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特表2023-549545接合はんだ及びその製造方法、炭化ケイ素被覆の接合方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-27
(54)【発明の名称】接合はんだ及びその製造方法、炭化ケイ素被覆の接合方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/00 20060101AFI20231117BHJP
   C08L 83/16 20060101ALI20231117BHJP
   C08K 3/40 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
C04B37/00 A
C08L83/16
C08K3/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023529005
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(85)【翻訳文提出日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 CN2021119168
(87)【国際公開番号】W WO2022100282
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】202011265156.4
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516267290
【氏名又は名称】中広核研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHINA NUCLEAR POWER TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE CO., LTD
(71)【出願人】
【識別番号】523174321
【氏名又は名称】嶺東核電有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】513047316
【氏名又は名称】中国広核集団有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】519063462
【氏名又は名称】中国広核電力股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】薛佳祥
(72)【発明者】
【氏名】廖業宏
(72)【発明者】
【氏名】任啓森
(72)【発明者】
【氏名】劉▲トン▼
(72)【発明者】
【氏名】▲ヅァイ▼剣▲ハン▼
(72)【発明者】
【氏名】馬海濱
(72)【発明者】
【氏名】張顕生
(72)【発明者】
【氏名】張永棟
(72)【発明者】
【氏名】李鋭
(72)【発明者】
【氏名】劉洋
【テーマコード(参考)】
4G026
4J002
【Fターム(参考)】
4G026BA14
4G026BB14
4G026BE02
4G026BF02
4G026BF38
4G026BG04
4G026BH13
4J002CP011
4J002CP211
4J002DL006
4J002FD206
4J002HA06
(57)【要約】
本発明は、接合はんだ及びその製造方法、炭化ケイ素被覆の接合方法を開示する。接合はんだに含まれる原料は、前駆体、ガラス粉体及び有機溶媒であり、前記前駆体とガラス粉体の質量比は90~98:2~10である。本発明における接合はんだは、炭化ケイ素被覆の接合に用いられる。ガラス粉体で形成されるガラス添加相と炭化ケイ素は濡れ性が良好であり、接合強度が高い。ガラス粉体の比率を調整可能とすることで、ガラス添加相の熱膨張率を調整可能となり、接合後の継手の応力を制御可能となる。これにより、厚くて緻密な接合層を実現し得るため、プロジェクトにおける取り付けに有利となり、且つ気密性が良好となる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素被覆の接合に用いられる接合はんだであって、
前記接合はんだに含まれる原料は、前駆体、ガラス粉体及び有機溶媒であり、
前記前駆体とガラス粉体の質量比は90~98:2~10であることを特徴とする接合はんだ。
【請求項2】
前記前駆体は、ポリカルボシラン及びポリシラザンのうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の接合はんだ。
【請求項3】
前記ガラス粉体の原料には、CA、SARe及びSMReのうちの1つ又は複数が含まれており、
前記CA、SARe及びSMReのうち、
CはCaOであり、AはAlであり、SはSiOであり、MはMgOであり、Reは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb又はLuであることを特徴とする請求項1に記載の接合はんだ。
【請求項4】
前記CA中の質量比は、CaO:Al=45~55:55~45であり、
前記SARe中の質量比は、SiO:Al:Re=30~60:15~30:25~40であり、
前記SMRe中の質量比は、SiO:MgO:Re=30~60:15~30:25~40であることを特徴とする請求項3に記載の接合はんだ。
【請求項5】
前記ガラス粉体は、CA、SARe及びSMReのうちの1つ又は複数を1400~1750℃で0.5~4h保温したあと水焼入れし、粉砕することで得られることを特徴とする請求項3に記載の接合はんだ。
【請求項6】
前記有機溶媒は、キシレン、トルエン、無水エタノール及びアセトンのうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の接合はんだ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の接合はんだの製造方法であって、
前駆体とガラス粉体を混合し、ボールミリングにより混合粉末を取得して、混合粉末と有機溶媒を均一に混合することで得られるスラリーが接合はんだとなる、とのステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
炭化ケイ素被覆の接合方法であって、
S1:互いに適合する被覆管と端栓との間に請求項1~6のいずれか1項に記載の接合はんだをコーティングし、
S2:前記接合はんだに対し、前駆体の硬化処理、前駆体の分解処理及び熱処理を順に行い、
S3:熱処理後の前記接合はんだが接合層を形成して、前記被覆管と端栓を一体的に接合する、
とのステップを含むことを特徴とする炭化ケイ素被覆の接合方法。
【請求項9】
ステップS2において、前記前駆体の硬化処理の温度は100~300℃であり、
前記前駆体の分解処理の温度は800~1200℃であり、
前記熱処理の温度は1300~1500℃であることを特徴とする請求項8に記載の炭化ケイ素被覆の接合方法。
【請求項10】
前記前駆体の硬化処理では、2℃/minの昇温速度で温度を100~300℃まで上昇させて0.5~2h保温し、前駆体の硬化圧力は0.01~1MPaであり、
前記前駆体の分解処理では、5~20℃/minの昇温速度で温度を800~1200℃まで上昇させて0.5~2h保温し、前駆体の分解圧力は0.01~1MPaであり、
前記熱処理では、1~20℃/minの昇温速度で温度を1300~1500℃まで上昇させて、0.5~2h保温することを特徴とする請求項9に記載の炭化ケイ素被覆の接合方法。
【請求項11】
ステップS3において、前記接合層の厚さは50~100μmであることを特徴とする請求項8~10のいずれか1項に記載の炭化ケイ素被覆の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核燃料の技術分野に関し、特に、接合はんだ及びその製造方法、炭化ケイ素被覆の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素(SiC)セラミックスは、高強度、高硬度、低密度、抗酸化性、耐腐食性等の特性を有するほか、熱膨張率が小さく、熱伝導率が大きく、高温性能が良好であり、中性子吸収断面積が小さい等の優れた性能も有しているため、燃料要素の被覆、原子炉容器の内壁、炉内配管ライナー等の原子核応用分野に幅広く用いられている。
【0003】
被覆は、主に被覆管と端栓を接合して構成され、高温、高圧、高放射線量、熱水腐食環境内で使用される。しかし、SiCは強力な共有結合化合物であり、融点が高く、自己拡散係数が小さいため、被覆管と端栓との直接接合を実現することが難しい。そこで、上記の環境条件に適応可能な接合はんだと方法が必要となる。現在のところ、原子力分野における炭化ケイ素の接合方法には、主に、前駆体法、ガラスセラミックスろう接法、MAX相ろう接法、NITE相ろう接法及び機械的接合が存在する。
【0004】
上述した方法には、それぞれ利点と欠点がある。前駆体法は、接合圧力が小さく、接合温度が低く、継手部分の熱応力が小さく、耐熱水腐食性及び耐放射線性能が良好である。しかし、前駆体は、分解過程で大量のガスを放出し、体積が収縮して気孔が形成される結果、接合強度や気密性等の性能が低下してしまう。一方、ガラスセラミックスろう接法は、密封性が良好で耐熱性・耐熱衝撃性に優れた継手を形成可能である。しかし、ガラスセラミックスは耐放射線性能に劣り、耐熱水腐食性能にも劣る。また、MAX相ろう接法による接合は、良好な耐熱衝撃性、耐酸化性能を有するが、高温下で分解されやすく、耐放射線性能にも劣る。また、NITE相ろう接法による接合は、良好な接合強度を有するが、接合圧力が大きすぎるため、被覆の接合には不向きである。
【0005】
原子力分野における前駆体接合の優位性、特に、継手が良好な耐熱水腐食性及び耐放射線性能を有するとの点に基づき、現在のところ、接合過程での体積の収縮を減少させるよう改良して、前駆体接合の剪断強度を向上させることが早急に求められている。そのほか、接合層の厚さが薄すぎると、被覆管と端栓との取り付けの難度が増大し、気密性が不足するとの問題が生じやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、炭化ケイ素被覆の接合に用いられる接合はんだ及びその製造方法と、当該接合はんだを用いて接合を行う炭化ケイ素被覆の接合方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が技術的課題を解決するために採用する技術方案は、以下の通りである。
【0008】
炭化ケイ素被覆の接合に用いられる接合はんだを提供する。前記接合はんだに含まれる原料は、前駆体、ガラス粉体及び有機溶媒である。
【0009】
前記前駆体とガラス粉体の質量比は90~98:2~10である。
【0010】
好ましくは、前記前駆体は、ポリカルボシラン及びポリシラザンのうちの少なくとも1つである。
【0011】
好ましくは、前記ガラス粉体の原料には、CA、SARe及びSMReのうちの1つ又は複数が含まれている。
【0012】
前記CA、SARe及びSMReのうち、CはCaOであり、AはAlであり、SはSiOであり、MはMgOであり、Reは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb又はLuである。
【0013】
好ましくは、前記CA中の質量比は、CaO:Al=45~55:55~45である。
【0014】
前記SARe中の質量比は、SiO:Al:Re=30~60:15~30:25~40である。
【0015】
前記SMRe中の質量比は、SiO:MgO:Re=30~60:15~30:25~40である。
【0016】
好ましくは、前記ガラス粉体は、CA、SARe及びSMReのうちの1つ又は複数を1400~1750℃で0.5~4h保温したあと水焼入れし、粉砕することで得られる。
【0017】
好ましくは、前記有機溶媒は、キシレン、トルエン、無水エタノール及びアセトンのうちの少なくとも1つである。
【0018】
本発明は、更に、接合はんだの製造方法を提供する。当該方法は、前駆体とガラス粉体を混合し、ボールミリングにより混合粉末を取得して、混合粉末と有機溶媒を均一に混合することで得られるスラリーが接合はんだとなる、とのステップを含む。
【0019】
本発明は、更に、炭化ケイ素被覆の接合方法を提供する。当該方法は、以下のステップを含む。
【0020】
S1:互いに適合する被覆管と端栓との間に上記いずれか1項に記載の接合はんだをコーティングする。
【0021】
S2:前記接合はんだに対し、前駆体の硬化処理、前駆体の分解処理及び熱処理を順に行う。
【0022】
S3:熱処理後の前記接合はんだが接合層を形成して、前記被覆管と端栓を一体的に接合する。
【0023】
好ましくは、ステップS2において、前記前駆体の硬化処理の温度は100~300℃である。
【0024】
前記前駆体の分解処理の温度は800~1200℃である。
【0025】
前記熱処理の温度は1300~1500℃である。
【0026】
好ましくは、前記前駆体の硬化処理では、2℃/minの昇温速度で温度を100~300℃まで上昇させて、0.5~2h保温する。また、前駆体の硬化圧力は0.01~1MPaである。
【0027】
前記前駆体の分解処理では、5~20℃/minの昇温速度で温度を800~1200℃まで上昇させて、0.5~2h保温する。また、前駆体の分解圧力は0.01~1MPaである。
【0028】
前記熱処理では、1~20℃/minの昇温速度で温度を1300~1500℃まで上昇させて、0.5~2h保温する。
【0029】
好ましくは、ステップS3において、前記接合層の厚さは50~100μmである。
【発明の効果】
【0030】
本発明における接合はんだは、炭化ケイ素被覆の接合に用いられる。ガラス粉体で形成されるガラス添加相と炭化ケイ素は濡れ性が良好であり、接合強度が高い。ガラス粉体の比率を調整可能とすることで、ガラス添加相の熱膨張率を調整可能となり、接合後の継手の応力を制御可能となる。これにより、厚くて緻密な接合層を実現し得るため、プロジェクトにおける取り付けに有利となり、且つ気密性が良好となる。
【0031】
本発明における接合はんだは、被覆の接合に応用されて、被覆の構造強度及び一体性を向上させる。これにより、原子炉の安全性を向上させて、原子炉内における新型被覆材の応用を積極的に推進させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明における接合はんだは、炭化ケイ素被覆の接合に用いられ、端栓を被覆管に接合する。
【0033】
当該接合はんだに含まれる原料は、前駆体、ガラス粉体及び有機溶媒である。
【0034】
前駆体とガラス粉体の質量比は、90~99:10~1である。
【0035】
前駆体は、ポリカルボシラン(PCS)である。
【0036】
ガラス粉体の原料には、CA、SARe及びSMReのうちの1つ又は複数が含まれる。且つ、当該ガラス粉体は、CA、SARe及びSMReのうちの1つ又は複数を1400~1750℃で0.5~4h保温したあと水焼入れし、粉砕することで得られる。
【0037】
CA、SARe及びSMReのうち、CはCaOであり、AはAlであり、SはSiOであり、MはMgOであり、Reは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb又はLuである。
【0038】
更に、CA中の質量比は、CaO:Al=45~55:55~45であり、SARe中の質量比は、SiO:Al:Re=30~60:15~30:25~40であり、SMRe中の質量比は、SiO:MgO:Re=30~60:15~30:25~40である。
【0039】
有機溶媒は、キシレン、トルエン、無水エタノール及びアセトンのうちの少なくとも1つである。
【0040】
本発明における接合はんだは、以下の方法で製造して形成される。即ち、前駆体とガラス粉体を混合し、ボールミリングにより混合粉末を取得して、混合粉末と有機溶媒を均一に混合することで得られるスラリーが接合はんだとなる。有機溶媒を適量とすることで、形成されるスラリーの固形分が30~60wt%となるようにする。
【0041】
具体的には、遊星型ボールミルを用いて、前駆体とガラス粉体をボールミリングにより混合する。ボールミリングの時間は8~24hとし、ボールミリングの回転速度は400r/minとする。
【0042】
本発明における接合はんだを炭化ケイ素被覆の接合に応用することで実現される炭化ケイ素被覆の接合方法は、以下のステップを含み得る。
【0043】
S1:互いに適合する被覆管と端栓との間に接合はんだをコーティングする。
【0044】
理解し得るように、端栓は主として被覆管の端部開口に接合される。よって、必要に応じて、接合はんだは、被覆管の端部開口又は端栓の接合端にコーティングするか、被覆管の端部開口及び端栓の接合端にコーティングする。端栓を被覆管の端部開口に組み合わせると、接合はんだは被覆管と端栓との間に位置し、接合待機組立体を形成する。
【0045】
接合はんだのコーティング厚さは、形成を要する接合層の厚さに応じて調整する。
【0046】
S2:接合はんだに対し、前駆体の硬化処理、前駆体の分解処理及び熱処理を順に行う。
【0047】
当該ステップS2では、まず、接合待機組立体を100~300℃下に置いて前駆体の硬化処理を行うことで、接合はんだ中の前駆体を硬化させる。前駆体の硬化処理では、2℃/minの昇温速度で温度を100~300℃まで上昇させて、0.5~2h保温する。また、前駆体の硬化圧力は0.01~1MPaとする。
【0048】
その後、前駆体の硬化処理を経た接合待機組立体を800~1200℃下に置いて前駆体の分解処理を行うことで、接合はんだ中の前駆体を分解する。前駆体の分解処理では、5~20℃/minの昇温速度で温度を800~1200℃まで上昇させて、0.5~2h保温する。また、前駆体の分解圧力は0.01~1MPaとする。
【0049】
最後に、前駆体の分解処理を経た接合待機組立体を1300~1500℃下に置いて熱処理を行う。熱処理では、1~20℃/minの昇温速度で温度を1300~1500℃まで上昇させ、0.5~2h保温する。
【0050】
熱処理によって、接合層におけるガラス相の結晶化度を調整し、被覆管と端栓との継手箇所における耐放射線性及び耐腐食性を向上させることが可能となる。
【0051】
S3:熱処理後の接合はんだが接合層を形成して、被覆管と端栓を一体的に接合する。
【0052】
接合はんだが形成する接合層は、緻密且つ気密性が良好である。接合層の厚さは50~100μmである。また、接合層の気密性は10-13~10-9Pa・m/sである。
【0053】
接合層の室温剪断強度は40~100MPaであり、1200℃での高温剪断強度は45~120MPaである。また、漏洩率は0~1×10-9Pa・m/sである。
【0054】
次に、具体的実施例によって、本発明につき更に説明する。
【実施例1】
【0055】
1.製造:
ポリカルボシラン(PCS)及びガラス粉体CA(C=CaO、A=Al)を原料として用いた。CAは、1650℃で2h保温したあと、水焼入れ及び粉砕することで取得した。PCSとCAを95:5の質量比で均一に混合し、混合粉体をキシレンと混合することで、固形分が50wt%の接合はんだを形成した。次に、接合はんだを被覆管と端栓との間にコーティングして接合待機組立体を形成した。そして、接合待機組立体につき、300℃で前駆体の硬化を行ってから、1200℃の分解温度及び1MPaの分解圧力を条件として分解した。最後に、1500℃で2hの後熱処理を行って、炭化ケイ素被覆を取得した。
【0056】
2.性能試験:
接合はんだで形成された接合層は、厚さが50μmであり、室温剪断強度が100MPaであり、1200℃での高温剪断強度が110MPaであった。また、漏洩率は0.5×10-9Pa・m/sであった。
【実施例2】
【0057】
1.製造:
ポリカルボシラン(PCS)及びガラス粉体CA(C=CaO、A=Al)を原料として用いた。ガラス粉体CAは、1700℃で2h保温したあと、水焼入れ及び粉砕することで取得した。PCSとCAを98:2の質量比で均一に混合し、混合粉体をキシレンと混合することで、固形分が60wt%の接合はんだを形成した。次に、接合はんだを被覆管と端栓との間にコーティングして接合待機組立体を形成した。そして、接合待機組立体につき、250℃で前駆体の硬化を行ってから、1100℃の分解温度及び0.1MPaの分解圧力を条件として分解した。最後に、1350℃で1hの後熱処理を行って、炭化ケイ素被覆を取得した。
【0058】
2.性能試験:
接合はんだで形成された接合層は、厚さが100μmであり、室温剪断強度が60MPaであり、1200℃での高温剪断強度が80MPaであった。また、漏洩率は0.8×10-9Pa・m/sであった。
【実施例3】
【0059】
1.製造:
ポリカルボシラン(PCS)及びガラス粉体SAY(S=SiO、A=Al、Y=Y)を原料として用いた。ガラス粉体SAYは、1700℃で2h保温したあと、水焼入れ及び粉砕することで取得した。PCSとCAを90:10の質量比で均一に混合し、混合粉体をキシレンと混合することで、固形分が30wt%の接合はんだを形成した。次に、接合はんだを被覆管と端栓との間にコーティングして接合待機組立体を形成した。そして、接合待機組立体につき、280℃で前駆体の硬化を行ってから、1150℃の分解温度及び0.5MPaの分解圧力を条件として分解した。最後に、1500℃で0.5hの後熱処理を行って、炭化ケイ素被覆を取得した。
【0060】
2.性能試験:
接合はんだで形成された接合層は、厚さが60μmであり、室温剪断強度が55MPaであり、1200℃での高温剪断強度が70MPaであった。また、漏洩率は0.2×10-9Pa・m/sであった。
【実施例4】
【0061】
1.製造:
ポリカルボシラン(PCS)及びガラス粉体SMY(M=MgO、Y=Y)を原料として用いた。CAは、1750℃で1h保温したあと、水焼入れ及び粉砕することで取得した。PCSとSMYを96:4の質量比で均一に混合し、混合粉体をキシレンと混合することで、固形分が45wt%の接合はんだを形成した。次に、接合はんだを被覆管と端栓との間にコーティングして接合待機組立体を形成した。そして、接合待機組立体につき、300℃で前駆体の硬化を行ってから、1200℃の分解温度及び1MPaの分解圧力を条件として分解した。最後に、1500℃で2hの後熱処理を行って、炭化ケイ素被覆を取得した。
【0062】
2.性能試験:
接合はんだで形成された接合層は、厚さが80μmであり、室温剪断強度が80MPaであり、1200℃での高温剪断強度が100MPaであった。また、漏洩率は0.5×10-9Pa・m/sであった。
【実施例5】
【0063】
1.製造:
ポリカルボシラン(PCS)及びガラス粉体SANd(A=Al、Nd=Nd)を原料として用いた。ガラス粉体SANdは、1550℃で1.5h保温したあと、水焼入れ及び粉砕することで取得した。PCSとSANdを95:5の質量比で均一に混合し、混合粉体をキシレンと混合することで、固形分が35wt%の接合はんだを形成した。次に、接合はんだを被覆管と端栓との間にコーティングして接合待機組立体を形成した。そして、接合待機組立体につき、280℃で前駆体の硬化を行ってから、1200℃の分解温度及び0.5MPaの分解圧力を条件として分解した。最後に、1500℃で1hの後熱処理を行って、炭化ケイ素被覆を取得した。
【0064】
2.性能試験:
接合はんだで形成された接合層は、厚さが85μmであり、室温剪断強度が80MPaであり、1200℃での高温剪断強度が100MPaであった。また、漏洩率は0.4×10-9Pa・m/sであった。
【0065】
[比較例1]
ポリカルボシラン(PCS)を原料として用い、PCSとキシレンを質量比1:1で混合した。そして、混合により製造したスラリーを被覆管と端栓との間にコーティングし、接合待機組立体を形成した。上記の接合待機組立体をまず300℃で硬化したあと、1200℃、1MPaで分解し、最後に1500℃で熱処理することで、接合後に炭化ケイ素被覆が形成された。
形成された当該炭化ケイ素被覆は、穴欠陥が多く、接合層の厚さが5μm未満であった。これは、前駆体の分解過程で大量の分解ガスが発生し、接合過程で接合材料が大量に流失したためである。結果として、接合層の厚さが小さくなり、中間接合層に大量の気孔欠陥が存在した。また、室温剪断強度試験の結果、剪断強度はわずか10.57MPaであり、1200℃で高温剪断試験を行ったところ、剪断強度はわずか6.01MPaであった。且つ、漏洩率は10-4Pa・m/sよりも大きかった。
【0066】
[比較例2]
CA(49.7wt% CaO、50.3wt% Al)を1500℃で2h保温したあと、水焼入れ及び粉砕を行った。次に、CAを原料として用い、CAとキシレンを質量比1:1で混合した。そして、混合により製造したスラリーを被覆管と端栓との間にコーティングし、接合待機組立体を形成した。上記の接合待機組立体をまず300℃で硬化したあと、1200℃、1MPaで分解し、最後に1500℃で熱処理することで、炭化ケイ素被覆を取得した。
炭化ケイ素被覆の中間接合層の厚さは約50μmであり、室温接合強度は60MPaに達した。しかし、1200℃での剪断強度はわずか8.27MPaであり、漏洩率は10-9Pa・m/sであった。
【0067】
以上から明らかなように、比較例1~2と比較して、実施例1~5では、前駆体とガラス粉体を組み合わせて接合はんだとすることで、厚くて緻密な接合層が実現された。当該接合層は、接合強度が高く、室温及び1200℃の高温条件における接合強度が高かった。また、漏洩率が要求を満たしていた。
【0068】
以上の記載は本発明の実施例にすぎず、これにより本発明の特許範囲を制限するものではない。本発明の明細書の内容を利用してなされる等価の構造又は等価のフローの変更、或いは、その他関連の技術分野への直接的又は間接的な応用は、いずれも同様の理由で本発明の特許保護の範囲に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核燃料の技術分野に関し、特に、接合はんだ及びその製造方法、炭化ケイ素被覆の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素(SiC)セラミックスは、高強度、高硬度、低密度、抗酸化性、耐腐食性等の特性を有するほか、熱膨張率が小さく、熱伝導率が大きく、高温性能が良好であり、中性子吸収断面積が小さい等の優れた性能も有しているため、燃料要素の被覆、原子炉容器の内壁、炉内配管ライナー等の原子核応用分野に幅広く用いられている。
【0003】
被覆は、主に被覆管と端栓を接合して構成され、高温、高圧、高放射線量、熱水腐食環境内で使用される。しかし、SiCは強力な共有結合化合物であり、融点が高く、自己拡散係数が小さいため、被覆管と端栓との直接接合を実現することが難しい。そこで、上記の環境条件に適応可能な接合はんだと方法が必要となる。現在のところ、原子力分野における炭化ケイ素の接合方法には、主に、前駆体法、ガラスセラミックスろう接法、MAX相ろう接法、NITE相ろう接法及び機械的接合が存在する。
【0004】
上述した方法には、それぞれ利点と欠点がある。前駆体法は、接合圧力が小さく、接合温度が低く、継手部分の熱応力が小さく、耐熱水腐食性及び耐放射線性能が良好である。しかし、前駆体は、分解過程で大量のガスを放出し、体積が収縮して気孔が形成される結果、接合強度や気密性等の性能が低下してしまう。一方、ガラスセラミックスろう接法は、密封性が良好で耐熱性・耐熱衝撃性に優れた継手を形成可能である。しかし、ガラスセラミックスは耐放射線性能に劣り、耐熱水腐食性能にも劣る。また、MAX相ろう接法による接合は、良好な耐熱衝撃性、耐酸化性能を有するが、高温下で分解されやすく、耐放射線性能にも劣る。また、NITE相ろう接法による接合は、良好な接合強度を有するが、接合圧力が大きすぎるため、被覆の接合には不向きである。
【0005】
原子力分野における前駆体接合の優位性、特に、継手が良好な耐熱水腐食性及び耐放射線性能を有するとの点に基づき、現在のところ、接合過程での体積の収縮を減少させるよう改良して、前駆体接合の剪断強度を向上させることが早急に求められている。そのほか、接合層の厚さが薄すぎると、被覆管と端栓との取り付けの難度が増大し、気密性が不足するとの問題が生じやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、炭化ケイ素被覆の接合に用いられる接合はんだ及びその製造方法と、当該接合はんだを用いて接合を行う炭化ケイ素被覆の接合方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が技術的課題を解決するために採用する技術方案は、以下の通りである。
【0008】
炭化ケイ素被覆の接合に用いられる接合はんだを提供する。前記接合はんだに含まれる原料は、前駆体、ガラス粉体及び有機溶媒である。
【0009】
前記前駆体とガラス粉体の質量比は90~98:2~10である。
【0010】
好ましくは、前記前駆体は、ポリカルボシラン及びポリシラザンのうちの少なくとも1つである。
【0011】
好ましくは、前記ガラス粉体の原料には、CA、SARe及びSMReのうちの1つ又は複数が含まれている。
【0012】
前記CA、SARe及びSMReのうち、CはCaOであり、AはAlであり、SはSiOであり、MはMgOであり、Reは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb又はLuである。
【0013】
好ましくは、前記CA中の質量比は、CaO:Al=45~55:55~45である。
【0014】
前記SARe中の質量比は、SiO:Al:Re=30~60:15~30:25~40である。
【0015】
前記SMRe中の質量比は、SiO:MgO:Re=30~60:15~30:25~40である。
【0016】
好ましくは、前記ガラス粉体は、CA、SARe及びSMReのうちの1つ又は複数を1400~1750℃で0.5~4h保温したあと水焼入れし、粉砕することで得られる。
【0017】
好ましくは、前記有機溶媒は、キシレン、トルエン、無水エタノール及びアセトンのうちの少なくとも1つである。
【0018】
本発明は、更に、接合はんだの製造方法を提供する。当該方法は、前駆体とガラス粉体を混合し、ボールミリングにより混合粉末を取得して、混合粉末と有機溶媒を均一に混合することで得られるスラリーが接合はんだとなる、とのステップを含む。
【0019】
本発明は、更に、炭化ケイ素被覆の接合方法を提供する。当該方法は、以下のステップを含む。
【0020】
S1:互いに適合する被覆管と端栓との間に上記いずれか1項に記載の接合はんだをコーティングする。
【0021】
S2:前記接合はんだに対し、前駆体の硬化処理、前駆体の分解処理及び熱処理を順に行う。
【0022】
S3:熱処理後の前記接合はんだが接合層を形成して、前記被覆管と端栓を一体的に接合する。
【0023】
好ましくは、ステップS2において、前記前駆体の硬化処理の温度は100~300℃である。
【0024】
前記前駆体の分解処理の温度は800~1200℃である。
【0025】
前記熱処理の温度は1300~1500℃である。
【0026】
好ましくは、前記前駆体の硬化処理では、2℃/minの昇温速度で温度を100~300℃まで上昇させて、0.5~2h保温する。また、前駆体の硬化圧力は0.01~1MPaである。
【0027】
前記前駆体の分解処理では、5~20℃/minの昇温速度で温度を800~1200℃まで上昇させて、0.5~2h保温する。また、前駆体の分解圧力は0.01~1MPaである。
【0028】
前記熱処理では、1~20℃/minの昇温速度で温度を1300~1500℃まで上昇させて、0.5~2h保温する。
【0029】
好ましくは、ステップS3において、前記接合層の厚さは50~100μmである。
【発明の効果】
【0030】
本発明における接合はんだは、炭化ケイ素被覆の接合に用いられる。ガラス粉体で形成されるガラス添加相と炭化ケイ素は濡れ性が良好であり、接合強度が高い。ガラス粉体の比率を調整可能とすることで、ガラス添加相の熱膨張率を調整可能となり、接合後の継手の応力を制御可能となる。これにより、厚くて緻密な接合層を実現し得るため、プロジェクトにおける取り付けに有利となり、且つ気密性が良好となる。
【0031】
本発明における接合はんだは、被覆の接合に応用されて、被覆の構造強度及び一体性を向上させる。これにより、原子炉の安全性を向上させて、原子炉内における新型被覆材の応用を積極的に推進させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明における接合はんだは、炭化ケイ素被覆の接合に用いられ、端栓を被覆管に接合する。
【0033】
当該接合はんだに含まれる原料は、前駆体、ガラス粉体及び有機溶媒である。
【0034】
前駆体とガラス粉体の質量比は、90~99:10~1である。
【0035】
前駆体は、ポリカルボシラン(PCS)である。
【0036】
ガラス粉体の原料には、CA、SARe及びSMReのうちの1つ又は複数が含まれる。且つ、当該ガラス粉体は、CA、SARe及びSMReのうちの1つ又は複数を1400~1750℃で0.5~4h保温したあと水焼入れし、粉砕することで得られる。
【0037】
CA、SARe及びSMReのうち、CはCaOであり、AはAlであり、SはSiOであり、MはMgOであり、Reは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb又はLuである。
【0038】
更に、CA中の質量比は、CaO:Al=45~55:55~45であり、SARe中の質量比は、SiO:Al:Re=30~60:15~30:25~40であり、SMRe中の質量比は、SiO:MgO:Re=30~60:15~30:25~40である。
【0039】
有機溶媒は、キシレン、トルエン、無水エタノール及びアセトンのうちの少なくとも1つである。
【0040】
本発明における接合はんだは、以下の方法で製造して形成される。即ち、前駆体とガラス粉体を混合し、ボールミリングにより混合粉末を取得して、混合粉末と有機溶媒を均一に混合することで得られるスラリーが接合はんだとなる。有機溶媒を適量とすることで、形成されるスラリーの固形分が30~60wt%となるようにする。
【0041】
具体的には、遊星型ボールミルを用いて、前駆体とガラス粉体をボールミリングにより混合する。ボールミリングの時間は8~24hとし、ボールミリングの回転速度は400r/minとする。
【0042】
本発明における接合はんだを炭化ケイ素被覆の接合に応用することで実現される炭化ケイ素被覆の接合方法は、以下のステップを含み得る。
【0043】
S1:互いに適合する被覆管と端栓との間に接合はんだをコーティングする。
【0044】
理解し得るように、端栓は主として被覆管の端部開口に接合される。よって、必要に応じて、接合はんだは、被覆管の端部開口又は端栓の接合端にコーティングするか、被覆管の端部開口及び端栓の接合端にコーティングする。端栓を被覆管の端部開口に組み合わせると、接合はんだは被覆管と端栓との間に位置し、接合待機組立体を形成する。
【0045】
接合はんだのコーティング厚さは、形成を要する接合層の厚さに応じて調整する。
【0046】
S2:接合はんだに対し、前駆体の硬化処理、前駆体の分解処理及び熱処理を順に行う。
【0047】
当該ステップS2では、まず、接合待機組立体を100~300℃下に置いて前駆体の硬化処理を行うことで、接合はんだ中の前駆体を硬化させる。前駆体の硬化処理では、2℃/minの昇温速度で温度を100~300℃まで上昇させて、0.5~2h保温する。また、前駆体の硬化圧力は0.01~1MPaとする。
【0048】
その後、前駆体の硬化処理を経た接合待機組立体を800~1200℃下に置いて前駆体の分解処理を行うことで、接合はんだ中の前駆体を分解する。前駆体の分解処理では、5~20℃/minの昇温速度で温度を800~1200℃まで上昇させて、0.5~2h保温する。また、前駆体の分解圧力は0.01~1MPaとする。
【0049】
最後に、前駆体の分解処理を経た接合待機組立体を1300~1500℃下に置いて熱処理を行う。熱処理では、1~20℃/minの昇温速度で温度を1300~1500℃まで上昇させ、0.5~2h保温する。
【0050】
熱処理によって、接合層におけるガラス相の結晶化度を調整し、被覆管と端栓との継手箇所における耐放射線性及び耐腐食性を向上させることが可能となる。
【0051】
S3:熱処理後の接合はんだが接合層を形成して、被覆管と端栓を一体的に接合する。
【0052】
接合はんだが形成する接合層は、緻密且つ気密性が良好である。接合層の厚さは50~100μmである。
【0053】
SiC継手の室温剪断強度は40~100MPaであり、1200℃での高温剪断強度は45~120MPaである。また、漏洩率は0~1×10-9Pa・m/sである。
【0054】
次に、具体的実施例によって、本発明につき更に説明する。
【実施例1】
【0055】
1.製造:
ポリカルボシラン(PCS)及びガラス粉体CA(C=CaO、A=Al)を原料として用いた。CAは、1650℃で2h保温したあと、水焼入れ及び粉砕することで取得した。PCSとCAを95:5の質量比で均一に混合し、混合粉体をキシレンと混合することで、固形分が50wt%の接合はんだを形成した。次に、接合はんだを被覆管と端栓との間にコーティングして接合待機組立体を形成した。そして、接合待機組立体につき、300℃で前駆体の硬化を行ってから、1200℃の分解温度及び1MPaの分解圧力を条件として分解した。最後に、1500℃で2hの後熱処理を行って、炭化ケイ素被覆を取得した。
【0056】
2.性能試験:
接合はんだで形成された接合層は、厚さが50μmであり、SiC継手の室温剪断強度が100MPaであり、1200℃での高温剪断強度が110MPaであった。また、漏洩率は0.5×10-9Pa・m/sであった。
【実施例2】
【0057】
1.製造:
ポリカルボシラン(PCS)及びガラス粉体CA(C=CaO、A=Al)を原料として用いた。ガラス粉体CAは、1700℃で2h保温したあと、水焼入れ及び粉砕することで取得した。PCSとCAを98:2の質量比で均一に混合し、混合粉体をキシレンと混合することで、固形分が60wt%の接合はんだを形成した。次に、接合はんだを被覆管と端栓との間にコーティングして接合待機組立体を形成した。そして、接合待機組立体につき、250℃で前駆体の硬化を行ってから、1100℃の分解温度及び0.1MPaの分解圧力を条件として分解した。最後に、1350℃で1hの後熱処理を行って、炭化ケイ素被覆を取得した。
【0058】
2.性能試験:
接合はんだで形成された接合層は、厚さが100μmであり、SiC継手の室温剪断強度が60MPaであり、1200℃での高温剪断強度が80MPaであった。また、漏洩率は0.8×10-9Pa・m/sであった。
【実施例3】
【0059】
1.製造:
ポリカルボシラン(PCS)及びガラス粉体SAY(S=SiO、A=Al、Y=Y)を原料として用いた。ガラス粉体SAYは、1700℃で2h保温したあと、水焼入れ及び粉砕することで取得した。PCSとSAYを90:10の質量比で均一に混合し、混合粉体をキシレンと混合することで、固形分が30wt%の接合はんだを形成した。次に、接合はんだを被覆管と端栓との間にコーティングして接合待機組立体を形成した。そして、接合待機組立体につき、280℃で前駆体の硬化を行ってから、1150℃の分解温度及び0.5MPaの分解圧力を条件として分解した。最後に、1500℃で0.5hの後熱処理を行って、炭化ケイ素被覆を取得した。
【0060】
2.性能試験:
接合はんだで形成された接合層は、厚さが60μmであり、SiC継手の室温剪断強度が55MPaであり、1200℃での高温剪断強度が70MPaであった。また、漏洩率は0.2×10-9Pa・m/sであった。
【実施例4】
【0061】
1.製造:
ポリカルボシラン(PCS)及びガラス粉体SMY(M=MgO、Y=Y)を原料として用いた。SMYは、1750℃で1h保温したあと、水焼入れ及び粉砕することで取得した。PCSとSMYを96:4の質量比で均一に混合し、混合粉体をキシレンと混合することで、固形分が45wt%の接合はんだを形成した。次に、接合はんだを被覆管と端栓との間にコーティングして接合待機組立体を形成した。そして、接合待機組立体につき、300℃で前駆体の硬化を行ってから、1200℃の分解温度及び1MPaの分解圧力を条件として分解した。最後に、1500℃で2hの後熱処理を行って、炭化ケイ素被覆を取得した。
【0062】
2.性能試験:
接合はんだで形成された接合層は、厚さが80μmであり、SiC継手の室温剪断強度が80MPaであり、1200℃での高温剪断強度が100MPaであった。また、漏洩率は0.5×10-9Pa・m/sであった。
【実施例5】
【0063】
1.製造:
ポリカルボシラン(PCS)及びガラス粉体SANd(A=Al、Nd=Nd)を原料として用いた。ガラス粉体SANdは、1550℃で1.5h保温したあと、水焼入れ及び粉砕することで取得した。PCSとSANdを95:5の質量比で均一に混合し、混合粉体をキシレンと混合することで、固形分が35wt%の接合はんだを形成した。次に、接合はんだを被覆管と端栓との間にコーティングして接合待機組立体を形成した。そして、接合待機組立体につき、280℃で前駆体の硬化を行ってから、1200℃の分解温度及び0.5MPaの分解圧力を条件として分解した。最後に、1500℃で1hの後熱処理を行って、炭化ケイ素被覆を取得した。
【0064】
2.性能試験:
接合はんだで形成された接合層は、厚さが85μmであり、SiC継手の室温剪断強度が80MPaであり、1200℃での高温剪断強度が100MPaであった。また、漏洩率は0.4×10-9Pa・m/sであった。
【0065】
[比較例1]
ポリカルボシラン(PCS)を原料として用い、PCSとキシレンを質量比1:1で混合した。そして、混合により製造したスラリーを被覆管と端栓との間にコーティングし、接合待機組立体を形成した。上記の接合待機組立体をまず300℃で硬化したあと、1200℃、1MPaで分解し、最後に1500℃で熱処理することで、接合後に炭化ケイ素被覆が形成された。
形成された当該炭化ケイ素被覆は、穴欠陥が多く、接合層の厚さが5μm未満であった。これは、前駆体の分解過程で大量の分解ガスが発生し、接合過程で接合材料が大量に流失したためである。結果として、接合層の厚さが小さくなり、中間接合層に大量の気孔欠陥が存在した。また、室温剪断強度試験の結果、SiC継手の剪断強度はわずか10.57MPaであり、1200℃で高温剪断試験を行ったところ、剪断強度はわずか6.01MPaであった。且つ、漏洩率は10-4Pa・m/sよりも大きかった。
【0066】
[比較例2]
CA(49.7wt% CaO、50.3wt% Al)を1500℃で2h保温したあと、水焼入れ及び粉砕を行った。次に、CAを原料として用い、CAとキシレンを質量比1:1で混合した。そして、混合により製造したスラリーを被覆管と端栓との間にコーティングし、接合待機組立体を形成した。上記の接合待機組立体をまず300℃で硬化したあと、1200℃、1MPaで分解し、最後に1500℃で熱処理することで、炭化ケイ素被覆を取得した。
炭化ケイ素被覆の中間接合層の厚さは約50μmであり、SiC継手の室温接合強度は60MPaに達した。しかし、1200℃での剪断強度はわずか8.27MPaであり、漏洩率は10-9Pa・m/sであった。
【0067】
以上から明らかなように、比較例1~2と比較して、実施例1~5では、前駆体とガラス粉体を組み合わせて接合はんだとすることで、厚くて緻密な接合層が実現された。当該接合層は、接合強度が高く、室温及び1200℃の高温条件における接合強度が高かった。また、漏洩率が要求を満たしていた。
【0068】
以上の記載は本発明の実施例にすぎず、これにより本発明の特許範囲を制限するものではない。本発明の明細書の内容を利用してなされる等価の構造又は等価のフローの変更、或いは、その他関連の技術分野への直接的又は間接的な応用は、いずれも同様の理由で本発明の特許保護の範囲に含まれる。
【国際調査報告】