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特表2023-550033ペリリルアルコールでの再発性神経膠芽腫の治療
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-30
(54)【発明の名称】ペリリルアルコールでの再発性神経膠芽腫の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/045 20060101AFI20231122BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231122BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20231122BHJP
   A61K 31/415 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 31/4188 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 31/4015 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20231122BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 31/52 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 31/475 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 31/404 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20231122BHJP
   C07D 231/12 20060101ALN20231122BHJP
   C07D 491/22 20060101ALN20231122BHJP
   C07D 487/04 20060101ALN20231122BHJP
   C07D 207/263 20060101ALN20231122BHJP
   C07H 15/252 20060101ALN20231122BHJP
   C07D 475/08 20060101ALN20231122BHJP
   C07D 473/38 20060101ALN20231122BHJP
   C07D 239/553 20060101ALN20231122BHJP
   C07D 519/04 20060101ALN20231122BHJP
   C07D 305/14 20060101ALN20231122BHJP
   C07D 403/06 20060101ALN20231122BHJP
   C07J 5/00 20060101ALN20231122BHJP
【FI】
A61K31/045
A61P35/00
A61P25/00
A61K47/55
A61K31/415
A61K31/4745
A61K31/4188
A61K31/4015
A61K9/72
A61K9/08
A61K9/12
A61K31/704
A61K31/519
A61K33/243
A61K39/395 N
A61K31/52
A61K31/513
A61K31/475
A61K31/337
A61K31/404
A61K31/573
C07D231/12 C
C07D491/22
C07D487/04 144
C07D207/263
C07H15/252
C07D475/08
C07D473/38
C07D239/553 A
C07D519/04
C07D305/14
C07D403/06
C07J5/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528136
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(85)【翻訳文提出日】2023-07-03
(86)【国際出願番号】 US2021059117
(87)【国際公開番号】W WO2022104041
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】63/112,799
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513048058
【氏名又は名称】ネオンク テクノロジーズ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】チェン,トーマス・シー.
【テーマコード(参考)】
4C050
4C057
4C063
4C072
4C076
4C085
4C086
4C091
4C206
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050AA07
4C050BB04
4C050CC07
4C050DD02
4C050EE02
4C050FF02
4C050GG03
4C050HH04
4C057BB02
4C057BB05
4C057CC04
4C057DD01
4C057JJ50
4C063AA01
4C063BB03
4C063CC06
4C063DD04
4C063EE01
4C072QQ00
4C072QQ07
4C072UU01
4C076AA11
4C076AA24
4C076AA93
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB25
4C076CC01
4C076CC27
4C076CC41
4C076DD37N
4C076EE59N
4C076FF34
4C085AA14
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC07
4C086BC36
4C086CB05
4C086CB22
4C086DA20
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA16
4C086MA52
4C086MA59
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZB26
4C091AA01
4C091BB03
4C091BB05
4C091CC01
4C091DD01
4C091EE07
4C091FF01
4C091GG01
4C091HH03
4C091JJ03
4C091KK12
4C091LL01
4C091MM03
4C091NN04
4C091PA03
4C091PA05
4C091PA09
4C091PB02
4C091QQ01
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA09
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA33
4C206MA36
4C206MA72
4C206MA85
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA13
4C206NA14
4C206ZA01
4C206ZB26
(57)【要約】
本発明は、精製されたペリリルアルコールを使用する鼻腔内神経膠芽腫療法を提供する。再発性神経膠芽腫を有する患者は、開示する方法によって精製されたペリリルアルコールで治療された場合、歴史的対照と比較して改善された生存率を示した。イソクエン酸デヒドロゲナーゼI(IDH1)突然変異を有する神経膠芽腫患者は、野生型IDH患者と比較して改善された生存率を示した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における神経系の腫瘍の治療方法であって、患者が、突然変異したイソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(IDH1)遺伝子を有し、該方法が、ペリリルアルコール(POH)またはペリリルアルコールカルバマートを含む医薬組成物を患者に投与することを含み、ペリリルアルコールカルバマートが、カルバマート連結基を介して治療用物質に共有結合しているペリリルアルコールである、前記方法。
【請求項2】
中枢神経系の腫瘍が神経膠芽腫である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
神経膠芽腫が再発性神経膠芽腫である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
治療用物質が化学療法剤である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
化学療法剤が、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼインヒビター、小胞体ストレス誘発剤、白金化合物、代謝拮抗剤、酵素インヒビター、受容体アンタゴニスト、治療用抗体およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
化学療法剤がジメチル-セレコキシブ(DMC)、イリノテカン(CPT-11)、テモゾロミドまたはロリプラムである、請求項4記載の方法。
【請求項7】
医薬組成物を吸入、鼻腔内、経口、静脈内、皮下または筋肉内投与する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項8】
医薬組成物を、経鼻送達装置を使用して投与する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
経鼻送達装置が、鼻腔内吸入器、鼻腔内スプレー装置、アトマイザー、ネブライザー、定量吸入器(MDI)、加圧用量吸入器、注入器、単位用量容器、ポンプ、ドロッパ、スクイーズボトルまたは双方向装置からなる群から選択される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
放射線で患者を治療することを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
化学療法剤を患者に投与することを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
ペリリルアルコールカルバマートが、ジメチルセレコキシブにコンジュゲート化されたペリリルアルコール、テモゾロミドPOHカルバマート(3-メチル 4-オキソ-3,4-ジヒドロイミダゾ[5,1-d][1,2,3,5]テトラジン-8-カルボニル)-カルバミン酸-4-イソプロペニルシクロヘキサ-1-エニルメチルエステル)およびロリプラムPOHカルバマート(4-(3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシフェニル)-2-オキソ)-ピロリジン-1-カルボン酸 4-イソプロペニルシクロヘキサ-1-エニルメチルエステル)またはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
(S)-ペリリルアルコールが、約99.0%(w/w)を超える純度または約99.5%(w/w)を超える純度を有する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
(S)-ペリリルアルコールが、約99.0%(w/w)を超える純度を有する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
(S)-ペリリルアルコールが、約99.5%(w/w)を超える純度を有する、請求項13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2020年11月12日付出願の米国仮特許出願第63/112,799号に基づく優先権を主張するものであり、その開示の全体を参照により本明細書に組み入れることとする。
【0002】
発明の分野
本発明はモノテルペンまたはセスキテルペン組成物に関する。特に、本発明は、神経系腫瘍を治療するための、約98.5%(w/w)を超える純度を有するモノテルペン(例えば、(S)-ペリリルアルコール)またはセスキテルペンの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
悪性神経膠腫は中枢神経系(CNS)がん(以下、「がん」は「癌」と表記される)の最も一般的な形態であり、現在、本質的に治療不能であると考えられている。種々の悪性神経膠腫のなかでも、未分化星状細胞腫(グレードIII)および多形神経膠芽腫(GBM;グレードIV)は、それらの侵襲的成長および現在利用可能な療法に対する耐性ゆえに、特に不良な予後を示す。悪性神経膠腫に対する現在の標準治療は手術、電離放射線および化学療法からなる。最近の医学の進歩にもかかわらず、過去50年間で悪性神経膠腫の予後の大幅な改善は見られなかった。Wenら,Malignant gliomas in adults.New England J Med.359:492-507,2008;Stuppら,Radiotherapy plus concomitant and adjuvant temozolomide for glioblastoma.New England J Med.352:987-996,2005。
【0004】
悪性神経膠腫の予後不良の主な理由は、十分な量の化学療法剤を脳に送達することが難しいことである。脳への薬物の接近は血液脳関門(BBB)によって制限される。最終的に脳に到達する薬物の濃度は肝臓初回通過代謝および尿中排泄によって更に減少する。したがって、腫瘍切除、抗腫瘍薬の定位的注入または医薬の対流促進送達のためのカテーテルの配置のような侵襲的手術がしばしば必要となる。
【0005】
薬物の鼻腔内送達は、血液脳関門を回避する及び医薬物質をCNSに直接的に迅速に送達する新規非侵襲的療法をもたらす。鼻腔内投与された薬物は数分以内に脳の実質組織、脊髄および/または脳脊髄液(CSF)に到達する。嗅覚路および三叉神経を介した送達に加えて、動物での研究からは、治療薬は鼻血管系をも介して全身に送達されるようである。Hashizumeら,New therapeutic approach for brain tumors:intranasal delivery of telomerase inhibitor GRN163.Neuro-oncology 10:112-120,2008;Thorneら,Delivery of insulin-like growth factor-1 to the rat brain and spinal cord along olfactory and trigeminal pathways following intranasal administration.Neuroscience 127:481-496,2004。治療剤の鼻腔内送達は、他の種類の癌、例えば肺癌、前立腺癌、乳癌、造血癌および卵巣癌などを治療するための全身的方法をもたらしうる。
【0006】
天然に存在するモノテルペンであるペリリルアルコール(POH)は、CNS癌、乳癌、膵臓癌、肺癌、黒色腫および結腸癌を含む種々の癌に対する有効な物質であることが示唆されている。Gould,M.Cancer chemoprevention and therapy by monoterpenes.Environ Health Perspect.1997 June;105(Suppl 4):977-979。経口ペリリルアルコールは、米国国立癌研究所(National Cancer Institute)により主催された最近の第I相試験において使用されている。経口ペリリルアルコールは重篤な副作用を誘発しなかったが、それは、主に胃腸への副作用により、一般に低忍容性であった。また、その抗癌効果は限定的であった。結果として、経口ペリリルアルコールの使用は中止された。Rippleら,Phase I clinical and pharmacokinetic study of perillyl alcohol administered four times a day.Clinical Cancer Res 6:390-6,2000。
【0007】
経口POHの胃腸副作用を最小限に抑え、POHを中枢神経系に直接送達する手段を提供するために、悪性脳腫瘍へのPOHの直接鼻腔内送達のためのPOHの経鼻製剤(後記を参照されたい)がブラジルのフルミネーゼ大学(Fluminese University)のクロヴィス・フォンセカ(Clovis Fonseca)博士によって研究された。Da Fonsecaら,Anaplastic oligodendroglioma responding favorably to intranasal delivery of perillyl alcohol:a case report and literature review,Surgical Neurology(2006)66:611-615。溶媒カクテルと組合された商用グレードのPOHのこの製剤は、再発性悪性神経膠腫を有する150名の患者に既に投与されており、最小限の副作用および6か月で50%の無進行生存率を示している。Da Fonsecaら,Correlation of tumor topography and peritumoral edema of recurrent malignant gliomas with therapeutic response to intranasal administration of perillyl alcohol.Invest New Drugs 2009,Jan.13。
【0008】
85%~96%の範囲の純度を有する商用グレードのペリリルアルコールは、典型的には、天然物から精製され、あるいはベータ-ピネン(マツの木から抽出される)のような天然物を合成的に修飾することによって精製される。これらの経路で得られるペリリルアルコールには、その異性体および他の不純物が混入することが避けられず、そのような混入物は、類似した物理化学的性質を有し、したがって、分別蒸留またはクロマトグラフィーのような通常の精製方法によってペリリルアルコールから除去することは極めて困難である。ペリリルアルコールの異性体および他の不純物はペリリルアルコールの所望の治療特性を阻害する可能性がある。
【0009】
したがって、高度に精製されたペリリルアルコールを製造し、この物質を、CNS癌、例えば悪性神経膠腫、および他の侵襲性脳腫瘍の治療に使用することが尚も必要とされている。精製されたペリリルアルコールは、単独で、または放射線療法、標準的な化学療法および手術を含む他の治療と組合せて投与されうる。投与はまた、鼻腔内経路、経口経路、肺送達用経口気管経路および経皮経路を含む種々の経路で行われうる。
【発明の概要】
【0010】
発明の概括
本発明は、(a)(S)-ペリリルアルコールを含む混合物を誘導体化して、ペリリルアルコール誘導体を生じさせる工程(ここで、ペリリルアルコール誘導体は、それが該混合物から分離されることを可能にする少なくとも1つの特性を有する);(b)分離のための前記特性を利用して、該混合物からペリリルアルコール誘導体を分離する工程;(c)工程(b)からのペリリルアルコール誘導体から(S)-ペリリルアルコールを遊離させる工程;および(d)工程(c)からの(S)-ペリリルアルコールを単離する工程を含む、(S)-ペリリルアルコールの精製方法を提供する。(S)-ペリリルアルコールは、約98.5%(w/w)を超える純度、約99.0%(w/w)を超える純度または約99.5%(w/w)を超える純度を有する。特定の実施形態においては、該混合物は天然物由来の不純物または他の不純物を更に含む。ペリリルアルコール誘導体の前記特性は、結晶を形成することであることが可能であり、したがって、工程(b)における分離は結晶化によるものでありうる。工程(b)における分離はクロマトグラフィーによるものでありうる。ペリリルアルコール誘導体はペリリルアルコールエステルでありうる。1つの実施形態においては、ペリリルアルコールエステルは安息香酸エステル、例えば3,5-ジニトロ安息香酸エステルである。
【0011】
本発明は(S)-ペリリルアルコールをも含み、ここで、(S)-ペリリルアルコールは、約98.5%(w/w)を超える純度、約99.0%(w/w)を超える純度または約99.5%(w/w)を超える純度を有する。
【0012】
本発明は更に、約98.5%(w/w)を超える純度を有する(S)-ペリリルアルコールを含む医薬組成物を提供する。(S)-ペリリルアルコールは、約98.5%(w/w)を超える純度を有しうる。医薬組成物は約0.1%(w/w)~約100%(w/w)の(S)-ペリリルアルコールを含みうる。また、医薬組成物は化学療法剤および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含みうる。化学療法剤はDNAアルキル化剤、トポイソメラーゼインヒビター、小胞体ストレス誘発剤、白金化合物、代謝拮抗剤、酵素インヒビター、受容体アンタゴニスト、治療用抗体またはワクチンでありうる。特定の実施形態においては、化学療法剤はジメチル-セレコキシブ(DMC)、イリノテカン(CPT-11)、テモゾロミドまたはロリプラムである。医薬組成物は単独で投与されることが可能であり、あるいは放射線照射の前、途中もしくは後、または化学療法剤の投与の前、途中もしくは後に投与されることが可能である。投与経路には、吸入、鼻腔内、経口、静脈内、皮下および筋肉内注射が含まれる。医薬組成物は、鼻腔内スプレー装置、アトマイザー、ネブライザー、定量吸入器(MDI)、加圧用量吸入器、注入器、鼻腔内吸入器、鼻用スプレーボトル、単位用量容器、ポンプ、ドロッパ、スクイーズボトルまたは双方向装置によって鼻腔内に投与されうる。医薬組成物はゲル、軟膏、鼻用乳剤、ローション、クリーム、鼻用タンポンまたは生体接着性ストリップの形態で鼻腔内に投与されうる。
【0013】
本発明は更に、約98.5%(w/w)を超える純度を有する(S)-ペリリルアルコールの治療的有効量を哺乳動物に送達する工程を含む、癌の治療方法を提供する。(S)-ペリリルアルコールは、治療用物質、例えば化学療法剤と混合または共配合されうる。癌は、神経系の腫瘍、例えば神経膠芽腫、または他の腫瘍でありうる。
【0014】
本発明は、鼻腔内投与用に製剤化された(S)-ペリリルアルコールと(S)-ペリリルアルコールの鼻腔内投与のための装置とを含む製造品(例えば、キット)を提供し、ここで、(S)-ペリリルアルコールは、約98.5%(w/w)を超える純度を有する。該装置は鼻腔内スプレー装置、アトマイザー、ネブライザー、定量吸入器(MDI)、加圧用量吸入器、注入器、鼻腔内吸入器、鼻用スプレーボトル、単位用量容器、ポンプ、ドロッパ、スクイーズボトルまたは双方向装置でありうる。該製造品は更に、(S)-ペリリルアルコールが例えば神経膠芽腫のような癌の治療に使用されることを示す印刷物を含みうる。印刷物は更に、(S)-ペリリルアルコールが単独で投与され、あるいは放射線、手術または化学療法剤と組合せて投与されることを示しうる。
【0015】
また、約98.5%(w/w)を超える純度を有する(S)-ペリリルアルコールの有効量と細胞を接触させる工程を含む、細胞の増殖(成長)の抑制方法も提供する。接触はインビトロまたはインビボで生じうる。細胞は神経膠腫細胞、髄膜腫細胞、下垂体腺腫細胞、肺癌細胞、前立腺癌細胞、乳癌細胞、造血癌細胞、黒色腫細胞または卵巣癌細胞でありうる。細胞はテモゾロミド耐性細胞または癌幹細胞でありうる。
【0016】
本発明の組成物および方法は、血管新生を低減または抑制するために使用されうる。本発明の組成物および方法は、血管内皮増殖因子(VEGF)およびインターロイキン8(IL8)(これらに限定されるものではない)を含む血管新生促進性サイトカインの産生を低減または抑制しうる。
【0017】
本発明の組成物および方法は、傍細胞透過性、例えば、内皮細胞または上皮細胞の傍細胞透過性を増加させるために使用されうる。本発明の組成物および方法は血液脳関門の透過性を増加させるために使用されうる。
【0018】
該方法はまた、突然変異したイソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(IDH1)遺伝子を有する患者における神経系の腫瘍を治療することを含み、該方法は、本発明の方法に従い精製されたペリリルアルコール(POH)を含む医薬組成物を患者に投与すること、またはペリリルアルコールカルバマート(ここで、ペリリルアルコールカルバマートは、カルバマート連結基を介して例えばテモゾラミド、ロリプラムまたはジメチルセレコキシブのような治療用物質に共有結合しているペリリルアルコールである)を投与することを含む。中枢神経系の腫瘍は神経膠芽腫または再発性神経膠芽腫でありうる。この治療は化学療法剤のような別の治療用物質と組合されうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1:種々のコホートの無増悪生存期間。NEO100治療の開始の後の最初の6か月以内の患者の無増悪生存期間(PFS-6)が、それぞれn=3の患者を含む4つのコホートに分けて示されている。
図2図2A~2B:放射線撮影応答の例。(図2A)NEO100治療の前および10か月間のNEO100治療の後の患者202のMRIスキャンは部分応答を示している。(図2B)NEO100治療の前および12か月間のNEO100治療の後の患者301のMRIスキャンであり、これはNEO100治療中の再発の欠如を示している。
図3図3A~3C:全生存。(図3A)完了した治療サイクルの数に関連づけることなく、NEO100治療の開始の後の最初の24か月以内の全患者(n=12)の生存率が示されている。12か月(OS-12)および24か月(OS-24)の時点の全生存率が示されている。OS中央値は15か月において示される。1名の患者(識別番号401)は、追跡調査から外されたため、4か月の時点(目盛マークで表示されている)で試験が打ち切られたことに注意されたい。(図3B)少なくとも6サイクルを完了した患者の群(n=4;>5サイクルとして表示されている)および5サイクル未満で完了した患者の群(n=7;<5サイクル)に分類して、NEO100治療の開始の後の最初の24か月以内の患者の生存率が示されている。患者401の状態は4サイクルの完了後に進行性疾患のため追跡調査から外されたため、この比較には含まれなかった。(図3C)腫瘍組織におけるIDH1の状態ごとに分類して、NEO100治療の開始の後の最初の24か月以内の患者の生存率が示されている。突然変異IDH1を有する患者5名中4名(80%)は少なくとも24カ月生存した。野生型IDH1を有する患者6名は18か月までにそれらの疾患で死亡した。P=.018(ログランク検定)。患者401(IDH1野生型(「WTまたはwt」))はs(目盛マークで表示されている)で試験が打ち切られた。
図4図4:患者の血漿中のペリル酸濃度。全ての患者の血漿中のペリル酸濃度を測定した(各グラフにおける四角の枠内に患者識別番号が示されている)。サイクル1の第1日、サイクル1の第8日およびサイクル2の第1日に、NEO100吸入の完了後の種々の時点で、採血を行った。右側の枠内は、これら3つの測定値のそれぞれの、各コホートに関するC-max平均を示す。各平均は、患者401からの1つの欠落データセット以外は、3名の患者から導き出された。
図5図5:NEO100投与の後の全生存期間 - NEO100治療開始からの月数。
【0020】
?発明の詳細な説明
略語:cGMP:現行適正製造基準;CNS:中枢神経系;GBM:神経膠芽腫(旧名:多形神経膠芽腫);IDH1:イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1;OS:全生存期間;MGMT:O6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼ;PFS:無増悪生存期間;WHO:世界保健機関;NEO100 - 本明細書ならびに米国特許第8,50,773号、第9,133,085号、第9,480,659号、第9,498,448号、第9,700,524号および第10,4757,618号(それらの全体を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている方法および材料に従い精製されたペリリルアルコールであり、NEO100は、前記方法によって精製された(S)-ペリリルアルコールであり、約99.0%(w/w)を超える純度を有する;IDH1:イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1;POHはペリリルアルコールと称され、p-メタ1,7-ジエン-6-オールと称される;ペリリルアルコールコンジュゲートを記載している米国特許は第8,916,545号、第9,499,461号、第9,580,372号、第9,663,428号および第10,092,562号であり、それらの全体を参照により本明細書に組み入れることとする;IDH1;mut. - 突然変異体;WTまたはw.t.は野生型である。
【0021】
本発明は、ペリリルアルコールをその異性体(エナンチオマーを含む)および他の不純物(ペリリルアルコールが天然物および/または合成起源から製造される場合にペリリルアルコールに典型的に付随するもの)から精製する方法を提供する。ペリリルアルコールの精製においては、ペリリルアルコールを誘導体化して、例えばその3,5-ジニトロ安息香酸エステルのような結晶性誘導体を生成させることが可能である。次いで、例えば通常の結晶化または分取クロマトグラフィーのような適切な技術によって、該ペリリルアルコール誘導体を、その付随混入物(該混入物も誘導体として存在するかどうかには無関係である)から分離することが可能である。次いで、精製されたペリリルアルコール誘導体を、約98.5%(w/w)を超える純度を有するペリリルアルコールに変換することが可能である。精製されたペリリルアルコールは単独で対象に投与されることが可能であり、または他の物質と一緒に共投与されうる。例えば、精製されたペリリルアルコールは、放射線または化学療法に対して癌患者を感作させるために使用されうる。商業的に入手可能な(S)-ペリリルアルコールと比較して、該精製(S)-ペリリルアルコールは、細胞アッセイおよび他の治療試験モデルにおいて、不相応に増強した活性を示す。
【0022】
本発明はモノテルペンもしくはセスキテルペンまたはモノテルペン誘導体の精製形態の製造方法を提供する。モノテルペン(またはセスキテルペン)は以下の工程によって精製される:(a)モノテルペン(またはセスキテルペン)を含む混合物を誘導体化して、モノテルペン(またはセスキテルペン)誘導体を生じさせる工程[ここで、モノテルペン(またはセスキテルペン)誘導体は、それが該混合物から分離されることを可能にする少なくとも1つの特性を有する];(b)分離のための該特性を利用して、該混合物からモノテルペン(またはセスキテルペン)誘導体を分離する工程;(c)工程(b)からのモノテルペン(またはセスキテルペン)誘導体からモノテルペン(またはセスキテルペン)を遊離させる工程;および(d)工程(c)からのモノテルペン(またはセスキテルペン)を単離する工程。精製されたモノテルペン(またはセスキテルペン)は、約98.5%(w/w)、約99.0%(w/w)または約99.5%(w/w)を超える純度を有しうる。特定の実施形態においては、該混合物は天然物由来の不純物または他の不純物を更に含む。(S)-ペリリルアルコールは、約98.5%(w/w)を超える純度、約99.0%(w/w)を超える純度または約99.5%(w/w)を超える純度を有する。
【0023】
モノテルペン(またはセスキテルペン)の前記特性は、結晶を形成することであることが可能であり、したがって、工程(b)における分離は結晶化によるものでありうる。モノテルペン(またはセスキテルペン)は以下の工程によって精製される:(a)モノテルペン(またはセスキテルペン)を誘導体化して、モノテルペン(またはセスキテルペン)誘導体を生じさせる工程;(b)モノテルペン(またはセスキテルペン)誘導体を結晶化する工程;(c)工程(b)のモノテルペン(またはセスキテルペン)誘導体結晶を分離する工程;(d)分離されたモノテルペン(またはセスキテルペン)誘導体をモノテルペン(またはセスキテルペン)に変換する工程;および(e)モノテルペン(またはセスキテルペン)を単離する工程。
【0024】
混合物からのモノテルペン(またはセスキテルペン)の分離はまた、当技術分野で公知の他の適切な分離技術、例えばクロマトグラフィー、吸着、遠心分離、デカンテーション、蒸留、電気泳動、蒸発、抽出、浮選、濾過、沈殿、沈降(これらに限定されるものではない)によるものでありうる。URL:http://en.wikipedia.org/wiki/Separation_of_mixturesから2010年2月11日付で検索されたWikipedia--Separation Process。混合物から誘導体を分離するのに有用な、モノテルペン(またはセスキテルペン)誘導体の特性は、混合物中のその他の成分の物理化学的特性とは異なる、その物理化学的特性のいずれかでありうる。物理化学的特性には、溶解度、極性、分配係数、アフィニティ、サイズ、流体力学的直径および電荷が含まれるが、これらに限定されるものではない。モノテルペン(またはセスキテルペン)誘導体が調製されるのは、該誘導体が、その異性体、構造変異体または混入物(出発物質中に存在するもの)の特性とは異なる少なくとも1つの特性を有する場合でありうる。クロマトグラフィーは、ガスクロマトグラフィー(GC)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、アフィニティクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーおよび逆相クロマトグラフィー(これらに限定されるものではない)を含む任意の適切な分取クロマトグラフィーでありうる。
【0025】
1つの実施形態においては、モノテルペンは(S)-ペリリルアルコールであることが可能であり、誘導体化反応はエステル化を含みうる。例えば、(S)-ペリリルアルコールは、3,5-ジニトロ安息香酸エステル誘導体を使用して製造されうる。
【0026】
本発明は更に、約98.5%(w/w)を超える純度、約99.0%(w/w)を超える純度または約99.5%(w/w)を超える純度を有するモノテルペン(またはセスキテルペン)組成物を提供する。
【0027】
精製されたモノテルペン(またはセスキテルペン)は医薬組成物に製剤化されることが可能であり、ここで、モノテルペン(またはセスキテルペン)は、約0.01%(w/w)~約100%(w/w)、約0.1%(w/w)~約80%(w/w)、約1%(w/w)~約70%(w/w)、約10%(w/w)~約60%(w/w)、または約0.1%(w/w)~約20%(w/w)の範囲の量で存在する。また、医薬組成物は例えば化学療法剤のような治療用物質を含有しうる。治療用物質はペリリルアルコールに溶解されうる。本発明の組成物は、例えば癌のような疾患を治療するために、単独で投与されることが可能であり、あるいは放射線または別の物質(例えば、化学療法剤)と一緒に共投与されることが可能である。治療は連続的であることが可能であり、モノテルペン(またはセスキテルペン)は他の物質の投与の前または後に投与されうる。あるいは物質は同時に投与されうる。投与経路は様々であることが可能であり、吸入、鼻腔内、経口、経皮、静脈内、皮下または筋肉内注射を含みうる。
【0028】
本発明はまた、本発明の方法によって製造された精製モノテルペン(またはセスキテルペン)の治療的有効量を患者に送達する工程を含む、例えば癌のような疾患の治療方法を提供する。
【0029】
本発明の組成物は1以上のタイプのモノテルペン(またはセスキテルペン)を含有しうる。モノテルペンには、2つのイソプレン単位からなる、分子式C1016を有するテルペンが含まれる。モノテルペンは直鎖状(非環式)であることが可能であり、または環を含有することが可能である。モノテルペンの酸化または転位のような生化学的修飾によって産生されるモノテルペノイド、およびモノテルペンまたはモノテルペノイドの薬学的に許容される塩も、本発明に含まれる。モノテルペンおよびモノテルペノイドの例には、ペリリルアルコール(S(-))およびR(+))、ピロリン酸ゲラニル、オシメン、ミルセン、ゲラニオール、シトラール、シトロネロール、シトロネラール、リナロール、ピネン、テルピネオール、テルピネン、リモネン、テルピネン、フェランドレン、テルピノレン、テルピネン-4-オール(またはチャノキ油)、ピネン、テルピネオール、テルピネン;メントール、チモールおよびカルボクロールのような単環式テルペンから誘導されるp-シメンのようなテルペノイド;樟脳、ボルネオールおよびユーカリプトールのような二環式モノテルペノイドが含まれる。
【0030】
モノテルペンは炭素骨格の構造によって区別可能であり、非環式モノテルペン[例えば、ミルセン、(Z)-および(E)-オシメン、リナロール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、ミルセノール、ゲラニアール、シトラールa、ネラール、シトラールb、シトロネラールなど]、単環式モノテルペン(例えば、リモネン、テルピネン、フェランドレン、テルピノレン、メントール、カルベオールなど)、二環式モノテルペン(例えば、ピネン、ミルテノール、ミルテナール、ベルバノール、ベルバノン、ピノカルベオール、カレン、サビネン、カンフェン、ツジェンなど)および三環式モノテルペン(例えば、トリシクレン)に分類されうる。Encyclopedia of Chemical Technology,Fourth Edition,Volume 23,p.834-835を参照されたい。
【0031】
本発明のセスキテルペンには、3つのイソプレン単位からなる、分子式C1524を有するテルペンが含まれる。セスキテルペンは直鎖状(非環式)であることが可能であり、または環を含有しうる。セスキテルペンの酸化または転位のような生化学的修飾によって産生されるセスキテルペノイドも本発明に含まれる。セスキテルペンの例には、ファルネソール、ファルネサール、ファルネシル酸およびネロリドールが含まれる。
【0032】
精製されたモノテルペン(またはセスキテルペン)は、誘導体化モノテルペン(またはセスキテルペン)を使用して製造可能であり、これは、その付随混入物(例えば、その異性体)から、結晶化によって分離されうる。結晶化および精製はモノテルペン(またはセスキテルペン)のキラル純度をも増加させうる。
【0033】
モノテルペン(またはセスキテルペン)の誘導体には、モノテルペン(またはセスキテルペン)のエステル、アルコール、アルデヒドおよびケトンが含まれるが、これらに限定されるものではない。モノテルペン(またはセスキテルペン)アルコールはエステル、アルデヒドまたは酸に誘導体化されうる。モノテルペン(またはセスキテルペン)の誘導体は、当業者に公知の化学反応によりモノテルペン(またはセスキテルペン)を再生させるために使用されうる。例えば、モノテルペン(またはセスキテルペン)のエステルを加水分解して、モノテルペン(またはセスキテルペン)を得ることが可能である。
【0034】
1つの実施形態においては、モノテルペン(またはセスキテルペン)は、モノテルペン(またはセスキテルペン)のエステルを使用して精製される。精製プロセスは以下の工程を含みうる:(a)モノテルペン(またはセスキテルペン)を誘導体化して、モノテルペン(またはセスキテルペン)のエステルを生じさせる工程;(b)モノテルペン(またはセスキテルペンのエステルを結晶化する工程;(c)工程(b)のモノテルペン(またはセスキテルペン)のエステルの結晶を分離する工程;(d)モノテルペン(またはセスキテルペン)のエステルをモノテルペン(またはセスキテルペン)に変換する工程;および(e)モノテルペン(またはセスキテルペン)を単離する工程。
【0035】
本発明のモノテルペン(またはセスキテルペン)アルコールのエステルは無機酸酸または有機酸から誘導されうる。無機酸には、リン酸、硫酸および硝酸が含まれるが、これらに限定されるものではない。有機酸には、カルボン酸、例えば安息香酸、脂肪酸、酢酸およびプロピオン酸が含まれるが、これらに限定されるものではない。モノテルペン(またはセスキテルペン)アルコールのエステルの例には、カルボン酸エステル[例えば、安息香酸エステル、脂肪酸エステル(例えば、パルミチン酸エステルおよびリノール酸エステル)、酢酸エステル、プロピオン酸エステル(またはプロパン酸エステル)およびギ酸エステル]、ホスファート、スルファートおよびカルバマート(例えば、N,N-ジメチルアミノカルボニル)が含まれるが、これらに限定されるものではない。Wikipedia--Ester;URL:http://en.wikipedia.org/wiki/Ester(11/11/2021)から検索。
【0036】
1つの実施形態においては、誘導体は、安息香酸エステル、限定的なものではないが例えば3,5-ジニトロ安息香酸エステル、4-ニトロ安息香酸エステル、3-ニトロ安息香酸エステル、4-クロロ安息香酸エステル、3,4,5-トリメトキシ安息香酸エステルおよび4-メトキシ安息香酸エステル、ヒドロキシ安息香酸のエステル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、ヘプチルおよびベンジルエステルである。(例えば、Wikipedia--Benzoate ester http://commons.wikimedia.org/wiki/Category:Benzoate_estersを参照されたい)。
【0037】
本発明において使用されうるモノテルペンの具体例として、ペリリルアルコール(一般にPOHと略称されえる)が挙げられる。本発明のペリリルアルコール組成物は(S)-ペリリルアルコール、(R)-ペリリルアルコール、または(S)-ペリリルアルコールと(R)-ペリリルアルコールとの混合物を含有しうる。
【0038】
ペリリルアルコールは以下の工程によって精製されうる:(a)ペリリルアルコールを含む混合物を誘導体化して、ペリリルアルコール誘導体を生じさせる工程(ここで、ペリリルアルコール誘導体は、それが該混合物から分離されることを可能にする少なくとも1つの特性を有する);(b)分離のための前記特性を利用して、該混合物からペリリルアルコール誘導体を分離する工程;(c)工程(b)からのペリリルアルコール誘導体からペリリルアルコールを遊離させる工程;および(d)工程(c)からのペリリルアルコールを単離する工程。特定の実施形態においては、該混合物は天然物由来の不純物または他の不純物を更に含む。
【0039】
ペリリルアルコールは、ペリリルアルコール誘導体を使用する本発明の方法を用いて精製されうる。誘導体には、ペリリルアルコールエステル、ジヒドロペリル酸およびペリル酸(perillic acid;ペリリル酸)が含まれる。ペリリルアルコールの誘導体には、その酸化誘導体および求核/求電子付加誘導体も含まれうる。米国特許公開第20090031455号、米国特許第6,133,324号および第3,957,856号。ペリリルアルコールの誘導体の多数の例が化学文献に報告されている(CAS Scifinder検索出力ファイル;2010年1月25日付で取得)。
【0040】
特定の例においては、ペリリルアルコールは、(a)ペリリルアルコールを誘導体化して、ペリリルアルコールエステルを生じさせる工程;(b)ペリリルアルコールエステルを結晶化する工程;(c)工程(b)のペリリルアルコールエステル結晶を(例えば、母液から)分離する工程;(d)分離されたペリリルアルコールエステルをペリリルアルコールに変換する工程;および(e)ペリリルアルコールを単離する工程によって精製される。ペリリルアルコールの誘導体は、当業者に公知の化学反応によって、ペリリルアルコールを再生させるために使用されうる。例えば、ペリリルアルコールのエステル、例えば3,5-ジニトロ安息香酸エステルを加水分解して、ペリリルアルコールを得ることが可能である。
【0041】
特定の実施形態においては、ペリリルアルコールのエステルまたはエーテルは、ペリリルアルコールを酸塩化物または塩化アルキル(それらの化学構造を以下に示す)と反応させることによって製造されうる。
【化1】
【0042】
エステル化反応のためには、ペリリルアルコールと酸塩化物(または塩化アルキル)とのモル比は、約1:1~約1:2、約1:1~約1:1.5の範囲、例えば、約1:1.05、約1:1.1、約1:1.2、約1:1.3、または約1:1.4でありうる。適切な反応溶媒には、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルおよびメチル-t-ブチルエーテルが含まれるが、これらに限定されるものではない。反応は、約-5℃~約50℃、または約-5℃~25℃の範囲の温度で行われうる。反応に含まれうる適切な塩基には、有機塩基、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、N,N’-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシドおよびカリウム-t-ブトキシドが含まれるが、これらに限定されるものではない。このようにして得られるエステルとしては、3,5-ジニトロ安息香酸エステル、4-ニトロ安息香酸エステル、3-ニトロ安息香酸エステル、4-クロロ安息香酸エステル、3,4,5-トリメトキシ安息香酸エステル、4-メトキシ安息香酸エステルおよびトリフェニルメチルエステルが挙げられる。化学反応の詳細は以下の実施例に記載されている。
【0043】
結晶化可能なモノテルペン(またはセスキテルペン)誘導体は結晶化または分取クロマトグラフィーによって精製されうる。結晶化は液体供給流から生成物を、しばしば、非常に純粋な形態で分離し、これは、供給流を冷却すること、または所望の生成物の溶解度を低下させて結晶を形成する沈殿剤を添加することにより行われる。結晶化が生じるためには、溶液が過飽和でなければならない。これは、溶液が、それが平衡状態(飽和溶液)で含有する溶解溶質よりも多くの溶解溶質を含有する必要があることを意味する。これは、例えば以下のもののような種々の方法によって達成されうる:1)溶液冷却;2)溶質の溶解度を低下させるための第2の溶媒の添加[逆溶媒またはドローンアウト(drown-out)として公知の技術];3)化学反応;および4)pHの変化。また、溶媒蒸発、球形晶析、分別結晶化、分別凍結法および他の適切な方法も使用されうる。Mersmann,A.Crystallization Technology Handbook.Edition 2(2001),CRC Press発行;Myersonら,Crystallization As a Separations Process(ACS Symposium Series)(1990),American Chemical Society発行。
【0044】
特定の例においては、ペリリルアルコールの3,5-ジニトロ安息香酸エステルの結晶化は以下のとおりに行われる。3,5-ジニトロ安息香酸エステルを含有する水層をジクロロメタンで抽出し、水で洗浄する。3,5-ジニトロ安息香酸エステルを含有する有機層を硫酸ナトリウムで乾燥する。次いで有機層を濾過し、濃縮する。得られた残渣を最終的にジイソプロピルエーテル母液から結晶化する。母液は、結晶固体の上にある液体部分であり、したがって、結晶から分離されうる。母液からの結晶の分離は、濾過(加圧および/または真空の補助の存在下または非存在下)、遠心分離およびデカンテーション(これらに限定されるものではない)を含むが任意の適切な技術を用いて行われうる。
【0045】
ペリリルアルコールの安息香酸エステルの結晶化のための適切な溶媒には、以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:ケトン溶媒(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、n-ブタノンおよびt-ブチルケトン);ニトリル溶媒(例えば、アセトニトリルおよびプロピオニトリル);ハロゲン化溶媒(例えば、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタンおよびクロロホルム);エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピルおよび酢酸t-ブチル);エーテル(例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、テトラヒドロフランおよび1,4-ジオキサン);炭化水素溶媒(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンおよびキシレン);およびそれらの混合物。1つの実施形態においては、溶媒はメチル-t-ブチルエーテルを含有する。メチル-t-ブチルエーテル(7~10容量)への安息香酸エステルの溶解は、所望の濃度を得るために、必要に応じて高温で行われうる。更に、着色不純物を除去するために、または重金属が存在する場合にはその含有量を減少させるために、または安息香酸エステルを含有する溶液から異物を除去するために、活性炭処理が行われうる。得られた反応混合物からの結晶化は、反応混合物を約25℃~約0℃の低温に冷却することによって行われうる。結晶の分離は、溶媒を除去し、次いで反応混合物を冷却することによって行われうる。溶媒は、ブチ・ロタベイパー(Buchi rotavapor)のようなロータリーエバポレーターを真空下で使用する蒸発を含む適切な技術によって除去されうる。結晶は、重力濾過または吸引濾過のような任意の通常の技術によって反応混合物から単離されうる。1つの実施形態においては、安息香酸エステルは濾過によって単離可能であり、所望により、更に溶媒で洗浄されうる。安息香酸エステルは、箱型乾燥機、真空乾燥機または空気オーブンにおける乾燥のような通常の技術のいずれかによって乾燥されうる。乾燥は真空オーブン内で約30℃~約60℃の温度で行われうる。
【0046】
結晶化可能なモノテルペン(またはセスキテルペン)誘導体の純度、したがってモノテルペン(またはセスキテルペン)の純度は、再結晶によって更に改善されうる。単一溶媒再結晶、多溶媒再結晶、熱濾過再結晶および当技術分野で周知の他の適切な再結晶技術のような種々の技術が用いられうる。Wikipedia--Recrystallization;URL:http://en.wikipedia.org/wiki/Recrystallization(chemistry)から検索。
【0047】
例えば、米国特許第Re.32,241号は、成分を含有する材料が流下するにつれて冷却表面上で結晶化する成分を有する装置を記載している。米国特許第4,666,456号は、混合物が冷却セクションのカスケードを通して供給される、液体混合物からの化合物の連続的部分結晶化を記載している。米国特許第米国特許第5,127,921号は、結晶および母液還流材料の量を調節することによって還流比条件を制御することを含む多段階再結晶法を提供している。
【0048】
前記のプロセスによって製造されるペリリルアルコールの純度は約98.5%(w/w)超[すなわち、約98.5%(w/w)を超える]、約99%(w/w)超、約99.5%(w/w)超または約99.9%(w/w)超でありうる。
【0049】
特定の実施形態において、本発明の化合物は1以上のキラル中心を含有しうる。「純度」なる語はキラル純度をも含みうる。モノテルペン(またはセスキテルペン)の立体異性体の純度は立体異性体の化学純度および/またはキラル純度を意味する。例えば、(S)-ペリリルアルコールの純度は(S)-ペリリルアルコールの化学純度およびキラル純度の両方を含みうる。モノテルペン(またはセスキテルペン)の立体異性体のキラル純度は約98.5%(w/w)超、約99%(w/w)超、約99.5%(w/w)超または約99.9%(w/w)超でありうる。
【0050】
(S)-ペリリルアルコールのキラル純度は約98.5%(w/w)超、約99%(w/w)超、約99.5%(w/w)超または約99.9%(w/w)超でありうる。特定の実施形態においては、本発明の(S)-ペリリルアルコールの比旋光度は、MeOH中で1g/mlのサンプル濃度で22℃で比旋光度が測定された場合、-87.95度~-91.9度の範囲でありうる[(S)-ペリリルアルコールの比旋光度の例に関しては表1を参照されたい]。
【表1】
【0051】
モノテルペン(またはセスキテルペン)の純度はガスクロマトグラフィー(GC)または高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析されうる。モノテルペン(またはセスキテルペン)の純度をアッセイするための、および不純物の存在を確認するための他の技術には、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析(MS)、GC-MS、赤外分光法(IR)および薄層クロマトグラフィー(TLC)が含まれるが、これらに限定されるものではない。WHO Specifications and Evaluations for Public Health Pesticides:Malathion,World Health Organization,2003。キラル純度はキラルGCまたは旋光度の測定によって評価されうる。
【0052】
あるいは、モノテルペン(またはセスキテルペン)は、誘導体の結晶化以外の方法によって精製されうる。例えば、モノテルペン(またはセスキテルペン)誘導体が調製されるのは、該誘導体が、その異性体、構造変異体または混入物(出発物質中に存在するもの)の特性とは異なる物理化学的特性(例えば、溶解度または極性)を有する場合でありうる。したがって、モノテルペン(またはセスキテルペン)誘導体は、当技術分野で公知の適切な分離技術、例えば分取クロマトグラフィーによって、モノテルペン(またはセスキテルペン)から分離されうる。
【0053】
精製されたモノテルペン(またはセスキテルペン)は貯蔵後も安定でありうる。例えば、約5℃で少なくとも3か月間貯蔵した後、本組成物は約98.5%(w/w)超、約99%(w/w)超、約99.5%(w/w)超または約99.9%(w/w)超のモノテルペン(またはセスキテルペン)を含有しうる。25℃および相対湿度60%で少なくとも3か月間貯蔵した後、本組成物は約98.5%(w/w)超、約99%(w/w)超、約99.5%(w/w)超または約99.9%(w/w)超のモノテルペン(またはセスキテルペン)を含有しうる。
【0054】
本発明はまた、疾患、例えば癌または他の神経系障害を治療するための、モノテルペン(またはセスキテルペン)の使用方法を提供する。モノテルペン(またはセスキテルペン)は、単独で、または放射線、手術もしくは化学療法剤と組合せて投与されうる。また、モノテルペンまたはセスキテルペンは抗ウイルス剤、抗炎症剤または抗生物質と共投与されうる。該物質は同時または連続的に投与されうる。モノテルペン(またはセスキテルペン)はその他の活性物質の投与の前、途中または後に投与されうる。
【0055】
モノテルペン(またはセスキテルペン)は、治療用物質を病変部位に送達するための溶媒または浸透促進剤としても使用されうる。例えば、モノテルペン(またはセスキテルペン)は、化学療法剤を腫瘍細胞に送達するための溶媒または浸透促進剤として使用されうる。モノテルペンまたはセスキテルペンは、例えば鼻腔内のような任意の適切な経路で送達されうるワクチンのための溶媒としても使用されうる。
【0056】
本発明はまた、モノテルペンまたはセスキテルペンの誘導体、例えばペリリルアルコールカルバマート誘導体の使用を提供する。例えば、ペリリルアルコール誘導体はペリリルアルコールカルバマートでありうる。ペリリルアルコール誘導体は、例えば化学療法剤のような治療用物質にコンジュゲート化(結合)されたペリリルアルコールでありうる。モノテルペン(またはセスキテルペン)誘導体は医薬組成物に製剤化されることが可能であり、ここで、モノテルペン(またはセスキテルペン)誘導体は約0.01%(w/w)~約100%(w/w)、0.1%(w/w)~約80%(w/w)、約1%(w/w)~約70%(w/w)、約10%(w/w)~約60%(w/w)、または約0.1%(w/w)~約20%(w/w)の範囲の量で存在する。本組成物は、例えば癌のような疾患を治療するために、単独で投与されることが可能であり、または放射線もしくは別の物質(例えば、化学療法剤)と一緒に共投与されうる。治療は連続的であることが可能であり、この場合、モノテルペン(またはセスキテルペン)誘導体は他の物質の投与の前または後に投与される。例えば、ペリリルアルコールカルバマートは、放射線または化学療法に対して癌患者を感作するために使用されうる。あるいは、物質は同時に投与されうる。投与経路は様々であることが可能であり、吸入、鼻腔内、経口、経皮、静脈内、皮下または筋肉内注射を含みうる。本発明はまた、モノテルペン(またはセスキテルペン)誘導体の治療的有効量を患者に送達する工程を含む、例えば癌のような疾患の治療方法を提供する。
【0057】
モノテルペン(またはセスキテルペン)の誘導体には、モノテルペン(またはセスキテルペン)のカルバマート、エステル、エーテル、アルコールおよびアルデヒドが含まれるが、これらに限定されるものではない。モノテルペン(またはセスキテルペン)アルコールはカルバマート、エステル、エーテル、アルデヒドまたは酸に誘導体化されうる。カルバマートは、酸素と窒素とに隣接するカルボニル基に基づく官能基
【化2】
【0058】
を共有する化合物のクラスを意味する。R、RおよびRは、置換されうる例えばアルキル、アリールなどのような基でありうる。窒素および酸素上のR基は環を形成していてもよい。R-OHはモノテルペンでありうる(例えば、POH)。R-N-R部分は治療用物質でありうる。
【0059】
カルバマートは、イソシアネートとアルコールとを反応させることによって、またはクロロホルマートをアミンと反応させることによって合成されうる。カルバマートは、ホスゲンまたはホスゲン等価体を利用する反応によって合成されうる。例えば、カルバマートは、ホスゲンガス、ジホスゲンまたは固体ホスゲン前駆体、例えばトリホスゲンを、2つのアミン、またはアミンおよびアルコールと反応させることによって合成されうる。カルバマート(ウレタンとしても公知である)は尿素中間体とアルコールとの反応からも製造されうる。炭酸ジメチルおよび炭酸ジフェニルもカルバマートの製造に使用される。あるいは、カルバマートは、アルコールおよび/またはアミン前駆体と、エステル置換ジアリールカーボナート、例えばビスメチルサリチルカーボナート(BMSC)との反応によって合成されうる。米国特許公開第20100113819号。カルバマートは以下のアプローチによって合成されうる。
【化3】
【0060】
適切な反応溶媒には、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、アセトンおよびジイソプロピルエーテルが含まれるが、これらに限定されるものではない。反応は、約-70℃~約80℃、または約-65℃~約50℃の範囲の温度で行われうる。ペリリルクロロホルマートと基質R-NHとのモル比は、約1:1~約2:1、約1:1~約1.5:1、約2:1~約1:1、または約1.05:1~約1.1:1の範囲でありうる。適切な塩基には、有機塩基、例えばトリエチルアミン、炭酸カリウム、N,N’-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルリチウムおよびカリウム-t-ブトキシドが含まれるが、これらに限定されるものではない。あるいは、カルバマートは以下のアプローチによって合成されうる。
【化4】
【0061】
適切な反応溶媒には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トルエン、ジイソプロピルエーテルおよびテトラヒドロフランが含まれるが、これらに限定されるものではない。反応は、約25℃~約110℃、もしくは約30℃~約80℃の範囲の温度、または約50℃の温度で行われうる。ペリリルアルコールと基質R-N=C=Oとのモル比は、約1:1~約2:1、約1:1~約1.5:1、約2:1~約1:1、または約1.05:1~約1.1:1の範囲でありうる。
【0062】
本発明のモノテルペン(またはセスキテルペン)アルコールのエステルは無機酸または有機酸から誘導されうる。無機酸には、リン酸、硫酸および硝酸が含まれるが、これらに限定されるものではない。有機酸には、カルボン酸、例えば安息香酸、脂肪酸、酢酸およびプロピオン酸、ならびに少なくとも1つのカルボン酸官能基を含有する任意の治療用物質が含まれるが、これらに限定されるものではない。モノテルペン(またはセスキテルペン)アルコールのエステルの例には、カルボン酸エステル[例えば、安息香酸エステル、脂肪酸エステル(例えば、パルミチン酸エステル、リノール酸エステル、ステアリン酸エステル、ブチリルエステルおよびオレイン酸エステル)、アセタート、プロピオナート(またはプロパノアート)およびホルマート]、ホスファート、スルファートおよびカルバマート(例えば、N,N-ジメチルアミノカルボニル)が含まれるが、これらに限定されるものではない。Wikipedia-Ester;URL:http://en.wikipedia.org/wiki/Esterから検索。
【0063】
本発明において使用されうるモノテルペンの具体例として、ペリリルアルコール(一般にPOHと略称される)が挙げられる。ペリリルアルコールの誘導体には、ペリリルアルコールカルバマート、ペリリルアルコールエステル、ペリリルアルデヒド、ジヒドロペリル酸、ぺリル酸、ペリリルアルデヒド誘導体、ジヒドロペリル酸エステルおよびぺリル酸が含まれる。ペリリルアルコールの誘導体には、その酸化誘導体および求核/求電子付加誘導体も含まれうる。米国特許公開第20090031455号、米国特許第6,133,324号および第3,957,856号。ペリリルアルコールの誘導体の多数の例が化学文献に報告されている[Appendix A:CAS Scifinder検索出力ファイル(2010年1月25日付で取得)を参照されたい]。
【0064】
特定の実施形態においては、POHカルバマートは、ペリリルクロロホルマートの第1反応物を、第2反応物、例えばジメチルセロコキシブ(DMC)、テモゾロミド(TMZ)およびロリプラムと反応させる工程を含むプロセスによって合成される。反応は、テトラヒドロフラン、および塩基、例えばn-ブチルリチウムの存在下で行われうる。ペリリルクロロホルマートは、POHをホスゲンと反応させることによって製造されうる。例えば、カルバマート結合によりテモゾロミドにコンジュゲート化されたPOHは、テモゾロミドを塩化オキサリルと反応させ、次いでペリリルアルコールと反応させることによって合成されうる。反応は1,2-ジクロロエタンの存在下で行われうる。
【0065】
本発明に含まれるPOHカルバマートには、4-(ビス-N,N’-4-イソプロペニルシクロヘキサ-1-エニルメチルオキシカルボニル[5-(2,5-ジメチルフェニル)-3-トリフルオロメチルピラゾール-1-イル]ベンゼンスルホンアミド、4-(3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシフェニル)-2-オキソ-ピロリジン-1-カルボン酸4-イソプロペニルシクロヘキサ-1-エニルメチルエステル、および(3-メチル4-オキソ-3,4-ジヒドロイミダゾ[5,1-d][1,2,3,5]テトラジン-8-カルボニル)カルバミン酸-4-イソプロペニルシクロヘキサ-1-エニルメチルエステルが含まれるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物を与える化学反応の詳細は後記の実施例に記載されている。
【0066】
モノテルペン(またはセスキテルペン)またはそのペリリルアルコールカルバマートは、神経系癌、例えば悪性神経膠腫(例えば、星状細胞腫、未分化星状細胞腫、多形神経膠芽腫)、網膜芽細胞腫、毛様細胞性星状細胞腫(グレードI)、髄膜腫、転移性脳腫瘍、神経芽腫、下垂体腺腫、頭蓋底髄膜腫および頭蓋底癌の治療に使用されうる。本明細書中で用いる「神経系腫瘍」なる語は、対象が神経系細胞の悪性増殖を有する状態を意味する。
【0067】
このモノテルペン(またはセスキテルペン)またはペリリルアルコールカルバマート組成物によって治療されうる癌には、以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:肺癌、耳鼻咽喉癌、白血病、結腸癌、黒色腫、膵臓癌、乳癌、前立腺癌、乳房癌、造血癌、卵巣癌、基底細胞癌、胆道癌、膀胱癌、骨癌、乳癌、子宮頸癌、絨毛癌、結腸および直腸癌、結合組織癌、消化器系癌、子宮内膜癌、食道癌、眼癌、頭頸部癌、胃癌、上皮内腫瘍、腎臓癌、喉頭癌、白血病、例えば急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、肝臓癌、リンパ腫、例えばホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫、骨髄腫、線維腫、神経芽腫、口腔癌(例えば、唇、舌、口および咽頭)、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸癌、腎臓癌、呼吸器系癌、肉腫、皮膚癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、子宮癌、泌尿器系癌、ならびに他の癌腫および肉腫。米国特許第7,601,355号。
【0068】
本発明はまた、原発性変性神経障害、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、精神障害、精神病および鬱病(これらに限定されるものではない)を含むCNS障害の治療方法を提供する。治療は、精製されたモノテルペンまたはセスキテルペンを、単独で、またはパーキンソン病、アルツハイマー病もしくは精神障害の治療に使用される現在の医薬と組合せて使用することからなりうる。例えば、精製されたモノテルペンまたはセスキテルペンは、パーキンソン病、アルツハイマー病または精神障害の治療に使用される現在の医薬の吸入のための溶媒として使用されうる。
【0069】
モノテルペン、セスキテルペンまたはペリリルアルコールカルバマートは、放射線療法と組合せて使用されうる。1つの実施形態において、本発明は、腫瘍細胞、例えば悪性神経膠腫細胞を放射線で処置(治療)する方法を提供し、ここで、細胞を、例えばペリリルアルコールのようなモノテルペンの有効量で処置し、次いで放射線に曝露する。モノテルペン処置は放射線照射の前、途中および/または後に行われうる。例えば、モノテルペンまたはセスキテルペンは放射線療法の開始の1週間前から連続的に投与可能であり、放射線療法の完了後の2週間にわたって継続して投与されうる。米国特許第5,587,402号および第5,602,184号。
【0070】
このモノテルペン、セスキテルペンまたはペリリルアルコールカルバマートは、化学療法剤、免疫療法剤および抗体(例えば、モノクローナル抗体)(これらに限定されるものではない)を包含する少なくとも1つの治療用物質と組合せて使用されうる。精製されたモノテルペンまたはセスキテルペンと組合せて使用されうる抗癌剤は癌細胞または対象に対する以下の効果のうちの1以上を有しうる:細胞死、細胞増殖の低減、細胞数の減少、細胞成長の抑制、アポトーシス、壊死、分裂期細胞死、細胞周期停止、細胞サイズの減少、細胞分裂の減少、細胞生存の低下、細胞代謝の低下、細胞損傷または細胞毒性のマーカー、細胞損傷または細胞毒性の間接的指標、例えば腫瘍縮小、対象の生存率の改善、または、望ましくない、望まない又は異常な細胞増殖に関連するマーカーの消失。米国特許公開第20080275057号。
【0071】
また、本発明には、モノテルペン(またはセスキテルペン)またはペリリルアルコールカルバマートと、少なくとも1つの治療用物質、例えば化学療法剤(これに限定されるものではない)とを含む混合物および/または共製剤も含まれる。
【0072】
化学療法剤には、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼインヒビター、小胞体ストレス誘発剤、白金化合物、代謝拮抗剤、ビンカルカロイド、タキサン、エポチロン、酵素インヒビター、受容体アンタゴニスト、治療用抗体、チロシンキナーゼインヒビター、ホウ素放射線増感剤(すなわち、ベルケイド)および化学療法併用療法が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
1つの実施形態において、本発明は、腫瘍細胞、例えば悪性神経膠腫細胞を化学療法で処置(治療)する方法を提供し、ここで、細胞を、例えばペリリルアルコールのようなモノテルペンの有効量で処置し、次いで化学療法に付す。モノテルペン処置は化学療法の前、途中および/または後に行われうる。
【0074】
DNAアルキル化剤は当技術分野で周知であり、種々の腫瘍の治療に使用される。DNAアルキル化剤の非限定的な例としては、ナイトロジェンマスタード、例えばメクロレタミン、シクロホスファミド(イホスファミド、トロホスファミド)、クロランブシル(メルファラン、プレドニムスチン)、ベンダムスチン、ウラムスチンおよびエストラムスチン;ニトロソウレア、例えばカルムスチン(BCNU)、ロムスチン(セムスチン)、フォテムスチン、ニムスチン、ラニムスチンおよびストレプトゾシン;アルキルスルホナート、例えばブスルファン(マンノスルファン、トレオスルファン);アジリジン、例えばカルボクオン、チオTEPA、トリアジクオン、トリエチレンメラミン;ヒドラジン(プロカルバジン);トリアゼン、例えばダカルバジンおよびテモゾロミド;アルトレタミンおよびミトブロニトールが挙げられる。
【0075】
トポイソメラーゼIインヒビターの非限定的な例には、以下のものが含まれる:カンプトテシン誘導体、例えばCPT-11(イリノテカン)、SN-38、APC、NPC、カンポテシン、トポテカン、メシル酸エキサテカン、9-ニトロカンプトテシン、9-アミノカンプトテシン、ルルトテカン、ルビテカン、シラテカン、ギマテカン、ジフロモテカン、エクスタテカン(extatecan)、BN-80927、DX-8951fおよびMAG-CPT[Pommier Y.(2006)Nat.Rev.Cancer 6(10):789-802および米国特許公開第200510250854号に記載されている];プロトベルベリンアルカロイドおよびその誘導体、例えばベルベルビンおよびコラリン[Liら,(2000)Biochemistry 39(24):7107-7116およびGattoら,(1996)Cancer Res.15(12):2795-2800に記載されている];フェナントロリン誘導体、例えばベンゾ[i]フェナントリジン、ニチジンおよびファガロニン[Makheyら,(2003)Bioorg.Med.Chem.11(8):1809-1820に記載されている];テルベンズイミダゾールおよびその誘導体[Xu(1998)Biochemistry 37(10):3558-3566に記載されている];ならびにアントラサイクリン誘導体、例えばドキソルビシン、ダウノルビシンおよびミトキサントロン[Foglesongら,(1992)Cancer Chemother.Pharmacol.30(2):123-25;Crowら,(1994)J.Med.Chem.37(19):31913194;およびCrespiら,(1986)Biochem.Biophys.Res.Commun.136(2):521-8に記載されている]。トポイソメラーゼIIインヒビターには、エトポシドおよびテニポシドが含まれるが、これらに限定されるものではない。二重(デュアル)トポイソメラーゼIおよびIIインヒビターには、サイントピン(Saintopin)および他のナフテセンジオン、DACAおよび他のアクリジン-4-カルボキサミンド、イントプリシンおよび他のベンゾピリドインドール、TAS-I03および他の7H-インデノ[2,1-c]キノリン-7-オン、ピラゾロアクリジン、XR11576および他のベンゾフェナジン、XR5944および他の二量体化合物、7-オキソ-7H-ジベンゾ[f,ij]イソキノリンおよび7-オキソ-7H-ベンゾ[e]ペリミジン、ならびにアントラセニル-アミノ酸コンジュゲート[DennyおよびBaguley(2003)Curr.Top.Med.Chem.3(3):339-353に記載されている]が含まれるが、これらに限定されるものではない。幾つかの物質はトポイソメラーゼIIを阻害し、DNAインターカレーション活性を有し、それらとしては、例えば、アントラサイクリン(アクラルビシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、アムルビシン、ピラルビシン、バルルビシン、ゾルビシン)およびアントラセネジオン(ミトキサントロンおよびピクサントロン)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
小胞体ストレス誘発剤の例には、ジメチル-セレコキシブ(DMC)、ネルフィナビル、セレコキシブおよびホウ素放射線増感剤[すなわち、ベルケイド(ボルテゾミブ)]が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
DNAアルキル化剤のサブクラスである白金系化合物。このような物質の非限定的な例には、カルボプラチン、シスプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、四硝酸トリプラチン、サトラプラチン、アロプラチン、ロバプラチンおよびJM-216が含まれる[McKeageら,(1997)J.Clin.Oncol.201:1232-1237および全般的にはCHEMOTHERAPY FOR GYNECOLOGICAL NEOPLASM,CURRENT THERAPY AND NOVEL APPROACHES,in the Series Basic and Clinical Oncology,Angioliら編,2004を参照されたい]。
【0078】
「FOLFOX」は、結腸直腸癌の治療に使用される一種の併用療法の略語である。それは5-FU、オキサリプラチンおよびロイコボリンを含む。この治療法に関する情報は米国国立癌研究所(National Cancer Institute)のウェブサイトcancer.gov(最終アクセス:2008年1月16日)において入手可能である。
【0079】
「FOLFOX/BV」は、結腸直腸癌の治療に使用される一種の併用療法の略語である。この療法は5-FU、オキサリプラチン、ロイコボリンおよびベバシズマブを含む。更に、「XELOX/BV」は、結腸直腸癌の治療に使用されるもう1つの併用療法であり、これは、カペシタビン(ゼローダ)として公知の5-FUのプロドラッグとオキサリプラチンおよびベバシズマブとの併用を含む。これらの治療に関する情報は米国国立癌研究所(National Cancer Institute)のウェブサイトcancer.govおよび全米総合癌センターネットワーク(National Comprehensive Cancer Network)のウェブサイトnccn.org(最終アクセス:2008年5月27日)において入手可能である。
【0080】
代謝拮抗剤の非限定的な例には、以下のものが含まれる:葉酸に基づくもの、すなわち、ジヒドロ葉酸レダクターゼインヒビター、例えばアミノプテリン、メトトレキサートおよびペメトレキセド;チミジル酸シンターゼインヒビター、例えばラルチトレキセド、ペメトレキセド;プリンに基づくもの、すなわち、アデノシンデアミナーゼインヒビター、例えばペントスタチン、チオプリン、例えばチオグアニンおよびメルカプトプリン、ハロゲン化/リボヌクレオチドレダクターゼインヒビター、例えばクラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、またはグアニン/グアノシン:チオプリン、例えばチオグアニン;またはピリミジンに基づくもの、すなわち、シトシン/シチジン:低メチル化剤、例えばアザシチジンおよびデシタビン、DNAポリメラーゼインヒビター、例えばシタラビン、リボヌクレオチドレダクターゼインヒビター、例えばゲムシタビン、チミン/チミジン:チミジル酸シンターゼインヒビター、例えばフルオロウラシル(5-FU)。5-FUの等価体には、そのプロドラッグ、類似体および誘導体、例えば5’-デオキシ-5-フルオロウリジン(ドキシフルロイジン)、1-テトラヒドロフラニル-5-フルオロウラシル(フトラフル)、カペシタビン(ゼローダ)、SI(テガフールと、2つのモジュレーターである5-クロロ-2,4ジヒドロキシピリジンおよびオキソン酸カリウムとからなるMBMS-247616)、ラリトレキセド(トムデックス)、ノラトレキセド(Thymitaq、AG337)、LY231514およびZD9331(例えばPapamicheal(1999)The Oncologist 4:478-487に記載されている)が含まれる。
【0081】
ビンカルカロイドの例には、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンフルニン、ビンデシンおよびビノレルビンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
タキサンの例には、ドセタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、パクリタキセルおよびテセタキセルが含まれるが、これらに限定されるものではない。エポチロンの一例として、イアベピロンが挙げられる。
【0083】
酵素インヒビターの例には、ファルネシルトランスフェラーゼインヒビター(チピファミブ);CDKインヒビター(アルボシディブ、セリシクリブ);プロテアソームインヒビター(ボルテゾミブ);ホスホジエステラーゼインヒビター(アナグレリド、ロリプラム);IMPデヒドロゲナーゼインヒビター(チアゾフリン);およびリポキシゲナーゼインヒビター(マソプロコール)が含まれるが、これらに限定されるものではない。受容体アンタゴニストの例には、ERA(アトラセンタン)、レチノイドX受容体(ベキサロテン)および性ステロイド(テストラクトン)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
治療用抗体の例には、抗HER1/EGFR(セツキシマブ、パニツムマブ)、抗HER2/neu(erbB2)受容体(トラスツズマブ、抗EpCAM(カツマキソマブ、エドレコロマブ)、抗VEGF-A(ベバシズマブ)、抗CD20(リツキシマブ、トシツモマブ、イブリツモマブ)、抗CD52(アレムツズマブ)、および抗CD33(ゲムツズマブ)が含まれるが、これらに限定されるものではない。米国特許第5,776,427号および第7,601,355号。
【0085】
チロシンキナーゼインヒビターの例には、ErbBに対するインヒビター:HER1/EGFR(エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、スニチニブ、ネラチニブ);HER2/neu(ラパチニブ、ネラチニブ);RTKクラスIII:C-kit(アキシチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ)、FLT3(レスタウルチニブ)、PDGFR(アキシチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ);およびVEGFR(バンデタニブ、セマキサニブ、セジラニブ、アキシチニブ、ソラフェニブ);bcr-abl(イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ);Src(ボスチニブ)およびヤヌスキナーゼ2(レスタウルチニブ)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
セツキシマブは抗EGFR抗体の一例である。それは、上皮増殖因子受容体(EGFR)を標的とするキメラヒト/マウスモノクローナル抗体である。生物学的等価抗体は、本明細書においては、修飾された抗体、およびEGFR抗原の同じエピトープに結合し、実質的に等価(同等)な生物学的応答(例えば、EGFRのリガンド結合の阻害、EGFR受容体の活性化の阻害、およびEGFR経路の下流シグナル伝達の遮断による細胞増殖の妨害)を生じさせる抗体として特定される。
【0087】
「ラパチニブ」(Tykerb(登録商標))はEGFRおよびerbB-2の二重インヒビターである。ラパチニブは、抗癌単独療法として、ならびにトラスツズマブ、カペシタビン、レトロゾール、パクリタキセルおよびFOLF1R1(イリノテカン、5-フルオロウラシルおよびロイコボリン)との併用療法として、多数の臨床試験において研究されている。それは、現在、転移性乳癌、頭頸部癌、肺癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌の経口治療に関する第III相試験中である。
【0088】
ラパチニブの化学的等価体は、チロシンキナーゼインヒビター(TKI)である、あるいはHER-1インヒビターまたはHER-2インヒビターである小分子または化合物である。幾つかのTKIは有効な抗腫瘍活性を有することが判明しており、既に承認されており、または臨床試験中である。そのようなものの例には、ザクチマ(Zactima)(ZD6474)、イレッサ(ゲフィチニブ)およびタルセバ(エルロチニブ)、メシル酸イマチニブ(STI571;グリベック)、エルロチニブ(OSI-1774;タルセバ)、カネルチニブ(CI1033)、セマキシニブ(SU5416)、バタラニブ(PTK787/ZK222584)、ソラフェニブ(BAY 43-9006)、スーテント(SUI 1248)およびレフルトモミド(SU101)が含まれるが、これらに限定されるものではない。ラパチニブの生物学的等価体は、HER-1インヒビターおよび/またはHER-2インヒビターであるそのペプチド、抗体または抗体誘導体である。そのようなものの例には、ヒト化抗体トラスツズマブおよびハーセプチンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0089】
PTK/ZKは、全てのVEGF受容体(VEGFR)、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体、c-KITおよびc-Fmsを標的とする広範な特異性を有する「小」分子チロシンキナーゼインヒビターである(Drevs(2003)Idrugs 6(8):787-794)。PTK/ZKは、VEGFR-1(Flt-1)、VEGFR-2(KDR/Flk-1)およびVEGFR-3(Flt-4)を含む、VEGFに結合する全ての公知受容体の活性を抑制することによって血管新生およびリンパ管新生を遮断する標的化薬である。PTK/ZKの化学名は1-[4-クロロアニリノ]-4-[4-ピリジルメチル]フタラジンスクシナートまたは1-フタラジンアミン、N-(4-クロロフェニル)-4-(4-ピリジニルメチル)-ブタンジオアート(1:1)である。PTK/TKの同義語および類似体はバタラニブ、CGP79787D、PTK787/ZK222584、CGP-79787、DE-00268、PTK-787、PTK787A、VEGFR-TKインヒビター、ZK222584およびZKとして公知である。
【0090】
精製されたモノテルペン、セスキテルペンまたはペリリルアルコールカルバマートと組合せて使用されうる化学療法剤には、アムサクリン、トラベクテジン、レチノイド(アリトレチノイン、トレチノイン)、三酸化ヒ素、アスパラギン枯渇剤(アスパラギナーゼ/ペグアスパルガーゼ)、セレコキシブ、デメコルシン、エレクロモール、エルサミトルシン、エトグルシド、ロニダミン、ルカントン、ミトグアゾン、ミトタン、オブリメルセン、テムシロリムスおよびボリノスタットも含まれうる。
【0091】
本発明の組成物および方法は、Rasタンパク質のレベルを低下させるために使用されうる。Rasファミリーは、細胞シグナル伝達に関与する低分子GTPアーゼのタンパク質ファミリーである。Rasシグナル伝達の活性化は細胞の成長、分化および生存が引き起こす。ras遺伝子における突然変異はそれを永続的に活性化し、細胞外シグナルの非存在下であっても、細胞内で不適切な伝達を引き起こしうる。これらのシグナルは細胞の成長および分裂をもたらすため、Rasシグナル伝達の調節不全は最終的に発癌および癌を招きうる。Rasにおける活性化突然変異は全てのヒト腫瘍の20~25%および特定の腫瘍型における最大90%で見出される。Goodsell DS(1999).Downward J.,“The molecular perspective:the ras oncogene”.Oncologist 4(3):263-4.(January 2003).“Targeting RAS signalling pathways in cancer therapy”.Nat.Rev.Cancer 3(1):11-22。Rasファミリーのメンバーには、HRAS;KRAS;NRAS;DIRAS1;DIRAS2;DIRAS3;ERAS;GEM;MRAS;NKIRAS1;NKIRAS2;NRAS;RALA;RALB;RAP1A;RAP1B;RAP2A;RAP2B;RAP2C;RASD1;RASD2;RASL10A;RASL10B;RASL11A;RASL11B;RASL12;REM1;REM2;RERG;RERGL;RRAD;RRAS;およびRRASが含まれるが、これに限定されるものではない。Wennerberg K,Rossman K L,Der C J(March 2005).“The Ras superfamily at a glance”.J.Cell.Sci.118(Pt 5):843-6。
【0092】
本発明の組成物および方法は、傍細胞透過性、例えば、内皮細胞または上皮細胞の傍細胞透過性を増加させるために使用されうる。本発明の組成物および方法は、血液脳関門の透過性を増加させるために使用されうる。
【0093】
本発明の組成物および方法は、血管新生を低減または抑制するために使用されうる。本発明の組成物および方法は、血管内皮増殖因子(VEGF)およびインターロイキン8(IL8)(これらに限定されるものではない)を含む血管新生促進性サイトカインの産生を低減または抑制しうる。
【0094】
精製されたモノテルペン、セスキテルペンまたはペリリルアルコールカルバマートは、血管新生インヒビターと組合せて使用されうる。血管新生インヒビターの例には、以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:アンジオスタチン、アンジオザイム、アンチトロンビンIII、AG3340、VEGFインヒビター(例えば、抗VEGF抗体)、バチマスタット、ベバシズマブ(アバスチン)、BMS-275291、CAI、2C3、HuMV833 カンスタチン、カプトプリル、カルボキシアミドトリアゾール、軟骨由来インヒビター(CDI)、CC-5013、6-O-(クロロアセチル-カルボニル)-フマギロール、COL-3、コンブレタスタチン、コンブレタスタチンA4ホスファート、ダルテパリン、EMD121974(シレンジタイド)、エンドスタチン、エルロチニブ、ゲフィチニブ(イレッサ)、ゲニステイン、臭化水素酸ハロフジノン、Id1、Id3、IM862、メシル酸イマチニブ、IMC-IC11誘導性タンパク質10、インターフェロン-アルファ、インターロイキン12、ラベンダスチンA、LY317615またはAE-941、マリマスタット、mspin、酢酸メドロクスプレゲステロン、Meth-1、Meth-2、2-メトキシエストラジオール(2-ME)、ネオバスタット、オテオポンチン切断産物、PEX、色素上皮増殖因子(PEGF)、血小板因子4、プロラクチン断片、プロリフェリン関連タンパク質(PRP)、PTK787/ZK222584、ZD6474、組換えヒト血小板因子4(rPF4)、レスチン、スクアラミン、SU5416、SU6668、SU11248スラミン、タキソール、テコガラン、サリドマイド、トロンボスポンジン、TNP-470、トロポニン-1、バソスタチン、VEG1、VEGF-トラップおよびZD6474。
【0095】
血管新生インヒビターの非限定的な例にはまた、チロシンキナーゼインヒビター、例えばチロシンキナーゼ受容体Flt-1(VEGFR1)およびFlk-1/KDR(VEGFR2)のインヒビター、表皮由来、線維芽細胞由来または血小板由来増殖因子のインヒビター、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)インヒビター、インテグリンブロッカー、ペントサンポリスルファート、アンジオテンシンIIアンタゴニスト、シクロオキシゲナーゼインヒビター[例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えばアスピリンおよびイブプロフェン、ならびに選択的シクロオキシゲナーゼ2インヒビター、例えばセレコキシブおよびロフェコキシブ]、ならびにステロイド性抗炎症薬(例えば、コルチコステロイド、ミネラルコルチコイド、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレド、ベタメタゾン)が含まれる。
【0096】
血管新生を調節または抑制し、本発明の化合物と組合せて使用されうる他の治療用物質には、凝固系および線維素溶解系を調節または抑制する物質が含まれる。凝固および線維素溶解経路を調節または抑制するそのような物質の例には、ヘパリン、低分子量ヘパリンおよびカルボキシペプチダーゼUインヒビター(活性トロンビン活性化可能線維素溶解インヒビター[TAFIa]のインヒビターとしても公知である)が含まれるが、これらに限定されるものではない。米国特許公開第20090328239号、米国特許第7,638,549号。
【0097】
本発明はまた、免疫調節治療の前または途中にモノテルペンまたはシスキテルペン、例えばペリリルアルコールの有効量を細胞に曝露する工程を含む、免疫調節治療応答を改善する方法を提供する。好ましい免疫調節物質としては、サイトカイン、例えばインターロイキン、リンホカイン、モノカイン、インターフェロンおよびケモカインが挙げられる。
【0098】
本発明は更に、精製されたモノテルペン(またはセスキテルペン)が溶媒または浸透促進剤として機能する組成物を提供する。1つの態様においては、モノテルペンはペリリルアルコールである。治療用物質の例は後記に記載されている。組成物は、1以上の薬学的に許容される担体、共溶媒または他の浸透促進剤を更に含みうる。
【0099】
1つの実施形態においては、組成物は以下の成分を含有する:治療用物質;少なくとも約0.03%(v/v)のモノテルペン(またはセスキテルペン)、例えばペリリルアルコール;少なくとも約2.6%(v/v)の共溶媒であって、1.3%(v/v)のポリオール、例えばグリセロールまたはその等価体でありうるもの;および少なくとも約1.3%(v/v)のエタノールまたはその等価体。
【0100】
精製されたモノテルペン(またはセスキテルペン)と共に使用されうる他の浸透促進剤には、以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:グリセリンの脂肪酸エステル、例えばカプリン酸、カプリル酸、ドデシル酸、オレイン酸のもの;イソソルビド、スクロース、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル;カプロイル乳酸;ラウレス(laureth)-2;ラウレス-2アセタート;ラウレス-2ベンゾアート;ラウレス-3カルボン酸;ラウレス-4;ラウレス-5カルボン酸;オレス(oleth)-2;グリセリルピログルタマートオレアート;グリセリルオレアート;N-ラウロイルサルコシン;N-ミリストイルサルコシン;ノクチル-2-ピロリドン;ラウラアミノプロピオン酸;ポリプロピレングリコール-4-ラウレス-2;ポリプロピレングリコール-4-ラウレス-5ジメチルラウラミド;ラウラミドジエタノールアミン(DEA)、ラウリルピログルタマート(LP)、グリセリルモノラウラート(GML)、グリセリルモノカプリラート、グリセリルモノカプラート、グリセリルモノオレアート(GMO)およびソルビタンモノラウラート。ポリオールまたはエタノールは浸透促進剤または共溶媒として機能しうる。追加的な浸透促進剤に関しては、米国特許第5,785,991号、第5,843,468号、第5,882,676号および第6,004,578号を参照されたい。
【0101】
共溶媒は当技術分野で周知であり、グリセロール、ポリエチレングリコール(PEG)、グリコール、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどを包含するが、これらに限定されるものではない。
【0102】
本組成物は、鼻腔内、経口、眼、腹腔内、吸入、静脈内、ICV、槽内注射または注入、皮下、インプラント、膣、舌下、尿道(例えば、尿道坐薬)、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、直腸、舌下、粘膜、眼、脊髄、髄腔内、関節内、動脈内、くも膜下、気管支およびリンパ管投与(これらに限定されるものではない)を含む、当技術分野で公知の任意の方法によって投与されうる。局所製剤はゲル、軟膏、クリーム、エアゾールなどの形態でありうる。鼻腔内製剤はスプレーまたは点滴として送達されうる。経皮製剤は経皮パッチまたはイオン導入によって投与されうる。吸入製剤は、ネブライザーまたは同様の装置を使用して送達されうる。組成物はまた、錠剤、丸剤、カプセル、半固体、粉末、徐放製剤、溶液、懸濁液、エリキシル剤、エアロゾルまたは任意の他の適切な組成物の形態をとりうる。
【0103】
そのような医薬組成物を製造するためには、精製されたモノテルペン(またはセスキテルペン)またはペリリルアルコールカルバマートの1以上を、通常の医薬配合技術に従い、薬学的に許容される担体、アジュバントおよび/または賦形剤と混合することが可能である。本組成物において使用されうる薬学的に許容される担体には、いずれかの標準的な薬学的担体、例えばリン酸緩衝生理食塩水、水、およびエマルション、例えば油/水または水/油エマルション、ならびに種々のタイプの湿潤剤が含まれる。組成物は更に、固体医薬賦形剤、例えばデンプン、セルロース、タルク、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルクなどを含有しうる。液体および半固体の賦形剤は、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール、および種々の油、例えば石油、動物、植物または合成由来の油、例えばラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などから選択されうる。液体担体、特に、注射溶液用の液体担体には、水、生理食塩水、水性デキストロースおよびグリコールが含まれる。担体、安定剤および補助剤(アジュバント)の例に関しては、Remington’s Pharmaceutical Sciences,E.W.Martin編(Mack Publishing Company,18th ed.,1990)を参照されたい。組成物は安定剤および保存剤をも含みうる。
【0104】
本明細書中で用いる「治療的有効量」なる語は、特定された障害または疾患を治療するのに、あるいは障害または疾患を治療する薬理学的応答を得るのに十分な量である。最も有効な手段および投与量を決定する方法は、治療に使用される組成物、治療の目的、治療される標的細胞および治療される対象によって変動しうる。治療投与量は、一般に、安全性および有効性が最適化されるように決定されうる。単回または複数回の投与が、治療する医師によって選択された用量レベルおよびパターンで行われうる。適切な投与製剤および治療用物質の投与方法は当業者によって容易に決定されうる。例えば、組成物は、約0.01mg/kg~約200mg/kg、約0.1mg/kg~約100mg/kg、または約0.5mg/kg~約50mg/kgで投与される。本明細書に記載されている化合物が別の物質または療法と共投与される場合、有効量は、治療用物質が単独で使用される場合よりも少なくなりうる。
【0105】
本発明はまた、鼻腔内投与用の前記組成物を提供する。したがって、組成物は浸透促進剤を更に含みうる。Southallら,Developments in Nasal Drug Delivery,2000。精製されたモノテルペン(またはセスキテルペン)またはペリリルアルコールカルバマート誘導体は、液体形態、例えば溶液、エマルション、懸濁液、点滴、または固体形態、例えば粉末、ゲルもしくは軟膏として鼻腔内投与されうる。鼻腔内医薬を送達するための装置は当技術分野で周知である。経鼻薬物送達は、鼻腔内吸入器、鼻腔内スプレー装置、アトマイザー、鼻用スプレーボトル、単位用量容器、ポンプ、ドロッパ、スクイーズボトル、ネブライザー、定量吸入器(MDI)、加圧用量吸入器、注入器および双方向装置(これらに限定されるものではない)を含む装置を使用して行われうる。経鼻送達装置は、正確な有効投与量が鼻腔に投与されるように計量されうる。経鼻送達装置は単一単位送達用または複数単位送達用でありうる。特定の例においては、Kurve Technology(Bethell,Wash.)(http://www.kurvetech.com)のViaNase Electronic Atomizerが本発明において使用されうる。本発明の化合物は、チューブ、カテーテル、シリンジ、パックテール、綿球、鼻タンポンを介して、または粘膜下注入によって送達されうる。米国特許公開第20090326275号、第20090291894号、第20090281522号および第20090317377号。
【0106】
精製されたモノテルペン(またはセスキテルペン)またはペリリルアルコールカルバマート誘導体は、標準的な方法を用いて、エアロゾルとして製剤化されうる。モノテルペン(またはセスキテルペン)は溶媒の存在下または非存在下で製剤化されることが可能であり、担体の存在下または非存在下で製剤化されることが可能である。製剤は溶液であることが可能であり、あるいは、1以上の界面活性剤を含有する水性エマルションでありうる。例えば、エアロゾルスプレーは、適切な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、炭化水素、圧縮空気、窒素、二酸化炭素または他の適切なガスを使用して、加圧容器から生成されうる。投与単位は、計量された量を送達するためのバルブを設けることによって決定されうる。ポンプスプレーディスペンサーは、計量された用量、または特定の粒子もしくは液滴サイズを有する用量を分配しうる。本明細書中で用いる「エアロゾル」なる語は気体中の溶液液滴または微細固体粒子の懸濁状態を意味する。具体的には、エアロゾルには、モノテルペン(またはセスキテルペン)の液滴の、ガスに含有された懸濁状態が含まれ、これは、任意の適切な装置、例えばMDI、ネブライザーまたはミスト噴霧器において生成されうる。エアロゾルには、空気または他のキャリアガス中に懸濁された本発明の組成物の乾燥粉末組成物も含まれる。Gonda(1990)Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 6:273-313;Raeburnら,(1992)Pharmacol.Toxicol.Methods 27:143-159。
【0107】
精製されたモノテルペン(またはセスキテルペン)またはペリリルアルコールカルバマートは、鼻吸入器によって送達されるミクロスフェアのような形態の粉末として、鼻腔に送達されうる。モノテルペン(またはセスキテルペン)は、固体表面、例えば担体に吸収されうる。粉末またはミクロスフェアは、乾燥した空気分配可能な形態で投与されうる。粉末またはミクロスフェアは、吸入器の容器内に貯蔵されうる。あるいは、粉末またはミクロスフェアは、カプセル内、例えばゼラチンカプセル内、または経鼻投与に適した他の単一用量単位内に充填されうる。
【0108】
医薬組成物は、例えばゲル、軟膏、鼻用エマルション、ローション、クリーム、鼻用タンポン、ドロッパまたは生体接着性ストリップの形態で、鼻腔内に組成物を直接配置することによって、鼻腔に送達されうる。特定の実施形態においては、例えば吸収を増強するために、鼻腔内での医薬組成物の滞留時間を延長させることが望ましい場合がある。したがって、医薬組成物は、所望により、生体接着性ポリマー、ガム(例えば、キサンタンガム)、キトサン(例えば、高度に精製されたカチオン性多糖)、ペクチン(または鼻粘膜に適用されるとゲルのように濃厚化する又は乳化する任意の炭水化物)、ミクロスフェア(例えば、デンプン、アルブミン、デキストラン、シクロデキストリン)、ゼラチン、リポソーム、カルバマー、ポリビニルアルコール、アルギナート、アカシア、キトサンおよび/またはセルロース(例えば、メチルまたはプロピル;ヒドロキシルまたはカルボキシ;カルボキシメチルまたはヒドロキシプロピル)を使用して製剤化されうる。
【0109】
精製されたモノテルペン(またはセスキテルペン)またはペリリルアルコールカルバマートを含有する組成物は、経口吸入によって、気道内、すなわち肺内に投与されうる。
【0110】
吸入可能な物質の典型的な送達系には、ネブライザー吸入器、乾燥粉末吸入器(DPI)および定量吸入器(MDI)が含まれる。
【0111】
ネブライザー装置は、液体形態の治療用物質をミストとして噴霧させる高速空気流を生成する。治療用物質は、適切なサイズの粒子の溶液または懸濁液のような液体形態で製剤化される。1つの実施形態においては、粒子は微粉化される。「微粉化」なる語は、約90%以上の粒子が約10μm未満の直径を有することであると定義される。適切なネブライザー装置は、例えばPARI GmbH(Starnberg,Germany)によって商業的に提供されている。他のネブライザー装置には、Respimat(Boehringer Ingelheim)、ならびに例えば米国特許第7,568,480号および第6,123,068号、およびWO97/12687に開示されているものが含まれる。モノテルペン(またはセスキテルペン)は、水溶液または液体懸濁液としてネブライザー装置において使用されるように製剤化されうる。
【0112】
DPI装置は、典型的には、吸気中に患者の気流中に分散されうる自由流動性粉末の形態で治療用物質を投与する。外部エネルギー源を用いるDPI装置も本発明において使用されうる。自由流動性粉末を得るために、治療用物質は適切な賦形剤(例えば、ラクトース)と共に製剤化されうる。乾燥粉末製剤は、例えば、約1μm~100μmの粒径を有する乾燥ラクトースをモノテルペン(またはセスキテルペン)の微粉化粒子と一緒にし、乾式混合することによって製造されうる。あるいは、モノテルペンは賦形剤の非存在下で製剤化されうる。製剤は、乾燥粉末ディスペンサー内に、または乾燥粉末送達装置用の吸入カートリッジもしくはカプセル内に充填される。商業的に提供されるDPI装置の例には、Diskhaler(GlaxoSmithKline,Research Triangle Park,N.C.)(例えば、米国特許第5,035,237号を参照されたい);Diskus(GlaxoSmithKline)(例えば、米国特許第6,378,519号を参照されたい);Turbuhaler(AstraZeneca,Wilmington,Del.)(例えば、米国特許第4,524,769号を参照されたい);およびRotahaler(GlaxoSmithKline)(例えば、米国特許第4,353,365号を参照されたい)が含まれる。適切なDPI装置の他の例は、米国特許第5,415,162号、第5,239,993号および第5,715,810号ならびにそれらにおける参考文献に記載されている。
【0113】
MDI装置は、典型的には、圧縮噴射ガスを使用して、計量された量の治療用物質を放出する。MDI投与用の製剤には、液化噴射剤中の有効成分の溶液または懸濁液が含まれる。噴射剤の例には、ヒドロフルオロアルクラン(HFA)、例えば1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA134a)および1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-n-プロパン(HFA227)、ならびにクロロフルオロカーボン、例えばCCl3Fが含まれる。MDI投与用のHFA製剤の追加的成分には、共溶媒、例えばエタノール、ペンタン、水;ならびに界面活性剤、例えばトリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸、レシチンおよびグリセリンが含まれる(例えば、米国特許第5,225,183号、EP 0717987およびWO 92/22286を参照されたい)。製剤はエアロゾルキャニスター内に充填され、これはMDI装置の一部を構成する。HFA噴射剤の存在下での使用のために特別に開発されたMDI装置の例は米国特許第6,006,745号および第6,143,227号に記載されている。適切な製剤の製造方法および吸入投与に適した装置の例に関しては、米国特許第6,268,533号、第5,983,956号、第5,874,063号および第6,221,398号、ならびにWO 99/53901、WO 00/61108、WO 99/55319およびWO 00/30614を参照されたい。
【0114】
モノテルペン(またはセスキテルペン)またはペリリルアルコールカルバマートは吸入による送達のためにリポソームまたはマイクロカプセル内にカプセル化されうる。リポソームは脂質二重膜と水性内部とから構成される小胞である。脂質膜はリン脂質から構成されることが可能であり、その例には、ホスファチジルコリン、例えばレシチンおよびリゾレシチン;酸性リン脂質、例えばホスファチジルセリンおよびホスファチジルグリセロール;ならびにスフィンゴリン脂質、例えばホスファチジルエタノールアミンおよびスフィンゴミエリンが含まれる。あるいはコレステロールが添加されうる。マイクロカプセルは、コーティング材でコーティングされた粒子である。例えば、コーティング材はフィルム形成ポリマー、疎水性可塑剤、界面活性剤または/および潤滑剤窒素含有ポリマーの混合物からなりうる。米国特許第6,313,176号および第7,563,768号。
【0115】
モノテルペンは真皮に容易に浸透しうるため、それは、局在化癌、例えば乳癌または黒色腫の治療のために、局所適用により、単独で、または他の化学療法剤と組合せて使用されうる。経皮送達剤として、モノテルペンは、鎮痛薬の経皮送達のために、麻薬または鎮痛剤と組合せて使用されうる。
【0116】
本発明はまた、眼投与用の前記組成物を提供する。したがって、組成物は浸透促進剤を更に含みうる。眼投与の場合、本明細書に記載されている組成物は溶液、エマルション、懸濁液などとして製剤化されうる。化合物を眼に投与するのに適した種々のビヒクルが当技術分野で公知である。特定の非限定的な例は米国特許第6,261,547号、第6,197,934号、第6,056,950号、5,800,807号、第5,776,445号、第5,698,219号、第5,521,222号、第5,403,841号、第5,077,033号、第4,882,150号および第4,738,851号に記載されている。
【0117】
モノテルペン(またはセスキテルペン)またはペリリルアルコールカルバマートは、前記疾患の治療のために、短期または長期にわたって、単独で、または他の薬物と組合せて投与されうる。本発明の組成物は、哺乳動物、好ましくはヒトに投与されうる。哺乳動物には、マウス、ラット、ウサギ、サル、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、家畜、スポーツ用動物、ペット、ウマおよび霊長類が含まれる、これらに限定されるものではない。
【0118】
本発明は更に、鼻腔内投与用に製剤化された精製されたモノテルペン(またはセスキテルペン)を含む製造品(例えば、キット)、および精製されたモノテルペン(またはセスキテルペン)の鼻腔内投与用装置を提供する。鼻腔内投与用装置は、鼻腔内スプレー装置、アトマイザー、ネブライザー、定量吸入器(MDI)、加圧用量吸入器、注入器、鼻腔内吸入器、鼻用スプレーボトル、単位用量容器、ポンプ、ドロッパ、スクイーズボトルまたは双方向装置でありうる。製造品は、精製されたモノテルペン(またはセスキテルペン)が例えば癌または他の神経系障害のような疾患の治療に使用されることを示す印刷物を含みうる。印刷物は、モノテルペン(またはセスキテルペン)が単独で、または放射線、手術もしくは化学療法剤と組合せて投与されることを示しうる。モノテルペンまたはセスキテルペンは抗ウイルス剤、抗炎症剤または抗生物質と共投与されうる。該物質は同時または連続的に投与されうる。
【0119】
本発明はまた、インビトロ、エクスビボまたはインビボでの細胞の増殖を抑制する方法も提供し、ここで、癌細胞のような細胞を、本明細書に記載されている精製されたモノテルペン(またはセスキテルペン)の有効量と接触させる。本発明の組成物および方法は、化学療法剤に対して耐性である細胞の増殖を抑制するために使用されうる。例えば、本発明の組成物および方法は、テモゾロミド耐性細胞の増殖を抑制するために使用されうる。
【0120】
病的な細胞または組織、例えば過剰増殖性細胞または組織は、細胞または組織を本発明の組成物の有効量と接触させることによって治療されうる。癌細胞のような細胞は原発性癌細胞であることが可能であり、American Type Culture Collection(ATCC)のような組織バンクから入手可能な培養細胞でありうる。病的細胞は、全身癌、神経膠腫、髄膜腫、下垂体腺腫、または全身癌、肺癌、前立腺癌、乳癌、造血癌もしくは卵巣癌からのCNS転移の細胞でありうる。細胞は、脊椎動物由来、好ましくは哺乳動物由来、より好ましくはヒト由来でありうる。米国特許公開第2004/0087651号;Balassianoら,(2002)Intern.J.Mol.Med.10:785-788;Thorneら,(2004)Neuroscience 127:481-496;Fernandesら,(2005)Oncology Reports 13:943-947;Da Fonsecaら,(2008)Surgical Neurology 70:259267;Da Fonsecaら,(2008)Arch.Immunol.Ther.Exp.56:267-276;Hashizumeら,(2008)Neuroncology 10:112-120。
【0121】
癌幹細胞(CSC)または腫瘍開始細胞は、自己複製のような幹細胞の特徴を有する未熟細胞である。しかし、CSCにおいては、自己再生が悪化する。Reyaら,Stem cells,cancer,and cancer stem cells.Nature.2001,414(6859):105-11。また、神経膠腫CSCは化学療法および放射線療法に対して耐性である。Baoら,Glioma stem cells promote radioresistance by preferential activation of the DNA damage response.Nature.2006,444(7120):756-60;Richら,Chemotherapy and cancer stem cells.Cell Stem Cell.2007;1(4):353-5。本組成物および方法は、神経膠芽腫癌幹細胞(これに限定されるものではない)を含む癌幹細胞の増殖を抑制するために使用されうる。
【0122】
本組成物のインビトロ効力は、当技術分野で周知の方法を使用して決定されうる。例えば、このモノテルペン(またはセスキテルペン)および/または治療用物質の細胞毒性はMTT[3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド]細胞毒性アッセイによって試験されうる。MTTアッセイは、代謝的に活性な細胞による、テトラゾリウム塩であるMTTの取り込みの原理に基づいており、ここで、それは、分光分析で読み取られうる青色ホルマゾン生成物へと代謝される。J.of Immunological Methods 65:55 63,1983。このモノテルペン(またはセスキテルペン)および/または治療用物質の細胞毒性はコロニー形成アッセイによって試験されうる。VEGF分泌およびIL-8分泌の抑制に関する機能アッセイはELISAによって行われうる。このモノテルペン(またはセスキテルペン)および/または治療用物質による細胞周期遮断は標準的なヨウ化プロピジウム(PI)染色およびフローサイトメトリーによって試験されうる。浸潤抑制はボイデンチャンバーによって試験されうる。このアッセイにおいては、再構成された基底膜の層であるマトリゲルが走化性フィルター上にコーティングされ、ボイデンチャンバー内の細胞の移動に対する障壁として機能する。浸潤能力を有する細胞のみがマトリゲル障壁を通過しうる。他のアッセイには、細胞生存性アッセイ、アポトーシスアッセイおよび形態学的アッセイが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0123】
以下の実施例は例示目的で記載されているに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0124】
実施例1: 3,5-ジニトロ安息香酸エステルを経由する(S)-ペリリルアルコールの精製
(S)-ペリリルアルコールは天然物から直接精製されることが可能であり、または酸化および転位による、ベータ-ピネン(マツの木から抽出される)のような天然物の合成的修飾によって得られうる(スキーム1)。
【化5】
【0125】
そのような(S)-ペリリルアルコール源には目的化合物の異性体が不可避的に混入しており、該混入物は物理化学的特性において非常に類似しており、したがって、分別蒸留またはクロマトグラフィーのような通常の精製方法によって除去することは困難である。
【0126】
本実施例においては、(S)-ペリリルアルコールを、それに典型的に付随している、天然物および/または合成源からの混入物から精製するために、まず、ペリリルアルコールをその3,5-ジニトロ安息香酸エステルとして誘導体化し、これを通常の結晶化によって混入物から分離した。誘導体化された(S)-ペリリルアルコールが結晶化によって精製されたら、それを加水分解して、精製された(S)-ペリリルアルコールを回収することが可能である(スキーム2)。このようにして製造された精製された(S)-ペリリルアルコールは、約99%を超える純度を有する。
【化6】
【0127】
3,5-ジニトロ安息香酸 4-(S)-イソプロペニルシクロヘキサ-1-エニルメチルエステル(化合物3)の合成
トリエチルアミン(12.2mL,87.5mmol)を、温度を15℃未満に維持しながら、ジクロロメタン(70ml)中の(S)-ペリリルアルコール(1,89.5%,10.0g,58.7mmol)の混合物に0.25時間かけて加えた。反応混合物を室温で30分間撹拌した。ジクロロメタン(30mL)に溶解した3,5-ジニトロベンゾイルクロリド(化合物2,14.23g,61.7mmol)の溶液を、温度を15℃未満に維持しながら、0.5時間かけて加えた。反応混合物を室温に加温し、次いで3.0時間撹拌した。反応混合物を水(75mL)でクエンチし、有機層を分離した。水層をジクロロメタン(50mL)で抽出した。合わせた有機層を水(2×100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(25g)で乾燥させた。濾過した有機層を濃縮し、得られた残渣をジイソプロピルエーテル(200mL)から結晶化させて、純粋な化合物3(重量:14.45g)を得た。母液をその体積の半分まで濃縮し、2.1gを第2の回収物として得た(総収率:81.2%、純度:99.4%(HPLCによる))。
【0128】
3,5-ジニトロ安息香酸 4-(S)-イソプロペニルシクロヘキサ-1-エニルメチルエステル(化合物3)の加水分解
水酸化ナトリウム水溶液(3.23g,80.0mmol、28mLの水に溶解)を、3,5-ジニトロ安息香酸4-イソプロペニル-シクロヘキサ-1-エニルメチル エステル(14.0g,40.4mmol)の氷冷溶液に加えた。メタノール(140mL)中で0.25時間かけて混合した。反応混合物を室温に加温し、次いで3.0時間撹拌した。メタノールを真空下で濃縮し、得られた残渣を水(60mL)に懸濁し、酢酸エチル(2×100mL)で抽出した。有機層を水(2×100mL)、次いでブライン(15%,100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(30g)で乾燥させた。濾過した有機層を真空下で濃縮して、純粋な(S)-ペリリルアルコールを得た(重量:5.84g,収率:95%、純度:99.4%(GCによる))。
【0129】
実施例2: 3,5-ジニトロ安息香酸 4(S)-イソプロペニルシクロヘキサ-1-エニルメチルエステル(化合物3)の合成および分取クロマトグラフィーによる精製
トリエチルアミン(5.3mL,38.0mmol)を、温度を15℃未満に維持しながら、ジクロロメタン(40ml)中の(S)-ペリリルアルコール(89.5%,5.0g,29.3mmol)の混合物に0.25時間かけて加えた。反応混合物を室温で30分間撹拌した。ジクロロメタン(15mL)に溶解した3,5-ジニトロベンゾイルクロリド(7.43g,32.2mmol)の溶液を、温度を15~20℃に維持しながら、0.5時間かけて加えた。反応混合物を室温に加温し、次いで3.0時間撹拌した。反応混合物を水(40mL)でクエンチし、有機層を分離した。水層をジクロロメタン(25mL)で抽出した。合わせた有機層を水(2×50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(20g)で乾燥させた。濾過した有機層を真空下で濃縮して残渣を得、これをカラムクロマトグラフィーによって精製した。カラムの寸法は以下のとおりであった:直径:2.5cm、高さ:30cm、シリカ:200メッシュ。カラムをヘキサン:酢酸エチル(98:2,200mL)、次いでヘキサン:酢酸エチル(95:5)で溶出した。画分のTLC分析(溶媒系;ヘキサン:酢酸エチル(90:10))に基づいて、ヘキサン:酢酸エチル(95:5)画分を合わせ、真空下で濃縮して固体を得た。(重量:7.9g,収率:78%)。
【0130】
実施例2: 4-ニトロ安息香酸 4(S)-イソプロペニルシクロヘキサ-1-エニルメチルエステルの合成(スキーム3)
【化7】
【0131】
トリエチルアミン(5.92mL,42.4mmol)を、温度を15℃未満に維持しながら、ジクロロメタン(30ml)中の(S)-ペリリルアルコール(5.0g,32.8mmol)の混合物に0.25時間かけて加えた。反応混合物を室温で30分間撹拌した。ジクロロメタン(30mL)に溶解した4-ニトロベンゾイルクロリド(6.39g,34.4mmol)の溶液を、温度を15℃未満に維持しながら、0.5時間かけて加えた。反応混合物を室温に加温し、次いで3.0時間撹拌した。反応混合物を水(50mL)でクエンチし、有機層を分離した。水層をジクロロメタン(25mL)で抽出した。合わせた有機層を水(2×50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(20g)で乾燥させた。濾過した有機層を濃縮して油状物を得た(重量:8.9g,収率:90%)。
【0132】
実施例3: 4-クロロ安息香酸 4(S)-イソプロペニルシクロヘキサ-1-エニルメチルエステルの合成(スキーム4)
【化8】
【0133】
トリエチルアミン(2.85mL,20.5mmol)を、温度を15℃未満に維持しながら、ジクロロメタン(25ml)中の(S)-ペリリルアルコール(2.5g,16.4mmol)の混合物に0.25時間かけて加えた。反応混合物を室温で30分間撹拌した。ジクロロメタン(10mL)に溶解した4-クロロベンゾイルクロリド(3.01g,17.2mmol)の溶液を、温度を15℃未満に維持しながら、0.5時間かけて加えた。反応混合物を室温に加温し、次いで3.0時間撹拌した。反応混合物を水(30mL)でクエンチし、有機層を分離した。水層をジクロロメタン(25mL)で抽出した。合わせた有機層を水(2×30mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(15g)で乾燥させた。濾過した有機層を濃縮して油状物を得た(重量:3.8g,収率:81.7%)。
【0134】
実施例4: 3,4,5-トリメトキシ安息香酸 4(S)-イソプロペニルシクロヘキサ-1-エニルメチルエステルの合成(スキーム5)
【化9】
【0135】
トリエチルアミン(2.85mL,20.5mmol)を、温度を15℃未満に維持しながら、ジクロロメタン(25ml)中の(S)-ペリリルアルコール(2.5g,16.4mmol)の混合物に0.25時間かけて加えた。反応混合物を室温で30分間撹拌した。ジクロロメタン(10mL)に溶解した3,4,5-トリメトキシベンゾイルクロリド(3.97g,17.2mmol)の溶液を、温度を15℃未満に維持しながら、0.5時間かけて加えた。反応混合物を室温に加温し、次いで3.0時間撹拌した。反応混合物を水(30mL)でクエンチし、有機層を分離した。水層をジクロロメタン(25mL)で抽出した。合わせた有機層を水(2×30mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(15g)で乾燥させた。濾過した有機層を濃縮して油状物を得た(重量:4.8g,収率:84.6%)。
【0136】
実施例5: 4-トリメトキシ安息香酸 4(S)-イソプロペニルシクロヘキサ-1-エニルメチルエステルの合成(スキーム6)
【化10】
【0137】
トリエチルアミン(2.97mL,21.3mmol)を、温度を15℃未満に維持しながら、ジクロロメタン(25ml)中の(S)-ペリリルアルコール(2.5g,16.4mmol)の混合物に0.25時間かけて加えた。反応混合物を室温で30分間撹拌した。ジクロロメタン(10mL)に溶解した4-メトキシベンゾイルクロリド(2.94g,17.2mmol)の溶液を、温度を15℃未満に維持しながら、0.5時間かけて加えた。反応混合物を室温に加温し、次いで3.0時間撹拌した。反応混合物を水(30mL)でクエンチし、有機層を分離した。水層をジクロロメタン(25mL)で抽出した。合わせた有機層を水(2×30mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(15g)で乾燥させた。濾過した有機層を濃縮して油状物を得た(重量:4.1g,収率:87%)。
【0138】
実施例6: ジメチルセレコキシブビスPOHカルバマート(4-(ビス-N,N’-4-イソプロペニルシクロヘキサ-1-エニルメチルオキシカルボニル[5-(2,5-ジメチルフェニル)-3-トリフルオロメチルピラゾール-1-イル]ベンゼンスルホンアミド)の合成
反応スキームは次のとおりである。
【化11】
【0139】
ホスゲン(トルエン中の20%,13ml,26.2mmol)を、温度を10℃~15℃に維持しながら、乾燥トルエン(30mL)中のペリリルアルコール(2.0グラム,13.1mmol)および炭酸カリウム(5.4グラム,39.1mmol)の混合物に30時間かけて加えた。反応混合物を室温に加温し、N下で8.0時間撹拌した。反応混合物を水(30mL)でクエンチし、有機層を分離した。水層をトルエン(20mL)で抽出し、合わせた有機層を水(50mL×2)、ブライン(15%,30mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(20グラム)で乾燥させた。濾過した有機層を真空下で濃縮して、ペリリルクロロホルマートを油状物として得た。重量:2.5グラム;収率:89%。H-NMR(400MHz,CDCl):δ 1.5(m,1H),1.7(s,3H),1.8(m,1H),2.0(m,1H),2.2(m,4H),4.7(dd,4H);5.87(m,1H)。
【0140】
ペリリルクロロホルマート(0.11グラム,0.55mmol)を乾燥アセトン(10mL)中のジメチルセレコキシブ(0.2グラム,0.50mmol)および炭酸カリウム(0.13グラム,1.0mmol)の混合物にN下で5分間かけてゆっくり加えた。反応混合物を加熱還流し、3時間維持した。TLC分析がジメチルセレコキシブ(>60%)の存在を示したため、更に1.0当量のペリリルクロロホルマートを加え、更に5時間還流した。反応混合物を冷却し、アセトンを真空下で濃縮して残渣を得た。
【0141】
得られた残渣を水(15mL)に懸濁し、酢酸エチル(3×15mL)で抽出した。合わせた有機層を水(20mL)、次いでブライン(15%,20mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過した有機層を真空下で濃縮して残渣を得、これをカラムクロマトグラフィー[カラム寸法:直径:1.5cm、高さ:10cm、シリカ:230~400メッシュ]によって精製し、ヘキサン(100mL)で、ついでヘキサン/酢酸エチル(95:5,100mL)の混合物で溶出した。ヘキサン/酢酸エチル画分を合わせ、真空下で濃縮してガム状塊を得た。
【0142】
生成物であるPOHカルバマートは120mgの重量および31%の収率を示した。H-NMR(400MHz,CDCl):δ 0.9(m,2H),1.4(m,2H),1.7(m,7H),1.95(m,8H),2.1(m,4H),2.3(s,3H),4.4(d,2H),4.7(dd,2H),5.6(br d,2H),6.6(s,1H),7.0(br s,1H),7.12(d,1H),7.19(d,1H),7.4(d,2H),7.85(d,2H);MS,m/e:751.8(M3%),574.3(100%),530.5(45%),396(6%)。注記:推定不純物からの更なる2H重複がNMR積分においては無視されている。
【0143】
実施例7: テモゾロミドPOHカルバマート(3-メチル 4-オキソ-3,4-ジヒドロイミダゾ[5,1-d][1,2,3,5]テトラジン-8-カルボニル)-カルバミン酸-4-イソプロペニルシクロヘキサ-1-エニルメチルエステル)の合成
反応スキームは以下のとおりである。
【化12】
【0144】
塩化オキサリル(0.13グラム,1.0mmol)を、温度をN下で10℃に維持しながら、1,2-ジクロロエタン(10mL)中のテモゾロミド(OChem Incorporation,0.1グラム,0.5mmol)の混合物に2分間かけてゆっくり加えた。反応混合物を室温に加温し、次いで3時間加熱還流した。過剰の塩化オキサリルおよび1,2-ジクロロエタンを真空下の濃縮によって除去した。得られた残渣を1,2-ジクロロエタン(15mL)に再溶解し、反応混合物をN下で10℃に冷却した。1,2-ジクロロエタン(3mL)中のペリリルアルコール(0.086グラム,0.56mmol)の溶液を5分間かけて加えた。反応混合物を室温に加温し、14時間撹拌した。1,2-ジクロロエタンを真空下で濃縮して残渣を得、これをヘキサンで粉砕した。得られた黄色固体を濾過し、ヘキサンで洗浄した。重量:170mg;収率:89%。H-NMR(400MHz,CDCl):δ 1.4-2.2(m,10H),4.06(s,3H),4.6-4.8(m,4H),5.88(br s,1H),8.42(s,1H),9.31(br s,1H);MS,分子イオンピークは観察されなかった。m/e:314(100%),286.5(17%),136(12%)。
【0145】
あるいは、テモゾロミドPOHカルバマートを以下の手順に従い合成した。温度をN下で10℃に維持しながら、塩化オキサリル(0.13グラム,1.0mmol)を1,2-ジクロロエタン(10mL)中のテモゾロミド(OChem Incorporation,0.1グラム,0.5mmol)の混合物に2分間かけてゆっくり加えた。反応混合物を室温に加温し、次いで3時間加熱還流した。過剰の塩化オキサリルおよび1,2-ジクロロエタンを真空下の濃縮によって除去した。得られた残渣を1,2-ジクロロエタン(15mL)に再溶解し、反応混合物をN下で10℃に冷却した。1,2-ジクロロエタン(3mL)中のペリリルアルコール(0.086グラム,0.56mmol)の溶液を5分間かけて加えた。反応混合物を室温に加温し、14時間撹拌した。1,2-ジクロロエタンを真空下で濃縮して残渣を得、これをショートシリカプラグカラム(カラム寸法:直径:2cm、高さ:3cm、シリカ:230~400メッシュ)によって精製し、ヘキサン/酢酸エチル(1:1,100mL)の混合物で溶出した。ヘキサン/酢酸エチル画分を合わせ、真空下で濃縮して白色固体残渣を得、これをヘプタンで粉砕し、濾過して白色固体を得た。重量:170mg;収率:89%。H-NMR(400MHz,CDCl):1.4-2.2(m,10H),4.06(s,3H),4.6-4.8(m,4H),5.88(br s,1H),8.42(s,1H),9.31(br s,1H);MS,分子イオンピークは観察されなかった;m/e:314(100%),286.5(17%),136(12%)。
【0146】
実施例8: ロリプラムPOHカルバマート(4-(3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシフェニル)-2-オキソ-ピロリジン-1-カルボン酸 4-イソプロペニルシクロヘキサ-1-エニルメチルエステル)の合成
【化13】
【0147】
ホスゲン(トルエン中の20%,13ml,26.2mmol)を、温度を10℃~15℃に維持しながら、乾燥トルエン(30mL)中のペリリルアルコール(2.0グラム,13.1mmol)および炭酸カリウム(5.4グラム,39.1mmol)の混合物に30時間かけて加えた。反応混合物を室温に加温し、N下で8.0時間撹拌した。反応混合物を水(30mL)でクエンチし、有機層を分離した。水層をトルエン(20mL)で抽出し、合わせた有機層を水(50mL×2)、ブライン(15%,30mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(20グラム)で乾燥させた。濾過した有機層を真空下で濃縮して、ペリリルクロロホルマートを油状物として得た。重量:2.5グラム;収率:89%。H-NMR(400MHz,CDCl):δ 1.5(m,1H),1.7(s,3H),1.8(m,1H),2.0(m,1H),2.2(m,4H),4.7(dd,4H);5.87(m,1H)。
【0148】
ブチルリチウム(2.5M,0.18mL,0.45mmol)を-72℃の乾燥THF溶液中のロリプラム(GL synthesis,Inc.,0.1グラム,0.36mmol)に、N下、5分間かけて加えた。反応混合物を-72℃で1.0時間撹拌した後、温度を-72℃に維持しながらペリリルクロロホルマート(4mLのTHFに溶解)を15分間かけて加えた。反応混合物を2.5時間撹拌し、飽和塩化アンモニウム(5mL)でクエンチした。反応混合物を室温に加温し、酢酸エチル(2×15mL)で抽出した。合わせた有機層を水(15mL)、ブライン(15%,15mL)で洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過した有機層を濃縮して油を得、これをカラムクロマトグラフィー[カラム寸法:直径:1.5cm、高さ:10cm、シリカ:230~400メッシュ]によって精製し、8% 酢酸エチル/ヘキサン(100mL)の混合物、次いで12% 酢酸エチル/ヘキサン(100mL)で溶出した。12% 酢酸エチル/ヘキサン画分を合わせ、真空下で濃縮してガム状固体を得た。重量:142mg;収率:86%。H-NMR(400MHz,CDCl):δ 1.5(m,1H),1.6(m,2H),1.7(s,3H),1.9(m,6H),2.2(m,5H),2.7(m,1H),2.9(m,1H),3.5(m,1H),3.7(m,1H),3.8(s,3H),4.2(m,1H),4.7(m,6H),5.8(br s,1H),6.8(m,3H);MS,m/e:452.1(M+1 53%),274.1(100%),206.0(55%)。
【0149】
実施例9: ペリリルアルコールによる再発性神経膠芽腫の治療
神経膠芽腫(GBM)患者、特に再発患者に対する、より良好な治療が緊急に必要とされている。ブラジルで行われた臨床試験は、ペリリルアルコール(POH)の鼻腔内送達がこの患者群において有効でありうることを示した。米国での第1/2a相臨床試験においてこの新規アプローチの安全性および有効性を評価するために、POHの高精製形態であるNEO100をcGMPで製造した。
【0150】
この研究は、再発性神経膠芽腫(GBM)患者における、鼻腔内NEO100を使用する、完了した第1相研究からの結果を示している。NEO100は天然モノテルペンペリリルアルコールの高純度cGMP製造形態である。本発明者らの結果は、鼻腔内NEO100が安全であり、再発性神経膠芽腫の治療に使用されうることを示している。IDH1野生型の初回再発GBMの歴史的(historical)生存期間は9.8か月であり、一方、IDH1突然変異体の初回再発GBMの生存期間は19.32か月である。無増悪生存期間の増加は認められなかった(Mandel JJ,Cachia D,Liu D,Wilson C,Aldape K,Fuller G,DeGroot JF:Impact of IDH1 mutation status on outcome in clinical trials for recurrent glioblastoma.J Neurooncol 129:147-154,2016)。IDH1突然変異再発性GBMにおけるNEO100での治療は3名の患者において予想外の長さの無増悪生存期間(平均32か月)および生存期間(全員が尚も生存、平均32か月)をもたらした。
【0151】
合計12名の再発性GBM患者をこの治験の第1相に登録した。ネブライザーおよび鼻マスクを使用する鼻腔内送達によってNEO100を投与した。投与は1日4回、毎日であった。3名の患者からなる4つのコホートは以下の用量の投与を受けた:96mg/回(384mg/日)、144mg/回(576mg/日)、192mg/回(768mg/日)および288mg/回(1152mg/日)。28日間の治療の完了を1サイクルとして記録した。有害事象を記録し、RANO基準による放射線撮影応答を2か月ごとに評価した。無増悪生存期間および全生存期間をそれぞれ6か月後および12か月後(PFS-6、OS-12)に測定した。
【0152】
鼻腔内NEO100は全ての用量レベルにおいて十分に忍容され、重篤な有害事象は報告されなかった。PFS-6は33%であり、OS-12は55%であり、OS中央値は15か月であった。4名の患者(33%)は24か月以上生存した。
【0153】
NEO100での鼻腔内神経膠腫治療は十分に忍容された。それは、歴史的対照と比較した場合、生存率の改善と相関しており、このことは、この新規鼻腔内アプローチが再発性GBMの治療に有用となりうる可能性を示している。
【0154】
再発性神経膠芽腫患者の予後は依然として惨憺たるものであり、より良好な治療選択肢が緊急に必要とされている。本発明者らの第1相研究は、天然リモネン関連化合物であるペリリルアルコールの高精製形態であるNEO100の鼻腔内投与を、この患者群に対する潜在的な新規治療法として評価した。再発性神経膠芽腫の患者はNEO100をネブライザーで毎日1日4回自己投与した。NEO100の安全性プロファイルは優れており、活性の示唆的証拠が認められた。鼻腔内NEO100は脳腫瘍治療に対する新規アプローチであり、再発性神経膠芽腫患者の治療成績を改善するのに臨床的に有用となる可能性を有する。
【0155】
序論
神経膠芽腫(GBM;WHOグレードIVの神経膠腫)は、成人の間で最も一般的な原発性悪性脳腫瘍である。治療レジメンに無関係に、大多数の患者は再発し、限られた治療選択肢に直面する。脳全体へのGBMの侵襲的浸潤は、典型的には、反復外科的切除の有効性を制限し、腫瘍細胞は、しばしば、更なる細胞毒性療法に対する耐性を獲得する。したがって、再発性GBMは反復手術、放射線再照射および追加的ラウンドの化学療法に十分には応答しない。これらの介入は全生存期間を程々に延長させうるが、これらの患者の予後は依然として極めて不良である。米国およびカナダにおいては、血管新生インヒビターであるベバシズマブが再発性GBMの治療に関して市場承認を受けている。それはVEGF(血管内皮増殖因子)に対するヒト化モノクローナル抗体であり、したがって標的化療法に相当する。それは単独で、または細胞毒性化学療法と組合せて使用されうる。しかし、利益を受ける持続期間は短く、全生存期間へのその影響は依然として限られたものであり、感動的なものではない。これが、欧州当局によって承認されなかった主な理由である
【0156】
改善された治療に対する根強い医学的要請を考慮して、本発明者らは、再発性GBM患者に対するペリリルアルコール(NEO100)の鼻腔内送達という新規タイプの介入を研究している。POH(p-メタ 1,7-ジエン-6-オールとも称される)は、それをメバロン酸経路によって合成するラベンダー、柑橘類、ペパーミントおよび幾つかの他の植物の精油から単離されるモノテルペンである。広範な前臨床研究はこの天然化合物の抗癌作用の強力な証拠をもたらした。POHの抗癌効果の厳密なメカニズムは不明であるが、おそらく、細胞周期停止、小胞体ストレスおよびアポトーシスの誘導を含む多面発現効果から生じるのであろう
【0157】
POHはメバロン酸経路のファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ(FPT)の酵素活性を抑制することが示されているため、POHは、Rasタンパク質の発癌活性(これは原形質膜固定および細胞分裂促進活性に翻訳後ファルネシル化を要する)の抑制を引き起こすのではないかという仮説が立てられた。しかし、これに関連した幾つかの研究は、決定的ではない曖昧な結果を示している。おそらく、Ras活性に対するいずれの影響も、POHが抗癌効果を発揮する幾つかのメカニズムの1つに過ぎないのであろう(詳細な参考文献を参照されたい)。種々の前臨床モデルにおける一貫した抗癌活性にもかかわらず、種々の固形腫瘍を有する患者における1990年代後半の多数の第1相および第2相試験は、説得力のある治療活性を実証できなかった。これらの研究においては、POHはゼラチンカプセルにおいて製剤化され、数グラムというかなり大量の用量で1日3~4回経口投与された。胃腸毒性が用量を制限することが判明し、一部の患者は、酷い慢性倦怠感(疲労、吐き気、げっぷ、逆流、下痢または便秘)ゆえに、治験が中止された7,9。結果として、経口POHは断念され、臨床的実施に導入されなかった。
【0158】
化学療法の経鼻送達は、全身毒性および初回通過代謝を最小限に抑えながら治療用物質を脳に送達するための新規パラダイムシフトプラットフォームとして想定されている10,12。片頭痛、脳卒中および他の神経学的症状のような種々の非癌状態においては、鼻から脳への有効な送達が実証されている9,13。例えば、鼻腔内インスリンは早期アルツハイマー病における認知を改善することが示されている14,15。まだ完全には特徴づけられていないが、脳内薬物取り込みの推定メカニズムは嗅神経および三叉神経ならびに鼻粘膜に関連していると考えられている。組合されたこれらの要因は薬物の直接的な接近および迅速な吸収を促進させ、それにより、より大きなバイオアベイラビリティ、および薬物応答の迅速な開始をもたらす13,16,17。しかし、これらの明確な利点にもかかわらず、癌治療用物質の経鼻送達は臨床実施においては確立されていない。
【0159】
再発性悪性神経膠腫患者で実施されたブラジルにおける第2相研究は癌治療の新規パラダイムとしてPOHの鼻腔内送達の先駆けとなった。商用グレードのPOHが1日4回自己投与された。これらの研究から公開された幾つかの報告は、この代替的な薬物送達方式がこの患者群において活性をもたらす可能性を有することを示した18,20。そのうえ、長期的なCNSまたは全身性の重篤な有害事象を伴うことなく、良好な忍容性が認められ、患者のコンプライアンスも、報告によれば非常に高かった(>95%)20。放射線撮影に基づく退縮が報告された19,20
【0160】
本発明者らは、再発性GBMを有する患者において、現行適正製造基準(cGMP)条件下で製造されたPOHの高精製形態である鼻腔内NEO100の臨床的安全性および活性を調べることに着手した。第1/2a相試験が現在進行中であり、ここでは、完了した第1相部分からの結果を報告する。
【0161】
2.患者および方法
第1相治験
「再発性グレードIV神経膠腫におけるNEO100の安全性および有効性の非盲検第1/2A相用量漸増研究(An Open-Label,Phase 1/2A Dose Escalation Study of Safety and Efficacy of NEO100 in Recurrent Grade IV Glioma)」なる題名の現在進行中の介入臨床試験[ClinicalTrials.gov識別子:NCT02704858]は多施設試験である。参加施設はクリーブランドクリニック(Cleveland Clinic)、ワシントン大学(University of Washington/Seattle)、ウィスコンシン大学(University of Wisconsin)および南カリフォルニア大学(University of Southern California)である。それは、臨床データ管理(Clinical Data Management)CROとして、ClinDatrix,Inc.(Irvine,CA)と共に、NeOnc Technologies,Inc.(Los Angeles,CA)によって後援されている。治験審査委員会(institutional review board)(IRB)によって承認されたプロトコールに従い、かつ、IRSによって承認された適切なインフォームドコンセントフォームへの署名の後、患者が登録された。この治験の第1相部分では、最初の患者は2017年4月に登録され、12人目の患者が2019年6月に登録された。第1相の主要目的は以下のとおりであった:(i)NEO100の鼻腔内投与の安全性および忍容性を判断すること、ならびに(ii)NEO100の最大耐用量を特定すること。
【0162】
NEO100の投与 - NEO100は、Norac Pharma(Azusa,CA)においてcGMP条件下で製造された高精製ペリリルアルコールである。それは、ネブライザーおよび鼻マスクを使用する鼻腔内投与により、1日4回送達される。診療所の看護師による最初の実地練習および説明の後、患者は各用量を自己投与する。NEO100は、エタノール:グリセロール(50:50,v/v)中の10%ストック溶液として製剤化されたものとして、各患者に提供される。各使用前に、該ストック溶液は水で希釈され、ネブライザー内に充填される。
【0163】
主要包含基準 - 包含基準として、以下のものが挙げられる:(i)放射線撮影に基づいて確認された進行性または再発性グレードIV神経膠腫;および安定用量のステロイドが少なくとも5日間投与されている。(ii)患者は以前の放射線治療およびテモゾロミド治療が奏功しなかった可能性が高い。(iii)18歳。(iv)KPS600、または0~2のECOG活動指標。(v)少なくとも3か月の予想生存期間。(vi)治験に入る2週間以内のガドリニウムを用いたベースラインMRI。(vii)登録前の2週間にわたって安定用量の抗てんかん薬で発作が抑制されている。
【0164】
応答評価 - 患者は標準治療の一部としてガドリニウム増強脳MRIを受ける。ベースライン腫瘍測定を登録後2週間以内に行い、RANO基準(神経腫瘍学における応答評価)によって評価する。MRIを、28日間の各偶数サイクル(すなわち、サイクル2、4、6)の後、および臨床症状に基づいて疾患進行が疑われるたびに反復する。腫瘍応答を、高悪性度神経膠腫に関するマクドナルド(MacDonald)応答基準およびRANO応答基準の両方を用いて評価し、これは放射線イメージング、神経学的状態およびステロイド投与を考慮している。有害事象(AE)の発生、身体検査所見、バイタルサインおよび臨床検査結果によって、試験全体を通じて、安全性を評価する。NCI有害事象共通用語基準(Common Terminology Criteria for Adverse Events)v.4.021を用いて、重症度に関してAEを等級付けする。
【0165】
結果
ここに示すのは、テモゾロミドでの標準的化学放射線療法が奏功しなかった後に再発性GBMを有する患者における鼻腔内投与NEO100の現在進行中の第1/2a相試験の完了した第1相部分の結果である。12名の患者が登録された(人口統計およびベースライン特性を表1に示す)。3名の患者の連続的コホートのそれぞれは384mg/日、576mg/日、768mg/日および1152mg/日の漸増用量で鼻腔内NEO100の投与を受けた。患者は、4つの等しい用量に分割されたこれらの量を、約5~6時間の間隔で毎日、自己投与した。
【0166】
毎月のサイクルのいずれにおいても、コホートのいずれにおいても、重度(グレード3または4)の副作用は認められなかった。他の副作用(グレード1)は鼻の痛みまたはかゆみ、鼻水、鼻周囲の皮膚炎症または頭痛からなるものであった。コホート2の1名の患者においてグレード2の白血球減少症の反復が認められたが、NEO100治療との因果関係は不明であった(表2)。
【0167】
当初、NEO100治療は、継続的な6か月間の治療として計画されていた。6か月の時点で安定な疾患を有する患者は延長使用プロトコルでの治療の継続が可能であったが、早期に進行した患者は治療を中止した。最初の6か月間の無増悪生存率を図1および表3に要約する。示されているとおり、コホート1(最低用量)の患者はNEO100治療を2サイクル(すなわち、2か月)しか完了しなかった。なぜなら、これらのサイクルの終わりに、進行性疾患が認められたからである。コホート2においても、2名の患者が早期(1サイクル後および2サイクル後)に進行性疾患を経験したが、3人目の患者(識別番号202)は6か月の時点で安定な疾患を有し、それ以降、現時点で合計33サイクルにわたってNEO100の投与を続けている。MRIで測定したところ、彼女の腫瘍は75%以上縮小した。コホート3では、1名の患者のみが進行性疾患ゆえに治療を早期に終了したが、その他の2名の患者は6か月の時点で安定しており、したがって治療を継続した。これら2名の患者のうちの1名(識別番号302)は11サイクルを完了し、その後、NEO100治療を受けずに更に16か月間経過したが、尚も生存している。もう1名(識別番号301)は合計24サイクルの治療を続けており、尚も生存している。この患者も放射線検査に基づく完全な寛解を示し、これは現在まで続いている。コホート4では、2名の患者が、それぞれ2か月および4か月における進行ゆえに、全6か月の治療を完了しなかった。これらの患者のうちの1名(識別番号402)はNEO100の中止後に更に13か月間生存した。別の患者(識別番号401)は4サイクルの完了の直後に追跡調査から外されたため、彼の現在の状態は不明である。このコホートの3人目の患者(識別番号403)は6か月の時点では安定な疾患を示したが、その後急速に悪化し、3か月後に死亡した。全体として、この第1相に登録された患者(n=12)の群全体のPFS-6は33%であり、コホート1が最低PFS-6(0%)を示し、コホート3が最高PFS-6(67%)を示した(図1)。
【0168】
放射線撮影応答の例を図2に示す。この図は、10か月間のNEO100治療の後の部分応答、および12か月間のNEO100治療の後の完全応答を示している。12か月の時点の全生存率(OS-12)は55%であり、24か月の時点のそれ(OS-24)は37%であり、OS中央値は15か月であった。
【0169】
図3A)。全体として、顕著に長い生存期間を示した患者が数名いた。4名の患者は少なくとも24か月生存し、そのうち3名は尚も生存している(表3)。したがって、PFS-6がわずか33%であるにもかかわらず、OS中央値が15か月という有望な結果が得られた。更に分析するために、全ての患者を2つの群に分けた。すなわち、少なくとも6サイクルのNEO100を完了した患者(n=4)の群、および完了しなかった患者(n=?)の群である。後者の群は1サイクルの患者1名、2サイクルの患者6名および4サイクルの患者1名(この患者は4サイクル完了の直後に追跡調査から外されたため、比較から除外された)を含んでいた。
【0170】
興味深いことに、これら2つの群の間には、長期生存率において、統計的有意性には達しなかったものの顕著な差が認められた。図3Bに示されているとおり、少なくとも6サイクルを完了した4名の患者では、OS-24は75%であった。比較すると、1サイクルまたは2サイクルのみを完了した評価可能な6名の患者では、OS-24は14%であった。しかし、この第2の群の治療成績は第1の群と比べて不良であったにもかかわらず、OS中央値は注目に値する11か月であり、このことは再び、早期進行にもかかわらず、長期生存が非常に有望であることを示している。
【0171】
また、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(IDH1)遺伝子の状態に基づいて全生存期間を分析した。IDH1のアミノ酸132の突然変異はグレードIIおよびIIIの星状細胞腫および乏突起神経膠腫ならびにこれらの病変から発生する神経膠芽腫の70%以上に存在する。N.England J.Med.2009;360:765-773を参照されたい。IDH1/IDH2突然変異分析は、SNaPshot Multiplex PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を使用する標準的な臨床検査プロトコルの一部として行われうる。例えば、https://www.labcorp.com/tests/481484/i-idh1-idh2-i-mutation-analysis(11/11/2021付検索)、https://www.mayocliniclabs.com/test-catalog/Clinical+and+Interpretive/92361(11/11/2021付検索)、https://www.mdanderson.org/research/research-resources/core-facilities/molecular-diagnostics-lab/services/idh1-mutation-analysis.html(11/11/2021付検索)を参照されたい。この遺伝子における突然変異は、新たに診断された神経膠腫患者における生存上の利点をもたらすことが公知である22図3Cに示されているとおり、IDH1突然変異腫瘍を有する患者に関して、有意に長い(p=0.018)全生存期間が認められ、5名中4名(80%)の患者が少なくとも24か月生存している。比較すると、野生型IDH1を有する患者はいずれも、18か月を超えては生存しなかったが、OS中央値は尚も、注目に値する11か月であった。鼻腔内NEO100の最初の1日量の投与後の種々の時点で全ての患者から得られた血漿において、ペリル酸(PA)の存在が測定された。これらの採血は最初の28日サイクルの第1日および第8日に行われ、第2サイクルの初日にも反復された。PAはペリリルアルコールの主要代謝産物であり、より安定であり、したがって、簡便で容易に検出できる、POH曝露のマーカーとなる。図4に示されているとおり、PAの血漿中濃度は容易に定量可能であり、NEO100投与後5分で最大濃度で存在し、最初の半減期は約20分であった。最大血漿PA濃度の平均は、より高い用量を投与した患者において、より高かった。また、各コホート内で、これらの濃度は、最初の用量投与(サイクル1の第1日)の測定値と比較して、後の2日間で顕著に高かった。絶対値における顕著な患者間変動にもかかわらず、Cmaxは鼻腔内送達後2時間以内にほとんどの患者で>90%減少した。全体として、これらのデータは、全身循環内への薬物の迅速な進入、ならびにそれに続く、排泄の一次速度論および蓄積の欠如を示した。
【0172】
考察
本研究は、鼻腔内NEO100が、1日4回投与された場合、安全であり、再発性GBM患者において潜在的に有効であるという証拠を提供する。この治療は全ての用量レベルで非常に忍容性が高く、重篤な有害事象は報告されなかった。使用した最高用量(288mgの4つの等量に分割された1152mg/日)において、MTDには達しなかった。これらの結果は、再発性GBM、グレードIIIの未分化星状細胞腫および未分化希突起膠腫を有する患者において、133mg qid(534mg/日)のより低い投与量であったものの、市販グレードのPOHを使用したブラジルにおける第1/2相試験で得られた結果と一致している18,20。それらの研究においては、プロトコールの順守率は高く(>95%)、鼻の痛みが時折引き起こされたが、数年間の継続的適用の後でさえも、重篤な副作用は認められなかった。
【0173】
本発明者らの現在の研究では患者数が少ないにもかかわらず、再発性GBM患者に対する鼻腔内NEO100の有効性の初期分析は有望であると思われる。PFS-6は33%であり、OS-6は92%であり、OS-12は58%であり、4名の患者(33%)は24か月間以上生存した。これは再発GBM患者での以前の単剤研究と非常に良好に比肩され、その幾つかを補足表1に要約する。Wongらは、テモゾロミド以前の時代に実施された種々の治療による8つの第2相研究をレビューしており、それは平均21%のOS-12および5.7か月のOS中央値を示した23。テモゾロミドでの標準的な化学放射線療法(別名Stuppプロトコル)が奏功しなかった患者を主に対象とした過去8年間で完了した幾つかのより新しい研究はまちまちの結果を示しており、生存率における増加の改善を達成したに過ぎなかった。例えば、交番電場(腫瘍治療場、TTF、NovoTTF-100A)は、概念的に新規なアプローチとして10年前に登場したが、それは、歴史的対照または通常の化学療法、例えばロムスチン26またはフォテムスチン27と比較して、再発状況における結果の改善を示さなかった25。ベバシズマブは再発性GBMの治療に関して米国で早期承認されたが、OS-12およびOS中央値に対するその影響には依然として言及されていない28,30
【0174】
プログラム死1(PD-1)免疫チェックポイント受容体を標的とする完全ヒトモノクローナル抗体であるニボルマブを使用したごく最近の治験も実質的な改善を示しておらず、生存率の結果は通常の化学療法またはベバシズマブで達成されたものと同等であった31
【0175】
ごく最近の2つの治験は、OS中央値が、1年という目標水準を超える結果を報告した(補足表1)。1つの研究は、別個に投与されるToca FC(徐放性5-フルオロシトシン)を代謝拮抗物質5-フルオロウラシルへと変換する酵母シトシンデアミナーゼを運搬する非溶解性レトロウイルス複製ベクターであるToca-511(vocimagene amiretrorepvec)を使用した32。この治験は55%の12%および13.6か月のOS中央値を達成した。腫瘍細胞の表面上で一般的に発現されるポリオウイルス受容体CD155を認識する組換えポリオライノウイルスキメラであるPVSRIPOの直接腫瘍内送達でも、同様の結果が得られた33。この治験は54%のOS-12および12.5か月のOS中央値を達成した。鼻腔内NEO100に関する本発明者らの本研究の結果は、これらの改善された結果と非常に良好に比肩される。なぜなら、本発明者らは55%のOS-12および15か月のOS中央値を達成したからである。
【0176】
本発明者らの研究の重要な利点はその非常に低い毒性、非侵襲性および重篤な有害事象の欠如にあり、このことは、この治療アプローチが患者の生活の質の低下を招かないことを強調するものである。比較すると、前記の多数の他の治療は、最適とは言えない安全性プロファイルを有する。例えば、ニトロソウレアはその骨髄抑制、肝臓/腎臓毒性または間質性肺疾患に関して公知であり、ベバシズマブは出血および高血圧を引き起こしうる。PVSRIPOの場合に行われている対流促進送達による直接投与は侵襲的であり、外科用カテーテルの留置および抜去に関連するあらゆるリスクを含む。一般に、併用レジメンは、優れた活性に関する証拠をもたらさず、一般に、より著しい毒性を生じさせる34
【0177】
本発明者らは更に、NEO100による計画された6か月間の治療の完了の前に進行した患者でさえも、予想よりも長生きしたという興味深い観察を行った。進行に際して、これらの患者は、その神経腫瘍医の判断に基づいて、最適な標準治療の組合せに切り替えられた。更に、NEO100の早期停止につながる、MRIスキャンにおける偽進行があった可能性がある。本研究の第IIa部分においては、これらの未解決の問題に特に注意を払うことが重要である。もう1つの興味深い結果は、IDH1突然変異を有する患者が生存上の利点を有するらしいという本発明者らの観察であった。IDH1遺伝子の突然変異は、悪性神経膠腫における、より良好な全生存期間の公知予測因子である22。しかし、この関連性は、新たに診断された患者の場合には、堅固に確立されているが、それが再発状況にも当てはまるかどうかは不明である。なぜなら、一貫性のない結果(少数の患者に関するもの)が報告されているからである。例えば、Mandelら35は、IHD1突然変異が、初回再発時のみではあるものの、生存率に対して正の影響を及ぼしうると報告した。しかし、Tabeiら36による別の報告はIDH1突然変異と最初の進行の後の生存との正の相関を確認できなかった。NEO100治療患者に関する本発明者らの結果は、IDH1突然変異状態を有する患者が、この治験における登録時から、有意に長く生存したことを示している。
【0178】
結論として、NEO100による鼻腔内神経膠腫治療は十分に忍容された。それは、歴史的対照と比較した場合の生存率の改善と相関しており、このことは、この新規概念アプローチが再発性GBMの治療に有用となりうる可能性を示している。それは、その非常に低い毒性プロファイルゆえに、有害事象を増加させることなく、このレジメンを他のより負担のかかるアプローチと組合せる可能性をもたらしうる。また、簡便な投与プロセスおよび継続的な生活の質に基づいて、鼻腔内NEO100に際して進行した患者は、更なる治療法を追求する傾向がより強いかもしれない。NEO100に対する耐性メカニズムは未だ特定も特徴付けもされていないが、補足表1に示されている、進行後の標準的な治療およびアプローチは、重要な活動および利益をそのような患者に尚ももたらしうると推測されうる。
【0179】
本発明の範囲は、前記に具体的に示され記載されているものによって限定されるものではない。当業者は、材料、構成、構造および寸法の、示されている例に対する適切な代替物が存在することを認識するであろう。本明細書においては、特許および種々の刊行物を含む多数の参考文献が引用され、考察されている。そのような参考文献の引用および考察は本発明の説明を明瞭化するために提供されているに過ぎず、いずれの参考文献も、本明細書に記載されている本発明の先行技術であると認めるものではない。本明細書において引用され考察されている全ての参考文献の全体を参照により本明細書に組み入れることとする。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されているものの変形、修飾よび他の実施が当業者に見出されるであろう。本発明の特定の実施形態が示され記載されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、変更および修飾が施されうることが当業者に明らかであろう。前記の説明および添付図面に記載されている事柄は、限定的なものとしてではなく単なる例示目的で記載されているに過ぎない。
【0180】
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【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】