(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-27
(54)【発明の名称】芳香族ジオール化合物、ジエポキシド化合物、かかる化合物から調製されたポリマー、及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 59/06 20060101AFI20231117BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20231117BHJP
B65D 8/00 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
C08G59/06
C09D163/00
B65D8/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528371
(86)(22)【出願日】2021-11-15
(85)【翻訳文提出日】2023-05-12
(86)【国際出願番号】 US2021059403
(87)【国際公開番号】W WO2022104222
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518155030
【氏名又は名称】エスダブリューアイエムシー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】プルーヴォス、ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリオ、マチュー
【テーマコード(参考)】
3E061
4J036
4J038
【Fターム(参考)】
3E061AB04
3E061AC01
3E061AC09
3E061AD01
3E061BA01
3E061BA02
4J036AB01
4J036AB07
4J036AB11
4J036AD10
4J036AD13
4J036DA01
4J036DC02
4J036DC22
4J036JA01
4J036JA06
4J036JA15
4J038DB001
4J038NA03
4J038NA11
4J038NA12
4J038PB04
4J038PC02
(57)【要約】
芳香環及びカルボニル基を含む第1の化合物と、カルボニル基を含む第2の化合物と、任意選択的に、エポキシド環を含む第3の化合物と、を含む反応物を反応させることによって、モノマーを形成する方法であって、モノマーが、ポリオール(例えば、ポリフェノール)又はポリエポキシドを含む、方法。このモノマーから誘導される1つ以上のセグメントを含むポリマーが提供される。このポリマーは、コーティング組成物、コーティング、又は多剤式エポキシド系を調製するために使用され得る。コーティング組成物は、食品又は飲料容器上にコーティングを提供するために適用され得る。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマーを形成する方法であって、前記方法が、
芳香環及びカルボニル基を含む第1の化合物と、
カルボニル基を含む第2の化合物と、
任意選択的に、エポキシド環を含む第3の化合物と、を含む反応物を反応させることを含み、
前記モノマーが、ポリオール(例えば、ポリフェノール)又はポリエポキシドを含む、方法。
【請求項2】
前記第1の化合物が、前記芳香環に直接結合したヒドロキシ基又はアルコキシド基を含み、任意選択的に、前記第1の化合物の前記カルボニル基が、好ましくは前記芳香環に直接結合したアシル基、好ましくは~CH(=O)又はアセチル基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の化合物が、式(I)の化合物であり、
【化1】
式中、Aは、任意選択的に置換され、かつ任意選択的にヘテロ原子を含む芳香環であり、前記ヘテロ原子は、好ましくはO、N又はSであり、
各R
1及びYは、独立して、水素又は有機基(例えば、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基)であり、
Xは、有機基(例えば、脂肪族基、脂環式基、芳香族基などのC1~C20、C1~C10、又はC1~C4含有基)であるか、又は存在せず(nが0であるとき)、
Zは、エピクロロヒドリンと反応性の基(例えば、ヒドロキシル基又は1つ以上の炭素原子を含むヒドロキシ含有基)であり、
nは、0又は1であり、
tは、2~4である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の化合物が、バニリン、ヒドロキシメチルフルフラール、ヒドロキシベンズアルデヒド(例えば、4~ヒドロキシベンズアルデヒド又は2~ヒドロキシベンズアルデヒド)、ヒドロキシルナフトアルデヒド(例えば、1~ヒドロキシ~2~ナフトアルデヒド、3~ヒドロキシ~2~ナフトアルデヒド、又は4~ヒドロキシ~1~ナフトアルデヒド)、3~ヒドロキシアセトフェノン、それらの置換改変体、又はそれらの組み合わせを含み、好ましくは、前記第1の化合物が、バニリン又はヒドロキシメチルフルフラールを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の化合物が、式(II)の化合物であり、
【化2】
式中、R
2及びR
3は、各々独立して、水素又は有機基(例えば、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基などのC1~C20、C1~C10、又はC1~C4含有基)であり、任意選択的に、R
2及びR
3は環に縮合している、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の化合物が、シクロヘキサノン、ジアルキルケトン(好ましくはジエチルケトン又はアセトン)、アルキルジオン(好ましくはシクロヘキサンジオン)、レブリン酸、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、前記第3の化合物と反応させることを含み、前記第3の化合物が、エピハロヒドリン、好ましくはエピクロロヒドリンを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記モノマーが、式(III)のモノマーであり、
【化3】
式中、A、R
1、X、Y、Z、n、及びtは、式(I)と同様であり、R
2及びR
3は、式(II)と同様である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記モノマーが、式(IV)のモノマーであり、
【化4】
式中、A、R
1、X、Y、n、及びtは、式(I)と同様であり、R
2及びR
3は、式(II)と同様であり、
Z
2は、エピクロロヒドリンとの反応後のZの残基であり、好ましくは、Z
2は、酸素、~NH~、~(CH
2)
mO~(mは1若しくは2である)、又は~COO~である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
式(III)のモノマーであって、
【化5】
式中、A、R
1、X、Y、Z、n、及びtは、式(I)と同様であり、R
2及びR
3は、式(II)と同様である、モノマー。
【請求項11】
式(IIIA)によって表され、
【化6】
式中、A、R
1、X、Y、Z、n、及びtは、式(I)と同様であり、各R
5は、独立して、水素又は有機基から選択され、好ましくは、R
5は水素である、請求項10に記載のモノマー。
【請求項12】
式(IV)のモノマーであって、
【化7】
式中、A、R
1、X、Y、n、及びtは、式(I)と同様であり、R
2及びR
3は、式(II)と同様であり、
Z
2は、エピクロロヒドリンとの反応後のZの残基であり、好ましくは、Z
2は、酸素、~NH~、~(CH
2)
mO~(mは1若しくは2である)、又は~COO~である、モノマー。
【請求項13】
式(IVA)によって表され、
【化8】
式中、A、R
1、X、Y、n、及びtは、式(I)と同様であり、R
5は、式(IIIA)と同様であり、
Z
2は、式(IV)と同様である、請求項12に記載のモノマー。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか一項に記載のモノマーから誘導される1つ以上のセグメントを含むポリマー。
【請求項15】
モノマーから誘導される構造単位を含み、請求項10~13のいずれか一項に記載のモノマーが、前記モノマーの5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、35重量%以上、50重量%以上、65重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、又は95重量%以上、又は99重量%以上;及び100重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、60重量%以下、40重量%以下、20重量%以下、又は10重量%以下を構成する、請求項14に記載のポリマー。
【請求項16】
請求項14又は15に記載のポリマーを含むコーティング又はコーティング組成物。
【請求項17】
請求項16に記載のコーティング及び金属基体を含む食品又は飲料容器であって、前記コーティングが、前記金属基体の少なくとも一部の上に配置されている、食品又は飲料容器。
【請求項18】
請求項10~13のいずれか一項に記載のポリエポキシドモノマーを含む剤Aと、
硬化剤を含む剤Bと、を含む、多剤式エポキシド系。
【請求項19】
請求項10~13のいずれか一項に記載のモノマーを含むモノマー混合物と、
不飽和モノマー、好ましくは(メタ)アクリレート又はスチレンと、の溶液を含むコーティング系又は複合材であって、
任意選択的に、前記モノマーを含有するオリゴマーのフリーラジカル単独重合によって得られる、コーティング系又は複合材。
【請求項20】
芳香環及びカルボニル基を含む化合物であって、任意選択的に、
バニリン、ヒドロキシメチルフルフラール、ヒドロキシベンズアルデヒド、ヒドロキシルナフトアルデヒド、3~ヒドロキシアセトフェノン、それらの置換改変体、又はそれらの組み合わせを含み、好ましくは、バニリン又はヒドロキシメチルフルフラールを含む、化合物と、
カルボニル基を含む官能単位を含有するポリマーであって、任意選択的に、アクリルポリマーである、ポリマーと、を反応させることによって得られるフェノールペンダントを含むコポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年11月16日に出願された米国仮特許出願第63/114,150号の利益を主張するものであり、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、芳香族ジオールモノマー及びその製造方法に関する。本開示は更に、芳香族ジオールモノマーを含有する組成物、及び芳香族ジオールモノマーを使用して調製されたポリマーに関する。
【背景技術】
【0003】
腐食を遅延又は抑制するための金属へのコーティングの適用は、十分に確立されている。これは、金属製の食品缶や飲料缶などの包装容器の分野において特に該当する。コーティングは、典型的には、内容物が容器の金属と接触するのを防ぐために、かかる容器の内部に適用される。金属と包装された製品との間の接触は、金属容器の腐食をもたらす可能性があり、それは包装された製品を汚染する可能性がある。これは、容器の内容物が本質的に化学的腐食性を有する場合に特に当てはまる。食品の充填ラインと容器蓋との間の容器のヘッドスペースにおける腐食を防止するために、食品及び飲料容器の内部にも保護コーティングが適用される。
【0004】
包装コーティングは、好ましくは、基体に高速塗布することができる必要があり、この要求の厳しい最終用途で機能するために硬化したときに必要な特性を提供しなければならない。例えば、コーティングは、食品接触に対して安全であり、包装された食品又は飲料製品の味に悪影響を及ぼさず、基体への優れた接着性を有し、汚染並びに「ポッピング」、「ブラッシング」及び/又は「ブリスタリング」などの他のコーティング欠陥に抵抗し、過酷な環境に曝露された場合であっても長期間にわたって劣化に抵抗する必要がある。加えて、コーティングは、一般に、容器の製造及び使用中に適切な膜の完全性を維持することができ、容器が製品包装中に供され得る加工条件に耐えることができる必要がある。
【0005】
ポリ塩化ビニル系コーティング及びビスフェノールA(「BPA」)を組み込んだエポキシ系コーティングを含む様々なコーティングが、内部保護用の缶コーティングとして使用されてきた。しかしながら、これらのコーティングタイプの各々は、潜在的な欠点を有する。例えば、ポリ塩化ビニル又は関連するハロゲン化物含有ビニルポリマーを含有する材料のリサイクルは問題となり得る。また、食品接触エポキシコーティングを配合するために一般的に使用されるある種のBPA系化合物を低減又は排除することも望まれている。
【0006】
市場で必要とされているのは、例えば包装用コーティングなどのコーティングに使用するための改善されたバインダー系である。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、芳香族ジオールモノマー、例えば、フェノールモノマー、特にポリフェノール(例えば、ジフェノール)モノマー、そのエポキシド(例えば、ジフェノールのジグリシジルエーテルなどのジエポキシド)、及びその製造方法に関する。本開示のポリフェノールモノマーは、2つ以上のフェノール基を含む。本開示は更に、ポリフェノールモノマーを含有する組成物、及びポリフェノールモノマーを使用して調製されたポリマーに関する。いくつかの実施形態では、ポリフェノールモノマーは、コーティング組成物中で使用され、例えば、食品又は飲料容器をコーティングするために使用される。
【0008】
一実施形態によれば、モノマーを形成する方法は、芳香環及びカルボニル基を含む第1の化合物と、カルボニル基を含む第2の化合物と、任意選択的に、エポキシド環を含む第3の化合物と、を含む反応物を反応させることを含み、ここで、モノマーは、ポリオール(例えば、ポリフェノール)又はポリエポキシドを含む。第1の化合物は、芳香環に直接結合しているアルコキシド基を含み得る。第1の化合物は、好ましくは芳香環に直接結合しているヒドロキシ基を含み得る。
【0009】
一実施形態によれば、本開示のモノマーは、モノマーから誘導される1つ以上のセグメントを含むポリマーを調製するために使用され得る。例えば、ポリマーは、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、35重量%以上、50重量%以上、65重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、若しくは95重量%以上、若しくは99重量%以上;及び/又は100重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、60重量%以下、40重量%以下、20重量%以下、若しくは10重量%以下のモノマーから誘導される構造単位を含み得る。
【0010】
ポリマーは、コーティング組成物、コーティング、又は多剤式エポキシド系を調製するために使用され得る。コーティング組成物は、食品又は飲料容器上にコーティングを提供するために適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】実施例1Aで調製された化合物のNMRスペクトルである。
【
図1B】実施例1Bで調製された化合物のNMRスペクトルである。
【
図2A】実施例2Aで調製された化合物のNMRスペクトルである。
【
図2B】実施例2Bで調製された化合物のNMRスペクトルである。
【
図3A】実施例3Aで調製された化合物のNMRスペクトルである。
【
図3B】実施例3Bで調製された化合物のNMRスペクトルである。
【
図4】実施例4Aで調製された化合物のNMRスペクトルである。
【
図5】実施例5で調製された化合物のNMRスペクトルである。
【
図6】実施例6で調製された化合物のNMRスペクトルである。
【
図7】実施例9で調製された化合物のDSCグラフである。
【
図8】本開示のコーティング組成物から形成されたコーティングを有する食品又は飲料容器の概略図である。
【0012】
定義
「オリゴマー」という用語は、本明細書では、2~10個(上下限値を含む)の繰り返し単位(モノマー)を含む化合物を指すために使用される。各繰り返し単位は、100以下、200以下、500以下、又は1000以下などの限定された分子量を有し得る。オリゴマーは、1000以下、1500以下、又は2000以下などの限定された分子量を有し得る。
【0013】
別段の指示がない限り、「ポリマー」及び「ポリマー材料」という用語は、有機ホモポリマー、例えばブロック、グラフト、ランダム及び交互コポリマーなどのコポリマー、ターポリマーなど、並びにそれらのブレンド及び修飾物を含むが、これらに限定されない。更に、特に限定しない限り、「ポリマー」という用語は、材料の全ての可能な幾何学的構成を含むものとする。これらの立体配置は、アイソタクチック、シンジオタクチック、及びアタクチック対称を含むが、これらに限定されない。
【0014】
用語「芳香環」は、本開示において、有機化合物の共役環系を指すために使用される。芳香環は、炭素原子のみを含んでいてもよく、又は酸素、窒素若しくは硫黄などの1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0015】
「有機基」という用語は、炭化水素基(例えば酸素、窒素、硫黄、及びケイ素などの、炭素及び水素以外の任意選択の元素を有するもの)であって、脂肪族基、環式基(例えば、芳香族基及び脂環式基)、又は脂肪族基と環式基の組み合わせ(例えば、アルカリル基及びアラルキル基)として、更に分類され得る炭化水素基を指すものとして本明細書で使用される。
【0016】
「脂肪族基」という用語は、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐炭化水素基を指すものとして本明細書で使用される。この用語は、例えば、アルキル、アルケニル、及びアルキニル基を包含するために使用される。
【0017】
「アルキル化」という用語は、本開示において、アルキル基が化合物に共有結合するように、化合物の水素原子又は負電荷をアルキル基で置換するように反応される化合物を説明するために使用される。
【0018】
「アルキル」という用語は、本開示において、アルカンのラジカルである一価の基を説明するために使用され、直鎖、分岐、環状、及び二環式アルキル基、並びにそれらの組み合わせを含み、非置換及び置換アルキル基の両方を含む。別段の指示がない限り、アルキル基は、典型的には、1~30個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~20個の炭素原子、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、又は1~3個の炭素原子を含有する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n~プロピル、n~ブチル、n~ペンチル、イソブチル、t~ブチル、イソプロピル、n~オクチル、n~ヘプチル、エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
用語「ヘテロ原子」は、本明細書では、炭素又は水素以外の原子を指すために使用される。ヘテロ原子の例としては、N、P、S、Oなどが挙げられる。
【0020】
「環式基」という用語は、脂環式基又は芳香族基として分類される閉環炭化水素基を意味し、これらの両方がヘテロ原子を含み得る。
【0021】
用語「フェノール」は、本明細書において、芳香環(典型的には6炭素芳香環)の炭素原子に直接結合した1つ以上のヒドロキシル基を有する芳香族炭化水素化合物を指すために使用される。
【0022】
「ポリフェノール」という用語は、本明細書では、それぞれが環の炭素原子に結合したヒドロキシル基を含む2つ以上のフェニレン基を有する多価物質を指すために使用される。「ジフェノール」という用語は、2つのフェニレン基がそれぞれ1つのヒドロキシル基を有するポリフェノールを指す。
【0023】
本明細書で使用される「フェニレン」という用語は、任意の置換基(例えば、水素原子、ハロゲン、炭化水素基、酸素原子、ヒドロキシル基などを含む)を有することができる6個の炭素原子の芳香環(例えば、ベンゼン基におけるような)を指す。したがって、例えば、以下の芳香族基は、それぞれフェニレン環である:~C6H4~、~C6H3(CH3)~、及び~C6H(CH3)2Cl~。また、例えば、ナフタレン基の各芳香環はフェニレン環である。
【0024】
「ビスフェノール」という用語は、2つのフェニレン基を有する多価ポリフェノールであって、それぞれのフェニレン基が6炭素環と、環の炭素原子に結合したヒドロキシル基とを含み、2つのフェニレン基の環は、いかなる原子も共有しない、多価ポリフェノールを指す。
【0025】
「架橋剤」という用語は、別個のポリマー間又は同じポリマーの2つの異なる領域間に共有結合を形成することができる分子を指す。
【0026】
「エストロゲン活性」又は「エストロゲンアゴニスト活性」という用語は、内因性エストロゲン受容体、典型的には内因性ヒトエストロゲン受容体との相互作用を通じて、ホルモン様活性を模倣する化合物の能力を指す。
【0027】
「基」という用語は、特定の部分を表現すること、及び部分を含む置換及び非置換構造のより広い分類を表現することの両方であることが意図される。したがって、「基」という用語が化学置換基を記載するために使用されるとき、記載された化学物質は、非置換基(例えば部分)、及び例えば鎖内に、O、N、Si、又はS原子を有するその基(アルコキシ基のような)、並びにカルボニル基、又は他の従来の置換を含む。「部分」という用語が化学化合物又は置換基を記載するために使用される場合、非置換の化学物質のみが含まれることが意図される。例えば、「アルキル基」という語句は、メチル、エチル、イソプロピル、t~ブチル、ヘプチル、ドデシル、オクタデシル、アミル、2~エチルヘキシルなどの純粋な開鎖飽和炭化水素アルキル置換基だけでなく、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルスルホニル、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシルなどの当技術分野で知られている更なる置換基を持つアルキル置換基も含むことが意図される。したがって、「アルキル基」は、エーテル基、ハロアルキル、ニトロアルキル、カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、スルホアルキルなどを含む。一方、「アルキル部分」という語句は、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、t~ブチル、ヘプチル、ドデシル、オクタデシル、アミル、2~エチルヘキシルなどの純粋な開鎖飽和炭化水素アルキル置換基のみを含むことに限定される。
【0028】
「反応性」という用語は、本明細書では、意図される化合物間の反応が、所望の処理条件において妥当な時間内に、例えば、50%以上、75%以上、又は90%以上の収率が、12時間以下、4時間以下、2時間以下、又は1時間以下内に起こることを意味するために使用される。
【0029】
本明細書で使用される「実質的に」という用語は、「顕著に」と同じ意味を有し、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約98%で、それに続く用語を修飾するものと理解することができる。特定の化合物を「実質的に含まない」という用語は、本発明の組成物が、百万分の1,000部(parts per million、ppm)未満の列挙された化合物(0.1重量%未満に相当する)を含有することを意味する。特定の化合物を「本質的に含まない」という用語は、本発明の組成物が百万分の100部(ppm)未満の列挙された化合物を含有することを意味する。特定の化合物を「完全に含まない」という用語は、本発明の組成物が、列挙された化合物を十億分の20部(parts per billion、ppb)未満含有することを意味する。前述の語句の文脈において、本発明の組成物は、化合物自体が未反応形態で存在するか、又は1つ以上の他の材料と反応しているかにかかわらず、前述の量未満の化合物を含有する。当業者によって理解されるように、成分、ポリマー、配合物、又は他の成分中の化合物の量は、典型的には、かかる成分、ポリマー、配合物、又は他の成分を作製する際に用いられた出発材料の量及び得られた収量に基づいて計算され得る。
【0030】
本明細書で使用される「実質的に...ではない」という用語は、「顕著に...ではない」と同じ意味を有し、「実質的に」の逆の意味を有する、すなわち、25%以下、10%以下、5%以下、又は2%以下で、それに続く用語を修飾すると理解することができる。
【0031】
「約」という用語は、本明細書では、当業者によって予想されるような測定における通常の変動を含むために数値と併せて使用され、「およそ」と同じ意味を有し、述べられた値の±5%などの典型的な誤差の範囲を包含すると理解される。
【0032】
「a」、「an」、及び「the」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図するものではなく、例示のために特定の例が使用され得る一般的なクラスを含む。
【0033】
用語「a」、「an」、及び「the」は、用語「少なくとも1つ」と交換可能に使用される。リストが続く「のうちの少なくとも1つ」及び「のうちの少なくとも1つを含む」という句は、リスト内の項目のうちのいずれか1つ、及びリスト内の2つ以上の項目の任意の組み合わせを指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、「又は」という用語は、一般に、内容が明確に別段の指示をしない限り、「及び/又は」を含むその通常の意味で使用される。「及び/又は」という用語は、列挙された要素の1つ若しくは全て、又は列挙された要素の任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0035】
端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含み、又は10以下は、10、9.4、7.6、5、4.3、2.9、1.62、0.3などを含む)。値の範囲が特定の値「まで/最大」又は「少なくとも」である場合、その値はその範囲内に含まれる。
【0036】
「好ましい」及び「好ましくは」という用語は、ある特定の状況下で、ある特定の利益をもたらし得る実施形態を指す。しかしながら、同じか又は他の状況下では、他の実施形態が好ましい場合もあり得る。更に、1つ以上の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用でないことを暗示するものではなく、特許請求の範囲を含む本発明の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものでもない。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本開示は、広義には重合性モノマーに関する。具体的には、本開示は、ポリフェノールモノマー(例えば、ジフェノール)などの芳香族ジオールモノマー、ポリエポキシドモノマー、及びそれらの製造方法に関する。本開示の芳香族ジオール(例えば、ジフェノール)モノマーは、ビスフェノール(例えば、ビスフェノールA)の代替物として使用され得る。同様に、ポリエポキシドモノマーは、ビスフェノールのエポキシド(例えば、BADGEとしても一般に知られているビスフェノールAのジグリシジルエーテル)の代替物として使用することができる。
【0038】
本開示は更に、芳香族ジオール(例えば、ポリフェノール)モノマー及び/又はポリエポキシドモノマーを含有する組成物、並びに芳香族ジオール(例えば、ポリフェノール)モノマー及びポリエポキシドモノマーの一方又は両方を使用して調製されるポリマーに関する。いくつかの実施形態では、モノマーは、コーティング組成物中で(例えば、ポリマーの構造単位として)使用される。いくつかの実施形態では、モノマーは、缶コーティング組成物中で(例えば、ポリマーの構造単位として)使用される。いくつかの実施形態では、モノマー(例えば、ジフェノールモノマーから誘導されるジエポキシドモノマー)は、熱硬化性コーティング組成物中で使用される。モノマーはまた、他の熱硬化性組成物(例えば、複合材など)において使用され得る。
【0039】
一実施形態によれば、芳香族ジオール(例えば、ジフェノールなどのポリフェノール)モノマーは、芳香環及びカルボニル基を有する第1の化合物と、カルボニル基を有する第2の化合物とから調製され得る。かかるモノマーは、第1の化合物と第2の化合物とを反応させることを含む方法によって調製され得る。この方法は、任意選択的に、エポキシド環を有する第3の化合物と反応させることを含み得る。モノマーは、芳香族ジオール、ポリフェノール、又はポリエポキシドであり得る。例えば、モノマーは、ジフェノール又はジフェノールから誘導されるジエポキシドであり得る。
【0040】
一実施形態によれば、第1の化合物は、芳香環に直接結合したアルコキシド基を含む。第1の化合物は、ヒドロキシ基を含み得、それは好ましくは芳香環に直接結合している。第1の化合物のカルボニル基は、アシル基、好ましくは~CH(=O)又はアセチル基であり得る。カルボニル基(例えば、アシル基、~CH(=O)、又はアセチル基)は、好ましくは芳香環に直接結合している。
【0041】
いくつかの実施形態では、第1の化合物は、式(I)によって表され、
【0042】
【化1】
式中、Aは、任意選択的に置換され、かつ任意選択的にヘテロ原子を含む芳香環であり、ヘテロ原子が、好ましくはO、N又はSであり、
各R
1及びYは、独立して、水素又は有機基(例えば、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基)であり、
Xは、有機基(例えば、脂肪族基、脂環式基、芳香族基などのC1~C20、C1~C10、又はC1~C4含有基)であるか、又は存在せず(nが0である場合)、
Zは、エピクロロヒドリンと反応性の基(例えば、1個以上の炭素原子を含むヒドロキシル基若しくはヒドロキシ含有基、又は一級若しくは二級アミノ基)であり、
nは、0又は1であり、
tは、2~4である。
【0043】
一実施形態では、式(I)中のnはゼロ(0)であり、カルボニルを有する炭素は芳香環に直接結合している。
【0044】
一実施形態では、Yは水素であり、第1の化合物は式(IA)によって表され、
【0045】
【化2】
式中、A、R
1、及びtは、式(I)の場合と同様であり、好ましくは、R
1は、水素又は酸素原子を含む脂肪族基であり、
mは0~2である。
【0046】
第1の化合物は、1,000ダルトン未満、500ダルトン未満、又は200ダルトン未満の原子量を有し得る。いくつかの実施形態では、第1の化合物は、1,000ダルトン未満の原子量を有する繰り返し単位を有するオリゴマーである。
【0047】
いくつかの実施形態では、第1の化合物は、バニリン、ヒドロキシメチルフルフラール、ヒドロキシベンズアルデヒド(例えば、4~ヒドロキシベンズアルデヒド又は2~ヒドロキシベンズアルデヒド)、ヒドロキシルナフトアルデヒド(例えば、1~ヒドロキシ~2~ナフトアルデヒド、3~ヒドロキシ~2~ナフトアルデヒド、又は4~ヒドロキシ~1~ナフトアルデヒド)、3~ヒドロキシアセトフェノン、それらの置換改変体、又はそれらの組み合わせである。好ましい実施形態では、第1の化合物は、バニリン又はヒドロキシメチルフルフラール(「HMF」)である。
【0048】
いくつかの実施形態では、第2の化合物は、式(II)によって表され、
【0049】
【化3】
式中、R
2及びR
3は、各々独立して、水素又は有機基である。例えば、R
2及びR
3は、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基などのC1~C20、C1~C10、又はC1~C4含有基から独立して選択され得る。R
2及びR
3は、任意選択的に、5員環又は6員環(例えば、シクロヘキサン環)などの環に縮合され得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、第2の化合物は、シクロヘキサノン、ジアルキルケトン(好ましくはジエチルケトン又はアセトン)、アルキルジオン(好ましくはシクロヘキサンジオン)、レブリン酸、それらの置換改変体(例えば、炭素含有基などの置換基で置換された1つ以上の水素原子を有するシクロヘキサノン)、又はそれらの組み合わせである。
【0051】
第2の化合物は、1,000ダルトン未満、500ダルトン未満、又は100ダルトン未満の原子量を有し得る。いくつかの実施形態では、第2の化合物は、1,000ダルトン未満の原子量を有する繰り返し単位を有するオリゴマーである。
【0052】
いくつかの実施形態では、本方法は、第1の化合物又は第1及び第2の化合物の中間生成物を、第3の化合物と反応させることを含む。第3の化合物は、エピハロヒドリン、好ましくはエピクロロヒドリンであり得る。
【0053】
本方法は、第1のステップにおいて第1の化合物を第2の化合物と反応させて中間生成物(例えば、ポリフェノールなどの芳香族ジオール、好ましくはジフェノール)を得、次いで、第2のステップにおいて中間生成物を第3の化合物と反応させてモノマーを得ることを含み得る。例えば、本方法は、最初にジフェニルを生成し、次いでエポキシド基をジフェニルに付加することを含み得る。モノマーは、ポリエポキシドモノマー、好ましくはジエポキシドモノマーであり得る。いくつかの実施形態では、本方法は、第1の化合物を第2の化合物と反応させる第1のステップのみを含み、モノマーは、第1のステップの反応生成物(例えば、ポリフェノールなどの芳香族ジオール、好ましくはジフェノール)である。
【0054】
あるいは、本方法は、第1のステップにおいて第1の化合物と第3の化合物とを反応させて中間生成物を得、第2のステップにおいて中間生成物を第2の化合物と反応させてモノマーを得ることを含み得る。例えば、本方法は、最初にエポキシド官能性フェニル化合物を生成すること、次いでこのエポキシド官能性フェニル化合物をカルボニル含有化合物と反応させてエポキシド官能性ジフェニルを得ることと、を含み得る。モノマーは、ポリエポキシドモノマー、好ましくはジエポキシドモノマーであり得る。
【0055】
本開示の方法において使用することができる好適なエピハロヒドリンとしては、以下の式によって表されるものが挙げられ、
【0056】
【化4】
式中、R
4は、水素又は1~4個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、好ましくは水素であり、Xは、ハロゲン、好ましくは塩素又は臭素、最も好ましくは塩素である。エピクロロヒドリンは、本開示の方法で使用するのに好ましいエピハロヒドリンである。
【0057】
一実施形態によれば、第1の化合物及び第2の化合物は、約2モル部の第1の化合物対約1モル部の第2の化合物の比で反応する。例えば、第1の化合物及び第2の化合物は、1.8:1~3:1モル部、1.8:1~2.5:1モル部、1.8:1~2.2:1モル部、又は2:1~2.2:1モル部の、第1の化合物及び第2の化合物の比で反応させることができる。好ましい実施形態では、第1の化合物対第2の化合物の比は、2:1又は約2:1(例えば、2:1~2.2:1)であり、それにより、二官能性(例えば、ジフェニル)モノマーではなく単官能性モノマーの形成をもたらし得る不完全な反応が最小限となる。
【0058】
一実施形態によれば、本方法は、式(III)のモノマーを合成するために使用することができ、
【0059】
【化5】
式中、A、R
1、X、Y、Z、n、及びtは、式(I)と同様であり、R
2及びR
3は、式(II)と同様である。
【0060】
モノマーは、ジフェノールであり得る。一実施形態によれば、モノマーは、式(IIIA)によって表され、
【0061】
【化6】
式中、A、R
1、X、Y、Z、n、及びtは、式(I)と同様であり、各R
5は、独立して、水素又は有機基から選択され、好ましくはR
5は水素である。例えば、本方法が、第1の化合物を第2の化合物としてのシクロヘキサノンと反応させることを含む場合、得られるモノマーは、式(IIIA)のモノマーであり得る。
【0062】
一実施形態によれば、モノマーは、式(IIIB)によって表され、
【0063】
【化7】
式中、R
1、Y、及びZは、式(I)と同様であり、R
5は、式(IIIA)と同様である。例えば、本方法が、置換ベンゼン環を有する第1の化合物を、第2の化合物としてのシクロヘキサノンと反応させることを含む場合、得られるモノマーは、式(IIIB)のモノマーであり得る。
【0064】
一実施形態によれば、モノマーは、式(IIIC):
【0065】
【化8】
によって表される。例えば、本方法が、第1の化合物としてのバニリンを第2の化合物としてのシクロヘキサノンと反応させることを含む場合、得られるモノマーは、式(IIIC)のモノマーであり得る。
【0066】
一実施形態によれば、モノマーは、式(IIID)によって表され、
【0067】
【化9】
式中、R
1、Y、及びZは、式(I)と同様であり、R
5は、式(IIIA)と同様である。例えば、本方法が、置換フラン環を有する第1の化合物を第2の化合物としてのシクロヘキサノンと反応させることを含む場合、得られるモノマーは、式(IIID)のモノマーであり得る。
【0068】
一実施形態によれば、モノマーは、式(IIIE):
【0069】
【化10】
によって表される。例えば、本方法が、第1の化合物としてのHMFを第2の化合物としてのシクロヘキサノンと反応させることを含む場合、得られるモノマーは式(IIIE)のモノマーであり得る。
【0070】
一実施形態によれば、示されたZ基(エピクロロヒドリンと反応性の基)は、モノマーがエポキシド、好ましくはジエポキシドであるように、エポキシド含有基に変換され得る。例えば、本方法は、式(III)の化合物を第3の化合物と反応させることを含むことができ、第3の化合物は、エピハロヒドリン、好ましくはエピクロロヒドリンなどのエポキシド官能性化合物である。
【0071】
一実施形態によれば、モノマーは、式(IV)によって表され、
【0072】
【化11】
式中、A、R
1、X、Y、n、及びtは、式(I)と同様であり、R
2及びR
3は、式(II)と同様であり、
式中、Z
2は、エピクロロヒドリンとの反応後のZの残基であり、好ましくは、Z
2は、酸素、~NH~、~(CH
2)
mO~(mは1若しくは2である)、又は~COO~である。
【0073】
一実施形態によれば、モノマーは、式(IVA):によって表され、
【0074】
【化12】
式中、A、R
1、X、Y、n、及びtは、式(I)と同様であり、R
5は、式(IIIA)と同様であり、
Z
2は、式(IV)と同様である。
【0075】
一実施形態によれば、モノマーは、式(IVB):
【0076】
【0077】
一実施形態によれば、モノマーは、式(IVC):
【0078】
【0079】
一実施形態によれば、モノマーは、式(IVD):
【0080】
【0081】
いくつかの実施形態では、第1の化合物、又は第1及び第2の化合物の中間生成物を、第3の化合物と反応させることは、相間移動触媒の存在下で行われる。好適な相間移動触媒の例としては、様々な四級アンモニウム塩及び四級ホスホニウム塩が挙げられる。任意の適切なアンモニウム塩又はホスホニウム塩を使用することができる。適切なアンモニウム塩の一例は、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(「TEBAC」)である。
【0082】
第1の化合物又は第1及び第2の化合物の中間生成物を第3の化合物と反応させることは、1モル部の第1の化合物又はその残基を1モル部以上の第3の化合物と組み合わせることを含み得る。第1及び第2の化合物の中間生成物が、第1の化合物の2つの残基を含む(例えば、ジフェニルである)場合、各残基はモル当量を占める。一部の実施形態では、第3の化合物(例えば、エピハロヒドリン)は、過剰に提供される。本方法は、1モル部の第1の化合物を、2モル部以上、3モル部以上、4モル部以上、又は好ましくは5モル部以上のエピハロヒドリンと組み合わせることを含み得る。本方法は、1モル部の第1の化合物を、20モル部以下、15モル部以下、10モル部以下、又は8モル部以下のエピハロヒドリンと組み合わせることを含み得る。本方法は、1モル部の第1の化合物を、1~20モル部、2~15モル部、又は3~10モル部のエピハロヒドリンと組み合わせることを含み得る。1つの例示的な実施形態では、1モル部の第1の化合物を約5モル部のエピハロヒドリンと組み合わせる。
【0083】
相間移動触媒の存在下で、第1の化合物又は第1及び第2の化合物の中間生成物を、第3の化合物(例えば、エピハロヒドリン)と反応させることは、1モル部の第3の化合物を、1/1000モル部以上、1/100モル部以上、1/50モル部以上、1/20モル部以上、又は好ましくは1/10モル部以上の相間移動触媒と組み合わせることを含み得る。本方法は、1モル部の第3の化合物を、1/2モル部以下、好ましくは1/5モル部以下の相間移動触媒と組み合わせることを含み得る。1つの例示的な実施形態では、1モル部の第3の化合物は、1/50~1/150モル部の相間移動触媒と組み合わされる。前述のように、好ましい実施形態では、相間移動触媒は、四級アンモニウム塩又は四級ホスホニウム塩、好ましくは四級アンモニウム塩であり得る。
【0084】
反応のパーセント収率は、反応の理論上の最大収率と比較した、重量で実際に達成された標的化合物(例えば、モノマー、オリゴマー、又はポリマー)の量に基づく。
【0085】
所望であれば、1種以上の希釈剤又は他の物質が反応混合物中に存在してもよい。例えば、有機溶媒が反応混合物中に含まれ得る。かかる希釈剤又は他の材料の量及び同一性は、好ましくは、所望の反応、又は第1の中間生成物などの反応生成物から更なる生成物又はポリマーを形成するために使用され得る重合反応を含む下流の反応に対して、不適切に干渉することを回避するよう制御される。いくつかの実施形態では、反応混合物のpHは、酸を用いて低下させるか、又は塩基を用いて上昇させる。例えば、バニリン及びシクロヘキサノンの反応混合物のpHは、酸(例えば、HCl)を用いて低下させ得る。バニリンエポキシド及びアセトンの反応混合物のpHは、塩基(例えば、NaOH)を用いて上昇させ得る。
【0086】
本開示のモノマー(例えば、式(III)又は式(IV)のモノマー)は、任意の好適な分子量を有し得る。モノマーは、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー及びポリスチレン標準を使用して評価して、最大約3,000、最大約2,000、最大約1,200、最大約800、最大約600、又は最大約500ダルトンの数平均分子量(Mn)を有し得る。
【0087】
モノマーがポリエポキシドである実施形態では、モノマーはまた、そのエポキシ当量重量に基づいて特徴付けられ得る。エポキシ当量は、例えば、過塩素酸による滴定によって決定することができる。いくつかの実施形態では、モノマーは、200以上(例えば、206)、210以上(例えば、219)、又は230以上(例えば、243)のエポキシ当量を有する。いくつかの実施形態では、バニリンが第1の化合物として使用される場合、モノマーは、(例えば、シクロヘキサノンが第2の化合物として使用され、エピクロロヒドリンがハロヒドリンとして使用される場合)210以上又は230以上、最大250のエポキシ当量を有し得る。
【0088】
本方法は、様々な洗浄、乾燥、抽出、及び/又は濾過ステップを含み得る。例えば、本方法は、過剰なエピハロヒドリンを除去することを含み得る。過剰のエピハロヒドリンは、例えば蒸留(真空蒸留など)によって除去し得る。過剰のエピハロヒドリンが除去された後、1重量%未満のエピハロヒドリンが反応混合物中に残存し得る。この方法はまた、モノマーを洗浄するステップを含み得る。好ましい実施形態によれば、1000ppm未満、500ppm未満、100ppm未満、50ppm未満、25ppm未満、又は10ppm未満のエピハロヒドリンが、モノマーの形成後の最終モノマー組成物又は最終ポリマー組成物中に残存する。単位「ppm」(百万分率)は、ここでは、重量による量を指すために使用される。
【0089】
本開示のモノマーは、様々な異なる最終用途において有用性を有し得る。モノマーは、重合性組成物の一部を形成し得る。かかる重合性組成物は、複数の形態をとり得、例えば、様々な基体、特に、工業用コイルなどの金属基体、並びに食品及び飲料容器(例えば、缶)又はその一部などの包装物品の形成に使用するための金属基体のコーティングに使用するための液体又は粉末コーティング組成物の配合剤に使用するためのポリマーを合成するために使用し得る。他のコーティング最終用途としては、工業用コーティング、海洋用コーティング(例えば、船体用)、貯蔵タンク用コーティング(例えば、金属又はコンクリート)、建築用コーティング(例えば、クラッディング、金属屋根材、天井、ガレージドアなど)、ガーデニングツール及び設備用コーティング、玩具用コーティング、自動車用コーティング、金属家具用コーティング、家庭用器具用コイルコーティング、床コーティングなどが挙げられ得る。
【0090】
好ましい実施形態では、コーティング組成物は、接着性包装コーティングとして、より好ましくは食品又は飲料容器の内面及び/又は外面上の接着性コーティングとして使用するのに適している。したがって、好ましい実施形態では、コーティング組成物は、食品接触コーティングとしての使用に適している。コーティング組成物は、化粧品包装又は医療用製品の包装コーティング最終用途において、特に薬物接触コーティングとして(例えば、一般に「MDI」容器と称され得る定量噴霧式吸入器の内部コーティングとして)有用性を有し得ることも企図される。コーティング組成物は、コーティングされた基体が体液と接触するコーティング用途(例えば、血液バイアルの内部コーティングなど)において有用性を有し得ることも企図される。
【0091】
本明細書で後に詳述するように、本明細書に開示されるポリマーは、ポリフェノール(例えば、ジフェノール)化合物などの芳香族ジオール化合物を含む成分から形成される。任意の好適な芳香族ジオール(例えば、ポリフェノール)化合物又は芳香族ジオール化合物の組み合わせを使用することができ、特定の実施形態では、ジフェノール化合物が好ましい。
【0092】
ポリマーは、任意の適切な骨格化学を有してもよく、直鎖状又は分岐鎖状のポリマーであり得る。しかしながら、好ましい実施形態では、ポリマーは直鎖状又は実質的に直鎖状のポリマーである。典型的には、骨格は、1つ以上のヘテロ原子(例えば、O、N、又はS)、より典型的には複数のヘテロ原子を含む。
【0093】
本開示のモノマーは、ポリエポキシド又はポリフェノール反応物が典型的に使用される任意のタイプのポリマー(例えば、コーティング又は接着剤の産業における使用のためのポリマーを含む)を作製するために使用され得ることが企図される。本明細書に開示されるモノマーは、食品又は飲料容器(例えば、金属食品若しくは飲料缶又はそれらの一部)の内面又は外面上での使用を意図したコーティング組成物を配合するために使用されるポリエステル及びポリエーテルバインダーポリマーのタイプを含む、コーティング産業で使用するためのバインダーポリマー(例えば、ポリエーテル、ポリエステル、それらのコポリマーなど)を作製する際の使用に特に有用である。本開示のポリフェノール及びポリエポキシドモノマーの一方又は両方は、液体、粉末、積層物、又は押出コーティング組成物における使用に適したバインダーポリマーを調製するために使用され得、コーティングされる基体に適用されるコーティング組成物は、好ましくは予備形成ポリマーを含む。この文脈における予備形成ポリマーは、コーティング組成物中のポリマーが、2000以上、3000以上、3500以上、又は4000以上の数平均分子量を有することを意味する。ポリマーの数平均分子量は、任意の好適な上限、例えば、最大100,000、最大50,000、最大20,000、又は最大10,000を有し得る。
【0094】
特定の好ましい実施形態では、ポリマーは、好ましくはその骨格中に複数のエーテル結合を含むポリエーテルポリマーである。任意選択的に、ポリマーの骨格は、エーテル結合以外の(例えば、エーテル結合に加えて、又はその代わりに)1つ以上のヘテロ原子を有する結合(例えば、段階成長又は縮合結合)、例えば、アミド結合、カーボネート結合、エステル結合、尿素結合、ウレタン結合、若しくは硫黄含有結合(例えば、炭素~硫黄鎖結合)など、又はそれらの組み合わせを含み得る。したがって、例えば、いくつかの実施形態では、骨格は、エステル結合及びエーテル結合の両方を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリマーは、エーテル結合以外の骨格の縮合結合又は段階成長結合を含まないポリエーテルポリマーである。一実施形態では、ポリマーは主鎖エステル結合を含まない。
【0095】
ポリマーは、芳香族基を含む。好ましくは、ポリマーは、主鎖に結合した複数の芳香族基を含む。ポリマーの主鎖は、例えば、1つ以上のフェノール基、1つ以上のオキシラン基、又はフェノール基及びオキシラン基の両方を含む、任意の好適な末端基を含み得る。
【0096】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、ポリマー中に十分な数のアリール及び/又はヘテロアリール基(典型的にはフェニレン基)を含むことは、特に包装される製品がいわゆる「持ちにくい」食品又は飲料製品である場合に、食品接触包装コーティングのための適切なコーティング性能を達成するための重要な因子であると考えられる。ザワークラウトは、持ちにくい製品の一例である。好ましい実施形態では、アリール及び/又はヘテロアリール基は、ポリマーの重量に対するポリマー中のアリール及びヘテロアリール基の総重量に基づいて、ポリマーの少なくとも約10重量パーセント(「重量%」)、より好ましくは少なくとも約25重量%、更により好ましくは少なくとも約35重量%、又は少なくとも約45重量%を構成する。アリール/ヘテロアリール基の上限濃度は特に限定されないが、好ましくは、かかる基の量は、ポリマーのTgが前述のTg範囲内にあるよう構成される。ポリマー中のアリール及び/又はヘテロアリール基の総量は、典型的には、ポリマーの約80重量%未満、より典型的には約75重量%未満、更により典型的には約70重量%未満、又は約60重量%未満を構成する。ポリマー中のアリール及び/又はヘテロアリール基の総量は、ポリマー中に組み込まれたアリール又はヘテロアリール含有モノマーの重量、及びアリール又はヘテロアリール基を構成するかかるモノマーの重量画分に基づいて決定することができる。
【0097】
本開示のモノマーは、例えば、使用直前又は使用の少し前に2つ以上の剤が一緒にされて最終組成物(例えば、最終熱硬化性組成物)を形成するものなどの、多剤式熱硬化性組成物の一部を形成し得る。多剤式エポキシド系は、本開示のポリエポキシドモノマーを含む第1の剤(例えば、剤A)と、硬化剤を含む第2の剤(例えば、剤B)とを含み得る。好適な硬化剤としては、例えば、ポリアミン及びポリアミドアミンが挙げられる。かかる多剤式エポキシド組成物は、例えば、キャスティング、接着剤、充填剤、及び特定のコーティング用途を含む、種々の目的のために使用され得る。例えば、多剤式エポキシド組成物は、飲料水、食用シロップ及び油(例えば、コーンシロップ)、他の液体供給原料などのヒトが消費するための液体製品を含む様々な製品を保持し得る、コンクリート又は金属タンクの内面をコーティングするために使用され得る。本開示の第1の剤とともに使用するための好適な硬化剤又は第2の剤を含む、かかる多剤式エポキシド組成物の例は、2019年11月21日に出願された、米国仮特許出願第62/938,541号に記載されている。
【0098】
ジフェノールモノマーは、架橋剤として、及び/又はコポリマー組成物の一部として使用され得る。例えば、ポリフェノールモノマーは、架橋モノマーの前駆体(例えば、オキシラン官能性メタクリレート)であってもよく、又は(例えば、ポリシクロカーボネート官能性ポリマー又はポリエポキシドとの)架橋剤であってもよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、ポリフェノール、典型的にはジフェノール、又はポリフェノールの混合物は、ポリエポキシド、典型的にはジエポキシド、又はポリエポキシドの混合物でアップグレードされて、分子量を構築し、所望の分子量及び他の所望の特性のバランスを有するポリエーテルポリマーを生成する。かかる実施形態では、1つ以上のポリフェノール及び1つ以上のポリエポキシドの一方又は両方は、本開示のモノマー(例えば、式(III)又は(IV)のモノマー)である。ポリシクロカーボネート、典型的にはジシクロカーボネートをポリエポキシドの代わりに使用して、本発明のジフェノールをアップグレードしてポリエーテルポリマーを形成し得る。ポリフェノールと反応してポリエーテルポリマーを形成する際に使用するためのかかるポリシクロカーボネート材料の例は、米国特許第10,000,461号及び同第10,717,897号に記載されている。例えば、ポリシクロカーボネート材料は、ジグリセロールジシクロカーボネート、(グリセロールシクロカーボネート)ジカーボネート、又はそれらの組み合わせから選択されるジシクロカーボネートを含み得る。ポリフェノール(例えば、ジフェノール)がポリシクロカーボネート(例えば、ジシクロカーボネート)と反応する実施形態では、得られるポリエーテルは、エポキシド基を含まなくてもよい。
【0100】
他の実施形態では、本開示のポリエポキシド、典型的にはジエポキシドは、ポリフェノール以外の、又はポリフェノールに加えての、1つ以上の増量剤でアップグレードされる。かかる増量剤の例としては、二酸、ジアミン、又は2つ以上の同一若しくは異なるオキシラン反応性基(例えば、ヒドロキシル基、酸基、若しくはアミン基)を含む任意の他の化合物が挙げられ得る。2つ以上の異なるオキシラン反応性基を有する増量剤の例としては、パラヒドロキシル安息香酸及び/又はパラヒドロキシフェニル酢酸が挙げられる。いくつかの実施形態では、カテコール、ヒドロキノン、レゾルシノール、それらの置換改変体、又はそれらの混合物は、本開示のポリエポキシドとともに使用するのに好ましい増量剤である。
【0101】
他の実施形態では、本開示のポリフェノール(例えば、式(III)のジフェノール)をエピハロヒドリン(例えば、エピクロロヒドリン)と反応させて分子量を増大させ、ポリエーテルポリマーを生成する。かかるプロセスの例は、いわゆる「タフィー」プロセスであり、これは、米国特許第10,113,027号に詳細に記載されている。
【0102】
他の実施形態では、本開示のポリフェノール(例えば、式(II)のジフェノール)を、式(IV)のジエポキシド以外の1つ以上のジエポキシドと反応させる。かかるジエポキシドの例としては、脂肪族又は脂環式ジオールのジエポキシド(好ましくはジグリシジルエーテル)を挙げることができ、いくつかの実施形態では脂環式ジオールが好ましい。好適な脂環式ジオールの例としては、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、2,2,4,4~テトラメチル~1,3~シクロブタンジオール、イソソルビド、これらの置換改変体、及びこれらの混合物などの、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の環式基を有するジオールが挙げられ得る。更に、又はあるいは、以下に記載されるジエポキシドのいずれかが使用され得る:米国特許第9,409,219号(例えば、4,4~メチレンビス(2,6~ジメチルフェノール)などのオルト置換ジフェノールのジグリシジルエーテル)、国際公開第2013/119686号(例えば、置換ヒドロキノンなどの二価モノフェノールのジグリシジルエーテル)、国際公開第2015/057932号(例えば、2つ以上のアミド結合を含むジフェノールのジエポキシド)、国際公開第2015/179064号(例えば、フラン、ベンゼンジメタノール、バニリルアルコール、及びペンダントアリール基を有するジオールのジグリシジルエーテルなどのジエポキシド)、国際公開第2017/079437号、国際公開第2018/125895号(例えば、モノフェノールとポリオレフィン系テルペンとの反応生成物であるポリフェノールのジエポキシド)、及び米国仮特許出願第62/941,013号。
【0103】
食品又は飲料缶コーティング用途における使用のための本開示の好ましいバインダーポリマーは、直鎖状又は分岐鎖状ポリマーであり得る。好ましいポリエステル及びポリエーテルポリマーは、水分散性部分(例えば、酸官能性アクリル部分)の任意のグラフト化の前に、典型的には直鎖状又は実質的に直鎖状のポリマーである。ポリエステル又はポリエーテルを水分散性にするためのプロセス及び酸官能性アクリルの例は、例えば、いかに記載されている:米国特許第4,212,781号、米国特許第4,285,847号、米国特許第4,517,322号、米国特許第5,830,952号、米国特許第8,927,075号、米国特許第10,501,639号、米国特許出願公開第2005/0196629号、及び国際公開第2019046750号。得られるコポリマーは、典型的には、ポリマー1グラム当たり少なくとも40、少なくとも55、又は少なくとも70ミリグラムKOHの酸価を有する。本明細書で言及される酸価は、BS EN ISO 3682~1998規格に従って計算されてもよく、あるいは反応物モノマーに基づいて理論的に決定されてもよい。
【0104】
所望であれば、1つ以上の追加のコモノマー又はコオリゴマーもまた、開示されるポリマーを生成するために使用される反応物(例えば、二酸モノマーなど)とともに含まれ得る。コモノマー又はコオリゴマーは、例えば、ポリフェノール化合物及び増量剤の初期反応混合物中に含まれてもよく、又は得られたオリゴマー若しくはポリマーと後反応させてもよい。本発明の好ましい実施形態では、かかる追加のコモノマー又はコオリゴマーは、開示されたポリマーを生成するために利用されない。
【0105】
ポリマーの分子量の増加は、所望の反応を促進するのに十分な量で適切な触媒を使用することによって促進することができる。好適な触媒の例としては、ホスフィン、脂肪族又は脂環式アミン、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0106】
好ましい実施形態では、開示されるポリマーは、本明細書に記載されるポリフェノール化合物(例えば、式(III)又は(IV)のポリフェノール化合物)から誘導される複数のセグメントを含み、これらは、好ましくはポリマーの骨格、より好ましくはポリエーテル骨格全体に分散している。好ましい実施形態では、ポリフェノール化合物から誘導されるセグメント(「ポリフェノールセグメント」と呼ばれる)は、ポリマーの全質量の実質的な部分を構成する。典型的には、ポリフェノールセグメントは、ポリマーの少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも40重量%、更により好ましくは少なくとも50重量%又は少なくとも55重量%を構成する。
【0107】
いくつかの実施形態では、ポリマー中のポリフェノールセグメントの重量パーセントは、上に列挙された量未満であってもよく、実質的にそれ未満であってもよい。例として、ポリフェノールセグメントの濃度は、ポリマーが、例えば、ポリマーがアクリル含有コポリマー(例えば、本開示のポリエーテルポリマー上にアクリルをグラフトして、例えば、ポリエーテルポリマーを水分散性にすることによって形成されるアクリル~ポリエーテルコポリマー)などのコポリマーである場合に生じ得るような高分子量の追加の成分を含む場合、上記に列挙された範囲外であり得る。
【0108】
開示されたアップグレードされた分子量のポリマーは、液体又は粉末ベースのコーティング組成物として様々な基体に適用され得る。液体コーティング組成物(典型的にはポリマー及び液体担体を含む)は、多くの最終用途、特に熱感受性基体上又は特に薄いコーティングが望まれる基体上での使用に好ましい場合がある。例示的な液体担体としては、水、有機溶媒、及び液体担体の混合物が挙げられる。有機溶媒の例としては、グリコールエーテル、アルコール、芳香族又は脂肪族炭化水素、二塩基性エステル、ケトン、エステルなどが挙げられる。好ましくは、かかる担体は、ポリマーの分散液又は溶液を提供するように選択され、これと更なる添加剤が組み合わされて、最終的なコーティング剤を提供し得る。
【0109】
一実施形態では、開示される液体コーティング組成物は、水が存在する場合、水をその最小量(例えば、水は、2重量%未満)でしか含まない溶媒ベースの系である。開示される溶媒系の液体コーティング組成物は、例えば、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上の不揮発性成分(すなわち、「固体」)、より好ましくは少なくとも25重量%の不揮発性成分を含有し得る。開示される溶媒系の液体コーティング組成物はまた、例えば、50重量%以下の不揮発性成分又は40重量%以下の不揮発性成分を含有し得る。
【0110】
一実施形態では、コーティング組成物は、好ましくは10重量%以上又は15重量%以上の非揮発性成分を有する、水ベースの組成物である。一実施形態では、コーティング組成物は、好ましくは50重量%以下の非揮発性成分、より好ましくは40重量%以下の非揮発性成分を有する、水ベースの組成物である。本開示の水ベースのコーティング系は、任意選択的に、1つ以上の有機溶媒を含み得、これは、典型的には、水に対する混和性を有するように選択される。水ベースのコーティング組成物の液体担体系は、典型的には、少なくとも50重量%の水、より典型的には少なくとも75重量%の水を含み、いくつかの実施形態では、90重量%又は95重量%を超える水を含む。開示されるポリマーを水に混和性にするために、任意の好適な手段を使用することができる。例えば、ポリマーは、ポリマーを水(又はかかる塩の基を形成することができる基)に混和性にするために、アニオン性又はカチオン性の塩の基などの好適な量の塩の基を含み得る。中和された酸の基又は塩基の基は、好ましい塩の基である。いくつかのかかる実施形態では、ポリマーは、ポリマー1グラム当たり少なくとも40、少なくとも55、又は少なくとも70ミリグラムKOHの酸価を有する水分散性ポリマーである。
【0111】
開示されるポリマーは、開示されるコーティング組成物中でバインダーポリマーとして機能し得る。コーティング組成物は、例えば、食品又は飲料容器などの容器のためのコーティングとしての使用に好適であり得る。バインダーポリマーの量は、適用方法、他のフィルム形成材料の存在、コーティング組成物が水系であるか溶媒系であるか、などを含む様々な考慮事項に応じて広く変化し得る。液体ベースのコーティング組成物の場合、バインダーポリマーは、コーティング組成物中の樹脂固形分の総重量に基づいて、典型的には少なくとも10重量%、より典型的には少なくとも30重量%、更により典型的には少なくとも50重量%を構成する。かかる液体ベースのコーティング組成物の場合、バインダーポリマーは典型的には、コーティング組成物中の樹脂固形分の総重量に基づいて、約90重量%未満、より典型的には約80重量%未満、更により典型的には約70重量%未満のコーティング組成物を構成するであろう。
【0112】
開示されるコーティング組成物は、単層コーティング系の層として、又は多層コーティング系の1つ以上の層として存在し得る。コーティング組成物は、プライマーコート、中間コート、トップコート、又はそれらの組み合わせとして使用することができる。コーティング組成物は、例えば、食品又は飲料容器などの容器のためのコーティングとしての使用に好適であり得る。特定の層及びコーティング系全体のコーティング厚さは、使用されるコーティング材料、基体、コーティング塗布方法、及びコーティングされた物品についての最終用途に依存して変化するであろう。開示されるコーティング組成物から形成される1つ以上の層を含む単層又は多層コーティング系は、任意の好適な全コーティング厚さを有し得るが、包装コーティング用途(例えば、食品若しくは飲料容器又はそれらの一部)では、典型的には、約2~約60マイクロメートル、より典型的には約3~約12マイクロメートルの全平均乾燥コーティング厚さを有する。
【0113】
例えば、
図8は、本開示のコーティング組成物でコーティングすることができる食品又は飲料容器の簡略化された例である容器10を示す。容器10は、ツーピース缶又はスリーピース缶であってもよい。容器10は、内部15を画定する、側壁11、第1の端部12(例えば、上部)、及び第2の端部13(例えば、底部)を有する。ツーピース缶では、側壁11及び端部のうちの1つ(例えば、第2の端部13)が、連続ピースから形成されてもよい。容器10は金属基体で構成され得る。金属基体は、本開示のコーティング組成物でコーティングされ得る。
【0114】
開示されたコーティング組成物は、基体が、例えば、食品用又は飲料用容器などの物品又はその一部に形成される前、又はその後のいずれかで、基体(典型的には、金属基体)に適用され得る。一実施形態では、本明細書に記載のコーティング組成物を金属基体に適用すること(例えば、組成物を平面コイル又はシートの形態で金属基体に適用すること)、組成物を硬化させること、及び基体を包装容器又はその一部(例えば、食品若しくは飲料缶又はその一部)に形成する(例えば、スタンピングによって)ことを含む、食品又は飲料缶を形成する方法が提供される。例えば、開示されたコーティング組成物の硬化コーティングをその表面上に有するツーピース若しくはスリーピース缶又はその一部(例えば、リベット締めされた飲料缶端部)は、かかる方法で形成され得る。別の実施形態では、金属基体を包装容器形成する方法であって、金属基体を包装容器又はその一部(例えば、食品又は飲料缶又はその一部)に(例えば、スタンピングによって)形成することと、本明細書に記載のコーティング組成物をかかる包装容器又はその一部の内側、外側、又は内側及び外側部分の両方に適用することと、組成物を硬化させることと、を含む方法が提供される。例えば、コーティング組成物は、(例えば、「ツーピース」食品又は飲料缶で典型的に生じるように)予備成形された食品又は飲料缶の内面に噴霧適用され得る。開示されるアップグレードされた分子量のポリマーは、食品用又は飲料用容器の内部又は内部部分での使用、及び食品又は飲料接触表面を伴う他の用途、又は金属基体を伴う他の用途での使用に特に望ましい。かかる例示的な用途としては、2ピースの絞り加工食品缶、3ピースの食品缶、食品缶の端部、絞り加工されアイロン加工された食品缶又は飲料缶が挙げられ、飲料缶の端部、イージーオープン式の缶の端部、ひねって外せる閉じ蓋などが挙げられる。
【0115】
好適な金属基体としては、例えば、鋼又はアルミニウムが挙げられる。剛性食品又は飲料の缶、又はその一部を形成するのに使用される金属基体は、典型的には、約0.005インチ~約0.025インチの範囲の厚さを有する。電気スズめっき鋼、冷間圧延鋼、及びアルミニウムは、食品又は飲料缶、又はそれらの一部のための金属基体として一般に使用される。金属箔基体が、例えば包装物品を形成するのに使用される実施形態では、金属箔基体の厚さは、上述の厚さよりも更に薄くてもよい。
【0116】
コーティング組成物は、噴霧コーティング、ロールコーティング、コイルコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、メニスカスコーティング、キスコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、ディップコーティング、スロットコーティング、スライドコーティングなど、並びに他のタイプの予め計量されたコーティングなどの任意の好適な手順を使用して基体に適用することができる。コーティングが金属シート又はコイルをコーティングするために使用される場合、コーティングはロールコーティングによって適用することができる。
【0117】
コーティング組成物を基体上に適用した後、組成物は、様々なプロセスを使用して硬化させることができる。それらのプロセスの例としては、従来の又は対流式のいずれかの方法によるオーブンベーク、又はコーティングを硬化させるのに好適な高温を提供する任意の他の方法が挙げられる。硬化プロセスは、個別のステップ又は複合ステップのいずれかで実施され得る。例えば、基体を周囲温度で乾燥させて、コーティング組成物を大部分、非架橋状態にすることができる。次いで、コーティングされた基体を加熱して、組成物を完全に硬化させることができる。一部特定の例では、開示されたコーティング組成物は、1つのステップで乾燥及び硬化され得る。硬化条件は、適用方法及び意図される最終用途に依存して変化する。硬化プロセスは、例えば、約100℃~約300℃、より典型的には約177℃~約250℃の範囲のオーブン温度を含む、任意の好適な温度で実施され得る。金属コイルがコーティングされる基体である場合、例えば、コーティングされた金属基体を、好ましくは約177℃を超えるピーク金属温度(peak metal temperature、「PMT」)に適切な時間にわたって加熱することによって、適用されたコーティング組成物の硬化を行うことができる。より好ましくは、コーティングされた金属コイルは、好適な期間(例えば、約5~900秒)、少なくとも約218℃のピーク金属温度(PMT)に加熱される。
【0118】
一実施形態によれば、ポリマーは、芳香環及び芳香環に直接連結されたヒドロキシ基、及びカルボニル基、を含む芳香族化合物を、カルボニル基を含む官能単位を含有するポリマーと反応させることによって得られるフェノールペンダントを含むコポリマーである。好ましいポリマーは、メタクロレイン、HMFメタクリレート、及び/又はバニリンメタクリレート単位を含有するアクリルである。
【0119】
いくつかの実施形態では、モノマーを更に反応させて、1つ以上のビニル二重結合を導入する。例えば、ジエポキシドモノマーを(メタ)アクリル酸モノマーと反応させて、その後のフリーラジカル反応のためにビニル二重結合を導入して、例えばアクリルポリマーを形成することができる。かかるアクリルは、有機溶液重合アクリル又は乳化重合ラテックスアクリルであり得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、本開示のモノマーのうちの1つ以上を用いて作製されるポリマー(特に、ポリエーテル)は、(i)末端オキシラン末端基、(ii)末端フェノール基、又は(iii)(i)及び(ii)の両方、を含む骨格を有する。
【0121】
好ましい実施形態では、本開示のモノマーのうちの1つ以上を用いて作製されるポリマー(例えば、ポリエーテルポリマー)は、ポリマーの骨格に結合した複数の二級ヒドロキシル基を含む。好ましい二級ヒドロキシル基の例としては、~CH2~CH(OH)~CH2~又は~CH2~CH2~CH(OH)~骨格セグメントに存在するものが挙げられる。したがって、特に好ましい実施形態では、ポリマーは、1つ以上のかかる骨格セグメント、より好ましくは複数のかかる骨格セグメントを含む。
【0122】
好ましい実施形態では、コーティング組成物の一部を形成し得る、本開示のモノマーのうちの1つ以上を用いて作製されるポリマー(例えば、ポリエーテルポリマー)は、2000以上、3000以上、3500以上、又は4000以上の数平均分子量を有する。ポリマーの数平均分子量は、任意の好適な上限、例えば、最大100,000、最大50,000、最大20,000、又は最大10,000を有し得る。
【0123】
好ましい実施形態では、本開示のモノマーのうちの1つ以上を用いて作製されるポリマー(例えば、ポリエーテルポリマー)は、1.5以上又は2以上の多分散指数(「PDI」)を有する。ポリマーのPDIは、5以下又は3.5以下であり得る。ある場合には、PDIは約1.5~約5、より好ましくは約2~約3.5である。
【0124】
開示されるポリマーは、任意の好適なガラス転移温度(「Tg」)を有することができる。上述のように、特定の好ましい実施形態では、本明細書に開示されるコーティング組成物は、例えば、内部に食品又は飲料を有する缶のコーティングなどの、食品接触包装コーティングを形成する際の使用に好適である。腐食性であり得る包装された食品又は飲料製品と長期間接触した場合の好適な耐食性を含む、食品接触包装コーティングとして使用するためのコーティング特性の好適なバランスを示すために、開示されるポリマーは、好ましくは0℃超、より好ましくは少なくとも30℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、又は少なくとも70℃のTgを有する。かかる好ましい実施形態では、Tgは150℃未満、より好ましくは130℃未満、更により好ましくは110℃未満である。Tgは、示差走査熱量測定(differential scanning calorimetry、「DSC」)によって測定することができる。特に好ましい実施形態では、ポリマーは、前述のTg値に従うTgを示すポリエーテルポリマーである。
【0125】
ポリマーのTgが、ポリマーを含むコーティング組成物又はかかるコーティング組成物でコーティングされたコーティング物品の文脈において本明細書で言及される場合、ポリマーについて示されるTg値は、ポリマーを含むコーティング組成物の任意の硬化前のポリマーのTgを指す。
【0126】
いかなる理論にも束縛されることを意図しないが、「高」Tgポリマーが所望される場合、所望のTgは、例えば、より高いTgポリマーを生じる傾向がある1つ以上のモノマーの好適な量を選択することによって達成され得る。かかるモノマーの例としては、1つ以上のアリール又はヘテロアリール基、1つ以上の多環式基、及び/又は1つ以上の脂環式基(例えば、シクロブタン基、トリシクロデカン基など)を有する特定のモノマーが挙げられ得る。
【0127】
いくつかの実施形態では、モノマー(例えば、ジフェノール及び/又はジエポキシドモノマー)は、コーティング組成物を調製するために使用される。コーティング組成物は、コーティング組成物中に含まれる全樹脂固形分に基づいて、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、35重量%以上、50重量%以上、65重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、又は95重量%以上、又は更には99重量%以上の、本開示のモノマーから作製されたポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、コーティング組成物中に含まれる全樹脂固形分に基づいて、100重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、60重量%以下、40重量%以下、20重量%以下、10重量%以下の、本開示のモノマーから作製されたポリマーを含む。コーティング組成物は、例えば、食品又は飲料容器などの容器のためのコーティングとしての使用に好適であり得る。
【0128】
好ましい実施形態では、モノマー(例えば、ジフェノール及び/又はジエポキシドモノマー)は、ポリマーを作製するために使用されるモノマーの1重量%以上、2重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、35重量%以上、50重量%以上、65重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、又は95重量%以上、又は99重量%以上を構成する。ジフェノール又はジエポキシドモノマーは、ポリマーを作製するために使用されるモノマーの100重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、20重量%以下、又は10重量%以下を構成し得る。いくつかの実施形態では、ジフェノール又はジエポキシドモノマーは、ポリマーの25重量%~100重量%、又は40重量%~100重量%を構成する。
【0129】
いくつかの実施形態では、ジフェノール若しくはジエポキシドモノマー、又はモノマーを用いて作製されたポリマーは、配合添加剤として(例えば、接着促進剤として)使用されることと一致する量でコーティング組成物中に含まれ得る。他の実施形態では、ジフェノール若しくはジエポキシドモノマー、又はこのモノマーを用いて作製されたポリマーは、コーティング組成物(例えば、コーティング組成物のフィルム形成樹脂系)の実質的な量又は主要な量に含まれ得る。
【0130】
開示されるコーティング組成物が、好適な反応性基(例えば、アミノ基、フェニルヒドロキシル基、カルボン酸若しくは無水物基、及び/又はエチレン性不飽和基)を有するポリマーを含む場合、コーティング組成物はまた、1つ以上の任意の(例えば、追加の)硬化剤(例えば、「架橋剤」と呼ばれることもある架橋樹脂)を使用して配合され得る。使用される場合、特定の架橋剤(「架橋樹脂」又は「架橋剤」と呼ばれることもある)の選択は、典型的には、配合される特定の製品に依存する。例えば、いくつかのコーティングは、非常に着色されている(例えば、金色コーティング)。これらのコーティングは、典型的には、それ自体が黄色がかった色を有する傾向がある架橋剤を使用して配合され得る。好ましい架橋剤は、BPA、BPF、BPS、それらのグリシジルエーテル化合物(例えば、BADGE)、及びエポキシノボラックを実質的に含まない。フェノプラスト、アミノプラスト及びブロック又は非ブロックイソシアネート架橋剤、ポリアミン、β~ヒドロキシアルキルアミド(例えば、EMS~CHEMIE AGによるPRIMID XL~552及びQM~1260製品)、並びにそれらの組み合わせを含む、様々なヒドロキシル反応性、オキシラン反応性、又はカルボキシル反応性架橋剤のいずれかを使用し得る。例示的なフェノプラスト樹脂としては、アルデヒドとフェノールとの縮合生成物が挙げられ、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドが好ましいアルデヒドである。フェノール類の例としては、フェノール、クレゾール、p~フェニルフェノール、p~tert~ブチルフェノール、p~tert~アミルフェノール、及びシクロペンチルフェノールが挙げられる。例示的なアミノプラスト樹脂としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、及びベンズアルデヒドなどのアルデヒドの、例えば、尿素、メラミン、及びベンゾグアナミンなどのアミノ基含有物質又はアミド基含有物質との縮合生成物が挙げられる。好適なアミノプラスト架橋樹脂の例としては、ベンゾグアナミン~ホルムアルデヒド樹脂、メラミン~ホルムアルデヒド樹脂、エーテル化メラミン~ホルムアルデヒド樹脂、及び尿素~ホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。好適なアミノプラスト架橋剤の1つの具体例は、Cytec Industries,Inc.からCYMEL 303の商品名で市販されている完全アルキル化メラミンホルムアルデヒド樹脂である。例示的なブロック化又は非ブロック化イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、シクロヘキシル~1,4~ジイソシアネートなどの脂肪族、脂環式又は芳香族の二価、三価又は多価イソシアネートが挙げられる。一般に好適なブロックイソシアネートの更なる例としては、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートの異性体、及びそれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、少なくとも約300、より好ましくは少なくとも約650、更により好ましくは少なくとも約1,000の数平均分子量を有するブロックイソシアネートを使用する。
【0131】
コーティング組成物中の架橋剤の濃度は、架橋剤のタイプ、ベークの時間及び温度、並びにコポリマー粒子の分子量に依存し得る。使用される場合、架橋剤は、典型的には、最大約50重量%、好ましくは最大約30重量%、より好ましくは最大約15重量%の量で存在する。使用される場合、架橋剤は、典型的には、少なくとも約0.1重量%、より好ましくは少なくとも約1重量%、更により好ましくは少なくとも約1.5重量%の量で存在する。これらの重量百分率は、コーティング組成物の全樹脂固体重量に基づく。
【0132】
いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド含有材料を実質的に含まず、より好ましくはこれらの化合物を本質的に含まず、更により好ましくはこれらの化合物を本質的に完全に含まず、最も好ましくはこれらの化合物を完全に含まない。
【0133】
開示されるコーティング組成物はまた、コーティング組成物又はその硬化コーティングに悪影響を及ぼさない他の任意の成分又は添加剤を含んでもよい。かかる任意選択の成分は、典型的には、コーティングの美観を向上させるため、組成物の製造、加工、取り扱い、又は適用を容易にするため、あるいは、コーティング組成物又はその硬化コーティングの特定の機能特性を更に改善するために含有させる。例えば、開示される組成物は、望ましいフィルム特性を提供するために、任意選択的に、既に言及した充填材の他に、染料、着色剤、トナー、合体剤、エキステンダ、耐食剤、流れ調整剤、チキソトロープ剤、分散剤、抗酸化剤、酸素~スカベンジング材料、接着促進剤、光安定剤及びそれらの混合物を含み得る。各任意選択成分は、好ましくは、その意図された目的を果たすのに十分な量であるが、コーティング組成物又はその組成物の硬化したコーティングに悪影響を及ぼすことのない量で含まれる。
【0134】
本明細書に記載のコーティング組成物はまた、コーティング組成物又はそれから得られる硬化コーティング組成物に悪影響を及ぼさない他の任意選択のポリマーを含み得る。かかる任意選択のポリマーは、典型的には非反応性充填剤材料として含まれるが、反応性架橋剤として、又は他の所望の特性を提供するために含まれてもよい。かかる任意の非反応性充填剤ポリマーとしては、例えば、ポリエステル、アクリル、ポリアミド、及びポリエーテルが挙げられる。あるいは、かかる追加のポリマー材料又はモノマーは、組成物の他の成分(例えば、酸官能性又は不飽和ポリマー)と反応性であってもよい。所望であれば、反応性ポリマーは、例えば、架橋を含む様々な目的のための追加の官能性を提供するために、又は開示されたアップグレードされた分子量のポリマーの水中への分散を補助するために、開示された組成物中に組み込まれてもよい。かかる反応性ポリマーの例としては、例えば、官能化ポリエステル、アクリル、ポリアミド、及びポリエーテルが挙げられる。
【0135】
別の好ましい任意成分は、硬化速度を増加させるための触媒である。触媒の例としては、強酸(例えば、リン酸、Cytec社からのCYCAT600として入手可能なドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA))、メタンスルホン酸(methane sulfonic acid、MSA)、p~トルエンスルホン酸(p~toluene sulfonic acid、pTSA)、ジノニルナフタレンジスルホン酸(DNNDSA)、及びトリフル酸);四級アンモニウム化合物;リン化合物;並びにスズ、チタン、及び亜鉛化合物;フリーラジカル源(例えば、過酸化物、アゾ化合物など)が挙げられるが、それらに限られない。具体的な例としては、テトラアルキルアンモニウムハライド、テトラアルキル又はテトラアリールホスホニウムヨージド又はアセテート、オクタン酸スズ、オクタン酸亜鉛、トリフェニルホスフィン、及び当業者によく知られている同様の触媒が挙げられるが、これらに限定されない。使用される場合、触媒は、コーティング組成物の不揮発性材料の重量に基づき、好ましくは少なくとも0.01重量%の量、より好ましくは、少なくとも0.1重量%で存在する。使用される場合、触媒は、コーティング組成物の不揮発性材料の重量に基づき、好ましくは3重量%以下、より好ましくは、1重量%以下の量で存在する。
【0136】
使用される場合、触媒は、好ましくは、コーティング組成物の総固体重量に基づき、少なくとも約0.01重量%、より好ましくは少なくとも約0.1重量%の量で存在する。更に、使用される場合、触媒はまた、好ましくは、コーティング組成物の総固体重量に基づき、約3重量%以下、より好ましくは約1重量%以下の不揮発性量で存在する。
【0137】
別の有用な任意成分は、潤滑剤(例えば、ワックス)であり、コーティングされた金属基体のシートに潤滑性を付与することによって、複雑な金属物品(例えば、容器クロージャ及び食品用又は飲料用缶の端部)の製造を容易にするものである。好適な潤滑剤の非限定的な例としては、例えば、カルナウバワックス又はラノリンワックスなどの天然ワックス、ポリテトラフルオロエタン(PTFE)及びポリエチレン型潤滑剤が挙げられる。使用される場合、潤滑剤は、好ましくは、コーティング組成物中の不揮発性材料の総重量に基づいて、少なくとも0.1重量%で、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下の量で、コーティング組成物中に存在する。
【0138】
界面活性剤は、基体の流動及び湿潤を助けるために、開示されたコーティング組成物に任意選択的に添加され得る。界面活性剤の例としては、ノニルフェノールポリエーテル及び塩、並びに当業者に既知の同様の界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。使用される場合、界面活性剤は、樹脂固形分の重量に基づいて、好ましくは少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.1重量%の量で存在する。使用される場合、界面活性剤は、樹脂固形分の重量に基づいて、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下の量で存在する。
【0139】
別の有用な任意の成分は、二酸化チタンなどの顔料である。使用される場合、顔料は、開示されたコーティング組成物中に、コーティング組成物中の固形分の総重量に基づいて、約70重量%以下、より好ましくは約50重量%以下、更により好ましくは約40重量%以下の量で存在する。
【0140】
好ましい実施形態では、コーティング組成物は、BPA、ビスフェノールF(「BPF」)、ビスフェノールS(「BPS」)、又はそれらの任意のジエポキシド(例えば、それらのジグリシジルエーテル、具体的には、BPAのジグリシジルエーテルであるBADGEなど)から誘導された構造単位を実質的に含まないか、又は完全に含まない。更に、コーティング組成物は、4,4’~(プロパン~2,2~ジイル)ジフェノールのエストロゲンアゴニスト活性以上のエストロゲンアゴニスト活性を有する二価フェノール又は他の多価フェノールから誘導される構造単位を実質的に含まないか、又は完全に含まないことが好ましい。より好ましくは、コーティング組成物は、BPS以上のエストロゲンアゴニスト活性を有する二価フェノール又は他の多価フェノールから誘導される任意の構造単位を実質的に含まないか、又は完全に含まない。いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、ビスフェノールから誘導される任意の構造単位を実質的に含まないか、又は完全に含まない。
【0141】
更により好ましくは、コーティング組成物は、4、4’~(プロパン~2、2~ジイル)ビス(2、6~ジブロモフェノール)を超えるエストロゲンアゴニスト活性を有する二価フェノール又は他の多価フェノールから誘導されるいかなる構造単位を、実質的に含まないか、又は完全に含まない。最適なことには、コーティング組成物は、二価フェノール、又は2,2~ビス(4~ヒドロキシフェニル)プロパン酸のエストロゲンアゴニスト活性を超えるエストロゲンアゴニスト活性を有する他の多価フェノールから誘導される、いかなる構造単位も実質的に含まないか、又は完全に含まない。コーティング組成物を含む組成物の組成物を含む組成物の任意の他の成分についても、好ましくは当てはまる。かかる構造単位及び適用可能な試験方法の考察については、例えば、米国特許第9,409,219号を参照のこと。
【0142】
いくつかの更なる実施形態では、コーティング組成物は、任意のアクリルアミド型モノマー(例えば、アクリルアミド又はメタクリルアミド)を実質的に含まないか、又は完全に含まない。更に、いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、スチレン(遊離又は重合)又は置換スチレン化合物(遊離又は重合)のうちの1つ以上を実質的に含まないか、又は完全に含まない。上述したように、これらの実施形態では、反応体モノマーは、例えば芳香族(メタ)アクリレート又は脂環式(メタ)アクリレートなどの他のエチレン性不飽和芳香族化合物又はエチレン性不飽和脂環式化合物を含んでもよい。追加の更なる実施形態では、コーティング組成物は、塩素化ビニルモノマーなどのハロゲン化モノマー(遊離又は重合にかかわらず)を実質的に含まないか、又は完全に含まない。
【0143】
コーティング組成物はまた、任意選択的に、異なるコーティング用途のためにレオロジー的に改変され得る。例えば、コーティング組成物を追加量の水性担体で希釈して、コーティング組成物中の全固形分を減少させてもよい。あるいは、水性担体の一部を除去(例えば、蒸発)して、コーティング組成物中の総固体含量を増加させてもよい。コーティング組成物中の最終総固体含量は、使用される特定のコーティング用途(例えば、噴霧コーティング)、特定のコーティング用途(例えば、缶内面用)、コーティング厚さなどに応じて変動し得る。
【0144】
いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、好ましくは、コーティング組成物の総重量に基づいて、約5%超、より好ましくは約10%超、更により好ましくは約15%超の総固体重量を有する。液体の実施形態では、コーティング組成物はまた、好ましくは、コーティング組成物の総重量に基づいて、約80%未満、より好ましくは約60%未満、更により好ましくは約50%未満の総固体重量を有する。液体担体(例えば、水性又は有機溶媒担体)は、コーティング組成物の重量の残りを構成し得る。特定の噴霧コーティング用途(例えば、アルミニウム飲料缶を含む食品又は飲料缶の内部噴霧)では、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に基づいて、約40%未満、より好ましくは約30%未満、更により好ましくは約25%未満の総固体重量を有し得る。これらの実施形態のいくつかにおいて、コーティング組成物は、約18%~約22%の範囲の総固体重量を有し得る。水性担体は、コーティング組成物の重量の残りを構成し得る。
【0145】
先に論じたように、コーティング組成物の水性担体は、好ましくは水を含み、1つ以上の任意の有機溶媒を更に含み得る。いくつかの実施形態では、水は、水性担体の総重量の約20重量%超、より好ましくは約35重量%超、更により好ましくは約50重量%超を構成する。いくつかの実施形態では、水は、水性担体の総重量の100重量%以下、より好ましくは約95重量%未満、更により好ましくは約90重量%未満を構成する。
【0146】
理論に束縛されるものではないが、好適な量の有機溶媒を含むことは、いくつかの実施形態において有利であり得る(例えば、特定のコイルコーティング用途では、コーティング組成物の流れ及びレベリングを改変し、ブリスタリングを制御し、コイルコーターのライン速度を最大化する)。したがって、特定の実施形態では、有機溶媒は、水性担体の総重量に基づいて、水性担体の0重量%超、より好ましくは約5重量%超、更により好ましくは約10重量%超を構成し得る。これらの実施形態では、有機溶媒はまた、水性担体の総重量に基づいて、水性担体の約80重量%未満、より好ましくは約50重量%未満、更により好ましくは約40重量%未満を構成し得る。
【0147】
コーティング組成物は、好ましくは、所与のコーティング用途に適した粘度を有する。特定の噴霧コーティング用途などのいくつかの実施形態では、コーティング組成物は、以下に記載される粘度試験(25℃におけるフォード粘度カップ#4)に基づいて、約5秒超、より好ましくは10秒超、更により好ましくは約15秒超の平均粘度を有し得る。いくつかの実施形態では、コーティング組成物はまた、以下に記載される粘度試験に基づいて、約40秒未満、より好ましくは30秒未満、更により好ましくは約25秒未満の平均粘度を有し得る。
【0148】
コポリマー粒子の水性分散液を有する本開示のコーティング組成物は、様々な異なるコーティング技術を使用して、様々な異なる基体上に適用され得る。いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、例えば、シート供給及びコイル適用の場合、ロールコーティングによって適用される。いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、内部噴霧コーティングとして適用される。上で簡単に説明したように、コーティング組成物から形成された硬化コーティングは、金属食品及び飲料缶(例えば、ツーピース缶、スリーピース缶など)上での使用に特に適している。ツーピース缶(例えば、ツーピースビール又はソーダ缶及び特定の食品缶)は、典型的には、絞りしごき加工(「D&I」)プロセスによって製造される。硬化コーティングは、食品又は飲料と接触する状況(本明細書ではまとめて「食品接触」と呼ぶ)での使用にも適しており、かかる缶の内側又は外側に使用することができる。
【0149】
本開示の好ましい内部噴霧又はローラーコートコーティング組成物は、食品又は飲料缶(例えば、3ピース又は2ピースの食品又は飲料缶)の内部に噴霧適用されて、基体を効果的かつ均一にコーティングし、連続硬化コーティングを形成することができる(例えば、基体は効果的にコーティングされており、コーティング中に不適切な穴又は他の不連続性がない)。
【0150】
本開示のコーティング組成物、特に缶コーティングに使用されるコーティング組成物に適した硬化温度は、約150℃(約300°F)超、より好ましくは約165℃(約330°F)超、更により好ましくは約180℃(約360°F)超である。いくつかの実施形態では、本開示のコーティング組成物に適した硬化温度はまた、約250℃(約480°F)未満、より好ましくは約240℃(約460°F)未満、更により好ましくは約230℃(約450°F)未満である。上述の温度に適したオーブン滞留時間は、約10秒~約30分の範囲である。例えば、コイルコーティングなどのいくつかの用途において、オーブン滞留時間は、10秒~30秒などの1分未満であり得る。内部噴霧用途などのいくつかの用途において、オーブン滞留時間は、1分~2分など、1分超であり得る。内部食品缶コーティングなどのいくつかの用途では、オーブン滞留時間は5分超、例えば10~30分であり得る。硬化後、得られた硬化缶コーティングは、続いて缶に充填される食品又は飲料製品から缶を保護するのに好適なフィルム厚さを有し得る。
【0151】
硬化コーティングの所望のフィルム厚は、所与の缶に充填される特定の食品又は飲料に応じて変化し得る。噴霧コーティング用途(例えば、食品又は飲料缶用の内部噴霧)のいくつかの実施形態では、硬化後の平均フィルム厚は、約0.7ミリグラム/平方インチ(mg/インチ2)を超え、より好ましくは約0.8mg/インチ2を超え、更により好ましくは約0.9mg/インチ2を超える。これらの実施形態では、硬化後の平均膜厚はまた、約4.0mg/インチ2未満、より好ましくは約3.0mg/インチ2未満、更により好ましくは約2.5mg/インチ2未満である。シート供給用途では、最大平均フィルム厚は、好ましくは約5.5mg/インチ2以下、又は約5.2mg/インチ2以下である。
【0152】
いくつかの更なる実施形態では、硬化後の平均膜厚は、約0.9mg/インチ2~約1.1mg/インチ2の範囲である。他の更なる実施形態では、硬化後の平均膜厚は、約1.4mg/インチ2~約1.6mg/インチ2の範囲である。更に他の更なる実施形態では、硬化後の平均膜厚は、約1.9mg/インチ2~約2.1mg/インチ2の範囲である。
【0153】
あるいは、コーティング組成物は、必要に応じてコイルコーティングとして適用され得る。コイルコーティング適用の間、金属(例えば、鋼又はアルミニウム)から構成される連続コイルは、本開示のコーティング組成物でコーティングされる。ひとたびコイルがコーティングされると、コーティングコイルは、コーティング組成物の硬化(例えば、乾燥及び硬化)のために、短い時間、熱、紫外線、又は電磁波による硬化サイクルに供され得る。コイルへのコーティングは、2ピースの絞り加工食品缶、食品缶の端部、絞り加工されアイロン加工された缶、飲料缶の端部などの成形物品を製造することができるコーティングされた金属(例えば、鋼又はアルミニウム)基体を提供する。
【0154】
本開示のコーティング組成物はまた、他のコーティング用途において有用性を提供する。これらの追加の用途としては、ウォッシュコーティング、シートコーティング、及びサイドシームコーティング(例えば、食品缶サイドシームコーティング)が挙げられるが、これらに限定されない。他の商業的なコーティング適用及び硬化方法、例えば、電気コーティング、押出コーティング、積層、粉末コーティングなども想定される。コーティング組成物はまた、例えば、薬物接触表面を含む定量噴霧式吸入器(「MDI」)の表面上を含む、医療又は化粧品包装用途において有用であり得る。
【0155】
上記の硬化ステップの間に、溶媒系は、好ましくは、蒸発されるか、さもなければコーティングから乾燥され、ポリマー又はコポリマー分子を硬化させる。所望であれば、乾燥ステップ及び硬化ステップを単一ステップで組み合わせてもよく、又は別々のステップで行ってもよい。
【0156】
本開示の硬化コーティング(特に、内部の食品接触コーティング)の好ましいガラス転移温度としては、約50℃超、より好ましくは約60℃超、更により好ましくは約70℃超、いくつかの実施形態では約80℃超のものが挙げられる。硬化コーティングの好ましいガラス転移温度としては、約120℃未満、より好ましくは約115℃未満、更により好ましくは約110℃未満、いくつかの実施形態では約100℃未満のものが挙げられる。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定することができる。
【0157】
意図される食品又は飲料製品によるコーティング浸透を更に防止するか、又はさもなければ低減するために、硬化したコーティングは、好ましくは適切に疎水性である。例えば、硬化したコーティングは、約90より大きい、より好ましくは約95より大きい、更により好ましくは約100より大きい脱イオン水との接触角を有することができる。
【0158】
硬化したコーティングは、食品及び飲料容器のための内側噴霧コーティングとして使用するための所望の特性を示し得る。例えば、硬化したコーティングは、以下のグローバル抽出試験に従って、好ましくは百万分の約25部(ppm)未満、より好ましくは約10ppm未満、更に好ましくは約1ppm未満のグローバル抽出を与える。
【0159】
更に、コーティング組成物(未硬化)は、好ましくは、以下のポットライフ安定性試験に従って、実質的に粘度の変化を示さない(例えば、粘度の変化があったとしても、25%未満、より好ましくは10%未満、更により好ましくは5%未満、更により好ましくは1%未満)べきである。したがって、本開示のコーティング組成物は、様々な異なる食品又は飲料製品を保持するよう構成された容器のためのシート供給コーティング又は内部噴霧コーティング組成物としての使用に特に好適である。
【0160】
組成物の純度及びモノマーの同一性は、任意の適切な分析技術を使用して決定され得る。例えば、プロトンNMRを使用してモノマーを同定することができる。有用な定量技術の例は、質量分析(mass spectrometry、MS)などの適切な検出方法と組み合わせたガスクロマトグラフィー(gas chromatography、GC)である。GC~MSを使用して不純物又は他の成分を検出することが困難である場合、GC~MSは、液体クロマトグラフィー(liquid chromatography、LC)及び紫外~可視光検出器(UV~Vis)で補完され得る。
【0161】
試験方法
本開示のコーティング組成物は、以下を含む様々な試験方法を使用して評価され得る。
【0162】
耐溶剤性試験。コーティングの「硬化」又は架橋の程度は、例えばメチルエチルケトン(methyl ethyl ketone、MEK))などの溶媒に対する耐性として測定される。この試験は、ASTM D 5402~93に記載されるように実施される。二重摩擦(すなわち、1回の前後運動)の回数が報告される。好ましくは、MEK溶媒耐性は、少なくとも30回の二重摩擦である。
【0163】
レトルト法。この試験は、食品又は飲料の保存又は滅菌にしばしば関連する条件に耐えるコーティングの能力の指標を提供する。コーティングされたETPフラットパネルを容器に入れ、試験物質に部分的に浸漬することができる。試験物質に完全に浸漬している間に、コーティングされた基体試料をオートクレーブに入れ、130℃の熱及び大気圧より1気圧高い圧力に60分間供する。レトルト直後に、コーティングされた基体サンプルを金属曝露について試験する。
【0164】
ウェッジ曲げ試験。この試験は、コーティングの可撓性のレベル及びその硬化の程度の指標を提供する。試験ウェッジは、コーティングされた長さ12cm×幅5cmの長方形の金属試験シートから形成される。試験ウェッジは、マンドレルの周りにシートを折り畳む(すなわち、曲げる)ことによって、コーティングされたシートから形成される。これを達成するために、マンドレルは、シートの12cmの縁に平行に、かつそこから等距離に配向されるように、コーティングされたシート上に配置される。得られた試験ウェッジは、6mmのウェッジ直径及び12cmの長さを有する。コーティングのウェッジ曲げ特性を評価するために、試験ウェッジをウェッジ曲げ試験機の金属ブロック内に縦に配置し、2.4kgの重りを60cmの高さから試験ウェッジ上に落下させる。次に、変形させた試験ウェッジを硫酸銅試験溶液(20部のCuSO4・5H2O、70部の脱イオン水、及び10部の塩酸(36%)を約2分間混合することによって調製)に浸漬する。露出した金属を顕微鏡下で検査し、試験ウェッジの変形軸に沿ったコーティング破損のミリメートルを測定する。結果は、以下の計算を用いてウェッジ曲げパーセンテージとして表し得る。
100%×[(120mm)~(破損のmm)]/(120mm)
【0165】
コーティングは、それが70%以上のウェッジ曲げパーセンテージを示す場合、ウェッジ曲げ試験を満たすと考えられる。
【0166】
金属の曝露。この試験は、缶端部などの加工物品を製造するのに必要な形成プロセスを受ける際に、コーティングされた基体がその完全性を保持する能力を測定する。それは、形成された端部又は容器における亀裂又は破損の有無の尺度である。端部は、典型的には電解質溶液で満たされたカップ上に配置される。カップを逆さにして、端部の表面を電解質溶液に曝露する。次いで、端部を通過する電流の強度が測定される。製造後にコーティングが無傷のままである(亀裂又は破損がない)場合、最小電流が端部を通過する。容器自体は、2ピース缶の場合の上記試験においてカップに取って代わる。
【0167】
本評価では、完全に変換された標準食品缶端部を、脱イオン水中に1重量%のNaClを含む室温の電解質溶液に約4秒間曝露した。評価されたコーティングは、端部の内面上に存在した。WACO Enamel Rater II(Wilkens~Anderson Company、Chicago,ILから入手)を使用して、出力電圧6.3Vで、金属曝露を測定した。測定された電流をミリアンペアで報告する。端部の連続性を最初に試験し、次いで端部をレトルト処理した後に試験した。冷却及び乾燥後、端部を通過するミリアンペアの電流を再び測定した。
【0168】
本発明の好ましいコーティングは、上記のように試験した場合、最初に10ミリアンペア(mA)未満、より好ましくは5mA未満を通過する。レトルト後、好ましいコーティングは、20mA未満、より好ましくは10mA未満、更により好ましくは5mA未満の連続性を与える。
【0169】
示差走査熱量測定。示差走査熱量測定(「DSC」)試験のための試料を、最初に液体樹脂組成物をアルミニウムシートパネル上に適用することによって調製する。次いで、パネルをFisher Isotemp電気オーブン内で、300°F(149℃)の温度で20分間ベークして、揮発性物質を除去する。室温に冷却した後、試料をパネルから掻き取り、標準試料パンに秤量し、標準的なDSCの加熱~冷却~加熱法を使用して分析する。試料を~60℃で平衡化し、次いで20℃/分で200℃まで加熱し、~60℃に冷却し、次いで20℃/分で再び200℃まで加熱する。ガラス転移を、最後の加熱サイクルのサーモグラムから計算する。転移の変曲点でガラス転移を測定する。
【0170】
本発明は、以下の実施例によって例示される。特定の実施例、材料、量、及び手順は単に例示的なものであり、他の実施形態が記載されるように作製され得ることが理解されるべきである。特に指示がない限り、全ての部及びパーセンテージは重量による。
【0171】
粘度試験。この試験は、レオロジー目的のために、例えば噴霧性及び他のコーティング適用特性のために、コーティング組成物の粘度を測定する。試験は、Ford Viscosity Cup#4を25℃で使用して、ASTM D1200~88に従って行われる。結果は秒単位で測定される。
【0172】
グローバル抽出試験。グローバル抽出試験は、コーティングから、コーティングされた缶に充填された食品に移動可能な移動性材料の総量を推定するよう設計されている。典型的には、コーティングされた基体が、所与の最終用途をシミュレートするために、様々な条件下で水又は溶媒のブレンドに供される。許容可能な抽出条件及び培地は、21 CFR§175.300、段落(d)及び(e)に記載されている。FDA規制によって定義される許容可能なグローバル抽出限界は、百万分の50部(ppm)である。
【0173】
本発明において使用できる抽出手順は、21 CFR§175.300、段落(e)(4)(xv)に記載されているが、最悪のケースのシナリオでも一定の性能を確保するため、以下の修正を伴う:1)アルコール(エタノール)含有量を10重量%まで増加させ、2)充填された容器が、10日間の平衡期間にわたり37.8℃(100°F)に保持される。これらの条件は、FDAの刊行物、食品接触通知を準備するための「Guidelines for Industry」に従っている。
【0174】
コーティングされた飲料缶に、10重量%のエタノール水溶液を充填し、2時間にわたって低温殺菌条件(65.6℃、150°F)に供し、引き続いて、37.8℃(100°F)で10日間の平衡期間とした。抽出物の量の決定は、21 CFR§175.300、段落(e)(5)に記載されているようにして決定され、ppm単位での値は、缶(端部なし)の表面積は44平方インチであり、容積は355ミリリットルであるということに基づいて計算される。好ましいコーティングは、グローバル抽出結果が50ppm未満、より好ましい結果が10ppm未満、更により好ましい結果が1ppm未満となるべきである。最も好ましくは、グローバル抽出結果は、最適な場合には検出不可能である。
【0175】
例示的な実施形態
実施形態1によれば、モノマーを形成する方法は、芳香環及びカルボニル基を含む第1の化合物と、カルボニル基を含む第2の化合物と、任意選択的に、エポキシド環を含む第3の化合物と、を含む反応物を反応させることを含み、ここで、モノマーは、ポリオール(例えば、ポリフェノール)又はポリエポキシドを含む。
【0176】
実施形態2は、第1の化合物が、芳香環に直接結合したアルコキシド基を含む、実施形態1に記載の方法である。
【0177】
実施形態3は、第1の化合物が、好ましくは芳香環に直接結合しているヒドロキシ基を含む、実施形態1又は2のいずれか1つに記載の方法である。
【0178】
実施形態4は、第1の化合物のカルボニル基が、好ましくは芳香環に直接結合しているアシル基、好ましくは~CH(=O)又はアセチル基を含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法である。
【0179】
実施形態5は、第1の化合物が式(I):
【0180】
【化16】
の化合物であり、式中、Aは、任意選択的に置換され、かつ任意選択的にヘテロ原子を含む芳香環であり、ヘテロ原子が、好ましくはO、N又はSであり、各R
1及びYは、独立して、水素又は有機基(例えば、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基)であり、Xは、有機基(例えば、脂肪族基、脂環式基、芳香族基などのC1~C20、C1~C10、又はC1~C4含有基)であるか、又は存在せず(nが0である場合)、Zは、エピクロロヒドリンと反応性の基(例えば、ヒドロキシル基又は1つ以上の炭素原子を含むヒドロキシ含有基)であり、nは、0又は1であり、tは、2~4である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法である。
【0181】
実施形態6は、nがゼロ(0)である、実施形態5に記載の方法である。
【0182】
実施形態7は、Yが水素であり、第1の化合物が式(IA)の化合物:
【0183】
【化17】
であり、式中、A、R
1、及びtは、式(I)と同様であり、好ましくは、R
1は、水素又は酸素原子を含む脂肪族基であり、mは、0~2である、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法である。
【0184】
実施形態8は、第1の化合物が、バニリン、ヒドロキシメチルフルフラール、ヒドロキシベンズアルデヒド(例えば、4~ヒドロキシベンズアルデヒド又は2~ヒドロキシベンズアルデヒド)、ヒドロキシルナフトアルデヒド(例えば、1~ヒドロキシ~2~ナフトアルデヒド、3~ヒドロキシ~2~ナフトアルデヒド、又は4~ヒドロキシ~1~ナフトアルデヒド)、3~ヒドロキシアセトフェノン、それらの置換改変体、又はそれらの組み合わせを含み、好ましくは、第1の化合物が、バニリン又はヒドロキシメチルフルフラールを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法である。
【0185】
実施形態9は、第2の化合物が式(II):
【0186】
【化18】
の化合物であり、式中、R
2及びR
3は、各々独立して、水素又は有機基(例えば、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基などのC1~C20、C1~C10、又はC1~C4含有基)であり、任意選択的に、R
2及びR
3は、環に縮合している、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法である。
【0187】
実施形態10は、第2の化合物が、シクロヘキサノン、ジアルキルケトン(好ましくはジエチルケトン又はアセトン)、アルキルジオン(好ましくはシクロヘキサンジオン)、レブリン酸、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法である。
【0188】
実施形態11は、第2の化合物がシクロペンタノンではない、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法である。
【0189】
実施形態12は、第2の化合物が、1,000ダルトン未満、500ダルトン未満、若しくは200ダルトン未満の原子量を有するか、又は1,000ダルトン未満の原子量を有する繰り返し単位を有するオリゴマーである、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法である。
【0190】
実施形態13は、方法が、第3の化合物と反応させることを含み、任意選択的に、第3の化合物がエピハロヒドリン、好ましくはエピクロロヒドリンを含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法である。
【0191】
実施形態14は、方法が、第1のステップにおいて、第1の化合物と第2の化合物とを反応させて、中間生成物(例えば、ポリフェノールなどの芳香族ジオール、好ましくはジフェノール)を得ることと、第2のステップにおいて、中間生成物を第3の化合物と反応させてモノマーを得ることとを含み、任意選択的に、モノマーが、ポリエポキシドモノマー、好ましくはジエポキシドモノマーを含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法である。
【0192】
実施形態15は、方法が、第1のステップにおいて、第1の化合物と第3の化合物とを反応させて中間生成物を得ることと、第2のステップにおいて、中間生成物を第2の化合物と反応させてモノマーを得ることとを含み、任意選択的に、モノマーが、ポリエポキシドモノマー、好ましくはジエポキシドモノマーを含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法である。
【0193】
実施形態16は、第1の化合物及び第2の化合物が、1.8:1~3:1モル部、1.8:1~2.5:1モル部、1.8:1~2.2:1モル部、又は2:1~2.2:1モル部の第1の化合物及び第2の化合物の比で反応する、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法である。好ましい実施形態では、第1の化合物対第2の化合物の比は、2:1又は約2:1モル部である。
【0194】
実施形態17は、モノマーが、ジフェノール又は他の芳香族ジオールである、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法である。
【0195】
実施形態18は、モノマーが式(III):
【0196】
【化19】
のモノマーであり、式中、A、R
1、X、Y、Z、n、及びtは、式(I)と同様であり、R
2及びR
3は、式(II)と同様である、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法である。
【0197】
実施形態19は、モノマーが式(IIIA):、
【0198】
【化20】
のモノマーであり、式中、A、R
1、X、Y、Z、n、及びtは、式(I)と同様であり、各R
5は、独立して、水素又は有機基から選択され、好ましくはR
5は水素である、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法である。
【0199】
実施形態20は、モノマーが式(IIIB):、
【0200】
【化21】
のモノマーであり、式中、R
1、Y及びZは、式(I)と同様であり、R
5は、式(IIIA)と同様である、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法である。
【0201】
実施形態21は、モノマーが式(IIIC):
【0202】
【化22】
のモノマーである、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法である。
【0203】
実施形態22は、モノマーが式(IIID):
【0204】
【化23】
のモノマーであり、式中、R
1、Y及びZは、式(I)と同様であり、R
5は、式(IIIA)と同様である、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法である。
【0205】
実施形態23は、モノマーがジエポキシドであるように、示されるZ基がエポキシド含有基に変換されている、実施形態18~22のいずれか1つに記載の方法である。
【0206】
実施形態24は、モノマーが式(IIIE):
【0207】
【化24】
のモノマーである、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法である。
【0208】
実施形態25は、モノマーが式(IV):
【0209】
【化25】
のモノマーであり、式中、A、R
1、X、Y、n及びtは、式(I)と同様であり、R
2及びR
3は、式(II)と同様であり、Z
2は、エピクロロヒドリンとの反応後のZの残基であり、好ましくはZ
2は、酸素、~NH~、~(CH
2)
mO~(mは1若しくは2である)、又は~COO~である、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法である。
【0210】
実施形態26は、モノマーが式(IVA):
【0211】
【化26】
のモノマーであり、式中、A、R
1、X、Y、n、及びtは、式(I)と同様であり、R
5は、式(IIIA)と同様であり、Z
2は、式(IV)と同様である、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法である。
【0212】
実施形態27は、モノマーが式(IVB):
【0213】
【化27】
のモノマーである、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法である。
【0214】
実施形態28は、モノマーが式(IVC):
【0215】
【化28】
のモノマーである、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法である。
【0216】
実施形態29は、実施形態1~28のいずれか1つの方法から得られるモノマーである。
【0217】
実施形態30は、式(III):
【0218】
【化29】
のモノマーであり、式中、A、R
1、X、Y、Z、n、及びtは、式(I)と同様であり、R
2及びR
3は、式(II)と同様である。
【0219】
実施形態31は、式(IIIA):
【0220】
【化30】
のモノマーであり、式中、A、R
1、X、Y、Z、n及びtは、式(I)と同様であり、各R
5は、独立して、水素又は有機基から選択され、好ましくはR
5は水素である。
【0221】
実施形態32は、モノマーが式(IIIB):
【0222】
【化31】
によって表され、式中、R
1、Y及びZは、式(I)と同様であり、R
5は、式(IIIA)と同様である、実施形態31に記載のモノマーである。
【0223】
実施形態33は、モノマーがジエポキシドであるように、示されるZ基がエポキシド含有基に変換されている、実施形態30~32のいずれか1つに記載のモノマーである。
【0224】
実施形態34は、モノマーが式(IIIC):
【0225】
【化32】
によって表される、実施形態30~32の実施形態いずれか1つに記載のモノマーである。
【0226】
実施形態35は、モノマーが式(IIID):
【0227】
【化33】
によって表され、式中、R
1、Y及びZは、式(I)と同様であり、R
5は、式(IIIA)と同様である、実施形態30又は31に記載のモノマーである。
【0228】
実施形態36は、モノマーが式(IIIE):
【0229】
【化34】
によって表される、実施形態35に記載のモノマーである。
【0230】
実施形態37は、式(IV):
【0231】
【化35】
のモノマーであり、式中、A、R
1、X、Y、n及びtは、式(I)と同様であり、R
2及びR
3は、式(II)と同様であり、Z
2は、エピクロロヒドリンとの反応後のZの残基であり、好ましくはZ
2は、酸素、~NH~、~(CH
2)
mO~(mは1若しくは2である)、又は~COO~である。
【0232】
実施形態38は、式(IVA):
【0233】
【化36】
によって表され、式中、A、R
1、X、Y、n、及びtは、式(I)と同様であり、R
5は、式(IIIA)と同様であり、Z
2は、式(IV)と同様である、実施形態37に記載のモノマーである。
【0234】
実施形態39は、モノマーが式(IVB):
【0235】
【化37】
によって表される、実施形態37又は38に記載のモノマーである。
【0236】
実施形態40は、式(IVC):
【0237】
【化38】
によって表される、実施形態37に記載のモノマーである。
【0238】
実施形態41は、モノマーが、式(IVD):
【0239】
【化39】
によって表される、実施形態37に記載のモノマーである。
【0240】
実施形態42は、実施形態30~41のいずれか1つに記載のモノマーから誘導される1つ以上のセグメントを含むポリマーである。
【0241】
実施形態43は、ポリマーがポリエーテルポリマーを含む、実施形態42に記載のポリマーである。
【0242】
実施形態44は、30℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、又は80℃以上のTgを有する、実施形態42又は43に記載のポリマーである。
【0243】
実施形態45は、150℃以下、130℃以下、120℃以下、又は110℃以下のTgを有する、実施形態42~44のいずれか1つに記載のポリマーである。
【0244】
実施形態46は、ポリマーが、2000以上、3000以上、3500以上、又は4000以上の数平均分子量を有する、実施形態42~45のいずれか1つに記載のポリマーである。
【0245】
実施形態47は、ポリマーが、ポリマーの骨格に結合した複数の二級ヒドロキシル基を含む、実施形態42~46のいずれか1つに記載のポリマーである。
【0246】
実施形態48は、ポリマーが、1つ以上の~CH2~CH(OH)~CH2~又は~CH2~CH2~CH(OH)~骨格セグメントを含む、実施形態42~47のいずれか1つに記載のポリマーである。
【0247】
実施形態49は、約1.5~約5、より好ましくは約2~約3.5の多分散指数(PDI)を有する、実施形態42~48のいずれか1つに記載のポリマーである。
【0248】
実施形態50は、ポリマーが、ポリエーテル~アクリレートコポリマーを含み、1つ以上のアクリル部分が、カルボン酸基及び/又はその塩の基を任意選択的に含む、実施形態42~49のいずれか1つに記載のポリマーである。
【0249】
実施形態51は、ポリマーが、水分散性基(例えば、中和された酸基又は中和された塩基基などの塩基)を含み、水分散性である、実施形態42~50のいずれか1つのポリマーである。
【0250】
実施形態52は、ポリマーの主鎖が、(i)末端オキシラン末端基、(ii)末端ヒドロキシル基(例えば、フェノール基のヒドロキシル)、又は(iii)(i)及び(ii)の両方、を含む、実施形態42~51のいずれか1つに記載のポリマーである。
【0251】
実施形態53は、ポリマーが、ビスフェノールA、ビスフェノールF、又はビスフェノールSから誘導される構造単位を含まない、実施形態42~52のいずれか1つに記載のポリマーである。
【0252】
実施形態54は、ポリマーが、ビスフェノールから誘導される構造単位(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールSにおけるような)を含まない、実施形態42~53のいずれか1つに記載のポリマーである。
【0253】
実施形態55は、モノマーから誘導される構造単位を含み、実施形態30~41のいずれか1つのモノマーが、モノマーの5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、35重量%以上、50重量%以上、65重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、又は95重量%以上、又は99重量%以上;及び、100重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、60重量%以下、40重量%以下、20重量%以下、又は10重量%以下を構成する、実施形態42~54のいずれか1つのポリマーである。
【0254】
実施形態56は、以下の式の1つ以上のセグメントを含む、実施形態42~55のいずれか1つに記載のポリマーであり、
【0255】
【化40】
式中、A、R
1、X、Y、n、及びtは、式(I)と同様であり、R
5は、式(IIIA)と同様であり、Z
2は、酸素、~NH~、~(CH
2mO~(mは1若しくは2である)、又は~COO~である。
【0256】
実施形態57は、実施形態42~56のいずれか1つに記載のポリマーを含むコーティング又はコーティング組成物である。
【0257】
実施形態58は、実施形態42~56のいずれか1つに記載のポリマーと溶媒とを含むコーティング組成物であって、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、又は25重量%以上の不揮発性成分と、50重量%以下又は40重量%以下の不揮発性成分とを含むコーティング組成物である。
【0258】
実施形態59は、溶媒が、少なくとも50重量%、少なくとも75重量%、少なくとも90重量%、若しくは少なくとも95重量%の水を含むか、又は、溶媒が、本質的に水からなる、実施形態58に記載のコーティング組成物である。
【0259】
実施形態60は、ポリマーが、アニオン性又はカチオン性の塩基などの塩の基、及び好ましくは中和された酸又は塩基の基を含む、実施形態58又は59に記載のコーティング組成物である。
【0260】
実施形態61は、ポリマーが、ポリマー1グラム当たり少なくとも40、少なくとも55、又は少なくとも70ミリグラムKOHの酸価を有する、実施形態58~60のいずれか1つに記載のコーティング組成物である。
【0261】
実施形態62は、実施形態42~55のいずれか1つのポリマーが、コーティング組成物中の樹脂固形分の総重量に基づいて、コーティング組成物の5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、35重量%以上、50重量%以上、65重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、又は95重量%以上、又は99重量%以上を構成する、実施形態57~61のいずれか1つのコーティング組成物である。
【0262】
実施形態63は、実施形態42~56のいずれか1つのポリマーが、コーティング組成物中の樹脂固形分の総重量に基づいて、コーティング組成物の100重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、60重量%以下、40重量%以下、20重量%以下、10重量%以下を構成する、実施形態57~62のいずれか1つに記載のコーティング組成物である。
【0263】
実施形態64は、ポリマーが、1.5以上若しくは2以上、及び/又は5以下若しくは3.5以下の多分散性指数(「PDI」)を有し、及び/又は、PDIが、約1.5~約5、より好ましくは約2~約3.5である、実施形態57~63のいずれか1つに記載のコーティング組成物である。
【0264】
実施形態65は、ポリマーが、示差走査熱量測定(「DSC」)によって測定したとき、0℃超、少なくとも30℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、若しくは少なくとも70℃;及び/又は150℃未満、130℃未満、若しくは110℃未満のTgを有する、実施形態57~64のいずれか1つに記載のコーティング組成物である。
【0265】
実施形態66は、コーティング組成物が、1つ以上の添加剤を更に含み、1つ以上の添加剤が、接着促進剤、硬化剤(例えば、架橋剤)、充填剤、染料、着色剤、トナー、造膜助剤、増量剤、防食剤、流動制御剤、チキソトロープ剤、分散剤、酸化防止剤、脱酸素材料、接着促進剤、光安定剤、触媒、潤滑剤、又はこれらの混合物を含む、実施形態57~65のいずれか1つのコーティング組成物である。
【0266】
実施形態67は、実施形態42~56のいずれか1つに記載のポリマーを含むコーティング組成物であって、粉末コーティングとして提供されている、コーティング組成物である。
【0267】
実施形態68は、実施形態57~67のいずれか1つに記載のコーティング組成物から作製されたコーティングを含む食品又は飲料容器である。
【0268】
実施形態69は、金属基体、好ましくはアルミニウムを含み、コーティングが、金属基体の少なくとも一部に配置されている、実施形態68に記載の食品又は飲料容器である。
【0269】
実施形態70は、コーティングが、0.7ミリグラム/平方インチ(mg/インチ2)超、0.8mg/インチ2超、若しくは0.9mg/インチ2超;及び/又は、5.5mg/インチ2以下、4.0mg/インチ2以下、3.0mg/インチ2以下、若しくは2.5mg/インチ2以下;及び/又は、約0.9mg/インチ2~約1.1mg/インチ2、約1.4mg/インチ2~約1.6mg/インチ2、若しくは約1.9mg/インチ2~約2.1mg/インチ2、の平均フィルム厚を有する、実施形態68又は69に記載の食品又は飲料容器である。
【0270】
実施形態71は、硬化コーティングが、示差走査熱量測定(DSC)によって測定したとき、50℃超、60℃超、70℃超、若しくは80℃超;及び/又は、120℃未満、115℃未満、110℃未満、若しくは100℃未満のガラス転移温度を有する、実施形態68~70のいずれか1つに記載の食品又は飲料容器である。
【0271】
実施形態72は、硬化コーティングが、全体抽出試験に従って、百万分の約25部(ppm)未満、より好ましくは約10ppm未満、更により好ましくは約1ppm未満の全体抽出を示す、実施形態68~71のいずれか1つに記載の食品又は飲料容器である。
【0272】
実施形態73は、実施形態42~67のいずれかに記載のポリマー又はコーティング組成物を、食品若しくは飲料容器又はその一部に(例えば、内部又は外部コーティングとして)使用することを含む方法である。
【0273】
実施形態74は、150℃超、165°超、若しくは180℃超;及び/又は、250℃未満、240℃未満、若しくは230℃未満の硬化温度で硬化することを含む、実施形態73に記載の方法である。
【0274】
実施形態75は、硬化が、10秒~30分、又はいくつかの用途では、1分未満、例えば10秒~30秒、又は1分超、例えば1分~2分、又は5分超、例えば10~30分の、オーブン滞留時間を有する、実施形態74に記載の方法である。
【0275】
実施形態76は、コーティングが、内部噴霧コーティング又はコイルコーティングによって適用される、実施形態73~75のいずれか1つに記載の方法である。
【0276】
実施形態77は、実施形態37~42のいずれか1つに記載のポリエポキシドモノマーを含む剤Aと、硬化剤を含む剤Bと、を含む多剤式エポキシド系である。
【0277】
実施形態78は、実施形態30~42のいずれか1つに記載のモノマーを含むモノマー混合物と、不飽和モノマー、好ましくは(メタ)アクリレート又はスチレンとの溶液を含む、コーティング系又は複合材である。
【0278】
実施形態79は、実施形態30~42のいずれか1つに記載のモノマーを含有するオリゴマーのフリーラジカル単独重合によって得られるコーティング系又は複合材である。
【0279】
実施形態80は、芳香環及びカルボニル基を含む化合物と、カルボニル基を含む官能単位を含有するポリマーとを反応させることによって得られるフェノールペンダントを含むコポリマーである。
【0280】
実施形態81は、化合物が、バニリン、ヒドロキシメチルフルフラール、ヒドロキシベンズアルデヒド(例えば、4~ヒドロキシベンズアルデヒド又は2~ヒドロキシベンズアルデヒド)、ヒドロキシルナフトアルデヒド(例えば、1~ヒドロキシ~2~ナフトアルデヒド、3~ヒドロキシ~2~ナフトアルデヒド、又は4~ヒドロキシ~1~ナフトアルデヒド)、3~ヒドロキシアセトフェノン、それらの置換改変体、又はそれらの組み合わせを含み、好ましくは、化合物が、バニリン又はヒドロキシメチルフルフラールを含む、実施形態80に記載のコポリマーである。
【0281】
実施形態82は、ポリマーがアクリルコポリマーである、実施形態80又は81に記載のコポリマーである。
【0282】
実施形態83は、官能単位が、メタクロレイン、HMFメタクリレート、又はバニリンメタクリレートを含む、実施形態80~82のいずれか1つに記載のコポリマーである。
【0283】
実施形態84は、モノマーがエポキシド基を含まない、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法である。
【0284】
実施形態85は、モノマーを、ポリシクロカーボネート、好ましくはジシクロカーボネートと反応させて、ポリエーテルポリマーを形成することを更に含む、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法である。
【0285】
実施形態86は、ポリシクロカーボネートが、ジグリセロールジシクロカーボネート、(グリセロールシクロカーボネート)ジカーボネート、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態82に記載の方法である。
【0286】
実施形態87は、モノマーがエポキシド基を含まない、実施形態29~36のいずれか1つに記載のモノマーである。
【0287】
実施形態88は、ポリマーがエポキシド基を含まない、実施形態42~56のいずれか1つに記載のポリマーである。
【0288】
実施形態89は、ポリシクロカーボネート、好ましくはジシクロカーボネートから誘導される構造単位を含む、実施形態88に記載のポリマーである。
【0289】
実施形態90は、ポリシクロカーボネートが、ジグリセロールジシクロカーボネート、(グリセロールシクロカーボネート)ジカーボネート、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態89に記載のポリマーである。
【0290】
実施形態91は、ポリマーがエポキシド基を含まない、実施形態57~67のいずれか1つに記載のコーティング組成物である。
【0291】
実施形態92は、ポリマーが、ポリシクロカーボネート、好ましくはジシクロカーボネートから誘導される構造単位を含む、実施形態91に記載のコーティング組成物である。
【0292】
実施形態93は、ポリシクロカーボネートが、ジグリセロールジシクロカーボネート、(グリセロールシクロカーボネート)ジカーボネート、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態92に記載のコーティング組成物である。
【0293】
実施形態94は、ポリマーがエポキシド基を含まない、実施形態69~72のいずれか1つに記載の食品又は飲料容器である。
【0294】
実施形態95は、ポリマーが、ポリシクロカーボネート、好ましくはジシクロカーボネートから誘導される構造単位を含む、実施形態94に記載の食品又は飲料容器である。
【0295】
実施形態96は、ポリシクロカーボネートが、ジグリセロールジシクロカーボネート、(グリセロールシクロカーボネート)ジカーボネート、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態95に記載の食料又は飲料用容器である。
【0296】
実施形態97は、ポリマーがエポキシド基を含まない、実施形態73~76のいずれか1つに記載の方法である。
【0297】
実施形態98は、ポリマーが、ポリシクロカーボネート、好ましくはジシクロカーボネートから誘導される構造単位を含む、実施形態97に記載の方法である。
【0298】
実施形態99は、ポリシクロカーボネートが、ジグリセロールジシクロカーボネート、(グリセロールシクロカーボネート)ジカーボネート、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態98に記載の方法である。
【0299】
実施形態100は、化合物がエポキシド基を含まない、実施形態80~83のいずれか1つに記載のコポリマーである。
【0300】
実施形態101は、化合物が、ポリシクロカーボネート、好ましくはジシクロカーボネートから誘導される1つ以上の構造単位を含む、実施形態100に記載のコポリマーである。
【0301】
実施形態102は、ポリシクロカーボネートが、ジグリセロールジシクロカーボネート、(グリセロールシクロカーボネート)ジカーボネート、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態101に記載のコポリマーである。
【0302】
いくつかの実施形態では、モノマーを形成する方法は、芳香環及びカルボニル基を含む第1の化合物と、カルボニル基を含む第2の化合物と、任意選択的に、エポキシド環を含む第3の化合物と、を含む反応物を反応させることを含み、ここで、モノマーは、ポリオール(例えば、ポリフェノール)又はポリエポキシドを含む。第1の化合物は、芳香環に直接結合したアルコキシド基を含み得る。第1の化合物は、好ましくは芳香環に直接結合しているヒドロキシ基を含み得る。第1の化合物のカルボニル基は、アシル基、好ましくは~CH(=O)又はアセチル基を含み得、これは好ましくは芳香環に直接結合している。第1の化合物は、上記の式(I)又は(IA)の化合物であり得る。第1の化合物は、バニリン、ヒドロキシメチルフルフラール、ヒドロキシベンズアルデヒド(例えば、4~ヒドロキシベンズアルデヒド又は2~ヒドロキシベンズアルデヒド)、ヒドロキシルナフトアルデヒド(例えば、1~ヒドロキシ~2~ナフトアルデヒド、3~ヒドロキシ~2~ナフトアルデヒド、又は4~ヒドロキシ~1~ナフトアルデヒド)、3~ヒドロキシアセトフェノン、それらの置換改変体、又はそれらの組み合わせを含み得、好ましくは、第1の化合物は、バニリン又はヒドロキシメチルフルフラールを含み得る。第2の化合物は、上記の式(II)の化合物であり得る。第2の化合物は、シクロヘキサノン、ジアルキルケトン(好ましくはジエチルケトン又はアセトン)、アルキルジオン(好ましくはシクロヘキサンジオン)、レブリン酸、又はそれらの組み合わせを含み得る。本方法は、第3の化合物と反応させることを含んでもよく、第3の化合物は、エピハロヒドリン、好ましくはエピクロロヒドリンを含み得る。本方法は、第1のステップにおいて、第1の化合物と第2の化合物とを反応させて中間生成物(例えば、ポリフェノールなどの芳香族ジオール、好ましくはジフェノール)をもたらすことと、第2のステップにおいて、中間生成物を第3の化合物と反応させてモノマーを得ることであって、モノマーが、ポリエポキシドモノマー、好ましくはジエポキシドモノマーを含むことができる、反応させることと、を含む。この方法は、第1のステップにおいて、第1の化合物と第3の化合物とを反応させて中間生成物をもたらすことと、第2のステップにおいて、中間生成物を第2の化合物と反応させてモノマーをもたらすことと、を含んでもよく、モノマーは、ポリエポキシドモノマー、好ましくはジエポキシドモノマーを含み得る。第1の化合物及び第2の化合物は、1.8:1~3:1モル部、1.8:1~2.5:1モル部、1.8:1~2.2:1モル部、又は2:1~2.2:1モル部の、第1の化合物及び第2の化合物の比で反応させ得る。好ましい実施形態では、第1の化合物対第2の化合物の比は、2:1又は約2:1モル部であり得る。モノマーは、ジフェノール又は他の芳香族ジオールである。モノマーは、上記の式(III)のモノマーであり得る。モノマーは、上記の式(IIIA)のモノマーであり得る。モノマーは、上記の式(IIIB)のモノマーであり得る。モノマーは、上記の式(IIIC)のモノマーであり得る。モノマーは、上記の式(IIID)のモノマーであり得る。モノマーは、上記の式(IIIE)のモノマーであり得る。モノマーは、上記の式(IV)のモノマーであり得る。モノマーは、上記の式(IVA)のモノマーであり得る。モノマーは、上記の式(IVB)のモノマーであり得る。モノマーは、上記の式(IVC)のモノマーであり得る。
【0303】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、上記の式(III)のモノマーから誘導される1つ以上のセグメント、又は上記の式(IIIA)のモノマーから誘導される1つ以上のセグメント、又は上記の式(IIIB)のモノマーから誘導される1つ以上のセグメント、又は上記の式(IIIC)のモノマーから誘導される1つ以上のセグメント、又は上記の式(IIID)のモノマーから誘導される1つ以上のセグメント、又は上記の式(IIIE)のモノマーから誘導される1つ以上のセグメント、又は上記の式(IV)のモノマーから誘導される1つ以上のセグメント、又は上記の式(IVA)のモノマーから誘導される1つ以上のセグメント、又は上記の式(IVB)のモノマーから誘導される1つ以上のセグメント、又は上記の式(IVC)のモノマーから誘導される1つ以上のセグメントを含む。ポリマーは、ポリエーテルポリマーを含み得る。ポリマーは、30℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、又は80℃以上のTgを有し得る。ポリマーは、150℃以下、130℃以下、120℃以下、又は110℃以下のTgを有し得る。ポリマーは、2000以上、3000以上、3500以上、又は4000以上の数平均分子量を有し得る。ポリマーは、ポリマーの主鎖に結合した複数の二級ヒドロキシル基を含む。ポリマーは、1つ以上の~CH2~CH(OH)~CH2~又は~CH2~CH2~CH(OH)~骨格セグメントを含む。ポリマーは、約1.5~約5、より好ましくは約2~約3.5の多分散指数(PDI)を有し得る。ポリマーは、ポリエーテル~アクリレートコポリマーを含んでもよく、1つ以上のアクリル部分は、任意選択的に、カルボン酸基及び/又はその塩の基を含む。ポリマーは、水分散性基(例えば、中和された酸基又は中和された塩基基などの塩基)を含み、水分散性であり得る。ポリマーの主鎖は、(i)末端オキシラン末端基、(ii)末端ヒドロキシル基(例えば、フェノール基のヒドロキシル)、又は(iii)(i)及び(ii)の両方を含み得る。ポリマーは、ビスフェノールA、ビスフェノールF、又はビスフェノールSから誘導される構造単位を含まなくてもよい。ポリマーは、ビスフェノール(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールSにおけるような)から誘導される構造単位を含まなくてもよい。ポリマーは、モノマーから誘導される構造単位を含み得、モノマーは、モノマーの5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、35重量%以上、50重量%以上、65重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、又は95重量%以上、又は99重量%以上;及び、100重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、60重量%以下、40重量%以下、20重量%以下、又は10重量%以下を構成し得る。
【0304】
いくつかの実施形態では、コーティング又はコーティング組成物は、上記の式(III)のモノマーから誘導される1つ以上のセグメント、又は上記の式(IIIA)のモノマーから誘導される1つ以上のセグメント、又は上記の式(IIIB)のモノマーから誘導される1つ以上のセグメント、又は上記の式(IIIC)のモノマーから誘導される1つ以上のセグメント、又は上記の式(IIID)のモノマーから誘導される1つ以上のセグメント、又は上記の式(IIIE)のモノマーから誘導される1つ以上のセグメント、又は上記の式(IV)のモノマーから誘導される1つ以上のセグメント、又は上記の式(IVA)のモノマーから誘導される1つ以上のセグメント、又は上記の式(IVB)のモノマーから誘導される1つ以上のセグメント、又は上記の式(IVC)のモノマーから誘導される1つ以上のセグメントを含むポリマーを含む。コーティング組成物は、ポリマー及び溶媒を含み得、コーティング組成物は、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、又は25重量%以上の不揮発性成分;及び50重量%以下又は40重量%以下の不揮発性成分を含み得る。溶媒は、少なくとも50重量%、少なくとも75重量%、少なくとも90重量%、若しくは少なくとも95重量%の水を含み得、又は溶媒は本質的に水からなる。ポリマーは、アニオン性又はカチオン性塩の基などの塩の基、好ましくは中和された酸又は塩基の基を含み得る。ポリマーは、ポリマー1グラム当たり少なくとも40、少なくとも55、又は少なくとも70ミリグラムのKOHの酸価を有し得る。ポリマーは、コーティング組成物中の樹脂固形分の総重量に基づいて、コーティング組成物の5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、35重量%以上、50重量%以上、65重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、又は95重量%以上、又は99重量%以上を構成し得る。ポリマーは、コーティング組成物中の樹脂固形分の総重量に基づいて、コーティング組成物の100重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、60重量%以下、40重量%以下、20重量%以下、10重量%以下を構成し得る。ポリマーは、1.5以上若しくは2以上、及び/又は5以下若しくは3.5以下の多分散性指数(「PDI」)を有し得、かつび/又は、PDIは、約1.5~約5、より好ましくは約2~約3.5であり得る。ポリマーは、示差走査熱量測定(「DSC」)によって測定したとき、0℃超、少なくとも30℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、若しくは少なくとも70℃;及び/又は150℃未満、130℃未満、若しくは110℃未満のTgを有し得る。コーティング組成物は、1つ以上の添加剤を更に含んでもよく、1つ以上の添加剤は、接着促進剤、硬化剤(例えば、架橋剤)、充填剤、染料、着色剤、トナー、造膜助剤、増量剤、防食剤、流れ調整剤、チキソトロープ剤、分散剤、酸化防止剤、脱酸素材料、接着促進剤、光安定剤、触媒、潤滑剤、又はそれらの混合物を含む。コーティング組成物は、粉末コーティングとして提供され得る。いくつかの実施形態では、食品又は飲料容器は、コーティング組成物から作製されたコーティングを含み得る。食品又は飲料容器は、金属基体、好ましくはアルミニウムを含み得、コーティングは、金属基体の少なくとも一部に配置され得る。コーティングは、0.7ミリグラム/平方インチ(mg/インチ2)超、0.8mg/インチ2超若しくは0.9mg/インチ2超;及び/又は、5.5mg/インチ2以下、4.0mg/インチ2以下、3.0mg/インチ2以下、若しくは2.5mg/インチ2以下;及び/又は、約0.9mg/インチ2~約1.1mg/インチ2、約1.4mg/インチ2~約1.6mg/インチ2、若しくは約1.9mg/インチ2~約2.1mg/インチ2、の平均フィルム厚を有し得る。硬化コーティングは、示差走査熱量測定(DSC)によって測定して、50℃超、60℃超、70℃超、若しくは80℃超;及び/又は、120℃未満、115℃未満、110℃未満、若しくは100℃未満のガラス転移温度を有し得る。硬化コーティングは、グローバル抽出試験に従って、百万分の約25部(ppm)未満、より好ましくは約10ppm未満、更により好ましくは約1ppm未満のグローバル抽出を示す。いくつかの実施形態では、方法は、ポリマー又はコーティング組成物を食品又は飲料容器又はその一部に(例えば、内部又は外部コーティングとして)使用させることを含み得る。本方法は、150℃超、165°超、若しくは180℃超;及び/又は、250℃未満、240℃未満、若しくは230℃未満の硬化温度で硬化することを含み得る。硬化は、10秒~30分、又はいくつかの用途では、10秒~30秒などの1分未満、又は1分~2分などの1分超、又は10~30分などの5分超の、オーブン滞留時間を有し得る。コーティングは、内側噴霧コーティング又はコイルコーティングによって適用され得る。
【実施例】
【0305】
実施例1A
実施例1Aでは、ジフェノールモノマーをバニリン及びシクロヘキサノンから調製した。
【0306】
ガラス容器中で、シクロヘキサノン4.3g(0.044mol)、バニリン13.66g(0.09mol)、及びエタノール80mLを混合した。混合物を室温で撹拌しながら、35%HClを89g(0.864mol)滴下した。HClの添加後、混合物を室温で40時間維持した。1リットルの脱塩水を添加した。沈殿物を500mLの水で洗浄し、80℃で乾燥させた。この沈殿物は、NMRにより2,6ジ(6~ヒドロキシ,5~メトキシ)ベンジリデンシクロヘキサノンであると同定された。NMRスペクトルを
図1Aに示す。
【0307】
【化41】
2,6ジ(6~ヒドロキシ,5~メトキシ)ベンジリデンシクロヘキサノン。
【0308】
得られるジフェノールの収率は、理論収率の百分率として計算することができる。理論上、2モルのバニリン(152.1g/molの分子量を有する)及び1モルのシクロヘキサノン(98.1g/molの分子量を有する)は、1モルの2,6ジ(6~ヒドロキシ,5~メトキシ)ベンジリデンシクロヘキサノン(366.4g/molの分子量を有する)を生成する。したがって、理論上、4.3gのシクロヘキサノン及び13.66gのバニリンは、14.7gの2,6ジ(6~ヒドロキシ,5~メトキシ)ベンジリデンシクロヘキサノンを生成する。この実施例で達成された計算収率は、12.6g/14.7g=86%であった。
【0309】
実施例1B
実施例1Bでは、ジグリシジルエーテル(「DGE」)を実施例1Aのジフェノール及びエピクロロヒドリンから調製した。
【0310】
ガラス容器に、3g(8.19mmol)の実施例1Aのジフェノール、0.19g(0.82mmol)のベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(「TEBAC」)、7.57g(81.9mmol)のエピクロロヒドリン、及び30mLのテトラヒドロフラン(「THF」)を入れた。成分が完全に溶解するまで、混合物を室温で撹拌した。次に、NaOH溶液(9.8gの水中4.9gのNaOH)を15℃で添加した。混合物を室温で15時間撹拌した。30mLの脱イオン(「DI」)水及び120mLのジクロロメタンを添加した。デカンテーション後、有機相をNaClで飽和させた水30mLで洗浄した。溶液をNa
2SO
4で乾燥させた。乾燥後、溶液を濾過し、溶媒を減圧下70℃で蒸留して除去した。得られた黄色粉末は、NMRによりジグリシジルエーテルと同定された。NMRスペクトルを
図1Bに示す。収率の計算値は94%であった。
【0311】
【化42】
2,6ジ(6~ヒドロキシ,5~メトキシ)ベンジリデンシクロヘキサノンのジグリシジルエーテル。
【0312】
実施例2A
実施例2Aでは、バニリンをエピクロロヒドリンでエポキシ化した。
【0313】
100g(0.66mol)のバニリンを、486.87g(5.62mol)のエピクロロヒドリン及び23gのテトラエチルアンモニウム(「TEA」)に70℃で溶解させた。70℃で4時間後、ジクロロメタンを添加した。次いで、混合物をDI水で2回洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させた。乾燥後、溶媒及び未反応のエピクロロヒドリンを真空下(0.01バール)で蒸留により除去した。乾燥後、136.8gのベージュ色の粉末が得られた。この粉末を100gのジクロロメタン、104.4gの水中の26.3gのNaOH溶液、及び6.9gの臭化テトラエチルアンモニウムに溶解させた。混合物を室温で3時間放置した。更に200gのジクロロメタンを加え、混合物を水で洗浄した。有機相をNa
2SO
4で乾燥した。溶媒を真空下(0.01バール)70℃で蒸留することにより除去した。オーブン中で乾燥させた後、130gのベージュ色の生成物が得られ、NMRによってバニリンのモノグリシジルエーテルであると同定された。NMRスペクトルを
図2Aに示す。収率の計算値は95%であった。
【0314】
【0315】
実施例2B
実施例2Bでは、ジエポキシドモノマーを、実施例2Aのバニリンのモノグリシジルエーテル及びアセトンから調製した。
【0316】
14.3g(0.069mol)のバニリンモノグリシジルエーテルを、2g(0.034mol)のアセトン及び55gのTHFに溶解させた。NaOH溶液(31.7gの水中3.2gのNaOH)を添加した。混合物を室温で8時間撹拌した。THFを真空下(0.01バール)70℃で蒸留することにより除去した。50gの水を添加して生成物を沈殿させた。濾過し、水で洗浄し、オーブン(50℃)中で乾燥させた後、12.8gのオレンジ色の固体を得た。生成物は、NMRによってジエポキシドとして同定された。NMRスペクトルを
図2Bに示す。収率の計算値は85%であった。
【0317】
【化44】
1,3ジ(6~ヒドロキシ,5~メトキシ)ベンジリデン2~プロパノンのジグリシジルエーテル。
【0318】
実施例3A
実施例3Aでは、ヒドロキシメチルフルフラール(「HMF」)及びシクロヘキサノンから芳香族ジオールモノマーを調製した。
【0319】
ガラス容器中で、5g(0.051mol)のシクロヘキサノン、13.17g(0.104mol)のHMF、及び50mLのエタノールを混合した。室温で撹拌しながら、水62mL中のK2CO3 15.5g(0.112mol)を滴下した。混合物を室温で24時間撹拌した。混合物を濾過し、100mLの水で洗浄した。得られた黄色粉末を80℃のオーブンで乾燥させて、15.5gの生成物を得た。生成物は、NMRによって、HMF及びシクロヘキサノンの芳香族ジオール付加物であると同定された。
【0320】
【0321】
NMRスペクトルを
図3Aに示す。収率の計算値は97%であった。
【0322】
実施例3B
実施例3Bでは、実施例3Aの芳香族ジオール及びエピクロロヒドリンから、ジグリシジルエーテル(「DGE」)を調製した。
【0323】
ガラス容器に、2.5g(8mmol)の実施例3Aのジフェノール、0.18g(0.8mmol)のTEBAC、7.36g(80mmol)のエピクロロヒドリン及び15gのTHFを入れた。混合物が均質になるまで、混合物を室温で撹拌した。次に、NaOH溶液(9.54gの水中4.77gのNaOH)を添加し、混合物を室温で16時間撹拌した。30mLの脱イオン(「DI」)水及び100mLのジクロロメタンを添加した。有機相を水で洗浄した。溶液をNa2SO4で乾燥させた。乾燥後、溶液を濾過し、有機溶媒及び過剰のエピクロロヒドリンを真空下(0.01バール)70℃で蒸留することによって除去した。3gの褐色粘性液体が得られ、NMRによりジグリシジルエーテルと同定された。
【0324】
【化46】
HMF及びシクロヘキサノンのジオール付加物のジグリシジルエーテル。
【0325】
NMRスペクトルを
図3Bに示す。収率の計算値は90%であった。
【0326】
実施例4A
実施例4Aでは、HMFをエピクロロヒドリンでエポキシ化した。
【0327】
凝縮器、撹拌機、及び温度プローブを備えたガラス容器に、10g(0.079mol)のHMF、0.9g(0.004mol)のTEBAC、36.68g(0.396mol)のエピクロロヒドリン、及び12.05g(0.087mol)のK2CO3を入れた。混合物を70℃で48時間撹拌した。30mLのジクロロメタン及び20mLの水を加えた。分離後、有機相を10mLの水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。乾燥後、ジクロロメタン及び未反応のエピクロロヒドリンを真空下(0.01バール)で蒸留により除去した。
【0328】
残留物を、10mLのジクロロメタンとともに、冷却器、撹拌機、及び温度プローブを備えたガラス容器に入れた。撹拌しながら、3.49gのNaOH、0.92gの臭化テトラエチルアンモニウム、及び13.85gの水の溶液を添加した。混合物を室温で3時間撹拌した。30mLのジクロロメタン及び20mLの水を加えた。分離後、有機相を10mLの水で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させた。乾燥後、ジクロロメタン及び未反応のエピクロロヒドリンを真空下(0.01バール)で蒸留により除去した。生成物は、NMRにより、HMFのモノグリシジルエーテルであると同定された。NMRスペクトルを
図4に示す。
【0329】
実施例4B
実施例4Bでは、ジエポキシドモノマーを、実施例4AのHMFのモノグリシジルエーテル及びシクロヘキサノンから調製した。
【0330】
ガラス容器に、2g(0.02mol)のシクロヘキサノン、7.79g(0.043mol)のHMFグリシジルエーテル、及び15mLのエタノールを入れた。NaOH溶液(18.4mLの水中1.9g(0.047mol)のNaOH)を滴下しながら、混合物を室温で撹拌した。混合物を室温で24時間撹拌した。30mLの水及び100mLのジクロロメタンを添加した。有機相を水で2回洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥させた。乾燥後、溶液を濾過し、有機溶媒及び過剰のエピクロロヒドリンを真空下(0.01バール)70℃で蒸留することによって除去した。6.8gの粘性液体を得た。実施例3Bと同様に、NMRにより、この化合物がシクロヘキサノン2,6メチレンビス(2~フラン,5~メタノールグリシジルエーテル)であると同定された。
【0331】
【化47】
HMF及びシクロヘキサノンのジフェノール付加物のジグリシジルエーテル。
【0332】
実施例5
実施例5では、ポリエーテルポリマーを、実施例1Aのバニリン誘導ジフェノール及び実施例1Bのバニリン誘導ジグリシジルエーテルから調製した。
【0333】
1.72g(0.0047mol)のバニリン誘導ジフェノール(2,6ジ(6~ヒドロキシ,5~メトキシ)ベンジリデンシクロヘキサノン)及び3g(0.0063mol)のそのDGE(2,6ジ(6~ヒドロキシ,5~メトキシ)ベンジリデンシクロヘキサノンのジグリシジルエーテル)を、8gのDMSOに180℃で溶解させた。混合物が均質になった後、14.2mgのブチルトリフェニルホスホニウムブロミドを添加し、混合物を180℃で4時間維持した。混合物の粘度が著しく増加したことが観察された。反応生成物をNMRスペクトルで観察し、バニリンジフェノールの付加物及びそのDGEを示した。NMRスペクトルを
図5に示す。
【0334】
実施例6
実施例6では、実施例4BのHMF及びシクロヘキサノンのジフェノール付加物のDGEと、メトキシヒドロキノンとから、ポリエーテルポリマーを調製した。調製は以下の反応によって表される:
【0335】
【0336】
2g(0.0047mol)のDGE及び0.66g(0.0047mol)の2~メトキシヒドロキノンを、冷却器、撹拌機及び温度プローブを備えたガラス容器中で混合した。混合物が均質になるまで、アルゴン流下で混合物を150℃で加熱した。8mgのブチルトリフェニルホスホニウムブロミドを添加し、混合物を180℃で2時間維持した。反応生成物をNMRスペクトルで観察したところ、ポリエーテルが定量的収率で生成していることが示された。NMRスペクトルを
図6に示す。
【0337】
実施例7
実施例7では、表1Aに示す化合物を使用して、実施例1Aのバニリン誘導ジフェノール及び実施例1Bのバニリン誘導ジグリシジルエーテルから、3つのポリエーテルポリマー試料を調製した。
【0338】
【0339】
各サンプルの成分を、温度制御システム、撹拌機、全凝縮器、及び窒素流を備えたガラス容器に入れた。まず、成分1、2、及び3を混合し、均質化し、150℃まで徐々に加熱した。成分4を添加し、混合物が透明になるまで混合物を150℃で撹拌した。温度を140℃に下げた後、触媒(成分5)を添加した。混合物のエポキシ当量(「EEW」)を定期的にチェックしながら、温度を140℃に維持した。EEWが約2500~3000で安定化したとき(変動は30分以内に100未満であった)、混合物を冷却し、成分6を添加した。続いて、得られたポリマーの不揮発性含量(「NVC」)、EEW、及び粘度を、表1Bに示すように評価した。過塩素酸による滴定(ASTM D1652)を用いてEEWを測定した。粘度は、25℃で落球法を使用して測定し、その際、粘度は、較正されたステンレス鋼(SKF4)の直径4mmの球が、20×300mmのガラス管に含まれる樹脂中に落下するのに必要な時間に比例して決定される。ポアズ単位の樹脂の粘度は、6.56×t(秒)であり、tは5cm落下する時間である。
【0340】
【0341】
実施例8
実施例8では、表2Aに示す化合物を使用して、実施例7のポリエーテルポリマー(試料2及び3)から2つのコーティングを調製した。
【0342】
【0343】
ポリエーテル樹脂をビーカーに入れ、エチルジグリコール及びキシレンを加えた。混合物を均質になるまで撹拌した。フェノール樹脂を撹拌しながら添加し、粘度をキシレンで調整した。次にワックスを加え、混合物を20分間撹拌した。
【0344】
コーティング(試料4及び5)を評価し、市販の試料と比較した。各コーティングを電解スズプレート(electrolytic tin plate、「ETP」)パネル上にバーコーターを用いて適用した(14~乾燥フィルム重量:5~6g/m2)。コーティングを換気オーブン中で硬化させ(200℃で12分の合計オーブン時間)、8時間冷却した。コーティングされたパネルを試験し、通常の食品缶端部上のエポキシフェノール(「EP」)及びポリエステルフェノール(「PEP」)コーティングの市販の標準(「Std」)と比較した。結果を以下の表2Bに示す。
【0345】
表において、FW乾燥は、乾燥フィルム重量(硬化後にパネル上に残るもの)を指す。各パネルのサイズはA4(210mm×297mm)であった。ピンホールとは、ワニス中の微視的な穴を指し、目視比較によって評価される。Erichsen GmbH(Hemer,Germany)から入手可能な曲げ衝撃試験機モデル471を使用して、ウェッジ曲げを試験した。白化、接着性、膨れ、及び腐食を目視比較に基づいて評価した。値は、2%の塩を含む水中又は3%の酢酸を含む水中でレトルト処理する前又はレトルト処理(130℃で1時間)した後の通常の食品缶エンドについて得た。数値が高いほど高性能であることを示す。
【0346】
【表4】
*値は、白化/接着/膨れ/腐食の順である。
【0347】
実験サンプル(サンプル4及び5)は、少なくとも市販製品と同様に機能することが観察された。エナメル質評価値は、実験サンプルが湿潤又は流動添加剤を含有しないという事実のために、わずかに高い。
【0348】
実施例9及び10
ジエポキシド中の二重結合の反応性は、モノマーの構造に依存する。アップグレードは、例えば、モノマーを140℃で数時間加熱することによって生成することができる(例えば、実施例2参照)。アップグレード(例えば、実施例3、表1Aに記載)の粘度は、二重結合の反応の阻害剤であるフリーラジカルスカベンジャー(TempoOH、CAS2226~96~2、Sigma Aldrichから入手可能)の添加によって低減されない。これは、140℃での二重結合が反応性でないことを示す。場合によっては、ジエポキシドに基づくアップグレードは、二重結合(バニリン/アセトン付加物のジエポキシド)の反応性が高すぎるために生成することができない。
【0349】
実施例9では、実施例4Bのジグリシジルエーテル(シクロヘキサノン2,6メチレンビス(2~フラン,5~メタノールグリシジルエーテル))の安定性を、示差走査熱量測定(「DSC」)を使用して試験した。DSCグラフを
図7に示す。この化合物は180℃まで安定であることがわかった。
【0350】
更に、バニリン及びシクロヘキサノンの付加物のDGE(実施例1Bで調製)を、過酸化ベンジルの存在下でスチレン又はメチルメタクリレートと100℃で反応させると、ホモポリマー及びジエポキシドモノマーの混合物が得られる。
【0351】
実施例10では、バニリン及びシクロヘキサノンの付加物(実施例1Aで調製)及びバニリン及びシクロヘキサノンの付加物のDGE(実施例1Bで調製)を、過酸化ベンゾイルの存在下でDMSOと混合し、100℃に加熱して、架橋ポリマーアップグレードを提供した。混合物はゲル化生成物を生じた。生成物は、その不溶性のためにNMRを用いて分析することができなかった。生成物は、以下の反応によって表される。
【0352】
【0353】
理論に束縛されるものではないが、フリーラジカルに対するモノマーの反応性は、スチレン又は通常のアクリルモノマーよりも低いが、適切なフリーラジカルによるアップグレードは、ポリエーテル骨格に沿った水素引き抜きによって反応する。生成されたラジカルは、二重結合と反応し得る。この水素引き抜きは、アクリル部分のグラフト化を可能にし、アクリルモノマー混合物中の(メタ)アクリル酸の使用のおかげで水分散性をもたらす。
【0354】
同様に、酸基を有するフリーラジカルは、二重結合へのグラフト化及び/又は付加によって反応することができる。例として、アップグレードは、バニリン及びシクロヘキサノンの付加物(例1Aで調製)と、バニリン及びシクロヘキサノンの付加物(例1Bで調製)のDGEとを、過酸化ベンゾイル及びイソ酪酸の存在下で反応させることによって得られた。
【0355】
本明細書で引用される全ての参考文献及び刊行物は、それらが本開示と直接矛盾し得る範囲を除いて、参照によりその全体が本開示に明示的に組み込まれる。本明細書では特定の実施形態を図示し説明してきたが、当業者であれば、本開示の範囲から逸脱することなく、図示及び説明した特定の実施形態を様々な代替的及び/又は均等な実施形態で置き換えることができることを理解するであろう。本開示は、本明細書に記載される例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されることを意図するものではなく、かかる実施例及び実施形態は、本明細書に記載される特許請求の範囲によってのみ限定されることを意図する本開示の範囲とともに、例としてのみ提示されることを理解されたい。
【国際調査報告】