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特表2023-549875テクスチャー特性が改善された乳酸菌株
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】テクスチャー特性が改善された乳酸菌株
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20231121BHJP
   A23C 9/123 20060101ALI20231121BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20231121BHJP
【FI】
C12N1/20
A23C9/123
A23L33/135
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023529066
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(85)【翻訳文提出日】2023-05-16
(86)【国際出願番号】 EP2021081821
(87)【国際公開番号】W WO2022106405
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】20208145.1
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503260310
【氏名又は名称】セーホーエル.ハンセン アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】トマス ヤンスン
(72)【発明者】
【氏名】ディデ エレゴー クレスチャンスン
(72)【発明者】
【氏名】イェスパ ブローエン
(72)【発明者】
【氏名】ビクトーリア プレーブナ
【テーマコード(参考)】
4B001
4B018
4B065
【Fターム(参考)】
4B001AC06
4B001AC21
4B001AC25
4B001AC26
4B001AC30
4B001AC31
4B001BC14
4B001EC04
4B001EC05
4B018MD86
4B018MD87
4B018MF13
4B065AA49X
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA23
4B065BB40
4B065CA22
4B065CA42
(57)【要約】
本発明は、改善されたテクスチャー向上特性を有する新規なストレプトコッカス・サーモフィルス株、前記株を含む組成物、および前記株を使用して製造された発酵製品に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)DSM 33676 株、並びにその変異体および変種。
【請求項2】
前記変異体および変種が、DSM 33676と同じまたは類似のせん断応力および/またはゲル硬度特性を示す、請求項1に記載のストレプトコッカス・サーモフィルスDSM 33676株。
【請求項3】
前記株が、テルライト(tellurite)および/またはその塩もしくは誘導体に対して耐性である、請求項1または2のいずれか一項に記載のストレプトコッカス・サーモフィルス菌DSM 33676株。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のストレプトコッカス・サーモフィルスDSM 33676株を含む組成物。
【請求項5】
混合物として、または部品キットとして、以下:
i)請求項1~3のいずれか一項に記載のストレプトコッカス・サーモフィルスDSM33676株と、
ii)ラクトバチルス・デルブルエッキィ亜種ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp bulgaricus)種に属する菌株と
を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物がスターターカルチャーである、請求項4~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物および/またはスターターカルチャーが、凍結、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、空気乾燥、トレイ乾燥または液体形態である、請求項4~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか一項に記載のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)DSM 33676株、または請求項4~7のいずれか一項に記載の組成物を用いて基質を発酵させることを含む、発酵製品の製造方法。
【請求項9】
前記基質が乳基質である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記発酵製品が乳製品である、請求項8~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記発酵製品が、濃縮果汁、シロップ、プロバイオティクス細菌培養物、着色剤、増粘剤、香料、防腐剤およびそれらの混合物からなる群より選択される成分をさらに含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
発酵前、発酵中および/または発酵後に、基質に酵素が添加され、前記酵素が、タンパク質を架橋することができる酵素、トランスグルタミナーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、キモシン、レンネット、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか一項に記載の方法により得られる発酵製品。
【請求項14】
請求項1~3のいずれかに記載のストレプトコッカス・サーモフィルスDSM33676株を含む発酵製品。
【請求項15】
発酵製品の製造のための、請求項1~3のいずれか一項に記載のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)DSM 33676株の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus;サーモフィルス菌)の変異体に関するものであり、この変異体は、その親株の特性を本質的に維持しながら、改善されたテクスチャー特性を有することが見出された。さらに、本発明は、該変異体を含むスターターカルチャーなどの組成物、および該変異体を使用して製造された発酵食品に関する。
【背景技術】
【0002】
食品産業は、食品の味やテクスチャー(食感、いわゆる口あたり)を改善するためだけでなく、これらの食品の貯蔵寿命を延ばすために、数多くの細菌、特に乳酸菌を利用している。酪農産業の場合、乳酸菌は、(発酵による)乳の酸性化をもたらすために集中的に使用されるだけでなく、それらが組み込まれた製品のテクスチャーを改良するためにも用いられている。
【0003】
食品業界で使用されている乳酸菌(LAB)の中で、ストレプトコッカス属(Streptococcus;連鎖球菌)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディオコッカス属(Pediococcus)およびビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium;ビフィズス菌)が主に利用される。ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus;サーモフィルス菌(S. thermophilus))種の乳酸菌は、単用で、またはラクトバチルス・デルブルエッキィ亜種ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp bulgaricus;ブルガリア菌(L. bulgaricus))などの他の細菌と併用して、食品、特に発酵製品の製造に広く利用されている。それらは、特に発酵乳、例えばヨーグルトの製造に使用される酵素(ferments)製剤に特に利用される。それらの一部は、発酵製品のテクスチャーの開発において主要な役割を果たす。この特性は、乳酸菌によって周囲環境に分泌される細胞外高分子の産生と密接に関連づけられる。
【0004】
ヨーグルトの現在のトレンドは、マイルドな風味と高いテクスチャー(組織のきめ細やかさ)である。今日、これは、マイルドな風味を生み出すスターターカルチャーの使用と、増粘剤またはタンパク質の添加によって望ましいとろみ(thickness)を与えることにより達成されている。ヨーグルトの生産者は、増粘剤を添加せずにこれらの特性を具備したヨーグルトを製造できることを望んでいる。これは、コストを削減し、クリーンラベル(添加物の少ない健全な乳製品であることの表示)を付けるのを助けるだろう。このニーズを達成するための非常に魅力的な方法の1つは、高レベルのテクスチャーをもたらすスターターカルチャーを使用することである。
【0005】
ある種のLAB(菌株)は、菌体外(または細胞外)多糖(EPS)を産生する能力に関連付けられるテクスチャーの改善に大きく貢献している。それらの多糖は、莢膜の形である(カプセルの形で細胞に付着した状態である)かまたは培地中に分泌される。EPSは単一種の糖(ホモ菌体外多糖)または異なる種の糖で構成された反復単位(ヘテロ菌体外多糖)のいずれかから成る。EPSを産生するLABは、EPSが発酵食品の天然増粘剤およびテクスチャー改良剤として作用することから大きく着目されている。さらに、規定されたレオロジー特性を持つ食品グレードのLAB由来のEPSは、食品添加物としての開発・利用可能性を有する。EPSは、粘度、離漿(シネレシス)、硬度、官能特性に影響を与えることにより、LAB発酵製品のレオロジー特性を改善することが知られている。主な構造的特徴(単糖の種類と構成、グリコシド結合、非糖修飾、電荷)、コンホメーションと分子量、多糖の量、および多糖と他の系構成成分との相互作用はいずれも、表示される技術-機能特性に寄与し、影響を与えうる要因である(Zeidan他、2017 FEMS Microbiol Rev 41: 168-200)。
【0006】
菌体外多糖の存在は、乳中のサーモフィルス菌(S.thermophilus)の増殖や生存に明白な利点を与えるわけではないが、この種または他の乳業用乳酸菌によるin situ 生産は、通常、発酵乳製品に望ましい「ねっとりした(ropy)」、いわゆる粘り気のあるテクスチャーを付与する。菌体外多糖を産生するサーモフィルス菌がモッツァレラチーズの官能特性を強化できることも研究で示されている。さらなる詳細については、Broadbent他の総説を参照されたい(J. dairy Sci. 86:407-423)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
産業界の要望を満たす目的で、食品に改善されたテクスチャーを付与する(texturize)ために、乳酸菌、特にサーモフィルス菌の新規テクスチャー改善株を提供することが必要になってきている。特に、ラクトバチルス・デルブルエッキィ亜種ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp bulgaricus;ブルガリア菌)のテクスチャー改善株と併用して使用できる、サーモフィルス菌の新規テクスチャー改善株が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[発明の要約]
本発明は、特にヨーグルトなどの発酵乳製品のテクスチャーを改善する能力に関して高められた特性を有し、かつ今日の高度に工業化された乳製品生産において有用である、新規ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)菌株に関する。
【0009】
特に、本発明は、新規のサーモフィルス菌DSM 33676株を開示する。
【0010】
したがって、本発明の一態様は、サーモフィルス菌(S. thermophilus)DSM 33676株並びにその突然変異体および変種に関する。
【0011】
別の態様では、本発明は、サーモフィルス菌DSM 33676株を含む組成物に関する。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、基質をサーモフィルス菌DSM 33676株によってまたはサーモフィルス菌DSM 33676株を含む組成物によって発酵させることを含む、発酵製品の製造方法に関する。
【0013】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の方法によって得られる発酵製品に関する。
【0014】
別の態様では、本発明は、サーモフィルス菌DSM 33676株を含む発酵製品に関する。
【0015】
続いて、さらなる態様は、発酵製品の製造のためのサーモフィルス菌DSM 33676株の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[発明の詳細な説明]
定義
本発明をより詳細に説明する前に、一連の用語および一般的な慣習を最初に定義する:
【0017】
「乳」という用語は、ウシ、ヒツジ、ヤギ、バッファローまたはラクダなどのいずれかの哺乳動物を搾乳することによって得られる乳汁分泌物として理解されるべきである。好ましい実施形態では、乳は牛乳である。乳という用語には、一部または全部が植物材料から作られたタンパク質/脂肪溶液も含まれる。
【0018】
「乳基質」という用語は、本発明の方法に従って発酵させることができる任意の生乳および/または加工乳材料でありうる。従って、有用な乳基質としては、全脂乳または低脂肪乳、脱脂乳、バターミルク、還元粉乳、練乳、粉乳、ホエー(乳清)、ホエーパーミエート、ラクトース(乳糖)、ラクトースの結晶化からの母液、ホエータンパク質濃縮物、またはクリームなどのタンパク質を含む、任意の乳製品または乳様製品の溶液/懸濁液が挙げられるが、それらに限定されない。明らかに、乳基質は任意の哺乳動物に由来し、例えば、実質的に純粋な哺乳動物の乳、または還元粉乳であってよく、または乳基質は植物材料に由来することができる。
【0019】
好ましくは、乳基質中のタンパク質の少なくとも一部は、(i)カゼインまたはホエータンパク質などの哺乳動物乳中に天然に存在するタンパク質、または(ii)植物乳中に天然に存在するタンパク質である。しかし、タンパク質の一部は、乳中に天然に存在しないタンパク質であってもよい。
【0020】
発酵前に、乳基質は、当技術分野で知られている方法に従って均質化および殺菌することができる。
【0021】
本明細書で使用される「均質化」とは、可溶性懸濁液または乳濁液を得るための強力な混合を意味する。発酵前に均質化を行う場合、乳脂肪が乳から分離しないように、乳脂肪をより小さなサイズに分散させるために実施することができる。これは、乳を、高圧にて小さな穴(オリフィス)に強制的に通過させることによって達成することができる。
【0022】
本明細書で使用される「殺菌」とは、微生物などの生存している有機体の存在を低減または排除するための乳基質の処理を意味する。好ましくは、殺菌は、特定の温度を特定の時間維持することによって達成される。通常、特定の温度は加熱によって達成される。有害菌などの一定の細菌を殺菌または不活化するために、温度および持続時間を選択することができる。その後、急冷工程が続く場合がある。
【0023】
本発明の方法における「発酵」とは、微生物の作用による、炭水化物のアルコールまたは酸への変換を意味する。好ましくは、本発明の方法における発酵は、ラクトース(乳糖)から乳酸への変換を含む。
【0024】
発酵乳製品の製造に使用される発酵工程は周知であり、当業者は、温度、酸素、微生物の量および特徴、並びに処理時間などの適切な処理条件を選択する方法を知っているだろう。明らかに、発酵条件は、本発明の達成を助けるように、すなわち固体または液体形態の乳製品または非乳製品(発酵乳製品)などの発酵製品を得るために選択される。
【0025】
本文脈において、「スターターカルチャー」という用語は、様々な食品、飼料および飲料などの発酵製品の調製における、発酵工程の開始を支援するための1種以上の細菌株(乳酸菌株など)の調製物である培養物を意味する。
【0026】
本文脈において、「ヨーグルトのスターターカルチャー」は、少なくとも1つのラクトバチルス・デルブルエッキィ亜種ブルガリカス(ブルガリア菌)株と、少なくとも1つのストレプトコッカス・サーモフィルス(サーモフィルス菌)株とを含む、細菌培養物である。本明細書によれば、「ヨーグルト」とは、乳基質にブルガリア菌株とサーモフィルス菌株とを含む組成物を接種してそれを発酵させることにより得られる発酵乳製品を指す。
【0027】
「テルライト(亜テルル酸塩)耐性」という用語は、37℃で1~3日間インキュベーション後に0.1mM K2TeО3を含有するM17寒天プレート上で生育する(コロニーを形成する)ことができる菌株として理解される。
【0028】
本文脈において、「変異体(mutant)」という用語は、例えば遺伝子工学、放射線および/または化学処理によって本発明の菌株(または母株)から誘導された株、または誘導され得る株として理解すべきである。変異体は、自然突然変異体であることもできる。変異体は、機能的に同等な変異体、例えば、実質的に同じ特性、または改善された特性(例えば、粘度、ゲル硬度、マウスコーティング性(後味の滑らかさ)、風味、ポスト酸性化、酸性化速度、および/またはファージ堅牢性に関して)を有する変異体であることが好ましい。かかる変異体は本発明の一部である。特に、「変異体」という用語は、本発明の菌株に、エタンメタンスルホン酸(EMS)またはN-メチル-N′-ニトロ-N-ニトログアニジン(NTG)などの化学変異原、UV光による処理を含む、従来使用されている任意の突然変異誘発処理を施すことによって得られた菌株、または自然突然変異体を指す。変異体は、数回の突然変異誘発処理(単回処理は、1回の突然変異誘発工程に続くスクリーニング/選択工程として理解すべきである)を受けていてもよいが、現在のところ、それは20回以下、または10回以下、または5回以下の処理(またはスクリーニング/選択工程)であることが好ましい。現在好ましい変異体では、細菌ゲノム中のオリゴヌクレオチドの1%未満、0.1%未満、0.01%未満、0.001%未満、またはさらに0.0001%未満が、母株と比較して別のヌクレオチドで置き換えられているか、または欠失している。
【0029】
本文脈において、「変種(variant)」という用語は、本発明の菌株と機能的に同等である菌株、例えば粘度、ゲル硬度、マウスコーティング性(後味の滑らかさ)、風味、ポスト酸性化、酸性化速度、および/またはファージ堅牢性に関して、実質的に同じまたは改善された特性を有する菌株として理解されるべきである。適切なスクリーニング技術を用いて同定することができる、かかる変異体は本発明の一部である。
【0030】
新規ストレプトコッカス・サーモフィルス株とその適用
本発明者らは、驚くべきことに、産業界のニーズを満たすサーモフィルス菌株(すなわちDSM 33676)を同定した。この新規株は、その母株と比較して、乳製品基質中、単独でまたは混合カルチャーの一部として適用された場合、テクスチャーを高めるなどの改善されたレオロジー特性を示す。
【0031】
サーモフィルス菌株DSM 33676は、最終製品のせん断応力(すなわち粘度)やゲル硬度などのレオロジーパラメータを改善するために、例えばヨーグルトスターターカルチャーなどの乳製品カルチャー(dairy cultures)において使用できる性能を持っている。
【0032】
かくして、本発明の一態様は、ストレプトコッカス・サーモフィルスDSM 33676株並びにその突然変異体および変種に関する。
【0033】
それらの突然変異体および変種は、DSM 33676と同じかまたは類似のせん断応力および/またはゲル硬度特性を示すと考えられる。本文脈において、「類似のせん断応力」という用語は、DSM 33676のせん断応力の10%下からDSM 33676のせん断応力の10%上までに及ぶ範囲として理解されるべきであり、その範囲は、DSM 33676のせん断応力特性の9%上/下、例えばDSM 33676のせん断応力特性の8%上/下、例えばDSM 33676のせん断応力特性の7%上/下、DSM 33676のせん断応力特性の6%上/下、DSM 33676のせん断応力特性の5%上/下、DSM 33676のせん断応力特性の4%上/下、DSM 33676のせん断応力特性の3%上/下、DSM 33676のせん断応力特性の2%上/下、DSM 33676のせん断応力特性の1%上/下であってもよい。
【0034】
本文脈において、「類似のゲル硬度」という用語は、DSM 33676のゲル硬度特性の10%下からDSM 33676のゲル硬度特性の10%上までに及ぶ範囲として理解されるべきであり、その範囲は、DSM 33676のゲル硬度特性の9%上/下、例えばDSM 33676のゲル硬度特性の8%上/下、例えばDSM 33676のゲル硬度特性の7%上/下、例えばDSM 33676のゲル硬度特性の6%上/下、例えばDSM 33676のゲル硬度特性の5%上/下、例えばDSM 33676のゲル硬度特性の4%上/下、例えばDSM 33676のゲル硬度特性の3%上/下、例えばDSM 33676のゲル硬度特性の2%上/下、例えばDSM 33676のゲル硬度特性の1%上/下であってもよい。
【0035】
上記の「特性」は、せん断応力またはゲル硬度を適切に測定する方法が記述されている定義の部分の文脈において理解することができるだろう。
【0036】
乳製品などの発酵製品のテクスチャー(食感)を決定する方法は、発酵製品のせん断応力(粘度)またはゲル硬度(複素弾性率)を測定することを含み、該方法は当技術分野で容易に入手可能でありかつ既知であり、本明細書に例示される。
【0037】
本発明の一実施形態では、ストレプトコッカス・サーモフィルスDSM 33676菌株は、乳1mLあたり少なくとも107個の細胞の量で接種した場合、脱脂乳(脂肪分0.5%)中43℃にて16時間増殖させた後、300秒-1(1/s)のせん断応力(Pa)として測定された20 Paを超えるせん断応力を生ずる。
【0038】
DSM 33676の添加によって製造された発酵製品について300秒-1で測定したときに20 Pa、22 Pa、24 Pa、26 Pa、28 Pa、30 Pa、31 Pa、32 Pa、33 Pa、34 Pa、または35 Paを超えるせん断応力が望ましいだろう。せん断応力は上記のとおりに測定される。単一培養物のせん断応力は、実施例2で測定される。
【0039】
DSM 33676と少なくとも1種の追加の乳酸菌株との組成物(混合カルチャー)の添加によって製造された発酵発酵製品について測定したときに、300秒-1(s-1)で35 Pa、40 Pa、45 Pa、50 Pa、60 Pa、70 Pa、80 Pa、90 Pa、または100 Paを超えるせん断応力は、官能評価パネル(sensory pannel)によって好ましいとされる感覚的な粘度/口内のとろみ感(mouth thickness)と似ているため、望ましいだろう。せん断応力は上記のとおりに測定される。せん断応力は、実施例3に記載のとおりに測定される。
【0040】
本発明の一実施形態では、ストレプトコッカス・サーモフィルスDSM 33676株は、乳1mLあたり少なくとも107細胞の量で接種した場合、脱脂乳(脂肪分0.5%)中で43℃にて16時間増殖させた後、1.52Hzでの振動によって測定すると、89Paを超える複素弾性率(動的弾性率)を生ずる。
【0041】
DSM 33676の添加によって製造された発酵製品に対して1.52Hzでの振動により測定した場合、90 Pa、91 Pa、92 Pa、93 Pa、94 Pa、95 Pa、96 Pa、97 Pa、98 Pa、99 Pa、または100 Paを超える複素弾性率が望ましいだろう。複素弾性率は上述の通りに測定される。単一培養物の複素弾性率は、実施例2で測定される。
【0042】
DSM 33676と少なくとも1種のさらなる乳酸菌株との組成物(混合カルチャー)の添加によって製造された発酵製品に対して1.52 Hzでの振動により測定した場合、140 Pa、141 Pa、142 Pa、143 Pa、144 Pa、145 Pa、146 Pa、147 Paまたは147 Paを超える複素弾性率が望ましいだろう。これは、知覚評価パネルにより好ましいとされる感覚的な粘度/口内のとろみ感と似ているため、望ましいだろう。複素弾性率は上記のとおりに測定される。せん断応力は、実施例3に記載されているとおりに測定される。
【0043】
好ましい実施形態では、ストレプトコッカス・サーモフィルスDSM 33676株は、乳1mLあたり少なくとも107細胞の量で接種した場合、脱脂乳(脂肪分0.5%)中43℃で16時間増殖させた後で300秒-1(1/s)にて測定(Pa)したとき、その母株と比較して少なくとも1%改善されたせん断応力、例えばその母株と比較して2%、例えば3%、例えば4%、例えば5%、例えば6%、例えば7%、例えば8%、例えば9%、例えば10%改善されたせん断応力をもたらす。
【0044】
好ましい実施形態では、ストレプトコッカス・サーモフィルスDSM 33676株は、乳1mLあたり少なくとも107細胞の量で接種した場合、脱脂乳(脂肪分0.5%)中43℃で16時間増殖させた後で1.52 Hzでの振動により測定したとき、その母株と比較して少なくとも1%改善された複素弾性率、例えばその母株と比較して2%、例えば3%、例えば4%、例えば5%、例えば6%、例えば7%、例えば8%、例えば9%、例えば10%改善された複素弾性率をもたらす。
【0045】
「テクスチャー」または「口あたり(mouthfeel)」とは、口内での製品の物理的および化学的相互作用を意味する。
【0046】
予想外にも、K2TeO3のようなテルライト(亜テルル酸塩)に対して耐性のサーモフィルス菌株由来の変異体が、高められたレオロジー特性を示すことが発見された。よって、一実施形態では、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus;サーモフィルス菌)DSM 33676株はテルライトおよび/またはその塩もしくは誘導体に対して耐性である。
【0047】
組成物
本発明のさらなる態様は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(サーモフィルス菌)DSM 33676株を含むか、またはそれらから成る組成物に関する。
【0048】
本発明の組成物は、いくつかの形態で提供され得る。該組成物は凍結形態、乾燥形態、凍結乾燥形態、または液体形態であることができる。従って、一実施形態では、該組成物は、凍結、乾燥、凍結乾燥、または液体の形態である。
【0049】
本発明の組成物は、凍結保護剤、凍結防止剤、抗酸化剤、栄養素、増量剤、香料、またはそれらの混合物をさらに含んでもよい。該組成物は、好ましくは、凍結保護剤、凍結防止剤、抗酸化剤および/または栄養素の1つまたは複数、より好ましくは凍結保護剤、凍結防止剤および/または抗酸化剤、最も好ましくは凍結保護剤または凍結防止剤、またはその両方を含む。凍結保護剤および任意の凍結防止剤などの保護剤の使用は、当業者に知られている。適切な凍結保護剤または凍結防止剤には、単糖、二糖、三糖、および多糖類(グルコース、マンノース、キシロース、ラクトース、スクロース、トレハロース、ラフィノース、マルトデキストリン、デンプンおよびアラビアゴム(アカシア)など)、ポリオール類(エリスリトール、グリセロール、イノシトール、マンニトール、ソルビトール、スレイトール、キシリトールなど)、アミノ酸(プロリン、グルタミン酸など)、複合物質(スキムミルク、ペプトン、ゼラチン、酵母エキスなど)、無機化合物(例えばトリポリリン酸ナトリウム)が含まれる。一実施形態では、本発明にかかる組成物は、イノシン-5′-一リン酸(IMP)、アデノシン-5′-一リン酸(AMP)、グアノシン-5′-一リン酸(GMP)、ウラノシン-5′-一リン酸(UMP)、シチジン-5′-一リン酸(CMP)、アデニン、グアニン、ウラシル、シトシン、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、ヒポキサンチン、キサンチン、ヒポキサンチン、オロチジン、チミジン、イノシン、および任意のそのような化合物の誘導体から選択された1または複数の凍結保護剤を含んで成ることができる。適切な抗酸化剤としては、アスコルビン酸、クエン酸およびその塩、ガレート、システイン、ソルビトール、マンニトール、マルトースが挙げられる。適切な栄養素としては、糖、アミノ酸、脂肪酸、ミネラル、微量元素、ビタミン類(ビタミンB群、ビタミンCなど)が挙げられる。当該組成物は、必要に応じて、増量剤(ラクトース、マルトデキストリンなど)および/または香料をはじめとして追加の物質を含んでもよい。
【0050】
本発明の一実施形態では、凍結保護剤は、その凍結保護性に加えてブースター効果を有する剤または同剤の混合物である。
【0051】
「ブースター効果」という表現は、凍結保護剤が発酵または変換を行う予定の培地に接種されたときに、解凍または再構成された(スターター)カルチャーに、該凍結保護剤が増加した代謝活性(ブースター効果)を付与する状況を記述するために使用される。生存能力と代謝活性とは同義の概念ではない。市販の凍結または凍結乾燥されたカルチャーは、代謝活性のかなりの部分を失っている可能性があるけれども、自身の生存能力を保持することができる。例えば、カルチャーは、たとえ短期間の間であっても貯蔵保管された場合、それらの酸生成(酸性化)活性を失う可能性がある。したがって、生存能力とブースター効果は、異なるアッセイによって評価する必要がある。生存能力は、コロニー形成単位の測定などの生存能アッセイによって評価される一方、ブースター効果は、カルチャーの生存能力に対する解凍または再構成されたカルチャーの関連代謝活性を定量化することによって評価される。「代謝活性」という用語は、カルチャーの脱酸素活性、その酸生成活性、すなわち例えば乳酸、酢酸、ギ酸および/またはプロピオン酸の生成、またはその代謝産物の生成活性、例えばアセトアルデヒド、(α-アセトラクテート、アセトイン、ジアセチル、および2,3-ブチレングリコール(ブタンジオール))などの芳香化合物の生成活性を指す。
【0052】
一実施形態において、本発明の組成物は、材料の重量%(w/w)として測定される、0.2%~20%の凍結保護剤または同剤の混合物を含有するかまたは含んで成る。しかしながら、重量%で0.2%から15%、0.2%から10%、0.5%から7%、および1%から6%の範囲の量、例えば凍結材料の重量%(w/w)として測定される凍結保護剤または同剤の混合物の2重量%~5重量%の範囲内を含む量で、凍結保護剤または同剤の混合物を添加することが好ましい。好ましい実施形態では、培養物は、材料の重量%(w/w)として測定される約3%の凍結保護剤または同剤の混合物を含む。凍結保護剤の約3%の量は、100 mM範囲の濃度に相当する。本発明の実施形態の各態様について、範囲は、記載された範囲の増分であり得ることを認識すべきである。
【0053】
さらなる態様では、本発明の組成物は、細菌細胞、例えばサーモフィルス菌の種に属する細胞、例えば(実質的な)ウレアーゼ陰性菌細胞のためのブースター(例えば、発育ブースターまたは酸性化ブースター)としてのアンモニウム塩〔例えば有機酸のアンモニウム塩(例えばギ酸アンモニウムおよびクエン酸アンモニウム)〕を含有するまたは含んで成る。「アンモニウム塩」、「ギ酸アンモニウム」などの用語は、塩の供給源またはイオンの組み合わせとして理解されるべきである。例えば「ギ酸アンモニウム」または「アンモニウム塩」の「供給源(または単に源ともいう)」という用語は、細胞の培養物に添加すると、ギ酸アンモニウムまたはアンモニウム塩を提供する化合物または化合物の混合物を指す。いくつかの実施形態では、アンモニウム源は、アンモニウムを増殖培地に放出するが、他の実施形態では、アンモニウム源は代謝されてアンモニウムを生成する。いくつかの好ましい実施形態では、アンモニウム源は外因性である。いくつかの特に好ましい実施形態では、アンモニウムは乳基質によって供給されない。もちろん、アンモニウム塩の代わりにアンモニアを加えてもよいことは理解すべきである。従って、アンモニウム塩という用語は、アンモニア(NH3)、NH4OH、NH4 などを含む。
【0054】
一実施形態では、本発明の組成物は、増粘剤および/または安定剤、例えばペクチン(例えばHMペクチン、LMペクチン)、ゼラチン、CMC、大豆繊維/大豆ポリマー、デンプン、加工デンプン、カラギーナン、アルギン酸塩、およびグアーガムを含んでもよい。
【0055】
微生物が多糖(EPSなど)を産生し、これが酸性化乳(acidified milk)製品に濃い/粘り気のあるテクスチャーを生じさせるような実施形態では、酸性化乳製品は、増粘剤および/または安定剤、例えばペクチン(HMペクチン、LMペクチンなど)、ゼラチン、CMC、大豆繊維/大豆ポリマー、デンプン、加工デンプン、カラギーナン、アルギン酸塩、グアーガムなどを実質的に不含有、または完全に不含有に製造される。実質的に不含有とは、製品が0重量%~20重量%(w/w)(例えば、0%~10%、0%~5%、または0%~2%、または0%~1%)の増粘剤および/または安定剤を含んでいると理解すべきである。
【0056】
該組成物は、混合物であってもよいし、以下を含む部品キット(kit-of-parts)としてであってもよい:
i)ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus;サーモフィルス菌)DSM33676株、および
ii)ラクトバチルス・デルブルエッキィ亜種ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp bulgaricus;ブルガリア菌)種に属する菌株。
【0057】
ヨーグルトのような乳製品などの製品の酸度、風味、テクスチャーの最善の組み合わせを得るために、サーモフィルス菌とブルガリア菌との組み合わせが頻繁に用いられる。
【0058】
一実施形態では、混合物または部品キットは、サーモフィルス菌DSM 24011株およびブルガリア菌DSM 33571株と組み合わせたサーモフィルス菌DSM 33676株を含みうる。
【0059】
別の実施形態では、混合物または部品キットは、サーモフィルス菌DSM 24011株およびブルガリア菌DSM 24074株と組み合わせたサーモフィルス菌DSM 33676株を含みうる。
【0060】
実施例3は、サーモフィルス菌とブルガリア菌とを含む混合カルチャーを示す。
【0061】
プロバイオティクス菌株
「プロバイオティクス菌」という用語は、消費者の健康増進効果を達成する目的で消費者に適切な量で投与される生存細菌(生菌)を指す。プロバイオティクス菌は、摂取後に胃腸管の環境を生きぬくことができ、消費者の腸でコロニーを形成する能力をもつ。
【0062】
ラクトバチルス属(Lactobacillus)の分類法が2020年に改正されたことは理解されよう。新しい分類法は、Zheng他、2020中に開示されており、別段何も指摘しない限り、本明細書にまとめられる。本発明の目的上、表1は、本発明に関連する一部のラクトバチルス種の新旧の名称の一覧を示す。
【0063】
【表1】
【0064】
本発明の特定の実施形態では、本発明にかかるプロバイオティクス菌株は、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus;アシドフィルス菌)、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei;パラカゼイ菌)、ラクチカゼイバチルス・ラムノサス(Lacticaseibacillus rhamnosus)、ラクチカゼイバチルス・カゼイ(Lacticaseibacillus casei;カゼイ菌)、ラクトバチルス・デルブルエッキィ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・ラクチス(Lactobacillus lactis)、ラクチプランティバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)、リモシラクトバチルス・ロイテリ(Limosilactobacillus reuteri;ロイテリ菌)およびラクトバチルス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)などのラクトバチルス属の細菌、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ブレビ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp. lactis)、ビフィドバクテリウム・デンチウム(Bifidobacterium dentium)、ビフィドバクテリウム・カテニュラタム(Bifidobacterium catenulatum)、ビフィドバクテリウム・アンギュラタム(Bifidobacterium angulatum)、ビフィドバクテリウム・マグナム(Bifidobacterium magnum)、ビフィドバクテリウム・シュードカテニュラタム(Bifidobacterium pseudocatenulatum)およびビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)などのビフィドバクテリウム属の細菌から成る群より選択される。
【0065】
本発明の特定の実施形態では、プロバイオティクスのラクトバチルス属株は、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus;アシドフィルス菌)、ラクチカセイバチルス・パラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei;パラカゼイ菌)、ラクチカセイバチルス・ラムノサス(Lacticaseibacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lacticaseibacillus casei;カゼイ菌)、ラクトバチルス・デルブルエッキィ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・ラクチス(Lactobacillus lactis)、ラクチプランティバチルス・プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)、リモシラクトバチルス・ロイテリ(Limosilactobacillus reuteri;ロイテリ菌)、ラクトバチルス・ジョンソニイLactobacillus johnsonii)からなる群より選択される。
【0066】
本発明の特定の実施形態では、プロバイオティクスのラクトバチルス株は、ラクティカセイバチルス・ラムノサス株およびラクチカセイバチルス・パラカゼイ株からなる群から選択される。
【0067】
本発明の特定の実施形態では、プロバイオティクス菌株は、ATCC 53103として寄託されたラクチカゼイバチルス・ラムノサス(Lacticaseibacillus rhamnosus)LGG(登録商標)菌株である。
【0068】
本発明の特定の実施形態では、プロバイオティクス菌株は、 ATCC 55544として寄託されたラクチカセイバチルス・パラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei)CRL 431菌株である。
【0069】
本発明の特定の実施形態では、プロバイオティクス菌のビフィドバクテリウム株は、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ブレベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクチス(Bifidobacterium animalis subsp. lactis)、ビフィドバクテリウム・デンチウム(Bifidobacterium dentium)、ビフィドバクテリウム・カテニュラタム(Bifodobacterium catenulatum)、ビフィドバクテリウム・アンギュラタム(Bifidobacterium angulatum)、ビフィドバクテリウム・マグナム(Bifidobacterium magnum)、ビフィドバクテリウム・シュードカテニュラタム(Bifidobacterium pseudocatenulatum)、ビフィドバクテリウム・インファンチス(Bifidobacterium infantis)からなる群より選択される。
【0070】
本発明の特定の実施形態では、プロバイオティクス菌のビフィドバクテリウム・プロバイオチクス(Bifidobacterium probioticus)株は、DSM 15954として寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクチス(Bifidobacterium animalis subsp. lactis)BB-12菌株である。
【0071】
上記の混合物または部品キットは、プロバイオティクス菌などであるがこれに限定されない他の乳酸菌とさらに組み合わせることができる。一実施形態では、少なくとも1つの乳酸菌は、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクチス(Bifidobacterium animalis subsp. Lactis)(例:BB-12(登録商標))、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)(例:LA-5(登録商標))、ラクチカゼイバチルス・ラムノサス(Lacticaseibacillus rhamnosus)(例:LGG(登録商標))およびそれらの組み合わせなどのビフィドバクテリウム属からなる群より選択される。
【0072】
どのビフィドバクテリウム属、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)および/またはラクチカゼイバチルス・ラムノサス(Lacticaseibacillus rhamnosus)を適用するかは、その用途と生産する食品に依存する。
【0073】
一実施形態では、混合物または部品キットは、ストレプトコッカス・サーフィルス(サーモフィルス菌)DSM 24011株、ラクトバチルス・デルブリュエッキ亜種ブルガリカス(ブルガリア菌)DSM 33571株およびビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス DSM 33443株と組み合わせた、ストレプトコッカス・サーモフィルスDSM 33676株を含んでもよい。
【0074】
一実施形態では、混合物または部品キットは、サーモフィルス菌DSM 24011株、ブルガリア菌DSM 24074株および乳酸菌(S. lactis)DSM 33443株と組み合わせた、サーモフィルス菌DSM 33676株である。
【0075】
一実施形態では、混合物または部品キットは、サーモフィルス菌DSM 24011株、ブルガリア菌DSM 33571株、乳酸菌DSM 33443株およびアシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)DSM 13241株と組み合わせた、サーモフィルス菌DSM 33676株である。
【0076】
一実施形態では、混合物または部品キットは、サーモフィルス菌DSM 24011株、ブルガリア菌DSM 24074株、乳酸菌DSM 33443株およびアシドフィルス菌DSM 13241株と組み合わせた、サーモフィルス菌DSM 33676株である。
【0077】
一実施形態では、混合物または部品キットは、サーモフィルス菌DSM 24011株、ブルガリア菌DSM33571株およびラクチカゼイバチルス・ラムノサスDSM 33156株と組み合わせて、サーモフィルス菌DSM 33676株を含んでもよい。
【0078】
一実施形態では、混合物または部品キットは、サーモフィルス菌DSM 24011株、ブルガリア菌DSM 24074株およびラクチカゼイバチルス・ラムノサス(Lacticaseibacillus rhamnosus)DSM 33156株と組み合わせて、サーモフィルス菌DSM 33676株を含んでもよい。
【0079】
上記の混合物または部品キットは、他のサーモフィルス菌株とさらに組み合わせることができる。これらの菌株は、例えばDSM 32823および/またはDSM 32587であり得る。
【0080】
「混合物」という表現は、サーモフィルス菌株(複数可)とブルガリア菌株(複数可)が物理的に一緒に混合されていることを意味する。一実施形態では、サーモフィルス菌株(複数可)とブルガリア菌株(複数可)が、同じ箱または同じパウチに入っている。
【0081】
対照的に、サーモフィルス菌株(複数可)とブルガリア菌株(複数可)を含む「部品キット」という表現は、サーモフィルス菌株の培養物とブルガリア菌株の培養物とが物理的に離れているが、一緒に使用されることが意図されていることを意味する。よって、サーモフィルス菌株の培養物とブルガリア菌株の培養物は別個の箱または小袋に入っている。一実施形態では、サーモフィルス菌株の培養物とブルガリア菌株の培養物は同一の形態の下にあり、すなわち、凍結形態、ペレットもしくは凍結ペレットの形態、粉末形態、例えば乾燥または凍結乾燥粉末形態である。
【0082】
本発明の特定の実施形態では、組成物は、104~1012 CFU(コロニー形成単位)/gのサーモフィルス菌株、例えば105~1011 CFU/g、例えば106~1010 CFU/g、または例えば107~109 CFU/gのサーモフィルス菌株を含む。
【0083】
特定の実施形態では、該組成物は、104~1012 CFU/gのブルガリア菌(L. bulgaricus)、例えば105~1011 CFU/g、例えば106~1010 CFU/g、または例えば107~109 CFU/gのブルガリア菌(L.brugalicus)株をさらに含む。
【0084】
ブルガリア菌、サーモフィルス菌および他の乳酸菌は、発酵乳製品等のための乳業など、様々な食品の生産において、技術的な目的を果たすスターターカルチャーとして汎用されている。従って、別の好ましい実施形態では、該組成物はスターターカルチャーとして適している。
【0085】
該組成物は、ヨーグルトスターターカルチャーなどのスターターカルチャーであってもよい。
【0086】
該組成物および/またはスターターカルチャーは、凍結、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、空気乾燥(風乾)、トレイ乾燥、または液体形態であり得る。典型的には、組成物および/またはスターターカルチャーの貯蔵安定性は、低水分活性を有する製品を配合することによって延長することができる。水分活性(Aw)を制御することにより、製品への水分の移動の影響を予測して調整することが可能である。従って、本明細書の乾燥組成物の水分活性(Aw)は、0.01~0.8の範囲、好ましくは0.05~0.4の範囲内であることが好ましいだろう。
【0087】
本発明のさらなる態様は、ストレプトコッカス・サーモフィルスDSM 33676株または本発明にかかる組成物を用いて基質を発酵させることを含む、発酵製品の製造方法に関する。
【0088】
生産しようとする製品に応じて、基質は乳基質であることができる。ヨーグルト、バターミルクまたはケフィア等の発酵乳製品が最終製品である場合、乳基質が特に好ましい。
【0089】
乳基質は、動物または植物由来の製品であることができる。従って、一実施形態では、発酵製品は乳製品である。乳製品は、限定されないがヨーグルト、バターミルクおよびケフィアなどのような発酵乳製品、または限定されないがフレッシュチーズやパスタ・フィラタチーズなどのようなチーズからなる群より選択することができる。
【0090】
発酵製品および/または乳製品自体が、発酵中に生成された酸および風味を含んでいるとしても、発酵製品および/または乳製品は、濃縮果実、シロップ、プロバイオティクス菌株もしくは培養物、着色剤、増粘剤、香料、保存剤およびそれらの混合物からなる群より選択された成分を含んでいることが望ましい場合がある。
【0091】
同様に、発酵前、発酵中および/または発酵後に、タンパク質を架橋できる酵素、トランスグルタミナーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、キモシン、レンネットおよびそれらの混合物からなる群より選択される酵素を、乳基質などの基質に添加してもよい。
【0092】
一実施形態では、発酵製品は、撹拌型製品、固形型製品または飲用製品の形態であってもよい。
【0093】
明らかに、本発明の別の態様は、本発明の方法によって得られる発酵製品に関する。従って、本発明の一態様は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)DSM 33676株を含む発酵製品でもある。発酵製品は乳製品であってもよい。
【0094】
本発明の最後の態様は、発酵製品の製造のためのストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)DSM 33676株の使用に関する。ここでも、発酵製品は乳製品であり得る。
【0095】
用語「a」、「an」、「the」、および類似の指示語の使用は、本明細書に別に指示されているか、文脈により明らかに矛盾していない限り、本発明を説明する文脈(特に、特許請求の範囲の文脈)において単数形と複数形の両方を包含すると解釈すべきである。「含む」、「有する」、「包含する」、および「含有する」という用語は、特に断りのない限り、制限のない(open-ended)用語(すなわち、「含んでいるが、それに限定されない」を意味する)として解釈すべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書で別段の指示がない限り、範囲内に入る個々の値を個別に参照する簡略的方法として機能することを単に意図しており、個々の値は、あたかも本明細書において個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されたすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈により明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供されるすべての例または例示的な文言(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより明確にする(illuminate)することを意図しており、別段の主張がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。明細書の文言は、特許請求されていないいずれかの要素が、本発明の実施に不可欠であることを示していると解釈すべきではない。
【0096】
本明細書における明らかに以前に公開された文献のリストまたは考察は、必ずしもその文献が技術の現状の一部である、または一般的な知識である、ということを認めていると見なされるべきではない。
【0097】
本発明の所与の態様、特徴、またはパラメータに関する選好、オプションおよび実施形態は、文脈上別段の指示がない限り、本発明の他のすべての局面、特徴およびパラメータに関するあらゆる選択、オプションおよび実施形態と組み合わせて開示されたものと見なされるべきである。これは、本明細書に記載の方法によって得られる最終組成物の一部となり得る、マイクロカプセル化された細菌培養物およびそのすべての特徴の説明に特に当てはまる。本発明の実施形態および特徴はまた、以下の項目で概説され、また、以下の非限定的実施例によっても説明される。
【0098】
微生物寄託と専門的ソリューション
当該ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株は、2020年10月29日に、セーホーエル.ハンセン アクティーゼルスカブ(Chr. Hansen A/S、ヘルスホルム、デンマーク国)により、受託番号DSM 33676のもとに国際寄託機関のDSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr. 7B、D-38124 Braunschweig、ドイツ国)に寄託された。
【0099】
本出願人は、特許が付与される日まで、下記の寄託微生物のサンプルをあくまで専門家だけが利用できるようにすることを要求している。
【0100】
【表2】
【0101】
項目
[X1]ストレプトコッカス・サーモフィルスDSM 33676株、並びにその変異体および変種。
【0102】
[X2]前記変異体および変種が、DSM 33676と同じまたは類似のせん断応力および/またはゲル硬度特性を示す、項目X1に記載のストレプトコッカス・サーモフィルスDSM 33676株。
【0103】
[X3]前記株が、テルライトおよび/またはその塩もしくは誘導体に対して耐性である、項目X1~X2のいずれか一項に記載のストレプトコッカス・サーモフィルスDSM 33676株。
【0104】
[Y1]項目X1~X3のいずれか一項に記載のストレプトコッカス・サーモフィルスDSM 33676株を含む組成物。
【0105】
[Y2]以下:
i)項目X1~X3のいずれか一項に記載のストレプトコッカス・サーモフィルスDSM 33676株と、
ii)ラクトバチルス・デルブルエッキィ亜種ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp bulgaricus)種に属する株と
を含む混合物としてまたは部品キット(kit-of-parts)として含んでいる、項目Y1に記載の組成物。
【0106】
[Y3]前記組成物がスターターカルチャーである、項目Y1~Y2のいずれか一項に記載の組成物。
[Y4]前記組成物および/またはスターターカルチャーが、凍結、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、空気乾燥(風乾)、トレイ乾燥または液体形態である、項目Y1~Y3のいずれか一項に記載の組成物。
【0107】
[Z1]項目X1~X3のいずれか一項に記載のストレプトコッカス・サーモフィルスDSM 33676株、または項目Y1~Y4のいずれか一項に記載の組成物を用いて基質を発酵させることを含む、発酵製品の製造方法。
[Z2]前記基質が乳基質である、項目Z1に記載の方法。
【0108】
[Z3]前記乳基質が動物または植物由来の製品である、項目Z1~Z2のいずれか一項に記載の方法。
[Z4]前記発酵製品が乳製品である、項目Z1~Z3のいずれか一項に記載の方法。
【0109】
[Z5]前記乳製品が、発酵乳製品(例えば、ヨーグルト、バターミルク、またはケフィア)またはチーズ(例えば、フレッシュチーズまたはパスタ・フィラータチーズ)からなる群より選択される、項目Z4に記載の方法。
【0110】
[Z6]前記発酵製品が、濃縮果実、シロップ、プロバイオティクス菌株またはカルチャー、着色剤、増粘剤、香料、防腐剤およびそれらの混合物からなる群より選択された成分をさらに含む、項目Z4~Z5のいずれか一項に記載の方法。
【0111】
[Z7]発酵前、発酵中および/または発酵後に酵素が基質に添加され、前記酵素はタンパク質を架橋することができる酵素、トランスグルタミナーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、キモシン、レンネットおよびそれらの混合物から成る群より選択される、項目Z6に記載の方法。
[Z8]前記発酵製品が、撹拌型製品、固形型製品、または飲用製品の形態である、項目Z1~Z7のいずれか一項に記載の方法。
【0112】
[Q1]項目Z1の方法により得られる発酵製品。
[Q2]前記発酵製品が乳製品である、項目Q1に記載の発酵製品。
【0113】
[P1]項目X1~X3のいずれか一項に記載のストレプトコッカス・サーモフィルス菌DSM 33676株を含む発酵製品。
[P2]前記発酵製品が乳製品である、項目P1に記載の発酵製品。
【0114】
[W1]発酵製品の製造のための項目X1~X3のいずれか一項に記載のストレプトコッカス・サーモフィルスDSM 33676株の使用。
[W2]前記発酵製品が乳製品である、項目W1に記載の使用。
【実施例
【0115】
実施例1:サーモフィルス菌(S. thermophilus)DSM 18111株からのテルライト(亜テルル酸塩)耐性変異体の単離および テクスチャー改善特性の向上
【0116】
テルライト(tellurite)耐性変異体は、DSM 18111株(「母株」とも呼ばれる)から次のようにして分離された。
【0117】
まず0.1mM K2TeO3を含むM17寒天プレート上にDSM 18111株の一晩培養物を塗抹し、続いて37℃で1~3日間インキュベートすることにより、変異体を直接スクリーニングした。0.1mM K2TeO3を含むM17寒天プレート上で、安定したテルライト耐性表現型を示す15の変異体を精製した。テルライト耐性の表現型を示すテルライト耐性変異体の1つを、DSM 33676と命名した。
【0118】
DSM 18111の変異体を、乳中1%の0.1mM KTeO3を含有するM17一晩培養物から接種し、37℃で24時間インキュベートした。次いで、発酵乳の粘度を、25mLピペットからの流出時間を測定することによって決定した。流出時間が長いほど、試験媒体の粘度が高い。流出時間は、3回の測定の平均として決定された。
【0119】
流出時間、すなわち粘度は、テルライト耐性変異体で増加した。変異体DSM 33767については、母株DSM 18111と比較して20%の粘度増加が測定された。
【0120】
この実験により、テルライト耐性変異体を単離することにより、EPS陽性サーモフィルス菌株のテクスチャー改善特性をさらに高めることが可能であることが実証された。
【0121】
実施例2:せん断応力と複素弾性率に関する母株DSM 18111とDSM 33676株との比較
【0122】
DSM 18111株を9.5%の還元脱脂乳に接種し、43℃でインキュベートして一晩培養した。次いで、DSM 18111を、脱脂乳(脂肪分0.5%)中1%の乳一晩培養物から2連で接種し、41℃で16時間インキュベートした。同様に、脱脂乳(0.5%)中1%の乳一晩培養物からDSM 33676株を接種し、43℃で16時間インキュベートした。
【0123】
インキュベーションの翌日、発酵乳を13℃に調整し、サンプルが均一になるまで、穴の開いたディスクを取り付けたスティックを用いて穏やかに攪拌した。サンプルのレオロジー特性は、C25同軸測定システムを備えたレオメーター(StressTech、Reologica Instruments社製、スウェーデン)で評価した。
【0124】
粘度測定試験は、0.27から300秒-1(1/s)まで21段階で変化するせん断速度を使って実施した。せん断速度を上げてからその後下げ、せん断応力と見かけの粘度の上昇曲線と下降曲線を記録した。
【0125】
遅延時間と積算時間は、それぞれ5秒と10秒であった。さらなる分析には、300秒-1(s-1)のせん断応力を選択した。
【0126】
結果
単一菌株の測定結果:
【0127】
【表3】
【0128】
DSM 33676は、DSM 18111と比較して8%増加した、ゲル硬度(複素弾性率)を示した(2回の測定の平均)。
【0129】
共生培養(混合培養)の結果:
スケールアップのための変異体DSM 33676株の選択は、低タンパク(3%)脱脂乳を使用して行い、95℃で5分間熱処理し、使用前に発酵温度まで冷却した。接種材料は、酵母抽出物を添加した無菌乳中で候補株を一晩培養したものであった。変異株DSM 33676を、同科である株に由来する、既に工業化されている改良株(DSM 22935)と比較した。
【0130】
すべての変異体を、試験菌株50%、酸性化サーモフィルス菌10%、テクスチャー改善サーモフィルス菌30%、およびブルガリア菌(L. brugalicus)10%からなるバックグラウンド培養物において試験した。各変異体に対して12通りの異なるバリエーションを作製した。ハミルトン(Hamilton)ロボット(TADM)により吸引中の抵抗を測定して、粘度の増加を調べた。各変異体の平均結果を基準株の平均と比較した。吸引時の陰圧(mPa)が高くなるほど、サンプルの粘度が高くなった。
【0131】
下表に結果を示す。
【0132】
【表4】
【0133】
実施例3:DSM 33676を含むブレンドを用いた攪拌プレーンヨーグルトの製造
材料および方法
乳基質:4.0%タンパク質分、1.5%脂肪分。Arla 社製中温加熱脱脂粉乳(SMP)を有する新鮮乳。
【0134】
ヨーグルト・カルチャー:カルチャー1(ブルガリア菌DSM 33571株、サーモフィルス菌DSM 24011株およびDSM 33676)、およびF-DVS YoFlex(登録商標)プレミアム1.0(1種のブルガリア菌株を2種の異なるサーモフィルス菌株との組み合わせで含む自社特許の従来技術スターターカルチャー)。
【0135】
【表5】
【0136】
結果
複合弾性率G*-ゲル硬度に相関する
【0137】
複素弾性率G*は、Anton Paar社製のASCレオメーターのDSR502型を使用した振動測定によって評価される。この方法は、分析試料を2つの表面の間で振動させる振動工程に基づいており、上部のジオメトリ(ボブ)が移動し、下部のカップが静止したままの状態で、試料が2つの表面間を上下振動する。振動は、一定のひずみで0.5~8Hzから実行される。これらの評価には、1.52Hzでの測定から結果が抽出される。試料は、測定前に13℃に1時間置かれる。各試料を、スプーンを使って底から上へ5回穏やかに攪拌して、均一な試料になるようにする。レオロジーカップを標線まで満たし、試料マガジン内に配置する。2つの別々のヨーグルトカップを使用して試料サンプルを2回反復測定する。測定は+7日目に実施され、測定温度は13℃に設定される。試料は測定日まで5℃で保存する。これらの結果は3回の製造を含むため、合計6点のデータポイントが存在する。
【0138】
【表6】
【0139】
せん断応力-口内でのとろみ感(mouth-thickness)に相関する
せん断応力は、Anton Paar社のASCレオメーターDSR502型を使用して測定する。この方法では、10-3-1(s-1)から300秒-1(s-1)へ進み、次いで10-3-1(s-1)に戻る、試料の回転変形に基づく回転ステップを使用している。対応するせん断応力が測定される。これらの結果では、4点のせん断速度(0.3;30;135;300秒-1)が流動曲線から抽出される(表4を参照)。試料は、測定前に1時間13℃に置かれる。各試料を底から上へスプーンで穏やかに5回かき混ぜ、均一な試料になるようにする。レオロジーカップの標線までサンプルを満たし、試料マガジン上に配置する。2つの別々のヨーグルトカップを使用して試料を2回測定する。測定は+7日目に実施し、測定温度を13℃に設定する。試料は測定日まで5℃で保存しておく。
【0140】
【表7】
【国際調査報告】