(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-27
(54)【発明の名称】炭化ケイ素被覆及びそのろう接接合方法、燃料棒及び燃料集合体
(51)【国際特許分類】
G21C 21/02 20060101AFI20231117BHJP
G21C 3/07 20060101ALI20231117BHJP
G21C 3/30 20060101ALI20231117BHJP
B23K 1/008 20060101ALI20231117BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20231117BHJP
B23K 1/19 20060101ALI20231117BHJP
C04B 37/00 20060101ALI20231117BHJP
B23K 101/34 20060101ALN20231117BHJP
【FI】
G21C21/02 110
G21C3/07
G21C3/30 100
B23K1/008 B
B23K1/00 330G
B23K1/19 B
B23K1/00 330Z
C04B37/00 B
B23K101:34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528566
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(85)【翻訳文提出日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 CN2021119167
(87)【国際公開番号】W WO2022100281
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】202011262850.0
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523174321
【氏名又は名称】嶺東核電有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】516267290
【氏名又は名称】中広核研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHINA NUCLEAR POWER TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE CO., LTD
(71)【出願人】
【識別番号】513047316
【氏名又は名称】中国広核集団有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】519063462
【氏名又は名称】中国広核電力股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】薛佳祥
(72)【発明者】
【氏名】廖業宏
(72)【発明者】
【氏名】任啓森
(72)【発明者】
【氏名】劉▲トン▼
(72)【発明者】
【氏名】▲ヅァイ▼剣▲ハン▼
(72)【発明者】
【氏名】馬海濱
(72)【発明者】
【氏名】張顕生
(72)【発明者】
【氏名】張永棟
(72)【発明者】
【氏名】李鋭
(72)【発明者】
【氏名】劉洋
【テーマコード(参考)】
4G026
【Fターム(参考)】
4G026BA14
4G026BB14
4G026BE02
4G026BF33
4G026BF38
4G026BF42
4G026BF43
4G026BG02
4G026BG23
4G026BH13
(57)【要約】
炭化ケイ素被覆のろう接接合方法は、以下のステップを含む。S1:Al及びSiを接合材料として用い、互いに適合する被覆管と端栓との間に接合材料を設置することで、Al/Si/Alの3層構造を有する中間接合材料を形成して、被覆管及び端栓とともに接合待機組立体を形成する。S2:接合待機組立体を真空又は不活性雰囲気に置いてろう接接合を行うことで、中間接合材料が接合層を形成し、被覆管と端栓を一体的に接合する。また、更に、上記の方法で形成される炭化ケイ素被覆、当該炭化ケイ素被覆を含む燃料棒及び燃料集合体に関する。当該ろう接接合方法は、Al及びSiを接合材料として用い、被覆管と端栓との間にAl/Si/Alの3層構造を有する接合層を形成する。これにより、SiC被覆の高強度で確実な接合を実現し、良好な耐高温性能及び耐熱水腐食性能を持たせることで、原子核応用における要求を満たす。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
S1:Al及びSiを接合材料として用い、互いに適合する被覆管と端栓との間に接合材料を設置することで、Al/Si/Alの3層構造を有する中間接合材料を形成して、前記被覆管及び端栓とともに接合待機組立体を形成し、
S2:接合待機組立体を真空又は不活性雰囲気に置いてろう接接合を行うことで、前記中間接合材料が接合層を形成し、前記被覆管と端栓を一体的に接合する、
とのステップを含むことを特徴とする炭化ケイ素被覆のろう接接合方法。
【請求項2】
ステップS1において、前記中間接合材料内のSiの質量パーセントは20~30%であることを特徴とする請求項1に記載の炭化ケイ素被覆のろう接接合方法。
【請求項3】
ステップS1において、前記Alはアルミニウム粉末又はアルミ箔であり、前記Siはシリコン粉末又はシリコンシートであることを特徴とする請求項1に記載の炭化ケイ素被覆のろう接接合方法。
【請求項4】
ステップS1において、前記Al及びSiの純度はいずれも95~99%であることを特徴とする請求項1に記載の炭化ケイ素被覆のろう接接合方法。
【請求項5】
ステップS2において、ろう接接合では、5~20℃/minの昇温速度で温度を1000~1400℃まで上昇させて0.5~2h保温し、接合圧力は0.01~0.1MPaであることを特徴とする請求項1に記載の炭化ケイ素被覆のろう接接合方法。
【請求項6】
ステップS2において、前記接合層の気密性は10
-13~10
-9Pa・m3/sであることを特徴とする請求項1に記載の炭化ケイ素被覆のろう接接合方法。
【請求項7】
ステップS1において、まず、AlとSiを積層し、Al/Si/Alの3層構造を有する中間接合材料を形成したあと、前記中間接合材料を被覆管と端栓との間に配置することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の炭化ケイ素被覆のろう接接合方法。
【請求項8】
ステップS1において、Alを被覆管上と端栓上に置き、被覆管上と端栓上にそれぞれAl層を形成したあと、いずれか一方のAl層上にSiを置いてSi層を形成してから、前記被覆管と端栓を組み合わせることで、前記Al層とSi層を重ねて、Al/Si/Alの3層構造を有する中間接合材料を形成することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の炭化ケイ素被覆のろう接接合方法。
【請求項9】
ステップS1において、まず、被覆管上又は端栓上にAlとSiを積層し、前記被覆管上又は端栓上にAl/Si/Alの3層構造を有する中間接合材料を形成したあと、前記被覆管と端栓を組み合わせることで、前記中間接合材料を前記被覆管と端栓との間に配置することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の炭化ケイ素被覆のろう接接合方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の炭化ケイ素被覆のろう接接合方法により接合して形成されることを特徴とする炭化ケイ素被覆。
【請求項11】
請求項10に記載の炭化ケイ素被覆を含むことを特徴とする燃料棒。
【請求項12】
請求項11に記載の燃料棒を含むことを特徴とする燃料集合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核燃料の技術分野に関し、特に、炭化ケイ素被覆及びそのろう接接合方法、燃料棒及び燃料集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素(SiC)は、構造用セラミックス材料として、優良な力学性能、高温性能、耐摩耗性等の優れた性能を有するだけでなく、原子核応用の分野では、良好な耐放射線性能、耐熱水腐食性及び小さな中性子吸収断面積を有することから、原子炉内の被覆材への応用が特に目立っている。しかし、原子力産業へのSiC被覆材の応用を実現するには、SiC被覆と端栓との接合の課題を解決せねばならない。
【0003】
SiCセラミックスは融点が極めて高く(~2700℃)、金属のような直接的な融接による接合は実現しにくいため、通常は、中間接合材料を加えて接合する必要がある。比較的よく見られる接合方法には、ろう接接合、ナノ浸透過渡共析相(NITE相)接合、固相拡散接合、MAX相接合、ガラスセラミックス接合、前駆体接合等がある。しかし、被覆管自体が薄壁、長尺管であるとの特性や、SiC被覆の接合前に管内に核燃料を装荷するとの前提条件から、SiC被覆管と端栓との接合時には、大きな接合圧力や接合温度を付与できないことが決まっている。上述した接合方法のうち、NITE相接合、固相拡散接合及びMAX相接合という3種類の方法については、通常、大きな接合圧力が必要となり、特に、NITE相接合は、高温(>1800℃)、高圧(>10MPa)下で行う必要がある。よって、これらの方法は、SiC被覆管と端栓との接合には不向きである。一方、前駆体接合は、低温(<1500℃)、低圧(<1MPa)下で接合可能であるが、接合過程で大きな体積の収縮が存在する。これにより、接合層に多くの気孔が存在してしまうため、SiC被覆の気密性にとって不都合であり、接合強度も低くなる。また、ガラスセラミックス接合については、低温、低圧下で接合可能であり、接合強度も高い。しかし、継手の耐熱水腐食性及び耐放射線性能に劣るため、原子炉内におけるSiC被覆の接合には適さない。これに対し、金属ろう接接合は、低温(~1200℃)、低圧(~0.1MPa)下での接合を実現可能なだけでなく、ろう接過程に液相が関与するため、接合後の継目の密封性が良好となり、接合強度も高くなる。しかし、ろう接過程で発生する副生成物が、特に、ろう接接合継手の耐高温性、耐放射線性及び耐熱水腐食性といった継手の総合性能に影響を及ぼしやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、上記の従来技術に存在する欠点に対し、炭化ケイ素被覆のろう接接合方法と、当該方法により接合して形成される炭化ケイ素被覆、当該炭化ケイ素被覆を有する燃料棒及び燃料集合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が技術的課題を解決するために採用する技術方案は、以下の通りである。
【0006】
炭化ケイ素被覆のろう接接合方法を提供する。当該方法は、以下のステップを含む。
【0007】
S1:Al及びSiを接合材料として用い、互いに適合する被覆管と端栓との間に接合材料を設置することで、Al/Si/Alの3層構造を有する中間接合材料を形成して、前記被覆管及び端栓とともに接合待機組立体を形成する。
【0008】
S2:接合待機組立体を真空又は不活性雰囲気に置いてろう接接合を行うことで、前記中間接合材料が接合層を形成し、前記被覆管と端栓を一体的に接合する。
【0009】
好ましくは、ステップS1において、前記中間接合材料内のSiの質量パーセントは20~30%である。
【0010】
好ましくは、ステップS1において、前記Alはアルミニウム粉末又はアルミ箔であり、前記Siはシリコン粉末又はシリコンシートである。
【0011】
好ましくは、ステップS1において、前記Al及びSiの純度はいずれも95~99%である。
【0012】
好ましくは、ステップS2において、ろう接接合では、5~20℃/minの昇温速度で温度を1000~1400℃まで上昇させて、0.5~2h保温する。また、接合圧力は0.01~0.1MPaである。
【0013】
好ましくは、ステップS2において、前記接合層の気密性は10-13~10-9Pa・m3/sである。
【0014】
好ましくは、ステップS1において、まず、AlとSiを積層し、Al/Si/Alの3層構造を有する中間接合材料を形成したあと、前記中間接合材料を被覆管と端栓との間に配置する。
【0015】
好ましくは、ステップS1において、Alを被覆管上と端栓上に置き、被覆管上と端栓上にそれぞれAl層を形成したあと、いずれか一方のAl層上にSiを置いてSi層を形成してから、前記被覆管と端栓を組み合わせることで、前記Al層とSi層を重ねて、Al/Si/Alの3層構造を有する中間接合材料を形成する。
【0016】
好ましくは、ステップS1において、まず、被覆管上又は端栓上にAlとSiを積層し、前記被覆管上又は端栓上にAl/Si/Alの3層構造を有する中間接合材料を形成したあと、前記被覆管と端栓を組み合わせることで、前記中間接合材料を前記被覆管と端栓との間に配置する。
【0017】
本発明は、更に、上記いずれかで述べた炭化ケイ素被覆のろう接接合方法により接合して形成される炭化ケイ素被覆を提供する。
【0018】
本発明は、更に、上記炭化ケイ素被覆を含む燃料棒を提供する。
【0019】
本発明は、更に、上記燃料棒を含む燃料集合体を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明における炭化ケイ素被覆のろう接接合方法では、ろう接接合方法に基づき、Al及びSiを接合材料として用い、被覆管と端栓との間にAl/Si/Alの3層構造を有する接合層を形成する。これにより、SiC被覆の高強度で確実な接合を実現し、良好な耐高温性能及び耐熱水腐食性能を持たせることで、原子核応用における要求を満たす。
【0021】
本発明における炭化ケイ素被覆のろう接接合方法は、低温(<1500℃)、低圧(<0.1MPa)下で高強度の接合を実現する。また、接合技術が簡単であり、機器に対する接合技術要求が低く、コストダウンになる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明における炭化ケイ素被覆のろう接接合方法は、炭化ケイ素被覆管と、当該炭化ケイ素被覆管に適合するエンドキャップとを一体的に接合することで、一体的な炭化ケイ素被覆を形成するために用いられる。当該ろう接接合方法は、以下のステップを含み得る。
【0023】
S1:Al及びSiを接合材料として用い、互いに適合する被覆管と端栓との間に接合材料を設置することで、Al/Si/Alの3層構造を有する中間接合材料を形成して、被覆管及び端栓とともに接合待機組立体を形成する。
【0024】
被覆管は炭化ケイ素被覆管であり、端栓は炭化ケイ素端栓である。
【0025】
金属Al(アルミニウム)及びSi(シリコン)を接合材料とする際に、それらの応用形式は、それぞれ粉末又はシートとしてもよい。即ち、Alはアルミニウム粉末又はアルミ箔(ホイル)であり、Siはシリコン粉末又はシリコンシートである。例えば、Si粉末、Al粉末といった粉末の原料を使用する場合には、設置時に、まず、有機溶媒中に混合してスラリーを形成してから、コーティング方式で対応層を形成するか、プレスして粉体シートを形成する。
【0026】
そのほか、Al及びSiの純度がいずれも95~99%の場合、接合効果が確実に保証される。
【0027】
中間接合材料が有するAl/Si/Alの3層構造(サンドイッチ様構造)については、積層構造がそれぞれAl層、Si層及びAl層となっている。即ち、Si層が2つのAl層の間に積層されている。
【0028】
中間接合材料において、Siの質量パーセントは20~30%であり(中間接合材料全体に占める質量パーセント)、好ましくは27%である。
【0029】
中間接合材料を被覆管と端栓との間に設置する際には、次の複数の実施形態が存在する。
【0030】
第1の実施形態では、まず、被覆管及び端栓の外部でAlとSiを積層し、Al/Si/Alの3層構造を有する中間接合材料を形成したあと、中間接合材料を被覆管と端栓との間に配置する。
【0031】
第2の実施形態では、Alを被覆管上と端栓上に置き、被覆管上と端栓上にそれぞれAl層を形成したあと、いずれか一方のAl層上にSiを置いてSi層を形成してから、被覆管と端栓を組み合わせる。これにより、Al層とSi層を重ねて、Al/Si/Alの3層構造を有する中間接合材料を形成する。
【0032】
第3の実施形態では、まず、被覆管上又は端栓上にAlとSiを積層し、被覆管上又は端栓上にAl/Si/Alの3層構造を有する中間接合材料を形成したあと、被覆管と端栓を組み合わせることで、中間接合材料を被覆管と端栓との間に配置する。
【0033】
S2:ステップS1で形成した接合待機組立体を真空又は不活性雰囲気に置いてろう接接合を行うことで、中間接合材料が接合層を形成し、被覆管と端栓を一体的に接合する。
【0034】
中間接合材料におけるAl層又はSi層は、粉末と有機溶媒を混合してスラリーを形成したあと、コーティングすることで形成される。よって、ろう接接合を行う前に、まず、接合待機組立体を乾燥処理することで、スラリー中の有機溶媒を除去する。
【0035】
具体的には、接合待機組立体を管状炉内に置き、真空又は不活性雰囲気(窒素ガス又はアルゴンガス等)下でろう接接合を行う。
【0036】
ろう接接合では、5~20℃/minの昇温速度で温度を1000~1400℃まで上昇させ、0.5~2h保温する。また、ろう接接合の接合圧力は0.01~0.1MPaとする。
【0037】
ろう接接合後、中間接合材料は被覆管と端栓との間にしっかりと接合される緻密な接合層を形成する。接合層において、Al及びSiは、ろう接過程で高温溶融後に一体的に混合される。よって、接合層は、厚さ方向の断面上にAlとSiの分離層構造を呈することがない。
【0038】
上述した炭化ケイ素被覆のろう接接合方法により接合して形成される炭化ケイ素被覆は、端栓が接合層を介して被覆管にしっかりと接合され、被覆管の端部開口を封止する。
【0039】
接合層の気密性は10-13~10-9Pa・m3/sである。剪断強度は40~100MPaであり、1200℃での高温剪断強度は40~80MPaである。また、熱水腐食後の接合層の腐食速度は被覆管及び端栓の10%以下である。
【0040】
本発明における炭化ケイ素被覆は、燃料棒の構造構成要素として燃料集合体に用いられる。具体的に、燃料棒は、上記の炭化ケイ素被覆を含むとともに、更に、炭化ケイ素被覆内に設置される燃料ペレットを含む。
【0041】
燃料集合体については、平行に間隔を置いて並ぶいくつかの上記燃料棒を含むとともに、更に、燃料棒の軸方向に沿って間隔を置いて分布するいくつかの位置決めグリッド等を含むが、具体的な構造の構成及び組み合わせ方式については従来技術の燃料集合体を参照する。
【0042】
次に、具体的実施例によって、本発明につき更に説明する。
【実施例1】
【0043】
厚さ15μmの金属Al箔と、1μm(粒度)のSi粉末を接合材料とした。Al箔とSi粉末の純度はいずれも99%であった。予めSi粉末を無水エタノール中に分散させ、超音波分散を5min行ったあと、Al箔上に均一に塗布することで、層分布がAl/Si/Alの中間接合材料を形成した。なお、中間接合材料中のSiの比率は27wt%となるよう制御した。
【0044】
中間接合材料をSiC被覆管と端栓との間に配置して接合待機組立体を形成した。そして、まず、60℃の真空オーブン内で乾燥処理を行うことで無水エタノールを除去した。乾燥後、接合待機組立体を管状炉内に置き、真空環境下で接合した。10℃/minで1200℃まで昇温して1h保温し、0.01MPaで加圧することで、完了後にSiC被覆が作製された。
【0045】
測定したところ、作製されたSiC被覆の室温剪断強度は100MPaであり、1200℃での高温剪断強度は80MPaであった。また、気密性は10-13Pa・m3/sであった。且つ、(400℃)熱水腐食後の接合層の腐食速度は被覆管及び端栓よりも5%高かった。
【実施例2】
【0046】
厚さ15μmの金属Al箔と、1μmのSi粉末を接合材料とした。Al箔とSi粉末の純度はいずれも99%であった。予めSi粉末を無水エタノール中に分散させ、超音波分散を5min行ったあと、Al箔上に均一に塗布することで、層分布がAl/Si/Alの中間接合材料を形成した。なお、中間接合材料中のSiの比率は30wt%となるよう制御した。
【0047】
中間接合材料をSiC被覆管と端栓との間に配置して接合待機組立体を形成した。そして、まず、60℃の真空オーブン内で乾燥処理を行うことで無水エタノールを除去した。乾燥後、接合待機組立体を管状炉内に置き、真空環境下で接合した。10℃/minで1200℃まで昇温して1h保温し、0.01MPaで加圧することで、完了後にSiC被覆が作製された。
【0048】
測定したところ、作製されたSiC被覆の室温剪断強度は60MPaであり、1200℃での高温剪断強度は40MPaであった。また、気密性は10-10Pa・m3/sであった。且つ、(400℃)熱水腐食後の接合層の腐食速度は被覆管及び端栓よりも8%高かった。
【実施例3】
【0049】
厚さ15μmの金属Al箔と、1μmのSi粉末を接合材料とした。Al箔とSi粉末の純度はいずれも99%であった。予めSi粉末を無水エタノール中に分散させ、超音波分散を5min行ったあと、Al箔上に均一に塗布することで、層分布がAl/Si/Alの中間接合材料を形成した。なお、中間接合材料中のSiの比率は25wt%となるよう制御した。
【0050】
中間接合材料をSiC被覆管と端栓との間に配置して接合待機組立体を形成した。そして、まず、60℃の真空オーブン内で乾燥処理を行うことで無水エタノールを除去した。乾燥後、接合待機組立体を管状炉内に置き、真空環境下で接合した。10℃/minで1200℃まで昇温して1h保温し、0.01MPaで加圧することで、完了後にSiC被覆が作製された。
【0051】
測定したところ、作製されたSiC被覆の室温剪断強度は80MPaであり、1200℃での高温剪断強度は60MPaであった。また、気密性は10-10Pa・m3/sであった。且つ、(400℃)熱水腐食後の接合層の腐食速度は被覆管及び端栓よりも6%高かった。
【実施例4】
【0052】
厚さ10μmの金属Al箔と、5μmのSiシートを接合材料とした。Al箔とSiシートの純度はいずれも99%であった。Al箔及びSiシートをAl/Si/Alの中間接合材料となるよう積層した。なお、中間接合材料中のSiの比率は20wt%となるよう制御した。
【0053】
中間接合材料をSiC被覆管と端栓との間に配置して接合待機組立体を形成した。そして、まず、60℃の真空オーブン内で乾燥処理を行うことで無水エタノールを除去した。乾燥後、接合待機組立体を管状炉内に置き、真空環境下で接合した。10℃/minで1400℃まで昇温して2h保温し、0.1MPaで加圧することで、完了後にSiC被覆が作製された。
【0054】
測定したところ、作製されたSiC被覆の室温剪断強度は40MPaであり、1200℃での高温剪断強度は40MPaであった。また、気密性は10-9Pa・m3/sであった。且つ、熱水腐食後の接合層の腐食速度は被覆管及び端栓よりも10%高かった。
【実施例5】
【0055】
5μmの金属Al粉末と、1μmのSi粉末を接合材料とした。Al粉末とSi粉末の純度はいずれも99%であった。まず、Al粉末とSi粉末をそれぞれ無水エタノール中に均一に分散させてからコーティングすることで、SiC被覆管と端栓との間に形成される中間接合材料を積層した。なお、Siの比率は20wt%となるよう制御した。
【0056】
まず、形成された接合待機組立体を60℃の真空オーブン内で乾燥処理し、無水エタノールを除去した。そして、乾燥後に、接合待機組立体を管状炉内に置き、アルゴンガス環境下で接合した。10℃/minで1000℃まで昇温して1h保温し、0.1MPaで加圧することで、完了後にSiC被覆が作製された。
【0057】
測定したところ、作製されたSiC被覆の室温剪断強度は70MPaであり、1200℃での高温剪断強度は50MPaであった。また、気密性は10-9Pa・m3/sであった。且つ、熱水腐食後の接合層の腐食速度は被覆管及び端栓よりも10%高かった。
【実施例6】
【0058】
厚さ10μmの金属Al粉末と、5μmのSiシートを接合材料とした。Al粉末とSiシートの純度はいずれも99%であった。実施例5の方法を参照して、Al粉末を無水エタノールと均一に混合してからコーティングし、Siシートと積層することで、SiC被覆管と端栓との間に位置する中間接合材料を形成した。なお、Siの比率は30wt%となるよう制御した。
【0059】
まず、形成された接合待機組立体を60℃の真空オーブン内で乾燥処理し、無水エタノールを除去した。そして、乾燥後に、接合待機組立体を管状炉内に置き、アルゴンガス環境下で接合した。10℃/minで1200℃まで昇温して2h保温し、0.1MPaで加圧することで、完了後にSiC被覆が作製された。
【0060】
測定したところ、作製されたSiC被覆の室温剪断強度は70MPaであり、1200℃での高温剪断強度は60MPaであった。また、気密性は10-9Pa・m3/sであった。且つ、熱水腐食後の中間層の腐食速度は被覆管及び端栓よりも9%高かった。
【0061】
[比較例1]
厚さ15μmの金属Al箔と、1μmのSi粉末を接合材料とした。Al箔とSi粉末の純度はいずれも99%であった。予めSi粉末を無水エタノール中に分散させ、超音波分散を5min行ったあと、Al箔上に均一に塗布することで、層分布がAl/Si/Alの中間接合材料を形成した。なお、中間接合材料中のSiの比率は10wt%となるよう制御した。
中間接合材料をSiC被覆管と端栓との間に配置して接合待機組立体を形成した。そして、まず、60℃の真空オーブン内で乾燥処理を行うことで無水エタノールを除去した。乾燥後、接合待機組立体を管状炉内に置き、真空環境下で接合した。10℃/minで1200℃まで昇温して1h保温し、0.01MPaで加圧することで、完了後にSiC被覆が作製された。
作製されたSiC被覆の室温剪断強度は30MPaであり、1200℃での高温剪断強度は10MPaであった。また、気密性は10-5Pa・m3/sであった。且つ、熱水腐食後に被覆管と端栓との接合箇所は裂開し、熱水腐食後に接合層に気孔が発生したことが示された。
【0062】
[比較例2]
厚さ15μmの金属Al箔と、1μmのSi粉末を接合材料とした。Al箔とSi粉末の純度はいずれも99%であった。且つ、形成される中間接合材料中のSiの比率は40wt%となるよう制御した。そして、上記比較例1に従ってSiC被覆を作製した。
作製されたSiC被覆の室温剪断強度は20MPaであり、1200℃での高温剪断強度は20MPaであった。また、気密性は10-6Pa・m3/sであった。且つ、熱水腐食後に被覆管と端栓との接合箇所は裂開し、熱水腐食後に接合層に気孔が発生したことが示された。
【0063】
以上の記載は本発明の実施例にすぎず、これにより本発明の特許範囲を制限するものではない。本発明の明細書の内容を利用してなされる等価の構造又は等価のフローの変更、或いは、その他関連の技術分野への直接的又は間接的な応用は、いずれも同様の理由で本発明の特許保護の範囲に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核燃料の技術分野に関し、特に、炭化ケイ素被覆及びそのろう接接合方法、燃料棒及び燃料集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素(SiC)は、構造用セラミックス材料として、優良な力学性能、高温性能、耐摩耗性等の優れた性能を有するだけでなく、原子核応用の分野では、良好な耐放射線性能、耐熱水腐食性及び小さな中性子吸収断面積を有することから、原子炉内の被覆材への応用が特に目立っている。しかし、原子力産業へのSiC被覆材の応用を実現するには、SiC被覆と端栓との接合の課題を解決せねばならない。
【0003】
SiCセラミックスは融点が極めて高く(~2700℃)、金属のような直接的な融接による接合は実現しにくいため、通常は、中間接合材料を加えて接合する必要がある。比較的よく見られる接合方法には、ろう接接合、ナノ浸透過渡共析相(NITE相)接合、固相拡散接合、MAX相接合、ガラスセラミックス接合、前駆体接合等がある。しかし、被覆管自体が薄壁、長尺管であるとの特性や、SiC被覆の接合前に管内に核燃料を装荷するとの前提条件から、SiC被覆管と端栓との接合時には、大きな接合圧力や接合温度を付与できないことが決まっている。上述した接合方法のうち、NITE相接合、固相拡散接合及びMAX相接合という3種類の方法については、通常、大きな接合圧力が必要となり、特に、NITE相接合は、高温(>1800℃)、高圧(>10MPa)下で行う必要がある。よって、これらの方法は、SiC被覆管と端栓との接合には不向きである。一方、前駆体接合は、低温(<1500℃)、低圧(<1MPa)下で接合可能であるが、接合過程で大きな体積の収縮が存在する。これにより、接合層に多くの気孔が存在してしまうため、SiC被覆の気密性にとって不都合であり、接合強度も低くなる。また、ガラスセラミックス接合については、低温、低圧下で接合可能であり、接合強度も高い。しかし、SiC被覆の耐熱水腐食性及び耐放射線性能に劣るため、原子炉内におけるSiC被覆の接合には適さない。これに対し、金属ろう接接合は、低温(~1200℃)、低圧(~0.1MPa)下での接合を実現可能なだけでなく、ろう接過程に液相が関与するため、接合層の密封性が良好となり、接合強度も高くなる。しかし、ろう接過程で発生する副生成物が、特に、ろう接接合被覆の耐高温性、耐放射線性及び耐熱水腐食性といったSiC被覆の総合性能に影響を及ぼしやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、上記の従来技術に存在する欠点に対し、炭化ケイ素被覆のろう接接合方法と、当該方法により接合して形成される炭化ケイ素被覆、当該炭化ケイ素被覆を有する燃料棒及び燃料集合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が技術的課題を解決するために採用する技術方案は、以下の通りである。
【0006】
炭化ケイ素被覆のろう接接合方法を提供する。当該方法は、以下のステップを含む。
【0007】
S1:Al及びSiを接合材料として用い、互いに適合する被覆管と端栓との間に接合材料を設置することで、Al/Si/Alの3層構造を有する中間接合材料を形成して、前記被覆管及び端栓とともに接合待機組立体を形成する。
【0008】
S2:接合待機組立体を真空又は不活性雰囲気に置いてろう接接合を行うことで、前記中間接合材料が接合層を形成し、前記被覆管と端栓を一体的に接合する。
【0009】
好ましくは、ステップS1において、前記中間接合材料内のSiの質量パーセントは20~30%である。
【0010】
好ましくは、ステップS1において、前記Alはアルミニウム粉末又はアルミ箔であり、前記Siはシリコン粉末又はシリコンシートである。
【0011】
好ましくは、ステップS1において、前記Al及びSiの純度はいずれも95~99%である。
【0012】
好ましくは、ステップS2において、ろう接接合では、5~20℃/minの昇温速度で温度を1000~1400℃まで上昇させて、0.5~2h保温する。また、接合圧力は0.01~0.1MPaである。
【0013】
好ましくは、ステップS2において、前記封止式SiC被覆の漏洩率は10-13~10-9Pa・m3/sである。
【0014】
好ましくは、ステップS1において、まず、AlとSiを積層し、Al/Si/Alの3層構造を有する中間接合材料を形成したあと、前記中間接合材料を被覆管と端栓との間に配置する。
【0015】
好ましくは、ステップS1において、Alを被覆管上と端栓上に置き、被覆管上と端栓上にそれぞれAl層を形成したあと、いずれか一方のAl層上にSiを置いてSi層を形成してから、前記被覆管と端栓を組み合わせることで、前記Al層とSi層を重ねて、Al/Si/Alの3層構造を有する中間接合材料を形成する。
【0016】
好ましくは、ステップS1において、まず、被覆管上又は端栓上にAlとSiを積層し、前記被覆管上又は端栓上にAl/Si/Alの3層構造を有する中間接合材料を形成したあと、前記被覆管と端栓を組み合わせることで、前記中間接合材料を前記被覆管と端栓との間に配置する。
【0017】
本発明は、更に、上記いずれかで述べた炭化ケイ素被覆のろう接接合方法により接合して形成される炭化ケイ素被覆を提供する。
【0018】
本発明は、更に、上記炭化ケイ素被覆を含む燃料棒を提供する。
【0019】
本発明は、更に、上記燃料棒を含む燃料集合体を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明における炭化ケイ素被覆のろう接接合方法では、ろう接接合方法に基づき、Al及びSiを接合材料として用い、被覆管と端栓との間にAl/Si/Alの3層構造を有する接合層を形成する。これにより、SiC被覆の高強度で確実な接合を実現し、良好な耐高温性能及び耐熱水腐食性能を持たせることで、原子核応用における要求を満たす。
【0021】
本発明における炭化ケイ素被覆のろう接接合方法は、低温(<1500℃)、低圧(<0.1MPa)下で高強度の接合を実現する。また、接合技術が簡単であり、機器に対する接合技術要求が低く、コストダウンになる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明における炭化ケイ素被覆のろう接接合方法は、炭化ケイ素被覆管と、当該炭化ケイ素被覆管に適合する端栓とを一体的に接合することで、一体的な炭化ケイ素被覆を形成するために用いられる。当該ろう接接合方法は、以下のステップを含み得る。
【0023】
S1:Al及びSiを接合材料として用い、互いに適合する被覆管と端栓との間に接合材料を設置することで、Al/Si/Alの3層構造を有する中間接合材料を形成して、被覆管及び端栓とともに接合待機組立体を形成する。
【0024】
被覆管は炭化ケイ素被覆管であり、端栓は炭化ケイ素端栓である。
【0025】
金属Al(アルミニウム)及びSi(シリコン)を接合材料とする際に、それらの応用形式は、それぞれ粉末又はシートとしてもよい。即ち、Alはアルミニウム粉末又はアルミ箔(ホイル)であり、Siはシリコン粉末又はシリコンシートである。例えば、Si粉末、Al粉末といった粉末の原料を使用する場合には、設置時に、まず、有機溶媒中に混合してスラリーを形成してから、コーティング方式で対応層を形成するか、プレスして粉体シートを形成する。
【0026】
そのほか、Al及びSiの純度がいずれも95~99%の場合、接合効果が確実に保証される。
【0027】
中間接合材料が有するAl/Si/Alの3層構造(サンドイッチ様構造)については、積層構造がそれぞれAl層、Si層及びAl層となっている。即ち、Si層が2つのAl層の間に積層されている。
【0028】
中間接合材料において、Siの質量パーセントは20~30%であり(中間接合材料全体に占める質量パーセント)、好ましくは27%である。
【0029】
中間接合材料を被覆管と端栓との間に設置する際には、次の複数の実施形態が存在する。
【0030】
第1の実施形態では、まず、被覆管及び端栓の外部でAlとSiを積層し、Al/Si/Alの3層構造を有する中間接合材料を形成したあと、中間接合材料を被覆管と端栓との間に配置する。
【0031】
第2の実施形態では、Alを被覆管上と端栓上に置き、被覆管上と端栓上にそれぞれAl層を形成したあと、いずれか一方のAl層上にSiを置いてSi層を形成してから、被覆管と端栓を組み合わせる。これにより、Al層とSi層を重ねて、Al/Si/Alの3層構造を有する中間接合材料を形成する。
【0032】
第3の実施形態では、まず、被覆管上又は端栓上にAlとSiを積層し、被覆管上又は端栓上にAl/Si/Alの3層構造を有する中間接合材料を形成したあと、被覆管と端栓を組み合わせることで、中間接合材料を被覆管と端栓との間に配置する。
【0033】
S2:ステップS1で形成した接合待機組立体を真空又は不活性雰囲気に置いてろう接接合を行うことで、中間接合材料が接合層を形成し、被覆管と端栓を一体的に接合する。
【0034】
中間接合材料におけるAl層又はSi層は、粉末と有機溶媒を混合してスラリーを形成したあと、コーティングすることで形成される。よって、ろう接接合を行う前に、まず、接合待機組立体を乾燥処理することで、スラリー中の有機溶媒を除去する。
【0035】
具体的には、接合待機組立体を管状炉内に置き、真空又は不活性雰囲気(窒素ガス又はアルゴンガス等)下でろう接接合を行う。
【0036】
ろう接接合では、5~20℃/minの昇温速度で温度を1000~1400℃まで上昇させ、0.5~2h保温する。また、ろう接接合の接合圧力は0.01~0.1MPaとする。
【0037】
ろう接接合後、中間接合材料は被覆管と端栓との間にしっかりと接合される緻密な接合層を形成する。接合層において、Al及びSiは、ろう接過程で高温溶融後に一体的に混合される。よって、接合層は、厚さ方向の断面上にAlとSiの分離層構造を呈することがない。
【0038】
上述した炭化ケイ素被覆のろう接接合方法により接合して形成される炭化ケイ素被覆は、端栓が接合層を介して被覆管にしっかりと接合され、被覆管の端部開口を封止する。
【0039】
封止式SiC被覆の漏洩率は10-13~10-9Pa・m3/sである。剪断強度は40~100MPaであり、1200℃での高温剪断強度は40~80MPaである。また、熱水腐食後の封止式SiC被覆の腐食速度は被覆管及び端栓の10%以下である。
【0040】
本発明における炭化ケイ素被覆は、燃料棒の構造構成要素として燃料集合体に用いられる。具体的に、燃料棒は、上記の炭化ケイ素被覆を含むとともに、更に、炭化ケイ素被覆内に設置される燃料ペレットを含む。
【0041】
燃料集合体については、平行に間隔を置いて並ぶいくつかの上記燃料棒を含むとともに、更に、燃料棒の軸方向に沿って間隔を置いて分布するいくつかの位置決めグリッド等を含むが、具体的な構造の構成及び組み合わせ方式については従来技術の燃料集合体を参照する。
【0042】
次に、具体的実施例によって、本発明につき更に説明する。
【実施例1】
【0043】
厚さ15μmの金属Al箔と、1μm(粒度)のSi粉末を接合材料とした。Al箔とSi粉末の純度はいずれも99%であった。予めSi粉末を無水エタノール中に分散させ、超音波分散を5min行ったあと、Al箔上に均一に塗布することで、層分布がAl/Si/Alの中間接合材料を形成した。なお、中間接合材料中のSiの比率は27wt%となるよう制御した。
【0044】
中間接合材料をSiC被覆管と端栓との間に配置して接合待機組立体を形成した。そして、まず、60℃の真空オーブン内で乾燥処理を行うことで無水エタノールを除去した。乾燥後、接合待機組立体を管状炉内に置き、真空環境下で接合した。10℃/minで1200℃まで昇温して1h保温し、0.01MPaで加圧することで、完了後にSiC被覆が作製された。
【0045】
測定したところ、作製された封止式SiC被覆の室温剪断強度は100MPaであり、1200℃での高温剪断強度は80MPaであった。また、漏洩率は10-13Pa・m3/sであった。且つ、(400℃)熱水腐食後の封止式SiC被覆の腐食速度は被覆管及び端栓よりも5%高かった。
【実施例2】
【0046】
厚さ15μmの金属Al箔と、1μmのSi粉末を接合材料とした。Al箔とSi粉末の純度はいずれも99%であった。予めSi粉末を無水エタノール中に分散させ、超音波分散を5min行ったあと、Al箔上に均一に塗布することで、層分布がAl/Si/Alの中間接合材料を形成した。なお、中間接合材料中のSiの比率は30wt%となるよう制御した。
【0047】
中間接合材料をSiC被覆管と端栓との間に配置して接合待機組立体を形成した。そして、まず、60℃の真空オーブン内で乾燥処理を行うことで無水エタノールを除去した。乾燥後、接合待機組立体を管状炉内に置き、真空環境下で接合した。10℃/minで1200℃まで昇温して1h保温し、0.01MPaで加圧することで、完了後にSiC被覆が作製された。
【0048】
測定したところ、作製された封止式SiC被覆の室温剪断強度は60MPaであり、1200℃での高温剪断強度は40MPaであった。また、漏洩率は10-10Pa・m3/sであった。且つ、(400℃)熱水腐食後の封止式SiC被覆の腐食速度は被覆管及び端栓よりも8%高かった。
【実施例3】
【0049】
厚さ15μmの金属Al箔と、1μmのSi粉末を接合材料とした。Al箔とSi粉末の純度はいずれも99%であった。予めSi粉末を無水エタノール中に分散させ、超音波分散を5min行ったあと、Al箔上に均一に塗布することで、層分布がAl/Si/Alの中間接合材料を形成した。なお、中間接合材料中のSiの比率は25wt%となるよう制御した。
【0050】
中間接合材料をSiC被覆管と端栓との間に配置して接合待機組立体を形成した。そして、まず、60℃の真空オーブン内で乾燥処理を行うことで無水エタノールを除去した。乾燥後、接合待機組立体を管状炉内に置き、真空環境下で接合した。10℃/minで1200℃まで昇温して1h保温し、0.01MPaで加圧することで、完了後にSiC被覆が作製された。
【0051】
測定したところ、作製された封止式SiC被覆の室温剪断強度は80MPaであり、1200℃での高温剪断強度は60MPaであった。また、漏洩率は10-10Pa・m3/sであった。且つ、(400℃)熱水腐食後の封止式SiC被覆の腐食速度は被覆管及び端栓よりも6%高かった。
【実施例4】
【0052】
厚さ10μmの金属Al箔と、5μmのSiシートを接合材料とした。Al箔とSiシートの純度はいずれも99%であった。Al箔及びSiシートをAl/Si/Alの中間接合材料となるよう積層した。なお、中間接合材料中のSiの比率は20wt%となるよう制御した。
【0053】
中間接合材料をSiC被覆管と端栓との間に配置して接合待機組立体を形成した。そして、まず、60℃の真空オーブン内で乾燥処理を行うことで無水エタノールを除去した。乾燥後、接合待機組立体を管状炉内に置き、真空環境下で接合した。10℃/minで1400℃まで昇温して2h保温し、0.1MPaで加圧することで、完了後にSiC被覆が作製された。
【0054】
測定したところ、作製された封止式SiC被覆の室温剪断強度は40MPaであり、1200℃での高温剪断強度は40MPaであった。また、漏洩率は10-9Pa・m3/sであった。且つ、熱水腐食後の封止式SiC被覆の腐食速度は被覆管及び端栓よりも10%高かった。
【実施例5】
【0055】
5μmの金属Al粉末と、1μmのSi粉末を接合材料とした。Al粉末とSi粉末の純度はいずれも99%であった。まず、Al粉末とSi粉末をそれぞれ無水エタノール中に均一に分散させてからコーティングすることで、SiC被覆管と端栓との間に形成される中間接合材料を積層した。なお、Siの比率は20wt%となるよう制御した。
【0056】
まず、形成された接合待機組立体を60℃の真空オーブン内で乾燥処理し、無水エタノールを除去した。そして、乾燥後に、接合待機組立体を管状炉内に置き、アルゴンガス環境下で接合した。10℃/minで1000℃まで昇温して1h保温し、0.1MPaで加圧することで、完了後にSiC被覆が作製された。
【0057】
測定したところ、作製された封止式SiC被覆の室温剪断強度は70MPaであり、1200℃での高温剪断強度は50MPaであった。また、漏洩率は10-9Pa・m3/sであった。且つ、熱水腐食後の封止式SiC被覆の腐食速度は被覆管及び端栓よりも10%高かった。
【実施例6】
【0058】
10μmの金属Al粉末と、5μmのSiシートを接合材料とした。Al粉末とSiシートの純度はいずれも99%であった。実施例5の方法を参照して、Al粉末を無水エタノールと均一に混合してからコーティングし、Siシートと積層することで、SiC被覆管と端栓との間に位置する中間接合材料を形成した。なお、Siの比率は30wt%となるよう制御した。
【0059】
まず、形成された接合待機組立体を60℃の真空オーブン内で乾燥処理し、無水エタノールを除去した。そして、乾燥後に、接合待機組立体を管状炉内に置き、アルゴンガス環境下で接合した。10℃/minで1200℃まで昇温して2h保温し、0.1MPaで加圧することで、完了後にSiC被覆が作製された。
【0060】
測定したところ、作製された封止式SiC被覆の室温剪断強度は70MPaであり、1200℃での高温剪断強度は60MPaであった。また、漏洩率は10-9Pa・m3/sであった。且つ、熱水腐食後の封止式SiC被覆の腐食速度は被覆管及び端栓よりも9%高かった。
【0061】
[比較例1]
厚さ15μmの金属Al箔と、1μmのSi粉末を接合材料とした。Al箔とSi粉末の純度はいずれも99%であった。予めSi粉末を無水エタノール中に分散させ、超音波分散を5min行ったあと、Al箔上に均一に塗布することで、層分布がAl/Si/Alの中間接合材料を形成した。なお、中間接合材料中のSiの比率は10wt%となるよう制御した。
中間接合材料をSiC被覆管と端栓との間に配置して接合待機組立体を形成した。そして、まず、60℃の真空オーブン内で乾燥処理を行うことで無水エタノールを除去した。乾燥後、接合待機組立体を管状炉内に置き、真空環境下で接合した。10℃/minで1200℃まで昇温して1h保温し、0.01MPaで加圧することで、完了後にSiC被覆が作製された。
作製された封止式SiC被覆の室温剪断強度は30MPaであり、1200℃での高温剪断強度は10MPaであった。また、漏洩率は10-5Pa・m3/sであった。且つ、熱水腐食後に被覆管と端栓との接合箇所は裂開し、熱水腐食後に接合層に気孔が発生したことが示された。
【0062】
[比較例2]
厚さ15μmの金属Al箔と、1μmのSi粉末を接合材料とした。Al箔とSi粉末の純度はいずれも99%であった。且つ、形成される中間接合材料中のSiの比率は40wt%となるよう制御した。そして、上記比較例1に従ってSiC被覆を作製した。
作製された封止式SiC被覆の室温剪断強度は20MPaであり、1200℃での高温剪断強度は20MPaであった。また、漏洩率は10-6Pa・m3/sであった。且つ、熱水腐食後に被覆管と端栓との接合箇所は裂開し、熱水腐食後に接合層に気孔が発生したことが示された。
【0063】
以上の記載は本発明の実施例にすぎず、これにより本発明の特許範囲を制限するものではない。本発明の明細書の内容を利用してなされる等価の構造又は等価のフローの変更、或いは、その他関連の技術分野への直接的又は間接的な応用は、いずれも同様の理由で本発明の特許保護の範囲に含まれる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
S1:Al及びSiを接合材料として用い、互いに適合する被覆管と端栓との間に接合材料を設置することで、Al/Si/Alの3層構造を有する中間接合材料を形成して、前記被覆管及び端栓とともに接合待機組立体を形成し、
S2:接合待機組立体を真空又は不活性雰囲気に置いてろう接接合を行うことで、前記中間接合材料が接合層を形成し、前記被覆管と端栓を一体的に接合する、
とのステップを含むことを特徴とする炭化ケイ素被覆のろう接接合方法。
【請求項2】
ステップS1において、前記中間接合材料内のSiの質量パーセントは20~30%であることを特徴とする請求項1に記載の炭化ケイ素被覆のろう接接合方法。
【請求項3】
ステップS1において、前記Alはアルミニウム粉末又はアルミ箔であり、前記Siはシリコン粉末又はシリコンシートであることを特徴とする請求項1に記載の炭化ケイ素被覆のろう接接合方法。
【請求項4】
ステップS1において、前記Al及びSiの純度はいずれも95~99%であることを特徴とする請求項1に記載の炭化ケイ素被覆のろう接接合方法。
【請求項5】
ステップS2において、ろう接接合では、5~20℃/minの昇温速度で温度を1000~1400℃まで上昇させて0.5~2h保温し、接合圧力は0.01~0.1MPaであることを特徴とする請求項1に記載の炭化ケイ素被覆のろう接接合方法。
【請求項6】
ステップS2において、
封止式SiC被覆の
漏洩率は10
-13~10
-9Pa・m3/sであることを特徴とする請求項1に記載の炭化ケイ素被覆のろう接接合方法。
【請求項7】
ステップS1において、まず、AlとSiを積層し、Al/Si/Alの3層構造を有する中間接合材料を形成したあと、前記中間接合材料を被覆管と端栓との間に配置することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の炭化ケイ素被覆のろう接接合方法。
【請求項8】
ステップS1において、Alを被覆管上と端栓上に置き、被覆管上と端栓上にそれぞれAl層を形成したあと、いずれか一方のAl層上にSiを置いてSi層を形成してから、前記被覆管と端栓を組み合わせることで、前記Al層とSi層を重ねて、Al/Si/Alの3層構造を有する中間接合材料を形成することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の炭化ケイ素被覆のろう接接合方法。
【請求項9】
ステップS1において、まず、被覆管上又は端栓上にAlとSiを積層し、前記被覆管上又は端栓上にAl/Si/Alの3層構造を有する中間接合材料を形成したあと、前記被覆管と端栓を組み合わせることで、前記中間接合材料を前記被覆管と端栓との間に配置することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の炭化ケイ素被覆のろう接接合方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の炭化ケイ素被覆のろう接接合方法により接合して形成されることを特徴とする炭化ケイ素被覆。
【請求項11】
請求項10に記載の炭化ケイ素被覆を含むことを特徴とする燃料棒。
【請求項12】
請求項11に記載の燃料棒を含むことを特徴とする燃料集合体。
【国際調査報告】