(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-27
(54)【発明の名称】最適化されたユニバーサルインフルエンザワクチンの設計、それらの設計及び使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/44 20060101AFI20231117BHJP
C07K 14/11 20060101ALI20231117BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20231117BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20231117BHJP
A61K 39/145 20060101ALI20231117BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20231117BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
C12N15/44
C07K14/11 ZNA
C12N15/86 Z
C12N7/01
A61K39/145
A61P37/04
A61P31/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023529937
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 US2021059915
(87)【国際公開番号】W WO2022109152
(87)【国際公開日】2022-05-27
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522382691
【氏名又は名称】グレフェックス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シュテルツ, ウーベ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】スピア, フィリップ シー.
(72)【発明者】
【氏名】チー, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】カル, ジャネイ ウィーラー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA45
4C085AA04
4C085BB11
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、ユニバーサルインフルエンザウイルスワクチンを提供する。ユニバーサルインフルエンザウイルスワクチンのための組成物は、少なくとも2つ、好ましくは2つよりも多くの異なるインフルエンザ血液凝集素(HA)由来抗原を含む。抗原が由来するHAタンパク質は、52位及び277位の保存されたシステインの間に位置する超可変領域を有しており、超可変領域は抗原において欠失している。少なくとも2つの抗原はそれぞれ、エンボス・エクスプローラ・コン・プログラムによって計算して、60、又は70、又は80を超える1つよりも多くのインフルエンザ血清型のHA分子との類似性を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワクチン用組成物であって、
少なくとも2つの異なるインフルエンザ血液凝集素(HA)由来抗原を含み、抗原が由来するHAタンパク質が超可変領域を含み、超可変領域が少なくとも2つの異なるインフルエンザHA由来抗原から欠失しており、少なくとも2つの異なるインフルエンザHA由来抗原の各々が、エンボス・エクスプローラ・コン・プログラムによって計算して少なくとも60を超える1つよりも多くのインフルエンザ血清型のHA分子との類似性を有する、ワクチン用組成物。
【請求項2】
類似性が少なくとも70である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
類似性が少なくとも80である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
超可変領域が、少なくとも2つの異なるインフルエンザHA由来抗原においてペプチドリンカーによって置き換えられている、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも2つの異なるインフルエンザHA由来抗原がタンパク質である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも2つの異なるインフルエンザHA由来抗原が、抗原が由来するHAタンパク質をコードするRNA及びDNAの一方である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
RNA及びDNAの一方がウイルスベクター中にある、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
超可変領域が、血清型H3のインフルエンザHAのアミノ酸ナンバリングを使用して52位及び277位の保存されたシステインの間に位置する、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
2つよりも多くの異なるインフルエンザHA由来抗原を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
ユニバーサルインフルエンザウイルスワクチンを製造するための方法であって、
エンボス・エクスプローラ・コン・プログラムによって計算して少なくとも60を超える第1の複数のインフルエンザ血清型のHA分子との類似性を有する第1のインフルエンザHA由来抗原を得ることと、
エンボス・エクスプローラ・コン・プログラムによって計算して少なくとも60を超える第2の複数のインフルエンザ血清型のHA分子との類似性を有する第2のインフルエンザHA由来抗原を得ることと、を含み、
第1及び第2の複数のインフルエンザ血清型は、異なる血清型から構成される、方法。
【請求項11】
第1及び第2の複数のインフルエンザ血清型が、異なる重複しない血清型で構成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第1及び第2のインフルエンザHA由来抗原が由来するHAタンパク質が超可変領域を含み、超可変領域が第1及び第2のインフルエンザHA由来抗原から欠失している、請求項10から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
類似性が、独立して、少なくとも70である、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
類似性が、独立して、少なくとも80である、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
超可変領域がペプチドリンカーによって置き換えられている、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
第1及び第2のインフルエンザHA由来抗原がタンパク質である、請求項10から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
第1及び第2のインフルエンザHA由来抗原が、抗原が由来するHAタンパク質をコードするRNA及びDNAの一方である、請求項10から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
HAタンパク質をコードするRNA及びDNAの一方をウイルスベクターにカプシド形成することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
エンボス・エクスプローラ・コン・プログラムによって計算して少なくとも60を超える第3の複数のインフルエンザ血清型のHA分子との類似性を有する少なくとも第3のインフルエンザHA由来抗原を得ることを含む、請求項10から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも2つの異なるインフルエンザ血清型に対して動物にワクチン接種する方法であって、
少なくとも2つの異なるインフルエンザ血液凝集素(HA)由来抗原を含むワクチン組成物であって、抗原が由来するHAタンパク質が超可変領域を含み、超可変領域が少なくとも2つの異なるインフルエンザHA由来抗原から欠失しており、少なくとも2つの異なるインフルエンザHA由来抗原の各々が、エンボス・エクスプローラ・コン・プログラムによって計算して少なくとも60を超える1つよりも多くのインフルエンザ血清型のHA分子との類似性を有する、ワクチン組成物を提供すること;及び、ワクチン組成物を動物に送達すること、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年11月18日に出願された仮出願第63/115,459号の優先権を主張するものであり、非仮出願であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の提出
サイズが18キロバイト(MS-Windowsで測定)であり、2021年11月18日に作成されたSequence_Listingというファイルを含む配列表が本明細書と共に提供され、その全体が参照により組み込まれる。
【0003】
本開示は、1つよりも多くのインフルエンザA血清型と高い類似性を有するインフルエンザHA由来抗原を含有する組成物に関する。別の実施形態において、本開示は、ユニバーサルインフルエンザワクチンのための組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
季節性インフルエンザ、パンデミックインフルエンザ及び高度に病的な鳥インフルエンザ(HP Al)は、鳥及び哺乳動物の大きな貯留層から生じる。新しいインフルエンザバリアントは、予測不可能な順列で迅速に組み換わることができる。HP Alの小さな遺伝的変化はその感染力を大幅に増加させ、効率的なヒトからヒトへの感染を可能にし得るので、パンデミック拡散は実際に現実になり得る。
【0005】
例えば、H5N1 HP Alは、2003年に鳥から人への感染を介してアジアで発生した。それは世界中に広がり、エジプトがホットスポットであった。アジアの元のH5N1 HP Al株はクレード1のものであったが、より最近のエジプト株はクレード2(クレード2.2.1)のものである。最初のH7N9 HP Alは2013年に中国で出現し、2016年と2017年にさらなるバリアントが続いた。米国連邦政府は、卵ベースの従来のH5N1及びH7N9ワクチンの備蓄を維持している。それらの免疫原性、特にSanofi-Pasteurクレード1 H5N1 ワクチンの免疫原性は、標準的な季節性インフルエンザワクチンの免疫原性よりも有意に低かった。ワクチンはプライム-ブーストレジメンで投与され、クレード2 H5N1 GSKワクチンはアジュバントによって増強される。他の問題は、クレード1とクレード2
H5N1ワクチンの間の異種保護レベルの低下、及び6ヶ月以内に無効になり得る免疫応答の一過性の性質である。
【0006】
広域反応性ワクチン、いわゆる「ユニバーサル」インフルエンザワクチンを用いて、インフルエンザウイルスの予測不可能な性質に対処することが提案されている。最も強力な抗インフルエンザ抗体(Ab)は、血液凝集素(HA)頭部に結合し、特定の細胞受容体との相互作用を物理的にブロックする。このHAドメインの高い変異性は特異性を提供するが、交差反応性を制限する。はるかに稀なAbは、高度に保存されたHAステム領域を認識する。それらは、いくつかのインフルエンザAサブタイプに広く結合する。ステム抗体は、細胞受容体結合を阻害することによってではなく、むしろ感染細胞のADCCを含むウイルス-膜融合を阻害し、核へのウイルス侵入を防止することによって作用し得る。しかしながら、現在の2抗原ステムワクチンは、基礎免疫のみを送達し得る。そのような2抗原ステムワクチンは、異なる血清型のインフルエンザ由来のHAとの比較的低い類似性又は「配列重複」のみを有する2つの異なる「保存された」抗原に基づく。したがって、2分子ユニバーサル抗原によって誘導される免疫応答を、特定のインフルエンザ株に基づくワクチンでブーストすることが必要であり得る。いくつかの科学的証拠はまた、広域反応性Abが、その後のインフルエンザ感染症を悪化させる疾患増強Abの誘導などの問題を有し得ることを示唆している。
【0007】
既存の解決策では以下の問題が適切に対処されていないため、季節性及びパンデミックのインフルエンザ並びにHPAI(並びに他の新たに出現している感染の脅威)に対する免疫予防のためのこの現在の手法は、ひどく不足している。
(1)力価:備蓄されたHP Alワクチンを含む現在のインフルエンザワクチンは、中程度の一過性の免疫防御しかもたらさない。
(2)開発速度:インフルエンザワクチンのための現在の開発及び生産スキームは遅く、急速に出現するインフルエンザ(及び他の感染の脅威)の課題を満たしていない。
(3)インフルエンザ株の変異性:インフルエンザは、それらの抗原組成を迅速に変化させる能力を有し、新しい株を説明し、新しい特異性に対処するために新しいワクチンを絶えず開発する必要がある。
【0008】
インフルエンザ血液凝集素に由来する保存された抗原を使用し、異なる血清型のインフルエンザに見られるタンパク質との高い類似性又は保存性を維持し、強力な免疫応答を誘導する、より一貫した「ユニバーサル」ワクチンを開発することが望ましい。
【0009】
古典的ウイルスワクチンは、ゆっくりとした能力の限られた受精卵技術を使用して、弱毒化された不活化ウイルス又はウイルス抽出物として産生される。より最近の組織培養手法には、インフルエンザ及びZIKV(ジカウイルス)ワクチンの場合の細胞培養ブロス中のウイルス増殖及び特異的抗原の合成が含まれる。タンパク質ベースのワクチンに固有の低い免疫原性は、アジュバントの添加によって増強することができ、増強しなければならない。
【0010】
完成したワクチンを送達するのではなく、遺伝子免疫化手法は、宿主に抗原を合成させて免疫系に提示させる。これらの系は、天然のウイルス感染をより厳密に模倣する。様々な戦略が研究されている。裸のDNAワクチンは、製造が簡単で迅速であるが、それらの低い免疫原性を克服するために比較的高用量及び特殊な送達系を必要とする。遺伝子ワクチンは、Ad、ワクシニアウイルス、水疱性口内炎ウイルス、黄熱病ウイルス及びアルファウイルスなどの操作されたウイルスを利用することが多い。しかしながら、それらの基礎となる生物学は、それらの有用性を制限し得る。それらは、例えば、稀ではあるが重度の有害反応に関連している17D黄熱ウイルス株として病原性であり得る。
【0011】
裸のDNAの他に、AAV、及び遺伝子移入の基礎としてのRNAウイルス、並びにワクチンベクタープラットフォーム、アデノウイルス(Ad)ベースの手法も利用可能である。Ad由来ベクターは良性であることが証明されており、宿主ゲノムへの組み込みを回避し、本質的にアジュバント化されている。多数のワクチンが、複製欠損の最小限に改変された早期世代(eg)Adベクターに基づいて操作されている。それらは、他のワクチン系との一対一比較においてより高い免疫原性を繰り返し実証している。さらに、それらはまた、鳥インフルエンザ及びZIKVに対する強力な免疫応答を引き起こしたことが実証されている。重要なことに、他のワクチン系とは対照的に、それらは長期間にわたって持続的な免疫防御をもたらす。したがって、彼らは、ZIKV、エボラ、結核及びマラリアに対するワクチンに新たな関心を集めている。
【0012】
早期Ad系の限界を克服するために異なる戦略を統合したAdベクター系が開発された。完全欠失(fd)Adベクタープラットフォームは、ヒト血清型Ad6などの有病率の低いヒト血清型にワクチンゲノムをパッケージングする。そのようなワクチンは、すべての内因性のAd遺伝子が完全に欠失している(fd)。fdAdベクターは、免疫系をワクチン抗原により良好に集中させ、抗Ad免疫応答による干渉を最小限に抑え、プライムブーストワクチン接種を可能にする。カプシド形成にヘルパーウイルスを使用するfdAdベクター系は、ヘルパーウイルス及び複製コンピテントアデノウイルス(RCA)による汚染に関連している。これらの不純物は、強力な抗Ad応答を誘導する可能性を有する。新しいfdAdアーキテクチャ、すなわちヘルパーウイルスから独立してfdAdをパッケージングするfdAdベクターを作製した(ヘルパーウイルス非依存性、hi)。これらは完全に欠失したヘルパーウイルス非依存性Adベクター(fdhiAdベクター)である。
【0013】
fdhiAdワクチンプラットフォームは、2つの独立して改変可能な成分:(i)すべての内因性のAd遺伝子が欠失されたfdAdベクターゲノムモジュール、及び(ii)必要なAd後期遺伝子をトランスで送達するパッケージ不可能な環状パッケージング発現プラスミドに基づいて構築される。
【0014】
すべての内因性のAd遺伝子が欠失したfdAdベクターゲノムを得るために、fdAdベクターベースモジュールを組み立てて、最大33kbの異なる導入遺伝子コンストラクトを収容する。それらは、左右のITR及び異なるAdのパッケージングシグナル(Ψ)を「運ぶ」。
【0015】
完成したfdAdベクターゲノムモジュールは約34kbのサイズであり、パッケージング不可能なパッケージング発現プラスミドの宿主細胞へのコトランスフェクションによってカプシド形成される。パッケージング発現プラスミドは、カプシドの組み立て、fdAdベクターゲノムモジュールの複製及びそのカプシドへの組み込みに必要なすべてのAd遺伝子をトランスで提供する。異なる環状パッケージング発現プラスミドが、ヒトAd種C及びBのカプシド(血清型35)のための改変pBR322骨格上で操作されている。それらは、重要な後期遺伝子(L1、L2、L3、L4、L5)を早期遺伝子E2及びE4と共にトランスで提供し、パッケージングシグナルy及び少なくとも1つのITRを欠失させる。
【0016】
fdAd技術は大きなペイロードを有し、これを利用して大きな導入遺伝子コンストラクトを送達することができる。例えば、フルサイズのヒト凝固第VIII因子cDNAを免疫抑制遺伝子CDS(合わせて12kb)と共に単一のfdAdベクターにおいて送達することが可能であった。両方の導入遺伝子は、細胞への形質導入時に効率的に発現された。したがって、fdAdベクターは、2つよりも多くの保存されたインフルエンザ抗原コンストラクトを送達する最適化されたユニバーサルインフルエンザワクチンの産生の基礎として使用することができる。
【0017】
現在のユニバーサルインフルエンザワクチンは、2つの保存されたインフルエンザ血液凝集素コンストラクトに基づいて構築される。初期のユニバーサルインフルムザワクチンの設計は、ステム領域のアルファ螺旋構造のエピトープに結合する2つの抗体、CR6261及びCR8020の反応性パターンに従った。この領域に対する抗体はウイルス粒子を中和する。これらの抗体は、完全長HAが膜に融合するのに必要なpH誘導性の立体構造変化を受けるのを妨げることによってHA機能を阻害するようである。CR6261及びCR8020は、それらの機能のために高度に保存された領域であるので、広範囲のHA標的を中和する。CR6261は、群1、サブタイプ1、2、5、6、9、13及び16においてHAを中和することが示された。CR8020は、グループ2のHA”3、4、7、10、14及び15に結合することが示された。これらの2つの群に従う2つの保存された血液凝集素抗原を設計すると、平均配列同一性は約55%になる。ヘッドレスコンストラクトは、ユニバーサルインフルエンザワクチンへの有望な手法であるが、技術的問題がこの手法のより広範な開発を妨げている。2つの抗原コンストラクト手法の低い同一性スコアは、低い親和性免疫応答をもたらす。さらに、低い配列重複を克服するために抗原コンストラクトの数を増加させると、この手法は困難かつ高価になった。ヘッドレスHAは、ワクチンのために不活化されるように卵培養物中で増殖することができる生存可能なインフルエンザウイルスを形成することができない。したがって、それらは代替手段によって製造されなければならない。
【0018】
fdAdベクターシステムは、これらの生産上の問題を克服する。ヘッドレスHAは、インフルエンザウイルス又はウイルス様粒子において機能する必要はなく、それらは、形質導入された細胞においてin vivoで発現される必要があるだけである。さらに、fdAdは、2つよりも多くのHAコンストラクトをそれらの大きなペイロードに容易に送達することができる。fdAdワクチンの多価性は、操作又は製造の複雑さを著しく増加させない。したがって、多価ユニバーサルインフルエンザワクチンを費用効果的に製造することができる。
【発明の概要】
【0019】
一実施形態では、本開示はワクチン用組成物を提供する。本開示の実施形態によれば、ワクチン用組成物は、少なくとも2つの異なるインフルエンザ血液凝集素(HA)由来抗原を含み、抗原が由来するHAタンパク質が超可変領域を含み、超可変領域が少なくとも2つの異なるインフルエンザHA由来抗原から欠失しており、少なくとも2つの異なるインフルエンザHA由来抗原の各々が、エンボス・エクスプローラ・コン・プログラムによって計算して少なくとも60を超える1つよりも多くのインフルエンザ血清型のHA分子との類似性を有する。
【0020】
一実施形態では、類似性は、少なくとも70、又は少なくとも80である。
【0021】
一実施形態では、超可変領域は、少なくとも2つの異なるインフルエンザHA由来抗原においてペプチドリンカーによって置き換えられている。
【0022】
一実施形態では、少なくとも2つの異なるインフルエンザHA由来抗原は、タンパク質である。別の実施形態では、少なくとも2つの異なるインフルエンザHA由来抗原は、抗原が由来するHAタンパク質をコードするRNA及びDNAの一方である。さらなる実施形態では、RNA及びDNAの一方はウイルスベクター中にある。
【0023】
一実施形態では、超可変領域は、血清型H3のインフルエンザHAのアミノ酸ナンバリングを使用して52位及び277位の保存されたシステインの間に位置する。
【0024】
別の実施形態では、組成物は、2つよりも多くの異なるインフルエンザHA由来抗原を含む。
【0025】
一実施形態では、本開示は、ユニバーサルインフルエンザウイルスワクチンを製造するための方法を提供する。本開示の実施形態によれば、ユニバーサルインフルエンザウイルスワクチンを製造するための方法は、エンボス・エクスプローラ・コン・プログラムによって計算して少なくとも60を超える第1の複数のインフルエンザ血清型のHA分子との類似性を有する第1のインフルエンザHA由来抗原を得ることと、エンボス・エクスプローラ・コン・プログラムによって計算して少なくとも60を超える第2の複数のインフルエンザ血清型のHA分子との類似性を有する第2のインフルエンザHA由来抗原を得ることと、を含み、第1及び第2の複数のインフルエンザ血清型は、異なる血清型から構成される。
【0026】
一実施形態では、第1及び第2の複数のインフルエンザ血清型は、異なる重複しない血清型で構成される。
【0027】
一実施形態では、第1及び第2のインフルエンザHA由来抗原が由来するHAタンパク質は超可変領域を含み、超可変領域は、第1及び第2のインフルエンザHA由来抗原から欠失している。
【0028】
一実施形態では、類似性は、独立して、少なくとも70、又は少なくとも80である。
【0029】
一実施形態では、超可変領域は、ペプチドリンカーによって置き換えられている。
【0030】
一実施形態では、第1及び第2のインフルエンザHA由来抗原はタンパク質である。別の実施形態では、第1及び第2のインフルエンザHA由来抗原は、抗原が由来するHAタンパク質をコードするRNA及びDNAの一方である。さらなる実施形態では、本方法は、HAタンパク質をコードするRNA及びDNAの一方をウイルスベクターにカプシド形成することを含む。
【0031】
一実施形態では、本方法は、エンボス・エクスプローラ・コン・プログラムによって計算して少なくとも60を超える第3の複数のインフルエンザ血清型のHA分子との類似性を有する少なくとも第3のインフルエンザHA由来抗原を得ることを含む。
【0032】
一実施形態において、本開示は、少なくとも2つの異なるインフルエンザ血清型に対して動物にワクチン接種する方法を提供する。本開示の実施形態によれば、本方法は、少なくとも2つの異なるインフルエンザ血液凝集素(HA)由来抗原を含むワクチン組成物であって、抗原が由来するHAタンパク質が超可変領域を含み、超可変領域が少なくとも2つの異なるインフルエンザHA由来抗原から欠失しており、少なくとも2つの異なるインフルエンザHA由来抗原の各々が、エンボス・エクスプローラ・コン・プログラムによって計算して少なくとも60を超える1つよりも多くのインフルエンザ血清型のHA分子との類似性を有する、ワクチン組成物を提供すること;及び、ワクチン組成物を動物に送達すること、を含む。
【0033】
配列表の簡単な説明
配列番号1:
図1に示す赤色インフルエンザ血清型のコンセンサス配列を示す。
【0034】
配列番号2:
図1に示す橙色インフルエンザ血清型のコンセンサス配列を示す。
【0035】
配列番号3:
図1に示す黄色インフルエンザ血清型のコンセンサス配列を示す。
【0036】
配列番号4:
図1に示す緑色インフルエンザ血清型のコンセンサス配列を示す。
【0037】
配列番号5:
図1に示す青色インフルエンザ血清型のコンセンサス配列を示す。
【0038】
配列番号6:
図1に示す紫色インフルエンザ血清型のコンセンサス配列を示す。
【0039】
特許又は出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を伴うこの特許又は特許出願公開の写しは、請求及び必要な料金の支払いに応じて特許庁によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】6つの相同性グループにグループ分けされた代表的なインフルエンザA血液凝集素タンパク質の配列同一性の図である。
【
図3】タンパク質配列としての保存された血液凝集素ステム導入遺伝子コンストラクトの図である。
【
図4】6つのコンセンサス保存ステムタンパク質との代表的なインフルエンザA血液凝集素タンパク質の配列類似性の図である。
【
図5】完全に欠失したヘルパーウイルス非依存性アデノウイルスベクタープラットフォームの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本開示の任意の実施形態を詳細に説明する前に、本開示は、その適用において、以下の説明に記載されるか又は図面に示される成分の構築及び配置の詳細に限定されないことを理解されたい。本開示は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施又は実行することができる。また、本明細書で使用される表現及び用語は、説明のためのものであり、限定するものと見なされるべきではないことが理解される。本明細書における「含む(including)」、「含有する(comprising)」又は「有する(having)」及びそれらの変形の使用は、その後に列挙される項目及びその均等物並びに追加の項目を包含することを意味する。本明細書における「本質的に含む(including essentially)」及び「本質的にからなる(consisting essentially of)」及びその変形の使用は、その後に列挙される項目、並びに均等物及び追加の項目を、そのような均等物及び追加の項目が全体の特性、使用又は製造を本質的に変更しないという条件で包含することを意味する。本明細書における「からなる(consisting of)」及びその変形の使用は、その後に列挙される項目を含み、これらの項目のみを含むことを意味する。
【0042】
図面を参照すると、全体を通して、同様の番号は同様の要素を指す。第1、第2などの用語は、様々な要素、成分、領域、及び/又は切片を説明するために本明細書で使用され得るが、これらの要素、成分、領域、及び/又は切片は、これらの用語によって限定されるべきではないことが理解されよう。これらの用語は、1つの要素、成分、領域及び/又は切片を、別の要素、成分、領域及び/又は切片と区別するためにのみ使用される。したがって、第1の要素、成分、領域又は切片は、本開示から逸脱することなく、第2の要素、成分、領域又は切片と呼ぶことができる。
【0043】
本開示における数値範囲は近似値であり、したがって、別途指示がない限り、範囲外の値を含んでもよい。数値範囲は、任意のより低い値と任意のより高い値との間に少なくとも2つの単位の分離があるという条件で、(特に明記しない限り)1単位の増分で、より低い値及びより高い値からの、及びこれらを含むすべての値を含む。一例として、例えば重量による成分の量などの組成、物理的又は他の特性が10~100である場合、10、11、12などのすべての個々の値、及び10~44、55~70、97~100などの部分範囲が明示的に列挙されることが意図される。明示的な値を含む範囲(例えば、1、又は2、又は3~5、又は6、又は7の範囲)の場合、任意の2つの明示的な値の間の任意の部分範囲が含まれる(例えば、上記の範囲1~7は部分範囲1~2;2~6;5~7;3~7;5~6などを含む)。1未満の値を含む範囲又は1より大きい分数を含む範囲(例えば、1.1、1.5など)については、1単位は、適切には0.0001、0.001、0.01又は0.1であると考えられる。10未満の一桁の数を含む範囲(例えば、1~5)については、1単位は典型的には0.1であると見なされる。これらは、具体的に意図されるものの例にすぎず、列挙された最低値と最高値との間の数値のすべての可能な組み合わせは、本開示において明示的に述べられていると見なされるべきである。
【0044】
「真下(beneath)」、「下(below)」、「下方(lower)」、「上(above)」、「上方(upper)」などの空間的用語は、本明細書では、図に示すように、1つの要素又は特徴と別の要素又は特徴との関係を説明するための説明を容易にするために使用され得る。空間的に相対的な用語は、使用又は例示における向きに応じて異なる向きを包含することを意図していることが理解されよう。例えば、図中の装置がひっくり返された場合、他の要素又は特徴の「下」又は「真下」にあると記載された要素は、他の要素又は特徴の「上」に配向される。したがって、例示的な「下」という用語は、上及び下の両方の向きを包含することができる。装置は、他の方向に向けられ(90°又は他の向きに回転され)てもよく、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。
【0045】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つ又は複数のありとあらゆる組み合わせを含む。例えば、「A及び/又はB」などの語句で使用される場合、「及び/又は」という語句は、AとBの両方;A又はB;A(単独);及びB(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、B及び/又はC」などの語句で使用される「及び/又は」という用語は、以下の実施形態A、B及びC;A、B、又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)のそれぞれを包含することを意図している。
【0046】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使用される命名法並びに以下に記載される細胞培養、分子遺伝学及び核酸付加化学及びハイブリダイゼーションにおける実験室手順は、当技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。組換え核酸法、ポリヌクレオチド合成、並びに微生物の培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)には、標準的な技術が使用される。一般に、酵素反応及び精製工程は、製造業者の仕様に従って行われる。技術及び手順は、一般に、当技術分野における従来の方法及び本文書全体を通して提供される様々な一般的な参考文献(一般に、参照により本明細書に組み込まれるSambrook et al.Molecular Cloning:a Laboratory Manual,2d ed.(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.を参照)に従って実行される。単位、接頭辞及び記号は、それらのSI許容形態で示されてもよい。別途指示がない限り、それぞれ、核酸は、5’から3’方向に左から右に書かれており;アミノ酸配列は、アミノからカルボキシルへの配向で左から右に書かれている。アミノ酸は、一般に知られている三文字の記号又はIUPAC-IUB生化学命名委員会によって推奨される1一文字の記号のいずれかによって本明細書で言及され得る。同様に、ヌクレオチドは、一般に受け入れられている一文字コードによって参照され得る。特に明記しない限り、本明細書で使用されるソフトウェア、電気、及び電子の用語は、The New’ IEEE Standard Dictionary of Electrical and Electronics Terms(5.sup.th edition,1993)で定義されている通りである。
【0047】
本明細書に開示される実施形態は、多価ユニバーサルインフルエンザAワクチンの設計、構築及び製造に関する。
【0048】
本開示全体を通して使用されるように、以下の用語は、別途指示がない限り、以下の意味を有すると理解されるべきであり、全体として本明細書を参照することによってより完全に定義される。
【0049】
本明細書で使用される「アデノウイルス」、「アデノウイルスビリオン」及び「アデノウイルス粒子」という用語は、すべての群、サブグループ、種及び血清型を含む、ヒト又は動物に感染する任意のアデノウイルスを含む、アデノウイルスとして分類され得るありとあらゆるウイルスを含む。
【0050】
本明細書で使用される「アデノウイルスベクター」という用語は、アデノウイルスに基づき、遺伝物質を移入するために使用される任意の遺伝子コンストラクト又はウイルスコンストラクトを含む。本明細書で使用される「欠失アデノウイルス」又は「欠失アデノウイルスベクター」という用語は、1つ又は複数の内因性の遺伝子又はそれから欠失された遺伝子断片を有するありとあらゆるアデノウイルス又はアデノウイルスベクターを含む。対照的に、本明細書で使用される「完全に欠失したアデノウイルス」及び「完全に欠失したアデノウイルスベクター」という用語は、内部末端反復配列(ITR)及びパッケージングシグナル(Ψ)を除いて、すべての内因性のアデノウイルス遺伝子及び遺伝物質が欠失している、ありとあらゆるアデノウイルス及びアデノウイルスベクターを含む。本明細書で使用される「アデノウイルスベクターゲノム」という用語は、アデノウイルスベクターに見られる遺伝物質を含む。
【0051】
「抗原」とは、宿主の免疫系を刺激して細胞性抗原特異的免疫応答又は体液性抗体応答を引き起こす1つ又は複数のエピトープを含む分子を意味する。したがって、抗原には、タンパク質、ポリペプチド、抗原性タンパク質断片、オリゴ糖、多糖類などが含まれる。さらに、抗原は、任意の公知のウイルス、細菌、寄生生物、植物原虫又は真菌に由来し得、生物体全体であり得る。この用語には、腫瘍抗原も含まれる。同様に、例えばDNA免疫化用途において抗原を発現するオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドも抗原の定義に含まれる。合成抗原、例えばポリエピトープ、隣接エピトープ、及び他の組換え又は合成由来の抗原(Bergmann et al.(1993)Eur.J.Immunol.23:2777 2781;Bergmann et al.(1996)J.Immunol.157:32423249;Suhrbier,A.(1997)Immunol.And Cell Biol.75:402408;Gardner et al.(1998)12th World AIDS Conference,Geneva,Switzerland,Jun 28-Jul.3,1998)も含まれる。
【0052】
「コード配列」又は選択されたポリペプチドを「コードする」配列は、適切な調節配列(又は「制御エレメント」)の制御下に置かれた場合、in vivoで転写され(DNAの場合)、ポリペプチドに翻訳される(mRNAの場合)核酸分子である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドン及び3’(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンによって決定される。転写終結配列は、コード配列の3’に位置し得る。コード配列の転写及び翻訳は、典型的には、転写プロモーター、転写エンハンサーエレメント、Shine及びDelagamo配列、転写終結シグナル、ポリアデニル化配列(翻訳終止コドンに対して3’に位置する)、翻訳開始の最適化のための配列(コード配列に対して5’に位置する)、及び翻訳終止配列を含むがこれらに限定されない「制御エレメント」によって調節される。
【0053】
本明細書で使用される「保存された抗原」という用語は、1つよりも多くの血清型のウイルスで発現される遺伝子バリアントとの類似性を示す抗原を指す。
【0054】
本明細書で使用されるアミノ酸残基の「保存的バリアント」という用語は、電荷、疎水性及びサイズなどの類似の生化学的特性を有するアミノ酸を含むタンパク質中の所与の位置のアミノ酸の変化を反映する。
【0055】
「コンストラクト」という用語は、アデノウイルスゲノム又はパッケージングコンストラクトのいずれかとしての本開示による遺伝子組成物又は組成物の少なくとも1つを指す。
【0056】
本明細書で使用される「削除する」又は「削除される」という用語は、抹消、消去、又は除去することを意味する。
【0057】
本明細書で使用される「欠失Ad(ウイルス)ベクター」及び「gutted-」、「mini-」、「deleted-」、「DELTA.」又は「擬似-ベクター」という用語は、ITRを有する線状ベクターモジュールを指す。これらのベクターはまた、いくつかの構造的及び/又は非構造的遺伝子配列及び/又は1つ又は複数の目的の遺伝子又は導入遺伝子をコードすることができる。
【0058】
「発現」という用語は、細胞における内因性の遺伝子、導入遺伝子又はコード化領域の転写及び/又は翻訳を指す。
【0059】
「遺伝子送達ベクター」、「GDV」、「遺伝子移入ベクター」又は「遺伝子移入ビヒクル」は、本開示のパッケージ化されたベクターモジュールを含む組成物である。
【0060】
本明細書で使用される場合、「遺伝子発現コンストラクト」という用語は、プロモーター、少なくとも目的の遺伝子の断片、及びポリアデニル化シグナル配列を指す。本開示のベクターモジュールは、遺伝子発現コンストラクトを含み得る。
【0061】
本明細書で使用される「目的の遺伝子」、「GOI」、及び「導入遺伝子」という用語は、その機能が医学的に重要であり、天然フラビウイルス遺伝子ではない可能性がある遺伝子をコードする遺伝子を指す。目的の遺伝子は、RNA又はタンパク質のレベルでその効果を発揮する遺伝子であり得る。目的の遺伝子の例には、治療遺伝子、免疫調節遺伝子、ウイルス遺伝子、細菌遺伝子、タンパク質産生遺伝子、阻害性RNA又はタンパク質、及び制御タンパク質が含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
「遺伝子配列」は、ヌクレオチドの順序を指す。遺伝子配列は調節可能であり得る。遺伝子発現の調節は、(1)遺伝子構造の変化:部位特異的リコンビナーゼ(例えば、Cre-loxPシステムに基づくCre)は、プロモーターと遺伝子との間の挿入配列を除去することによって遺伝子発現を活性化することができる;(2)転写の変化:誘導(カバー)又は阻害の軽減のいずれかによる;(3)mRNAに組み込まれる特異的配列又はsiRNAによるmRNA安定性の変化;及び(4)mRNA中の配列による翻訳の変化の1つによって達成することができる。欠失アデノウイルスは、「高容量」アデノウイルスとも呼ばれる。これらの欠失アデノウイルスは、最大33kbの遺伝子配列を収容することができる。
【0063】
「ヘッドレスヘマグルチニン」という用語は、血液凝集素ステムからなる血液凝集素コンストラクトを指す。
【0064】
「血液凝集素ステム」又は「ステム領域」という用語は、比較的不変であり、インフルエンザ血液凝集素の遺伝子超可変領域を含まないインフルエンザ血液凝集素タンパク質の構造成分を指す。
【0065】
「異種」という用語は、通常は自然と密接に関連していないDNA配列の任意の組み合わせに使用される。
【0066】
「相同性」という用語は、1対の構造又は遺伝子間に共通の祖先が存在することを指す。
【0067】
「宿主細胞」又は「パッケージング細胞」は、アデノウイルス若しくはアデノウイルスベクターゲノム又は改変ゲノムをパッケージングしてウイルス粒子を産生することができる細胞である。それは、欠損遺伝子産物又はその均等物を提供するように操作することができる。したがって、パッケージング細胞は、アデノウイルスゲノムをアデノウイルス粒子にパッケージングすることができる。そのような粒子の産生は、ゲノムが複製され、感染性ウイルスを組み立てるために必要なタンパク質が産生されることを必要とする。粒子はまた、ウイルス粒子の成熟に必要な特定のタンパク質を必要とし得る。そのようなタンパク質は、ベクター、パッケージングコンストラクト又はパッケージング細胞によって提供され得る。本開示に従ってパッケージング細胞株を作製するために使用され得る例示的な宿主細胞(HC)としては、宿主細胞がアデノウイルスの増殖を許容する限り、A549、HeLa、MRC5、W138、CHO細胞、Vero細胞、ヒト胚性網膜細胞又は任意の真核細胞が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの宿主細胞株には、脂肪細胞、軟骨細胞、上皮細胞、線維芽細胞、膠芽細胞腫、肝細胞、ケラチノサイト、白血病、リンパ球芽球様細胞、単球、マクロファージ、筋芽細胞及びニューロンが含まれる。他の細胞型には、初代細胞培養物に由来する細胞、例えば、ヒト初代前立腺細胞、ヒト胚性網膜細胞、ヒト幹細胞が含まれるが、これらに限定されない。真核生物の二倍体細胞株及び異数体細胞株は、本開示の範囲内に含まれる。パッケージング細胞は、組換えウイルスベクターの高力価ストックを生成するために、本明細書に記載の異なるコンストラクトの製品をそれらの製品に適したレベルで発現することができるものでなければならない。
【0068】
「免疫応答」は、細胞性又は体液性免疫応答などの獲得免疫応答である。
【0069】
本開示の文脈において、「免疫調節分子」は、抗原特異的様式で標的細胞に対する細胞性及び/又は体液性宿主免疫応答を調節する、すなわち増加又は減少させるポリペプチド分子であり、好ましくは宿主免疫応答を減少させるものである。一般に、本開示の教示によれば、免疫調節分子(複数可)は、本明細書に記載のGDVからの発現後に、標的細胞表面膜と会合する、例えば、細胞表面膜に挿入されるか、又は細胞表面膜に共有結合的に若しくは非共有結合的に結合する。
【0070】
本明細書で使用される「インフルエンザウイルス」、「インフルエンザビリオン」、及び「インフルエンザ粒子」という用語は、すべての群、サブグループ、及び血清型を含む、ヒト又は動物に感染する任意のインフルエンザウイルスを含む、インフルエンザウイルスとして分類され得るありとあらゆるウイルスを含む。
【0071】
本明細書で使用される「導入する」又は「トランスフェクション」という用語は、宿主細胞への発現ベクターの送達を指す。ベクターは、トランスフェクションによって細胞に導入することができ、これは、典型的には、物理的手段(例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション又はリポフェクション);感染(典型的には感染剤、すなわちウイルスによる導入を指す);又は形質導入(典型的には、ウイルスによる細胞の安定した感染、又はウイルス剤(例えば、バクテリオファージ)によるある微生物から別の微生物への遺伝物質の移入を意味する)によって異種DNA又はRNAを細胞に挿入することを意味する。ベクターは、プラスミド、ウイルス又は他のビヒクルであり得る。
【0072】
「線状DNA」という用語は、非環状化DNA分子を指す。「線状RNA」という用語は、非環状化RNA分子を指す。
【0073】
本明細書で使用される「自然に」という用語は、自然に見られるもの;野生型;本質的に又は本質的なものを指す。
【0074】
「核酸」という用語は、一本鎖又は二本鎖形態のいずれかのデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドポリマーを指し、特に限定されない限り、天然ヌクレオチド(例えば、ペプチド核酸)と同様の様式で一本鎖核酸にハイブリダイズするという点で天然ヌクレオチドの本質的な性質を有する既知のアナログを包含する。核酸は、別の核酸配列と機能的関係に置かれると「動作可能に連結される」。例えば、プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に動作可能に連結される。一般に、「動作可能に連結される」とは、連結されているDNA配列が近接していることを意味する。しかしながら、エンハンサーは近接している必要はない。連結は、好都合な制限酵素認識部位でのライゲーションによって達成される。そのような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが、従来の慣例に従って使用される。
【0075】
本明細書で使用される「非構造遺伝子」という用語は、アデノウイルスゲノムに存在する遺伝子の群を指す。これらの遺伝子は「非構造遺伝子」をコードしている。
【0076】
「パッケージングコンストラクト」又は「パッケージング発現プラスミド」という用語は、環状二本鎖DNA分子の操作されたプラスミドコンストラクトを指し、DNA分子は、プロモーターの制御下にあるアデノウイルス構造遺伝子又は非構造遺伝子の少なくともサブセットを含む。「パッケージングコンストラクト」は、感染、ウイルス粒子を産生するための独立したウイルス複製、及び/又はウイルス粒子にパッケージングされるこの遺伝物質の効率的なパッケージングを可能にするための1つよりも多くのITR又は遺伝情報を含まない。
【0077】
「許容的」である細胞は、ウイルスの複製を支援する。
【0078】
本明細書で使用される「プラスミド」という用語は、染色体DNAとは独立して複製することができる、染色体DNAとは別個の染色体外DNA分子を指す。多くの場合、それは環状で二本鎖である。
【0079】
「ポリリンカー」という用語は、任意のプロモーター又はDNAセグメントの容易な挿入を可能にするいくつかの固有の制限酵素認識部位を保有する人工的に合成されたDNAの短いストレッチを指す。
【0080】
「プロモーター」という用語は、特定の遺伝子の転写を促進するDNAの調節領域を意味する。プロモーターは通常、特定のコード配列の適切な転写開始部位でRNA合成を開始するようにRNAポリメラーゼIIに指示することができるTATAボックスを含む。プロモーターは、転写開始速度に影響を及ぼす、上流プロモーターエレメントと呼ばれる、一般にTATAボックスの上流又は5’に位置する他の認識配列をさらに含み得る。「構成的プロモーター」は、多くの細胞型においてその関連ゲートの連続的な転写を可能にするプロモーターを指す。「誘導プロモーター系」とは、調節剤(小分子、例えばテトラサイクリン、ペプチドホルモン及びステロイドホルモン、神経伝達物質、並びに環境因子、例えば熱及び重量オスモル濃度を含む)を使用して遺伝子を誘導又はサイレンシングする系を指す。そのような系は、それらの応答が段階的であり、調節剤の濃度に依存するという意味で「アナログ」である。また、そのような系は、調節剤の除去によって可逆的である。これらのプロモーターの活性は、生物因子又は非生物因子の存在又は非存在によって誘導される。誘導性プロモーターは、それらに動作可能に連結された遺伝子の発現を、生物体又は特定の組織の発生の特定の段階でオン又はオフにすることができるので、遺伝子工学における強力なツールである。
【0081】
本明細書で使用される「伝播する」又は「伝播された」という用語は、任意のプロセスによる再生産、増殖、又は数、量、若しくは程度の他の増加を指す。
【0082】
本明細書で使用される「精製」という用語は、実質的にほとんど、ほとんど、実質的にすべて、又はすべての外来、外生又は好ましくないエレメントを精製又は遊離させるプロセスを指す。
【0083】
「調節配列」、「調節領域」又は「調節エレメント」は、転写因子などの制御タンパク質が優先的に結合するDNAのプロモーター、エンハンサー又は他のセグメントである。それらは遺伝子発現、したがってタンパク質発現を制御する。
【0084】
本明細書で使用される「リコンビナーゼ」という用語は、遺伝子組換えを触媒する酵素を指す。リコンビナーゼ酵素は、2本の長いDNA鎖間の短いDNA片の交換、特に対になった母方染色体と父方染色体との間の相同領域の交換を触媒する。
【0085】
「制限酵素」又は「制限エンドヌクレアーゼ」は、二本鎖DNAを切断する酵素である。
【0086】
「制限酵素認識部位」又は「制限認識部位」という用語は、DNA分子を切断する部位として制限酵素によって認識されるヌクレオチドの特定の配列を指す。これらの部位は、必ずしもそうとは限らないが、一般にパリンドロームであり(制限酵素は通常ホモダイマーとして結合するため)、特定の酵素は、その認識部位内又はその近くのどこかで2つのヌクレオチド間で切断し得る。
【0087】
「複製」又は「複製する」という用語は、例えば、限定されないが、ウイルス粒子などの対象物の同一のコピーを作製することを意味する。
【0088】
本明細書で使用される場合、「複製欠損」という用語は、自然環境で複製することができないウイルスの特徴を指す。複製欠損ウイルスは、その複製に不可欠な1つ又は複数の遺伝子、例えば、限定されないが、El遺伝子が欠失したウイルスである。複製欠損ウイルスは、欠失遺伝子を発現する細胞株において実験室で増殖させることができる。
【0089】
本明細書で使用される「類似性」又は「配列類似性」という用語は、タンパク質配列間の経験的関係の尺度を指す。本明細書で使用される類似性スコアは、所与のタンパク質内のアミノ酸残基間の進化的距離の近似、したがって類似性及び/又は同定を表す。
【0090】
本明細書で使用される「構造遺伝子」という用語は、でのウイルスカプシドを形成するアデノウイルスゲノムに存在する遺伝子の群を指す。
【0091】
「スタッファー」という用語は、そのサイズを増大させるために別のDNA又はRNA配列に挿入されるDNA又はRNA配列を指す。スタッファー断片は、通常、いかなるタンパク質もコードせず、転写エンハンサー又はプロモーターなどの遺伝子発現のための調節エレメントも含まない。
【0092】
本明細書で使用される「標的」又は「標的化された」という用語は、例えば、限定されないが、その活性が外部刺激によって改変され得るタンパク質、細胞、器官、又は核酸などの生物学的実体を指す。刺激の性質に応じて、標的に直接変化はなくてもよく、又は標的の立体構造変化が誘導されてもよい。
【0093】
用語「トランスフェクション」は、DNA又はRNAとしての細胞遺伝物質への指示(例えば、単離された核酸分子又は本開示のコンストラクトの導入)を指す。本明細書で使用される「形質導入」という用語は、DNAとして、又は本開示のGDVを用いることによる、細胞DNAへの導入を指す。本開示のGDVを標的細胞に形質導入することができる。
【0094】
本明細書で使用される「ユニバーサルインフルエンザワクチン」という用語は、1つよりも多くの血清型又はいくつかのインフルエンザ血清型のインフルエンザウイルスに対する免疫応答をヒト及び動物において誘導することができる抗原を保有するインフルエンザワクチンを指す。
【0095】
本明細書で使用される「非翻訳領域」という用語は、タンパク質をコードしないRNA部分を指す。
【0096】
「ベクター」という用語は、宿主細胞の感染に使用され、その中にポリヌクレオチドを挿入することができる核酸を指す。ベクターはしばしばレプリコンである。発現ベクターは、その中に挿入された核酸の転写を可能にする。いくつかの一般的なベクターには、プラスミド、コスミド、ウイルス、ファージ、組換え発現カセット及びトランスポゾンが含まれるが、これらに限定されない。「ベクター」という用語はまた、ある場所から別の場所への遺伝子の移入を助けるエレメントを指し得る。
【0097】
「ベクターモジュール」という用語は、アデノウイルスビリオンにパッケージングされたアデノウイルス遺伝子組成物を指す。
【0098】
本明細書で使用される「ウイルスDNA」又は「ウイルスRNA」という用語は、ウイルス粒子に見られるDNA又はRNAの配列を指す。
【0099】
本明細書で使用される場合、「ウイルスゲノム」は、ウイルス粒子に見られ、ウイルス複製に必要なすべてのエレメントを含むDNA又はRNAの全体である。ゲノムが複製され、ウイルス複製の各サイクルでウイルス子孫に伝達される。
【0100】
本明細書で使用される「ビリオン」という用語は、ウイルス粒子を指す。各ビリオンは、保護タンパク質カプシド内の遺伝物質からなる。
【0101】
本明細書で使用される「野生型」という用語は、生物体、株、遺伝子、タンパク質、核酸、又は自然界で生じる特徴の典型的な形態を指す。野生型とは、天然集団において最も一般的な表現型を指す。「野生型」及び「天然に存在する」という用語は互換的に使用される。
【0102】
本開示の実施形態によれば、ユニバーサルインフルエンザワクチンが提供される。
【0103】
一実施形態では、ユニバーサルインフルエンザワクチンは、抗原のセットを含む多量体ワクチンであり、抗原のセットは、少なくとも2つ、好ましくは2つよりも多くの異なるインフルエンザ血液凝集素(HA)由来抗原を含む。血液凝集素は、インフルエンザウイルスの表面に見られる糖タンパク質であり、ウイルスの感染力に不可欠である。
【0104】
インフルエンザHAに由来する抗原は、インフルエンザHAの全部若しくは一部をコードするDNA配列若しくはRNA配列、又はインフルエンザHA自体の全部若しくは一部に対するタンパク質配列であり得る。
【0105】
インフルエンザHAは、血清型H3のインフルエンザ血液凝集素のアミノ酸ナンバリングを使用してナンバリングして52位及び277位の保存されたシステインの間に位置する超可変領域を有する。一実施形態では、超可変領域に対応する抗原のDNA、RNA又はタンパク質配列が欠失される。
【0106】
一実施形態では、HA超可変領域をペプチドリンカー(又はペプチドリンカーに対応するDNA又はRNA配列)で置き換えて、ヘッドレス血液凝集素コンストラクトの安定性及び細胞表面発現を増加させる。例示的な非限定的なペプチドリンカーは、GGGGS-GGGGS-GGGGS-GGGGS(又は(GGGGS)4)である。
【0107】
一実施形態において、インフルエンザHA由来抗原は、ヘッドレスインフルエンザ血液凝集素タンパク質に基づく。
【0108】
一実施形態では、少なくとも2つ、好ましくは2つよりも多くの異なるインフルエンザHA由来抗原は、エンボス・エクスプローラ・コン・プログラムによって計算して60、又は65、又は70、又は75、又は80、又は85、又は90の類似性スコアを超える、1つよりも多くのインフルエンザ血清型のHA配列(DNA、RNA又はタンパク質)との類似性を有する配列(DNA、RNA又はタンパク質であろうとなかろうと)から構成される。類似性スコアは、異なるHAの対応する位置における同一のアミノ酸残基(又はそれぞれのコードDNA若しくはRNA)の存在、及び異なるHAの対応する位置におけるアミノ酸残基(又はそれぞれのコードDNA若しくはRNA)の保存的バリアントの存在に基づく。
図1は、HAステム領域における配列同一性に従ってHAをアラインメント及びグループ化することによって、インフルエンザHA及び類似性スコアの視覚的例示を提供する。
【0109】
一実施形態では、インフルエンザAの特定の血清型の代表的な血液凝集素が、異なる血液凝集素のアラインメントに使用される。例示的な代表的なインフルエンザA血清型としては、限定されないが、以下が挙げられる:
H1:A/Califomia/48/2017(H1N1)
H2:A/Moscow/1019/1965(H2N2)
H3:A/Washington/16/2017(H3N2)No 8
H4:A/duck/Guangdong/DGQTSJ147P/2015(H4N8)
H5:A/Cygnus olor/Belgium/1567/2017(H5N8)
H6:A/green-winged teal/Tennessee/17OS0651/2017(H6N1)
H7:A/Guangdong/HP001/2017(H7N9)
H8:American black duck/Illinois/4119/2009(H8N4)
H9:A/Japanese Quail/Vietnam/4/2009(H9N2)
H10:A/ American black duck/Alberta/118/2016(H10N7)
H11:A/duck/Memphis/546/1974
H12:American black duck/New Brunswick/00998/2010(H12N6)
H13:American white pelican/Minnesota/Sg-0611/2008(H13N9)
H14:A/Northem shoveler/Missouri/16OS6248/2016(H14N7)
H15:A/duck/Bangladesh/24704/2015(H15N9)
H16:A/glaucous-Owinged gull/Southcentral Alaska/16MB03160/2016(H16N3)
H17:A|H17N10|09/2010|A/little_yellow_shouldered_bat/Guatemala/060/2010
H18:4|HA|A|A/dark_fhrit_eating_bat/Bolivia/PBV780_781/2011
【0110】
別の実施形態では、本明細書で使用される類似性スコアは、所与のタンパク質内のアミノ酸残基間の進化的距離の近似(したがって類似性及び/又は同定)を表す。そのデータに基づいて、異なる血液凝集素血清型の系統樹が作成され、異なる血液凝集素の進化的つながり及び距離を系統樹として示す(
図2)。
【0111】
別の実施形態では、いくつかの保存されたヘッドレス血液凝集素タンパク質コンストラクトが、これらの類似性スコアに基づいて設計される。保存されたコンストラクトの例示的な「ペプチド配列」を
図3に示し、インフルエンザA血液凝集素に対するこれらの配列の配列類似性を
図4に示す。
【0112】
本明細書に記載されるように、ユニバーサルインフルエンザウイルスワクチンは、少なくとも2つ、又は好ましくは2つよりも多くの異なるインフルエンザ血液凝集素(HA)由来抗原から構成される抗原のセットを含む。一実施形態では、少なくとも2つ、好ましくは2つよりも多くの異なるインフルエンザHA由来抗原は、
図3に提供される配列から選択されるか、又は配列conHAl、conCHA2、conHA3、conH4、conH5及びconH6から選択される少なくとも2つ、好ましくは2つよりも多くの保存されたヘッドレス血液凝集素タンパク質コンストラクトである。一実施形態では、少なくとも2つ、又は好ましくは2つよりも多くの抗原は、ワクチンの形態でヒト及び/又は動物に提供される。
【0113】
一実施形態では、少なくとも2つ、又は好ましくは2つよりも多くのインフルエンザHA由来抗原は、タンパク質として提供され、ウイルス様粒子と組み合わされ、ナノ粒子で送達され、エマルジョンで送達され、それらの配列は導入遺伝子としてDNA又はRNAワクチンに組み込まれ、又はそれらの配列はウイルスベクターに組み込まれる。
図5は、ウイルスベクターモデルの概略図である。
【0114】
別の実施形態では、本開示のワクチンは、限定されないがワクチンアジュバント及びインターロイキンなどの免疫増強部分の存在下又は非存在下で、ワクチン製剤の標準的な方法を使用して製剤化された適切な医薬担体中でインフルエンザHA由来抗原を送達する。
【0115】
別の実施形態では、1つ又は複数のインフルエンザHA由来抗原コンストラクトは、限定されないが、筋肉内、鼻腔内、皮内、皮下、経口、直腸内又は気管支内を含む異なる適用経路を介してヒト及び動物にワクチンとして送達される。
【0116】
別の実施形態では、1つ又は複数のインフルエンザHA由来抗原コンストラクトは、アデノウイルスベクター中の導入遺伝子コンストラクトとして送達される。
【0117】
別の実施形態では、1つ又は複数のインフルエンザHA由来抗原コンストラクトは、完全に欠失したアデノウイルスベクター、例えば、限定されないが、完全に欠失したヘルパーウイルス非依存性アデノウイルスベクター中に導入遺伝子コンストラクトとして送達される。
【0118】
別の実施形態では、1つ又は複数のインフルエンザHA由来抗原コンストラクトは、プロモーター及びポリアデニル化部位を含有する。別の実施形態では、導入遺伝子コンストラクトは、内部リボソーム進入部位によって連結される。別の実施形態では、導入遺伝子コンストラクトは、内部リボソーム侵入部位によって連結された1つよりも多くのインフルエンザHA由来抗原コンストラクトをコードする。別の実施形態では、導入遺伝子コンストラクトは、リンカー自己消化酵素によって連結された、又はタンパク質消化酵素によって消化可能な1つよりも多くのインフルエンザHA由来抗原コンストラクトをコードする。
【0119】
別の実施形態では、インフルエンザHA由来抗原コンストラクトの導入遺伝子コンストラクトは、限定されないが、アルファウイルスレプリコンなどの複製効率的RNAとして、限定されないがアデノウイルスベクターなどのベクター内にコードされる。
【0120】
一実施形態では、ユニバーサルインフルエンザワクチンを製造する方法が提供される。実施形態において、本方法は、少なくとも60、又は65、又は70、又は75、又は80、又は85、又は90の類似性スコアを超える1つよりも多くのインフルエンザ血清型のHA分子との類似性を有する少なくとも2つ、好ましくは2つよりも多くの異なるインフルエンザHA由来抗原を得ることを含む。次いで、少なくとも2つ、好ましくは2つよりも多くの異なるインフルエンザHA由来抗原は、HA抗原をコードするDNA配列、HA抗原をコードするRNA配列、又はワクチン組成物に含めるためのタンパク質配列として提供される。少なくとも2つ、好ましくは2つよりも多くのインフルエンザHA由来抗原は、本明細書で提供される任意の実施形態又は実施形態の組み合わせによるものであってもよい。少なくとも2つ、好ましくは2つよりも多くの異なるインフルエンザHA由来抗原は、ワクチン組成物に含めるためのウイルスベクターの形態で提供され得る。
【0121】
一実施形態では、少なくとも2つ、好ましくは2つよりも多くのインフルエンザAサブタイプに対して動物(例えば、ヒトを含む)にワクチン接種する方法は、少なくとも2つ、好ましくは2つよりも多くの異なるインフルエンザを含むワクチン組成物を提供することを含む。HA由来タンパク質抗原。
【実施例】
【0122】
実施例1-インフルエンザHA由来抗原の設計
異なる血清型のインフルエンザHAのタンパク質配列の例のタンパク質配列を並べる。実施例で使用されるタンパク質配列は、以下のインフルエンザAサブタイプに由来する。
H1:A/Califomia/48/2017(H1N1)
H2:A/Moscow/1019/1965(H2N2)
H3:A-/Washington/16/2017(H3N2)No 8
H4:A/duck/Guangdong/DGQTSJ147P/2015(H4N8)
H5:A/Cygnus olor/Belgium/1567/2017(H5N8)
H6:A/green-winged teal/Tennessee/17OS0651/2017(H6N1)
H7:A/Guangdong/HP001/2017(H7N9)
H8:American black duck/Illinois/4119/2009(H8N4)
H9:A/Japanese Quail/Vietnam/4/2009(H9N2)
H10:A/ American black duck/Alberta/118/2016(H10N7)
H11:A/duck/Memphis/546/1974
H12:American black duck/New Brunswick/00998/2010(H12N6)
H13:American white pelican/Minnesota/Sg-0611/2008(H13N9)
H14:A/Northem shoveler/Missouri/16OS6248/2016(H14N7)
H15:A/duck/Bangladesh/24704/2015(H15N9)
H16:A/glaucous-Owinged gull/Southcentral Alaska /16MB03160/2016(H16N3)
H17:A|H17N10|09/2010|A/little_yellow_shouldered_bat/Guatemala/060/2010
H18:4|HA|A|A/dark_fhut_eating_bat/Bolivia/PBV780_781/2011
【0123】
異なるHA血清型の類似性の分析に基づいて、
図1及び
図2に示すように、血清型を6つの類似性グループに分類する。HA配列は、fludg.orgからダウンロードされる。分析のために不完全な配列を除去する。残りの配列は、MAFFTオンラインsseerrvveerrバージョン7:https://mafft.cbrc.jp/alignment/server/large.html?aug31を使用してアラインメントされる。解析には以下の設定を用いる。
i.FFT-NS-2
ii.メモリ使用量:通常
iii.アミノ酸配列のスコアリングマトリックス:BLOSUM 62
iv.Gapオープニングペナルティ:5
【0124】
このアラインメントに基づいて、HA血清型を以下の群に分類する。
H-I(赤色):HA血清型H7、H10、H15を有する
H-II(橙色)HA血清型H3、H4、H14を有する
H-III(黄色)HA血清型H1、H2、H5、H6を有する
H-IV(緑色)HA血清型H8、H9、H12を有する
H-V(青色)HA血清型H11、H13、H15を有する
H-VI(紫色)HA血清型H17、H18を有する
【0125】
これらのアラインメントでは、
図1に示すように、異なるHA群のそれぞれのHAタンパク質全体内のアミノ酸残基の同一性率は、分析したHAタンパク質について63.7%の同一性の値を超える。
【0126】
実施例2-インフルエンザHA由来抗原の配列
実施例1の分析に基づいて、HAの保存領域について異なるHA血清型のコンセンサスタンパク質を開発する。各HA血清型群H1~H18のコンセンサス配列は、エンボス・エクスプローラ・コン:http://www.bioinformatics.nl/cgi-bin/emboss/consで導出される。以下の設定を使用した:
i.複数チェックを1に設定
ii.位置における必要なアイデンティティ数:1
【0127】
工程1では、18個のHA血清型のそれぞれに対するコンセンサス配列を開発する。配列は、fludb.orgに見出される。
【0128】
以下の数の配列を使用して、それぞれのHA血清型コンセンサス配列を誘導する。
H1:22868
H2:622
H3:25600
H4:1932
H5:5694
H6:1745
H7:2743
H8:150
H9:3885
H10:1236
H11:670
H12:210
H13:6856
H14:31
H15:21
H16:268
H17:3
H18:2
【0129】
工程1:HAコンセンサス配列が同定されると、6つの群のそれぞれに対するコンセンサス配列のヘッドレスバージョンは、以下の方法で決定される。
(a)18個の代表的なコンセンサス配列は、bioeditにおいてクラスターWとアラインメントされる。
(b)普遍的に保存されたシステインは、欠失直前の残基として位置60で同定される。
(c)287~290位付近(普遍的に保存されたGLFGAIA配列から約100aa)の普遍的に保存されたCxxxCを同定し、これをヘッドレス欠失の末端として使用する。
(d)(c)における2つのシステインの間の領域を欠失させ、GGGG又は(GGGGS)n(n≧1)で置き換える
【0130】
図3において、サイズタンパク質コンセンサス配列は、モノマーペプチドリンカーと共に列挙されている。
【0131】
実施例3-保存されたHA領域コンセンサス配列の類似性
図3に示す6つのタンパク質コンセンサス配列を、各コンセンサス配列に割り当てられたHA血清型のHAタンパク質配列とアラインメントさせる。アミノ酸同一性並びに所与の位置におけるアミノ酸残基における保存的アミノ酸変化の類似性を考慮して、類似性の割合が計算される。スコアは、エンボス・エクスプローラ・コン・プログラムを用いて計算され、
図4に提供される。なお、スコアはいずれも83を超えている。
【0132】
実施例4-6つの保存されたユニバーサルインフルエンザHA由来抗原コンストラクトのための導入遺伝子を担持する完全に欠失したAdウイルスベクターの設計及び構築
fdAdベクターは、すべての内因性のad遺伝子が欠失している。Adゲノム内の空間は、33kbまでの長さの導入遺伝子コンストラクトを収容することができる。fdAdベクターゲノムは、アデノウイルス逆方向末端反復配列(ITR)及びアデノウイルスΨなどのAdパッケージングシグナルに対応するアデノウイルス配列のみを担持する。
【0133】
fdAdウイルスベクターゲノムは、第2の遺伝子コンストラクトによるカプシド形成に必要なゲノムに必要な欠失アデノウイルス遺伝子を備えた宿主又はパッケージング細胞内のアデノウイルスカプシドにパッケージングされる。その第2の遺伝子コンストラクトは、ヘルパーウイルスコンストラクト又はパッケージング発現プラスミドによって提供され得るが、これらに限定されない。
【0134】
一例では、一旦線状化されたfdAdベクターゲノムは、
図5に示されるように、ヒト血清型6のAdカプシドをコードする遺伝子を、宿主細胞、例えば、限定されないが、ヒト胎児性腎細胞株HEK-293の細胞に運ぶパッケージング発現プラスミドでコトランスフェクトされる。細胞から一旦放出されたカプシド形成されたアデノウイルスベクターを精製し、例えばワクチン接種に使用する。
【0135】
一例では、fdAdは、6つのコンセンサス配列をコードする導入遺伝子コンストラクトを担持する。以下の組成で3つの導入遺伝子発現カセットを製造する:番号1:サイトメガロウイルスプロモーターエンハンサー配列、続いてH-I(赤色)コンセンサスタンパク質をコードする導入遺伝子、続いて内部リボソーム進入部位、続いてH-II(橙色)コンセンサスタンパク質をコードする導入遺伝子、続いてポリアデニル化部位。
番号2:サイトメガロウイルスプロモーターエンハンサー配列、続いてH-III(黄色)コンセンサスタンパク質をコードする導入遺伝子、続いて内部リボソーム進入部位、続いてH-IV(緑色)コンセンサスタンパク質をコードする導入遺伝子、続いてポリアデニル化部位。
番号3:サイトメガロウイルスプロモーターエンハンサー配列、続いてH-V(青色)コンセンサスタンパク質をコードする導入遺伝子、続いて内部リボソーム進入部位、続いてH-Vl(紫色)コンセンサスタンパク質をコードする導入遺伝子、続いてポリアデニル化部位。
【0136】
3つの導入遺伝子コンストラクト、番号1、2及び3を完全に欠失したアデノウイルスベクターゲノムに移す。
【0137】
実施例5-ヒト又は動物を6つの保存されたユニバーサルヘッドレスHAタンパク質コンストラクトの導入遺伝子を担持するfdAdベクターで免疫化するためのプロトコール
6つのコンセンサスに保存されたHAタンパク質の導入遺伝子を担持するfdAdベクターを、実施例4に記載されるようにAd転写物にカプシド形成する。これを生理的溶液に懸濁し、ヒト及び/又は動物を免疫化するために使用する。この目的のために、それは、それだけに限らないが、筋肉内、皮内、皮下経路を介した注射によって、又はそれだけに限らないが、鼻腔内又は経口経路などの他の経路によってレシピエントに送達される。
【0138】
体液性免疫応答及び細胞性免疫応答の両方が、このアデノウイルスベクターに曝露されたヒト及び動物において誘導される。これらの免疫応答は、任意のインフルエンザA血清型のメンバーに属するインフルエンザウイルスの攻撃からヒト及び動物を保護する。
【0139】
ユニバーサルインフルエンザワクチン及び関連する方法の複数の実施形態を本明細書で詳細に説明したが、それらの改変及び変形が可能であるべきであり、それらのすべてが本発明の真の精神及び範囲内に入ることが明らかである。さらに、多数の修正及び変更が当業者には容易に思い浮かぶので、本発明を図示及び説明された正確な構築及び操作に限定することは望ましくなく、したがって、本開示の範囲に属するすべての適切な修正及び均等物に頼ってもよい。
【配列表】
【国際調査報告】