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  • 特表-半導体ウエハのメタライゼーション 図1
  • 特表-半導体ウエハのメタライゼーション 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】半導体ウエハのメタライゼーション
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/09 20060101AFI20231121BHJP
   H05K 3/10 20060101ALI20231121BHJP
   H01L 21/288 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H05K1/09 A
H05K3/10 D
H05K1/09 D
H01L21/288 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527443
(86)(22)【出願日】2021-12-01
(85)【翻訳文提出日】2023-05-08
(86)【国際出願番号】 CN2021134797
(87)【国際公開番号】W WO2022116996
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】202011393016.5
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515131116
【氏名又は名称】ヘレウス ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】シェン、ファンチョン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、アルウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ラン
(72)【発明者】
【氏名】ボルト、カイ-ウルリッヒ
【テーマコード(参考)】
4E351
4M104
5E343
【Fターム(参考)】
4E351AA06
4E351BB31
4E351CC08
4E351CC10
4E351CC22
4E351CC27
4E351DD05
4E351DD06
4E351DD12
4E351DD21
4E351EE03
4E351EE06
4E351GG20
4M104AA01
4M104AA03
4M104AA04
4M104AA05
4M104AA10
4M104BB08
4M104BB09
4M104DD51
4M104DD79
5E343AA02
5E343AA05
5E343AA22
5E343BB23
5E343BB25
5E343BB34
5E343BB76
5E343DD12
5E343FF05
5E343FF11
5E343GG11
(57)【要約】

本発明は、半導体ウエハの製造方法であって、i)MODインク組成物を半導体ウエハに適用し、それによって前駆体層を形成するステップと、ii)前駆体層を硬化させるステップと、を含む、方法に関する。一実施形態では、ステップi)における適用は、インクジェット印刷によって行われる。MODインクをインクジェット印刷する方法は、装置コストが低く、消費電力が低く、材料の無駄がなく、オンデマンド印刷が行われて、容易な選択的堆積/設計柔軟性がもたらされる(エッチングを必要としない)。加えて、本発明の方法は、ウエハの裏面上のメタライゼーション層の接着性及び導電性を改善するものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハの製造方法であって、
i)MODインク組成物を半導体ウエハに適用し、それによって前駆体層を形成するステップと、
ii)前記前駆体層を硬化させるステップと、を含む、方法。
【請求項2】
ステップi)における前記適用が、噴霧、スピンコーティング、ディップコーティング、又はインクジェット印刷によって、好ましくはインクジェット印刷によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップi)及びii)を含むサイクルが、1回以上行われ、各サイクルにおいて、ステップi)が1回以上実行され、ステップii)が1回以上行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
複数のサイクルを行う場合、100nm~800nm、好ましくは150nm~500nm、より好ましくは200nm~300nmの厚さを有する層が、各サイクルにおいて形成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップii)における前記硬化が、電磁放射及び/又は加熱によって行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
放射線強度が、100W/cm~1000W/cm、好ましくは100W/cm~500W/cm、より好ましくは100W/cm~400W/cmであり、放射線波長が、100nm~1mm、好ましくは100nm~2000nm、より好ましくは100nm~800nmである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
加熱温度が、50℃~500℃、好ましくは80℃~400℃、より好ましくは約150℃~300℃である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
iii)硬化後に得られた前記層をアニーリングするステップを更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップiii)における前記アニーリングが、120℃~500℃の温度で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法により、前記半導体ウエハの裏面をメタライズし、及び/又は表面をメタライズし、好ましくは裏面をメタライズする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記半導体ウエハが、Siウエハ、SiCウエハ、GaNウエハ、GaAsウエハ、又はGaウエハ、好ましくはSiウエハである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記半導体ウエハが、パワーエレクトロニクスウエハ又はロジックICウエハである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記MODインク組成物が、a)少なくとも1つの金属前駆体と、b)溶媒と、を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記金属前駆体が、80℃~500℃の分解温度を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記MODインク組成物中の前記金属が、Ag、Ag/Sn、又はAuである、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記金属前駆体が、
a)少なくとも1つの金属カチオンと、
b)カルボキシレート、カルバメート、ナイトレート、ハライドイオンからなる群から選択される少なくとも1つのアニオン、及びオキシムと、からなる、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が、ステップi)の前に行われるステップ:
1)前記半導体ウエハ上に接着層及びバリア層を形成するステップ、
又は
2)前記半導体ウエハ上に接着機能及びバリア機能の両方を有する層を形成するステップを更に含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ステップ1)及び2)における前記層の前記形成が、化学蒸着、スパッタ堆積、電気めっき、噴霧、スピンコーティング、ディップコーティング、又はインクジェット印刷によって、好ましくはインクジェット印刷によって行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記層の前記形成が、噴霧、スピンコーティング、ディップコーティング、又はインクジェット印刷によって行われる場合、使用される前記インクがMODインク組成物である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
2)について、前記MODインク組成物が、ビスマス含有MODインク組成物である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ステップ1)又は2)の各層を形成した後、前記得られたウエハを硬化及び/又はアニーリングする、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載の方法によって得られる半導体ウエハ。
【請求項23】
請求項22に記載の半導体ウエハを備える半導体デバイス。
【請求項24】
a)半導体ウエハと、
b)MODインク組成物の未硬化層と、を備える、半導体ウエハ前駆体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハの製造方法に関する。特に、本発明は、半導体ウエハをメタライズすることによる半導体ウエハの製造方法に関する。
【0002】
半導体デバイスの製造中、通常、半導体ウエハをメタライズすることが必要である。メタライゼーションスキームは、典型的には、以下の要件を満たすべきである。第1に、ウエハ上に直接配置された層がウエハに接着されるべきである。第2に、メタライゼーション構造の外面は、半導体デバイスをリードフレームなどに接合できるようにはんだ付け可能であるべきである。第3に、メタライゼーション構造自体は、クラックが生じないものであるべきである。加えて、メタライゼーションは、ウエハの更なる反りを低減するために、スタックに対する効果的な応力制御を必要とし、低いオーム接触抵抗及び優れた接着性もまた、メタライゼーションプロセスにとって重要な要件である。
【0003】
ウエハメタライゼーションのための従来の方法は、スパッタリング/蒸着であり、Ti/Ni/Ag、Al/Ti/NiV/Ag、又はTi/Auなどの複数のスタック層が典型的に使用される。
【0004】
例えば、米国特許第4946376号は、ウエハの裏面に配置された500~3000Åの厚さを有するバナジウム層と、バナジウム層上に配置された10,000~20,000Åの厚さを有する銀層と、を備える半導体デバイスのためのメタライゼーションスキームを開示しており、バナジウム層及び銀層は、蒸着又はスパッタリングによって適用される。
【0005】
米国特許第6790709(B2)号は、マイクロ電子デバイス及びその製造方法を開示している。マイクロ電子デバイスは、活性表面、裏面、及び少なくとも1つの側面を有するマイクロ電子ダイを備え、マイクロ電子ダイは、傾斜側壁及びチャネル側壁を備え、メタライゼーション層は、マイクロ電子ダイの裏面及び傾斜側壁上に配置される。メタライゼーション層は、化学蒸着、スパッタリング堆積(PVD)、電気めっきなどを含むがこれらに限定されない、当技術分野で既知の任意の方法、好ましくはスパッタリング堆積によって形成することができる。
【0006】
米国特許出願公開第2008/0083611(A1)号は、ウエハと堆積金属膜との間の接着性を改善する方法を開示しており、
この方法は、200℃未満の温度で堆積膜に金属イオンを衝突させることを含み、金属イオンのエネルギーは、金属原子とウエハ原子との間の界面混合を達成するのに十分に高く、金属イオンのエネルギーは、ウエハへの応力損傷を防止するのに十分に低い。この文献における堆積膜は、スパッタリングによって製造される。
【0007】
上述した従来技術の主な欠点は、装置コストが高いこと、材料利用率が低いこと、及びウエハサイズの変動(例えば、200mm~300mm)に対応することに関して追加のハードウェア(シールド/マスク)が必要であることである。
【0008】
加えて、従来技術は、印刷技術を使用することによるメタライゼーションの方法も開示している。
【0009】
例えば、米国特許第10763230(B2)号は、シリコンウエハの第1の面上にナノ銀粒子伝導性インクのパターンをインクジェット印刷することによって湿潤層を形成するステップと、次いで、ウエハをオーブン内で加熱してインク中の溶媒及び他の材料を蒸発させることによって湿潤層を硬化させるステップと、を含む、集積回路の裏面メタライゼーションの方法を開示している。
【0010】
国際公開第2020/094583(A1)号は、電磁干渉遮蔽層によって少なくとも部分的に覆われた半導体パッケージの製造方法を開示しており、この方法は、少なくとも、i.半導体パッケージ、及びインク組成物であって、当該インク組成物は、少なくとも以下の成分:a)少なくとも1つの金属前駆体を含む化合物及びb)少なくとも1つの有機化合物を含む、インク組成物を提供するステップと、ii.インク組成物の少なくとも一部分を半導体パッケージに適用し、前駆体層を形成するステップと、iii.前駆体層を、100nm~1mmの範囲のピーク波長の電磁放射線で処理するステップと、を含む。この方法では、ウエハをメタライズするのではなく電磁干渉遮蔽層を提供する目的で、インク組成物を、シリコンウエハ自体ではなく半導体パッケージ、すなわちエポキシに適用する。
【0011】
印刷によるメタライゼーションの従来技術の方法は、いくつかの欠点を有し、メタライゼーション層の接着性及び導電性は、依然として更なる改善を必要とする。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服すること、並びに半導体ウエハの製造方法、特に半導体ウエハをメタライズすることによる半導体ウエハの製造方法であって、得られたメタライゼーション層が改善された接着性及び導電性を有する、方法を提供することである。
【0013】
具体的には、本発明の目的は、半導体ウエハの製造方法であって、
i)MODインク(有機金属分解インク(Metal-Organic Decomposition ink))組成物を半導体ウエハに適用し、それによって前駆体層を形成するステップと、
ii)前駆体層を硬化させるステップと、を含む、方法、を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、本発明の方法によって得られる半導体ウエハを提供することである。
【0015】
本発明の更なる目的は、本発明の半導体ウエハを備える半導体デバイスを提供することである。
【0016】
本発明の更に別の目的は、a)半導体ウエハと、b)未硬化MODインク層と、を備える、半導体ウエハ前駆体を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一態様では、本発明は、半導体ウエハの製造方法であって、
i)MODインク組成物を半導体ウエハに適用し、それによって前駆体層を形成するステップと、
ii)前駆体層を硬化させるステップと、を含む、方法を提供する。
【0018】
本発明の方法は、半導体ウエハの裏面及び/又は表面をメタライズすることを可能にし、好ましくは裏面をメタライズすることを可能にする。使用される金属は、Ag、Ag/Sn、又はAuであり得る。得られるメタライゼーション層の厚さは、所望に応じて決定されてよく、例えば、約100nm~約3000nm、好ましくは約300nm~約2000nm、及び特に好ましくは約300nm~約1000nmであってもよい。得られるメタライゼーション層は、良好な導電性及び熱伝導性を有し、外部に取り付けられる材料に対する良好なはんだ付け性も有する。
【0019】
半導体ウエハは、Siウエハ、SiCウエハ、GaNウエハ、GaAsウエハ、又はGaウエハ、好ましくはSiウエハであってもよい。半導体ウエハは、パワーエレクトロニクスウエハ又はロジックICウエハであってもよい。
【0020】
ステップi)
本発明の一実施形態では、ステップi)における適用は、噴霧、スピンコーティング、ディップコーティング、又はインクジェット印刷によって、好ましくはインクジェット印刷によって行われる。
【0021】
インクジェット印刷は、材料の無駄を減らし、マスクもエッチングステップも必要としない積層造形プロセスである。更に、インクジェット印刷は、大きなウエハ(例えば、300mmウエハ)を取り扱うことができ、これにより、そのようなウエハのための高価な金属堆積装置の必要性が低減され、ひいては製造コストが低減される。
【0022】
インクジェット印刷は、パターン化された方法で行うことができる。インクジェット印刷は、圧電インクジェットプリンタなどの任意の種類のインクジェットプリンタによって行うことができる。インクジェット印刷によって適用される層の数は、所望の層厚を得るために1つ以上の層、好ましくは1~10層であり得る。インクジェット印刷の層厚は、印刷解像度及び層の数を調整することによって調整することができる。インクジェット印刷のDPI範囲X/Yは、300~3000であり得る。
【0023】
本発明で使用されるMODインク組成物は、適用される金属の前駆体化合物と、溶媒と、を含む。適用される金属(特に銀)の膜を形成するために、有機溶媒は、金属前駆体化合物が分解反応によって固体構造に変換され得るように除去される必要がある。
【0024】
しかしながら、溶媒の除去中に、特に膜が厚い場合には、内部又は表面に気泡が形成されることがあり、これは最終的に高い空隙率を有する膜をもたらす。したがって、MODインクは、従来、薄膜の調製のみに好適であると考えられており、そうでなければ品質問題が生じる可能性がある。更に、MODインクによって調製された金属膜は、CVD又はPVDなどの他の方法によって調製されたものと比較して、基板への接着性が劣ると考えられる。気泡密度を減少させる唯一の方法は、単に加熱速度を変えることによって溶媒をゆっくりと除去することであると考えられる。したがって、この方法は、現代の半導体産業に適用するには遅すぎる。
【0025】
その結果、MODインクは、現在、半導体産業において、例えば、フレキシブルプリント回路(FPC)用途におけるポリイミド(PI)又はポリエチレンテレフタレート(PET)上に回路を製造する(すなわち、導電性経路を作製する)ためにのみ使用されている。これらの用途では、金属層は薄く均一であるべきであり、また、比較的良好な環境で使用されるべきである。裏面メタライゼーションなどの他の用途では、温度が大幅に変化したとき、又は高電流密度が頻繁に発生したときにメタライゼーション層が剥がれないように、ウエハへの良好な結合を確保するために、裏面メタライゼーション層は比較的厚く強いものであるべきなので、MODインクは不適切であると考えられる。
【0026】
しかしながら、驚くべきことに、MODインクが本発明の方法において使用される場合、厚く、かつ空隙率が小さい緻密な層が、適用後の硬化ステップ(適用及び硬化サイクルと呼ばれる)においてそれを完全に硬化させることによって、1回の適用及び硬化サイクルにおいて高速で得ることができることが見出された。一方、複数回の適用及び硬化サイクルを実施し、各サイクルにおいて100nm~800nm、好ましくは150nm~500nm、より好ましくは200nm~300nmの厚さを有する層を形成することも可能であり、したがって、厚く、かつ空隙率が小さく、かつ結晶粒が大きい(最大1000nm)緻密な層を高速で得ることができる。得られた層は、良好な接着性及び導電性を有し、したがって、ウエハの裏面メタライゼーションのためにMODインクを使用することを可能にし、したがって、従来技術のバイアスを克服する。MODインクを使用する本発明の方法によって得られる層は、PVD法の空隙率と同等の、又はそれよりも小さい空隙率を有する。
【0027】
ナノ粒子インクなどの他のインクに対するMODインクの利点の1つは、より均一で、より平坦で、より緻密な膜を形成する能力である。金属ナノ粒子を含有するインクによって得られる層は、通常、非常に疎であり、すなわち、空隙率が高い。これに対して、MODインクを使用する本発明の方法によって得られる層は、空隙率がはるかに低い。ナノ粒子インクとは異なり、MODインクは、混合物(懸濁液)ではなく溶液であり、経時的に沈降せず、適用中に生じる問題が少ない(例えば、ノズルを詰まらせる可能性が低い)。MODインクの粘度は、噴霧性及びアニーリング温度を調整するために容易に調整することができる。加えて、MODインクは、環境に優しく、ナノ粒子を含有せず、より容易に入手可能であり、また、MODインクは、最終的にナノ粒子インクよりも安価であり得る。
【0028】
本発明で使用されるMODインク組成物は、次の成分:a)少なくとも1つの金属前駆体と、b)溶媒と、を含む。
【0029】
MODインク組成物中の金属は、Ag、Ag/Sn、又はAuである。
【0030】
金属前駆体は、80℃~500℃、例えば、80℃~500℃、又は150℃~500℃、又は180℃~350℃、又は150℃~300℃、又は180℃~270℃の分解温度を有する。
【0031】
金属前駆体は、
a)少なくとも1つの金属カチオンと、
b)カルボキシレート、カルバメート、ナイトレート、ハライドイオンからなる群から選択される少なくとも1つのアニオン、及びオキシムと、からなる。
【0032】
2つ以上の金属前駆体の組み合わせが使用されてもよく、2つ以上の金属前駆体は、同じ金属カチオンを有するが、同じ若しくは異なる種類のアニオンを有するか、又は、異なる金属カチオンを有するが、同じ種類のアニオンを有する。この組み合わせとしては、例えば、カルボン酸銀とカルボン酸スズとの組み合わせ、2つの異なるカルボン酸銀の組み合わせ、及びカルボン酸銀とカルバミン酸銀との組み合わせが挙げられる。
【0033】
カルボキシレートは、1つ以上の金属カチオン及び1つ以上のカルボキシレートアニオンからなる塩である。カルボキシレートアニオンのカルボン酸部分は、直鎖状でも分岐状でもよく、又は環状構造単位を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。更に好ましい種類のカルボキシレートは、モノカルボキシレート及びジカルボキシレート、又は環状カルボキシレートである。一実施形態では、1~20個の炭素原子を有するカルボキシレートなどの直鎖飽和カルボキシレートが好ましい。直鎖カルボキシレートは、アセテート、プロピオネート、ブチレート、バレレート、ヘキサノエート、ヘプタノエート、オクタノエート、ノナノエート、デカノエート、ウンデカノエート、ドデカノエート、テトラデカノエート、ヘキサデカノエート、又はオクタデカノエートからなる群から選択することができる。別の実施形態では、1~20個の炭素原子を有する飽和イソカルボキシレート及び飽和ネオカルボキシレートが使用されてもよい。一実施形態では、5個以上の炭素原子を有する飽和ネオカルボキシレート、例えば、ネオペンタノエート、ネオヘキサノエート、ネオヘプタノエート、ネオオクタノエート、ネオノナノエート、ネオデカノエート、及びネオドデカノエート、が好ましい。
【0034】
ハライドイオンは、フルオライドイオン、クロライドイオン、ブロマイドイオン、及びアイオダイドイオンからなる群から選択される。
【0035】
MODインク組成物の金属含有量は、熱重量分析(thermogravimetric analysis、TGA)によって通常決定されるように、インク組成物の総重量に基づいて、金属で計算して、約1重量%~約60重量%、例えば、約1重量%~約50重量%又は約10重量%~約40重量%である。
【0036】
MODインク組成物は、溶媒を更に含む。MODインク組成物は、いずれの場合も、MODインク組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~約90重量%、好ましくは約20重量%~約90重量%の溶媒を含む。
【0037】
溶媒として、グリコールエーテル、テルペン、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、アルデヒド、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される溶媒を使用することができる。
【0038】
グリコールエーテルは、少なくとも1つのジオール単位を有する有機物質である。グリコールエーテルとしては、エチレングリコールエーテル、ジエチレングリコールエーテル、トリエチレングリコールエーテル、テトラエチレングリコールエーテル、プロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテルなどを挙げることができる。市販されている例は、DOWANOL PNP(プロピレングリコールn-プロピルエーテル)及びDOWANOL PNB(プロピレングリコールn-ブチルエーテル)、DOWANOL DPNB(ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル)及びDOWANOL DPNP(ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル)である。
【0039】
テルペンは、天然に存在する不飽和炭化水素であり、これは天然物質から単離することができ、その構造は1つ以上のイソプレン単位まで追跡することができる。いくつかのテルペンはまた、工業的に及び人工的に入手可能である。テルペンは、好ましくは非環状テルペン又は環状テルペンである。環状テルペンの中でも、単環式テルペンが好ましい。好ましくは、テルペンは、オレンジテルペン、リモネン、及びピネン、又はこれらの組み合わせから選択される。
【0040】
脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、及びアルデヒドなどの他の好適な溶媒は、当該技術分野において周知である。
【0041】
MODインク組成物は、任意選択で、接着促進剤、粘度助剤、及び他の添加剤などの1つ以上の他の成分を含んでもよい。
【0042】
一実施形態では、MODインク組成物は接着促進剤を含んでもよく、好ましくは、接着促進剤の含有量は、MODインク組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~約5重量%であってもよい。
【0043】
一実施形態では、MODインク組成物は、インク組成物の総重量に基づいて、約5重量%~約30重量%、より好ましくは約10重量%~約20重量%の重量比で1つ以上の粘度助剤を含んでもよい。
【0044】
ロジン樹脂又はその誘導体は、インク組成物に好適な粘度助剤である。特に好ましい市販製品は、H.Reynaud&Fils GmbH(Hamburg)から入手可能なバルサム樹脂である。
【0045】
一実施形態では、MODインク組成物は、いずれの場合もインク組成物の総重量に基づいて、約0.05重量%~約3重量%、より好ましくは約0.05重量%~約1重量%の割合で他の添加剤を含んでもよい。インク添加剤として好適なことが当業者に既知の全ての化学物質を、他の添加剤として使用することができる。特に好ましいのは、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンなどのシロキサン含有添加剤である。
【0046】
一実施形態では、MODインク組成物は、MODインク組成物の総重量に基づいて、1重量%未満、又は0.5重量%未満、又は0.2重量%未満の金属粒子を含む。最も好ましくは、本発明の組成物は実質的に金属粒子を含まない。
【0047】
MODインク組成物は、20℃の温度及び1013hPaの周囲圧力で測定して、約0.1~約100mPa・s、例えば約5~約30mPa・sの粘度を有するインク組成物など、適用に好適な粘度を有してもよい。
【0048】
MODインク組成物中の成分は、当業者に既知であり、好適であると考えられる全ての方法で混合することができる。混合は、混合プロセスを容易にするためにわずかに高い温度で行うことができる。典型的には、混合中の温度は40℃を超えない。インク組成物は、室温又は冷蔵庫で保存することができる。
【0049】
ステップii)
ステップii)では、ステップi)で得られた前駆体層を硬化させる。硬化中、湿潤層中の溶媒は蒸発し、層内で核形成を誘発する。
【0050】
ステップi)で使用されるMODインク中の金属Ag、Ag/Sn、又はAuは酸化されにくいので、硬化は空気中で行うことができる。もちろん、硬化は不活性雰囲気下で行うこともできる。不活性雰囲気の例としては、窒素、ヘリウム、アルゴン、及びネオンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
ステップii)における硬化は、加熱及び/又は電磁放射によって行われてもよい。本発明の一実施形態では、加熱及び電磁放射は、同時に行われてもよく、又は加熱後に電磁放射を行ってもよく、又は電磁放射後に加熱を行ってもよい。
【0052】
硬化が加熱によって行われる場合、これはオーブン内で行われてもよい。加熱温度は、約50℃~約250℃、好ましくは約80℃~約200℃、より好ましくは約150℃~約200℃であってもよく、加熱時間は、約1~約60分、好ましくは約5~約40分であってもよい。
【0053】
硬化が電磁放射によって行われる場合、約100nm~約1mm、好ましくは約100nm~約2000nm、より好ましくは約100nm~約800nmの波長を有する電磁放射線が使用されてもよい。放射線強度は、約100W/cm~約1000W/cm、好ましくは約100W/cm~約500W/cm、より好ましくは約100W/cm~約400W/cmであってもよい。放射速度は、約0.01mm/秒~約1000mm/秒、好ましくは約0.1mm/秒~約500mm/秒、より好ましくは約0.1mm/秒~約50mm/秒であってもよい。放射は、1~100回、好ましくは1~50回行われてもよい。
【0054】
本発明の一実施形態では、ステップi)及びii)を含むサイクルは、1回以上行われ、各サイクルにおいて、ステップi)は1回以上行われ、ステップii)は1回以上行われる。例えば、サイクルは1~10回、好ましくは1~5回、より好ましくは1~3回行われてもよく、各サイクルにおいて、ステップi)は1~10回、好ましくは1~5回、より好ましくは1~3回行われ、ステップii)は1~10回、好ましくは1~5回、より好ましくは1~3回行われる。
【0055】
複数のサイクルを行う場合、100nm~800nm、好ましくは150nm~500nm、より好ましくは200nm~300nmの厚さを有する層が、各サイクルにおいて形成される。
【0056】
他のステップ
本発明の方法は、ステップiii)、すなわち、ステップii)で得られた層をアニーリングするステップを更に含んでもよい。
【0057】
アニーリング温度は、金属の融点に関連し、より高いアニーリング温度は、より高い融点を有する金属に使用される。アニーリング温度は、約120℃~約500℃、好ましくは約150℃~約460℃であってもよい。アニーリング時間もまた、金属の融点に関連し、より長いアニーリング時間は、より高い融点を有する金属に使用される。アニーリング時間は、約1~約60分、好ましくは約5~約40分、より好ましくは約5~約30分であってもよい。
【0058】
ステップi)で使用されるMODインク中の金属Ag、Ag/Sn、又はAuは酸化されにくいので、アニーリングは空気中で行うことができる。もちろん、アニーリングは不活性雰囲気下で行うこともできる。不活性雰囲気の例としては、窒素、ヘリウム、アルゴン、及びネオンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
アニーリングは、任意の好適な装置、例えば、管状炉で行うことができる。
【0060】
本発明の方法はまた、半導体ウエハを洗浄するステップなどの他のステップを含んでもよい。
【0061】
本発明の一実施形態では、半導体ウエハは、各層(例えば、MODインク組成物層)が半導体ウエハに適用される前に、又は各層(例えば、MODインク組成物層)が半導体ウエハ上に既に存在する他の層に適用される前に、表面上のあらゆるあり得る酸化物を除去するために洗浄されてもよい。酸化物が存在すると、接触抵抗を増大させ、接着性に影響を及ぼすことがあり、ひいては、製品の性能に影響を及ぼすことがある。加えて、洗浄は、表面上の化学結合を活性化することによって膜の接着性を強化することに加え、表面から残留夾雑物質を除去することができる。あるいは、表面上の酸化物層を、洗浄プロセス中に保持することもできる。
【0062】
洗浄方法としては、プラズマ洗浄及び化学洗浄が挙げられ得る。好ましくは、プラズマを使用して洗浄を行う。プラズマ洗浄の例としては、Arプラズマ洗浄、空気プラズマ洗浄、又は真空プラズマ洗浄が挙げられ得る。プラズマ洗浄の時間は、約1~約60分、好ましくは約1~約10分であってもよい。好適な化学洗浄方法は、当該技術分野において周知である。
【0063】
半導体ウエハを洗浄した後、半導体ウエハにベース層を適用することができる。好適なベース層は、接着層及びバリア層であってもよく、接着層はシリコンウエハ表面と直接接触しており、バリア層は接着層の上に配置されて、接着層の酸化を防止し、また、接着層とそれに続くAg、Ag/Sn、又はAu層(上述のように)との間の相互拡散を防止する。もちろん、接着機能及びバリア機能の両方を有する層を適用することもできる。
【0064】
具体的には、本発明の方法は、ステップi)の前に行われる以下のステップ:
1)半導体ウエハ上に接着層及びバリア層を形成するステップ、又は
2)半導体ウエハ上に接着機能及びバリア機能の両方を有する層を形成するステップを更に含む。
【0065】
驚くべきことに、接着機能及びバリア機能の両方を有する層並びにAg、Ag/Sn、又はAu層を備えたウエハは、優れた熱伝導性及び導電性を有することが見出された。
【0066】
ベース層の適用は、化学蒸着、スパッタ堆積、電気めっき、噴霧、スピンコーティング、ディップコーティング、又はインクジェット印刷によって、好ましくはインクジェット印刷によって行われてもよい。噴霧、スピンコーティング、ディップコーティング、又はインクジェット印刷が使用される場合、好ましくは、適用される金属の前駆体を含むMODインク組成物も使用される。使用されるMODインク組成物は、Ag、Ag/Sn、又はAu層について上述したものなどであり、違いは、使用される金属がベース層に使用されるものであることである。
【0067】
ベース層のインクジェット印刷はまた、パターン化された方式で行うこともできる。インクジェット印刷は、インクジェットプリンタ、好ましくは圧電インクジェットプリンタによって行われる。インクジェット印刷によって適用される層の数は、1つ以上の層、好ましくは1~10層であり得る。インクジェット印刷の層厚は、印刷解像度及び層の数を調整することによって調整することができる。インクジェット印刷のDPI範囲X/Yは、300~3000であり得る。
【0068】
ベース層の適用後、得られたベース層は、上記のように硬化及びアニーリングされてもよい。本発明では、場合により、硬化処理及びアニーリング処理を一括して「後処理」と呼ぶことがある。
【0069】
接着層及びバリア層を半導体ウエハに適用する場合、これは、(i)1つ以上の接着層を適用し、接着層を硬化及び/又はアニーリングし、次いで、1つ以上のバリア層を適用し、バリア層を硬化及び/又はアニーリングすることによって、又は(ii)1つ以上の接着層を適用し、次いで、1つ以上のバリア層を適用し、次いで、得られた複合層を一緒に硬化及び/又はアニーリングすることによって行うことができる。(i)の場合、複数の接着層が適用されるとき、所望の厚さが得られるまで、各接着層を適用し、次いで、その層を硬化及び/又はアニーリングし、次いで、次の接着層を適用し、次いで、その次の接着層を硬化及び/又はアニーリングしていくこと、以下略が可能である。複数の接着層が適用された後に、適用された接着層の全てを一緒に硬化及び/又はアニーリングすることも可能である。同様に、(i)の場合、複数のバリア層が適用されるとき、所望の厚さが得られるまで、各バリア層を適用し、次いで、そのバリア層を硬化及び/又はアニーリングし、次いで、次のバリア層を適用し、次いで、その次のバリア層を硬化及び/又はアニーリングしていくこと、以下略が可能である。複数のバリア層が適用された後に、適用されたバリア層の全てを一緒に硬化及び/又はアニーリングすることも可能である。
【0070】
硬化は、電磁放射及び/又は加熱によって行われる。硬化が加熱によって行われる場合、加熱温度は、約50℃~約250℃、好ましくは約80℃~約200℃、より好ましくは約150℃~約200℃であり、加熱時間は、約1~約60分、好ましくは約5~約40分である。硬化が電磁放射によって行われる場合、約100nm~約1mm、好ましくは約1000nm~約2000nm、より好ましくは約100nm~約800nmの波長を有する電磁放射線が使用されてもよい。接着層及びバリア層の硬化のために、放射線強度は、約1W/cm~約100W/cm、好ましくは約10W/cm~約50W/cmであってもよい。放射速度は、約0.01mm/秒~約1000mm/秒、好ましくは約0.1mm/秒~約500mm/秒、より好ましくは約0.1mm/秒~約50mm/秒であってもよい。放射は、1~約100回、好ましくは1~約50回行われてもよい。
【0071】
ベース層に使用されるMODインク中の金属が酸化されやすい場合、例えばTi及びNiの場合、硬化中に酸化物に変換する傾向があるため、金属の酸化を防止するために不活性雰囲気下でのアニーリングが必要である。ベース層に使用されるMODインク中の金属が酸化されにくい場合、例えばPt、Ag、及びAuの場合、硬化は空気中で行うことができる。もちろん、不活性雰囲気下での硬化も可能である。不活性雰囲気の例としては、窒素、ヘリウム、アルゴン、及びネオンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
アニーリング温度は、約120℃~約500℃、好ましくは約150℃~約460℃であってもよい。アニーリング時間もまた、金属の融点に関連し、より長いアニーリング時間は、より高い融点を有する金属に使用される。アニーリング時間は、約1~約60分、好ましくは約5~約40分、より好ましくは約5~約30分であってもよい。上述したように、使用される金属に応じて、ベース層のアニーリングは、還元性雰囲気下又は不活性雰囲気下で行われてもよい。
【0073】
ベース層はまた、PVD法によって適用することもできる。特定のPVDプロセス条件は、当該技術分野において周知である。
【0074】
接着層に使用される金属は、チタン(Ti)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、又はこれらの混合物であってもよい。バリア層に使用される金属は、ニッケル(Ni)、バナジウム(Vi)、クロム(Cr)、又はニッケル-バナジウム(NiV)などのこれらの混合物であってもよい。接着機能及びバリア機能の両方を有する層の場合、好ましい金属は、ビスマス(Bi)、ニッケル-バナジウム(NiV)、又はタングステン(W)であり、より好ましくはBiである。
【0075】
接着層の厚さは、50nm~500nm、好ましくは50nm~100nmであってもよい。バリア層の厚さは、100nm~500nm、好ましくは100nm~200nmであってもよい。接着機能及びバリア機能の両方を有する層の厚さは、30nm~500nm、好ましくは50nm~100nmであってもよい。
【0076】
本発明の文脈では、接着層及びバリア層が明確に定義されているが、実際の製造プロセスでは、接着層及びバリア層が界面で融合して、界面層を形成することがあることに留意されたい。
【0077】
本発明の方法の実施形態
図1は、
(i)MOD(金属前駆体+溶媒)を配合するステップと、
(ii)圧電プレスに充填されたMODインクを用いてウエハの裏面上に湿潤層をインクジェット印刷するステップであって、層厚は、印刷解像度及び層の数を調整することによって調整することができる、ステップと、
(iii)湿式印刷された層を電磁放射によって硬化させて、溶媒を蒸発させ、核形成させるステップと、
(iv)硬化層を管状オーブン内でアニーリングするステップと、を含み、
ステップ(ii)及び(iii)は一緒に、所望の層厚を得るために1回以上行うことができる、本発明の方法の一実施形態を示す。
【0078】
好ましい実施形態では、本発明は、半導体ウエハの製造方法であって、
1)ウエハをプラズマ洗浄するステップと、
2)接着層をインクジェット印刷するステップと、
3)接着層を後処理するステップと、
4)バリア層をインクジェット印刷するステップと、
5)バリア層を後処理するステップと、
6)Ag、Ag/Sn、又はAu層をインクジェット印刷するステップと、
7)銀層を後処理するステップと、を含む、方法に関する。
【0079】
接着層/バリア層の後処理条件は以下の通りである。
硬化:放射線強度1W/cm~100W/cm、波長100nm~1mm、及び速度0.1mm/秒~1000mm/秒で、1~100回、
アニーリング:120℃~500℃で1~30分。
【0080】
Ag、Ag/Sn、又はAu層の後処理条件は以下の通りである。
硬化:放射線強度100W/cm~1000W/cm、波長100nm~1mm、及び速度0.1mm/秒~100mm/秒で、1~100回、
アニーリング:120℃~500℃で1~30分。
【0081】
本発明の方法の利点
本発明は、MODインクを利用して、シリコンウエハの裏面上に異なる薄膜層を堆積させるものであり、半導体デバイスにおけるウエハメタライゼーション用途のためのものである。これにより、装置コストを節約し、材料の無駄を低減することができる。特に、本発明の好ましい実施形態では、MODインクを適用するためにインクジェット印刷が使用され、これにより、工業規模の圧電インクジェットプレスを使用して膜を製造することが可能になり、これは、積層造形プロセスであり、以下の主な利点を有する。
1.装置コストが低く、消費電力が低い(真空を必要としない)。
2.材料の無駄がない。
3.オンデマンド印刷により、選択的堆積/設計柔軟性が容易になる(エッチングを必要としない)。
【0082】
MODインクのインクジェット印刷及び本発明による後処理によって得られるウエハは、PVD又はナノ粒子インクによって製造された層と比較して、異なる層微細構造を有する。従来技術のPVDは、非常に緻密な層をもたらし、一方、従来技術のナノ金属粒子を含有するインクの使用は、通常、小さい凝集体及び高い空隙率を有する層をもたらす。これに対して、本発明のMOD層は、アニーリング後に大きな結晶粒を含有する緻密な構造を有し、後処理条件を調整することによって各層の形状を容易に調整することができる。これにより、本発明のAg、Ag/Sn、又はAu層の優れた導電性が得られる。特に、本発明の方法によって得られるAg、Ag/Sn、又はAu層の導電率は、従来技術におけるナノ金属インクを使用して得られる層の導電率よりも高く、従来技術におけるPVD法を使用して得られる層の導電率と同等である。
【0083】
本発明の他の態様
本発明の別の態様では、本発明の方法によって得られる半導体ウエハが提供される。
【0084】
本発明の更に別の態様では、本発明の半導体ウエハを備える半導体デバイスが提供される。
【0085】
本発明の更なる態様では、a)半導体ウエハと、b)未硬化MODインク層と、を備える、半導体ウエハ前駆体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
図1】本発明の方法の概略図を示す。
図2】実施例2の酸化ビスマス/銀スタックの断面の電子顕微鏡画像を示す。
【実施例
【0087】
以下の実施例の目的は、本発明を更に説明することであるが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0088】
試験方法
スクエア抵抗率
本発明の方法によって得られる層のスクエア抵抗率を測定するために、Ossila(Sheffield,UK)から入手した4点プローブを使用した。
【0089】
剥離試験
ウエハへのメタライゼーション層の接着性は、剥離試験によって特性評価した。剥離試験規格はASTM D3359-09であった。
【0090】
実施例1
本実施例では、接着層及びバリア層としてのTi/Ni層は、PVD(Shanghai Yuquan Trading Co.,Ltd.から入手)を使用して実行し、銀層は、MODインクを使用して、インクジェット印刷法によって成し、各層について以下のパラメータであった。
接着層:Ti、50nm
バリア層:Ni、100nm
銀層:Ag、300nm
【0091】
プロセスフローは以下の通りであった。
1.5分間、Arプラズマ洗浄する。
2.Tiを厚さ50nmでPVDする。
3.Niを厚さ100nmでPVDする。
4.Heraeus製のインクジェットプリンタ、プリントヘッドモデル:RICOH MH5421Fを使用して、MOD銀インクを、DPI1200×1600、1層でインクジェット印刷する。MOD銀インクは、それぞれインクの総重量に基づいて、15重量%のネオデカン酸銀及び85重量%のリモネン(DL-リモネン、CAS番号138-86-3、Merck KGaAから入手、カタログ番号814546)で構成した。
5.Heraeus UV硬化装置Heraeus Semray 4103を使用することによって銀インク層を硬化させる(波長:395nm、速度:1mm/秒、1回、放射線強度250W/cm)。
6.以下の表に示される異なる条件下でSG-XL1200アニーリング装置を使用することによってアニーリングする。
【0092】
得られたメタライゼーション層を試験し、結果を以下の表に示す。
【表1】
【0093】
ウエハ上のメタライゼーション層全体(Ti+Ni+Ag層)の接着性能を試験したところ、良好な結果が得られ、4B/5Bに合格し、Ag層のスクエア抵抗は約64mΩ/sqであった。異なるアニーリング条件では、剥離試験及びスクエア抵抗に本質的に差はなかった。
【0094】
実施例2
本実施例では、MODインクを使用し、全ての層をインクジェット印刷法によって適用した。各層のパラメータは以下の通りであった。
接着機能及びバリア機能の両方を有する印刷層:酸化ビスマス、60nm、及び
印刷銀層:Ag、590nm。
【0095】
プロセスフローは以下の通りであった。
1.接着層及びバリア層のインクジェット印刷:Heraeus製のインクジェットプリンタ、プリントヘッドモデル:RICOH MH5421Fを使用、MODビスマスインク、DPI:564×564、1層。MODビスマスインクは、それぞれインクの総重量に基づいて、15重量%のネオデカン酸ビスマス及び85重量%のDowanol PNP(プロピレングリコールn-プロピルエーテル、CAS番号1569-01-3、The Dow Chemical Company,Inc.(Maryland,USA)から入手)で構成した。
2.SG-XL1200アニーリング装置を使用することによって、100℃で10分間乾燥し、450℃で10分間アニーリングする。
3.プリントヘッドモデル:RICOH MH5421Fインクジェットを備えるHeraeus製のインクジェットプリンタを使用して、MOD銀インクをDPI:1270×1270、3層で印刷する。MOD銀インクは、それぞれインクの総重量に基づいて、15重量%のネオデカン酸銀及び85重量%のリモネン(DL-リモネン、CAS番号138-86-3、Merck KGaAから入手、カタログ番号814546)で構成した。
4.SG-XL1200アニーリング装置を使用することによって、100℃で10分間乾燥し、450℃で10分間アニーリングする。
【0096】
ウエハ上のメタライゼーション層全体(酸化ビスマス+銀層)の接着性能を試験したところ、良好な結果が得られ、5Bに合格し、Ag層のスクエア抵抗は約42mΩ/sqであった。
【0097】
図2は、本実施例の酸化ビスマス/銀スタック層の断面の電子顕微鏡画像を示す。図2から、銀層が酸化ビスマス層と良好に接触するのと同様に、酸化ビスマス層は基板と良好に接触しており、膜構造は、低い空隙率で非常に緻密であったことが分かる。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-05-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハの製造方法であって、
i)MODインク組成物を半導体ウエハに適用し、それによって前駆体層を形成するステップと、
ii)前記前駆体層を硬化させるステップと、を含む、方法。
【請求項2】
ステップi)における前記適用が、噴霧、スピンコーティング、ディップコーティング、又はインクジェット印刷によって、好ましくはインクジェット印刷によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップi)及びii)を含むサイクルが、1回以上行われ、各サイクルにおいて、ステップi)が1回以上実行され、ステップii)が1回以上行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
複数のサイクルを行う場合、100nm~800nm、好ましくは150nm~500nm、より好ましくは200nm~300nmの厚さを有する層が、各サイクルにおいて形成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップii)における前記硬化が、電磁放射及び/又は加熱によって行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
放射線強度が、100W/cm~1000W/cm、好ましくは100W/cm~500W/cm、より好ましくは100W/cm~400W/cmであり、放射線波長が、100nm~1mm、好ましくは100nm~2000nm、より好ましくは100nm~800nmである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
加熱温度が、50℃~500℃、好ましくは80℃~400℃、より好ましくは約150℃~300℃である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
iii)硬化後に得られた前記層をアニーリングするステップを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
ステップiii)における前記アニーリングが、120℃~500℃の温度で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法により、前記半導体ウエハの裏面をメタライズし、及び/又は表面をメタライズし、好ましくは裏面をメタライズする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
前記半導体ウエハが、Siウエハ、SiCウエハ、GaNウエハ、GaAsウエハ、又はGaウエハ、好ましくはSiウエハである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項12】
前記半導体ウエハが、パワーエレクトロニクスウエハ又はロジックICウエハである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項13】
前記MODインク組成物が、a)少なくとも1つの金属前駆体と、b)溶媒と、を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項14】
前記金属前駆体が、80℃~500℃の分解温度を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記MODインク組成物中の前記金属が、Ag、Ag/Sn、又はAuである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記金属前駆体が、
a)少なくとも1つの金属カチオンと、
b)カルボキシレート、カルバメート、ナイトレート、ハライドイオンからなる群から選択される少なくとも1つのアニオン、及びオキシムと、からなる、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が、ステップi)の前に行われるステップ:
1)前記半導体ウエハ上に接着層及びバリア層を形成するステップ、
又は
2)前記半導体ウエハ上に接着機能及びバリア機能の両方を有する層を形成するステップを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項18】
ステップ1)及び2)における前記層の前記形成が、化学蒸着、スパッタ堆積、電気めっき、噴霧、スピンコーティング、ディップコーティング、又はインクジェット印刷によって、好ましくはインクジェット印刷によって行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記層の前記形成が、噴霧、スピンコーティング、ディップコーティング、又はインクジェット印刷によって行われる場合、使用される前記インクがMODインク組成物である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
2)について、前記MODインク組成物が、ビスマス含有MODインク組成物である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ステップ1)又は2)の各層を形成した後、前記得られたウエハを硬化及び/又はアニーリングする、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
請求項1又は2に記載の方法によって得られる半導体ウエハ。
【請求項23】
請求項22に記載の半導体ウエハを備える半導体デバイス。
【請求項24】
a)半導体ウエハと、
b)MODインク組成物の未硬化層と、を備える、半導体ウエハ前駆体。

【国際調査報告】