(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】二次電池の活性化方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20231121BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/04 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528024
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2023-05-10
(86)【国際出願番号】 KR2022013324
(87)【国際公開番号】W WO2023038388
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0121099
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジュン フーン
(72)【発明者】
【氏名】リー、チュル ヘン
(72)【発明者】
【氏名】カン、ヨー スン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ソル ジ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジェ ウォン
【テーマコード(参考)】
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5H028AA06
5H028BB03
5H028BB04
5H028BB10
5H028HH10
5H029AJ02
5H029AK03
5H029AL07
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029CJ03
5H029CJ13
5H029CJ16
5H029CJ23
5H029HJ00
5H029HJ17
5H029HJ18
5H029HJ19
(57)【要約】
本発明の活性化方法は、電解質添加剤による還元反応電圧を導き出す段階と、電解質添加剤を含む電解質が注入された二次電池を予備充電(Pre-charge)する予備充電段階と、二次電池内に収納された電極組立体を上記注入された電解質に含浸および熟成させるプレエイジング(Pre-aging)段階と、を含み、上記予備充電段階の充電終止電圧は、上記還元反応電圧未満であることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質添加剤による還元反応電圧を導き出す段階と、
前記電解質添加剤を含む電解質が注入された二次電池を予備充電する予備充電段階と、
前記二次電池内に収納された電極組立体を前記注入された電解質に含浸および熟成させるプレエイジング段階と、を含み、
前記予備充電段階の充電終止電圧は、前記還元反応電圧未満である、二次電池の活性化方法。
【請求項2】
前記還元反応電圧は、前記電解質添加剤を含む前記二次電池の一番目の充電時の電圧-容量プロファイルを微分したdQ/dVグラフにおいて還元反応が始まるオンセットポイントの電圧である、請求項1に記載の二次電池の活性化方法。
【請求項3】
前記予備充電段階の充電終止電圧は、前記還元反応電圧の70%~99%の範囲内に設定される、請求項2に記載の二次電池の活性化方法。
【請求項4】
前記予備充電段階は、前記電解質の注入直後から3時間内に開始する、請求項1に記載の二次電池の活性化方法。
【請求項5】
前記予備充電段階は、定電流充電方式によるものである、請求項1に記載の二次電池の活性化方法。
【請求項6】
前記予備充電段階は、前記二次電池を0.01~0.5のCレートで充電する、請求項5に記載の二次電池の活性化方法。
【請求項7】
前記プレエイジング段階の後に、
プレエイジングした前記二次電池を充電する1次充電段階と、
1次充電した二次電池を熟成させるエイジング段階と、をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の二次電池の活性化方法。
【請求項8】
前記1次充電段階は、前記二次電池を加圧しつつ充電する、請求項7に記載の二次電池の活性化方法。
【請求項9】
前記二次電池を満放電および満充電する段階をさらに含む、請求項7に記載の二次電池の活性化方法。
【請求項10】
前記満放電および満充電する段階の後に、前記二次電池をエイジングする段階をさらに含む、請求項9に記載の二次電池の活性化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年9年10日付の韓国特許出願第10-2021-0121099号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、二次電池の活性化方法に関し、より具体的には、含浸(wetting)前に予備充電(pre-charge)を通じて負極電位を低減するに際して、電解質中の一部の添加剤の負極反応を抑制しつつ、負極電位のみを低減することができる活性化方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
一般的に、二次電池は、充電が不可能な一次電池とは異なって、充放電が可能な電池を意味し、携帯電話、ノートパソコン、コンピュータ、ビデオカメラなどの電子機器または電気自動車などに広く用いられている。特に、リチウム二次電池は、ニッケル-カドミウム電池またはニッケル-水素電池より大きい容量を有し、単位重量当たりのエネルギー密度が高いため、その活用程度が急速に増加する傾向にある。
【0004】
このようなリチウム二次電池は、主にリチウム系酸化物と炭素材をそれぞれ正極活物質と負極活物質に使用する。リチウム二次電池は、このような正極活物質と負極活物質をそれぞれ塗布した正極板と負極板が分離膜を挟んで配置された電極組立体と、電極組立体を電解質と共に封止収納する外装材と、を備える。
【0005】
一方、リチウム二次電池は、電池ケースの形状によって、電極組立体が金属缶に内蔵されている缶型二次電池と、電極組立体がアルミニウムラミネートシートのパウチに内蔵されているパウチ型二次電池とに分類することができる。
【0006】
二次電池は、一般的に、電極組立体が電池ケースに収納された状態で液体状態の電解質、すなわち電解質が注入され、電池ケースがシールされる過程を通じて製造される。
【0007】
このようなリチウム二次電池は、製造工程または使用中に様々な原因によって様々な形態の不良が発生することがある。特に、製造が完了した二次電池の一部は、自己放電率以上の電圧降下挙動を示す現象を示すことがあるが、このような現象を低電圧という。
【0008】
このような二次電池の低電圧不良現象は、代表的に、内部に位置する金属異物に起因する場合が多い。特に、二次電池の正極板に鉄や銅のような金属異物が存在する場合、このような金属異物は、負極においてデンドライト(Dendrite)に成長することができる。また、このようなデンドライトは、二次電池の内部短絡を起こして、二次電池の故障や損傷、ひどい場合には、発火の原因となる恐れがある。
【0009】
これを解決するために、様々な試みが行われているが、その中の1つ方法が電解質注入後に電解質含浸(wetting)前に充電を進めて負極電位を低減する工程である予備充電(pre-charge)が代表的である。充電前の負極電位は、Li還元電位を基準として3V以上を有し、これは、セルの内部に2.59Vの還元電位を有する鉄、2.78Vの還元電位を有するニッケルに比べて高い電位に該当する。電解質を注入した後、電解質は、徐々に電極の空隙の内部に含浸(Wetting)するが、このとき、異物またはCuが酸化して溶出することができる。これによって、電解質の注入後、電解質の含浸完了時点の間に、予備充電工程を行うことによって、負極の電位を低減して、異物またはCuなどの金属が溶出するのを防止することができる。
【0010】
しかしながら、予備充電は、電解質が電極の空隙の内部に十分に含浸する前に開始して進行されるので、予備充電時に電解質中に含まれた一部の添加剤は、負極の表面で還元反応を起こして負極の表面に不均一な被膜を形成させることができ、不均一な被膜の形成による電池の寿命特性の低下をもたらすことができる。したがって、予備充電時に、電解質添加剤の反応を抑制する技術に関する開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するためのものであって、二次電池の含浸(wetting)前に予備充電(pre-charge)を行うとき、添加剤が負極の表面で反応して被膜を形成することを抑制しつつ、負極集電体の電位のみを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による二次電池の活性化方法は、電解質添加剤による還元反応電圧を導き出す段階と、電解質添加剤を含む電解質が注入された二次電池を予備充電(Pre-charge)する予備充電段階と、二次電池内に収納された電極組立体を上記注入された電解質に含浸および熟成させるプレエイジング(Pre-aging)段階と、を含み、上記予備充電段階の充電終止電圧は、上記還元反応電圧未満であることを特徴とする。
【0013】
本発明の一実施形態において、上記還元反応電圧は、上記電解質添加剤を含む二次電池の一番目の充電時の電圧-容量プロファイルを微分したdQ/dVグラフにおいて電解質の還元反応が始まるオンセットポイント(onset point)の電圧であってもよい。
【0014】
本発明の一実施形態において、上記予備充電段階の充電終止電圧は、上記還元反応電圧の70%~99%の範囲内で設定されてもよい。
【0015】
本発明の一実施形態において、上記予備充電段階は、電解質の注入直後から3時間以内に開始することができる。
【0016】
本発明の一実施形態において、上記予備充電段階は、定電流充電方式によることができる。
【0017】
本発明の一実施形態において、上記予備充電段階は、二次電池を0.01~0.5のC-rateで充電することができる。
【0018】
本発明の一実施形態において、上記プレエイジング段階後に、プレエイジングした二次電池を充電する1次充電段階と、1次充電した二次電池を熟成させるエイジング段階と、をさらに含んでもよい。
【0019】
本発明の一実施形態において、上記1次充電段階は、二次電池を加圧しつつ充電することができる。
【0020】
本発明の一実施形態において、上記二次電池を満放電および満充電する段階をさらに含んでもよい。
【0021】
本発明の一実施形態において、上記満放電および満充電する段階の後に二次電池をエイジングする段階をさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の活性化方法は、電解質添加剤の負極反応を抑制しつつ、負極の電位を低減して、低電圧不良を防止し、かつ、SEI被膜を均一に形成する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態による活性化方法のフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施形態による活性化方法のフローチャートである。
【
図3】本発明の一実施形態による活性化方法のフローチャートである。
【
図4】添加剤の種類別に、二次電池の一番目の充電時の電圧-容量プロファイルを微分したdQ/dVグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明することとする。その前に、本明細書および請求範囲に使用された用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈されるべきものではなく、発明者は、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に立って本発明の技術的思想に符合する意味や概念と解釈すべきである。
【0025】
したがって、本明細書に記載された実施形態と図面に示された構成は、本発明の最も好ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替できる様々な均等物と変形例がありえることを理解すべきである。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態による二次電池活性化方法の順序を示す図であり、同図を参照すると、本発明の一実施形態による二次電池の活性化方法は、電解質添加剤による還元反応電圧を導き出す段階S100と、電解質添加剤を含む電解質が注入された二次電池を予備充電(Pre-charge)する予備充電段階S200と、二次電池内に収納された電極組立体を上記注入された電解質に含浸および熟成させるプレエイジング(Pre-aging)段階S300と、を含む。
【0027】
一般的に、二次電池の組み立てが完了すれば、電池構造を安定化させ、使用可能な状態となるように、組み立てられた電池を充電、エイジング、放電などの工程を含む活性化工程を行うが、このような活性化工程の開始前に、優先的に二次電池に注入された電解質が電極組立体の内部に十分に含浸するように、電解質が注入された二次電池を常温で一定時間放置して安定化させるプレエイジング段階を経る。
【0028】
図1を参照すると、電解質を二次電池に注入した後、電解質を電極組立体に含浸(wetting)させるプレエイジング段階を経るが、前述したように、異物または金属の溶出による低電圧不良を抑制するために、電解質の注入後にプレエイジング段階S300を完了する前に、二次電池を所定の充電率で充電する予備充電段階S200を行う技術が導入された。
【0029】
予備充電段階の導入は、電解質が電極に含浸する間に、負極の電位を低減することができ、これによって、金属が酸化して溶出するのを防止することによって、低電圧不良を抑制することができるという利点があるが、本発明の発明者らは、予備充電段階で、充電SOCが高い場合には、電解質中の一部の添加剤成分が還元分解されて、負極に不均一な被膜を形成し、高ローディング電極の場合、このような不均一がさらに深化し得ることを予測し、電解質添加剤の負極反応を抑制しつつ、負極の電位のみを低減することができる予備充電方法を提示するために本発明に至ることになった。
【0030】
電解質中には、電解質のイオン伝導度、電池の寿命または安全性を向上させるために、様々な種類の添加剤が含まれており、これらの添加剤は、機能によって、負極表面のSEI形成/調節剤、二次電池内過充電防止剤、電解質のイオン伝導特性向上剤、難燃剤などに区分することができるが、これら添加剤ごとに負極表面で反応する還元電位は異なっている。
【0031】
したがって、本発明は、電解質添加剤の種類に応じた還元反応電圧を導き出した後、予備充電段階で、充電終止電圧を、上記還元反応電圧未満に設定し、添加剤の還元分解反応が電解質の含浸後に進行されるように誘導することによって、均一なSEI被膜を形成し、電解質の含浸前に負極の電位を低減することによって、低電圧不良を抑制する効果がある。
【0032】
<添加剤による還元反応電圧の導き出す段階>
上記電解質添加剤による還元反応電圧を導き出す段階S100は、上記予備充電段階での充電終止電圧を設定するために、充電終止電圧の基準となる電解質添加剤による二次電池の還元反応電圧を導き出す段階である。添加剤の種類に応じて還元分解反応の様相と還元分解電圧が異なっているので、本発明の還元反応電圧導き出し段階を通じて予備充電段階での充電終止電圧の適切な基準を導き出すことができる。
【0033】
一具体例において、上記添加剤の還元反応電圧は、電解質添加剤を含む二次電池の最初の充電時の電圧-容量プロファイルを微分したdQ/dVグラフにおいて電解質の還元反応が始まるオンセットポイント(onset point)での電圧と定義することができる。
【0034】
図4は、本発明の実施形態によって添加剤の種類別に、二次電池の一番目の充電時の電圧-容量プロファイルを微分したdQ/dVグラフである(Ref.は添加剤を含まない対照群である)。
図4を参照して説明すると、添加剤の種類に応じてdQ/dVのグラフ概形が異なるように現れ、添加剤AのdQ/dVは、ピークが観察されず、添加剤Bと添加剤Cの各dQ/dVは、ピークが観察される。ここで、ピークとは、dQ/dVの傾きが急激に増加してから、急激に減少する変換点を意味し、オンセットポイント(onset point)は、dQ/dVの傾きが増加し始める地点と定義することができる。具体的には、
図4に示されたように、添加剤Bのオンセットポイントは、約1.5V前後で観察され、添加剤Cのオンセットポイントは、約1.9V前後で観察される。したがって、添加剤Bを含む電池に対しては、予備充電の充電終止電圧を1.5Vを基準として、添加剤Cを含む電池に対しては、予備充電の充電終止電圧を1.9Vを基準として設定することができる。
【0035】
上記電圧-容量プロファイルを得るための充電方法は、公知の方法によって行うことができ、一具体例において、電解質として、当該電解質添加剤が含まれた二次電池を常温(23℃)の条件で1.0~2.7Vの駆動電圧の範囲内で、0.1のC-rateの充電条件でSOC(state of charge)40%まで充電を実施し、電圧に応じた容量変化を観察して、上記電圧-容量プロファイルを得ることができるが、これに限定されるものではない。
【0036】
また、一具体例において、上記二次電池とは、フルセル(Full cell)であってもよい。
【0037】
<予備充電段階>
本発明の予備充電段階S200は、負極の電位を低減して金属の溶出を防止するために、電解質の注液後、電解質の含浸前に、充電を行う段階であり、本発明は、予備充電段階の充電終止電圧を、上記電解質添加剤の還元反応電圧未満に設定して充電することに特徴がある。
【0038】
予備充電段階で、充電終止電圧を添加剤のファンウン反応電圧を超過した電圧に設定して充電を行う場合、一部の添加剤は、還元分解されて負極の表面に不均一な被膜を形成するが、本発明は、予備充電段階での充電終止電圧を添加剤の還元反応電圧未満に設定することによって、添加剤の還元分解反応が電解質含浸後に進行されて均一なSEI被膜が形成され、これによって、寿命特性が改善される。
【0039】
一具体例において、予備充電段階の充電終止電圧は、上記電解質添加剤の還元反応電圧の70~99%の数値範囲内で設定されてもよく、より好ましくは、75%~95%の数値範囲内で設定されてもよい。上記充電終止電圧が高すぎる場合には、電解質添加剤が還元分解される可能性があるので、好ましくなく、充電終止電圧が低すぎる場合には、負極電位を低減するのに不十分で、好ましくないので、上記数値範囲が好ましい。
【0040】
本発明の予備充電段階は、電解質の注入後に開始するが、電解質の注入直後から、電解質は、徐々に電極組立体の内部に移動し、電解質添加剤の還元分解反応が進行され得るので、電解質の注入時点と予備充電段階の開始時点の時間的間隔は短いほど好ましく、一具体例において、予備充電段階は、電解質の注入後6時間以内、より好ましくは、電解質の注入後3時間以内に行われてもよく、電解質の注入直後に行われることが最も理想的である。
【0041】
本発明の予備充電段階での充電方法は、定電流で充電するCC(Constant current、定電流)充電方式またはCC-CV(定電圧-定電流)充電方式によることができる。本発明の予備充電段階は、負極の電位を低減するのに目的があるので、基本的には、一定の電流で充電するCC充電方式が適合するが、場合によって、電池に過電流が流れるときには、電流の調節のために補充的にCV(Constant voltage)充電方式を採用することができる。
【0042】
このとき、予備充電段階の充電速度は、予備充電段階の目的する所要時間を考慮して適切に設定することができ、具体的には、0.01~0.5のC-rate、好ましくは、0.02~0.4のC-rate、より好ましくは、0.03~0.3のC-rateであってもよいが、これに限定されるものではない。充電速度が低い場合、安定的に負極の電位を低減することができるが、その分、予備充電に所要する時間が長くなり、そのため、含浸前に添加剤が還元分解され得るので、充電速度が低すぎることは好ましくなく、反対に、充電速度が高すぎる場合には、負極の電位が急に低くなり、副作用が発生することがある。
【0043】
<プレエイジング段階>
プレエイジング段階S300は、電池の組立後、電解質が電極組立体に十分に含浸するように電池を熟成させる段階である。
【0044】
より具体的には、二次電池は、充電時、電子が導線に乗って負極に移動して帯電すれば、電荷中性(charge neutrality)を成すために、リチウムイオンが負極に吸蔵される。このとき、リチウムイオンは、電解質が含浸した部位、すなわち、イオンの移動経路が維持される部位(wetting area)では吸蔵が可能であるが、電解質非含浸部位(non-wetting area)では吸蔵が相対的に難しくなる。したがって、プレエイジングする段階を通じて電解質が正極および負極に良好に含浸するように電池を一定の温湿度条件を有する環境下で熟成させることができる。
【0045】
プレエイジング段階を経た後に、二次電池を所定の充電深度で充電する1次充電段階と、充電した電池を熟成させるエイジング段階を含む一連の活性化過程を本格的に実施し、本発明では、このようなプレエイジング過程を含む一連の過程を全部活性化工程の概念に含ませて説明することとする。
【0046】
一具体例において、プレエイジング過程の所要時間は、具体的には、3時間~72時間、6時間~60時間、12時間~48時間であってもよく、これは、正極、負極および電解質の素材、二次電池の設計容量などによって適切に調節することができる。
【0047】
また、プレエイジング時の温度は、20℃~30℃の常温条件で行われ得るが、詳細には、22℃~28℃、より詳細には、23℃~27℃、さらに詳細には、25℃~27℃で実施することができ、必ずこれに限定されるものではなく、設計しようとする電池の特性に応じて適切に変更することができる。
【0048】
本発明の活性化工程は、リチウム二次電池を対象に行う。このようなリチウム二次電池は、次のような工程を通じて組み立てられた後、上記プレエイジング段階を経る。
【0049】
電極活物質およびバインダーを含む電極合剤を電極集電体に塗布し、それぞれ正極および負極を製造した後、上記正極と負極の間に分離膜を介在して、電極組立体を準備する。
【0050】
このように準備した電極組立体を電池ケースに収納した後、電解質を注入し、電池ケースを封止して電池を組み立てる。
【0051】
このような電池を組み立てる段階は、特に限定されず、公知の方法によって行うことが可能である。
【0052】
また、上記電極組立体は、正極と、負極と、上記正極および負極の間に介在している分離膜と、を含む構造であれば、特に限定されず、例えば、ジェリーロール型、スタック型またはスタック/フォールディング型などが挙げられる。
【0053】
上記電池ケースは、電池の包装のための外装材に使用されるものであれば、特に限定されず、円筒型、角型またはパウチ型が使用されてもよい。
【0054】
上記電解質は、有機溶媒、リチウム塩および添加剤を含んでもよい。
【0055】
上記有機溶媒は、電池の充放電過程で酸化反応などによる分解を最小化することができるものであれば、限定がなく、例えば、環状カーボネート、線状カーボネート、エステル、エーテルまたはケトンなどであってもよい。これらは、単独で使用されてもよく、2種以上が混用されて使用されてもよい。
【0056】
上記有機溶媒のうち、特にカーボネート系有機溶媒が好ましく使用されてもよく、環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)およびブチレンカーボネート(BC)が挙げられ、線状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)およびエチルプロピルカーボネート(EPC)が代表的である。
【0057】
上記リチウム塩は、LiPF6、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiBF4、LiBF6、LiSbF6、LiN(C2F5SO2)2、LiAlO4、LiAlCl4、LiSO3CF3およびLiClO4などリチウム二次電池の電解液に通常使用されるリチウム塩が限定されずに使用されてもよく、これらは、単独で使用されてもよく、2種以上が混用されて使用されてもよい。
【0058】
また、上記電解液には添加剤がさらに含まれ、例えば、上記添加剤としては、SEI膜を安定的に形成するために、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、環状サルファイト、飽和スルトン、不飽和スルトン、非環状スルホン、リチウムジフルオロオキサラートボラート(LiODFB)、およびこれらの誘導体からなる群から選ばれるいずれか1つまたはこれらのうち2種以上の混合物が使用されてもよいが、これらに限定されものではない。
【0059】
上記環状サルファイトとしては、エチレンサルファイト、メチルエチレンサルファイト、エチルエチレンサルファイト、4,5-ジメチルエチレンサルファイト、4,5-ジエチルエチレンサルファイト、プロピレンサルファイト、4,5-ジメチルプロピレンサルファイト、4,5-ジエチルプロピレンサルファイト、4,6-ジメチルプロピレンサルファイト、4,6-ジエチルプロピレンサルファイト、1,3-ブチレングリコールサルファイトなどが挙げられ、飽和スルトンとしては、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトンなどが挙げられ、不飽和スルトンとしては、エテンスルトン、1,3-プロペンスルトン、1,4-ブテンスルトン、1-メチル-1,3-プロペンスルトンなどが挙げられ、非環状スルホンとしては、ジビニルスルホン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、メチルエチルスルホン、メチルビニルスルホンなどが挙げられる。
【0060】
このような添加剤は、負極に堅固なSEI被膜を形成することによって、低温出力特性を改善させることはもちろん、高温サイクルの作動時に発生しうる正極表面の分解を阻害と電解質の酸化反応を防止するために上記電解質に添加される。
【0061】
上記電池ケースがパウチ型である場合に、アルミニウム層を含むアルミニウム積層パウチが使用されてもよい。上記電解液を注入した後に、上記アルミニウム積層パウチの開封された部分を熱溶接または熱融着することで封止することができる。
【0062】
図2は、本発明の一実施形態による活性化方法のフローチャートである。
図2を参照すると、本発明による二次電池の活性化方法は、上記プレエイジング段階S300後に、プレエイジングした二次電池を充電する1次充電段階S400と、1次充電した二次電池を熟成させるエイジング段階S500と、をさらに含む。
【0063】
<1次充電段階>
上記1次充電段階S400は、プレエイジングした二次電池を所定の充電深度となるまで充電を実施する段階である。上記1次充電段階を通じて、二次電池が活性化することができる。
【0064】
上記1次充電段階は、完全充電である必要がなく、1次充電段階の充電深度は、具体的には、電池設計容量(SOC100%)の75%以下であってもよく、15~70%、30~60%であってもよいが、上記範囲でも十分に安定したSEI被膜を形成することができ、初期ガス発生を誘導することができる。充電深度をどんな数値に設定するかは、これに限定されるものではなく、活性化工程の目的に合うように適切に変更可能である。
【0065】
上記1次充電段階の充電条件は、当業界において公知となった条件によって充電が行われ得る。
【0066】
一具体例において、上記1次充電段階は、2.5~4.0Vの充電終止電圧、1.0C以下のCレート(C-rate)で充電が行われ得る。ただし、このような充電終止電圧の場合、電池の容量、電池の素材など特性によって変わり得る。
【0067】
また、上記1次充電時の温度条件は、20℃~30℃、詳細には、22℃~28℃、より詳細には、23℃~27℃で実施することができる。
【0068】
また、上記1次充電段階は、二次電池を加圧しつつ、行われてもよい。二次電池を加圧しつつ、1次充電する場合、内部ガスが電極の内部にタラップされることを抑制することができる。
【0069】
<エイジング段階>
上記方法によって1次充電した電池を安定化したり、1次充電を通じて形成されたSEI被膜の安定化を加速化するために、様々な条件で二次電池を熟成させるエイジング段階S500を実施する。
【0070】
上記エイジング段階は、常温・常圧条件下で所定の時間二次電池を熟成させる常温エイジング過程を経ることができ、目的に応じて、常温エイジングの代わりに、高温エイジングを実施することもでき、常温エイジングおよび高温エイジングを両方とも実施することもできる。上記高温エイジングは、高温環境で電池を熟成させることであり、SEI被膜の安定化を加速させることができ、1次充電した電池に対して高温エイジングおよび常温エイジング過程を順次に実施することができる。
【0071】
一具体例において、上記高温エイジングは、50℃~100℃、好ましくは、50℃~80℃の温度で実施することができる。上記高温エイジングは、1~30時間、好ましくは、2時間~24時間行われ得る。
【0072】
一具体例において、上記常温エイジングは、20℃~30℃、詳細には、22℃~28℃、より詳細には、23℃~27℃、さらに詳細には、25℃~27℃の温度で実施することができる。常温エイジングは、12~120時間、18~72時間行われ得る。
【0073】
図3は、本発明の一実施形態による活性化方法のフローチャートであり、
図3を参照すると、二次電池をSOC0%付近まで完全放電し、その後、放電した二次電池設計容量の95%(SOC95%)以上に充電する満放電および満充電する段階をさらに行うことができる。上記満放電および満充電する段階は、1回行ったり、2回以上繰り返して実施することができる。
【0074】
一具体例において、本発明による二次電池の活性化方法は、上記満放電および満充電する段階の後に追加エイジング段階をさらに含んでもよい。追加エイジング段階は、二次電池を安定化する過程であり、常温または高温で行うことが可能であり、具体的には、1日~21日間行うことができる。上記追加エイジング段階は、電池の自己放電を超過する範囲で電圧の降下が起こる低電圧不良電池を選別するために、一定の時間的間隔ごとに電池の開放回路電圧(OCV;Open Circuit Voltage)を測定する過程を含むモニタリング(OCVトラッキング)過程を含んでもよい。
【0075】
本発明の活性化方法は、必要に応じて、二次電池の内部のガスを外部に排出するデガッシング段階をさらに含んでもよい。二次電池は、上記1次充電およびエイジング段階を経る中に、電解質と電極の反応によって内部にガスが発生するが、内部ガスを電池の外部に排出するためにデガッシング段階が行われ得る。このとき、デガッシング段階は、上記エイジング段階で同時に行われてもよく、エイジング段階後に行われてもよい。
【0076】
以下、実施例などに基づいて本発明をより詳細に説明する。しかしながら、本明細書に記載された実施例に記載された構成は、本発明の一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替できる様々な均等物と変形例がありえることを理解しなければならない。
【0077】
製造例
正極活物質としてNCM(Li[Ni0.8Co0.1Mn0.1]O2)100重量部、導電材としてカーボンブラック(FX35、Denka)1.5重量部およびバインダー高分子としてポリビニリデンフルオライド(KF9700、Kureha)2.3重量部を溶剤としてのNMP(N-methyl-2-pyrrolidone)に添加して、正極活物質スラリーを製造した。上記正極活物質スラリーを640mg/25cm2のローディング量でアルミホイルの両面にコートした後、真空乾燥して、正極を収得した。
【0078】
負極は、負極活物質として人造黒鉛(GT、Zichen(China))100重量部、導電材としてカーボンブラック(Super-P)1.1重量部、スチレン-ブタジエンゴム2.2重量部、カルボキシメチルセルロース0.7重量部を溶剤としての水に添加して、負極活物質スラリーを製造した後、銅ホイル上に1回コーティング、乾燥および圧着して製造した。
【0079】
一方、無機層が導入された微細多孔性構造のポリエチレン分離膜を製造した後、これを正極と負極の間に介在して電極組立体を製造し、上記電極組立体をパウチ型電池ケースに内蔵した後、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)が3:7(体積比)の組成で混合された有機溶媒に、1MのLiPF6、電解液添加剤として添加剤B1wt%を含む電解液を注入して、電池を完成した。
【0080】
実施例
上記製造例の電池に対して、常温(23℃)の条件で1.0~2.7Vの駆動電圧範囲内で、0.1のC-rateの充電条件でSOC(state of charge)40%まで充電を実施し、電圧に応じた容量変化を観察して収得した電圧-容量プロファイルを微分したグラフを
図4に示した。
図4を参照すると、添加剤Bは、還元反応のオンセットポイントが約1.5Vの電圧に現れることが分かる。
【0081】
上記製造例の電池の電解液注入後から30分が経過した時点で、製造例の電池に対して、23℃の温度で、充電終止電圧を1.4Vに設定し、0.1のC-rateの充電速度で定電流方式で予備充電を実施した。その後、23℃の温度で、予備充電した電池を常圧条件下で48時間熟成させて、プレエイジング過程を完了した。
【0082】
プレエイジングした電池を電池設計容量の65%(SOC65%)まで0.2CのCレートで充電して、1次充電を完了した。1次充電した電池を60℃の温度で24時間高温エイジングを行った後、25℃の常温で4日間常温エイジングを実施した。その後、満放電および満充電、追加エイジングを実施して、二次電池の活性化工程を行った。
【0083】
比較例1
上記実施例において、添加剤の還元反応電圧を導き出す段階と予備充電段階を省略したことを除いて、実施例と同一に活性化工程を行った。
【0084】
比較例2
上記実施例において、予備充電段階の充電終止電圧を2.0Vに設定したことを除いて、上記実施例と同じ方法で活性化工程を行った。
【0085】
実験例1:高温貯蔵後の電圧降下量
上記実施例および比較例で製造された二次電池それぞれに対して、常温(25℃で0.33のC-rateで定電流/定電圧条件下で4.2V、50mA cut offまで満充電(SOC100%)した後、PNE-0506充放電装置(製造社:PNE solution)を用いて貯蔵前の初期電圧(V1)を測定した。次に、60℃の温度条件で1ヶ月間貯蔵した後、上記充放電装置を用いて貯蔵後の電圧(V2)を測定し、電圧降下量を表1に示した。
【0086】
実験例2:100サイクル後の容量保持率
上記実施例および比較例で製造されたそれぞれの二次電池を0.8のC-rateで4.35Vまで定電流・定電圧条件下で充電および0.05Cのcut off充電を実施し、0.5C、3.0Vで放電した。次に、0.8のC-rateで4.35Vまで定電流・定電圧条件下で充電および0.05Cのcut off充電を実施し、常温で0.5C、3.0Vで放電することを1回cycleとして100回cycle実施後のサイクル容量保持率(retention)を1回cycle容量に対する%で示し、下記表1に記載した。
【0087】
【0088】
上記表1を参照すると、予備充電段階を行わない比較例1は、1ヶ月貯蔵後の電圧降下量が、実施例の電池と比較して格別に大きいが、これは、実施例の電池が予備充電段階を経ることで、異物や金属の溶出を防止することによる効果であると解釈される。
【0089】
一方、比較例2の電池は、予備充電段階を経たが、予備充電段階で電解質添加剤の還元分解反応が現れる電圧を超過した電圧に充電終止電圧を設定したので、電解質が十分に含浸する前に、添加剤の還元分解反応が起こり、不均一なSEI被膜の形成によって容量保持率が実施例の電池と比較して不良に現れたと解釈される。
【0090】
このように本発明の活性化方法は、電解質添加剤の負極反応を抑制しつつ、負極の電位を低減して、低電圧不良を防止し、かつ、SEI被膜を均一に形成する効果がある。
【国際調査報告】