(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】浸透性が改善されたシース内側層を有する2層マルチストランドコード
(51)【国際特許分類】
D07B 1/06 20060101AFI20231121BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
D07B1/06 A
B60C9/00 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526259
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(85)【翻訳文提出日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 FR2021051861
(87)【国際公開番号】W WO2022096799
(87)【国際公開日】2022-05-12
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ジャネッティ アレクサンドレ
【テーマコード(参考)】
3B153
3D131
【Fターム(参考)】
3B153AA14
3B153AA19
3B153AA34
3B153AA47
3B153CC29
3B153CC52
3B153FF16
3B153GG07
3D131AA15
3D131AA39
3D131AA47
3D131BA18
3D131BB03
3D131BB04
3D131BC31
3D131DA32
3D131DA43
3D131LA28
(57)【要約】
本発明は、K≧1の内部ストランド(TI)で構成されるコードの内側層(CI)と、螺旋半径R2を有するコードの内側層(CI)の周りに巻かれたL>1の外側ストランド(TE)で構成されるコードの外側層(CE)とを備える2層マルチストランドコード(50)に関する。各内側及び外側ストランド(TI,TE)の中間及び外側層(C2,C2’,C3,C3’)は脱飽和される。コード(50)は、シース内側層(CIG)を製造する段階であって、内側層(CI)が、厚みGを有するエラストマー組成物によって、次に、外側層(CE)によって囲まれ、Gが、Rtを内側層(CI)が理論上の外側層(CET)と直接接触した時に取得される理論上の外側層(CET)の螺旋半径であるとした場合にR2/Rtが1.02から1.25の範囲になるようなものである上記製造する段階と、比率R2/Rtが1.00から1.10の範囲になるようにコードの外側層(CE)をコードの内側層(CI)が外接する円に近づける段階(400)とを伴う方法によって取得される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層マルチストランドコード(50)であって、
K≧1の内部ストランド(TI)で作られたコードの内部層(CI)であって、該内部ストランド(TI)又は各内部ストランド(TI)が3層(C1,C2,C3)ストランドであり、かつ
Q=2、3、又は4の内部金属スレッド(F1)で作られた内部層(C1)、
前記内部層(C1)の周りに巻かれた直径d2のM個の中間金属スレッド(F2)で作られた中間層(C2)、及び
前記中間層(C2)の周りに巻かれた直径d3のN個の外部金属スレッド(F3)で作られた外部層(C3)、
を備える前記内部層(CI)と、
コードの前記内部層(CI)の周りに巻かれたL>1の外部ストランド(TE)で作られたコードの外部層(CE)であって、螺旋半径R2を有し、各外部ストランド(TE)が3層(C1’,C2’,C3’)ストランドであり、かつ
Q’=2、3、又は4の内部金属スレッド(F1’)で作られた内部層(C1’)、
前記内部層(C1’)の周りに巻かれた直径d2’のM’個の中間金属スレッド(F2’)で作られた中間層(C2’)、及び
前記中間層(C2’)の周りに巻かれた直径d3’のN’個の外部金属スレッド(F3’)で作られた外部層(C3’)、
を備える前記外部層(CE)と、
を備え、
前記内部ストランド(TI)又は各内部ストランド(TI)の前記中間層(C2)は、該内部ストランド(TI)又は各内部ストランド(TI)の該中間層のスレッド間距離I2の合計SI2が前記直径d2よりも大きいか又はそれに等しいように脱飽和され、
前記内部ストランド(TI)又は各内部ストランド(TI)の前記外部層(C3)は、該内部ストランド(TI)又は各内部ストランド(TI)の該外部層のスレッド間距離I3の合計SI3が前記直径d3よりも大きいか又はそれに等しいように脱飽和され、
前記外部ストランド(TE)又は各外部ストランド(TE)の前記中間層(C2’)は、各外部ストランド(TE)の該中間層(C2’)のスレッド間距離I2’の合計SI2’が前記直径d2’よりも大きいか又はそれに等しいように脱飽和され、
各外部ストランド(TE)の前記外部層(C3’)は、各外部ストランド(TE)の前記外部層(C3’)のスレッド間距離I3’の合計SI3’が前記直径d3’よりも大きいか又はそれに等しいように脱飽和され、
コード(50)が、
シース内部層(CIG)を製造する段階であって、前記内部層(CI)が、厚みGを有するエラストマー組成物によって、次に、外部層(CE)によって囲まれ、該エラストマー組成物の該厚みGが、Rtを該内部層(CI)が理論上の外部層(CET)と直接に接触した時に取得される該理論上の外部層(CET)の螺旋半径とする場合に比率R2/Rtが1.02から1.25の範囲であるようなものである前記製造する段階と、
前記比率R2/Rtが1.00から1.10の範囲であるようにコードの前記外部層(CE)をコードの前記内部層(CI)が外接する円に近づける段階(400)と、
を備える方法によって取得される、
ことを特徴とする2層マルチストランドコード(50)。
【請求項2】
コードの前記外部層(CE)は、コード(50)の主軸に垂直なコードの断面上で2個の隣接する外部ストランド(TE)が内接する円形包絡線を平均的に分離する最短距離であるとして定められる該外部ストランドのストランド間距離Eが厳密に20μm未満であるように飽和されることを特徴とする請求項1に記載のコード(50)。
【請求項3】
Lが、螺旋半径Rtを有する前記理論上の外部層(CET)上に敷設することができる外部ストランド(TE)の最大数に等しく、Lは、前記外部層(CE)が不完全に不飽和であるようなものであることを特徴とする請求項1に記載のコード(50)。
【請求項4】
エラストマー組成物の前記シースの前記厚みGは、厳密に0mmよりも大きく、好ましくは、0.01mmよりも大きいか又はそれに等しいことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコード(50)。
【請求項5】
エラストマー組成物の前記シースの前記厚みGは、0.8mmよりも小さいか又はそれに等しく、好ましくは、0.60mmよりも小さいか又はそれに等しく、より好ましくは、0.52mmよりも小さいか又はそれに等しいことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のコード(50)。
【請求項6】
前記エラストマー組成物は、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、及びこれらのエラストマーの混合物から構成される群から選択されたエラストマーを備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のコード(50)。
【請求項7】
K=1、2、3、又は4、好ましくは、K=1、2、又は3、より好ましくは、K=1又は3であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のコード(50)。
【請求項8】
L=6、7、8、9、又は10、好ましくは、L=6、7、8、又は9、より好ましくは、L=6又は9であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のコード(50)。
【請求項9】
M=7、8、9、又は10、好ましくは、M=7、8、又は9であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のコード(50)。
【請求項10】
M’=7、8、9、又は10、好ましくは、M’=7、8、又は9であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のコード(50)。
【請求項11】
N=12、13、14、15、又は16、好ましくは、N=12、13、又は14であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のコード(50)。
【請求項12】
N’=12、13、14、15、又は16、好ましくは、N’=12、13、又は14であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のコード(50)。
【請求項13】
2層マルチストランドコード(50)を製造する方法であって、
段階(100)では、K≧1の内部ストランド(TI)が、撚り合わせ又は捩りによって螺旋状に組み付けられて前記コードの内部層(CI)を形成し、該内部ストランド(TI)又は各内部ストランド(TI)は、3層(C1,C2,C3)ストランドであり、かつQ=2、3、又は4の内部金属スレッド(F1)で作られた内部層(C1)と、該内部層(C1)の周りに巻かれた直径d2のM個の中間金属スレッド(F2)で作られた中間層(C2)であって、そのために該内部ストランド(TI)又は各内部ストランド(TI)の該中間層のスレッド間距離I2の合計SI2が直径d2よりも大きいか又はそれに等しい前記中間層(C2)と、該中間層(C2)の周りに巻かれた直径d3のN個の外部金属スレッド(F3)で作られた外部層(C3)であって、そのために該内部ストランド(TI)又は各内部ストランド(TI)の該外部層のスレッド間距離I3の合計SI3が直径d3よりも大きいか又はそれに等しい前記外部層(C3)とを備え
段階(200)では、前記内部層(CI)が、厚みGを有するエラストマー組成物によって取り囲まれてシース内部層(CIG)を形成し、該エラストマー組成物の該厚みGは、Rtを該内部層(CI)が理論上の外部層(CET)と直接に接触する時に取得される該理論上の外部層の螺旋半径とする場合に比率R2/Rtが1.02から1.25の範囲であるようにものであり、
段階(300)では、L>1の外部ストランド(TE)が、撚り合わせ又は捩りによって前記コードの前記内部層(CI)の周りに螺旋状に組み付けられ、各外部ストランド(TE)が、3層(C1’,C2’,C3’)ストランドであり、かつQ’=2、3、又は4の内部金属スレッド(F1’)で作られた内部層(C1’)と、該内部層(C1’)の周りに巻かれた直径d2’のM’個の中間金属スレッド(F2’)で作られた中間層(C2’)であって、そのために各外部ストランド(TE)の該中間層(C2’)のスレッド間距離I2’の合計SI2’が直径d2’よりも大きいか又はそれに等しい中間層(C2’)と、該中間層(C2’)の周りに巻かれた直径d3’のN’個の外部金属スレッド(F3’)で作られた外部層(C3’)であって、そのために各外部ストランド(TE)の該外部層(C3’)のスレッド間距離I3’の合計SI3’が直径d3’よりも大きいか又はそれに等しい前記外部層(C3’)とを備え、
段階(400)では、前記比率R2/Rtが1.00から1.10の範囲であるように、前記コードの前記外部層(CE)を該コードの前記内部層(CI)が外接する円に近づけるための手段(500)が使用される、
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
エラストマー母材(102)と、
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の少なくとも1つのコード(50)と、
を備えることを特徴とする補強製品(100)。
【請求項15】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の少なくとも1つのコード(50)、又は
請求項14に記載の補強製品、
を備えることを特徴とするタイヤ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ、特に大型産業車両のためのタイヤを補強するのに取りわけ使用することができるマルチストランドコードに関する。
【背景技術】
【0002】
半径方向カーカス補強体を有するタイヤは、トレッドと、2個の非伸張性ビードと、ビードをトレッドに接続する2個の側壁と、カーカス補強体とトレッド間に周方向に配置されたベルト又はクラウン補強体とを備える。このクラウン補強体は、潜在的に金属又は布地タイプのコード又は単繊維のような補強要素で補強されたエラストマー組成物で作られた複数のプライを備える。
【0003】
クラウン補強体は、一般的に、作動プライ又は交差プライと呼ばれることもある少なくとも2個の重ね合わされたクラウンプライを備え、それらの一般的に金属の補強要素は、プライ内で互いに実質的に平行に配置されるが、一方のプライから他方のプライに交差し、すなわち、正中円周面に対して一般的に10°と45°の間に含まれる角度だけ対称又は非対称に傾斜する。作動プライは、一般的に、タイヤを誘導するそれらの機能を実行するように非常に低い伸長度を示す補強要素を備える。
【0004】
クラウン補強体はまた、エラストマー組成物の様々な他の補助プライ又は層を備える場合があり、それらは、場合によって変化する幅を有し、かつ補強要素を含有するか又はしない場合がある。ベルトの残った部分を外部攻撃又は穿孔から保護する役割を有する保護プライとして公知のもの又は実質的に周方向に向けられた補強要素を含有するフーピングプライとして公知のもの(「ゼロ度」プライとして公知)に例示的に言及することができ、これらが作動プライに対して半径方向外側又は内側であるかを問わない。保護プライは、一般的に高い伸長度を示す補強要素を備え、そのためにそれらは、例えば岩石のような圧子によって印加される応力の影響下で変形する。
【0005】
構造189.23の2層マルチストランド金属コードを備える作動プライ補強要素は従来技術から公知である。このコードは、内部ストランドで作られたコードの内部層と、コードの内部層の周りに螺旋状に巻かれた6個の外部ストランドで作られたコードの外部層とを備える。同じく、特許出願WO2019243691も、内部ストランドで作られたコードの内部層とコードの内部層の周りに螺旋状に巻かれた6個の外部ストランドで作られたコードの外部層とを備える構造171.26の2層マルチストランド金属コードを開示している。
【0006】
各内部及び外部ストランドは、3個の内部スレッドで作られたストランドの内部層と、9個のスレッドで作られた中間層と、15個の外部スレッドで作られたストランドの外部層とを備える。各スレッドは、0.23mmに等しい直径を有する。
【0007】
特に建設プラントタイプの大型産業車両のタイヤは、多くの攻撃を受ける。具体的に、このタイプのタイヤは、通常は凹凸路面上を走行し、時にトレッドの穿孔をもたらす。これらの穿孔は、クラウン補強体の特にクラウンプライの金属補強要素を酸化してタイヤの寿命をかなり縮める腐食作用物質、例えば、空気及び水の侵入を可能にする。
【0008】
タイヤの寿命を延ばすためのソリューションは、破断時のコードの力を増大することである。一般的に、破断時の力は、コードを構成するスレッドの直径を増大することにより、及び/又はスレッドの数及び/又は各スレッドの個々の強度を増大することによって高められる。しかし、スレッドの直径を尚も更に増大すること、例えば、特許出願WO2016051669の場合のように必要な0.45mmを超えて増大することは、コードの可撓性の低下に至り、これは望ましくない。スレッドの数を増大することは、通常は、エラストマー組成物がストランドに浸透する機能の低下に至る。最後に、各スレッドの個々の強度を増大することは、スレッドを製造するのに使用される設備に有意な投資を必要とする。
【0009】
タイヤの寿命を延ばすための別のソリューションは、これらの腐食作用物質の広がりに対抗することである。
【0010】
すなわち、コードの製造中に各金属スレッドをエラストマー組成物で覆うように規定することができる。この工程中に、存在するエラストマー組成物は、各ストランドの各層間に存在する毛細管に浸透し、すなわち、腐食作用物質が広がることを防止する。一般的に原位置でゴム引きされたコードと呼ばれるそのようなコードは、従来技術から公知である。
【0011】
タイヤの硬化中にプライのエラストマー組成物で毛細管を充填することを促すために内部及び/又は外部ストランドの中間及び外部層上のスレッド間距離を増大することも可能である。これは、層から1又は2以上のスレッドを取り除くことにより、又は他にストランドの層上で減少する直径のスレッドを使用することによって取得することができる。スレッドの数を低減することは、コードの破断強度の低下に至り、これは望ましくない。
【0012】
最後に、エラストマー組成物が内部ストランドにより良好にアクセスすることを可能にするように外部ストランドの間のストランド間距離を増大することが可能である。これは、外部ストランドの直径よりも直径が大きい内部ストランドを使用することによって達成することができる。このソリューションは、複数の異なるスレッド直径をコードの製造中に管理する必要性、又は1又は複数の内部ストランドと外部ストランド間の構成が異なることに至り、これは望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2019/243691号
【特許文献2】国際公開第2016/051669号
【特許文献3】仏国特許第2419181号
【特許文献4】仏国特許第2419182号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、コードの中へのかつそれに沿った腐食作用物質の侵入及び広がりを低減することをそれを行う際にコードの破断時の強度を損うことなく可能にするようにコード189.23と比べてその外部ストランドの改善された浸透性とエラストマー組成物による内部ストランドへのより良い接近性とを示すコードである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によるコード
【0016】
この目的のために、本発明の1個の主題は、
-Q=2、3、又は4の内部金属スレッドで作られた内部層と、
-内部層に巻かれた直径d2のM個の中間金属スレッドで作られた中間層と、
-中間層に巻かれた直径d3のN個の外部金属スレッドで作られた外部層と、
-コードの内部層に巻かれたL>1の外部ストランドで作られたコードの外部層であって、螺旋半径R2を有し、各外部ストランドが、3層ストランドであり、かつ
-Q’=2、3、又は4の内部金属スレッドで作られた内部層、
-内部層に巻かれた直径d2’のM’個の中間金属スレッドで作られた中間層、及び
-中間層に巻かれた直径d3’のN’個の外部金属スレッドで作られた外部層、
を備えるコードの前記外部層と、
を備える2層マルチストランドコードであり、
-上記又は各内部ストランドの中間層は、上記又は各内部ストランドの中間層のスレッド間距離I2の合計SI2が直径d2よりも大きいか又はそれに等しいように脱飽和され、
-上記又は各内部ストランドの外部層は、上記又は各内部ストランドの外部層のスレッド間距離I3の合計SI3が直径d3よりも大きいか又はそれに等しいように脱飽和され、
-上記又は各外部ストランドの中間層は、上記又は各外部ストランド(TE)の中間層のスレッド間距離I2’の合計SI2’が直径d2’よりも大きいか又はそれに等しいように脱飽和され、
-各外部ストランドの外部層は、各外部ストランドの外部層のスレッド間距離I3’の合計SI3’が直径d3’よりも大きいか又はそれに等しいように脱飽和され、
-コードは、
-シース内部層を製造する段階であって、内部層が、厚みGを有するエラストマー組成物によって囲まれ、次に、外部層によって囲まれ、エラストマー組成物の厚みGが、Rtを内部層が理論上の外部層と直接接触した時に取得される理論上の外部層の螺旋半径であるとした場合に、比率R2/Rtが1.02から1.25の範囲になるようにする上記製造する段階と、
-コードの外部層をコードの内部層(CI)が外接する円に近づけて、比率R2/Rtが1.00から1.10の範囲になるようにする段階と、
を備える方法によって取得される。
【0017】
表現「aとbの間」に示す値の範囲は、aより大からbより小に延びる(すなわち、端点a及びbを除外する)値の範囲を表すのに対して表現「aからbまで」に示す値の範囲は、端点「a」から端点「b」まで延びる値の範囲を意味し、すなわち、厳密な端点「a」及び「b」を含む。
【0018】
定義により、コードの外部層の螺旋半径R2は、コードの軸に垂直な平面では外部層の外部ストランドの中心を通過する理論上の円の半径である。
【0019】
定義により、ストランドの直径は、ストランドが内接することができる最小円の直径である。
【0020】
定義により、スレッドの脱飽和層とは、非架橋エラストマー組成物を通過させるのに十分な空間が金属スレッドの間に残されているようなものである。本発明により、各ストランドの外部層は脱飽和され、これは、外部層の金属スレッドが接触せず、2個の隣接する外部金属スレッドの間にエラストマー組成物を通過させるのに十分な空間があること、すなわち、スレッド間距離の合計がスレッドの直径以上であることを意味する。層のスレッド間距離は、コードの主軸に垂直なコードの断面では、層の2個の隣接するスレッドを平均的に分離する最短距離であるとして定められる。従って、スレッド間距離は、スレッド間距離の合計を層内のスレッド間隔の数で割ることによって計算される。言い換えれば、スレッド間距離が5μm以上である場合に、層は脱飽和される可能性がある。
【0021】
好ましくは、上記又は各内部ストランドの中間層のスレッド間距離I2は15μm以上、より好ましくは35μm以上、より好ましくは50μm以上、非常に好ましくは60μm以上である。
【0022】
好ましくは、各外部ストランドの中間層のスレッド間距離I2’は15μm以上、より好ましくは35μm以上、より好ましくは50μm以上、非常に好ましくは60μm以上である。
【0023】
好ましくは、上記又は各内部ストランドの外部層のスレッド間距離I3は15μm以上、より好ましくは35μm以上、より好ましくは50μm以上、非常に好ましくは60μm以上である。
【0024】
好ましくは、各外部ストランドの外部層のスレッド間距離I3’は15μm以上、より好ましくは35μm以上、より好ましくは50μm以上、非常に好ましくは60μm以上である。
【0025】
好ましくは、各ストランドの外部層のスレッド間距離は、100μm以下である。
【0026】
対照的に、スレッドの飽和した層は、エラストマー組成物を通過させるのに十分な空間が金属スレッド間に存在しないようになっており、すなわち、スレッド間距離の合計がスレッドの直径よりも厳密に小さいようになっている。言い換えれば、スレッドの飽和層は、スレッド間距離が5μm未満であるようになっているものとすることができる。
【0027】
本発明では、コードは2層のストランドを有し、これは、それ以上でも以下でもなく、2層のストランドで作られたアセンブリを備えることを意味し、アセンブリが1層でもなく3層でもなく、2層のストランドだけを有することを意味する。
【0028】
理論上の外部層と直接接触しているとは、内部層と理論上の外部層の間にシースが存在しないことである。
【0029】
エラストマー組成物又はエラストマー性組成物が意味するのは、組成物が少なくとも1つのエラストマー又は1つのゴム(この2つの用語は同義語である)と少なくとも1つの他の成分とを含むということである。
【0030】
コードの内部層は、厚みGのエラストマー組成物によって囲まれ、次に外部層によって囲まれる。
【0031】
本発明によるコードは、内部層と外部層の間にエラストマー組成物が存在しないので浸透されないコード189.23と比べて、改善した浸透性を提供する。本発明の背後の本発明者は、この初期比R2/Rtの1.02から1.25の範囲により、タイヤが硬化している間に内部ストランドに浸み込んで間隙を埋めるのに十分なエラストマー組成物の厚みを有することが可能になるという仮説を提唱する。これは、エラストマー組成物が、一方で外部ストランド間に、他方で外部ストランドと内部ストランドの間に浸透することができるようにし、従って、シースに由来するエラストマー組成物を内部ストランドの中に中心毛管まで追いやることができる内部ストランド及び外部ストランドの中間層及び外部層の脱飽和に起因して可能になる。従って、外部ストランドを内部層に近づけることを可能にする最終段階の助けにより、こうしてコードの直径を縮めると同時にコードに非常に良く浸透させることができる。
【0032】
有利なことに、上記又は各内部ストランドは、円筒形の層を有する。
【0033】
有利なことに、上記又は各外部ストランドは、円筒形の層を有する。
【0034】
極めて有利なことに、上記又は各内部ストランド及び各外部ストランドは、円筒形の層を有する。そのような円筒形の層は、ストランドの様々な層が異なるピッチで巻かれている場合に及び/又はこれらの層の巻き方向が層毎に異なる場合に取得されることが想起されるであろう。円筒形の層を有するストランドは、全ての層のピッチが同じでかつ全ての層の巻き方向が同じであって遥かに低い浸透性を示す密な層を有するストランドとは異なり、浸透性が非常に高い。
【0035】
公知のように、ストランドのピッチとは、コードの軸に対して平行に測定されたこのストランドの長さを表し、その長さの後は、このピッチを有するストランドがコードの当該軸の周りに完全に1回転しているということが想起されるであろう。同様に、スレッドのピッチとは、このスレッドが位置するストランドの軸に平行に測定されたこのスレッドの長さを表し、その長さの後は、このピッチを有するスレッドがストランドの当該軸の周りに完全に1回転する。
【0036】
ストランドの層又はスレッドの層の巻き方向とは、ストランド又はスレッドがコード又はストランドの軸に対して成す方向である。巻き方向は、一般的に、文字Z又はSで指定される。
【0037】
スレッド及びストランドに関するピッチ、巻き方向、及び直径は、ASTM規格D2969-04(2014)に準拠して決定される。
【0038】
好ましくは、ストランドは予備成形を受けない。
【0039】
有利なことに、コードは金属製である。用語「金属コード」は、定義上、金属材料で主として(すなわち、これらのスレッドの50%超)又は完全に(スレッドの100%)構成されたスレッドによって形成されたコードを意味するものと理解される。そのような金属コードは、好ましくはスチールコード、より好ましくは、以下で「炭素鋼」と呼ぶパーライト(又はフェライト-パーライト)炭素鋼ですることができるコード、又はステンレス鋼(定義上、ステンレス鋼は、少なくとも11%のクロムと少なくとも50%の鉄とを備える)とすることができたコードに実施される。しかし、他の鋼又は他の合金を使用することも当然ながら可能である。
【0040】
炭素鋼を有利に使用する場合に、その炭素含有量(鋼の重量%)は、0.05%と1.2%の間、特に0.4%と1.1%の間にあることが好ましく、これらの含有量は、タイヤに必要である機械的特性とスレッドの実施可能性との良い妥協点を表すものである。
【0041】
使用する金属又は鋼は、それが特に炭素鋼かステンレス鋼かを問わず、例えば、金属コード及び/又はその構成要素の加工性特性、又は粘着性、耐腐食性、又は耐老化性のようなコード及び/又はタイヤ自体の使用特性を改善する金属層でそれ自体被覆することができる。好ましい実施形態により、使用する鋼は、真鍮(Zn-Cu合金)又は亜鉛の層で覆われる。
【0042】
好ましくは、定められた(内部又は外部)ストランドの同一層のスレッドは、全て実質的に同じ直径を有する。有利なことに、外部ストランドは、全て、実質的に同じ直径を有する。「実質的に同じ直径」が意味するのは、スレッド又はストランドが工業的公差の範囲内で同じ直径を有するということである。
【0043】
有利なことに、外部ストランドは、40mmから100mmの範囲、好ましくは50mmから90mmの範囲にあるピッチで内部ストランドの周りに螺旋状に巻かれる。
【0044】
本発明の第1の実施形態では、コードの外部層は、コードの主軸に垂直なコードの断面上で2個の隣接する外部ストランドが内接する円形包絡線を平均的に分離する最短距離であるとして定められる、外部ストランドのストランド間距離Eは、厳密に20μm未満になるように飽和する。
【0045】
定義により、コードの飽和した層は、外部ストランドに関するストランド間距離が厳密には20μm未満であるようになっている。外部ストランドの外部層のストランド間距離は、コードの主軸に垂直なコードの断面上で2個の隣接する外部ストランドが内接する円形包絡線を平均的に分離する最短距離であるとして定められる。従って、コードのこの構造により、外部層の良好な構造上安定性を保証することが可能になり、かつ外部層の飽和により、外部層は、確実に比較的多くの外部ストランドを備え、従って比較的高い破断時の力を示すことが可能になる。
【0046】
対照的に、コードの脱飽和層は、外部ストランドに関するストランド間距離Eが20μmよりも大きいか又はそれに等しいようになっている。
【0047】
本発明による第2の実施形態では、Lは、螺旋半径Rtを有する理論上の外部層上に敷設することができる外部ストランドの最大数Lmax以下であり、Lは、外部層が不完全に不飽和であるようになっている。
【0048】
定義により、不完全に不飽和である層は、この層のP個のストランドと同じ直径を有する少なくとも1つの(P+1)番目のストランドを追加するのに十分な空間がこの層にはないようになっている。この特定の例では、外部層のL個の外部ストランドと同じ直径を有する少なくとも1つの(L+1)番目の外部ストランドを追加するのに十分な空間が外部層にはない。従って、コードのこの構造により、外部層の良好な構造上安定性を保証することが可能になり、かつ外部層の不完全な不飽和により、外部層は、確実に比較的多くの外部ストランドを備え、従って比較的高い破断時の力を示すことが可能になる。
【0049】
完全に不飽和である層は、不完全に不飽和である層とは対照的に、この層のP個のストランドと同じ直径を有する少なくとも1つの(P+1)番目のストランドを追加するのに十分な空間がこの層内にあるようになっており、従って、複数のストランドが互いに接触しているか、又は接触していないことが考えられる。この特定の例では、外部層のL個の外部ストランドと同じ直径を有する少なくとも1つの(L+1)番目の外部ストランドを追加するのに十分な空間が外部層に存在する。
【0050】
好ましくは、Lは、螺旋半径Rtを有する理論上の外部層上に敷設することができる外部ストランドの最大数Lmaxに等しく、Lは、外部層が不完全に不飽和であるようになっている。外部層は多くの外部ストランドを備え、従って、比較的高い破断時の力を示している。
【0051】
有利なことに、エラストマー組成物のシースの厚みGは、厳密には0mmより大きく、好ましくは0.01mm以上である。エラストマー組成物の厚みGが大きいほど内部層での浸透性が良好である。
【0052】
有利なことに、エラストマー組成物のシースの厚みGは、0.8mm以下であり、好ましくは0.60mm以下であり、より好ましくは0.52mm以下である。この厚みにより、内部層の浸透性を最適化すると同時にコードの外径を制限することが可能になる。
【0053】
有利なことに、エラストマー組成物は、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーの混合物から構成される群から選択されたエラストマーを備える。
【0054】
好ましくは、エラストマー組成物は、天然ゴム、合成ポリイソプレン、イソプレンコポリマー、及びこれらのエラストマーの混合物から構成される群から選択されたエラストマーを備える。
【0055】
好ましくは、エラストマー組成物はまた、加硫系及び充填材を含有する。より優先的には、エラストマーはジエン系エラストマーである。
【0056】
好ましくは、エラストマーは、補強充填材としてカーボンブラックを備える。
【0057】
有利なことに、K=1、2、3、又は4、好ましくはK=1、2、又は3、より好ましくはK=1又は3である。
【0058】
有利なことに、L=6、7、8、9、又は10であり、好ましくはL=6、7、8、又は9、より好ましくはL=6又は9である。
【0059】
第1の変形では、K=1、L=6である。K=1であるコードでは、エラストマー組成物の存在により、良好な浸透性が可能になり、更は、外部ストランドが内部ストランドに及ぼす過酷な横荷重に起因して内部ストランドへの接触圧を軽減することが可能になる。
【0060】
第2の変形では、K=2、L=7又は8であり、好ましくはK=2、L=8である。
【0061】
第3の変形では、K=3、L=7、8、又は9であり、好ましくはK=3、L=9である。
【0062】
第4の変形では、K=4、L=9又は10であり、好ましくはK=4、L=10である。
【0063】
本発明によらない特にK=3又は4である実施形態では、コードに不十分に浸透した場合に、コードに沿って延びるように有意に容易にする中心毛管を定めるK=3又は4の内部ストランド間で腐食作用物質の非常に有意な広がりを見る危険性がある。この欠点は、K個の内部ストランドの周りにあるシースがそれをエラストマー組成物で浸透可能にすることによって克服することができ、それにより、それ自体穿孔している中心毛管に腐食作用物質が近づかないように防ぎ、これらの腐食作用物質がコードに沿って広がらないように防ぐ。
【0064】
K>1であるコードでは、コードが引張られた場合に加わる最も過酷な横荷重は、内部ストランド間に加わる横荷重である。K>1である構造を提示し、最大数の外部ストランドを加えることによって破断強度を最大にするためにコードの外部層を飽和させるような多くの外部ストランドを備えるコードが従来技術から公知である。ここでは、ストランドの外部層が脱飽和されることに起因して、コードは、一方では、エラストマー組成物を通過させる外部スレッド間の空間を有し、従って、コードを腐食による影響を受けにくいものとすることができる。他方では、外部スレッドの数は減少するが、ストランドの外部層の脱飽和は、一方でエラストマー組成物が外部スレッド間に浸透することを可能にし、他方でシースのエラストマー組成物を内部ストランド間に押し込んで、内部ストランド間に加わる横荷重を少なくとも部分的に吸収するエラストマー組成物のクッションを形成するようにすることを可能にする。従って、飽和したコード外部層を有する類似のコードと比較してより良い耐腐食性が達成される。
【0065】
本発明によるコードの内部ストランド
【0066】
1つの好ましい実施形態では、Q>1、好ましくはQ=2、3、又は4である。Qが1に等しい例では、コードに加えられる繰返し圧縮荷重の作用下で、内部ストランドの内部スレッドが内部ストランド、更にはコードから半径方向に離れるのを見る危険性があると考えられる。内部ストランドの内部層に複数のスレッドが存在する(Q>1)ことに起因して、この危険性は低減され、その場合に、圧縮荷重は内部層の複数のスレッドに分配される。
【0067】
有利なことに、M=7、8、9、又は10であり、好ましくはM=7、8、又は9である。
【0068】
有利なことに、N=12、13、14、15、又は16であり、好ましくはN=12、13、又は14である。
【0069】
好ましくは、Q=4、M=9、及びN=14である。
【0070】
本発明によるコードの外部ストランド
【0071】
有利なことに、M’=7、8、9、又は10であり、好ましくはM’=7、8、又は9である。
【0072】
有利なことに、N’=12、13、14、15、又は16であり、好ましくはN’=12、13、又は14である。
【0073】
好ましくは、Q’=3、M’=9、及びN’=14である。
【0074】
有利なことに、
-Q=4、M=9、及びN=14であり、
-各内部ストランドの各内部金属スレッドは、各内部ストランドの各中間スレッドの直径d2に等しく、かつ各内部ストランドの各外部スレッドの直径d3に等しい直径d1を有し、
-Q’=3、M’=9、及びN’=14であり、
-各外部ストランドの各中間金属スレッドは、各外部ストランドの各外部スレッドの直径d3’に等しい直径d2’を有し、
-d1=d2=d3=d1’である。
【0075】
有利なことに、各金属スレッドは、0.10mmから0.60mm、好ましくは0.12mmから0.50mm、より優先的には0.15mmから0.42mmの範囲にある、それぞれの直径d1、d1’、d2、d2’、d3、d3’を有する。
【0076】
本発明によるコードの製造方法
【0077】
本発明の別の主題は、2層マルチストランドコードの製造方法であり、
-段階では、撚り合わせ又は捩りにより、K≧1の内部ストランドを螺旋状に組み付けて、コードの内部層を形成する;上記又は各内部ストランドは3層ストランドであり、Q=2、3、又は4の内部金属スレッドで作られた内部層と、内部層の周りに巻かれた直径d2のM個の中間金属スレッドで作られた中間層であって、上記又は各内部ストランドの中間層のスレッド間距離I2の合計SI2が直径d2よりも大きいか又はそれに等しいような上記中間層と、中間層の周りに巻かれた直径d3のN個の外部金属スレッドで作られた外部層であって、上記又は各内部ストランドの外部層のスレッド間距離I3の合計SI3が直径d3よりも大きいか又はそれに等しいような上記外部層とを備える;
-段階では、厚みGを有するエラストマー組成物で内部層を取り囲んでシース内部層を形成し、エラストマー組成物の厚みGは、比率R2/Rtが1.02から1.25の範囲になるようになっており、ここで、Rtは内部層が理論上の外部層と直接接触する時に取得される理論上の外部層の螺旋半径である;
-段階では、撚り合わせ又は捩りにより、L>1の外部ストランドをコードの内部層の周りに螺旋状に組み付ける;各外部ストランドは2層ストランドであり、Q’=2、3、又は4の内部金属スレッドで作られた内部層と、内部層の周りに巻かれた直径d2’のM’個の中間金属スレッドで作られた中間層であって、各外部ストランドの中間層のスレッド間距離I2’の合計SI2’が直径d2’よりも大きいか又はそれに等しいような上記中間層と、中間層の周りに巻かれた直径d3’のN’個の外部金属スレッドで作られた外部層であって、各外部ストランドの外部層のスレッド間距離I3’の合計SI3’が直径d3’よりも大きいか又はそれに等しいような上記外部層とを備える;
-段階では、手段を使用して、コードの外部層をコードの内部層が外接する円に近づけ、比率R2/Rtが1.00から1.10の範囲になるようにする。
【0078】
有利なことに、K≧1の内部ストランドを螺旋状に組み付ける段階と、L>1の外部ストランドをコードの内部層の周りに組み立てる段階とは、撚り合わせを使用して行われる。
【0079】
有利なことに、コードの外部層をコードの内部層が外接する円に近づけるために採用される手段は、例えば、互いに対面しているがオフセットして取り付けられた2列のローラから構成され、それらの間にコードが通される。
【0080】
一実施形態では、一方の列は可動であり、固定された列に近づけてケーブルが曲げの連続を受けるようにすることができる。
【0081】
別の実施形態では、このローラ列は、コードの軸の周りを移動することができる。
【0082】
本発明による補強製品
【0083】
本発明の別の主題は、エラストマー母材と上記に定めた通りの少なくとも1つのコードとを有する補強製品である。
【0084】
有利なことに、補強製品は、エラストマー母材に埋め込まれた本発明による1又は複数のコードを備え、複数のコードの場合に、コードは主方向に並んで配置される。
【0085】
本発明によるタイヤ
【0086】
本発明の別の主題は、上記に定めた通りの少なくとも1つのコード又は補強製品を有するタイヤである。
【0087】
好ましくは、タイヤは、2個のビードに固定されて、それ自体がトレッドで覆い被されたクラウン補強体によって半径方向に覆い被されたカーカス補強体を有し、クラウン補強体は、2個の側壁によってビードに接続され、上記に定めた通りの少なくとも1つのコードを備える。
【0088】
1つの好ましい実施形態では、クラウン補強体は、保護補強体と作動補強体とを備え、作動補強体は、上記に定めた通りの少なくとも1つのコードを備え、保護補強体は、半径方向にトレッドと作動補強体の間に挟まれている。
【0089】
コードは、最も特に「大型車両」、すなわち、地下鉄、バス、道路運搬車両(トラック、トラクタ、トレーラ)、オフロード車両、農業車両又は建設プラント車両、又は他の運送又は荷役車両のような重車両から選択される産業車両に向けたものである。
【0090】
好ましくは、タイヤは、建設プラントタイプの車両のためのものである。従って、タイヤは、タイヤを取り付けることを意図されたリムのシート部の直径が、インチ単位で25インチ以上、好ましくは39インチから63インチまでのサイズを有する。
【0091】
本発明はまた、本発明によるアセンブリ、又は本発明による含浸したアセンブリを有するゴム物品に関する。ゴム物品が意味するのは、ボール、非空気圧タイヤケーシングのような非空気的物体、コンベヤベルト又は無限軌道のゴムで作ることができたあらゆる種類の物品である。
【0092】
本発明のより良い理解は、単に非限定的な例として与えられて図面を参照して行われる後に続く実施例を読めば取得されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【
図1】本発明によるタイヤの周方向に垂直な断面図である。
【
図3】本発明により補強された製品の断面図である。
【
図4】本発明によるコード(50)に関するコードの軸(真っ直ぐで静止していると仮定する)と垂直な断面での概略図である。
【
図5】本発明によるコード(50)を製造するための設備に関する模式図である。
【
図6】本発明によるコード(50)を製造するための設備に関する模式図である。
【
図7】本発明によりコード(50)の外部層を内部層に近づける段階400の模式図である。
【
図8】コードEDITの写真と比較コードC1及びC2の写真とを示す図である。
【
図9】本発明によるコード50、51、及び70の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0094】
本発明によるタイヤの実施例
【0095】
タイヤに関して通常の各々軸線方向(X)、半径方向(Y)、及び周方向(Z)に対応する座標系X、Y、Zを
図1及び2に表している。
【0096】
タイヤの「正中円周面」Mは、タイヤの回転軸に垂直であり、各ビードの環状補強構造体から等距離に位置する平面である。
【0097】
図1及び2は、本発明による一般的な参照番号10で示されるタイヤを表している。
【0098】
タイヤ10は、建設プラントタイプ、例えば、「ダンプカー」タイプの重車両のためのものである。従って、タイヤ10は、型式53/80R63の寸法を有する。
【0099】
タイヤ10は、クラウン補強体14で補強されたクラウン12と、2個の側壁16と、2個のビード18とを有し、これらのビード18の各々は、環状構造体、この例ではビードワイヤ20を使用して補強されている。クラウン補強体14は、トレッド22によって半径方向に覆い被され、側壁16によってビーズ18に接続される。カーカス補強体24は、2個のビード18に固定され、この例では2個のビードワイヤ20の周りに巻かれ、タイヤ20の外側に向けて位置決めされた折返し部26を備え、折返し部26は、ここではホイールリム28の上に装着されて示されている。カーカス補強体24は、クラウン補強体14によって半径方向に覆い被されている。
【0100】
カーカス補強体24は、半径方向カーカスコード(図示せず)で補強された少なくとも1つのカーカスプライ30を備える。カーカスコードは、互いに実質的に平行に位置決めされ、正中円周面M(2個のビード18間の中間に位置してクラウン補強体14の中心を通る、タイヤの回転軸に垂直な平面)に対して80°と90°の間に含まれる角度を成すように、一方のビード18から他方に延びる。
【0101】
タイヤ10はまた、タイヤ10の半径方向内面34を定め、タイヤ10の内部空間から来る空気の拡散からカーカスプライ30を保護することを意図されたエラストマーで作られたシーリングプライ32(一般的に「内側ライナ」として公知)を備える。
【0102】
クラウン補強体14は、半径方向にタイヤ10の外側から内側へ向けて、トレッド22の半径方向内側に配置された保護補強体36と、保護補強体36の半径方向内側に配置された作動補強体38と、作動補強体38の半径方向内側に配置された追加補強体40とを備える。従って、保護補強体36は、半径方向にトレッド22と作動補強体38の間に挟まれている。作動補強体38は、半径方向に保護補強体36と追加補強体40の間に挟まれている。
【0103】
保護補強体36は、保護金属コードを備える第1及び第2の保護プライ42、44を備え、第1のプライ42は、第2のプライ44の半径方向内側に配置される。必要に応じて、保護金属コードは、タイヤの周方向Zに対して少なくとも10°に等しい、好ましくは10°から35°の範囲、より好ましくは15°から30°の範囲の角度を成す。
【0104】
作動補強体38は、第1及び第2の作動プライ46、48を備え、第1のプライ46は、第2のプライ48の半径方向内側に配置される。各プライ46、48は、少なくとも1つのコード50を備える。必要に応じて、作動金属コード50は、一方の作動プライから他方の作動プライに交差し、タイヤの周方向Zに対して最大で60°に等しい、好ましくは15°から40°の範囲にある角度を成す。
【0105】
追加補強体40は、制限ブロックとも呼ばれ、その目的には、膨張の機械的応力を部分的に吸収することであり、例えば、同じくそれ自体公知のように、追加の金属補強要素を備え、例えば、FR2 419、181又はFR2 419、182に説明されているように、タイヤ10の周方向Zに対して最大で10°に等しく、好ましくは5°から10°の範囲にある角度を成す。
【0106】
本発明による補強製品の実施例
【0107】
図3は、本発明による一般的な参照番号100で示される補強製品を表している。補強製品100は、エラストマー母材102に埋め込まれた少なくとも1つのコード50、この例では複数のコード50を備える。
【0108】
図3は、エラストマー母材102、コード50を座標系X、Y、Zで表し、方向Yが半径方向であり、方向X及びZが軸線方向及び周方向である。
図3では、補強製品100は、主方向Xに並んで配置され、補強製品100内で互いに平行に広がり、集団としてエラストマー母材102に埋め込まれた複数のコード50を備える。
【0109】
本発明によるコード
【0110】
図4は、本発明によるコード50を表している。コードの内部層CIが内接する円にコードの外部層CEを近づける段階400の前でコード50を描いている。
【0111】
コード50は金属であり、2個の円筒形の層を有するマルチストランドタイプである。従って、コード50が構成されるストランドは2層であり、それ以上でも以下でもないことが理解されるであろう。
【0112】
コード50は、K≧1の内部ストランドTIを備えるコードの内部層CIを備える。この特定の例では、K=1、2、3、又は4、好ましくはK=1、2、又は3、より好ましくはK=1又は3であり、ここでは、K=3である。内部層CIは、厚みGのエラストマー組成物によって囲まれ、従って、シース内部層CIGを形成する。外部層CEは、コードのシース内部層CIGの周りに螺旋半径R2で巻かれた、L>1の外部ストランドTEを備える。この特定の例では、L=6、7、8、9、又は10であり、好ましくはL=6、7、8、又は9、より好ましくはL=6又は9であり、この特定の例では、L=9である。ここでは、R2は、1.69mmに等しい。
【0113】
エラストマー組成物の厚みGは、比率R2/Rtが1.02から1.25の範囲になるようになっており、ここで、Rtは内部層CIが理論上の外部層CETと直接接触する時に取得される理論上の外部層CETの螺旋半径である。ここでは、R2=1.69、R2/Rt=1.06である。
【0114】
コード50は、コードの外部層CEをコードの内部層CIが外接する円に近づけて比率R2/Rtが1.00から1.10の範囲になるようにする段階500を有する方法により、最後に取得される。ここでは、R2=1.67、R2/Rt=1.05である。
【0115】
コード50はまた、単一ラッピングワイヤで作られたラッパーF(図示せず)を備える。
【0116】
コード50の内部ストランドTI
【0117】
内部ストランドは、3層ストランドであり、Q=2、3、又は4の内部金属スレッドF1で作られた内部層C1と、内部層C1に巻かれたM個の中間金属スレッドで作られた中間層C2と、中間層C2に巻かれたN個の外部金属スレッドで作られた外部層C3とを備える。
【0118】
ここでは、Q=4である。
【0119】
M=7、8、9、又は10であり、好ましくはM=7、8、又は9である。ここではM=9である。
【0120】
N=12、13、14、15、又は16であり、好ましくはN=12、13、又は14である。ここではN=14である。
【0121】
各内部ストランドTIの中間層C2は脱飽和され、不完全に脱飽和されている。脱飽和されているので、各内部ストランドの外部層のスレッド間距離は15μm以上、より好ましくは35μm以上であり、ここでは43μmに等しい。各内部ストランドの中間層のスレッド間距離I2の合計SI2は、各内部ストランドの中間層の中間スレッドの直径d2よりも大きいか又はそれに等しい。ここでは、合計SI2=0.39mmは、d2=0.26mmより大きい値である。
【0122】
各内部ストランドTIの外部層C3は脱飽和され、不完全に脱飽和されている。脱飽和されているので、各内部ストランドの外部層のスレッド間距離は15μm以上、より好ましくは35μm以上、より好ましくは50μm以上であり、ここでは53μmに等しい。各内部ストランドの外部層のスレッド間距離I3の合計SI3は、各内部ストランドの外部層の外部スレッドの直径d3よりも大きいか又はそれに等しい。ここでは、合計SI3=0.74mmは、d3=0.26mmより大きい値である。
【0123】
各内部ストランドTIの各内部、中間及び外部スレッドは、それぞれ直径d1、d2及びd3を有する。各内部ストランドTIの各内部スレッド直径d1、中間スレッド直径d2及び外部スレッド直径d3は、0.10mmから0.60mm、好ましくは0.12mmから0.50mm、より好ましくは0.15mmから0.42mmの範囲である。ここでは、d1=d2=d3=0.26mmである。
【0124】
コード50の外部ストランドTE
【0125】
各外部ストランドTEは3層を有し、Q’=2、3、又は4の内部金属スレッドで作られた内部層C1’と、内部層C1’に巻かれたM’個の中間金属スレッドで作られた中間層C2’と、中間層C2’に巻かれたN’個の外部金属スレッドで作られた外部層C3’とを備える。
【0126】
ここでは、Q’=3である。
【0127】
M’=7、8、9、又は10であり、好ましくはM’=7、8、又は9である。ここではM’=9である。
【0128】
N’=12、13、14、15、又は16であり、好ましくはN’=12、13、又は14である。ここではN’=14である。
【0129】
各外部ストランドTEの中間層C2’は脱飽和され、不完全に脱飽和されている。脱飽和されているので、各外部ストランドの外部層のスレッド間距離は15μm以上、より好ましくは35μm以上であり、ここでは43μmに等しい。各外部ストランドの中間層のスレッド間距離I2’の合計SI2’は、各外部ストランドの中間層の中間スレッドの直径d2’以上である。ここでは、合計SI2’=0.39mmであり、d2’=0.23mmより大きい値である。
【0130】
各外部ストランドTEの外部層C3は脱飽和され、不完全に脱飽和されている。脱飽和されているので、各外部ストランドの外部層のスレッド間距離は15μm以上、より好ましくは35μm以上、より好ましくは50μm以上であり、ここでは50μmに等しい。各外部ストランドの外部層のスレッド間距離I3’の合計SI3’は、各外部ストランドの外部層の外部スレッドの直径d3’以上である。ここでは、合計SI3’=0.70mmであり、d3’=0.23mmより大きい値である。
【0131】
各外部ストランドTEの各内部、中間、及び外部スレッドは、それぞれ直径d1’、d2’、及びd3’を有する。各内外部ストランドTEの各内部スレッド直径d1’、中間スレッド直径d2’及び外部スレッド直径d3’は、0.10mmから0.60mm、好ましくは0.12mmから0.50mm、より好ましくは0.14mmから0.42mmの範囲である。ここでは、d1’=0.26mm、d2’=d3’=0.23mmである。
【0132】
コード50は、以下のようになっている:
-Q=4、M=9、及びN=14であり、
-各内部ストランドの各内部金属スレッドは、各内部ストランドの各中間スレッドの直径d2に等しく、かつ各内部ストランドの各外部スレッドの直径d3に等しい直径d1を有し、
-Q’=3、M’=9、及びN’=14であり、
-各外部ストランドの各中間金属スレッドは、各外部ストランドの各外部スレッドの直径d3’に等しい直径d2’を有し、
-d1=d2=d3=d1’である。
【0133】
コードの外部層CEは脱飽和されている。従って、2個の隣接する外部ストランドTEを分離する平均ストランド間距離Eは、20μm以上である。好ましくは、2個の隣接する外部ストランドTEを分離する平均ストランド間距離Eは、40μm以上であり、より好ましくは50μm以上である。ここでは、ストランド間距離Eは170μmに等しい。
【0134】
各スレッドは、2500≦Rm≦3100MPaになるようなRmと表記される破断強度を有する。これらのスレッドに対する鋼は、SHT(「超高張力」)等級であると呼ばれる。他のスレッド、例えば、UT(「超高張力」)又はMT(「メガ張力」)等級のような上位等級のスレッドと同様に、例えば、NT(「普通張力」)又はHT(「高張力」)等級のような下位等級のスレッドを使用することができる。
【0135】
本発明によるコードの製造方法
【0136】
ここで、マルチストランドコード50の製造方法の一例を
図5及び6を参照して説明する。
上述の各内部ストランドは、以下の段階を伴う公知の方法に従って製造され、好ましくはインラインで連続的に実行される:
-最初に、撚り合わせにより、内部層C1のQ=2、3、又は4の内部スレッドF1をピッチp1でZ方向に組み立てて、第1の組立点で内部層C1を形成する第1の段階;
-続いて、撚り合わせ又は捩りにより、M個の中間スレッドF2を内部層C1のQ個の内部スレッドF1の周りにピッチp2でZ方向に組み立てて、第2の組立点で中間層C2を形成する第2の段階;
-続いて、撚り合わせ又は捩りにより、N個の外部スレッドF3を中間層C2のM個の中間スレッドF2の周りにピッチp3でZ方向に組み立てて、第3の組立点で外部層C3を形成する第3の段階;
-好ましくは、最終的な撚り-均衡化段階。
【0137】
段階100では、K≧1の内部ストランドTIを撚り合わせによって螺旋状に組み付けて、コードの内部層CIを形成する。
【0138】
段階200では、厚みGを有するエラストマー組成物で内部層CIを取り囲んで、シース内部層CIGを形成し、エラストマー組成物の厚みGは、比率R2/Rtが1.02から1.25の範囲になるようになっており、ここで、Rtは内部層CIが理論上の外部層CETと直接接触する時に取得される理論上の外部層CETの螺旋半径である。
【0139】
上述の各外部ストランドは、以下の段階を伴う公知の方法に従って製造され、好ましくはインラインで連続的に実行される:
-最初に、撚り合わせにより、内部層C1’のQ’=2、3、又は4の内部スレッドF1’をピッチp1’でZ方向に組み立てて、第1の組立点で内部層C1’を形成する第1の段階;
-続いて、撚り合わせ又は捩りにより、M本’の中間スレッドF2’を内部層C1’のQ’個の内部スレッドF1’の周りにピッチp2’でZ方向に組み立てて、第2の組立点で中間層C2’を形成する第2の段階;
-続いて、撚り合わせ又は捩りにより、N’個の外部スレッドF3’を中間層C2’のM’個の中間スレッドF2’の周りにピッチp3’でZ方向に組み立てて、第3の組立点で外部層C3’を形成する第3の段階;
-好ましくは、最終的な撚り-均衡化段階。
【0140】
ここで「撚り-均衡化」が意味するのは、当業者には公知のことであるが、外部層でのように中間層でのストランドの各スレッドに加わる残留トルク対の解消(又は撚りの弾性復帰)である。
【0141】
この最終的な撚り-均衡化段階の後に、ストランドの製造が完了する。各ストランドは、マルチストランドコードを取得するために撚り合わせによって基本ストランドを組み立てるという後の作動に先立ち、保管のために1又は2以上の受けリールに巻かれる。
【0142】
段階300では、L>1の外部ストランドTEは、撚り合わせによってコードの内部層CIの周りに螺旋状に組み立てられる。段階400では、手段500を使用して、コードの外部層CEをコードの内部層CIGが外接する円に近づけ、比率R2/Rtが1.00から1.10の範囲になるようにする。
【0143】
【0144】
コードの外部層CEをコードの内部層CIが外接する円に近づけるために採用される手段500は、例えば、互いに対面しているがオフセットして取り付けられた2列のローラから構成され、それらの間にコードが通される。各列は、6個と8個の間のローラを収容する。一方の列は可動であり、固定された列に近づけてコードが曲げの連続を受けるようにすることができる。これらのローラ列は固定されるか又はコードの軸の周りを移動可能であるものとすることができる。
【0145】
従って、コードは、
図7に示すようにその直径を縮めることができる曲げ作動の連続を受ける。
【0146】
Lは、螺旋半径Rtを有する理論上の外部層CET上に敷設することができる外部ストランドTEの最大数Lmaxに等しく、Lは、外部層CEが不完全に不飽和であるようになっている。ここでは、Lmax=6であり、L=Lmax=6である。
【0147】
エラストマー組成物のシースの厚みGは、厳密に0mmより大きく、好ましくは0.01mm以上であり、厚みGは0.80mm以下、好ましくは0.60mm以下、より好ましくは0.52mm以下である。ここでは、G=0.08mmである。
【0148】
エラストマー組成物は、加硫系、充填材及びジエン系エラストマーを含有する。
【0149】
使用されるエラストマー組成物は、天然(解膠)ゴム及びカーボンブラックN330(65phr)ベースの従来からタイヤに使用されているジエン系エラストマー組成物であり、更に以下の通常添加物を含有する:硫黄(7phr)、スルフェンアミド促進剤(1phr)、ZnO(8phr)、ステアリン酸(0.7phr)、酸化防止剤(1.5phr)、ナフテン酸コバルト(1.5phr)(phrはエラストマー100重量部当たりの重量部を意味する);コーティングエラストマー組成物のE10弾性率は約10MPaである。
【0150】
一部の事例では、最後の組立段階では、ラッパーFが、ピッチpfでS方向に、先に取得されたアセンブリの周りに巻かれる。
【0151】
次に、コードは、半径方向タイヤのクラウン補強体の製造に従来から使用されている補強充填材としての天然ゴム及びカーボンブラックをベースとした公知の組成物から形成された複合生地内にスキミングによって組み込まれる。この組成物は、本質的に、エラストマー及び補強充填剤(カーボンブラック)に加えて、酸化防止剤、ステアリン酸、伸展油、接着促進剤としてのナフテン酸コバルト、かつ最後に加硫系(硫黄、促進剤及びZnO)を含有する。
【0152】
これらのコードによって補強された複合生地は、コードの両側に重ね合わされ、それぞれ1mmと4mmの間の範囲にある厚みを有するエラストマー組成物の2個の薄い層から形成されたエラストマー組成物母材を有する。スキムピッチ(コードがエラストマー組成物生地に敷設される間隔)は、4mmから8mmの範囲である。
【0153】
次に、これらの組成物生地は、タイヤを製造する方法中にクラウン補強体での作動プライとして使用され、その段階は、他に当業者に公知である。
【0154】
以下の表1は、様々なコード50、51、60、及び70の特徴をまとめたものである。
【表1】
【0155】
比較試験
【0156】
空気透過性試験
【0157】
この試験は、一定の圧力下で所与の時間に試験片を通過する空気の体積を測定することにより、試験したコードに対して長手方向の空気透過率を決定することを可能にする。そのような試験の原理は、当業者には公知であり、コードを空気に対して不透過性にするためのコード処理の有効性を明らかにするためものであり、例えば、ASTM規格D2692-98に説明されている。
【0158】
そのような試験は、製造されたままで未老化のコードに対して行われる。生コードは、コーティング組成物と呼ばれるエラストマー組成物で予め外側を被覆される。このために、平行に並べた(コード間距離:20mm)連続する10個のコードが、生状態のジエン系エラストマー組成物の2個の層又は「スキム」(長さが80×200mmの2個の矩形)の間に配置され、各スキムは5mmの厚みを有する。次にこの全てが金型に固定され、各コードは、締付けモジュールを使用して、金型に配置される時に確実に真っ直ぐに横たわるだけの張力下(例えば、3daN)に保たれる;次に、約110℃の温度と15バールの圧力(長さが80×200mmの矩形ピストン)で約8時間加硫(硬化)処理が行われる。その後に、全体が金型から取り出され、このようにして、被覆されたコードの10個の試験片が、特性評価のために長さが7x7x60mmの平行六面体の形状に切り出される。
【0159】
コーティングエラストマー組成物として使用される組成物は、天然(解膠)ゴム及びカーボンブラックN330(65phr)ベースの従来からタイヤに使用されているジエン系エラストマー組成物であり、更に以下の通常添加物を含有する:硫黄(7phr)、スルフェンアミド促進剤(1phr)、ZnO(8phr)、ステアリン酸(0.7phr)、酸化防止剤(1.5phr)、ナフテン酸コバルト(1.5phr)(phrはエラストマー100重量部当たりの重量部を意味する);コーティングエラストマー組成物のE10弾性率は約10MPaである。
【0160】
硬化状態にある周囲のエラストマー組成物(又はコーティングエラストマー組成物)で従って被覆した6cm長のコードに対して試験が以下の方法で行われる:空気が1バールの圧力でコードの入口端に注入され、出口端での空気の体積が流量計(例えば、0~500cm3/minで較正)を使用して測定される。測定中に、コードのサンプルは、圧縮気密シール(例えば、高密度発泡体又はゴム製のシール)内に固定され、コードに沿って一端から他端、その長手軸線に沿って通過する空気の量だけが測定で考慮されるようにする;気密シール自体の気密性は、中実エラストマー組成物の試験片、すなわち、コードのないものを使用して予め点検される。
【0161】
コードの長手方向不透過性が高いほど、測定される平均空気流量(10個の試験片にわたって平均される)は小さくなる。測定は±0.2cm3/minの精度で行われるので、0.2cm3/min以下の測定値はゼロと見なされ、それらは、その軸に沿って(すなわち、その長手方向に)気密(完全に気密)であるとして説明することができるコードに対応する。
【0162】
表2は、比較コードT1及びT2、及び従来技術EDT(189.23)のコードの特徴をまとめたものである
【0163】
【0164】
以下の表3は、それぞれ、従来技術のコードEDT、様々な比較コードC1及びC2、及び本発明によるコード50、60、及び70に対する透過性試験の結果をまとめたものである。比較コードC1は、従来技術のコード189.23のバージョンであり、浸透性を改善するためにスレッドの層を脱飽和し、スレッドの直径を異ならせている。コードC2は、従来技術のコード189.23の別のバージョンである。これらの試験結果は、ベース100に示している。従って、これらの試験のいずれか1つに対して100を超える結果は、試験したコードが対照コードよりも大きい不透過性を示すことを示し、この事例では、対照コードC1は、コードC2、50、51、60、及び70と比較されている。
【0165】
【0166】
本発明によるコード50、51、60、及び70は、コードEDTよりも非常に著しく良好な浸透性を示し、比較コードC1及びC2よりも顕著に良好であり、これは、専ら本発明による比率R2/Rtの結果であることが特記される。更に、
図9では、コード50、51、及び70の場合に、ほぼ完全に中心毛管に浸透しているのに対して、
図8でコードEDT及び比較コードC1、C2の場合はそうではなく、暗い領域は、エラストマー組成物が欠けている領域であることに更に注意することができる。
【0167】
従って、表3は、様々なシース厚に関してエラストマー組成物のコード内への浸透及び従ってこのエラストマー組成物が内部ストランドに近づく機能が、R2/Rt=1の従来技術のコード及び対照コードC1及びC2によって表されるバージョンと比べて、厚みGのシースの存在に起因して本発明による比率R2/Rtの場合に著しく改善することを示している。
【0168】
当然ながら、本発明は、上述の例示的実施形態に限定されるものではない。
【0169】
工業的実施可能性、コスト、及び総合的な性能の理由から、本発明は、従来の円形断面を有する直線状スレッド、すなわち、真っ直ぐなスレッドで実施することが好ましい。
【0170】
これらの特徴が互いに適合することを条件として、上記に説明した又は想定した様々な実施形態の特徴を組み合わせることも可能であることになる。
【符号の説明】
【0171】
50 本発明によるコード
C1 内部ストランドの内部層
C2 内部ストランドの中間層
C3 内部ストランドの外部層
CET 理論上の外部層
【国際調査報告】