(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】水素の電解生成装置
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20231121BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20231121BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523655
(86)(22)【出願日】2021-11-15
(85)【翻訳文提出日】2023-05-16
(86)【国際出願番号】 IB2021060544
(87)【国際公開番号】W WO2022106975
(87)【国際公開日】2022-05-27
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523138231
【氏名又は名称】ダブリューエス スロット エスエー
【氏名又は名称原語表記】WS SLOT SA
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】クアルテロ ガルシア‐モラート, リカルド
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA09
4K021CA15
4K021DC01
4K021DC03
(57)【要約】
本発明は、水素の電解生成のための装置に関し、この装置は、水を満たした第1のチャンバ(26)と、下部(23)と、上部(28)と、下部(23)の内部に置かれ、電解セルと水素ノズル(4)とを含むガス生成ユニット(1)と、上部(28)の内部に置かれる電気ジェネレータ(12)と、第1のチャンバ(26)の内部に置かれる第1の駆動機構(5-9)と、前記第1のチャンバ(26)の最上部に置かれる水素出口(18)と、を備え、第1のチャンバ(26)は、下部と上部(23、28)との間に置かれ、水素ノズル(4)を介してガスユニット(1)と連通し、気泡に作用する浮力により第1のチャンバ(26)の水中に水素気泡を発生させて上方向に向けることができ、第1の駆動機構(5-9)は、上昇する気泡によって作動するように適合され、ジェネレータ(12)は、第1の駆動機構(5-9)により作動されるように適合され、電解セルは、電気ジェネレータ(12)に接続されている。本発明はまた、以下のステップを含む水素の生成方法に関し、この方法は、電気分解によって水中に水素を発生させるステップと、前記電気分解の間に発生された水素気泡によって上方に向けられた駆動機構を作動させるステップと、駆動機構の機械的エネルギを電気エネルギに変換するステップと、前記電解のために前記電気エネルギを使用するステップと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素の電解生成のための装置であって、
水を満たした第1のチャンバ(26)と、
下部(23)と、
上部(28)と、
前記下部(23)の内部に置かれ、電解セルと水素ノズル(4)とを含むガス生成ユニット(1)と、
前記上部(28)の内部に置かれる電気ジェネレータ(12)と、
前記第1のチャンバ(26)の内部に置かれる第1の駆動機構(5-9)と、
前記第1のチャンバ(26)の最上部に置かれる水素出口(18)と、
を備え、
前記第1のチャンバ(26)は、前記下部と前記上部(23、28)との間に置かれ、前記水素ノズル(4)を介して前記ガスユニット(1)と連通し、水素気泡は、前記第1のチャンバ(26)の水中で発生して前記気泡に作用する浮力により上方向に向けられ、前記第1の駆動機構(5-9)は、上昇する気泡によって作動するように適合され、前記ジェネレータ(12)は、前記第1の駆動機構(5-9)により作動されるように適合され、前記電解セルは、電気ジェネレータ(12)に接続されている、装置。
【請求項2】
水を満たし、前記上部(28)と連通しているが、前記第1のチャンバ(26)から分離されている、第2のチャンバ(27)と、
前記第2のチャンバ(27)の内部に置かれる、第2の駆動機構(5-9)と、
前記上部チャンバ(28)の内部に置かれる、少なくとも1つの酸素出口(24)と、
を更に備える、装置であって、
前記ガス生成ユニット(1)は、酸素ノズル(3)を更に含み、前記第2のチャンバ(27)は、前記酸素ノズル(3)を介して前記ガスユニット(1)と連通し、前記第2のチャンバ(27)の水中に酸素気泡が発生し、前記気泡に作用する浮力により上方向に導かれるように適合され、前記第2の駆動機構(5-9)は、上昇する気泡によって駆動されるように適合され、前記ジェネレータ(12)は、前記駆動機構(5-9)によって駆動されるように適合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ガス生成ユニット(1)は、水に浸漬されている、請求項1又は2に記載の装置セル。
【請求項4】
両方のチャンバ(26,27)は、水素気泡と酸素気泡との混合を避けるために、前記ノズル(3,4)の下方の前記下部(23)に置かれた通路を介して連通している、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ジェネレータ(12)は、両方の駆動機構(5-9)によって作動されるように設計されている、請求項2、3又は4に記載の装置。
【請求項6】
前記駆動機構は、上下の歯車(6)を中心として回動する閉ループを形成する垂直のチェーン又はベルト(5)と、前記チェーン又はベルト(5)に固定された複数のボウル(7’,7”)とを備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
各ボウル(7’,7”)は、前記チェーン又はベルト(5)に接触する前記ボウルの内部側とは反対側のボウル側の外部に置かれるノッチ(8)を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
単一かつ同一のチェーン又はベルト(5)を使用する2つの駆動機構を備える、請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
前記チェーン又はベルト(5)が、前記ボウル(7’,7”)によって捕捉される気泡の数を増加させるように、垂直に対して傾斜している、請求項5~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記駆動機構は、車輪と、前記車輪に固定された複数のボウルとを備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
始動バッテリを備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
少なくとも1つの下部センサ(21)および1つの上部センサ(22)で構成される液体検出器を備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
一連の相互接続されたモジュールを備える装置であって、第1のモジュールは、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置と同一であり、第2のモジュールは、同一であるが、ガス生成ユニットを欠いている、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記第1のチャンバが、井戸、プール、湖、海または任意の他の同様の液体容器である、請求項1~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
水素の生成の為の方法であって、
電気分解を介して水中に水素を生成するステップと、
前記電気分解の間に生成された水素気泡によって上方に向けられた駆動機構を作動させるステップと、
前記駆動機構の機械的エネルギを電気エネルギに変換するステップ と、
前記電解のために前記電気エネルギを使用するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[発明の分野]
【0002】
本発明は、一般に水素の生成に関するものであり、より正確には、電解セルを用いた水素の生成に関するものである。
【0003】
[背景]
【0004】
電解セルは電気エネルギから化学反応を起こすために使用される。電解セルは、電気分解と呼ばれるプロセスで化合物を分解するためによく使用される。水の電気分解の場合、分解は水素ガスおよび酸素ガスを生成する。このような反応を開始させるためには、分子内の結合を切断するのに十分な電気エネルギを与える必要があり、その結果、イオン(アニオンとカチオン)が生成する。電力の供給は、電解質と接触する電極によって行われる。負に帯電した電極をカソードと呼び、正に帯電した電極をアノードと呼ぶ。ガスの形をしたイオンは、その正または負の電荷に従って、それぞれの電極に導かれ、その電極の近傍に集まる。水素の2個の原子と酸素の1個の原子が共有結合で結合した水分子の場合、水素はガスの形でカソードに、酸素はアノードに現れる。したがって、水素および/または酸素ガスを生成するためには、電解セルに水を満たし、十分な電力を供給する必要がある。
【0005】
既存の電解セルに対して、電力は、原子力、熱、水力、風力、太陽光などの一般的なエネルギ源によって提供される。しかしながら、これらのエネルギ源を使用することには幾つかの欠点がある。特に再生可能なものは、必ずしも利用可能であるとは限らない。あるものは比較的大量の一酸化炭素CO2を生成するそれらの大きさ、特に水素の生成に関するものは、比較的重要である。
【0006】
さらに、電解に現在使用されている電力は、実際に必要とされる電力よりも遙かに高いことが多い。その結果、例えばエネルギベクトル輸送として使用される水素の生成における収率は非常に低い。
【0007】
したがって、電解セルによるガスの既存の生成、特に水素の生成を改善する必要がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の目的は、現在の制限を克服するために、高度なエネルギ自律性を有するグリーン水素の工業的生成のための装置および方法を提供することである。
【0009】
本発明の第2の目的は、水素の電解生成のための電気の使用を最適化することである。
【0010】
本発明の概念は、水電解によって生成された水素および酸素の気泡に付与される浮力を利用して、前記電解のための電気を生成することに基づいている。本発明は、より正確には、水素の電解生成のための装置から成り、この装置は、
水を満たした第1のチャンバと、
下部と、
上部と、
下部に置かれ、電解セルおよび水素ノズルを含むガス生成ユニットと、
上部に置かれた電気ジェネレータと、
第1のチャンバの内部に置かれた第1の駆動機構と、
第1のチャンバの最上部に置かれた水素出口と、
を備え、
第1のチャンバは、下部と上部との間に置かれ、水素ノズルを介してガスユニットと連通する第1のチャンバであって、水素気泡は、第1のチャンバの水中で生成され、気泡に作用する浮力によって上方向に導かれ、第1の駆動機構は、上昇する気泡によって作動するように適合され、ジェネレータは、第1の駆動機構によって駆動されるように適合され、電解セルは電気ジェネレータに接続されている。
【0011】
本発明はまた、以下のステップを含む水素の生成方法。
【0012】
以下のステップを含む水素の生成方法であって、
電気分解によって水中に水素を発生させるステップ、
前記電気分解の間に発生された水素気泡によって上方に向けられた駆動機構を作動させるステップ、
駆動機構の機械的エネルギを電気エネルギに変換するステップ、
前記電解のために前記電気エネルギを使用するステップ。
【0013】
本発明のより具体的な実施形態は、従属クレームに開示されている。
【0014】
先に述べたように、本発明は、液体媒体中のガスがガス環境中の液体と同じ力で移動するという所見に基づいている。2つの物質の間の密度の差によって、2つの物質は、その状態(ガス状または液体)にかかわらず、あたかも2つの流体であるかのように、密度のバランスに達するまで、一方の物質を他方の物質に移動させる。密度の非常に異なる2つの液体または2つのガスについても同じことが起こる。密度の差は、流体運動を発生させる力に比例する。
【0015】
空気中の水素ガスは非常に揮発性である。密度が空気密度よりもはるかに低いため、非常に速い上昇速度を示す。空気を水で置換すると、密度差は遙かに大きくなる。したがって、水中の水素気泡に付与される力は、水素気泡の上昇運動に起因する力が車輪型機構などの駆動機構を作動させ、それによって電気ジェネレータに機械的エネルギを提供することができる程度に、比較的重要である。
【0016】
本発明の好ましい実施形態において、ガス生成ユニットおよび電気ジェネレータ駆動機構は、電解に送る同じ液体中に浸漬され、同じ体積である。水素生成の場合、液体は水であり、この水は、選択された電極または技術の性質に応じて、触媒または溶解した元素を含むかまたは含まない。
【0017】
ガス生成ユニットは、チャンバの底部に置かれることが好ましい。本質的に電解システムであるこのユニットは、電流を電解セルの電極(カソードおよびアノード)に運ぶ導電体を介して電力供給される。生成したイオンは正または負の電荷に従って電解システムの内側で分離する。水の場合、水素は酸素から分離される。イオンがガスの形で分離されるとき、それらは、好ましくはガスが混合する可能性がないように分離されて、それらの対応するノズルを通って電解システムから離れる。
【0018】
ガスが気泡の形でガス発生ユニットを離れると、それらは急速に上昇し、駆動機構の下部に向けられる。この後者のものは、チェーンまたはベルトに取り付けることができるボウルまたは同様の中空容器の形態のパドルを有利に備えることができる。ガス生成ユニットからの水素および酸素ガスのノズルのすぐ上に置かれたボウルは、これらのガスが内側に捕捉され、上方に移動し、後続のボウルがより多くの浮力ガスを捕捉することを可能にし、したがって機構を駆動するので、前記ガスによって生成された上向きの推力によって上昇を開始する。
【0019】
各チェーンまたはベルトに取り付けられるボウルの数は、チャンバの高さ/深さに応じて変動してもよい。ガスが充填された第1のボウルが駆動機構の最上部に到達すると、第1のボウルは、上軸を中心に回転して上下逆になることによって、ガスを放出し、空洞に液体が充填されるために空洞内にそれが再び浸漬する。この点は、装置内部の最大浮力を利用するために必要な液体レベルを示す。この作用は、浮力のあるガスが機構を通してボウルを押し上げながら流れ続ける限り続く。
【0020】
ガスは、貯蔵のために回収されるか、または駆動機構の上部から更なる使用のために経路変更されてもよい。
【0021】
各チェーンは、好ましくは、その全長に沿って添えられたボウルを担持し、隣接する2つのボウル間の間隔は、次のものをブロックまたは干渉することなく、浮力ガスを可能な限り捕捉するように最適化される。それらの長さは、水素および酸素を生成する際に電解システムによって消費される電気を可能な限り多く生成するのに必要な機械的電力を維持するように決定されるべきである。このエネルギは、他の器具または補助システムを駆動するために、例えば、貯蔵のためにガスを圧縮するために、または電解に使用される湿った周囲空気から抽出する大気水ジェネレータを駆動するために、確かに使用可能である。
【0022】
2つのガスが電気分解による流体の分離において生成されるので、2つのチェーンまたはベルトを設置してもよく、両方とも同じ電気ジェネレータに接続されるが、別々の垂直パイプライン内のガスの1つによってそれぞれ駆動される。ほとんどの場合、生成される2つのガスの体積と密度は同じではないので、ボウルの大きさや数はそれに応じて変化することがある。水の場合、酸素の体積は生成される水素の体積の半分である。
【0023】
装置の効率に依存して、機構に沿ってガスによって加えられる浮力は、電解システムによって消費される正確に同量の電力を生成するのに十分でない可能性がある。このような場合には、電解システムを駆動するのに後で使用するために、例えば、フライホイール、バッテリまたは蓄熱によって蓄積することができる。
【0024】
別の実施形態において、垂直パイプラインを支持する下部を有する水に、電解システムは浸漬されない。むしろ、ボウルを充填することができるように、ガスノズルが前記チャンバの下部に接続された状態で近くに置かれる。このシステムは、電解システムの送り流体を、垂直パイプラインに含まれる流体と異なるものとすることを可能にする。(精製された)淡水に依存することなく、また装置を海水腐食にさらすことなく、炭素-中性水素エネルギのグリッド規模の生産に対する潜在的な解決策である海水電解を行うことができるので、これは有利である。精製された淡水を消費する電気分解システムを使用する場合、酸素含有量が高くても、蒸留水および脱イオン水は機構のチェーンのような金属材料に対して非常に低い腐食効果を有するので、垂直パイプラインは同じ液体で満たされてもよい。
【0025】
別の実施形態において、チェーンは、電気分解から生成されるガスの量で可能な最大の電気を生成するのに必要なだけ多くのボウルを収容するのに十分な寸法のホイールで置き換えられる。
【0026】
別の実施形態において、装置は、モジュールシステムであり、このモジュールシステムは、それらの各々の最上部に置かれた電気ジェネレータを駆動する同じ種類の機構を備えた一連の相互接続されたモジュールからなる。このモジュールシステムは、装置の高さ/深さを増大させることなく性能を向上させることができ、また、第1のモジュールを通って流れ、その後、プロセスで消費されることなく、次のモジュールの最上部チャンバから底部チャンバへと経路変更されるガスを生成するために1つのガス生成ユニットを使用するので有利である。
【0027】
別の実施形態において、駆動機構は、ボールの下に捕捉されない気泡による電力損失を低減するために僅かに傾斜しており、電気ジェネレータは、チェーンまたはベルトによって駆動されて回転するときに角運動量を増加させるために拡大された直径を有する上軸の内側に置かれている。この構成は、機構の摩擦を低減することによっても効率を向上させる。
【0028】
第1に、本発明はいかなる特定の地理または気象条件にも限定されない。それは昼夜、一年中、地表の上または下でさえも操作可能である。第2に、本発明の装置全体を、湖や海などの大きな水域に沈めることができる。このような大きな本体における電解質(水)の豊富な供給はまた、電解質の圧送または再循環の可能な問題を軽減する。さらに、高圧下、例えば大量の水の下で行われる電気分解は、水素が再生可能エネルギ資源とクリーンエネルギ消費者の間のエネルギ担体である技術の可能性と受容に寄与することが期待される。第3に、電解セルは、装置の高さ/深さを増大させることなくその性能を増大させるために、モジュールシステムに変えることができる。それにもかかわらず、本発明の装置全体は、非常に限られた空間を必要とし、それに比例して、同様の容量のPVまたは風力発電プラントよりも遙かに少ない。第4に、本発明は、PV発電所および風力発電所と異なり、騒音または視覚的な汚染を引き起こさない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明は、幾つかの実施例および以下の図とともに、本章においてよりよく理解されるであろう。
【
図1】
図1は、本発明による装置の一実施例の側面図である。
【
図3】
図3は、生成ユニットからのガスの出口を示し、それらはボウルに向けられる。
【
図5】
図5は、ノッチがどのようにしてボウルをガス生成ユニットからのノズルに接触することなく回転させることを可能にするかを示す。
【
図6】
図6は、モジュールシステムとしての本発明の装置の別の実施例の正面図である。
【
図7】
図7は、駆動機構を僅かに傾け、電気ジェネレータを上軸の内側に配置した側面図である。
【発明の詳細な説明】
【0030】
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、材料、方法および実施例は例示的なものに過ぎず、限定的であることを意図するものではない。
【0031】
図1および
図2に例示された実施例において、本発明による装置は、本質的に、水が充填された垂直方向に配向された第1のチャンバ26と、水が充填された垂直方向に配向された第2のチャンバ27と、第2のチャンバ27に連通する上部28と、ガス生成ユニット1が置かれる下部23とを備えたカラムからなる。ガス生成ユニット1は、カソードとアノード(図示せず)とからなる電解セルを水からなる電解質に浸漬して構成されている。ガス生成ユニット1は、水素ノズル4を介して第1のチャンバ26と連通し、酸素ノズル3を介して第2のチャンバ27と連通している。電解はユニット1内で誘導されてもよく、その結果、水素および酸素ガスが生成される。プロトン交換膜(PEM)技術が好ましく用いられるのは、不規則な電荷を有する性能が良好であり、蒸留水と共に用いることができるためである。
【0032】
好ましくは、PEMタイプの膜電極アセンブリ(MEA)複数電極システムが使用される。電極は、浸漬されることが意図されているので、外側の水と接触することを避けるポリマー内に封入される。このためには、電気接続が絶縁され、外側に対して密封されていることが必要である。
【0033】
ガス生成ユニット1は、吸熱反応が起こるため、熱エネルギを必要とする。ユニット1が空気に囲まれると、その温度は低下し、その結果、その性能が低下する。この実施例の場合のようにユニット1を浸漬させると、その熱伝導率が増大し、したがって冷却システムを実施する必要なしに温度安定化が促進される。
【0034】
水入口2が開いた状態で浸漬されるユニット1は、それを取り囲む水を送る入口チャネリングを必要としない。MEA(膜電極)の電池の各端部には、それぞれのノズル3、4に導かれるガス(本実施例では水素および酸素)の出口がある。各ノズル3,4は、壁によって分離された垂直チャンバ26,27と連通して、気泡の混合を防止する。
【0035】
図3に示すように、壁17は、水が一方のチャンバ26、27から他方に流れてそれらを満たすことができるように、2つのチャンバ26、27を完全に分離していない。この実施例において、水はガス生成ユニット1を介してチャンバ26,27に入り、後者は入口2を介して外部水源に接続されている。
【0036】
各チャンバ26、27の内側には、垂直ループを形成するチェーン5に固定された数個のボウル7’、7”を備えた駆動機構がある。チェーン5は、2つの歯車6(上下に1つずつ)を中心に回転する。各ボウル7’、7”は、チェーン5に接触するボウル内部側とは反対側のボウル側に外部に置かれるノッチ8を含む。ノッチ8を設けることにより、チェーン5が移動したときに気泡がボウル内に侵入するのを容易にし、最大にする。
【0037】
図2は、ボウル7’、7”の2列を示す。小さなボウル7”(左欄)は酸素用、大きなボウル7”(右欄)は水素用である。この図はまた、ギア611の軸と、2つの列が最大直径11のギア上でどのように相互作用するかを示し、後者は電気ジェネレータ12と速度乗算器13に作用する。水素出口18(
図1および
図2参照)および酸素出口24(
図2参照)も示されている。
【0038】
前述したように、水素ボウル7’は酸素ボウル7’よりも大きい。これは、発生する水素の体積が酸素の体積よりも大きいためである。酸素ボウル7”は、水素ボウル7’と同じ体積を有することができる。しかしながら、形状ではなく、体積を小さくする方が有利である。そうすることによって、摩擦が低減され、エネルギー損失が最小化される。
【0039】
上部28には、共通の回転軸9に固定され、チェーン5と相互作用する2つの歯車6がある。回転シャフト9は、最低の水のレベル10よりも下方に位置している。第2のチャンバ26内に置かれた別の歯車11もまた、回転シャフト9上に固定される。それは、ベルトおよび回転乗算器13を介して電気ジェネレータ12と相互作用する。この他の歯車11は、ボウル7’、7”に接続された歯車6の回転速度が電気ジェネレータ12に必要な回転速度よりも遅いので、電気ジェネレータ12に必要な回転数を補正するために異なる大きさを有する。このため、前記回転乗算器13を含める必要がある。乗算係数は、ジェネレータとその最適回転数の関数である。
【0040】
始動バッテリ14は、ガス生成ユニット1内で電解を開始するために使用される。直流ジェネレータの使用は、始動バッテリ14の充電を容易にすることができるが、交流ジェネレータと共にうまく動作することもできる。始動バッテリ14は、充電コントローラ15によって接続される。システム内のエネルギが電気分解に必要とされるエネルギよりも高い場合には、電気エネルギの外部電源16も可能である。
【0041】
上部28には、ギア機構および電気ジェネレータ12のための空間がある。この空間には液体がない。それはまた、水平および垂直の壁17で第1のチャンバから隔離されている。水素出口18は、前記空間に対してできるだけ近い位置にある。
【0042】
水素出口18は、水が到達可能な最大レベル19のすぐ上に置かれる。水レベルはまた、回転シャフト9より上に維持されなければならない。正しいレベルの水を保証するために、液体検出器20が設けられる。水入口30を介したチャンバの充填は、水レベルが最小レベル10未満であるときに活性化される。最小レベル10および最大レベル19は、それぞれ下センサ21および上センサ22によって検出される。充填を簡単にするために、2つのチャンバは下部23で連通しているが、ガスがチャンバ内で混合するのを防ぐために上方にノズル3,4を維持している。逆電解セルに使用するためには水素を純粋に保つことが重要である。
【0043】
第2のチャンバは、出口24を介して外部環境と連通している。これらの出口24は、電気ジェネレータ12を含む空間の内部に置かれる。ガス状の酸素は空気よりも密度が高いので、ガス状の酸素を外側に放出することによって、セルの外壁に沿って下降し、壁を僅かに加熱し、熱の一部を上部から下部へ輸送し、そこで電気分解プロセスによって吸収される。この酸素ガスがデバイス付近の表面に広がり、通気性の良い空気の質が向上する。
【0044】
電気ジェネレータ12は、バッテリの充電量に応じてガス発生量を調整する充電コントローラ15を介して、ガス生成ユニット1の外側にワイヤ25で接続されている。このようにして、バッテリ14が完全に充電されたとき、すべての電力を水素の生成に割り当てることができる。
【0045】
図6は、それらの各々の上部に置かれた電気ジェネレータ12を駆動する同じ種類の機構5-8、11、13、17を装備した一連の相互接続されたモジュールからなるモジュールシステムとしての装置を示す。このモジュールシステムが有利であるのは、第1のモジュールの内側に配置された単一のガス生成ユニット1を使用して、その機構を通って流れ、その後、プロセスで消費されることなく次のモジュールの最上部チャンバから底部チャンバへガスライン29を通って再経路化されるガスを生成するからである。
【0046】
図7は、各ボウル7’、7”の下に捕捉されない気泡による電力損失を低減するための、僅かに傾斜した構成における駆動機構を示す。ベルトの角度方向は、ボウル7’、7”内に捕捉される気泡の数を増加させる。さらに、上軸の内側に置かれる電気ジェネレータ12は、チェーンによって駆動されて回転するときに角運動量を増加させるために、直径が拡大されている。この構成は、機構の摩擦を低減することによっても効率を向上させる。
【0047】
もちろん、本発明は、これらの実施例および図に限定されるものではなく、特許請求の範囲に定義される任意の代替物をカバーする。
【0048】
【符合の説明】
【0049】
1…ガス生成ユニット、
2…水入口、
3…酸素ノズル、
4…水素ノズル、
5…チェーン、
6…チェーン歯車、
7…ボウル(7’ 水素ボウル、7” 酸素ボウル)、
8…ノッチ、
9…回転シャフト、
10…液体最小レベル、
11…ジェネレータ歯車、
12…電気ジェネレータ、
13…回転乗算器、
14…始動バッテリ、
15…充電コントローラ、
16…外部電源、
17…壁、
18…水素出口、
19…液体最大レベル、
20…液体レベル検出器、
21…下センサ、
22…上センサ、
23…下部、
24…酸素出口、
25…電気ワイヤ、
26…第1のチャンバ、
27…第2のチャンバ、
28…上部、
29…ガスライン、
30…水入口。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素の電解生成のための装置であって、
水を満たした第1のチャンバ(26)と、
下部(23)と、
上部(28)と、
前記下部(23)の内部に置かれ、電解セルと水素ノズル(4)と酸素ノズル(3)とを含むガス生成ユニット(1)であって、両方のノズルは、対応するガスが混合できないように分離されている、ガス生成ユニット(1)と、
前記上部(28)の内部に置かれる電気ジェネレータ(12)と、
前記第1のチャンバ(26)の内部に置かれる第1の駆動機構(5-9)と、
前記第1のチャンバ(26)の最上部に置かれる水素出口(18)と、
を備え、
前記第1のチャンバ(26)は、前記下部と前記上部(23、28)との間に置かれ、前記水素ノズル(4)を介して前記ガスユニット(1)と連通し、水素気泡は、前記第1のチャンバ(26)の水中で発生して前記気泡に作用する浮力により上方向に向けられ、前記第1の駆動機構(5-9)は、上昇する気泡によって作動するように適合され、前記ジェネレータ(12)は、前記第1の駆動機構(5-9)により作動されるように適合され、前記電解セルは、電気ジェネレータ(12)に接続されている、装置。
【請求項2】
水を満たし、前記上部(28)と連通しているが、前記第1のチャンバ(26)から分離されている、第2のチャンバ(27)と、
前記第2のチャンバ(27)の内部に置かれる、第2の駆動機構(5-9)と、
前記上部チャンバ(28)の内部に置かれる、少なくとも1つの酸素出口(24)と、
を更に備える、装置であって、
前記第2のチャンバ(27)は、前記酸素ノズル(3)を介して前記ガスユニット(1)と連通し、前記第2のチャンバ(27)の水中に酸素気泡が発生し、前記気泡に作用する浮力により上方向に導かれるように適合され、前記第2の駆動機構(5-9)は、上昇する気泡によって駆動されるように適合され、前記ジェネレータ(12)は、前記駆動機構(5-9)によって駆動されるように適合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ガス生成ユニット(1)は、水に浸漬されている、請求項1又は2に記載の装置セル。
【請求項4】
両方のチャンバ(26,27)は、水素気泡と酸素気泡との混合を避けるために、前記ノズル(3,4)の下方の前記下部(23)に置かれた通路を介して連通している、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ジェネレータ(12)は、両方の駆動機構(5-9)によって作動されるように設計されている、請求項2、3又は4に記載の装置。
【請求項6】
前記駆動機構は、上下の歯車(6)を中心として回動する閉ループを形成する垂直のチェーン又はベルト(5)と、前記チェーン又はベルト(5)に固定された複数のボウル(7’,7”)とを備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
各ボウル(7’,7”)は、前記チェーン又はベルト(5)に接触する前記ボウルの内部側とは反対側のボウル側の外部に置かれるノッチ(8)を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
単一かつ同一のチェーン又はベルト(5)を使用する2つの駆動機構を備える、請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
前記チェーン又はベルト(5)が、前記ボウル(7’,7”)によって捕捉される気泡の数を増加させるように、垂直に対して傾斜している、請求項5~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記駆動機構は、車輪と、前記車輪に固定された複数のボウルとを備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
始動バッテリを備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
少なくとも1つの下部センサ(21)および1つの上部センサ(22)で構成される液体検出器を備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
一連の相互接続されたモジュールを備える装置であって、第1のモジュールは、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置と同一であり、第2のモジュールは、同一であるが、ガス生成ユニットを欠いている、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記第1のチャンバが、井戸、プール、湖、海または任意の他の同様の液体容器である、請求項1~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
水素の生成の為の方法であって、
電気分解を介して水中に水素を生成するステップと、
前記電気分解の間に生成された水素気泡によって上方に向けられた駆動機構を作動させるステップと、
前記駆動機構の機械的エネルギを電気エネルギに変換するステップ と、
前記電解のために前記電気エネルギを使用するステップと、
を含む、方法。
【国際調査報告】