(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】毛様溝インプラント及び毛様溝インプラントを使用する方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20231121BHJP
A61F 9/007 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
A61F2/16
A61F9/007 170
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526063
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(85)【翻訳文提出日】2023-05-29
(86)【国際出願番号】 US2021057104
(87)【国際公開番号】W WO2022094120
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522336096
【氏名又は名称】スパイグラス ファーマ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SPYGLASS PHARMA,INC.
(71)【出願人】
【識別番号】308032460
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイト
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF COLORADO,a body corporate
(74)【代理人】
【識別番号】100207837
【氏名又は名称】小松原 寿美
(72)【発明者】
【氏名】ケーブル ザ セカンド、クレイグ アラン
(72)【発明者】
【氏名】カフーク、マリック ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】サスマン、グレン アール.
(72)【発明者】
【氏名】デネウィル、ジェームズ アール.
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA25
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC05
4C097DD01
4C097DD04
4C097EE02
4C097EE03
4C097EE06
4C097SA01
4C097SA06
4C097SA10
(57)【要約】
本開示は、1つ以上の薬物送達デバイスを含むことができる眼用インプラント、例えば毛様溝インプラントを提供する。対象の眼、例えば、眼の毛様溝又は水晶体嚢への埋め込みのために本明細書に記載される薬物送達眼用デバイスを使用する方法が、本明細書においてさらに提供される。インプラントは、第1の材料を含むとともに対象の眼に埋め込むために構成されたリング又は部分リングであって、外周面、内壁、及び中央開口部17によって特徴付けられる、リング又は部分リングと、第2の材料を含むとともに第1のハプティック端部及び第2のハプティック端部でリング又は部分リングに取り付けられた閉ループハプティックとを備える。第1の材料及び第2の材料は異なる化学組成を有し、リング又は部分リングは閉ループハプティックよりも剛性が高い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼用インプラントであって、
第1の材料を含むとともに対象の眼に埋め込むために構成されたリング又は部分リング15であって、外周面、内壁、及び中央開口部17によって特徴付けられる、リング又は部分リング15と、
第2の材料を含むとともに第1のハプティック端部16d,41,45及び第2のハプティック端部16d,42,44で前記リング又は部分リングに取り付けられた閉ループハプティック16,16C,16L,43,46と、を備え、
前記第1の材料及び前記第2の材料は異なる化学組成を有し、前記リング又は部分リングは前記閉ループハプティックよりも剛性が高い、眼用インプラント。
【請求項2】
埋め込み後の眼に存在する条件では、前記リング又は部分リングはその形状を保持し、前記閉ループハプティックは変形する、請求項1に記載の眼用インプラント。
【請求項3】
100mNの付与力で、前記リング又は部分リングはその形状を保持し、前記閉ループハプティックは変形する、請求項1又は2に記載の眼用インプラント。
【請求項4】
10mNの付与力で、前記リング又は部分リングはその形状を保持し、前記閉ループハプティックは変形する、請求項1又は2に記載の眼用インプラント。
【請求項5】
複数の閉ループハプティックを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項6】
前記第1のハプティック端部は、前記インプラントが埋め込まれる組織により印加される力によって前記閉ループハプティックが変形可能となるように、前記第1のハプティック端部で前記リングに可撓的に接続されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項7】
前記閉ループハプティックの一部は、前記リングの穴18,49,50,84を通過し、前記中央開口部に入って把持特徴部21,85を形成する、請求項1から6のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項8】
前記第2のハプティック端部は、前記インプラントが埋め込まれる組織により印加される力によって前記閉ループハプティックが変形可能となるように、前記第2のハプティック端部で前記リングに可撓的に接続されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項9】
前記閉ループハプティックは、前記第1のハプティック端部、前記第2のハプティック端部、又はこれらの組み合わせが、前記リング15の凹部内に配置されるように構成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項10】
前記第1のハプティック端部は、前記第1のハプティック端部を前記リングに機械的に固定すること、前記第1のハプティック端部を前記リングとオーバーモールド成形すること、前記第1のハプティック端部を前記リングに融着すること、前記第1のハプティック端部を熱収縮取付けにより前記リングに取り付けること、前記第1のハプティック端部を接着剤により前記リングに取り付けること、又はこれらの組み合わせによって、前記リングに取り付けられている、請求項1から5又は請求項7から9のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項11】
前記第2のハプティック端部は、前記第2のハプティック端部を前記リングに機械的に固定すること、前記第2のハプティック端部を前記リングとオーバーモールド成形すること、前記第2のハプティック端部を前記リングに融着すること、前記第2のハプティック端部を熱収縮取付けにより前記リングに取り付けること、前記第2のハプティック端部を接着剤により前記リングに取り付けること、又はこれらの組み合わせによって、前記リングに取り付けられている、請求項1から7又は請求項8から10のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項12】
前記第1の材料は生体適合性材料であり、前記第2の材料は生体適合性材料である、請求項1から11のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項13】
前記第1の材料は第1のポリマーであり、前記第2の材料は第2のポリマーである、請求項1から12のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項14】
前記第1の材料は、シリコーン、アクリル樹脂、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)、及びポリアクリル酸エチル(PEA)、又はこれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項15】
前記第2の材料はエラストマーである、請求項1から14のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項16】
前記第2の材料は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリプロピレン(PP)、及びポリエーテルスルホン(PES)、又はこれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、請求項1から15のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項17】
眼用インプラントであって、
患者の眼に埋め込むために構成されたリング又は部分リング15であって、外周面、内壁、及び中央開口部17によって特徴付けられる、リング又は部分リング15と、
第1のハプティック端部16d,41,43及び第2のハプティック端部16d,42,44で前記リングに接続されたハプティック16,16L,43,46と、を備え、
前記ハプティックは、前記インプラントが埋め込まれる組織により印加される力によって前記ハプティックが変形可能となるように、前記第1のハプティック端部で前記リングに可撓的に接続されている、眼用インプラント。
【請求項18】
前記ハプティックは、前記インプラントが埋め込まれる組織により印加される力によって前記ハプティックが変形可能となるように、前記第2のハプティック端部で前記リングに可撓的に接続されている、請求項17に記載の眼用インプラント。
【請求項19】
前記ハプティックは、前記第1のハプティック端部、前記第2のハプティック端部、又はこれらの組み合わせが、前記リング15の凹部37,52,53内に配置されるように構成されている、請求項17又は18に記載の眼用インプラント。
【請求項20】
前記リングは、前記外周面の開口19,51,56,57から前記内壁に向かって通じる穴18,36,47,48,49,50,52,53を備える、請求項1から19のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項21】
前記第2のハプティック端部16d,42,44は、前記穴18,36,48,50,52内に摺動可能に配置される、請求項20に記載の眼用インプラント。
【請求項22】
前記眼用インプラントは、対象の眼の後眼房及び毛様溝に埋め込むために構成されている、請求項1から21のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項23】
前記第2のハプティック端部は、前記インプラントが埋め込まれる組織により印加される力によって前記ハプティックが変形可能となるように、前記第2のハプティック端部で前記リングに可撓的に接続されている、請求項17から22のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項24】
前記第2のハプティック端部は、前記第2のハプティック端部を前記リングに機械的に固定すること、前記第2のハプティック端部を前記リングとオーバーモールド成形すること、前記第2のハプティック端部を前記リングに融着すること、前記第2のハプティック端部を熱収縮取付けにより前記リングに取り付けること、前記第2のハプティック端部を接着剤により前記リングに取り付けること、又はこれらの組み合わせによって、前記リングに取り付けられている、請求項17から22のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項25】
対象の眼に埋め込むために構成された眼用インプラントであって、
前記眼用インプラントは、
前記対象の前記眼に埋め込むために構成されたリング15であって、外周面、内壁、及び中央開口部17によって特徴付けられる、リング15と、
第1のハプティック端部16d,41,45及び第2のハプティック端部16d,42,44で前記リングに接続されたハプティック16,16L,43,46と、を備え、
前記リングは、前記外周面の開口19,51から前記内壁に向かって通じる穴18,49,50を備え、
前記第2のハプティック端部16d,42,44は、前記穴18,48,50,52内に配置されるとともに前記穴内で摺動可能に配置されており、それにより前記ハプティックは、前記インプラントが埋め込まれる組織により印加され、前記第2のハプティック端部を前記穴18,48,50,52に押し込むように働き得る力によって変形可能となる、眼用インプラント。
【請求項26】
対象の眼の後眼房及び毛様溝に埋め込むために構成された眼用インプラントであって、
前記眼用インプラントは、
前記対象の前記眼の前記後眼房に埋め込むために構成されたリング15であって、外周面、内壁、及び中央開口部17によって特徴付けられる、リング15と、
第1のハプティック端部16d,41,45及び第2のハプティック端部16d,42,44で前記リングに接続されたハプティック16,16L,43,46と、を備え、
前記リングは、前記外周面の開口19,51から前記内壁に向かって通じる穴18,49,50を備え、
前記第2のハプティック端部16d,42,44は、前記穴18,48,50,52内に配置されるとともに前記穴内で摺動可能に配置されており、それにより前記ハプティックは、前記インプラントが埋め込まれる組織により印加され、前記第2のハプティック端部を前記穴18,48,50,52に押し込むように働き得る力によって変形可能となる、眼用インプラント。
【請求項27】
前記第2のハプティック端部16d,42,44は、前記第2のハプティック端部16d,42,44の残部よりも大きな断面を有するハプティック遠位先端部16Tを備える、請求項25又は26に記載の眼用インプラント。
【請求項28】
前記第2のハプティック端部16d,42,44は、前記第2のハプティック端部16d,42,44の残部よりも大きな断面を有するハプティック遠位先端部16Tを備え、前記貫通穴18,36,48,50は、前記ハプティック遠位先端部16Tよりも小さな断面を備えた内腔を有し、それにより前記第2のハプティック端部は、前記貫通穴から抜けるのを阻止又は防止される、請求項25から27のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項29】
前記第2のハプティック端部16d,42,44に配置された把持特徴部21をさらに備え、前記把持特徴部は、把持器具の係合用に構成されている、請求項1から28のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項30】
前記外周面の前記開口19,51から前記内壁に向かって通じる前記穴18,50は、前記リングの前記内壁の開口20,56に連通する貫通穴であり、前記第2のハプティック端部16d,42,44は、前記第2のハプティック端部16d,42,44の残部よりも大きな断面を有するハプティック遠位先端部16Tを備え、前記ハプティック遠位先端部16Tは、前記中央開口部17に配置されている、請求項25から29のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項31】
前記第1のハプティック端部16d,41,45は、前記第1のハプティック端部16d,41,45の残部よりも大きな断面を有するハプティック遠位先端部16Tを備える、請求項25から30のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項32】
前記第1のハプティック端部16d,41,45は、前記第1のハプティック端部の残部よりも大きな断面を有するハプティック遠位先端部16Tを備え、前記貫通穴18,47,49は、前記ハプティック遠位先端部16Tよりも小さな断面を備えた内腔を有し、それにより前記第1のハプティック端部は、前記貫通穴から抜けるのを阻止又は防止される、請求項25から31のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項33】
前記第1のハプティック端部16d,41,45に配置された把持特徴部21をさらに備え、前記把持特徴部は、把持器具の係合用に構成されている、請求項1から32のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項34】
前記外周面の前記開口19,51から前記内壁に向かって通じる前記穴18,49は、前記リングの前記内壁の開口20,57に連通する貫通穴であり、前記第1のハプティック端部16d,41,45は、前記第1のハプティック端部の残部よりも大きな断面を有するハプティック遠位先端部16Tを備え、前記ハプティック遠位先端部16Tは、前記中央開口部17に配置されている、請求項25から33のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項35】
前記穴18,52,53,49,50は、前記リング内において半径方向に向いている、請求項25から34のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項36】
前記穴18,52,53,49,50は、前記リング内において弦方向に向いている、請求項25から34のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項37】
前記穴18,49,50は、前記リングの前記内壁又は前記リングの前面の開口と連通する貫通穴である、請求項25から36のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項38】
前記穴18,52,53は、前記リングによって終了する止まり穴である、請求項25から36のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項39】
前記第1のハプティック端部は、前記インプラントが埋め込まれる組織により印加される力によって前記ハプティックが変形可能となるように、前記第2のハプティック端部で前記リングに可撓的に接続されている、請求項25から38のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項40】
前記第1のハプティック端部は、前記第1のハプティック端部を前記リングに機械的に固定すること、前記第1のハプティック端部を前記リングとオーバーモールド成形すること、前記第1のハプティック端部を前記リングに融着すること、前記第1のハプティック端部を熱収縮取付けにより前記リングに取り付けること、前記第1のハプティック端部を接着剤により前記リングに取り付けること、又はこれらの組み合わせによって、前記リングに取り付けられている、請求項25から39のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項41】
前記リングは第1の生体適合性材料を含み、前記ハプティックは第2の生体適合性材料を含む、請求項17から40のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項42】
前記第1の生体適合性材料及び前記第2の生体適合性材料は異なる化学組成を有し、前記リング又は部分リングは前記ハプティックよりも剛性が高い、請求項41に記載の眼用インプラント。
【請求項43】
埋め込み後の前記眼に存在する条件では、前記リング又は部分リングはその形状を保持し、前記閉ループハプティックは変形する、請求項42に記載の眼用インプラント。
【請求項44】
100mNの付与力で、前記リング又は部分リングはその形状を保持し、前記閉ループハプティックは変形する、請求項42又は43に記載の眼用インプラント。
【請求項45】
10mNの付与力で、前記リング又は部分リングはその形状を保持し、前記閉ループハプティックは変形する、請求項42から44のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項46】
前記第1の生体適合性材料は第1のポリマーであり、前記第2の生体適合性材料は第2のポリマーである、請求項41から45のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項47】
前記第1の生体適合性材料は、シリコーン、アクリル樹脂、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)、及びポリアクリル酸エチル(PEA)、又はこれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、請求項41から46のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項48】
前記第2の生体適合性材料はエラストマーである、請求項41から47のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項49】
前記第2の生体適合性材料は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリプロピレン(PP)、及びポリエーテルスルホン(PES)、又はこれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、請求項41から48のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項50】
薬物送達構造物をさらに備える、請求項1から49のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項51】
前記中央開口部17内に配置されたレンズ34をさらに備える、請求項1から50のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項52】
眼用インプラントであって、
対象の眼に埋め込むために構成された第1の弓形薬物送達構造物及び第2の弓形薬物送達構造物70であって、毛様溝に設置するために構成された外輪郭70Cを有し、前記対象の前記眼の状態又は疾患を治療するように構成された治療薬を含有する、第1の弓形薬物送達構造物及び第2の弓形薬物送達構造物70と、
前記第1の弓形薬物送達構造物と前記第2の弓形薬物送達構造物とを接続する第1の付勢部材及び第2の付勢部材71であって、前記第1の薬物送達構造物と前記第2の薬物送達構造物とを互いから離れるように付勢して毛様溝インプラントを大径形態に構成するように、及び前記毛様溝インプラントの小径形態への圧縮を可能にするように、弾性的に拡張可能及び圧縮可能に構成されている、第1の付勢部材及び第2の付勢部材71と、を備える、眼用インプラント。
【請求項53】
眼用インプラントであって、
対象の眼の毛様溝に埋め込むために構成された弓形薬物送達構造物70であって、前記毛様溝に設置するために構成された外輪郭70Cを有し、前記対象の前記眼の状態又は疾患を治療するように構成された治療薬を含有する、弓形薬物送達構造物70と、
前記弓形薬物送達構造物に接続された付勢部材71であって、対象の眼の毛様溝に埋め込むために構成されており、前記弓形薬物送達構造物を前記付勢部材の一端から離れるように付勢して前記毛様溝インプラントを大径形態に構成するように、及び前記毛様溝インプラントの小径形態への圧縮を可能にするように、弾性的に拡張可能及び圧縮可能に構成されている、付勢部材71と、を備える、眼用インプラント。
【請求項54】
眼用インプラントであって、
弾性的に拡張可能及び圧縮可能なワイヤーフレーム80と、
支柱83によって連結されたパネル81,82を備えた薬物送達構造物であって、前記パネル及び前記支柱は開口部を画定する、薬物送達構造物と、を備え、
前記圧縮可能なワイヤーフレームの一部は前記開口部内に配置されている、眼用インプラント。
【請求項55】
前記眼用インプラントは、外側輪郭が眼の前記毛様溝に接するまで、弾性的に拡張するように構成されている、請求項1から54のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項56】
前記薬物送達構造物27,81,82は、治療薬を含有する、請求項50から51又は請求項54のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項57】
前記弓形薬物送達構造物70は、治療薬を含有する、請求項52又は53に記載の眼用インプラント。
【請求項58】
前記薬物送達構造物は、治療薬、マトリックス中に配置された治療薬、侵食性治療薬、及び薬物溶出構造物を形成するマトリックス中の治療薬、又はこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項50から56のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項59】
前記薬物送達構造物27は、前記リング15の後面15P上に配置される、請求項50から56又は請求項58のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項60】
前記治療薬は、薬物溶出構造物を形成するマトリックス中に配置されている、請求項56から59のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項61】
前記薬物送達構造物は、前記リング若しくは部分リング15内又は前記弓形薬物送達構造物70内に配置される、請求項50から60のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項62】
前記薬物送達構造物又は前記弓形薬物送達構造物70は、前記治療薬を含有するポリマーマトリックスを含む、請求項56から60のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項63】
前記ポリマーマトリックスは生体侵食性である、請求項62に記載の眼用インプラント。
【請求項64】
前記治療薬は、プロスタグランジン類似体、アルファアゴニスト、Rho-キナーゼ(ROCK)阻害薬、アデノシン受容体アゴニスト、炭酸脱水酵素阻害薬、アドレナリン作動性及び/又はコリン作動性受容体活性化薬、ステロイド、アプタマー、補体因子、抗酸化薬、抗炎症薬、抗体、抗増殖薬、抗有糸分裂薬、又は抗炎症薬のうちの1つ以上を含む、請求項56から63のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項65】
前記プロスタグランジン類似体は、ビマトプロストを含む、請求項64に記載の眼用インプラント。
【請求項66】
治療を必要とする対象における眼の状態又は疾患を治療する方法であって、請求項1から64のいずれか一項に記載の眼用インプラントを準備することと、
前記眼用インプラントを前記対象の前記眼に埋め込むことによって、前記対象における前記眼の状態又は疾患を治療することと、を含む、方法。
【請求項67】
前記眼用インプラントをインジェクタ内に圧縮することと、前記インジェクタの一部を前記対象の眼に挿入することと、前記眼用インプラントを前記対象の眼内に解放することと、をさらに含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記眼用インプラントを前記対象の眼の後眼房及び毛様溝に埋め込むことを含む、請求項66又は67に記載の方法。
【請求項69】
前記眼用インプラントを前記対象の眼の水晶体嚢に埋め込むことを含む、請求項66又は67に記載の方法。
【請求項70】
治療薬を前記眼用インプラントから前記対象の眼の組織に送達することをさらに含む、請求項66から69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記治療薬は、前記治療薬を含有するマトリックスから前記治療薬を溶出させることによって送達される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記治療薬は、プロスタグランジン類似体である、請求項70又は71に記載の方法。
【請求項73】
前記治療薬は、ビマトプロストである、請求項70から72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記眼の状態又は疾患は、加齢黄斑変性症、弱視、白内障、色盲、糖尿病性網膜症、ドライアイ、飛蚊症、緑内障、結膜炎、屈折異常、及び網膜剥離、又はこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項66から73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記眼の状態又は疾患は緑内障である、請求項66から74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記対象は、前記対象の眼の水晶体嚢に埋め込まれた眼内デバイスを以前に受容していた、請求項66から75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
把持特徴部21,85を使用して、前記デバイスを前記眼内で操作することをさらに含む、請求項66から76のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛様溝インプラント及び毛様溝インプラントを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の眼内インプラントは、その製造性及び埋め込まれたときに眼組織を損傷することなく治療効果を与えるその能力の点で限界がある場合がある。よって、使用中の安全性の改善及び組織障害の低減、並びに製造性の改善をもたらす眼内インプラントに対して満たされていない要求が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本明細書では対象の眼に埋め込むことができる眼内インプラントが提供される。場合によっては、本明細書では対象者の眼の毛様溝(ciliary sulcus)又は水晶体嚢(capsular bag)に埋め込むための眼内インプラントが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
様々な実施形態において、眼用インプラントは、第1の材料を含むとともに対象の眼に埋め込むために構成されたリング又は部分リング15であって、外周面、内壁、及び中央開口部17によって特徴付けられる、リング又は部分リング15と、第2の材料を含むとともに第1のハプティック端部16d,41,45及び第2のハプティック端部16d,42,44でリング又は部分リングに取り付けられた閉ループハプティック16,16C,16L,43,46とを備える。第1の材料及び第2の材料は異なる化学組成を有し、リング又は部分リングは閉ループハプティックよりも剛性が高い。
【0005】
いくつかの態様において、埋め込み後の眼に存在する条件では、リング又は部分リングはその形状を保持し、閉ループハプティックは変形する。他の態様では、100mNの付与力で、リング又は部分リングはその形状を保持し、閉ループハプティックは変形する。さらなる態様では、10mNの付与力で、リング又は部分リングはその形状を保持し、閉ループハプティックは変形する。
【0006】
特定の態様において、眼用インプラントは、複数の閉ループハプティックを備える。
いくつかの態様において、第1のハプティック端部は、インプラントが埋め込まれる組織により印加される力によって閉ループハプティックが変形可能となるように、第1のハプティック端部でリングに可撓的に接続されている。
【0007】
他の態様において、閉ループハプティックの一部は、リングの穴18,49,50,84を通過し、中央開口部に入って把持特徴部21,85を形成する。
いくつかの態様において、第2のハプティック端部は、インプラントが埋め込まれる組織により印加される力によって閉ループハプティックが変形可能となるように、第2のハプティック端部でリングに可撓的に接続されている。
【0008】
いくつかの実施形態において、閉ループハプティックは、第1のハプティック端部、第2のハプティック端部、又はこれらの組み合わせが、リング15の凹部内に配置されるように構成されている。
【0009】
他の態様において、第1のハプティック端部は、第1のハプティック端部をリングに機械的に固定すること、第1のハプティック端部をリングとオーバーモールド成形すること、第1のハプティック端部をリングに融着すること、第1のハプティック端部を熱収縮取付けによりリングに取り付けること、第1のハプティック端部を接着剤によりリングに取り付けること、又はこれらの組み合わせによって、リングに取り付けられている。
【0010】
特定の実施形態において、第2のハプティック端部は、第2のハプティック端部をリングに機械的に固定すること、第2のハプティック端部をリングとオーバーモールド成形すること、第2のハプティック端部をリングに融着すること、第2のハプティック端部を熱収縮取付けによりリングに取り付けること、第2のハプティック端部を接着剤によりリングに取り付けること、又はこれらの組み合わせによって、リングに取り付けられている。
【0011】
いくつかの態様において、第1の材料は生体適合性材料であり、第2の材料は生体適合性材料である。他の態様において、第1の材料は第1のポリマーであり、第2の材料は第2のポリマーである。特定の態様において、第1の材料は、シリコーン、アクリル樹脂、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)、及びポリアクリル酸エチル(PEA)、又はこれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
【0012】
いくつかの実施形態において、第2の材料はエラストマーである。他の実施形態において、第2の材料は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリプロピレン(PP)、及びポリエーテルスルホン(PES)、又はこれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
【0013】
様々な実施形態において、眼用インプラントは、患者の眼に埋め込むために構成されたリング又は部分リング15であって、外周面、内壁、及び中央開口部17によって特徴付けられる、リング又は部分リング15と、第1のハプティック端部16d,41,43及び第2のハプティック端部16d,42,44でリングに接続されたハプティック16,16L,43,46とを備える。ハプティックは、インプラントが埋め込まれる組織により印加される力によってハプティックが変形可能となるように、第1のハプティック端部でリングに可撓的に接続されている。
【0014】
いくつかの実施形態において、ハプティックは、インプラントが埋め込まれる組織により印加される力によってハプティックが変形可能となるように、第2のハプティック端部でリングに可撓的に接続されている。
【0015】
他の態様において、ハプティックは、第1のハプティック端部、第2のハプティック端部、又はこれらの組み合わせが、リング15の凹部37,52,53内に配置されるように構成されている。
【0016】
特定の実施形態において、リングは、外周面の開口19,51,56,57から内壁に向かって通じる穴18,36,47,48,49,50,52,53を備える。いくつかの態様において、第2のハプティック端部16d,42,44は、穴18,36,48,50,52内に摺動可能に配置される。
【0017】
様々な態様において、眼用インプラントは、対象の眼の後眼房及び毛様溝に埋め込むために構成されている。
いくつかの実施形態において、第2のハプティック端部は、インプラントが埋め込まれる組織により印加される力によってハプティックが変形可能となるように、第2のハプティック端部でリングに可撓的に接続されている。
【0018】
特定の実施形態において、第2のハプティック端部は、第2のハプティック端部をリングに機械的に固定すること、第2のハプティック端部をリングとオーバーモールド成形すること、第2のハプティック端部をリングに融着すること、第2のハプティック端部を熱収縮取付けによりリングに取り付けること、第2のハプティック端部を接着剤によりリングに取り付けること、又はこれらの組み合わせによって、リングに取り付けられている。
【0019】
様々な態様において、本開示は、対象の眼に埋め込むために構成された眼用インプラントを提供する。眼用インプラントは、対象の眼に埋め込むために構成されたリング15であって、外周面、内壁、及び中央開口部17によって特徴付けられる、リング15と、第1のハプティック端部16d,41,45及び第2のハプティック端部16d,42,44でリングに接続されたハプティック16,16L,43,46とを備える。リングは、外周面の開口19,51から内壁に向かって通じる穴18,49,50を備える。第2のハプティック端部16d,42,44は、穴18,48,50,52内に配置されるとともに穴内で摺動可能に配置されており、それによりハプティックは、インプラントが埋め込まれる組織により印加され、第2のハプティック端部を穴18,48,50,52に押し込むように働き得る力によって変形可能となる。
【0020】
様々な態様において、本開示は、対象の眼の後眼房及び毛様溝に埋め込むために構成された眼用インプラントを提供する。眼用インプラントは、対象の眼の後眼房に埋め込むために構成されたリング15であって、外周面、内壁、及び中央開口部17によって特徴付けられる、リング15と、第1のハプティック端部16d,41,45及び第2のハプティック端部16d,42,44でリングに接続されたハプティック16,16L,43,46とを備え、リングは、外周面の開口19,51から内壁に向かって通じる穴18,49,50を備え、第2のハプティック端部16d,42,44は、穴18,48,50,52内に配置されるとともに穴内で摺動可能に配置されており、それによりハプティックは、インプラントが埋め込まれる組織により印加され、第2のハプティック端部を穴18,48,50,52に押し込むように働き得る力によって変形可能となる。
【0021】
いくつかの態様において、第2のハプティック端部16d,42,44は、第2のハプティック端部16d,42,44の残部よりも大きな断面を有するハプティック遠位先端部16Tを備える。
【0022】
他の態様において、第2のハプティック端部16d,42,44は、第2のハプティック端部16d,42,44の残部よりも大きな断面を有するハプティック遠位先端部16Tを備え、貫通穴18,36,48,50は、ハプティック遠位先端部16Tよりも小さな断面を備えた内腔を有し、それにより第2のハプティック端部は、貫通穴から抜けるのを阻止又は防止される。
【0023】
いくつかの態様において、眼用インプラントは、第2のハプティック端部16d,42,44に配置された把持特徴部21をさらに備え、前記把持特徴部は、把持器具の係合用に構成されている。
【0024】
他の態様において、外周面の開口19,51から内壁に向かって通じる穴18,50は、リングの内壁の開口20,56に連通する貫通穴であり、第2のハプティック端部16d,42,44は、第2のハプティック端部16d,42,44の残部よりも大きな断面を有するハプティック遠位先端部16Tを備え、前記ハプティック遠位先端部16Tは、中央開口部17に配置されている。
【0025】
さらなる実施形態において、第1のハプティック端部16d,41,45は、第1のハプティック端部16d,41,45の残部よりも大きな断面を有するハプティック遠位先端部16Tを備える。
【0026】
いくつかの態様において、第1のハプティック端部16d,41,45は、第1のハプティック端部の残部よりも大きな断面を有するハプティック遠位先端部16Tを備え、貫通穴18,47,49は、ハプティック遠位先端部16Tよりも小さな断面を備えた内腔を有し、それにより第1のハプティック端部は、貫通穴から抜けるのを阻止又は防止される。
【0027】
他の実施形態において、眼用インプラントは、第1のハプティック端部16d,41,45に配置された把持特徴部21をさらに備え、前記把持特徴部は、把持器具の係合用に構成されている。
【0028】
特定の態様において、外周面の開口19,51から内壁に向かって通じる穴18,49は、リングの内壁の開口20,57に連通する貫通穴であり、第1のハプティック端部16d,41,45は、第1のハプティック端部の残部よりも大きな断面を有するハプティック遠位先端部16Tを備え、前記ハプティック遠位先端部16Tは、中央開口部17に配置されている。
【0029】
いくつかの実施形態において、穴18,52,53,49,50は、リング内において半径方向に向いている。他の実施形態において、穴18,52,53,49,50は、リング内において弦方向に向いている(chordally oriented)。さらなる実施形態において、穴18,49,50は、リングの内壁又はリングの前面の開口と連通する貫通穴である。付加的な要素において、穴18,52,53は、リングによって終了する止まり穴である。
【0030】
いくつかの態様において、第1のハプティック端部は、インプラントが埋め込まれる組織により印加される力によってハプティックが変形可能となるように、第2のハプティック端部でリングに可撓的に接続されている。
【0031】
特定の実施形態において、第1のハプティック端部は、第1のハプティック端部をリングに機械的に固定すること、第1のハプティック端部をリングとオーバーモールド成形すること、第1のハプティック端部をリングに融着すること、第1のハプティック端部を熱収縮取付けによりリングに取り付けること、第1のハプティック端部を接着剤によりリングに取り付けること、又はこれらの組み合わせによって、リングに取り付けられている。
【0032】
他の態様において、リングは第1の生体適合性材料を含み、ハプティックは第2の生体適合性材料を含む。
いくつかの実施形態において、第1の生体適合性材料及び第2の生体適合性材料は異なる化学組成を有し、リング又は部分リングはハプティックよりも剛性が高い。
【0033】
いくつかの態様において、埋め込み後の眼に存在する条件では、リング又は部分リングはその形状を保持し、閉ループハプティックは変形する。いくつかの実施形態では、100mNの付与力で、リング又は部分リングはその形状を保持し、閉ループハプティックは変形する。他の実施形態では、10mNの付与力で、リング又は部分リングはその形状を保持し、閉ループハプティックは変形する。
【0034】
特定の実施形態において、第1の生体適合性材料は第1のポリマーであり、第2の生体適合性材料は第2のポリマーである。いくつかの態様において、第1の生体適合性材料は、シリコーン、アクリル樹脂、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)、及びポリアクリル酸エチル(PEA)、又はこれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
【0035】
いくつかの実施形態において、第2の生体適合性材料はエラストマーである。特定の実施形態において、第2の生体適合性材料は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリプロピレン(PP)、及びポリエーテルスルホン(PES)、又はこれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
【0036】
いくつかの実施形態において、眼用インプラントは、薬物送達構造物をさらに備える。
特定の態様において、眼用インプラントは、中央開口部17内に配置されたレンズ34をさらに備える。
【0037】
様々な実施形態において、眼用インプラントは、対象の眼に埋め込むために構成された第1の弓形薬物送達構造物及び第2の弓形薬物送達構造物70であって、毛様溝(sulcus)に設置するために構成された外輪郭70Cを有し、対象の眼の状態又は疾患を治療するように構成された治療薬を含有する、第1の弓形薬物送達構造物及び第2の弓形薬物送達構造物70と、第1の弓形薬物送達構造物と第2の弓形薬物送達構造物とを接続する第1の付勢部材及び第2の付勢部材71であって、第1の薬物送達構造物と第2の薬物送達構造物とを互いから離れるように付勢して毛様溝(sulcus)インプラントを大径形態に構成するように、及び毛様溝インプラントの小径形態への圧縮を可能にするように、弾性的に拡張可能及び圧縮可能に構成されている、第1の付勢部材及び第2の付勢部材71とを備える。
【0038】
様々な実施形態において、眼用インプラントは、対象の眼の毛様溝に埋め込むために構成された弓形薬物送達構造物70であって、毛様溝に設置するために構成された外輪郭70Cを有し、対象の眼の状態又は疾患を治療するように構成された治療薬を含有する、弓形薬物送達構造物70と、弓形薬物送達構造物に接続された付勢部材71であって、対象の眼の毛様溝に埋め込むために構成されており、弓形薬物送達構造物を付勢部材の一端から離れるように付勢して毛様溝インプラントを大径形態に構成するように、及び毛様溝インプラントの小径形態への圧縮を可能にするように、弾性的に拡張可能及び圧縮可能に構成されている、付勢部材71とを備える。
【0039】
様々な実施形態において、眼用インプラントは、弾性的に拡張可能及び圧縮可能なワイヤーフレーム80と、支柱83によって連結されたパネル81,82を備えた薬物送達構造物であって、パネル及び支柱は開口部を画定する、薬物送達構造物とを備え、圧縮可能なワイヤーフレームの一部は開口部内に配置されている。
【0040】
いくつかの態様において、眼用インプラントは、外側輪郭が眼の毛様溝に接するまで、弾性的に拡張するように構成されている。
いくつかの態様において、弓形薬物送達構造物70は、治療薬を含有する。
【0041】
特定の実施形態において、薬物送達構造物27,81,82は、治療薬を含有する。特定の態様において、薬物送達構造物は、治療薬、マトリックス中に配置された治療薬、侵食性(erodible)治療薬、及び薬物溶出構造物を形成するマトリックス中の治療薬、又はこれらの組み合わせから成る群から選択される。いくつかの実施形態において、薬物送達構造物27は、リング15の後面15P上に配置される。特定の態様において、治療薬は、薬物溶出構造物を形成するマトリックス中に配置されている。いくつかの態様において、薬物送達構造物は、リング若しくは部分リング15内又は弓形薬物送達構造物70内に配置される。いくつかの実施形態において、薬物送達構造物又は弓形薬物送達構造物70は、治療薬を含有するポリマーマトリックスを含む。特定の実施形態において、ポリマーマトリックスは生体侵食性(bioerodible)である。さらなる実施形態において、治療薬は、プロスタグランジン類似体、アルファアゴニスト、Rho-キナーゼ(ROCK)阻害薬、アデノシン受容体アゴニスト、炭酸脱水酵素阻害薬、アドレナリン作動性及び/又はコリン作動性受容体活性化薬、ステロイド、アプタマー、補体因子、抗酸化薬、抗炎症薬、抗体、抗増殖薬、抗有糸分裂薬、又は抗炎症薬のうちの1つ以上を含む。特定の実施形態において、プロスタグランジン類似体は、ビマトプロストを含む。
【0042】
様々な実施形態において、本開示は、治療を必要とする対象における眼の状態又は疾患を治療する方法を提供する。本方法は、本明細書に記載されるような眼用インプラントを準備することと、眼用インプラントを対象の眼に埋め込むことによって、対象における眼の状態又は疾患を治療することとを含む。
【0043】
いくつかの態様において、本方法は、眼用インプラントをインジェクタ内に圧縮することと、インジェクタの一部を対象の眼に挿入することと、眼用インプラントを対象の眼内に解放することとを含む。他の態様において、本方法は、眼用インプラントを対象の眼の後眼房及び毛様溝に埋め込むことを含む。他の態様において、本方法は、眼用インプラントを対象の眼の水晶体嚢に埋め込むことを含む。
【0044】
他の態様において、本方法は、治療薬を眼用インプラントから対象の眼の組織に送達することをさらに含む。特定の実施形態において、治療薬は、治療薬を含有するマトリックスから治療薬を溶出させることによって送達される。さらなる態様において、治療薬は、プロスタグランジン類似体である。付加的な実施形態において、治療薬は、ビマトプロストである。
【0045】
いくつかの態様において、眼の状態又は疾患は、加齢黄斑変性症、弱視(amblyopia、lazy eye)、白内障、色盲、糖尿病性網膜症、ドライアイ、飛蚊症、緑内障、結膜炎、屈折異常、及び網膜剥離、又はこれらの組み合わせから成る群から選択される。特定の態様において、眼の状態又は疾患は緑内障である。
【0046】
特定の実施形態において、対象は、対象の眼の水晶体嚢に埋め込まれた眼内デバイスを以前に受容していた。
他の態様において、本方法は、把持特徴部21,85を使用して、デバイスを眼内で操作することをさらに含む。
【0047】
いくつかの態様において、本開示は、患者の眼に埋め込むために構成されたリングと、リングの周面に近接した開口19からリングの内壁に近接した開口19に連通する通路18とを備えた眼用インプラントを提供する。
【0048】
他の態様において、本開示は、患者の眼の後眼房に埋め込むために構成されたリングと、リングの周面に近接した開口19からリングの内壁に近接した開口19に連通する通路18とを備えた眼用インプラントを提供する。様々な態様において、本明細書では、対象の眼の状態を治療する方法が提供される。前記方法は、対象の眼の水晶体嚢に埋め込むために構成されたリングと、リングの周面に近接した開口19からリングの内壁に近接した開口19に連通する通路18とを備えた眼用インプラントを準備することと、通路により、リングの内壁からリングの周面に近接する開口19への房水の流れが開口19に対して可能となって治療薬が中央開口部から水晶体嚢の赤道へ流れることができるように、リングを眼の水晶体嚢に埋め込むこととを含む。場合によっては、このような方法は、リングに固定された薬物送達構造物をさらに含むことができ、薬物送達構造物はビマトプロストを含有し、本方法は、眼用インプラントを埋め込んで緑内障を治療することを伴う。場合によっては、このような方法は、リングに固定された薬物送達構造物をさらに含むことができ、薬物送達構造物は、水晶体嚢の赤道及び後嚢における水晶体内皮細胞(lens endothelial cell)の増殖及び活性を抑制するように機能し得る治療薬を含有し、本方法は、眼用インプラントを埋め込んで水晶体嚢の赤道及び後嚢における水晶体内皮細胞の増殖及び活性を抑制することを伴う。
【0049】
本明細書に挙げたすべての刊行物、特許、及び特許出願は、個々の刊行物、特許、又は特許出願が参照により援用されると具体的に及び個々に示されている場合と同じ程度に、参照により本明細書に援用される。
【0050】
本発明の新規な特徴は、添付される特許請求の範囲に具体的に示されている。本発明の原理が利用される例示的な実施形態を示す以下の詳細な説明及び添付図面を参照することによって、本開示の特徴及び利点についてのよりよい理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図3】
図2に示すように眼の毛様溝で使用するために構成された薬物送達プラットフォームを示す図。
【
図5】
図2及び
図3の薬物送達プラットフォームの前方斜視図。
【
図6】ハプティック先端部に後方でアクセスできるように構成された薬物送達システムを示す。
【
図7】ハプティック先端部に後方でアクセスできるように構成された薬物送達システムを示す。
【
図8】捕らえられたハプティック先端部の特徴を有して構成された毛様溝(sulcus)IOLを示す図。
【
図9】
図6~
図8のデバイスの貫通穴の前方開口を示す側面図。
【
図11】1つ以上の房水流通穴を備えるとともに眼の毛様溝で使用するために構成されたインプラントと組み合わせた薬物送達プラットフォームを示す図。
【
図14】房水開口部によって変更された毛様溝(sulcus)レンズを示す図。
【
図15】本開示の実施形態による、眼の毛様溝で使用するために構成された薬物送達毛様溝インプラントを示す図。
【
図16】本開示の実施形態による、圧縮形態にある
図15に示した薬物送達毛様溝インプラントを示す図。
【
図17】本開示の実施形態による、付勢部材が薬物送達構造物と一体的に形成された薬物送達プラットフォームを示す図。
【
図18】本開示の実施形態による、付勢部材が薬物送達構造物と一体的に形成された薬物送達プラットフォームを
図17の圧縮形態として示す図。
【
図19】本開示の実施形態による、単一の弓形薬物送達構造物を有した薬物送達プラットフォームを示す図。
【
図20】本開示の実施形態による、弾性的に拡張可能及び圧縮可能なワイヤーフレームを有した薬物送達デバイスを備える薬物送達プラットフォームを示す図。
【
図21】本開示の実施形態による、弾性的に拡張可能及び圧縮可能なリングを有した薬物送達デバイスを備える薬物送達プラットフォームを示す図。
【
図22】本開示の実施形態による、弾性的に拡張可能及び圧縮可能なリングを有した薬物送達デバイスを備える薬物送達プラットフォームを示し、
図21のデバイスの圧縮されたものを示す図。
【
図23】本開示の実施形態による、閉ループハプティック及びA字形ハプティックを備える薬物送達プラットフォームを示す図。
【
図24】本開示の実施形態による、閉ループハプティック及び保持特徴部を備える薬物送達プラットフォームを示す図。
【
図25】本開示の実施形態による、閉ループハプティック及びA字形ハプティックを備える薬物送達プラットフォームを示す図。
【
図26】本開示の実施形態による、圧縮可能な部分リングに取り付けられた複数の閉ループハプティックを備える薬物送達プラットフォームを示す図。
【
図27】本開示の実施形態による、付勢部材が薬物送達構造物と一体的に形成された薬物送達プラットフォームを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本開示は、対象の眼に埋め込むための眼内デバイスを提供する。本明細書で提供されるデバイスは、対象の眼の様々な領域に埋め込むことができる。様々な実施形態において、本明細書では、本明細書に記載されるような対象の眼の毛様溝に埋め込むための眼内デバイスが提供される。
【0053】
本明細書で使用される場合、別段の定義がない限り、「眼科用デバイス」、「眼科用インプラント」、「眼内デバイス」などの用語は、交換可能に使用することができ、概して、対象の(例えばヒトの)眼の1つ以上の特定の場所に埋め込むことができるデバイスを指し得る。
【0054】
図1及び
図2は、対象の眼における眼内薬物送達システム又は他の眼用インプラントの配置及び使用を示す。眼1は、水晶体2及び水晶体嚢3と、角膜5及び虹彩6並びに角膜と虹彩との間の空間を満たす房水を含む前眼房4と、虹彩と水晶体嚢との間の後眼房7とを備える。後腔/硝子体8は、水晶体と網膜9との間の大きな空間である。眼の天然水晶体2は、光軸10によって特徴付けられる。毛様溝11は、虹彩6の後面と毛様体12の前面との間に位置する後眼房を取り囲む環状空間である。(眼内インプラントの以下の記載において、後及び前という用語は、眼の解剖学的構造に関して用いられ、眼の解剖学的構造では角膜が前であり、網膜は後である)。房水は、水晶体及び角膜に栄養を与え、眼内の圧力を維持する。房水は、毛様溝において、水晶体嚢/水晶体と虹彩との間を内方に流れ、次に虹彩の開口部を通って前方に流れて前眼房(虹彩及び水晶体と角膜との間の開放空間)に流れ込み、次に虹彩と角膜との間で半径方向外方に流れ、そこで強膜内の構造物(具体的には、強膜内のシュレム管及び静脈(図示せず))を通って排出される。
【0055】
図2は、眼における毛様溝インプラント/薬物送達プラットフォーム13の配置を示す。毛様溝インプラント/薬物送達プラットフォームが埋め込まれる多くの場合において、対象は、天然水晶体を除去した後に水晶体嚢内に眼内レンズ14を既に設置している場合がある。この例では、毛様溝インプラント/薬物送達プラットフォームは、リング15の形式で提供され、単独で又は別のインプラントとともに、後眼房7及び毛様溝11に埋め込まれる。
図2に示すように、毛様溝インプラント/薬物送達プラットフォーム13は、後眼房7の毛様溝において、虹彩6の後方、且つ毛様体12の前方に、又はより一般的には水晶体前嚢の前方に、配置される。毛様溝インプラント/薬物送達プラットフォーム13は、毛様溝インプラント/薬物送達プラットフォーム13に固定されたハプティック16で適所に保たれ、ハプティック16は、毛様溝の組織に係合し、毛様溝インプラント/薬物送達プラットフォーム13を眼の光軸10に対して中心に保つように構成されている。ハプティックは、毛様溝の様々な直径に適応し、埋め込み後にハプティックが毛様溝の辺縁上の組織と接するまで拡張するように弾性的に外方に付勢される。毛様溝は、以下の寸法、すなわち、45度で11.55+/-0.38mm、90度で11.99±0.36mm、135度で11.54±0.36mm、及び180度で11.32±0.40mmを有することができ、垂直径は水平径より大きいことがあり、約0.67±0.26mm(範囲、0.36~1.13mm)の垂直径と水平径との平均差を有する。
【0056】
I.眼内インプラント
本明細書では、本明細書に記載されるように1つ以上のU-ループハプティックを備えることができる眼内インプラントが提供される。いくつかの実施形態において、このような眼内インプラントは、1つ以上のU-ループハプティックを備えた(例えば対象の眼の毛様溝に埋め込むための)毛様溝インプラントである。実施形態において、
図3は、
図2の毛様溝インプラント/薬物送達プラットフォームの前面図である。薬物送達プラットフォームは、平面の前面15A及び後面15P(例えば
図4に示すようなもの)、薬物送達構造物27、並びに中央開口部17を有した、ワッシャのように平坦であり得るリング15を備える。他の実施形態では、前面15A及び後面15Pの各々は、独立して平面でなくてもよく、端部における鋭角的な半径の代わりに、丸みを帯びた頂部を備えてもよい。リング15は、好ましくは(例えば、この実施形態では)リングの前面及びリングの後面のどちらにも連通することなく、リングの前面とリングの後面との間において、リングの外周の開口19からリングの内面及びリングの内壁の開口20の間を連通する、半径方向に向いた貫通穴18を備える。いくつかの実施形態では、半径方向に向いた貫通穴18は、前部カバーのみを有した(後面のない)開口によって置き換えられるであろう。この実施形態では、後面は、水晶体嚢の前面に密着して位置し、ハプティックの遠位先端部を保持する貫通穴を形成する。
【0057】
ハプティックの基部16B(「第1の端部」)は、ハプティックをリングに機械的に固定すること、ハプティックをリングとオーバーモールド成形すること、ハプティックをリングに融着すること、熱収縮取付けによりハプティックをリングに取り付けること、接着剤によりハプティックをリングに取り付けること、を含む任意の適当な手法で、又はそれがリングに対して動くことができないような任意の他の適当な取付けによって、リングに固定されている。ハプティック16は、ループ部分16Lを備え、ハプティック基部16Bから離れた「自由端」又は先端部16T(「第2の端部」又は「末端部」)を有する。ループ部分は、リングとのハプティック基部16Bの接合部から半径方向に延び、湾曲してリングへ戻り、そこでハプティック先端部16Tは、貫通穴18に進入し、好ましくは、先端部が中央開口部17内に露出するように貫通穴を通過する。U-ループハプティック又は馬蹄形ハプティックは、ループ部分がリングへ戻って貫通穴に進入するのに(及び、好ましくは、貫通穴を通って中央開口部内に延びるのに)十分な弧に沿って延びるように、ハプティックが基部から弧を描くという点で、一般的なC-ループハプティック及びJ-ループハプティックと異なっており、先端部がリングに動かないように固定されていないという点でプレートハプティック又はループハプティックと異なっている。
【0058】
先端部は、好ましくは、シンスキーフック(Sinskey hook)、マイクロ把持鉗子又は他の器具と係合し易いように構成され得る。示したように、先端部は、アイレットなどの把持特徴部21で構成されるが、ピンホール(シンスキーフックを受け入れる大きさに形成される)、任意のセレーション、フランジ、かかり、レンチフラット、又はマイクロ把持鉗子によって把持され得る他の平面などの他の形態が用いられてもよい。他の適当な把持器具が利用可能な場合、又は以下に記載するような操作が想定されない場合には、先端部は、把持特徴部を有さずに、鈍端で終了してもよい。
【0059】
先端部16T及び先端部の近位にある短い部分を含むハプティックの遠位端部16dは、半径方向貫通穴18内に緩く配置されるように構成されており、それに相応して、半径方向貫通穴は、先端部16Tを含むハプティックの遠位端部16dを緩く受容するように構成されている。ハプティック遠位端部、特に半径方向貫通穴内に配置されたその部分は、遠位端部16dが貫通穴内で摺動可能となるような、前後方向寸法(
図4の矢印22)、半径方向貫通穴の前後方向寸法(
図4の矢印24)に関連した大きさに形成されたリングの周縁(
図4の矢印23)に対応する寸法、及び貫通穴の周方向の広さ(
図3の矢印25)に対応する寸法を有し、遠位端部16dは貫通穴内で半径方向(又は長手方向)に平行移動し得る。把持特徴部21を一方又は他方の寸法(
図4の矢印26)で半径方向貫通穴の対応する寸法よりも大きくして、遠位先端部が半径方向貫通穴から脱出し、リングに固定されなくなるのを防止することができる(把持特徴部は、好ましくは、ハプティックが貫通穴から半径方向外方に抜けるのを防止する機械的な停止部として作用する)。図示したアイレットは、例えば、貫通穴の矢印25で識別される周方向の幅よりも大きな直径を有する。この構成は、毛様溝の辺縁によってハプティックループに印加される半径方向内向きの力の軽減をもたらす。これらの力は、ハプティックの先端部16T及び遠位端部16dを貫通穴内に、及び中央開口部に向かって/中央開口部内に押し込むように作用して、他の場合にはリングを変形させる可能性があるリングへの半径方向内向きの力の移行を回避する。ハプティックに対する半径方向内向きの力の結果は、仮想線で
図3に示されており、遠位端部16d及び把持特徴部21が半径方向内方に変位している。また、遠位先端部が貫通穴内に拘束されているため、先端部は、C-ループ又はJ-ループハプティックのように、埋め込み又は除去の間に解剖学的構造又は操作により印加される力によって虹彩又は毛様体に押し込まれることがなく、そのため先端部による外傷の危険性が最小限に抑えられるか、又は排除される。また、以下に記載するように、把持特徴部は、ハプティックを毛様溝から引き抜き、ハプティックを虹彩及び毛様体から外すために使用することができ、器具を毛様溝に挿入し、器具先端部をこれらの構造物上に通過させる必要がない。
【0060】
したがって、器具を毛様溝又は後眼房に挿入する必要がなく、ハプティックは、虹彩又は周囲組織に係合することなく、毛様溝位置から外され、より容易に除去するために載置平面を越えて持ち上げられ、したがって付随する組織に対する外傷を最小限に抑えることができる。これらのハプティックループはまた、ハプティックが(デバイス全体の幾何学的中心に向かって)寄せられ、次いでリングが適切に配置されたときに解放され(毛様溝内に開くことが許容され)得るように、最初の埋め込み中にデバイスの配置を支援し得る。ハプティックの拘束された性質により、眼に挿入するためにデバイスを折り畳むことも容易となり、その再現性も高くなるであろう。これは、ハプティックが既知の空間及び軸線において拘束されるためであり、したがってデバイスをインジェクタ内に圧縮してから眼内に射出する又は置くことがより容易となるであろう。
【0061】
図4は、厳密に合致し得る貫通穴の高さ及びハプティックの前後方向寸法を示す、
図2及び
図3の薬物送達プラットフォームの側面図である。また、外周面15Cも示されている。ハプティック先端部及び把持特徴部は、貫通穴の前後方向寸法より大きな前後方向寸法を有し得る。この側面図では、薬物送達構造物27は、リング15の後面15P上に示されている。前面15Aは、この図解では実質的に平面であり、これは虹彩の刺激を最小限に抑えるために好ましい。前面は、滑らかに湾曲し得るが、他の図に示す薬物送達デバイス及び/又は区画室などの突出部を有さない場合がある。
図5は、
図4のデバイスの前方斜視図である。薬物送達構造物はまた、リングの前面にある凹部に配置され、平らな前面又は滑らかに湾曲した前面に沿う表面で構成され、薬物送達構造物の前面がリングの前面を越えて前方に延在せずに凹部内に収まるように構成され得る。リングの平面に対するハプティックの傾斜角又はボールト角(vault angle)の角度αは、ハプティックの基部から前方へ、好ましくは約0°~約20°、約0°~約10°、又は0°~約5°である。
【0062】
薬物送達構造物は、
図3に示すように配置され得るが、リングのまわりに、例えば、半径方向に整列して、若しくはハプティック基部及びハプティック開口部に近接して、配置されてもよいし、又はリングの後面の全周に(
図10)配置されてもよい。薬物送達構造物はまた、非常に薄いシリコーンの安定性/剛性を高める構造要素としても機能することができ、シリコーンリングが開いた状態を保つ能力を高める(すなわち、その拘束されていない円形形態からの変形を最小限に抑え、埋め込み後の「楕円化」を回避する、又は最小限に抑える)ように配置され得る。ハプティックの基部はまた、シリコーンの本体内にさらに延在してリングの安定性をさらに高めてもよい。
図3に示すハプティックの基部は、リング内に延び、リングの内部に周方向に延在して、リングを安定させ得る。ハプティックは、好ましくはシリコーンで形成され得るリングより剛性の高い材料で構成された場合、リング内部に延在させると、組み立てたハプティック及びリングの剛性を増大させるのに役立つ。
【0063】
後面15Pにおいて、薬物送達プラットフォームは、1つ以上の薬物送達構造物27を備え得る。薬物送達構造物は後面に直接固定されてもよいし、又は薬物送達構造物は区画室に配置されてもよい。
【0064】
リング上に設置するために構成された薬物送達構造物は、治療薬又はマトリックス中に配置された治療薬を含有するブロック、平板、ウェーハ等の形式の薬物デポー又は薬物塊として提供されてもよく、侵食性治療薬、又は薬物溶出構造物を形成するマトリックス中の治療薬を含有してもよい。
【0065】
図6は、ハプティック先端部に後方でアクセスできるように構成された薬物送達システムを示す。
図7及び
図8は、ハプティック先端部にアクセスできるように構成された薬物送達システムを示す。中央開口部を、例えばレンズ又は他の構成要素で塞ぐことが所望される場合には、ハプティック先端部及び貫通穴は、
図6及び
図7に従って構成することができ、これらは、眼の周囲組織によってハプティックに印加される半径方向の圧縮力の移行を最小限に抑え、埋め込み及び除去の間にハプティック先端部による虹彩に対する外傷の可能性を排除するという利点と、ハプティックを毛様溝から解放するためにハプティック先端部を把持する機能性とを保持する。
図6において、貫通穴は、リングの前面15Aの開口19からリングの後面15Aの後方開口32Pに連通している。リングは、リング内に配置された薬物送達構造物27を含むことができる。リングは、(ハプティックの遠位端部16dの)ハプティック先端部16Tが延在することができる穴32を含む。把持特徴部21は、
図6に示すように、後方開口32Pを越えて後方且つ半径方向内方に延在してもよいし、又は把持特徴部21は、
図7に示すように、前方開口32Aの凹部においてリングの前面より完全に下方に配置されてもよい。
図7では、ハプティック先端部16T及び把持特徴部21は、完全に凹部内、且つ完全に前面の後方に配置されている(つまり、リングの前面の前方に突出していない(凹部の底はリングの前面の一部と見なされない))。ハプティックは、ループ形態16Lとすることができる。
図7に示すように、中央開口部は、レンズ部品33を備えて、埋め込み型コラマーレンズ(implantable collamer lens:ICL)などの毛様溝に埋め込むためのレンズを形成し得るか、又は対象の水晶体嚢に埋め込むためのIOLを形成し得る。
【0066】
図8は、レンズ34とIOLレンズを支持するために使用される任意選択の最小限のリング15とを有した、IOLにおいて埋め込み式のハプティック先端部を備える薬物送達プラットフォームの実施形態の特徴を示す。この図では、ハプティック16のハプティック遠位端部16d及びハプティック先端部16T、並びにハプティック基部16Bに位置するものは、レンズ若しくはフレームの周囲又はレンズの周縁付近のレンズ後面からレンズの前面38の開口及び凹部37まで後方開口の半径方向内方に連通する貫通穴36に配置され得、ハプティック先端部は、完全に凹部37内、且つ完全に前面の後方に配置されており(つまり、レンズの前面光学面の前方に突出していない(凹部の底はレンズの前面光学面の一部と見なされない))、そのため、ハプティック先端部は、虹彩に接触することはないが、依然としてフック又は把持鉗子で把持するためにアクセスすることができ、周囲組織によってハプティックに印加される圧縮力を緩和するために依然として貫通穴内で摺動可能である。
図9は、
図6、
図7及び
図8に関して記載したようにリング又はレンズの前面の開口で終了する貫通穴を示す、薬物送達プラットフォーム又は毛様溝IOLの側面図である。
図8のデバイスと同様に、このデバイスは対象の毛様溝又は水晶体嚢に埋め込まれ得るIOLを備える。
【0067】
図10は、上記の
図2~
図9のデバイスに適用され得る変形例を示す。貫通穴の2つの異なる形態が
図10に示されている。ハプティック43の各端部41,42及びハプティック46の各端部44,45は、リングの外周の開口51からリングの内面に連通する又はリングの内面に向かって通じる、弦方向に向いた(すなわちリングの内側又は外側の円の割線に沿った)穴47,48,49,50内に摺動可能に配置されている。ハプティック43(図解中の上側のハプティック)について、穴52,53は、リングの前面及びリングの後面のどちらかと連通したり、又は
図7でのようにリングの後面の凹部で終了したりすることなく、リングの前面とリングの後面との間でリングの本体にある細長い空所54,55と連通する止まり穴である。細長い空所は、細長い空所内でのハプティック遠位先端部16Tの平行移動を可能にする大きさ及び寸法に形成されており、一方、各遠位先端部及び進入口は、先端部を空所から引き抜くことができないように構成されている。ハプティック46(図解の下側のハプティック)について、穴49,50は、リングの内壁の開口56,57と連通する貫通穴であり、各穴の内腔は、好ましくは(この実施形態では)リングの前面及びリングの後面のどちらにも連通することなく、リングの前面とリングの後面との間に配置されている。
【0068】
この形態では、ハプティックの両端部44,45は、前図と同様にハプティックが毛様溝の周囲組織を損傷しにくくなるように、周囲組織によって内方に押され得る。また、先端部が内部で平行移動する弦方向に向いた穴は、遠位先端部に対してより長い行程を与える。遠位先端部が中央開口部内に延在する形態について、遠位先端部の行程は、リングの内壁付近にとどまっており、(
図3の半径方向に向いた貫通穴と比べて)中央開口部内にそれほど遠くまで突出していない。
【0069】
図10はまた、リング15の後面の全周にわたって延在する薬物送達構造物58の形態を示しており、この薬物送達構造物58は、
図3~
図9、
図11~
図14及び
図21~
図27に示すデバイスにも適用され得る。他の実施形態では、薬物送達構造物58はリング15の前面の全周にわたって延在し、この薬物送達構造物58は、
図3~
図9、
図11~
図14及び
図21~
図27に示すデバイスにも適用され得る。
【0070】
上述した各デバイスでは、インプラントの除去を容易にするように露出した把持特徴部の利点とともに、又はそのような利点を伴わずに、ハプティック遠位端部を貫通穴内に捕らえる利点を得ることができる。ハプティック端部16d,41,42,44,45の残部より大きな断面を有するハプティック遠位先端部16Tは、埋め込み中に第2のハプティック端部が完全に引き出されるのを阻止又は防止するためのロック手段として機能し得る。穴18,49,50,52,53は、ハプティック遠位先端部16Tよりも小さな断面を備えた内腔を有し、そのため遠位先端部及び遠位端部は、内方に摺動したり、外方に広がったりして、毛様溝の組織により印加される力に適応することができるが、それらが穴から脱出できないように穴内に拘束され続ける。
【0071】
さらに本明細書では、本明細書に記載されるように1つ以上の房水流通穴を備えることができる眼内インプラントが提供される。いくつかの実施形態において、そのようなデバイスは毛様溝インプラントである。
図11及び
図12は、毛様溝インプラント/薬物送達プラットフォームの前面図である。インプラントは、1つ以上の房水流通穴18を備えることができ、眼の毛様溝で使用するために構成され得る。毛様溝インプラント/薬物送達プラットフォームは、平面の前面15A及び後面15P並びに中央開口部17を有した、好ましくはワッシャのように平坦なリング15を備える。薬物送達構造物は、リング27内に配置されて示されている。任意の適当な形態のハプティックは、薬物送達プラットフォームの外周縁に固定され得る。リング15は、いくつかの房水貫通穴18を備え、房水貫通穴18は、リングの外周若しくは外壁に近接した又はリングの外周若しくは外壁における開口19から、リングの内面又は内壁の間、及びリングの内壁に近接した、又は設置後に前面の内周縁ゾーンが虹彩によって閉塞されない場合には内周縁の近くのリングの前面に近接した、開口20の間を連通する。インプラントが毛様溝レンズ又はICLを備える場合には、内側開口20はまた、レンズの外周領域(視線の外側)においてレンズの前面に開口してもよい。リングは、平坦な外壁、平坦な内壁、並びに平坦な前面及び後面によって方形の半径方向断面を有し得る(方形又は矩形トロイド)が、1つ以上の表面が丸みを帯びていてもよく、又はリングが円形又は楕円形の断面を有してもよい(トーラス)。
【0072】
図12は、外側と内側との間の貫通穴18を示す、
図11の薬物送達プラットフォームの前方斜視図である。貫通穴は半径方向に向いた貫通穴として示されているが、これらの貫通穴が毛様溝から虹彩の開口に連通して毛様溝からの及び前眼房への房水の流れを可能にするのであれば、貫通穴は厳密に半径方向に向いている必要はない。貫通穴は、リングの割線に沿って弦方向に整列していてもよく、また貫通穴は、直線状である必要はなく、リングの外側及び毛様溝(埋め込み時)からリングの内側及び瞳孔(埋め込み時)と連通するいかなる形式の流体通路を備えてもよい。流体通路は、接続した開細孔の網状組織を形成するように構成された網状の連続気泡発泡体を備えていてもよく、この場合、リングは、網状の連続気泡発泡体で部分的に又は全体的に構成される。流体通路はまた、リングのすべて又は一部を構成する、ウィッキングシリコーン、メッシュ材料若しくは繊維状材料、又は親水性ポリマー(ヒドロゲル)等のようなウィッキング材料によって提供されてもよい。
【0073】
薬物送達プラットフォームとして意図されたインプラントについて、薬物送達構造物27は、
図12及び
図13に示すように、リングの後面に配置され得る。
図12に示すリングは、代わりに、
図13に関連して、複数のウェブ部材又は壁60によって連結された後方リング15P及び前方リング15Aとして記述され得る。複数のウェブ部材又は壁60は、複数のチャネル61を分離しており、これらのチャネル61は、チャネルの両側のウェビングと、チャネルの前方境界及び後方境界上の前方リング及び後方リングとによって囲まれている。
【0074】
図14は、レンズの外周面又は壁から通じている房水貫通穴18によって変更された毛様溝レンズ62を示す。貫通穴は、レンズの外縁又は外周面の開口19からレンズ自体の前面上の前方開口20に連通している。前方開口20は、虹彩によって覆われると予想される前面の外側領域64とは対照的に、しかし対象によって知覚可能な光軸及び視野65の十分外側に存在することが好ましい、埋め込み後に虹彩が拡張及び収縮するときに虹彩によって覆われない前面の内側表面領域63に好ましくは位置する。先の図と同様に、流体通路は、図示したように貫通穴を備えてもよいし、又は内側表面領域63のすべて若しくは一部を構成する網状の連続気泡発泡体、ウィッキング材料、メッシュ材料若しくは繊維状材料、親水性ポリマー(ヒドロゲル)を備えてもよい。
【0075】
図11~
図14に関して記載される房水流通特徴部は、薬物デポーを支持するための単なるリング若しくは足場、人工虹彩、オクルーダーパドルを有したリング、眼内圧力センサリング、光学マスク等、又は
図14によって示すように、後眼房及び毛様溝若しくは水晶体嚢に埋め込むために構成されたIOLを含み得る他の眼用インプラントに組み込まれ得る。
【0076】
レンズの前面に出口を有した貫通穴の利用は、インプラントの中央領域がオクルーダー又は光学マスクなどのデバイスによって占有される他の毛様溝インプラントに適用され得る。
【0077】
薬物送達構造物は、
図11に示すように配置され得るが、リングのまわりに、例えば、半径方向に整列して、若しくはハプティック基部及びハプティック開口部に近接して、配置されてもよいし、又はリングの後面の全周に配置されてもよい。薬物送達構造物はまた、非常に薄いシリコーンの安定性/剛性を高める構造要素としても機能することができ、シリコーンリングがその円形形状を維持する能力を高める(すなわち、その拘束されていない円形形態からの変形を最小限に抑え、埋め込み後の「楕円化」を回避する、又は最小限に抑える)ように配置され得る。
【0078】
図15は、
図2に概して例示したような毛様溝インプラント/薬物送達プラットフォームの前面図である。このような実施形態の毛様溝インプラント及び/又は薬物送達プラットフォームは、少なくとも1つの、好ましくは2つ以上の薬物送達構造物70を備えることができ、薬物送達構造物70は、平面の前面70A及び後面(
図15には図示せず)を有した、好ましくは弓形である。薬物送達構造物70は、付勢部材71によって接続されて、薬物送達構造物及び付勢部材の内面によって画定される中央開口部17を残す。薬物送達構造物の外側輪郭70Cは、好ましくは弓形であり、より好ましくは円形であり、外側輪郭70Cが毛様体及び毛様体突起などの毛様溝の内周領域に対して付勢されるときにそれが配置される眼の毛様溝の内側の湾曲/円周に合致するような大きさに形成されている。付勢部材は、光学的視野の外で虹彩の下に適合するように構成されている。
【0079】
図16は、圧縮形態にある
図15の薬物送達プラットフォームを示す。デバイスは
図16に示す圧縮された小径形態に向かって圧縮され得るか、又は
図15の開いたより大きな拘束されていない大径形態に向かって拡張し得る。デバイスは、眼内に送達するためにインジェクタ内に圧縮され折り畳まれ、眼内に解放され、外側輪郭が毛様溝に接するまで弾性的に拡張することが許容されるか、又は(デバイスの初期状態に応じて)圧縮されて薬物送達構造物70を毛様溝内に適合させ得る。
【0080】
付勢部材は、様々な形式で提供され得る。一例では、
図15及び
図16に示すように、各付勢部材は、示した2つの薬物送達構造物を接続する個別の圧縮ばねを含む。
図17は、付勢部材が薬物送達構造物と一体的に形成された薬物送達プラットフォーム72を示す。このデバイスにおける付勢部材は、薬物デポー領域74同士の間に配置されたデバイスの外方拡張領域73を備える(しかしながら、デバイス全体が、治療薬を溶出する又は他の方法で送達するように構成された薬物デポーを備えてもよい)。デバイス内には、中央開口部17が形成されている。拡張領域は、切欠き75によって画定された一体蝶番(living hinge)ジョイントとして構成され、デバイスを
図17に示す大径の拘束されていない形態に開かせるように弾性的に付勢される。この形態では、蝶番ジョイントは、薬物デポー領域を互いから離して付勢するように弾性的に開いているが、
図18に示す閉じた小径の拘束された形態に弾性的に圧縮可能である。デバイスは、眼内に送達するためにインジェクタ内に圧縮され折り畳まれ、眼内に解放され、外側輪郭が毛様溝に接するまで弾性的に拡張することが許容されるか、又は(デバイスの初期状態に応じて)圧縮されて、薬物デポー領域74を毛様溝内に適合させ得る。
【0081】
図18は、圧縮形態にある
図17の薬物送達プラットフォームを示す。デバイスは、
図18に示す圧縮された小径形態に向かって圧縮され得るか、又は
図17の開いたより大きな拘束されていない大径形態に向かって拡張し得る。デバイスは、眼内に送達するためにインジェクタ内に圧縮され折り畳まれ、眼内に解放され、外側輪郭が毛様溝に接するまで弾性的に拡張することが許容されるか、又は(例えば、デバイスの初期状態に応じて)圧縮されて薬物デポー領域74を毛様溝内に適合させ得る。
【0082】
いくつかの実施形態において、
図15~
図18の弓形薬物送達構造物70は毛様溝の赤道又は外側辺縁に係合するように構成されており、一方、付勢部材71は、弓形薬物送達構造物70を付勢し、(
図2に示すように)毛様溝インプラント/薬物送達プラットフォームを眼の光軸10に対して中心に維持するように構成されている。弓形薬物送達構造物70は、それらが房水の流路を実質的に塞がないように周方向の範囲を制限され得る。付勢部材は、この場合も付勢部材が房水の流路を実質的に塞がないように、しかし房水が毛様溝から付勢部材を通過して前眼房に流れ込むことができるように、好ましくは前後方向で薄型のものである。
【0083】
本開示のデバイス、例えば
図15~
図18に示したものは、2つの薬物送達構造物又は薬物デポー領域を備えた対称形とすることができるが、これらのデバイスは薬物送達構造物又は薬物デポー領域を非対称に分布させて構成されてもよく、またデバイスは1つ又はいくつかの薬物送達構造物若しくは薬物デポー領域で構成されてもよい。
【0084】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態(例えば
図15~
図18に示すようなもの)は、1つ以上の外方に付勢された薬物デポーを備える薬物送達眼内インプラントである。場合によっては、このような薬物送達眼内インプラントは、対象の(例えばヒトの)眼の毛様溝又は水晶体嚢に埋め込むための薬物送達毛様溝インプラントである。
【0085】
図19は、例えば
図15の薬物送達構造物に類似した、弓形の外輪郭70Cを備えた単一の弓形薬物送達構造物70のみを有した薬物送達プラットフォームを示す。弓形コネクタ76(これ自体が弾力性を有し、付勢部材の一部として機能し得る)によって連結された付勢部材71は、単一の弓形薬物送達構造物70を弓形コネクタ76から離れるように弾性的に付勢するように動作可能である。弓形薬物送達構造物70は、付勢部材71及び弓形コネクタ76と結合して内側開口部17を形成する。デバイスはまた水晶体嚢に埋め込まれてもよく、その場合には、図の薬物送達プラットフォームは、水晶体嚢に挿入され、薬物送達構造物及び適用可能な場合には付勢部材71又は弓形コネクタ76が水晶体嚢の内側に突き当たるまで、水晶体嚢内で弾性的に拡張することが許容される。
【0086】
図20は、弾性的に拡張可能及び圧縮可能なワイヤーフレーム80を有した薬物送達デバイスを備える薬物送達プラットフォームを示しており、単一の薬物送達デバイスは、支柱83によって連結されたパネル81,82を備え、パネル及び支柱の間に開口部を有し、この開口部内に圧縮可能なワイヤーフレームの一部が配置されている。ワイヤーフレームは、例えば圧縮可能なポリマー又は圧縮可能な金属などの任意の適当な可撓性材料を含むことができる。
【0087】
図21及び
図22は、弾性的に拡張可能及び圧縮可能なリング84を有した薬物送達デバイスを備える薬物送達プラットフォームを示しており、薬物送達構造物27はリングに固定されている。前図のデバイスと同様に、デバイスは、眼内に送達するためにインジェクタ内に圧縮され折り畳まれ、眼内に解放され、外側輪郭が毛様溝に接するまで弾性的に拡張することが許容されるか、又は(デバイスの初期状態に応じて)圧縮されて薬物送達構造物27(例えば送達デポー)を毛様溝内に適合させ得る。圧縮可能なリング84は薬物送達デポーとして形成されてもよいが、特定の実施形態では、その目的は、薬物送達構造物27(例えば薬物デポー)を外方に付勢することである。
図22は、デバイスが卵形の(ovular)形態をとるような、
図21に示すデバイスの圧縮を示す。
【0088】
図23~
図26は、毛様溝又は水晶体嚢の内部におけるデバイスの最適な適合を可能にする一方で、眼の他の組織との望ましくない相互作用を最小限にする又は有さないようにする可撓性形態を有した薬物送達プラットフォームの付加的な形態を示す。
図23~
図25の個々の特徴はまた、
図3~
図22、
図26、及び
図27のうちのいずれに適用されてもよい。薬物送達プラットフォームは、平面の前面15A及び平面の後面(
図23~
図26には図示せず)並びに中央開口部17を有した、ワッシャのように平坦であり得るリング(
図23~
図25に示すようなもの)又は部分リング(
図26に示すようなもの)15を備えることができる。他の実施形態では、前面15A又は後面は、平面でなくてもよく、丸みを帯びた頂部又は他の適当な形態を備えてもよい。
図23では、閉ループハプティック16Cは、ハプティック基部16Bで取り付けられている。
図26では、2つの閉ループハプティック16Cがハプティック基部16Bで取り付けられている。
【0089】
閉ループハプティック16Cは、砂時計形態(
図23、
図24及び
図25の上側のハプティックと同様)又は対象の眼に埋め込まれたときの薬物送達構造物の安定化及び眼組織に対する損傷からの保護を促進する他の適当な形態を有することができる。薬物送達デバイスは、単一の閉ループハプティック又は複数の閉ループハプティックを有することができる。他の実施形態では、付加的なハプティックをリングに取り付けることもできる。
図23及び
図24に示すように、第2の組のハプティック(
図23の参照符号16A及び
図24の参照符号16U)をハプティック基部16Bでリング15に取り付けることができる。これらの付加的なハプティックは、U字形の形態(
図24の下側のハプティックと同様)、A字形の形態(
図23の下側のハプティックと同様)、又は
図3~
図10に示すような他の適当な形態を含む、様々な形式をとることができる。閉ループハプティック及び他のハプティック16A,16Uの各々は、ハプティック基部16Bで、ハプティックをリングに機械的に固定すること、ハプティックをリングとオーバーモールド成形すること、ハプティックをリングに融着すること、熱収縮取付けによりハプティックをリングに取り付けること、接着剤によりハプティックをリングに取り付けること、を含む任意の適当な方法で、又は任意の他の適当な取付けによって、取り付けられ得る。代わりに、閉ループハプティック16C及び/又は他のハプティック16A,16Uはまた、
図3~
図10について記載される方法のいずれかに従って、リング15に可撓的に接続されてもよい。
【0090】
図24に示すように、ハプティック16Uはまた、ハプティック16Uがデバイスの中央開口部17内に延びて、把持特徴部85を形成するように、リング15の貫通穴又はチャネル84を通過することができる。
【0091】
図25に示すように、薬物送達デバイスは、1つ以上の保持特徴部15Dを形成するためにリング15の延長部を備えることができる。保持特徴部は、リングと同一の又は異なる材料を含むことができる。保持特徴部15Dは、リングと連続していてもよいし、又は任意の適当な手法でリングに取り付けられていてもよい。
【0092】
図26の部分リング15は、力の印加下で圧縮可能である。デバイスに対するそのような圧縮の結果は、
図26に仮想線で示す。
本開示の他のデバイスと同様に、
図23~
図26のデバイスは薬物送達構造物を備えることができ、薬物送達構造物は、前面15Aや後面に配置されるか、リングに組み込まれることが可能であり、又はデバイス内の独立した区画室に配置されてもよい。
【0093】
図27のデバイスは、中央開口部17を形成する可撓性で圧縮可能なリング構造物86を備える。デバイスはまた、1つ以上の薬物送達構造物27(リング構造物基部87でリング構造物に付着)、リング構造物の安定化を促進するループ71a、及び薬物送達構造物27の間に配置された付勢部材71も含んでいる。リング構造物は、本開示に記載されるハプティックのいずれかに見られるものと同一の材料で構成され得る。
【0094】
本開示の様々な実施形態において、ハプティック16L,16,16C,16A,16Uは、ハプティックをリング又は部分リングに機械的に固定すること、ハプティックをリング又は部分リングとオーバーモールド成形すること、ハプティックをリング又は部分リングに融着すること、熱収縮取付けによりハプティックをリング又は部分リングに取り付けること、接着剤によりハプティックをリング又は部分リングに取り付けることによって、又は任意の他の適当な取付けによって、リング又は部分リング15,83,86に接続される。このような取付けは、
図3~
図9及び
図23~
図26に示すものを含む。
【0095】
本開示のハプティック16L,16,16C,16A,16U,43,46に適当な材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリプロピレン(PP)、及びポリエーテルスルホン(PES)、又はこれらの任意の組み合わせなどのポリマー材料を含む生体適合性材料が挙げられる。本開示のリング又は部分リング15,83,86に適当な材料としては、例えば、シリコーン、アクリル樹脂、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)、ポリアクリル酸エチル(PEA)、及びこれらの組み合わせなどのポリマー材料を含む生体適合性材料が挙げられる。
【0096】
様々な実施形態において、本開示の眼用インプラントは、第1の材料を含むとともに対象の眼に埋め込むために構成されたリング又は部分リング15であって、外周面、内壁、及び中央開口部17によって特徴付けられる、リング又は部分リング15と、第2の材料を含むとともに第1のハプティック端部16d,41,45及び第2のハプティック端部16d,42,44でリング又は部分リングに取り付けられた閉ループハプティック16,16C,16L,43,46とを備える。第1の材料及び第2の材料は異なる化学組成を有し、リング又は部分リングは閉ループハプティックよりも剛性が高い。
【0097】
様々な態様において、本開示の眼用インプラント(例えば
図3~
図10及び
図23~
図26に示すようなもの)に印加される力は、ハプティック(例えば閉ループハプティック16,16C,16L,43,46)を変形させるのに十分であるが、リング又は部分リングは変形させない。一般に、埋め込み後の眼に存在する条件では、リング又は部分リングはその形状を保持し、閉ループハプティックは変形する。いくつかの態様では、100mNの付与力で、リング又は部分リングはその形状を保持し、閉ループハプティックは変形する。他の態様では、80mNの付与力で、リング又は部分リングはその形状を保持し、閉ループハプティックは変形する。さらなる態様では、60mNの付与力で、リング又は部分リングはその形状を保持し、閉ループハプティックは変形する。他の態様では、50mNの付与力で、リング又は部分リングはその形状を保持し、閉ループハプティックは変形する。いくつかの態様では、40mNの付与力で、リング又は部分リングはその形状を保持し、閉ループハプティックは変形する。さらなる態様では、30mNの付与力で、リング又は部分リングはその形状を保持し、閉ループハプティックは変形する。他の態様では、20mNの付与力で、リング又は部分リングはその形状を保持し、閉ループハプティックは変形する。他の態様では、10mNの付与力で、リング又は部分リングはその形状を保持し、閉ループハプティックは変形する。いくつかの態様では、5mNの付与力で、リング又は部分リングはその形状を保持し、閉ループハプティックは変形する。
【0098】
図3~
図27による薬物送達デバイスは、眼の組織への治療薬の送達を容易にする様々な方法で構成され得る。概して、本明細書にさらに記載するように、1つ以上の薬物送達構造物27,58,70,81は、治療薬又はマトリックス中に配置された治療薬を含有するブロック、平板、ウェーハ等の形式の薬物デポー又は薬物塊として提供されてもよく、侵食性治療薬、又は薬物溶出構造物を形成するマトリックス中の治療薬を含有してもよい。後眼房及び毛様溝に埋め込むための本明細書に記載されるデバイスの各々は、水晶体嚢における埋め込みにも適している。本開示のデバイスは、水晶体嚢の赤道において水晶体嚢に又は後眼房及び毛様溝に治療薬を提供するように構成されている。例えば、治療薬は、水晶体内皮細胞の増殖及び活性、並びに後嚢混濁(posterior capsular opacification)の発生を抑制するように機能し得る(例えば細胞骨格薬(cytoskeletal drug)、ラトランクリン、抗VEGF、等)。
【0099】
本明細書に記載され、
図3~
図27に示されるデバイスの各々について、薬物送達構造物27,58,70,81は、後面15Pの上若しくは中に、前面15Aの上若しくは中に、又はこれらの組み合わせに配置され得る。薬物送達構造物は、後面及び/又は前面に直接固定されてもよいし、後面に固定された区画室に配置されてもよいし、又は他の方法でデバイスに組み込まれてもよい。リング又は部分リング15,83,86自体が、例えばシリコーンマトリックス中の治療薬から構成された薬物送達構造物27,58,70,81を含んでもよい。
【0100】
II.眼用インプラントを埋め込み及び操作する方法
図3~
図27に示すような本開示の眼内インプラントは、対象の眼において様々な用途に使用され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるこのようなデバイスの薬物送達プラットフォームは、対象の眼に、毛様溝に、治療薬を眼内送達する方法に使用され得る。様々な態様において、本開示の薬物送達デバイスは、閉ループハプティック、又はより具体的にはU-ループハプティックを備える。本開示の様々な実施形態を用いて、外科医は、本開示の薬物送達デバイスを対象の眼に挿入し、ハプティックを虹彩の下に配置し、リングを水晶体嚢及び水晶体に対して中心に置くことができる。
【0101】
いくつかの態様において、本開示のデバイスはIOLを備える。例えば、IOLを備えたそのようなデバイスは、
図7及び
図8に示され、又は
図3~
図6、
図10~
図14、及び
図23~
図25に示すデバイス用を含む、本開示の中央開口部17内に配置され、任意のリング15に取り囲まれたIOLとして示される。様々な実施形態において、本開示のデバイスは、IOLデバイスが(例えば水晶体嚢に埋め込まれるデバイスとして)以前に埋め込まれた対象の眼、又はまだ天然水晶体を含んでおり、無傷の水晶体嚢を有する対象の眼に埋め込むことができる。
【0102】
図3~
図27に示すような本開示のデバイスは、デバイスが眼の光軸を中心とするように又はしないように、埋め込まれ得る。その後、手術中、又は埋め込みのかなり後のいずれかに、外科医は、先端把持器具を、切開部を通じて(角膜の基部、角膜輪部に沿った「透明な角膜」若しくは「輪部エントリーポイント」又はさらに「強膜エントリーポイント」で)眼内に、例えばシンスキーフック又はマイクロ把持鉗子を角膜の下に、把持されるべき先端部の反対側のポイントから、又は把持されるべき先端部から(角膜の縁のまわりで)周方向に変位したエントリーポイントから挿入し、それにより、上記器具が、先端部を半径方向内方に引っ張り、次いで先端部を把持し、先端部を半径方向内方に開口部を横切って優しく引っ張って、ハプティックを毛様溝から外し、それを虹彩よりも前方の位置に移動させ、このプロセスを角膜の他の側(角膜輪部(角膜と強膜との境界)の他の側又は前眼房の他の側)から繰り返して第2のハプティック先端部を解放し、角膜の下の切開部を通じて薬物送達プラットフォームを除去することができることによって、薬物送達プラットフォームを除去し得る。この除去手順は、器具を毛様溝に挿入したり、又はハプティックのループ部分を把持して直接操作したり、又は虹彩をハプティック先端部に晒したり、又はハプティック先端部を毛様溝内に露出させたりすることなく行われ得る。
【0103】
薬物送達プラットフォームに関して記載しているが、上述し
図3~
図10及び
図23~
図26に示した変更されたハプティック構造は、薬物デポーを支持するための単なるリング若しくは足場、人工虹彩、オクルーダーパドルを有したリング、眼内圧力センサリング、光学マスク等、又は
図7及び
図8によって示すように後眼房及び毛様溝に埋め込むために構成されたIOLを含み得る他の眼用インプラントに組み込まれ得る。また、後眼房及び毛様溝への埋め込みについて記載されたデバイスはまた、水晶体嚢に埋め込まれて、捕捉されたハプティックの利点、又はハプティックを穴に捕捉することによる応力緩和の態様、又は調整及び除去のためにハプティック先端部を把持する利点を組み合わせて又は単独で得ることもできる。
【0104】
本開示の様々な態様において、ハプティック先端部16Tは、好ましくは、シンスキーフック、マイクロ把持鉗子又は他の器具と係合し易いように構成され得る。把持特徴部21を組み込んだハプティック先端部16Tに加えて、本開示の付加的なデバイスは、把持特徴部85を組み込む。
図3、
図5、
図6、
図10及び
図24に示すように、ハプティック先端部16Tは、アイレットなどの把持特徴部21,85で構成することができ、又はピンホール(シンスキーフックを受け入れる大きさに形成される)、任意のセレーション、フランジ、かかり、レンチフラット、若しくはマイクロ把持鉗子によって把持され得る他の平面などの他の形態が用いられてもよい。
図3~
図10に示したデバイスについて、他の適当な把持器具が利用可能な場合、又は以下に記載するような操作が想定されない場合には、先端部は、把持特徴部を有さずに、鈍端で終了してもよい。器具の毛様溝又は後眼房への挿入を必要とせずに、ハプティックは、虹彩又は周囲組織に係合することなく、毛様溝位置から外され、より容易に除去するために載置平面を越えて持ち上げられ、したがって付随する組織に対する外傷を最小限に抑えることができる。これらのハプティック16L,16,16C,16A,16U,43,46(ハプティックループ16L,16,16C,43,46を含む)はまた、ハプティックが(デバイス全体の幾何学的中心に向かって)寄せられ、次いでリングが適切に配置されたときに解放され(毛様溝内に開くことが許容され)得るように、最初の埋め込み中にデバイスの配置を支援し得る。様々な態様において、ハプティック(本開示の閉ループハプティック)の拘束された性質により、デバイスを眼に挿入するために折り畳むこともより容易となり、その再現性も高くなるであろう。これは、ハプティックが既知の空間及び軸線において拘束されるためであり、したがってデバイスをインジェクタ内に圧縮してから眼内に射出する又は置くことがより容易となるであろう。
【0105】
III.眼用インプラントを使用して対象を治療する方法
図3~
図27に示すような本開示の薬物送達デバイスは、対象の毛様溝又は水晶体嚢を含む対象の眼に治療薬を眼内送達する方法に使用され得る。例えば、緑内障の治療のためには、薬物送達構造物27,58,81中の治療薬は、ビマトプロストなどの眼内圧を低減するのに有効な治療薬である場合がある。いくつかの態様において、外科医は、本開示のデバイス(例えば
図3~
図27に示すようなもの)のいずれかを虹彩と水晶体嚢との間に位置する後眼房内に、前面を虹彩に向け、後面を水晶体嚢に対面させ、使用される任意のハプティックを毛様溝内に延在させて、挿入する。
【0106】
図3~
図27に示すようなものを含む本明細書に記載の実施形態の各々について、薬物送達デバイスは、治療を必要とする対象の状態又は疾患を治療するための様々な治療薬を送達するように構成され得る。治療は、状態若しくは疾患の任意の回復、又はこれらの任意の症状の改善(主観的又は客観的なもの)を含む。本開示のデバイスは、加齢黄斑変性症、弱視、白内障、色盲、糖尿病性網膜症、ドライアイ、飛蚊症、緑内障、結膜炎、屈折異常、網膜剥離、及びこれらの任意の組み合わせを治療するために使用することができる。いくつかの実施形態において、治療薬としては、ビマトプロスト、ブリモニジン、ラタノプロスト、チモロール、ピロカルピン、ブリンゾラミド、並びにベータ遮断薬、アルファアゴニスト、Rho-キナーゼ(ROCK)阻害薬、アデノシン受容体アゴニスト、炭酸脱水酵素阻害薬、アドレナリン作動性及びコリン作動性受容体活性化薬、及びプロスタグランジン類似体の一般的な範疇の他の薬物を挙げることができ、これらは薬物送達デバイスに組み込まれて緑内障を治療し得る。アフリベルセプト、ベバシズマブ、ペガプタニブ、ラニビズマブ、ステロイド、及びアプタマーは、薬物送達デバイスに組み込まれて滲出型黄斑変性症を治療し得る。補体因子、抗酸化薬、及び抗炎症薬は、薬物送達デバイスに組み込まれて萎縮型黄斑変性症を治療し得る。メトトレキサート、抗体、デキサメタゾン、トリアムシノロン及び他のステロイド薬は、薬物送達デバイスに組み込まれてブドウ膜炎を治療し得る。抗増殖薬、抗有糸分裂薬、抗炎症薬、及び水晶体上皮細胞の拡散を抑制する他の薬剤は、薬物送達デバイスに組み込まれて後嚢混濁を治療し得る。フルオロキノロンなどの抗生物質、ケトロラクなどの非ステロイド薬、及びプレドニゾロン類などのステロイドは、白内障手術後の術後管理のために薬物送達デバイスに組み込まれて感染及び炎症を治療し得る。
【0107】
本明細書では、例えば
図21、
図22及び
図27に示すように、外方に付勢された薬物デポーを備える薬物送達眼内インプラントを使用して対象を治療する方法がさらに提供される。本開示のさらなる実施形態(例えば、
図3~
図20及び
図23~
図26のいずれか)は、1つ以上の外方に付勢された薬物デポーを備えるように変更することができる。本明細書で開示するように、このような薬物送達眼内インプラントは、対象の眼の毛様溝又は水晶体嚢に埋め込むための薬物送達毛様溝インプラントである。様々な実施形態において、使用時、このような外方に付勢された薬物デポーを備えた本明細書の
図21、
図22及び
図27に示すような毛様溝インプラント及び/又は薬物送達プラットフォーム(又は薬物デポーを組み込むように変更された他の実施形態)は、薬物送達構造物を毛様溝に挿入してデバイスを前眼房に挿入し、デバイスを弾性的に拡張させることによって、対象の眼に治療薬を眼内送達する方法に使用され得る。前眼房内に解放すると、付勢部材は、周方向に弾性的に拡張して、薬物送達構造物を毛様溝内でそれらが毛様溝角部(sulcus angle)で解剖学的構造に突き当たるまで外方に押す。
【0108】
本明細書では、1つ以上の房水流通穴(例えば
図11~
図14に示すようなもの、又は
図3~
図10及び
図15~17のいずれかに組み込まれるようなもの)を含む眼内インプラントを使用する方法が提供される。様々な場合において、このようなインプラントは、対象の眼の毛様溝に又は水晶体嚢に埋め込むのための毛様溝インプラントである。埋め込み後、流体通路は、房水がリングを通過できるようにし、流体が毛様溝及び後眼房で蓄積するのを防止する。通路によりリングの内壁からリングの周面に近接する開口19への流体の流れが可能となるように水晶体嚢に埋め込まれた場合には、治療薬は、中央開口部から水晶体嚢の赤道に送達され得る。
【0109】
デバイス及び方法の好ましい実施形態は、それらが開発された環境に関連して記載されているが、これらの実施形態は本発明の原理の例示に過ぎない。様々な実施形態の要素を他の種類の各々に組み込んで、そのような他の種類と組み合わせたこれらの要素の利点を得ることができ、様々な有益な特徴は、実施形態において単独で又は互いに組み合わされて利用され得る。本発明の趣旨及び添付する特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく、他の実施形態及び形態が考案され得る。
【国際調査報告】