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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】リオトロピック液晶相粒子
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/00 20060101AFI20231121BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20231121BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20231121BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231121BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231121BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20231121BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20231121BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20231121BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20231121BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20231121BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20231121BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20231121BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
A61K9/00
A61K9/48
A61P31/10
A61P31/04
A61K45/00
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/08
A61K47/24
A61K47/14
A61K47/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526388
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-06-22
(86)【国際出願番号】 AU2021051277
(87)【国際公開番号】W WO2022087686
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】2020903958
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506018639
【氏名又は名称】ロイヤル・メルボルン・インスティテュート・オブ・テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】ROYAL MELBOURNE INSTITUTE OF TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ドラモンド, カルム
(72)【発明者】
【氏名】ディエット, ブレンダン ポール
(72)【発明者】
【氏名】コン, シャーロット
(72)【発明者】
【氏名】ユ, ハイタオ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA32
4C076AA53
4C076AA99
4C076BB01
4C076BB02
4C076BB04
4C076BB07
4C076BB11
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB22
4C076BB25
4C076CC32
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD39
4C076DD40
4C076DD43
4C076DD45
4C076DD52
4C076DD59
4C076DD60
4C076DD63
4C076DD67
4C076FF31
4C076FF68
4C084AA17
4C084MA05
4C084MA31
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA43
4C084MA66
4C084NA10
4C084NA13
4C084ZB351
4C084ZB352
(57)【要約】
本開示は、グラム陰性細菌及び/又は真菌感染症を治療するための活性剤の送達に有用である、非ラメラリオトロピック液晶相粒子を提供する。非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、グラム陰性細菌外膜又は真菌外層での融合イベントを通じての活性剤の送達において利益をもたらすことが示されている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラム陰性細菌又は真菌に関連する疾患、障害又は状態の治療又は予防方法であって、その治療又は予防を必要とする対象に、治療有効量の抗菌剤又は抗真菌剤を含む非ラメラリオトロピック液晶相粒子を投与して、それにより前記疾患、障害又は状態を治療又は予防するステップを含み、前記非ラメラリオトロピック液晶相粒子が、1つ以上の融合性両親媒性脂質を含む、方法。
【請求項2】
前記疾患、障害又は状態が、グラム陰性細菌又は真菌によって引き起こされる感染症である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非ラメラリオトロピック液晶相粒子が、前記抗菌剤又は抗真菌剤をそのチャネル又は折り畳み内にカプセル封入する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記非ラメラリオトロピック液晶相粒子が、前記1つ以上の融合性両親媒性脂質の自己集合によって形成される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記非ラメラリオトロピック液晶相粒子が、少なくとも2つの融合性両親媒性脂質を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記非ラメラリオトロピック液晶相粒子が、活性剤の存在下で、前記1つ以上の融合性両親媒性脂質の前記自己集合によって形成されている、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記非ラメラリオトロピック液晶相粒子が、キュービック相、ヘキサゴナル相、及びスポンジ相からなる群から選択されるバルク相を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記非ラメラリオトロピック液晶相粒子が、キュボソームである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記非ラメラリオトロピック液晶相粒子が、-0.05nm-1未満の内部曲率誘発性スプレイ
【数1】

を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記非ラメラリオトロピック液晶相粒子が、0mV超のゼータ電位を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記非ラメラリオトロピック液晶相粒子が、約50nm超、任意選択で、約100nm超の粒子直径を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記非ラメラリオトロピック液晶相粒子が、少なくとも1つの安定剤を含み、任意選択で、前記安定剤が、前記粒子の6~18重量%で存在する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記非ラメラリオトロピック液晶相粒子が、1つ以上の正荷電脂質を、任意選択で、0.1~20mol%未満の量で含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記非ラメラリオトロピック液晶相粒子が、非両親媒性及び/又は非融合性荷電化合物を更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記1つ以上の融合性両親媒性脂質が、オレオイル、リノレオイル、リノレノイル、フィタノイル、ファルネソイル(farnesoyl)、及び伸長脂肪族疎水性からなる群から選択される疎水性テール基を提示するものから選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ以上の融合性両親媒性脂質が、アルコール、カルボキシル、ポリオール、糖、アミド、アミン、乳酸、グリセリル、ジグリセリル、配位錯体、カプロラクタム、エーテル、酢酸、キノン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるヘッド基を提示するものから選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上の融合性両親媒性脂質が、1-モノオレイン、2-モノオレイン、シトレム、乳酸オレオイル、オレアミド、モノエライジン、リノール酸、エライジン酸、モノパルミトレイン、モノリノレイン、フィタントリオール、ジオレイン、トリオレイン、ジオレオイルグリセロール、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド、ジオクタデシル(ジメチル)アンモニウムクロリド(DOAC/DODMAC)又はブロミド(DODAB)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-ホスファチジルグリセロール(DOPG)、オレイン酸、リゾ1-ヒドロキシ-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ジヘキシル-ホスホコリン、ビタミンEトコフェロール、ビタミンE(トコフェロール)アセテート、フィタノイルモノエタノールアミド、ファルネソイル(farnesoyl)モノエタノールアミド、オレオイルモノエタノールアミド、リノレオイルモノエタノールアミド及びリノレノイルモノエタノールアミドからなる群から選択され得る、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記非ラメラリオトロピック液晶相粒子が少なくとも2つの融合性両親媒性脂質を含む場合、前記融合性両親媒性脂質のうちの少なくとも1つが、モノオレイン及びフィタントリオールから選択されることになる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記抗菌剤が、グラム陰性細菌抗菌剤である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記抗菌剤が、グラム陰性細菌抗生物質である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記抗菌剤又は抗真菌剤が、疎水性である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記抗菌剤又は抗真菌剤が、2つ以上の抗菌剤又は抗真菌剤である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記2つ以上の抗菌剤又は抗真菌剤が、同じ非ラメラリオトロピック液晶相粒子内の2つ以上の抗菌剤又は2つ以上の抗真菌剤である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記抗菌剤又は抗真菌剤が、前記粒子の0.1~30.0mol%で存在する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記疾患、障害、又は状態が、グラム陰性感染症であり、その場合、病原体が、Enterobacteriaceae、Pseudomonas、Vibrio、Campylobacter、Legionella、Neisseria、Mycobacterium、Hemophilus及びBartonellaからなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記疾患、障害、又は状態が真菌感染症である場合、真菌病原体が、カンジダ属、クリプトコックス属及びアスペルギルス属からなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記抗菌剤又は抗真菌剤が、前記グラム陰性細菌又は真菌の外層若しくは膜での前記非ラメラリオトロピック液晶相粒子間の融合イベントの後に、前記グラム陰性細菌又は真菌中に放出される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記非ラメラリオトロピック液晶相粒子が、モノオレインを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療治療及び疾患の診断の分野に関する。より具体的には、本発明は、活性剤のための担体粒子であり、それを使用する、非ラメラリオトロピック液晶相粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書における背景技術へのいかなる言及も、そのような技術がオーストラリア又は他の場所で共通の一般的知識を構成することを承認と解釈されるべきではない。
【0003】
抗生物質耐性菌の有病率の増加は、人類に対する主要な健康リスクの1つとして捉えられている。耐性は、主に、耐性のある遺伝子変異を促す抗生物質の過剰使用によって引き起こされている。耐性菌による財政的及び健康上の合併症は、将来的に増加すると予測されている抗菌薬治療の新しい手段は、現在、広範囲な調査下にあるが、新しい抗生物質の開発は、依然として遅い。グラム陰性細菌の外部細胞膜は、Escherichia coli及びPseudomonas aeruginosaなどの悪名高い種を含み、追加の透過障壁を提供し、それらを従来の小分子抗生物質に対して特に弾力性があるようにする。最終手段の抗生物質に耐性があるグラム陰性細菌が、すでに報告されている。このため、世界保健機関(WHO)は、グラム陰性細菌に対する新しい治療の特に喫緊の必要性を優先させている。
【0004】
新しい抗生物質に対する低い発見率が継続しているために、既存の治療を補完する技術の開発は重要になり得る。送達技術及び担体制御インターナライゼーションは、細菌と効果的に戦うためのより効果的な治療を提供し得る。特に、ナノ材料は、単一又は複数の療法用化合物の担体としての機能を果たし得、かつ潜在的に細菌膜障壁を弱体化させるように機能する可能性が高くなり得、抗菌アウトカムを増幅させ得る。しかしながら、ナノ材料と細菌との間の相互作用は、依然としてあまり理解されていない
【0005】
エンドサイトーシス経路を介してナノ材料を通常インターナライズする哺乳動物細胞とは対照的に2、3、細菌は、材料を輸送するそれらの細胞壁の透過性に依存する。細胞壁の生得的な複雑さは、効果的な抗生物質の開発における困難さに対する主な原因であり、したがって、哺乳動物細胞に適した担体はまた、めったに細菌細胞への送達に適していない。キュービック相脂質ナノ担体(キュボソーム)などのリオトロピック液晶中間層担体は、エンドサイトーシス以外の手段による哺乳動物細胞株への治療薬の送達におけるいくつかの見込みを示している4、5、6、7。送達のメカニズム、並びに、その結果としての、いずれかのカプセル封入された活性の信頼性及び送達の範囲は、既存の文献では未だに解決されていない。
【0006】
同様に、耐性真菌感染症は有病率が増加しており、現在の健康の慣行を脅かしている。血流に入ると、これらの感染症は、約25%の致死率を有する。推定される医療費は、年間30億ドルである。抗真菌薬は、しばしば高い細胞毒性を示し、難水溶性である。細菌と同様に、真菌の、外側細胞壁材料、例えば、キチンは、抗菌剤に対して有意な拡散障壁を提供することができる。
【0007】
抗菌剤及び抗真菌剤、並びに他の生物学的に活性剤を含む抗菌剤を送達する追加の担体を提供する必要がある。そのような活性物質の担体として、他の医学的用途の中で微生物感染症のより効果的な治療のために、新しいリオトロピック液晶相粒子の開発が更に必要である。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、1つ以上の融合性両親媒性脂質を含む非ラメラリオトロピック液晶相粒子、及び活性剤を封入する粒子が提供される。
【0009】
第2の態様では、第1の態様の非ラメラリオトロピック液晶相粒子、薬学的に許容される担体、希釈剤及び/又は賦形剤からなる薬学的組成物が提供される。
【0010】
第3の態様では、第1の態様の非ラメラリオトロピック液晶相粒子を形成するステップと、非ラメラリオトロピック液晶相粒子を標的領域に投与するステップと、を含む、活性剤の制御放出方法が提供される。
【0011】
第4の態様では、第1の態様の非ラメラリオトロピック液晶相粒子を形成する方法であって、(i)1つ以上の融合性両親媒性脂質を提供するステップと、(ii)活性剤の存在下で、1つ以上の融合性両親媒性脂質を溶液に曝露するステップと、を含む、方法が提供される。
【0012】
第5の態様では、疾患、障害又は状態の治療又は予防方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の第1の態様の非ラメラリオトロピック液晶相粒子、又は第2の態様の薬学的組成物を投与して、それによって疾患、障害又は状態を治療又は予防するステップを含む、方法が提供される。
【0013】
第6の態様では、疾患、障害又は状態の治療又は予防における使用のために、第1の態様の非ラメラリオトロピック液晶相粒子、又は第2の態様の薬学的組成物が提供される。
【0014】
第7の態様では、疾患、障害又は状態の治療のための医薬品の製造において、第1の態様の非ラメラリオトロピック液晶相粒子の使用が提供される。
【0015】
第8の態様では、活性剤を生物学的標的に送達する方法であって、第1の態様の非ラメラリオトロピック液晶相粒子を投与するステップを含む、方法が提供される。
【0016】
第9の態様では、哺乳動物における疾患、障害又は状態を診断する方法であって、第1の態様の非ラメラリオトロピック液晶相粒子又は第2の態様の組成物を投与するステップを含み、第1の態様の非ラメラリオトロピック液晶相粒子内の活性剤が、哺乳動物における疾患、障害若しくは状態の診断を容易にするように、哺乳動物に又は哺乳動物から得られた生物学的標的に標識された活性剤である、方法が提供される。
【0017】
上記の個々のセクションで言及される本発明の様々な特徴及び実施形態は、必要に応じて、他のセクションに準用される。したがって、あるセクションで指定された特徴は、必要に応じて、他のセクションで指定された特徴と組み合わされ得る。
【0018】
本発明の更なる特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0019】
本発明が容易に理解され、かつ実用化され得るように、次に、好ましい実施形態が、添付の図面を参照して例として記載される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】蛍光タグ付きキュボソーム粒子の非在下での細菌の一連の蛍光画像である。左及び右は、それぞれ、λex=405nm及びλex=647nmで記録された画像を示す。スケールバー=2μm。
図2】B.cereusによるキュボソームの取り込みを示す一連の画像及びグラフィック表現である。(a)B.cereus表面への単一のキュボソームのその場結合を示すTIRFスナップショット。スケールバー=5μm。(b)結合するキュボソームの平均二乗変位。(c)約4時間にわたる、MOキュボソームがB.cereus表面への連続付着を強調するスナップショット。(d)24時間にわたる、粒子からB.cereusへの蛍光の長期移動。スケールバー=20μm。(e)B.cereus表面と接触する個々のキュボソームについての経時的に抽出された蛍光強度。データは、挿入物内では対数スケール、及び-1/2の指示勾配で示されている。(f)B.cereusについての経時的に抽出された強度。
図3】Staphylococcus Aureusによるキュボソーム取り込みを示す一連の画像及びグラフィック表現である。(a及びb)S.aureusの表面へのMO-DOTAPキュボソームの連続した結合を強調するTIRFスナップショット。スケールバー=2μm。(c)S.aureus表面と接触する個々のキュボソームについて、経時的に抽出された蛍光強度。データは、挿入物内では両対数スケールで、実線及び破線それぞれとして示される-1/3及び-1/2の指示勾配で示されている。(d)S.aureus、ペプチドグリカン抽出物、及びリポタイコ酸で処理されたペプチドグリカン抽出物のクラスターについての経時的な蛍光強度。(e)S.aureusペプチドグリカン抽出物の表面へのMOキュボソームの連続した結合を強調するTIRFスナップショット。スケールバー=5μm。(f)非存在の、かつキュボソームによる処理の際の、S.aureusペプチドグリカン抽出物のSEM顕微鏡写真。スケールバー=1μm。(g)キュボソームによる処置後の固定S.aureusのSEM。スケールバー=300nm。(h)S.aureusペプチドグリカン及びリポタイコ酸抽出物の表面に結合するキュボソームの欠落を示す、一連のTIRFスナップショットである。スケールバー=5μm。
図4】Escherichia coliによるキュボソーム取り込みの変動を示す一連の画像である。(a)Escherichia coliの表面へのMOキュボソームの連続した結合を強調するTIRFスナップショット。スケールバー=2μm。(b)Escherichia coliの表面へのMO-DOTAPキュボソームの連続した結合及び広がり。スケールバー=2μm。(c及びd)λex=647nmでのスナップショットであり、MO及びMO-DOTAPそれぞれについて、E.coliにわたる蛍光の見かけのバーストを強調する。スケールバー=2μm。(e)2つのMO-DOTAPキュボソームの急速な相互作用のスナップショット。最初のフレームは、λex=405nmからの蛍光を示し、続く4つのフレームは、λex=647nmである。2つのキュボソームが10秒及び20秒でランディングすることが観察される。以下のフレームでは、キュボソームはもはや存在しないが、強度の勾配が細菌周囲に示されている。(f~m)MO-キュボソームによって処理されたEscherichia coliのSEM顕微鏡写真。スケールバー=400nm。
図5】Escherichia coliによるキュボソーム取り込みを示す一連の画像及びグラフィック表現である。(a及びb)MO及びMO-DOTAPそれぞれについての個々のE.coli細胞にわたるピーク強度プロファイル。(c)Escherichia coli細胞全体にわたる強度。左軸は、総面積強度を示す。右軸は、ピーク強度を示す。(d)Escherichia coliと接触している個々のMO-DOTAPキュボソームの経時的なピーク強度。挿入物には、対数スケールで再プロットされたデータが含まれている。急な及び浅い破線は、それぞれ、-1及び-1/6の勾配を示す。(e)対数尺度での個々のキュボソームの単一の代表的なプロット。(f)(e)でプロットされた個々のキュボソームの対応するTIRFスナップショット。スケールバー=2μm。
図6】急速な取り込みのインシデントを示すグラフィック表現である。(a)Escherichia coliと接触している個々のキュボソームの経時的なピーク強度。矢印は、蛍光が細菌全体に急速に広がった時点を示す。(b)ログスケールで経時的に秒単位でプロットされたデータ。急な破線及び浅い破線は、それぞれ、-1及び-1/6の勾配を示す。
図7】(a)キュボソーム(明るい点)のSLBとの融合を示す低速度撮影TIRFタイムラプス、を示す一連の画像及びグラフィック表現である。スケールバー=1.5μm。(b)E.coliへのキュボソームの取り込みは、2つの明確なレジームを示す。挿入画像は10秒間隔であり、ナノ担体(NC)の広がりを示す。(c)S.aureusへの取り込みは、1つの明確なレジームを示す。(c及びd)それぞれ、E.coli及びS.aureusのNC(明るい斑点)の結合及びインターナライゼーションを示すTIRFタイムラプス。スケールバー=C.albicansへのNC(赤色)の2μm(e)インターナライゼーション。
図8】Pseudomonas aeruginosaに対する様々な程度のノボビオシンを含有するキュボソームの製剤を示す。遊離抗生物質は、普通の黒色線で示されている。x軸上の濃度は、溶液中の薬物濃度である。薬物濃度は、配合物にわたって一貫している。Novoの1~3~5%モルへと増加させることは、粒子あたりの薬物負荷の増加を反映するが、濃度が増加するにつれて存在する粒子はより少なくなる。
図9】Escherichia coliに対する様々な程度のノボビオシンを含有するキュボソームの配合物を示す。遊離抗生物質は、普通の黒色線で示されている。x軸上の濃度は、溶液中の薬物濃度である。薬物濃度は、配合物にわたって一貫している。Novoの1~3~5%モルへと増加させることは、粒子あたりの薬物荷重の増加を反映するが、濃度が増加するにつれて存在する粒子はより少なくなる。
図10】変動している血清環境の存在下でのノボビオシン製剤によるPseudomonas aeruginosaの阻害を示す。x軸は、タンパク質環境の濃度であり、抗生物質の濃度は、各製剤について20ug/mlに固定される。MO-TAP-3NovoをHSA、BSA及びFBSで評価した。遊離抗生物質の等価負荷は、それぞれ、黒色の四角形、円、及び三角形で示されている。破線は、血清タンパク質の不在下でのMO-TAP-3Novoの性能を示す。
図11】Pseudomonas aeruginosaに対する様々な程度のピペラシリンを含有するキュボソームの配合物を示す。遊離抗生物質は、普通の黒色線で示されている。
図12】Escherichia coliに対する様々な程度のピペラシリンを含有するキュボソームの配合物を示す。遊離抗生物質は、普通の黒色線で示されている。
図13】Pseudomonas aeruginosaに対する様々な程度のメロペネムを含有するキュボソームの配合物を示す。遊離抗生物質は、普通の黒色線で示されている。
図14】Escherichia coliに対する様々な程度のメロペネムを含有するキュボソームの配合物を示す。遊離抗生物質は、普通の黒色線で示されている。
図15】Escherichia coliに対する様々な程度のクラリスロマイシンを含有するキュボソームの配合物を示す。遊離抗生物質は、普通の黒色線で示されている。
図16】クラリスロマイシン製剤が沈降/分散不良を起こしやすいことを示す写真である。
図17】Pseudomonas aeruginosaに対する様々な程度のゲンタマイシンを含有するキュボソームの配合物を示す。遊離抗生物質は、普通の黒色線で示されている。
図18】Escherichia coliに対する様々な程度のゲンタマイシンを含有するキュボソームの配合物を示す。遊離抗生物質は、普通の黒色線で示されている。
図19】Escherichia coliに対するジクロキサシリン及びタゾバクタムを含有するキュボソームの配合物を示す。
図20】Escherichia coliに対するベンジルペニシリンを含有するキュボソームの配合物を示す。
図21】Escherichia coliに対する様々な程度のリファンピシンを含有するキュボソームの配合物を示す。
図22】溶液中に遊離しており、MO-1TAP-3Fus(ハッシュカラム)にカプセル封入された様々な用量のリファンピシンについてのCFUカウントを示す。アスタリスクで示される最小阻害濃度(90%死亡)。リファンピシンの場合、試験した最低濃度(0.05μg/ml)では、遊離薬物と比較して、CFU中ですでに50%低減していた。次いで、0.5μg/mlでは、カウントは、約7倍劇的に低減された。それぞれのMICは、プロット上の*によって再び注釈され、それぞれ、遊離している及びカプセル封入されているRifについて、3~5μg/ml及び1μg/mlであり、MICにおける少なくとも3倍の低減を示す。遊離MIC値は、Escherichia coliO157:H7(約4μg/ml)について報告された値と合理的に一致している。
図23】Escherichia coliに対して、0~10~20%の様々な程度のDOPE(増加曲率)を有する1%のリファンピシンを含有するキュボソームの配合物を示す。
図24】遅延試験後の図23についてのように、Escherichia coliに対して、様々な程度のDOPE(増加曲率)を有する1%のリファンピシンを含有するキュボソームの配合物を示す。
図25】Escherichia coliに対して、10又は20の様々な程度のDOPE(増加曲率)を有する1%のDOTAP(正電荷)を含有するキュボソームの配合物を示す。
図26】Escherichia coliに対して、1%のリファンピシン70%MO、30%のDOPE(mol%)、又は1%のリファンピシン60%MO、40%のDOPE(mol%)(DOPEの増加に伴う増加曲率)を含有し、したがって、ヘキサゴナル相を提示する、キュボソームの配合物を示す。
図27】Escherichia coliに対する、図26に示される配合物の第2のデータセットである。
図28】Escherichia coliに対して、1%のリファンピシン、1%のDOTAP (正電荷)、70%のMO及び30%のDOPE又は1%のリファンピシン、1%のDOTAP(正電荷)、60%のMO及び40%のDOPE(DOPEの増加に伴う増加曲率)を含有し、したがって、大腸菌に対してヘキサゴナル相を提示する、キュボソームの配合物を示す。
図29】Escherichia coliに対する、図28に示される配合物の第2のデータセットである。
図30】Escherichia coliに対して、溶液中に遊離しており、MO-1DOTAP-3Fus(ハッシュ化カラム)中にカプセル封入されている様々な投与量のフシジン酸についてのCFUカウントを示す。アスタリスクで示される最小阻害濃度(90%死亡)。
図31】対照としてのカプセル封入された活性剤なしの様々な濃度の脂質ナノ粒子に対するPseudomonas aeruginosa及びEscherichia coliの生存率を示す。
図32】リファンピシン配合物のMIC決定結果及びMycobacterium smegmatisへのDOTAP(正電荷)の組み込みを示す。
図33】Mycobacterium smegmatisに対する、リファンピシン配合物により達成された細胞死及びDOTAP(正電荷)の組み込みを示す。
図34】Mycobacterium tuberculosis H37Raに対する、リファンピシン配合物のMIC決定結果及びDOTAP(正電荷)の組み込みを示す。
図35】Mycobacterium tuberculosis H37Raに対する、リファンピシン配合物により達成された細胞死及びDOTAP(正電荷)の組み込みを示す。
図36】candida albicansに対する、1%のフィリピン、0/1%のDOTAP(正電荷)、0/10%のコレステロールを含有するキュボソームの配合物を示す。
図37】candida albicansに対する、1%のアムホテリシンB、0/1%のDOTAP(正電荷)、0/10%のコレステロールを含有するキュボソームの配合物を示す。
図38】単独のフルコナゾールに対して共焦点及びSEMによって得られた画像、フルコナゾール(対照ナノ粒子)及びフルコナゾール荷重脂質ナノ粒子を含まない脂質粒子を示す。a)pH-5.0での共焦点画像、b)pH-5.0でのSEM画像、c)pH-7.0での共焦点画像、d)pH-7.0でのSEM画像。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、少なくとも部分的に、非ラメラリオトロピック液晶相粒子のある特定のパラメータ及び成分、例えば、成分誘発性脂質の性質、内部又は平均自発曲率、電荷、薬物充填、及びマイクロレオロジーが操作されて、(i)活性剤の改善されたカプセル化封入の改善、(ii)微生物との誘導体の挙動の改善、(iii)活性剤の最適な放出プロファイル、(iv)生体膜と接触する立体障壁及び/又は静電気障壁における低減、(v)そうでなければ起こり、かつ該活性剤の活性を不活性化又は低減させるであろう損傷又は結合からの活性の保護、(vi)そうでなければ細菌膜を横断することができないであろう活性剤を送達する能力、並びに(vii)遊離活性の送達と比較しての活性剤の有効性の改善、のうちの1つ以上が可能である担体粒子を提供することができることを実現することに基づいている。
【0022】
特定の活性剤の送達を改善するように、かつ/又は特定の生物学的標的への送達を改善するように適応させることができる非ラメラリオトロピック液晶相粒子の形成は、検出、標的治療、イメージングなどを含む医療用途内での広範な使用を可能にするであろう。
【0023】
具体的には、本明細書では、真菌及びマイコバクテリア及びグラム陰性細菌にペイロードを送達することが可能である非ラメラリオトロピック液晶相担体粒子を設計することができることが示されている。本明細書での粒子の設計は、具体的には、限定的ではないが、粒子をグラム陰性細菌の細菌膜又は真菌膜との融合によって、抗菌剤及び抗真菌剤の送達に適し得る。
【0024】
真菌、具体的には、グラム陰性菌への活性剤の送達は、困難であることで知られている。周知のとおり、グラム陽性種の場合、細菌膜は、ペプチドグリカンの厚い外層及び内部血漿リン脂質膜からなる。逆に、グラム陰性種では、2つのリン脂質膜の間に挟まれた比較的薄いペプチドグリカン層が、外側膜上で特徴となっているリポ多糖類とともに示される。グラム陰性種において存在する外膜は、それらを抗菌化合物に対して特に弾力性があるようにし、抗菌剤の送達にとって特有の課題を提示する。
【0025】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解するであろう意味と同じ意味を有する。
【0026】
本特許明細書では、「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」、「含む(includes)」「含むこと(including)」、又は類似の用語は、要素のリストを含む方法又は組成物がそれらの要素のみを含むのではなく、リストされていない他の要素をうまく含むことができるように、非排他的な包含を意味するように意図されている。
【0027】
「からなる(consisting of)」は、「からなる(consisting of)」という語句に続く全てのものを含むが、それらに限定されないことを意味する。したがって、「からなる」という語句とは、列挙される要素が必要であり、又は必須であることを、及び他の要素が存在し得ないことを示す。
【0028】
「から本質的になる(consisting essentially of)」とは、この語句の後に列挙され、この列挙される要素について本開示で明示される活性若しくは作用を妨げない又はこの活性若しくは作用に寄与しない他の要素に限定される任意の要素を含むことを意味する。したがって、「から本質的になる」という語句は、列挙される要素が必要であり、又は必須であることを示すが、他の要素は任意選択的であり、列挙される要素の活性若しくは作用に影響を及ぼすか否かに応じて存在してもよく、又は存在しなくてもよいことを示す。
【0029】
「非ラメラリオトロピック液晶相担体粒子」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの両親媒性物質から形成されて、活性剤を担持することができる2次元及び/又は3次元中間相構造を与える、液晶非ラメラ構造を含む自己組織化粒子を指す。非ラメラリオトロピック液晶相担体粒子は、生体膜との優れた融合、及び生体膜を通過させての活性剤の送達をもたらすように本明細書で示されている。用語「脂質担体」、「非ラメラリオトロピック液晶相担体粒子」、「非ラメラLLC粒子」、「粒子」、及び「ナノ粒子」は、本明細書では互換的に使用される。
【0030】
実施形態では、用語「非ラメラリオトロピック液晶相担体粒子」は、キュービック形態、ヘキサゴナル形態、及びスポンジ形態を含むように使用され得る。「スポンジ相」又は「スポンジ粒子」(L)は、長距離秩序を有せず、逆二連続キュービック相(QII)の等価結晶周期性を示すと認識されるが、それらはしばしば「溶融」QIIキュービック相とみなされ、したがって、第1の態様の粒子として含まれるとみなされる。したがって、短距離秩序スポンジ相は、この用語の範囲内であると明示的にみなされる。実施形態では、用語「非ラメラリオトロピック液晶相担体粒子」は、キュービック相(正及び逆)、キュービック相(正離散、逆離散、逆両連続-単純、ジャイロイド及びダイヤモンドを含む-及び逆不連続)、並びにリボン、メッシュ、又は非キュービック「スポンジ」両連続を含む他の「中間相」からなる群から選択される1つ以上の相を含むように使用されてもよい。好ましくは、この用語は、キュービック相及び/又はヘキサゴナル相に使用される。
【0031】
「両親媒性物質」、「両親媒性」及び「両親媒性脂質」という用語は、本明細書で使用される場合、親水性部分及び疎水性部分の両方を含む化合物を指し、かつ本明細書に記載されるLLC粒子の形成において、脂質、融合性又は他で使用され得る。通常、そのような化合物は、親水性ヘッド基及び疎水性テールを有するであろう。好適な例にしては、脂肪酸及び脂質分子の領域が挙げられる。
【0032】
「融合性」という用語は、本明細書で言及される場合、非ラメラリオトロピック液晶相担体粒子の一部として、粒子の細菌細胞膜などの生体膜との融合を促進又は増強して、それによって活性剤の送達を容易にするであろう化合物、通常は、脂質を指す。
【0033】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書で使用される場合、無機若しくは有機塩基及び無機若しくは有機酸を含む薬学的に許容される非毒性塩基又は酸から調製される塩などの全身又は局所投与に対して毒性的に安全である活性剤の塩を指す。薬学的に許容される塩は、アルカリ及びアルカリ土類、アンモニウム、アルミニウム、鉄、アミン、グルコサミン、塩化物、硫酸塩、スルホン酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、ビタレート(bitarate)、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、ナプシル酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、テレフタル酸塩、パルモ酸塩、ピペラジン、ペクチネート(pectinate)及びS-メチルメチオニン塩などを含む群から選択され得る。
【0034】
本発明の第1の態様によれば、1つ以上の融合性両親媒性脂質を含む非ラメラリオトロピック液晶相粒子、及び活性剤をカプセル封入する粒子であってもよい、脂質担体が提供される。
【0035】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子であり得る脂質担体は、1つ以上の融合性両親媒性脂質の自己集合によって形成される。適切な両親媒性脂質は、水又は水性緩衝液などの水溶液の存在下で自己組織化して、非ラメラ中間相を示すリオトロピック液晶(LLC)構造を形成することが理解されるであろう。
【0036】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、少なくとも2種の融合性両親媒性脂質、任意選択で、少なくとも3個若しくは少なくとも4個、又は少なくとも5個、又は少なくとも6個、又は少なくとも7個、8個、9個若しくは10個又はそれ以上の融合性両親媒性脂質を含む。
【0037】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、1つ、2つ、3つ又は4つの融合性両親媒性脂質からなり得るか、又はそれらから本質的になり得る。
【0038】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、1つ、2つ、3つ又は4つの融合性両親媒性脂質、融合性又は非融合性からなり得るか、又はそれらから本質的になり得る。
【0039】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、活性剤の存在下での1つ以上の融合性両親媒性脂質の自己集合によって形成される。活性剤は、粒子に結合、組み込まれる、又は粒子内にカプセル封入され得る複数の様式があり得、最終的なアプローチは、活性剤の性質及び粒子がそれを送達する様式に依存するであろうことが理解されるであろう。例えば、ある特定の実施形態では、活性剤の粒子の大部分の表面への結合に焦点を当てることが適切であり得る。しかしながら、通常は、粒子は、任意の付随的な表面結合活性剤に加えて、活性剤が脂質粒子の内部チャネル及び折り畳み内に組み込まれるように、活性剤の存在下で形成される。
【0040】
実施形態では、活性剤の大多数は、第1の態様の粒子の内部チャネル内に位置する。好ましくは、標的領域への送達時に、第1の態様の粒子と会合した活性剤の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%が、第1の態様の粒子の内部チャネル内に位置する。
【0041】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、10マイクロメートル未満の粒子サイズを有するコロイド粒子であるコロイド粒子であり得る。
【0042】
実施形態では、第1の態様の粒子の粒子サイズは、約10マイクロメートル~約40ナノメートルであり得る。好ましくは、粒子サイズは、約5マイクロメートル~約50ナノメートル、より好ましくは、約1マイクロメートル~約50ナノメートル、更により好ましくは、約800ナノメートル~約50ナノメートル、更により好ましくは、約600ナノメートル~約50ナノメートル、更になおより好ましくは、約500ナノメートル~約50ナノメートル若しくは約400ナノメートル~約50ナノメートル、又は約5マイクロメートル~約100ナノメートル、より好ましくは、約1マイクロメートル~約100ナノメートル、更により好ましくは、約800ナノメートル~約100ナノメートル、なおより好ましくは、約600ナノメートル~約100ナノメートル、更になおより好ましくは、約500ナノメートル~約100ナノメートル若しくは約400ナノメートル~約100ナノメートルである。したがって、第1の態様の粒子は、上記の粒子サイズ範囲の実施形態内で活性剤のナノ担体として機能し得る。
【0043】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、必要に応じて、各々の正相及び逆相/逆相を含む、キュービック相、ヘキサゴナル相、及びスポンジ相からなる群から選択されるバルク相を有する。
【0044】
非ラメラLLC粒子マトリックスは、リポソームなどのそれらのラメラ類似体と比較して、利点の範囲を提供する。それらの脂質組成物は、細菌の外側膜によりそれらを融合性にすることができ、それらの高い内部表面積及び両親媒性性質のために、キュボソームなどの非ラメラLLC粒子は、活性剤のアレイをカプセル封入及び放出する能力を有する。非ラメラLLC粒子マトリックスはまた、カプセル封入された活性剤の構造的完全性を酵素分解から保護することができる。
【0045】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、ヘキサゴナル(正及び逆)、キュービック(正離散、逆離散、逆-単純、ジャイロイド、及びダイヤモンドを含む-及び逆不連続)、並びにリボン、メッシュ、又は非キュービック「スポンジ」両連続を含む他の「中間相」からなる群から選択されるものである。
【0046】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、キュボソーム粒子、ヘキソソーム粒子及びスポンジ粒子からなる群から選択されるものである。
【0047】
実施形態では、第1の態様の非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、キュボソーム又はヘキソソームであり得る。
【0048】
好ましくは、キュボソームは、両連続キュービック相(V)又は逆両連続キュービック相(V)キュボソームである。逆両連続キュービック相(V)キュボソームは、特に好ましい。Vが様々なキュービック相の包括的な用語であることを、当業者は理解するであろう。Vは、VII又はQIIと呼ばれることもある。QII内には、QII (Pn3m)、QII (Im3m)、QII (Ia3d)が存在する。
【0049】
逆(inverse)(逆(reverse))相粒子は、活性剤を収容することができ、かつある特定の状況下でより良好に制御された放出プロファイルを可能にする、複雑な一連の内部チャネルを提供するために、好ましい場合がある。
【0050】
キュボソーム内のキュービック相構造は、三重周期的な最小表面に繰り返し包まれた脂質二重層モチーフを提供する。第1の態様のこれらの粒子内の脂質膜の表面曲率の増加は、細菌膜などの脂質膜を含む他の自己組織化システムとの接触時に二重層融合を促進する際に役立ち得る。したがって、高い曲率値が、本開示の脂質担体において好ましい。その高い内部表面積及び両親媒性性質のために、キュボソームは、小分子、タンパク質、抗菌ペプチド、及び他の殺生物性成分などの抗菌剤を含む、多岐にわたる現在利用可能な活性剤をカプセル封入及び放出する能力を有する。
【0051】
第1の態様の粒子の形成に使用される融合性脂質に関して、脂質の臨界パッキングパラメータ(CPP)を使用して、形成された粒子の特性である平均曲率及びガウス曲率を合理化し、したがって、形成されたか又は形成されている中間相の性質を示し、結果として生じる活性剤担体としての非ラメラLLC粒子の適合性の考慮を可能にすることができる。CPPは、次の式を介して平均曲率及びガウス曲率に関連している。
【数1】

式中、
lcは、炭化水素鎖の有効長である
Hは、平均曲率である
Kは、ガウス曲率である
本開示の粒子の形成の際に使用するための関連する両親媒性脂質の分子構造は、CPP>1を得るために上記の式を満たす必要がある。
【0052】
同じアプローチが、2つ以上の両親媒性脂質に適用され得る。複数の両親媒性物質の場合、内因性CPPが1未満の両親媒性物質は、平均CPPが>1であるように、二次両親媒性物質のCPPが>1である組成物に含まれ得る。CPP>1を達成するために曲率の増加にも寄与し得る二次添加剤としては、小疎水性分子、両親媒性ヘッド基と相互作用するポリマー、強いコスモトロープ、及びSiRNA an DNAが挙げられる。逆に、曲率は、CPP<1の両親媒性物質、高分子量PEG、強いカオトロピック、荷電ヘッド基、及びLogPが-1.5~0の溶媒を含有することによって減少され得る。
【0053】
したがって、LLC粒子は、当該技術分野で既知のアプローチによって計算され得る界面曲率に基づいて分類され得る。一般的に言えば、逆リオトロピック相の曲率は、ラメラ<両連続キュービック<ヘキサゴナル<ミセルキュービックの順で増加する。
【0054】
実施形態では、1つ以上の融合性両親媒性脂質は、約1.0以上の臨界充填パラメータ(CPP)を有する。
【0055】
実施形態では、1つ以上の融合性両親媒性脂質は、約1.0~約3.0、好ましくは、約1.0~約2.5、より好ましくは、約1.0~約2.0、更により好ましくは、約1.0~約1.75、更になおより好ましくは、約1.0~約1.5のCPPを有する。
【0056】
複数の脂質が第1の態様の粒子に組み込まれる場合、個々の脂質のCPP値に対する上記の全ての参照は、平均CPP値に対する参照となることが理解されるであろう。すなわち、LLC粒子が2つ以上の両親媒性物質(脂質)を含む場合、平均CPPは、成分両親媒性脂質の全てのCPP値のモル平均として定義されてもよい。平均CPP値は、上記で提供されるものから選択され得る。
【0057】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、約1.0~約3.0、好ましくは、約1.0~約2.5、より好ましくは、約1.0~約2.0、更により好ましくは、約1.0~約1.75、更になおより好ましくは、約1.0~約1.5の平均CPP値を有する。
【0058】
CPPは、次:v/aのように計算され、式中、lは、両親媒性(脂質)鎖の有効長であり、aは、有効界面活性剤ヘッド基面積(鎖間引力相互作用とヘッド基反発相互作用のバランスによって決定される)であり、vは、両親媒性分子によって占有される平均体積である。
【0059】
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、約1.0~約3.0、最適には、約1.0~約1.5の平均CPP値が、活性剤の捕捉及びその後の放出の両方を可能にする粒子曲率を提供すると仮定する。CPP値はまた、粒子が生体膜と融合する可能性の予測を可能にし得る。
【0060】
同様に、自然スプレイ値は、非ラメラLLC粒子の自然曲率に対応する。2つの脂質が対応する自然スプレイエネルギーを有する場合、それらの間の融合はよりエネルギー的に有利になる。したがって、以下のスプレイ値を有する第1の態様の粒子は、細菌膜などの生体膜との所望の融合イベントを受ける可能性がより高いと考えられる。
【0061】
融合性脂質の選択は、明らかにスプレイに影響を及ぼすであろうし、かつ、例えば、ミリスチル、ペンタデセニル、オレイル、エライジル、リノレイル、リノレニル、アラキンドニル(arachindonyl)、ドコセニル及び/又はイソプレノイド型疎水性物質、例えば3,7,11-トリメチル-ドデシル、5,9,13-トリメチルテトラデカニル、3,7,11,15-テトラメチル-ヘキサデシル、5,9,13,17-テトラメチルオクタデシルを用いることを含む、鎖スプレイを増強するための疎水性物質の選択に基づいて判定され得る。そのような脂質の非限定的な例としては、当該技術分野で知られているように、ME、MP、MM、MV、MO、ML、及びMRが挙げられる。
【0062】
スプレイによる表面積当たりのエネルギーコストは、次式で近似される。
【数2】

式中、κは、単層のスプレイ係数であり、
【数3】

は、自然スプレイである。
【数4】

κは、単層のスプレイ係数であり、tは、チルトベクトルである。
総エネルギーコスト
【数5】
【0063】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、-0.05nm-1未満の内部曲率誘発性スプレイ
【数6】

を有する。
【0064】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、-0.10nm-1未満の内部曲率誘発性スプレイ
【数7】

を有する。
【0065】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、-0.15nm-1未満の内部曲率誘発性スプレイ
【数8】

を有する。
【0066】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、-0.20nm-1未満の内部曲率誘発性スプレイ
【数9】

を有する。
【0067】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、-0.25nm-1未満の内部曲率誘発性スプレイ
【数10】

を有する。
【0068】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、約-0.05nm-1~約-0.95nm-1、又は約-0.05nm-1~約-0.85nm-1、又は約-0.05nm-1~約-0.75nm-1、又は約-0.05nm-1~約-0.65nm-1、又は約-0.05nm-1~約-0.55nm-1、又は約-0.05nm-1~約-0.40nm-1、又は約-0.10nm-1~約-0.95nm-1、又は約-0.10nm-1~約-0.85nm-1、又は約-0.10nm-1~約-0.75nm-1、又は約-0.10nm-1~約-0.65nm-1、又は約-0.10nm-1~約-0.55nm-1、又は約-0.10nm-1~約-0.40nm-1、又は約-0.15nm-1~約-0.75nm-1、又は約-0.15nm-1~約-0.65nm-1、又は約-0.15nm-1~約-0.55nm-1、又は約-0.15nm-1~約-0.40nm-1、又は約-0.20nm-1~約-0.75nm-1、又は約-0.20nm-1~約-0.65nm-1、又は約-0.20nm-1~約-0.55nm-1、又は約-0.25nm-1~約-0.75nm-1、又は約-0.25nm-1~約-0.65nm-1、又は約-0.25nm-1~約-0.55nm-1の内部曲率誘導スプレイ
【数11】

を有する。
【0069】
更に、当業者は、本開示に照らして、以下の式を使用して、適切な曲率レベルを確認して、本明細書に記載される利点を提供することができ、
【数12】

式中、c0Tは、全曲率であり、xは、分画組成物脂質iであり、c0iは、脂質iの曲率であり、c0jは、脂質jの曲率であり、(1-x)は、脂質jの分画組成物である。更なる組み合わせのために、この式は、脂質kを含むように展開され、組成物の合計は、1に等しい。
【0070】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子の格子パラメータは、約20~約684Å、又は約20~約500Å、又は約20~約400Å、又は約20~約200Å、又は約20~約190Å、又は約20~約180Å、又は約20~約170Å、又は約20~約160Å、又は約20~約150Å、又は約40~約684Å、又は約40~約500Å、又は約40~約400Å、又は約40~約200Å、又は約40~約190Å、又は約40~約180Å、又は約40~約170Å、又は約40~約160Å、又は約40~約150Å、又は約60~約684Å、又は約60~約500Å、又は約60~約400Å、又は約60~約200Å、又は約60~約190Å、又は約60~約180Å、又は約60~約170Å、又は約60~約160Å、又は約60~約150Å、又は約80~約684Å、又は約80~約500Å、又は約80~約400Å、又は約80~約200Å、又は約80~約190Å、又は約80~約180Å、又は約80~約170Å、又は約80~約160Å、又は約80~約150Å、又は約100~約684Å、又は約100~約500Å、又は約100~約400Å、又は約100~約200Å、又は約100~約190Å、又は約100~約180Å、又は約100~約170Å、又は約100~約160Å、又は約100~約150Å、又は約120~約684Å、又は約120~約500Å、又は約120~約400Å、又は約120~約200Å、又は約120~約190Å、又は約120~約180Å、又は約120~約170Å、又は約120~約160Å、又は約120~約150Åである。
【0071】
格子パラメータは、例えば、通常、キュボソーム又はヘキソソームよりも大きい格子パラメータを有するスポンジ粒子に関連して、最大684Åの範囲で膨張され得る。一般的により膨張される相は、200~400Åの値を有してもよい。膨張される格子パラメータは、ヘッド基が静電荷を含有する場合があり、これらは負に荷電され得る(例えば、PG及びPSリン脂質)又は正に荷電され得る(例えば、DOTAP及びDOMA)ことを含む、ある特定の設計規則を有する。ヘッド基は、複数のヒドロキシル基(例えば、DGMO及びOG)を有する水和剤を含んでもよい。疎水性領域は、膜を安定化するためのコレステロール又は他の硬化剤を含み得、かつ/又は膜曲率の減少を促進する両親媒性物質(例えば、PC及びPEリン脂質)を含み得る。脂質-PEGポリマー(例えば、DOPE-PEG及びMO-PEG)は、水チャネルを膨張させるために荷電脂質と組み合わせて使用され得る。更に、ブロックコポリマー(例えば、プルロニックF127、F108及びポリソルベート80)は、ナノ粒子分散体が必要な場合に安定剤として使用され得るが、それらは水チャネルの膨張時に直接的な影響を及ぼさない場合がある。
【0072】
実施形態では、1つ以上の脂質のうちの少なくとも1つは、電荷を提示するか、又は電荷を提示するように修飾されている。
【0073】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、非両親媒性及び/又は非融合性荷電化合物を更に含み得る。
【0074】
結果に示されるように、荷電種の存在は、第1の態様の粒子と生体膜との間の接触を促進する観点から有益な結果を有することが見出されている。これは、そうでなければ粒子と生体膜を分離したままにする可能性のある任意の立体障壁又は静電気障壁を克服するのを助ける非ラメラLLC粒子上の正電荷に起因すると考えられる。接触イベントの数は、それによって増加され、それに応じて、より多くの数の融合イベント及び送達イベントがもたらされ得る。これは、正味の負電荷を示すグラム陰性細菌膜などの細菌膜で特に重要である。
【0075】
電荷は、非ラメラLLC粒子への、1つ以上の荷電種の組み込みによって生成され得る。これは、荷電両親媒性物質又は界面活性剤の含有によって達成され得る。当該技術分野で既知である、広範囲のカチオン性脂質、界面活性剤、及び関連化合物が適切であり得ることが理解されるであろう。
【0076】
実施形態では、非ラメラLLC粒子は、カチオン性脂質を含んでもよい。
【0077】
実施形態では、カチオン性脂質は、正電荷を有し得る窒素含有ヘッド基を含む脂質であってもよい。
【0078】
両親媒性又は界面活性剤分子のヘッド基などの正荷電種がまた、第1の態様の非ラメラLLC粒子を融合することが望まれる生体膜の初期摂動を生成する際に重要であると仮定される。これは、次いで、融合への開始事象であり得る膜の曲げ、傾斜、拡大などを含み得る。
【0079】
実施形態では、カチオン性脂質は、0.1~20mol%未満、又は0.1~10mol%未満、又は0.1~5mol%未満、又は0.1~4mol%未満、又は0.1~3mol%未満、又は0.1~2mol%未満、又は0.5~20mol%未満、又は0.5~10mol%未満、又は0.5~5mol%未満、又は0.5~4mol%未満、又は0.5~3mol%未満、又は0.5~2mol%未満の量で非ラメラLLC粒子に組み込まれてもよい。
【0080】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子であり得る脂質担体は、0mV超であるゼータ電位を有し得る。
【0081】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、約0mV超~約60mV、約0mV超~約50mV、約0mV超~約40mV、約1mV~約60mV、約1mV~約50mV、約1mV~約40mVのゼータ電位を有し得る。
【0082】
本発明者らは、更に、第1の態様の粒子の、グラム陰性細菌、マイコバクテリウム、又は真菌の膜などの生体膜との適切な融合を達成させるように、第1の態様の粒子の粘度の設計及び制御が考慮すべき重要なパラメータであると仮定する。具体的には、第1の態様の粒子が生体膜と接触すると、十分な粘度を有して、十分な接着を達成することを確実にすることに、及び離れないことを確実にすることが重要である。これはまた、ナノ構造がほとんどの流動条件下で維持されることを確実にするであろう。
【0083】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、0℃~40℃で約10Pas-1~約1×10^6Pas-1の動的粘度を有し得る。
【0084】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、100s-1未満の剪断速度で、約5cST~約30,000cST、又は約10cST~約20,000cSTの剪断粘度を有し得る。
【0085】
1つ以上の融合性両親媒性脂質は、特に、キュボソーム及びヘキソソームを形成するように、当該技術分野で既知であるものから選択され得る。適切な1つ以上の融合性両親媒性脂質の選択は、当該技術分野で理解されるある特定の要件に基づいて行われ得る。例えば、脂質は、周囲温度及び生理的温度でII型リオトロピック液晶相を採用するものから選択され得る。適切な脂質の選択に適切であり得るパラメータとして、疎水性成分:1に対しては(i)が挙げられる。温度は、溶融鎖が存在するように、鎖融解温度、及び2を上回る必要がある。少なくとも14個の炭素の炭素鎖中に少なくとも1つのシス不飽和結合が、骨格に沿った少なくとも中間の位置、又は3に存在する必要がある。炭素骨格は、少なくとも12個の炭素を含み、そのうちの3個は、メチル分岐を有する二次炭素、及び4である必要がある。疎水性物質の分子量は、少なくとも200amu超、かつヘッド基:5に関しては(ii)である必要がある。ヘッド基は、最小の親水性(例えば、ヒドロキシル)、6を有する少なくとも3つの官能基を含有する必要がある。ヘッド基は、ヘッド基-水の水素結合ネットワーク、及び7を形成することができる必要がある。ヘッド基領域は、疎水性フットプリントと比較して小さい必要がある。ガイドとして、これは、疎水性物質についての基準1、2及び4を満たし、ヘッド基についての基準5、6及び7を満たすために、本開示の実施例で使用されるMO脂質が挙げられる。これらの基準を適切に満たす多くの他の脂質が利用可能であり、それらは、既知のこれらの基準、又は容易に確認される値に基づいて選択され得ることが理解されるであろう。
【0086】
ガイダンスは、各々が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる以下の刊行物のうちの1つ以上に見出され得る。(i)T.Kaasgaard and C.J.Drummond“Ordered 2D and 3D Nanostructured Amphiphile Self-Assembly Materials Stable in Excess Solvent”Phys.Chem.Chem.Phys.2006,8,4957-4975.(ii)C.Fong,T.Le and C.J.Drummond“Lyotropic Liquid Crystal Engineering-Ordered Nanostructured Small Molecule Amphiphile Self-Assembly Materials by Design”Chem.Soc.Rev.,2012,41,1297-1322 DOI:10.1039/c1cs15148g、(iii)L.van‘t Hag,S.L.Gras,C.E.Conn and C.J.Drummond“Lyotropic liquid crystal engineering moving beyond binary compositional space-Ordered nanostructured amphiphile self-assembly materials by design”Chem.Soc.Rev.,2017,46,2705-2731.DOI:10.1039/c6cs00663a、及び(iv)S.Sarkar,N.Tran,Md H.Rashid,T.C.Le,I.Yarovsky,C.E.Conn and C.J.Drummond“Toward cell membrane biomimetic lipidic cubic phases:a high-throughput exploration of lipid compositional space”ACS Applied Biomaterials,2019,2,182-195.DOI:10.1021/acsabm.8b00539。
【0087】
ポリヒドロキシル(糖脂質)及びポリエーテル(ポリエチレンオキシド)は、ヘッド基を形成するII型の最大のカテゴリーのうちの2つを形成する。ヘッド基モチーフの非限定的な例としては、アルコール、脂肪酸、モノアシルグリセリド、MAG、2-MAG、グリセラート、グリセリルエーテル、エチレンオキシド、アミド、モノエタノールアミド、ジエタノールアミド、セリノールアミド、メチルプロパンジオールアミド、エチルプロパンジオールアミド、尿素、尿素アルコール、ビウレット、ビウレットアルコール、尿素化物、エンドカンナビノイド(アナンダミド、ビロダミン、2-グリセロール、ドーパミン、2-グリセロールエーテル)及び糖脂質が挙げられる。例としては、DMPC及びDMPEなどのリン脂質が挙げられる。
【0088】
実施形態では、1つ以上の融合性両親媒性脂質は、エチレンオキシド両親媒性物質、モノアシルグリセロール両親媒性物質、糖脂質両親媒性物質、ホスファチジルエタノールアミン両親媒性物質、及び尿素系両親媒性物質、並びにそれらの誘導体又は類似体からなる群から選択され得る。
【0089】
エチレンオキシド両親媒性物質としては、C12(EO)、C12(EO)、C12(EO)、及びC12(EO)並びにジアルキルエチレンオキシド両親媒性物質が挙げられ得る。モノアシルグリセロールとしては、モノミリストレイン、モノオレイン、モノバクセニン、及びモノエルシンが挙げられ得る。モノアシルグリセロールに類似する両親媒性物質は適切であり得、オレイルグリセラート、フィタニルグリセラート、グリセリルモノオレイルエーテル、グリセリルフィタニルエーテル、フィタントリオール及びモノノナデセノインを含む。一置換糖脂質を含む、適切であり得る糖部分を有する糖脂質:β-Mal(Phyt)、β-Glc(Phyt)、β-Xyl(Phyt)、β-Glc-(TMO)、β-Mal(Phyt)、及びβ-Glc(Phyt)、並びに二置換非分岐糖脂質:1,2-ジアシル-(β-D-グルコピラノシル)-sn-グリセロール、1,2-ジアルキル-(β-D-グルコピラノシル)-sn-グリセロール、1,3-ジアシル-(β-D-グルコピラノシル)-sn-グリセロール、1,3-ジアルキル-(β-D-グルコピラノシル)-sn-グリセロール。ホスファチジルエタノールアミン両親媒性物質としては、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)及びジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)が挙げられ得る。尿素両親媒性物質としては、ドデシル尿素(DU)、オクタデシル尿素(ODU)、オレイル尿素(OU)、オレイルビウレット(OBU)、リノレイル尿素(LU)、フィタニル尿素(PU)、ヘキサヒドロファルネシル尿素(HFU)が挙げられ得る。
【0090】
実施形態では、1つ以上の融合性両親媒性脂質は、1-モノオレイン、2-モノオレイン、シトレム、乳酸オレオイル、オレアミド、モノエライジン、リノール酸、エライド酸、モノパルミトレイン、モノリノレイン、フィタントリオール、ジオレイン、トリオレイン、ジオレオイルグリセロール、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド、ジオクタデシル(ジメチル)アンモニウムクロリド(DOAC/DODMAC)又はブロミド(DODAB)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-ホスファチルグリドグリセロール(DOPG)、オレイン酸、リゾ1-ヒドロキシ-2-オレオイル-sn-グリセロ-3ーホスホコリン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ジヘキシル-ホスホコリン、ビタミンEトコフェロール、ビタミンE(トコフェリル)アセテート、フィタノイルモノエタノールアミド、ファルネソイル(farnesoyl)モノエタノールアミド、オレオイルモノエタノールアミド、リノレオイルモノエタノールアミド及びリノレノイルオイルモノエタノールアミドからなる群から選択され得る。
【0091】
一本鎖両親媒性脂質は、飽和脂肪酸C7-C16、オレイン酸、エライド酸、リノール酸、オレイン酸ナトリウム/ガドリニウム、オレアミド、1-グリセリルモノオレイルエーテル(GME)、GMO、2-MO、乳酸オレオイル、シトレム、ジグリセロールオレアート(DGMO)、リゾ(1-オレオイル)-ホスファチジル-コリン、(Z)-オクタデカ-9-エニルフェロセン、N-ドデシル-カプロラクタム(C12)、ビタミンK1、ユビキノン-10(コエンザイムQ10)、ビタミンE、ビタミンEアセタート、ビタミンAパルミターテ、アミチン酸、アルファ-トコフェリルPEO1000サクシナーテ(ビタミンE TPGS)、PEG2000-MO、PEG-PT、PEO-ステアラーテ(x=40-100)、ポリソルベート-80からなる群から選択され得る。
【0092】
複数のアルキル鎖を有する両親媒性脂質は、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、ジ(キャノーラエチルエステル)ジメチルアンモニウムクロリド(DEEDAC);ジオクタデシル(ジメチル)アンモニウムクロリド(DOAC/DODMAC)又はブロミド(DODAB);ジオレイン;ジオレオイルグリセロール(DOG)、EDTA-bi-オレオイル;EDTA-bi-フィタニル;1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP);1,2-ジオレオイル-ホスファチジン酸(DOPA);1,2-ジオレイル-ホスファチジルグリセロール(DOPG)、1,2-ジステアロイル-ホファチジルグリセロール(DSPG);1,2-ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジステアロイル-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE);1,2-ジオレオイル-ホスファチジルコリン(DOPC);1-パルミトイル-2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC);1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホセリン(DOPS);1,2-ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、DSPE-mPEG350、750、2000(X=7、16又は45);DSPE-PEG2000、3400,5000;DMPE-mPEG550;(C18)2 DTPA(Gd)、カルジオリピン、シクロデキストリン誘導体(βCD-nC10)からなる群から選択され得る。
【0093】
本明細書の任意の実施形態では、融合性両親媒性脂質は、モノオレイン及び/又はフィタントリオールであり得る。
【0094】
本明細書の任意の実施形態では、本開示の脂質粒子は、コレステロール、DLPC、DSPC、DPPE、DPPS、DOPS、DPPC、DMPC、DMPS及びDLPSのうちの1つ以上と組み合わせたMO又はフィタントリオールを含み得る。
【0095】
モノアシルグリセロールは、その相図の大きな領域にわたって逆相を形成することが知られており、モノオレインが最も顕著である。逆相の形成は、シス-二重結合によって導入されるねじれのために、好ましい。より長いアシル鎖は、疎水性鎖体積を増加させ、モノオレインをよりくさび形状化し、中間相のスペクトル内のタイプ2相に向かってシフトさせる。二重結合が脂質の末端に近づくと、その効果が減少し、くさび形状化がより減少する。アシル鎖伸長は、中間相形成をタイプ2相に向かって駆動することが予想され、これを基礎とすると、H2相がそのような変化で支配的な相になることは驚くことではない。
【0096】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子が少なくとも2つの融合性両親媒性脂質を含む場合、融合性両親媒性脂質のうちの少なくとも1つは、モノオレイン及びフィタントリオールから選択され得る。
【0097】
そのような実施形態では、モノオレイン及び/又はフィタントリオール融合性両親媒性脂質は、個別に又は組み合わせて、トリオレイン、ビタミンE及びDOPEのうちの1つ以上と組み合わされもよい。非ラメラリオトロピック液晶相粒子上に電荷を提示することが望ましい場合、これらの組み合わせは、それら自体、当該技術分野で周知であり、市販されており、多種多様な四級アンモニウムカチオン性化合物を含むものから選択される1つ以上のカチオン性脂質と更に組み合わされてもよい。
【0098】
ある特定の脂質は、最終的な脂質粒子、例えば、DOPEの内部曲率に対するそれらの効果のために、特に選択され得る。そのような脂質が、モノオレインなどの主な融合性脂質に加えて含まれる場合、それらは、約10~40mol%で存在し得る。
【0099】
代表的な陽イオン性脂質は、以下の非限定的な実施例から選択され得る:3-β[N(-ジグアニジノスペルミジン)-カルバモイル]コレステロール(BGSC);3-β[N,N-ジグアニジノエチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール(BGTC);N、N、N、Nテトラメチルテトラパルミチルスペルミン(セルフェクチン);NtN’-ブチル-N’-テトラデシル-3-テトラデシル-アミノプロピオン-アミジン(CLONfectin)ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB);1,2-ミリストキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE);2,3-ジオレオイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-p-ロパナ(ニトロトリフルオロアセテート)(DOSPA);1,3-ジオレオイルオキシ-2-(6-カルボキシスペルミル)-プロピルアミド(DOSPER);4-(2,3-ビス-パルミトイルオキシ-プロピル)-1-メチル-1H-イミダゾール(DPIM);N,N,N’,N’-テトラメチル-N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2,3-ジオレオイルオキシ-1,4-ブタン二アンモニウムヨージド(Tfx-50);N-1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)又は他のN-(N,N-1-ジアルコキシ)-アルキル-N,N,N-三置換アンモニウム界面活性剤;トリメチルアンモニウム基は、コレステリル基(ChOTBの場合)DORI(DL-1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアミノプロピル(WO93/03709に開示されている)-β-ヒドロキシエチルアンモニウム)又はDORIE(DL-1,2-O-ジオレオイル-3-ジメチルアミノプロピル)-B-ヒドロキシエチルアンモニウム)(DORIE)又はその類似体に接続されたブタノールスペーサーアーム1,2-ジオレオイル-3-(4’-トリメチルアンモニオ)ブタノール-sn-グリセロール(DOBT)又はコレステリル(4’-トリメチルアンモニア)ブタノアート(ChOTB)を介して二本鎖(DOT)になっている;1,2-ジオレオイル-3-スクシニル-sn-グリセロールコリンエステル(DOSC);カチオン相間移動剤としてのテトラオクチルアンモニウムブロミド(TOAB);コレステリルヘミサクシネートエステル(ChOSC);ミドングリシルスペルミン(DOGS)及びジパルミトイルホスファチジルエタノールアミルスペルミン(DPPES)又は米国特許第5,283,185号に開示されているカチオン性脂質、コレステリル-3β-カルボキシ-アミド-エチレントリメチルアンモニウムクロリド、1-ジメチルアミノ-3-トリメチルアンモニオ-DL-2-プロピル-コレステリルカルボキシレートヨージド、コレステリル-3-O-カルボキシアミドエチレンアミン、コレステリル-3-β-オキシスクシンアミド-エチレントリメチルアンモニウムヨージド、1-ジメチルアミノ-3-トリメチルアンモニオ-DL-2-プロピル-コレステリル-3-β-オキシスクシネートヨージド、2-(2-トリメチルアンモニオ)-エチルメチルアミノエチル-コレステリル-3-β-オキシスクシネートヨージド、3-β-N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)カルバモイルコレステロール(DC-chol)、及び3-β-N-(ポリエチレンイミン)-カルバモイルコレステロール;O,O-ジミリスチル-N-リシル-アスパルタート(DMKE);O,O-ジミリスチル-N-リシル-グルタメート(DMKD):1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE);1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DLEPC);1,2-ジミリスチル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DMEPC);1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DOEPC);1,2-ジパルトイル(dipal Toyl)-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DPEPC);1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DSEPC);1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアモニウムプロパン(DOTAP);ジオレオイルジメチルジメチルアミノプロパン(DODAP);1,2-パルミトイル-3-トリメチルモニウムプロパン(DPTAP);1,2-ジステアロイル-3-トリメチルモニウムプロパン(DSTAP);1,2-ミリストイル-3-トリメチルモニウムプロパン(DMTAP);及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)。
【0100】
実施形態では、特に好ましいカチオン性脂質は、DOTAP及び/又はDODAB及び/又はテトラオクチルアンモニウムブロミド(TOAB)である。
【0101】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、例えば、オレイン酸などの1つ以上の融合性脂質に加えて、脂肪酸を含んでもよい。
【0102】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、少なくとも1つの安定剤を含み得る。安定剤は、当該技術分野で既知のものから選択され得る。
【0103】
好ましくは、安定剤は、ポロキサマー若しくは界面活性剤、又はPEG化脂質安定剤、又はこれらの修飾バージョンである。
【0104】
実施形態では、安定剤は、PEG-PPO-PEGトリブロックコポリマー及び非イオン性ブロックコポリマー界面活性剤及び荷電部分と共重合したPEOから選択される。ポロキサマー407及びプルロン127は、安定化剤の好適な例であり得、本明細書に記載される第1の態様の実施形態のいずれかに組み込まれ得る。(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、又は同様の電荷担持部分と共重合したPEOも適切であり得る。PEG2000-MO、PEG-PT、DSPE-PEG(2000)アミン、18:0 PEG2000 PE、及びDSPE-PEG(5000)アミン(それらに限定されない)を含むPEG化脂質安定剤がまた、適切である。そのような安定剤の多くが、当該技術分野で知られている。
【0105】
安定剤の使用が好ましく、安定剤の性質は、脂質の性質に基づいて選択され得るが、これらの成分の適合性の選択及び理解は、当該技術分野における既知の情報に基づいてもよい。
【0106】
現在までに報告されている多くの立体安定剤は、4つの群:(i)両親媒性ブロックコポリマー(すなわち、Poloxamer(商標))、(ii)PEG化脂質、(iii)カスタマイズされた脂質-コポリマー、及び(iv)代替的な滅菌安定剤(例えば、胆汁酸塩、タンパク質)、に分割され得る。理想的には、選択される安定剤は、接近する粒子の間に静電気障壁、又はより一般的には、立体障壁を提供することによって、粒子の凝集を防止する。本開示の脂質粒子において最適に機能し得る安定剤は、(i)それらは一般に、より大きな親水性ドメインを有する非対称な両親媒性ポリマー構造に起因して、高いHLB(親水性-親油性バランス)値を有する高親水性であることを含む、同様の特性を共有する。分子の親水性部分が疎水性領域に囲まれていないことが重要である。高いHLBは、より長いPEG鎖又は複数のPEG鎖の使用、(ii)水素結合アクセプターの存在及び水素結合ドナーの非存在、並びに(iii)電気的中性、によって達成され得る。当業者は、これに基づいて、適切な安定剤を選択することができる。更に、以下の学術論文は、本開示の脂質粒子との使用に適切であり得る安定剤の重要な態様に対処し、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。(i)J.Y.T.Chong,X.Mulet,B.J.Boyd and C.J.Drummond;“Steric Stabilizers for Cubic Phase Lyotropic Liquid Crystal Nanodispersions(Cubosomes)”in “Advances in Planar Lipid Bilayers and Liposomes”,Vol 21,Chp 5,(2015)p.131-187,ISSN1554-4516,Elsevier;(ii)J.Zhai,B.Fan,S.H.Thang,C.J.Drummond“Novel amphiphilic block copolymers for the formation of stimuli-responsive non-lamellar lipid nanoparticles” Molecules,2021,26,3648-3664.DOI:10.3390/molecules26123648;(iii)J.Zhai,R.Suryadinata,B.Luan,N.Tran,T.MHinton,J.Ratcliffe,X.Hao and C.J.Drummond “Amphiphilic brush polymers produced by the RAFT polymerisation method stabilise and reduce the cell toxicity of lipid lyotropic liquid crystalline nanoparticles” Faraday Discussions,2016,191,545-563.DOI:10.1039/C6FD00039H;Faraday Discussion 191 on Nanoparticles with Morphological and Functional Anisotropy;(iv)J.Zhai,T.J.Hinton,L.J.Waddington,C.Fong,N.Tran,X.Mulet,C.J Drummond and B.W.Muir“Lipid-PEG Conjugates Sterically Stabilise and Reduce the Toxicity of Phytantriol-Based Lyotropic Liquid Crystalline Nanoparticles”Langmuir,2015,31,10871-10880.DOI:10.1021/acs.langmuir.5b02797;(v)J.Y.T.Chong,X.Mulet,D.Keddie,L.J.Waddington,S.T.Mudie,B.J.Boyd and C.J.Drummond “Novel Steric Stabilisers for Lyotropic Liquid Crystalline Nanoparticles:Pegylated Phytanyl Copolymers” Langmuir,2015,31,2615-2629.DOI:10.1021/la501471z;(vi)J.Y.T.Chong,X.Mulet,A.Postma,D.J.Keddie,L.J.Waddington,B.J.Boyd and C.J.Drummond “Novel RAFT Amphiphile Brush Copolymer Steric Stabilisers for Cubosomes:Poly(octadecyl acrylate)-block-poly(polyethylene glycol methyl ether acrylate)” Soft Matter,2014,10,6666-6676.DOI:10.1039/C4SM01064G;(vii)A.Tilley,C.J.Drummond and B.J.Boyd “Disposition and Association of the Steric Stabiliser Pluronic F127 in Lyotropic Liquid Crystalline Nanostructured Particle Dispersions” J.Colloid and Interface Science,2013,392,288-296.DOI:10.1016/j.jcis.2012.09.051(viii)J.Y.T.Chong,X.Mulet,L.J.Waddington,B.J.Boyd and C.J.Drummond “High Throughput Discovery of Novel Steric Stabilisers for Cubic Lyotropic Liquid Crystal Nanoparticle Dispersions” Langmuir,2012,28,9223-9232.DOI:10.1021/la301874v;(ix)J.Y.T.Chong,X.Mulet,L.J.Waddington,B.J.Boyd and C.J.Drummond “Steric Stabilisation of Cubic Lyotropic Liquid Crystalline Nanoparticles:High Throughput Evaluation of Triblock Polyethylene Oxide-Polypropylene Oxide-Polyethylene Oxide Copolymers.”Soft Matter,2011,7,4768-4777.DOI:10.1039/c1sm05181d.
【0107】
安定剤は、第1の態様の粒子の形成中に存在してもよい。
【0108】
安定剤は、5~20重量%、6~18重量%、7~16重量%、又は8~14重量%で存在し得る。
【0109】
実施形態では、第1の態様の粒子を形成する脂質は、実質的に、以下を含む:
(a)モノレイン及び/又はフィタントリオール;
(b)モノレイン及び/又はフィタントリオール、並びにDOPE、
(c)モノレイン及び/又はフィタントリオール、並びにDOTAP、
(d)モノレイン及び/又はフィタントリオール、並びにTOAB、
(e)モノレイン及び/又はフィタントリオール、並びにオレイン酸、
(e)モノレイン及び/又はフィタントリオール、並びにDOPE及びDOTAP。
【0110】
第1の態様の脂質粒子がDOPEを含む実施形態では、それは、10~40mol%で存在し得る。
【0111】
第1の態様の脂質粒子がDOTAPを含む実施形態では、それは、0.5~5mol%、又は0.5~4mol%で存在し得る。
【0112】
ある特定の実施形態では、第1の態様の粒子を形成する脂質は、以下を実質的に含み得る:
a)モノオレイン、又は
b)モノオレイン(80~99.9mol%)、トリオレイン(0.1~20mol%)、又は
c)モノオレイン(80~99.9mol%)、ビタミンE(0.1~20mol%)、又は
d)モノオレイン(80~99.9mol%)、DOPE(0.1~20mol%)。
【0113】
ある特定の実施形態では、第1の態様の粒子を形成する脂質は、以下を実質的に含み得る:
a)モノオレイン(95~99.9mol%)、DOTAP(0.1~5mol%)、又は
b)モノオレイン(95~99.9mol%)、DODAB(0.1~5mol%)、又は
c)DOTAP(0.1~5mol%)を有する上記のリストからの任意の脂質。
【0114】
非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、モノオレイン及び/又はフィタントリオール、並びに上記の両親媒性脂質のリストから選択される1つ又は2つの両親媒性脂質からなるか、又は本質的にそれらからなり得る。
【0115】
実施形態では、1つ以上の両親媒性脂質は、オレオイル、リノレオイル、リノレノイル、フィタノイル、ファルネソイル(farnesoyl)、又は伸長脂肪族疎水性鎖からなる群から選択される疎水性テール基を提示するものから選択され得る。
【0116】
そのような実施形態では、融合性両親媒性脂質のヘッド基は、化学部分の電荷又は他の所望の表面官能性を提示するように修飾された「非従来型」ヘッド基であり得る。
【0117】
少なくとも1つの融合性両親媒性脂質が非従来型ヘッド基を提示する実施形態では、それは、結合した疎水性テールと通常通りに会合しないペプチドヘッド基又はカチオン性ヘッド基であってもよい。1つの非限定的な実施例では、ヘッド基は、アミノグリコシド系ヘッド基であり得る。
【0118】
実施形態では、融合性両親媒性脂質の疎水性テールは、特定の表面官能性又は物理的特徴を提示するように修飾された「非従来型」テール基であってもよい。特に、テール基は、粒子についての最終CPP値に対する制御を可能にするように修飾されてもよい。したがって、実施形態では、約1.0~約3.0、好ましくは、約1.0~約2.5、より好ましくは、約1.0~約2.0、更により好ましくは、約1.0~約1.75、更になおより好ましくは、約1.0~約1.5のCPP値が提供されるように、融合性両親媒性脂質の疎水性テールを選択し得る。
【0119】
非ラメラリオトロピック液晶相粒子が、1つ以上の荷電両親媒性物質又は界面活性剤、誘発性又は他のものを含む実施形態では、それらは、DOTAP、DOTMA、DODAP、ジオクタデシル(ジメチル)アンモニウムクロリド(DOAC/DODMAC)又はブロミド(DODAB)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)及びCTABからなる群から選択され得る。
【0120】
実施形態では、活性剤は、動物及びヒトを含むが、それらに限定されない、生物学的系、経路、分子、若しくは生物に関連する相互作用の任意の物理的若しくは生化学的特性に影響を与えるか、又はそれを識別するのを助けることができる任意の物質から選択され得る。特に、本明細書で使用される場合、薬剤には、ヒト若しくは他の動物における疾患の診断、治癒、検出、緩和、治療、又は予防、又はそうでなければヒト若しくは動物の身体的若しくは精神的幸福を増強することを目的とした任意の物質が含まれるが、これらに限定されない。生物学的に活性な分子の例としては、ペプチド、タンパク質、染料、酵素、及び小分子薬物が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載の方法及び組成物との使用に好適な活性剤のクラスとしては、薬物、プロドラッグ、放射性核種、撮像剤、ポリマー、抗生物質、殺菌剤、金属含有ナノ粒子、抗炎症剤、抗腫瘍剤、心血管剤、抗不安剤、ホルモン、成長因子、ステロイド剤、遺伝子発現修飾剤、ノックダウン剤、siRNA、RNAi剤、ダイサー基質、miRNA、shRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アプタマー、微生物由来の毒素、抗結核抗体断片を含むその抗体及び断片などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
特に好ましい活性剤としては、グラム陰性細菌及び/又はマイコバクテリア及び/又は真菌に対して有効であることが既知の任意の薬剤が挙げられ得る。
【0122】
活性剤は、0.1~30.0mol%、又は0.1~25.0mol%、又は0.1~20.0mol%、又は0.1~10.0mol%、又は0.1~5.0mol%、又は0.1~4.0mol%、又は0.1~3.5mol%、又は0.1~3.0mol%、又は0.5~30.0mol%、又は0.5~25.0mol%、又は0.5~20.0mol%、又は0.5~10.0mol%、又は0.5~5.0mol%、又は0.5~4.0mol%、又は0.5~3.5mol%、又は0.5~3.5mol%で存在し得る。
【0123】
本発明の1つの利点は、そうでなければ「遊離」活性物質として使用することができない活性剤を使用することができることである。例えば、ある特定の抗生物質は、その有効性が著しく低減する程度に血清タンパク質に結合することが知られている。あるいは、いくつかの活性剤は、細菌細胞内での場合には標的に対して活性であり得るが、細菌膜を通過することができない。本アプローチは、活性剤を分解から保護するか、若しくは血清タンパク質に不必要に結合するようになるかの両方を提供する脂質担体粒子を提供し、又は、細菌若しくは真菌細胞への改善された送達を提供する。
【0124】
「薬剤」又は「活性薬剤」という用語は、薬学的に有効な又は許容される塩の形態の活性化合物を含み得ることが理解されるであろう。
【0125】
本明細書の任意の実施形態では、活性剤は、金属ナノ結晶ではない。
【0126】
したがって、一実施形態では、1つ以上の融合性両親媒性脂質を含む非ラメラリオトロピック液晶相粒子、及び活性剤をカプセル封入する粒子が存在し、粒子は、(i)約1.0~約3.0の平均CPPと、(ii)0mV超のゼータ電位と、(iii)0℃~40℃で約10Pas-1~約1e6Pas-1の動的粘度とを含む。
【0127】
そのような実施形態では、平均CPP値は、約1.0~約2.5、より好ましくは、約1.0~約2.0、更により好ましくは、約1.0~約1.75、更になおより好ましくは、約1.0~約1.5であり得る。
【0128】
実施形態では、1つ以上の両親媒性脂質と、活性剤をカプセル封入する粒子とを含む非ラメラリオトロピック液晶相粒子であって、粒子が、(i)約-0.10nm-1~約-0.55nm-1の内部曲率誘導スプレイ
【数13】

と、(ii)+0mV超のゼータ電位と、(iii)約60~約684Åの格子パラメータと、を含む、非ラメラリオトロピック液晶相粒子が提供される。
【0129】
実施形態では、非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、50nm~450nm、80nm~400nm、100nm~300nm、又は120nm~300nmの粒子直径を有する。
【0130】
好ましくは、非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、キュボソーム粒子である。
【0131】
好ましくは、活性剤は、グラム陰性細菌活性剤又はマイコバクテリア抗菌活性剤又は抗真菌剤のうちの1つ以上である。
【0132】
好適には、一実施形態においてキュボソームナノ担体粒子である非ラメラリオトロピック液晶相粒子は、1つ以上の正荷電脂質又は安定剤を含む。
【0133】
第2の態様では、第1の態様の非ラメラリオトロピック液晶相粒子、薬学的に許容される担体、希釈剤及び/又は賦形剤であってもよい脂質担体を含む薬学的組成物が提供される。
【0134】
好適には、薬学的に許容される担体、希釈剤、及び/又は賦形剤は、希釈剤、溶媒、pH緩衝剤、結合剤、充填剤、乳化剤、崩壊剤、ポリマー、潤滑剤、油、脂肪、ワックス、コーティング剤、粘度変性剤、流動化剤などのうちの1つ以上であり得るか、又はそれらを含み得る。
【0135】
希釈剤としては、微結晶セルロース、ラクトース、マンニトール、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、カオリン、乾燥デンプン、粉末糖などのうちの1つ以上が挙げられ得る。結合剤としては、ポビドン、デンプン、ステアリン酸、ガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのうちの1つ以上が挙げられ得る。崩壊剤としては、デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グリコール酸ナトリウムデンプンなどのうちの1つ以上が挙げられ得る。溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロパノール、クロロホルム、アセトン、メチルエチルケトン、塩化メチレン、水などのうちの1つ以上が挙げられ得る。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、水添植物油、ベヘン酸グリセリルなどのうちの1つ以上が挙げられ得る。流動化剤は、コロイド状二酸化ケイ素、タルク又はコーンスターチなどのうちの1つ以上であり得る。緩衝剤は、リン酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、及び炭酸緩衝剤を含み得るが、それらに限定されない。充填剤は、ゼラチン、デンプン、及び合成ポリマーゲルを含む1つ以上のゲルを含み得るが、それらに限定されない。コーティング剤は、フィルム形成剤、溶媒、可塑剤などのうちの1つ以上を含み得る。好適なフィルム形成剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポビドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール、アクリレートなどのうちの1つ以上であり得る。好適な溶媒は、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、クロロホルム、アセトン、メチルエチルケトン、塩化メチレンなどのうちの1つ以上であり得る。可塑剤は、プロピレングリコール、ヒマシ油、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリソルベートなどのうちの1つ以上であり得る。
【0136】
本発明による有用であり得る賦形剤の非限定的な例を提供するHandbook of Excipients 6th Edition,Eds. Rowe,Sheskey&Quinn(Pharmaceutical Press)を参照する。
【0137】
薬学的に許容される担体、希釈剤、及び/又は賦形剤の選択は、少なくとも部分的に、製剤の投与様式に依存することが理解されるであろう。単なる例として、組成物は、錠剤、カプセル、カプレット、粉末、注射用液体、坐剤、徐放性製剤、浸透圧ポンプ製剤、又は投与に有効かつ安全な任意の他の形態の形態であり得る。
【0138】
好ましくは、薬学的組成物は、第1の態様の粒子の液体分散体である。液体分散体は、水性分散体であり得る。液体分散体は、液体製剤の送達のために知られている標準カプセル内にカプセル封入され得る。
【0139】
好適には、薬学的組成物は、本明細書に更に記載されるように、哺乳動物における疾患、障害若しくは状態の治療又は予防のためのものである。
【0140】
第3の態様では、第1の態様の非ラメラリオトロピック液晶相粒子を形成するステップと、非ラメラリオトロピック液晶相粒子を標的領域に投与するステップと、を含む、活性剤の制御放出方法が提供される。
【0141】
実施形態では、標的領域は、グラム陰性細菌感染症、又はマイコバクテリア感染症、又は真菌感染症であり得る。感染症は、哺乳動物におけるものであり得る。
【0142】
第4の態様では、(i)1つ以上の融合性両親媒性脂質を提供するステップと、(ii)活性剤の存在下で1つ以上の融合性両親媒性脂質を溶液に曝露するステップと、を含む、第1の態様の非ラメラリオトロピック液晶相粒子を形成する方法が提供される。
【0143】
溶液は、水溶液であり得る。
【0144】
実施形態では、溶液は、疎水性活性剤の使用により順応性を有するように調整されてもよい。例えば、溶溶媒混合物が使用され得る。
【0145】
論じられるように、第1の態様の粒子は、非ラメラLLC粒子の複雑な内部アーキテクチャ内の活性物質の捕捉による活性剤の望ましい放出プロファイルを提供し得る。
【0146】
第1の態様の粒子は、所望の組成物が何であるかに正確に依存する様々な様式で形成され得る。簡潔に述べると、選択された融合性脂質は、適切な活性剤と組み合わされ、次いで、例えば、水溶液に曝露されて、自己集合を誘発してもよい。通常、安定剤はまた、水溶液に含まれる。上述のものを含む、ポロキサマー及びプルロニクスなどの安定剤は、適切であり得る。
【0147】
粒子内に更に荷電成分を含めることが望ましい場合、DOTAP、又は同様に、荷電種を、融合性脂質及び活性剤に含めてもよい。
【0148】
これらの成分の性質は、次に、活性剤の放出プロファイルに影響を及ぼす、最終粒子生成物の中間相に影響を及ぼすように選択され得る。
【0149】
標的領域は、活性剤を送達することが望ましい任意の領域であり得る。通常、標的領域は、ヒト対象などの対象の生物学的試料又は組織又は流体内にあるであろう。例えば、標的領域は、抗菌剤が第1の態様の粒子を介して送達されている細菌感染症に感染した組織であってもよい。
【0150】
最終放出プロファイルは、同じ活性の異なる放出プロファイルを有する第1の態様のいくつかの異なる粒子によって最もよく達成され得ることが理解されるであろう。例えば、上述のパラメータは、2つの異なる粒子集団を提供するように選択され得る。一方の集団は、キュボソーム集団であってもよく、他方は、各々が抗菌性を担持するヘキソソーム集団であってもよい。異なる集団は、別々に又は一緒に投与されてもよく、異なる内部アーキテクチャ及び異なる融合性脂質のために、抗菌剤を異なる速度で送達して、より長い時間枠にわたって治療効果を達成し得る。
【0151】
あるいは、異なる集団は、第1の態様の粒子のアーキテクチャが関連する活性物質に対して調整された異なる抗菌剤を含んでもよい。
【0152】
第5の態様では、疾患、障害又は状態の治療又は予防方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の第1の態様の非ラメラリオトロピック液晶相粒子、又は第2の態様の薬学的組成物を投与して、それによって疾患、障害又は状態を治療又は予防するステップを含む、方法が提供される。
【0153】
第6の態様では、疾患、障害又は状態の治療又は予防における使用のために、第1の態様の非ラメラリオトロピック液晶相粒子、又は第2の態様の薬学的組成物が提供される。
【0154】
第7の態様では、疾患、障害又は状態の治療のための医薬品の製造において、第1の態様の非ラメラリオトロピック液晶相粒子の使用が提供される。
【0155】
本明細書で一般的に使用される場合、「投与する」又は「投与」などの用語は、特定の経路又はビヒクルなどによる哺乳動物への関連する粒子又は組成物の導入を表す。投与経路としては、局所、非経口、及び経腸が挙げられ、経口、口腔、舌下、鼻、肛門、胃腸、皮下、筋肉内及び皮内投与経路が挙げられるが、これらに限定されない。
【0156】
「治療する」、「治療」又は「治療すること」は、対象が経験する疾患、障害又は状態の既存の徴候又は症状を少なくとも改善、低減又は抑制するために、臨床的に許容される基準に従って医学的状態が改善される程度まで、関連する粒子又は組成物の対象への投与を意味する。例えば、「細菌感染症を治療する」は、感染症を低減するか、又は感染症を根絶するか、又は患者の感染症の症状を緩和することを意味し、改善及び緩和は、スワブ試料試験などを含む、臨床的に許容される標準化された試験及び/又は経験的試験によって評価される。
【0157】
「予防する」、「予防すること」又は「予防的」は、疾患障害又は状態の徴候若しくは症状を示さないが、予防の不在下でそのような徴候又は症状を示しそうであると予想されるか、又は予測される対象に関連する粒子若しくは組成物を予防的に投与することを意味する。予防的治療は、予想される症状又は徴候を少なくとも軽減又は部分的に改善し得る。
【0158】
本明細書で使用される場合、「有効量」又は「治療有効量」は、治療されている状態の症状の発生を防止する、又は症状の悪化を停止させる、又は症状を治療する及び緩和させる、又は症状の重症度を少なくとも低減させるのに十分な量の関連する粒子又は組成物の投与を指す。有効量は、患者の年齢、性別、体重などを有する当業者により理解されるような様式で変化するであろう。適切な投与量又は投与量レジームは、ルーチン試験を通じて、又は第1の態様の粒子を介して送達される活性物質の現在の治療レジームに基づいて確認され得る。
【0159】
本明細書で使用される場合、「対象」又は「個体」又は「患者」という用語は、治療が所望される任意の対象、具体的には、脊椎動物対象、及び更に具体的には、哺乳動物対象を指し得る。適切な脊椎動物には、霊長類、鳥類、家畜動物(例えば、ヒツジ、ウシ、ウマ、ロバ、ブタ)、実験動物(例えば、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター)、コンパニオン動物(例えば、ネコ、イヌ)、及び捕獲野生動物(例えば、キツネ、シカ、ディンゴ)が含まれるが、それらに限定されない。好ましい対象は、本明細書に記載される疾患、障害、又は状態の治療を必要とするヒトである。しかしながら、上述の用語は、症状が必ずしも存在することを意味するものではないことが理解されよう。一実施形態では、対象は、細菌感染症、具体的には、グラム陰性細菌感染症の治療を受けているヒトである。
【0160】
本明細書で使用される場合、「併用療法(co-therapy)」及び「併用療法(combination therapy)」という用語は、本明細書に記載される1つ以上の粒子又は組成物、並びに疾患、障害又は状態を治療するための1つ以上の薬剤を、同時に、連続して、別々に、又は単一の医薬製剤若しくは組み合わせで投与することによりそれを必要とする対象の治療を意味する。別個の剤形で投与される場合、各化合物について1日当たりに投与される投与量の数は、同じものあっても異なるものであってもよい。関連する粒子又は組成物、及び疾患、障害又は状態を治療するための1つ以上の活性剤は、同じ又は異なる投与経路で投与され得る。
【0161】
上で論じられるように、異なるアーキテクチャを示す第1の態様の粒子が形成されて、これらが同じ又は異なる活性剤を送達するように使用され得る。これは、具体的には、例えば、2つ以上の粒子が、関連する活性物質の送達、及び/又は特定の株と融合するか又は付着する能力に最適である形態に基づいて選択され得る多株細菌感染症を治療する場合に、適切であり得る。
【0162】
実施形態では、疾患、障害、又は状態は、マイコバクテリア、及び真菌を含むグラム陰性細菌からなる群から選択される微生物に関連する、又はそれによって引き起こされる疾患、障害、又は状態であり得る。
【0163】
本開示の目的のためには、マイコバクテリアは、グラム陰性細菌であるとみなされる。マイコバクテリアは、グラム陽性及びグラム陰性細菌の両方の態様を例示する細胞壁を有するとみなされるが、mycobacterium tuberculosisなどの重要なマイコバクテリアは、グラム陽性よりもグラム陰性細菌にゲノム的に近いとみなされ得る:https://doi.org/10.1054/tube.2002.0328、したがって、この命名法が本明細書において適用される。理論に拘束されることを望むものではないが、細胞壁の主な共通成分はペプチドグリカンであり、ペプチドグリカンはほぼ全ての細菌において見出され、細胞の完全性を保護する役割を果たす。マイコバクテリアの固有の特徴である複雑な細胞壁は、異常に強い疎水性特性を有するよく認識された薬物標的である。重要なコア細胞壁構造は、アラビノガラクタン多糖、ペプチドグリカン及び外層長鎖、マイコール酸の3つの主な成分で構成されている。マイコバクテリア細胞膜の約60%は、脂質から構成されている。マイコバクテリア細胞壁は、本明細書において、第1の態様の粒子を使用した活性剤の送達に適していることが示されている。
【0164】
具体的な一実施形態では、疾患、障害又は状態は、抗生物質、及び/又は抗真菌剤を含む抗菌剤による治療に応答する疾患、障害又は状態である。すなわち、疾患、障害又は状態は、グラム陰性細菌感染症及び/又は真菌感染症である。
【0165】
一実施形態では、疾患、障害又は状態は、病原体によって引き起こされるか、又は病原体に関連する。病原体は、哺乳動物に感染し得るグラム陰性細菌又は真菌であり得る。
【0166】
実施形態では、治療される感染症がグラム陰性感染症である場合、原因病原体は、Enterobacteriaceae、Pseudomonas、Vibrio、Campylobacter、Legionella、Neisseria、Mycobacterium、Hemophilus及びBartonellaからなる群から選択され得る。
【0167】
実施形態では、グラム陰性細菌は、E.coli、Pseudomonas aeruginosa、Klebsiella、Acinetobacter baumannii、Neisseria gonorrhoeae、Enterobacteriaceae、Mycobacterium tuberculosis、及びMycobacterium smegmatisからなる群から選択され得る。
【0168】
真菌の非限定的な例には、Candida、Cryptococcus、及びAspergillus種が含まれるが、それらに限定されない。実施形態では、疾患、障害若しくは状態に関連する、又はそれを引き起こす真菌は、C.albicans、C.glabrata、C.parapsilosis、C.tropicalis、C.dublinensis、C.krusei、C.lusitaniae、C.Auris、C.Neoformans、及びA.fumigatusからなる群から選択される。
【0169】
本発明者らは、本開示の粒子が、グラム陰性細菌及び真菌との融合イベントをもたらすが、グラム陽性細菌との同様の融合イベントに続かない有利な特性を提供することを見出し、したがって、いくつかの活性剤は依然としてグラム陽性細菌に送達され得、それらはグラム陰性及び真菌種に対して最適な有効性を示す。
【0170】
本明細書における任意の態様又は実施形態では、活性剤は、疎水性活性剤であり得る。
【0171】
実施形態では、活性剤は、疎水性抗菌活性物質又は抗真菌活性物質である。好ましくは、疎水性抗菌活性剤は、グラム陰性疎水性抗菌活性剤である。
【0172】
そのような活性剤は、当該技術分野において周知であり、グラム陰性細菌感染症及び真菌感染症に対して一般的に使用される。本開示は、そのようなすでに既知の抗菌剤及び抗真菌剤のための改善された送達ビヒクルを提供し、したがって、当業者は、本開示に基づいて、感染部位への後続の送達のために本開示の粒子を装填するための適切な活性剤を選択することに困難を有しないであろう。
【0173】
活性剤が抗真菌性である場合、抗真菌性は、アゾール、エキノキャンディン及びアムホテリシンBから選択され得る。前者の2つのクラスは、真菌細胞壁の成分(それぞれ、エルゴステロール及びグルカン)に対する阻害剤であり、後者は、エルゴステロールに結合する。
【0174】
実施形態では、活性剤は、リファンピシン、フシジン酸、アンピシリン、ピペラシリン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、フィリピン、アンホテリシンB、ベンジルペニシリン、メロペネム、クラリスロマイシン、ノボビオシン、エタンブトール、イソニアジド、ストレプトマイシン、フルコナゾール、イトラコナゾール、及びピラジンアミドからなる群から選択される。そのような活性剤は、代表的なものであるだけであることが理解されるであろう。
【0175】
抗菌剤又は抗真菌剤は、非ラメラリオトロピック液晶相粒子と該グラム陰性細菌又は真菌の外層若しくは膜との間の融合イベントに続いて、グラム陰性細菌又は真菌内に放出されることが理解されるであろう。すなわち、グラム陰性又は真菌感染症の治療は、病原体の近傍又は隣接する活性剤の拡散放出ではない。むしろ、それは、第1の態様の非ラメラリオトロピック液晶相粒子の、活性剤を病原体内に直接放出されることを可能にする病原体外壁、層又は膜との融合である。
【0176】
第8の態様では、活性剤を生物学的標的に送達する方法であって、第1の態様の非ラメラリオトロピック液晶相粒子を投与するステップを含む、方法が提供される。
【0177】
一実施形態では、送達される活性剤は、検出剤であり得、したがって、送達方法は、検出方法であり得る。
【0178】
検出剤は、タグ、プローブ、又は染料であり得る。
【0179】
第1の態様、活性剤及び生物学的標的の粒子は、上記の態様のいずれかについて前述したようであってもよい。生物学的標的は、好ましくは、患者からの生物学的試料又はインビボ組織、器官若しくは体液である。実施形態では、患者は、細菌感染症を有してもよい。
【0180】
第1の態様の粒子内の活性物質のカプセル封入は、活性物質の溶解性を改善すること、又は溶解性の問題を隠すこと、活性物質をインビボでの破壊若しくは修飾から保護すること、対象内の循環時間に影響を与えること、カプセル封入活性物質の細胞毒性を低減すること、及び標的細胞内へのより効率的な送達による必要な投与量を低減させることを含む1つ以上の利点を提供し得る。
【0181】
第1の態様の粒子がグラム陰性細菌感染症を治療するために使用される実施形態では、その粒子は、エンドサイトーシスを介していかなる有意な範囲にも細菌を入らせない。言い換えれば、第1の態様の粒子がグラム陰性細菌感染症を治療するために使用される場合、活性物質は、粒子の細菌膜との融合に続いて、及びそれに起因して送達される。
【0182】
真核細胞の場合、取り込みは、多くの既知のナノ担体又は治療剤を包み込んで内在化するいくつかのエンドサイトーシス経路によって調節されることが理解されよう。内在化にもかかわらず、リソソームへの輸送を含む細胞プロセスは、しばしば、担体及び任意のカプセル封入治療薬の両方の分解に繋がり、低い治療効率をもたらす。しかしながら、第1の態様の粒子は、それらの固有の脂質二重層モチーフに起因して、異なる内部化機構、すなわち、粒子の二重層モチーフの外側細胞壁又は内部エンドソーム内のいずれかとの膜融合を利用することによって、これらのプロセスを破壊することができる。第1の態様の粒子の細胞膜との直接の親和性は、それらの共有された自己集合化の性質によって合理化され得る。ポリマー又は無機ナノ担体は、結合テザリング分子によって構築され、非ラメラLLC粒子は、分子間相互作用によって形成されるオブジェクトである。したがって、前者は、内在化のために著しく大きい膜摂動を必要とする。非ラメラLLC粒子内の構成脂質の表面曲率の増加は、特異的に、二重層融合を促進し得る。構造的には、酵母細胞は、キチン、グルカン、及びタンパク質の外層によって被覆されているグラム陰性細菌と同様の内側の血漿脂質膜を共有する。
【0183】
本発明の第9の態様では、哺乳動物における疾患、障害又は状態を診断する方法であって、第1の態様の非ラメラリオトロピック液晶相粒子又は第2の態様の組成物を投与するステップを含み、第1の態様の非ラメラリオトロピック液晶相粒子内の活性剤が、哺乳動物に、又は哺乳動物における疾患、障害若しくは状態の診断を容易にするように哺乳動物から得られた生体試料に、標識された活性剤である、方法が提供される。
【0184】
染料又は標識剤が哺乳動物細胞の範囲に送達され得ることが、本明細書に示される結果から理解され、したがって、第1の態様の粒子が検出剤として有用であり得ることが理解されるであろう。粒子はまた、それらがある特定の細胞型又は受容体に標的化されるように、分子タグ又は標的部分を組み込むように設計されてもよい。
【0185】
以下の実験セクションは、本発明のある特定の化合物の特徴付け及びその有効性をより詳細に記載する。その意図は、本発明をいかなる様式においても限定することなく、本発明の化合物のある特定の具体的な実施形態及びそれらの有効性を例示することである。
【0186】
実験
【表1】

命名規則
以下のテキストで使用される図及び表記に関して、以下が使用される。Constituent_lipid-modifier_lipid-drug、例えば、MO-DOTAP-1NOVO-主脂質としてのモノロレインを意味し、更にDOTAPによって修飾され、活性剤として1mol%のノボビオシンをカプセル封入する。
【0187】
プロット/データ/実験規則
濃度は、ug/ml単位であり、使用中の薬物の濃度である。生存率は、通常、様々な濃度に対する細胞増殖についての阻害率によって評価される。より高い数は、より多くの死細菌に相当する。いくつかの事例では、生存率は、コロニー形成単位(CFU)カウントによって評価されている。より低い数は、より多くの死細菌に相当する。
【0188】
材料
モノオレイン(MO)(97%、Sigma)、プルロニックF127(Sigma)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)(99%、Avanti)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)(99%、Avanti)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(DOPG)(99%、Avanti)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)(99%、Avanti)、TOAB(99%、Sigma)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N(シアニン5)(Cy-5)、1,2-ジオレオレオイル-snグリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N(リサミンローダミンBスルホニル)(99%、Avanti)、オクタデシルローダミンクロリド(R18)(Thermofisher)、エタノール(AR)、イソプロパノール(AR)を、更なる精製なしで受け入れたまま使用した。ペプチドギルカン抽出物(S.aureus由来)及びリポタイコ酸(S.aureus由来)を、1mg/mlの分散液を調製することによって受け入れたまま使用した。リファンピシン(98%、Sigma)、フシジン酸(98%+、Sigma)、アンピシリン(Sigma)、ピペラシリン(Sigma)、ゲンタマイシン(Sigma)、バンコマイシン(Sigma)、フィリピン(Sigma)、アンホテリシンB(Sigma)、ベンジルペニシリン(Sigma)、メロペネム(Sigma)、クラリスロマイシン(Sigma)、ノボビオシン(Sigma)、エタンブトール(Sigma)、イソニアジド(Sigma)、ストレプトマイシン(Sigma)、及びピラジナミド(Sigma)。
【0189】
McFarland0.5硫酸バリウム濁度標準:
接種密度を標準化するために、BaSO濁度標準が使用される(0.5McFarland標準)。手順は、以下のステップからなる。
(1)0.048mol/LのBaCl2(1.175%w/v BaCl2×2H2O)の0.5mLを、0.18mol/LのH2SO4(1%v/v)の99.5mLに添加することによって、この濁度標準を調製する。
(2)1cmの光路及び一致したキュベットを備えた分光光度計を使用して、濁度標準の正しい密度を確認して、吸光度を決定する。625nmでの吸光度は、0.5McFarland標準については0.08~0.10でなければならない。
(3)ブロス培養接種菌液の増殖又は希釈に使用するものと同じサイズのスクリューキャップチューブに4~6mLを分ける。
(4)これらのチューブを堅く密封し、それらを、暗闇の中、室温で保管する。
(5)この濁度標準を、使用直前に機械的ボルテックスミキサー上で激しく攪拌する。
(6)準備の3か月後に標準を取り替えるか、又はそれらの密度を再確認する。
【0190】
粒子に対する活性の効果の確立及び粒子設計の最適化
粒子調製:脂質成分(例えば、モノオレイン、50mg)を、エタノール(0.5ml)中の活性剤(例えば、Cy5、0.1mg)と混合する。溶液を真空オーブン中で少なくとも12時間乾燥させる。均質な脂質混合物を、安定剤(例えば、0.5重量%のF-127ブロックコポリマー)の溶液で水和する。混合物を、プローブ超音波処理(Branson超音波装置250、50%デューティサイクル、5分)で分散させ、結果としてキュボソームの5重量%の分散がもたらされる。脂質組成物及びカプセル封入カーゴの変動は、脂質混合段階に導入され得る。安定剤及び変化した脂質成分を使用して、以下に概説する任意の望ましくない相転移、放出プロファイル又はコロイド安定性における一般的低減を最小限に抑えるように努め得る。
【0191】
粒子のコロイド特性は、適用前に特徴付けられる。粒子のサイズ及びゼータ電位は、動的光散乱(DLS)によって決定される。粒子の内部ナノ構造は、SAXSを介して決定される。この特性評価は、きちんとした粒子及び各カプセル封入製剤の両方に対して実行される。粒子は、病原体標的に会合する前に、低い遊離薬物放出速度を必要とする。カプセル封入薬物の放出は、無限のシンク条件下でUV吸光度測定を使用して透析された試料から決定される。生体培地への応答は、緩衝液(例えば、PBS)、培養培地(DMEM)、及びLBブロスの存在下でのコロイド及び放出実験の繰り返しによって判定されて、通常の実験室実験に対するコンテキスト、並びにインビボ条件に類似するように血清タンパク質を含有する溶液を提供する。特定のタンパク質の影響は、その後判定される。生体培地への曝露後のタンパク質の特性評価、粒子に結合したタンパク質は、粒子/環境の組み合わせごとに少なくとも3回の反復を使用するSDSページゲル電気泳動によってスクリーニングされる。等温滴定熱量測定(ITC)は、粒子に対する個々の生体分子の親和性を定量化するように使用される。一般的なスクリーニングは、360秒当たり2μLを使用するが、注入量及び待機時間は、それぞれの熱シグネチャに対して最適化される。濃度の影響は、(10~100μM)にわたってスクリーニングされる。ITCは、Aim1に概説される温度で繰り返され、標的ごとに少なくとも3回繰り返される。希釈実験を、対照として実行する。
【0192】
一般手順:キュボソーム/ヘキソソームを、脂質、例えば、モノオレイン(合計約50mg)をエタノール(1ml)中に混合することによって、調製した。電荷の含有のために、DOTAP又はTOABを脂質混合相に含めて、1mol%、例えば、(MO49.5mg、DOTAP 0.93mg)を得た。薬物負荷のために、Rif(3.46mg)及びFus(2.17mg)などの抗生物質を、試料MO-DOTAP-3Rif及びMO-DOTAP-3Fusについてそれぞれ、脂質混合相に含めた。その後、溶液を真空オーブン中で少なくとも12時間乾燥させた。均質な脂質混合物を、F-127(1mL、5mg/mL)の溶液で水和した。混合物をプローブ超音波処理(Branson超音波装置250、50%デューティサイクル、5秒オフで3秒、合計持続時間5分)によって分散させ、結果として約5重量%のキュボソーム分散をもたらした。
【0193】
DOPE負荷の例:MO-10PE-1DOTAP-モノオレイン(40mg)、DOPE(9.91mg)、DOTAP(0.93mg)、MO-20PE-1DOTAP-モノオレイン(32.5mg)、DOPE(16.7mg)、DOTAP(0.93mg)、MO-30DOPE-1TAP-モノオレイン(26mg)、DOPE(24mg)、DOTAP(0.93mg)、MO-40DOPE-1TAP-モノオレイン(21.5mg)、DOPE(28.2mg)、DOTAP(0.93mg)、MO-1DOTAP-1Rif-モノオレイン(49.5mg)、DOTAP(0.93mg)、リファンピシン(1.15mg)、MO-1DOTAP-2Rif-モノオレイン(49.5mg)、DOTAP(0.93mg)、リファンピシン(2.30mg)、MO-1DOTAP-3Rif-モノオレイン(49.5mg)、DOTAP(0.93mg)、リファンピシン(3.46mg)、MO-1DOTAP-4Rif-モノオレイン(49.5mg)、DOTAP(0.93mg)、リファンピシン(4.62mg)、MO-1DOTAP-1NOVO-モノオレイン(49.5mg)、DOTAP(0.93mg)、ノボビオシン(0.86mg)、MO-1DOTAP-3NOVO-モノオレイン(49.5mg)、DOTAP(0.93mg)、ノボビオシン(2.58mg)、MO-1DOTAP-5NOVO-モノオレイン(49.5mg))、DOTAP(0.93mg)、ノボビオシン(4.29mg)、MO-1DOTAP-1PIP-モノオレイン(49.5mg)、DOTAP(0.93mg)、ピペラシリン(0.72mg)、MO-1DOTAP-3PIP-モノオレイン(49.5mg)、DOTAP(0.93mg)、ピペラシリン(2.17mg)、MO-1DOTAP-5PIP-モノオレイン(49.5mg)、DOTAP(0.93mg)、ピペラシリン(3.63mg)。
【0194】
E.coli O157:H7に対するMTSベースの細胞生存率アッセイ
E.coli O157:H7の純粋な培養物は、RMIT University(オーストラリア)の微生物培養収集物から得られた。細菌株を、栄養ブロス(NB)及び栄養寒天(NA)(Sigma-Aldrich(オーストラリア))中で維持した。シリンジフィルタ(0.45μm、PES)を、Millipore(オーストラリア)から購入した。Sterile Technoplas Petri Dishを、Interpath Services(オーストラリア)から購入した。MTSアッセイキット(Promega CellTiter 96 Aqueous One Solution)を、Promegaから購入した。
【0195】
細胞生存率アッセイ
MTSアッセイキットを使用して、ミトコンドリア琥珀酸デヒドロゲナーゼの活性の平均値に基づいて、細胞生存率を決定した。
【0196】
E.coli O157:H7及びPseudomonas aeruginosa(ATCC2835)細菌細胞を、0.5~0.6の光学密度(O.D600)を有する10mL無菌プラスチックスクリューキャップ遠心チューブ内の栄養ブロス(NB)中で培養し、37℃で150rpmで振とうしながら増殖させた。
【0197】
E.coli O157:H7及びPseudomonas aeruginosa(ATCC2835)細菌株に対する細胞生存率決定アッセイを、全てのセットの試料に対して2回ずつ実行した。きちんとした抗生物質又は抗生物質が負荷されたナノ粒子のいずれかを含有する各セット。きちんとした抗生物質ストック溶液をジメチルスルホキシド(DMSO)中で調製した。1%の細菌接種液を、DMSO(1%)を含有する陽性対照、及び50μg/mLのMOベースのカチオン性(DOTAP1mol%)脂質ナノ粒子を含有する陰性対照に添加した。異なる抗生物質が負荷されたナノ粒子を、滅菌ミレックス-GPシリンジフィルタ(0.45μm、PES、Millipore)を使用して濾過し、実験に使用した。遊離抗生物質(DMSO中5mg/mLのストック)及び意図された濃度の抗生物質が負荷された脂質ナノ粒子を、5mLの培養(1%接種体を含む)培地への接種時に添加し、20~24時間インキュベートし、このとき、細菌の増殖は、37℃で、150rpmでの振とうにより固定相に達した。
【0198】
各試料から100μLの細胞培養培地を採取し、96ウェルプレートに分配した。細菌細胞生存率を、MTSアッセイキットを用いて測定した。10μLのMTS溶液を、100μLの試料ごとに添加し、37℃で2時間インキュベートした。マイクロプレートリーダー(SpectraMax、Molecular Devices)を使用して、490nmでの吸光度を測定した。対照試料からの測定された吸光度を、100%の細胞生存率に対して設定した。したがって、他の全ての試料データを、この値に比較して調整した。
【0199】
E.coli O157:H7に対するCFUベースの細胞生存率アッセイ
最小阻害濃度(MIC)測定アッセイ。E.coli O157:H7の純粋な培養物は、RMIT University(オーストラリア)の微生物培養収集物から得られた。細菌株を、栄養ブロス(NB)及び栄養寒天(NA)(Sigma-Aldrich(オーストラリア))中で維持した。E.coli O157:H7に対するMIC決定アッセイを、試料の全てのセットにおいて2つずつ実施し、各セットは、本開示の遊離リファンピシン(若しくはフシジン酸)又はリファンピシン(若しくはフシジン酸)が負荷されたナノ粒子のいずれかを含有していた。各複製物について、E.coliの50μLの一晩培養物を5mLの栄養ブロス(NB)に希釈し、37℃で、150rpmで振とうしながら0.5~0.6の光学密度(O.D600)まで増殖させた。遊離リファンピシン及びフシジン酸ストック溶液を、DMSO中で調製した。陽性対照は、DMSO(1%)を有する1%の細菌接種物を含有し、陰性対照は、50μg/mLのMOベースのカチオン性(DOTAP1mol%)脂質ナノ粒子を含有していた。リファンピシン及びフシジン酸負荷ナノ粒子を、使用前に滅菌ミルレックス-GPシリンジフィルタ(0.45μm)を使用して濾過した。
【0200】
濾過前後の薬物の濃度を、UV-Vis分光法で評価した。4mg/mlのリファンピシンのストック溶液をエタノールに調製した。0、2、1、0.5、0.25、0.125、0.0625、0.03125、0.015、0.0078及び0.00390mg/mlの濃度を有する10の標準的な連続希釈溶液をエタノール中に調製し、340nmにおける吸光度を相対濃度に対してプロットして、標準較正曲線を得た。50μLのリファンピシン(3mol%又は3.5mg/mL)負荷MOベースのカチオン性(DOTAP1mol%)脂質ナノ粒子を、濾過前後に、950μLのエタノール溶液中に溶解させた。両方のナノ粒子試料のリファンピシン濃度(濾過前及び濾過後)は、リファンピシンの標準曲線から測定された。濾過後に、リファンピシン濃度は、濾過されていない試料よりも約5%低いことがわかった。遊離リファンピシン(DMSO中5mg/mLのストック)及びリファンピシン(3mol%又は3.5mg/mL)薬物負荷MOベースのカチオン性(DOTAP1mol%)脂質ナノ粒子を、接種時に0.05~5μg/mL~5mLの培地の濃度範囲で添加した。細菌増殖を、600nmでの吸光度を読み取ること、並びにインキュベーションの24時間後にコロニー形成単位(CFU/mL)を決定することによって測定し、その時点で、細菌増殖は固定相に到達した。最小阻害濃度(MIC)は、90%超の栄養寒天プレート(NA)上の細菌に対するいかなる増殖も阻害する遊離薬物又はナノ粒子の最小濃度として定義された。
【0201】
真菌細胞生存率アッセイ
Candida albicans(ATCC10251)生物を、無菌バイアルからサブローデキストロース寒天又はジャガイモデキストロース寒天上にサブ培養して、純度及び生存率を確保するために継代培養した。インキュベーション全体の温度は、35℃であった。
【0202】
接種体を、直径約1mmの5つのコロニーを、24時間前のCandida albicansの培養物から選択することによって調製した。コロニーを、5mLの滅菌0.145-mol/L生理食塩水(8.5g/L NaCl、0.85%生理食塩水)中に懸濁させた。得られた懸濁液を15秒間ボルテックスし、細胞密度を十分な滅菌生理食塩水を添加して分光光度計で調整して、0.5McFarland標準(以下に示す)によって530nmの波長で生成されたものに対して透過率を増加させた。
【0203】
この手順により、1mL当たり1×106~5×106個の細胞の真菌細胞ストック懸濁液を得る。作用懸濁液は、RPMI1640ブロス培地によるストック懸濁液の1:100希釈、続いて1:20希釈によって作製され、これにより、1mL当たり5.0×102~2.5×103個の細胞が得られる。
【0204】
Candida albicans株に対する細胞生存率決定アッセイを、試料の全てのセットについて二回実行した。きちんとした抗生物質又は抗生物質が負荷されたナノ粒子のいずれかを含有する各セット。きちんとした抗生物質ストック溶液をジメチルスルホキシド(DMSO)中で調製した。細胞ストック懸濁液の1%を、DMSO(1%)を含有する陽性対照に、及び50μg/mLのMOベースのカチオン性(DOTAP1mol%)脂質ナノ粒子を含有する陰性対照に添加した。異なる抗生物質が負荷されたナノ粒子を、滅菌ミレックス-GPシリンジフィルタ(0.45μm、PES、Millipore)を使用して濾過し、実験に使用した。遊離抗生物質(DMSO中のストック5mg/mL)及び意図された濃度の抗生物質が負荷された脂質ナノ粒子を、接種時に5mLの培地(細胞ストック懸濁液の1%を有する)に添加し、24~30時間インキュベートし、このとき、真菌細胞の増殖は35~37℃で固定期に到達する。
【0205】
各試料から100μLの細胞培養培地を採取し、96ウェルプレートに分配した。真菌細胞生存率を、MTSアッセイキットを使用することによって測定した。10μLのMTS溶液を、100μLの試料ごとに添加し、37℃で2時間インキュベートした。マイクロプレートリーダー(SpectraMax、Molecular Devices)を使用して、490nmでの吸光度を測定した。対照試料からの測定された吸光度を、100%の細胞生存率に対して設定した。したがって、他の全ての試料データを、この値に比較して調整した。
【0206】
結果
グラム陽性細菌との相互作用
キュボソームの取り込みを、2つのグラム陽性細菌種であるBacillus cereus(B.cereus)及びStaphylococcus aureus(S.aureus)中で評価した。ペプチドグリカンの最外層は、これらの種について、それぞれ、約50nm及び23nmの厚さであると推定される。全内部反射蛍光顕微鏡(TIRF)を使用して、その場でのキュボソーム相互作用を明らかにした。細菌細胞は、青色で示されるλex=405nmでの励起からのそれらの内在蛍光によって観察され得る。一方、キュボソームは、赤色で示されるリン脂質染料18:1-Cy5(λex=647nm)によって蛍光タグ付けされた。細菌自体は、この波長(λex=647nm)で無視できる蛍光を示す。蛍光タグの不在下での細菌の代表的な蛍光画像を、図1に示す。
【0207】
B.cereusへの蛍光タグ付きキュボソームの取り込みを示すタイムラプス系列を、図2aに示す。図2aにおけるタイムラプスから、溶液中の一時的なキュボソームは、白色矢印で強調表示される。明るい円形スポットとして見えるキュボソームは、t=8.7秒及び14.5秒でのフレーム間で溶液全体を移動し、その後t=約14.9秒でB.cereus表面に付着することが観察された。平均二乗変位(Δr)は、図2bに示す粒子追跡によって決定された。約8.7秒(破線で示される)の勾配における突然の偏差は、キュボソームの細菌の表面への付着と一致する。変位データにおいて、t=0は、キュボソームの出現(図2aにおけるタイムラプスにおけるフレーム8.7秒に最も近い)に対応することに留意されたい。一旦付着すると、キュボソームは、キュボソームが溶液中に移動している間でさえ、細菌の表面上あるままであった。これはまた、図2bに示される変位トラッキングによって示され、一旦付着すると、低減された勾配は、有意により大きいコロイド、すなわち、細菌-キュボソーム複合体の動きを示す。図2cにおけるタイムラプスは、より長い時間(約3時間)にわたって、キュボソームが、明るい赤色斑点(λex=647nm)として青色の細菌の表面(λex=405nm)に連続して付着することが観察されたことを示す。キュボソームは、数分の期間にわたってサイズ及び形状を維持して、長期安定性を示した。
【0208】
図2c~dにおける広範囲のタイムラプスは、数時間後に、キュボソームからの最初に局在化された蛍光源が、徐々にB.cereus細胞全体を覆うように広がることを示す。これは、赤色信号の着実な増加によって、このタイムラプスで定性的に観察される。この挙動は、図2e~fに定量化されている。個々のキュボソーム(図2e)の蛍光強度(I)は、経時的に指数関数的に減衰した。対数スケールでデータをプロットすると、2つの異なるレジームが明らかになり、最初の約15秒は-1/9の傾き及び約15秒~400秒の間の-1/2の支配的な勾配を特徴とし、それぞれの各々のレジームについてI約t-1/9又はI約t-1/2である強度減衰を示す。この長寿は、キュボソームが10秒以内に融合するように現れる真核細胞で観察される取り込み挙動とは全く対照的である。付着の初期段階に、キュボソームが、表面、すなわち、B.cereusの外側ペプチドグリカン層を濡らし得ることが予想される。後者の部分(15秒以降)について観察された支配的なスケーリングは、1次元における点源放出の拡散について予想されるものと相関し、Cmax約t-0.5dであり、式中、Cmaxは時間tにおける最大濃度であり、dは次元数である。これは、厚いペプチドグリカン層を通って内側に拡散するキュボソーム成分脂質によって概念的に合理化され得る。
【0209】
細菌と相互作用する多くのキュボソームの累積効果は、着実に増加することが示されている細胞全体にわたる蛍光強度に反映される(図2f)。蛍光強度の増加は、全てのキュボソーム組成物にわたって観察された。蛍光強度増加の大きさ及び速度は、MO及びPT間で合理的に類似しているが、正荷電キュボソームについては顕著な加速及びより大きな大きさが存在していた。例えば、3時間のインキュベーション後、MO-DOTAPキュボソームについて観察される強度(ζ=+31mV)は、MOキュボソームのそれ(ζ=-12mV)の2倍であった。この増加は、負荷電B.cereus膜と陽性キュボソーム表面との間の引力ポテンシャルによって促進される、細菌との成功裡の衝突の数の増加に起因し得る。
【0210】
S.aureus細菌へのキュボソームの取り込みを、図3に示す。小さな球形の細菌は観察するのがやや難しかったが、それらは表面に一貫して結合したままであり、より明確な粒子追跡を可能にした。2つの代表的な時間経過を、図3a及びbに示す。第1のシリーズでは、個々のキュボソームが、約4分間の過程にわたって徐々に消散する前に、表面に当たるのを観察することができる。第2のシリーズでは、3つの個々のキュボソームの下部細菌への同時付着を含む、キュボソームの数の増加が観察された。このシリーズでは、キュボソームは約2~7分間にわたって着地して散逸することが明らかに観察された。このタイムラプスにより、キュボソームが一般にその形状を保持するが、付着後にサイズが縮小することが示される。しかしながら、図3bにおける最下部のキュボソームにより、キュボソーム側方フットプリントにおいて明確な収縮が示される。
【0211】
同じ時間経過(図3b)内に、粒子サイズの変化に起因する、付着のサイズ及び持続時間においていくつかの変動が存在していた。おそらくより大きいキュボソームは、強度が増加したより大きいフットプリントを有し、完全に減衰するのにより長い期間を要した。粒子は、2~10分後に散逸するように見えた。個々のキュボソームについて経時的にピーク蛍光強度が、図3cに示される代表的なプロットで、再度追跡された。図3cの挿入図内では、対数スケールのデータは、-1/2に近いいくつかの点で、約-1/3の勾配との相関を示す。興味深いことに、このスケーリングは、B.cereusで観察されたものと合理的に一致している。両方のグラム陽性細菌のスケーリング間の類似性は、相互作用が外側のペプチドグリカン層の存在によって支配されることを示唆している。-1/3と-1/2との間の勾配の変動は、幾何学的差異から生じ得る。B.cereusに対して利用可能なS.aureusの表面積の低減は、融合するキュボソーム間の相互作用をもたらすことさえあり得る。それにもかかわらず、観察された支配的なスケーリングは、ペプチドグリカンの外層を通る材料の1ーd点源放出と再び相関する。
【0212】
S.aureusからのペプチドグリカン抽出物を使用して、キュボソームと細菌の外側ペプチドグリカン層との間の相互作用を更に評価した。抽出物とS.aureus自身との類似性に基づいて、抽出物は、元の細菌の形状を保持するペプチドグリカン殻を提供した。この場合、イメージングの解像度は、生きたS.aureusよりもやや明瞭であった(図3e)。スフェロイド粒子は、通常、界面での平面シート又は積み重ね中に存在していた。タイムラプス(図3e)から、多くのキュボソームがクラスターの周囲の周りに蓄積することが観察された。経時的に、赤色蛍光がクラスタードメイン全体に徐々に広がることが観察された。インビトロ実験とは対照的に、キュボソームはフットプリント又は強度を低減させるようには見えなかった。
【0213】
模倣物を、追加の細胞壁成分を含むことによって、類似の実験で調べた。この場合、ペプチドグリカン抽出物を、リポタイコ酸(LTA)抽出物(50%w/wLTA:ペプチドグリカン)とともにインキュベートした。前の結果とは全く対照的に、組み合わされた抽出物へのキュボソームの付着は観察されなかった。組み合わせた抽出物へのキュボソーム付着のタイムラプスを、図3hに示す。S.aureus、ペプチドグリカン、及びペプチドグリカン+LTA抽出物のクラスター間の相対的な取り込みを、図3dに定量化している。一般に、S.aureus自体は、新しいキュボソームの添加に起因するいくつかのピークを伴う着実な取り込みを示した。この漸進的な増加は、B.cereusによって示された初期の結果と相関して、キュボソーム物質のS.aureusへの取り込みをもう一度反映している。対照的に、ペプチドグリカン及びペプチドグリカン+LTA抽出物は、それぞれ、増強された及び阻害された取り込みを示した。ペプチドグリカン層に広範囲に見出されるLTAの存在は、これの正確なメカニズムが解明されていないが、キュボソーム付着を妨害するようである。
【0214】
より高い分解能で付着を調査するために、SEMを、ペプチドグリカン抽出物及びS.aureusに対して実行した(図3f、g)。繰り返すが、抽出物は、固定されたS.aureusと幾何学的に類似していた。SEM画像は、キュボソームでの処理後に、抽出物本体間の粗さが明らかに打ち消され、キュボソーム材料が広がり、抽出物を巻き込んだことを示すことを示している(図3f)。比較すると、幾何学的に顕著なコントラストは、処理されたS.aureus細菌と処理されていないS.aureus細菌との間で観察されなかった。これは、生きた細菌による粒子の分解、又は、SEMが時間内に単一のスナップショットのみを捕捉するために、キュボソーム相互作用のタイミングを反映する可能性がある。次いで、固定されたS.aureusを処理したキュボソームについて、SEMにより、きちんとした細菌及び細菌の末端に対してより小さい円形の特徴によって装飾された細菌の二峰性分布が明らかになった。2つの代表的な画像が、図3gに示され、これは、細胞に対する外部の球状の特徴を強調する。この特徴のサイズ(左右のパネルの横方向の直径290nm及び220nm)は、キュボソームのサイズと一致している。加えて、位置は、TIRF測定中に観察された取り込み位置と一致している。図3gにおける球状特徴とS.aureus細菌との間の見かけの接触角は、それぞれ、約132°及び120°である。高接触角は、TIRF測定におけるキュボソームの最小の広がりと一致するが、その角度は、固定中に物理的処理によって変化された可能性がある。真空中のキュボソームの物理的安定性は、オスミウム及びグルタルアルデヒドによるMO中の不飽和結合及びヒドロキシルの架橋に起因する。内部構造の詳細は、特に5nmのスパッタコーティングを考慮すると、SEMによって解決されない。重合及び陰性染色がメソ構造のTEMを以前可能にしていたことに留意されたい。これらの結果は、グラム陽性細菌の治療に近づくことにおける困難性を示している。
【0215】
グラム陰性菌との相互作用
グラム陰性細菌との相互作用を、Escherichia coli(E.coli)を使用して調べた。S.aureusと同様に、E.coliも界面に十分に付着したままであった。図4aに示されるタイムラプスから、キュボソームが約30分にわたって連続して付着することが観察された。一旦付着すると、キュボソームは徐々に衰退して収縮し、グラム陽性種について前述したように主に振る舞うように見えた。これらの単一のキュボソーム相互作用が最も一般的であったが、約3時間のより長い期間にわたる図4bのタイムラプスに見られるように、複数のキュボソームを含む相互作用がまた、観察された。0~約47分の間に、単一のキュボソームが細菌表面に付着することが観察された。これに続いて、二次吸着が、以前に付着したキュボソームの上に観察された。約90分のフレームでは、新しいキュボソームが着地し、蛍光が細胞のかなりの部分全体に拡散することを促すことが観察された。94分のフレームまでに、細胞全体がキュボソーム波長で明るく蛍光した。この系列の後半のフレームでは、このプロセスが繰り返されることが示されている(約175分)。これらの系列は、細菌のキュボソーム汚染領域が新しいキュボソームについての好ましい着地部位であることを示唆しており、これはおそらく、細胞膜に融合性脂質を含有によって可能になる。更に、キュボソーム材料は、E.coli全体を通して急速に広がり得る。
【0216】
単一チャネル(λex=647nm)での取り込みを調べることによって、急速な取り込みの事象がより明確に解決され得る。図4cにおける短い系列は、MOキュボソームについて、これを強調している。上部パネルでは、小さい円形の特徴は、20秒で直径約100~200nmであるように解決される。突然、3分後に、この特徴は、細胞体全体にわたる蛍光のバーストを誘導するように見えた。類似のイベントが、図4dのMO-DOTAPキュボソームについて示され、キュボソーム付着は、細胞体の右中央の明るい点によって推測され得る。上述のように、グラム陰性細菌の場合、キュボソームは、まず、ペプチドグリカン層ではなく、外側の原形質膜と相互作用する。この意味で、キュボソームとグラム陰性細菌との間の相互作用は、哺乳動物の膜との相互作用とより比べられる。材料の急速な広がりは、キュボソーム材料の外側膜と融合する能力を反映し得る。原形質膜を介した材料の移動は、おそらく図4eにおいて最も明確である。初期フレームは、細菌の位置を強調するλex=405nmのシグナルチャネルを示している。以下の画像シリーズ(λex=647nm)では、2つのキュボソームが、それぞれ、10秒及び20秒で着地するのを観察され得る。30秒までに、局所蛍光は、細菌全体に散逸した。興味深いことに、増加したシグナルが、脂質膜内の染料の位置と一致する細胞の周囲で観察された。このシリーズでは、膜中の材料の時空間勾配が解決された、迅速な相互作用及び大量のキュボソーム材料の組み合わせが可能性となった。
【0217】
図4f~mに示されるSEM画像は、図4aに示されるものと著しく類似したキュボソーム付着の画像を明らかにした。一連の画像から、いくつかの異なる球状のアスペリティが、E.coliの表面上で観察され得る。画像内の突起のサイズは、直径が約400nmから約50nmまで変化する。E.coli表面との接触では、より大きいキュボソームが細菌表面とのより高い接触角を示すように見えた。これは、接触角が90°を超えるように見える図4g及びlから最も顕著である。対照的に、小さなキュボソームはより大きく広がり、細菌表面に巻き込まれているように見える。サイズのばらつきから、キュボソームの各々が固定プロセスによって効果的に凍結された細菌への内在化の様々な段階で捕捉されていることが推測され得る。
【0218】
個々のE.coliによる取り込み速度を、蛍光強度を経時的に定量化することによって評価した。個々のキュボソーム取り込みイベントの数は、それぞれ、MO及びMO-DOTAPキュボソームの代表的な結果である、図5a及びbにおいて観察され得る。強度における多くのピークが観察され、これは、細胞へのキュボソームの付着に起因し得る。2つのプロット間で、MO-DOTAPがキュボソーム付着に起因するピークの頻度の増加をもたらすことは即座に明らかである。これは、B.cereusについて初期に示された結果、及びリポソームへの正電荷の組み込みによって障害が最小限に抑えられているリポソームについての以前の結果と、概して一致している。図5cにおけるより狭い持続時間に焦点を当てると、赤色曲線は、キュボソーム付着からの2つの顕著なピークを有するピーク強度曲線を示す。灰色の点は、細胞全体の面積について記録された蛍光強度を示す。各キュボソーム付着イベントの後に、ピーク強度は減衰するが、面積強度における段階的増加が存在する。これらの組み合わせは、キュボソームから細菌への付与された蛍光の移動を示す。更に、この結果は、キュボソームからの負荷成分の量子化された送達を明確に示す。
【0219】
E.coliに付着した個々のキュボソームについて強度を経時的に追跡することによって、更なる差異が、グラム陽性種の強度のそれに対して観察された。指数減衰をなおも示している間に、対数スケールで、2つの勾配-1/6及び-1(図5d)によって示されるように、2つのレジームが観察された。1つの代表的な結果が、図5eにプロットされ、対応する時系列の画像が図5fにプロットされている。これら2つの勾配は、キュボソームのE.coliとの相互作用が2段階で起こることを示唆している。キュボソーム内のフルオロフォアの均質な分散が与えられると、強度Imaxは、キュボソームサイズ(R)でスケーリングされ、及び質量(m)バランスは、
【数14】

よって駆動され得、これは、キュボソームが高さhの2D脂質二重層内に拡散するときの濃度勾配δcによって駆動される。δcの2D拡散に基づく時間スケール~tー3/2でのδcの進化は、拡張拡散長(粒子の接触フットプリント直径の半分、L/2)と絡み合っている
【数15】

。方程式の積分は、実験の初期段階で得られたデータと良好な一致を提供するImax~t-1/6の最終強度スケーリングに到達する。融合は、ナノ担体のスポットサイズにおける徐々の低減、及び図5fにおける細胞周囲の周辺の明確な強度の勾配によって定性的に観察され得る。
【数16】

後の段階では、勾配は、徐々にI~t-1のスケーリングを示す-1値に移行する。このスケーリングは、キュボソームが点源として材料を2次元で効果的に送達していること、を示唆している。2段階プロセスは、(1)形質膜内への融合、及び(2)細胞壁を通る連続拡散として推論され得る。融合脂質と細菌との間の質量バランスは、
【数17】

として構築され得、F及びFは、それぞれ、外側形質膜及び内側細胞壁における脂質の拡散を表す。キュボソームが、最初に原形質膜内の濃度勾配を駆動する原形質膜と適合することを考えると、融合は、初期段階で支配的であり、F>Fであり、Fは無視され得る。次いで、膜中の脂質濃度が徐々に増加するにつれて、内壁を通って細胞の内部への脂質移動が強化される。図5dに示されるように、より短い期間の相互作用に対しては、融合相が優勢である。次いで、後の段階では、強度は、材料が外膜から内側のペプチドグリカン層を通って移行するにつれて減衰し、キュボソームは点源として作用する。
【0220】
従来の抗生物質(例えば、ベータ-ラクタム、アンサマイシン)又は抗菌ペプチドを含む抗菌薬は、本明細書で研究したリン脂質染料と同様の様式で送達され得ることが予想される。カプセル封入された材料の漏れがないと仮定して、送達は、付着したキュボソームの数によって定量化されるべきである。指数-1/2でスケーリングされたグラム陽性細菌への送達は、1-D点放出と一致する。グラム陰性菌の場合、2段階のプロセスでは、指数-1との2-Dでの点源としてのカーゴの放出により後続される指数-1/6との初期融合が関与しており、送達がグラム陽性種よりも効果的であることを示唆している。これは、送達された化合物がグラム陰性細菌全体に急速に広がり得るという観察によって更に支持され、グラム陰性細菌の形質膜がキュボソーム材料及び細胞壁の組み込みを助けることを示唆している。この外側膜を回避する能力は、ますます弾力性のあるグラム陰性種への治療薬の送達に不可欠であることが証明され得る。更に、融合に対するエネルギー的障壁を低下させる融合性脂質の包含は、このプロセスを更に促進するはずである。
【0221】
図4c~dに示される急速な蛍光拡大の断続的な発生は、2段階モデルからの逸脱を引き起こした。付着中に急速な広がりを示したキュボソームの強度対時間曲線のサブセットが、図6に示される。一般に、強度曲線は、図6a~bに先に示されるスケーリングに従うが、ここでの各曲線はまた、プロット内の矢印でマークされる強度の急激な低下も有する。この低下は、蛍光の局在が細菌全体に拡大した時点に対応する。この低下が発生するのに要する時間は散発的であり、全てのキュボソームに対して発生してはいなかった。各場合において、ピーク蛍光は40~50%低減し、低下持続時間は通常の減衰よりも速かった(秒対分)。結果として、この断続的なプロセスについてのスケーリング解析は、データ点の数が低減したために実行不可能であった。すなわち、ログプロットに示されているドロップの示唆的な勾配は、約-2.13と2.33との間で変化した。これらのイベントは不規則であり、細菌全体が蛍光になったことを考えると、これらの特定のキュボソーム(又はその一部)が細胞壁全体を横切っていた可能性があり得る。2段階輸送モデルからの逸脱は、細菌によって分泌される酵素の影響を反映していてもよい。Thornらは最近、リパーゼの存在が疎水性カーゴのバースト放出を促進することを実証した。
【0222】
総内部反射蛍光(TIRF)を使用したキュービックナノ担体と支持された脂質二重層(SLB)との間の融合挙動は、図7aに示される。このシリーズは、約6.5秒にわたって半径方向に拡散する蛍光を伴う明るい点として最初に観察されたキュボソーム材料の融合を示す。真核細胞で同じアプローチを使用して、これらの相互作用の動態を直接観察し、定量化することが可能である。実験では、キュボソームが12時間以上にわたる細菌への共局在が示される。結果は、それぞれ、図7b及び7cにおいて強調される、グラム陰性対グラム陽性細菌へのキュボソームの輸送における異なるレジーム及び差異を明らかにした。図7d及びeのスナップショットは、キュボソームと細菌との間の区別、及び個々のキュボソーム-細菌相互作用の観察を可能にする、その場表面感受性測定からの代表的な結果を示す。
【0223】
図7fの上部画像において、真菌の周りの赤色蛍光の環が観察され得る。真菌が有糸分裂を起こすと、真菌膜が変形して、付着されたキュボソームが形質膜と融合することを可能にする。図7fの下部画像に示されるように、キュボソームからの赤色蛍光の広範な内在化が観察可能である。細菌についての同じ設計基準が真菌に適用されることを予想するのは合理的である。
【0224】
活性剤の送達
ノボビオシン
ノボビオシンは、DNA合成に関与する酵素を阻害する。図8及び9並びに表2は、表1に提示される、抗生物質ノボビオシンを含有するキュボソーム製剤によるP.aeruginosa及びE.coliの阻害を示す。プロットは、ノボビオシン(x軸)の濃度に対する各製剤の阻害(y軸)を示す。総濃度は、各製剤間で同等である。
【0225】
P.aeruginosaに対して、ノボビオシンの全てのカプセル封入製剤は、自由に溶解されたもの(黒色実線)よりも有意に多くの阻害を有していた。
【0226】
キュボソーム当たりの薬物(又は粒子当たりの薬物分子)の濃度が増加するにつれて、阻害が増加した。カバー範囲(1~5mol%)。この結果は、より高い薬物負荷を有するより少ない粒子が、より低い薬物負荷を有するより多くの粒子よりもより効果的であることを示す。
【0227】
例えば、80μg/mlで、MO-DOTAP-1NOVO、MO-DOTAP-3NOVO、MO-DOTAP-5NOVOは、それぞれ、51%、55%、及び85%の阻害を示した。遊離抗生物質は13%の阻害を達成した。
【0228】
タンパク質合成を阻害する抗生物質/静菌剤である二次薬物フシジン酸の含有がまた、阻害を更に増加させた(プラス対五角形)。
【0229】
実際には、P.aeruginosaは、通常、外側の形質膜にわたる透過性が限定されているために、ノボビオシンに対して高い耐性を示す。カプセル封入されたときの阻害の増加は、キュービック相ナノ粒子によって本明細書に示される融合機構に起因する。
【0230】
「融合性」脂質の包含は、融合取り込み機構を促進する。高度に湾曲した脂質、10mol%でのDOPEの包含は、全ての濃度範囲にわたって平均57%阻害を増加させた。例えば、MO-DOTAP-3NOVO及びMO-DOTAP-10PE-3NOVOは、それぞれ、60μg/mlで約48%及び約85%をもたらした。
【0231】
ノボビオシンは、血清タンパク質への結合による血清中の高不活性化のために、実際にはしばしば使用されない。対照的に、ノボビオシンがキュボソーム中にカプセル封入されたとき、阻害は血清アルブミンの存在下で改善するように見えた。
【0232】
阻害は、ヒト血清アルブミン(HSA)、ウシ血清アルブミン(BSA)、及びウシ胎児血清(FBS)の存在下で、MO-DOTAP-3NOVOを使用して評価された。図10は、カプセル封入が、自由に溶解した抗生物質(黒色線)に対して抗生物質活性を保持することを示す。破線は、同等の負荷(20μg/ml)での血清タンパク質の非存在下でのMO-DOTAP-3NOVOの性能を反映している。
【表2】

【表3】
【0233】
ピペラシリン
ピペラシリンは、細胞破裂に繋がるペプチドグリカンの架橋を阻害するベータラクタム抗生物質である。図11及び12並びに表4は、表3に提示される、抗生物質ピペラシリンを含有するキュボソーム製剤によるP.aeruginosa及びEe.coliの阻害を示す。
【0234】
P.aeruginosa(図11)に対して、ピペラシリンの全てのカプセル封入製剤は、遊離して溶解した薬物(実線)よりも有意に多くの阻害を有していた。
【0235】
キュボソーム当たりの薬物(又は粒子当たりの薬物分子)の濃度が増加するにつれて、阻害が増加した。
【0236】
例えば、MO-DOTAP-1Pip、MO-DOTAP-3Pip、MO-DOTAP-5Pipは、それぞれ、52%、59%、及び75%を達成した。
【0237】
カチオン性脂質DOTAPの包含による正電荷の組み込みは、阻害を大幅に増加させた。これは、約80%+阻害(ダイヤモンド、クロス、プラス)を有し、かつ約50%(逆三角形、五角形、正方形)を有するカチオン性脂質を有しない粒子の群化によって観察され得る。
【0238】
同様の阻害は、カチオン性部分としてTOABの包含によって達成された(クロス対プラス)。
【0239】
E.coli(図12)に対して、同じ傾向が観察された。カプセル封入されたピペラシリンは、カプセル封入濃度が1mol%超のときに、遊離抗生物質の性能を超えた。
【0240】
表4は、異なる重要な成分脂質、モノオレイン又はフィタントリオールのキュボソームにカプセル封入されたときのE.coliに対するピペラシリンについての阻害を示す。製剤間の性能は同様であった。
【表4】

【表5】
【0241】
メロペネム
メロペネムは、細胞の破裂と死に繋がる細胞壁の合成を阻害するベータ-ラクタム抗生物質である。図13及び14は、表5に提示される、抗生物質ピペラシリンを含有するキュボソーム製剤による、P.aeruginosa及びE.coliの阻害を示す。
【0242】
P.aeruginosa及びE.coliに対して、メロペネムの全てのカプセル封入製剤は、遊離して溶解した薬物(黒の実線)よりも有意に多くの阻害を有していた。
【0243】
キュボソーム当たりの薬物(又は粒子当たりの薬物分子)の濃度が増加するにつれて、阻害が増加した。メロペネムの場合、この影響は3~5mol%の間で飽和しているように見えた。
【0244】
カチオン性脂質DOTAPの包含による正電荷の組み込みは、阻害を大幅に増加させた。これは、約80%+阻害(ダイヤモンドークロスープラス)を有し、約50%(正方形、三角形、五角形)を有するカチオン性脂質を有しない粒子の群で観察され得る。
【表6】
【0245】
クラリスロマイシン
クラリスロマイシンは、タンパク質合成を阻害する。図15は、表6に提示されるような、この抗生物質を含有するキュボソーム製剤によるP.aeruginosa及びE.coliの阻害を示す。
【0246】
カチオン性脂質DOTAPの包含による正電荷の組み込みは、阻害を増加させた。カチオン性キュボソーム内に1及び3mol%でカプセル封入された場合、カプセル封入クラリスロマイシンは、遊離して溶解した抗生物質と比較して、E.coliの阻害の増加をもたらした。
【0247】
カチオン性脂質の非存在下では、性能は、製剤間で本質的に等価であった。
【0248】
図16に示されるように、薬物の沈殿に起因する可能性が高いクラリスロマイシンでは、増強はそれほど顕著ではなかった。これは、この効果を最小限に抑える製剤への追加のバリエーションによって対処され得る。
【表7】
【0249】
ゲンタマイシン
ゲンタマイシンは、タンパク質合成を中断させ、細菌細胞膜に対していくつかの影響を示し得るアミノグリコシドである。図17及び18は、表7に提示されるように、この抗生物質を含有するキュボソーム製剤によるP.aeruginosa及びE.coliの阻害を示す。
【0250】
阻害は、カプセル封入されたときに大幅に強化され、遊離して溶解された抗生物質と比較して有意に低減された濃度でピーク阻害を達成した。
【0251】
荷電脂質DOTAP又はOAがキュボソーム粒子に組み込まれたときに、阻害の10~20%の増加が観察され、これは、それぞれ、ゼータ電位及び負の曲率を増加させた。
【0252】
顕著なコントラストは、濃度依存性抗生物質であるゲンタマイシンの作用様式と相まって、増強された送達に起因し得る。それは、低濃度の継続的な存在に反して、高濃度を必要とする。
【表8】
【0253】
ジクロキサシリン
ジクロキサシリンは、細胞の破裂及び死に繋がる細胞壁合成を阻害する、狭いスペクトルのベータ-ラクタム抗生物質である。ジクロキサシリンは、グラム陰性菌に対する活性が限られている。
【0254】
図19は、表8に示される、抗生物質ジクロキサシリンを含有するキュボソーム製剤によるE.coliの阻害を示す。タゾバクタム(ベータラクタマーゼ阻害剤)との二重カプセル封入は、阻害(正方形対三角形)を効果的に倍増させ、それによって、グラム陰性細菌に対して通常典型的に受け入れられない抗生物質でさえ、第2の活性剤と組み合わせて使用される場合に、本開示のアプローチにおいて有用であり得ることが示される。
【表9】
【0255】
ベンジルペニシリン
ベンジルペニシリンは、細胞の破裂及び死に繋がる細胞壁合成を阻害する、狭いスペクトルのベータ-ラクタム抗生物質である。ベンジルペニシリンは、ベータラクタマーゼ抗生物質に対する固有の耐性のために、グラム陰性細菌に対する活性を有する。図20は、表9に示されるような、抗生物質ベンジルペニシリンを含有するキュボソーム製剤によるE.coliの阻害を示す。
【0256】
ベンジルペニシリンは、遊離抗生物質と比較して、3mol%でカプセル封入した場合に阻害の増加をもたらし、それによって、薬物濃度/負荷などの製剤の単純な変化を使用して、転帰を改善することができることを示す。
【0257】
CFU試験では、概して濃度とともに増加する、カプセル封入されたときにコロニーカウントにおける10~84%の更なる低減が明らかになった(表10)。
【表10】

【表11】
【0258】
リファンピシン
リファンピシンはRNA合成を阻害する。図21及び22は、表11に提示される、抗生物質リファンピシンを含有するキュボソーム製剤によるE.coliの阻害を示す。
【0259】
キュボソーム当たりの薬物(又は粒子当たりの薬物分子)の濃度が増加するにつれて、阻害が増加した。この結果は、より高い薬物負荷を有するより少ない粒子が、より低い個々の薬物負荷を有するより多くの粒子よりもより効果的であり得ることを示す。この結果はまた、カプセル封入が同じ量の薬物の有効性を大幅に高めることを示す。
【0260】
4mol%の負荷で、阻害は3mol%のものから低減されることが留意された。この官能性の喪失は、ナノ粒子における秩序立った構造の喪失、又はより具体的には、より高い薬物濃度による融合性キュービック相の中間構造化の喪失に起因する。
【表12】
【0261】
増加曲率
本明細書に記載される抗生物質活性剤の送達は、理論に限定されることを望まないが、自己集合ナノ粒子及び細菌膜の融合を介して生じることが提案される。したがって、融合性脂質の含有は、融合が生じるエネルギー的障壁を更に低減することによって融合送達経路を促進すべきである。リファンピシンの場合、これは、一連の製剤を介して、濃度の増加したDOPE、高融合性脂質(表12)、及び陽イオン性脂質の存在(表13)で示される。
【0262】
0~20%DOPE(含有)間で、粒子は、キュービック相である。30~40%のドープでは、粒子はヘキサゴナル対称性を示す。DOPE0~20(すなわち、0~20%)の増加に伴い、粒子の格子パラメータは、粒子の曲率の増加を反映して、146Åから99.6Åに減少した。平均自発曲率は、-0.161nm-1から-0.216nm-1にシフトした。同時に、1mol%のリファンピシンによる阻害が増加することが観察された(図22及び23)。例えば、2μg/mlでは、阻害は、それぞれ、14%、36%、60%であった。
【0263】
この結果は、融合性脂質の含有が、抗生物質の送達におけるキュボソームの有効性を増加させることを示している。この傾向はまた、カチオン性ナノ粒子でも観察された(図24)。30%DOPEと比較して、40%DOPEを有する製剤からも、阻害の増加が観察された(図26及び27)。この増加は、カチオン性ナノ粒子ではやや顕著ではなかった(図28及び29)。
【表13】

【表14】

【表15】

【表16】
【0264】
アンピシリン
アンピシリンは、細胞破裂に繋がるペプチドグリカンの架橋を阻害するベータラクタム抗生物質である。表17は、表16に提示される、抗生物質アンピシリンを含有するキュボソーム製剤によるP.aeruginosaの阻害を示す。
【0265】
0.5~10μg/mlの間で、カプセル封入された製剤は、遊離抗生物質よりも50~70%多くの阻害を示した。例えば、0.5μg/mlでの39%と比較して、62%である。薬物vs濃度依存性の時間依存性により、より高い濃度での増強プラトー。
【表17】

【表18】
【0266】
バンコマイシン
バンコマイシンは、細胞壁合成を阻害する糖ペプチド抗生物質であり、通常、膜を横断する拡散障壁及び変化した標的のために、グラム陰性株(例えば、P.aeruginosa)に対して不活性である。
【0267】
表19は、表18に提示されるように、抗生物質バンコマイシンを含有するキュボソーム製剤によるP.aeruginosaの阻害を示す。0.5~20ug/mlの濃度では、カプセル封入バンコマイシンは少なくとも2.7倍以上の阻害をもたらした。最も低い濃度(0.5ug/ml)では、カプセル封入は16倍以上の阻害をもたらした。これは、細菌膜を横断する拡散の困難さのために、通常はグラム陰性細菌に対して有効ではない可能性がある薬物を効果的に送達し、使用することができるという、本アプローチの利点を示す。
【表19】

【表20】
【0268】
二重薬物負荷
本開示の脂質粒子の周期的な三次元トポロジーは、同じ粒子内の複数の薬物カーゴのカプセル封入を容易にする。これは、Novo-Fus、Rif-Fus、及びPip-Fusの組み合わせについて以下に示される。
【表21】

【表22】

【表23】
【0269】
フシジン酸
フシジン酸は、タンパク質の合成を妨げる静菌剤である。それは、非常に疎水性であり、したがって、グラム陰性細菌に対して最小限有用性を有する。本開示の脂質粒子において使用されるとき、特に、図30に見られるように濃度が増加するにつれて、E.coliコロニー形成単位(CFU)において有意な低下が観察された。CFUカウントの著しい低下は、0.1mg/ml超のFus濃度で観察され、0.2mg/mlで半分以上低減された。プロット上の*で示される、それぞれの最小阻害濃度(MIC)は、カプセル封入薬物及び遊離薬物について、それぞれ0.5mg/ml及び1.5mg/mlであった。MICは、細胞増殖の90%阻害を達成する最小濃度を指す。繰り返しになるが、Fusは、通常は、分子サイズ及び疎水性のために外膜を横断する輸送が不十分であるために、グラム陰性細菌に対する活性が限られていることが留意される。
【0270】
対照
負荷された活性剤を有しないナノ粒子の毒性を、E.coli及びP.aeruginosaに対して調べた。図31に示される結果から、脂質キュボソーム粒子は、抗生物質がカプセル封入されていない場合、細菌生存率に対して無視できない影響を有する。
【0271】
抗TB薬の製剤を、MOベースのキュボソームに負荷した
市販されているTB薬は、寿命が短く、迅速なクリアランスを有し、これによってその有効性が制限されている。抗結核薬の有効性を増加させ、結核治療の成功率を向上させるために、本開示の脂質粒子送達などの効果的かつ堅牢な送達システムが必要である。
【0272】
本実験はMycobacterium smegmatis及びMycobacterium tuberculosis H37Raインビトロ培養モデルに対する単一の抗結核薬(リファンピシン、エタンブトール、イソニアジド、ピラジンアミド、及びストレプトマイシン)のカプセル封入及び送達のためのモノオレイン(MO)ベースのキュボソームの可能性を評価した。
【0273】
これを試験するために、5つの抗TB薬、リファンピシン、イソニアジド、ピラジンアミド、エタンブトール、及びストレプトマイシンをMOキュボソームにカプセル封入した。疎水性薬物リファンピシン及びイソニアジド(オクタノール水分配係数が、それぞれ、4.24及び-0.70である)のカプセル封入は、Im3m相の格子パラメータの増加をもたらした。リファンピシン及び15mol%のイソニアジドについて、最大4mol%の薬物負荷を達成した。結果を図32~35に示し、図32は、Mycobacterium smegmatisについてのMIC判定を示し、図33は、Mycobacterium smegmatisについてのMICにおける細胞死を示す。細胞内細菌についてのRifの報告されたMIC値は、4~5μg/mLであり、細胞内細菌についてのMO-Rif(1mol%)の存在下でのMIC値は、3μg/mLであるが、細胞内細菌についてのMO-DOTAP(0.1mol%)の存在下でのMIC値は、1μg/mLであることが見出された。細胞死についての報告された値は、約20~24時間である。MO-Rifは、MIC値でのインキュベーション時間を24時間から15時間に低減させ、一方、MO-DOTAP(0.1mol%)-Rif(1mol%)は、MIC値でのインキュベーション時間を24時間から6時間に低減させた。
【0274】
図34は、Mycobacterium tuberculosis H37RaのMIC判定を示し、図35は、Mycobacterium tuberculosis H37RaについてのMICにおける細胞死を示す。細胞内細菌についてのRifの報告されたMIC値は0.04~0.05μg/mLであり、かつ細胞内細菌に対するMO-Rif(1mol%)の存在下でのMIC値は0.03μg/mLであり、一方、細胞内細菌についてのMO-DOTAP(0.1mol%)の存在下でのMIC値は0.015μg/mLであることが見出された。MICにおける細胞死の報告値は、約8~9日である。MO-Rifは、MIC値でのインキュベーション時間を7~8日に低減させ、一方、MO-DOTAP(0.1mol%)-Rif(1mol%)は、MIC値でのインキュベーション時間を8日から5日に低減させた。
【0275】
したがって、キュボソームにカプセル封入されたリファンピシンは、遊離薬物と比較して、有意により大きい殺傷効果を有し、軸性細菌培養のライフサイクル持続時間を短縮する可能性を有する。更に、陽イオン性脂質DOTAPの添加(0.1mol%)による正電荷の組み込みは、殺傷効果を有意に増加させた。カチオン性キュボソーム中の抗TB薬リファンピシンのカプセル封入は、インビトロ研究における薬物バイオアベイラビリティを改善し、バチルス負荷を3日から1日に低減させるのに要する時間を改善した。これは、投与頻度を低減させ、潜在的に延長されたTB薬治療レジームに起因する不十分な患者コンプライアンスの困難を解決する可能性がある。
【表24】

【表25】
【0276】
真菌との相互作用
フィリピン及びアムホテリシンB
抗真菌薬の有効性を、真菌株カンジダ・アルビカンスに対して検討した。フィリピン及びアムホテリシンBは、細胞漏出及び死を促す原形質膜からエルゴステロールを除去することによって作用する抗真菌薬である。化合物は両方とも疎水性であり、いくつかの脂質複合体生成物が利用可能である。フィリピンのための本開示の全てのカプセル封入製剤は、遊離薬物に対して阻害の増加をもたらした(図36)。カチオン性脂質DOTAPの包含による正電荷の組み込みは、阻害を大幅に増加させた。これは、陽イオン特性(プラス及び五角形シンボル)を有する粒子の群化並びに(三角形及び正方形シンボル)を有しない粒子の群化によって観察され得る。
【0277】
アムホテリシンの全てのカプセル封入製剤は、遊離して溶解した薬物と少なくとも同等の阻害をもたらした(図37)。カチオン性脂質を再び含有すると、阻害が大幅に増加した。遊離して溶解した薬剤と比較して、98%の阻害を達成するために必要な濃度は、10ug/mlから0.1ug/mlに、100分の1低減した。
【表26】

【表27】
【0278】
フルコナゾール
フルコナゾールは、真菌細胞膜の重要な構造成分であるエルゴステロール合成を損なうことによって、真菌性疾患を制御する。しかしながら、フルコナゾールによる全身療法は、薬物毒性及び薬物耐性という2つの重大な問題を提起する。
【0279】
イオン化性アミノ脂質の合成:4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリンとオレイン酸(OA)との間のエステル化反応を使用して、アミノ脂質モルホリンオレイエステル(MOE/脂質-5)を合成した。要するに、アミノアルコール(1.1当量)を、DCM、EDCl(1.1当量)及びDMAP(0.2当量)におけるOA(1.0当量)の冷却溶液に添加した。反応温度を、室温で24時間攪拌した。溶媒を回転蒸発器を使用して除去し、フラッシュシリカカラムで得られた粗物質を精製した。合成された脂質構造は、核磁気共鳴(NMR)イメージング(1H)分析によって確認された。フルコナゾールを有する脂質ナノ粒子及びフルコナゾールを有しない空のナノ粒子を、乾燥脂質水和方法によって調製した。MO(20mg/1mLのエタノール)及びMOE(20mg/1mLのエタノール)を溶解させ、70:30の比で混合し、真空オーブンで12時間それを保持することによってエタノールを除去することにより、乾燥フィルムを調製した。薬物を有しない空のナノ粒子を、形成された乾燥脂質を1mLのF127(1mLのDI水中2mg)溶液で水和することによって調製した。結果として生じる混合物を、プローブソニケータ(Q Sonica)を使用して、パルスモードで5分間超音波処理し、不透明な分散液を得た。形成された乾燥脂質を、F127及びフルコナゾール(各2mg)を含有する1mLのDI水で水和させることによって、カプセル封入製剤を調製した。結果として生じる混合物を、プローブソニケータ(Q Sonica)を使用して、パルスモードで5分間超音波処理し、不透明な分散液を得た。
【0280】
染色及び増殖条件:真菌フルコナゾール耐性Cryptococcus neoformansは、SA Pathologyから入手し、-80℃でジャガイモデキストロース(PD)ブロスに保存した。真菌を、使用前に、ジャガイモデキストロース(PD)プレート中37℃で一晩培養した。接種ループを使用して、PDBブロス中の細胞を懸濁し、UV-vis分光計を使用して、光学密度を、600nm(OD600)で約2に調整した。5μlの真菌懸濁液を、最終体積100μlの96ウェルプレートに添加し、約0.1の最終OD600濃度を得る。
【0281】
抗微生物アッセイ:96ウェルプレートを使用して、フルコナゾール非含有剤、薬物を有しない対照ナノ粒子、及びフルコナゾールカプセル封入脂質ナノ粒子である抗菌剤の最小阻害濃度を調べ、50%(MIC-50)、及び90%(MIC-90)のフルコナゾール耐性C.neoformansの増殖を阻害した。96ウェルプレートをUV-vis分光光度計で24時間インキュベートし、スペクトルを220~1000nmの範囲で収集した。要約すると、プレートには、真菌対照、PDブロス対照、及び抗菌対照を含む、真菌とともにインキュベートされた抗菌薬の一連の濃度が含有されていた。この実験を、pH5.2及びpH7.1で実施した。
【0282】
結果
O2MEは、pH7.4で中性であり、より低いpH(4~6.0)で正に荷電され、より低いpHでヘッド基拡張及び電荷反発を引き起こす。PH-7.4で30重量%のO2MEをMOに組み込むと、内部ヘキサゴナル相を有するヘキソソームが得られた。より低いpH値でのヘッド基拡張及び電荷反発のために、膜曲率が減少し、中間相がヘキサゴナルからキュービックに変化する。フルコナゾール耐性のために、フルコナゾール単独で感染症を治療することによってはMIC-90には到達しないが、キュービック構造及び正電荷を有するカプセル封入製剤は、pH7.08での183.843ug/mlと比較して、pH5.17で123.015μg/mlのMIC-90値を有する。SEM及び共焦点画像は、図38に見られるように、真菌壁の破壊を支持する。
【表28】

【表29】
【0283】
参照文献リスト
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【国際調査報告】