(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】銅代謝関連疾患又は障害を治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/28 20060101AFI20231121BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20231121BHJP
G01N 33/84 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
A61K31/28
A61P3/00
G01N33/84 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528431
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(85)【翻訳文提出日】2023-06-14
(86)【国際出願番号】 US2021059239
(87)【国際公開番号】W WO2022104135
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503102674
【氏名又は名称】アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】パン, ウェイ-ジアン
(72)【発明者】
【氏名】マ, マーク
(72)【発明者】
【氏名】メルツァー, ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】スウェンソン, ユージーン スコット
(72)【発明者】
【氏名】モズリー, スコット エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ペルト, ライアン
(72)【発明者】
【氏名】キックアロ, アダム
(72)【発明者】
【氏名】デル アンゲル, ギレルモ
(72)【発明者】
【氏名】チャマルティ, ハリーシュ
【テーマコード(参考)】
2G045
4C206
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA26
2G045DB13
2G045FA40
4C206AA01
4C206AA02
4C206JB20
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZC21
4C206ZC54
(57)【要約】
本開示は、ウィルソン病(WD)などの銅代謝関連疾患又は障害を診断及び治療する方法に関する。本開示の一態様は、対象における銅代謝関連疾患又は障害(ウィルソン病など)を治療する方法を提供する。このような方法は、対象の生物学的サンプル中の総銅の濃度及び不安定結合銅(LBC)の濃度を判定するステップと、対象の生物学的サンプル中の総銅に対するLBCの比率を判定するステップと、対象の生物学的サンプル中の総銅に対するLBCの比率が0.21~0.27以上である場合、治療有効量のテトラチオモリブデン酸ビスコリン(BC-TTM)を対象に投与するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における銅代謝関連疾患又は障害を治療する方法であって、
前記対象の生物学的サンプル中の総銅の濃度及び不安定結合銅(LBC)の濃度を判定するステップと、
前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するLBCの比率を判定するステップと、
前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するLBCの前記比率が0.21~0.27以上である場合、治療有効量のテトラチオモリブデン酸ビスコリンを前記対象に投与するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記テトラチオモリブデン酸ビスコリンは、前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するLBCの前記比率が0.21以上である場合、前記対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記テトラチオモリブデン酸ビスコリンは、前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するLBCの前記比率が0.24以上である場合、前記対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記テトラチオモリブデン酸ビスコリンは、前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するLBCの前記比率が0.27以上である場合、前記対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記銅代謝関連疾患又は障害は、ウィルソン病である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象の生物学的サンプル中の前記総銅の濃度は、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記対象の生物学的サンプル中の前記LBCの濃度は、LBCアッセイを使用して判定される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記対象は、ウィルソン病などの前記銅代謝関連疾患又は障害の治療を以前に受けていない(すなわち未治療の対象)、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記テトラチオモリブデン酸ビスコリンの治療有効量は、1日当たり約15mg~約60mgの範囲である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記テトラチオモリブデン酸ビスコリンの治療有効量は、1日約15mgである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記テトラチオモリブデン酸ビスコリンの治療有効量は、1日約30mg(例えば、1日2×15mg)である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記テトラチオモリブデン酸ビスコリンの治療有効量は、1日約60mg(例えば、1日4×15mg)である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記対象への前記治療有効量のテトラチオモリブデン酸ビスコリンの前記投与後、前記対象は、能力障害状態、精神症状、臨床症状又は治療満足度の改善を示す、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記生物学的サンプルは、ヒト血漿又はヒト血清を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記生物学的サンプルは、ヒト血漿を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記生物学的サンプルは、ヒト血清を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
対象における銅代謝関連疾患又は障害を診断する方法であって、
前記対象の生物学的サンプル中の総銅の濃度及びLBCの濃度を判定するステップと、
前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するLBCの比率を判定するステップと、
前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するLBCの前記比率が0.21~0.27以上である場合、前記対象を銅代謝関連疾患又は障害と診断するステップと
を含む方法。
【請求項18】
前記対象は、前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するLBCの前記比率が0.21以上である場合、前記銅代謝関連疾患又は障害と診断される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記対象は、前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するLBCの前記比率が0.24以上である場合、前記銅代謝関連疾患又は障害と診断される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記対象は、前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するLBCの前記比率が0.27以上である場合、前記銅代謝関連疾患又は障害と診断される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記銅代謝関連疾患又は障害は、ウィルソン病である、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記対象の生物学的サンプル中の前記総銅の濃度は、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定される、請求項17~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記対象の生物学的サンプル中の前記LBCの濃度は、LBCアッセイを使用して判定される、請求項17~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記生物学的サンプルは、ヒト血漿又はヒト血清を含む、請求項17~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記生物学的サンプルは、ヒト血漿を含む、請求項17~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記生物学的サンプルは、ヒト血清を含む、請求項17~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
対象をテトラチオモリブデン酸ビスコリンによる治療に適すると同定する方法であって、
前記対象の生物学的サンプル中の総銅の濃度及び不安定結合銅(LBC)の濃度を判定するステップと、
前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するLBCの比率を判定するステップと、
前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するLBCの前記比率が0.21~0.27以上である場合、前記対象をテトラチオモリブデン酸ビスコリンによる治療に適すると同定するステップと、
任意選択的に、治療有効量のテトラチオモリブデン酸ビスコリンを、テトラチオモリブデン酸ビスコリンによる治療に適すると同定された前記対象に投与するステップと
を含む方法。
【請求項28】
前記対象は、前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するLBCの前記比率が0.21以上である場合、テトラチオモリブデン酸ビスコリンによる治療に適すると同定される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記対象は、前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するLBCの前記比率が0.24以上である場合、テトラチオモリブデン酸ビスコリンによる治療に適すると同定される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記対象は、前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するLBCの前記比率が0.27以上である場合、テトラチオモリブデン酸ビスコリンによる治療に適すると同定される、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記対象の生物学的サンプル中の前記総銅の濃度は、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定される、請求項27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記対象の生物学的サンプル中の前記LBCの濃度は、LBCアッセイを使用して判定される、請求項27~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記テトラチオモリブデン酸ビスコリンの治療有効量は、1日当たり約15mg~約60mgの範囲である、請求項27~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記テトラチオモリブデン酸ビスコリンの治療有効量は、1日約15mgである、請求項27~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記テトラチオモリブデン酸ビスコリンの治療有効量は、1日約30mg(例えば、1日2×15mg)である、請求項27~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記テトラチオモリブデン酸ビスコリンの治療有効量は、1日約60mg(例えば、1日4×15mg)である、請求項27~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記対象への前記治療有効量のテトラチオモリブデン酸ビスコリンの前記任意選択的な投与後、前記対象は、能力障害状態、精神症状、臨床症状又は治療満足度の改善を示す、請求項27~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記生物学的サンプルは、ヒト血漿又はヒト血清を含む、請求項27~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記生物学的サンプルは、ヒト血漿を含む、請求項27~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記生物学的サンプルは、ヒト血清を含む、請求項27~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
対象における銅代謝関連疾患又は障害を治療する方法であって、
前記対象の生物学的サンプル中の総銅の濃度及び直接測定された非セルロプラスミン結合銅(dNCC)の濃度を判定するステップと、
前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するdNCCの比率を判定するステップと、
前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するdNCCの前記比率が0.245~0.295以上である場合、治療有効量のテトラチオモリブデン酸ビスコリンを前記対象に投与するステップと
を含む方法。
【請求項42】
前記テトラチオモリブデン酸ビスコリンは、前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するdNCCの前記比率が0.2456以上である場合、前記対象に投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記テトラチオモリブデン酸ビスコリンは、前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するdNCCの前記比率が0.276以上である場合、前記対象に投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記テトラチオモリブデン酸ビスコリンは、前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するdNCCの前記比率が0.295以上である場合、前記対象に投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記テトラチオモリブデン酸ビスコリンの治療有効量は、1日当たり約15mg~約60mgの範囲である、請求項41~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記テトラチオモリブデン酸ビスコリンの治療有効量は、1日約15mgである、請求項41~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記テトラチオモリブデン酸ビスコリンの治療有効量は、1日約30mg(例えば、1日2×15mg)である、請求項41~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記テトラチオモリブデン酸ビスコリンの治療有効量は、1日約60mg(例えば、1日4×15mg)である、請求項41~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記対象への前記治療有効量のテトラチオモリブデン酸ビスコリンの前記投与後、前記対象は、能力障害状態、精神症状、臨床症状又は治療満足度の改善を示す、請求項41~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
対象における銅代謝関連疾患又は障害を診断する方法であって、
前記対象の生物学的サンプル中の総銅の濃度及びdNCCの濃度を判定するステップと、
前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するdNCCの比率を判定するステップと、
前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するdNCCの前記比率が0.245~0.295以上である場合、前記対象を銅代謝関連疾患又は障害と診断するステップと
を含む方法。
【請求項51】
前記対象は、前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するdNCCの前記比率が0.2456以上である場合、前記銅代謝関連疾患又は障害と診断される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記対象は、前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するdNCCの前記比率が0.276以上である場合、前記銅代謝関連疾患又は障害と診断される、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記対象は、前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するdNCCの前記比率が0.295以上である場合、前記銅代謝関連疾患又は障害と診断される、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記銅代謝関連疾患又は障害は、ウィルソン病である、請求項41~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記対象の生物学的サンプル中の前記総銅の濃度は、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定される、請求項41~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記対象の生物学的サンプル中の前記dNCCの濃度は、dNCCアッセイを使用して判定される、請求項41~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記対象は、ウィルソン病などの前記銅代謝関連疾患又は障害の治療を以前に受けていない(すなわち未治療の対象)、請求項41~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記生物学的サンプルは、ヒト血漿又はヒト血清を含む、請求項41~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記生物学的サンプルは、ヒト血漿を含む、請求項41~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記生物学的サンプルは、ヒト血清を含む、請求項41~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
対象をテトラチオモリブデン酸ビスコリンによる治療に適すると同定する方法であって、
前記対象の生物学的サンプル中の総銅の濃度及びdNCCの濃度を判定するステップと、
前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するdNCCの比率を判定するステップと、
前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するdNCCの前記比率が0.245~0.295以上である場合、前記対象をテトラチオモリブデン酸ビスコリンによる治療に適すると同定するステップと、
任意選択的に、治療有効量のテトラチオモリブデン酸ビスコリンを、テトラチオモリブデン酸ビスコリンによる治療に適すると同定された前記対象に投与するステップと
を含む方法。
【請求項62】
前記対象は、前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するdNCCの前記比率が0.245以上である場合、テトラチオモリブデン酸ビスコリンによる治療に適すると同定される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記対象は、前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するdNCCの前記比率が0.276以上である場合、テトラチオモリブデン酸ビスコリンによる治療に適すると同定される、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記対象は、前記対象の生物学的サンプル中の総銅に対するdNCCの前記比率が0.295以上である場合、テトラチオモリブデン酸ビスコリンによる治療に適すると同定される、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
前記対象の生物学的サンプル中の前記総銅の濃度は、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定される、請求項61~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記対象の生物学的サンプル中の前記dNCCの濃度は、dNCCアッセイを使用して判定される、請求項61~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記テトラチオモリブデン酸ビスコリンの治療有効量は、1日当たり約15mg~約60mgの範囲である、請求項61~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記テトラチオモリブデン酸ビスコリンの治療有効量は、1日約15mgである、請求項61~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記テトラチオモリブデン酸ビスコリンの治療有効量は、1日約30mg(例えば、1日2×15mg)である、請求項61~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記テトラチオモリブデン酸ビスコリンの治療有効量は、1日約60mg(例えば、1日4×15mg)である、請求項61~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記対象への前記治療有効量のテトラチオモリブデン酸ビスコリンの前記任意選択的な投与後、前記対象は、能力障害状態、精神症状、臨床症状又は治療満足度の改善を示す、請求項61~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記生物学的サンプルは、ヒト血漿又はヒト血清を含む、請求項61~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記生物学的サンプルは、ヒト血漿を含む、請求項61~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記生物学的サンプルは、ヒト血清を含む、請求項61~72のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、それらの全体が参照により本明細書に援用される、2020年11月13日に出願された米国仮特許出願第63/113,516号明細書及び2021年9月10日に出願された米国仮特許出願第63/242,722号明細書の優先権の利益を主張する。
【0002】
本開示は、ウィルソン病(WD)などの銅代謝関連疾患又は障害を診断及び治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ウィルソン病(WD)は、銅(Cu)の輸送障害を引き起こす稀な常染色体劣性遺伝疾患であり、病的なCuの蓄積を引き起こす。WDでは、ATP7B遺伝子の変異がアデノシントリホスファターゼ2(ATPase2)の不十分な産生をもたらし、それは、次に、Cuの胆汁中排泄障害と、健常人において血漿中に見出されるCuの95%超を含有する血清フェロキシダーゼであるセルロプラスミン(Cp)中へのCuの取り込み障害とをもたらす。その結果、肝臓、脳及び他の組織中でCuが増加し、結果として臓器障害及び機能不全が生じる。WDの初期の徴候及び症状は、主に肝臓、神経又は精神疾患であるが、患者は、多くの場合、肝臓疾患と神経精神疾患との複合疾患を発症する。未治療の又は不十分な治療を受けた患者は、罹患率が進行し、通常、肝硬変に続発して死亡する。WDに関連する他の死因としては、肝悪性腫瘍及び重度の飢餓衰弱を伴う神経学的悪化が挙げられる。
【0004】
WDの現在の治療法は、Cuをキレート化して尿中Cu排泄を促進する一般的なキレート剤療法であるD-ペニシラミン及びトリエンチン並びに腸内メタロチオネインの上方制御を通して食餌性Cuの取り込みをブロックする亜鉛(Zn)である。現在利用可能な薬物は、忍容性及び有効性の問題により、高い治療中止率を有する。これらは、頻繁な投薬(1日当たり2~4回)を必要とし、絶食状態で服用しなければならない。その有害事象(AE)プロファイル及び複雑な投薬レジメンは、低い治療コンプライアンス及び高い治療失敗率をもたらし、これは、生涯治療を必要とするWDでは大きい懸案事項である。
【0005】
テトラチオモリブデン酸ビスコリン(「BC-TTM」;BC-TTM;以前にはWTX101として知られていた)は、WDの治療のために開発されている、研究中である経口のファーストインクラスの銅タンパク質結合分子である。BC-TTMは、以下の構造を有する。
【化1】
【0006】
これまでの研究では、BC-TTMは、Cu-テトラチオモリブデン酸-アルブミン三者複合体(TPC)の迅速且つ不可逆的な形成によってCuの制御を改善し、神経学的劣化をはじめとする組織毒性を引き起こし得る遊離Cuの動員なしに迅速な脱銅をもたらすことが示唆された。現在の治療の選択肢と比較した忍容性の向上及び簡略化された1日1回(QD)投薬レジメンの利便性を通して、BC-TTM治療の長期服薬遵守の向上が達成されることが期待されている。
【0007】
WDの効果的な治療は、食餌中の銅の吸収と、糞便及び尿からの銅の排出との間の正味の負のバランスを確立し、維持することを伴う。銅の制御の有効性をモニターすることは、多くの場合、血液及び尿中のバイオマーカーの定期的な測定を伴う。「遊離」銅レベルは、WDにおける疾患負荷の概念的なバイオマーカーであり得る一方、血液及び尿中に存在する銅は、セルロプラスミン、メタロチオネイン、アルブミン、トランスキュプレインなどをはじめとする様々な親和性の担体が付随すると考えられる。銅管理に続いて、肝臓、神経、精神症状発現の安定化又は改善が期待され、これらの要因は、臨床医による治療応答の解釈に寄与する。血清又は血漿中の循環銅は、非セルロプラスミン結合銅(NCC)の推定を通して評価され得るが、NCCの推定値は、間接的な推定であり、生理学的及び数値的に不可能な負のNCC結果を生成することもあるため、価値が限られている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、概して、対象における例えばウィルソン病などの銅代謝関連疾患又は障害を治療するのに有用な方法を提供する。
【0009】
本開示の一態様は、対象における銅代謝関連疾患又は障害(ウィルソン病など)を治療する方法を提供する。このような方法は、対象の生物学的サンプル中の総銅の濃度及び不安定結合銅(LBC)の濃度を判定するステップと、対象の生物学的サンプル中の総銅に対するLBCの比率を判定するステップと、対象の生物学的サンプル中の総銅に対するLBCの比率が0.21~0.27以上である場合、治療有効量のテトラチオモリブデン酸ビスコリン(BC-TTM)を対象に投与するステップとを含む。
【0010】
本開示の別の態様は、対象における銅代謝関連疾患又は障害を診断する方法であって、対象の生物学的サンプル中の総銅の濃度及びLBCの濃度を判定するステップと、対象の生物学的サンプル中の総銅に対するLBCの比率を判定するステップと、対象の生物学的サンプル中の総銅に対するLBCの比率が0.21~0.27以上である場合、対象を銅代謝関連疾患又は障害と診断するステップとを含む方法を提供する。
【0011】
本開示の別の態様は、対象をテトラチオモリブデン酸ビスコリンによる治療に適すると同定する方法であって、対象の生物学的サンプル中の総銅の濃度及び不安定結合銅(LBC)の濃度を判定するステップと、対照の生物学的サンプル中の総銅に対するLBCの比率を判定するステップと、対象の生物学的サンプル中の総銅に対するLBCの比率が0.21~0.27以上である場合、対象をテトラチオモリブデン酸ビスコリンによる治療に適すると同定するステップと、任意選択的に、治療有効量のテトラチオモリブデン酸ビスコリンを、テトラチオモリブデン酸ビスコリンによる治療に適すると同定された対象に投与するステップとを含む方法を提供する。
【0012】
本開示の別の態様は、対象における銅代謝関連疾患又は障害を治療する方法であって、対象の生物学的サンプル中の総銅の濃度及び直接測定された非セルロプラスミン結合銅(dNCC)の濃度を判定するステップと、対象の生物学的サンプル中の総銅に対するdNCCの比率を判定するステップと、対象の生物学的サンプル中の総銅に対するdNCCの比率が0.245~0.295以上である場合、治療有効量のテトラチオモリブデン酸ビスコリンを対象に投与するステップとを含む方法を提供する。
【0013】
本開示の別の態様は、対象における銅代謝関連疾患又は障害を診断する方法であって、対象の生物学的サンプル中の総銅の濃度及びdNCCの濃度を判定するステップと、対象の生物学的サンプル中の総銅に対するdNCCの比率を判定するステップと、対象の生物学的サンプル中の総銅に対するdNCCの比率が0.245~0.295以上である場合、対象を銅代謝関連疾患又は障害と診断するステップとを含む方法を提供する。
【0014】
本開示の別の態様は、対象をテトラチオモリブデン酸ビスコリンによる治療に適すると同定する方法であって、対象の生物学的サンプル中の総銅の濃度及びdNCCの濃度を判定するステップと、対象の生物学的サンプル中の総銅に対するdNCCの比率を判定するステップと、対象の生物学的サンプル中の総銅に対するdNCCの比率が0.245~0.295以上である場合、対象をテトラチオモリブデン酸ビスコリンによる治療に適すると同定するステップと、任意選択的に、治療有効量のテトラチオモリブデン酸ビスコリンを、テトラチオモリブデン酸ビスコリンによる治療に適すると同定された対象に投与するステップとを含む方法を提供する。
【0015】
本明細書に記載される本開示の方法の特定の実施形態では、対象は、ウィルソン病に罹患している。特定の実施形態では、対象は、以前にウィルソン病の治療を受けていない(すなわち未治療の対象)。特定の実施形態では、対象は、以前にウィルソン病の標準治療(SoC)治療を受けている。本開示の方法の特定の実施形態では、対象は、以前にウィルソン病の治療を受けていないか、又は対象は、以前に4週間以下のウィルソン病の標準治療を受けている。
【0016】
特許請求される本発明のこれら及び他の特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲と合わせて以下の詳細な説明からより詳細に理解されるであろう。特許請求の範囲は、その中の詳述によって定義され、本明細書に記載される特徴及び利点の具体的な考察によって定義されないことに留意されたい。
【0017】
添付図面は、本開示の組成物及び方法のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれてその一部を構成する。図面は、本開示の1つ又は複数の実施形態を示し、説明と共に本開示の原理及び動作を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】研究201(完全解析セット)で経時的に測定された総血漿銅、不安定結合銅及び24時間尿銅の平均値(95%信頼区間)を示す。
【
図1B】研究203(完全解析セット)で経時的に測定された総血漿銅、不安定結合銅及び24時間尿銅の平均値(95%信頼区間)を示す。
【
図2】健常参加者における平均(SD)血漿総モリブデン、総銅、不安定結合銅及びセルロプラスミン結合銅濃度の時間プロファイルを示す。
【
図3】健常参加者対ウィルソン病参加者における平均(SD)血漿不安定結合銅/総銅比-時間プロファイルを示す。
【
図4】健常患者とウィルソン病患者とを分類するためのLBC/総銅比(LTC比)の最適な閾値を判定するための解析に用いた患者集団を示す。
【
図5】健常患者対ウィルソン病患者のLTC比の分布を示す箱ひげ図を示す。
【
図6】健常患者対ウィルソン病患者を分類するためのLTC比の性能を示す受信動作特性(ROC)曲線を示す。
【
図7】fスコア収量に基づく0.24又は24%のLTC比の最適閾値を示す。
【
図9】健常患者とウィルソン病患者とのdNCC/総銅比(dNCC比)の分布を示す箱ひげ図である。
【
図10】健常患者とウィルソン病患者との分類にdNCC比を使用することの性能を示す受信動作特性(ROC)曲線である。
【
図11】fスコア収量に基づく0.276又は27.6%のdNCC比の最適閾値を示す。
【
図13】対象の血清LBCレベルと血漿LBCレベルとの差をY軸とし、2つのレベルの平均値をX軸とするブランド・アルトマン散布図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
開示されるプロセス及び材料を説明する前に、本明細書に記載される態様は、特定の実施形態に限定されず、当然のことながら、変化し得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明することのみを目的とし、本明細書で特に定義されない限り、限定を意図されないことも理解されるべきである。
【0020】
本開示に鑑みて、本明細書に記載される方法及び組成物は、所望の必要性を満たすように当業者によって構成され得る。本開示は、銅代謝関連疾患又は障害の治療における改善を提供する。
【0021】
本明細書に記載される本開示の方法の特定の実施形態では、銅代謝関連疾患又は障害は、ウィルソン病である。
【0022】
特定の実施形態では、銅代謝関連疾患又は障害は、銅毒性である(例えば、硫酸銅殺真菌剤への大量曝露、銅を多く含む飲料水の摂取、銅補給剤の過使用などによる)。特定の実施形態では、銅代謝関連する疾患又は障害は、銅欠乏症、メンケス病又は無セルロプラスミン血症である。特定の実施形態では、銅代謝関連疾患又は障害は、学業不振、座瘡、注意力欠陥/多動性障害、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アテローム性動脈硬化症、自閉症、アルツハイマー病、カンジダ菌の過剰繁殖、慢性疲労、肝硬変、鬱病、アドレナリン活性上昇、銅タンパク質上昇、ノルエピネフリン活性上昇、感情的メルトダウン線維筋痛症、頻繁な怒り、老人性の銅排泄障害、強い不安、脱毛、肝疾患、活動亢進、甲状腺機能低下症、エストロゲンに対する不耐性、避妊薬に対する不耐性、カイザー・フライシャー環、学習障害、ドーパミン活性低下、多発性硬化症、神経学的問題、酸化ストレス、パーキンソン病、集中力低下(poor concentration)、集中力低下(poor focus)、免疫機能低下耳鳴り、アレルギー、食用色素に対する過敏症、甲殻類に対する過敏症、皮膚金属不耐症、皮膚過敏症、睡眠障害、爪の白斑から選択される少なくとも1つである。
【0023】
本明細書の用法では、「治療」及び「治療する」という用語は、(i)言及された疾病状態、病状又は障害(又はその症状)を改善し、例えば疾患、病状又は障害の病態又は総体症状を経験しているか又は示している個人における疾患、病状又は障害を改善し(すなわち病態及び/又は総体症状を逆転させるか又は改善し)、例えば疾患又はその症状の重症度を軽減するか、又は疾患の進行を抑制するなど、又は(ii)言及された生物学的効果を引き出すことを意味する。
【0024】
上記のように、テトラチオモリブデン酸ビスコリン(BC-TTM、ALXN1840、コリンチオモリブデン酸、チオモリブデン酸及びWTX101としても知られている)が本開示の方法において投与される。
【0025】
BC-TTMは、WDの治療のために開発中のファーストインクラスのCuタンパク質結合剤であり、国際公開第2019/110619号パンフレット(その全体が参照により本明細書に援用される)に詳細に記載されている。BC-TTM単剤療法は、28人のWD患者で評価されており、BC-TTMは、ベースラインと比較して、24週目の平均血清非セルロプラスミン結合Cu(NCC)を72%減少させることが示された。BC-TTMによる治療は、一般に、忍容性が良好であり、報告された有害事象(AE)のほとんどは、軽度(グレード1)~中等度(グレード2)であった。最も頻繁に報告された薬物関連AEは、血液学的パラメータの変化、疲労、硫黄性おくび及び他の胃腸症状であった。可逆的な肝機能検査値の上昇が患者の39%で観察され;これらの上昇は、軽度~中等度で無症候性であり、ビリルビンの顕著な増加を伴わず、用量の低減又は治療の中断により正常化された。BC-TTMによる治療開始時、逆説的な神経学的悪化は、観察されなかった。
【0026】
BC-TTMの治療有効量は、以前に確立されている。例えば、特定の実施形態では、BC-TTMは、1日当たり約15~60mgの範囲で投与され得る。特定の実施形態では、BC-TTMは、1日約15mgの量で投与される。特定の実施形態では、BC-TTMは、1日約30mgの量で投与される(例えば、1日2回服用される約15mg又は1日1回服用される2錠の15mg錠剤)。特定の実施形態では、BC-TTMは、1日約45mgの量で投与される(例えば、1日3回服用される約15mg又は1日1回服用される3錠の15mg錠剤)。特定の実施形態では、BC-TTMは、1日約60mgの量で投与される(例えば、1日4回服用される約15mg又は1日1回服用される4錠の15mg錠剤)。
【0027】
特定の他の実施形態では、BC-TTMは、約15~60mgの範囲で1日おきに投与され得る。特定の実施形態では、BC-TTMは、約60mgの量で1日おきに投与される。特定の実施形態では、BC-TTMは、約15mgの量で1日おきに投与される。特定の実施形態では、BC-TTMは、約30mgの量で1日おきに投与される。特定の実施形態では、BC-TTMは、約45mgの量で1日おきに投与される。特定の実施形態では、BC-TTMは、約60mgの量で1日おきに投与される。
【0028】
本開示の特定の実施形態では、治療中にBC-TTMの治療有効量を増加させることでさらなる利益が提供され得る。したがって、特定の実施形態では、BC-TTMの治療有効量は、治療の6週間後(すなわち42日後)に増加される。例えば、特定の実施形態では、BC-TTMの初期治療有効量(すなわち1日目~42日目)は、1日約15mgである。BC-TTMの引き続く治療有効量の増加(すなわち例えば43日目など、42日目後)は、特定の実施形態では、1日約30mgである。特定の実施形態では、BC-TTMの引き続く治療有効量の増加は、1日約45mgである。特定の実施形態では、BC-TTMの引き続く治療有効量の増加は、1日約60mgである。例えば、特定の他の実施形態では、BC-TTMの初期治療有効量は、1日約30mgである。特定の実施形態では、BC-TTMの引き続く治療有効量の増加は、1日約45mgである。特定の実施形態では、BC-TTMの引き続く治療有効量の増加は、1日約60mgである。
【0029】
本開示の特定の実施形態では、治療中にBC-TTMの治療有効量を低減することでさらなる利益が提供され得る。したがって、特定の実施形態では、BC-TTMの治療有効量は、治療の6週間後(すなわち42日後)に低減される。例えば、特定の実施形態では、BC-TTMの初期治療有効量(すなわち1日目~42日目)は、1日約60mgである。BC-TTMの引き続く治療有効量の低減(すなわち例えば43日目など、42日目以降)は、特定の実施形態では、1日約45mgである。特定の実施形態では、BC-TTMの引き続く治療有効量の低減は、1日約30mgである。特定の実施形態では、BC-TTMの引き続く治療有効量の低減は、1日約15mgである。例えば、特定の他の実施形態では、BC-TTMの初期治療有効量は、1日約30mgである。特定の実施形態では、BC-TTMの引き続く治療有効量の低減は、1日約15mgである。
【0030】
本明細書の用法では、「個人」、「患者」又は「対象」という用語は、同義的に使用され、哺乳類をはじめとする任意の動物を指し、少なくとも1つの実施形態ではヒトを指す。特定の実施形態では、対象は、健常対象である。特定の実施形態では、対象は、WDに罹患している。本明細書に記載される本開示の方法の特定の実施形態では、対象は、肝硬変を有する。特定の他の実施形態では、対象は、肝硬変を有しない。
【0031】
本開示の方法は、第一選択治療として有用である。したがって、本開示の方法の特定の実施形態では、対象は、以前にウィルソン病の治療を受けていない(すなわち未治療の対象)。
【0032】
本開示の方法の特定の実施形態では、対象は、以前にWDの標準治療(SoC)治療を受けている。例えば、特定の実施形態では、対象は、以前にトリエンチン(トリエチレンタトラミンとしても知られている;N’-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチル]エタン-1,2-ジアミン)を投与されたことがある。トリエンチンは、CUPRIOR(登録商標)(GMP-Orphan United Kingdom Ltd)、SYPRINE(登録商標)(Aton Pharma,Inc.)又はCufence(Univar,Inc.)という名称の下で販売されることもある。特定の実施形態では、対象は、D-ペニシラミン(ペニシラミン酸としても知られている;(2S)-2-アミノ-3-メチル-3-スルファニルブタン)を以前に投与されたことがある。D-ペニシラミンは、CUPRIMINE(登録商標)(Valeant Pharmaceuticals)又はDEPEN(登録商標)(Meda Pharmaceuticals)という名称の下で販売されることもある。特定の実施形態では、対象は、以前に亜鉛を投与されている。特定の実施形態では、対象は、以前にトリエンチン、D-ペニシラミン及び/又は亜鉛を投与されている。特定の他の実施形態では、対象は、以前にトリエンチン及び/又はD-ペニシラミンを投与されている。
【0033】
本開示の方法の特定の実施形態では、対象は、24週間以下のWDの標準治療を受けている。特定の実施形態では、標準治療は、12週間以下、又は6週間以下、又は4週間以下であった。標準治療は、継続的である必要はない。例えば、対象は、合計24週間以下(例えば、12週間以下、又は6週間以下、又は4週間以下)の治療を断続的に受け得る。しかしながら、特定の実施形態では、標準治療は、継続的である。
【0034】
本開示の方法の特定の実施形態では、対象は、4週間以下のWDの標準治療を受けている。
【0035】
本開示の方法の特定の実施形態では、対象は、少なくとも4週間のWDの標準治療を受けている。特定の実施形態では、標準治療は、少なくとも6週間、又は少なくとも12週間、又は少なくとも24週間、又は少なくとも36週間、又は少なくとも48週間、又は少なくとも52週間の長さであった。標準治療は、継続的である必要はない。例えば、対象は、合計少なくとも4週間(例えば、少なくとも6週間、又は少なくとも12週間、又は少なくとも24週間、又は少なくとも36週間、又は少なくとも48週間、又は少なくとも50週間、又は少なくとも52週間、又は少なくとも103週間)の治療を断続的に受け得る。しかしながら、特定の実施形態では、標準治療は、継続的である。
【0036】
本開示の方法の特定の実施形態では、対象は、ウィルソン病などの銅代謝関連疾患又は障害に関して以前に治療を受けていないか、又は4週間以下の標準治療受けている。
【0037】
本明細書に記載される本開示の方法において、対象は、テトラチオモリブデン酸ビスコリンを投与する少なくとも2週間前に標準治療を完了していた。特定の実施形態では、対象は、テトラチオモリブデン酸ビスコリンを投与する少なくとも3週間前、少なくとも4週間又は少なくとも6週間前に標準治療を完了していた。
【0038】
特定の実施形態では、先行詞「約」を使用して値が近似値として表現される場合、特定の値が1つの可能な実施形態を形成し、所与の値の変動が可能であることが理解されるであろう(例えば、約80は、80±10%を含み得る)。さらに、各範囲の端点は、他の端点との関係においても、他の端点から独立しても重要であることが理解されるであろう。
【0039】
本明細書の用法では、「総銅」とは、生物学的サンプル(例えば、全血、血清又は血漿)中の全ての銅種の合計を指す。総銅には、セルロプラスミン(Cp)結合銅及び全種の非セルロプラスミン結合銅の両方が含まれる。一般に、総銅は、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)などの質量分析法により、高い感度及び特異性で直接測定され得る。
【0040】
「NCC」という用語は、セルロプラスミンに結合していない総銅の割合(すなわち「非セルロプラスミン結合銅」)を指す。現在利用可能な推定方法の下では、NCCは、血液(例えば、血清又は血漿など)中の総銅及びCpの直接測定並びに以下の式を使用して推定される。
【数1】
【0041】
この計算は、6つの銅原子が常に1つのCp分子に結合しており、NCC及びセルロプラスミンの濃度が直接相関しているという仮定を前提とする。実際には、Cpは、1つのCp1分子当たりの銅原子の数にかなりの不均一性を示し得る。実際には、6~8個の銅原子がCpに結合し得、WDでは、通常、1つのCp1分子当たり6個未満の銅原子が結合する。さらに、研究108における健常対象からの臨床データは、1つのCp1分子当たり平均しておよそ4.6個のCu原子が結合していることを示した。
【0042】
新たに利用可能な直接測定法の下では、NCCは、NCCアッセイを使用して直接測定される(このような直接測定されたNCCは、本明細書では「dNCC」と称され、NCCの直接測定を伴うこのようなNCCアッセイは、本明細書では「dNCCアッセイ」と称される)。したがって、本明細書で開示される特定の実施形態では、NCCは、dNCCアッセイを使用して直接測定される。例えば、特定の実施形態では、NCCは、その全体が参照により本明細書に援用される、2021年3月18日に公開されたPCT特許出願公開国際公開第2021/050850号パンフレットにおいて「NCCアッセイ」として記載されているdNCCアッセイを使用して直接測定される。さらなる特定の実施形態では、NCCを直接測定するために使用されるdNCCアッセイは、これもその全体が参照により援用される、2020年9月11日に出願された米国仮特許出願第63/077,155号明細書で開示されている抗体又は抗体混合物を使用する。
【0043】
BC-TTMで治療された対象では、非セルロプラスミン結合銅としては、アルブミン、トランスキュプレイン及び他の量が少ない血漿タンパク質に結合している(集合的にLBCと称される)か、又はテトラチオモリブデン酸-Cu-アルブミン三者複合体(TPC)中にある総銅の画分が挙げられる。TPCの濃度は、直接測定され得ないが、特定の実施形態ではモリブデン濃度をサロゲートとして使用し、TPCの濃度を推定し得る。
【0044】
「NCCcorrected」という用語は、セルロプラスミンと結合していないか又はTPC中にない総銅(すなわちLBC)の画分を指し、血液(例えば、血清又は血漿など)中のモリブデンの直接測定値をNCC値から差し引くことによって計算される。したがって、「NCCcorrected」は、BC-TTMで治療された対象の血液中のモリブデン-銅-アルブミン三者複合体の存在を考慮したNCC値の補正である。
【0045】
「LBC」又は「不安定結合銅」という用語は、アルブミン、トランスキュプレイン及び他の量が少ない血漿タンパク質に結合する総銅の画分を指す。したがって、LBCは、セルロプラスミンにもTPCにも結合していない総銅の画分を含む。特定の実施形態では、LBC画分は、LBCアッセイを使用して直接測定される。例えば、特定の実施形態では、LBCは、その全体が参照により本明細書に援用される、2021年3月18日に公開されたPCT特許出願公開国際公開第2021/050850号パンフレットにおいて「LBCアッセイ」として記載されているLBCアッセイを使用して直接測定される。さらなる特定の実施形態では、LBCを直接測定するために使用されるLBCアッセイは、これもその全体が参照により援用される、2020年9月11日に出願された米国仮特許出願第63/077,155号明細書で開示されている抗体又は抗体混合物を使用する。その中にTPCが存在しない生物学的サンプル(血液、血清又は血漿など)では、NCC及びLBCの画分は、同じである。
【0046】
特定の実施形態では、LTC比は、健常対象と銅代謝関連疾患又は障害の対象とを分類するための最適な閾値を特定するために使用される。特定の実施形態では、LTC比の最適閾値は、0.21~0.27である。特定の実施形態では、LTC比の最適閾値は、0.24である。例えば、LTC比は、銅代謝関連疾患又は障害の診断法に使用され得る。特定の実施形態では、対象の生物学的サンプル(例えば、血液、血清、血漿など)のLTC比が0.21~0.27以上であることは、対象が銅代謝関連疾患又は障害を有することを示す。特定の実施形態では、対象の生物学的サンプルのLTC比が0.24以上であることは、対象が銅代謝関連疾患又は障害を有することを示す。
【0047】
特定の実施形態では、dNCC比は、健常対象と銅代謝関連疾患又は障害の対象とを分類するための最適な閾値を特定するために使用される。特定の実施形態では、dNCC比の最適閾値は、0.245~0.295である。特定の実施形態では、dNCC比の最適閾値は、0.276である。例えば、dNCC比は、銅代謝関連疾患又は障害の診断法に使用され得る。特定の実施形態では、対象の生物学的サンプル(例えば、血液、血清、血漿など)のdNCC比が0.245~0.295以上であることは、対象が銅代謝関連疾患又は障害を有することを示す。特定の実施形態では、対象の生物学的サンプルのdNCC比が0.276以上であることは、対象が銅代謝関連疾患又は障害を有することを示す。
【0048】
特定の実施形態では、有効量は、以下に適した量であり得る:
(i)疾患の進行を抑制すること;
(ii)予防的使用、例えば疾患、病状又は障害の素因があるか又はそのリスクがあるが、依然としてその疾患の病態又は総体症状を経験又は示していない個人における疾患、病状又は障害の発症を予防又は抑制すること;
(iii)疾患を抑制すること;例えば、疾患、病状又は障害の病態又は総体症状を経験しているか又は示している個人における疾患、病状又は障害を抑制すること;
(iv)言及された疾病状態を改善すること、例えば疾患、病状又は障害の病態又は総体症状を経験しているか又は示している個人における疾患、状態又は障害を改善する(すなわち病態及び/又は総体症状を逆転させるか又は改善する)こと、例えば疾患の重症度を軽減すること;又は
(v)言及された生物学的効果を引き出すこと。
【実施例】
【0049】
本開示の方法は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これは、本開示の範囲又は趣旨を、そこに記載された特定の手順及び化合物に限定するものとして解釈されるものではない。
【0050】
背景
血液中の総銅の濃度は、一般に、WDにおける治療応答のモニタリングに有益でないと考えられてきた。血清又は血漿中の総銅濃度は、セルロプラスミンの濃度に大きく依存するが、ATP7Bの遺伝的機能欠損により、ほとんどのWD患者ではセルロプラスミンの濃度が異常に低いことが知られている。したがって、WD患者の血清又は血漿中の総銅レベルは、逆説的に低いことになる。成功した治療は、総銅濃度をさらに低下させることが予想されるが、これを解釈するのは困難である。治療を受けたWD患者の血液中の総銅の最適な目標濃度は、不明であるが、セルロプラスミンが正常な健常人の間で確立された検査基準範囲を大幅に下回る可能性が高い。
【0051】
研究203(SoCで治療されたWDを有する参加者)及び研究201(BC-TTMで治療されたWDを有する参加者)が開始された時点で、それぞれNCCとNCCcorrectedが主要な有効性結果の尺度のサロゲートとして選択された。その理論的根拠は、NCCが、緩く結合しているか又は「交換可能な」銅の画分を表し、これがWDにおける臓器障害を説明するということであった。尿中銅排泄量は、BC-TTM治療によって変化すると予想されなかったため、24時間の尿中銅排泄量の変化を測定しても情報価値があるとは期待されなかった。
【0052】
新たに開発され、技術的に検証されたLBCアッセイを使用して、以下の研究から第2相臨床サンプルを再分析し、BC-TTM投与時の血漿「遊離」NCC又はNCCcorrectedを直接定量した:
・研究201、WDを有する患者におけるBC-TTMの有効性及び安全性の非盲検試験、及び
・研究203、WDを有する患者の自然経過/標準治療研究。
【0053】
BC-TTM又は標準治療で治療された参加者の血漿中の総モリブデン、総銅、NCC及びLBC(LBCは、最終的にNCCcorrectedを置き換える)の統合解析から、BC-TTM治療中の総銅及びLBCの両方におけるこれまで認識されていなかった動的変化が明らかになった。総銅及びLBCのこれらの動的変化は、SoC治療で観察されなかった。各SoC治療並びにBC-TTMの主要特性を表1に示す。
【0054】
【0055】
研究201
研究201は、18歳以上の新たにWDと診断された参加者においてBC-TTMを24週間投与し、36か月の延長期間でBC-TTMの有効性及び安全性を評価する第2相多施設共同非盲検試験であった。この研究は、米国及び欧州の施設で実施された。参加者は、15~120mg/日の個別化された用量でBC-TTMの投与を受けた。合計28人の参加者が登録され、治療を受けた(コホート1の10人[治療経験がある]、コホート2の18人[未治療であるか又は最小限の治療のみ受けている])。参加者1名は、コホート2に登録されたが、治療を受けなかった。
【0056】
この研究の主要目的は、18歳以上のWDの参加者におけるモリブデン血漿濃度について調整されたNCCレベルに対する24週間のBC-TTMの有効性を評価することであった。登録時における正常な基準範囲内又はそれを超えるNCCレベルが必要であった。副次的な目的としては、安全性及び忍容性、肝測定値、能力障害、神経学的状態に対するBC-TTMの効果並びにPKデータの収集が挙げられる。36か月の延長段階では、BC-TTMの忍容性並びに長期安全性及び有効性を評価した。投薬は、NCCレベル(モリブデン血漿濃度に合わせて調整)及び安全性データに基づいて個別化した。有効性の主要評価項目は、成功した参加者の割合、すなわち血漿「遊離」銅の制御又はベースラインからの改善を達成した参加者の割合に関連していた。事後解析では、セルロプラスミンにもTPCにも結合していない血漿中の「遊離」銅を定量化するためのLBCアッセイの結果を使用して、血漿銅の制御も評価した。
【0057】
研究201の過程で、最初に観察された薬物関連肝酵素の上昇に対処するため、BC-TTMの最大許容量を減量した。参加者は、最初の4~8週間、ベースラインNCC濃度に基づいて15~120mg/日のBC-TTMの開始用量を投与され、続いて残りの研究期間にわたって応答に応じて個別化投薬を受けた。BC-TTMの投薬は、当初1日2回(BID)与えられたが、大多数の登録が行われる前の2016年3月のプロトコル改正により、(治験責任医師が適切と判断した場合)1日1回の投薬が実施された。120mg/日の投与を受けた参加者において、治療中にアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)が顕著に上昇した後、用量レジメンが最大用量の300mg/日から60mg/日に修正された。サンプルサイズが小さく、データにばらつきがあるため、全体を通して用量の加重平均の中央値を引用する。
【0058】
研究201の主要評価項目は、ベースラインから24週目までのNCC/NCCcorrectedの変化であった。BC-TTMでの治療により、4週目からNCCcorrectedで測定/計算される「遊離」銅濃度が急速に減少した(p=0.0199)。NCC濃度の平均減少もベースラインと対比して24週目に統計的に有意であった(p<0.0001)。24週目までに、前回の治療時間に関係なく、ほぼ全ての参加者が成功裏にBC-TTMによる治療を受けたと見なされた(参加者の90.0%がコホート1に含まれ、参加者の83.3%がコホート2に含まれていた)。これらの結果は、長期の延長期間を通して維持され;最終評価時点では、24人(85.7%[コホート1の9人(90.0%)、コホート2の15人(83.3%)])が、前向きに定義された研究主要評価項目に従い、BC-TTMによる治療に関して成功したと見なされた。
【0059】
研究203
研究203は、SoC薬剤(キレート化剤であるペニシラミン及びトリエンチン並びに亜鉛)で治療されたWDを有する参加者の銅パラメータを評価するための24ヶ月の多施設共同観察研究であった。以前のWD治療の期間に応じて、参加者を2つのコホートに割り当てた(コホート1:28日を超える以前のWD治療;コホート2:未治療であるか又は28日以下の以前のWD治療)。本研究の参加者は、既存の薬物療法を継続し、BC-TTM又は他の治験薬の投与を受けなかった。
【0060】
本研究の主要目的は、SoCで治療を受けたWDの参加者の血漿及び尿中の銅パラメータを評価することであった。本研究の副次目的は、銅パラメータを、病歴及び投薬歴、臨床検査結果、WD薬物療法及び臨床の全体的印象(CGI)をはじめとする対応する臨床データと比較することであった。有効性の主要評価項目は、NCCの正規化濃度(0.8μM~2.3μM)を達成若しくは維持したか、又は登録時に基準範囲を超えていた場合、6ヶ月の治療中にNCCの少なくとも25%の減少に達した参加者の割合であった。事後解析では、セルロプラスミンに結合していない血漿中の銅を定量化するためのLBCアッセイの結果を使用して、血漿銅の制御も評価した。
【0061】
合計64人の参加者が登録され、そのうちの57人が研究を完了し、7人が研究を中止した。合計33人(51.6%)の参加者が6ヶ月目までNCCの正常な基準範囲を達成及び/又は維持することに成功した。
【0062】
主要有効性解析は、LBCデータを使用して反復した。全体として、62人(96.9%)の参加者が6ヶ月目までLBCを基準範囲内(男性:0.9~4.4μmol/L、女性:0.7~5.9μmol/L)に達成及び/又は維持することに成功した。研究203の血漿サンプルの分析では、研究201の分析(
図1A)と比較して、組織からの銅の動員が最小限であることが明らかになった(
図1B)。
【0063】
研究203では、採血の頻度が減少したが、研究201と比較した傾向の違いは、非常に明確である。コホート2(未治療)参加者では、ベースラインから4週目までに総銅及びLBCが非常にわずかに減少したが、これは、組織からの測定可能な動員なしの血漿中の控えめな脱銅効果と一致する。その後、総銅量又はLBCのいずれにも変化がなかった。治療経験のある参加者の間では、総銅及びLBCの両方がベースラインで低く、48週間を通して実質的に変化がなかった。ベースラインの24時間尿中の銅排泄量は、コホート2の方が数値的に大きかった(左パネル)が、24時間尿中の銅排泄量は、時間の経過と共にほとんど変化せず、コホート2の未治療参加者では48週目にわずかな減少が認められた。
【0064】
48週目までに、総銅濃度は、およそ4μMの最下点に達した。これは、正常な基準範囲を下回る一方、セルロプラスミンが相対的に欠乏しているため、WDを有する参加者は、ほぼ常に総銅の基準範囲を大幅に下回ることが予想される。上記のように、総銅の正常な基準範囲は、WDでは当てはまらない。
【0065】
ペニシラミン、トリエンチン及び/又は亜鉛で治療を受けた参加者では、51.6%の参加者が、6ヶ月の終わりまでに基準範囲内の目標NCC濃度を達成することによって定義される「成功」を達成した。事後解析では、参加者の96.9%が、6ヶ月の終わりまでに基準範囲内の目標LBC濃度を達成することによって定義される成功としての成功を達成した。いずれの測定値も、銅の制御又はWDの臨床症状に関して情報価値があるかどうかは明らかでない。血漿中のNCC、総銅又はLBC濃度のベースラインから48週目までの変化(又は変化率)を測定しても、銅のコントロールに関する知見は、ほとんど得られなかった。対照的に、研究201における最初の24週間の治療中のBC-TTMの顕著な銅動員効果は、この違いを非常に明確にする。
【0066】
研究106
研究106は、単回投与BC-TTM PKと安全性が、健康な日本人参加者と外国人参加者との間で同等であるかどうかを評価するための非盲検、2期間、並行群間、第1相試験であった。この研究は、現在進行中の第3相の研究301への日本人患者の登録及び日本でのBC-TTMの新薬申請を支援するために、英国の単一センターで実施された。
【0067】
参加者は、24人(日本人12人、外国人12人)であった。投薬期間1では、参加者は、一晩の絶食に続いて、1日目の0時間目に1錠の15mgのBC-TTM EC錠剤を単回投与された。投薬期間2では、参加者は、一晩の絶食に続いて、1日目の0時間目に4錠の15mgのBC-TTM EC錠剤(合計60mg)を単回投与された。参加者は、各投薬期間中に投薬後10日間追跡され、投薬期間の間隔は、最低14日間(+2日間)空けられた。PK及びPD濃度を初日には数時間にわたって測定し、次の9日間では1日1回測定した。したがって、研究106では、薬物投与後数時間以内のPK及びPDプロファイルの変化を調べることができる。これらのPK/PDプロファイルは、研究201の1日目、12週目及び24週目の受診時に得られた12時間の高密度PK/PDプロファイルと比較され得る。
【0068】
考察
BC-TTMのPKパラメータ及びPDプロファイルを日本人及び外国人の参加者間で比較したところ、絶食条件下でBC-TTM15mg又は60mgを単回経口投与した後に有意差はなかった。したがって、本明細書では解析の目的で民族コホートを統合した。
図2は、研究106の健常参加者の平均(SD)PK/PDプロファイルを示す。これらのデータ提示及び他の情報の詳細は、研究106のCSRに見出され得る。
【0069】
WDを有する参加者をBC-TTMで治療するための治療モニタリングツールの選択を促進するために、研究106について評価を実施し、研究201と比較した。これは、脱銅期から維持期への用量漸増時、WDを有する参加者が治療不足又は治療過多にならないように、研究201の血漿中の総モリブデン、総銅、LBC及びLBC/総銅比、セルロプラスミン結合銅(CpC)及びTPCなどのPK/PDデータで達成され、確認され得る。BC-TTM臨床開発プログラムでは、疾患並びに参加者の不均一性及び対応する個別化された投薬の実施により、各参加者は、治療に対する応答が時間的及び規模的に異なり得る。したがって、上記のPK/PDパラメータの包括的及び/又は組み合わせについて提案された調査は、WDを有する参加者において最適な有効性及び安全性の治療結果を達成するための時間枠及びパラメータ範囲を定義するうえで重要である。
【0070】
総モリブデン:BC-TTMの単回15mg又は単回60mgのいずれかの投与後、総モリブデンの血漿濃度-時間プロファイルは、同様であり、PKパラメータについても同様であった。血漿モリブデンが最大になるまでの時間(T
max)は、5時間であり、推定t
1/2は、64~84時間又は2.7~3.5日であった。血漿総モリブデンC
maxとAUCは、15mgから60mgまでの用量比例未満の増加であり、より高い用量のBC-TTMに対応する用量比例(線形)増加は、観察されなかった(
図2)。平均用量で正規化された血漿総モリブデンAUC及び限外濾過モリブデンAUCに基づいて、血漿モリブデンのおよそ96%は、TPCの形態であることが予想された。
【0071】
総銅:総合された民族データは、投与前のベースラインで13.1μM(範囲:6.2~19.2μM)の血漿総銅の平均値を有した。BC-TTMの15mg及び60mgの単回投与後、それぞれ23.0及び21.7μMの最大個別血漿総銅濃度が観察された。これらの値は、正常な健常対象の血清又は血漿総銅の基準範囲内にあり、ICP-MSアッセイ(LabCorp.銅、血清又は血漿[インターネット].2020a.[2020年7月16日引用].https://www.labcorp.com/tests/001586/copper-serum-or-plasmaから入手可能)を使用することで11.3~26.1μMであると報告されている。
【0072】
血漿総銅濃度は、投与後8~12時間で最大値に達し、ベースラインからの最大中央値増加は、およそ26~34%であった(
図2)。投与後8~12時間の時点後、銅濃度は、徐々に減少し、ベースラインからの変化率の中央値は、投与前のベースラインのおよそ10%未満内に達した。投与後240時間目に、総銅濃度は、投与前のベースラインに戻った。
【0073】
血漿中の総銅の早期増加は、総モリブデンの出現と密接に並行しており、BC-TTMの吸収直後のTPCの急速な形成と一致した。総銅の最大血漿濃度は、投与後約3~7時間までに総モリブデンの最大血漿濃度に続いた。
【0074】
LBC及びLBC/総銅比:統合された民族データは、投与前のベースラインで0.805μM(範囲:0.48~1.49μM)の血漿LBC平均値を有した。ベースラインにおける全参加者の平均血漿LBC濃度は、血漿総銅濃度(LBC/総銅比)の約6%(±2%)であった。最初の3時間で一時的な減少があり(一方で血漿総モリブデン濃度が増加していた)、その後、増加し(
図2の挿入図)、15mg又は60mgのいずれかの投与後、時間の経過と共に最終的に血漿LBCの投与前のベースライン濃度に戻った(
図2)。単回の15mg及び60mgのBC-TTM投与後、それぞれ2.79及び2.93μMの最大個別血漿LBC濃度が観察された。これらの値は、正常な健常対象の血漿LBCの基準範囲内にある(表2を参照されたい)。
【0075】
【0076】
統合された民族性及び用量データからの血漿LBC濃度の中央値は、投与後3時間で投与前ベースライン濃度のおよそ50~70%の最下点に達し、続いて投与後12~24時間で投与前ベースライン濃度のおよそ80~90%に増加し、投与後10日目にベースラインに戻った(
図2)。血漿中の総モリブデンがC
maxに向かってなおも増加し続けている間、最初の3時間では血漿中のLBCが減少したことから、BC-TTMは、血漿中の「遊離」銅又はLBCを低減する初期能力を有することが暗示される。引き続くLBCの増加は、BC-TTMの全体的な肝臓脱銅効果又は銅動員効果に関連し得、投与後約12時間でほぼ同時に最大血漿総銅濃度及びLBC濃度に達する。投薬後の最初の12時間の時間枠内では、比較的少量の動員された銅分子は、安定したTPCに完全に捕捉されず、LBCとして測定可能になった可能性がある。BC-TTMがCuと結合するのは、Cuがアルブミン分子のN末端ヒスチジンのような特定の位置に存在する場合であり、それ以外の場所に結合した銅分子は、BC-TTMと結合せず、TPCを形成しないこともある。別の可能性として、研究106からの投与後サンプルでは、BC-TTM治療後12~24時間以内にトランスキュプレインレベルが増加したことを示すデータがあり、これも血漿LBC濃度のピーク時間を説明し得る。
【0077】
研究106の平均(SD)血漿LBC/総銅比-時間プロファイルは、血漿LBCプロファイルと同様の傾向を示す(
図3、挿入図)。BC-TTM投与後の効果(血漿総銅及びLBC)-時間曲線下の面積に基づくAUEC計算(全参加者データをプール、民族及び用量の両方)は、血漿LBCの百分率が血漿総銅に対してとほとんど変化しない7%(±1%)ことを示す。これは、組織銅動員によって血漿総銅及び血漿LBCの両方の濃度に動的変化があったにもかかわらず、「遊離」銅の相対量が実質的に無変化であり、BC-TTMの単回投与後も正常な基準範囲内に十分に維持されていたことを示唆する。
【0078】
研究201では、血漿中の総モリブデン及び銅の12時間の高密度PK/PDサンプルを1日目、12週目、24週目に採取した。「遊離」銅を評価するための血漿サンプルも受診時の0、4及び8時間目に収集し、LBC濃度について分析した。研究106と研究201との比較の目的のため、
図3は、両方の研究の投薬後12時間の時間窓内のLBC/総銅比-時間プロファイルを重ね合わせている。C
maxに貢献した全ての人々を使用して加重平均用量の計算を行い、1日目、12週目及び24週目では、対応する数値は、30mg、33.6mg及び35.8mgであった。
図3(上)は、投与前1日目の平均血漿LBC/総銅比-時間プロファイルが正常範囲の上限をわずかに下回り、SDが正常を十分に上回っていたことを示す。加重平均用量30mgのBC-TTM後、LTC比は、投与後4時間でベースラインから約30%低下し、8時間後にわずかに回復した。12週間の反復投与後、受診日に加重平均用量33.6mgのBC-TTM治療を行った後、平均LBC/総銅比-時間プロファイルは、1日目と比較してわずかに低下し、脱銅期がなおも進行中であり得ることが示唆された。24週目では、投与前のLTC比は、1日目の投与前のベースラインと比較して約30%の大幅な減少を有し、投与後4時間では約50%低下の最下点を有した。15mg又は60mgのBC-TTMの単回投与後、全体的なLBC/総銅比時間プロファイルは、研究106のものをなおも上回っていたにもかかわらず、BC-TTMの加重平均用量は、第24週目の受診日に35.8mgとわずかに増加し、脱銅期が完了し得ることが示唆された(
図3、下)。
【0079】
臨床的証拠は、WDを有する参加者の診断のためのLTC比又はdNCC比の使用を支持する。例えば、TPCが存在しない対象、すなわちBC-TTMによる治療を受けていない対象では、NCC及びLBCの画分が同じであるため、dNCC比をこの目的に使用し得る。理論に束縛されるものではないが、LBC(又はBC-TTMによる治療を受けていない対象ではdNCC)は、アルブミン及び銅特異的タンパク質であるCp及びトランスキュプレイン以外のタンパク質に結合した循環銅の画分を表すと考えられている。LBC値(BC-TTMによる治療を受けていない対象ではdNCC値)は、総銅に対する百分率又は比率で表した場合、未治療のWD患者の銅代謝の変化を反映し、1回の採血でWDを診断できる可能性を有する。例えば、健常患者について確立された正常な基準範囲と比較することにより、LTC比値又はdNCC比の上昇を独立検査として使用し、WDを診断するか、又は対象をBC-TTMによる治療に適すると同定し得る。
【0080】
メタ解析に基づいて、LTC比の平均値及び範囲は、研究106、研究104、研究201、研究203、研究108及び研究301のデータに基づいて計算した。このデータを表3に示す。
【0081】
【0082】
表3の値を取得するために使用した方法:表3の「参照」サンプルは、BioIVT及びLampire Biological Laboratoriesから購入した個々のロットの成人ヒトリチウムヘパリン血漿サンプルであった。血漿サンプルは、到着時に-70℃で保存した。血漿サンプル中のセルロプラスミン結合銅(CpC)及びLBCの濃度は、検証済みのICP-MS法を用いて測定した。アッセイでは、最初に抗Cp抗体を使用してCpを免疫捕捉し、ICP-MS法によってCpC濃度を測定した。得られた非セルロプラスミン溶液に対してEDTAキレート処理と濾過を実行し、ICP-MS分析のためのLBCを血漿から単離した。総血清銅濃度は、CpC及びLBCで構成される。
【0083】
総銅に対するLBCの比率は百分率で表され、以下のように計算される。
【数2】
平均値及び分散を性別間で比較した。正規性の仮定は、コルモゴロフ・スミルノフ検定及びアンダーソン・ダーリング検定を用いて検証した。次に、Box-Cox法を適用して、正規化変換を同定した。Dixon法及びTukey法を用いて、変換されたデータに対して外れ値検出を実行した。変換されたデータについて性別の平均値及び分散を比較し、z検定の結果に基づいてデータを分配した。サブグループ基準範囲は、Clinical and Laboratory Standards Institute(2008)で提案されているノンパラメトリック法を用いて取得した(EP28-A3c:Defining,Establishing,and Verifying Reference Intervals in the Clinical Laboratory;Approved Guideline(3rd edition),Wayne,PA)。
【0084】
表3の「基準」範囲の研究対象集団:上記の表3に記載される「基準」範囲のサンプルは、122人の女性対象及び126人の男性対象からのng/mLで表されるLBC及び総銅濃度で構成された。対象の年齢中央値は、40歳(Χ=41.3、範囲18~74)であった。女性の年齢中央値は、39.0歳(Χ=40.6、範囲18~74)であり、男性の年齢中央値は、42.0歳(Χ=41.9、範囲18~70)であった。全体及び男女別の%LBCの記述統計を表4に示す。t検定から、%LBCの平均値が男女で異なることが明らかになった(Χ=女性10.03%、Χ=男性14.97%;p<0.0001)。グループ分散も不等であった(Folded F検定、p=0.0008)。
【0085】
【0086】
健常患者とウィルソン病患者との分類のための計算されたLTC比の最適閾値
LTC比を使用して、患者が健康であるか又はウィルソン病を有するかを分類するための最適な閾値を決定するために、337人の健常患者及び70人のウィルソン病患者のLTC比を解析した(
図4)。具体的には、研究104、研究106及び研究108からの248の「参照」サンプル(
図4では「HV」として特定される)及び89の健常患者サンプルを解析した。70人のウィルソン病患者のコホートは、研究301、研究201及び研究203からのものである。解析は、以前の治療による潜在的な交絡効果のため、未治療の患者の治療に焦点を当てた。
【0087】
健常患者とウィルソン病患者との分布を箱ひげ図で表した(
図5)。箱ひげ図を使用して、平均値を表示することで数値データの分布及び歪度を観察した。t検定を実行し、健常患者とウィルソン病患者との間のLTC比の平均値の差の有意性(p値<2.2e-16)を示した。各LTC比データでの性能を0~1で測定し、健常患者とウィルソン病患者とを分類した。
【0088】
このスコアリング分類子の性能を評価するRパッケージ及び可視化するggplotRパッケージである、ROCR(Sing T,et al.(2005)ROCR:visualizing classifier performance in R.Bioinformatics 21(20):3940-1)を使用した(
図6)。受信動作特性(ROC)曲線をプロットし(
図6)、健常患者とウィルソン病患者との分類にLTC比を使用した場合の性能を示す。データセットは、わずかに不均衡であったため、Fスコアを使用して最適な閾値値を定義した。さらに、ROCRツール(Sing T et al.(2005))を使用してFスコアを測定した。
【0089】
約0.73のFスコア最大値で、0.24又はLTC比の24%という最適閾値が観察された(
図7)。特異性及び感度のトレードオフを考慮して、Fスコアが0.7を超える閾値の範囲を調査した。LTC比の閾値の範囲は、
図8に示すように定義された(すなわち両端を含めて0.21~0.27)。最後に、RのCaret(Kuhn.(2008),J.Stat.Soft.,Building predictive models in R using caret Package 28;1-26)ライブラリからのconfusionMatrix関数を使用して、観測クラス及び予測クラスと関連統計とのクロス集計を計算した。
【0090】
健常患者とウィルソン病患者との分類のための計算されたdNCC比の最適閾値
dNCC比を使用して、患者が健康であるか又はウィルソン病を有するかを分類するための最適な閾値を決定するために、149人の健常患者及び41人のウィルソン病患者のdNCC比を解析した。具体的には、研究104、研究106及び研究108からの60の「参照」サンプル及び89の健常患者サンプルを解析した。41人のウィルソン病患者のコホートは、研究301及び研究201からのものである。解析は、以前の治療による潜在的な交絡効果のため、未治療の患者の治療に焦点を当てた。
【0091】
健常患者とウィルソン病患者との分布を箱ひげ図で表した(
図9)。箱ひげ図を使用して、平均値を表示することで数値データの分布及び歪度を観察した。t検定を実行し、健常患者とウィルソン病患者との間のdNCC比の平均値の差の有意性(p値<6.082e-10)を示した。各dNCC比データでの性能を0~1で測定し、健常患者とウィルソン病患者とを分類した。
【0092】
このスコアリング分類子の性能を評価するRパッケージ及び可視化するggplotRパッケージである、ROCR(Sing T,et al.(2005)ROCR:visualizing classifier performance in R.Bioinformatics 21(20):3940-1)を使用した。受信動作特性(ROC)曲線をプロットし(
図10)、健常患者とウィルソン病患者との分類にdNCC比を使用した場合の性能を示す。データセットは、わずかに不均衡であったため、Fスコアを使用して最適な閾値値を定義した。さらに、ROCRツール(Sing T et al.(2005))を使用してFスコアを測定した。
【0093】
約0.69のFスコア最大値で、0.276又はdNCC比の27.6%という最適閾値が観察された(
図11)。特異性及び感度のトレードオフを考慮して、Fスコアが0.65を超える閾値の範囲を調査した。dNCC比閾値の範囲は、
図12に示すように定義された(すなわち両端を含めて0.245~0.295)。最後に、RのCaret(Kuhn.(2008),J.Stat.Soft.,Building predictive models in R using caret Package 28;1-26)ライブラリからのconfusionMatrix関数を使用して、観測クラス及び予測クラスと関連統計とのクロス集計を計算した。
【0094】
血清及び血漿サンプル比較
52人の健常人からのヒトリチウムヘパリン血漿及び血清の適合セットをBIOIVTから入手した。
【0095】
血漿及び血清サンプル中のLBC濃度は、PCT/米国特許出願公開第21/49890号明細書で開示される抗CP mAb混合物(1、2、3)でヤギ抗ヒトCP抗体を置き換えて、その全体が参照により本明細書に援用される、2020年1月8日に出願された米国仮出願第62/958,432号明細書の実施例10に記載されるような検証済みのLBC生物分析アッセイ法を実行した後、ICP-MS(Agilent 8900)によって判定した。
【0096】
簡潔に述べると、最初に抗CP mAb混合物(1、2、3)を用いた免疫捕捉によってCPを除去してdNCC画分を取得し、続いてEDTAでdNCC溶液をキレート化し、その後、濾過して濾液中に銅の不安定結合型を収集した。
【0097】
より具体的には、約20μLの各生物学的サンプルを、抗CP mAb混合物(1、2、3)(1サンプル当たり合計約96μgの抗CP mAb)で被覆された約200μLのビーズと共にウェルに添加し、その後、PCT/米国特許出願公開第21/49890号明細書の実施例4で開示されている免疫捕捉ステップに供し、サンプル毎のdNCC画分を生成した。
【0098】
サンプル毎に約200μLのdNCC画分を、金属を含まない清浄なチューブに移し、その後、約60μLのキレートスパイク溶液(45.5mMのEDTA(Sigma BioUltra)及び456μMのL-Histidine(Sigma BioUltra))を各サンプルに添加した。サンプルを穏やかによく混合し、およそ37℃で約1時間インキュベートした。任意選択的に、チューブを遠心分離し得る。
【0099】
インキュベートした各サンプルを、2%硝酸で洗浄した30K MWCO遠心フィルター(再生セルロース膜)(Millipore、AmiconUltra)に移し、約25℃、約14,000×gで約35分間遠心分離した。
【0100】
約200μLの濾液を、新しい清浄な金属を含まないプラスチックチューブに移し、約600μLの0.1%HNO3H2O溶液を、金属を含まないプラスチックチューブに添加した。
【0101】
約10μLのロジウム内標準スパイク(100ng/mL)を、上記の金属を含まないチューブのそれぞれに添加した。次に、各チューブをおよそ3500rpmで約1分間遠心分離し、ボルテックス処理してよく混合した。
【0102】
LBCの定量は、内標準としてロジウムを使用し、表5及び6に要約される条件及びパラメータの下で操作されるICP-MS(Agilent 8900)によって実行した。同心マイクロミストネブライザーを使用して、スプレーチャンバーの温度を約2℃に維持した。分析は、He MSMSガスモードで実行した。
【0103】
【0104】
【0105】
ICP-MSシステムのプラズマをオンにし、「はい」をクリックして自動調整を実行した。自動調整と調整チェックは、調整溶液(Agilent)を使用して実行した。ICP-MSシステムは、デフォルト設定のウォームアップで平衡化した。次に、サンプルをICP-MS測定に導入した。
【0106】
52人の健常人からのヒト血漿及び血清におけるLBC濃度の結果を表7に示す。同じセットの52人の健常人からのヒト血清及びヒトLi-H血漿から得られたLBC濃度間の一致度は、ブランド・アルトマン法によって評価した(Giavarina,Biochemia Medica 2015;25(2):141-51を参照されたい)。
図13は、血清LBCレベルと血漿LBCレベルとの間の差をY軸とし、両方の平均値をX軸とするブランド・アルトマン散布図を示す。2セットのLBC値の差の平均は、10.1ng/mLである。これは、血清LBC値が血漿LBCよりも平均して10.1ng/mL高いことを意味する。
【0107】
ブランド・アルトマン法では、データ点の95%が、一致限界(LOA)として定義される平均差の±1.96標準偏差(SD)内に存在することが推奨される。このプロットでは、上限LOA及び下限LOAは、それぞれ-27.7及び47.9として計算された。このプロットは、平均差及びLOAの95%信頼区間(CI)も示し、これは、推定値におけるサンプリング誤差の可能性を示す。要約すると、サンプル点全体の5%未満を占める、52個のうちの2個がLOAの95%CIから外れており、これは、血清及び血漿LBC濃度が10.1ng/mLの偏りで互いに一致することを示唆し得る。
【0108】
【0109】
【0110】
本明細書に記載される実施例及び実施形態は、例示のみを目的とし、それに照らして様々な修正形態又は変更形態が当業者に示唆され、本出願の趣旨及び範囲並びに添付の特許請求の範囲に組み込まれることが理解される。本明細書で引用される全ての刊行物、特許及び特許出願は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【国際調査報告】