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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】脂肪族炭化水素の回収
(51)【国際特許分類】
   C10G 1/00 20060101AFI20231121BHJP
   C10G 1/10 20060101ALI20231121BHJP
   C10G 1/04 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
C10G1/00 Z
C10G1/10
C10G1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528419
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(85)【翻訳文提出日】2023-05-19
(86)【国際出願番号】 EP2021081486
(87)【国際公開番号】W WO2022101392
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】20207461.3
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002105
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ランジュ,ジャン-ポール・アンドレ・マリー・ジョゼフ・ジスラン
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ロッサム,フース
(72)【発明者】
【氏名】オルトフ,ティモテー・ヨハンネス
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,カイ・ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】シュティーヒター,ヘンドリク
(72)【発明者】
【氏名】ケベド・エンリケス,ホセ・アティリオ
(72)【発明者】
【氏名】グラウ・リニエ,ルイス・アルベルト
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA03
4H129BA03
4H129BA04
4H129BA20
4H129BB02
4H129BB03
4H129BB10
4H129BC12
4H129BC37
4H129NA01
4H129NA24
4H129NA43
(57)【要約】
本発明は、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む液体流から脂肪族炭化水素を回収するためのプロセスであって、a)当該液体流を洗浄溶媒と接触させ、それによってヘテロ原子含有有機化合物を除去することと、a)洗浄された流れを抽出溶媒で液-液抽出することと、を含み、ステップa)中に、及び/又は複数のステップa)の間に、及び/又はステップa)とb)との間に、及び/又はステップb)の後に、ヘテロ原子含有有機化合物、任意選択の芳香族炭化水素、及び任意選択の他の汚染物質が、当該液体流から、及び/又はステップa)から得られる洗浄された流れから、及び/又はステップb)から得られるラフィネート流から、それぞれ、後者の流れを収着剤と接触させることによって除去される、プロセス、に関する。更に、本発明は、上記のプロセスを含む、プラスチックから脂肪族炭化水素を回収するためのプロセス、及び上記のプロセスのうちの1つで回収されるような脂肪族炭化水素を含む炭化水素供給物を蒸気分解するためのプロセスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む液体炭化水素供給原料流から脂肪族炭化水素を回収するためのプロセスであって、
a)前記液体炭化水素供給原料流の少なくとも一部を、1つ以上のヘテロ原子を含有する洗浄溶媒a)と混合して、得られた混合物を、洗浄溶媒a)及びヘテロ原子含有化合物を含む第1の流れと、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の流れとに分離するステップと、
b)ステップa)から得られた前記第2の流れの少なくとも一部を、1つ以上のヘテロ原子を含有する抽出溶媒b)と接触させ、かつその流れを抽出溶媒b)による液-液抽出に供して、脂肪族炭化水素及び任意選択でヘテロ原子含有有機化合物を含む第1の流れと、抽出溶媒b)、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の流れとをもたらすステップと、を含み、
(i)ステップa)中に、前記第1及び第2の流れが、ステップa)において分離される前に、前記液体炭化水素供給原料流の少なくとも一部が、収着剤と接触させられ、及び/又は
(ii)先行するステップa)と後続のステップa)との間に、前記先行するステップa)から得られた前記第2の流れの少なくとも一部が、収着剤と接触させられ、及び/又は
(iii)ステップa)とb)との間に、ステップa)から得られた前記第2の流れの少なくとも一部が、収着剤と接触させられ、及び/又は
(iv)ステップb)から得られた前記第1の流れが、脂肪族炭化水素及びヘテロ原子含有有機化合物を含み、ステップb)の後に、その流れの少なくとも一部が、収着剤と接触させられる、プロセス。
【請求項2】
前記洗浄溶媒a)が、少なくとも10MPa1/2、好ましくは、少なくとも15MPa1/2のRa、ヘプタンを有し、Ra、ヘプタンが、25℃で決定される、ヘプタンに関するハンセン溶解度パラメータ距離を指し、
前記洗浄溶媒a)が、25℃で決定される溶媒100g当たりのNaClのgで、少なくとも0.1g/100g、好ましくは、少なくとも1g/100gの塩化ナトリウムの溶解度を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記洗浄溶媒a)が、水、アンモニア、及び有機溶媒であって、ジオール並びにトリオール(モノエチレングリコール(MEG)、モノプロピレングリコール(MPG)、及びグリセロールを含む);グリコールエーテル(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及びテトラエチレングリコールを含むオリゴエチレングリコール、並びに200~1,000g/モル又は200~700g/モルの分子量を有し得るポリエチレングリコール(PEG)を含む);ホルムアミド及びモノアルキルホルムアミド及びアセトアミドを含む、アミド(アルキル基が、1~8個又は1~3個の炭素原子を含有してもよく、メチルホルムアミドを含む);ジアルキルスルホキシド(前記アルキル基は、1~8個又は1~3個の炭素原子を含有してもよく、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む);スルホン(スルホランを含む);ヒドロキシエステル(乳酸メチル及び乳酸エチルを含む、乳酸エステルを含む);アミン系化合物(エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンを含む);炭酸化合物(炭酸プロピレン及び炭酸グリセロールを含む);並びにシクロアルカノン化合物(ジヒドロレボグルコセノンを含む)からなる群から選択される、有機溶媒、からなる群から選択される1つ以上の溶媒を含み、前記洗浄溶媒a)が、好ましくは水を含む、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記抽出溶媒b)が、少なくとも5MPa1/2、好ましくは、少なくとも10MPa1/2のRa、ヘプタンを有し、Ra、ヘプタンが、25℃で決定される、ヘプタンに関するハンセン溶解度パラメータ距離を指す、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記抽出溶媒b)が、アンモニア、又は好ましくは、ジオール及びトリオール(モノエチレングリコール(MEG)、モノプロピレングリコール(MPG)、ブタンジオール及びグリセロールの任意の異性体を含む);グリコールエーテル(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールを含む、オリゴエチレングリコールを含む)、並びにそれらのモノアルキルエーテル(ジエチレングリコールエチルエーテルを含む);アミド(N-アルキルピロリドンを含み、アルキル基は、1~8個又は1~3個の炭素原子を含有してもよく、N-メチルピロリドン(NMP)を含む)、ホルムアミド、並びにジ及びモノアルキルホルムアミド、及びアセトアミド(前記アルキル基は、1~8個又は1~3個の炭素原子を含有してもよく、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルホルムアミド及びジメチルアセトアミドを含む);ジアルキルスルホキシド(前記アルキル基は、1~8個又は1~3個の炭素原子を含有してもよく、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む);スルホン(スルホランを含む);N-ホルミルモルホリン(NFM);フラン環含有成分及びそれらの誘導体(フルフラール、2-メチルフラン、フルフリルアルコール及びテトラヒドロフルフリルアルコールを含む);ヒドロキシエステル(乳酸メチル及び乳酸エチルを含む、乳酸エステルを含む);リン酸トリアルキル(リン酸トリエチルを含む);フェノール化合物(フェノール及びグアイアコールを含む);ベンジルアルコール化合物(ベンジルアルコールを含む);アミン系化合物(エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンを含む);ニトリル化合物(アセトニトリル及びプロピオニトリルを含む);トリオキサン化合物(1,3,5-トリオキサンを含む);炭酸化合物(炭酸プロピレン及び炭酸グリセロールを含む);並びにシクロアルカノン化合物(ジヒドロレボグルコセノンを含む)からなる群から選択される1つ以上の有機溶媒を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
(i)ステップa)中に、前記第1及び第2の流れが、ステップa)において分離される前に、前記ヘテロ原子含有有機化合物の一部が、前記液体炭化水素供給原料流から、その流れの少なくとも一部を収着剤と接触させることによって除去され、ステップ(i)から得られた処理された流れの少なくとも一部が、ステップb)に供給され、及び/又は
(ii)ステップa)が、連続した複数のステップa)を含み、前記ヘテロ原子含有有機化合物の一部が、先行するステップa)から得られた前記第2の流れから、その流れの少なくとも一部を収着剤と接触させることによって除去され、ステップ(ii)から得られた前記処理された流れの少なくとも一部が、後続のステップa)に供給され、及び/又は
(iii)前記ヘテロ原子含有有機化合物の一部が、ステップa)から得られた前記第2の流れから、その流れの少なくとも一部を収着剤と接触させることによって除去され、ステップ(iii)から得られた前記処理された流れの少なくとも一部が、ステップb)に供給され、及び/又は
(iv)ステップb)から得られた前記第1の流れが、脂肪族炭化水素及びヘテロ原子含有有機化合物を含み、ヘテロ原子含有有機化合物が、その流れの少なくとも一部を収着剤と接触させることによって、その流れから除去される、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
プラスチックから脂肪族炭化水素を回収するためのプロセスであって、前記プラスチックの少なくとも一部が、ヘテロ原子含有有機化合物を含み、前記プロセスが、
(I)前記プラスチックを分解し、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む炭化水素生成物を回収するステップと、
(II)ステップ(I)で得られた前記炭化水素生成物の少なくとも一部を含む液体炭化水素供給原料流を、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセスに供するステップと、を含む、プロセス。
【請求項8】
炭化水素供給物を蒸気分解するためのプロセスであって、前記炭化水素供給物が、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセスで回収された脂肪族炭化水素を含む、プロセス。
【請求項9】
炭化水素供給物を蒸気分解するためのプロセスであって、
請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、液体炭化水素供給原料流から脂肪族炭化水素を回収するステップと、
先行するステップで回収された脂肪族炭化水素を含む炭化水素供給原料を蒸気分解するステップと、を含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む液体炭化水素供給原料流から脂肪族炭化水素を回収するためのプロセス、上記のプロセスを含む、プラスチックから脂肪族炭化水素を回収するためのプロセス、並びに上記のプロセスのうちの1つで回収されるような脂肪族炭化水素を含む炭化水素供給物を蒸気分解するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチックは、例えば、熱分解によるプラスチックの分解を介して、オレフィン及び芳香族炭化水素を含む高付加価値の化学物質に変換され得る。プラスチックの熱分解は、広い沸点範囲の炭化水素を含有する生成物流をもたらすことができる。そのような熱分解生成物流からの炭化水素を、蒸気分解装置内で更に分解して、新しいプラスチックの作製に使用することができるモノマーであるエチレン及びプロピレンを含む、高付加価値の化学物質を生成することができる。
【0003】
国際公開第2020/212315号は、脂肪族炭化水素を含み、芳香族炭化水素及び/又は極性成分を更に含む液体炭化水素供給原料流から脂肪族炭化水素を回収するプロセスであって、当該プロセスが、供給原料流及び有機溶媒流をカラムに供給することと、供給原料流を有機溶媒流と接触させることと、有機溶媒による芳香族炭化水素及び/又は極性成分の液-液抽出によって脂肪族炭化水素を回収することと、を含む、プロセス、を開示している。
【0004】
上述の国際公開第2020/212315号によれば、当該液体炭化水素供給原料流は、プラスチック廃棄物の熱分解によって生成される液体生成物を含み得る。更に、国際公開第2020/212315号によれば、当該有機溶媒は、ジオール及びトリオール(モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、及びブタンジオールの任意の異性体を含む);グリコールエーテル(ジエチレングリコール及びテトラエチレングリコールを含むオリゴエチレングリコール、並びにそれらのエーテル(ジエチレングリコールジメチルエーテルを含む)を含む);アミド類(N-メチルピロリドンを含むN-アルキルピロリドン、及びジメチルホルムアミドを含むジアルキルホルムアミドを含む);ジアルキルスルホキシド(ジメチルスルホキシドを含む);スルホラン;N-ホルミルモルホリン(N-formyl morpholine、NFM);及びフラン環含有成分(フルフラール、2-メチル-フラン、及びフルフリルアルコールを含む)からなる群から選択され得る。
【0005】
更に、米国特許出願公開第2018/0355256号は、プラスチックから燃料を導出するための方法を開示しており、この方法は、ある量のプラスチックを熱分解プロセスに供し、それによってプラスチックの少なくとも一部を粗燃料に変換することと、1)粗燃料から1つ以上の不純物を抽出するために1つ以上の抽出溶媒を使用する向流液-液抽出を含む第1の抽出ステップ、及び2)第1の抽出ステップから得られた汚染された抽出溶媒の向流抽出を含む第2の抽出ステップによって直接使用可能な形態で燃料を抽出することとを含む。米国特許出願公開第2018/0355256号の図2に示されているプロセスでは、プラスチックの熱分解によって作製される粗燃料(すなわち、粗ディーゼル)を、最初にN-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)による抽出に供して、硫黄化合物及び芳香族を含む1つ以上の不純物を粗燃料から抽出する。次いで、第1の抽出ステップからの汚染されたNMPを、水を使用する第2の抽出ステップに供して、汚染された抽出溶媒の極性を増加させ、それによって当該不純物を分離する。最終ステップにおいて、第2の抽出ステップからの水で汚染されたNMPは、標準蒸留カラムを使用して蒸留され、再循環水及び再循環NMPを生じる。
【0006】
上記の米国特許出願公開第2018/0355256号のプロセスにおいて、一定量のヘテロ原子含有有機汚染物質を、第1の抽出ステップにおいて粗燃料(供給原料)から除去することができるが、得られた精製燃料は、依然として比較的多量のこれらの汚染物質を含むことがあり、これは、これらの汚染物質が蒸気分解装置の収率、選択性、及び信頼性に悪影響を及ぼすため、そのような浄化された油を、燃料として使用する代わりに蒸気分解装置に供給する場合に特に懸念される。
【0007】
加えて、そのような粗供給原料は、他の汚染物質、例えばケイ素含有化合物、例えばシリカ及びシロキサン化合物を含有し得る。例えば、当該シリカは、プラスチックの機械的特性を改善する充填材料、例えばガラス繊維(SiO)としてのその使用で知られている。更に、当該シロキサン化合物は、-R-Si-O-SiR-鎖を含有するポリシロキサンポリマーに由来してもよい。
そのようなケイ素含有化合物は、抽出溶媒(NMPなど)によって除去されず、したがって最終的にラフィネート流に至る可能性がある。更に、そのような粗供給原料中の他の汚染物質は、金属であり得る。例えば、カルサイト(CaCO)及びウォラストナイト(CaSiO)もまた、プラスチックにおける充填材料としてのそれらの使用で知られている。これらの金属の一部は、抽出物流中に至らない可能性があるが、抽出溶媒と錯体を形成し、代わりにラフィネート流中に至る可能性がある。ラフィネート流からのそのようなケイ素含有化合物はまた、蒸気分解装置への供給物中に存在する場合、それらが蒸気分解装置炉において引き起こし得る管状炉のファウリングのために、悪影響を有する。
【0008】
一般に、いくつかのヘテロ原子含有有機汚染物質、特に塩化物、窒素、及び/又は酸素含有汚染物質、並びに上記のケイ素含有化合物及び金属などの他の汚染物質について、炭化水素供給物が蒸気分解装置に供給され得る前に適合すべきある特定の仕様(最大濃度)が存在する。
【0009】
上記の米国特許出願公開第2018/0355256号に開示されているような抽出プロセスへの粗供給物が存在する可能性があり、この粗供給物は、そのような抽出プロセスを適用しただけでは上記の仕様を満たす十分な品質の精製供給物(例えば、蒸気分解装置への)が得られないほど多量のヘテロ原子含有有機汚染物質及び任意の他の汚染物質、例えば廃プラスチックから作製された熱分解油を含有する。
【0010】
加えて、当該抽出プロセスにおいて、再循環水(第2の抽出ステップにおける抽出溶媒)及び再循環NMP(第1の抽出ステップにおける抽出溶媒)中の当該汚染物質の「蓄積」が存在する可能性があり、これは最終的に、最終精製生成物の品質の更なる低減につながる。
【0011】
上記の汚染物質の蓄積は、上記の米国特許出願公開第2018/0355256号に記載のプロセスにおける水抽出溶媒によって、抽出されるべきNMPに加えて、第2の抽出ステップにおいて汚染物質の一部も抽出することによって引き起こされ得る。結果として、(米国特許出願公開第2018/0355256号の図2の)蒸留カラムへの供給物は、依然として、特定の量のヘテロ原子含有有機汚染物質、特に酸素含有有機汚染物質、具体的には、例えばフェノールを含むより極性の高い成分を含み得る。当該蒸留は、水及びそのような汚染物質が共沸混合物を形成し得るため、当該汚染物質の一部が再循環水と一緒に分離されるという結果をもたらす可能性があり、それによって水再循環流の品質を低下させる。再循環水が第2の抽出ステップで使用されるカラムに再循環される場合、再循環水中のこれらの汚染物質の濃度は、第1の抽出ステップで使用される再循環NMP中のこれらの汚染物質の蓄積に加えて、増加(蓄積)する。これは、第1及び第2の抽出ステップの低減した効率をもたらし得る。(当該再循環NMP中の)これらの汚染物質のそのような蓄積は、浄化された油が、依然として比較的多量のこれらの汚染物質を含むという結果になる可能性があり、これは、そのような浄化された油が蒸気分解装置に供給される場合に特に懸念される。
【0012】
更に、実際には、供給原料は、塩などの他の汚染物質、特にプラスチックの熱分解から得られる液体炭化水素供給原料流を含み得る。例えば、そのような供給原料は、上で考察されたように、方解石(CaCO)及び珪灰石(CaSiO)を含有し得る。そのような塩は、例えば、抽出溶媒が、米国特許出願第公開第2018/0355256号の図2のプロセスのカラムAで使用されるようなNMPである場合には、抽出流に至り得る。続いて、そのような塩は、当該プロセスで使用されるカラムBからの水-NMP底部流に至り、次いで蒸留カラムCに入り、そこでそれらはNMP底部流中で濃縮される。次いで、塩は、NMPと一緒に再循環され、それらの濃度は、経時的に増加する。更に、NMP及び他の有機溶媒は、塩に対して限られた溶解力を有するため、それらは蒸留カラム中で沈殿し始め、カラムのファウリングをもたらす。
【0013】
脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む液体流から脂肪族炭化水素を回収するための改善されたプロセスを開発することが継続して必要とされており、液体流は、特にそのような回収された脂肪族炭化水素を蒸気分解装置に供給する前に、特定の混合廃プラスチック中の廃プラスチックを分解することから生じ得る。本発明の目的は、そのような液体流から脂肪族炭化水素を回収するためのそのようなプロセスを提供することであり、このプロセスは、技術的に有利で、効率的かつ手頃であり、特に、米国特許出願公開第2018/0355256号に関連して上で考察されたように、上記の欠点のうちの1つ以上を有しないプロセスである。そのような技術的に有利なプロセスは、好ましくは、比較的低いエネルギー需要及び/又は比較的低い資本支出をもたらすであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2020/212315号
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0355256号明細書
【発明の概要】
【0015】
驚くべきことに、そのようなプロセスは、a)脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、並びに任意選択で芳香族炭化水素を含む液体流を、1つ以上のヘテロ原子を含有する洗浄溶媒a)と接触させ、それによってヘテロ原子含有有機化合物を除去することと、b)洗浄ステップa)から得られた、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、並びに任意選択で芳香族炭化水素を含む流れを、1つ以上のヘテロ原子を含有する抽出溶媒b)で液-液抽出することとであって、(i)ステップa)中に、当該液体供給原料流の少なくとも一部が、収着剤(又は吸着剤(sorbent))と接触させられ、及び/又は(ii)複数のステップa)の間に、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、並びに任意選択で芳香族炭化水素を含む、先行するステップa)から得られた流れの少なくとも一部が、収着剤と接触させられ、及び/又は(iii)ステップa)とb)との間に、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、並びに任意選択で芳香族炭化水素を含む、ステップa)から得られた流れの少なくとも一部が、収着剤と接触させられ、及び/又は(iv)ステップb)の後に、脂肪族炭化水素並びにヘテロ原子含有有機化合物を含む、ステップb)から得られたラフィネート流の少なくとも一部が、収着剤と接触させられ、当該収着剤が、ヘテロ原子含有有機化合物の少なくとも一部を後者の流れから除去する、液-液抽出することと、によって提供され得ることが、本発明者らによって見出された。
【0016】
したがって、本発明は、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む液体炭化水素供給原料流から脂肪族炭化水素を回収するためのプロセスに関し、当該プロセスは、
a)液体炭化水素供給原料流の少なくとも一部を、1つ以上のヘテロ原子を含有する洗浄溶媒a)と混合して、得られた混合物を、洗浄溶媒a)及びヘテロ原子含有化合物を含む第1の流れと、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の流れとに分離するステップと、
b)ステップa)から得られた第2の流れの少なくとも一部を、1つ以上のヘテロ原子を含有する抽出溶媒b)と接触させ、かつその流れを抽出溶媒b)による液-液抽出に供して、脂肪族炭化水素及び任意選択でヘテロ原子含有有機化合物を含む第1の流れと、抽出溶媒b)、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の流れとをもたらすステップと、を含み、
(i)ステップa)中に、第1及び第2の流れが、ステップa)において分離される前に、液体炭化水素供給原料流の少なくとも一部が、収着剤と接触させられ、及び/又は
(ii)先行するステップa)と後続のステップa)との間に、先行するステップa)から得られた第2の流れの少なくとも一部が、収着剤と接触させられ、及び/又は
(iii)ステップa)とb)との間に、ステップa)から得られた第2の流れの少なくとも一部が、収着剤と接触させられ、及び/又は
(iv)ステップb)から得られた第1の流れが、脂肪族炭化水素及びヘテロ原子含有有機化合物を含み、ステップb)の後に、その流れの少なくとも一部が、収着剤と接触させられる。
【0017】
有利には、本発明では、抽出ステップを適用するだけで最終精製炭化水素生成物に至り得る、ヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択で当該他の汚染物質は、本発明のプロセスにおける洗浄ステップ及び収着ステップによって除去される。これは次に、有利には、多くのヘテロ原子含有有機汚染物質、特に塩化物、窒素、及び/又は酸素含有汚染物質、並びに炭化水素供給物が蒸気分解装置に供給され得る前に満たすべき任意の他の汚染物質についてのある特定の仕様(最大濃度)を満たす十分に高品質の最終炭化水素生成物をもたらし得る。本明細書内では、液体炭化水素供給原料流中の又はそれに由来するヘテロ原子含有有機汚染物質(ヘテロ原子含有有機化合物)以外の当該「他の汚染物質」とは、液体炭化水素供給原料流中の又はそれに由来する塩、及び/又はケイ素含有化合物、及び/又は金属を含み得る汚染物質を指す。
【0018】
更に、有利には、ヘテロ原子含有有機化合物、特に酸素含有有機汚染物質、具体的には、例えばフェノールを含むより極性の高い成分の一部は、抽出ステップb)に先行する洗浄ステップa)において除去され、このステップa)において、液体炭化水素供給原料流の少なくとも一部が、洗浄溶媒a)と接触させられ、それによって、本プロセスの下流部分におけるそのような汚染物質の蓄積を回避又は低減する。更に、有利には、当該洗浄ステップa)において、供給原料流からの任意の他の汚染物質も除去され、それによって、下流セクションにおける塩を含むこれらの他の汚染物質の一部のより高い濃度への蓄積を防止し、それによって、同時に、そのような塩の沈殿による下流蒸留カラムのファウリングを防止する。
【0019】
更に、抽出溶媒b)、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む、ステップb)から得られた第2の(抽出)流中の抽出されたヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択で当該他の汚染物質は、上で考察されたように、当該ステップb)への任意の再循環抽出溶媒b)流中に蓄積し得る。そのような蓄積を引き起こす当該ヘテロ原子含有有機化合物は、本プロセスのステップb)において抽出される全てのヘテロ原子含有有機化合物のうち最も高い極性を有する成分を含み得る。そのような場合、有利には、本発明のプロセスにおける抽出ステップb)後の収着ステップ(iv)によって、ヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択で他の汚染物質を実質的に含まない比較的純粋な最終炭化水素生成物が、次いで、依然として送達され得、例えば、蒸気分解装置に供給され得る。更に加えて、洗浄ステップa)を通して、並びに洗浄ステップa)中の収着ステップ(i)、及び/又は複数の洗浄ステップa)の間の収着ステップ(ii)、及び/又は洗浄ステップa)後かつ抽出ステップb)前の収着ステップ(iii)を通して、これらのヘテロ原子含有有機化合物及び他の任意選択の汚染物質の一部は、抽出ステップb)に供される前に供給原料流から既に除去されており、それにより、任意の抽出溶媒b)再循環流中の当該蓄積が防止される。比較的純粋な抽出溶媒b)流は、次いで、有利には、ステップb)に再循環され、新しい供給物から更なるヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択の芳香族炭化水素を抽出するために使用され得る。したがって、本発明において、ヘテロ原子含有有機化合物を含む上述の汚染物質、及び上で考察されたように蓄積するか又は蓄積する可能性のある任意の塩を含む任意の他の汚染物質は、有利には、抽出ステップb)に先行する洗浄ステップa)において既に除去され、当該収着ステップ(i)、(ii)、(iii)及び/又は(iv)において使用される収着剤中に濃縮され得、それによって、本プロセスにおける任意の再循環流中のそのような汚染物質の蓄積を防止し、最終的に比較的純粋な最終炭化水素生成物をもたらす。
【0020】
(i)上記の予備洗浄ステップa)と(ii)抽出ステップb)の前及び/又は後の収着剤の上記使用との組み合わせのために、本発明では、これらの汚染物質の蓄積を軽減するための他の面倒な方法を適用する必要がないか、又は実質的にその必要性が低減される。例えば、再循環前に任意の再循環流(例えば、任意の再循環抽出溶媒b)流)の一部をブリードする必要がないか、又はその必要性が実質的に低減され、(i)そのようなブリード流は、廃棄されて抽出溶媒の損失をもたらすか、又は(ii)抽出溶媒は、そのようなブリード流から、例えば、その蒸留によって回収され得るが、しかしながら、それは面倒である。
【0021】
加えて、本発明のプロセスにおける上記の洗浄ステップa)において、好ましくは抽出ステップb)から得られるラフィネート流に至るべきではない他の汚染物質もまた、有利には、上記のヘテロ原子含有有機汚染物質及び任意選択の塩と同時に除去され得る。例えば、シリカ及びシロキサン化合物などの上記のケイ素含有化合物も、有利には、本プロセスのステップa)において除去され得、それにより、そのような汚染物質が、蒸気分解プロセスなどの後続のプロセスにおいて有し得るあらゆる悪影響を防止する。
【0022】
更に、本発明は、プラスチックから脂肪族炭化水素を回収するためのプロセスに関し、プラスチックの少なくとも一部が、ヘテロ原子含有有機化合物を含み、当該プロセスは、
(I)プラスチックを分解し、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む炭化水素生成物を回収するステップと、
(II)ステップ(I)で得られた炭化水素生成物の少なくとも一部を含む、液体炭化水素供給原料流を、液体炭化水素供給原料流から脂肪族炭化水素を回収するための上記のプロセスに供するステップと、を含む。
【0023】
なお更に、本発明は、炭化水素供給物を蒸気分解するためのプロセスに関し、炭化水素供給物が、脂肪族炭化水素の回収のための上記のプロセスのうちの1つにおいて回収された脂肪族炭化水素を含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による脂肪族炭化水素の回収のためのプロセスの一実施形態を示す。
図2】上記のプロセスの別の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のプロセスの各々は、複数のステップを含む。加えて、当該プロセスは、連続するステップの間に1つ以上の中間ステップを含んでもよい。更に、当該プロセスは、最初のステップの前及び/又は最後のステップの後に、1つ以上の追加のステップを含んでもよい。例えば、当該プロセスがステップa)、b)及びc)を含む場合、当該プロセスは、ステップa)とb)との間及びステップb)とc)との間に1つ以上の中間ステップを含んでもよい。更に、当該プロセスは、ステップa)の前及び/又はステップc)の後に1つ以上の追加のステップを含んでもよい。
【0026】
本明細書内で、「ステップy)は、ステップx)から得られた流れの少なくとも一部を、に供することを含む」のような句は、「ステップy)は、ステップx)から得られた流れの一部又は全部を、に供することを含む」を意味するか、又は同様に、「ステップy)は、ステップx)から得られた流れを、部分的又は完全に供することを含む」を意味する。例えば、ステップx)から得られた流れを、1つ以上の部分に分割してもよく、これらの部分のうちの少なくとも1つを、ステップy)に供してもよい。更に、例えば、ステップx)から得られた流れを、ステップx)とステップy)との間の中間ステップに供して、その少なくとも一部が、ステップy)に供され得る、更なる流れを得てもよい。
【0027】
本発明のプロセス並びに当該プロセスで使用される流れ及び組成物は、それぞれ、1つ以上の様々な記載されたステップ及び成分を、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、又は「含む(including)」という用語で説明されるが、それらはまた、それぞれ、当該1つ以上の様々な記載されたステップ及び成分「から本質的になる」又は「からなる」こともできる。
【0028】
本発明の文脈において、流れが、2つ以上の成分を含む場合では、これらの成分は、100%を超えない全体量で選択されるべきである。
【0029】
更に、プロパティの上限及び下限が引用されている場合、上限のうちのいずれかと下限のうちのいずれかとの組み合わせによって定義される値の範囲も含まれる。
【0030】
本明細書内では、流れ中の特定の成分の量に関して「実質的にない」とは、当該流れの量(すなわち、重量)に基づいて、問題の成分の最大で1,000、好ましくは最大で500、より好ましくは最大で100、より好ましくは最大で50、より好ましくは最大で30、より好ましくは最大で20、及び最も好ましくは最大で10ppmw(parts per million by weight、重量百万分率)である量を意味する。
【0031】
本明細書内では、カラムからの「頂部流」又は「底部流」とは、それぞれ、カラムの頂部又はカラムの底部から、カラムの全長に基づいて、0%~30%、より好適には0%~20%、更により好適には0%~10%の位置でカラムを出る流れが参照される。
【0032】
特に指示がない限り、本明細書において、沸点が参照される場合、これは、760mmHgの圧力(101.3kPa)での沸点を意味する。
【0033】
本明細書内では、「ヘテロ原子含有化合物」という用語は、ヘテロ原子含有有機化合物及び/又は塩を含むヘテロ原子含有無機化合物を指す。
【0034】
液体炭化水素供給原料流
本発明において、液体炭化水素供給原料流は、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む。
【0035】
好ましくは、液体炭化水素供給原料流は、99:1~1:99の重量比で、30~300℃の沸点を有する脂肪族炭化水素及び300~600℃を超える沸点を有する脂肪族炭化水素の両方を含む。30~300℃の沸点を有する脂肪族炭化水素の量は、30~600℃の沸点を有する脂肪族炭化水素の総量に基づいて、最大で99重量%又は最大で80重量%又は最大で60重量%又は最大で40重量%又は最大で30重量%又は最大で20重量%又は最大で10重量%であり得る。更に、30~300℃の沸点を有する脂肪族炭化水素の量は、30~600℃の沸点を有する脂肪族炭化水素の総量に基づいて、少なくとも1重量%又は少なくとも5重量%又は少なくとも10重量%又は少なくとも20重量%又は少なくとも30重量%であり得る。
【0036】
したがって、有利には、液体炭化水素供給原料流は、30~600℃の広い沸点範囲内で様々な量の脂肪族炭化水素を含み得る。したがって、沸点と同様に、液体炭化水素供給原料流中の脂肪族炭化水素の炭素数はまた、広い範囲、例えば5~50個の炭素原子内で変動し得る。液体炭化水素供給原料流中の脂肪族炭化水素の炭素数は、少なくとも4又は少なくとも5又は少なくとも6であり得、かつ最大で50又は最大で40又は最大で30又は最大で20であり得る。
【0037】
液体炭化水素供給原料流中の脂肪族炭化水素の量は、液体炭化水素供給原料流の総重量に基づいて、少なくとも30重量%又は少なくとも50重量%又は少なくとも80重量%又は少なくとも90重量%又は少なくとも95重量%又は少なくとも99重量%であり得、かつ100重量%未満又は最大で99重量%又は最大で90重量%又は最大で80重量%又は最大で70重量%であり得る。脂肪族炭化水素は、環状、線状、及び分岐状であり得る。
【0038】
液体炭化水素供給原料流中の脂肪族炭化水素は、非オレフィン系(パラフィン系)及びオレフィン系脂肪族化合物を含み得る。液体炭化水素供給原料流中のパラフィン系脂肪族化合物の量は、液体炭化水素供給原料流の総重量に基づいて、少なくとも20重量%又は少なくとも40重量%又は少なくとも60重量%又は少なくとも80重量%であり得、かつ100重量%未満又は最大で99重量%又は最大で80重量%又は最大で60重量%であり得る。更に、液体炭化水素供給原料流中のオレフィン系脂肪族化合物の量は、液体炭化水素供給原料流の総重量に基づいて、100重量%未満又は少なくとも20重量%又は少なくとも40重量%又は少なくとも60重量%又は少なくとも80重量%であり得、かつ最大で99重量%又は最大で80重量%又は最大で60重量%であり得る。
【0039】
更に、オレフィン系化合物は、1つの炭素-炭素二重結合を有する脂肪族化合物(モノオレフィン)及び/又は2つ以上の炭素-炭素二重結合を有する脂肪族化合物を含み得、後者の化合物は、共役又は非共役であり得る。すなわち、2つ以上の炭素-炭素二重結合は、共役していてもよく、共役していなくてもよい。2つ以上の炭素-炭素二重結合を有する脂肪族化合物は、アルファ及びオメガ位置に二重結合を有する化合物を含み得る。液体炭化水素供給原料流中のモノオレフィンの量は、液体炭化水素供給原料流の総重量に基づいて、少なくとも20重量%又は少なくとも40重量%又は少なくとも60重量%又は少なくとも80重量%であり得、かつ100重量%未満又は最大で99重量%又は最大で80重量%又は最大で60重量%であり得る。更に、液体炭化水素供給原料流中に2つ以上の炭素-炭素二重結合を有する共役脂肪族化合物の量は、液体炭化水素供給原料流の総重量に基づいて、0重量%超、又は少なくとも10重量%又は少なくとも20重量%又は少なくとも40重量%又は少なくとも60重量%であり得、かつ最大で80重量%又は最大で60重量%又は最大で40重量%であり得る。
【0040】
本明細書内では、1個以上のヘテロ原子を含有する脂肪族炭化水素は、以下に更に記載されるように、「ヘテロ原子含有有機化合物」である。明示的に又は文脈によって別段の指示がない限り、本明細書内では、「脂肪族炭化水素」という用語は、ヘテロ原子含有脂肪族炭化水素を含まない。更に、明示的に又は文脈によって別段の指示がない限り、本明細書内では、「脂肪族炭化水素」という用語は、2つ以上の炭素-炭素二重結合を有する共役脂肪族化合物を含まない。
【0041】
上記の脂肪族炭化水素に加えて、液体炭化水素供給原料流は、ヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択で芳香族炭化水素を含む。
【0042】
液体炭化水素供給原料流中の芳香族炭化水素の量は、液体炭化水素供給原料流の総重量に基づいて、0重量%、又は0重量%超、又は少なくとも5重量%又は少なくとも10重量%又は少なくとも15重量%又は少なくとも20重量%又は少なくとも25重量%又は少なくとも30重量%であり得、かつ最大で50重量%又は最大で40重量%又は最大で30重量%又は最大で20重量%であり得る。芳香族炭化水素は、単環式及び/又は多環式芳香族炭化水素を含み得る。単環式芳香族炭化水素の例は、スチレンである。多環式芳香族炭化水素は、非縮合及び/又は縮合多環式芳香族炭化水素を含み得る。非縮合多環式芳香族炭化水素の例は、オリゴスチレンである。スチレン及びオリゴスチレンは、ポリスチレンに由来し得る。縮合多環式芳香族炭化水素の例は、ナフタレン及びアントラセン、並びにアルキルナフタレン及びアルキルアントラセンである。芳香族炭化水素中の1つ又は複数の芳香族環は、アルキル基(飽和)及びアルキレン基(不飽和)を含む1つ以上のヒドロカルビル基によって置換され得る。
【0043】
本明細書内では、1個以上のヘテロ原子を含有する芳香族炭化水素は、以下で更に説明するように「ヘテロ原子含有有機化合物」である。明示的に又は文脈によって別段の指示がない限り、本明細書内では、「芳香族炭化水素」という用語は、ヘテロ原子含有芳香族炭化水素を含まない。
【0044】
更に、液体炭化水素供給原料流中のヘテロ原子含有有機化合物の量は、液体炭化水素供給原料流の総重量に基づいて、0重量%超であり、少なくとも0.5重量%又は少なくとも1重量%又は少なくとも3重量%又は少なくとも5重量%又は少なくとも10重量%又は少なくとも15重量%又は少なくとも20重量%であり得、かつ最大で30重量%又は最大で20重量%又は最大で10重量%又は最大で5重量%であり得る。
【0045】
液体炭化水素供給原料流中のヘテロ原子含有有機化合物は、酸素、窒素、硫黄及び/又はハロゲン(例えば、塩素)、好適には酸素、窒素及び/又はハロゲンであり得る、1個以上のヘテロ原子を含有する。ヘテロ原子含有有機化合物は、以下の部分:アミン、イミン、ニトリル、アルコール、エーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、酸、アミド、カルバメート(ウレタンと呼ばれることもある)及び尿素のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0046】
更に、上記のヘテロ原子含有有機化合物は、脂肪族又は芳香族であり得る。脂肪族ヘテロ原子含有有機化合物の例は、オリゴマーポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)である。オリゴマーPVCは、ポリ塩化ビニルに由来し得る。芳香族ヘテロ原子含有有機化合物は、単環式及び/又は多環式芳香族ヘテロ原子含有有機化合物を含み得る。単環式芳香族ヘテロ原子含有有機化合物の例は、テレフタル酸及び安息香酸である。多環式芳香族ヘテロ原子含有有機化合物の例は、オリゴマーのポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)である。テレフタル酸、安息香酸及びオリゴマーPETは、ポリエチレンテレフタレートに由来し得る。窒素含有有機化合物の例は、ポリウレタン及びナイロンを含むポリアミドに由来する化合物である。
【0047】
明示的に又は文脈によって別段の指示がない限り、本明細書内では、「ヘテロ原子含有有機化合物」という用語は、液体炭化水素供給原料流中の又は液体炭化水素供給原料流に由来するヘテロ原子含有有機化合物を意味する。更に、明示的に又は文脈によって別段の指示がない限り、本明細書内では、「ヘテロ原子含有有機化合物」という用語は、本明細書で定義される抽出溶媒及び/又は洗浄溶媒を含まない。
【0048】
追加として、液体炭化水素供給原料流は、塩を含むことができる。当該塩は、有機塩及び/又は無機塩を含み得る。塩は、陽イオンとしてアンモニウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は遷移金属、及び陰イオンとしてカルボン酸、硫酸、リン酸、又はハロゲン化物を含み得る。
【0049】
更に、追加として、液体炭化水素供給原料流は、シリカ及びシロキサン化合物などのケイ素含有化合物を含んでもよい。
【0050】
なお更に、追加として、液体炭化水素供給原料流は、金属を含み得る。
【0051】
好ましくは、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む、液体炭化水素供給原料流中の成分の少なくとも一部は、合成化合物であり、例えば、化石油中に存在するような天然化合物ではない。例えば、そのような合成化合物には、バイオマスから合成されたプラスチックの熱分解に由来する化合物、例えば、バイオエタノールからエタノールの脱水及びそれに続くそのようにして形成されたエチレンの重合によって合成されたポリエチレンが含まれる。
【0052】
更に、本プロセスでは、ヘテロ原子含有有機化合物及び任意の他の汚染物質は、容易に除去されるため、本プロセスへの供給物は、有利には、比較的多量のそのようなヘテロ原子含有有機化合物及び他の汚染物質を許容することができる。したがって、本プロセスへの供給原料を生成するために熱分解され得る廃プラスチックは、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリウレタン(polyurethane、PU)などのヘテロ原子含有プラスチックを含み得る。具体的には、ポリエチレン(polyethylene、PE)及びポリプロピレン(polypropylene、PP)などのヘテロ原子を含まないプラスチックに加えて、比較的多量のそのようなヘテロ原子含有プラスチックを含有する、混合廃プラスチックを熱分解することができる。
【0053】
ステップa)-液体炭化水素供給原料流の予備洗浄
本プロセスのステップa)において、抽出ステップb)の前に、ヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択で他の汚染物質が、液体炭化水素供給原料流から、その流れの少なくとも一部を洗浄溶媒a)と接触させることによって除去される。したがって、ステップa)は、本プロセスの抽出ステップb)に先行する。ステップa)は、液体炭化水素供給原料流の少なくとも一部を洗浄溶媒a)と混合することと、得られた混合物を、洗浄溶媒a)、ヘテロ原子含有化合物、及び任意選択で他の汚染物質を含む第1の流れと、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の流れとに分離することと、を含む。ステップa)から得られた第2の流れの少なくとも一部は、ステップb)に供給され、すなわち、ステップb)において抽出溶媒b)と接触させられる。
【0054】
更に、本プロセスにおいて、ステップa)は、連続して複数回、すなわち、少なくとも2回、好ましくは2回又は3回、より好ましくは2回行われ得る。後者は、第1のステップa)(又は先行するステップa))から得られた、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、任意選択で他の汚染物質、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の流れが、第2のステップa)(又は後続のステップa))に送られ、更なるヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択の他の汚染物質が、その第2の流れから、その流れの少なくとも一部を洗浄溶媒a)と接触させることによって除去され、この第2のステップa)はまた、その流れの少なくとも一部を洗浄溶媒a)と混合し、得られた混合物を、洗浄溶媒a)、ヘテロ原子含有化合物、及び任意選択で他の汚染物質を含む第1の流れと、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の流れとに分離することを意味する。当該第2のステップa)から得られた第2の流れの少なくとも一部は、ステップb)に供給され、すなわち、ステップb)において抽出溶媒b)と接触させられるか、又は更なるステップa)に供給される。更に、当該第2のステップa)から(又は任意の後続のステップa)から)得られる第1の流れの少なくとも一部は、洗浄溶媒a)をそのような第1の又は先行するステップa)に提供するために、当該第1のステップa)(又は任意の先行するステップa))に供給され得る。
【0055】
分配係数に依存して、ヘテロ原子含有有機化合物及び任意の芳香族炭化水素はまた、ある程度、ステップa)から得られた第2の流れに至るが、第2の流れは、第1の流れよりも疎水性が高い。したがって、当該第2の流れは、脂肪族炭化水素に加えて、ヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択で芳香族炭化水素を更に含む。当該第1及び第2の流れは、2つ以上の炭素-炭素二重結合を有する共役脂肪族化合物を更に含んでもよい。
【0056】
ステップa)において、洗浄溶媒a)は、液体炭化水素供給原料流とは別に、かつ液体炭化水素供給原料流中に存在し得る任意の洗浄溶媒a)、例えば、水に加えて添加され、液体炭化水素供給原料流と混合され得る。ステップa)において、添加される洗浄溶媒a)を含む流れは、液体炭化水素供給原料流から除去される、ヘテロ原子含有有機化合物を含まないか又は実質的に含まず、かつ他の汚染物質を含まないか又は実質的に含まず、それによって液体炭化水素供給原料流からそのような汚染物質を除去する効率を高めることが好ましい。
【0057】
本プロセスのステップa)において、液体炭化水素供給原料流の少なくとも一部が、洗浄溶媒a)と接触させられる。加えて、ステップa)において、当該流れはまた、収着ステップ(i)に関連して以下に更に説明される収着剤と、好ましくは同時に接触させられ得る。
【0058】
ステップa)における洗浄溶媒a)は、酸素、窒素、及び/又は硫黄であり得る、1つ以上のヘテロ原子を含有する。当該洗浄溶媒a)は、ヘプタン中での混和性を有しないか、又は比較的低い混和性を有することが好ましい。好ましくは、洗浄溶媒a)は、ヘプタンの重量に基づいて、最大で10重量%、又は最大で3重量%、又は最大で1重量%、又は最大で0.5重量%、又は最大で0.1重量%の洗浄溶媒a)が、ヘプタン中に混和し得るようなヘプタン中での混和性を有する。更に、ヘプタン中での洗浄溶媒a)の混和性は、ヘプタン中での抽出溶媒b)の混和性よりも低いことが好ましい。ヘプタンなどの別の化合物中のある特定の化合物の混和性は、ASTM法D1476を含む、当業者に既知の任意の一般的な方法によって決定することができる。本明細書において、ある化合物の別の化合物への混和性に言及する場合、これは25℃での混和性を意味する。
【0059】
ステップa)における洗浄溶媒a)は、少なくとも10MPa1/2、好ましくは、少なくとも20MPa1/2、より好ましくは、少なくとも30MPa1/2、より好ましくは、少なくとも40MPa1/2の、25℃で決定されるヘプタンに関するハンセン溶解度パラメータ距離Ra、ヘプタンを有し得る。更に、洗浄溶媒a)についての当該Ra、ヘプタンは、最大で55MPa1/2、より好ましくは、最大で50MPa1/2、より好ましくは、最大で45MPa1/2であり得る。例えば、水についての当該Ra、ヘプタンは、45MPa1/2である。ハンセン溶解度パラメータは、ステップb)において使用される抽出溶媒b)に関連して、以下で更に説明される。
【0060】
更に、ステップa)における洗浄溶媒a)は、25℃で決定される溶媒100g当たりのNaClのgで、少なくとも0.1g/100g、好ましくは少なくとも0.3g/100g、より好ましくは少なくとも0.5g/100g、より好ましくは少なくとも0.7g/100g、より好ましくは少なくとも1g/100g、より好ましくは少なくとも2g/100g、より好ましくは少なくとも3g/100g、より好ましくは少なくとも4g/100g、最も好ましくは少なくとも5g/100gの塩化ナトリウムの溶解度を有し得、最大で50g/100g、又は最大で40g/100g、又は最大で36g/100gであり得る。例えば、水についての当該塩化ナトリウムの溶解度は、36g/100gである。
【0061】
なお更に、ステップa)における洗浄溶媒a)は、水、アンモニア、及び25℃で決定される、最大で15MPa1/2、好ましくは最大で13MPa1/2、より好ましくは最大で11MPa1/2の酢酸ジエチルアンモニウム(diethylammonium acetate、DEAA)に関するハンセン溶解度パラメータ距離Ra、DEAAを有する有機溶媒からなる群から選択される1つ以上の溶媒を含み得る。更に、洗浄溶媒a)についての当該Ra、DEAAは、少なくとも5MPa1/2、好ましくは少なくとも8MPa1/2、より好ましくは少なくとも10MPa1/2であり得る。例えば、モノエチレングリコール(monoethylene glycol、MEG)についての当該Ra、DEAAは、12MPa1/2である。更に、好ましくは、洗浄溶媒a)のための当該有機溶媒は、同じ溶媒についてのRa、DEAAよりも大きいRa、ヘプタンを有し、Ra、ヘプタンとRa、DEAAとの当該差は、少なくとも15MPa1/2、より好ましくは少なくとも16MPa1/2、最も好ましくは少なくとも17MPa1/2である。更に、好ましくは、Ra、ヘプタンとRa、DEAAとの当該差は、最大で25MPa1/2、より好ましくは最大で22MPa1/2、最も好ましくは最大で20MPa1/2である。例えば、モノエチレングリコールについてのRa、ヘプタンとRa、DEAAとの当該差は、16.3MPa1/2である。
【0062】
上記のように、抽出溶媒b)及び洗浄溶媒a)のヘプタン中での混和性は、好ましくは異なり、この場合、当該溶媒a)及びd)は同一ではない。具体的には、洗浄溶媒a)は、25℃で決定されるヘプタンに関するハンセン溶解度パラメータ距離Ra、ヘプタンを有し得、これは、抽出溶媒b)についてのそのようなRa、ヘプタンよりも大きい。好ましくは、溶媒a)及びb)についてのRa、ヘプタンの当該差は、少なくとも1MPa1/2、より好ましくは少なくとも5MPa1/2、より好ましくは少なくとも10MPa1/2、より好ましくは少なくとも15MPa1/2、より好ましくは少なくとも20MPa1/2、より好ましくは少なくとも25MPa1/2である。更に、好ましくは、溶媒a)及びb)についてのRa、ヘプタンの当該差は、最大で55MPa1/2、より好ましくは最大で50MPa1/2、より好ましくは最大で45MPa1/2、より好ましくは最大で40MPa1/2、より好ましくは最大で35MPa1/2、より好ましくは最大で30MPa1/2である。
【0063】
具体的には、本プロセスのステップa)における洗浄溶媒a)は、水、アンモニア、並びに有機溶媒であって、ジオール及びトリオール(モノエチレングリコール(MEG)、モノプロピレングリコール(monopropylene glycol、MPG)、及びグリセロールを含む);グリコールエーテル(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及びテトラエチレングリコールを含むオリゴエチレングリコール、並びに200~1,000g/モル又は200~700g/モルの分子量を有し得るポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)を含む);ホルムアミド及びモノアルキルホルムアミド及びアセトアミドを含む、アミド(アルキル基が、1~8個又は1~3個の炭素原子を含有してもよく、メチルホルムアミドを含む);ジアルキルスルホキシド(アルキル基は、1~8個又は1~3個の炭素原子を含有してもよく、ジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide、DMSO)を含む);スルホン(スルホランを含む);ヒドロキシエステル(乳酸メチル及び乳酸エチルを含む、乳酸エステルを含む);アミン系化合物(エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンを含む);炭酸化合物(炭酸プロピレン及び炭酸グリセロールを含む);並びにシクロアルカノン化合物(ジヒドロレボグルコセノンを含む)からなる群から選択される1つ以上の有機溶媒を含み得る。好ましくは、当該洗浄溶媒a)は、水並びに上述のジオール及びトリオール、具体的にはモノエチレングリコール(MEG)及びグリセロール、並びにグリコールエーテル、具体的にはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、及び200~1,000g/モル又は200~700g/モルの分子量を有し得るポリエチレングリコール(PEG)のうちの1つ以上を含む。より好ましくは、洗浄溶媒a)は、水を含み、最も好ましくは水からなる。本発明によれば、洗浄溶媒a)は、上述した1つ以上の溶媒、例えば水と組み合わせて、上述されていない1つ以上の溶媒を含んでもよく、後者の溶媒の相対量は、広い範囲内で変化し得、全洗浄溶媒に基づいて、例えば0.1重量%程度の低さであってもよい。
【0064】
ステップa)において、添加される洗浄溶媒a)、例えば水を含む流れは、7超のpH(「アルカリ性」)、7未満のpH(「酸性」)、又は約7のpH(「中性」)を有し得る。
【0065】
更に、ステップa)において、添加される洗浄溶媒a)、例えば水を含む流れは、7超、より好ましくは8~14超、より好ましくは8~14、より好ましくは10~14、最も好ましくは12~14のpHを有することが好ましい場合がある。そのようなpHを有するそのような流れは、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、重炭酸リチウム、炭酸カリウム、及び重炭酸カリウムを含むアルカリ金属炭酸塩及び重炭酸塩、並びに水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化カルシウムを含むアルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物、並びに水酸化アンモニウムからなる群から選択される1つ以上の塩を洗浄溶媒a)流に添加することによって提供され得る。そのようなpHを有する洗浄溶媒a)を含むアルカリ性流は、ヘテロ原子含有有機化合物及び/又はケイ素含有化合物を除去するのに好ましい場合がある。更に、そのようなアルカリ性流の洗浄性能は、ステップa)に、収着ステップ(i)に関連して以下に更に説明される収着剤を添加することによって改善され得る。
【0066】
ステップa)において、洗浄溶媒a)を含むアルカリ性流が、ステップa)に供給される場合、当該ステップa)は、2つ以上のステップa)を含み得、第1のステップa)において、例えば8~10の比較的低いpHを有する洗浄溶媒a)を含むアルカリ性流が、供給され、第2又はその後のステップa)において、例えば10~14の比較的高いpHを有する洗浄溶媒a)を含むアルカリ性流が、供給される。
【0067】
なお更に、ステップa)において、添加される洗浄溶媒a)、例えば水を含む流れは、7未満、より好ましくは1未満~6、より好ましくは1~6、より好ましくは2~5、最も好ましくは2~4のpHを有することが好ましい場合がある。そのようなpHを有するそのような流れは、無機酸(鉱酸)又は有機酸を洗浄溶媒a)流に添加することによって提供され得る。好適には、塩酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、過塩素酸、フッ化水素酸、ヨウ化水素酸、及び硫酸からなる群から選択される1つ以上の無機酸を添加することができる。及び/又は、好適には、メタンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸を含むスルホン酸、並びにギ酸、シュウ酸、酢酸、乳酸、尿酸、リンゴ酸、酒石酸、及びクエン酸を含むカルボン酸からなる群から選択される1つ以上の有機酸を添加してもよい。更に、好適には、酸流の酸性度は、スルホン酸ポリスチレン又はジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレンなどの有機ポリマーを含むイオン交換樹脂又はイオン交換ポリマーによって提供することができ、ここで、イオン交換部位は、重合後に、酸基、例えばスルホン酸基又はカルボン酸基による官能化によって導入される。
【0068】
そのようなpHを有する洗浄溶媒a)を含む酸流は、ヘテロ原子含有有機化合物及び/又は金属を除去するのに好ましい場合がある。更に、そのような酸流の洗浄性能は、ステップa)に、収着ステップ(i)に関連して以下に更に説明される収着剤を添加することによって改善され得る。特に、収着剤(例えば、粘土)も添加される場合、そのような収着剤は、同時に、有利には酸によって活性化され、それによって全体的な性能を更に向上させることができる。そのような収着剤の「インサイチュ」酸活性化の場合、洗浄溶媒a)を含む流れのpHは、好ましくは6.5未満、より好ましくは5.4~6.5である。
【0069】
ステップa)において、洗浄溶媒a)を含む酸流が、ステップa)に供給される場合、当該ステップa)は、2つ以上のステップa)を含み得、第1のステップa)において、例えば4~6の比較的高いpHを有する洗浄溶媒a)を含む酸流が、供給され、第2又はその後のステップa)において、例えば2~4の比較的低いpHを有する洗浄溶媒a)を含む酸流が、供給される。
【0070】
なお更に、ステップa)において、添加される洗浄溶媒a)、例えば水を含む流れは、約7のpHを有することが好ましい場合がある。そのような中性流の洗浄性能は、ステップa)に、収着ステップ(i)に関連して以下に更に説明される収着剤を添加することによって改善され得る。
【0071】
ステップa)が、連続した複数のステップを含む場合、第1のステップa)に供給される洗浄溶媒a)、例えば水を含む流れは、7超、より好ましくは8~14超、より好ましくは8~14、より好ましくは10~14、最も好ましくは12~14のpHを有し、第2の又は任意の他の後続のステップa)、好ましくは、ステップb)の前の最後のステップa)に供給される洗浄溶媒a)、例えば水を含む流れは、約7のpHを有することが好ましい。そのような追加の中性洗浄ステップa)は、すすぎステップとみなすこともでき、このステップでは、収着剤を添加しないことが好ましい。
【0072】
ステップa)が、連続した複数のステップを含む場合、第1のステップa)に供給される洗浄溶媒a)、例えば水を含む流れは、7未満、より好ましくは1未満~6、より好ましくは1~6、より好ましくは2~5、最も好ましくは2~4のpHを有し、第2の又は任意の他の後続のステップa)、好ましくは、ステップb)の前の最後のステップa)に供給される洗浄溶媒a)、例えば水を含む流れは、約7のpHを有することが好ましい。そのような追加の中性洗浄ステップa)は、すすぎステップとみなすこともでき、このステップでは、収着剤を添加しないことが好ましい。
【0073】
ステップa)が実施される温度は、4~400℃の範囲内、より好ましくは4~300℃の範囲内、最も好ましくは4~200℃の範囲内であり得る。特に、好ましくは、当該温度は、30~200℃、より好ましくは50~170℃、最も好ましくは60~150℃である。ステップa)が実施される圧力は、大気圧~100バールの範囲内、より好ましくは大気圧~20バールの範囲内、最も好ましくは大気圧~6バールの範囲内であり得る。特に、好ましくは、当該圧力は、大気圧超~15バール、好ましくは1.1~10バール、より好ましくは1.5~8バール、最も好ましくは2~6バールである。
【0074】
ステップa)は、連続的に又はバッチ式で、好ましくは連続的に実行され得る。更に、ステップa)における混合は、当業者に既知の任意の方式で実行され得る。例えば、ミキサーは、以下に記載されるような相分離装置の上流で使用され得る。更に、例えば、インライン(又は静的)混合は、そのような相分離装置の上流で実行されてもよい。なお更に、混合は、以下に記載されるような抽出カラム中で行われ得る。
【0075】
洗浄溶媒a)のそのような添加及びステップa)における混合を通して、洗浄溶媒a)、ヘテロ原子含有化合物、及び任意選択で他の汚染物質を含む第1の相と、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の相とが、ステップa)から生じ、これらの相は、それぞれ、上述の第1の流れと第2の流れとに分離され得る。したがって、有利には、ステップa)において液体炭化水素供給原料流とは別に添加される当該洗浄溶媒a)は、回収される脂肪族炭化水素からヘテロ原子含有有機化合物及び任意の他の汚染物質の一部を除去し、それによって、同時に、本プロセスの下流におけるそのような汚染物質の蓄積を防止し、したがって、プロセス全体の安定性及び信頼性を向上させる。
【0076】
ステップa)における相分離は、デカンタ、浮選装置、コアレッサ、及び遠心分離機、好適にはデカンタを含む、2つの相を分離することができる任意の装置によって実行され得る。ステップa)における相分離は、単一段階で、例えば、デカンタ、浮選装置、コアレッサ、又は遠心分離機において実施され得る。例えば、ステップa)においてデカンタを使用する場合、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む上相、並びに洗浄溶媒a)、ヘテロ原子含有化合物、及び任意選択で他の汚染物質を含む下相が、それぞれ、当該第2の流れと第1の流れとに分離され得る。
【0077】
更に、ステップa)は、複数の分離ステージを備える抽出カラム内で実施され得る。後者の場合、ステップa)は、液体炭化水素供給原料流の少なくとも一部をカラム内で洗浄溶媒a)と接触させ、かつ当該供給原料流を洗浄溶媒a)による液-液抽出に供して、洗浄溶媒a)、ヘテロ原子含有化合物、及び任意選択で他の汚染物質を含む第1の流れと、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の流れとをもたらすことを含み、当該洗浄溶媒a)は、当該供給原料流が供給される位置よりも高い位置で抽出カラムに供給され、それによって向流液-液抽出を可能にし、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む抽出カラムからの頂部流(上記「第2の流れ」)と、洗浄溶媒a)、ヘテロ原子含有化合物、及び任意選択で他の汚染物質を含む抽出カラムからの底部流(上記「第1の流れ」)とをもたし得る。
【0078】
上記抽出カラム内の内部構造物は、供給原料流と洗浄溶媒a)との混合に寄与する。そのようなカラムの内部構造物は、当該技術分野で既知である。カラムの内部構造物は、ラシヒリング、ポールリング、レッシングリング、ビアレッキリング、ディクソンリングなどの充填物;篩プレート;又は、とりわけ、Perry’s Chemical Engineer’s Handbookに記載されているようなランダム構造充填物を含み得る。更に、カラムに撹拌手段が設けられてもよい。例えば、シャフトがカラムに沿って延びてもよく、カラムに固定されたロータ及びステータが設けられてもよい。
【0079】
したがって、有利には、ステップb)の前のステップa)において既に、液体炭化水素供給原料流に由来する全ての塩及び/又はケイ素含有化合物及び/又は金属が除去され、ヘテロ原子含有有機化合物の一部も、液体炭化水素供給原料流から回収される脂肪族炭化水素から除去され、その結果、その後の抽出ステップb)においてそのようなヘテロ原子含有有機化合物の分離を行う必要性が低減される。更に、液体炭化水素供給原料流に由来する塩及び/又はケイ素含有化合物及び/又は金属を含むそのような他の汚染物質に関連する厄介な問題(そのような厄介な問題は、本明細書の序論で考察さられている)も、有利には、そのような他の汚染物質を第1のステップで既に除去することによって、回避され得る。したがって、抽出ステップb)の効率が向上され得るだけでなく、同時に、そのような汚染物質(ヘテロ原子含有有機化合物及び任意の他の汚染物質)によって引き起こされるそのような厄介な問題が、有利に防止され得、したがって、プロセス全体の安定性及び信頼性が、向上され得る。
【0080】
ステップa)から得られた、洗浄溶媒a)、ヘテロ原子含有化合物、及び任意選択で他の汚染物質を含む第1の流れの少なくとも一部は、ステップa)に再循環され得る一方、別の部分は、プロセスから抜き取られ得る。ステップa)において除去されたヘテロ原子含有有機化合物は、任意選択で、ヘテロ原子を除去するための水素化処理の後に、燃料に変換され得る。更に、ステップa)において除去された当該化合物は、溶媒として使用され得る様々な画分に更に分離され得る。
【0081】
ステップa)が、連続した複数のステップを含む場合、第1のステップa)において、液体炭化水素供給原料流の少なくとも一部が、洗浄溶媒a)と混合され得、添加される洗浄溶媒a)を含む流れは、上述のように7超のpH(アルカリ性)又は7未満のpH(酸性)を有し得、任意選択で、収着ステップ(i)に関連して以下に更に説明されるように全ての収着剤を除去した後に、得られた液相が、上記のようにデカンタ、浮選装置、コアレッサ、及び遠心分離機、好適にはデカンタ内で分離されて、洗浄溶媒a)、ヘテロ原子含有化合物、及び任意選択で他の汚染物質を含む第1の流れと、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、任意選択で他の汚染物質、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の流れとをもたらし得、第2のステップa)において、第1のステップa)から得られた第2の流れの少なくとも一部が、洗浄溶媒a)と、好ましくは、上述のように約7のpHを有する洗浄溶媒a)流と、例えば上記のような抽出カラム内で接触させられ得、当該第2の流れが、洗浄溶媒a)による液-液抽出に供されて、洗浄溶媒a)、ヘテロ原子含有化合物、及び任意選択で他の汚染物質を含む第1の流れと、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の流れとをもたらし得、第2のステップa)から得られた第2の流れの少なくとも一部が、ステップb)に供給され得る。任意選択で、当該第1の流れ、具体的には当該第1のステップa)から得られた第1の流れは、当該収着剤が、当該第1のステップa)における第1及び第2の流れの分離前に除去されない場合、収着ステップ(i)に関連して以下で更に説明されるように任意の収着剤を含んでもよい。後者の場合、収着剤は、例えば濾過によって、当該第1の流れから除去され得る。
【0082】
ステップb)-抽出溶媒b)による抽出
本プロセスのステップb)において、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む、ステップa)から得られた第2の流れ(ここから、先行するステップa)において、その流れの少なくとも一部を洗浄溶媒a)と接触させることによって、ヘテロ原子含有有機化合物及び任意の他の汚染物質の一部が除去される)の少なくとも一部が、1つ以上のヘテロ原子を含有する抽出溶媒b)と接触させられ、その流れが、抽出溶媒b)による液-液抽出に供されて、脂肪族炭化水素及び任意選択でヘテロ原子含有有機化合物を含む第1の流れと、抽出溶媒b)、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の流れとをもたらす。
【0083】
本プロセスのステップb)において、ステップa)から得られた第2の流れが、カラム(抽出カラム)に供給され得る。更に、抽出溶媒b)を含む溶媒流は、ステップa)から得られた第2の流れが供給される位置よりも高い位置でカラムに供給され、それにより、向流液-液抽出を可能にし、脂肪族炭化水素及び任意選択でヘテロ原子含有有機化合物を含む、カラムからの頂部流(上記「第1の流れ」)と、抽出溶媒b)、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む、カラムからの底部流(上記「第2の流れ」)とをもたし得る。
【0084】
ステップb)において、抽出溶媒b)の、ステップa)から得られた第2の流れに対する重量比は、少なくとも0.05:1、又は少なくとも0.2:1、又は少なくとも0.5:1、又は少なくとも1:1、又は少なくとも2:1、又は少なくとも3:1であり得、かつ最大で5:1、又は最大で3:1、又は最大で2:1、又は最大で1:1であり得る。更に、ステップb)における温度は、少なくとも0℃、又は少なくとも20℃、又は少なくとも30℃、又は少なくとも40℃、又は少なくとも50℃であり得、かつ最大で200℃、又は最大で150℃、又は最大で100℃、又は最大で70℃、又は最大で60℃、又は最大で50℃、又は最大で40℃であり得る。ステップb)における圧力は、少なくとも100mbara、又は少なくとも500mbara、又は少なくとも1bara、又は少なくとも1.5bara、又は少なくとも2baraであり得、かつ最大で50bara、又は最大で30bara、又は最大で20bara、又は最大で15bara、又は最大で10bara、又は最大で5bara、又は最大で3bara、又は最大で2bara、又は最大で1.5baraであり得る。ステップb)における温度及び圧力は、好ましくは、ステップa)から得られた第2の流れからの炭化水素及び抽出溶媒b)の両方が液体状態であるようなものである。
【0085】
ステップb)において、脂肪族炭化水素は、ヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択で芳香族炭化水素を、抽出溶媒b)で液-液抽出することによって回収される。更に、好ましくは、回収された脂肪族炭化水素は、99:1~1:99の重量比で、30~300℃の沸点を有する脂肪族炭化水素及び300~600℃を超える沸点を有する脂肪族炭化水素を含む。液体炭化水素供給原料流中の脂肪族炭化水素に関して、30~300℃の沸点を有する脂肪族炭化水素と300~600℃を超える沸点を有する脂肪族炭化水素との重量比の上記の説明はまた、回収された脂肪族炭化水素に当てはまる。
【0086】
ステップb)において、当該液-液抽出は、脂肪族炭化水素及び任意選択でヘテロ原子含有有機化合物を含む第1の流れと、抽出溶媒b)、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の流れとをもたらす。本明細書内では、回収された脂肪族炭化水素を含む前者の流れ(第1の流れ)を「ラフィネート流」と称することもでき、後者の流れ(第2の流れ)を「抽出物流」と称することもできる。そのようなラフィネート流は、芳香族炭化水素、2つ以上の炭素-炭素二重結合を有する共役脂肪族化合物、及びヘテロ原子含有有機化合物の含有量が低減している。そのようなラフィネート流は、芳香族炭化水素を含まないか、又は最大で10重量%若しくは最大で5重量%若しくは最大で1重量%で含むか、又は実質的に含まない。更に、そのようなラフィネート流は、2つ以上の炭素-炭素二重結合を有する共役脂肪族化合物を含まないか、又は最大で15重量%若しくは最大で10重量%若しくは最大で5重量%若しくは最大で1重量%で含むか、又は実質的に含まない。更に、そのようなラフィネート流は、ヘテロ原子含有有機化合物を含まないか、又は最大で1重量%で含むか、又は実質的に含まない。
【0087】
本プロセスのステップb)において使用される抽出溶媒b)は、ステップb)においてカラムに溶媒流として供給されてもよく、好ましくは、ステップa)から得られる第2の流れの密度よりも少なくとも3%、又は少なくとも5%、又は少なくとも8%、又は少なくとも10%、又は少なくとも15%、又は少なくとも20%高い密度を有する。更に、当該密度は、ステップa)から得られる第2の流れの密度よりも最大で50%、又は最大で40%、又は最大で35%、又は最大で30%高くてもよい。
【0088】
更に、ステップb)で使用される抽出溶媒b)は、酸素、窒素及び/又は硫黄であり得る、1つ以上のヘテロ原子を含有する。なお更に、当該抽出溶媒b)は、200℃の温度で熱的に安定であることが好ましい。なお更に、当該抽出溶媒b)は、少なくとも50℃、又は少なくとも80℃、又は少なくとも100℃、又は少なくとも120℃、かつ最大で300℃、又は最大で200℃、又は最大で150℃である沸点を有し得る。なお更に、当該抽出溶媒b)は、ヘプタン中での混和性を有しないか、又は比較的低い混和性を有することが好ましい。好ましくは、抽出溶媒b)は、ヘプタンの重量に基づいて、最大で30重量%、又は最大で20重量%、又は最大で10重量%、又は最大で3重量%、又は最大で1重量%の抽出溶媒b)が、ヘプタン中で混和性であるようなヘプタン中での混和性を有する。ヘプタンなどの別の化合物中のある特定の化合物の混和性は、ASTM法D1476を含む、当業者に既知の任意の一般的な方法によって決定することができる。本明細書において、ある化合物の別の化合物への混和性に言及する場合、これは25℃での混和性を意味する。
【0089】
更に、ステップb)における抽出溶媒b)は、少なくとも3MPa1/2、好ましくは少なくとも5MPa1/2、より好ましくは少なくとも10MPa1/2、より好ましくは少なくとも15MPa1/2の、25℃で決定されるヘプタンに関するハンセン溶解度パラメータ距離Ra、ヘプタンを有し得る。更に、抽出溶媒b)についての当該Ra、ヘプタンは、45MPa1/2未満、又は最大で40MPa1/2、好ましくは最大で35MPa1/2、より好ましくは最大で30MPa1/2、より好ましくは最大で25MPa1/2であり得る。例えば、N-メチルピロリドン(NMP)についての当該Ra、ヘプタンは、15MPa1/2である。
【0090】
なお更に、当該抽出溶媒b)は、25℃で決定されるトルエンに関するハンセン溶解度パラメータ距離Ra、トルエンと比較して、少なくとも1.5MPa1/2、好ましくは少なくとも2MPa1/2のヘプタンに関するハンセン溶解度パラメータ距離Ra、ヘプタンの差(すなわち、Ra、ヘプタン-Ra、トルエン)を有し得る。更に、抽出溶媒b)についてのRa、トルエンと比較したRa、ヘプタンの当該差は、最大で4.5MPa1/2、好ましくは最大で4MPa1/2であってもよい。
【0091】
ハンセン溶解度パラメータ(Hansen solubility parameters、HSP)は、ある成分の別の成分と比較した可能性を予測するための手段として使用することができる。より具体的には、各成分は、3つのハンセンパラメータによって特徴付けられ、各々一般に、MPa0.5で表され、δは、分子間の分散力からのエネルギーを示し、δは、分子間の二極性分子間力からのエネルギーを示し、δは、分子間の水素結合からのエネルギーを示す。化合物間の親和性は、式(1)で定義されるハンセン溶解度パラメータ(HSP)距離Rとして、これらの溶媒の原子及び分子間相互作用を定量化する多次元ベクトルを使用して記述することができる:
(R=4(δd2-δd1+(δp2-δp1+(δh2-δh1 (1)
式中、
=化合物1と化合物2との間のHSP空間での距離(MPa0.5
δd1、δp1、δh1=化合物1のハンセン(又は同等の)パラメータ(MPa0.5
δd2、δp2、δh2=化合物2のハンセン(又は同等の)パラメータ(MPa0.5
【0092】
したがって、回収される化合物(すなわち、回収される化合物が化合物1であり、溶媒が化合物2である、又はその逆)に関して計算された所与の溶媒についてのRの値が小さいほど、回収される化合物に対するこの溶媒の親和性が高くなる。
【0093】
多数の溶媒についてのハンセン溶解度パラメータは、とりわけ、CRC Handbook of Solubility Parameters and Other Cohesion Parameters,Second Edition by Allan F.M.Barton,CRC press 1991;Hansen Solubility Parameters:A User’s Handbook by Charles M.Hansen,CRC press 2007に見出すことができる。
【0094】
具体的には、本プロセスのステップb)で使用される抽出溶媒b)は、アンモニア、又は好ましくは、ジオール及びトリオール(モノエチレングリコール(MEG)、モノプロピレングリコール(MPG)、ブタンジオール及びグリセロールの任意の異性体を含む);グリコールエーテル(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールを含む、オリゴエチレングリコールを含む)、並びにそれらのモノアルキルエーテル(ジエチレングリコールエチルエーテルを含む);アミド(N-アルキルピロリドンを含み、アルキル基は、1~8個又は1~3個の炭素原子を含有してもよく、N-メチルピロリドン(NMP)を含む)、ホルムアミド、並びにジ及びモノアルキルホルムアミド、及びアセトアミド(アルキル基は、1~8個又は1~3個の炭素原子を含有してもよく、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルホルムアミド及びジメチルアセトアミドを含む);ジアルキルスルホキシド(アルキル基は、1~8個又は1~3個の炭素原子を含有してもよく、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む);スルホン(スルホランを含む);N-ホルミルモルホリン(NFM);フラン環含有成分及びそれらの誘導体(フルフラール、2-メチルフラン、フルフリルアルコール及びテトラヒドロフルフリルアルコールを含む);ヒドロキシエステル(乳酸メチル及び乳酸エチルを含む、乳酸エステルを含む);リン酸トリアルキル(リン酸トリエチルを含む);フェノール化合物(フェノール及びグアイアコールを含む);ベンジルアルコール化合物(ベンジルアルコールを含む);アミン系化合物(エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンを含む);ニトリル化合物(アセトニトリル及びプロピオニトリルを含む);トリオキサン化合物(1,3,5-トリオキサンを含む);炭酸化合物(炭酸プロピレン及び炭酸グリセロールを含む);並びにシクロアルカノン化合物(ジヒドロレボグルコセノンを含む)からなる群から選択される1つ以上の有機溶媒を含み得る。
【0095】
より好ましくは、当該抽出溶媒b)は、上記のジアルキルスルホキシド、具体的にはDMSO;スルホン、具体的にはスルホラン;上記N-アルキルピロリドン、具体的にはNMP;及びフラン環含有成分、具体的にはフルフラールのうちの1つ以上を含む。更により好ましくは、当該抽出溶媒b)は、上記のN-アルキルピロリドン、具体的にはNMP、及びフラン環含有成分、具体的にはフルフラールのうちの1つ以上を含む。最も好ましくは、抽出溶媒b)は、NMPを含む。
【0096】
四級アンモニウム塩、具体的には塩化トリオクチルメチルアンモニウム又は塩化メチルトリブチルアンモニウムの水溶液もまた、ステップb)における抽出溶媒b)として使用され得る。
【0097】
上記のように、ステップb)から得られた第2の流れ(上記の第1の(抽出)カラムのためのこの流れは、そのようなカラムからの底部流に相当する)は、抽出溶媒b)、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む。当該流れは、2つ以上の炭素-炭素二重結合を有する共役脂肪族化合物を、そのような化合物が、ステップa)から得られた第2の流れの中に存在する場合に、更に含み得る。
【0098】
本発明において、抽出溶媒b)は、ステップb)から得られた第2の流れから、及び任意選択でステップb)から得られた第1の流れから(後者の流れも抽出溶媒b)を含む場合)回収され得、次いで、有利には、ステップb)に再循環される。好適には、当該抽出溶媒は、任意の方式で、例えば、国際公開第2020/212315号又は2020年10月16日に出願された同時係属中の欧州特許出願第2020/2249.7号(これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような方式で、回収及び再循環され得る。
【0099】
有利には、任意の芳香族炭化水素、及び上述のように抽出溶媒を回収する際に除去された、2つ以上の炭素-炭素二重結合を有する共役脂肪族化合物は、パイガスとブレンドされ、燃料に加工されるか、又は芳香族化合物の生成に使用され得る。同様に、そのような回収時に除去されたヘテロ原子含有有機化合物も、任意選択でヘテロ原子を除去するための水素化処理の後に、燃料に変換され得る。更に、そのような回収時に除去された当該化合物は、溶媒として使用され得る様々な画分に更に分離され得る。
【0100】
収着ステップ(i)、(ii)、(iii)及び(iv)
本発明において、有利には、収着剤が、ヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択で芳香族炭化水素、並びに任意選択で上記のケイ素含有化合物及び金属などの他の汚染物質を除去するために、ステップ(i)、(ii)、(iii)及び(iv)において使用され、これらの汚染物質は、液体炭化水素供給原料流中にあるか、又は抽出ステップb)において完全に除去されなくてもよいが、例えば、液体炭化水素供給原料流中のこれらの汚染物質の濃度が比較的高いために、回収される脂肪族炭化水素を含む、ステップa)から得られた第1の流れに同伴される。そのような収着によって、有利には、十分に高品質の最終精製炭化水素生成物を得ることができ、その結果、それを更に処理することができ、例えば蒸気分解装置に供給することができる。
【0101】
上記の収着による、ヘテロ原子含有有機化合物、任意選択で芳香族炭化水素、及び任意選択で上記の他の汚染物質の除去は、本プロセスにおいて、以下のステップ:
(i)ステップa)中に、第1及び第2の流れが、ステップa)において分離される前に、液体炭化水素供給原料流の少なくとも一部を収着剤と接触させるステップ、及び/又は
(ii)先行するステップa)と後続のステップa)との間に、先行するステップa)から得られた第2の流れの少なくとも一部を収着剤と接触させるステップ、及び/又は
(iii)ステップa)とb)との間に、ステップa)から得られた第2の流れの少なくとも一部を収着剤と接触させるステップ、及び/又は
(iv)ステップa)の後に、ステップb)から得られた、脂肪族炭化水素及びヘテロ原子含有有機化合物を含む第1の流れの少なくとも一部を収着剤と接触させるステップ、のうちの1つ以上において適用されることが想定される。
【0102】
したがって、具体的には、上述の収着は、本プロセスにおいて、上記のステップ(i)、(ii)、(iii)及び(iv)に対応する以下のステップ(i)、(ii)、(iii)及び(iv)のうちの1つ以上において適用され得る。
(i)ヘテロ原子含有有機化合物の一部が、液体炭化水素供給原料流から、その流れの少なくとも一部をステップa)中に、ステップa)において第1及び第2の流れが分離される前に、収着剤と接触させることによって除去され、ステップ(i)から得られた処理された流れの少なくとも一部が、ステップb)に供給される、及び/又は
(ii)ステップa)が、連続した複数のステップa)を含み、ヘテロ原子含有有機化合物の一部が、先行するステップa)から得られた第2の流れから、その流れの少なくとも一部を収着剤と接触させることによって除去され、ステップ(ii)から得られた処理された流れの少なくとも一部が、後続のステップa)に供給される、及び/又は
(iii)ヘテロ原子含有有機化合物の一部が、ステップa)から得られた第2の流れから、その流れの少なくとも一部を収着剤と接触させることによって除去され、ステップ(iii)から得られた処理された流れの少なくとも一部が、ステップb)に供給される、及び/又は
(iv)ステップb)から得られた第1の流れが、脂肪族炭化水素及びヘテロ原子含有有機化合物を含み、ヘテロ原子含有有機化合物が、その流れの少なくとも一部を収着剤と接触させることによって、その流れから除去される。
【0103】
好ましくは、上述の収着は、本プロセスにおいて、当該ステップ(i)、(iii)及び(iv)のうちの1つ以上において適用される。更に、収着ステップ(iii)が適用され、洗浄ステップa)が、連続した複数のステップa)を含む場合、連続した中の最後のステップa)から得られた第2の流れの少なくとも一部が、収着剤と接触させられてもよい。
【0104】
本プロセスが、1つの収着ステップを含む場合、そのような単一の収着ステップは、好ましくは収着ステップ(iii)又は(iv)、最も好ましくは収着ステップ(iv)である。本プロセスが、2つの収着ステップを含む場合、これらは、好ましくは収着ステップ(i)及び(iii)、又は収着ステップ(i)及び(iv)であり、最も好ましくは収着ステップ(i)及び(iv)である。
【0105】
収着ステップ(i)、(ii)、(iii)及び(iv)により、汚染物質の少なくとも一部は、有利には、本プロセスの抽出ステップb)による除去に加えて、そのような収着ステップにおいて使用される収着剤中に濃縮され、それによって、十分に高い品質(純度)の最終炭化水素生成物が、依然として送達され得ることを可能にするであろう。収着ステップ(i)、(ii)、(iii)及び(iv)は、本プロセスを用いて、比較的多量のヘテロ原子含有有機汚染物質及び任意選択で他の汚染物質を含有する液体炭化水素供給原料流が、更に処理されることを可能にする。加えて、ステップb)への任意の抽出溶媒b)再循環流中のこれらの汚染物質の蓄積は、有利には、本プロセスにおける収着ステップ(iv)を通して、最終炭化水素生成物中のこれらの汚染物質の蓄積をもたらさないであろう。更に、加えて、これらの汚染物質の後のステップ部分が、抽出ステップb)に供される前に、供給原料流から既に除去されている、本プロセスにおける収着ステップ(i)、(ii)及び(iii)を通して、ステップb)への任意の抽出溶媒b)再循環流中のこれらの汚染物質の当該蓄積が、防止され得る。したがって、収着剤は汚染物質を保持し、この収着剤は、最終的に再生され得るか、又はプロセスから除去され、新しい収着剤によって置き換えられ得、それによって、上記の利点を提供し続ける。
【0106】
なお更に、本発明において、本プロセスの収着ステップ(i)、(ii)及び(iii)から得られた処理された流れの一部は、抽出ステップb)に供給され得る一方、別の部分は、当該ステップb)を迂回し得る。ステップ(i)、(ii)及び(iii)から得られた処理された流れ全体が、ステップb)を迂回し得ることも想定されるが、これは、特許請求された本発明によるものではない。例えば、そのような迂回は、当該処理された流れの品質が、既に蒸気分解装置供給物の仕様内にあるように十分に高い場合に好適であり得る。次いで、当該処理された流れの少なくとも一部は、好適には、間に抽出ステップなしで、蒸気分解装置に直接供給されてもよい。
【0107】
有利には、洗浄ステップa)と組み合わせた収着ステップ(i)、(ii)、(iii)並びに/又は(iv)、及び上記のような抽出ステップb)の(部分的な)迂回の選択肢を通して、異なる品質(異なる汚染物質及び/又は異なるレベルの汚染物質)を有する広範囲の液体炭化水素供給原料が処理され得るように、柔軟性が、本プロセスに追加される。
【0108】
上述の収着ステップ(i)、(ii)、(iii)及び(iv)において、収着剤との接触は、当業者に既知の任意の方式で、実施され得る。
【0109】
収着ステップ(i)において、収着剤は、ステップa)において、収着剤粒子を含む懸濁液として存在することが好ましい。そのような収着剤粒子は、ステップa)に添加される洗浄溶媒a)を含む流れに添加され得る。そのような懸濁液の場合、収着剤は、第1及び第2の流れが、ステップa)において分離される前に、例えば濾過によって、処理された流れから除去されることが好ましい。代替的に、収着剤は、洗浄溶媒a)及びヘテロ原子含有化合物を含む第1の流れと一緒に、沈降によって、又は異なる方法を適用することによって、例えば、ステップa)において第1及び第2の流れを分離するときに遠心分離機又は液体サイクロンなどの分離器を使用することによって除去されてもよい。
【0110】
更に、収着ステップ(ii)、(iii)及び(iv)において、収着剤は、収着ステップ(i)について上述したように、収着剤粒子を含む懸濁液として存在してもよく、又は充填床に固定されてもよい。好ましくは、収着ステップ(ii)、(iii)及び(iv)において、収着剤は、充填床に固定される。
【0111】
本発明において、収着ステップ(i)、(ii)、(iii)及び(iv)における収着剤の相対量は、上述の懸濁液が使用される場合、収着ステップへの処理されるべき供給物に基づいて、0.01重量%~20重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%、より好ましくは0.1重量%~1重量%であり得る。更に、上記の充填床が、収着ステップ(ii)、(iii)及び(iv)において使用される場合、液空間速度(Liquid Hourly Space Velocity、LHSV)は、0.1~50l/時、好ましくは1~10l/時であり得る。特定の目標LHSVは、温度及び汚染物質の濃度などのいくつかの要因に依存し得る。
【0112】
本明細書において、収着は、1つの物質(収着剤)が、吸収、吸着、又は両方の組み合わせによって別の物質を取り込むか、又は保持するプロセスを意味する。好ましくは、本発明において使用される収着剤は、上述のヘテロ原子含有化合物、任意選択で芳香族炭化水素、及び任意選択で他の汚染物質を優先的に収着する収着剤である。具体的には、上述のヘテロ原子含有化合物、任意選択で芳香族炭化水素、及び任意選択で他の汚染物質は、回収される脂肪族炭化水素と比較して、並びに本明細書で定義される任意の抽出溶媒及び/又は洗浄溶媒と比較して、優先的に収着されることが好ましい。
【0113】
本プロセスのステップ(i)、(ii)、(iii)及び(iv)で使用するための収着剤は、好適には、ミクロ細孔、メソ細孔、若しくはマクロ細孔、又はそれらの組み合わせで構成される多孔質構造を有する。IUPAC表記によれば、ミクロ多孔質構造は、2nm(20Å、オングストローム)未満の孔径を有し、メソ多孔質構造は、2~50nm(20~500Å)の孔径を有し、マクロ多孔質構造は、50nm(500Å)を超える孔径を有する。
【0114】
ステップ(i)、(ii)、(iii)及び(iv)において好適に使用され得る収着剤は、本明細書中に列挙される特定の材料に限定されない。一般に、比較的高い比表面積、ミクロ細孔、メソ細孔、若しくはマクロ細孔、又はそれらの組み合わせを含む多孔質構造を有することを特徴とする、天然起源又は合成、無機又は有機源からの、処理された又は処理されていない表面を有する任意の形態の任意の材料を、本発明において使用することができる。当該比表面積は、1~3000m/g、好ましくは50~2000m/g、より好ましくは100~1000m/gの範囲であってもよい。当該比表面積は、少なくとも1m/g又は少なくとも10m/g又は少なくとも50m/gであってもよい。更に、最大で3000m/g又は最大で1000m/g又は最大で500m/gであってもよい。更に、ステップ(i)、(ii)、(iii)及び(iv)で使用するのに好適な収着剤は、少なくとも0.001cm/g、又は少なくとも0.01cm/g、又は少なくとも0.1cm/g、かつ最大で1cm/g、又は最大で3cm/g、又は最大で5cm/g、又は最大で10cm/gの細孔容積を有する。ステップ(i)、(ii)、(iii)及び(iv)で使用するのに好適な収着剤は、上記の特性から2つ、すなわち細孔径及び表面積、又は細孔径及び細孔容積、又は表面積及び細孔容積を満たし得る。
【0115】
本発明のプロセスのステップ(i)、(ii)、(iii)及び(iv)において好都合に使用され得る収着剤は、合成又は天然の分子篩であり得る。更に、本発明のプロセスのステップ(i)、(ii)、(iii)及び(iv)において好都合に使用され得る収着剤は、無機起源の分子篩、例えば、金属酸化物(金属は、Al、Si、Zn、Mg、Ti、Zrなどのアルカリ土類金属、遷移金属、及びポスト遷移金属のうちの1つ以上である)、又はゼオライト、粘土、活性粘土、アルミナ、活性アルミナ、非晶質アルミナ、シリカゲル、珪藻土、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、非晶質シリカ、多孔質ガラスなどであり得るか、又は有機起源の分子篩、例えば活性炭、架橋及び多孔質ポリマー、炭素質材料、例えば炭素チャー(「チャー」は「木炭」を表す)、グラフェン系ナノ材料、並びに単層若しくは多層カーボンナノチューブであり得るか、又は金属有機骨格などのハイブリッド分子篩であり得る。収着剤は、収着剤への液体アクセスを可能にするチャネル及び空洞をその中に有する、多孔性非晶質無機又は有機マトリックス(結合剤材料とも称される)中に分散され得る。代替的に、収着剤は、結合剤材料なしで使用されてもよい。
【0116】
本プロセスのステップ(i)、(ii)、(iii)及び(iv)で使用される収着剤は、漂白粘土、ヒドロゲルシリカ、ケイ酸塩、及び活性炭からなる群から選択される1つ以上の収着剤であり得る。漂白粘土が、特に好ましい。
【0117】
漂白粘土鉱物は、様々な量のアルミニウム、鉄、マグネシウム、アルカリ金属、アルカリ土類、及び他のカチオンを含み得る含水フィロケイ酸塩である。フィロケイ酸塩は、以下の鉱物のサブグループ:蛇紋石、粘土鉱物、雲母、及び亜塩素酸塩を含み得る。
【0118】
好ましくは、本発明に好適な吸着剤は、蛇紋石-カオリン群、タルク-パイロフィライト群、スメクタイト群、バーミキュライト若しくはイライト群、及び/又はマイカ群からのフィロケイ酸塩である。蛇紋石群のフィロケイ酸塩は、アンチゴライト、クリソタイル、及びリザルダイトを含み得る。カオリン群のフィロケイ酸塩は、ハロイサイト、カオリナイト、イライト、モンモリロナイト、バーミキュライト、タルク、セピオライト、パリゴルスカイト(又はアタパルジャイト)、及びパイロフィライトを含み得る。マイカ群のフィロケイ酸塩は、黒雲母、フクサイト、白雲母、金雲母、レピドライト、マーガライト、海緑石を含み得る。亜塩素酸塩群のフィロケイ酸塩は、亜塩素酸塩を含み得る。
【0119】
より好ましくは、本発明に好適な収着剤としては、主にモンモリロナイトを含有し得るベントナイト又はセピオライトなどのスメクタイト群からの高活性粘土(これらの粘土は、酸活性化後に適用され得る);天然に活性であり、フラー土とも呼ばれるもの;並びにホルマイト、アタパルジャイト(又はパリゴルスカイト)及び海泡石などの酸の添加によって「インサイチュで」活性化され得る表面修飾吸着剤が挙げられる。これらの粘土はまた、炭酸カルシウム、石英、及び長石などのいくつかの他の鉱物を含有し得る。市販の漂白粘土の適切な例は、BASFからのグレードFシリーズ及びNevergreen、Oil-Dri CorpからのPure-Floシリーズ及びPerformシリーズ、ImerysからのCynerSorbシリーズ、及びClariantからのTonsilシリーズである。
【0120】
本発明のステップ(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)において好適な吸着剤として使用され得る他の材料は、水和層状アルカリケイ酸塩である。それらは、天然又は合成であり得、負電荷、電荷補償のためのアルカリカチオン、及び場合によっては層間の水を備えるSiO層(シート)を含む。水和層状ケイ酸塩の例は、カネマイト、オクトシリケート、マガディアイト、及びケニヤアイトである。更に、水和層状アルカリケイ酸塩を官能化して、収着目的の無機-有機ハイブリッドを得ることができる。水和層状アルカリケイ酸塩は、それらの高いカチオン交換容量のために、金属イオンの除去に好ましく使用される。イオン交換樹脂はまた、触媒として使用される場合、鉱酸を置換する能力、並びに金属及びフェノール、アルデヒド、及び有機酸を含むヘテロ原子含有化合物などの汚染物質を除去する能力を有する。例えば、イオン交換樹脂は、油から脂肪酸を除去するために使用されてきた。市販のイオン交換樹脂は、Dow-DupontからのAmberlite(商標)シリーズからのもの、例えば、Amberlyst A23(酸除去用)、Amberlite XAD4(フェノール除去用)、Amberlystシリーズ(反応における鉱酸の代わり)である。そのようなイオン交換樹脂も、本発明において収着剤として好適に使用され得る。
【0121】
本発明のステップ(i)、(ii)、(iii)及び(iv)における使用に好適な粘土又は層状ケイ酸塩吸着剤は、それらの細孔容積、表面積、イオン交換容量(ion exchange capacity、IEC)、及び細孔径分布によって特徴付けられ得る。本発明に好適な粘土又は層状ケイ酸塩は、少なくとも0.1cm/g、より好ましくは0.4cm/g超、最も好ましくは0.5cm/g超の細孔容積を有する。比細孔容積は、好ましくは最大1.0cm/g、より好ましくは最大0.8cm/g、最も好ましくは最大0.7cm/gである。本発明に好適な粘土又は層状ケイ酸塩は、好ましくは100m/g~500m/g、より好ましくは200m/g~400m/gの範囲の表面積を有する。本発明に好適な層状ケイ酸塩は、少なくとも25meq/100gであるが、好ましくは40meq/100g超、最も好ましくは50meq/100g~80meq/100gの範囲のイオン交換容量(IEC)を有する。合成層状ケイ酸塩は、最大500meq/100gのイオン交換容量を有し得る。本発明に好適な粘土又は層状ケイ酸塩は、好ましくは全細孔容積の少なくとも20%、より好ましくは少なくとも22%、最も好ましくは少なくとも30%などの細孔径分布を有することで特徴付けられ、最大7.5nmの直径を有する細孔によって提供される。好ましくは、全細孔容積の少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、最も好ましくは少なくとも50%が、最大で14nmの直径を有する細孔によって提供される。好ましくは、全細孔容積の40%未満、より好ましくは35%未満が、25nm超の直径を有する細孔によって提供される。
【0122】
更に、本発明のステップ(i)、(ii)、(iii)及び(iv)で使用される吸着剤は、本明細書に開示される吸着剤の組み合わせであってもよい。粘土の組み合わせの例は、好ましくは10~90重量%のアタパルジャイト、より好ましくは20~60重量%のアタパルジャイト、最も好ましくは30~50重量%のアタパルジャイトを含有するアタパルジャイト/モンモリロナイト混合物である。
【0123】
ステップ(i)、(ii)、(iii)及び(iv)において汚染物質を最適に除去するために、上記の無機吸着剤は、最初に、当業者に知られているように、熱的又は化学的な処理又は活性化に供される必要があり得る。
【0124】
本発明のステップ(i)、(ii)、(iii)及び(iv)において使用するのに好適な活性炭及び炭素チャーなどの炭素を含む収着剤は、主に炭素からなり得、例えば、80~100重量%の炭素、好ましくは90~100重量%の炭素、より好ましくは95~100重量%、最も好ましくは98~100重量%の炭素、非常に好ましくは99~100重量%の炭素を含む物質である。
【0125】
ステップ(i)、(ii)、(iii)及び(iv)において、ヘテロ原子含有有機化合物を含む上記の汚染物質のうちの1つ以上を除去するための収着剤として好ましい活性炭は、瀝青源からのものである。更に、そのような収着剤として使用され得る活性炭は、好ましくは、500~1200mg/gの範囲のヨウ素価、及び95~1500の範囲、好ましくは200~1500の範囲の高い糖蜜価を有することにより特徴付けられる。「ヨウ素価」は、10~28オングストロームのサイズの細孔の相対的尺度である。それは、粒状活性炭1グラム当たりに収着された元素状ヨウ素のミリグラムで報告され、低分子量有機化合物を収着するために活性炭上で利用可能な面積を決定する。ヨウ素価は、ASTM D4607に従って決定することができる。「糖蜜価」は、活性炭がストック溶液から色を除去する程度を測定する。それは、28オングストロームを超える細孔を測定する。これらは、より大きな分子量の有機化合物の除去に関与する細孔である。この場合、収着された糖蜜の量が定量化される。
【0126】
更に、本発明のための好適な活性炭は、600~2000m/gの範囲の全比表面積及び0.9~2.5ml/gの範囲の全細孔容積を有する。なお更に、本発明のための好ましい活性炭は、20オングストロームより大きい細孔について、100m/gを超える比表面積及び0.5ml/gを超える細孔容積を有する。これらの特性は、ステップ(i)、(ii)、(iii)及び(iv)において除去される当該ヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択の芳香族炭化水素を含む比較的大きな分子を除去する際に有利である。
【0127】
表面が修飾及び/又は官能化された活性炭及び炭素チャーも、ステップ(i)、(ii)、(iii)及び(iv)において好適に使用され得る。炭素材料表面上に機能特性を生成するための好適な方法としては、液体及びガス酸化剤による酸化、材料表面上への官能基のグラフト化、リガンドの物理吸着、蒸着、及び/又は炭素活性化プロセス中に発生した官能基が挙げられる。
【0128】
本発明のステップ(ii)、(iii)及び(iv)に好適な吸着剤は、ゼオライト系、シリカゲル、アルミナ、粘土系、又は活性炭である分子篩であり得る。
【0129】
本発明において、収着ステップ(ii)、(iii)及び(iv)において除去されるヘテロ原子含有有機化合物のサブグループは、極性又は非極性であり得る有機塩化物を含み得る。ゼオライトを含む収着剤は、そのような有機塩化物除去に好適である。具体的には、X及びYなどのフォージャサイト(Faujasite、FAU)骨格を含むゼオライト、脱アルミニウム化ゼオライトY、低ナトリウム超安定Y(Ultrastable Y、USY)を含む収着剤;ZSM-5及びペンタシルゼオライトなどのMFI型;MCM-22、ITQ-1、SSZ-25などのMWW型;ゼオライトベータなどのBEA型、及びモルデナイト(Mordenite、MOR)型は、本発明における収着剤として、特に有機塩化物除去に好適である。更に、収着剤のゼオライト成分は、元素の周期表で定義されるアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、又はポスト遷移金属から誘導される金属カチオンで含浸されてもよい。有機塩化物は、ゼオライト系収着剤と相互作用した後に塩化物を塩酸の形態で放出することができるため、収着剤は、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物若しくは炭酸塩などの塩基性若しくは両性酸化物、又は放出された塩酸を捕捉することができる活性アルミナ若しくは別の金属酸化物も備える必要があり得る。本発明に好適な市販のゼオライト系材料の例は、UOPからの吸着剤PCL-100、BASFからのCL-850、及びUniCatからのTCR-16である。
【0130】
更に、本発明において、収着ステップ(ii)、(iii)及び(iv)において除去されるヘテロ原子含有有機化合物の別のサブグループは、極性成分を含み得る。シリカゲルを含む収着剤は、そのような極性成分を除去するのに好適である。極性成分を除去するための市販のシリカゲルの好適な例は、Grace Materials TechnologiesからのTRISYL(登録商標)である。更に、上記の有機塩化物を含む極性成分の優先的収着のための好適な収着剤は、そのSi/Al比によって決定される極性を有するゼオライト系材料、又はヘテロ原子含有化合物及び優先的に極性の化合物に対するその親和性を増加させるために、カチオン交換又は表面修飾などの処理を受けたゼオライトを含む。
【0131】
本発明において、収着剤によって除去される必要があり得る可能性のある汚染物質は、シリカ及びシロキサン化合物などの上記のケイ素含有化合物であり得る。好ましくは、シリカゲル、ゼオライト13X、活性アルミナ、ハイドロタルサイト(一般式MgAlCO(OH)16・4(HO)の層状複水酸化物粘土)及び活性炭を含む収着剤が、そのようなケイ素含有化合物の除去に好適であり得る。
【0132】
ステップ(ii)、(iii)及び(iv)における温度は、周囲温度~400℃、好ましくは40~200℃、より好ましくは40~180℃の範囲であり得る。更に、ステップ(ii)、(iii)及び(iv)における圧力は、周囲圧力~100バールの範囲、好ましくは5~30バールの範囲、最も好ましくは5~20バールの範囲であり得る。当該圧力は、洗浄ステップa)(このステップa)は、収着ステップ(i)を含み得る)における圧力、及び抽出ステップb)における圧力と異なってもよい。
【0133】
ヘテロ原子含有化合物及び任意選択で芳香族炭化水素が、吸着剤材料中に蓄積して、「使用済み吸着剤」を生成する。当該技術分野で知られているように、最終的に、収着剤を交換又は再生する必要がある。いずれの場合も、使用済み収着剤を含有する対応する容器は、使用中止となる。再生の場合、使用済み吸着剤は、ヘテロ原子含有化合物及び任意選択で芳香族炭化水素を含有しない流れと接触させられる。好ましくは、この流れを加熱して、ヘテロ原子含有化合物及び任意選択で芳香族炭化水素の脱着を促進する。再生流は、気体、液体又は超臨界流体であり得る。それは窒素のように不活性であり得るか、又は水素、酸素及び過酸化水素のように反応性であり得る。再生方法に依存して、再生温度は、20~350℃の範囲である。収着剤材料の再生は、蒸気又は窒素などの流れでストリッピングすることによって、又は収着剤を空気中で加熱して収着された材料を燃焼させることによって行うことができる。代替的に、本発明で使用される収着材料が完全に再生することができない場合、その収着容量に達したときに廃棄しなければならない。更に、ステップa)で使用される吸着剤について、吸着剤が、使用済み吸着剤として分離される場合、吸着剤中に含有された有機化合物は、当該技術分野で既知の有機溶媒で吸着剤を洗浄することによって除去され得る。代替的に、吸着剤は、焼却のような処分のために除去される。
【0134】
上流及び下流の統合
本発明において、液体炭化水素供給原料流は、プラスチック、好ましくは廃プラスチック、より好ましくは混合廃プラスチックの分解を含むプロセスにおいて形成される炭化水素生成物の少なくとも一部を含むことができ、プラスチックの少なくとも一部が、ヘテロ原子含有有機化合物を含む。
【0135】
したがって、本発明はまた、プラスチックから脂肪族炭化水素を回収するためのプロセスに関し、プラスチックの少なくとも一部が、ヘテロ原子含有有機化合物を含み、当該プロセスは、
(I)プラスチックを分解し、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む炭化水素生成物を回収するステップと、
(II)ステップ(I)で得られた炭化水素生成物の少なくとも一部を含む、液体炭化水素供給原料流を、液体炭化水素供給原料流から脂肪族炭化水素を回収するための上記のプロセスに供するステップと、を含む。
【0136】
本脂肪族炭化水素回収プロセスに関してそのようなものとして上記した選好及び実施形態は、プラスチックから脂肪族炭化水素を回収するための本プロセスのステップ(II)にも適用される。上記ステップ(I)において、得られる炭化水素生成物は、液体又は固体若しくはワックスのいずれかであってもよい。後者の場合、ステップ(II)の脂肪族炭化水素回収プロセスに供する前に、固体又はワックスを最初に加熱して液体にする。
【0137】
上記のプロセスにおいて、ステップ(I)に供給されるプラスチックの少なくとも一部は、ヘテロ原子含有有機化合物を含み、このプラスチックは、好ましくは廃プラスチック、より好ましくは混合廃プラスチックである。当該ステップ(I)において、プラスチックの分解は、熱分解プロセス及び/又は接触分解プロセスを伴ってもよい。ステップ(I)における分解温度は、300~800℃、好適には400~800℃、より好適には400~700℃、より好適には500~600℃であってもよい。更に、任意の圧力が加えられてもよく、この圧力は、大気圧未満、大気圧、又は大気圧超であってもよい。ステップ(I)における熱処理は、プラスチックの溶融及びその分子のより小さい分子への分解を引き起こす。ステップ(I)における分解は、熱分解として又は液化として行うことができる。熱分解及び液化の両方において、連続液相が形成される。加えて、熱分解では、不連続な気相が形成され、これは液相を逃れ、連続した気相に分離する。液化においては、比較的高い圧力を加えることによって有意な気相は存在しない。
【0138】
更に、ステップ(I)において、その後の気相の凝縮及び/又は液相の冷却は、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む、液体又は固体若しくはワックスのいずれかであり得る炭化水素生成物を提供し、この少なくとも一部は、ステップ(II)において上記の脂肪族炭化水素回収プロセスに供される。
【0139】
上記のステップ(I)は、任意の既知の方式、例えば、国際公開第2018/069794号又は同第2017/168165号(これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているような方式で実施され得る。
【0140】
有利には、脂肪族炭化水素の回収のための上記のプロセスのうちの1つにおいて回収された、広い沸点範囲内の様々な量の脂肪族炭化水素を含み得る脂肪族炭化水素は、水素による処理(水素化処理(hydrotreating)又は水素化処理(hydroprocessing))などの更なる前処理なしに蒸気分解装置に供給されてもよい。蒸気分解装置への供給物として使用されることに加えて、当該回収された脂肪族炭化水素はまた、有利には、水素化分解、異性化、水素化処理、熱接触分解、及び流動接触分解を含む他の精製プロセスに供給されてもよい。更に、蒸気分解装置への供給物として使用されることに加えて、当該回収された脂肪族炭化水素はまた、有利には、各々がディーゼル、船舶燃料、溶媒等の異なる用途を見出し得る異なる画分に分離されてもよい。
【0141】
したがって、本発明はまた、炭化水素供給物を蒸気分解するためのプロセスに関し、炭化水素供給物が、脂肪族炭化水素の回収のための上記のプロセスのうちの1つにおいて回収された脂肪族炭化水素を含む。更に、したがって、本発明はまた、炭化水素供給物を蒸気分解するためのプロセスであって、脂肪族炭化水素の回収のための上記のプロセスのうちの1つにおいて液体炭化水素供給原料流から脂肪族炭化水素を回収するステップと、炭化水素供給物が、前のステップで回収された脂肪族炭化水素を含む、炭化水素供給物を蒸気分解するステップとを含む、プロセスに関する。本明細書において、「前のステップで回収された脂肪族炭化水素を含む炭化水素原料を蒸気分解する」という当該句は、「回収された脂肪族炭化水素の少なくとも一部を含む炭化水素供給物を蒸気分解する」ことを意味し得る。蒸気分解プロセスへの炭化水素供給物はまた、脂肪族炭化水素の回収のための本プロセス以外の別の供給源からの炭化水素を含んでもよい。そのような他の供給源は、ナフサ、ハイドロワックス、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0142】
有利には、液体炭化水素供給原料流が芳香族炭化水素、特に多環式芳香族、ヘテロ原子含有有機化合物、2つ以上の炭素-炭素二重結合を有する共役脂肪族化合物、又はそれらの組み合わせを含む場合、これらは、回収された炭化水素を蒸気分解プロセスに供給する前に、上記の本脂肪族炭化水素回収プロセスによって既に除去されている。これは、当該除去された化合物、特に多環式芳香族が、蒸気分解装置の予熱、対流、及び放射セクション、並びに蒸気分解装置の下流の熱交換及び/又は分離機器において、例えば、蒸気分解装置からの流出物を急速に冷却するために使用される移送ライン交換器(transfer line exchanger、TLE)において、もはやファウリングを引き起こし得ないという点で特に有利である。炭化水素が凝縮すると、それらは、熱分解してコークス層になり、ファウリングを引き起こす場合がある。そのようなファウリングは、分解装置のランレングスを決定する主要な要因である。ファウリングの量を低減すると、メンテナンスをシャットダウンせずに実行時間が長くなり、交換器の熱伝達が改善される。
【0143】
蒸気分解は、任意の既知の方式で実行され得る。炭化水素供給物は、典型的には、予熱される。供給物は、熱交換器、炉、又は熱伝達及び/若しくは加熱デバイスの任意の他の組み合わせを使用して加熱することができる。供給物は、分解条件下の分解ゾーンで蒸気分解され、少なくともオレフィン(エチレンを含む)及び水素を生成する。分解ゾーンは、供給物を分解するのに好適な当該技術分野で既知の任意の分解システムを備え得る。分解ゾーンは、1つ以上の炉を備え得、各々が特定の供給物又は供給物の画分専用である。
【0144】
分解は、高温、好ましくは650~1000℃の範囲、より好ましくは700~900℃、最も好ましくは750~850℃の範囲で実行される。蒸気は、通常、分解ゾーンに追加され、炭化水素分圧を低減させ、それによってオレフィンの収率を高めるための希釈剤として機能する。蒸気はまた、分解ゾーンでの炭素質材料又はコークスの形成及び堆積を低減する。分解は、酸素がない場合に発生する。分解条件での滞留時間は、非常に短く、典型的には、数ミリ秒ほどである。
【0145】
分解装置から、芳香族化合物(蒸気分解プロセスで生成される)、オレフィン、水素、水、二酸化炭素、及び他の炭化水素化合物を含み得る分解装置流出物が得られる。得られる特定の生成物は、供給物の組成、炭化水素対蒸気比、並びに分解温度及び炉滞留時間に依存する。次いで、蒸気分解装置からの分解された生成物は、しばしばTLE(「移送ライン交換器」)と称される1つ以上の熱交換器を通過して、分解生成物の温度を急速に低減させる。TLEは、好ましくは、分解生成物を400~550℃の範囲の温度まで冷却する。
【0146】

液体炭化水素供給原料流から脂肪族炭化水素を回収するための本プロセスは、図1及び図2に更に示される。
【0147】
図1のプロセスにおいて、脂肪族炭化水素(以下「ジエン」と称される、2つ以上の炭素-炭素二重結合を有する共役脂肪族化合物を含む)、芳香族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び塩を含む液体炭化水素供給原料流1と、本発明による洗浄溶媒a)である水を含み、pH約7(アルカリ性)を有する流れ10とが、ミキサー11に供給され、その中で混合される。更に、図1に「(X)」で示されるように、収着剤が、本発明による収着ステップ(i)を表すミキサー11に供給され得る。
【0148】
得られた混合流12は、デカンタ20に供給される。デカンタ20において、混合流は、脂肪族炭化水素、ジエン、芳香族炭化水素、及びヘテロ原子含有有機化合物を含む流れ21と、水、ヘテロ原子含有化合物、及び塩を含む流れ22とに分離される。流れ22は、流れ22a及び22bに分割され、流れ22bは、任意選択で流れ22bから有機化合物及び塩を除去した後、ミキサー11に再循環される。流れ21と、本発明による洗浄溶媒a)である水を含み、約7のpHを有する流れ23とが、抽出カラム24に供給される。更に、図1に「(X)」で示されるように、流れ21が、収着剤と接触させられ得、これは、本発明による収着ステップ(ii)を表す。カラム24において、流れ21は、流れ23(水)と接触し、水によるヘテロ原子含有有機化合物の液-液抽出をもたらし、脂肪族炭化水素、ジエン、芳香族炭化水素、及びヘテロ原子含有有機化合物を含む頂部流25と、水及びヘテロ原子含有化合物を含む底部流26とをもたらす。流れ26は、デカンタ20からの流れ22の一部と合わせることができる。更に、図1に「(X)」で示されるように、流れ25が、収着剤と接触させられ得、これは、本発明による収着ステップ(iii)を表す。
【0149】
更に、図1のプロセスにおいて、抽出カラム24からの流れ25、本発明による抽出溶媒b)である有機溶媒(例えば、N-メチルピロリドン)を含む第1の溶媒流2、及び洗浄溶媒である水を含む第2の溶媒流3が、抽出カラム4に供給される。カラム4において、流れ25を、第1の溶媒流2(有機溶媒)と接触させ、それによって有機溶媒によるジエン、芳香族炭化水素、及びヘテロ原子含有有機化合物の液-液抽出により脂肪族炭化水素を回収する。更に、第2の溶媒流3中の水は、水による有機溶媒の液-液抽出によって、カラム4の上部から有機溶媒を除去する。回収された脂肪族炭化水素を含む流れ5は、上部のカラム4を出る。更に、有機溶媒、水、ジエン、芳香族炭化水素、及びヘテロ原子含有有機化合物を含む流れ6は、カラム4の底部から出る。図1に「(X)」で示されるように、流れ5が、収着剤と接触させられ得、これは、本発明による収着ステップ(iv)を表す。流れ6と、脱混合溶媒である追加の水を含む流れ14とが合わされ、合わされた流れが、デカンタ13に供給される。デカンタ13において、合わせた流れは、ジエン、芳香族炭化水素、及びヘテロ原子含有有機化合物を含む流れ15と、有機溶媒、水、ジエン、芳香族炭化水素、及びヘテロ原子含有有機化合物を含む流れ16とに分離される。流れ16は、蒸留カラム7に供給され、水、ジエン、芳香族炭化水素、及びヘテロ原子含有有機化合物を含む頂部流8と、有機溶媒を含む底部流9とに分離される。底部流9からの有機溶媒は、有機溶媒流2を介して再循環される。流れ8は、オーバーヘッドデカンタ17に供給され、ジエン、芳香族炭化水素、及びヘテロ原子含有有機化合物を含む流れ18と、水を含む流れ(これは、比較的少量のジエン、芳香族炭化水素、及びヘテロ原子含有有機化合物を更に含んでいてもよい)とに分離され、その水流の一部(流れ19a)は、還流として蒸留カラム7に戻され、他の部分(流れ19b)は、水流14及び/又は水流3及び/又は水流10及び/又は水流23を介して再循環されてもよい。
【0150】
図2のプロセスにおいて、上記の液体炭化水素供給原料流1はまた、最初にミキサー11及びデカンタ20内で、続いて抽出カラム24内で、本発明による洗浄溶媒a)である水と、最初に接触させられる。図2のプロセスにおける当該供給原料流のそのような上流処理に関して、図1のプロセスにおける対応する処理の上記説明が、本発明による収着ステップ(i)、(ii)及び(iii)を表すミキサー11、流れ21、及び流れ25に関連する、図2に「(X)」によって示される収着剤との任意選択の接触も含めて、参照される。
【0151】
更に、図2のプロセスにおいて、脂肪族炭化水素、ジエン、芳香族炭化水素、及びヘテロ原子含有有機化合物を含む、抽出カラム24からの流れ25と、本発明による抽出溶媒b)である有機溶媒(例えば、N-メチルピロリドン)を含む第1の溶媒流2とが、第1の抽出カラム4aに供給される。カラム4aでは、流れ25は、第1の溶媒流2(有機溶媒)と接触し、それによって、有機溶媒によるジエン、芳香族炭化水素、及びヘテロ原子含有有機化合物の液-液抽出によって脂肪族炭化水素を回収し、結果として、回収された脂肪族炭化水素及び有機溶媒を含む頂部流5aと、有機溶媒、ジエン、芳香族炭化水素、及びヘテロ原子含有有機化合物を含む底部流6とが生じる。流れ5aと、洗浄溶媒である水を含む第2の溶媒流3とが、第2の抽出カラム4bに供給される。カラム4bでは、流れ5aは、第2の溶媒流3(水)と接触し、それによって、水による有機溶媒の液-液抽出によって有機溶媒を除去する。回収された脂肪族炭化水素を含む流れ5bは、上部のカラム4bを出る。更に、有機溶媒及び水を含む流れ14(この水は、脱混合溶媒である)は、カラム4bの底部から出る。図2に「(X)」で示されるように、流れ5bは、収着剤と接触させられ得、これは、本発明による収着ステップ(iv)を表す。流れ6及び14を合わせ、合わせた流れをデカンタ13に供給する。デカンタ13以降での処理に関して、図2のプロセスにおける下流の処理は、図1のプロセスにおける対応する処理の上記の説明を参照する。
図1
図2
【国際調査報告】