(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】最小限の処理を施した果物または野菜を保存する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
A23B 7/144 20060101AFI20231121BHJP
A23B 7/00 20060101ALI20231121BHJP
A23B 7/04 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
A23B7/144
A23B7/00 101
A23B7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528094
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(85)【翻訳文提出日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 IL2021051260
(87)【国際公開番号】W WO2022107119
(87)【国際公開日】2022-05-27
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523167703
【氏名又は名称】ベス-エル マシナリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BETH-EL MACHINERY LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】フックス,シモン
【テーマコード(参考)】
4B169
【Fターム(参考)】
4B169AB05
4B169CA02
4B169HA01
4B169HA11
4B169KA01
4B169KB04
4B169KB10
4B169KC02
4B169KC04
(57)【要約】
新鮮な果物または野菜の栄養特性、食感および味を維持しながら、すぐに食べられる最小限の処理を施した果物または野菜を長期保存するための方法およびシステムが提供される。本方法は、以下の工程を含む:少なくとも、果物または野菜、滅菌密封可能パッケージおよび炭酸液体を提供する工程;果物または野菜の外部を少なくとも洗浄および消毒することによって果物または野菜を処理する工程;処理された果物または野菜を滅菌密封可能パッケージに入れる工程;密封可能パッケージの残りの容積に炭酸液体を充填する工程;密封可能パッケージを密封する工程;および1℃~40℃の保存温度で密封パッケージを保存する工程。処理工程は、消毒処理環境下で実施される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
新鮮な果物または野菜の栄養特性および味を保持しながら、すぐに食べることができる最小限の処理を施した果物または野菜を長期保存するための方法であって、
a.少なくとも、果物または野菜、滅菌密封可能パッケージおよび炭酸液体を提供する工程;
g.果物または野菜の外部を少なくとも洗浄および消毒することによって果物または野菜を処理する工程;
k.前記処理された果物または野菜を前記滅菌密封可能パッケージに入れる工程;
l.前記密封可能パッケージの残りの容積に炭酸液体を充填する工程;
m.前記密封可能パッケージを密封する工程;および
n.1℃~40℃の保存温度で前記密封パッケージを保存する工程
を含み、
工程g、k、lおよびmが消毒処理環境下で実施されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
工程gにおいて、果物または野菜の外部を洗浄および消毒する工程が、水および酸化剤を含む冷却消毒溶液を用いて行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化剤が、5.0PPM未満の濃度におけるオゾン水溶液中のオゾンであることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸化剤が、0.5PPM~2.0PPMの濃度におけるオゾン水溶液中のオゾンであり、オゾン水溶液が0.25~6分間適用されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記消毒溶液が、2℃~4℃に冷却されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
工程gの後に、以下の工程:
h.少なくともH13 HEPAクラスのHEPAフィルタを通して濾過された強制清浄空気を用いて、前記最小限の処理を施した果物または野菜から前記消毒溶液を除去する工程
をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
工程aの後に、以下の工程:
c.水および酸化剤を含む前記冷却消毒溶液を用いて、前記果物または野菜の外部を予備洗浄および消毒する工程
をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程cの後に、以下の工程:
d.強制空気を用いて、前記果物または野菜から前記消毒溶液を除去する工程
をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程dの後に、以下の工程:
e.直接包装されていない前記最小限の処理を施した果物または野菜を、直射日光の当たらない、冷却され、乾燥し、風通しのよい貯蔵室に保管する工程
をさらに含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程aの後に、以下の工程:
f.完全可食製品を得るために、前記果物または野菜をその全状態から物理的に変化させることによって、果物または野菜を処理する工程
をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記果物または野菜を処理する工程が、以下:
開封、剥皮、トリミング、切断、スライス、チョッピング、ダイシング、ライシング、細断、種子除去、分離、抽出および引裂き
からなる群から選択される1つまたは複数のプロセスによって行われることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記果物または野菜を処理する工程が、消毒環境下に全体的にかつ連続的に保持された正常な処理領域で行われ、前記環境は、30~200PPMの濃度でオゾンガスを含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
工程fにおいて、前記で使用される1つまたは複数の処理ツールまたは切断ナイフが、1PPM~2PPMの濃度の水性オゾン溶液によって断続的に消毒されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記炭酸液体が、前記最小限の処理を施した果物または野菜と浸透圧バランスを得るために、前記最小限の処理を施した果物または野菜と実質的に同じpH値および同じ溶解物含有量を有し、したがって、前記新鮮な果物または野菜の自然な形状および食感を保持することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記炭酸液体が、搾りたての果物または野菜ジュースであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記炭酸液体が、前記最小限の処理を施した果物または野菜と同じ種類のもので作られた、新鮮な絞りたての果物または野菜ジュースであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
工程gの後に、以下の工程:
i.前記最小限の処理を施した果物または野菜の一部を、保存剤を添加することなく、新鮮なジュースに絞り出す工程;および
j.新鮮な絞りたての果物または野菜ジュースを、保存促進剤として機能するCO
2を用いて炭化する工程
をさらに含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ジュースの炭酸化が、ジュースの温度が1℃~10℃の状態で、飽和に達するのに充分な時間、少なくとも3バールの圧力でジュース中に二酸化炭素を溶解することによって行われることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記滅菌密封可能パッケージが、陽圧保持密閉キャップを備えたガラスまたはプラスチックボトルであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記充填され密封されたパッケージの保存温度が、1℃~12℃であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記処理のための果物または野菜が、損傷を受けていない果物または野菜を含むように収穫中に選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記最小限の処理を施した果物または野菜がザクロから抽出されたザクロ種子であり、前記ジュースがザクロジュースであることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
新鮮な果物または野菜の栄養特性および味を保持しながら、すぐに食べることができる最小限の処理を施した果物または野菜を長期保存するためのシステムであって、
a)洗浄可能な搬送面を備えるコンベヤであって、前記搬送面は、最小限の処理を施した果物または野菜よりも小さい穿孔を含む、コンベヤ;
b)処理領域に沿って前記コンベヤを取り囲む長手方向シールドであって、外部汚染を防止し、前記処理領域内に過圧消毒環境を封入するように構成された、長手方向シールド;
c)処理領域外のコンベヤの第1の端部に隣接して配置される、装填ゾーン;
d)処理領域内のコンベヤに沿って配置された第1の消毒ゾーンであって、消毒溶液の複数のエミッタを含む、第1の消毒ゾーン;
e)前記第1の消毒ゾーン後の処理領域に配置される、最小限の処理を施した果物または野菜のためのパッケージ充填ゾーン;
f)前記パッケージ充填ゾーンの後の処理領域に配置される、液体充填ゾーン;
g)前記液体充填ゾーンの後の処理領域に配置される、密封ゾーン
を備え、
前記コンベヤ速度は、前記最小限の処理を施した果物または野菜を消毒ゾーン内で少なくとも15秒間維持するように設定され、処理領域の温度は1℃~40℃に設定され、消毒溶液は前記最小限の処理を施した果物または野菜を十分に湿潤させ、液体充填ゾーンで使用される液体は炭酸液体である、
ことを特徴とする、システム。
【請求項24】
h)前記第1の消毒ゾーンの後かつ前記パッケージ充填ゾーンの前で、前記処理領域に配置される、第1の消毒剤除去ゾーンであって、少なくともH13 HEPAクラスのHEPAフィルタを通して濾過される強制濾過空気によって消毒剤除去が行われる、第1の消毒剤除去ゾーン
をさらに備えることを特徴とする、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
i)前記処理領域の外で前記コンベヤに沿って、前記装填ゾーンの後に配置される、第2の消毒ゾーンであって、前記消毒溶液の複数のエミッタを含む、第2の消毒ゾーン;
j)前記第2の消毒ゾーンの後に、前記処理領域に配置される、最小処理ゾーン
をさらに備えることを特徴とする、請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
k)前記第2の消毒ゾーンの後かつ前記最小処理ゾーンの前で、前記処理領域の外に配置される、第2の消毒剤除去ゾーン
をさらに備えることを特徴とする、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記最小処理ゾーンが、以下:
開封、剥皮、トリミング、切断、スライス、チョッピング、ダイシング、ライシング、細断、種子除去、分離、抽出および引裂き
からなる群から選択される1つまたは複数のプロセスを実行するように構成されるツールを備えることを特徴とする、請求項25に記載のシステム。
【請求項28】
前記最小限の処理を施した果物または野菜を消毒溶液で湿潤させる工程が、前記果物または野菜の食感損傷を回避するために、低衝撃技術を使用することを特徴とする、請求項23に記載のシステム。
【請求項29】
前記低衝撃湿潤技術が、滴下、ソフトスプレー、および液体カーテンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記消毒溶液が、水、および、次亜塩素酸塩、過酸化水素およびオゾンからなる群から選択される酸化剤を含むことを特徴とする、請求項23に記載のシステム。
【請求項31】
放出後の空気中の前記酸化剤の濃度が、200PPM未満であることを特徴とする、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記酸化剤は、水性オゾン溶液中の濃度が5PPM未満のオゾンであることを特徴とする、請求項30に記載のシステム。
【請求項33】
放出後の空気中のオゾンの濃度が、30~200PPMであることを特徴とする、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
l)前記炭酸液体を炭酸化するための圧力容器
をさらに備えることを特徴とする、請求項23に記載のシステム。
【請求項35】
m)前記処理された果物または野菜の一部を搾り出してジュースにするためのスクイーザであって、前記ジュースは前記圧力容器に供給され、炭酸化されて炭酸液体となる、スクイーザ
をさらに備えることを特徴とする、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
n)前記処理された果物または野菜の一部を前記スクイーザに供給する搬送手段
をさらに備えることを特徴とする、請求項35に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果物または野菜を保存するための方法およびシステムに関し、より詳細には、新鮮な果物または野菜の栄養特性、食感および味を保持しながら、すぐに食べられる(ready to eat)最小限の処理を施した果物または野菜の長期保存のための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
最小限の処理を施したすぐに食べられる果物または野菜は、「新鮮カット(fresh-cut)」、「すぐに使用できる(ready to use)」、「プレカット(pre-cut)」、または「付加価値」生産物と呼ばれることもあり、栄養レベルおよび新鮮な味を維持しながら完全可食製品を得るために、追加の処理(低温殺菌、ブランチングまたは調理など)なしに、圃場から収穫された後にその全状態から物理的に(例えば、洗浄、剥皮、トリミング、チョッピング、ダイシング、ライシング、細断、スライス、または引裂きにより)変化されている果物または野菜またはそれらの組合せである。典型的には、最終製品は適切なパッケージで密封され、輸送中および販売時点において冷蔵される。最小限の処理を施した農産物は、例えば、野菜サラダ、リンゴ、パイナップル、モモ、チェリー、イチゴ、メロン、スイカ、および実質的に任意の野菜または果物を含んでもよい。
【0003】
最小限の処理を施した生産物は、細菌、ウイルスおよび胞子などのヒト病原体および腐敗微生物で汚染され得る。汚染は、農作、収穫および処理中に起こり得る。カットされた製品における微生物増殖は、カットされていない製品におけるよりも著しく速い。天然保護皮の除去によって、内部細孔が露出され、有害微生物の増殖が促進され、酵素活性が加速する。したがって、処理された果物および野菜の保存期間は、主に微生物増殖および酵素活性によって制限される。
【0004】
保存処理をしていない最小限の処理を施したすぐに食べられる果物または野菜の保存期間は、典型的には、周囲温度および果物または野菜の種類に応じて、数時間から最大で約2週間である。1℃~2℃の保存温度によって、約2週間の最大期間が提供される。冷凍および低温殺菌などのより徹底した保存方法は、栄養価ならびに食感および新鮮な味を著しく低下させる。
【0005】
すぐに食べられる新鮮な生産物に対する需要が高まっているため、最小限の処理を施した果物または野菜の保存期間を延ばすことは、この数10年間の間に大きな注目を集めた。果物およびジュースの保存期間を延ばすことに対する二酸化炭素処理の寄与は、当業界でよく知られている。
【0006】
1880年という早期に付与されたMeffordの特許文献1には、果物を保存するプロセスが記載され、このプロセスは、そのような果物を、樹上で熟した状態で、圧力下で炭酸ガスまたは二酸化炭素に飽和するまでさらす工程、および、その後レシーバ内でガスの存在から果物を除去する工程からなる。
【0007】
1920年に付与されたBauligの特許文献2には、果汁を処理するプロセスが記載され、このプロセスは、果汁を空気と接触させずに滅菌状態で常に維持しながら、密閉容器内の滅菌状態の滅菌ジュースに炭酸ガスを充填する工程を含む。
【0008】
1988年に公開されたPriceの特許文献3には、新鮮な果物および野菜を保存する方法が記載され、この方法は、果物および野菜を抗酸化剤と接触させる工程、および、その後0.5%~10%の酸素、20%~50%の二酸化炭素、残りは窒素のガス下で密閉保存する工程を含む。
【0009】
2005年に公開されたKeglerの特許文献4には、それ自体の製品パッケージ内で果物または野菜の風味を強化して保存期間を延ばし、風味を強化した果物または野菜の大量生産および大量流通を可能にする方法が記載され、この方法は、以下:CO2の陽圧を保持することができる製品パッケージを提供する工程、前記製品パッケージに果物または野菜を受け入れる工程、前記製品パッケージにCO2を導入する工程、および、前記果物または野菜および前記CO2を含有する前記製品パッケージを密封する工程、を含み、前記製品パッケージは前記CO2の陽圧を保持し、前記果物または野菜が前記CO2を吸収し、それによって前記製品パッケージ内の前記果物または野菜の風味が強化される。
【0010】
しかしながら、二酸化炭素処理は、それ自体では数週間の規模で保存期間を延長するに過ぎないが、果物または野菜は、成長期中だけでなく、一年中入手可能であることが望ましい。
【0011】
したがって、保存期間を約6ヶ月に延長するために、最小限の処理を施したすぐに食べられる果物または野菜の保存技術をさらに改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第226094号明細書
【特許文献2】米国特許第1336720号明細書
【特許文献3】英国特許出願公開第2205478号明細書
【特許文献4】国際公開第2005/117598号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の主な目的は、新鮮な果物または野菜の栄養特性、食感、および味を保持しながら、すぐに食べることができる最小限の処理を施した果物または野菜の長期保存のための方法およびシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様によれば、以下の工程:
a.少なくとも、果物または野菜、滅菌密封可能パッケージおよび炭酸液体を提供する工程;
g.果物または野菜の外部を少なくとも洗浄および消毒することによって果物または野菜を処理する工程;
k.処理された果物または野菜を滅菌密封可能パッケージに入れる工程;
l.密封可能パッケージの残りの容積に炭酸液体を充填する工程;
m.密封可能パッケージを密封する工程;および
n.1℃~40℃の保存温度で密封パッケージを保存する工程
を含み、
工程g、k、lおよびmは消毒処理環境下で実施される、方法が提供される。
【0015】
別の態様によれば、本方法は、工程gの後に、以下の工程をさらに含む:
h.少なくともH13 HEPAクラスのHEPAフィルタを通して濾過された強制清浄空気を用いて、最小限の処理を施した果物または野菜から消毒溶液を除去する工程。
【0016】
別の態様によれば、本方法は、工程aの後に、以下の工程をさらに含む:
c.水および酸化剤を含む冷却消毒溶液を用いて、果物または野菜の外部を予備洗浄および消毒する工程。
【0017】
別の態様によれば、本方法は、工程cの後に、以下の工程をさらに含む:
d.強制空気を用いて、果物または野菜から消毒溶液を除去する工程。
【0018】
別の態様によれば、本方法は、工程dの後に、以下の工程をさらに含む:
e.直接包装されていない最小限の処理を施した果物または野菜を、直射日光の当たらない、冷却され、乾燥し、風通しのよい貯蔵室に保管する工程。
【0019】
別の態様によれば、本方法は、工程eの後に、以下の工程をさらに含む:
f.完全可食製品を得るために、果物または野菜をその全状態から物理的に変化させることによって、果物または野菜を処理する工程。
【0020】
さらに別の態様によれば、本方法は、工程gの後に、以下の工程をさらに含む:
i.最小限の処理を施した果物または野菜の一部を、保存剤を添加することなく、新鮮なジュースに絞り出す工程、および
j.新鮮な絞りたての果物または野菜ジュースを、保存促進剤として機能するCO2を用いて炭化する。
【0021】
本発明の追加の態様によれば、上記の方法の工程を実行するためのシステムが提供される。本システムは、以下:
a)洗浄可能な搬送面を備えるコンベヤであって、前記搬送面は、最小限の処理を施した果物または野菜よりも小さい穿孔を含む、コンベヤ;
b)処理領域に沿ってコンベヤを取り囲む長手方向シールドであって、外部汚染を防止し、処理領域内に過圧消毒環境を封入するように構成された、長手方向シールド;
c)処理領域外のコンベヤの第1の端部に隣接して配置される、装填ゾーン;
d)処理領域内のコンベヤに沿って配置された第1の消毒ゾーンであって、消毒溶液の複数のエミッタを含む、第1の消毒ゾーン;
e)消毒剤除去ゾーンの後の処理領域に配置される、最小限の処理を施した果物または野菜のためのパッケージ充填ゾーン;
f)パッケージ充填ゾーンの後の処理領域に配置される、液体充填ゾーン;
g)液体充填ゾーンの後の処理領域に配置される、密封ゾーン
を備え、
コンベヤ速度は、最小限の処理を施した果物または野菜を消毒ゾーン内で少なくとも15秒間維持するように設定され、処理領域の温度は1℃~40℃に設定され、消毒溶液は最小限の処理を施した果物または野菜を十分に湿潤させ、液体充填ゾーンで使用される液体は炭酸液体である。
【0022】
本発明のより具体的な態様は、以下の特許請求の範囲に提供される。
【0023】
本発明およびそれが実際に実施され得る方法は、非限定的な例としてのみ以下の概略図を参照することによって理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態による本質的な方法工程を定めるフローチャート
【
図2】本発明の別の実施形態による追加の任意選択の方法工程を定める、
図1と同様のフローチャート
【
図3】本発明のさらに別の実施形態によるさらなる任意選択の方法工程を定める、
図2と同様のフローチャート
【
図4】本発明のさらなる実施形態によるさらなる任意選択の方法工程を定める、
図3と同様のフローチャート
【
図5】本発明の一実施形態に従って作製された最小限のシステムの概略図
【
図6】本発明の別の実施形態に従って作製された追加の任意選択の要素を有する
図5のシステムの概略図
【
図7】本発明のさらに別の実施形態に従って作製された追加の任意選択の要素を有する
図6のシステムの概略図
【
図8】本発明のさらなる実施形態によるさらなる任意選択の要素を含む、
図7と同様のシステムの概略図
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に関するいくつかの用語は、本発明を詳細に説明する前に定義される。以下の定義が本出願を通して使用されることに留意されたい。
【0026】
本発明の目的のために、「実質的に」なる用語は、記載された値の80%~120%の範囲の値を指す。
【0027】
本発明の目的のために、「植物生産物」なる用語は、未処理の果物または野菜またはそれらの組合せなどの、(剥皮または切断の前の)全体としての植物の可食部分を指す。
【0028】
種子および果物についての多くの一般的な用語は、植物学的な分類に対応しない。料理用語では、果物は通常、任意の甘味のある植物部分、特に植物性果物である。ナッツは、任意の硬い、油性の、かつ殻付きの植物性生産物であり、野菜は、任意の風味のあるまたは甘くない植物性生産物である。しかしながら、植物学において、果物は、種子を含有する成熟した子房または心皮であり、ナッツは、種子ではなくある種の果物であり、種子は、成熟した胚珠である。本発明の目的のために、両方の用語が適用され得る。
【0029】
本発明の目的のために、「最小限の処理を施した」なる用語は、栄養レベル、食感および新鮮な味を維持しながら、完全可食製品を得るために、追加の処理(低温殺菌、凍結、ブランチングまたは調理など)なしに、圃場から収穫された後にその全状態から物理的に(例えば、洗浄、開封、剥皮、トリミング、切断、スライス、チョッピング、ダイシング、ライシング、細断、種子除去、分離、抽出および引裂きにより)変化された果物または野菜またはそれらの組合せ(植物生産物)を指す。
【0030】
本発明は、新鮮な果物または野菜の栄養特性、食感および味を保持しながら、すぐに食べられる最小限の処理を施した果物または野菜の長期保存のための方法およびシステムに関する。その目的は、販売および簡単な消費に適したパッケージで、一年中、すぐに食べられる最小限の処理を施した季節性植物生産物を保存することを可能にすることである。したがって、パッケージを開封することによって、最小限の処理を施した新鮮な果物または野菜を、いかなる種類の皮または表皮を除去することなく、スプーンで消費することができる。
【0031】
本来、果物および野菜の内部は、通常、皮または表皮の保護によって健康かつ無菌に保たれる。しかしながら、収穫中、機械的損傷が皮または表皮に生じ、その結果、大量の植物生産物が感染しやすくなる。さらに、さらなる剥皮、切断および処理によって、天然の保護が失われ、植物生産物の内部が急速に汚染され、最終的に腐敗する可能性がある。
【0032】
本発明は、あらゆる種類の果物および野菜の保存のための方法およびシステムを提供するが、サイズおよび形状の自然な差異により、あらゆる選択肢を網羅するためにいくつかの異なる実施形態が必要となり得る。例えば、チェリー、イチゴおよびラズベリーは、剥皮および切断を行わずに保存され得る。したがって、以下の詳細な実施形態は、あらゆる種類の最小限の処理を施した植物生産物を網羅するために異なるものとなる。
【0033】
本発明のある実施形態によれば、新鮮な果物または野菜の栄養特性、食感および味を保持しながら、すぐに食べることができる最小限の処理を施した果物または野菜の長期保存のための方法が提供される。
図1を参照すると、剥皮または切断を必要としないそのような植物生産物について、本方法は以下の本質的な工程を含む:
a.少なくとも、果物または野菜、滅菌密封可能パッケージおよび炭酸液体を提供する工程。工程aは、
図1において符号20でマークされた開始工程である。
【0034】
上記工程aと下記工程gとの間に、いくつかの任意選択の工程が続き得るが、これらについては以下で説明する。基本的なプロセスでは、次の工程は以下の通りである:
g.少なくとも、果物または野菜の外部を洗浄および消毒することによって果物または野菜を処理する工程。工程gは、
図1において符号22で示されている。
【0035】
上記工程gと下記工程kとの間に、いくつかの任意選択の工程が続き得るが、これらについては以下で説明する。基本的なプロセスについては、以下の工程である:
k.処理された果物または野菜を滅菌密封可能パッケージに入れる工程。工程kは、
図1において24とマークされている。
l.密封可能パッケージの残りの容積に炭酸液体を充填する工程。工程lは、
図1において26とマークされている。
m.密封可能パッケージを密封する工程。工程mは、
図1において28とマークされている。および以下の最終工程:
n.1℃~40℃の保存温度で密封パッケージを保存する工程。工程nは、
図1において符号30で示されている。
【0036】
結果を改善するために、工程g、k、lおよびmは、以下でさらに説明するように、消毒された処理環境下で実行される。
【0037】
好ましくは、工程aで言及されるような処理のために提供される果物または野菜は、損傷を受けていない果物または野菜を含むように収穫中に選択される。工程aにおいて言及される滅菌密封可能パッケージは、炭酸液体の陽圧を保持することができる任意の可撓性または剛性パッケージであり得る。例えば、陽圧保持密閉キャップを備えたガラスまたはプラスチックボトルまたはジャーを使用することができる。パッケージは、充填前に滅菌または局所滅菌して供給することができる。
【0038】
工程nにおいて、充填され密封されたパッケージの保存温度は、内容物に構造的損傷を与えることなく40℃に達することができるが、保存温度が1℃~12℃に保たれることが長期の保存期間に好ましい。
【0039】
工程aにおける上述の炭酸液体は、二酸化炭素(CO2)ガスを液体に溶解させることによって製造することができる。炭酸化を行う任意の方法は、特定の圧力および温度条件下で炭酸ガスを液体に導入することによる。設定条件は、二酸化炭素ガスによる液体の部分的または完全な飽和を達成するのに充分な特定の期間にわたって適用される。加圧ガスプロセスは、典型的には、ソフト炭酸飲料およびソーダ水の製造に使用される。プロセスは、加圧二酸化炭素ガスの代わりに、固体状態の冷却二酸化炭素(ドライアイス)を利用してもよい。炭酸化プロセスはまた、菌類または特にビール発酵で知られるような酵母などの嫌気性微生物を利用して、天然の方法で実行することもできる。
【0040】
溶解した二酸化炭素は、発酵の副産物であるさらなるCO2の生成を防止するCO2圧力によって、嫌気性細菌の増殖に対して作用する。さらに、嫌気性細菌の増殖に必要とされる酸素を置き換えることによって、好気性細菌の形成を防止する。
【0041】
上述のような消毒工程gのさらなる効果は、果物または野菜の外部の洗浄および消毒が冷却された消毒溶液で行われる場合に達成される。冷却された消毒溶液の使用によって、果物または野菜は冷却され、望ましくない酵素活性は著しく遅くなる一方で、植物生産物は同じプロセス工程で外部が消毒される。2℃~4℃に冷却された消毒溶液は、処理された植物生産物を効果的に冷却することが認識された。
【0042】
消毒溶液は、使用され得る任意の他の添加剤にかかわらず、水および酸化剤(水溶液中)を含み得る。水溶液中で使用することができる酸化剤のいくつかの選択肢は、例えば、次亜塩素酸塩、過酸化水素またはオゾンである。一実施形態では、酸化剤はオゾンであり、5PPM未満の濃度のオゾン水溶液として提供される。通常の作業条件において、濃度は0.5PPM~2.0PPMであるべきである。水性オゾン溶液を0.25~6分間適用すると、良好な結果が得られることが示される。
【0043】
上述のように、プロセスは、消毒された処理環境で行われる。典型的には、消毒は、処理領域内にわずかな過剰圧力の消毒ガスを適用することによって達成される。いくつかの実施形態では、消毒ガスは、上述の酸化剤の蒸発によって自然に受け入れられる。放出および蒸発後の空気中の酸化剤の濃度は、実質的に5分間適用される場合、通常の処理パラメータ下では、100PPMを超えない。オゾンの場合、放出および蒸発後の空気中のオゾンの濃度は、200PPMを超えない。他の実施形態は、処理領域の消毒のためにオゾンを使用しながら、酸化剤として次亜塩素酸塩または過酸化水素を使用することができる。
【0044】
消毒液の残留は望ましくなく、包装段階の前に除去する必要がある。消毒溶液は、自然蒸発によって除去されてもよいが、必要に応じて能動的かつより高速のプロセス工程が行われてもよい。したがって、
図2を参照すると、工程gの後かつ工程kの前に、追加の工程が提供され、以下のさらなる工程が提案される:
h.最小限の処理を施した果物または野菜から強制清浄空気で消毒溶液を除去する工程であって、空気は、既に消毒された植物生産物の汚染を防止するために、少なくともH13 HEPAクラスのHEPAフィルタを通して濾過され、工程hは、
図2において32とマークされている。
【0045】
上述のように、植物生産物のサイズおよび形状に自然な差異があるため、すべての可能性を網羅するために、いくつかの異なる実施形態のプロセスが必要となり得る。例えば、オレンジ、リンゴ、メロン、マンゴーおよびザクロは、典型的には、包装前に皮が剥かれ、切断または分離される。したがって、以下の実施形態は、そのような植物生産物の処理を網羅するために、いくつかの追加のプロセス工程を含む。
【0046】
したがって、
図3を参照すると、工程aの後かつ工程gの前に、以下の任意選択のプロセス工程が提供される:
c.水および酸化剤を含む冷却消毒溶液を用いて、果物または野菜の外部を予備洗浄および消毒する工程。工程cは、
図3において34とマークされている。
d.強制空気を用いて、果物または野菜から消毒溶液を除去する工程。工程dは、
図3において36とマークされている。消毒溶液は、工程gを参照して上述した酸化剤の1つを含んでもよい。
【0047】
いくつかの場合において、プロセスは、処理の準備ができている収穫された植物生産物の実際の量よりも能力が少ない場合がある。このような場合、植物生産物の一部の処理を遅らせる必要がある。工程dの後の任意選択の工程は、以下を提案する:
e.直接包装されていない最小限の処理を施した果物または野菜を、直射日光の当たらない、冷却され、乾燥し、風通しのよい貯蔵室に保管する工程。工程eは、
図3において38とマークされている。予備洗浄および消毒工程を経たこのような植物生産物は、植物生産物の種類に応じて、さらなる処理および包装の前に、最大2ヶ月の長期保存され得る。
【0048】
植物生産物が直接処理されるか、保存後に処理されるかにかかわらず、工程dまたはeの後の次の工程は、以下の工程である:
f.完全可食製品を得るために、果物または野菜をその全状態から物理的に変化させることによって、果物または野菜を処理する工程。工程fは、
図3において40とマークされている。
【0049】
工程fは、果物または野菜に適した任意の種類の処理を使用することができる。例えば、処理は、以下のプロセスタイプのうちの1つまたは複数を使用し得る:開封、剥皮、トリミング、切断、スライス、チョッピング、ダイシング、ライシング、細断、種子除去、分離、抽出および引裂き。処理工程f、ならびに本明細書において以下に記載される包装までの以下の工程は、果物の処理中に微生物が発生しないように、清潔な処理領域で行わなければならない。上述のような処理領域は、消毒環境下に全体的にかつ連続的に保持され、そのような環境は、30~200PPMの濃度のオゾンガスを含み得る。工程gおよびfにおいて適用される消毒環境に加えて、例えば、処理された植物生産物を支持するコンベヤベルトまたはプロセスにおいて使用される1つまたは複数の切断ナイフなどの、処理された植物生産物と接触する任意のプロセス機器が、1PPM~2PPMの濃度の水性オゾン溶液によって断続的に消毒される。
【0050】
処理された果物または野菜の自然な食感および形状を保存し、構造的な軟化を回避する目的で、上記工程aで言及された炭酸液体は、最小限の処理を施した果物または野菜と実質的に同じpH値および同じ溶解物含有量を有するべきである。例えば、Brix値によって測定される炭酸液体中の糖含有量は、処理された植物生産物と実質的に同じであるべきである。pH値および溶解物含有量は、炭酸液体と最小限の処理を施した果物または野菜との間の浸透圧バランスを得るために必要とされる要素である。したがって、植物生産物の個々の細胞における望ましくない収縮または膨張を防止し、新鮮な果物または野菜の自然な形状および食感を保持する。必要に応じて、炭酸液体を1℃~4℃に冷却して、プロセス中の酵素活性を最小限にすることができる。
【0051】
処理された植物生産物と炭酸液体との間のそのような浸透圧バランスを達成するための簡単な方法は、植物生産物のパラメータに近いパラメータを有す搾りたて果物または野菜ジュースを使用することによって得ることができる。果物または野菜ジュースを使用することによってまた、処理された植物生産物の酵素活性が低下し、保存期間が延長される。異なる果物または野菜ミックスまたはジュースミックスを一緒に詰めて、豊かで味のある内容物を提供することができる。炭酸液体が、最小限の処理を施した果物または野菜と同じ種類の果物または野菜から作られた搾りたて果物または野菜ジュースである場合、最適な適合性を得るためのさらにより正確な方法が達成される。
【0052】
そのために、
図4を参照すると、プロセスは、選択された前のプロセス工程に応じて、工程gまたはhの後に、以下の工程を含んでもよい:
i.最小限の処理を施した果物または野菜の一部を、保存剤を添加することなく、新鮮なジュースに絞り出す工程。工程iは、
図4において44とマークされている。および以下の工程:
j.新鮮な絞りたての果物または野菜ジュースを、保存促進剤として機能するCO
2を用いて炭化する。工程jは、
図4において46とマークされている。
【0053】
工程iおよびjを適用することによって、炭酸液体が処理された植物生産物と最適な適合性を有することが確保される。良好な性能を示す具体例は、最小限の処理を施した果物または野菜がザクロから抽出されたザクロ種子であり、ジュースがザクロジュースである場合である。ジュースの処理は、微生物によるジュースの汚染を回避するために、処理領域に関して上述したのと同じ清浄度または無菌レベルで行われる。処理された植物生産物の同じバッチからジュースを絞り出すことにより、最適な適合性が確保される。
【0054】
工程jに関連して記載されるジュースの炭酸化は、ジュースに二酸化炭素を溶解することによって行うことができる。プロセス中、ジュースをステンレス鋼タンクなどの圧力保持容器に入れ、タンクの底部に位置するノズルから加圧二酸化炭素をバブリングする。二酸化炭素は、必要とされる飽和レベルに達するのに充分な時間、少なくとも3バール、典型的には6バール~8バールの圧力で適用される。炭酸化中のジュースの温度は、冷却エネルギーコストを低減するために、1℃~10℃、典型的には8℃である。必要とされる清浄度が維持される限り、ジュース保存のために他の保存手段または添加剤は必要とされない。
【0055】
炭酸のレベルは、果物飲料中の実質的に4g/l(グラム/リットル)から始まってソフトドリンク中の9g/lおよびソーダ水中の12g/lまで、各ジュース配合物について変化する。1リットル当たりの重量によるCO2ガス含有量は、他の成分と比較して最も少ないものの1つであるが、製品の味および食感に関して非常に重要である。CO2は、ソフトドリンクにおける発泡を提供するのに適した数少ないガスの1つである。これは、毒性がなく、不活性で、かつ実質的に無味であり、使いやすい大量輸送および貯蔵を可能にする。
【0056】
典型的には、炭酸化プロセスは、通常は炭酸化の前にジュースに適用される脱気(空気の除去)と組み合わされる。空気の存在は、変色および臭いまたは味の変化などの、腐敗および酸化効果のリスクを増加させ得るが、空気の除去および場合によっては他のガスの存在によって、製品の保存安定性が増加する。空気を洗い流すためにCO2が使用されることがあるが、真空回転ディスクまたは超音波脱気装置などの機械的脱気装置の使用が、当技術分野で知られているように典型的には好ましい。
【0057】
本発明の別の目的は、上述のプロセス工程を実行することができるシステムを提供することである。したがって、
図5~8を参照すると、概して参照番号10で示されるシステムが、新鮮な果物または野菜の栄養特性、食感、および味を保持しながら、すぐに食べられる最小限の処理を施した果物または野菜の長期保存のために提供される。
図5に示される最小限のシステム10は、以下を備え得る:
-洗浄可能な搬送面52を備えた、概して参照符号50で参照されるコンベヤであって、搬送面は、好ましくは、洗浄液および消毒液が通過できるように、最小限の処理を施した果物または野菜53より小さい穿孔を備える、金網(woven wire)ベルト、連結チェーン要素、または穿孔付き可撓性シートの形態のステンレス鋼で作製される;
-処理領域56に沿ってコンベヤ50を取り囲み、外部汚染を防止し、処理領域56内の過圧消毒環境を封入するように構成される、長手方向シールド54;
-処理領域56のうちコンベヤの第1の端部(尾端部)に隣接して配置される、装填ゾーン58。装填ゾーン58において、植物生産物は、コンベヤ搬送面52上に積載され、コンベヤ50に沿って矢印によって示されるように処理領域56に向かって搬送される;
-処理領域56内のコンベヤ50に沿って配置される、第1の消毒ゾーン60。第1の消毒ゾーンは、コンベヤ50に沿って配置された消毒溶液の複数のエミッタ62によって形成される多段プロセスとして構築される。特定の実施形態では、一連の3つ以上のエミッタがコンベヤに沿って配置され、果物または野菜の完全な湿潤(消毒溶液との接触)を確保する;
-第1の消毒ゾーン60の後(下流)の処理領域56に配置される、最小限の処理を施した果物または野菜53のためのパッケージ充填ゾーンまたはステーション64。パッケージ充填ステーション64において、処理された植物生産物53は、ボトルまたはジャーなどのパッケージ76に入れられる。パッケージ充填ゾーンまたはステーションは、当技術分野で既知の自動充填および計量機器を含み得る;
-パッケージ充填ゾーンまたはステーション64の後(下流)の処理領域56に配置される、液体充填ゾーンまたはステーション66。液体は、好ましくは、容器68からパイプ70および充填ノズル72を通って滴下される炭酸液体である。液体充填ステーション66において、パッケージ76の残りの容積が炭酸液体で充填される。液体充填ゾーンまたはステーションは、当技術分野で既知の自動注入および計量機器を含み得る;
-液体充填ゾーンまたはステーション66の後(下流)の処理領域56に配置される、密封ゾーンまたはステーション74。密封ステーション74において、パッケージ76は、炭酸液体の陽圧を保持するために気密封止される。密封ゾーンまたはステーションは、当技術分野で既知のヒートシーリング装置または自動キャップ配置装置を含み得る。
【0058】
充填され密封された消費準備のできたパッケージ76は、処理領域56を出て、カートンボックス78などの適切なパッケージに積み重ねられ、配送または消費まで冷却保存することができる。
【0059】
方法工程を参照して上述したように、消毒溶液は自然蒸発によって除去することができる。しかしながら、
図6を参照すると、処理された植物生産物が第1の消毒ゾーン60を通過した後に、任意選択の能動的なより高速のシステム要素が使用され得る。追加の要素は以下を含む:
-消毒ゾーン60の後(下流)の処理領域56に配置される、第1の消毒剤除去(分離)ゾーン80。この実施形態では、パッケージ充填ゾーン64は、説明した第1の消毒剤除去ゾーン80の後に配置される。
【0060】
上記のシステム構成要素については、いくつかの具体的なデータに留意すべきである。コンベヤ速度は、好ましくは、最小限の処理を施した果物または野菜を消毒ゾーン60内で少なくとも15秒間維持するように設定され、典型的には6分以下が必要とされる。処理領域56内の温度は、1℃~40℃に設定される。消毒溶液は、最小限の処理を施した果物または野菜を完全に湿潤させるべきであるが、湿潤プロセスは積極的であるべきではない。湿潤プロセスは、果物または野菜の軟組織の食感損傷を回避するために、低衝撃技術を使用してもよい。これは、消毒溶液の非常に微細なミストを運ぶ乱流空気流を生成することによって達成され得る。低衝撃湿潤技術は、滴下、ソフトスプレー、または液体カーテンを形成するようなものに適切な特定のノズル82を使用してもよい。消毒剤の除去は、強制濾過空気のエアナイフ84として知られる空気流の薄いパターンによって行われ、好ましくは、空気は、少なくともH13 HEPAクラスのHEPAフィルタを通して濾過される。
【0061】
処理領域56は、消毒環境下に全体的にかつ連続的に維持され、そのような環境は、30~200PPMの濃度のオゾンガスを含み得る。処理領域56内のガスのわずかな過圧により、処理領域56内への汚染空気の進入が防止される。オゾンが消毒溶液中の酸化剤として使用される場合、消毒ガスは、オゾンの蒸発によって自然に受け入れられる。しかしながら、次亜塩素酸塩または過酸化水素などの他の消毒溶液が処理領域56で使用される場合、オゾンガスは、ノズルおよびファン57(
図6)によって処理領域56に別途供給される必要がある。
【0062】
方法工程に関連して上述したように、大きな果物または野菜は、剥皮および切断などの追加の処理を必要とし得る。この目的のために、
図7を参照すると、システムは、以下をさらに備え得る:
-処理領域56の外でコンベヤに沿って、装填ゾーン58の後(下流)に配置される、第2の消毒ゾーン86であって、第2の消毒ゾーン86は、消毒溶液の複数のエミッタ62を含む。典型的には、一連の3つのエミッタが、コンベヤに沿って配置され、果物または野菜の完全な湿潤を確保する;
-第2の消毒ゾーン86の後(下流)に、処理領域56の外に配置される、第2の消毒剤除去ゾーン88。消毒剤の除去は、強制濾過空気のエアナイフ84として知られる空気流の薄いパターンによって行われる。空気濾過品質は、植物生産物がこの段階ではまだ切断または剥皮されていないので、上述の第1の消毒剤除去ゾーンのものよりも低い程度であり得る;
-第2の消毒除去ゾーン88の後(下流)に、処理領域56に配置される、最小処理ゾーン90。
【0063】
最小処理ゾーンは、以下のプロセスの1つまたは複数を実行するように構成された処理ツール91を備える:開封、剥皮、トリミング、切断、スライス、チョッピング、ダイシング、ライシング、細断、種子除去、分離、抽出および引裂き。汚染を最小限に抑えるために自動処理が好ましいが、グローブボックスの技術から知られているように、壁に取り付けられたハンドグローブおよびシールド54に取り付けられたビューウィンドウを用いて手動処理が可能である。例えばチェリーまたはイチゴを処理する間など、最小限の処理が必要とされない場合、上記の処理ツール91を分解し、別々に保管することができる。最小処理ゾーン90を参照して説明した最小限の処理は、異なる生産ラインで行われてもよく、
図5および
図6を参照して上述したシステムと同じ消毒環境条件下に置くことができることに留意されたい。
図7および8において、植物生産物53は、最小処理ゾーン90を通過した後のスライス線で示されている。
【0064】
処理領域56で適用される消毒環境に加えて、例えば、処理された植物生産物を支持するコンベヤベルト、または最小処理ゾーン90で使用される1つまたは複数の切断ナイフもしくは処理ツール91などの、処理された植物生産物と接触する任意の処理機器が、1PPM~2PPMの濃度のオゾン水溶液によって断続的に消毒される。
【0065】
少なくとも第1の消毒ゾーン60で使用される消毒溶液は、水、および、例えば次亜塩素酸塩、過酸化水素またはオゾンなどの酸化剤の水溶液として作られる。オゾンが酸化剤として使用される場合、オゾン水溶液中の濃度は5PPM未満でなければならない。消毒溶液の濃度は、いくつかの種類は高濃度のオゾンに対してより敏感であるため、果物または野菜の種類に依存する。例えばザクロ種子は、水溶液中に2PPMの濃度を有するオゾン溶液で消毒されるべきである。放出および蒸発後の空気中のオゾンの濃度は、30~200PPMであるべきである。
【0066】
方法工程を参照して上述したように、炭酸化された果物または野菜ジュースを炭酸液体として使用することができる。この目的のために、
図8を参照すると、システムは、以下をさらに備え得る:
-調製済み炭酸液体を局所的に炭酸化または保持するための圧力容器68;および
-処理された果物または野菜の一部を絞り出してジュースにするスクイーザ92にであって、ジュースは圧力容器68に供給され、炭酸化されて炭酸液体となる。エレベータ94(
図8)または任意の他の搬送手段を使用して、処理された果物または野菜の一部をスクイーザに供給することができる。スクイーザは、当技術分野において既知であるように、および処理された植物生産物に応じて、プレスまたは遠心タイプのものであってもよい。
【0067】
いくつかの場合において、プロセスは、処理の準備ができている収穫された植物生産物の実際の量よりも少ない能力を有し得る。このような場合、植物生産物の一部の処理を遅らせる必要がある。したがって、
図7および
図8を参照すると、任意選択の実施形態では、後に処理される植物生産物を一時的に保管するための貯蔵室96が提供される。貯蔵室96は、直射日光の当たらない、冷却され、乾燥し、風通しのよい場所に保たれるべきである。第2の消毒ゾーン86および第2の消毒剤除去ゾーン88で行われるプロセスは、異なるシステム上で別々に実行され、
図5および
図6を参照して上述したシステムのうちの1つに運ばれてもよいことに留意されたい。説明されるシステム10は、モジュール構造を利用することができ、任意の要素が、取り外され、または別の要素と交換され、したがって、種々の異なる種類の植物生産物のために処理能力を拡張することができる。
【0068】
上記で説明され、添付の図面に示される本発明の特定の実施形態は、単に例示を目的として記載されることが理解されるであろう。本発明の他の変形、修正、および応用は、当業者には容易に思い浮かぶであろう。したがって、全てのそのような変形は、本発明の範囲および精神内にあると考えられることが明らかである。したがって、本明細書で求められる保護は、以下の特許請求の範囲に記載されるとおりである。
【国際調査報告】