(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】組成物または物質、その生成方法およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
B01J 27/18 20060101AFI20231121BHJP
C01B 25/32 20060101ALI20231121BHJP
B01J 37/34 20060101ALI20231121BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20231121BHJP
C07C 29/36 20060101ALI20231121BHJP
C07C 31/08 20060101ALI20231121BHJP
C07C 45/00 20060101ALI20231121BHJP
C07C 49/08 20060101ALI20231121BHJP
C07C 51/15 20060101ALI20231121BHJP
C07C 53/02 20060101ALI20231121BHJP
C07C 227/00 20060101ALI20231121BHJP
C07C 229/08 20060101ALI20231121BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231121BHJP
【FI】
B01J27/18 M
C01B25/32 P
B01J37/34
B01J37/08
C07C29/36
C07C31/08
C07C45/00
C07C49/08 A
C07C51/15
C07C53/02
C07C227/00
C07C229/08
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023529116
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(85)【翻訳文提出日】2023-07-13
(86)【国際出願番号】 EP2021082013
(87)【国際公開番号】W WO2022106481
(87)【国際公開日】2022-05-27
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599012422
【氏名又は名称】ベー・ブラウン・サージカル・ソシエダッド・アノニマ
【氏名又は名称原語表記】B. Braun Surgical, S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】513233665
【氏名又は名称】ウニベルジテート ポリテクニカ デ カタル-ニア
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カルロス エンリケ アレマン ランソ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーディ プイガリ ベラルタ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーディ サンズ
(72)【発明者】
【氏名】ポウ トゥロン ドルス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァネッサ サンス ベルトラン
(72)【発明者】
【氏名】アンナ マリア ロドリゲス リベロ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA08
4G169BB05A
4G169BB05B
4G169BB14A
4G169BB14B
4G169BC09A
4G169BC09B
4G169CB70
4G169CB72
4G169CB74
4G169DA05
4G169EC25
4G169FB30
4G169FB58
4G169FC07
4G169FC08
4H006AA02
4H006AC41
4H006AC44
4H006AC46
4H006AC52
4H006BA06
4H006BA35
4H006BA91
4H006BE41
4H006BE60
4H006BS10
4H006BU32
4H006FE11
4H006NB11
4H006NB16
4H039CA99
4H039CL25
(57)【要約】
本発明は、組成物または物質、特に、永久分極ヒドロキシアパタイトと、ブルシャイトおよび/またはブルシャイト様物質と、を含む、触媒的に活性な組成物または物質に関する。さらに、本発明は、組成物または物質を生成する方法と、本方法によって得られるまたは得ることができる組成物または物質と、組成物または物質の使用と、に関する。
【選択図】
図1(a)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久分極ヒドロキシアパタイトと、
ブルシャイトおよび/またはブルシャイト様物質と、を含む、組成物または物質。
【請求項2】
前記組成物または物質は、触媒、好ましくは多相触媒の形態にあり、
前記永久分極ヒドロキシアパタイトは、前記触媒の相、特に主要相を形成し、
前記ブルシャイトおよび/またはブルシャイト様物質は、前記触媒のさらなる相を形成することを特徴とする、請求項1に記載の組成物または物質。
【請求項3】
前記組成物または物質は、
図1(a)に示されている、広角x線散乱パターンを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物または物質。
【請求項4】
前記組成物または物質は、
図1(b)に示されている、ラマンスペクトルを有することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の組成物または物質。
【請求項5】
前記永久分極ヒドロキシアパタイトは、前記ブルシャイトおよび/またはブルシャイト様物質の割合よりも大きな割合を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の組成物または物質。
【請求項6】
前記永久分極ヒドロキシアパタイトは、前記組成物または物質の総重量に対して、50重量%~99.9重量%、特に、75重量%~99重量%、好ましくは80重量%~95重量%の割合を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の組成物または物質。
【請求項7】
前記ブルシャイトおよび/またはブルシャイト様物質は、前記組成物または物質の総重量に対して、0.1重量%~35重量%、特に、1重量%~25重量%、好ましくは5重量%~20重量%の割合を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の組成物または物質。
【請求項8】
前記ブルシャイトおよび/またはブルシャイト様物質は、広角x線散乱によって特に決定される、65%~99.9%、好ましくは75%~99%、より好ましくは80%~95%の結晶化度を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の組成物または物質。
【請求項9】
前記ブルシャイトおよび/またはブルシャイト様物質は、広角x線散乱によって特に決定される、20nm~500nm、特に、50nm~200nm、好ましくは70nm~100nmの結晶子サイズを有することを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の組成物または物質。
【請求項10】
以下の工程を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の組成物または物質を生成するする方法であって、
前記以下の工程は、
ヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの試料を用意する工程(a)と、
工程(a)において用意したヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの前記試料を焼結する工程(b)と、
工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた成形体に、特に少なくとも1分間、および/または900℃~1200℃の間、特に1000℃~1200℃の温度で、250V~2500Vの間の一定または可変DC電圧を印加する工程(c)、または、
工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた成形体に、特に少なくとも1分間、および/または900℃~1200℃の間、特に1000℃~1200℃の温度で、1.49kV/cm~15kV/cmの間の等価電界を印加する工程(c)、または、
工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた成形体に、特に>0分間~24時間、および/または900℃~1200℃の間、特に1000℃~1200℃の温度で、2500V~1500000Vの間の静電気放電を印加する工程(c)、または、
工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた成形体に、特に>0分間~24時間、および/または900℃~1200℃の間、特に1000℃~1200℃の温度で、148.9kV/cm~8928kV/cmの間の等価電界を印加する工程(c)と、
工程(c)において得られた前記試料を冷却して、前記DC電圧または前記等価電界を維持する工程(d)、または、工程(c)において得られた前記試料を冷却して、前記静電気放電または前記等価電界を維持する、または維持しない工程(d)と、を含み、
工程(c)を行う場合、工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた前記成形体は、工程(c)の間に前記一定または可変DC電圧、等価電界、または静電気放電を印加するために使用される正極と負極との間に配列され、
工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた前記成形体は、前記正極から離れている、方法。
【請求項11】
以下の工程を含む方法によって得られる、または得ることができる、請求項1から9のいずれかに特に記載の組成物または物質であって、
前記以下の工程は、
ヒドロキシアパタイト、特に、天然または合成ヒドロキシアパタイト、および/またはアモルファスリン酸カルシウムの試料を用意する工程(a)と、
工程(a)において用意したヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの前記試料を焼結する工程(b)と、
工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた成形体に、特に少なくとも1分間、および/または900℃~1200℃の間、特に1000℃~1200℃の温度で、250V~2500Vの間の一定または可変DC電圧を印加する工程(c)、または、
工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた成形体に、特に少なくとも1分間、および/または900℃~1200℃の間、特に1000℃~1200℃の温度で、1.49kV/cm~15kV/cmの間の等価電界を印加する工程(c)、または、
工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた成形体に、特に>0分間~24時間、および/または900℃~1200℃の間、特に1000℃~1200℃の温度で、2500V~1500000Vの間の静電気放電を印加する工程(c)、または、
工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた成形体に、特に>0分間~24時間、および/または900℃~1200℃の間、特に1000℃~1200℃の温度で、148.9kV/cm~8928kV/cmの間の等価電界を印加する工程(c)と、
工程(c)において得られた前記試料を冷却して、前記DC電圧または前記等価電界を維持する工程(d)、または、工程(c)において得られた前記試料を冷却して、前記静電気放電または前記等価電界を維持する、または維持しない工程(d)と、を含み、
工程(c)を行う場合、工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた前記成形体は、工程(c)の間に前記一定または可変DC電圧、等価電界、または静電気放電を印加するために使用される正極と負極との間に配列され、
工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた前記成形体は、2つの電極の一方から、好ましくは前記正極から離れており、即ち、工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた前記成形体は、前記2つの電極の一方に、好ましくは、前記正極に対する距離を有する、組成物または物質。
【請求項12】
特に、有機分子の合成のための反応において、触媒、特に電気触媒または光電気触媒としての、請求項1~9または11のいずれかに記載の組成物または物質の使用。
【請求項13】
触媒としての前記使用は、アミノ酸、特に、天然アミノ酸、好ましくは、グリシンおよび/またはアラニンの前記合成のための反応におけるものであることを特徴とする、請求項12に記載の組成物または物質の使用。
【請求項14】
触媒としての前記使用は、カルボン酸、特に、ギ酸、酢酸、マロン酸またはそれらの混合物の前記合成のための反応におけるものであることを特徴とする、請求項12に記載の組成物または物質の使用。
【請求項15】
触媒としての前記使用は、アルデヒドおよび/またはケトン、特に、アセトンの前記合成のための反応におけるものであることを特徴とする、請求項12に記載の組成物または物質の使用。
【請求項16】
触媒としての前記使用は、アルコール、特に、メタノールおよび/またはエタノールの前記合成のための反応におけるものであることを特徴とする、請求項12に記載の組成物または物質の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物または物質、前記組成物または物質を生成する方法、およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
式Ca10(PO4)6(OH)2を有するリン酸カルシウムの結晶形態である合成無機ヒドロキシアパタイト(HAp)は、骨および歯との組成類似性および構造類似性が理由で、主に生物医学において関心がもたれており、これによって、このような硬質組織を修復および再構築するため、その使用が動機付けられてきた。HApは、空間群P63/mおよび格子寸法a=b=9.42Åおよびc=6.87Åを有する、六方晶構造を有しており、これは、最大で1273℃まで安定である。
【0003】
HApの電気特性は、その生物医学用途に影響を及ぼすことが見出された。したがって、当初には、高温、すなわち200℃~800℃において、DC電位(すなわち1.0~10.0kV/cm)を印加することによって表面電荷を生成する、HApの分極に関心がもたれていた(Itoh,S.;Nakamura,S.;Kobayashi,T.;Shinomiya,K.;Yamashita,K.;Itoh,S.Effect of Electrical Polarization of Hydroxyapatite Ceramics on New Bone Formation.Calcif.Tissue Int.2006、78、133~142)。
【0004】
このような熱刺激分極(TSP)法によって、結晶粒内の欠損が引き起こされ、粒界における空間電荷分極を生じ、どちらも電気双極子の形成を含む(Nakamura,S.;Kobayashi,T.;Yamashita,K.Highly Orientated Calcification in Newly Formed Bones on Negatively Charged Hydroxyapatite Electrets.Key Eng.Mater.2005、284~286、897~900)。
【0005】
しかし、時間経過によりこのような双極子の緩和によって、分極が、この効果が定量化されない場合でさえも、部分的にしか維持されない(半永久的)ことが示唆された。
【0006】
最近、予め焼結した結晶性HAp(cHAp)に1000℃で1時間、500Vの一定DC電圧(すなわち、3kV/cmのDC場)を印加することによって、永久分極ヒドロキシアパタイトが合成された(Rivas,M.;del Valle,L.J.;Armelin,E.;Bertran,O.;Turon,P.;Puiggali,J.;Aleman,C.Hydroxyapatite with Permanent Electrical Polarization:Preparation,Characterization, and Response against Inorganic Adsorbates. Chem.Phys.Chem.2018、19、1746~1755)。このTSP法は、結晶化度の増大をもたらす、OH-欠損(空孔)の形成および構造的変化として、重要な化学的変化を引き起こした。したがって、得られた分極した無機物の電気化学的特性および導電性は、cHAp(すなわち、TSP処理をしていない焼結済みHAp)と比較した場合、著しく増大した。例えば、永久分極ヒドロキシアパタイトは、電気光触媒として使用されて、N2から窒素を、ならびにCO2およびCH4から炭素を固定化することによって、温和な反応条件(すなわち、大気圧から6bar、および95℃)で、グリシン(Gly)およびアラニン(Ala;D/Lラセミ混合物)の両方を得ることができることが見出された(Rivas,M.;del Valle,L.J.;Turon,P.;Aleman,C.;Puiggali,J.Sustainable Synthesis of Amino Acids by Catalytic Fixation of Molecular Dinitrogen and Carbon Dioxide.Green Chem.2018、20、685~693)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既に進歩があるにも関わらず、特に、好ましくはアミノ酸および他の有機分子など高価値化学製品を合成するための触媒としての永久分極ヒドロキシアパタイトを含む組成物または物質が依然としてさらに必要とされている。
【0008】
したがって、上述を鑑みて、本発明の根底をなす目的は、上記の必要性に適切に対処する、組成物または物質、その生成方法、およびそれらの使用を利用可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本目的は、独立請求項1および11に記載の組成物または物質、請求項10に記載の組成物または物質を生成するための方法、および請求項12~16に記載の組成物または物質の使用によって達成される。本組成物または物質の好ましい実施形態は、従属請求項2~9に規定されている。さらに、本発明の好ましい実施形態は、本明細書において規定される。すべての特許請求の範囲の主題および文言は、それぞれ、参照により、明示的な参照により本明細書に組み込まれている。
【0010】
第1の態様によれば、本発明は、組成物または物質、特に、永久分極ヒドロキシアパタイトと、ブルシャイトおよび/またはブルシャイト様物質と、を含む、触媒的に活性な組成物または物質に関する。
【0011】
本発明により使用される用語「永久分極ヒドロキシアパタイト」は、ヒドロキシアパタイト、特に、完全な構造再分布、特にほとんど完全な構造再分布を受けた、合成ヒドロキシアパタイトであって、高い結晶化度を有する、すなわち、特に、少量のアモルファスリン酸カルシウムを含み、かつ電気化学活性ならびに単位質量および表面あたりの電荷の蓄積量の増大によって検出される空孔が存在する合成ヒドロキシアパタイトを意味する。この永久分極ヒドロキシアパタイトは、二度と消失することがない、電気化学活性およびイオン移動度を有する。永久分極ヒドロキシアパタイトの対応する
31P-NMRスペクトルは、
図18に示されている通りである。好ましくは、前記スペクトルは、参照としてリン酸(H
3PO
4)を使用し、ヒドロキシアパタイトのホスフェート基に対応する2.6ppmにおける特有のピークを示す、固体ヒドロキシアパタイトを用いて行われる。
【0012】
本発明により使用される用語「熱分極ヒドロキシアパタイト」は、好ましくは、以下の工程を備える方法(熱分極方法)により得られる、または得ることができる永久分極ヒドロキシアパタイトを意味する。以下の工程は、ヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの試料を、特に700℃~1200℃の間の温度で焼結する工程(a)と、工程(a)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(a)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた成形体に、特に少なくとも1分間、900℃~1200℃の間、特に1000℃~1200℃の温度で、特に250V~2500Vの間の一定または可変DC電圧を印加する工程(b)、または、工程(a)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または、工程(a)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた成形体に、特に少なくとも1分間、900℃~1200℃の間、特に1000℃~1200℃の温度で、特に1.49kV/cm~15kV/cmの間の等価電界を印加する工程(b)、または、工程(a)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(a)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた成形体に、特に>0分間~24時間、および/または900℃~1200℃の間、特に1000℃~1200℃の温度で、特に2500V~1500000Vの間の静電気放電を印加する工程(b)、または、工程(a)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(a)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた成形体に、特に>0分間~24時間、および/または900℃~1200℃の間、特に1000℃~1200℃の温度で、特に148.9kV/cm~8928kV/cmの間の等価電界を印加する工程(b)と、を含む。
【0013】
工程(a)におけるヒドロキシアパタイトの試料は、天然の、すなわち自然発生ヒドロキシアパタイト、または合成ヒドロキシアパタイトとすることができる。
【0014】
さらに、工程(a)におけるヒドロキシアパタイトの試料は、特に、結晶性ヒドロキシアパタイトの試料であってもよい。
【0015】
したがって、本発明による組成物または物質の永久分極ヒドロキシアパタイトは、上記の方法(熱的分極法)によって好ましくは得られるか、または得ることができる。
【0016】
本発明により使用される用語「ブルシャイト」は、化学式CaHPO4・2H2Oを有する、リン酸塩物質またはリン酸塩無機物、特に合成リン酸塩物質または合成リン酸塩無機物を意味する。WAXS(広角x線散乱)スペクトルでは、ブルシャイトの最も代表的なピークは、2θ=29°、31°、35°、42°および51°に見られ、これらは、それぞれ、(141)、(221)、(121)、(152)、(143)反射(JCPDSカード番号72-0713)に起因している。
【0017】
本発明により使用される、用語「ブルシャイト様物質」とは、それぞれ、HPO4
2-の基準振動モード、POH変形モードおよびPOH回転モードに相当する、878、848および794cm-1における、ラマンスペクトル・ピークで示されるリン酸カルシウム物質を指す。
【0018】
本発明により使用される用語「室温」は、15℃~35℃、特に、18℃~30℃、好ましくは20℃~30℃、より好ましくは20℃~28℃、特に、20℃~25℃の温度を意味する。
【0019】
本発明は、特に触媒の形態の、新規かつ多用途な組成物または物質が、ヒドロキシアパタイトに熱刺激分極(TSP)処理を適用することによって特に得ることができるという驚くべき知見にあり、この場合、ヒドロキシアパタイトは、TSP処理を行うために負極と一緒に使用される正極から離れている。このような組成物は、高価値有機分子、特にアミノ酸、および/またはカルボン酸、アルデヒド、ケトン、アルコールなどの他の有機分子を生成または合成することが特にできることが驚くべきことに判明した。さらに、特に、その炭素原子数に関して、反応生成物の選択性が、好ましくは、永久分極ヒドロキシアパタイト相の表面、特に永久分極ヒドロキシアパタイト主要相の表面における、ブルシャイト相および/またはブルシャイト様物質相の出現に応じて有利なことに調節され得ることが驚くべきことに判明した。
【0020】
本発明の実施形態では、本組成物または物質は、触媒、好ましくは多相触媒、特に二相触媒の形態にあり、この場合、永久分極ヒドロキシアパタイトは、触媒の相、特に主要相を形成し、ブルシャイトおよび/またはブルシャイト様物質は、触媒のさらなる相を形成する。
【0021】
特に触媒の形態にある、組成物または物質の文脈において、本発明により使用される用語「主要相」は、組成物または物質、特に触媒の総重量に関する割合であって、組成物または物質、特に触媒の総重量にやはり関して、組成物または物質、特に触媒の残りの相(複数または単数)のある割合よりも多い、上記の割合を有する相を意味する。
【0022】
好ましくは、ブルシャイトおよび/またはブルシャイト様物質は、永久分極ヒドロキシアパタイトの表面に形成されるか、または表面に存在する。特に、永久分極ヒドロキシアパタイト、さらに正確に述べると、その表面は、少なくとも部分的に、特に一部だけ、または完全に、ブルシャイトおよび/またはブルシャイト様物質によって層化されているか、または被覆されている。
【0023】
さらなる実施形態では、組成物または物質は、
図1(a)に示されている、広角x線散乱(WAXS)パターンを有する。X線散乱(WAXS)パターンは、ピーク、特に2θ=29°、31°、35°、42°および51°に代表的なまたは特有のピークを示し、これらは、それぞれ、(141)、(221)、(121)、(152)、(143)反射(JCPDSカード番号72-0713)に起因する。好ましくは、前記パターンは、室温で、好ましくは、20℃~25℃の温度で、および/または大気圧条件下、特に、大気湿度および/または大気圧下で行われるか、または得られる。
【0024】
さらなる実施形態では、組成物または物質は、
図1(b)に示されている、ラマンスペクトルを有する。ラマンスペクトルは、878cm
-1、848cm
-1および794cm
-1にピークを示す。前記ピークは、それぞれ、HPO
4
2-の基準振動モード、POH変形モードおよびPOH回転モードに対応する。好ましくは、前記スペクトルは、特に、532nmの波長を有するレーザーを使用して記録した、室温で、好ましくは、20℃~25℃の温度で、および/または大気圧条件下、特に、大気湿度および/または大気圧下で行われるか、または得られる。
【0025】
さらに、永久分極ヒドロキシアパタイトは、
図16に示されている、好ましくは
31P-NMRスペクトルを有する。前記スペクトルは、ヒドロキシアパタイトのホスフェート基に対応する、2.6ppmまたは約2.6ppm、すなわち2.5ppm~2.7ppmの範囲に特有のピークを示す。好ましくは、前記スペクトルは、20℃~25℃の温度において、および参照としてリン酸(H
3PO
4)を使用し、固体永久分極ヒドロキシアパタイトを用いて行われるか、または得られる。さらに、前記スペクトルは、400MHz核磁気共鳴(NMR)分光計を使用することによって、好ましくは得られるか、または得ることができる。一般に、特に、使用したNMR分光計に応じて、永久分極ヒドロキシアパタイトは、ヒドロキシアパタイトのホスフェート基に対応する、あるピーク、特に、2.3ppm~2.9ppm、特に、2.4ppm~2.8ppm、好ましくは2.5ppm~2.7ppm、より好ましくは2.5ppm~2.6ppmの範囲に特有のピークを有する、
31P-NMRスペクトルを有することができる。
【0026】
さらに、永久分極ヒドロキシアパタイトは、≧65%、特に、65%~99.9%、好ましくは75%~99%、より好ましくは80%~95%の広角x線散乱(WAXS)によって特に決定される、結晶化度を特に有することができる。
【0027】
さらに、永久分極ヒドロキシアパタイトの結晶子は、20nm~500nm、特に、50nm~200nm、好ましくは70nm~100nmの広角x線散乱(WAXS)によって特に決定されるサイズを特に有することができる。好ましくは、本文脈において、用語「サイズ」は、永久分極ヒドロキシアパタイトの結晶子の平均径を指す。
【0028】
本発明により使用される永久分極ヒドロキシアパタイトのさらなる特徴および利点に関しては、その内容が明確な参照により本明細書に組み込まれている、国際公開2018/024727号公報が引用される。
【0029】
本発明のさらなる実施形態では、永久分極ヒドロキシアパタイトは、ブルシャイトおよび/またはブルシャイト様物質の割合よりも大きな割合を有する。
【0030】
本発明のさらなる実施形態では、永久分極ヒドロキシアパタイトは、組成物または物質の総重量に対して、50重量%~99.9重量%、特に、65重量%~99.9重量%、特に、75重量%~99重量%、好ましくは80重量%~95重量%、特に、85重量%~90重量%、特に、85重量%~88重量%の割合を有する。
【0031】
本発明のさらなる実施形態では、ブルシャイトおよび/またはブルシャイト様物質は、広角x線散乱(WAXS)の手段によって特に決定される、65%~99.9%、特に75%~99%、好ましくは80%~95%の結晶化度を有する。
【0032】
本発明のさらなる実施形態では、ブルシャイトおよび/またはブルシャイト様物質は、広角x線散乱の手段(WAXS)によって特に決定される、20nm~500nm、特に、50nm~200nm、好ましくは70nm~100nmの結晶子サイズを有する。本文脈において、用語「サイズ」は、ブルシャイトおよび/またはブルシャイト様物質の結晶子の平均径を指す。
【0033】
本発明のさらなる実施形態では、ブルシャイトおよび/またはブルシャイト様物質は、組成物または物質の総重量に対して、>0重量%~50重量%、特に、0.1重量%~35重量%、特に、1重量%~25重量%、好ましくは5重量%~20重量%、特に、10重量%~15重量%、特に、12重量%~15重量%の割合を有する。
【0034】
さらに、組成物または物質は、生成物混合物の全生成物の収率の合計に関して、0.5:2、特に、0.75:1.5、好ましくは0.8:1.25となる、永久分極ヒドロキシアパタイト対ブルシャイトおよび/またはブルシャイト様物質の全触媒活性比を特に有することができる。全触媒活性は、1H-NMR(核磁気共鳴)分光法によって好ましくは決定されてもよい。その目的のため、1H-NMRスペクトルのピークの面積は、得られた各生成物のプロトンの数に応じて、好ましくは正規化される。
【0035】
さらに、本組成物または物質は、該組成物または物質の総重量に対して、>0重量%~15重量%、特に、>0重量%~10重量%、好ましくは、>0重量%~5重量%となる、アモルファスリン酸カルシウムの割合を有することができる。
【0036】
さらに、本組成物または物質は、アモルファスリン酸カルシウムを含まなくてもよい。
【0037】
さらに、本組成物または物質は、該組成物または物質の総重量に対して、>0重量%~15重量%、特に、>0重量%~10重量%、好ましくは、>0重量%~5重量%となる、リン酸三カルシウム、特に、β-リン酸三カルシウムの割合を有することができる。
【0038】
さらに、本組成物または物質は、リン酸三カルシウム、特に、β-リン酸三カルシウムを含まなくてもよい。
【0039】
さらに、本組成物または物質は、107Ωcm2~105Ωcm2、特に、107Ωcm2~105Ωcm2、好ましくは105Ωcm2のバルク抵抗率を有することができる。特に、バルク抵抗率は、3か月後に、4%~33%、特に、4%~63%、好ましくは4%(しか)向上し得る。本発明により使用される用語「バルク抵抗率」は、電子移動に対する抵抗率を意味し、電気化学インピーダンス分光法によって決定することができる。
【0040】
さらに、本組成物または物質は、3か月後に15%未満、特に、8%未満低下する、表面キャパシタンスを有することができる。好ましくは、本組成物または物質は、3か月後に、0%または>0%~15%、より好ましくは0%または>0%~5%低下する、表面キャパシタンスを有することができる。本発明により使用される用語「表面キャパシタンス」は、熱的分極法によって誘発される、ヒドロキシアパタイトの表面変化に起因するキャパシタンスを意味し、電気化学インピーダンス分光法によって決定することができる。
【0041】
さらに、本組成物または物質は、粒子の形態であってもよい。粒子は、ある直径、好ましくは、20nm~500nm、特に、50nm~200nm、好ましくは70nm~100nmの広角x線散乱(WAXS)によって特に決定される、平均直径を有することができる。
【0042】
さらに、本組成物または物質は、前述の段落において明記した、粒子を特に有する粉末の形態にあってもよい。
【0043】
さらに、本組成物または物質は、成形体の形態であってもよい。成形体は、多角形、例えば、三角形、正方形もしくは矩形、五角形、六角形、七角形、八角形または九角形の断面、または角のない、特に円形、長円計または楕円形の断面を有することができる。
【0044】
特に、成形体は、ディスク、プレート、錐体(円錐)または円筒の形態にあってもよい。
【0045】
さらに、成形体は、>0cm~10cm、特に、>0cm~1cm、好ましくは、>0cm~0.2cmの厚さを有することができる。
【0046】
さらに、本組成物または物質は、コーティングの形態にあってもよい。
【0047】
本組成物または物質は、活性成分をさらに含んでもよい。活性成分は、特に、生物学的活性成分または薬学的活性成分であってもよい。活性成分は、抗菌剤、より詳細には、抗生物質、成分、創傷治癒促進成分、殺菌成分、抗炎症成分、血液凝固促進成分、成長因子、細胞分化因子、細胞接着因子、細胞動員因子、細胞受容体、細胞結合因子、サイトカイン、ペプチド、構造タンパク質、細胞外タンパク質(例えば、コラーゲンなど)、血清タンパク質(例えば、アルブミンなど)、多糖(例えば、ヒアルロン酸など)、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNA、RNA、それらの塩、立体異性体、より詳細には、それらのジアステレオマーおよびそれらの混合物からなる群から特に選択されてもよい。
【0048】
例えば、活性成分は、ビグアニド、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、トリクロサン、クロルヘキシジン、ゲンタマイシン、ビタミン、銅、亜鉛、銀、金およびそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0049】
本組成物または物質は、ポリマー、セラミック、シリケート、有機金属化合物およびそれらの混合物からなる群から選択される物質をさらに含んでもよい。
【0050】
ポリマーは、生分解性ポリマー、すなわちインビボで、すなわちヒトまたは動物の身体内部で分解するポリマー、または非生分解性ポリマーとすることができる。さらに、ポリマーは、バイオポリマー、すなわち天然ポリマーまたは合成ポリマー、すなわち工業的ポリマーまたは非天然ポリマーであってもよい。さらに、ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマー、すなわち少なくとも2種の、特に2種だけ、またはそれより多くの異なるモノマー単位を含むポリマーであってもよい。
【0051】
ポリマーは、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアルキルテレフタレート、ポリアリールテレフタレート、ポリアリールエーテルケトン、ポリヒドロキシアルカノエート、タンパク質(細胞外タンパク質および/または球状タンパク質および/または酵素および/または抗体および/または血液凝固因子など)、多糖、およびそれらの混合物からなる群から特に選択されてもよい。
【0052】
特に、ポリマーは、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド6、ポリアミド6-6、ポリアミド6-12、ポリアミド12、レーヨン、絹、特に、スパイダーシルク、ポリテトラフルオルエチレン(polytetrafluorethylene)、ポリ二塩化ビニリデン、二フッ化ポリビニリデン、ポリテトラフルオルプロピレン(polytetrafluorpropylene)、ポリヘキサフルオルプロピレン(polyhexafluorpropylene)、ポリビニルアルコール、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシブチレート、ポリ-3-ヒドロキシブチレート、ポリ-4-ヒドロキシブチレート、ポリトリメチレンカーボネート、ポリ-ε-カプロラクトン、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、レチクリン、フィブロネクチン、ラミニン、フィブリン、フィブリノゲン、アルブミン、デンプン、アミロース、アミロペクチン、デキストラン、デキストリン、セルロース、セルロース誘導体(アルキルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースなど)、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、硫酸デキストラン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、DNA、RNA、それらの塩、それらの立体異性体、それらのコポリマーおよびそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0053】
本組成物または物質は、無機触媒、特に、無機光触媒をさらに含んでもよい。より詳細には、本組成物または物質は、無機触媒、特に光触媒により少なくとも一部に、特に一部にのみ、または完全にコーティングされてもよい。無機触媒は、TiO2、MgO2、MnO2またはそれらの組合せなどの触媒であってもよい。
【0054】
さらに、本組成物または物質は、アミノトリス(メチレンホスホン酸)および/またはオキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2)および/またはジルコニア(ZrO2)により少なくとも一部に、特に一部にのみ、または完全にコーティングされてもよい。より詳細には、本組成物または物質は、3層コーティングを有してもよく、特に、3層コーティングは、2層のアミノトリス(メチレンホスホン酸)および1層のオキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2)またはジルコニア(ZrO2)からなってもよく、オキシ塩化ジルコニウムの層は、並べられているか、または2層のアミノトリス(メチレンホスホン酸)の間に挟まれている。
【0055】
さらに、本組成物または物質は、好ましくは、医療的組成物または物質、特に医薬組成物または物質であってもよい。
【0056】
さらに、本組成物または物質は、好ましくは、医療用装具、特に、骨インプラントまたは補綴物、特に、膝または臀部の補綴物などのインプラントであってもよい。
【0057】
第2の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様による組成物または物質を生成または合成する方法に関する。
【0058】
方法は、以下の工程を含む。以下の工程は、ヒドロキシアパタイト、特に、天然または合成ヒドロキシアパタイト、および/またはアモルファスリン酸カルシウムの試料を用意する工程(a)と、工程(a)において用意したヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの前記試料を焼結する工程(b)と、工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた成形体に、特に少なくとも1分間、および/または900℃~1200℃の間、特に1000℃~1200℃の温度で、250V~2500Vの間の一定または可変DC電圧を印加する工程(c)、または、工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた成形体に、特に少なくとも1分間、および/または900℃~1200℃の間、特に1000℃~1200℃の温度で、1.49kV/cm~15kV/cmの間の等価電界を印加する工程(c)、または、工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた成形体に、特に>0分間~24時間、および/または900℃~1200℃の間、特に1000℃~1200℃の温度で、2500V~1500000Vの間の静電気放電を印加する工程(c)、または、工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた成形体に、特に>0分間~24時間、および/または900℃~1200℃の間、特に1000℃~1200℃の温度で、148.9kV/cm~8928kV/cmの間の等価電界を印加する工程(c)と、工程(c)において得られた前記試料を冷却して、前記DC電圧または前記等価電界を維持する工程(d)、または、工程(c)において得られた前記試料を冷却して、前記静電気放電または前記等価電界を維持する、または維持しない工程(d)と、を含み、工程(c)を行う場合、工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた前記成形体は、工程(c)の間に前記一定または可変DC電圧、等価電界、または静電気放電を印加するために使用される正極と負極との間に配列され、工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた前記成形体は、2つの電極の一方から、好ましくは前記正極から離れており、即ち、工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた前記成形体は、前記2つの電極の一方に、好ましくは、前記正極に対する距離を有する。
【0059】
好ましくは、工程(c)を行う場合、工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の試料から得られた成形体は、正極と負極との間に配列され、これらは、工程(c)の間、一定DC電圧もしくは可変DC電圧、等価電界または静電気放電を印加するために使用され、こうして、工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の試料から得られた成形体は、2つの電極の一方だけから、好ましくは正極だけから離れており、すなわちこうして、工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の試料から得られた成形体は、2つの電極の一方だけに、好ましくは正極だけに距離を有する。言い換えると、工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の試料から得られた成形体は、好ましくは、2つの電極の他方に、より好ましくは負極に接触した状態にある。
【0060】
さらに、工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の試料から得られた成形体は、2つの電極の一方から、好ましくは正極から、>0cm~10cm、特に、>0cm~5cm、好ましくは、>0cm~0.1cmの距離で離れている。
【0061】
電極、特に、正極および/または負極は、異なる形状とすることができる。電極、特に、正極および/または負極は、多角形断面、例えば、三角形、正方形もしくは矩形、五角形、六角形、七角形、八角形または九角形の断面、あるいは角のない、特に、円形、長円形または楕円形の断面を有することができる。さらに、電極、特に、正極および/または負極は、プレートもしくはディスク、錐体(円錐)または円筒の形態にあってもよい。
【0062】
さらに、電極、特に、正極および/または負極は、鋼、特に、ステンレス鋼から作製され得る。
【0063】
さらに、電極、すなわち、正極および負極は、0.01mm~10cm、特に、0.01mm~5cm、好ましくは0.01mm~1mmとなる相互距離を有することができる。
【0064】
好ましくは、工程(a)は、懸濁液、特にリン酸カルシウムを含有する水性アルコール性懸濁液に水熱処理を施す工程を含む。
【0065】
本発明により使用される用語「水性アルコール性懸濁液」は、水およびアルコール、特に、溶媒または溶媒混合物としてエタノールを含有する懸濁液を意味する。
【0066】
好ましくは、リン酸カルシウム含有懸濁液は、第二リン酸アンモニウム(リン酸水素二アンモニウム、(NH4)2HPO4)を含有する水溶液、および窒化カルシウム(Ca(NO3)2)を含有するアルコール性、特に、エタノール溶液を使用することにより得られる。より好ましくは、窒化カルシウムのpHは、10~12、特に、10~11.5、より好ましくは10.5~11に調節される。より好ましくは、第二リン酸アンモニウムを含有する水溶液を、窒化カルシウムを含有するアルコール性、特にエタノール溶液に加える。さらに、得られた混合物は、室温で、特に>0時間~24時間、好ましくは撹拌されて、リン酸カルシウムを含有する懸濁液を形成する。後者の懸濁液の形成は、反応混合物の「エージング」と称されてもよい。
【0067】
さらに、水熱処理は、特に、>0bar~200bar、特に、>0bar~50bar、好ましくは、>0bar~20barの圧力下、オートクレーブ中で好ましくは行われる。
【0068】
さらに、水熱処理は、50℃~240℃、特に、100℃~240℃、より好ましくは110℃~240℃、より好ましくは120℃~240℃、より好ましくは130℃~240℃、より好ましくは140℃~240℃、とりわけ好ましくは150℃~240℃の温度で好ましくは行われる。
【0069】
さらに、水熱処理は、>0時間~48時間、特に、>0時間~24時間、好ましくは12時間~24時間、好ましくは行われる。
【0070】
より好ましくは、水熱処理は、特に、150℃で24時間のエージング後の、上記の反応混合物を加圧滅菌することによって行われる。
【0071】
本工程(a)は、リン酸カルシウムを含有する水熱処理した懸濁液を冷却して、沈殿物を形成させる工程をさらに含んでもよい。特に、リン酸カルシウムを含有する水熱処理懸濁液は、0℃~90℃、特に、10℃~75℃、好ましくは25℃の温度まで冷却されてもよい。
【0072】
本工程(a)は、特に、遠心分離および/またはろ過によって、リン酸カルシウムを含有する水熱処理懸濁液を冷却することによって得られる沈殿物を分離する工程をさらに含んでもよい。
【0073】
本工程(a)は、特に、水、および/またはアルコール、特にエタノールを使用する、リン酸カルシウムを含有する水熱処理懸濁液を冷却することによって得られた分離沈殿物を洗浄する工程をさらに含んでもよい。
【0074】
本工程(a)は、リン酸カルシウムを含有する水熱処理懸濁液を冷却して、ヒドロキシアパタイト、特に、合成ヒドロキシアパタイトを生成することによって得られた分離した、および場合により洗浄した沈殿物を凍結乾燥する工程をさらに含んでもよい。凍結乾燥は、1日間~4日間、特に2日間~3日間、好ましくは3日間、行われ得る。
【0075】
さらに、工程(a)におけるヒドロキシアパタイトの試料は、特に、結晶性ヒドロキシアパタイトの試料であってもよい。
【0076】
さらに、上記の工程(b)は、700℃~1150℃の間、特に、800℃~1100℃の間、特に1000℃の温度で行うことができる。さらに、本発明による方法は、工程(b)と工程(c)との間に、さらなる工程(bc)、即ち、工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の試料を成形、特にプレスして、成形体を形成する工程を好ましくは含む。
【0077】
したがって、成形体は、前記試料を成形によって、特にプレスすることによって、工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の試料から好ましくは得ることができる。
【0078】
特に、工程(bc)は、1MPa~1000MPa、特に、100MPa~800MPa、好ましくは600MPa~700MPaの圧力下で行うことができる。さらに、工程(bc)は、1分間~90分間、特に、5分間~50分間、好ましくは10分間~30分間、行うことができる。
【0079】
成形体は、多角形、例えば、三角形、正方形もしくは矩形、五角形、六角形、七角形、八角形または九角形、あるいは角のない、特に円形、長円形または楕円形の断面を有することができる。さらに、成形体は、0.1cm~10cm、特に、0.1cm~5cm、好ましくは0.5cm~2cmの厚さを有することができる。
【0080】
好ましくは、成形体は、ディスク、プレート、錐体(円錐)または円筒の形態にある。
【0081】
さらに、一定もしくは可変DC電圧または等価電界を、1時間~24時間、特に0.1時間~10時間、特に1時間、上記の工程(c)に印加してもよい。
【0082】
さらに、上記の工程(c)において印加されるDC電圧は、好ましくは500Vであり、これは、3kV/cmの一定電界と等価である。
【0083】
さらに、上記の工程(c)において印加される等価電界は、好ましくは、3kV/cmである。
【0084】
さらに、工程(c)における温度は、好ましくは、少なくとも900℃、より好ましくは少なくとも1000℃、特に、1000℃である。好ましくは、工程(c)における温度は、900℃~1200℃、特に、1000℃~1200℃である。
【0085】
さらに、上記の工程(d)は、工程(c)において得られた試料を室温まで冷却することによって行うことができる。
【0086】
さらに、上記の工程(d)は、1分間~72時間、特に、15分間~5時間、好ましくは15分間~2時間、行うことができる。
【0087】
好ましくは、上記の工程(c)を行う場合、工程(b)において得られた試料またはその成形試料は、2つの電極の一方から、好ましくは正極から、>0cm~10cm、特に、0.1cm~7cm、好ましくは1cm~5cm、間隔が設けられている。好ましくは、工程(b)において得られた試料またはその成形試料は、2つの電極の他方に、好ましくは負極に物理的に接触した状態にある。
【0088】
第3の態様によれば、本発明は、組成物または物質、特に、好ましくは本発明の第1の態様による、以下の工程を含む方法によって得られる、または得ることができる触媒的に活性な組成物または物質(すなわち、触媒)に関する。以下の工程は、ヒドロキシアパタイト、特に、天然または合成ヒドロキシアパタイト、および/またはアモルファスリン酸カルシウムの試料を用意する工程(a)と、工程(a)において用意したヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの前記試料を焼結する工程(b)と、工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた成形体に、特に少なくとも1分間、および/または900℃~1200℃の間、特に1000℃~1200℃の温度で、250V~2500Vの間の一定または可変DC電圧を印加する工程(c)、または、工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた成形体に、特に少なくとも1分間、および/または900℃~1200℃の間、特に1000℃~1200℃の温度で、1.49kV/cm~15kV/cmの間の等価電界を印加する工程(c)、または、工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた成形体に、特に>0分間~24時間、および/または900℃~1200℃の間、特に1000℃~1200℃の温度で、2500V~1500000Vの間の静電気放電を印加する工程(c)、または、工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた成形体に、特に>0分間~24時間、および/または900℃~1200℃の間、特に1000℃~1200℃の温度で、148.9kV/cm~8928kV/cmの間の等価電界を印加する工程(c)と、工程(c)において得られた前記試料を冷却して、前記DC電圧または前記等価電界を維持する工程(d)、または、工程(c)において得られた前記試料を冷却して、前記静電気放電または前記等価電界を維持する、または維持しない工程(d)と、を含み、工程(c)を行う場合、工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた前記成形体は、工程(c)の間に前記一定または可変DC電圧、等価電界、または静電気放電を印加するために使用される正極と負極との間に配列され、工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた前記成形体は、2つの電極の一方から、好ましくは前記正極から離れており、即ち、工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料、または工程(b)において得られたヒドロキシアパタイトおよび/またはアモルファスリン酸カルシウムの焼結後の前記試料から得られた前記成形体は、前記2つの電極の一方に、好ましくは、前記正極に対する距離を有する。
【0089】
さらなる特徴および利点に関して、特に、本組成物もしくは物質、および/または本方法に関しては、これまでの記載、特に本発明の第1および/または第2の態様に開示されている実施形態の全体が参照される。特に本発明の第1および/または第2の態様において、これまでの記載に記載されている特徴および利点はまた、本発明の第3の態様による組成物または物質に関して、変更すべきところは変更して適用される。
【0090】
さらに好ましくは、本発明は、有機分子、特に、官能基化有機分子、すなわちカルボキシル基、アミノ基、アルデヒド基(ホルミル基)、ケト基、ヒドロキシ基およびそれらの組合せからなる群から特に選択される官能基を含むまたは官能基を有する有機分子の生成または合成、特に選択的生成または合成のための組成物または物質の使用に関する。有機分子、特に、官能基化有機分子は、1~3個の炭素原子を好ましくは含む、またはこれを有する。好ましくは、有機分子、特に、官能基化有機分子は、アミノ酸、カルボン酸、アルデヒド、ケトン、アルコールおよびそれらの混合物からなる群から選択される。特に、アミノ酸(複数)/アミノ酸(単数)は、グリシンおよび/またはアラニンである。さらに、カルボン酸は、特に、ギ酸、酢酸、マロン酸およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。さらに、ケトンは、好ましくはアセトンである。さらに、アルコール(複数)/アルコール(単数)は、好ましくは、メタノールおよび/またはエタノールである。
【0091】
本発明のさらなる実施形態では、本発明は、触媒、特に、電気触媒、好ましくは光電気触媒としての、組成物または物質の使用に関する。
【0092】
好ましくは、触媒としての前記使用は、有機分子、特に、官能基化有機分子、すなわちカルボキシル基、アミノ基、アルデヒド基(ホルミル基)、ケト基、ヒドロキシ基およびそれらの組合せからなる群から特に選択される官能基を含むまたは官能基を有する有機分子の生成または合成、特に選択的生成または合成のための反応におけるものである。有機分子、特に官能基化有機分子は、1~3個の炭素原子を好ましくは含む、またはこれを有する。
【0093】
本発明のさらなる実施形態では、触媒としての前記使用は、アミノ酸、特に、天然アミノ酸、好ましくは、グリシンおよび/またはアラニンの生成または合成、特に選択的生成または合成のための反応におけるものである。
【0094】
本発明のさらなる実施形態では、触媒としての前記使用は、カルボン酸、特に、ギ酸、酢酸、マロン酸またはそれらの混合物の生成または合成、特に選択的生成または合成のための反応におけるものである。
【0095】
本発明のさらなる実施形態では、触媒としての前記使用は、アルデヒドまたはケトン、特に、アセトンの生成または合成、特に選択的生成または合成のための反応におけるものである。
【0096】
本発明のさらなる実施形態では、触媒としての前記使用は、アルコール、特に、メタノールおよび/またはエタノールの生成または合成、特に選択的生成または合成のための反応におけるものである。
【0097】
さらに、触媒としての前記使用は、好ましくは、カルボン酸、アルデヒド、ケトン、アルコール、および前記有機分子のうちの少なくとも2種の混合物を含む、またはこれらからなる混合物の生成または合成のための反応におけるものである。
【0098】
さらに、触媒としての前記使用は、好ましくは、エタノール、およびギ酸、酢酸、マロン酸、アセトン、メタノールからなる群から特に選択される少なくとも1種のさらなる有機分子、および前記の有機分子のうちの少なくとも2種の混合物を含む、またはこれらからなる混合物の生成または合成のための反応におけるものである。
【0099】
特に、触媒としての前記使用は、エタノール、ギ酸、酢酸、アセトンおよびメタノールを含む、またはこれらからなる混合物の生成または合成のための反応におけるものとすることができる。
【0100】
特に、触媒としての前記使用は、エタノール、酢酸、マロン酸、アセトンおよびメタノールを含む、またはこれらからなる混合物の生成または合成のための反応におけるものとすることができる。
【0101】
特に、触媒としての前記使用は、エタノール、酢酸およびアセトンを含む、またはこれらからなる混合物の生成または合成のための反応におけるものとすることができる。
【0102】
さらに、本発明は、生物医学用途における組成物または物質の使用に特に関する。好ましくは、前記生物医学用途は、歯用のセメント、骨、補綴物、医療用装具、薬物送達、遺伝子治療法および組織再生からなる群から選択される。
【0103】
さらに、本発明は、電極としての組成物または物質の使用に特に関する。
【0104】
さらに、本発明は、ポリマーにドープするための組成物または物質の使用に特に関する。
【0105】
さらに、本発明は、有機分子を担持するため、好ましくは有機分子を吸着するための組成物または物質の使用に特に関する。好ましくは、有機分子は、有機金属化合物、炭水化物、アミノ酸、脂質、ATP、ポリマーおよびそれらの組合せ、特に、混合物からなる群から選択される。前記ポリマーに関すると、これまでの記載の全体が参照される。
【0106】
さらに、本発明は、ピロホスフェート、トリホスフェート、トリホスホネート、ポリホスフェートまたはそれらの組合せ、特に、混合物などの、リン含有化合物を担持するための、好ましくはリン含有化合物を吸着するための組成物または物質の使用に関する。ポリホスフェートは、1~50000モノマー単位またはそれらの任意の組合せを有するポリホスフェートのいずれかから選択されてもよい。
【0107】
さらに、本発明は、有機金属化合物、好ましくは、金属ホスホン酸塩を担持するため、好ましくは吸着するための組成物または物質の使用に特に関する。有機金属化合物は、好ましくは、金属イオン含有化合物である。好ましくは、金属イオンは、遷移金属イオン、ランタノイドイオンおよびそれらの組合せからなる群から選択される。より好ましくは、有機金属化合物は、金属イオン含有化合物であり、この場合、金属イオンは、Sr2+、Mg2+、Fe2+、Fe3+、Mn2+、Zr2+、Au+、Ti4+およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0108】
さらに、本発明は、分子認識、特にラセミ分割のための組成物または物質の使用に特に関する。
【0109】
さらに、本発明は、骨粗鬆症などの、骨分解および/または骨悪性腫瘍の処置において使用するための、組成物または物質に特に関する。
【0110】
さらに、本発明は、例えば、特に、DNAおよび/またはRNAのための薬物送達系としての組成物または物質に特に関する。
【0111】
さらに、本発明は、疾患の予防および/または処置に使用するための、組成物または物質に特に関する。好ましくは、疾患は、がん、ニューロン疾患および組織石灰化に関連する疾患からなる群から選択される。より好ましくは、疾患は、以下に限定されないが、軟骨無形成症を含めた遺伝性障害、アルファ-1抗トリプシン欠乏症、抗リン脂質症候群、自閉症、常染色体優性多発性嚢胞腎、乳がん、シャルコー-マリー-トゥース、結腸がん、クリデュチャット、クローン病、嚢胞性線維症、有痛脂肪症、ダウン症候群、デュアン症候群、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、第V因子ライデン栓友病、家族性高コレステロール血症、家族性地中海熱、脆弱X症候群、ゴーシェ病、ヘモクロマトーシス、血友病、全前脳胞症、ハンチントン病、クラインフェルター症候群、マルファン症候群、筋強直性ジストロフィー、神経線維腫症、ヌーナン症候群、骨形成不全症、パーキンソン病、フェニルケトン尿症、ポーランド先天異常、ポルフィリン症、プロジェリア、前立腺がん、網膜色素変性、重症複合免疫不全症(SCID)、鎌状赤血球症、皮膚がん、脊髄性筋萎縮症、テイサックス、サラセミア、トリメチルアミン尿症、ターナー症候群、軟口蓋心臓顔貌症候群、WAGR症候群、ウイルソン病、ならびに小動脈および大動脈、心臓弁、脳(ここでは、頭蓋石灰化として知られている)、関節および腱(膝関節および回旋筋腱板など)、胸部のような軟部組織、筋肉および脂肪、腎臓、膀胱および胆嚢に関連する疾患からなる群から選択される。
【0112】
さらに、本発明は、全固体電池における組成物または物質の使用に特に関する。本明細書において使用する場合、全固体電池とは、固体電極と固体電解質の両方を有する電池のことである。
【0113】
さらに、本発明は、それ自体がエネルギーを発生することができるチップである、エネルギーハーベスティングチップにおける組成物または物質の使用に特に関する。エネルギーハーベスティングは、周囲エネルギーの使用可能な電気エネルギーへの変換として定義される。電池などのような一般的な貯蔵素子に貯蔵したエネルギーと比べた場合、環境は、比較的、無限のエネルギー源となる。したがって、エネルギーハーベスティング(すなわち、捕捉)法は、エネルギー密度よりもその電力密度を特徴としなければならない。
【0114】
さらに、本発明は、特に空気または大気から、二酸化炭素、一酸化炭素、メタンまたはそれらの混合物などの有害ガスを除去するための組成物または物質の使用に特に関する。
【0115】
上述の段落に記載されている使用のさらなる特徴および利点に関しては、これまでの記載の全体が参照される。
【0116】
本発明のさらなる特徴および利点は、従属請求項の主題と関連付けた、以下の図、その説明および実施例から明確になろう。個々の特徴は、本発明の一実施形態における組合せにおいて、単独でまたは個別のどちらか一方で認識することができる。好ましい実施形態は、単に、本発明の例示およびよりよい理解のための役割を果たすに過ぎず、決して本発明を限定するものと理解されるべきではない。
【0117】
図中に、以下が、概略的に表示される。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【
図1(a)】多相HAp-ブルシャイト触媒(以降C-2と呼ぶ)に関する、20°~60°の特徴的な2θ範囲におけるWAXS回折パターン。
【
図1(b)】C-2に関する、PO
4
3-内部モード(ν
1、ν
2、ν
3およびν
4)のラマンスペクトル。
【
図1(c)】20°~60°の特徴的な2θ範囲におけるWAXS回折パターン。
【
図1(d)】単相ヒドロキシアパタイト(HAp)触媒(以降C-1と呼ぶ)およびC-2に関する、PO
4
3-内部モード(ν
1、ν
2、ν
3およびν
4)のラマンスペクトル。HApおよびブルシャイトに関する特徴的な反射および振動は、各部分図に標識されている。
【
図2】C-1およびC-2触媒に関して、1μmの間隔を有する、7×4アレイから得られた積み上げラマンスペクトル。スケール・バーは、ピークの相対強度を指す。
【
図3】関心区域のC-1およびC-2のラマンスペクトルの徹底分析:3500~3700cm
-1(532nmのレーザーを用いて取得)の範囲における、(a)ν1基本モード、(b)格子モード、および(c)O-H伸縮振動モード。HApおよびブルシャイトに関する特徴的なラマン振動は、それぞれ、黒色および緑色で標識されている。
【
図4】C-1およびC-2触媒に関して得られたCa 2pのXPSスペクトル。
【
図5】(a)0.5~4.0ppm、(b)5.5~8.5ppmにおける領域の1H-NMRスペクトル。
【
図6】C-1およびC-2触媒の触媒性能の比較:(a)生成物/エタノールの割合、(b)検出生成物全部のC-2/C-1の割合。
【
図7】(a)HAp結晶構造の単位格子、(b)HAp結晶構造のc軸に沿ったOH
-チャネル。
【
図8】(a)ブルシャイトの単位格子、(b)モネタイトの単位格子。
【
図9】(a)および(b)ブルシャイトの結晶構造。水素結合に関与する原子は、標識されている。
【
図10】様々な水熱温度を使用し、24時間、調製した、(a)結晶性ヒドロキシアパタイト(これ以降、cHApと呼ぶ)(T
h)および(b)熱刺激分極化結晶性(これ以降、cHAp/tspと呼ぶ)(T
h)のラマンスペクトル。
【
図11】cHAp(150℃)およびcHAp/tsp(T
h≧100℃)の(a)770~910cm
-1および(b)100~350cm
-1の間隔でのラマンスペクトル。
【
図12】(a)HTの異なる時間:10時間および24時間を使用して調製した、cHAp(150℃)およびcHAp/tsp(150℃)のラマンスペクトル。(b)cHAp(150℃)に様々なDC電圧を印加することによって調製したcHAp/tsp(150℃)のラマンスペクトル。(c)500Vの電圧を印加し、cHAp(150℃)試料と接触したまたは接触していない鋼製電極を維持することにより調製したcHAp/tsp(150℃)のラマンスペクトル。cHAp(150℃)は、(b)および(c)の両方において、HTを24時間、適用して調製した。
【
図13】(a)1000℃において、HTを24時間、適用し、500Vの分極電圧を印加して得られたcHAp/tsp(150℃)の様々な深さにおけるラマンスペクトル。(b)100~350cm
-1領域に関して、(a)に表示されているスペクトルの拡大。
【
図14】T
h=50、100、150、200および240℃での、cHAp(T
h)の低倍率SEM顕微鏡写真である。すべての場合において、HTを24時間、適用した。cHAp(150℃)の高倍率顕微鏡写真も表示されている。
【
図15】(a)T
h=50、100、150、200および240℃での、cHAp(T
h)に対応するX線回折パターン。すべての場合において、HTを24時間、適用した。cHApおよびブルシャイトに起因する反射は、cHAp(150℃)のディフラクトグラムにおける、それぞれ、黒色ダイヤモンドおよび白色ダイヤモンドによって記されている一方、βTCP(β-リン酸三カルシウム)に関連する反射は、cHAp(50℃)のディフラクトグラムにおいて黒丸によって表示されている。(b)T
h≧100℃を用いた場合のcHAp(T
h)におけるcHApおよびブルシャイト相の分布。これは、cHApの(211)反射およびブルシャイトの(141)反射から得た。
【
図16】6barのチャンバ圧(すなわち、各フィード反応ガス2bar)を使用し、cHAp(150℃)を使用して調製した触媒により、反応後(95℃および48時間)に得られた試料の場合:(a)100mMのHClおよび50mMのNaClを含有する重水中に試料を溶解することによる、触媒からのアミノ酸の抽出後に得られた溶液の
1H NMRスペクトル、および(b)合成アミノ酸を含む触媒の固体状態
13C NMRスペクトル。
【
図17】T
hの関数としての、N
2、CO
2およびCH
4の電気光触媒固定化における、アラニンおよびグリシンの収率(触媒1cm
2あたりの%)。すべての場合において、反応(三連で)は、6barおよび95℃において、48時間、行った。
【
図18】永久分極ヒドロキシアパタイトの
31P-NMRスペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0119】
(実験項目)
1.物質
硝酸カルシウムCa(NO3)2、リン酸水素二アンモニウム[(NH4)2HPO4;純度>99.0%]、水酸化アンモニウム溶液30%[NH4OH;純度:28~30%w/w]、塩化ジルコニル(ZC;ZrOCl2・8H2O)およびアミノトリス(メチレンホスホン酸)(ATMP)は、Sigma Aldrichから購入した。エタノール(純度>99.5%)は、Scharlabから購入した。実験はすべて、ミリQ水を用いて行った。純度>99.995%を有するN2、CH4およびCO2ガスは、Messerから購入した。
【0120】
2.結晶性ヒドロキシアパタイト(cHAp)の合成
脱イオン水(水酸化アンモニウムで、pHを10.5±0.2に調節した)中の500mMの(NH4)2HPO415mLを、エタノール中の500mMのCa(NO3)225mLに、穏やかな撹拌下(100rpm)、滴下して加えた(2mL/分)。この混合物を室温で、1時間、撹拌し(100rpm)、懸濁液を得た。特に明記しない限り、水熱(HT)処理では、オートクレーブDigestec DAB-2を使用して、50℃~240℃の範囲の温度(Th)で、24時間に亘って懸濁液に適用した。オートクレーブが開かれる前に、冷却された。白色沈殿物を遠心分離によって分離し、水および60/40v/vエタノール/水の混合物で5分間、8000rpmで逐次、洗浄した(2回)。得られた粉末を、3日間、凍結乾燥した後、特にCarbolite ELF11/6W/301炉を使用して、空気雰囲気において、2時間、1000℃で焼結した。この後、この手順を使用して得られた試料を、cHAp(Th)と表し、ここで、Thは、ヒドロキシアパタイト(HAp)のHTに使用した温度を指す。
【0121】
3.熱刺激分極法(TSP)
第1の手法に準拠し、150mgの焼結cHAp粉末を620MPaで10分間(すなわち、適用重量5トン)、単軸プレスし、10mmの直径および1mmの厚さのディスクを得た。4cm離した2枚のステンレス鋼(AISI304)プレートの間にディスクを置き、空気雰囲気中、1000℃で加熱した。次に、100V、500Vまたは1000VのDC電圧を1時間、印加した。この後に、TSP法をcHAp(Th)に適用することによって得られた試料をcHAp/tsp(Th)と表し、印加した電圧が、各場合において、明示的に示されている。
【0122】
第2の手法に準拠して、500Vおよび1000℃において、1時間、HApディスクを曝露することからなる熱刺激分極(TSP)処理を適用して、触媒活性化が(も)、首尾よく達成された。単一相HAp触媒(これ以降C-1と呼ぶ)を得るため、電極(2つのステンレス鋼AISI304プレート)を、HApディスクと接触させて置いた。代わりに、多相HAp-ブルシャイト触媒(これ以降C-2と呼ぶ)は、負極と接触した状態にあるHApディスクから4cm、正極を離すことによって得られた。
【0123】
4.物性評価:
構造的物性評価検討は、X線光電子分光法(XPS)、マイクロラマン分光法および広角x線散乱(WAXS)を使用して行った。WAXSスペクトルから、結晶化度(χc)および結晶子サイズLhklを求めた。
【0124】
さらに、試料の構造的指紋領域を、Renishaw Centrus2957T2検出器を装備したinVia Qontor共焦点ラマン顕微鏡(Renishaw)を使用して検討した。測定はすべて、532および785nmのレーザーを用いて実施した。代表的な結果を実現するため、この検討において提示されたスペクトルはすべて、42個の点を有する105×90μmのグリッドの平均値の結果である。デプス・プロファイルも同じ装置を使用して得た。
【0125】
形態学的特徴付けは、Shottky電界放出を用いるSEM GEMINIカラムを装備した集束イオンビームZeiss Neon40顕微鏡を使用する走査型電子顕微鏡(SEM)によって行った。試料は、試料の帯電問題を回避するため、炭素薄層でスパッタコーティングした。
【0126】
上記の通り、結晶化度(χc)は、Bragg-Brentano2θ構成およびCu Kα線照射(λ=0.1542nm)によるBrucker D8 Advanceモデルを使用して、広角x線散乱(WAXS)によって得られた。一次元Lynx Eye検出器を使用した。測定は、0.02°刻みで20°~60°の2θ範囲、およびスキャン速度2秒で行った。以下の式を使用して、χc値が得られた。
【0127】
【0128】
式中、I300は、(300)反射の強度であり、V112/300は、(112)および(300)反射の間の隙間の強度である。
【0129】
結晶子サイズLhklは、以下のDebye-Scherrer式を使用して計算した。
【0130】
【0131】
式中、λは、単色X線ビームの波長であり、Bは、最大強度におけるピークの半値全幅であり、θhklは、(hkl)面に対するBraggの法則を満足するピーク回折角度である。
【0132】
5.炭素固定化
この反応は、UV照射(GPH265T5L4、253.7nm)下、95℃において、72時間、3barのCO2および3barのCH4の気圧で、不活性反応器チャンバ中で行った。封止前に、脱イオン化した液状の水0.5mLを反応器に加えた。触媒表面からの反応の生成物を、1H-NMR分光法(Bruker Avance III-400)によって分析した。反応の収率は、参照として対照濃度を用いて、市販の製品を使用して得られた。
【0133】
6.共存しているブルシャイト相に及ぼすTSP処理の効果
C-1およびC-2に関して記録したWAXSスペクトルを比較した
図1aにより、どちらの触媒でも、高度に結晶性のHApが間違いなく存在していることが明らかである。したがって、2θ=31.8°、32.2°および33.0°において特定したピークは、それぞれ、HApの(211)、(112)および(300)反射に相当する(JCPDSカード番号9-0432)。同時に存在するブルシャイトの最も顕著なピークは、2θ=29°、31°、35°、42°および51°に見られ、これらは、それぞれ、(141)、(221)、(121)、(152)、(143)、反射(JCPDSカード番号72-0713)に起因する。分かる通り、(221)である2θ=31.0°は、
図1aにおけるブルシャイトの唯一の区別可能な反射であるが、C-1およびC-2に関して得られた相対強度の比較により、後者のC-2にこのような同時に存在するアパタイト相が存在することが支持される。最も関連性のある差異の1つは、2θ=51.3°において観察され、これは、HApの(410)反射またはブルシャイトの(143)に起因することができる。C-1の場合、(402)HAp反射に対応する2θ=52.1°におけるピークに比べた、2θ=51.3°におけるピークの強度は、1より小さく(I
2θ=51.0/I
2θ=52.1=0.96)、前者のピークの強度は、後者のピークよりもわずかに小さいことを示している。C-2の場合、I
2θ=51.0/I
2θ=52.1は、I
51/52.1=1.14まで向上し、2θ=51.3°におけるピークは、2θ=52.1°におけるピークよりも強くなることを証明している。
【0134】
(112)および(300)ピークも使用して、結晶化度を求めた(χc;Eq S1)一方、(211)反射を使用して、結晶子サイズ(L211;Eq S2)を計算した。結晶化度は非常に高く、2種の触媒に関して類似している(C-1およびC-2の場合、それぞれ、χc=0.95±0.03および0.92±0.03である)。結晶子サイズは、2種の触媒に関して、やはり同等であり、得られた値(C-1およびC-2の場合、それぞれ、L211=75.2±2.4および82.7±3.72nm)は、文献において報告されているものと一致する。総合的に、これらの観察は、TSP処理の間に適用された差異は、主要HAp相に影響しないことを示している。
【0135】
C-1およびC-2触媒に関するラマン検討が、
図1bに表されている。アパタイト相のスペクトルは、その特徴的P-O振動が主に優位となる。PO
4
3-内部モードに対応するHApの4つの特徴的な領域は、触媒のスペクトルにおいて観察することができ、ν
1=962cm
-1、ν
2=400~900cm
-1、ν
3=570~625cm
-1およびν
4=1020~1095cm
-1である。どちらの試料も、ν
1モードが、970および949cm
-1における別の2つのピークにわずかに分割していることを示しており、これは、β-リン酸三カルシウム(TCP)アパタイト相において見られる、3種の結晶学的非等価四面体PO
4
3-の様々なP-O伸縮振動に起因する。したがって、文献により、TCPの存在は、HT合成およびこの後に適用した焼結の間の条件においてわずかに変化したことを除いて、TSP処理に無関係である。さらに、これまでの検討により、TSP処理は、結晶化度を増大させて、結晶学的に特定の配向に仕向けることによってTCP相が低下することが示された。それに加え、2つの試料が、ほぼ同じ相対量のTCP(すなわち、それぞれ、C-1およびC-2に対する970cm
-1におけるラマンシフトと962cm
-1における主要ピークとの強度の割合I
970/962は、0.12および0.10である)を示すという事実は、TSP処理の間に適用された条件の差異は、TCP生成の前駆体ではないことの証拠となる。しかし、TSP処理の間に、正極と無機ディスクとを隔離する効果は、
図1bに明確に現れている。より詳細には、C-2試料中のブルシャイトの存在は、それぞれ、HPO
4
2-の基準振動モード、POH変形モードおよびPOH回転モードに相当する、878、848および794cm
-1におけるピークによって裏付けられる。C-1およびC-2触媒のラマンスペクトルの間に見られる他の差異を以下に考察する。
【0136】
HPO
4
2-およびPOH振動の確かな存在により、TSP条件に応じたブルシャイトの量の変化の追跡が可能となる。この意味では、HApとブルシャイト相との間の相乗活性は、それらの露出表面に強く依存し、したがって、それらの表面分布の特徴付けは、非常に興味深い。
図2は、C-1およびC-2試料の28のラマンスペクトルを図示しており、これは、1μmの間隔の7×4アレイから記録されている。明確にするため、スペクトルはすべて、一緒に積み重ね、スケール・バーは、ピークの相対強度を指す。予期される通り、C-1スペクトルは、C-2試料と比較して、上記のブルシャイト・ピークの形跡を何ら示さない。驚くべきことに、HPO
4
2-基準振動モードに対応するC-2の878cm
-1ピークは、最大で90%までその相対強度が変化したことを示し、これは、共存するブルシャイト相が、非常に不均質に分布していることを示している。
図2から導かれる結果により、電界を印加するために使用した機器の形状は、同時に存在する2つの相の不均質性を規定する重要な役割を果たすことが示唆される。この結論を支持するため、発明者らは、正極を隔離して、TSP処理を繰り返す、追加の実験を行った。より詳細には、プレートを除去して、正極として作用する銅製ケーブルだけを残した。記録したラマンスペクトルの試験により、ブルシャイト相が印加場の幾何形状に依存することが確認された。HPO
4
2-ピークおよびPOH振動ピークは、一層強く見えるだけではなく(すなわち、それぞれ、正極にプレートを使用しないで、および使用して調製したC-2触媒の場合、I
878/962=0.22およびI
878/962=0.73である)、試料はまた、約21%しか相対変化を示さない、878cm
-1における一層均一なピークとなった。総合的に、結果は、触媒のHAp/ブルシャイトの割合および不均質性は、プレート間距離、およびTSP処理の間の電気(electric)の幾何形状を変えることによって調節することができることを実証している。
【0137】
7.C-2触媒の構造的特徴付け
ブルシャイト含有触媒に起こる相乗効果を理解するため、網羅的な構造的特徴付けが重要である。この事例検討では、発明者らの取り組みは、ブルシャイトが、どのようにして、その境界におけるゆがみとしてHAp結晶格子と一体化し、新規な活性縁部を生成して、導電率を局所的に増大させるのかを見極めることに着目した。HApの最も一般的な多形は、空間群P6
3/m(a=b=9.432Å、c=6.881Å;α=β=90°、γ=120°)を有する六方晶格子(
図7を参照されたい)であり、PO
4
3-基は、等価な四面体で秩序よく並んでいる一方、Ca
2+イオンは、2つの異なる結晶学的位置を占有している。この結晶相では、OH
-基は、c-軸に沿って柱状に秩序よく並んでいるが、静電力のために配向が乱れている。TSP処理の適用時に、OH
-基は、電界の特定の方向に沿って配向する傾向があり、こうして、結晶格子中に結晶学的応力が導入される。この結晶学的応力は、ν1基本モードの領域におけるラマンスペクトルの拡大図を示す
図3a中に、C-1について示されている。C-2試料のHApの主要ν
1振動モードは、962cm
-1におけるその理論値と一致する一方、C-1主要ピークは、963cm
-1に位置しており、PO
4
3-四面体の引張ひずみを反映している。C-1が、このようなシフトを示す唯一の試料であるという事実は、C-2触媒に見られるブルシャイトは、OH
-鎖の再配列によって誘起される局所的な引張応力張力を相殺していることを示す。
【0138】
C-2触媒の最も驚くべき態様の1つは、ブルシャイト相の実現は、TSPが高温で行われるという事実と明らかに矛盾するということである。約160℃では、ブルシャイトは、モネタイト(CaHPO
4)へと脱水し、温度が、それぞれ、320、700および1200℃まで増大すると、さらに脱プロトン化して、ピロリン酸カルシウム(Ca
2P
2O
7)のγ、βおよびαという異なる形態になる。878、848および794cm
-1におけるHPO
4
2-およびPOH振動モード、ならびに約732cm
-1におけるPOP振動が存在しないことから得られる実験的証拠により、Ca
2P
2O
7の存在を除外することができる。ブルシャイトとモネタイトとの区別は、このような構造は、
図8に反映される通り、異なる空間群で結晶化するので、格子の振動モードを分析することによってはっきりと視覚化される。ブルシャイトは、Ia空間群対称性(a=5.799Å、b=15.126Å、c=6.184Å;α=γ=90°、β=116.428°)を有する単斜晶構造を示す一方、モネタイトは、P1空間群対称性(a=6.916Å、b=6.619Å、c=6.946Å;α=96.180°、β=103.82°、γ=88.34°)を有する三斜晶単位格子を示す。C-1およびC-2触媒の格子モードを
図3bで比較する。C-1は、140および155cm
-1(それぞれ、Ca
1+Ca
2およびCa
2の過渡振動に起因する);193および205cm
-1(PO
4
3-の並進振動);235および288cm
-1(PO
4
3-の秤動振動);270cm
-1(Ca
1の過渡振動);および332cm
-1(OH
-の並進振動)において、HApの特徴的な格子モードを表す。
【0139】
C-1と比べて、C-2に対して記録されたスペクトルは、111、142および270cm
-1においてかなり一層強いピークを示し、これらは、ブルシャイトにおけるCa
2+特有の結晶学的部位の寄与に起因される。さらに、205cm
-1におけるPO
4
3-並進モードは、C-1に関して、C-2において増強される。142cm
-1におけるピーク(HApのCa
1+Ca
2およびブルシャイトのCaの過渡振動に帰属)は、C-1に関して、かなり一層強く、2cm
-1の赤方偏移を示した一方、155cm
-1におけるピークは、ブルシャイト相には存在しないCa
2のHAp過渡振動に起因するので、変化しないままである。C-1における140cm
-1からC-2における142cm
-1へのCa
2+過渡振動の赤方偏移は、C-2では、モネタイトの代わりにブルシャイトが存在することを裏付ける。したがって、群対称性により、Ca
2+過渡振動に起因するラマンシフトは、以下の通りの順序となるはずである:モネタイト<HAp<ブルシャイト。全体として、
図3a~bに示されている結果は、ブルシャイトの存在を裏付けるばかりでなく、C-2触媒は、一層高い移動度およびそれほど大きくない引張応力を有する局所Ca
2+を示し、これは、その触媒性能の増強を担う相乗効果を引き起こし得る。
【0140】
図9に示されている通り、ブルシャイトの結晶構造は、a軸に平行で、c軸に沿って成長しているジグ-ザグCa
2+およびPO
4
3-交互鎖によって形成される層化系として理解することができる。これらの鎖は、中間層を形成する、H
2O分子によってもたらされる、水素結合を介して、b軸に沿って一緒になった結合である。しかし、この水中間層は、C-2のラマンスペクトルにおいて検出されていない。水に関する特徴的な伸縮モードは、ν
1の場合、3539および3483cm
-1において、ならびにν
2の場合、3270および3163cm
-1において、2つの二本線の形態で検出されるはずである。
図3cは、3574cm
-1における、HApのOH
-伸縮モードに対応する、特徴的なHApピークを示している。さらに、678cm
-1に通常位置する、水の秤動モードも、
図1bにおいて認識することができない。
【0141】
図3bにおける格子モードの詳細分析により、OH
-基の並進振動モードに帰属される、C-2の場合の323cm
-1における、強力な新規ピークが存在することが明らかになった。このピークは、C-1スペクトルにおいて得られたHApの並進振動に一致する332cm
-1、および323cm
-1に位置する2つの異なるピークにはっきりとデコンボリューションすることができる。この新規ピークが重要な青方偏移を示すという事実は、それほどの移動度を有さず、したがって、何らかの形で結合している、異なる結晶学的OH
-が存在することを示している。水素結合相互作用にH
2O分子が関与するため、純粋なブルシャイトのH
2O分子は、自由分子のH
2O分子から歪み、水分子に対して2つの異なる結晶学的部位を生成する(H
2O-O1およびH
2O-O2として、
図9に標識されている)。外部層は、(H
2O-O1の)O3・・・H2および(H
2O-O2の)OH1・・・H4水素結合の相互作用を介する、一緒になった結合であり、それぞれ、1.81Åおよび1.90Åという短い距離、および167.3°および175.7°というほとんど直線の角度を示す。上記の理論的側面を考慮し、かつ得られた実験結果に一致して、水分子の結晶学的位置を占有するヒドロキシル基は、水素結合相互作用を介して、結晶学的ブルシャイトまたはブルシャイト様相の安定化を担うように思われる。HApの結晶構造の改変を引き起こす、高温でのプロトンとヒドロキシル基との交換を幅広く検討した。しかし、格子の他の酸素に水素結合した残留水プロトンは抑制されるので、H
2O分子のOH
-による置き換えは、他の結晶学的ゆがみを引き起こすことがある。H
2O-O2水分子の場合に対して、H5は、H
2O-O1水分子に弱く結合しているので(H5・・・H
2O-O1距離は、2.16Å)、上記のことは、ブルシャイトの安定性にとって重要ではない。したがって、Ca
2+とPO
4
3-イオンを交互に入れ替えると、一層弱い相互作用が形成され、したがって、より大きな移動度を有する。この仮説は、C-2触媒において、このようなイオンの場合の格子モードの強度の劇的な増大によって支持される(
図3b)。
【0142】
一方、H2O-O1水分子は、PO4
3-基のO3への水素結合でもある(距離は、1.78Å)。この場合、水素結合がOH-によって置き換えられていることの判定は、これらはエネルギー的に非常に似ているので、一層、難しい。しかし、TSP処理によって、特定のOH-配向が強いられる一方、OH1・・・H4およびO3・・・H2は逆方向を向くので、OH-イオンの組合せは、両方の方向(O3・・・H2およびH3・・・O3)に向くと仮定することは妥当であり得る。
【0143】
ラマン分光法によって強調されるCa
2+イオンの格子移動度の増強を定量するため、XPS測定を行い、Caの表面電子結合状態をキャプチャした。
図4は、C-1およびC-2触媒のXPS Ca2pを比較する。どちらのスペクトルも、C-1の場合、346.9および350.5eVに、ならびにC-2の場合、346.4および350.0eVに位置するHApの特徴的なCa 2p
3/2およびCa 2p
1/2ピークを示す。この観察は、TSP処理後のHApに関する最近のXPS検討と良好に一致する。Ca 2pピークの結合エネルギーは、主に、Ca・・・PO
4
3-結合と関係する。Ca 2p
3/2の標準値は、一部の場合、例えば、RCOO
-基が吸着される(すなわち、Ca・・・COO
-結合は、Ca・・・PO
4
3-結合よりも強い)場合により高い結合エネルギーにおけるシフトが観察される場合でさえも、約347.2eVに、通常測定される。代わりに、より小さな結合エネルギーへのシフトは、TSP処理によって生じたOH
-空孔に関連する、C-1およびC-2に認められる。ラマンスペクトルと一致して、C-1試料(-0.3eV)よりも、C-2試料(-0.8eV)の方が、シフトは一層顕著である。この0.5eVの差異は、C-2触媒中のブルシャイトの共存相の存在に起因している。
【0144】
8.触媒の選択性に及ぼすブルシャイトの存在の効果
以前の項目において行われた網羅的な分析により、C-1とC-2触媒との間の構造的な差異を識別することが可能となり、後者のC-2触媒において検出された2つの相の間におけるいくつかの考えられる相乗作用に着目する。より詳細には、HApの触媒特性に及ぼす共存するブルシャイト相の効果は、以下の通り説明することができる。(1)Ca2+イオンは、より小さな結合エネルギーを有しており、したがって、新規な触媒部位または吸着部位として作用することができる。(2)OH-の存在が両方の相に維持される場合でさえも、秩序よく並んだOH-の柱の対称性は、相間の境界において破壊されて、電子伝導率が低いが、電荷は一層多く蓄積された領域を生じ得る。ブルシャイト相によって寄与されるこの考えられる相乗作用を究明するため、比較のため、C-1触媒およびC-2触媒を使用して、炭素固定化反応を行った。より詳細には、反応は、95℃において、触媒を直接照射するUVランプの照射下で、CO2およびCH4ガス混合物(それぞれ、3bar)および液状の水(1mL)を使用して、不活性反応チャンバ(120mL)中で触媒作用を及ぼす。
【0145】
図5は、100mM HClおよび50mM NaClを含有する重水に溶解したC-1およびC-2触媒からの72時間反応後に得られた
1H-NMRスペクトルを示しており、これによって、触媒の表面に形成される反応生成物を特定することが可能となった。低周波数領域におけるスペクトルを調査することによって、両方の触媒について、3種の反応生成物をはっきりと特定する(
図5a):エタノール(それぞれ、3.50および1.06ppmに、CH
2四重線、CH
3三重線)、アセトン(2.08ppmにおけるCH
3一重線)および酢酸(1.85ppmにおける、CH
3一重線)。両方の場合において、主要生成物であるエタノールのOHピーク(すなわち、C-1およびC-2の場合の触媒1グラムあたり、それぞれ、13.13±3.75および15.01±4.62μmol)は、4.65ppmにおいて、強い水のピークと重なる(図示せず)。いずれの場合でも、
図5aに表示されている2つのスペクトルは、比較的、類似しており、ブルシャイトの共存は、エタノール、アセトンおよび酢酸の収率に何ら有意な効果を果たさないことを示している。
【0146】
対照的に、高周波数領域(
図5b)における
1H-NMRスペクトルの分析により、非常に重要かつ着目すべき差異があることが明らかである。より詳細には、ギ酸(8.28ppmにおいて一重線)および微量の二重結合炭素化合物に起因する5.81ppmのピークが、C-1試料だけに検出される。これは、C-1からのギ酸の収率8.06±1.89μmolが非常に高いので、重要な達成であり、全収率は、36%に達した(エタノールの場合、59%)。表1は、C-1およびC-2を使用した反応の収率を要約している。
【0147】
【0148】
表1は、C-1およびC-2によって触媒される反応のすべての生成物に関する収率(触媒1グラムあたりの生成物のμmol)である。
【0149】
C-1触媒とC-2触媒との間の選択性の差異をさらに理解するため、エタノール生成(
図6a)およびC-2/C-1生成物の割合(
図6b)に関する反応の収率を解析した。最初に、C-2
合計/C-1
合計の割合(C-2
合計およびC-1
合計とは、それぞれ、C-2触媒およびC-1触媒を使用して得たすべての生成物を指す)によって定義される総合的な触媒活性比は、0.8である。この値が1に近いという事実は、新規な相を導入することによって触媒を調節すると、総合的な触媒活性に何ら重要な影響を及ぼさず、選択性だけに影響を及ぼすことを示している。したがって、アセトン、酢酸およびエタノールの収率は、C-1の場合よりもC-2の場合の方が高く、生成するギ酸の量を相殺する。さらに、この結果は、HApおよびブルシャイト相の共存は、・CH
3の組み込みを容易にし、ギ酸の酢酸への変換が有利に働くことが好都合であることを証明している。一貫して、アセトンの収率は、C-1の場合よりも、C-2の場合の方が高い。
【0150】
総合的に、HApをベースとする触媒にブルシャイト相を少量組み込むと、CO2およびCH4固定化反応において、・CH3種の組み込みが増強される。これは、以下に起因する。(1)電荷の蓄積は、CH4の・CH3への解離を有利にする。(2)Ca2+は、それほど結合しないので、化学種の吸着に対してより感受性が高い。
【0151】
9.cHAp/tspベースの触媒の調製
3種の構成成分の触媒は、cHAp/tspディスク(直径:10mm;厚さ:1mm)上に、50mMのATMP、10mMのZCおよび50mMのATMP水溶液100μLを逐次、滴下することによって調製した。各滴下工程前に、試料を乾燥するため、室温で8時間、維持した。
【0152】
10.アミノ酸の合成
高圧ステンレス鋼製反応器を使用して、アミノ酸の合成を行った。反応器も、パーフッ素化ポリマーをコーティングした不活性反応チャンバ(120mL)を特徴とし、ここに触媒および水を配合した。反応器は、N2、CH4、CO2の入口のための入口弁、およびガス状反応生成物を回収するための出口弁を備える。UVランプ(GPH265T5L/4、253.7nm)も、反応器の中央に置き、触媒に直接照射し、ランプは、UV透過性石英管によって保護した。反応媒体と反応器表面との間のいずれの接触も回避するため、パーフッ素化ポリマーの薄膜によりすべての表面をコーティングし、こうして、他の触媒影響を除いた。
【0153】
この反応は、95℃において48時間の反応時間で行った。約150mgと秤量した触媒試料、および0.5mLの脱イオン化した液状の水を最初に、反応チャンバに配合した。最初の空気含有物を排除するため、このチャンバを第1の選択ガスで広範囲にパージした。各選択ガスを導入して、反応チャンバの圧力(室温で測定)を目標圧まで向上させた。すべての場合において、各フィード反応ガス2barを逐次、導入することによって、チャンバ圧を最大で6barまで向上させた。
【0154】
反応生成物は、NMR分光法によって分析した。NMRスペクトルはすべて、それぞれ、1Hおよび13Cに対して、400.1および100.6MHzの周波数で操作したBruker Avance III-400分光計を用いて取得した。ケミカル・シフトは、内部標準として、テトラメチルシラン(1Hおよび13C)を使用して較正した。64回および1000回のスキャンをそれぞれ、1Hおよび13C NMRに関して記録した。触媒からアミノ酸を除去するため、試料を100mMのHClおよび50mMのNaClを含有する重水に溶解し、重水を最後に添加した。
【0155】
11.cHAp:水熱(HT)処理の温度
HApの沈殿およびHTは、化学量論を調節し、条件に応じて容易に形成され得る、β-リン酸三カルシウム(βTCP)などの他の相の形成を回避するために重要な工程であり、1000~1200℃での焼結は、結晶構造を精密化するために使用されることが多い。
【0156】
図10aは、沈殿工程の後に、T
h=50℃、100℃、150℃、200℃および240℃において、24時間、HTを適用することによって調製したcHAp(T
h)試料に関して記録したラマンスペクトルを比較している。水溶液中でのラマン測定から通常、観察されるPO
4
3-四面体の基準モード周波数の値は、υ
1=938cm
-1、υ
2=420cm
-1、υ
3=1017cm
-1およびυ
4=567cm
-1である。cHApおよびβTCPでは、結晶場は、これらの影響が結晶学的構造に依存する場合でさえも、PO
4
3-の基準モードのシフトだけではなく、分裂も引き起こす。
図10aに表示されているスペクトルは、PO
4
3-の基準モードの分裂により、水熱温度の増加につれて低下することが明確に示されている。例えば、962cm
-1におけるPO
4
3-の非退縮υ
1モードから生じる単一の強度の大きなピークは、cHAp(T
h≧100℃)試料のスペクトルでは検出された一方、いくつかのピークが、cHAp(50℃)の場合に観察され得る。cHAp(T
h≧100℃)の場合、それぞれ、400~490、570~625および1020~1095の周波数範囲に及ぶ、二重退縮υ
2、ならびに三重退縮υ
3およびυ
4に関して、類似した特徴が観察される。すべての場合において、PO
4
3-バンドは、自由四面体基準モード(すなわち、水溶液中)に対応するものよりも20~25cm
-1高い周波数に現れる。
【0157】
cHApは、P6
3/m空間群を示し、単位格子は、6個の等価なPO
4
3-四面体を含む一方、βTCPは、R3c空間群で結晶化し、その単位格子は、3つの非等価なタイプで分布した42個のPO
4
3-四面体を含む。したがって、υ
1=962cm
-1に検出される単一の強度の大きなピークは、βTCPの場合、2つのピークおよびショルダーとして観察される。この構造的な差異はまた、υ
2およびυ
4に影響を及ぼし、これらは、cHApにおける場合よりもβTCPの方において高い周波数範囲に及ぶ。さらに、υ
2およびυ
4は、βTCPでは、わずか55cm
-1の周波数ギャップによって分かれている一方、cHApでは、そのギャップは、120cm
-1である。
図10aにおいて分かる通り、cHAp(50℃)試料に関して記録したスペクトルの指紋領域は、βTCPの場合に予測されるものと一致しており、HTを低温で行った場合、これが主要相となることを示している。
【0158】
図10bにおいて表示されている、cHAp/tsp(T
h)に関して得られるラマンスペクトルは、PO
4
3-の基準モードについてcHAp(T
h)の場合に記載されているものと類似した特徴を示している(
図10a)。TSP処理後、PO
4
3-に関連するピークの強度および幅は、T
h=50℃において調製した試料のβTCP相に相当する一方、cHApは、T
h≧100℃で水熱処理した試料では、はっきりと特定される。しかし、一部の区別される特徴も、T
hの関数として、cHAp/tsp(T
h)試料において特定することができる。例えば、cHAp/tsp(150℃)は、約330cm
-1に弱いピークを示す一方、この試料の残りには、シグナルは検出されない。これらのピークの検出は、試料の結晶化度に依存することを考慮すると、ラマンの結果は、最も高い結晶化度は、HTがT
h=150℃において行われた場合に実現されることを示唆する。さらに、cHAp/tsp(T
h≧100℃)の場合、
図11aにおいてはっきりと証明される通り、878cm
-1にピークが検出される。アパタイトの前駆体であると理解される、ブルシャイト無機物(すなわち、CaHPO
4・2H
2O)であることを特徴とするこのシグナルは、HPO
4
2-の基準モード周波数に起因する。このバンドの強度は、T
h=150℃において得られた試料の場合、一層大きい一方、残りの場合、弱いピークとして観察される。さらに、POH回転および変形モードに典型的な2つのバンドが、794および848cm
-1に見られる。すべての場合において、それらのモードは、非常に弱いので、POHシグナルはまた、T
h=150℃において得られた試料の最高強度を示す。
【0159】
図11bは、cHAp(150℃)およびcHAp/tsp(T
h≧100℃)の場合、100~350cm
-1の間に観察される弱い強度バンドを比較する。これらのバンドは、Ca
2+(111、139および154cm
-1)、PO
4
3-(287cm
-1)およびOH
-(331および323cm
-1)部分格子の並進モード、ならびにPO
4
3-基の回転モード(205cm
-1)に起因する。分かる通り、これらすべてのバンドの強度および狭さはどちらも、TSP法が、cHAp(150℃)試料に適用される場合に最大となる。さらに、OH
-部分格子の並進モードに関連する強度バンド(
図11bにおける331および323cm
-1)は、POH回転および変形モード(
図11aにおける794および848cm
-1)のバンドとともに直線的な増大をもたらし、構造的な相関関係があることの証拠となる。
【0160】
12.HTの期間およびTSP処理の特徴
HTの期間は、HApの構造、したがって触媒としてのcHAp/tspの性能に影響を及ぼす別の因子である。
図12aは、HTの時間が10時間または24時間である場合、T
h=150℃において調製した試料に関して記録されるラマンスペクトルを比較している。分かる通り、わずか10時間のHT後に得られたcHAp試料のスペクトルは、βTCP相に関する先の項目に記載されているピークを示している。したがって、cHApへのβTCP相の変換は、T
hが最適であった場合でさえ、HTが十分に長い場合だけ完了する。興味深いことに、
図12aは、878cm
-1におけるブルシャイト・ピーク、および323cm
-1におけるOH
-部分格子の並進モードの出現によって証明される通り、TSP処理は、10時間および24時間の両方を使用して調製した試料において、表面の再配列に有利となることを示している。それにも関わらず、PO
4
3-の4つの基準モード周波数に関連する、10時間の処理時間を使用して得られたcHAp(150℃)試料に対して特定されたβTCP指紋領域は、永久分極プロセスの後、実質的に変化しないままである。したがって、TSP法は、HTの短縮によって誘発される望ましくない構造的影響を相殺するために使用することができない。
【0161】
cHApにおける永久分極を誘発するために使用される電界強度の影響は、cHAp(150℃)試料に、100V、500Vまたは1000V(それぞれ、25、125、250V・cm
-1)のDC電圧を印加することによって試験した。得られた試料すべてに対して得られたラマンスペクトルは、cHApに対応するが(
図12b)、cHAp/tspの触媒活性に明らかに関連するいくつかのバンドは、DC電圧の強度によってわずかに影響を受ける。より詳細には、OH
-部分格子の並進モード(323cm
-1)、HPO
4
2-の基準モード(878cm
-1)およびPOH回転および変形モード(794および848cm
-1)に起因するピークは、100Vおよび1000Vにおいて得られたものよりも、500Vにおいて分極させた試料の方が、強度がより大きく、より鮮明になる。これらの結果によれば、TSP法に使用した電圧の変化は、触媒としてのcHAp/tspの活性を無効にするとは予想されないが、その有効性のわずかな変化を誘発することが予期される。
【0162】
最後に、TSP処理における電極の幾何形状の影響を検討した。この目的の場合、500VのDC電圧、および電極に対して以下の2種の異なる幾何形状を使用してcHAp/tsp(150℃)試料を調製した。(i)4cmで隔離した鋼製プレートであり、したがって、cHAp(150℃)ディスクは、1つの電極としか(すなわち、焼結無機ディスクの厚さは1mmであった)接触していなかった。(i)1mmで隔離した鋼製プレートであり、したがって、cHAp(150℃)ディスクの各側は、電極と接触した。
図12cにおいて比較した、記録したラマンスペクトルによって、794、848および878cm
-1のバンドは、TSP法が、鋼-cHAp接触を妨げて行われる場合にしか観察されないことが明らかである。同様に、OH
-部分格子の並進モードに関連するバンド(323cm
-1)の強度は、電極間の隔離が4cmである場合に、かなり一層強くなる。
【0163】
深さプロファイリング・ラマン分析を行い、TSP処理によって誘発される変化の程度をモニタリングした。
図13aは、24時間、HTを適用し、かつ1000℃で500Vの分極電圧を使用して調製したcHAp/tsp(150℃)の場合の、様々な深さ(すなわち、表面から95μmの深さまで)で記録したラマンスペクトルを比較する。スペクトルは、すべての場合において同じ指紋領域を示すが、シグナルの強度は、深さが増大するにつれて低下する。この観察は、HPO
4
2-(878cm
-1)、およびPOH回転と変形モード(794および848cm
-1)の両方のバンドの場合、特に顕著である。これらの結果は、TSP処理によって引き起こされる変化が、主に、無機物の表面に位置することを示している。これは、
図13bに裏付けられており、この図は、110および330cm
-1の領域において検出された、本質的に弱いバンドを表示している。PO
4
3-基(205cm
-1)の回転モード、特には、Ca
2+(111、139および154cm
-1)、PO
4
3-(287cm
-1)およびOH
-(323cm
-1)部分格子の並進モードに関連するバンドの強度は、深さの増大を伴って低下する。
【0164】
13.cHAp試料の形態学的および構造的特徴付け
図10および
図11に表示されているラマンスペクトルは、cHAp(T
h)およびcHAp/tsp(T
h)の化学的性質が、T
h、したがって、cHAp/tspの触媒活性に依存することを示している。cHApの形態および構造における、T
hの関連性を検討するため、SEMおよびXRDを使用した。
【0165】
T
h=50℃、100℃、150℃、200℃および240℃での、cHAp(T
h)の低倍率SEM顕微鏡写真が、
図14に表示されている。最も集密した表面を呈するβTCP(T
h=50℃)を含む試料を除外すると、試料の残りは、広範囲の多孔質区域が改変された集密領域から作製された形態を呈する。代表的な試料としてcHAp(150℃)の場合の
図14に示されている高倍率顕微鏡写真の精査により、多孔質区域は、優先方向で無機ナノ粒子の凝集により成長する柱によって構築されることを示している。しかし、多孔質領域の形態は、T
hとは明らかに無関係である。
【0166】
調製したcHAp(T
h)試料の構造的特徴付けは、WAXDによって完了した(
図15a)。六方晶結晶対称性cHAp(a=b=9.421Å、c=6.881Å、α=β=90°およびγ=120°;JCPDSカード番号9-0432)の特徴的指紋領域は、通常、(211)、(112)および(300)反射に対応する、32°~34° 2θにおけるピークに関連する。これらの反射は、T
h≧100℃を使用して調製した試料のすべての回折プロファイルにおいて、明確に特定され、cHAp(50℃)試料の反射において、直観することができる。cHApの他の特徴的な反射ピークは、(211)、(202)(130)(222)および(214)反射に対応する、2θ=32°、34°、40°、47°および49°に見られる。(112)および(300)ピークも使用して、結晶化度を求めた(χ
c;式1)一方、(211)反射を使用して、結晶子サイズを計算した(L
211;式2)。cHAp(T
h)のχ
cは、T
h=100℃、150℃、200℃および240℃の場合、それぞれ、0.53、0.82、0.68および0.77となり、これは、
図10aにおいて表示されているラマンスペクトルと完全に一致する。したがって、cHApのχ
cは、T
h=150℃で調製した場合に最大になり、T
h=240℃で得たものが続く。cHAp(150℃)およびcHAp(240℃)に関して、χ
cの低下に伴って、cHAp(200℃)において検出された変化であって、かつ実験により再現可能な上記の変化は、結晶に対する凍結乾燥と焼結プロセスとの複合効果に起因し、この効果は、使用したT
hの値に依存するように思われる。これによって、T
hが150℃から200℃に向上した場合に、χ
cが低下することが説明されるばかりではなく、χ
cは、cHAp(150℃)の場合よりもcHAp(240℃)の方が低いという事実も説明され得る。他には、L
211の計算値は、それぞれ、T
h=100℃、150℃、200℃および240℃でのcHAp(T
h)の場合、69.1、82.7、82.6および82.7nmに対応する。
【0167】
一方、格子パラメータa=5.812Å、b=15.180Å、c=6.239Å、α=γ=90°およびβ=116.43°を有する単斜晶構造を有する、ブルシャイト(JCPDSカード番号72-0713)の最も関連性のある反射ピークは、cHAp(150℃)のX線回折パターンにおいてはっきりと観察される(
図15a)。cHAp(240℃)の場合、弱い、ならびにcHAp(100℃)およびcHAp(200℃)の場合、より弱いこれらの反射は、それぞれ、2θ=29°、35°、42°および51°で、(141)、(121)、(152)、(143)に相当する。例えば、(143)として、これらの反射のいくつかの位置は、純粋なcHApの理論回折において見られる他の反射と一致するが、相対強度の変化は、2つの相が共存することを示し、これはラマンスペクトルと一致していると言及するに値する。T
h≧100において調製した試料におけるcHApおよびブルシャイト相の量は、X線回折パターンを使用して、cHApの(211)反射とブルシャイトの(141)反射とを比較することによって、大まかに推定した。結果により、ブルシャイト相の形成は、HTをT
h≧100℃で行った場合に促進されるが(
図15b)、cHApは、すべての場合において、明らかに主要相であることを示している。しかし、ブルシャイトの含有率は、T
h=100℃および200℃の場合、約5%から、T
h=150および240℃の場合、約15%まで増加する。
【0168】
一般に、Th=200℃において得られた試料の異常な挙動は、このような温度において、ブルシャイトの場合に報告された脱水プロセスに起因する。したがって、無機層が、水素結合した水分子によって一緒に保持されている、ブルシャイト、CaHPO4・2H2Oの層化構造は、アモルファス相およびモネタイト、CaHPO4に変換する。より詳細には、表面水は、約100℃で蒸発するが、ホスフェート基中の酸素原子との水素結合によって会合しているブルシャイトの2つの結晶学的水分子は、このような温度において安定状態のままであり、200℃で系から出ていく。200℃におけるブルシャイトの脱水に関係する構造的転移によって、χcの低下が説明され、これは、ひいては、触媒活性が喪失する。
【0169】
最後に、cHAp(50℃)に関して得られたディフラクトグラムを精査(
図15a)すると、cHApに関連するものよりも優位な、βTCP(JCPDSカード番号09016)に関して通常、報告された反射ピークを認識することができる。したがって、菱面体晶βTCPは、最低温度においてHT処理した試料中では、主要結晶相として現れる。
【0170】
14.アミノ酸の合成のための触媒としてのcHAp/tsp(Th)の性能
最近の検討では、本発明者らは、N2からの窒素、ならびにCO2およびCH4からの炭素の固定化を触媒して、2種の最も単純なアミノ酸である、Gly(グリシン)およびAla(アラニン)を得た。触媒は、cHAp/tsp(150℃)試料をコーティングすることによって調製され、ATMPの2つの層は、中間ZC層によって隔離された。この目的のため、cHAp/tsp(150℃)ディスクを、室温で5時間、5mMのATMP、5mMのZCおよび1.25mMのATMP水溶液に逐次、浸漬した。各浸漬後に、試料を37℃で3時間、乾燥した。触媒反応は、N2、CO2、CH4およびH2Oを含有する単純なガス混合物から始めて、不活性反応チャンバ中、UV光照射および温和な反応条件下で行った。
【0171】
図16は、ATMPおよびZCコーティングの施用の変化が、触媒の性能を改変しないことを証明している。
図16aは、cHAp(150℃)を使用して調製した触媒を溶解することによって得られた試料、および95℃で48時間後の反応生成物の
1H NMRスペクトルを示している。ATMPメチレン基に対応するシグナルは、3.53~3.56ppmの二重線として現れる一方、生成したGlyのメチレン基に対応するシグナルは、3.37ppmにおける一重線であり、Alaのメチン基およびメチル基のどちらも、それぞれ、3.84~3.87ppmに四重線であり、1.60~1.62ppmに二重線である。同じ化合物はまた、
図16bに表示されている
13C NMRスペクトルに検出されており、ATMP(53.82および52.92ppm)、Gly(172.26および41.35ppm)およびAla(175.26、50.56および16.18ppm)ユニットに帰属されるピークしか検出されない。
【0172】
この反応は、T
h≧100℃でcHAp(T
h)を使用して調製した触媒の場合もポジティブであることに留意すべきである。この反応の収率は、
1H NMRピークを較正するため、制御した濃度で市販のGlyおよびAla(Sigma-Aldrichから購入)を使用して計算した。T
hに対する触媒1cm
2あたりの%で表した反応収率の変化が、
図17に表されている。これらの値は、発明者らの以前の検討において見出された値(48時間後に2.5)よりも高い(すなわち、Gly/Alaの割合は、反応時間が2から96時間に増加すると、5.4から2.2に低下した)。この特徴は、発明者らの以前の検討において調製した触媒において観察されなかった、ブルシャイト相の存在に起因している。したがって、本検討において記載されている方法を用いて達成されたブルシャイトとcHApとの組合せは、GlyからAlaへの変換を明らかに加速する。
【0173】
一方、収率は、χc、およびcHAp/tsp(Th)中のブルシャイト含有率の両方と相関する。したがって、48時間後のアミノ酸の最大収率は、Th=150℃および240℃(すなわち、それぞれ、2.8%および2.7%)において調製した触媒の場合に得られ、これは、最高のχcだけではなく(すなわち、それぞれ、0.82および0.77)、ブルシャイトの最高含有率(すなわち、それぞれ、15%および12%)も示した。対照的に、総収率は、χc<0.7を有するcHAp/tsp(Th)試料によって触媒される反応の場合、約0.5~0.6%と1桁低下する。この特徴は、空間的な並進モードの非常に重要な役割を明確に反映しており、これによって、格子の励起時に、振動および並進分子運動により表面での電荷の移動が容易になる。
【国際調査報告】