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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-27
(54)【発明の名称】がん予防における短鎖脂肪酸の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/19 20060101AFI20231117BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231117BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231117BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20231117BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20231117BHJP
   A61K 9/30 20060101ALI20231117BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20231117BHJP
   A61K 9/56 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
A61K31/19
A61P1/16
A61P35/00
A61K47/02
A61K47/38
A61K9/30
A61K9/20
A61K9/56
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528582
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 US2021059211
(87)【国際公開番号】W WO2022104116
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】63/112,783
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591135163
【氏名又は名称】テンプル・ユニバーシティ-オブ・ザ・コモンウェルス・システム・オブ・ハイアー・エデュケイション
【氏名又は名称原語表記】TEMPLE UNIVERSITY-OF THE COMMONWEALTH SYSTEM OF HIGHER EDUCATION
(71)【出願人】
【識別番号】523174837
【氏名又は名称】エスエフエー セラピューティクス,インコーポレイティド
(71)【出願人】
【識別番号】523174848
【氏名又は名称】マーク エー.フェイテルソン
(71)【出願人】
【識別番号】523174859
【氏名又は名称】アラ アルズマンヤン
(71)【出願人】
【識別番号】519273452
【氏名又は名称】イラ シー.スペクター
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】マーク エー.フェイテルソン
(72)【発明者】
【氏名】アラ アルズマンヤン
(72)【発明者】
【氏名】イラ シー.スペクター
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA45
4C076AA60
4C076BB01
4C076BB13
4C076BB16
4C076CC16
4C076CC27
4C076DD30
4C076EE31
4C076EE32
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA02
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA72
4C206MA86
4C206NA12
4C206NA13
4C206NA14
4C206ZA75
4C206ZB26
(57)【要約】
本開示は、B型肝炎ウイルス関連肝細胞がんを治療するための組成物及び方法を記載する。B型肝炎ウイルス(HBV)による慢性感染は、肝細胞がん(HCC)の発症の主要なリスク因子である。HBVにコードされるがんタンパク質HBxは、宿主遺伝子の発現及び複数のシグナル伝達経路の活性を変化させる。短鎖脂肪酸は、HBxに関連する機能を標的化することによって、慢性肝疾患のHCCへの進行を遅延又は遮断するために使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝細胞がんを治療する方法であって、肝細胞がんの治療を必要とする対象に医薬組成物を投与することを含み、前記医薬組成物が、治療有効量の第1の短鎖脂肪酸である第1の化合物又はその薬学的に許容される塩と、治療有効量の第2の短鎖脂肪酸である第2の化合物又はその薬学的に許容される塩と、水酸化マグネシウムと、を含む、方法。
【請求項2】
前記肝細胞がんが、B型肝炎ウイルス関連肝細胞がんである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記投与することが、経口投与することである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記投与することが、皮下投与することである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記投与することが、静脈内投与することである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の化合物が、酪酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の化合物が、酪酸ナトリウムである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の化合物の前記治療有効量が、約500mg~約4000mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の化合物の前記治療有効量が、約2000mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の化合物の前記治療有効量が、約3000mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の化合物の前記治療有効量が、約4000mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の化合物が、プロピオン酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の化合物が、酪酸ナトリウムである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の化合物の前記治療有効量が、約50mg~約500mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の化合物の前記治療有効量が、約150mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の化合物の前記治療有効量が、約250mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の化合物の前記治療有効量が、約400mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記医薬組成物が、最大で約0.5%(w/w)の水酸化マグネシウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記医薬組成物が、最大で約0.3%(w/w)の水酸化マグネシウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記医薬組成物が、最大で約0.1%(w/w)の水酸化マグネシウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記医薬組成物が、薬学的に許容される賦形剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記薬学的に許容される賦形剤が、セルロースである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記薬学的に許容される賦形剤が、メチルセルロースである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記薬学的に許容される賦形剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記医薬組成物が、腸溶コーティングを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記腸溶コーティングが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記医薬組成物が、錠剤として製剤化される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記医薬組成物が、カプセルとして製剤化される、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記対象が、ヒトである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年11月12日に出願された米国仮出願第63/112,783号の利益を主張するものであり、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
B型肝炎ウイルス(HBV)による慢性感染は、肝細胞がん(HCC)の発症の主要なリスク因子である。HBVにコードされるがんタンパク質HBxは、宿主遺伝子の発現及び複数のシグナル伝達経路の活性を変化させる。抗炎症性及び抗腫瘍性を有する短鎖脂肪酸(SCFA)は、慢性肝疾患(CLD)からHCCへの進行を遮断することができる。
【0003】
参照による組み込み
本出願において引用される各特許、刊行物、及び非特許文献は、各々が個々に参照により組み込まれる場合と同様に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0004】
いくつかの実施形態では、肝細胞がんを治療する方法であって、肝細胞がんの治療を必要とする対象に医薬組成物を投与することを含み、医薬組成物が、治療有効量の第1の短鎖脂肪酸である第1の化合物又はその薬学的に許容される塩と、治療有効量の第2の短鎖脂肪酸である第2の化合物又はその薬学的に許容される塩と、水酸化マグネシウムと、を含む、方法が本明細書に開示される。
【0005】
いくつかの実施形態では、医薬組成物であって、治療有効量の酪酸である第1の化合物又はその薬学的に許容される塩と、治療有効量のプロピオン酸である第2の化合物又はその薬学的に許容される塩と、水酸化マグネシウムと、を含む、医薬組成物が本明細書に開示される。
【0006】
いくつかの実施形態では、医薬組成物であって、治療有効量の酪酸である第1の化合物又はその薬学的に許容される塩と、治療有効量のプロピオン酸である第2の化合物又はその薬学的に許容される塩と、水酸化マグネシウムと、から本質的になる、医薬組成物が本明細書に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本明細書に記載のHBxトランスジェニック(HBxTg)マウス試験の実験ステップの概要を示す。
【0008】
図2】パネルAは、腫瘍サイズに対する、SCFA又はPBSで処置した12ヶ月齢マウスの群からの腫瘍結節のパーセンテージを示す。パネルBは、PBS処置マウスからの大きな腫瘍の例を示す。パネルCは、SCFA処置マウスからの2つの小さな腫瘍の例を示す。
【0009】
図3】9ヶ月目(パネルA及びB)並びに12ヶ月目(パネルC及びD)に評価された肝臓において示された病理を有するマウスの数を示す。
【0010】
図4】初代ヒト肝細胞及び2つのHBx発現ヒトHCC細胞株に対するSCFAの効果を示す。
【0011】
図5】遺伝子オントロジー(Gene Ontology(GO))生物学的プロセスによって配置された、PBS対照と比較した、SCFA処置後のHBxTgマウス由来の12ヶ月齢の肝臓における発現が減少又は増加したタンパク質の数を示す。
【0012】
図6-1】PBS(パネルA~C)又はSCFA(パネルD~F)で処置した動物からの12ヶ月齢マウスの肝臓における、HBx(パネルA及びD)、Dab2(パネルB及びE)、正常IgG(パネルC)、又はウサギ免疫前血清(パネルF)についての免疫組織化学的染色を示す。パネルGは、対照(C)肝臓と比較した処置(T)肝臓からのDab2及びShoc2の代表的なウェスタンブロットを示す。パネルHは、対照(n=12)マウスと比較して、処置(n=12)マウスから差次的に発現されたDab2及びShoc2の概要を示す(P<0.01)。パネルIは、12ヶ月齢のHBxTgマウス肝臓におけるRas関連のタンパク質に対するSCFAのプロテオミクスデータの概要を示す。
図6-2】PBS(パネルA~C)又はSCFA(パネルD~F)で処置した動物からの12ヶ月齢マウスの肝臓における、HBx(パネルA及びD)、Dab2(パネルB及びE)、正常IgG(パネルC)、又はウサギ免疫前血清(パネルF)についての免疫組織化学的染色を示す。パネルGは、対照(C)肝臓と比較した処置(T)肝臓からのDab2及びShoc2の代表的なウェスタンブロットを示す。パネルHは、対照(n=12)マウスと比較して、処置(n=12)マウスから差次的に発現されたDab2及びShoc2の概要を示す(P<0.01)。パネルIは、12ヶ月齢のHBxTgマウス肝臓におけるRas関連のタンパク質に対するSCFAのプロテオミクスデータの概要を示す。
【0013】
図7】パネルAは、分析前に、対照としてPBSで処置した3匹の異なるマウス(C)、及び試験化合物(T)、SCFAで処置した3匹のマウスにおける活性化Rasについてのプルダウンアッセイを示す。パネルBは、SCFAで処置した別の7匹と比較した、PBSで処置した7匹のマウスにおけるRasプルダウンの概要を示す(*P<0.001)。
【0014】
図8】12ヶ月齢のSCFA処置対対照HBxTg肝臓の経路分析の概要を示す。示された経路は、一貫して、HBxによって上方制御され、SCFAによって下方制御された。
【発明を実施するための形態】
【0015】
肝臓がんは、世界中で6番目に最もよく診断され、2番目に致死的ながんである。HCCは、世界の原発性肝がん診断の約80%を占める。HCCの発生率は増加し続けており、米国では過去20年にわたって3倍になっている。HBVによる慢性感染は、HCCの主要なリスク因子である。HBVは、世界中でおよそ20億人の人々に感染しており、これらのうち、推定2億5000万人が、肝炎、肝硬変、及びHCCの発症のリスクが高いキャリアになっている。米国では、診断時からの2年生存率は50%未満であり、5年生存率はわずか8.9%であり、それにより、より有効な治療選択肢に対する緊急の必要性が強調される。
【0016】
B型肝炎ウイルス(HBV)による慢性感染は、肝細胞がん(HCC)の発症の主要なリスク因子である。HBVにコードされるがんタンパク質HBxは、宿主遺伝子の発現及び複数のシグナル伝達経路の活性を変化させる。HBVにコードされるHBxは、HCCの発症に中心的に寄与し得る。
【0017】
CLDにおける細胞死及び再生の反復サイクルは、宿主DNAへのHBx遺伝子の組込みの増加、及び機能的HBxの産生と関連しており、それにより、宿主遺伝子発現の変化、染色体不安定性、並びに細胞生存、炎症、血管新生、及び免疫応答に重要なシグナル伝達経路の変化をもたらす。HBxによって変化するシグナル伝達経路の中で、PI3K、Ras、及びNF-κBシグナル伝達経路は、細胞の生存及び増殖を促進する。HBxによるPI3K、PDGF、VEGF、Ras、及びNF-κBの異常な活性化は、HCCの開始及び進行をもたらし得る。HBxはまた、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)及びDNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)を刺激することによって、エピジェネティック調節を介して宿主遺伝子発現を変化させることができ、HBxは、腫瘍抑制因子をサイレンシングし、宿主癌遺伝子を活性化して発がんを促進し得る。
【0018】
HCCの変化は、腸内マイクロバイオームの組成を変化させ得る。この変化は、腸における炎症促進性代謝産物及び抗炎症性代謝産物のレベル並びに比の変化に対応し得る。SCFAは、腸内微生物によって行われる食物繊維の嫌気性発酵によって産生される。SCFAは、がん細胞において、細胞成長及び分化を調節し、炎症を予防又はその可能性を低減し、細胞増殖を阻害し、アポトーシスを誘導する。SCFAは、発がんにおいてHBxが利用する同じ分子及び経路の多くに対するHBxの作用に対抗することができる。例えば、SCFAは、ヒストンデアセチラーゼ(HDACi)を阻害することによって細胞増殖を減少させることができ、一方、HBxは、選択されたHDACの活性を刺激する。したがって、SCFAは、クロマチン構造に対するHBxのエピジェネティック効果を逆転させ得る。SCFAは炎症促進性NF-κBシグナル伝達を阻害するが、HBxはNF-κB及び関連する炎症を刺激する。具体的には、HBxの発現及び活性は、炎症に特徴的な酸化的環境において増加する。更に、肝臓内HBx発現の強度及び分布は、CLDの重症度と相関し、それによって、慢性炎症環境がHBxの作用を増強することを示唆する。
【0019】
抗炎症性及び抗腫瘍性を有する短鎖脂肪酸(SCFA)を使用して、慢性肝疾患(CLD)からHCCへの進行を遮断することができる。SCFAを含む医薬組成物を使用して、CLDからHCCへの進行を遮断する方法が本明細書に開示される。
【0020】
肝細胞がんを治療する方法であって、肝細胞がんの治療を必要とする対象に医薬組成物を投与することを含み、医薬組成物が、治療有効量の第1の短鎖脂肪酸である第1の化合物又はその薬学的に許容される塩と、治療有効量の第2の短鎖脂肪酸である第2の化合物又はその薬学的に許容される塩と、水酸化マグネシウムと、を含む、方法が本明細書で開示される。医薬組成物であって、治療有効量の酪酸である第1の化合物又はその薬学的に許容される塩と、治療有効量のプロピオン酸である第2の化合物又はその薬学的に許容される塩と、水酸化マグネシウムと、を含む、医薬組成物が本明細書に更に開示される。また、医薬組成物であって、治療有効量の酪酸である第1の化合物又はその薬学的に許容される塩と、治療有効量のプロピオン酸である第2の化合物又はその薬学的に許容される塩と、水酸化マグネシウムと、から本質的になる、医薬組成物が本明細書に開示される。
【0021】
本開示の化合物
SCFAは、1つの極性カルボン酸部分及び疎水性炭化水素鎖からなる飽和脂肪酸である。本開示は、SCFA、SCFA前駆体、SCFA生合成前駆体、SCFA部分を含む化合物、SCFA誘導体、又はその薬学的に許容される塩の使用を記載する。
【0022】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、又はイソ吉草酸である。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、ホルメート、アセテート、プロピオネート、ブチレート、イソブチレート、バレレート、若しくはイソバレレート、又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、イソ酪酸ナトリウム、吉草酸ナトリウム、又はイソ吉草酸ナトリウムである。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、メトキシ酢酸、バルプロ酸、3-メトキシプロピオン酸、エトキシ酢酸、トリブチリン、又はプロピオン酸エステルである。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、ブチレート、N-アセチルブチレート、フェニルブチレート、イソブチレート、ピバロイルオキシメチルブチレート、又はモノアセトングルコース-3-ブチレートである。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、酪酸ナトリウム、N-アセチル酪酸ナトリウム、フェニル酪酸ナトリウム、イソ酪酸ナトリウム、ピバロイルオキシメチル酪酸ナトリウム、又はモノアセトングルコース-3-酪酸ナトリウムである。
【化1】
【0023】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、ピルビン酸、オクタン酸、ドデカン酸、(4R)-4-ヒドロキシペンタン酸、2-エチルヒドラクリル酸、2-ヒドロキシ-3-メチルペンタン酸、2-メチルブタ-2-エン酸、ブタン酸、メチル酪酸、ジメチル酪酸、ペンタジエン酸、ペンテン酸、ピバル酸、又はプロピン酸である。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、ピルベート、オクタノエート、ドデカノエート、(4R)-4-ヒドロキシペンタノエート、2-エチルヒドラクリレート、2-ヒドロキシ-3-メチルペンタノエート、2-メチルブタ-2-エノエート、ブタノエート、メチルブチレート、ジメチルブチレート、ペンタジエノエート、ペンテノエート、ピバレート、若しくはプロピノエート、又は前述のいずれかの薬学的に許容される塩である。
【0024】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、SCFA前駆体又はその誘導体である。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、ラクテート、スクシネート、ホルメート、1,2-プロペンジオール、トリプタミン、インドール、インドール-3-アセテート、又はその薬学的に許容される塩である。
【0025】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、酪酸又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、酪酸ナトリウムである。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、プロピオン酸ナトリウムである。
【0026】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、SCFA生合成前駆体又はその誘導体である。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、アセチル-CoAカルボキシラーゼ阻害剤、アデノシン一リン酸キナーゼ(AMPK)活性化因子、又はビタミンDである。
【0027】
薬学的に許容される塩
本開示は、本明細書に記載の任意の治療用化合物の薬学的に許容される塩を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の化合物の薬学的に許容される水和物又は溶媒和物を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、塩基付加塩を提供する。塩基付加塩を形成するために化合物に添加される塩基は、有機塩基であっても無機塩基であってもよい。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される塩は、金属塩である。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される塩は、アンモニウム塩である。
【0028】
金属塩は、本開示の化合物への無機塩基の添加から生じ得る。無機塩基は、例えば、ヒドロキシド、カルボネート、バイカルボネート、又はホスフェートなどの塩基性対イオンと対になった金属カチオンからなる。金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、又は主族金属であり得る。いくつかの実施形態では、金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、セリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、カルシウム、ストロンチウム、コバルト、チタン、アルミニウム、銅、カドミウム、又は亜鉛である。
【0029】
いくつかの実施形態では、金属塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、セリウム塩、マグネシウム塩、マンガン塩、鉄塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、コバルト塩、チタン塩、アルミニウム塩、銅塩、カドミウム塩、又は亜鉛塩である。
【0030】
アンモニウム塩は、本開示の化合物へのアンモニア又は有機アミンの添加から生じ得る。いくつかの実施形態では、有機アミンは、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、ピペリジン、N-メチルピペリジン、N-エチルピペリジン、ジベンジルアミン、ピペラジン、ピリジン、ピラゾール、ピピラゾール、イミダゾール、ピラジン、又はピピラジンである。
【0031】
いくつかの実施形態では、アンモニウム塩は、トリエチルアミン塩、ジイソプロピルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モルホリン塩、N-メチルモルホリン塩、ピペリジン塩、N-メチルピペリジン塩、N-エチルピペリジン塩、ジベンジルアミン塩、ピペラジン塩、ピリジン塩、ピラゾール塩、ピピラゾール塩、イミダゾール塩、ピラジン塩、又はピピラジン塩である。
【0032】
いくつかの実施形態では、塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酒石酸塩、アスコルビン酸塩、ゲンチシン酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、パントテン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、又はマレイン酸塩である。
【0033】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、カルボン酸のエステルである。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、カルボン酸と、1~6個の炭素原子の分岐又は非分岐アルキルアルコールとのエステルである。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、イソプロピルエステル、t-ブチルエステル、ペンチルエステル、又はヘキシルエステルであり得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、酪酸又はその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、酪酸ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、プロピオン酸ナトリウムを含む。
【0035】
本開示の医薬組成物
本開示は、本開示の少なくとも1つの化合物を含む、医薬組成物を提供する。本開示の医薬組成物は、本明細書に記載の任意の化合物と、担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、及び/又は賦形剤などの他の化学成分との組み合わせであり得る。医薬組成物は、生物、例えば対象への化合物の投与を容易にする。医薬組成物は、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、経口、非経口、眼、皮下、経皮、経鼻、膣内、及び局所投与を含む様々な形態及び経路によって医薬組成物として治療有効量で投与することができる。
【0036】
医薬組成物は、局所様式で、例えば、臓器への化合物の直接注射を介して、任意選択でデポ剤又は徐放性製剤又はインプラントで、投与することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、経口投与のために製剤化されている。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本開示の化合物を薬学的に許容される担体又は賦形剤と組み合わせることによって製剤化することができる。このような担体は、対象による経口摂取のために、液体、ゲル、シロップ、エリキシル、スラリー、又は懸濁液を製剤化するために使用され得る。経口溶解性製剤に使用される溶媒の非限定的な例としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、生理食塩水、生理食塩水、DMSO、ジメチルホルムアミド、リン酸カリウム緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、リン酸ナトリウム緩衝液、4-2-ヒドロキシ-1-ピペラジンエタンスルホン酸緩衝液(HEPES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸緩衝液(MOPS)、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)緩衝液(PIPES)、及びクエン酸ナトリウム生理食塩水緩衝液(SSC)を挙げることができる。経口溶解性製剤に使用される共溶媒の非限定的な例としては、スクロース、尿素、クレマフォール(cremaphor)、DMSO、及びリン酸カリウム緩衝液を挙げることができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、本開示の薬学的調製物は、静脈内投与のために製剤化され得る。医薬組成物は、油性又は水性ビヒクル中の滅菌懸濁液、溶液又はエマルジョンとして非経口注射に適した形態であってもよく、懸濁化剤、安定剤及び/又は分散剤などの製剤化剤を含有してもよい。
【0039】
非経口投与用の医薬製剤には、水溶性形態の活性化合物の水溶液が含まれる。活性化合物の懸濁液は、油性注射懸濁液として調製することができる。好適な親油性溶媒又はビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、又はオレイン酸エチル若しくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、又はリポソームが挙げられる。懸濁液はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために化合物の溶解度を増加させる好適な安定剤又は薬剤を含有することができる。あるいは、活性成分は、使用前に好適なビヒクル(例えば、発熱物質を含まない滅菌水)を用いて構成するための粉末形態であり得る。
【0040】
活性化合物は局所的に投与することができ、溶液、懸濁液、ローション、ゲル、ペースト、薬用スティック、バーム、クリーム及び軟膏などの様々な局所的に投与可能な組成物に製剤化することができる。そのような医薬組成物は、可溶化剤、安定剤、張性増強剤、緩衝剤及び保存剤を含有することができる。本開示の化合物は、対象の皮膚、又は体腔、例えば、口腔、膣腔、膀胱腔、頭蓋腔、脊髄腔、胸腔、若しくは骨盤腔に局所的に適用することができる。本開示の化合物は、利用可能な体腔に適用することができる。
【0041】
医薬組成物は、薬学的に使用され得る調製物への活性化合物の加工を容易にする、賦形剤及び補助剤を含む1つ以上の生理学的に許容される担体を使用して製剤化され得る。製剤は、選択された投与経路に応じて改変することができる。本明細書に記載の化合物を含む医薬組成物は、例えば、混合、溶解、乳化、カプセル化、封入、又は圧縮プロセスによって製造することができる。
【0042】
医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤、及び遊離塩基又は薬学的に許容される塩形態として本明細書に記載の化合物を含むことができる。医薬組成物は、可溶化剤、安定剤、張性増強剤、緩衝剤及び保存剤を含有することができる。
【0043】
本明細書に記載の化合物を含む組成物の調製のための方法は、化合物を1つ以上の不活性な薬学的に許容される賦形剤又は担体と共に製剤化して、固体、半固体、又は液体組成物を形成することを含む。固体組成物としては、例えば、粉末(散剤)、錠剤、分散性顆粒、カプセル(カプセル剤)、及びカシェが挙げられる。液体組成物としては、例えば、化合物が溶解している溶液、化合物を含むエマルジョン、又は本明細書に開示される化合物を含むリポソーム、ミセル、若しくはナノ粒子を含有する溶液が挙げられる。半固体組成物としては、例えば、ゲル、懸濁液及びクリームが挙げられる。組成物は、液体溶液若しくは懸濁液、使用前に液体に溶解若しくは懸濁するのに適した固体形態、又はエマルジョンであり得る。これらの組成物はまた、少量の非毒性の補助物質、例えば、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、及び他の薬学的に許容される添加剤を含み得る。
【0044】
本開示における使用に適した剤形の非限定的な例としては、液体、粉末、ゲル、ナノ懸濁液、ナノ粒子、ミクロゲル、水性又は油性懸濁液、エマルジョン、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0045】
本開示における使用に適した薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例としては、結合剤、崩壊剤、抗接着剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、可塑剤、保存剤、懸濁化剤、乳化剤、抗菌剤、球状化剤、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示の薬学的に許容される賦形剤は、医薬品グレードの賦形剤である。
【0046】
医薬組成物は、急速放出製剤の形態、徐放製剤の形態、又は中間放出製剤の形態で提供することができる。急速放出形態は、即時放出を提供することができる。徐放製剤は、制御放出又は持続遅延放出を提供することができる。本開示の医薬組成物は、例えば、即時放出形態であっても制御放出製剤であってもよい。即時放出製剤は、化合物を迅速に作用させるように製剤化することができる。即時放出製剤の非限定的な例としては、容易に溶解可能な製剤が挙げられる。制御放出製剤は、活性剤の放出速度及び放出プロファイルが生理学的及び時間治療要件に適合され得るように適合された、あるいはプログラムされた速度での活性剤の放出をもたらすように製剤化された医薬製剤であり得る。制御放出製剤の非限定的な例としては、顆粒、遅延放出顆粒、ヒドロゲル(例えば、合成又は天然起源のもの)、他のゲル化剤(例えば、ゲル形成食物繊維)、マトリックスベースの製剤(例えば、少なくとも1つの活性成分が分散されたポリマー材料を含む製剤)、マトリックス内の顆粒、ポリマー混合物、及び顆粒塊が挙げられる。
【0047】
いくつかの実施形態では、制御放出製剤は、遅延放出形態である。遅延放出形態は、化合物の作用を長期間遅延させるように製剤化することができる。遅延放出形態は、有効用量の1つ以上の化合物の放出を、例えば、約4時間、約8時間、約12、約16時間、又は約24時間遅延させるように製剤化することができる。
【0048】
制御放出製剤は、持続放出形態であり得る。持続放出形態は、例えば、長期間にわたって化合物の作用を持続させるように製剤化することができる。持続放出形態は、約4時間、約8時間、約12、約16時間、又は約24時間にわたって、有効用量の本明細書に記載の任意の化合物を提供する(例えば、生理学的に有効な血液プロファイルを提供する)ように製剤化され得る。
【0049】
腸溶コーティングは、胃環境での溶解又は崩壊を防止する経口薬に適用されるポリマーバリアである。腸溶コーティングは、胃の酸性から薬物を保護し、胃を薬物の有害な影響から保護し、又は胃の後に薬物を放出することができる。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、腸溶コーティングを用いて提供される。いくつかの実施形態では、本開示の腸溶コーティングは、医薬品グレードの腸溶コーティングである。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、下部胃腸管で溶解する腸溶コーティングを用いて提供される。
【0050】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物に腸溶コーティングを提供するために使用される材料は、脂肪酸、ワックス、シェラック、プラスチック、植物繊維、又はフィルム樹脂である。いくつかの実施形態では、腸溶コーティング材料は、メチルアクリレート-メタクリル酸コポリマー、アセテートフタレートセルロース(CAP)、アセテートサクシネートセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、アセテートサクシネートヒドロキシプロピルメチルセルロース、アセテートサクシネートヒプロメロース、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、メチルメタクリレート-メタクリル酸コポリマー、セラック、アセテートトリメリテートセルロース、ナトリウムアルギネート、又はゼインである。いくつかの実施形態では、化合物は、腸溶コーティング軟質ゲルとして提供され、腸溶コーティングは、腸溶コーティング水溶液として提供される。いくつかの実施形態では、腸溶コーティング水溶液は、エチルセルロース、中鎖トリグリセリド、オレイン酸、アルギン酸ナトリウム、又はステアリン酸である。
【0051】
いくつかの実施形態では、腸溶コーティングは、Vcaps(登録商標)腸溶カプセルとして提供される。いくつかの実施形態では、腸溶コーティングは、アセテートフタレートセルロース、アセテートトリメリテートセルロース(CAT)、ポリビニルアセテートフタレート、フタレートヒドロキシプロピルメチルセルロース、アセテートサクシネートヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ(1:1のメタクリル酸:エチルアクリレート)、ポリ(1:1のメタクリル酸:メチルメタクリレート)、又はポリ(1:2のメタクリル酸:メチルメタクリレート)である。いくつかの実施形態では、腸溶コーティングは、Eudragit(登録商標)L30D、Eudragit(登録商標)L100-55、HP-F、Sureteric(登録商標)、Acryl-Eze(登録商標)、Aquarius(商標)Control ENA、Aquateric(商標)、Aquacoat(登録商標)ECD、又はAquasolve(商標)である。
【0052】
本開示の医薬組成物をコーティングするために使用される腸溶コーティングは、約0.5μm~約500μmの厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、腸溶コーティングは、約0.5μm~約5μm、約5μm~約20μm、約20μm~約50μm、約50μm~約100μm、約100μm~約200μm、約200μm~約300μm、約300μm~約400μm、又は約400μm~約500μmの厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、腸溶コーティングは、約0.5μm、約10μm、約25μm、約50μm、約75μm、約100μm、約150μm、約200μm、約250μm、約300μm、約350μm、約400μm、約450μm、又は約500μmの厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、腸溶コーティングは、約200μmの厚さを有する。いくつかの実施形態では、腸溶コーティングは、約350μmの厚さを有する。いくつかの実施形態では、腸溶コーティングは、約500μmの厚さを有する。
【0053】
意図される投与様式に応じて、医薬組成物は、固体、半固体又は液体の投薬形態(例えば、錠剤、坐剤、丸剤、カプセル剤、散剤、液体(液剤)、エリキシル剤、懸濁剤、ローション、クリーム、又はゲルなど)の形態(例えば、正確な投薬量の単回投与に好適な単位投与形態)であり得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、ナノ懸濁液、水性懸濁液、又は油性懸濁液の形態であり得る。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、ドロップ又はシロップの形態であり得る。
【0054】
固体組成物について、非毒性固体担体としては、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、及び炭酸マグネシウムが挙げられる。
【0055】
本開示における使用に適した薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例としては、造粒剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、甘味剤、流動促進剤、抗接着剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗酸化剤、ガム、コーティング剤、着色剤、香味剤、コーティング剤、可塑剤、保存剤、懸濁化剤、乳化剤、植物性セルロース系材料及び球状化剤、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示における使用に適した薬学的に許容される賦形剤としては、アジュバント、抗酸化剤、キレート剤、界面活性剤、発泡剤、湿潤剤、乳化剤、増粘剤、緩衝剤、又は保存剤も挙げられる。
【0056】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、透過促進剤である。いくつかの実施形態では、透過促進剤は、エタノール、グリセロールモノラウラート、ポリエチレングリコールモノラウラート、又はジメチルスルホキシドである。いくつかの実施形態では、透過促進剤は、オレイン酸、オレイルアルコール、エトキシジグリコール、ラウロカプラム、アルカンカルボン酸、ジメチルスルホキシド、極性脂質、又はN-メチル-2-ピロリドンである。
【0057】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、ヒドロトロープ剤である。いくつかの実施形態では、ヒドロトロープ剤は、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、又はキシレンスルホン酸ナトリウムである。
【0058】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、錠剤結合剤、錠剤崩壊剤、増粘剤、錠剤若しくはカプセル希釈剤、錠剤若しくはカプセル崩壊剤、熱安定剤、吸着剤、フィルム形成剤、造粒剤、コーティング剤、香味固定剤、着色剤、甘味剤、又は等張化剤である。
【0059】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、アラビアゴム(acacia)、アルギン酸塩、アルギン酸、酢酸アルミニウム、ベンジルアルコール、ブチルパラベン、ブチル化ヒドロキシトルエン、クエン酸、炭酸カルシウム、キャンデリラワックス、クロスカルメロース(croscarmellose)ナトリウム、粉砂糖、コロイド状二酸化ケイ素、セルロース、単純又は無水リン酸カルシウム、カルナウバワックス、コーンスターチ、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ステアリン酸カルシウム、カルシウムジナトリウムEDTA、コポリビドン、水素化ひまし油、リン酸水素カルシウム二水和物、塩化セチルピリジン、システインHCl、クロスポピドン、リン酸二若しくは三カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸一水素二ナトリウム、ジメチコン、エリトロシンナトリウム、エチルセルロース、ゼラチン、モノオレイン酸グリセリル、グリセリン、グリシン、モノステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒプロメロース、HPMCフタレート、酸化鉄、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、ラクトース(水和又は無水)、ステアリン酸マグネシウム、微結晶セルロース、マンニトール、メチルセルロース、炭酸マグネシウム、鉱油、メタクリル酸コポリマー、酸化マグネシウム、メチルパラベン、ポピドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリソルベート80、プロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、プロピレンパラベン、polaxamer(407、188、又はプレーン)、重炭酸カリウム、ソルビン酸カリウム、馬鈴薯デンプン、リン酸、ステアリン酸ポリオキシ140、グリコール酸デンプンナトリウム、アルファデンプン、ナトリウムクロスメロース(crossmellose)、ラウリル硫酸ナトリウム、デンプン、二酸化ケイ素、安息香酸ナトリウム、ステアリン酸、スクロース、ソルビン酸、炭酸ナトリウム、サッカリンナトリウム、アルギン酸ナトリウム、シリカゲル、モノオレイン酸ソルビタン、フマル酸ステアリルナトリウム、塩化ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム二水和物、ナトリウムスターチ、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、コハク酸、プロピオン酸ナトリウム、二酸化チタン、タルク、トリアセチン又はクエン酸トリエチルである。
【0060】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、安定剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、水酸化マグネシウムを含む。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、最大で約3.0%、最大で約2.8%、最大で約2.6%、最大で約2.4%、最大で約2.2%、最大で約2.0%、最大で約1.8%、最大で約1.6%、最大で約1.4%、最大で約1.2%、最大で約1.0%、最大で約0.9%、最大で約0.8%、最大で約0.7%、最大で約0.6%、最大で約0.5%、最大で約0.4%、最大で約0.3%、最大で約0.2%、又は最大で約0.1%(w/w)の水酸化マグネシウムを含む。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、最大で約3.0%(w/w)の水酸化マグネシウムを含む。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、最大で約2.0%(w/w)の水酸化マグネシウムを含む。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、最大で約1.0%(w/w)の水酸化マグネシウムを含む。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、最大で約0.5%(w/w)の水酸化マグネシウムを含む。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、最大で約0.3%(w/w)の水酸化マグネシウムを含む。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、最大で約0.1%(w/w)の水酸化マグネシウムを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、水酸化マグネシウムと、を含む。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、水酸化マグネシウムと、から本質的になる。
【0062】
薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Nineteenth Ed(Easton,PA:Mack PublishingCompany,1995);Hoover,John E.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania 1975;Liberman,H.A.and Lachman,L.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker,New York,N.Y.,1980;及びPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Seventh Ed.(Lippincott Williams & Wilkins 1999)に見出すことができ、これらの各々は、全体が参照により組み込まれる。
【0063】
本明細書で提供される治療方法又は使用を実施する際に、治療有効量の本明細書に記載の化合物は、治療される疾患又は状態を有する対象に医薬組成物で投与される。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトなどの哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象は、成人、高齢成人、青年、青年前、小児、幼児、乳児、新生児、又は非ヒト小児、幼児、乳児、新生児、及び非ヒト動物である。いくつかの実施形態では、対象は患者である。
【0064】
本開示の組成物との組み合わせに適した薬学的に活性な薬剤の非限定的な例としては、抗感染薬、すなわち、アミノグリコシド、抗ウイルス薬、抗菌薬、抗コリン作用薬/鎮痙薬、抗糖尿病薬、抗高血圧症薬、抗腫瘍薬、心血管薬、中枢神経系薬、凝固調節剤、ホルモン、免疫薬、免疫抑制剤、及び眼科用調製物が挙げられる。
【0065】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、a)第1の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩と、b)第2の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩と、を含み、第1の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩及び第2の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩は、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも7:1、少なくとも8:1、少なくとも9:1、少なくとも10:1、少なくとも11:1、少なくとも12:1、少なくとも13:1、少なくとも14:1、少なくとも15:1、少なくとも16:1、少なくとも17:1、少なくとも18:1、少なくとも19:1、又は少なくとも20:1の比で製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、第1の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩と、第2の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩とは、少なくとも4:1の比で製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、第1の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩と、第2の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩とは、少なくとも10:1の比で製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、第1の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩と、第2の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩とは、少なくとも15:1の比で製剤中に存在する。
【0066】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、a)第1の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩と、b)第2のアミノ酸又はその薬学的に許容される塩と、水酸化マグネシウムと、を含み、第1の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩と、第2の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩とは、約2:1~約4:1、約4:1~約6:1、約6:1~約8:1、約8:1~約10:1、約10:1~約12:1、約12:1~約14:1、約14:1~約16:1、約16:1~約18:1、又は約18:1~約20:1の比で製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、第1の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩と、第2の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩とは、約14:1~約16:1の比で製剤中に存在する。
【0067】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、a)第1の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩と、b)第2のアミノ酸又はその薬学的に許容される塩と、水酸化マグネシウムと、を含み、第1の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩と、第2の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩とは、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約11:1、約12:1、約13:1、約14:1、約15:1、約16:1、約17:1、約18:1、約19:1、又は約20:1の比で製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、第1の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩と、第2の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩とは、約10:1の比で製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、第1の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩と、第2の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩とは、約15:1の比で製剤中に存在する。
【0068】
いくつかの実施形態では、第1の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩は、酪酸又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、第1の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩は、酪酸ナトリウムである。いくつかの実施形態では、第1の短鎖脂肪酸は、酪酸である。いくつかの実施形態では、第2の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩は、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、第2の短鎖脂肪酸は、プロピオン酸ナトリウムである。いくつかの実施形態では、第2の短鎖脂肪酸は、プロピオン酸である。一部の実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤を更に含む。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、セルロースである。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、メチルセルロースである。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、ヒドロキシプロピルセルロースである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、腸溶コーティングを更に含む。いくつかの実施形態では、腸溶コーティングは、Vcaps(登録商標)(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)腸溶カプセルである。いくつかの実施形態では、腸溶コーティングは、CATである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、錠剤として製剤化されている。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、カプセルとして製剤化されている。
【0069】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、a)酪酸又はその薬学的に許容される塩と、b)プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、水酸化マグネシウムと、を含み、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩とは、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも7:1、少なくとも8:1、少なくとも9:1、少なくとも10:1、少なくとも11:1、少なくとも12:1、少なくとも13:1、少なくとも14:1、少なくとも15:1、少なくとも16:1、少なくとも17:1、少なくとも18:1、少なくとも19:1、又は少なくとも20:1の比で医薬組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、a)酪酸ナトリウムと、b)プロピオン酸ナトリウムと、水酸化マグネシウムと、を含み、酪酸ナトリウムと、プロピオン酸ナトリウムとは、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも7:1、少なくとも8:1、少なくとも9:1、少なくとも10:1、少なくとも11:1、少なくとも12:1、少なくとも13:1、少なくとも14:1、少なくとも15:1、少なくとも16:1、少なくとも17:1、少なくとも18:1、少なくとも19:1、又は少なくとも20:1の比で医薬組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、第1の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩と、第2の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩とは、少なくとも4:1の比で製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、第1の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩と、第2の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩とは、少なくとも10:1の比で製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、第1の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩と、第2の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩とは、少なくとも15:1の比で製剤中に存在する。
【0070】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、a)酪酸又はその薬学的に許容される塩と、b)プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、水酸化マグネシウムと、を含み、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩とは、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約11:1、約12:1、約13:1、約14:1、約15:1、約16:1、約17:1、約18:1、約19:1、又は約20:1の比で医薬組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、酪酸ナトリウムと、プロピオン酸ナトリウムと、水酸化マグネシウムと、を含み、酪酸ナトリウムと、プロピオン酸ナトリウムとは、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約11:1、約12:1、約13:1、約14:1、約15:1、約16:1、約17:1、約18:1、約19:1、又は約20:1の比で医薬組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、第1の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩と、第2の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩とは、約4:1の比で製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、第1の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩と、第2の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩とは、約10:1の比で製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、第1の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩と、第2の短鎖脂肪酸又はその薬学的に許容される塩とは、約15:1の比で製剤中に存在する。
【0071】
いくつかの実施形態では、第1の短鎖脂肪酸は、酪酸又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、第1の短鎖脂肪酸は、酪酸又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、第1の短鎖脂肪酸は、酪酸ナトリウムである。いくつかの実施形態では、第2の短鎖脂肪酸は、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、第2の短鎖脂肪酸は、プロピオン酸である。いくつかの実施形態では、第2の短鎖脂肪酸は、プロピオン酸ナトリウムである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤を更に含む。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、セルロースである。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、メチルセルロースである。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、ヒドロキシプロピルセルロースである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、腸溶コーティングを更に含む。いくつかの実施形態では、腸溶コーティングは、Vcaps(登録商標)(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)腸溶カプセルである。いくつかの実施形態では、腸溶コーティングは、CATである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、錠剤として製剤化されている。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、カプセルとして製剤化されている。
【0072】
投薬
本明細書に記載の医薬組成物は、正確な投与量の単回投与に適した単位投与形態であり得る。単位投与形態において、製剤は、適切な量の1つ以上の医薬組成物又は製剤を含有する単位用量に分割される。単位投与量は、別個の量の医薬組成物又は製剤を含有するパッケージの形態であり得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物又は製剤は、バイアル又はアンプル中の液体として提供される。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物又は製剤は、単回用量の再密閉不可能な容器にパッケージされた水性懸濁液として提供される。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物又は製剤は、複数回用量の再密閉可能な容器にパッケージされた水性懸濁液として提供される。複数回用量の再密閉可能な容器は、例えば、保存剤と組み合わせて使用することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物又は製剤は、単回用量容器、例えば、サシェ中の粉末として提供される。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物又は製剤は、複数回用量の再密閉可能な容器中の粉末として提供される。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物又は製剤は、錠剤の形態で提供される。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物又は製剤は、カプセルの形態で提供される。
【0075】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、約50mg~約100mg、約100mg~約200mg、約200mg~約300mg、約300mg~約400mg、又は約400mg~約500mgの範囲で組成物中に存在し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、約500mg~約5,000mg、約1,000mg~約5,000mg、約1,500mg~約4,000mg、約2,000mg~約3,000mg、又は約2,500mg~約3,000mgの範囲で組成物中に存在し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、約1,000mg~約1,200mg、約1,200mg~約1,400mg、約1,400mg~約1,600mg、約1,600mg~約1,800mg、約1,800mg~約2,000mg、約2,000mg~約2,200mg、約2,200mg~約2,400mg、約2,400mg~約2,600mg、約2,600mg~約2,800mg、約2,800mg~約3,000mg、約3,000mg~約3,200mg、約3,200mg~約3,400mg、約3,400mg~約3,600mg、約3,600mg~約3,800mg、約3,800mg~約4,000mg、約4,000mg~約4,200mg、約4,200mg~約4,400mg、約4,400mg~約4,600mg、約4,600mg~約4,800mg、又は約4,800mg~約5,000mgの範囲で組成物中に存在し得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、約50mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、又は約500mgの量で組成物中に存在し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、約500mg、約750mg、約1,000mg、約1,250mg、約1,500mg、約1,750mg、約2,000mg、約2,250mg、約2,500mg、約3,000mg、約3,250mg、約3,500mg、約3,750mg、約4,000mg、約4,250mg、約4,500mg、約4,750mg、又は約5,000mgの量で組成物中に存在し得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、用量は、対象の質量で割った薬物の量、例えば、対象の体質量1キログラム当たりの薬物のミリグラムの観点から関して表すことができる。いくつかの実施形態では、化合物は、約1mg/kg~約5mg/kg、約5mg/kg~約10mg/kg、約10mg/kg~約15mg/kg、約15mg/kg~約20mg/kg、約20mg/kg~約25mg/kg、約25mg/kg~約30mg/kg、約30mg/kg~約35mg/kg、約35mg/kg~約40mg/kg、約40mg/kg~約45mg/kg、又は約45mg/kg~約50mg/kg、約50mg/kg~約55mg/kg、約55mg/kg~約60mg/kg、約60mg/kg~約65mg/kg、約65mg/kg~約70mg/kg、又は約70mg/kg~約75mg/kgの範囲の量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物は、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、又は約75mg/kgの量で投与される。
【0078】
いくつかの実施形態では、化合物は、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、又は約6mg/kgの量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物は、約4mg/kgの量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物は、約5mg/kgの量で投与される。
【0079】
いくつかの実施形態では、化合物は、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、又は約70mg/kgの量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物は、約65mg/kgの量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物は、約70mg/kgの量で投与される。
【0080】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本開示の1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本開示の1つの化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本開示の2つの化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本開示の3つの化合物を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本開示の第1の化合物と、本開示の第2の化合物と、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約50mg~約4000mgの量の第1の化合物と、約50mg~約500mgの量の第2の化合物と、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1500mg~約2000mgの量の第1の化合物と、約150mg~約200mgの量の第2の化合物と、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約3000mg~約4000mgの量の第1の化合物と、約200mg~約300mgの量の第2の化合物と、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約2000mg~約3000mgの量の第1の化合物と、約300mg~約400mgの量の第2の化合物と、を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約65mg/kg~約70mg/kgの量の第1の化合物と、約1mg/kg~約5mg/kgの量の第2の化合物と、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約65mg/kgの量の第1の化合物と、約4mg/kgの第2の化合物と、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約70mg/kgの量の第1の化合物と、約5mg/kgの第2の化合物と、を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、1つの追加のSCFAと、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、イソ酪酸又はその薬学的に許容される塩と、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、バレレート又はその薬学的に許容される塩と、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、イソバレレート又はその薬学的に許容される塩と、を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、酪酸ナトリウムと、1つの追加のSCFAと、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、プロピオン酸ナトリウムと、酪酸ナトリウムと、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、イソ酪酸ナトリウムと、酪酸ナトリウムと、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、酪酸ナトリウムと、吉草酸ナトリウムと、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、酪酸ナトリウムと、イソ吉草酸ナトリウムと、を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、酪酸と、1つの追加のSCFAと、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、プロピオン酸と、酪酸と、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、イソ酪酸と、酪酸と、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、酪酸と、吉草酸と、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、酪酸と、イソ吉草酸と、を含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、イソ酪酸又はその薬学的に許容される塩と、1つの追加のSCFAと、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、イソ酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、イソ酪酸又はその薬学的に許容される塩と、バレレート又はその薬学的に許容される塩と、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、イソ酪酸又はその薬学的に許容される塩と、イソバレレート又はその薬学的に許容される塩と、を含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、イソ酪酸ナトリウムと、1つの追加のSCFAと、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、イソ酪酸ナトリウムと、酪酸ナトリウムと、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、イソ酪酸ナトリウムと、吉草酸ナトリウムと、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、イソ酪酸ナトリウムと、イソ吉草酸ナトリウムと、を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、イソ酪酸と、1つの追加のSCFAと、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、イソ酪酸と、プロピオン酸と、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、イソ酪酸と、吉草酸と、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、イソ酪酸と、イソ吉草酸と、を含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1.5g~約2gの酪酸又はその薬学的に許容される塩と、約150mg~約200mgのプロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約4gの酪酸又はその薬学的に許容される塩と、約250mgのプロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約3.5g~約4gの酪酸又はその薬学的に許容される塩と、約150mg~約300mgのプロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約2.5g~約3gの酪酸又はその薬学的に許容される塩と、約300mg~約400mgのプロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、250mgのプロピオン酸ナトリウムと、4,000mgのイソ酪酸ナトリウムと、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、250mgの吉草酸ナトリウムと、4,000mgのイソ酪酸ナトリウムと、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、250mgのイソ吉草酸ナトリウムと、4,000mgのイソ酪酸ナトリウムと、を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、250mgのプロピオン酸と、4,000mgのイソ酪酸と、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、250mgの吉草酸と、4,000mgのイソ酪酸と、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、250mgのイソ吉草酸と、4,000mgのイソ酪酸と、を含む。
【0092】
投与方法
本明細書に記載の医薬組成物又は治療剤は、疾患又は状態の発生前、発生中、若しくは発生後に投与することができ、治療剤を含有する組成物を投与するタイミングは変動し得る。例えば、医薬組成物又は治療剤は、予防薬として使用することができ、状態又は疾患になりやすい対象に連続的に投与して、疾患又は状態の発生の可能性を低下させることができる。医薬組成物又は治療剤は、症状の発症中又は発症後にできるだけ早く対象に投与することができる。医薬組成物又は治療剤の投与は、症状の発症の最初の48時間以内、症状の発症の最初の24時間以内、症状の発症の最初の6時間以内、又は症状の発症の3時間以内に開始することができる。最初の投与は、本明細書に記載の任意の製剤を使用して、本明細書に記載の任意の経路によるなど、任意の実用的な経路を介することができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、医薬組成物又は治療剤は、疾患の初期症状を示す患者に投与することができる。いくつかの実施形態では、症状は咳である。いくつかの実施形態では、症状は発熱である。医薬組成物又は治療剤は、疾患又は状態の発症が検出若しくは疑われた後、実用的である限りすぐに、疾患の治療に必要な期間にわたって、例えば、約1ヶ月~約3ヶ月間投与することができる。いくつかの実施形態では、医薬組成物又は治療剤を投与することができる時間の長さは、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヶ月、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約2ヶ月、約9週間、約10週間、約11週間、約12週間、約3ヶ月、約13週間、約14週間、約15週間、約16週間、約4ヶ月、約17週間、約18週間、約19週間、約20週間、約5ヶ月、約21週間、約22週間、約23週間、約24週間、約6ヶ月、約7ヶ月、約8ヶ月、約9ヶ月、約10ヶ月、約11ヶ月、約1年、約13ヶ月、約14ヶ月、約15ヶ月、約16ヶ月、約17ヶ月、約18ヶ月、約19ヶ月、約20ヶ月、約21ヶ月、約22ヶ月、約23ヶ月、約2年、約2.5年、約3年、約3.5年、約4年、約4.5年、約5年、約6年、約7年、約8年、約9年、又は約10年であり得る。治療の長さは、各対象に対して変動し得る。
【0094】
複数の医薬組成物又は治療剤は、任意の順序で又は同時に投与することができる。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、別の治療剤による治療と組み合わせて、その前に、又はその後に投与される。同時の場合、医薬組成物又は治療剤は、単一の統一された形態で、又は複数の形態で、例えば複数の別個の丸剤として提供することができる。医薬組成物又は治療剤は、単一のパッケージ又は複数のパッケージに一緒に若しくは別々にパッケージすることができる。医薬組成物又は治療剤のうちの1つ以上を複数回投与で与えることができる。同時でない場合、複数回投与の間のタイミングは、約1ヶ月程度まで変動し得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日3回、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で1週間にわたって、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で2週間にわたって、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で3週間にわたって、毎日の経口用量で投与される。
【0096】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、食物と一緒に毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日3回、毎回食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で1週間にわたって、毎回食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で2週間にわたって、毎回食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で3週間にわたって、毎回食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。
【0097】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、食後に毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日3回、毎回食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で1週間にわたって、毎回食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で2週間にわたって、毎回食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で3週間にわたって、毎回食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、食事の約5分後、約15分後、約30分後、又は約1時間後に投与される。
【0098】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日3回、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で1ヶ月間にわたって、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で2ヶ月間にわたって、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で3ヶ月間にわたって、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で1年間にわたって、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で2年間にわたって、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で3年間にわたって、毎日の経口用量で投与される。
【0099】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、食物と一緒に毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日3回、毎回食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で1ヶ月間にわたって、毎回食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で2ヶ月間にわたって、毎回食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で3ヶ月間にわたって、毎回食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で1年間にわたって、毎回食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で2年月間にわたって、毎回食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で3年間にわたって、毎回食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。
【0100】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、食後に毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日3回、毎回食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で1ヶ月間にわたって、毎回食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で2ヶ月間にわたって、毎回食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で3ヶ月間にわたって、毎回食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で1年間にわたって、毎回食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で2年間にわたって、毎回食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で3年間にわたって、毎回食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、食事の約5分後、約15分後、約30分後、又は約1時間後に投与される。
【0101】
いくつかの実施形態では、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む、医薬組成物が、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む、医薬組成物が、1日3回、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む、医薬組成物が、1日3回、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む、医薬組成物が、1日3回で1週間にわたって、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む、医薬組成物が、1日3回で2週間にわたって、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む、医薬組成物が、1日3回で3週間にわたって、毎日の経口用量で投与される。
【0102】
いくつかの実施形態では、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む、医薬組成物が、食物と一緒に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む、医薬組成物が、1日3回、毎回食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む、医薬組成物が、1日3回、毎回食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む、医薬組成物が、1日3回で1週間にわたって、毎回食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む、医薬組成物が、1日3回で2週間にわたって、毎回食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む、医薬組成物が、1日3回で3週間にわたって、毎回食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。
【0103】
いくつかの実施形態では、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む、医薬組成物が、食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む、医薬組成物が、1日3回、毎回食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む、医薬組成物が、1日3回、毎回食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む、医薬組成物が、1日3回で1週間にわたって、毎回食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む、医薬組成物が、1日3回で2週間にわたって、毎回食後緒に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む、医薬組成物が、1日3回で3週間にわたって、毎回食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、食事の約5分後、約15分後、約30分後、又は約1時間後に投与される。
【0104】
いくつかの実施形態では、酪酸ナトリウムと、プロピオン酸ナトリウムと、を含む、医薬組成物は、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸ナトリウムと、プロピオン酸ナトリウムと、を含む、医薬組成物は、1日3回、経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸ナトリウムと、プロピオン酸ナトリウムと、を含む、医薬組成物は、1日3回で1週間にわたって、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸ナトリウムと、プロピオン酸ナトリウムと、を含む、医薬組成物は、1日3回で2週間にわたって、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸ナトリウムと、プロピオン酸ナトリウムと、を含む、医薬組成物は、1日3回で3週間にわたって、毎日の経口用量で投与される。
【0105】
いくつかの実施形態では、酪酸ナトリウムと、プロピオン酸ナトリウムと、を含む、医薬組成物は、食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸ナトリウムと、プロピオン酸ナトリウムと、を含む、医薬組成物は、1日3回、毎回食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸ナトリウムと、プロピオン酸ナトリウムと、を含む、医薬組成物は、1日3回で1週間にわたって、毎回食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸ナトリウムと、プロピオン酸ナトリウムと、を含む、医薬組成物は、1日3回で2週間にわたって、毎回食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸ナトリウムと、プロピオン酸ナトリウムと、を含む、医薬組成物は、1日3回で3週間にわたって、毎回食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。
【0106】
いくつかの実施形態では、酪酸ナトリウムと、プロピオン酸ナトリウムと、を含む、医薬組成物は、食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸ナトリウムと、プロピオン酸ナトリウムと、を含む、医薬組成物は、1日3回、毎回食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸ナトリウムと、プロピオン酸ナトリウムと、を含む、医薬組成物は、1日3回で1週間にわたって、毎回食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸ナトリウムと、プロピオン酸ナトリウムと、を含む、医薬組成物は、1日3回で2週間にわたって、毎回食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸ナトリウムと、プロピオン酸ナトリウムと、を含む、医薬組成物は、1日3回で3週間にわたって、毎回食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、食事の約5分後、約15分後、約30分後、又は約1時間後に投与される。
【0107】
いくつかの実施形態では、酪酸及びプロピオン酸、又は各々の薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物は、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸及びプロピオン酸、又は各々の薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物は、1日3回、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸及びプロピオン酸、又は各々の薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物は、1日3回、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸及びプロピオン酸、又は各々の薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物は、1日3回で1週間にわたって、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸及びプロピオン酸、又は各々の薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物は、1日3回で2週間にわたって、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸及びプロピオン酸、又は各々の薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物は、1日3回で3週間にわたって、毎日の経口用量で投与される。
【0108】
いくつかの実施形態では、酪酸及びプロピオン酸、又は各々の薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物は、食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸及びプロピオン酸、又は各々の薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物は、1日3回、毎回食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸及びプロピオン酸、又は各々の薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物は、1日3回、毎回食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸及びプロピオン酸、又は各々の薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物は、1日3回で1週間にわたって、毎回食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸及びプロピオン酸、又は各々の薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物は、1日3回で2週間にわたって、毎回食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸及びプロピオン酸、又は各々の薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物は、1日3回で3週間にわたって、毎回食事と一緒に、毎日の経口用量で投与される。
【0109】
いくつかの実施形態では、酪酸及びプロピオン酸、又は各々の薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物は、食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸及びプロピオン酸、又は各々の薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物は、1日3回、毎回食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸及びプロピオン酸、又は各々の薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物は、1日3回、毎回食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸及びプロピオン酸、又は各々の薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物は、1日3回で1週間にわたって、毎回食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸及びプロピオン酸、又は各々の薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物は、1日3回で2週間にわたって、毎回食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸及びプロピオン酸、又は各々の薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物は、1日3回で3週間にわたって、毎回食後に、毎日の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、食事の約5分後、約15分後、約30分後、又は約1時間後に投与される。
【0110】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、毎日の非経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日3回、毎日の非経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で1週間にわたって、毎日の非経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で2週間にわたって、毎日の非経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で3週間にわたって、毎日の非経口用量で投与される。
【0111】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、毎日の非経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日3回、毎日の非経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で1ヶ月間にわたって、毎日の非経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で2ヶ月間にわたって、毎日の非経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で3ヶ月間にわたって、毎日の非経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で1年間にわたって、毎日の非経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で2年間にわたって、毎日の非経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日3回で3年間にわたって、毎日の非経口用量で投与される。
【0112】
いくつかの実施形態では、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む、医薬組成物が、毎日の非経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む、医薬組成物が、1日3回、毎日の非経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む、医薬組成物が、1日3回で1週間にわたって、毎日の非経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む、医薬組成物が、1日3回で2週間にわたって、毎日の非経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸又はその薬学的に許容される塩と、プロピオン酸又はその薬学的に許容される塩と、を含む、医薬組成物が、1日3回で3週間にわたって、毎日の非経口用量で投与される。
【0113】
いくつかの実施形態では、酪酸ナトリウムと、プロピオン酸ナトリウムと、を含む、医薬組成物は、毎日の非経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸ナトリウムと、プロピオン酸ナトリウムと、を含む、医薬組成物は、1日3回、毎日の非経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸ナトリウムと、プロピオン酸ナトリウムと、を含む、医薬組成物は、1日3回で1週間にわたって、毎日の非経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸ナトリウムと、プロピオン酸ナトリウムと、を含む、医薬組成物は、1日3回で2週間にわたって、毎日の非経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸ナトリウムと、プロピオン酸ナトリウムと、を含む、医薬組成物は、1日3回で3週間にわたって、毎日の非経口用量で投与される。
【0114】
いくつかの実施形態では、酪酸及びプロピオン酸、又は各々の薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物は、毎日の非経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸及びプロピオン酸、又は各々の薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物は、1日3回、毎日の非経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸及びプロピオン酸、又は各々の薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物は、1日3回で1週間にわたって、毎日の非経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸及びプロピオン酸、又は各々の薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物は、1日3回で2週間にわたって、毎日の非経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、酪酸及びプロピオン酸、又は各々の薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物は、1日3回で3週間にわたって、毎日の非経口用量で投与される。
【0115】
本明細書に記載の医薬組成物は、正確な投与量の単回投与に適した単位投与形態であり得る。単位投与形態において、製剤は、適切な量の1つ以上の化合物を含有する単位用量に分割される。単位投与量は、別個の量の製剤を含有するパッケージの形態であり得る。非限定的な例は、パッケージされた注射剤、バイアル、又はアンプルである。水性懸濁組成物は、単回用量の再密閉不可能な容器にパッケージすることができる。複数回用量の再密閉可能な容器は、例えば、保存剤と組み合わせて、又は保存剤なしで使用することができる。注射用製剤は、単位投与形態で、例えば、アンプルで、又は保存剤を含む複数回用量容器で提供することができる。
【0116】
本開示の医薬組成物は、例えば、対象を例えば別の医薬品で治療する前、治療中、又は治療後に使用することができる。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、抗ウイルス薬とともに投与される。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、抗生物質とともに投与される。本明細書で提供される医薬組成物は、他の療法、例えば、化学療法、放射線、手術、抗炎症剤、及び選択されたビタミンと併せて投与することができる。他の薬剤は、医薬組成物の前、後、又はそれと同時に投与することができる。
【0117】
治療有効量は、疾患の重症度、対象の年齢及び相対的健康状態、使用される化合物の効力、並びに他の因子に応じて広く変動し得る。化合物は、単独で、又は混合物の成分として1つ以上の治療剤と組み合わせて使用することができる。いくつかの実施形態では、化合物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10種の追加の治療剤と組み合わせて使用することができる。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、1種の追加の治療剤とともに使用され得る。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、2種の追加の治療剤とともに使用され得る。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、3種の追加の治療剤とともに使用され得る。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、抗ウイルス薬とともに投与される。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、抗生物質とともに投与される。
【0118】
治療方法
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、状態を治療するために使用することができる。いくつかの実施形態では、状態は、大腸炎関連結腸直腸がん(CRC)である。いくつかの実施形態では、状態は、肝細胞がんである。
【0119】
キット
本開示の組成物は、キットとしてパッケージすることができる。いくつかの実施形態では、キットは、組成物の投与又は使用に関する書面による指示書を含む。書面は、例えば、ラベルであってもよい。書面は、条件付き投与方法を示唆することができる。指示書は、対象及び監督する医師に、療法の投与から最適な臨床転帰を達成するための最良のガイダンスを提供する。書面は、ラベルであってもよい。いくつかの実施形態では、ラベルは、規制機関、例えば、米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)、又は他の規制機関によって承認され得る。
【実施例
【0120】
実施例1:SCFA処置は、異形成及びHCC結節の数を減少させる。
SCFAは、CLDからのHCCと同様に、慢性炎症のバックグラウンドで発症する大腸炎関連結腸直腸がんを処置するために使用された。したがって、実験は、ヒトHBVキャリアに見られるCLD及びHCCの発症機序(pathogenesis)における多くの段階を厳密に再現するHBxトランスジェニック(HBxTg)マウスモデルにおいて、SCFAが異形成結節及び/又はHCCの発症を遅らせるという仮説を検定するために設計した。異形成結節の発症に対するSCFAの影響を決定するために、HBxTgマウスを6~9ヶ月齢からSCFA又はPBSで処置した(以後、「9ヶ月群」と称する)。HCC発症に対するSCFAの影響を決定するために、マウスの更なる群を、9~12ヶ月齢からSCFA又はPBSで処置した(以後、「12ヶ月群」と称する)。
【0121】
処置の終わりに、9ヶ月群及び12ヶ月群からの肝臓を組織病理について評価し、12ヶ月群の肝臓をプロテオミクスによって更に分析した(図1)。いずれの月齢群においても、PBS対照マウスと比較して、SCFA処置マウスにおいて肝炎又は脂肪症を発症したマウスの数に統計的な差はなかった(表1及び2)。処置を開始する前にマウスがこれらの疾患段階を発症したので、この結果は予想された。対照的に、有意に少ないSCFA処置マウスが、9ヶ月群(P<0.02)及び12ヶ月群(P<0.05)の両方において異形成を発症した。
【0122】
表1は、処置から3ヶ月後の9ヶ月齢マウスにおける肝臓組織病理を示す。表2は、処置から3ヶ月後の12ヶ月齢マウスにおける肝臓組織病理を示す。肝臓を、各葉の異なる部分からの5つの異なる切片において、肝炎、脂肪症、異形成、及びHCCについて評価した。この月齢では、HCC結節は見えなかった。プラス記号(+)は疾患段階の存在を示し、マイナス記号(-)は非存在を示す。病変の数を数え、括弧内に列挙した。
【表1】
【表2】
【0123】
更に、SCFAは、12ヶ月群の対照マウスと比較して、HCCを発症したマウスの数を減少させた(表3、P<0.001)。表3は、9ヶ月齢及び12ヶ月齢のSCFA処置マウス及び対照マウスにおける腫瘍を示す。
【表3】
P<0.02;**P<0.001;***P<0.05。
PBS、リン酸緩衝生理食塩水;SCFA、短鎖脂肪酸。
【0124】
腫瘍を発生させたマウスの中で、SCFA処置マウスは、PBS処置マウスにおいて発生した主に大きな腫瘍と比較して、主に小さなサイズの腫瘍を有した(図2、P<0.001)。図2、パネルAは、腫瘍サイズに対する、SCFA又はPBSで処置した12ヶ月齢マウスの群からの腫瘍結節のパーセンテージを示す。S:小さな腫瘍(<0.5cm)、M:中程度の大きさの腫瘍(0.5~1cm)、L:大きな腫瘍(>1cm)。パネルBは、PBS処置マウスからの大きな腫瘍の例を示す。パネルCは、SCFA処置マウスからの2つの小さな腫瘍の例を示す。(B)及び(C)中の矢印は、腫瘍結節の位置を示す。PBS、リン酸緩衝生理食塩水;SCFA、短鎖脂肪酸。
9ヶ月齢及び12ヶ月齢のマウス由来の肝臓切片を、光学顕微鏡によって組織病理学について試験したところ、HCCは、HCCを有するヒトキャリアと同様に、CLDに特徴的な他の病変も有するマウスの肝臓にのみ存在した(図3、表1及び表2)。したがって、HCCは、処置マウス及び対照マウスの両方においてCLDのバックグラウンドで発現するが、SCFAは、HBV関連HCCの発症機序を遅延させる。図3は、9ヶ月目(パネルA及びB)並びに12ヶ月目(パネルC及びD)に評価された肝臓において示された病理を示すマウスの数を示す。SCFA処置マウス(パネルA及びC)とPBS処置マウス(パネルB及びD)との間で、各月齢群において比較を行う。HCC、肝細胞がん;PBS、リン酸緩衝生理食塩水;SCFA、短鎖脂肪酸。
【0125】
実施例2:SCFAはがん細胞生存率を特異的に低下させる。
SCFAはHBxTgマウスにおいて腫瘍発生を遅延させることができたので、SCFAがヒトHCCの生存率に影響を及ぼすかどうかを評価するために追加の実験を設計した。先に記載された、HBxを構成的に発現するHep3Bx及びHuh7xヒト肝がん細胞株をSCFAで処置した場合、細胞生存率は、24時間にわたって用量依存的に減少した。対照的に、初代ヒト肝細胞の生存率は、同じ用量及び期間でのSCFA処置によって影響を受けなかった(P<0.01;図4)。これらの観察はインビボ実験と一致し、それによって、SCFA処置が腫瘍増殖を部分的に阻害する1つの方法を実証した。
【0126】
図4は、初代ヒト肝細胞及び2つのHBx発現ヒトHCC細胞株に対するSCFAの効果を示す。初代ヒト肝細胞及びHBx(Hep3Bx及びHuh7x)でトランスフェクトしたHCC細胞株を、漸増濃度のSCFAで処置し、MTSアッセイを使用して細胞生存率について評価した。初代ヒト肝細胞(●)、Huh7x
【化2】
及びHep3Bx
【化3】
全ての測定を三回行った。結果は、PBS処置細胞と比較したSCFA処置細胞の生存率(%)として表す。はp<0.01を示す。SCFA、短鎖脂肪酸。
【0127】
実施例3:プロテオミクスによるタンパク質の差次的発現
質量分析に基づくプロテオミクスを、SCFA処置及び対照の12ヶ月齢HBxTgマウス肝臓に対して実施して、腫瘍が出現した月齢での生物学的プロセスにおけるタンパク発現及びシグナル伝達経路に対するSCFAの効果を決定した。したがって、3つの生物学的再現物を、分析した各群に含めた。肝臓の異なる葉からの組織を各サンプルから採取した。これらは微視的腫瘍を含んでいた場合があるが、これらのサンプル中の細胞の大部分は非腫瘍であった。同定された3,000を超えるタンパク質のうち、222のタンパク質が12ヶ月群において差次的に発現された。差次的に発現されたタンパク質は、互いに有意に異なるレベル(P<0.05)でPBS処置群と比較してSCFAにおいて検出されたもの、並びに1つの群における大多数又は全てのサンプルにおいて検出され、比較群のいずれのサンプルにおいても検出されないタンパク質を含む。この試験において使用される質量分析計、Q exactiveは、1ng程度のサンプル中に存在するタンパク質を検出することが可能であり、この質量分析計を、低い検出限界を有する非常に高感度の質量分析計にする。
【0128】
PBS処置マウスと比較してSCFA処置マウスの肝臓において差次的に発現されたタンパク質を、それらのGO生物学的プロセスによって配置した(図5)。図5は、GO生物学的プロセスによって配置された、PBS対照と比較した、SCFA処置後のHBxTgマウス由来の12ヶ月齢の肝臓における発現が減少(黒色バー)又は増加(灰色バー)したタンパク質の数を示す。HBxTg、B型肝炎xトランスジェニック;PBS、リン酸緩衝生理食塩水;SCFA、短鎖脂肪酸。
【0129】
タンパク質輸送を媒介する14個の差次的に発現された遺伝子のうち、13個は対照肝臓において検出可能であったが、SCFA処置サンプルにおいては検出限界未満であった。この観察は、SCFAが、ゴルジとエンドソームとの間の輸送(MON)、エキソサイトーシスを調節するタンパク質(エクソシスト複合成分2及び5)、核内移行及び核外移行を調節するタンパク質(インポーチン-5、エクスポーチン-7、インポーチンサブユニットα-1、核孔複合タンパク質Nup98)、並びにNF-κBシグナル伝達(ELKS/Rab6相互作用CAST)ファミリーメンバーに関与するタンパクの下方制御された発現を含む、タンパク質輸送を下方制御することを示唆する(表4)。
【0130】
表4は、12ヶ月齢の肝臓において、PBSと比較してSCFAによって変化する生物学的プロセスに関連する差次的に発現されたタンパク質を示す。
【表4-1】
【表4-2】
単輸送GO生物学的プロセスに従う。
+、SCFA処置によって強く上方制御され、PBS対照では検出不能であるタンパク質。-PBS対照において強く上方制御され、SCFA処置肝臓において検出不能であるタンパク質。数値を伴うタンパク質は、PBS処置マウスと比較したSCFA処置マウスにおける倍数変化を表す。
PBS、リン酸緩衝生理食塩水;SCFA、短鎖脂肪酸。
【0131】
更に、アポトーシス経路に関与する10個のタンパク質が、SCFA処置後に差次的に発現された。この観察は、SCFAがアポトーシスを促進し得る(STE20様ser/thrキナーゼ、ATP依存性RNAヘリカーゼDDX47、及び腫瘍抑制因子DAB2の発現増加を介して)か、又はアポトーシスから保護し得る(バキュロウイルスIAP反復含有タンパク質6の上方制御、β-カテニン様タンパク質1、及び腫瘍抑制因子タンパク質プルーンホモログの下方制御を介して)ことを示唆する。転写調節において、SCFAは、ヒストンデアセチラーゼ阻害を介する公知の転写調節因子であり、処置は、転写伸長因子Aタンパク質3、ENY2、アクチン様タンパク質6A、及びロイシンリッチ反復フライトレス相互作用タンパク質1(転写リプレッサー)の上方制御された発現、並びにβ-アレスチン-1、TGIDサブユニット5、及びクリプトクロム-1の下方制御された発現をもたらす。
【0132】
転写はまた、SMARCC2及びヌクレオプラスミン-3のクロマチンリモデリングタンパク質SWI/SNF複合体サブユニットの差次的発現によって変化し得る。6つのミトコンドリアタンパク質の発現も変化し、PBS対照肝臓では検出可能であるが、SCFA処置マウスの肝臓では検出不能である。より少数のタンパク質の発現もまた、SCFAによって様々な他の経路において変化する(図5、表4)。
【0133】
12ヶ月齢の肝臓の経路分析は、SCFA処置が、肝臓癌形成においてHBxによって活性化されることが既知である経路の下方制御に関連することを示した。これらの経路としては、PI3K、PDGF、FGF、IGF、EGF、Wnt、VEGF、及びRasが挙げられる(図5)。これらの経路に関連するタンパク質は、PBSを与えた肝臓では上方制御されたが、SCFA肝臓では検出不能であった。これらのシグナル伝達経路の異常な活性化は全て、HCCの開始及び進行に関与している。これらの経路は、細胞増殖及び成長を推進し、アポトーシスを遮断し、血管新生を促進し、これらは全てHCCの発症機序に影響を及ぼす。
【0134】
上記の結果は、SCFA処置が、一部のマウスにおけるHCC結節のサイズ及び出現の減少、並びに他のマウスにおけるより小さい腫瘍と関連することを示した(図2、表3)。HBxは、HCCの発症機序においてRasを活性化することが既知であり、Rasシグナル伝達に関連する多くのタンパク質が、12ヶ月齢のHBxTgマウス肝臓においてSCFA処置によって変化したので(図6)、この経路を更なる分析のために選択した。プロテオミクスデータは、Rasに直接関連するいくつかのタンパク質(例えば、上流Ras-Raf足場タンパク質Shoc2、及び下流活性化因子MEK2)が、SCFA処置によって減少したことを明らかにした。CDK5及びp70S6kを含む、Rasの下流のタンパク質も減少した。腫瘍抑制因子及びRas阻害剤であるDab2は、処置の際に増加した(表4、図6)。総合すると、プロテオミクスの結果は、腫瘍性病変の発生を遅延させるSCFAの能力が、Ras経路における重要な癌促進タンパク質の下方制御を伴うことを示唆している。
【0135】
実施例4:差次的に発現されたRAS関連タンパク質の検証
Ras/Raf/MEK/ERKシグナル伝達カスケードは、細胞増殖、分化、アポトーシス、及び腫瘍形成を推進し、ヒトHCCの50~100%において活性化される。HBxは、Shc-Grb2-Sos複合体形成を促進することによってRasを活性化する。Dab2は、この複合体の形成を競合的に遮断することによってRas活性化を阻害する。Ras経路に関するプロテオミクスの結果を検証するために、IHCを行った。HBxについては、SCFA処置マウス及びプラセボ処置マウスの多くが、細胞の核区画及び細胞質区画においてびまん性、小葉性及び散在性の組織染色を示したが、差異は統計的に有意ではなかった。しかしながら、HBx染色の強度は、対照と比較して、SCFA処置マウスにおいて減少した(図6、パネルA及びD、P<0.02を比較されたい)。細胞質染色は、全てのマウスから評価された肝臓サンプルにおいて観察されたが、動物の半分は核HBxも有していた。これらの同じマウスからの連続した組織スライドをDab2について染色した場合、散在した単一細胞は、SCFA処置マウス及びプラセボ処置マウスの両方において、Dab2について弱い細胞質染色及び時には核染色を示したが、これらの差異は統計的に有意ではなかった。しかしながら、Dab2染色は、多数の散在した細胞においてより広範囲であり、小葉組織染色を、対照組織と比較して、SCFA処置組織において観察した(図6、パネルB及びE、P<0.025を比較されたい)。染色特異性は、正常ウサギIgG(図6、パネルC)又は無関係なモノクローナル抗体(図6、パネルF)を用いて実証された。ウェスタンブロッティングは、Dab2が対照マウスと比較してSCFA処置マウスにおいて2.6倍上方制御されたこと、及びRasがRafを活性化するために必要とされるShoc2については、その逆が観察されたことを示した(図6、パネルG及びH;P<0.01)。プロテオミクス及びウェスタンブロッティングによって検出されたShoc2及びDab2変化の確認は、SCFAがRas経路を下方制御し得ることを更に裏付ける。更に、Rasシグナル伝達を抑制するDab2の上方制御はまた、MEK1/2、サイクリン依存性キナーゼ5(CDK5)、β-アレスチン1、及びリボソームキナーゼp70s6kなどの下流エフェクターのレベルの抑制をもたらすこととなり、これらは全て、PBS処置マウスの肝臓において高度に発現されたが、プロテオミクス分析においてSCFAで処置したマウスでは検出不能であった(図6、パネルI)。
【0136】
図6は、PBS(パネルA~C)又はSCFA(パネルD~F)で処置した動物からの12ヶ月齢マウスの肝臓における、HBx(パネルA及びD)、Dab2(パネルB及びE)、正常IgG(パネルC)、又はウサギ免疫前血清(パネルF)についての免疫組織化学的染色を示す。パネルGは、対照(C)肝臓と比較した処置(T)肝臓からのDab2及びShoc2の代表的なウェスタンブロットを示す。パネルHは、対照(n=12)マウスと比較して、処置(n=12)マウスから差次的に発現されたDab2及びShoc2の概要を示す(*P<0.01)。パネルIは、12ヶ月齢のHBxTgマウス肝臓におけるRas関連のタンパク質に対するSCFAのプロテオミクスデータの概要を示す。SCFA処置によって発現が増加したタンパク質を三角で示し、SCFA処置によって減少したタンパク質を丸で示す。SCFA処置によって差次的に発現されなかったRas経路におけるタンパク質は、四角で示されている。Dab2、無効ホモログ2;HBx、B型肝炎x;SV40、シミアンウイルス40;SCFA、短鎖脂肪酸。
【0137】
Rasは、活性なGTP結合型と不活性なGDP結合型との間を循環する小さなGTPアーゼである。次いで、GSTプルダウンアッセイを使用して、12ヶ月齢のSCFA給餌肝臓及びPBS給餌肝臓における活性型Ras(Ras-GTP)のレベルを決定するために実験を設計した。SCFA処置HBxTgマウス肝臓は、対照サンプルと比較して、Ras-GTPの発現において4倍の減少を示し(図7)、プロテオミクス(表4)及びウェスタンブロット法(データを示さず)によって決定されるように、SCFA処置が活性Rasのレベルの減少に関連するが(P<0.001)、総Rasタンパクのレベルに変化がないことを実証した。Rasが発がんに重要な多くのプロセスを刺激し、HCCにおいて活性化されることが既知であることを考慮すると、これらの結果は、Rasを阻害するSCFAの能力が、この動物モデルにおけるHCCの遅延した発症機序に寄与することを示唆している。
【0138】
図7のパネルAは、分析前に、対照としてPBSで処置した3匹の異なるマウス(C)及び試験化合物(T)、SCFAで処置した3匹のマウスにおける活性化Rasについてのプルダウンアッセイを示す。パネルBは、SCFAで処置した別の7匹と比較した、PBSで処置した7匹のマウスにおけるRasプルダウンの概要を示す(P<0.001)。シグナル密度を任意単位(a.u.)で測定した。GTP、グアノシン三リン酸;PBS、リン酸緩衝生理食塩水;SCFA、短鎖脂肪酸。
【0139】
実施例5:考察
実験を、HCC結節が発症する時点でHBxTgマウスの肝臓に生じる変化を特定するように設計した。SCFAは、9ヶ月齢までに異形成を発症したマウスの数を有意に減少させた(表3)。12ヶ月齢のマウスにおいて、処置は、異形成及びHCCを発症したマウスの数を減少させた(表3)。予想外に、脂肪症の発生率は、対照と比較して両方の処置群において高かったが、これらの差異は統計的に有意ではなかった。これは、先に報告されたように、処置群における脂肪酸のより高い摂取によるものであり得る。SCFAで処置した12ヶ月群は、対照マウスよりも小さい腫瘍を有していた(図2)。この結果は、SCFA処置が、腫瘍発症を遅延させ得るか、及び/又は確立された腫瘍の増殖に直接影響し得るかのいずれかであることを示唆している。後者はインビトロで確認され、SCFAはHBx陽性ヒトHCC細胞株、Huh7x及びHep3Bxの増殖を阻害した(図4)。これらの知見は、ブチレートがHepG2.2.15細胞の増殖を阻害することを示す以前の観察を広げるものである。ブチレートはまた、肝がん細胞株の分化を促進することによって腫瘍進行を遅延又は予防し得る。SCFAによる初代ヒト肝細胞の処置は、生存率の識別可能な損失をもたらさなかった(図4)。この結果は、腫瘍細胞の生存に影響を及ぼす経路が、正常な肝細胞における同じ経路よりもSCFAに対してはるかに感受性であったことを示唆している。
【0140】
SCFAの効果の根底にあるシグナル伝達経路及び遺伝子発現パターンにおけるこれらの変化の性質を区別するために、12ヶ月齢マウスから採取した複数の肝臓サンプルにおいてプロテオミクスを行った。結果は、様々な生物学的プロセスにおける多くのタンパク質の差次的発現を示し(図5)、それによって多段階発がんに対するSCFAの有望な多面発現効果を強調した。肝臓におけるこれらの差次的に発現されたタンパク質の経路分析は、とりわけ、SCFA処置に応答して、抑制されたRas、PI3K、VEGF、TGF-β、インターフェロンシグナル伝達、及び炎症関連経路を明らかにした(表4)。これらの同じ経路は、HBxによって活性化されることが既知である(図8)。
【0141】
図8は、12ヶ月齢のSCFA処置肝臓対対照HBxTg肝臓の経路分析の概要を示す。示された経路は、一貫して、HBxによって上方制御され、SCFAによって下方制御された。EGF、上皮細胞増殖因子、FGF、線維芽細胞増殖因子;HBx、B型肝炎x;HBxTg、B型肝炎xトランスジェニック;HCC、肝細胞がん;IGF、インスリン様増殖因子;PDGF、血小板由来増殖因子;PI3K、ホスホイノシチド3-キナーゼ;SCFA、短鎖脂肪酸;VEGF、血管内皮増殖因子。
【0142】
加えて、HBxによって構成的に活性化され、HCCの発症機序に重要に寄与するNF-κBは、SCFA、特にブチレートによってエピジェネティックに下方制御される。本明細書における下方制御されたがん関連経路の中で、Ras、PI3K、VEGF、FGF、及びEGFは全て、HCCにおいてHBxによって活性化され、全てNF-κBとクロストークし、それによって、NF-κB阻害も起こり得ることが示唆される。HBxは、PI3K及びRas経路の活性を促進することによって、感染細胞をアポトーシスから保護する。この調節解除は、抑制されていない細胞増殖、浸潤、及び転移を介してHCC進行を促進することが見出された。血管新生(VEGFシグナル伝達)、細胞死(アポトーシスシグナル伝達)、免疫介在性破壊(T細胞活性)、持続的増殖シグナル伝達(IGF、Ras、及びPDGF)、腫瘍促進性炎症(ケモカイン及びサイトカインシグナル伝達)、並びに浸潤及び転移(インテグリンシグナル伝達)を伴う他の経路における変化は、これらの全てがSCFAによって下方制御され、最終的にHCCの発症をもたらす複数の段階における遅延の根底になり得るがんの顕著な特徴である。
【0143】
先に、HBxは、Krasと相乗作用してHCCの形成及び進行を促進することが示された。この関係はまた、タンパク質の中でもとりわけ、Akt、TGF-β、及びβ-カテニンの調節解除をもたらした。HBV感染組織のプロテオミクス分析により、HBxが、HIF-1αとの相互作用を介して酸化ストレスを増加させ、本明細書されるプロテオミクス分析において改変されることも実証された経路であることが確認された。隣接する非腫瘍組織と比較したHBV-HCC組織の更なる分析は、β-カテニン関連タンパク質、NF-κBシグナル伝達成分、リボソームサブユニット、ユビキチン関連タンパク質、呼吸複合体及び代謝関連タンパク質の発現の変化を示し、これは、本試験においても検出された変化を裏付ける。本明細書に提示されるこのデータは、HCCの発症機序においてHBxによって変化するタンパク質及び経路のいくつかが、SCFAでの処置によって逆転されることを立証する。
【0144】
マルチキナーゼ阻害剤、ソラフェニブ、及び関連化合物による治療は、後期HCC患者の標準的治療であった。具体的には、ソラフェニブによるPI3K、PDGF、VEGF、IGF、TGF-β、及びRas経路の阻害が、この薬物の化学療法効果であると原因であると広く考えられている。ソラフェニブの有効性を制限する1つの問題は、進行したHCCを有する患者に治療が提供されるということであり得、がんをもたらす重大な変化の多くが腫瘍の発生の前に既に起こっている場合、より早期の介入が予防的価値を有することがある。SCFAは正常な肝細胞の生存率に影響を及ぼさなかったので(図4)、SCFAは悪性細胞に対して特異的に毒性であり、既に著しい肝臓損傷を有するHBVキャリアの間で毒性を制限する代替的なアプローチを提供し得る。
【0145】
SCFAが12ヶ月齢の処置された肝臓においてHCCの発生率を低下させること、及びRasシグナル伝達経路がHBxによって刺激され、かつHCCにおいて一般的に活性化されることを考慮して、プロテオミクスによって差次的に発現されたRas経路成分の活性及び差次的発現を検証するために更なる研究を行った。図6における結果は、腫瘍抑制因子Dab2の発現の増加、及び下流Rasシグナル伝達経路成分であるShoc2の発現の減少を示す。Ras活性も、SCFA処置によって有意に減少した(図7)。重要なことに、HCCにおけるDab2のエピジェネティックなサイレンシングが、Ras活性化と関連付けられ、それによってHCCの開始及び進行がもたらされる。Dab2は、Grb2へのSos結合と競合することによってRasを負に調節し、それによってSos/Grb2複合体の形成を破壊し、結果として生じるRasの活性化を抑制するので、これは、SCFAがHCCの発症機序を遅延させる1つの機序であり得る。この経路の活性化は、乳がん、結腸がん、及び前立腺がんを含むいくつかの他のヒトがんにおいても見出され、このことは、SCFAが他のがんタイプの治療において有益であり得ることを示唆している。
【0146】
Dab2のエピジェネティックなサイレンシングは、他のヒトがんにおいて調査された。周知のHDACiであるトリコスタチンA(TSA)による治療は、鼻咽頭がん、扁平上皮がん、及び移行上皮がん細胞におけるDab2の発現を回復させた。この結果は、HDAC媒介性クロマチン調節がDab2下方制御において役割を果たし得ることを示す。SCFAは、エピジェネティックにサイレンシングされた遺伝子の発現をいくつかの方法で回復可能にすることができる。ブチレートが、HDAC、SIRT-1を阻害することによってHBx発現を遮断することが示されたので、SCFAはHBx自体を遮断し、これによりそれがその変化を媒介することを妨げ得る。ブチレートはまた、HepG2.2.15細胞におけるHBxの発現を阻害することが示され、これはまたインビボで観察された。分子レベルでは、SCFAは、それらの活性部位に競合的に結合することによってHDACを無効にし、これにより腫瘍抑制因子のサイレンシングを阻害し得る。SCFA処置マウスの肝臓におけるHBx発現の減少(図6)はまた、HBxによって阻害されることも既知である腫瘍抑制因子p53の活性を回復させ得る。更に、Dab2は、子宮頸がんにおけるmiR-106bの標的として同定された。HCCにおけるDab2抑制は、HBxによって促進されるmiR-106bの発現の増加によるものであり得る。ブチレートは、miR-106bの発現を減少させ、これは細胞増殖の減少を伴った。したがって、SCFAの使用によるHBx機能の標的化は、肝硬変及びHCCの発症のリスクが高いCLDを有するHBVキャリアの治療のための新規の非毒性アプローチを提供することができる。
【0147】
実施例6:材料及び方法
A.短鎖脂肪酸(SCFA):SCFAを購入し、更に精製することなく使用した。SCFAは、ブチレート、プロピオネート、及びアセテートのナトリウム塩であった。
【0148】
B.マウス及び処置:HBxTgマウス(C57B1/6×DBA)では、6ヶ月齢までに肝炎及び脂肪症が動物で発症し、9ヶ月齢までに異形成が発症し、12ヶ月齢までにHCC結節が発症する。両方の性別の6ヶ月齢及び9ヶ月齢のマウスからなる同胞同腹子を、3ヶ月間の経口胃管栄養法によってSCFA又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で日中に週5日処置した。各SCFAの濃度は、40mMのブチレート、67.5mMのアセテート、及び25.9mMのプロピオネートであった。処置の3ヶ月後、肝臓を取り出し、次いで組織学的検査を行った。腫瘍直径を、小結節(<0.5cm)、中結節(0.5~1.0cm)及び大結節(>1cm)についてキャリパーを使用して測定した。12ヶ月齢群の3匹のマウスからの肝臓サンプルをプロテオミクスのために調製した(下記参照)。
【0149】
対照は同胞同腹子であった。全てのマウスに同じ食餌を与え、水を自由裁量で与えた。マウスは、処置前に絶食させなかった。処置は、明周期中、毎日ほぼ同じ時間に行った。マウスを、富化のためにBed-o’cob(登録商標)及びドームを備えたオートクレーブケージに収容した。処置の3ヶ月後、マウスをケタミン/キシラジンカクテルで麻酔し、次いでPBSで灌流した。
【0150】
図1は、HBxトランスジェニック(HBxTg)マウス試験の実験ステップの概要を示す。アスタリスク()は、各群のマウスを安楽死させたときのマウスの月齢を示す。バーは、SCFA(群1及び3)又はPBS(群2及び4)で処置したマウスについての6~9ヶ月(群1及び2)及び9~12ヶ月(群3及び4)の処置期間を示す。H&E、ヘマトキシリン及びエオシン;IHC、免疫組織化学;PBS、リン酸緩衝生理食塩水;SCFA、短鎖脂肪酸。
【0151】
C.免疫組織化学:組織サンプルのパラフィン埋め込み切片を使用して、免疫組織化学(IHC)分析を実施した。一次抗体は、抗HBx(抗99)、並びにDab2及びShoc2に対するウサギポリクローナル抗体であった。
【0152】
HBxTgマウスの肝臓を摘出し、ホルマリンで固定し、パラフィンに埋め込んだ。5μm厚の組織切片を、これらのパラフィンブロックから調製した。免疫組織化学(IHC)のために、スライドを脱パラフィンし、脱水し、Unitrieve抗原回復溶液中で30分間インキュベートし、60℃に加熱し、UltraVision(登録商標)検出システムを使用して染色した。正常マウス免疫グロブリンG(IgG)を抗Dab2の対照として使用し、一方、抗99抗体(抗HBxペプチド抗体)を産生するように免疫化した同じ動物由来の前採血ウサギ血清をHBxのIHCの対照として使用した。Dab2染色のために、ウサギポリクローナル抗体を使用し、正常ウサギIgGを対照として使用した。抗体希釈物を製造業者によって推奨されるとおりに使用した。IHCの結果は、+(<20%の陽性細胞)、++(20~70%の陽性細胞)、及び+++(>70%の陽性細胞)として記録した。IHCはまた、散在性(個々の細胞が陽性)、小葉性(陽性細胞の群)、又はびまん性(切片中のほとんどの細胞が陽性)として細胞レベルで評価した。IHCについての細胞内局在(subcellular localization)も、膜(M)、核(N)、又は細胞質(C)として評価した。肝臓組織病理検査は、ヘマトキシリン及びエオシン染色を使用して評価された。スライドは2人の研究者によって独立して評価された。
【0153】
D.SDS/PAGES及びウェスタンブロット法:12ヶ月齢の対照及びSCFA処置HBxTgマウス肝臓サンプル由来の急速凍結肝臓組織から、タンパク溶解物を調製した。予め急速凍結した肝臓組織を、プロテアーゼ阻害剤カクテルを含む溶解緩衝液中でホモジナイズした。14,000gで15分間の遠心分離を2回行うことによって、細胞破片を除去した。細胞からのタンパク質抽出物を、同じ溶解緩衝液を用いて調製した。ウェスタンブロッティング(WB)のために、肝臓組織からの100μgのタンパク質抽出物をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、ニトロセルロース膜に移した。膜を抗Dab2又は抗Shoc2、及び抗β-アクチンと共にインキュベートした。ブロットを、Odyssey(登録商標)ウェスタンブロッティングキットを用いて発色させた。二次抗体は、β-アクチン検出にはIRDye(登録商標)ヤギ抗マウス、又は、Dab2又は抗Shoc2にはヤギ抗ウサギIgGであった。可視化をOdyssey(登録商標)Fcイメージングシステムによって行い、定量化をImage Studio(登録商標)ソフトウェアによって行った。
【0154】
E.RAS活性アッセイ:製造業者の指示書に従って、対照及びSCFA処置HBxTgマウス肝臓サンプルに対してRas活性化アッセイを実施して、GTP結合Rasを単離した。単離してから、サンプルをSDS-PAGEによって分離し、ニトロセルロース膜に移した。膜を抗ras及びIRDye(登録商標)ヤギ抗ウサギIgGと共にインキュベートした。ブロットを、Odyssey(登録商標)ウェスタンブロッティングキットを用いて発色させた。Odyssey(登録商標)Fcイメージングシステムを使用してブロットを可視化し、Image Studio(登録商標)ソフトウェアによって定量化した。
【0155】
F.細胞培養:Hu7及びHep3B細胞を、組換えレトロウイルスによってHbx遺伝子で安定に形質導入し(それぞれ、Hu7x及びHep3Bxと呼ぶ)、先に記載されたように個々のクローンを選択せずに培養した。初代ヒト肝細胞をZen-Bio,Inc.から購入し、製造業者の指示書に従って培養した。
【0156】
G.細胞生存率及び処置:細胞を完全DMEM中の96ウェルプレートに播種し、5%CO中で一晩インキュベートした。処置は、24時間にわたる異なる濃度のSCFA(0、1、5、及び10mM)からなった。次いで、細胞生存を、製造業者の指示書に従ってMTSアッセイを使用して三回で決定した。
【0157】
H.プロテオミクス及びデータ解析:12ヶ月齢の対照(n=3)及びSCFA処置(n=3)HBxTgマウス由来の肝臓組織をホモジナイズし、抽出タンパク質を消化した。ペプチドを酸性化し、活性化された内製カチオンステージ先端上にロードし、精製し、3つの画分に溶出した。これらの画分について質量分析を行った。差次的に改変されたタンパク質を、PANTHER(進化的関係によるタンパク質分析)分類システムを用いて機能的経路に組織化した。
【0158】
サンプルを14,000gで10分間遠心分離した。タンパク質濃度を、Bradfordアッセイを用いて決定した後、100μgのタンパク質を酵素トリプシンで消化した。サンプルを、in-StageTip処置プロトコルに従って分画し、脱塩した。
【0159】
無標識プロテオーム解析を、各群の各マウスからのこれらの画分に対して独立して行った。ペプチド混合物を、イオン交換クロマトグラフィーによって分画し、次いで、MaxQuant(登録商標)ソフトウェアを使用するQ Exactive(登録商標)質量分析によって同定し、PANTHERによって更に解析した。エレクトロスプレーイオン化(ESI)は、-1800Vのスプレー電圧でエミッタ(ID 30μM、長さ40mm)を用いてなされた。MS/MS断片化は、MSモードとMS/MSモードとの間の自動切り替えを伴う、動的排除(1つのスペクトル後の10.0秒間排除)を伴う衝突誘起解離を使用して、各スペクトル内の10個の最も多く存在するイオンに対して行われた。ペプチド誤認率(FDR)は0.01であり、タンパクFDRは0.01であり、最小ペプチド長は7アミノ酸であり、最小レイザ及びユニークペプチドは1分であった。生成されたピークリストをAndromeda(登録商標)ソフトウェアにより処理し、SwissProtマウスデータベース(リリース2018年1月;16,950の配列)に対して検索した。Andromeda検索パラメータをハツカネズミ(Mus musculus)(種);トリプシン(酵素);Cys上のカルバミドメチル(固定修飾);(可変修飾)、メチオニン酸化及びアセチル(タンパク質N末端);前駆体ペプチドに対する7ppmの質量公差及び生成イオンに対する20ppm質量公差として設定した。データを、1%タンパク質及びペプチドスペクトルマッチ(PSM)FDRでフィルタリングした。
【0160】
I.統計:全てのデータを、Excel(登録商標)又はGGraphPad(登録商標)ソフトウェアを用いて分析し、更なる統計解析を以下に概説するように実施した。
【0161】
プロテオミクスのために、群内で低い分散を有する選択されたタンパク質、及び群間で差次的に発現されたタンパク質について、定量化されたタンパク質に対して、統計的有意性に対しt検定を行った。差次的に発現されたタンパク質(対照マウスと比較して大きさの差が2倍より大きく、P<0.05)をPANTHER経路解析のために選択した。更に、1つの群からの大多数又は全てのサンプルにおいて検出され、比較群のサンプルでは検出されなかったタンパク質を、経路解析及び文献検索のために選択した。
【0162】
カイ二乗解析を使用して、異形成及びHCCを発症した処置対対照HBxTgマウス肝臓のパーセンテージ間の有意性を決定した。スチューデントのt検定を使用して、9ヶ月齢の処置HBxTgマウス対対照HBxTgマウスにおける異形成結節の発症、並びに12ヶ月齢の処置HBxTgマウス対対照HBxTgマウスにおける腫瘍発症における有意性を評価した。処置対対照間のDab2の染色強度の差をカイ二乗解析によって評価した。細胞株における細胞生存率の差は、スチューデントのt検定によって決定した。P<0.05の場合、統計的有意性であるとみなされた。
【0163】
実施例7:ブチレートとプロピオネートと水酸化マグネシウムとを含む製剤によるHBxトランスジェニックマウスの処置
HBxトランスジェニックマウス(C57B1/6×DBA)を作り出し、マウスが6ヶ月齢までに肝炎及び脂肪症を発症し、9ヶ月齢までに異形成を発症し、12ヶ月齢までにHCC結節を発症するように改変する。両方の性別の6ヶ月齢及び9ヶ月齢のマウスからなる同胞同腹子を、日中、週7日、製剤1(40mMのブチレートと、25.9mMのプロピオネートと、9mMのMg(OH)と)で処置するか、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で処置する。製剤1又はPBSを飲料水に添加することによって、製剤1又はPBSを3ヶ月間投与する。水を毎日新鮮な製剤1又はPBSサンプルと交換する。各群のマウスは、およそ同数の雄及び雌マウスを有する10匹のマウスからなる。
【0164】
6~9ヶ月齢からの製剤1(群1)又はプラセボ(群2)による処置の3ヶ月後、又は9~12ヶ月齢からの製剤1(群3)又はプラセボ(群4)による処置の3ヶ月後に、マウスを失血により安楽死させ、更なる分析のために肝臓を取り出す。更なる実験のために、マウスを製剤1(群5)又はPBS(群6)で9ヶ月間(3~12ヶ月齢)処置する。血液サンプルを、フローサイトメトリーによって、炎症促進性マーカー及び抗炎症性マーカーについて、並びにCD8+T細胞及びFoxP3+T細胞の頻度についてスクリーニングする。HBx発現を、製剤1及びPBS処置マウスの肝臓において評価する。
【0165】
実施例8:酪酸とプロピオン酸と水酸化マグネシウムとを含む製剤によるHBV関連肝炎の治療。
60歳の中央値を有する合計100人の患者が動員される。患者は、進行中のHBV感染及び関連する肝臓炎症並びに/又は肝硬変を有し、ブチレートに対する禁忌がない。患者に、酪酸ナトリウム1gと、プロピオン酸ナトリウム100mgと、水酸化マグネシウム0.0055mgと、を含む製剤を1日3回投与するか、又はプラセボを投与し、肝細胞がん(HCC)のスクリーニングプログラムに含める。対象は、5年の中央値にわたって追跡される。治療の直前に、患者をALT/AST、GGT;フィブロスキャンによる肝硬度;血中の炎症促進性サイトカイン及び抗炎症性サイトカイン(TNFα、IFNγ、IL-2、IL-4、IL5~IL10);並びにHBVマーカー(HBeAg、抗HBe、及びHBV DNA)についてスクリーニングする。スクリーニングは、試験が完了するまで毎年繰り返される。治療コホート及び未治療コホートにおける慢性肝疾患(肝炎及び線維症)、肝臓がん、慢性肝疾患関連死(通常肝硬変による)、又は移植の発生率について多変量解析によって患者を解析する。
【0166】
実施形態
以下の非限定的な実施形態は、本発明の例示的な実施例を提供するが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0167】
実施形態1。肝細胞がんを治療する方法であって、肝細胞がんの治療を必要とする対象に医薬組成物を投与することを含み、医薬組成物が、治療有効量の第1の短鎖脂肪酸である第1の化合物又はその薬学的に許容される塩と、治療有効量の第2の短鎖脂肪酸である第2の化合物又はその薬学的に許容される塩と、水酸化マグネシウムと、を含む、方法。
【0168】
実施形態2。肝細胞がんが、B型肝炎ウイルス関連肝細胞がんである、実施形態1に記載の方法。
【0169】
実施形態3。投与することが、経口投与することである、実施形態1又は2に記載の方法。
【0170】
実施形態4。投与することが、皮下投与することである、実施形態1又は2に記載の方法。
【0171】
実施形態5。投与することが、静脈内投与することである、実施形態1又は2に記載の方法。
【0172】
実施形態6。第1の化合物が、酪酸である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0173】
実施形態7。第1の化合物が、酪酸ナトリウムである、実施形態6に記載の方法。
【0174】
実施形態8。第1の化合物の治療有効量が、約500mg~約4000mgである、実施形態1に記載の方法。
【0175】
実施形態9。第1の化合物の治療有効量が、約2000mgである、実施形態1に記載の方法。
【0176】
実施形態10。第1の化合物の治療有効量が、約3000mgである、実施形態1に記載の方法。
【0177】
実施形態11。第1の化合物の治療有効量が、約4000mgである、実施形態1に記載の方法。
【0178】
実施形態12。第2の化合物が、プロピオン酸である、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0179】
実施形態13。第2の化合物が、酪酸ナトリウムである、実施形態12に記載の方法。
【0180】
実施形態14。第2の化合物の治療有効量が、約50mg~約500mgである、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0181】
実施形態15。第2の化合物の治療有効量が、約150mgである、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0182】
実施形態16。第2の化合物の治療有効量が、約250mgである、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0183】
実施形態17。第2の化合物の治療有効量が、約400mgである、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0184】
実施形態18。医薬組成物が、最大で約0.5%(w/w)の水酸化マグネシウムを含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0185】
実施形態19。医薬組成物が、最大で約0.3%(w/w)の水酸化マグネシウムを含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0186】
実施形態20。医薬組成物が、最大で約0.1%(w/w)の水酸化マグネシウムを含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0187】
実施形態21。医薬組成物が、薬学的に許容される賦形剤を更に含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法。
【0188】
実施形態22。薬学的に許容される賦形剤が、セルロースである、実施形態21に記載の方法。
【0189】
実施形態23。薬学的に許容される賦形剤が、メチルセルロースである、実施形態21に記載の方法。
【0190】
実施形態24。薬学的に許容される賦形剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、実施形態21に記載の方法。
【0191】
実施形態25。医薬組成物が、腸溶コーティングを更に含む、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
【0192】
実施形態26。腸溶コーティングが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルである、実施形態25に記載の方法。
【0193】
実施形態27。医薬組成物が、錠剤として製剤化される、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法。
【0194】
実施形態28。医薬組成物が、カプセルとして製剤化される、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法。
【0195】
実施形態29。対象が、ヒトである、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法。
【0196】
実施形態30。医薬組成物であって、治療有効量の酪酸である第1の化合物又はその薬学的に許容される塩と、治療有効量のプロピオン酸である第2の化合物又はその薬学的に許容される塩と、水酸化マグネシウムと、を含む、医薬組成物。
【0197】
実施形態31。医薬組成物であって、治療有効量の酪酸である第1の化合物又はその薬学的に許容される塩と、治療有効量のプロピオン酸である第2の化合物又はその薬学的に許容される塩と、水酸化マグネシウムと、から本質的になる、医薬組成物。
【0198】
実施形態32。第1の化合物の治療有効量が、約500mg~約4000mgである、実施形態30又は31に記載の医薬組成物。
【0199】
実施形態33。第1の化合物の治療有効量が、約2000mgである、実施形態30又は31に記載の医薬組成物。
【0200】
実施形態34。第1の化合物の治療有効量が、約3000mgである、実施形態30又は31に記載の医薬組成物。
【0201】
実施形態35。第1の化合物の治療有効量が、約4000mgである、実施形態30又は31に記載の医薬組成物。
【0202】
実施形態36。第1の化合物の薬学的に許容される塩が、酪酸ナトリウムである、実施形態30又は31に記載の医薬組成物。
【0203】
実施形態37。第2の化合物の治療有効量が、約50mg~約500mgである、実施形態30~36のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0204】
実施形態38。第2の化合物の治療有効量が、約150mgである、実施形態30~36のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0205】
実施形態39。第2の化合物の治療有効量が、約250mgである、実施形態30~36のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0206】
実施形態40。第2の化合物の治療有効量が、約400mgである、実施形態30~36のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0207】
実施形態41。第2の化合物の薬学的に許容される塩が、プロピオン酸ナトリウムである、実施形態30~40のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0208】
実施形態42。医薬組成物が、最大で約0.5%(w/w)の水酸化マグネシウムを含む、実施形態30~41のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0209】
実施形態43。医薬組成物が、最大で約0.3%(w/w)の水酸化マグネシウムを含む、実施形態30~41のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0210】
実施形態44。医薬組成物が、最大で約0.1%(w/w)の水酸化マグネシウムを含む、実施形態30~41のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0211】
実施形態45。薬学的に許容される賦形剤を更に含む、実施形態30~44のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0212】
実施形態46。薬学的に許容される賦形剤が、セルロースである、実施形態45に記載の医薬組成物。
【0213】
実施形態47。薬学的に許容される賦形剤が、メチルセルロースである、実施形態45に記載の医薬組成物。
【0214】
実施形態48。薬学的に許容される賦形剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、実施形態45に記載の医薬組成物。
【0215】
実施形態49。医薬組成物が、腸溶コーティングを更に含む、実施形態30~48のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0216】
実施形態50。腸溶コーティングが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルである、実施形態49に記載の医薬組成物。
【0217】
実施形態51。医薬組成物が、錠剤として製剤化されている、実施形態30~50のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0218】
実施形態52。医薬組成物が、カプセルとして製剤化されている、実施形態30~50のいずれか1つに記載の医薬組成物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図8
【国際調査報告】