IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マイクロチップ テクノロジー インコーポレイテッドの特許一覧

特表2023-549624センサシステムを動作させるためのノイズロバスト獲得構成を決定するための方法及びシステム
<>
  • 特表-センサシステムを動作させるためのノイズロバスト獲得構成を決定するための方法及びシステム 図1
  • 特表-センサシステムを動作させるためのノイズロバスト獲得構成を決定するための方法及びシステム 図2
  • 特表-センサシステムを動作させるためのノイズロバスト獲得構成を決定するための方法及びシステム 図3
  • 特表-センサシステムを動作させるためのノイズロバスト獲得構成を決定するための方法及びシステム 図4
  • 特表-センサシステムを動作させるためのノイズロバスト獲得構成を決定するための方法及びシステム 図5
  • 特表-センサシステムを動作させるためのノイズロバスト獲得構成を決定するための方法及びシステム 図6
  • 特表-センサシステムを動作させるためのノイズロバスト獲得構成を決定するための方法及びシステム 図7
  • 特表-センサシステムを動作させるためのノイズロバスト獲得構成を決定するための方法及びシステム 図8A
  • 特表-センサシステムを動作させるためのノイズロバスト獲得構成を決定するための方法及びシステム 図8B
  • 特表-センサシステムを動作させるためのノイズロバスト獲得構成を決定するための方法及びシステム 図9
  • 特表-センサシステムを動作させるためのノイズロバスト獲得構成を決定するための方法及びシステム 図10
  • 特表-センサシステムを動作させるためのノイズロバスト獲得構成を決定するための方法及びシステム 図11
  • 特表-センサシステムを動作させるためのノイズロバスト獲得構成を決定するための方法及びシステム 図12
  • 特表-センサシステムを動作させるためのノイズロバスト獲得構成を決定するための方法及びシステム 図13
  • 特表-センサシステムを動作させるためのノイズロバスト獲得構成を決定するための方法及びシステム 図14
  • 特表-センサシステムを動作させるためのノイズロバスト獲得構成を決定するための方法及びシステム 図15
  • 特表-センサシステムを動作させるためのノイズロバスト獲得構成を決定するための方法及びシステム 図16
  • 特表-センサシステムを動作させるためのノイズロバスト獲得構成を決定するための方法及びシステム 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】センサシステムを動作させるためのノイズロバスト獲得構成を決定するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20231121BHJP
   H03H 17/00 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G06F3/041 522
G06F3/041 512
H03H17/00 621K
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511993
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 US2021022950
(87)【国際公開番号】W WO2022132212
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/126,137
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/198,860
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
2.JAVA
(71)【出願人】
【識別番号】397050741
【氏名又は名称】マイクロチップ テクノロジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROCHIP TECHNOLOGY INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハイム、アクセル
(57)【要約】
センサ又は通信システムのためのノイズロバスト獲得構成を決定するシステム及び方法が開示される。例示的な方法は、センサシステムからのセンサ受信信号を取得するステップと、事前定義されたノイズスキャン周波数でのセンサ受信信号のA/D変換によってセンサ受信信号からデジタル受信信号を決定するステップと、互いに異なる2つ以上のデシメーションレートを使用してデジタル受信信号の整数デシメーションによって複数のデシメートされたデジタル受信信号を決定するステップであって、2つ以上のデシメーションレートの各々はそれぞれの候補獲得構成に関連付けられている、決定するステップと、複数のデシメートされたデジタル受信信号のうちの1つ以上を使用して、候補獲得構成のうちの複数についての1つ以上のノイズ測度を決定するステップと、1つ以上のノイズ測度を使用して候補獲得構成からセンサシステムの動作のための獲得構成を決定するステップと、を有するノイズスキャンを含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムの動作のためのノイズロバスト獲得構成を決定する方法であって、ノイズスキャンにおいて、
前記システムからのシステム受信信号を取得するステップと、
事前定義されたノイズスキャン周波数における前記システム受信信号のA/D変換によって、前記システム受信信号からのデジタル受信信号を決定するステップと、
互いに異なる2つ以上のデシメーションレートを使用して前記デジタル受信信号の整数デシメーションによって複数のデシメートされたデジタル受信信号を決定するステップであって、前記2つ以上のデシメーションレートの各々は、それぞれの候補獲得構成に関連付けられている、決定するステップと、
前記複数のデシメートされたデジタル受信信号のうちの1つ以上を使用して、前記候補獲得構成のうちの複数についての1つ以上のノイズ測度を決定するステップと、
前記1つ以上のノイズ測度を使用して、前記候補獲得構成から前記システムの動作のための前記獲得構成を決定するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記獲得構成を決定する前記ステップは、前記1つ以上のノイズ測度から好ましいノイズ測度を選択するステップを含み、前記獲得構成は、前記好ましいノイズ測度の前記候補獲得構成に対応するように設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記好ましいノイズ測度は、前記1つ以上のノイズ測度のうちの最低ノイズレベルをもたらす、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記2つ以上のデシメーションレートの各々について、デシメートされたデジタル受信信号の対応するグループは決定され、各グループにおいて、前記デシメートされたデジタル受信信号は、異なる開始位相において互いに異なる、請求項1~3のうちの1つ以上に記載の方法。
【請求項5】
前記ノイズ測度のうちの1つ以上は、有効ノイズパワー推定によって決定され、前記有効ノイズパワー推定は、前記デシメートされたデジタル受信信号のグループのうちの1つの前記デシメートされたデジタル受信信号の各々にわたる位相瞬時ノイズ測度の和の決定を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記位相瞬時ノイズ測度の各々は、係数ベクトルからの係数で重み付けされたそれぞれのデシメートされたデジタル受信信号のサンプルの和である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記獲得構成は、A/D変換のためのサンプリング周波数、前記システムの動作のための刺激信号の動作周波数、スキャン持続時間、獲得されるべきサンプルの数、及びローパスフィルタ係数のうちの少なくとも1つ以上を含む、請求項1~6のうちの1つ以上に記載の方法。
【請求項8】
前記事前定義されたノイズスキャン周波数は、前記システムの動作中の刺激信号の動作周波数よりも著しく高い、請求項1~7のうちの1つ以上に記載の方法。
【請求項9】
前記2つ以上のデシメーションレートは2の倍数である、請求項1~8のうちの1つ以上に記載の方法。
【請求項10】
前記システム受信信号は、前記システムに刺激信号が印加されることなく前記ノイズスキャン中に獲得される、請求項1~9のうちの1つ以上に記載の方法。
【請求項11】
前記候補獲得構成から前記システムの動作のための前記獲得構成を決定する前記ステップは、前記1つ以上のノイズ測度をノイズ閾値と比較するステップと、前記ノイズ閾値が前記ノイズ測度のいずれによっても満たされない場合に、
少なくとも1つの更新された候補獲得構成を取得するために、前記候補獲得構成のうちの少なくとも1つのスキャン時間を増加させるステップ、
前記少なくとも1つの更新された候補獲得構成に対して1つ以上の更新されたノイズ測度を決定するステップ、及び
前記1つ以上の更新されたノイズ測度を前記ノイズ閾値と比較するステップと、を含む、請求項1~10のうちの1つ以上に記載の方法。
【請求項12】
前記スキャン時間は、先行するノイズスキャンのスキャン時間の整数倍だけ増加する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ノイズスキャンに続いて、前記ノイズスキャン中に決定された前記獲得構成を使用してSNスキャン中に前記システムを動作させるステップを含む、請求項1~12のうちの1つ以上に記載の方法。
【請求項14】
2つのSNスキャンの間に複数のノイズスキャンを後続して行うステップを含み、前記複数のノイズスキャンは事前定義されたノイズスキャン周波数を使用し、前記複数のノイズスキャンのうちの少なくともいくつかの前記事前定義されたノイズスキャン周波数は互いに異なる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
SNスキャン中の前記システムの動作のための全体的な獲得構成を、前記後続して行う複数のノイズスキャン中に取得される獲得構成から決定するステップを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ノイズスキャン中のA/D変換の開口時間は、前記SNスキャンのために設定された開口時間と同一であるか、又は前記開口時間の実質的に整数分の1である、請求項13~15のうちの1つ以上に記載の方法。
【請求項17】
前記システムは、容量式センサシステム及びタッチスクリーンセンサシステムのうちの1つ以上である、請求項1~16のうちの1つ以上に記載の方法。
【請求項18】
前記システムはセンサシステムであり、前記システム受信信号はセンサ受信信号である、請求項1~17のうちの1つ以上に記載の方法。
【請求項19】
前記システムは通信システムであり、前記システム受信信号は通信受信信号である、請求項1~18のうちの1つ以上に記載の方法。
【請求項20】
センサシステムのノイズロバスト獲得動作の方法であって、
前記センサシステム上で少なくとも1つのノイズスキャンを行うステップと、
前記センサシステム上で少なくとも1つのSNスキャンを行うステップと、を含み、
前記少なくとも1つのノイズスキャン中のA/D変換の開口時間は、前記少なくとも1つのSNスキャンのA/D変換の開口時間と同一であるか、又は前記開口時間の実質的に整数分の1である、方法。
【請求項21】
センサ回路に請求項1~20のいずれか一項に記載の方法を行わせるように構成されたコンテンツを含む、コンピュータ可読媒体。
【請求項22】
システムの動作のための獲得構成を決定する回路であって、
前記システムからのシステム受信信号を取得するためのインターフェースと、
事前定義されたノイズスキャン周波数における前記システム受信信号のA/D変換によって、前記システム受信信号からのデジタル受信信号を決定するA/D変換器と、
互いに異なる2つ以上のデシメーションレートを使用して前記デジタル受信信号の整数デシメーションによって複数のデシメートされたデジタル受信信号を決定するように構成されたデシメーション回路であって、前記2つ以上のデシメーションレートの各々は、それぞれの候補獲得構成に関連付けられている、デシメーション回路と、
前記複数のデシメートされたデジタル受信信号のうちの1つ以上を使用して、前記候補獲得構成のうちの複数についての1つ以上のノイズ測度を決定するように構成されたノイズ評価回路と、
前記1つ以上のノイズ測度を使用して、前記候補獲得構成から前記システムの動作のための前記獲得構成を決定するように構成された構成回路と、を備える、回路。
【請求項23】
前記システムはセンサシステムであり、
前記回路は、前記センサシステムの動作のための獲得構成を決定するセンサ回路であり、
前記インターフェースはセンサインターフェースであり、かつ
前記システム受信信号はセンサ受信信号である、請求項22に記載の回路。
【請求項24】
容量式タッチ検知システムであって、
容量式検知のために構成された1つ以上の電極と、
請求項23に記載のセンサ回路と、を備え、前記センサ回路は、前記1つ以上の電極のうちの少なくとも1つに接続されている、容量式タッチ検知システム。
【請求項25】
前記システムは通信システムであり、
前記回路は、前記通信システムの動作のための獲得構成を決定する通信回路であり、
前記インターフェースは通信システムインターフェースであり、かつ
前記システム受信信号はセンサ受信信号である、請求項22に記載の回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、2020年12月16日に米国特許商標庁に出願された米国特許仮出願第63/126137号の優先権を主張するものである。前述の特許出願の内容は、あらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【0002】
(分野)
本開示は、ノイズロバスト獲得構成を決定するための方法及びシステムに関し、特にセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
本背景技術の節は、本開示の背景を全般的に説明する目的で提供される。本発明者の成果、並びに出願の時点で先行技術として別様に認定されていない可能性がある、本説明の態様は、本開示に対する先行技術として明示的にも暗示的にも認められていない。
【0004】
「検知システム」とも呼ばれることもあるセンサシステムは、様々な用途で既知である。例えば、容量式タッチセンサシステムは、コンピュータ、タブレット、スマートフォンなどの電子デバイスのユーザインターフェース、及びその他の電子デバイスに使用されている。
【0005】
容量式タッチセンサシステムは、例えば、交番電場を生成し、かつこの電場内のセンサ電極において1サイクルで取得される電位差(すなわち、電圧)を測定することによって実現され得る。単一の電極、又は送信電極と1つ以上の受信電極との組み合わせが使用されてもよい。この電圧は、センサ電極とその電気的環境との間の静電容量の測度であり、すなわち、これは、人間の指又は手のような物体によって影響を受ける。代替的に、電極とセンサ回路との間に流れる電流(すなわち、電荷の動き)を使用して、センサ電極とその電気環境との間の静電容量を決定することができる。
【0006】
上述の原理に従って動作する従来のシステムの一つの問題点は、センサ付近のスイッチモード電源、蛍光灯、又は無線通信などの電気的なノイズ源が電場に影響を与え得ることである。したがって、ノイズの多い環境で、この電圧を正確かつ確実に推定することが問題になる。
【0007】
本発明者は、ノイズに対するロバスト性が、容量式タッチ検知システムを含む任意のセンサシステムにとって、かつまた通信システムにとって課題であると決定した。特に、標準的な、国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission、IEC)が行った、例えばIEC61000-4-6のような振幅変調ノイズによるノイズ試験、例えばISO11452-4の自動車規格によるバルク電流注入(bulk current injection、BCI)試験、又は二乗ノイズに対するロバスト性ついて合格することは、過去に問題となったことがある。
【発明の概要】
【0008】
上記に基づいて、例えば容量式タッチセンサシステムなど、センサシステムのノイズロバスト動作を可能にする必要性が存在する。この目的は、独立請求項の主題によって解決される。従属請求項及び以下の説明は、本発明の様々な実施形態を含む。
【0009】
一般的かつ例示的な一態様では、センサシステムの動作のためのノイズロバスト獲得構成を決定する方法が提供される。この方法は、ノイズスキャンにおいて、
センサシステムからのセンサ受信信号を取得するステップと、
事前定義されたノイズスキャン周波数でのセンサ受信信号のA/D変換によって、センサ受信信号からデジタル受信信号を決定するステップと、
互いに異なる2つ以上のデシメーションレートを使用してデジタル受信信号の整数デシメーションによって複数のデシメートされたデジタル受信信号を決定するステップであって、2つ以上のデシメーションレートの各々は、それぞれの候補獲得構成に関連付けられている、決定するステップと、
複数のデシメートされたデジタル受信信号のうちの1つ以上を使用して候補獲得構成のうちの複数についての1つ以上のノイズ測度を決定するステップと、
1つ以上のノイズ測度を使用して、候補獲得構成からセンサシステムの動作のための獲得構成を決定するステップと、を含む。
【0010】
通常及び別の例示的な態様においてセンサシステムの動作のための獲得構成を決定するために提供されるセンサ回路であって、センサ回路は、
センサシステムからセンサ受信信号を取得するためのセンサインターフェースと、
事前定義されたノイズスキャン周波数におけるセンサ受信信号のA/D変換によって、センサ受信信号からのデジタル受信信号を決定するA/D変換器と、
互いに異なる2つ以上のデシメーションレートを使用してデジタル受信信号の整数デシメーションによって複数のデシメートされたデジタル受信信号を決定するように構成されたデシメーション回路であって、2つ以上のデシメーションレートの各々は、それぞれの候補獲得構成に関連付けられている、デシメーション回路と、
複数のデシメートされたデジタル受信信号のうちの1つ以上を使用して、獲得構成のうちの複数についての1つ以上のノイズ測度を決定するように構成された、ノイズ評価回路と、
1つ以上のノイズ測度を使用して候補獲得構成からセンサシステムの動作のための獲得構成を決定するように構成された構成回路と、を備える。
【0011】
通常及び別の例示的な態様において、容量式タッチ検知システムが提供され、容量式タッチ検知システムは、
容量式検知のために構成された1つ以上の電極と、
前述の態様のセンサ回路であって、1つ以上の電極のうちの少なくとも1つに接続されるセンサ回路と、を備える。
【0012】
通常及び別の例示的な態様において、通信システムの動作のためのノイズロバスト獲得構成を決定する方法が提供される。この方法は、ノイズスキャンにおいて、
通信システムからの受信信号を取得するステップと、
事前定義されたノイズスキャン周波数における受信信号のA/D変換によって、受信信号からデジタル受信信号を決定するステップと、
互いに異なる2つ以上のデシメーションレートを使用してデジタル受信信号の整数デシメーションによって複数のデシメートされたデジタル受信信号を決定するステップであって、2つ以上のデシメーションレートの各々は、それぞれの候補獲得構成に関連付けられている、決定するステップと、
複数のデシメートされたデジタル受信信号のうちの1つ以上を使用して、獲得構成のうちの複数についての1つ以上のノイズ測度を決定するステップと、
1つ以上のノイズ測度を使用して、候補獲得構成から通信システムの動作のための獲得構成を決定するステップと、を含む。
【0013】
通常及び別の例示的な態様において、通信システムの動作のための獲得構成を決定する通信回路が提供される。通信回路は、
通信システムからの受信信号を取得するための通信システムインターフェースと、
定義されたノイズスキャン周波数における受信信号のA/D変換によって、受信信号からのデジタル受信信号を決定するA/D変換器と、
互いに異なる2つ以上のデシメーションレートを使用してデジタル受信信号の整数デシメーションによって複数のデシメートされたデジタル受信信号を決定するように構成されたデシメーション回路であって、2つ以上のデシメーションレートの各々は、それぞれの獲得構成に関連付けられている、デシメーション回路と、
複数のデシメートされたデジタル受信信号のうちの1つ以上を使用して、獲得構成のうちの複数についての1つ以上のノイズ測度を決定するように構成された、ノイズ評価回路と、
1つ以上のノイズ測度を使用して候補獲得構成から通信システムの動作のための獲得構成を決定するように構成された構成回路と、を備える。
【0014】
1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載される。他の特徴は、説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】センサ回路の第1の例示的な実施形態を概略的なブロック図で示す。
図2】容量式タッチ検知システムの例示的な実施形態を概略図で示す。
図3】第1の実施形態による例示的なフロー図における図1のセンサ回路の機能を示す。
図4図1のセンサ回路のデシメーション回路の機能を概略的に示す。
図5】ノイズスキャン及びSNスキャンのための2つの信号処理チェーンを概略的に示す。
図6】第2の実施形態による例示的なフロー図における図1のセンサ回路の機能を示す。
図7】概略図における理想的なADCの伝達関数の例示的な大きさを示す。
図8A】更なる実施形態による例示的なフロー図における図1のセンサ回路の機能を示す。
図8B】更なる実施形態による例示的なフロー図における図1のセンサ回路の機能を示す。
図9】デジタルLPFによるスペクトルノイズ抑制を示す。
図10】別の実施形態による例示的なフロー図における図1のセンサ回路の機能を示す。
図11】電流積分を使用する電荷測定のための基本的で例示的な図及び対応するタイミング図を示す。
図12】2つの電流積分器を使用する電荷測定のための別の例示的な図を、対応するタイミング図とともに示す。
図13】タッチスクリーンコントローラの例示的なアナログフロントエンド(analog front-end、AFE)の2つのスライスを概略的に示す。
図14】開口及びリセットスイッチのスライス独立制御を伴う、電流積分及び積分器リセットのための例示的なタイミング図を示す。
図15】開口及びリセットスイッチのスライス独立制御を伴わない、電流積分及び積分器リセットのための例示的なタイミング図を示す。
図16図15のタイミング構成を用いて取得されたデータを示す。
図17】2つのパケット長に対するデジタルLPFによるスペクトルノイズ抑制を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の特定の実施形態を以下に詳細に説明する。本発明の実施形態の以下の説明では、本発明の徹底的な理解を提供するために、特定の詳細が説明される。しかしながら、当業者であれば、本発明はこれらの特定の詳細なしに実施され得ることが明らかであろう。他の例では、本説明を不必要に複雑にすることを避けるために、周知の特徴は詳細に説明されていない。
【0017】
以下の説明では、記載された実施形態による本発明の、少なくとも2つの構成要素、デバイス、ユニット、プロセッサ、回路、又はモジュール間のデータ又は信号接続を示すために、「に接続(connected to)」若しくは「と接続(connected with)」という用語が使用される。このような接続は、それぞれの構成要素、デバイス、ユニット、プロセッサ、回路、若しくはモジュール間で直接接続されてもよく、又は間接的に、すなわち、中間構成要素、デバイス、ユニット、プロセッサ、回路、若しくはモジュールを介した接続であってもよい。接続は永久的であっても一時的であってもよく、無線若しくは導体ベースのもの、デジタル若しくはアナログであってもよい。
【0018】
以下の説明において、序数(例えば、第1、第2、第3など)は、要素(すなわち、本願の任意の名詞)に対する形容詞として使用され得る。序数の使用は、「前」、「後」、「単一」という用語、及び他のそのような専門用語の使用などによって明示的に開示されない限り、要素の任意の特定の順序付けを暗示又は作成するものではなく、任意の要素を単一の要素のみに限定するものでもない。むしろ、序数の使用は、同様の名称の要素を区別するためである。例えば、第1の要素は第2の要素と区別され、第1の要素は1つよりも多い要素を包含し、要素の順序において第2の要素を継承する(又は先行する)ことができる。
【0019】
多くの用途において、センサシステムが使用されている。例えば、今日の電子デバイス、例えばスマートフォン、ラップトップ、タブレット、ウェアラブルは、一般に静電容量式又は抵抗性タッチセンサシステムを使用するタッチスクリーンなしでは考えられない。現在の発展においては、自動車、航空機、又は産業機器など、より複雑なシステムでのタッチパネルの利用が進んでいる。
【0020】
ノイズに対するロバスト性は、前述したように、このようなあらゆるセンサシステムにとって重要な課題である。容量式タッチスクリーンに伴う特定の問題は、これらが、設計上、ユーザに面しており、例えば、ユーザの手又は指が近接すると、使用する電場が影響を受け得るように構成される必要があることである。このため、これらのタイプのタッチスクリーンは、周囲の場からのノイズに対して特に脆弱になる。
【0021】
更に、本発明者が認識しているように、所与のセンサ及び構成について予想される信号対ノイズ比(以下では「SNR」という)を決定するための信頼できる手段がなく出力SNRが不十分となるか、又はリソース、例えば獲得時間の浪費につながる。タッチ検知システムの顧客(例えば、スマートフォン製造業者)にとっては、信頼性が高く、正確な出力推定値を有する高いタッチレポートレートを得ることが重要である。タッチレポートレートとは、本明細書では、タッチコントローラがホストコントローラに(x,y)位置の推定値を転送する速度を意味する。
【0022】
センサシステムのノイズロバスト性に影響を及ぼすいくつかの影響要因は、例えば、動作周波数(容量式センサシステムの場合、いわゆる「刺激信号」の動作周波数)とそれに関連するA/D変換のサンプリング周波数、スキャン期間、及びローパスフィルタ係数の選択のうちの1つ以上がある。本論の文脈では、これらの影響要因に影響を及ぼすセンサシステムの構成可能なパラメータのセットは、センサシステムの「獲得構成」又は「データ獲得構成」(以下、簡略化のために「AC」ともいう)として理解される。いくつかの実施形態では、獲得構成は、A/D変換のためのサンプリング周波数、センサシステムの(獲得)動作のための刺激信号の動作周波数(搬送波周波数)、スキャン期間、獲得するサンプル数、「パケット長」、及びローパスフィルタ係数のうちの少なくとも1つ以上のパラメータを備える。異なるACは、これらのパラメータのうちの1つ以上において異なる。これらのパラメータは、センサ制御回路の「アナログフロントエンド」並びにデジタル処理を構成するために使用され得る。
【0023】
通信システム又は検知システムの受信信号は、通常、受信して評価される必要がある実際の情報とノイズとが混在している。この情報は、例えば、センサ電極とユーザの指との間の静電容量又は距離の測度であり得る。加法性ノイズの場合、受信信号は単に情報とノイズとの和である。典型的には、情報部分とノイズ部分との両方が未知であるので、情報部分は受信信号から容易に抽出することができず、これは一意に解くことができない2つの未知数を有する1つの方程式に匹敵する。しかし、「情報は経時的にゆっくりと変動する」など、情報、ノイズ、又はその両方についての特性を仮定しながら、ノイズの多い受信信号から情報量を推定することは可能である。ノイズが少ないほど、結果として得られる推定値はより正確になり、すなわち、推定値の不確実性はより小さくなる。したがって、ノイズがほとんどない獲得構成、例えば、別の獲得構成と比較して、結果として得られる推定値においてより少ないノイズを示す獲得構成を採用することが望ましい。
【0024】
センサシステムを用いて試験測定を行い、かつこの測定データから、ノイズ量を表すノイズ測度を計算することが可能である。このような試験測定を、本文脈では「ノイズスキャン」と呼ぶ。
【0025】
ノイズスキャンは、異なる候補ACに対して行ってもよく、決定されたそれぞれのノイズが与えられると、最小量のノイズが生じたACが選択され得る。受信信号が所望の情報とノイズとの両方を含む場合の測定は、シグナルアンドノイズスキャン、又は「SNスキャン」と呼ばれることになる。SNスキャンの間、センサ又は通信システムは、交番電界を励起し、受信側で情報部分を得るために、刺激信号を発生させ及び発信する必要がある場合がある。ノイズスキャン中に獲得されたデータから、事前定義された候補ACに対するSNスキャン中に予想されるノイズ量の推定値を計算することができる。本明細書では、そのような推定値を「ノイズ推定値」と呼ぶ。1回のノイズスキャン中に獲得されたノイズスキャンデータからノイズ推定値が計算されるACは、少なくとも、センサシステムのアナログフロントエンドのパラメータと考えられる動作周波数及びサンプリング周波数において異なり得る。
【0026】
本文脈では、「刺激信号」又は単に「刺激」は、例えば、電極の電位を所与の目標値又は目標信号に駆動するための、例えば、チップなどのセンサ回路と電極との間の電荷の能動的に制御された運動として理解される。いくつかの実施形態では、この目標値又は目標信号は、刺激が開始される前に指定される。例えば、目標信号が所与のパルス周波数を有する矩形パルス列である場合、電極の電位がこの目標信号へ駆動する前に、このパルス周波数が選択される。
【0027】
いくつかの実施形態では、刺激は、周期的信号、例えば、矩形パルス列であってもよい。この周期的な信号の周波数、例えばパルス周波数は、前述した動作周波数であり、「搬送波周波数」とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、刺激信号は、キャリア信号周期中に1回ずつ、高い信号レベルと低い信号レベルとで交互に安定する。受信側では、受信(received)信号は、復調され、ローパスフィルタリングされてもよく、その両方が、アナログ/デジタル(analog-to-digital、A/D)変換後にデジタル領域で実施されてもよい。刺激が矩形パルス列であるとき、いくつかの実施形態では、サンプリングは搬送波周波数の2倍で行われてもよい。復調は、いくつかの実施形態では、A/D変換されたサンプルにプラス1及びマイナス1を交互に乗算することによって行われ得る。
【0028】
上記に基づいて、本発明の実施形態によって対処される必要性は、例えば、信頼性が高く、正確な出力推定値を有する高いタッチレポートレートを達成するために、候補ACのセットから好適なACを選択することである。
【0029】
本発明の基本的で例示的な概念は、a)複数のACについての(例えば、搬送波周波数及びスキャン時間に対する)信頼性の高いノイズ(パワー)推定値を得るために、異なる方法、より正確には異なるパラメータを用いて、ノイズスキャン測定データの同じシーケンスを処理することを可能にするベース周波数及びサブ周波数の概念と、b)復調とローパスフィルタリングとの後のSNスキャン測定データの真のノイズパワーに対する正確な推定値を提供するロバスト性のあるノイズ測度と、を含む。
【0030】
第1の例示的な態様によれば、センサシステムの動作のためのノイズロバスト獲得構成を決定する方法は、ノイズスキャンにおいて以下の、
センサシステムからのセンサ受信信号を取得するステップと、
事前定義されたノイズスキャン周波数でのセンサ受信信号のA/D変換によって、センサ受信信号からデジタル受信信号を決定するステップと、
互いに異なる2つ以上のデシメーションレートを使用してデジタル受信信号の整数デシメーションによって複数のデシメートされたデジタル受信信号を決定するステップであって、2つ以上のデシメーションレートは、それぞれの候補獲得構成に関連付けられている、決定するステップと、
複数のデシメートされたデジタル受信信号のうちの1つ以上を使用して、候補獲得構成のうちの複数についての1つ以上のノイズ測度を決定するステップと、
1つ以上のノイズ測度を使用して、候補獲得構成からセンサシステムの動作のための獲得構成を決定するステップと、を含む。
【0031】
本態様のセンサシステムは、近接度、圧力、位置、変位、力、湿度、流体レベル、及び加速度を検出及び測定するためのセンサシステムを含むが、これらに限定されない任意の好適なタイプのものであってもよい。例えば、センサシステムは、赤外線センサシステム又は超音波センサシステムであってもよい。例えば、センサシステムは、タッチスクリーンディスプレイ用などの容量式又は抵抗性タッチセンサシステムであってもよい。例えば、センサシステムは、非接触センサシステムであってもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、本態様の方法は、センサ回路、例えば、好適なプログラミングを有するマイクロコントローラ及び/又はマイクロプロセッサなどの制御ユニットを備えるセンサ回路を使用して行われる。代替的に又は追加的に、センサ回路は、本例示的態様の方法の機能の少なくとも一部を提供する専用回路を備えてもよい。
【0033】
前述したように、本態様のノイズスキャンは、例えば、それぞれのセンサシステムに対するノイズの影響を決定するための試験測定と見なされてもよい。いくつかの実施形態では、ノイズスキャン中に取得される測定データは、いかなる情報も含まず、ノイズのみを含み、すなわち、ノイズスキャン中のセンサ受信信号は、刺激信号がセンサシステムに印加されることなく獲得される。
【0034】
(センサ)受信信号(すなわち、ノイズスキャン又はSNスキャン中に受信、測定若しくは獲得された信号)は、例えば、電極とセンサ回路との間を流れる電流、すなわち電荷の動き、ある特定の時間間隔にわたって積分された電流、又は基準電位に対する電極の電位若しくは電圧であってもよい。センサ受信信号は、任意の好適な手段、例えば対応する導電接続によってセンサシステムから取得されてもよい。
【0035】
この受信信号は、使用時に刺激によって影響を受け、場合によっては人間の指のような環境要因によって修正される場合があり、ほとんどの状況で環境ノイズ源によって影響を受ける。これらの環境的又は外部的な影響要因に加えて、センサ回路内にアナログ前処理が存在する可能性があり、例えば1/fノイズ又はA/D変換器の量子化ノイズなど、受信信号に更なる内部ノイズが加わる可能性がある。内部源からのノイズに対するロバスト性は、通常、システム設計中に対処することができるが、環境ノイズ源は、設計時に少なくともある程度は分からない。本明細書で説明される方法及びシステムは、外部ノイズに対するロバスト性に対処する。内部ノイズを無視すると、受信信号のあらゆる変化、すなわち、任意の電流又は上記電位の変化は、この関心のある外部ノイズによって引き起こされる。
【0036】
第1の例示的な態様によれば、方法は、事前定義されたノイズスキャン周波数におけるセンサ受信信号のA/D変換によって、センサ受信信号からデジタル受信信号を決定することを含む。A/D変換は、任意の好適な方法を使用して、例えば、フラッシュA/D変換器、積分A/D変換器、逐次比較A/D変換器、シグマデルタA/D変換器、直接変換A/D変換器、ランプ比較A/D変換器、ウィルキンソンA/D変換器、電荷平衡A/D変換器、デュアルスロープA/D変換器、デルタ符号化A/D変換器、パイプライン化A/D変換器、時間インターリーブA/D変換器、中間FM段A/D変換器、TS-ADC、又は任意の同等物を使用して、限定されることなく行われ得る。本明細書における「A/D変換器」という用語は、好適なA/D変換器を有するアナログフロントエンドのセットアップを含む。A/D変換は、用途に応じて設定され得る事前定義されたノイズスキャン周波数で行われる。いくつかの実施形態では、ノイズスキャン周波数は、センサシステムの動作中の刺激信号の動作周波数よりも著しく高い。いくつかの実施形態において、ノイズスキャン周波数は、動作周波数の3倍~40倍など、動作周波数の少なくとも3倍に設定されてもよい。いくつかの実施形態において、ノイズスキャン周波数は、動作周波数の3倍~4倍に設定される。
【0037】
いくつかの実施形態では、ノイズスキャン周波数、すなわち、ノイズスキャン中のA/D変換器のサンプリングレートは、SNスキャン中のA/D変換器のサンプリングレートよりも著しく高くてもよい。逆に、ノイズスキャンでは、SNスキャンに比べてA/D変換器のサンプリング間隔が大幅に短くなる場合があり、そうすると受信した入力信号をA/D変換したサンプルのアナログ処理に利用できる時間が短くなる。その結果、A/D変換間の時間が短くなるので、SNスキャンに望まれるアナログ処理のタイミングをノイズスキャンに適用することができない。以下において、ノイズスキャンの開口時間とSNスキャンの開口時間との特定の比を使用して、実施形態を説明する。
【0038】
第1の例示的な態様によれば、方法は、互いに異なる2つ以上のデシメーションレートを用いてデジタル受信信号を整数倍にデシメートすることにより、複数のデシメートされたデジタル受信信号を決定することを含む。
【0039】
言い換えればA/D変換が行われた後、すなわちデジタル領域において、デジタル受信信号は次に、複数のデシメートされたデジタル受信信号を取得するために整数デシメーションによってデシメートされる。少なくとも2つの異なるデシメーションレートが使用され、これらの各々は、それぞれの候補獲得構成に関連付けられている。いくつかの実施形態では、2つ以上のデシメーションレートは、例えば、2及び4のような2の倍数である。いくつかの実施形態では、2つを超えるデシメーションデートが使用される。
【0040】
2つ以上のデシメーションレートは、例えば、異なるデシメーションレートを適用した際に結果として生じる異なるサンプリングレートに照らして、それぞれの候補獲得構成に関連付けられている。
【0041】
本態様によると、複数のデシメートされたデジタル受信信号のうちの1つ以上を使用して、候補獲得構成のうちの複数についての1つ以上のノイズ測度が決定される。次に、1つ以上のノイズ測度を使用して、センサシステムの動作のための獲得構成が、候補獲得構成から決定される。
【0042】
上記から明らかなように、第1の態様による方法は、センサ受信信号の同じ測定データを使用して、複数のデシメートされたデジタル受信信号を決定することを可能にする。2つ以上のデシメーションレートが使用されるので、複数のデシメートされたデジタル受信信号は、それに対応して2つ以上の異なるサンプリング周波数を有する。サンプリング周波数及び関連する動作周波数は、テストされるべき獲得構成、すなわち「候補AC」の一部であり得るので、説明された方法は、したがって、例えば、複数の異なる候補ACをテストするために同じ測定データを使用することを可能にする。
【0043】
いくつかの実施形態では、オーバーサンプリングはノイズスキャン中に行われる。次いで、SNスキャンの場合と同じ(ノイズの)エイリアシングをもたらすために、ノイズスキャン信号をデシメートするためのデシメーションレートは、例えば、デシメートされたサンプリングレートがSNスキャンサンプリングレートに等しくなるように選択されてもよい。
【0044】
他の既知の手法とは対照的に、本明細書の教示は、少なくともいくつかの実施形態において、相対的に最良の搬送波周波数を識別するための解決策だけでなく、ノイズロバスト性のための完全な解決策を提供する。同じ測定データからではあるが異なるACについての1つ以上のノイズ測度の決定により、例えば、AMノイズ及び二乗ノイズに対するロバスト性が提供される。この方法はまた、本質的に迅速であり、測定時間を節約する。いくつかの実施形態において、本方法は更に、タッチレポートレートと出力SNRとの間のトレードオフを見出すことを可能にする。
【0045】
前述したように、第1の例示的な態様の方法は、複数のデシメートされたデジタル受信信号のうちの1つ以上から(2つ以上の)候補獲得構成のうちの複数について1つ以上のノイズ測度を決定することを含む。ノイズ測度の決定は、例えば、デジタル領域で行われ得る。いくつかの実施形態では、候補獲得構成の各々について1つ以上のノイズ測度が決定され、それにより、異なる候補ACの比較が可能になる。いくつかの実施形態では、それぞれのデシメーションレートに関連付けられた少なくとも1つのデシメートされたデジタル受信信号から、各デシメーションレートについてノイズ測度が計算される。いくつかの実施形態では、ノイズ測度は、複数のデシメートされたデジタル受信信号から各デシメーションレートについて計算される。この方法は、以下でより詳細に説明される。
【0046】
ノイズ測度は、ノイズの比較可能な測度を取得するための任意の好適なタイプであってもよい。例えば、ノイズ測度は、典型的には、複数のデシメートされたデジタル受信信号のうちの少なくとも1つに存在するノイズレベルを定量化する数値であり得る。
【0047】
いくつかの実施形態におけるノイズ測度は、例えば、有効ノイズパワー推定(effective noise power estimation、ENPE)によって取得されるようなパワー測度であってもよいが、例えば、パワー測度の平方根又は別の線形測度、すなわち線形関数のみを使用して入力データから計算される量であってもよいが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、ノイズ測度は位相瞬時ノイズ測度である。例えば、あらゆる目的のために本明細書に組み込まれる米国特許第10151608(B2)号で論じられているように、ノイズ測度がスコア値であり、より高いスコアがSNスキャンのより低いノイズレベルを示すアプローチもある。
【0048】
いくつかの実施形態では、ノイズ測度を計算するためのデータを獲得するためのスキャン中、すなわち、ノイズスキャン中に刺激が存在する。この種のスキャン中に獲得された測定データは、例えば、センサの近傍にある人間の指によって影響を受ける可能性が高いが、それでも、好適なACを識別するための十分に良好な判定ベースをもたらすために使用することができる。このことを考慮して、「パワー測度」という用語が、いくつかの実施形態では、「ノイズ測度」という用語と交換可能に使用され得る。
【0049】
第1の例示的な態様によれば、1つ以上のノイズ測度が決定されると、センサシステムの動作のための獲得構成は、所与の候補獲得構成から決定される。本決定は、1つ以上のノイズ測度に基づく。以下でより詳細に論じられるように、また、いくつかの実施形態では、本決定は、例えば、最短スキャン時間(「スキャン持続時間」ともいう)などの更なる考慮事項によって影響され得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、獲得構成を決定するステップは、1つ以上のノイズ測度から好ましいノイズ測度を選択するステップを含み、獲得構成は、好ましいノイズ測度に関連付けられた候補獲得構成に対応するように設定される。
【0051】
いくつかの実施形態では、好ましいノイズ測度は、例えば最大ノイズの事前定義された閾値に基づくなど、事前定義された基準に基づいて選択される。
【0052】
いくつかの実施形態では、好ましいノイズ測度は、1つ以上のノイズ測度のうちの最低ノイズレベルをもたらす。言い換えれば、これらの実施形態では、好ましいノイズ測度は、「最良の」ノイズ測度と呼ぶこともでき、最良のノイズ測度は、その量がノイズ測度の所与の比較集合内の他の全てのノイズ測度と比較して最低ノイズレベルを示すノイズ測度として理解される。例えば、ノイズ測度がENPEによって決定される場合、最良のノイズ測度は最も低い値を有し、米国特許第10151608(B2)号の開示によれば、それは最も高い値を有することになる。
【0053】
いくつかの実施形態では、2つ以上のデシメーションレートの各々について、デシメートされたデジタル受信信号の対応するグループ(すなわち、2つ以上のデシメートされたデジタル受信信号のグループ)が、複数のデシメートされたデジタル受信信号の決定の一部として、決定される。したがって、また2つ以上のデシメーションレートの観点から、本実施形態によれば、少なくとも2つのグループのデシメートされたデジタル受信信号が提供され、あるグループのグループ「メンバー」は、同じデシメーションレートを共有する。
【0054】
いくつかの実施形態では、所与のグループの各デシメートされたデジタル受信信号が、その所与のグループの他の全てのデシメートされたデジタル受信信号と異なる。デシメートされたデジタル受信信号のグループは、任意の好適な方法で互いに異なってもよい。デシメートされたデジタル受信信号のグループは、同じ又は異なる個数のサンプルを有し得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、各グループにおいて、デシメートされたデジタル受信信号が、少なくとも、異なる開始位相を有することによって、互いに異なり得るが、これに限定されない。本実施形態は、以下の説明から明らかになるように、ノイズの決定を更に改善することを可能にする。デジタル信号に関する「開始位相」という用語は、デジタル受信信号の第1のサンプルに対するデシメートされた信号の第1のサンプルの遅延として理解され、典型的には、受信信号のサンプリングレートにおけるサンプルの単位の中の遅延である。したがって、2つの信号に関する異なる開始位相は、2つの信号が異なる開始サンプルを有することを指す。
【0056】
一目瞭然であるように、デシメートされたデジタル受信信号の所与のグループにおいて、全ての可能な開始位相が表される必要はない。例えば、少なくとも2つのデシメーションレートR(0,j)の各々についてデジタル受信信号xは、開始位相のサブセットv=v0,v0+dv,v0+2dv,...,R(0,j)-1に対してデシメートされてもよく、ここでは、j=0,1,・・・はサブ周波数インデックスと表記される。他の実施形態では、デシメートされたデジタル受信信号のグループは、全ての使用可能な開始位相を表す。例えば、少なくとも2つのデシメーションレートR(0,j)の各々について、信号xは、全ての開始位相v=0、1、...、R(0,j)-1についてデシメートされ得る。したがって、24個のサンプルと4のデシメーションレート(すなわち、R=4)とを有するデジタル受信信号の例示的な場合において、グループは、6個のサンプルを有する4つの対応するデシメートされたデジタル受信信号からなり、各信号は、合計4つの使用可能な開始位相の異なる開始位相で開始されるであろう。グループのデシメートされたデジタル受信信号の各々は、あるサンプルの位相シフトに起因して、4つごとのサンプルのみを含むが、全てのサンプルは、依然としてグループ内で表され、改善されたノイズ測度をもたらす。
【0057】
いくつかの実施形態では、1つ以上のノイズ測度は、有効ノイズパワー推定(ENPE)によって決定され、ENPEは、デシメートされたデジタル受信信号のグループのうちの1つのデシメートされたデジタル受信信号の各々にわたる位相瞬時ノイズ測度の(例えば、正規化された)和の決定を含む。いくつかの実施形態では、有効ノイズパワー推定は、全てのグループに対して、すなわち全てのデシメーションレートに対して行われる。位相瞬時ノイズ測度の和の決定は、任意の好適な方法によって行われ得る。いくつかの実施形態では、位相瞬時ノイズ測度は、係数ベクトルからの係数で重み付けされたデシメートされたデジタル受信信号の(全ての)サンプルの和である。例えば、係数ベクトルは、ローパスフィルタの係数を含むベクトルであってもよい。例えば、所望の長さのボックスカー窓(全て1)又はハン(又はハニング)窓の係数である。このような和項の正規化は、例えば、この和項を係数ベクトル内の全ての係数の和で除算することによって行うことができる。この正規化は、重み付けされた和の項に対して直接行われる必要はなく、後の処理段階で、例えば位相瞬時ノイズ測度の和の後に行うこともでき、これにより計算の複雑さを低減することができる。
【0058】
例えば、所与のデシメーションレートに対するENPEを計算するために、所与のグループの各デシメートされたデジタル受信信号について、割り当てられた係数ベクトルとのドット積が計算される。いくつかの実施形態では、これらのドット積は、全ての係数の和で除算することによって正規化される。次に、正規化された二乗ドット積の平均を計算して、ENPEを得ることができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、候補獲得構成のセットから獲得構成を決定するステップは、ノイズ測度が(事前定義された)ノイズ閾値を満たす間、最短スキャン時間を有する候補獲得構成を選択するステップを含む。最短の使用可能なスキャン時間が採用されるため、特に高いタッチレポートレートを提供する。
【0060】
ノイズ測度をノイズ閾値と比較するという文脈では、予想される出力信号対ノイズ比(signal-to-noise ratio、SNR)を(事前定義された)SNR閾値と比較する代替形態も包含することが理解されることに留意されたい。SNRは、先に説明したように、先験的に決定された信号パワー及びノイズ測度決定から計算することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、候補獲得構成のセットから獲得構成を決定するステップは、1つ以上のノイズ測度をノイズ閾値と比較し、ノイズ閾値が1つ以上のノイズ測度のいずれによっても満たされない場合、候補獲得構成のうちの少なくとも1つのスキャン時間を増加させて少なくとも1つの更新された候補獲得構成を取得し、少なくとも1つの更新された候補獲得構成について1つ以上の更新されたノイズ測度を決定し、1つ以上の更新されたノイズ測度をノイズ閾値と比較するステップを更に含む。
【0062】
本実施形態は、元の候補獲得構成のいずれもが所望のノイズ閾値を満たさない場合に、スキャン時間を増加させて候補獲得構成を徐々に評価することを可能にし、これは、例えば、それぞれの用途に従って設定され得る。これに対応して、いくつかの実施形態では、ノイズ閾値を満たす獲得構成が見つかるまで、説明されたステップを繰り返すことができる。所与の反復において、閾値を満たす複数の候補獲得構成が見出された場合、いくつかの実施形態では、候補獲得構成は、所与の反復のスキャン時間に対して最低ノイズレベルを有するシステム動作のための獲得構成として選択される。いくつかの実施形態では、複数又は全ての候補獲得構成のスキャン時間が、先行するステップの所与の反復において増加される。これにより、同じ動作周波数及びサンプリング周波数を有し得るが、異なる係数ベクトルを有し得る複数の更新された候補獲得構成を提供する。
【0063】
いくつかの実施形態では、スキャン時間は、元の/先行する候補獲得構成のスキャン時間の実質的に整数倍だけ増加される。これらの実施形態は、ノイズを低減するのに特に有益である。いくつかの実施形態では、「実質的に整数倍」とは、約
【数1】
の整数倍からの百分率偏差からなり、ここでTは元のスキャン時間である。
【0064】
スキャン時間を増加させるために、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの更新された候補獲得構成を取得するために、それに対応して増加したスキャン時間で新しいノイズスキャンが行われ得る。
【0065】
他の実施形態では、センサシステムからセンサ受信信号を取得するステップの間に、最大スキャン時間でセンサ受信信号を取得し、その一部分のみを最初に考慮することが可能である。例えば、いくつかの実施形態では、A/D変換が行われた後、センサ受信信号の一部のみが、すなわち最小スキャン時間で、元のセンサ受信信号が記憶される間に、更に処理され、かつ論じられたデシメーションの基礎を形成する。これらの実施形態では、元のセンサ受信信号の記憶されたコピーのより長い部分を後で使用することによって、すなわちスキャン時間を増加させることによって、スキャン時間を「増加させる」ことが可能である。いくつかの実施形態では、最大スキャン時間は、最小スキャン時間の4倍であってもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、センサシステムの事前定義された最小出力レポートレートが与えられてもよく、又は逆に、それぞれの測定データが獲得される間にスキャンサイクル(すなわち、1つ以上のノイズスキャン及びSNスキャンの連続動作)の最大持続時間が与えられてもよい。スキャンサイクルに利用可能なこの時間は、ノイズスキャン及び少なくとも1つのSNスキャンのような補助的な測定を含む、スキャンサイクル中に行われる全ての個々の測定にわたって分配される。例えば、SNスキャンの1つの個々の測定に対して、最大スキャン時間Tを得ることができる。
サンプリング周波数fsがACに与えられると、例えばfs=2・fcは、動作周波数又は搬送波周波数fcの2倍となり、最大
【数2】
まで、ADCサンプルを時間Tに適合させることが可能となる。
したがって、この利用可能なスキャン時間Tを完全に活用するために、いくつかの実施形態では、所与のACについて、獲得及び処理されるサンプルの数、本明細書では「パケット長」Lと記載されるサンプル数を、
【数3】
に設定することが可能である。
【0067】
いくつかの実施形態において、及び獲得されたデータを処理するために有限入力応答(finite input response、FIR)ローパスフィルタが採用される場合、ローパスフィルタ出力の安定を必要としながらも、獲得されたデータの全てを利用するために、並びにスキャン時間T中に獲得されたデータに対する単一の出力値が望まれる場合があるので、フィルタ長をLに設定することもできる。ローパスフィルタ係数のベクトルは、例えば、いくつかの実施形態においてフィルタのスペクトル抑制を制御するために選択されてもよい。例えば、ベクトルの第1の要素は、ベクトルの中間要素よりも小さい正の値であり得る。例えば、このようなベクトルは、[0.05、0.1、0.2、0.3、0.2、0.1、0.05]とすることができる。いくつかの実施形態では、ベクトルは対称である。例えば、ローパスフィルタ係数のベクトルとして、長さLのハニング窓を選択することが可能である。ハニング窓のn番目の要素は、Mathworksによって定義されるように、以下のとおりである。
【数4】
いくつかの実施形態では、ノイズスキャンに続いて、方法は、ノイズスキャン中に決定された獲得構成を使用して、SNスキャン中にセンサシステムを動作させることを含む。SNスキャン中、センサシステムは、交番電界を励起するために刺激信号を発信するように動作してもよく、次いで、タッチ検出などのそれぞれのセンシングアプリケーションについて評価することができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、最新のスキャンの獲得構成が現在のノイズシナリオのための最新の構成を表すという観点から、最新のノイズスキャンの獲得構成を使用してSNスキャン中にセンサシステムを動作させる。いくつかの実施形態では、SNスキャンに続いて、更なるノイズスキャンが行われる。結果として生じる循環動作は、センサシステムが電源切断されるときなど、いくつかの実施形態においてセンサシステムの検知動作が停止するまで繰り返されてもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、本方法は、2つのSNスキャンの間に複数のノイズスキャンを後続して行うことを含み、複数のノイズスキャンは事前定義されたノイズスキャン周波数を使用し、複数のノイズスキャンのうちの少なくともいくつかの(又は例えば、全ての)事前定義されたノイズスキャン周波数が互いに異なる。本実施形態は、特に、共通の倍数を共有しない候補獲得構成が評価されるべきであるとき、ノイズロバスト獲得構成の決定を更に改善することを可能にする。
【0070】
例えば、後続して行う複数のノイズスキャン中に取得される獲得構成から、センサシステムの動作のための全体的な獲得構成を決定することが可能である。換言すれば、「好適な」又は「最良の」全体的な獲得構成は、ノイズスキャンの各実行において取得された複数の獲得構成から決定され得る。いくつかの実施形態では、全体的な獲得構成は、関連付けられたノイズ測度及び/又はそれぞれのスキャン時間を比較することによって、複数のノイズスキャン中に決定された獲得構成のグループから決定され得る。
【0071】
代替的に、いくつかの実施形態では、スキャンサイクル中に、例えば2つ(又は異なる数)の予め定義されたノイズスキャン周波数のみについて連続してノイズスキャンを行い、最良のACをもたらすものを維持しながら、残りのノイズスキャン周波数の候補を循環的にループして2番目のものを選択することも可能である。
【0072】
いくつかの実施形態では、獲得構成を決定するための(すなわち、ノイズスキャン中の)A/D変換の開口時間は、SNスキャンの開口時間と実質的に同一であるか、又はその整数分の1となるように設定される。すなわち、SNスキャンには、それぞれの用途に応じて(例えば、タッチレポートレートの点から)開口時間が予め定義され、又は所望により選択され、ノイズスキャン中のA/D変換のための開口時間は、それに応じて、すなわち、事前定義された開口時間と同一又はその整数分の1に設定される。本発明の文脈では、「開口時間」という用語は、一般に、アナログ信号が測定システムに入力される持続時間、すなわち、測定システムが外界に露出され、したがってその内部アナログ状態がアナログ入力信号によって変えられる時間として理解される。いくつかの実施形態では、開口時間は、センサ受信信号がセンサ回路のセンサインターフェースに入力される時間に関連し、これについては以下で論じる。いくつかの実施形態では、開口時間は、センサ受信信号がセンサ回路のA/D変換器に入力される時間に関連し、これについては以下で論じる。
【0073】
ノイズスキャン開口時間がSNスキャン開口時間と同一であるとき、相対的最良な搬送波周波数の判定をもたらすことを保証することが可能である。ノイズのスキャン開口時間がSNスキャン開口時間の整数分の1であり、ノイズが狭帯域の場合、絶対的な実効ノイズパワーの推定はできないが、最適な搬送波周波数を得ることは依然として可能である。
【0074】
本発明者が確認したように、SNスキャン開口時間とノイズスキャン開口時間との間のある特定の比について相対的最良な搬送波周波数の判定をもたらすことを保証することが可能である。これは、ノイズスキャン開口時間が、a)SNスキャン開口時間と同一であるか、又はb)ノイズスキャン開口時間がSNスキャン開口時間の整数分の1であるか、若しくはこれに対応して、SNスキャン開口時間がノイズスキャン開口時間の整数倍である場合である。
【0075】
いくつかの実施形態では、基本周波数インデックスiを有する(所与の基本周波数f(i)について)持続時間
【数5】
は、全てのインデックス対(i,j)について実質的に同じである。
【0076】
いくつかの実施形態では、当該方法のステップは、センサシステムのためのセンサ回路によって少なくとも部分的に行われる。いくつかの実施形態では、(例えば、非一時的)コンピュータ可読媒体は、センサ回路に本明細書に記載されるような方法のステップを行わせるように構成されているコンテンツが提供される。
【0077】
別の態様によれば、センサシステムの動作のための獲得構成を決定するセンサ回路が提供される。センサ回路は、
センサシステムからのセンサ受信信号を取得するためのセンサインターフェース又は入力部と、
事前定義されたノイズスキャン周波数におけるセンサ受信信号のA/D変換によって、センサ受信信号からのデジタル受信信号を決定するA/D変換器と、
互いに異なる2つ以上のデシメーションレートを使用してデジタル受信信号の整数デシメーションによって複数のデシメートされたデジタル受信信号を決定するように構成されたデシメーション回路であって、2つ以上のデシメーションレートの各々は、それぞれの候補獲得構成に関連付けられている、デシメーション回路と、
複数のデシメートされたデジタル受信信号のうちの1つ以上を使用して、候補獲得構成のうちの複数についての1つ以上のノイズ測度を決定するように構成された、ノイズ評価回路と、
1つ以上のノイズ測度を使用して候補獲得構成からセンサシステムの動作のための獲得構成を決定するように構成された構成回路と、を備えるが、これらに限定されない。
【0078】
いくつかの実施形態では、本態様によるセンサ回路は、前述の態様に関して前に論じた実施形態のうちの1つ以上に従って構成されている。使用される用語及びそれらの決定に関して、先行する態様が参照される。
【0079】
別の態様によれば容量式タッチ検知システム(容量式センサ)が提供される。この態様の容量式タッチ検知システムは、
容量式検知のために構成された1つ以上の電極と、
電極の少なくとも1つに接続されたセンサ回路と、を備え、センサ回路は、
1つ以上の電極からセンサ受信信号を取得するためのセンサインターフェース又は入力部と、
事前定義されたノイズスキャン周波数におけるセンサ受信信号のA/D変換によって、センサ受信信号からのデジタル受信信号を決定するA/D変換器と、
互いに異なる2つ以上のデシメーションレートを使用してデジタル受信信号の整数デシメーションによって複数のデシメートされたデジタル受信信号を決定するように構成されたデシメーション回路であって、2つ以上のデシメーションレートの各々は、それぞれの候補獲得構成に関連付けられている、デシメーション回路と、
複数のデシメートされたデジタル受信信号のうちの1つ以上を使用して、候補獲得構成のうちの複数についての1つ以上のノイズ測度を決定するように構成された、ノイズ評価回路と、
1つ以上のノイズ測度を使用して候補獲得構成からセンサシステムの動作のための獲得構成を決定するように構成された構成回路と、を備える。
【0080】
いくつかの実施形態では、本態様によるセンサ回路は、前述の態様に関して前に論じた実施形態のうちの1つ以上に従って構成されている。使用される用語及びそれらの決定に関して、先行する態様が参照される。本明細書で使用される「容量式タッチ検知システム」という用語は、例えば、近接の検出に基づく非接触センサシステムを含むと理解される。
【0081】
ここで、実施形態の様々な要素に数字表示が与えられ、更なる実施形態が議論される図面を参照する。
【0082】
例示的な実施形態において、説明された実施形態の構成要素はそれぞれ、示された又は説明されたような組み合わせと、示された又は説明された以外の組み合わせとにおいて、互いに独立して考慮されるべき個々の特徴を表すものである。加えて、記載された実施形態は、記載されたもの以外の本発明の特徴によって補足することもできる。
【0083】
図1は、センサ回路1の第1の例示的な実施形態を概略的なブロック図で示す。センサ回路1は、センサシステム又は通信システム(いずれも図1には図示せず)を動作させるように適合されている。例えば、図2に概略的に示される容量式タッチ検知システム21のセンサ20は、センサ回路1に接続されてもよい。本発明は、容量式タッチ検知システムに限定されないことを強調するが、本記載においては、容量式タッチ検知システム21を参照する。
【0084】
図1の実施形態の例示的なセンサ回路1は、以下の動作及び構成要素を提供するハードウェア/ソフトウェアを有するマイクロコントローラによって具現化されてもよい。より明確にするために、マイクロコントローラ自体は、図1の概略ブロック図に示されていない。
【0085】
センサ回路1は、センサ接続部3を使用して容量式タッチ検知システム21のセンサ20に接続可能なセンサインターフェース2を備える。容量式タッチ検知は、例えば、コンピュータ、タブレット、スマートフォン、ウェアラブル、及びスマートホーム機器などの電子機器の容量式タッチパネルパネル、車両、列車、船舶、航空/宇宙船、及び産業又は科学機器用の電子部品に使用することが知られているが、これらに限定されるものではない。一実施例では、容量式タッチ検知システム21は、「タッチレス」センサシステムである。
【0086】
センサインターフェース2及びセンサ接続部3は、センサ回路1が、本明細書において「シグナルアンドノイズスキャン」、又はSNスキャンと呼ばれる獲得動作中に容量式タッチ検知システム21のセンサ20を動作/駆動することを可能にする。SNスキャン中、センサ回路1又はより正確にはセンサ回路1の駆動回路4は、刺激信号を作成して送信し、容量式タッチセンシングシステム21のセンサ20の近くに交番電界を励起し、次に、受信側で、すなわち容量式タッチ検知に関して、ユーザの1つ以上の指又は異なる物体がセンサ20の表面の近くで検出されたかどうかの情報部分をもたらす。刺激信号の送信及び戻りセンサ受信信号の受信の両方は、センサインターフェース2によって処理される。本説明の目的のために、また一例として、刺激信号は周期的信号、すなわち矩形パルス列である。この周期信号の周波数、すなわちパルス周波数は、SNスキャンの動作周波数又は搬送波周波数と呼ばれる。
【0087】
獲得動作に加えて、センサ回路1は、対応するノイズスキャンモードでノイズスキャンを行う。ノイズスキャン中、好ましくは、センサ回路1によってセンサに刺激信号が印加されることはない。
【0088】
ノイズスキャンは、先に説明したように、試験測定として機能し、ノイズスキャン中に取得した測定データからのノイズ測度の計算を可能にし、これは、SNスキャン中に予想されるノイズの量を表す。ノイズに対するロバスト性は、容量式タッチ検知システム21を含む任意の通信システム又はセンサシステムにとって重要な課題である。特に、標準的な、IECが行った、例えばIEC61000-4-6のような振幅変調ノイズによるノイズ試験、例えばISO11452-4の自動車規格によるバルク電流注入(BCI)試験、又は二乗ノイズに対するロバスト性に合格することが対処される。更に、容量式タッチ検知システム21の様々な用途のために、信頼性が高く正確な出力推定値で高いタッチレポートレートをもたらすことが重要である。
【0089】
ノイズスキャンを行う目的は、SNスキャン中に容量式タッチ検知システム21の動作のための獲得構成を決定することである。獲得構成は、SNスキャン中の容量式タッチ検知システム21の動作のための1つ以上のパラメータを備え、A/D変換のためのサンプリング周波数、センサシステムの(獲得)動作のための刺激信号の動作周波数(搬送波周波数)、スキャン持続時間、獲得するサンプルの数、及びローパスフィルタ係数のうちの1つ以上を備え得る。
【0090】
本説明では、SNスキャン中のA/D変換のためのサンプリング周波数は、刺激信号の動作周波数/搬送波周波数に関連すると考えられることに留意されたい。この関係の1つの理由は、本実施形態におけるセンサ受信信号が準静的信号であること、すなわち、矩形パルス列の形状の刺激信号の観点から、所与の時間間隔中に経時的に変わらないか、又はほとんど変わらない信号であることである。受信側又は検知側では、以下で説明するように、信号がローパスフィルタリングを受けたとき、そのエッジは丸められ、各エッジの後、信号は、一定レベルに落ち着くまで遷移期間を示すようになる。ここで、受信信号は、信号が十分な程度に安定したときに、各エッジの後に1回サンプリングされる。つまり、SNスキャン中は、矩形パルス列の1周期ごとに2つのサンプルがあるので、サンプリング周波数が搬送波周波数の2倍であることに相当する。
【0091】
センサ回路1は更に、A/D変換器5と、デジタル信号処理回路15と、ノイズ評価回路8と、構成回路9と、メモリ10と、タッチ検出器11と、出力部12とを備える。デジタル信号処理回路15は、特に、以下でより詳細に説明するように、複数のデシメートされたデジタル受信信号を決定するように構成されたデシメーション回路(図1には示されていない)を備える。図1は、例えば、A/D変換器5のサンプリングレート又は信号処理回路15によるメモリ10のアクセスを制御するための、前述の構成要素間の全ての制御接続を示すわけではないことに留意されたい。
【0092】
ノイズスキャン中、A/D変換器5、デジタル信号処理回路15、ノイズ評価回路8、及び構成回路9の信号処理チェーンがアクティブ状態となる。
【0093】
SNスキャン中は、ノイズ評価回路8及び構成回路9は、ディセーブル、すなわち非アクティブ状態である。この場合、センサ受信信号は、A/D変換及び信号処理の後、センサ20上のユーザのタッチを決定するためにタッチ検出器11に提供される。この結果は、出力部12を介して接続された外部構成要素に提供される。
【0094】
以下、図1及び図3のフロー図を参照して、センサ回路1及びその構成要素の機能について説明する。
【0095】
説明を簡単にするために、例示的な容量式タッチ又はタッチレス検知システム21は多数の獲得構成を有し、そのアナログフロントエンドパラメータは、動作周波数及びそれぞれのサンプリング周波数を除いて等しく、後者であるサンプリング周波数は、前述したように、この例示的な実施形態では搬送周波数の2倍であると仮定される。異なるサンプリング周波数は共通の倍数を持ち、これは事前定義されたノイズスキャン周波数である。フィルタリングされるサンプルの数及びローパスフィルタ係数の選択のような他のデジタル信号処理パラメータは、これらのAC間で異なっていてもよいし、異なっていなくてもよい。
【0096】
ステップ30において、センサ回路1の初期化/電源投入によりノイズスキャンが開始される。ステップ31において、上述したように、刺激信号が印加されることなく、センサインターフェース2を用いてセンサ20からセンサ受信信号が取得される。したがって、信号はノイズのみから構成される。
【0097】
続いて、ステップ32において、センサ受信信号は、A/D変換器5を用いてA/D変換され、デジタルセンサ受信信号が取得される。ノイズスキャン中、データは、我々が基本周波数又は事前定義されたノイズスキャン周波数として示す周波数fbで獲得される。構成ステップ(図示せず)中に、fbは、多数のACのSNスキャンサンプリング周波数の公倍数であるように選択される。これらのACのうちの1つが、例えば、候補搬送波周波数fcを持たせるようにする。このACを用いたSNスキャン中、サンプリング周波数は、fc=2・fcのはずである。しかしながら、事前定義されたノイズスキャン周波数は、R倍高く、すなわち、fb=R・2・fcであり、式中のRはデシメーションレートである。したがって、A/D変換器5は、サンプリング周波数fb=2・R・fcでノイズスキャン中にアナログセンサ受信信号をサンプリングし、すなわち、サンプリング周波数はSNスキャンよりもR倍高くなる。
【0098】
ステップ33において、デシメートされたデジタル受信信号が、デジタルセンサ受信信号からデジタル信号処理回路15のデシメーション回路によって生成される。
【0099】
デジタルセンサ受信信号のデシメーションは、それぞれのデシメートされたデジタル受信信号におけるサンプルの数を低減させる。図4は、例示的なデシメーションレートR=2、3、4、及び6に対するデジタル信号処理回路15の動作を概略的に示す。
【0100】
デシメーションは、複数の異なるデシメーションレート、すなわち、図4に示すように、デシメーションレートR=2、3、4、及び6を使用する。各デシメーションレートについて、複数のデシメートされたデジタル受信信号が提供されるが、これについては、以下でより詳細に説明する。
【0101】
複数のデシメーションレートによるデシメーションを適用することにより、同一の測定データ、すなわちデジタルセンサ受信信号から、複数の可能な「候補」獲得構成を評価することができる。前述したように、この実施形態における(候補)獲得構成は、ノイズスキャンのサンプリング周波数が公倍数であるサンプリング周波数を有する。ローパスフィルタ長及び係数値は、いくつかの例において同様に異なり得る。複数のデシメーションレートによるノイズスキャンデジタルセンサ受信信号のデシメーションは、これらの異なるサンプリング周波数を有するデシメートされたデジタル受信信号を提供し、したがって、同じセンサ受信信号を使用して異なる候補獲得構成を評価することが可能になる。図4の例から明らかなように、スキャン持続時間は一定(すなわち、L(i)=24個のサンプル)であるが、それぞれのACパケット長デシメートされたデジタル受信信号におけるサンプルの数は、パケット長Lに等しいデシメートされたデジタル受信信号のサンプル数は、デシメーションレートに依存して変動する。いくつかの実施形態では、異なるACについてのスキャン持続時間が異なり得る。例えば、ノイズスキャンが合計20個のサンプルをもたらす場合、R=4は4*5=20個のサンプルをもたらすが、R=3では、3*7=21が元のサンプル長20に「適合」しないので、3*6=18個のサンプルしか存在しないこととなるであろう。
【0102】
デシメートされたデジタル受信信号が生成されると、ステップ34において、デジタル信号処理回路15は、デシメートされたデジタル受信信号を復調する。これは、本明細書では限定はしないが、SNスキャン中にも行われるであろう、サンプルをプラス1とマイナス1と交互に乗算することによって行われる。復調後、デジタルローパスフィルタリング、例えば、1つ以上の有限インパルス応答(FIR)フィルタを用いて、不要な高周波信号成分が除去される。異なるデシメーションレートRは、更なる処理において差異を必要とし得ることに留意されたい。特に、FIRフィルタのフィルタ係数の数は、デシメーション後のサンプルの数
【数6】
すなわち、それぞれの候補ACのパケット長Lに等しく、フィルタ係数の値はそれに応じて異なるデシメーションレートRに対して異なっても良い。本実施形態において、フィルタリングは、ローパスフィルタ係数のベクトルとして長さLのハニング窓を使用して適用される。ハニング窓のn番目の要素は、Mathworksによって定義されるように、以下のとおりである。
【数7】
【0103】
フィルタリングの後、
【数8】
による更なるデシメーションが適用され、獲得されたADCサンプルのブロックに対して単一の出力値が提供される。その結果、デジタル信号処理回路15のデジタル処理チェーンは、図5を参照して以下でより詳細に説明されるが、簡略化のために
【数9】
はLと略記する。
【0104】
評価は、ステップ35において、デシメートされたデジタル受信信号から候補となる獲得構成のノイズ対策を決定するノイズ評価回路8によって行われる。
【0105】
前述したように、デシメーションレートごとに、デシメートされたデジタル受信信号のグループが決定される。例えば、図4に示されるように、図の最上段では、L(i)=24のサンプルxkであり、k=0,1,...,23である、元のADC 5出力信号を示している。その下は、デシメーションレートR=2,3,4,6において、単一の元のADC信号が、異なる開始サンプルxνであり、ν=0,1,...,R-1を伴うRの信号に逆多重化される様子を示す。これにより、デシメートされた信号のサンプルは
【数10】
としてリネーミングされる。すなわち、図4におけるL(i)=24のサンプル及びR=2,3,4,6の例示的な値に対して、それぞれ12、8、6及び4のサンプルの長さのデシメートされた信号が得られる。
【0106】
図4から分かるように、デシメーションレートR=3の場合、合計3つのデシメートされたデジタル受信信号が決定され、これらは異なる開始位相、すなわち異なる開始サンプルを示す。これは、ステップ35で特に有益なノイズ測度、すなわち「ENPE」とも呼ばれる「有効ノイズパワー推定値」を計算するために行われる。
【0107】
したがって、図3のプロセスは、デジタル領域において、デジタル受信信号が異なる信号位相ν∈{0,1,...,R-1}を使用してデシメートされ、結果として得られたR信号の各々が、サンプリングレートfs=fb/Rを有することを提供する。いくつかの実施形態では、採用される信号位相のセットは、位相の完全なセット{0,1,...,R-1}のサブセット、例えば、{0,2,4,...,R-1}でもあり得ることに留意されたい。言い換えれば、デシメートされたデジタル受信信号の各グループは、必ずしも全ての可能な信号位相を含むわけではない。
【0108】
数学的には、各デシメーションレートRには、例えば、FIRローパスフィルタ(low-pass filter、LPF)の係数を含む、デシメートされた信号と同じ長さを有する係数ベクトルが割り当てられる。デシメーションレートRに対するENPEを計算するために、最大Rのデシメートされた信号ベクトルの各々について、割り当てられた係数ベクトルとのドット積は、ノイズ評価回路8によってステップ35で計算される。任意選択的に、いくつかの実施形態では、これらのドット積は、全ての係数の和で除算することによって正規化され得る。次に、正規化された二乗ドット積の平均を計算して、ENPEを得る。
【0109】
数学的には、図4は、各R∈{2,3,4,6}について、元の信号ベクトルx=[x012...x23]が、最大R個の信号ベクトルにまで分割される様子を示しており、
【数11】
となり、式中、
【数12】
及びν∈{0,1,...,R-1}を表す。w=[w012N]を、各デシメーションレートRに割り当てられる長さ(N+1)=L(i)/Rの係数ベクトルを表すことにする。次に、搬送波周波数fcの受信信号をfs=2・fcでサンプリングし、復調して係数でフィルタリングした場合のENPEη(x,R,w)は、基本周波数fb=R・2・fcでサンプリングしたノイズスキャンデータベクトルxと、デシメーションレートRと、係数ベクトルwとから、次式のように計算される。
【数13】
【0110】
ここで、項
【数14】
は、位相瞬時ノイズ測度と呼ばれる。正規化項
【数15】
は、1のフィルタのDC利得を保証し、位相νの和から移動することができ、次いで、二乗され、又は後の処理ステップにおいて考慮され得、
【数16】
を残す。
【0111】
異なるデシメーションレートRを区別するために、j番目のデシメーションレートR(0,j)に、インデックスj=0,1,2,...を有する上付き文字を割り当てる。同様に、デシメーションレートR(0,j)に割り当てられた係数ベクトルは、w(0,j)を与える。
【0112】
同じ測定データを使用して異なる候補ACのノイズ測度を計算するので、例えば振幅変調ノイズで経験される時間的変化はノイズ測度に影響を及ぼすが、同じデータから計算されたノイズ測度は依然として比較可能なままであり、比較的最低のノイズ測度を有するACを識別することを保証する。
【0113】
デシメーションレートが2の倍数の場合、位相の和ν=0,1,...,R-1を位相の和ν=v0,v0+R/2に変えることによって計算量を減らすことができ、式中ν0∈{0,1,...,R/2-1}である。例えば、R=6については、
【数17】
の式を求めることにより、複雑さが低減されたENPEを計算することができる。
【0114】
一旦ノイズ測度、すなわち、本明細書におけるENPEが各候補獲得構成について決定されると、ENPEは構成回路9に渡され、構成回路9は、ステップ36で決定されたENPEを使用して候補獲得構成からセンサシステムの動作のための獲得構成を選択する。
【0115】
この実施形態では、構成回路9は、ステップ36において、関連付けられたENPEを評価することにより、候補獲得構成のうち、最も低いノイズをもたらすものを決定する。
【0116】
候補獲得構成が獲得構成として選択されると、ノイズスキャンが完了する。獲得構成は、構成回路9によって駆動回路4に提供される。加えて、選択された獲得構成は、将来の参照のためにメモリ10に記憶される。次いで、容量式タッチ検知システム21は、ノイズスキャンの結果に従って、少なくとも1つのSNスキャンにおいて動作される(ステップ37)。SNスキャンは、特に相互容量センサの場合に、複数のセンサ(送信)線3に対して行われ得ることに留意されたい。SNスキャンの後、ステップ30から始まる新しいノイズスキャンが行われる。
【0117】
ノイズスキャン及びSNスキャンに対して、2つの結果として生じる信号処理チェーンが、簡略化された概略図で図5に示されている。
【0118】
図5は、図の上部において、SNスキャン中に獲得されたデータのデジタル処理を示す。センサ受信信号は、搬送波周波数fcの2倍でアナログ領域からデジタル領域に変換され、すなわち、fs=2・fcであり、ADC5を使用してデジタルセンサ受信信号が取得される。デジタルADC出力信号、すなわちデジタルセンサ受信信号は、次に、復調器13、FIRローパスフィルタ6、及びデシメーション回路7を備えるデジタル信号処理回路15に提供される。デジタルADC出力信号、すなわちデジタルセンサ受信信号は、復調器13によって、そのサンプルにプラス1とマイナス1とを交互に乗算することによって復調され、復調された信号は、フィルタ係数がLのデジタルローパスLPFフィルタ6に入力されて、最終的に計数Lでデシメートされ、すなわち、L個のサンプルを入力した後の、1つのサンプルのみがデシメータ7の出力である。
【0119】
図5の下部には、ノイズスキャン時のデジタル処理回路15とノイズ評価回路8との処理がより詳細に示されている。ADC5は、事前定義されたノイズスキャン周波数でアナログセンサ受信信号をサンプリングしている。図5において、1つの例示的なACの処理が示される。この動作は、検討される各ACに対して行われる。
【0120】
例示的なACは搬送波周波数fc=fb/(2・R)を有する。ADC5によるデジタルセンサ受信信号を取得するための変換後のサンプリングされた信号は、ν∈{0,1,...,R-1}でインデックス付けされたR個の信号へ逆多重化され、ここで、R個の信号の各々は、サンプリングレートfs=2・fcを有する。SNスキャン中の処理に相当し、SNスキャンにおける条件と同様の条件を提供するために、逆多重化された信号の各々は、そのサンプルを交互にプラス及びマイナス1で乗算することによって、それぞれの復調器13によって復調され、各復調された信号は、FIRローパスフィルタLPF6においてフィルタリングされ、デシメーション回路7によってデシメートされるようになっている。R・L個のサンプルxkをアナログ/デジタル変換及び処理した後、各デシメートされた信号に対して、1つのデシメートされたサンプルを取得した。各デシメートされたサンプルは、ノイズ評価回路8によって二乗され、次いで、これらのR個の二乗されたサンプルの平均が、ノイズ評価回路8によって計算され、ENPEを得る。
【0121】
図3及び図5を参照して前述した処理は、必ずしも「オンライン」で完了する必要はないことに留意されたい。その代わり、図3図5を参照して前述したように、各ADCサンプルxkは、それが(±1)と乗算されて、中間積として復調された値が得られると、すぐに破棄されてもよい。一実施形態では、サンプルxkは、オフライン処理のためにメモリ10に記憶され得る。この実施形態では、図3及び図5を参照して説明した処理は、A/D変換後に開始される。
【0122】
図6は、別の実施形態におけるセンサ回路1の動作の例示的なフロー図を示す。この動作は、特に図3を参照しながら、前述の説明に対応する。したがって、ステップ60~67の動作は、ステップ66aを除いて、それぞれのステップ30~37の動作に対応し、ステップ66aでは、構成回路9が、SNスキャンのために駆動回路4によって使用される獲得構成の開口時間を、現在のノイズスキャン中にA/D変換器5によって使用される開口時間の整数倍(同一の開口時間、すなわち整数=1、を含む)に設定する。そのために、構成回路9はA/D変換器5(図1には示されていない)に接続されている。開口時間は、次のノイズスキャン周期になると、ステップ60で元の開口時間に戻される。
【0123】
本実施形態は、アナログデータを捕捉して時間離散型サンプルを作成する場合、アナログ信号が測定システムに入力される持続時間、すなわち、測定システムが外界に露出され、その結果、アナログ入力信号によって内部のアナログ状態が変えられる時間が、出力サンプルの値に影響を与えることがあるという発明者の認識に基づいている。ADC5の場合、この持続時間が、いわゆる「開口時間」である。図7の概略図は、周波数fnの単一トーン信号に対する感受性とも呼ばれる、理想的なADCの伝達関数の大きさを、開口時間0.833μs及び2.5μsの場合について示す。開口時間の逆数の倍数、すなわち、それぞれ1/0.833μs=1.2MHzと1/2.5μs=400kHzとでスペクトルのゼロが観察される。
【0124】
一部のタッチ検知デバイスでは、電極を検知すると、センサ電極に流れる又はセンサ電極から流れる電流は、決定論的な時間量にわたって積分されている。この積分時間も開口時間と見なされる。
【0125】
2つの連続するサンプルの開口時間窓は重複することができないので、開口時間は、2つの連続するサンプル間の時間、つまりサンプル間隔より長くすることはできない。サンプリング周波数が高いほど、サンプル間隔が短くなり、したがって最大開口時間が短くなる。したがって、事前定義されたノイズスキャン周波数fb=2・R・fcでサンプリングするとき、式中fcは、例示的なACの搬送波周波数であり、最大開口時間1/(2・R・fc)は、サンプリング周波数が1/(2・fc)であるSNスキャン中よりも短い。
【0126】
所望の開口時間はまた、使用するセンサの種類にも依存するかもしれない。例えば、ITOは銅に比べて導電率が低いため、PCBセンサに比べてITOセンサの信号の整定時間が長くなるのが一般的である。したがって、同様の形状のPCBセンサと比較して、ITOセンサには、より長い開口時間が望ましい場合がある。開口時間が測定値にほとんど影響を与えない場合もあることに留意されたい。これらは、例えば、電圧フォロワ回路(「バッファ増幅器」)の出力部で行われる電圧測定を含むことができる。
【0127】
しかしながら、ある特定のシナリオでは、所望の開口時間がSNスキャンのサンプル間隔より短くても、ノイズスキャンのサンプル間隔を超えることがあり得る。この場合、明らかに、所望の開口時間はノイズスキャンに適用できない。異なるより短い開口時間がノイズスキャンのために選択され得る。しかしながら、SNスキャンとノイズスキャンとで異なる開口時間を選択することは、SNスキャンに対するノイズスキャンデータから信頼性の高いENPEを得る可能性を損なう可能性がある。特に、ノイズスキャン磁化率スペクトルが、SNスキャン磁化率スペクトルがゼロを有さない周波数においてゼロを有する場合、ノイズスキャンデータにおいて有害なノイズが見られず、ノイズロバスト性アルゴリズムが無意味な判定を下す可能性がある。
【0128】
しかしながら、SNスキャン開口時間とノイズスキャン開口時間との間のある特定の比に対して、比較的良好な搬送波周波数の判定、すなわち、いくつかのノイズシナリオに対する比較的良好な獲得構成に関する判定を得ることは可能である。これは、ノイズスキャン開口時間がSNスキャン開口時間の整数分の1であるか、又はこれに対応して、SNスキャン開口時間がノイズスキャン開口時間の整数倍である場合である。これは、図7において、全ての「ノイズスキャンゼロ」(積分時間0.833μs)が「SNスキャンゼロ」(積分時間2.5μs)にかかる場合の割合1/3を例として示している。
【0129】
ENPEは、復調及びローパスフィルタリングの後に受信信号のノイズパワーの絶対推定値を提供する。一部のセンサシステム又は用途によっては、このノイズパワーに対して、それを超えてしまうと望ましくない動作を引き起こす上限閾値が存在する場合がある。
【0130】
より低いノイズパワーを得るための1つの例示的な手法は、獲得され、処理された、本明細書では「パケット長」と表される、サンプル数Lを増加させることであり、したがってフィルタ長をLと等しくする。フィルタ長はフィルタ次数N+1に等しい、すなわちL=N+1であることに留意されたい。しかしながら、パケット長を増加させることだけでは、通常ノイズ抑制は改善しない。ノイズ抑制は、主に、選択されたローパスフィルタリングに依存し、そのパケット及びフィルタ長は、1つの態様にすぎない。図17は、ボックスカー窓及びハニング窓について、パケットサイズを5から7に増やした場合のスペクトルノイズ抑制の例を示したものである。例えば、ボックスカー窓を有する上の表では、正規化された周波数
【数18】
ラジアン/サンプルに対してノイズ感受性が低下せずに、増加している。
【0131】
図9は、ボックスカー又は矩形窓ローパスフィルタ(上)及び「ハニング」窓ローパスフィルタ(下)について、全てのノイズ周波数f=fn、又は図9の全ての正規化周波数Ω=2πf/fsに対してノイズ抑制が向上するようにパケット長が増加する必要があることを示している。特に、より短いパケット長のスペクトルゼロは、より長いパケット長のゼロの上にかかるはずである。図9では、ボックスカー窓LPFに対して、より長いパケット長がより短いパケット長の倍数であり、ハニング窓LPFに対して、より長いパケット長がより短いパケット長の倍数+1である場合に、これが達成されることが示されている。ボックスカー、ハニング窓、及びMatlabのハニング窓(本明細書におけるハニング窓は、最初及び最後のサンプルが除去されたハニング窓に対応する)ローパスフィルタの場合、全てのノイズ周波数に対して改善されたノイズ抑圧効果を保証するためにパケット長LをL’に増加させる方法の規則は、以下のとおりである。
【数19】
【0132】
センサシステムに対する別の要件は、最小レポートレートであってもよく、すなわち、容量式タッチ又は非接触検知システム21は、最小レポートレートに等しい、又はそれより高いレポートレートで推定データを出力することが要求され得る。この推定されたデータは、例えば、図5(上部)に「タッチ検出器11へ」として例示されているような、ローパスフィルタリングされデシメートされたデータ、又はそこから計算されたデータであり得る。このような最小レポートレートは、典型的には、報告されたデータがどのように獲得され処理されるかに依存しない。すなわち、例えば、搬送周波数に依存しない。しかし、最小レポートレートは、測定時間の上限を最小レポートレートの逆数に設定する。容量式タッチ検知システム21に対する別の要件は、最小SNRであってもよく、言い換えれば、出力値の予想されるノイズパワーが限界値未満であってもよい。いくつかの実施形態では、これは一次要件であってもよく、所望のレポートレートで満たすことができない場合、図8A及び図8Bを参照して以下で説明するように、ノイズパワー制限を維持し、それを満たそうと試みながら、レポートレートが低減される(すなわち、スキャンが時間増加される)。
【0133】
図8A及び図8Bは、別の例示的な実施形態におけるセンサ回路1の動作を示すフロー図を示す。動作は、特に図6を参照しながら先の説明に対応する。したがって、ステップ80~87の動作は、以下で説明するように、ステップ82a及び86a~86gを除いて、ステップ60~67のそれぞれの動作に対応する。
【0134】
ステップ82において、容量式タッチ検知システム21から取得したセンサ受信信号は、デジタル受信信号を取得するためにA/D変換され、これは、ステップ32及び62を参照して前述した処理に対応する。本実施形態では、ステップ81の間に取得されるセンサ受信信号は、事前定義された最大スキャン時間、すなわち事前定義された最大持続時間を有する。例えば、事前定義された最大持続時間は200マイクロ秒であってもよい。
【0135】
ステップ82aにおいて、最大スキャン時間を有するデジタル受信信号のコピーがメモリ10に記憶される。次に、デジタル受信信号の一部、すなわち、事前定義された最小スキャン時間を有する部分が選択される。ステップ83~85の更なる処理は、デジタル受信信号のこの部分に基づく。
【0136】
ステップ86において、獲得構成が候補獲得構成から選択される。なお、図8Bでは、分かりやすくするために、ステップ86の処理をステップ86a~86gに分解して示している。
【0137】
ステップ86aにおいて、構成回路9は、ステップ85において決定されたように、関連付けられたENPEを評価することによって最も低いノイズをもたらす候補獲得構成を選択する。ステップ86bにおいて、構成回路9は、選択されたENPEが、ノイズパワー又はSNRとして決定され得る事前定義されたノイズ閾値を満たすか、又はそれよりも低いかどうかを決定する。例えば、SNRに関する事前定義されたノイズ閾値は20dBであってもよい。選択されたENPEが事前定義されたノイズ閾値を満たすか又はそれよりも低い場合、選択された候補獲得構成は、先の説明に対応して、ステップ87においてSNスキャンのための獲得構成に設定される。SNスキャンのための開口時間は、図6を参照して説明したように、ステップ86cで設定される。
【0138】
選択された候補獲得構成に対するノイズ測度が事前定義されたノイズ閾値を超える場合、処理はステップ86dに進む。ステップ86dにおいて、事前定義された最大スキャン時間に達していないと仮定されると、構成回路9は、スキャン時間を約整数倍だけ増加させ、この増加したスキャン時間を評価する。このように行うために、ステップ86eにおいて、構成回路9は、ステップ82aにおいて記憶された最大スキャン時間を有する元のデジタル受信信号のコピーをメモリ10から取得する。次に、ステップ86fにおいて、前回のスキャン時間の整数倍であるスキャン時間、例えば、評価された前回部分のスキャン時間の2倍のスキャン時間を有する、元のデジタル受信のより大きな部分が選択される。その後、処理はステップ83で継続され、増加したスキャン時間は、前述のように、ステップ83~86に従って評価される。
【0139】
数学的には、本明細書では、ノイズロバスト性レベル(Noise Robustness Level、NRL)を、事前定義された最大スキャン時間又は測定時間のインデックスとして使用する。例えば、NRLρ=0は、最短の最大スキャン時間T0に対応する最低NRLを示すとする。各候補獲得構成について、そのパケット長は、サンプリング周波数fs=2・fcで、この時間中に獲得され得るサンプルの最大数
【数20】
に設定し、式中の、fcは、ACの搬送波周波数である。例えばT0=125μs及びfc=100kHzの場合、結果として得られるパケット長は、
【数21】
個のサンプルとなる。
【0140】
次に高いNRLρ=1について各ACパケット長は、ローパスフィルタ設計に依存して、式(1)に従って決定され、例えばパラメータk=2であれば、すなわちスキャン時間がおよそ2倍になる。
【0141】
ノイズ閾値を満たす獲得構成が見つかるか、又は最大事前定義スキャン時間に達してノイズ閾値を満たす獲得構成がなくなるまで、説明したステップが反復的に繰り返される。後者の場合、ステップ86dの問い合わせにより、ステップ86gにおいて出力部12で警告信号が生成され、好適な獲得構成が見つからなかったことを警告する。次に、動作はステップ86cに進み、ACを使用して、SNスキャンにおける動作のための最良のノイズ測度をもたらす。
【0142】
前述から明らかなように、スキャンサイクルは、ノイズスキャンと、それに続く、最良のノイズ測度をもたらしたACを使用するSNスキャンとで構成され得る。そして、次のノイズスキャン及びSNスキャンを有する次のスキャンサイクルが続く。次いで、当該スキャンサイクルは、デバイスがシャットダウンされるまで繰り返される。
【0143】
前述したように、目標は、最も低いNRL、すなわち、最も短く必要とされるスキャン時間、つまり最も高いレポートレートを見つけることであり、そのために、最大ノイズ閾値のENPEをもたらす候補獲得構成が存在する。限界値以下のENPEをもたらす同じスキャン時間を有する1つよりも大きい獲得構成が存在する場合、図8A及び図8Bのプロセスは、最低ENPEをもたらすACを選択する。
【0144】
サンプリング周波数が公倍数を共有しない候補ACが存在する場合、複数の事前定義されたノイズスキャン周波数を使用する、わずかに修正されたプロセスが採用され得る。対応する例示的な実施形態が、図10のフロー図に示されている。
【0145】
事前定義されたノイズスキャン周波数fbでサンプリングされたノイズスキャン信号が与えられると、整数のデシメーションレートRについて多数の異なる値を選択することが可能である。
【0146】
しかし、ノイズスキャン周波数fbでサンプリングした信号からENPEを計算できる搬送波周波数
【数22】
の個数は、実質的に限られている。
【0147】
候補搬送波周波数のセットを増加させるために、追加のノイズスキャン周波数が、実施形態に従って評価され得る。これらのノイズスキャン周波数を区別するために、i番目の候補基本周波数f(i)に対してインデックスi=0,1,2,...の上付き文字を割り当てる。i番目の候補基本周波数に対するj番目のデシメーションレートをR(i,j)と表記し、その対応する候補搬送波周波数及び係数ベクトルを、それぞれ、f(i,j)及びw(i,j)として表記する。
【0148】
基本周波数インデックスi、サブ周波数インデックスj、及びNRLρを有するACのパケット長を
【数23】
と表記する。
【0149】
処理は、ステップ100でセンサ回路1の初期化から始まる。各事前定義されたノイズスキャン周波数ごとに、個々のノイズスキャンがステップ101、102及び103で行われる。本実施形態は、3つの後続のノイズスキャンの実行に限定されないことに留意されたい。各ノイズスキャン中の動作は、図1図9を参照して前述した実施形態のうちの1つに対応する。各ステップ101、102、及び103において、少なくとも1つの候補ACについてのノイズ測度が取得される。いくつかの実施形態では、同じ候補ACについてのノイズ測度が、多数のステップ101、102、及び103において取得され得る。
【0150】
ステップ104において、ステップ101、102及び103において評価された候補獲得構成から全体的な獲得構成が決定される。全体的な獲得構成は、全体として最低のENPEが得られるステップ101、102、及び103の獲得構成候補を選択することによって決定される。換言すれば、全体的な獲得構成は、ノイズスキャン101、102、103の使用可能な最良の候補獲得構成に対応する。NRLの考え方は、このような複数のノイズスキャン周波数の場合にも適用することができる。ステップ105において、センサシステムは、全体的な獲得構成を使用してSNスキャンで動作される。そして、動作は、センサ回路1の処理が停止されるまでステップ100に戻る。
【0151】
他の既知の手法とは対照的に、様々な実施形態に従って説明される手法は、比較的良好な搬送波周波数を識別するための解決策を提供するだけでなく、ノイズロバスト性のための完全な解決策も提供する。それは、例えば、AMノイズ及び二乗ノイズに対するロバスト性さえももたらす。これは、同じ測定データからではあるが、異なるACについて計算することができる非常に正確で定量的なSNR又はノイズパワー推定値により可能となる。これは更に、タッチレポートレートと出力SNRとの間のトレードオフを見つけることを可能にする。
【0152】
更に選択されたローパスフィルタ設計方法、例えばボックスカー窓フィルタ関数に対して、他のACパラメータを変えずに残しつつ、スキャン時間を増加させた場合に、ノイズロバスト性の向上を保証する要件を用いて、多くの候補ACのパラメータ(例えば、フィルタ長及びフィルタ係数値など)は、いくつかの高レベル要件(例えば、200μsスキャン時間など)から導出することができ、強力なトレーニングを必要とせずに単純なノイズロバスト性構成が可能になる。
【0153】
本開示の更なる例示的な態様は、電流の分離されたコピーを取得すること、及び重複する開口窓を用いた信号獲得のためのデジタル処理に関するものである。
【0154】
アナログデータを捕捉して時間離散型又はデジタル出力サンプルを作成するとき、アナログ信号が測定システムに入力される持続時間、すなわち、測定システムが外界に露出され、その結果、アナログ入力信号によって内部のアナログ状態が変えられる時間が、出力サンプルの値に影響を及ぼし得る。
【0155】
アナログ/デジタル変換器(ADC)の場合、この持続時間は、前述したように、開口時間として周知のことである。図7は、周波数fnの単一トーン信号に対する感受性とも呼ばれる、理想的なADCの伝達関数の大きさを、開口時間0.833μs及び2.5μsの場合について示していることを想起されたい。開口時間の逆数、例えば、それぞれ1/0.833μs=1.2MHzと1/2.5μs=400kHzの倍数でスペクトルのゼロが観察される。
【0156】
利用可能なタッチスクリーンコントローラの一部では、電極を検知すると、センサ電極へ、又はセンサ電極から流れる電流が、決定論的な時間量にわたって積分されて、この時間中に移動した電荷の量が測定される。この積分時間は一つの開口時間である。電流積分を用いた電荷測定の基本的で例示的な図が図11に示されている。図11は、図の右側に図示した信号sap(t)で制御される開口スイッチがオン、信号sres(t)で制御されるリセットスイッチがオフの間に、コンデンサCint上で積分される電流iinを生成する未知の電流源を示している。電流源の抵抗Rは、開口スイッチがオンであるときは無視できる。
【0157】
アナログ信号の標準的なシリアル処理では、2つの連続するサンプルの開口時間窓は重複することができないので、開口時間は、2つの連続するサンプル間の時間、つまりサンプル間隔よりも通常は長くすることはできない。サンプリング周波数が高いほど、サンプリング間隔が短くなり、したがって最大開口時間が短くなる。
【0158】
連続するサンプルのために、隣接又は重複する開口時間窓を有することが有益である場合がある用途がある。例えば、上記では、第1のタイプのサンプリング周波数が第2のタイプのサンプリング周波数の倍数である2つの異なるタイプの測定、すなわち、「ノイズスキャン」及び「SNスキャン」が説明されているが、両方に対して同じ開口時間が望ましい。SNスキャンでは開口時間を選択する一方で、ノイズスキャンのサンプリング周波数が高すぎて、2つの連続するサンプルの間に選択した時間の開口窓が適合しない場合があるので、開口窓が重複してしまうこととなる。
【0159】
重複する開口時間窓を得るために、何らかの並列処理の手段が有益であり得る。例えば、前述のタッチスクリーンコントローラのようなシステムでは、2つ以上の積分器が有効であろう。問題は、これらの2つ以上の積分器が、同じパッド又は測定ノードをタップするとき、それらの測定を潜在的に相互に干渉し得るというリスクがあるということである。これは図12に示されており、図の右側に開口スイッチの状態
【数24】
が、時間とともにプロットされている。両方の開口スイッチ
【数25】
がオンである時間中に、未知の入力電流は、2つの積分器間で制御されずに分割される。したがって、重複する開口時間窓を有する決定論的測定は可能ではない場合がある。この方式では、同じアナログ入力電流を、測定が互いに干渉することなく、複数回測定することは不可能である。
【0160】
容量式検知において、所望の開口時間は、例えば使用するセンサの種類にも依存する。例えば、ITOは銅に比べて導電率が低いため、PCBセンサに比べてITOセンサの信号の整定時間が長くなるのが一般的である。したがって、同様の形状のPCBセンサと比較して、ITOセンサには、より長い開口時間が望ましい場合がある。
【0161】
前述に基づくと、1つの入力と複数の出力とを持つ電流増幅器を採用し、入力電流の多数の分離されたコピーを得ることが解決策となる場合がある。次いで、各コピーを1つの積分器でタップすることができ、積分器入力電流は分離され、すなわち、互いに独立である。デジタル後処理ステップにおいて、多数のアナログコピーから取得されたデータは、例えば、単一のデジタル出力信号をもたらすように再配置されてもよい。
【0162】
本議論の基本的なアプローチは、アナログ入力信号の複数の分離されたコピーを作成することである。次いで、アナログ処理及びA/D変換が、信号コピーの各々に対して個別に実施され得る。最終ステップは、異なる処理分岐からのデジタルサンプルを単一の出力信号にインターリーブ又は多重化することである。
【0163】
入力電流が出力電流から独立した標準的な電子部品がトランジスタである。このようなトランジスタの複数個を含み得る増幅器のようなより複雑な構成要素についても、この独立性は維持される。1つの入力電流が2つの出力電流を制御し、その入力電流がいずれの出力電流からも独立している場合、これは、出力電流も互いに相互に独立していることを意味する。
【0164】
タッチスクリーンコントローラデバイスの及び古典的なタッチスクリーンコントローラ測定の一部においては、アナログ入力信号は電流である。既存のタッチスクリーンコントローラのアナログフロントエンド(AFE)の一部には、スライスと呼ばれるアナログ処理用の複数の実質的に同一の並列ユニットが設けてある。各スライスは積分器を備える。
【0165】
異なる積分器に対して完全に独立したタイミングを有することが望ましいが、一部のタッチスクリーンコントローラデバイスは、全てのスライスに対して共通のサンプリング間隔又はサンプリング周波数に制限され得る。しかしながら、必要とされる小さなデジタル修正とは別に、既存のデバイスでは、2つの測定の開口時間窓が重複する場合に、入力電流の2つのコピーの独立した測定が可能になるであろう。図13は、タッチスクリーンコントローラの例示的なAFEのいわゆるスライスのうちの2つを概略的に示す図である。図13の左上の主スライスのパッドは、電流増幅器の入力Xに接続される。この電流増幅器の非反転出力Z0は積分器に接続され、その結果積分器の出力はADCに接続される。主スライスの電流増幅器の反転出力Z1が、副スライス上の積分器の入力に接続され、その出力は再びADCに接続される。副スライスの電流増幅器は切断され、主スライスの増幅器反転電流のみが積分器に入力される。開口スイッチINTMOEは、主スライス及び副スライスに対して独立して制御され得るが、積分器リセットスイッチRST1及びRST2は、独立して制御可能でなくてもよい。
【0166】
前述において、ノイズスキャンのために、開口時間窓、又は電流積分窓を重複させる必要性を説明してきた。このようなノイズスキャンの場合、単一のスライス、例えば、最も高いノイズレベルが予想され得るセンサ電極に接続されたスライスからの測定データに主に関心が向くであろう。主スライスがこの最もノイズの多い電極に接続されている、例えば、この最もノイズの多い電極が図13の主スライスのパッドに接続されていると仮定すると、理論的には、主スライスの入力電流の2つの分離されたコピーが取得され、主スライス及び副スライスの両方において、それぞれの他方のスライス上の電流に影響を及ぼすことなく、開口又はリセットスイッチを開閉することが可能となる。
【0167】
図14は、開口及びリセットスイッチのスライス独立制御を仮定するときの、電流積分及び積分器リセットの例示的なタイミング図を示す。各積分窓は、積分キャパシタのリセットによって先行される。主スライス及び副スライスの積分窓は、インターリーブされ、時間的に重複する。アナログ/デジタル(A/D)変換の後、2つのスライスからのサンプルはインターリーブされて、単一のデジタル信号が得られる。例えば、主スライスからの第1の出力サンプル、副スライスからの第1の出力サンプル、主スライスからの第2のサンプル、副スライスからの第2のサンプルなどを連結することによって、新しい単一デジタル信号が作成される。ノイズスキャンの文脈において、取得された信号は、更なる処理の前にデシメートされ、デシメート後、これらのデシメートされた信号の連続するサンプルに対応する現在の積分窓は、もはや重複しないことに留意されたい。
【0168】
しかしながら、主スライス及び副スライスで別々に積分を制御することができるが、主スライスと副スライスとで共通する積分器リセット制御のため、一部のタッチパネルコントローラデバイスでは、図14のタイミングが実現できない場合がある。
【0169】
タッチスクリーンコントローラを用いてできることは、図14に類似したタイミングではあるが、図15に示されるような、重複しない積分窓を用いても可能である。実際、A/D変換がまた、垂直破線によって示されるように、主スライス及び副スライス上で同期して行われ、したがって、各スライスからの1つおきのデジタルサンプルは、それが現在の積分器の積分位相の終了時ではなく、恐らくランダムな積分器状態の間に獲得されるため、望ましくなく、したがって、廃棄され得る。
【0170】
図15のタイミング構成を使用した試験実装で取得されたデータを図16に示す。20kHzの単一トーン信号は、スライスY34に接続されたセンサ電極に結合され、サンプリング周波数は200kHzである。主スライスY34及び副スライスY35からのサンプルは、インターリーブされた様式で示されているが、実線及び破線は、それぞれ各スライスからのサンプルを結んでいる。スライスY35の信号(破線)は、Y35に対する信号がADC値-15のレベルでミラーリングされたY34に対する信号のほぼ鏡像であるので、依然として再反転及びシフトされる必要があることが観察され得る。必要とされるオフセットは、実際の信号獲得の前に(例えば、パッド/電極が切断された状態で、すなわち入力信号がない状態で)決定される必要があるが、デジタル領域における信号再構成が実現可能である。
【0171】
本明細書においてアナログ信号の「コピー」に言及するとき、必ずしも正確な一対一のコピーが必要なわけではない。いくつかの用途では、厳密に単調なコピー関数で十分な場合もあり、任意の歪みがデジタル領域で補償され得る。
【0172】
しかしながら、A/D変換の前に電流が積分されるタッチスクリーンコントローラデバイスのような処理を伴うシステムの場合、入力信号、すなわち、入力電流の線形歪みのみが、いくつかの実施形態では、デジタル等化(すなわち、歪みの補償)を可能にするために、許容可能であり得る。また、一般に、例えば、ADC量子化ノイズとともに信号の等化を考慮するとき、多かれ少なかれ線形のコピー関数が有益であり得る。
【0173】
前述のタッチスクリーンコントローラ特有の解決策では、主スライス及び副スライス上の獲得周波数が同じであるが、獲得位相のみが異なるときに、開口時間窓を重複させることを可能にする。しかし、ハードウェア制御により、同じアナログ信号の複数のコピーが与えられた場合、異なるスライスに対して完全に独立したタイミングが可能になれば、任意の異なるサンプリング周波数と開口時間窓とを含む異なるAFE構成でノイズレベル評価のための信号獲得の問題に対する汎用的な解決策を得ることが可能になる。
【0174】
アナログ入力信号x(t)を有するセンサシステムのいくつかの実施形態は、センサシステムがx(t)の2つ以上のアナログコピーyi(t)、i=0,1,...を作成することを提供する。
【0175】
いくつかの実施形態において、コピーyi(t)はx(t)の厳密な単調写像である。
【0176】
いくつかの実施形態において、コピーyi(t)は、x(t)の線形関数yi(t)=bi *x(t)+aiである。
【0177】
いくつかの実施形態において、センサシステムは、容量式検知システムである。
【0178】
いくつかの実施形態において、信号x(t)は電流である。
【0179】
いくつかの実施形態において、信号y(t)は電流である。
【0180】
いくつかの実施形態において、2つ以上のアナログ信号コピーyi(t)が、デジタルサンプルを生成するためにアナログ回路Hiに入力され、少なくとも2つの回路Hiの開口窓が時間的に重複する。
【0181】
いくつかの実施形態において、アナログ回路Hiは積分器を備える。
【0182】
いくつかの実施形態において、2つ以上の回路Hi上のサンプリング周波数は同じである。
【0183】
いくつかの実施形態において、センサシステムは、入力にx(t)が供給される電流増幅器を備え、電流増幅器は、1つの入力段を共有する2つ以上の出力段を有する。
【0184】
いくつかの実施形態において、異なる分岐上の信号からのサンプルが多重化され、単一の出力信号をもたらす。
【0185】
アナログ入力信号のコピーを作成して、独立した処理のために分離された信号を得るための汎用的な解決策は、ここで可能となり、任意のAFE構成を互いに比較する問題を解決し、好適な獲得構成を見つけるのに有益である。
【0186】
いくつかの実施形態において、開口時間がサンプリング期間を超えて増加されることで、非常に正確なノイズパワー推定を可能にする。
【0187】
異なるセンサ電極からの信号を評価する代替的な手法と比較して、ノイズが、異なる結合強度で異なるセンサ電極に結合され、推定値に誤ったバイアスを与え得るリスクがなく、これは単に説明した手法では、評価される全てのデータが単一のセンサ電極からを起源とするという理由からである。
【0188】
本発明を本発明の特定の実施形態に関して説明してきたが、これらの実施形態は、単に、例証であって、本明細書に開示される本発明の制限ではない。本発明の図示される実施形態の本明細書における説明は、要約及び概要における説明を含め、包括的であること、又は本発明を本明細書に開示される精密な形態に限定することを意図しない(かつ、特に、要約又は概要内の任意の特定の実施形態、特徴、又は機能の包含は、発明の範囲をそのような実施形態、特徴、又は機能に限定することを意図しない)。むしろ、説明は、当業者に、要約又は概要に説明される任意のそのような実施形態特徴又は機能を含め、本発明を任意の特に説明される実施形態、特徴、又は機能に限定せず、本発明を理解するための背景を提供するために、例示的実施形態、特徴、及び機能を説明することを意図する。本発明の特定の実施形態及び本発明の実施例は、例証目的のためだけに本明細書に説明されるが、種々の均等修正も、当業者が認識及び理解するであろうように、本発明の趣旨及び範囲内において可能である。示されるように、これらの修正は、本発明の図示される実施形態の前述の説明に照らして、本発明に行われ得、本発明の趣旨及び範囲内に含まれるものとする。したがって、本発明は、その特定の実施形態を参照して、本明細書に説明されるが、様々な修正、種々の変更、及び代用が、前述の開示内で意図され、いくつかの事例では、記載されるような本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本発明の実施形態のいくつかの特徴が、他の特徴の対応する使用を伴わずに、採用されるであろうことが理解されるであろう。したがって、多くの修正は、特定の状況又は材料を本発明の本質的範囲及び趣旨に適合させるために行われ得る。
【0189】
本明細書の全体を通した「一実施形態(one embodiment)」、「一実施形態(an embodiment)」、若しくは「特定の実施形態(a specific embodiment)」、又は同様の専門用語の参照は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれ、必ずしも、全実施形態に存在しなくてもよいことを意味する。したがって、「一実施形態では(in one embodiment)」、「一実施形態では(in an embodiment)」、若しくは「特定の実施形態では(in a specific embodiment)」という言い回し、又は本明細書の全体を通した種々の場所における同様の専門用語のそれぞれの表出は、必ずしも、同じ実施形態を参照するわけではない。更に、任意の特定の実施形態の特定の特徴、構造、又は特性は、任意の好適な様式において、1つ以上の他の実施形態と組み合わせられ得る。本明細書に説明及び図示される実施形態の他の変形例及び修正も、本明細書の教示に照らして可能であって、本発明の趣旨及び範囲の一部として見なされるべきであることを理解されたい。
【0190】
本明細書の説明では、構成要素及び/又は、方法の実施例などの多数の特定の詳細が、本発明の実施形態の完全理解を提供するために提供される。しかしながら、当業者は、実施形態が特定の詳細のうちの1つ以上を伴わずに、若しくは他の装置、システム、アセンブリ、方法、構成要素、材料、部品、及び/又は、同等物を伴って、実践可能であり得ることを認識するであろう。他の例では、本発明の実施形態の態様を不明瞭にすることを回避するために、公知の構造、構成要素、システム、材料、又は動作は具体的には、詳細に図示又は説明されない。本発明は、特定の実施形態を使用することによって図示され得るが、これは、任意の特定の実施形態ではなく、本発明をそれに限定するわけでもなく、当業者は、追加の実施形態が、容易に理解可能であって、本発明の一部であることを認識するであろう。
【0191】
本明細書に説明される本発明の実施形態のルーチン、方法、又はプログラムを実装するために、C、C++、Java、アセンブリ言語を含み、これらに限定されない、任意の好適なプログラミング言語を使用することができる。手続き型又はオブジェクト指向などの異なるプログラミング技法を採用することができる。任意の特定のルーチンが、単一コンピュータ処理デバイス又は複数のコンピュータ処理デバイス、単一コンピュータプロセッサ又は複数のコンピュータプロセッサ上で実行することができる。データは、単一記憶媒体内に記憶され、又は複数の記憶媒体を通して分散され得、単一データベース又は複数のデータベース(又は、他のデータ記憶技法)内に常駐し得る。ステップ、動作、又は計算は、特定の順序で提示され得るが、この順序は、異なる実施形態において変えることができる。いくつかの実施形態では、複数のステップが本明細書に順次的として示される範囲において、代替実施形態におけるそのようなステップのいくつかの組み合わせが、同時に実施されてもよい。本明細書で説明される動作のシーケンスは、オペレーティングシステム、カーネルなどの別のプロセスによって中断、一時停止、又は別様に制御され得る。ルーチンは、オペレーティングシステム環境内において、又は独立ルーチンとして動作することができる。本明細書で説明される機能、ルーチン、方法、ステップ、及び動作は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又は任意のそれらの組み合わせで実施され得る。
【0192】
本明細書に説明される実施形態は、ソフトウェア、又はハードウェア、又は両方の組み合わせにおいて、制御論理の形態で実装されることができる。制御論理は、情報処理デバイスに、種々の実施形態に開示される一組のステップを実施するよう指示するように適合された複数の命令として、コンピュータ可読媒体などの情報記憶媒体内に記憶され得る。本明細書に提供される本開示及び教示に基づいて、当業者は、本発明を実装するための他の手法及び/又は、方法を理解するであろう。
【0193】
本明細書に記載されるステップ、動作、方法、ルーチン、又はその一部のいずれかをソフトウェアプログラミング又はコード内で実装することも、本発明の趣旨及び範囲内である。そのようなソフトウェアプログラミング又はコードは、コンピュータ可読媒体内に記憶されることができ、プロセッサによって、コンピュータに、本明細書に説明されるステップ、動作、方法、ルーチン、又はその一部のいずれかを行わせるように操作されることができる。本発明は、1つ以上の汎用デジタルコンピュータにおいてソフトウェアプログラミング又はコードを使用することによって、特定用途向け集積回路、プログラマブル論理デバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイなどを使用することによって実装され得る。光学的、化学的、生物学的、量子力学的、又はナノ加工システム、構成要素及び機構が、使用され得る。一般に、本発明の機能は、当技術分野において公知のような任意の手段によって達成されることができる。例えば、分散型又はネットワーク化されたシステム、構成要素及び回路を使用することができる。別の実施例では、データの通信又は転送(又は別様に、ある場所から別の場所に移動させること)は、有線、無線、又は任意の他の手段によるものであり得る。
【0194】
「コンピュータ可読媒体」は、命令実行システム、装置、システム、又はデバイスによって、若しくはそれらに関連して使用するためのプログラムを含む、記憶する、通信する、伝搬する、又は移送することができる任意の媒体とすることができる。コンピュータ可読媒体は、限定ではなく、単なる一例として、電子、磁気、光学、電磁、赤外線、又は半導体システム、装置、システム、デバイス、伝搬媒体、若しくはコンピュータメモリであり得る。そのようなコンピュータ可読媒体は、概して、機械可読であり、人間可読(例えば、ソースコード)又は機械可読(例えば、オブジェクトコード)であり得る、ソフトウェアプログラミング又はコードを含むものとする。非一時的コンピュータ可読媒体の例は、ランダムアクセスメモリ、読み取り専用メモリ、ハードドライブ、データカートリッジ、磁気テープ、フロッピーディスケット、フラッシュメモリドライブ、光データ記憶デバイス、コンパクトディスク読み取り専用メモリ、並びに他の適切なコンピュータメモリ及びデータ記憶デバイスを含むことができる。例示的な実施形態では、ソフトウェア構成要素の一部又は全部は、単一のサーバコンピュータに、又は別個のサーバコンピュータの任意の組み合わせに常駐することができる。当業者が理解することができるように、本明細書で開示される実施形態を実装するコンピュータプログラム製品は、コンピューティング環境内の1つ以上のプロセッサによって変換可能なコンピュータ命令を記憶する1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体を備え得る。
【0195】
「プロセッサ」は、データ、信号又は他の情報を処理する任意のハードウェアシステム、機構又は構成要素を含む。プロセッサは、汎用中央処理ユニット、複数の処理ユニット、機能性を達成するための専用回路、又は他のシステムを伴うシステムを含むことができる。処理は、地理的位置に限定される必要はなく、時間的制限を有する必要もない。例えば、プロセッサは、「リアルタイム」、「オフライン」、「バッチモード」などでその機能を実施することができる。処理の一部は、異なる時間及び異なる場所で、異なる(又は、同一の)処理システムによって実施され得る。
【0196】
「構成要素」、「モジュール」、「回路(circuitry)」、「回路(circuit)」、「デバイス」、「ユニット」、及び「システム」などの用語は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の組み合わせを包含する。例えば、システム又は構成要素は、プロセス、プロセッサ上で実行するプロセス、又はプロセッサであってもよい。更に、機能、構成要素、又はシステムは、単一のデバイスに局在化されてもよく、又はいくつかのデバイスにわたって分散されてもよい。説明される主題は、1つ以上のコンピューティングデバイスを制御するためのソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、又はそれらの任意の組み合わせを生み出すための標準的なプログラミング技法又はエンジニアリング技法を使用して、装置、方法、又は製造品として実装され得る。
【0197】
本明細書で使用される場合、「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」という用語、又はそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含を網羅することが意図される。例えば、要素のリストを備えているプロセス、製品、物品、又は装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されず、明示的に列挙されていない、又はそのようなプロセス、プロセス、物品、又は装置に固有の他の要素を含んでもよい。本明細書全体で使用される「例示的な」という用語は、「例、実例、又は例証として役立つ」ことを意味し、他の実施形態よりも「好適な」又は「利点を有する」ことを意味しない。
【0198】
更に、本明細書で使用される「又は(or)」という用語は、別段の指示がない限り、一般に「及び/又は(and/or)」を意味することが意図される。例えば、条件A又はBは、以下のいずれか1つによって満たされる。Aが真(又は存在する)かつBが偽(又は存在しない)、Aが偽(又は存在しない)かつBが真(又は存在する)、並びにA及びBの両方が真(又は存在する)である。本明細書で使用される場合、以下の請求項を含め、「a」又は「an」(及び、先行詞が「a」又は「an」であるときは、「the」)によって先行される用語は、別様に請求項内で明確に示されない限り、そのような用語の単数形及び複数形の両方を含む(すなわち、「a」又は「an」の参照は、単数形のみ又は複数形のみを明確に示す)。また、本明細書の説明及び以下の請求項全体を通して使用されるように、「の中に(in)」の意味は、文脈によって明確に別様に示されない限り、「の中に(in)」及び「に(on)」を含む。
【0199】
図面/図に示される要素のうちの1つ以上はまた、特定の用途に従って有用であるように、更に分離若しくは統合された様式で実装され得るか、又は場合によっては除去されるか若しくは動作不能としてレンダリングされ得ることが理解されるであろう。加えて、図面/図中の任意の信号矢印は、別様に具体的に記述されない限り、限定的ではなく例示的にすぎないと見なされるべきである。
【0200】
したがって、本発明の範囲は、補正され得る以下の特許請求の範囲によってのみ定義されることが意図され、各請求項は、本発明の実施形態として本明細書に明示的に組み込まれる。
【0201】
開示される実施形態に対する他の変形例は、当業者によって、特許請求される発明を実施する際に、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の研究から理解及び達成され得る。請求項において、「含む(comprising)」という語は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外しない。単一のプロセッサ、モジュール、又は他のユニットは、請求項に記載されたいくつかの項目の機能を満たすことができる。
【0202】
ある特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に利用することができないことを示すものではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアとともに又はその一部として供給される、光学記憶媒体又はソリッドステート媒体などの好適な媒体に記憶/配布され得るが、インターネット又は他の有線若しくは無線通信システムを介するなど、他の形態で配布されてもよい。特許請求の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2023-04-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムの動作のためのノイズロバスト獲得構成を決定する方法であって、ノイズスキャンにおいて、
前記システムからのシステム受信信号を取得するステップと、
事前定義されたノイズスキャン周波数における前記システム受信信号のA/D変換によって、前記システム受信信号からのデジタル受信信号を決定するステップと、
互いに異なる2つ以上のデシメーションレートを使用して前記デジタル受信信号の整数デシメーションによって複数のデシメートされたデジタル受信信号を決定するステップであって、前記2つ以上のデシメーションレートの各々は、それぞれの候補獲得構成に関連付けられている、決定するステップと、
前記複数のデシメートされたデジタル受信信号のうちの1つ以上を使用して、前記候補獲得構成のうちの複数についての1つ以上のノイズ測度を決定するステップと、
前記1つ以上のノイズ測度を使用して、前記候補獲得構成から前記システムの動作のための前記獲得構成を決定するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記獲得構成を決定する前記ステップは、前記1つ以上のノイズ測度から好ましいノイズ測度を選択するステップを含み、前記獲得構成は、前記好ましいノイズ測度の前記候補獲得構成に対応するように設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記好ましいノイズ測度は、前記1つ以上のノイズ測度のうちの最低ノイズレベルをもたらす、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記2つ以上のデシメーションレートの各々について、デシメートされたデジタル受信信号の対応するグループは決定され、各グループにおいて、前記デシメートされたデジタル受信信号は、異なる開始位相において互いに異なる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ノイズ測度のうちの1つ以上は、有効ノイズパワー推定によって決定され、前記有効ノイズパワー推定は、前記デシメートされたデジタル受信信号のグループのうちの1つの前記デシメートされたデジタル受信信号の各々にわたる位相瞬時ノイズ測度の和の決定を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記位相瞬時ノイズ測度の各々は、係数ベクトルからの係数で重み付けされたそれぞれのデシメートされたデジタル受信信号のサンプルの和である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記獲得構成は、A/D変換のためのサンプリング周波数、前記システムの動作のための刺激信号の動作周波数、スキャン持続時間、獲得されるべきサンプルの数、及びローパスフィルタ係数のうちの少なくとも1つ以上を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記事前定義されたノイズスキャン周波数は、前記システムの動作中の刺激信号の動作周波数よりも著しく高い、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記2つ以上のデシメーションレートは2の倍数である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記システム受信信号は、前記システムに刺激信号が印加されることなく前記ノイズスキャン中に獲得される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記候補獲得構成から前記システムの動作のための前記獲得構成を決定する前記ステップは、前記1つ以上のノイズ測度をノイズ閾値と比較するステップと、前記ノイズ閾値が前記ノイズ測度のいずれによっても満たされない場合に、
少なくとも1つの更新された候補獲得構成を取得するために、前記候補獲得構成のうちの少なくとも1つのスキャン時間を増加させるステップ、
前記少なくとも1つの更新された候補獲得構成に対して1つ以上の更新されたノイズ測度を決定するステップ、及び
前記1つ以上の更新されたノイズ測度を前記ノイズ閾値と比較するステップと、を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記スキャン時間は、先行するノイズスキャンのスキャン時間の整数倍だけ増加する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ノイズスキャンに続いて、前記ノイズスキャン中に決定された前記獲得構成を使用してSNスキャン中に前記システムを動作させるステップを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
2つのSNスキャンの間に複数のノイズスキャンを後続して行うステップを含み、前記複数のノイズスキャンは事前定義されたノイズスキャン周波数を使用し、前記複数のノイズスキャンのうちの少なくともいくつかの前記事前定義されたノイズスキャン周波数は互いに異なる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
SNスキャン中の前記システムの動作のための全体的な獲得構成を、前記後続して行う複数のノイズスキャン中に取得される獲得構成から決定するステップを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ノイズスキャン中のA/D変換の開口時間は、前記SNスキャンのために設定された開口時間と同一であるか、又は前記開口時間の実質的に整数分の1である、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記システムは、容量式センサシステム及びタッチスクリーンセンサシステムのうちの1つ以上である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記システムはセンサシステムであり、前記システム受信信号はセンサ受信信号である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記システムは通信システムであり、前記システム受信信号は通信受信信号である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
センサシステムのノイズロバスト獲得動作の方法であって、
前記センサシステム上で少なくとも1つのノイズスキャンを行うステップと、
前記センサシステム上で少なくとも1つのSNスキャンを行うステップと、を含み、
前記少なくとも1つのノイズスキャン中のA/D変換の開口時間は、前記少なくとも1つのSNスキャンのA/D変換の開口時間と同一であるか、又は前記開口時間の実質的に整数分の1である、方法。
【請求項21】
センサ回路に請求項1~20のいずれか一項に記載の方法を行わせるように構成されたコンテンツを含む、コンピュータ可読媒体。
【請求項22】
システムの動作のための獲得構成を決定する回路であって、
前記システムからのシステム受信信号を取得するためのインターフェースと、
事前定義されたノイズスキャン周波数における前記システム受信信号のA/D変換によって、前記システム受信信号からのデジタル受信信号を決定するA/D変換器と、
互いに異なる2つ以上のデシメーションレートを使用して前記デジタル受信信号の整数デシメーションによって複数のデシメートされたデジタル受信信号を決定するように構成されたデシメーション回路であって、前記2つ以上のデシメーションレートの各々は、それぞれの候補獲得構成に関連付けられている、デシメーション回路と、
前記複数のデシメートされたデジタル受信信号のうちの1つ以上を使用して、前記候補獲得構成のうちの複数についての1つ以上のノイズ測度を決定するように構成されたノイズ評価回路と、
前記1つ以上のノイズ測度を使用して、前記候補獲得構成から前記システムの動作のための前記獲得構成を決定するように構成された構成回路と、を備える、回路。
【請求項23】
前記システムはセンサシステムであり、
前記回路は、前記センサシステムの動作のための獲得構成を決定するセンサ回路であり、
前記インターフェースはセンサインターフェースであり、かつ
前記システム受信信号はセンサ受信信号である、請求項22に記載の回路。
【請求項24】
容量式タッチ検知システムであって、
容量式検知のために構成された1つ以上の電極と、
請求項23に記載のセンサ回路と、を備え、前記センサ回路は、前記1つ以上の電極のうちの少なくとも1つに接続されている、容量式タッチ検知システム。
【請求項25】
前記システムは通信システムであり、
前記回路は、前記通信システムの動作のための獲得構成を決定する通信回路であり、
前記インターフェースは通信システムインターフェースであり、かつ
前記システム受信信号はセンサ受信信号である、請求項22に記載の回路。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
言い換えればA/D変換が行われた後、すなわちデジタル領域において、デジタル受信信号は次に、複数のデシメートされたデジタル受信信号を取得するために整数デシメーションによってデシメートされる。少なくとも2つの異なるデシメーションレートが使用され、これらの各々は、それぞれの候補獲得構成に関連付けられている。いくつかの実施形態では、2つ以上のデシメーションレートは、例えば、2及び4のような2の倍数である。いくつかの実施形態では、2つを超えるデシメーションレートが使用される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図9
【補正方法】変更
【補正の内容】
図9
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図17
【補正方法】変更
【補正の内容】
図17
【国際調査報告】