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特表2023-549552薬剤投与デバイスのための圧力管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-27
(54)【発明の名称】薬剤投与デバイスのための圧力管理方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20231117BHJP
【FI】
A61M5/168 516
A61M5/168 520
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023529910
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(85)【翻訳文提出日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 US2021059456
(87)【国際公開番号】W WO2022108901
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】63/114,894
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417-1880, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-マルク ヴォル
(72)【発明者】
【氏名】スティーブ ビギン
(72)【発明者】
【氏名】シモン オライリー
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル マルセルポイル
(72)【発明者】
【氏名】セドリック オルニー
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066QQ14
4C066QQ25
4C066QQ35
4C066QQ46
4C066QQ58
4C066QQ77
4C066QQ78
4C066QQ82
4C066QQ92
(57)【要約】
ポンプと、流体ラインと、電源とを含む薬剤投与デバイスのための圧力管理方法であって、この方法は、ポンプを介して流体ラインを経由して流体を投与するステップと、流体ライン内部の圧力を示すパラメータを決定するステップと、流体ライン内部の圧力を示すパラメータが圧力しきい値レベルを上回ったかどうかを決定するステップと、所定の条件が満たされるまで、流体ラインを経由した流体の投与を一時停止させるステップと、所定の条件が満たされた後で、流体ラインを経由した流体の投与を再開するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプと、流体ラインと、電源とを備える薬剤投与デバイスのための圧力管理方法であって、前記方法は、
a)ポンプを介して、前記流体ラインを経由して流体を投与するステップと、
b)前記流体ライン内部の圧力を示すパラメータを決定するステップと、
c)前記流体ライン内部の圧力を示すパラメータが圧力しきい値レベルを上回ったかどうかを決定するステップと、
d)所定の条件が満たされるまで、前記流体ラインを経由した流体の前記投与を一時停止させるステップと、
e)前記所定の条件が満たされた後で、前記流体ラインを経由した前記流体の前記投与を再開するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
最大遅延期間の間、流体の前記投与が一時停止している場合、前記流体ラインを経由した流体の前記投与を終了させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最大遅延期間は少なくとも30秒である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記所定の条件は、前記流体ライン内部での所定の圧力レベルを含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記所定の条件は、所定の期間を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記流体ライン内部での圧力を示す前記パラメータは、前記ポンプの作動中に前記薬剤投与デバイスの電流を測定することによって決定される、請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記薬剤投与デバイスの前記電流を前記測定することは、前記ポンプの作動サイクルの間にピーク電流値から参照電流値を減算することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポンプを介して第1の流量で前記流体ラインを経由して流体を最初に投与するステップと、
前記ポンプを介して第2の流量で前記流体ラインを経由して流体を次に投与するステップであって、前記第1の流量は前記第2の流量より低い、ステップと、
をさらに含む、請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記ポンプを介して前記第1の流量で前記流体ラインを経由して流体を最初に投与する前記ステップは、15-50μLの流体を投与するように構成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ポンプを介して前記第1の流量で前記流体ラインを経由して流体を最初に投与する前記ステップは、ボーラス投与間での所定の遅延期間の間、流体の前記投与を一時停止させることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の流量は、完全に閉塞された状態を想定する最大許容流量に一致する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記ポンプを介して前記第1の流量で前記流体ラインを経由して流体を最初に投与する前記ステップは、最大で20μLの流体を投与するように構成される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
b)からe)までのステップのうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのプロセッサを含むマイクロコントローラーを用いて実行される、請求項1乃至12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
薬剤投与デバイスであって、
電源と、
流体を収容するように構成された容器と、
前記容器と流体連通する流体ラインと、
前記容器から前記流体ラインまで前記流体を投与するように構成されたポンプと、
マイクロコントローラーであって、前記デバイスに、
前記ポンプを介して前記流体ラインを経由して流体を投与することと、
前記流体ライン内部の圧力を示すパラメータを決定することと、
前記流体ライン内部の圧力を示す前記パラメータが、圧力しきい値レベルを上回るかどうかを決定することと、
所定の条件が満たされるまで、前記流体ラインを経由した流体の前記投与を一時停止させることと、
前記所定の条件が満たされた後で、前記流体ラインを経由した前記流体の前記投与を再開することと、
を行わせるようにプログラムされた、または構成された少なくとも1つのプロセッサを含む、マイクロコントローラーと、
を含む薬剤投与デバイス。
【請求項15】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記ポンプを介して第1の流量で前記流体ラインを経由して流体を最初に投与することと、
前記ポンプを介して第2の流量で前記流体ラインを経由して流体を次に投与することであって、前記第1の流量は前記第2の流量より低い、投与することと、
を行うようにさらにプログラムされる、または構成される、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記少なくとも1つのプロセッサは、ボーラス投与間での所定の遅延期間の間、流体の前記投与を一時停止させることを行うようにさらにプログラムされる、または構成される、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記第1の流量は、完全に閉塞された状態を想定する最大許容流量に一致する、請求項15に記載のデバイス。
【請求項18】
マイクロコントローラーと、容器と、ポンプと、流体ラインと、電源とを含む薬剤投与デバイスについての圧力管理方法に対するコンピュータープログラム製品であって、前記コンピュータープログラム製品は、プログラム命令を含む少なくとも1つの非一時的なコンピューター可読媒体を備え、前記プログラム命令は、前記マイクロコントローラーによって実行されたときに、前記薬剤投与デバイスに、
前記ポンプを介して、前記流体ラインを経由して流体を投与することと、
前記流体ライン内部の圧力を決定することと、
前記流体ライン内部の前記圧力が、圧力しきい値レベルを上回るかどうかを決定することと、
所定の条件が満たされるまで、前記流体ラインを経由した流体の前記投与を一時停止させることと、
前記所定の条件が満たされた後で、前記流体ラインを経由した前記流体の前記投与を再開することと、
を行わせる、コンピュータープログラム製品。
【請求項19】
前記少なくとも1つの非一時的なコンピューター可読媒体は、前記マイクロコントローラーによって実行されたときに、前記マイクロコントローラーに、
前記ポンプを介して第1の流量で前記流体ラインを経由して流体を最初に投与することと、
前記ポンプを介して第2の流量で前記流体ラインを経由して流体を次に投与することであって、前記第1の流量は前記第2の流量より低い、投与することと、
を行わせるプログラム命令をさらに含む、請求項18に記載のコンピュータープログラム製品。
【請求項20】
前記少なくとも1つの非一時的なコンピューター可読媒体は、前記マイクロコントローラーによって実行されたときに、前記マイクロコントローラーに、ボーラス投与間での所定の遅延期間の間、流体の前記投与を一時停止させることを行わせるプログラム命令をさらに含む、請求項19に記載のコンピュータープログラム製品。
【請求項21】
前記第1の流量は、完全に閉塞された状態を想定する最大許容流量に一致する、請求項19に記載のコンピュータープログラム製品。
【請求項22】
圧力しきい値レベルを示す前記パラメータが、しきい値、範囲、および/または圧力増加の割合を含む、請求項18乃至21のいずれかに記載のコンピュータープログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示は、薬剤投与デバイスのための圧力管理方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年11月17日に出願された、「薬剤投与デバイスのための圧力管理方法」と表題がつけられた米国仮出願第63/114,894号の優先権を主張し、その全体の開示は参照によりその全体において本明細書に組み込まれる。
【0003】
関連技術の説明
自動注射器のようなウェアラブルな医療デバイスは、臨床施設から遠く離れた場所で、および/または患者の衣類の下で個々に装着されている間に、患者に治療を提供する利点を有する。ウェアラブルな医療デバイスは、患者の皮膚に適用されることができ、および例えば27時間の遅延の後など、ウェアラブルな医療デバイスを患者の皮膚に適用した後、所定の期間内に、医薬組成物の投与量を自動的に投与するように構成されることができる。デバイスが医薬組成物を患者に投与した後、患者は、続いてデバイスを取り外して廃棄し得る。
【0004】
ある状況では、液体が注射されている媒体のために、デバイスから出る流体の流れが悪くなり得、このことは、デバイスの流体ラインにおける圧力の増加につながる可能性がある。圧力が、あるしきい値を超えて上昇するとき、流体経路の完全性が損なわれ得、デバイス内部の漏れおよび薬剤の全投与量を投与できないことを引き起こす。デバイス内部の流体漏れはまた、流体とデバイスとの相互間で接触することによる潜在的な汚染の懸念だけでなく、デバイスへのダメージおよびその後のシステム障害を引き起こし得る。
【0005】
ヒト皮下組織は、種々の細胞型と、細胞外基質(ECM)成分と、微細構造と、細胞およびECMの肉眼で見える配置とで構成される。これらの要素は、組織の機械的特性に寄与する。組織はまた、リンパ系、血管を含み得、および固有の流体吸収特性および固有の流体保持特性を有する。これらの特性は個人、体内の位置の間で異なり、および時間が経つにつれて、注射部位における流体の注入に対する抵抗度の変化を引き起こし得る。組織の抵抗が高すぎる場合、またはデバイスからの所与の投与流量に対して吸収率が低すぎる場合、圧力が増大し得、および流体ラインと他の構成要素とが損なわれ得るしきい値を超えてバルブに到達し得る。
【発明の概要】
【0006】
一態様または一実施形態では、ポンプと、流体ラインと、電源との薬剤投与デバイスのための圧力管理方法であって、方法は、ポンプを介して流体ラインを経由して流体を投与するステップと、流体ライン内部の圧力を示すパラメータを決定するステップと、流体ライン内部の圧力を示すパラメータが圧力しきい値レベルを上回ったかどうかを決定するステップと、所定の条件が満たされるまで、流体ラインを経由した流体の投与を一時停止させるステップと、所定の条件が満たされた後で、流体ラインを経由した流体の投与を再開するステップとを含む。
【0007】
方法は、少なくとも1つのプロセッサを含むマイクロコントローラーを用いて実行され得る。
【0008】
方法は、最大遅延期間の間、流体の投与が一時停止している場合、流体ラインを経由した流体の投与を終了させるステップを含み得る。最大遅延期間は少なくとも30秒であり得る。別の構成では、最大遅延期間は少なくとも4分であり得る。所定の条件は流体ライン内部での所定の圧力レベルであり得る。所定の条件は所定の期間であり得る。
【0009】
流体ライン内部の圧力は、ポンプの作動中に薬剤投与デバイスの電流のような圧力を示すパラメータを測定することによって決定され得る。薬剤投与デバイスの電流を測定することは、ポンプの作動サイクルの間にピーク電流値から参照電流値を減算してストローク電力値を決定することを含み得る。所定の条件は、薬剤投与デバイスにおけるセンサーからの入力であり得るか、またはユーザからの入力であり得る。
【0010】
方法は、ポンプを介して第1の流量で流体ラインを経由して流体を最初に投与するステップと、ポンプを介して第2の流量で流体ラインを経由して流体を次に投与するステップであって、第1の流量は第2の流量より低いステップをさらに含み得る。ポンプを介して第1の流量で流体ラインを経由して流体を最初に投与することは、15-50μLの流体を投与するように構成され得る。ポンプを介して第1の流量で流体ラインを経由して流体を最初に投与するステップは、ボーラス投与間での所定の遅延期間の間、流体の投与を一時停止させることを含み得る。第1の流量は、完全に閉塞された状態を想定する最大許容流量に一致し得る。ポンプを介して第1の流量で流体ラインを経由して流体を最初に投与するステップは、最大で20μLの流体を投与するように構成され得る。
【0011】
さらなる態様または実施形態において、薬剤投与デバイスは、電源と、流体を収容するように構成された容器と、容器と流体連通する流体ラインと、容器から流体ラインまで流体を投与するように構成されたポンプと、マイクロコントローラーであって、ポンプを介して流体ラインを経由して流体を投与し、流体ライン内部の圧力を示すパラメータを決定し、流体ライン内部の圧力を示すパラメータが圧力しきい値レベルを上回るかどうかを決定し、所定の条件が満たされるまで流体ラインを経由した流体の投与を一時停止させ、および所定の条件が満たされた後で流体ラインを経由した流体の投与を再開するようにプログラムされた、または構成された少なくとも1つのプロセッサを含むマイクロコントローラーとを含む。
【0012】
さらなる態様または実施形態において、マイクロコントローラーと、容器と、ポンプと、流体ラインと、電源とを備える薬剤投与デバイスについての圧力管理方法に対するコンピュータープログラム製品であって、コンピュータープログラム製品は、プログラム命令を含む少なくとも1つの非一時的なコンピューター可読媒体を含み、プログラム命令は、マイクロコントローラーによって実行されたときに、マイクロコントローラーに、ポンプを介して、流体ラインを経由して薬剤投与デバイスが流体を投与するように操作することと、流体ライン内部の圧力を示すパラメータを決定することと、流体ライン内部の圧力を示すパラメータが、圧力しきい値レベルを上回るかどうかを決定することと、所定の条件が満たされるまで、流体ラインを経由した流体の投与を一時停止させることと、所定の条件が満たされた後で、流体ラインを経由した流体の投与を再開することとを行わせる、コンピュータープログラム製品。
【0013】
圧力しきい値レベルは、しきい値、範囲、および/または圧力増加の割合を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
上記のおよび本開示の他の特徴と利点と、それらを達成する様式とは、添付の図面と併せて考慮される本開示の実施形態に関する以下の説明を参照することによってより明白となり、および本開示そのものがより良く理解されることになる。
【0015】
図1】本出願の一態様または一実施形態による、薬剤投与デバイスの透視図である。
図2】上蓋が取り除かれた、図1の薬剤投与デバイスの透視図である。
図3図1の薬剤投与デバイスの概略図である。
図4】本出願の一態様または一実施形態による圧力管理方法を示す、図1の薬剤投与デバイスについての圧力対時間のグラフである。
図5】本出願の一態様または一実施形態による、圧力管理方法の概略図である。
図6図5の方法のさらなる概略図である。
図7】本出願の第2の態様または第2の実施形態による、圧力管理方法の概略図である。
図8A】本出願の一態様または一実施形態による流体経路圧力を決定する方法を示す、図1の薬剤投与デバイスについての電流対時間のグラフである。
図8B図8Aで示された領域8Bの拡大グラフである。
図8C図8Bで示された領域8Cの拡大グラフである。
【0016】
対応する参照符号は、対応する部分をいくつかの図面にわたって示す。本明細書で設定された例示は本開示の例となる実施形態を説明するものであって、そのような例示はどのような様式においても本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
「左」、「右」、「内部の」、「外部の」、「より上に」、「より下に」などのような空間的な用語、または方向の用語は本発明を限定するものとして考慮されるべきではなく、本発明は様々な代替的な方向を想定することができる。
【0018】
本明細書および特許請求の範囲で使用されている全ての数字は、全ての例において、用語「約(about)」によって修正されるものとして理解されるべきである。「約」によって、記述された値のプラスまたはマイナス10パーセントの範囲が意味される。本明細書および特許請求の範囲で使用されるように、「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」という単数形は、コンテキストが明確に別の方法を規定するのでなければ、複数の指示物を含む。用語「第1の」、「第2の」などは、任意の特定の順序または出来事の配列に言及することが意図されておらず、それよりむしろ異なる状態、特性、または要素に言及する。「少なくとも(at least)」によって、「より大きい、または~に等しい」ことが意味される。
【0019】
図1乃至3を参照すると、薬剤投与デバイス10は、容器12、電源14、挿入機構16、制御電子機器18、蓋20、および基板22を含む。1つの態様または実施形態において、薬剤投与デバイス10は、インスリンまたは骨髄刺激剤(bone marrow stimulant)投与デバイスのようなウェアラブルな自動注射器である。薬剤投与デバイス10は、患者の皮膚上に取り付けられ得、および容器12から患者に医薬組成物を注射するように動作し得る。薬剤投与デバイス10は、医薬組成物で事前に充填されてもよく、または薬剤投与デバイス10は、患者または医療専門家によって使用前に医薬組成物で充填されてもよい。
【0020】
薬剤投与デバイス10は、医薬組成物、例えば任意の所望の薬剤の投与量を、ゆっくりと制御された注射速度で皮下注射によって患者の体内に投与するように構成される。薬剤投与デバイス10によって実現される投与の例示的な持続時間は、約5分から約60分までに及びうるが、この例示的な範囲に限定されない。薬剤投与デバイス10によって投与される医薬組成物の例示的な容量は、約0.1ミリリットルから約10ミリリットルまでに及び得るが、この例示的な範囲に限定されない。患者に投与される医薬組成物の容量は調整され得る。
【0021】
再び図1から図4を参照して、1つの態様または実施形態において、電源14は、1または複数の電池を含む直流電源である。制御電子機器18は、マイクロコントローラー24、感知電子機器26、ポンプおよびバルブコントローラー28、感知電子機器30、および薬剤投与デバイス10の作動を制御する配置電子機器32を含む。薬剤投与デバイス10は、容器12と、容器12の容量センサー34と、容器充填ポート36と、ポンプおよびバルブ作動装置40と、ポンプおよびバルブ機構42とを含む計測システム38とを含む流体工学サブシステムを含む。流体工学サブシステムは、閉塞センサー44と、配置作動装置46と、患者の皮膚に挿入するためのカニューレ48と、容器12およびカニューレ48に流体連通する流体ライン50とをさらに含み得る。代替的な態様または実施形態では、閉塞センサーはモーター電流を測定するためのシステムである。1つの態様または実施形態において、挿入機構16は、デバイス10の内部に全体が配置された格納位置から、カニューレ48がデバイス10の外側に伸長する伸長位置にカニューレ48を移動させるように構成される。薬剤投与デバイス10は、Pizzocheroらについての米国特許第10,449,292号において説明されたのと同様の様式で動作してもよい。
【0022】
図4乃至図6を参照すると、一態様または一実施形態では、薬剤投与デバイス10の圧力管理の方法52は、ポンプおよびバルブ機構42を介して、流体ライン50を経由して流体を投与するステップと、流体ライン50内部の圧力を決定するステップと、流体ライン50内部の圧力が圧力しきい値レベルを上回るかどうかを決定するステップと、所定の条件が満たされるまで流体ライン50を経由した流体の投与を一時停止するステップと、所定の条件が満たされた後で流体ライン50を経由する流体の投与を再開することと、を含む。所定の条件は所定の期間であってもよいが、所定の条件はまた、流体ライン50内部の所定の圧力レベルであってもよく、または所定の条件は、デバイス内のセンサーからの入力もしくはユーザからの入力であってもよい。流体ライン50内部の圧力レベルは、センサーまたは他の構成を利用して継続的に監視され得るが、圧力は、以下のさらなる詳細で説明されるように、デバイス10の作動中に利用される電流に基づいて決定され得る。図4に示されるように、流体ライン50内部の圧力が圧力しきい値レベル60に達した場合、流体の投与の一時停止62が開始されて、可能な場合、流体の投与が再開されることができるレベルまで圧力が自然に低下する。方法52のアルゴリズムロジックは、図5および図6に示される。方法52は、流体の投与の開始から流体の全投与量の投与の完了までの1または複数の反復プロセスを含み得る。方法52は、マイクロコントローラー24または薬剤投与デバイス10の他のプロセッサによって実行され得る。
【0023】
一態様または一実施形態では、方法52は、流体の投与が最大遅延期間の間一時停止しているときに、流体ライン50を経由する流体の投与を終了させることを含む。例えば、流体ライン50内部の圧力が所定の圧力レベルを下回るまで流体の投与を一時停止し、および最大遅延期間後に流体ライン50内部の圧力が所定の圧力レベルを下回らない場合、投与プロセスは終了し、およびエラーまたは閉塞表示が薬剤投与デバイス10によって提供され得る。一態様または一実施形態では、最大遅延期間は少なくとも30秒である。別の態様または実施形態では、最大遅延期間は少なくとも4分である。1つの態様または実施形態では、流体の投与は複数のより少量の投与を介して提供され、および最大遅延期間は、これらの個別の投与間の時間の全合計または遅延期間の合計数を含む。例えば、流体ライン50内部の圧力が圧力しきい値レベル60を上回るために、流体の投与を所定の時間量の間一時停止する場合、後続のボーラス投与が投与され得、および圧力が圧力しきい値レベル60を上回り続ける場合、投与が終了し得る。投与を一時停止して圧力しきい値レベル60を下回らない場合、投与は、1または複数の後続のボーラス投与の後に終了し得る。
【0024】
図7を参照すると、一態様または一実施形態では、方法52は、ポンプおよびバルブ機構42を介して第1の流量で流体ライン50を経由して流体を最初に投与するステップと、ポンプおよびバルブ機構42を介して第2の流量で流体ライン50を経由して流体を次に投与するステップであって、第1の流量は第2の流量より低いステップと、をさらに含み得る。第2の流量で流体を投与した後、図4乃至図6において上記にて説明された方法52は、投与が完了するまで、または閉塞状態が決定されるまで継続し得る。生物学的な組織に流体が浸透した場合、生物学的な組織の機械的特性および吸収特性は流体によって変更される。浸透された組織は、典型的には、流体のさらなる浸透に対してより低い抵抗を表示する。したがって、ピーク注入圧力は、典型的には、投与の開始時および任意の流体が標的組織に入る前に生じる。したがって、投与の開始時に第1の流量を提供することによって、先手を取って流体ライン50内の圧力が管理されることができる。一態様または一実施形態では、第1の流量で流体ライン50を経由する流体の最初の投与は、15-50μLの流体を投与するように構成される。一態様または一実施形態では、流体ライン50を経由する第1の流量での流体の最初の投与は、ボーラス投与間の所定の遅延期間の間、流体の投与を一時停止62することを含む。
【0025】
一態様または一実施形態では、第1の流量は、完全に閉塞された状態を想定した最大許容流量に一致する。20μLの流体のような既知の量を投与した後、第2の流量で投与を再開する前に例えば1分などの期間の間、投与が一時停止62される。20μLの流体の投与は、ポンプおよびバルブ機構42の4つの作動サイクルに対応し得る。
【0026】
図8A乃至図8Cを参照すると、一態様または一実施形態では、流体ライン50内の圧力は、ポンプおよびバルブ機構42の作動中に圧力を直接測定するか、または薬剤投与デバイス10の電流を測定するような、圧力を示すパラメータを測定することによって決定される。薬剤投与デバイス10の電流の測定は、ポンプおよびバルブ機構42の作動サイクル中にピーク電流値72から基準電流値またはベースライン電流値70を減算してストローク電流値74を決定することを含むが、他の適切な電流検出構成が利用されてもよい。ストローク電流値74は、ポンプおよびバルブ機構42の特定の作動サイクルに対する流体ライン50の下流圧力を推定するために利用される。例えば、ストローク電流値74は、ストローク電流値74が使用されて流体ライン50の圧力レベルを正確に推定できるように、テストまたはベンチマークすることによって、様々な下流圧力レベルに対応されることができる。
【0027】
デバイス10および方法52は、製造コストが低く、誤閉塞アラームの発生が少ない状態で、投与プロセス中の最大圧力および全体的な圧力プロファイルの管理を提供し、薬剤投与デバイス10の有効動作範囲を広げ、およびデバイス10内部に漏れを引き起こすことなく最適な投与時間を可能にする。
【0028】
本発明は、最も実用的でおよび好ましい実施形態であると現在考えられているものに基づいて例示の目的のために詳細に説明されたが、そのような詳細は単にその目的のためであって、本発明は開示された実施形態に限定されないが、むしろ、添付の特許請求の範囲の精神および範囲内にある修正および同等の構成を包含することが意図されていることを理解されたい。例えば、本発明は、可能な限り任意の実施形態の1または複数の特徴が、他の任意の実施形態の1または複数の特徴と組み合わせられることができることを予期することを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
【手続補正書】
【提出日】2023-08-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプと、流体ラインと、電源とを備える薬剤投与デバイスのための圧力管理方法であって、前記方法は、
a)ポンプを介して、前記流体ラインを経由して流体を投与するステップと、
b)前記流体ライン内部の圧力を示すパラメータを決定するステップと、
c)前記流体ライン内部の圧力を示す前記パラメータが圧力しきい値レベルを上回ったかどうかを決定するステップと、
d)所定の条件が満たされるまで、前記流体ラインを経由した前記流体の前記投与を一時停止させるステップと、
e)前記所定の条件が満たされた後で、前記流体ラインを経由した前記流体の前記投与を再開するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
最大遅延期間の間、前記流体の前記投与が一時停止している場合、前記流体ラインを経由した前記流体の前記投与を終了させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最大遅延期間は少なくとも30秒である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記所定の条件は、前記流体ライン内部での所定の圧力レベルを含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記所定の条件は、所定の期間を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記流体ライン内部での圧力を示す前記パラメータは、前記ポンプの作動中に前記薬剤投与デバイスの電流を測定することによって決定される、請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記薬剤投与デバイスの前記電流を前記測定することは、前記ポンプの作動サイクルの間にピーク電流値から参照電流値を減算することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポンプを介して第1の流量で前記流体ラインを経由して前記流体を最初に投与するステップと、
前記ポンプを介して第2の流量で前記流体ラインを経由して前記流体を次に投与するステップであって、前記第1の流量は前記第2の流量より低い、ステップと、
をさらに含む、請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記ポンプを介して前記第1の流量で前記流体ラインを経由して前記流体を最初に投与する前記ステップは、15-50μLの前記流体を投与するように構成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ポンプを介して前記第1の流量で前記流体ラインを経由して前記流体を最初に投与する前記ステップは、ボーラス投与間での所定の遅延期間の間、前記流体の前記投与を一時停止させることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の流量は、完全に閉塞された状態を想定する最大許容流量に一致する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記ポンプを介して前記第1の流量で前記流体ラインを経由して前記流体を最初に投与する前記ステップは、最大で20μLの前記流体を投与するように構成される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
b)からe)までのステップのうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのプロセッサを含むマイクロコントローラーを用いて実行される、請求項1乃至12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
薬剤投与デバイスであって、
電源と、
流体を収容するように構成された容器と、
前記容器と流体連通する流体ラインと、
前記容器から前記流体ラインまで前記流体を投与するように構成されたポンプと、
マイクロコントローラーであって、前記デバイスに、
前記ポンプを介して前記流体ラインを経由して前記流体を投与することと、
前記流体ライン内部の圧力を示すパラメータを決定することと、
前記流体ライン内部の圧力を示す前記パラメータが、圧力しきい値レベルを上回るかどうかを決定することと、
所定の条件が満たされるまで、前記流体ラインを経由した前記流体の前記投与を一時停止させることと、
前記所定の条件が満たされた後で、前記流体ラインを経由した前記流体の前記投与を再開することと、
を行わせるようにプログラムされた、または構成された少なくとも1つのプロセッサを含む、マイクロコントローラーと、
を含む薬剤投与デバイス。
【請求項15】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記ポンプを介して第1の流量で前記流体ラインを経由して前記流体を最初に投与することと、
前記ポンプを介して第2の流量で前記流体ラインを経由して前記流体を次に投与することであって、前記第1の流量は前記第2の流量より低い、投与することと、
を行うようにさらにプログラムされる、または構成される、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記少なくとも1つのプロセッサは、ボーラス投与間での所定の遅延期間の間、前記流体の前記投与を一時停止させることを行うようにさらにプログラムされる、または構成される、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記第1の流量は、完全に閉塞された状態を想定する最大許容流量に一致する、請求項15に記載のデバイス。
【請求項18】
ログラム命令を含む少なくとも1つの非一時的なコンピューター可読媒体であって、前記プログラム命令は、マイクロコントローラーによって実行されたときに、薬剤投与デバイスに
ンプを介して、流体ラインを経由して流体を投与することと、
前記流体ライン内部の圧力を決定することと、
前記流体ライン内部の前記圧力が、圧力しきい値レベルを上回るかどうかを決定することと、
所定の条件が満たされるまで、前記流体ラインを経由した前記流体の前記投与を一時停止させることと、
前記所定の条件が満たされた後で、前記流体ラインを経由した前記流体の前記投与を再開することと、
を行わせる、少なくとも1つの非一時的なコンピューター可読媒体
【請求項19】
前記少なくとも1つの非一時的なコンピューター可読媒体は、前記マイクロコントローラーによって実行されたときに、前記マイクロコントローラーに、
前記ポンプを介して第1の流量で前記流体ラインを経由して前記流体を最初に投与することと、
前記ポンプを介して第2の流量で前記流体ラインを経由して前記流体を次に投与することであって、前記第1の流量は前記第2の流量より低い、投与することと、
を行わせるプログラム命令をさらに含む、請求項18に記載の少なくとも1つの非一時的なコンピューター可読媒体
【請求項20】
前記少なくとも1つの非一時的なコンピューター可読媒体は、前記マイクロコントローラーによって実行されたときに、前記マイクロコントローラーに、ボーラス投与間での所定の遅延期間の間、前記流体の前記投与を一時停止させることを行わせるプログラム命令をさらに含む、請求項19に記載の少なくとも1つの非一時的なコンピューター可読媒体
【請求項21】
前記第1の流量は、完全に閉塞された状態を想定する最大許容流量に一致する、請求項19に記載の少なくとも1つの非一時的なコンピューター可読媒体
【請求項22】
圧力しきい値レベルを示すパラメータが、しきい値、範囲、および/または圧力増加の割合を含む、請求項18乃至21のいずれかに記載の少なくとも1つの非一時的なコンピューター可読媒体
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
一態様または一実施形態では、ポンプと、流体ラインと、電源とを備える薬剤投与デバイスのための圧力管理方法であって、方法は、ポンプを介して流体ラインを経由して流体を投与するステップと、流体ライン内部の圧力を示すパラメータを決定するステップと、流体ライン内部の圧力を示すパラメータが圧力しきい値レベルを上回ったかどうかを決定するステップと、所定の条件が満たされるまで、流体ラインを経由した流体の投与を一時停止させるステップと、所定の条件が満たされた後で、流体ラインを経由した流体の投与を再開するステップとを含む。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正の内容】
図3
【国際調査報告】