(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】組換え補体タンパク質を産生させる方法、そのベクターおよび治療的使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/864 20060101AFI20231121BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20231121BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20231121BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20231121BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20231121BHJP
C07K 1/16 20060101ALI20231121BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231121BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20231121BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20231121BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20231121BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20231121BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20231121BHJP
A61K 38/48 20060101ALI20231121BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N15/12 ZNA
C12N7/01
C12P21/02 C
C07K14/47
C07K1/16
A61K48/00
A61P7/04
A61P7/06
A61P13/12
A61P25/28
A61P27/02
A61K38/48 100
A61P37/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573426
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(85)【翻訳文提出日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 GB2021053009
(87)【国際公開番号】W WO2022106842
(87)【国際公開日】2022-05-27
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520404610
【氏名又は名称】ジャイロスコープ・セラピューティクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】マルヒバンク,ケビン
(72)【発明者】
【氏名】カバナー,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,クレア
(72)【発明者】
【氏名】コックス,トム
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
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4B065CA44
4C084AA02
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4C084ZA161
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4H045AA10
4H045AA30
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4H045EA20
4H045FA74
4H045GA15
4H045GA23
4H045GA26
(57)【要約】
本発明の態様は、成熟補体系タンパク質の組換え産生に関する。本発明のある特定の実施形態は、完全成熟ヒト補体I因子タンパク質(CFI)の組換え産生に関する。完全成熟ヒトCFIを哺乳動物細胞から組換えで発現させるのに用いるための発現ベクターの詳細が、本明細書に含まれる。さらに、組換えで発現させたCFIを精製するのに用いるためのクロマトグラフィーステップが、開示される。本発明のある特定の態様は、遺伝子療法などにおける発現系の使用に関する。本発明のある特定の実施形態は、例えば、補体に媒介される障害の処置において使用するための、医薬としての前記ベクターの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え成熟補体I因子タンパク質またはそのバリアントを産生させるための発現ベクターであって、
a.組換え前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子と、
b.フューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子であって、前記フューリンタンパク質またはそのバリアントが、コードされた前駆体補体I因子タンパク質を切断して、組換え成熟補体I因子タンパク質を産生させることができ、必要に応じて、前記フューリンタンパク質またはそのバリアントが、コードされた前駆体補体I因子タンパク質の50%よりも多くを切断することができる、核酸分子と
を含む、発現ベクター。
【請求項2】
請求項1に記載の発現ベクターを含む、発現系。
【請求項3】
前記発現ベクターが、プロモーターエレメントを含む、請求項1または2に記載の発現ベクターまたは発現系。
【請求項4】
前記プロモーターエレメントが、前記前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子の上流にある、請求項3に記載の発現ベクターまたは発現系。
【請求項5】
前記プロモーターエレメントが、前記フューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子の上流にある、請求項3または4に記載の発現ベクターまたは発現系。
【請求項6】
前記発現ベクターが、翻訳開始配列をコードする核酸分子を含む、請求項1から5のいずれかに記載の発現ベクターまたは発現系。
【請求項7】
前記翻訳開始配列をコードする核酸分子が、前記プロモーターエレメントの下流に、前記前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子および前記フューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子の上流に配置される、請求項6に記載の発現ベクターまたは発現系。
【請求項8】
前記発現ベクターが、内部リボソーム進入部位(IRES)をコードする核酸分子をさらに含み、好ましくは、前記IRESをコードする核酸分子が、前記前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子と、前記フューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子との間に配置される、請求項1から7のいずれかに記載の発現ベクターまたは発現系。
【請求項9】
前記内部リボソーム進入部位をコードする核酸分子が、配列番号9に記載される核酸配列を含む、請求項8に記載の発現ベクターまたは発現系。
【請求項10】
前記組換え成熟ヒト補体I因子タンパク質が、配列番号2に記載されるアミノ酸配列(重鎖)または配列番号2に記載される前記アミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列から選択される第1のアミノ酸配列と、配列番号3に記載される第2のアミノ酸配列(軽鎖)または配列番号3に記載される前記アミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列とを含み、前記第1および第2のアミノ酸配列が、ジスルフィド結合を介して連結されている、請求項1から9のいずれかに記載の発現ベクターまたは発現系。
【請求項11】
前記組換え前駆体ヒト補体I因子が、配列番号1に記載されるアミノ酸配列、または配列番号1に記載される前記アミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性、例えば、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から10のいずれかに記載の発現ベクターまたは発現系。
【請求項12】
前記フューリンタンパク質が、配列番号5に記載されるアミノ酸配列または配列番号5に記載される前記アミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1から11のいずれかに記載の発現ベクターまたは発現系。
【請求項13】
前記フューリンタンパク質が、配列番号5に記載される前記アミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性、例えば、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項12に記載の発現ベクターまたは発現系。
【請求項14】
前記ベクターが、配列番号10に記載される核酸配列または配列番号10に記載される前記核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する核酸配列から選択される核酸配列を含む、請求項1から13のいずれかに記載の発現ベクターまたは発現系。
【請求項15】
前記ベクターが、配列番号8に記載される核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性、例えば、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項1から14のいずれかに記載の発現ベクターまたは発現系。
【請求項16】
前記発現ベクターが、耐性マーカーをコードする少なくとも1つの核酸分子を含む、請求項1から15のいずれかに記載の発現ベクターまたは発現系。
【請求項17】
組換え成熟補体I因子タンパク質またはそのバリアントを産生させるための発現系であって、
a.組換え前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子と、
b.フューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子であって、前記フューリンタンパク質またはそのバリアントが、コードされた前駆体補体I因子タンパク質を切断して、組換え成熟補体I因子タンパク質を産生させることができ、必要に応じて、前記フューリンタンパク質またはそのバリアントが、コードされた前駆体補体I因子タンパク質の80%、85%、90%、または95%よりも多くを切断することができる、核酸分子と
を含む、発現系。
【請求項18】
医薬として使用するための、請求項1から17のいずれかに記載の発現ベクターまたは発現系。
【請求項19】
補体系に媒介される障害を処置するのに使用するための、請求項1から17のいずれかに記載の発現ベクターまたは発現系。
【請求項20】
前記補体系に媒介される障害が、非定型溶血性尿毒症症候群、微小血管障害性溶血性貧血、加齢性黄斑変性、C3糸球体症、アルツハイマー病、脳炎症および/もしくは血小板減少症、または眼の補体関連疾患もしくは状態、例えば、加齢性黄斑変性(AMD)、緑内障、糖尿病性網膜症、早期発症型黄斑変性、シュタルガルト病、中心性漿液性網脈絡膜症、網膜色素変性、もしくはブドウ膜炎から選択され、好ましくは、AMDである、請求項19に記載の使用のための発現ベクターまたは発現系。
【請求項21】
前記発現ベクターが、ウイルスベクター、好ましくは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項18から20のいずれかに記載の使用のための発現系。
【請求項22】
対象において補体系に媒介される障害を処置する方法であって、請求項1から17のいずれかに記載の発現ベクターまたは発現系を投与するステップを含み、好ましくは、前記発現ベクターまたは発現系を、対象の眼の領域に投与するステップを含む、方法。
【請求項23】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター粒子であって、
a.前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸配列と、
b.フューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸配列であって、前記フューリンタンパク質またはそのバリアントが、コードされた前駆体補体I因子タンパク質を切断して、組換え成熟補体I因子タンパク質を産生させることができる、核酸配列と
を含む、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター粒子。
【請求項24】
前記ベクター粒子が、プロモーターをさらに含む、請求項23に記載のAAVベクター粒子。
【請求項25】
前記ベクター粒子が、IRESをコードする核酸配列をさらに含み、好ましくは、前記IRESをコードする核酸配列が、前記前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子と、前記フューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子との間に配置される、請求項23または24に記載のAAVベクター粒子。
【請求項26】
前記AAVベクター粒子が、AAV2ゲノムおよびAAV2キャプシドタンパク質、AAV2ゲノムおよびAAV5キャプシドタンパク質、またはAAV2ゲノムおよびAAV8キャプシドタンパク質を含む、請求項23から25のいずれかに記載のAAVベクター粒子。
【請求項27】
請求項23から26のいずれかに記載のAAVベクター粒子を含む、医薬組成物。
【請求項28】
医薬として使用するため、好ましくは、補体系に媒介される障害を処置するのに使用するための、請求項23から27のいずれかに記載のAAVベクター粒子または組成物。
【請求項29】
前記補体系に媒介される障害が、非定型溶血性尿毒症症候群、微小血管障害性溶血性貧血、加齢性黄斑変性、C3糸球体症、アルツハイマー病、脳炎症および/もしくは血小板減少症、または眼の補体関連疾患もしくは状態、例えば、加齢性黄斑変性(AMD)、緑内障、糖尿病性網膜症、早期発症型黄斑変性、シュタルガルト病、中心性漿液性網脈絡膜症、網膜色素変性、もしくはブドウ膜炎から選択され、好ましくは、AMDである、請求項28に記載の使用のためのAAVベクター粒子または組成物。
【請求項30】
組換え成熟補体I因子タンパク質またはそのバリアントを産生させるための方法であって、
a.組換え前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアント、および組換えフューリンタンパク質またはそのバリアントを、前記発現されるフューリンタンパク質またはそのバリアントが前記発現される組換え前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントを切断して、前記組換え成熟補体I因子タンパク質またはそのバリアントを形成するのに好適な条件下で、宿主細胞において発現させるステップであって、必要に応じて、前記組換え前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントの80%よりも多くが、前記フューリンタンパク質またはそのバリアントによって切断される、ステップ
を含む、方法。
【請求項31】
a.宿主細胞に、前記前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子および前記フューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子を含む発現ベクターをトランスフェクトするステップ
を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記発現ベクターが、
a.内部リボソーム進入部位をコードする核酸分子であって、前記前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子と、前記フューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子との間に配置される、内部リボソーム進入部位をコードする核酸分子、
b.プロモーターエレメントであって、前記前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子および前記フューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子の上流に配置される、プロモーターエレメント、
c.翻訳開始配列であって、前記プロモーターエレメントの下流に、前記前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子および前記フューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子の上流に配置される、翻訳開始配列
をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記組換え前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子および前記組換えフューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子を、真核生物細胞において発現させるステップを含み、必要に応じて、前記真核生物細胞が、ヒト胎児腎臓293T細胞である、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記組換え前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントおよび組換えフューリンタンパク質またはそのバリアントを、請求項1から17のいずれかに記載の発現ベクターまたは発現系において発現させるステップを含む、請求項31から33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記組換え成熟補体I因子タンパク質またはそのバリアントを回収するステップをさらに含む、請求項31から34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
請求項31から35のいずれかに記載の方法によって得ることができる、成熟組換え補体I因子タンパク質またはそのバリアント。
【請求項37】
請求項36に記載の成熟組換え補体I因子またはそのバリアントを含む、治療用組成物。
【請求項38】
それを必要とする対象の処置における使用のため、好ましくは、障害、例えば、非定型溶血性尿毒症症候群、微小血管障害性溶血性貧血、C3糸球体症、アルツハイマー病、脳炎症、血小板減少症、または眼の補体関連疾患もしくは状態、例えば、加齢性黄斑変性(AMD)、緑内障、糖尿病性網膜症、早期発症型黄斑変性、シュタルガルト病、中心性漿液性網脈絡膜症、網膜色素変性、もしくはブドウ膜炎、好ましくは、AMDに罹患している対象の処置における使用のための、請求項37に記載の治療用組成物。
【請求項39】
組換え成熟補体I因子(CFI)タンパク質を、1つまたは複数の細胞成分から分離するための方法であって、以下の
(a)前駆体補体I因子タンパク質、成熟補体I因子タンパク質、および1つまたは複数のさらなる細胞成分の混合物を含む調製物を、クロマトグラフィー材料と、前記前駆体補体I因子タンパク質および前記成熟形態の補体I因子タンパク質がそれぞれ前記クロマトグラフィー材料に結合することができる条件下で接触させるステップと、
(b)前記クロマトグラフィー材料を、1つまたは複数の塩を含有する溶出緩衝溶液と接触させるステップと、
(c)前記前駆体補体I因子タンパク質および前記成熟補体I因子タンパク質を溶出させて、一連の溶出物を得るステップであって、前記一連の溶出物内で、前記前駆体補体系タンパク質および成熟形態の補体系タンパク質が、互いに実質的に分離されており、かつ/または前記前駆体補体I因子タンパク質および成熟形態の補体I因子タンパク質が、他の細胞成分から実質的に分離されており、必要に応じて、前記クロマトグラフィー材料が、抗OX21抗体を含む、ステップと
を含む、方法。
【請求項40】
以下の
d)成熟補体I因子タンパク質および前駆体補体I因子タンパク質を含む前記溶出物を含む調製物を、少なくとも1つのさらなるクロマトグラフィー材料と、前記前駆体補体I因子タンパク質および前記成熟形態の補体I因子タンパク質が前記少なくとも1つのさらなるクロマトグラフィー材料に結合する条件下で接触させるステップと、
e)前記少なくとも1つのさらなるクロマトグラフィー材料を、1つまたは複数の塩を含有する溶出緩衝溶液と接触させるステップと、
f)さらなる一連の別の溶出物を得るために、前記前駆体補体系タンパク質および成熟補体系タンパク質を溶出させるステップと
をさらに含み、
前記さらなる一連の溶出物内で、前記前駆体補体I因子タンパク質および前記成熟形態の補体I因子タンパク質が、互いに実質的に分離しており、必要応じて、前記さらなるクロマトグラフィー材料が、カチオン交換(CEX)クロマトグラフィー材料である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記カチオン交換クロマトグラフィー材料と接触する前記溶出緩衝溶液が、約4.5~7.5のpH、必要に応じて、約pH6.0を有し、かつ/または親和性クロマトグラフィー材料と接触する前記溶出緩衝溶液が、約1.5~4.5のpH、必要に応じて、約pH2.7を有する、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記親和性クロマトグラフィー材料と接触する前記溶出緩衝溶液が、グリシンを含み、必要に応じて、前記グリシンが、0.1Mの濃度であり、必要に応じて、前記前駆体補体I因子タンパク質および前記成熟補体I因子タンパク質が、約2.5:7.5のモル比で、前記調製物中に存在する、請求項41に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、成熟補体系タンパク質の組換え産生に関する。本発明のある特定の実施形態は、完全成熟ヒト補体I因子タンパク質(CFI)の組換え産生に関する。哺乳動物細胞から完全成熟ヒトCFIを組換えで発現させるための発現ベクターの詳細が、本明細書に含まれる。組換えで発現されたCFIを精製するためのクロマトグラフィーステップが、さらに開示される。本発明のある特定の態様は、遺伝子療法などにおける発現系の使用に関する。本発明のある特定の実施形態は、例えば、補体に媒介される障害の処置において使用するための、医薬としての前記ベクターの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
補体系は、互いに反応して病原体をオプソニン化し、感染症と闘うのを補助する一連の炎症性応答を誘導する、多数の異なる血漿タンパク質から構成される先天免疫系の一部である。多くの補体タンパク質は、「前駆体」形態で存在し、炎症の部位において活性化される。侵入する病原体から宿主を保護することに加えて、補体は、先天免疫と獲得免疫との橋渡しを行い、免疫複合体ならびに損傷した組織および細胞の処分を行う。補体の代替経路(AP)は、アイドリング(tick-over)機序によって継続的に活性化されており、古典的経路およびレクチン経路によってもトリガーされ得る。APにおいて、補体成分3(C3)は、自然発生的加水分解を受け、C3bを近傍の外来細胞および宿主細胞の表面上に配置する。細菌などの活性化表面上で、C3bは、B因子と結合し、これが、次いで、D因子によって切断されて、C3転換酵素であるC3bBbが形成される。プロパージンの結合は、この酵素を安定化させる。この酵素複合体は、次いで、さらにC3をC3bに切断して、フィードバックループを開始する。この増幅ループの下流において、C3bもまた、C3転換酵素と結合して、C5転換酵素であるC3bBbC3bが形成される。C5が切断されて、アナフィラトキシンC5aおよびC5bとなり、これが、溶解性膜侵襲性複合体(C5b-9)の形成を開始する。
【0003】
付帯的な補体損傷から宿主細胞を保護するために、多くの可溶性タンパク質および膜会合型補体調節タンパク質は、それらの表面上で補体を不活性化するように機能する。補体I因子(CFI)は、補体系の重要な調節性酵素である88kDaの血清糖タンパク質である。それは、C3bおよびC4bのα鎖を切断するセリンプロテアーゼであるが、その切断は、その補因子タンパク質、C3b切断の場合はH因子(FH)、C4b切断の場合はC4結合タンパク質(C4BP)、ならびに両方の場合はCD46および補体受容体1の存在下においてだけである。
【0004】
それは、多数の組織において発現されるが、主として肝臓の肝細胞によって発現される。コードされたプロタンパク質(プロ-CFI)が切断されて、重鎖および軽鎖の両方が産生され、それらがジスルフィド結合によって連結されて、ヘテロ二量体糖タンパク質が形成される。このヘテロ二量体は、補体成分C4bおよびC3bを切断し、不活性化して、C3およびC5転換酵素の酵素のアセンブリを防止することができる。この遺伝子における欠損は、化膿性感染症に対する易罹患性を伴う常染色体劣性疾患であるCFI欠如を引き起こす。
【0005】
補体系の調節不全は、いくつかの障害を媒介することが知られている。CFI遺伝子における珍しい遺伝的バリアントは、急性腎不全、微小血管障害性溶血性貧血、および血小板減少症によって特徴付けられる疾患である非定型溶血性尿毒症症候群の素因と関連付けられている。近年では、低いレベルの循環CFIが、CFI遺伝子における珍しい遺伝的バリアントを有する個体において特定されており、これらは、進行性加齢性黄斑変性(AMD)と関連付けられ、AMDの危険性におけるCFIの役割を裏付けている(Kavanagh et al., 2015, Hallam et al 2020)。AMDは、50歳を上回る個体における失明のもっとも一般的な原因であり、現時点では処置選択肢がほとんどない。CFIに媒介される補体系調節はまた、初期アルツハイマー病の進行にも関係している(Hakobyan et al, 2016)。CFI欠如は、最近、劇症型脳炎症とも関連付けられている(Altmann et al, 2020)。この研究により、これらの個体におけるCFI活性の増強が、なんらかの治療的利点を有し得ることが示唆される。
【0006】
上述のように、CFIが産生される場合、それは、まず、4残基のリンカーペプチド(RRKR)によって重鎖が軽鎖に接続された、一本鎖前駆体(プロ-CFI)として合成される。プロ-CFIは、不活性である。プロセシング中に、リンカーは、フューリンとして知られているカルシウム依存性セリンエンドプロテアーゼによって切断され、成熟CFIの重鎖および軽鎖が単一のジスルフィド結合によって一緒に保持された状態で残る。
【0007】
現在、高いパーセンテージの組換え成熟CFIを含む組成物を産生させる試みは、効果がないか、または複数の高度に最適化された下流プロセシングステップを必要とするかのいずれかである。典型的には、先行技術の方法は、前駆体から成熟CFIタンパク質への不完全な切断をもたらし、これによって、最初の場合、切断されていない前駆体タンパク質を大量に含む組成物が生じ、下流の切断ステップが必要となる。さらに、これまでの試みは、血漿由来の補体I因子と比較して低減された活性を有する組成物をもたらしている。
【0008】
Wongらは、COS-1細胞に、ヒトプロ-CFIおよびフューリンを独立してコードする2つの異なるベクターをコトランスフェクトしても、50%程度の成熟CFIの合成しか生じないことを示している。さらに、独立したプロ-CFIおよびフューリンのベクターの設計は、一般に、灌流組織内の細胞のコトランスフェクションという要件および困難な事象に起因して、そのような発現系を遺伝子療法において使用することを妨げる。
【0009】
国際公開第2018/170152号パンフレットは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞におけるpDR2真核生物発現ベクターからのプロ-CFIの組換え発現に続いて、精製された組換えプロ-CFIをフューリンとともにインビトロでインキュベートして成熟CFIを産生させるための方法を開示している。精製された組換えプロ-CFIを続いてフューリンで切断することにより、産生手順に時間および費用が加算されると考えられ得る。このプロセスはまた、インビトロでしか実行することができず、そのため、遺伝子療法としてインビボで使用することはできない。
【0010】
したがって、先行技術と関連する問題を軽減することが、本発明のある特定の実施形態の目的である。
【0011】
成熟補体系タンパク質の組換え産生のための方法を提供することが、ある特定の実施形態の目的である。
【0012】
インビボでの成熟補体I因子の組換え産生のための方法を提供することが、ある特定の実施形態の目的である。
【0013】
インビボで成熟補体I因子を発現させることができる発現ベクターを提供することが、ある特定の実施形態の目的である。
【0014】
対象内での成熟補体I因子の組換え産生のための方法を提供することが、ある特定の実施形態の目的である。
【0015】
発現ベクターであって、a)前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子と、b)フューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子であって、前記フューリンタンパク質またはそのバリアントが、コードされた前駆体補体I因子タンパク質を切断して、成熟補体I因子タンパク質を産生させることができる、核酸分子とを含み、発現ベクターが、ヒト対象内の成熟補体I因子の濃度を増加させる、発現ベクターを提供することが、ある特定の実施形態の目的である。
【0016】
補体に媒介される障害の処置において使用するための発現ベクターであって、a)前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子と、b)フューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子であって、前記フューリンタンパク質またはそのバリアントが、コードされた前駆体補体I因子タンパク質を切断して、成熟補体I因子タンパク質を産生させることができる、核酸分子とを含む、発現ベクターを提供することが、ある特定の実施形態の目的である。
【0017】
対象において補体に媒介される障害を処置する方法であって、それを必要とする対象に、a)前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子と、b)フューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子であって、前記フューリンタンパク質またはそのバリアントが、コードされた前駆体補体I因子タンパク質を切断して、成熟補体I因子タンパク質を産生させることができる、核酸分子とを含む、発現ベクターを投与するステップを含む、方法を提供することが、ある特定の実施形態の目的である。
【0018】
高い濃度の組換え産生成熟補体I因子を産生させるための方法を提供することが、本発明のある特定の実施形態の目的である。
【0019】
補体関連障害の処置において使用するための補体I因子タンパク質を提供することが、本発明のある特定の実施形態の目的である。
【発明の概要】
【0020】
本発明の第1の態様において、成熟組換え補体I因子タンパク質またはそのバリアントの産生のための発現ベクターであって、
a.前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子と、
b.フューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子であって、前記フューリンタンパク質またはそのバリアントが、コードされた前駆体補体I因子タンパク質を切断して、成熟補体I因子タンパク質を産生させることができる、核酸分子と
を含む、発現ベクターが、提供される。
【0021】
ある特定の実施形態において、フューリンタンパク質は、組換え前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントの50%よりも多くを、切断することができる。
【0022】
ある特定の実施形態において、発現される組換えフューリンタンパク質またはそのバリアントは、組換え前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントの55%よりも多く、例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%よりも多くを、切断することができる。
【0023】
ある特定の実施形態において、発現ベクターは、インビボでの使用に好適である。発現ベクターのさらなる詳細は、本明細書に提供されている。
【0024】
本発明のさらなる態様において、成熟組換え補体I因子タンパク質またはそのバリアントの産生のためのベクターを含む、発現系であって、ベクターが、
a.前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子と、
b.フューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子であって、前記フューリンタンパク質が、コードされた前駆体補体I因子タンパク質を切断して、成熟補体I因子タンパク質を産生させることができる、核酸分子と
を含む、発現系が、提供される。
【0025】
ある特定の実施形態において、フューリンタンパク質は、組換え前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントの50%よりも多くを、切断することができる。
【0026】
ある特定の実施形態において、発現される組換えフューリンタンパク質またはそのバリアントは、組換え前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントの55%よりも多く、例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%よりも多くを、切断することができる。
【0027】
ある特定の実施形態において、発現ベクターは、プロモーターエレメントを含む。
【0028】
ある特定の実施形態において、プロモーターエレメントは、インビボでの使用に適合される。
【0029】
ある特定の実施形態において、プロモーターエレメントは、前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子の上流にある。ある特定の実施形態において、プロモーターエレメントは、フューリンタンパク質をコードする核酸分子の上流にある。
【0030】
ある特定の実施形態において、プロモーターエレメントは、前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子およびフューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子の上流にある。
【0031】
ある特定の実施形態において、プロモーターエレメントは、発現系の環境変化に応答して、差次的に活性化される。
【0032】
ある特定の実施形態において、発現ベクターは、翻訳開始配列をコードする核酸分子を含む。
【0033】
ある特定の実施形態において、翻訳開始配列をコードする核酸分子は、プロモーターエレメントの下流に、前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子およびフューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子の上流に配置される。
【0034】
ある特定の実施形態において、翻訳開始配列をコードする核酸分子は、配列番号7に記載される配列を含む。
【0035】
ある特定の実施形態において、発現ベクターは、内部リボソーム進入部位をコードする核酸分子をさらに含む。
【0036】
ある特定の実施形態において、内部リボソーム進入部位をコードする核酸分子は、前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子と、フューリンタンパク質をコードする核酸分子との間に配置される。
【0037】
ある特定の実施形態において、フューリンタンパク質をコードする核酸分子は、IRESの上流にあり、補体I因子タンパク質をコードする核酸分子は、IRESの下流にある。
【0038】
ある特定の実施形態において、内部リボソーム進入部位は、脳心筋炎ウイルスIRESである。
【0039】
ある特定の実施形態において、内部リボソーム進入部位をコードする核酸分子は、配列番号9に記載される核酸配列を含む。
【0040】
多重遺伝子の共発現に使用することができる他の戦略には、単一のベクターにおける複数のプロモーター、遺伝子間のタンパク質分解切断部位、および「自己切断性」2Aペプチドの使用が含まれる。
【0041】
ある特定の実施形態において、発現ベクターは、タンパク質分解切断部位をコードする核酸分子を含み得る。
【0042】
ある特定の実施形態において、発現ベクターは、自己切断性ペプチド、例えば、2A自己切断性ペプチド、例えば、T2A、P2A、E2A、またはF2Aをコードする核酸分子を含み得る。
【0043】
好ましくは、自己切断性ペプチドをコードする核酸分子は、フューリンタンパク質をコードする核酸分子と、前駆体補体I因子タンパク質をコードする核酸分子との間に配置される。ある特定の実施形態において、前駆体補体I因子タンパク質をコードする核酸分子は、フューリンタンパク質をコードする核酸分子の上流にあり、自己切断性ペプチドをコードする核酸分子は、前駆体補体I因子タンパク質をコードする核酸分子とフューリンタンパク質をコードする核酸分子との間に配置される。ある特定の実施形態において、前駆体補体I因子をコードする核酸分子は、フューリンタンパク質をコードする核酸分子の下流にあり、自己切断性ペプチドをコードする核酸分子は、前駆体補体I因子をコードする核酸分子とフューリンタンパク質をコードする核酸分子との間に配置される。
【0044】
好ましくは、発現ベクターは、内部リボソーム進入部位をコードする核酸分子を含む。
【0045】
ある特定の実施形態において、組換え前駆体補体I因子は、哺乳動物補体I因子タンパク質である。ある特定の実施形態において、哺乳動物前駆体補体I因子は、ヒト前駆体補体I因子タンパク質である。
【0046】
ある特定の実施形態において、成熟ヒト補体I因子タンパク質は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列(重鎖)、または配列番号2に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、もしくは85%の配列同一性を有するアミノ酸配列から選択される第1のアミノ酸配列と、配列番号3に記載される第2のアミノ酸配列(軽鎖)、または配列番号3に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する第2のアミノ酸配列とを含み、第1および第2のアミノ酸配列は、ジスルフィド結合を介して連結されている。
【0047】
ある特定の実施形態において、前駆体ヒト補体I因子は、配列番号1に記載されるアミノ酸配列、または配列番号1に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性、例えば、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0048】
ある特定の実施形態において、第1のアミノ酸配列および/または第2のアミノ酸配列は、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有する。
【0049】
ある特定の実施形態において、発現される補体I因子タンパク質は、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、ペグ化、および/またはユビキチン化されている。
【0050】
ある特定の実施形態において、コードされたフューリンタンパク質またはそのバリアントは、哺乳動物フューリンタンパク質またはそのバリアントである。ある特定の実施形態において、コードされたフューリンタンパク質またはそのバリアントは、ヒトフューリンタンパク質またはそのバリアントである。
【0051】
ある特定の実施形態において、ヒトフューリンタンパク質は、配列番号5に記載されるアミノ酸配列、または配列番号5に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、もしくは85%の配列同一性を有するアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0052】
ある特定の実施形態において、ヒトフューリンタンパク質は、配列番号5に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性、例えば、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0053】
ある特定の実施形態において、ヒトフューリンタンパク質は、配列番号5に記載されるアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む。
【0054】
ある特定の実施形態において、ベクターは、配列番号10に記載される核酸配列、または配列番号10に記載される核酸配列に対して少なくとも75%、80%、もしくは85%の配列同一性を有する核酸配列から選択される核酸配列を含む。
【0055】
ある特定の実施形態において、ベクターは、配列番号8に記載される核酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、または90%の配列同一性、例えば、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。
【0056】
ある特定の実施形態において、発現ベクターは、耐性マーカーをコードする少なくとも1つの核酸分子を含む。
【0057】
ある特定の実施形態において、耐性マーカーをコードする核酸分子は、ハイグロマイシン耐性マーカーをコードする。
【0058】
ある特定の実施形態において、ハイグロマイシン耐性マーカーをコードする核酸分子は、配列番号13に記載される核酸配列を含む。
【0059】
ある特定の実施形態において、耐性マーカーをコードする核酸分子は、アンピシリン耐性マーカーをコードする。
【0060】
ある特定の実施形態において、アンピシリン耐性マーカーをコードする核酸分子は、配列番号16に記載される核酸配列を含む。
【0061】
ある特定の実施形態において、発現系は、宿主細胞をさらに含み、宿主細胞は、真核生物細胞であり、必要に応じて、真核生物細胞は、ヒト胎児腎臓293Tである。
【0062】
ある特定の実施形態において、発現系は、インビボ発現に適合される。
【0063】
ある特定の実施形態において、発現系は、インビトロ発現に適合される。
【0064】
適切には、発現ベクターは、ウイルスベクターである。ある特定の実施形態において、ウイルスベクターは、非組込みウイルスベクターである。非組込みウイルスベクターは、アデノウイルスベクターであり得る。
【0065】
ある特定の実施形態において、ウイルスベクターは、組込みウイルスベクターである。
【0066】
適切には、組込みウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクターであり得る。
【0067】
ある特定の実施形態において、AAVベクターは、AAVベクター粒子の形態である。
【0068】
ある特定の実施形態において、AAVベクター粒子は、AAV2ゲノムおよびAAV2キャプシドタンパク質、AAV2ゲノムおよびAAV5キャプシドタンパク質、またはAAV2ゲノムおよびAAV8キャプシドタンパク質を含む。
【0069】
本発明のさらなる態様において、組換え成熟補体I因子タンパク質またはそのバリアントを産生させるための方法であって、
a.(i)組換え前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアント、および(ii)組換えフューリンタンパク質またはそのバリアントを、発現されるフューリンタンパク質が発現される組換え前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントを切断して、組換え成熟補体I因子タンパク質またはそのバリアントを形成するのに好適な条件下で、宿主細胞において発現させるステップであって、必要に応じて、組換え前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントの50%よりも多くが、発現されるフューリンタンパク質によって切断される、ステップ
を含む、方法が、提供される。
【0070】
ある特定の実施形態において、発現される組換え前駆体補体I因子タンパク質もしくはそのバリアントの55%よりも多く、例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%よりも多くが、発現される組換えフューリンタンパク質によって切断される。
【0071】
ある特定の実施形態において、本方法は、宿主細胞に、前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子およびフューリンタンパク質をコードする核酸分子を含む発現ベクターをトランスフェクトするステップを含む。
【0072】
ある特定の実施形態において、発現ベクターは、
a.内部リボソーム進入部位をコードする核酸分子であって、前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子と、フューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子との間に配置される、内部リボソーム進入部位をコードする核酸分子、
b.プロモーターエレメントであって、前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子およびフューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子の上流に配置される、プロモーターエレメント、
c.翻訳開始配列であって、プロモーターエレメントの下流に、前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子およびフューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子の上流に配置される、翻訳開始配列
をさらに含む。
【0073】
ある特定の実施形態において、本方法は、組換え前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子および組換えフューリンタンパク質をコードする核酸分子を、真核生物細胞において発現させるステップであって、必要に応じて、真核生物細胞が、ヒト胎児腎臓293T細胞である、ステップを含む。
【0074】
ある特定の実施形態において、本方法は、組換え前駆体補体I因子タンパク質および組換えフューリンタンパク質を、本明細書に記載される発現系において発現させるステップを含む。
【0075】
ある特定の実施形態において、本方法は、組換え成熟補体I因子タンパク質を回収するステップをさらに含む。
【0076】
ある特定の実施形態において、本方法は、インビトロ方法である。ある特定の実施形態において、本方法は、インビボ方法である。さらなる詳細は、本明細書において以下に提供される。
【0077】
本発明のさらなる態様において、ヒト対象内の成熟CFIの濃度を増加させるための本明細書に記載される発現ベクターが、提供される。
【0078】
本発明のさらなる態様において、補体系に媒介される障害の処置および/または予防において使用するための、本明細書に記載される発現ベクターが、提供される。
【0079】
本発明によって処置することができる、補体に媒介される疾患または障害の例としては、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS);膜性増殖性糸球体腎炎2型(MPGN2);微小血管障害性溶血性貧血、ハンチントン病、C3糸球体症、脳炎症、血小板減少症;ギランバレー症候群、多発性硬化症(MS)、アルツハイマー病、パーキンソン病、アレルギー性脳脊髄炎、重症筋無力症(MG);全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、リウマチ性関節炎;心臓血管疾患もしくは状態、例えば、心筋梗塞、慢性心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、もしくは卒中;血液障害、例えば、発作性夜間ヘモグロビン尿症;呼吸器障害、例えば、喘息;皮膚疾患、例えば、水疱性類天疱瘡もしくは乾癬;臓器移植拒絶後の処置、移植片対宿主病;眼疾患もしくは状態、例えば、加齢性黄斑変性(AMD)、緑内障、糖尿病性網膜症、早期発症型黄斑変性、シュタルガルト病、中心性漿液性網脈絡膜症、もしくは網膜色素変性、視神経脊髄炎、もしくはブドウ膜炎、または他の炎症性疾患および/もしくは自己免疫疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
好ましくは、補体系に媒介される障害は、眼疾患または状態、例えば、加齢性黄斑変性(AMD)、緑内障、糖尿病性網膜症、早期発症型黄斑変性、シュタルガルト病、中心性漿液性網脈絡膜症、もしくは網膜色素変性、視神経脊髄炎、もしくはブドウ膜炎、または他の炎症性疾患および/もしくは自己免疫疾患である。もっとも好ましくは、障害は、AMDである。補体系に媒介される障害のさらなる詳細は、本明細書に提供される。
【0081】
本発明のさらなる態様において、補体系に媒介される障害の処置および/または予防において使用するための、本明細書に記載される発現系が、提供される。本発明によって処置することができる、補体に媒介される疾患または障害の例としては、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS);膜性増殖性糸球体腎炎2型(MPGN2);微小血管障害性溶血性貧血、ハンチントン病、C3糸球体症、脳炎症、血小板減少症;ギランバレー症候群、多発性硬化症(MS)、アルツハイマー病、パーキンソン病、アレルギー性脳脊髄炎、重症筋無力症(MG);全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、リウマチ性関節炎;心臓血管疾患もしくは状態、例えば、心筋梗塞、慢性心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、もしくは卒中;血液障害、例えば、発作性夜間ヘモグロビン尿症;呼吸器障害、例えば、喘息;皮膚疾患、例えば、水疱性類天疱瘡もしくは乾癬;臓器移植拒絶後の処置、移植片対宿主病;眼疾患もしくは状態、例えば、加齢性黄斑変性(AMD)、緑内障、糖尿病性網膜症、早期発症型黄斑変性、シュタルガルト病、中心性漿液性網脈絡膜症、もしくは網膜色素変性、視神経脊髄炎、もしくはブドウ膜炎、または他の炎症性疾患および/もしくは自己免疫疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
好ましくは、補体系に媒介される障害は、眼疾患または状態、例えば、加齢性黄斑変性(AMD)、緑内障、糖尿病性網膜症、早期発症型黄斑変性、シュタルガルト病、中心性漿液性網脈絡膜症、もしくは網膜色素変性、視神経脊髄炎、もしくはブドウ膜炎、または他の炎症性疾患および/もしくは自己免疫疾患である。好ましい実施形態において、障害は、補体に媒介される眼障害または疾患である。もっとも好ましくは、障害は、AMDである。補体系に媒介される障害のさらなる詳細は、本明細書に提供される。
【0083】
本発明のさらなる態様において、対象における補体系に媒介される障害を処置および/または予防する方法であって、本明細書に記載される発現系を、対象に投与するステップを含む、方法が、提供される。
【0084】
本発明のさらなる態様において、対象における補体系に媒介される障害を処置および/または予防する方法であって、本明細書に記載される発現ベクターを、対象に投与するステップを含む、方法が、提供される。
【0085】
ある特定の実施形態において、本方法は、成熟補体I因子の産生を提供する。
【0086】
ある特定の実施形態において、本方法は、発現ベクターから成熟補体I因子を産生させるステップを含む。
【0087】
ある特定の実施形態において、本方法は、インビボにおける本明細書に記載される発現ベクターからの成熟補体I因子の組換え産生を提供する。
【0088】
ある特定の実施形態において、本方法は、対象における成熟補体I因子の組換え産生を提供する。
【0089】
ある特定の実施形態において、本方法は、高い濃度の組換え産生成熟補体I因子を産生させる。
【0090】
ある特定の実施形態において、本発明は、細胞内の成熟補体I因子の濃度を増加させるための方法を提供する。
【0091】
ある特定の実施形態において、本発明は、組織内の成熟補体I因子の濃度を増加させるための方法を提供する。
【0092】
ある特定の実施形態において、本発明は、補体系に関連する障害の処置において使用するための補体I因子タンパク質を提供する。
【0093】
本発明のさらなる態様において、本明細書に記載される方法によって得ることができる成熟組換え補体I因子タンパク質が、提供される。
【0094】
本発明のさらなる態様において、本明細書に記載される方法によって得ることができる成熟組換え補体I因子タンパク質および組換え前駆体補体I因子タンパク質の混合物であって、50%よりも多くの成熟組換えCFIタンパク質:組換え前駆体CFIタンパク質を含む、混合物が、提供される。
【0095】
ある特定の実施形態において、成熟組換え補体I因子タンパク質は、哺乳動物補体I因子タンパク質、例えば、ヒトCFIタンパク質である。
【0096】
本発明のさらなる態様において、本明細書に記載され、本明細書に記載される方法によって得ることができる、成熟組換え補体I因子タンパク質から構成される治療用組成物が、提供される。
【0097】
ある特定の実施形態において、組成物は、補体系に媒介される障害、例えば、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS);膜性増殖性糸球体腎炎2型(MPGN2);微小血管障害性溶血性貧血、ハンチントン病、C3糸球体症、脳炎症、血小板減少症;ギランバレー症候群、多発性硬化症(MS)、アルツハイマー病、パーキンソン病、アレルギー性脳脊髄炎、重症筋無力症(MG);全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、リウマチ性関節炎;心臓血管疾患もしくは状態、例えば、心筋梗塞、慢性心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、もしくは卒中;血液障害、例えば、発作性夜間ヘモグロビン尿症;呼吸器障害、例えば、喘息;皮膚疾患、例えば、水疱性類天疱瘡もしくは乾癬;臓器移植拒絶後の処置、移植片対宿主病;眼疾患もしくは状態、例えば、加齢性黄斑変性(AMD)、緑内障、糖尿病性網膜症、早期発症型黄斑変性、シュタルガルト病、中心性漿液性網脈絡膜症、もしくは網膜色素変性、視神経脊髄炎、もしくはブドウ膜炎、または他の炎症性疾患および/もしくは自己免疫疾患に罹患している対象の処置において使用するためのものである。
【0098】
好ましくは、補体系に媒介される障害は、眼疾患または状態、例えば、加齢性黄斑変性(AMD)、緑内障、糖尿病性網膜症、早期発症型黄斑変性、シュタルガルト病、中心性漿液性網脈絡膜症、もしくは網膜色素変性、視神経脊髄炎、もしくはブドウ膜炎、または他の炎症性疾患および/もしくは自己免疫疾患である。もっとも好ましくは、障害は、AMDである。
【0099】
本発明のさらなる態様において、組換え成熟補体I因子(CFI)タンパク質を、1つまたは複数の細胞成分から分離するための方法であって、以下の
(a)前駆体補体I因子タンパク質、成熟形態の補体I因子タンパク質、および1つまたは複数のさらなる細胞成分の混合物を含む調製物を、クロマトグラフィー材料と、前記前駆体補体I因子タンパク質および前記成熟形態の補体I因子タンパク質がそれぞれクロマトグラフィー材料に結合することができる条件下で接触させるステップと、
(b)クロマトグラフィー材料を、1つまたは複数の塩を含有する溶出緩衝溶液と接触させるステップと、
(c)前記前駆体補体I因子タンパク質および成熟補体I因子タンパク質を溶出して、一連の溶出物を得るステップと
を含み、
一連の溶出物内で、前駆体補体系タンパク質および成熟形態の補体系タンパク質が、互いに実質的に分離しており、かつ/または前駆体補体I因子タンパク質および成熟形態の補体I因子タンパク質が、他の細胞成分から実質的に分離している、方法が、提供される。
【0100】
ある特定の実施形態において、クロマトグラフィー材料は、親和性クロマトグラフィー材料である。ある特定の実施形態において、クロマトグラフィー材料は、OX21モノクローナル抗体にカップリングされたクロマトグラフィー材料を含む。
【0101】
ある特定の実施形態において、本方法は、以下の
d)成熟補体I因子タンパク質および前駆体補体I因子タンパク質を含む溶出物を含む調製物を、少なくとも1つのさらなるクロマトグラフィー材料と、前記前駆体補体I因子タンパク質および前記成熟形態の補体I因子タンパク質が少なくとも1つのさらなるクロマトグラフィー材料に結合する条件下で接触させるステップと、
e)少なくとも1つのさらなるクロマトグラフィー材料を、1つまたは複数の塩を含有する溶出緩衝溶液と接触させるステップと、
f)さらなる一連の別の溶出物を得るために、前記前駆体補体系タンパク質および成熟補体系タンパク質を溶出させるステップと
をさらに含み、
さらなる一連の溶出物内で、前駆体補体I因子タンパク質および成熟形態の補体I因子タンパク質が、互いに実質的に分離している。
【0102】
ある特定の実施形態において、さらなるクロマトグラフィー材料は、カチオン交換(CEX)クロマトグラフィー材料である。
【0103】
ある特定の実施形態において、前駆体補体I因子タンパク質および成熟形態の補体I因子タンパク質は、前駆体補体I因子タンパク質および成熟形態の補体I因子タンパク質が結合しているクロマトグラフィー材料を、漸増濃度の塩を含有する緩衝溶液と接触させることによって、カチオン交換クロマトグラフィーから溶出される。ある特定の実施形態において、溶出緩衝溶液は、漸増濃度の塩化ナトリウムを含有する。
【0104】
ある特定の実施形態において、前駆体補体I因子タンパク質および成熟形態の補体I因子タンパク質が結合しているクロマトグラフィー材料と接触させる、溶出緩衝溶液の塩濃度は、線形勾配によって増加させる。ある特定の実施形態において、溶出緩衝液の塩濃度は、ステップ勾配によって増加させる。ある特定の実施形態において、溶出緩衝液の塩濃度は、線形勾配および/またはステップ勾配によって増加させる。
【0105】
ある特定の実施形態において、カチオン交換クロマトグラフィー材料と接触させる溶出緩衝溶液は、約4.5~7.5のpH、好ましくは、必要に応じて約pH6.0を有する。
【0106】
ある特定の実施形態において、親和性クロマトグラフィー材料と接触させる溶出緩衝溶液は、約1.5~4.5のpH、必要に応じて約pH2.7を有する。
【0107】
ある特定の実施形態において、親和性クロマトグラフィー材料と接触させる溶出緩衝溶液は、グリシンを含み、必要に応じて、グリシンは、0.1Mの濃度である。
【0108】
ある特定の実施形態において、本方法は、親和性クロマトグラフィー(例えば、OX21モノクローナル抗体-NHS-セファロース)、アニオン交換(AEX)クロマトグラフィー、および/またはカチオン交換(CEX)クロマトグラフィーを行って、溶出物を得るステップを含む。
【0109】
ある特定の実施形態において、本方法は、クロマトグラフィー材料を、線形勾配で増加する塩濃度を有する溶出緩衝溶液と接触させるステップを含む。ある特定の実施形態において、溶出緩衝溶液は、約4.5~7.5のpH、好ましくは、約pH6.0を有する。
【0110】
ある特定の実施形態において、緩衝液は、ナトリウム塩またはカリウム塩を含む。ある特定の実施形態において、前駆体補体I因子および成熟補体I因子は、約2.5:7.5のモル比で、調製物中に存在する。
【0111】
本発明のある特定の実施形態は、これより、例示のみの目的で、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【
図1】補体系のある特定の態様の概要を示す図である。
【
図2-1】本明細書に記載されるタンパク質のアミノ酸配列および核酸分子のヌクレオチド配列を示す図である。具体的には、配列番号1は、ヒト前駆体補体I因子のアミノ酸配列であり、配列番号2は、成熟補体I因子のヒト重鎖のアミノ酸配列であり、配列番号3は、成熟補体I因子のヒト軽鎖のアミノ酸配列であり、配列番号5は、ヒトフューリンタンパク質のアミノ酸配列であり、配列番号4は、ヒト補体I因子のリンカー配列のアミノ酸配列であり、配列番号6は、ヒトEF1aプロモーターのヌクレオチド配列であり、配列番号7は、コザック配列のヌクレオチド配列であり、配列番号8は、ヒトフューリン遺伝子(ORF016536)のヌクレオチド配列であり、配列番号9は、脳心筋炎ウイルスIRESのヌクレオチド配列であり、配列番号10は、ヒト補体I因子のヌクレオチド配列(配列受託番号NM_000204、バージョン番号NM_000204.4)であり、配列番号11は、SV40後期ポリアデニル化シグナルのヌクレオチド配列であり、配列番号12は、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)最初期エンハンサー/プロモーターのヌクレオチド配列であり、配列番号13は、ハイグロマイシン耐性マーカーのヌクレオチド配列であり、配列番号14は、ウシ成長ホルモン後期ポリアデニル化シグナルのヌクレオチド配列であり、配列番号15は、pUC複製起点のヌクレオチド配列であり、配列番号16は、アンピシリン耐性マーカーのヌクレオチド配列であり、配列番号17は、例示的なCMVプロモーターのヌクレオチド配列であり、配列番号18は、例示的なCAGプロモーターのヌクレオチド配列であり、配列番号19は、例示的なWPREヌクレオチド配列であり、配列番号20は、例示的なWPRE3ヌクレオチド配列であり、配列番号21は、例示的なウシ成長ホルモンポリ-Aシグナルのヌクレオチド配列であり、配列番号22は、さらなる例示的なウシ成長ホルモンポリ-Aシグナルのヌクレオチド配列である。
【
図3】哺乳動物細胞株における組換えヒトCFI(FI)のプロセシングの図である。プロ-CFI(「プロFI」)は、分泌の前にプロセシングを受ける。CFIが、細胞において発現されるとき、タンパク質の不完全なプロセシングは、インタクトなRRKRリンカーを有するプロ-CFIならびに重鎖および軽鎖がジスルフィド結合のみによって連結された成熟CFI(「成熟FI」)の両方の分泌をもたらす。
【
図4】SDS-PAGEゲルにおけるCFI(「FI」)の移動を示す概略図である。異なる形態のCFIが、非還元ゲルおよび還元ゲルの両方に出現している。プロ-CFIは、還元および非還元条件下において、88kDaで出現している。成熟CFIは、非還元条件下においては88kDaで出現しているが、還元の場合には、ジスルフィド結合の破壊に起因して50kDaおよび38kDaで出現している。
【
図5】前駆体CFI(「プロ-I因子」)および成熟CFI(「完全プロセシングCFI」)の流体相補因子活性の評価を示す図であり、C3b、FH、および様々な濃度の完全にプロセシングされたI因子を、37℃で30分間インキュベートした(左)。30分の時点で、最低濃度の完全にプロセシングされたI因子(6.25ng)(右)は、C3α-110バンドの減少、ならびにC3α-68、-46、および-43バンドの増加によって明らかなように、C3bを切断していた。対照的に、45分までに、10ngの前駆体CFIは、明らかな活性を示さなかった。
【
図6】本発明のある特定の実施形態によるフューリン-IRES-CFIベクターのプラスミドマップを示す図である。フューリン遺伝子は、プロ-CFIのRRKRリンカーを切断するフューリン酵素のコーディングを担う。フューリン遺伝子は、プロ-CFIにおいて見出されるRRKRリンカーを切断するフューリン酵素の合成を担う。内部リボソーム進入部位(IRES)は、cap非依存性様式で翻訳を開始し、単一のポリシストロニックmRNAから2つのタンパク質の合成を可能にする。CFIは、タンパク質補体I因子をコードする。さらなるベクターの詳細は、
図7に提供されている。
【
図7】本発明のある特定の実施形態による
図6に示されるベクターに存在する成分を示す表である。
【
図8】血清精製CFI(FI)を、非還元および還元条件下においてIRES-ベクターにより産生されたCFIと比較する、SDS-PAGEの代表的な銀染色を示す図である。単一のバンドを、非還元条件下において、IRESおよび血清CFIの両方について、88kDaで特定することができる。対照的に、還元条件下では、IRESおよび血清FIの両方について、50kDaおよび38kDaで、それぞれ、重鎖(HC)および軽鎖に対応する2つの別個のバンドを特定することができる。
【
図9】血清精製CFI(FI)およびIRES-ベクターCFIの間の流体相補因子活性の比較を示す図である。C3b、H因子(FH)、および10ngのFIまたは血清精製FIのいずれかを、37℃で1時間、溶液中でインキュベートした。5、15、30、45、および60分間の間隔で、還元レムリー(laemelli)緩衝液の添加によって反応を停止させた。C3b破壊を、SDS-PAGEおよびクーマシー染色によって評価した。C3α-110バンドの減少、ならびにC3α -68、-46、および-43バンドの出現は、タンパク質分解切断によるC3bの不活性化を示した。活性は、両方の起源のCFIについて、同等であることが示された。
【
図10】pDEF-CFIベクターを示す略図であり、pDEF-CFIコンストラクトは、哺乳動物CFI配列が挿入された改変されたpDR2 EF1α(pDEF)発現ベクターである。
【
図11】組換えプロ-CFIを、実施例3に記述される組換えタンパク質調製物から精製したときに得られた代表的なUV追跡を示す図である。
【
図12】成熟CFIおよびプロ-CFIを分解する、還元条件下で実行した、
図11に従って得られた選択された画分の代表的なSDS-PAGEを示す図である。A)クーマシーブルー染色SDS PAGE-成熟CFIに対応する2つのバンドが、それぞれ、重鎖および軽鎖について50KDaおよび38kDaで、サンプルに存在する。プロ-CFIを含有するサンプルは、90kDaに見られる単一のバンドを示した。B)ウエスタンブロットは、補体I因子に対するポリクローナル抗体を使用して検出した。成熟CFIについては、(A)と同様に重鎖および軽鎖の2つのバンドが確認される。プロ-CFIについては、1つのバンドしか観察されない。
【
図13】クーマシーおよびウエスタンブロットによって視覚化したプロ-CFIを分解する代表的なSDS PAGEを示す図である。還元(R)および非還元(NR)の両方の条件下において、1つのバンドが存在する。
【発明を実施するための形態】
【0113】
別途定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって広く理解されているものと同じ意味を有する。
【0114】
本発明のある特定の態様は、プロテアーゼの共発現を用いた前駆体補体系タンパク質の発現を提供する。ある特定の実施形態において、共発現されるプロテアーゼは、前駆体補体系タンパク質と相互作用して、成熟形態の補体系タンパク質を産生することができる。
【0115】
本発明のある特定の態様は、組換え成熟補体I因子(CFI)タンパク質を提供する方法を提供する。本発明のさらなる態様は、組換え成熟補体I因子タンパク質を発現させるための発現系を提供する。
【0116】
本発明のある特定の態様は、成熟形態の補体I因子が産生されるように、ポリシストロニックRNAからの組換え前駆体補体I因子およびフューリンの発現を提供するベクターに関する。
【0117】
本発明のある特定の態様は、単離された組換え成熟補体系タンパク質を提供する。本発明のある特定の態様は、単離された組換え成熟補体I因子タンパク質を提供する。
【0118】
「補体系タンパク質」という用語は、補体カスケードに関与する任意のタンパク質を指す。補体カスケードおよび補体系タンパク質は、当該技術分野において説明されている。
【0119】
ある特定の実施形態において、組換え成熟補体系タンパク質は、補体カスケード調節タンパク質であってもよい。
【0120】
本発明のある特定の態様は、単離された組換え成熟補体I因子を提供する。
【0121】
本発明のさらなる態様において、組換えCFIタンパク質およびセリンプロテアーゼタンパク質を発現させるための発現系が、提供される。発現系は、インビボで使用するためのものであり得る。
【0122】
本明細書において使用される場合、「発現系」は、組換えタンパク質の発現に有用な成分を含む系を指す。例えば、発現系は、1つまたは複数の発現ベクターを含み得る。ある特定の実施形態において、発現系は、タンパク質合成のためのエネルギーおよび機序を提供するために使用することができる、生物学的環境、例えば、細胞をさらに含み得る。必要な成分を含有する細胞抽出物、すなわち、無細胞タンパク質発現系を使用することも可能である。
【0123】
加えて、発現系は、細胞への遺伝子材料の導入を促進するベクター(本明細書において発現ベクターとも称される)を含み得、これは、遺伝子材料の複製をもたらす調節部分および通常は維持のための選択マーカーを含む。また、発現系は、発現させようとするタンパク質のアミノ酸配列をコードするオープンリーディングフレームを含有するベクターに組み込まれる核酸分子を含み得る。ベクターはまた、産生させようとするタンパク質の転写および翻訳に必要な成分も含み得る。ベクターのさらなる詳細は、本明細書に提供されている。
【0124】
適切には、発現系は、宿主細胞および/または組織を含み得る。宿主細胞は、エキソビボ宿主細胞または組織であり得る。あるいは、発現系は、例えば、遺伝子療法としてインビボで使用するためのものであり得る。したがって、発現系は、それを必要とする対象に外来的に投与され得る。
【0125】
本明細書において使用される場合、対象は、好ましくは、ヒト対象である。
【0126】
ある特定の実施形態において、発現系は、インビトロ発現系および/またはエキソビボ発現系である。
【0127】
ある特定の実施形態において、発現系は、インビボ発現系である。
【0128】
本明細書において使用される「単離された」という用語は、生物学的成分(例えば、核酸分子またはタンパク質)が、天然に存在する生物の細胞内の他の生物学的成分、すなわち、他の染色体および染色体外DNAおよびRNA、ならびにタンパク質から実質的に分離されているか、または精製されていることを指す。「単離された」核酸およびタンパク質には、標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。この用語はまた、宿主細胞における組換え発現によって調製された核酸およびタンパク質、ならびに化学的に合成された核酸、タンパク質、およびペプチドを包含する。
【0129】
本明細書において使用される場合、「タンパク質」という用語は、「ペプチド」または「ポリペプチド」と互換可能に使用することができる。適切には、「タンパク質」という用語は、ペプチジル結合によって連結された、少なくとも2つの共有結合的に結合したアルファアミノ酸残基を意味する。タンパク質という用語は、精製された天然の産物、または部分的もしくは全体的に組換えもしくは合成技法を使用して産生され得る化学的産物を包含する。タンパク質という用語は、1つを上回るポリペプチドの複合体、例えば、二量体もしくは他の多量体、融合タンパク質、タンパク質バリアント、またはこれらの誘導体を指し得る。この用語はまた、改変されたタンパク質、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、ペグ化、ユビキチン化などによって改変されたタンパク質も含む。タンパク質は、核酸コドンによってコードされないアミノ酸を含み得る。
【0130】
本明細書において使用される場合、「前駆体」という用語は、さらに翻訳後プロセシングに供されるポリペプチドを指す。ある特定の事例において、前駆体ポリペプチドは、その対応する成熟形態と比べて活性が低い。「プロフォーム」という用語もまた、本明細書において使用され、「プロフォーム」および「前駆体」という用語は、本明細書において互換可能に使用される。
【0131】
タンパク質の前駆体形態は、プロテアーゼによって、タンパク質の成熟形態を形成するように、プロセシングされ得る。本明細書において使用される場合、「プロテアーゼ」という用語は、ペプチド結合を加水分解することができる任意のタンパク質を指す。「エンドプロテアーゼ」という用語は、非末端アミノ酸ペプチド結合を加水分解することができるプロテアーゼを指す。「セリンエンドプロテアーゼ」という用語は、求核性セリンが酵素活性中心として機能する、エンドプロテアーゼを指す。ある特定の実施形態において、プロテアーゼは、フューリンタンパク質である。プロテアーゼは、哺乳動物プロテアーゼ、例えば、ヒトプロテアーゼであり得る。プロテアーゼは、ヒトフューリンであり得る。
【0132】
「成熟」という用語は、本明細書において使用される場合、前駆体ポリペプチドと比べて異なる活性を有する種に対する翻訳後改変を受けた前駆体ポリペプチドに由来するポリペプチドまたはタンパク質を指す。
【0133】
本明細書において使用される場合、「導入遺伝子発現カセット」および「発現カセット」という用語は、核酸ベクターが標的細胞に送達する遺伝子配列を含む核酸分子を指して使用される。これらの配列は、目的の遺伝子(例えば、CFI、フューリン遺伝子)、1つまたは複数のプロモーター、および調節エレメントを含み得る。
【0134】
本明細書において使用される場合、「調節エレメント」という用語は、標的細胞における遺伝子(例えば、CFI、フューリン遺伝子)の有効な発現に必要であり、したがって、導入遺伝子発現カセットに含まれるべき、調節エレメントを指し得る。そのような配列としては、例えば、プロモーター、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、プラスミドベクター内へのDNAフラグメントの挿入を促進するポリリンカー配列、またはイントロンスプライシングおよびmRNA転写産物のポリアデニル化を担う配列などを挙げることができる。
【0135】
本発明者らは、宿主細胞内で、成熟補体系タンパク質、例えば、組換え成熟CFIタンパク質を組換えで産生させる方法を考案したと考えられる。
【0136】
いくつかの実施形態において、本発明は、他の細胞成分から実質的に単離されている、成熟補体系タンパク質、例えば、組換え成熟CFIタンパク質を組換えで産生させる方法を提供する。
【0137】
組換えCFIタンパク質を産生させる先行技術の方法は、前駆体CFIタンパク質の不完全なプロセシングをもたらしており、そのため、組換え成熟CFIタンパク質が、前駆体CFIから実質的に単離されていないか、または組換え前駆体CFIが、インビトロでフューリンとのインキュベーションを必要とすることになると考えられる。本発明者らは、先行技術において開示されている方法と比較して、プロセシングステップの数が低減された、成熟CFIタンパク質を組換えで産生させる方法を考案したと考えられる。
【0138】
Wongらは、COS-1細胞に、ヒトプロ-CFIおよびフューリンを独立してコードする2つの異なるベクターをコトランスフェクトしても、50%程度の成熟CFIの合成しか生じないことを示している。さらに、独立したプロ-CFIおよびフューリンのベクターの設計は、一般に、灌流組織内の細胞のコトランスフェクションという要件および困難な事象に起因して、そのような発現系を遺伝子療法において使用することを妨げる。
【0139】
したがって、本発明のある特定の実施形態は、成熟補体系タンパク質の産生および単離に関する。
【0140】
本発明のある特定の実施形態は、組換え成熟補体I因子(CFI)の産生および単離に関する。
【0141】
ある特定の実施形態において、本方法は、補体系タンパク質の前駆体形態の、補体系タンパク質の前駆体形態をプロセシングして補体系タンパク質の成熟形態を形成することができるプロテアーゼ酵素との組換え共発現を含む。
【0142】
ある特定の実施形態において、本方法は、補体系タンパク質の前駆体およびプロテアーゼ酵素の、同じ発現ベクターからの共発現を含む。ある特定の実施形態において、本方法は、補体系タンパク質の前駆体およびプロテアーゼ酵素の、ポリシストロニックRNAからの共発現を含む。
【0143】
ある特定の実施形態において、本方法は、前駆体CFIタンパク質、およびプロ-CFIをプロセシングして成熟CFIを産生させることができるプロテアーゼ酵素の、組換え共発現を含む。
【0144】
ある特定の実施形態において、本方法は、前駆体CFIタンパク質およびプロテアーゼ酵素の、同じ発現ベクターからの共発現を含む。ある特定の実施形態において、本方法は、前駆体CFIタンパク質およびプロテアーゼ酵素の、ポリシストロニックRNAからの共発現を含む。ある特定の実施形態において、プロテアーゼ酵素は、エンドプロテアーゼである。ある特定の実施形態において、エンドプロテアーゼは、セリンエンドプロテアーゼである。ある特定の実施形態において、セリンエンドプロテアーゼは、フューリンである。
【0145】
補体I因子は、重要な補体調節因子である。それは、多数の組織において発現されるが、主として肝臓の肝細胞によって発現される。CFIは、2つの鎖が、ジスルフィド結合によって一緒に連結された、ヘテロ二量体である。重鎖は、I因子モジュール、CD5ドメイン、および2つの低密度リポタンパク質受容体ドメイン(LDLr)を含有する。軽鎖は、セリンプロテアーゼドメインを含み、その活性部位は、His380、Asp439、およびSer525の三連構造からなる。CFI重鎖アミノ酸配列は、配列番号2に示されており、CFI軽鎖アミノ酸配列は、配列番号3に示されている。
【0146】
CFIが合成される場合、それは、まず、4残基のリンカーペプチド(RRKR)によって重鎖が軽鎖に接続された、一本鎖前駆体(前駆体CFIタンパク質)として作製される。したがって、本明細書において使用される場合、「前駆体CFIタンパク質」という用語は、4残基のリンカーペプチド(RRKR)を含む一本鎖前駆体補体I因子タンパク質を指して使用される。適切には、前駆体CFIタンパク質(プロ-CFI)は、実質的に不活性であり、本質的にC3、C3b不活性化、またはiC3b分解活性を有さない。ある特定の実施形態において、組換え前駆体CFIタンパク質は、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0147】
プロセシング中に、前駆体CFIタンパク質は、カルシウム依存性セリンエンドプロテアーゼであるフューリンによって切断され、全長成熟CFIの重鎖および軽鎖が単一のジスルフィド結合によって一緒に保持された状態で残る。このタンパク質は、本明細書において、成熟CFIタンパク質と称される。ある特定の実施形態において、フューリンは、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0148】
したがって、本明細書において使用される場合、「成熟CFIタンパク質」という用語は、RRKRリンカー配列またはその近隣で、例えば、フューリンによって切断されるか、または切断されている、CFIタンパク質を指す。ある特定の実施形態において、成熟CFIタンパク質は、前駆体CFIタンパク質と比較して、RRKRリンカー配列が欠如しており、前駆体CFIタンパク質は、318位~321位にRRKRリンカー配列を含む。他の実施形態において、成熟CFIタンパク質は、RRKRリンカー配列の近隣で切断され、したがって、成熟CFIタンパク質は、軽鎖および重鎖を含み得、そのうちの一方または両方が、リンカー配列の1つまたは複数のアミノ酸残基を含む。
【0149】
ある特定の実施形態において、組換え前駆体CFIタンパク質は、非ヒト哺乳動物CFIタンパク質である。他の実施形態において、組換え前駆体CFIタンパク質は、ヒトCFIタンパク質である。
【0150】
ある特定の実施形態において、成熟CFIタンパク質は、ジスルフィド結合を含み、組換え成熟CFIタンパク質は、ジスルフィド結合の還元時に重鎖および軽鎖に切断可能である。ある特定の実施形態において、成熟CFIタンパク質は、I因子膜侵襲性複合体(FIMAC)モジュール、CD5モジュール、および2つのLDLrモジュールを含む重鎖、ならびにセリンプロテアーゼドメインを含む軽鎖を含む。ある特定の実施形態において、成熟CFIタンパク質は、グリコシル化されている。
【0151】
本明細書において使用される場合、「組換え前駆体CFIタンパク質」という用語は、組換え方法を使用して得られる、上述の前駆体CFIタンパク質を指して使用される。
【0152】
本明細書において使用される場合、「組換え成熟CFIタンパク質」という用語は、組換え方法を使用して得られる、上述の成熟CFIタンパク質を指して使用される。
【0153】
本明細書において使用される場合、「総CFIタンパク質含量」という用語は、単一の組成物または調製物中に存在する、組換え成熟CFIタンパク質および組換え前駆体CFIタンパク質の組合せの総含量を指す。
【0154】
適切には、「組換え成熟CFIタンパク質」は、組換え発現によって作製された、すなわち、天然に存在しないか、または血漿に由来しない、上記に定義される成熟CFIタンパク質である。適切には、野生型成熟CFIタンパク質は、2つの鎖を含み、それぞれの鎖が、グリコシル化を受け、それによって、合計で6つのN結合型グリコシル化部位が生じ、66kDaの予測分子量におよそ18kDaの炭水化物が加算される。
【0155】
組換え成熟CFIタンパク質は、天然に由来する、すなわち、血漿に由来する成熟CFIタンパク質とは異なるグリコシル化パターンを有し得る。
【0156】
ある特定の実施形態において、組換えCFIタンパク質は、C3b不活性化およびiC3b分解活性を保持する、全長CFIタンパク質のフラグメントである。
【0157】
「組換え」および「組換え発現」という用語は、当該技術分野において周知である。「組換え発現」という用語は、本明細書において使用される場合、宿主生物における外来遺伝子の転写および翻訳に関する。
【0158】
外来DNAは、宿主細胞の外部を起源とする任意のデオキシリボ核酸を指す。外来DNAは、宿主のゲノムに組み込まれてもよく、または非組込みエレメントから発現されてもよい。
【0159】
組換えタンパク質は、組換え核酸から発現されるか、または発現されることが可能な、任意のポリペプチドを含む。したがって、組換え前駆体CFIタンパク質は、組換えDNA配列によって発現される。組換え前駆体CFIタンパク質は、発現中にRRKRリンカー配列またはその近隣で酵素プロセシングを受けて、本明細書に記載されるヘテロ二量体が残り得る。
【0160】
ある特定の実施形態において、プロテアーゼは、組換え補体系タンパク質と組換えで共発現され得る。
【0161】
ある特定の実施形態において、プロテアーゼは、組換えプロ-CFIと組換えで共発現され得る。ある特定の実施形態において、プロテアーゼは、フューリンタンパク質である。
【0162】
フューリンは、インビボにおいて、Arg-X-X-Argの最小切断部位でタンパク質を切断する、サブチリシン様プロタンパク質転換酵素である。ヒトフューリンタンパク質は、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0163】
ある特定の実施形態において、フューリンタンパク質は、ヒトフューリンタンパク質またはそのフラグメントである。ある特定の実施形態において、フューリンタンパク質は、成熟フューリンタンパク質のフラグメントである。適切には、フューリンタンパク質は、膜貫通ドメインの前で終結された短縮型フューリンタンパク質である。適切には、短縮型フューリンタンパク質は、595~791位にまたはその間の位置に、例えば、RRKRリンカー配列で切断するために、フューリンの触媒活性に関与する少なくとも1つまたは複数のアミノ酸残基を含む。
【0164】
ある特定の実施形態において、フューリンタンパク質またはそのフラグメントは、グリコシル化されている。適切には、フューリンタンパク質またはそのフラグメントは、Asn387、Asn440、およびAsn553から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基において、グリコシル化されている。
【0165】
ある特定の実施形態において、フューリンタンパク質またはそのフラグメントは、60kDaまたはそれ以上の分子量を有する。適切には、フューリンタンパク質またはそのフラグメントは、約65~85kDaの分子量を有する。ある特定の実施形態において、フューリンタンパク質またはそのフラグメントは、タグ、例えば、Hisタグを含む。
【0166】
ある特定の実施形態において、フューリンタンパク質またはそのフラグメントは、配列番号5に記載されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む。ある特定の実施形態において、フューリンタンパク質フラグメントは、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むタンパク質の少なくともアミノ酸残基108~715を含む。
【0167】
ある特定の実施形態において、フューリンタンパク質は、配列番号5に示される配列を有するタンパク質との少なくとも70%または80%、例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するタンパク質である。適切には、配列同一性%は、配列番号5に記載されるアミノ酸配列の全長にわたるものである。ある特定の実施形態において、フューリンタンパク質は、配列番号5のアミノ酸残基108~715からなる配列との少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するタンパク質である。
【0168】
ある特定の実施形態において、組換えプロ-CFIおよび組換えフューリンの両方が、同じ発現ベクターから共発現される。ある特定の実施形態において、組換えプロ-CFIおよび組換えフューリンは、ポリシストロニックRNAから発現される。
【0169】
ある特定の実施形態において、発現ベクターは、内部リボソーム進入配列(IRES)を含有し得る。ある特定の実施形態において、IRESは、プロ-CFIをコードする遺伝子とプロテアーゼ酵素をコードする遺伝子との間に配置されるであろう。
【0170】
ある特定の実施形態において、プロ-CFIをコードする遺伝子は、フューリンタンパク質をコードする遺伝子の上流にある。好ましい実施形態において、プロ-CFIをコードする遺伝子は、フューリンタンパク質をコードする遺伝子の下流にある。
【0171】
ある特定の実施形態において、プロ-CFIをコードする遺伝子は、フューリンタンパク質をコードする遺伝子の上流にあり、IRESは、プロ-CFIをコードする遺伝子とフューリンタンパク質をコードする遺伝子との間に配置される。好ましい実施形態において、プロ-CFIをコードする遺伝子は、フューリンタンパク質をコードする遺伝子の下流にあり、IRESは、プロ-CFIをコードする遺伝子とフューリンタンパク質をコードする遺伝子との間に配置される。
【0172】
ある特定の実施形態において、ベクターは、補体系タンパク質をコードする遺伝子の上流に、プロモーターエレメントを含有する。他の実施形態において、発現ベクターは、1つまたは複数のタンパク質をコードする遺伝子の上流に、プロモーターを含有し得る。
【0173】
ある特定の実施形態において、発現ベクターは、プロ-CFIをコードする遺伝子の上流に、プロモーターエレメントを含有する。他の実施形態において、発現ベクターは、1つまたは複数のタンパク質をコードする遺伝子の上流に、プロモーターを含有し得る。
【0174】
ある特定の実施形態において、組換え成熟CFIタンパク質は、配列番号2および配列番号3に記載されるそれぞれのアミノ酸配列を有する2つのポリペプチドを含み、2つのアミノ酸配列は、ジスルフィド結合によって連結されている。
【0175】
ある特定の実施形態において、組換え成熟CFIタンパク質は、配列番号2および配列番号3に記載されるそれぞれのアミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、または85%の配列同一性を有するそれぞれのアミノ酸配列を含む、第1のポリペプチドおよびさらなるポリペプチドを含み、第1のポリペプチドおよびさらなるポリペプチドは、ジスルフィド結合によって連結されている。
【0176】
ある特定の実施形態において、組換え成熟CFIタンパク質は、配列番号2および配列番号3に記載されるそれぞれのアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、例えば、少なくとも91%、92%、93%、または94%同一である、それぞれのアミノ酸配列を含む、第1のアミノ酸ポリペプチドおよびさらなるアミノ酸ポリペプチドを含み、第1のアミノ酸配列およびさらなるアミノ酸配列は、ジスルフィド結合によって連結されている。
【0177】
ある特定の実施形態において、組換え成熟CFIタンパク質は、配列番号2および配列番号3に記載されるそれぞれのアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性、例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%の同一性を有するそれぞれのアミノ酸配列を含む、第1のポリペプチドおよびさらなるポリペプチドを含み、第1のアミノ酸配列およびさらなるアミノ酸配列は、ジスルフィド結合によって連結されている。
【0178】
ある特定の実施形態において、組換え成熟CFIタンパク質は、C3b不活性化およびiC3b分解活性を保持する、配列番号2に記載されるアミノ酸配列のフラグメントを含む。
【0179】
ある特定の実施形態において、組換え成熟CFIタンパク質は、C3b不活性化およびiC3b分解活性を保持する、配列番号3に記載されるアミノ酸配列のフラグメントを含む。
【0180】
ある特定の実施形態において、配列に軽度の改変を有するタンパク質は、それらが機能性であることを条件として、同等に有用であり得る。2つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチドの文脈において、「配列同一性」、「同一性パーセント」、および「配列同一性パーセント」という用語は、2つまたはそれ以上の配列または部分配列が、最大の一致に関して(必要に応じてギャップを導入して)比較およびアライメントした場合に、同じであるか、または指定されたパーセンテージの同じであるヌクレオチドもしくはアミノ酸残基を有することを指し、任意の保存的アミノ酸置換は配列同一性の一部と考えない。同一性パーセントは、配列比較ソフトウェアもしくはアルゴリズムを使用して、または目視検査によって、測定され得る。
【0181】
アミノ酸またはヌクレオチド配列のアライメントを得るために使用することができる様々なアルゴリズムおよびソフトウェアが、当該技術分野において公知である。配列同一性パーセントを判定するのに好適なプログラムとしては、例えば、米国政府のNational Center for Biotechnology. Information BLASTウェブサイト(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)から入手可能なBLASTプログラムスイートが挙げられる。2つの配列間の比較は、BLASTNまたはBLASTPのいずれかのアルゴリズムを使用して行うことができる。BLASTNは、核酸配列を比較するために使用され、一方でBLASTPは、アミノ酸配列を比較するために使用される。ALIGN、ALIGN-2(Genentech、South San Francisco、California)、またはDNASTARから入手可能なMegAlignは、配列をアライメントするために使用することができるさらなる公的に入手可能なソフトウェアプログラムである。当業者であれば、特定のアライメントソフトウェアによる最大のアライメントに適切なパラメーターを決定することができる。ある特定の実施形態において、アライメントソフトウェアのデフォルトパラメーターが使用される。
【0182】
ある特定の実施形態において、組換え成熟補体I因子タンパク質は、参照配列と比較して、1つまたは複数の突然変異を含むアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態において、参照配列は、配列番号2および3に示される。ある特定の実施形態において、参照配列は、配列番号1に示される。ある特定の実施形態において、突然変異は、挿入、欠失、または置換であり得る。
【0183】
タンパク質の置換バリアントとしては、アミノ酸配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基が、除去されており、異なるアミノ酸残基がその場所に挿入されているものが挙げられる。本発明のある特定の実施形態の成熟組換えCFIタンパク質は、保存的または非保存的置換を含有し得る。「保存的置換」という用語は、本明細書において使用される場合、1つまたは複数のアミノ酸残基の、類似の生化学的特性を有するアミノ酸残基との置換に関する。典型的には、保存的置換は、結果として得られるタンパク質の活性にほとんど影響を及ぼさないかまたはまったく影響を及ぼさない。本明細書に記載されるCFIタンパク質のバリアントのスクリーニングを使用して、どのアミノ酸残基が、アミノ酸残基の置換を耐容し得るかを特定することができる。1つの例において、改変されたタンパク質の関連する生物学的活性は、1つまたは複数の保存的アミノ酸残基置換が実施された場合のCFIと比較して、25%を上回って減少されず、好ましくは、20%を上回って減少されず、特に、10%を上回って減少されない。
【0184】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載される組換え成熟CFIタンパク質は、CFI活性に対するCFI突然変異の影響を判定するために、1つまたは複数の機能性アッセイにおいて、産生され、特徴付けられる。産生および/または特徴付けられる組換え成熟CFIタンパク質は、例えば、G119R、L131R、V152M、G162D、R187Y、R187T、T203I、A240G、A258T、G287R、A300T、R317W、R339Q、V412M、もしくはP553Sバリアント、または任意の他のバリアントであり得、機能の喪失が疑われるか、または機能に対する影響が判定されることになる。
【0185】
補体I因子、またはそのフラグメント、バリアント、もしくは誘導体の機能的活性は、当業者に公知の任意の好適な方法を使用して判定され得る。例えば、補体I因子のタンパク質分解活性の測定は、Hsiung et al. (Biochem. J. (1982) 203: 293-298)に記載されている。CFI活性に関する溶血アッセイおよび膠着アッセイの両方が、Lachmann PJ & Hobart MJ (1978) “Complement Technology” in Handbook of Experimental Immunology 3rd edition Ed DM Weir Blackwells Scientific Publications Chapter 5A p17に記載されている。タンパク質分解アッセイも含むより詳細な説明が、Harrison RA (1996) in “Weir's Handbook of Experimental Immunology” 5th Edition Eds; Herzenberg Leonore A'Weir DM, Herzenberg Leonard A & Blackwell C Blackwells Scientific Publications Chapter 75, 36-37によって提供されている。膠着アッセイは、高度に感受性であり、固定されたC3bをiC3bに転換する第1の(二重)クリップおよびコングルチニンとの反応性の獲得の両方を検出し、固定されたiC3bで開始し、コングルチニンとの反応性の喪失を調べることによってC3dgへの最終クリップを検出するために、使用することができる。溶血アッセイは、C3bからiC3bへの転換に使用され、タンパク質分解アッセイは、すべてのクリップを検出する。
【0186】
ある特定の実施形態において、精製された成熟補体系タンパク質、例えば、精製された補体I因子は、本質的にプロテアーゼタンパク質またはそのフラグメントを含まない組成物に含まれていてもよい。ある特定の実施形態において、精製された成熟補体系タンパク質は、医薬組成物に含まれていてもよい。ある特定の実施形態において、前記医薬組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0187】
ある特定の実施形態において、補体系タンパク質は、前駆体CFIタンパク質である。ある特定の実施形態において、組換え前駆体CFIタンパク質は、ヒト前駆体CFIタンパク質である。組換え前駆体CFIタンパク質は、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0188】
ある特定の実施形態において、組換え前駆体補体系タンパク質は、タグを含む。ある特定の実施形態において、タグは、Hisタグである。
【0189】
ある特定の実施形態において、組換え前駆体CFIタンパク質は、真核生物細胞において発現される。タンパク質は、インビトロで発現され得る。
【0190】
ある特定の実施形態において、本方法は、原核生物細胞において、組換え前駆体CFIタンパク質を発現させるステップを含む。適切には、原核生物細胞は、大腸菌(Escherichia coli)である。他の実施形態において、原核生物細胞はまた、枯草菌(B. subtilis)であってもよい。
【0191】
ある特定の実施形態において、真核生物細胞は、昆虫、植物、および哺乳動物細胞から選択される。
【0192】
CFIタンパク質をコードするDNAをクローニングまたは発現させるのに好適な宿主細胞としては、原核生物、酵母、または高次真核生物細胞が挙げられる。
【0193】
この目的に好適な原核生物としては、真正細菌、例えば、グラム陰性生物またはグラム陽性生物、例えば、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、例えば、大腸菌属(Escherichia)、例えば、大腸菌(E. coli)、エンテロバクター(Enterobacter)、エルウイニア(Erwinia)、クレブシエラ(Klebsiella)、プロテウス(Proteus)、サルモネラ(Salmonella)、例えば、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、セラチア(Serratia)、例えば、霊菌(Serratia marcescans)、および赤痢菌(Shigella)、ならびに桿菌(Bacillus)、例えば、枯草菌(B. subtilis)およびB.リケニフォルミス(B.licheniformis)、シュードモナス(Pseudomonas)、例えば、緑濃菌(P. aeruginosa)、およびアクチノバクテリア(Actinobacteria)、例えば、ストレプトマイセス(Streptomyces)種が挙げられる。
【0194】
原核生物に加えて、真核微生物、例えば、糸状菌または酵母が、補体系タンパク質をコードするベクター、補体系タンパク質およびプロテアーゼをコードするベクター、CFIをコードするベクター、またはCFIおよびフューリンをコードするベクターに好適なクローニングまたは発現宿主であり得る。
【0195】
出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、または一般的なパン酵母が、低次真核宿主微生物間でもっとも一般的に使用されているが、その他のものも有用であり得る。
【0196】
ある特定の実施形態において、宿主細胞は、哺乳動物宿主細胞、例えば、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(例えば、COS-7);ヒト胎児腎臓株(例えば、293または293T細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(例えば、BHK);網膜色素上皮細胞;チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO)、マウスセルトリ細胞(例えば、TM4);サル腎臓細胞(例えば、CV1);アフリカミドリザル腎臓細胞(例えば、VERO-76);ヒト子宮頸がん細胞(例えば、HELA);イヌ腎臓細胞(例えば、MDCK);バッファローラット肝臓細胞(例えば、BRL 3A);ヒト肺細胞(例えば、W138);ヒト肝臓細胞(例えば、Hep G2);マウス乳房腫瘍(MMT 060562);TRI細胞、MRC 5細胞、およびFS4細胞である。
【0197】
宿主細胞に、タンパク質産生のために本明細書に記載される発現ベクターまたはクローニングベクターを形質転換し、プロモーターを誘導するため、形質転換体を選択するため、または所望される配列をコードする遺伝子を増幅するために適宜改変した従来的な栄養培地において培養する。
【0198】
ある特定の実施形態において、発現ベクターおよび/または発現系は、インビボ発現のためのものである。したがって、ある特定の実施形態において、発現系は、インビボ発現に適合されるベクターを含む。ある特定の実施形態において、ベクターは、ウイルスベクターである。ある特定の実施形態において、ベクターは、非ウイルスベクターである。
【0199】
「核酸分子」または「核酸配列」という用語は、本明細書において使用される場合、1つのヌクレオチド糖の3’位が、ホスホジエステル架橋によって次のものの5’位に連結されている、ヌクレオチドのポリマーを指す。線形核酸鎖において、一方の末端は、典型的に、遊離5’リン酸基を有し、他方は、遊離3’ヒドロキシル基を有する。核酸配列は、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチド、およびそれらのフラグメントもしくは部分、ならびに一本鎖または二本鎖であり得るゲノム起源または合成起源のDNAまたはRNAを指して、またセンス鎖またはアンチセンス鎖を表して、本明細書に使用され得る。本明細書において使用される場合、「核酸分子」および「核酸配列」という用語は、例えば、核酸分子がポリヌクレオチドまたはベクター内に含まれる場合、互換可能であることが、当業者には明確に理解されるであろう。
【0200】
「ベクター」、例えば、発現ベクターという用語は、本明細書において使用される場合、ウイルスベクター、バクテリオファージ、細菌人工染色体、または酵母人工染色体であり得る。ベクターは、DNAまたはRNAベクターであり得る。ベクターは、自己複製性染色体外ベクターであってもよく、適切には、DNAプラスミドである。いくつかの実施形態において、ベクターは、複製起点を含有する核酸分子を意味する。
【0201】
ヌクレオチド分子について考察する場合、「上流」および「下流」という用語は、DNAまたはRNAにおける遺伝子コードの相対的な位置を指す。「上流」および「下流」は、それぞれ、RNA転写が生じる5’から3’への方向に関する。上流は、RNA分子の5’末端の方向であり、下流は、3’末端の方向である。二本鎖DNAを考える場合、上流は、問題の配列の非鋳型鎖の5’末端の方向であり、下流は、3’末端の方向であり、一方で、鋳型鎖の3’末端は、問題の領域の上流であり、5’末端は、下流である。
【0202】
適切には、発現系は、ベクター、例えば、発現ベクターを含み得、これは、プロモーターエレメントをさらに含み得る。「プロモーター」および「プロモーターエレメント」という用語は、本明細書において使用される場合、細胞における核酸の発現を付与、活性化、または増強させることができる、合成または天然に由来する分子を意味する。プロモーターエレメントは、遺伝子の発現をさらに増強させる、ならびに/またはその空間的発現および/もしくは時間的発現を変化させるための、1つまたは複数の特定の転写調節配列を含み得る。プロモーターはまた、転写開始部位から数千塩基対程度離れて配置され得る、遠位エンハンサーまたはリプレッサーエレメントも含み得る。プロモーターは、遺伝子成分の発現を、構成的に調節し得るか、あるいは発現が生じる細胞、組織、もしくは器官に関して、または発現が生じる発生段階に関して、または外部刺激、例えば、生理学的ストレス、病原体、金属イオン、もしくは誘導剤に応答して、差次的に調節し得る。プロモーターは、誘導性であってもよい。
【0203】
ある特定の実施形態において、発現ベクターは、1つを上回るプロモーター(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つのプロモーター、またはそれ以上)を含有し得る。
【0204】
ある特定の実施形態において、プロモーターは、真核生物プロモーターであり得る。ある特定の実施形態において、プロモーターは、EF1aプロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、PGK1プロモーター、Ubcプロモーター、ヒトベータアクチンプロモーター、CAGプロモーター、TREプロモーター、UASプロモーター、Ac5プロモーター、ポリヘドロンプロモーター、CaMKIIaプロモーター、GAL1プロモーター、GAL10プロモーター、TEF1プロモーター、GDSプロモーター、ADH1プロモーター、ADH1プロモーター、CamV35Sプロモーター、Ubi、H1プロモーター、およびU6プロモーターからなる群から選択され得る。
【0205】
ある特定の実施形態において、ベクターは、配列番号6に記載される核酸配列を含む。
【0206】
ある特定の実施形態において、プロモーターは、原核生物プロモーター(例えば、lacプロモーター、T7A1プロモーター、T7A2プロモーター、T7A3プロモーター、araBADプロモーター、Ptacプロモーター、pLプロモーター、Hyper-Spankプロモーター)であり得る。
【0207】
ある特定の実施形態において、プロモーターは、ウイルスプロモーター(例えば、T7プロモーター、SP6プロモーター、T3プロモーター)であり得る。ある特定の実施形態において、発現ベクターは、翻訳開始配列(例えば、コザック配列)を含有し得る。ある特定の実施形態において、翻訳開始配列は、プロモーターの下流にあるであろう。
【0208】
ある特定の実施形態において、発現ベクターは、内部リボソーム進入部位(IRES)(例えば、脳心筋炎ウイルスIRES、ピコルナウイルスIRES、アフトウイルスIRES、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスIRES、A型肝炎IRES、C型肝炎IRES、ペスチウイルスIRES、ジシストロウイルスIRES、ムギクビレアブラムシ(Rhopalosiphum padi)ウイルスIRES、マレック病ウイルス、FGF-1 IRES、FGF-2 IRES、PDGF/c-sis IRES、VEGF IRES、IGF-II IRES、Apaf-1 IRES、Bag-1 IRES、Bcl-2 IRES、BiP IRES、Cat-1 IRES、C-myc IRES、CDK1 IRES、Cyclin D1 IRES、サイクリンT1 IRES、DAP5 IRES、FGF2 IRES、Hiap2 IRES、HIF-1α IRES、IGFR IRES、Mnt IRES、MTG8a IRES、p27 Kip1、p53 IRES、PDGF IRES、PITSLRE IRES、Rev-erb α、UNR IRES、XIAP IRES)を含有する。
【0209】
いくつかの実施形態において、IRESは、脳心筋炎ウイルスIRESである。
【0210】
ある特定の実施形態において、ベクターは、配列番号9に記載される核酸配列から構成される。ある特定の実施形態において、発現ベクターは、1つまたは複数の耐性マーカー、例えば、2つもしくは3つ、またはそれ以上を含有し得る。ある特定の実施形態において、耐性マーカーは、カナマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、アンピシリン、カルベニシリン、ブレオマイシン、エリスロマイシン、ポリミキシンB、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ハイグロマイシン、ネオマイシン、ブラストサイジン、ピューロマイシン、ジェネティシン、G418、およびZeiocinのうちの1つまたは複数から選択され得る。
【0211】
ある特定の実施形態において、ベクターは、配列番号13に記載される核酸配列を含む。
【0212】
ある特定の実施形態において、ベクターは、配列番号16に記載される核酸配列を含む。
【0213】
ある特定の実施形態において、発現ベクターは、配列番号13および配列番号16に記載される2つの核酸配列を含む。
【0214】
ある特定の実施形態において、発現ベクターは、少なくとも1つの酵母選択マーカー、例えば、2つもしくは3つ、またはそれ以上を含有し得る。ある特定の実施形態において、耐性マーカーは、HIS3、URA3、LYS2、LEU2、TRP1、MET15、ura4+、leu1+、ade6+、およびこれらの組合せから選択される。
【0215】
ある特定の実施形態において、発現ベクターは、転写終結配列を含有し得る。ある特定の実施形態において、発現ベクターは、ポリアデニル化(例えば、SV40、hGH、BGH、およびrbGlob)を促進する終結配列を含有し得る。ポリアデニル化は、AAUAAAモチーフまたはそのバリアントを含有し得る。
【0216】
ある特定の実施形態において、発現ベクターは、配列番号11に記載される核酸配列を含む。
【0217】
ある特定の実施形態において、本方法は、組換え前駆体CFIタンパク質の、組換えフューリンタンパク質との共発現を含む。ある特定の実施形態において、組換え前駆体CFIタンパク質およびフューリンタンパク質の両方が、同じ発現ベクターから共発現される。ある特定の実施形態において、プロ-CFIおよびフューリンは、ポリシストロニックRNAから発現される。
【0218】
ある特定の実施形態において、発現ベクターは、例えば、遺伝子療法として、インビボで使用するためのものである。ある特定の実施形態において、発現系は、例えば、遺伝子療法として、インビボで使用するためのものである。ある特定の実施形態において、発現ベクターは、組織選択的プロモーターエレメントを含む。
【0219】
ベクターには、細胞において自律的複製を誘導する核酸配列が含まれ得るか、または宿主細胞DNAへの組込みを可能にするのに十分な配列が含まれ得る。
【0220】
ある特定の実施形態において、ベクターは、プラスミド(例えば、DNAプラスミドまたはRNAプラスミド)、コスミド、細菌人工染色体、およびウイルスベクターから選択される。
【0221】
ある特定の実施形態において、ベクターは、アデノウイルス、複製欠損レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、およびレンチウイルスから選択されるウイルスベクターである。
【0222】
本明細書において使用される場合、「ウイルスベクター」という用語は、典型的には核酸分子の移入または細胞のゲノムへの組込みを促進するウイルス由来の核酸エレメントを含む核酸分子(例えば、移入プラスミド)、または核酸移入を媒介するウイルス粒子のいずれかを指して、使用される。
【0223】
ウイルス粒子は、典型的には、様々なウイルス成分を含み、核酸に加えて、宿主細胞成分も含むことがある。ウイルスベクターという用語はまた、核酸を細胞に移入することができるウイルスもしくはウイルス粒子、または移入される核酸そのもののいずれかを指し得る。ウイルスベクターおよび移入プラスミドは、主としてウイルスに由来する構造的および/または機能的遺伝子エレメントを含有する。
【0224】
本発明のある特定の実施形態は、治療的に有意なベクターを生成するための細胞の感染に関し得る。典型的には、ウイルスは、単純に、生理学的条件下において適切な宿主細胞に曝露され、ウイルスの取り込みが許容される。
【0225】
ある特定の実施形態において、本発明による核酸ベクターは、ウイルスベクター、例えば、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ワクシニア/ポックスウイルス、またはヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV))に由来するベクターである。
【0226】
ある特定の実施形態において、ベクターは、非組込みウイルスベクターであってもよい。
【0227】
「非組込みウイルスベクター」という用語は、典型的には宿主細胞のゲノムへの組換えDNAの組込みを誘起しない、ベクターを指す。
【0228】
ある特定の実施形態において、非組込み核酸ベクターは、アデノウイルスベクターである。
【0229】
標的細胞への組換えDNAの送達のための1つの方法は、アデノウイルス発現ベクターの使用を含む。アデノウイルスベクターは、ゲノムDNAへの組込みの能力が低いことが知られているが、この特性は、これらのベクターによって得られる遺伝子移入の効率が高いことによって釣り合いが取れている。
【0230】
本明細書において使用される場合、「アデノウイルス発現ベクター」という用語は、(a)コンストラクトのパッケージングを補助し、(b)そこでクローニングされた組換え遺伝子コンストラクトを最終的に発現させるのに十分なアデノウイルス配列を含有するコンストラクトを指す。
【0231】
アデノウイルスは、その中等度のゲノムサイズ、操作の容易さ、高い力価、広い標的細胞範囲、および高い感染性のため、遺伝子移入ベクターとして使用するのに特に好適である。ウイルスゲノムの両端は、ウイルスDNA複製およびパッケージングに必要なシスエレメントである100~200個の塩基対の末端逆位反復配列(ITR)を含有する。ゲノムの初期(E)および後期(L)領域は、ウイルスDNA複製の発生によって分割される異なる転写単位を含有する。E1領域(E1AおよびE1B)は、ウイルスゲノムおよびいくつかの細胞遺伝子の転写の調節を担うタンパク質をコードする。E2領域(E2AおよびE2B)の発現は、ウイルスDNA複製のためのタンパク質の合成をもたらす。これらのタンパク質は、DNA複製、後期遺伝子発現、および宿主細胞シャットオフに関与する。ウイルスキャプシドタンパク質の大半を含む、後期遺伝子の産物は、主要後期プロモーター(MLP)によって生じる単一の一次転写産物の主要なプロセシングの後にのみ、発現される。MLPは、感染の後期の間、特に効率的であり、このプロモーターから生じるすべてのmRNAは、5’-三連リーダー(TPL)配列を有し、これによって、それらは翻訳に好ましいmRNAとなっている。
【0232】
複製欠損であるアデノウイルスベクターの生成および増殖は、ヒトアデノウイルス5 DNAフラグメントによってヒト胎児腎臓細胞(HEK293細胞)から形質転換された、E1タンパク質を構成的に発現する、293と表記される固有のヘルパー細胞株に依存する。E3領域は、アデノウイルスゲノムからも得ることができるため、現在のアデノウイルスベクターは、293細胞の補助により、E1、E3、または両方の領域に、外来DNAを有する。
【0233】
ヘルパー細胞株は、ヒト細胞、例えば、ヒト胎児腎臓細胞、筋細胞、造血細胞、または他のヒト胎児間葉もしくは上皮細胞に由来し得る。あるいは、ヘルパー細胞は、ヒトアデノウイルスを許容する他の哺乳動物種の細胞に由来してもよい。そのような細胞としては、例えば、ベロ細胞、または他のサル胎児間葉もしくは上皮細胞が挙げられる。上述のように、好ましいヘルパー細胞株は、HEK293である。
【0234】
Racher et al. (1995)は、HEK-293細胞を培養し、アデノウイルスを増殖させるための改善された方法を開示している。1つの形式において、100~200mlの培地を含有する1リットルのシリコン処理したスピナーフラスコ(Techne、Cambridge、UK)に、個々の細胞を接種することによって、天然の細胞凝集体を成長させる。40rpmで撹拌した後、細胞生存性を、トリパンブルーで推定する。別の形式では、Fibra-Celマイクロキャリア(Bibby Sterlin、Stone、UK)(5g/l)を、以下のように用いる。5mlの培地に再懸濁した細胞接種材料を、250mlのErlenmeyerフラスコにおいて担体(50ml)に添加し、1~4時間、ときどき撹拌しながら静置する。次いで、培地を、50mlの新しい培地と置き換え、振盪を開始する。ウイルス産生のために、細胞を、約80%のコンフルエンスまで成長させ、その後に、培地を(最終体積の25%まで)置き換え、アデノウイルスを0.05の感染多重度で添加する。培養物を、一晩静置させ、その後に、体積を、100%まで増加させ、さらに72時間振盪を行う。
【0235】
アデノウイルスベクターが複製欠損であるか、または少なくとも条件的に欠損であるという要件以外に、アデノウイルスベクターの性質は、本発明の使用が成功するために重要であるとは考えられていない。アデノウイルスは、42個の異なる公知の血清型またはサブグループA~Fのうちのいずれかであり得る。サブグループCのアデノウイルス5型は、本発明において使用するための条件的複製欠損アデノウイルスベクターを得るための好ましい出発材料である。これは、アデノウイルス5型が、多くの生化学情報および遺伝子情報が公知のヒトアデノウイルスであり、アデノウイルスをベクターとして利用して多くの構築に使用されてきた歴史があるためである。上述のように、典型的なベクターは、複製欠損であり、アデノウイルスE1領域を有さない。したがって、E1コーディング配列が除去されている位置に形質転換コンストラクトを導入することが、もっとも便宜的であろう。しかしながら、アデノウイルス配列内のコンストラクトの挿入の位置は、重要ではない。目的の遺伝子をコードするポリヌクレオチドは、Karlsson et al. (1986)によって説明されているように、E3置き換えベクターの欠失したE3領域の代わりに挿入されてもよいか、またはヘルパー細胞株もしくはヘルパーウイルスがE4欠損を補うE4領域に挿入されてもよい。
【0236】
アデノウイルスの成長および操作は、当業者に公知である。アデノウイルスベクターの生成および使用に関する詳細は、Danthinne, X., Imperiale, M. Production of first-generation adenovirus vectors: a review. Gene Ther 7, 1707-1714 (2000); Nadeau, I., Kamen, A. Biotechnology Advances, Volume 20, Issues 7-8, 2003, Pages 475-489において見出すことができる。
【0237】
この群のウイルスは、高い力価、例えば、1ml当たり10プラーク形成単位で得ることができ、それらは、高度に感染性である。アデノウイルスの生命サイクルは、宿主細胞ゲノムへの組込みを必要としない。アデノウイルスベクターによって送達される外来遺伝子は、エピソーム性であり、したがって、宿主細胞に対して低い遺伝子毒性を有する。野生型アデノウイルスのワクチン接種研究において、副作用は報告されておらず、インビボでの遺伝子移入ベクターとしてのそれらの安全性および治療能が示される。アデノウイルスベクターは、真核生物遺伝子発現およびワクチンの開発において使用されている。アデノウイルスベクターはまた、ある特定のタイプのがんの処置に関しても記載されている(米国特許第5,789,244号明細書)。組換えアデノウイルスは、遺伝子療法に使用することができる。
【0238】
上述のように、遺伝子療法のためのアデノウイルスベクターの産生のための方法は、当該技術分野において周知である。
【0239】
ある特定の実施形態において、ベクターは、組込みウイルスベクターであってもよい。
【0240】
「組込みウイルスベクター」という用語は、典型的には宿主細胞のゲノムへの組換えDNAの組込みを誘起する、ベクターを指す。
【0241】
好ましい実施形態において、組込み核酸ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクターである。
【0242】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、高い組込み頻度を有し、非分裂細胞に感染することができるため、本発明のある特定の実施形態において使用するのに有望なベクター系である。AAVは、感染の広範な宿主範囲を有し、機能的機序が十分に特徴付けられている。
【0243】
組換えAAVベクターの生成および使用に関する詳細は、米国特許第5,139,941号明細書および米国特許第4,797.368号明細書において見出すことができる。
【0244】
すべての公知のAAV血清型のゲノム組成は、非常に類似している。AAVのゲノムは、約5,000ヌクレオチド(nt)未満の長さである線形の一本鎖DNA分子である。末端逆位反復配列(ITR)は、非構造複製(Rep)タンパク質および構造(VP)タンパク質の固有のコーディングヌクレオチド配列に隣接する。VPタンパク質(VP1、2、および3)は、キャプシドまたはタンパク質シェルを形成する。末端の145ntは、自己相補的であり、T字型のヘアピンを形成するエネルギー的に安定した分子内二重鎖が形成され得るように、組織化されている。これらのヘアピン構造は、ウイルスDNA複製の起点として機能し、細胞内DNAポリメラーゼ複合体のプライマーとして機能し得る。哺乳動物細胞における野生型AAV感染後に、Rep遺伝子25(すなわち、Rep78およびRep52)が、それぞれ、P5プロモーターおよびPI 9プロモーターから発現され、いずれのRepタンパク質も、ウイルスゲノムの複製における機能を有する。Rep ORFにおけるスプライシング事象により、実際には4つのRepタンパク質(すなわち、Rep78、Rep68、Rep52、およびRep40)の発現がもたらされる。しかしながら、哺乳動物細胞において、Rep78およびRep52タンパク質をコードするスプライシングされていないmRNAが、AAVベクター産生に十分であることが示されている。哺乳動物細胞におけるAAV感染は、キャプシドタンパク質産生を、2つのスプライスアクセプター部位の交互使用およびVP2のACG開始コドンの準最適な利用の組合せに依存している。
【0245】
組換えAAV導入遺伝子ベクター(rAAV)は、1つまたは好ましくはすべての野生型AAV遺伝子が欠失していてもよいが、依然として、機能的ITR核酸配列を含み得る。rAAV-導入遺伝子ベクターは、ウイルスタンパク質、例えば、AAVのrep(複製)またはcap(キャプシド)遺伝子をコードするいずれのヌクレオチド配列も含まない可能性がある。機能的ITR配列は、AAVビリオンの複製、救済、およびパッケージングに必要である。ITR配列は、野生型配列であり得るか、または野生型配列との少なくとも80%、85%、90%>、95%、もしくは100%の配列同一性を有し得るか、またはそれらが機能性のままである限り、例えば、ヌクレオチドの挿入、突然変異、欠失、もしくは置換によって、変更されていてもよい。この文脈において、機能性とは、キャプシドシェルへのゲノムのパッケージングを誘導し、次いで、形質導入しようとする宿主細胞または標的細胞における発現を可能にする、能力を指す。典型的には、野生型AAVゲノムの末端逆位反復配列は、rAAV-導入遺伝子ベクターにおいて保持される。ITRは、AAVウイルスゲノムからクローニングされ得るか、AAV ITRを含むベクターから切除され得る。ITRヌクレオチド配列は、標準的な分子生物学的技法を使用して、本明細書に定義される導入遺伝子にいずれかの末端でライゲーションされ得るか、またはITR間の野生型AAV配列が、所望されるヌクレオチド配列と置き換えられ得る。rAAV-導入遺伝子ベクターは、少なくとも、AAV血清型のうちの1つの末端逆位反復配列領域(ITR)のヌクレオチド配列、またはそれに実質的に同一であるヌクレオチド配列、ならびに2つのITR間に挿入される(好適な調節エレメントの制御下で)治療用タンパク質をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含み得る。現在使用されているrAAV-導入遺伝子ベクターの大半は、AAV血清型2に由来するITR配列を使用する。
【0246】
いくつかの実施形態において、AAV ITRは、AAV2またはAAV8 ITRである。好ましい実施形態において、AAV ITRは、AAV2 ITRである。
【0247】
12個のヒト血清型(AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、およびAAV12)ならびに100個を上回る非ヒト霊長類由来の血清型を含む、アデノ随伴ウイルス(AAV)の複数の血清型が、現在、特定されている。Howarth et al., Using viral vectors as gene transfer tools. Cell Biol. Toxicol. 26: 1-10 (2010)。AAVベクターの末端逆位反復配列(ITR)またはキャプシド配列の血清型は、任意の公知のヒトまたは非ヒトAAV血清型から選択され得る。本発明の実施形態の組換えAAVベクターの産生、精製、および特徴付けは、当該技術分野において公知の多数の方法のうちのいずれかを使用して行われ得る。研究室規模の産生方法の考察については、例えば、Clark, Recent advances in recombinant adeno-associated virus vector production. Kidney Int. 61s:9-15 (2002)を参照されたい。
【0248】
ある特定の実施形態において、発現系は、所望される発現カセットに隣接する末端逆位反復配列(ITR)をコードするAAV由来の核酸ベクターを含む。ベクターは、発現カセットの第1の末端に、前記発現カセットプロモーターに隣接する少なくとも1つのITR(L-ITR)を含み得、第1の末端とは逆の発現カセットの第2の末端に、ポリアデニル化配列に隣接する少なくとも1つのITR(R-ITR)を含み得る。
【0249】
「隣接する」とは、ITRが、導入遺伝子発現カセットの両側、すなわち、5’末端および3’末端に位置することを意味する。ITRは、それによって、導入遺伝子発現カセットをフレームに入れる。
【0250】
ウイルスベクター、例えば、AAVベクターは、任意の好適なプロモーターを含み得、その選択は、当業者によって容易に行われ得る。プロモーター配列は、構成的に活性であってもよく(すなわち、任意の宿主細胞バックグラウンドで作動可能である)、または代替として、特定の宿主細胞環境においてのみ活性であり、それによって、特定の細胞型における導入遺伝子の標的化発現を可能にしてもよい(例えば、組織特異的プロモーター)。ベクターが、治療のために投与される場合、プロモーターは、標的細胞において機能性であるべきことが、好ましい。
【0251】
網膜細胞特異的ではない好ましいプロモーターとしては、必要に応じてサイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーエレメントと組み合わされた、ニワトリベータ-アクチン(CBA)プロモーターが挙げられる。本発明において使用するための例示的なプロモーターは、CAGプロモーターである。
【0252】
例示的なCMVプロモーター配列は、以下である。
【0253】
【0254】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、配列番号17に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するヌクレオチド配列を有するプロモーターを含む。好ましくは、ここで、ヌクレオチド配列は、配列番号17によって表されるプロモーターの機能的活性を、実質的に保持する。
【0255】
例示的なCAGプロモーター配列は、以下である。
【0256】
【0257】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、配列番号18に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するヌクレオチド配列を有するプロモーターを含む。好ましくは、ヌクレオチド配列は、配列番号18によって表されるプロモーターの機能的活性を、実質的に保持する。
【0258】
他の実施形態において、ウイルスベクターは、配列番号18のヌクレオチド配列を有するプロモーターを含む。
【0259】
好ましくは、プロモーターは、前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子およびフューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子の上流にある。
【0260】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、内部リボソーム進入部位(IRES)をコードする核酸分子をさらに含み、好ましくは、IRESをコードする核酸分子は、前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子またはそのバリアントと、フューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子との間に配置される。
【0261】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、転写後調節エレメントをコードするヌクレオチド配列をさらに含む。好ましくは、ヌクレオチド配列は、ウッドチャック肝炎転写後調節エレメント(WPRE)調節エレメントまたはそのバリアントをコードする。好ましくは、WPRE調節エレメントは、前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子およびフューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子の下流にある。
【0262】
例示的なWPREは、以下である。
【0263】
【0264】
最小ガンマおよびアルファエレメントのみを含有する、WPREの短縮バージョン(WPRE3と称される、Choi, J.-H. et al. (2014) Molecular Brain 7: 17)もまた、本発明において使用され得る。例示的なWPRE3配列は、以下である。
【0265】
【0266】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、配列番号19または20に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するヌクレオチド配列を有する転写後調節エレメントを含む。好ましくは、ここで、ヌクレオチド配列は、配列番号19または20によって表される転写後調節エレメントの機能的活性を、実質的に保持する。
【0267】
他の実施形態において、ウイルスベクターは、配列番号19または20のヌクレオチド配列を有する転写後調節エレメントを含む。
【0268】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、ポリ-Aシグナルをコードするヌクレオチド配列をさらに含む。好ましくは、ポリ-Aシグナルは、前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子およびフューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子の下流にある。
【0269】
好ましいポリアデニル化部位は、ウシ成長ホルモンポリ-A(bGHポリ-A)シグナルである。したがって、いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、ウシ成長ホルモンポリ-Aシグナルをコードするヌクレオチド配列を含む。好ましくは、ウシ成長ホルモンポリ-Aシグナルは、前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子およびフューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子の下流にある。
【0270】
例示的なウシ成長ホルモンポリ-A(bGHポリ-A)シグナルは、以下である。
【0271】
【0272】
さらなる例示的なウシ成長ホルモンポリ-A(bGHポリ-A)シグナルは、以下である。
【0273】
【0274】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、配列番号21または22に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するヌクレオチド配列を有するポリアデニル化シグナルを含む。好ましくは、ここで、ヌクレオチド配列は、配列番号21または22によって表されるポリアデニル化シグナルの機能的活性を、実質的に保持する。
【0275】
他の実施形態において、ウイルスベクターは、配列番号21または22のヌクレオチド配列を有するポリアデニル化シグナルを含む。
【0276】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、
(a)5’AAV ITRと、
(b)CMVプロモーターまたはCAGプロモーターと、
(c)前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子と、
(d)IRES部位または自己切断性ペプチド、例えば、2A配列をコードする核酸分子と、
(e)フューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子と、
(f)ポリ-Aシグナル、好ましくは、ウシ成長ホルモンポリ-Aシグナルと、
(g)3’AAV ITRと
を含む。
【0277】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、
(a)5’AAV ITRと、
(b)CMVプロモーターまたはCAGプロモーターと、
(c)前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子と、
(d)IRES部位または自己切断性ペプチド、例えば、2A配列をコードする核酸分子と、
(e)フューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子と、
(f)必要に応じてWPRE3調節エレメントである、WPRE調節エレメントと、
(g)ポリ-Aシグナル、好ましくは、ウシ成長ホルモンポリ-Aシグナルと、
(h)3’AAV ITRと
を含む。
【0278】
好適には、(c)および(e)によって定義される核酸分子は、ベクター内で相互の位置にあり得る。
【0279】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、
(a)5’AAV ITRと、
(b)CMVプロモーターまたはCAGプロモーターと、
(c)フューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子と、
(d)IRES部位または自己切断性ペプチド、例えば、2A配列をコードする核酸分子と、
(e)前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子と、
(f)ポリ-Aシグナル、好ましくは、ウシ成長ホルモンポリ-Aシグナルと、
(g)3’AAV ITRと
を含む。
【0280】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、
(a)5’AAV ITRと、
(b)CMVプロモーターまたはCAGプロモーターと、
(c)フューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子と、
(d)IRES部位または自己切断性ペプチド、例えば、2A配列をコードする核酸分子と、
(e)前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子と、
(f)必要に応じてWPRE3調節エレメントである、WPRE調節エレメントと、
(g)ポリ-Aシグナル、好ましくは、ウシ成長ホルモンポリ-Aシグナルと、
(h)3’AAV ITRと
を含む。
【0281】
好適には、(b)が、CAGプロモーターを含む実施形態において、(f)は、WPRE3調節エレメントであり得る。
【0282】
ウイルスベクターは、5’から3’に、(a)~(g)または(a)~(h)を順に含み得る。
【0283】
ある特定の実施形態において、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、またはレンチウイルスであり、もっとも好ましくは、AAVベクターである。
【0284】
いくつかの実施形態において、AAVベクターは、AAV粒子の形態である。
【0285】
ウイルスベクターおよびウイルスベクター粒子、例えば、AAVに由来するものを調製および改変する方法は、当該技術分野において周知である。本発明の一実施形態において、AAVベクター粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、Rec2、またはRec3 AAVベクター粒子である。
【0286】
一実施形態において、AAVは、AAV1、AAV2、AAV5、AAV7、AAV8、またはAAV8血清型であり得る。
【0287】
一実施形態において、AAVは、AAV2またはAAV8血清型であり得る。
【0288】
AAVの向性は、異なる血清型に由来するキャプシドおよびゲノムを組み合わせることによって、微調整され得る。本発明のAAV粒子は、1つの血清型のITRを有するAAVゲノムまたは誘導体が、異なる血清型のキャプシドにパッケージングされた、キャプシド転換形態を含み得る。本発明のAAV粒子は、2つまたはそれ以上の異なる血清型に由来する未改変のキャプシドタンパク質の混合物がウイルスキャプシドを構成している、モザイク形態も含む。キメラ、シャッフル型、またはキャプシド改変型の誘導体は、AAVベクターに1つまたは複数の所望される機能性を提供するように選択され得る。
【0289】
例えば、血清型AAV1~13のうちのいずれか1つに由来するITRは、異なる血清型のキャプシド、例えば、AAV1-12、AAV7m8、AAV-DJ、AAV-DJ8、AAV-DJ9、AAVrh8、AAVrh8R、AAVrh10、AAVrh39、AAVRec2、またはAAVRec3のうちのいずれか1つから選択されるAAVキャプシドに保持およびパッケージングされてもよい。
【0290】
いくつかの実施形態において、AAV2のITRは、異なる血清型のキャプシドに保持およびパッケージングされる。
【0291】
本発明において使用しようとする血清型は、送達経路および形質導入しようとする標的細胞に応じて選択することができる。
【0292】
AAV血清型は、AAVウイルスの感染の組織特異性(または向性)を決定する。したがって、本発明により患者に投与されるAAVにおいて使用するための好ましいAAV血清型は、標的細胞、好ましくは、眼内の標的細胞の感染に対する天然の向性または高い効率を有するものである。一実施形態において、本発明における使用のためのAAV血清型は、神経感覚網膜、網膜色素上皮、および/または脈絡膜の細胞に形質導入するものである。
【0293】
いくつかの実施形態において、本発明のAAV粒子としては、AAV2ゲノムおよびAAV2キャプシドタンパク質を有するもの(AAV2/2)、AAV2ゲノムおよびAAV5キャプシドタンパク質を有するもの(AAV2/5)、ならびにAAV2ゲノムおよびAAV8キャプシドタンパク質を有するもの(AAV2/8)が挙げられる。
【0294】
好ましくは、ウイルスベクターまたはウイルスベクター粒子は、医薬として使用するためのもの、好ましくは、補体に媒介される障害の処置において使用するためのものである。
【0295】
補体I因子をコードする野生型ヌクレオチド配列の例は、本明細書において、配列番号10として開示されている。
【0296】
いくつかの実施形態において、補体I因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号10に対して少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する。好ましくは、ヌクレオチド配列によってコードされたタンパク質は、配列番号1によって表されるタンパク質の機能的活性を、実質的に保持する。
【0297】
他の実施形態において、補体I因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号10である。
【0298】
他の実施形態において、補体I因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号10の55位~1752位に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する。好ましくは、ヌクレオチド配列によってコードされたタンパク質は、配列番号1によって表されるタンパク質の機能的活性を、実質的に保持する。
【0299】
他の実施形態において、補体I因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号10の55位~1752位である。
【0300】
他の実施形態において、補体I因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号1に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする。好ましくは、ここで、アミノ酸配列は、配列番号1によって表されるタンパク質の機能的活性を、実質的に保持する。
【0301】
他の実施形態において、補体I因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号1のアミノ酸配列をコードする。
【0302】
他の実施形態において、補体I因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号1の19位~583位に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする。好ましくは、ここで、アミノ酸配列は、配列番号1によって表されるタンパク質の機能的活性を、実質的に保持する。
【0303】
他の実施形態において、補体I因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号1の19位~583位のアミノ酸配列をコードする。
【0304】
本発明のさらなる態様において、組換え成熟補体I因子タンパク質またはそのバリアントを産生させるための方法であって、組換え前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアント、および組換えフューリンタンパク質またはそのバリアントを、発現されるフューリンタンパク質が発現される組換え前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントを切断して、組換え成熟補体I因子タンパク質またはそのバリアントを形成するのに好適な条件下で、宿主細胞において発現させるステップを含む、方法が、提供される。
【0305】
ある特定の実施形態において、本方法は、細胞に、前駆体補体I因子タンパク質をコードする核酸分子を形質転換するステップを含む。適切には、本方法は、細胞に、前駆体補体系タンパク質をコードするか、または本明細書に記載されるように、前駆体補体系タンパク質およびプロテアーゼ酵素(例えば、フューリン)をコードする、ベクターを形質転換するステップを含む。ある特定の実施形態において、前駆体補体系タンパク質およびプロテアーゼ酵素は、同じ核酸分子から共発現される。ある特定の実施形態において、前駆体補体系およびプロテアーゼ酵素は、ポリシストロニックRNAから共発現される。
【0306】
適切には、本方法は、細胞に、前駆体CFIタンパク質、もしくはフューリンをコードするか、または本明細書に記載されるように、前駆体CFIタンパク質およびプロテアーゼ酵素(例えば、フューリン)をコードする、少なくとも1つのベクターを形質転換するステップを含む。
【0307】
ある特定の実施形態において、前駆体-CFIおよびプロテアーゼ酵素(例えば、フューリン)は、同じ核酸分子から共発現される。ある特定の実施形態において、前駆体-CFIおよびプロテアーゼ酵素は、ポリシストロニックRNAから共発現される。
【0308】
本発明のある態様において、遺伝子療法の方法における、本明細書に定義される発現系の使用であって、発現ベクターが、細胞において自律的複製を誘導する1つもしくは複数の配列を含み得る、かつ/または宿主細胞DNAへの組込みを可能にするのに十分な配列を含み得る、使用が、提供される。
【0309】
ある特定の実施形態において、本発明は、対象の遺伝子療法の方法であって、対象が、補体系に媒介される障害に罹患している、方法を提供する。
【0310】
ある特定の実施形態において、本発明は、発現系および/または発現ベクターであって、ヒト対象内の成熟補体I因子の濃度を増加させる、発現系および/または発現ベクターを提供する。
【0311】
本発明のある態様において、対象における補体系に媒介される障害を処置および/または予防する方法であって、本発明のある特定の態様の発現系および/または発現ベクターを、それを必要とする対象に投与するステップを含む、方法が、提供される。
【0312】
ある特定の実施形態において、本方法は、CFIタンパク質における突然変異と関連する障害の処置および/または予防のためのものである。
【0313】
ある特定の実施形態において、本方法は、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS);膜性増殖性糸球体腎炎2型(MPGN2);ハンチントン病;ギランバレー症候群、多発性硬化症(MS)、アルツハイマー病、パーキンソン病、アレルギー性脳脊髄炎、重症筋無力症(MG);全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、リウマチ性関節炎;心臓血管疾患もしくは状態、例えば、心筋梗塞、慢性心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、もしくは卒中;血液障害、例えば、発作性夜間ヘモグロビン尿症;呼吸器障害、例えば、喘息;皮膚疾患、例えば、水疱性類天疱瘡もしくは乾癬;臓器移植拒絶後の処置、移植片対宿主病;眼疾患もしくは状態、例えば、加齢性黄斑変性(AMD)、緑内障、糖尿病性網膜症、早期発症型黄斑変性、シュタルガルト病、中心性漿液性網脈絡膜症、もしくは網膜色素変性、視神経脊髄炎、もしくはブドウ膜炎、または他の炎症性疾患および/もしくは自己免疫疾患から選択される、補体に媒介される障害の処置および/または予防のためのものである。
【0314】
ある特定の実施形態において、本方法は、CFIタンパク質欠乏の処置のためのものである。ある特定の実施形態において、本方法は、C3沈着と関連する糸球体腎炎、リウマチ性関節炎、および全身性エリテマトーデス(SLE)から選択される、CFIタンパク質欠乏と関連する障害の処置のためのものである。
【0315】
好ましい実施形態において、障害は、補体に媒介される眼障害または疾患、例えば、加齢性黄斑変性(AMD)、緑内障、糖尿病性網膜症、早期発症型黄斑変性、シュタルガルト病、中心性漿液性網脈絡膜症、もしくは網膜色素変性、視神経脊髄炎、もしくはブドウ膜炎である。もっとも好ましくは、障害は、AMDである。
【0316】
ある特定の実施形態において、本方法は、対象に、本発明のある特定の態様の発現ベクターを投与するステップを含む。ある特定の実施形態において、発現ベクターによって発現される組換え成熟CFIタンパク質は、治療において使用するためのものである。ある特定の実施形態において、本方法は、対象の眼の領域に、発現ベクターを投与するステップを含む。ある特定の実施形態において、本方法は、対象の眼に、本発明のある特定の態様の発現ベクターを注射するステップを含む。ある特定の実施形態において、眼への投与は、網膜下、脈絡膜上、または硝子体内注射によるものである。適切には、本方法は、補体に媒介される眼障害または疾患、例えば、加齢性黄斑変性(AMD)、緑内障、糖尿病性網膜症、早期発症型黄斑変性、シュタルガルト病、中心性漿液性網脈絡膜症、もしくは網膜色素変性、視神経脊髄炎、もしくはブドウ膜炎の処置のためのものである。好ましくは、障害は、加齢性黄斑変性である。
【0317】
ある特定の実施形態において、本方法は、対象に、本発明のある特定の態様の発現系を投与するステップを含む。ある特定の実施形態において、発現系によって発現される組換え成熟CFIタンパク質は、治療において使用するためのものである。ある特定の実施形態において、本方法は、対象の眼の領域に、発現系を投与するステップを含む。ある特定の実施形態において、本方法は、対象の眼に、本発明のある特定の態様の発現系を注射するステップを含む。ある特定の実施形態において、眼への投与は、網膜下、脈絡膜上、または硝子体内注射によるものである。適切には、本方法は、補体に媒介される眼障害または疾患、例えば、加齢性黄斑変性(AMD)、緑内障、糖尿病性網膜症、早期発症型黄斑変性、シュタルガルト病、中心性漿液性網脈絡膜症、もしくは網膜色素変性、視神経脊髄炎、もしくはブドウ膜炎の処置のためのものである。好ましくは、障害は、加齢性黄斑変性である。
【0318】
いくつかの実施形態において、地図状萎縮の形成が、予防もしくは低減され、かつ/または地図状萎縮の量が、低減される。
【0319】
いくつかの実施形態において、地図状萎縮の進行が、遅延される。
【0320】
いくつかの実施形態において、対象の処置される眼への投与後12カ月間にわたって、同じ期間にわたる未処置の眼と比べて、地図状萎縮面積の増加に少なくとも10%の低減がある。他の実施形態において、対象の処置される眼への投与後12カ月間にわたって、同じ期間にわたる未処置の眼と比べて、地図状萎縮面積の増加に少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の低減がある。
【0321】
いくつかの実施形態において、C3b不活性化およびiC3b分解活性のレベルは、対象、または対象の眼、例えば、網膜色素上皮(RPE)房水および/もしくは硝子体液において、必要に応じて、対象、または眼もしくはそのRPEの正常レベルを上回るレベルまで、増加する。
【0322】
いくつかの実施形態において、使用は、(a)眼および/もしくは血清において正常なレベルの補体I因子活性もしくは濃度、好ましくは血清中、少なくとも30μg/mL、例えば、30~40μg/mLを有する、ならびに/または
(b)珍しい補体I因子バリアント対立遺伝子を有さない、
対象における障害を処置または予防するためのものである。
【0323】
ある特定の実施形態において、本方法は、経口投与、非経口投与、および/または吸入を通じて、本発明のある特定の態様の発現ベクターを投与するステップを含む。ある特定の実施形態において、本方法は、経口投与、非経口投与、および/または吸入を通じて、発現ベクターによって発現される組換え成熟CFIタンパク質を投与するステップを含む。
【0324】
ある特定の実施形態において、本方法は、経口投与、非経口投与、および/または吸入を通じて、本発明のある特定の態様の発現系を投与するステップを含む。ある特定の実施形態において、経口投与、非経口投与、および/または吸入を通じて、発現系によって発現される組換え成熟CFIタンパク質を投与するステップを含む。
【0325】
発現ベクター、系、および/または組換え成熟CFIタンパク質は、組成物において投与されてもよい。
【0326】
したがって、ある特定の実施形態において、発現ベクター、系、および/または組換え成熟CFIタンパク質を含む組成物が、提供される。
【0327】
発現ベクター、系、および/または組換え成熟CFIタンパク質、またはそれを含む組成物は、それを必要とする対象、例えば、補体系に媒介される障害に罹患している対象に、投与するためのものであり得る。
【0328】
組成物は、経口投与および/または非経口投与のためのものであり得る。組成物は、対象の眼に投与するためのものであり得る。
【0329】
担体または他の材料の厳密な性質は、投与の経路、例えば、網膜下、脈絡膜上、または硝子体内注射に応じて、当業者によって決定され得る。
【0330】
本発明のある特定の実施形態の組成物は、賦形剤とともに、またはそれを伴わずに、投与され得る。賦形剤としては、例えば、封入材料または添加剤、例えば、吸収促進剤、抗酸化剤、結合剤、緩衝化剤、コーティング剤、着色剤、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、増量剤、充填剤、香味剤、保水剤、滑沢剤、香料、保存剤、噴射剤、剥離剤、滅菌剤、甘味剤、可溶化剤、湿潤剤、およびこれらの混合物が挙げられる。賦形剤は、薬学的に許容される賦形剤であり得る。
【0331】
医薬組成物は、典型的には、液体形態である。液体医薬組成物は、一般に、液体担体、例えば、水、石油、動物油もしくは植物油、鉱油、または合成油を含む。生理食塩水溶液、塩化マグネシウム、デキストロースもしくは他の糖類溶液、またはグリコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、もしくはポリエチレングリコールが、含まれ得る。いくつかの場合において、界面活性剤、例えば、プルロニック酸(pluronic acid)(PF68)0.001%が、使用され得る。
【0332】
固体剤形において経口で投与しようとするある特定の実施形態の組成物を含む組成物の調製のための賦形剤としては、例えば、寒天、アルギン酸、水酸化アルミニウム、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、1,3-ブチレングリコール、カルボマー、ヒマシ油、セルロース、酢酸セルロース、カカオバター、トウモロコシデンプン、トウモロコシ油、綿実油、クロスポビドン、ジグリセリド、エタノール、エチルセルロース、ラウリン酸エチル、オレイン酸エチル、脂肪酸エステル、ゼラチン、胚芽油、グルコース、グリセロール、ラッカセイ油、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、イソプロパノール、等張生理食塩水、ラクトース、水酸化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、麦芽、マンニトール、モノグリセリド、オリーブ油、ピーナツ油、リン酸カリウム塩、ジャガイモデンプン、ポビドン、プロピレングリコール、リンガー溶液、ベニバナ油、ゴマ油、カルボキシメチルセルロースナトリウム、リン酸ナトリウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ナトリウムソルビトール、ダイズ油、ステアリン酸、フマル酸ステアリル、スクロース、界面活性剤、タルク、トラガカント、テトラヒドロフルフリルアルコール、トリグリセリド、水、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0333】
液体剤形において経口で投与しようとする本発明のある特定の実施形態の組成物の調製のための賦形剤としては、例えば、1,3-ブチレングリコール、ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、エタノール、ソルビタンの脂肪酸エステル、胚芽油、ラッカセイ油、グリセロール、イソプロパノール、オリーブ油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ゴマ油、水、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0334】
浸透圧で投与しようとする本発明のある特定の実施形態の組成物の調製のための賦形剤としては、例えば、クロロフルオロ炭化水素、エタノール、水、およびこれらの混合物が挙げられる。非経口で投与しようとする本発明のある特定の実施形態の組成物の調製のための賦形剤としては、例えば、1,3-ブタンジオール、ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、デキストロース、胚芽油、ラッカセイ油、リポソーム、オレイン酸、オリーブ油、ピーナツ油、リンガー溶液、ベニバナ油、ゴマ油、ダイズ油、U.S.P.または等張塩化ナトリウム溶液、水、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0335】
直腸または膣に投与しようとする本発明の化合物を含む組成物の調製のための賦形剤としては、例えば、カカオバター、ポリエチレングリコール、ワックス、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0336】
適切には、発現ベクター、系、および/または組換え成熟CFIタンパク質は、治療有効量での投与のためのものである。本明細書において使用される場合、「治療有効量」という用語は、患者において所望される治療作用、例えば、標的状態の予防もしくは処置、またはその状態と関連する症状の緩和をもたらす、薬剤、例えば、ある特定の実施形態の薬剤の量を指すとする。適切には、厳密な治療有効量は、所与の対象における処置の有効性という点で、もっとも有効な結果をもたらすであろう組成物の量である。この量は、治療用化合物の特徴(活性、薬物動態、薬力学、およびバイオアベイラビリティを含む)、対象の生理学的状態(年齢、性別、疾患の種類およびステージ、全般的な身体状態、所与の投薬量に対する応答性、および医薬品の種類を含む)、製剤中の1つまたは複数の薬学的に許容される担体の性質、ならびに投与の経路を含むがこれらに限定されない、様々な要因に応じて変動するであろう。臨床および薬理学の分野の当業者であれば、日常的な実験を通じて、すなわち、化合物の投与に対する患者の応答をモニタリングし、それに応じて投薬量を調節することによって、投与する組成物の治療有効量を決定することができるであろう。さらなる案内については、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 21st Edition, Univ. of Sciences in Philadelphia (USIP), Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, Pa., 2005を参照されたい。
【0337】
いくつかの実施形態において、本発明の発現ベクターまたは発現系は、網膜下、脈絡膜上、または硝子体内注射のための医薬組成物に製剤化され得る。注射される医薬組成物の体積は、例えば、およそで約10~500μL、例えば、約50~500、100~500、200~500、300~500、400~500、50~250、100~250、200~250、または50~150μLの体積であり得る。体積は、例えば、約10、50、100、150、200、250、300、350、400、450、または500μLであり得る。好ましくは、体積は、100μLである。
【0338】
当業者であれば、個々の網膜下、網膜直接、脈絡膜上、または硝子体内注射について熟知しており、十分にそれを実行することができるであろう。
【0339】
本明細書に記載される1つの実施形態において、発現ベクターもしくは発現系、またはそれを含む医薬組成物は、対象の寿命の間に、1回以下、または2回以下で投与される。
【0340】
いくつかの実施形態において、網膜下、脈絡膜上、または硝子体内注射によって投与される医薬組成物は、片眼当たり少なくとも1e8または1e9ベクターゲノム[vg]の用量で、例えば、1e8vg/眼、2e8vg/眼、1e9vg/眼、2e9vg/眼、1e10vg/眼、2e10vg/眼、5e10vg/眼、1e11vg/眼、2e11vg/眼、5e11vg/眼、または1e12vg/眼の用量で投与され得る。
【0341】
本発明のさらなる態様において、組換え成熟CCFIタンパク質を、1つまたは複数の細胞成分から単離する方法が、提供される。ある特定の実施形態において、本方法は、組換え成熟CFIタンパク質を、組換え前駆体CFIタンパク質から分離するためのものである。ある特定の実施形態において、本方法は、組換え前駆体および成熟補体系タンパク質を含有する調製物を、必要に応じて、1回または複数回さらに、前駆体および成熟形態のCFIタンパク質がクロマトグラフィー材料に結合する条件下で、前記材料と接触させるステップを含む。ある特定の実施形態において、クロマトグラフィー材料は、
a)強カチオン交換クロマトグラフィー樹脂(例えば、スルホン化ポリスチレン)、
b)弱カチオン交換クロマトグラフィー樹脂(例えば、カルボン酸メタクリレート)、
c)強アニオン交換クロマトグラフィー樹脂(例えば、第四級アンモニウムポリスチレン)、
d)弱アニオン交換クロマトグラフィー樹脂(例えば、ポリアミン、ポリスチレン、もしくはフェノール)、
e)プロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂、
f)プロテインG親和性クロマトグラフィー樹脂、
g)プロテインA/G親和性クロマトグラフィー樹脂、
h)プロテインL親和性クロマトグラフィー樹脂、
i)固定化された金属親和性クロマトグラフィー樹脂(例えば、ニッケル-NTA樹脂もしくはコバルト-NTA樹脂)、
j)グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)親和性クロマトグラフィー樹脂、
k)疎水性相互作用樹脂(例えば、ブチル樹脂もしくはオクチル樹脂)、
l)OX21モノクローナル抗体-NHS-セファロース)、および/または
m)サイズ排除クロマトグラフィー樹脂
を含む。
【0342】
ある特定の実施形態において、本方法は、組換え前駆体および成熟補体系タンパク質、ならびに必要に応じて1つまたは複数の細胞成分を含む調製物を、少なくとも1つのさらなるクロマトグラフィー材料と接触させるステップ(例えば、調製物を、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のクロマトグラフィー材料と接触させるステップ)を含む。
【0343】
ある特定の実施形態において、本方法は、一連の別の溶出物を得るために、前駆体および成熟形態の補体I因子タンパク質を含有する調製物を、少なくとも1つのさらなるクロマトグラフィー材料と接触させるステップを含み、ここで、前駆体補体系タンパク質および成熟形態の補体系タンパク質は、互いに実質的に分離されており、かつ/または前駆体補体I因子タンパク質および成熟形態の補体I因子タンパク質は、他の細胞成分から実質的に分離されている。
【0344】
ある特定の実施形態において、本方法は、前駆体および成熟形態の補体I因子タンパク質を含有する調製物を、親和性クロマトグラフィー材料および/またはカチオン交換(CEX)クロマトグラフィー材料と接触させるステップを含み、必要に応じて、親和性クロマトグラフィー材料は、OX21モノクローナル抗体にカップリングされたクロマトグラフィー材料であり得る。
【0345】
ある特定の実施形態において、本方法は、前駆体および成熟形態の補体I因子タンパク質を含有する調製物を、OX21モノクローナル抗体にカップリングされたクロマトグラフィー材料と接触させるステップを含む。
【0346】
ある特定の実施形態において、本方法は、以下の
(a)前駆体補体I因子タンパク質および成熟形態の補体I因子タンパク質の混合物を含む調製物を、カチオン交換クロマトグラフィー材料と、前記前駆体補体I因子タンパク質および前記成熟形態の補体I因子タンパク質がそれぞれクロマトグラフィー材料に結合する条件下で接触させるステップと、
(b)クロマトグラフィー材料を、1つまたは複数の塩を含有する溶出緩衝溶液と接触させるステップと、
(c)一連の別の溶出物を得るために、前記前駆体補体I因子タンパク質および前記成熟形態の補体I因子タンパク質を溶出させるステップと
を含み、
一連の溶出物内で、前駆体補体I因子タンパク質および成熟形態の補体I因子タンパク質は、互いに実質的に分離している。
【0347】
ある特定の実施形態において、ステップ(a)の前に、本方法は、
i)前駆体補体I因子タンパク質、成熟形態の補体I因子タンパク質、および1つまたは複数の細胞成分の混合物を含む調製物を、親和性クロマトグラフィー材料と、前記前駆体補体I因子タンパク質および前記成熟形態の補体I因子タンパク質がそれぞれクロマトグラフィー材料に結合することができる条件下で接触させるステップと、
ii)クロマトグラフィー材料を、1つまたは複数の塩を含有する溶出緩衝溶液と接触させるステップと、
iii)1つまたは複数の細胞成分を実質的に含まない前記前駆体補体I因子タンパク質および前記成熟形態の補体I因子タンパク質の第2の調製物を得るために、前記前駆体補体I因子タンパク質および前記成熟形態の補体I因子タンパク質を溶出させるステップと
をさらに含む。
【0348】
ある特定の実施形態において、本方法は、成熟形態の補体I因子および/または前駆体補体I因子を、1つまたは複数の細胞成分から実質的に分離するステップを含む。例えば、成熟形態の補体I因子および/または前駆体補体I因子を細胞培養物から実質的に分離すること。
【0349】
ある特定の実施形態において、本方法は、成熟形態の補体I因子および/または前駆体補体I因子ならびに1つまたは複数の細胞成分を含有する調製物を、親和性クロマトグラフィー材料と接触させることによって、成熟形態の補体I因子および/または前駆体補体I因子を、1つまたは複数の細胞成分から実質的に分離するステップを含む。ある特定の実施形態において、本方法は、成熟形態の補体I因子および/または前駆体補体I因子ならびに1つまたは複数の細胞成分を含有する調製物を、OX21モノクローナル抗体にカップリングされたクロマトグラフィー材料と接触させることによって、成熟形態の補体I因子および/または前駆体補体I因子を、1つまたは複数の細胞成分から実質的に分離するステップを含む。
【0350】
ある特定の実施形態において、本方法は、1つまたは複数の細胞成分を実質的に含まない前駆体補体I因子タンパク質および/または成熟形態の補体I因子タンパク質の調製物を得るために、前記前駆体補体I因子タンパク質および/または成熟形態の補体I因子タンパク質を溶出させるステップを含む。
【0351】
ある特定の実施形態において、本方法は、前駆体補体I因子タンパク質および成熟形態の補体I因子タンパク質の混合物を含む調製物を、カチオン交換クロマトグラフィー材料と接触させる前に、成熟形態の補体I因子および/または前駆体補体I因子を、1つまたは複数の細胞成分から実質的に分離するステップを含む。
【0352】
いくつかの実施形態において、本方法は、クロマトグラフィー的に活性な材料に結合した前駆体および成熟形態の補体I因子タンパク質を、1つまたは複数の溶出緩衝液と接触させるステップであって、緩衝液(すなわち、その酸-塩基コンジュゲート構成成分の作用によるpH変化に耐性である水溶液)を、前駆体および成熟形態のCFIタンパク質が結合しているクロマトグラフィー材料の上に流す、ステップを含む。
【0353】
いくつかの実施形態において、本方法は、主として前駆体または成熟形態の補体系タンパク質を含有する異なる溶出物を得るために、前駆体および成熟形態の補体I因子タンパク質を、クロマトグラフィー材料から溶出させるステップであって、水性緩衝液を、前駆体および成熟形態の補体I因子タンパク質がそれぞれ結合しているクロマトグラフィー材料の上に流して、成熟形態または前駆体を、クロマトグラフィー材料から水性緩衝液の前記異なる溶出物への解離をもたらす、ステップを含む。
【0354】
いくつかの実施形態において、本方法は、クロマトグラフィー的に活性な材料に結合した前駆体および成熟補体I因子タンパク質を、1つまたは複数の洗浄緩衝液と接触させるステップであって、緩衝液(すなわち、その酸-塩基コンジュゲート構成成分の作用によるpH変化に耐性である水溶液)を、前駆体および成熟補体I因子タンパク質が結合しているクロマトグラフィー材料の上に流す、ステップを含む。
【0355】
ある特定の実施形態において、補体I因子タンパク質は、哺乳動物CFI、例えば、ヒトCFIタンパク質である。
【0356】
カラム体積(CV)という用語は、培地によって占有されていないクロマトグラフィーカラムまたはカートリッジの体積を指す。
【0357】
いくつかの実施形態において、本方法は、総補体I因子タンパク質が、約50%~90%(例えば、50%、例えば、60%、例えば、70%、例えば、80%、例えば、90%)の動的結合能力(DBC)で樹脂に結合する、ステップを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、総補体I因子タンパク質が、約50%~99%(例えば、50%、例えば、60%、例えば、70%、例えば、80%、例えば、90%、例えば、95%、例えば、99%)の動的結合能力(DBC)で樹脂に結合する、ステップを含む。
【0358】
「動的結合能力」(DBC)という用語は、典型的な流動条件下において、クロマトグラフィー的に活性な材料に結合するであろう産物の量を定義し、関連する流動条件およびローディング特徴下において、判定されるべきものである。これは、大部分の産物レベルがフロースロー(ブレイクスルー点)で測定される前にローディングすることができる量に基づいて計算される。
【0359】
いくつかの実施形態において、本方法は、溶出物が、約7.0~8.2のpHに中和され得る、例えば、溶出物のpHが、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、または8.2の値に調節され得る、ステップを含む。
【0360】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通じて、「含む」および「含有する」ならびにそれらの変化形は、「含むが限定されない」ことを意味し、それらは、他の部分、添加剤、成分、整数、またはステップを除外することを意図するものではない(および除外しない)。本明細書の説明および特許請求の範囲を通じて、別途文脈により必要とされない限り、単数形は、複数形を包含する。具体的には、不定冠詞が使用される場合、本明細書では、別途文脈により必要とされない限り、複数形ならびに単数形を企図するものとして理解されるものとする。
【0361】
本発明の特定の態様、実施形態、または実施例と併せて記載されている特性、整数、特徴、または群は、それらと不適合でない限り、本明細書に記載される任意の他の態様、実施形態、または実施例に、適用可能であることを理解されたい。本明細書(あらゆる添付の特許請求の範囲、要約書、および図面を含む)に開示される特性のすべて、ならびに/またはそのようにして開示されているあらゆる方法もしくはプロセスのステップのすべては、任意の組合せで組み合わせることができるが、そのような特性および/またはステップのうちの少なくとも一部が、相互に排他的である場合の組合せは除く。
【0362】
本発明は、いずれの前述の実施形態の詳細にも制限されない。本発明は、本明細書(あらゆる添付の特許請求の範囲、要約書、および図面を含む)に開示されている特性の任意のあらゆるものもしくはあらゆる新規な組合せ、またはそのようにして開示されているあらゆる方法もしくはプロセスのステップのあらゆる新規なものもしくはあらゆる新規な組合せに及ぶ。
【0363】
本明細書と同時またはそれよりも前に本出願と関連して提出されており、本明細書とともに公衆の閲覧に付されているすべての論文および文書に、読者の注目が向けられ、すべてのそのような論文および文書の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0364】
[実施例1]
プロ-CFIの流体相補因子活性の評価
材料および方法、ならびに結果
プロ-CFIの切断能力の評価を、流体相補因子アッセイによって判定した。1μgのC3b、250ngのH因子、および10ngのプロ-CFIを、最終体積15μLのリン酸緩衝食塩水(PBS)(9.5mM PO4、カルシウムまたはマグネシウムなし)において混合し、37℃で1.5時間インキュベートした。5、15、30、および45分間の間隔で還元レムリー緩衝液を添加することによって、反応を停止させた(2Xレムリーサンプル緩衝液(Bio-Rad、161-0737):65.8mM Tris-HCl、pH6.8、26.3%(重量/体積)グリセロール、2.1% SDS、0.01%ブロモフェノールブルー。還元にするために、50μlの2-β-メルカプトエタノールを、950μlのサンプル緩衝液に添加した。サンプルを、レムリー緩衝液と1:1で混合した)。C3bのタンパク質分解切断を、クーマシーで染色した10%のSDS-PAGEゲルを使用して判定した。
【0365】
[実施例2]
成熟CFIの単独での組換え産生のための発現ベクター
材料および方法
ベクターの設計
成熟CFIおよびプロ-CFIの共産生の問題に対処するために、CFI発現ベクターを設計した(VB171219-1127wqz)(
図6)。ベクターは、cap非依存性翻訳を通じた単一のポリシストロニックmRNAからの2つのタンパク質(プロ-CFIおよびフューリン)の産生を促進するために、内部リボソーム進入部位(IRES)を含有する。フューリンがプロ-CFIと比べて確実に過剰となるように、フューリンを、IRESエレメントの上流に配置した(上流の転写産物は、典型的に、下流の転写産物よりも多量に産生される)。ベクターはまた、哺乳動物細胞株におけるタンパク質の発現を増強するSV40ドメインも含有する。選択を容易にするために、2つの抗生物質耐性遺伝子(アンピシリンおよびハイグロマイシン)を含めた。
【0366】
トランスフェクション
マキシプレップキット(QIAGEN、カタログ番号/識別子:12163)を使用して、ベクターDNAを増幅させ、配列を検証した後、ヒト胎児腎臓293T(ATCC(登録商標)CRL-3216(商標))細胞にトランスフェクトした。JetPEI試薬(Polyplus-トランスフェクション、101-40N)を、製造業者のプロトコールに従って、トランスフェクションに使用した。HEK293Tを、10%の熱不活性化ウシ胎児血清(Gibco、10270106)、6.06mM L-グルタミン溶液(Gibco、25030081)、および100U/mLペニシリン-ストレプトマイシン溶液(Gibco、15140122)を補充したDMEM培地(Gibco、11966025)において、37℃および5%のCO2で培養した。0.4mg/mlハイグロマイシンB(Sigma-Aldrich、H3274)の存在下において、安定にトランスフェクトされた細胞を選択した。単一クローンを、野生型HEK293T細胞の支持細胞層の存在下において限界希釈によって特定し、もっとも高い発現体を、タンパク質産生に選択した。細胞を、再度、上記と同じ培地において、多層培養フラスコ(Millicell HY 5層、Millipore)で、37℃および5%のCO2で10日間培養した後、上清を採取した。HEK293T細胞は、接着性であるため、上清は、stripetteピペットを使用してピペッティングすることによって取り出した。上清を回収した後、それを、3600gで遠心分離機において回転処理して、任意の細胞片をペレットにした後、0.22μm細孔フィルター(GPWP04700)を使用して濾過した。
【0367】
I因子の精製
OX21抗体(Public Health England、91060417 ECACC)を、製造業者の説明書に従って(GE Healthcare - Instructions 71-7006-00, 2014)、1mlのHiTrap NHS活性化HPカラム(GE Healthcare、17071601)にカップリングさせることによって、OX21カラムを生成した。
【0368】
AKTA Startタンパク質精製系(GE Healthcare、29022094-ECOMINSSW)を使用して、I因子の精製を行った。まず、系を、泳動緩衝液(PBS)でプライミングした後、OX21カラムに接合させた。上清を、カラムにローディングし、未結合のタンパク質を、泳動緩衝液を使用して除去した。結合したCFIを、次いで、0.1Mグリシン(pH2.7)を用いて、1分当たり1mlの流速で、1mlの画分に溶出させた。1M Tris-塩基(pH9.0)を添加して、pHを中和した後、PD-10脱塩カラム(GE Healthcare、17085101)を使用して、PBSへの緩衝液交換を行った。
【0369】
銀染色
精製したI因子を、銀染色の後に、12%のSDS-PAGEゲルで視覚化した。まず、キュベットを使用するNanoDrop(商標)OneC Microvolume UV-Vis分光光度計を使用して、タンパク質を定量した。70μlのサンプルを、キュベットにローディングした。A280読み取りに、(分子量(kDa)/減衰係数(M-1 cm-1))を乗じて、濃度(mg/ml)を計算した。1μgのタンパク質を、それぞれのウェルにローディングした。まず、ゲルを50%(体積/体積)のメタノール、10%(体積/体積)の酢酸に30分間浸漬した後、5%(体積/体積)のメタノール、7%(体積/体積)の酢酸にさらに30分間浸漬することによって、銀染色を達成した。酢酸およびメタノールの混合物を、次いで、洗い流した後、5%のグルタルアルデヒド中で最終的な30分間のインキュベーションを行い、脱イオン水で一晩洗浄した。次いで、ゲルを、5μg/mlのジチオスレイトール溶液中に30分間浸した後、0.1%(重量/体積)の硝酸銀で染色した。0.28M炭酸ナトリウムおよび0.0185%(体積/体積)のホルムアルデヒドの溶液を使用して、褐色のバンドが形成されるまで、染色を顕色処理した。反応をクエンチするために、クエン酸(Sigma、251275)を10分後に添加した。
【0370】
血清精製FIおよびIRES-ベクターFIの流体相補因子活性の比較
血清精製CFIと比較したIRES-ベクターで生成されたFIの補体調節活性を判定するために、流体相補因子アッセイを行った。簡単に述べると、1μgのC3bおよび250ngのH因子を、10ngの組換えCFIまたは血清精製CFIのいずれかと混合し、PBS中最終体積15μlにした。反応混合物を、37℃で1時間インキュベートし、別個のアリコートを取り出し、5、15、30、45、および60分間の間隔で、2-β-メルカプトエタノールを含有するレムリー緩衝液で処置した。C3bのタンパク質分解破壊の評価を、クーマシーで染色した10%のSDS-PAGEゲルを使用して達成した。
【0371】
結果
血清由来のCFIと比較した本発明を使用して生成した組換えI因子
フューリンでの精製後酵素処置を伴わずに完全にプロセシングされたCFIを産生する本発明の能力を評価するために、精製されたCFIの銀染色を行った。血清精製I因子を還元条件下においてIRESベクターで産生されたCFIと比較するSDS PAGEの銀染色では、IRES CFIおよび血清CFIの両方について、88kDaに単一のバンドが存在する。還元条件下では、IRES CFIおよび血清CFIの両方について、それぞれ、重鎖および軽鎖に対応する50kDaおよび38kDaの2つのバンドが存在する。結果は、プロ-CFIの混入がない完全にプロセシングされたCFIを、本発明を使用して得ることができることを示した。
【0372】
本発明の実施形態を使用して生成した組換えCFIの機能
本発明を使用して生成したCFIの機能的活性を評価するために、血清精製CFI(Complement Technology、A138)および精製された組換えCFIを、補因子アッセイにおいて比較した。血清精製FI IRES-ベクターFI間の流体相補因子活性の比較。C3b、H因子、および10ngのIRES CFIまたは血清精製FIのいずれかを、37℃で1時間、溶液中でインキュベートした。5、15、10、45、および60分間の間隔で、還元レムリー緩衝液の添加によって反応を停止させた。C3b破壊を、SDS-PAGEおよびクーマシー染色によって評価した。C3α’(110kDa)の減少、ならびにいくつかの他のC3α’バンド(68kDa、46kDa、および43kDa)の出現は、タンパク質分解切断を通じたC3bの不活性化を示す。
【0373】
IRES CFIおよび血清CFIの酵素活性は、同等であることが示された。
【0374】
[実施例3]
プロ-CFIおよび成熟CFIの分離および単離
材料および方法
コンストラクトの設計:
哺乳動物CFI配列(CFI受託:Y00318 M25615、VERSION Y00318.1)が挿入された改変されたpDR2 EF1α(pDEF-CFI)発現ベクターを、プロ-CFIの組換え産生に使用した。
【0375】
トランスフェクション:
ベクターDNAを、マキシプレップキット(QIAGEN、カタログ番号/識別子:12163)を使用して増幅させ、配列を検証した後、jetPEI(Polyplus; VWR、Leicestershire、UK)を製造業者のプロトコールに従って使用してCHO-K1(ATCC(登録商標)CCL-61(商標))細胞にトランスフェクトした。トランスフェクトしたCHOを、10%の熱不活性化ウシ胎児血清(Gibco)および5mLペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン(Gibco、10378016)を補充したDMEM-F12(Gibco、11320033)において、37℃、5%のCO2で培養した。0.6mg/mlハイグロマイシンBの存在下において、安定にトランスフェクトされた細胞を選択した。単一クローンを、限界希釈によって生成し、もっとも高い発現体を、タンパク質産生に選択した。細胞を、ローラーボトルにおいて10日間培養し、培地を交換した後、14日目に上清を採取した。CHO細胞は接着性であるため、上清は、stripetteピペットを使用してピペッティングによって取り出した。上清を回収した後、それを、3600gで遠心分離機において回転処理して、任意の細胞片をペレットにした後、0.22μm細孔フィルター(GPWP04700)を使用して濾過した。成熟I因子およびプロ-Iの混合物(およそ20~30%のプロ-CFI)を、OX-21モノクローナル抗体をカップリングさせた1mlのHiTrap NHS活性化HPカラム(GE Healthcare)を使用して、細胞上清から精製した。
【0376】
透析:
精製した産物を回収し、3.5KDaの透析チュービング(Thermo Scientific、10005743)に移した後、4℃で一晩、50mM一塩基性リン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich、S8282)、pH6において透析した。
【0377】
カチオン交換クロマトグラフィー:
Mono S 5/50 GLカラム(Sigma-Aldrich、GE17-5168-01)へのローディングを促進するために、精製したタンパク質を、Vivaspin 30,000kDa分子量カットオフ遠心分離濃縮装置(Z614637、Sigma)を使用して濃縮した。まず、カラムを、1.5ml/分で5カラム体積(CV)の透析緩衝液(50mM一塩基性リン酸ナトリウム、pH6)で平衡処理した後、10mL Superloopを使用して調製物を注入した。調製物を注入した後、カラムを、2CVの透析緩衝液で洗浄し、その後に線形塩勾配を使用して溶出させた。塩緩衝液(50mM一塩基性リン酸ナトリウム、pH6、1M NaCl)のパーセンテージが、30CV(30mL)にわたって、0%から40%に増加した。プロ-CFIおよびCFIは、異なる等電点を有し、したがって、異なる塩濃度で溶出する。溶出されたタンパク質を、96ディープウェルプレートに、0.5mlの画分で採取し、得られた画分からのサンプルを、SDS PAGEに流し、クーマシーブルーで染色した。第1のピークに由来する画分は、完全成熟CFIを含有し、第2のピークに由来する画分は、プロ-CFIを含有する(
図10)。成熟CFIまたはプロ-CFIのいずれかを照合し、PD10脱塩カラム(Cytiva、17085101)を使用してPBSへの緩衝液交換を行った後、凍結させた。
【0378】
結果
生成されたプロ-CFIの視覚化
ある特定の実施形態の方法が、プロ-CFIを産生し得るかどうかを判定するために、クーマシーブルーで染色したSDS PAGEおよびウエスタンブロットを行った。サンプルを、まず、SDS PAGEに流し、製造業者のプロトコールに従って(Bio-Rad)移動タンクを使用してニトロセルロース膜に移した。移動タンクに、移動緩衝液(25mM Tris、190mMグリシン、20%のメタノール、蒸留水中)を充填し、ブロッティングカセットをアセンブルした。カセットは、2つのスポンジ、2片の濾紙、1片のニトロセルロース、および1つのSDS PAGEゲルからなっていた。カセットを、次いで、タンクに差し込み、サンプルを、PowerPac(Bio-Rad)を使用して、100Vおよび400mAで90分間移した。膜を、次いで、PBST(0.1%のTween 20)中5%の脱脂乳で、室温において1時間、ブロッキングした。ローラー振盪装置を使用して、膜の完全な被覆を確実にした。膜を、次いで、ブロッキング緩衝液において、I因子に対するヒツジポリクローナル抗体(Abcam、ab8843)(1μg/ml)とともにインキュベートした。ブロットを、4℃で一晩インキュベートした。膜を、0.1%のPBSTで3回洗浄し、ブロッキング緩衝液中に1:3000で希釈したロバ抗ヒツジIgG-西洋ワサビペルオキシダーゼ(Jackson ImmunoResearch、713-035-147)とともに室温で1時間インキュベートした。膜を、再度洗浄し、Clarity Western ECL基質(BioRad、1705060)を製造業者のプロトコールに従って使用して顕色処理した。ブロットを、次いで、Odyssesy Fcイメージングシステム(Licor)で視覚化した。還元条件下では、第1の溶出ピークから回収した画分は、成熟CFIの重鎖および軽鎖に対応するバンドをもたらし、第2のピークに由来する画分は、プロ-CFIに対応するバンドのみを生成した。ピーク画分について、いずれの種も交差混入の根拠はなかった。
【0379】
本発明は、以下の番号付けされた段落によってさらに説明される。
1.組換え成熟補体I因子タンパク質またはそのバリアントを産生させるための発現系であって、
a.組換え前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子と、
b.フューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子であって、前記フューリンタンパク質またはそのバリアントが、コードされた前駆体補体I因子タンパク質を切断して、組換え成熟補体I因子タンパク質を産生させることができ、必要に応じて、フューリンタンパク質が、コードされた前駆体補体I因子タンパク質の50%よりも多くを切断することができる、核酸分子と
を含む、発現系。
2.前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子と、フューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子とを含む、発現ベクターを含む、段落1に記載の発現系。
3.発現ベクターが、プロモーターエレメントを含む、段落1または段落2に記載の発現系。
4.プロモーターエレメントが、前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子の上流にある、段落3に記載の発現系。
5.プロモーターエレメントが、フューリンタンパク質をコードする核酸分子の上流にある、段落3または段落4に記載の発現系。
6.発現ベクターが、翻訳開始配列をコードする核酸分子を含む、段落1から5のいずれかに記載の発現系。
7.翻訳開始配列をコードする核酸分子が、プロモーターエレメントの下流に、前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子およびフューリンタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子の上流に配置される、段落6に記載の発現系。
8.発現ベクターが、内部リボソーム進入部位をコードする核酸分子をさらに含む、段落2から7のいずれかに記載の発現系。
9.内部リボソーム進入部位をコードする核酸分子が、配列番号9に記載される核酸配列を含む、段落8に記載の発現系。
10.組換え成熟ヒト補体I因子タンパク質が、配列番号2に記載されるアミノ酸配列(重鎖)または配列番号2に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列から選択される第1のアミノ酸配列と、配列番号3(軽鎖)に記載される第2のアミノ酸配列または配列番号3に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列とを含み、第1および第2のアミノ酸配列が、ジスルフィド結合を介して連結されている、段落1から9のいずれかに記載の発現系。
11.組換え前駆体ヒト補体I因子が、配列番号1に記載されるアミノ酸配列、または配列番号1に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性、例えば、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、段落1から10のいずれかに記載の発現系。
12.フューリンタンパク質が、配列番号5に記載されるアミノ酸配列または配列番号5に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む、段落1から11のいずれかに記載の発現系。
13.フューリンタンパク質が、配列番号5に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性、例えば、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、段落12に記載の発現系。
14.ベクターが、配列番号10に記載される核酸配列または配列番号10に記載される核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する核酸配列から選択される核酸配列を含む、段落1から13のいずれかに記載の発現系。
15.ベクターが、配列番号8に記載される核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性、例えば、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有する核酸配列を含む、段落2から14のいずれかに記載の発現系。
16.発現ベクターが、耐性マーカーをコードする少なくとも1つの核酸分子を含む、段落2から15のいずれかに記載の発現系。
17.医薬として使用するための、段落1から16のいずれかに記載の発現系。
18.補体系に媒介される障害を処置するのに使用するための、段落17に記載の発現系。
19.補体系に媒介される障害が、非定型溶血性尿毒症症候群、微小血管障害性溶血性貧血、加齢性黄斑変性、C3糸球体症、アルツハイマー病、脳炎症、および/または血小板減少症から選択される、段落18に記載の使用のための発現系。
20.発現ベクターが、ウイルスベクターである、段落17から19のいずれかに記載の使用のための発現系。
21.組換え成熟補体I因子タンパク質またはそのバリアントを産生させるための方法であって、
a.組換え前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアント、および組換えフューリンタンパク質またはそのバリアントを、発現されるフューリンタンパク質が発現される組換え前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントを切断して、組換え成熟補体I因子タンパク質またはそのバリアントを形成するのに好適な条件下で、宿主細胞において発現させるステップであって、必要に応じて、組換え前駆体補体I因子タンパク質の50%よりも多くが、フューリンタンパク質によって切断される、ステップ
を含む、方法。
22. a.宿主細胞に、前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子およびフューリンタンパク質をコードする核酸分子を含む発現ベクターをトランスフェクトするステップ
を含む、段落21に記載の方法。
23.発現ベクターが、
a.内部リボソーム進入部位をコードする核酸分子であって、前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子と、フューリンタンパク質をコードする核酸分子との間に配置される、内部リボソーム進入部位をコードする核酸分子、
b.プロモーターエレメントであって、前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子およびフューリンタンパク質をコードする核酸分子の上流に配置される、プロモーターエレメント、
c.翻訳開始配列であって、プロモーターエレメントの下流に、前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子およびフューリンタンパク質をコードする核酸分子の上流に配置される、翻訳開始配列
をさらに含む、段落22に記載の方法。
24.組換え前駆体補体I因子タンパク質またはそのバリアントをコードする核酸分子および組換えフューリンタンパク質をコードする核酸分子を、真核生物細胞において発現させるステップを含み、必要に応じて、真核生物細胞が、ヒト胎児腎臓293T細胞である、段落22または23に記載の方法。
25.組換え前駆体補体I因子タンパク質および組換えフューリンタンパク質を、段落1から18のいずれかに記載の発現系において発現させるステップを含む、段落22から24のいずれかに記載の方法。
26.組換え成熟補体I因子タンパク質を回収するステップをさらに含む、段落22から25のいずれかに記載の方法。
27.段落22から26のいずれかに記載の方法によって得ることができる、成熟組換え補体I因子タンパク質。
28.段落27に記載の成熟組換え補体I因子を含む、治療用組成物。
29.それを必要とする対象の処置において使用するための、段落28に記載の治療用組成物。
30.非定型溶血性尿毒症症候群、微小血管障害性溶血性貧血、加齢性黄斑変性、C3糸球体症、アルツハイマー病、脳炎症、および/または血小板減少症から選択される障害に罹患している対象の処置において使用するための、段落29に記載の治療用組成物。
31.組換え成熟補体I因子(CFI)タンパク質を、1つまたは複数の細胞成分から分離するための方法であって、以下の
(a)前駆体補体I因子タンパク質、成熟補体I因子タンパク質、および1つまたは複数のさらなる細胞成分の混合物を含む調製物を、クロマトグラフィー材料と、前記前駆体補体I因子タンパク質および前記成熟形態の補体I因子タンパク質がそれぞれクロマトグラフィー材料に結合することができる条件下で接触させるステップと、
(b)クロマトグラフィー材料を、1つまたは複数の塩を含有する溶出緩衝溶液と接触させるステップと、
(c)前記前駆体補体I因子タンパク質および成熟補体I因子タンパク質を溶出させて、一連の溶出物を得るステップであって、一連の溶出物内で、前駆体補体系タンパク質および成熟形態の補体系タンパク質が、互いに実質的に分離されており、かつ/または前駆体補体I因子タンパク質および成熟形態の補体I因子タンパク質が、他の細胞成分から実質的に分離されており、必要に応じて、クロマトグラフィー材料が、抗OX21抗体を含む、ステップと
を含む、方法。
32.以下の
d)成熟補体I因子タンパク質および前駆体補体I因子タンパク質を含む溶出物を含む調製物を、少なくとも1つのさらなるクロマトグラフィー材料と、前記前駆体補体I因子タンパク質および前記成熟形態の補体I因子タンパク質が少なくとも1つのさらなるクロマトグラフィー材料に結合する条件下で接触させるステップと、
e)少なくとも1つのさらなるクロマトグラフィー材料を、1つまたは複数の塩を含有する溶出緩衝溶液と接触させるステップと、
f)さらなる一連の別の溶出物を得るために、前記前駆体補体系タンパク質および成熟補体系タンパク質を溶出させるステップと
をさらに含み、
さらなる一連の溶出物内で、前駆体補体I因子タンパク質および成熟形態の補体I因子タンパク質が、互いに実質的に分離しており、必要応じて、さらなるクロマトグラフィー材料が、カチオン交換(CEX)クロマトグラフィー材料である、
段落31に記載の方法。
33.カチオン交換クロマトグラフィー材料と接触する溶出緩衝溶液が、約4.5~7.5のpH、必要に応じて、約pH6.0を有し、かつ/または親和性クロマトグラフィー材料と接触する溶出緩衝溶液が、約1.5~4.5のpH、必要に応じて、約pH2.7を有する、段落31に記載の方法。
34.親和性クロマトグラフィー材料と接触する溶出緩衝溶液が、グリシンを含み、必要に応じて、グリシンが、0.1Mの濃度であり、必要に応じて、前駆体補体I因子タンパク質および成熟補体I因子タンパク質が、約2.5:7.5のモル比で、調製物中に存在する、段落33に記載の方法。
【国際調査報告】