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特表2023-549516車両のブレーキシステムを作動させる方法、ブレーキシステム用制御器、ブレーキシステム
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  • 特表-車両のブレーキシステムを作動させる方法、ブレーキシステム用制御器、ブレーキシステム 図1
  • 特表-車両のブレーキシステムを作動させる方法、ブレーキシステム用制御器、ブレーキシステム 図2
  • 特表-車両のブレーキシステムを作動させる方法、ブレーキシステム用制御器、ブレーキシステム 図3
  • 特表-車両のブレーキシステムを作動させる方法、ブレーキシステム用制御器、ブレーキシステム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-27
(54)【発明の名称】車両のブレーキシステムを作動させる方法、ブレーキシステム用制御器、ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/00 20060101AFI20231117BHJP
【FI】
B60T8/00 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528550
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(85)【翻訳文提出日】2023-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2021076009
(87)【国際公開番号】W WO2022106096
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】102020214482.6
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ツィッブリッヒ,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ツィッブリッヒ,ドミニク
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246BA02
3D246DA01
3D246GB01
3D246GB28
3D246GC14
3D246HA03A
3D246HA05A
3D246HA94A
3D246JA03
3D246JB03
3D246JB11
3D246JB32
3D246JB47
3D246LA02Z
(57)【要約】
【課題】 本発明は、ブレーキシステム(1)内に液圧を発生させるための第1および第2のアクチュエータ(3,4)と、前記第1のアクチュエータ(3)の起動のために形成された第1の制御器(5)と、前記第2のアクチュエータ(4)の起動のために形成された第2の制御器(6)とを用いて、車両(2)の前記ブレーキシステム(1)を作動させる方法であって、前記ブレーキシステム(1)を非常ブレーキに関して監視し、非常ブレーキが検知されれば、そのときに、第1の液圧を発生させて前記車両(2)を予め設定した緊急減速度に到達させるために前記第1のアクチュエータ(3)を前記第1の制御器(5)によって起動させる前記方法に関する。
【解決手段】 本発明による方法は、前記第1のアクチュエータ(3)によって到達可能な、または、到達した減速度が、前記予め設定した緊急減速度よりも小さければ、そのときに、前記第2のアクチュエータ(4)を起動させて第2の液圧を発生させるために前記第2の制御器(6)を前記第1の制御器(5)によって起動させることを特徴としている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキシステム(1)内に液圧を発生させるための第1および第2のアクチュエータ(3,4)と、前記第1のアクチュエータ(3)の起動のために形成された第1の制御器(5)と、前記第2のアクチュエータ(4)の起動のために形成された第2の制御器(6)とを用いて、車両(2)の前記ブレーキシステム(1)を作動させる方法であって、前記ブレーキシステム(1)を非常ブレーキに関して監視し、非常ブレーキが検知されれば、そのときに、第1の液圧を発生させて前記車両(2)を予め設定した緊急減速度に到達させるために前記第1のアクチュエータ(3)を前記第1の制御器(5)によって起動させる前記方法において、
前記第1のアクチュエータ(3)によって到達可能な、または、到達した減速度が、前記予め設定した緊急減速度よりも小さければ、そのときに、前記第2のアクチュエータ(4)を起動させて第2の液圧を発生させるために前記第2の制御器(6)を前記第1の制御器(5)によって起動させることを特徴とする方法。
【請求項2】
非常ブレーキを検知するため、前記車両(2)の車両データを監視することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記車両データが、ドライバーによるブレーキペダルの操作距離と操作の速度とを含んでいること、前記操作距離と前記速度とがそれぞれ予め設定した限界値を越えていれば、前記非常ブレーキを導入することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記車両データが、前記車両(2)の周囲を検知する前記車両(2)のセンサのセンサデータを含んでいること、前記センサデータを評価したときに危険な走行状況が認知されれば、前記非常ブレーキを導入することを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記車両(2)の実減速度を測定すること、前記実減速度が前記予め設定した緊急減速度よりも小さければ、そのときにはじめて前記第2のアクチュエータ(4)を起動させることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ブレーキシステム(1)内の実液圧を測定すること、前記実液圧が前記予め設定した緊急減速度に依存して予め設定した目標液圧よりも小さければ、そのときにはじめて前記第2のアクチュエータ(4)を起動させることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
実減速度および/または実液圧を測定できなければ、最大可能液圧を発生させるために前記第2のアクチュエータ(4)を起動させることを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
ブレーキシステム(1)のための第1および第2の制御器(5,6)において、前記制御器(5,6)が、請求項1~7のいずれか一項記載の方法を実施するために整えられていることを特徴とする第1および第2の制御器。
【請求項9】
ブレーキシステム(1)内に液圧を発生させるための第1および第2のアクチュエータ(3,4)を備えた車両(2)の前記ブレーキシステム(1)において、請求項8記載の第1および第2の制御器(5,6)が設けられていることを特徴とする車両のブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキシステム内に液圧を発生させるための第1および第2のアクチュエータと、前記第1のアクチュエータの起動のために形成された第1の制御器と、前記第2のアクチュエータの起動のために形成された第2の制御器とを用いて、車両の前記ブレーキシステムを作動させる方法であって、前記ブレーキシステムを非常ブレーキに関して監視し、非常ブレーキが検知されれば、そのときに、第1の液圧を発生させて前記車両を予め設定した緊急減速度に到達させるために前記第1のアクチュエータを前記第1の制御器によって起動させるようにした前記方法に関するものである。
【0002】
さらに、本発明はブレーキシステム用第1および第2の制御器並びに車両のブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
冒頭で述べた種類の方法、制御器およびブレーキシステムは、従来技術から知られている。その際特に、検出した非常ブレーキを基に車両のドライバーを支援して車両のフル減速を達成させることが知られている。その際、車両のアシストシステムにより、特に液圧式ブレーキアシストにより非常ブレーキが認知されると、車両が停止するまで車両のフル減速が導入される。液圧式ブレーキアシストの作動により、可能限り早く、車両の予め設定した緊急減速度、特に最大可能減速度に到達するのが目的である。このため、車両の最大可能減速度に到達するようにブレーキシステム内の液圧を発生させるために、車両のブレーキシステムの複数のアクチュエータを、特に電気機械式ブレーキ倍力装置または電子スタビリティプログラムの液圧ポンプを制御器によって起動する。このため、車両の車輪ブレーキでのブレーキ圧は、特に、ブレーキ圧がアンチロックブレーキシステムの制御範囲内まで上昇するように、すなわち個々の車輪のロック圧またはロック限界まで上昇するように調整される。
【発明の概要】
【0004】
請求項1の構成要件を備えた本発明による方法は、第1のアクチュエータによって到達可能な、または、到達した減速度が、予め設定した緊急減速度よりも小さければ、そのときに、第2のアクチュエータを起動させて第2の液圧を発生させるために第2の制御器を第1の制御器によって起動させることを特徴としている。第2の制御器を第1の制御器によってこのように起動することにより、車両の予め設定した緊急減速度への到達は第2のアクチュエータによって常に保証されている。すなわち第2の制御器は、第1の制御器を支援する要請、または、緊急ブレーキを導入する要請を受ける。さらに、第2の制御器はブレーキシステムを緊急ブレーキに関して監視する必要はなく、むしろこれは第1の制御器が引き受けてよい。第2の制御器は、好ましくは、車両の電子スタビリティプログラムまたはアンチロックブレーキシステムの一部である。第1の制御器は、好ましくは、これとは独立に起動可能な、特に電気機械式ブレーキシステムの一部を制御する。好ましくは、第1の制御器は、特に電子スタビリティプログラムに関連付けられている複数のセンサから、達成された車両の減速度に関する情報および/またはアンチロックブレーキシステムの制御状態、特にブレーキスリップに関する情報を得る。これらの情報を用いて、有利には、まず液圧を、第1のアクチュエータによって最大に到達可能な液圧に制限し、この液圧が予め設定した緊急減速度に到達するために不十分であるときにはじめて、第2の制御器を起動して第2のアクチュエータを起動させることが達成される。その際、好ましくは、予め設定した緊急減速度とは、特にECEコントロールによって法的に予め設定されるまたは要請される最小減速度である。
【0005】
本発明の有利な更なる構成によれば、非常ブレーキを検知するため、車両の車両データを監視することが企図されている。非常ブレーキを検知するために車両の車両データを監視することにより、非常ブレーキの必要性があれば、これを確実に認知することが保証されているので有利である。その際、いずれにしろ、好ましくはすでにある車両の車両データが監視され、その結果ブレーキシステムに付加的な車両データまたは入力信号を割り当てる必要がない。
【0006】
本発明の有利な更なる構成によれば、車両データが、ドライバーによるブレーキペダルの操作距離と操作の速度とを含んでいること、操作距離と速度とがそれぞれ予め設定した限界値を越えていれば、非常ブレーキを導入することが企図されている。ブレーキペダルの操作距離と操作の速度とをこのように監視することにより、簡単な判断論理を用いて、非常ブレーキを導入せねばならないかどうかを決定可能である。この監視は、ブレーキペダルまたはブレーキペダルの操作がブレーキ回路から機械的に完全に切り離されているブレーキシステム、すなわちドライバーがペダルパワーシミュレータに介入して減速を行うブレーキシステムにおいても使用可能であるので有利である。好ましくは、ブレーキペダルの操作から生じるシミュレータ圧力と入力棒距離とは、ドライバーの制動要望の判定のために利用され、非常ブレーキの認定のために使用される。
【0007】
本発明の有利な更なる構成によれば、車両データが、車両の周囲を検知する車両のセンサのセンサデータを含んでいること、センサデータを評価したときに危険な走行状況が認知されれば、非常ブレーキを導入することが企図されている。危険な走行状況は、特に、先行車両に対する間隔が小さすぎる場合、または、道路上に障害物がある場合に存在し、その結果事故を回避するために車両を減速させねばならない。車両の周囲を検知する複数のセンサによって危険な走行状況を認知するためのセンサデータを監視して評価することにより、特にブレーキペダルの操作によるドライバーの制動要望がたとえまだない場合でも、或いは、ドライバーが危険な走行状況を危険なこととして認識しなかった場合またはまだ認識していない場合でも、非常ブレーキを適時に導入できることが保証されているので有利である。したがって、本方法は自動ブレーキングの場合でも、すなわちドライバーの介入がなくても実施可能であるので有利である。
【0008】
本発明の有利な更なる構成によれば、車両の実減速度を測定すること、実減速度が予め設定した緊急減速度よりも小さければ、そのときにはじめて第2のアクチュエータを起動させることが企図されている。測定した実減速度が不十分であれば、そのときにはじめて第2のアクチュエータをこのように起動することにより、第2のアクチュエータが不必要に起動されないこと、或いは、液圧が不必要に上昇しないことが保証されているので有利である。その際、好ましくは、フル減速という目標がすでに達成されたかどうかが監視され、この場合同様に第2の制御器による第2のアクチュエータの起動が省略される。また、車両の実減速度の測定により、特にブレーキフェードによって発生する故障状態であって、第1の制御器によって第1のアクチュエータを起動させた場合に期待される車両の減速が達成できないような前記故障状態にブレーキシステムがあるかどうかが確実に認知されるので有利である。
【0009】
本発明の有利な更なる構成によれば、ブレーキシステム内の実液圧を測定すること、実液圧が予め設定した緊急減速度に依存して予め設定した目標液圧よりも小さければ、そのときにはじめて第2のアクチュエータを起動させることが企図されている。測定した実液圧が不十分であれば、そのときにはじめて第2のアクチュエータをこのように起動することにより、第2のアクチュエータが不必要に起動されないこと、或いは、液圧が不必要に上昇しないことが保証されているので有利である。
【0010】
本発明の有利な更なる構成によれば、実減速度および/または実液圧を測定できなければ、最大可能液圧を発生させるために第2のアクチュエータを起動させることが企図されている。最大可能液圧を発生させるために第2のアクチュエータをこのように起動することにより、実減速度または実液圧に対する測定データがない場合に対して有利なフォールバックレベルが提供されている。これにより、少なくとも、センサ装置が故障した場合に非常ブレーキ時の十分な減速が第2の制御器と第2のアクチュエータとによって引き続き確保されるという限りでは、ブレーキシステムの耐障害性が向上する。
【0011】
本発明による、ブレーキシステムのための第1および第2の制御器は、制御器が特に本発明による方法を実施するために整えられているという請求項8の構成要件を特徴としている。これから、すでに挙げた利点が得られる。
【0012】
請求項9の構成要件を備えた本発明によるブレーキシステムは、ブレーキシステム内に液圧を発生させるための第1および第2のアクチュエータを備え、本発明による制御器が設けられていることを特徴としている。これから、すでに挙げた利点が得られる。
【0013】
更なる有利な構成要件およびこれら構成要件の組み合わせは、前述したことおよび請求の範囲から明らかである。
次に、図面を用いて本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ブレーキシステムの概略図である。
図2】ブレーキシステムを作動させる方法を示す図である。
図3】ブレーキシステム内での圧力経過の特性曲線である。
図4】ブレーキシステム内での圧力経過の他の特性曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、車両2のブレーキシステム1の構成要素を概略図で示している。ブレーキシステム1は、第1のアクチュエータ3と第2のアクチュエータ4とを有している。第1のアクチュエータ3と第2のアクチュエータ4とは、それぞれブレーキシステム1内に液圧を発生させるために形成され、その結果詳細に図示していない車両2の車輪ブレーキ機構をブレーキ圧で付勢可能である。さらに、ブレーキシステム1は第1の制御器5と第2の制御器6とを有している。第1の制御器5は、通信技術的に第1のアクチュエータ3と結合され、第1のアクチュエータ3を起動させるために形成されている。さらに、第1の制御器5は第2の制御器6と通信技術的に結合され、第2の制御器6を起動させるために形成されている。また、第1の制御器5は、特に車両2の車両データに基づいてブレーキシステム1を第1の制御器5により非常ブレーキに関して監視可能であるように、通信技術的に車両2と結合されている。
【0016】
以下では、図2に関して、車両2のブレーキシステム1を作動させる有利な方法を説明する。このため、図2はフローチャートに基づいて本方法を示している。特に、本方法により、車両2が非常ブレーキを認知したときに予め設定した緊急減速度で安全且つ迅速に停止まで制動されること、或いは、フル減速を蒙ることが保証される。
【0017】
ステップS1で、ブレーキシステムを非常ブレーキに関して監視することで本方法を開始する。非常ブレーキを検知するため、好ましくは車両2の車両データを監視する。車両データは、好ましくは、ドライバーによるブレーキペダルの操作距離と操作の速度、および/または、車両2の周囲を検知する車両2の複数のセンサのセンサデータを含んでいる。
【0018】
ステップS2で、車両データを評価して、非常ブレーキを導入しなければならないかどうかを調べる。ドライバーによるブレーキペダルの操作距離と操作の速度がそれぞれ予め設定した限界値を越えていれば、非常ブレーキを導入するのが好ましい。さらに、車両2の周囲を検知する車両2の複数のセンサのセンサデータを評価する際に危険な走行状況が認知されれば、非常ブレーキを導入するのが有利である。いま、特にブレーキペダルの操作の際に予め設定した限界値を越えることもなければ、危険な走行状況もないがために、非常ブレーキを導入する必要がないと認知されれば、ステップS6で本方法が終了する。
【0019】
しかしながら、非常ブレーキを導入しなければならないことが認知されれば、本方法をステップS3でもって継続させる。ステップS3では、第1の液圧pを発生させて、車両2の予め設定した緊急減速度に到達するために、第1の制御器5によって第1のアクチュエータ3を起動させる。予め設定した緊急減速度とは、特に法的に予め設定される最小減速度である。
【0020】
いま、ステップS4で、好ましくは第1の制御器5によるアクチュエータ3の起動後の予め設定した時点で、第1のアクチュエータ3によって到達した減速度が予め設定した緊急減速度よりも小さいかどうかを調べる。このため、好ましくは、車両の実減速度を測定し、予め設定した緊急減速度と比較する。到達した減速度または実減速度が予め設定した緊急減速度と少なくとも同じ大きさであれば、同様に本方法がステップS6で終了する。この事例は、図3に示した圧力経過に基づいて後述する。
【0021】
しかしながら、第1のアクチュエータ3によって到達した減速度が予め設定した緊急減速度よりも実際に小さければ、或いは、到達した減速度または実減速度を測定できなければ、或いは、すでに到達可能な減速度が予め設定した緊急減速度よりも小さければ、本方法をステップS5でもって継続させる。ステップS5では、第2のアクチュエータ4を起動させて第2の液圧pを発生させるために、第1の制御器5によって第2の制御器6を起動させることで、予め設定した緊急減速度に到達させる。この事例は、図4に示した圧力経過に基づいて後述する。その後、好ましくは車両2のフル減速の達成をもって、本方法がステップS6で終了する。
【0022】
図3は、非常ブレーキを認知したときのブレーキシステム1内での複数の圧力経過の複数の特性曲線を示している。これらの特性曲線は1つのグラフに図示されており、x軸は時間tを表し、y軸は圧力pを表している。図3に図示した複数の圧力経過を用いると、到達した減速度が十分であり、第2のアクチュエータ4によって液圧を上昇させる必要なしに本方法が終了することがステップS4で認知された場合に本発明に従って実施される方法が図2に対する説明どおりのものであることを理解することができる。
【0023】
まず、時点tでドライバーが制動過程を導入し、制動過程で車輪ブレーキ機構でのブレーキ圧pとブレーキシステム内の第1の液圧pとが直線的に上昇し、それらの大きさは等しい。時点tで、第1の制御器5によって非常ブレーキを導入し、その結果、予め設定した緊急減速度に到達するためにこのとき液圧pの経過が予め設定される。時点tで、車輪ブレーキ機構において最大ブレーキ圧pBmaxまたはロック圧が達成されている。
【0024】
このとき、アンチロックブレーキシステムが制動過程に介入して制御する。車輪がロックしそうになると、アンチロックブレーキシステムはまず、ロック傾向が制止されるまでの間ブレーキ圧pを減少させ、次にこれを再び増大させる。すなわち、車輪ブレーキ機構におけるブレーキ圧pは時点t以降最大ブレーキ圧pBmaxのまわりで振動する。
【0025】
時点t後、第1の液圧pは、本事例では予め設定した液圧pと同じ大きさであり且つ最大ブレーキ圧pBmaxよりも大きな最大の第1の液圧p1maxに到達するまでさらに上昇し、その結果予め設定した緊急減速度に到達する。それ故、第2のアクチュエータ4による第2のより高い液圧pの発生は必要ない。
【0026】
図4は、非常ブレーキを認知したときのブレーキシステム1内での複数の圧力経過の他の複数の特性曲線を示している。これらの特性曲線は同様に1つのグラフに図示されており、x軸は時間tを表し、y軸は圧力pを表している。図4に図示した複数の圧力経過を用いると、到達した減速度が不十分であり、第2のアクチュエータ4によって液圧を上昇させねばならないことがステップS4で認知された場合に本発明に従って実施される方法が図2に対する説明どおりのものであることを理解することができる。
【0027】
すでに図3で述べたように、ドライバーが時点tで制動過程を導入し、制動過程で車輪ブレーキ機構でのブレーキ圧pとブレーキシステム内の第1の液圧pとが直線的に上昇し、それらの大きさは等しい。時点tで、第1の制御器5によって再び非常ブレーキを導入し、その結果、予め設定した緊急減速度に到達するためにこのとき液圧pの経過が予め設定される。第1の液圧pは、時点t後にさらに最大の第1の液圧p1maxまで上昇する。時点tで、第1の液圧pが車輪ブレーキ機構での最大ブレーキ圧pBmaxよりも小さいことが認知される。このため、液圧pを、最大ブレーキ圧pBmaxよりも大きな最大の第2の液圧p2maxへ上昇させるために、第2のアクチュエータ4を起動させ、その結果予め設定した緊急減速度に到達することができる。
【0028】
いま、ブレーキ圧pは車輪ブレーキ機構において最大ブレーキ圧pBmaxが達成されるまでさらに上昇する。このとき、前述したようにアンチロックブレーキシステムが再び制動過程に介入して制御し、その結果ブレーキ圧pは、予め設定した緊急減速度へ到達するために最大ブレーキ圧pBmaxのまわりを振動する。
【符号の説明】
【0029】
1 ブレーキシステム
2 車両
3 第1のアクチュエータ
4 第2のアクチュエータ
5 第1の制御器
6 第2の制御器
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】