(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-27
(54)【発明の名称】医療用チューブ清掃装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/00 20060101AFI20231117BHJP
A61B 90/70 20160101ALI20231117BHJP
【FI】
A61M1/00 160
A61B90/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528990
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(85)【翻訳文提出日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 US2021059687
(87)【国際公開番号】W WO2022109006
(87)【国際公開日】2022-05-27
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516245863
【氏名又は名称】クリアフロー, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CLEARFLOW, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュナン, ケネス
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA18
4C077BB10
4C077DD21
4C077EE04
4C077GG02
(57)【要約】
医療用チューブから邪魔なデブリを除去する清掃装置を作動させる方法及び装置が開示される。より詳細には、チューブ内の磁気ガイドに磁気的に係合して並進させるように適合される第1の主磁気要素を備えるシャトルが開示される。第1の主磁気要素は、そこから生じる第1の主磁界が、シャトルの側部から見ると、チューブの長手方向軸に対して実質的に垂直に位置合わせされるように位置合わせされる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉塞物を除去する装置であって、
中にチューブを収容するように構成されるチューブ通路を画定し、前記チューブ通路内に収容されると前記チューブの長さに沿って並進するように適合されるシャトルを備え、
該シャトルは、第1の主磁気要素を備え、
該第1の主磁気要素は、その第1の主磁界の第1の主磁界軸が、該シャトルの側部から見ると、前記チューブ通路の長手方向軸に対して実質的に垂直に位置合わせされるように位置合わせされる、装置。
【請求項2】
前記シャトルは、第2の主磁気要素を更に備え、
該第2の主磁気要素は、その第2の主磁界の第2の主磁界軸が、前記シャトルの前記側部から見ると、前記チューブ通路の前記長手方向軸に対して実質的に垂直に位置合わせされるように位置合わせされる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の主磁気要素のN極は、前記チューブ通路を向き、前記第2の主磁気要素のS極は、前記チューブ通路を向く、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記チューブ通路内に受けられ、中に磁気ガイドを有するチューブを更に備え、
前記第1の主磁界軸は、前記長手方向軸に沿って前記磁気ガイドのS極末端と実質的に位置合わせされ、
前記第2の主磁界軸は、前記長手方向軸に沿って前記磁気ガイドのN極末端と実質的に位置合わせされる、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記シャトルは、第1の副磁気要素を更に備え、
該第1の副磁気要素は、その第1の副磁界の第1の副磁界軸が、前記シャトルの前記側部から見ると、前記チューブ通路の前記長手方向軸に対して実質的に垂直に位置合わせされるように位置合わせされる、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の主磁気要素及び前記第1の副磁気要素は、前記第1の主磁界軸及び前記第1の副磁界軸が、前記チューブ通路の前記長手方向軸に対して径方向に位置合わせされるように、前記チューブ通路に対して互いに対向する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記チューブ通路内に受けられ、中に磁気ガイドを有するチューブを更に備え、
前記第1の主磁界軸及び前記第1の副磁界軸は、前記長手方向軸に沿って前記磁気ガイドのS極末端と実質的に位置合わせされる、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記シャトルは、第2の副磁気要素を更に備え、
該第2の副磁気要素は、その第2の副磁界の第2の副磁界軸が、前記シャトルの前記側部から見ると、前記チューブ通路の前記長手方向軸に対して実質的に垂直に位置合わせされるように位置合わせされる、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記チューブ通路内に受けられ、中に磁気ガイドを有するチューブを更に備え、
前記磁気ガイドと前記第1の主磁気要素との間の磁気結合の強度は、調整可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記磁気結合の強度は、前記シャトルにおける前記第1の主磁気要素の第1の位置と第2の位置とに対して、前記磁気ガイドと前記第1の主磁気要素との間の距離を調整することによって、調整可能である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の主磁気要素は、前記チューブ通路から離れた第1の位置と、前記チューブ通路に近接した第2の位置との間で調整可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記シャトルは、前記チューブ通路から離れるように径方向にばね付勢されるボタンを更に備え、ばね付勢に抗して前記ボタンを押下すると、前記第1の主磁気要素が前記第1の位置から前記第2の位置に向かって付勢される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記第1の副磁気要素は、前記シャトル内に固定される、請求項5に記載の装置。
【請求項14】
前記第1の主磁気要素の露出面に隣接して配置される主磁気シールドを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記シャトルは、前記チューブ通路の1つの側方部から前記通路の反対側の側方部へと延在する側方磁気シールドを更に備える、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記シャトルは、前記チューブ通路を画定する通路本体を更に備え、
前記側方磁気シールドは、強磁性材料を含み、前記通路本体から側方に延在するフィン上に着座し、
前記フィンは、前記第1の主磁界によって誘導される変形に抗して前記側方シールドの形状を維持するように寸法決定される、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記フィンは、前記側方磁気シールドの開口部内に嵌合するように構成される突出部を備える、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記第1の副磁気要素の露出面に隣接して配置される副磁気シールドを更に備える、請求項5に記載の装置。
【請求項19】
前記シャトルは、前記チューブ通路を画定するとともに、前記第1の主磁気要素を受けるように構成される主凹部を備える通路本体を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
閉塞物を除去する装置であって、
チューブの長さに沿って並進するように適合されるシャトルを備え、
該シャトルは、
中にチューブを収容するように構成される長手方向軸を有するチューブ通路、及び前記チューブ通路の外側に配置される第1の主磁石凹部を画定する通路本体と、
前記第1の主磁石凹部内に受けられ、前記長手方向軸に対して径方向に位置合わせされる第1の主磁界軸に沿って生じる第1の主磁界を有する第1の主磁気要素と、
前記第1の主磁石凹部内で、前記第1の主磁気要素を、前記チューブ通路から径方向に離れた第1の位置と、前記チューブ通路に径方向に近接した第2の位置との間で摺動可能に調整するように動作可能なボタンと、
を備える、装置。
【請求項21】
前記シャトルは、前記長手方向軸に対して前記第1の主磁界軸と径方向に位置合わせされるとともに前記第1の主磁界軸に対向する第1の副磁界軸に沿って生じる第1の副磁界を有する第1の副磁気要素を更に備える、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記シャトルは、
前記第1の主磁気要素の露出面に隣接して配置される主磁気シールドと、
前記通路本体の1つの側方部から前記通路本体の反対側の側方部へと延在する側方磁気シールドと、
前記第1の副磁気要素の露出面に隣接して配置される副磁気シールドと、を更に備え、
前記側方磁気シールドは、強磁性材料を含み、前記通路本体から側方に延在するフィン上に着座し、
前記フィンは、前記第1の主磁界によって誘導される変形に抗して前記側方シールドの形状を維持するように寸法決定される、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記通路本体は、前記チューブ通路の外側で、前記長手方向軸に沿って前記第1の主磁石凹部に隣接して離隔されて配置される第2の主磁石凹部を更に画定し、
前記シャトルは、
前記第2の主磁石凹部内に受けられ、前記第1の主磁界軸に対して平行であるとともに前記長手方向軸に対して径方向に位置合わせされる第2の主磁界軸に沿って生じる第2の主磁界を有する、第2の主磁気要素と、
前記長手方向軸に沿って前記第1の副磁気要素に隣接して離隔される第2の副磁気要素であって、該第2の副磁気要素は、前記長手方向軸に対して前記第2の主磁界軸と径方向に位置合わせされるとともに前記第2の主磁界軸に対向する第2の副磁界軸に沿って生じる第2の副磁界を有する、第2の副磁気要素と、
を更に備え、
前記ボタンは、それぞれの前記第1の主磁石凹部及び前記第2の主磁石凹部内で、前記第1の主磁気要素及び前記第2の主磁気要素の両方を、前記第1の位置と前記第2の位置との間で一緒に動作可能である、請求項21に記載の装置。
【請求項24】
閉塞物を除去する方法であって、
チューブの外側に配置されるシャトルを前記チューブの長さに沿って並進させて、これに対応して、少なくとも部分的に前記チューブ内に配置され、前記チューブの壁を通して前記シャトルに磁気結合される細長いガイド部材を並進させることであって、前記シャトルから生じる磁界は、前記シャトルの側部から見ると前記チューブの長手方向軸に対して実質的に垂直に位置合わせされること、を含む、方法。
【請求項25】
前記シャトル内に配置される第1の磁気要素の位置を調整することによって、前記チューブ内で前記細長いガイド部材に取り付けられる又は前記細長いガイド部材とともに形成される清掃部材を並進させるのに利用可能な並進力の量を調整すること、を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の磁気要素の前記位置は、前記シャトルが前記チューブに沿って並進されると、前記チューブから離れた第1の位置と、前記チューブに近接した第2の位置との間で動的に調整可能である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
閉塞物を除去する装置であって、
中にチューブを収容するように構成されるチューブ通路を画定し、前記チューブ通路内に収容されると、前記チューブの長さに沿って並進するように適合される、シャトルと、
第1の主磁気要素であって、該第1の主磁気要素と、前記チューブ通路を通して受けられると前記チューブ内に配置される磁気ガイドとの間の結合強度を調整するために調整可能である、第1の主磁気要素と、
を備える、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、包括的には、医療用チューブアセンブリに関し、より具体的には、医療用チューブアセンブリの医療用チューブから閉塞物を除去する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用チューブは、流体又は装置を患者の体内に送達する、及び/又は、体液及び分泌物を体内の区画及び構造部から排出するのに用いることができる。例えば、医療用チューブは、種々の治療に際して、膀胱、結腸若しくは消化管の他の部分から、又は肺若しくは他の器官から流体を排出するのに用いることができる。別の例として、医療用チューブは、外傷手術後に体腔内に通常蓄積する血液及び他の流体を排出するのに用いることができる。更に別の例として、医療用チューブは、栄養を与えるために患者の体内に流体を送達するのに用いることができるか、又は、医療用チューブは、流体若しくは装置の除去若しくは送達のために脈管系にアクセスをもたらすのに用いることができる。通常、医療用チューブは、近位部分が患者の体外にあるままで、医療用チューブの遠位端部が物質の除去若しくは送達が望まれる空間内に又はその空間に隣接してもたらされるように患者内に挿入され、近位部分は、例えば吸引源に接続することができる。
【0003】
医療用チューブを通過する流体(特に血液又は血小板を含む流体)は、医療用チューブ内に、チューブ内の吸引路を部分的に又は完全に閉塞し得る凝塊又は他の閉塞物を形成する場合がある。医療用チューブの閉塞は、医療用チューブが配された本来の目的である、流体及び他の物質を除去又は送達する効力に影響を与え、最終的に、医療用チューブが部分的に又は完全に機能しなくなる可能性がある。いくつかの場合、機能していないチューブは、深刻な又は生命を脅かし得る結果をもたらすおそれがある。例えば、心臓又は肺の手術後に胸腔チューブ内に詰まりが存在する場合、適切なドレナージが行われず、心臓及び肺の周囲に流体の蓄積が生じることにより、心タンポナーデ及び気胸等の深刻で有害な事態を引き起こす可能性がある。
【0004】
特許文献1は、引用することにより本明細書の一部をなし、医療用チューブ(胸腔チューブ等)から邪魔な凝固物質を除去する清掃装置を開示している。当該装置は、ガイドチューブの上に装着されるシャトルを利用して、シャトルと、チューブ内のガイドワイヤ(及び対応する清掃部材)に連結される磁気ガイドとの間の磁気結合を介してチューブ内の清掃部材を作動させる。シャトル及び磁気ガイド内の磁気要素の配置に基づいて、使用中にシャトルは磁気ガイドから結合解除することが可能である。例えば、この結合解除は、医療用チューブ内にキンク又は大きな凝固物質等の閉塞物が存在することで、チューブ内のガイドワイヤにかかる抗力が、シャトルと磁気ガイドとの間の磁気結合よりも強いときに発生し得る。この文献に開示されている実施形態は、そのような結合解除に対処し、シャトルと磁気ガイドとの間の磁気結合を改善する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
第1の態様によれば、医療用チューブから閉塞物を除去する装置が開示される。本装置は、中にチューブを収容するように構成されるチューブ通路を画定し、通路内に収容されるとチューブの長さに沿って並進するように適合されるシャトルを備える。シャトルは、第1の主磁気要素を備え、第1の主磁気要素は、その第1の主磁界の第1の主磁界軸が、シャトルの側部から見ると、チューブ通路の長手方向軸に対して実質的に垂直に位置合わせされるように位置合わせされる。
【0007】
第2の態様によれば、閉塞物を除去する装置は、チューブの長さに沿って並進するように適合されるシャトルを備える。シャトルは、中にチューブを収容するように構成される長手方向軸を有するチューブ通路を画定する通路本体を備える。第1の主磁石凹部が、通路本体内でチューブ通路の外側に配置される。第1の主磁気要素が、第1の主磁石凹部内に受けられ、上述の長手方向軸に対して径方向に位置合わせされる第1の主磁界軸に沿って生じる第1の主磁界を有する。ボタンが、第1の主磁石凹部内で、第1の主磁気要素を、チューブ通路から径方向に離れた第1の位置と、チューブ通路に径方向に近接した第2の位置との間で摺動可能に調整するように動作可能である。
【0008】
第3の態様によれば、医療用チューブから閉塞物を除去する方法が開示される。本方法は、チューブの外側に配置されるシャトルをチューブの長さに沿って並進させて、これに対応して、少なくとも部分的にチューブ内に配置され、チューブの壁を通してシャトル部材に磁気結合される細長いガイド部材を並進させることを含む。シャトルから生じる磁界は、シャトルの側部から見ると、チューブの長手方向軸に対して実質的に垂直に位置合わせされる。
【0009】
第4の態様によれば、閉塞物を除去する装置は、中にチューブを収容するように構成されるチューブ通路を画定し、通路内に収容されるとチューブの長さに沿って並進するように適合されるシャトルを備える。シャトルの第1の主磁気要素は、第1の主磁気要素と、チューブ通路を通して受けられるとチューブ内に配置される磁気ガイドとの間の結合強度を調整するために、調整可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】中に形成される閉塞物を医療用チューブから除去することができるように、患者内に配置された医療用チューブ(例えば、胸腔チューブ)に結合された清掃装置を示す概略斜視図である。
【
図3A】本明細書に開示される実施形態に係る、医療用チューブから閉塞物を除去する清掃装置の、磁気ガイド内の磁気要素とシャトル内の磁気要素との間の磁界の概略図であり、磁気要素の第1の配置を示す。
【
図3B】本明細書に開示される実施形態に係る、医療用チューブから閉塞物を除去する清掃装置の、磁気ガイド内の磁気要素とシャトル内の磁気要素との間の磁界の概略図であり、磁気要素の第2の配置を示す。
【
図4】以降に記載の一例示の実施形態に係るシャトルを有する清掃装置の側面図である。
【
図5】
図4の清掃装置内のシャトルの斜視図である。
【
図8】シャトルのハウジング全体が取り外された、
図5のシャトルの更なる部分分解図である。
【
図9】シャトルの他の要素が取り外された、
図5のシャトルの副磁気要素及び副シールドの配置を示す拡大分解図である。
【
図10】同じくシャトルの他の要素が取り外された、
図5のシャトルの駆動磁石、駆動シールド、ばね、及びボタンの配置を示す拡大分解図である。
【
図11】
図5の線A-Aに沿ったシャトルの斜視側方断面図である。
【
図12】
図5の線B-Bに沿ったシャトルの断面図である。
【
図13】シャトルの他の部分が取り外された、チューブ通路40に対して副磁気要素に対向する、第1の位置にある
図5のシャトルの駆動磁石を示す斜視側方断面図である。
【
図14】駆動磁石が第2の位置にある、
図13のような斜視断面図である。
【
図15】代替的な一実施形態に係るシャトルの斜視断面図である。
【
図16】シャトルと、対応するガイドワイヤ及び清掃部材とを概略的に示す、胸腔チューブに結合された清掃装置の斜視図であり、胸腔チューブから閉塞物を除去するための前進を異なる段階で示しており、
図16の完全に前進した状態から
図18の完全に後退した状態まで及ぶ。
【
図17】シャトルと、対応するガイドワイヤ及び清掃部材とを概略的に示す、胸腔チューブに結合された清掃装置の斜視図であり、胸腔チューブから閉塞物を除去するための前進を異なる段階で示しており、
図16の完全に前進した状態から
図18の完全に後退した状態まで及ぶ。
【
図18】シャトルと、対応するガイドワイヤ及び清掃部材とを概略的に示す、胸腔チューブに結合された清掃装置の斜視図であり、胸腔チューブから閉塞物を除去するための前進を異なる段階で示しており、
図16の完全に前進した状態から
図18の完全に後退した状態まで及ぶ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
或る特定の技術用語は、本明細書において単に便宜上用いられており、本発明に対する限定とはみなされない。本明細書において用いられる相対的な用語は、図面を参照して最もよく理解される。さらに、図面において、或る特定の特徴は、概略的な形態で示されている場合がある。
【0012】
「近位」及び「遠位」という用語は、特徴部の2つの端部又は部分を説明する際に本明細書において使用される場合、これらの2つの端部又は部分が、概して患者に対して直列システムに沿って有することになる相対的な位置決めを示しており、遠位端部又は部分は、近位端部又は部分よりも患者に近い(又は患者内でより前進している)ことに留意されたい。例えば、チューブを通して流路に沿って患者から流体を抜くチューブを備える直列システムにおいて、チューブの遠位端部又は部分は、近位端部又は部分よりも患者に近くなり(内部に挿し込まれる可能性がある)、近位端部又は部分は、流体の流路に沿って患者の外側にあることになる。
【0013】
ここで、例示の実施形態が示されている添付図面を参照して、以下により完全に例を記載する。しかし、態様は多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものとして解釈すべきではない。
【0014】
図1は、一例示の実施形態に係る、患者の体腔内から蓄積した流体を排出するために使用される医療用チューブの概略図を示している。
図1において、医療用チューブは、患者の胸腔に挿入され、胸腔から流体を排出するために使用され、例えば、上記で組み込まれた‘243号特許に記載の胸腔チューブ10であり得る。残りの説明は、胸腔チューブ10を参照して行う。しかしながら、他の用途において使用される他の身体チューブも、本明細書に記載の実施形態とともに使用してもよい。
【0015】
図1を参照すると、胸腔チューブ10は、胸腔(身体)壁を通して患者に入り、チューブの遠位端部は、胸部(身体)内の流体が排出される場所に位置決めされるようになる。胸腔チューブ10の近位端部は、身体の外側に残ったままである。胸腔チューブ10は、医師によって従来の方式で胸腔壁を通して患者に挿入して、適所に位置決めして固定することができる。清掃装置100は、胸腔チューブ10の近位端部に嵌合される。清掃装置100は、胸腔チューブ10の近位端部に接続され、近位端部と流体連通して設けられるシャトルガイドチューブ110(後述)を備えることができる。清掃装置100は、胸腔チューブ10内を通して可逆的に前進させて、邪魔なデブリを引き抜くことができる清掃部材124(同様に後述)も備える。シャトルガイドチューブ110の近位端部(すなわち、胸腔チューブ10への接続点とは反対の端部)は、例えば真空チューブ210を介して吸引源200に接続される。吸引源は、シャトルガイドチューブ110(存在する場合)及び真空チューブ210(存在する場合)を介して、胸腔チューブ10内で吸引を行い、体腔から流体を抜くとともに、胸部内の正常な生理学的負圧を維持する。
【0016】
ここで、一例示の清掃装置100をより十分に説明する。
図2に見られるように、清掃装置100は、上述したシャトルガイドチューブ110を備えることができる。シャトルガイドチューブ110は、近位端部111及び遠位端部112を有する。使用時、シャトルガイドチューブ110の近位端部111は、吸引源に、好ましくはその近位端部に固定される吸引継手90を介して接続されるように適合され、遠位端部112は、胸腔チューブ10等の医療用チューブに、好ましくはその遠位端部に固定される胸腔チューブ継手92を介して接続されるように適合される。ガイドチューブ110は、ガイドチューブ通路116及び外周118を画定する内径114を有する壁を有する。シャトル20は、ガイドチューブ110の外周118の上に選択的に装着することができ、より詳細に後述するように、チューブ110の長さに沿って並進して、清掃部材124を前進及び後退させるように適合される。
図1、
図2及び
図15~
図17において、シャトル20が概略的に表されている。
図4~
図14(詳細に後述)は、シャトル20の一例示の実施形態を示している。
【0017】
ガイドチューブ通路116内には、ワイヤ清掃アセンブリ120が少なくとも部分的に配置される。ワイヤ清掃アセンブリ120は、細長いガイド部材122と、ガイド部材122の遠位領域、好ましくはその遠位端部に配置及び固定される清掃部材124とを備える。1つの実施形態において、ガイド部材122は、ガイドワイヤの形態とすることができ、清掃部材124は、ガイドワイヤによって、例えばループとして形成することができる。磁気ガイド130(例えば、永久磁石)が、ガイド部材122に、好ましくはその近位領域に固定される。
【0018】
図2において明らかなように、シャトル20は、シャトル20内に位置する又はシャトル20に関連する外側磁気要素142を介して、磁気ガイド130に磁気結合する。
図2に示す磁気要素142は、後述するように、主磁気要素27及び副磁気要素28(
図7を参照)とすることができる。外側磁気要素142のN極とS極とが、磁気ガイド130の磁石132の対応する(しかし、典型的には反対の向き)極に対して概ね平行に軸方向に位置合わせされる場合、シャトル20内の外側磁気要素142と磁気ガイド130との間に結果として生じる協働磁界は、
図3Aに概略的に示すように平行である。
【0019】
所与の磁界強度の磁石の場合、
図3Aに示すそのような平行磁界は、ガイド部材122(又はこれに取り付けられる清掃部材124)が医療用チューブ10内の頑丈な閉塞物に遭遇し、ガイド部材122が逆らって並進しなければならない抗力を生み出すとき、シャトル20が磁気ガイド130から結合解除されることに抵抗するのに十分に強くない場合がある。清掃部材124がそのような閉塞物に遭遇する場合、閉塞物がもたらす抵抗(抗力)を克服するために、X方向(
図2)において清掃部材124に十分な力が印加されなければならない。清掃部材124が胸腔チューブ10内のデブリに係合するとき、デブリを通して移動するのに必要な力の量が、シャトルの並進中に磁気ガイド130と外側磁気要素142との間の磁気結合力のX方向成分を超える場合、シャトル20と磁気ガイド130との間の結合解除が発生する。
【0020】
シャトル20と磁気ガイド130との間の磁気結合のそのような喪失は、胸腔チューブ10におけるキンクが、X方向の磁気結合力に打ち勝つのに十分な抗力をガイド部材122に生み出す場合、又は他の諸々の理由によっても発生する場合がある。磁気結合が、シャトル20を磁気ガイド130との近接状態に復帰させることによって復元され得るが、(閉塞物がある場合のように)結合解除された理由が存続している場合は依然として結合解除に直面する可能性がある。
【0021】
図4~
図14は、例えばシャトルガイドチューブ110の壁を通して磁気ガイド130との強力な結合をもたらす一例示のシャトル20を有する清掃装置を示している。
図4に見られるように、清掃装置100は、近位端部111及び遠位端部112を有する上述のシャトルガイドチューブ110を備えることができる。使用時、シャトルガイドチューブ110の近位端部111は、吸引源に、好ましくはその近位端部に固定される吸引継手90を介して接続されるように適合され、遠位端部112は、胸腔チューブ10等の医療用チューブに、好ましくはその遠位端部に固定される胸腔チューブ継手92を介して接続されるように適合される。図示しない代替的な一実施形態において、ガイドチューブ110の遠位端部112は、T字継手又はY字継手等の分岐継手を介して医療用チューブに接続することができ、ガイドチューブ110は、医療用チューブと、分岐継手の第3のポートと連通する吸引源(例えば、真空チューブ210を介した)との間に画定される主吸引回路の側方分岐を形成する。このようにして、ガイドワイヤ(後述)は、分泌液を医療用チューブから吸引する主吸引回路から側方にガイドチューブ110を通じて後退される。特定のガイドチューブ設置(すなわち、主吸引回路が直列であるか又は分岐しているか)に関係なく、シャトル20は、ガイドチューブ110の壁の外周118(
図2を参照)にわたって配置され、好ましくは外周118と接触し、後述するように、X方向においてチューブ110の長さに沿って並進して、ワイヤ清掃アセンブリ120を前進及び後退させるように適合される。
【0022】
シャトル止め部150は、ガイドチューブ110の遠位領域における、好ましくはガイドチューブ110の遠位端部にちょうど近接して、ガイドチューブ110の外周118に固定される。シャトル20及びシャトル止め部150は、互いに面する相補的な第1の面及び第2の面を有することができる。シャトル20がガイドチューブ110の長さに沿って遠位方向に並進するにつれて、シャトル20は、それぞれの第1の面及び第2の面が互いに接触する又は互いに隣接して配置される位置に接近して最終的に到達する。これは、シャトル20の最遠位位置を表し、したがって、医療用チューブ10内の清掃部材124の遠位方向の前進の最大度を表す。好ましくは、シャトル止め部150の位置は、清掃部材124が使用時に医療用チューブ10の遠位端部から出てこないことを確実にするように、ガイド部材122の長さに対応するように選択される。
【0023】
ワイヤ清掃アセンブリ120は、ガイドチューブ通路116内に少なくとも部分的に配置されるように構成される。
図6Aに見られるように、ワイヤ清掃アセンブリ120は、細長いガイド部材122と、ガイド部材122の遠位領域、好ましくはその遠位端部に配置及び固定される清掃部材124とを備える。1つの例において、ガイド部材122は、ガイドワイヤの形態とすることができ、清掃部材124は、巻いてループを形成することができるガイドワイヤによって形成することができる。この説明の残りは、ガイド部材122の好ましい例としてガイドワイヤを参照して行う。しかしながら、ガイド部材122の他の例があり得て、当業者であれば容易に確定するであろう。
【0024】
図6Aを更に参照すると、磁気ガイド130は、ガイドワイヤ122に、好ましくはその近位領域において固定される。磁気ガイド130は、1つ又は複数の内側磁気要素132を備えることができる。磁気要素132は、ガイドチューブ110内に存在するため、「内側」磁気要素とみなされる。任意選択で、内側磁気要素132は、永久磁石であり得る。代替的に、内側磁気要素132は、必ずしも永久磁石でない磁気特性を有する金属要素であってもよい。本明細書において使用される場合、金属要素は、磁力を介して永久磁石によって引き寄せることが可能である場合、磁気特性を有する。磁気ガイド130は、任意の好適な又は従来の手段を介してガイドワイヤ122に固定することができる。
図6Bは、一例示的な磁気ガイド130の拡大図(
図6Aの「B」に示す)を示している。この例において、軸方向の貫通孔を有する複数の(4つを示す)円筒形の内側磁気要素132は、互いに同軸上で隣接して位置合わせされる。内側磁気要素132は、それらのそれぞれのN極とS極とが同じ方向を向くように方向付けられる。これにより、内側磁気要素132は、それらの隣接面において互いに引き寄せ合うことになる。ガイドワイヤ122は、その遠位端部から延在し、内側磁気要素132の軸方向孔を通過する。
【0025】
これも理解されるように、2つ以上のそのような内側磁気要素132が使用される場合、両方若しくは全てが永久磁石であること、又は両方若しくは全てが永久磁石でないことは必須でない。内側磁気要素132は、任意選択で、各永久磁石及び非永久磁石のうちの1つ(又はそれ以上)として存在してもよい。しかしながら、両者の間の維持力が、ガイドワイヤ122に対して両者を適所に保持するために依拠され得る例において、永久磁石を内側磁気要素132として使用することは、両者の間により強力な引力を生み出すものであり、両者をガイドワイヤ122によりしっかりと保持することになる。
【0026】
上述のように、
図4に最も明確に見られるように、シャトル20は、ガイドチューブ110の外周118にわたって、好ましくは外周118に接触して配置される。シャトル20は、外周118に実質的に対応する直径を有する貫通孔の形態であることが好ましいチューブ通路40を有し、シャトル20は、ガイドチューブ110がそのチューブ通路40を通して受けられると、そのチューブの長さに沿って摺動可能かつ平滑に並進することができる。シャトル20は、シャトルハウジングを備え、シャトルハウジングは、図示の実施形態(
図7)において、シャトル20の外部本体を形成する対向する第1のクラムシェル半部分21及び第2のクラムシェル半部分22から形成される。押下可能なボタン23は、シャトルハウジングを通してアクセス可能であり、例えばシャトルハウジングから盛り上がっており、後述するように、駆動磁石27を作動させるために使用される。
【0027】
図7に示すように、シャトル20は、通路本体24を備え、通路本体24は、ガイドチューブ110(又はガイドチューブ110が使用されない実施形態においては医療用チューブ10)を収容するように上述のチューブ通路40を画定する。代替的に、チューブ通路40は、例えば、別個のガイドチューブ110が真空チューブ210と医療用チューブ10との間に介在しない場合、真空チューブ210を収容することができる。通路本体24内のチューブ通路40は、相補的であり、ガイドチューブ110の外周形状、又は円筒形チューブの場合にはその外周118に実質的に対応する内面を有することが好ましい。1つ又は複数の主磁石凹部33(2つを示す)は、通路本体24の外側部分において、チューブ通路40の外側に形成され、チューブ通路40と長手方向に位置合わせした状態で分配される。凹部33は、その中に受けられる磁気要素のそれぞれの長手方向(磁界)軸が、チューブ通路40の長手方向軸に対して垂直になり交差するように、位置合わせされることが好ましい。1つ又は複数の主磁気要素27(例えば、駆動磁石)は、通路本体24のそれぞれの凹部33内に受けられる。図示の例において、主磁気要素27は円筒形である。他の例において、主磁気要素27は、通路本体24の主磁石凹部33内に嵌合するのに好適な任意の形状であってもよい。その凹部33は任意の所望の形状であってもよい。
【0028】
上述の内側磁気要素132と同様に、主磁気要素27は、永久磁石としてもよく、又は、代替的に、必ずしも永久磁石でない磁気特性を有する金属要素としてもよい。しかしながら、明確になる理由により、内側磁気要素132のうちの少なくとも1つ又は主磁気要素27のうちの少なくとも1つのいずれかは、永久磁石とするべきである。好ましい例において、内側磁気要素132及び主磁気要素27の両方は永久磁石である。さらに、磁気ガイド130及び主磁気要素27は、例えば、14kGs~15kGs、例えば14.3kGs~14.8kGsの残留磁束密度(Br)を有することができる。
【0029】
図3Bは、主磁気要素27が
図7に示すシャトルの実施形態のように配置される場合の、(例えば、磁気ガイド130の)内側磁気要素132及び主磁気要素27の配置を概略的に示している。(
図3Bは、更に後述する副磁気要素28も示している)。
図3B及び
図7に見られるように、主磁気要素27(シャトル20内に収容される)は、チューブ通路40に対して径方向に位置合わせされることが好ましく、それぞれのN極及びS極は、その通路の長手方向軸に交差するチューブ通路40の半径(及び円筒形である場合には特定の主磁気要素27の軸)に沿って位置合わせされる。2つの主磁気要素27は、駆動磁石として使用される場合、それらのそれぞれのN極とS極とが反対方向を向くように配置される。換言すれば、一方の主磁気要素27のN極はチューブ通路40を向き、他方の主磁気要素27のS極はチューブ通路40を向く。これにより、2つの主磁気要素27は、主磁気要素27の長手方向の間隔によって画定される通路40のセグメントに沿ってその通路40内に受けられると、ガイドチューブ110を向く単一のN極及び単一のS極が生まれる。このようにして、
図3Bに関して以下に更に説明するように、主磁気要素27から結果として生じる磁界は伝播して、磁気ガイド130の磁界に対して(また、これに向かって)平行ではなく実質的に垂直に位置合わせすることができる。主磁気要素27の間の間隔は、それらのそれぞれの長手方向(又は磁界)軸が、磁気ガイド130の長手方向軸に沿って、磁気ガイド130のそれぞれのN極端部及びS極端部と実質的に位置合わせされ、好ましくはこれらに交差することが望ましい。第1の主磁気要素27のS極は、磁気ガイド130のN極を向き、第2の主磁気要素27のN極は、磁気ガイド130のS極を向くことが好ましい。
【0030】
図7及び
図9に示すように、シャトル20は、通路本体24のチューブ通路40に対して主磁気要素27に径方向に対向する1つ又は複数の副磁気要素28を更に備える。副磁気要素28は、通路本体24の外側部分においてチューブ通路40の外側に形成され、それぞれの主磁石凹部33に対向し、通路40に対して共通の径方向軸に沿って主磁石凹部33と位置合わせされる、対応する副磁石凹部34内に受けられる。図示の例において、副磁気要素28は円筒形である。他の例において、副磁気要素28は、通路本体24の副磁石凹部34内に嵌合するのに好適な任意の形状であってもよい。副磁気要素28は、永久磁石としてもよく、又は、代替的に、必ずしも永久磁石でない磁気特性を有する金属要素としてもよい。しかしながら、明確になる理由により、内側磁気要素132のうちの少なくとも1つ又は副磁気要素28のうちの少なくとも1つのいずれかは、永久磁石とするべきである。好ましい例において、内側磁気要素132及び副磁気要素28の両方は永久磁石である。さらに、磁気ガイド130及び副磁気要素28は、例えば、14kGs~15kGs、例えば14.3kGs~14.8kGsの残留磁束密度(Br)を有することができる。
【0031】
好ましい実施形態において、副磁気要素28は、対向する主磁気要素27と同様に長手方向に離隔される(すなわち、それらのそれぞれの軸は、上記主磁気要素27と位置合わせされ同軸である)が、上記主磁気要素27とは反対に方向付けられる。すなわち、各副磁気要素28のN極/S極の向きは、その対向する主磁気要素27のN極/S極の向きとは反対であるべきであり、それぞれの対向する主磁気要素27及び副磁気要素28の対向する極は、チューブ通路40の反対で互いに向く。
【0032】
主磁気要素27と同様に、副磁気要素28は、チューブ通路40に対して径方向に位置合わせされ、各副磁気要素28のN極及びS極は、その通路の長手方向軸に交差するチューブ通路40の半径(及び円筒形である場合には特定の副磁気要素28の軸)に沿って位置合わせされる。したがって、上記と同様に、かつ
図3Bに関して以下で更に説明するように、副磁気要素28から結果として生じる磁界は伝播して、磁気ガイド130の磁界に対して(また、これに向かって)平行ではなく実質的に垂直に位置合わせされる。各副磁気要素28も、対向する主磁気要素27と共通の径方向軸(チューブ通路40に対する)に沿って位置合わせされることが好ましく、それらの対向する磁界は、それらの共通の径方向軸に沿って位置合わせされ、通路本体24を通して互いに向かって伝播する。
【0033】
図示の実施形態において、対向する主磁気要素27及び副磁気要素28の1つのセットのみが設けられ、端から(すなわち、その通路40の長手方向軸に沿って)見たとき、チューブ通路40の単一の半径に沿って位置合わせされる。しかしながら、任意選択で、対向する主磁石27及び副磁石28の複数のセットは、チューブ通路40に対して周方向に分配され、その通路40のそれぞれの周方向に割り出される半径に沿って位置合わせされてもよく、すなわち、それぞれの半径のうちの周方向に隣接する半径が、通路40の長手方向軸に沿って端から見たとき、通路40の扇形を画定するように位置合わせされる。例えば、対向する主磁石27及び副磁石28の2つのセットを設けることができ、各セットは、それに沿って他方のセットが位置合わせされる半径に対して垂直なチューブ通路40のそれぞれの半径に沿って位置合わせされ、2つの半径は、チューブ通路40の長手方向軸に沿って端から見たとき、チューブ通路40の4つの等しい四分円の円弧セグメントを画定する。
【0034】
対向する主磁気要素27及び副磁気要素28は、更に説明するように、ガイドチューブ110(又は医療用チューブ10)内のガイド部材122に取り付けられる磁気ガイド130への強力な磁気結合をもたらし、チューブ110の外側でのシャトル20の並進を介してそのチューブ内のガイド部材122を駆動する。周囲の電子的医療機器又は挿入された医療デバイスとの干渉を低減するために、シャトル20は、磁気シールドを(例えば、そのハウジング内に)組み込むことができる。例えば、主磁気シールド25は、主磁気要素27の露出面にわたって、主磁気要素27と、説明する第1の位置と第2の位置との間で主磁気要素27を調整するために使用されるボタン23との間に配置することができる。同様に、副磁気シールド29は、副磁気要素28の露出面にわたって設ける(例えば、副磁石凹部34内の副磁気要素28を覆う)ことができる。
図7及び
図8に示すように、シャトル20は、シャトル20内の主磁気要素27及び副磁気要素28を囲む側方シールド30を更に備えることができる。図示のように、側方シールド30は、通路本体24の1つの側部から通路本体24の反対側の側部へと、通路本体24の端部の周りに延在するU字形状要素とすることができる。側方シールド30は、通路本体24の両側部から(例えば、中に形成されるフィン35から)延在する突出部32に嵌合するように寸法決定される開口部31を備える。突出部32が開口部31内に固定されるように側方シールド30を位置合わせすることによって、シールド30の適切でしっかりした位置合わせを保証することができる。
【0035】
フィン35は、通路本体24から側方に延在し、主磁気要素27及び副磁気要素28から所定の距離を置いて通路本体24に均一に隣接する側方シールド30を適切に着座させるように寸法決定される。これは、シールド30が強磁性材料(例えば、低炭素鋼)から作製される場合に有用であり、シールド30は、シールド30を正しく着座させてその形状を維持するそのようなフィン35が存在しない場合、主磁石27及び副磁石28の磁界によって寄せられて変形され得る。フィン35及びそれらの関連する突出部は、位置ずれを防止するために、通路本体24にわたる側方シールド30の適切で再現性のある位置合わせ及び固定を容易にもする。さらに、側方シールド30の着座位置及び向きを固定することによって、フィン35は、シールド30が、磁界シャントを生み出し得る、磁石27、28又は磁石と連通する任意の磁界伝導性構造体から均一に離隔されたままとなり、これらに接触しないことを確実にする。代わりに、側方シールド30は、説明のように離隔され、遠距離場の磁気シールドを提供して、磁界をシャトル内に実質的に閉じ込め、それらの磁界の漏洩を最小限にする。
【0036】
主磁気シールド25及び副磁気シールド29並びに側方シールド30は、低炭素鋼から作製されることが好ましい。他の例において、これらは、鉄含有量が多い任意の材料、例えば、当該技術分野において既知の従来のミューメタル材料から作製されてもよい。理解されるように、主磁気シールド25及び副磁気シールド29並びに側方シールド30は、シャトル20内の主磁石27及び副磁石28を磁気的に遮蔽するように協働し、シャトル20を超えたそれらの磁界の伝播を阻害する。説明したような組合せシールドは、完全には磁気要素27及び28を封入し得ない(磁気要素は、磁気ガイド130と磁気的に相互作用し、チューブ通路40を収容するため)が、シャトル20を超えた磁界の伝播及び強度を低減することに役立つ。シャトル20がチューブの上に装着され、その中の磁気ガイド130と位置合わせされる場合、説明したような組合せシールドは、磁気ガイド130(ここではシャトル20内に配置される)から生じる磁界も遮蔽し、磁気ガイド130と相互作用する主磁気要素27及び副磁気要素28を内包する完全な磁気回路から生じる組合せ磁界を効果的に内側に方向付けし直すことも留意されたい。結果として、磁気ガイド130との磁気結合力を増大させることができる。
【0037】
主磁気シールド25及び副磁気シールド29(例えば、低炭素鋼から作製)の厚さを調整することにより、磁気ガイド130との磁気結合強度に影響し得ることが分かった。例えば、主磁気シールド25の厚さが増大すると、一方の主磁気要素27から他方へのそれぞれの磁界のシャントが大きくなり、組合せ主磁界をチューブ通路40軸(及び磁気ガイド130)に向かって径方向の内向きに駆動させることに効果的に役立つ。これは、主磁気要素27と、チューブ通路40を通して受けられるチューブ内の磁気ガイド130との間の結合力を強化する傾向がある。同様に、副磁気シールド29の厚さが増大すると、副磁気要素28の間のそれぞれの磁界のシャントが大きくなる。これは、副磁気要素28と磁気ガイド130との間の磁気結合を補強する。磁気ガイド130との結合を最適化するために、それぞれの主磁気シールド25及び副磁気シールド29の厚さを調節することが有用であり得る。すなわち、主磁気要素27と磁気ガイド130との間の結合力が増大すると、シャトル20の並進を介して、磁気ガイド130に取り付けられるガイド部材122(及び清掃部材124)に利用可能な並進(軸方向)力をより強力にすることができる。しかしながら、そのような結合力の増大により、磁気ガイド130とチューブ壁の内径との間の横断方向(径方向)力が増大し、摩擦の増大につながる。副磁気要素28と磁気ガイド130との間の結合力を増大させると、磁気ガイド130を主磁気要素27に隣接するチューブ壁から遠ざけることによって、その影響を低減させることができる。主磁気シールド25と副磁気シールド29との間の相対的な厚さを調節することによって、これらの相克する影響(結合による利用可能な並進力対摩擦)を最適化することができる。低炭素鋼の場合、シールドの厚さは、主磁気シールド25及び副磁気シールド29の両方について、0.01インチ~0.25インチ、より好ましくは0.025インチ~0.175インチの範囲内であることが好ましい。一方、側方シールドの厚さを増大させると、独立して、外部環境に対するシャトル内から生じる磁界の漏洩を低減するのに役立つことができる。
【0038】
図3Bは、磁気ガイド130(の例示の内側磁気要素132)に対して、開示したように方向付け及び位置合わせされる主磁気要素27及び副磁気要素28と、それらの結果として生じる協働する磁界とを示している。この図に見られるように、主磁気要素27及び副磁気要素28の磁界は、磁気ガイド130から(例えば、その要素132から)生じる磁界の軸と垂直に位置合わせされる軸に沿って伝播する。磁界がこの方式で位置合わせされると、シャトル20(その主磁気要素27/副磁気要素28を介した)と磁気ガイド130との間の磁気引力はかなり強力なものとなり、使用中のシャトル20と磁気ガイド130との間の結合を改善することができることが分かった。したがって、胸腔チューブ10内の清掃部材124が遭遇する閉塞物によって導入される抗力抵抗を克服するために、磁気ガイドからシャトル20を結合解除することなく、X方向においてより多くの力を清掃部材124に印加することができる。
【0039】
例えば、‘243号特許に記載のリングとして構成される高磁界強度の希土類ネオジウム磁石が、磁気ガイド130内の同様の組成のネオジウム磁石に結合される従来のシャトル20は、典型的には、シャトル20が磁気ガイド130から結合解除される前に、X方向において約0.4Ibfの並進力を清掃部材124に送達する。これは、医療用チューブ10内の閉塞物によって導入される抗力を克服するために利用可能な力の量である。一方、ここで開示されるように、磁気ガイド130に向かって径方向に磁気要素の対向する磁界を同様に構成される磁気ガイド130に対して方向付けるように位置合わせされる主磁気要素27及び副磁気要素28を使用すると、本明細書のシャトル20は、磁気ガイド130から結合解除される前に、清掃部材124に最大約1.2Ibfの並進力、すなわち、従来技術の装置と比較して利用可能な並進力の約3倍の並進力を送達することが分かっている。利用可能な並進力が増大するのは、使用中のシャトル20内の磁気要素と磁気ガイド130内の磁気要素との間の磁気引力がより強力である結果であり、主磁気要素27及び副磁気要素28を本明細書に開示するように方向付ける結果と考えられる。その結果、医療用チューブ10内の閉塞物を克服して清掃する能力が大きくなり、シャトルが結合解除されることの発生率が低減される。
【0040】
さらに、主磁気シールド25及び副磁気シールド29は、主磁気要素27及び副磁気要素28のそれぞれと、磁気ガイド130との間の実効磁気引力を強化することに役立つことが考えられる。具体的には、主磁気シールド25は、隣接する主磁気要素27の両極を結合し、主磁気要素27の間の回路を完成させることによって、磁気要素の磁界を補強する。副磁気シールド29は、同様に作用して、副磁気要素28の間の回路を完成させることによって、副磁気要素28の磁界を補強する。これにより、医療用チューブ10内の閉塞物を克服して清掃する能力が大きくなり、シャトルが結合解除されることの発生率が低減される。
【0041】
理解されるように、チューブ壁を通したシャトル20と磁気ガイド130との間の強力な磁気結合で利用可能な最大の大きさは、清掃部材124を並進させるために常に必要とはならない。例えば、閉塞物が存在しない場合、又は微小な閉塞物が存在する場合、清掃部材124を並進させるためには最小の結合力が必要になり得る。そのような事例において、シャトル20と磁気ガイド130との間の最大結合力は、チューブ110に沿ったシャトル20の摺動に抗した摩擦力を増大させ、装置100を日常的に使用するにはより面倒になるため、望ましくないおそれがある。内側磁気ガイド130とチューブ110の内径との間の摩擦力も増大させることになる。したがって、シャトル20は、低減した磁気結合強度で動作するとともに、手術者が医療用チューブ10内の頑丈な閉塞物を除去又は移動させることを所望するときにのみ、結合強度の大きさを最大度まで増大させる機構を備える。
【0042】
具体的には、
図7及び
図10に示すように、上述のように、シャトル20は、例えば、主磁気要素27の反対側の主磁気シールド25の面上に配置される、押下可能なボタン23を備える。1つの例において、ボタン23は、その下側から、主磁気シールド25における中央開口部37を通して、主磁気要素27の間に位置決めされるばね26を通して延在するボス36を備える。主磁気シールド25に対向して、ばね26は着座し、例えば、主磁石凹部33の間に画定される径方向通路又はばね凹部38内で、通路本体24に接して静置する。このようにして、ばね26は、主磁気シールド25及びその反対面にあるボタン23を、通路本体24から径方向に離れた位置において付勢する。主磁気要素27は、磁気シールドの下面に(例えば、磁気相互作用を介して)接着され、主磁気要素27は、以降に説明するように、同様に、主磁気要素27の第1の位置(
図13)に対応するチューブ通路40から径方向に離れるように付勢されることが好ましい。一方、ボタン23を径方向の内向きに押下すると、好ましくは、主磁気シールド25及び取り付けられた主磁気要素27が、同様に以降に説明する、それらの要素27の第2の位置(
図14)において、主磁石凹部33のそれぞれの床に接して着座するまで、主磁気シールド25及び取り付けられた主磁気要素27は、ばね付勢に抗して径方向の内向きに駆動される。
【0043】
例えば
図11及び
図13に示すように、副磁気要素28は、通路本体24の副磁石凹部34内に固定される。逆に、主磁気要素27は、通路本体24のチューブ通路40に対する径方向位置の範囲を通して、例えば、上述の第1の位置と第2の位置との間で調整することができる。副磁気要素28の径方向位置が固定されているので、磁気ガイド130(ひいては清掃部材124)を並進させるために副磁気要素28から利用可能な磁界強度は、手動で調整可能でない。しかしながら、ボタン23を動作させることによって、磁気ガイド130を駆動するために主磁気要素27から利用可能な磁界強度を手動で調整することができ、これにより、更に説明するように、主磁気要素27が第1の位置と第2の位置との間で調整される。
【0044】
図13を参照すると、主磁気要素27は、第1の(静置)位置において示されている。磁気ガイド130は、シャトル20のチューブ通路40内に(シャトル20を通して受けられるチューブ110の内側に)配置されており、主磁気要素27及び副磁気要素28は、対向する径方向から磁気ガイド130に磁気的に引き寄せられる。そして、シャトル20がガイドチューブ110に沿って並進するにつれて、シャトル20の磁気要素27、28と磁気ガイド130との間の磁気引力により、例えば、胸腔チューブ10内の閉塞物を除去するために、胸腔チューブ10内の清掃部材124の移動が誘導される。主磁気要素27がチューブ通路40から離れた第1の(静置)位置にあるときのこの並進運動は、概して、所定の間隔を空けた胸腔チューブ10の日常的な清掃に十分である。
【0045】
しかしながら、清掃部材124が胸腔チューブ10内で頑丈な閉塞物に遭遇する場合、閉塞物を横断又は撤去し、清掃部材124を、胸腔チューブ10を通るその進路に沿って並進させ続けるためには、X方向における追加の力が必要となり得る。そのような事例において、ボタン23を押すことで、チューブ通路40に隣接するそれぞれの主磁石凹部33内に着座する第2の位置に向かって又はその位置へと、主磁気要素27を径方向の内向きに前進させることができる。そのような径方向に前進した(第2の)位置において、主磁気要素27は、
図14に示すように、凹部33内により引っ込み、シャトル20のチューブ通路40内に受けられるチューブ110内の磁気ガイド130に近くなる。主磁気要素27が磁気ガイド130により近く位置すると、主磁気要素27と磁気ガイド130との間の磁気引力が増大し、シャトル20は、磁気ガイド130から結合解除される前に、X方向において清掃部材124により強力な並進力を印加することが可能になる。
【0046】
主磁気要素27は、
図13において第1の位置及び
図14において第2の位置に示されているが、それらの位置は、調整可能な範囲の境界を表すことを理解されたい。主磁気要素27は、それらの位置の間の任意の点に調整して、主磁気要素27と磁気ガイド130との間の磁気結合の強度に対して対応する調整をもたらすことができる。例えば、X方向において利用可能な力のわずかな増大が望ましい場合、ボタン23をわずかに押下するだけで、例えば、主磁気要素27と磁気ガイド130との間の径方向距離を、10%、15%、20%、25%、又は100%未満の他の何らかの分率だけ短縮することができる。X方向における追加の力が望ましい場合、ボタン23を更に押下することで、例えば、当該径方向距離をより更に、例えば30%、35%、40%、45%、50%、又はそれ以上の分だけ短縮することができる。ユーザーは、ボタン23を押下し、主磁気要素27と磁気ガイド130との間の距離を、主磁気要素27の第1の位置と第2の位置との間の任意の量だけ短縮することができる。ばね26は、ボタン23(及び主磁気要素27)を完全に径方向に後退した(すなわち、「静置」)位置に向かって付勢し、そのため、ボタン23の任意の押下に対抗する。このようにして、ユーザーは、ボタン23がばね付勢に抗して押される程度を調節することによって、磁界強度の増大度を調整することができる。そして、動作が完了すると、ばね26は、ボタン23(及び主磁気要素27)を完全に径方向に後退した「静置」位置へと復帰させる。
【0047】
1つの例において、(主磁気要素27が、それぞれの主磁石凹部の床に対して完全に径方向に係合及び着座した状態での)主磁気要素27と副磁気要素28との間の径方向(チューブ通路40に対する)距離は、例えば、その中に特定のチューブ110を収容するように適合されるチューブ通路40の直径に応じて、0.5インチ、0.75インチ、0.85インチ、0.95インチ、又は1インチである。磁気ガイド130を主磁気要素27と副磁気要素28との間に位置決めすることにより、理論上、磁気ガイド130は、チューブ通路40内側のチューブ110内の略中央位置において磁気的に径方向に懸架することができる。典型的には、この理論上の可能性は実際には実現されないが、それにもかかわらず、磁気ガイド130が主磁気要素27と副磁気要素28との間の対向する方向において寄せられることにより、シャトル20が清掃部材124を並進させるように動作する際の、磁気ガイド130とガイドチューブ通路との間の摩擦力を低減することができる。結果として、清掃部材124がX方向に並進するのに利用可能な力の量は、シャトル20がチューブ110に沿って並進すると増大させることができる。
【0048】
主磁気要素27及び副磁気要素28のいずれか(又は両方)と、チューブ通路40内に受けられるチューブ110内の磁気ガイド130との間の磁界強度を最大化させるために(それが望ましい場合)、その間の径方向距離は、最小限とするべきである。1つの例において、例えば、主磁気要素27と磁気ガイド130との間の径方向距離は、各主磁石凹部33の基部壁内に開口部41を導入することによって短縮することができ、これにより、主磁気要素27を径方向のより内向きに駆動することができるように、それぞれの凹部33の近傍におけるチューブ通路40の外径が効果的に短縮される。これを
図12に示す。凹部33の近傍におけるチューブ通路40の周壁を構成する通路本体24の一部を除去することによって、主磁気要素27は、より径方向の内向きに着座し、チューブ通路40の(又は更には、その部分的な中の)内径に近くすることができる。また、任意選択で、所望の場合、同様の開口部を各副磁石凹部34の床に設けることで、副磁気要素28の径方向の内向きの固定度をより大きくすることができる。しかしながら、実際には、副磁石凹部34の床におけるそのような開口部はあまり好ましくない。なぜなら、チューブ内の閉塞物を克服するためにより強力な結合(ボタン23の押下を介する)が必要とされないとき、結合力(ひいては、シャトル20又は磁気ガイド130のいずれかの並進に抗した結果として生じる摩擦力)を減少させるためには或る程度の間隔が望ましいからである。
【0049】
記載の実施形態において、シャトル20内の主磁気要素27と、チューブ通路40内に受けられるチューブ内の磁気ガイド130との間の磁界の結合強度は、主磁気要素27の径方向位置を調整することによって、調整することができる。上記の実施形態は、2つの主磁気要素27及び2つの副磁気要素28も開示する。しかしながら、代替的な一実施形態のシャトル20は、既述したように、チューブ通路40に対して共通の半径に沿って1つの主磁気要素27と、対向する1つの副磁気要素28とのみを有してもよい。加えて、主磁気要素(複数の場合もある)27は調整可能である必要はない。むしろ、主磁気要素(複数の場合もある)は、固定位置にあってもよい。
【0050】
図15は、既述したとおりだが、主磁気要素27が調整可能でないシャトル20の部分断面図を示している。この実施形態において、主磁気要素27と磁気ガイド130との間の結合強度は調整可能でない。この実施形態は、製造しやすさの見地から望ましいが、他の開示した実施形態のような磁気ガイド130との調整可能な結合強度を有しない。
【0051】
ここで、
図16~
図18を参照すると、本明細書に記載の清掃装置100が、胸腔チューブ通路とガイドチューブ通路116との間の流体連通を提供しながら、シャトルガイドチューブ110の遠位端部と胸腔チューブ10の近位端部との間の流体密接続を確実にする胸腔チューブ継手92を介して、胸腔チューブ10に嵌合された状態で示されている。胸腔チューブ10は、外周と、胸腔チューブ通路を画定する内径とを有する壁を有する。
【0052】
上述のように清掃装置100及び胸腔チューブ10がともに嵌合されると、ガイド部材122、及びその遠位端部に配置される清掃部材124は、以下のように胸腔チューブ10からデブリを除去することを支援するために、胸腔チューブ10に対して前進及び後退させることができる。使用時、磁気ガイド130並びにシャトル20の主磁気要素27及び副磁気要素28は、シャトル20がガイドチューブ110の上に装着又は適切に位置決めされると、互いに磁気的に引き寄せられて結合される。これにより、ガイドチューブ110の壁を通して作用する磁力を介して、磁気ガイド130がシャトル20に結合される。結果として、シャトル20をシャトルガイドチューブ110の長さに沿って長手方向に摺動又は並進させることにより、シャトル20に磁気結合される磁気ガイド130と、磁気ガイド130に固定されるガイド部材122との対応する並進運動が誘導される。
図16において、シャトル20(概略的に図示)は、第1の位置において、シャトル止め部150と接触して示されている。ガイド部材122の遠位端部と、ガイド部材122が磁気ガイド130に固定される点との間のガイド部材122の長さは、胸腔チューブ10の長さに、シャトル止め部150と胸腔チューブ10が継手92に係合する点との間の距離に対応する長さを加算したものに実質的に等しくなるように選択されることが好ましい。この実施形態において、シャトル20がシャトル止め部150に接して位置決めされるとき(磁気ガイド130は、ガイドチューブ110の長さに沿ってシャトル20と連動している)、ガイド部材122の遠位端部にある清掃部材124は、胸腔チューブ10内のその遠位端部に隣接して配置され、胸腔チューブ10から体腔内に出てこない。好ましい実施形態において、これは清掃部材124の第1の位置であり、清掃装置100が胸腔チューブ10からデブリを能動的に除去するために使用されていないとき、清掃部材124は通常、この位置に静置している。
【0053】
動作時、胸腔チューブ10(その遠位端部)が患者の体腔内に挿入され、シャトルガイドチューブ110が、その近位端部にある吸引源200に接続されると、体腔からの流体は、胸腔チューブ通路内に入って中を通り、次にガイドチューブ通路116を通して抜かれ、従来の収集キャニスター(図示せず)において等、任意の好適な又は従来の様式で収集又は処分される。(代替的に、上述のように、ガイドチューブ110は、医療用チューブ10と真空チューブ210との間に画定される主吸引回路から分岐してもよく、この場合、体腔からの流体は主に、主吸引回路を通して抜かれ、ガイドチューブ110を通しては抜かれない)。図示の実施形態において、清掃部材124は、胸腔チューブ10の長さに沿って並進する際に胸腔チューブ10の内径に擦れるワイヤループの形態である。
【0054】
上述のように、清掃部材124(例えば、ループ)は、通常、胸腔チューブ10の遠位端部に隣接して胸腔チューブ通路の内側に配置される。胸腔チューブ10から中に蓄積した凝塊及び他のデブリ400を除去することに役立つように、シャトル20は、チューブ110内の磁気ガイド130と磁気結合されるようにチューブ110の上に配置される。シャトル20がそのように嵌合され、チューブ110内の磁気ガイド130と磁気結合されると、看護師、医師、又は他の手術者は、シャトル20をガイドチューブ110の長さに沿って近位方向に、チューブ110の近位端部に向かって引く。磁気ガイド130とシャトルの主磁気要素27及び副磁気要素28との間の磁気引力は、シャトル20が近位方向に並進する際に、磁気ガイド130をシャトル20と連動した状態で保持する。そして、これにより、
図17に見られるように、ガイド部材122及び清掃部材124が、胸腔チューブ通路を通して近位方向に寄せられる。清掃部材124は、近位方向に寄せられると、その経路内の凝固物質及び他のデブリ400に係合し、そのような物質及びデブリを近位方向に(
図17、
図18)、胸腔チューブ通路の近位端部に向かって押しやり、最終的に当該通路から出てガイドチューブ通路116内に押し込む(
図18)。この動作を遂行するために、手術者は、シャトル20を片方の手で把持し、ガイドチューブ110の近位端部をもう片方の手で把持することが好ましく、これにより、シャトル20に印加される引張力は、胸腔チューブ10を患者内の適所に保持する縫合線に抗してではなく、もう片方の手を介してチューブ110に印加される反力に抗して印加される。代替的に、同じ目的は、シャトル20を摺動させる前に、ガイドチューブ110の異なる部分又はシャトル止め部150をもう片方の手で把持することによって達成してもよい。任意選択で、清掃部材124は、凝固物質又は他のデブリの破砕に役立つように、及びそのようなデブリを近位方向に寄せることを支援するために、胸腔チューブ通路に対する後退及び前進を交互に行ってもよい。清掃動作が終了すると、シャトル20は、磁気ガイド130、ひいては清掃部材124をその静置位置へと戻すために使用することができる。
【0055】
胸腔チューブ10内の頑丈な凝塊を横断又は撤去するために追加の並進力が望ましい場合、ユーザーは、シャトル20上のボタン23を押下して、その中のチューブ通路40に向かって主磁気要素27を径方向に前進させることで、シャトル20と磁気ガイド130との間の磁界を強化することができる。
【0056】
そのようなボタン23が設けられる実施形態において、ボタン23は、図示する主磁気要素27を両方とも同時に作動させるものとして記載されている。しかしながら、選択される実施形態において、一方の主磁気要素27は、通路本体24のチューブ通路40に向かって又は接して通常(又は常時)完全に径方向に前進(又は着座)させることができ、ボタン23の作動により、第2の(又はそれ以上の)主磁気要素(複数の場合もある)27を前進(又は後退)させて、結合磁界強度を調整する。または、記載の複数のボタン23を、主磁気要素27ごとに1つずつ設けることができ、それらの磁気要素27は、チューブ通路40を通して受けられるチューブ内の磁気ガイド130との結合強度を調整するために、個々に及び選択的に径方向に前進させることができる。加えて、ボタン23は、押下可能なボタン23として記載されているが、主磁気要素(複数の場合もある)27を径方向に前進させるために、ロッカースイッチ又は別の種類のスイッチに置き換えられる。任意選択で、例えば、ボタン23(又は他のスイッチ)は、ボタン23を完全に径方向に前進した位置に(又は、異なる、例えばユーザーが選択した前進度において)所望に応じて係止する係止機能部を備えてもよい。
【0057】
理解されるように、シャトル20が医療用チューブ10内の清掃部材124を作動させるために使用されている間、シャトル20がガイドチューブ110内の磁気ガイド130から結合解除される場合、シャトル20及び磁気ガイド130は、磁気結合が再確立されるまで、シャトル20を前方(又は後方)に前進させることによって、磁気的に再結合することができる。代替的に、手術者は、胸腔チューブ10又はガイドチューブ110を圧搾して、チューブ壁を通してガイド部材122に手動で係合し、シャトル20が、ガイドチューブ110の壁を通して磁気ガイド130に磁気的に再係合するために並進している間に適所に保持してもよい。シャトル20(その磁気要素)と磁気ガイド130との間の磁気結合を介してガイド部材122の並進を容易にすることに加えて、開示される実施形態は、シャトル20をチューブの外部の周りに回転させることによって、胸腔チューブ10/ガイドチューブ110内のガイド部材122の回転も容易にする。シャトル20内のそれぞれの対向する第1の磁気要素27及び第2の磁気要素28から横断方向に位置合わせされる磁界は、固定の向きにおいて磁気ガイド130に磁気結合される。したがって、シャトル20をチューブの周りに回転させることにより、これに対応して、その固定の向きの結果として、チューブ内で磁気ガイド130(及び磁気ガイド130が取り付けられるガイド部材122)が回転する。これは、チューブ内の邪魔なデブリの除去に役立つとともに、閉塞物、又はチューブ内の湾曲若しくは屈曲から結果として生じる(例えば、チューブ内のキンクに起因する)ねじれを探査することに有用であり得る。
【0058】
或る特定の好ましい実施形態に関して本発明を記載したが、本発明は、本明細書に開示の本質的に例示的かつ非限定的な実施形態に限定されず、本開示を検討すれば当業者には想到されるとともに添付の特許請求の範囲に記載の本発明の趣旨及び範囲内にある全ての変更形態及び改変形態を含むことを理解されたい。
【国際調査報告】