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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】パルス式の渦電流システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/06 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
G01B7/06 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534985
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(85)【翻訳文提出日】2023-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2021075906
(87)【国際公開番号】W WO2022122207
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】20213460.7
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソベル、ヤール
(72)【発明者】
【氏名】ツラタンスキー、マルティン
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA16
2F063BC05
2F063CA10
2F063DA01
2F063DA21
2F063GA08
(57)【要約】
本開示は、電磁場内に配置された導電性材料の物体に渦電流を誘導する変化する電磁場を生成するように構成されたパルス式の渦電流(PEC)システムのための送信機(2)に関する。送信機は、スイッチングデバイス(24)と、電圧源(25)に接続されるように構成された送信コイル(21)とを備える。スイッチングデバイスは、送信コイルを通じて電圧源によって生成される電流をスイッチングするために配置される。送信コイルは、複数の並列の導電性のコイル層(22)を備え、それぞれの減衰抵抗器(23)は、各コイル層(22)にわたって接続され、各コイル層は、それぞれのダイオード(D)と直列に接続されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁場内に配置された導電性材料の物体(1)に渦電流を誘導し、変化する電磁場を生成するように構成されたパルス式の渦電流(PEC)システム(10)のための送信機(2)であって、前記送信機は、スイッチングデバイス(24)と、電圧源(25)に接続されるように構成された送信コイル(21)とを備え、前記スイッチングデバイス(24)は、前記送信コイルを通じて前記電圧源によって生成される電流をスイッチングするために配置され、
前記送信コイルは、互いに並列に接続された複数の並列の導電性のコイル層(22)を備え、減衰抵抗器(23)が各前記コイル層(22)にわたってそれぞれ接続され、前記コイル層の各々は、それぞれのダイオード(D)と直列に接続されている、送信機(2)。
【請求項2】
前記スイッチングデバイス(24)は、MOSFET、例えば、nチャンネルMOSFETであるか、又はMOSFET、例えば、nチャンネルMOSFETを含む、請求項1に記載の送信機(2)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の送信機(2)と、
前記渦電流によって生成される変化する電磁場を検出するように構成された受信機(3)と、を備え、
前記受信機は、導電性の受信コイル(31)と、受信チャンネル(RC)(33)と、前記受信コイルと前記RCとの間に接続された過電圧保護回路(OVP)(32)とを備える
PECシステム(10)。
【請求項4】
前記OVP(32)は、バイポーラである、請求項3に記載のPECシステム(10)。
【請求項5】
前記OVP(32)は、Hブリッジのトポロジによるバイポーラである、請求項4に記載のPECシステム(10)。
【請求項6】
前記Hブリッジのトポロジは、4つの金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)(V)、例えば、nチャンネルMOSFETによって形成される、請求項5に記載のPECシステム(10)。
【請求項7】
前記RC(33)は、前記受信機(3)内に備えられた増幅器(34)に接続されている、請求項3から6のいずれかに記載のPECシステム(10)。
【請求項8】
請求項3から7のいずれか一項に記載のPECシステム(10)によって前記物体(1)の厚さ(d)を決定する方法であって、
前記送信機(2)によって、前記物体(1)に第1の渦電流を誘導すること(S1)と、
前記受信機(3)によって、時間の関数として、前記RC(33)における第1の極性を有する第1の電圧を測定すること(S2)と、ここで、前記第1の電圧は、前記第1の渦電流により生成され、変化する電磁場によって前記受信コイル(31)に誘導され、
前記第1の電圧の前記測定(S2)に基づいて、前記物体(1)の厚さ(d)を決定すること(S5)と、を備える、方法。
【請求項9】
前記送信機(2)によって、前記物体(1)に第2の渦電流を誘導すること(S3)と、
前記受信機(3)によって、時間の関数として、前記RC(33)における前記第1の極性とは反対の第2の極性を有する第2の電圧を測定すること(S4)と
をさらに備え、
前記第2の電圧は、前記第2の渦電流によって生成され、変化する電磁場によって前記受信コイル(31)に誘導され、前記RC(33)における電圧の極性は、バイポーラであるOVP(32)によって制御され、
前記物体(1)の厚さ(d)を決定すること(S5)は、前記第1の電圧の測定(S2)と前記第2の電圧の測定(S4)との両方に基づく、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記物体(1)はプレートである、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記厚さは、0.5mmから0.2mmまで、例えば、0.4mmから0.2mmまでの範囲内である、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
コンピュータで実行可能な構成要素がコントローラ(6)に備えられた処理回路(61)上で実行されるときに、前記PECシステム(10)の前記コントローラ(6)に、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法を実行させるための前記コンピュータで実行可能な構成要素(63)を備える、コンピュータプログラム製品(62)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、電磁場内に配置された導電性材料の物体に渦電流を誘導する変化する電磁場を生成するように構成された送信機と、渦電流によって生成された変化する電磁場を検出するように構成された受信機とを備えるパルス式の渦電流(PEC)システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]PECは、例えば、米国特許第5,059,902号に記載されるように、電気抵抗率、非鉄金属シートの厚さ、及びエッジ位置などの機械量の測定にうまく適用されてきた。
【0003】
[0003]この方法は、送信コイル内の直流電流を用いて測定の下でプレートに静磁場を生成することによって行われる。次いで、磁場は、電流をオフにすることによって突然除去され、適切な負荷抵抗器に磁気エネルギーを蓄積させる。電流カットオフから生じる第1のパルスが測定され、プレートとコイルとの間の距離を決定するためにその積分が使用され得る。
【0004】
[0004]送信コイル内の電流が減衰した後、印加磁場の突然の変化によってプレートに誘導される渦電流の測定を開始することが可能である。プレート内の渦電流の急速な減衰による磁場の変化は、プレートの抵抗率及び厚さを推定するために測定及び分析され得る小さな信号を誘導することができる。
【0005】
[0005]通常、渦電流信号の測定は、渦電流減衰からmV信号を測定するように特別に設計された別個の受信コイルと別個の測定受信チャネル(RC)とを用いて行われる。送信機電流のカットオフから生じる第1のパルスは、数百ボルトであり得、そのため、渦電流の測定チャネルは、何かしらの過電圧保護(OVP)も含まなければならない。
【0006】
[0006]渦電流減衰の最も早い部分は、厚さに依存せず、プレートの抵抗率の測定値を得るために使用され得る。より後の部分はシート抵抗に依存し、したがって、それは、抵抗率を厚さで除算したものに依存する。抵抗率とシート抵抗とを計算した後に、例えば、米国特許第6,661,224号に説明されるように、プレートの厚さが推定され得る。
【発明の概要】
【0007】
[0007]本発明の目的は、薄いプレートの厚さ測定のための改善されたPECシステムと方法とを提供することである。
【0008】
[0008]例えば0.5mm未満の厚さを有する薄いプレートの厚さを測定するために、送信機電流を増加させる必要があることが理解されている。本発明によって、より薄い厚さ、例えば200μmの厚さまで十分な精度で測定され得る。本発明によれば、送信機のより高い電流とより低いキャパシタンスとが、(コイル層ごとに1つ、循環電流がコイル層間を流れるのも防ぐ)単一の半導体スイッチ及び並列ダイオードを備えたより単純なコイルシステムによって得られる。
【0009】
[0009]本発明の一態様によれば、PECシステムのための送信機が提供される。送信機は、電磁場内に配置された導電性材料の物体に渦電流を誘導する変化する電磁場を生成するように構成されている。送信機は、スイッチングデバイスと、電圧源に接続されるように構成された送信コイルとを備える。スイッチングデバイスは、送信コイルを通じて電圧源によって生成される電流をスイッチングするために配置される。送信コイルは、互いに並列に接続された複数の並列の導電性のコイル層を備え、それぞれの減衰抵抗器は、各コイル層にわたって(すなわち、コイル層ごとにたった1つの減衰抵抗器又は少なくとも1つの減衰抵抗器を意味する1つ)接続され、各コイル層は、それぞれのダイオード(すなわち、コイル層ごとにたった1つのダイオード、又は少なくとも1つのダイオードである1つ)と直列に接続される。
【0010】
[0010]本発明の別の態様によれば、PECシステム(例えば、本開示のPECシステムの一実施形態)が提供される。PECシステムは、本開示の送信機の一実施形態と、渦電流によって生成される変化する電磁場を検出するように構成された受信機とを備え、受信機は、導電性の受信コイルと、受信チャンネル(RC)と、受信コイルとRCとの間に接続された過電圧保護回路(OVP)とを備える。
【0011】
[0011]本発明の別の態様によれば、本開示のPECシステムの一実施形態により物体の厚さを決定する方法が提供される。方法は、送信機によって、物体に第1の渦電流を誘導することと、受信機によって、時間の関数として、RCにおける第1の極性を有する第1の電圧を測定することと、ここにおいて、第1の電圧は、第1の渦電流により生成される変化する電磁場により受信コイルに誘導され、第1の電圧の測定に基づいて、物体の厚さを決定することとを備える。
【0012】
[0012]本発明の別の態様によれば、コンピュータで実行可能な構成要素がコントローラに備えられた処理回路上で実行されるときに、PECシステムのコントローラに本開示の方法の一実施形態を実行させるためのコンピュータで実行可能な構成要素を備えるコンピュータプログラム製品が提供される。
【0013】
[0013]OVPは、初期の電圧スパイクからRCを保護するために使用され、安定した方法で渦電流によって誘導される小さい電圧(mV範囲)の測定を可能にする。本発明の送信コイルは、ユニポーラであるので、並列ダイオードの結果として、任意のオフセットを補償するために受信機側がバイポーラであることを可能にすることがいくつかの用途において望ましいものであり得る。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、OVPは、バイポーラトポロジを有し、誘導された渦電流が常に同じ極性であっても、RCの極性をスイッチングするためにOVPが使用されることを可能にする。
【0014】
[0014]任意の態様の任意の特徴は、適切な場合にはいつでも、任意の他の態様に適用され得ることに留意されたい。同様に、いずれかの態様の任意の利点は、いずれかの他の態様に適用することができる。開示された実施形態の他の目的、特徴、及び利点は、添付の特許請求の範囲及び図面による以下の詳細な開示から明らかになろう。
【0015】
[0015]一般に、特許請求の範囲で使用されるすべての用語は、本明細書で別段明示的に定義されない限り、当該技術分野におけるその通常の意味に従って解釈されるべきである。「1つの(a)/1つの(an)/その(the)要素、装置、構成要素、手段、ステップなど」へのすべての言及は、別段明示的に述べられていない限り、要素、装置、構成要素、手段、ステップなどの少なくとも1つの実例を指すものとしてオープンに解釈されるべきである。本明細書に開示される任意の方法のステップは、明示的に述べられていない限り、開示された正確な順序で実行される必要はない。本開示の異なる特徴/構成要素についての「第1の」、「第2の」などの使用は、特徴/構成要素を他の同様の特徴/構成要素から区別することのみが意図され、特徴/構成要素にいかなる順序又は階層も与えない。
【0016】
[0016]実施形態は、以下の添付図面を参照することによって、例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のPECシステムの一実施形態の概略ブロック図。
図2】本発明の送信機の一実施形態の概略回路図。
図3】本発明の受信機の一実施形態の概略回路図。
図4】本発明のいくつかの実施形態による方法の概略フローチャート。
図5】本発明のいくつかの実施形態によるコントローラの概略ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[0017]次に、いくつかの実施形態が示される添付の図面を参照して、実施形態が、以下より完全に説明される。しかしながら、多くの異なる形態の他の実施形態が、本開示の範囲内で可能である。むしろ、以下の実施形態は、本開示が徹底的で完全であり、当業者に本開示の範囲を十分に伝えるように、例として与えられる。同じ番号は、説明全体を通じて同じ要素を指す。
【0019】
[0018]図1は、典型的にはAlなどの非鉄の導電性材料の(シートメタルとも呼ばれ得る)プレートである物体1の厚さdを測定するために構成されたPECシステム10の一実施形態を示しており、物体は、第1の(ここでは下)側4aと、第2の(ここでは上)側4bとを有する。図において、プレートの形態の物体1は、図の平面に直交する長手方向軸を有する。
【0020】
[0019]PECシステム10は、送信機2と受信機3とを備える。図において、送信機2と受信機3との両方、具体的には送信機コイル及び受信機コイルは、それに関してそれぞれ、物体1の同じ側に配置され、このことは、いくつかの実施形態において好ましい。しかしながら、いくつかの他の実施形態では、受信コイルは、送信コイルに対して物体1の反対側に配置され得る。
【0021】
[0020]PECシステム10は、例えば図中の破線によって示されるように、制御シグナリングを介して送信機2及び受信機3を制御するためのコントローラ6を備え得る。コントローラは、別個のデバイスとして形成されてもよく、送信機及び/又は受信機と部分的又は完全に一体化されてもよい。コントローラ6は、例えば、送信機及び受信機とは別個に配置される中央コントローラデバイスと、送信機及び/又は受信機と一体化された分散型コントローラデバイスとを備え得る。
【0022】
[0021]送信機電流をオフにすることが可能である速度は、使用されるコイルシステムの時定数に依存する。コイルシステムの時定数は、
【0023】
【数1】
【0024】
に比例し、ここで、Lは、コイルシステムの実効インダクタンスであり、Cは、その実効キャパシタンスである。実効キャパシタンスは、コイルシステムの分散キャパシタンス、及び取り付けられた電子機器のキャパシタンスを含む。
【0025】
[0022]導電性の物体1、例えばアルミニウム(Al)プレートなどの非鉄のプレートの抵抗率の情報を得るために、磁場の変化が物体/板を貫通する時間を有する前に測定を行うことが好都合であり得る。これは、磁場の変化が物体/プレートを貫通する時間を有する前に測定を実行することが好都合であり得る。これは、
【0026】
【数2】
【0027】
に等しい時間スケールで生じ、ただし、dはプレート厚さ、ρはその抵抗率、μ0は自由空間の透磁率である。
【0028】
[0023]送信機2のコイルの時定数がプレート1の時定数よりもずっと小さくすべきであるという条件は、
【0029】
【数3】
【0030】
を測定することが可能である厚さdに下限を設定し、ただし、定数kは、測定システムの要件及び特性に依存する。
【0031】
[0024]したがって、厚さdの測定限界を0.5mmから0.2mmに下げるために、送信機2の電流をオフにする速度は、6倍で増加させられる必要があり得ることになる。
【0032】
[0025]したがって、厚さ測定の下限を減少させるために、送信機コイルシステムの速度を増加させることが必要であり得る。これは、送信コイルの巻き数を減少させることによって少なくとも部分的に行われ得る。送信コイルの巻き数を減少させることによって、インダクタンスと実効キャパシタンスとの両方は、減少させられ得る。しかしながら、送信コイルの巻き数を減少させることにより、物体内の磁束と物体1内の渦電流の大きさとをも減少させ、したがって、測定信号は、電流がカットオフされる直前の物体内の全磁束に依存する。
【0033】
[0026]したがって、送信機コイルの巻数を抑えつつ、渦電流測定の信号対雑音比を維持するために、送信機電流、すなわち送信機2のコイルを通じた電流を実質的に増加させることが望ましいものであり得る。
【0034】
[0027]本発明の送信機トポロジは、あらゆる測定において送信機電流を同じ方向に流すことによって、高い電流及び低いキャパシタンスで使用するのに適合した解決策を提供する。これは、物体/プレート1をユニポーラの磁化にかける送信機電流のためのとても単純な回路をもたらす。したがって、送信機電流のカットオフから生じる大きい電圧パルス、ならびに減衰する渦電流によって誘導される小さな信号は、常に同じ極性を有する。そのような送信コイル21の例示的な実施形態は、図2に示されている。
【0035】
[0028]図2、送信コイル21は、送信コイルを通じて送信電流を供給するために構成された電圧源25に接続されている。スイッチングデバイス24は、送信機電流をオン又はオフにするために、例えば、半導体スイッチ又は回路遮断器、ここでは半導体スイッチ、好ましくは金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、例えば(nMOSとも呼ばれる)nチャネルMOSFETを備える。
【0036】
[0029]送信機コイル21は、抵抗を抑えつつより高い送信機電流の使用を可能にするために、互いに並列に接続された複数の並列の導電性のコイル層22を含む。図2では、2つのコイル層22a及び22bが概略的に示されているが、任意の数のコイル層、例えば少なくとも4つのコイル層が、送信コイル21の複数のコイル層22内に備えられ得る。それぞれの減衰抵抗器23(ここではそれぞれ23a及び23b)は、コイルのキャパシタンスから生じる並列の振動回路を減衰させるために、複数のコイル層の各コイル層22にわたって接続され得る。複数のコイル層22の各々は、送信機コイル21内に形成された共振回路からスイッチングデバイス24を絶縁するために、それぞれの一方向に阻止するデバイス、典型的にはダイオードD、ここではコイル層22aと直列のダイオードD1及びコイル層22bと直列のダイオードD2と直列に接続される。複数のそれぞれのダイオードDは、コイル層22間を流れる循環電流の形成も防ぐ。さもなければ、異なるコイル層22間の差は、物体1の比較的小さい渦電流の測定に干渉し得るそのような循環電流をもたし得る。好ましくは、送信機コイル21は、コイル層22を形成するためにプリント可能な回路基板(PCB)のいくつかの層を使用し、コイル層ごとに1つのPCB層がある。典型的には、コイル層22は、互いに同一である。インダクタンスを十分に低く維持するために、各コイル層の巻き数は、例えば1回巻きから4回巻きの範囲内で、とても少なくなり得る。
【0037】
[0030]さらに、送信機コイル21がユニポーラであることによって、それぞれのダイオードDが各コイル層22と直列に接続される結果として、典型的には、送信機電流は、従来のバイポーラ送信機について直列の2つのダイオード及び2つのスイッチングデバイスと比較して、送信機21において直列の1たった1つのダイオードD及びたった1つのスイッチングデバイス24を通じて送信されなければならず、送信機21における抵抗損失及び熱損失を減少させる。また、より高いドレイン抵抗及びより高いキャパシタンスのpMOS型の半導体スイッチの代わりに、nMOS型の半導体スイッチは、スイッチングデバイス24に使用されてもよい。送信機における熱損失をさらに最小化するために、スイッチングデバイス24は、並列に接続されたいくつかの半導体スイッチを備えても又は並列に接続されたいくつかの半導体スイッチから構成されてもよく、又は並列に接続されたいくつかの半導体スイッチからなってもよい。
【0038】
[0031]図3は、受信機3の一実施形態を示す。受信機3は、信機電流のカットオフから生じる変化する電磁場によって誘導され、次いで物体1の渦電流の減衰によって誘導される受信機電流が形成されることが可能である受信機コイル31を備える。受信機電流は、物体1の特性を決定するために電圧測定が行われ得るRC33へ出力される。しかしながら、送信機2における送信機電流のカットオフ時に生じる比較的とても高い電圧スパイクからRC33を保護するために、OVP32は、受信機コイル31とRC33との間に接続される。増幅器34は、その中の比較的低い(mV範囲の)電圧の測定を容易にするためにRCに接続され得る。
【0039】
[0032]典型的には、OVP(過電圧保護回路)は、複数の半導体スイッチVを備え、例えば、それぞれは、nMOS又はpMOSなどのMOSFETを備え、好ましくは、pMOSと比較してより低いドレイン抵抗及びより低いキャパシタンスによりnMOSを備える。
【0040】
[0033]送信機2はユニポーラであるので、受信機コイル31に誘導される受信機電流は常に同じ極性である。これは、OVP32が、従来のバイポーラ送信機が使用されるときと比較して、より単純なトポロジを有することも可能にする。しかしながら、そこで、PECシステム10内のオフセットをなくすことは難しいものであり得る。したがって、バイポーラOVP32を使用することは有利であり得、ユニポーラの送信機2を使用するときでも、RC33における極性が測定間で変更されることを可能にする。物体の厚さdの測定を実行するとき、そのような測定は、それぞれがバイポーラOVP32によってRC33において異なる極性をそれぞれ有する2つのサブ測定を含むことができる。図3の実施形態では、OVPは、4つの半導体スイッチV1、V2、V3、及びV4のHブリッジのトポロジによるバイポーラであり、この例では、それぞれはnMOSを備え、これはOVPをバイポーラにする便利なやり方であり得る。
【0041】
[0034]さらに、増幅器34が使用される場合、そのような増幅器は、時間と共に変化するオフセット電圧を有し得、そのオフセットは、RC33における異なる極性でサブ測定によって補償されることも可能である。上述したように、RC33の極性は、バイポーラOVP32によって制御されてもよい。典型的には、このオフセット補償は、2つのサブ測定によって可能にされるオフセットの減算を備え、安定したやり方でRC33における比較的小さい電圧の測定を容易にする。
【0042】
[0035]図4は、本開示の方法のいくつかの実施形態を示す。この方法は、本開示のPECシステム10の一実施形態によって物体1の厚さdを決定/測定するためのものである。この方法は、送信機2によって、物体1に第1の渦電流を誘導することS1を含む。次いで、受信機3によって、RC33における第1の極性を有する第1の電圧は、時間の関数として測定されS2、ここにおいて、第1の電圧は、第1の渦電流によって生成される変化する電磁場によって受信機コイル31において誘導される。次いで、物体1の厚さdが、第1の電圧の測定S2に基づいて決定されるS5。
【0043】
[0036]いくつかの実施形態では、方法は、厚さdを決定することS5の前に、送信機2によって物体1に第2の渦電流を誘導することS3も備える。次いで、第1の極性とは反対の第2の極性を有する第2の電圧が、受信機3によってRC33において時間の関数として測定され得るS4。本実施形態では、第2の電圧が、第2の渦電流によって生成される変化する電磁場によって受信コイル31に誘導され、RC33における電圧の極性は、バイポーラであるOVP32によって制御される。次いで、厚さdを決定することS5は、第1の電圧の測定S2と第2の電圧の測定S4との両方に基づき得る。したがって、オフセットを減算され得る。
【0044】
[0037]本発明のいくつかの実施形態では、OVP32は、バイポーラである。これは、本開示のユニポーラの送信機2を使用するときに、例えばオフセットを補償するために、異なる極性でRC33における測定を可能にする便利な方法であり得る。いくつかの実施形態では、OVP32は、Hブリッジのトポロジによってバイポーラである。いくつかの実施形態では、Hブリッジのトポロジは、4つのMOSFET V、例えば、(本明細書ではnMOSとも呼ばれる)nチャネルMOSFETによって形成される。
【0045】
[0038]本発明のいくつかの実施形態では、RC33は、受信機3に備えられた増幅器34に接続されている。これは、RCにおける比較的小さい誘導電圧の測定S2及び/又はS4を容易にし、改善することができる。
【0046】
[0039]本発明のいくつかの実施形態では、送信機2のスイッチングデバイス24は、MOSFET、例えば、(本明細書ではnMOSとも呼ばれる)nチャネルMOSFETである、又はそれを備える。したがって、送信機2のスイッチングデバイス24とOVP32の半導体スイッチVとの両方は、それぞれのnMOSを好都合に備え得る。
【0047】
[0040]本発明のいくつかの実施形態では、物体1は、例えば、ロールからPECシステム10へ供給される、及び/又はPECシステム10を通過した後にロールに巻き上げられるプレート又はシート金属である。
【0048】
[0041]PECシステム10のいくつかの実施形態は、物体1の薄い厚さ、例えば0.5mmから0.2mmまで、例えば0.4mmから0.2mmまでの範囲内など、0.5mm未満の厚さdを決定するのに特に役立ち得る。
【0049】
[0042]図5は、本開示のコントローラ6の一実施形態を概略的に示す。コントローラ6は、処理回路61、例えば中央処理装置(CPU)を備える。処理回路61は、マイクロプロセッサの形態で1つ又は複数の処理ユニットを備えることができる。しかしながら、計算能力を有する他の適切なデバイスが、処理回路61、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又はコンプレックスプログラマブルロジックデバイス(CPLD:complex programmable logic device)に備えられてもよい。処理回路61は、1つ又はいくつかの記憶ユニット、例えばメモリのストレージ62に記憶された1つ又はいくつかのコンピュータプログラム又はソフトウェア(SW)63を実行するように構成されている。記憶ユニットは、本明細書で説明されるように、コンピュータで実行可能な構成要素としてそこに記憶されたSW63と共にコンピュータプログラム製品62を形成するコンピュータ可読手段と見なされ、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、もしくは他のソリッドステートメモリ、又はハードディスク、あるいはこれらの組み合わせの形態であってもよい。また、処理回路61は、必要に応じて、ストレージ62にデータを記憶するように構成されてもよい。コントローラ6は、本開示の方法を実行するように構成されてもよい。
【0050】
[0043]本開示は、いくつかの実施形態を参照して主に上述されてきた。しかしながら、当業者によって容易に理解されるように、上で開示されたもの以外の他の実施形態は、添付の特許請求の範囲によって定められるように、本開示の範囲内で等しく可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】