(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-27
(54)【発明の名称】微多孔性ポリエチレンフィラメント
(51)【国際特許分類】
D01F 6/04 20060101AFI20231117BHJP
C08J 9/00 20060101ALI20231117BHJP
C08J 9/36 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
D01F6/04 Z
C08J9/00 A CES
C08J9/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528504
(86)(22)【出願日】2021-11-10
(85)【翻訳文提出日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 US2021058697
(87)【国際公開番号】W WO2022103783
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド ビー.マイナー
【テーマコード(参考)】
4F074
4L035
【Fターム(参考)】
4F074AA18
4F074AB01
4F074CA01
4F074CD08
4F074DA02
4F074DA38
4F074DA53
4L035BB32
4L035BB76
4L035BB81
4L035DD02
4L035DD07
4L035EE20
4L035FF10
4L035HH02
4L035MA01
(57)【要約】
ポリエチレン(PE)及び多孔性フィラメント、並びにこのようなフィラメントを製造する方法が、デンタルフロス、医療用縫合糸、及び衣類又はその他の織物を含む種々の用途のために開示される。PEフィラメントを延伸させ、折り曲げ、且つ/又は他の形で操作することにより、ポロシティを含む所期特性を得ることができる。PEフィラメントは、軽量であり、把持しやすく、滑動しやすく、非細断性であり、そして快適であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微多孔性モノフィラメントであって、
幅が0.2mm~8.0mmであり、
厚さが0.02mm~0.35mmであり、そして
ポロシティが15%~90%である
連続ポリエチレンフィラメントを含む、微多孔性モノフィラメント。
【請求項2】
前記連続ポリエチレンフィラメントがデンタルフロスである、請求項1に記載の微多孔性モノフィラメント。
【請求項3】
前記連続ポリエチレンフィラメントが超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含む、請求項1又は2に記載の微多孔性モノフィラメント。
【請求項4】
前記連続ポリエチレンフィラメントが延伸UHMWPEを含む、請求項3に記載の微多孔性モノフィラメント。
【請求項5】
前記幅が0.3mm~6.0mmであり、そして
前記厚さが0.022mm~0.325mmである、
請求項1~4のいずれか1項に記載の微多孔性モノフィラメント。
【請求項6】
前記幅が0.5mm~3.0mmであり、そして
前記厚さが0.03mm~0.15mmである、
請求項5に記載の微多孔性モノフィラメント。
【請求項7】
前記幅が0.8mm~2.5mmであり、そして
前記厚さが0.04mm~0.10mmである、
請求項6に記載の微多孔性モノフィラメント。
【請求項8】
前記ポロシティが30%~80%である、請求項1~7のいずれか1項に記載の微多孔性モノフィラメント。
【請求項9】
前記連続ポリエチレンフィラメントの引張強度が0.1GPa~1.5GPaである、請求項1~8のいずれか1項に記載の微多孔性モノフィラメント。
【請求項10】
前記連続ポリエチレンフィラメントの破断強度が3N~50Nである、請求項1~9のいずれか1項に記載の微多孔性モノフィラメント。
【請求項11】
前記連続ポリエチレンフィラメントのテナシティが0.5cN/dTex~20cN/dTexである、請求項1~10のいずれか1項に記載の微多孔性モノフィラメント。
【請求項12】
前記連続ポリエチレンフィラメントの最大荷重点伸びが1%~100%である、請求項1~11のいずれか1項に記載の微多孔性モノフィラメント。
【請求項13】
前記連続ポリエチレンフィラメントの線密度が90dTex~1040dTexである、請求項1~12のいずれか1項に記載の微多孔性モノフィラメント。
【請求項14】
前記線密度が200dTex~700dTexである、請求項13に記載の微多孔性モノフィラメント。
【請求項15】
前記線密度が250dTex~650dTexである、請求項14に記載の微多孔性モノフィラメント。
【請求項16】
前記線密度が300dTex~600dTexである、請求項15に記載の微多孔性モノフィラメント。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の複数の微多孔性モノフィラメントを含むマルチフィラメント。
【請求項18】
少なくとも1つの微多孔性モノフィラメントを含む布帛であって、前記少なくとも1つの微多孔性モノフィラメントが、
幅が0.2mm~8.0mmであり、
厚さが0.02mm~0.35mmであり、そして
ポロシティが15%~90%である
連続ポリエチレンフィラメントを含む、布帛。
【請求項19】
前記布帛が1つ又は2つ以上のヤーンをさらに含む、請求項18に記載の布帛。
【請求項20】
前記1つ又は2つ以上のヤーンがモノフィラメントヤーン、マルチフィラメントヤーン、又はこれらの組み合わせである、請求項19に記載の布帛。
【請求項21】
前記1つ又は2つ以上のヤーンが、前記連続ポリエチレンフィラメント、又は、ウール、綿、絹、亜麻、ヘンプ、種々の動物に由来する獣毛、アンゴラ、サイザル、ラミー、アクリル、ポリエステル、ポリアミド、ポリアラミド、ポリウレタン、アセテート、レーヨン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、リヨセル、モダクリル、ポリビニリデンクロリド、炭素、ガラス、セルロース、セルロースアセテート、セルロースエステル、弾性繊維、又はこれらの組み合わせから成る群から選択された別の材料を含む、請求項19又は20に記載の布帛。
【請求項22】
前記布帛が織布又は編地である、請求項18~21のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項23】
前記連続ポリエチレンフィラメントが超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含む、請求項18~22のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項24】
前記連続ポリエチレンフィラメントが延伸UHMWPEを含む、請求項23に記載の布帛。
【請求項25】
前記連続ポリエチレンフィラメントの引張強度が0.1GPa~1.5GPaである、請求項18~24のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項26】
前記ポロシティが30%~80%である、請求項18~25のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項27】
前記微多孔性モノフィラメントの破断強度が3N~50Nである、請求項18~26のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項28】
前記連続ポリエチレンフィラメントのテナシティが0.5cN/dTex~20cN/dTexである、請求項18~27のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項29】
前記連続ポリエチレンフィラメントの最大荷重点伸びが1%~100%である、請求項18~28のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項30】
前記連続ポリエチレンフィラメントの線密度が90dTex~1040dTexである、請求項18~29のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項31】
複数の前記微多孔性モノフィラメントがヤーンの形態を成している、請求項18~30のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項32】
微多孔性モノフィラメントを製造する方法であって、
ポリエチレンテープ又はメンブレンを用意し、そして
前記テープ又はメンブレンを切断してモノフィラメントにする
ことを含み、
前記モノフィラメントのポロシティが15%~90%であり、そして前記方法が、前記ポロシティを低減するいかなる圧縮工程をも欠いている、微多孔性モノフィラメントを製造する方法。
【請求項33】
前記切断工程の前に、前記ポリエチレンテープ又はメンブレンを延伸させることをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記切断工程の後に、前記モノフィラメントを延伸させることをさらに含む、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
前記モノフィラメントを長さ方向に折り曲げることをさらに含む、請求項32~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記モノフィラメントを捩じることをさらに含む、請求項32~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記モノフィラメントをスプール上へ巻き付け、そして前記スプールをデンタルフロスとして使用するために包装することをさらに含む、請求項32~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記モノフィラメントを布地内へ組み入れることをさらに含む、請求項32~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
ペースト処理によって、前記ポリエチレンテープを形成することをさらに含む、請求項32~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
ゲル処理によって、前記ポリエチレンテープを形成することをさらに含む、請求項32~39のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月12日付けで出願された仮出願第63/112,956号の優先権を主張する。これはあらゆる目的のためにその全体を参照することにより、本明細書中に援用される。
【0002】
本発明は大まかに言えば、ポリエチレン(PE)ポリマー、例えば超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)ポリマーに関し、そしてより具体的には、デンタルフロス、医療用縫合糸、及び布帛又は衣類を含む種々の用途のためのPEフィラメント、並びにPEフィラメントを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
合成繊維、例えばデンタルフロス、医療用縫合糸、及び布帛スレッドのために使用される合成繊維は、種々の望ましい材料特性を有するべきである。例えば、デンタルフロスは、使用中、使用者の歯の間を通されるときに細断、ほつれ、又はそうでなければその他の破断が生じないように耐摩耗性であるべきである。医療用縫合糸は例えば、生体適合性であり、具体的な用途に適した強度特性及び結び目保持特性を呈するべきである。布帛スレッドは例えば、具体的な用途にとって十分な耐久性及び強度を有するべきである。当該技術分野に必要とされるものは、具体的な用途に適したポリエチレンポリマー繊維である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
多孔性PEフィラメント、及びこのようなフィラメントを製造する方法が、デンタルフロス又は布帛又は衣類を含む種々の用途のために開示される。PEフィラメントを延伸させ、折り曲げ、且つ/又は他の形で操作することにより、所期特性を得ることができる。PEフィラメントは、把持しやすく、滑動しやすく、非細断性であり、そして快適であり得る。
【0005】
ある実施態様(「実施態様1」)によれば、微多孔性モノフィラメントであって、幅が0.2mm~8.0mmであり、厚さが0.02mm~0.35mmであり、そしてポロシティが15%~90%である連続ポリエチレンフィラメントを含む、微多孔性モノフィラメントが提供される。
【0006】
さらに別の実施態様(「実施態様2」)によれば、少なくとも1つの微多孔性モノフィラメントを含む布帛であって、前記少なくとも1つの微多孔性モノフィラメントが、幅が0.2mm~8.0mmであり、厚さが0.02mm~0.35mmであり、そしてポロシティが15%~90%である連続ポリエチレンフィラメントを含む、布帛が提供される。
【0007】
さらに別の実施態様(「実施態様3」)によれば、微多孔性モノフィラメントを製造する方法であって、ポリエチレンテープ又はメンブレンを用意し、前記ポリエチレンテープ又はメンブレンを少なくとも1つの方向に延伸させることにより、前記テープ又はメンブレンのポロシティを15%~90%まで増大させ、そして前記テープ又はメンブレンを切断してモノフィラメントにすることを含み、前記方法が、前記ポロシティ(多孔度)を低減するいかなる圧縮工程をも欠いている、微多孔性モノフィラメントを製造する方法が提供される。
【0008】
先行の実施態様は一例に過ぎず、本開示によって他の形で提供される発明概念のうちのいずれかの概念の範囲を制限するか又は狭くするように読まれるべきではない。数多くの例が開示されるが、さらに他の実施態様が下記詳細な説明から当業者に明らかになる。下記詳細な説明は具体的な例を示し記述する。したがって、図面及び詳細な説明は事実上限定的なものではなく事実上事例的なものとみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
添付の図面は、本開示のさらなる理解のために含まれ、そして本明細書中に組み込まれ、且つ本明細書の一部を構成し、実施態様を例示し、そして記載内容と一緒に、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0010】
【
図1】
図1は、ある実施態様に基づく、PEフィラメントを製造する模範的方法を示すフローチャートである。
【0011】
【
図2】
図2は、下記発明実施例Hに基づくフィラメントの走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【0012】
【
図3】
図3は、下記比較例Zに基づくフィラメントのSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
定義及び用語
本開示は、限定的に読まれるようには意図されない。例えば、本出願において使用される用語は、当業者がこのような用語を帰属させるであろう意味に照らして幅広く読まれるべきである。
【0014】
不正確を表す用語に関しては、「約(about)」及び「ほぼ(approximately)」を互いに置き換え可能に用いることにより、表明された測定値を含み、且つ表明された測定値に合理的に近い任意の測定値をも含む測定値を意味する。表明された測定値に合理的に近い測定値は、当業者によって理解され容易に突き止められるような合理的に僅かな量だけ、表明された測定値から逸脱している。このような逸脱は、例えば測定誤差、測定及び/又は製造設備較正の差、測定値の読み出し及び/又は設定に際してのヒューマンエラー、他の構成部分と関連する測定値の差を考慮した性能及び/又は構造パラメータ、具体的には実施シナリオを最適化するために行われる微調整、人又は機械による物体の不正確な調整及び/又は操作、及び/又はこれに類するものに帰することができる。
【0015】
種々の実施態様の説明
当業者には明らかなように、所期機能を発揮するように構成された任意の数の方法及び装置によって、本開示の種々の態様を実現することができる。なお、本明細書中に言及される添付の図面は必ずしも原寸に比例するものではなく、本開示の種々の態様を例示するために誇張されることもある。その点において、図面は制限的なものと解釈されるべきではない。
【0016】
図1を参照すると、PEフィラメント、例えばデンタルフロスとして使用するのに適したUHMWPEフィラメントを製造する模範的方法100が提供されている。他の用途、例えば衣類又は他の織物における他の用途のためにPEフィラメントを使用することも本開示の範囲内に含まれる。方法100はいかなる圧縮工程をも欠いてよい。圧縮工程はフィラメント内の微孔を低減且つ/又は破壊することになる。
【0017】
方法100の用意工程102において、PEテープ又はメンブレンを用意する。テープ又はメンブレンのPEポリマーは、その分枝、結晶構造、分子量、及び/又はコモノマー含量が様々であってよい。好適なPEポリマーは例えば、分子質量が500000amu超のUHMWPE、高分子量ポリエチレン(HMWPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、及びこれらの混合物を含む。テープ又はメンブレンのPEポリマーは、エチレンのホモポリマー、又はエチレンと少なくとも1つのコモノマーとのコポリマーであってよい。ある特定の実施態様では、少なくとも1つのコモノマーはアルキル分枝状コモノマー及び/又は炭素原子数3~20のアルファ-オレフィン又は環状オレフィンであってよい。好適なコモノマーの一例としては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、シクロヘキセン、及び炭素原子数が最大20のジエン(例えばブタジエン又は1,4-ヘキサジエン)が挙げられるがこれらに限られない。コモノマーは、0.001mol%~10mol%、又は0.01mol%~5mol%、又は0.1mol%~1mol%の量でコポリマー中に存在してよい。PEテープ又はメンブレンは多孔性材料、より具体的には相互接続された孔を含有する微多孔性材料であってよい。ある特定の実施態様では、PEテープは、PEポリマーをペースト処理することにより形成されてよい。ペースト処理は、PE粒子を潤滑剤と混合し、PEポリマーの溶融温度及び潤滑剤の沸点を下回る温度を維持しながら潤滑粒子をカレンダー加工によりテープにし、そしてテープを乾燥させることにより、潤滑剤を除去することを伴う。他の実施態様では、PEテープはPEポリマーをゲル処理することによって、又は別の適宜の処理技術によって形成されてよい。PEメンブレンはPEテープを延伸させることによって形成されてよい。
【0018】
用意工程102から得られたPEテープ又はメンブレンには、1つ又は2つ以上の任意の処理工程103を施すことができる。
図1に示されているように、任意の処理工程103は、第1延伸工程104と、切断工程106と、第2延伸工程108と、折り曲げ工程110と、捩り工程112とを含む。これらの工程のそれぞれについてさらに後述する。
【0019】
方法100の第1延伸工程104では、PEテープ又はメンブレンを任意には1つ又は2つ以上の方向(例えば機械方向(MD)及び/又は横方向(TD))に延伸且つ/又は伸張させることにより、ポロシティのいかなる損失をも最小限に抑え、多くの場合にはテープ又はメンブレンのポロシティレベルを増大させないまでもこれを少なくとも維持するように注意して、延伸PE(ePE)テープ又はメンブレンを製造することができる。これを支援する1つの技術は、一方の方向を定置のまま保持しながら、他方の方向に延伸させることである。第1延伸工程104は、PEフィラメントが、PEポリマーの溶融温度未満の温度、例えば120℃~140℃、より具体的には125℃~130℃の温度の一連の回転加熱ローラ又は加熱プレートを通過するようにすることを伴ってよい。第1延伸工程104は、伸張速度0.1%/sec~100%/sec、より具体的には0.3%/sec~10%/sec、より具体的には0.5%/sec~3.5%/secで実施されてよい。それぞれの方向において、PEテープ又はメンブレンは1.01倍~10倍、より具体的には1.05倍~2.5倍、より具体的には1.05倍~1.5倍だけ延伸させられてよい。第1延伸工程104から結果として得られたePEテープ又はメンブレンは、用意工程102から得られた微多孔性PEテープ又はメンブレンよりも高い多孔性を有してよく、フィブリルによって相互接続されたノードを有してよい。
【0020】
方法100の切断工程106では、PEテープ又はメンブレンは任意には、例えば所期幅の間隔を置いた一連のギャップ付きブレードにテープを通すことなどによって、長さ方向に細長く切り裂くことにより所期幅を有するリボン状フィラメントにすることができる。切断工程106後の所期幅は、0.1mm~30mm、より具体的には0.1mm~10mm、より具体的には0.2mm~8.0mm、より具体的には0.25mm~7.5mm、より具体的には0.3mm~6.0mm、より具体的には0.3mm~3.5mm、より具体的には0.5mm~3.0mm、そしてより具体的には0.8mm~2.5mmであってよい。ある特定の実施態様では、PEフィラメントは単一のストランド又はモノフィラメントのままであってよい。しかしながら、PEフィラメントを他のストランドと融合し、ブレイディングし、又はそうでなければ他の形で束ねることによりマルチフィラメントを製造することも本開示の範囲に含まれる。
【0021】
方法100の第2延伸工程108では、PEフィラメントを任意には機械方向(MD)に延伸且つ/又は伸張させることにより、所期ポロシティレベルを維持するように注意して、延伸PE(ePE)フィラメントを製造することができる。第2延伸工程108は、PEフィラメントが、PEポリマーの溶融温度未満の温度、例えば120℃~140℃、より具体的には125℃~130℃の温度の一連の回転加熱ローラ又は加熱プレートを通過するようにすることを伴ってよい。第2延伸工程108は、伸張速度0.1%/sec~100%/sec、より具体的には0.3%/sec~10%/sec、より具体的には0.5%/sec~3.5%/secで実施されてよい。PEフィラメントは1.01倍~10倍、より具体的には1.05倍~2.5倍、より具体的には1.05倍~1.5倍だけ延伸させられてよい。第2延伸工程108から結果として得られたePEフィラメントは、用意工程102又は前の第1延伸工程104から得られたPEテープ又はメンブレンよりも高い又は低い多孔性を有してよく、フィブリルによって相互接続されたノードを有してよい。方法100のある特定の実施態様では、第1延伸工程104及び第2延伸工程108の両方を実施してよい。方法100の他の実施態様では、第1延伸工程104又は第2延伸工程108のうちの一方だけを実施してよい。
【0022】
方法100の折り曲げ工程110では、PE又はePEフィラメントを任意には長さ方向に折り曲げることにより、より狭い、より厚いフィラメントにすることができる。折り曲げられたPE又はePEフィラメントの、折り曲げ工程110後の幅は、0.2mm~8.0mm、より具体的には0.25mm~7.5mm、より具体的には0.3mm~6.0mm、より具体的には0.3mm~3.5mm、より具体的には0.5mm~3.0mm、より具体的には0.8mm~2.5mm、そしてより具体的には1.0mm~2.5mmであってよい。PE又はePEフィラメントの、折り曲げ工程110後の厚さは、0.02mm~0.35mm、より具体的には0.02mm~0.25mm、より具体的には0.03mm~0.15mm、そしてより具体的には0.04mm~0.10mmであってよい。
【0023】
方法100の捩り工程112では、PE又はePEフィラメントは任意に捩じられてよい。PE又はePEフィラメントは所期巻数、例えば1m当たり10巻~1m当たり1000巻、より具体的には1m当たり250巻~1m当たり750巻だけ捩じられてよい。この捩り工程112はフィラメントを緻密化することができる。この捩り工程112を改変して、例えば他の物理的操作、例えばフィラメントを加圧することも本開示の範囲に含まれる。捩り工程112は、例えば米国特許第5,989,709号明細書に基づいて実施することができる。
【0024】
方法100のさらなる処理工程114では、PE又はePEフィラメントはその所期用途のために処理されてよい。ある実施態様では、PE又はePEフィラメントには、さらなる処理工程114中に、滅菌、香り付け、エンボス加工、スプールへの巻き付け、及び/又はデンタルフロスとして使用するための包装を施すことができる。PE又はePEデンタルフロスは驚くべきことに、ワックスなしでも把持しやすく、滑動しやすく、非細断性(特にマルチフィラメントではなくモノフィラメントとして提供される場合)であり、そして快適であり得る。
【0025】
他の実施態様では、PE又はePEフィラメントはさらなる処理工程114中に、衣類又は他の織物内へ組み込まれてよい。布帛は織布及び編地の両方を含む。布帛は1つ又は2つ以上のモノフィラメントヤーン、マルチフィラメントヤーン、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。このようなヤーンは、上記PE又はePEフィラメント、並びに他の材料、例えば、ウール、綿、絹、亜麻、ヘンプ、種々の動物に由来する獣毛、アンゴラ、サイザル、ラミー、アクリル、ポリエステル、ポリアミド、ポリアラミド、ポリウレタン、アセテート、レーヨン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、リヨセル、モダクリル、ポリビニリデンクロリド、炭素、ガラス、セルロース、セルロースアセテート、セルロースエステル、弾性繊維、又はこれらの組み合わせから形成されてよい。
【0026】
PE又はePEフィラメントは、現在のePTFEデンタルフロスよりも軽量であり得る。なぜならば、PEはPTFEよりも50%超軽量だからである。ある特定の実施態様では、PE又はePEフィラメントの長さ当たりの重量(すなわち線密度)は、1040dTex未満、より具体的には90dTex~1040dTex、より具体的には100dTex~1000dTex、より具体的には200dTex~700dTex、より具体的には250dTex~650dTex、より具体的には300dTex~600dTex、そしてより具体的には350dTex~550dTexであってよい。比較すると、同様のポロシティを有する現在のePTFEデンタルフロスの、長さ当たりの重量は1040dTexを超える。
【0027】
PE又はePEフィラメントの他の特性は、デンタルフロスとして使用するのに適していてよい。PE又はePEフィラメントの嵩密度は、0.1g/cc~0.8g/cc、より具体的には0.2g/cc~0.7g/cc、より具体的には0.14g/cc~0.76g/ccであってよい。PE又はePEフィラメントのポロシティは、15%~90%、より具体的には20%~80%、より具体的には19%~76%、そしてより具体的には30%~60%であってよい。PE又はePEフィラメントの破断強度は、3N~50N、より具体的には5N~30N、そしてより具体的には10N~25Nであってよい。PE又はePEフィラメントのテナシティ(tenacity、強力)は、0.5cN/dTex~20cN/dTex、より具体的には0.7cN/dTex~18cN/dTex、より具体的には1.0cN/dTex~10cN/dTex、より具体的には1.5cN/dTex~8cN/dTexであってよい。PE又はePEフィラメントの引張強度は、0.1GPa~1.5GPa、より具体的には0.2GPa~0.8GPa、より具体的には0.3GPa~0.6GPaであってよい。PE又はePEフィラメントの最大荷重点伸びは、1%~100%、より具体的には5%~95%、より具体的には10%~75%であってよい。
【0028】
デンタルフロス用途において、完全密度フィラメントよりも引張強度が低いにもかかわらず、本フィラメントの微多孔性構造はフィラメントの圧縮に適応すると考えられ(例えば歯間の狭い空間を通るとき)、そしてこの圧縮は細断又は破断に対する抵抗を高めると考えられる。さらに、本フィラメントの微多孔性構造はフィラメントの剛性を低くすることを可能にし、そして歯茎に付加的な快適さを提供し、またフィラメントをより快適に把持できるようにする。布帛用途において、フィラメントは、所期特性、例えば低い空気透過率、低いウェットピックアップ(wet pick up)、及び好適な風合い(hand)を有する軽量材料を製造することができる。
【0029】
試験法
言うまでもなく、ある特定の方法及び設備を後述するものの、当業者によって適切と見極められた他の方法又は設備を代わりに利用してもよい。
【0030】
フィラメントの長さ当たりの重量(dTex)
0.9メートルだけ分離された2つのピンの周りにフィラメントの10倍の長さ(5往復分)を巻きつけることにより、9メートル長のフィラメントを得た。次いで、9メートル長を0.0001グラムまでの精度でスケール上で秤量した。次いで、この重量を1000で掛け算することにより、デニール(g/9000m)単位で長さ当たりの重量を出した。このデニール測定値を次いで1.1111で掛け算することにより、dTexの単位で長さ当たりの重量を出した。
【0031】
フィラメント幅(mm)
0.1mm刻みのグラデーションを有する10倍アイループ(eye loop)を利用して、コンベンショナルな方式でフィラメント幅を測定した。3つの測定値を求めて平均することにより、幅を0.05mm刻みで見極めた。
【0032】
フィラメント厚(mm)
0.001mm刻みの精度のはさみゲージを利用して、フィラメント厚(又は高さ)を測定した。はさみゲージでフィラメントを圧縮しないように注意した。3つの測定値を求め、そして0.001mm刻みで平均した。
【0033】
フィラメント密度(g/cc)
前に測定したフィラメントの長さ当たりの重量、フィラメント幅、及びフィラメント厚を利用して、下記式を用いてフィラメント密度を計算した。
【数1】
【0034】
フィラメントのポロシティ(%)
フィラメントのポロシティは、試料の総体積(空気+ポリマー)と比較した空気体積の量である。完全密度のポリエチレン又はUHMWPEは0.94g/ccであると想定した。完全密度のポリテトラフルオロエチレン又はPTFEは2.18g/ccであると想定した。フィラメントのポロシティ(%)を下記式を用いて計算した。
【数2】
【0035】
フィラメントの破断強度(N)及び伸び(%)
フィラメント破断強度は、フィラメントを破断(破壊)するために必要となる最大荷重の測定値であった。引張試験機、例えばマサチューセッツ州CantonのInstron Machineによって破断強度を測定した。Instron 機械は、繊維(ホーン型)ジョーを備えた。ジョーは引張荷重の測定中に繊維及びストランド物品を固定するのに適している。引張試験機のクロスヘッド速度は1分当たり25.4cmであった。ゲージ長は25.4cmであった。それぞれの繊維タイプの5つの測定値を求め、平均値をニュートン単位で報告した。最大荷重点での破断前のフィラメントの伸びも測定した。それぞれの繊維タイプの5つの伸び測定値を求め、平均値をパーセント単位で報告した。
【0036】
フィラメントのテナシティ(cN/dTex)
フィラメントのテナシティは、繊維の長さに対する重量に対して正規化された、フィラメントの破断強度である。フィラメントのテナシティ(cN/dTex)を下記式を用いて計算した。
【数3】
【0037】
フィラメントの引張強度(GPa)
フィラメントの引張強度は、断面積に対して正規化されたフィラメントの引張強度である。完全密度のポリエチレン又はUHMWPEを0.94g/ccであると想定し、そして1cN/dTexのテナシティは13,633psiに等しくなるであろう。下記式を用いてフィラメント引張強度(GPa)を計算した。
【数4】
【0038】
SEM試料調製法
それぞれのフィラメント試料に液体窒素を噴霧し、次いで、ドイツ国Wetzlar在Leica Microsystemsから入手可能なLeica Ultracut UCT内のダイアモンドナイフで、噴霧された試料を切り取ることによって、断面SEM試料を調製した。
【0039】
マトリックス引張強度(MTS)
MTSを見極めるために、ASTM D412-ドッグボーン・ダイ・タイプF(DD412F)を使用して、試料メンブレンを長手方向及び横方向に切断した。平らな面を有するグリップ及び「200 lb」(ほぼ90.72kg)ロードセルを備えたINSTRON(登録商標)5500R (マサチューセッツ州Norwood 在Illinois Tool Works Inc.)引張試験機を使用して、引張破断荷重を測定した。グリップのためのゲージ長は8.26cmに設定し、歪み速度は0.847cm/sに設定した。試料をグリップ内に入れた後、試料を1.27cm引き込むことによりベースラインを得、これに続いて前述の速度で引張試験を行った。各条件毎に2つの試料を個別に試験し、最大荷重(すなわちピーク力)測定値の平均をMTS計算のために使用した。長手方向及び横方向のMTSは、下記等式を用いて計算した。
【数5】
【0040】
実施例
発明実施例A
質量8.8グラム/m2、ポロシティ76%、長手方向のマトリックス引張強度24,600psi、及び横方向のマトリックス引張強度13,200psiを有する、UHMWPEを含むPEメンブレンを得た。
【0041】
次いでメンブレンを細長く切り裂くことにより、長さ当たりの重量336dtex及び密度0.23g/ccを有する3.0mm幅×0.048mm厚のフィラメントの断面を形成し、ポロシティ76%をもたらした(完全密度PEが0.94g/ccであると想定した)。このフィラメントを続いて2.0mm幅のアイレットを通して折り曲げた。折り曲げたフィラメントは下記特性、すなわち幅1.8mm、高さ(又は厚さ)0.089mm、長さ当たりの重量336dtex、嵩密度0.21g/cc、ポロシティ78%、破断強度6.67N、テナシティ1.99cN/dtex、引張強度0.19GPa、及び最大荷重点伸び3.0%を有した。
【0042】
この折り曲げ済みフィラメントは把持しやすく、フロッシング中に細断又は破断するいかなる傾向もなしに歯間を容易に滑動した。さらに、フィラメント中のポロシティは、フィラメントの剛性を低くすることを可能にし、そして歯茎に付加的な快適さを提供し、またフィラメントをより快適に把持できるようにした。
【0043】
発明実施例B
実施例Aのメンブレンから5.3mm幅のフィラメントを細長く切り裂いた。細長く切り裂かれたメンブレンのフィラメントを、次いで伸張比1.15:1とともに伸張速度3.5%/secで、140℃に設定された加熱プレートにわたって伸張させた。この第1伸張に続いて第2伸張を、伸張比1.10:1とともに伸張速度2.6%/secで、140℃に設定された加熱プレートにわたって施した。この第2伸張に続いて第3伸張を、伸張比1.10:1とともに伸張速度2.9%/secで、140℃に設定された加熱プレートにわたって施した。この第3伸張に続いて第4伸張を、伸張比1.08:1とともに伸張速度1.8%/secで、140℃に設定された加熱プレートにわたって施した。伸張済みフィラメントを次いで2.0mm幅のアイレットを通して折り曲げた。折り曲げたフィラメントは下記特性、すなわち幅1.5mm、高さ(又は厚さ)0.043mm、長さ当たりの重量371dtex、嵩密度0.58g/cc、ポロシティ38%、破断強度20.11N、テナシティ5.42cN/dtex、引張強度0.51GPa、及び最大荷重点伸び2.6%を有した。
【0044】
このフィラメントは把持しやすく、フロッシング中に細断又は破断するいかなる傾向もなしに歯間を容易に滑動した。さらに、フィラメント中のポロシティは、フィラメントの剛性を低くすることを可能にし、そして歯茎に付加的な快適さを提供し、またフィラメントをより快適に把持できるようにした。
【0045】
発明実施例C
107ミリメートル幅、20ミクロン厚、そして1平方メートル当たりの面密度8.5グラム、そしてこれとともにポロシティ57.8%である、UHMWPEを含むPEメンブレンを得た。次いでこのメンブレンを細長く切り裂くことにより、6.9mm幅の断面を形成した。次いで細長く切り裂かれたメンブレンを、伸張比1.10:1とともに伸張速度3.1%/secで、120℃に設定された加熱プレートにわたって伸張させた。この第1伸張に続いて第2伸張を、伸張比1.10:1とともに伸張速度1.4%/secで、120℃に設定された加熱プレートにわたって施した。この第2伸張に続いて第3伸張を、伸張比1.05:1とともに伸張速度0.7%/secで、120℃に設定された加熱プレートにわたって施した。この第3伸張に続いて第4伸張を、伸張比1.05:1とともに伸張速度0.8%/secで、120℃に設定された加熱プレートにわたって施した。この第4伸張に続いて第5伸張を、伸張比1.05:1とともに伸張速度0.6%/secで、120℃に設定された加熱プレートにわたって施した。フィラメントは下記特性、すなわち幅3.1mm、高さ0.023mm、長さ当たりの重量410dtex、嵩密度0.58g/cc、ポロシティ38%、破断強度24.95N、テナシティ6.09cN/dtex、引張強度0.57GPa、及び最大荷重点伸び11.4%を有した。
【0046】
このフィラメントは把持しやすく、フロッシング中に細断又は破断するいかなる傾向もなしに歯間を容易に滑動した。さらに、フィラメント中のポロシティは、フィラメントの剛性を低くすることを可能にし、そして歯茎に付加的な快適さを提供し、またフィラメントをより快適に把持できるようにした。
【0047】
発明実施例D
伸張済みフィラメントを続いて2.0mm幅のアイレットに通すことにより折り曲げることを除けば実施例Cと同様に、UHMWPEを含むPEフィラメントを製造した。折り曲げ済みフィラメントは下記特性、すなわち幅1.6mm、高さ0.049mm、長さ当たりの重量409dtex、嵩密度0.52g/cc、ポロシティ45%、破断強度24.78N、テナシティ6.06cN/dtex、引張強度0.57GPa、及び最大荷重点伸び11.9%を有した。
【0048】
このフィラメントは把持しやすく、フロッシング中に細断又は破断するいかなる傾向もなしに歯間を容易に滑動した。さらに、フィラメント中のポロシティは、フィラメントの剛性を低くすることを可能にし、そして歯茎に付加的な快適さを提供し、またフィラメントをより快適に把持できるようにした。このフィラメントは、続いて2.0mm幅のアイレットに通して折り曲げることによって生じる厚さ及び幅の変化に起因する使いやすさの見地から、そしてより全体的有効性があるという感覚から、実施例Cを凌ぐ改善されたフロスを示す。
【0049】
発明実施例E
折り曲げ済みフィラメントを続いてリングツイスタを通して1m当たりの巻数630で捩じることを除けば実施例Dと同様に、UHMWPEを含むPEフィラメントを製造した。捩り済みフィラメントは下記特性、すなわち直径0.31mm、長さ当たりの重量477dtex、嵩密度0.63g/cc、ポロシティ33%、破断強度15.44N、テナシティ3.24cN/dtex、引張強度0.30GPa、及び最大荷重点伸び14.8%を有した。
【0050】
この捩り済みフィラメントは把持しやすく、フロッシング中に細断又は破断するいかなる傾向もなしに歯間を容易に滑動した。さらに、フィラメント中のポロシティは、捩り済みフィラメントの剛性を低くすることを可能にし、そして歯茎に付加的な快適さを提供し、またフィラメントをより快適に把持できるようにした。この捩り済みフィラメントは、方形形状又はリボン形状よりも丸みを帯びたフィラメントが望まれる用途において好ましいと言える。
【0051】
発明実施例F
500ミリメートル幅、30ミクロン厚、そして1平方メートル当たりの面密度18.1グラム、そしてこれとともにポロシティ36%である、UHMWPEを含むPEメンブレンを得た。続いて伸張比2:1とともに伸張速度4.3%/secで、120℃に設定された熱風乾燥機を通して、このメンブレンを機械方向に伸張した。この機械方向の伸張に続いて、伸張比4.7:1とともに伸張速度15.6%/secで、130℃の炉内において横方向伸張を施した。結果として生じたメンブレンは下記特性、すなわち幅697ミリメートル、厚さ14ミクロン、ポロシティ66%、そしてASTM D412に基づいて試験して、それぞれ機械方向及び横方向において、最大荷重7.65ニュートン × 6.23ニュートン、及び最大荷重点伸び25.6% × 34.3%を有した。メンブレンは15.7秒のガーレー時間を有した。ガーレー時間は、100立方センチメートル(1デシリットル)の空気が、4.88インチの水の圧力差(0.176psi)で1.0平方インチの所与の材料を通過するのに必要な秒数と定義されている(ISO 5636-5:2003)。
【0052】
このメンブレンから5.1mmのフィラメントを細長く切り裂いた。細長く切り裂かれたこのフィラメントを続いて1.0mm幅のアイレットを通して折り曲げた。折り曲げ済みフィラメントは下記特性、すなわち幅1.3mm、高さ0.075mm、長さ当たりの重量228dtex、嵩密度0.23g/cc、ポロシティ75%、破断強度6.23N、テナシティ2.74cN/dtex、引張強度0.26GPa、及び最大荷重点伸び19.4%を有した。
【0053】
このフィラメントは把持しやすく、フロッシング中に細断又は破断するいかなる傾向もなしに歯間を容易に滑動した。さらに、フィラメント中のポロシティは、フィラメントの剛性を低くすることを可能にし、そして歯茎に付加的な快適さを提供し、またフィラメントをより快適に把持できるようにした。
【0054】
発明実施例G
実施例Fのメンブレンから7.6mmのフィラメントを細長く切り裂いた。細長く切り裂かれたこのフィラメントを続いて1.0mm幅のアイレットを通して折り曲げた。折り曲げ済みフィラメントは下記特性、すなわち幅1.4mm、高さ0.095mm、長さ当たりの重量340dtex、嵩密度0.26g/cc、ポロシティ72%、破断強度9.21N、テナシティ2.71cN/dtex、引張強度0.25GPa、及び最大荷重点伸び18.2%を有した。
【0055】
このフィラメントは把持しやすく、フロッシング中に細断又は破断するいかなる傾向もなしに歯間を容易に滑動した。さらに、フィラメント中のポロシティは、フィラメントの剛性を低くすることを可能にし、そして歯茎に付加的な快適さを提供し、またフィラメントをより快適に把持できるようにした。
【0056】
発明実施例H
実施例Fのメンブレンから8.9mmのフィラメントを細長く切り裂いた。細長く切り裂かれたこのフィラメントを続いて2.0mm幅のアイレットを通して折り曲げた。折り曲げ済みフィラメントは下記特性、すなわち幅1.7mm、高さ0.110mm、長さ当たりの重量420dtex、嵩密度0.22g/cc、ポロシティ77%、破断強度13.2N、テナシティ3.15cN/dtex、引張強度0.30GPa、及び最大荷重点伸び26.0%を有した。
【0057】
図2は、このフィラメントを5000:1の倍率で示す走査電子顕微鏡(SEM)画像である。フィラメントの微多孔性をSEM画像において明確に見ることができる。
【0058】
このフィラメントは把持しやすく、フロッシング中に細断又は破断するいかなる傾向もなしに歯間を容易に滑動した。さらに、フィラメント中のポロシティは、フィラメントの剛性を低くすることを可能にし、そして歯茎に付加的な快適さを提供し、またフィラメントをより快適に把持できるようにした。
【0059】
比較例Z
商業的なデンタルフロスを形成するために使用される微多孔性ePTFEフィラメントのSEM画像を撮影した。フィラメントは下記特性、すなわち幅2.1mm、高さ0.103mm、長さ当たりの重量1030dtex、嵩密度0.48g/cc、ポロシティ78%、破断強度19.13N、テナシティ1.86cN/dtexを有した。
【0060】
図3は、このフィラメントを5000:1の倍率で示す走査電子顕微鏡(SEM)画像である。フィラメントの微多孔性をSEM画像において明確に見ることができる。
【0061】
このフィラメントは把持しやすく、フロッシング中に細断又は破断するいかなる傾向もなしに歯間を容易に滑動した。さらに、フィラメント中のポロシティは、フィラメントの剛性を低くすることを可能にし、そして歯茎に付加的な快適さを提供し、またフィラメントをより快適に把持できるようにした。
【0062】
発明実施例I
1000ミリメートル幅、16.5ミクロン厚、そして1平方メートル当たりの面密度5.5グラム、そしてこれとともにポロシティ64.5%であるPEメンブレンを得た。メンブレンから2.0mmのフィラメントを細長く切り裂いた。細長く切り裂かれたこのフィラメントを続いて1.0mm幅のアイレットを通して折り曲げた。折り曲げ済みフィラメントは下記特性、すなわち幅0.8mm、高さ0.060mm、長さ当たりの重量103dtex、嵩密度0.22g/cc、ポロシティ77%、破断強度4.49N、テナシティ4.37cN/dtex、引張強度0.41GPa、及び最大荷重点伸び71.5%を有した。
【0063】
発明実施例J
実施例Iのメンブレンから3.8mmのフィラメントを細長く切り裂いた。細長く切り裂かれたこのフィラメントを続いて1.0mm幅のアイレットを通して折り曲げた。折り曲げ済みフィラメントは下記特性、すなわち幅0.9mm、高さ0.077mm、長さ当たりの重量186dtex、嵩密度0.27g/cc、ポロシティ71%、破断強度8.41N、テナシティ4.55cN/dtex、引張強度0.43GPa、及び最大荷重点伸び72.3%を有した。
【0064】
発明実施例K
実施例Iのメンブレンから5.8mmのフィラメントを細長く切り裂いた。細長く切り裂かれたこのフィラメントを続いて1.0mm幅のアイレットを通して折り曲げた。折り曲げ済みフィラメントは下記特性、すなわち幅1.0mm、高さ0.115mm、長さ当たりの重量284dtex、嵩密度0.25g/cc、ポロシティ73%、破断強度12.54N、テナシティ4.40cN/dtex、引張強度0.41GPa、及び最大荷重点伸び74.9%を有した。
【0065】
このフィラメントは把持しやすく、フロッシング中に細断又は破断するいかなる傾向もなしに歯間を容易に滑動した。さらに、フィラメント中のポロシティは、フィラメントの剛性を低くすることを可能にし、そして歯茎に付加的な快適さを提供し、またフィラメントをより快適に把持できるようにした。フィラメントは容易に使い捨てすることができる。
【0066】
比較布帛例Y
長さ当たりの全重量が367dTexである4プライ・ナイロン・マルチフィラメント・ヤーンを得た。このヤーンを1×2綾織パターンで製織することにより、1インチ当たりの横糸打ち込み本数(ppi)48×1インチ当たりの縦糸打ち込み本数(epi)48から成る254cm幅の織布を製造した。これは1cm当たりの横糸打ち込み数18.9×1cm当たりの縦糸打ち込み数18.9に変換される。この布帛上で次の測定値、すなわち面積当たりの重量168g/m2、厚さ0.54mm、1分当たりの空気透過率67立方フィート(cfm)、ウェットピックアップ27%をもたらす、1平方メートル当たりのウェットピックアップ45グラム(gsm)を求めた。風合い(hand)は248gと測定された。
【0067】
発明布帛実施例L
実施例Iの103dTexの本発明のフィラメントを、織布内のすべての他の横糸と置換することを除いて、長さ当たりの全重量が367dTexである4プライ・ナイロン・マルチフィラメント・ヤーンを比較例Yと同じ1×2綾織パターンで製織した。この布帛上で次の測定値、すなわち面積当たりの重量140g/m2、厚さ0.54mm、1分当たりの空気透過率69立方フィート(cfm)、ウェットピックアップ24%をもたらす、1平方メートル当たりのウェットピックアップ34グラム(gsm)を求めた。風合いは238gと測定された。
【0068】
発明布帛実施例M
実施例Jの186dTexの本発明のフィラメントを、織布内のすべての他の横糸と置換することを除いて、長さ当たりの全重量が367dTexである4プライ・ナイロン・マルチフィラメント・ヤーンを比較例Yと同じ1×2綾織パターンで製織した。この布帛上で次の測定値、すなわち面積当たりの重量151g/m2、厚さ0.54mm、1分当たりの空気透過率43立方フィート(cfm)、ウェットピックアップ24%をもたらす、1平方メートル当たりのウェットピックアップ36グラム(gsm)を求めた。風合いは359gと測定された。
【0069】
発明布帛実施例N
実施例Kの284dTexの本発明のフィラメントを、織布内のすべての他の横糸と置換することを除いて、長さ当たりの全重量が367dTexである4プライ・ナイロン・マルチフィラメント・ヤーンを比較例Yと同じ1×2綾織パターンで製織した。この布帛上で次の測定値、すなわち面積当たりの重量165g/m2、厚さ0.56mm、1分当たりの空気透過率29立方フィート(cfm)、ウェットピックアップ23%をもたらす、1平方メートル当たりのウェットピックアップ(WPU)38グラム(gsm)を求めた。風合いは530gと測定された。
【0070】
前の実施例の布帛特性を下記表1に要約する。
【表1】
【0071】
空気透過率を最小化し得るできる限り軽量の布帛から形成された衣類を着用したいという消費者の要望がある。これらの軽量布帛が低いウェットピックアップ特性を有することも望ましい。さらに、これらの布帛は極めて軽量である場合には、布帛の風合い又は剛性を高めることにより、布帛又は衣類が全体的な保護感をもたらすのに十分であるという感覚を着用者に与えることが望まれ得る。ナイロンヤーンは、アパレル産業において、これらの特性のために優れた特徴を提供すると考えられている。それでもなお、アパレル産業におけるこれらの特性の改善が望まれる。
【0072】
上記表1に示されたいずれの事例においても、発明実施例L~Nの本発明の布帛は、比較例Yの100%ナイロン対照布帛よりも軽量である。本発明の布帛の重量が対照布帛に最も近い事例では、空気透過率が大幅に減少する。布帛重量のギャップがより大きい事例でも、空気透過率の実質的な低下がまだある。布帛重量に最も大きな差がある事例でも、空気透過率の測定値は類似している。このように、すべての事例において、所与の軽量布帛に関して極めて低い空気透過率を提供し得ることが示される。
【0073】
同様に、いずれの事例においても、重量当たりの空気透過率が低いこれらの布帛は、ウェットピックアップ特性がより低いことも示している。布帛の重量が低ければ低いほど、ウェットピックアップも低くなる。また、あらゆる事例において、本発明の布帛は対照布帛よりも、重量当たりのパーセンテージで、より低いウェットピックアップを示す。
【0074】
表1からやはり判るように、布帛の重量が対照布帛に最も近い事例では、風合いは著しく高められている。布帛重量のギャップがより大きい事例でも、風合いはなおも実質的に高められている。布帛の重量の差が最も大きい事例でも、風合いは僅かに低下するにすぎない。このように、すべての事例において、所与の布帛重量に関して、対照と比較してより高い風合いを提供し得ることが示されている。
【0075】
本出願の発明を全般的に、そして具体的な実施態様に関連して上記のように説明してきた。当業者には明らかなように、開示の範囲を逸脱することなしに、種々の改変及び変更を実施態様において加えることができる。したがって、本発明の改変形及び変更形が添付の請求項及びこれらの均等の範囲に含まれるのであれば、実施態様はこれらの改変形及び変更形に範囲が及ぶものとする。
【国際調査報告】