(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】キメラコロナウイルススパイクタンパク質をコードする組換えベクターおよびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/85 20060101AFI20231121BHJP
C12N 15/50 20060101ALI20231121BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20231121BHJP
C12N 15/869 20060101ALI20231121BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231121BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20231121BHJP
A61K 39/265 20060101ALI20231121BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20231121BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20231121BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231121BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20231121BHJP
C07K 14/165 20060101ALN20231121BHJP
C07K 14/145 20060101ALN20231121BHJP
【FI】
C12N15/85 Z
C12N15/50 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/869 Z
C07K19/00
A61K39/215
A61K39/265
A61P31/14
A61K35/76
A61K48/00
A61P37/04
C07K14/165
C07K14/145
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528137
(86)(22)【出願日】2021-11-11
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 EP2021081311
(87)【国際公開番号】W WO2022101307
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】510000976
【氏名又は名称】インターベット インターナショナル ベー. フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ランゲレイス,マルティン・アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】デ・グルーフ,アド
(72)【発明者】
【氏名】フェルメイ,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ボッシュ,ベレンド・ジャン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA17
4C084MA52
4C084MA59
4C084MA65
4C084NA14
4C084ZB09
4C084ZB33
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4C085AA38
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4C085BA82
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4C087AA01
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4C087BC83
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4C087MA59
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4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB33
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA01
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、キメラコロナウイルススパイクタンパク質をコードする組換えベクターを提供する。本発明はさらに、これらの組換えベクターを含む新規免疫原性組成物およびワクチンを提供する。コロナウイルスに対して動物対象を保護するために、これらの免疫原性組成物およびワクチンをヒト、ネコおよびトリを含む動物対象に投与する方法も含まれる。免疫原性組成物およびワクチンを単独でまたは他の保護剤と組み合わせて作製する方法も提供される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロナウイルスに由来するスパイクタンパク質と、前記コロナウイルススパイクタンパク質の膜貫通ドメイン(TMD)およびC末端ドメイン(CTD)の代わりに、宿主細胞の細胞膜から出芽する出芽ウイルス(BV
pm)に由来する表面糖タンパク質のTMDおよびCTDとを含むキメラコロナウイルススパイクタンパク質をコードする組換えベクターであって、前記組換えベクターが組換えBV
pmである場合、前記表面糖タンパク質の前記TMDおよび前記CTDは、前記組換えBV
pmのウイルス種とは異なるウイルス種に由来する、組換えベクター。
【請求項2】
組換え発現ベクターおよび合成メッセンジャーRNA(合成mRNA)からなる群から選択される、請求項1に記載の組換えベクター。
【請求項3】
前記表面糖タンパク質が、水疱性口内炎ウイルス(VSV)の糖タンパク質(Gタンパク質)、インフルエンザウイルスのヘマグルチニン、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ、ニューカッスル病ウイルス(NDV)のヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ(HN)タンパク質、NDVの融合(F)タンパク質、ヒト免疫不全ウイルスの糖タンパク質120(gp120)、ラッサウイルスの糖タンパク質(GP)、エボラウイルスのGP、麻疹ウイルス(MV)のFタンパク質およびMVのHNタンパク質からなる群から選択されるBV
pm種に由来する、請求項1または2に記載の組換えベクター。
【請求項4】
前記表面糖タンパク質が前記VSVの前記Gタンパク質である、請求項3に記載の組換えベクター。
【請求項5】
前記キメラコロナウイルススパイクタンパク質が不活化されたフューリン切断部位を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組換えベクター。
【請求項6】
前記キメラコロナウイルススパイクタンパク質が、中央ヘリックスであって、前記中央ヘリックスの最初の2つの連続するアミノ酸残基が一対のプロリン残基(2P)によって置き換えられているために、前融合状態でさらに安定化されている、中央ヘリックスを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組換えベクター。
【請求項7】
前記コロナウイルススパイクタンパク質が、ヒトコロナウイルス、伝染性気管支炎ウイルス(IBV)、ウシコロナウイルス、イヌコロナウイルス、ネココロナウイルス、ブタコロナウイルスおよびコウモリコロナウイルスからなる群から選択されるコロナウイルスに由来する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組換えベクター。
【請求項8】
前記コロナウイルススパイクタンパク質がヒトコロナウイルスに由来する、請求項7に記載の組換えベクター。
【請求項9】
前記ヒトコロナウイルスが、SARS-CoV-2、SARS-CoVおよびMERSからなる群から選択される、請求項8に記載の組換えベクター。
【請求項10】
前記ヒトコロナウイルスが、SARS-CoV-2である、請求項9に記載の組換えベクター。
【請求項11】
前記キメラコロナウイルススパイクタンパク質が、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号10のアミノ酸配列のアミノ酸残基14~1211と90%以上の同一性を含み、前記キメラコロナウイルススパイクタンパク質が不活化されたフューリン切断部位を含む、請求項10に記載の組換えベクター。
【請求項12】
前記キメラコロナウイルススパイクタンパク質が、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号12のアミノ酸配列のアミノ酸残基14~1211と90%以上の同一性を含み、前記キメラコロナウイルススパイクタンパク質が不活化されたフューリン切断部位を含み、配列番号12の位置986のリジン(K)残基と位置987のバリン(V)残基が一対のプロリン残基(2P)によって置き換えられている、請求項10に記載の組換えベクター。
【請求項13】
前記キメラコロナウイルススパイクタンパク質が、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号10または12のアミノ酸配列のアミノ酸残基1212~1260と90%以上の同一性をさらに含む、請求項11または12に記載の組換えベクター。
【請求項14】
前記コロナウイルススパイクタンパク質がIBVに由来する、請求項7に記載の組換えベクター。
【請求項15】
前記IBVが、マサチューセッツ血清型、4/91血清型およびQX血清型からなる群から選択される血清型のメンバーである、請求項14に記載の組換えベクター。
【請求項16】
前記IBVがIBV-Ma5株である、請求項14に記載の組換えベクター。
【請求項17】
前記キメラコロナウイルススパイクタンパク質が、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号4のアミノ酸配列のアミノ酸残基19~1091と90%以上の同一性を含み、前記キメラコロナウイルススパイクタンパク質が不活化されたフューリン切断部位を含む、請求項16に記載の組換えベクター。
【請求項18】
前記キメラコロナウイルススパイクタンパク質が、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号6のアミノ酸配列のアミノ酸残基19~1091と90%以上の同一性を含み、前記キメラコロナウイルススパイクタンパク質が不活化されたフューリン切断部位を含み、配列番号6の位置859のアラニン(A)残基と位置860のイソロイシン(I)残基が一対のプロリン残基(2P)によって置き換えられている、請求項16に記載の組換えベクター。
【請求項19】
前記キメラコロナウイルススパイクタンパク質が、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号4または6のアミノ酸配列のアミノ酸残基1092~1140と90%以上の同一性をさらに含む、請求項17または18に記載の組換えベクター。
【請求項20】
組換えウイルスベクターおよびDNA発現プラスミドからなる群から選択される組換え発現ベクターである、請求項1~19のいずれか一項に記載の組換えベクター。
【請求項21】
シチメンチョウの組換えヘルペスウイルス(HVT)、組換え弱毒化マレック病ウイルス1型(MDV1)、組換えマレック病ウイルス2型(MDV2)、組換えMV、組換えNDVおよびアルファウイルスRNAレプリコン粒子(RP)からなる群から選択される組換えウイルスベクターである、請求項20に記載の組換え発現ベクター。
【請求項22】
HVTである、請求項21に記載の組換えウイルスベクター。
【請求項23】
前記アルファウイルスRNAレプリコン粒子がベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)レプリコン粒子である、請求項21に記載の組換えウイルスベクター。
【請求項24】
DNA発現プラスミドである、請求項20に記載の組換え発現ベクター。
【請求項25】
RNAレプリコンをコードする、請求項24に記載の組換え発現ベクター。
【請求項26】
前記RNAレプリコンがVEEV RNAレプリコンである、請求項25に記載の組換え発現ベクター。
【請求項27】
合成mRNAである、請求項1~19のいずれか一項に記載の組換えベクター。
【請求項28】
請求項1~20のいずれか一項に記載の組換えベクター、請求項21~23のいずれか一項に記載の組換えウイルスベクター、請求項24~26のいずれか一項に記載のDNA発現プラスミドまたは請求項27に記載の合成mRNAと、薬学的に許容され得る担体とを含む免疫原性組成物。
【請求項29】
請求項1~13もしくは20のいずれか一項に記載の組換えベクター、請求項23に記載の組換えウイルスベクター、請求項24~26のいずれか一項に記載のDNA発現プラスミドまたは請求項27に記載の合成mRNAと、薬学的に許容され得る担体とを含む、SARS-CoV-2による感染からの哺乳動物の保護を補助するためのワクチン。
【請求項30】
前記ワクチンが、ワクチン接種された哺乳動物において殺菌免疫を誘導するか、前記ワクチン接種された哺乳動物からナイーブ哺乳動物へのコロナウイルスの伝染を防止するか、または前記ワクチン接種された哺乳動物において殺菌免疫を誘導し、かつ前記ワクチン接種された哺乳動物からナイーブ哺乳動物へのコロナウイルスの伝染を防止する、請求項29に記載のワクチン。
【請求項31】
前記ワクチン接種された哺乳動物がネコであるか、前記ナイーブ哺乳動物がネコであるか、または前記ワクチン接種された哺乳動物および前記ナイーブ哺乳動物の両方がネコである、請求項30に記載のワクチン。
【請求項32】
アジュバントを含む、請求項29~31のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項33】
アジュバントを含まないワクチンである、請求項29~31のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項34】
請求項1~7もしくは14~20のいずれか一項に記載の組換えベクター、請求項21~23のいずれか一項に記載の組換えウイルスベクター、請求項24~26のいずれか一項に記載のDNA発現プラスミドまたは請求項27に記載の合成mRNAと、薬学的に許容され得る担体とを含む、トリにおけるIBVの感染による伝染性気管支炎からの前記トリの保護を補助するためのワクチン。
【請求項35】
非IBVトリ病原体に対する防御免疫を誘発するための少なくとも1つの非IBV抗原をさらに含む、請求項34に記載のワクチン。
【請求項36】
アジュバントを含む、請求項34または35に記載のワクチン。
【請求項37】
アジュバントを含まないワクチンである、請求項34または35に記載のワクチン。
【請求項38】
有効量の請求項29~37のいずれか一項に記載のワクチンを哺乳動物またはトリに投与することを含む、コロナウイルスに対する前記哺乳動物または前記トリにおける免疫応答を誘導する方法。
【請求項39】
哺乳動物においてコロナウイルスに対する殺菌免疫を誘導するか、ワクチン接種された哺乳動物からナイーブ哺乳動物へのコロナウイルスの伝染を防止するか、または前記哺乳動物において前記コロナウイルスに対する殺菌免疫を誘導し、かつ前記ワクチン接種された哺乳動物から前記ナイーブ哺乳動物への前記コロナウイルスの伝染を防止する方法であって、有効量の請求項30~33のいずれか一項に記載のワクチンを前記哺乳動物に投与することを含む、方法。
【請求項40】
前記ワクチン接種された哺乳動物がネコであるか、前記ナイーブ哺乳動物がネコであるか、または前記ワクチン接種された哺乳動物および前記ナイーブ哺乳動物の両方がネコである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記投与することが、筋肉内投与(IM)、皮下投与(SC)、皮内投与(ID)、経口、鼻腔内または卵内投与からなる群から選択される投与の様式によって行われる、請求項38~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
少なくとも1回の追加免疫投与が投与される、請求項38~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
SARS-CoV-2に由来するスパイクタンパク質と、前記SARS-CoV-2スパイクタンパク質のTMDおよびCTDの代わりに、水疱性口内炎ウイルスに由来する表面糖タンパク質のTMDおよびCTDとを含むキメラコロナウイルススパイクタンパク質。
【請求項44】
前記キメラコロナウイルススパイクタンパク質が不活化されたフューリン切断部位を含む、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号10のアミノ酸配列のアミノ酸残基14~1211と90%以上の同一性を含む、請求項43に記載のキメラコロナウイルススパイクタンパク質。
【請求項45】
前記キメラコロナウイルススパイクタンパク質が不活化されたフューリン切断部位を含み、配列番号12の位置986のリジン(K)残基と位置987のバリン(V)残基が一対のプロリン残基(2P)によって置き換えられている、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号12のアミノ酸配列のアミノ酸残基14~1211と90%以上の同一性を含む、請求項43に記載のキメラコロナウイルススパイクタンパク質。
【請求項46】
前記キメラコロナウイルススパイクタンパク質が、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号10または12のアミノ酸配列のアミノ酸残基1212~1260と90%以上の同一性をさらに含む、請求項44または45に記載のキメラコロナウイルススパイクタンパク質。
【請求項47】
IBVに由来するスパイクタンパク質と、前記IBVスパイクタンパク質のTMDおよびCTDの代わりに、水疱性口内炎ウイルスに由来する表面糖タンパク質のTMDおよびCTDとを含むキメラコロナウイルススパイクタンパク質。
【請求項48】
前記キメラコロナウイルススパイクタンパク質が、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号4のアミノ酸配列のアミノ酸残基19~1091と90%以上の同一性を含み、前記キメラコロナウイルススパイクタンパク質が不活化されたフューリン切断部位を含む、請求項47に記載のキメラコロナウイルススパイクタンパク質。
【請求項49】
前記キメラコロナウイルススパイクタンパク質が、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号6のアミノ酸配列のアミノ酸残基19~1091と90%以上の同一性を含み、前記キメラコロナウイルススパイクタンパク質が不活化されたフューリン切断部位を含み、配列番号6の位置859のアラニン(A)残基と位置860のイソロイシン(I)残基が一対のプロリン残基(2P)によって置き換えられている、請求項48に記載のキメラコロナウイルススパイクタンパク質。
【請求項50】
前記キメラコロナウイルススパイクタンパク質が、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号4または6のアミノ酸配列のアミノ酸残基1092~1140と90%以上の同一性をさらに含む、請求項48または49に記載のキメラコロナウイルススパイクタンパク質。
【請求項51】
請求項43~50のいずれか一項に記載のキメラコロナウイルススパイクタンパク質をコードする核酸。
【請求項52】
ワクチンが、SARS-CoV-2による感染からの哺乳動物の保護を補助するものであるか、または前記ワクチンが、伝染性気管支炎からのトリの保護を補助するものである、ワクチンとして使用するための、請求項1~20のいずれか一項に記載の組換えベクター。
【請求項53】
前記組換えベクターが、請求項21および24~26のいずれか一項に記載の組換え発現ベクター、請求項22および23に記載の組換えウイルスベクター、DNA発現プラスミド、アルファウイルスRNAレプリコン粒子ならびに合成mRNAから選択される、請求項52に記載のワクチンとして使用するための組換えベクター。
【請求項54】
ワクチンが、SARS-CoV-2による感染からの哺乳動物の保護を補助するものであるか、または前記ワクチンが、伝染性気管支炎からのトリの保護を補助するものである、ワクチンの製造のための、請求項1~20のいずれか一項に記載の組換えベクターの使用。
【請求項55】
前記組換えベクターが、請求項21および24~26のいずれか一項に記載の組換え発現ベクター、請求項22および23に記載の組換えウイルスベクター、DNA発現プラスミド、アルファウイルスRNAレプリコン粒子ならびに合成mRNAから選択される、請求項54に記載のワクチンの製造のための組換えベクターの使用。
【請求項56】
請求項1~20のいずれか一項に記載の組換えベクターと、薬学的に許容され得る担体とを混合する工程を含む、請求項29~37のいずれか一項に記載のワクチンの製造方法。
【請求項57】
前記組換えベクターが、請求項21および24~26のいずれか一項に記載の組換え発現ベクター、請求項22および23に記載の組換えウイルスベクター、DNA発現プラスミド、アルファウイルスRNAレプリコン粒子ならびに合成mRNAから選択される、請求項56に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キメラコロナウイルススパイクタンパク質をコードする組換えベクターに関する。本発明はさらに、これらの組換えベクターを含む新しい免疫原性組成物およびワクチンに関する。本発明はさらに、コロナウイルスに対して動物を保護するために、ヒトを含む動物対象にこれらの免疫原性組成物およびワクチンを投与する方法に関する。さらに、本発明は、単独でまたは他の保護剤と組み合わせて免疫原性組成物およびワクチンを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コロナウイルスは、16個の非構造タンパク質と、数個のアクセサリータンパク質と、(i)ウイルスの表面から突出する大きな糖タンパク質であるスパイク表面タンパク質(スパイクタンパク質またはSタンパク質);(ii)内在性膜(またはマトリックス)タンパク質(M);(iii)小膜エンベロープタンパク質(E);および(iv)ヌクレオカプシドタンパク質(N)という4つの主要な構造タンパク質とをコードする、エンベロープを有する一本鎖非分節型ポジティブセンスRNAウイルスである。コロナウイルスのスパイクタンパク質は、感染される動物の宿主細胞の膜を貫通する宿主標的タンパク質の特定の細胞外ドメインに結合することによって、コロナウイルスの指向性を決定する。標的タンパク質は、受容体と称される。
【0003】
すべてのコロナウイルスS糖タンパク質は、合成中に切除されるシグナル配列、ビリオン粒子の外側に存在する外部ドメイン、ビリオン粒子の脂質二重層中へSタンパク質を固定する役割を担う膜貫通領域、ならびに膜タンパク質(E)および内在性膜タンパク質(M)などの他のコロナウイルスタンパク質と相互作用し得る細胞質尾部という4つのドメインからなる。コロナウイルススパイクタンパク質は、電子顕微鏡によってコロナウイルスビリオンスパイクとして観察可能なI型糖タンパク質である。Sタンパク質は、おそらくMタンパク質との非共有結合相互作用を介してビリオン膜内に集合するが、コロナウイルス様粒子の形成には必要とされない。カルボキシ末端ドメインによって決定されるコロナウイルス粒子内への組み込み後、S糖タンパク質は、標的細胞受容体への結合およびウイルス膜と細胞膜の融合を担い、感受性細胞の感染において主要な役割を果たす。
【0004】
コロナウイルスは、トリコロナウイルス、ウシコロナウイルス、イヌコロナウイルス、ネココロナウイルス、ブタコロナウイルス、コウモリコロナウイルスおよびヒトコロナウイルスを含むウイルスの大きなファミリーである。トリコロナウイルスである伝染性気管支炎ウイルス(Infectious Bronchitis virus)(IBV)は、家禽(ニワトリ)の急性で、伝染性の高い呼吸器疾患である伝染性気管支炎を引き起こす。伝染性気管支炎の臨床徴候には、くしゃみ/スニッキング、気管ラ音、鼻汁および喘鳴が含まれ、成鳥よりも雛においてより明白である。鳥はまた、抑うつ状態であるように見え、食物消費量が減少することがある。肉用鳥は低下した体重増加を有するのに対して、産卵鳥は卵を産む数が少なくなる。呼吸器感染症は、ニワトリを二次的な細菌感染症に罹りやすくし、これは雛では致命的であり得る。ウイルスはまた、特に雛において卵管に永続的な損傷を引き起こすことがあり、産卵および卵の品質の低下をもたらし、腎臓に永続的な損傷を引き起こすことがあり、時には腎臓疾患をもたらし、これは致命的であり得る。
【0005】
新型コロナウイルス感染症(Coronavirus Disease 2019)(COVID-19)と呼ばれている2019年~2020年の世界的なヒトパンデミックの病原体は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2)(SARS-CoV-2)と呼ばれる呼吸器の(および場合によっては腸の)コロナウイルスである。ヒトにおけるコロナウイルス感染症は、前世紀に報告されていたが、これらは一般に、風邪のような症候群に関連しているのに対して、SARS-CoV-2は、2000年以降3番目の大きなベータコロナウイルスの流行として、2003年のSARSの流行(SARS-CoV)および2012年の中東呼吸器症候群コロナウイルス(Middle East Respiratory Syndrome coronavirus)(MERS-CoV)に続いている。
【0006】
SARS-CoVとSARS-CoV-2の両方に対する宿主受容体は、モノカルボキシペプチダーゼとして機能し、血管の健康において重要な役割を果たす亜鉛金属酵素であるI型内在性膜タンパク質であるアンジオテンシン変換酵素2(angiotensin-converting enzyme 2)(ACE2)である。ACE2の主な機能は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)の効果を相殺することである。ACEは、アンジオテンシンIホルモンを血管収縮性ペプチドアンジオテンシンIIに切断するのに対して、ACE2は、アンジオテンシンIIのC末端アミノ酸を切断し、最終的に、反対の作用を有する血管拡張性ペプチドの形成をもたらす。ACE2へのSARS-CoV-2のスパイクタンパク質の結合は、エンドサイトーシスおよび細胞内に位置するエンドソーム内へのウイルスの移行をもたらす。
【0007】
SARS-CoV-2は人畜共通感染源を有すると考えられており、SARS-CoV-2は、直接または中間動物を介して、コウモリコロナウイルス(コウモリCoV)から進化した[Wu et al.,Cell Host&Microbe 27:1-4(2020)]。実際、SARS-CoVとSARS-CoV-2はいずれも、潜在的に中間宿主が関与して、ヒトに侵入した様々なSARS様コウモリCoVから進化したと考えられている。SARS-CoVは、捕獲されたハクビシン(Paguma larvata)を介して、コウモリからヒトに侵入したことが示唆されている[Wu et al.,前出;Guan et al.,Science,302:276-278(2003)]。注目すべきことに、ハクビシンも、SARS-CoVに極めて感受性であることが示されている[Kan et al.,J.of Virol 79(18):11892-11900(2005);Guan et al.,前出]。一貫して、それらの全ゲノムのヌクレオチド配列を比較することは、SARS-CoV-2がSARS-CoVよりもSARS様コウモリCoVに遺伝的により密接に関連していることを示す[Wu et al.,前出]。
【0008】
SARS-CoVと同様に、動物園のライオンおよびトラならびにイエネコがSARS-CoV-2に対する検査で陽性となったという多数の報告が一般的な報道機関に存在している。イエネコを含むこれらのネコ科動物のいくつかは、感染の臨床徴候および有意な死後肺病変を実証している。最近の報告は、SARS-CoV-2がフェレット、ハムスターおよびミンクに感染し得ることも示している。
【0009】
今日まで、ヒトがイエネコからCOVID-19に罹患したという報告は存在しないが、そのような伝染が起こり得るという大きな不安が残っている。この不安の1つの根拠は、感染したイエネコがエアロゾルによって十分なSARS-CoV-2を放出して、物理的に離されていた他のネコに感染し得ることを報告する研究から得られる。さらに、それらの抗体陽転率に基づいて、研究は、SARS-CoV-2のネコ間伝染が自然な状況で起こり得ることを示唆している。さらに、最近の研究では、感染したミンクがSARS-CoV-2をヒトに伝染させたことが示されている[Oreshkova et al.,Eurosurveillance 25(23)(2020):pii=2001005;doi:10.2807/1560-7917.ES.2020.25.23.2001005]。
【0010】
若干勇気づけられることに、予備研究において、SARS-CoV-2は比較的少ない遺伝的多様性を示しており、SARS-CoV-2に対する適切なネコ科動物ワクチンが成功し得ることを示唆している。理想的には、そのようなワクチンは、ネコへのウイルスの伝染を予防し、ネコがウイルスの保有宿主になるのを予防し、および/または感染したネコによるSARS-CoV-2の排出を低下させるであろう。現在、200を超える潜在的なSARS-CoV-2ワクチンがヒト用に開発されており、研究者は多くの異なるワクチン戦略を採用している。しかしながら、この前例のない努力によってさえ、これらのワクチン戦略の任意の1つがSARS-CoV-2の拡散またはCOVID-19の作用を打ち消す上で大きく前進するワクチンをもたらすかどうかはなお不確実なままである。
【0011】
SARS-CoV-2に対する最近の興奮の前でさえ、宿主免疫系に対するヒトコロナウイルススパイクタンパク質の免疫原性および/または利用可能性を増加させるためのヒトコロナウイルススパイクタンパク質の改変は、既にいくらか興味深いものとなっていた。第1の7つ組リピート(HR1)と中央ヘリックスの間のループ中でのプロリン置換が、融合タンパク質の早期のトリガリングを制限し、残基V1060およびL1061における2つの連続するプロリン置換(2Pと呼ばれる)の導入により、外胚葉収量の50倍を超える改善をもたらすことを示した、HIV-1および呼吸器合胞体ウイルス(RSV)由来の融合タンパク質での以前の知見に依拠して、SARS-CoVおよびHCoV-HKU1由来のスパイクタンパク質中での相同的な置換も、外部ドメインの発現レベルを増加させ、立体構造の均一性を改善したことが実証された[Pallesen et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 114:E7348-e7357,https://doi.org/10.1073/pnas.1707304114(2017)]。さらに、中央ヘリックスの先頭への2つの連続するプロリン残基(2P)の導入は、ベータコロナウイルスSタンパク質を原型の前融合立体構造に保持するための一般的な戦略であることが示唆された[Pallesen et al.,前出]。より最近では、Amanat et al.,[doi:https://doi.org/10.1101/2020.09.16.300970,(2020)]は、2つのプロリンの導入および多塩基性切断部位の除去が、マウスモデルにおいて組換えスパイクをベースとしたSARS-CoV-2ワクチンの最適な有効性をもたらすことを報告した。ヒトコロナウイルススパイクタンパク質の他の修飾も議論されてきた[Sternberg and Naujokat,Life Sciences,257:118056(2020);Li,Ann.Rev.Viol.,3(1):237-261(2016);およびWickramasinghe et al.,Virus Research 194:37-48(2014)を参照]。
【0012】
ブタにおける致死的なブタ急性下痢症候群(SADS)の原因因子は、コウモリコロナウイルスであるHKU2とゲノム配列が98.48%同一の新規コロナウイルスである。HKU2関連コロナウイルスは、養豚場付近の洞窟内のコウモリ中に、2016年に検出された。この新しいコロナウイルスであるブタ急性下痢症候群コロナウイルス(SADS-CoV)は、SARS-CoVと同じキクガシラコウモリ(Rhinolophus)の属に由来する[Zhou et al.,Nature,556:255-258(2018);doi.org/10.1038/s41586-018-0010-9]。
【0013】
水疱性口内炎ウイルス(VSV)は、狂犬病ウイルスを含むラブドウイルス科(Rhabdoviridae)に属する、非分節型マイナス鎖RNAウイルスである。VSVは、極性上皮細胞の基底外側表面から優先的に出芽する。この出芽選好は、その糖タンパク質の基底外側局在化と相関する[例えば、Drokhlyansky et al.,J.Virol.,89(22):11718-11722(2015)を参照]。このような細胞膜出芽は、ウイルスが宿主細胞から出ることを可能にし、ウイルスの外側エンベロープを形成するためにウイルスタンパク質が濃縮された宿主由来の膜を獲得しなければならないエンベロープを有するウイルスによって主に使用される。組み立てられたまたは構築されている過程のヌクレオカプシドは、宿主細胞膜における膜湾曲の形成を誘導し、形成している出芽中に包まれ、これは最終的には膜切断によってくびれ切れてエンベロープに包まれた粒子を放出する。
【0014】
アルファウイルス由来のRNAレプリコン粒子(RP)の使用は、特定の動物病原体に対して保護するために長年にわたってワクチンにおいて使用されてきた多数のベクター戦略の1つである[Vander Veen,et al.,Anim Health Res Rev.13(1):1-9.(2012)doi:10.1017/S1466252312000011;Kamrud et al.,J Gen Virol.91(Pt7):1723-1727(2010)]。アルファウイルス由来のRPは、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)[Pushko et al.,Virology 239:389-401(1997)]、シンドビス(SIN)[Bredenbeek et al.,Journal of Virology 67:6439-6446(1993)]およびセムリキ森林ウイルス(SFV)[Liljestrom and Garoff,Biotechnology(NY)9:1356-1361(1991)]を含むいくつかの異なるアルファウイルスに対して開発されている。アルファウイルスRPワクチンは、増殖欠損アルファウイルスRNAレプリコンを宿主細胞中に送達し、インビボで(1または複数の)所望の免疫原性導入遺伝子の発現をもたらす[Pushko et al.,前出]。インビトロで検出可能なスパイクタンパク質を発現するSARS-CoVスパイクタンパク質をコードするハイブリッドVEEV/SIN複製粒子の構築が報告されている[米国特許第9,730,997号]。RPはまた、いくつかの伝統的なワクチン製剤と比較した場合、魅力的な安全性および有効性プロファイルを有する[Vander Veen,et al.Anim Health Res Rev.13(1):1-9(2012)]。さらに、VEEV RPプラットフォームは、イヌおよびネコ由来の病原性抗原をコードするために使用されており[例えば、国際公開第2019/086645号、国際公開第2019/086646号および国際公開第2019/115090号を参照されたい。]、ブタおよび家禽用のいくつかのUSDA認可ワクチンの基礎である。
【0015】
本明細書における任意の参考文献の引用は、そのような参考文献が本出願に対する「従来技術」として利用可能であることの承認として解釈されるべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第9,730,997号
【特許文献2】国際公開第2019/086645号
【特許文献3】国際公開第2019/086646号
【特許文献4】国際公開第2019/115090号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Wu et al.,Cell Host&Microbe 27:1-4(2020)
【非特許文献2】Guan et al.,Science,302:276-278(2003)
【非特許文献3】Kan et al.,J.of Virol 79(18):11892-11900(2005)
【非特許文献4】Oreshkova et al.,Eurosurveillance 25(23)(2020):pii=2001005;doi:10.2807/1560-7917.ES.2020.25.23.2001005
【非特許文献5】Pallesen et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 114:E7348-e7357,https://doi.org/10.1073/pnas.1707304114(2017)
【非特許文献6】Amanat et al.,[doi:https://doi.org/10.1101/2020.09.16.300970,(2020)]
【非特許文献7】Sternberg and Naujokat,Life Sciences,257:118056(2020);Li,Ann.Rev.Viol.,3(1):237-261(2016)
【非特許文献8】Wickramasinghe et al.,Virus Research 194:37-48(2014)
【非特許文献9】Zhou et al.,Nature,556:255-258(2018);doi.org/10.1038/s41586-018-0010-9
【非特許文献10】Drokhlyansky et al.,J.Virol.,89(22):11718-11722(2015)
【非特許文献11】Vander Veen,et al.,Anim Health Res Rev.13(1):1-9.(2012)doi:10.1017/S1466252312000011
【非特許文献12】Kamrud et al.,J Gen Virol.91(Pt7):1723-1727(2010)
【非特許文献13】Pushko et al.,Virology 239:389-401(1997)
【非特許文献14】Bredenbeek et al.,Journal of Virology 67:6439-6446(1993)
【非特許文献15】Liljestrom and Garoff,Biotechnology(NY)9:1356-1361(1991)
【非特許文献16】Vander Veen,et al.Anim Health Res Rev.13(1):1-9(2012)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、本発明は、修飾されたコロナウイルススパイクタンパク質をコードする組換えベクターを提供する。特定の態様において、修飾されたコロナウイルススパイクタンパク質は、キメラコロナウイルススパイクタンパク質である。修飾されたコロナウイルススパイクタンパク質(例えば、キメラコロナウイルススパイクタンパク質)をコードするベクターは、免疫原性組成物においておよび/またはワクチンにおいて使用することができる。具体的な態様において、組換えベクターは組換え発現ベクターである。他の態様において、組換えベクターは合成メッセンジャーRNA(合成mRNA)である。
【0019】
本発明の一局面は、コロナウイルスに由来するスパイクタンパク質と、前記コロナウイルススパイクタンパク質の膜貫通ドメイン(TMD)およびC末端ドメイン(CTD)の代わりに、宿主細胞の細胞膜から出芽する出芽ウイルス(BVpm)に由来する表面糖タンパク質からのTMDおよびCTDとを含むキメラコロナウイルススパイクタンパク質をコードする組換えベクターを提供する。この種類の特定の態様において、組換えベクターは組換えBVpmであり、表面糖タンパク質のTMDおよびCTDは、組換えBVpmのウイルス種とは異なるウイルス種に由来する。
【0020】
組換えベクターのある態様において、BVpmに由来する表面糖タンパク質は、VSVからの糖タンパク質(Gタンパク質)である。組換えベクターの他の態様において、BVpmに由来する表面糖タンパク質は、インフルエンザウイルスのヘマグルチニンである。組換えベクターのさらに他の態様において、BVpmに由来する表面糖タンパク質は、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼである。組換えベクターのさらに他の態様において、BVpmに由来する表面糖タンパク質は、ニューカッスル病ウイルス(NDV)のヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ(HN)タンパク質である。組換えベクターのさらに他の態様において、BVpmに由来する表面糖タンパク質は、NDVの融合(F)タンパク質である。組換えベクターのさらに他の態様において、BVpmに由来する表面糖タンパク質は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の糖タンパク質120(gp120)である。組換えベクターのさらに他の態様において、BVpmに由来する表面糖タンパク質は、ラッサウイルスの糖タンパク質(GP)である。組換えベクターのさらに他の態様において、BVpmに由来する表面糖タンパク質は、エボラウイルスのGPである。組換えベクターのさらに他の態様において、BVpmに由来する表面糖タンパク質は、麻疹ウイルス(MV)のFタンパク質である。組換えベクターのさらに他の態様において、BVpmに由来する表面糖タンパク質は、MVのHNタンパク質である。
【0021】
関連する局面において、本発明は、キメラコロナウイルススパイクタンパク質のフューリン切断部位が不活化されているキメラコロナウイルススパイクタンパク質をコードする組換えベクターを提供する。他の態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質の中央ヘリックスの最初の2つの連続するアミノ酸残基が一対のプロリン残基(2P)によって置き換えられているために、前融合状態でさらに安定化されているキメラコロナウイルススパイクタンパク質をコードする組換えベクター。
【0022】
関連する態様において、組換えベクターは、キメラコロナウイルススパイクタンパク質のフューリン切断部位が不活化されており、かつコロナウイルススパイクタンパク質の中央ヘリックスの最初の2つの連続するアミノ酸残基が一対のプロリン残基(2P)によって置き換えられているために、キメラコロナウイルススパイクタンパク質が前融合状態でさらに安定化されている、キメラコロナウイルススパイクタンパク質をコードする。
【0023】
特定の態様において、組換えベクターは、キメラコロナウイルススパイクタンパク質のコロナウイルススパイクタンパク質部分が哺乳動物コロナウイルスに由来するキメラコロナウイルススパイクタンパク質を含む。組換えベクターのある態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質のコロナウイルススパイクタンパク質部分は、ウシコロナウイルスに由来する。組換えベクターのさらに他の態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質のコロナウイルススパイクタンパク質部分は、イヌコロナウイルスに由来する。組換えベクターのさらに他の態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質のコロナウイルススパイクタンパク質部分は、ネココロナウイルスに由来する。組換えベクターのさらに他の態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質のコロナウイルススパイクタンパク質部分は、ブタコロナウイルスに由来する。この種類の組換えベクターの特定の態様において、ブタコロナウイルスはSADS-CoVである。この種類の組換えベクターの他の特定の態様において、ブタコロナウイルスはブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)である。組換えベクターのさらに他の態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質のコロナウイルススパイクタンパク質部分は、コウモリコロナウイルスに由来する。
【0024】
組換えベクターのさらに特定の態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質のコロナウイルススパイクタンパク質部分は、ヒトリコロナウイルスに由来する。この種類の組換えベクターの具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質のコロナウイルススパイクタンパク質部分は、SARS-CoVに由来する。この種類の組換えベクターのさらに他の態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質のコロナウイルススパイクタンパク質部分は、MERSに由来する。この種類の組換えベクターのさらにより特定の態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質のコロナウイルススパイクタンパク質部分は、SARS-CoV-2に由来する。
【0025】
組換えベクターの具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号10のアミノ酸配列のアミノ酸残基14~1211と80%、85%、90%、95%、97%、99%、99.5%またはそれを超える同一性を含み、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、不活化されたフューリン切断部位を含む。この種類の組換えベクターのより具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号10のアミノ酸配列のアミノ酸残基1212~1260と80%、85%、90%、95%、97%またはそれを超える同一性をさらに含む。組換えベクターのさらにより具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0026】
組換えベクターの他の具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号12のアミノ酸配列のアミノ酸残基14~1211と80%、85%、90%、95%、97%、99%、99.5%またはそれを超える同一性を含み、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、不活化されたフューリン切断部位の両方を含み、配列番号12の位置986のリジン(K)残基および位置987のバリン(V)残基は、一対のプロリン残基(2P)によって置き換えられている。この種類の組換えベクターのより具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号12のアミノ酸配列のアミノ酸残基1212~1260と80%、85%、90%、95%、97%またはそれを超える同一性をさらに含む。組換えベクターのさらにより具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、配列番号12のアミノ酸配列を含む。
【0027】
組換えベクターのさらに他の態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質のコロナウイルススパイクタンパク質部分は、トリコロナウイルスに由来する。この種類の組換えベクターの特定の態様において、トリコロナウイルスはIBVである。組換えベクターのより具体的な態様において、IBVはマサチューセッツ血清型である。組換えベクターのこの種類のさらにより特定の態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質のコロナウイルススパイクタンパク質部分は、IBV-Ma5に由来する。組換えベクターの他の態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質のコロナウイルススパイクタンパク質部分は、血清型4/91IBVに由来する。組換えベクターのさらに他の関連する態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質のコロナウイルススパイクタンパク質部分は、血清型QX IBVに由来する。
【0028】
これらの組換えベクターの具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号4のアミノ酸配列のアミノ酸残基19~1091と80%、85%、90%、95%、97%、99%、99.5%またはそれを超える同一性を含み、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、不活化されたフューリン切断部位を含む。この種類の組換えベクターのより具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号4のアミノ酸配列のアミノ酸残基1092~1140と80%、85%、90%、95%、97%またはそれを超える同一性をさらに含む。組換えベクターのさらにより具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、配列番号4のアミノ酸配列を含む。
【0029】
組換えベクターの他の具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号6のアミノ酸配列のアミノ酸残基19~1091と80%、85%、90%、95%、97%、99%、99.5%またはそれを超える同一性を含み、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、不活化されたフューリン切断部位の両方を含み、配列番号6の位置859のアラニン(A)残基および位置860のイソロイシン(I)残基は、一対のプロリン残基(2P)によって置き換えられている。この種類の組換えベクターのより具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号6のアミノ酸配列のアミノ酸残基1092~1140と80%、85%、90%、95%、97%またはそれを超える同一性をさらに含む。組換えベクターのさらにより具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、配列番号6のアミノ酸配列を含む。
【0030】
本発明の一局面において、本発明の組換えベクターは、組換え発現ベクターである。この種類の特定の態様において、組換え発現ベクターは組換えウイルスベクターである。他の態様において、組換え発現ベクターはDNA発現プラスミドである。
【0031】
特定の態様において、組換えウイルスベクターは組換えトリウイルスベクターである。この種類のより特定の態様において、組換えウイルスベクターはシチメンチョウの組換えヘルペスウイルス(HVT)である。さらに他の態様において、組換えウイルスベクターは組換え弱毒化マレック病ウイルス1型(MDV1)である。さらに他の態様において、組換えウイルスベクターは組換え弱毒化マレック病ウイルス2型(MDV2)である。さらに他の態様において、組換えウイルスベクターは組換え弱毒化NDVである。
【0032】
他の態様において、組換えウイルスベクターは組換え弱毒化MVである。さらに他の態様において、組換えウイルスベクターはアルファウイルスRNAレプリコン粒子(RP)である。この種類の具体的な態様において、アルファウイルスRNAレプリコン粒子はVEEV RNAレプリコン粒子である。さらにより特定の態様において、アルファウイルスRNA RPは、VEEVの非病原性TC-83株のカプシドタンパク質および糖タンパク質を含む。
【0033】
具体的な態様において、組換えウイルスベクターは、本発明のキメラコロナウイルススパイクタンパク質をコードするVEEV RNAレプリコン粒子である。より具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、SARS-CoV-2-VSVスパイクタンパク質である。
【0034】
他の具体的な態様において、組換えウイルスベクターは、本発明のキメラコロナウイルススパイクタンパク質をコードする組換えHVTベクターである。より具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、本発明のキメラIBV-VSVスパイクタンパク質である。
【0035】
さらに他の態様において、組換え発現ベクターはDNA発現プラスミドである。この種類の特定の態様において、DNA発現プラスミドはRNAレプリコンをコードする。さらにより特定の態様において、RNAレプリコンはVEEV RNAレプリコンである。
【0036】
さらに他の態様において、組換えベクターは合成mRNAである。
【0037】
特定の態様において、組換えベクターは、1つまたは複数の他の抗原をさらにコードする。この種類のある態様において、組換えベクターは、キメラコロナウイルススパイクタンパク質を含み、第2のコロナウイルス抗原をさらにコードする。この種類の具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、キメラSARS-CoV-2スパイクタンパク質であり、第2のコロナウイルス抗原は、第2のSARS-CoV-2タンパク質抗原である。より特定の態様において、第2のSARS-CoV-2タンパク質抗原は、内在性膜(またはマトリックス)タンパク質(M)である。他の態様において、第2のSARS-CoV-2タンパク質抗原は、小膜エンベロープタンパク質(E)である。さらに他の態様において、第2のSARS-CoV-2タンパク質抗原はヌクレオカプシドタンパク質(N)である。より特定の態様において、第2のSARS-CoV-2タンパク質抗原は、2つのキメラSARS-CoV-2スパイクタンパク質のスパイクタンパク質部分がSARS-CoV-2の異なる株に由来する第2のキメラSARS-CoV-2スパイクタンパク質である。
【0038】
他の態様において、組換えベクターは、必要に応じて第2のキメラSARS-CoV-2スパイクタンパク質および/または第2のSARS-CoV-2抗原ならびに非SARS-CoV-2からの抗原と一緒に、第1のキメラSARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードする。ある態様において、非SARS-CoV-2抗原は、ネコカリシウイルス(FCV)カプシドタンパク質である。さらに他の態様において、非SARS-CoV-2抗原は狂犬病ウイルス糖タンパク質(G)である。さらに他の態様において、非SARS-CoV-2抗原は、ネコ白血病ウイルス(FeLV)エンベロープタンパク質である。さらに他の態様において、非SARS-CoV-2抗原はヒトインフルエンザウイルスタンパク質である。この種類の特定の態様において、ヒトインフルエンザウイルスタンパク質はヘマグルチニンである。別の態様において、ヒトインフルエンザウイルスタンパク質はノイラミニダーゼである。
【0039】
本発明はさらに、本発明の組換えベクターの1つまたは複数を含む免疫原性組成物を提供する。特定の態様において、免疫原性組成物は、薬学的に許容され得る担体を含む。組換えベクターは、組換え発現ベクター、例えば組換えウイルスベクターおよびDNA発現プラスミド、または合成mRNAであり得る。本発明はさらに、免疫原性組成物の1つまたは複数と薬学的に許容され得る担体とを含むワクチンを提供する。
【0040】
したがって、本発明の免疫原性組成物および/またはワクチンは、任意の組換えウイルスベクター、本発明の任意のDNA発現プラスミドおよび/または本発明の任意の合成mRNAを含む、本発明の任意の組換えベクターの1つまたは複数を含むことができる。ある態様において、免疫原性組成物および/またはワクチンは、薬学的に許容され得る担体をさらに含む。
【0041】
ある態様において、SARS-CoV-2による感染からの哺乳動物の保護を補助するワクチンは、SARS-CoV-2に由来するスパイクタンパク質と、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のTMDおよびCTDの代わりに、宿主細胞の細胞膜から出芽する出芽ウイルス(BVpm)に由来する表面糖タンパク質からのTMDおよびCTDとを含むキメラSARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードする組換えベクターを含む。この種類の特定の態様において、組換えベクターは組換えBVpmであり、表面糖タンパク質のTMDおよびCTDは、組換えBVpmのウイルス種とは異なるウイルス種に由来する。より具体的な態様において、BVpmの表面糖タンパク質は、水疱性口内炎ウイルスのGタンパク質である。この種類のある態様において、哺乳動物はヒトである。他の態様において、ワクチンは、ネコ科動物またはフェレットにおけるSARS-CoV-2の感染に起因する、ネコ科動物またはフェレットにおけるSARS-CoV-2の排出を低減させることを補助するためのものである。
【0042】
したがって、ある態様において、本発明のワクチンは、ワクチン接種された哺乳動物において殺菌免疫を誘導する。さらに他の態様において、本発明のワクチンは、ワクチン接種された哺乳動物からナイーブ哺乳動物へのコロナウイルスの伝染を防止する。関連する態様において、本発明のワクチンは、ワクチン接種された哺乳動物において殺菌免疫を誘導し、かつワクチン接種された哺乳動物からナイーブ哺乳動物へのコロナウイルスの伝染を防止する。この種類の特定の態様において、ワクチン接種された哺乳動物はネコ科動物である。この種類のより特定の態様において、ワクチン接種された哺乳動物はネコ(例えば、イエネコ)である。さらに他の態様において、ナイーブ哺乳動物はネコ科動物である。この種類のより特定の態様において、ネコ科動物はネコ(例えば、イエネコ)である。関連する態様において、ワクチン接種された哺乳動物とナイーブ哺乳動物の両方がネコ(例えば、イエネコ)である。ある態様において、このような哺乳動物(例えば、ネコ科動物)ワクチンは、アジュバントを含む。他のこのような態様において、哺乳動物(例えば、ネコ科動物)ワクチンはアジュバントを含まないワクチンである。
【0043】
代替の態様において、ワクチンは、トリにおけるIBVの感染に起因するトリにおける伝染性気管支炎の保護を補助するためのものであり、IBVに由来するスパイクタンパク質と、コロナウイルススパイクタンパク質のTMDおよびCTDの代わりに、宿主細胞の細胞膜から出芽する出芽ウイルス(BVpm)に由来する表面糖タンパク質からのTMDおよびCTDとを含むキメラIBVスパイクタンパク質をコードする組換えベクターを含む。この種類の特定の態様において、組換えベクターは組換えBVpmであり、表面糖タンパク質のTMDおよびCTDは、組換えBVpmのウイルス種とは異なるウイルス種に由来する。より具体的な態様において、BVpmの表面糖タンパク質は、水疱性口内炎ウイルスのGタンパク質である。関連する態様において、ワクチンは、ニワトリにおけるIBVの感染に起因する伝染性気管支炎からのニワトリの保護を補助するためのものである。
【0044】
本発明はさらに、本発明のワクチンの免疫学的有効量を哺乳動物に投与することを含む、コロナウイルス、例えばSARS-CoV-2に対して哺乳動物を免疫する方法を提供する。ある態様において、投与する方法は筋肉内投与(IM)によって行われる。ある態様において、投与する方法は皮下投与(SC)によって行われる。さらに他の態様において、投与する方法は皮内投与(ID)によって行われる。さらに他の態様において、投与する方法は経口投与によって行われる。さらに他の態様において、投与する方法は鼻腔内投与によって行われる。本発明のワクチンは、単回用量投与として(例えば、単回用量ワクチンとして)または1もしくは複数のその後の追加免疫投与のいずれかで投与することができる。
【0045】
特定の態様において、哺乳動物はネコ科動物である。より特定の態様において、ネコ科動物はイエネコである。さらに他の態様において、ネコ科動物はライオンである。さらに他の態様において、ネコ科動物はトラである。関連する態様において、哺乳動物はフェレットである。代替の態様において、哺乳動物はヒトである。
【0046】
本発明はさらに、有効量の本発明のワクチンの1つを哺乳動物に投与し、これにより哺乳動物ワクチンを提供することを含む、哺乳動物においてコロナウイルスに対する殺菌免疫を誘導する方法を提供する。さらに他の態様において、本発明は、有効量の本発明の哺乳動物ワクチンの1つを哺乳動物に投与することを含む、ワクチン接種された哺乳動物からナイーブ哺乳動物へのコロナウイルスの伝染を防止する方法を提供する。関連する態様において、本発明は、有効量の本発明の哺乳動物ワクチンの1つを哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物においてコロナウイルスに対する殺菌免疫を誘導し、かつワクチン接種された哺乳動物からナイーブ哺乳動物へのコロナウイルスの伝染を防止する方法を提供する。この種類の特定の態様において、ワクチン接種された哺乳動物はネコ科動物である。この種類のより特定の態様において、ワクチン接種される哺乳動物はネコ(例えば、イエネコ)である。さらに他の態様において、ナイーブ哺乳動物はネコ科動物である。この種類のより特定の態様において、ネコ科動物はネコ(例えば、イエネコ)である。関連する態様において、ワクチン接種される哺乳動物およびナイーブ哺乳動物はいずれもネコ(例えば、イエネコ)である。ある態様において、このような哺乳動物(例えば、ネコ科動物)ワクチンは、アジュバントを含む。他のこのような態様において、哺乳動物(例えば、ネコ科動物)ワクチンはアジュバントを含まないワクチンである。
【0047】
本発明はさらに、本発明のワクチンの免疫学的有効量をトリに投与することを含む、IBVに対してトリを免疫する方法を提供する。したがって、本発明のワクチンは、非経口投与によってトリに投与することができる。特定の態様において、ワクチンは、筋肉内投与(IM)によってトリに投与される。さらに他の態様において、ワクチンは皮下投与(SC)によってトリに投与される。さらに他の態様において、ワクチンは、皮内投与(ID)によってトリに投与される。さらに他の態様において、ワクチンは経口投与によってトリに投与される。さらに他の態様において、ワクチンは、鼻腔内投与によってトリに投与される。さらに他の態様において、ワクチンは、卵内投与によってトリに投与される。さらに他の態様において、ワクチンは、乱切によってトリに投与される。より具体的な態様において、トリはニワトリである。本発明のワクチンは、単回用量投与として(例えば、単回用量ワクチンとして)または1もしくは複数のその後の追加免疫投与のいずれかで投与することができる。
【0048】
本発明の組換えベクター、例えば、キメラSARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードするアルファウイルスRNAレプリコン粒子またはキメラIBVスパイクタンパク質をコードする組換えHVTを含む免疫原性組成物および/またはワクチン(多価ワクチンを含む)は、アジュバントの存在下または非存在下で投与することができる。
【0049】
特定の態様において、アジュバントは、2種以上の油、例えば鉱油と1つまたは複数の非鉱油を含むオイルアジュバントである。この種類のある態様において、オイルアジュバントは、鉱油として流動パラフィン油と、スクアラン、スクアレン、ビタミンE、ビタミンE-アセタート、オレアートおよびオレイン酸エチルから選択される1つまたは複数の非鉱油とを含む。より特定の態様において、オイルアジュバントは、流動パラフィン油およびビタミンE-アセタートを含む。代替の態様において、ワクチンはアジュバントを含まず、アジュバントを含まないワクチンである。
【0050】
さらに別の局面において、本発明は、SARS-CoV-2に由来するスパイクタンパク質と、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のTMDおよびCTDの代わりに、水疱性口内炎ウイルスに由来する表面糖タンパク質のTMDおよびCTDとを含むキメラコロナウイルススパイクタンパク質を提供する。具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号10のアミノ酸配列のアミノ酸残基14~1211と80%、85%、90%、95%、97%、99%、99.5%またはそれを超える同一性を含み、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、不活化されたフューリン切断部位を含む。この種類のより具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号10のアミノ酸配列のアミノ酸残基1212~1260と80%、85%、90%、95%、97%またはそれを超える同一性をさらに含む。さらにより具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0051】
具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号12のアミノ酸配列のアミノ酸残基14~1211と80%、85%、90%、95%、97%、99%、99.5%またはそれを超える同一性を含み、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、不活化されたフューリン切断部位の両方を含み、配列番号12の位置986のリジン(K)残基および位置987のバリン(V)残基は、一対のプロリン残基(2P)によって置き換えられている。この種類のある態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号12のアミノ酸配列のアミノ酸残基1212~1260と80%、85%、90%、95%、97%またはそれを超える同一性をさらに含む。さらにより具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、配列番号12のアミノ酸配列を含む。
【0052】
本発明はさらに、SARS-CoV-2に由来するスパイクタンパク質と、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のTMDおよびCTDの代わりに、水疱性口内炎ウイルスに由来する表面糖タンパク質のTMDおよびCTDとを含むキメラコロナウイルススパイクタンパク質の1つまたは複数をコードする核酸を提供する。
【0053】
さらに別の局面において、本発明は、IBVに由来するスパイクタンパク質と、IBVスパイクタンパク質のTMDおよびCTDの代わりに、水疱性口内炎ウイルスに由来する表面糖タンパク質のTMDおよびCTDとを含むキメラコロナウイルススパイクタンパク質を提供する。具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号4のアミノ酸配列のアミノ酸残基19~1091と80%、85%、90%、95%、97%、99%、99.5%またはそれを超える同一性を含み、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、不活化されたフューリン切断部位を含む。より具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号4のアミノ酸配列のアミノ酸残基1092~1140と80%、85%、90%、95%、97%またはそれを超える同一性をさらに含む。さらにより具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、配列番号4のアミノ酸配列を含む。
【0054】
具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号6のアミノ酸配列のアミノ酸残基19~1091と80%、85%、90%、95%、97%、99%、99.5%またはそれを超える同一性を含み、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、不活化されたフューリン切断部位の両方を含み、配列番号6の位置859のアラニン(A)残基および位置860のイソロイシン(I)残基は、一対のプロリン残基(2P)によって置き換えられている。この種類のある態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、アミノ酸残基の同じ範囲にわたって、配列番号6のアミノ酸配列のアミノ酸残基1092~1140と80%、85%、90%、95%、97%またはそれを超える同一性をさらに含む。さらにより具体的な態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、配列番号6のアミノ酸配列を含む。
【0055】
本発明はさらに、IBVに由来するスパイクタンパク質と、IBVスパイクタンパク質のTMDおよびCTDの代わりに、水疱性口内炎ウイルスに由来する表面糖タンパク質のTMDおよびCTDとを含むキメラコロナウイルススパイクタンパク質の1つまたは複数をコードする核酸を提供する。
【0056】
本発明のこれらおよび他の局面は、以下の図面の簡単な説明および詳細な説明を参照することによってよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】市販のID Screen(登録商標)Infectious Bronchitis Indirect(IDVet)試験からの結果を示す。
【
図2】修飾されたIBVスパイクタンパク質をコードする組換えウイルス構築物を用いた線毛運動障害アッセイからの結果を示す。
【
図3】SARS-CoV-2 RBD Surrogate Pseudo-VN試験の結果を示す。
【
図4】初回ワクチン接種から3週間後の追加免疫ワクチン接種後のSARS-CoV-2 RBD Surrogate Pseudo-VN試験の結果を示す。
【
図5A】モルモットモデルにおけるワクチン候補の免疫原性研究を示す。
図5Aは、動物取扱の概要を提供する:V=ワクチン接種およびB=採血。
【
図5B】モルモットモデルにおけるワクチン候補の免疫原性研究を示す。
図5Bは、21日目(D21)からの10倍希釈血清試料を使用して実施されたサロゲートSARS-CoV-2ウイルス中和(VN)試験を示す。
【
図5C】モルモットモデルにおけるワクチン候補の免疫原性研究を示す。
図5Cは、初回ワクチン接種から35、49および63/64日後(d.p.v.)からの1,000倍希釈血清試料を使用して実施されたサロゲートSARS-CoV-2 VN試験を示す。円を伴う黒い線はスパイク-wt抗原によって誘導された抗体レベルを示し、四角を伴う灰色の線はスパイク-FCS-2P-VSV抗原によって誘導された抗体レベルを示す。
【
図5D】モルモットモデルにおけるワクチン候補の免疫原性研究を示す。
図5Dは、抗原としてSARS-CoV-2 スパイク RBD(左)または外部ドメイン(右)を使用した間接的ELISAの結果を示す。スパイク-wt抗原(円を伴う黒い線)またはスパイク-FCS-2P-VSV抗原(四角を伴う灰色の線)に曝露されたネコからの血清のEC50値(希釈倍率として表される)が示されている。
【
図5E】モルモットモデルにおけるワクチン候補の免疫原性研究を示す。
図5Eは、70/71日目に採取した血液からのリンパ球刺激試験(LST)の結果を提供する。精製されたSARS-CoV-2 S1抗原を使用して単離されたリンパ球を刺激し、刺激の96時間後に増殖を測定した。
【
図5F】モルモットモデルにおけるワクチン候補の免疫原性研究を示す。
図5Fは、70/71日目に採取した2倍希釈されたスワブ試料を使用して実施したサロゲートVN試験を提供する。
【
図6A】ネコにおけるワクチン接種-攻撃誘発実験を示す。
図6Aは、動物取扱の概要を提供する:V=ワクチン接種、B=採血、O=中咽頭スワブ、N=鼻洗浄、(all)=すべての動物、(ch)=攻撃誘発された動物のみ、(sen)=歩哨動物のみ。
【
図6B】ネコにおけるワクチン接種-攻撃誘発実験を示す。
図6Bは、ワクチン接種の21および45日後(d.p.v.)にSARS-CoV-2 VN試験を用いて決定された血清中和抗体価を示す。白抜き四角を伴う黒い線は対照ワクチン接種動物における抗体レベルを示し、黒三角を伴う黒い線は非ワクチン接種歩哨動物における抗体レベルを示し、塗りつぶされた四角を伴う灰色の線はスパイク-FCS-2P-VSV抗原によって誘導される抗体価を示す。
【
図6C】ネコにおけるワクチン接種-攻撃誘発実験を示す。
図6Cは、攻撃誘発の日、ワクチン接種の45日後(白抜き四角)および攻撃誘発の12日後(攻撃誘発)または14日後(歩哨)(黒塗りの四角)にSARS-CoV-2 VN試験を用いて決定された血清中和抗体価を示す。
【
図6D】ネコにおけるワクチン接種-攻撃誘発実験を示す。
図6Dは、攻撃誘発の1日後から8日後(d.p.c.)までの中咽頭スワブにおけるpfu/mlでのSARS-CoV-2ウイルス力価を示す白抜きの四角を伴う黒い線は、攻撃誘発された対照ワクチン接種動物におけるウイルス力価を示し、三角を伴う黒い線は、対照ワクチン接種動物と一緒に飼育された非ワクチン接種歩哨動物におけるウイルス力価を示し、塗りつぶされた四角を伴う灰色の線は、スパイク-FCS-2P-VSV抗原でワクチン接種された動物におけるウイルス力価を示し、下向きの三角を伴う黒い線は、スパイク-FCS-2P-VSV抗原でワクチン接種された動物と一緒に飼育された非ワクチン接種歩哨動物におけるウイルス力価を示す。
【
図6E】ネコにおけるワクチン接種-攻撃誘発実験を示す。
図6Eは、攻撃誘発後の鼻腔洗浄におけるプラーク形成単位(pfu)/mlでのSARS-CoV-2ウイルス力価を示す。
図6Eの線および記号は、
図6Dと同じである。
【
図7】野生型SARS-CoV-2スパイク抗原(スパイク-wt)および安定化されたSARS-CoV-2スパイク抗原(スパイク-FCS-2P-VSV)の概略図を提供する。異なるスパイクタンパク質ドメインは、異なる灰色の陰影で示されている。また、フューリン切断部位変異(ΔFCS、R682A/R683A)、2P置換(K986P/V987P)およびTM-CTD置換が示されている。
【
図8】Vero宿主細胞に対するFACSによって試験した場合の、それぞれBCoV由来のキメラスパイクタンパク質の総発現レベルおよび表面発現レベルに対する効果を記載する。
【
図9】Vero宿主細胞に対するFACSによって試験した場合の、それぞれSADS-CoV由来のキメラスパイクタンパク質の総発現レベルおよび表面発現レベルに対する効果を記載する。詳細は実施例11に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明は、ヒト、ネコ科動物およびフェレットなどの哺乳動物において、ニワトリなどのトリ、ブタ、ウシおよびイヌにおいて、コロナウイルスによって引き起こされる疾患の予防を補助する、またはいくつかの場合においては疾患を予防する免疫原性組成物およびワクチンを提供する。さらに、以下の実施例10に示されるように、本発明はさらに、哺乳動物において殺菌免疫を誘導する免疫原性組成物およびワクチンを提供する。
【0059】
本発明の一局面において、コロナウイルスはSARS-CoV-2であり、疾患はヒト、ネコおよび/またはフェレットにおける疾患である。これらのワクチンは、ワクチン接種されたヒト、ネコおよび/またはフェレットに有益であり得るだけでなく、特にネコおよびフェレットの場合には、ネコおよびフェレットがさらに未知の潜在的に有害な変異が生じ得るウイルスの保有宿主になることも防止し得る。さらに、このようなワクチンは、ネコおよび/またはフェレットにおけるSARS-CoV-2のウイルス排出の低下または排除にさえつながり得る。このようなウイルス排出は、ヒトを含む他の動物へのSARS-CoV-2の伝染をもたらし得る。したがって、本発明はさらに、感染した動物からナイーブ動物へのコロナウイルスの伝染を防止する免疫原性組成物およびワクチンを提供する。
【0060】
本発明の別の局面において、コロナウイルスはIBVであり、疾患はニワトリなどの家禽における疾患である。本発明の別の局面において、コロナウイルスはIBVであり、疾患はブタにおける疾患である。この種類の特定の態様において、コロナウイルスはSADS-CoVである。この種類の特定の態様において、コロナウイルスはPEDVであり、疾患はブタにおける疾患である。
【0061】
したがって、本発明は、キメラコロナウイルススパイクタンパク質をコードする組換えベクターを含む免疫原性組成物および/またはワクチン(多価ワクチンを含む)を提供する。ある態様において、キメラコロナウイルススパイクタンパク質は、コロナウイルススパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)、コロナウイルススパイクタンパク質のフューリン切断部位およびコロナウイルススパイクタンパク質の中央ヘリックスを含むが、例えば、コロナウイルススパイクタンパク質のTMDおよびCTDがBVpmの表面糖タンパク質のTMDおよびCTDによって置き換えられている、宿主細胞の細胞膜から出芽する出芽ウイルス(BVpm)の表面糖タンパク質のTMDおよびCTDを含む。この種類の特定の態様において、組換えベクターは組換えBVpmであり、表面糖タンパク質のTMDおよびCTDは、組換えBVpmのウイルス種とは異なるウイルス種に由来する。
【0062】
本発明をより十分に理解するために、以下の定義を提供する。
【0063】
説明における便宜のための単数形の用語の使用は、決してそのように限定することを意図するものではない。したがって、例えば、「ポリペプチド(a polypeptide)」を含む組成物への言及は、そのようなポリペプチドの1つまたは複数への言及を含む。さらに、「アルファウイルスRNAレプリコン粒子」への言及は、特に明記しない限り、複数のこのようなアルファウイルスRNAレプリコン粒子への言及を含む。
【0064】
本明細書で使用される場合、「およそ」という用語は、「約」という用語と互換的に使用され、値が示された値の50%以内であることを意味する、すなわち、1ミリリットル当たり「およそ」1×108個のアルファウイルスRNAレプリコン粒子を含有する組成物は、1ミリリットル当たり5×107~1.5×108個のアルファウイルスRNAレプリコン粒子を含有する。
【0065】
本明細書で使用される場合、「組換えベクター」は、異種遺伝子によってコードされるタンパク質を産生するために、単離された宿主細胞または宿主生物の宿主細胞中に異種遺伝子を導入することができるベクターである。宿主細胞は、標的動物内にあり得る。組換えベクターの例としては、組換え発現ベクターおよび合成メッセンジャーRNAが挙げられる。
【0066】
本明細書で使用される場合、「組換え発現ベクター」は、宿主細胞または宿主生物において適切な条件下で、コードされたタンパク質、例えばキメラコロナウイルススパイクタンパク質の発現を可能にする適切なシグナルを含有する組換えベクターである。組換え発現ベクターの例としては、組換え哺乳動物およびトリウイルス、RNAレプリコンおよびRNAレプリコン粒子を含むDNA発現プラスミドおよび組換えウイルスが挙げられる。
【0067】
DNA発現プラスミドは、異種遺伝子を宿主細胞または宿主生物中に導入して、その異種遺伝子によってコードされるタンパク質を産生するために使用することができる組換え発現ベクターの一種である。次いで、何らかの形質移入の方法によって、例えば、生化学物質を担体として使用して、機械的手段によって、または電気穿孔によって、真核宿主細胞または真核宿主生物中にDNA発現プラスミドを挿入することができる。典型的には、DNA発現プラスミドは宿主細胞のゲノム中への安定な組み込みのためのシグナルを欠くので、異種タンパク質の発現は一過性であろう。その結果、DNA発現プラスミドは、宿主細胞または宿主生物を形質転換または不死化しないであろう。DNA発現プラスミドの例は、pcDNA(商標)、pCR3.1(商標)、pCMV(商標)、pFRT(商標)、pVAX1(商標)、pCI(商標)、Nanoplasmid(商標)、pFRT(商標)およびpCAGGS[Niwa et al.,Gene,108:193-199(1991)]である。
【0068】
本明細書で使用される場合、「RNAレプリコン」という用語は、「レプリコンRNA(replicon RNA)」または「レプリコンRNA(Replicon RNA)」という用語と互換的に使用され、存在すれば、細胞培養物または動物宿主での親ウイルスの増殖の成功を可能にする1つまたは複数の要素(例えば、構造タンパク質のコード配列)を欠く修飾されたRNAウイルスゲノムを指す。適切な細胞状況において、RNAレプリコンはそれ自体を増幅し、1つまたは複数のサブゲノムRNA種を産生し得る。RNAレプリコン粒子とは対照的に、RNAレプリコンはウイルス構造タンパク質でパッケージされておらず、その結果、宿主細胞への侵入効率がより低い。
【0069】
本明細書で使用される場合、「RP」と略される「RNAレプリコン粒子」という用語は、ウイルスに由来する構造タンパク質、例えばカプシドおよび糖タンパク質にパッケージングされたRNAレプリコンである。本明細書で使用される場合、「アルファウイルスRNAレプリコン粒子」という用語は、例えばPushkoら[前出]によって記載されているように、同じくアルファウイルスに由来する構造タンパク質、例えば、カプシドおよび糖タンパク質にパッケージングされたアルファウイルス由来のRNAレプリコンである。RNAレプリコンはアルファウイルス構造成分(例えば、カプシドおよび糖タンパク質)をコードしないので、RNAレプリコン粒子は、(ヘルパープラスミドまたは類似の成分なしに)細胞培養物または動物宿主中で増殖することができない。
【0070】
本明細書で使用される場合、「合成メッセンジャーRNA」または「合成mRNA」という用語は、選択されたタンパク質をコードし、mRNAを安定化させ、タンパク質翻訳を増加させる5’および3’非翻訳領域(UTR)に隣接するmRNAのヌクレオチド配列を含むように構築されている、それにより真核細胞の細胞質中に天然に存在する成熟mRNA分子に類似するmRNAの組換え一本鎖分子を指す。これらの調節配列は、ウイルス遺伝子または真核生物遺伝子に由来し得る。本発明の場合、合成mRNAは、キメラコロナウイルススパイクタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。合成メッセンジャーRNAは、本発明のキメラコロナウイルススパイクタンパク質を合成する過程においてリボソームによって読み取られる。典型的には、合成mRNAの5’-UTRは、天然では転写の開始直後に真核生物メッセンジャーRNAの5’末端に付加される修飾されたグアニンヌクレオチドである5’RNAm7Gキャップなどの「5’キャップ」構造を含む。5’キャップは、5’-5’-三リン酸結合を介して最初の転写されたヌクレオチドに連結されている末端7-メチルグアノシン残基からなり得る。その存在は、リボソームによる認識およびRNaseからの保護にとって極めて重要である。合成mRNAは、典型的には、3’末端におけるポリアデニリル部分のメッセンジャーRNA分子への共有結合である3’ポリA尾部も有する。合成mRNAは、形質移入によって、および/または適切な担体、例えばポリマーもしくはカチオン性脂質を使用することによって、真核生物宿主生物または宿主細胞に送達することができる。mRNA安定性および翻訳の開始のために通常必須であるキャップおよびポリ(A)尾部とは対照的に、天然に存在するmRNA中に見られる他の核外輸送シグナルは専ら細胞質中に存在するように設計されているので、合成mRNAベクターにとって必要ではない。本発明において使用されるべき合成メッセンジャーRNA分子の様々な構造およびそれらの合成に関する詳細は、当技術分野で周知である[例えば、総説Pardi et al.,Nat Rev Drug Discov 17:261-279,doi:10.1038/nrd.2017.243(2018)を参照]。同様に、合成mRNAを細胞質中に直接送達するには、スプライシングされた形態での合成mRNAの合成が必要であり、天然のmRNAにおいて見られる冗長なスプライシングシグナルの可能性が合成mRNAでは省略されることを可能にする[Tolmachov and Tolmachova,Gene Technology,4(1):100017(2015),米国特許第9,428,535号およびSclake et al.RNA Biol.9(11):1319-1330(2012)doi:10.4161/rna.22269を参照]。
【0071】
上で定義された合成mRNAは、裸のmRNA分子の形態であり得、またはmRNA分子が合成mRNA分子の細胞取り込みを促進する1つまたは複数の担体分子と会合し、もしくはそれに複合体化している形態であり得る。この目的のために、多種多様なインビボ形質移入試薬が開発されている(例えば、上記の総説Pardiらを参照されたい。)。
【0072】
本明細書中で使用される場合、「Y1144A」は、配列番号2のアミノ酸配列を含むIBVコロナウイルススパイクタンパク質のアミノ酸配列への修飾を表す。したがって、CTD中の配列番号2の位置1144のチロシン残基(Y)はアラニン残基(A)で置き換えられている。このアミノ酸置換は、IBVコロナウイルススパイクタンパク質のCTD中のER保持シグナルを機能的に除去する。非修飾IBVコロナウイルススパイクタンパク質では、ER保持シグナルは、スパイクタンパク質をERまたは他の細胞内区画中に保持するのに役立つ。
【0073】
本明細書で使用される場合、宿主細胞の細胞膜から出芽する出芽ウイルスは、「BVpm」と表記され、細胞膜から優先的に出芽するが、小胞体(ER)、小胞体-ゴルジ中間区画およびトランスゴルジネットワークのような細胞内区画からはあまり優先的に出芽しないこともあり得るウイルスである。したがって、BVpmは、宿主細胞の細胞膜から出芽することによって宿主細胞から自然に出るウイルスである。宿主細胞の細胞膜からのこのような出芽は、BVpmが宿主細胞から出ることを可能にし、ウイルスの外側エンベロープを形成するためにウイルスタンパク質が濃縮された宿主由来の膜を獲得しなければならないエンベロープを有するウイルスによって主に使用される。本発明のBVpmは、好ましくは動物ウイルス、例えばトリまたは哺乳動物ウイルスである。BVpmの例は、VSV、インフルエンザウイルス、NDV、HIV、ラッサウイルス、エボラウイルスおよびMVである。注意すべきことに、コロナウイルスはBVpmではない。コロナウイルススパイクタンパク質は、CTD中にER保持シグナルを含有し、ER保持シグナルはスパイクタンパク質をERまたは他の細胞内区画中に保持する[Welsch et al.,Febs Letters 581:2089-2097(2007)、およびWinter et al.,J.Virol.82(6):2765-27771(2008)を参照]。
【0074】
TMDおよびCTDを含むBVpm表面糖タンパク質に関する詳細な構造情報は、NCBIゲノムデータベース、UniProtおよびEMBL/GenBankなどの様々な公開の核酸およびタンパク質配列データベースに見出すことができる。
【0075】
「に由来する(originate from)」、「に由来する(originates from)」および「に由来する(originating from)」という用語は、所与のタンパク質またはそのタンパク質の一部およびそれを自然にコードする病原体またはその病原体の株に関して互換的に使用され、本明細書で使用される場合、その病原体またはその病原体の株によってコードされるその所与のタンパク質またはそのタンパク質の一部の修飾されていないおよび/または切断されたアミノ酸配列を意味する。病原体に由来するタンパク質またはそのタンパク質の一部に対する本発明の核酸構築物内のコード配列は、そのタンパク質の対応する配列が由来する病原体または病原体の株(天然に弱毒化された株を含む)中のそのタンパク質の対応する配列と比較して、発現されたタンパク質のアミノ酸配列の修飾および/または切断をもたらすように遺伝子操作されていてもよい。
【0076】
ウイルスの「表面糖タンパク質」は、宿主の膜上の受容体部位を同定し、これに結合する役割を果たすウイルスエンベロープの表面上に見られる糖タンパク質である。次いで、ウイルスエンベロープは宿主の膜と融合し、カプシドおよびウイルスゲノムが宿主に侵入して感染することを可能にする。表面糖タンパク質の例としては、コロナウイルスのスパイクタンパク質および水疱性口内炎ウイルスの表面糖タンパク質が挙げられる。
【0077】
VSVは、狂犬病ウイルスを含むラブドウイルス科に属する非分節型マイナス鎖RNAウイルスである。VSVは、極性上皮細胞の基底外側表面から優先的に出芽する。この出芽選好は、その糖タンパク質の基底外側局在化と相関する[例えば、Drokhlyansky et al.,J.Virol.,89(22):11718-11722(2015)を参照]。このような細胞膜出芽は、ウイルスが宿主細胞から出ることを可能にし、ウイルスの外側エンベロープを形成するためにウイルスタンパク質が濃縮された宿主由来の膜を獲得しなければならないエンベロープを有するウイルスによって主に使用される。
【0078】
IBVはコロナウイルスである、すなわち、ガンマコロナウイルス属、コロナウイルス科、ニドウイルス目のメンバーである。IBV S糖タンパク質、すなわちスパイクタンパク質は、約1162のアミノ酸残基を含み、2つのサブユニットS1(約535アミノ酸残基および約90kDaのMW)およびS2(約627アミノ酸残基および約84kDaのMW)に切断される。C末端S2サブユニットは、N末端S1サブユニットと非共有結合的に会合し、膜貫通ドメインおよびC末端細胞質尾部ドメインを含有する。S1サブユニットは、スパイクタンパク質の受容体結合活性を含む。さらに、IBVスパイクタンパク質は、ニワトリに接種された場合に、防御免疫応答の誘導に関与する[総説については、Cavanagh,Vet.Res.38:281-297(2007)を参照;欧州特許出願公開第0423869号;国際公開第2004/078203号;および国際公開第2012/110745号も参照]。
【0079】
SARS-CoV-2は、ニドウイルス目のコロナウイルス科のベータコロナウイルス属のメンバーである。コロナウイルスのスパイクタンパク質は、宿主受容体の特定の細胞外ドメインに結合することによってウイルスの指向性を決定する、ウイルスの表面から突出する大きな糖タンパク質である。ヒトアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)は、SARS-CoV-2およびSARS-CoVスパイクタンパク質の両方に対する宿主受容体として働く。コロナウイルスゲノムの最も可変な部分は、コロナウイルススパイクタンパク質のRBDである。しかしながら、注目すべきことに、RBDの6つの極めて重要なアミノ酸残基のうちの5つは、SARS-CoV-2スパイクタンパク質とSARS-CoVスパイクタンパク質との間で異なる。SARS-CoV-2スパイクタンパク質はスパイクタンパク質の2つのサブユニット、S1およびS2の接合部に多塩基性切断部位(RRAR、配列番号13)を含むのに対して、SARS-CoVスパイクタンパク質は含まないことにより、SARS-CoV-2スパイクタンパク質は、SARS-CoVスパイクタンパク質とさらに異なる[Andersen et al.,Nature Medicine 26:450-455(2020)を参照]。この多塩基性切断部位は、プロテアーゼによる効果的な切断を可能にし、これはSARS-CoV-2の感染力において役割を果たす。SARS-CoVのように、他のヒトベータコロナウイルスのいくつかのスパイクタンパク質はこのような構造を含むので、多塩基性切断部位はSARS-CoV-2スパイクタンパク質に特有ではないが、最も密接に関連するコウモリコロナウイルスのスパイクタンパク質も、この多塩基性切断部位を含むことは見出されていない。TMDおよびCTDを含む、動物およびヒトコロナウイルスのスパイクタンパク質に関する詳細な構造情報は、NCBIゲノムデータベース、UniProtおよびEMBL/GenBankなどの様々な公開の核酸およびタンパク質配列データベースに見出すことができる。
【0080】
本明細書で使用される場合、「膜貫通ドメイン」または「TMD」は、細胞膜中に挿入されるかまたは挿入されるべきタンパク質の疎水性領域である。タンパク質の膜貫通ドメインのいずれかの側の一部は、膜の反対側にある。[例えば、The Senses:A Comprehensive Reference,Masland et al.,editors;第2版(2008)を参照]。コロナウイルススパイクタンパク質の膜貫通ドメインは、カルボキシ末端部分の近く、このタンパク質のカルボキシ末端にある細胞質尾部のすぐ隣に存在する。動物およびヒトコロナウイルスのスパイクタンパク質のTMDに関する詳細な構造情報は、NCBIゲノムデータベース、UniProtおよびEMBL/GenBankなどの様々な公開の核酸およびタンパク質配列データベースに見出すことができる。
【0081】
本明細書で使用される場合、「C末端ドメイン」または「CTD」という用語は、「細胞質尾部」または「CT」という用語と互換的に使用され、細胞質中に突出する、エンベロープを有するウイルスの表面糖タンパク質、例えばコロナウイルスのスパイクタンパク質の一部である。I型膜糖タンパク質のCTDは、表面糖タンパク質のカルボキシ末端にある。動物およびヒトコロナウイルスのスパイクタンパク質のCTDに関する詳細な構造情報は、NCBIゲノムデータベース、UniProtおよびEMBL/GenBankなどの様々な公開の核酸およびタンパク質配列データベースに見出すことができる。
【0082】
本明細書で使用される場合、略語「2P」は、エンベロープを有するウイルスの表面糖タンパク質、例えばコロナウイルスのスパイクタンパク質の中央ヘリックスの最初の2つの連続するアミノ酸残基を置換して原型前融合立体構造における表面糖タンパク質をさらに安定化する一対の連続するプロリン残基を表す。[Pallesen et al.,前出を参照]。
【0083】
「キメラタンパク質」は、2つ以上のタンパク質の一部から構成されるタンパク質である[例えば、McQueen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,83:9318-9322(1986)を参照]。
【0084】
本明細書で使用される場合、「キメラコロナウイルススパイクタンパク質」は、コロナウイルススパイクタンパク質(CSP)の一部およびBVpmの表面糖タンパク質の一部から構成されるタンパク質、例えば、コロナウイルススパイクタンパク質のTMDおよびCTDに代わるBVpmの表面糖タンパク質からのTMDおよびCTDとともに、コロナウイルススパイクタンパク質の2つのサブユニット:コロナウイルススパイクタンパク質の受容体結合ドメインを含むS1およびS2を含む組換えタンパク質である。特定の態様において、BVpmは水疱性口内炎ウイルスである。
【0085】
本明細書で使用される場合、例えば、配列番号12のアミノ酸残基14~1211のように、所定のアミノ酸配列に対してアミノ酸残基の特定の範囲が与えられているパーセント同一性決定を行うことに関する「アミノ酸残基の同じ範囲にわたって」という用語は、そのパーセント同一性の決定がその特定のアミノ酸範囲にわたって行われることを示す。
【0086】
本明細書で使用される場合、コロナウイルススパイクタンパク質の「フューリン切断部位」は、IBVおよびSARS-CoV-2のスパイクタンパク質を含む多くのコロナウイルススパイクタンパク質の感染力において役割を果たすプロテアーゼ、例えば宿主細胞のフューリンによる効果的な切断を可能にする多塩基性フューリン切断部位である[Andersen et al.,Nature Medicine 26:450-455(2020)を参照]。注目すべきことに、他のヒトベータコロナウイルスのいくつか、例えばSARS-CoVのスパイクタンパク質はこのような構造を含まず、最も密接に関連するコウモリコロナウイルスのスパイクタンパク質も、この多塩基性切断部位を含むことは見出されていない。
【0087】
本明細書で使用される場合、コロナウイルススパイクタンパク質の「不活化されたフューリン切断部位」または「ΔFCS」は、宿主細胞のフューリンプロテアーゼによる切断を受けにくいように遺伝子改変されたコロナウイルススパイクタンパク質のフューリン切断部位である。以下の例では、IBVのスパイクタンパク質についてフューリン切断部位が不活化されている、すなわち、配列番号4および6の位置533~537のアミノ酸残基RRFRRがAAFAA(配列番号14)に変異され、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質についてフューリン切断部位が不活化されており、配列番号8および10の位置682~685のアミノ酸残基RRARがAAAR(配列番号15)に変異された。
【0088】
「非SARS-CoV-2」という用語は、病原体および/または抗原もしくはその免疫原性断片などの用語を修飾して、それぞれの病原体および/または抗原がSARS-CoV-2でもSARS-CoV-2タンパク質抗原またはその免疫原性断片でもないこと、および非SARS-CoV-2抗原がSARS-CoV-2に由来しないことを表すために使用される。
【0089】
「非IBV」という用語は、病原体および/または抗原もしくはその免疫原性断片などの用語を修飾して、それぞれの病原体および/または抗原がIBVでもIBVタンパク質抗原またはその免疫原性断片でもないこと、および非IBV抗原がIBVに由来しないことを表すために使用される。
【0090】
本明細書で使用される場合、「改変生」および「弱毒化」という用語は、所与の生きたウイルスおよび/または生きた微生物に関して交換可能に使用される。
【0091】
本明細書で使用される場合、「保護する」、および/または「~に保護を提供する」、および/または「~に防御免疫を誘発する」、および/または「疾患の予防を補助する」、および/または「保護を補助する」、および/または「ウイルス量を低下させる」、および/または「ウイルス血症を軽減する」という用語は、感染の任意の徴候からの完全な保護を必要としない。例えば、「保護を補助する」は、攻撃誘発後に、根底にある感染の症候が少なくとも軽減され、および/もしくはウイルス排出の軽減を補助するように保護が十分であること、ならびに/または症候を引き起こす根底にある細胞的、生理学的もしくは生化学的原因もしくは機構の1つもしくは複数が軽減および/もしくは除去されることを意味し得る。この文脈で使用される「軽減した」とは、感染の生理学的状態だけでなく、感染の分子的状態を含む感染の状態に対する比較を意味することが理解される。
【0092】
本明細書で使用される場合、「ワクチン」は、典型的には水を含有する液体などの薬学的に許容され得る担体と組み合わされた1つまたは複数の抗原を含む、動物、例えばニワトリまたはネコ科動物(動物という用語は、ある態様においてはヒトを含むが、他の態様においては明確にヒトを除外する)への適用に適した組成物であり、動物に投与すると、野生型ウイルスおよび/または野生型微生物による感染から生じる疾患からの保護を最小限補助するのに十分強力な、すなわち、疾患の予防を補助し、および/または疾患を予防、改善もしくは治癒するのに十分強力な免疫応答を誘導する。
【0093】
本明細書で使用される場合、「殺菌免疫」は、SARS-CoV-2(またはその特定の株)などの特定の疾患を引き起こす病原体の検出可能な複製を防止し、したがってその特定の疾患を引き起こす病原体による動物における生産的感染の確立を防止する免疫の種類である。
【0094】
本明細書で使用される場合、ワクチン接種を通じて、動物において、SARS-CoV-2(またはその特定の株)などの特定の疾患を引き起こす病原体に対して「殺菌免疫を誘導する」ワクチンは、ワクチン接種の結果として、ワクチン接種された動物がその特定の疾患を引き起こす病原体に対する殺菌免疫を達成することを意味する。殺菌免疫を誘導するには、1回より多くのワクチン投与が必要であることがあり得る。
【0095】
本明細書で使用される場合、「コロナウイルスの伝染を予防する」ワクチンは、ワクチン接種された動物におけるSARS-CoV-2(またはその特定の株)などの特定の疾患を引き起こす病原体に対する免疫応答が、特定の疾患を引き起こす病原体の任意の排出が他の動物において疾患を引き起こすのに不十分である程度まで、ワクチン接種された動物におけるその特定の疾患を引き起こす病原体の複製の量を低下させることを意味する。
【0096】
本明細書で使用される場合、「哺乳動物」という用語は、子供が母親の特別な乳腺からの乳によって栄養を与えられる脊椎動物である。哺乳動物の例としては、ヒト、イヌ、ネコ科動物、ヒツジ、フェレットおよびブタが挙げられる。
【0097】
本明細書で使用される場合、「イヌ」という用語は、特に明記しない限り、すべての家畜犬、カニス・ルプス・ファミリアリス(Canis lupus familiaris)またはカニス・ファミリアリス(Canis familiaris)を含む。
【0098】
本明細書で使用される場合、「ネコ科動物」という用語は、ネコ科(Felidae family)の任意のメンバーを指す。この科のメンバーには、ネコ亜科の任意のメンバー、例えば、ネコ、ライオン、トラ、ピューマ、ジャガー、レパード、ユキヒョウ、ヒョウ、北アメリカマウンテンライオン、チーター、オオヤマネコ、ボブキャット、カラカルまたはこれらの任意の雑種などの、野生、動物園および家庭のメンバーが含まれる。ネコには、純血種および/または雑種のペットネコ、ショーキャット、研究用ネコ、クローンネコおよび野生のまたは野生化したネコを含むイエネコ(フェリス・カトゥス(Felis catus))も含まれる。
【0099】
本明細書で使用される場合、「フェレット」は、イタチ科(mustelid family)に属する哺乳動物の1つである哺乳動物である。
【0100】
典型的には、本発明のワクチンは、コロナウイルスからのワクチン接種された動物の保護を補助する、例えば、SARS-CoV-2からのヒトもしくはネコ科動物の保護を補助する、ネコ科動物もしくはフェレットにおけるウイルスの排出の防止を補助する、またはIBVからのトリの保護を補助する有効な量、すなわち「有効量」で投与される。
【0101】
本明細書で使用される場合、多価ワクチンは、2つ以上の異なる抗原を含むワクチンである。この種類の特定の態様において、多価ワクチンは、2つ以上の異なる病原体に対してレシピエントの免疫系を刺激する。
【0102】
「アジュバント」および「免疫刺激物質」という用語は、本明細書では互換的に使用され、免疫系の刺激を引き起こす1つまたは複数の物質として定義される。この文脈において、アジュバントは、1つまたは複数のワクチン抗原/単離物に対する免疫応答を増強するために使用される。したがって、「アジュバント」は、特定の抗原に対する免疫応答を非特異的に増加させ、これにより任意の所与のワクチンにおいて必要な抗原の量および/または関心対象の抗原に対する十分な免疫応答を生成するために必要な注射の頻度を低下させる作用物質である。この文脈において、アジュバントは、1つまたは複数のワクチン抗原/単離物に対する免疫応答を増強するために使用される。
【0103】
本明細書で使用される場合、「アジュバントを含まないワクチン」は、アジュバントを含有しないワクチンまたは多価ワクチンである。
【0104】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る」という用語は、修飾される名詞が医薬品における使用に適していることを意味するために形容詞的に使用される。例えば、医薬ワクチン中の賦形剤を記載するためにこの用語を使用する場合、この用語は、組成物の他の成分と適合性であり、意図されたレシピエント動物、例えばネコ科動物に対して不都合に有害ではないものとして賦形剤を特定する。
【0105】
「担体」という用語は、組換えベクター、例えばアルファウイルスRNAレプリコン粒子が一緒に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルを指す。薬学的に許容され得る担体は、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの、石油、動物、植物または合成起源のものを含む水および/または油などの無菌の液体であり得る。水または水溶液の生理食塩水および糖水溶液、例えばデキストロースおよび/またはグリセロール溶液を、特に注射用溶液のための担体として使用することができる。アジュバントを含まないワクチンの場合、担体はアジュバントではあり得ない。
【0106】
「非経口投与」には、皮下注射、粘膜下注射、静脈内注射、筋肉内注射、皮内注射、経口、鼻腔内および注入が含まれる。
【0107】
本明細書で使用される場合、特定のタンパク質(例えば、タンパク質抗原)に関する「免疫原性断片」という用語は、免疫原性である、すなわち免疫グロブリン(抗体)またはT細胞抗原受容体などの免疫系の抗原認識分子と特異的に相互作用することができるそのタンパク質の断片である。好ましくは、本発明の免疫原性断片は、抗体および/またはT細胞受容体認識に対して免疫優性である。特定の態様において、所与のタンパク質抗原に関する免疫原性断片は、完全長タンパク質SARS-CoV-2スパイクタンパク質またはIBVスパイクタンパク質の抗原性の少なくとも25%を保持するそのタンパク質の断片である。好ましい態様において、免疫原性断片は、完全長タンパク質SARS-CoV-2スパイクタンパク質またはIBVスパイクタンパク質の抗原性の少なくとも50%を保持する。さらに好ましい態様において、免疫原性断片は、完全長タンパク質SARS-CoV-2スパイクタンパク質またはIBVスパイクタンパク質の抗原性の少なくとも75%を保持する。免疫原性断片は、完全長キメラスパイクタンパク質の少なくとも1つの保存された領域を含む100アミノ酸残基以上であり得、またはその一方で、完全長タンパク質からわずかに単一のアミノ酸が喪失した大きな断片であり得る。特定の態様において、免疫原性断片は、完全長タンパク質キメラスパイクタンパク質の125~1000アミノ酸残基を含む。他の態様において、免疫原性断片は、完全長キメラスパイクタンパク質の250~750アミノ酸残基を含む。
【0108】
本明細書で使用される場合、両配列のアミノ酸残基が同一である場合に、1つのアミノ酸配列は第2のアミノ酸配列に対して100%「同一」であり、または100%の「同一性」を有する。したがって、2つのアミノ酸配列のアミノ酸残基の50%が同一である場合に、アミノ酸配列は第2のアミノ酸配列に対して50%「同一」である。配列比較は、所与のタンパク質、またはキメラタンパク質の場合には、比較されているポリペプチドの一部によって含まれるアミノ酸残基の連続するブロックにわたって行われる。
【0109】
したがって、本発明のキメラコロナウイルススパイクタンパク質の同一性パーセントは、キメラスパイクタンパク質中の異なるタンパク質のそれぞれについて個別に行われる。例えば、(i)IBVスパイクタンパク質のTMDおよびCTDを除くIBVスパイクタンパク質のすべて、ならびに(ii)水疱性口内炎ウイルスの表面タンパク質のTMDおよびCTDのみから構成される本発明のキメラコロナウイルススパイクタンパク質の場合には、IBVスパイクタンパク質に対するアミノ酸配列比較は、(一般にシグナル配列を含まない)IBVスパイクタンパク質に由来するキメラコロナウイルススパイクタンパク質のアミノ酸配列にわたって行われ、水疱性口内炎ウイルスの表面タンパク質に対するアミノ酸配列比較は、水疱性口内炎ウイルスタンパク質の表面タンパク質に由来するキメラコロナウイルススパイクタンパク質のアミノ酸配列にわたって行われる。ここでも、コロナウイルススパイクタンパク質の一部のパーセント同一性の決定は、タンパク質の対応する一部によって含まれるアミノ酸残基の連続するブロックにわたって行われる。
【0110】
特定の態様において、さもなければ2つのアミノ酸配列間の対応関係を変化させ得る選択された欠失または挿入が考慮される。重要なことに、本発明のキメラコロナウイルススパイクタンパク質の所定のアミノ酸配列と所定のパーセント(%)またはそれを超える同一性を有するキメラコロナウイルススパイクタンパク質は、キメラコロナウイルススパイクタンパク質のその所定のアミノ酸配列の特定の機能的特性を保持しなければならない。したがって、キメラコロナウイルススパイクタンパク質のフューリン切断部位が不活化されている、本発明のキメラコロナウイルススパイクタンパク質の所定のアミノ酸配列とパーセント(%)またはそれを超える同一性を有するキメラコロナウイルススパイクタンパク質は、全体のアミノ酸配列の残りの可変性にかかわらず、不活化された切断部位を有するという特性を保持しなければならない。同様に、コロナウイルススパイクタンパク質の中央ヘリックスの最初の2つの連続するアミノ酸残基の一対のプロリン残基(2P)による置換によって、前融合状態においてさらに安定化されているキメラコロナウイルススパイクタンパク質は、全体のアミノ酸配列の残りの可変性にかかわらず、プロリン残基のこの対を保持しなければならない。
【0111】
本明細書で使用される場合、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列のパーセント同一性は、整列初期設定パラメータおよび同一性の初期設定パラメータを用いて、C、MacVector(商標)(MacVector,Inc.Cary,NC 27519)、Vector NTI(商標)(Informax,Inc.MD)、Oxford Molecular Group PLC(1996)およびClustal Wアルゴリズムを使用して決定することができる。同じまたは類似の初期設定パラメータを使用して配列類似性を決定するために、これらの市販のプログラムを使用することもできる。あるいは、例えば、初期設定パラメータを使用するGCG(Genetics Computer Group、Program Manual for the GCG Package、Version 7、Madison、Wisconsin)Pileupプログラムを使用して、初期設定フィルター条件下でのAdvanced Blast検索を使用することができる。
【0112】
本発明において、「不活化された」ウイルスまたは微生物は、動物において免疫応答を誘発することができるが、動物に感染することはできないウイルスまたは微生物である。例えば、不活化されたSARS-CoV-2は、バイナリーエチレンイミン、ホルマリン、β-プロピオラクトン、チメロサールまたは熱からなる群から選択される因子によって不活化され得る。
【0113】
組換えベクター
「ベクター」は、宿主細胞中などの適切な条件下でその発現を可能にするための適切なシグナルとともに、ポリペプチドをコードするための遺伝情報(ヌクレオチド配列)を保有する分子構造として本発明の分野で周知である。本発明について、「発現」は、転写および/または翻訳による遺伝情報からのタンパク質の発現の周知の原理に関する。DNAまたはRNAのような核酸分子から、ウイルス様粒子およびレプリコン粒子などのより複雑な構造、組換えウイルスベクターなどの複製する組換え微生物にまで及ぶ、組換えベクターの多くの種類およびバリアントが公知であり、本発明において使用することができる。使用されるベクターの種類に応じて、シス(すなわち、組換えベクター自体の中に提供される)またはトランス(すなわち、別個の供給源から提供される)のいずれかで、より多くのまたはより少ない発現シグナルを提供する必要がある。
【0114】
本発明の「組換えベクター」は、その遺伝的構成がその天然の対応物の遺伝的構成と完全には一致しないベクターである。したがって、このようなベクターは、典型的には分子クローニングおよび組換えタンパク質発現技術によるその遺伝情報のインビトロ操作によって変更された分子構成を有する。行われた変更は、ベクターおよび/またはベクターが発現するタンパク質の発現、操作、精製、安定性および/または免疫学的挙動を提供し、改善し、または適合させる役割を果たすことができる。これらおよび他の技術は、標準的なテキストブック[Sambrook and Russell,“Molecular cloning:a laboratory manual:Cold Spring Harbour Laboratory Press(2001);ISBN:0879695773);Ausubel et al.,in:Current Protocols in Molecular Biology,(J.Wiley and Sons Inc,NY,(2003),ISBN:047150338X);Dieffenbach and Dveksler:“PCR primers:a laboratory manual”(CSHL Press,ISBN 0879696540);およびBartlett and Stirling,“PCR Protocols”,(Humana press,ISBN:0896036421)]において極めて詳細に説明されている。
【0115】
組換えベクターの1つの種類は組換え発現ベクターであり、これには、主にニワトリワクチンにおいて使用される、組換えHVTベクターなどの組換えウイルスベクター[例えば、米国特許第5,853,733号を参照]、およびより幅広い範囲の動物対象を有するRNAレプリコン粒子[例えば、Pushko et al.,前出を参照]が含まれる。
【0116】
組換えシチメンチョウのヘルペスウイルスベクター
クローニングされた重複するサブゲノム断片の同時形質移入によってヘルペスウイルスを生成できることが、仮性狂犬病ウイルスに対して最初に実証された[van Zijl et al.,J.Virology 62:2191-2195(1988)]。その後、この手順は、組換えHVTベクターを構築するために使用され[組換えHVTベクターの構築に関して開示された方法に関して参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,853,733号を参照]、本発明のキメラコロナウイルススパイクタンパク質をコードする組換えHVTベクターを構築するために使用することができる。この方法では、標準的な組換えDNA技術[Maniatis et al.,(1982)Molecular Cloning,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(1982);およびSambrook et al.,Molecular Cloning,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(1989)]を利用して構築されたいくつかの大きな重複するサブゲノム断片として細菌ベクター中に、HVTゲノム全体がクローニングされる。HVT株FC126コスミドライブラリーは、コスミドベクターpWE15(Stratagene、Santa Clara、CAの現Agilent Technologies)中にクローニングされた剪断されたウイルスDNAに由来した。さらに、酵素BamHIでの制限消化によっていくつかの大きなゲノムDNA断片を単離し、pWE15またはプラスミドベクターpSP64(Promeg、Madison WI)のいずれかにクローニングした。米国特許第5,853,733号に記載されているように、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)細胞中へのこれらの断片の同時形質移入は、断片の重複する領域にわたる相同組換えによって媒介されるHVTゲノムの再生をもたらす。同時形質移入の前にサブゲノム断片の1つまたは複数中に挿入が直接操作されれば、この手順は、挿入を含有するウイルスの高い頻度をもたらす。例えば、FC126HVTを生成するために5つの重複するサブゲノムクローンが必要とされ、一連のHVT/NDV/ILTV組換えウイルスを作製するための基礎としての役割を果たした[米国特許第8,932,064号を参照]。コスミド再生組換えHVT構築物は、本質的に米国特許第5,853,733号に記載されているように行うことができる[例えば、米国特許第5,853,733号の
図8を参照]。あるいは、CRISPR/Cas9系を用いて、所望の組換えトリヘルペスウイルスウイルスを構築することもできる[Tang et al.,Vaccine,36(5):716~722(2018)を参照]。
【0117】
組換えRNAウイルス、RNAレプリコンおよびRNAレプリコン粒子
RNAウイルスは、それらのゲノム中に遺伝子操作された、ワクチン抗原をコードするヌクレオチド、例えば、本発明のキメラコロナウイルススパイクタンパク質をコードするヌクレオチド配列を導入するためのベクタービヒクルとして使用することができる。しかしながら、これまでのRNAウイルスの使用は、主にウイルス抗原をRNAウイルス中に組み込み、次いでウイルスをレシピエント宿主中に導入することに限定されてきた。その結果、組み込まれたウイルス抗原に対する保護抗体が誘導される。アルファウイルスRNAレプリコン粒子は、病原性抗原をコードするために使用されてきた。このようなアルファウイルスレプリコンプラットフォームは、VEEV[Pushko et al.,前出]、シンドビス(SIN)[Bredenbeek et al.,Journal of Virology 67:6439-6446(1993)その内容はその全体が本明細書に組み入れられる]、およびセムリキ森林ウイルス(SFV)[Liljestrom and Garoff,Biotechnology(NY)9:1356-1361(1991)、その内容はその全体が本明細書に組み入れられる]を含むいくつかの異なるアルファウイルスから開発されてきた。さらに、アルファウイルスRNAレプリコン粒子は、ブタおよび家禽用のいくつかのUSDA認可ワクチンの基礎である。これらには、ブタ流行性下痢ワクチン、RNA粒子(製品コード19U5.P1)、ブタインフルエンザワクチン、RNA(製品コード19A5.D0)、トリインフルエンザワクチン、RNA(製品コード19O5.D0)および処方製品、RNA粒子(製品コード9PP0.00)が含まれる。
【0118】
本発明のアルファウイルスRNAレプリコン粒子は、凍結乾燥され、無菌水希釈剤で再水和され得る。他方、アルファウイルスRNAレプリコン粒子が別々に保存されるが、投与前に他のワクチン成分と混合されることが意図される場合、アルファウイルスRNAレプリコン粒子は、それらの成分の安定化溶液、例えば高スクロース溶液中に保存することができる。
【0119】
したがって、本発明の一局面において、ワクチンは、VEEVのカプシドタンパク質および糖タンパク質を含むアルファウイルスRNA RPを含む。さらにより具体的な態様において、ワクチンは、VEEVの非病原性TC-83株のカプシドタンパク質および糖タンパク質を含み、キメラコロナウイルススパイクタンパク質をコードするアルファウイルスRNA RPを含む。キメラコロナウイルススパイクタンパク質をコードするアルファウイルスRNAレプリコン粒子を含む免疫原性組成物および/またはワクチン(多価ワクチンを含む)は、アジュバントの存在下または非存在下で投与することができる。ある態様において、免疫原性組成物および/またはワクチンはヒト用である。他の態様において、免疫原性組成物および/またはワクチンは、ネコ科動物用である。さらに他の態様において、免疫原性組成物および/またはワクチンはフェレット用である。さらに他の態様において、免疫原性組成物および/またはワクチンはニワトリ用である。ワクチンおよび/または免疫原性組成物を単独で、または他の保護剤と組み合わせて作製および使用する方法も提供される。
【0120】
プロモーター
本発明の組換えウイルスベクター中のタンパク質抗原をコードする異種遺伝子の発現を駆動するために、所与の組換えベクター、例えば組換えウイルスベクターの天然のプロモーターを使用することとは別に、多くの代替のプロモーター、例えば、仮性狂犬病ウイルス(PRV)gpXプロモーター[国際公開第87/04463号 を参照]、ラウス肉腫ウイルスLTRプロモーター、SV40初期遺伝子プロモーター、ヒトサイトメガロウイルス前初期1(hCMV IE1)遺伝子プロモーター[米国特許第5,830,745号;米国特許第5,980,906号]およびニワトリβ-アクチン遺伝子プロモーター[欧州特許公開第1298139号]を組換えウイルスベクター中で使用することもできる。コードするヌクレオチド配列の転写を終結させるために、ヌクレオチドコード領域の下流にポリアデニル化調節エレメントを含めることがしばしば必要とされる。したがって、多くの遺伝子は、それらのコード配列の下流端にポリアデニル化調節エレメントを含む。多くのこのような調節エレメントが同定されており、本発明の組換え発現ベクターにおいて使用することができる。
【0121】
合成メッセンジャーRNA
本発明のキメラコロナウイルススパイクタンパク質をコードする合成mRNAの作製は、例えばMegaScript(登録商標)T7RNAポリメラーゼおよびキャップ類似体を使用するインビトロランオフ転写の前に、制限酵素を使用するプラスミドDNA直鎖化によって開始することができる。(この過程は、RNAレプリコン産生において見られるRNA転写のために使用される過程に類似している)。合成mRNA分子は、RNAseから保護されるように、および真核細胞中での効率的な送達のためにパッケージングされるべきである。送達のために、カチオン性ポリマー、デンドリマー、または脂質ナノ粒子(LNP)などの異なる技術を使用することができる。[例えば、Pardi et al.,上記を参照]組換えベクターとして使用するための合成mRNAは、機械的もしくは化学的手段によること、形質移入によること、またはタンパク質、多糖、カチオン性脂質もしくはポリマーなどの適切な(ナノ粒子)担体で包むことを含む多くの方法で、その標的動物または宿主細胞に送達することができる。合成mRNAを安定化するために、例えばヌクレオチドに、それらの骨格に、またはヌクレオチド類似体の組み込みによって、ある種の化学修飾が適用され得る。[例えば、米国特許第9,447,164号を参照]
ワクチンおよび多価ワクチン
本発明はさらに、本発明の組換えベクターと薬学的に許容され得る担体とを含むワクチンを提供する。本発明の一局面において、ワクチンは、SARS-CoV-2による感染からの、ヒト、ネコ科動物またはフェレットの保護を補助する。この種類の特定の態様において、ワクチンは、ネコ科動物におけるSARS-CoV-2の排出を低減させることを補助する。本発明はさらに、フェレットにおけるSARS-CoV-2の排出を低減させることを補助するワクチンを提供する。他の態様において、ネコ科動物ワクチンは、感染したネコ科動物における1つまたは複数の臨床徴候の重症度を軽減させることを補助する。さらに他の態様において、フェレットワクチンは、感染したフェレットにおける1つまたは複数の臨床徴候の重症度を軽減させることを補助する。さらに他の態様において、ワクチンは、ニワトリの保護を補助する。
【0122】
本発明はまた、多価ワクチンおよび免疫原性組成物を提供する。哺乳動物またはトリ免疫原性組成物またはワクチンにおいて有用な任意の抗原またはこのような抗原の組み合わせを、本発明の任意のそれぞれの哺乳動物ワクチンもしくは免疫原性組成物、またはトリワクチンもしくは免疫原性組成物にそれぞれ添加することができる。このような多価ワクチンおよび/または免疫原性組成物は、本発明に含まれる。特定の態様において、多価ワクチンは、キメラSARS-CoV-2スパイクタンパク質および1つもしくは複数の他のSARS-CoV-2タンパク質抗原、および/もしくは1つもしくは複数の非SARS-CoV-2タンパク質抗原をコードするアルファウイルスRNA RPを含み、ならびに/または例えば1つもしくは複数の他のSARS-CoV-2タンパク質抗原、および/もしくは1つもしくは複数の非SARS-CoV-2タンパク質抗原をコードする1つもしくは複数の追加のアルファウイルスRNAレプリコン粒子をさらに含む。同様の態様において、1つまたは複数のキメラコロナウイルススパイクタンパク質、例えばキメラIBVスパイクタンパク質をコードするアルファウイルスRNA RPを含む多価ワクチンは、例えば1つまたは複数の他の1つまたは複数の非IBVタンパク質抗原をコードする1つまたは複数の追加のアルファウイルスRNAレプリコン粒子をさらに含む。
【0123】
したがって、本発明のキメラIBVスパイクタンパク質をコードする組換えベクターを含む本発明のトリワクチンは、非IBV病原体に対する防御免疫を誘発するための少なくとも1つの非IBV抗原をさらに含むことができる。この種類のある態様において、ワクチンは、非IBV病原体に由来する少なくとも1つの抗原またはその免疫原性断片をコードするヌクレオチド配列を含む組換えベクターをさらに含む。この種類の特定の態様において、組換えベクターはHVTである。代替の態様において、組換えベクターはVEEV RNAレプリコン粒子である。
【0124】
したがって、ある態様において、組換えベクターは、1つまたは複数の他の抗原をさらにコードする組換えウイルスベクターである。この種類の特定の態様において、組換えウイルスベクターは、第2のIBVタンパク質抗原をさらにコードする。より特定の態様において、第2のIBVタンパク質抗原は、第1のキメラIBVスパイクタンパク質が由来するIBVとは異なるIBVの株に由来するIBVスパイクタンパク質を含む第2のキメラIBVスパイクタンパク質である。他の態様において、組換えベクターは、必要に応じて第2のキメラIBVスパイクタンパク質と一緒に第1のキメラIBVスパイクタンパク質、および非IBV由来の1つまたは複数の抗原をコードすることができる。ある態様において、非IBV抗原は、NDV抗原である。この種類のある態様において、NDV抗原は、Fタンパク質である。さらに他の態様において、非IBV抗原は、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBDV)抗原である。この種類のある態様において、IBDV抗原は、ウイルスタンパク質2(VP2)である。さらに他の態様において、非IBV抗原は、伝染性喉頭気管炎ウイルス(ILTV)タンパク質である。この種類のある態様において、ILTVタンパク質は、糖タンパク質B(gB)である。他のこのような態様において、ILTVタンパク質は、糖タンパク質D(gD)である。さらに他の態様において、ILTVタンパク質は、糖タンパク質I(gI)である。さらに他の態様において、組換えウイルスベクターは、ILTVgD、gIおよびgBのうちの2つ以上の任意の組み合わせをコードする。他の態様において、非IBV抗原は、トリインフルエンザウイルス(AIV)タンパク質である。この種類のある態様において、AIVタンパク質は、AIVヘマグルチニン(HA)である。他の態様において、AIVタンパク質は、AIVノイラミニダーゼ(NA)である。さらに他の態様において、組換えウイルスベクターは、AIV HAとAIV NAの両方をコードする。
【0125】
例えば、組換えHVTは、キメラIBVスパイクタンパク質を単独で、または例えば1つもしくは複数のトリインフルエンザ抗原を含む多価HVTベクター中でコードおよび発現するように構築され得る。多価HVTベクターは当分野で周知である[例えば、米国特許第8,932,064号を参照]。さらに他の態様において、組換えウイルスベクターは、組換え弱毒化MDV1であり得る。さらに他の態様において、組換えウイルスベクターは、組換え弱毒化MDV2であり得る。さらに他の態様において、組換えウイルスベクターは、組換え弱毒化NDVであり得る。
【0126】
同様に、1つまたは複数の生弱毒化ウイルス分離株、例えば生弱毒化NDV、および/または生弱毒化IBDV、および/または生弱毒化ILTV、および/またはHVTを含む生弱毒化マレック病ウイルス(MDV)、天然に弱毒化されたウイルス、および/または生弱毒化トリインフルエンザウイルス(AIV)と一緒に、トリワクチン中のキメラIBVスパイクタンパク質をコードする組換えベクターを添加することができる。
【0127】
代替のワクチン態様において、非IBV抗原は不活化された非IBV病原体である。
【0128】
特定のワクチン態様において、非IBV病原体は不活化されたNDVであり得る。他のワクチン態様において、非IBV病原体は不活化されたIBDVである。さらに他のワクチン態様において、非IBV病原体は不活化されたILTVである。さらに他のワクチン態様において、非IBV病原体は不活化されたMDV1である。さらに他のワクチン態様において、非IBV病原体はHVTである。さらに他のワクチン態様において、非IBV病原体は不活化されたトリインフルエンザウイルスである。あるワクチン態様において、ワクチンは、複数の非IBV病原体由来の非IBV抗原を含む。
【0129】
キメラSARS-CoV-2スパイクタンパク質および非SARS-CoV-2病原体抗原の両方をコードする組換えベクターを含む多価哺乳動物ワクチンおよび/または免疫原性組成物が本発明に含まれる。特定のワクチン態様において、非SARS-CoV-2病原体はネコカリシウイルス(FCV)である。他のワクチン態様において、非SARS-CoV-2病原体はネコ白血病ウイルス(FeLV)である。さらに他のワクチン態様において、非SARS-CoV-2病原体は、ネコ汎白血球減少症ウイルス(FPLV)である。さらに他のワクチン態様において、非SARS-CoV-2病原体はネコ鼻気管炎ウイルス(FVR)である。さらに他のワクチン態様において、非SARS-CoV-2病原体はネコ免疫不全症(FIV)である。特定のワクチン態様において、非SARS-CoV-2病原体はクラミドフィラ・フェリス(Chlamydophila felis)である。さらに他のワクチン態様において、非SARS-CoV-2病原体はイヌインフルエンザウイルス(CIV)である。さらに他のワクチン態様において、非SARS-CoV-2病原体はイヌパルボウイルス(CPV)である。さらに他のワクチン態様において、非SARS-CoV-2病原体はイヌジステンパーウイルス(CDV)である。さらに他のワクチン態様において、非SARS-CoV-2病原体は狂犬病ウイルスである。あるワクチン態様において、ワクチンは、複数の非SARS-CoV-2病原体由来の非SARS-CoV-2抗原由来の抗原を含む。
【0130】
さらに、例えば、不活化されたFCV株および/または不活化されたネコヘルペスウイルスおよび/または不活化されたネコパルボウイルスおよび/または不活化されたネコ白血病ウイルスおよび/または不活化されたネコ伝染性腹膜炎ウイルスおよび/または不活化されたネコ免疫不全ウイルスおよび/または不活化された狂犬病ウイルスおよび/または不活化されたネコインフルエンザウイルスおよび/または不活化されたイヌインフルエンザウイルスなどの1つまたは複数の他の不活化されたウイルス分離株と一緒に、ヒト、ネコ科動物またはフェレットワクチンおよび/または対応する免疫原性組成物中の1つまたは複数のキメラコロナウイルススパイクタンパク質、例えばキメラSARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードするアルファウイルスRNA RPを添加することができる。さらに、クラミドフィラ・フェリス、および/またはボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)および/またはバルトネラ属種(Bartonella spp.)(例えば、B.ヘンセラ(B.henselae))のバクテリン(またはバクテリンの細画分、例えば線毛細画分)も、このような多価ワクチン中に含めることができる。
【0131】
さらに、1つまたは複数の生弱毒化ウイルス分離株、例えば生弱毒化FCVウイルスおよび/または生弱毒化ネコ白血病ウイルスおよび/または生弱毒化ネコ伝染性腹膜炎ウイルスおよび/または生弱毒化ネコ免疫不全ウイルスおよび/または生弱毒化狂犬病ウイルスおよび/または生弱毒化ネコインフルエンザウイルスおよび/または生弱毒化イヌインフルエンザウイルスと一緒に、ヒト、ネコ科動物またはフェレット免疫原性組成物および/またはワクチン中のキメラコロナウイルススパイクタンパク質をコードするアルファウイルスRNA RPを添加することができる。さらに、生弱毒化クラミドフィラ・フェリスおよび/または生弱毒化ボルデテラ・ブロンキセプチカおよび/または生弱毒化バルトネラ属種(例えば、B.ヘンセラ)も、このような多価ワクチン中に含めることができる。
【0132】
したがって、本発明は、第2のSARS-CoV-2タンパク質抗原をコードする1つまたは複数のVEEV RNAレプリコン粒子を含むワクチンを提供する。特定の態様において、第1のVEEV RNAレプリコン粒子は、第1のキメラSARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードし、第2のVEEV RNAレプリコン粒子は、第1のSARS-CoV-2スパイクタンパク質が由来するものとは異なるSARS-CoV-2の株に由来する第2のキメラSARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードする。
【0133】
特定のワクチンにおいては、組換えウイルスベクターはアルファウイルスRNAレプリコン粒子である。この種類のより特定の態様において、アルファウイルスRNAレプリコン粒子はVEEV RNAレプリコン粒子である。さらにより具体的な態様において、ワクチンは、VEEVの非病原性TC-83株のカプシドタンパク質および糖タンパク質を含み、キメラコロナウイルススパイクタンパク質をコードするアルファウイルスRNA RPを含む。
【0134】
アジュバント:
本発明の一局面において、ワクチンはアジュバントなしである、すなわちアジュバントを含まない。他方、ある態様において、ワクチンはアジュバントを含有する。本発明のワクチンにおいて使用され得るアジュバントの例としては、CARBOPOL(登録商標)[例えば、ポリアルケニルエーテルまたはジビニルグリコールで架橋されたアクリル酸のポリマー、Alhydrogel+QuilA、水酸化アルミニウム、Alhydrogel、Emulsigen+EMA31+Neocryl XK62、Carbomer、Carbomer 974P、Adjuphos、Alhydrogel+QS21(サポニン)Carbigenが挙げられる。特定の態様において、アジュバントは、2種以上の油、例えば鉱油と1つまたは複数の非鉱油を含むオイルアジュバントである。この種類のある態様において、オイルアジュバントは、鉱油として流動パラフィン油と、スクアラン、スクアレン、ビタミンE、ビタミンE-アセタート、オレアートおよびオレイン酸エチルから選択される1つまたは複数の非鉱油とを含む。より特定の態様において、オイルアジュバントは、流動パラフィン油およびビタミンE-アセタートを含む。さらにより特定の態様において、オイルアジュバントは、XSOLVE(商標)である。
【0135】
投与:
本発明のワクチンは、非経口投与、より具体的には静脈内、筋肉内、皮下、経口、鼻腔内、皮内および/または腹腔内ワクチン接種を含む任意の標準的な経路によって容易に投与することができる。当業者は、ワクチン組成物が、好ましくはレシピエント動物の各種類および投与経路に対して適切に製剤化されることを理解するであろう。したがって、本発明はまた、コロナウイルスおよび/または他の動物病原体に対して哺乳動物を免疫する方法を提供する。1つのこのような方法は、ヒト、ネコ科動物またはフェレットがSARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する適切な抗体を産生するように、哺乳動物に免疫学的有効量の本発明のヒト、ネコ科動物またはフェレットワクチンを注射することを含む。別のこのような方法は、ニワトリがIBVスパイクタンパク質に対する適切な抗体を産生するように、ニワトリに免疫学的有効量の本発明のトリワクチンを注射することを含む。この方法において、「ニワトリ」は、任意の年齢のニワトリであり得る。一態様において、ニワトリを免疫するいわゆる卵内法を適用する場合、ニワトリは胚である。
【0136】
以下の実施例は、本発明のさらなる理解を提供する役割を果たすが、本発明の有効な範囲を制限することを決して意図するものではない。
【0137】
さらなる方法および使用:
上に概説したように、本発明の組換えベクターは、周知の方法によって製造することができる本発明によるワクチンまたは免疫原性組成物において有利に使用することができる。これらの局面および態様はまた、異なる管轄では異なる言葉で表現され得る。
【0138】
したがって、さらなる局面において、本発明は、ワクチンとして使用するための本発明による組換えベクターであって、前記ワクチンはSARS-CoV-2による感染からの哺乳動物の保護を補助するものであるか、または前記ワクチンは伝染性気管支炎からのトリの保護を補助するものである、組換えベクターに関する。ワクチンとして使用するための組換えベクターの一態様において、組換えベクターは、すべて本明細書で定義されるとおりの組換え発現ベクター、組換えウイルスベクター、DNA発現プラスミド、アルファウイルスRNAレプリコン粒子および合成mRNAから選択される。
【0139】
さらなる局面において、本発明は、ワクチンの製造のための本発明による組換えベクターの使用であって、前記ワクチンはSARS-CoV-2による感染からの哺乳動物の保護を補助するものであるか、または前記ワクチンは伝染性気管支炎からのトリの保護を補助するものである、組換えベクターの使用に関する。ワクチンの製造のための組換えベクターの使用の一態様において、組換えベクターは、すべて本明細書で定義されるとおりの組換え発現ベクター、組換えウイルスベクター、DNA発現プラスミド、アルファウイルスRNAレプリコン粒子および合成mRNAから選択される。
【0140】
さらなる局面において、本発明は、本発明によるワクチンの製造のための方法であって、本発明による組換えベクターと薬学的に許容され得る担体とを混合することを含む、方法に関する。ワクチンの製造のための方法の一態様において、組換えベクターは、すべて本明細書で定義されるとおりの組換え発現ベクター、組換えウイルスベクター、DNA発現プラスミド、アルファウイルスRNAレプリコン粒子および合成mRNAから選択される。
【0141】
[実施例]
以下の略語は、以下の実施例で使用されるコロナウイルススパイクタンパク質およびキメラコロナウイルススパイクタンパク質ならびにそれらのそれぞれのヌクレオチドおよびアミノ酸配列の標識に使用される。
【0142】
WTまたはwt:野生型タンパク質
SP:シグナルペプチド
RBD 受容体結合ドメイン
ΔFCS:フューリン切断部位の不活化
ΔCTD:CTDの除去
VSV:水疱性口内炎ウイルスの表面糖タンパク質のTMDおよびCTDによるスパイクタンパク質のTMDおよびCTDの置換。
【0143】
2P:原型の前融合立体構造を安定化するための2P修飾の追加。
【0144】
Y
1144A:ER保持シグナルの機能的除去
3M:三量体化ドメインの付加
[実施例1]
ヌクレオチドおよびアミノ酸配列
IBV-Ma5-スパイク[配列番号1]
IBV-Ma5-スパイク[配列番号2]
1-18 シグナルペプチド(SP)
19-532 S1
533-537 フューリン切断部位(FCS)
538-1162 S2
1092-1140 膜貫通ドメイン(TMD)
1141-1162 C末端ドメイン(CTD)
IBV-Ma5-スパイク-ΔFCS-VSV[配列番号3]
IBV-Ma5-S-ΔFCS-VSV[配列番号4]
1-18 シグナルペプチド(SP)
19-532 S1
533-537 変異されたFCS RRFRR->AAFAA
538-1091 S2
1092-1116 VSV膜貫通ドメイン(TMD)
1117-1140 VSV C末端ドメイン(CTD)
IBV-Ma5-スパイク-ΔFCS-2P-VSV[配列番号5]
IBV-Ma5-S-ΔFCS-2P-VSV[配列番号6]
1-18 シグナルペプチド(SP)
19-532 S1
533-537 変異されたFCS RRFRR->AAFAA
538-1091 S2
859-860 A859P+I860P置換
1092-1116 VSV膜貫通ドメイン(TMD)
1117-1140 VSV C末端ドメイン(CTD)
SARS-CoV-2-スパイク[配列番号7]
SARS-CoV-2-スパイク[配列番号8]
1-13 シグナルペプチド(SP)
14-681 S1
333-527 受容体結合ドメイン(RBD)
682-685 フューリン切断部位(FCS)
686-1211 S2
1212-1255 膜貫通ドメイン(TMD)
1256-1273 C末端ドメイン(CTD)
SARS-CoV-2-スパイク-ΔFCS-VSV[配列番号9]
SARS-CoV-2-スパイク-ΔFCS-VSV[配列番号10]
1-13 シグナルペプチド(SP)
14-681 S1
333-527 受容体結合ドメイン(RBD)
682-685 変異されたFCS RRAR->AAAR
686-1211 S2
1212-1236 VSV膜貫通ドメイン(TMD)
1237-1260 VSV C末端ドメイン(CTD)
SARS-CoV-2-スパイク-ΔFCS-2P-VSV[配列番号11]
SARS-CoV-2-スパイク-ΔFCS-2P-VSV[配列番号12]
1-13 シグナルペプチド(SP)
14-681 S1
333-527 受容体結合ドメイン(RBD)
682-685 変異されたFCS RRAR->AAAR
686-1211 S2
986-987 K986P+V987P置換
1212-1236 VSV膜貫通ドメイン(TMD)
1237-1260 VSV C末端ドメイン(CTD)
【表1】
[実施例2]
VEEV RNAレプリコン粒子中へのSARS-CoV-2およびIBVスパイクタンパク質のコード配列の組み込み
アルファウイルスRNAレプリコン構築
コドン最適化されたSARS-CoV-2スパイクタンパク質(SARS-CoV-2-S-wt)、対応するSARS-CoV-2スパイクキメラスパイクタンパク質(SARS-CoV-2-S-ΔFCS、SARS-CoV-2-S-ΔFCS-2P、SARS-CoV-2-S-ΔFCS-ΔCTD、SARS-CoV-2-S-ΔFCS-VSV、SARS-CoV-2-S-ΔFCS-2P-VSV)、およびコドン最適化されたIBVスパイク(IBV-S-wt)、および対応するIBVスパイクキメラスパイクタンパク質(IBV-S-2P-ΔCTD、IBV-S-2P-Y1144A、IBV-S-2P-VSV)をコードするアルファウイルスRNAレプリコン粒子を含むワクチンを調製した。
【0145】
SARS-CoV-2スパイクタンパク質遺伝子RPの作製。
【0146】
SARS-CoV-2スパイク遺伝子を発現するために使用するためのVEEVレプリコンベクターは、以下の修正を加えて、前述のように構築される[米国特許第9,441,247号を参照;その内容は参照により本明細書に組み入れられる。]。VEEV TC-83由来のレプリコンベクター「pVEK」[米国特許第9,441,247号に開示および記載されている]を制限酵素AscIおよびPacIで消化して、ベクター「pVHV」を作製する。SARS-CoV-2、2019-nCoV/USA-WI1/2020株(GenBankアクセッションMT039887)由来のスパイクタンパク質遺伝子配列をネコのコドン使用表の方向にコドン最適化し、隣接するAscIおよびPacI部位とともに合成した。それぞれAscIおよびPacI酵素で合成遺伝子およびpVHVベクターを消化し、連結してベクター「pVHV-SARS-CoV-2-スパイク」を作製する。正しいベクターおよび挿入断片の同一性を確認するために、プラスミドバッチを配列決定する。
【0147】
SARS-CoV-2スパイクタンパク質遺伝子RNA RPの作製。
【0148】
以下の修正を加えて、以前に記載されたように[米国特許第9,441,247号を参照;その内容は参照により本明細書に組み入れられる。]、SARS-CoV-2スパイク(SARS-CoV-2-S-wt)遺伝子および対応するSARS-CoV-2スパイクキメラスパイクタンパク質(SARS-CoV-2-S-ΔFCS、SARS-CoV-2-S-ΔFCS-2P、SARS-CoV-2-S-ΔFCS-ΔCTD、SARS-CoV-2-S-ΔFCS-VSV、SARS-CoV-2-S-ΔFCS-2P-VSV)を発現させるために使用するためのVEEVレプリコンベクターを構築した。VEEV TC-83由来のレプリコンベクター「pVEK」[米国特許第9,441,247号に開示および記載されている]を制限酵素AscIおよびPacIで消化して、ベクター「pVHV」を作製する。SARS-CoV-2、2019-nCoV/USA-WI1/2020株(GenBankアクセッションMT039887)からのスパイクタンパク質遺伝子配列、および対応するSARS-CoV-2スパイクキメラスパイクタンパク質)をコドン最適化し、隣接するAscIおよびPacI部位とともに合成した。それぞれAscIおよびPacI酵素で合成遺伝子およびpVHVベクターを消化し、連結してベクター「pVHV-SARS-CoV-2-スパイク」を作製する。正しいベクターおよび挿入断片の同一性を確認するために、プラスミドバッチを配列決定する。
【0149】
IBVスパイクタンパク質遺伝子RNA RPの作製。
【0150】
SARS-CoV-2からのスパイクタンパク質遺伝子配列と同様に、IBV、Ma5株(GenBankアクセッションKY626045)からのスパイクタンパク質遺伝子配列をコドン最適化し、隣接するAscIおよびPacI部位とともに合成した。上記のSARS-CoV-2スパイクタンパク質について上述したように、IBVスパイク(IBV-S-wt)遺伝子および対応するIBVスパイクキメラスパイクタンパク質(IBV-S-2P-CTD、IBV-S-2P-Y1144A、IBV-S-2P-VSV、IBV-S-ΔFCS、IBV-S-ΔFCS-2P、IBV-S-ΔFCS-ΔCTD、IBV-S-ΔFCS-VSV、IBV-S-ΔFCS-2P-VSV)を発現させるために使用するためのVEEVレプリコンベクターを構築した。したがって、SARS-CoV-2からのスパイクタンパク質遺伝子配列と同様に、IBV、Ma5株(GenBankアクセッションKY626045)からのスパイクタンパク質遺伝子配列をコドン最適化し、隣接するAscIおよびPacI部位とともに合成する。それぞれAscIおよびPacI酵素で合成遺伝子およびpVHVベクターを消化し、連結してベクター「pVHV-IBV-Ma5-スパイク」を作製する。正しいベクターおよび挿入断片の同一性を確認するために、プラスミドバッチを配列決定する。
【0151】
VEEV TC-83RNA RPの作製は、以前に記載された方法に従って行われる[米国特許第9,441,247号および米国特許第8,460,913号;これらの内容は参照により本明細書に組み入れられる。]。手短に言えば、MegaScript T7RNAポリメラーゼおよびキャップ類似体を使用したインビトロ転写の前に、NotI制限酵素でpVHV-スパイクレプリコンベクターDNAおよびヘルパーDNAプラスミドを直鎖化する。重要なことに、作製において使用されるヘルパーRNAは、以前に記載されたように、VEEVサブゲノムプロモーター配列を欠く[Kamrud et al.,J Gen Virol.91(Pt7):1723-1727(2010)]。レプリコン成分およびヘルパー成分についての精製されたRNAを合わせ、ベロ細胞の懸濁液と混合し、4mmキュベット中で電気穿孔し、無血清培養培地に戻す。一晩のインキュベーション後、懸濁液をデプスフィルターに通し、5%スクロース(w/v)を含有するリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、最後に保持されたRPを400mMNaCl+5%スクロース(w/v)緩衝液で溶出することによって、アルファウイルスRNAレプリコン粒子を細胞および培地から精製する。溶出されたRPを0.22ミクロンのメンブレンフィルターに通し、保存のために一定分量に分配した。感染したベロ細胞単層に対する免疫蛍光アッセイによって、機能的RPの力価を決定する。次いで、コドン最適化されたSARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードする得られた増殖欠陥アルファウイルスRNAレプリコン粒子を、アジュバントを含まないまたはアジュバントを含むワクチン製剤に入れ、動物対象に投与することができる。
【0152】
[実施例3]
IFAを使用した培養細胞中でのIBVスパイク抗原の発現
宿主細胞中でのIBVスパイク抗原の発現を調べるために、本発明によるポリペプチドを宿主細胞に送達するための異なる形態を使用して一連の実験を行った。異なる染色技術を適用して、それらの発現の種類および位置を可視化した。
【0153】
ベロ細胞中のプラスミドDNAからのIBVスパイク抗原
フューリン切断部位の不活化(ΔFCS)、C末端ドメインの除去(ΔCTD)、またはVSVの表面糖タンパク質TMDおよびCTDによるスパイクタンパク質TMDおよびCTDの置き換え、プロリン変異(2P)、三量体化ドメインの付加(3M)、またはER保持シグナルの変異(Y1144A)がIBVスパイク抗原の発現レベルに対して何らかの影響を有するかどうかを決定するために、IBVスパイク抗原の産生を誘導するpCAGGS発現プラスミドでベロ細胞を形質移入し、免疫蛍光アッセイ(IFA)のために使用した。
【0154】
材料および方法
10%FCS、L-グルタミンおよび1%非必須アミノ酸を補充したDMEM中でベロ細胞を培養した。0.5mlの培養培地中の24ウェルクラスタ中に、25.000細胞/cm2の密度で形質移入のための細胞を播種し、37℃、5%CO2でインキュベートした。翌日、製造者の説明書に従って、ウェル当たり、50μlの形質移入ミックス中のLipofectamine3000(商標)(ThermoFisher)を使用して、500ngのpCAGGSプラスミドDNAでベロ細胞の半コンフルエントな単層を形質移入した。形質移入/感染の24時間後、ウェルあたり約1mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で細胞を1回洗浄し、ウェルあたり0.5mlの96%エタノールを用いて-20℃で30分間固定した。ウェルあたり約1mlの洗浄緩衝液(PBS+0.15%ポリソルベート20)を使用して細胞を3回洗浄し、室温で1時間、0.25mlのIBEIA緩衝液(PBS+0.05%ポリソルベート20+0.1%BSA)中の、CharlesRiverからのINT-M41-01-03マウスモノクローナル抗体またはニワトリポリクローナル抗体血清のいずれかを使用してスパイク抗原を可視化した。0.25mlのIBEIA緩衝液中、二次ヤギ抗マウスIgG Alexa488またはヤギ抗ニワトリIgG Alexa568抗体(ThermoFisher)を使用して、結合した抗体を室温で1時間染色した。染色の間および最終染色後に、細胞を洗浄緩衝液で3回洗浄した。蛍光顕微鏡を使用して、染色された細胞を分析した。
【0155】
結果
IBV-Massに対して作られたマウスモノクローナル抗体およびニワトリポリクローナル抗体血清はいずれも、ベロ細胞中でのスパイク抗原発現を可視化することができた。C末端ドメインまたはER保持シグナルを改変することは、染色パターンを細胞膜より細胞膜の方向に変化させるようである。他のスパイク変異体抗原からは、この分析技術を使用して発現レベルの差を適切に評価することができなかった。
【0156】
HELA細胞中のプラスミドDNAからのIBVスパイク抗原
フューリン切断部位の不活化(ΔFCS)、C末端ドメインの除去(ΔCTD)、またはVSVの表面糖タンパク質TMDおよびCTDによるスパイクタンパク質TMDおよびCTDの置き換え、プロリン変異(2P)、三量体化ドメインの付加(3M)、またはER保持シグナルの変異(Y1144A)またはこれらの組み合わせがIBVスパイク抗原の発現レベルに対して何らかの影響を有するかどうかを決定するために、IBVスパイク抗原の産生を誘導するpCAGGS発現プラスミドでHeLa細胞を形質移入し、免疫蛍光アッセイ(IFA)のために使用する。
【0157】
材料および方法
24ウェルクラスタ中に、100,000細胞/cm2の密度で、HELA細胞をDMEM/10%FCS/PS中に播種した。翌日、ポリエチレンイミン(Polysciences Inc.)を使用して、1:10のDNA:PEI比で、625ngのpCAGGS2プラスミドDNAで細胞を形質移入した。形質移入ミックスをOptiMEM(Lonza)中で調製し、15秒間ボルテックス撹拌し、次いで室温で20分間インキュベートした。その後、ウェルあたり50μLのミックスを添加し、細胞との7時間のインキュベーション後に培地を交換した。形質移入の24時間後に、DAPIを含有する50μLの培養培地(ウェルあたりの最終希釈率1:4000)を各ウェルに添加し、15~30分間インキュベートし、その後培地を除去し、単層をDPBS(カルシウムおよびマグネシウムを含まない1×DPBS、Lonza)で1回洗浄し、続いて3%PFAで固定した。1時間固定した後、細胞をDPBSで再び洗浄し、0.5%サポニンで、4℃で15分間透過処理し(または透過処理せず)、3%BSA(ブロッキング溶液)中で1時間ブロッキングした。その後、抗IBV S mAb(INT-M41-01-03、MSD Animal Health)と共にガラススライドを室温で1時間インキュベートし、ブロッキング緩衝液で1:100に希釈した。その後、5分間の3回の洗浄工程を0.05%Tween20溶液で行い、二次抗体(ロバ抗マウスIgG Alexa488、Molecular probes)をブロッキング緩衝液中に1:400希釈で添加した。さらに1時間のインキュベーション後、0.05%Tween20溶液で3回およびDPBSで1回、細胞を再度洗浄した。10μLのFluorProtect(商標)試薬(Millipore)を使用してスライドをマウントし、室温で一晩保存した後、Olympus BX60蛍光顕微鏡を用いて画像を収集した。特に明記しない限り、DPBS中ですべての溶液を調製した。
【0158】
結果
C末端ドメインを欠失させることまたはIBV TM-CTDでVSVのその対応物を置き換えることは、細胞表面発現を強く増強する。さらに、ER保持シグナル中の単一のアミノ酸置換は、細胞表面局在化の同じ増加をもたらすようである。2P置換を導入することまたはフューリン切断部位を変異させることは、全体的な抗原発現レベルを増強するのに対して、さらなる三量体化ドメイン(3M)を導入することによってIBVスパイク三量体を安定化させることは、スパイク発現レベルを低下させる。注目すべきことに、フューリン切断部位および2Pに対する修飾はいずれも発現レベルに影響を及ぼしたのに対して、Y
1144A、CTDおよびVSV修飾はタンパク質局在化に影響を及ぼした(下記の表1を参照)。このことは、これらの修飾の組み合わせが有益であることを示唆した。
【表2】
ベロ細胞中のPVAXプラスミドDNAワクチンからのIBVスパイク抗原
フューリン切断部位の不活化(ΔFCS)、CTDの修飾[IBVスパイクタンパク質のCTDを欠失させることによって(ΔCTD)、またはスパイクタンパク質のTMDおよびCTDをVSVの表面糖タンパク質のTMDおよびCTDによって置き換えることによって]、プロリン変異(2P)、またはER保持シグナルの変異(Y
1144A)の組み合わせが、IBVスパイク抗原の発現レベルおよび/または細胞表面局在化に対して何らかの影響を及ぼすかどうかを決定するために、IBVスパイク抗原の産生を誘導するpVAXプラスミドDNAワクチンでベロ細胞を形質移入し、免疫蛍光アッセイ(IFA)に使用した。
【0159】
材料および方法
10%FCS、L-グルタミンおよび1%非必須アミノ酸を補充したDMEM中でベロ細胞を培養した。0.5mlの培養培地中の24ウェルクラスタ中に、25.000細胞/cm2の密度で形質移入のための細胞を播種し、37℃、5%CO2でインキュベートした。翌日、製造者の説明書に従って、ウェル当たり、50μlの形質移入ミックス中のLipofectamine3000(ThermoFisher)を使用して、500ngのpVAXプラスミドDNAでベロ細胞の半コンフルエントな単層を形質移入した。形質移入/感染の24時間後、ウェルあたり約1mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で細胞を1回洗浄し、-20℃で30分間ウェルあたり0.5mlの96%エタノールまたは室温で15分間0.5mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中4%PFAのいずれかを用いて固定した。後者の種類の固定は、細胞膜がなお無傷であることを保証し、その結果、観察されるシグナルはいずれも細胞表面に発現されるはずである。ウェルあたり約1mlの洗浄緩衝液(PBS+0.15%ポリソルベート20)を使用して細胞を3回洗浄し、室温で1時間、0.25mlのIBEIA緩衝液(PBS+0.05%ポリソルベート20+0.1%BSA)中の、CharlesRiverからのINT-M41-01-03マウスモノクローナル抗体またはニワトリポリクローナル抗体血清のいずれかを使用してスパイク抗原を可視化した。0.25mlのIBEIA緩衝液中、二次ヤギ抗マウスIgG Alexa488またはヤギ抗ニワトリIgG Alexa568抗体(ThermoFisher)を使用して、結合した抗体を室温で1時間染色した。染色の間および最終染色後に、細胞を洗浄緩衝液で3回洗浄した。蛍光顕微鏡を使用して、染色された細胞を分析した。
【0160】
結果
2P置換(2P)およびフューリン切断部位変異(ΔFCS)と組み合わせたC末端ドメインの欠失(ΔCTD)またはER保持シグナル中の単一アミノ酸置換(Y
1144A)は、細胞表面発現のみならず最も最適な発現レベルをもたらすようである。ΔFCS-2P変化と組み合わせたVSVのTM-CTDによるTM-CTD置換の組み合わせは、タンパク質の局在化のみならず発現レベルを増加させるが、他の2つの組み合わせよりも程度は低い。この最初のインビトロデータは、C末端ドメインの除去、ER保持シグナル中のアミノ酸置換(Y
1144A)またはVSVのCTDによるIBV CTDの置換とのΔFCS-2P修飾の組み合わせはすべて、IBVスパイクタンパク質の細胞表面発現と総発現の両方の増加をもたらしたことを示す。しかしながら、興味深いことに、対応するインビボデータで見出された他の2つの修飾されたIBVスパイクタンパク質に対する、VSVのCTDによるIBV CTDの置換の優位性(下記参照)は、このインビトロデータでは観察されなかった。
【表3】
[実施例4]
HEK293細胞中でのIBVスパイク抗原の発現のフローサイトメトリー分析
フューリン切断部位への修飾(ΔFCS)、C末端ドメインの修飾(ΔCTDまたはVSV)、プロリン変異(2P)、三量体化ドメインの付加(3M)、またはER保持シグナルの変異(Y
1144A)がIBVスパイク抗原の発現レベルに対して何らかの影響を有するかどうかを決定するために、フローサイトメトリーで分析されるようにIBVスパイク抗原の産生を誘導するpCAGGS発現プラスミドでHEK293細胞を形質移入した。
【0161】
材料および方法
DMEM/10%FCS/PS中でHEK293T細胞を培養し、6ウェルクラスタ中に100.000細胞/cm2の密度で播種した。翌日、ポリエチレンイミン(Polysciences Inc.)を使用して、1:10のDNA:PEI比で、2.5μgのpCAGGS2プラスミドDNAで細胞を形質移入した。形質移入ミックスをOptiMEM(商標)(Lonza)中で調製し、15秒間ボルテックス撹拌し、次いで室温で20分間インキュベートした。その後、ウェルあたり200μLのミックスを添加し、細胞との7時間のインキュベーション後に培地を交換した。形質移入後24時間に、DPBS(カルシウムおよびマグネシウムを含まない1×DPBS、Lonza)で単層を1回洗浄し、細胞を解離させ、0.32mLのTrypLE(商標)(トリプシン置換試薬、Gibco)を室温で3~5分間添加した。次に、細胞をDMEM(最大1mL)と混合し、10μLの懸濁液を計数のために使用し(Invitrogen、CountessII)、一方、残りを5分/1000rpmの遠心分離によってペレット化した。培地を除去し、氷上で20分間、2%PFAで細胞を固定した。固定後、細胞をペレット化し(5分/2500rpm/4℃)、0.5%サポニンで、氷上で20分間透過処理し(または透過処理せず)、氷上の3%BSA(ブロッキング溶液)中で1時間ブロッキングした。各試料から二連で、約4×10E5の細胞を分析のためにさらに使用した。ブロッキングされた細胞を丸底96ウェルクラスタに移し、ペレット化し、一次抗体(mAb INT-m41-01-03またはINT-m41-01-08、MSD Animal Health)とインキュベートし、ブロッキング緩衝液で1:200に希釈した。その後、5分間の3回の洗浄工程を0.05%Tween20溶液で行い、二次抗体(ヤギ抗マウスまたはロバ抗マウスIgG Alexa488、Molecular probes)をブロッキング緩衝液中に1:200希釈で添加した。1時間のインキュベーション後、細胞を0.05%Tween20溶液で再び3回洗浄し、FACS緩衝液(2%BSA、5mMEDTA、0.02%NaN3)中に再懸濁した後、CytoFLEX LX(商標)(Beckman Coulter)で分析した。
【0162】
結果
FACS分析は、IFAの結果を補強する:フューリン切断部位変異(ΔFCS)に加えて、ER保持シグナルの変異(Y
1144A)、C末端ドメインの欠失(ΔCTD)およびVSV TMD-CTDの存在は、IBV S変異体の表面発現を改善する。ΔFCS-2Pに加えてVSV TM-CTドメインを含有する変異体によって、最も高い表面発現および総発現が得られた。3M変異体は、最も低い表面発現を有していた。
【表4】
[実施例5]
IFAを使用した培養細胞中でのSARS-CoV-2スパイク抗原の発現
宿主細胞中でのSARS-CoV-2スパイク抗原の発現を調べるために、本発明によるポリペプチドを宿主細胞に送達するための異なる形態を使用して一連の実験を行った。異なる染色技術を適用して、それらの発現の種類および位置を可視化した。
【0163】
ベロ細胞中でPVAXプラスミドDNAおよびVEEV RPワクチンを使用するSARS-CoV-2スパイク抗原
フューリン切断部位の不活化(ΔFCS)、C末端ドメインの修飾(ΔCTDまたはVSV)またはプロリン変異(2P)の組み合わせがSARS-CoV-2スパイク抗原の発現レベルおよび/または細胞表面局在化に対して何らかの影響を有するかどうかを決定するために、pVAXプラスミドDNAワクチンでベロ細胞を形質移入するか、またはスパイク抗原の産生を誘導するVEEV RPを感染させ、免疫蛍光アッセイ(IFA)のために使用した。
【0164】
材料および方法
10%FCS、L-グルタミンおよび1%非必須アミノ酸を補充したDMEM中でベロ細胞を培養した。0.5mlの培養培地中の24ウェルクラスタ中に、25.000細胞/cm2の密度で形質移入のための細胞を播種し、37℃、5%CO2でインキュベートした。翌日、製造者の説明書に従って、50μlの形質移入ミックス中のLipofectamine3000(ThermoFisher)を使用して、500ngのpVAXプラスミドDNAでベロ細胞の半コンフルエントな単層を形質移入するか、またはウェル当たり5.0×10E5のVEEV RPを感染させた。形質移入/感染の24時間後、ウェルあたり約1mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で細胞を1回洗浄し、ウェルあたり0.5mlの96%エタノールを用いて-20℃で30分間固定した。ウェルあたり約1mlの洗浄緩衝液(PBS+0.15%ポリソルベート20)を使用して細胞を3回洗浄し、0.25mlのIBEIA緩衝液(PBS+0.05%ポリソルベート20+0.1%BSA)中の、SARS-CoV-2のS1Aドメインに対して作られたCR3022ヒトモノクローナル抗体またはウサギポリクローナル抗体のいずれかを使用して室温で1時間、スパイク抗原を可視化した。0.25mlのIBEIA緩衝液中、二次ヤギ抗ヒトIgG Alexa488およびヤギ抗ウサギIgG Alexa568抗体(ThermoFisher)を使用して、結合した抗体を室温で1時間染色した。染色の間および最終染色後に、細胞を洗浄緩衝液で3回洗浄した。蛍光顕微鏡を使用して、染色された細胞を分析した。
【0165】
結果
SARS-CoV-2のS1Aドメインに対して作られたCR3022ヒトモノクローナル抗体およびウサギポリクローナル抗体はいずれも、ベロ細胞中でのスパイク抗原発現を可視化することができた。フューリン切断部位を不活化させること(ΔFCS)は、pVAXプラスミドDNAワクチンプラットフォームおよびVEEV-RPワクチンプラットフォームから抗原が産生されるときに抗原発現レベルを増加させる。他のスパイク変異体抗原からは、この分析技術を使用して発現レベルおよび/または局在化に明確な差を観察することができなかった。
【表5】
HELA細胞中でPVAXプラスミドDNAおよびVEEV RPワクチンを使用するSARS-CoV-2スパイク抗原
不活化されたフューリン切断部位(ΔFCS)、C末端ドメインの修飾(ΔCTDまたはVSV)またはプロリン変異(2P)の組み合わせがSARS-CoV-2スパイク抗原の発現レベルおよび/または細胞表面局在化に対して何らかの影響を有するかどうかを決定するために、スパイク抗原の産生を誘導するpCAGGS発現プラスミドでHELA細胞を形質移入し、免疫蛍光アッセイ(IFA)のために使用した。
【0166】
材料および方法
ガラススライド(1cmの直径)を含有する24ウェルクラスタ中に40.000細胞/cm2の密度で、HeLa細胞をDMEM/10%FCS/PS中に播種した。翌日、ポリエチレンイミン(Polysciences Inc.)を使用して、1:10のDNA:PEI比で、625ngのpCAGGS2プラスミドDNAで細胞を形質移入した。形質移入ミックスをOptiMEM(Lonza)中で調製し、15秒間ボルテックス撹拌し、次いで室温で20分間インキュベートした。その後、ウェルあたり50μLのミックスを添加し、細胞との7時間のインキュベーション後に培地を交換した。形質移入の24時間後に、DAPIを含有する50μLの培養培地(ウェルあたりの最終希釈率1:4000)を各ウェルに添加し、15~30分間インキュベートし、その後培地を除去し、単層をDPBS(カルシウムおよびマグネシウムを含まない1×DPBS、Lonza)で1回洗浄し、続いて3%PFAで固定した。1時間固定した後、細胞をDPBSで再度洗浄し、3%BSA(ブロッキング溶液)中で1時間ブロッキングした。その後、抗SARS CoV2 SヒトmAb(RBDを標的とする)とともにガラススライドを室温で1時間インキュベートし、ブロッキング緩衝液で10μg/mLに希釈した。その後、5分間の3回の洗浄工程を0.05%Tween20溶液で行い、二次抗体(ヤギ抗ヒトIgG Alexa488、Molecular probes)をブロッキング緩衝液中に1:400希釈で添加した。さらに1時間のインキュベーション後、0.05%Tween20溶液で3回およびDPBSで1回、細胞を再度洗浄した。10μLのFluorProtect試薬(Millipore)を使用してスライドをマウントし、室温で一晩保存した後、Olympus BX60蛍光顕微鏡を用いて画像を収集した。特に明記しない限り、DPBS中ですべての溶液を調製した。
【0167】
結果
フューリン切断部位を不活化すること(ΔFCS)は、抗原がpCAGGS発現プラスミドから産生されるときに抗原発現レベルをわずかに増加させる。また、2P置換は、VSVのTM-CTDのTM-CTD置換との組み合わせありまたはなしで、発現レベルをわずかに増加させる。VSVのTM-CTDのTM-CTD置換単独(VSV)のCTD欠失(ΔCTD)は、発現レベルに対してあまり影響を有さない。
【表6】
[実施例6]
HEK293細胞中でのSARS-CoVスパイク抗原の発現のフローサイトメトリー分析
不活化されたフューリン切断部位(ΔFCS)、C末端ドメインの修飾(ΔCTDまたはVSV)およびプロリン変異(2P)の組み合わせがスパイク抗原の発現レベルおよび局在化に対して何らかの影響を有するかどうかを決定するために、SARS-CoV-2スパイク抗原の産生を誘導するpCAGGS発現プラスミドでHEK293細胞を形質移入し、フローサイトメトリー分析のために使用した。
【0168】
材料および方法
DMEM/10%FCS/PS中でHEK293T細胞を培養し、6ウェルクラスタ中に1×10E5細胞/cm2の密度で播種した。翌日、ポリエチレンイミン(Polysciences Inc.)を使用して、1:10のDNA:PEI比で、2.5μgのpCAGGS2プラスミドDNAで細胞を形質移入した。形質移入ミックスをOptiMEM(Lonza)中で調製し、15秒間ボルテックス撹拌し、次いで室温で20分間インキュベートした。その後、ウェルあたり200μLのミックスを添加し、細胞との7時間のインキュベーション後に培地を交換した。形質移入後24時間に、DPBS(カルシウムおよびマグネシウムを含まない1×DPBS、Lonza)で単層を1回洗浄し、0.32mLのTrypLE(トリプシン置換試薬、Gibco)を室温で3~5分間添加することによって細胞を解離させた。次に、ピペット操作によって細胞をDMEM(最大1mL)と混合し、10μLの懸濁液を計数のために使用し(Invitrogen、CountessII)、一方、残りを5分/1000rpmの遠心分離によってペレット化した。培地を除去し、氷上で20分間、3%PFAで細胞を固定した。固定後、細胞をペレット化し(5分/2500rpm/4℃)、0.5%サポニンで、氷上で20分間透過処理し(または透過処理せず)、氷上の3%BSA(ブロッキング溶液)中で1時間ブロッキングした。各試料から二連で、約4×10E5の細胞を分析のためにさらに使用した。ブロッキングされた細胞を丸底96ウェルクラスタに移し、ペレット化し、一次抗体(ヒトMAb47D11またはCR3022)と共にインキュベートし、ブロッキング緩衝液で10μg/mLに希釈した。その後、5分間の3回の洗浄工程を0.05%Tween20溶液で行い、二次抗体(ヤギ抗ヒトIgG Alexa488、Molecular probes)をブロッキング緩衝液中に1:400希釈で添加した。1時間のインキュベーション後、細胞を0.05%Tween20溶液で再び3回洗浄し、FACS緩衝液(2%BSA、5mMEDTA、0.02%NaN3)中に再懸濁した後、CytoFLEX LX(Beckman Coulter)で分析した。FlowJov.9ソフトウェアで結果を分析した。特に明記しない限り、DPBS中ですべての溶液を調製した。
【0169】
結果
結果は、検出のために使用されるhMAbおよび特定のRBDエピトープの接近可能性に応じて変化する傾向がある。hMAb47D11を検出のために使用すると、ΔFCSを有する変異体は、特にVSV TMDが存在する場合に、改善された発現を有する。ΔFCSおよびΔCTDを有する変異体は、より低い発現を有する。このアッセイで得られたデータは、HeLa細胞における免疫蛍光分析によって裏付けられる。
【表7】
[実施例7]
ニワトリにおけるIBVスパイク抗原の免疫原性
修飾されたIBVスパイクタンパク質を使用した上記インビトロ研究をニワトリにおけるインビボ研究に拡張した。上記のように、修飾されたIBV Ma5スパイク抗原は、感染細胞の細胞表面上でより効率的に発現されるように設計された。VEEV RNA RPワクチンプラットフォームで例示される、修飾されたIBV Ma5抗原をコードするウイルスベクターの保護効力を、IBV M41攻撃誘発に対して評価した。ワクチン接種の3週間後に攻撃誘発によってワクチンの有効性を決定し、次いで、気管外植片の線毛運動の程度および血清学データに基づいて評価した。
【0170】
材料および方法
以下の表7に従って、1日齢の66羽(n=66)の鳥を7つの群(群1~7)に割り当てた。1日目に、眼鼻腔(OCN)投与による市販のワクチンおよび筋肉内(IM)投与による表7に列記されている実験ワクチンのいずれかを群2~8のニワトリにワクチン接種した。22日目に、IBV血清学を決定するために、群2、4、5、6および7のニワトリから血液を採取した。23日目に、ニワトリを眼(OC)接種によるIBV M41攻撃誘発に供した。28、29および30日目に、ニワトリを安楽死させ、それらの気管を線毛運動障害アッセイにおいて使用してワクチンの有効性を決定した。
【表8】
ワクチン接種のためのすべての材料は、予定されたワクチン接種の直前に調製した。ワクチンを周囲温度で調製し、調製の2時間以内に投与した。1日目に、右眼および右鼻孔開口部にわたって分割された0.1mlのワクチンを眼鼻腔経路によってまたは脚に0.25mlのワクチンをIM経路によって、群3~7のニワトリにワクチン接種した。
【0171】
ワクチン接種されたら、ワクチン接種の日から研究の終了まで、疾患の臨床徴候または死亡の発生についてニワトリのすべての群を毎日モニタリングした。性質的に非一過性であると考えられるか、またはより重症になる可能性が高い疼痛および不快感を示すニワトリを動物福祉の理由で安楽死させた。
【0172】
22日目に、群2、4、5、6および7のニワトリのすべての翼静脈から血液試料(約2ml)を採取した。血液試料を評価のために周囲温度で輸送した。室温で凝固させた後、血液試料を3000xgで10分間遠心分離することにより血清を採取した。血清試料を2つの組に分け、続いて56℃で30分間熱不活化し、次いでさらなる使用まで-20℃で保存した。20日目に採取した血液試料を血清学的アッセイに供し、市販のID Screen(登録商標)Infectious Bronchitis Indirect(IDVet)試験を用いてIBV Ma5に対する抗体価を決定した。
【0173】
23日目、ワクチン接種の3週間後に、IBV M41攻撃誘発ウイルスを、スケジュールされた攻撃誘発の直前に、Nobilis(登録商標)Oculo鼻希釈液で希釈した。その後、攻撃誘発される必要があるニワトリがその中で飼育される各アイソレータに対して別々のアリコートを調製した。攻撃誘発材料は、バイオセーフティ輸送ボックスに入れて氷上で輸送された。23日目に、眼経路によって、攻撃誘発株(4.5Log10、0.1ml/ニワトリ)で群3~7のすべての鳥を攻撃誘発した。材料を両眼にわたって等しく分割した。攻撃誘発後、攻撃誘発ウイルスの残量を逆滴定によって分析した。
【0174】
ニワトリを安楽死させた後の気管単離のために、予定された死後検査を行った。従前にZoletil(商標)の筋肉内注射を行い、頸椎脱臼によって4週齢のニワトリを安楽死させた。ニワトリの安楽死の直後に、1組の無菌器具を用いて1つの群のニワトリの全気管のサンプリングを行った。気管を切除し、予め加温した(37℃)培地を含むチューブに個々に集めて、線毛運動障害試験のために輸送するまで断熱箱の中に保った。集めた気管を処理し、繊毛運動性について調べた。気管は、手に入るにつれて処理した。各気管から10個の輪、すなわち、上(喉頭蓋のすぐ下)から3個、中央から4個および下から3個を切断した。切断されたら、無血清培地中で輪を洗浄して粘液を除去し、読み取りのために24ウェルプレートに配置した。低倍率顕微鏡を用いて輪を読み取った。気管輪の少なくとも50%が激しい線毛運動を示した場合、非罹患として気管輪にスコアを与えた(「+」と表記)。50%を下回る線毛運動を有する気管輪には「罹患」としてスコアを与え、「-」と表記した。環の90%以上が罹患していなければ、ニワトリは保護されているとみなされた。
【0175】
結果
Nobilis(登録商標)IB Ma5ワクチンを接種されたニワトリは、10匹中6匹の動物で889の閾値を超える堅牢な抗体陽転を示し、この群は1242の平均ELISA力価を有した。wt IBV Ma5スパイク抗原を発現するVEEV RPをワクチン接種された1匹のニワトリのみが、抗体陽転を示し、この群は336の平均ELISA力価を有した。ΔFCS+CTD+2P適応またはΔFCS+Y
1144A+2P適応の組み合わせは、IBVスパイク抗原の免疫原性に対して影響を及ぼさなかった。著しく対照的に、ΔFCS+2P+VSV適応は、10匹の動物のうち4匹が明確な抗体陽転を示すより免疫原性の高い抗原をもたらし、この群は617の平均ELISA力価を有した(
図1参照)。
【0176】
平均ELISA力価は、Nobilis IB Ma5ワクチンが100%の保護をもたらし、wt IBVスパイク抗原を発現するVEEV RPワクチンは20%の保護に過ぎなかったのに対して、ΔFCS+2P+VSV適応は55%の保護をもたらしたワクチン有効性と良好に相関した(
図2参照)。
【0177】
[実施例8]
モルモットにおけるVEEV RPワクチンを使用したSARS-COV-2スパイク抗原の免疫原性
修飾されたSARS-CoV-2スパイク変異体がインビボにおいて改善された免疫原性を与えるかどうかを試験するために、異なるSARS-CoV-2スパイク抗原をコードするVEEV RPワクチンを接種されたモルモットで実験を行った。本研究の目的は、モルモットにおけるSARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質をコードするVEEV RPの血清学的有効性を評価することであった。
【0178】
材料および方法
本研究では、研究日(SD)0、21および42に、ワクチン接種のためにn=35匹のモルモットを使用した。0.3ml中1.0E7pfuの用量でワクチンを筋肉内に与えた。動物の1つの群には、XSOLVE(商標)100アジュバントと混合されたワクチンを接種した。SD59で血液を採取し、血清学的分析のために使用した。
【表9】
凍結したアルファウイルスRNAレプリコン粒子をワクチン接種前に室温で解凍した。すべてのモルモットの大腿部または臀部に、およそ0.3mLの適切なワクチン調製物を筋肉内(IM)接種した。その後のワクチン接種については別の部位を使用した。群2には、注射前にRNA-Pワクチンと混合されたXSOLVE(商標)100アジュバントを、約0.6mLの得られた注射体積でワクチン接種した。
【0179】
研究の終了時に、8~10mLの血清という目標最低収量のために、モルモットを最終的に採血した。AVMAによって承認された方法を使用して、採血前に動物を麻酔した。採取後、血液試料を4時間以下室温に保った後、4℃で30分間、1257xgでの遠心分離によって分離した。試験まで、すべての血清試料を-20℃以下で凍結保存した。市販のサロゲート擬似VN試験(GenScript)を使用して、すべての血清試料をSARS-CoV-2抗体についてアッセイした。
【0180】
結果
野生型(wt)SARS-CoV-2スパイク抗原を発現するVEEV RPをワクチン接種されたモルモットは7%の阻害しかもたらさず、極めて不良な抗体陽転を示した。SARS-CoV-2スパイク抗原のフューリン切断部位(ΔFCS)を不活化すると、平均して39%の阻害がもたらされたが、ΔFCS+VSVとΔFCS+2P+VSVを組み合わせると、それぞれ52および54%の阻害がもたらされた(
図3参照)。したがって、IBVスパイク抗原について観察されたように、2P変異ありまたはなしで、VSV修飾と組み合わされたフューリン切断部位(ΔFCS)の不活化は、極めて高い免疫原性の抗原をもたらす。
【0181】
初回ワクチン接種の3週間後に、モルモットに追加ワクチン接種を行った。モルモットから採取した血液を用いたサロゲートVN試験からの結果を以下の
図4に示す。これらのデータからは、2つの点が顕著である。第1に、スパイク-2P-VSV変異体は、スパイク-wt抗原よりもはるかに免疫原性が高い。本条件下では、スパイク-2P-VSV試験はほぼ100%の阻害を示す。VEEV RPは、驚くべきことに、DNA発現プラスミドワクチンよりもはるかに免疫原性が高かった。
【0182】
[実施例9]
モルモットにおけるVEEV RPワクチンを使用したSARS-COV-2スパイク抗原によって誘導される液性および細胞性免疫応答
材料および方法
動物および飼育
Envigoから、雌のSPFモルモット(Dunkin Hartley)を350グラムの最小体重で入手し、実験群にランダムに割り当て、色分けされたタグを使用して個別に印を付けた。研究期間全体を通じて、ベースライン臨床所見を記録した。研究期間全体を通じて、体温を含むベースライン臨床所見を記録した。
【0183】
SARS-CoV-2スパイク遺伝子RPワクチンの作製。
【0184】
SARS-CoV-2スパイクwtまたはスパイク-FCS-2P-VSV遺伝子のいずれかを産生するために使用されるVEEVレプリコンベクターを、上記の実施例2に以前に記載されたように構築した(
図7も参照)。SARS-CoV-2、2019-nCoV/USA-WI1/2020株からのスパイク_wt遺伝子配列(GenBankアクセッションMT039887)、ならびにR
682A/R
683A(ΔFCS)K
986P/V
987P(2P)置換およびSARS-CoV-2スパイク残基1212~1273のVSV糖タンパク質の残基463~511への置き換えを有するスパイク-FCS-2P-VSV誘導体(GenBankアクセッションYP_009505325)をコドン最適化し、隣接するAscIおよびPacI部位とともに合成した(ATUM、Newark、CA)。合成遺伝子およびpVHVベクターをそれぞれAscIおよびPacI酵素で消化し、連結して、上記の実施例2に記載されているようにベクター「pVHV-SARS-CoV-2-スパイク_wt」および「pVHV-SARS-CoV-2-スパイク-FCS-2P-VSV」を作製した。
【0185】
TC-83 RNA RPの作製は、上記の方法によって行った(上記の実施例2を参照)。簡潔には、pVHV-SARS-CoV-2-スパイク_wtおよびpVHV-SARS-CoV-2-スパイク-FCS-2P-VSVレプリコンベクターDNAおよびヘルパーDNAプラスミドを、RiboMAX(商標)Express T7 RNAポリメラーゼおよびキャップ類似体(Promega、Madison、WI)を使用したインビトロ転写の前にNotI制限酵素で直鎖化した。重要なことに、作製において使用されるヘルパーRNAは、VEEサブゲノムプロモーター配列を欠く。レプリコン成分およびヘルパー成分についての精製されたRNAを合わせ、ベロ細胞の懸濁液と混合し、4mmキュベット中で電気穿孔し、無血清培養培地に戻した。一晩のインキュベーション後、懸濁液をデプスフィルターに通し、5%スクロース(w/v)を含有するリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、最後に保持されたRPを400mMNaCl+5%スクロース(w/v)緩衝液または200mMNa2SO4+5%スクロース(w/v)で溶出することによって、アルファウイルスRNAレプリコン粒子を細胞および培地から精製した。溶出されたRPを0.22ミクロンのメンブレンフィルターに通し、アッセイおよび凍結乾燥の前に、保存のために一定分量に分配した。緑色蛍光タンパク質を発現する対照ワクチンも調製した。
【0186】
スクロース、NZ AmineおよびDMEMを含有する安定剤中での凍結乾燥および2~8℃での保存後に、感染したベロ細胞単層に対する免疫蛍光アッセイによって、機能的RP-スパイクワクチンの力価を決定した。簡潔には、ワクチンを連続希釈し、96ウェルプレート中のベロ細胞単層培養物に添加し、37℃で18~24時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を固定し、一次抗体(抗VEEV nsp2モノクローナル抗体)、続いてFITCコンジュゲート抗マウスIgG二次抗体で染色した。Biotek(登録商標)Cytation(商標)5 Imaging Readerを使用して、希釈当たり2つのウェル中ですべての陽性の、蛍光染色された細胞を計数することによって、RNA粒子を定量した。
【0187】
モルモット研究
350グラムの最小体重を有するSPFモルモットを、非ワクチン接種対照群、RP-スパイク-wtワクチン接種群およびRP-スパイク-FCS-2P-VSVワクチン接種群にわたって無作為に分割した(群あたりn=6)。配置の1週間後、動物は非ワクチン接種の状態を保つか、または筋肉内に1×10E7のRP用量(各脚の筋肉中に0.1ml)の初回ワクチン接種を受けた。初回ワクチン接種の3週間後、動物は1×10E7のRP用量筋肉内(各脚の筋肉に0.1ml)の追加ワクチン接種を受けた。追加免疫の6週間後、ワクチン接種動物は2回目の追加ワクチン接種を受け、7日後に動物を屠殺した。リンパ球刺激試験(LST)のために終末血液を採取し、出血を引き起こすことなく気管を慎重に切開した。スワブを用いて気管内から粘液を採取し、1mlのリン酸緩衝生理食塩水に溶解し、粘膜抗体価を決定するために使用した。追加ワクチン接種の日に、および追加ワクチン接種後6週間まで2週間間隔で、心臓穿刺を用いて、凝固した血液を採取し、全身抗体価を決定するために血清を使用した。
【0188】
サロゲートウイルス中和アッセイモルモット血清
GenScriptからのSARS-CoV-2 Surrogate Virus Neutralization Test Kitを製造者の説明書に従って使用した。簡単に説明すると、血清を試料希釈緩衝液で希釈し、HRP-RBDと1:1で混合し、37℃で30分間インキュベートした。次に、表面にコーティングされたACE2受容体を含有する96ウェルプレートに試料を入れ、37℃で15分間インキュベートした。結合していないHRP-RBDを洗い流し、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)基質を使用して残存する西洋ワサビ過酸化物(HRP)を可視化し、OD450で測定した。
【0189】
血清中の抗RBDおよびスパイク外部ドメイン抗体価を推定するためのELISA
精製されたSARS-CoV-2 RBDおよびスパイク外部ドメインをダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)[CaおよびMgなし、Lonza、17~512F]に希釈し、10nM(10pmol/mL)を使用して96ウェルプレート(MaxiSorp-ThermoFisher、またはHigh binding-Greiner Bio-one)上にコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。翌朝、0.25mL洗浄溶液/ウェル(DPBS、0.05%Tween20)を使用してELISAプレートウォッシャ(ImmunoWash 1575、BioRad)でプレートを3回洗浄し、次いで、250μLのブロッキング溶液(5%ミルク-Protifar、Nutricia、DPBS中0.1%Tween20)で、室温で2時間ブロッキングした。その後、ブロッキング溶液を廃棄した。次いで、(ブロッキング溶液中に、2連または3連で調製した)血清の4倍連続希釈物を対応するウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。各プレートは、陽性対照(約2のOD450を得るために希釈したモルモット血清)および陰性対照ウェルを含有した。プレートを再度3回洗浄した後、HRP含有抗体-ヤギ抗モルモット(IgG-HRPO、JacksonLab 106-035-003、1:8000)と室温で1時間インキュベートした。最後の洗浄工程を実施した後、100μL/ウェルのSuper Sensitive TMB(Surmodics、TMBS-1000-01)と共に室温で10分間インキュベートした。100μL/ウェルの12.5%H2SO4(Millipore、1.00716.1000)を添加することによって反応を停止した。ELx808BioTekプレートリーダーを用いて、450nmでの吸光度を30分で測定した。
【0190】
T細胞刺激試験(LST)
血液を採取し、Histopaque1083を含有するSepmateチューブ(Stemcell)を製造者の説明書に従って使用してリンパ球を単離した。簡潔には、K3-EDTA血液をRPMI-1640培地で1:2に希釈し、1200×gで10分間ペレット化した。チューブの最上層中の細胞を収集し、RPMI-1640を含有する清浄なチューブに入れ、400×gで7分間ペレット化した。細胞をRPMI-1640培地で1回洗浄し、400×gで7分間ペレット化した。細胞濃度を計数し、37℃で20分間、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で1×10E7の細胞を染色した。細胞をRPMI-1640で1回洗浄し、各動物からの5×10E5の細胞を、培地、ConA(10μg/ml)、または精製されたSARS-CoV-2 S1抗原(5、2.5、1.25、0.62、0.31または0.15μg/ml)のいずれかで2連で刺激した。刺激の3日後に、FACS-Verseを用いて細胞増殖を測定した。
【0191】
結果
スパイク-wtおよびスパイク-FCS-2P-VSV抗原(
図7の概略図を参照)の免疫原性を、VEEV RPベクターワクチンが筋肉内投与されたモルモットモデルにおいて評価した(
図5A)。初回ワクチン接種後、すべての動物は、スパイク受容体結合を妨害する抗体価を測定する市販のサロゲートVN試験によって評価されるように、抗体陽転を示した。スパイク-wt抗原と比較した場合、スパイク-FCS-2P-VSV抗原によって、明らかにより高いサロゲートVN力価が誘導された(
図5B)。2回目のワクチン接種後に、これらの力価は、実験の終了までより高い力価で強化された。一貫して、スパイク-FCS-2P-VSV抗原によって誘導された力価は、スパイク-wt抗原を産生するRPワクチンと比較してより高かった(
図5C~D)。
【0192】
VEEV RPベクタープラットフォームは、液性応答および細胞性応答の両方の効率的な誘導で知られている。RPワクチン候補によって誘導された細胞性応答のレベルを評価するために、第3の免疫化を行い、7日後に、リンパ球刺激試験(LST)のためにリンパ球を単離した。ConAで刺激したすべての単離されたリンパ球は、>80%の増殖力価をもたらした。スパイク-wt抗原とスパイク-FCS-2P-VSV抗原の間での液性応答の差とは対照的に、SARS-CoV-2 S1特異的T細胞分化のレベルに差は観察されなかった(
図5E)。液性応答が粘膜免疫ももたらすかどうかを決定するために、実験の最後に気管スワブを採取した。興味深いことに、サロゲートVN力価は気管スワブ中にも検出され、レベルは全身抗体レベルと相関し、スパイク-wt抗原と比較してスパイク-FCS-2P-VSV抗原について優れた力価を有していた(
図5F)。これらの抗体価は、親ワクチン接種が防御粘膜免疫を誘導することができることを示唆する。
【0193】
[実施例10]
安定化されたスパイク抗原を発現するアルファウイルスレプリコンに基づくワクチンは、殺菌免疫を誘導し、ネコ間でのSARS-COV-2の伝染を防止する
材料および方法
動物および飼育
短毛の雄および雌のSPFイエネコをMarshall BioResources(Waverly、NY)から入手し、マイクロチップによって同定し、実験群にランダムに割り当てた。研究期間全体を通じて、体温を含むベースライン臨床所見を記録した。
【0194】
SARS-CoV-2スパイク遺伝子RPワクチンの作製。
【0195】
SARS-CoV-2スパイクwtまたはスパイク-FCS-2P-VSV遺伝子のいずれかを産生するために使用されるVEEVレプリコンベクターを、上記の実施例2に以前に記載されたように構築した(上記実施例9および
図7も参照)。
【0196】
SARS-CoV-2攻撃誘発ウイルスおよび細胞培養
中国の流行地域への旅行から帰国し、米国のワシントンで2020年1月に臨床疾患(COVID-19)を発症した呼吸器疾患を有する患者からの中咽頭スワブから、SARS-CoV-2株USA-WA1/2020(GenBankアクセションQHO60594.1)が単離された。ウイルスをベロ細胞上で1継代増殖させた。ウイルス力価を決定するために、ベロ細胞上でウイルスの連続希釈を行い、24時間でのニュートラルレッド含有二次オーバーレイによる対比染色および48時間のインキュベーション後の可視化によってプラーク形成単位を定量した。
【0197】
プラセボ対照ワクチン
緑色蛍光タンパク質(gfpまたはGFP)を発現するRNA粒子からなるプラセボワクチンを、上記のようにアッセイし、凍結乾燥し、2~8℃で保存した。使用後、ワクチン接種用量を確認するために、試験ワクチンの各々を滴定した。
【0198】
ネコ血清学
インビトロプラーク減少中和試験(PRNT)を使用して、SARS-CoV-2に対する血清学的応答を調べた。手短に言えば、血清を56℃で30分間不活化し、ネコ血清の段階希釈物を調製し、100pfuのSARS-CoV-2と共に37℃で1時間インキュベートした。次いで、ウイルス血清混合物をベロ細胞上に播種し、24時間でニュートラルレッド含有二次オーバーレイで対比染色し、48時間後に可視化することによってプラークの数を読み取った。90%以上のウイルスが中和された最高希釈の逆数として、抗体価を決定した。
【0199】
有効性試験
10匹の11週齢SPFネコの2つの群を形成し、別々に飼育した。一方の群には皮下経路(0.5ml/用量)によって投与される5×10E7のRP-スパイク-FCS-2P-VSVをワクチン接種し、他方の群には同じ用量のRP-gfpを与えた。3週間後、各群は同じ処置を受けた。2回目のワクチン接種の25日後、軽い鎮静状態下で3.1×10E5pfuのSARS-CoV-2を用いて鼻腔内経路および経口経路の両方を使用することによって、ネコに攻撃誘発を行った。攻撃誘発の1日後に各群と一緒に飼育することによって、ワクチン接種も攻撃誘発も受けなかった5匹のSPFネコのさらに2つの群を歩哨として使用した。攻撃誘発後10日間毎日、SARS-CoV-2感染の指標となる臨床徴候について、すべての動物を観察した。確認された臨床徴候には、うつ、呼吸困難、鼻汁、眼漏、咳、結膜炎および/またはくしゃみが含まれた。攻撃誘発後/混合後研究の1~11日目に体温を記録した。
【0200】
中咽頭スワブ
攻撃誘発後研究の1~7日目に、攻撃誘発されたネコからウイルス単離のための中咽頭スワブを収集し、ゲンタマイシン、ペニシリン、ストレプトマイシンおよびアムホテリシンBを含有する1%ウシ血清アルブミンを含有するトリス緩衝MEM(BA-1培地)中にスワブを配置した。接触伝播を評価するために、攻撃誘発後研究の2~8日目に、接触歩哨から輸送培地中にもスワブを収集した。試験まで試料を-50℃で凍結した。
【0201】
鼻洗浄
攻撃誘発後1、2、3、5および7日目に、1mlのBA-1培地をネコの鼻孔中に滴下し、ペトリ皿に鼻汁を採取することによって、ウイルス単離のための鼻洗浄試料を採取した。接触を評価するために、攻撃誘発後2、3、4、6および8日目に、接触歩哨からも鼻洗浄液を採取した。試験まで試料を-50℃で凍結した。
【0202】
血液試料
一次ワクチン接種前および3週間後の血清のために血液試料を採取した。さらに、攻撃誘発の前および14日後に血液試料を採取した。
【0203】
ウイルス再単離
すべての中咽頭スワブおよび鼻洗浄液をウイルス再単離のために試験した。6ウェルプレート中のベロE6細胞のコンフルエントな単層をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1回洗浄し、スワブ/洗浄試料の連続10倍希釈物100μlを播種し、37℃で1時間インキュベートし、次いで、2%FBSを含有するMEM中の0.5%アガロースを重層した。ニュートラルレッド色素を含有する第2のオーバーレイを24時間後に添加し、プラークを48時間でカウントした。ウイルス力価をLog10pfu/mlで記録した。
【0204】
結果
ワクチンの有効性を決定するために、対照としての高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)を産生するRPワクチン、最適化されたSARS-CoV-2スパイク抗原(スパイク-FCS-2P-VSV)をネコにワクチン接種するか、またはネコをワクチン接種されていない状態に保った(歩哨)。追加ワクチン接種の3週間後、ネコを粘膜SARS-CoV-2攻撃誘発に曝露し、
図6Aに概説されるように試料を採取した。
【0205】
ワクチン接種後、いずれの時点においても、いずれのネコにも有害反応は検出されなかった。スパイク-FCS-2P-VSV抗原を産生するRPワクチンは、単回のワクチン接種後にすべてのネコにおいてウイルス中和抗体価を誘導することが可能であり、これは2回目のワクチン接種後に強化され、3.5週間後の攻撃誘発までレベルを維持した(
図6B)。ワクチン接種されていない歩哨動物は、攻撃誘発まで常に陰性を保った。攻撃誘発されたネコも歩哨ネコも、攻撃誘発後にいかなる臨床徴候も示さなかった。しかしながら、ワクチン接種されず、攻撃誘発を受けたネコ10匹のうち9匹が、攻撃誘発の1日後、および観察期間中少なくとも3日間、経口的に(
図6D)および経鼻的に(
図6E)ウイルスを排出した。これらのデータは、粘膜SARS-CoV-2攻撃誘発が気道における効率的なウイルス複製をもたらすことを示している。より高く、より一貫したウイルス排出が鼻洗浄液から検出されたのに対して、中咽頭スワブはより一貫性の低いパターンを示した。興味深いことに、攻撃誘発の1日後に、非ワクチン接種対照と一緒に配置された非ワクチン接種歩哨のうちの2匹で鼻洗浄液からもウイルス排出が検出された。さらに、5匹の歩哨動物すべてが、少なくとも2日間、経口経路を介してウイルスを排出し、これは、ワクチン接種されず、攻撃誘発された動物から歩哨動物へのウイルスの効率的な拡散を実証している(
図6D)。
【0206】
ワクチン接種されたネコはいずれも、攻撃誘発後の任意の時点で、検出可能なウイルスを経口的に(
図6D)または経鼻的に(
図6E)排出しなかった。結果は、ワクチンが感染を予防したことを示している。また、ワクチン接種されたネコにおける攻撃誘発ウイルス複製の欠如を考慮すると予想されるとおり、ワクチン接種されたネコとともに飼育された非ワクチン接種歩哨ではウイルスは検出されなかった。攻撃誘発後のウイルス中和抗体価の分析により、ワクチン接種されていない、攻撃誘発された動物および歩哨動物の両方が効率的に感染したことが確認された(
図6C)。これと好対照に、ワクチン接種されたネコとともに飼育された歩哨動物では、抗体陽転は観察されなかった。したがって、スパイク-FCS-2P-VSV抗原を産生するVEEV RPワクチンは、(i)殺菌免疫を誘導し、かつ(ii)ウイルスの伝染がナイーブネコに感染することを予防する。
【0207】
一方、これらの結果は、Langereis et al.,2021,npj Vaccines vol.6,no.122;https://doi.org/10.1038/s41541-021-00390-9として公開されている。
【0208】
本発明は、本明細書に記載される具体的な態様によって範囲が限定されるものではない。実際に、本明細書に記載されたものに加えて、本発明の様々な修正が、前述の説明から当業者には明らかになるであろう。そのような修正は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
【0209】
さらに、核酸またはポリペプチドについて与えられるすべての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、およびすべての分子量または分子質量値は近似値であり、説明のために提供されることを理解されたい。
【0210】
[実施例11]
さらなるコロナウイルススパイク抗原の変異
さらなるコロナウイルス由来のキメラスパイクタンパク質の発現を調べるために、さらにいくつかの実験を行った。とりわけ、ウシコロナウイルス(BCoV)およびSADSを引き起こすブタコロナウイルスのスパイクタンパク質をコードする遺伝子を、それらの安定性および(表面)発現を改善するために変異させた。
【0211】
材料および方法
FACSによる発現を示すための実験を本質的に上記のように行った:ベロ細胞を増幅し、播種した。Lipofectamineを用いて、試験されるべき(変異された)スパイク遺伝子を含有するプラスミドをベロ細胞中に形質移入し、培養した。次に、細胞を採取し、固定した。それぞれ、総発現/内部または表面発現を区別することを可能にするために、細胞を界面活性剤で透過処理するか、または透過処理しなかった。使用した抗体は、BCoVについては、マウスモノクローナル抗BCoVスパイクおよびヤギ抗マウスIgG-A488コンジュゲート抗体であり、SADS-CoVについては、ポリクローナルウサギ抗SADS-CoV S1抗体およびヤギ抗ウサギIgG-A488コンジュゲート抗体であった。
【0212】
使用されるBCoVスパイクタンパク質遺伝子(配列番号17中の翻訳とともに配列番号16を参照)は、公のデータベースで利用可能な2016-2021からの130個のBCoVスパイク配列から組み立てられたコンセンサス配列である。
【0213】
SADS-CoVスパイク遺伝子(配列番号19中の翻訳とともに配列番号18を参照)は、GDS04株のブタ腸アルファコロナウイルスに由来し、そのゲノムはGenBank acc.nr.:MF167434から入手可能である。
【0214】
BCoV(コンセンサス)スパイクについて試験されたスパイクタンパク質変異は、上記IBVおよびSARS-CoV-2スパイクタンパク質について試験したものと同様であった:FCS、2PおよびVSV-TM/CT。さらに、HA遺伝子配列がGenBank acc.nr.:V01088から入手可能であるインフルエンザウイルスHAタンパク質、A/プエルトリコ/8/1934(H1N1)株由来のコンセンサスTMD-CTD領域によって、BCoVコンセンサスTMD-CTD領域を置き換えた。
【0215】
SADS-CoVスパイクのTMD-CTD領域をVSV Gタンパク質由来のTMD-CTD領域によって置き換えることによって、SADS-CoVスパイクを変異させた。
【0216】
BCoVスパイクに対して行われた特定の変異:
-「FCS」を変異されたBCoVコンセンサススパイク遺伝子は、変異された(不活化された)フューリン切断部位を有し、配列番号20に示されており、そのヌクレオチド2290~2295および2299~2304に変異を組み込む。
【0217】
-「FCS-2P」変異されたBCoVコンセンサススパイク遺伝子は、不活化されたフューリン切断部位の隣に、安定化する2つのプロリンも組み込んでいる。配列は、配列番号21に示されており、そのヌクレオチド3238~3243に2P変異を有する。
【0218】
-「FCS-IAV-TM/CT」変異されたBCoVコンセンサススパイク遺伝子は、そのヌクレオチド3922~4029にインフルエンザHA TM/CT領域を有する配列番号22に示されるように、不活化されたフューリン切断部位の隣に、インフルエンザウイルスHAタンパク質からのコンセンサスTMD-CTD領域によるBCoVコンセンサスTMD-CTD領域の置換も組み込んでいる。
【0219】
-「FCS-VSV-TM/CT」変異されたBCoVコンセンサススパイク遺伝子は、不活化されたフューリン切断部位の隣に、VSV Gタンパク質からのコンセンサスTMD-CTD領域によるBCoVスパイクタンパク質コンセンサスTMD-CTD領域の置換も組み込んでおり、そのヌクレオチド3922~4068にVSV Gタンパク質TM/CT領域を有する配列番号23を参照されたい。
【0220】
-構築物「FCS-2P-VSV-TM/CT」は、上記の変異を組み合わせる。
【0221】
SADS-CoVスパイクに対して行われた特定の変異:
「VSV-TM/CT」変異されたSADS-CoVスパイク遺伝子は、VSV Gタンパク質からのTMD-CTD領域によるSADS-CoV TMD-CTD領域の置換を組み込んでおり、そのヌクレオチド3205~3351にVSV TM/CT領域を有する配列番号24を参照されたい。
【0222】
結果
BCoVおよびSADS-CoV由来のスパイクタンパク質の発現に対する異なる変異の効果を、100%に設定されたそれらのそれぞれの非変異スパイクタンパク質(「wt」)の発現レベルと比較した。BCoV由来のキメラスパイクタンパク質についての結果を
図8に示し、SADS-CoVについての結果を
図9に示す。
【0223】
図8および
図9から明らかなように、BCoVおよびSADS-CoVスパイクタンパク質についての結果は、上記のIBVおよびSARS-CoV2スパイクタンパク質について見られた結果と同様である。すべてのスパイクタンパク質について、出芽ウイルスの表面糖タンパク質(例えば、VSV Gタンパク質)からのTMD-CTD領域によるTMD-CTD領域の置換は、総発現レベルにとって有益であるが、宿主細胞の表面上での発現のレベルにとって特に有利である。これは、インフルエンザウイルスHAタンパク質由来のTMD-CTD領域の使用後にも観察された。フューリン切断シグナル(「FCS」)の除去および融合前立体構造の安定化(「2P」)などの他の修飾も同様の効果、すなわち、総スパイクタンパク質発現レベルのいくらかの増加、および細胞表面上でのスパイクタンパク質発現の強いないし非常に強い増加を有する。
【0224】
したがって、BCoVおよびSADS-CoVスパイクタンパク質についてのこれらの結果は、本明細書に記載されている本発明の有利な効果を確認し、拡張する。
【配列表】
【国際調査報告】