(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-30
(54)【発明の名称】神経変性疾患に関連する神経病理の治療および予防
(51)【国際特許分類】
A61K 39/10 20060101AFI20231122BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20231122BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20231122BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
A61K39/10
A61K35/74 A
A61P25/28
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528418
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(85)【翻訳文提出日】2023-05-12
(86)【国際出願番号】 US2021059579
(87)【国際公開番号】W WO2022108950
(87)【国際公開日】2022-05-27
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523048343
【氏名又は名称】イリアド バイオテクノロジーズ,リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ILiAD Biotechnologies,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ルビン,キース
(72)【発明者】
【氏名】グレイザー,スティーヴン
【テーマコード(参考)】
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4C085BA17
4C085CC07
4C085EE01
4C085GG10
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC51
4C087CA09
4C087MA59
4C087NA14
4C087ZA16
4C087ZB09
(57)【要約】
生弱毒化ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)ベースのワクチンを、Aβ脳プラークを特徴とする神経変性疾患を発症するリスクのある対象に投与することにより、かかる治療をしていないこの対象において発症するだろうβ脳プラーク量を予防または低減することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルツハイマー病に罹患しているかまたは発症するリスクのある対象の脳内のβアミロイドプラークを予防または低減するために、生弱毒化ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)株を含む組成物の使用であって、前記生弱毒化ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)株は、前記対象をコロニー形成し、前記対象が前記組成物を投与されない場合の前記対象の脳内に形成したかもしくは存在していたβアミロイドプラーク量を減少させる前記対象における防御反応を誘導することができる、使用。
【請求項2】
前記生弱毒化ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)株は、前記対象の気道の感染症をコロニー形成することができる、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記生弱毒化ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)株は、変異百日咳毒素遺伝子、欠失または変異皮膚壊死性遺伝子、およびボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)ampG遺伝子を置換する異種ampG遺伝子を含む、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記生弱毒化ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)株は、2006年3月9日に受入番号1-3585で国立微生物培養寄託機関(Collection Nationale de Culture Microorganismes)(C.N.C.M.)に寄託されたBPZE1株である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記生弱毒化ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)株は、非病原性である、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記対象は、アルツハイマー病と診断されている、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記対象は、軽度認知障害と診断されている、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記対象は、アミロイド前駆体タンパク質をコードする遺伝子、プレセニリンIをコードする遺伝子、およびプレセニリンIIをコードする遺伝子の群から成る遺伝子のうちの少なくとも1つにおいて変異を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
前記対象は、1または2つのε-4アレルを特徴とするアポリポタンパク質Eアロタイプを有する、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
前記対象は、無症候性ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)感染症に罹患している、請求項1に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連技術
本願は、2020年11月17日に出願された米国特許仮出願第63/114,909号の優先権を主張する。
【0002】
連邦政府資金による研究開発の記載
該当しない。
【0003】
技術分野
本開示は、総じて、微生物学、ワクチン学、神経学、および医学の分野に関する。より詳細には、本開示は、対象におけるボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)(BP)または無症候性BPコロニー形成感染症の予防または低減によるこの対象におけるアルツハイマー病(AD)などの神経変性疾患に関連する神経病理の予防または低減に関する。
【背景技術】
【0004】
ADは、異常タウタンパク質から成る細胞内脳神経原線維変化(NFT)、およびアミロイドβ(Aβ)ペプチドから成る細胞外プラークを有する者における緩徐進行性認知障害および行動障害を特徴とする神経変性疾患である。現在の治療は、この病気の症状にしか役立たず、多大な努力にもかかわらず、この病気の進行を停止または回復する治療は承認されていない。
【0005】
ADの原因および進行は、よく理解されていない。ADのほとんどの症例は、孤発性であり、65歳後に起こる。この病気の発症リスクは、年齢によって最も予測される。遺伝的特徴もADに対する感受性において重要な役割を果たす。いくつかの異なる遺伝子座における変異は、ADの開始および進行に影響すると思われると特定された。これらの変異は、アミロイド前駆体タンパク質、プレセニリンI、およびプレセニリンII、ならびにアポリポタンパク質Eアロタイプをコードするものを含む遺伝子において見られる。例えば、対象におけるAPOEε-4アレルの存在は、非保因者の30倍、およびε-3/ε-4ヘテロ接合体の3.7倍のこの疾病発症の相対的リスク付与する(Myers,R.H.,et al.“Apolipoprotein E element 4 association with dementia in a population-based study:The Framingham Study.”Neurology 46.3(1996):673-677)。他の因子(例えば、低ホルモンレベル、金属暴露)およびADの関係性は研究中であるが、明確な因果関係は確立されていない。
【0006】
数十年間、病態的に産生されたアミロイドβ(Aβ)原線維およびプラークは、ミクログリアおよびアストロサイトを活性化する脳組織内に蓄積して、脳神経炎症をもたらし、最終的にシナプス機能への毒性および神経細胞死に至るとほとんどの専門家は考えている。全身炎症疾患は、ADの神経変性を引き起こす可能性があり、プリオンはADの原因となるかもしれないと他の専門家は提案した。
【0007】
科学界によりほとんど敬遠されているが、別の仮定は、ADは細菌性感染症が原因であることである。軽度~中度ADに罹患している対象におけるクラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)コロニー形成を排除することを目的としている臨床治験から、プラセボ投与群と比較して、抗生物質を用いた治療群における統計的に有意な効果はないことが分かった。Molloy et al.,Int J Geriat Psychiatry,28:463-70,2013.AD病態に寄与すると提案されている他の微生物としては、ヒトヘルペスウイルス1~6、C型肝炎ウィルス、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、トレポネーマ・パリズム(Treponema pallidum)、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、およびトキソプラズマ・ゴンディイ(Toxoplasma gondii)が挙げられる。Sochocka et al.,Curr Neuropharmacol,15:996-1009,2017。それでも、特定の病原体はADの原因となると決定的に証明されていないので、ADが感染源を有するという概念は議論の余地があるままである。
【発明の概要】
【0008】
生弱毒化BPベースのワクチンを、Aβ脳プラークを特徴とする神経変性疾患を発症するリスクのある対象に投与することにより、かかる治療をしていないこの対象において発症するだろうβ脳プラーク量を予防または低減することが発見された。注目すべきことに、その後にBPの病原性株に感染していない対象においてでさえワクチン接種による防御反応は観察された。
【0009】
これらの発見に基づいて、(a)無症候性BPコロニー形成感染症またはBP臨床感染症を予防もしくは低減、または(b)ADなどの神経変性疾患の病理学的特徴の原因となるもしくは前記病理学的特徴に寄与するBP毒素を中和する薬剤を対象に投与することにより、この疾病に罹患しているかもしくは発症のリスクのある対象におけるADなどの神経変性疾患の病理学的特徴の予防方法または治療方法を本明細書に記載する。ADに罹患しているかもしくは発症のリスクのある対象の脳内のβアミロイドプラークの予防方法または低減方法も本明細書に記載する。後者の方法は、対象をコロニー形成することができる生弱毒化ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)株(例えば、薬剤的に許容可能な組成物またはワクチンにおける)の治療有効量を前記対象に投与するステップを含み、前記対象が前記組成物を投与されない場合に前記対象の脳内に形成したかまたは存在していたβアミロイドプラーク量を低減する前記対象における防御反応を含む。同様に、アルツハイマー病に罹患しているかまたは発症するリスクのある対象の脳内のβアミロイドプラークを予防または低減するために、生弱毒化ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)株を含む組成物の使用であって、前記生弱毒化ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)株は、前記対象をコロニー形成し、前記対象が前記組成物を投与されない場合の前記対象の脳内に形成したかもしくは存在していたβアミロイドプラーク量を減少させる前記対象における防御反応を誘導することができる、使用を本明細書に記載する。
【0010】
前記薬剤は、前記対象(例えば、気道コロニー形成感染症)における非病原性BP無症候性コロニー形成感染症を引き起こし、神経変性疾患の病理学的特徴を予防または低減する前記対象における防御反応を引き起こすことができる生弱毒化ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)株であり得る。生弱毒化ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)株は、変異百日咳毒素遺伝子、欠失または変異皮膚壊死性遺伝子、および天然BPampG遺伝子(例えば、2006年3月9日に受入番号1-3585で国立微生物培養寄託機関(Collection Nationale de Culture Microorganismes)(C.N.C.M.)に寄託されたBPZE1株)を置換する異種ampG遺伝子を含むものであり得る。
【0011】
神経変性疾患は、前記対象の脳内のβアミロイドプラークの存在を特徴とするものであり得、前記ワクチンを前記対象に投与するステップは、前記対象の脳内のAβプラーク形成を低減または予防する防御反応をもたらすことができる。
【0012】
本明細書に記載されている方法では、前記対象は、アルツハイマー病と診断されたか、もしくは発症するリスクのある者、または軽度認知障害に罹患している者であり得る。更に、前記対象は、アミロイド前駆体タンパク質、プレセニリンI、およびプレセニリンIIをコードする遺伝子の少なくとも1つに変異を有する者;または1つもしくは2つのε-4アレルを特徴とするアポリポタンパク質Eアロタイプを有する者であり得る。更に、前記対象は、無症候性ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)コロニー形成感染症を有する者であり得る。
【0013】
本明細書で使用されるとき、フレーズ「ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)臨床感染症」または「BP臨床感染症」は、頻繁な咳にかん高い「吸気性笛声」音が続き得る発作を特徴とする症候性BP感染症を意味する。本明細書で使用されるとき、フレーズ「無症候性ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)コロニー形成感染症」または「無症候性BPコロニー形成感染症」は、頻繁な咳にかん高い「吸気性笛声」音が続き得る発作を特徴としない無症候性または軽度な症候性BP感染症(例えば、一過性の咳または鼻漏)を意味する。
【0014】
別段に定義されない限り、本明細書で使用されている全ての技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解しているのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと同様又は均等な方法及び材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および材料は以下に記載する。本明細書で言及されている全ての出版物、特許、及び特許出願は、その全文を参照することにより援用される。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が優先する。加えて、以下に述べられている特定の実施形態は、例証にすぎず、限定的であることを意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、APP/PS1マウスにおけるBP感染症および/またはBPの生弱毒株を用いたワクチン接種の効果を評価するための実験プロトコールを示す概略図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されているプロトコールに従ったAPP/PS1マウスにおける海馬Aβプラーク領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
対象のBP臨床感染症もしくは無症候性BPコロニー形成感染症の予防もしくは低減または神経変性疾患の原因となるもしくは寄与するBP毒素の中和により、ADなどの前記神経変性疾患の進行の予防方法、治療方法、または遅延方法を、本明細書に記載する。下記実施形態は、これらの方法の代表例を例証する。それにもかかわらず、これらの実施形態の記載から、下記に提供される記載に基づいて、本発明の他の態様を行うことができおよび/または実施することができる。
【0017】
一般的方法論
従来の微生物学的、免疫学的、分子生物学的、及び医学的技術を含む方法を本明細書に記載する。微生物学的方法は、Methods for General and Molecular Microbiology(3d Ed),Reddy et al.,ed.,ASM Pressに記載されている。免疫学的方法は、総じて、当技術分野において公知であり、Current Protocols in Immunology,Coligan et al.,ed.,John Wiley & Sons,New Yorkなどの方法論専門書に記載されている。分子生物学の技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,vol.1-3,Sambrook et al.,ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,2001;およびCurrent Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.,ed.,Greene Publishing and Wiley-Interscience,New Yorkなどの専門書に詳細に記載されている。医学的処置の一般的方法は、McPhee and Papadakis,Current Medical Diagnosis and Treatment 2010,49th Edition,McGraw-Hill Medical,2010;およびFauci et al.,Harrison’s Principles of Internal Medicine,17th Edition,McGraw-Hill Professional,2008に記載されている。
【0018】
対象
本明細書に記載されている方法は、ADなどの神経変性疾患に罹患しているか、または発症するリスクのあるいずれもの対象に適用可能である。ヒト患者におけるADの診断を、臨床評価により行うことができる。「ADを発症するリスクのある対象」は、軽度認知障害(MCI)と診断されたもの、ADに罹患していた親もしくは兄弟がいた少なくとも65歳の人、ADの発症に関連するリスク遺伝子(例えば、APOE-ε4)を有する人、またはADの発症に関連する決定的遺伝子(例えば、変異アミロイド前駆体タンパク質、プレセニリンI、またはプレセニリン2をコードする遺伝子)を有する人である。本明細書に記載されているように治療されるかも知れない他の対象は、無症候性BPコロニー形成感染症もしくはBP臨床感染症と診断されたもの、および/または無症候性BPコロニー形成感染症に感染するリスクのあるものである。本明細書に記載されている方法は、タウタングルおよび/またはβアミロイドプラークを有する対象にも適用可能である。
【0019】
BP無症候性コロニー形成感染症を予防または低減する薬剤
ADを予防または治療するため、臨床BP感染症または無症候性BPコロニー形成感染症を予防または低減する薬剤を対象に投与することができる。前記薬剤は、米国特許第9,119,804号に記載されている生弱毒化BPZE1株、または米国特許第9,655,959号に記載されているアデニル酸シクラーゼ欠損BPAL10株などのその誘導体;米国特許第9,528,086号に記載されている融合タンパク質発現BP株;国際公開第2019/077028(A1)号に記載されているセロタイプ3;米国特許第10,682,377号に記載されているパータクチン欠損BP株;および国際公開第2020/049133(A1)号に記載されているアデニル酸シクラーゼ触媒ドメイン活性に欠けているBP株を含むワクチンなどのBPに対する強力な粘膜免疫を誘導するBPワクチンであり得る。他の適切な弱毒化BP株が、薬剤として使用されるかも知れない。以下のもの:百日咳毒素(PTX)、皮膚壊死性毒素(DNT)、気管細胞毒(TCT)、アデニル酸シクラーゼ(AC)、リポ多糖(LPS)、線維状赤血球凝集素(FHA)、パータクチン、またはbvg規制成分のいずれかのうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5以上)のその産生を低減するBP株の変異により弱毒化を達成する可能性がある。かかる変異体の作製方法は、本明細書ならびに米国特許第9,119,804号および米国特許出願公開第15/472,436号に記載されている。前記薬剤は、無症候性ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)感染症、臨床ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)感染症、または百日咳を排除または予防する抗生物質(例えば、鼻腔内抗生物質)であってもよい。前記抗生物質は、例えば、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、またはアジスロマイシンであり得る。
【0020】
BP毒素を中和する薬剤
ADを予防または治療するため、1つ以上のBP毒素(例えば、ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)毒素)を標的として中和する薬剤を、対象に投与することができる。かかる薬剤は、ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)細菌により発現される抗原と特異的に結合する抗体、またはかかる抗体の産生を誘導するワクチンであり得る。
【0021】
製剤/投与量/投与
上記BP株を、対象への投与のためのワクチンとして製剤することができる。適切な数の生細菌を、リン酸緩衝生理食塩水などの薬剤的に適切な賦形剤または担体、蒸留水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、様々な種類の湿潤剤、滅菌溶液および同様のものと混合する。場合によっては、ワクチンを凍結乾燥し、次いで、投与前に再調製する。粘膜(特に鼻腔、気管支、または肺)投与に適合する薬剤的に適切な賦形剤または担体は、気道のBP株への曝露の目的のため好ましい。この分野、およびUSP/NFにおける標準的テキストであるRemington’s Pharmaceutical Sciences参照。
【0022】
粘膜投与用に製剤される場合、ワクチンの各用量は、気道の非病原性無症候性BPコロニー形成感染症をもたらすために充分な数の生ボルデテラ(Bordetella)細菌、例えば、これを受ける哺乳類の体重および年齢に応じて、約(すなわち、±50%)5×105~5×1010細菌を含むことができる。ヒト対象への投与のため、用量は、約1×105、1×106、5×106、1×107、5×107、1×108、5×108、1×109、5×109、または1×1010生BP細菌を含むことができる。前記用量を、1日、2日、3日、4日、5日、もしくは6日または1週、2週、3週、4週、5週、もしくは6週、または1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月の間隔で1回または複数(2、3、4、5、6、7、8以上)回で与えてよい。総じて、充分な量のワクチンを投与して、感染症および防御反応をもたらす。誘導された防御反応が衰えた後に追加の量を投与することができる。
【0023】
防御反応の誘発方法
本明細書に記載されているワクチンを、気道中でワクチン内の細菌を沈着するいずれかの適切な方法により哺乳類対象(例えば、ヒト)に投与することができる。例えば、前記ワクチンを、例えば、インヘラー、注射器、インサフレイター、噴霧装置、その他を用いて、吸入または鼻腔内導入により投与してよい。1×105~1×109(例えば、1×105、5×105、1×106、5×106、1×106、5×106、1×107、5×107、1×108、5×108、1×109±10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%)の生細菌の単回用量の投与は、通常、防御反応を誘導するのに充分であるが、1つ以上(1、2、3、4、またはそれ以上)の追加ブースター投与を、充分な防御反応が発症するまで、4日以上(例えば、4日、5日、6日、もしくは7日;または1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、もしくは8週)の間隔で投与してもよい。防御反応の発症を、ボルデテラ(Bordetella)特異的抗体力価の定量およびボルデテラ(Bordetella)抗原特異的T細胞応答(例えば、ELISPOTアッセイを用いて)の測定などの当技術分野において公知の方法により評価することができる。神経画像処理(例えば、フルオロデオキシ-d-グルコース(FDG)を用いた脳代謝の機能的MRIおよびポジトロン断層撮影(PET)試験ならびにピッツバーグ化合物B(PiB)などのアミロイドトレーサーを使用して神経変性の進行を評価することができる。ワクチン誘導防御反応が衰えた(例えば、最終ワクチン接種から1年、2年、3年、4年、5年、10年以上後)な場合に、防御反応を追加免疫するためにワクチンを再度投与してよい。
【実施例】
【0024】
実施例1-材料及び方法
【0025】
ヒトADを早期に発症させるヒト遺伝子でトランスフェクトされたAPP/PS1マウスを、下記実験で使用した。Holcomb et al.Nat.Med.,4:97-100,1998参照。これらのマウスは、ヒトADにおいて見られるように、海馬内を含むその脳内にβアミロイド含有プラークを生成する。野生型(WT)マウスを、コントロールとして使用した。
【0026】
これから、その特徴的な病原性毒素のうちの3つを不活性化あるいは除去した、そのBPZE1、ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)由来の生弱毒化鼻腔内ワクチンを、下記実験で使用した。米国特許第9,730,995号参照。
【0027】
40WT及び40APP/PS1の8齢週マウスを試験で使用した。これらのマウスを下表1に示されている群に割り当てた。
【0028】
実験プロトコールは
図1に示す。マウスを、0週および2週においてBPZE1または媒体で治療した。40週において、マウスにBPまたは感染モックで感染させた。44週において、群9および群10にBPZE1を再度投与した。64週において、海馬を各動物から取り出し、コンゴレッド染色を用いてAβプラークについて評価した。
【0029】
実施例2-結果
【0030】
図2を参照して、海馬Aβプラークを、コンゴレッド染色により評価した。コントロールのパーセンテージとして平均プラーク面積を、プラーク21~50、51~80、90~120について、>120ピクセルの大きさで決定した。BP単独での感染は、コントロールと比較して、Aβプラークにより覆われた海馬面積を増大する傾向であった。前BPZE1ワクチン接種は、BPZE1を予めワクチン接種されなかったBP曝露マウスと比較して、その後BPに対して曝露したAPP/PS1マウスにおいてAβプラークにより覆われている海馬面積を低減した(複数のβアミロイドプラークサイズにわたった反復測定に対する混合p値、0.003)。BPZE1ワクチン接種は、BPに曝露されなかったコントロールマウスと比較して、その後BPに対して曝露および未曝露されたAPP/PS1マウスの複合群においてβアミロイドプラークによる海馬被覆面積を低減した(複数のβアミロイドプラークサイズにわたった反復測定に対する混合p値、0.001)。BPZE1は、BPに対して曝露されなかったワクチン未接種コントロールマウスと比較して、BPに対して曝露されなかったAPP/PS1マウスにおいてβアミロイドプラークにより覆われた海馬面積を低減する強い傾向を示した(複数のβアミロイドプラークサイズにわたった反復測定に対する混合p値、0.055)。
【0031】
BPZE1は、ヒトADに見られるように、遺伝的にAβ脳プラークを産生しやすいマウスにおいてコントロールに対して予防効果を有する。BPZE1ワクチン接種は、その後BPに対して曝露されたマウスにおいてAβ海馬被覆を有意に低減し、その後BPに対して曝露および未曝露されたマウスの複合群においてより少ない海馬Aβプラークと関連する。
【0032】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と関連して記載しているが、前述の記載は例証することを意図し、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は添付のクレームの範囲により規定されている。他の態様、利点、および変更は次のクレームの範囲内である。
【国際調査報告】