IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クナウフ ギプス カーゲーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】基材用プライマーとしてのデンプン
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/52 20060101AFI20231121BHJP
   E04F 13/02 20060101ALI20231121BHJP
   C04B 41/46 20060101ALI20231121BHJP
   C04B 24/38 20060101ALI20231121BHJP
   C04B 28/00 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
C04B41/52
E04F13/02 A
C04B41/46
C04B24/38 Z
C04B28/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530785
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(85)【翻訳文提出日】2023-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2021000143
(87)【国際公開番号】W WO2022106047
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】20000419.0
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510094539
【氏名又は名称】クナウフ ギプス カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガムビッヒラー,カロリネ
(72)【発明者】
【氏名】リュッケル,アンネ
(72)【発明者】
【氏名】ケップラー,リンダ
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PB39
(57)【要約】
本発明は、基材をコーティングする方法であって、
(i)基材にプライマーを塗布する工程、
(ii)プライマー塗装された基材にコーティングを塗布する工程、並びに
(iii)塗布されたコーティングを乾燥及び/又は硬化させる工程を含み、
プライマーが、1種類以上のアルファ化デンプンを含む水性プライマーである、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材をコーティングする方法であって、
(i)前記基材にプライマーを塗布する工程、
(ii)プライマー塗装された前記基材にコーティングを塗布する工程、並びに
(iii)塗布された前記コーティングを乾燥及び/又は硬化させる工程を含み、
前記プライマーが、1種類以上のアルファ化デンプンを含む水性プライマーである、方法。
【請求項2】
前記基材が無機基材又は非無機基材であり、かつ/又は前記基材が吸収性基材又は非吸収性基材である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基材が、レンガ又はメーソンリー、特に吸収性レンガ、コンクリート基材、石膏ボード、フィラー、プラスター、石、タイル又は木質基材から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記1種類以上のアルファ化デンプンのデンプンが、コムギ、モチコムギ、ジャガイモ、トウモロコシ、ワキシーコーン、イネ若しくはエンドウマメのデンプン又はそれらのうち2つ以上の混合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アルファ化デンプンが、ドラム乾燥アルファ化デンプン又は押出アルファ化デンプンであり、かつ/又は
前記1種以上のアルファ化デンプンが、未加工デンプン、又はプロポキシル化デンプン、酵素処理デンプン、酸処理デンプン、リン酸架橋デンプン若しくはコーティングデンプンから選択される加工デンプンをベースとする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記プライマーが、防腐剤、湿潤剤、分散剤、消泡剤、充填剤、繊維状充填剤、ブロッキング防止剤、及び可塑剤から選択される1種類以上の添加剤を更に含み、添加剤の総量が、好ましくは、前記プライマーの乾燥重量を基準にして5重量%未満である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、1種類以上のアルファ化デンプンを含む、又は1種類以上のアルファ化デンプンからなる固体プライマーに水を加えることによって前記水性プライマーを調製する工程を更に含み、前記固体が好ましくは流動性固体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記プライマーが、前記1種類以上のアルファ化デンプンを、前記プライマーの乾燥重量を基準にして80重量%~100重量%、好ましくは90重量%~97重量%含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記水性プライマーの含水量が、前記水性プライマーの総重量を基準にして80重量%~99重量%、好ましくは85重量%~95重量%、最も好ましくは89重量%~91重量%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
表面に塗布された前記プライマーが、前記コーティングを塗布する前に乾燥され、乾燥時間が、好ましくは1~24時間である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記コーティングが、プラスター又はフィラーであり、好ましくは、粘土、石膏、石灰、セメント、セメント石灰又は合成樹脂をベースとするプラスター又はフィラーから選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記コーティングが、フィラー塗装又はプラスター塗りによって塗布される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法によって得られる、コーティングされた基材。
【請求項14】
次のコーティングの、基材への付着性を高めるために、前記基材において使用されるプライマー組成物であって、1種類以上のアルファ化デンプンからなる、又は1種類以上のアルファ化デンプンを含む、プライマー組成物。
【請求項15】
コーティング剤でコーティングされる基材をプライマー塗装するための、1種類以上のアルファ化デンプンからなる、又は1種類以上のアルファ化デンプンを含む組成物の使用。
【請求項16】
前記組成物が、プライマー塗装に使用する前に水が追加される固体、好ましくは流動性固体である、又は、前記組成物が、すぐに使用できる水性プライマー若しくは必要に応じて使用前に水で希釈することができる濃縮物である、請求項15に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、無機又は非無機基材をコーティングする方法であって、アルファ化デンプンを含むプライマーが、コーティングされる前の基材に塗布される、方法に関する。コーティングは、好ましくはプラスター又はフィラーである。本発明は更に、本方法によって得られるコーティングされた基材、プライマー組成物、及びプライマー塗装のためのアルファ化デンプンの使用に関する。
【0002】
従来技術
水性ポリマー分散液は、コーティング又はフィラー塗装、プラスター塗り、接着又は壁紙貼り作業の前に、多孔質又は高密度基材を準備するためのプライマー又は下塗り塗料として建築分野で広く使用されている。プライマーが満たすべき要件は、多孔質基材への浸透、ダスト結合及び不安定な表面の固結、規定された吸収性の設定、基材と次に塗布される塗料との間の付着性向上など、多岐にわたる。
【0003】
水性ポリマー分散液は、アクリル酸エステルコポリマー、例えばスチレンアクリレート、又はエチレン酢酸ビニルコポリマーなどのベースポリマーを含む。ベースポリマーは通常、最低造膜温度(MFT)、膜硬度、湿潤挙動、消泡、不凍性及び保存性などの特定の特性を調整するために、好適な添加剤と混合される。
【0004】
プライマーは、ディープ(浸透)プライマー又は下塗り塗料とも呼ばれる。プライマーは、レンガ又はメーソンリー、フィラー(パテとも呼ばれる)、石膏ボード、プラスター、セメントスクリード、硫酸カルシウムスクリードなどの基材に、直接又は希釈して塗布される。プライマーは安価であり、容易に入手可能なポリマー分散液から簡単な設備で製造することができる。建築現場の職人は、目の前の作業に応じて、プライマーを原液のまま、又は製造業者によって指定された比率で、水で希釈して塗布する。
【0005】
国際公開第97/35818号には、コーティング、特にフィラー塗装の前に、無機及び非無機基材をプライマー塗装するための再分散粉末であって、アクリレート及びビニルエステルコポリマーをベースとする、再分散粉末の使用が記載されている。
【0006】
欧州特許第1624122(A2)号は、建物の外壁の内側に取り付けられる吸音部材の配置であって、セルロースを主成分とする下層と、連結した上層とを備え、下層は建物の外壁の内側に吹き付けられ、上層はプラスターコーティングを含む、配置に関する。
【0007】
欧州特許第0521920(B1)号は、固形分を基準にして5~80重量%の量で特定のアルコールエトキシレートを含有する微粒子水性ポリマー分散液をベースとし、任意に添加剤を含有するディーププライマーに関する。
【0008】
出願公開第2008-201997(A)号は、70~85重量%の水不溶性セルロースと15~30重量%の接着剤との混合物を含む壁面用コーティング材であって、接着剤は、デンプンペースト、コンニャクペースト及びセルロースエーテルのうちの1つ又は2つ以上を含み、コーティング材を塗布する前に、壁基材にアンカーコートが塗布されてもよい、壁面用コーティング材に関する。
【0009】
KR100653385(B1)は、酸化マグネシウムディスクから作製され、孔が設けられたベースプレートと、デンプン、ポリエチレンオキシド、ソルビン酸、セルロースエタン、リン酸アンモニウム、及び綿糸、チャフ、わら、コルクのチップ又は粉末からなる表面部材層と、ベースプレート及び表面部材層の間に形成された、デンプン、ポリエチレンオキシド、ソルビン酸、セルロース、リン酸アンモニウム及びセルロースペーパーからなる吸音材層とを含有する、防音・防火内装建築材に関する。
【0010】
水性ポリマー分散液をベースとする従来のプライマーの欠点は、含有されるポリマーが、天然資源を消費し、環境中での分解が困難なマイクロプラスチックを生成する合成ポリマーであることである。これは、環境保全に関する問題である。
【0011】
したがって、より環境に優しく、マイクロプラスチックを含まず、同時に、従来のプライマーの特性に少なくとも匹敵する特性を有する、代替プライマーが必要とされている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の基礎となる研究において、基材のプライマー塗装にアルファ化デンプンを使用することによって、これらの目的が達成され得ることが予想外に見出された。
【0013】
したがって、本発明は、請求項1に記載の方法、並びに更なる独立請求項に記載のコーティングされた基材、対応するプライマー組成物、及び使用に関する。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に示されている。
【0014】
したがって、本発明は、基材をコーティングする方法であって、
(i)基材にプライマーを塗布する工程、
(ii)プライマー塗装された基材にコーティングを塗布する工程、並びに
(iii)塗布されたコーティングを乾燥及び/又は硬化させる工程を含み、
プライマーが、1種類以上のアルファ化デンプンを含む水性プライマーである、方法に関する。
【0015】
本発明の利点は、プライマーに使用されるアルファ化デンプンが再生可能な原料をベースとすること、及びマイクロプラスチックが回避されることである。驚くべきことに、本発明によるプライマーは、従来のプライマーと比較して、少なくとも同等の、又は部分的には更に優れた特性を有する。付着性向上効果は、従来のプライマーに匹敵するか、あるいは従来のプライマーよりも優れている。
【0016】
1種類以上のアルファ化デンプンを含む水性プライマーは、それぞれ、無機及び非無機表面又は基材をプライマー塗装するために使用される。プライマー塗装は、主にダスト結合し、基材の吸収性を低下させることによって、主に基材と次のコーティングとの間の付着性を改善する。
【0017】
本発明による基材をコーティングする方法は、(i)次のコーティングの前に、基材にプライマーを塗布する工程を含む。基材は、吸収性基材又は非吸収性基材であり得る。基材は、無機基材又は非無機基材であり得る。基材は、好ましくは、建物の基材である。
【0018】
好ましい実施形態によれば、無機基材は、レンガ若しくはメーソンリー、コンクリート基材、石膏ボード、フィラー、プラスター、石、又はタイルから選択される。レンガ又はメーソンリーは、特に吸収性レンガ又はメーソンリー、例えばセルラーコンクリートブロック、珪灰レンガ又は赤レンガである。石膏ボードはドライウォールとも呼ばれる。フィラーは、レベリングコンパウンド、ジョイントコンパウンド又はパテとも呼ばれる。タイルの例は、テラゾータイル及びセラミックタイルである。石又はタイルなどの基材を使用してもよい。非無機基材としては、例えば、木質チップボードなどの木質基材を挙げることができる。
【0019】
本発明によれば、プライマーであって、1種類以上のアルファ化デンプンを含む水性プライマーである、プライマーが基材に塗布される。
【0020】
アルファ化デンプンは、加工デンプンである。アルファ化デンプンは、熱水処理されたデンプンであり、典型的には水中で火にかけ、次いで、通常はドラム乾燥機又は押出機で乾燥させて、デンプンを冷水中でそれぞれ可溶性又は膨潤性にする。アルファ化デンプンは、好ましくは、冷水及び温水によく溶解する。したがって、水性プライマーは、好ましくはアルファ化デンプン水溶液を含む。したがって、水性プライマーは、好ましくは、水溶液である。
【0021】
アルファ化デンプンは、ドラム乾燥機で乾燥させたアルファ化デンプンであってもよく、押出機で乾燥させたアルファ化デンプンであってもよい。
【0022】
1種類以上のアルファ化デンプンのデンプンは、好ましくは、コムギ、モチコムギ、ジャガイモ、トウモロコシ、ワキシーコーン、イネ若しくはエンドウマメのデンプン又はそれらのうち2つ以上の混合物から選択される。
【0023】
アルファ化デンプンは、他の点では未加工のデンプン、又は更なる加工が施されたデンプンをベースとしてもよい。そのような加工デンプンは、プロポキシル化デンプン、酵素処理デンプン、酸処理デンプン、リン酸架橋デンプン又はコーティングデンプンから選択されてもよい。この加工は、デンプンのアルファ化前、アルファ化中又はアルファ化後に行ってもよい。
【0024】
アルファ化デンプンに加えて、プライマーは、例えば、防腐剤、湿潤剤、分散剤、消泡剤、繊維状充填剤を含む充填剤、ブロッキング防止剤、及びグリコールなどの可塑剤から選択される1種類以上の添加剤を更に含んでもよい。このような添加剤の使用は、当技術分野において慣習的である。このような添加剤は、プライマーの処理特性又は性能特性を改善するために使用してもよい。
【0025】
添加剤の総量は、プライマーの乾燥重量を基準にして、好ましくは5重量%未満である。乾燥重量は、水分を含まないプライマーの重量を意味することが意図される。
【0026】
プライマーは水性プライマーであり、したがって水を含む。水性プライマーは液体プライマーであり、好ましくはペースト状プライマー、すなわちペーストである。プライマーは、そのような形態で、例えば適切な容器に入れて、すぐに使用できる水性プライマーとして、又は濃縮物として配送することができる。
【0027】
もちろん、必要であれば、使用前に更に水で希釈してもよい。デンプンの粘度及び使用量に応じて、配送のために高濃度のペースト又は液体ペーストを得ることができる。プライマーは、現場の施工条件下で、職人が水を使用して容易に必要な処理粘度にすることができる。
【0028】
好ましい実施形態において、プライマーの固体形態がドライミックスとして販売され、これは水に可溶性、乳化性又は分散性であってもよい。そして、水を加えて混合することにより、使用可能なプライマーが現場で得られる。濃度を変化させることで、基材の吸収性に応じて適切なプライマーを製造することができる。
【0029】
したがって、本方法は、1種類以上のアルファ化デンプンを含む、又は1種類以上のアルファ化デンプンからなる固体プライマーに水を加えることによって水性プライマーを調製する工程を更に含んでもよい。もちろん、固体プライマーは、上記のような1種類以上の添加剤を更に含んでもよい。したがって、固体プライマーは、1種類以上のアルファ化デンプンからなってもよく、又は1種類以上のアルファ化デンプンに、1種類以上の添加剤を加えて混合することにより得られる。
【0030】
固体プライマーは、好ましくは流動性固体である。固体プライマーは通常、ドライミックス又は粉末である。固体プライマーはまた、顆粒状などの凝集形態であってもよい。水性プライマーは、水を加えることによって固体プライマーから得ることができる。固体及び固体プライマーという用語は、本明細書では同じ意味で使用される。
【0031】
使用者によって混合される固体状又は粉末状でプライマーを保存及び配達することは、いくつかの利点を有する。まず、顧客は以前のプライマーのように水を「購入」する必要がなく、固体型は耐霜性がある。固体プライマー又は粉末プライマーの包装には段ボール箱を使用することができるため、包装の手間もかからない。更に、固体プライマーには殺生物剤、殺真菌剤などの防腐剤を添加する必要がない、又はほんのわずかしか添加しなくてもよい。デンプンが微生物にとって良好な繁殖地を形成するため、これは液体状においてはより困難である。
【0032】
好ましい実施形態において、プライマーは、1種類以上のアルファ化デンプンを、プライマーの乾燥重量を基準にして80重量%~100重量%、好ましくは90重量%~100重量%、最も好ましくは97重量%~100重量%含む。
【0033】
塗布のために、水性プライマーの含水量は、水性プライマーの総重量を基準にして、例えば80重量%~99重量%、好ましくは85重量%~95重量%、最も好ましくは89重量%~91重量%であってもよい。
【0034】
水性プライマーは、従来の手段、例えばはけ塗り又は吹き付けによって基材に塗布してもよい。表面に塗布されたプライマーは、好ましくはコーティングを塗布する前に乾燥される。好適な乾燥時間は基材の種類によるが、通常1~24時間、好ましくは16~24時間である。乾燥は、標準大気などの環境条件で行うことができる。
【0035】
本発明の方法は、プライマーが施された基材にコーティングを塗布する工程を更に含む。
【0036】
コーティングは、基材、特に建物の基材に好適な任意のコーティングであってもよい。コーティングは、好ましくはプラスター又はフィラーであり、より好ましくは粘土、石膏、石灰、セメント、セメント石灰又は合成樹脂をベースとするプラスター又はフィラーから選択される。好ましい実施形態において、コーティングは、クレイプラスター、石膏プラスター、石灰プラスター、セメントプラスター、セメント石灰プラスター、合成樹脂プラスター、石膏フィラー、セメントフィラー又は合成樹脂フィラーから選択される。
【0037】
好ましい実施形態において、コーティングは、フィラー塗装又はプラスター塗りによって塗布される。塗布後、コーティングを乾燥及び/又は硬化させる。
【0038】
本発明はまた、上記の本発明の方法によって得られる、コーティングされた基材に関する。方法に関する全てのプロセス工程、材料、特徴、及び関連する記述は、コーティングされた基材にも当てはまるため、該記述を参照されたい。
【0039】
本発明はまた、次のコーティングの、基材への付着性を高めるために、基材において使用されるプライマー組成物であって、1種類以上のアルファ化デンプンからなる、又は1種類以上のアルファ化デンプンを含むプライマー組成物、特に上記の固体プライマー又は水性プライマーに関する。方法に関する全てのプロセス工程、材料、特徴及び関連する記述は、プライマー組成物にも当てはまるため、該記述を参照されたい。プライマー組成物は、通常、固体、好ましくは流動性固体であり、プライマー塗装に使用する前に水が追加される、又はすぐに使用できる水性プライマー若しくは水性濃縮物などの水性プライマー組成物である。
【0040】
本発明はまた、コーティング剤でコーティングされる基材をプライマー塗装するための、1種類以上のアルファ化デンプンからなる、又は1種類以上のアルファ化デンプンを含む組成物の使用に関する。1種類以上のアルファ化デンプンからなる、又は1種類以上のアルファ化デンプンを含む組成物は、特に、上記の固体プライマー又は水性プライマーである。
【0041】
好ましい実施形態において、組成物は、プライマー塗装に使用する前に水が追加される固体、好ましくは流動性固体である、又は、組成物は、すぐに使用できる水性プライマー若しくは必要に応じて使用前に水で希釈することができる濃縮物である。濃縮物とは、水性プライマー濃縮物を指す。
【0042】
方法に関する全てのプロセス工程、材料、特徴及び関連する記述は、本発明の使用にも当てはまるため、該記述を参照されたい。
【0043】
以下では、本発明を実施例によって更に例示するが、該例示は、本出願の範囲をいかなる形でも限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0044】
付着性試験
基材としての赤レンガを、以下のプライマーで前処理した。
【0045】
【表1】
【0046】
CWS 30 10%及びLightec 10%が本発明に従って使用され、Aufbrennsperre 1:4は従来技術のプライマーである。
【0047】
赤レンガ基材にプライマーを塗布し、プライマーを乾燥させた後、製造業者の指示に従って、プライマー塗装された基材に、以下のコーティング剤のうちの1つを塗布した。
【0048】
【表2】
【0049】
石膏プラスターの付着性を、DIN EN 13279-2(発行日2014年3月)に従って試験する。結果を以下の表に示す。
【0050】
HRは付着クラック(「Haftriss」)を意味し、PRはプラスタークラック(「Putzriss」)を意味する。付着クラックは、プラスターの付着が最終的にクラックを生じる、すなわち付着が良好でないことを意味する。プラスターがクラックを生じる場合、基材へのプラスターの付着性は、プラスター自体の内部強度よりも明らかに優れている。したがって、付着クラックが存在せず、プラスタークラック「のみ」(100%)が存在する場合、プラスターは、実用的には実際の条件下でそれ自体クラックを生じないため、非常に有望であると見ることができる。
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
【表8】
【0057】
クラックパターン及びN/mm単位の付着引張強度の結果を基準にして、付着性向上に関する結論を導き出すことができる。
【0058】
結果から分かるように、アルファ化デンプンから作製したプライマーは、従来のプライマーと少なくとも同程度に良好であり、時には更に優れているが、いずれの場合も、合成ポリマーから作製したプライマーよりも大幅に安い。
【0059】
特に、本発明のデンプン溶液をプライマーとして使用することによって、付着クラックのパーセンテージが減少するため、同等の、又はより優れた付着性が示される。
【0060】
処理時間へのプライマーの影響
異なるプライマー及びプラスターを考慮した、異なる基材(赤レンガ、セルラーコンクリート、石灰砂岩)に対するプラスター塗りの処理及び取り扱いを試験した。石灰砂岩は吸収性が高く、セルラーコンクリートは吸収性がそれより低く、レンガは最も吸収性が低い。
【0061】
以下の表は、プライマーなし、異なるプライマーあり(Lightec 10%、CWS40 10%、Aufbrennsperre 1:4)の異なる基材に対するプラスターMP 75 L Neuherbergの処理時間を示す。
【0062】
処理時間を決定するために、以下の手順を実施した:最初に、プライマーを基材に塗布し(「プライマーなし」実験を除く)、続いて24時間待機し、次いでプラスターを塗布した(0分として定義)。この実施例では、プラスターの硬化プロセス中に、いくつかの(標準的な)工程を行った。これらの工程(塗り広げ(レベリング)、スクラッチング、フェルティング/目荒らし、第1スムージング、第2スムージング)は、特定の時間の、特定の実験における成分の特性(例えば、粘度)に応じて、表に記載された時間に従って(すなわち、かなり短い時間枠、例えば、+/-10分で)処理される。当業者は、自分の経験に従って、例えば、プラスターを指で試験することにより、次の工程にいつ進むかを知ることができる。当業者に既知の標準的な工具、例えば、台形スラット、H-スラット、スムージングディスク、スムージングこて、又は(表面)スムーサーを各工程において使用した。フェルティング/目荒らし工程では、(若干の)水を含んだスポンジディスク(又はスポンジワッシャ)が使用された。結果(単位:分)を以下の表に示す。
【0063】
【表9】
【0064】
Lightec 10%の結果は、全ての基材について非常に均一であり、効果はAufbrennsperreに類似している。CWS40 10%の結果は、全ての基材について非常に均一であり、効果はAufbrennsperreに類似している。
【0065】
以下の表は、プライマーなし、異なるプライマーあり(Lightec 10%、CWS30 10%、Aufbrennsperre 1:4)の異なる基材に対するプラスターRotband Embsenの処理時間を示す。
【0066】
処理時間を決定するために、上記と同じ手順を使用した。結果を以下の表に示す。
【0067】
【表10】
【0068】
プライマーの目的は、基材の吸収性を低下させることによって付着性を改善すること、及び異なる吸収性を有する異なる基材に対してより均一な吸着を達成することである。
【0069】
結果は、アルファ化デンプン溶液により、プライマーAufbrennsperreに類似した効果が達成されることを示している。これらの結果から、アルファ化デンプンは、膜形成により基材の吸収性を低下させるが、塗布されたプラスターにより再溶解し、プラスター中に一部移行し、膜再形成時の付着性を向上させると考えられる。
【国際調査報告】