(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】膨張式エアバッグ
(51)【国際特許分類】
B60R 21/231 20110101AFI20231121BHJP
B60R 21/36 20110101ALI20231121BHJP
【FI】
B60R21/231
B60R21/36 320
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526603
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(85)【翻訳文提出日】2023-05-19
(86)【国際出願番号】 EP2021076957
(87)【国際公開番号】W WO2022100922
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】102020129621.5
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】ケジエルスキ、マテウシュ
(72)【発明者】
【氏名】シエクラ、プシェミスワフ
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA04
3D054AA07
3D054AA08
3D054AA13
3D054AA14
3D054AA17
3D054AA18
3D054AA22
3D054CC04
3D054CC09
3D054CC35
3D054DD15
3D054FF16
(57)【要約】
自動車用の膨張式エアバッグ(10)が開示される。エアバッグ(10)は、当該層(11、12)の間の単一の膨張式チャンバ(15)の境界(14)の周りに延在し、境界(14)を画定する周縁シーム(13)によって相互接続されている布層(11、12)を備える。膨張式チャンバ(15)は、インフレータ(27)に接続された流体入口(19)を備える入口領域(20)を有する。入口領域(20)が膨張式チャンバ(15)の少なくとも1つの他の領域(21)と重ね合わされ、それによって当該インフレータ(27)からのガスの流れによるエアバッグ(10)の膨張時にチャンバ(15)に膨張形状を生じさせるように、周縁シーム(13)の第1及び第2の周縁に離間された領域(22、23)が互いに固定され、膨張形状が、エアバッグ(10)の膨張時に当該インフレータ(27)に隣接して位置する膨張式チャンバ(15)の少なくとも1つの当該他の領域(21)によって特徴付けられる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の膨張式エアバッグ(10)であって、前記エアバッグ(10)が、一対の重ね合わされた布層(11、12)であって、前記層(11、12)の間の単一の膨張式チャンバ(15)の境界(14)の周りに延在し、境界(14)を画定する周縁シーム(13)によって相互接続された布層(11、12)を備え、前記膨張式チャンバ(15)が、インフレータ(27)に接続された流体入口(19)を備える入口領域(20)を有し、前記エアバッグ(10)は、前記入口領域(20)が前記膨張式チャンバ(15)の少なくとも1つの他の領域(21)と重ね合わされ、それによって前記インフレータ(27)からのガスの流れによる前記エアバッグ(10)の膨張時に前記チャンバ(15)に膨張形状を生じさせるように、前記周縁シーム(13)の第1及び第2の周縁に離間された領域(22、23)が互いに固定され、前記膨張形状が、前記エアバッグ(10)の膨張時に前記インフレータ(27)に隣接して位置する前記膨張式チャンバ(15)の少なくとも1つの前記他の領域(21)によって特徴付けられることを特徴とする、膨張式エアバッグ(10)。
【請求項2】
前記膨張形状が、前記エアバッグ(10)の膨張時に前記インフレータ(27)に当接する前記膨張式チャンバ(15)の少なくとも1つの前記他の領域(21)によって更に特徴付けられる、請求項1に記載のエアバッグ(10)。
【請求項3】
前記膨張形状は、前記入口領域(20)が少なくとも1つの前記他の領域(21)に当接する2段構成を有する、請求項1又は2に記載のエアバッグ(10)。
【請求項4】
前記一対の重ね合わされた布層(11、12)が、上部布層(11)と、下部布層(12)と、を備え、前記膨張式チャンバ(15)の前記入口領域(20)は、前記エアバッグ(10)が膨張したときに前記入口領域(20)の前記下部布層(12)が前記又は各他の領域(21)の前記上部布層(11)に当接するように、前記又は各前記他の領域(21)と重ね合わされる、請求項1~3のいずれか一項に記載のエアバッグ(10)。
【請求項5】
前記周縁シーム(13)の前記第1及び第2の領域(22、23)は、前記膨張式チャンバ(15)の前記入口領域(20)が前記膨張式チャンバ(15)の2つの別個の他の領域(21)と重ね合わされるように、互いに固定される、請求項1~4のいずれか一項に記載のエアバッグ(10)。
【請求項6】
前記膨張式チャンバ(15)の前記2つの別個の他の領域(21)が、実質的に同一の形状及び構成である、請求項5に記載のエアバッグ(10)。
【請求項7】
前記周縁シーム(13)の前記第1の領域(22)が、前記膨張式チャンバ(15)の一方の前記別個の他の領域(21)の一部を境界付け、前記周縁シーム(13)の前記第2の領域(23)が、前記膨張式チャンバ(15)の他方の前記別個の他の領域(21)の一部を境界付け、前記膨張式チャンバ(15)の前記2つの別個の他の領域(21)が、前記周縁シーム(13)の前記第1及び第2の領域(22、23)を互いに接続することによって相互接続される、請求項5又は6に記載のエアバッグ(10)。
【請求項8】
前記膨張式チャンバ(15)の前記2つの別個の他の領域(21)が、前記周縁シーム(13)の前記第1の領域(22)と前記第2の領域(23)との間の前記接続部(25)を挟んで実質的に鏡面対称である、請求項7に記載のエアバッグ(10)。
【請求項9】
前記膨張式チャンバ(15)の前記入口領域(20)が、前記周縁シーム(13)の前記第1及び第2の領域(22、23)の上に重なる、請求項1~8のいずれか一項に記載のエアバッグ(10)。
【請求項10】
前記周縁シーム(13)は、前記布層(11、12)が相互接続される相互接続幅(w)を有し、前記周縁シーム(13)の前記第1及び第2の領域(22、23)が、前記相互接続幅(w)内に完全に形成された接続部(25)によって互いに固定される、請求項1~9のいずれか一項に記載のエアバッグ(10)。
【請求項11】
前記相互接続幅(w)が、前記周縁シーム(13)に沿って変化し、前記周縁シーム(13)の前記第1及び第2の領域(22、23)において、前記シーム(13)に沿った他の場所よりも大きい、請求項10に記載のエアバッグ(10)。
【請求項12】
前記接続部が、縫合(25)を含む、請求項10又は11に記載のエアバッグ(10)。
【請求項13】
前記周縁シーム(13)の前記第1及び第2の領域(22、23)が、縫合(25)によって互いに固定される、請求項1~9のいずれか一項に記載のエアバッグ(10)。
【請求項14】
前記周縁シーム(13)の前記第1及び第2の領域(22、23)が、重ね合わされている、請求項1~13のいずれか一項に記載のエアバッグ(10)。
【請求項15】
前記布層(11、12)の各々が、織られ、複数の糸を含み、一方の前記布層(11)の糸の少なくともいくつかは、他方の前記層(12)の糸の少なくともいくつかと織り合わされて前記周縁シーム(13)を画定し、前記周縁シーム(13)が、それによって織られ、前記層(11、12)の構造と一体化される、請求項1~14のいずれか一項に記載のエアバッグ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張式エアバッグに関する。より具体的には、本発明は、自動車安全装置用の膨張式エアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
事故の際に車両の乗員を保護するために自動車にエアバッグを設けることが現在非常に広く知られており、より最近では、歩行者が車両に挟まれた場合に歩行者を保護するために、車両の外側の領域にわたって膨張するように構成されたエアバッグを設けることも知られている。全てのタイプのエアバッグは、長年にわたってかなり洗練されてきており、多くは、現在、それらの特定の機能、それらの必要とされる膨張特性、及びそれらが取り付けられるか、又はそれらが膨張することが意図される車両の部分の形状及び構成によって決定される特定の幾分複雑な形状を有する。このようなエアバッグは、当初、自動車に取り付けられたエアバッグモジュール内に設けられた、きつく折り畳まれかつ/又は巻かれたパッケージの形態で提供されている。
【0003】
従来、エアバッグは、織布から製造され、典型的には、シームによって相互接続された2つ以上の布層を備える。多くの場合、布層は別々に織られ、次に一緒に縫合されて、縫合シームを提供するが、場合によっては、層は互いに接着結合されて、結合シームを形成してもよく、又は一緒に熱融着されて、融着シームを形成してもよい。しかしながら、場合によっては、一方の布層の糸が、いくつかのエリアにおいて他方の布層の糸と織り合わされ、それによって、エアバッグ布の織りに一体化される織りシームをそれらのエリアに生成する、いわゆるワンピース製織技術によって、2つの布層が同時に織られてもよい。
【0004】
エアバッグは一般に入口を有し、この入口は、典型的にはガス発生器などのインフレータに直接接続され、インフレータからの膨張ガスの流入を可能にして、エアバッグを膨張させる。そのようなインフレータは、膨張ガスの大容量で強烈な流れを生成するように構成されており、したがって、入口が設けられているエアバッグの領域に加えられる力は極めて大きい可能性がある。いくつかの状況において、これは、インフレータの可能な場所に制限がある場合に、エアバッグの所望の膨張特性を達成することを困難にし得る。更に、インフレータは、乗員に近接して位置しなければならない場合に、車両乗員に、例えば、衝突の際のインフレータとの衝撃による傷害の危険を与える可能性がある。インフレータはまた、作動中に非常に熱くなる可能性があり、インフレータに近接する乗員に火傷の危険を与える可能性がある。したがって、いくつかのエアバッグ設備では、正しい膨張特性を確保するようにインフレータを適切に配置する一方で、インフレータに近接した車両乗員がインフレータとの接触又は衝撃から生じる傷害の危険から十分に保護されることを確保することが困難であり得ることが分かっている。
【0005】
本発明は、上記を考慮して考案されたものである。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、自動車用の膨張式エアバッグであって、エアバッグが、一対の重ね合わされた布層であって、当該層の間の単一の膨張式チャンバの境界の周りに延在し、境界を画定する周縁シームによって相互接続された布層を備え、当該膨張式チャンバが、インフレータに接続された流体入口を備える入口領域を有し、エアバッグは、当該入口領域が膨張式チャンバの少なくとも1つの他の領域と重ね合わされ、それによって当該インフレータからのガスの流れによるエアバッグの膨張時に当該チャンバに膨張形状を生じさせるように、当該周縁シームの第1及び第2の周縁に離間された領域が互いに固定され、当該膨張形状が、エアバッグの膨張時に当該インフレータに隣接して位置する膨張式チャンバの少なくとも1つの当該他の領域によって特徴付けられることを特徴とする、エアバッグが提供される。
【0007】
任意選択的に、当該膨張形状は、エアバッグの膨張時に当該インフレータに当接する膨張式チャンバの少なくとも1つの当該他の領域によって更に特徴付けられる。
【0008】
いくつかの実施形態では、当該膨張形状は、任意選択的に、当該入口領域が少なくとも1つの当該他の領域に当接する2段構成を有する。
【0009】
好都合には、当該一対の重ね合わされた布層は、上部布層と、下部布層と、を備え、膨張式チャンバの当該入口領域は、エアバッグが膨張したときに入口領域の当該下部布層が当該又は各他の領域の当該上部布層に当接するように、当該又は各当該他の領域と重ね合わされる。
【0010】
任意選択的に、当該周縁シームの当該第1及び第2の領域は、当該膨張式チャンバの当該入口領域が当該膨張式チャンバの2つの別個の他の領域と重ね合わされるように、互いに固定される。
【0011】
膨張式チャンバの当該入口領域は、周縁シームの当該第1及び第2の領域上に重なり得る。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、自動車用の膨張式エアバッグであって、エアバッグが、一対の重ね合わされた布層であって、当該層の間の単一の膨張式チャンバの境界の周りに延在し、境界を画定する周縁シームによって相互接続された布層を備え、エアバッグは、当該周縁シームの第1及び第2の周縁に離間された領域が互いに固定され、それによって、当該周縁シームが非平面経路をたどるように、エアバッグの膨張時に当該チャンバに三次元膨張形状を生じさせることを特徴とする、エアバッグが提供される。
【0013】
本発明の当該第2の態様のいくつかの実施形態では、当該周縁シームの当該第1及び第2の領域は、当該膨張式チャンバの第1の領域が当該膨張式チャンバの少なくとも1つの他の領域と重ね合わされ、それによってエアバッグの膨張時に当該膨張式チャンバの少なくとも一部に2段膨張構成を付与するように、互いに離間して固定される。
【0014】
任意選択的に、膨張式チャンバの当該第1の領域は、周縁シームの当該第1及び第2の領域の上に重なる。
【0015】
好都合には、当該膨張式チャンバの当該第1の領域は、当該膨張式チャンバへの入口を画定し得、入口は、インフレータと係合するように構成される。
【0016】
本発明の当該第2の態様のいくつかの実施形態では、当該一対の重ね合わされた布層は、上部布層と、下部布層と、を備え、膨張式チャンバの当該第1の領域は、エアバッグが膨張したときに第1の領域の当該下部布層が当該又は各他の領域の当該上部布層に当接するように、当該又は各当該他の領域と重ね合わされる。
【0017】
任意選択的に、当該周縁シームの当該第1及び第2の領域は、当該膨張式チャンバの当該第1の領域が当該膨張式チャンバの2つの別個の他の領域と重ね合わされるように、互いに固定される。
【0018】
当該膨張式チャンバの2つの別個の他の領域を有する本発明の当該第1又は第2の態様のいずれかの実施形態において、これらの領域は、実質的に同一の形状及び構成であってもよい。
【0019】
本発明の両方の態様のいくつかの実施形態では、周縁シームの当該第1の領域は、膨張式チャンバの一方の当該別個の他の領域の一部を境界付け、周縁シームの当該第2の領域は、膨張式チャンバの他方の当該別個の他の領域の一部を境界付け、膨張式チャンバの当該2つの別個の他の領域は、周縁シームの当該第1及び第2の領域を互いに接続することによって相互接続される。
【0020】
任意選択的に、当該膨張式チャンバの当該2つの別個の他の領域は、周縁シームの第1の領域と第2の領域との間の当該接続部を挟んで実質的に鏡面対称であってもよい。
【0021】
本発明の第1の態様及び第2の態様の両方による実施形態は、当該周縁シームが、当該布層が相互接続される相互接続幅を有し、周縁シームの当該第1及び第2の領域が、当該相互接続幅内に完全に形成された接続部によって互いに固定されるように構成されてもよい。
【0022】
任意選択的に、当該相互接続幅は、当該周縁シームに沿って変化し、周縁シームの当該第1及び第2の領域において、シームに沿った他の場所よりも大きい。代替的に、当該相互接続幅は、当該周縁シームに沿って変化し、周縁シームの当該第1及び第2の領域において、シームに沿った他の場所よりも狭い。
【0023】
当該接続部は、縫合を含んでもよい。代替的に又は追加的に、当該接続部は接着剤を含んでもよく、又は加熱によって周縁シームの当該第1及び第2の領域を一緒に融着することによって形成されてもよい。代替的に又は追加的に、当該接続部は、周縁シームの当該第1及び第2の領域を一緒に固定するために、1つ以上のリベット又は他の機械的締結具を備えてもよい。
【0024】
任意選択的に、周縁シームの当該第1及び第2の領域は、縫合によって互いに固定される。代替的に又は追加的に、周縁シームの当該第1及び第2の領域は、1つ以上のリベット又は他の機械的締結具によって互いに固定されてもよい。
【0025】
周縁シームの当該第1及び第2の領域は、重ね合わされてもよい。
【0026】
本発明の第1及び第2の態様の両方による実施形態は、当該布層の各々が、織られ、複数の糸を含み、一方の当該布層の糸の少なくともいくつかが、他方の当該層の糸の少なくともいくつかと織り合わされて当該周縁シームを画定し、周縁シームが、それによって織られ、当該層の構造に一体化されるように構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明がより容易に理解され、その更なる特徴が理解されるように、本発明の実施形態を例示の目的で添付の図面を参照して説明する。
【
図1】本発明の第1及び第2の態様による、部分的に組み立てられたエアバッグの上から見た平面図である。
【
図2】膨張式チャンバの第1の入口領域が膨張式チャンバの他の2つの領域と重ね合わされた状態を示す、
図1のエアバッグを上から見た平面図である。
【
図3】膨張式チャンバの当該2つの他の領域をより詳細に示す、
図2のエアバッグの下から見た図である。
【
図5】膨張前の、インフレータと組み合わされたエアバッグを示す、概略斜視図である。
【
図6】膨張状態にある膨張式チャンバの入口領域を図示する、上から見た図である。
【
図7】膨張状態にある膨張式チャンバの入口領域を図示する、斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、添付の図面を参照して本発明の態様及び実施形態を説明する。更なる態様及び実施形態は、当業者には明らかであろう。
【0029】
本明細書に開示される本発明は、例えば、運転者用エアバッグ、助手席乗員用エアバッグ、後部座席乗員用エアバッグ、膝用エアバッグ、胸部用エアバッグ、サイドエアバッグ、膨張式サイドカーテン、及び自動車が衝突した場合に歩行者に保護を提供するために自動車の外部の一部にわたって膨張するように意図されたタイプの歩行者用エアバッグなど、様々かつ広範な異なるタイプのエアバッグにおける実装に好適である。
【0030】
図1には、本発明に従って部分的に構成されたエアバッグ10が示されており、エアバッグは、膨張していない状態で平らに広げられて示されている。
【0031】
エアバッグ10は、実質的に同一の形状の2つの可撓性布層11、12から形成される。層11、12は、
図1では重ね合わせて配置されて示されており、上部層11は下部層12にわたって延在している。上部層11及び下部層12は、2つの層の間の単一の膨張式チャンバ15の境界14の周りに延在し、境界14を画定する周縁シーム13によって相互接続されている。
【0032】
本発明の好ましい実施形態では、エアバッグ10の相互接続された層11、12は、いわゆる「ワンピース製織」技術によって単一の織機上で同時に織られることが提案され、この技術では、一方の層の糸が、周縁シーム13を画定するために特定のエリアにおいて他方の層の糸と織り合わされる。そのような実施形態では、結果として得られる周縁シーム13は、したがって、布層11、12の両方の一体及び一部として織られる一方で、層は、周縁シーム13の境界の内側で互いに分離したままであり、それにより、膨張式チャンバ15が画定される。
図1に示されるように、2つの層11、12の糸はまた、周縁シーム13の境界14の内側で2つの層11、12を相互接続するように、他のエリア16で織り合わされてもよい。
図1に示されるエアバッグにおいて、他の織り合わされたエリア16は、内部シームの配列を画定し、それによって、層11、12の間に形成された膨張式チャンバ15内に一連の略平行な膨張式セル17を作成する。
【0033】
しかしながら、本発明のエアバッグは、上述したタイプのワンピース製織技術による製造に特に適し得るが、そのような技術の使用に限定されないことを理解されたい。実際、他の実施形態では、周縁シーム13、及び
図1のエリア16に示されるような任意の必要な内部シームは、当業者に明らかな他の好都合な方法で形成されてもよいことが想定される。例えば、いくつかの実施形態では、布層11、12は、別個のシートとして互いに完全に別個に形成され、その後、布層11、12を相互接続するために従来の縫合によって形成されてもよく、かつ/又は布層11、12を一緒に結合するために接着剤を使用して作成されてもよく、又は布層11、12を一緒に融着するための加熱によって更に形成されてもよいシームによって相互接続されてもよいことが想定される。
【0034】
図1に示す実施形態では、周縁シーム13は上述したワンピース製織技術によって形成され、周縁シーム13は、2つの層11、12の糸が織り合わされ、それによって層11、12を相互接続する横方向相互接続幅wを有することが観察される。観察されるように、相互接続幅wは、周縁シーム13のいくつかの領域が他の領域よりも広くなるように、周縁シーム13に沿って幾分変化してもよい。
【0035】
図1に示す特定のエアバッグ10の場合、相互接続された布層11、12は、非常にほぼ細長い長方形の形状を有することが観察される。より詳細には、一方の端部(
図1の左側端部)において、布層11、12は各々、実質的に同一の形状の一対の突出ウィング11b、12bの間に位置決めされている、中央に位置する幾分L字型の構造11a、12aを画定するように成形されていることが観察される。周縁シーム13は、ウィング11b、12b及びL字型の構造を含むそれらの全周縁範囲の周りで2つの布層11、12を相互接続するが、接続されないままである整列されたL字型の構造11a、12aに沿った短い長さを除き、それによって膨張式チャンバ15への流体入口19を画定する。2つの布層11、12の整列され、相互接続されたL字型の構造11a、12aは、膨張式チャンバ15の第1の領域20を画定するように協働し、一方、2つの布層11、12の整列され、相互接続されたウィング11b、12bは、膨張式チャンバ15のそれぞれの別個のウィング領域21を画定するように協働する。より具体的には、膨張式チャンバ15の第1の領域は、以下でより詳細に説明するように、インフレータに接続するように構成されている膨張式チャンバ15の入口領域を画定する。
【0036】
図1において、布層の一方の対のウィング11b、12bは、周縁シーム13の第1の直線領域22によって相互接続され、他方の対のウィング11b、12bは、周縁シーム13の第2の直線領域23によって相互接続されることが観察される。周縁シーム13の第1及び第2の直線領域22、23は、互いに等しい長さであってもよく、膨張式チャンバ15のそれぞれのウィング領域21の各境界部分であってもよい。理解されるように、周縁シーム13の第1及び第2の領域22、23は、それらが各々シーム13の周りのそれぞれの離間位置に位置しているという意味で、互いに周縁に離間される。更に、
図1に示す特定のエアバッグ構成では、周縁シーム13の前述の第1及び第2の直線領域22、23は各々、比較的狭い相互接続幅wを有する膨張式チャンバ15の主中央エリアの側部に沿った参照番号24によって示される領域など、シーム13に沿った他の場所よりも大きい相互接続幅wを有することに留意されたい。しかしながら、これは本提案の本質的な態様とは考えられず、他の実施形態では、周縁シーム13の第1及び第2の直線領域22、23は、シーム13に沿った他の場所よりも小さい相互接続幅wを有してもよいことが想定される。例えば、周縁シーム13の相互接続幅wが、基準点からの距離の関数としてシームの周りで変化する実施形態が想定される。基準点Xの例が
図1に示されており、基準点Xは、エアバッグ10の幅が最も狭い、エアバッグ10の長さに沿った略長手方向中央位置において、周縁シーム13に沿って位置している。相互接続幅wは、基準点Xの近位の周縁シームの領域よりも基準点Xの遠位の周縁シームの領域において大きくなることが想定される。したがって、例えば、特に大型のエアバッグの場合、基準点Xから離れた周縁シーム13の領域が、第1及び第2の領域22、23の相互接続幅よりも実際に大きい相互接続幅wを有し得る実施形態が可能である。
【0037】
次に
図2を参照すると、エアバッグ10は、その構成における後続のステップに従って示されている。特に、
図2は、周縁シーム13のそれぞれの第1及び第2の直線領域22、23が互いに上に重なるように、膨張式チャンバ15の2つのウィング領域21が操作されて、入口領域20の下に移動された後のエアバッグ10を示している。周縁シーム13の第1及び第2の直線領域22、23の重ね合わされた関係は、
図4の断面図に最も明確に図示されている。この構成では、膨張式チャンバ15の入口領域20の一部が、各ウィング領域21の一部の上部にわたって重ね合わされることが観察される。更に、この構成では、膨張式チャンバ15の2つのウィング領域21は、それら自体の上に回動又は折り畳まれず、したがって、入口領域ウィング部布層12は、各ウィング領域21の上部布層11の上部にわたって位置することに留意されたい。
【0038】
次いで、周縁シーム13の重ね合わされた第1及び第2の直線領域22、23は、互いに固定される。好ましい実施形態では、これは、周縁シーム13の第1及び第2の領域22、23を相互接続する接続部を形成するために、1つ以上の縫合線25を作成することによって達成される。これは、下から見たエアバッグ10の端部領域を示す
図3に最も明確に示されている。周縁シーム13の第1及び第2の領域22、23を互いに接続することにより、膨張式チャンバ15の2つのウィング領域21も相互接続される。しかしながら、代替的な実施形態では、周縁シーム13の領域22、23は、当業者に明らかな他の好都合な方法で互いに固定されてもよいことが想定されることに留意されたい。例えば、いくつかの実施形態では、領域22、23は、接着剤を使用して領域22、23を一緒に結合することによって互いに固定されてもよく、又は加熱を使用して一緒に融着されてもよいことが想定される。他の実施形態では、領域22、23は、リベット又は他のそのような締結具の使用を介して互いに固定されてもよいことが想定される。
【0039】
ここで、
図3は、
図1及び
図2には図示されていないエアバッグ10の一対の任意の取付タブ26を示していることを理解されたい。各取付タブ26は、それぞれのウィング領域21から外向きに突出する。取付タブ26は、自動車の構造体へのエアバッグ10の固定を容易にするために設けられ得る。理解されるように、他の実施形態では、取付タブ26は、エアバッグの周りの他の位置に設けられてもよい。
【0040】
周縁シーム13の第1及び第2の領域22、23を互いに固定する当該又は各縫合線25は、それらの領域における周縁シームの相互接続幅w内に完全に形成されることが好ましいと考えられる。
【0041】
図2を参照すると、図示された実施形態では、膨張式チャンバ15の2つのウィング領域21は、周縁シームの第1及び第2の領域22、23を相互接続する縫合25によって形成された接続部を挟んで実質的に鏡面対称であることに留意されたい。
【0042】
次に
図5を参照すると、完成したエアバッグ10が、例えば、それ自体公知のタイプのガス発生器であり得るインフレータ27と組み合わせて図示されている。インフレータ27は、細長い略円筒形状であり、インフレータの長さの大部分が膨張式チャンバ15の入口領域20の内側に位置するように、エアバッグ10の流体入口19に挿入することによって、流体入口19に接続される。クランプ28は、流体入口19に近接する入口領域20の布の周りに設けられ、それによってインフレータをエアバッグ10に固定する。当業者には理解されるように、インフレータ27は、膨張式チャンバ15の入口領域20の内側に位置決めされた一連のガス出口を備え、インフレータの露出端は、回路に接続するための電気コネクタ29を備え、この電気コネクタ29は、典型的には衝突センサと、電子制御ユニットと、を備え、衝撃又は衝突の発生を検出し、それに基づいて作動信号をインフレータに送信して、インフレータを作動させるように動作可能である。インフレータの作動は、膨張ガスの流れを膨張式チャンバ15の入口領域20に向けるのに有効であり、膨張ガスは、
図5の矢印によって概して示されるように、そこからエアバッグ10を膨張させるために膨張式チャンバ15の主領域に向けられ、そこから2つのウィング領域21に向けられる。
【0043】
次に
図6及び
図7を参照すると、上述のエアバッグ10が膨張状態で図示されており、インフレータ27の作動、したがって膨張式チャンバ15の膨張後のその形状及び構成を表している。図示されるように、入口領域20及び2つのウィング領域21は、布層11、12がインフレータ27からの膨張ガスによって離れるように付勢される膨張構成を達成する。
【0044】
理解されるように、周縁シーム13の周縁に離間された領域22、23が上述のように相互接続及び固定されておらず、膨張式チャンバ15の2つのウィング領域21が入口領域20の下で相互接続されている場合、エアバッグ10は、膨張時に略平坦な二次元膨張形状を自然に達成し、周縁シーム13は、エアバッグ10の周りの略平坦な経路をたどる。しかしながら、周縁シーム13の周縁に離間された領域22、23が入口領域21に隣接して互いに実際に相互接続され、固定される様式のために、それらの相互接続の効果は、エアバッグの膨張時に膨張式チャンバ15に三次元膨張形状を生じさせることであり、周縁シーム13は、代わりに非平面経路をたどる。これは、
図7に最も明確に図示されており、膨張式チャンバ15の入口領域20が、膨張構成においてウィング領域21に当接し、それによって、i)ウィング領域21をわずかに下方に付勢し、II)入口領域20をわずかに上方に付勢し、その結果、膨張式チャンバのウィング領域21の周りに延在し、それを境界付ける周縁シームの領域が、入口領域20の周りに延在し、それを境界付ける周縁シームの領域と共に平面外に延在することが分かる。膨張式チャンバ15の膨張形状は、それによって、インフレータ27、入口領域20及びウィング領域21のエリアにおいて2段構成を達成し、入口領域20の膨張形状は上段を表し、ウィング領域21の膨張形状は下段を表す。更に、膨張した入口領域20が膨張したウィング領域21に当接するので、入口領域20はウィング領域21に幾分の支持を提供することができ、逆もまた同様である。
【0045】
図6及び
図7からも理解されるように、エアバッグ10が膨張すると、膨張式チャンバの入口領域20は、周縁シーム13の相互接続された第1及び第2の領域22、23の上に重なり、入口領域20の下部布層12がウィング領域21の上部布層11に当接するように、2つのウィング領域21と重ね合わされる。更に、
図5を参照すると、エアバッグ10が膨張するとき、膨張式チャンバ15のウィング領域21の1つが、インフレータ27に隣接して位置し、インフレータ27に当接する膨張構成をとり、それによって、インフレータ27を支持する可能性を提供し、事故時にインフレータ27による潜在的に有害な衝撃から車両乗員(又は歩行者エアバッグの場合には歩行者)を保護する緩衝効果を提供することも理解されたい。ウィング領域21がインフレータ27に隣接して位置するという事実はまた、作動時に非常に熱くなり得るインフレータ27との接触を防止するのに役立つので、乗員(又は歩行者)に火傷の危険からのある程度の保護を提供する。
【0046】
特定の形態であるいは開示された機能を行うための手段又は開示された結果を適宜得るための方法若しくは工程に関して表された、上記説明又は以下の特許請求の範囲又は添付の図面に開示された特徴は、別個に又はかかる特徴の任意の組み合わせで、本発明をその多様な形態で実現するために利用されてよい。
【0047】
本発明は、上述の例示的な実施形態と関連して説明されてきたが、本開示が与えられた場合、当業者には多くの同等な変更及び変形が明らかであろう。したがって、上に示された本発明の例示的な実施形態は、例示的なものであり、限定的なものではないと見なされる。記載された実施形態に対する様々な変更が、本発明の範囲から逸脱することなくなされ得る。
【0048】
疑義を回避するために、本明細書で提供される任意の理論的説明は、読者の理解を向上させる目的で提供される。本発明者らは、これらの理論的説明のいずれにも束縛されることを望まない。
【0049】
本明細書で使用される任意のセクション見出しは、構成上の目的のみのためであり、記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0050】
以下の特許請求の範囲を含む本明細書全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「有する(have)」、「備える(comprise)」及び「含む(include)」という語、並びに「有する(having)」、「備える(comprises)」、「備える(comprising)」及び「含む(including)」などの変形例は、記載された整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を含むことを意味するが、任意の他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を除外することを意味しないと理解される。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」が、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、複数のものを含むことに留意しなければならない。範囲は、本明細書において、「約(about)」1つの特定の値から、かつ/又は「約」別の特定の値までとして表現され得る。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態は、1つの特定の値から、かつ/又は他の特定の値までを含む。同様に、値が先行詞「約」の使用によって近似値として表される場合、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるであろう。数値に関する用語「約」は任意選択であり、例えば、+/-10%を意味する。
【0051】
用語「好ましい(preferred)」及び「好ましくは(preferably)」は、本明細書において、いくつかの状況下で特定の利益を提供し得る本発明の実施形態を指すために使用される。しかしながら、他の実施形態も、同じ又は異なる状況下で好ましい場合があることを理解されたい。したがって、1つ以上の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用でないことを意味又は暗示するものではなく、本開示の範囲から、又は特許請求の範囲から他の実施形態を除外することを意図するものではない。
【国際調査報告】