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特表2023-549912皮膚における酸化ストレスを処置する方法及びそのための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】皮膚における酸化ストレスを処置する方法及びそのための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/60 20060101AFI20231121BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231121BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
A61K8/60
A61K8/34
A61Q19/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530162
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-05-18
(86)【国際出願番号】 US2021063194
(87)【国際公開番号】W WO2022132688
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/125,011
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】箱崎 智洋
(72)【発明者】
【氏名】レオ ティモシー ラフリン ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】マシュー クレア アーマン
(72)【発明者】
【氏名】シーピン ング
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC012
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC081
4C083AC091
4C083AC092
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC152
4C083AC172
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC252
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC312
4C083AC352
4C083AC401
4C083AC402
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC532
4C083AC542
4C083AC642
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC852
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD202
4C083AD212
4C083AD221
4C083AD222
4C083AD352
4C083AD411
4C083AD491
4C083AD492
4C083AD621
4C083AD631
4C083AD632
4C083AD661
4C083AD662
4C083BB51
4C083CC03
4C083DD27
4C083DD33
4C083EE12
4C083EE13
(57)【要約】
酸化ストレスによって影響を受けた皮膚細胞における細胞エネルギーレベルは、特定の比率で存在するスクロースエステル及び脂肪族アルコールを含むスキンケア組成物の使用を通して改善させることができる。脂肪族アルコール及びスクロースエステルは、特定の比率でスキンケア組成物に組み込まれた場合、酸化ストレスの作用を受けた皮膚細胞に細胞ATPレベルにおける相乗的改善を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキンケア組成物であって、
(i)0.0001%~10%のスクロースエステルと、
(ii)0.0001%~10%の脂肪族アルコールと、
(iii)皮膚科学的に許容される担体と、
を含み、前記脂肪族アルコール及びスクロースエステルが、前記組成物の重量に基づいて、1:4~40:1、好ましくは1:2~20:1、及びより好ましくは1:1~10:1の重量比で存在し、スクロースエステルと脂肪族アルコールとの組み合わせが、酸化ストレス試験に従って少なくとも1.1の相乗係数を有する、スキンケア組成物。
【請求項2】
前記スクロースエステルが、ラウリン酸スクロース、ジラウリン酸スクロース、トリラウリン酸スクロース、これらの誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のスキンケア組成物。
【請求項3】
前記スクロースエステルが、ラウリン酸スクロースとジラウリン酸スクロースとの混合物を含み、ラウリン酸スクロースが、前記スクロースエステルの55重量%~80重量%で存在し、ジラウリン酸スクロースが、前記スクロースエステルの20重量%~45重量%で存在する、請求項2に記載のスキンケア組成物。
【請求項4】
前記脂肪族アルコールが、ヘキシルデカノール、リシノレート、12-ヒドロキシステアレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のスキンケア組成物。
【請求項5】
前記スクロースエステル及び前記脂肪族アルコールが、各々、前記組成物の約0.0001重量%~約10重量%で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載のスキンケア組成物。
【請求項6】
前記組成物が、ビタミン、ミネラル、ペプチド、糖アミン、日焼け止め剤、オイルコントロール剤、フラボノイド化合物、抗酸化剤、防腐剤、プロテアーゼ阻害剤、チロシナーゼ阻害剤、抗炎症剤、保湿剤、角質除去剤、皮膚美白剤、潤滑剤、抗ニキビ活性物質、キレート剤、抗しわ活性物質、抗萎縮活性物質、フィトステロール、N-アシルアミノ酸化合物、抗菌剤、及び抗真菌剤、コンディショニング剤、乳化剤、レオロジー変性剤、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つの追加成分を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のスキンケア組成物。
【請求項7】
前記追加成分が、ビタミンB3化合物、ウンデシレノイルフェニルアラニン、ビタミンE化合物、パルミトイル化ジペプチド、パルミトイル化ペンタペプチド、ビタミンA化合物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるスキンケア活性物質である、請求項6に記載のスキンケア組成物。
【請求項8】
前記組成物が、アクリレート/C10~30アルキルアクリレートクロスポリマー、アクリレートイソデカン酸ビニルクロスポリマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるレオロジー変性剤を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のスキンケア組成物。
【請求項9】
前記組成物が、グリセレス-25ピロリドンカルボン酸イソステアレート、PEG-100ステアレート、ステアレス-2、ステアレス-21、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される乳化剤を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のスキンケア組成物。
【請求項10】
酸化ストレスによって影響を受けた皮膚細胞における細胞エネルギーレベルを改善する方法であって、
(i)処置が望まれる皮膚の標的部分を特定する工程と、
(ii)処置期間の過程にわたって、前記皮膚の標的部分に、請求項1~9のいずれか一項に記載のスキンケア組成物を塗布する工程と、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、酸化ストレスにさらされた皮膚細胞における細胞エネルギーレベルの改善に関する。より具体的には、本開示は、酸化ストレスにさらされた皮膚細胞における細胞エネルギーレベルを相乗的に改善するスクロースエステルと脂肪族アルコールとの組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
生命の基本的原理は、細胞がエネルギーを生み出す必要性及び能力である。ヒトにおいては、食物が取り込まれ、最終的にアデノシン三リン酸(adenosine triphosphate、「ATP」)などの化学化合物に変換されて、身体の細胞によって使用され、生命を持続させる生物学的プロセスを実行する。食物の有用な構成成分(例えば、炭水化物、脂肪、及びタンパク質)を使用可能なエネルギーに変換する細胞の代謝経路は、複雑であり、完全には解明されていない様式で種々の因子の影響を受ける場合がある。哺乳動物の皮膚細胞も例外ではない。皮膚細胞は、皮膚の健康を維持するために動的で複雑な関係で一緒に機能する種々の異なる種の細胞を含むことが知られている。例えば、ケラチノサイトは増殖及び分化して、連続的な皮膚のターンオーバーを提供し、メラノサイトは皮膚の色素沈着のためのメラニン合成を提供し、線維芽細胞は細胞外マトリックスを合成して、皮膚に厚さ及び弾性を提供する。これは、健康な皮膚を維持するために、皮膚細胞ができる限り効率的にエネルギーを生成し、最適なレベルで機能することが重要である。
【0003】
現在、種々の環境ストレス要因が、細胞の生体エネルギーに影響を及ぼし、皮膚細胞のエネルギーレベルを低減し得ることが知られており、これは、老化の目に見える徴候(例えば、小じわ、しわ、不均一な皮膚色調、色素沈着過剰スポット)として物理的に現れ得る。酸化ストレスが細胞エネルギーレベルを低減する理由についての1つの理論は、活性酸素種(reactive oxygen species、「ROS」)への曝露が、細胞構造、及びミトコンドリアなどの細胞小器官に損傷を引き起こすことである。ROSは、酸素を含有する高度に反応性の分子(例えば、酸素イオン及び過酸化物)である。いくつかの場合には、ROSは、正常な代謝の天然の副産物として細胞内で形成され、細胞シグナル伝達及び恒常性において役割を果たす。しかしながら、細胞が熱又はUV照射などのストレス要因に曝露されると、ROSレベルは、劇的に、細胞の抗酸化防御系が圧倒される点までも増加し得る。これが起こると、細胞損傷が生じ得る。
【0004】
紫外線(ultraviolet radiation、「UV」)及び汚染物質(例えば、タバコの煙、自動車の排気、オゾン)などの環境ストレス要因は、ROS産生レベルの上昇につながり得る。ROSによって引き起こされる細胞損傷が経時的に蓄積するにつれて、最終的に組織損傷及び/又は臓器機能不全につながり得る細胞レベルでの酸化ストレスをもたらす。この損傷は、典型的には、皮膚の構造及び形態の顕著な変化(例えば、「光損傷」)及びATP産生の低減として現れる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、酸化ストレスによって引き起こされる細胞ATP産生の減少を抑制、阻止、及び/又は逆転させるスキンケア活性物質が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書において、酸化ストレスによって影響を受けた皮膚細胞における細胞エネルギーレベルを改善する組成物及び方法が提供される。これらの方法は、処置が望まれる皮膚の標的部分を特定する工程と、スクロースエステル及び脂肪族アルコールを含むスキンケア組成物を塗布する工程と、を含み、スキンケア組成物中の、脂肪族アルコールのスクロースエステルに対する重量比が、1:4~40:1であり、スクロースエステルと脂肪族アルコールとの組み合わせが、酸化ストレス試験による、細胞のアデノシン三リン酸(ATP)レベルにおける相乗的改善を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
皮膚の機能及び外観に対する酸化ストレスの望ましくない作用は知られており、皮膚老化の目に見える徴候を処置するために市販されている数多くのスキンケア組成物がある。驚くべきことに、スクロースエステルと脂肪族アルコールとを特定の比率で組み合わせることにより、酸化ストレスにさらされた細胞のATPレベルにおける相乗的改善を提供することができることがここで発見された。
【0008】
本明細書中での「実施形態」などへの言及は、その実施形態と関連付けて説明される、特定の材料、特徴、構造、及び/又は特性が、少なくとも1つの実施形態、任意選択的に多数の実施形態に含まれていることを意味するが、全ての実施形態に、説明された材料、特徴、構造、及び/又は特性が組み入れられることを意味するものではない。更に、材料、特徴、構造、及び/又は特性は、異なる実施形態にわたって、任意の好適な方法で組み合わされてもよく、材料、特徴、構造、及び/又は特性は、説明されるものから除外されてもよいし、代用されてもよい。したがって、本明細書に記載されている実施形態及び態様は、別段明記しない限り又は不適合性が明示されてされない限り、組み合わせて明示的に例示されていなくても、他の実施態様及び/又は態様の要素又は構成成分を含むか又はこれらと組み合わされることが可能である。
【0009】
全ての実施形態において、別途記載のない限り、成分の百分率は全て化粧品組成物の重量を基準としている。特に別途記載のない限り、全ての比率は重量比である。有効桁数は、表示された量に対する限定を表すものでも、測定値の精度に対する限定を表すものでもない。特に別途記載のない限り、全ての数量は、単語「約」によって修飾されるものと理解される。別途示されない限り、全ての測定は、およそ25℃の周囲条件でなされたと理解され、「周囲条件」とは、約1気圧及び相対湿度約50%の条件を意味する。全ての数値範囲は包括的であり、明示的に開示されていない狭い範囲を形成するために組み合わせることが可能である。例えば、区切られた上下の範囲制限は、更なる範囲を作る上で互換性がある。
【0010】
本発明の組成物は、本明細書に記載の必須成分及び任意成分を含む、それらから本質的になる、又はそれらからなることができる。本明細書で使用する場合、「~から本質的になる」とは、組成物又は構成成分が、特許請求される組成物又は方法の基本的かつ新規な特性を実質的に変えない追加成分のみを含み得ることを意味する。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他の意味を示さない限り、複数形も含むことが意図される。
【0011】
定義
「約」とは、言及された値のプラスマイナス20パーセント(±20%)又はそれよりも低い値(例えば、15%、10%未満、若しくは更には5%未満)に等しい範囲を指すことで、特定の値を修飾する。
【0012】
「剤」とは、特定の効果又は機能を提供することを目的とした材料並びにその構成成分を指す。例えば、皮膚軟化剤は、皮膚に皮膚軟化効果を提供することを目的とした材料(例えば、脂肪族アルコール)であり、増粘化剤は、概して、組成物の粘度を増加させることを目的とした材料である。
【0013】
組成物に関連して使用される「塗布する」又は「塗布」とは、本明細書における組成物を皮膚若しくは毛髪などの身体の表面上に塗布又は広げることを意味する。
【0014】
「化粧品組成物」とは、化粧剤を含有し、非治療的(すなわち、非医学的)使用が意図された組成物を意味する。化粧品組成物の例としては、カラー化粧品(例えば、ファンデーション、リップスティック、コンシーラー、及びマスカラ)、スキンケア組成物(例えば、保湿剤及び日焼け止め剤)、パーソナルケア組成物(例えば、洗い流す及び洗い流さないボディソープ及び石鹸)、ヘアケア組成物(例えば、シャンプー及びコンディショナー)が挙げられる。
【0015】
本明細書において、「誘導体」とは、所定の化合物のアミド、エーテル、エステル、アミノ、カルボキシル、アセチル、及び/又はアルコールの誘導体を意味する。
【0016】
「有効量」は、処理期間の過程にわたってケラチン性組織に対して正の効果を有意に誘導するのに十分な化合物及び組成物の量を意味する。正の効果は、本明細書に開示される効果を独立して又は組み合わせて含む、健康、外観、及び/又は感触の効果であり得る。特定の例において、スクロースエステル及び脂肪族アルコールの有効量は、酸化ストレスの結果として低減された細胞ATPレベルを増加させるのに十分な量である。
【0017】
「スキンケア」とは、皮膚のコンディション(例えば、皮膚の健康、外観、又は質感/感触)を調節及び/又は改善することを意味する。皮膚のコンディションを改善するいくつかの非限定例としては、滑らかでより均一な外観及び/又は感触を提供することにより、皮膚の見た目及び/又は感触を改善すること、皮膚の1つ以上の層の厚さを増加させることと、皮膚の弾性又は弾力性を改善すること、皮膚のハリを改善すること、並びに皮膚の脂っぽい、てかてかした、及び/若しくはくすんだ外観を低減し、皮膚の水分量の状態若しくは保湿を改善し、小じわ及び/若しくはしわの外観を改善し、皮膚角質除去若しくは落屑を改善し、皮膚を膨化させ、皮膚バリア特性を改善し、皮膚の色合いを改善し、発赤若しくは皮膚のシミの外観を低減させ、及び/又は皮膚の明るさ、つや、若しくは透明感を改善すること、が挙げられる。
【0018】
「スキンケア活性物質」は、皮膚に塗布すると、皮膚又は皮膚の中に通常見られる細胞の一種に急性効果及び/又は慢性効果をもたらす、化合物又は化合物の組み合わせを意味する。スキンケア活性物質は、皮膚又はそれに関連する細胞を調節及び/又は改善する(例えば、皮膚の弾性、水分量、バリア機能、及び/又は細胞代謝を改善する)ことができる。
【0019】
「スキンケア組成物」は、スキンケア活性物質を含み、皮膚のコンディションを調節及び/又は改善する組成物を意味する。
【0020】
「相乗作用」及びその変形は、2つ以上の材料(例えば、スクロースエステル及び脂肪族アルコール)の組み合わせによって提供される作用が、これらの材料に予想される相加作用よりも大きいことを意味する。例えば、相乗作用は、スクロースエステルと脂肪族アルコールとの組み合わせが、それらの計算された相加作用よりも大きいことによって細胞ATPレベルを増加させる場合に示される。
【0021】
本明細書で使用される「処置期間」は、材料又は組成物が標的皮膚表面に塗布される時間の長さ及び/又は頻度を意味する。
【0022】
組成物
本明細書における化粧品組成物は、ヒトの皮膚への局所塗布を意図しており、皮膚科学的に許容される担体中に配置されたスクロースエステルと脂肪族アルコールとの相乗的組み合わせを含有する。スクロースエステルと脂肪族アルコールとの組み合わせは、酸化ストレスの結果として低減された細胞ATPレベルを相乗的に改善するのに十分である。処置期間(例えば、2、4、又は8週間)の過程にわたって使用される場合、スクロースエステルと脂肪族アルコールとの相乗的組み合わせは、目に見える皮膚老化の徴候の外観を改善し得る。いくつかの場合には、スクロースエステル及び脂肪族アルコールは、1:4~40:1(例えば、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、15:1、20:1、25:1、又は更には30:1)の、脂肪族アルコールのスクロースエステルに対する重量比で存在する。本明細書における組成物は、任意選択的に、1つ以上の追加の皮膚活性物質、又は局所スキンケア組成物に一般に含まれる種類の他の成分を含んでもよい。
【0023】
本明細書のスキンケア組成物は、スキンケア組成物成分を組み合わせる従来の方法を使用して作製することができる。しかしながら、いくつかの場合には、従来の方法を使用してスクロースエステルを組成物中に可溶化することは困難であり得る。これらの場合には、スクロースエステルをグリコールプレミックス中に可溶化し、次いでこれを組成物に添加することが望ましい場合がある。このプロセスの例は、Tanakaらによって2020年12月14日に出願され、「Method of Manufacturing Cosmetic Compositions Comprising Sucrose Esters and Solvents」と題された同時係属中の米国仮出願第63/124,870号に記載されている。
【0024】
本明細書のスキンケア組成物は、化粧品組成物、医薬組成物、又は薬用化粧品組成物であってもよく、溶液、懸濁液、ローション、クリーム、ゲル、トナー、スティック、スプレー、エアロゾル、軟膏、クレンジングリキッド洗浄液及び固形バー、ペースト、フォーム、ムース、シェービングクリーム、拭き取り用品、ストリップ、パッチ、電動式パッチ、ヒドロゲル、フィルム形成製品、フェイシャル及びスキンマスク(不溶性シートを有するもの、及び有さないもの);ファンデーション、アイライナー及びアイシャドウなどのメークアップなどを含むがこれらに限定されない様々な製品形態で提供することができる。いくつかの場合には、組成物の形態は、選択された皮膚科学的に許容される特定の担体に従い得る。例えば、組成物(及び担体)は、エマルション(例えば、油中水型、水中油型、若しくは水中油中水型)又は水性分散液の形態で提供されてもよい。
【0025】
水中油型エマルションとしてスキンケア組成物を提供することが望ましい場合があるが、スクロースエステルと脂肪族アルコールとの組み合わせは、安定性の問題(相分離、シネレシスなど)を引き起こす場合がある。驚くべきことに、特定の種類の増粘剤及び乳化剤を選択することによって、エマルション安定性の問題を克服することができることがここで見出された。好適な増粘剤及び乳化剤のいくつかの非限定的な例は、以下により詳細に記載される。スクロースエステルを含有する安定したエマルションの他の例は、Ehrmanらによって2020年12月14日に出願され、「Stable Skin Care Emulsion and Methods of Using the Same」と題された同時係属中の米国仮出願第63/125,021号に開示されている。
【0026】
スクロースエステル
本明細書における組成物は、有効量のスクロースと脂肪酸とのエステルを含み、脂肪酸は、12~24個の炭素原子(例えば、12~22個の炭素原子、又は更には12~約18個の炭素原子)を有するものから選択される。特に好適な脂肪酸は、飽和アルキル基を有するものから選択される。いくつかの場合には、スクロースエステルは、ラウリン酸スクロース、ジラウリン酸スクロース、トリラウリン酸スクロース、これらの誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。本明細書で使用される「ラウリン酸スクロース」は、式C244412及びCAS#25339-99-5を有する化合物を意味する。「ジラウリン酸スクロース」は、式C366613及びCAS#25915-57-5を有する化合物を意味し、「トリラウリン酸スクロース」は、式C488814及びCAS#94031-23-9を有する化合物を意味する。スクロースエステルは、組成物の0.0001重量%~15重量%(例えば、0.0002重量%~10重量%、0.001重量%~15重量%、0.025重量%~10重量%、0.05重量%~7重量%、0.05重量%~5重量%、又は更には0.1重量%~3重量%)で存在し得る。
【0027】
いくつかの場合には、スクロースエステルは、2つ以上のスクロースエステルのブレンドであり得、2つ以上のスクロースエステルは、任意の1つのスクロースエステルの別のスクロースエステルに対する比率が1:10~1:1(例えば、1:7、1:5、1:3、又は1:2)で存在する。いくつかの場合には、スクロースエステルは、ラウリン酸スクロースとジラウリン酸スクロースとのブレンドであり得、ラウリン酸スクロースは、スクロースエステルの50重量%~80重量%で存在し、ジラウリン酸スクロースは、スクロースエステルの20重量%~45重量%で存在する。あるいは、スクロースエステルは、ラウリン酸スクロース、ジラウリン酸スクロース、及びトリラウリン酸スクロースのブレンドであり得、ジラウリン酸スクロースは、スクロースエステルの35重量%以上で存在する。本明細書で使用するためのスクロースエステルの特に好適な例は、BASFからのBC10034であり、これはラウリン酸スクロースとジラウリン酸スクロースとのブレンドである。BC10034スクロースエステル材料は、ラウリン酸スクロースとジラウリン酸スクロースとの比が3:1~3:2の範囲であり得る。
【0028】
脂肪族アルコール
本明細書における組成物は、脂肪族アルコールを含む。脂肪族アルコールは、以下の一般構造を有する高分子量の直鎖一級アルコールを指し、
【0029】
【化1】
式中、n=8~32である。
【0030】
脂肪族アルコールは、天然又は合成、飽和又は不飽和、分枝鎖又は直鎖であり得る。スキンケア組成物に一般に使用される脂肪族アルコールのいくつかの非限定的な例としては、カプリル酸、カプリル、ラウリル、ミリスチル、セチル、ステアリル、及びベヘニルアルコールが挙げられる。本明細書における脂肪族アルコールは、分子中の炭素原子の数によって総称的に呼ばれ得る。例えば、「C12アルコール」は、その鎖中に12個の炭素原子を有するアルコール(すなわち、ドデカノール)を指す。本明細書での使用に好適であり得る脂肪族アルコールのいくつかの非限定的な例は、リシノレート及び12-ヒドロキシステアレートである。本明細書での使用に特に好適な脂肪族アルコールは、ヘキシルデカノール(CAS番号2425-77-6)であり、これは、以下の構造を有する。
【0031】
【化2】
【0032】
脂肪族アルコールは、組成物の0.0001重量%~15重量%(例えば、0.0002重量%~10重量%、0.001重量%~15重量%、0.025重量%~10重量%、0.05重量%~7重量%、0.05重量%~5重量%、又は更には0.1重量%~3重量%)で組成物中に含まれ得る。
【0033】
皮膚科学的に許容される担体
本明細書に開示される組成物は、皮膚科学的に許容される担体(「担体」と呼ばれる場合もある)を含む。「皮膚科学的に許容される担体」という語句は、担体がケラチン性組織への局所塗布に好適であり、良好な審美特性を有し、組成物中の活性物質と相溶性を有し、安全性又は毒性について不当な懸念をいっさい生じさせないことを意味する。一実施形態において、担体は、約50重量%~約99重量%、約60重量%~約98重量%、約70重量%~約98重量%、又はあるいは約80重量%~約95重量%のレベルで存在する。
【0034】
担体は、多種多様な形態であってもよい。いくつかの場合には、構成成分(例えば、抽出物、日焼け止め活性物質、追加成分)の溶解性又は分散性によって担体の形態及び特徴が決定され得る。非限定的な例としては、単純な溶液(例えば、水性又は無水)、分散液、エマルション、及び固体形態(例えば、ゲル、スティック、流動性固体、又は非晶質材料)が挙げられる。いくつかの場合には、皮膚科学的に許容される担体は、エマルションの形態である。エマルションは、連続水相(例えば、水中油型若しくは水中油中水型エマルション)又は連続油相(例えば、油中水型若しくは油中水中油型エマルション)を有し得る。本発明の油相には、シリコーンオイル、炭化水素油、エステル、エーテルなどの非シリコーン油、及びこれらの混合物が含まれ得る。水相は、典型的には、水及び水溶性成分(例えば、水溶性保湿剤、コンディショニング剤、抗菌剤、湿潤剤、及び/又は他のスキンケア活性物質)を含む。しかしながら、いくつかの場合には、水相は、水溶性保湿剤、コンディショニング剤、抗菌剤、湿潤剤、及び/又は他の水溶性スキンケア活性物質が挙げられるが、これらに限定されない水以外の構成成分を含んでもよい。いくつかの場合には、組成物の非水構成成分は、グリセリン及び/又は他のポリオールなどの湿潤剤を含む。
【0035】
いくつかの場合には、本明細書における組成物は、軽くてべたつかない感覚的感触を提供する水中油型(oil-in-water、「O/W」)エマルションの形態である。本明細書における好適なO/Wエマルションは、組成物の50重量%超の連続水相を含み得、残部は分散油相であり得る。水相は、任意の水溶性及び/又は水混和性成分とともに水相の重量に基づいて、1%~99%の水を含み得る。これらの場合では、分散油相は、油性組成物の望ましくない感触効果をいくらか回避するのを助けるために、典型的には、組成物の30重量%未満(例えば、1%~20%、2%~15%、3%~12%、4%~10%、又は更には5%~8%)で存在する。油相は、1つ以上の揮発性及び/又は非揮発性油(例えば、植物油、シリコーン油、及び/又は炭化水素油)を含み得る。本組成物に使用するのに好適であり得る油のいくつかの非限定的な油の例は、米国特許第9,446,265号及び米国特許出願公開第2015/0196464号に開示されている。
【0036】
担体は、1つ以上の皮膚科学的に許容される親水性希釈剤を含有してもよい。本明細書で使用するとき、「希釈剤」としては、スクロースエステルを分散、溶解、又は別の方法で組み込むことができる材料が挙げられる。親水性希釈剤としては、水、低級一価アルコール(例えば、C~C)、並びに低分子量グリコール及びポリオールなどの有機親水性希釈剤が挙げられ、これらには、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、分子量200~600g/モル)、ポリプロピレングリコール(例えば、分子量425~2025g/モル)、グリセロール、ブチレングリコール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトールエステル、1,2,6-ヘキサントリオール、エタノール、イソプロパノール、ソルビトールエステル、ブタンジオール、エーテルプロパノール、エトキシル化エーテル、プロポキシル化エーテル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
他の任意選択の成分
本明細書における方法での使用に好適な組成物は、任意選択の構成成分が組成物の所望される効果を許容できないように変更しない限り、局所スキンケア組成物における使用が既知である1つ以上の任意選択の成分を含んでもよい。特に、追加成分は、酸化ストレスの結果として低減された細胞ATPレベルを相乗的に増加させるためのスクロースエステル脂肪族アルコールの能力に望ましくない影響を与えるべきではない。いくつかの場合には、活性物質が互いに干渉しないように、異なる生物学的経路を介して機能するスキンケア活性物質を選択することが望ましい場合がある。組成物がエマルションの形態である場合、追加成分は、エマルションに不安定性(例えば、シネレシス)を導入するべきではない。例えば、組成物中の他の成分、特にビタミンB3化合物、サリチレート、及びペプチドのようなpH感受性成分と錯体を形成しない任意選択の成分を選択することが望ましい場合がある。
【0038】
追加成分は、過度の毒性、不適合性、不安定性、アレルギー応答などを伴わずに、ヒトの皮膚組織と接触させて使用するのに好適でなければならない。存在する場合、任意選択の成分は、組成物の約0.001重量%~50重量%(例えば、0.01重量%~40重量%、0.1重量%~30重量%、0.5重量%~20重量%、又は1重量%~10重量%)の量で含まれてもよい。追加成分のいくつかの非限定的な例としては、ビタミン、ミネラル、ペプチド及びペプチド誘導体、糖アミン、サンスクリーン、オイルコントロール剤、微粒子、フラボノイド化合物、育毛調整剤、抗酸化剤及び/又は抗酸化前駆体、防腐剤、プロテアーゼ阻害剤、チロシナーゼ阻害剤、抗炎症剤、保湿剤、角質除去剤、皮膚美白剤、日焼け止め剤、サンレスタンニング剤、潤滑剤、抗ニキビ剤、抗セルライト剤、キレート剤、抗しわ活性物質、抗萎縮活性物質、フィトステロール及び/又は植物ホルモン、N-アシルアミノ酸化合物、抗菌剤、並びに抗真菌剤が挙げられる。追加成分のいくつかの特に好適な例としては、ビタミンB3化合物(例えば、ナイアシンアミド)、n-アシルアミノ酸(例えば、ウンデシレノイルフェニルアラニン)、ビタミンE化合物(例えば、酢酸トコフェリル)、パルミトイル化ジペプチド(例えば、パルミトイル-リジン-トレオニン)、パルミトイル化ペンタペプチド(例えば、パルミトイル-リジン-トレオニン-トレオニン-リジン-セリン)、ビタミンA化合物(例えば、レチノール及びプロピオン酸レチニル)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上のスキンケア活性物質が挙げられる。本明細書での使用に好適であり得る任意選択の成分及び/又はスキンケア活性物質の他の非限定的な例が、米国特許出願公開第2002/0022040号、同第2003/0049212号、同第2004/0175347号、同第2006/0275237号、同第2007/0196344号、同第2008/0181956号、同第2008/0206373号、同第2010/0092408号、同第2008/0206373号、同第2010/0239510号、同第2010/0189669号、同第2010/0272667号、同第2011/0262025号、同第2011/0097286号、同第2012/0197016号、同第2012/0128683号、同第2012/0148515号、同第2012/0156146号、及び同第2013/0022557号、並びに米国特許第5,939,082号、同第5,872,112号、同第6,492,326号、同第6,696,049号、同第6,524,598号、同第5,972,359号、及び同第6,174,533号に記載されている。
【0039】
コンディショニング剤
本明細書の組成物は、0.1重量%~50重量%のコンディショニング剤(例えば、0.5%~30%、1%~20%、又は更には2%~15%)を含んでもよい。コンディショニング剤を添加することは、望ましい感触特性(例えば、塗布時の絹のような滑らかな感触)を有する組成物を提供するのに役立ち得る。コンディショニング剤のいくつかの非限定的な例としては、炭化水素油及びワックス、シリコーン、脂肪酸誘導体、コレステロール、コレステロール誘導体、ジグリセリド、トリグリセリド、植物油、植物油誘導体、アセトグリセリドエステル、アルキルエステル、アルケニルエステル、ラノリン、ワックスエステル、蜜蝋誘導体、ステロール及びリン脂質、これらの塩、異性体、及び誘導体、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。コンディショニング剤の特に好適な例としては、ジメチコンコポリオール、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、混合C1~30アルキルポリシロキサン、フェニルジメチコン、ジメチコノール、ジメチコン、ジメチコノール、シリコーンクロスポリマー、及びこれらの組み合わせなどの揮発性又は非揮発性シリコーン流体が挙げられる。ジメチコンは特に好適であり得るが、これは、一部の消費者は、特定のジメチコン流体によって提供される感触特性を良好な保湿と関連付けるためである。コンディショニング剤として使用するのに好適であり得るシリコーン流体の他の例は、米国特許第5,011,681号に記載されている。
【0040】
本明細書における組成物は、好適なレオロジー、安定性、及び皮膚感触特性を有する組成物を提供するために、0.05%~5%の疎水的に変性された水性レオロジー変性剤(例えば、増粘化剤)を含んでもよい。本明細書での使用に好適であり得る増粘化剤のいくつかの非限定的な例としては、全てLubrizolから入手可能な、PEMULEN EZ-4U、PEMULEN TR-1、PEMULEN TR-2、及びある特定のULTREZブランドのアクリレート/C10~30アルキルアクリレートクロスポリマーなどの、架橋ポリアクリレートポリマーが挙げられる。他の例としては、3Vによって販売されているSTABYLEN 30などのアクリレートビニルイソデカノエートクロスポリマー、Seppic(登録商標)によって販売されているSEPIMAX ZENなどのポリアクリレートクロスポリマー-6、及びClariantによって販売されているARISTOFLEX SILKなどのポリアクリロイルジメチルタウリンナトリウムが挙げられる。いくつかの場合には、SEPIGEL 305ブランドのポリアクリルアミド増粘剤などのポリアクリルアミド系増粘剤はエマルションを不安定化する場合があるため、これらの種類の増粘剤を除外することが望ましい場合がある。
【0041】
本明細書における組成物のレオロジー変性剤は、中鎖~長鎖の脂肪酸誘導体乳化剤(例えば、約12~20個の炭素鎖、あるいは16~20個の炭素鎖)を含んでもよい。いくつかの例において、乳化剤は、ステアレス-2ステアレス-21、PEG-100ステアレート、グリセレス-25ピロリドンカルボン酸イソステアレート、及びこれらの組み合わせなどの非イオン性ステアリン酸誘導乳化剤であり得る。「ステアリン酸誘導乳化剤」は、界面活性剤の親油性ドメインのうちの少なくとも1つが飽和18炭素鎖(ステアリン酸と同様)で構成されている乳化剤である。これらの乳化剤は、典型的には、それらの化学名でステアレート、ステアレス、又はイソステアレートを含有し、多くの場合、他の化学部分と組み合わされたステアリン酸から誘導される。特に好適な乳化剤としては、14以上の親水性-親油性バランス(hydrophilic-lipophilic balance、HLB)を有するステアリン酸誘導乳化剤が挙げられる。乳化剤は、0.05%~5%(例えば、0.1%~4%、0.5%~3%、又は更には1%~2%)で組成物中に存在し得る。いくつかの場合には、水中油型エマルションを不安定化し得る、PEG-11メチルエーテルジメチコン、PEG-12ジメチコン、PEG/PPG 19/19ジメチコン、又は他のPEG化ジメチコンなどの、ある特定のポリエーテル変性シリコーン乳化剤を除外することが望ましい場合がある。
【0042】
使用方法
本明細書における組成物を使用する方法は、処置を必要とする人の皮膚の標的部分を特定する工程と、処置期間の過程にわたって皮膚の標的部分に本組成物を塗布する工程と、を伴う。本明細書における組成物は、有効量のスクロースエステルと脂肪族アルコールとを組み合わせて含有すべきである。皮膚の標的部分は、額、口周囲、顎、眼窩周囲、鼻、及び/若しくは頬)などの顔の皮膚表面上、又は身体の別の部分(例えば、手、腕、脚部、背部、胸)にあってもよい。処置を必要とする人は、その皮膚が、小じわ、しわ、色素沈着過剰、不均一な皮膚色調、及び/又は典型的には老化に関連する他の目に見える皮膚特徴などの酸化ストレスの徴候を示す人である。いくつかの場合には、皮膚の標的部分が、皮膚老化の目に見える兆候を示さない場合があるが、人の加齢のようなそのような問題を典型的に発症する皮膚領域である場合、使用者(例えば、比較的若い使用者)は依然としてそのような皮膚領域を標的にしたいと望む場合がある。このようにして、本方法は、皮膚老化の目に見える徴候の開始を遅らせるための予防的手段として使用することができる。
【0043】
組成物は、処理期間中、皮膚の標的部分に、かつ所望される場合には周囲の皮膚に、少なくとも1日1回、1日2回、又はそれ以上の頻度で毎日塗布することができる。1日2回塗布する場合、1回目と2回目の塗布の間は、少なくとも1~12時間の間隔を空ける。組成物は典型的に、朝及び/又は夜就寝前に塗布される。本明細書における方法に従って使用される場合、本組成物は、皮膚細胞におけるATP産生を増加させることにより、酸化ストレスによって影響を受けた皮膚の外観を改善することができる。細胞ATP産生の変化は、以下により詳細に記載される方法に従って決定され得る。
【0044】
本明細書における処置期間は、理想的には、組成物中に存在するスクロースエステルと脂肪族アルコールとの組み合わせが、酸化ストレスを受けている皮膚細胞におけるATP産生を増加させ、それによって皮膚老化の目に見える徴候の外観を改善するのに十分な時間である。本方法によって提供されるATP産生効果は、スクロースエステル及び脂肪族アルコールの個々での使用と比べて、ATP産生の相乗的増加によって示され得る。いくつかの場合には、本方法は、ATP産生の予想された増加と比べて、少なくとも5%(例えば、10%、15%、20%、25%、又はそれ以上)のATP産生の相乗的増加を提供し得る。処理期間は、少なくとも1週間(例えば、約2週間、4週間、8週間、又は更には12週間)にわたって持続し得る。いくつかの場合には、処理期間は、数ヶ月(すなわち3~12ヶ月)に及ぶであろう。いくつかの場合には、少なくとも2週間、4週間、8週間、又は12週間の処理期間中に、週の大半の日数(例えば、少なくとも週に4日、5日又は6日)にわたって、少なくとも1日に1回、又は更には1日に2回組成物を塗布し得る。
【0045】
組成物を塗布する工程は、局所的塗布により行うことができる。組成物の塗布に関して、「局所的な」、「局所的」、又は「局所的に」という用語は、処置が望まれていない皮膚表面への送達を最小限にしつつ、組成物が標的領域(例えば、しわ(wrinkle)又はしわ(line))に送達されることを意味する。本組成物は、ある皮膚領域に塗布し、軽く揉み込むことができる。組成物又は皮膚科学的に許容される担体の形態は、局所的塗布が容易となるように選択されるべきである。本明細書における特定の実施形態は、組成物をある領域に局所的に塗布することを想到しているが、本明細書における組成物は、1つ以上の皮膚表面に広範に塗布され得ることが理解されよう。特定の実施形態において、本明細書における組成物は、多段階式美容法の一部として使用してもよく、この多段階式美容法では、本組成物を1つ以上の他の組成物の前及び/又は後に塗布してもよい。
【0046】
方法
酸化ストレス試験
この試験方法は、酸化ストレスにさらされた細胞における細胞ATP産生を改善するための試験剤の能力を決定するための好適な方法を提供する。
【0047】
ケラチノサイト(例えば、University of Texas Southwestern製のH-tert-ケラチノサイト)を、T150フラスコ内で、ヒトケラチノサイト増殖サプリメント(例えば、Thermo Fisher Scientific製のカタログ#S-001-5)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(例えば、Thermo Fisher Scientific製のカタログ#15140-122)を補充したEpiLife Medium(例えば、Thermo Fisher Scientific製のカタログ#MEPICFPRF500)中で培養する。ケラチノサイトが約70%の集密度に到達したら、それらを96ウェルプレート(20,000セル/ウェルを有する白色透明底)に播種する。プレートを24時間インキュベートした後、実験的なストレス及び処置を適用する。
【0048】
96ウェルプレートを、以下のように試料(ウェル)の3つの群に分ける:(i)ストレス及び処置を適用しない、(ii)ストレスを適用するが処置を適用しない、並びに(iii)ストレス及び処置の両方を適用する。組み合わせ実験において、ストレスに加えて2回の処置を適用することができる。ストレスなし/処置なしの試料(すなわち、上記の群(i))については、培養培地を単純に新しくする。ストレスをかけた試料(すなわち、上記の群(ii)及び(iii))については、培地を交換するために、400μMの過酸化水素(HOOH)を含有する培養培地を使用する。処置試料(すなわち、上記の群(iii))については、HOOHを添加した直後に、100倍のマスターストックからウェルに処置物をピペットで移動させる。プレートをCO2インキュベーターに90分間戻した後、ATPを測定する。
【0049】
製造業者の指示に従って、試料から培地を除去し、それをATP Glo(登録商標)試薬(Promega,Madison,WIから入手可能)又は同等物と交換することによって、ATPを測定する。室温での曝露の10分後、Perkin Elmer ENVISIONブランドのプレートリーダー又は同等物を使用して、各試料の発光を測定することができる。発光カウントは、細胞中のATPレベルに正比例する。各試料について発光カウントを記録する。
【0050】
各処置群の反復を一緒に平均し、標準p値計算を使用して(両側、等分散)、有意性を計算する。2つの処置物がATPレベルを相乗的に強化するように見える場合、組み合わされた処置物の結果を個々の処置物の合計と比較して、相乗係数を決定することができる。相乗係数は、組み合わされた処置物から観察された作用を、個々の各処置物からの結果の合計で割った比率として計算される。1.00の相乗係数は、組み合わせ処置が予想通りに実行されたことを示すのに対して、相乗係数>1.00は、単純な加法性/期待値を超える相乗効果を示す。
【0051】
酸化ストレス試験で使用される試験剤は、細胞毒性に起因して比較的低濃度に制限される。つまり、高濃度の試験剤を「保護されていない」ケラチノサイトに直接塗布することは、全ての細胞のうちのいくつかを殺傷する場合があり、これは、明らかに試験結果を歪める。正常なヒトの皮膚は、異物及び汚染物質に対するバリアとして働く角質層を有し、それによって下層の生きた表皮を保護する。角質は、成熟した角質細胞(「レンガ」)が脂肪酸、セラミド、及びコレステロールの脂質マトリックス(「モルタル」)中に配置されている「レンガ及びモルタル」配列を有する。局所的に塗布されたスキンケア活性物質が効果的であるためには、それが角質に浸透して、生きた表皮中の生細胞に到達しなければならない。しかしながら、角質への浸透は、スキンケア活性物質を10倍~10,000倍のいずれかで効果的に希釈し、比較的少量の塗布された活性物質のみが実際に生きた表皮に到達する。酸化ストレス試験で使用されるケラチノサイトは、試験剤/スキンケア活性物質を希釈するための角質層を有しないため、試験剤は、生細胞への塗布前に希釈されなければならない。したがって、試験剤の特定の濃度についての酸化ストレス試験において観察された結果は、ヒト角質の既知の希釈作用に基づいて、拡張可能である(例えば、10倍~10,000倍で)。例えば、10ppm(0.001%)の濃度で酸化ストレス試験において相乗作用を示す試験剤は、0.01%、0.1%、及び/又は1%でスキンケア組成物中に含まれる場合、実質的に同じ相乗作用を提供すると考えられる。
【0052】
実施例及び組み合わせ
実施例1:配合物
以下の表1は、スクロースエステルとビタミンB化合物との相乗的組み合わせを含有するスキンケア組成物の例を提供する。例示的な組成物は、従来の方法を使用して作製することができる。いくつかの場合には、組成物が水中油型エマルションの形態である場合、それを以下の通りに作製することが望ましい場合がある。スクロースエステル、ペンチレングリコール、及びQS水を組み合わせ、スクロースエステルが完全に溶解するまで混合することによって、スクロースエステルプレミックスを調製する。スクロースエステルの溶解を補助するために、必要に応じて熱を使用してもよい。これとは別に、水相は、増粘剤及びポリマー乳化剤を水中に分散させることによって調製することができる。増粘剤が分散され、均質になった後、任意の追加の乳化剤(例えば、高HLB乳化剤)を水性相に添加する。残りの水性相成分を添加し、所望のpH(例えば、pH5~7)に調整する。別個の容器中で、油相成分を組み合わせ、必要に応じて加熱しながら(例えば、任意の固体材料を融解するために)均質になるまで混合する。次に、混合しながら油相をゆっくり添加することによって油相を水相中に乳化させ、エマルションが完全に均質になるまで混合を続ける。エマルションが完全に均質になった後、任意の残りの成分又は粉末相材料を均質になるまで混合しながら添加する。スクロースエステルプレミックス相は、乳化工程の前又は後にバッチに添加し、次いでバッチが均質になるまで混合することができる。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
+中性pH5~7に近づけるためのバランス
1.Ajinomotoから入手可能なELDEW PS-203
2.Shin-Etsuから入手可能なKSG-16
3.BASFから入手可能なEMULGADE PL68/50
4.Dow Corningから入手可能なXIAMETER PMX-1503
5.Shin-Etsuから入手可能なKF-6011
6.BASF製のBC10034
7.Lubrizolから入手可能なCARBOPOL ULTREZ 20
8.Lubrizolから入手可能なPEMULEN TR-1
9.Lubrizolから入手可能なPEMULEN EZ-4U
10.3Vから入手可能なSTABLYEN 30
11.Seppicから入手可能なSEPIGEL 305
12.Seppicから入手可能なSEPIWHITE
13.Seppicから入手可能なSEPIMAX ZEN
14.Clariantから入手可能なARISTOFLEX SILK
【0057】
実施例2-スクロースエステルの脂肪族アルコールに対する比率の臨界。
この実施例は、スキンケア組成物中に好適な比率でスクロースエステル及び脂肪族アルコールを含むことを提供する重要性を示す。この実施例で試験した脂肪族アルコールはヘキシルデカノールであり、スクロースエステルはラウリン酸スクロースとジラウリン酸スクロースとの混合物(BASF製のBC10034)である。1:1、5:1、50:1、及び1:5の脂肪族アルコールのスクロースエステルに対する比率を、上記の酸化ストレス試験に従って試験した。試験の結果のまとめを、以下の表2、3、4、及び5に提供する。1より大きい相乗値及び0.05未満のp値を有する試験脚は、相乗的であるとみなされる。少なくとも1.05の相乗値が好ましい(例えば、少なくとも1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、又は更には1.6以上)。
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】
【0060】
【表7】
【0061】
【表8】
【0062】
表2、3、4、及び5に見ることができるように、1:1及び5:1の脂肪族アルコールのスクロースエステルに対する比率のみが、ATP産生において統計的に有意な相乗的改善を提供した。これらのデータは、脂肪族アルコールのスクロースエステルに対するある特定の比率(例えば、50:1~1:5)のみが、酸化的にストレスを受けた細胞におけるATP産生の所望の相乗的増加を提供し得ることを示唆する。したがって、酸化ストレスに関連する皮膚老化の徴候を処置することを意図したスキンケア組成物によって提供される皮膚外観効果は、組成物が脂肪族アルコールとスクロースエステルとの好適な組み合わせを含む場合に大幅に強化され得る。
【0063】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、別途指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0064】
相互参照される又は関連するあらゆる特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本明細書に引用される全ての文書は、除外又は限定することを明言しない限りにおいて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求されるいかなる発明に対する先行技術であるとはみなされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのようないかなる発明も教示、示唆又は開示するとはみなされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0065】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な他の変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にある全てのそのような変更及び修正を添付の特許請求の範囲に網羅することが意図される。
【国際調査報告】