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特表2023-549791電気化学電池、並びにレドックスフロー電池、燃料電池、及び電解槽用のコンポーネント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】電気化学電池、並びにレドックスフロー電池、燃料電池、及び電解槽用のコンポーネント
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0228 20160101AFI20231121BHJP
   H01M 8/0245 20160101ALI20231121BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20231121BHJP
   H01M 8/0232 20160101ALI20231121BHJP
   H01M 8/0208 20160101ALI20231121BHJP
   H01M 8/0213 20160101ALI20231121BHJP
   H01M 8/0234 20160101ALI20231121BHJP
   H01M 8/0215 20160101ALI20231121BHJP
   H01M 8/0236 20160101ALI20231121BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20231121BHJP
   H01M 8/18 20060101ALI20231121BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20231121BHJP
   C25B 9/60 20210101ALI20231121BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20231121BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20231121BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20231121BHJP
【FI】
H01M8/0228
H01M8/0245
H01M4/86 M
H01M8/0232
H01M8/0208
H01M4/86 B
H01M8/0213
H01M8/0234
H01M8/0215
H01M8/0236
H01M8/02
H01M8/18
H01M8/10 101
C25B9/60
C25B9/23
C25B1/04
C25B9/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528235
(86)(22)【出願日】2021-11-10
(85)【翻訳文提出日】2023-05-11
(86)【国際出願番号】 DE2021100893
(87)【国際公開番号】W WO2022105959
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】102020130693.8
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ラディスラウス ドブレニツキ
(72)【発明者】
【氏名】メーメト エテ
(72)【発明者】
【氏名】ベアトラム ハーグ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン-ペーター ヴィクトーア シンツェル
(72)【発明者】
【氏名】イェーヴァンティ フィヴェカナンタン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン マーティン シュトゥンプフ
【テーマコード(参考)】
4K021
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB43
4K021DB49
4K021DB53
5H018AA06
5H018AA08
5H018DD03
5H018DD08
5H018EE10
5H018EE11
5H018HH03
5H018HH05
5H126AA03
5H126AA12
5H126BB06
5H126BB10
5H126DD05
5H126DD14
5H126DD17
5H126FF04
5H126GG08
5H126GG11
5H126JJ03
5H126JJ05
(57)【要約】
本発明は、電気化学電池用のコンポーネント(1、1’、1a、1b、1c、1d)であって、コンポーネント(1、1’、1a、1b、1c、1d)が、レドックスフロー電池(8)用の電極の形態で、又は燃料電池(90)若しくは電解槽用のバイポーラプレートの形態で、又は電解槽用の流体拡散層(22a、22b)の形態で存在し、メタルシート(2a)及び/又はエキスパンドメタルグリル(2b、2b’)の形態の材料から形成されている基板(2)を備え、材料が、スズ-ニッケル合金、又はスズ-銀合金、又はスズ-亜鉛合金、又はスズ-ビスマス合金、又はスズ-アンチモン合金から形成されている、電気化学電池用のコンポーネント(1、1’、1a、1b、1c、1d)に関する。本発明はまた、レドックスフロー電池(8)、燃料電池(90)、及び電解槽に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学電池用のコンポーネント(1、1’、1a、1b、1c、1d)であって、前記コンポーネント(1、1’、1a、1b、1c、1d)が、レドックスフロー電池(8)用の電極の形態で、又は燃料電池(90)若しくは電解槽用のバイポーラプレートの形態で、又は電解槽用の流体拡散層(22a、22b)の形態で存在し、メタルシート(2a)及び/又はエキスパンドメタルグリル(2b、2b’)の形態の材料から形成されている基板(2)を備え、前記材料が、スズ-ニッケル合金、又はスズ-銀合金、又はスズ-亜鉛合金、又はスズ-ビスマス合金、又はスズ-アンチモン合金から形成されていることを特徴とする、電気化学電池用のコンポーネント(1、1’、1a、1b、1c、1d)。
【請求項2】
前記メタルシート(2a)及び前記エキスパンドメタルグリル(2b、2b’)が、5mmの最大厚さで各々設計されていることを特徴とする、請求項1に記載のコンポーネント(1、1’、1a、1b)。
【請求項3】
前記メタルシート(2a)及び前記エキスパンドメタルグリル(2b、2b’)が、少なくとも領域において三次元プロファイル(4)を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のコンポーネント(1、1’、1a、1b)。
【請求項4】
前記基板(2)上に適用されているコーティング(3)を更に備え、前記コーティング(3)が、
a)炭素若しくは貴金属若しくは貴金属合金若しくは金属窒化物、若しくはハフニウム、ニオブ、タンタル、ビスマス、ニッケル、スズ、スズ-ニッケル合金からなる群からの少なくとも1つの材料、又は
b)Ir-C、Ir-Ru-C、Ru-C、Ag-C、W-C、Cu-C、Mo-C、Cr-C、Mg-C、Pt-C、Ta-C、Nb-Cからなる群からの材料の組み合わせのうちの少なくとも1つからの均一若しくは不均一な固溶体若しくは化合物であって、コーティング(3)中の炭素の割合が、35~99.99原子%の範囲にある、固溶体若しくは化合物、又は
c)銅-スズ合金若しくはスズ-ニッケル合金若しくはスズ-銀合金若しくはスズ-亜鉛合金若しくはスズ-ビスマス合金若しくはスズ-アンチモン合金から作製された、材料組成物に関して基板(2)とは異なるように選択されたコーティング(3)、のいずれかであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンポーネント(1、1’、1a、1b)。
【請求項5】
前記コーティング(3)が、2~500nmの範囲の層厚(D)を有することを特徴とする、請求項4に記載のコンポーネント(1、1’、1a、1b)。
【請求項6】
前記コーティング(3)が、少なくとも前記レドックスフロー電池(8)の電解質への接触領域において、前記基板(2)を覆っていることを特徴とする、請求項4又は5に記載の、前記レドックスフロー電池(8)用の前記電極の形態のコンポーネント(1、1’、1a、1b)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の少なくとも1つの電極と、特に、7~14の範囲のpHを有する少なくとも1つの電解質と、を備える、レドックスフロー電池(8)、特に、レドックスフローバッテリ。
【請求項8】
少なくとも2つの電極と、第1の反応チャンバ(10a)と、第2の反応チャンバ(10b)と、を備え、各反応チャンバ(10a、10b)が、前記電極のうちの1つと接触し、前記反応チャンバ(10a、10b)が、イオン交換膜(9a)によって互いに分離されている、請求項7に記載のレドックスフロー電池(8)。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の少なくとも1つのバイポーラプレートと、少なくとも1つの高分子電解質膜(9)と、を備える、燃料電池(90)。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載の少なくとも1つのバイポーラプレート又は流体拡散層(22a、22b)と、少なくとも1つの高分子電解質膜(9)と、を備える、電解槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学電池用のコンポーネントに関し、このコンポーネントは、レドックスフロー電池用の電極の形態で、又は燃料電池若しくは電解槽のバイポーラプレートの形態で、又は電解槽の流体拡散層の形態で、存在する。このコンポーネントは、メタルシート及び/又はエキスパンドメタルグリルの形態の材料から形成された基板を備える。本発明は更に、レドックスフロー電池、燃料電池、及び電解槽に関する。
【0002】
電極及びそれを備えたレドックスフロー電池の形態のコンポーネント、特にレドックスフローバッテリ又はフローバッテリは十分に知られている。レドックスフローバッテリは、電気エネルギーの貯蔵装置であり、電気エネルギーは、カソライトと呼ばれるもの及びアノライトと呼ばれるものである液体化合物又は電解質に貯蔵される。電解質は、イオン交換膜によって互いに分離された2つの反応チャンバに配置される。この膜を介してカソライトとアノライトとの間のイオン交換が起こり、そこで電気エネルギーが放出される。放出された電気エネルギーは、カソライト及びアノライトと各々接触している1つの電極を介して取り出される。電解質は、ポンプによって反応チャンバ内を循環し、膜のそれぞれの対向面に沿ってそれぞれ循環し、流れる。電解質は、任意のサイズのタンクに貯蔵できるため、レドックスフローバッテリに貯蔵されるエネルギー量は、使用するタンクのサイズのみに依存する。
【0003】
蓄電システムとしてのフローバッテリシステムは、再生可能エネルギーによって静止及び可動用途分野に持続可能なエネルギー供給を提供する。高い効率と電力密度を達成するための目的は、バッテリスタックで可能な限りコンパクトな電池設計を実現することである。しかしながら、高い電力密度は、バッテリスタックの個々のコンポーネントに関して大きな課題をもたらす。
【0004】
WO2018/145720A1には、電極ユニット及び電極ユニットを用いたレドックスフローバッテリが記載されている。したがって、とりわけ、複合材料からの電極ユニット基板の形成が記載されている。
【0005】
WO2018/146342A1は、レドックスフローバッテリで使用するための様々なリグニンベースの電解質組成物を開示している。
【0006】
刊行物「A biomimetic high-capacity phenazine-based anolyte for aqueous organic redox flow batteries」、Aaron Hollas et al.、Nature energy、Vol. 3、June 2018、pages 508-514には、水性「有機」電解質に基づく、又はレドックス活性有機種を含む水性電解質に基づくレドックスフローバッテリ用のアノライトが記載されている。これらはますます重要になってきている。
【0007】
現在、強塩基性又は酸性の電解質を使用しているため、レドックスフローバッテリの電極用の耐腐食性基板として、プラスチック及びグラファイトのプレート状複合材料がよく使用されている。これらの基板は通常、両面に炭素コーティングが適用されているか、又は、そこを流れることができる、膜と電極との間に炭素フェルトがある。電極の総プレート厚は、0.7~1.2mm程度が一般的である。このような電極は、多くの場合、電気絶縁性のプラスチックフレームに保持されており、フレーム及び組み立てプロセスに追加のコストがかかる。そのような電極のサイズ及び製造要件は、現在、レドックスフロー電池の省スペースで特にコンパクトな形状及びその合理的な工業生産の障害となっている。
【0008】
その技術的背景については、刊行物「Engineering aspects of the design, construction and performance of modular redox flow batteries for energy storage」、L.F.Arenas et al.、Journal of Energy Storage 11 (2017)、 pages 119-153を参照されたい。
【0009】
しかしながら、特に高分子電解質膜を有する燃料電池及び電解槽などの他の電気化学電池は、バイポーラプレート及び流体拡散層の領域に耐腐食性基板を必要とする。
【0010】
本発明の目的は、レドックスフロー電池用の電極の形態の、又は燃料電池若しくは電解槽用のバイポーラプレートの形態の、又は電解槽用の流体拡散層の形態の、コンポーネントであって、安価に製作可能なコンポーネントを提供することである。更に、本発明の目的は、レドックスフロー電池、燃料電池、及び少なくとも1つのそのようなコンポーネントを有する電解槽を提供することである。
【0011】
本目的は、材料がスズ-ニッケル合金又はスズ-銀合金又はスズ-亜鉛合金又はスズ-ビスマス合金又はスズ-アンチモン合金から形成されるという点で、メタルシート及び/又はエキスパンドメタルグリルの形態の材料から形成される基板を備えるコンポーネントによって達成される。
【0012】
スズ-ニッケル合金又はスズ-銀合金又はスズ-亜鉛合金又はスズ-ビスマス合金又はスズ-アンチモン合金には、不可避的なppmレベルの不純物が存在する場合がある。すべての他の金属の1重量%以下の合計含有量で、少なくとも1種の他の金属を添加することが可能である。
【0013】
電極の形態の本発明によるコンポーネントは、レドックスフロー電池の電解質と比較して、特に中性及び強アルカリ性条件において、その活物質に対して電気化学的に安定している。それは、電解質で必要な反応(触媒活性と呼ばれるもの)と比較して低い過電圧と、金コーティングに匹敵する最も低い界面抵抗を示す。電極の形状のコンポーネントは、わずかな製造ステップで安価に製造することもできる。
【0014】
電極、バイポーラプレート、又は流体拡散層の寸法に応じて、機械的安定性を確保するために、表面積が増加するにつれて厚さを増加させることが有利である。原則として、厚さ0.1mm超のシートメタル及びエキスパンドメタルグリルをこのようなコンポーネントに使用することができる。しかしながら、シートメタル及びエキスパンドメタルグリルが最大5mmの厚さで各々設計されている場合、有用であることが証明されている。
【0015】
コンポーネントの好ましい実施形態では、シートメタル及び/又はエキスパンドメタルグリルは、少なくとも領域において三次元プロファイルを有する。これにより、メタルシート又はエキスパンドメタルグリルの、通過する流体に対する後で利用可能な接触面が増加する。
【0016】
基板は、メタルシートのみ、エキスパンドメタルグリルのみ(おそらく、例えば、ニッケル又はグラファイト複合材で作製された、導電性で流体を通さない支持プレートと組み合わせて)、又はメタルシートとエキスパンドメタルグリルとの組み合わせを備え得る。
【0017】
流体が流れることができるエキスパンドメタルグリルが1つだけ設けられている場合、これは、コイル状に巻き上げること、一方の層を他方の層の上面に重ねること、又は単層で設けることができる。
【0018】
メタルシートとエキスパンドメタルグリルとの組み合わせの場合、エキスパンドメタルグリルは流体に面して配置され、好ましくは、メタルシートとエキスパンドメタルグリルとの間のクランプのみが存在する。しかしながら、コンポーネントのその後の組み立てを簡単にするために、エキスパンドメタルグリルを個々のスポット溶接によってメタルシートに取り付けるか、メタルシートに接着又ははんだ付けすることもできる。
【0019】
好ましくは、基板は、少なくとも領域において、片面又は好ましくは両面に三次元プロファイリングを有し、フローフィールドを形成する。基板へのこのようなフローフィールドの導入は、エンボス加工などによって費用対効果の高い方法で可能である。このようなフローフィールドは、流体のフローを定義された経路に方向付け、基板の表面の領域における三次元構造と等価である。これにより、膜上及び膜に沿った流体の均一な分布とフローが保証される。
【0020】
コンポーネントは、好ましくは、基板上に適用されているコーティングを更に備え、コーティングは、
a)炭素若しくは貴金属若しくは貴金属合金若しくは金属窒化物、若しくはハフニウム、ニオブ、タンタル、ビスマス、ニッケル、スズ、スズ-ニッケル合金からなる群からの少なくとも1つの材料、又は
b)Ir-C、Ir-Ru-C、Ru-C、Ag-C、W-C、Cu-C、Mo-C、Cr-C、Mg-C、Pt-C、Ta-C、Nb-Cからなる群からの材料の組み合わせのうちの少なくとも1つからの均一若しくは不均一な固溶体若しくは化合物であって、コーティング中の炭素の割合が、35~99.99原子%の範囲にある、固溶体若しくは化合物、又は
c)銅-スズ合金若しくはスズ-ニッケル合金若しくはスズ-銀合金若しくはスズ-亜鉛合金若しくはスズ-ビスマス合金若しくはスズ-アンチモン合金から作製された、化学組成物に関して基板とは異なるように選択されたコーティング、のいずれかから形成される。
【0021】
更に、微量の水素、窒素、ホウ素、フッ素、又は酸素がカバー層に存在する可能性がある。
【0022】
c)によるコーティングは、化学組成物に関して基板の材料とは異なる。すなわち、同じ金属を異なる濃度で含むことができるか、又は他の金属を含むことができる。
【0023】
コーティングの適用は、コンポーネントの化学的安定性を更に改善し、その耐用年数を大幅に延長する。
【0024】
その層は、好ましくは、2~500nmの範囲の層厚を有する。
【0025】
コーティングが基板の少なくとも片面、好ましくは両面又はすべての面を覆っている場合、効果的であることが証明されている。特に、メタルシートの縁部の領域では、コーティングされていない領域又は層厚が非常に薄い領域が存在する可能性がある。特に、コーティングは、レドックスフロー電池の電解質との接触領域、すなわち、カソライト又はアノライトと直接接触して使用される領域で、基板を覆うべきである。
【0026】
コーティングは、好ましくは、PVDプロセス又は組み合わされたPVD/PACVDプロセスを使用して基板上に形成される。この点で、金属基板に対する流体の腐食効果を防ぐために、コーティングが可能な限り細孔を含まないように堆積されるか、少なくとも直径が0.1mm未満の細孔のみを有する場合に有利である。しかしながら、コーティングは、代替的なコーティング方法、例えば、ガルバニック又は溶射によって適用することもできる。
【0027】
コーティングは、それが金属で作製されている場合、めっきの形態であり得る。金属加工において、めっきとは、1つ以上の金属層を別の母材の金属に片面又は両面に適用するすることである。このように、圧力及び/又は温度又はその後の熱処理(例えば、拡散焼鈍)によって分離不可能な結合が達成される。めっきは、特に薄い金属箔を圧延することによって行うことができる。
【0028】
特に、電極が、片面又は両面にコーティングを有し、上記のグループa)で言及されるコーティング用の金属材料の1つ、特にスズでめっきすることによって形成されるシートメタルで作製されている場合、有用であることが証明されている。
【0029】
本目的は、電極の形態の本発明による少なくとも1つのコンポーネントと、少なくとも1つの電解質と、を備える、レドックスフロー電池、特にレドックスフローバッテリによっても達成される。特に、7~14の範囲のpHを有する電解質が選択される。
【0030】
レドックスフロー電池は、好ましくは、少なくとも2つの電極と、第1の反応チャンバと、第2の反応チャンバと、を備え、各反応チャンバは、電極のうちの1つと接触し、かつ反応チャンバは、イオン交換膜によって互いに分離されている。電極を使用すると、膜までの距離を短くできるため、レドックスフロー電池の省スペース設計が可能になる。
【0031】
電極は、電解質に対して不浸透性であり、レドックスフロー電池内の反応チャンバを問題なく分離できる。同時に、このような電極は、電気化学的安定性に対する高い要件に加えて、低い界面抵抗及び高い触媒活性に対する要件も満たす表面を有する。
【0032】
特に、アノライト側にレドックス活性種を備える水性電解質を有するフローバッテリは、本発明による電極の好ましい用途である。
【0033】
電極の厚みを薄くすることができるため、小型のレドックスフローバッテリを製造することができ、製造コストも低くなる。したがって、レドックスフローバッテリを形成するために、好ましくは10を超える、特に50を超えるレドックスフロー電池が、電気的に相互接続された方法で使用される。
【0034】
ここでは、レドックスフロー電池又はレドックスフローバッテリに好適な例として、次のアノライトに言及する:
1.4Mの7,8-ジヒドロキシフェナジン-2-スルホン酸(略称:DHPS)、
これは、1モルの水酸化ナトリウム溶液に溶解されている。
【0035】
ここでは、レドックスフロー電池又はレドックスフローバッテリに好適な例として、次のカソライトに言及する:
0.31Mのカリウムヘキサシアノ鉄(II)と0.31Mのカリウムヘキサシアノ鉄(III)、
これは、2モルの水酸化ナトリウム溶液に溶解されている。
【0036】
レドックスフロー電池又はレドックスフローバッテリを形成するために、アノライト側にレドックス活性有機種を含有する水性電解質との電解質の組み合わせが使用されることが好ましい。
【0037】
バイポーラプレートの形態の本発明による少なくとも1つのコンポーネントと、少なくとも1つの高分子電解質膜と、を備える、燃料電池は、長期にわたって安定であることが証明された。
【0038】
更に、バイポーラプレート又は流体拡散層の形態の本発明による少なくとも1つのコンポーネントを備え、かつ少なくとも1つの高分子電解質膜を備える電解槽は、長期にわたって安定であることが証明された。
【0039】
図1~6は、本発明による電極の形態のコンポーネントと、レドックスフロー電池又はレドックスフローバッテリと、の例を示す。図7及び8は、電解槽の燃料電池及び電解セルの例を示す。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】基板面の平面図で基板を備える電極を示す。
図2】コーティングを備える電極の断面を示す。
図3】プロファイルを持つ電極の断面を示す。
図4】メタルシート及びエキスパンドメタルグリルで作製された基板を備える電極の断面を示す。
図5】電極をフラックスフィールドとともに示す。
図6】レドックスフロー電池又はレドックスフロー電池を有するレドックスフローバッテリを示す。
図7】電解槽を断面図で示す。
図8】燃料電池スタックを三次元図で示す。
【0041】
図1は、基板平面の平面図で基板2を備える電極の形態のコンポーネント1を示している。ここで、基板2は、0.5mm未満の厚さを有するメタルシート2aから形成されている。メタルシート2aは、スズ-銀合金で作製されている。
【0042】
図2は、両面にコーティング3を有する、スズ-アンチモン合金で作製されたメタルシート2aの形態の基板2を備える、電極の形態のコンポーネント1の断面を示す。しかしながら、コーティング3は、メタルシート2aの片面のみに適用することもでき、コーティング3は、少なくともレドックスフロー電池8の電解質との接触領域において基板2を覆うことを意図している(図6参照)。
【0043】
図3は、スズ-ビスマス合金で作製されたメタルシート2aの形態の基板2を備える電極の形態のコンポーネント1の断面を示している。メタルシート2aは、三次元プロファイル4を有し、レドックスフロー電池8の電解質に対するメタルシート2aの後の接触表面を増加させる。
【0044】
図4は、メタルシート2a及びエキスパンドメタルグリル2bを備える基板2を備える電極の形態のコンポーネント1’の断面を示している。メタルシート2a及びエキスパンドメタルグリル2bは、スズ-銀合金で形成されている。
【0045】
図5は、フラックスフィールド7を形成するプロファイル4を有するスズ-銀合金で作製された、メタルシート2aの形態の基板2を備える、電極の形態のコンポーネント1の三次元図を示している。基板2には、各ケースにおいてフローフィールド7を形成するために両面にプロファイル4があり、結果としてレドックスフロー電池8内で電解質が流れるべき電極の表面の三次元構造をもたらす。
【0046】
図6は、レドックスフロー電池8又はレドックスフローバッテリを示し、レドックスフローバッテリをそれぞれ有する。レドックスフロー電池8は、電極の形態の2つのコンポーネント1a、1b、第1の反応チャンバ10a、及び第2の反応チャンバ10bを備え、各反応チャンバ10a、10bは、電極のうちの一方と接触している。反応チャンバ10a、10bは、イオン交換膜9aによって、互いに分離されている。液体アノライト11aが、タンク13aから第1の反応チャンバ10aへポンプ12aを介してポンプ圧送され、コンポーネント1aとイオン交換膜9aとの間を通って供給される。液体カソライト11bが、タンク13bから第2の反応チャンバ10bへポンプ12bを介してポンプ圧送され、コンポーネント1bとイオン交換膜9aとの間を通って供給される。イオン交換は、イオン交換膜9aにわたって発生し、電気エネルギーが電極におけるレドックス反応により放出される。
【0047】
図7は、アノード側A及びカソード側Kに互いを分離する高分子電解質膜9を備える、電解槽の電解セル20を示している。触媒層21a、21bは、各々触媒材料及び流体拡散層22a、22bを備え、流体拡散層22a、22bは、高分子電解質膜9の両側に触媒層21a、21bに隣接して配置される。流体拡散層22a、22bは、導電プレート24a、24bに隣接して各々配置され、流体拡散層22a及び22bは、スズ-銀合金で作製されたエキスパンドメタル2b、2b’から形成されている。プレート24a、24bは各々、反応媒質(水)の供給及び反応生成物(水、水素、酸素)の除去を改善するために、流体拡散層22a、22bに面する側にフローチャネル23a、23bを有する。
【0048】
図8は、複数の燃料電池90を備える燃料電池スタック100を概略的に示している。各燃料電池90は、バイポーラプレートの形態のコンポーネント1c、1dの両面に隣接する高分子電解質膜9を備える。各バイポーラプレートは、スズ-銀合金基板を有する。バイポーラプレートは、開口部80aを有する流入領域と、燃料電池(90)にプロセスガス及びクーラントを供給し、燃料電池(90)及びクーラントから反応生成物を除去するために使用される更なる開口部80bを有する出口領域と、を有する。バイポーラプレートはまた、両側にガス分配構造7’を有し、これは、高分子電解質膜9と接触するために設けられる。
【符号の説明】
【0049】
1、1’、1a、1b、1c、1d コンポーネント
2 基板
2a シートメタル
2b、2b’ エキスパンドメタルグリル
3 コーティング
4 プロファイル
7 フラックスフィールド
7’ ガス分配構造
8 レドックスフロー電池又はレドックスフローバッテリ
9 高分子電解質膜
9a イオン交換膜
10a 第1の反応チャンバ
10b 第2の反応チャンバ
11a アノライト
11b カソライト
12a、12b ポンプ
13a、13b、13c タンク
20 電解槽の電解セル
21a、21b 触媒材料
22a、22b 流体拡散層
23a、23b フローチャネル
24a、24b 導電プレート
80a、80b 開口部
90 燃料電池
100 燃料電池スタック
A アノード側
K カソード側
d シートメタル又はエキスパンドメタルの厚さ
D コーティングの厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】