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特表2023-549729電子センサのための装置、システム、および製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】電子センサのための装置、システム、および製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/20 20060101AFI20231121BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20231121BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20231121BHJP
   A61B 5/113 20060101ALI20231121BHJP
   A61B 5/08 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G01L1/20 Z
A61B5/11 100
A61B5/16 130
A61B5/113
A61B5/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526924
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(85)【翻訳文提出日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 AU2021051257
(87)【国際公開番号】W WO2022087670
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】2020903914
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】523156187
【氏名又は名称】スリープタイト ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SLEEPTITE PTY LTD
【住所又は居所原語表記】10B Heland Place Braeside,Victoria 3195 Australia
(71)【出願人】
【識別番号】517333347
【氏名又は名称】ロイヤル メルボルン インスティチュート オブ テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】ROYAL MELBOURNE INSTITUTE OF TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】124 La Trobe Street,Melbourne,Victoria 3000,Australia
(71)【出願人】
【識別番号】523156198
【氏名又は名称】スリープイージー べディング オーストラリア ピーティーワイ リミテッド(スリープイージー)
【氏名又は名称原語表記】SLEEPEEZEE BEDDING AUSTRALIA PTY LTD(SLEEPEEZEE)
【住所又は居所原語表記】27-29 Jesica Road Campbellfield, Victoria 3061
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デン ダンゲン,キャメロン
(72)【発明者】
【氏名】スリラム,シャラス
(72)【発明者】
【氏名】バースカラン,マドゥ
(72)【発明者】
【氏名】ワリア,サミート
(72)【発明者】
【氏名】マンヅィス,ビル
(72)【発明者】
【氏名】ドン,ダシェン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ハリー
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038PP05
4C038PS00
4C038SS09
4C038SV01
4C038VA04
4C038VA15
4C038VB33
4C038VB35
4C038VC20
(57)【要約】
本開示は、一般的には、電子ひずみセンサ、センサを組み込んだシステム、およびセンサを製造する方法に関する。さらに、本開示は、生きている対象の1つ以上の生理学的パラメータを測定する方法、または生きている対象の睡眠関連障害を診断する方法に関し、これらの方法は、生きている対象が生じさせる信号を電子ひずみセンサまたはシステムで感知することを含む。ひずみセンサは、基材上に印刷された電極層と、電極層の一部分に印刷された感知層と、電極層および感知層を包む封入層とを備える。電極層は、感知層のシート抵抗よりも低いシート抵抗を呈し、感知層は、電極層に直接接触している。センサの電気抵抗を、センサに加わる力に応答した感知層内の微視的亀裂の形成を通じて増加させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性かつ伸縮性のひずみセンサを製造する方法であって、
第1の導電性インクで基材上に電極層を印刷するステップと、
第2の導電性インクで前記電極層上に感知層を印刷するステップと、
ホットメルト層を適用することによって前記電極層および感知層を封入するステップと
を含み、
前記第1の導電性インクは、第2の導電性インクのシート抵抗よりも小さいシート抵抗を呈し、
前記電極層と感知層とは、直接接触している、方法。
【請求項2】
前記ホットメルト層に熱を加えて前記センサを布地に接着するステップをさらに含み、随意により、前記センサは、布地の2つの層の間に一体化される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の導電性インクは、銀(Ag)を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
25μmの厚さにおける前記第1の導電性インクのシート抵抗は、1オーム未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第2の導電性インクは、カーボン(C)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
25μmの厚さにおける前記第2の導電性インクのシート抵抗は、少なくとも10オームである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記電極層は、第1の電極および第2の電極を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記電極層は、おおむね細長く、
前記第1および第2の電極の各々は、ヘッド部分およびテール部分を備え、
前記第1および第2の電極の前記テール部分は、実質的に平行である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記テール部分の各々は、反復する波形パターンに構成されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1および第2の電極の前記ヘッド部分は、前記第1および第2の電極の前記ヘッドを互いに噛み合わせるように構成された複数の指状突起を備える、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記感知層は、前記第1および第2の電極のヘッド部分に限定されている、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記感知層は、前記センサまたは前記センサの付近に加えられる外力に応答して微視的亀裂を生じることにより、前記センサの電気抵抗を増加させるように構成されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記感知層の前記微視的亀裂は、前記外力が除かれると、前記センサの前記電気抵抗が減少するように実質的に解消する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
可撓性かつ伸縮性のひずみセンサを製造する方法であって、
約50μm~約1000μmの範囲の厚さおよび約100℃を上回る融点の熱可塑性エステル系ポリウレタンフィルムを備える基材上に、第1および第2の電極を備えており、各々の電極はヘッド部分およびテール部分を有しており、前記第1および第2の電極の前記ヘッド部分は互いに噛み合わせられているおおむね細長い電極層を、Ag含有導電性インクで印刷するステップと、
C含有導電性インクを含む感知層を、前記電極層の前記互いに噛み合った部分の上に直接印刷するステップと、
約10μm~約100μmの範囲の厚さおよび約100℃を下回る融点のエステル系ポリウレタンフィルムを備えるホットメルト層を適用することによって、前記電極層および感知層を封入するステップと
を含み、
前記センサは、
前記センサまたは前記センサの付近への外力の印加によって、前記感知層内に微視的亀裂が生じて、前記センサの電気抵抗が増加し、
前記外力の除去によって、前記感知層内の前記微視的亀裂が実質的に解消して、前記センサの電気抵抗が減少する
ように構成されている、方法。
【請求項15】
基材上に印刷され、第1の導電性インクを含んでいる電極層と、
前記電極層の一部分の上に印刷され、第2の導電性インクを含んでいる感知層と、
前記電極層および前記感知層を包む封入層と
を備え、
前記第1の導電性インクは、第2の導電性インクのシート抵抗よりも小さいシート抵抗を呈し、
前記感知層は、前記電極層に直接接触している、
可撓性かつ伸縮性のひずみセンサ。
【請求項16】
前記第1の導電性インクは、銀(Ag)を含む、請求項15に記載のセンサ。
【請求項17】
25μmの厚さにおける前記第1の導電性インクのシート抵抗は、1オーム未満である、請求項15または16に記載のセンサ。
【請求項18】
前記第2の導電性インクは、カーボン(C)を含む、請求項15~17のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項19】
25μmの厚さにおける前記第2の導電性インクのシート抵抗は、少なくとも10オームである、請求項15~18のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項20】
前記電極層は、おおむね細長く、前記第1の導電性インクは、第1の電極および第2の電極を形成しており、
前記第1の電極および前記第2の電極の各々は、ヘッド部分およびテール部分を備え、前記第1および第2の電極の前記テール部分は、実質的に平行である、請求項15~19のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項21】
前記テール部分の各々は、反復する波形パターンに構成されている、請求項20に記載のセンサ。
【請求項22】
前記第1および第2の電極の前記ヘッド部分は、前記第1および第2の電極の前記ヘッドを互いに噛み合わせるように構成された複数の指状突起を備える、請求項20または21に記載のセンサ。
【請求項23】
前記感知層は、前記互いに噛み合った第1および第2の電極の前記ヘッド部分に限定されている、請求項20~22のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項24】
前記感知層は、前記センサまたは前記センサの付近に加えられる外力に応答して微視的亀裂を生じることにより、前記センサの電気抵抗を増加させるように構成されている、請求項20~23のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項25】
前記感知層の前記微視的亀裂は、前記外力が除かれると、前記センサの前記電気抵抗が減少するように実質的に解消する、請求項24に記載のセンサ。
【請求項26】
前記第1および第2の電極の前記互いに噛み合ったヘッド部分によって定められるヘッド領域と、
前記第1および第2の電極の前記テール部分によって定められるテール領域と
をさらに備え、
前記テール領域の幅に対する前記ヘッド領域の幅の比は、約1:1~約1:3であり、好ましくは約1:1である、請求項22~25のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項27】
前記基材は、紙ライナを備える、請求項15~26のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項28】
前記封入層は、前記センサを布地材料に接着するように構成される、請求項15~27のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項29】
可撓性かつ伸縮性のひずみセンサが一体化されたマットレスカバーであって、前記センサは、
電極層が印刷されており、前記電極層は、第1の導電性インクから形成された第1および第2の電極を含んでいる基材と、
前記電極層の一部分の上に設けられ、第2の導電性インクを含んでいる感知層と、
前記電極層および前記感知層を包む封入層と
を備え、
前記センサの電気抵抗が、前記センサまたは前記センサの付近への印加力に応答した前記感知層内の微視的亀裂の形成によって増加する、マットレスカバー。
【請求項30】
可撓性かつ伸縮性のひずみセンサであって、
約50μm~約1000μmの範囲の厚さおよび約100℃を上回る融点の熱可塑性エステル系ポリウレタンフィルムを備える基材と、
前記基材上にAg含有導電性インクで印刷され、第1および第2の電極を備えており、各々の電極はヘッド部分およびテール部分を有しており、前記第1および第2の電極の前記ヘッド部分は互いに噛み合わせられており、前記テール部分の各々は反復する波型パターンを備えているおおむね細長い電極層と、
前記電極層の前記互いに噛み合った部分の上に直接印刷され、C含有導電性インクを含んでいる感知層と、
約10μm~約100μmの範囲の厚さおよび約100℃を下回る融点のエステル系ポリウレタンフィルムを備えており、前記電極層および感知層を封入するホットメルト封入層と
を備え、
前記センサの電気抵抗が、前記センサまたは前記センサの付近への印加力に応答した前記感知層内の微視的亀裂の形成によって増加する、センサ。
【請求項31】
請求項15~28のいずれか一項に記載の少なくとも1つの可撓性かつ伸縮性のひずみセンサと、
センサ電気抵抗の変化を外部装置に通信するように構成された通信ユニットと
を備える監視システム。
【請求項32】
生きている対象が生じさせる少なくとも1つの生理学的パラメータを測定する方法であって、
請求項15~28のいずれか一項に記載の少なくとも1つの可撓性かつ伸縮性のひずみセンサを用意するステップと、
前記対象を前記少なくとも1つのひずみセンサに接触させ、前記対象が生じさせる少なくとも1つの生理学的パラメータの変化により、前記少なくとも1つのひずみセンサの電気抵抗の変化を生じさせるステップと、
随意により、報告および/または分析のために、前記電気抵抗の変化を検出して外部装置に送信するステップと
を含む方法。
【請求項33】
前記少なくとも1つの生理学的パラメータは、体の動き、圧力または重量の変化、および呼吸、あるいはこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
生きている対象における睡眠関連障害を診断する方法であって、
請求項15~28のいずれか一項に記載のセンサが生じさせる電気抵抗の変化を含む信号を受信するステップと、
随意により、前記受信した信号を対照データと比較し、前記障害を診断するステップと
を含む方法。
【請求項35】
前記睡眠関連障害は、不眠症、いびき、睡眠時無呼吸、睡眠時異常行動、およびむずむず脚症候群、あるいはこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的には、電子ひずみセンサ、センサを組み込んだシステム、およびセンサを製造する方法に関する。さらに、本開示は、生きている対象の1つ以上の生理学的パラメータを測定する方法、または生きている対象の睡眠関連障害を診断する方法に関し、これらの方法は、生きている対象が生じさせる信号を電子ひずみセンサまたはシステムで感知することを含む。
【背景技術】
【0002】
睡眠は、人体の自然な機能であり、平均で人間の寿命の1/3を占める。睡眠は、日中に蓄積される精神的および身体的疲労に対処する上で重要であり、生活の質に深く影響を及ぼす可能性がある免疫機能を強化する。したがって、さまざまな睡眠段階における体動、呼吸、および心拍を絶えず監視することが、早期の疾患の診断ならびに睡眠障害の検出に関して、大きな関心を集めている。さらに、監視システムから収集されたデータを分析し、結果を臨床医または医療関係者に届けることが、心臓、肺、および睡眠の障害症状を呈する患者の診断、監視、および臨床転帰を改善することによって、全体的な生活の質の改善に役立つ可能性がある。
【0003】
とりわけ過去数十年の技術的進化が、睡眠の質を監視するためのさまざまな製品の開発を加速させてきた。例えば、耳脳波検査(EEG)および耳心電図検査(ECG)センサが、睡眠段階および心拍数の記録に使用されている。身体装着型ひずみゲージセンサが、身体運動、呼吸、および心拍を監視するために使用されてきた。これらのタイプのセンサは、装着型であるため、不快感を引き起こし、最終的に睡眠の質に影響を及ぼす可能性がある。非装着型の監視システムは、この問題に対処し、妨げを最小限にすることができる。例えば、レーダおよび/または深度カメラを使用して、胸部および腹部の運動を測定することができる。さらに、近赤外(IR)カメラ画像を使用して、IRドットを投影および追跡することで、呼吸数を分析することができる。プライバシーの懸念の他に、カメラに基づくシステムは、コストおよびエネルギー消費ゆえに、毎日の消費者による使用に関して実用的でない。代替案は、圧電に基づくセンサシステムである。そのようなシステムは、典型的には、きわめて少ない電力しか使用せず、圧力データ(心拍数、呼吸数、睡眠周期、および運動など)を取得するためにマットレスの下方に配置されたセラミックセンサを備えることができる。圧電センサに基づく病院および家庭での睡眠監視のためのいくつかの市販の非装着型の製品が存在する。それにもかかわらず、きわめて高い購入コストの他に、そのようなシステムは、特定の機能および/または感度を欠いている。例えば、圧電センサは、睡眠の最中の運動の方向を認識することができない。
【0004】
したがって、低コストで、信頼性があり、非侵襲的な睡眠監視装置およびシステムについて、差し迫った必要性が存在する。ユーザの睡眠状態に対する妨げを最小限にすることができる非装着型のユーザ体験は、より正確なデータを臨床医および医療関係者に提供することができる。さらに、装置およびシステムは、大規模製造に適合可能である必要がある。スケーラブルであるが低コストの生産は、消費者、専門家、および臨床診療による装置およびシステムの採用を迅速に進めることができ、したがって社会全体の健康および福祉に有用である。
【0005】
本明細書において何らかの先行刊行物(または、そこから導き出される情報)または何らかの既知の事項に言及したとしても、そのような言及は、そのような先行刊行物(または、そこから導き出される情報)または既知の事項が本明細書に関係する努力の分野における共通の一般知識を形成するとの承認でも、自認でも、何らかの形態の示唆でもなく、そのような承認、自認、または示唆として解釈されてはならない。
【発明の概要】
【0006】
この概要は、以下で「発明を実施するための形態」においてさらに説明される概念の選択を簡略化した形態で紹介するために提供される。この概要は、特許請求される主題の重要な特徴を特定することを意図しておらず、特許請求される主題の範囲を決定する際の補助として使用されることも意図していない。
【0007】
本開示は、非侵襲型ひずみセンサ、非侵襲型監視システム、およびその製造方法を提供する。さらに、本開示は、生きている対象の少なくとも1つの生理学的パラメータを測定する方法、または生きている対象の睡眠関連障害を診断する方法を提供し、これらの方法は、生きている対象が生じさせる信号を本開示のひずみセンサまたはシステムで感知することを含む。
【0008】
本開示の1つの非限定的な態様によれば、ひずみセンサを製造する方法が提供される。一実施形態において、本方法は、第1の導電性インクで基材上に電極層を印刷することと、電極層上に感知層を印刷することと、ホットメルト層を適用することによって電極層および感知層を封入することとを含む。好ましくは、電極層および感知層は直接接触している。
【0009】
いくつかの実施形態において、本方法は、ホットメルト層に熱を加えてセンサを布地に接着することをさらに含み、随意により、センサは、布地の2つの層の間に一体化される。
【0010】
いくつかの実施形態において、電極層は、おおむね細長く、第1および第2の電極の各々は、ヘッド部分およびテール部分を備え、第1および第2の電極のテール部分は、実質的に平行である。好ましくは、テール部分の各々は、反復する波形パターンを備える。
【0011】
本開示の別の非限定的な態様によれば、ひずみセンサが提供される。いくつかの実施形態において、ひずみセンサは、基材上に印刷されて設けられ、第1の導電性インクを含んでいる電極層と、電極層の一部分の上に印刷されて設けられ、第2の導電性インクを含んでいる感知層と、電極層および感知層を包む封入層とを備え、感知層は、電極層に直接接触している。
【0012】
いくつかの実施形態において、センサまたはセンサの付近に外力が加わることで、感知層内に微視的亀裂が生じて抵抗が増加し、外力が除かれると、感知層内の微視的亀裂が実質的に解消して抵抗が減少する。
【0013】
本開示の別の非限定的な態様によれば、監視システムが提供される。いくつかの実施形態において、監視システムは、上述のセンサと、感知された信号(すなわち、電気抵抗の変化)を外部装置に通信するように構成された随意による通信ユニットとを備える。通信ユニットと外部装置との通信は、好ましくは無線通信による。
【0014】
本開示によれば、好ましい結果は、監視装置、システム、および製造方法が、生きている対象の睡眠挙動を監視するための低コストで信頼性のある非侵襲的なやり方を提供できることである。これに関して、本開示の別の非限定的な態様によれば、生きている対象が生じさせる少なくとも1つの生理学的パラメータを測定する方法が提供され、この方法は、
基材と、基材上に設けられた電極層と、電極層上に設けられた感知層と、感知層および電極層を包む封入層とを備える少なくとも1つの可撓性かつ伸縮性のひずみセンサを用意するステップと、
対象をひずみセンサに接触させ、少なくとも1つの生理学的パラメータの変化により、少なくとも1つのセンサの電気抵抗の変化を生じさせるステップと、
随意により、報告または分析のために、電気抵抗の変化を検出して外部装置に送信するステップと
を含む。
【0015】
本開示のさらに別の非限定的な態様によれば、生きている対象における睡眠関連障害を診断する方法が提供され、この方法は、
対象に接触し、基材と、基材上に設けられた電極層と、電極層上に設けられた感知層と、電極層および感知層を包む封入層とを備えており、感知層は電極層に直接接触している少なくとも1つの可撓性かつ伸縮性のひずみセンサが生じさせる電気抵抗の変化を含む信号を受信するステップと、
随意により、受信した信号を分析し、前記障害を診断するステップと
を含む。
【0016】
本明細書に記載の結果は限定されず、本開示に記載の結果のいずれかであっても、本開示に記載の結果と異なってもよいことを、理解されたい。この点に関して、他の実施形態が、本開示の種々の態様の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0017】
本明細書に記載の非侵襲型ひずみセンサのための装置、システム、および製造方法の特徴を、添付の図面を参照することによって、よりよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の一実施形態による布地上の電子ひずみセンサを製造するためのワークフローを示している。
【0019】
図2A】本開示の一実施形態による電子ひずみセンサの概略図を示しており、図2A(i)は、センサの正面斜視図であり、図2A(ii)は、図2A(i)の破線による断面図である。図2A(iii)は、センサの一実施形態の分解図を示している。
【0020】
図2B】印刷プロセスの種々の段階の後の電子ひずみセンサの写真(縮尺バーは1cm)を提示しており、図2B(i)は、2つの異なる形状の電極層を有するポリウレタン基材を示し、図2B(ii)は、感知層および封入層を有する図2B(i)の電極層を示している。
【0021】
図2C】本開示の一実施形態によるマットレスカバーに埋め込まれた電子ひずみセンサの写真を提示(左側)(破線は、マットレスカバーの上面およびマットレスカバーの裏面からのひずみセンサの位置を示す(左上および左下))し、さらにマットレスカバーに埋め込まれたひずみセンサに外力が加わったときの典型的な抵抗変化を提示(右側)している。
【0022】
図2D(i)】マットレスカバーにおける本開示の電子ひずみセンサの配置の一実施形態を示している。センサおよび配線を示すカバーの一部分の断面が示されている。
図2D(ii)】マットレスカバーにおける本開示の電子ひずみセンサの配置の別の実施形態を示している。この図は、アレイ状に配置された複数のセンサの分解図である。
【0023】
図3(a)】本開示の一実施形態による互いに噛み合った電極パターンのスクリーンマスク設計を示している。
図3(b)】本開示の一実施形態によるセンサ層のための矩形パターンのスクリーンマスク設計を示している。
【0024】
図4(a)】本開示の一実施形態による印刷電極の光学顕微鏡画像(反射モード)を示しており、縮尺バーは、低倍率(左側の画像(i)および(iii)、白色の縮尺バー)および高倍率(右側の画像(ii)および(iv)、黒塗りの縮尺バー)についてそれぞれ1.5mmおよび500μmである。
図4(b)】柔軟性および伸縮性を証明するための印刷電極のねじりの写真である。
図4(c)】柔軟性および伸縮性を証明するための印刷電極の引き伸ばしの写真である。
【0025】
図5(a)】本開示の非侵襲型監視システムの一実施形態の写真であり、ひずみセンサ試験が、ソースメータと、マットレスのカバーに埋め込まれたひずみセンサの上に横たわって動くユーザとを使用して示されている。
図5(b)】本開示の一実施形態によるひずみセンサが埋め込まれたマットレスカバーの上での手による押圧試験の抵抗曲線を示している。
図5(c)】ユーザがひずみセンサが埋め込まれたマットレスカバーの上に横たわっているときに得られた身体運動の抵抗曲線を示している。
図5(d)】90分間にわたって生成されたユーザの抵抗曲線を示しており、ユーザは、深く呼吸しており、本開示の一実施形態によるひずみセンサが埋め込まれたマットレスカバーの上に横たわっている。
図5(e)】(d)に示した抵抗曲線について、18~36分の期間の拡大図である。
【0026】
図6(a)】マットレスがローレータ試験に供されているときに本開示の一実施形態によるマットレスカバーに埋め込まれたひずみセンサによって生成された抵抗曲線を示している。
図6(b)】事前に10,000回のローレータサイクルに供されたマットレスカバーに埋め込まれたひずみセンサによって生成された手による押圧試験の抵抗曲線を示している。
【0027】
図7】本開示の例示的な実施形態による監視システムの一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
ここで、態様および実施形態を、本開示のすべてではないが一部の実施形態を示している添付の図面を参照して、以下でさらに充分に説明する。実際、本開示の技術は、多くの異なる形態で具現化されてよく、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。
【0029】
同様に、本明細書に記載の装置、システム、および方法の多数の修正および他の実施形態が、前述の説明および関連の図面に提示された教示の恩恵により、本開示に関係する技術の当業者に思い浮かぶであろう。したがって、本開示は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、修正および他の実施形態が、添付の特許請求の範囲に含まれるように意図されていることを理解されたい。特定の用語が本明細書において使用されているが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用され、限定の目的では使用されていない。
【0030】
本明細書および特許請求の範囲を通して、用語は、明示的に記載された意味を超えて文脈において示唆または暗示される微妙な意味を有し得る。同様に、本明細書において使用される「一実施形態において」という語句は、必ずしも同じ実施形態または実施態様を指すものではなく、本明細書において使用される「別の実施形態において」という語句は、必ずしも異なる実施形態または実施態様を指すものではない。例えば、特許請求される主題は、例示的な実施形態または実施態様の全体的または部分的な組み合わせを含むことが意図される。
【0031】
一般に、用語は、文脈における使用から少なくとも部分的に理解され得る。例えば、本明細書で使用される「および」、「または」、または「および/または」などの用語は、そのような用語が使用される文脈に少なくとも部分的に依存し得るさまざまな意味を含み得る。典型的には、「A、B、またはC」などの列挙を関連付けるために使用される場合の「または」は、A、B、およびCを意味して包括的な意味で使用されることも、A、B、またはCを意味して排他的な意味で使用されることも意図している。さらに、本明細書において使用される「1つ以上の」または「少なくとも1つの」という用語は、文脈に少なくとも部分的に依存して、任意の特徴、構造、または特性を単数の意味で説明するために使用されてもよく、あるいは特徴、構造、または特性の組み合わせを複数の意味で説明するために使用されてもよい。同様に、「a」、「an」、または「the」などの用語は、ここでも、文脈に少なくとも部分的に依存して、単数形の用法を伝え、あるいは複数形の用法を伝えると理解され得る。さらに、「に基づいて」または「によって決定される」という用語は、必ずしも排他的な要因の組を伝えることを意図していないと理解されてよく、むしろ、やはり文脈に少なくとも部分的に依存して、必ずしも明示的に説明されていない追加の要因の存在を許容できる。
【0032】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および材料と類似または同等の任意の方法および材料を、本開示の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料を本明細書で説明する。
【0033】
本明細書に記載の方法ステップ、プロセス、および動作は、実行の順序として具体的に特定されない限り、必ずしも説明または図示された特定の順序でのそれらの実行を必要とすると解釈されるべきではない。追加のステップまたは代替のステップが使用されてもよいことも理解されたい。
【0034】
特記されない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される量または反応条件などを表すすべての数字は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、そのようでないと示されない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、各々の数値パラメータは、有効数字の桁数および通常の丸め規則に照らして解釈されるべきである。「約」という用語は、+/-5%または+/-1%または+/-0.1%など、+/-10%の範囲を指すと理解され得る。
【0035】
本明細書における値の範囲の記載は、単に、その範囲内に入る各々の別個の値に個別に言及することの簡略方法として役立つように意図されている。本明細書に別段の指示がない限り、各々の個別の値が、あたかも本明細書に個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。例えば、範囲が約1~約50である場合、それは、例えば1、7、34、46.1、23.7、あるいはこの範囲内の任意の他の値または範囲を含むと考えられる。
【0036】
本明細書で使用される用語は、特定の例示的な実施形態を説明するためのものにすぎず、限定を意図するものではない。本明細書および特許請求の範囲における「・・・を備える(comprise)」、「・・・を備える(comprises)」、「・・・に含まれる(comprised)」、または「・・・を備えている(comprising)」、「・・・を含む(including)」、あるいは「・・・を有する(having)」などの用語は、包括的な意味で使用され、すなわち記載された特徴の存在を指定するが、追加の特徴またはさらなる特徴の存在を排除するものではない。
【0037】
本明細書に開示される特定の実施形態は、「・・・からなる(consisting of)」または「・・・から本質的になる(consisting essentially of)」という文言を使用して特許請求の範囲においてさらに限定され得る。出願時のものであっても、補正によって追加されたものであっても、特許請求の範囲において使用される場合、「・・・からなる」というつなぎの用語は、特許請求の範囲で指定されていないあらゆる要素、ステップ、または成分を除外する。「・・・から本質的になる」というつなぎの用語は、請求項の範囲を、指定された材料またはステップ、ならびに基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない材料またはステップに限定する。そのように特許請求される実施形態は、本明細書に本質的または明示的に記載され、可能にされる。
【0038】
本明細書において使用されるとき、「診断」または「診断する」は、疾患または状態あるいはその症状を分類すること、疾患/状態/症状の重症度を判断すること、疾患/状態/症状の進行を監視すること、疾患/状態/症状の転帰および/または回復の見通しを予測することを広く指す。「検出」または「予測」という用語も、随意により、前述のいずれかを包含し得る。
【0039】
本開示は、一般に、非侵襲型の監視装置、非侵襲型の監視システム、およびその製造方法に関する。より具体的には、本開示は、身体の動き、圧力の変化、および呼吸などの生きている対象の1つ以上の生理学的パラメータの検出における非侵襲型の監視装置または非侵襲型の監視システムの使用を提供する。いくつかの実施形態において、1つ以上の生理学的パラメータは、対象がマットレス上に水平に位置するときに、非侵襲的なやり方で、センサを対象の皮膚に直接接触させることなく測定される。本開示は、睡眠挙動を測定し、かつ/または不眠症、いびき、睡眠時無呼吸、睡眠時異常行動、およびむずむず脚症候群を含む睡眠関連障害を診断する方法を提供する。睡眠の測定および/または睡眠障害の診断は、高血圧、心疾患、糖尿病、および脳卒中などの他の健康問題の特定または予測において有用であり得る。睡眠時間の減少および/または睡眠の質の低下は、日中の集中および注意の問題ならびに判断力の低下を引き起こす可能性がある。高齢者では、怪我の一般的な原因が転倒であり、夜間の睡眠の質の低下が危険因子であると認識されている。さらに、本開示は、有益なことに、非侵襲型睡眠監視装置および非侵襲型睡眠監視システムを低コストで大規模に製造する方法も提供することができる。
【0040】
本開示の一態様によれば、非侵襲型ひずみセンサが提供される。いくつかの実施形態において、非侵襲型ひずみセンサは、可撓性かつ伸縮性の電子機器を備え、例えば、睡眠中に生きている対象の1つ以上の生理学的パラメータを絶えず監視するために、マットレスカバーに埋め込むことが可能である。通常はマットレスの下方に配置される従来の剛体ベッドセンサと異なり、本開示の非侵襲型ひずみセンサは、独自の製造プロセスを通じてマットレスカバーに直接埋め込むことが可能である。これは、優れたセンサ感度、可撓性、伸縮性、および耐久性を含む多くの利点を提供する。いくつかの実施形態において、本開示のひずみセンサは、1つの特定のタイプのマットレスではなく、任意のタイプのマットレスで働くように使用されてもよい。さらに、本開示のひずみセンサを使用して、身体の動き、圧力または体重の変化、および呼吸などの生きている対象の1つ以上の生理学的パラメータを検出することができる。いくつかの実施形態において、ひずみセンサの電気抵抗の変化を、直接的な身体接触を必要とする装着型のセンサとは対照的に、間接的なやり方で、リアルタイムで読み取り、収集することができる。さらなる実施形態においては、ひずみセンサの電気抵抗の変化を、後の分析のためにコンピュータ可読記憶媒体(ローカルまたはリモート)に記憶することができる。
【0041】
いくつかの実施形態において、本開示のひずみセンサを、生きている対象の体重またはその一部を支持するように設計された任意の物品に組み込んでもよい。例えば、本開示のひずみセンサを、椅子(リクライナなど)のカバー、クッション、または枕に組み込んでもよい。
【0042】
いくつかの実施形態において、本開示のひずみセンサ(または、アレイひずみセンサ)を無線通信装置に接続することにより、収集された信号(すなわち、電気抵抗の変化を含む)をクラウドベースのデータプラットフォームならびにスマートフォンなどのモバイル機器にアップロードすることができる。したがって、生きている対象の監視を担当する介護者(すなわち、臨床医、医療関係者、および/または家族)が、あらゆる時点またはあらゆる場所においてこれらのデータにアクセスすることができ、何らかの信号が異常になった場合に、そのような介護者に通知することができる。さらに、本開示のひずみセンサは、予期せぬ動きまたは動きの欠如を介護者に警報することを可能にすることができる。このように、ひずみセンサは、対象を監視する者が、対象が夜間にどれだけ長く離床していたかを判断すること、または対象を監視する者に、対象が夜間にどれだけ長く離床していたかを警報することを可能にし、あるいは対象の状態をチェックするようにリマインダをもたらすことを可能にすることができる。
【0043】
皮膚に直接接触する監視製品(装着型の製品など)または外部の監視装置(IRカメラなど)のいずれかを必要とする従来の監視システムとは対照的に、本開示の可撓性かつ伸縮性のひずみセンサは、正確な生理学的測定を提供しつつ、快適な代替の非装着型のユーザ体験を提供する。さらに、本開示のひずみセンサがマットレスカバーに埋め込まれる場合、カバーを多様なマットレスの材料およびサイズに適合するように製造することができ、製造時にマットレスへの一体化を必要とし得る他のスマートベッド製品と比べてコストを削減することができる。他方で、低コストの利点は、既存の製品における使用に合わせてひずみセンサを適合させる可能性に反映されるだけでなく、ひずみセンサの製造プロセス自体にも反映される。
【0044】
本開示の別の非限定的な態様によれば、可撓性かつ伸縮性のひずみセンサを製造する方法が提供される。図1が、この製造方法の一実施形態の全体的な作業フローを示している。第1に、紙ライナを含む熱可塑性ポリウレタン(PU)エステルグレードフィルムが、可撓性センサの基材として使用される。基材の好ましい厚さは、約150μmである。基材は、製造プロセスにおける他の変数に応じて、約50~約1000μmの範囲の別の厚さを有してもよい。
【0045】
所望のひずみセンサ電極抵抗を達成するための予備混合インクが好ましい。より具体的には、いくつかの実施形態において、本開示のひずみセンサおよびこのセンサを製造する方法は、導電性インクに依存する。さらに好ましくは、導電性インクは、印刷可能インクである。一般に、好適な導電性インクは、担体(例えば、付着後に蒸発する液体溶媒)と、インクが塗布された基材上に残る1つ以上の導電性材料または他の機能性材料の粒子とを含む。導電性材料の粒子サイズが、導電性材料を基材に塗布するために使用されるプロセスに適している限り、任意のタイプの導電性材料を利用することができる。例えば、導電性材料を、アルミニウム、金、銀、銅、カーボン、グラフェン、および白金からなる群、あるいはこれらの組み合わせから選択することができる。導電性インクを、任意の適切な硬化プロセスを使用して硬化させることができる。
【0046】
いくつかの実施形態において、本開示のセンサの印刷に適した導電性インクは、銀(Ag)粒子を含む導電性成分、エポキシ、酢酸エチル、イソプロパノール、およびイソプロピルアセトンを含有するAgインクである。いくつかの実施形態において、銀インクは、約10~20重量%のポリエステル樹脂、約65~85重量%の導電性銀粉末、約10~15重量%の溶媒、および約1~5重量%の充填剤を含んでよい。いくつかの実施形態においては、カーボン(C)インクが、別の好ましいインクであり、カーボンブラックおよび/またはグラファイトなどの導電性成分、エポキシ、酢酸エチル、イソプロパノール、およびイソプロピルアセトンを含んでよい。さらに別の実施形態において、好ましくはカーボンインクは、約10~20重量%のポリ塩化ビニリデン、約1%~5重量%のカーボンブラック、約60~70重量%の二塩基エステル溶媒、および約10~20重量%のグラファイトを含んでよい。望ましい印刷された抵抗は、約100~約10,000オームであるが、これらに限定されない。さらに好ましくは、本開示のセンサの印刷に適したインクは、エラストマー特性を有するインクである。すなわち、好ましいインクは、可撓性かつ伸縮性のインクである。
【0047】
図1に示されるように、インク調合物および基材を調製した後に、Ag系電極が基材上に印刷される。いくつかの実施形態において、印刷は、スクリーン印刷法による。スクリーン印刷法は、ステンレス鋼マスク、好ましくは約60~130スレッド/cmのマスク、さらに好ましくは約65~120スレッド/cmのマスクを含むことができる。スクリーン印刷法に適したスキージは、好ましくは約60~90デュロメータの範囲の硬度を有する。スキージによるインクの塗布に続いて、好ましくは周囲温度での乾燥が行われる。約50~100スレッド/cmのポリエステルスクリーンなど、他のタイプのマスクも使用することができる。いくつかの実施形態においては、本開示の導電性インク含有センサを印刷するために、他のタイプの印刷技術(2Dまたは3D)を使用することができる。
【0048】
図1は、その後のスクリーン印刷工程によって、Ag系電極の上にカーボン系感知フィルムが設けられることを示している。カーボン系感知フィルムは、カーボン含有インク、好ましくは約10~20重量%のポリ塩化ビニリデン、約1%~5重量%のカーボンブラック、約60~70重量%の二塩基エステル溶媒、および約10~20重量%のグラファイトを含むインクで、スクリーン印刷によって作成される。以下でさらに述べるように、感知フィルムを作成するために使用されるインクは、好ましくは、電極を印刷するために使用されるインクとは異なる特性を有する。例えば、感知層を作成するために使用されるインクが、センサの使用時に亀裂を形成するように構成され得る一方で、電極層を作成するために使用されるインクは、好ましくは亀裂を形成しない。カーボン系感知フィルムの印刷および硬化後に、クリップ系コネクタ(例えば、CJT、A2550-TP-CR、または2.54mmピッチのFFCクリンプフレックスコネクタ)が回路ポートに取り付けられる。
【0049】
その後に、接着および封入の両方のための好ましくは無溶媒エーテルまたはエステル系のホットメルト接着剤層(例えば、DingZing Advanced Materials Inc.のカタログ番号FS3258)がセンサに塗布され、可撓性かつ伸縮性のひずみセンサの製造が完了することを、図1がさらに示している。好適なホットメルトシート特性の例が、表2に要約される。製造されたひずみセンサを、ホットプレス転写技術あるいは他の積層または加熱技術(例えば、光または温度硬化性ポリマーを用いた接着)によって、布地などの表面に転写することができる。一般に、製造されたセンサを表面に接着するための温度は、ホットメルト接着剤層を溶融させるために充分であるが、基材層を溶融させるには不充分である。
【0050】
可撓性センサの性能チェックは、好ましくは、ソースメータ、Wi-Fiベースの通信ユニット、および/または電流を測定するための他の装置によって実行される。信号データは、リアルタイムで検討および解釈されてよい。あるいは、収集された信号データを、後の分析のためにローカルまたはリモートに格納することができる。さらに、可撓性センサから収集された信号のデータ分析を、コンピュータ、モバイルデバイス、またはクラウドコンピューティングデバイス、あるいはこれらの組み合わせによって実行することができる。
【0051】
図2A(i)が、本開示の一実施形態によるひずみセンサ構造の概略図である。図2A(ii)が、ひずみセンサ構造の上部の拡大断面図であり、断面の方向は、図2A(i)に示された破線によって反映されており、センサの左側が詳しく示されている。図2A(i)によれば、この実施形態によるセンサ(10)は、好ましくは、第1の電極(12)および第2の電極(13)を含む交互噛み合い電極層と、感知層(14)と、ホットメルト接着剤に基づく封入層(16)と、紙ライナ(18)を有するポリウレタン(PU)基材(17)とを含む。各々の電極(12、13)は、おおむね細長く、ヘッド部分およびテール部分を備え、各々のヘッド部分が、複数の指状突起(すなわち、フィンガ状の突出部)を提供する。好ましくは、各々の電極(12、13)は、3~12個の指状突起、さらに好ましくは5~8個の指状突起、最も好ましくは6個の指状突起を備える。交互噛み合い電極層(12、13)は、Ag、金(Au)、銅(Cu)、およびカーボン(C)のうちの少なくとも1つ、あるいはこれらの組み合わせを含むことができ、好ましくはAgを含むことができる。厚さは、約100nm~約100μmの範囲であってよい。図2Aに示されるように、感知層は、電極(12、13)の一部分、好ましくは電極のヘッド部分を覆うことができ、さらに好ましくは、感知層は、電極の交互噛み合い部分に限定される。感知層(14)は、長方形、円形、または任意の他の適切な形状を有することができる。感知層は、導電性カーボン(C)、導電性金属(例えば、Au、Ag、Cu、またはこれらの組み合わせ)、導電性ポリマー、および導電性金属/ポリマー複合材料のうちの少なくとも1つ、あるいはこれらの組み合わせを含むことができる。厚さは、約100nm~約100μmの範囲であってよい。ホットメルト接着剤に基づく封入層(16)は、ホットメルト特性を有する少なくとも1つのPUシートを含むことができ、エステルまたはエーテル系フィルムを備えることができる。接着剤に基づく封入層(16)の厚さは、約10μm~約100μmの範囲であってよい。PU基材(17)は、少なくとも1つのエステルまたはエーテル系フィルムを備えることができ、その厚さは、約50~約1000μmの範囲であってよい。接着剤に基づく封入層(16)の融点は、PU基材(17)の融点よりも低い。いくつかの実施形態において、接着剤に基づく封入層(16)の融点は、約85℃~約145℃であり、好ましくは約100℃未満である。いくつかの実施形態において、PU基材(17)は、約85℃~約175℃、好ましくは約100℃超、さらに好ましくは約150℃の融点を有してよい。
【0052】
図2A(iii)が、本開示の可撓性かつ伸縮性のひずみセンサの一実施形態の分解斜視図を示している。電極(12、13)、感知層(14)、封入層(16)、および紙ライナを有する基材層(17、18)が示されている。この特定の実施形態において、ホットメルト封入層(16)は、センサを布地層(19)に接着するために使用される。
【0053】
図2Bに、ひずみセンサ電極層の実施形態が、2つのタイプの電極テールと共に示されている。図2B(i)によれば、基材層上の2つの電極層の写真が示されている。一実施形態においては、1つの電極層(20)が、各々が実質的に線形な(直線状の)テールを有する2つの交互に噛み合う左右の電極を備え、別の実施形態(22)においては、電極層が、繰り返しの波形パターン(例えば、正弦波)を備えるテールを有する交互に噛み合う左右の電極を備えることができる。線形であっても、波形であっても、左右の電極のテールは、好ましくは実質的に平行である。ストライプ状のテールを有する電極(20)と比較して、波形のテールまたは「波状の」形状のテールを有する電極(22)は、引き伸ばしに対する抵抗変化が最小限であり、センサ信号に対する干渉が最小であるため、好ましい。したがって、波状の形状の電極で収集された信号は、より高い精度をもたらすことができる。さらに、波状の形状の電極テールは、ひずみによりよく耐え、ひずみセンサの故障率を下げるうえで役に立つ。とくには正方形、三角形、または鋸歯状の波形などの他の波形を含む他のタイプの非線形形状の電極テールが可能である。
【0054】
図2B(ii)は、感知層(28)が適用され、次いでホットメルト接着剤に基づく封入層が適用された図2B(i)の電極の写真を示している。ホットメルト接着剤に基づく封入層の存在を、図2B(i)の「光沢」から、図2B(ii)の封入された電極のより「マット」(非光沢)な外観への電極の光沢の変化によって、検出することができる。
【0055】
本開示によるセンサの全体寸法を、所与の用途に適するように調整することができる。いくつかの実施形態において、センサの全長は、マットレス(例えば、シングルベッド用またはさらに大きい)などの表面の幅に及んでよい。他の実施形態においては、図2Bに示したセンサを一例として使用して、センサは、おおむね細長い(すなわち、幅に対して長い)。交互に噛み合ったヘッド部分(参照符号29aによって例示される)の上部からテール部分(参照符号29bによって例示される)の端部までのセンサの長さは、約2cm~約10cm、好ましくは約4cm~約8cmである。いくつかの実施形態において、センサの全幅(参照符号29cによって例示される)は、好ましくは約0.5cm~約5cm、さらに好ましくは約1cm~約3cmである。いくつかの実施形態において、各々の電極のテール部分(参照符号29bによって例示される)の長さ(直線状であっても、波形の繰り返しを取り入れていても)は、好ましくは約1cm~約8cm、好ましくは約3cm~約6cmである。さらに、電極のヘッド部分(参照符号29aによって例示される)の長さは、好ましくは約1cm~約8cm、好ましくは約3cm~約6cmである。左右の電極の交互に噛み合ったヘッド部分が協働して、ヘッド領域(29c)を定め、左右の電極の対応する実質的に平行なテール部分が協働して、テール領域(29d)を定める。
【0056】
いくつかの実施形態において、電極テールのトラックの幅は、好ましくは約0.01cm~1cm、さらに好ましくは約0.1cm~約0.5cmである。電極の厚さ(すなわち、電極が適用された基材の表面から測定されるヘッド部分およびテール部分を含む電極の高さ)は、好ましくは約800nm~500μm、さらに好ましくは約1μm~約100μm、さらにより好ましくは約10μm~約50μmである。
【0057】
電極のヘッド部分(例えば、図2Bにおいて29aと記されているヘッド部分)における各々の指状突起の長さは、約0.5cm~2cm、好ましくは約0.8~1cmである。さらに、各々の指状突起の幅は、好ましくは約200μm~2,000μm、さらに好ましくは約500μm~1,000μmである。
【0058】
いくつかの実施形態において、各々の電極テールにおける波形の振幅は、好ましくは約0.5mm~50mm、さらに好ましくは約1mm~10mmである。
【0059】
さらなる実施形態において、センサは、第1および第2の電極の交互に噛み合ったヘッド部分によって定められるヘッド領域と、第1および第2の電極のテール部分によって定められるテール領域とを備える。したがって、電極テールの長さに対する電極ヘッド領域の長さの比は、好ましくは約1:1~1:300であり、さらに好ましくは約1:3~約1:30であり、さらにより好ましくは約1:3~約1:10である。他の実施形態において、テール領域の幅(すなわち、例えば図2Bの参照符号29cによって例示されるように第1および第2の電極のテールにまたがる幅)に対するヘッド領域の幅の比は、約1:1~約1:3であり、好ましくは約1:1である。
【0060】
いくつかの実施形態において、感知層のサイズは、センサの交互に噛み合ったヘッド部分における指状突起の数および長さに比例する。いくつかの実施形態において、感知層の幅は、約0.5~5cm、好ましくは約1cm~3cmである。いくつかの実施形態において、感知層の長さは、約0.5~5cm、好ましくは約1cm~3cmである。さらなる実施形態において、感知層は、センサのヘッド、好ましくはセンサの交互に噛み合ったヘッド部分の指状突起に限定される。
【0061】
好都合には、細長いセンサのヘッド部分に感知層を限定することにより、センサ信号の変動性が実質的に低減され、信号対雑音比が最大化される。感知層の厚さは、好ましくは約500nm~100μm、さらに好ましくは約1μm~約20μmである。
【0062】
さらなる利点として、従来の設計による電極に基づく薄膜圧力センサとは対照的に、本開示のひずみセンサは、スペーサ誘電体(または、絶縁層)を必要とせずに、感知層に直接接触する交互噛み合い電極層を提供する。したがって、いくつかの実施形態によれば、本開示のひずみセンサは、電極とセンサ層との間の誘電体層を除外する。これにより、製造の最中の余分な位置合わせ工程の必要性が回避され、したがって、スケーラブルなスクリーン印刷プロセスがさらに簡素化され、センサ製造コストが削減される。
【0063】
いくつかの実施形態によれば、センサが印刷された後に、ホットメルトに基づく転写技術を適用して、生きている対象の少なくとも1つの生理学的パラメータの測定に使用される物品または装置に、センサを取り付けることができる。好ましい実施形態においては、本開示のひずみセンサを布地に転写して、一体型センサをもたらすために、ホットメルトに基づく転写技術が使用される。さらに好ましくは、布地はマットレスカバーである。いくつかの実施形態において、センサは、少なくとも2つの層を含む布地の層間に配置される。すなわち、センサは、布地の層内に一体化される。図2C(i)が、布地(30)の2つの層の間の本開示のひずみセンサの一実施形態を示している。図2C(i)の左側のパネルにおいては、破線で囲まれたセンサをより見やすくするために、布地層の層が除去されている。この実施形態におけるセンサは、紙ライニングが除去され、ホットメルト接着剤および感知層が下を向いた状態で、基材に取り付けられる。布地への付着を可能にするために、接着剤層を溶融させるべく熱が加えられる。布地が裏返されたとき(32)、センサを見て取ることはできないが、破線および接着剤テープ(34)がセンサの位置を示している。ワイヤを、クリップベースのコネクタによってセンサに接続することができ、ワイヤは、信号の読み出しのために制御ボックスに接続される。
【0064】
図2C(ii)に示されるセンサ性能試験が、圧力が加えられたとき(例えば、生きている対象の身体がセンサの上に座り、あるいは横たわっているとき)に図2C(i)の可撓性ひずみセンサが生じさせる信号を示している。センサは、約0.001V~3V、好ましくは約0.01V~約1V、さらに好ましくは約0.01Vの低電圧で動作しているときに、身体のあらゆる動きを、対応する抵抗変化を与えることによって検出することができる。
【0065】
いくつかの実施形態において、マットレスカバーの代わりに、本開示のひずみセンサを、生きている対象の体重またはその一部を支持するように設計された任意の物品に組み込んでもよい。例えば、本開示のひずみセンサを、椅子(リクライナなど)、クッション、または枕などの家具用カバーに組み込み、好ましくは一体化させることができる。
【0066】
いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのセンサを布地に組み込むことができる。図2D(i)が、そのようなセンサ配置の一実施形態を示している。ひずみセンサ(35)を、マットレスカバー(36)の表面に組み込むことができ、一体化されたセンサ(35)を明らかにするように切り取られたマットレスカバー(36)の一部分が示されている。組み込みは、マットレスカバーの内面またはマットレスカバーの少なくとも2つの層の間へと、すでに述べたホットメルト接着剤によるものであってよい。あるいは、他の接着剤(例えば、布地接着剤)または取り付け方法(例えば、縫製またはVelcro(商標)ファスナ)を用いてもよい。この図は、1つ以上のワイヤ(37)によって制御ボックス(38)に接続されたセンサを示している。別の実施形態において、布地は、本開示による可撓性センサのアレイを備えてもよい。
【0067】
図2D(ii)が、アレイ配置の一例を示している。具体的には、この図は、1つ以上の接続ワイヤ(37)および制御ボックス(38)を有するマットレスカバー(36)に一体化されたセンサ(35)のアレイの分解図を提供している。好ましくは、図2D(ii)に示されるように、アレイ内のセンサの配置は、マットレスの表面を実質的に覆う。
【0068】
本開示によるひずみセンサの感知機構は、圧力下にあるときの感知層内の微視的亀裂(または、「微小亀裂」)の形成に相関することが明らかになっている。すなわち、外力がセンサまたはセンサの付近に加えられると、センサが曲がり、かつ/または引き伸ばされることで、感知層の薄膜内に微小亀裂が発生し、抵抗の増加を引き起こす。圧力/ひずみが除かれると、感知層内の弾性ポリマーマトリックス、電極層、基材、およびホットメルト層のエラストマー特性、あるいはこれらの組み合わせが、亀裂を実質的に解消し、連続的な感知層を回復させ、抵抗の回復(すなわち、減少)をもたらす。この点に関して、本開示のセンサは、可撓性および伸縮性の両方を有し、既存の非可撓性センサ、または可撓性であるが伸縮性ではないセンサと比較して、外力の検出精度の向上を可能にする。
【0069】
上述のように、いくつかの実施形態においては、2つのパターンを印刷して、本開示によるひずみセンサを作成することができる。電極用の交互噛み合いパターン、および感知層用の矩形パターン。図3(a)および図3(b)が、本開示の一実施形態によるマスク設計を示している。図3(a)は、「波状」の電極テール(42)を有する電極の隣に「線形」な電極テール(40)を有するセンサのマスク設計を示しており、製造において、マスクは、好ましくは、ただ1つのタイプのテール設計を有するセンサを備えると考えられる。図3(b)は、印刷された電極層に重ねられる後続の感知層(46)のためのマスクを示している。本開示のマスクは、好ましくは、2つの層の印刷時の位置合わせを容易にし、したがってより良好な印刷解像度を達成するために、隅に作成された十字「+」マーク(44)を含む。
【0070】
マスクに関して、約60~130スレッド/cmのステンレス鋼スレッドを有するステンレス鋼タイプが好ましい。さらに好ましくは、約20~40μmのインクエマルション層厚さが、マスクを使用して塗布される。しかしながら、例えば約50~100スレッド/cmを有するポリエステルスクリーンなど、他のタイプのマスクを、好ましくは同様のエマルション層厚さで使用してもよい。
【0071】
交互噛み合いパターンの電極層を印刷するために、Ag粒子、酢酸エチル、酢酸ブチル、およびイソプロピルアセトンを含有する市販のインクを使用することができる。例えば、EDAG 725A(LOCTITE,Henkei)、EDAG 478SS(LOCTITE,Henkei)、およびPOLU-10P(SP130,SHENZHEN POWER LUCK INK)、あるいはこれらの組み合わせが好適である。可撓性デバイスの印刷に適した他の代替のインクを使用してもよい。好ましくは、電極層を印刷に適したインク(単一のインクでも、インクのブレンドであっても)は、25μmの厚さでのシート抵抗が、10オーム未満、好ましくは1オーム未満、さらに好ましくは0.015オーム未満である。好ましくは、25μmの厚さでの電極層のシート抵抗は、約0.001~約0.02オーム、最も好ましくは約0.015オームである。
【0072】
感知層の印刷に関しては、印加された力に対して高速応答感度プロファイルを示す市販のインクが好ましい。インクは、カーボンブラック、グラファイト、エポキシ、酢酸エチル、イソプロパノール、酢酸ブチル、およびイソプロピルアセトンを含むことができる。例えば、カーボン含有熱可塑性導電性インクであるECI-7004-LR(LOCTITE,Henkei)と、カーボン含有熱可塑性非導電性インクであるNCI-7002(LOCTITE,Henkei)との混合物から調製されたインクが好ましい。したがって、いくつかの実施形態において、感知層を印刷するためのインクは、所望の抵抗率を提供するために、導電性インクと非導電性インクとのブレンドを含む。さらに好ましくは、ECI7004-LR:NCI-7002の比は、約1*100~約100:1、より好ましくは約1:10~約10:1の範囲内であってよい。代替の実施形態においては、ECI7004-LRとNCI-7002との混合物中のECI7004-LRについて、10のうちの約2~約6部の範囲を使用することができる。さまざまな体積比のこれらのインクの混合物を使用して、例えば表1に示されるように、約100~約10,000オームの抵抗範囲を達成することができる。
【表1】
【0073】
CI-2001(Nagase Chemtex;10~20μmの厚さで50オームの抵抗を有する)およびCI-2050LR(Nagase Chemtex;その抵抗率は、CI-2050HRとブレンドすることによって調整可能である)、あるいはこれらの組み合わせなど、他の代替の感圧インクも、この用途に使用することが可能である。いくつかの実施形態において、感知層の調製に適したインク(単一のインクであっても、インクのブレンドであっても)は、25μmの厚さでのシート抵抗が、少なくとも20オーム、好ましくは少なくとも100オーム、より好ましくは少なくとも1,000オーム、さらにより好ましくは少なくとも100,000オームである。
【0074】
インクの混合を、好ましくは、気泡を避けるために真空ミキサ(THINKYMIXER ARV-310LED)を使用することによって行うことができ、ここで、インクは、沈殿の可能性を避けるために調製の直後に使用される。より長い保存時間のために、元のインクストックを、密封キャップを有する4℃の冷蔵庫に保管することができる。
【0075】
基材および接着剤材料の選択および調製
いくつかの実施形態において、熱可塑性PUエステルグレードフィルムカタログ番号FS1155(DingZing Advanced Materials Inc.、表2の項目3の特性を有する)が、印刷基材として好ましい。他の材料と比較して、FS1155フィルムは、比較的高い融点(約150℃)を有する。この温度は、周囲温度を超えるインク乾燥をサポートするために好ましい。さらに、FS1155は、本開示によるセンサの作製への適用を可能にする優れた伸縮性(>600%)を有する。これに加えて、このような材料は、防水性であり、フィルムに皺が寄るときにいかなるノイズも発生しない。上述のすべての特徴も、このPUフィルムを、布地上に電子回路を製造するための好ましい候補にする。
【0076】
印刷されたフィルムの伸縮性および耐久性に関して、図4(a)(i)~(iv)が、本開示の実施形態による印刷および封入された電極の光学顕微鏡画像を示しており、縮尺バーは、低倍率画像(図(i)および(iii)、白色の縮尺バー)に関して1.5mmであり、高倍率画像(図(ii)および(iv)、黒色の縮尺バー)に関して500μmである。低倍率(50)および高倍率(52)での直線状の平行に印刷された電極ライン、ならびに低倍率(54)および高倍率(56)での波状ラインで印刷された電極(より顕著な「河川のように湾曲した」タイプのループパターン)が示されている。図4(b)および図4(c)は、印刷されたフィルムが激しい操作(例えば、引き伸ばし、曲げ、および/またはねじり)を受けることができることを示している。この操作は、電極の機能に影響を与えない。図4(c)(i)および(ii)は、それぞれひずみなし対30%のひずみの印刷された電極を比較している。したがって、いくつかの実施形態において、印刷された電極を有する基材は、電極機能に影響を与えることなく約10%~約80%のひずみを被ることができ、さらに好ましくは、印刷された電極を有する基材は、電極機能に影響を与えることなく少なくとも30%のひずみを被ることができる。
【0077】
いくつかの実施形態において、基材として、紙剥離ライナを有する厚さ150μmのPUフィルムが、本開示のひずみセンサ製造プロセスのための優れた取り扱い特性を提供するがゆえに好ましい。PUシートを、一実施形態によれば、さらなる修正を伴わずに直接使用することができる。しかしながら、他の代替の実施形態によれば、PUシートを、必要に応じてさらに修正することができる。
【0078】
いくつかの実施形態において、本開示の封入されたセンサを作製するために、ホットメルト接着剤シートカタログ番号FS3258(DingZing Advanced Materials Inc.、表2の項目10の特性を有する)が好ましい。ホットメルト接着剤シートは、熱可塑性ポリウレタンエステル、潤滑剤、およびUV吸収剤のうちの少なくとも1つを含み、約85℃の融点を有する。
【0079】
FS3258ホットメルト接着剤シートは、高温加熱下で溶融し、周囲温度まで冷却されるとほとんどの表面に接着する。さらに、シートは、固化後にその厚さを失うことがなく、したがって接着および封入の両方のための良好な候補となる。一実施形態において、FS3258シートをインク被覆FS1155 PUシートへと転写するために、ヒートプレス機(Mophorn Heat Press、12×15インチ、約30.5×38.1cm相当)が使用される。一般に、圧力下で最大約120℃の加熱を提供することができ、印刷されたセンサに適合することができる動作ステージを備える任意のヒートプレスまたは放熱装置を使用して、FS3258シートをPUシートへと転写することができる。
【0080】
感知層のスクリーン印刷および組み立て
一実施形態によれば、自動スクリーン印刷機(RT06001、Pacific Trinetics Corporation)が、電子センサの製造に使用される。RT06001は、6”x6”(15.24cm×15.24cm)角未満のシートを印刷することができ、320mm×320mm角および高さ15mmのフレームサイズのスクリーンを採用することができる。電極層の印刷プロセスを開始するために、紙ライナを有するFS1155 PU基材が、最初に真空吸引によってRT06001のステージ上にしっかりと配置される。次いで、(例えば、図3(a)に示したような)電極を印刷するためのパターン化されたマスクが、プリンタに取り付けられる。次いで、Ag系インクが、マスクへと、スキージに近いエッジに注がれる。好ましくは、インクは、比較的均一な厚さでスキージの全幅を覆う矩形の形状に配置される必要がある。すべてが所定の位置に配置されると、印刷が開始される。ブレード処理により、印刷領域全体を覆うようにインク液が押され、次いで、スキージによって圧力が加えられて、印刷が完了する。次いで、基材は、真空吸引を除去することによって解放され、乾燥のために平坦な金属パッドへと移される。連続製造方法では、新たな基材をステージに取り付けて、印刷を繰り返すことができる。ロールツーロール生産を、プリンタの変更によって実現することができる。未使用のAgインクが回収され、終了後にマスクがアセトン/イソプロパノールで洗浄される。PUシート上のAgインクを硬化させるために、基材は、約15分間にわたって約80℃のオーブンに配置される。あるいは、周囲(室温)条件下でのおおむね25分間以上の乾燥が、インクの乾燥を可能にするために充分である。
【0081】
第2の工程は、硬化させた基材上に感知層を印刷することを含む。(例えば、図3(b)に示したような)矩形の設計などの専用マスクが設置され、次いで、ブランクPUシートが真空吸引によってプリンタステージ上に配置される。同様に、次いで、予め混合されたカーボンインクがマスク上に配置される。印刷前にシート上の十字マークの位置を確認するために、テストランを実行することができる。内蔵カメラを使用して、カメラマーカ位置をテスト印刷された十字マーク位置と位置合わせすることができる。この位置合わせプロセスが完了すると、カメラマーカ位置をロックすることができる。次いで、印刷された電極を含む硬化させた基材が、十字マーク位置をカメラマーカに一致させるようにプリンタステージ上に配置される。次いで、印刷が開始され、ブレードがインクを押し、続いてスキージが適用される。次いで、印刷されたセンサは、上述のように熱によって硬化させるために移送される。次いで、コネクタが、安定した接続を確実にするために、市販のクリンプフレックスコネクタ(例えば、CJT社のA2550-TP-CRという2.54mmピッチのFFCクリンプフレックスコネクタ、Nicomatic社のCRIMPFLEXという2.54mmピッチのコネクタシステム)を使用して回路ポートに取り付けられる。
【0082】
第3の工程は、封入を含む。封入は、プリント回路を酸化および汚染下での破損から保護する一方で、センサの伸縮性および弾性にも寄与する。ホットメルト層が、所望の形状に切断され、次いで印刷されたセンサの上に配置され、その後にセンサおよびホットメルト層の組み合わせはヒートプレス機(Mophorn Heat Press、12x15インチ)に配置される。約50~60PSIの圧力下で、おおむね50秒間にわたって、約105℃で熱が加えられる。次いで、この組み合わせが室温まで冷却され、封入プロセスが完了する。
【0083】
最後の工程は、印刷された電子センサを表面、とくにはカバー布地(すなわち、マットレスのカバー布地)へと転写することを含む。ヒートプレス機が、約105℃に予熱される。封入された電子センサデバイスが、カバー布地の裏側の所望の位置に配置される。封入層側を、紙ライナを上に向けてカバーの裏側に接触させる必要があることを理解されたい。ひとたび位置が確認されると、ホットプレスが適用される(Mophorn Heat Press、12×15インチ、約50~60PSI)。約50秒の加熱および加圧の後に、電子センサデバイス全体がカバーに転写される。マットレスカバーの他に、センサの接合の適用を、高温、より具体的には105℃での加熱によって、任意の材料に与えることが可能である。
【0084】
センサ性能
いくつかの実施形態において、センサ性能が、可撓性センサをソースメータに接続することによって評価される。0.01Vの動作電圧で、指先での押圧、手での押圧、体重の圧力、体動、ならびに深呼吸を、可撓性センサによって検出することができる。図5(a)~図5(e)が、マットレスカバーに埋め込まれた図2および図3によるひずみセンサに関して、試験システムの一例および関連の試験結果を示している。図5(a)は、マットレスカバーに埋め込まれたひずみセンサと、マットレス上に横たわる試験対象と、ソースメータと、コンピュータ読み出しとを備えるシステムを示している。図5(b)は、繰り返しの手による押圧によって発生する抵抗プロファイルを示しており、図5(c)は、対象の体動による抵抗プロファイルを示している。図5(d)および図5(e)は、マットレスに埋め込まれたセンサ上に依然として横たわる対象が生じさせる抵抗プロファイルを示しており、対象は深く呼吸している。これらのデータは、本開示に従って作製されたひずみセンサが高感度であり、マットレス上のわずかな動きを抵抗変化を通じて検出することができることを明確に実証している。すなわち、マットレス上に何らかの外圧変化が存在すると、その圧力がセンサに加えられ、センサが感知層における微小亀裂を生じる。発生する亀裂の量に応じて、センサの抵抗が比例して増加する。外圧が除かれると、センサの種々の構成要素(基材、インク、および封入層)の弾性が、センサを初期の状態へと回復させ、微小亀裂を再び連続的な層へと融合させる。これが、抵抗の低下を可能にする。
【0085】
耐久性試験
耐久性試験を、センサ、制御ボックス、およびワイヤリングハーネスについて実行することができる。一実施形態において、センサは、マットレスのカバー上に転写され、その後に、マットレスローレータ試験に供されるマットレスの上に配置される。マットレスのローレータ試験(米国材料試験協会(ASTM)規格F1566に従う試験など)は、マットレスの硬さ保持および表面変形などの特性を測定する。試験を、体重が約80~約130kgの対象、好ましくは体重が約120kgの対象による10年間の使用におけるマットレス性能をシミュレートするために、さまざまなサイクルポイント(典型的には、約0~約100,000サイクル)で実施することができる。したがって、ローレータ試験は、センサの堅牢性を検証するための1つの機構を提供する。
【0086】
図6が、本開示による可撓性かつ伸縮性のひずみセンサが埋め込まれたカバーで覆われたマットレスについて、ローレータ試験の抵抗プロファイルを示している。図6(a)は、ローレータ試験の最中の抵抗の変化を示しており、抵抗が、予想どおりに、センサへのローレータの近接に応じて変化している。図6(c)は、ひずみセンサが埋め込まれたカバーで覆われ、すでに10,000回のローレータサイクルによる試験を受けたマットレスにおける手での押圧試験を示している。この図は、繰り返しの手での押圧が一貫して認識されていることを示しており、センサはローレータ試験の結果として損傷していないと推測される。これらのデータは、本開示による可撓性かつ伸縮性のひずみセンサが、一般的な摩耗および破れに直面して長年の同等の耐久性を有することを示している。
【0087】
さらなる実施形態において、PCB、制御ボックス、およびワイヤリングハーネスの耐久性試験は、さまざまな温度、さまざまなレベルの湿度、防塵性、耐水性(例えば、高圧ジェット、水滴)、ならびにマットレスの引き倒し、衝撃、振動、包装、および輸送に対する感度および堅牢性の試験を含むことができる。センサを同様の試験に供することもできる。
【0088】
データの生成および通信
一実施形態によれば、非侵襲型監視システムが提供される。図7が、マットレスカバー(36)に一体化されたひずみセンサ(35)の可撓性アレイを備え、1つ以上の接続ワイヤ(37)および制御ボックス(38)を有しているそのような監視システム(100)の一例を示している。制御ボックス(38)は、任意のACまたはDC電圧源を含むことができる電源(102)に電気的に接続される。例えば、電源(102)は、壁コンセントを含むことができ、制御ボックス(38)は、電源コードを介して接続される。他の例において、電源(102)はバッテリを含むことができる。制御ボックス(38)は、電源コードを介してバッテリに接続されてよい。他の実施形態においては、バッテリなどの電源(102)が、制御ボックス(38)と一体化されてよい。
【0089】
制御ボックス(38)は、ネットワーク(106)を介して監視サーバ(104)に通信可能に結合した無線通信ユニットを含むことができる。いくつかの実施形態において、制御ボックス(38)は、Wi-Fiアクセスポイントまたはゲートウェイを介してネットワーク(106)に無線で結合する。他の実施形態において、制御ボックス(38)は、スマートフォンまたはタブレットコンピュータに無線で結合し、スマートフォンまたはタブレットコンピュータは、NFC接続、Bluetooth(登録商標)接続、RFID接続、またはZigbee接続などの有線または無線接続を介してネットワーク(106)に接続される。いくつかの実施形態において、制御ボックス(38)は、抵抗器、コンデンサ、I/O拡張器、NPNトランジスタ、マルチプレクサ、マイクロコントローラ、デジタルアナログ変換器(DAC)、メモリ、およびコネクタを含むことができる。
【0090】
いくつかの実施形態において、制御ユニット(38)の通信ユニットは、感知したデータをローカルに(ユニット内あるいはハードディスクまたは他の書き込み可能メモリなどのコンピュータ可読媒体内に)記憶し、あるいはデータをコンピュータ、モバイル機器、および/または監視サーバ(104)(例えば、クラウドコンピューティングサーバ)などの外部装置に送信するように構成される。データを、外部装置を利用することによってリアルタイムで視覚化することができる。
【0091】
いくつかの実施形態において、制御ユニット(38)は、可撓性センサに電力を供給しつつ、可撓性センサ(35)からの収集データを監視サーバ(104)に送信するように構成される。さらに、通信ユニットが無線であるか否かにかかわらず、リアルタイムの身体の動きをウェブベースのインターフェースで示すことができる。
【0092】
監視サーバ(104)は、制御ユニット(38)からネットワーク(106)を介して感知データを受信するように構成された任意のプロセッサ、ワークステーション、コンピュータなどを含むことができる。監視サーバ(104)は、受信したデータをユーザに関連付けられたアカウント内のデータベースに格納する。監視サーバ(104)は、ユーザまたは第三者が(スマートフォン、タブレットコンピュータ、コンピュータ、などを使用して)アカウントにアクセスしてデータをグラフィカルに眺めることを可能にするための1つ以上のインターフェースを含む。場合によっては、監視サーバ(104)は、ユーザがいつ動いたか、および/またはどれだけ動いたかを検出し、ユーザが睡眠または休息の最中にどのように動いたかを示す1つ以上のデータ視覚化を作成するために、1つ以上のしきい値を使用することができる。
【0093】
本明細書に記載の現時点の好ましい実施形態に対する種々の変更および修正が、当業者には明らかであることを理解されたい。そのような変更および修正を、本主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、かつその意図された利点を損なうことなく、行うことができる。したがって、そのような変更および修正は、添付の特許請求の範囲によって網羅されることが意図されている。
【表2】
図1
図2A(i)】
図2A(ii)】
図2A(iii)】
図2B(i)-2B(ii)】
図2C(i)】
図2C(ii)】
図2D
図3(a)】
図3(b)】
図4(a)(i)】
図4(a)(ii)】
図4(a)(iii)】
図4(a)(iv)】
図4B
図4C(i)】
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図5(d)】
図5(e)】
図6(a)】
図6(b)】
図7
【国際調査報告】