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特表2023-549616ノイズの多い短時間の胸部インピーダンス測定から呼吸パラメータを抽出するための技術
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-28
(54)【発明の名称】ノイズの多い短時間の胸部インピーダンス測定から呼吸パラメータを抽出するための技術
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/08 20060101AFI20231120BHJP
【FI】
A61B5/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530286
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(85)【翻訳文提出日】2023-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2021082219
(87)【国際公開番号】W WO2022106578
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】63/115,762
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】519383544
【氏名又は名称】アナログ・ディヴァイシス・インターナショナル・アンリミテッド・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ラジャラクシュミ・ジャヤラマン
(72)【発明者】
【氏名】スリラム・ガネサン
(72)【発明者】
【氏名】ナヤン・スレシュクマール・バット
(72)【発明者】
【氏名】アビゲイル・レイノルズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョヒュン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】グオリン・パン
(72)【発明者】
【氏名】トニー・ジェイ・アクル
(72)【発明者】
【氏名】ヴェヌゴパル・ゴピナサン
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038SS04
4C038SS08
4C038ST04
4C038SV03
4C038SX07
(57)【要約】
一実施形態は、短時間胸部インピーダンス(「TI」)信号から呼吸パラメータを抽出する方法であり、この方法は、TI測定信号を前処理してそこから呼吸信号を取得することと、信号品質及び信号完全性のうちの少なくとも1つについて呼吸信号を評価することと、自己相関アルゴリズム及び時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムのうちの少なくとも一方を呼吸信号に対して実行して、そこから少なくとも1つの呼吸パラメータを抽出することであって、少なくとも1つの呼吸パラメータは、呼吸速度(「RR」)及び1回呼吸量(「TV」)のうちの少なくとも1つを含む、抽出することと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胸部インピーダンス(TI)測定信号から被験者の呼吸パラメータを抽出する方法であって、前記方法は、
前記TI測定信号に対して信号品質チェックを実施することと、
自己相関アルゴリズム及び時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムのうちの少なくとも一方を、前記TI測定信号の少なくとも一部に対して実行して、前記TI測定信号の前記少なくとも一部から前記被験者の少なくとも1つの呼吸パラメータを抽出することであって、少なくとも1つの呼吸パラメータは、呼吸数(「RR」)及び1回呼吸量(「TV」)のうちの少なくとも1つを含む、抽出することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記実施及び実行する前に、前記TI測定信号をローパスフィルタリングすることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ローパスフィルタリングを実施するために使用されるフィルタのカットオフ周波数は、0.65ヘルツである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記信号品質チェックは、インピーダンス限定信号品質チェックを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記インピーダンス限定信号品質チェックは、生理学的限界に基づいて閾値を参照して、電極接触インピーダンス及び全身インピーダンスのうちの少なくとも1つをチェックすることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記信号品質チェックは、前記TI測定信号内の少なくとも1つの信号アーチファクトを識別することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの信号アーチファクトを前記TI測定信号から除去して、前記TI測定信号の前記少なくとも一部を生成することを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの信号アーチファクトは、ノイズを含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの信号アーチファクトは、前記被験者の移動の結果である、請求項6、7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記TI測定信号に対して自己相関アルゴリズム及び時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムのうちの少なくとも一方を前記実行することは、
前記TI測定信号を自己相関させて、前記TI測定信号の二次平均を求めることと、
前記自己相関されたTI測定信号におけるピーク間の時間差に基づいて期待値を計算して、推定呼吸数(「RR」)を導出することと、を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記自己相関TI測定信号から前記TI測定信号の信号対雑音比(SNR)を導出することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記推定RRの信頼度メトリックを計算することを更に含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記TI測定信号に対して自己相関アルゴリズム及び時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムのうちの少なくとも一方を前記実行することは、
前記TI測定信号の一次導関数上のゼロクロッシングをカウントして、前記TI信号を吸入サイクルと呼気サイクルに分割して、呼吸数(RR)を計算することと、
ピークTI値の中央値から1回呼吸量(「TV」)を計算することと、を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記RRを計算し、前記TVを計算する前に、前記一次導関数に浅い呼吸閾値を適用することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記自己相関アルゴリズム及び前記時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムのうちの少なくとも一方によって生成された推定値を、前記自己相関アルゴリズムと関連付けられた信頼度メトリックに基づいて選択することを更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記自己相関アルゴリズム及び前記時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムのうちの少なくとも一方によって生成された推定値を、臨床状態を示す信号シグネチャに基づいて選択することを更に含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記TI測定信号は、持続時間が60秒未満である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記TI測定信号は、持続時間が30秒未満である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
胸部インピーダンス(TI)測定信号から被験者の呼吸数(RR)を決定する方法であって、前記方法は、
前記TI測定信号を前処理して、呼吸信号を生成することと、
前記呼吸信号に対して信号品質チェックを実施することと、
前記呼吸信号の少なくとも一部に対して時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムを実行して、推定時間領域RR(TD_RR)を求めることと、
前記呼吸信号の前記少なくとも一部に対して自己相関アルゴリズムを実行して、推定自己相関RR(AC_RR)及び前記推定AC_RRに対する信頼度メトリックを求めることと、
前記信頼度メトリックに基づいて、前記推定TD_RR及び前記推定AC_RRのうちの1つを選択することと、
前記推定TD_RR及び前記推定AC_RRのうちの前記選択された1つを最終RRとして出力することと、を含む、方法。
【請求項20】
前記推定TD_RR及び前記推定AC_RRのうちの1つを、前記信頼度メトリックに基づいて前記選択することは、
前記信頼度メトリックが閾値以上である場合、前記推定AC_RRを選択することと、
前記信頼度メトリックが前記閾値未満である場合に、前記推定TD_RRを選択することと、を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記信号品質チェックの結果が不良である場合、前記推定TD_RR及び前記推定AC_RRのうちの前記選択された1つを前記最終RRとして出力することを控えることを更に含む、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記前処理をすることが、ローパスフィルタを使用して前記TI測定信号をフィルタリングすることを含む、請求項19、20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記信号品質チェックは、インピーダンス限定信号品質チェックを含む、請求項19~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記インピーダンス限定信号品質チェックは、生理学的限界に基づいて閾値を参照して、電極接触インピーダンス及び全身インピーダンスのうちの少なくとも1つをチェックすることを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記信号品質チェックは、前記呼吸信号内の少なくとも1つの信号アーチファクトを識別することを含む、請求項19~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの信号アーチファクトを前記呼吸信号から除去して、前記呼吸信号の前記少なくとも一部を生成することを更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1つの信号アーチファクトは、ノイズを含む、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1つの信号アーチファクトは、前記被験者の移動の結果である、請求項25、26又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記呼吸信号の前記少なくとも一部に対して自己相関アルゴリズムを前記実行することは、
前記呼吸信号の前記少なくとも一部を自己相関させて、自己相関された信号を求めることと、
前記自己相関された信号内のピーク間の時間差に基づいて期待値を計算して、推定呼吸数(「RR」)を導出することと、を更に含む、請求項19~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記信頼度メトリックは、前記自己相関された信号のノイズ電力に対する信号電力の比である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記呼吸信号の前記少なくとも一部に対して時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムを前記実行することは、
前記呼吸信号の前記少なくとも一部の一次導関数信号に対するゼロクロッシングの数をカウントすることであって、前記ゼロクロッシングの数は、前記推定TD_RRに対応する、カウントすることを更に含む、請求項19~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記呼吸信号の前記少なくとも一部に対して時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムを前記実行することは、前記呼吸信号の前記少なくとも一部に関連して無呼吸状態にフラグを立てることを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記呼吸信号の前記少なくとも一部に対して時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムを前記実行することは、前記呼吸信号の前記少なくとも一部に関連して浅い呼吸状態にフラグを立てることを更に含む、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
胸部インピーダンス(TI)測定信号から被験者の1回呼吸量(TV)を決定する方法であって、
前記TI測定信号を前処理して、呼吸信号を生成することと、
前記呼吸信号に対して信号品質チェックを実施することと、
前記呼吸信号の少なくとも一部に対して時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムを実行して、推定TVを決定することと、
前記信号品質チェックの結果に基づいて、前記推定TVを選択的に報告することと、を含む、方法。
【請求項35】
前記信号品質チェックの前記結果が不良である場合、前記推定TVを報告することを控えることを更に含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記前処理することは、ローパスフィルタを使用して前記TI測定信号をフィルタリングすることを含む、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
前記信号品質チェックは、インピーダンス限定信号品質チェックを含む、請求項34、35又は36に記載の方法。
【請求項38】
前記インピーダンス限定信号品質チェックは、生理学的限界に基づいて閾値を参照して、電極接触インピーダンス及び全身インピーダンスのうちの少なくとも1つをチェックすることを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記信号品質チェックは、前記呼吸信号内の少なくとも1つの信号アーチファクトを識別することを含む、請求項34~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記少なくとも1つの信号アーチファクトを前記呼吸信号から除去して、前記呼吸信号の前記少なくとも一部を生成することを更に含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記呼吸信号の前記少なくとも一部に対して時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムを前記実行することは、
前記TVを、ピークTI値の中央値から推定することを更に含む、請求項34~40のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本開示は、2020年11月19日に出願された「TECHNIQUES FOR EXTRACTING RESPIRATORY PARAMETERS FROM NOISY SHORT DURATION THORACID IMPEDANCE MEASUREMENTS」と題された米国仮特許出願第63/115,762号の優先権を主張し、その開示は、その全体が参照により組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、胸部インピーダンス測定値から呼吸パラメータを検出するための技術に関し、より詳細には、ノイズの多い短時間の胸部インピーダンス測定値からそのようなパラメータを抽出するための技術に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の実施形態は、胸部インピーダンス(TI)測定信号から被験者の呼吸パラメータを抽出する方法を提供する。本方法は、
TI測定信号に対して信号品質チェックを実施することと、
自己相関アルゴリズム及び時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムのうちの少なくとも一方を、TI測定信号の少なくとも一部に対して実行して、TI測定信号の少なくとも一部から被験者の少なくとも1つの呼吸パラメータを抽出することであって、少なくとも1つの呼吸パラメータは、呼吸数(「RR」)及び1回呼吸量(「TV」)のうちの少なくとも1つを含む、抽出することと、を含む。
【0004】
本開示の別の実施形態は、胸部インピーダンス(TI)測定信号から被験者の呼吸数(RR)を決定する方法を提供する。本方法は、
TI測定信号を前処理して、呼吸信号を生成することと、
呼吸信号に対して信号品質チェックを実施することと、
呼吸信号の少なくとも一部に対して時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムを実行して、推定時間領域RR(TD_RR)を求めることと、
呼吸信号の少なくとも一部に対して自己相関アルゴリズムを実行して、推定自己相関RR(AC_RR)及び推定AC_RRに対する信頼度メトリックを求めることと、
信頼度メトリックに基づいて、推定TD_RR及び推定AC_RRのうちの1つを選択することと、
推定TD_RR及び推定AC_RRのうちの選択された1つを最終RRとして出力することと、を含む。
【0005】
本開示の別の実施形態は、胸部インピーダンス(TI)測定信号から被験者の1回呼吸量(TV)を決定する方法を提供する。本方法は、
TI測定信号を前処理して、呼吸信号を生成することと、
呼吸信号に対して信号品質チェックを実施することと、
呼吸信号の少なくとも一部に対して時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムを実行して、推定TVを決定することと、
信号品質チェックの結果に基づいて、推定TVを選択的に報告することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示並びにその特徴及び利点のより完全に理解するために、添付の図面と併せて以下の説明を参照し、同様の参照番号は同様の部分を表す。
【0007】
図1】本開示のいくつかの実施形態による、ノイズの多い短時間の胸部インピーダンス測定値から呼吸パラメータを導出するための例示的なシステムの例示的な環境を示す。
図2】本開示のいくつかの実施形態による、図1のシステムの例示的な機能構成要素を示すブロック図である。
図3A】本開示のいくつかの実施形態による、ノイズの多い短時間の胸部インピーダンス測定値から呼吸パラメータを抽出するための方法の動作を示すフロー図である。
図3B】本開示のいくつかの実施形態による、ノイズの多い短時間の胸部インピーダンス測定値から呼吸数を抽出するための方法の動作を示すフロー図である。
図4A】本開示のいくつかの実施形態による、自己相関ベースアルゴリズムを使用した呼吸変調胸部インピーダンス信号からの呼吸パラメータ抽出を示す。
図4B】本開示のいくつかの実施形態による、時間領域ベース(ゼロクロッシング)アルゴリズムを使用した呼吸変調胸部インピーダンス信号からの呼吸パラメータ抽出を示す。
図5】本開示のいくつかの実施形態による、インピーダンス限定信号品質チェックを実施するための方法を示すフロー図である。
図6】本開示のいくつかの実施形態による、胸部インピーダンス信号におけるノイズ及びモーションアーチファクトの影響を示すグラフである。
図7】本開示のいくつかの実施形態による、アーチファクト検出信号品質チェックを実施するための方法を示すフロー図である。
図8A】本開示のいくつかの実施形態による、胸部インピーダンス信号から検出されたアーチファクトを除去するための方法を示す。
図8B】本開示のいくつかの実施形態による、胸部インピーダンス信号から検出されたアーチファクトを除去するための方法を示す。
図8C】本開示のいくつかの実施形態による、胸部インピーダンス信号から検出されたアーチファクトを除去するための方法を示す。
図8D】本開示のいくつかの実施形態による、胸部インピーダンス信号から検出されたアーチファクトを除去するための方法を示す。
図8E】本開示のいくつかの実施形態による、胸部インピーダンス信号から検出されたアーチファクトを除去するための方法を示す。
図9】本開示のいくつかの実施形態による、胸部インピーダンス信号の最も長い前処理された良好なセグメントの信号品質を評価するための方法を示すフロー図である。
図10A】本開示のいくつかの実施形態による、胸部インピーダンス信号からRRを抽出するための自己相関ベースアルゴリズムの動作をまとめて示すグラフである。
図10B】本開示のいくつかの実施形態による、胸部インピーダンス信号からRRを抽出するための自己相関ベースアルゴリズムの動作をまとめて示すグラフである。
図10C】本開示のいくつかの実施形態による、胸部インピーダンス信号からRRを抽出するための自己相関ベースアルゴリズムの動作をまとめて示すグラフである。
図11A】本開示のいくつかの実施形態による、自己相関ベースアルゴリズムの動作を示すフロー図をまとめて示す。
図11B】本開示のいくつかの実施形態による、自己相関ベースアルゴリズムの動作を示すフロー図をまとめて示す。
図12】それぞれ胸部容積(リットル)及び流量(リットル/分)の代わりとしての胸部インピーダンス信号及びその導関数の生理学的意義を示すグラフである。
図13A】本開示のいくつかの実施形態による、時間領域ベースゼロクロッシングアルゴリズムの動作を示すフロー図をまとめて示す。
図13B】本開示のいくつかの実施形態による、時間領域ベースゼロクロッシングアルゴリズムの動作を示すフロー図をまとめて示す。
図14A図13A~13Bに示される時間領域ベースゼロクロッシングアルゴリズムの動作をまとめて示すグラフを含む。
図14B図13A~13Bに示される時間領域ベースゼロクロッシングアルゴリズムの動作をまとめて示すグラフを含む。
図14C図13A~13Bに示される時間領域ベースゼロクロッシングアルゴリズムの動作をまとめて示すグラフを含む。
図14D図13A~13Bに示される時間領域ベースゼロクロッシングアルゴリズムの動作をまとめて示すグラフを含む。
図14E図13A~13Bに示される時間領域ベースゼロクロッシングアルゴリズムの動作をまとめて示すグラフを含む。
図14F図13A~13Bに示される時間領域ベースゼロクロッシングアルゴリズムの動作をまとめて示すグラフを含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
患者の胸部に配置された電極を使用して得られた胸部インピーダンス測定値は、呼吸による肺の空気レベルの変調が胸部電気インピーダンスの比例変調に反映されるという事実により、目的の呼吸パラメータを収集する間接的で非侵襲的な方法を提供する。しかしながら、このような測定値は、例えば、動き、咳、及び/又は不適切な皮膚電極接触のために、非常に高いレベルのノイズアーチファクトの影響を受けやすく、測定値から呼吸数(RR)及び1回呼吸量(TV)などのパラメータを抽出することを困難にする。加えて、特定の臨床状態は、例えば、前述のアーチファクトの存在下で抽出することが更に困難である、浅い呼吸、無呼吸、及び/又は周期的又は振動的呼吸などのイベントの抽出を必要とする。本明細書に記載の実施形態は、時間領域ベースアプローチ及び自己相関ベースアプローチを含む、前述の問題に対処するための2つのアプローチを含む。両方のアプローチは、呼吸サイクルの生理学的態様に密接に従い、最小限のヒューリスティックルールを維持し、したがって、量子化誤差を含む毎分2呼吸(BPM)以内に限られた誤差を有する単一の60秒の胸部インピーダンス測定値からこれらのパラメータのほとんどを抽出することを可能にする。
【0009】
人の異常な呼吸活動は、呼吸、心臓及び/又は神経学的疾患の初期指標である。臨床的には、吸入及び呼気中の胸壁偏位の数をカウントすることによって、1分当たりの呼吸数におけるRRが報告される。この方法はうまくいかないことが多く、看護師のスキルレベルに依存している。TV(吸入及び呼気される空気の体積)を抽出する臨床的方法は、鼻クリップで口からチューブ内に呼吸することを伴うため、家庭でのモニタリングには使用できない。
【0010】
前述のように、人の胸部に配置された電極を介した胸部インピーダンスモニタリングは、RR及びTVなどの呼吸パラメータを抽出するための間接的で非侵襲的な方法を提供し得る。しかしながら、本技術の精度は、皮膚への不適切な電極接触による超低周波ベースライン変動の存在、心臓活動などの高周波生理学的干渉因子、咳、しゃっくり、体の動きなどに起因する広帯域回路ノイズ及びモーションアーチファクトなどのうちの1つ以上によって損なわれる。更に、特定の生理学的状態は、信号形態において様々なシグネチャを示し、これにより、高い信頼度で呼吸パラメータを抽出することが更に困難になる。
【0011】
ピーク検出/カウントなどの従来の時間領域ベースアプローチ、及び周波数領域ベースアプローチは、信号自体の非定常的な性質、並びに信号に埋め込まれたノイズのために、胸部インピーダンス測定信号(又は単に胸部インピーダンス信号)から、目的のパラメータを抽出することに苦慮している。
【0012】
本明細書に記載の実施形態は、これらの問題に対する解決策を提供し、異なる生理学的信号形態及びアーチファクト条件の存在下で、2つの異なる方法論(時間領域ベース及び自己相関ベース)を適用することによって、胸部インピーダンス信号から呼吸パラメータを確実に抽出するための技術を提供する。入力信号、加速度計データ、及びフィルタリングされたノイズを使用して胸部インピーダンス信号の信号品質を評価する新しいアプローチも提示される。
【0013】
時間領域ベースアプローチは、自己相関ベースの技術からの低信頼度RR推定(信号品質ではない)の場合にRRを報告すること、並びに無呼吸の場合にRRを推定すること、及びTVを計算することに有用である。
【0014】
図1は、本開示のいくつかの実施形態による、ノイズの多い短時間の胸部インピーダンス測定値を使用して、被験者のRR及びTVなどの呼吸パラメータを導出し、モニタリングするためのシステム102の例示的な実施形態の例示的な環境100を示す。モニタリングは、連続的又は定期的な手法で実施されてもよい。図1に示されるように、例示的な一実施形態によれば、システム102は、胸部インピーダンス測定モジュール112と、複数の表面電極/センサ114a~114d(例えば、4つの表面電極/センサ、又は他の任意の好適な数の表面電極/センサ)と、を含む。例えば、表面電極のうちの1つ以上は、固体ゲル表面電極、又は他の任意の好適な表面電極として実装され得る。システム102は、少なくとも複数の表面電極/センサ114a~114dを介して、被験者104の胴体、上部胸部、及び頸部、又は身体の他の任意の好適な部分若しくは領域のうちの1つ以上と接触するように動作可能な、概ね三角形のデバイス、又は他の任意の好適な形状のデバイスとして構成され得る。
【0015】
様々な実装態様では、システム102は、ウェアラブルベスト状構造内で、複数のパッチ状デバイスとして、又は他の任意の好適な構造若しくはデバイスとして実装されることを可能にする構成を有することができる。環境100などの1つの可能な環境では、システム102は、スマートフォン106との無線通信経路116を介して双方向通信に携わるように動作可能であってもよく、スマートフォン106は、更には、通信ネットワーク108(例えば、インターネット)との無線通信経路118を介して双方向通信に携わるように動作可能であってもよい。あるいは、クラウド110への直接リンクは、基地局又は携帯電話を介したホップを必要とせずに提供されてもよい。スマートフォン106は、通信ネットワーク108を介して、クラウドコンピューティング、データ処理、データ分析、データトレンド推定、データ削減、データ融合、データ記憶、及び他の機能のためのリソースを含むことができる、クラウド110との無線通信経路120を介した双方向通信に携わるように更に動作可能である。システム102は、クラウド110と直接、無線通信経路122を介した双方向通信に携わるように更に動作可能である。
【0016】
図2は、本開示のいくつかの実施形態による、ノイズが多い短時間の胸部インピーダンス測定値を使用して、被験者のRR及びTVなどの呼吸パラメータを導出し、モニタリングするためのシステム102の例示的なブロック図を示す。図2に示されるように、システムは、胸部インピーダンス測定モジュール112と、プロセッサ202及び関連するメモリ208と、胸部インピーダンス測定データを格納するためのデータストレージ206と、送信機/受信機204と、を含む。送信機/受信機204は、無線通信経路116を介してスマートフォン106(図1)と通信するためのBluetooth通信、Wi-Fi通信、又は他の任意の好適な短距離通信を実施するように構成され得る。送信機/受信機204は、無線通信経路122を介してクラウド110(図1)と通信するために、セルラー通信又は他の任意の好適な長距離通信を実施するように更に構成され得る。特定の実施形態では、胸部インピーダンス測定モジュール112は、図1に示される複数の表面電極/センサ114a~114dと切り替え可能に接続を行うための電極/センサ接続切替回路224を更に含んでもよい。
【0017】
プロセッサ202は、データアナライザ226及びデータ融合/決定エンジン228などの複数の処理モジュールを含むことができる。送信機/受信機204は、Bluetooth又はWi-Fi対応スマートフォン、又は他の任意の好適なスマートフォンであり得る、スマートフォン106との間の無線通信経路116を介してBluetooth又はWi-Fi信号などの無線信号を送受信するように動作可能な少なくとも1つのアンテナ210を含むことができる。アンテナ210は、無線通信経路122を介してクラウド110との間のセルラー信号などの無線信号を送受信するように更に動作可能である。
【0018】
プロセッサ202は、本明細書で説明されるように、胸部インピーダンス信号から呼吸パラメータを導出するための自己相関ベースの技術及び時間領域ベースの技術をそれぞれ実装するための自己相関モジュール230及び時間領域モジュール232を更に含むことができる。プロセッサ202は、本明細書で説明されるように、胸部インピーダンス信号に関連して信号品質チェックを実施するための信号品質評価モジュール234を更に含むことができる。
【0019】
送信機/受信機204は、Bluetooth若しくはWi-Fi対応スマートフォン、又は他の任意の好適なスマートフォンであり得る、スマートフォン106との間の無線通信経路116を介してBluetooth又はWi-Fi信号などの無線信号を送受信するように動作可能な少なくとも1つのアンテナ210を含むことができる。アンテナ210は、無線通信経路122を介してクラウド110との間のセルラー信号などの無線信号を送受信するように更に動作可能である。
【0020】
いくつかの実施形態による、ノイズの多い短時間の胸部インピーダンス測定値を使用して、RR及びTVなどの呼吸パラメータを導出及びモニタリングするためのシステム102の動作は、図1及び2だけでなく、以下の用例を参照して更に理解されるであろう。この用例では、被験者104が仰臥位又は直立位置にある間、毎日固定時間(例えば、1日2回)で、又は所定の日数連続して、被験者又は補助者は、被験者の胴体及び上部胸部及び頸部(又は身体の他の任意の好適な部分又は領域)のうちの1つ以上と、複数の表面電極/センサ114a~114dを介して接触するように、概ね三角形のデバイス(又は他の任意の好適な形状のデバイス)として構成されたシステム102を配置する。
【0021】
システム102を被験者の胴体及び/又は上部胸部及び/又は頸部に接触させた後、胸部インピーダンス測定モジュール112を作動させて、被験者104から胸部インピーダンスデータを採集、収集、感知、測定、又は別様に取得し、それを示す信号を生成することができる。特定の実施形態では、例示的な方法を使用して取得された胸部インピーダンスデータの性質は、ノイズが多く、短時間である。
【0022】
胸部インピーダンス測定モジュール112は、被験者104の胴体、上胸部、及び/又は頸部の皮膚と接触する複数の表面電極114a~114dの一部又は全てを使用して、胸部インピーダンス測定を実施することができる。本明細書で説明される実施形態の特徴によれば、以下でより詳細に説明されるように、呼吸数及び1回呼吸量などの呼吸パラメータは、胸部インピーダンス測定モジュール112からのノイズの多い短時間の胸部インピーダンスデータから導出され得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、胸部インピーダンス測定モジュール112からの胸部インピーダンスデータは、少なくとも部分的なデータ分析、データトレンド推定、及び/又はデータ削減のためにデータアナライザ226に提供されてもよい。一実施形態では、胸部インピーダンス測定データは、病歴、人口統計情報、及び他の検査モダリティなどの他のメタデータと組み合わせて、「クラウド内で」分析、トレンド推定、及び/又は削減され、呼吸パラメータに関する様々なレベルの臨床介入で使用するための事前設定されたアラートを備えたクラウドベースのデータストレージ110で利用可能にすることもできる。
【0024】
データアナライザ226は、少なくとも部分的に分析された胸部インピーダンスデータをデータ融合/決定エンジン228に提供してもよく、これは、被験者104についての1つ以上の推論を行う際の後での使用のために、1つ以上のアルゴリズム及び/又は決定基準に従って、胸部インピーダンスデータを他の感知データと効果的に少なくとも部分的に融合又は組み合わせることができる。次いで、プロセッサ202は、少なくとも部分的に組み合わされた胸部インピーダンス及び他の感知データを送信機/受信機204に提供してもよく、これは、組み合わされた胸部インピーダンス及び感知データを、無線通信経路122を介してクラウド110に直接、又は無線通信経路116を介してスマートフォン106に送信することができる。次に、スマートフォン106は、通信ネットワーク108を介して、無線通信経路118、120を介して組み合わされた胸部インピーダンス及び感知データをクラウド110に送信することができ、そこで、それを更に分析、トレンド推定、削減、及び/又は融合することができる。上記のように、通信データは、スマートフォン/携帯電話又は基地局の関与なしに、クラウド110に直接通信されてもよいことが認識されるであろう。
【0025】
次いで、結果として生じるキュレーションされて組み合わされた感知データは、リスクスコアリング/層別化、モニタリング及び/又は追跡目的のために、病院の臨床医によって遠隔でダウンロードされ得る。
【0026】
図3Aは、本開示のいくつかの実施形態による、ノイズの多い短時間の胸部インピーダンス測定値又は信号から呼吸パラメータを抽出するための方法300の動作を示すフロー図である。
【0027】
ステップ302では、被験者(例えば、被験者104(図1))に配置された電極(例えば、電極114(図1))を使用して得られた短時間(例えば、60秒)の胸部インピーダンス信号を前処理して、そこから呼吸信号を取得する。特定の実施形態では、ステップ302は、0.65Hzでカットオフした周波数(Fc)を有するローパスフィルタを使用して実施されてもよい。
【0028】
ステップ304において、信号品質及び信号完全性評価は、呼吸信号に対して実施される(例えば、モジュール234(図2)によって)。特定の実施形態では、信号品質評価は、生理学的限界に基づいて確立された閾値と比較される、電極接触インピーダンス及び全身インピーダンスなどの、信号に関する特定の胸部インピーダンス限定メトリックを計算することを含んでもよい。信号完全性評価は、信号のシグネチャをチェックして、信号内の大きなアーチファクト又は妨害を検出及び除去することを含んでもよい。加速度計データを使用して、信号内の動きアーチファクトを検出してもよく、どのモーションアーチファクトも、ステップ304で除去することができる。
【0029】
以下でより詳細に説明されるように、方法300などのノイズの多い短時間の胸部インピーダンス信号からRR及びTVを抽出するための方法の特定の実施形態は、胸部インピーダンス信号が、被験者の肺容積の代わりであり、胸部インピーダンス信号の導関数が、被験者の肺の内外の空気流速の代わりであるという事実を利用している。
【0030】
一般に、自己相関アルゴリズムは、ノイズを伴う非定常信号の固有の周期性イベントを導出する。図3Aを再び参照すると、ステップ306では、(例えば、モジュール230(図2)によって実装される)自己相関に基づく技術を使用して呼吸信号が処理される。特に、ステップ306では、呼吸信号を自己相関して、呼吸信号の二次平均を求める。周期性を抽出するためのほとんどの自己相関ベースアルゴリズムでは、自己相関された信号の優位ピーク又は極大値が単独で考慮されるが、これは大きな高/低周波数ノイズによる誤差が生じやすい。本明細書で説明される実施形態の特徴によれば、ステップ306で実装される自己相関ベースの技術は、自己相関された呼吸信号全体を利用して、信号内の隠れた周期性及びその変動に対するより良い洞察を得る。したがって、例示された実施形態において、ステップ306では、自己相関された信号のピーク間の時間差に基づく期待値を計算して、自己相関アルゴリズムの推定RRを導出する。この技術は、異常な形態、周期的、振動的な呼吸パターン、及び回路ノイズを有する呼吸信号によく適している。
【0031】
ステップ308では、呼吸信号は、(例えば、モジュール232(図2)によって実装される)時間領域ベースの技術を使用して処理される。特に、以下でより詳細に説明するように、ステップ308では、呼吸信号は、呼吸信号の一次導関数上のゼロクロッシングを計算することによって、吸入サイクルと呼気サイクルに分割される。無効なRR(例えば、1分当たり40回を超える、1分当たり6回未満の呼吸など)、及び/又は呼気比に対する無効な吸入(例えば、1:4又は4:1)などの生理学的制限に基づくヒューリスティックルールを適用して、有効な呼吸を識別し、無効な呼吸を排除する。本明細書で説明される特徴の実施形態によれば、時間領域ベースアルゴリズムは、間隔カウントによってRRを計算し、ピーク胸部インピーダンス値の中央値からTVを計算する。本明細書に記載の時間領域ベースアルゴリズムは、周波数及び振幅が変調された呼吸及び無呼吸を伴う呼吸信号によく適している。
【0032】
ステップ310では、自己相関ベースアルゴリズム及び時間領域ベースアルゴリズムからの推定値は、特定の臨床状態を表す特定の信号シグネチャに基づいて選択されてもよい。例えば、数秒間呼吸がない無呼吸の場合、吸入及び呼気の数は、時間領域ベースアルゴリズムによって最もよく説明されるが、自己相関ベースアルゴリズムは、被験者が無呼吸イベントの前又は後に呼吸している呼吸数(すなわち、RR)を正確に特定する。これに対して、振動性呼吸の場合には、RRは自己相関ベースアルゴリズムによって指定され、TVにおける振動は、時間領域ベース「ゼロクロッシング」アルゴリズムによって指定される。
【0033】
ステップ312では、以下に記載されるように、自己相関ベースアルゴリズム及び時間領域アルゴリズムからの推定値に対して信頼度評価が実施されてもよい。
【0034】
ステップ314では、RR及びTV推定値が選択され、所望に応じて報告及び/又は記録される。
【0035】
胸部インピーダンス信号(例えば、かなりの量のノイズを有するもの)の場合、自己相関法などの周波数領域法は、胸部インピーダンス信号からRRを導出する際により有用であるが、他の胸部インピーダンス信号(例えば、特に周期的ではない胸部インピーダンス信号)の場合、時間領域ベースの方法は、胸部インピーダンス信号からRRを導出する際により有用であることが認識されるであろう。本明細書に記載の実施形態は、両方の方法を使用してRRを導出し、次いでその環境下でより正確である可能性が高いものを選択する、両アプローチの相対的な利点を活用している。
【0036】
図3Bは、本開示のいくつかの実施形態による、ノイズの多い短時間の胸部インピーダンス測定値又は信号からRRを検出するための方法320の動作を示すフロー図である。
【0037】
ステップ322では、被験者(例えば、被験者104(図1))に配置された電極(例えば、電極114(図1))を使用して得られた短時間(例えば、60秒)の胸部インピーダンス信号を前処理して、そこから呼吸信号を取得する。特定の実施形態では、ステップ322は、0.65Hzでカットオフした周波数(Fc)を有するローパスフィルタを使用して実施されてもよい。いくつかの実施形態では、胸部インピーダンス信号は、0.1Hz~0.75Hzの目的の帯域幅にフィルタリングされてもよい。
【0038】
ステップ324において、ステップ308では、呼吸信号を時間領域ベースの技術を使用して処理し、推定される時間領域RR(「TD_RR」)を生成する。加えて、時間領域ベースの技術の実施中に呼吸信号に無呼吸が検出された場合、FLAG_APNEA_DETECTEDフラグが設定される。
【0039】
ステップ326では、呼吸信号の導関数が計算され、ステップ328では、自己相関ベースの技術を使用して呼吸信号及び/又はその導関数が処理され、推定される自己相関RR(「AC_RR」)、並びに推定されるAC_RRの信頼度メトリックを生成する。特定の実施形態では、信頼度メトリック(CM)は、ノイズ電力(推定AC_RRの±5bpmの範囲外の1分当たりの呼吸(BPM)に対応する)に対する信号電力(推定AC_RRの±5bpmの範囲内のBPMに対応する)の比に等しい。
【0040】
ステップ328では、(以下に説明する1つ以上の信号品質チェックによって決定されるような)胸部インピーダンス信号の品質が良好であるかどうかを判定する。胸部インピーダンス信号の品質が良好でない場合、実行はステップ332に進み、信号が信頼できない/使用できないために報告すべきRRがないという決定が行われる。
【0041】
ステップ328では、胸部インピーダンス信号の品質が良好であると判定された場合、実行はステップ334に進み、信頼度メトリックが所定の閾値(例えば、1)よりも小さいかどうかを判定する。ステップ334で信頼度メトリックが所定の閾値よりも小さいと判定された場合、実行は、推定されるTD_RRがRRとして出力されるステップ336に進む。ステップ334で、信頼度メトリックが所定の閾値以上であると判定された場合、実行は、推定されるAC_RRがRRとして出力されるステップ338に進む。
【0042】
特定の実施形態では、RR推定値(例えば、AC_RR又はTD_RR)を使用して、TV抽出に使用されるフィルタリングを調整してもよい。例えば、RRが10bpmであることが判明した場合、ローパスフィルタの中心周波数Fc及び帯域幅が、10bpm+/-3bpmとなるように選択されて、TV抽出を改善することができる。TV情報は、RR信頼度メトリック(CM_RR)報告の決定要因のうちの1つであることに留意されたい。例えば、非常に低いTV(おそらく接触不良による)又は非常に大きなTV(おそらく接触インピーダンス変調による)は、両方ともRR報告に対する信頼度を低下させることになる。更に、RRとTVの情報を組み合わせることで、重要な臨床的洞察が得られる場合がある。例えば、毎分換気量は、1分間に呼吸される空気の量として定義され、RR及びTVの積である(例えば、典型的には、5~8リットル/分)。更に、TVはリットル単位では直接検出されないが、推定されるTVをベースライン読み取り値と比較することによって、毎分換気量の有意な減少/増加がある場合には、可能性のある低換気/過換気にフラグを立ててもよい。
【0043】
図4A及び4Bは、本開示のいくつかの実施形態による、自己相関ベースアルゴリズムを使用した振動呼吸信号からの呼吸パラメータの抽出を示すグラフ(図4A)及び時間領域ベース(ゼロクロッシング)アルゴリズムを使用した振動呼吸信号からの呼吸パラメータの抽出を示すグラフ(図4B)である。
【0044】
図5は、本明細書に記載される実施形態(例えば、ステップ304(図3A)で実施されるように)に従って、インピーダンス限定信号品質チェックを実施するための方法500のフロー図を示す。図5に示されるように、ステップ502では、処理前の胸部インピーダンス(「TI」)信号をチェックして、それが有効なインピーダンス範囲内(例えば、30Ω超かつ250Ω未満)であるかどうかを判定する。胸部インピーダンス信号が有効なインピーダンス範囲内にないと判定された場合、実行はステップ504に進み、そこでエラーコードが生成され、胸部インピーダンス信号が範囲外であり、信号品質が-1(「信頼度なし」)と評価されることを示す。更に、ステップ504では、パラメータvalid_RR(報告されたRRが有効であるかどうかを示すように設定されたフラグである)の値が0に設定される(すなわち、報告されたRRは有効ではない)。ステップ502で、胸部インピーダンス信号が有効なインピーダンス範囲内にあると判定された場合、実行はステップ506に進み、ここで、valid_RRの値が1に設定される(すなわち、報告されたRRが有効である)。
【0045】
ステップ508では、胸部インピーダンス信号の整定偏差が指定されたパーセンテージ(例えば、10%)より小さいかどうかを決定する。本明細書で使用される場合、「整定偏差」は、測定持続時間にわたる胸部インピーダンスの変化を指す。例えば、胸部インピーダンスが10%以上変化する場合、電極接触は不安定である可能性が高い。胸部インピーダンス信号の整定偏差が指定されたパーセンテージ以上であると判定された場合、実行はステップ510に進み、そこでエラーコードが生成されて、胸部インピーダンス整定偏差が大きすぎることを示す。更に、ステップ510では、パラメータgSQM_valid_TVの値が0に設定され、パラメータgSQM_valid_RRの値が0に設定される。ステップ508で、胸部インピーダンス信号の整定偏差が指定されたパーセンテージよりも小さいと判断された場合、実行は、gSQM_valid_TVの値が1に設定されるステップ512に進む。gSQM_valid_TV及びgSQM_valid_RRは、それぞれ、TV及びRRの信号品質メトリックであり、値「1」は良好な信号品質を示し、値「0」は不良な信号品質を示すことが認識されるであろう。
【0046】
ステップ514では、接触インピーダンスの不整合が特定の値(例えば、2000オーム)より小さいかどうかを判定する。接触インピーダンス不整合が特定の値以上であると判定された場合、実行はステップ516に進み、そこでは、接触インピーダンス不整合が高すぎることを示すエラーコードが生成される。更に、ステップ516において、gSQM_valid_RRの値は0に設定される。ステップ514において、接触インピーダンスの不整合が特定の値より小さいと判定される場合、実行はステップ518に進む。
【0047】
ステップ518では、接触インピーダンスが特定の値(例えば、3000オーム)より小さいかどうかを判定する。接触インピーダンスが特定の値以上であると判定された場合、実行はステップ520に進み、そこでは、接触インピーダンスが高すぎることを示すエラーコードが生成される。更に、ステップ520において、gSQM_valid_RRの値は0に設定される。ステップ518で、接触インピーダンスが特定の値より小さいと判定された場合、実行はステップ522に進む。
【0048】
ステップ522では、インピーダンス限定信号品質チェックに合格したとみなされ、gSQM_valid_RRの値は1に設定される。
【0049】
ここで図6を参照すると、胸部インピーダンス信号602に障害(例えば、アーチファクト)600がある場合、信号のサンプル分布604は、大きい/非常に小さい数のために、一方向に尾を引く可能性が高いと認識されることになる。簡単に言えば、アーチファクトが存在すると、平均から信号偏差が増加する。これを評価するために、胸部インピーダンス信号のノイズが増加するにつれて増加する変動係数(CoV)を考慮してもよい。胸部インピーダンス信号の標準偏差(std)もこの効果を反映することになるが、これを達成するための最適な閾値を定義することは困難であることを認識されたい。これに対して、CoVは、信号に対するノイズの比(std(信号)/mean(信号))を定義する。1より大きいCoVは、サンプル分布が超指数的であることを示すのに対して、0.4より小さいCoVは、サンプル分布が反対方向に尾を引くことを示す。
【0050】
図7は、本明細書に記載される実施形態(例えば、ステップ304(図3A)で実施されるように)に従って、アーチファクト検出信号品質チェックを実施するための方法700のフロー図を示す。図7を参照すると、ステップ702では、前処理された胸部インピーダンス信号及び対応する加速度計データが、範囲[0~1]で正規化されて、平均におけるDCの影響を除去し、胸部インピーダンス信号のCoVが計算される。実質的に同時に、ステップ704では、前処理された胸部インピーダンス信号及び加速度計データは、ゼロ平均、単位分散について正規化され、尖度が計算される。
【0051】
ステップ706では、胸部インピーダンス信号又は加速度計データのいずれかについて、(1)CoVが1より大きいか、又は(2)CoVが0.4より小さくかつ尖度が7より大きいかについての判定が行われる。これらの条件のいずれかがいずれかの信号に対して真である場合、ステップ708で、アーチファクトが検出される。ステップ706において、いずれの条件もいずれの信号に対しても真でない場合、実行はステップ710に進む。
【0052】
ステップ710では、gSQM_valid_RR=1、gSQM_valid_TV=1(方法500(図5)で判定されたように)であるかどうか、及び信号の長さが30秒を超えるかどうかを判定する。これらの条件の全てが真である場合、実行は、信号が高品質のデータ信頼度(data_quality=1)を有するとみなされるステップ712に進む。ステップ710の条件のうちの1つ以上が真実でない場合、実行は、信号が低品質のデータ信頼度(data_quality=0)を有するとみなされるステップ714に進む。本明細書で使用される場合、data_qualityは、最終的な組み合わせた信号品質メトリックを表す。十分な持続時間(>30秒)のアーチファクトのない信号の場合、それはgSQM_valid_TV及びgSQM_valid_RRの論理ANDであり、したがって、それは、TV及びRRのSQMに応じて、1又は0とすることができる。信号にアーチファクトがあるか、又は長さが不十分な場合は、それは、-1に設定される(信号が良くない/使用できないことを示す)。
【0053】
図8A~8Eは、本明細書に記載の実施形態による、胸部インピーダンス信号から検出されたアーチファクトを除去して、本明細書に記載の実施形態による、RR及びTVが導出され得る信号を生成するための方法を示す。図8Aは、アーチファクト802を含む処理前の胸部インピーダンス信号800を示す。処理前の胸部インピーダンス信号800は、ゼロ平均及び単位分散について正規化される。加えて、シャノンエネルギエンベロープが、胸部インピーダンス信号について計算され、閾値が適用される。シャノンエネルギは、単なる信号エネルギよりも優れた識別を示し、末端部と比較して中間域のアーチファクトを重視することが認識されるであろう。図8Bは、処理前の胸部インピーダンス信号800及びアーチファクト802のシャノンエネルギを表す波形810を示す。
【0054】
図8Cに示されるように、マスク820は、波形810(図8B)から展開され、アーチファクト802を含む胸部インピーダンス信号のセグメントを識別する。ここで図8Dを参照すると、胸部インピーダンス信号は、不良セグメント830(アーチファクトを含む)及び良好なセグメント832にセグメント化される。最も長い良好セグメントは、図8Dに示される実施形態では、良好セグメント832の全てを含み、識別されて、前処理されて図8Eで参照番号840によって指定される最も長い前処理された良好セグメントを作成する。次いで、本明細書で説明されるように、最も長い前処理された良好なセグメント840を使用して、RR及びTVを導出する。図9に示されるように、最も長い前処理された良好セグメント840の信号品質が評価される。
【0055】
図9は、セグメント840(図8E)などの、最も長い前処理された良好なセグメントの信号品質を評価するための方法900を示す。ステップ902では、セグメントのCoV及び尖度が計算される。ステップ904では、CoVが1未満であるか、又はCoVが0.4より大きいか、及び尖度が7未満であるかどうかを判定する。ステップ904で否定的な判定がなされた場合、実行はステップ906に進み、そこで非品質信頼値がセグメントに割り当てられ、セグメントのdata_qualityパラメータが-1に設定される。
【0056】
ステップ904で肯定的な判定が行われた場合、実行はステップ908に進み、gSQM_valid_RRが1に等しいかどうか、gSQM_valid_TVが1に等しいかどうか、及び信号の長さが30秒未満であるかどうかが判定される。ステップ908で指定された全ての条件が満たされた場合、実行はステップ910に進み、高品質の信頼値がセグメントに割り当てられ、data_qualityパラメータが1に設定される。
【0057】
ステップ908で指定された条件の1つが満たされない場合、実行はステップ912に進み、gSQM_valid_RRが1に等しく、gSQM_valid_TVが1に等しく、信号の長さが15秒未満であるかどうかが判定される。ステップ912で指定された条件の全てが満たされた場合、実行はステップ914に進み、低品質信頼値がセグメントに割り当てられ、data_qualityパラメータが0に設定される。
【0058】
ステップ912で指定された条件のうちの1つが満たされない場合、実行はステップ916に進み、品質信頼値はセグメントに割り当てられず、data_qualityパラメータが-1に設定される。
【0059】
特定の実施形態の詳細によれば、本明細書に記載の自己相関ベースアルゴリズムは、外部ノイズの影響を受けることなく、(厳密に周期的及び/又は静止的である必要はない)呼吸信号の固有の周期性を導出する。説明されるように、自己相関ベースアルゴリズムを使用してRRを抽出することは、前処理された信号をトレンド除去して、自己相関された信号から、トレンド静止信号(ゼロ平均)、信号の自己相関、及びヒューリスティックベースRR計算を導出することを伴う。加えて、信号対雑音比(SNR)及びTVは、自己相関された信号から計算され得る。図10A~10Cは、胸部インピーダンス信号1000(図10A)からRRを抽出するための自己相関ベースアルゴリズムの動作を示す。以下でより詳細に説明されるように、RRの期待値が計算され(図10B)、相対閾値を使用して、ノイズに対してピークを有効なものとみなす(図10C)。
【0060】
図11A及び11Bは、本明細書で説明される実施形態による、自己相関ベースモジュールの動作を示すフロー図1100である。ステップ1102では、60秒間の胸部インピーダンス信号(例えば、胸部インピーダンス信号セグメント)が、自己相関ベースモジュールに入力される。ステップ1104では、入力された胸部インピーダンス信号セグメントがローパスフィルタでフィルタリングされ、高周波ノイズを除去する。特に、ローパスフィルタは、0.65HzのFc及び長さ/3個のタップ数を有する有限インパルス応答フィルタ(FIR)であってもよい。
【0061】
ステップ1106では、一階微分が実施され、(信号が静止していない場合には)ベースライン変動を除去して差分信号(Δ振幅/Δ時間)を生成する。
【0062】
ステップ1108では、相関が、それ自体の時間差バージョン(1つのサンプルの遅延)を有する差分信号に対して計算され、自己相関された信号((Δ振幅/Δ時間)2)を生成する。
【0063】
ステップ1110では、全ての極大値又はピークが、自己相関された信号内で識別される。
【0064】
ステップ1112では、ピークの強度が否定的に相関される場合、及びピークの振幅が隣接するピークの振幅の40%未満である場合、ピークは廃棄される。
【0065】
ステップ1114では、ピーク間の相対振幅及び相対時間差が計算されて、調和周期に等しい相対時間差のアレイ及び相対振幅のアレイ、又は信号電力を生成する。
【0066】
ステップ1116では、相対時間差(例えば、60/Δ時間/サンプリングレート)のアレイを使用して、1分当たりの呼吸のアレイ(BPM)が計算される。
【0067】
ステップ1118では、ステップ1116で計算されたBPMのアレイからBPM値を除外してもよく、(1)それが44よりも大きいか、又は6未満である場合、又は(2)その値と隣接するBPM値との差が10以上である場合、アレイからBPM値を除外してもよい。その結果は、有効な相対BPM値のアレイとなる。
【0068】
ステップ1120では、有効な相対BPM値の平均が計算され、推定平均RRとみなされる。
【0069】
ステップ1122では、推定平均RRに対応する自己相関された信号内の最も高いピークが識別される。これは、推定される支配的なRRである。1回呼吸インピーダンスの変化は、最も高い信号ピークの平方根に等しい。
【0070】
ステップ1124では、原点からの最も高いピークに対応する時間差のRRが計算され、推定された支配的RRとみなされる。
【0071】
ステップ1126では、瞬間BPMの許容偏差が計算される(例えば、推定平均RR±5)。
【0072】
ステップ1128では、信号帯域の内側(信号)及び外側(ノイズ)に入る相対信号電力の全てを合計して、SNRを計算する。
【0073】
全ての相対的時間差の期待値は、胸部インピーダンス信号における周期性の高いシーケンスの高調波、サイクル間の周波数の増加/減少、低周波数アーチファクト、及び不均一な信号振幅(例えば、浅い呼吸、無呼吸による)によって影響を受けるRRを表す。重複する信号の数が限られている場合は常に、相関データのみがピークとして表され、全ての相関していないデータはキャンセルされる。このアルゴリズムは信号の振幅に完全に依存するわけではないため、大きなアーチファクトはほとんど影響を受けない。自己相関されたプロット内の有効なピークを識別するために、グローバル閾値ではなく相対閾値が適用される。
【0074】
本明細書に記載の実施形態の特徴によれば、時間領域ベースのアプローチも提供され、これは自己相関ベースの技術からの低信頼度RR推定(信号品質ではない)の場合にRRを報告し、無呼吸の場合にRRを推定し、TVを計算するのに有用である。
【0075】
図12は、胸部インピーダンス信号及びその導関数が、それぞれ、グラフ1200に示されるように、胸部容積(リットル)の代わりとして、グラフ1202に示されるように、流量(リットル/分)の代わりとして生理学的意義を示す。図13A~13Bは、本明細書に記載の実施形態の特徴に従って、時間領域ベースゼロクロッシングを実装するための方法1300の動作を示す。時間領域ベースアルゴリズムは、説明されるように、自己相関ベースアルゴリズムからの信頼度の低いRR推定の場合には、時間領域カウントに基づいてRRを報告し、無呼吸の場合にはRRを推定し、TVを計算するために必要である。
【0076】
図13Aを参照すると、ステップ1302では、(図14Aに示されるように)短時間の胸部インピーダンス信号が時間領域モジュールに入力される。ステップ1304では、入力信号は、ローパスフィルタ(例えば、0.65Hzで)によって前処理されて、図14Bに示すフィルタリングされた信号を生成する。ステップ1306では、前処理された入力信号の導関数が展開され(図14C)、ステップ1308では、導関数信号のゼロクロッシングが識別される(図14D)。ステップ1310では、ピーク及び谷は、導関数信号内で識別される。有効なピークを識別するために適用されるヒューリスティックルールは、有効なインピーダンスピークの最小閾値未満であるピークを排除すること(例えば、アーチファクト除去後の最高ピークの5%)、隣接する吸入ピークとの間隔が1.5秒(40bpm)未満である吸入ピークを排除すること、及び/又はピーク吸入及びピーク呼気値が90%変化するピークを排除すること(例えば、ピーク吸入は40ミリオーム(mohm)であり、ピーク呼気は400mohmである)を含んでもよい。
【0077】
ステップ1312では、浅い呼吸閾値(図13Bでより詳細に説明される)が適用される。ステップ1314では、中央値の胸部インピーダンス値が計算され(図14E)、TV推定値を生成する。ステップ1316では、谷とともに各有効なピークがカウントされ(図14F)、時間領域法(「RRt_estimate」)を使用して推定されるRRを生成する。
【0078】
図13Bは、本明細書に記載の実施形態による浅い呼吸閾値法1350の適用を示すフロー図である。図13Bに示されるように、浅い呼吸閾値を適用することは、1つの吸入及び呼気サイクルを積分すること(ステップ1352)、次いで、ピーク値が20mohm又は最大ピーク値の5%を超えるかどうかを判定すること(ステップ1354)を含む。ピーク値が最大ピーク値の20mohm又は5%以下の場合、吸入/呼気サイクルは、カウントから除外される(ステップ1356)。ピーク値が最大ピーク値の20mohm又は5%を超える場合、吸入/呼出サイクルがカウントに含まれる(ステップ1358)。これらの前述のステップは、全ての吸入/呼出サイクルで繰り返される(ステップ1360)。
【0079】
例1は、胸部インピーダンス(TI)測定信号から被験者のための呼吸パラメータを抽出する方法であって、この方法は、TI測定信号に対して信号品質チェックを実施することと、自己相関アルゴリズム及び時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムのうちの少なくとも一方をTI測定信号の少なくとも一部に対して実行して、TI測定信号の少なくとも一部から被験者の少なくとも1つの呼吸パラメータを抽出することであって、少なくとも1つの呼吸パラメータは、呼吸数(「RR」)及び1回呼吸量(「TV」)のうちの少なくとも1つを含む、抽出することと、を含む、方法を提供する。
【0080】
例2は、実施及び実行する前に、TI測定信号をローパスフィルタリングすることを更に含む、例1に記載の方法を提供する。
【0081】
例3は、ローパスフィルタリングを実施するために使用されるフィルタのカットオフ周波数が、0.65ヘルツである、例2に記載の方法を提供する。
【0082】
例4は、信号品質チェックが、インピーダンス限定信号品質チェックを含む、例1~3のいずれかに記載の方法を提供する。
【0083】
例5は、インピーダンス限定信号品質チェックが、生理学的限界に基づいて閾値を参照して、電極接触インピーダンス及び全身インピーダンスのうちの少なくとも1つをチェックすることを含む、例4に記載の方法を提供する。
【0084】
例6は、信号品質チェックが、TI測定信号内の少なくとも1つの信号アーチファクトを識別することを含む、例1~5のいずれかに記載の方法を提供する。
【0085】
例7は、TI測定信号から少なくとも1つのアーチファクトを除去して、TI測定信号の少なくとも一部を生成することを更に含む、例6に記載の方法を提供する。
【0086】
例8は、少なくとも1つのアーチファクトが、ノイズを含む、例6に記載の方法を提供する。
【0087】
例9は、少なくとも1つのアーチファクトが、被験者の移動の結果である、例6に記載の方法を提供する。
【0088】
例10は、TI測定信号に対して自己相関アルゴリズム及び時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムのうちの少なくとも一方を実行することが、TI測定信号を自己相関させて、TI測定信号の二次平均を求めることと、自己相関されたTI測定信号のピーク間の時間差に基づいて期待値を計算して、推定される呼吸数(「RR」)を導出することと、を更に含む、例1~9のいずれかに記載の方法を提供する。
【0089】
例11は、自己相関されたTI測定信号からTI測定信号の信号対雑音比(SNR)を導出することを更に含む、例10に記載の方法を提供する。
【0090】
例12は、推定されたRRの信頼度メトリックを計算することを更に含む、例10~11のいずれかに記載の方法を提供する。
【0091】
例13は、TI測定信号に対して自己相関アルゴリズム及び時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムのうちの少なくとも一方を実行することが、TI測定信号の一次導関数上のゼロクロッシングをカウントして、TI信号を吸入サイクル及び呼吸サイクルに分割して呼吸数(RR)を計算することと、ピークTI値の中央値から1回呼吸量(「TV」)を計算することと、を含む、例1~12のいずれかに記載の方法を提供する。
【0092】
例14は、RRを計算し、TVを計算する前に、浅い呼吸閾値を一次導関数に適用することを更に含む、例13に記載の方法を提供する。
【0093】
例15は、自己相関アルゴリズムと関連付けられた信頼度メトリックに基づいて、自己相関アルゴリズム及び時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムのうちの少なくとも一方によって生成された推定値を選択することを更に含む、例1~14のいずれかに記載の方法を提供する。
【0094】
例16は、自己相関アルゴリズム及び時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムのうちの少なくとも一方によって生成された推定値を、臨床状態を示す信号シグネチャに基づいて選択することを更に含む、例1~15のいずれかに記載の方法を提供する。
【0095】
例17は、TI測定信号が、持続時間が60秒未満である、例1~16のいずれかに記載の方法を提供する。
【0096】
例18は、TI測定信号が、持続時間が30秒未満である、例1~17のいずれかに記載の方法を提供する。
【0097】
例19は、胸部インピーダンス(TI)測定信号から被験者の呼吸速度(RR)を決定する方法であって、TI測定信号を前処理して呼吸信号を生成することと、呼吸信号に対して信号品質チェックを実施することと、呼吸信号の少なくとも一部に対して時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムを実行して推定時間領域RR(TD_RR)を求めることと、呼吸信号の少なくとも一部に対して自己相関アルゴリズムを実行して推定自己相関RR(AC_RR)及び推定AC_RRの信頼度メトリックを求めることと、推定TD_RR及び推定AC_RRのうちの1つを信頼度メトリックに基づいて選択することと、推定TD_RR及び推定AC_RRのうちの選択された1つを最終RRとして出力することと、を含む方法を提供する。
【0098】
例20は、信頼度メトリックに基づいて推定TD_RR及び推定AC_RRのうちの1つを選択することが、信頼度メトリックが閾値以上である場合、推定AC_RRを選択することと、信頼度メトリックが閾値未満である場合、推定TD_RRを選択することと、を含む、例19に記載の方法を提供する。
【0099】
例21は、信号品質チェックの結果が悪い場合、推定TD_RR及び推定AC_RRのうちの選択された1つを最終RRとして出力することを控えることを更に含む、例19~20のいずれかに記載の方法を提供する。
【0100】
例22は、前処理が、ローパスフィルタを使用してTI測定信号をフィルタリングすることを含む、例19~21のいずれかに記載の方法を提供する。
【0101】
例23は、信号品質チェックが、インピーダンス限定信号品質チェックを含む、例19~22のいずれかに記載の方法を提供する。
【0102】
例24は、インピーダンス限定信号品質チェックが、生理学的限界に基づいて閾値を参照して、電極接触インピーダンス及び全身インピーダンスのうちの少なくとも1つをチェックすることを含む、例23に記載の方法を提供する。
【0103】
例25は、信号品質チェックが、呼吸信号内の少なくとも1つの信号アーチファクトを識別することを含む、例19~24のいずれかに記載の方法を提供する。
【0104】
例26は、呼吸信号から少なくとも1つのアーチファクトを除去して、呼吸信号の少なくとも一部を生成することを更に含む、例25に記載の方法を提供する。
【0105】
例27は、少なくとも1つのアーチファクトが、ノイズを含む、例25~26のいずれかに記載の方法を提供する。
【0106】
例28は、少なくとも1つのアーチファクトが、被験者の移動の結果である、例25~27のいずれかに記載の方法を提供する。
【0107】
例29は、呼吸信号の少なくとも一部に対して自己相関アルゴリズムを実行することが、呼吸信号の少なくとも一部を自己相関させて自己相関された信号を求めることと、自己相関された信号のピーク間の時間差に基づいて期待値を計算して推定呼吸数(「RR」)を導出することと、を更に含む、例19~28のいずれかに記載の方法を提供する。
【0108】
例30は、信頼度メトリックが、自己相関された信号のノイズ電力に対する信号電力の比である、例29に記載の方法を提供する。
【0109】
例31は、呼吸信号の少なくとも一部に対して時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムを実行することが、呼吸信号の少なくとも一部の一次導関数信号に対するゼロクロッシングの数をカウントすることであって、ゼロクロッシングの数は、推定されたTD_RRに対応する、カウントすることを含む、例19~30のいずれかに記載の方法を提供する。
【0110】
例32は、呼吸信号の少なくとも一部に対して時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムを実行することが、呼吸信号の少なくとも一部に関連して無呼吸状態にフラグを立てることを更に含む、例31に記載の方法を提供する。
【0111】
例33は、呼吸信号の少なくとも一部に対して時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムを実行することが、呼吸信号の少なくとも一部に関連して浅い呼吸状態にフラグを立てることを更に含む、例31~32のいずれかに記載の方法を提供する。
【0112】
例34は、胸部インピーダンス(TI)測定信号から被験者の1回呼吸量(TV)を決定する方法であって、TI測定信号を前処理して呼吸信号を生成することと、呼吸信号に対して信号品質チェックを実施することと、呼吸信号の少なくとも一部に時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムを実行して推定されるTVを決定することと、信号品質チェックの結果に基づいて推定されるTVを選択的に報告することと、を含む方法を提供する。
【0113】
例35は、信号品質チェックの結果が悪い場合、推定されるTVを報告することを控えることを更に含む、例34に記載の方法を提供する。
【0114】
例36は、前処理が、ローパスフィルタを使用してTI測定信号をフィルタリングすることを含む、例34~35のいずれかに記載の方法を提供する。
【0115】
例37は、信号品質チェックが、インピーダンス限定信号品質チェックを含む、例34~36のいずれかに記載の方法を提供する。
【0116】
例38は、インピーダンス限定信号品質チェックが、生理学的限界に基づいて閾値を参照して、電極接触インピーダンス及び全身インピーダンスのうちの少なくとも1つをチェックすることを含む、例37に記載の方法を提供する。
【0117】
例39は、信号品質チェックが、呼吸信号内の少なくとも1つの信号アーチファクトを識別することを含む、例34~39のいずれかに記載の方法を提供する。
【0118】
例40は、少なくとも1つのアーチファクトを呼吸信号から除去して、呼吸信号の少なくとも一部を生成することを更に含む、例39に記載の方法を提供する。
【0119】
例41は、呼吸信号の少なくとも一部に対して時間領域ゼロクロッシングアルゴリズムを実行することが、ピークTI値の中央値からTVを推定することを更に含む、例34~40のいずれかに記載の方法を提供する。
【0120】
本明細書に概説された全ての仕様、寸法、及び関係(例えば、要素、動作、ステップなどの数)は、単に例示及び教示のみのために提供されたことに留意されたい。そのような情報は、本開示の趣旨、又は添付の特許請求の範囲から逸脱せずに大きく変動し得る。本仕様は、1つの非限定的な例にのみ適用され、したがって、それらはそのように解釈されるべきである。前述の説明において、例示的な実施形態は、特定の構成要素の配置を参照して説明された。添付の請求項の範囲から逸脱しない限り、このような実施形態に対して様々な修正及び変更を加えることができる。したがって、説明及び図面は、制限的な意味ではなく、例示的な意味で捉えられるべきである。
【0121】
本明細書で提供される多くの例では、相互作用は、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の電気的構成要素に関して記述され得ることに留意されたい。しかしながら、これは、明瞭化及び単なる例示の目的でなされたものである。本システムは、任意の好適な方法で統合され得ることを認識されるべきである。同様の設計選択に沿って、図面の図示された部品、モジュール、及び素子のいずれかを様々の可能な構成に組み合わせることができ、それらの全ては明らかに本明細書の広範な範囲内にある。特定の場合において、限られた数の電気的要素のみに言及することによって、所与の一連のフローの機能のうちの1つ以上を記載する方が容易である場合がある。図面及びその教示の電気回路は、容易に拡張可能であり、多数の構成要素、並びにより複雑/洗練された配置及び構成に対応し得ることを理解されたい。したがって、提供された例は、膨大な他のアーキテクチャに潜在的に適用されるときに、電気回路の広範な教示を限定又は阻害するべきではない。
【0122】
また、本明細書において、「一実施形態」、「例示的な実施形態」、「実施形態」、「別の実施形態」、「いくつかの実施形態」、「様々な実施形態」、「他の実施形態」、「代替実施形態」などに含まれる様々な特徴(例えば、要素、構造、モジュール、構成要素、ステップ、動作、特性など)への言及は、任意のそのような特徴が本開示の1つ以上の実施形態に含まれることを意味することを意図しているが、同じ実施形態において組み合わされてもよいし、又は必ずしも組み合わされなくてもよい。
【0123】
また、回路アーキテクチャに関連する機能は、図に示されるシステムによって、又はシステム内で実行され得る可能な回路アーキテクチャ機能の一部のみを示していることに留意されたい。これらの動作の一部は、必要に応じて削除若しくは除去されてもよいし、又は、本開示の範囲から逸脱することなく、これらの動作は大幅に修正又は変更されてもよい。更に、これらの操作のタイミングは、大幅に変更されてもよい。前述の動作フローは、例及び考察のために提供されている。実質的な柔軟性は、本開示の教示から逸脱することなく、任意の好適な配置、時系列、構成、及びタイミング機構が提供され得るという点で、本明細書で説明される実施形態によって提供される。
【0124】
多数の他の変更、置換、変形、改変、及び修正は、当業者に確認されてもよく、本開示は、添付の特許請求の範囲内にあるような全てのそのような変更、置換、変形、改変、及び修正を包含することが意図される。
【0125】
上記のデバイス及びシステムの全ての任意の特徴は、本明細書に記載の方法又はプロセスに関して実装されてもよく、例の詳細は、1つ以上の実施形態のどこで使用されてもよいことに留意されたい。これらの(上記)例の「するための手段」は、任意の好適なソフトウェア、回路、ハブ、コンピュータコード、ロジック、アルゴリズム、ハードウェア、コントローラ、インターフェース、リンク、バス、通信経路などとともに、本明細書で説明された任意の好適な構成要素を使用することを含むが、これらに限定されない。
【0126】
上記提供された例、並びに本明細書で提供された多数の他の例を使用して、相互作用は、2つ、3つ、又は4つのネットワーク要素に関して説明され得ることに留意されたい。しかしながら、これは、明瞭化及び単なる例示の目的でなされたものである。特定の場合、限られた数のネットワーク要素のみを言及することによって、所与の一連のフローの機能の1つ以上を説明することがより容易であり得る。添付の図面(及びそれらの教示)を参照して図示及び説明されるトポロジは容易に拡張可能であり、多数の構成要素、並びにより複雑/高度な配置及び構成に対応し得ることを理解されたい。したがって、提供される例は、膨大な他のアーキテクチャに潜在的に適用される場合、図示されたトポロジの広範な教示を限定又は阻害するべきではない。
【0127】
また、前述のフロー図のステップは、図面に示される通信システムによって、又はその内部で実行され得る可能なシグナリングシナリオ及びパターンの一部のみを示していることに留意することが重要である。これらのステップのいくつかは、適宜削除又は除去されてもよく、又はこれらのステップは、本開示の範囲から逸脱することなく、かなり修正又は変更されてもよい。加えて、これらの動作の多くは、1つ以上の追加の動作と同時に、又は並行して実行されていると説明されている。しかしながら、これらの操作のタイミングは大幅に変更されてもよい。前述の動作フローは、例及び考察のために提供されている。本開示の教示から逸脱することなく、任意の好適な配置、順序、構成、及びタイミング機構が提供され得るという点で、図面に示される通信システムによって実質的な柔軟性が提供される。
【0128】
本開示は、特定の配置及び構成を参照して詳細に説明されているが、これらの例示的な構成及び配置は、本開示の範囲から逸脱することなく大幅に変更され得る。例えば、本開示は、特定の通信交換を参照して説明されているが、本明細書で説明される実施形態は、他のアーキテクチャに適用可能であり得る。
【0129】
無数の他の変更、置換、変形、改変、及び修正が、当業者に確認されてもよく、本開示は、添付の特許請求の範囲内にあるような全てのそのような変更、置換、変形、改変、及び修正を包含することが意図される。米国特許商標庁(USPTO)、更には、本願に関して取得されたあらゆる特許のあらゆる読者が本明細書に添付の特許請求の範囲を解釈することを助けるために、出願人は、(a)いかなる添付の特許請求の範囲も、特定の請求項で「ための手段」又は「ためのステップ」という言葉が特に使用されていない限り、本願の出願日に存在する米国特許法第142条第6項を行使することを意図しない、及び(b)明細書のいかなる記述によっても、添付の特許請求の範囲に特に反映されないいかなる形でも本開示を制限することを意図しない、ことに留意することを望む。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
【国際調査報告】