(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】ロボット支援腹腔鏡外科処置におけるトロカールの位置を評価するための適応ロボット支援システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/35 20160101AFI20231121BHJP
【FI】
A61B34/35
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527724
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 EP2021081052
(87)【国際公開番号】W WO2022101175
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522419908
【氏名又は名称】ロブ サージカル システムズ,エスエル
【氏名又は名称原語表記】ROB SURGICAL SYSTEMS, SL
【住所又は居所原語表記】Autovia de Castelldefels C-31, km 190,5, 08820 El Prat de Llobregat (ES)
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【氏名又は名称】井上 満
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【氏名又は名称】名塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】アマット ギルバウ,ジョゼップ
【テーマコード(参考)】
4C130
【Fターム(参考)】
4C130AA04
4C130AA23
4C130AB02
4C130AC05
4C130AD05
4C130CA11
(57)【要約】
ロボット支援腹腔鏡外科処置におけるトロカールの位置を評価するための適応ロボット支援システムと方法を提案した。この装置はロボットアームを備えた手術用ロボットを備え、それぞれのアームは受動ジョイントによって、トロカールに結合されるのに適した外科用器具を固定する。システムはまた、制御ユニットと、コマンドステーションと、受動ジョイントの回転軸の角度α及びβを測定するためのセンサーとを備える。制御ユニットは腹腔内の外科用器具の動きのそれぞれについて、測定された角度α及びβを理論的角度α及びβと比較することによってトロカールの位置の動的推定を実行し、比較において得られた誤差の符号値に従って、前記動きのそれぞれにおいてパラメータρを正又は負に増加させることによってパラメータρの補正を実行する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのロボットアーム(101)を備えた外科ロボット(100)であって、前記ロボットアーム(101)は一連のジョイントを含み、前記一連のジョイントの受動ジョイント(202、302)によって、外科用器具(102)を固定するように構成され、前記受動ジョイント(202、302)の各々はいくつかの回転軸に共通する交点の周りを自由に回転するように構成され、前記外科用器具(102)はトロカール(103)に連結されるように適合され、前記トロカール(103)は腹腔鏡外科処置中に、患者の腹腔内へのその導入のために適合された、該外科ロボット(100)と、
少なくとも1つのロボットアーム(101)内の動きを制御するように構成された制御ユニットと、
制御要素(111、113)を通じた外科ロボット(100)の遠隔操作のために構成されたコマンドステーション(110)であって、前記制御ユニットが前記コマンドステーション(110)に動作可能に接続されている、該コマンドステーションと、
前記ロボットアーム(101)内に配置され、前記受動ジョイント(202、302)の回転軸の方向の角度α及びβを測定するように構成されたセンサー
を含み、前記制御ユニットが
-前記処置中の特定の時間隔中に確立された前記腹腔内の前記外科用器具(102)の動きの各々について、前記センサーによって測定された方向の角度α及びβを、前記トロカール(103)の動きがないときに対応する理論的な方向の角度α及びβと比較するステップと、
-パラメータρの補正を実行するステップであって、前記比較で得られた誤差の符号値に従って、前記特定の時間隔の間の前記動きの各々において前記パラメータρを正又は負に増加させることによって、前記受動ジョイント(202、302)の回転軸の交点と支点との間の距離に対応するパラメータρの補正を実行する、該ステップ
を実行することによって、前記腹腔の壁に挿入された前記トロカール(103)の位置の動的推定を実行するように更に構成されていることを特徴とする、
ロボット支援腹腔鏡外科処置におけるトロカールの位置を評価するための適応ロボット支援システム。
【請求項2】
前記補正は、ファジィ論理アルゴリズムを適用することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御要素は、ペダル(113)及び/又はアクチュエータ/押しボタン(111)を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御ユニットは、前記外科ロボット(100)の内部に配置される、請求項1~3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記制御ユニットは前記外科ロボット(100)及び前記コマンドステーション(110)に対する遠隔制御ユニットであり、有線又はワイヤレス連結によってそれらに接続される、請求項1~3のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
外科ロボット(100)の1つ又は複数のロボットアーム(101)の動きを制御する制御ユニットを使用して、患者の腹腔の壁に挿入された少なくとも1つのトロカール(103)の位置の動的推定を実行するステップであって、前記トロカール(103)は前記1つ又は複数のロボットアーム(101)のうちの1つのロボットアーム(101)に固定された外科用器具(102)に支持されるものである、該ステップを有し、
前記ステップは、
-腹腔鏡外科処置中の特定の時間隔中に確立された前記腹腔内の前記外科用器具(102)の動きの各々について、以前に測定された前記ロボットアーム(101)の受動ジョイント(202、302)の回転軸の方向の角度α及びβを、前記トロカール(103)の動きがないときに対応する理論的な方向の角度α及びβと比較するステップであって、前記測定された方向の角度α及びβ及び前記理論的な方向の角度α及びβは、メモリ又はデータベースに記憶されている、該ステップと、
-パラメータρの補正を実行するステップであって、前記比較で得られた誤差の符号値に従って、前記特定の時間隔の間の前記動きの各々において前記パラメータρを正又は負に増加させることによって、前記受動ジョイント(202、302)の回転軸の交点と支点との間の距離に対応するパラメータρの補正を実行する、該ステップ
を実行することにより行われる、ロボット支援腹腔鏡外科処置におけるトロカールの位置を評価するための適応方法。
【請求項7】
前記補正は、ファジー論理アルゴリズムを適用することを含む、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、腹腔鏡手術の分野に関する。特に、本発明は、ロボット支援腹腔鏡外科的処置(又は、外科的介入/surgery intervention)におけるトロカールの位置を評価するための適応ロボット支援システムに関する。本発明はまた、そのような目的のための方法を提供する。
【0002】
提案されるシステム及び方法は処置中に各トロカールの位置を連続的に評価することを可能にし、したがって、支点の位置、すなわち、患者の腹壁における各トロカールの挿入点を知ることを可能にする。本発明はまた、トロカールを機械的に固定する必要なく、腹部ボールト内で動き(又は、移動)が生じたときに外科ロボット(又は、手術ロボット)の外科用器具を安定させることを可能にする。
【背景技術】
【0003】
ロボット支援腹腔鏡手術の使用は1980年代後半に始まり、外科ロボットに接続された遠隔操作ステーションを使用することによって遠隔で手術処置を行うことからなる。
【0004】
このタイプの用途が対処する必要がある主な問題の1つはコマンドステーションの動き[→M]をロボットアームの動き[→R]に変換して、トロカールを介して腹腔内に導入される外科用器具の動きがコマンドステーションの上述の動き[→M]と同一である動き[→P]に従うようにすることである(
図1参照)。
【0005】
外科用器具の不安定性を防止するために、トロカールは、空間内の適切な支点上に固定される。それにもかかわらず、トロカールが腹部ボールト内に自由に挿入される場合、例えば患者の呼吸によりトロカールが空間内でその位置を変化させると、望ましくない動きが生じ、外科用器具を駆動するロボットアームが、腹部ボールトの上昇を伴うこの場合において、所与の加えられたトルクを生じる。
【0006】
動作全体にわたって支点が不変であるために、現行システムのほとんどは、空間内にトロカールを固定する多関節ロボットアームを使用し、様々なジョイントの動きをプログラムすることを可能にするアーキテクチャによるトロカールの望ましくない動きを許容せず、アクセス可能な3D作業体積(遠隔運動中心、RCM)を達成することを可能にする全ての動きにおいて外科用器具のシャフトの通過のための遠隔固定点を常に保証する。したがって、腹腔内の外科用器具の位置は、もはやトロカールの可能な動きに依存しない。それにもかかわらず、その動きを防止するためにロボットアームによってトロカールに加えられる力は場合によっては医学文献に反映されるように、患者に血腫を発症させる。
【0007】
文献[1]は、先行する戦略のアーキテクチャ特性を記載している。このアーキテクチャでは回転軸がRCM点と位置合わせされるので、RCM点を中心に外科用器具を旋回させることを可能にする2つの回転J4及びJ5は機械的に外科用器具のアイソセントリックな通過を保証する。
【0008】
文献[2]には前述のものと同様の解決策が記載されているが、これはより最近のものである。この文献は、従来のMIS技術の高効率とロボット操作の器用さを組み合わせた小型テーブル付MISロボットを提案する。新しいロボットのマスターマニピュレータとスレーブマニピュレータは一体化されており、外科医は、手術台の隣のロボットを操作し得る。手術、特に縫合手術の困難さを低減するために、外科用器具は、「ロールピッチ遠位ロール」(roll-pitch-distal roll)リスト(又は、手首)及び迅速交換インターフェースを用いて開発される。同様に、支点効果によって引き起こされる協調していない手と目の動きを克服するために、動作マッピングモデルがロボットのために確立される。
【0009】
患者に対するトロカールによって引き起こされる応力に由来するロボット支援腹腔鏡手術に典型的な副作用を回避するために、3D空間におけるトロカールの実際の位置を連続的に計算することを可能にする受動的多関節及び感覚(又は、センサライズド/sensorized)アームの導入も提案されている(文献[3])。したがって、このシステムは外科用ロボットがトロカールにいかなる力も加えないことを確実にすることを可能にし、したがって、患者における血腫の発生が防止される。対照的に、トロカールの貫通(又は、挿入/penetration)の長さは定義されず、これは、腹腔内の外科用器具の位置の計算を実行することを妨げる。
【0010】
文献[4]において、低侵襲心臓処置を実行するためのシステムも開示される。システムは、一対のロボットアームに連結された一対の外科用器具を含む。器具は、組織を保持し縫合するように操作し得るエンドエフェクタを有する。ロボットアームは、コントローラによって一対のマスタハンドルに結合される。ハンドルは、エンドエフェクタの対応する動きを生成するために外科医によって動かされることができる。ハンドルの移動は、エンドエフェクタが外科医の手によって実行される移動とは異なる、典型的にはより小さい、対応する移動を有するようにスケーリングされる。スケールファクタは、外科医がエンドエフェクタの動きの分解能を制御できるように調整可能である。エンドエフェクタの動きは入力ボタンによって制御することができ、その結果、エンドエフェクタは、ボタンが外科医によって押されたときにのみ移動する。入力ボタンは外科医がエンドエフェクタを動かすことなくハンドルの位置を調整することを可能にし、その結果、ハンドルをより快適な(又は、楽に操ることができる/comfortable)位置に動かすことができる。システムはまた、外科医が手術部位を遠隔で見ることを可能にするロボット制御内視鏡を有する可能性がある。心臓処置は患者の皮膚に小さな切開を形成し、器具及び内視鏡を患者に挿入することによって実施し得る。外科医はハンドルを操作し、エンドエフェクタを動かして、冠状動脈バイパス移植片等の心臓処置を行う。
【0011】
したがって、ロボットアームのジョイントが受動ジョイントであるときにトロカールの位置を連続的に評価することを可能にする新しいシステム及び方法が必要とされる。
【0012】
参考文献:
[1]da Vinci(登録商標)システム: テクノロジー及び外科的解析、https://entokey.com/the-da-vinci-system-technology-and-surgical-analysis/。
[2]Huaifeng Zhangら、MIS技術とロボット技術の利点を組み合わせた新しいMISロボットのシステム設計。デジタルオブジェクト識別子10.1109/ACCESS.2020。
[3]roll‐pitch‐roll手首を有するスレーブマニピュレータのデザインと評価、テレロボット外科におけるオートツールローディングメカニズム、Ki‐Young・キムら。国際医療ロボット・コンピュータ支援手術ジャーナル。
[4] US5855583 A. Wang Yulun et al. ”Method and apparatus for performing minimally invasive cardiac procedures”。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのために、本発明の実施形態は第一態様に従って、ロボット支援腹腔鏡外科処置中にトロカールの位置を評価するための適応を受けやすい(すなわち、適応性のある)ロボット支援システムを提供する。提案されたシステムは、いくつかの自由度で多関節化された1つ又は複数のロボットアームを備えた外科ロボットを備える。各ロボットアームは、受動ジョイントを介して外科用器具を固定するように配置/構成される。受動ジョイントの各々は、回転軸の単一の交点の周りを自由に回転するように構成される。
【0014】
同様に、各外科用器具は、腹腔鏡外科処置中に患者の腹腔内に導入し得るトロカールに結合されるように配置される/適している。ロボット支援システムは、上述のロボットアーム内の動きを制御するように構成された制御ユニットと、制御要素を介した外科ロボットの支援/遠隔操作のために構成されたコマンドステーションと、各ロボットアーム内に配置され、受動ジョイントの回転軸の方向(又は、向き)の角度α及びβを測定するように構成されたセンサーとをさらに含む。制御ユニットは、コマンドステーションに動作可能に接続される。
【0015】
提案されたシステムでは、上述の制御ユニットが処置中の特定の時間隔中に確立された腹腔内の外科用器具の動きのそれぞれについて、センサーによって測定された方向の角度α及びβの、トロカールの動きがないときに対応する理論的な方向の角度α及びβとの比較を実行し、パラメータρの補正を実行することであって、比較で得られた誤差の符号値に従って、前記特定の時間隔中の動きのそれぞれにおいて前記パラメータρを正又は負に増加させることによって、受動ジョイントの回転軸の交点と対応する支点との間の距離に相対的な(すなわち、対応する)パラメータρの補正を実行することによって、腹腔の壁に挿入された1つ又は複数の前記トロカールの位置の動的推定を実行する。
【0016】
一実施形態では、補正がファジー論理アルゴリズムを適用することを含む。
【0017】
特に、ファジィ論理アルゴリズムは、毎秒約200~1000回の速度で実行される。したがって、各移動において多数の決定(正の誤差又は負の誤差)を実行する必要があるため、制御ユニットは、得られた結果を統計的平均にする。
【0018】
制御ユニットは、外科ロボットの内部に配置し得る。代替的に、制御ユニットが外科ロボット及びコマンドステーションに対して遠隔/外部にあってもよく、有線又はワイヤレス接続によってそれに連結されてもよい。
【0019】
本発明の実施形態はまた、別の態様によれば、ロボット支援腹腔鏡外科処置におけるトロカールの位置を評価するための適応方法を提供する。本方法は、外科用ロボットの1つ又は複数のロボットアームの動きを制御する制御ユニットを使用して、患者の腹腔内に挿入されたトロカールの位置の動的推定を実行することを含む。上述のトロカールは、前記ロボットアームのうちの1つに固定された外科用器具を支持する。
【0020】
動的推定を実行するために、本方法は、腹腔鏡外科処置入中の特定の時間隔中に確立された腹腔内の外科用器具の動きの各々について、以前に測定されたロボットアームの受動ジョイントの回転軸の方向の角度α及びβを、トロカールの動きがないときに対応する理論的な方向の角度α及びβと比較することを含む。同様に、本方法は、統計的にフィルタリングされた比較で得られた誤差の符号値に従って、上述の特定の時間隔の間の移動のそれぞれにおいてパラメータρを正又は負に増加させることによって、受動ジョイントの回転軸の交点と支点との間の距離に相対的/対応するパラメータρの補正を実行することを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、測定された及び理論的な方向の角度α及びβがメモリ又はデータベースに記憶される。
【0022】
いくつかの実施形態では、本方法が処置中に使用されるトロカールの各々について実施される。各トロカールは、外科ロボットのロボットアームに固定された外科用器具を支持する。一般に、各外科ロボットは、1~4本のロボットアームを含む。
【0023】
本明細書に開示される本発明の他の実施形態はまた、上述の制御ユニットによって実行されるステップ及び動作を実行するためのコンピュータプログラム製品を含み得る。より詳細にはコンピュータプログラム製品がその中にコード化されたコード命令を含むコンピュータシステム可読媒体を含む実施形態であり、それはコンピュータシステムの少なくとも1つのプロセッサにおいて実行されると、プロセッサに、本発明の実施形態として本明細書に示される動作を実行させる。
【0024】
本発明は、したがって、上述の受動配向ジョイントの器具の方向の角度の数値を考慮した再帰的算出によって、空間内のトロカール/複数のトロカールの位置を推定することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
前述及び他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して、いくつかの単なる例示的かつ非限定的な実施形態の以下の詳細な説明に基づいて、より良く理解されるであろう。
図1及び
図2は、本発明の実施形態による、提案されたシステムのアーキテクチャを示す。
図3は、外科ロボットの2つのロボットアームの異なるジョイントをより詳細に示す。
図4は、受動ジョイントの回転軸の方向の角度α及びβと、受動ジョイントの回転軸の交点と支点との間の距離に対するパラメータρとを図示する。
図5は、腹腔内におけるトロカールの移動例を示す。
図6は、一実施形態による、外科用ロボットの2つのロボットアームの方向の角度α及びβならびにパラメータρがどのように取得されるかを図式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、ロボット支援腹腔鏡外科処置におけるトロカールの位置を評価するための、特に低侵襲手術のための適応ロボット支援システム、及び適応方法を提供する。
【0027】
本発明によって提案されるロボット支援システム1は浮動トロカールを可能にし、トロカールが受動ジョイントを旋回させるジョイントを作り、トロカール自体が、ロボット支援システムがいかなる抵抗トルクももたらすことなく、その方向を固定する役割を果たすようにする構成を有する。
【0028】
図2を参照すると、提案されたロボット支援システム1の一実施形態が示されている。この実施形態では、システム1が各々がトロカール103を通して旋回する外科用器具102を保持し、操作する4つのロボットアーム101を備えた外科ロボット100を備える。オペレータ(又は、操作者)はスクリーン(又は、画面)112によって光景(又は、場面/scene)を見ながらコマンドステーション110から制御装置111及び/又はペダル113を介してロボットを制御する。同様に、システムはロボットアーム101のジョイントの動きを計算する制御ユニット(図示せず)を備え、その結果、外科用器具102を支持する固定点105はいくつかの軌道を実行し、その結果、トロカール103を通して旋回する外科用器具102の遠位要素104によって実行される軌道は制御装置111及び/又はペダル113を通してオペレータによって実行される動きに対応する。
【0029】
制御ユニットは1つ又は複数のプロセッサ及び周辺機器によって形成される処理ユニット、例えば、算術論理ユニット、通信バス、入出力要素等を含み得る。
【0030】
図3は、多関節鎖(又は、チェーン)によって形成されるロボットアーム101のアーキテクチャをより詳細に示す。特に、
図3は、外科ロボット100のロボットアーム101のうち2つの構成を示す(他の2つのアームが図の簡略化のために図示されていない)。一方のロボットアーム101はジョイント201(角度W
0B,W
1B,W
2B及びW
3Bを参照する)及び202(角度W
4B及びW
5Bを参照する)によって形成され、他方のアームはロボットアーム101が空間内でそれらの動きを固定するための様々なアーキテクチャ/設計を有し得ると仮定すると、ジョイント301(角度W
0c,W
2c及びW
3cを参照する)及び302(角度W
4c及びW
5cを参照する)によって形成される。同様に、ロボットアーム101は異なるアーキテクチャを有するので、それらの間の干渉は最小限に抑えられる。適正にモータ操作されるジョイント201、301は、3D空間内で外科用器具102の支持体を移動させることを可能にする。
【0031】
ジョイント202、302は、受動的な、特にカルダン型のジョイントである。したがって、パラメータρ(
図4参照)が定義されていないので、トロカール103の位置は決定されず、これは、腹腔内の外科用器具102の位置の計算を実行することを妨げる。パラメータρの計算は、異なる点からの方向の角度α及びβがトロカール103の固定点に収束することを考慮して、ロボットアーム101の異なる位置から幾何学的に実行し得る(
図5参照)。実際には、これらの理論的解がデータ(すなわち、方向の角度α及びβの変化)が非常に小さく、前記角度を測定するために使用される角度センサーの分解能が制限されることを考慮すると、十分に正確な結果を提供することができなかった。より正確な実績を得るために、本発明は上述の制御ユニットによって、上述のパラメータρの推定及び補正(又は、修正/correction)を実行するための反復計算を実行する。そのために、最初の位置ρ
0に基づいて、特定の時間隔の間のロボットアーム101の動きの位置の各々について、方向の角度α及びβの比較において観察された誤差の符号に従って、各動きにおいてこの大きさの正又は負の補正が実行される。補正が高速で毎秒多数回実行されるとき、パラメータρの増分の値は統計的にフィルタリング/推定される。
【0032】
ρの推定が正しければ、各ロボットアーム101に配置されたセンサーによって得られる方向の角度α及びβによって定義される空間内の方向の回転中心から定義される空間内の線は、支点を通過することになる。距離ρの負の推定誤差は予想されるよりも小さい角度α及びβの変動を引き起こし、一方、正の推定誤差は、予想されるよりも大きい角度α及びβの変動を引き起こす。システムはそれによって、トロカール103の支点の位置の推定を連続的に更新し、受動配向ジョイント202、302が受動ジョイントであるので、トロカール103に及ぼすロボットアーム101の応力がゼロであることを保証する(又は、確実にする/ensuring)ことによって、腹腔内の外科用器具102の位置を制御するための運動学的計算を実行し得る。
【0033】
特定の実施形態では、言及された補正が数値代数形式ではなく、むしろ、方向の角度α及びβの数値ではなく、むしろ、それぞれの移動間隔(traveled interval)の後に測定されたこれらの2つの角度方向の値とトロカール103の動きがなかったとした場合に有するべきであった方向との間のその正又は負の偏差を考慮して、ファジー論理アルゴリズムによって行われる。
【0034】
一実施形態では、パラメータρがトロカール103の仰角運動が例えば、ガス圧力の変化によって生じるとき、及びコマンドステーション110の制御装置111を介して運動(又は、動き/movement)が全く行われない場合、角度α及びβの変化に基づいて推定される。
【0035】
外科用アーム101のうちの1つが第一点(1)から第二点(2)に移動するときのパラメータρの値の動的補正を計算するためのアルゴリズムの実施形態は、以下で詳細に説明される(
図6参照)。
【0036】
本実施形態によれば、アルゴリズムの初期開始条件が以下の式による最初の貫通において計算されたトロカール103の座標X
T,Y
T,Z
Tである。
【0037】
先行する初期条件は、動きの各新しい間隔において再帰的に操作される。ロボットアーム101の位置(1)では、先行点のトロカール103の座標(XT1,YT1,ZT1)、及びパラメータρの先行値ρ(t-1)が利用可能である。
【0038】
次に、推定値ρ(t-1)が正しい値であり、トロカール103がその位置に留まっていれば、第一点から第二点までの移動間隔を行った後、第二点に到達する際に有するべき方向の角度α及びβの算出を行う。
【0039】
次いで、第二点におけるロボットアーム101の位置からトロカールまでの理論的距離ρ(t)が計算される。
【0040】
この第二点において、第二点から見たトロカール103の新たな理論的位置が、新たに以前に計算された距離ρ
2から計算される。
【0041】
最後に、得られた値ρ
2の反復補正が、以前に計算された角度α
c2及びβ
c2の値と、センサーによって実際に測定された角度α
m及びβ
mの値との間の誤差に基づいて、ファジー論理基準を適用して、得られた誤差の符号に基づいて、及び前記誤差がどのくらい大きいか又は小さいかの推定に基づいて実行される。
【0042】
この場合、距離ρの算出値の増減は、得られる誤差が「小さい」か「大きい」かに応じて、とりわけ、n=1又はn=2とし得る。
【0043】
すなわち、トロカールまでの距離ρ(t)(すなわち、受動配向ジョイント202、302の回転軸の交点と支点との間の距離)が決定/計算されると、各反復の後、トロカール103の位置は、以下の式を適用することによって特に得ることができる。
ここで、(X
R,Y
R,Z
R)は固定点105(
図4参照)の座標であり、α及びβはトロカール位置(X
T,Y
T,Z
T)の更新時の受動配向ジョイント202、302の方向の角度(すなわち、角度値)である。
【0044】
提案された発明は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又はそれらの任意の組み合わせで実施し得る。それがソフトウェアで実装される場合、機能は、コンピュータ可読媒体中の1つ又は複数の命令又はコードとして記憶されるか、又はコード化されることができる。
【0045】
本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲において定義される。
[→M]、[→R]、[→P]等はベクトル付き符号を示す。例えば、[→M]は、
を意味する。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのロボットアーム(101)を備えた外科ロボット(100)であって、前記ロボットアーム(101)は一連のジョイントを含み、前記一連のジョイントの受動ジョイント(202、302)によって、外科用器具(102)を固定するように構成され、前記受動ジョイント(202、302)の各々はいくつかの回転軸に共通する交点の周りを自由に回転するように構成され、前記外科用器具(102)はトロカール(103)に連結されるように適合され、前記トロカール(103)は腹腔鏡外科処置中に、患者の腹腔内へのその導入のために適合された、該外科ロボット(100)と、
少なくとも1つのロボットアーム(101)内の動きを制御するように構成された制御ユニットと、
制御要素(111、113)を通じた外科ロボット(100)の遠隔操作のために構成されたコマンドステーション(110)であって、前記制御ユニットが前記コマンドステーション(110)に動作可能に接続されている、該コマンドステーションと、
前記ロボットアーム(101)内に配置され、前記受動ジョイント(202、302)の回転軸の方向の角度α及びβを測定するように構成されたセンサー
を含み、前記制御ユニットが
-前記処置中の特定の時間隔中に確立された前記腹腔内の前記外科用器具(102)の動きの各々について、前記センサーによって測定された方向の角度α及びβを、前記トロカール(103)の動きがないときに対応する理論的な方向の角度α及びβと比較するステップと、
-パラメータρの補正を実行するステップであって、前記比較で得られた誤差の符号値に従って、前記特定の時間隔の間の前記動きの各々において前記パラメータρを正又は負に増加させることによって、前記受動ジョイント(202、302)の回転軸の交点と
前記トロカール(103)の支点との間の距離に対応するパラメータρの補正を実行する、該ステップ
を実行することによって、前記腹腔の壁に挿入された前記トロカール(103)の位置の動的推定を実行するように更に構成されていることを特徴とする、
ロボット支援腹腔鏡外科処置におけるトロカールの位置を評価するための適応ロボット支援システム。
【請求項2】
前記補正は、ファジィ論理アルゴリズムを適用することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御要素は、ペダル(113)及び/又はアクチュエータ/押しボタン(111)を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御ユニットは、前記外科ロボット(100)の内部に配置される、請求項1~3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記制御ユニットは前記外科ロボット(100)及び前記コマンドステーション(110)に対する遠隔制御ユニットであり、有線又はワイヤレス連結によってそれらに接続される、請求項1~3のいずれかに記載の装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲において定義される。[→M]、[→R]、[→P]等はベクトル付き符号を示す。例えば、[→M]は、
を意味する。
下記は、本願の出願当初に記載の発明である。
<請求項1>
少なくとも1つのロボットアーム(101)を備えた外科ロボット(100)であって、前記ロボットアーム(101)は一連のジョイントを含み、前記一連のジョイントの受動ジョイント(202、302)によって、外科用器具(102)を固定するように構成され、前記受動ジョイント(202、302)の各々はいくつかの回転軸に共通する交点の周りを自由に回転するように構成され、前記外科用器具(102)はトロカール(103)に連結されるように適合され、前記トロカール(103)は腹腔鏡外科処置中に、患者の腹腔内へのその導入のために適合された、該外科ロボット(100)と、
少なくとも1つのロボットアーム(101)内の動きを制御するように構成された制御ユニットと、
制御要素(111、113)を通じた外科ロボット(100)の遠隔操作のために構成されたコマンドステーション(110)であって、前記制御ユニットが前記コマンドステーション(110)に動作可能に接続されている、該コマンドステーションと、
前記ロボットアーム(101)内に配置され、前記受動ジョイント(202、302)の回転軸の方向の角度α及びβを測定するように構成されたセンサー
を含み、前記制御ユニットが
-前記処置中の特定の時間隔中に確立された前記腹腔内の前記外科用器具(102)の動きの各々について、前記センサーによって測定された方向の角度α及びβを、前記トロカール(103)の動きがないときに対応する理論的な方向の角度α及びβと比較するステップと、
-パラメータρの補正を実行するステップであって、前記比較で得られた誤差の符号値に従って、前記特定の時間隔の間の前記動きの各々において前記パラメータρを正又は負に増加させることによって、前記受動ジョイント(202、302)の回転軸の交点と支点との間の距離に対応するパラメータρの補正を実行する、該ステップ
を実行することによって、前記腹腔の壁に挿入された前記トロカール(103)の位置の動的推定を実行するように更に構成されていることを特徴とする、
ロボット支援腹腔鏡外科処置におけるトロカールの位置を評価するための適応ロボット支援システム。
<請求項2>
前記補正は、ファジィ論理アルゴリズムを適用することを含む、請求項1に記載のシステム。
<請求項3>
前記制御要素は、ペダル(113)及び/又はアクチュエータ/押しボタン(111)を含む、請求項1に記載のシステム。
<請求項4>
前記制御ユニットは、前記外科ロボット(100)の内部に配置される、請求項1~3のいずれかに記載のシステム。
<請求項5>
前記制御ユニットは前記外科ロボット(100)及び前記コマンドステーション(110)に対する遠隔制御ユニットであり、有線又はワイヤレス連結によってそれらに接続される、請求項1~3のいずれかに記載の装置。
<請求項6>
外科ロボット(100)の1つ又は複数のロボットアーム(101)の動きを制御する制御ユニットを使用して、患者の腹腔の壁に挿入された少なくとも1つのトロカール(103)の位置の動的推定を実行するステップであって、前記トロカール(103)は前記1つ又は複数のロボットアーム(101)のうちの1つのロボットアーム(101)に固定された外科用器具(102)に支持されるものである、該ステップを有し、
前記ステップは、
-腹腔鏡外科処置中の特定の時間隔中に確立された前記腹腔内の前記外科用器具(102)の動きの各々について、以前に測定された前記ロボットアーム(101)の受動ジョイント(202、302)の回転軸の方向の角度α及びβを、前記トロカール(103)の動きがないときに対応する理論的な方向の角度α及びβと比較するステップであって、前記測定された方向の角度α及びβ及び前記理論的な方向の角度α及びβは、メモリ又はデータベースに記憶されている、該ステップと、
-パラメータρの補正を実行するステップであって、前記比較で得られた誤差の符号値に従って、前記特定の時間隔の間の前記動きの各々において前記パラメータρを正又は負に増加させることによって、前記受動ジョイント(202、302)の回転軸の交点と支点との間の距離に対応するパラメータρの補正を実行する、該ステップ
を実行することにより行われる、ロボット支援腹腔鏡外科処置におけるトロカールの位置を評価するための適応方法。
<請求項7>
前記補正は、ファジー論理アルゴリズムを適用することを含む、請求項6に記載の方法。
【国際調査報告】