IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グリーン・クロス・コーポレイションの特許一覧

特表2023-549878自己抗体に対する回避率又は活性が向上したADAMTS13バリアント
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】自己抗体に対する回避率又は活性が向上したADAMTS13バリアント
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/64 20060101AFI20231121BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20231121BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231121BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20231121BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20231121BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20231121BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20231121BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231121BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20231121BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231121BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20231121BHJP
   C12N 15/57 20060101ALN20231121BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20231121BHJP
【FI】
C12N9/64 Z ZNA
C07K16/00
C07K19/00
A61P7/02
A61P7/06
A61P13/12
A61K38/16
A61K47/68
A61K31/7088
A61K48/00
C12N15/13
C12N15/57
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023529074
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(85)【翻訳文提出日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 KR2021014991
(87)【国際公開番号】W WO2022108148
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0154710
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】506379781
【氏名又は名称】グリーン・クロス・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】GREEN CROSS CORP.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ナム, ヒョン-ジャ
(72)【発明者】
【氏名】ファン, スン ホ
(72)【発明者】
【氏名】クワック, ヒチョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ, カヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム, スヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ユ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ, ヨンミン
(72)【発明者】
【氏名】イ, ジェ モク
(72)【発明者】
【氏名】シン, スンヘ
(72)【発明者】
【氏名】クォン, ヨン ウン
(72)【発明者】
【氏名】チョ, スンヒョン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC14
4C076CC17
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE41N
4C076EE59
4C076FF34
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084NA14
4C084ZA51
4C084ZA54
4C084ZA55
4C084ZA81
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA51
4C086ZA54
4C086ZA55
4C086ZA81
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA89
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、自己抗体に対する回避率が改善されたADAMTS13変異体タンパク質、及びこれを使用して血栓性疾患を予防又は治療するための組成物に関する。本発明のADAMTS13バリアントタンパク質は、ADAMTS13の主要なドメインに対して高い結合親和性を有することが知られている代表的な自己抗体を効率的に回避することにより、そのような自己抗体の存在が主要な病因である様々な血栓性疾患、例えばTTP(血栓性血小板減少性紫斑病)等に対する有効な治療用組成物として使用することができ、身体に投与される場合その生物活性を安定に維持することができる。さらに、自己抗体によって認識される新たな部位がADAMTS13内で同定されることから、対応する部位内の様々な変異の組み合わせを適用することによって、本発明は、自己抗体回避率が改善された新規のADAMTS13バリアントをスクリーニングする上で有用に使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1の85番目、93番目、126番目、135番目、278番目、282番目、308番目、314番目、317番目、334番目、364番目、376番目、413番目、427番目、452番目、465番目、567番目、578番目、585番目、589番目、607番目、608番目、609番目、612番目、618番目、624番目、630番目、635番目、643番目、650番目、651番目、654番目、655番目、656番目、658番目、664番目、及び672番目の残基からなる群から選択される1つ又は複数のアミノ酸残基の置換を含むADAMTS13(a disintegrin and metalloproteinase with a thrombospondin type 1 motif, member 13)バリアントタンパク質、又はその機能性断片。
【請求項2】
前記ADAMTS13のバリアントタンパク質が、以下の位置にアミノ酸残基の置換を含む各バリアントタンパク質からなる群から選択される、請求項1に記載のADAMTS13バリアントタンパク質又はその機能性断片:
85番目及び317番目の残基;612番目の残基;282番目、465番目、及び672番目の残基のうち2つ以上;635番目の残基;452番目及び612番目の残基;278番目、334番目、及び427番目の残基のうち2つ以上;618番目の残基;135番目の残基;126番目、567番目、及び651番目の残基のうち2つ以上;413番目の残基;334番目の残基;314番目の残基;93番目、364番目、及び376番目の残基のうち2つ以上;308番目の残基;656番目の残基;607番目の残基;612及び624番目の残基;589番目の残基;650番目及び656番目の残基;643番目の残基;585番目及び658番目の残基;630番目、654番目、及び664番目の残基のうち2つ以上;589番目、608番目、609番目、624番目、及び655番目の残基のうち4つ以上;578番目の残基;585番目の残基;314番目及び635番目の残基;並びに314番目及び612番目の残基。
【請求項3】
85番目の残基がPheで、93番目の残基がValで、126番目の残基がMetで、135番目の残基がIleで、278番目の残基がIleで、282番目の残基がAlaで、308番目の残基がLysで、314番目の残基がThrで、317番目の残基がHisで、334番目の残基がThr又はValで、364番目の残基がArgで、376番目の残基がAspで、413番目の残基がAspで、427番目の残基がAsnで、452番目の残基がIleで、465番目の残基がAspで、567番目の残基がSerで、578番目の残基がLeuで、585番目の残基がAsn又はMetで、589番目の残基がGlnで、607番目の残基がArgで、608番目の残基がMetで、609番目の残基がLeuで、612番目の残基がPhe又はTyrで、618番目の残基がSerで、624番目の残基がAsp又はCysで、630番目の残基がLeuで、635番目の残基がValで、643番目の残基がPheで、650番目の残基がHisで、651番目の残基がAspで、654番目の残基がGlyで、655番目の残基がValで、656番目の残基がArg又はHisで、658番目の残基がHisで、664番目の残基がAsnで、及び672番目の残基がValでそれぞれ置換されている、請求項1に記載のADAMTS13バリアントタンパク質又はその機能性断片。
【請求項4】
(a)請求項1~3のいずれか一項に記載のADAMTS13のバリアントタンパク質又はその機能性断片;及び
(b)前記(a)にコンジュゲートされたIgG4免疫グロブリンのFc領域
を含む融合タンパク質。
【請求項5】
前記Fc領域が、配列番号2の22番目、24番目、及び26番目の残基からなる群から選択される1つ又は複数のアミノ酸残基の置換を含む、請求項4に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記22番目の残基がTyrで、前記24番目の残基がThrで、及び前記26番目の残基がGluでそれぞれ置換されている、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記(a)と(b)の間にIgG1免疫グロブリンのヒンジ領域をさらに含む、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか一項に記載のADAMTS13バリアントタンパク質若しくはその機能性断片;又は請求項4~7のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか一項に記載のADAMTS13バリアントタンパク質若しくはその機能性断片;又は請求項4~7のいずれか一項に記載の融合タンパク質;又は請求項8に記載のヌクレオチドを活性成分として含む、血栓性疾患を予防若しくは治療するための組成物。
【請求項10】
前記血栓性疾患が血栓性微小血管症(TMA)である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記血栓性微小血管症(TMA)が、血小板減少性紫斑病(TTP)、溶血性尿毒症症候群(HUS)、HELLP(Hemolysis, Elevated Liver enzymes, and Low Platelet count)症候群、妊娠高血圧腎症、及び鎌状赤血球症からなる群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
自己抗体に対する回避率が改善されたADAMTS13バリアントをスクリーニングする方法であって、以下のステップ:
(a)配列番号1の85番目、93番目、126番目、135番目、278番目、282番目、308番目、314番目、317番目、334番目、364番目、376番目、413番目、427番目、452番目、465番目、567番目、578番目、585番目、589番目、607番目、608番目、609番目、612番目、618番目、624番目、630番目、635番目、643番目、650番目、651番目、654番目、655番目、656番目、658番目、664番目、及び672番目の残基からなる群から選択される1つ又は複数のアミノ酸残基が置換又は欠失されたADAMTS13バリアントを調製するステップ;並びに
(b)ADAMTS13に対する自己抗体を、前記ステップ(a)で調製されたADAMTS13バリアントに接触させるステップを含み;
前記自己抗体が、野生型ADAMTS13に対する親和性より低い親和性で前記ADAMTS13バリアントに結合する場合、前記ADAMTS13バリアントは、自己抗体に対する回避率が改善されたADAMTS13バリアントとして決定される、前記方法。
【請求項13】
前記ステップ(a)が、配列番号1の85番目、93番目、126番目、135番目、278番目、282番目、308番目、314番目、317番目、334番目、376番目、413番目、427番目、465番目、567番目、578番目、585番目、607番目、609番目、612番目、624番目、630番目、643番目、650番目、654番目、655番目、656番目、658番目、及び672番目の残基からなる群から選択される1つ又は複数のアミノ酸残基を置換することによって行われる、請求項12に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己抗体に対する酵素活性が低下した又は高い酵素活性を有するADAMTS13バリアント、及びこれを使用して血栓性疾患を治療するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は、凝血塊が全身の微小血管にでき、直ちに治療しなければ死に至る、血栓性微小血管症に属する稀な血液疾患である。発生頻度は年間100万人に1.5~6症例であることが知られており、発生頻度は主に平均年齢40歳の成人及び女性で高い(Miesbachら、2019)。その病理学的特徴としては、血小板の減少、赤血球の減少、ヘマトクリット値(HCT)の上昇等が挙げられ、凝血塊のため、腎臓、心臓、脳などの多くの臓器で機能障害が生じることが知られている。その症状としては、内出血、発熱、倦怠感、呼吸困難、意識の混乱、頭痛等が挙げられる(Hovingaら、2017)。
【0003】
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は2種類に分類される:ADAMTS13(a disintegrin and metalloproteinase with a thrombospondin type 1 motif, member 13)(トロンボスポンジン1型モチーフを有するディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ、メンバー13)をコードする遺伝子の機能障害により先天性ADAMTS13機能欠損症を引き起こす先天性TTP(cTTP);及び後天的原因によるADAMTS13活性の低下に起因する後天性TTP(aTTP)。一般には、ADAMTS13活性が通常のTTPの10%未満である場合、TTPと診断される。aTTPは、細菌感染、特定の薬物、自己免疫疾患、例えばループス、妊娠等に起因することが報告されており、発病の主要な機序の1つとして、ADAMTS13を認識する自己抗体によるADAMTS13活性の抑制が報告されている(GARDプログラム、2018)。ADAMTS13酵素は、フォンヴィレブランド因子(von Willebrand factor)(vWF)の大きな多量体をより小さな単位に分解する上で役割を果たす。vWFではaTTP患者で見出される抗体がADAMTS13に結合し、その機能を抑制し、vWFの分解を妨げ、これが最終的に血小板と一緒になった凝血塊の過剰産生をもたらし、疾患を引き起こす。
【0004】
cTTP患者に対する標準的な治療として、新鮮凍結血漿の注射により欠損分解酵素が提供される補充療法が使用されるのに対し、aTTP患者に対しては、血漿交換(PEX)を行って中和抗体を除去することにより症状を軽減することが目的とされる。aTTP患者の場合、治療効果を高め、再発を防止するために、免疫抑制薬(プレドニゾロン、コルチコステロイド等)が組み合わせて投与され、中和抗体の産生を低減するためにB細胞死を誘導するリツキシマブが使用され得る。血漿交換の回数は疾患の重症度及び症状の進行に依存するが、血小板数を正常化するのに数回の血漿交換が一般的には必要とされる。現在の治療は、血漿交換を繰り返す不便さ、及び免疫抑制薬の使用から生じる感染症に対する脆弱性の増加などの限界がある。
【0005】
したがって、TTPの従来の療法の限界を克服するために、本発明者らは、患者の自己抗体への結合を効率的に回避することによって、自己抗体の存在下でも活性を維持することができる組換えADAMTS13タンパク質バリアントを調製し、TTP疾患マウスモデルにおける有効性評価により、組換えADAMTS13タンパク質バリアントはTTP疾患の有効な治療として有用に使用され得ることが確認された。
【0006】
多くの学術論文及び特許文献が本明細書を通して参照され、それらの引用が示される。引用された学術論文及び特許文献の開示は、本発明が属する技術分野のレベル及び本発明の詳細をより明白に記載するために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、ほとんどが難治性希少疾患に属する様々なADAMTS13機能障害性疾患を治療する有効で基本的な方法を開発するために広範な研究を行った。その結果、本発明者らは、自己抗体によって認識されるADAMTS13のコア領域が同定され、これらの領域のいくつかのアミノ酸が置換されている場合、自己抗体への結合がブロックされ、vWF分解及び血栓症抑制のための活性が維持され、故に血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)を含む過剰な血栓形成に起因する様々な疾患の効率的な治療用組成物として使用することができることを発見し、本発明を完成させた。
【0008】
したがって、本発明の目的は、ADAMTS13バリアントタンパク質又はその機能性断片を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、血栓性疾患を予防又は治療するための組成物を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる別の目的は、ADAMTS13自己抗体に対する回避率が改善されたADAMTS13バリアントタンパク質をスクリーニングする方法を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的及び利点は、本発明の以下の詳細な説明、特許請求項の範囲、及び図面からより明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、配列番号1の85番目、93番目、126番目、135番目、278番目、282番目、308番目、314番目、317番目、334番目、364番目、376番目、413番目、427番目、452番目、465番目、567番目、578番目、585番目、589番目、607番目、608番目、609番目、612番目、618番目、624番目、630番目、635番目、643番目、650番目、651番目、654番目、655番目、656番目、658番目、664番目、及び672番目の残基からなる群から選択される1つ若しくは複数のアミノ酸残基の置換を含むADAMTS13(a disintegrin and metalloproteinase with a thrombospondin type 1 motif, member 13)(トロンボスポンジン1型モチーフを有するディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ、メンバー13)バリアントタンパク質、又はその機能性断片が提供される。
【0013】
本発明者らは、ほとんどが難治性希少疾患に属する様々なADAMTS13機能障害性疾患を治療する有効で基本的な方法を開発するために広範な研究を行った。その結果、本発明者らは、ADAMTS13自己抗体によって認識されるコア領域が同定され、これらの領域のいくつかのアミノ酸が置換されている場合、自己抗体への結合がブロックされ、vWF分解及び血栓症抑制のための活性が維持され、故に血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)を含む過剰な血栓形成に起因する様々な疾患の効率的な治療用組成物として使用することができることを発見した。
【0014】
本明細書で使用される場合、用語「タンパク質」とは、ペプチド結合によるアミノ酸残基の相互結合によって形成される直鎖状分子を指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、用語「機能性断片」とは、いくつかのアミノ酸残基が欠失されている完全長タンパク質の断片であることから、元々の生物活性及び機能を維持する完全長タンパク質のアナログを指す。
【0016】
本発明によれば、配列番号1は、1427個のアミノ酸からなるADAMTS13タンパク質のアミノ酸配列である。したがって、本発明のADAMTS13バリアントタンパク質又はその機能性断片は、完全長(1427a.a.)ADAMTS13タンパク質か、又は上記の変異が75番目~685番目の領域を含むその機能性断片に導入されるADAMTS13バリアントであってもよい。75番目~685番目の領域を含むいくつかの断片は、例えば、1~685(685a.a.)又は75~685(611a.a.)であってもよい。
【0017】
本発明のADAMTS13タンパク質及びその機能性断片に本質的に含まれるアミノ酸配列である配列番号1はまた、上記の配列に対して実質的な同一性を示すアミノ酸配列も含む。実質的な同一性とは、上記のアミノ酸配列と最大限整列させた後、当技術分野で一般的に使用されるアルゴリズムを使用して分析される場合、上記のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の相同性、具体的には少なくとも80%の相同性、より具体的には少なくとも90%の相同性、最も具体的には少なくとも95%の相同性を示すアミノ酸配列を指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「自己抗体」とは、抗原のエピトープに結合し、それによって抗原を特異的に認識することができる1つ又は複数の可変ドメインを含む免疫グロブリンタンパク質の1つであり、個体自身の免疫系によって産生され、個体自身のタンパク質を認識し、標的にする抗体を指す。自己抗体の存在は、対応する自己抗体によって特異的に認識されるタンパク質の内因性機能又は生物活性の減少又は喪失をもたらし、故に様々な疾患の原因になる。
【0019】
本発明の特定の実施形態によれば、ADAMTS13バリアントタンパク質は、以下の位置にアミノ酸残基の置換を含む各バリアントタンパク質からなる群から選択される:
85番目及び317番目の残基;612番目の残基;282番目、465番目、及び672番目の残基のうち2つ以上;635番目の残基;452番目及び612番目の残基;278番目、334番目、及び427番目の残基のうち2つ以上;618番目の残基;135番目の残基;126番目、567番目、及び651番目の残基のうち2つ以上;413番目の残基;334番目の残基;314番目の残基;93番目、364番目、及び376番目の残基のうち2つ以上;308番目の残基;656番目の残基;607番目の残基;612及び624番目の残基;589番目の残基;650番目及び656番目の残基;643番目の残基;585番目及び658番目の残基;630番目、654番目、及び664番目の残基のうち2つ以上;589番目、608番目、609番目、624番目、及び655番目の残基のうち4つ以上;578番目の残基;585番目の残基;314番目及び635番目の残基;並びに314番目及び612番目の残基。
【0020】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明に適用される変異位置のうち、85番目の残基はPheで、93番目の残基はValで、126番目の残基はMetで、135番目の残基はIleで、278番目の残基はIleで、282番目の残基はAlaで、308番目の残基はLysで、314番目の残基はThrで、317番目の残基はHisで、334番目の残基はThr又はValで、364番目の残基はArgで、376番目の残基はAspで、413番目の残基はAspで、427番目の残基はAsnで、452番目の残基はIleで、465番目の残基はAspで、567番目の残基はSerで、578番目の残基はLeuで、585番目の残基はAsn又はMetで、589番目の残基はGlnで、607番目の残基はArgで、608番目の残基はMetで、609番目の残基はLeuで、612番目の残基はPhe又はTyrで、618番目の残基はSerで、624番目の残基はAsp又はCysで、630番目の残基はLeuで、635番目の残基はValで、643番目の残基はPheで、650番目の残基はHisで、651番目の残基はAspで、654番目の残基はGlyで、655番目の残基はValで、656番目の残基はArg又はHisで、658番目の残基はHisで、664番目の残基はAsnで、及び672番目の残基はValでそれぞれ置換されている。
【0021】
本発明の別の態様によれば、本発明は、(a)上記本発明のADAMTS13バリアントタンパク質又はその機能性断片;及び(b)上記の(a)にコンジュゲートされたIgG4免疫グロブリンのFc領域を含む融合タンパク質を提供する。
【0022】
本発明者らは、本発明で発見されたADAMTS13バリアントタンパク質にIgG4免疫グロブリンに由来するFc領域がコンジュゲートされると、インビボでの安定性は有意に向上するが、内因性vWF切断の活性及び中和抗体を回避する活性は維持することができること、並びに特に、遠位末端の一部が除去されている開いた形態の断片で示される構造的不安定性が有意に改善されることを見出した。
【0023】
本発明の特定の実施形態によれば、Fc領域は、配列番号2の22番目、24番目、及び26番目の残基からなる群から選択される1つ又は複数のアミノ酸残基の置換を含む。より具体的には、22番目の残基はTyrで、24番目の残基はThrで、及び26番目の残基はGluでそれぞれ置換されている。
【0024】
本発明によれば、配列番号2は、IgG4免疫グロブリンに由来するFc領域(217a.a.)である。本発明者らは、上記に記載されたADAMTS13バリアントタンパク質又はその機能性断片が、22番目、24番目、及び26番目の残基がそれぞれTyr、Thr、及びGluで置換されているIgG4免疫グロブリン由来Fc領域[IgG4(YTE)]と融合されると、ADAMTS13バリアントタンパク質又はその機能性断片の血中半減期が最大化されること、故に、投与後の生理的活性が長期間維持され得ることを見出した。
【0025】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明の融合タンパク質は、上記に記載された(a)と(b)の間にIgG1免疫グロブリンのヒンジ領域をさらに含む。
【0026】
本発明によれば、IgG1免疫グロブリンに由来するヒンジ領域は、配列番号3(15a.a.)によって表される場合がある。
【0027】
本発明のさらなる別の態様によれば、本発明は、上記本発明のADAMTS13バリアントタンパク質若しくはその機能性断片;又は上記融合タンパク質をコードするヌクレオチドを提供する。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「ヌクレオチド」は、DNA(gDNA及びcDNA)及びRNA分子を包括的に含むという意味を有し、核酸分子の基本的構造単位であるヌクレオチドは、天然のヌクレオチドだけでなく、糖又は塩基領域が修飾されたそのアナログも含む。本発明において治療、薬物製造等の目的で発現されるヌクレオチド配列は、添付配列表に記載されたヌクレオチド配列に限定されないことは当業者に明らかである。ヌクレオチドのいくつかの変異は、タンパク質に変化をもたらさない。そのような核酸は、機能的に同等のコドン、コドンの縮重により同じアミノ酸をコードするコドン、及び生物学的に同等のアミノ酸をコードするコドンを有する全ての分子を包含する。
【0029】
生物学的に同等の活性を有する上記変異を考慮すると、本発明で使用されるヌクレオチドは、配列表に記載された配列に対して実質的な同一性を示す配列を含むと解釈される。実質的な同一性とは、上記のアミノ酸配列と最大限整列させた後、当技術分野で一般的に使用されるアルゴリズムを使用して分析される場合、本発明の配列に対して少なくとも70%の相同性、少なくとも80%の相同性、より具体的には少なくとも90%の相同性、最も具体的には少なくとも95%の相同性を示す配列を指す。配列比較のためのアラインメント方法は、当技術分野で開示されている。アラインメントの様々な方法及びアルゴリズムは、Huangら、Comp.Appl.BioSci.8:155~65頁(1992)及びPearsonら、Meth.Mol.Biol.24:307~31頁(1994)に記載されている。NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschulら、J.Mol.Biol.215:403~10頁(1990))は、米国国立生物学情報センター(National Center for Biological Information)(NCBI)等からアクセス可能であり、blastp、blastn、blastx、tblastn、及びtblastxなどの配列決定プログラムと併せて使用することができる。
【0030】
本発明のヌクレオチドは、本発明の上記バリアントADAMTS13を遺伝子の形態で対象に送達する遺伝子療法の形態で使用され得るか、又は宿主細胞でADAMTS13バリアントタンパク質を発現させることによって剤形で組換えタンパク質の製造に使用され得る。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「発現する」とは、対象が内因性遺伝子を発現又は導入できるようにするために、内因性遺伝子の天然の発現レベルを高めるように遺伝子担体を使用し、遺伝子を染色体外因子として複製可能にするか、又は対象の細胞内で染色体組み込みを完成させることを意味する。したがって、用語「発現」は「形質転換」、「トランスフェクション」、及び「形質導入」と同義である。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「遺伝子担体」とは細胞への遺伝子の輸送の任意の手段を指し、遺伝子送達は細胞への遺伝子の形質導入と同じ意味を有する。組織レベルでは、遺伝子送達という用語は遺伝子の拡散と同じ意味を有する。したがって、本発明の遺伝子送達系は、遺伝子浸透系及び遺伝子拡散系と記載することができる。
【0033】
本発明の遺伝子送達系は、導入される遺伝子の自己発現に必要な全てのエレメントを含むポリヌクレオチド構築物である発現カセットの形態で含まれてもよい。発現カセットは通常、遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター、転写終結シグナル、リボソーム結合部位、及び翻訳終結シグナルを含む。発現カセットは、自己複製可能な発現ベクターの形態であってもよい。
【0034】
本発明で使用される遺伝子送達系は、従来の遺伝子挿入に使用される任意の遺伝子送達系に適用することができ、例えば、プラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、及びレンチウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、リポソーム、及びニオソームが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0035】
本発明のさらなる別の態様によれば、本発明は、本発明の上記ADAMTS13バリアントタンパク質若しくはその機能性断片;上記融合タンパク質;又はこれらをコードするヌクレオチドを活性成分として含む、血栓性疾患を予防又は治療するための組成物を提供する。
【0036】
本発明のさらなる別の態様によれば、本発明は、本発明の上記ADAMTS13バリアントタンパク質若しくはその機能性断片;上記融合タンパク質;又はこれをコードするヌクレオチドを活性成分として含む組成物を対象に投与するステップを含む、血栓性疾患を予防又は治療するための方法を提供する。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「血栓性疾患」とは、血管の微小循環系における血小板凝集によって生成される血栓により血流が低下するか又は遮断され、腎臓、心臓、及び脳などの各臓器に虚血性損傷が引き起こされる全身疾患を指す。
【0038】
ADAMTS13酵素活性が中和抗体によって抑制され、故にフォンヴィレブランド因子(vWF)を正しく分解しない場合、過剰な血小板凝集及び血栓過剰産生が起こる。したがって、中和抗体を高効率で回避しながらvWF分解活性が維持又は改善される本発明のADAMTS13バリアントタンパク質は、様々な血栓性疾患の有効な予防又は治療のための組成物として使用することができる。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「予防」とは、障害又は疾患を有すると診断されていないが、障害又は疾患を有する可能性がある対象における障害又は疾患の発生を抑制することを指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「治療」とは、(a)障害、疾患、若しくは症状の進行の抑制;(b)障害、疾患、若しくは症状の軽減;又は(c)障害、疾患、又は症状の排除を指す。本発明の組成物が対象に投与されると、該組成物は、中和抗体の存在と関係なくvWFを特異的に認識及び分解する役割を果たして過剰な血栓の生成をブロックし、血栓性疾患の進行を抑制するか、排除するか、又は軽減する。したがって、本発明の組成物はそのままでこれらの疾患を治療するための組成物になり得るか、又は他の薬理学的成分と一緒に投与され、上記の疾患の治療補助剤として適用され得る。したがって、本明細書で使用される場合、用語「治療」又は「治療剤」は「補充治療」又は「治療補助剤」の意味を含む。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「投与(administration)」又は「投与(administer)」とは、本発明の組成物の治療有効量が対象の体内で形成されるように本発明の組成物の治療有効量を対象に直接投与することを指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「治療有効量」とは、組成物中に含有される薬理学的成分が、本発明の医薬組成物が投与される個体に治療又は予防効果をもたらすのに十分な組成物の含量を指し、用語「治療有効量」は「予防有効量」の意味を含む。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、ヒト、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、サル、チンパンジー、ヒヒ、及びアカゲザルを含むが、これらに限定されない。具体的には、本発明の対象はヒトである。
【0044】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明の組成物によって予防又は治療することができる血栓性疾患は血栓性微小血管症(TMA)である。より具体的には、血栓性微小血管症(TMA)は、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、溶血性尿毒症症候群(HUS)、HELLP(Hemolysis, Elevated Liver enzymes, and Low Platelet count(溶血、肝酵素上昇、及び血小板減少))症候群、妊娠高血圧腎症、及び鎌状赤血球症、より具体的には血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)又は鎌状赤血球症、さらにより具体的には血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)である。
【0045】
本発明の組成物が医薬組成物として調製される場合、その中に含まれる薬学的に許容できる担体は製剤で一般的に使用される担体であり、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルジネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニールピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油等が挙げられるが、それらに限定されない。本発明の医薬組成物は、上記の成分に加えて、滑沢剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存料等をさらに含んでもよい。適切な薬学的に許容できる担体及び薬剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第19版、1995)に詳細に記載されている。
【0046】
本発明の医薬組成物は経口又は非経口投与されてもよく、具体的には非経口様式で投与されてもよく、より具体的には皮下、経皮、又は静脈内投与されてもよい。
【0047】
本発明の医薬組成物の適切な用量は、製剤方法、投与方法、患者の年齢、体重、性別、健康状態、食べ物、投与時間、投与経路、排出速度、及び反応感度などの要因に応じて様々に処方され得る。本発明の医薬組成物の好ましい用量は、成人については0.001mg/kg~100mg/kgの範囲である。
【0048】
本発明の医薬組成物は、本発明が属する技術分野の当業者によって容易に行われ得る方法に従って、薬学的に許容できる担体及び/又は賦形剤を使用して製剤化することによって単位剤形で調製され得るか、又は複数回投与容器に組み込むことによって調製され得る。この場合、製剤は、油中溶液若しくは水性媒体、懸濁液、シロップ、若しくはエマルションの形態であってもよいか、又はエキス、粉末、粉末剤、顆粒、錠剤、若しくはカプセルの形態であってもよく、分散剤又は安定剤をさらに含んでもよい。
【0049】
本発明のさらなる別の態様によれば、本発明は、自己抗体回避率が改善されたADAMTS13バリアントをスクリーニングする方法であって:
(a)配列表の第1の配列の85番目、93番目、126番目、135番目、278番目、282番目、308番目、314番目、317番目、334番目、364番目、376番目、413番目、427番目、452番目、465番目、567番目、578番目、585番目、589番目、607番目、608番目、609番目、612番目、618番目、624番目、630番目、635番目、643番目、650番目、651番目、654番目、655番目、656番目、658番目、664番目、及び672番目の残基からなる群から選択される1つ又は複数のアミノ酸残基が置換又は欠失されたADAMTS13バリアントを調製するステップ;並びに
(b)ADAMTS13に対する自己抗体を、上記のステップ(a)で調製されたADAMTS13バリアントと接触させるステップを含み;
自己抗体が、野生型ADAMTS13に対する親和性より低い親和性でADAMTS13バリアントに結合する場合、ADAMTS13バリアントは、自己抗体に対する回避率が改善されたADAMTS13バリアントとして決定される、上記方法を提供する。
【0050】
本発明によれば、本発明者らは、使用してADAMTS13中和抗体に結合することができるか否かについて、ランダム変異誘発によって得られた約800ほどのバリアントのライブラリーを分析した;その結果、本発明者らは、中和抗体への結合において配列番号1のアミノ酸残基の位置が重要な役割を果たすこと、及び中和抗体に対する親和性はこれらの位置における変異によって制御され得ることを見出した。したがって、様々なバリアントが、変異のタイプ、及び本発明者らによって発見されたこれらの残基位置を通じて導入されるそれらの変異の組み合わせにより得られ得、自己抗体の存在によって活性が低減されないADAMTS13バリアント酵素が、これらのバリアントと自己抗体の結合の測定により選択され得る。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「自己抗体回避率」とは、野生型ADAMTS13と比較した自己抗体に結合しないADAMTS13バリアントの比のパーセンテージとして表される値を指し、自己抗体に対する高い回避率とは、自己抗体に対する親和性が低く、故に、ADAMTS13の固有の生物活性(例えば、vWF分解活性)が自己抗体によって抑制されないことを意味する。したがって、用語「自己抗体回避率が改善されたADAMTS13バリアント」は、「自己抗体に対する親和性が低下したADAMTS13バリアント」又は「自己抗体への結合能が低下したADAMTS13バリアント」としても表現することができる。
【0052】
本発明によれば、自己抗体に対する候補バリアントの回避率は、上記のステップ(a)で調製されたADAMTS13バリアントと自己抗体の結合を測定して評価することができる。自己抗体への結合は様々な方法によって測定することができ、そのうちの1つが、抗体を抗原(又は抗原を発現する細胞)と共に培養し、非結合抗体を除去(例えば、洗浄)し、結合抗体をこれに結合した標識抗体により検出するステップを含む方法である。抗原と抗体の結合は、典型的には抗体の相補性決定領域(CDR)及び抗原のエピトープを通じて媒介され、タンパク質のランダム及び非特異的結合とは異なり、抗原及び可変ドメインの特定の三次元構造はこれらの2つの構造が正確な結合を形成できるようにする。したがって、本発明を通じて発見された自己抗体との主要な反応部位の変異の適切な組み合わせが適切な組み合わせで行われるならば、自己抗体の結合は効果的にブロックすることができる。
【0053】
測定の結果、野生型と比べて自己抗体に対する親和性又は結合能が低下した候補バリアントが、自己抗体に対する回避率が改善されたADAMTS13バリアントとして決定され得る。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「親和性の減少」とは、ADAMTS13の内因性酵素活性が測定可能なレベルまで改善される程度の、ADAMTS13バリアントと自己抗体の結合の有意な減少を指し、「結合能の低下」としても記載される場合がある。具体的には、用語「親和性の減少」とは、野生型と比べて結合が20%以上、より具体的には40%以上、より具体的には60%以上減少した状態を指す。
【0055】
本発明の特定の実施形態によれば、上記のステップ(a)は、85番目、93番目、126番目、135番目、278番目、282番目、308番目、314番目、317番目、334番目、376番目、413番目、427番目、465番目、567番目、578番目、585番目、607番目、609番目、612番目、624番目、630番目、643番目、650番目、654番目、655番目、656番目、658番目、及び672番目の残基からなる群から選択される1つ又は複数のアミノ酸残基を置換することによって行われる。
【発明の効果】
【0056】
本発明の特徴及び利点は、以下のように要約することができる:
(a)本発明は、自己抗体に対する回避率が改善されたADAMTS13バリアントタンパク質、及びこれを使用して血栓性疾患を予防又は治療するための組成物を提供する。
(b)本発明のADAMTS13バリアントタンパク質は、ADAMTS13の主要なドメインに対して高い結合親和性を有することが知られている代表的な自己抗体を効率的に回避することにより、自己抗体が主要な病因になる様々な血栓性疾患、例えば血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)に対する効率的な治療用組成物として使用することができ、身体に投与される場合、生物活性を安定に維持することができる。
(c)したがって、本発明では、自己抗体によって認識される新たな部位もADAMTS13内で同定されることから、様々な変異の組み合わせが対応する部位内に適用され得、自己抗体に対する回避率が改善された新規のADAMTS13バリアントをスクリーニングするのに有効に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1a】ランダム変異誘発を使用してヒトADAMTS13バリアントライブラリーの構築を示す略図、及び変異率を確かめた結果を示す図である。図1aは、ランダム変異誘発によるライブラリー構築プロセスの模式図である。ランダム変異を、エラープローンPCR(EP PCR)によりMDTCS領域又はSドメインに誘導し、アクセプターベクターに挿入し、クローニングし、次いで大腸菌(E. coli)に形質転換してコロニーを確保した。DNAをコロニーから抽出し、変異したヌクレオチド配列をサンガー配列決定分析により確かめた。
図1b】ランダム変異誘発を使用してヒトADAMTS13バリアントライブラリーの構築を示す略図、及び変異率を確かめた結果を示す図である。図1bは、配列決定分析の結果を示すグラフを示す。MDTCS又はSドメインを標的にすることによって構築されたライブラリーの総変異率及び変異形態をそれぞれ確かめた。
図2a】中和抗体に結合するADAMTS13の各ドメインの結合部位を確かめた結果を示す略図である。図2aは、ADAMTS13の発現率又は中和抗体の結合部位を確かめるために調製された、様々なドメインが組み合わされた6種類のADAMTS13断片(又は野生型完全長ADAMTS13)の模式図を示す。
図2b】中和抗体に結合するADAMTS13の各ドメインの結合部位を確かめた結果を示す略図である。図2bは、各ADAMTS13ドメインで発現されたタンパク質を使用してプロテインA-セファロース及び各中和抗体を混合して免疫沈降させた後、抗V5抗体を用いてウェスタンブロットを行った結果を示す。「インプット」は、各ドメインのタンパク質の発現レベルを示す。
図2c】中和抗体に結合するADAMTS13の各ドメインの結合部位を確かめた結果を示す略図である。図2cは、Ab4-16抗体がSドメインに、Ab67抗体がDドメインに、Ab66抗体がT2~T8ドメインにそれぞれ特異的に結合することを示す、ADAMTS13中和抗体の結合部位の模式図である。
図3a】抗ADAMTS13抗体を回避するか又は野生型ADAMTS13より優れた活性を有するバリアントのスクリーニング結果を示す略図である。Ab4-16抗体又はAb67抗体の回避率及びADAMTS13活性は、野生型クローン及びADAMTS13バリアントで測定した。相対活性は、野生型クローン及びバリアントの特異的力価を確かめ、それらを以下の方程式に代入して算出した:相対活性(%)=バリアントの特異的力価/野生型ADAMTS13の特異的力価×100。
図3b】抗ADAMTS13抗体を回避するか又は野生型ADAMTS13より優れた活性を有するバリアントのスクリーニング結果を示す略図である。Ab4-16抗体又はAb67抗体の回避率及びADAMTS13活性は、野生型クローン及びADAMTS13バリアントで測定した。相対活性は、野生型クローン及びバリアントの特異的力価を確かめ、それらを以下の方程式に代入して算出した:相対活性(%)=バリアントの特異的力価/野生型ADAMTS13の特異的力価×100。
図4a】単一中和抗体に対する12種類の完全長ADAMTS13バリアントの回避率を確かめた結果を示す図である。7種類の中和抗体(Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、及びAb67)に対する抗体回避率を、12種類の完全長ADAMTS13バリアントで測定した。中和抗体回避率は、相対的結合レベルをWT ADAMTS13値と比較し、これを使用して以下の方程式に相対的回避率を代入して算出した:回避率(%)=(1-バリアントの結合能/WT ADAMTS13の結合能)×100。
図4b】単一中和抗体に対する12種類の完全長ADAMTS13バリアントの回避率を確かめた結果を示す図である。7種類の中和抗体(Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、及びAb67)に対する抗体回避率を、12種類の完全長ADAMTS13バリアントで測定した。中和抗体回避率は、相対的結合レベルをWT ADAMTS13値と比較し、これを使用して以下の方程式に相対的回避率を代入して算出した:回避率(%)=(1-バリアントの結合能/WT ADAMTS13の結合能)×100。
図5a】Fc結合MDTCS断片バリアントを発現する培養培地で単一中和抗体を回避する能力を確かめた結果を示す図である。選択された12種類のバリアントをMDTCS断片化に供し、次いでFc結合バリアントを選択された変異アミノ酸残基と組み合わせ、2つのアミノ酸変異を有するDM1及びDM2バリアントを含む合計14種類のバリアントを発現させた培養培地を使用して、8種類の中和抗体(Ab3-01、Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、及びAb67)のADAMTS13の中和抗体回避率及び相対活性を測定した。回避率(%)=(1-バリアントの結合能/WT ADAMTS13の結合能)×100;相対活性(%)=バリアントの特異的力価/WT ADAMTS13の特異的力価×100
図5b】Fc結合MDTCS断片バリアントを発現する培養培地で単一中和抗体を回避する能力を確かめた結果を示す図である。選択された12種類のバリアントをMDTCS断片化に供し、次いでFc結合バリアントを選択された変異アミノ酸残基と組み合わせ、2つのアミノ酸変異を有するDM1及びDM2バリアントを含む合計14種類のバリアントを発現させた培養培地を使用して、8種類の中和抗体(Ab3-01、Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、及びAb67)のADAMTS13の中和抗体回避率及び相対活性を測定した。回避率(%)=(1-バリアントの結合能/WT ADAMTS13の結合能)×100;相対活性(%)=バリアントの特異的力価/WT ADAMTS13の特異的力価×100
図6】Fc結合MDTCS断片バリアントを発現する培養培地の条件下で混合中和抗体を回避する能力を確かめた結果を示す図である。等比で混合される9種類の中和抗体(Ab3-01、Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、Ab66、及びAb67)を、MDTCS-Fc(すなわち、対照群)及び12種類の候補バリアントを発現する4nM培養培地に混合し、反応させた。次いで、各候補バリアントの残存活性を以下の方程式に代入して算出した:残存活性(%)=A÷B×100(A:混合中和抗体の条件下の活性、B:中和抗体で治療しない条件下の活性)。
図7a】Fc結合MDTCS断片バリアント培養培地及び精製溶液の条件下で単一中和抗体を回避する能力を確かめた結果を示す図である。8種類の単一中和抗体(Ab3-01、Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、及びAb67)に関する中和抗体の回避率及び相対活性を、12種類のバリアント(1C03、2B01、2B02、3B05、4E11、4H07、5G08、7A02、8D01、8D05、DM1、及びDM2)を発現させた培養培地か、又はPhytipシステムを使用して精製した精製溶液を使用して測定した(図7a及び7b)。精製溶液の濃度をFc ELISAにより確かめた。回避率(%)=(1-バリアントの結合能/MDTCS-Fcの結合能)×100、相対活性(%)=バリアントの特異的力価/MDTCS-Fcの特異的力価×100。それぞれ、青色のバーは精製バリアントタンパク質を示し、灰色のバーは発現したバリアントタンパク質の中央値を示す。
図7b】Fc結合MDTCS断片バリアント培養培地及び精製溶液の条件下で単一中和抗体を回避する能力を確かめた結果を示す図である。8種類の単一中和抗体(Ab3-01、Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、及びAb67)に関する中和抗体の回避率及び相対活性を、12種類のバリアント(1C03、2B01、2B02、3B05、4E11、4H07、5G08、7A02、8D01、8D05、DM1、及びDM2)を発現させた培養培地か、又はPhytipシステムを使用して精製した精製溶液を使用して測定した(図7a及び7b)。精製溶液の濃度をFc ELISAにより確かめた。回避率(%)=(1-バリアントの結合能/MDTCS-Fcの結合能)×100、相対活性(%)=バリアントの特異的力価/MDTCS-Fcの特異的力価×100。それぞれ、青色のバーは精製バリアントタンパク質を示し、灰色のバーは発現したバリアントタンパク質の中央値を示す。
図8】Fc結合MDTCS断片バリアント培養培地及び精製溶液の条件下で混合中和抗体を回避する能力を確かめた結果を示す図である。等比で混合される8種類の中和抗体(Ab3-01、Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、及びAb67)を、MDTCS-Fc(すなわち、対照群)及び12種類の候補バリアントを発現する培養培地か又は4nM精製溶液に混合し、反応させた。次いで、各候補バリアントの残存活性を測定した。残存活性を以下の方程式に代入して算出した:残存活性(%)=A÷B×100(A:混合中和抗体の条件下の活性、B:中和抗体で治療しない条件下の活性)。
図9】Fc結合MDTCS断片バリアントの薬物動態の結果を示すグラフである。MDTCS又はFc(IgG1-YTE)結合MDTCS及び4つの最終候補バリアント(1C03、5C09、7A02、及びDM2)断片タンパク質をマウスの尾静脈に投与後、血漿を1時間ごとに得た。タンパク質は、各物質の特異的力価が160IU/kgとなり得るように投与し、1時間ごとに得た血漿中に残留している物質の活性を活性アッセイにより測定した。
図10a】IgG1-YTE結合MDTCS断片バリアント培養培地の条件下で単一中和抗体を回避する能力を確かめた結果を示す図である。選択された5種類のバリアントをMDTCS断片化に供し、8種類の単一中和抗体(Ab3-01、Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、及びAb67)の中和抗体を回避する率及び相対活性を、IgG1-YTE結合バリアントを発現する培養培地を使用して測定した(図10a及び10b)。回避率(%)=(1-バリアントの結合能/MDTCS-IgG1-YTEの結合能)×100;相対活性(%)=バリアントの特異的力価/MDTCS-IgG1-YTEの特異的力価×100。
図10b】IgG1-YTE結合MDTCS断片バリアント培養培地の条件下で単一中和抗体を回避する能力を確かめた結果を示す図である。選択された5種類のバリアントをMDTCS断片化に供し、8種類の単一中和抗体(Ab3-01、Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、及びAb67)の中和抗体を回避する率及び相対活性を、IgG1-YTE結合バリアントを発現する培養培地を使用して測定した(図10a及び10b)。回避率(%)=(1-バリアントの結合能/MDTCS-IgG1-YTEの結合能)×100;相対活性(%)=バリアントの特異的力価/MDTCS-IgG1-YTEの特異的力価×100。
図11】IgG1-YTE結合MDTCS断片バリアントを発現する培養培地の条件下で混合中和抗体を回避する能力を確かめた結果を示す図である。等比で混合される9種類の中和抗体(Ab3-01、Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、Ab66、及びAb67)を、MDTCS-IgG1-YTE(すなわち、対照群)及び5種類の候補バリアントを発現する4nM培養培地に混合し、反応させた。次いで、各候補バリアントの残存活性を以下の方程式によって算出した:残存活性(%)=A÷B×100(A:混合中和抗体の条件下の活性、B:中和抗体で治療しない条件下の活性)。
図12】IgG1-YTE結合MDTCS断片バリアント培養培地の条件下で混合中和抗体を回避する能力を確かめた結果を示す図である。等比で混合される9種類の中和抗体(Ab3-01、Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、Ab66、及びAb67)を、MDTCS-IgG1-YTE(すなわち、対照群)及び5種類の候補バリアントを含む4nM精製溶液に混合し、反応させた。次いで、各候補バリアントの残存活性を以下の方程式によって算出した:残存活性(%)=A÷B×100(A:混合中和抗体の条件下の活性、B:中和抗体で治療しない条件下の活性)。
図13a】それぞれ、aTTP模倣マウスモデルを使用して中和抗体を回避する率をテストするための手順を示す模式図(図13a)、及びバリアント候補の用量に応じた残存ADAMTS13活性を示す略図(図13b)である。
図13b】それぞれ、aTTP模倣マウスモデルを使用して中和抗体を回避する率をテストするための手順を示す模式図(図13a)、及びバリアント候補の用量に応じた残存ADAMTS13活性を示す略図(図13b)である。
図14a】aTTP模倣マウスモデルを使用して最も優れた中和抗体回避率(図14a)、血小板及びLDHレベル及びADAMTS13活性の改善を示す模式図(図14b)、並びに臨床症状の観察結果(図14c)をそれぞれ示した、DAMTS13の残存活性を維持するためのテスト手順を示す模式図、及びDM2-IgG1-YTEの濃度に応じた臨床症状を示す図である。
図14b】aTTP模倣マウスモデルを使用して最も優れた中和抗体回避率(図14a)、血小板及びLDHレベル及びADAMTS13活性の改善を示す模式図(図14b)、並びに臨床症状の観察結果(図14c)をそれぞれ示した、DAMTS13の残存活性を維持するためのテスト手順を示す模式図、及びDM2-IgG1-YTEの濃度に応じた臨床症状を示す図である。
図14c】aTTP模倣マウスモデルを使用して最も優れた中和抗体回避率(図14a)、血小板及びLDHレベル及びADAMTS13活性の改善を示す模式図(図14b)、並びに臨床症状の観察結果(図14c)をそれぞれ示した、DAMTS13の残存活性を維持するためのテスト手順を示す模式図、及びDM2-IgG1-YTEの濃度に応じた臨床症状を示す図である。
図15a】cTTPマウスモデルへのDM2-IgG1-YTEの投与による血液症状及び臨床症状の改善の存在/非存在、及びヒトADAMTS13活性の回復の程度に関するテスト手順を示す模式図(図15a)、並びに血小板及びLDHレベル及びADAMTS13活性の改善、及びADAMTS13活性の回復の観察結果(図15b)をそれぞれ示す図である。
図15b】cTTPマウスモデルへのDM2-IgG1-YTEの投与による血液症状及び臨床症状の改善の存在/非存在、及びヒトADAMTS13活性の回復の程度に関するテスト手順を示す模式図(図15a)、並びに血小板及びLDHレベル及びADAMTS13活性の改善、及びADAMTS13活性の回復の観察結果(図15b)をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明は例を通してより詳細に記載される。これらの例は、本発明をより詳細に示すためにすぎず、本発明の趣旨によりこれらの例によって本発明の範囲が限定されないことは当業者に明らかであろう。
【実施例
【0059】
実験方法
ランダム変異誘発によるヒトADAMTS13バリアントライブラリーの構築
ヒト野生型ADAMTS13を含有する発現ベクター、及び変異MDTCS(メタロプロテアーゼ、Disintegrin-like、Thrombospondinタイプ 1(TSP1)repeat、Cys-rich、and Spacer)(メタロプロテアーゼ、ディスインテグリン様、ロンボスポンジン1型(TSP1)リピート、Cysリッチ、及びスペーサー)又はスペーサー(S)ドメイン領域のクローニング用の2つの受容体ベクターを調製した。以下の表1のオリゴヌクレオチドを使用してADAMTS13のMDTCS又はSドメイン領域についてエラープローンPCR(GeneMorph II Random Mutagenesis Kit、Agilent Technologies)を行い、増幅したMDTCS又はSドメインのPCR産物を、電気泳動によって溶出されるアガロースゲル電気泳動後の溶出によって得た。Golden Gateクローニング方法を使用して、溶出したPCR産物及びアクセプターベクターのライゲーション後、得られたものを大腸菌(Escherichia coli(E. coli))に形質転換して、ランダム変異誘発によって産生されたバリアントのライブラリーを調製した。トランスフェクショングレードのプラスミドDNAを、Plasmid Plus 96 Miniprepキット(QIAGEN)を使用して1ライブラリーあたり384個の大腸菌コロニーから抽出して、合計768個の変異ADAMTS13バリアントを得た。アミノ酸変異のタイプ及び位置を、対応するDNAのヌクレオチド配列分析により確かめた。
【0060】
【表1】
【0061】
ヒトADAMTS13バリアントの一過性発現
ADAMTS13バリアントのタンパク質の発現のために、Expi293F(商標)細胞(Thermo Fisher、カタログ番号A14527)をExpi293発現培地に希釈して3×10細胞/mLの濃度に調製した。第1のチューブでは、プラスミドDNA 2.5μgをopti-MEM I Reduced血清 Medium(Thermo Fisher、カタログ番号31985-070)で最終容量152.5μLに希釈し、他のチューブでは、ExpiFectamine 293 8μL及びopti-MEM I Reduced血清 Medium 140μLを混合し、5分間放置した。希釈したプラスミドDNA 152.5μLを第2のチューブの混合溶液に添加し、20分間放置した。調製した細胞2.5mLを24ディープウェルプレートの各ウェルに等分した。ExpiFectamine 293及び前もって調製したプラスミドDNAの混合物を細胞に分配し、37℃、CO条件のインキュベーターで225rpmで振盪しながら培養した。24時間後、ExpiFectamineトランスフェクションエンハンサー1 15μL及びエンハンサー2 150μLをそこに添加し、5日間培養した。6日目に、培養物を300rcfで5分間遠沈して上清を回収し、得られたものをバリアントの選択のための分析に使用した。
【0062】
ヒト及びマウスADAMTS13中和抗体の構築
異なるドメインに結合するADAMTS13中和抗体を構築するために、抗原としての完全長組換えヒトADAMTS13(R&D Systems、カタログ番号6156-AD)及びHuman Combinatorial Antibody Library(HuCAL、Bio-Rad)のPLATINUM(登録商標)ファージライブラリーを使用して、ADAMTS13に対して優れた結合能を有する16種類のFabを選択し、それらのうち、MDTCS部分及びC末端部分のそれぞれに結合する6種類の抗体(Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、Ab66、及びAb67)を完全長抗体として調製した。aTTP患者の血漿中、Sドメインに特異的に結合することが知られているAb3-01、Ab4-16、及びAb4-20も完全長抗体として構築し、バリアントの選択分析に使用した。
【0063】
ヒトADAMTS13バリアントの発現濃度の測定
一過性発現により得られた培養培地に存在するADAMTS13バリアントタンパク質の発現レベルを確かめるために抗ADAMTS13抗体(Ab66、GC Green Cross抗体)を使用してELISAを行った。PBS(Lonza、17-516Q)中2μg/mLに希釈した抗ADAMTS13抗体100μLを、96ウェルEIA/RIA高結合型マイクロプレート(Corning、カタログ番号3590)のウェルごとに分注し、室温で2時間反応させた。次いで、洗浄バッファー(0.1v/v% tween 20/PBS)を使用してマイクロプレートを3回洗浄した。ブロッキングバッファー(1w/v% ウシ血清アルブミン/PBS)を1ウェルあたり300μLで分注し、室温で2時間反応させ、その後、洗浄バッファーで3回洗浄した。組換えヒトADAMTS13(R&D Systems、6156-AD)を標準試料として使用し、測定する培養物をブロッキングバッファーで16倍又は32倍希釈し、1ウェルあたり100μLで分注し、室温で1時間、500rpmで撹拌して反応させた。3回洗浄後、抗6×Hisタグ抗体(Abcam、カタログ番号Ab1187)を1:10,000希釈し、1ウェルあたり100μLで分注し、その後、室温で1時間、500rpmで撹拌して反応させた。6回洗浄後、TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)を1ウェルあたり100μLで分注し、室温で10分間反応させた。その後、停止バッファー(HSO)を1ウェルあたり100μLで分注し、マイクロプレートリーダーを使用して吸光度を450nmで測定した。測定した吸光度を標準試料反応曲線に代入し、濃度を算出した後、希釈係数を校正して最終濃度を決定した。
【0064】
Fc融合MDTCS断片及びバリアントの発現濃度の測定
PBS(Lonza、カタログ番号17-516Q)を使用して2μg/mLに希釈したヤギ抗ヒトIgG Fc(Abcam、カタログ番号A3803)を、96ウェルEIA/RIA高結合型マイクロプレート(Corning、カタログ番号3590)に1ウェルあたり100μLで分注し、室温で2時間反応させた。次いで、洗浄バッファー(0.1v/v% tween 20/PBS)を使用してマイクロプレートを3回洗浄した。ブロッキングバッファー(1w/v% ウシ血清アルブミン/PBS)を1ウェルあたり300μLで分注し、室温で2時間反応させ、その後洗浄バッファーで3回洗浄した。標準試料として、濃度を確保したFc融合MDTCS断片タンパク質を使用し、測定する試料を標準範囲に含まれるようにブロッキングバッファーで希釈した。その後、得られたものを1ウェルあたり100μLで分注し、室温で1時間、400rpmで撹拌して反応させた。3回洗浄後、抗ヒトIgG(Fc特異的)ペルオキシダーゼ抗体(Sigma-aldrich、カタログ番号A0170)を1:10,000希釈し、1ウェルあたり100μLで分注し、室温で1時間、400rpmで撹拌して反応させた。6回洗浄後、TMBを1ウェルあたり100μLで分注し、室温で30分間反応させた。その後、停止バッファー(0.5M HSO)を1ウェルあたり100μLで分注し、マイクロプレートリーダーを用いて吸光度を450nmで測定した。
【0065】
ヒトADAMTS13バリアントの活性の測定
ADAMTS13バリアントの活性を測定するために、Technozyme ADAMTS13活性キット(Technoclone、カタログ番号5450701)のマニュアルを使用して実験を行った。GST-vWF73基質を1ウェルあたり100μLで分注し、室温で1時間反応させ、次いで洗浄バッファーで3回洗浄した。標準試料としてキットのキャリブレーターを使用し、測定する培養物としてストック溶液又はその3倍希釈物を、加熱不活性化血漿を使用して1ウェルあたり100μLで添加し、室温で30分間反応させた。洗浄バッファーで3回洗浄後、コンジュゲートを1ウェルあたり100μLで添加し、室温で1時間反応させ、洗浄バッファーで再び3回洗浄した。TMB発色試薬を1ウェルあたり100μLで添加し、30分間反応させ、次いで停止バッファー100μLを添加して反応を止め、ELISAリーダーを用いて吸光度を450nmで測定した。特異的力価(IU/mg)を算出するために、発現結果(μg/mL)を活性値(IU/mL)に当てはめ、野生型(WT)ADAMTS13及びバリアントの特異的力価を使用して、以下の方程式に代入して相対活性(%)を算出した:
相対活性(%)=バリアントの特異的力野生型ADAMTS13の価/特異的力価×100
【0066】
ヒトADAMTS13中和抗体の回避率の確認
ADAMTS13中和抗体を回避するための各ADAMTS13バリアントの能力を確かめるために、8種類の抗ADAMTS13抗体(Ab3-01、Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、及びAb67、GC Green Cross)を使用してELISAを行った。PBS(Lonza、カタログ番号17-516Q)を使用して1~2μg/mLに希釈した抗ADAMTS13抗体を、96ウェルEIA/RIA高結合型マイクロプレート(Corning、カタログ番号3590)に1ウェルあたり100μLで添加し、室温で2時間反応させた。次いで、マイクロプレートを洗浄バッファー(0.1% tween 20/PBS)で3回洗浄した。ブロッキングバッファー(1% BSA/PBS)を1ウェルあたり300μLで添加し、室温で2時間反応させ、次いで洗浄バッファーで3回洗浄した。標準試料として組換えヒトADAMTS13(R&D Systems、カタログ番号6156-AD)を使用し、測定する培養物をブロッキングバッファーで25~50ng/mLに希釈し、1ウェルあたり100μLで分注し、室温で1時間、500rpmで振盪して反応させた。3回洗浄後、抗6×Hisタグ抗体(Abcam、カタログ番号Ab1187)を1:10,000希釈し、1ウェルあたり100μLで分注し、室温で1時間、500rpmで振盪して反応させた。6回洗浄後、TMBを1ウェルあたり100μLで分注し、室温で10~20分間反応させた。次いで、停止バッファー(HSO)を1ウェルあたり100μLで分注し、マイクロプレートリーダーを使用して吸光度を450nmで測定した。中和抗体回避率は、相対的結合レベルを野生型ADAMTS13値と比較するように算出し、次いで、これを使用して以下の方程式に相対的回避率を代入した:
回避率(%)=(1-バリアントの結合能/野生型ADAMTS13の結合能)×100
MDTCS及びFc(IgG1-YTE)コンジュゲートMDTCSバリアントの構築及びタンパク質産生
【0067】
IgG1-YTE(ヒンジ-Fc)をMDTCS又はMDTCSバリアント断片にコンジュゲートした発現ベクターを構築し、遺伝子合成(Thermo Fisher Scientific、GeneArt(登録商標)Gene Synthesis)を以下の表2に示すように行った。表2の各合成遺伝子をpMSID2ベクター(GC Green Crossによって構築された)に挿入して発現ベクターを構築した。CHO DG44(S)細胞を、CDM4CHO(GE、カタログ番号SH30557.02)培地を使用して3×10細胞/mLで期待量に応じて継代培養した。トランスフェクション当日、3×10生細胞を回収し、OptiPro(商標)SFM(Gibco、カタログ番号12309019)に懸濁し、1×10細胞/mL(3mL)の最終容量に希釈し、125mL振盪フラスコに添加し、CO振盪インキュベーター(37℃、5% CO)、140rpmで培養した。発現ベクター30μgを、OptiPro(商標)SFMを使用して合計容量1.5mLに混合した(チューブ1)。トランスポーター5(商標)PEI(transporter 5TM PEI)(Polyscience、カタログ番号26008-5)90μL、及びOptiPro(商標)SFM 1,410μLを混合した(チューブ2)。前もって調製したチューブ2をチューブ1に添加し、穏やかに混合した後、混合物を室温で20~30分間反応させた。DNA:PEI複合体3mLを、前もって調製したCHO DG44(S)細胞3mLに滴下した。得られたものをCO振盪インキュベーター(37℃、5% CO)、140rpmで培養し、その4時間後、CDM4CHO培地24mLをCHO DG44(S)/DNA:PEI複合体6mLに添加し、同じ条件下で培養した。インキュベーションの48時間後、細胞数及び細胞の生存を測定し、得られたものを15×10細胞の容量まで遠心チューブに添加し、1,200rpmで5分間遠心分離し、上清を除去し、20nM MTXを含有するCDM4CHO培地30mLに懸濁し、次いで振盪フラスコに接種し、培養した。細胞の生存が90%以上に回復するまで継代培養を3~4日間おきに行った。最終過剰発現細胞株を大規模に培養し、タンパク質精製に使用した。MDTCSタンパク質精製のために、調製した培養物を遠心分離して細胞を除去し、次いで、調製した培養溶液を遠心分離後、酢酸セルロースで作られた滅菌フィルター(Sartobran P、5235307H7-OO、Sartorius)を使用して濾過した。濾過培養物を濃縮し、次いで陰イオン交換クロマトグラフィー(Q Sepharose Fast Flow、GE)、マルチモードクロマトグラフィー(ヒドロキシアパタイト、Bio-Rad)、及び親和性クロマトグラフィー(Blue Sepharose、GE)を使用して精製し、MDTCSバリアントIgG1-YTEコンジュゲートタンパク質を、過剰発現細胞株の培養物を遠心分離して該細胞を除去するように濾過し、次いで酢酸セルロース(Sartobran P、5235307H7-OO、Sartorius)で作られた抗菌フィルターを使用して精製した。精製は、濾過培養物を使用して親和性クロマトグラフィー(プロテインA、MabSelect SuRe、GE Healthcare)及びサイズ排除クロマトグラフィーを使用して行った。精製タンパク質は95%以上の純度を有することが確かめられた。
【0068】
【表2】
【0069】
MDTCS-ヒンジ-Fc融合物の薬物動態の確認
MDTCS-IgG1-YTE(ヒンジ-Fc)融合物の血中持続時間及び薬物動態パラメーターを比較するために、44匹又は52匹のC57BL/6マウス(4匹/採血時)を各群で使用した。MDTCS(対照群)、及びIgG1-YTEがMDTCSバリアントに融合された3種類の物質(テスト群)160IU/kgを尾静脈に注射した後、血液試料を0.083、0.25、0.5、1、2、4、8、12、24、48、72、96、及び168時間時点で採取した。血液500μLを、10%三クエン酸ナトリウム(sodium tri-citrate)(すなわち、抗凝固薬)を含有するシリンジにより心臓から採取し、2,000×g、4℃で20分間遠心分離して上清を分離し、血漿を得た。血漿中に存在するMDTCSバリアント-ヒンジ-Fcの活性を、Technozyme ADAMTS13活性キット(Technoclone、カタログ番号5450701)のマニュアルに従って測定した。さらに、44匹のマウスから得た血漿について活性アッセイを行って、マウス血漿中のマウスADAMTS13活性の平均値(0.0772IU/mL)を得た。PK試験試料の活性の測定値から対応する値を除くことによって、マウス血漿に固有のマウスADAMTS13活性を除外することができ、投与物質の活性の結果のみが得られた。ネイティブプール法(native pooled method)及びWINNONLINを使用して非コンパートメント解析によりデータを解析した。t1/2は薬物の血中半減期を示し、AUCInfは0~無限大時間までの活性グラフ下の面積を示し、平均滞留時間(MRT)は体内の薬物分子の平均滞留時間を示す。
【0070】
中和抗体のADAMTS13結合部位の確認
完全長野生型又はC末端ドメインを連続的に欠失させた6種類のADAMTS13の核酸配列を、pcDNA3.1 V5-His Bベクター(Invitrogen、カタログ番号V81020)にクローニングした。上記の一過性発現方法により得られた培養物を使用して、構築したDNAをプロテインA-セファロース4Bを添加して免疫沈降し、その後ウェスタンブロットした。具体的には、3種類の30nM ADAMTS13中和抗体(Ab4-16、Ab66、及びAb67)を正常な対照血漿(HemosIL、カタログ番号00020003110)に添加した。中和抗体を含有する血漿10mL及びADAMTS13の各断片タンパク質50ngを含有する培養物を一緒に添加した後、結合バッファー(50mM Tris-HCl pH8.0、150mM NaCl、1% Triton X-100、及び1% BSA)500μLをそれに添加し、4℃で24時間反応させた。反応の完了後、プロテインA-セファロース4B樹脂(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号101041)20μLを50%スラリーとしてそれに添加し、4℃で4時間反応させた。樹脂を845rcfで1分間、遠心分離によって回収し、次いで洗浄バッファー(50mM Tris-HCl pH8.0、150mM NaCl、1% Triton X-100)で3回洗浄した。樹脂に結合したタンパク質を、10% β-メルカプトエタノールを含有するSDS試料バッファー(Novex、カタログ番号NP0007)により溶出し、95℃で5分間加熱し、その後、SDS-PAGE及びV5抗体(Invitrogen、カタログ番号R960-25)による抗免疫ブロットを行った。
【0071】
aTTP模倣疾患を有するマウスモデルにおけるバリアントのPoC評価
aTTP模倣疾患を有するマウスモデルは、ADAMTS13 KOマウスをヒトADAMTS13中和抗体で処理して確立した。ADAMTS13 KOマウスは、CRISPR/Cas9システムを使用してADAMTS13遺伝子のエクソン1と6の間に大きな欠失及びフレームシフト変異を誘導してMacrogenにより調製された。等比で混合した9種類のADAMTS13中和抗体(Ab3-01、Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、Ab66、及びAb67)を、12~25週齢ADAMTS13 KOマウスに0.54mg/kgの用量で静脈内投与した。15分後、対照物質(MDTCS-Fc)又は5種類のバリアント(1C03、2B02、5C09、7A02、及びDM2)を5,000IU/kg又は7,000IU/kgの用量で投与した。投与の6時間後に血液試料を採取して、ADAMTS13活性を測定した。
【0072】
aTTPモデルマウスで示されたADAMTS13活性及び血液学的特性の回復が、DM2バリアントの投与によって改善されるかを確かめるために、等比で混合した9種類のADAMTS13中和抗体(Ab3-01、Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、Ab66、及びAb67)を、12~25週齢ADAMTS13 KOマウスに0.54mg/kgの用量で静脈内投与した。15分後、対照物質(MDTCS-Fc)又はバリアントDM2を、5,000IU/kg、7,000IU/kg、又は14,000IU/kgの用量で投与した。中和抗体の投与の30分後、組換えヒトvWF(VEYVONDI)2,000IU/kgの投与後、その6時間後に血液700μLを採取し、血液300μLをEDTAチューブ(BD Medical、REF365974)に添加し、他の300μLをSSTチューブ(BD Medical、REF365967)に添加し、30分間室温に置き、次いで4℃、3,000rpmで15分間遠心分離して血清を分離した。残存血液をクエン酸ナトリウムと9:1比(血液:クエン酸ナトリウム)で混合し、血漿を分離し、血漿中のヒトADAMTS13の残存活性を分析するのに使用した。EDTAチューブの白血球は、血球計(ADVIAp 2120i、Siemens)を使用して血小板(PLT)などの一般的血液検査にかけ、SSTチューブで分離された血清は、血液生化学分析器(Hitachi、7180)を使用して乳酸脱水素酵素(LDH)を測定するのに使用した。統計解析は、Tukey検定を用いる一元配置ANOVA検定を使用した。
【0073】
cTTP疾患を有するマウスモデルにおけるバリアントのPoC評価
cTTP疾患を有するマウスモデルは、ADAMTS13 KOマウスを使用して確立した。12~25週齢ADAMTS13 KOマウスに、ビヒクル又はDM2バリアントを20IU/kg、60IU/kg、180IU/kg、及び360IU/kgの用量で静脈内投与し、その15分後、組換えヒトvWF(VEYVONDI)を2,000IU/kgの用量で投与し、その6時間後に血液試料を採取した。白血球は血小板レベルの測定を含む一般的血液検査に使用し、血清はLDHレベルの測定に使用し、血漿はヒトADAMTS13活性の分析に使用した。
【0074】
実験結果
ランダム変異誘発を使用したヒトADAMTS13バリアントの構築
aTTP患者が持つADAMTS13中和抗体の場合、ADAMTS13の様々なドメインのうちMDTCSへの結合の割合が相対的に極めて高く、97%を超えること、及びSドメインが最もよく見られる結合部位であることが報告されている(Tersteegら、2016;Klausら、2004;Lekenら、2005)。上記に基づき、MDTCS部分又はSドメインを標的にする変異が生じ得るように、エラープローンPCRを行って各ライブラリーを調製した(図1a)。各ライブラリーから384個のADAMTS13バリアントのDNAを得、ヌクレオチド配列を分析した結果、MDTCS部分のライブラリーの総変異率は72.9%であり、具体的には、サイレント変異又は非変異は23.7%、空ベクター又は乏しい配列3.1%、ナンセンス変異8.9%、フレームシフト変異4.9%、及びミスセンス変異59.1%の割合を示した(図1b)。Sドメインライブラリーの場合、全体の変異率は50.8%であり、サイレント変異又は非変異は44.5%、空ベクター又は乏しい配列4.7%、ナンセンス変異2.3%、フレームシフト変異3.1%、及びミスセンス変異45.3%を占めた(図1b)。上記の変異のうち、サイレント又は非変異、空ベクター又は乏しい配列、及びナンセンス変異を示したそれらのバリアントを除外して、約500個のバリアントを使用して選択実験を行った。
【0075】
ADAMTS13中和抗体の調製及び結合部位の確認
ヒトADAMTS13の異なるエピトープを認識する抗体に関して、MDTCS領域又はSドメインに変異を有するバリアントがADAMTS13の中和抗体を回避することができるかを確かめるために、HuCALシステム(Bio-Rad)を使用してFabを構築し、ヒトADAMTS13に対して優れた結合能を有する16種類を選択した。16種類の間で異なるドメインに特異的に結合することが確認されたAb66及びAb67を、完全長抗体の形態で作製した。Ab4-16は、aTTP患者の血漿中でSドメインに特異的に結合することが知られているため、完全長抗体の形態で作製し(Casinaら、2015)、各抗体の結合領域は、図2cに示す通り、Ab4-16がSドメインに、Ab67がMDTCS領域に、Ab66がC末端(TSP-2~TSP-8ドメイン)に特異的に結合していた。
【0076】
バリアントの選択基準の設定
バリアントの評価は、ランダム変異誘発により構築したバリアントのうち、野生型ADAMTS13と同じアミノ酸配列を有する非変異又はサイレント変異バリアント(以下、野生型クローン)に関して相対的結果を分析して実施した。合計59個の野生型クローンを、Ab4-16及びAb67に対する活性及び結合親和性について分析し、各野生型クローンの分析結果を野生型ADAMTS13構築物の結果と比べて示し、図3に示す。図3に見て取れるように、Ab4-16及びAb67抗体に対する野生型ADAMTS13(59種類)、変異ADAMTS13(304種類)、及び保存的アミノ酸置換を含有する選択されたADAMTS13(26種類)に関する回避率及び相対活性が示されている。野生型クローンは、変異がないにもかかわらず野生型ADAMTS13構築物による結果において相対的差異を示し、以下の表3に示すように、変異ADAMTS13(304種類)のうち、回避率の特定の値又は相対活性より大きい値若しくは等しい値を有する26種類のADAMTS13変異体を選択した。
【0077】
具体的には、変異ADAMTS13に関して、Ab4-16に対する回避率は-29.5%~33.4%の範囲であり、Ab67に対する回避率は-24.4%~30.5%の範囲であり、相対活性は62.7%~128.9%の範囲であることが示された(表3)。3シグマのルールを使用して正規分布を適用した結果、Ab4-16に対する回避率は-34.1%~38.5%であり、Ab67に対する回避率は-38.5%~42.3%であり、相対活性は47.0%~145.2%の範囲であり、故にほとんど全てのWTクローンがこの分布内に入ると予測された。したがって、バリアントの選択において、選択基準を以下のように適用した:3シグマの最大に基づきAb4-16については38.5%を超える回避率、Ab67については42.3%の回避率、又は47.0%以上の相対活性。
【0078】
【表3】
【0079】
ADAMTS13中和抗体を回避し、野生型ADAMTS13のレベルより高いか又は等しい活性を有するバリアントの選択
WTクローン及びアミノ酸変異を有するバリアントを細胞にトランスフェクション後、培養物中に存在するタンパク質の量を測定し、50ng/mL以上の発現濃度を有する304個のバリアントについて中和抗体に対する結合親和性及び活性アッセイを行った。アミノ酸変異を有するバリアントは、WTクローンと比べて中和抗体に対する結合親和性又は相対活性において様々な分布を有することが示され、それらのうち、選択基準を満足する26種類のバリアントを最終的に選択した(図3a及び3b)。26個のバリアントのうち、18種類のバリアントはSドメインに変異を有することが示され、特に、Sドメイン変異を有する13種類のバリアント(1C03、1G07、2B01、2B02、3B05、3G04、5C09、5G08、6B12、7A02、8C04、8D01、及び8F01)は、aAb4-16に対する高い回避率を有することが示され、5種類のバリアント(7E01、7G08、8C02、8D01、及び8D05)は、高い相対活性の特徴を有することが示された(表4)。6種類のバリアントはDドメインに変異を有することが示され、それらのうち5種類(46、3A06、4C07、4E11、及び4H07)はAb67に対する高い回避率の特徴を示した。さらに、Mドメインの変異を有する6種類のバリアント、Cドメインの変異を有する2種類のバリアント、及びTドメインの変異を有する2種類のバリアントを同定した。結果の繰り返し再現性を、26個の選択されたバリアントについて3回の繰り返し実験により確かめ、WTクローンと比べて繰り返しテストでも優位性を持続的に維持する12種類のバリアントをインビトロ効力テストの対象として選択した。12種類のバリアントのうち、1C03、2B01、2B02、3B05、5C09、5G08、7A02、及び8D01をそれらの優れたAb4-16抗体回避率のために選択し、4C07、4E11及び4H07をAb67抗体に対するそれらの優れた回避率のために選択した。最後に、8D05をその優れた相対活性のために選択した。
【0080】
12種類の選択されたバリアントにおける追加の中和抗体を回避する能力を確かめるために、本発明者らは、 スクリーニングに使用したAb4-16及びAb67抗体に加えて、中和抗体Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、及びAb65も回避することができるかを確かめようとした。12種類のバリアントのうち、Sドメインにアミノ酸変異を有する9種類のバリアントの、8D05を除く8種類のバリアント、1C03、2B01、2B02、3B05、5C09、5G08、7A02、及び8D01は、aTTP患者が持つADAMTS13自己抗体の配列に基づき調製されたAb4-16及びAb4-20に対する優れた回避率を示し、これらのバリアントはまた、Ab60及びAb61に対する優れた回避能力も示した。対照的に、Dドメインにアミノ酸変異を有するバリアント4C07、4E11、及び4H07の場合、Ab67に対する回避率が優れていた(図4、表5)。
【0081】
【表4】

【表5】
【0082】
Fc結合MDTCS断片バリアントの中和抗体回避能力の確認
構造機能試験では、ADAMTS13の合計14個のドメインのうち、CUB2ドメインがC末端TSP-2から除去されたMDTCSドメインは、ADAMTS13に類似したメタロプロテアーゼ機能を有することが示され、故にVWFを切断することができることが報告された(Shelatら、2005)。これは、完全長ADAMTS13の代わりにMDTCS断片のみでもTTP疾患の治療剤として機能できること、及び患者の血漿中に存在する、C末端部分に結合する切断型の中和抗体を回避できることを示唆している。
【0083】
さらに、本発明者らは、MDTCS断片の構造的安定性をさらに改善し、Fcを結合することによって半減期を延長しようと試みた。選択された12種類のバリアントをMDTCSを含む断片にし、Fc結合バリアントを調製し、2つのアミノ酸変異を有するDM1及びDM2バリアントを、選択されたバリアントアミノ酸残基を組み合わせてさらに調製した。最終候補物質は、上述の方法によって細胞で発現させた培養物及び精製溶液を使用して、単一又は混合中和抗体の回避率及び相対活性を測定して選択した。培養物を使用して8種類の単一中和抗体への結合の回避率及び該抗体に対する相対活性を測定した結果、2B01、3B05、4H07、5G08、8D05、及びDM1は、同じようなレベルで全ての中和抗体を回避することが示された(図5、表6)。1C03、2B02、5C09、7A02、8D01、及びDM2は、3-01及びAb60に対する結合の優れた回避率を示した。6種類の候補の全てがSドメインにアミノ酸変異を有し、8D01を除いて、612番目のアミノ酸に共通して変異を有することが示された。4E11及びDM2の場合、それらはAb67への結合の優れた回避率を有することが示され、両方ともDドメインの314番目のアミノ酸に変異を有することが示された。相対活性の場合、DM1は57.9%という最も低い相対活性を示し、1C03は133.1%という最も高い相対活性を示した。上記の2種類を除く全ての候補は78.2%~125.1%の相対活性を示し、MDTCS-Fc対照群の相対活性と類似していた(表6)。9種類の中和抗体(Ab3-01、Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、Ab66、及びAb67)を同じ比で混合する条件下、対照群MDTCS-Fcと比べた4C07及び5C09を除く候補バリアントの回避能力を確かめるために、7.5nMの混合中和抗体及び4nMの各バリアント発現培養物を混合し、室温で1時間反応させて残存活性を測定した。MDTCS-Fcは3.5%の残存活性を維持することが示され、3B05、4E11、4H07、5G08、及び8D05は1.24%~2.42%の残存活性を有することが確認され、故に残存活性はMDTCS-Fcより低いことを示した(図6)。対照的に、1C03、2B01、2B02、7A02、8D01、DM1、及びDM2の場合、残存活性は7.69%~18.81%で維持され、故に、混合中和抗体による回避能力はMDTCS-Fcと比べて優れていることを裏付けた(図6)。
【0084】
精製溶液を使用して候補物質バリアントの中和抗体回避能力を確かめるために、Phytipシステム(プロテインA樹脂)を使用して4C07及び5C09を除く12種類の培養物でタンパク質精製を行った。精製溶液の濃度をFc ELISAにより確かめ、標的タンパク質が銀染色により溶出されることが確認された。精製溶液を使用して単一中和抗体の回避率を確かめた結果、バリアントのほとんどが、培養物で評価された結果と同じような傾向を有することが確認された(図7)。2B01 5G08、8D05、及びDM1バリアントは、8種類の中和抗体全てに関して中和抗体を24.6%以上回避することが示され、1C03、2B02、7A02、8D01、及びDM2は、培養物の結果と同じような3-01及びAb60への結合の優れた回避率を示した。4E11及びDM2の場合、それらは、培養物の結果と同じ、Ab67への結合の優れた回避率を有することが確認された。各バリアントの相対活性を図7及び表7に示す。混合中和抗体の条件下の残存活性を測定した結果、MDTCS-Fcは3.76%の残存活性を維持することが確認され、3B05、4E11、4H07、及び8D05バリアントは2.05%~3.50%の残存活性を示すことが確認され、故にMDTCS-Fcと比べてより高い抑制を示した。対照的に、1C03、2B01、2B02、5G08、7A02、8D01、DM1、及びDM2の場合、6.34%~12.8%の残存活性が維持されることが確認され、故に、MDTCS-Fcと比べて混合中和抗体が中和抗体を回避する優れた能力を有することを裏付けた(図8)。
【0085】
上記の結果に基づき、混合中和抗体に対する相対活性又は回避率を包括的に考慮し、612番目のアミノ酸における変異のため混合中和抗体を回避する優れた能力を有すると予測される1C03、2B02、7A02、DM2、及び5C09を、さらなる試験の5種類の候補として選択した。
【0086】
【表6】

【表7】
【0087】
最終的に選択された5種類のMDTCSバリアント断片にIgG1-YTEがコンジュゲートされたDNAを構築して細胞で発現させた培養物で、8種類の単一中和抗体の結合を回避する能力及び相対活性を測定した。その結果、1C03、2B02、5C09、及び7A02はAb3-01及びAb60への結合の優れた回避率を示し、DM2の場合、Ab3-01、Ab60、及びAb67への結合の回避率が優れていることが確認された(図10)。相対活性は、(図10)のMDTCS-IgG1-YTEの相対活性と同様の98.6~127.7%であった。9種類の中和抗体が同じ比で混合される条件下で、対照群MDTCS-IgG1-YTEと比べて5種類のバリアント物質の回避能力を確かめるために、混合中和抗体(9種類)及び各バリアント発現培養物を混合し、室温で1時間反応させ、残存活性を測定した。MDTCS-IgG1-YTEの場合、残存活性は5.5%で維持され、5種類の物質の場合、残存活性は8.18%~13.42で維持され、故に中和抗体による回避能力が対照群と比べて優れいることを裏付けた(図11)。
【0088】
タンパク質を、IgG1-YTEが上記の5種類のMDTCSバリアント断片にコンジュゲートされた発現培養物からPhytipシステム(プロテインA樹脂)を使用して精製し、混合中和抗体の残存活性及び特異的力価を精製溶液で測定した。対応する精製溶液の濃度をFc ELISAにより確かめ、標的タンパク質の溶出を銀染色により確かめた。混合中和抗体の条件下の残存活性を測定した結果、MDTCS-IgG1-YTEは0.4%で維持されることが確認され、1C03、2B02、5C09、7A02、及びDM2の残存活性はそれぞれ5.7%、1.7%、8.8%、2.6%、及び7.9%で維持され、故に混合抗体回避能力はMDTCS-IgG1-YTEより優れていることが裏付けられた。特異的力価を測定した結果、7A02(10,288IU/mg)を除く4種類のバリアントは、対照群(18,030IU/mg)と同じような19,091IU/mg~22,379IU/mgの特異的力価を示すことが確認された(図12)。その結果、5つのバリアント断片のIgG1-YTEコンジュゲート物質は、対照群と比べて混合中和抗体における優れた回避能力を有すること、及び7A02を除く4種類のバリアントは対照群と同じような特異的力価を有することが確認された。
【0089】
MDTCS断片バリアントの半減期がFc結合によって増加したかの評価
MDTCS(IgG1-YTE)に結合されたFcが半減期を実際に増加させるかを決定するために、マウスにおいて薬物動態分析を行った。この目的のために、IgG1-YTEが結合されるMDTCS又はMDTCS、及び4種類の最終候補(1C03、5C09、7A02、及びDM2)バリアント断片タンパク質をマウスの尾静脈に投与し、次いで血漿を各設定時間に得た。これらの物質を各物質の特異的力価に基づき160IU/kgの濃度に投与し、各設定時間に得た血漿中に残存している物質の活性を活性アッセイにより測定した。得られた結果をナイーブプール法(naive pooled method)によってまとめ、非コンパートメント解析法を使用して薬物動態解析を行った。MDTCSの半減期は2.898時間と測定され、MDTCS-IgG1-YTEは11.51時間であり、各バリアントは5.184~9.902時間の半減期を示した。対照MDTCSと比べて、半減期はIgG1-YTEコンジュゲーションにより1.79~3.97倍延長された。さらに、IgG1-YTEコンジュゲーションによる物質の平均滞留時間を示す平均滞留時間(MRT)値は7.189~11.67時間であり、故に3.743時間と比べて滞留時間の増加を示した(表8、図9)。その結果、IgG1-YTE融合は、インビボでの血中半減期及び平均持続時間による活性の維持において有効であることが確認された。
【0090】
【表8】
【0091】
上記のように、本発明者らは、MDTCS領域若しくはSドメインに結合するADAMTS13中和抗体を回避するか、又は野生型ADAMTS13と同等以上の活性を示す26種類の新規のバリアントを発見した。これらのうち、9種類の中和抗体に対する最も優れた回避能力又は著しく優れた相対活性を有する12種類を選択し、次いで、vWF切断に不可欠であるが、C末端に結合する中和抗体を効率的に回避することができるMDTCS断片を構築し、D、C又はSドメインに結合する自己抗体を回避する割合が有意に改善されたバリアントを同定した。本発明のバリアントは、IgG1-YTEコンジュゲーションにより血中半減期を増加させることによって、生理的活性の安定性及び耐久性が改善された有効な薬理学的成分として有用に使用することができる。
【0092】
aTTP模倣疾患マウスモデルにおけるバリアントPoCの確認結果
確立したaTTP模倣マウスモデルから最終候補物質を選択するために、対照物質(MDTCS-IgG1-YTE)又は選択された5つのバリアント候補物質(1C03-IgG1-YTE、2B02-IgG1-YTE、5C09-IgG1-YTE、7A02-IgG1-YTE、及びDM2-IgG1-YTE)を投与し、中和抗体を回避する割合を評価した(図13a)。5種類のバリアント候補物質のうち、DM2-IgG1-YTEは、5,000IU/kg及び7,000IU/kgの両方の用量で最も高いヒトADAMTS13残存活性を示した(図13b)。最も良い中和抗体回避率を示したDM2-IgG1-YTE物質を最終的に選択し、様々な濃度で投与してヒトADAMTS13の残存活性を維持する能力及び臨床症状の軽減の程度を確認した(図14a);その結果、軽減の程度はDM2用量が増加するにつれて増加することが確認され、血小板及びLDHレベルの改善は、7,000IU/kg投与群でMDTCS-IgG1-YTE投与と比べてDM2-IgG1-YTE投与により比較的高いことが観察された(図14b)。血小板及びLDHレベルの改善と一致して、ヒトADAMTS13活性テストの結果、対照物質又は候補物質の投与用量に比例する残存活性の増加を観察することができた(図14b)。臨床症状の観察の結果、aTTP模倣マウスモデルで示された死亡率又は血尿は、対照物質又は候補物質の投与によって低下することが確認された。特に、DM2-IgG1-YTE治療群の場合、いずれの用量でも死亡はなく、7,000IU/kg以上の用量で投与した場合、血尿症状を有する対象は観察されなかった(図14c)。7,000IU/kgの用量で投与した場合、平均残存活性はDM2-IgG1-YTEの0.32IU/mLであり、これはMDTCS-IgG1-YTEの0.03IU/mLの平均残存活性より9.6倍高く、臨床症状の観察結果の差は、残存活性のそのような差によると決定された。一般的血液検査、臨床化学検査、及び臨床症状の観察の結果、MDTCS-IgG1-YTE及びDM2-IgG1-YTEの投与は、aTTP模倣マウスモデルにおけるaTTPの臨床症状を改善する傾向があることが確認され、これにより、インビボでのPoCを確認することができた。特に、7,000IU/kgの用量で投与した場合、DM2-IgG1-YTE投与はMDTCS-IgG1-YTE投与と比べて優れた改善効果を示すことが確認された。
【0093】
cTTP疾患マウスモデルにおけるバリアントPoCの確認の結果
cTTPマウスモデルにおけるTTP疾患で現れる血液症状及び臨床症状の改善の存在並びにヒトADAMTS13活性の回復の程度を、aTTP模倣マウスモデルでの5種類のバリアント候補のうち最も優れた効果を示したDM2-IgG1-YTEを使用して確かめた(図15a)。血小板及びLDHレベルの改善は、DM2-IgG1-YTEの用量の増加に従って濃度依存的に生じることを確認することができ、血小板の有意な増加は、対照群と比べてDM2-IgG1-YTE 180を360IU/kgで投与された群で観察され、特に、360IU/kgで投与された群の場合、正常レベルに匹敵する回復が示された(図15b)。LDHレベルの場合、LDHは、180IU/kgで投与された群において対照群と同じようなレベルまで回復することが確認された(図15b)。DM2-IgG1-YTEを60IU/kg群の用量で投与した群から出発するADAMTS13活性の場合、0.1IU/mL以上の平均活性が示され、360IU/kgの用量で投与された群では、1.08IU/mLの平均活性が測定された(図15b)。したがって、DM2-IgG1-YTEバリアントは、cTTP疾患マウスにおいて臨床症状を効果的に改善し、ADAMTS13活性を回復させることができることが見出された。
【0094】
本発明の特定の部分が上記に詳細に説明されたように、これらの特定の説明は当業者にとっての好ましい実施形態にすぎず、本発明の範囲がそれに限定されないことは明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の特許請求の範囲及びその同等物によって規定されることになる。
【0095】
参考文献
1. Miesbach W, Menne J, Bommer M,Schonermarck U, Feldkamp T, Nitschke M, Westhoff TH, Seibert FS, Woitas R, SousaR, Wolf M, Walzer S, Schwander B. Orphanet Journal of Rare Diseases (2019)14:260. doi: 10.1186/s13023-019-1240-0.
2. Ercig B, Wichapong K,Reutelingsperger CPM, Vanhoorelbeke K, Voorberg J, Nicolaes GAF. ThrombHaemost. 2018;118(1):28-41. doi:10.1160/TH17-06-0404
3. Johanna A Kremer Hoving, Paul Coppo,Bernhard Lammle, Joel L Moake, Toshiyuki Miyata, Karen Vanhoorelbeke. Nat RevDis Primers. 2017 Apr 6; 3:17020. doi: 10.1038/nrdp.2017.20.
4. Genetic and Rare Diseases InformationCenter (GARD)-an NCATS Program. 10 October 2018
5. Tersteeg C, Verhenne S, Roose E, etal. Expert Rev Hematol. 2016; 9(2): 209-221. doi:10.1586/17474086.2016.1122515
6. Klaus C, Plaimauer B, Studt JD, etal. Blood. 2004; 103(12): 4514-4519. doi:10.1182/blood-2003-12-4165
7. Luken BM, Turenhout EA, Hulstein JJ,Van Mourik JA, Fijnheer R, Voorberg J. Thromb Haemost. 2005; 93(2):267-274.doi:10.1160/TH04-05-0301
8. Veronica C. Casina, Wenbing Hu,Jian-Hua Mao, Rui-Nan Lu, Hayley A. Hanby, Brandy Pickens, Zhong-Yuan Kan, WoonK. Lim, Leland Mayne, Eric M. Ostertag, Stephen Kacir, Don L. Siegel, S. WalterEnglander, and X. Long Zheng. Proc Natl Acad Sci U S A. 2015 Aug 4; 112(31):9620-5. doi: 10.1073/pnas.1512561112.
9. Suresh G Shelat, Jihui Ai, and X.Long Zheng. Semin Thromb Hemost. 2005 Dec; 31(6):659-72. doi:10.1055/s-2005-925472.
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7a
図7b
図8
図9
図10a
図10b
図11
図12
図13a
図13b
図14a
図14b
図14c
図15a
図15b
【配列表】
2023549878000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明に適用されるアミノ酸残基の置換は、85番目の残基Pheでの置換、93番目の残基Valでの置換、126番目の残基Metでの置換、135番目の残基Ileでの置換、278番目の残基Ileでの置換、282番目の残基Alaでの置換、308番目の残基Lysでの置換、314番目の残基Thrでの置換、317番目の残基Hisでの置換、334番目の残基Thr又はValでの置換、364番目の残基Argでの置換、376番目の残基Aspでの置換、413番目の残基Aspでの置換、427番目の残基Asnでの置換、452番目の残基Ileでの置換、465番目の残基Aspでの置換、567番目の残基Serでの置換、578番目の残基Leuでの置換、585番目の残基Asn又はMetでの置換、589番目の残基Glnでの置換、607番目の残基Argでの置換、608番目の残基Metでの置換、609番目の残基Leuでの置換、612番目の残基Phe又はTyrでの置換、618番目の残基Serでの置換、624番目の残基Asp又はCysでの置換、630番目の残基Leuでの置換、635番目の残基Valでの置換、643番目の残基Pheでの置換、650番目の残基Hisでの置換、651番目の残基Aspでの置換、654番目の残基Glyでの置換、655番目の残基Valでの置換、656番目の残基Arg又はHisでの置換、658番目の残基Hisでの置換、664番目の残基Asnでの置換、及び672番目の残基Valでの置換からなる群から選択される少なくとも1つである
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
本発明の特定の実施形態によれば、Fc領域は、配列番号2の22番目、24番目、及び26番目の残基からなる群から選択される1つ又は複数のアミノ酸残基の置換を含む。より具体的には、アミノ酸残基の置換は、22番目の残基Tyrでの置換、24番目の残基Thrでの置換、及び26番目の残基Gluでの置換からなる群から選択される少なくとも1つである
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
図1a】ランダム変異誘発を使用してヒトADAMTS13バリアントライブラリーの構築を示す略図、及び変異率を確かめた結果を示す図である。図1aは、ランダム変異誘発によるライブラリー構築プロセスの模式図である。ランダム変異を、エラープローンPCR(EP PCR)によりMDTCS領域又はSドメインに誘導し、アクセプターベクターに挿入し、クローニングし、次いで大腸菌(E. coli)に形質転換してコロニーを確保した。DNAをコロニーから抽出し、変異したヌクレオチド配列をサンガー配列決定分析により確かめた。
図1b】ランダム変異誘発を使用してヒトADAMTS13バリアントライブラリーの構築を示す略図、及び変異率を確かめた結果を示す図である。図1bは、配列決定分析の結果を示すグラフを示す。MDTCS又はSドメインを標的にすることによって構築されたライブラリーの総変異率及び変異形態をそれぞれ確かめた。
図2a】中和抗体に結合するADAMTS13の各ドメインの結合部位を確かめた結果を示す略図である。図2aは、ADAMTS13の発現率又は中和抗体の結合部位を確かめるために調製された、様々なドメインが組み合わされた6種類のADAMTS13断片(又は野生型完全長ADAMTS13)の模式図を示す。
図2b】中和抗体に結合するADAMTS13の各ドメインの結合部位を確かめた結果を示す略図である。図2bは、各ADAMTS13ドメインで発現されたタンパク質を使用してプロテインA-セファロース及び各中和抗体を混合して免疫沈降させた後、抗V5抗体を用いてウェスタンブロットを行った結果を示す。「インプット」は、各ドメインのタンパク質の発現レベルを示す。
図2c】中和抗体に結合するADAMTS13の各ドメインの結合部位を確かめた結果を示す略図である。図2cは、Ab4-16抗体がSドメインに、Ab67抗体がDドメインに、Ab66抗体がT2~T8ドメインにそれぞれ特異的に結合することを示す、ADAMTS13中和抗体の結合部位の模式図である。
図3a】抗ADAMTS13抗体を回避するか又は野生型ADAMTS13より優れた活性を有するバリアントのスクリーニング結果を示す略図である。Ab4-16抗体又はAb67抗体の回避率及びADAMTS13活性は、野生型クローン及びADAMTS13バリアントで測定した。相対活性は、野生型クローン及びバリアントの特異的力価を確かめ、それらを以下の方程式に代入して算出した:相対活性(%)=バリアントの特異的力価/野生型ADAMTS13の特異的力価×100。
図3b】抗ADAMTS13抗体を回避するか又は野生型ADAMTS13より優れた活性を有するバリアントのスクリーニング結果を示す略図である。Ab4-16抗体又はAb67抗体の回避率及びADAMTS13活性は、野生型クローン及びADAMTS13バリアントで測定した。相対活性は、野生型クローン及びバリアントの特異的力価を確かめ、それらを以下の方程式に代入して算出した:相対活性(%)=バリアントの特異的力価/野生型ADAMTS13の特異的力価×100。
図4a】単一中和抗体に対する12種類の完全長ADAMTS13バリアントの回避率を確かめた結果を示す図である。7種類の中和抗体(Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、及びAb67)に対する抗体回避率を、12種類の完全長ADAMTS13バリアントで測定した。中和抗体回避率は、相対的結合レベルをWT ADAMTS13値と比較し、これを使用して以下の方程式に相対的回避率を代入して算出した:回避率(%)=(1-バリアントの結合能/WT ADAMTS13の結合能)×100。
図4b】単一中和抗体に対する12種類の完全長ADAMTS13バリアントの回避率を確かめた結果を示す図である。7種類の中和抗体(Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、及びAb67)に対する抗体回避率を、12種類の完全長ADAMTS13バリアントで測定した。中和抗体回避率は、相対的結合レベルをWT ADAMTS13値と比較し、これを使用して以下の方程式に相対的回避率を代入して算出した:回避率(%)=(1-バリアントの結合能/WT ADAMTS13の結合能)×100。
図5a】Fc結合MDTCS断片バリアントを発現する培養培地で単一中和抗体を回避する能力を確かめた結果を示す図である。選択された12種類のバリアントをMDTCS断片化に供し、次いでFc結合バリアントを選択された変異アミノ酸残基と組み合わせ、2つのアミノ酸変異を有するDM1及びDM2バリアントを含む合計14種類のバリアントを発現させた培養培地を使用して、8種類の中和抗体(Ab3-01、Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、及びAb67)のADAMTS13の中和抗体回避率及び相対活性を測定した。回避率(%)=(1-バリアントの結合能/WT ADAMTS13の結合能)×100;相対活性(%)=バリアントの特異的力価/WT ADAMTS13の特異的力価×100
図5b】Fc結合MDTCS断片バリアントを発現する培養培地で単一中和抗体を回避する能力を確かめた結果を示す図である。選択された12種類のバリアントをMDTCS断片化に供し、次いでFc結合バリアントを選択された変異アミノ酸残基と組み合わせ、2つのアミノ酸変異を有するDM1及びDM2バリアントを含む合計14種類のバリアントを発現させた培養培地を使用して、8種類の中和抗体(Ab3-01、Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、及びAb67)のADAMTS13の中和抗体回避率及び相対活性を測定した。回避率(%)=(1-バリアントの結合能/WT ADAMTS13の結合能)×100;相対活性(%)=バリアントの特異的力価/WT ADAMTS13の特異的力価×100
図6】Fc結合MDTCS断片バリアントを発現する培養培地の条件下で混合中和抗体を回避する能力を確かめた結果を示す図である。等比で混合される9種類の中和抗体(Ab3-01、Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、Ab66、及びAb67)を、MDTCS-Fc(すなわち、対照群)及び12種類の候補バリアントを発現する4nM培養培地に混合し、反応させた。次いで、各候補バリアントの残存活性を以下の方程式に代入して算出した:残存活性(%)=A÷B×100(A:混合中和抗体の条件下の活性、B:中和抗体で治療しない条件下の活性)。
図7a】Fc結合MDTCS断片バリアント培養培地及び精製溶液の条件下で単一中和抗体を回避する能力を確かめた結果を示す図である。8種類の単一中和抗体(Ab3-01、Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、及びAb67)に関する中和抗体の回避率及び相対活性を、12種類のバリアント(1C03、2B01、2B02、3B05、4E11、4H07、5G08、7A02、8D01、8D05、DM1、及びDM2)を発現させた培養培地か、又はPhytipシステムを使用して精製した精製溶液を使用して測定した(図7a及び7b)。精製溶液の濃度をFc ELISAにより確かめた。回避率(%)=(1-バリアントの結合能/MDTCS-Fcの結合能)×100、相対活性(%)=バリアントの特異的力価/MDTCS-Fcの特異的力価×100。それぞれ、色のバーは精製バリアントタンパク質を示し、色のバーは発現したバリアントタンパク質の中央値を示す。
図7b】Fc結合MDTCS断片バリアント培養培地及び精製溶液の条件下で単一中和抗体を回避する能力を確かめた結果を示す図である。8種類の単一中和抗体(Ab3-01、Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、及びAb67)に関する中和抗体の回避率及び相対活性を、12種類のバリアント(1C03、2B01、2B02、3B05、4E11、4H07、5G08、7A02、8D01、8D05、DM1、及びDM2)を発現させた培養培地か、又はPhytipシステムを使用して精製した精製溶液を使用して測定した(図7a及び7b)。精製溶液の濃度をFc ELISAにより確かめた。回避率(%)=(1-バリアントの結合能/MDTCS-Fcの結合能)×100、相対活性(%)=バリアントの特異的力価/MDTCS-Fcの特異的力価×100。それぞれ、色のバーは精製バリアントタンパク質を示し、色のバーは発現したバリアントタンパク質の中央値を示す。
図8】Fc結合MDTCS断片バリアント培養培地及び精製溶液の条件下で混合中和抗体を回避する能力を確かめた結果を示す図である。等比で混合される8種類の中和抗体(Ab3-01、Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、及びAb67)を、MDTCS-Fc(すなわち、対照群)及び12種類の候補バリアントを発現する培養培地か又は4nM精製溶液に混合し、反応させた。次いで、各候補バリアントの残存活性を測定した。残存活性を以下の方程式に代入して算出した:残存活性(%)=A÷B×100(A:混合中和抗体の条件下の活性、B:中和抗体で治療しない条件下の活性)。
図9】Fc結合MDTCS断片バリアントの薬物動態の結果を示すグラフである。MDTCS又はFc(IgG1-YTE)結合MDTCS及び4つの最終候補バリアント(1C03、5C09、7A02、及びDM2)断片タンパク質をマウスの尾静脈に投与後、血漿を1時間ごとに得た。タンパク質は、各物質の特異的力価が160IU/kgとなり得るように投与し、1時間ごとに得た血漿中に残留している物質の活性を活性アッセイにより測定した。
図10a】IgG1-YTE結合MDTCS断片バリアント培養培地の条件下で単一中和抗体を回避する能力を確かめた結果を示す図である。選択された5種類のバリアントをMDTCS断片化に供し、8種類の単一中和抗体(Ab3-01、Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、及びAb67)の中和抗体を回避する率及び相対活性を、IgG1-YTE結合バリアントを発現する培養培地を使用して測定した(図10a及び10b)。回避率(%)=(1-バリアントの結合能/MDTCS-IgG1-YTEの結合能)×100;相対活性(%)=バリアントの特異的力価/MDTCS-IgG1-YTEの特異的力価×100。
図10b】IgG1-YTE結合MDTCS断片バリアント培養培地の条件下で単一中和抗体を回避する能力を確かめた結果を示す図である。選択された5種類のバリアントをMDTCS断片化に供し、8種類の単一中和抗体(Ab3-01、Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、及びAb67)の中和抗体を回避する率及び相対活性を、IgG1-YTE結合バリアントを発現する培養培地を使用して測定した(図10a及び10b)。回避率(%)=(1-バリアントの結合能/MDTCS-IgG1-YTEの結合能)×100;相対活性(%)=バリアントの特異的力価/MDTCS-IgG1-YTEの特異的力価×100。
図11】IgG1-YTE結合MDTCS断片バリアントを発現する培養培地の条件下で混合中和抗体を回避する能力を確かめた結果を示す図である。等比で混合される9種類の中和抗体(Ab3-01、Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、Ab66、及びAb67)を、MDTCS-IgG1-YTE(すなわち、対照群)及び5種類の候補バリアントを発現する4nM培養培地に混合し、反応させた。次いで、各候補バリアントの残存活性を以下の方程式によって算出した:残存活性(%)=A÷B×100(A:混合中和抗体の条件下の活性、B:中和抗体で治療しない条件下の活性)。
図12】IgG1-YTE結合MDTCS断片バリアント培養培地の条件下で混合中和抗体を回避する能力を確かめた結果を示す図である。等比で混合される9種類の中和抗体(Ab3-01、Ab4-16、Ab4-20、Ab60、Ab61、Ab64、Ab65、Ab66、及びAb67)を、MDTCS-IgG1-YTE(すなわち、対照群)及び5種類の候補バリアントを含む4nM精製溶液に混合し、反応させた。次いで、各候補バリアントの残存活性を以下の方程式によって算出した:残存活性(%)=A÷B×100(A:混合中和抗体の条件下の活性、B:中和抗体で治療しない条件下の活性)。
図13a】それぞれ、aTTP模倣マウスモデルを使用して中和抗体を回避する率をテストするための手順を示す模式図(図13a)、及びバリアント候補の用量に応じた残存ADAMTS13活性を示す略図(図13b)である。
図13b】それぞれ、aTTP模倣マウスモデルを使用して中和抗体を回避する率をテストするための手順を示す模式図(図13a)、及びバリアント候補の用量に応じた残存ADAMTS13活性を示す略図(図13b)である。
図14a】aTTP模倣マウスモデルを使用して最も優れた中和抗体回避率(図14a)、血小板及びLDHレベル及びADAMTS13活性の改善を示す模式図(図14b)、並びに臨床症状の観察結果(図14c)をそれぞれ示した、DAMTS13の残存活性を維持するためのテスト手順を示す模式図、及びDM2-IgG1-YTEの濃度に応じた臨床症状を示す図である。
図14b】aTTP模倣マウスモデルを使用して最も優れた中和抗体回避率(図14a)、血小板及びLDHレベル及びADAMTS13活性の改善を示す模式図(図14b)、並びに臨床症状の観察結果(図14c)をそれぞれ示した、DAMTS13の残存活性を維持するためのテスト手順を示す模式図、及びDM2-IgG1-YTEの濃度に応じた臨床症状を示す図である。
図14c】aTTP模倣マウスモデルを使用して最も優れた中和抗体回避率(図14a)、血小板及びLDHレベル及びADAMTS13活性の改善を示す模式図(図14b)、並びに臨床症状の観察結果(図14c)をそれぞれ示した、DAMTS13の残存活性を維持するためのテスト手順を示す模式図、及びDM2-IgG1-YTEの濃度に応じた臨床症状を示す図である。
図15a】cTTPマウスモデルへのDM2-IgG1-YTEの投与による血液症状及び臨床症状の改善の存在/非存在、及びヒトADAMTS13活性の回復の程度に関するテスト手順を示す模式図(図15a)、並びに血小板及びLDHレベル及びADAMTS13活性の改善、及びADAMTS13活性の回復の観察結果(図15b)をそれぞれ示す図である。
図15b】cTTPマウスモデルへのDM2-IgG1-YTEの投与による血液症状及び臨床症状の改善の存在/非存在、及びヒトADAMTS13活性の回復の程度に関するテスト手順を示す模式図(図15a)、並びに血小板及びLDHレベル及びADAMTS13活性の改善、及びADAMTS13活性の回復の観察結果(図15b)をそれぞれ示す図である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0086
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0086】
【表6】
【表7】
【手続補正5】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項3】
前記アミノ酸残基の置換が、85番目の残基Pheでの置換、93番目の残基Valでの置換、126番目の残基Metでの置換、135番目の残基Ileでの置換、278番目の残基Ileでの置換、282番目の残基Alaでの置換、308番目の残基Lysでの置換、314番目の残基Thrでの置換、317番目の残基Hisでの置換、334番目の残基Thr又はValでの置換、364番目の残基Argでの置換、376番目の残基Aspでの置換、413番目の残基Aspでの置換、427番目の残基Asnでの置換、452番目の残基Ileでの置換、465番目の残基Aspでの置換、567番目の残基Serでの置換、578番目の残基Leuでの置換、585番目の残基Asn又はMetでの置換、589番目の残基Glnでの置換、607番目の残基Argでの置換、608番目の残基Metでの置換、609番目の残基Leuでの置換、612番目の残基Phe又はTyrでの置換、618番目の残基Serでの置換、624番目の残基Asp又はCysでの置換、630番目の残基Leuでの置換、635番目の残基Valでの置換、643番目の残基Pheでの置換、650番目の残基Hisでの置換、651番目の残基Aspでの置換、654番目の残基Glyでの置換、655番目の残基Valでの置換、656番目の残基Arg又はHisでの置換、658番目の残基Hisでの置換、664番目の残基Asnでの置換、及び672番目の残基Valでの置換からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載のADAMTS13バリアントタンパク質又はその機能性断片。
【国際調査報告】