(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】外科用装置、システム、および外科用装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/04 20060101AFI20231121BHJP
A61B 17/06 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
A61B17/04
A61B17/06 510
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528572
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2020081887
(87)【国際公開番号】W WO2022100833
(87)【国際公開日】2022-05-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523174653
【氏名又は名称】ツリメト・テヒノロジース・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ZURIMED TECHNOLOGIES AG
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187469
【氏名又は名称】藤原 由子
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【氏名又は名称】古後 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】バッハマン・エリアス
(72)【発明者】
【氏名】リー・シャン
(72)【発明者】
【氏名】バンゼ・ポール
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160BB01
4C160BB11
(57)【要約】
【課題】操作者及び患者にとって安全に使用できる外科用フェルティング装置を提供する。
【解決手段】患者の軟組織(46)にインプラントをフェルティングする外科用装置(1)は、往復運動するように構成された少なくとも1つのフェルティング針(2)と、接続インターフェース(128;135)であって、少なくとも1つのフェルティング針をアクチュエータに接続し、かつ、当該インターフェース(128;135)から少なくとも1つのフェルティング針(2)に往復運動を伝達する接続インターフェース(128;135)と、を備える。本装置は、針保護機構(3;20;135;242;331;451;553)を備える。針保護機構は、少なくとも1つの針が往復運動中に硬質の構造体との接触により損傷することを防止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の軟組織(46)にインプラントをフェルティングする外科用装置(1)であって、
往復運動するように構成された少なくとも1つのフェルティング針(2)と、接続インターフェース(128;135)であって、前記少なくとも1つのフェルティング針をアクチュエータに接続し、かつ、当該インターフェース(128;135)から前記少なくとも1つのフェルティング針(2)に往復運動を伝達する接続インターフェース(128;135)と、を備える外科用装置(1)において、
前記装置が、針保護機構(3;20;135;242;331;451;553)を備え、
前記針保護機構が、前記少なくとも1つの針が往復運動中に硬質の構造体との接触により損傷することを防止するように構成されることを特徴とする、外科用装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の外科用装置(1)において、前記少なくとも1つのフェルティング針の幅または直径が、0.8mm未満、好ましくは0.6mm未満、最も好ましくは0.4mm未満である、外科用装置(1)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の外科用装置(1)において、針保護機構が、前記組織に接触して前記少なくとも1つの針の所定の貫入深さを設定するスペーサ(3;20)を含む、外科用装置(1)。
【請求項4】
請求項3に記載の外科用装置(1)において、前記スペーサ(3;20)が、1つ以上のフィンガ(20)、好ましくは2つのフィンガ(20)を備え、前記1つ以上のフィンガが、前記針の往復運動が前記所定の貫入深さを超えないように前記組織に接触する遠位端面を含む、外科用装置(1)。
【請求項5】
請求項4に記載の外科用装置(1)において、前記スペーサ(20)が、前記軟組織の表面に沿って前記針を摺動させることができるようなスライドを形成する、外科用装置(1)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の外科用装置(1)において、前記少なくとも1つのフェルティング針が最大貫入深さ(16)を有し、前記最大貫入深さが調整可能である、外科用装置(1)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の外科用装置(1)において、前記針保護機構が針衝突センサ(331)を備え、前記針衝突センサが、好ましくは、硬質の構造体までの距離を測定するように構成されている、外科用装置(1)。
【請求項8】
請求項7に記載の外科用装置(1)において、前記針衝突センサが、前記少なくとも1つの針(2)の曲げを測定するように構成されており、前記センサが、好ましくは、電気歪みセンサ、電磁センサ、または圧電センサである、外科用装置(1)。
【請求項9】
請求項7または8に記載の外科用装置(1)において、前記外科用装置がコントローラを備え、前記コントローラが、前記針衝突センサ(331)の測定に基づいて、前記少なくとも1つのフェルティング針の前記貫入深さ(16)を調整するように構成されている、外科用装置(1)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の外科用装置(1)において、前記アクチュエータ(8)から前記少なくとも1つの針(2)に往復運動を伝達するように適合されたカップリング(128;235)を含み、前記針保護機構が、前記アクチュエータ(8)から前記針(2)を切り離し、前記カップリングを切り離すことによって、前記針が損傷することを防止するように適合されている、外科用装置(1)。
【請求項11】
請求項10に記載の外科用装置(1)において、前記針保護機構がスリッパクラッチ(235)を含み、前記少なくとも1つの針に作用する所定の力またはモーメントを超過したとき、前記スリッパクラッチ(235)が少なくとも部分的に滑る、外科用装置(1)。
【請求項12】
請求項11に記載の外科用装置(1)において、前記スリッパクラッチが、
ピンと、面取り面;
ボールスプリングと、ボールを受け入れるための対応する凹部;および
前記少なくとも1つの針のためのスプリングベアリング
のうちの1つ以上を含む、外科用装置(1)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の外科用装置(1)において、前記針保護機構が所定の破断点を含み、前記少なくとも1つの針にかかる力が所定の閾値を超えると、前記所定の破断点が破断し、
前記所定の破断点が、好ましくは、前記少なくとも1つの針に力を伝達する機械的カップリング(553)の一部であり、
前記機械的カップリングが、好ましくは、前記所定の破断点を有するロッドを含む、外科用装置(1)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の外科用装置と、
前記少なくとも1つの針を往復運動で駆動するアクチュエータ(8)、特に電気モータと、
を含むシステム(1)。
【請求項15】
外科用装置(1)、好ましくは請求項1から12のいずれか一項に記載の外科用装置の製造方法であって、
- 往復運動するように構成された少なくとも1つのフェルティング針(2)と、接続インターフェース(128;135)であって、前記少なくとも1つのフェルティング針をアクチュエータ(8)に接続し、かつ、前記アクチュエータ用の当該インターフェース(128;135)から前記少なくとも1つの針(2)に往復運動を伝達する接続インターフェースと、を備える外科用装置(1)を準備するステップと、
- 前記少なくとも1つの針が往復運動中に硬質の構造体との接触により損傷することを防止する針保護機構(3;20;135;242;331;451;553)を準備するステップと、
を含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の前提部に係る外科用装置、システム、および外科用装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、最近、インプラントの生体力学的に有利な移植を可能にする外科用フェルティング装置を開発した。開発された装置は、従来の縫合技術と比較して、改善された固定を可能にする。このような外科用フェルティング装置の一例は、国際出願第PCT/CH2019/000015号(特許文献1)に開示されている。この外科用フェルティング装置は、外科用フェルトを貫通して組織内へと繰り返し移動する針を備える。フェルトのストランドを組織内に埋め込むことによって、針は、フェルトと組織との間に十分に分散した強力な機械的結合を形成する。従来の縫合と比較して、この技術はより速やかであり、局所的な応力のピークによって起こり得る、縫合糸が組織を切り裂く「チーズワイヤリング」などの副作用を軽減することもできる。
【0003】
しかし、外科用フェルティング装置は手持ち式の場合があり、針が高速で動くことから、針が損傷するおそれが大きい。損傷は、針と、骨や他の手術器具のような硬質の構造体との衝突によって生じ得る。このような衝突は、機能性に悪影響を及ぼす部分的な針の破壊(塑性曲げ、破損、裂け目)につながる可能性がある。さらに、患者の体内で針の一部を失う可能性もあり、健康上のリスクとなる。そして、組織や外科用フェルト内で針が高速で動くと、摩擦によって望ましくない熱が発生することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際出願第PCT/CH2019/000015号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の技術的課題は、先行技術の上記欠点を克服することである。特に、本発明の技術的課題は、操作者及び患者にとって安全に使用できる外科用フェルティング装置を提供することである。本発明のさらなる課題は、フェルティング針によって発生する熱を低減することであり得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題は、独立請求項の特徴によって解決される。本発明の一態様は、患者の軟組織にインプラントをフェルティングする外科用装置に関する。患者は、人間でも動物でもよい。フェルティングは、フェルトを含むインプラント内へと(いくつかの実施形態では、インプラントを貫通して)フェルティング針を繰り返し動かし、それによってフェルトの繊維を絡ませるプロセスとして理解され得る。フェルティング針は、フェルトの繊維を捕らえ、フェルトを通して繊維を移動させて、フェルトの繊維をさらに絡ませるバーブ(返し)を含む針として理解され得る。特に、フェルティングは、インプラントの一部を形成するフェルトの繊維を互いに絡ませるだけでなく、患者の組織の繊維をフェルトの繊維と絡ませることもできる。それにより、フェルトの一部のストランドが患者の組織に埋め込まれ絡まり、組織の一部のストランドがフェルトに埋め込まれ絡まることがある。これにより、組織とフェルトの間に十分に分散した強力な機械的結合が形成される。
【0007】
外科用装置は、少なくとも1つのフェルティング針を備える。少なくとも1つのフェルティング針は、往復運動するように構成される。本明細書で言及される往復運動は、反復的な前後運動であると理解され得る。この運動は、並進運動、つまり直線運動であってもよいし、回転運動であってもよい。さらに、外科用装置は、接続インターフェースであって、少なくとも1つのフェルティング針をアクチュエータに接続し、かつ、当該インターフェースから少なくとも1つのフェルティング針に往復運動を伝達する接続インターフェースを備える。このインターフェースは、解除可能または永久的な取り付けを提供し得る。例えば、解除可能なインターフェースとしては、ピン、ラッチ、ねじ、磁石、または他の既知の機械的手段もしくは他の接続手段が挙げられる。リベット、接着剤または一体型設計による永久的な取り付けも可能である。少なくとも1つの針が解除可能に取り付けられていると、この少なくとも1つの針を交換することが可能になる。
【0008】
特定の実施形態では、装置は、振動する針によって発生する摩擦熱を冷却する水冷システムを備える。
【0009】
アクチュエータは、空気圧式、油圧式または電磁式であってよい。特に、アクチュエータは、電気モータであってもよいし、電磁コイルを具備または利用するものであってもよいし、空気圧または油圧を利用するものであってもよい。装置は、アクチュエータの回転運動を並進運動に変換するように構成されていてもよい。特に、装置は、回転運動を並進運動に変換するスコッチヨーク機構またはピストンロッド駆動機構を備えていてもよい。これにより、より効率の良いモータを使用し得る。往復並進運動(振動)の速度および/または周波数は調整可能であってもよい。装置は、インターフェース又はアクチュエータから少なくとも1つの針に往復運動を伝達する直動ロッドを備えていてもよい。摩耗および加熱を低減するために、ベアリング及び低摩擦材料(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)を用いて直動ロッドの摩擦を最小限に抑えてもよい。
【0010】
少なくとも1つの針は、好ましくは、ステンレス鋼で形成されているか、またはステンレス鋼を含む。針は、ステンレス鋼コーティングを含んでもよい。ステンレス鋼は、外科手術の酸化条件に対して特に耐性がある。したがって、本装置は、例えば、針を酸化させ得る生理食塩水での洗浄が常に行われる関節鏡手術において使用され得る。
【0011】
装置は、針保護機構を備えていてもよい。針保護機構は、少なくとも1つの針が往復運動中に硬質の構造体との接触により損傷することを防止する。
【0012】
針保護機構は、少なくとも1つの針の最大貫入深さを定めてもよい。最大貫入深さは、調整可能であってもよい。特に、最大貫入深さは、往復運動の振幅よりも小さくてもよい。加えて又は代替的に、針保護機構は、往復運動を制限してもよいし、障害物(すなわち、硬組織)を検出するように構成されてもよいし、衝突が発生した場合に少なくとも1つの針からアクチュエータを切り離してもよいし、これらの任意の組み合わせであってもよい。往復運動の振幅を変更することおよび/または最大貫入深さを制限することによって、運動が制限されてもよい。
【0013】
硬質の構造体は、例えば、患者の骨や、針の作動中に針と接触し得る他の手術器具であり得る。
【0014】
本外科用装置は、腱、髄膜、脊椎円板もしくは筋膜などの膠質組織などの解剖学的構造の修復または固定、靭帯再建(側副靭帯、十字靭帯など)、皮下縫合、皮膚閉鎖、骨格筋、心筋、弁、および中空臓器(大血管、膀胱、食道、場合によっては腸)の従来の縫合に使用することができる。また、これらの解剖学的構造に、インプラントが取り付けられてもよい。
【0015】
一実施形態では、少なくとも1つのフェルティング針の幅または直径が、0.8mm未満、好ましくは0.6mm未満、最も好ましくは0.4mm未満である。直径が小さい針は、摩擦が小さく、発生する熱量が少ない。しかし、針の直径が小さいと、針がより壊れやすくなる可能性がある。
【0016】
一実施形態では、針保護機構は、軟組織またはパッチに接触して少なくとも1つの針の最大所定貫入深さを設定するスペーサを含む。スペーサは、組織を押すことで、針が所望の程度を超えて貫入することを防止する。これは、腱や脊椎円板などの、骨に近い位置にある解剖学的構造に対して特に有用であり得る。さらに、スペーサは、操作者が針の運動の振幅を所望の範囲(例えば、フェルトと軟組織)内に保つのを助け、取扱い性を向上させる。
【0017】
スペーサは弾性を有していてもよく、特に、スペーサはばねを含むか、ばねを形成していてもよい。弾性を有するとは、ユーザが装置を軟組織に押し付けることで、加えられた力に応じてスペーサのスペーシングを変えることができるものであるとして理解され得る。一実施形態では、スペーサは、湾曲形状または屈曲形状を有していてもよい。この弾性により、装置の先端部をフェルティング可能なパッチまたは組織と一定に接触させることが可能となる。さらに、これは、さらなる道具および/または補助を必要とすることなく、軟組織を所定の位置に保持するのに役立ち得る。組織またはパッチに一定に接触していなければ、組織またはパッチが振動してしまい、組織を通る針の貫入量が小さくなる可能性がある。特に、スペーサは、針を後退させるときに、針がパッチを持ち上げることを防止する(ストリッピング効果)。針がフェルトおよび/または組織から後退するとき、バーブおよび/または摩擦によってパッチが外科用装置の方に引っ張られることがある。スペーサはこれを防止し、少なくとも1つの針はパッチを持ち上げることなくパッチおよび/または組織から引き抜かれる。
【0018】
好ましい実施形態では、スペーサは、1つ以上のフィンガを備える。好ましくは、スペーサは、2つ、3つ、またはそれ以上のフィンガを備える。1つ以上のフィンガは、針の往復運動が所定の貫入深さを超えないように軟組織に接触する遠位端面を含む。1つ以上のフィンガは、フィンガの径方向外側の面がスペーサの遠位端面を形成するように、遠位側で折り曲げられていてもよい。これにより、操作者は、少なくとも1つのフェルティング針を視覚的に観察することができ、装置をより正確に制御することが可能である。さらに、折り曲げられたフィンガは、フィンガの弾力性を可能とし得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、フィンガは、遠位側で互いに接続されていてもよく、特に、単一のワイヤによって形成されていてもよい。フィンガは、形状記憶合金、例えばニチノールから形成されていてもよい。フィンガは、圧縮・伸長した形態を有していてもよい。例えば、フィンガは、針用のガイドチューブの遠位端から出されてもよい。
【0020】
好ましい実施形態では、スペーサは、軟組織の表面に沿って針を摺動させることができるようなスライドを形成する。特に、1つ以上のフィンガは、同じ方向に折り曲げられていてもよい。この場合、湾曲が指す方向に軟組織の上で装置を容易に移動させつつ、同時に、一定の貫入深さを維持し、一定の圧力を加えて軟組織を所定の位置に保つことができる。代替的に、スライドは、ミシンで知られているスライドと同様に形成されていてもよい。
【0021】
好ましい実施形態では、少なくとも1つのフェルティング針は、最大貫入深さを有する。最大貫入深さは、調整可能であってもよい。それにより、装置は、特定の使用事例に適合させることができる。さらに、操作者は、硬組織の近くで操作する場合に、貫入深さを調整することができる。
【0022】
好ましい実施形態では、往復運動は振幅を有する。振幅は、調整可能であってもよい。それにより、装置は、特定の使用事例に適合させることができる。さらに、操作者は、硬組織の(あまりにも)近くで操作する場合に、振幅を調整することによって最大浸透深さを調整することができる。
【0023】
好ましい実施形態では、装置はガイドチューブを備える。ガイドチューブは、少なくとも1つの針および/または並進ロッドを少なくとも部分的に取り囲む。並進ロッドは、インターフェースから少なくとも1つの針に往復運動を伝達することができる。ガイドチューブは、外側管状部材であってもよい。さらにガイドチューブは、ばねに直列に接続されてもよいし、弾性を有していてもよい。
【0024】
好ましい実施形態において、装置は、現在の貫入深さを示す目盛りを含んでいてもよい。好ましい実施形態では、装置は、現在の最大貫入深さを示す目盛りを含んでいてもよい。
【0025】
好ましい実施形態では、針保護機構は、針衝突センサを備える。好ましい実施形態では、衝突センサは、硬質の構造体までの距離を測定するように構成されている。針衝突センサは、例えば超音波センサなどの、距離センサであってもよい。センサは、装置(特にハウジングまたはガイドチューブ)と硬組織との間の距離を測定することができる。これにより、針を損傷させ得る硬組織または他の障害物を検出することができる。さらに、装置は、硬組織または他の障害物までの検知距離を操作者に示すためのインジケータを備えていてもよい。インジケータは、光学的(すなわち、ディスプレイまたはダイオード)または触覚的または音響的なインジケータであってよい。
【0026】
好ましい実施形態において、針衝突センサは、少なくとも1つの針および/または直動ロッドの曲げを測定するように構成されている。センサは、弾性歪みセンサおよび/または電磁センサおよび/または圧電センサであってよい。少なくとも1つの針が骨などの硬組織と衝突したとき、針および/または直動ロッドは、破損する前に曲がることがある。針衝突センサは、この曲げを検出する。これにより、コントローラは、針をアクチュエータから切り離すか、または最大貫入深さを減少させる変更を行うことができる。
【0027】
好ましい実施形態において、外科用装置は、コントローラを備える。コントローラは、センサから信号を受信し、針衝突センサの測定結果に基づいて少なくとも1つの針の最大貫入深さを調整するように構成される。それにより、衝突の検出または衝突のおそれの検出に応じて、貫入深さの迅速な自動調整を可能にする開制御ループが提供される。いくつかの実施形態において、アクチュエータは、さらなるセンサを用いて現在の最大貫入深さを測定してもよく、コントローラは、最大貫入深さの閉ループ制御のための信号をアクチュエータから受信するように構成されてもよい。
【0028】
外科用装置は、少なくとも1つの針の往復運動を駆動するアクチュエータを備えていてもよい。好ましい実施形態では、外科用装置は、アクチュエータから少なくとも1つの針に往復運動を伝達するように適合されたカップリングを備える。カップリングは、スリッパクラッチであってもよい。ここでいうスリッパクラッチは、閾値力または閾値モーメントを超えたときに、アクチュエータから針を切り離すクラッチであると理解され得る。スリッパクラッチは、少なくとも1つの針に作用する所定の力またはモーメントを超過したとき、少なくとも部分的に滑ることができる。それによって、針保護機構は、アクチュエータから針を切り離し、衝突が発生したときに針が損傷することを防ぐように適合されている。
【0029】
好ましい実施形態では、スリッパクラッチは、ピンと面取り面、ボールスプリングとボールを受け入れるための対応する凹部、および、少なくとも1つの針のためのスプリングベアリングのうちの1つ以上を含む。
【0030】
好ましい実施形態において、針保護機構は、所定の破断点を含む。所定の破断点は、少なくとも1つの針にかかる力が所定の閾値を超えると、破断する。所定の閾値は、針を破断するのに必要な力よりも小さくてもよい。
【0031】
好ましい実施形態では、所定の破断点は、少なくとも1つの針に力を伝達する機械的カップリングの一部である。機械的カップリングは、好ましくは、所定の破断点を有するロッドを含む。いくつかの実施形態では、所定の破断点は、先細り部や、隆起部、縁部、または凹部などの構造的弱化部によって提供され得る。他の実施形態では、所定の破断点は、少なくとも1つの針の一部である。
【0032】
さらなる実施形態では、装置は、破損した針を検出するように構成される。特に、針は、電気回路の一部であってもよいし、上述したような針衝突センサを含んでもよい。さらに、装置は、針が破損していることを光学的、触覚的または音響的に示すように構成されたインジケータ、例えば警告灯を含むことができる。
【0033】
本発明のさらなる態様は、上記のような外科用装置と、アクチュエータとを含むシステムに関する。アクチュエータは、特に、少なくとも1つの針を往復運動で駆動する電気モータであってよい。
【0034】
本発明のさらなる態様は、外科用装置の製造方法に関する。好ましくは、外科用装置は、上記のような外科用装置である。本方法は、
- 往復運動するように構成された少なくとも1つのフェルティング針と、接続インターフェースであって、少なくとも1つのフェルティング針をアクチュエータに接続し、かつ、アクチュエータ用の当該インターフェースから少なくとも1つの針に往復運動を伝達する接続インターフェースと、を備える外科用装置を準備するステップと、
- 少なくとも1つの針が往復運動中に硬質の構造体との接触により損傷することを防止する針保護機構を準備するステップと、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明の非限定的な実施形態を、添付の図面を参照しつつ、あくまでも例示的に説明する。
【
図1】本発明に係る外科用装置の第1実施形態を示す概略斜視図である。
【
図2A】
図1に係る外科用装置の調整可能な最大貫入深さについてのさらなる詳細を示す図である。
【
図2B】
図1に係る外科用装置の調整可能な最大貫入深さについてのさらなる詳細を示す図である。
【
図3A】
図1に係る外科用装置の遠位先端部の代替的な実施形態を示す図である。
【
図3B】
図1に係る外科用装置の遠位先端部の代替的な実施形態を示す図である。
【
図4】本発明に係る外科用装置の第2実施形態を示す概略斜視図である。
【
図5】
図4に係る外科用装置の断面を示す図である。
【
図6A】本発明に係る外科用装置のアクチュエータ用のインターフェースを示す図である。
【
図6B】本発明に係る外科用装置のアクチュエータ用のインターフェースを示す図である。
【
図7A】本発明に係る外科用装置のアクチュエータ用のさらなるインターフェースを示す図である。
【
図7B】本発明に係る外科用装置のアクチュエータ用のさらなるインターフェースを示す図である。
【
図8】本発明に係る外科用装置の第3実施形態の遠位部分の断面を示す図である。
【
図9】本発明に係る外科用装置の第4実施形態の遠位部分の、第1の位置にあるときの断面を示す図である。
【
図10】
図9の外科用装置の遠位部分の、第2の位置にあるときの断面を示す図である。
【
図11】本発明に係る外科用装置の第5実施形態の遠位部分の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、本発明に係る第1実施形態の外科用装置1の斜視図である。外科用装置1は、ハウジング5と、ハウジング5から延びるガイドチューブ3とを備える。フェルティング針2が、ガイドチューブ5内に配置され、ガイドチューブ5の端部から延びている。フェルティング針2は、フェルティング針の軸心およびガイドチューブ3の軸心に沿って前後に往復動させることができる。外科用装置1は、グリップ部7を含むハンドル10を備える。さらに、外科用装置1は、外科用装置につながる電源コード9を備えたエネルギー源に接続されている。
【0037】
外科用装置1のハウジング5内には、アクチュエータ(ここでは電気モータ8)が配置されている。モータ8は、針2の往復運動を駆動する。ガイドチューブ3は、ホイール4を用いて針3に対して移動させることができる。ホイール4を回すと、ガイドチューブ3が遠位方向に後退し、針2の先端部が露出する。ホイール4を反対方向に回すと、ガイドチューブ3が近位方向に押されて、針2の先端部を覆うことができる。その結果、針の往復運動における針の貫入深さは、ガイドチューブの相対位置による。例えば、針2の移動振幅が25mmであっても、ガイドチューブが往復運動中に針の最遠位端位置から10mmしか後退していなければ、針の最大貫入深さは10mmしかない。本明細書において、近位および遠位は操作者の視点から理解される。すなわち、遠位とは操作者から離れる方向を示し、近位とは操作者に向かう方向を示す。
【0038】
ガイドチューブ3を針2に対して相対的に設定することにより、針の最大貫入深さが制限され、操作者は、移植部位の下方深くに存在する組織のフェルティングを回避し、特に骨などの硬組織との衝突を回避することができる。さらに、ガイドチューブ5は、装置の輸送および開梱中に針2を保護する。ガイドチューブ5は、ガイドプラグ6(
図1を参照)に埋め込まれており、ばね(例えば
図5を参照)に直列に接続されていてもよい。
【0039】
図2Aは、ガイドチューブ3の相対的な移動をさらに詳細に示している。ホイール4は、操作者がホイールをより容易に握れるように隆起部12を含む。さらに、ホイールは、ガイドチューブ3の現在の位置を示すインジケータ11を含む。図示の例では、ホイール上の数字は、最大限に露出できる針の長さ、すなわち最大貫入深さを示す。さらに、ガイドチューブ3自体は、貫入深さ目盛り13を含む。貫入深さ目盛り13は、ガイドチューブ3の外周面上のマーキングとして実現される。本実施例では、マーキングは、ガイドチューブ3の周囲の円環である。ガイドチューブ3を後退させたとき、現在の貫入深さは、まだ見えている最後の環、すなわちハウジング5内に後退していない最後の環から読み取ることができる。深さ目盛りは、現在の貫入深さを示している。ホイール4の移動の結果としてガイドチューブ3を直接後退させた場合、現在の貫入深さと最大貫入深さは同じである。もっとも、いくつかの実施形態では、第2実施形態を参照して説明されるように、これら2つは異なる場合がある。
【0040】
ガイドチューブ3の相対的な移動は、
図2Aおよび
図2Bの矢印で示されている。操作者がホイールを反時計回りに回すと、ガイドチューブ3が後退し、表示された最大貫入深さ16を露出させる。
【0041】
図3Aおよび
図3Bは、ガイドチューブ3のさらなる実施形態を示しており、これらの実施形態は、独立に、または、後退可能なガイドチューブ3と組み合わせて用いることができる。
図3Aの実施形態では、ガイドチューブ3は、その遠位端24に、2つのフィンガ21を備える保護フォーク20を含む。フィンガ21は、遠位端から延び、湾曲部22付近で曲げられている。使用時には、フィンガ21の遠位端面が患者の軟組織と接触し、前述の実施形態のガイドチューブ3の端部と同様に、貫入深さ16を定める。フィンガ21の湾曲により、現在フェルティングされているフェルトおよび/または軟組織に沿って外科用装置1が滑らかに動くように支援することで、外科用装置が軟組織の上をスムーズに滑ることを可能にする。
【0042】
図3Bの実施形態では、保護フォークは形状記憶合金製のワイヤによって形成されている。輸送時、ワイヤはガイドチューブ内に保持される。操作前に、ワイヤはガイドチューブの遠位端24から出され、
図3Bの右側に示すように曲げ位置をとる。
【0043】
操作者が遠位方向に押した場合、屈曲したワイヤや屈曲したフィンガがばねとして機能し、必要に応じて一時的に(力に応じて)貫入深さを大きくできるようにしてもよい。
【0044】
図4および
図5は、本発明に係る第2実施形態の外科用装置101を示す。
図4に外科用装置101の斜視図を示し、
図5に外科用装置101の断面図を示す。概して、本明細書では、同様の特徴に対して同様の参照符号を使用し、その際に、参照符号を100ずつ増加させている。例えば、フェルティング針2は、
図4に示す実施形態のフェルティング針102と同様であり得る。
【0045】
前述の第1実施形態と同様に、第2実施形態の外科用装置101は、フェルティング針102と、ガイドチューブ103と、プラグ106と、ガイドチューブ103を後退させるためのホイール104と、ハウジング105とを含む。ハウジング105には、電源コード109が接続されている。
【0046】
図5から分かるように、外科用装置101は、モータ108を含む。モータ108は軸を駆動し、その軸の回転がギアユニット126を介してスコッチヨーク128に伝達される。スコッチヨーク128は、モータ108の回転運動を並進運動に変換する。一実施形態のスコッチヨーク128は、
図6Aおよび
図6Bにおいて詳細に見ることができる。スコッチヨーク128は、回転運動を直線運動にして、直線運動をガイドチューブ103内に保持される並進運動ロッド119に伝達する。並進運動ロッド119は、ベアリング129によって案内される。針102は並進運動ロッド119の遠位端に配置され、往復運動する。このとき、運動の振幅はスコッチヨーク128によって定められ、往復運動の周波数はモータ108によって決定される。
【0047】
また、外科用装置101はホイール104を含む。ホイール104は、インサート132の外側ねじ部に係合する内側ねじ部130を含む。外側チューブ103は並進ロッド119を覆っており、外側チューブの遠位端が遠位先端125で覆われている。ガイドチューブ3の近位側および近位端は、プラグ106を含む。プラグ106も、その軸方向に沿ってばね131に接続されている。それにより、ばね131は、プラグ106とインサート132との間に配置されている。外科用装置101の操作中、操作者が、フェルティング針102を有する遠位先端をフェルトに押し付けることがある。それにより、外側チューブ103は近位方向に押される。ばね131はこの動きに抵抗し、操作者はばねに抗して押す必要がある。それにより、外側チューブ103は、装置が使用されていないとき、鋭利な針102を覆う。
【0048】
さらに、ホイール104を用いて、インサート132を前後に移動させることができる。インサートは、外側チューブ103を後退させる最大幅127を画定する。したがって、後退させる最大幅127は、針102の最大貫入深さに対応する。硬組織(例えば骨組織)が軟組織の下に位置していることがあるので、最大貫入深さを画定することで、針102が硬組織と衝突しないように保護する。硬組織が下方に位置する様々な組織をフェルティングする場合(例えば、8mmの回旋筋腱板または12mmのアキレス腱)には、最大貫入深さを上述のように設定すると有利である。
【0049】
保護機能に加えて、ばね131は、フェルティング可能なパッチや、それぞれの組織に対して装置の先端部が一定に接触することを可能にし得る。組織またはフェルトに一定に接触していなければ、組織が振動し、組織を通しての針の貫入が最小限になる可能性がある。
【0050】
図6Aおよび
図6Bは、スコッチヨーク128の実施形態を詳細に示す。スコッチヨークは、インターフェースまたはカップリングを形成することができる。スコッチヨーク128は、ホイール135を含む。ホイール135は、六角ソケット144を介してモータ108によって駆動され、方向134周りに回転する。ホイールの径方向外側の部分には、ピン136が配置されている。さらに、スコッチヨークは、スライダ138を含む。スライダ138は、ピン136が移動するスロット139を含む。ホイールの回転により、並進ロッド119の軸心に沿った直線方向の力は矢印137で示されるように伝達されるが、スロット139により、この方向に対して横方向の力は伝達されない。
【0051】
図6Bは、針102とモータ108との間の機械的分離(mechanical uncoupling)の一例を示す実施形態である。スライダ138は、スロット139に面取り面133を含んでいてもよい。針102に過大な力がかかると、これらの力は、直動ロッド及びスライダを介してスコッチヨーク128に伝達される。面取り面133はピン上を滑らかに動き、それによってスライダ137を持ち上げてピン136から外し、針102にさらなる力が加わることを防止する。よって、ホイール135とスライダ138は機械的に切り離される。
【0052】
さらなる例では、電磁モータ108が使用されてもよい。この場合、モータが針102に対する閾値を超える力を検出した場合、針102の振幅を調整することができる。針102にかかる力が直線駆動部の電磁力を超える場合、針を後退させてもよいし、または、単にモータを停止させてもよい。
【0053】
さらなる機械的分離を
図7Aおよび
図7Bに示す。
図7Aおよび7Bは、ホイール235を示す。ホイール235は、
図6Aおよび
図6Aのホイール135の代替的な実施形態である。ホイール235は、内側ホイール240と同心円状の外側ホイール241との2つの部分を含む。
図7Aは、ホイール235の分解図であり、
図7Bは、組み立てられた状態のホイール235を示す。ホイール135と同様に、ホイール235は、六角ソケット244とピン236とを含む。内側ホイール240は、ボール242で外側ホイールに結合される。ボール242は、ばね(図示せず)によって径方向外側に押されている。外側ホイール241は、その内周に沿ってボール242のための凹部243を含む。内側ホイール240が外側ホイール241の内周にセットされると、ボール242はばねの力に抗して径方向内側に押され、正しく位置合わせされていれば、凹部243にラッチする。ボール242が凹部243にある限り、モータ108から針102に力が伝達される。しかし、針102が硬組織と衝突した場合には、ボール242は内側に押し込まれ、閾値を超える力は伝達されない。それにより、2つのホイール240および241の回転結合が解除される。
【0054】
あるいは、ボールスプリングと凹部を、過大な力が加わった場合に壊れるような弱いリンクやラッチに置き換えることもできる。ラッチは、ばねや他のコンプライアントメカニズムによるものとすることができる。さらに別の選択肢として、必要なときに係合を解除し、力が閾値を下回ったときに再係合するように細かく調整された磁石が考えられる。他の実施形態では、システムは電気機械式とすることができ、力センサまたは他のセンサ(例えば、針の歪み、伝導率)が、針にかかる力が閾値を超えたことを検出する。これらのセンサの信号により、コントローラが針をアクチュエータから切り離すか、または、アクチュエータを停止させてもよい。
【0055】
本発明に係る第3実施形態の外科用装置301が
図8に示されている。外科用装置301は、ガイドチューブ303と、最大貫入深さ316を有する針302とを含む。
図8から分かるように、針は軟組織46内で前後に移動される。針302は、並進ロッド319によって直線運動337で駆動される。並進ロッド319は、ベアリング329によって案内される。さらに、外科用装置301は、超音波距離センサ331を含む。超音波距離センサ331は、ガイドチューブの遠位端に配置され、ガイドチューブ303の遠位端と骨組織47との間の距離を測定することができる。測定された距離は、音、光、または振動による合図でユーザに報告されてもよく、このような合図はユーザが最大浸透深さ316を設定することを可能にする。例えば、最大貫入深さは、
図1から
図5について説明したように設定することができる。あるいは、外科用装置301は、測定された距離よりも小さくなるように最大貫入深さ316を自動的に調整するコントローラを追加的に含んでいてもよい。
【0056】
第4実施形態の外科用装置401が
図9および
図10に示されている。外科用装置401は、外科用装置301と同様であり、ガイドチューブ403と、ベアリング429と、直線運動437に沿って移動する並進ロッド419とを含む。並進ロッド419は、針402に接続されている。しかし、針402は、並進ロッド419に直接接続されていない。代わりに、並進ロッド419の並進力が、ばね451およびピストンシリンダ450を介して針402に伝達される。ばね451およびシリンダ450は、並進ロッド419の空洞452内に配置される。あるいは、ばね451およびシリンダ450は、単に並進ロッド419の端部に配置されていてもよい。通常の動作では、針402は並進ロッド419の動きに追従する。しかし、針402が硬い物体に衝突した場合には、ばね451が圧縮され、過剰な力を吸収する(
図10参照)。さらに、ばね451の不要な振動を防止するために、ばねと並列または直列に減衰要素を設けてもよい。いくつかの実施形態では、ばねは、弾性変形可能なロッド(例えば、ニチノールバンド)によって形成されてもよい。
【0057】
第5実施形態の外科用装置501が
図11に示されている。外科用装置501は、
図9及び
図10に示した外科用装置401と同様であってよい。ただし、並進ロッド519は、ばねの代わりに、接続ロッド554と所定の破断点553とで針502に接続されている。接続ロッド552は、所定の破断点553を特徴とする要素に結合された弾性変形可能なロッドであってよい。所定の破断点553は、本技術分野で知られている手段によって形成されてもよく、例えば縁部、隆起部、または異なる材料を用いて形成されてもよい。針502が骨組織47に衝突すると、接続ロッド554が撓む。この撓みにより、並進力は、所定の破断点553における剪断力に変換される。ロッドの撓みが大きいほど、所定の破断点553にかかる剪断力が大きくなり、結果的に破断しやすくなる。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の軟組織(46)にインプラントをフェルティングする外科用装置(1)であって、
往復運動するように構成された少なくとも1つのフェルティング針(2)と、接続インターフェース(128;135)であって、前記少なくとも1つのフェルティング針をアクチュエータに接続し、かつ、当該インターフェース(128;135)から前記少なくとも1つのフェルティング針(2)に往復運動を伝達する接続インターフェース(128;135)と、を備える外科用装置(1)において、
前記装置が、針保護機構(3;20;135;242;331;451;553)を備え、
前記針保護機構が、前記少なくとも1つの針が往復運動中に硬質の構造体との接触により損傷することを防止するように構成されることを特徴とする、外科用装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の外科用装置(1)において、前記少なくとも1つのフェルティング針の幅または直径が、0.8mm未
満である、外科用装置(1)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の外科用装置(1)において、針保護機構が、前記組織に接触して前記少なくとも1つの針の所定の貫入深さを設定するスペーサ(3;20)を含む、外科用装置(1)。
【請求項4】
請求項3に記載の外科用装置(1)において、前記スペーサ(3;20)が、1つ以上のフィンガ(20
)を備え、前記1つ以上のフィンガが、前記針の往復運動が前記所定の貫入深さを超えないように前記組織に接触する遠位端面を含む、外科用装置(1)。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか一項に記載の外科用装置(1)において、前記少なくとも1つのフェルティング針が最大貫入深さ(16)を有し、前記最大貫入深さが調整可能である、外科用装置(1)。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の外科用装置(1)において、前記針保護機構が針衝突センサ(331)を備え
る、外科用装置(1)。
【請求項7】
請求項
6に記載の外科用装置(1)において、前記針衝突センサが、前記少なくとも1つの針(2)の曲げを測定するように構成されて
いる、外科用装置(1)。
【請求項8】
請求項
6または
7に記載の外科用装置(1)において、前記外科用装置がコントローラを備え、前記コントローラが、前記針衝突センサ(331)の測定に基づいて、前記少なくとも1つのフェルティング針の前記貫入深さ(16)を調整するように構成されている、外科用装置(1)。
【請求項9】
請求項
8に記載の外科用装置(1)において、前記針保護機構がスリッパクラッチ(235)を含み、前記少なくとも1つの針に作用する所定の力またはモーメントを超過したとき、前記スリッパクラッチ(235)が少なくとも部分的に滑る
か、または、
前記スリッパクラッチが、
ピンと、面取り面;
ボールスプリングと、ボールを受け入れるための対応する凹部;および
前記少なくとも1つの針のためのスプリングベアリング
のうちの1つ以上を含む、外科用装置(1)。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれか一項に記載の外科用装置(1)において、前記針保護機構が所定の破断点を含み、前記少なくとも1つの針にかかる力が所定の閾値を超えると、前記所定の破断点が破断
する、外科用装置(1)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
第5実施形態の外科用装置501が
図11に示されている。外科用装置501は、
図9及び
図10に示した外科用装置401と同様であってよい。ただし、並進ロッド519は、ばねの代わりに、接続ロッド554と所定の破断点553とで針502に接続されている。接続ロッド552は、所定の破断点553を特徴とする要素に結合された弾性変形可能なロッドであってよい。所定の破断点553は、本技術分野で知られている手段によって形成されてもよく、例えば縁部、隆起部、または異なる材料を用いて形成されてもよい。針502が骨組織47に衝突すると、接続ロッド554が撓む。この撓みにより、並進力は、所定の破断点553における剪断力に変換される。ロッドの撓みが大きいほど、所定の破断点553にかかる剪断力が大きくなり、結果的に破断しやすくなる。
なお、本開示は、実施の態様として以下の内容を含む。
〔態様1〕
患者の軟組織(46)にインプラントをフェルティングする外科用装置(1)であって、
往復運動するように構成された少なくとも1つのフェルティング針(2)と、接続インターフェース(128;135)であって、前記少なくとも1つのフェルティング針をアクチュエータに接続し、かつ、当該インターフェース(128;135)から前記少なくとも1つのフェルティング針(2)に往復運動を伝達する接続インターフェース(128;135)と、を備える外科用装置(1)において、
前記装置が、針保護機構(3;20;135;242;331;451;553)を備え、
前記針保護機構が、前記少なくとも1つの針が往復運動中に硬質の構造体との接触により損傷することを防止するように構成されることを特徴とする、外科用装置(1)。
〔態様2〕
態様1に記載の外科用装置(1)において、前記少なくとも1つのフェルティング針の幅または直径が、0.8mm未満、好ましくは0.6mm未満、最も好ましくは0.4mm未満である、外科用装置(1)。
〔態様3〕
態様1または2に記載の外科用装置(1)において、針保護機構が、前記組織に接触して前記少なくとも1つの針の所定の貫入深さを設定するスペーサ(3;20)を含む、外科用装置(1)。
〔態様4〕
態様3に記載の外科用装置(1)において、前記スペーサ(3;20)が、1つ以上のフィンガ(20)、好ましくは2つのフィンガ(20)を備え、前記1つ以上のフィンガが、前記針の往復運動が前記所定の貫入深さを超えないように前記組織に接触する遠位端面を含む、外科用装置(1)。
〔態様5〕
態様4に記載の外科用装置(1)において、前記スペーサ(20)が、前記軟組織の表面に沿って前記針を摺動させることができるようなスライドを形成する、外科用装置(1)。
〔態様6〕
態様1から5のいずれか一態様に記載の外科用装置(1)において、前記少なくとも1つのフェルティング針が最大貫入深さ(16)を有し、前記最大貫入深さが調整可能である、外科用装置(1)。
〔態様7〕
態様1から6のいずれか一態様に記載の外科用装置(1)において、前記針保護機構が針衝突センサ(331)を備え、前記針衝突センサが、好ましくは、硬質の構造体までの距離を測定するように構成されている、外科用装置(1)。
〔態様8〕
態様7に記載の外科用装置(1)において、前記針衝突センサが、前記少なくとも1つの針(2)の曲げを測定するように構成されており、前記センサが、好ましくは、電気歪みセンサ、電磁センサ、または圧電センサである、外科用装置(1)。
〔態様9〕
態様7または8に記載の外科用装置(1)において、前記外科用装置がコントローラを備え、前記コントローラが、前記針衝突センサ(331)の測定に基づいて、前記少なくとも1つのフェルティング針の前記貫入深さ(16)を調整するように構成されている、外科用装置(1)。
〔態様10〕
態様1から9のいずれか一態様に記載の外科用装置(1)において、前記アクチュエータ(8)から前記少なくとも1つの針(2)に往復運動を伝達するように適合されたカップリング(128;235)を含み、前記針保護機構が、前記アクチュエータ(8)から前記針(2)を切り離し、前記カップリングを切り離すことによって、前記針が損傷することを防止するように適合されている、外科用装置(1)。
〔態様11〕
態様10に記載の外科用装置(1)において、前記針保護機構がスリッパクラッチ(235)を含み、前記少なくとも1つの針に作用する所定の力またはモーメントを超過したとき、前記スリッパクラッチ(235)が少なくとも部分的に滑る、外科用装置(1)。
〔態様12〕
態様11に記載の外科用装置(1)において、前記スリッパクラッチが、
ピンと、面取り面;
ボールスプリングと、ボールを受け入れるための対応する凹部;および
前記少なくとも1つの針のためのスプリングベアリング
のうちの1つ以上を含む、外科用装置(1)。
〔態様13〕
態様1から12のいずれか一態様に記載の外科用装置(1)において、前記針保護機構が所定の破断点を含み、前記少なくとも1つの針にかかる力が所定の閾値を超えると、前記所定の破断点が破断し、
前記所定の破断点が、好ましくは、前記少なくとも1つの針に力を伝達する機械的カップリング(553)の一部であり、
前記機械的カップリングが、好ましくは、前記所定の破断点を有するロッドを含む、外科用装置(1)。
〔態様14〕
態様1から13のいずれか一態様に記載の外科用装置と、
前記少なくとも1つの針を往復運動で駆動するアクチュエータ(8)、特に電気モータと、
を含むシステム(1)。
〔態様15〕
外科用装置(1)、好ましくは態様1から12のいずれか一態様に記載の外科用装置の製造方法であって、
- 往復運動するように構成された少なくとも1つのフェルティング針(2)と、接続インターフェース(128;135)であって、前記少なくとも1つのフェルティング針をアクチュエータ(8)に接続し、かつ、前記アクチュエータ用の当該インターフェース(128;135)から前記少なくとも1つの針(2)に往復運動を伝達する接続インターフェースと、を備える外科用装置(1)を準備するステップと、
- 前記少なくとも1つの針が往復運動中に硬質の構造体との接触により損傷することを防止する針保護機構(3;20;135;242;331;451;553)を準備するステップと、
を含む、製造方法。
【国際調査報告】