IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイトの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-28
(54)【発明の名称】固定化による酵素の安定および活性
(51)【国際特許分類】
   C12N 11/08 20200101AFI20231120BHJP
   C08F 292/00 20060101ALI20231120BHJP
   C12N 11/087 20200101ALI20231120BHJP
   C12N 9/16 20060101ALN20231120BHJP
【FI】
C12N11/08
C08F292/00
C12N11/087
C12N9/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528540
(86)(22)【出願日】2021-11-15
(85)【翻訳文提出日】2023-07-11
(86)【国際出願番号】 US2021072409
(87)【国際公開番号】W WO2022104385
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】63/113,234
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
2.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】308032460
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイト
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF COLORADO,a body corporate
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ エス.ウェルツ
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル エル.カール
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ケー.シュワルツ
(72)【発明者】
【氏名】ヘクター サンチェス-モラン
【テーマコード(参考)】
4B033
4J026
【Fターム(参考)】
4B033NA27
4B033NB36
4B033NB62
4B033NC03
4J026BA27
4J026BB04
4J026BB09
4J026CA04
4J026CA05
4J026DB06
4J026FA08
4J026GA08
(57)【要約】
酵素固定化のための親水性モノマーおよび疎水性モノマーの統計的コポリマーからなるポリマーブラシ。ヘテロポリマーブラシは、高温に対して4つの異なるリパーゼを安定化させた。特に、統計的コポリマーは、ホモポリマーブラシよりも4つのリパーゼを安定化させた。さらに、リゾムコール・ミエヘイ・リパーゼの場合、統計的コポリマーは、親水性または疎水性モノマーのいずれかのホモポリマーよりも酵素を安定化させた。その結果、高温安定性が向上し、酵素触媒やセンシング用途に望ましい高温での反応により、触媒速度が大幅に向上した。さらに、高温に対する安定化は、非水性溶媒に対する安定化を意味し、これは生体触媒の多くの用途にとって非常に重要である。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定化酵素の調製方法であって、
モノマー含有重合前駆体混合物を提供するステップであって、前記モノマー混合物は、親水性モノマーおよび疎水性モノマーを、100:1~1:100の間での親水性モノマー:疎水性モノマーのモル比で含む、前記ステップ;
基材表面の存在下で前駆体混合物との重合反応を行い、コポリマーブラシを含む重合基材を生成するステップ;および
重合基材のポリマーブラシへの酵素の固定を可能にするのに有効な条件下で、重合基材を酵素と接触させるステップ:
を含む、前記固定化酵素の調製方法。
【請求項2】
前記親水性モノマー:疎水性モノマーのモル比が、タンパク質表面の親水性をもとに選択され、タンパク質表面の親水性が大きいということは、ランダムコポリマー中の疎水性モノマーに対する親水性モノマーの比率が高いことを意味する、請求項1に記載の固定化酵素の調製方法。
【請求項3】
前記親水性モノマーは、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、および対応するアクリレートおよびアクリルアミドを非限定的に含む、カチオン性モノマー;3-スルホプロピルメタクリレート、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、メタクリル酸、および対応するアクリレートおよびアクリルアミドを非限定的に含む、アニオン性モノマー;並びに、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、および対応するアクリレートおよびアクリルアミドを非限定的に含む、その他の双性イオンモノマーである、請求項1に記載の固定化酵素の調製方法。
【請求項4】
前記疎水性モノマーは、分子量の異なるポリ(エチレングリコール)メタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート、n-イソプロピルアクリルアミド、2-N-モルホリノエチルメタクリレート、並びに対応するアクリレートおよびアクリルアミドからなる群から選択されるモノマーである、請求項1に記載の固定化酵素の調製方法。
【請求項5】
反応性モノマーをさらに含む、請求項1に記載の固定化酵素の調製方法。
【請求項6】
前記反応性モノマーが、グリシジルメタクリレートおよび対応するアクリレート及びアクリルアミド、並びに金属配位基、例えばニトリロトリアセテート及びイミノジアセテート官能化モノマーからなる群から選択されるモノマーである、請求項4に記載の固定化酵素の調製方法。
【請求項7】
前記前駆体混合物がアミン反応性架橋剤を含む、請求項1に記載の固定化酵素の調製方法。
【請求項8】
前記アミン反応性架橋剤がNHS(例えば1%メタクリル酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS-MA))である、請求項1に記載の固定化酵素の調製方法。
【請求項9】
前記統計的コポリマーブラシは、「グラフティッド フロム」アプローチを使用して合成される、請求項1に記載の固定化酵素の調製方法。
【請求項10】
前記親水性モノマー:疎水性モノマーのモル比が、約20:1、約15:1、約12:1、約10:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:10、約1:12、約1:15、および約1:20からなる群から選択される比率である、請求項1に記載の固定化酵素の調製方法。
【請求項11】
前記表面がシリカ表面、例えばシリカ微小球等である、請求項1に記載の固定化酵素の調製方法。
【請求項12】
前記基材が微小球である、請求項1に記載の固定化酵素の調製方法。
【請求項13】
前記酵素が、リパーゼ、トランスアミナーゼ、ニトリラーゼ、イミンレダクターゼ、アルドラーゼ、リガーゼ、N-アシルトランスフェラーゼ、ケトレダクターゼ、加水分解酵素、ヒドロゲナーゼ、デヒドロゲナーゼ、モノオキシゲナーゼ、ペルオキシゲナーゼ、オキシダーゼ、ハロゲナーゼ、およびメチルトランスフェラーゼからなる群から選択される酵素群である、請求項1に記載の固定化酵素の調製方法。
【請求項14】
前記酵素が、リパーゼである、請求項1に記載の固定化酵素の調製方法。
【請求項15】
前記リパーゼが、カンジダ・ルゴサ・リパーゼ(CRL)、カンジダ・アンタークティカ・リパーゼB(CALB)、リゾムコール・ミエヘイ・リパーゼ(RML)、枯草菌リパーゼA(LipA)、シュードモナス・ストゥッツェリ・トリアシルグリセロールリパーゼ(リパーゼTL)、及びスフィンゴモナス属由来のリパーゼ(HXN-200)からなる群より選択されるリパーゼである、請求項14に記載の固定化酵素の調製方法。
【請求項16】
固定化酵素の調製方法であって、
モノマー含有重合前駆体混合物を提供するステップであって、前記モノマー混合物がスルホベタインメタクリレート(SBMA)およびポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)を、100:1~1:100の間でのSBMA:PEGMAのモル比で含む、前記ステップ
前駆体混合物との重合反応を行い、コポリマーブラシを得るステップ;
前記統計的コポリマーブラシを表面に固定させるのに有効な条件下で、基材表面を前記統計的コポリマーブラシと接触させて重合基材を生成するステップ;および
重合基材のポリマーブラシへの酵素の固定を可能にするのに有効な条件下で、重合基材を酵素と接触させるステップ:
を含む、前記固定化酵素の調製方法。
【請求項17】
前記コポリマーが、統計的コポリマーである、請求項16に記載の固定化酵素の調製方法。
【請求項18】
前記コポリマーが、コポリマーである、請求項16に記載の固定化酵素の調製方法。
【請求項19】
前記前駆体混合物が、酵素表面の第一級アミンを介してブラシへの共有酵素固定化を可能にする、メタクリル酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS-MA)をさらに含む、請求項16に記載の固定化酵素の調製方法。
【請求項20】
前記表面がシリカ表面、例えばシリカ微小球等である、請求項16に記載の固定化酵素の調製方法。
【請求項21】
前記基材が微小球である、請求項16に記載の固定化酵素の調製方法。
【請求項22】
前記酵素が、リパーゼ、トランスアミナーゼ、ニトリラーゼ、イミンレダクターゼ、アルドラーゼ、リガーゼ、N-アシルトランスフェラーゼ、ケトレダクターゼ、加水分解酵素、ヒドロゲナーゼ、デヒドロゲナーゼ、モノオキシゲナーゼ、ペルオキシゲナーゼ、オキシダーゼ、ハロゲナーゼ、およびメチルトランスフェラーゼからなる群から選択される酵素群である、請求項16に記載の固定化酵素の調製方法。
【請求項23】
前記酵素が、リパーゼである、請求項16に記載の固定化酵素の調製方法。
【請求項24】
前記リパーゼが、カンジダ・ルゴサ・リパーゼ(CRL)、カンジダ・アンタークティカ・リパーゼB(CALB)、リゾムコール・ミエヘイ・リパーゼ(RML)、枯草菌リパーゼA(LipA)、シュードモナス・ストゥッツェリ・トリアシルグリセロールリパーゼ(リパーゼTL)、及びスフィンゴモナス属由来のリパーゼ(HXN-200)からなる群より選択されるリパーゼである、請求項23に記載の固定化酵素の調製方法。
【請求項25】
「グラフティッド トゥ」アプローチを用いて、基材表面にランダムな統計的コポリマーブラシを合成し、続いて重合基材を重合基材のポリマーブラシに酵素を固定させるのに有効な条件下で重合基材を酵素と接触させる、固定化酵素の調製方法。
【請求項26】
基材表面に固定されるポリマーブラシを形成する、100:1~1:100の間での親水性モノマー:疎水性モノマーのモル比で親水性モノマーおよび疎水性モノマーからなる統計的コポリマーを含み、重合基材のポリマーブラシに固定された酵素をさらに含む、固定化酵素系。
【請求項27】
前記酵素が、リパーゼ、トランスアミナーゼ、ニトリラーゼ、イミンレダクターゼ、アルドラーゼ、リガーゼ、N-アシルトランスフェラーゼ、ケトレダクターゼ、加水分解酵素、ヒドロゲナーゼ、デヒドロゲナーゼ、モノオキシゲナーゼ、ペルオキシゲナーゼ、オキシダーゼ、ハロゲナーゼ、およびメチルトランスフェラーゼからなる群から選択される酵素群からのものである、請求項26に記載の固定化酵素系。
【請求項28】
前記酵素がリパーゼである、請求項26に記載の固定化酵素系。
【請求項29】
前記リパーゼが、カンジダ・ルゴサ・リパーゼ(CRL)、カンジダ・アンタークティカ・リパーゼB(CALB)、リゾムコール・ミエヘイ・リパーゼ(RML)、枯草菌リパーゼA(LipA)、シュードモナス・ストゥッツェリ・トリアシルグリセロールリパーゼ(リパーゼTL)、及びスフィンゴモナス属由来のリパーゼ(HXN-200)からなる群より選択されるリパーゼである、請求項28に記載の固定化酵素系。
【請求項30】
前記親水性モノマー:疎水性モノマーのモル比が、タンパク質表面の親水性を基に選択され、タンパク質表面の親水性が大きいということは、ランダムコポリマー中の疎水性モノマーに対する親水性モノマーの比率が高いことを意味する、請求項26に記載の固定化酵素系。
【請求項31】
前記親水性モノマーは、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、および対応するアクリレートおよびアクリルアミドを非限定的に含む、カチオン性モノマー;3-スルホプロピルメタクリレート、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、メタクリル酸、および対応するアクリレートおよびアクリルアミドを非限定的に含む、アニオン性モノマー;並びに、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、および対応するアクリレートおよびアクリルアミドを非限定的に含む、その他の双性イオンモノマーである、請求項26に記載の固定化酵素系。
【請求項32】
前記疎水性モノマーは、分子量の異なるポリ(エチレングリコール)メタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート、n-イソプロピルアクリルアミド、2-N-モルホリノエチルメタクリレート、並びに対応するアクリレートおよびアクリルアミドからなる群から選択される、請求項26に記載の固定化酵素系。
【請求項33】
基材表面に固定されたポリマーブラシを形成する、100:1~1:100の間での親水性モノマー:疎水性モノマーのモル比で親水性モノマーおよび疎水性モノマーからなる統計的コポリマーを含み、重合基材のポリマーブラシに酵素を固定するために有効な条件を作り出すための緩衝混合物をさらに含む、固定化酵素系用キット。
【請求項34】
前記親水性モノマー:疎水性モノマーのモル比が、タンパク質表面の親水性を基に選択され、タンパク質表面の親水性が大きいということは、ランダムコポリマー中の疎水性モノマーに対する親水性モノマーの比率が高いことを意味する、請求項33に記載の固定化酵素系用キット。
【請求項35】
前記親水性モノマーは、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、および対応するアクリレートおよびアクリルアミドを非限定的に含む、カチオン性モノマー;3-スルホプロピルメタクリレート、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、メタクリル酸、および対応するアクリレートおよびアクリルアミドを非限定的に含む、アニオン性モノマー;並びに、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、および対応するアクリレートおよびアクリルアミドを非限定的に含む、その他の双性イオンモノマーである、請求項33に記載の固定化酵素系用キット。
【請求項36】
前記疎水性モノマーは、分子量の異なるポリ(エチレングリコール)メタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート、n-イソプロピルアクリルアミド、2-N-モルホリノエチルメタクリレート、並びに対応するアクリレートおよびアクリルアミドからなる群から選択される、請求項33に記載の固定化酵素系用キット。
【請求項37】
前記表面がシリカ表面、例えばシリカ微小球等である、請求項33に記載の固定化酵素系用キット。
【請求項38】
前記基材が微小球である、請求項33に記載の固定化酵素系用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
【0002】
本出願は、2020年11月13日に提出された米国仮出願第63/113,234号の利益を主張する。
【0003】
政府の利害関係の陳述
【0004】
本発明は、米国陸軍研究局によって付与された助成金番号W911NF-15-1-0141、およびDOD/DTRAによって付与された助成金番号HDTRA1-16-1-0045による政府の支援を受けて行われた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0005】
発明の分野
【0006】
本発明は、調節可能なポリマー材料による固定化酵素を触媒増強するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0007】
酵素は、温和な条件下で絶妙な選択性と活性を有する並外れた触媒であり、触媒としての重要性が高まっている [Schmid, A., et al., Industrial Biocatalysis Today and Tomorrow. Nature 2001, 409 (January), 258-268; Campos, K. R. et al., The Importance of Synthetic Chemistry in the Pharmaceutical Industry. Science (80-. ). 2019, 363 (6424); Bornscheuer, U. T., et al., Engineering the Third Wave of Biocatalysis. Nature 2012, 485 (7397), 185-194.]。しかしながら、酵素の安定性はほんのわずかであり、温度、pH、溶媒などの環境条件のわずかな変化により急速な不活性化が引き起こされる [Taverna, D. M., et al., Why Are Proteins Marginally Stable? Proteins Struct. Funct. Genet. 2002, 46 (1), 105-109.]。したがって、酵素が活性である条件の範囲を広げ、触媒の寿命を改善し、高温での反応を操作することによって触媒速度を増加させるために、酵素の安定化は何十年にもわたり研究の焦点となってきた [Adams, M. W., et al., Extremozymes: Expanding the Limits of Biocatalysis. Nature Biotechnology. 1995, pp 662-668; Haki, G. D.; Rakshit, S. K. Developments in Industrially Important Thermostable Enzymes: A Review. Bioresour. Technol. 2003, 89 (1), 17-34; Devine, P. N., et al., Extending the Application of Biocatalysis to Meet the Challenges of Drug Development. Nat. Rev. Chem. 2018, 2 (12), 409-421.]。酵素触媒の場合、高温は典型的に、周囲温度より高くなるものの、水の沸点未満である(つまり、20℃~100℃の間)。酵素の安定化のための追加の方法および組成物を有することは、非常に望ましくそして有益となる。本発明は、以下の開示において容易に明らかになるような組成物および方法を提供する。
【発明の概要】
【0008】
酵素安定化は、固定化によって達成され得る[Cao, L. Immobilised Enzymes: Science or Art? Curr. Opin. Chem. Biol. 2005, 9 (2), 217-226; Datta, S.; Christena, L. R.; Rajaram, Y. R. S. Enzyme Immobilization: An Overview on Techniques and Support Materials. 3 Biotech 2013, 3 (1), 1-9; Klibanov, A. M. Enzyme Stabilization by Immobilization. Anal. Biochem. 1979, 93, 1-25.]。安定化に加えて、酵素固定化は高価な触媒のリサイクルを容易にし、下流の分離を減らし、さまざまなバイオセンシングモダリティに適合させる[Barbosa, O., et al., Heterofunctional Supports in Enzyme Immobilization: From Traditional Immobilization Protocols to Opportunities in Tuning Enzyme Properties. Biomacromolecules 2013, 14 (8), 2433-2462; Barbosa, O., et al., Strategies for the One-Step Immobilization-Purification of Enzymes as Industrial Biocatalysts. Biotechnol. Adv. 2015, 33 (5), 435-456; Rodrigues, R. C., et al., Modifying Enzyme Activity and Selectivity by Immobilization. Chem. Soc. Rev. 2013, 42 (15), 6290-6307.]。酵素固定化への1つのアプローチは、ポリマーブラシの使用である。ポリマーブラシは、立体的相互作用によりポリマーが固体表面に対して拡張またはブラシ状の構造を採用して、ポリマーを表面に吸着または共有結合することによって(グラフティッド トゥ)、または開始剤官能化表面からポリマーを合成することによって(グラフティッド フロム)生成することができるように、高密度のポリマーで修飾された表面である[Brittain, W. J.; Minko, S. A Structural Definition of Polymer Brushes. J. Polym. Sci. Part A Polym. Chem. 2007, 45 (16), 3505-3512.]。ポリマーブラシは、ポリマーブラシで機能化され得る多様な固体担体およびさまざまな利用可能なポリマー化学物質を与えられる、酵素固定化に対する1つのアプローチである[Cullen, S. P., et al., Polymerie Brushes as Functional Templates for Immobilizing Ribonuclease A: Study of Binding Kinetics and Activity. Langmuir 2008, 24 (3), 913-920; Zoppe, J. O., et al., Surface-Initiated Controlled Radical Polymerization: State-of-the-Art, Opportunities, and Challenges in Surface and Interface Engineering with Polymer Brushes. Chem. Rev. 2017, 117 (3), 1105-1318; Xu, F. J., et al., Bioactive Surfaces and Biomaterials via Atom Transfer Radical Polymerization. Prog. Polym. Sci. 2009, 34 (8), 719-761.]。
【0009】
疎水性モノマーからなるポリマーブラシ担体は、酵素吸着のための強い疎水性駆動力によって酵素負荷を改善するために使用され得る。あるいは、親水性表面は固定化時に酵素の表面誘導性アンフォールディングを減少させるため、親水性ポリマーが採用され得る。
【0010】
増強された酵素安定化は、親水性および疎水性モノマーの両方を含む統計的コポリマーからなるポリマーブラシへの酵素の固定化によって本明細書において実証される。驚くべきことに、アッセイされた全てのリパーゼは、ホモポリマーの1つと比較して、統計的コポリマーに固定化した場合により大きな高温安定性を示した。カンジダ・ルゴサ・リパーゼ(CRL)の場合、統計的コポリマーは、いずれの組成のホモポリマーよりも安定化性があった。重要なことに、この安定性により、高温での酵素の操作が可能になり、触媒作用の速度が大幅に向上した。さらに、高温安定性は、触媒の寿命が長く、有機溶媒による不活性化に対する耐性が高いことを示唆しており、産業用触媒およびバイオセンシングに大きな利点がある。[Iyer, P. V.; Ananthanarayan, L. Enzyme Stability and Stabilization-Aqueous and Non-Aqueous Environment. Process Biochem. 2008, 43 (10), 1019-1032.]
【0011】
固定化による酵素の安定性の向上は、産業生物触媒の酵素性能の向上を促進するための1つのアプローチである。しかしながら、固定化酵素の安定性の向上は、典型的には酵素特異的であり、経験的で試行錯誤の努力によって達成される。この研究では、追加の酵素安定性を付与する固定化担体を特定する新しい機械学習ベースの計算技術が提示される。この手法は、表面原子の水の親和性をガウス曲線でモデル化し、疎水性パッチ(HP)、それらの疎水性強度、およびそれらの化学的性質(すなわち、芳香族または脂肪族含有量)の強化されたマッピングを提供する。4つの異なるリパーゼのさまざまな分子表面が、ナノスケールで広範囲の疎水性にまたがるさまざまなモノマー比(SBMA/OEGMA)でのランダムポリ(スルホベタイン-co-エチレングリコール)ブラシの優先安定化に与える影響を調査した。さまざまな温度で活性測定を行った結果、表面親水性の高いリパーゼの中には、より親水性の高い環境でより優れた安定性と最適な触媒活性を示すもの(SBMAリッチブラシ上の枯草菌リパーゼAやリゾムコール ミエヘイ リパーゼなど)がある一方で、よりバランスのとれたSBMA/OEGMA混合物(カンジダ・ルゴサ・リパーゼなど)や疎水性の高い純粋なOEGMA環境を好むもの(カンジダ・アンタークティカ・リパーゼBなど)もあることが明らかになった。特に、この計算ツールから得られた結果は、タンパク質表面の親水性および疎水性が、一致する性質のコポリマーブラシ表面の優先安定化に大きな役割を果たすことを説明することができる。これらの結果は、持続可能性、エネルギー、食品加工、化学・生物兵器防衛など、さまざまな分野で安定性が課題となる産業関連酵素の安定性を高めるための生体材料界面の合理的な設計に活用され得る。
【0012】
第1の態様において本発明は、固定化酵素を調製する方法を提供する。第1の態様の方法は、モノマー含有重合前駆体混合物を提供するステップであって、前記モノマー混合物は、親水性モノマーおよび疎水性モノマーを、100:1~1:100の間での親水性モノマー:疎水性モノマーのモル比で含む、前記ステップ、基材表面の存在下で前駆体混合物との重合反応を行い、コポリマーブラシを含む重合基材を生成するステップ、および重合基材のポリマーブラシへの酵素の固定を可能にするのに有効な条件下で、重合基材を酵素と接触させるステップを含むことができる。コポリマーブラシは、統計的またはランダムコポリマーであり得る。有益な実施形態において、コポリマーは統計的コポリマーである。さらなる有益な実施形態において、親水性モノマー:疎水性モノマーのモル比は、タンパク質表面の親水性をもとに選択される。タンパク質表面の親水性が大きいということは、コポリマー中の疎水性モノマーに対する親水性モノマーの比率が高いことを意味する(例えば、ランダムコポリマー)。
【0013】
親水性モノマー(単数または複数)は、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、および対応するアクリレートおよびアクリルアミドを非限定的に含む、カチオン性モノマー;3-スルホプロピルメタクリレート、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、メタクリル酸、および対応するアクリレートおよびアクリルアミドを非限定的に含む、アニオン性モノマー;並びに、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、および対応するアクリレートおよびアクリルアミドを非限定的に含む、その他の双性イオンモノマーであり得る。
【0014】
疎水性モノマー(単数または複数)は、分子量の異なるポリ(エチレングリコール)メタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート、n-イソプロピルアクリルアミド、2-N-モルホリノエチルメタクリレート、並びに対応するアクリレートおよびアクリルアミドからなる群から選択されるモノマーであり得る。
【0015】
特定の実施形態では、この方法は反応性モノマーを採用することができる。反応性モノマーは、グリシジルメタクリレートおよび対応するアクリレート及びアクリルアミド、並びに金属配位基、例えばニトリロトリアセテート及びイミノジアセテート官能化モノマーからなる群から選択されるモノマーであり得る。
【0016】
第1の態様の有益な実施形態において、前駆体混合物は、アミン反応性架橋剤を含む。アミン反応性架橋剤は、NHS(例えば1%メタクリル酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS-MA))であり得る。
【0017】
コポリマーブラシは、「グラフティッド フロム」アプローチまたは「グラフティッド トゥ」アプローチを用いて合成され得る。
【0018】
親水性モノマー:疎水性モノマーのモル比は、約20:1、約15:1、約12:1、約10:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:10、約1:12、約1:15、および約1:20からなる群から選択される比率であり得る。
【0019】
有益な実施形態では、基材は微小球である。さらに有益な実施形態において、基材は微小球である。特に有益な実施形態において、基材はシリカ微小球である。
【0020】
酵素としては、リパーゼ、トランスアミナーゼ、ニトリラーゼ、イミンレダクターゼ、アルドラーゼ、リガーゼ、N-アシルトランスフェラーゼ、ケトレダクターゼ、加水分解酵素、ヒドロゲナーゼ、デヒドロゲナーゼ、モノオキシゲナーゼ、ペルオキシゲナーゼ、オキシダーゼ、ハロゲナーゼ、およびメチルトランスフェラーゼからなる群から選択される酵素群であり得る。有益な実施形態において、酵素はリパーゼである。リパーゼは、カンジダ・ルゴサ・リパーゼ(CRL)、カンジダ・アンタークティカ・リパーゼB(CALB)、リゾムコール・ミエヘイ・リパーゼ(RML)、枯草菌リパーゼA(LipA)、シュードモナス・ストゥッツェリ・トリアシルグリセロールリパーゼ(リパーゼTL)、およびスフィンゴモナス属由来のリパーゼ(HXN-200)からなる群から選択されるリパーゼであり得る。
【0021】
第2の態様において本発明は、固定化酵素を調製する第2の方法を提供する。この方法は、モノマー含有重合前駆体混合物を提供するステップであって、前記モノマー混合物がスルホベタインメタクリレート(SBMA)およびポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)を、100:1~1:100の間でのSBMA:PEGMAのモル比で含む、前記ステップ、前駆体混合物との重合反応を行い、コポリマーブラシを得るステップ、前記統計的コポリマーブラシを表面に固定させるのに有効な条件下で、基材表面を前記統計的コポリマーブラシと接触させて重合基材を生成するステップ、重合基材のポリマーブラシへの酵素の固定を可能にするのに有効な条件下で、重合基材を酵素と接触させるステップを含む。
【0022】
コポリマーブラシは、統計的またはランダムコポリマーであり得る。有益な実施形態において、コポリマーは統計的コポリマーである。第2の態様のさらに有益な実施形態において、親水性モノマー:疎水性モノマーのモル比は、タンパク質表面の親水性をもとに選択される。タンパク質表面の親水性が大きいということは、コポリマー中の疎水性モノマーに対する親水性モノマーの比率が高いことを意味する(例えば、ランダムコポリマー)。
【0023】
親水性モノマー:疎水性モノマーのモル比は、約20:1、約15:1、約12:1、約10:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:10、約1:12、約1:15、および約1:20からなる群から選択される比率であり得る。
【0024】
有益な実施形態では、基材は微小球である。さらに有益な実施形態において、基材は微小球である。特に有益な実施形態において、基材はシリカ微小球である。
【0025】
酵素は、リパーゼ、トランスアミナーゼ、ニトリラーゼ、イミンレダクターゼ、アルドラーゼ、リガーゼ、N-アシルトランスフェラーゼ、ケトレダクターゼ、加水分解酵素、ヒドロゲナーゼ、デヒドロゲナーゼ、モノオキシゲナーゼ、ペルオキシゲナーゼ、オキシダーゼ、ハロゲナーゼ、およびメチルトランスフェラーゼからなる群から選択される酵素群であり得る。有益な実施形態において、酵素はリパーゼである。リパーゼは、カンジダ・ルゴサ・リパーゼ(CRL)、カンジダ・アンタークティカ・リパーゼB(CALB)、リゾムコール・ミエヘイ・リパーゼ(RML)、枯草菌リパーゼA(LipA)、シュードモナス・ストゥッツェリ・トリアシルグリセロールリパーゼ(リパーゼTL)、およびスフィンゴモナス属由来のリパーゼ(HXN-200)からなる群から選択されるリパーゼであり得る。
【0026】
第3の態様において本発明は、固定化酵素を調製する第3の方法を提供する。この方法は、「グラフティッド トゥ」アプローチを使用して基材表面にランダムな統計的コポリマーブラシを合成すること、続いて重合基材を重合基材のポリマーブラシに酵素を固定させるのに有効な条件下で重合基材を酵素と接触させることを含むことができる。
【0027】
第4の態様において、本発明は、基材表面に固定されるポリマーブラシを形成する、100:1~1:100の間での親水性モノマー:疎水性モノマーのモル比で親水性モノマーおよび疎水性モノマーからなる統計的コポリマーを含み、重合基材のポリマーブラシに固定された酵素をさらに含む、固定化酵素系を提供する。該酵素は、リパーゼ、トランスアミナーゼ、ニトリラーゼ、イミンレダクターゼ、アルドラーゼ、リガーゼ、N-アシルトランスフェラーゼ、ケトレダクターゼ、加水分解酵素、ヒドロゲナーゼ、デヒドロゲナーゼ、モノオキシゲナーゼ、ペルオキシゲナーゼ、オキシダーゼ、ハロゲナーゼ、およびメチルトランスフェラーゼからなる群から選択される酵素群からであり得る。有益な実施形態において、酵素はリパーゼである。
【0028】
第4の態様でのコポリマーブラシは、統計的またはランダムコポリマーであり得る。有益な実施形態において、コポリマーは統計的コポリマーである。さらなる有益な実施形態において、親水性モノマー:疎水性モノマーのモル比は、タンパク質表面の親水性を基に選択される。タンパク質表面の親水性が大きいということは、ランダムコポリマー中の疎水性モノマーに対する親水性モノマーの比率が高いことを意味する(例えば、ランダムコポリマー)。
【0029】
親水性モノマー(単数または複数)は、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、および対応するアクリレートおよびアクリルアミドを非限定的に含む、カチオン性モノマー;3-スルホプロピルメタクリレート、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、メタクリル酸、および対応するアクリレートおよびアクリルアミドを非限定的に含む、アニオン性モノマー;並びに、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、および対応するアクリレートおよびアクリルアミドを非限定的に含む、その他の双性イオンモノマーであり得る。
【0030】
疎水性モノマー(単数または複数)は、分子量の異なるポリ(エチレングリコール)メタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート、n-イソプロピルアクリルアミド、2-N-モルホリノエチルメタクリレート、並びに対応するアクリレートおよびアクリルアミドからなる群から選択されるモノマーであり得る。
【0031】
特定の実施形態では、この方法は反応性モノマーを採用することができる。反応性モノマーは、グリシジルメタクリレートおよび対応するアクリレート及びアクリルアミド、並びに金属配位基、例えばニトリロトリアセテート及びイミノジアセテート官能化モノマーからなる群から選択されるモノマーであり得る。
【0032】
有益な実施形態では、基材は微小球である。さらに有益な実施形態において、基材は微小球である。特に有益な実施形態において、基材はシリカ微小球である。
【0033】
第5の態様において本発明は、固定化酵素系用キットを提供する。このキットは、基材表面に固定されたポリマーブラシを形成する、100:1~1:100の間での親水性モノマー:疎水性モノマーのモル比で親水性モノマーおよび疎水性モノマーからなる統計的コポリマーを含むことができる。重合基材のポリマーブラシに酵素を固定するために有効な条件を作り出すための緩衝混合物をさらに含むことができる。親水性モノマー:疎水性モノマーのモル比が、タンパク質表面の親水性を基に選択され得る。タンパク質表面の親水性が大きいということは、ランダムコポリマー中の疎水性モノマーに対する親水性モノマーの比率が高いことを意味する。
【0034】
有益な実施形態では、基材は微小球である。さらに有益な実施形態において、基材は微小球である。特に有益な実施形態において、基材はシリカ微小球である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明のより完全な理解のために、添付の図面に関連して取られた以下の詳細な説明を参照すべきである:
【0036】
図1-1】図1は、可溶性および固定化された(a)LipA、(b)RML、(c)CRL、および(d)CALBの温度に対する活性を示す4つのグラフ((a)~(d))のセットである。各ブラシの組成はパーセントPEGMAとしてリストされ、残りの組成はSBMAである。活性は、10 μM酪酸レゾルフィンを含む温度制御されたキュベットホルダーにおいて、適度な攪拌下で、50mMリン酸ナトリウム(pH 7.5)中で測定した。蛍光生成物であるレゾルフィンを測定し、線形形成速度を使用して速度を計算した。バックグラウンド加水分解は、各温度について差し引かれた。
図1-2】図1は、可溶性および固定化された(a)LipA、(b)RML、(c)CRL、および(d)CALBの温度に対する活性を示す4つのグラフ((a)~(d))のセットである。各ブラシの組成はパーセントPEGMAとしてリストされ、残りの組成はSBMAである。活性は、10 μM酪酸レゾルフィンを含む温度制御されたキュベットホルダーにおいて、適度な攪拌下で、50mMリン酸ナトリウム(pH 7.5)中で測定した。蛍光生成物であるレゾルフィンを測定し、線形形成速度を使用して速度を計算した。バックグラウンド加水分解は、各温度について差し引かれた。
図2図2は、タンパク質の表面における疎水性相互作用(左、正ΔGsolv)および親水性相互作用(右、負ΔGsolv)のガウスモデリングの表示を提供する図である。
図3-1】図3は、5つのイラスト(a-e)のセットである。(a)溶媒暴露フィルタリング後の結晶構造中の溶媒露出原子の空間配置。(b)各原子の累積溶媒和自由エネルギーの表示。(c)疎水性でHPに属する表面原子の空間的配置。(d)タンパク質の表面上のHPのPymol表現(赤-グレースケールでは見えない)。(e)タンパク質の表面上のHP(濃い灰色)のピモール表現。
図3-2】図3は、5つのイラスト(a-e)のセットである。(a)溶媒暴露フィルタリング後の結晶構造中の溶媒露出原子の空間配置。(b)各原子の累積溶媒和自由エネルギーの表現。(c)疎水性でHPに属する表面原子の空間的配置。(d)タンパク質の表面上のHPのPymol表現(赤-グレースケールでは見えない)。(e)タンパク質の表面上のHP(濃い灰色)のピモール表現。
図4図4は、グラフ(a)および2つのイラスト(bおよびc)である。(a)HPに属する原子の芳香族性と空間配置に基づいて3つの異なる領域を示すBSLAのパッチトポロジープロット。低領域(薄い灰色)は、主に芳香性およびまばらな配置のHPを表し、破線の間の中間領域は、中間の芳香族性で、まばらに配置された脂肪族HPまたは密集した芳香族HPとの混合領域を表す。上部領域(濃い灰色)は、密集した脂肪族原子のHPを表している。 (b) BSLAのΔGsolv|maxが最も高いHPパッチの表示。(c)BSLAの最大面積を持つHPパッチの表示。
図5図5は、タンパク質表面全体の面積当たりの溶媒和の累積自由エネルギーを示すグラフである(4つの異なるリパーゼのパッチに属する領域およびパッチに属さない領域の両方を、それらのToptにおけるそれらの活性重み付け組成に対して考慮する。エラーバーは、3つのレプリケート測定値(n = 3)の平均の標準誤差を表す。
図6図6は、コポリマーブラシに固定化された疎水性パッチを有する酵素を描写した説明図である。
図7図7は、結晶構造の4つの説明図((a)-(d))のセットである。(a)hi-patchで決定したBSLAおよび疎水性パッチの結晶構造。(b)hi-patchで決定されたRMLおよび疎水性パッチの結晶構造。(c)hi-patchで決定されたCRLおよび疎水性パッチの結晶構造。(d)hi-patchで決定されたCALBおよび疎水性パッチの結晶構造。
図8図8は、3つのグラフ((a)-(c))のセットである。(a)HPに属する原子の芳香族性と空間配置に基づいて3つの異なる領域を示すRMLのパッチトポロジープロット。 (b) CRLのパッチトポロジープロット。(c) CALBのパッチトポロジープロット。
図9図9は、活性重み付け組成物プロファイルの4つのグラフ((a)-(d))のセットである。(a)異なる温度でのBSLAの活性重み付け組成プロファイル。(b)異なる温度でのRMLの活性重み付け組成プロファイル。(c)異なる温度でのCRLの活性重み付け組成プロファイル。(d)異なる温度でのCALBの活性重み付け組成プロファイル。強調表示されているのは、各リパーゼの最大活性に対応するデータポイントであり、これは最適温度Toptに対応する。エラーバーは、3つの反復測定値(n = 3)の平均の標準誤差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
ポリマーブラシは、ポリマーブラシが酵素固定化のための担体としてランダムコポリマーからなるように作成されている。これらの不均一系担体の組成は、様々な電荷および疎水性のドメインを含む酵素の不均一化学表面に一致するように調整することができる。担体のこの合同不均一性の導入により、固定化酵素の安定性が大幅に向上し、高温およびより高い触媒回転率での酵素触媒反応の操作が可能になった。
【0038】
ポリ(エチレングリコール)メタクリレート及びスルホベタインメタクリレートのランダムコポリマーからなるポリマーブラシ担体へのカンジダ・ルゴサ・リパーゼの固定化は、いずれかのモノマー単独からなるニートポリマーブラシに固定化された同じ酵素と比較して、高温での安定性の向上をもたらした。酵素の安定性の向上により、高温での酵素触媒反応の操作が可能になり、触媒速度及び触媒の動作寿命が大幅に向上した。
【0039】
さらに、タンパク質表面を全溶媒暴露原子ベースで考慮する新しい機械学習ベースの計算技術が開発された。ガウス曲線を用いて様々な強度と空間効果を考慮して水の親和性相互作用をモデル化することにより、疎水性が蓄積された領域の検出を達成し、すべてのHP、それらの疎水性強度、およびそれらの化学的性質の詳細なマッピングを報告する。さらに、スルホベタインメタクリレート(SBMA)及びオリゴエチレングリコールメタクリレート(OEGMA)を異なる比率で形成したランダムコポリマーブラシの共有結合固定化による優先安定化に及ぼす、4つの異なるリパーゼ酵素のさまざまな表面の影響を調査した。さまざまな温度で活性測定を行い、研究されたさまざまな酵素とさまざまなコポリマーブラシ混合物との相互作用に関する関連する洞察を明らかにした。リパーゼの中には、より親水性の高い環境(SBMAリッチブラシ)において、より優れた安定性と触媒活性を示すものもあれば、より疎水性の高いSBMA/OEGMAのバランスのとれた混合物や純粋なOEGMA環境を好むものもある。特に、前述の計算ツールから得られた定量結果は、タンパク質表面の親水性および疎水性が、一致する性質のコポリマーブラシ表面での優先安定化に大きな役割を果たすことを説明することができる。これらの結果は、本明細書において教示された技術が、持続可能性、エネルギー、食品加工、化学兵器および生物兵器の防衛など、さまざまな分野で長年の安定性問題を抱える産業に関連する酵素の最適な人口界面の決定および合成を合理的に導くための手段を提供することを示している。
【0040】
ナノスケールでのタンパク質の表面疎水性の計算研究、並びに4つのリパーゼBSLA、RML、CRL、CALBの実験的活性測定を組み合わせることにより、親水性および/または疎水性相互作用がランダムコポリマーブラシなどの生体材料界面における巨視的な生物触媒活性に与える影響についての包括的なボトムアップな理解を開発した。タンパク質表面全体の水の親和性をモデル化し、ナノスケールのトポグラフィーでタンパク質をマッピングするための機械学習ベースの密度スキャンを適用することにより、HPの形態および疎水性強度を正確に決定して報告した。さらに、タンパク質残基のさまざまな化学的性質のために、芳香族性指数が採用され、これらのリパーゼの豊富な表面不均一性を実証した。芳香族性が高く、分布が散在する疎水性パッチは、脂肪族パッチや密集パッチよりも溶媒曝露の不利益が少ないことを証明し、ΔGsolv|maxは、特定のHPのトポロジカルおよび化学的性質を説明するための首尾一貫したプロキシであることが証明された。さらに、SBMAおよびOEGMAの異なる混合物によって形成されたランダムコポリマーブラシでの共有結合固定化による優先安定化に対する、4つの異なるリパーゼ酵素での異なる表面の影響を調査した。さまざまな温度で活性測定を行った結果、酵素が明確に定義されたコポリマーブラシ混合物に対してさまざまな嗜好性を示すことが明らかになった。リパーゼの中には、より親水性の高い環境(SBMAリッチブラシ)において、より優れた安定性と触媒活性を示すものもあれば、より疎水性の高いSBMA/OEGMAのバランスのとれた混合物や純粋なOEGMA環境を好むものもある。特に、hi-patch計算ツールから得られた定量結果は、タンパク質表面の親水性と疎水性が、一致する性質のコポリマーブラシ表面の優先安定化に大きな役割を果たすことを説明することができる。これらの結果は、持続可能性、エネルギー、食品加工、化学兵器および生物兵器の防衛など、さまざまな分野で長年の安定性問題を抱える産業に関連する酵素の最適な人口界面の決定および合成を合理的に導くための技術を構成する。
【実施例
【0041】
実施例1 ― 材料および方法
【0042】
コポリマーブラシは、親水性モノマーおよび疎水性モノマーを最適に含む。本明細書に提示される例示的な実施形態のいくつかにおいて、スルホベタインメタクリレート(SBMA)が親水性モノマーとして採用され、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)が疎水性モノマーとして採用され、1%メタクリル酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS-MA)が、酵素表面上の第一級アミンを介してブラシへの共有酵素固定化を可能にするために採用された。代替的に、親水性モノマー(単数または複数)は、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロライド、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロライド、ならびに対応するアクリレートおよびアクリルアミドを非限定的に含む、カチオン性モノマー; 3-スルホプロピルメタクリレート、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、メタクリル酸、ならびに対応するアクリレートおよびアクリルアミドを非限定的に含む、アニオン性モノマー;および2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ならびに対応するアクリレートおよびアクリルアミドを非限定的に含む、他の双性イオンモノマーを含むことができる。疎水性モノマー(単数または複数)は、異なる分子量のポリ(エチレングリコール)メタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート、n-イソプロピルアクリルアミド、2-N-モルホリノエチルメタクリレート、ならびに対応するアクリレートおよびアクリルアミドからなる群から選択されるモノマーを含むことができる。酵素固定化の場合、グリシジルメタクリレートならびに対応するアクリレートおよびアクリルアミドを非限定的に含むその他の反応性モノマーが採用され得る、ならびに金属配位基、例えばニトリロ三酢酸およびイミノ二酢酸官能化モノマーが採用され得る。
【0043】
材料:カンジダ・ルゴサ・リパーゼ(CRL)、カンジダ・アンタークティカ・リパーゼB(CALB)、およびリゾムコール・ミエヘイ・リパーゼ(RML)は、シグマ・アルドリッチ社から購入し、さらなる精製をせずに使用した。枯草菌リパーゼA(LipA)を前述のように発現および精製した。多分散シリカ微小球(1~3μm)をNanocymから購入し、機能化前にUVオゾンで洗浄した。酪酸レゾルフィン(RB)、臭化銅(I)、2-2'-ビピリジル(Bpy)、メタクリル酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS-MA)、および[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル-(3-スルホプロピル)-アンモニウムヒドロキシド(SBMA)をシグマ・アルドリッチ社から購入し、受け取ったまま使用した。ポリ(エチレングリコール)メタクリレート(Mn=360Da、PEGMA)はシグマ・アルドリッチ社から購入し、重合前に塩基性アルミナを通過させた。(p-クロロメチル)フェニルトリクロロシラン(CMPS)はGelestから購入し、受け取ったまま使用した。
【0044】
表面機能化:多分散微小球(2.5g)をUV-オゾンで1時間洗浄した後、CMPSでシラン化した。洗浄した微小球を30mLのトルエンに適度に攪拌しながら加え、これに0.3mLのCMPSを加えた。シラン化は室温で45分間放置した後、濾過し、トルエン、メタノール、および蒸留水で連続洗浄した。官能化された粒子を乾燥させ、siATRPの前に真空デシケーターに貯蔵した。
【0045】
siATRP:ホモポリマーおよび統計的コポリマーブラシは、前述のように、原子移動ラジカル重合(ATRP)を使用して、開始剤官能化シリカ微小球からの「グラフトフロム」アプローチを使用して合成された。。簡単に説明すると、重合反応は、それぞれSBMA、PEGMA、NHS-MA、bpy、Cu(I)Br、Cu(II)Brのモル比100-x:x:1:5:2:0.2のトリフルオロエタノール(TFE)中で調製され、xは飼料中のPEGMAの量を百分率で表した。さらに、1モルパーセントのNHS-MAを飼料に添加して、酵素表面の第一級アミンを介して酵素を共有結合させた。官能化シリカ微小球を除く全ての反応物を重合反応に加え、3回の凍結ポンプ融解サイクルで反応を脱気した。最終凍結サイクルで、シリカ微小球をシュレンクフラスコに添加した。室温で24時間放置し、空気に曝して重合反応を終了させた。重合した微小球を濾過し、温かいTFEで十分にすすいだ後、乾燥し、固定化する前に真空デシケーターに貯蔵した。
【0046】
酵素固定化:pH 7.5の50mMリン酸ナトリウム中で10mgの粒子と2mg/mLの酵素800μLを混合することにより酵素を固定化した。固定化反応は、微小球を懸濁させるために穏やかに振盪しながら4℃で一晩行った。固定化された酵素量は、上清中の残存活性を測定し、その後同じ緩衝液で粒子をすすいだ。
【0047】
酵素活性測定:すべてのリパーゼの酵素活性は、酪酸エステルの加水分解により蛍光生成物レゾルフィンを形成する蛍光基質レゾルフィン酪酸で測定された。反応は、50mMリン酸ナトリウム中、pH7.5の基質濃度10μMで行った。反応は、温度制御されたキュベットホルダーで連続攪拌を使用して、570nmの励起および593nmの発光波長を有する蛍光光度計(Fluoromax-4、堀場製作所)でモニターした。10%変換前の生成物形成の初期線形速度を使用して、各温度での速度を決定した。蛍光強度は、レゾルフィンについての標準検量線を用いて濃度に関連付けた。バックグラウンド加水分解は、各温度について差し引いた。使用した励起波長および発光波長はそれぞれ570/593nmであった。
【0048】
実施例2 ― 安定性を向上させるための、不均一系ポリマーブラシへの酵素固定化。
【0049】
固定化酵素の安定性に及ぼす固定化化学の効果を評価するために、可溶性酵素と、異なる組成のポリマーブラシに固定化した酵素について、活性の温度依存性を測定した(図1)。活性の温度依存性は、酵素の高温安定性を決定すると同時に、触媒の性能に関する貴重な情報を提供するために便利な方法である。一般に、酵素触媒反応は、温度の上昇が酵素の不活性化を引き起こすまで、アレニウスの式に従って、温度の上昇とともに指数関数的に増加する。高温での不活性化は、変性(すなわち、折り畳まれた酵素構造の喪失)または凝集によるものであり、後者は固定化酵素では不可能である。したがって、活性の至適温度の上昇は、酵素の高温安定性の増加を示す。
【0050】
枯草菌由来のリパーゼA(lipA)の場合、固定化lipAの活性の至適温度は、ホモポリマーおよび統計的コポリマー担体組成物の両方について可溶性酵素と比較して高く、全ての場合において固定化時の安定化を示した(図1a)。0%、25%、50%、および75%のPEGMAブラシに固定化されたlipAの活性の最適温度は50℃であり(それぞれ100%、75%、50%、および25%のPEGMA)、ホモポリマーPEGMAブラシよりもこれらの担体組成物上でより高い高温安定性を示した。これは、化学的不均一性がlipAの疎水性ホモポリマーと比較して高温安定性を高めたことを示している。
【0051】
リゾムコール・ミエヘイ・リパーゼ(RML)の場合、活性の至適温度は、100%PEGMAまたは可溶性酵素のいずれかよりも0%、25%、50%、および75%PEGMAの方が大きかった(図1b)。特に、この酵素は100%PEGMA担体上での安定性が溶液中よりも低く、この組成物のホモポリマーが不安定化していることを示唆している。逆に、全ての統計的コポリマーは、可溶性酵素に対して安定化するか、または100%PEGMAホモポリマー担体上に固定化された。
【0052】
カンジダ・ルゴサ・リパーゼ(CRL)の場合、活性の至適温度は、いずれのホモポリマーよりも混合物(すなわち、25%、50%、および75%PEGMA)に対して最も大きかったが、統計的コポリマーが試験された任意の条件の中で最も安定化されたことを示している(図1c)。
【0053】
カンジダ・アンタークティカ・リパーゼB(CALB)については、100% PEGMAで最大の活性至適温度が観察された(図1d)。しかしながら、75%PEGMAは、他の統計的コポリマーまたはホモポリマーSBMA(0%PEGMA)よりも高い温度至適値を有し、統計的コポリマーが親水性SBMAホモポリマー担体と比較してより大きな安定化を提供したことを示す。
【0054】
最も安定化をもたらす組成は酵素ごとに異なり、RMLの場合、固定化担体の最も安定化する組成は親水性モノマーと疎水性モノマーからなる統計的コポリマーであった。これは、安定性の向上が望まれる酵素固定化の重要な設計基準を提供する。
【0055】
温度と速度の間のアレニウスの関係により、高温安定性のわずかな増加は、高温での反応速度を指数関数的に高くする。これは、同じ変換を達成するために必要な酵素が少ない工業用触媒や、速度が高いほど感度が高くなるバイオセンシングでは特に重要である。さらに、固定化酵素の高温安定性が向上すれば、溶媒耐性も向上することが実証されている[Iyer, P. V.; Ananthanarayan, L. Enzyme Stability and Stabilization-Aqueous and Non-Aqueous Environment. Process Biochem. 2008, 43 (10), 1019-1032.]。これは工業的な触媒反応において重要であり、所望の基質や生成物が水に不溶性であるまたは、水が触媒メカニズムにおいて役割を果たし、水濃度の低下によって反応の方向性が変化する。これは特にリパーゼにとって重要で、非水触媒作用はエステルの合成に利用できるが、水中ではエステル加水分解が有利になる。
【0056】
本明細書において、工業的に重要な4種類のリパーゼを、親水性モノマーと疎水性モノマーからなる統計的コポリマーに固定化すると、ホモポリマーブラシと比較して高温安定性が向上することを実証する。本明細書で調べたリパーゼの物理的性質の多様性を考えると、この結果はすべての酵素に普遍的に当てはまる可能性が高い。安定化のメカニズムは推測の域を出ないが、異種ポリマーが酵素の表面の化学的不均一性と一致する可能性がある。酵素の表面は、一般的に親水性であるが、サイズと頻度が異なる疎水性部分の不連続につながった領域を含んでいる。[Jacak, R.; Leaver-Fay, A.; Kuhlman, B. Computational Protein Design with Explicit Consideration of Surface Hydrophobic Patches. Proteins Struct. Funct. Bioinforma. 2012, 80 (3), 825-838.] ポリマー担体と酵素表面との間の合同は、多くの好ましい安定化相互作用をもたらす。したがって、この研究の文脈において、疎水性という用語は、酵素表面上の疎水性パッチと好ましい相互作用を生じる任意の部分を含み得る。これには、水溶性または水和性のために慣例上疎水性とは呼ばれないモノマーが含まれ得る。
【0057】
実施例3 ― 材料および方法(その2)
【0058】
材料:枯草菌リパーゼA(BSLA)、カンジダ・ルゴサ・リパーゼ(CRL)、カンジダ・アンタークティカ・リパーゼB(CALB)、及びリゾムコール・ミエヘイ・リパーゼ(RML)をシグマ・アルドリッチ社から購入した。多分散シリカ微小球(1~3μm)をNanocymから購入した。酪酸レゾルフィン(RB)、臭化銅(I)、2-2'-ビピリジル(Bpy)、メタクリル酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS-MA)、vオリゴエチレングリコールメタクリル酸エステル(Mn=300Da、OEGMA)、および[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル-(3-スルホプロピル)-アンモニウムヒドロキシド(SBMA)をシグマ・アルドリッチ社から購入した。(p-クロロメチル)フェニルトリクロロシラン(CMPS)はGelestから購入した。すべての非タンパク質化合物は、さらなる精製をせずに使用した。
【0059】
表面処理とポリマー官能化:直径1~3μmの多分散微小球(2.5g)を、PTFEビーカーで適度に攪拌しながら30mLのトルエンに懸濁し、1mLのCMPSを加えた。粒子を真空中で濾過し、トルエンおよび2-プロパノールで洗浄し、次のステップの前にデシケーターに貯蔵した。
【0060】
ランダムコポリマーブラシは、開始剤としてCMPS単層を用いて微小球の表面からATRPリビング重合で成長させた。0%から100%のモル比(パーセンテージはOEGMA含有量を指し、補数はSBMA含有量を指す)に及ぶ濃度のOEGMAおよびSBMAの範囲の微小球およびモノマー含有重合前駆体混合物を、5mLの2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)中で調製した。前駆体溶液は、0% OEGMAで1.29 gのSBMAを含み、100% OEGMAで1.20 gのOEGMAを含んだ。共有結合を促進するために、0.0073 gのNHS-MAも加えた(モル比で1%)。0.022gのCuBrおよび0.0624gのBpyを含む第2溶液は、10 mL TFEにおいて作成され、CuBrの完全な溶解まで、持続的に攪拌された。両方の溶液は、溶解したO2を除去するために真空下で、3つの凍結-溶解サイクルによって、シュレンクフラスコにおいて脱気され、次に、銅含有溶液をN2不活性雰囲気下で微小球およびモノマー混合物を含むフラスコに移し、5psiの陽圧で24時間反応させた。ポリマーブラシでコーティングされた微小球を真空ろ過で回収し、TFEと無水2-プロパノールで、3サイクルで順次洗浄し、さらに使用するまでデシケーターに保管した。
【0061】
タンパク質固定化:全ての酵素は、固定化反応の前に透析した。BSLA、CRL、CALB、およびRMLを8 M尿素溶液に対して透析し、固定化前にpH 7.5で50 mMリン酸バッファーに1:20に希釈してリフォールディングした。固定化反応は、ポリマーブラシコーティングされた1 mg微小球を800 μLの10-5 Mタンパク質と混合し、チューブリボルバー内で、4℃で12時間回転させることによって実行された。
【0062】
微小球上での負荷は、数回の洗浄、上澄みの回収を行い、活性測定によりそれらの濃度を測定することによりマスバランスによって算出された。
【0063】
活性測定:各反応容器において酵素の濃度を標準化するために、事前算出した微小球への酵素負荷を利用した。酵素活性は、連続的な蛍光強度追跡によるVmax領域での生成物形成の初期速度の傾きから決定された。蛍光強度は、反応測定の同じ条件でのレゾルフィンの標準検量線を用いることにより、濃度に関連付けられた。異なる条件(すなわち温度)におけるすべての基質加水分解を活性測定から差し引いて、非触媒バックグラウンド加水分解を除外した。使用した励起波長および発光波長はそれぞれ570/593nmであった。
【0064】
熱安定性プロファイルは、最終体積3mLおよび穏やかな攪拌で、Fluoromax-4 (Horiba) 蛍光光度計で測定された。緩衝溶液は、外部の温浴において目標の温度に事前加熱し、キュベットが、温度を維持するために蛍光光度計に取り付けられた埋め込み式ペルチェシステムに装填された。基質および酵素(可溶性または固定化)は、大きな温度変化を防ぐために、ごくわずかな容量のアリコートで添加された。
【0065】
全ての活性アッセイは、50 mM pH7.5のリン酸バッファーにおいて行われた。
【0066】
計算解析:Protein Data Bankから入手した結晶構造が、すべてのタンパク質構造を調べるために利用された。異なるタンパク質で用いられたPDBファイルは、1ISP (LipA), 1GZ7 (CRL), 4K6G (CalB) and 3TGL (RML)であった。PDBファイルからのメタデータおよび主要なポリペプチド以外の情報をクリーニングし(すなわち、単一のポリペプチド鎖を残し、水分子、水素、基質、補因子分子をすべて除去)、Excelスプレッドシートにエクスポートした。クリーニングが完了すると、PDBファイルはPymol 2.4で開かれ、社内のPythonスクリプトを使用して、各原子の溶媒接触表面積が計算され、これらの値もスプレッドシートにエクスポートされる。MatLabスクリプトが、タンパク質の表面特性を研究するために開発されて利用された(図2)。結晶構造中の各原子iについて、単一原子の溶媒接触表面積(すなわち、ファンデルワールス半径+水の半径)が算出され、分画溶媒接触表面積(γi)は、
【数1】
のように定義される。
ここで、SASAcs,i は、結晶構造中の原子iについて計算された溶媒接触表面積であり、SASAtot,i は球状の自由形状孤立原子iの全溶媒接触表面積である。γi < 2%(完全に埋もれるか、ほとんど溶媒に露出しない)である原子はすべてフィルタリングされ(図3a)、表面分析中に無視された。
【0067】
タンパク質表面原子の水に対する親水性/疎水性に関連するさまざまな効果(すなわち、水素結合の傾向/不能性、イオン水和、ファンデルワールス力)は、ポリペプチド内の性質に応じて、個々の原子の溶媒和の自由エネルギー(ΔGsolv)を利用することによって説明される。近傍の影響のない結晶構造中の原子iの溶媒和の自由エネルギー(ΔGsolv|cs,i)は、以下のように算出される:
【数2】
ここで (ΔGsolv|free,i) は自由形状球状原子iの溶媒和の理論自由エネルギーである。
【0068】
タンパク質の表面の疎水性パッチ(HP)、すなわち空間的近接および有意な疎水性強度の原子をマッピングするために;以前に使用された「motion blur Point Accumulation for Imaging in Nanoscale Topography」(mbPAINT)技術を改良したものが使用される。各原子の溶媒との疎水性相互作用の強さ(溶媒和自由エネルギーΔGsolvによって定量化される)44,45、および周囲の原子への影響は、ガウス曲線としてモデル化され(図1)、振幅はΔGsolv|cs,iに対応し、標準偏差は、非荷電原子の場合は3.5 Å、荷電原子の場合は6 Åの溶媒和特性長(λi)45に補正係数(1/4)を掛けたものに対応する。各原子の累積疎水性強度は、自身の原子のガウス分布での振幅(ΔGsolv|cs,i)、および対応する原子間距離における周囲の原子iからのガウステールからの寄与に対応し、以下の式に従う:
【数3】
ここで、ΔGsolv|cum,j は表面内の原子jの溶媒和の累積自由エネルギー、ΔGsolv|cs,iは隣接する原子iの溶媒和の孤立自由エネルギー、nは結晶構造中の溶媒にアクセス可能な原子の総数、djiは原子jおよび隣接する原子iの間の距離である。ΔGsolv|cum,jが算出されると(図3b)、疎水性環境中の原子(ΔGsolv|cum,j>0)がHPクラスタリング解析で考慮される。MatLabの機械学習および統計パッケージの関数として利用可能な「Density-Based Spatial Clustering of Applications with Noise」(DBSCAN)と呼ばれる機械学習クラスタリング手法は、同じHPまたは異なるHPの一部として、原子をクラスタリングするために使用される。パッチと見なす空間的に近い原子の最小数を4に設定し、近傍探索半径(ε、つまり、他のデータ点が同じクラスターの一部と見なされる必要がある半径)を水の半径の3倍(1.4 Å)に設定した。ノイズと見なされるすべての原子は、疎水性であっても、分析のためにHPの一部ではないと見なされる(図3c)。
【0069】
さらに、タンパク質構造中の原子は、それらの脂肪族/芳香族の性質に基づいてランク付けされ、二項割り当てが行われ(0=脂肪族、1=芳香族)、芳香族性指数が定義されて、各HPの化学的性質が分類される。すべてのパッチには、各所属原子の空間配置とそのΔGsolv|cum、表面積、芳香族性指数の情報が保存されている。各疎水性パッチに属する原子は、エクスポートおよび視覚化するためにPymol形式で出力される(図3d)。タンパク質全体の溶媒和の自由エネルギー(ΔGsolv|prot)は、次のように計算される。
【数4】
【0070】
活性重み付けコポリマー組成の計算。
【0071】
酵素が異なる温度で優先安定性を示すコポリマーブラシ組成を算出するために、「活性重み付け組成物」
【数5】
を次のように定義した。
【0072】
【数6】
【0073】
【数7】
【0074】
ここで、
【数8】
は、%OEGMAで表されるコポリマーブラシ組成物、nは試験された異なるコポリマー組成物の数であり、
【0075】
【数9】
は、特定のコポリマーブラシに固定化された各リパーゼの比活性である。
【0076】
【数10】
の値は、図9に示す活性重み付け組成物プロファイルを構築するために、異なるリパーゼについて各温度で計算された。
【0077】
実施例4 ― タンパク質表面疎水性の計算解析
【0078】
疎水性相互作用に基づく異なる性質のポリマーブラシ界面との相互作用におけるリパーゼ表面の不均一性の影響を調査するために、リパーゼ表面の疎水性のトポロジーと強度を特徴付けるスクリプトが考案された。枯草菌リパーゼA(LipA)、カンジダ・ルゴサ・リパーゼ(CRL)、カンジダ・アンタークティカ・リパーゼB(CalB)、リゾムコール・ミエヘイ・リパーゼ(RML)(PDB ID:それぞれ1ISP、1GZ7、4K6G、3TGL)を分析対象とした。
【0079】
Protein Data Bankから入手した結晶構造を原子ベースで検討した。PDBファイルに含まれる情報(原子の空間座標および一次配列の順序)は、単一のポリペプチドとして用意され、Excelスプレッドシートにエクスポートされたが、その他のポリペプチド鎖、水分子、補因子、基質、イオン、水素原子などの他の要素は、分析のために無視された。さらに、結晶構造内の各原子の溶媒露出度は、社内のスクリプトを用いて算出された。
【0080】
各原子と水との親和性は、各原子の溶媒和の自由エネルギー(ΔGsolv)によって定量化され、ガウス曲線としてモデル化され、振幅は与えられた原子のΔGsolvに対応し、親水性相互作用の場合は負、疎水性相互作用の場合は正となり、標準偏差は、特徴的な長さスケール(λi)に対応する(図2)。タンパク質表面原子の水との親水性/疎水性に関連するさまざまな効果(すなわち、水素結合の傾向/不能性、イオン水和、ファンデルワールス力)は、ΔGsolvの値で説明されている。ガウス曲線の距離依存性は、隣接する原子に対する親水性または疎水性の影響を調査するためのツールとして機能した。折り畳まれたタンパク質表面上の原子の累積ΔGsolvは、そのガウス曲線の振幅に、結晶構造内の溶媒に露出した他のすべての原子に属するガウス曲線の寄与を加えたものに対応するが、空間的に近接している原子のみが大きく寄与する。
【0081】
タンパク質の表面(すなわち、空間的近接性および有意な疎水性強度の原子)のHPをマッピングするために、「motion blur Point Accumulation for Imaging in Nanoscale Topography」(mbPAINT)技術を改良したものが使用される。まず、結晶構造中の各原子の表面アクセス性を利用して、すべての埋没原子をフィルタリングし、疎水性分析において溶媒アクセス可能な表面(SAS)原子(図2a)のみが、考慮されるようにする。SAS原子のガウス曲線が算出され、各原子は累積ΔGsolvの情報を記憶する(図3b)。疎水性原子を溶媒にアクセス可能な原子に分離するために、疎水性閾値(ΔGsolv > 0)を超えるΔGsolvを持つすべての原子がクラスタリング分析の対象となる。「Density-Based Spatial Clustering of Applications with Noise」(DBSCAN)と呼ばれるクラスタリング手法が、原子を異なるHPの一部としてグループ化するために用いられ、ノイズと見なされるすべての原子は、疎水性であっても、該分析においてはHPの一部ではないと見なされる(図3c)。実際、このノイズ無視の適用は、タンパク質表面のナノスケールでは、単一の疎水性原子がディウェッティングギャップを形成できないという事実とよく一致している。次に、HP情報をPymol形式で出力し、結果を迅速に可視化する(図3d)。本研究で検討した4つのリパーゼの結晶構造におけるHPの空間配置を決定し、観察のために出力した(図7)。決定されたHPごとに、パッチのサイズ(すなわち、表面被覆率、残基数、関与する原子の数など)、パッチの合計ΔGsolvまたはパッチ内で達成された最大ΔGsolv (ΔGsolv|max)など、さまざまな情報を抽出または算出できる。このスクリプトを「疎水性強度パッチ(hydrophobic intensity patch)」の略で「hi-patch」と名付け、非常に確立された「hpatch」のアップグレードとして、疎水性パッチの出力を強化し、それらの疎水性強度を提供することで疎水性パッチの出力を強化し、機械学習ベースの密度スキャンによるマッピングを強化した。
【0082】
ΔGsolv|maxの値は、距離依存の計算の性質上、各パッチに関する貴重なトポロジー情報を間接的に提供する。たとえば、空間的に近接している原子は、同じ溶媒に露出した疎水性原子に対して、より分離された原子よりも高い値ΔGsolv|maxを達成する。この効果、ならびに各HPに属する原子の化学的性質を調べるために、芳香族性指数を定義した。この芳香族性指数は、その脂肪族または芳香族の性質(脂肪族=0、芳香族=1)に基づく各原子への二項割り当てに依存している。したがって、DBSCANクラスタリングアルゴリズムを使用してHPの割り当てが実行されると、各HPの芳香族性指数を調べることができる。芳香度ΔGsolv|maxの興味深い効果は、異なるサイズのパッチで観察することができた。芳香度の低い(すなわち、ほとんどが脂肪族)パッチは、単位サイズあたりのΔGsolv|maxの値が著しく高く、一方芳香度が高いパッチは、より大きなパッチを形成する傾向を示したものの、より小さな値を示した。この挙動は、脂肪族パッチのサイズが大きいことの不利益を明らかにし、脂肪族原子のΔGsolv値が芳香族原子のΔGsolv値よりも大きさが大きい(つまり疎水性が高い)ため、疎水性ポケットに埋もれやすいという事実と一致している。各HPのΔGsolv|maxをサイズに対してプロットし、パッチの形態を個別に観察すると、BSLAについて3つの異なる性質のパッチ領域を決定することができた(図4)。第1の領域は、上部の破線の傾きの上に濃い灰色で示されており、芳香族性が低く、原子表面パッキングが近いHPを表している。図4bは、BSLAで最大のΔGsolv|maxのパッチであるこの領域の代表的なパッチを示している。中程度の灰色の2番目の領域は、さまざまなHPの性質を表す:中間の芳香性のHP、まばらな空間配置を伴う低芳香度のHP、および空間的に近接した高芳香性のHP。3番目の領域は、薄い灰色で下の破線の下にあり、ΔGsolv|maxが低く、芳香度が高い原子に対応し、まばらな空間配置を示している。図4cは、この高い芳香族度と広い表面領域からの代表的なHPを示している。他の3つの結晶構造すべてについても同様の解析が行われ(図7)、BSLA結晶構造から決定された灰色の領域は、他のリパーゼについても非常に良好に保持されているようであった。
【0083】
実施例5 ― ランダムコポリマーブラシ混合物に固定化したリパーゼの触媒活性の差。
【0084】
前述のリパーゼは、純粋な[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル-(3-スルホプロピル)-アンモニウムヒドロキシド(SBMA)または純粋なオリゴエチレングリコールメタクリレート(OEGMA)ポリマーブラシに固定化することにより、さまざまな優先安定性を示し、異なるリパーゼの不均一性を示唆している。異なるポリマー、あるいは異なるコポリマー混合物に対する異なるリパーゼの嗜好性を説明する根本的な現象論は、完全には理解されていない。異なるポリマーブラシ環境への親和性に対するリパーゼの表面不均一性の影響を探求して理解を深めるため、平均直径2μmのシリカ微小球上にSBMAおよびOEGMAの異なる含有量を含むランダムコポリマーブラシを合成した。ブラシは、OEGMAおよびSBMAを用いて、0%から100%のモル比(パーセンテージはOEGMA含有量を指し、補数はSBMA含有量を指す)の範囲の濃度、すなわち0、25、50、75および100%OEGMA、続いて100、75、50、25および0%SBMAの範囲で合成された。さらに、メタクリル酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS-MA)を1%含有量で添加した。コポリマーブラシ骨格中にNHSが存在すると、その表面に存在する第一級アミンを介したリパーゼの共有結合が可能であった。以前の研究では、さまざまな組成のSBMA/OEGMAコポリマーブラシをグラフトした表面が、さまざまな親水性を示すことが実証された。巨視的な親水性の違いは、接触角測定によって観察することができた。しかし、最も重要なことは、SBMAの含有量が増加するにつれて、ナノスケールの親水性の変動と疎水性吸着サイトの減少が観察されたことであり、これはコポリマーブラシ表面のナノスケールの親水性を体系的に調整し、その後、これらの環境がさまざまなリパーゼ表面とどのように相互作用するかを研究できることを示している。
【0085】
様々なコポリマーブラシ組成物上で共有結合で固定化する際のリパーゼの活性と安定性の関係を、20~80℃の範囲の温度で温度活性プロファイル(すなわち、比活性対反応温度)を用いて試験した(図5)。BSLA、CRL、CALB、およびRMLを異なるコポリマーブラシに固定化すると、さまざまな安定性応答が得られた。BSLAおよびCALBは、それぞれ純粋なSBMAおよび純粋なPEGMAに固定化すると安定性の最大値を示し、相補的モノマーの濃度が増加するにつれて徐々に安定性が低下した。これらのプロファイルは、BSLA(図1a)がより親水性の表面で(異なる温度での触媒活性に応じて)安定化しやすく、よりナノスケールの疎水性を有するブラシに固定化されると安定性を失い;およびCALB(図1d)が、より疎水性の表面上で優先的に安定化され、より親水性の表面上で安定性を失うことにつながる、表面不均一性の違いに光を当てている。特に、RMLおよびCRLは、コポリマーブラシ混合物において活性極大(すなわち、温度範囲にわたって触媒活性が最大となる点)を示し(図1b、c)、最適なSBMA/OEGMAコポリマーブラシ組成の存在を示唆している。異なるコポリマーブラシに対する各リパーゼの親和性を定量化するために、「活性重み付け組成物」
【数11】
を定義した。
【0086】
温度範囲にわたる
【数12】
の変化を、異なるリパーゼについて定量化したところ(補足図S3)、低温ではすべてのリパーゼの活性重み付け組成が約50%OEGMAの値に対応することが観察でき、これは、親水性が異なる環境におけるリパーゼの安定性に顕著な差がないことを示唆している。
【0087】
それにもかかわらず、活性測定において温度が上昇するにつれて、リパーゼは、いくつかのコポリマーブラシ組成物において他のものよりも大きな活性値を示すことによってそれらの挙動を区別し、それは表示された触媒活性が最大である組成物に対して
【数13】
の変化をもたらす。
【0088】
例えば、純粋なSBMAブラシに最も親和性を示す(すなわち、親水性環境への親和性が高い)BSLAは、50%OEGMAの
【数14】
から始まり、温度が上昇するにつれて0%OEGMAの組成に傾くのに対し、CALBは温度が上昇するにつれて、50%OEGMAから100%OEGMAに傾く。再び、RMLとCRLはより穏やかなコポリマー混合物の嗜好性を示すが、RMLはSBMAブラシを優先する結果となり、CRLは温度活性プロファイルの全範囲にわたって50%OEGMA濃度で安定したままである。
【0089】
測定温度を上げることによる、
【数15】
のこのような変化は、酵素の安定性が高温のような変性条件下で問われたときにコポリマー混合物の嗜好性を明らかにするのに対し、タンパク質の安定性が損なわれない場合はあまりみられないという事実によって説明できる。
【0090】
さらに、異なる温度でのすべての
【数16】
プロファイルのうち、それぞれに割り当てられた最適触媒温度(Topt)と、対応するToptでの
【0091】
【数17】
は、BSLA、RML、CRL、およびCALBでそれぞれ12%、28%、47%、および100%であった。
【0092】
実施例6 ― リパーゼの表面不均一性と最適なコポリマーブラシ組成とのマッチング。
【0093】
Toptでシリカ表面からグラフトした異なるランダムコポリマーブラシ上での優先安定化を決定する可能性のあるリパーゼ表面の不均一性に関する側面を解明するために、hi-patchスクリプト(表1)の結果を分析した。ナノスケールで広範囲の親水性/疎水性を間接的に組み込んだポリマーブラシ組成との妥当な相関関係を調べた。直感的には、タンパク質表面の分画疎水性被覆率は、多種多様なリパーゼが多種多様な表面上で異なる嗜好性を示す傾向を示す合理的な代用指標となりうるが、本研究で検討した4種類の酵素については、明らかな一貫した相関関係は見られないようであった。興味深いことに、タンパク質表面の疎水性パッチの特定の疎水性強度(全タンパク質のパッチ面積あたりの合計ΔGsolv)を考慮すると、各リパーゼのToptにおける
【数18】
と妥当な相関があるように見えたが、最も重要なこととしては、親水性と疎水性の両方の寄与を考慮すると(タンパク質表面全体の面積あたりのΔGsolv)、Toptにおける
【0094】
【数19】
に関して相関が強化された(図5)。これは、疎水性パッチに属する領域がこれらのリパーゼの表面全体の20~25%にほとんど相当し、したがって、パッチからの疎水性寄与だけでは、タンパク質表面と溶媒およびコポリマーブラシとの相互作用の全体を捉えることはできないという事実によって説明することができる。さらに、ポリマーブラシの動的な性質を考えると、タンパク質表面からの非パッチ結合領域もブラシ、特にSBMAモノマーとの相互作用に大きな役割を果たしていると仮定する。おそらく、疎水性強度および分布の研究だけではなく、さまざまなHPを研究することが、タンパク質の凝集、多量体形成、分子結合、および静止表面での結合に対する疎水性の役割を理解するための重要なアプローチを構成する可能性がある;一方、ポリマーブラシコーティングされた表面やポリマーとタンパク質の複合体などの動的な性質の溶媒および表面との相互作用では、タンパク質表面上で自己組織化する能力を有し、表面全体アプローチは、タンパク質の本質的に不均一な性質との相互作用のアンサンブルを捉えるのにより便利であるように思われる。興味深いことに、hi-patchスクリプトの結果は、疎水性パッチ検出およびタンパク質疎水性ランキングのために確立されたhpatchツールの疎水性スコアを上回っているようである(表2)。
【0095】
実際、ΔGsolv /areaの全タンパク質値は、hpatchスコアよりも、研究されたさまざまなリパーゼのToptにおける
【数20】
と実質的によく相関することが証明された。
【0096】
引用文献
【0097】
(1) Schmid, A.; Dordick, J. S.; Hauer, B.; Kiener, A.; Wubbolt, M.; Witholt, B. Industrial Biocatalysis Today and Tomorrow. Nature 2001, 409 (January), 258-268.
(2) Campos, K. R.; Coleman, P. J.; Alvarez, J. C.; Dreher, S. D.; Garbaccio, R. M.; Terrett, N. K.; Tillyer, R. D.; Truppo, M. D.; Parmee, E. R. The Importance of Synthetic Chemistry in the Pharmaceutical Industry. Science (80-. ). 2019, 363 (6424).
(3) Bornscheuer, U. T.; Huisman, G. W.; Kazlauskas, R. J.; Lutz, S.; Moore, J. C.; Robins, K. Engineering the Third Wave of Biocatalysis. Nature 2012, 485 (7397), 185-194.
(4) Taverna, D. M.; Goldstein, R. A. Why Are Proteins Marginally Stable? Proteins Struct. Funct. Genet. 2002, 46 (1), 105-109. https://doi.org/10.1002/prot.10016.
(5) Adams, M. W. W.; Perler, F. B.; Kelly, R. M. Extremozymes: Expanding the Limits of Biocatalysis. Nature Biotechnology. 1995, pp 662-668.
(6) Haki, G. D.; Rakshit, S. K. Developments in Industrially Important Thermostable Enzymes: A Review. Bioresour. Technol. 2003, 89 (1), 17-34.
(7) Devine, P. N.; Howard, R. M.; Kumar, R.; Thompson, M. P.; Truppo, M. D.; Turner, N. J. Extending the Application of Biocatalysis to Meet the Challenges of Drug Development. Nat. Rev. Chem. 2018, 2 (12), 409-421.
(8) Cao, L. Immobilised Enzymes: Science or Art? Curr. Opin. Chem. Biol. 2005, 9 (2), 217-226.
(9) Datta, S.; Christena, L. R.; Rajaram, Y. R. S. Enzyme Immobilization: An Overview on Techniques and Support Materials. 3 Biotech 2013, 3 (1), 1-9.
(10) Klibanov, A. M. Enzyme Stabilization by Immobilization. Anal. Biochem. 1979, 93, 1-25.
(11) Barbosa, O.; Torres, R.; Ortiz, C.; Berenguer-Murcia, A.; Rodrigues, R. C.; Fernandez-Lafuente, R. Heterofunctional Supports in Enzyme Immobilization: From Traditional Immobilization Protocols to Opportunities in Tuning Enzyme Properties. Biomacromolecules 2013, 14 (8), 2433-2462.
(12) Barbosa, O.; Ortiz, C.; Berenguer-Murcia, A.; Torres, R.; Rodrigues, R. C.; Fernandez-Lafuente, R. Strategies for the One-Step Immobilization-Purification of Enzymes as Industrial Biocatalysts. Biotechnol. Adv. 2015, 33 (5), 435-456.
(13) Rodrigues, R. C.; Ortiz, C.; Berenguer-Murcia, A.; Torres, R.; Fernandez-Lafuente, R. Modifying Enzyme Activity and Selectivity by Immobilization. Chem. Soc. Rev. 2013, 42 (15), 6290-6307.
(14) Brittain, W. J.; Minko, S. A Structural Definition of Polymer Brushes. J. Polym. Sci. Part A Polym. Chem. 2007, 45 (16), 3505-3512.
(15) Cullen, S. P.; Liu, X.; Mandel, I. C.; Himpsel, F. J.; Gopalan, P. Polymerie Brushes as Functional Templates for Immobilizing Ribonuclease A: Study of Binding Kinetics and Activity. Langmuir 2008, 24 (3), 913-920.
(16) Zoppe, J. O.; Ataman, N. C.; Mocny, P.; Wang, J.; Moraes, J.; Klok, H. A. Surface Initiated Controlled Radical Polymerization: State-of-the-Art, Opportunities, and Challenges in Surface and Interface Engineering with Polymer Brushes. Chem. Rev. 2017, 117 (3), 1105-1318.
(17) Zoppe, J. O.; Ataman, N. C.; Mocny, P.; Wang, J.; Moraes, J.; Klok, H. A. Surface-Initiated Controlled Radical Polymerization: State-of-the-Art, Opportunities, and Challenges in Surface and Interface Engineering with Polymer Brushes. Chem. Rev. 2017, 117 (3), 1105-1318.
(18) Xu, F. J.; Neoh, K. G.; Kang, E. T. Bioactive Surfaces and Biomaterials via Atom Transfer Radical Polymerization. Prog. Polym. Sci. 2009, 34 (8), 719-761.
(19) Xu, F. J.; Cai, Q. J.; Li, Y. L.; Kang, E. T.; Neoh, K. G. Covalent Immobilization of Glucose Oxidase on Well-Defined Poly(Glycidyl Methacrylate)-Si(111) Hybrids from Surface-Initiated Atom-Transfer Radical Polymerization. Biomacromolecules 2005, 6 (2), 1012-1020.
(20) Weltz, J. S.; Kienle, D. F.; Schwartz, D. K.; Kaar, J. L. Dramatic Increase in Catalytic Performance of Immobilized Lipases by Their Stabilization on Polymer Brush Supports. ACS Catal. 2019, 4992-5001.
(21) Palomo, J. M.; Segura, R. L.; Fernandez-Lorente, G.; Pernas, M.; Rua, M. L.; Guisan, J. M.; Fernandez-Lafuente, R. Purification, Immobilization, and Stabilization of a Lipase from Bacillus Thermocatenulatus by Interfacial Adsorption on Hydrophobic Supports. Biotechnol. Prog. 2004, 20 (2), 630-635.
(22) Fernandez-Lorente, G.; Terreni, M.; Mateo, C.; Bastida, A.; Fernandez-Lafuente, R.; Dalmases, P.; Huguet, J.; Guisan, J. M. Modulation of Lipase Properties in Macro- Aqueous Systems by Controlled Enzyme Immobilization: Enantioselective Hydrolysis of a Chiral Ester by Immobilized Pseudomonas Lipase. Enzyme Microb. Technol. 2001, 28 (4-5), 389-396.
(23) Scouten, W. H.; Luong, J. H. T.; Stephen Brown, R. Enzyme or Protein Immobilization Techniques for Applications in Biosensor Design. Trends Biotechnol. 1995, 13 (5), 178-185.
(24) Hartono, S. B.; Qiao, S. Z.; Liu, J.; Jack, K.; Ladewig, B. P.; Hao, Z.; Lu, G. Q. M. Functionalized Mesoporous Silica with Very Large Pores for Cellulase Immobilization. J. Phys. Chem. C 2010, 114 (18), 8353-8362.
(25) Qi, H.; Du, Y.; Hu, G.; Zhang, L. Poly(Carboxybetaine Methacrylate)-Functionalized Magnetic Composite Particles: A Biofriendly Support for Lipase Immobilization. Int. J. Biol. Macromol. 2018, 107, 2660-2666.
(26) Weltz, J. S.; Kienle, D. F.; Schwartz, D. K.; Kaar, J. L. Reduced Enzyme Dynamics upon Multipoint Covalent Immobilization Leads to Stability-Activity Trade-Off. J. Am. Chem. Soc. 2020.
(27) Iyer, P. V.; Ananthanarayan, L. Enzyme Stability and Stabilization-Aqueous and Non-Aqueous Environment. Process Biochem. 2008, 43 (10), 1019-1032.
(28) Jacak, R.; Leaver-Fay, A.; Kuhlman, B. Computational Protein Design with Explicit Consideration of Surface Hydrophobic Patches. Proteins Struct. Funct. Bioinforma. 2012, 80 (3), 825-838.
【0098】
クレーム用語集(GLOSSARY OF CLAIM TERMS)
【0099】
本出願全体を通して使用される場合、「a」および「an」という用語は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、参照されるコンポーネントまたはステップの「少なくとも1つ」、「少なくとも第1の」、「1つ以上」または「複数」を意味するという意味で使用される。例えば、「細胞(a cell)」という用語は、複数の細胞を含み、それらの混合物を含む。
【0100】
本明細書で使用される用語「および/または」は、「および」、「または」および「前記用語によって連結される要素の、すべてまたは任意の他の組み合わせ」の意味を含む。
【0101】
本明細書で使用される用語「約」または「およそ」は、所与の値または範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内を意味する。
【0102】
動作例以外で、または特に明示的に指定しない限り、本明細書の以下の部分における、材料の量、反応の時間および温度、量の比、分子量(数平均分子量(「Mn」)または重量平均分子量(「Mw」)のいずれであっても)の値などの数値範囲、量、値およびパーセンテージのすべては、「約」という用語が値、量または範囲とともに明示的に現れていなくても、「約」という語によって前置きされているかのように読むことができる。したがって、別段の指示がない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示により得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定しようとするのではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効数字の桁数に照らして、通常の丸め技術を適用して解釈されるべきである。
【0103】
本開示の広い範囲を規定する数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、具体例に記載される数値は可能な限り正確に報告される。しかしながら、どのような数値も、本質的に、それぞれの試験測定に見られる標準偏差から必然的に生じるある種の誤差を含んでいる。さらに、様々な範囲の数値範囲が本明細書に記載される場合、列挙された値を含むこれらの値の任意の組み合わせが使用され得ることが企図される。
【0104】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、製品、組成物および方法が参照される成分またはステップを含むことを意味するが、他のものを排除するものではないことを意味する。「本質的にからなる」は、製品、組成物および方法を定義するために使用される場合、本質的な意義を有する他の成分またはステップを除外することを意味するものとする。したがって、列挙された成分から本質的になる組成物は、微量の汚染物質および薬学的に許容される担体を除外しないであろう。「からなる」とは、他の成分またはステップの微量要素以上を除外することを意味するものとする。
【0105】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、指定された量の特定の成分を含む物、ならびに指定された量の指定された成分の組み合わせから直接的または間接的に生じる任意の物を包含することを意図する。ポリマーは、重合によって形成され、本質的に繰り返し構造単位(例えば、モノマー)からなる化合物または化合物の混合物である。モノマーは、他の同一の分子と結合してポリマーを形成することができる分子である。ホモポリマーは、1種類のモノマー単位のみで構成されるポリマーである。コポリマーは、2つ(またはそれ以上)の異なるタイプのモノマーが同じポリマー鎖内で連結されている場合に形成されるポリマーである(1つのモノマーのみが使用されるホモポリマーとは対照的である)。統計的コポリマーは、2つ以上のモノマーが何らかの統計規則に従う順序で配置されたポリマーである。モノマーのモル分率が、鎖内の任意の点でそのモノマーの残基を見出す確率に等しい場合、ポリマーはランダムポリマーである。これらのポリマーは、一般に、フリーラジカル重合法を介して合成される。
【0106】
本明細書で使用される場合、「基材」という用語は、1つ以上の表面を提供する基材を指し、ここで、表面は、ポリマーブラシを形成することができる、またはポリマーブラシをグラフトもしくは別の方法で固定することができる。
【0107】
本明細書で使用される場合、「ブラシ」または「ポリマーブラシ」という用語は、ラジカル重合性末端基を有する重合基材から形成されるポリマー側鎖を指し、ここで、重合基材は、基材である、または基材に生着され得る、またはほかの方法で基材に付着され得、それによって実質的に基材の形態をとる。
【0108】
本明細書において使用される「反応性モノマー」という用語は、ラジカル誘導グラフト化反応に関与することができる化合物を指す。反応性モノマーは、上記および本明細書のようなポリマーを形成することができる任意の材料(例えば、非限定的に、グリシジルメタクリレート(GMA)またはエチレン)であり得る。基材物質および反応性モノマーは同一の化合物であってもよく、例えば、ポリエチレン基材は、グラフト化反応においてエチレンモノマーまたはポリマーを利用してもよい。
【0109】
本発明の方法を実施するためのキットがさらに提供される。「キット」とは、少なくとも1つの試薬、例えば本発明の重合前駆体混合物を含む任意の製造物(例えば、パッケージまたは容器)を意図する。キットは、本発明の方法を実行するためのユニットとして宣伝、流通、または販売されてもよい。さらに、キットには、キットおよびその使用方法を説明する添付文書を含むことができる。キット試薬のいずれかまたは全部は、密封容器またはパウチなど、外部環境からそれらを保護する容器内に提供され得る。
【0110】
上記の利点、および前述の説明から明らかにされた利点は、効率的に達成される。本発明の範囲から逸脱することなく、上記の構成において一定の変更がなされ得るので、前述の説明に含まれる、または添付の図面に示される全ての事項は、例示として解釈され、限定的な意味ではないことが意図される。
【0111】
本出願において引用される全ての参考文献は、本明細書と矛盾しない範囲で参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0112】
上記の利点、および前述の説明から明らかにされた利点は効率的に達成され、本発明の範囲から逸脱することなく上記の構成において特定の変更が加えられ得るので、前述の説明に含まれる、または添付の図面に示されているすべての事項は例示として解釈され、限定的な意味ではないことが意図される。
【0113】
以下の特許請求の範囲は、本明細書に記載される本発明の一般的および特定の特徴の全て、ならびに、言語の問題として、その間にあると言われる本発明の範囲のすべての記述を網羅することを意図することも理解されたい。本発明が説明された。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
図1-1】
図1-2】
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】