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特表2023-549708押出装置で押し出された管の溶融物の垂れ下がりを測定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】押出装置で押し出された管の溶融物の垂れ下がりを測定する方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/92 20190101AFI20231121BHJP
   G01B 11/06 20060101ALI20231121BHJP
   B29C 48/88 20190101ALI20231121BHJP
   B29C 48/09 20190101ALI20231121BHJP
【FI】
B29C48/92
G01B11/06 101Z
B29C48/88
B29C48/09
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526302
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-05-31
(86)【国際出願番号】 EP2021080214
(87)【国際公開番号】W WO2022106180
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】102020130298.3
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102020130903.1
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511082609
【氏名又は名称】シコラ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】シコラ・ハラルド
【テーマコード(参考)】
2F065
4F207
【Fターム(参考)】
2F065AA30
2F065AA52
2F065BB08
2F065CC00
2F065FF31
2F065FF41
2F065GG01
2F065MM09
2F065PP22
4F207AG08
4F207AP05
4F207AP11
4F207AQ02
4F207AR06
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK76
4F207KM06
4F207KM16
(57)【要約】
本発明は、押出装置内で押し出された管の溶融物の垂れ下がりを測定するための方法に関し、管の壁厚は、管の円周にわたって測定され、管の円周にわたる壁厚プロファイルは、測定された壁厚から生成され、溶融物の垂れ下がりは、生成された壁厚プロファイルの周波数および/または振幅から測定される。
図4


【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出装置(20)内で押し出される管(10)の溶融物の垂れ下がりを測定するための方法であって、前記管(10)の壁厚(40)が前記管(10)の円周にわたって測定され、前記管(10)の前記円周にわたる壁厚プロファイル(54)が前記測定された壁厚(40)から生成されることと、前記溶融物の前記垂れ下がりが、生成された前記壁厚プロファイル(54)の周波数および/または振幅から測定されることとを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記溶融物の前記垂れ下がりが、前記生成された壁厚プロファイル(54)と基準壁厚プロファイル(50)との比較から推測されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基準壁厚プロファイル(50)が、周期的な基準壁厚プロファイルであることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記基準壁厚プロファイル(50)が、前記押出装置(20)の出口で直接、予想または測定される基準壁厚プロファイル(50)であることを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記生成された壁厚プロファイル(54)と前記基準壁厚プロファイル(50)との比較から偏差プロファイル(56)が生成されることを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記管(10)の前記壁厚(40)が、前記押出装置(20)から出てくる前記管(10)の第1の冷却部(22)の下流で前記管(10)の前記円周にわたって測定されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記管(10)が完全に固化する前に予想される前記溶融物のさらなる垂れ下がりが、前記溶融物の前記測定された垂れ下がりから予測されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記押出装置(20)および/または前記押出装置(20)の下流に配置された少なくとも1つの冷却部(22、26)の少なくとも1つのプロセスパラメータにおける変化が、前記溶融物の前記測定された垂れ下がりに基づいて識別されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記押出装置(20)および/または前記押出装置(20)の下流に配置された少なくとも1つの冷却部(22、26)の少なくとも1つの制御パラメータが、前記溶融物の前記測定された垂れ下がりに基づいて変更されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの制御パラメータが、生成された前記偏差プロファイル(56)によって変更されることを特徴とする、請求項5および9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの制御パラメータが、位相ロックループによって変更されることを特徴とする、請求項9または10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの制御パラメータが、前記押出装置(20)の出力容量および/または前記押出装置(20)内の溶融温度および/または前記押出装置(20)の前記出口における前記管(10)の形状を測定する前記押出装置(20)の設定要素(51)の温度および/または位置であることを特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記管(10)の前記壁厚(40)を測定するために、テラヘルツ放射線(32)が前記管(10)の前記円周にわたって前記管(10)に向かって放出され、前記管(10)によって反射されたテラヘルツ放射線(32)が検出され、前記管(10)の前記円周にわたる前記壁厚(40)が、前記検出されたテラヘルツ放射線(32)から測定されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記テラヘルツ放射線(32)が、変調連続波テラヘルツ放射、特に周波数変調連続波テラヘルツ放射であり、および/または前記テラヘルツ放射線(32)が、パルス変調テラヘルツ放射または位相変調テラヘルツ放射であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記管(10)の前記壁厚(40)が、前記管(10)によって放出および反射された前記テラヘルツ放射線(32)の伝播時間測定から測定されることを特徴とする、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記テラヘルツ放射線(32)を放出するための少なくとも1つの送信機と、前記管(10)によって放出および反射された前記テラヘルツ放射線(32)を検出するための少なくとも1つの検出器とが、前記テラヘルツ放射線の前記放出および検出中に、前記管(10)の前記長手方向軸を中心に、好ましくは円形経路に沿って回転することを特徴とする、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出装置で押し出された管の溶融物の垂れ下がりを測定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
押出装置では、例えばプラスチック管が押し出され、押出装置を出る管はそれらの長手方向に沿って規則的に搬送される。このプロセスでは、それらは、典型的には、冷却液、例えば水が管の外面に噴霧されて管を冷却する複数の冷却部を通過する。押出装置を出た直後、押し出された管の溶融物は依然として広い領域にわたって流れることができ、これはまだ固化していないことを意味する。冷却プロセスの間、冷却部によって強化されて、管は、完全に硬化するまで、またはそれぞれ固化するまで冷却される。
【0003】
テラヘルツ放射線によって管の直径および/または壁厚を測定する方法は、国際公開第2016/139155号から知られている。この測定方法では、押出装置内で押し出される管の直径または壁厚などの幾何学的パラメータの精密な測定が可能である。特に、管が押出装置を出た直後に測定される場合、測定された幾何学的パラメータは、管の完全に固化した状態の実際の幾何学的パラメータから逸脱する可能性がある。特に、押し出された管の固化中に、重力の結果として溶融物の下方への垂れ下がりが規則的に発生し、その結果、管の上部領域と下部領域との間の壁厚比が冷却の過程にわたって変化する。溶融物の垂れ下がりを完全に防止することはできない。押出装置からの出口で不均一な壁厚を意図的に設定することによって、予測的に垂れ下がりを打ち消すことが試みられている。その際、垂れ下がりを精密に制御する必要がある。しかしながら、垂れ下がりは、測定によって検出することが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
説明された従来技術から進めて、本発明の目的は、最初に述べたタイプの方法を提供することであり、それによって溶融物の垂れ下がりを従来技術と比較してより簡単かつより精密に検出することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、請求項1の主題によって目的を達成する。有利な実施形態は、従属請求項、明細書および図面に開示されている。
【0006】
最初に述べたタイプの方法では、本発明は、管の壁厚が管の円周にわたって測定され、管の円周にわたる壁厚プロファイルが、測定された壁厚から生成されるという点、また溶融物の垂れ下がりが、生成された壁厚プロファイルの周波数および/または振幅から測定されるという点で、目的を達成する。
【0007】
本発明に従って測定される管は、例えば、プラスチック管であってもよい。これは、押出装置内で押し出される。押出装置では、知られているように、押出材料は加熱により溶融され、溶融物は、押し出される物体の形状をモデル化する押出機ノズルを介して排出される。この目的のために、押出機ノズルは、少なくとも1つの出口開口部を有する。押し出された管は、押出装置から長手方向に排出され、長手方向にさらに搬送される。特に、管は、本発明による測定中に長手方向に搬送される。本発明による壁厚の測定中、管は完全に固化していない可能性があり、これは依然として流動性成分を有することを意味する。押出装置を出た後、管は1つまたは複数の冷却部を通過することができる。このような冷却部では、説明したように、例えば水などの冷却液が冷却のために管の外面に噴霧される。押出装置を出て搬送部のさらなる領域にわたって継続した直後、管はまだ完全には固化しておらず、したがって依然として溶融物の形態の流動性成分を有する。冷却部を通過すると、管は、その最終形状に達するまでさらに連続的に固化される。第1の冷却部を通過した後、管は、典型的にはまだ完全には固化しておらず、これは依然として流動性成分を有することを意味する。
【0008】
説明したように、管の固化中に、溶融物の下方への垂れ下がりが生じる。また説明したように、溶融物は押出機ノズルのヘッド内で直接管に成形されるため、垂れ下がりを完全に回避することはできない。垂れ下がりは、押出装置からの出口において、管が下部領域よりも上部領域においてより大きい壁厚で意図的に排出されるという点で予想され得る。原則として、押出機内の溶融物の温度を可能な限り高く設定することが望ましいが、これは、押出装置の高い出力容量および対応する生産性と同義だからである。一方、管の下部領域での溶融物の制御されない垂れ下がり、したがって完全に冷却された管の形状の許容できない逸脱のリスクは、温度と共に高まる。
【0009】
設定要素、例えば板状設定要素は、多くの場合、そのような押出装置の押出機ノズルのヘッドに設けられる。そのような設定要素は、典型的には、押出機ノズルの少なくとも1つの出口開口部の近傍に配置される。設定要素により、押出装置の押出機ノズルからの出口における壁厚は、管の円周にわたって複数の点で設定することができる。一般的な押出機ノズルは、特に管内壁の領域に配置された、例えば10個、16個、または20個のそのような設定要素を有する。これらの設定要素の各々は、機械的に調整することができ、かつ/またはヒータを備え、この領域における壁厚の変動を可能にする。管の温度が高いほど、より顕著な流れ挙動をもたらす。管の円周にわたって管の壁厚を適切に設定するために、そのような設定要素に多かれ少なかれ潤滑剤を供給することも考えられる。
【0010】
本発明は、上述の設定要素が管の円周にわたって壁厚の変調をもたらすという驚くべき認識に基づいており、これは、特に正確な壁厚測定、例えば、以下でより詳細に説明するようなテラヘルツ放射線壁厚測定で測定することによって、壁が冷却された後、特に管の内部で依然として識別することができる。特に、壁厚プロファイルは、測定によって検出され得る周波数および/または振幅変調を有する。本発明者らは、この変調が設定要素に起因するものであると推測している。壁厚プロファイルは、特に、余弦関数または正弦関数などの周期関数に従って変調することができる。壁厚の変調の振幅は非常に小さい。例えば、約10mmの平均壁厚では、壁厚の変調の振幅は約10μmであり、したがって約0.1%である。しかしながら、それに応じて正確な壁厚測定方法を用いて、変調を確実に検出することができる。
【0011】
本発明はまた、壁厚プロファイルの周波数および/または振幅変調が溶融物の垂れ下がりに応じて変化するという認識に基づいている。例えば、管の円周にわたって同じ周波数および特定の振幅を有する周期的な壁厚プロファイルが押出装置の押出機ノズルからの出口に直接存在する場合、壁厚プロファイルの周波数および振幅の両方は、管が冷えるにつれて生じる溶融物の垂れ下がり中に変化し得る。溶融物の垂れ下がりに起因して、壁厚プロファイルのいわば圧縮が、管の下部領域において生じ、これは、壁厚プロファイルの変調の周波数がより大きいことを意味する。加えて、壁厚プロファイルの変調振幅もまた、管が冷えるにつれて低減される。この理由は、最初はほとんどまだ完全に存在していた溶融物の変調が、特に冷却部において外側から始まる管材料の固化に起因して最初は元の相で硬化し、溶融物のまだ液体の成分は重力の結果として下方に垂れ下がるためであると推測される。結果として、壁厚プロファイルの対応する振幅減少がおそらく生じる。
【0012】
これに基づいて、本発明の教示は、円周にわたって測定された管の壁厚プロファイルの周波数および/または振幅の評価を使用して、上方から下方への溶融物の垂れ下がりの程度を検出することである。本発明によれば、これは従来技術と比較してより簡単でより正確な方法で可能である。当然のことながら、例えば壁厚プロファイルの周波数を直接測定したり、またはそれぞれ評価したりすることは必須ではない。例えば、壁厚プロファイルの波長もしくは位相、またはそれぞれ位相シフトなど、周波数によって測定される変数を測定して、それを評価に使用することも可能である。振幅についても同様である。
【0013】
したがって、本発明によれば、管の壁厚は、管の円周にわたって測定される。この場合、壁厚は、管の円周にわたって連続的にまたは離散的な周方向距離で測定することができる。この場合、管の全周にわたって、すなわち360°の角度範囲で測定されることが好ましい。しかしながら、全周の一部にわたってのみ、特に、溶融物の垂れ下がりが壁厚プロファイルの周波数および/または振幅に影響を及ぼす円周の上もしくは下の4分の1、または上もしくは下の半分などの溶融物のたるみに特徴的な部分にわたってのみ、壁厚を測定することも考えられる。測定された壁厚から、管の円周にわたる壁厚プロファイルが生成され、これは円周にわたる壁厚を示す曲線を意味する。壁厚が連続的に測定されず、代わりに円周にわたって離散距離で測定される場合、壁厚プロファイルを示す曲線を生成するために、測定点間で補間を実行することができる。生成された壁厚プロファイルの周波数および/または振幅の評価を使用して、溶融物の垂れ下がりを測定によって正確に測定することができる。
【0014】
説明したように、壁厚プロファイルの周波数および/または振幅変調は、特に押出装置の出口における壁厚のための設定要素によって引き起こすことができる。この場合、例えば周期的な振幅変調を伴う壁厚プロファイルが押出装置の押出ノズルの出口に存在することができる。次いで、この壁厚プロファイルは、本発明に従って測定および評価される溶融物の垂れ下がりに従って変化する。しかしながら、本発明は、壁厚を確立するための異なる手段を有する、特にそのような設定要素のない押出装置にも使用することができる。次いで、溶融物の垂れ下がりによって引き起こされる、押出装置の出口に存在する他の特徴的な壁厚変動の変化を評価することが可能である。このような壁厚変動は、本発明に従って意図的に導入することもできる。例えば、押出装置の出口における壁厚を適切に設定することによって、増加または減少した壁厚を有する画定された周方向部分を設計することが考えられる。この目的のために、増加または減少した壁厚を引き起こす少なくとも1つの対応するマーキング要素を押出装置の出口に設けることができる。溶融物が垂れ下がる場合、壁厚が増加または減少した領域における壁厚プロファイルの測定によって識別され得る変化、例えば、壁厚が増加または減少した壁部の幅の増加または減少が起こり得る。したがって、振幅変化は、本発明に従って測定および生成された壁厚プロファイルに生じる。このことから、次いで、溶融物の垂れ下がりを推測することができる。
【0015】
一般的に言えば、押出装置は、本発明に従って生成された壁厚プロファイルにおいて識別することができ、またはそれぞれ識別される壁厚の特徴的な特性を引き起こす少なくとも1つの要素をその出口に有することができる。
【0016】
一実施形態によれば、溶融物の垂れ下がりは、生成された壁厚プロファイルと基準壁厚プロファイルとの比較から推測することができる。特に、溶融物の垂れ下がりは、生成された壁厚プロファイルの周波数および/または振幅と基準壁厚プロファイルの周波数および/または振幅との比較から推測することができる。基準壁厚プロファイルは、測定によって、または理論的に、特に数学的に測定することができる。基準壁厚プロファイルは、特に、生成された壁厚プロファイルと同じ周方向部分に存在することができる。本発明に従って生成された壁厚プロファイルが管の全周にわたって生成される場合、基準壁厚プロファイルも管の全周にわたって存在することができる。生成された壁厚プロファイルと基準壁厚プロファイルとの比較は、特に溶融物の垂れ下がりの定量的測定を単純化する。垂れ下がりによって引き起こされる壁厚プロファイルの変化は、特に簡単な方法で確認することができる。
【0017】
特に実用的な方法では、基準壁厚プロファイルは、周期的な基準壁厚プロファイル、例えば、正弦または余弦形状の基準壁厚プロファイルとすることができる。このような周期的な基準壁厚プロファイルは、少なくとも壁厚を測定する設定要素が存在し、均一に配置されている場合、押出装置の押出機ノズルからの出口で直接予想され得る。このような周期的な基準壁厚プロファイルは、垂れ下がりを測定するための本発明による比較の開始値として特に適している。しかしながら、特に、そのような設定要素が設けられていない場合、基準壁厚プロファイルは、異なる基準壁厚プロファイル、例えば、意図的に導入され得る特徴的な壁厚変化をモデル化する基準壁厚プロファイルであってもよい。
【0018】
したがって、基準壁厚プロファイルは、押出装置の出口で直接、特に押出装置の押出機ノズルの出口で直接、予想または測定される基準壁厚プロファイルとすることができる。既に説明したように、例えば、特に比較的大きな振幅を有する周期的プロファイルがそこで予想され得る。後に測定された壁厚プロファイルが、基準壁厚プロファイルから、例えば基準壁厚プロファイルの周期性から逸脱しているか、または基準壁厚プロファイルから変化している、例えば低い振幅を有する場合、これは溶融物の垂れ下がりの定性的および定量的指標である。
【0019】
別の実施形態によれば、生成された壁厚プロファイルと基準壁厚プロファイルとの間の比較から、特に管の円周にわたって偏差プロファイルを生成することができる。したがって、この偏差プロファイルは、特に曲線の形態で、生成された壁厚プロファイルと基準壁厚プロファイルとの間の偏差をモデル化する。偏差プロファイルは、例えば、生成された壁厚プロファイルと基準壁厚プロファイルとの間の壁厚変化および/または位相変化および/または周波数変化および/または振幅変化を示すことができる。偏差プロファイル、またはそれぞれ偏差プロファイルに対応するプロファイルは、特に適切な方法で、押出装置および/または押出装置の下流に配置された少なくとも1つの冷却部を調整するための入力変数として使用して、測定位置におけるおよび/または管の完全に固化した状態での所望の壁厚プロファイルを達成することができる。
【0020】
管の円周にわたる管の壁厚は、押出装置から来る管の第1の冷却部の下流で測定することができる。特に、測定は、第1の冷却部の後ろおよび第2の冷却部の前で行うことができる。次いで、管は、部分的に、特にその外側で冷却されて固化されるが、通常は、内部に流動可能な溶融成分を依然として有する。
【0021】
測定された溶融物の垂れ下がりから、管が完全に固化する前に予想される溶融物のさらなる垂れ下がりを予測することも可能である。これは、例えば、完全に固化した管の以前に測定された壁厚プロファイルとの比較によって行うことができる。したがって、管が完全に固化していない状態であっても、完全に固化した状態の壁厚形状に関する信頼できる記述を行うことができる。
【0022】
別の実施形態によれば、押出装置および/または押出装置の下流に配置された少なくとも1つの冷却部の少なくとも1つのプロセスパラメータでの変化は、測定された溶融物の垂れ下がりに基づいて識別することができる。したがって、例えば押出装置および/または押出装置の下流に配置された冷却部の故障や冷却液の温度上昇など、生成プロセスに予期しない変化が生じる場合、測定された垂れ下がりは重要な信号生成器である。生成プロセスにおけるそのような予期しない変化は、本発明に従って早期に検出され得、それに応じて打ち消され得る。
【0023】
別の実施形態によれば、押出装置および/または押出装置の下流に配置された少なくとも1つの冷却部の少なくとも1つの制御パラメータは、測定された溶融物の垂れ下がりに基づいて変更することができる。このようにして、安定した生成プロセスを設定することができ、またはそれぞれ、最適なプロセス条件を有するそのような安定した生成プロセスを調整することができる。
【0024】
少なくとも1つの制御パラメータは、生成された偏差プロファイルによって、特に実用的な実施形態に従って変更することができる。偏差プロファイルは、自動調整のための調整変数として特に適している。
【0025】
別の実施形態によれば、少なくとも1つの制御パラメータは、位相ロックループによって変更することができる。位相ロックループ(PLL)は、外部周期基準信号と発振器またはそれに由来する信号との間の位相偏差が可能な限り一定になるように、可変発振器の位相位置またはそれぞれ周波数が閉制御ループを介して影響を受ける調整方法である。位相ロックループの基準周波数は、例えば、押出装置の押出機ノズルの設定要素の数に対応することができる。位相検出器を使用して、生成された壁厚プロファイルと基準周波数を有する基準壁厚プロファイルとの間の位相偏差が、電圧制御発振器の周波数を調整するために使用され、その制御電圧は周波数変化のモデルを示し、これは特に偏差プロファイルに対応することを意味する。位相検出器は、例えば、測定された壁厚プロファイルと基準壁厚プロファイルとの間の偏差プロファイルを出力信号として提供することができる。このような位相ロックループを用いて、本例では、少なくとも1つの制御パラメータを特に適切な方法で変更することができる。もちろん、他の方法、例えば、変調周波数のみを通過させることができるように狭い帯域幅を有するバンドパスフィルタを使用することも考えられる。周波数弁別器を使用することも考えられる。バンドパスフィルタは、例えば、下流位相検出器と組み合わせて使用することができ、位相検出器は、バンドパスフィルタを通してフィルタリングされた測定された壁厚プロファイルと基準壁厚プロファイルとの位相を比較し、位相差を出力する。次いで、位相差を、少なくとも1つの制御パラメータにおける変化の基礎として使用することができる。下流周波数弁別器を有するバンドパスフィルタを使用することも考えられ、周波数弁別器は、バンドパスフィルタを介してフィルタリングされた測定された壁厚プロファイルと基準壁厚プロファイルとの周波数を比較し、周波数差を出力する。次いで、これを、少なくとも1つの制御パラメータにおける変化の基礎として使用することができる。
【0026】
少なくとも1つの制御パラメータは、例えば、押出装置の出力容量および/または押出装置内の溶融温度および/または押出装置の出口における管の形状を測定する押出装置の設定要素の温度および/または位置であり得る。
【0027】
別の実施形態によれば、管の壁厚を測定するために、テラヘルツ放射線が管に向かって放出され、管から反射されたテラヘルツ放射線が検出され、検出されたテラヘルツ放射線、特に検出されたテラヘルツ放射線の強度から管の壁厚が測定されるようにすることができる。この実施形態では、テラヘルツ放射線が管に向かって放出される。テラヘルツ放射線は、部分的に管に入ることができる。これは、管の(外部および任意選択的に内部)境界面で反射され、適切な検出器によって検出される。テラヘルツ放射線の周波数は、例えば、10GHz~3THzの周波数範囲内にあることができる。これは、いわゆるミリ波であり得る。テラヘルツ放射線を放出する送信機および反射されたテラヘルツ放射線を受信する検出器は、実質的に同じ位置に配置することができる。それらは、例えば、トランシーバに統合することができる。幾何学的パラメータは、特にレーザなどの光学系が困難を経験する困難なプロセス環境を含む、テラヘルツ放射線を用いて信頼できる方法で測定することができる。さらに、この測定方法は、本発明に従って評価された壁厚プロファイルの周波数および/または振幅変調を確実に検出するのに十分な精度を提供する。テラヘルツ放射線による壁厚の測定は、例えば国際公開第2016/139155号に記載されている。したがって、この文書が参照される。
【0028】
テラヘルツ放射線は、変調連続波テラヘルツ放射、特に周波数変調連続波テラヘルツ放射であり得る。テラヘルツ放射線は、パルス変調テラヘルツ放射または位相変調テラヘルツ放射であってもよい。周波数変調は、周波数バーストまたは複数の周波数バーストを含むことができる。特に、所定の周波数範囲が1回または複数回横断される、いわゆる周波数掃引が発生する可能性がある。いわゆる時間領域反射測定法または周波数領域反射測定法は、例えば、パルス変調テラヘルツ放射または位相変調テラヘルツ放射として展開することができる。1つの周波数スペクトルの代わりに、複数の離散周波数が送信されることも考えられる。
【0029】
管の壁厚は、例えば国際公開第2016/139155号に記載されているように、管によって放出および反射されたテラヘルツ放射線の伝播時間測定値から測定することができる。
【0030】
さらなる実施形態によれば、テラヘルツ放射線を放出するための少なくとも1つの送信機と、管によって放出および反射されたテラヘルツ放射線を検出するための少なくとも1つの検出器とを、テラヘルツ放射線の放出および検出中に、管の長手方向軸を中心に、好ましくは円形経路に沿って回転させることができる。送信機および検出器からなるペア、例えばトランシーバを回転させる、またはそれぞれシフトさせることによって、管の円周にわたって分布する壁厚の値を検出することができる。当然ながら、送信機および受信機の複数のペアを管の円周にわたって分布させて配置し、このようにして、円周にわたって複数の測定値を測定することも考えられる。
【0031】
本発明の例示的な実施形態は、図面を参照して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明による方法を実施するための装置の概略側面図である。
図2図1の装置の部分断面図である。
図3】溶融物の垂れ下がりを示すための、図1および図2に示す管の断面図である。
図4】本発明による方法を説明するための3つの図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
同じ参照番号は、特に指示しない限り、図面中の同じ対象物を指す。
【0034】
壁12と、管10によって画定された中空空間14と、断面が円形の外面16と、中空空間14を画定する同様に断面が円形の内面18とを有する、本例ではプラスチック管10である管10が、図1および図2に示されている。プラスチック管10は、本例では、押出装置20内の押出機の助けを借りて押し出され、適切な搬送装置によってその長手方向軸に沿って図1の左から右に搬送される。押出装置20の押出機ノズルから出た後、管10は最初に第1の冷却部22を通過するが、ここで、管10は、かなりの程度加熱されてまだ完全には固化されていない、すなわち依然として流動性成分(溶融物)を有する押出装置20を出て、冷却される。さらにこの手順に沿って、管10は測定装置24を通過し、ここで、管10の壁厚は、以下でより詳細に説明する方法で管10の円周にわたって測定される。測定装置24に続いて、管10は、さらなる冷却が行われるさらなる冷却部26を通過する。管10が完全に固化した後、例えば長さ切断装置28で所定の長さに切断される。
【0035】
測定装置24の構造および機能は、図2を参照してより詳細に説明される。図示の例では、測定装置24は、テラヘルツ放射線の送信機および検出器が組み合わされたトランシーバ30を備える。送信機は、テラヘルツ放射線32を管10に向けて放出する。テラヘルツ放射線は、管10の異なる境界面およびトランシーバ30の反対側に配置された反射器34で反射され、トランシーバ30に戻り、そこで検出器によって検出される。さらに、トランシーバ30は、ライン36を介して評価装置38に接続される。検出器によって受信された反射放射線は、ライン36を介して評価装置38に転送される対応する測定信号を生成する。このようにして、評価装置38は、伝搬時間測定値を使用して、図2に描かれている例えば壁厚40、42を測定することができる。
【0036】
この場合、測定装置24は、例えば壁厚40の測定中に管の長手方向軸を中心に回転し、壁厚は管10の全周にわたって連続的にまたは離散距離で測定され、管の円周にわたる壁厚プロファイルがこれから生成される。
【0037】
管10は、図3に断面で示されており、押出装置20の押出機ノズルの隣接する板状設定要素間の境界面は、一定の角度距離で描かれた光線46によって示されている。設定要素は、特に管内壁の領域で冷却される前に、押出管の壁形状でモデル化される。溶融物の垂れ下がりが生じることなく、これらの設定要素は、光線46によるそれらの元の距離に対応する管10の内壁18に反射される。実際には、冷却中の溶融物の垂れ下がりに起因して、設定要素によってモデル化された領域のシフトが生じ、これはφで指定された角度位置から始まり、それに応じて、角度位置φ、φおよびφならびに領域48における光線46’によって図3に示されるように、特に管10の上側が最初に伸張し、続いて管10の下側への圧縮が生じる。
【0038】
この効果は、特に0°~+180°および0°~-180°の管の円周にわたる壁厚プロファイルに関する図4に示されており、ここで0°は管の上側である。図4では、2つの上の図において、壁厚は、いずれの場合も周方向角度にわたってプロットされている。図4の最上段の図には、基準壁厚プロファイル50が示されており、図示の例では、一定の周波数および振幅を有する余弦形状プロファイルである。基準壁厚プロファイルは、押出装置20の押出機ノズルからの出口で直接予想されるプロファイルである。説明のために、押出機ノズルの設定要素51およびそれらの間に形成された境界面52を図4に示す。基準壁厚プロファイル50の周波数は、円周にわたって均一に分布する押出機ノズルの設定要素51または境界面52の周波数にそれぞれ対応する。
【0039】
図4の中段の図は、図1に示す測定装置24の測定位置で管10の円周にわたって測定された壁厚プロファイル54を概略的に示す。一方では、測定された壁厚プロファイル54の振幅は、基準壁厚プロファイル50の振幅より小さいことが分かる。周方向角度が増加するにつれて、図3に示す光線46’のシフトに対応して、0°下方の管の最上部位置から開始して、基準壁厚プロファイル50からの周波数の偏差が発生し、特に最初に角度位置φまで周波数が減少し、次いで管の下側180°まで周波数が増加することが分かる。
【0040】
図4の最下段の図には、測定された壁厚プロファイル54と基準壁厚プロファイル50との間の比較から生成された偏差プロファイル56が示されている。偏差プロファイルは、基準壁厚プロファイル50と比較した、測定された壁厚プロファイル54の位相シフトφを示す。偏差プロファイル54は、相検出器の出力を形成することができ、それに基づいて、押出装置および/または第1の冷却部22または追加の冷却部26の少なくとも1つの制御パラメータが、測定装置24の測定位置において、または管10の完全に冷却された状態において、所望の壁厚プロファイル、例えば周期的な壁厚プロファイルを生成するために変更される。
【0041】
例えば、対応する管10の完全に固化した状態で生成された壁厚プロファイルと例えば比較することによって、管10が依然として流動性成分を規則的に有する測定装置24の測定位置で生成された壁厚プロファイル54を使用して管10が完全に固化する前に予想される溶融物のさらなる垂れ下がりを予測することも可能である。
【符号の説明】
【0042】
10 管
12 壁
14 中空空間
16 外面
18 内壁
20 押出装置
22、26 冷却部
24 測定装置
28 長さ切断装置
30 トランシーバ
32 テラヘルツ放射線
34 反射器
36 ライン
38 評価装置
40、42 壁厚
46、46’ 光線
48 領域
50 基準壁厚プロファイル
51 設定要素
52 境界面
54 壁厚プロファイル
56 偏差プロファイル
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】