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特表2023-550036富化された生体活性腎細胞集団、その特徴及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-30
(54)【発明の名称】富化された生体活性腎細胞集団、その特徴及び使用
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20231122BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20231122BHJP
   A61K 35/22 20150101ALI20231122BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 31/728 20060101ALI20231122BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
C12Q1/68
C12N5/071
A61K35/22
A61P13/12
A61K31/728
G01N33/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528161
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(85)【翻訳文提出日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 US2021059215
(87)【国際公開番号】W WO2022104120
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】63/113,437
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/214,483
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/255,704
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519031841
【氏名又は名称】ベルトラム, ティモシー エー.
(71)【出願人】
【識別番号】519031830
【氏名又は名称】ジャイン, ディーパク
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラム, ティモシー エー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャイン, ディーパク
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B065
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CB01
2G045DA36
4B063QA05
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065CA23
4B065CA24
4B065CA46
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA25
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB41
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA81
(57)【要約】
治療可能性を有する富化された不均一腎細胞集団を識別する方法、治療可能性を有する富化された不均一腎細胞集団、及びその使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する方法であって、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞が少なくとも1つの腎形成マーカーを発現するかどうかを判定する工程と、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞が前記少なくとも1つの腎形成マーカーを発現すると判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する工程と、
を含み、ここで、前記少なくとも1つの腎形成マーカーは、SIX2、OSR1、LHX1、RET、及びFGF8の1つ以上を含む、方法。
【請求項2】
前記判定する工程は、前記少なくとも1つの腎形成マーカーを発現する前記富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージを決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの腎形成マーカーは、SIX2を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの腎形成マーカーは、SIX2を含み、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で約6.0%以下がSIX2を発現する場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの腎形成マーカーは、OSR1を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの腎形成マーカーは、OSR1を含み、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約36%~約85%がOSR1を発現する場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの腎形成マーカーは、LHX1を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの腎形成マーカーは、LHX1を含み、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%~約58%がLHX1を発現すると判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの腎形成マーカーは、RETを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの腎形成マーカーは、RETを含み、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%~約90%がRETを発現する場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの腎形成マーカーは、FGF8を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの腎形成マーカーは、FGF8を含み、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約0.48%~約59%がFGF8を発現する場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの腎形成マーカーは、
(a)SIX2及びOSR1、又は、
(b)SIX2及びLHX1、又は、
(c)SIX2及びRET、又は、
(d)SIX2及びFGF8、又は、
(e)OSR1及びLHX1、又は、
(f)OSR1及びRET、又は、
(g)OSR1及びFGF8、又は、
(h)LHX1及びRET、又は、
(i)LHX1及びFGF8、又は、
(j)RET及びFGF8、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの腎形成マーカーは、
(a)SIX2及びOSR1、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約36%がOSR1を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(b)SIX2及びLHX1、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%超がLHX1を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(c)SIX2及びRET、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%超がRETを発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(d)SIX2及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(e)OSR1及びLHX1、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約36%がOSR1を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%超がLHX1を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(f)OSR1及びRET、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約36%がOSR1を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%超がRETを発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(g)OSR1及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約36%がOSR1を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(h)LHX1及びRET、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%超がLHX1を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%超がRETを発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(i)LHX1及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%超がLHX1を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(j)RET及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%超がRETを発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの腎形成マーカーは、
(a)SIX2及びOSR1、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約36%~約85%がOSR1を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(b)SIX2及びLHX1、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%~約58%がLHX1を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(c)SIX2及びRET、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%~約90%がRETを発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(d)SIX2及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約0.48%~約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(e)OSR1及びLHX1、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約36%~約85%がOSR1を発現することが判定され、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%~約58%がLHX1を発現すると判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(f)OSR1及びRET、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約36%~約85%がOSR1を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%~約90%がRETを発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(g)OSR1及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約36%~約85%がOSR1を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約0.48%~約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(h)LHX1及びRET、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%~約58%がLHX1を発現すると判定され、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%~約90%がRETを発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(i)LHX1及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%~約58%がLHX1を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約0.48%~約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(j)RET及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%~約90%がRETを発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約0.48%~約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの腎形成マーカーは、
(a)SIX2、OSR1、及びLHX1、又は、
(b)SIX2、OSR1、及びRET、又は、
(c)SIX2、OSR1、及びFGF8、又は、
(d)SIX2、LHX1、及びRET、又は、
(e)SIX2、LHX1、及びFGF8、又は、
(f)SIX2、RET、及びFGF8、又は、
(g)OSR1、LHX1、及びRET、又は、
(h)OSR1、LHX1、及びFGF8、又は、
(i)OSR1、RET、及びFGF8、又は、
(j)LHX1、RET、及びFGF8、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの腎形成マーカーは、
(a)SIX2、OSR1、及びLHX1、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約36%がOSR1を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%超がLHX1を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(b)SIX2、OSR1、及びRET、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約36%がOSR1を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%超がRETを発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(c)SIX2、OSR1、及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約36%がOSR1を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(d)SIX2、LHX1、及びRET、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%超がLHX1を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%超がRETを発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(e)SIX2、LHX1、及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6.0%がSIX2を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%超がLHX1を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(f)SIX2、RET、及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%超がRETを発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(g)OSR1、LHX1、及びRET、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約36%がOSR1を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%超がLHX1を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%超がRETを発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(h)OSR1、LHX1、及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約36%がOSR1を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%超がLHX1を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(i)OSR1、RET、及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約36%がOSR1を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%超がRETを発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(j)LHX1、RET、及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%超がLHX1を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%超がRETを発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの腎形成マーカーは、
(a)SIX2、OSR1、及びLHX1、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約36%~約85%がOSR1を発現することが判定され、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%~約58%がLHX1を発現すると判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(b)SIX2、OSR1、及びRET、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約36%~約85%がOSR1を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%~約90%がRETを発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(c)SIX2、OSR1、及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約36%~約85%がOSR1を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約0.48%~約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(d)SIX2、LHX1、及びRET、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%~約58%がLHX1を発現すると判定され、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%~約90%がRETを発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(e)SIX2、LHX1、及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%~約58%がLHX1を発現すると判定され、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約0.48%~約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(f)SIX2、RET、及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%~約90%がRETを発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約0.48%~約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(g)OSR1、LHX1、及びRET、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約36%~約85%がOSR1を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%~約58%がLHX1を発現すると判定され、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%~約90%がRETを発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(h)OSR1、LHX1、及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約36%~約85%がOSR1を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%~約58%がLHX1を発現すると判定され、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約0.48%~約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(i)OSR1、RET、及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約36%~約85%がOSR1を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%~約90%がRETを発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約0.48%~約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;又は、
(j)LHX1、RET、及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%~約58%がLHX1を発現すると判定され、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%~約90%がRETを発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約0.48%~約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの腎形成マーカーは、
(a)SIX2、OSR1、LHX1、及びRET、
(b)SIX2、OSR1、LHX1、及びFGF8、
(c)SIX2、LHX1、RET、及びFGF8、
(d)SIX2、OSR1、RET、及びFGF8、
(e)OSR1、LHX1、RET、及びFGF8、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの腎形成マーカーは、
(a)SIX2、OSR1、LHX1、及びRET、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約36%がOSR1を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%超がLHX1を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%超がRETを発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;
(b)SIX2、OSR1、LHX1、及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約36%がOSR1を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%超がLHX1を発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;
(c)SIX2、LHX1、RET、及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%超がLHX1を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%超がRETを発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;
(d)SIX2、OSR1、RET、及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約36%がOSR1を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%超がRETを発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;
(e)OSR1、LHX1、RET、及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約36%がOSR1を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%超がLHX1を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%超がRETを発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの腎形成マーカーは、
(a)SIX2、OSR1、LHX1、及びRET、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約36%~約85%がOSR1を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%~約58%がLHX1を発現すると判定され、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%~約90%がRETを発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;
(b)SIX2、OSR1、LHX1、及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約36%~約85%がOSR1を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%~約58%がLHX1を発現すると判定され、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約0.48%~約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;
(c)SIX2、LHX1、RET、及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%~約58%がLHX1を発現すると判定され、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%~約90%がRETを発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約0.48%~約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;
(d)SIX2、OSR1、RET、及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約36%~約85%がOSR1を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%~約90%がRETを発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約0.48%~約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;
(e)OSR1、LHX1、RET、及びFGF8、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約36%~約85%がOSR1を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%~約58%がLHX1を発現すると判定され、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%~約90%がRETを発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約0.48%~約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する;
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの腎形成マーカーは、SIX2、OSR1、LHX1、RET、及びFGF8を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの腎形成マーカーは、SIX2、OSR1、LHX1、RET、及びFGFを含み、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約36%がOSR1を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%超がLHX1を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%超がRETを発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項2に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの腎形成マーカーは、SIX2、OSR1、LHX1、RET、及びFGF8を含み、ここで、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約36%~約85%がOSR1を発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%~約58%がLHX1を発現すると判定され、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%~約90%がRETを発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約0.48%~約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項2に記載の方法。
【請求項25】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞がネフリン、ポドシン、又はRACK-1の1つ以上を発現するかどうかを判定することと、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞がネフリン、ポドシン、又はRACK-1の1つ以上を発現すると判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することと、
を更に含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記1つ以上は、ネフリンを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記1つ以上は、ポドシンを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記1つ以上は、ポドシンを更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記1つ以上は、RACK-1を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記1つ以上は、RACK-1を更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記1つ以上は、RACK-1を更に含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記1つ以上は、RACK-1を更に含む、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約4%~約99%がネフリンを発現することが判定される場合に、前記不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約90%がポドシンを発現することが判定される場合に、前記不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約4%~約99%がネフリンを発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約90%がポドシンを発現することが判定される場合に、前記不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約85%がRACK-1を発現することが判定される場合に、前記不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約4%~約99%がネフリンを発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約85%がRACK-1を発現することが判定される場合に、前記不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約90%がポドシンを発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約85%がRACK-1を発現することが判定される場合に、前記不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約4%~約99%がネフリンを発現し、前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約90%がポドシンを発現し、かつ前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約85%がRACK-1を発現することが判定される場合に、前記不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞がBMP4、BMP7、GDNF、HOX11、EYA1、SAL1、及びSIX4の1つ以上を発現するかどうかを判定することと、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞がBMP4、BMP7、GDNF、HOX11、EYA1、SAL1、及びSIX4の1つ以上を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することと、
を更に含む、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞がPAX2、CITED1、FGFR1、FGF7、FGF10、HOX10、POD1、及びMUC1の1つ以上を発現するかどうかを判定することと、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞がPAX2、CITED1、FGFR1、FGF7、FGF10、HOX10、POD1、及びMUC1の1つ以上を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することと、
を更に含む、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記1つ以上は、PAX2を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞がBMP7、SMAD、LIF、FOXD1、HOXB7、ALK3、DKK1、及びSPRY1の1つ以上を発現するかどうかを判定することと、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞がBMP7、SMAD、LIF、FOXD1、HOXB7、ALK3、DKK1、及びSPRY1の1つ以上を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することと、
を更に含む、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞がヒアルロナン媒介運動性受容体(RHAMM)、C2、C3、C4、フィブリノーゲン、凝固第XIII因子、TEK、KDR、Notch1、Notch3、Timp3、Vwf、Adam15、Gas6、Igfbp1、又はTm4sf4の遺伝子の1つ以上を発現するかどうかを判定することと、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞がRHAMM、C2、C3、C4、フィブリノーゲン、凝固第XIII因子、TEK、KDR、Notch1、Notch3、Timp3、Vwf、Adam15、Gas6、Igfbp1、又はTm4sf4の遺伝子の1つ以上を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することと、
を更に含む、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記1つ以上の遺伝子は、RHAMMを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
請求項1~45のいずれか一項に記載の方法に従って識別された富化された不均一腎細胞集団。
【請求項47】
請求項46に記載の富化された不均一腎細胞集団を含む医薬組成物。
【請求項48】
治療を必要とする患者における腎臓疾患を治療する方法であって、
治療的有効量の請求項47に記載の医薬組成物を投与すること、
を含む、方法。
【請求項49】
腎臓疾患を治療する医薬の製造における、請求項47に記載の医薬組成物の使用。
【請求項50】
富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する方法であって、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞によるRHAMM、C2、C3、C4、フィブリノーゲン、凝固第XIII因子、TEK、KDR、Notch1、Notch3、Timp3、Vwf、Adam15、Gas6、Igfbp1、及びTm4sf4の遺伝子の1つ以上の発現レベルを決定することと、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞による前記1つ以上の遺伝子の発現レベルが、コントロール腎細胞集団の細胞による前記1つ以上の遺伝子の発現レベルと比べて増加している場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することと、
を含む、方法。
【請求項51】
前記1つ以上の遺伝子は、RHAMMを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記富化された不均一腎細胞集団は、密度勾配分離の工程を含む方法を介して調製され、かつ前記コントロール腎細胞集団は、前記密度勾配分離の工程に供された細胞を含む、請求項50又は51に記載の方法。
【請求項53】
前記方法を介して調製された前記富化された不均一腎細胞集団は、約1.04g/mL超の浮遊密度の細胞を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
請求項50~53のいずれか一項に記載の方法に従って識別された富化された不均一腎細胞集団。
【請求項55】
請求項54に記載の富化された不均一腎細胞集団を含む医薬組成物。
【請求項56】
ヒアルロン酸を更に含む、請求項55に記載の医薬組成物。
【請求項57】
治療を必要とする患者における腎臓疾患を治療する方法であって、
治療的有効量の請求項55又は56に記載の医薬組成物を投与すること、
を含む、方法。
【請求項58】
腎臓疾患を治療する医薬の製造における、請求項55又は56に記載の医薬組成物の使用。
【請求項59】
富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する方法であって、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞がSIX2、OSR1、RET、及びポドシンを発現するかどうかを判定することと、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞がSIX2、OSR1、RET、及びポドシンを発現すると判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することと、
を含む、方法。
【請求項60】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約10%がSIX2を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%がSIX2を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約36%がOSR1を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項59~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約36%~約85%がOSR1を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項59~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約90%までがRETを発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項59~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の85%超がポドシンを発現することが判定される場合に、前記集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項59~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞がLHX1、FGF8、RACK-1、又はネフロンの1つ以上を発現するかどうかを判定することと、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞がLHX1、FGF8、RACK-1、又はネフロンの1つ以上を発現すると判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することと、
を更に含む、請求項59~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記1つ以上は、LHX1を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%~約58%がLHX1を発現すると判定されることが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記1つ以上は、FGF8を含む、請求項66~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約0.48%~約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記1つ以上は、RACK-1を含む、請求項66~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約85%がRACK-1を発現することが判定される場合に、前記不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記1つ以上は、ネフリンを含む、請求項66~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約4%~約99%がネフリンを発現することが判定される場合に、前記不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する方法であって、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞がネフリン、ポドシン、及びLHX1を発現するかどうかを判定することと、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞がネフリン、ポドシン、及びLHX1を発現する場合に、前記集団を治療可能性を有するものとして識別することと、
を含む、方法。
【請求項76】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の70%超がネフリンを発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の75%超がネフリンを発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の80%超がポドシンを発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項75~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の90%超がポドシンを発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の10%超がLHX1を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項75~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の20%超がLHX1を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞がSIX2、OSR1、RET、FGF8、又はRACK-1の1つ以上を発現するかどうかを判定することと、
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞がSIX2、OSR1、RET、FGF8、又はRACK-1の1つ以上を発現すると判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することと、
を更に含む、請求項75~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記1つ以上は、SIX2を含む、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約15%がSIX2を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記1つ以上は、OSR1を含む、請求項82~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約36%~約84%がOSR1を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記1つ以上は、RETを含む、請求項82~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約90%までがRETを発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記1つ以上は、FGF8を含む、請求項82~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の約0.48%~約59%がFGF8を発現することが判定される場合に、前記富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記1つ以上は、RACK-1を含む、請求項82~90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約85%がRACK-1を発現することが判定される場合に、前記不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
請求項75~92のいずれか一項に記載の方法に従って治療可能性を有するものとして識別された前記富化された不均一腎細胞集団を含む医薬組成物。
【請求項94】
治療を必要とする患者における腎臓疾患を治療する方法であって、
治療的有効量の請求項93に記載の医薬組成物を投与すること、
を含む、方法。
【請求項95】
腎臓疾患を治療する医薬の製造における、請求項93に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
慢性腎臓疾患(CKD)は、治療的介入がなければ悪化することになる進行性の腎症を特徴としており、最終的に患者は末期腎疾患(ESRD)に至る可能性がある。米国から欧州までの有病率データによれば、一般母集団のおよそ10%が病期1~病期3のCKDを患っていることが分かっている(ヨーロッパ腎臓学会2009年(ERA, 2009)、米国腎臓病データシステム2011年(USRDS, 2011)、非特許文献1)。世界中で、CKD及びESRDの罹患率及び有病率は増加している一方で、治療成績は依然として不良のままである(非特許文献2)。慢性腎臓疾患の有病率は、米国だけでも1996年から2006年の間に33%超増加した(非特許文献3)。CKDの罹患率の増加は重大な公衆衛生への脅威をもたらし、その影響は大きくなることが予測されるばかりである。
【0002】
ESRDの最大の原因は真性糖尿病であり(非特許文献4)、CKDの罹患率は、主に2型糖尿病の罹患率の増加が原因で増加し続けている(非特許文献4)。CKDは、しばしば高血圧症及び腎血管疾患を含む基礎となる併存症及び/又は危険因子による有害な転帰を伴う(非特許文献5、非特許文献6)。重篤な併存症のため、CKDを伴う患者は生存してESRDまで進行するよりも早期に死亡する可能性が5倍~11倍高い(非特許文献7、非特許文献8)。ESRD患者が生存するには腎代替療法(透析又は移植)が必要とされる。現在、米国では50万人を超える人々が透析又は腎臓移植を必要とし、メディケアコストにおいて年間220億ドル超を占めている(総メディケア予算の6%)(非特許文献9)。腎臓移植はCKDについての決定的な標準治療であり、透析よりも良好な長期生存率(及び費用対効果)をもたらすが、臓器は相変わらず慢性的に不足したままである。死体腎臓ドナー及び生体腎臓ドナーは両方とも増加しているにもかかわらず、米国における100透析患者年当たりの移植率は事実上減少している。CKDの有害な転帰をその疾患に早期に介入することによって予防すること又は遅延させることは、CKD管理における主要な戦略である。残念なことに、疾患の進行を防ぐ早期治療アプローチは成功に至っていない。
【0003】
組織工学及び細胞ベースの応用を含む新たな治療パラダイムは、腎臓機能の実質的かつ持続的な増強をもたらし、疾患の進行を遅延させ、この患者集団において生活の質を改善することができる。これらの次世代の再生医療技術は、CKDについての治療選択肢として単離腎細胞を提供する(Presnellらによる特許文献1及びIlaganらによる特許文献2)。これらの生体活性腎細胞をCKDに関する動物モデルの腎臓に注射すると、動物の生存率及び腎臓機能の大幅な改善がもたらされた。
【0004】
当該技術分野においては、腎臓疾患の治療についての治療可能性を有する細胞をそれらの再生能力又は腎形成能力に基づいて識別し、腎細胞ベースの療法薬が有効性の期待されるレベルを満たすことを保証する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2010/056328号
【特許文献2】国際出願PCT/US2011/036347号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Jha et al.著の「慢性腎臓疾患:世界的な側面及び展望(Chronic kidney disease: global dimension and perspectives.)」 Lancet. 2013; 382:260-72
【非特許文献2】Shaw et al.著の「2010年及び2030年についての糖尿病の有病率の世界的推定(Global estimates of the prevalence of diabetes for 2010 and 2030.)」 Diabetes Res Clin Pract. 2010; 87:4-14
【非特許文献3】米国腎臓統計システム.CKD及びESRDのコスト.ミネソタ州ミネアポリス,2007年(U.S. Renal Data System. Costs of CKD and ESRD. Minneapolis, MN, 2007)
【非特許文献4】Postma and de Zeeuw, 2009
【非特許文献5】Khan et al., 2002
【非特許文献6】Stenvinkel P.著の「慢性腎臓疾患-公衆衛生上の優先順位及び早発性心血管疾患の前触れ(Chronic kidney disease - a public health priority and harbinger of premature cardiovascular disease)」J Intern med. 2010; 268:456-67
【非特許文献7】Collins et al., 2003
【非特許文献8】Smith et al., 2004
【非特許文献9】米国臓器調達及び移植ネットワーク並びに移植レシピエントの科学的登録の年次報告書:移植データ1998年~2007年.メリーランド州ロックビル:HHS/HRSA/HSB/DOT,2008年(Annual Report of the U.S. Organ Procurement and Transplantation Network and the Scientific Registry of Transplant Recipients: Transplant Data 1998-2007. Rockville, MD: HHS/HRSA/HSB/DOT, 2008)
【発明の概要】
【0007】
本開示は、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する方法を記載する。この方法においては、富化された不均一腎細胞集団の細胞が少なくとも1つの腎形成マーカーを発現するかどうかを判定する。富化された不均一腎細胞集団の細胞が少なくとも1つの腎形成マーカーを発現する場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する。少なくとも1つの腎形成マーカーには、SIX2、OSR1、LHX1、RET、及びFGF8の1つ以上が含まれる。
【0008】
本開示はまた、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する更なる方法を記載する。この方法においては、富化された不均一腎細胞集団の細胞によるRHAMM、C2、C3、C4、フィブリノーゲン、凝固第XIII因子、TEK、KDR、Notch1、Notch3、Timp3、Vwf、Adam15、Gas6、Igfbp1、及びTm4sf4の遺伝子の1つ以上の発現レベルを決定する。富化された不均一腎細胞集団の細胞による1つ以上の遺伝子の発現レベルがコントロール腎細胞集団の細胞による1つ以上の遺伝子の発現レベルと比べて増加している場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する。
【0009】
本開示は、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する更に別の方法を記載する。この方法においては、富化された不均一腎細胞集団の細胞がSIX2、OSR1、RET、及びポドシンを発現するかどうかを判定する。富化された不均一腎細胞集団の細胞がSIX2、OSR1、RET、及びポドシンを発現すると判定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する。
【0010】
本開示は、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別するなおも更なる方法を記載する。この方法においては、富化された不均一腎細胞集団の細胞がネフリン、ポドシン、及びLHX1を発現するかどうかを判定する。富化された不均一腎細胞集団の細胞がネフリン、ポドシン、及びLHX1を発現すると判定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】選択された腎細胞集団、例えば、富化された不均一腎細胞集団の細胞により発現されたものとして検出された細胞マーカー、それらのマーカーについての細胞起源、及びそれらのマーカーを発現する細胞が腎臓における発生に関与し得る構造物を記載する表である。
図1B図1Aに記載されるマーカーを発現することが蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって判定された、選択された腎細胞集団、例えば、富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセントを示すグラフである。平均パーセント及び95%CIが表される。
図2】発現変動遺伝子(DEG)セットにおけるエンリッチメントされた京都遺伝子ゲノム百科事典(KEGG)パスウェイの散布図である。縦の座標はパスウェイ名を表し、横の座標はリッチ係数(Rich factor)を表す。各点のサイズ及び色は、それぞれパスウェイ内の差次的遺伝子の数及び異なるQ値の範囲を表す。TGF-βシグナル伝達経路、サルモネラ感染症、関節リウマチ、ピリミジン代謝、癌におけるプロテオグリカン、癌における経路、他の種類のO-グリカン生合成、レジオネラ症、Hippoシグナル伝達経路、HTLV-1感染症、FoxOシグナル伝達経路、薬物代謝-その他の酵素、及び細胞周期についての暗点は全て、1.00に近い高いQ値の範囲内にある。糖尿病合併症におけるAGE-RAGEシグナル伝達経路及びアメーバ症についての点は全て、0.00に近い低いQ値の範囲にある。タンパク質消化及び吸収、小細胞肺癌、ECM-受容体相互作用、軸索誘導、並びにアルギニン及びプロリン代謝についての点は、中程度ないし低いQ値の範囲にある。
図3】DEGセットのKEGGパスウェイについてのアノテーションのグラフである。
図4】メチル化変動領域(DMR)の平均メチル化レベル分布のバイオリン型箱ひげ図である。Hyper-dmrは、試料中の過剰メチル化されているdmrを指し、hypo-dmrは、試料中の低メチル化されているdmrを指す。
図5】(A)SIX2、(B)OSR1、(C)LHX1、(D)RET、(E)ネフリン、(F)ポドシン、(G)FGF8、及び(H)RACK-1の発現についての細胞のFACS解析からの散布図である。(A)~(H)のそれぞれについての上方の散布図では、陰性細胞をゲーティングしたアイソタイプコントロール抗体を使用した。(A)~(H)のそれぞれの下方の散布図では、抗原特異的抗体を使用して陽性細胞を検出し、ゲーティングして陰性細胞から切り離した。陽性細胞集団は、縦軸の右側又は横軸の上のいずれかにある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
腎臓は、血管系から電解質を選択的に濾過する働きをする、個別の特化された機能単位、すなわちネフロンへと腎実質全体にわたって組織化される足細胞、メサンギウム細胞、内皮細胞、線維芽細胞、上皮細胞、並びに多数の幹細胞及び前駆細胞集団を含む多数の異なる細胞型から構成された複雑な器官である。腎臓のこの複雑さにより、固形腎臓器の代替構造物を作製することは非常に困難なものとなる。
【0013】
哺乳動物の腎臓発生の複雑なプロセスは、中間中胚葉として知られる中胚葉の領域において始まる。前腎、すなわち「第1の腎臓」は、中間中胚葉から起こる腎臓発生における系統決定の最初の工程に相当する。前腎は、前腎管に接続された上皮尿細管細胞の小さな中空の球体である。次に、前腎管は尾側に伸長する一方で、前腎自体は退縮する。中間中胚葉は目下、第2の腎臓、すなわち中腎管の別名でも知られる中腎を形成している。女性ではこれは退行するが、男性では最終的に精巣上体、すなわち精巣と膀胱との間の結合組織となる。中腎腎臓は約30本の細管からなる。中腎細管の側先端は中腎管と癒合し、排泄部から総排出腔への通路が開かれる。総排出腔は最終的に膀胱及び直腸となる。最後に、後腎、すなわち後腎間葉は尿管芽から発生し、これは腎管から出芽して広範囲に分岐し、それぞれの新しい成長先端が後腎芽組織のキャップ状の凝集体を獲得し、それによって分葉状の後腎が得られる。
【0014】
尿管芽と後腎間葉との間の双方向シグナル伝達は、最終的に腎形成の影響力の大きい事象を媒介する役割を担う。E10.5での腎管の伸長物である尿管芽は、周囲の後腎間葉にシグナルを伝え、侵入している尿管芽の先端周りで後腎間葉細胞の凝縮を誘導する。次に、これらの間葉凝縮体は間葉-上皮移行を経て、腎小体として知られる原始上皮小胞を形成する。尿管芽の分岐が続くことにより、集合管系及び腎盂の構成要素の発生がもたらされる。一方で、腎小体は体系的な一連の形態学的変化を経て、最終的には尿管芽上皮と癒合して、連続した上皮尿細管であるS字体を形成する。S字体に内皮細胞が侵入することにより、糸球体血管系の形成が引き起こされる。隣接する後腎間葉からのシグナル伝達に応答して尿管芽上皮からの分岐形態形成が続くことにより、今度は尿管芽先端での後腎間葉の新たな凝集体の誘導及び腎形成事象の継続がもたらされる。尿管芽の分岐形態形成及び追加の間葉凝縮体の誘導のこの反復プロセスは発生中の腎臓の放射軸に沿って続き、最も若いネフロンが末梢に向かって誘導される。
【0015】
発生中の腎臓における分岐形態形成及びそれに付随する腎形成の基礎となる分子遺伝学は複雑である。簡単に言うと、尿管芽の誘導は、分泌された成長因子GDNFのその受容体RETを介した上方調節によって引き起こされる。前腎管に沿ったRETの発現は尿管芽形成部位で最も高い。GDNF又はRETのいずれかのノックアウト突然変異は胚致死性であり、尿管出芽の不全並びにその結果としての腎臓及び尿管の形成の停止に関連している。GDNF発現の上方調節は、PAX2、SIX1、SIX2、SIX4を含む転写因子の作用によるものである。
【0016】
後腎間葉凝縮体から腎小体への変換の間の間葉-上皮移行は、主としてWNT9b及びWNT4を含むWNTファミリーのタンパク質によって制御される。このために、WNT4のノックアウト体は生後24時間以内に死亡し、腎臓は小さく異常であり、未分化の後腎間葉からなる。尿管芽の分岐及び腎形成の側面を調節する他の成長因子としては、TGF-β、FGF2、FGF7、LIF、及びLIM1が挙げられる。さらに、多数の相互作用シグナル伝達経路が尿管芽分岐及び腎形成の両方の側面の調節に関与している。これらには、古典的WNT/β-カテニン経路、ソニックヘッジホッグ経路、並びにTGF-βスーパーファミリーシグナル伝達経路のBMP及びFGFメンバーが含まれる。
【0017】
前/後軸に沿った中間中胚葉の領域化は、PAX2、PAX8、OSR1、及びWT1を含む或る特定の主要な転写因子の発現によって特徴付けられる。OSR1は、最初は沿軸運命及び側板運命から中間中胚葉を決定するが、それでもなおキャップ間葉の決定及び生存にとって重要である。OSR1発現はキャップ間葉に限定されることになり、OSR1ヌルマウスは主要なキャップ間葉遺伝子(PAX2、SIX2、GDNF、EYA1、及びSALL1)の発現を示すことができない。対照的に、OSR1は、これらの系譜の分離前に後腎間葉で発現されるにもかかわらず、FOXD1+間質コンパートメントの形成には必要とされない。
【0018】
WNT9b遺伝子は、後腎発生の誘導前に上皮ウォルフ管において発現される。WNT9bの発現は尿管芽において継続しており、ここでは、その発現は先端よりも茎領域においてより顕著である。マウスにおけるWNT9bの発現は、成体になるまで集合管内で維持される。キャップ間葉におけるWNT9b媒介性誘導により、WNT4、線維芽細胞成長因子8(FGF8)、ペアードボックス8(PAX8)、及びLIMホメオボックスタンパク質1(LHX1)をコードする遺伝子の発現が開始される。これらの遺伝子は、WNT9b欠損胚腎臓のキャップ間葉においては発現に至ることはできず、ネフロンが形成されないため、結果的にWNT9bノックアウトマウスは出生後すぐに死亡する。
【0019】
胚性腎形成中の最も早期のシグナル伝達事象に典型的に関連した多数のマーカーの発現が観察されたことは、腎臓から単離した後に拡大され、分離工程を受けた富化された不均一腎細胞集団が脱分化し、より多くの腎前駆体様特性を獲得した可能性があることを示している。したがって、これらの腎前駆体様特性を有する富化された不均一腎細胞集団を罹患した腎実質に導入すると、通常は腎形成を媒介するが成体実質の状況では再生として解釈される重要なシグナル伝達カスケードの開始が引き起こされ得る。
【0020】
本明細書においては、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する方法、治療可能性を有するものとして識別された不均一腎細胞集団、並びに治療可能性を有する不均一腎細胞集団の方法及び使用が記載される。
【0021】
富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する方法において、富化された不均一腎細胞集団の治療可能性は、腎臓疾患、尿細管輸送欠損症、又は糸球体濾過欠損症の治療におけるものであり得る。
【0022】
富化された不均一腎細胞集団が腎臓疾患を治療する可能性を有するものとして識別される場合に、その腎臓疾患は、腎臓が血液を濾過し、血液から過剰な水分、電解質、及び老廃物を除去する機能を発揮する能力の喪失をもたらす急性腎不全又は慢性腎不全のあらゆる段階又は程度に関連し得る。腎臓疾患としては、貧血、例えば、エリスロポエチン欠乏症及びミネラル平衡異常、例えば、ビタミンD欠乏症等の内分泌機能不全を挙げることができる。腎臓疾患は腎臓に由来する場合もあれば、又は別の病態、例えば、心不全、高血圧症、糖尿病、自己免疫疾患、若しくは肝臓疾患に続発する場合もある。代替的に、腎臓疾患は腎臓への急性損傷後に発症する場合もあれば、又は腎臓及び/又は尿路の異常の結果である場合もある。
【0023】
富化された不均一腎細胞集団が治療可能性を有するものとして識別される場合に、富化された不均一腎細胞集団は、腎機能を回復し、腎機能を安定化し、腎機能を改善し、腎線維症を軽減し、腎炎症を軽減し、腎臓における尿細管形成を誘導し、腎臓における腎形成を誘導し、腎臓における糸球体形成を誘導し、又はそのような治療を必要とする患者の腎臓において再生効果を有し得る。富化された不均一腎細胞集団が治療可能性を有するものとして識別される場合に、富化された不均一腎細胞集団は、そのような治療を必要とする患者においてミネラル平衡を回復し、又は貧血を緩和し得る。富化された不均一腎細胞集団が治療可能性を有するものとして識別される場合に、富化された不均一腎細胞集団は、透析の必要性を引き延ばし、若しくは防ぐことができ、又は腎臓疾患についての治療を必要とする患者における腎臓移植の必要性を引き延ばし、若しくは防ぐことができる。
【0024】
富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する方法において、富化された不均一腎細胞集団の細胞が少なくとも1つの腎形成マーカーを発現するかどうかを判定することができる。上記方法において発現が判定される少なくとも1つの腎形成マーカーは、SIXホメオボックス2(SIX2)、オッドスキップ関連1(odd-skipped-related 1)(OSR1)、LIMホメオボックス1(LHX1)、トランスフェクション中の再構成(rearranged during transfection)(RET)、又は線維芽細胞成長因子8(FGF8)のいずれか1つであり得る。上記方法において発現が判定される少なくとも1つの腎形成マーカーは、SIX2、OSR1、LHX1、RET、及びFGF8のいずれか1つ、いずれか2つ、いずれか3つ、いずれか4つ、又は全てであり得るか、又はそれらを含み得る。
【0025】
富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別するこれらの方法において、少なくとも1つの腎形成マーカーの発現の判定は、SIX2、OSR1、LHX1、RET、又はFGF8の腎形成マーカーのいずれか2つの発現の判定であり得るか、又はそれらを含み得る。発現の判定がこれらの腎形成マーカーのいずれか2つの判定である場合に、2つの腎形成マーカーは、SIX2及びOSR1、又はSIX2及びLHX1、又はSIX2及びRET、又はSIX2及びFGF8、又はOSR1及びLHX1、又はOSR1及びRET、又はOSR1及びFGF8、又はLHX1及びRET、又はLHX1及びFGF8、又はRET及びFGF8であり得るか、又はそれらを含み得る。
【0026】
富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する方法において、少なくとも1つの腎形成マーカーの発現の判定は、SIX2、OSR1、LHX1、RET、又はFGF8の腎形成マーカーのいずれか3つの発現の判定であり得るか、又はそれらを含み得る。発現の判定がこれらの腎形成マーカーのいずれか3つの判定である場合に、3つの腎形成マーカーは、SIX2、OSR1、及びLHX1、又はSIX2、OSR1、及びRET、又はSIX2、OSR1、及びFGF8、又はSIX2、LHX1、及びRET、又はSIX2、LHX1、及びFGF8、又はSIX2、RET、及びFGF8、又はOSR1、LHX1、及びRET、又はOSR1、LHX1、及びFGF8、又はOSR1、RET、及びFGF8、又はLHX1、RET、及びFGF8であり得るか、又はそれらを含み得る。
【0027】
富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する方法において、少なくとも1つの腎形成マーカーの発現の判定は、SIX2、OSR1、LHX1、RET、又はFGF8の腎形成マーカーのいずれか4つの発現の判定であり得るか、又はそれらを含み得る。発現の判定がこれらの腎形成マーカーのいずれか4つの判定である場合に、4つの腎形成マーカーは、SIX2、OSR1、LHX1、及びRET、又はSIX2、OSR1、LHX1、及びFGF8、又はSIX2、LHX1、RET、及びFGF8、又はSIX2、OSR1、RET、及びFGF8、又はOSR1、LHX1、RET、及びFGF8のいずれかであり得るか、又はそれらを含み得る。
【0028】
富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する方法において、少なくとも1つの腎形成マーカーの発現の判定は、SIX2、OSR1、LHX1、RET、及びFGF8の腎形成マーカーのそれぞれの発現の判定であり得るか、又はそれらを含み得る。
【0029】
富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する方法において、不均一の富化された腎細胞集団の細胞が少なくとも1つ(例えば、いずれか1つ、又はいずれか2つ、又はいずれか3つ、又はいずれか4つ、又は5つ全て)の腎形成マーカーを発現することの判定は、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。
【0030】
富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する方法において、少なくとも1つの腎形成マーカーの発現の判定は、少なくとも1つの腎形成マーカーを発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージを決定することを更に含み得る。少なくとも1つの腎形成マーカーを発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが決定される場合に、SIX2、OSR1、LHX1、RET、及びFGF8の腎形成マーカーのいずれか1つ、いずれか2つ、いずれか3つ、いずれか4つ、又は5つ全てを発現する細胞のパーセンテージを決定することができる。少なくとも1つの腎形成マーカーを発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが決定される場合に、ほぼ或る特定の又は特定のパーセンテージの富化された不均一腎細胞集団の細胞がSIX2、OSR1、LHX1、RET、及びFGF8の腎形成マーカーのいずれか1つ、いずれか2つ、いずれか3つ、いずれか4つ、又は5つ全てを発現する場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。
【0031】
SIX2を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージを上記方法において決定し、かつ富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約0.02%がSIX2を発現すると判定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。代替的に、SIX2を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが少なくとも約0.04%、又は少なくとも約0.1%、又は少なくとも約0.5%、又は少なくとも約1.0%、又は少なくとも約1.5%、又は少なくとも約2.0%、又は少なくとも約2.5%、又は少なくとも約3.0%、又は少なくとも約3.5%、又は少なくとも約4.0%、又は少なくとも約4.5%、又は少なくとも約5.0%、又は少なくとも約5.5%であると決定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。SIX2を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが0%超で多くとも約15.0%まで、0%超で多くとも約10.0%まで、又は0%超で多くとも約9.5%まで、又は0%超で多くとも約9.0%まで、又は0%超で多くとも約8.5%まで、又は0%超で多くとも約8.0%まで、又は0%超で多くとも約7.5%まで、又は0%超で多くとも約7.0%まで、又は0%超で多くとも約6.5%まで、又は0%超で多くとも約6.0%までであると決定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。さらに、SIX2を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが約0.02%から約15.0%の間、又は約0.02%から約10.0%の間、又は約0.02%から約9.0%の間、又は約0.02%から約8.0%の間、又は約0.02%から約7.0%の間、又は約0.02%から約6.0%の間、又は約0.04%から約15.0%の間、又は約0.04%から約10.0%の間、又は約0.04%から約9.0%の間、又は約0.04%から約8.0%の間、又は約0.04%から約7.0%の間、又は約0.04%から約6.0%の間、又は約1.0%から約15.0%の間、又は約1.0%から約10.0%の間、又は約1.0%から約9.0%の間、又は約1.0%から約8.0%の間、又は約1.0%から約7.0%の間、又は約1.0%から約6.0%の間であると決定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。
【0032】
OSR1を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージを上記方法において決定し、かつ富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約30%がOSR1を発現すると判定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。代替的に、OSR1を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが少なくとも約35%、又は少なくとも約36%、又は少なくとも約37%、又は少なくとも約38%、又は少なくとも約39%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約41%、又は少なくとも約42%、又は少なくとも約43%、又は少なくとも約44%、又は少なくとも約45%、又は少なくとも約50%であると決定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。OSR1を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが0%超で多くとも約90%まで、又は0%超で多くとも約88%まで、又は0%超で多くとも約86%まで、又は0%超で多くとも約84%まで、又は0%超で多くとも約82%まで、又は0%超で多くとも約80%まで、又は0%超で多くとも約75%まで、又は0%超で多くとも約70%までであると決定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を再生可能性を有するものとして識別することができる。さらに、OSR1を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが約30%から約90%の間、又は約30%から約88%の間、又は約30%から約86%の間、又は約30%から約84%の間、又は約30%から約82%の間、又は約30%から約80%の間、又は34%から90%の間、又は約34%から約88%の間、又は約34%から約86%の間、又は約34%から約84%の間、又は約34%から約82%の間、又は約34%から約80%の間、又は約36%から約90%の間、又は約36%から約88%の間、又は約36%から約86%の間、又は約36%から約84%の間、又は約36%から約82%の間、又は約36%から約80%の間、又は約40%から約90%の間、又は約40%から約85%の間、又は約45%から約90%の間、又は約45%から約85%の間、又は約50%から約90%の間、又は約50%から約85%の間、又は約55%から約90%の間、又は約55%から約85%の間、又は約60%から約90%の間、又は約60%から約85%の間、又は約65%から約90%の間、又は約65%から約85%の間、又は約70%から約90%の間、又は約70%から約85%の間であると決定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を再生可能性を有するものとして識別することができる。
【0033】
LHX1を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージを上記方法において決定し、かつ富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約5%がLHX1を発現すると判定される場合に、不均一の富化された腎細胞集団を再生可能性を有するものとして識別することができる。代替的に、LHX1を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが少なくとも約6%、又は少なくとも約7%、又は少なくとも約8%、又は少なくとも約9%、又は少なくとも約10%であると決定される場合に、不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。LHX1を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが0%超で多くとも75%まで、又は0%超で多くとも70%まで、又は0%超で多くとも約65%まで、又は0%超で多くとも約64%まで、又は0%超で多くとも約63%まで、又は0%超で多くとも約62%まで、又は0%超で多くとも約61%まで、又は0%超で多くとも約60%まで、又は0%超で多くとも約59%まで、又は0%超で多くとも約58%まで、又は0%超で多くとも約57%まで、又は0%超で多くとも約56%まで、又は0%超で多くとも約55%までであると決定される場合に、不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。さらに、LHX1を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが約6%から約60%の間、又は約6%から約59%の間、又は約6%から約58%の間、又は約6%から約57%の間、又は約6%から約56%の間、又は約6%から約55%の間、又は約6%から約54%の間、又は約8%から約60%の間、又は約8%から約59%の間、又は約8%から約58%の間、又は約8%から約57%の間、又は約8%から約56%の間、又は約8%から約55%の間、又は約8%から約54%の間、又は約10%から約60%の間、又は約10%から約59%の間、又は約10%から約58%の間、又は約10%から約57%の間、又は約10%から約56%の間、又は約10%から約55%の間、又は約10%から約54%の間、又は約16%から80%の間、又は約16%から70%の間、又は約16%から約60%の間、又は約16%から約58%の間、又は約16%から約56%の間、又は約16%から約54%の間、又は約16%から約52%の間、又は約16%から約50%の間、又は22%から約60%の間、又は約22%から約58%の間、又は約22%から約56%の間、又は約22%から約54%の間、又は約22%から約52%の間、又は約22%から約50%の間であると決定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を再生可能性を有するものとして識別することができる。
【0034】
RETを発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージを上記方法において決定し、かつ富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約45%がRETを発現すると判定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。代替的に、RETを発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが少なくとも約22%、少なくとも約24%、少なくとも約26%、少なくとも約28%、少なくとも約30%、少なくとも約32%、少なくとも約34%、少なくとも約36%、少なくとも約38%、少なくとも約40%、少なくとも約42%、少なくとも約44%、少なくとも約46%、又は少なくとも約47%、又は少なくとも約48%、又は少なくとも約49%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約51%、又は少なくとも約52%、又は少なくとも約53%、又は少なくとも約54%であると決定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。RETを発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが0%超で多くとも約95%まで、又は0%超で多くとも約94%まで、又は0%超で多くとも約93%まで、又は0%超で多くとも約92%まで、又は0%超で多くとも約91%まで、又は0%超で多くとも約90%まで、又は0%超で多くとも約89%まで、又は0%超で多くとも約88%まで、又は0%超で多くとも約87%まで、又は0%超で多くとも約86%まで、又は0%超で多くとも約85%までであると決定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。さらに、RETを発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが約45%から約95%の間、又は約45%から約94%の間、又は約45%から約93%の間、又は約45%から約92%の間、又は約45%から約91%の間、又は約45%から約90%の間、又は約45%から約89%の間、又は約45%から約88%の間、又は約47%から約95%の間、又は約47%から約94%の間、又は約47%から約93%の間、又は約47%から約92%の間、又は約47%から約91%の間、又は約47%から約90%の間、又は約47%から約89%の間、又は約47%から約88%の間、又は約49%から約95%の間、又は約49%から約94%の間、又は約49%から約93%の間、又は約49%から約92%の間、又は約49%から約91%の間、又は約49%から約90%の間、又は約49%から約89%の間、又は約49%から約88%の間、又は約20%から約60%の間、又は約20%から約55%の間、又は約20%から約50%の間、又は約20%から約45%の間、又は約20%から約40%の間、又は約25%から約60%の間、又は約25%から約55%の間、又は約25%から約50%の間、又は約25%から約45%の間、又は約25%から約40%の間であると決定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。
【0035】
FGF8を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージを上記方法において決定し、かつ富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約0.2%がFGF8を発現すると判定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。代替的に、FGF8を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが少なくとも約0.25%、又は少なくとも約0.3%、又は少なくとも約0.35%、又は少なくとも約0.4%、又は少なくとも約0.45%、又は少なくとも約0.48%、又は少なくとも約0.5%、又は少なくとも約0.55%、又は少なくとも約0.6%、又は少なくとも約0.8%、又は少なくとも約1.0%、又は少なくとも約1.5%、又は少なくとも約2.0%、又は約2.5%であると決定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。FGF8を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが0%超で多くとも約65%まで、又は0%超で多くとも約64%まで、又は0%超で多くとも約63%まで、又は0%超で多くとも約62%まで、又は0%超で多くとも約61%まで、又は0%超で多くとも約60%まで、又は0%超で多くとも約59%若しくは多くとも約58%まで、又は0%超で多くとも約57%まで、又は0%超で多くとも約56%まで、又は0%超で多くとも約55%までであると決定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。さらに、FGF8を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが約0.3%から約64%の間、又は約0.3%から約63%の間、又は約0.3%から約62%の間、又は約0.3%から約61%の間、又は約0.3%から約60%の間、又は約0.3%から約59%の間、又は約0.3%から約58%の間、又は約0.3%から約57%の間、又は約0.4%から約64%の間、又は約0.4%から約63%の間、又は約0.4%から約62%の間、又は約0.4%から約61%の間、又は約0.4%から約60%の間、又は約0.4%から約59%の間、又は約0.4%から約58%の間、又は約0.4%から約57%の間、又は約0.5%から約64%の間、又は約0.5%から約63%の間、又は約0.5%から約62%の間、又は約0.5%から約61%の間、又は約0.5%から約60%の間、又は約0.5%から約59%の間、又は約0.5%から約58%の間、又は約0.5%から約57%の間、又は約1%から約64%の間、又は約1%から約54%の間、又は約1%から約44%の間、又は約1%から約34%の間、又は1%から約24%の間、又は約2%から約64%の間、又は約2%から約54%の間、又は約2%から約44%の間、又は約2%から約34%の間、又は2%から約24%の間、又は約3%から約64%の間、又は約3%から約54%の間、又は約3%から約44%の間、又は約3%から約34%の間、又は3%から約24%の間であると決定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。
【0036】
富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する方法は、SIX2、OSR1、LHX1、RET、及びFGF8の腎形成マーカーのいずれか2つ、いずれか3つ、いずれか4つ、又は5つ全ての組合せを発現する不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージを決定する工程を含み得る。例えば、以下のいずれか2つ、いずれか3つ、いずれか4つ、又は5つ全ての組合せが決定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる:不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約6%までがSIX2を発現すること、不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約36%がOSR1を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約8%がLHX1を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約49%がRETを発現すること、及び/又は富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約59%までがFGF8を発現すること。別の例においては、以下のいずれか2つ、いずれか3つ、いずれか4つ、又は5つ全てが決定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる:富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約0.04%がSIX2を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約85%までがOSR1を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約58%までがLHX1を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約90%までがRETを発現すること、及び/又は富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約0.48%がFGF8を発現すること。以下のいずれか2つ、いずれか3つ、いずれか4つ、又は5つ全てが決定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして更に識別することができる:富化された不均一腎細胞集団の細胞の約0.04%から約6.0%の間がSIX2を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の約36%から約85%の間がOSR1を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%から約58%の間がLHX1を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の約49%から約90%の間がRETを発現すること、及び細胞の約0.48%及び/又は約59%の間がFGF8を発現すること。これらのパーセンテージで発現が決定され得るいずれか2つ、いずれか3つ、いずれか4つ、又は5つ全ての腎形成マーカーの組合せは、SIX2及びOSR1、又はSIX2及びLHX1、又はSIX2及びRET、又はSIX2及びFGF8、又はOSR1及びLHX1、又はOSR1及びRET、又はOSR1及びFGF8、又はLHX1及びRET、又はLHX1及びFGF8、又はRET及びFGF8、又はSIX2、OSR1、及びLHX1、又はSIX2、OSR1、及びRET、又はSIX2、OSR1、及びFGF8、又はSIX2、LHX1、及びRET、又はSIX2、LHX1、及びFGF8、又はSIX2、RET、及びFGF8、又はOSR1、LHX1、及びRET、又はOSR1、LHX1、及びFGF8、又はOSR1、RET、及びFGF8、又はLHX1、RET、及びFGF8、又はSIX2、OSR1、LHX1、及びRET、SIX2、OSR1、LHX1、及びFGF8、SIX2、LHX1、RET、及びFGF8、SIX2、OSR1、RET、及びFGF8、OSR1、LHX1、RET、及びFGF8、又はSIX2、OSR1、LHX1、RET、及びFGF8のいずれかの組合せであり得る。
【0037】
富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する方法において、以下のいずれか2つ、いずれか3つ、いずれか4つ、又は5つ全てが決定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして代替的に識別することができる:不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約10%までがSIX2を発現すること、不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約30%がOSR1を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約5%がLHX1を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約40%がRETを発現すること、及び/又は富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約60%までがFGF8を発現すること。別の例においては、以下のいずれか2つ、いずれか3つ、いずれか4つ、又は5つ全てが決定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる:富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約0.02%がSIX2を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約90%までがOSR1を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約65%までがLHX1を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約95%までがRETを発現すること、及び/又は富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約0.4%がFGF8を発現すること。さらに、以下のいずれか2つ、いずれか3つ、いずれか4つ、又は5つ全てが決定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる:富化された不均一腎細胞集団の細胞の約0.02%から約10.0%の間がSIX2を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の約30%から約90%の間がOSR1を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の約5%から約65%の間がLHX1を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の約40%から約95%の間がRETを発現すること、及び/又は細胞の約0.4%から約60%の間がFGF8を発現すること。これらのパーセンテージで発現が決定され得るいずれか2つ、いずれか3つ、いずれか4つ、又は5つ全ての腎形成マーカーの組合せは、SIX2及びOSR1、又はSIX2及びLHX1、又はSIX2及びRET、又はSIX2及びFGF8、又はOSR1及びLHX1、又はOSR1及びRET、又はOSR1及びFGF8、又はLHX1及びRET、又はLHX1及びFGF8、又はRET及びFGF8、又はSIX2、OSR1、及びLHX1、又はSIX2、OSR1、及びRET、又はSIX2、OSR1、及びFGF8、又はSIX2、LHX1、及びRET、又はSIX2、LHX1、及びFGF8、又はSIX2、RET、及びFGF8、又はOSR1、LHX1、及びRET、又はOSR1、LHX1、及びFGF8、又はOSR1、RET、及びFGF8、又はLHX1、RET、及びFGF8、又はSIX2、OSR1、LHX1、及びRET、SIX2、OSR1、LHX1、及びFGF8、SIX2、LHX1、RET、及びFGF8、SIX2、OSR1、RET、及びFGF8、OSR1、LHX1、RET、及びFGF8、又はSIX2、OSR1、LHX1、RET、及びFGF8のいずれかの組合せであり得る。
【0038】
富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する方法において、以下のいずれか2つ、いずれか3つ、いずれか4つ、又は5つ全てが決定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる:不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約3%までがSIX2を発現すること、不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約60%がOSR1を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約25%がLHX1を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約65%がRETを発現すること、及び/又は富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約35%までがFGF8を発現すること。別の例においては、以下のいずれか2つ、いずれか3つ、いずれか4つ、又は5つ全てが決定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる:富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約0.5%がSIX2を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約80%までがOSR1を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約55%までがLHX1を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約90%までがRETを発現すること、及び/又は富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約5%がFGF8を発現すること。さらに、以下のいずれか2つ、いずれか3つ、いずれか4つ、又は5つ全てが決定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる:富化された不均一腎細胞集団の細胞の約0.5%から約3.0%の間がSIX2を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の約60%から約80%の間がOSR1を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の約25%から約55%の間がLHX1を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の約65%から約90%の間がRETを発現すること、及び/又は細胞の約5%から約35%の間がFGF8を発現すること。これらのパーセンテージで発現が決定され得るいずれか2つ、いずれか3つ、いずれか4つ、又は5つ全ての腎形成マーカーの組合せは、SIX2及びOSR1、又はSIX2及びLHX1、又はSIX2及びRET、又はSIX2及びFGF8、又はOSR1及びLHX1、又はOSR1及びRET、又はOSR1及びFGF8、又はLHX1及びRET、又はLHX1及びFGF8、又はRET及びFGF8、又はSIX2、OSR1、及びLHX1、又はSIX2、OSR1、及びRET、又はSIX2、OSR1、及びFGF8、又はSIX2、LHX1、及びRET、又はSIX2、LHX1、及びFGF8、又はSIX2、RET、及びFGF8、又はOSR1、LHX1、及びRET、又はOSR1、LHX1、及びFGF8、又はOSR1、RET、及びFGF8、又はLHX1、RET、及びFGF8、又はSIX2、OSR1、LHX1、及びRET、SIX2、OSR1、LHX1、及びFGF8、SIX2、LHX1、RET、及びFGF8、SIX2、OSR1、RET、及びFGF8、OSR1、LHX1、RET、及びFGF8、又はSIX2、OSR1、LHX1、RET、及びFGF8のいずれかの組合せであり得る。
【0039】
富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する方法において、以下のいずれか2つ、いずれか3つ、いずれか4つ、又は5つ全てが決定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる:不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約10%までがSIX2を発現すること、不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約35%がOSR1を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約8%がLHX1を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約20%がRETを発現すること、及び/又は富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約60%までがFGF8を発現すること。別の例においては、以下のいずれか2つ、いずれか3つ、いずれか4つ、又は5つ全てが決定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる:富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約0.2%がSIX2を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約85%までがOSR1を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約65%までがLHX1を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の0%超で多くとも約90%までがRETを発現すること、及び/又は富化された不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約0.5%がFGF8を発現すること。さらに、以下のいずれか2つ、いずれか3つ、いずれか4つ、又は5つ全てが決定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる:富化された不均一腎細胞集団の細胞の約0.2%から約10.0%の間がSIX2を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の約35%から約85%の間がOSR1を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の約8%から約65%の間がLHX1を発現すること、富化された不均一腎細胞集団の細胞の約20%から約90%の間がRETを発現すること、及び/又は細胞の約0.5%から約60%の間がFGF8を発現すること。これらのパーセンテージで発現が決定され得るいずれか2つ、いずれか3つ、いずれか4つ、又は5つ全ての腎形成マーカーの組合せは、SIX2及びOSR1、又はSIX2及びLHX1、又はSIX2及びRET、又はSIX2及びFGF8、又はOSR1及びLHX1、又はOSR1及びRET、又はOSR1及びFGF8、又はLHX1及びRET、又はLHX1及びFGF8、又はRET及びFGF8、又はSIX2、OSR1、及びLHX1、又はSIX2、OSR1、及びRET、又はSIX2、OSR1、及びFGF8、又はSIX2、LHX1、及びRET、又はSIX2、LHX1、及びFGF8、又はSIX2、RET、及びFGF8、又はOSR1、LHX1、及びRET、又はOSR1、LHX1、及びFGF8、又はOSR1、RET、及びFGF8、又はLHX1、RET、及びFGF8、又はSIX2、OSR1、LHX1、及びRET、SIX2、OSR1、LHX1、及びFGF8、SIX2、LHX1、RET、及びFGF8、SIX2、OSR1、RET、及びFGF8、OSR1、LHX1、RET、及びFGF8、又はSIX2、OSR1、LHX1、RET、及びFGF8のいずれかの組合せであり得る。
【0040】
或る特定のマーカーを発現する細胞のパーセンテージが「約」特定の数のパーセンテージ、例えば、約5%として示される場合に、細胞のパーセンテージは正確に特定の数、例えば、正確に5%である必要はないことを理解されたい。むしろ、或る特定のマーカーを発現する細胞のパーセンテージが「約」特定の数、例えば、約5%であると示される場合に、或る特定のマーカーを発現する細胞のパーセンテージは、その特定の数の最大10%以内、例えば4.5%から5.5%の間であり得ることを理解されたい。
【0041】
富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する方法において、富化された不均一腎細胞集団の細胞が1つ以上の更なるマーカー、すなわち、SIX2、OSR1、LHX1、RET、及びFGF8の腎形成マーカー以外のマーカーを発現するかどうかを判定することができる。1つ以上の更なるマーカーは、足細胞マーカー、上皮マーカー、発生マーカー、又はmiRNAの1つ以上であり得るか、又はそれらを含み得る。1つ以上の更なるマーカーが足細胞マーカーを含む場合に、1つ以上の更なるマーカーは、1つ以上のネフリン、EpiCAM、NPHS2(ポドシンをコードする)、ポドシン、ウィルムス腫瘍タンパク質(WT1)、又はポドカリキシンを含み得る。1つ以上の更なるマーカーが上皮細胞マーカーを含む場合に、1つ以上の更なるマーカーは、E-カドヘリン、N-カドヘリン、キュブリン(cubulin)/メガリン、ビタミンD-25ヒドロキシラーゼ(CYP2R1)、γ-グルタミルトランスフェラーゼ1(GGT1)、肝臓濃縮転写タンパク質(LAP)、サイトケラチン(CK)18、アクアポリン(AQP)2、腎臓損傷分子(KIM1)、エリスロポエチン(EPO)、キナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)、上皮細胞接着分子(ECAM)、又はAQP1の1つ以上を含み得る。1つ以上の更なるマーカーが発生マーカーを含む場合に、発生マーカーは、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、ソニックヘッジホッグ(SHH)、NOTCH、C-X-Cモチーフケモカイン受容体4(CXCR4)、ルナティックフリンジ(lunatic fringe)(LFNG)、又はIL-11の1つ以上を含み得る。1つ以上の更なるマーカーは、活性化Cキナーゼ1(RACK-1)についての受容体であり得るか、又はそれを含み得る。1つ以上の更なるマーカーがmiRNAを含む場合に、miRNAは、miR22、miR181、又はmiR145の1つ以上であり得る。
【0042】
1つ以上の更なるマーカーが足細胞マーカーを含む場合に、足細胞マーカーは、ネフリンであり得る。そのような方法において、富化された不均一腎細胞集団の細胞がネフリンを発現すると更に判定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。1つ以上の更なるマーカーがネフリンであるか、又はネフリンを含む場合に、ネフリンを発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージを決定することができる。ネフリンを発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが決定される場合に、不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%がネフリンを発現する場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。ネフリンを発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが決定される場合に、不均一腎細胞集団の細胞の約4%から約95%の間、又は約10%から約95%の間、又は約15%から約95%の間、又は約20%から約95%の間、又は約25%から約95%の間、及び約30%から約95%の間、又は35%から約95%の間、又は約40%から約95%の間、又は約45%から95%の間、又は約50%から約95%の間、又は約55%から約95%の間、又は約60%から約95%の間、又は約65%から約95%の間、又は70%から約95%の間、又は約75%から約95%の間、又は約80%から約95%の間、又は約85%から約95%の間がネフリンを発現する場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。
【0043】
1つ以上の更なるマーカーが足細胞マーカーであるか、又はそれを含む場合に、足細胞マーカーは、ポドシンであり得る。そのような方法において、富化された不均一腎細胞集団の細胞がポドシンを発現すると更に判定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。1つ以上の更なるマーカーがポドシンであるか、又はポドシンを含む場合に、ポドシンを発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージを決定することができる。ポドシンを発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが決定される場合に、不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約80%、少なくとも約82%、少なくとも約84%、少なくとも約86%、少なくとも約88%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約96%、又は少なくとも約98%がポドシンを発現する場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。
【0044】
1つ以上の更なるマーカーが足細胞マーカーを含む場合に、足細胞マーカーは、ネフリン及びポドシンの両方を含み得る。そのような方法において、富化された不均一腎細胞集団の細胞がネフリン及びポドシンを発現すると更に判定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。1つ以上の更なるマーカーがネフリン及びポドシンを含む場合に、ネフリン及びポドシンを発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージを決定することができる。ネフリン及びポドシンを発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが決定される場合に、細胞の少なくとも4%がネフリンを発現し、かつ細胞の少なくとも約90%がポドシンを発現する場合に、又は細胞の少なくとも8%がネフリンを発現し、かつ細胞の少なくとも約90%がポドシンを発現する場合に、細胞の少なくとも10%がネフリンを発現し、かつ細胞の少なくとも約90%がポドシンを発現する場合に、又は細胞の少なくとも12%がネフリンを発現し、かつ細胞の少なくとも約90%がポドシンを発現する場合に、又は細胞の少なくとも14%がネフリンを発現し、かつ細胞の少なくとも約90%がポドシンを発現する場合に、又は細胞の少なくとも20%がネフリンを発現し、かつ細胞の少なくとも約90%がポドシンを発現する場合に、又は細胞の少なくとも25%がネフリンを発現し、かつ細胞の少なくとも約90%がポドシンを発現する場合に、又は細胞の少なくとも30%がネフリンを発現し、かつ細胞の少なくとも約90%がポドシンを発現する場合に、又は細胞の少なくとも35%がネフリンを発現し、かつ細胞の少なくとも約90%がポドシンを発現する場合に、又は細胞の少なくとも40%がネフリンを発現し、かつ細胞の少なくとも約90%がポドシンを発現する場合に、又は細胞の少なくとも45%がネフリンを発現し、かつ細胞の少なくとも約90%がポドシンを発現する場合に、又は細胞の少なくとも50%がネフリンを発現し、かつ細胞の少なくとも約90%がポドシンを発現する場合に、又は細胞の少なくとも55%がネフリンを発現し、かつ細胞の少なくとも約90%がポドシンを発現する場合に、又は細胞の少なくとも60%がネフリンを発現し、かつ細胞の少なくとも約90%がポドシンを発現する場合に、又は細胞の少なくとも65%がネフリンを発現し、かつ細胞の少なくとも約90%がポドシンを発現する場合に、又は細胞の少なくとも70%がネフリンを発現し、かつ細胞の少なくとも約90%がポドシンを発現する場合に、又は細胞の少なくとも75%がネフリンを発現し、かつ細胞の少なくとも約90%がポドシンを発現する場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。
【0045】
1つ以上の更なるマーカーがRACK-1であるか、又はRACK-1を含む場合に、富化された不均一腎細胞集団の細胞がRACK-1を発現する場合に、その細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。1つ以上の更なるマーカーがRACK-1であるか、又はRACK-1を含む場合に、RACK-1を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージを決定することができる。RACK-1を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが決定される場合に、不均一腎細胞集団の細胞の少なくとも約80%、少なくとも約82%、少なくとも約84%、少なくとも約86%、少なくとも約88%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約96%、又は少なくとも約98%がRACK-1を発現する場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。
【0046】
1つ以上の更なるマーカーが上皮細胞マーカーを含む場合に、上皮細胞マーカーは、CYP2R1であり得る。そのような方法において、富化された不均一腎細胞集団の細胞がCYP2R1を発現すると更に判定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。1つ以上の更なるマーカーがCYP2R1であるか、又はCYP2R1を含む場合に、CYP2R1を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージを決定することができる。CYP2R1を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが決定される場合に、不均一腎細胞集団の細胞の約75%から約100%の間、又は約80%から約100%の間、又は約85%から約100%の間、又は約86%から約100%の間、又は約87%から約100%の間、又は約88%から約100%の間、又は約75%から約97%の間、又は約80%から約97%の間、又は約85%から約97%の間、又は約86%から約97%の間、又は約87%から約97%の間、又は約88%から約97%の間がCYP2R1を発現する場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。
【0047】
1つ以上の更なるマーカーが発生マーカーを含む場合に、発生マーカーは、CXCR4であり得る。そのような方法において、富化された不均一腎細胞集団の細胞がCXCR4を発現すると更に判定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。1つ以上の更なるマーカーがCXCR4であるか、又はCXCR4を含む場合に、CXCR4を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージを決定することができる。CXCR4を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが決定される場合に、不均一腎細胞集団の細胞の約15%超、又は約16%超、又は約17%超、又は約18%超、又は約19%超、又は約20%超、又は約21%超、又は約22%超、又は約23%超、又は約24%超、又は約25%超がCXCR4を発現する場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。
【0048】
1つ以上の更なるマーカーは、骨形成タンパク質(BMP)4、BMP7、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ホメオボックスタンパク質HOX11、眼欠損ホモログ1(eyes absent homolog 1)(EYA1)、SAL1、及びSIX4(SIXホメオボックス4)の1つ以上の組合せを含み得る。1つ以上の更なるマーカーは、ペアードボックス2(PAX2)、Glu/Aspリッチなカルボキシ末端ドメインを有するCbp/P300相互作用トランス活性化因子1(Cbp/P300 interacting transactivator with Glu/Asp rich carboxy-terminal domain 1)(CITED1)、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)1、FGF7、FGF10、ホメオボックスタンパク質HOX10、カプスリング(capsuling)/エディカルジン(edicardin)/Tcf21(POD1)POD1、及びムチン1(MUC1)の1つ以上の組合せを含み得る。1つ以上の更なるマーカーは、ヒアルロナン媒介運動性受容体(Receptor for Hyaluronan Mediated Motility)(RHAMM)、補体成分C2、補体成分C3、補体成分C4、フィブリノーゲン、凝固第XIII因子、TEKチロシンキナーゼ、KDR、Notch1、Notch3、Timp3、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)、Adam15、成長停止特異的6(Growth arrest-specific 6)(Gas6)、インスリン様成長因子結合タンパク質(Igfbp)1、又は膜貫通4スーパーファミリーメンバー4(Transmembrane 4 Superfamily member 4)(Tm4sf4)の1つ以上の組合せを含み得る。1つ以上の更なるマーカーは、RHAMMを含み得る。
【0049】
1つ以上の更なるマーカーは、CDKN2A、インターロイキン11(IL11)、転写成長因子(TGF)β2、フィブロネクチン(FN)1、システインリッチ分泌タンパク質LCCLドメイン含有2(cysteine rich secretory protein LCCL domain containing 2)(CRISPLD2)、1型コラーゲンα1鎖(COL1A1)、リシルオキシダーゼ(LOX)、runt関連転写因子2(RUNX2)、ルナティックフリンジ(LFNG)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、クローディン(CLDN)3、ウリジンホスホリラーゼ(UPP)1、クルッペル様因子(KLF)14、グリコシルトランスフェラーゼ様(glycosyltransferase-like)(GYLTL)1B、α-マンノシダーゼクラス1Cメンバー1(mannosidase alpha class 1C member 1)(MAN1C1)、ポリペプチドN-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ9(GALNT9)、アクアポリン(AQP1)、溶質キャリアファミリー47メンバー1(SLC47A1)、WNKリジン欠損プロテインキナーゼ(WNK)2、カルシウム感知受容体(CASR)、レチノイン酸誘導性2(retinoic acid induced 2)(RAI2)、原形質膜小胞関連タンパク質(PLVAP)、シーサファミリーメンバー(shisa family member)(SHISA)3、前立腺アンドロゲン調節ムチン様タンパク質1(prostate androgen-regulated mucin-like protein 1)(PARM1)、FGF11、フォークヘッドボックスE1(FOXE1)、WNTファミリーメンバー(WNT)5A、WNT10A、TGFβ1、及びインスリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP)3の1つ以上の組合せを含み得る。1つ以上の更なるマーカーは、IL11、TGFβ2、CRISPLD2、LOX、LNFG、BDNF、WNT5A、又はIGFBP3のいずれか1つ以上を含み得る。
【0050】
富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する幾つかの方法において、富化された不均一腎細胞集団の細胞がSIX2、OSR1、RET、及びポドシンを発現するかどうかを判定することができる。そのような方法において、富化された不均一腎細胞集団の細胞がSIX2、OSR1、RET、及びポドシンを発現すると判定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。富化された不均一腎細胞集団の細胞がSIX2、OSR、RET、及びポドシンを発現することの判定は、SIX2、OSR、RET、及びポドシンを発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージを決定することを含み得る。
【0051】
富化された不均一腎細胞集団の細胞がSIX2、OSR、RET、及びポドシンを発現することの判定が、SIX2、OSR、RET、及びポドシンを発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージを決定することを含む場合に、(i)SIX2を発現する集団の細胞のパーセンテージは、0%超で多くとも15.0%まで、又は0%超で多くとも約10.0%まで、又は0%超で多くとも約9.5%まで、又は0%超で多くとも約9.0%まで、又は0%超で多くとも約8.5%まで、又は0%超で多くとも約8.0%まで、又は0%超で多くとも約7.5%まで、又は0%超で多くとも約7.0%まで、又は0%超で多くとも約6.5%まで、又は0%超で多くとも約6.0%まで、又は約0.02%から約15%の間、又は約0.02%から約10.0%の間、又は約0.02%から約9.0%の間、又は約0.02%から約8.0%の間、又は約0.02%から約7.0%の間、又は約0.02%から約6.0%の間、又は約0.04%から約15%の間、又は約0.04%から約10.0%の間、又は約0.04%から約9.0%の間、又は約0.04%から約8.0%の間、又は約0.04%から約7.0%の間、又は約0.04%から約6.0%の間、又は約1.0%から約15.0%の間、又は約1.0%から約10.0%の間、又は約1.0%から約9.0%の間、又は約1.0%から約8.0%の間、又は約1.0%から約7.0%の間、又は約1.0%から約6.0%の間であり得て、(ii)OSRを発現する集団の細胞のパーセンテージは、0%超で多くとも約90%まで、又は0%超で多くとも約88%まで、又は0%超で多くとも約86%まで、又は0%超で多くとも約84%まで、又は0%超で多くとも約82%まで、又は0%超で多くとも約80%まで、又は0%超で多くとも約75%まで、又は0%超で多くとも約70%まで、約30%から約90%の間、又は約30%から約88%の間、又は約30%から約86%の間、又は約30%から約84%の間、又は約30%から約82%の間、又は約30%から約80%の間、又は34%から90%の間、又は約34%から約88%の間、又は約34%から約86%の間、又は約34%から約84%の間、又は約34%から約82%の間、又は約34%から約80%の間、又は約36%から約90%の間、又は約36%から約88%の間、又は約36%から約86%の間、又は約36%から約84%の間、又は約36%から約82%の間、又は約36%から約80%の間、又は約40%から約90%の間、又は約40%から約85%の間、又は約45%から約90%の間、又は約45%から約85%の間、又は約50%から約90%の間、又は約50%から約85%の間、又は約55%から約90%の間、又は約55%から約85%の間、又は約60%から約90%の間、又は約60%から約85%の間、又は約65%から約90%の間、又は約65%から約85%の間、又は約70%から約90%の間、又は約70%から約85%の間であり得て、(iii)RETを発現する集団の細胞のパーセンテージは、0%超で多くとも約94%まで、又は0%超で多くとも約93%まで、又は0%超で多くとも約92%まで、又は0%超で多くとも約91%まで、又は0%超で多くとも約90%まで、又は0%超で多くとも約89%まで、又は0%超で多くとも約88%まで、又は0%超で多くとも約87%まで、又は0%超で多くとも約86%まで、又は0%超で多くとも約85%まで、又は約45%から約95%の間、又は約45%から約94%の間、又は約45%から約93%の間、又は約45%から約92%の間、又は約45%から約91%の間、又は約45%から約90%の間、又は約45%から約89%の間、又は約45%から約88%の間、又は約47%から約95%の間、又は約47%から約94%の間、又は約47%から約93%の間、又は約47%から約92%の間、又は約47%から約91%の間、又は約47%から約90%の間、又は約47%から約89%の間、又は約47%から約88%の間、又は約49%から約95%の間、又は約49%から約94%の間、又は約49%から約93%の間、又は約49%から約92%の間、又は約49%から約91%の間、又は約49%から約90%の間、又は約49%から約89%の間、又は約49%から約88%の間、又は約20%から約60%の間、又は約20%から約55%の間、又は約20%から約50%の間、又は約20%から約45%の間、又は約20%から約40%の間、又は約25%から約60%の間、又は約25%から約55%の間、又は約25%から約50%の間、又は約25%から約45%の間、又は約25%から約40%の間であり得て、かつ(iv)ポドシンを発現する集団の細胞のパーセンテージは、少なくとも約80%、少なくとも約82%、少なくとも約84%、少なくとも約86%、少なくとも約88%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約96%、又は少なくとも約98%であり得る。
【0052】
富化された不均一腎細胞集団の細胞がSIX2、OSR1、RET、及びポドシンを発現するかどうかを判定して、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する方法において、富化された不均一腎細胞集団の細胞がLHX1、FGF8、RACK-1、及びネフリンの1つ以上を発現するかどうかを更に判定することができる。これらの方法において、富化された不均一腎細胞集団の細胞がSIX2、OSR、RET、及びポドシンを発現すると判定され、かつ富化された不均一腎細胞集団の細胞がLHX1、FGF8、RACK-1、及びネフリンの1つ以上を発現すると更に判定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。
【0053】
これらの方法において、富化された不均一腎細胞集団の細胞がSIX2、OSR1、RET、及びポドシンを発現するかどうかの判定、並びに富化された不均一腎細胞集団の細胞がLHX1、FGF8、RACK-1、及びネフリンの1つ以上を発現するかどうかの更なる判定は、富化された不均一腎細胞集団の細胞が以下のいずれかを発現するかどうかの判定であり得る:SIX2、OSR1、RET、ポドシン、及びLHX1、又はSIX2、OSR1、RET、ポドシン、及びFGF8、又はSIX2、OSR1、RET、ポドシン、及びRACK-1、又はSIX2、OSR1、RET、ポドシン、及びネフリン、又はSIX2、OSR1、RET、ポドシン、LHX1、及びFGF8、又はSIX2、OSR1、RET、ポドシン、LHX1、及びRACK-1、又はSIX2、OSR1、RET、ポドシン、LHX1、及びネフリン、又はSIX2、OSR1、RET、ポドシン、FGF8、及びRACK-1、又はSIX2、OSR1、RET、ポドシン、FGF8、及びネフリン、又はSIX2、OSR1、RET、ポドシン、RACK-1、及びネフリン、又はSIX2、OSR1、RET、ポドシン、LHX1、FGF8、及びRACK-1、又はSIX2、OSR1、RET、ポドシン、LHX1、FGF8、及びネフリン、又はSIX2、OSR1、RET、ポドシン、LHX、RACK-1、及びネフリン、又はSIX2、OSR1、RET、ポドシン、FGF8、RACK-1、及びネフリン、又はSIX2、OSR1、RET、ポドシン、LHX、FGF8、RACK-1、及びネフリン。
【0054】
富化された不均一腎細胞集団の細胞がSIX2、OSR1、RET、及びポドシンを発現し、更にLHX1、FGF8、RACK-1、及びネフリンの1つ以上を発現するかどうかの判定は、SIX2、OSR1、RET、ポドシンを発現し、更にLHX1、FGF8、RACK-1、及びネフリンの1つ以上を発現する細胞のパーセントの決定であり得る。富化された不均一腎細胞集団の細胞がSIX2、OSR1、RET、及びポドシンを発現し、更にLHX1、FGF8、RACK-1の1つ以上を発現することが判定される場合に、(i)SIX2を発現する集団の細胞のパーセンテージは、0%超で多くとも15%までであり得るか、又は0%超で多くとも約10.0%まで、又は0%超で多くとも約9.5%まで、又は0%超で多くとも約9.0%まで、又は0%超で多くとも約8.5%まで、又は0%超で多くとも約8.0%まで、又は0%超で多くとも約7.5%まで、又は0%超で多くとも約7.0%まで、又は0%超で多くとも約6.5%まで、又は0%超で多くとも約6.0%まで、又は約0.02%から約15.0%の間、又は約0.02%から約10.0%の間、又は約0.02%から約9.0%の間、又は約0.02%から約8.0%の間、又は約0.02%から約7.0%の間、又は約0.02%から約6.0%の間、又は約0.04%から約15%の間、又は約0.04%から約10.0%の間、又は約0.04%から約9.0%の間、又は約0.04%から約8.0%の間、又は約0.04%から約7.0%の間、又は約0.04%から約6.0%の間、又は約1.0%から約15.0%の間、又は約1.0%から約10.0%の間、又は約1.0%から約9.0%の間、又は約1.0%から約8.0%の間、又は約1.0%から約7.0%の間、又は約1.0%から約6.0%の間であり得て、(ii)OSR1を発現する集団の細胞のパーセンテージは、0%超で多くとも約90%まで、又は0%超で多くとも約88%まで、又は0%超で多くとも約86%まで、又は0%超で多くとも約84%まで、又は0%超で多くとも約82%まで、又は0%超で多くとも約80%まで、又は0%超で多くとも約75%まで、又は0%超で多くとも約70%まで、約30%から約90%の間、又は約30%から約88%の間、又は約30%から約86%の間、又は約30%から約84%の間、又は約30%から約82%の間、又は約30%から約80%の間、又は34%から90%の間、又は約34%から約88%の間、又は約34%から約86%の間、又は約34%から約84%の間、又は約34%から約82%の間、又は約34%から約80%の間、又は約36%から約90%の間、又は約36%から約88%の間、又は約36%から約86%の間、又は約36%から約84%の間、又は約36%から約82%の間、又は約36%から約80%の間、又は約40%から約90%の間、又は約40%から約85%の間、又は約45%から約90%の間、又は約45%から約85%の間、又は約50%から約90%の間、又は約50%から約85%の間、又は約55%から約90%の間、又は約55%から約85%の間、又は約60%から約90%の間、又は約60%から約85%の間、又は約65%から約90%の間、又は約65%から約85%の間、又は約70%から約90%の間、又は約70%から約85%の間であり得て、(iii)RETを発現する集団の細胞のパーセンテージは、0%超で多くとも約94%まで、又は0%超で多くとも約93%まで、又は0%超で多くとも約92%まで、又は0%超で多くとも約91%まで、又は0%超で多くとも約90%まで、又は0%超で多くとも約89%まで、又は0%超で多くとも約88%まで、又は0%超で多くとも約87%まで、又は0%超で多くとも約86%まで、又は0%超で多くとも約85%まで、又は約45%から約95%の間、又は約45%から約94%の間、又は約45%から約93%の間、又は約45%から約92%の間、又は約45%から約91%の間、又は約45%から約90%の間、又は約45%から約89%の間、又は約45%から約88%の間、又は約47%から約95%の間、又は約47%から約94%の間、又は約47%から約93%の間、又は約47%から約92%の間、又は約47%から約91%の間、又は約47%から約90%の間、又は約47%から約89%の間、又は約47%から約88%の間、又は約49%から約95%の間、又は約49%から約94%の間、又は約49%から約93%の間、又は約49%から約92%の間、又は約49%から約91%の間、又は約49%から約90%の間、又は約49%から約89%の間、又は約49%から約88%の間、又は約20%から約60%の間、又は約20%から約55%の間、又は約20%から約50%の間、又は約20%から約45%の間、又は約20%から約40%の間、又は約25%から約60%の間、又は約25%から約55%の間、又は約25%から約50%の間、又は約25%から約45%の間、又は約25%から約40%の間であり得て、(iv)ポドシンを発現する集団の細胞のパーセンテージは、少なくとも約80%、少なくとも約82%、少なくとも約84%、少なくとも約86%、少なくとも約88%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約96%、又は少なくとも約98%であり得て、任意に(v)LHX1を発現する集団の細胞のパーセンテージは、少なくとも約5%、少なくとも約6%、又は少なくとも約7%、又は少なくとも約8%、又は少なくとも約9%、又は少なくとも約10%、0%超で多くとも約80%まで、又は0%超で多くとも約70%まで、又は0%超で多くとも約65%まで、又は0%超で多くとも約64%まで、又は0%超で多くとも約63%まで、又は0%超で多くとも約62%まで、又は0%超で多くとも約61%まで、又は0%超で多くとも約60%まで、又は0%超で多くとも約59%まで、又は0%超で多くとも約58%まで、又は0%超で多くとも約57%まで、又は0%超で多くとも約56%まで、又は0%超で多くとも約55%まで、約6%から約60%の間、又は約6%から約59%の間、又は約6%から約58%の間、又は約6%から約57%の間、又は約6%から約56%の間、又は約6%から約55%の間、又は約6%から約54%の間、又は約8%から約60%の間、又は約8%から約59%の間、又は約8%から約58%の間、又は約8%から約57%の間、又は約8%から約56%の間、又は約8%から約55%の間、又は約8%から約54%の間、又は約10%から約60%の間、又は約10%から約59%の間、又は約10%から約58%の間、又は約10%から約57%の間、又は約10%から約56%の間、又は約10%から約55%の間、又は約10%から約54%の間、又は約16%から約80%の間、又は約16%から約70%の間、又は約16%から約60%の間、又は約16%から約58%の間、又は約16%から約56%の間、又は約16%から約54%の間、又は約16%から約52%の間、又は約16%から約50%の間、又は22%から約60%の間、又は約22%から約58%の間、又は約22%から約56%の間、又は約22%から約54%の間、又は約22%から約52%の間、又は約22%から約50%の間であり得て、任意に(vi)FGF8を発現する集団の細胞のパーセンテージは、少なくとも約0.2%、少なくとも約0.45%、又は少なくとも約0.48%、又は少なくとも約0.5%、又は少なくとも約0.55%、又は少なくとも約0.6%、又は少なくとも約0.8%、又は少なくとも約1.0%、又は少なくとも約1.5%、又は少なくとも約2.0%、又は約2.5%、0%超で多くとも約65%まで、又は0%超で多くとも約64%まで、又は0%超で多くとも約63%まで、又は0%超で多くとも約62%まで、又は0%超で多くとも約61%まで、又は0%超で多くとも約60%まで、又は0%超で多くとも約59%若しくは多くとも約58%まで、又は0%超で多くとも約57%まで、又は0%超で多くとも約56%まで、又は0%超で多くとも約55%まで、約0.3%から約64%の間、又は約0.3%から約63%の間、又は約0.3%から約62%の間、又は約0.3%から約61%の間、又は約0.3%から約60%の間、又は約0.3%から約59%の間、又は約0.3%から約58%の間、又は約0.3%から約57%の間、又は約0.4%から約64%の間、又は約0.4%から約63%の間、又は約0.4%から約62%の間、又は約0.4%から約61%の間、又は約0.4%から約60%の間、又は約0.4%から約59%の間、又は約0.4%から約58%の間、又は約0.4%から約57%の間、又は約0.5%から約64%の間、又は約0.5%から約63%の間、又は約0.5%から約62%の間、又は約0.5%から約61%の間、又は約0.5%から約60%の間、又は約0.5%から約59%の間、又は約0.5%から約58%の間、又は約0.5%から約57%の間、又は約1%から約64%の間、又は約1%から約54%の間、又は約1%から約44%の間、又は約1%から約34%の間、又は1%から約24%の間、又は約2%から約64%の間、又は約2%から約54%の間、又は約2%から約44%の間、又は約2%から約34%の間、又は2%から約24%の間、又は約3%から約64%の間、又は約3%から約54%の間、又は約3%から約44%の間、又は約3%から約34%の間、又は3%から約24%の間であり得て、任意に(vii)RACK-1を発現する集団の細胞のパーセンテージは、少なくとも約80%、少なくとも約82%、少なくとも約84%、少なくとも約86%、少なくとも約88%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約96%、又は少なくとも約98%であり得て、任意に(viii)ネフロンを発現する集団の細胞のパーセンテージは、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、約4%から約95%の間、又は約10%から約95%の間、又は約15%から約95%の間、又は約20%から約95%の間、又は約25%から約95%の間、及び約30%から約95%の間、又は35%から約95%の間、又は約40%から約95%の間、又は約45%から95%の間、又は約50%から約95%の間、又は約55%から約95%の間、又は約60%から約95%の間、又は約65%から約95%の間、又は70%から約95%の間、又は約75%から約95%の間、又は約80%から約95%の間、又は約85%から約95%の間であり得る。
【0055】
富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する幾つかの他の方法において、富化された不均一腎細胞集団の細胞がネフリン、ポドシン、及びLHX1を発現するかどうかを判定することができる。そのような方法において、富化された不均一腎細胞集団の細胞がネフリン、ポドシン、及びLHX1を発現すると判定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。
【0056】
富化された不均一腎細胞集団の細胞がネフリン、ポドシン、及びLHX1を発現することの判定は、ネフリン、ポドシン、及びLHX1を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージを決定することを含み得る。上記判定が、ネフリン、ポドシン、及びLHX1を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージを決定し、次いで、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することを含む場合に、(i)ネフリンを発現する集団の細胞のパーセンテージは、少なくとも約70%、少なくとも約72%、少なくとも約75%、少なくとも約77%、少なくとも約80%、少なくとも約82%、少なくとも約85%、少なくとも約87%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約95%、又は少なくとも約97%であり得て、(ii)ポドシンを発現する集団の細胞のパーセンテージは、少なくとも約80%、少なくとも約82%、少なくとも約84%、少なくとも約86%、少なくとも約88%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約96%、又は少なくとも約98%であり得て、かつ(iii)LHX1を発現する集団の細胞のパーセンテージは、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、約15%から約80%の間、約20%から約80%の間、約15%から約75%の間、約15%から約70%の間、又は約20%から約80%の間であり得る。
【0057】
富化された不均一腎細胞集団の細胞がネフリン、ポドシン、及びLHX1を発現するかどうかを判定して、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する方法において、富化された不均一腎細胞集団の細胞がSIX2、OSR1、RET、又はFGF8の腎形成マーカーの1つ以上を発現するかどうかを更に判定することができる。これらの方法において、富化された不均一腎細胞集団の細胞がネフリン、ポドシン、及びLHX1を発現すると判定され、かつ富化された不均一腎細胞集団の細胞がSIX2、OSR1、RET、又はFGF8の1つ以上を発現すると更に判定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。
【0058】
これらの方法において、富化された不均一腎細胞集団の細胞がネフリン、ポドシン、及びLHX1を発現し、更にSIX2、OSR1、RET、又はFGF8の1つ以上を発現するかどうかの判定は、富化された不均一腎細胞集団の細胞が以下のいずれかを発現するかどうかの判定であり得る:ネフリン、ポドシン、LHX1、及びSIX2、ネフリン、ポドシン、LHX1、及びOSR1、ネフリン、ポドシン、LHX1、及びRET、ネフリン、ポドシン、LHX1、及びFGF8、ネフリン、ポドシン、LHX1、SIX2、及びOSR1、ネフリン、ポドシン、LHX1、SIX2、及びRET、ネフリン、ポドシン、LHX1、SIX2、及びFGF8、ネフリン、ポドシン、LHX1、OSR1、及びRET、ネフリン、ポドシン、LHX1、ORS1、及びFGF8、ネフリン、ポドシン、LHX1、RET、及びFGF8、ネフリン、ポドシン、LHX1、SIX2、OSR1、及びRET、ネフリン、ポドシン、LHX1、SIX2、RET、及びFGF8、ネフリン、ポドシン、LHX1、OSR1、RET、及びFGF8、ネフリン、ポドシン、LHX1、SIX2、OSR1、及びFGF8、又はネフリン、ポドシン、LHX1、SIX2、OSR1、RET、及びFGF8。
【0059】
富化された不均一腎細胞集団の細胞がネフリン、ポドシン、及びLHX1を発現し、更にSIX2、OSR1、RET、及びFGF8の1つ以上を発現するかどうかの判定は、ネフリン、ポドシン、及びLHX1を発現し、更にSIX2、OSR1、RET、及びFGF8の1つ以上を発現する細胞のパーセントの決定であり得る。ネフリン、ポドシン、及びLHX1、並びにSIX2、OSR1、RET、及びFGF8の1つ以上を発現する集団の細胞のパーセンテージを決定し、次いで、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する場合に、(i)ネフリンを発現する細胞のパーセンテージは、少なくとも約70%、少なくとも約72%、少なくとも約75%、少なくとも約77%、少なくとも約80%、少なくとも約82%、少なくとも約85%、少なくとも約87%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約95%、又は少なくとも約97%であり得て、(ii)ポドシンを発現する細胞のパーセンテージは、少なくとも約80%、少なくとも約82%、少なくとも約84%、少なくとも約86%、少なくとも約88%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約96%、又は少なくとも約98%であり得て、(iii)LHX1を発現する細胞のパーセンテージは、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、約15%から約80%の間、約20%から約80%の間、約15%から約75%の間、約15%から約70%の間、又は約20%から約80%の間であり得て、任意に(iv)SIX2を発現する細胞のパーセンテージは、0%超で多くとも約15.0%まで、又は0%超で多くとも約13%まで、又は0%超で多くとも約11%まで、又は0%超で多くとも約9%まで、又は0%超で多くとも約7%まで、又は0%超で多くとも約5%まで、又は0%超で多くとも約3%まで、又は約0.02%から約15%の間、又は約0.02%から約13%の間、又は約0.02%から約11%の間、又は約0.02%から約9%の間、又は約0.02%から約7%の間、又は約0.02%から約5%の間、又は約0.02%から約3%の間、又は約0.04%から約15%の間、又は約0.04%から約13%の間、又は約0.04%から約11%の間、又は約0.04%から約9%の間、又は約0.04%から約7%の間、又は約0.04%から約5%の間、又は約0.04%から約3%の間、又は約1%から約15%の間、又は約1%から約13%の間、又は約1%から約11%の間、又は約1%から約9%の間、又は約1%から約7%の間、又は約1%から約5%の間、又は約1%から約3%の間であり得て、任意に(v)OSR1を発現する細胞のパーセンテージは、0%超で多くとも約90%まで、又は0%超で多くとも約88%まで、又は0%超で多くとも約86%まで、又は0%超で多くとも約84%まで、又は0%超で多くとも約82%まで、又は0%超で多くとも約80%まで、又は0%超で多くとも約75%まで、又は0%超で多くとも約70%まで、約30%から約90%の間、又は約30%から約88%の間、又は約30%から約86%の間、又は約30%から約84%の間、又は約30%から約82%の間、又は約30%から約80%の間、又は34%から90%の間、又は約34%から約88%の間、又は約34%から約86%の間、又は約34%から約84%の間、又は約34%から約82%の間、又は約34%から約80%の間、又は約36%から約90%の間、又は約36%から約88%の間、又は約36%から約86%の間、又は約36%から約84%の間、又は約36%から約82%の間、又は約36%から約80%の間、又は約40%から約90%の間、又は約40%から約85%の間、又は約45%から約90%の間、又は約45%から約85%の間、又は約50%から約90%の間、又は約50%から約85%の間、又は約55%から約90%の間、又は約55%から約85%の間、又は約60%から約90%の間、又は約60%から約85%の間、又は約65%から約90%の間、又は約65%から約85%の間、又は約70%から約90%の間、又は約70%から約85%の間であり得て、任意に(vi)RETを発現する細胞のパーセンテージは、0%超で多くとも約94%まで、又は0%超で多くとも約93%まで、又は0%超で多くとも約92%まで、又は0%超で多くとも約91%まで、又は0%超で多くとも約90%まで、又は0%超で多くとも約89%まで、又は0%超で多くとも約88%まで、又は0%超で多くとも約87%まで、又は0%超で多くとも約86%まで、又は0%超で多くとも約85%まで、又は約45%から約95%の間、又は約45%から約94%の間、又は約45%から約93%の間、又は約45%から約92%の間、又は約45%から約91%の間、又は約45%から約90%の間、又は約45%から約89%の間、又は約45%から約88%の間、又は約47%から約95%の間、又は約47%から約94%の間、又は約47%から約93%の間、又は約47%から約92%の間、又は約47%から約91%の間、又は約47%から約90%の間、又は約47%から約89%の間、又は約47%から約88%の間、又は約49%から約95%の間、又は約49%から約94%の間、又は約49%から約93%の間、又は約49%から約92%の間、又は約49%から約91%の間、又は約49%から約90%の間、又は約49%から約89%の間、又は約49%から約88%の間、又は約20%から約60%の間、又は約20%から約55%の間、又は約20%から約50%の間、又は約20%から約45%の間、又は約20%から約40%の間、又は約25%から約60%の間、又は約25%から約55%の間、又は約25%から約50%の間、又は約25%から約45%の間、又は約25%から約40%の間であり得て、任意に(vii)FGF8を発現する細胞のパーセンテージは、少なくとも約0.2%、少なくとも約0.45%、又は少なくとも約0.48%、又は少なくとも約0.5%、又は少なくとも約0.55%、又は少なくとも約0.6%、又は少なくとも約0.8%、又は少なくとも約1.0%、又は少なくとも約1.5%、又は少なくとも約2.0%、又は少なくとも約2.5%、0%超で多くとも約65%まで、又は0%超で多くとも約60%まで、又は0%超で多くとも約59%若しくは多くとも約58%まで、又は0%超で多くとも約57%まで、又は0%超で多くとも約56%まで、又は0%超で多くとも約55%まで、約0.3%から約64%の間、又は約0.3%から約63%の間、又は約0.3%から約62%の間、又は約0.3%から約61%の間、又は約0.3%から約60%の間、又は約0.3%から約59%の間、又は約0.3%から約58%の間、又は約0.3%から約57%の間、又は約0.4%から約64%の間、又は約0.4%から約63%の間、又は約0.4%から約62%の間、又は約0.4%から約61%の間、又は約0.4%から約60%の間、又は約0.4%から約59%の間、又は約0.4%から約58%の間、又は約0.4%から約57%の間、又は約0.5%から約64%の間、又は約0.5%から約63%の間、又は約0.5%から約62%の間、又は約0.5%から約61%の間、又は約0.5%から約60%の間、又は約0.5%から約59%の間、又は約0.5%から約58%の間、又は約0.5%から約57%の間、又は約1%から約64%の間、又は約1%から約54%の間、又は約1%から約44%の間、又は約1%から約34%の間、又は1%から約24%の間、又は約2%から約64%の間、又は約2%から約54%の間、又は約2%から約44%の間、又は約2%から約34%の間、又は2%から約24%の間、又は約3%から約64%の間、又は約3%から約54%の間、又は約3%から約44%の間、又は約3%から約34%の間、又は3%から約24%の間であり得る。
【0060】
富化された不均一腎細胞集団の細胞がネフリン、ポドシン、及びLHX1を発現するかどうかを判定して、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する方法において、富化された不均一腎細胞集団の細胞がSIX2、OSR1、RET、又はFGF8の腎形成マーカーの1つ以上を発現するかどうかを判定するのに加えて又はその代わりとして、この細胞がRACK1を発現するかどうかを更に判定することができる。これらの方法において、不均一腎細胞集団の細胞がネフリン、ポドシン、及びLHX1を発現し、更にRACK-1を発現する場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。
【0061】
これらの方法において、富化された不均一腎細胞集団の細胞がRACK1を発現するかどうかの判定は、ネフリン、ポドシン、及びLHX1を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージ、並びに任意にSIX1、OSR1、RET、及びFGF8の1つ以上を発現する細胞のパーセンテージに加えて、RACK1を発現する細胞のパーセンテージの決定であり得る。RACK1を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが上記方法の部分として決定される場合に、富化された腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別するパーセンテージは、少なくとも約80%、少なくとも約82%、少なくとも約84%、少なくとも約86%、少なくとも約88%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約96%、又は少なくとも約98%であり得る。
【0062】
富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する更に別の方法において、富化された不均一腎細胞集団の細胞がγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)-1、CK18、及びポドシンを発現するかどうかを判定することができる。そのような方法において、富化された不均一腎細胞集団の細胞がGGT-1、CK18、及びポドシンを発現すると判定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。富化された不均一腎細胞集団の細胞がGGT-1、CK18、及びポドシンを発現することの判定は、GGT-1、CK18、及びポドシンを発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージを決定することを含み得る。富化された不均一腎細胞集団の細胞がGGT-1、CK18、及びポドシンを発現することが判定される場合に、(i)集団の細胞の少なくとも4.5%、又は少なくとも10%、又は少なくとも18%がGGT-1を発現し、(ii)集団の細胞の少なくとも80%がCK18を発現し、かつ(iii)集団の細胞の少なくとも約80%、少なくとも約82%、少なくとも約84%、少なくとも約86%、少なくとも約88%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約96%、又は少なくとも約98%がポドシンを発現する場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。これらの方法において、集団の細胞によって細胞培養培地中に分泌されたVEGF及び/又はKIM-1は、更にその細胞を治療可能性を有するものとして識別することができる。
【0063】
富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する幾つかの方法において、富化された不均一腎細胞集団の細胞が少なくとも1つの腎形成マーカーを発現するかどうかを判定することは必要とされない。富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別するこれらの代替的な方法において、RHAMM、C2、C3、C4、フィブリノーゲン、凝固第XIII因子、TEK、KDR、Notch1、Notch3、Timp3、Vwf、Adam15、Gas6、Igfbp1、又はTm4sf4の遺伝子の1つ以上の発現レベルを決定することによって、その細胞を治療可能性を有するものとして識別することができる。これらの代替的な方法において、発現レベルが決定され得る1つ以上の遺伝子はRHAMMであり得る。これらの代替的な方法において、富化された不均一腎細胞集団の細胞による1つ以上の遺伝子の決定された発現レベルがコントロール腎細胞集団の細胞による1つ以上の遺伝子の発現と比べて増加している場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。
【0064】
さらに、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する方法のいずれかにおいて、富化された不均一腎細胞集団を更に転写解析又はトランスクリプトームシグネチャー解析に供することができる。富化された不均一腎細胞集団が転写解析又はトランスクリプトームシグネチャー解析に供される場合に、富化された不均一腎細胞集団の細胞が補体若しくは補体カスケードに関連する転写経路若しくはシグネチャー、血管発生、血管形態形成、血管系発生、又は創傷への応答について上方調節されている及び/又は細胞外マトリックス-受容体相互作用に関連する転写経路又はシグネチャーについて下方調節されていることが判定される場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。
【0065】
本明細書において論じられる、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別するのに有用なマーカー、例えば、SIX2、OSR1、RET、LHX1、FGF8、ネフリン、ポドシン、及びRACK-1は、富化された不均一腎細胞集団による治療を必要とする患者、例えば、腎臓疾患、尿細管輸送欠損症、又は糸球体濾過欠損症についての治療を必要とする患者が、治療に対する中ないし高レスポンダー又は低レスポンダーであるかどうかを識別する方法においても有用であり得る。そのような方法において、患者が中ないし高レスポンダーと識別される場合に、その患者を、治療に対する奏効が推定糸球体濾過率(eGFR)の増加であり得る患者と識別することができる。患者が低レスポンダーと識別される場合に、その患者を、治療に対する奏効がeGFRの傾きの改善であり得るがeGFRの増加を伴わない患者と識別することができる。患者が中ないし高レスポンダー又は低レスポンダーであり得るかどうかを識別するために、マーカー、例えば、SIX2、OSR1、RET、LHX1、FGF8、ネフリン、ポドシン、及びRACK-1の1つ以上を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージを決定することができる。例えば、患者が中ないし高レスポンダー又は低レスポンダーであるかどうかを識別するために、LHX1を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージを決定することができる。LHX1を発現する不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが少なくとも50%であると決定される場合に、その患者を中ないし高レスポンダーと識別することができる。LHX1を発現する不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが50%未満であると決定される場合に、その患者を低レスポンダーと識別することができる。別の例として、患者が中ないし高レスポンダー又は低レスポンダーであるかどうかを識別するために、SIX2を発現する富化された不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージを決定することができる。SIX2を発現する不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが少なくとも3.5%であると決定される場合に、その患者を中ないし高レスポンダーと識別することができる。SIX2を発現する不均一腎細胞集団の細胞のパーセンテージが3.5%未満であるが0%超であると決定される場合に、その患者を低レスポンダーと識別することができる。LHX1及びSIX2の両方のパーセンテージを決定して、患者を中ないし高レスポンダー又は低レスポンダーと識別することができる。
【0066】
富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別する方法のいずれかにおいて、富化された不均一腎細胞集団の細胞が1つ以上の、例えば腎形成マーカー及び/又は更なるマーカーを発現するかどうかの判定(又は1つ以上の遺伝子の発現レベルの決定)は、富化された不均一腎細胞集団の細胞が核酸、例えば、mRNA若しくはmiRNA又はポリペプチドの形態のマーカーを発現するかどうかを判定することであり得る(又は1つ以上の遺伝子の発現レベルを決定することであり得る)。マーカー(又はその発現が判定される若しくは発現レベルが決定される遺伝子)は、膜結合型若しくは膜会合型である場合もあれば、細胞内である場合もあれば、又は細胞から分泌される場合もある。富化された不均一腎細胞集団の細胞による1つ以上の、例えば、腎形成マーカー及び/又は更なるマーカーの発現(又は遺伝子の発現レベル)を、マーカーの存在(又は遺伝子の発現レベル)の検出に適したあらゆるアッセイを介して決定することができる。多くのそのようなアッセイは、当該技術分野において既知である。例えば、マーカー(又は遺伝子の発現レベルが決定され、その発現)がポリペプチドの形態で決定される場合に、これをウェスタンブロット、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)等のアッセイによって決定することができる。マーカー(又は遺伝子の発現レベルが決定され、その発現)が核酸の形態で決定される場合に、これをサザンブロット、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)若しくは逆転写酵素PCR、遺伝子発現連鎖解析(SAGE)、Mass ARRAY、又は蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)等のアッセイによって決定することができる。アッセイが、腎形成マーカー及び/又は更なるマーカーが富化された不均一腎細胞集団の細胞によって発現されるかどうかを判定する(又は1つ以上の遺伝子の発現レベルを決定する)かどうかにかかわらず、アッセイは、マーカー(又は発現レベルが決定される遺伝子)が存在するかどうかを判定する、及び/又はマーカー(又は遺伝子)を発現する細胞のパーセントを決定する標識された検出試薬を含み得る。標識された検出試薬は、(i)マーカー(又は遺伝子の発現産物)と直接的又は間接的に複合体を形成する部分と、(ii)検出部分とを含み得る。非限定的な検出部分としては、放射性同位体、例えば、35S、14C、125I、H、及び131I、金コロイド粒子、蛍光標識、例えば、Texas Red、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、リサミン、フィコクリテリン(phycocryterin)、フィコシアニン、SPECTRUM ORANGE、SPECTRUM GREEN1、並びに酵素基質、例えば、ホタルルシフェラーゼ、細菌ルシフェラーゼ、ルシフェリン、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、又はβ-ガラクトシダーゼが挙げられる。
【0067】
上記方法のいずれかにおいて治療可能性を有するものとして識別され得る富化された不均一腎細胞集団は、腎上皮細胞、腎尿細管細胞、腎尿細管上皮細胞、又は腎近位尿細管細胞等の1つ以上の腎細胞型について富化されていてもよい。これらの1つ以上の腎細胞型についての富化された不均一腎細胞集団の富化は、患者の腎臓組織、患者の腎臓生検、又は患者の腎臓組織若しくは腎臓生検から樹立された細胞のin vitro培養物(まとめて「出発腎細胞集団」と呼称され得る)よりも高いパーセンテージの1つ以上の腎細胞型を有する富化された不均一腎細胞集団への言及であり得る。出発腎細胞集団は、患者の腎臓組織又は患者の腎臓生検から樹立された細胞のin vitro培養物である場合に、腎臓組織又は腎臓生検の解離された細胞(例えば、腎臓組織又は腎臓生検から細切及び/又は酵素消化を介して解離された細胞)を含む、赤血球及び破片を除去する処理がなされていても、又はなされていなくてもよい腎細胞調製物であり得る。富化された不均一腎細胞集団の一例は、本明細書の実施例において記載される選択された腎細胞集団(SRC)である。
【0068】
富化された不均一腎細胞集団は、出発腎細胞集団(例えば、患者の腎臓組織、患者の腎臓生検、又は患者の腎臓組織若しくは腎臓生検から樹立された細胞のin vitro培養物)から分離工程を含む方法を介して調製された結果として1つ以上の腎細胞型について富化されていてもよい。分離工程は、1回、2回、又は3回より多く継代されていない出発腎細胞集団の細胞をそれらの浮遊密度に基づいて分離する工程であり得る。分離工程が細胞をそれらの浮遊密度に基づいて分離する工程である場合に、その分離工程は、グリセロール、グルコース、OptiPrep、Percoll、又はFicoll-Paque等の密度勾配媒体を使用する単一段階又は多段階の連続密度勾配又は不連続密度勾配を利用することができる。このような密度勾配媒体をこうして使用した結果として、出発腎細胞集団(又は多くとも1回、2回、若しくは3回継代された出発腎細胞集団)の細胞を1つ以上の区別可能な画分に分離することができ、その画分から、富化された不均一腎細胞集団の細胞を明確に識別し、単離することができる。区別可能な画分(複数の場合もある)は、画分(複数の場合もある)中の細胞の浮遊密度が約1.045g/mL超、又は1.045g/mL超、又は1.045g/mL以上である画分であり得る。区別可能な画分(複数の場合もある)は、画分(複数の場合もある)中の細胞の浮遊密度が約1.04g/mL超、又は1.04g/mL超、又は1.04g/mL以上、又は約1.0419g/mL超、又は1.0419g/mL超、又は1.0419g/mL以上である画分であり得る。区別可能な画分(複数の場合もある)は、浮遊密度が約1.045g/mLから約1.091g/mLの間、又は約1.045g/mLから約1.052g/mLの間である画分であり得る。代替的に、分離工程は、出発腎細胞集団の細胞(又は1回、2回、若しくは3回より多く継代されていない出発腎細胞集団の細胞)を、これらがそれらの表面上に特定のマーカーを発現するかどうかに基づいて分離する工程であり得る。分離工程が細胞をそれらの特定の細胞表面マーカーの発現に基づいて分離する場合に、分離工程は、フローサイトメトリーを利用する工程であり得る。フローサイトメトリーは、出発腎細胞集団(又は多くとも1回、2回、若しくは3回継代された出発腎細胞集団)が、例えば、腎上皮細胞、腎尿細管細胞、腎尿細管上皮細胞、又は腎近位尿細管細胞に特徴的なネフリン等の特定の表面マーカーを発現する場合に、その出発腎細胞集団から細胞を選別し、それによって、単離された富化された不均一腎細胞集団を形成することができる。
【0069】
出発腎細胞集団(又は多くとも1回、2回、若しくは3回継代された出発腎細胞集団)から調製された富化された不均一腎細胞集団を、分離工程の前に低酸素条件下で培養することができる。細胞が分離工程の前に低酸素条件下で培養される場合に、その細胞を、酸素レベルが約20%未満、又は約15%未満、又は約10%未満、又は約9%未満、又は約8%未満、又は約7%未満、又は約6%未満、又は約5%未満の酸素、又は約4%未満の酸素、又は約3%未満の酸素、又は約2%未満の酸素である条件下で培養することができる。細胞が低酸素条件下で培養される場合に、その細胞を、低酸素条件下で少なくとも6時間、少なくとも8時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、少なくとも14時間、少なくとも16時間、少なくとも20時間、少なくとも24時間、少なくとも30時間、少なくとも36時間、少なくとも42時間、又は少なくとも48時間培養することができる。
【0070】
概して、富化された不均一腎細胞集団の調製を、あらゆる出発細胞集団、例えば、患者の腎臓組織又は患者の腎臓生検から樹立された細胞のin vitro培養物から行うことができる。富化された不均一腎細胞集団が、患者の腎臓組織又は腎臓生検から樹立された細胞のin vitro培養物から調製される場合に、そのin vitro培養物の細胞を、多くとも1回、又は多くとも2回、又は多くとも3回継代することによって拡大させることができる。代替的に、所望であれば、腎臓組織又は腎臓生検から樹立された細胞のin vitro培養物の細胞を凍結保存した後に、多くとも1回、又は多くとも2回、又は多くとも3回継代することによって拡大させることができる。細胞を拡大させたら、拡大された細胞を凍結保存することができる。次いで、拡大された細胞を、凍結保存されているか否かにかかわらず、分離工程に供することもでき、又は低酸素培養条件に続いて分離工程に供することもできる。富化された不均一腎細胞集団は、分離工程を実施することによって単離可能である。富化された腎細胞集団が単離されたら、これを凍結及び/又は解析した後に療法薬として使用することができる。
【0071】
さらに、出発腎細胞集団からの富化された不均一腎細胞集団の調製において、1つ以上のコントロール腎細胞集団が生成され得る。コントロール腎細胞集団は、富化された不均一腎細胞集団の調製において、分離工程の前に出発腎細胞集団を1つ以上の工程又は条件に供した結果として生成されるあらゆる腎細胞集団であり得る。コントロール腎細胞集団は、分離工程の前に、例えば、出発腎細胞集団を多くとも1回、2回、又は3回継代することによって出発腎細胞集団を拡大工程に供した後に、出発腎細胞集団から生成された腎細胞集団であり得る。代替的には、コントロール腎細胞集団は、分離工程の前に、出発腎細胞集団を低酸素条件下で培養した後に、出発腎細胞集団から生成された腎細胞集団であり得る。別の例において、コントロール腎細胞集団は、分離工程の実施前に、出発腎細胞集団を多くとも1回、2回、又は3回継代し、低酸素条件下で培養した結果として、出発腎細胞集団から生成された腎細胞集団であり得る。更に別の例において、コントロール腎細胞集団は、分離工程の実施前に、出発腎細胞集団を多くとも1回、2回、又は3回継代することによって拡大させ、及び/又は低酸素条件下で培養し、及び/又は凍結保存した結果として、出発腎細胞集団から生成された腎細胞集団であり得る。コントロール腎細胞集団は、分離工程を実施する準備において完全な一連の工程又は条件に供されたが、まだ分離工程には供されていない、出発腎細胞集団から生成された腎細胞集団であり得る。
【0072】
このようなコントロール腎細胞集団を本明細書で提供される方法において使用することができ、ここで、富化された不均一腎細胞集団の細胞による1つ以上の遺伝子、例えば、RHAMM、C2、C3、C4、フィブリノーゲン、凝固第XIII因子、TEK、KDR、Notch1、Notch3、Timp3、Vwf、Adam15、Gas6、Igfbp1、又はTm4sf4の発現レベルが、コントロール腎細胞集団の細胞による1つ以上の遺伝子の発現のレベルと比べて増加している場合に、富化された不均一腎細胞集団を治療可能性を有するものとして識別することができる。1つ以上の遺伝子の発現におけるレベルの増加は、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも100%の増加であり得る。そのような方法において、1つ以上の遺伝子は、RHAMMであり得るか、又はRHAMMを含み得て、コントロール集団と比べての富化された不均一腎細胞集団におけるRHAMM発現レベルの増加は、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも100%の増加であり得る。そのような方法において、発現レベルにおける増加は、1つ以上の遺伝子を発現する細胞のパーセンテージにおける増加であり得るか、又は1つ以上の遺伝子の総発現量(細胞数で調節される)における増加であり得る。
【0073】
富化された不均一腎細胞集団が本明細書に開示される方法のいずれかに従って治療可能性を有するものとして識別される場合に、その細胞集団を医薬組成物中に含めることができ、又は治療を必要とする患者における腎臓疾患を治療する方法において投与することができ、及び/又は腎臓疾患を治療する医薬の製造において使用することができる。富化された不均一腎細胞集団が治療可能性を有するものとして識別され、かつ医薬組成物中に含まれる場合に、その細胞集団をヒドロゲル組成物又は液体組成物として製剤化することができる。その組成物はヒアルロン酸を含んでもよく、又はヒアルロン酸を含まなくてもよい。
【0074】
医薬組成物をヒドロゲル組成物として製剤化する場合に、富化された不均一腎細胞組成物の細胞を、約8℃以下でゲル状態を維持し、ほぼ周囲温度以上で実質的に液体状態を維持し、かつ約8℃からほぼ周囲温度以上の間で固-液遷移状態にある温度感受性細胞安定化生体材料と合わせることができる。ヒドロゲル組成物に含まれる温度感受性細胞安定化生体材料は、組換え由来の細胞外マトリックスタンパク質、腎臓若しくは別の組織若しくは器官を起源とする細胞外マトリックス、又はゼラチンの1つ以上であり得る。温度感受性細胞安定化生体材料がゼラチンを含む場合に、ゼラチンは、ブタI型αIコラーゲン又は組換えヒトI型αIコラーゲン等のI型αIコラーゲンに由来し得る。温度感受性細胞安定化生体材料がゼラチンを含む場合に、ゼラチンは、医薬組成物中に約0.5%~約1%(重量/容量)、又は約0.8%~約0.9%(重量/容量)、又は約0.88%(重量/容量)で存在し得る。富化された不均一腎細胞集団の細胞は、生体材料全体にわたって分散されている場合もあれば、又は生体材料全体にわたって実質的に均一に分布している場合もある。
【0075】
医薬組成物を液体組成物として製剤化する場合に、富化された不均一腎細胞集団を、あらゆる適切な液体、例えば、適切な細胞貯蔵培地若しくは細胞培養培地、生理食塩水、又はそれらの組合せと合わせて、直ちに使用するか、又はそれを使用するタイミングまで凍結貯蔵することができる。
【0076】
富化された不均一腎細胞集団が治療可能性を有するものとして識別される場合に、富化された不均一腎細胞集団、又は富化された不均一腎細胞集団を含む医薬組成物を、腎臓疾患を治療する方法において患者に投与することができる。富化された不均一腎細胞集団が治療可能性を有するものとして識別される場合に、富化された不均一腎細胞集団、又は富化された不均一腎細胞集団を含む医薬組成物を、腎臓疾患を治療する医薬の製造において使用することができる。腎臓疾患は、あらゆる段階又は程度の急性腎不全又は慢性腎不全であり得る。腎臓疾患は腎臓において生ずる場合もあれば、又は別の病態、例えば、心不全、高血圧症、糖尿病、自己免疫疾患、若しくは肝臓疾患に続発する場合もある。代替的に、腎臓疾患は、腎臓への急性損傷から起こる腎臓疾患、又は腎臓及び/又は尿路の異常の結果であり得る。腎臓疾患としては、貧血、例えば、エリスロポエチン欠乏症及びミネラル平衡異常、例えば、ビタミンD欠乏症等の内分泌機能不全を更に挙げることができる。
【0077】
富化された不均一腎細胞集団が治療可能性を有するものとして識別される場合に、富化された不均一腎細胞集団、又は富化された不均一腎細胞集団を含む医薬組成物を投与して、腎臓疾患を治療することができる。腎臓機能を回復し、腎臓機能を安定化し、腎臓機能を改善し、腎線維症を軽減し、腎炎症を軽減し、そのような治療を必要とする患者の腎臓において誘導することによって腎臓疾患を治療することができる。腎臓疾患の治療は、そのような治療を必要とする患者におけるミネラル平衡を回復し、又は貧血を緩和することができる。腎臓疾患の治療は、透析の必要性を引き延ばし、又は防ぐことができ、又は腎臓疾患についての治療を必要とする患者における腎臓移植の必要性を引き延ばし、又は防ぐことができる。腎臓疾患の治療が、患者における透析の必要性又は腎臓移植の必要性を引き延ばす場合に、引き延ばしは、少なくとも1年、少なくとも1.5年、少なくとも2年、少なくとも2.5年、少なくとも3年、少なくとも3.5年、少なくとも4年、少なくとも4.5年、少なくとも5年、少なくとも5.5年、少なくとも6年、少なくとも6.5年、少なくとも7年、少なくとも7.5年、少なくとも8年、少なくとも8.5年、少なくとも9年、少なくとも9.5年、又は少なくとも10年であり得る。腎臓疾患の治療を、患者の血清アルブミン、アルブミン対グロブリン比(A/G比)、血清リン、血清ナトリウム、腎臓のサイズ(超音波により計測可能)、血清カルシウム、リン:カルシウム比、血清カリウム、タンパク尿、尿クレアチニン、血清クレアチニン、血中窒素尿素(BUN)、コレステロール値、トリグリセリド値及び糸球体濾過率(GFR)、体重、血圧(平均全身血圧、拡張期血圧、又は収縮期血圧)、並びに身体的持久運動能力の改善を観察することによって決定することができる。
【0078】
富化された不均一腎細胞集団が治療可能性を有するものとして識別される場合に、その細胞集団を、当該技術分野において既知であるあらゆる適切な投与経路によって患者に投与することができる。例えば、富化された不均一腎細胞集団、又は富化された不均一腎細胞集団を含む医薬組成物を、腎臓疾患についての治療を必要とする患者に全身投与することができる。富化された不均一腎細胞集団、又は富化された不均一腎細胞集団を含む医薬組成物を、腎臓疾患についての治療を必要とする患者の腎臓(複数の場合もある)に又はその中に投与することができる。富化された不均一腎細胞集団が腎臓疾患についての治療を必要とする患者の腎臓(複数の場合もある)に又はその中に投与される場合に、その細胞集団を単回又は多回の注射を介して投与することができる。その細胞集団を、直接的な開腹術を介して、直接的な腹腔鏡手術を介して、経腹的に又は経皮的に投与することができる。富化された不均一腎細胞集団、又は富化された不均一腎細胞集団を含む医薬組成物を、腎臓の腎皮質への経皮注射によって投与することができ、又はガイドカニューレを経皮的に挿入して腎臓被膜に穿刺した後に、富化された不均一腎細胞集団を腎臓中に注入することによって投与することができる。
【0079】
富化された不均一腎細胞集団、又は富化された不均一腎細胞集団を含む医薬組成物は、あらゆる適切な経路によって治療的有効用量で投与される。腎臓疾患についての治療を必要とする患者に投与する治療的有効用量又は治療的有効量は、患者の推定腎臓重量のグラム当たり約1×10個~9×10個の富化された不均一腎細胞集団の細胞を含み得る。医薬組成物の治療的有効量は、患者の推定腎臓重量のグラム当たり約1×10個の富化された不均一腎細胞集団の細胞、1×10個の富化された不均一腎細胞集団の細胞、約2×10個の富化された不均一腎細胞集団の細胞、2×10個の富化された不均一腎細胞集団の細胞、約3×10個の富化された不均一腎細胞集団の細胞、3×10個の富化された不均一腎細胞集団の細胞、約4×10個の富化された不均一腎細胞集団の細胞、4×10個の富化された不均一腎細胞集団の細胞、約5×10個の富化された不均一腎細胞集団の細胞、又は5×10個の富化された不均一腎細胞集団の細胞の用量であり得る。
【0080】
当業者は、日常的な実験を超えた実験を使用しなくても、本明細書において記載される特定の実施形態の多くの均等物を認識し、又は把握することができるであろう。そのような均等物は、添付の特許請求の範囲により包含されることが意図される。
【0081】
本明細書において挙げられる全ての出版物、特許、及び特許出願は、それぞれの個々の出版物、特許、又は特許出願の全体が引用することにより具体的にかつ個別に本明細書の一部をなすことを示すのと同じ程度で、引用することにより本明細書の一部をなす。
【実施例
【0082】
実施例1:富化された不均一腎細胞集団の調製
解決策。富化された不均一腎細胞集団を調製する一方法において、表1に示される試薬を使用して、富化された不均一腎細胞集団を腎臓組織又は生検試料から調製した。
【0083】
【表1】
【0084】
ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)は、あらゆる細胞洗浄に有用である。
【0085】
腎臓試料からの細胞の単離。この方法において、富化されていない腎細胞の調製に至るための原材料として、腎臓生検を介した腎組織を使用した。一般に、調製において使用される腎組織は、皮質組織、皮髄境界部組織、又は髄質組織の1つ以上から構成され得る。皮髄境界部組織が好ましい。CKDの腎臓からは、瘢痕組織を避けて多数の生検コア(最低2つ)が必要とされる場合がある。腎組織は臨床医によって患者から取得された。必要に応じて、組織は組織輸送培地中で輸送される場合がある。
【0086】
組織を組織洗浄溶液で洗浄して、入り込むバイオバーデンを減らしてから、組織を処理して細胞を抽出した。
【0087】
腎組織を細切し、消化溶液中で解離させた。得られた細胞懸濁液を中和し、洗浄し、ダルベッコ改変イーグル培地(D-MEM)+10%のウシ胎児血清(FBS)(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)中に再懸濁し、洗浄し、腎細胞成長培地(RCGM)中に再懸濁した。組織培養処理されたポリスチレンフラスコ又はディッシュ上での培養の開始をRCGM中で行った。例えば、1つの生検を8mLのRCGM中で1つのT25 Nuncフラスコ中にプレーティングした。
【0088】
富化されていない不均一腎臓培養の拡大。腎細胞の拡大は、受け取った組織の量と、入り込む組織からの腎細胞の単離の成功とに依存していた。必要に応じて、単離された細胞を凍結保存することができる。腎細胞の成長動態は、個々の患者から単離された細胞の固有のばらつきのため、試料ごとに異なる可能性がある。
【0089】
規定の細胞拡大プロセスが開発されており、このプロセスは、入り込む組織のばらつきに起因する細胞回収の範囲に対応する。表2。腎細胞の拡大は、密閉培養容器(例えば、Tフラスコ、Cell Factories、HyperStacks(商標))における腎細胞成長培地中での規定の細胞培養手順を使用する連続継代を要した。
【0090】
【表2】
【0091】
最初のTフラスコ(継代0)において細胞成長が観察され、目に見える汚染の兆候がなくなったら、培養培地を取り替え、その後は2日~4日ごとに交換した。顕微鏡下で培養物を視覚的に観察することによって、細胞を評価して、腎細胞の形態を検証した。培養物は、細胞が互いに密集しているため、隙間のない舗道又は石畳の外観を特徴的に示した。これらの形態学的特徴は拡大中に変化する場合があり、全ての継代で存在し得るわけではない。細胞培養コンフルエンスは、細胞拡大全体にわたって使用される培養容器内の様々なレベルのコンフルエンスにある細胞の画像ライブラリーを使用して推定された。
【0092】
培養容器が少なくとも50%のコンフルエントとなったときに、腎細胞をトリプシン処理によって継代した。剥離した細胞を腎細胞成長培地が入った容器中に収集し、計数し、細胞生存率を計算した。各細胞継代において、十分な数の培養容器において細胞を500個~4000個の細胞/cmで播種して、治療製剤又は評価に必要とされる細胞数まで細胞数を増やした。培養容器を5%のCO環境において37℃のインキュベーター内に入れた。上記のように、細胞の形態及びコンフルエンスを監視し、組織培養培地を2日~4日ごとに交換した。表3に、ヒトドナーからの腎臓生検の細胞単離及び細胞拡大の間に見られるヒト腎細胞の生存率を列記する。
【0093】
【表3】
【0094】
異なる患者からの組織の固有のばらつきにより、培養において異なる細胞収率がもたらされる可能性がある。したがって、細胞継代のタイミング又は各継代で目標の細胞数を達成するのに必要とされる培養容器の数及び種類を厳密に規定することは現実的ではなかった。典型的には、腎細胞は2回又は3回の継代を経るが、培養期間及び細胞収率は、細胞成長速度に応じて変動し得る。
【0095】
採取又は継代のために、TrypLE(Invitrogen)を用いて細胞を剥離した。生存率をトリパンブルー排除を介して評価し、血球計算盤を使用して手動で又は自動式のCellometer(商標)計数システム(Nexcelom Bioscience、マサチューセッツ州ローレンス)を使用して又はAO/DAPIを用いてNC-200ヌクレオカウンターを使用して計数を実施した。
【0096】
培養された細胞の凍結保存。拡大された腎細胞を凍結保存して、個々の患者からの細胞成長の固有のばらつきに対応し、かつ療法薬、例えば、富化された不均一腎細胞集団を、必要に応じて、予め決められた臨床スケジュールで送達することができる。凍結保存された細胞はまた、治療用量/追加の治療用量が必要とされる状況(例えば、患者の病気による遅延、予期せぬ経過事象等の状況における追加の用量)において予備の細胞供給源を提供する。細胞を凍結保存し、解凍時に生存可能な機能的な細胞を回復するのに使用される条件を確立した。
【0097】
拡大された腎細胞を凍結保存した場合に、細胞を凍結保存溶液中に1mL当たり約50×10個の細胞の最終濃度に懸濁し、バイアル中に分注した。1mL当たり約50×10個の細胞が入った1mlのバイアルを、速度制御フリーザーの凍結室に入れ、予めプログラムされた速度で凍結させた。凍結後に、細胞を工程内貯蔵のために液体窒素フリーザーに移した。
【0098】
富化された不均一腎細胞集団の調製。凍結保存された細胞から成長させた又は拡大培養物から直接的に成長させた最終培養容器から、富化された不均一腎細胞集団を調製することができる。
【0099】
凍結保存された細胞の場合に、細胞を解凍し、組織培養容器にプレーティングして、最後の1回の拡大工程を行った。最終培養容器がおよそ50%~100%のコンフルエンスになったときに、細胞は富化された不均一腎細胞集団を分離する処理の準備ができていた。培地交換及びNKAの最終洗浄により、最終産物中の残りの全ての凍結保存溶液が希釈された。
【0100】
最終的な細胞培養容器が少なくとも50%のコンフルエンスに達したら、培養容器を、37℃で5%のCO環境において2%の酸素に設定された低酸素インキュベーターに移し、一晩培養した。細胞は2%の酸素に設定された酸素制御インキュベーターにおいて24時間未満又は一晩保持され得る。より生理学的に関連性のある低酸素(2%)環境への曝露は、細胞分離効率を改善し、VEGF等の低酸素誘導性マーカーのより優れた検出を可能にした。
【0101】
細胞を低酸素条件に十分な時間(一晩ないし48時間)曝露した後に、細胞をTrypLE(Invitrogen)を用いて剥離した。生存率をトリパンブルー排除を介して評価し、血球計算盤を使用して手動で又は自動式のCellometer(商標)計数システム(Nexcelom Bioscience、マサチューセッツ州ローレンス)を使用して又はAO/DAPIを用いてNC-200ヌクレオカウンターを使用して計数を実施した。細胞をOptiMEMにより1回洗浄し、DPBS中で1mL当たり約850×10個の細胞に再懸濁した。
【0102】
密度境界/界面にまたがる遠心分離を使用して、採取された腎細胞集団を細胞浮遊密度に基づいて分離した。腎細胞懸濁液を、OptiMEM中の7%イオジキサノール溶液(OptiPrep、60%(重量/容量))にわたって遠心分離することによって分離した。
【0103】
7%のOptiPrep密度界面溶液を調製し、使用前に所望の密度の指標となる屈折率を測定した(屈折率1.3456±0.0004)。採取された腎細胞を溶液の上面に成層させた。密度界面を、遠心分離管又は細胞プロセッサー(例えば、COBE 2991)のいずれかにおいて、室温で800×gにて20分間(間断なく)遠心分離した。およそ1.045g/mLを超える浮遊密度を示す細胞画分を、遠心分離後に別個のペレットとして収集した。1.045g/mL未満の浮遊密度を維持している細胞を除外し、廃棄した。
【0104】
富化された不均一腎細胞集団のペレットをDPBS中に再懸濁した。最終産物中の残留OptiPrep、FBS、培養培地、及び補助物質の繰り越しを4回のDPBS洗浄工程によって最小限に抑えた。
【0105】
実施例2:治療可能性を示す富化された不均一腎細胞集団による腎形成マーカー発現の識別及び判定
序論。腎臓を含む複雑な組織及び器官の再生には、発生及び器官形成に共通する機構要素が利用され得る。胚性腎形成中の最も早期のシグナル伝達事象に典型的に関連した多数のマーカーの発現は、例えば、実施例1に記載されるプロセスを介して調製された富化された不均一腎細胞集団が脱分化し、より腎前駆体様の特性を獲得したことを示すこととなる。これらの形質を有する富化された不均一腎細胞集団を罹患した腎実質に導入すると、通常は腎形成を媒介するが(成体実質の状況では)再生として解釈され得る重要なシグナル伝達カスケードの開始が引き起こされ得る。
【0106】
方法。例えば、実施例1に記載されるように調製された富化された不均一腎細胞集団を、FACS解析により腎形成マーカーの発現について試験した。細胞の腎形成マーカー発現の検出に使用される抗体を表4において明らかにする。
【0107】
【表4】
【0108】
FACS用の細胞調製。FACS解析を実施するのに、富化された不均一腎細胞集団の細胞をトリプシン消化によって採取し、400gで10分間遠心分離して細胞ペレットを形成した。細胞ペレットをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、細胞内抗原の検出に必要とされる細胞透過処理用のサポニンを含む4%のパラホルムアルデヒド溶液中に再懸濁して、固定した。固定後に、細胞をペレット化し、1×洗浄バッファー(Becton Dickenson、独自組成)で2回洗浄し、100μl~200μlの洗浄バッファー中に再懸濁した。
【0109】
FACS染色及び解析。FACS染色を、表4に示されるように2μgの一次抗体(直接標識又は非標識)を加えることによって4℃で20分間実施した。細胞を抗体とともにインキュベートした後に、細胞を洗浄バッファーで2回洗浄した。必要に応じて、例えば、一次抗体が非標識である場合に、細胞をAlexaFluor 488等の検出可能な蛍光体を有する適切な二次抗体で更に免疫標識した。FACS解析の間にチャンネルの適切なゲーティングを可能にするのに、主要な染色反応と並行して適切なアイソタイプコントロール及び二次抗体コントロールを設けた。
【0110】
全ての細胞集団を再度洗浄バッファーで洗浄し、200μlのPBS中に再懸濁した。免疫染色された富化された不均一腎細胞集団の解析を、MACSQuantアナライザーにおいて実施した。
【0111】
結果。合計18個の富化された不均一腎細胞集団の臨床試料において、5つの腎形成マーカーの特定のレベルの発現が観察された。表5及び表6を参照のこと。
【0112】
【表5】
【0113】
【表6】
【0114】
ネフリンは、治療可能性を有する富化された不均一腎細胞集団の約4.34パーセントから98.72パーセントの間の細胞によって発現されることも判明した。
【0115】
富化された不均一腎細胞集団の更なる臨床試料の解析を行って、再び5つの腎形成マーカーの発現レベルを決定した。5つの腎形成マーカーに加えて、ネフリン及びポドシン(腎形成の間の糸球体の発生に重要であり得る)並びにRACK-1の特定のレベルも決定した。図1Bを参照のこと。
【0116】
腎臓の再生には、発生及び器官形成に共通する機構要素を利用することが必要とされ得る。胚性腎形成における最も早期のシグナル伝達事象に典型的に関連したマーカーの発現は、例えば、実施例1に記載されるように調製された富化された不均一腎細胞集団が脱分化し、より腎前駆体様の特性を獲得したことを示すこととなる。したがって、そのような富化された不均一腎細胞集団を罹患した腎臓へと導入すると、通常は腎形成を媒介するが(成体実質の状況では)再生として解釈され得る重要なシグナル伝達カスケードの開始が引き起こされ得る。腎形成マーカーであるSIX2、OSR1、LHX1、RET、及びFGF8の発現は、富化された不均一腎細胞集団が、例えば、罹患した腎臓の再生効果を介して、どのようにして治療的便益を得ることができるかというメカニズムを説明することができる。例えば、実施例1に記載される方法に従って調製された富化された不均一腎細胞集団は、腎臓疾患についての治療を必要とする患者において、透析の引き延ばし、アルブミン対クレアチニン比の減少、及びeGFRの増加等の治療効果を実証した。続いて、各腎形成マーカー及び腎形成におけるその役割について簡単に説明する。
【0117】
SIX2は、ショウジョウバエ「シネ・オクリス(sine oculis)」ホメオボックスタンパク質と相同なタンパク質をコードする脊椎動物遺伝子ファミリーのメンバーである。SIX2タンパク質は、腎臓、頭蓋骨、及び胃を含む幾つかの器官の発生に重要な役割を果たす転写因子である。腎臓の発生の間に、SIX2は尿管芽から発せられる誘導的シグナルに対抗することによってキャップ間葉の多能性ネフロン前駆細胞を未分化状態に維持し、WNT9Bと協働して再生中の前駆細胞増殖を促進する。SIX2は、古典的なWNTシグナル伝達に依存せずにTCF7L2及びOSR1とのその相互作用を通じて機能し得ることから、WNT4等のキャップ間葉における分化遺伝子の転写を防ぐ。さらに、SIX2は、OSR1とは独立して作用し、それ自体、GDNF、及びOSR1を含む多くのキャップ間葉遺伝子の発現を活性化する。
【0118】
OSR1は、生殖腺及び腎臓を形成する中間中胚葉の最初期マーカーである。この発現は中間中胚葉の形成には必須ではなく、むしろ腎臓構造及び生殖腺構造に向かう分化に不可欠である。OSR1は、初期の泌尿器生殖器の発生に関与する転写因子LHX1、PAX2、及びWT1の上流で作用し、これらの発現を引き起こす。正常な腎臓の発生において、PAX2-EYA1-HOX11複合体の活性化並びにそれに続くSIX2及びGDNFの発現の活性化により、尿管芽の分岐及びネフロンを形成するキャップ間葉の維持が可能となる。SIX2はキャップ間葉の自己再生状態を維持し、GDNF-RETシグナル伝達経路を介したGDNFは、成長中の尿管芽の誘引及び分岐に必要とされる。発生中の腎臓内で、OSR1発現細胞はメサンギウム細胞、周皮細胞、尿管平滑筋、及び腎被膜となる。OSR1発現細胞が分化する細胞型は、発現喪失のタイミングによって決まり、血管系又は尿管上皮の一部となる細胞は初期(E8.5)にOSR1の発現を失い、ネフロンとなる細胞は後期(E11.5)に発現を失う。OSR1発現が欠如したマウスにおいては、腎臓形成の3つの全ての段階が影響を受けており、WT1及びPAX2の発現が低下したマウスと同様であり、ウォルフ管が異常であり、存在する中腎細管がより少なく、腎臓を形成する後腎及び生殖腺が欠損している。胎生10.5日目に、OSR1発現が欠如した胚は尿管芽を成長させることができず、尿管芽は非緻密化後腎間葉へと移行する。尿管芽からの誘導シグナルの欠如と、下流のPAX2発現の減少とが組み合わさった結果、腎臓のアポトーシス及び無形成が引き起こされる。
【0119】
LHX1は転写因子である。脊椎動物の胚において、腎臓は中間中胚葉に由来する。LIMクラスのホメオボックス転写因子LHX1は中間中胚葉において初期に発現され、腎間葉において発現される最初の遺伝子の1つである。アフリカツメガエルの胚におけるLHX1の枯渇は、腎野のほぼ完全な喪失をもたらす。
【0120】
RETは、とりわけ、正常な腎臓の発生及び精子の産生(精子形成)に必要である。RETタンパク質は細胞膜を貫通しているため、タンパク質の一端は細胞内に留まり、もう一端は細胞の外表面から突き出ている。このタンパク質の配置により、該タンパク質は細胞外の特定の因子と相互作用し、細胞がその環境に応答するのを助けるシグナルを受け取ることができる。成長及び発生を刺激する分子(成長因子)がRETタンパク質に取り付くと、細胞内で複雑な化学反応のカスケードが引き起こされる。これらの反応により、細胞は分裂又は成熟して特化した機能を獲得する等の或る特定の変化を受けるよう指示される。
【0121】
FGF8遺伝子は、線維芽細胞成長因子8(FGF8)をコードする。このタンパク質は、細胞分裂、細胞成長及び細胞成熟の調節、並びに出生前の発生を含む多くのプロセスに関与する線維芽細胞成長因子と呼ばれるタンパク質ファミリーの一部である。FGF8は、細胞表面上の線維芽細胞成長因子受容体1(FGFR1)と呼ばれる別のタンパク質に取り付き(結合し)、それにより細胞内で化学反応のカスケードが引き起こされる。
【0122】
治療可能性を有する富化された不均一腎細胞集団によって発現される腎形成マーカーのパネルを識別した。これらのマーカーの発現は、富化された不均一腎細胞集団の細胞が、腎形成又は腎臓の再生を媒介するシグナル伝達カスケードに影響を及ぼし、それにより治療効果をもたらす能力を有するという証拠を与える。マーカーの発現には幾らかのばらつきがあることが留意されるが、これが予想されるのは細胞が自己起源となるためである。
【0123】
実施例3:富化された不均一腎細胞集団の治療的生体活性にとって機構的に重要な転写物調節の特定。
序論:富化された不均一腎細胞集団の修復的活性、回復的活性、及び/又は再生的活性の根底にあるメカニズムを更に理解するのに、そこに含まれる腎細胞の部分集団に対してゲノムワイドなトランスクリプトームプロファイリングを実施した。PreG(勾配分画前(pre-gradient fractionation))材料の密度勾配分離によって調製された4つの構成要素富化された腎細胞部分集団(B2、B3、B4、及びB5)が、富化された不均一腎細胞集団に含まれる。この実施例において、齧歯類PreG材料、及び齧歯類の富化された不均一腎細胞集団を構成する4つの構成要素富化された腎細胞部分集団(B2、B3、B4、及びB5)のトランスクリプトームプロファイルを別々に解析し、比較し、対比した。4つの構成要素富化された腎細胞部分集団(B2、B3、B4、及びB5)のそれぞれを別々に解析し、それらのトランスクリプトームプロファイルをPreG材料のプロファイルと比較することにより、富化された不均一腎細胞集団の観察された修復的生体活性、回復的生体活性、及び再生的生体活性に対するそれぞれの寄与を理解することができた。
【0124】
材料及び方法/腎細胞集団の調製:3匹の独立したドナー(5週齢、雄、同質遺伝子型ルイス実験室ラット)からの腎臓を、この解析において特徴付けられた全ての腎細胞集団及び部分集団の3つの独立した生物学的複製物についての出発材料として使用した。ラット腎臓全体からの選択された生体活性初代腎細胞の調製は詳細に記載されている(A.T., Guthrie, K.I., Kelley, R. Methods Mol Biol 1001, 53, 2013、Kelley, R., et al. American Journal of Physiology & Renal Physiology 299, 1026, 2010、Kelley, R., et al. Cell Transplantation 22, 1023, 2013)。簡単に言うと、5週齢の雄ルイスラット(Hilltop Labs、米国ペンシルベニア州、スコッツデール)から全腎臓を採取し、腎臓組織を4.0ユニット/mLのディスパーゼ(Stem Cell Technologies, Inc.、カナダ国ブリティッシュコロンビア州、バンクーバー)及び300ユニット/mLのコラゲナーゼIV(Worthington Biochemical、米国ニュージャージー州、レイクウッド)を含むバッファー中で酵素的に解離させた。15%のイオジキサノール(Optiprep(商標)、Axis Shield、米国マサチューセッツ州、ノートン)による遠心分離によって、赤血球及び破片を除去した。初代腎細胞を組織培養処理されたポリスチレンプレート(NUNC、米国ニューヨーク州、ロチェスター)へと播種し、5%のウシ胎児血清(FBS)、2.5μgのEGF、25mgのウシ下垂体抽出物(BPE)、1×ITS(インスリン/トランスフェリン/亜セレン酸ナトリウム培地サプリメント)、及び抗生物質/抗真菌薬(全てInvitrogen(米国カリフォルニア州、カールスバッド)から)を含む高グルコースダルベッコ改変イーグル培地(DMEM):ケラチノサイト無血清培地(KSFM)の1:1混合物である50:50培地中で培養した。培養後の細胞分離の前に、初代腎細胞培養物を大気酸素条件(21%)からより生理学的に適切な低酸素環境(2%)に24時間移して、細胞分離効率を向上させた。2mLの無添加のKSFM(uKSFM)中で75×10個の細胞として調製された初代腎細胞培養物の分離を、15mLのコニカルポリプロピレンチューブにおいて齧歯類用に特別に層状化された4段階のイオジキサノール(OptiPrep、uKSFM中60%(重量/容量))密度勾配(16%、13%、11%、及び7%)を介した遠心分離によって実施し、800×gで室温にて20分間(間断なく)遠心分離した。遠心分離後に、細胞副画分をピペットを介して勾配から抽出し、4つの異なるバンド(B1~B4)及びペレット(B5)として収集した。全てのバンドを滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄してから使用した。勾配前試料(「PreG」)及び全腎臓組織試料(「Macro」)を比較のために各齧歯類から収集した。各齧歯類細胞集団に使用される培養条件を以下の表7にまとめる。
【0125】
【表7】
【0126】
材料及び方法/転写物解析:ゲノムワイドな転写物解析用のRNAを、QiagenのRNA単離キットを使用して製造業者の指示に従って調製した。以下の表8に従って正規化された各試料からの2μgのRNAを使用して、AffymetrixのGeneChip Rat Genome 230 2.0アレイ(ウェイクフォレスト大学の健康科学マイクロアレイコア施設(Wake Forest University Health Sciences Microarray Core Facility)、ノースカロライナ州、ウィンストン・セーラム)におけるゲノムワイドな転写物解析を行った。
【0127】
【表8】
【0128】
材料及び方法/データ解析:AffymetrixのGeneChipデータを、RMA(Rafael et al., 2003. Nucleic Acids Research 31:e15)を使用して正規化した。それぞれの構成要素富化された腎細胞部分集団(B1、B2、B3、B4、B5)からの遺伝子発現プロファイルを、対応のあるt検定を使用してPreG材料における遺伝子発現プロファイルと比較した。発現変動遺伝子を、対応のあるt検定によってP<0.05で検出した後に、DAVID(http://david.abcc.ncifcrf.gov)によって解析して、遺伝子オントロジー(GO)カテゴリー及び京都遺伝子ゲノム百科事典(KEGG)パスウェイを検出したところ、これらは各画分とPreGとの間で有意に異なっていた。GO解析には、冗長性を最小限に抑え、GOタームにおける特異性を高めるのにDAVIDによって提供されたGO生物学的プロセスカテゴリーであるGO-BP-FATを使用した。GO及びKEGGのパスウェイ解析から生成されたP値にボンフェローニ調整を適用して、多重検定補正を行った。KEGGパスウェイプロットを、BioconductorのPathview(Weijun Luo and Cory Brouwer. Bioinformatics, 29(14):1830-1831, 2013)を使用して作成した。QIAGENのIngenuityパスウェイ解析(IPA(商標)、QIAGEN Redwood City、www.qiagen.com/ingenuity)を使用して、GOカテゴリーについての遺伝子ネットワークを作成した。
【0129】
結果/副画分B1:PreG材料に対するB1部分集団のGO解析により、細胞周期(P=9.40×10-4)、細胞分裂(P=9.81×10-5)、及び細胞周期期(P=0.016)の調節に関連するGOカテゴリーの有意な下方調節が示された(表9)。KEGGパスウェイ解析によっても同様の結果が生じた(表9)。下方調節された周期パスウェイ遺伝子は、細胞成長(G1、G2)、DNA複製(S)、及び有糸分裂(M)を含む細胞周期の各期に分布していた。例えば、B1においてPreGと比べて負の調節を受ける主要な細胞周期調節タンパク質には、CDK2、CDK7、CYCE、CDC45、ORC、CHK1、CHK2、MAD2、CDC20、及びAPCが含まれていた。さらに、転写の調節(P=0.001)、RNA代謝プロセスの調節(P=0.044)、及びスプライセオソーム(P=0.002)を含む、転写の調節に関連するGO/KEGGカテゴリーは、有意に下方調節されていた(表9)。
【0130】
【表9】
【0131】
これらのトランスクリプトームデータは、B1部分集団が有意により低い増殖可能性及び再生可能性を表すことを示唆しており、CKDの齧歯類モデルにおいて腎病態生理に対するB1細胞による機能的影響がないことが観察されることと一致している(Bruce, A.T., Guthrie, K.I., Kelley, R. Methods Mol Biol 1001, 53, 2013、Kelley, R., et al. American Journal of Physiology & Renal Physiology 299, 1026, 2010、Kelley, R., et al. Cell Transplantation 22, 1023, 2013)。
【0132】
PreG材料に対するB1部分集団におけるGO/KEGGカテゴリーの有意な上方調節には、免疫応答に関与するサイトカイン媒介性シグナル伝達経路(P=0.023)並びに異物及び細胞老廃物の消化に関与するリソソーム(P=4.44×10-4)が含まれていた。細胞接着(P=0.045)も上方調節されていた(表9)。これらのデータは、改めて、CKDの齧歯類モデルにおいて腎病態生理に対するB1細胞による機能的影響がないことが観察されることと一致している。B1富化された腎細胞部分集団は、富化された不均一腎細胞集団の構成要素ではない。
【0133】
結果/副画分B2:B2のトランスクリプトームプロファイルは、パスウェイレベルでPreGと類似していることが判明した。GO/KEGGカテゴリーは、有意に上方調節されているとは識別されなかった。たった1つのパスウェイであるECM受容体相互作用(rno04512)が、PreG材料と比べて有意に下方調節(P=0.039)されていることが判明した。ECM受容体相互作用の下方調節と一致して、コラーゲン、ラミニン、リーリン、テネイシン、ビトロネクチン、及びトロンボスポンジン(THBS)を含む多数のECMタンパク質はB2において有意に下方調節されていた。細胞外マトリックス(ECM)成分の過剰な沈着が組織線維化を引き起こすことはよく知られている(Liu Y. Kidney International 69, 213, 2006、Kisseleva and Brenner, 2008. Proc Am Thorac Soc 5: 338-42、El-Nahas, 2003. Kidney Int 64: 1553-63)。さらに、腎線維症は、慢性腎臓疾患(CKD)から末期腎臓疾患への疾患進行の証しである。
【0134】
ECM関連遺伝子で観察される負に調節されたトランスクリプトームプロファイルとは対照的に、ヒアルロナン媒介運動性受容体(RHAMM;CD168又はヒアルロナン媒介運動性受容体(HMMR)としても知られる)の発現は、B2部分集団においてPreG材料と比べて特異的に上方調節されていた(倍率変化=1.114、P=0.030)。RHAMMの発現は、多くのin vitroモデル系及びin vivoモデル系において再生的生体活性に直接的に関連付けられている。例えば、RHAMMは、血管新生、3D唾液腺スフェロイドの再生、並びにアフリカツメガエルのオタマジャクシの尾及び細胞の運動性のそれぞれを促進することも分かっている。したがって、RHAMMの発現レベルの増加は組織再生に有益である可能性がある(Pradhan-Bhatt et al., 2014. Laryngoscope 124: 456-461、Contreras et al., 2009. Development 136: 2987-96、Tolg et al., 2006. J Cell Biol 175: 1017-28、Savani RC, et al. 2001. J. Biol. Chem. 276 (39): 36770-8、Hall CL, et al. 1994.. J. Cell Biol. 126 (2): 575-88、Hamilton SR, et al. 2007. J. Biol. Chem. 282 (22): 16667-80)。さらに、RHAMMを受容体とするヒアルロン酸(HA)は、発生中の腎臓の間質腔全体に存在し(Bakala, H., et al., 1988. J Morphol 196: 1-14)、尿管芽の集合管への分化及び後腎間葉の間葉-上皮移行を分子量に依存せずに刺激することが分かっているECM構成要素である。B2部分集団におけるRHAMMの有意な上方調節及びこれらのデータは、腎組織工学及び細胞ベースの医学にとって興味深い可能性をもたらす。一例として、或る特定の濃度で規定の分子量のHAを放出するように設計された足場を、再生結果の調節を期待して腎臓内に移植することができる。
【0135】
結果/副画分B3:KEGGパスウェイ解析により、補体カスケード及び凝固カスケードに関連するカテゴリーが、B3部分集団においてPreG材料と比べて有意に上方調節されていることが判明した(P=0.008)(表10)。上方調節されている遺伝子には、C2、C3、及びC4等の補体成分遺伝子、並びにフィブリノーゲン(FG)及び凝固第XIII因子(F13)等の凝固関連遺伝子が含まれていた。補体系及び凝固系は、損傷及び侵入者に対する「防御の第一線」と考えられている(Choi G, et al. Swiss Med Wkly. 2006; 136:139-144)。したがって、このパスウェイの上方調節は免疫応答の増加を示す。KEGG解析と一致して、GO解析でも体液性免疫応答の有意な増加が見出された(P=0.025)(表10)。細胞免疫系及び体液性免疫系の両方の多数の構成要素は、四肢、骨格筋、心臓、及び神経系を含む多数の器官及び組織での修復結果、回復結果、又は再生結果に寄与することが十分に確立されている(Aurora and Olson, 2014. Cell Stem Cell 15: 14-25)。
【0136】
【表10】
【0137】
B3部分集団における有意に下方調節されたGOカテゴリーは、アクチン重合及びアクチンフィラメントの長さの調節に関連していた(表10)。アクチン細胞骨格の動的な再組織化は、細胞遊走の主なドライバーである。アクチン重合の阻害は、細胞遊走及びB3部分集団の治療効果に対して悪影響を与える可能性がある。
【0138】
結果/副画分B4:B4部分集団は、CKDに関する齧歯類モデルにおいて機能的な結果をもたらすことが観察された。その観察されたin vivoでの治療的生体活性と一致して、血管系の発生(P=7.76×10-7)、血管の発生(P=1.36×10-6)、血管形態形成(P=1.76×10-6)、血管新生(P=1.82×10-6)、及び創傷に対する応答(P=1.35×10-5)を含む多数の再生関連のGOカテゴリーは、B4部分集団においてPreG材料よりも有意に上方調節されていることが判明した(表11)。GOカテゴリーの血管新生は、腎臓、心臓、並びにその他の多数の器官及び組織における修復、回復、又は再生の中心となる(Takiya and Borojevic, 2011. Kidney Int Suppl 1: 99-102、Kramann and Humphreys, 2014. Semin Nephrol 34: 374-83、Park and Gerecht, 2014. Development 141: 2760-9、Kaully et al., 2009. Tissue Eng Part B 15: 159-69)。CXCR4、TEK、FGFR1、及びKDRを含む血管新生及びその他の再生関連のシグナル伝達経路の中心となる主要な受容体が上方調節されていることが判明した。これらの中で、SDF1/CXCR4軸は、異所性の細胞ベースの療法に応答して腎修復、腎回復、又は腎再生の中心となる(Togel and Westenfelder, 2011. Kidney Int Suppl 1: 87-89、Sharma et al., 2011. Stem Cells Dev 20: 933-46、Sagrinati, C., et al. Trends Mol Med 14, 277, 2008)。創傷に対する応答のGOカテゴリーにおいて、Notch1、Notch3、Timp3、Vwf、Adam15、Gas6、Igfbp1、及びTm4sf4等の上方調節された多くの遺伝子は、GOカテゴリーの創傷治癒並びに組織修復、組織補修、又は組織再生にも属する。これらの遺伝子のPreGに対する有意な上方調節は、部分集団B4の再生的生体活性とも一致する。
【0139】
【表11】
【0140】
さらに、細胞接着関連のGOカテゴリーは、B4においてPreG材料と比べて有意に上方調節されていることが判明した(表11)。細胞接着は、移植された細胞の宿主環境への取り込み及び機能的統合に不可欠である。細胞接着遺伝子の誘導は、移植された細胞のホーミングに有益である可能性がある。
【0141】
解析されたパスウェイが、B4において有意に下方調節されていることは見出されなかった。
【0142】
結果/副画分B5:部分集団B5は、遺伝子発現レベルでPreG材料と比べて最も特徴的な画分であることが判明した。40個のGO/KEGGカテゴリーは、PreGとは有意に異なっていた(表12及び表13)。
【0143】
【表12】
【0144】
【表13】
【0145】
上方調節されたGO/KEGGカテゴリーには、細胞接着、血管新生、管の分岐形態形成、細胞形態形成、上皮細胞増殖の調節、血管の発生、血管形態形成、血管系の発生、細胞成分の形態形成、細胞形態形成、分化に関与する細胞形態形成、管の形態形成、細胞突起の組織化及び形態形成、細胞部分の形態形成、分岐構造の形態形成、発生の成熟、並びに栄養素に対する応答等が含まれていた。これらの有意に上方調節されたGO/KEGGカテゴリーの大部分は、明らかに修復結果、回復結果、又は再生結果の触媒反応に関与している。
【0146】
B4で観察されるように、主要な血管新生促進受容体のCXCR4、TEK、及びKDRはB5において顕著に上方調節されている。さらに、血管新生促進リガンドであるPGF、ANGPT2、ANGPT4、VEGFA、及びPDGFAは、B5部分集団においてPreG材料と比べて有意に上方調節されていることが観察された。これらのリガンドの再生的生体活性は十分に確立されている。
【0147】
特に興味深い幾つかの有意に異なって調節されるパスウェイには、古典的なWnt/β-カテニンシグナル伝達経路が含まれていた。古典的なWnt/β-カテニンシグナル伝達経路は、B5部分集団においてPreG材料と比べて有意に下方調節されていた(表13)。Wntシグナル伝達は腎形成及び器官形成に密接に関与しているが、適切な状況では線維化促進作用もあり、病状の維持に寄与することもできる(Kawakami et al., 2013. J Pathol 229: 221-31、Shkreli et al., 2011. Nat Med 18: 111-9、Cisternas et al., 2014. Curr Mol Med 14: 510-22)。SRCとの関連におけるB5についての適切なWntシグナル伝達生体活性は、その線維化促進作用であり得ることが可能であるため、Wntシグナル伝達のあらゆる減少は、線維性の罹患腎臓内への移植の際の望ましい結果であると思われる(Cuevas et al., 2015. Biomed Res Int. 論文ID 726012)。
【0148】
また、興味深いことに、GOカテゴリー「管の分岐形態形成」が、B5部分集団においてPreG材料と比べて上方調節されていた。哺乳動物の腎形成が、腎管の派生物である尿管芽と、周囲の後腎間葉との間の分岐形態形成の反復プロセスによって誘導されることを考えると、これは興味深いものであった。隣接する後腎間葉からのシグナル伝達に応答して尿管芽上皮からの分岐形態形成が継続することにより、今度は尿管芽先端での後腎間葉の新たな凝集体の誘導及び腎形成事象の継続がもたらされる。この反復プロセスは、発生中の腎臓の放射軸に沿って継続し、最も若いネフロンが末梢に向かって誘導される(Basu and Ludlow, 2012. Birth Defects Research Part C 96: 30-38によって概説される)。このために、富化された不均一腎細胞集団、例えばSRCの成体齧歯類の腎臓における移植は、新生ネフロン様構造物の誘導と新たに関連付けられた(Basu, J., et al. Cell Transplantation 20, 1771, 2011)。
【0149】
最後に興味深いことに、TGF-β1シグナル伝達経路を介したGOカテゴリーの上皮細胞増殖の調節の活性化は、宿主の細管上皮細胞の増殖促進における富化された不均一腎細胞集団、例えばSRCの潜在的な役割と一致するとして注目された。実際、このために、移植された富化された不均一腎細胞集団は、5/6Nモデルにおける尿細管細胞の増殖を促進することが観察された。富化された不均一腎細胞集団、例えばSRCでの治療により、特に細管上皮におけるKi67増殖細胞の数が特異的に増加した。このコンパートメント特異的な増殖は、治療転帰の直接的な指標となり得る。上皮の増殖は腎機能の補充につながるのに対して、間質の増殖は線維症につながる。
【0150】
PreG材料と比べてB5部分集団におけるタンパク質代謝に関連する多数のGO/KEGGカテゴリーの有意な下方調節が観察され、これは単純にB5部分集団についての全体的な代謝率がPreG材料と比べて低下していることを示し得る。
【0151】
要約。富化された不均一腎細胞集団、例えばSRCは、PreG材料のイオジキシノール(iodixinol)勾配遠心分離によって製造される。PreG材料のイオジキシノール勾配遠心分離により、PreG材料の5つのB1~B5の部分集団への分離がもたらされる。B1~B5の部分集団のトランスクリプトームプロファイリングにより、慢性腎臓疾患の治療における修復的生体活性、回復的生体活性、及び再生的生体活性によって明らかなように、富化された不均一腎細胞集団、例えばSRCの根底にあり得る主要なトランスクリプトームネットワーク及びそれに付随するシグナル伝達経路、作用機序が特定された。PreG材料と比べての、最終的な富化された不均一腎細胞集団産物に含まれるB2~B5の部分集団における有意差には、部分集団B2におけるECM受容体相互作用に関連するGO/KEGGカテゴリーの下方調節、部分集団B3における免疫応答に関連するGO/KEGGカテゴリーの上方調節及びアクチン重合の調節に関連するGO/KEGGカテゴリーの下方調節、B4における修復、回復、再生、及び細胞接着に関連するGO/KEGGカテゴリーの上方調節、並びにB5における修復的活性、回復的活性、又は再生的活性に明確に関連する多数のカテゴリーを含む40個の調節が異なるGO/KEGGカテゴリーが含まれる。富化された不均一腎細胞集団に含まれない部分集団B1は、PreG材料と比べて、細胞周期及び転写制御に関連するGO/KEGGカテゴリーにおいて有意な下方調節を示し、かつ炎症に関連するGO/KEGGカテゴリーにおいて有意な上方調節を示した。
【0152】
総合すると、トランスクリプトームデータは、治療的に使用される富化された不均一腎細胞集団、例えばSRCが、腎臓において、部分的に、再生の促進に関連する多数のトランスクリプトームネットワークを活性化する一方で同時に腎疾患及び病態生理の継続的な進展を促進し得る代わりの転写経路を抑制することによって、修復結果、回復結果、又は再生結果を触媒することを示唆している。
【0153】
実施例4:慢性腎臓疾患の治療に使用される富化された不均一ヒト腎細胞集団の再生的生体活性について機構的に重要な発生経路の特定。
序論:実施例3における齧歯類データを更に基にして、臨床試験に使用するために調製されたヒトの富化された不均一腎細胞集団に対してトランスクリプトーム解析及びエピゲノム解析を実施した。腎自家細胞療法(REACT)は、慢性腎臓疾患、糖尿病性腎症、並びに腎臓及び尿路の先天異常の治療用の新規の再生医学の候補である(Stavas 2021. 「腎臓及び尿路の先天異常に続発する慢性腎臓疾患を伴う成人における腎自家細胞療法注射に関するプロトコル及びベースラインデータ(Protocol and Baseline Data on Renal Autologous Cell Therapy Injection in Adults with Chronic Kidney Disease Secondary to Congenital Anomalies of the Kidney and Urinary Tract.)」. Blood Purif 50(4-5):678-683、Stenvinkel P, Wadstroem J, Bertram T, Detwiler R, Gerber D, Brismar TB, et al.著の「病期3及び病期4の糖尿病性慢性腎臓疾患における選択された自家腎細胞の移植-「ファースト・イン・ヒューマン」試験の臨床治験(Implantation of autologous selected renal cells in diabetic chronic kidney disease stages 3 and 4-clinical experience of a "First in Human" study.)」. Kidney Int Rep. 2016 1(3):105-13)。REACTは、被験体自身の腎生検に由来する初期細胞集団(この実施例においては初期細胞集団はBRC0又はBRC0集団と呼ばれる)から調製又は製造された、富化された不均一腎細胞集団(この実施例においてはSRC又はSRC集団と呼ばれる)を用いて製剤化される。ヒトSRC集団対BRC0集団のトランスクリプトームプロファイル及びエピゲノムプロファイルの比較を行って、腎臓疾患の治療に使用されるヒトSRCの修復的活性及び回復的活性の根底にあるメカニズムを確認し、更に調査した。
【0154】
材料及び方法/慢性腎臓疾患の治療に使用されるSRCの調製:腎組織生検から選択された腎細胞を調製する方法は、以前に詳細に記載されている(Bruce, A.T., Guthrie, K.I., Kelley, R.著の「機能的腎細胞のex vivo培養及び分離(Ex vivo culture and separation of functional renal cells.)」 Methods Mol Biol 1001, 53, 2013、Halberstadt et al., 2013, Methods Mol. Biol.)。
【0155】
材料及び方法/cDNAライブラリー構築:ライブラリー構築のために、各細胞集団(n=6)からRNAを抽出した。DNアーゼI処理及び品質管理(QC)の実施後に、200ngの高品質トータルRNAを使用してライブラリー構築を行った。オリゴ(dT)を含む磁気ビーズを使用してmRNAを単離した。断片化バッファーを加えることによってmRNAをランダムに断片化し、次いで、dNTP、RNアーゼH、及びDNAポリメラーゼIを加えた後に、mRNAテンプレート及びランダムヘキサマープライマーを使用することによってcDNAを合成した。短い断片を精製し、EBバッファーで溶解して、末端修復及び単一ヌクレオチドA(アデニン)付加を行った。その後に、短い断片をシーケンシングアダプターと接続した。サイズ選択及びPCR濃縮を通じて、二本鎖cDNAライブラリーを完成させた。QC工程の間に、試料ライブラリーの定量化及び定性化において、Agilent 2100バイオアナライザー及びABI StepOnePlusリアルタイムPCRシステムを使用した。最後に、有効濃度及び予想されるデータ量に従ってプールした後に、CD Genomics(ニューヨーク州シャーリー)のIllumina NovaSeq6000を使用して、定性化されたRNA-seqライブラリーをシーケンシングした。
【0156】
材料及び方法/バイオインフォマティクス解析:FastQCツール(http://www.bioinformatics.babraham.ac.uk/projects/fastq)を使用して、生のリードの品質に関する基本的な統計を実施した。シーケンシングアダプター及び低品質データを、Trimmomatic(バージョン0.36)(Juhling, F., et al.著の「metilene:亜硫酸水素塩シーケンシングデータからのメチル化変動領域の高速かつ高感度な呼び出し(metilene: fast and sensitive calling of differentially methylated regions from bisulfite sequencing data.)」 Genome Res, 2016. 26(2): p. 256-62)によって削除した。フィルタリングされたクリーンリードを、HISAT2(Kanehisa, M., et al.著の「ゲノムを生命及び環境に結び付けるKEGG(KEGG for linking genomes to life and the environment.)」 Nucleic Acids Res, 2008. 36(Database issue): p. D480-4)によって参照ゲノムにマッピングし、位置及び遺伝子の特徴を取得した。CufflinksソフトウェアのCuffquantコンポーネント及びCuffnormコンポーネントを使用して、遺伝子にマッピングされたリードの位置情報を使用して転写物及び遺伝子発現レベルを定量化した。異なる発現レベルでの遺伝子の数だけではなく各単一遺伝子の遺伝子発現レベルも解析した。DESeqを使用して、生物学的複製物を含む試料についてDEGを解析し、複製物を含まない試料についてはEBSeqを解析した。解析中に、試料を最初にグループ化したため、後に2つごとの群間でコントロール-治療のペアとして比較を行うことができた。このプロセス中に、2以上の変化倍率及び0.01未満のFDRをスクリーニング基準として設定した。遺伝子オントロジー(GO-遺伝子オントロジーコンソーシアム2000年(Gene Ontology Consortium, 2000))エンリッチメント解析は、発現変動タンパク質をコードする遺伝子と有意に関連するGOタームの特定を試みる、遺伝子機能の記述の国際標準化された分類系のセットである。GO分子は3つの主要なカテゴリーに分けられる:1)細胞成分:細胞内構造、位置、及び核小体、テロメア等の巨大分子複合体、及び初期複合体の認識を説明するのに使用される;2)分子機能:遺伝子、遺伝子産物、炭水化物結合又はATPヒドロラーゼ活性等の個々の機能を説明するのに使用される;並びに3)生物学的プロセス:有糸分裂又はプリン代謝等の生物学的プロセスに関与する遺伝子によってコードされる産物を説明するのに使用される。KEGGパスウェイを使用して、ゲノムバックグラウンド全体と比較して特定の遺伝子が有意にエンリッチメントされたパスウェイを特定した。この解析用の式は、
【数1】
(式中、「N」は、パスウェイのアノテーションを有する全ての遺伝子の数であり、「n」は、N内の候補遺伝子の数であり、かつ「m」は、特定のパスウェイでアノテーションされた遺伝子の数であった)であった。0.05以下のFDRを有するパスウェイを、有意にエンリッチメントされたパスウェイとして規定した。KOBAS(2.0)を使用して、パスウェイエンリッチメント解析を実施した。
【0157】
材料及び方法/縮約表現重亜硫酸塩シーケンシング(Reduced Representation Bisulfite Sequencing)(RRBS):Nucleon(商標)BACCゲノムDNA抽出キット(GE Healthcare、Life Sciences)を使用して細胞試料(BRC0、SRC、n=4)からゲノムDNAを単離し、Qubit高感度アッセイ(Life Technologies)を使用して二本鎖DNA含有量を定量化した。各細胞試料からの1μgのゲノムDNAをMspI(NEB)で消化し、続いてPremium RRBSキット(Diagenode)を使用して末端調製及びアダプターライゲーションを行った。AMPure XPビーズ(Beckman Coulter, Inc.)を使用してサイズ選択を行って、150bp~350bpの範囲内の最もCpGリッチな領域が富化しているMspI消化産物のDNA画分を得た。引き続き、ZYMOのEZ DNA Methylation-Goldキットを使用して重亜硫酸塩処理を行った。次いで、25μlのKAPA HiFi HotStart Uracil+ReadyMix(2×)及び1μMの最終濃度をそれぞれ有する8bpのインデックスプライマーを使用して、変換されたDNAを12サイクルのPCRによって増幅し、AMPure XPビーズを使用してクリーンアップした。構築されたRRBSライブラリーをCD Genomics(ニューヨーク州シャーリー)に送り、シーケンシング及びバイオインフォマティクス解析を行った。簡単に言うと、Quant-iT dsDNA HSアッセイキット(Invitrogen)を用いてQubit蛍光光度計によってライブラリーを定量化し、IlluminaのHiseqプラットフォームにおいてペアエンド150bp戦略を使用してシーケンシングした。
【0158】
材料及び方法/RRBSデータ解析:FastQCツール(www.bioinformatics.babraham.ac.uk/projects/fastq)を使用して、生のリードの品質に関する基本的な統計を実施した。次いで、シーケンシングアダプター及びシーケンシングデータの低品質データを、Trimmomatic(バージョン0.36)(Juhling, F., et al.著の「metilene:亜硫酸水素塩シーケンシングデータからのメチル化変動領域の高速かつ高感度な呼び出し(metilene: fast and sensitive calling of differentially methylated regions from bisulfite sequencing data.)」 Genome Res, 2016. 26(2): p. 256-62)によって削除した。BSMAPソフトウェアを使用して、パラメーター「-n 0 -g 0 -v 0.08 -m 50 -x 1000」を用いて重亜硫酸塩配列を参照ゲノムにマッピングした(Kanehisa, M., et al.著の「ゲノムを生命及び環境に結び付けるKEGG(KEGG for linking genomes to life and the environment.)」 Nucleic Acids Res, 2008. 36(Database issue): p. D480-4)。アラインメントの統計情報を収集したが、ここでは、後続の解析のためにユニークなマッピングされたリードだけが保持される。少なくとも5の配列デプスカバレッジ(sequence depth coverage)を有するメチル化シトシンのみを使用した。アラインメントにおける塩基がCである場合にメチル化が起こり、逆に、アラインメントにおける塩基がTである場合にメチル化は起こらなかった。個々のシトシンのメチル化レベルを、個々のCpGシトシンの総シーケンシングデプスに対する確認されたメチル化CpGシトシンのシーケンシングデプスの比、すなわち、ML=mC/(mC+umC)(式中、MLは、メチル化レベルであり、mC及びumCは、それぞれメチル化Cに対応するリードの数及び非メチル化Cに対応するリードの数を表す)として計算した。ソフトウェアmetilene(バージョン0.2-7)を使用して、バイナリセグメンテーションアルゴリズムと二次元統計検定(パラメーター:-M 300 -m 5 -d 0.1 -t 1 -f 1 -v 0.7)との組合せによってDMR(メチル化変動領域)を特定した(Bruce et al., 2013. 「機能的腎細胞のex vivo培養及び分離(Ex vivo culture and separation of functional renal cells.)」 Methods Mol Biol 1001:53-640)。DMR関連遺伝子の遺伝子オントロジー(GOと呼ばれる、http://www.geneontology.org/)エンリッチメント解析を適用して、対象となる生物学的プロセスを明らかにした。0.05以下のQ値を有するパスウェイを、DMR関連遺伝子で有意にエンリッチメントされていると見なした。DMRアノテーションの結果及びKEGGのデータベースに基づいて(Sha et al., 2021. 「選択された腎細胞(SRC)のゲノムワイドな転写プロファイリング:慢性腎臓疾患の治療における再生的生体活性についての機能的パスウェイの特定(Genome-wide transcriptional profiling of selected renal cells (SRC): identification of functional pathways for regenerative bioactivity in treatment of chronic kidney disease.)」投稿論文)、遺伝子本体並びに上流領域及び下流領域(2k上流、遺伝子本体、及び2k下流)がDMRと重複することが観察された遺伝子に対して機能的エンリッチメント解析を実施した。
【0159】
結果/SRC集団の細胞とBRC0集団の細胞との間を区別する発現変動転写物
合計n=6の個々のドナーを使用して、「材料及び方法」において記載されるように、ライブラリー構築及びRNA-seq解析用のトータルRNA及びcDNAを調製した。SRC集団対BRC0集団を判別する合計221個のDEGを特定した。これらの221個のDEGは、SRCにおいてBRC0と比べて特異的に上方調節された119個の遺伝子と、SRCにおいてBRC0と比べて特異的に下方調節された102個の遺伝子とから構成される。SRCにおいてBRC0と比べて上方調節及び下方調節された上位20個の遺伝子のリストをそれぞれ表14及び表15に示す。これらの転写物についての偽発見率(FDR)は10-6以下であり、これは非常に高い統計的有意性を反映している。
【0160】
【表14】
【0161】
【表15】
【0162】
表14及び表15に列挙された遺伝子の調査により、SRCをBRC0から明確に区別する上位の上方調節されたDEGには、細胞周期制御(CDKN2A、IL11、TGFβ2)、細胞外マトリックス再組織化(FN1、CRISPLD2、COL1A1、LOX)、及び発生に関与するシグナル伝達経路(RUNX2、LFNG、BDNF)の側面を媒介する遺伝子が含まれることが分かった。SRCをBRC0から明確に区別する上位の下方調節されたDEGには、タイトジャンクションのアセンブリ及び組織化(CLDN3)、グルコース代謝(UPP1、KLF15)、タンパク質グリコシル化(GYLTL1B、MAN1C1、GALNT9)、並びに水及びイオン輸送(AQP1、SLC47A1、WNK2、CASR)、並びに発生に関与するシグナル伝達経路(RAI2、PLVAP、SHISA3、PARM1、CASR)に関与する遺伝子が含まれていた。その他の注目すべき上方調節されたDEG(表14には示されていないが依然として非常に重要である)には、BDNF、FGF11、FOXE1、WNT5A、WNT10A、TGFβ1、及びIGFBP3が含まれており、これらは全て、発生及び形態形成に関連する細胞間シグナル伝達の側面に関与している。
【0163】
これらの遺伝子の中で、CDKN2Aの発現は、この遺伝子が細胞老化の確立されたマーカーであるため、単にin vitroでの細胞集団の長期継代の現れである可能性が高い(Famulski & Halloran, 2005;「腎臓の老化における分子事象(Molecular events in kidney ageing)」, Curr Opin Nephrol Hyperten 14:243-248)。
【0164】
IL11に関して、腎臓及び他の器官における線維性疾患及び炎症性疾患の多数の側面に密接に関与しているが(Cook and Schafer, 2020; 「日常に潜んでいる:インターロイキン11は線維症、組織完全性、及び間質炎症の主制御因子として現れる(Hiding in Plain Sight: Interleukin-11 Emerges as a Master Regulator of Fibrosis, Tissue Integrity, and Stromal Inflammation)」, Ann Rev Med. 71: 263)、IL11は、特に関連性のある再生的生体活性において潜在的な役割を担う。IL11は、尾の再生中の多数の細胞系譜にわたる未分化前駆体集団の誘導及び維持を通じて、アフリカツメガエルにおける器官再生に必要であることが分かっている(Tsujioka et al., 2017; 「インターロイキン-11は、アフリカツメガエルのオタマジャクシの尾の再生中に異なる細胞系譜の前駆体を誘導し、維持する(interleukin-11 induces and maintains progenitors of different cell lineages during Xenopus tadpole tail regeneration.)」 Nature Commun. 8: 495)。
【0165】
TGFβ2遺伝子だけでなくTGFβスーパーファミリーの他のメンバーも腎臓発生の重要なメディエーターであり、ネフロン数を直接的又は間接的のいずれかで調節することが知られている(Sims-Lucas et al., 2008, 「TGF-β2ヘテロ接合突然変異マウスにおける腎形成の増強及び加速(Augmented and accelerated nephrogenesis in TGF-β2 heterozygous mutant mice)」, Pedr. Res 63: 607-612)。さらに、TGF-β2は、FGF2と相乗的に作用し、単離された齧歯類の後腎間葉外植片において多数の尿細管形成を誘導することが分かっている(Plisov et al., 2001. 「TGFβ2、LIF、及びFGF2は協働して腎形成を誘導する(TGF beta 2, LIF and FGF2 cooperate to induce nephrogenesis)」, Development 128: 1045)。
【0166】
分岐モルフォゲン(branching morphogen)CRISPLD2(LDL1としても知られる)は、発生中の尿管分岐先端(UBT)に対して特異的な局在パターンを有することが分かっている(Rutledge et al., 2017. 「尿管前駆体ニッチにおける細胞の不均一性及び器官発生における分岐形態形成の明確なプロファイル(Cellular heterogeneity in the ureteric progenitor niche and distinct profiles of branching morphogenesis in organ development)」, Development 144:3177)。CRISPLD2/LDL1の発現の観察は、後腎間葉細胞から分泌されたCRISPLD2が腎臓集尿系の分岐形態形成を促進することを示唆しており、これは肺芽の分枝形成の初期段階に対するその推定効果と同等である(Quinlan et al., 2007. 「発生中の腎臓における新規の分岐モルフォゲンであるLGL1は、レチノイン酸によって誘導される(LGL1, a novel branching morphogen in developing kidney, is induced by retinoic acid.)」 Am J Physiol Renal Physiol; 293(4):F987-93)。
【0167】
LOX及びLOX様タンパク質ファミリーは、細胞外マトリックスのアセンブリ及び再組織化におけるそれらの生体活性を通じて、発生及び器官形成において多数の役割を果たすことが知られている。LOX及びLOX様タンパク質は、脳、脊髄、肺、心臓、大動脈、歯、骨、軟骨、筋肉及び腱、皮膚、並びに子宮を含む多数の組織及び器官の発生に関係している(Wei et al., 2020; 「器官の発生におけるリシルオキシダーゼファミリーの役割(総説)(Role of the lysyl oxidase family in organ development (Review))」, Exp. Ther. Med. 20: 163-172)。
【0168】
LFNGは3つのNotchリガンドのうちの1つであり、その発現は腎小体における近位/遠位極性の確立及び分界に関与している。Notch経路は、コンマ体段階及びS字体段階を通じて成し遂げられる近位極性を確立し、近位尿細管及び足細胞の発生にとって不可欠である(O-Brian and McMahon, 2014. 「後腎ネフロンの誘導及びパターン化(Induction and patterning of the metanephric nephron.)」 Semin Cell Dev Biol. 36:31-38)。LFNG及び密接に関連するグリコシルトランスフェラーゼラジカルフリンジの発現は、アフリカツメガエルにおける発生の尾芽段階で近位前腎の背前領域において観察されている。LFNGの発現は、E14.5マウス胚における発生中のネフロンの遠位部分及び近位部分には存在しないことが分かっているが、将来の近位尿細管においては強く検出される(NotchリガンドDLL1の発現と同様)。そしてE17.5までに、LFNG発現は腎臓末梢における発生中のネフロンの一部に限定されていることが分かっており、将来の近位尿細管の細胞におけるNOTCHシグナル伝達によってLFNGが調節され得ることが示唆される(Leimeister et al., 2003. 「マウス胎児後腎におけるNotch経路遺伝子の発現は、近位尿細管の発生における役割を示唆している(Expression of Notch pathway genes in the embryonic mouse metanephros suggests a role in proximal tubule development.)」 Gene Expression Patterns 3: 595-598)。
【0169】
ヒト胎児腎臓におけるBDNFの発現解析により、BDNFが発生中の原始糸球体構造及び間葉由来尿細管内の上皮細胞の頂端領域に局在していることが分かった。BDNFは分化とともに遠位尿細管において検出されるが、その発現は誘導されていない間葉においては観察されておらず、こうしてBDNFが初期の誘導事象には関与せず、むしろネフロン組織化の後期段階に関与していることが示唆される(Huber et al., 1996. 「ヒト胎児腎臓におけるニューロトロフィン及びニューロトロフィン受容体(Neurotrophins and neurotrophin receptors in human fetal kidney.)」 Developmental biology 179: 369-381)。興味深いことに、BDNFは、細胞骨格アクチン重合におけるマイクロRNAに依存した増加を通じて、in vitro及びin vivoで足細胞の補修を媒介することも明らかにされた(Li et al., 2015. 「BDNFは、アクチン重合のマイクロRNAを介した増加により足細胞の損傷を補修する(BDNF repairs podocyte damage by microRNA-mediated increase of actin polymerization.)」 J Pathol 235: 731-744)。ゼブラフィッシュ幼生におけるモルホリノを介したBDNFのノックダウンは、異常な糸球体形態、足細胞の数の減少、並びに足細胞マーカーであるネフリン及びポドシンの誤発現をもたらした(Endlich et al., 2018. 「BDNF:慢性腎臓疾患を伴う患者の尿細胞におけるmRNA発現及び腎機能におけるその役割(BDNF: mRNA expression in urine cells of patients with chronic kidney disease and its role in kidney function.)」 J Cell Mol Med. 22: 5265-5277)。
【0170】
WNT5Aは、腎臓の発生において不可欠であることが分かっており、ロビノウ症候群を呈する患者における先天性腎尿路異常(CAKUT)は、WNT5A遺伝子における突然変異と関連している。尿管樹の発生、尿細管上皮細胞の組織化、及び基底膜の完全性における異常は、WNT5A欠損齧歯類(Pietila et al., 2016. 「Wnt5a欠損は、尿管樹の発生、尿細管上皮細胞の組織化、及び基底膜の完全性における異常を引き起こし、腎臓集合管のパターン化における役割を示す(Wnt5a Deficiency Leads to Anomalies in Ureteric Tree Development, Tubular Epithelial Cell Organization and Basement Membrane Integrity Pointing to a Role in Kidney Collecting Duct Patterning.)」 Plos One 11: e0147171)だけでなく、異所性尿管芽(UB)誘導による重複尿管及び重複腎においても観察されている。初期のUB形成中に、WNT5A突然変異胚は、後腎間葉(MM)の配置の調節不全を示し、その結果、MMとウォルフ管との間の時空間的に異常な相互作用が生じ、ウォルフ管との不適切なGDNFシグナル伝達が引き起こされる。さらに、突然変異型MMにおける細胞増殖は、コントロールと比べて大幅に減少していることが分かっており、これは発生中の尿管芽の正しい上皮尿細管形成を確実にするためのMMの形態形成におけるWNT5A/ROR2シグナル伝達の重要な役割を示唆している(Nishita et al., 2014. 「尿管出芽中の後腎間葉の形態形成におけるWnt5a-Ror2シグナル伝達の役割(Role of Wnt5a-Ror2 Signaling in Morphogenesis of the Metanephric Mesenchyme during Ureteric Budding)」; Mol Cell Biol 16: 3096-3105)。WNT5Aシグナル伝達はまた、足細胞の発生、及び平面内細胞極性経路を介したアクチン細胞骨格の再組織化による損傷からの糸球体足細胞の回復に関与している可能性もある(Babayeva et al., 2011. 「平面内細胞極性経路は、足細胞におけるアクチンの再構成、細胞の形状、運動性、及びネフリンの分布を調節する(Planar cell polarity pathway regulates actin rearrangement, cell shape, motility, and nephrin distribution in podocytes.)」AJPRP F549-60)。
【0171】
IGFBP3は、ヒト胎児腎臓における集尿系及び尿管の成熟細胞及び分化細胞において記録されており、おそらく腎形成の間にIGFの生体活性を調節するように作用する(Matsell et al., 1994. 「腎形成の間のインスリン様成長因子及び結合タンパク質遺伝子の発現(Expression of insulin-like growth factor and binding protein genes during nephrogenesis.)」 Kidney Int 46: 1031-42)。
【0172】
結果/DEG遺伝子セットのGO解析により、発生に関連する分類子のエンリッチメントが示される:進化的関係によるタンパク質解析(Protein ANalysis THrough Evolutionary Relationships)(PANTHER)過剰表現解析を実施して、ヒトゲノム全体と比べてDEG遺伝子セットにおいて特異的にエンリッチメントされたGOカテゴリーを特定した。PANTHER解析の結果は、表14及び表15に示される結果と大体一致しており、ここで、DEGデータセットは、細胞コミュニケーション、細胞分化、細胞間接着、発生プロセス、神経系発生、及び系の発生を含む発生に関連するGO識別子のエンリッチメントを示している。DEGセット全体のREACTOMEパスウェイ解析において強調される主要なパスウェイには、発生生物学、細胞周期、細胞間コミュニケーション、細胞外マトリックス組織化、神経系、シグナル伝達、遺伝子発現(転写)パスウェイが含まれていた。
【0173】
ヒトゲノム全体と比較した、SRC対BRC0における全てのDEGのGO-BP(生物学的プロセス)、GO-CC(細胞成分)、及びGO-MF(分子機能)の解析も実施した。ヒトゲノム全体と比べたDEGの特異的なエンリッチメントが、発生に関連する以下のGO-BPカテゴリーについて観察された:細胞プロセス、単一生物プロセス、生物学的調節、代謝プロセス、刺激に対する応答、多細胞生物プロセス、発生プロセス、シグナル伝達、局在化、細胞成分の組織化又は生合成、多生物プロセス、免疫系プロセス、生殖、生殖プロセス、運動、生物学的接着、行動、化学的シナプス伝達に関与するシナプス前プロセス、細胞殺傷、及び細胞凝集。エクソソームを介した細胞間コミュニケーションがSRCにとって重要な作用メカニズムであることを示す以前の報告(Bruce et al., 2013. 「機能的な腎細胞のex vivo培養及び分離(Ex vivo culture and separation of functional renal cells.)」 Methods Mol Biol 1001:53-64)と一貫して、SRC/BRC0のDEGセットにおける以下のGO-CCカテゴリーのエンリッチメントに注目した:細胞外領域、細胞外領域部分、超分子複合体、シナプス、他の生物、及び他の生物部分。最後に、以下のGO-MFカテゴリーについて、ヒトゲノム全体と比べたDEGのエンリッチメントが観察された:構造分子活性、分子機能調節因子、トランスポーター活性、核酸結合転写因子活性、分子トランスデューサー活性。これらのGO分類子のそれぞれの遺伝子組成及び祖先/子に関する追加の詳細は、amigo.geneontology.orgで確認することができる。
【0174】
結果/DEG遺伝子セットのKEGG解析により、発生に関連する分類子のエンリッチメントが示される:SRC/BRC0のDEG遺伝子セットに関連する主要な特定された代謝経路及びシグナル伝達経路のKEGGアノテーションも行った。DEG遺伝子セットにおいて特異的にエンリッチメントされたKEGG細胞プロセス分類子は、上皮細胞結合の形成、組織化及び維持、細胞周期の制御、並びに幹細胞の多能性の調節に広く関連していた:接着結合、p53シグナル伝達経路、タイトジャンクション、幹細胞の多能性を調節するシグナル伝達経路、アクチン細胞骨格の調節、エンドサイトーシス、細胞周期、及び接着斑。さらに、発生、細胞周期制御、及び再生に関連する多数の主要なシグナル伝達経路も、主要なKEGGカテゴリー:AMPK、mTOR、WNT、HIF-1、JAK-STAT、RAP-1、TNF、TGFβ、MAPK、FOXO、HIPPO、及びPI3K-AKTシグナル伝達経路だけでなく、サイトカイン-サイトカイン受容体相互作用、ECM受容体相互作用においてもエンリッチメントされていた。
【0175】
図2として示される散布図は、KEGGエンリッチメント解析結果のグラフ表示である。この図において、KEGGエンリッチメントの程度は、リッチ係数、q値、及び特定のパスウェイにおいてエンリッチメントされた遺伝子の数によって測定された。リッチ係数とは、パスウェイ内に位置するアノテーションされた遺伝子の総数に対する、パスウェイ内に位置する発現変動遺伝子の数の比率を指す。リッチ係数が大きいほど、エンリッチメントの程度が高くなる。q値は、多数の仮説検定後の補正されたp値である。q値の値の範囲は[0,1]であり、ゼロに近づくほどエンリッチメントが有意である。腎臓の再生に関連する主要なKEGGパスウェイには、TGF-βシグナル伝達経路、HIPPOシグナル伝達経路、FOXOシグナル伝達経路、細胞周期、ECM受容体相互作用、ピリミジン代謝が含まれていた。
【0176】
上方調節されたDEGセットに特に焦点を当てると、以下のKEGG分類子が有意であることが明らかになった:接着結合、エンドサイトーシス、細胞周期、アクチン細胞骨格の調節、p53シグナル伝達経路、幹細胞の多能性を調節するシグナル伝達経路、及び接着斑。上方調節されたDEGセットにおいて有意な追加のパスウェイには、Rap1シグナル伝達経路、HIF1シグナル伝達経路、JAK-STATシグナル伝達経路、TGF-βシグナル伝達経路、MAPKシグナル伝達経路、TNFシグナル伝達経路、及びHIPPOシグナル伝達経路が含まれていた(図3)。上方調節されたDEG遺伝子セットのtopGO解析を図3に示す。再生に特に関連する主要なGO-BP識別子には、子宮内胚発生、上皮成長因子受容体シグナル伝達経路、Gタンパク質共役型受容体シグナル伝達経路、Notchシグナル伝達経路、及び上皮細胞増殖の負の調節が含まれていた。
【0177】
下方調節されたDEGセットの具体的な調査により、以下のKEGG分類子:接着斑、アポトーシス、リソソーム、細胞周期、タイトジャンクション、及びエンドサイトーシスだけでなく、シグナル伝達経路:HIPPO、ヘッジホッグ、及びAMPKについてもエンリッチメントが示された。下方調節されたDEGセットのtopGO解析により、以下のBP分類子についてのエンリッチメントが示された:EGFRシグナル伝達経路、Notchシグナル伝達経路、GPCRシグナル伝達経路、消化管形態形成、心臓ルーピング、上皮細胞増殖の負の調節。
【0178】
結果/SRC集団及びBRC0集団のエピゲノムプロファイリング:SRCとBRC0との間のメチル化変動領域(DMR)の比較を図4にバイオリン型箱ひげ図として表す。これは、SRCゲノムがBRC0ゲノムと比べて、割合的に過剰メチル化が多く、低メチル化が少ないことを示している(n=4)。DMRアノテーションの結果に基づいて、遺伝子本体並びに上流領域及び下流領域(2k上流、遺伝子本体、及び2k下流)がDMRと重複する遺伝子に対して機能的エンリッチメント解析を実施した。SRC対BRC0における最も高度にエンリッチメントされたDMR関連遺伝子におけるGO-BP分類子には、細胞接着、シグナル伝達、及びRNAポリメラーゼによる転写の負/正の調節が含まれていた。BRC0と比べてSRC集団において高度にエンリッチメントされていることが特定されたKEGGパスウェイには、アクチン細胞骨格の調節、癌におけるプロテオグリカン、接着斑、エンドサイトーシス、cAMPシグナル伝達経路、RASシグナル伝達経路、RAP1シグナル伝達経路、PI3-AKTシグナル伝達経路、MAPKシグナル伝達経路、及びHIPPOシグナル伝達が含まれていた。大まかに言うと、これらの分類子は、細胞外マトリックスの組織化及び再組織化、並びに生物の発生及び細胞増殖に関連するシグナル伝達経路に関与する遺伝子を診断するものであった。これらの分類子は、DEGセットの解析において以前に特定された分類子とも一致していた。
【0179】
同様に、ゲノム上のDMRの分布に基づいて、遺伝子プロモーター領域(転写開始部位から1.5K上流、及び転写開始部位の0.5K下流)に関する機能的エンリッチメント解析の場合に重複遺伝子が存在した。この解析によれば、DMR関連遺伝子に関連するGO分類子には、アクチン細胞骨格の調節、エンドサイトーシス、cAMPシグナル伝達経路、細胞接着分子CAM、RAP1シグナル伝達経路が含まれていた。また、SRC対BRC0における最大の倍率変化について注目すべきことは、創傷治癒及び組織再生に関連する重要な炎症段階である白血球の経内皮遊走であった。さらに、DMR関連遺伝子に関連するKEGG分類子には、アクチン細胞骨格の調節、cAMPシグナル伝達経路、幹細胞の多能性を調節するシグナル伝達経路、RASシグナル伝達経路、RAP1シグナル伝達経路、PI3K-AKTシグナル伝達経路、エンドサイトーシス、細胞接着CAM、白血球の経内皮経路が含まれていた。これらの分類子は、DEGセットにおいて以前に特定されたものとも大体一致していた。
【0180】
結果/要約:全体として、ヒト起源のSRCは、発生に関連するGO分類子及びKEGG分類子においてエンリッチメントされたDEGセットを示した。DEG遺伝子セットにおいて特異的にエンリッチメントされたKEGG細胞プロセス分類子は、上皮細胞結合の形成、組織化及び維持、細胞周期の制御、並びに幹細胞の多能性の調節に広く関連していた。DMR遺伝子セットにおいて同様のエンリッチメントパターンが観察された。これらの発現データ及び明細書に示される他の発現データに基づいて、SRCは、損傷部位又は罹患部位で新規腎臓様組織形成を最終的に引き起こす胚性腎形成の側面と同等である機構的パスウェイを部分的に活性化することによって、腎臓のin vivoでの再生を媒介し、腎臓疾患患者の臨床転帰を改善することができる。
【0181】
実施例5:中等度ないし進行型の2型糖尿病関連CKD被験体に投与される富化された不均一腎細胞集団-腎形成マーカーの発現レベル及び臨床転帰との潜在的な関係の評価
序論:富化された不均一腎細胞集団、例えばこの実施例において言及されるSRCが、新規腎形成を媒介するシグナル伝達カスケードに影響を与えることによって、罹患した腎臓に対する再生効果を媒介する可能性があるという理解の下で、中等度ないし進行型の2型糖尿病関連CKDを伴う臨床試験被験体に投与されたSRCを、腎形成マーカーの発現レベルについて評価し、それに応じて患者の臨床的奏効と比較した。
【0182】
材料及び方法/投与用のSRCの調製:臨床試験における全ての患者に標準的な経皮腎生検を行って腎臓細胞を単離し、そこから投与用のそれらのSRCを調製した。実施例1及び実施例4に記載されるように、SRCを腎生検から調製した。
【0183】
材料及び方法/SRCの表現型マーカー解析:懸濁液中のSRCを300×gで室温にて5分間遠心分離した。得られたSRCペレットをダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で1回洗浄した後に、BD固定/透過化溶液(BD Biosciences、カタログ番号554714)中で4℃にて20分間固定した。固定した細胞を500×gで室温にて5分間遠心分離した。細胞ペレットをBD透過化/洗浄バッファー(Perm/Wash buffer)中に再懸濁した。再懸濁した細胞をアリコート(150000個の細胞を含む20μL)に分けた後に、1μgの一次抗体とともに4℃で1時間インキュベートした。このインキュベーションの終わりに、細胞をペレット化し、BD透過化/洗浄バッファーで洗浄し、再度ペレット化し、150μLのDPBS中に再懸濁した。蛍光体に直接コンジュゲートされていない抗体の場合は、1μgの二次抗体を細胞とともに更に30分間インキュベートした後に、洗浄し、DPBS中に再懸濁した。次いで、細胞をフローサイトメトリーによって解析した。
【0184】
材料及び方法/SRCのFACS解析:SRCがキャップ間葉、腎形成間質、及び尿管芽についてのマーカーを含むかどうかを判定するのに、細胞をこれらの特定の成分を識別する膜タンパク質についてスクリーニングした。以下の免疫試薬を使用してスクリーニングを行った:ヤギ抗ウサギIgG H&L(Alexafluor 488)(Abcam Inc. カタログ番号ab150077)、NPHS2に対するウサギポリクローナル(Abcam Inc. カタログ番号ab50339)、ネフリンに対するウサギモノクローナル(Y17R)(Abcam Inc. カタログ番号ab136894)、RETに対するAlexafluor 488ウサギモノクローナル(EPR2871)(Abcam Inc. ab237105)、ポリクローナルウサギIgGアイソタイプコントロール(Abcam Inc. ab37415)、Six2抗体(H-4)PE(Santa Cruz, カタログ番号sc-377193 PE)、OSR1抗体(Santa Cruz、カタログ番号sc376545 PE)、Lhx1モノクローナルIgG2a(Santa Cruz、カタログ番号sc515631 PE)、RETウサギモノクローナル抗体(Abcam Inc. カタログ番号ab237105)、RB IGGに対するヤギポリクローナル二次抗体(H&L)-Alexa Fluor 488(Abcam Inc. カタログ番号ab150077)、Alexa Fluor(商標)647マウスIgG2a,κアイソタイプコントロール(BD、カタログ番号557715)、全長Fgf8モノクローナル(Abcam、カタログ番号ab89550)、ウサギIgGアイソタイプコントロール[PE](Novus Biologicals、カタログ番号NBP2-36463PE)、及びPEマウスIgG1,κアイソタイプコントロール(BD, カタログ番号555749)。
【0185】
材料及び方法/FACS表現型マーカー解析:1.5mLのマイクロ遠心分離管において少なくとも50000個のSRCをペレット化し、細胞を100μLのBD固定/透過化溶液中で4℃にて20分間固定することによって、表現型マーカー解析を実施した。次いで、マイクロ遠心分離管をマイクロ遠心分離機において3分間500×gに置き、固定した細胞をペレット化した後に、これを500μLのBD透過化/洗浄バッファーで1回洗浄した。洗浄物のペレットを20μLのBD透過化/洗浄バッファー中に再懸濁し、1μgの一次抗体を加えて4℃で1時間インキュベートした。細胞を500μLのBD透過化/洗浄バッファーで1回洗浄し、20μLのBD透過化/洗浄バッファー中に再懸濁し、1μgの二次抗体を加えて、4℃で30分間インキュベートした。最後の洗浄を500μLのBD透過化/洗浄バッファーを用いて実施した。ペレットを150μLのDPBS中に再懸濁し、細胞をフローサイトメトリーにより解析した。
【0186】
結果/SRCのマーカー発現解析:臨床試験において被験体に投与されたSRCのマーカー発現解析の結果を表16に示す。
【0187】
【表16】
【0188】
例えば、実施例2において示された以前の解析と一致して、臨床試験被験体のSRCは、腎形成マーカーパネルのマーカー、並びにネフリン、ポドシン、及びRACK-1を含む他のマーカーを発現した。臨床試験被験体のSRCにはまた、以前に記載されたマーカーを発現する細胞が同様のパーセンテージで含まれていた。様々なマーカーの相関により、それらの共発現の証拠が見つかった(図5A図5Hを参照のこと)。
【0189】
SRCによるマーカーの発現を更に解析したところ、低レスポンダー(eGFRの傾きは改善したがeGFRの改善はなかった)として識別された被験体と比べて、中/高レスポンダー(eGFRの改善)として識別された被験体が、様々なバイオマーカーのより高い発現を示し、Six2については有意性への傾向があり、LHx1については有意性を有することが明らかになった(表16)。これらの解析は、SRC集団の細胞がより高いレベルの腎形成マーカーの発現レベルを有するため、これらが再生的活性及び回復的活性を媒介する能力を高め、それによって罹患した腎臓に治療効果をもたらし得ることを実証することにより、SRCが新規腎形成を媒介する可能性があることの更なる証拠を示す。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】