IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エス・エム・エス・ジーマーク・アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特表2023-550065金属のストリップを圧延するための圧延装置、このような圧延装置内で使用するためのロール装置並びに圧延装置を改装するための方法
<>
  • 特表-金属のストリップを圧延するための圧延装置、このような圧延装置内で使用するためのロール装置並びに圧延装置を改装するための方法 図1
  • 特表-金属のストリップを圧延するための圧延装置、このような圧延装置内で使用するためのロール装置並びに圧延装置を改装するための方法 図2A
  • 特表-金属のストリップを圧延するための圧延装置、このような圧延装置内で使用するためのロール装置並びに圧延装置を改装するための方法 図2B
  • 特表-金属のストリップを圧延するための圧延装置、このような圧延装置内で使用するためのロール装置並びに圧延装置を改装するための方法 図3
  • 特表-金属のストリップを圧延するための圧延装置、このような圧延装置内で使用するためのロール装置並びに圧延装置を改装するための方法 図4
  • 特表-金属のストリップを圧延するための圧延装置、このような圧延装置内で使用するためのロール装置並びに圧延装置を改装するための方法 図5
  • 特表-金属のストリップを圧延するための圧延装置、このような圧延装置内で使用するためのロール装置並びに圧延装置を改装するための方法 図6
  • 特表-金属のストリップを圧延するための圧延装置、このような圧延装置内で使用するためのロール装置並びに圧延装置を改装するための方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-30
(54)【発明の名称】金属のストリップを圧延するための圧延装置、このような圧延装置内で使用するためのロール装置並びに圧延装置を改装するための方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 31/10 20060101AFI20231122BHJP
   B21B 13/14 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
B21B31/10 Z
B21B13/14 B
B21B13/14 L
B21B13/14 D
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023528628
(86)(22)【出願日】2021-09-20
(85)【翻訳文提出日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2021075740
(87)【国際公開番号】W WO2022106093
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】102020214383.8
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】フィルク・エドガー
(72)【発明者】
【氏名】ギュンペル・マルクス
(57)【要約】
本発明は、金属のストリップを圧延するための圧延装置(1)であって、間にロールギャップ(W)を規定する少なくとも1つの第1及び第2のワークロール(4,6,6’)と、少なくとも1つの第1及び第2のバックアップロール(11,12)を有し、共通のロールスタンド(2)内で、少なくとも一方のワークロール(4,6’)がワークロールチョック(5,9’)に支承され、バックアップロール(11,12)がバックアップロールチョック(13,14)に支承され、ワークロールチョック(5,9’)は、第1及び/又は第2のワークロール(4,6’)が、それぞれ、小さい直径の1つのワークロール(6)と少なくとも1つの付加ロール(8)を備えるロール装置(10)に交換可能であるように形成され、小さい直径のワークロール(6)が、付加ロール(8)を介して支持され、付加ロールが、付加ロールチョック(7)に支承され、小さい直径のワークロールが、付加ロールチョック(7)のワークロール軸受(9)内に配置されていること、を特徴とする圧延装置(1)に関する。本発明は、更に、このような圧延装置(1)内で使用するためのロール装置(10)と圧延装置(1)を改装するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属のストリップを圧延するための圧延装置(1)であって、間にロールギャップ(W)を規定する少なくとも1つの第1及び第2のワークロール(4,6,6’)と、少なくとも1つの第1及び第2のバックアップロール(11,12)を有し、共通のロールスタンド(2)内で、少なくとも一方のワークロール(4,6’)がワークロールチョック(5,9’)に支承され、バックアップロール(11,12)がバックアップロールチョック(13,14)に支承され、ワークロールチョック(5,9’)は、第1及び/又は第2のワークロール(4,6’)が、それぞれ、小さい直径の1つのワークロール(6)と少なくとも1つの付加ロール(8)を備えるロール装置(10)に交換可能であるように形成され、小さい直径のワークロール(6)が、付加ロール(8)を介して支持され、付加ロールが、付加ロールチョック(7)に支承され、小さい直径のワークロールが、付加ロールチョック(7)のワークロール軸受(9)内に配置されていること、を特徴とする圧延装置(1)。
【請求項2】
ロール装置(10)内のワークロール軸受(9)の位置が調整可能であること、を特徴とする請求項1に記載の圧延装置(1)。
【請求項3】
ワークロール軸受の位置が、軸方向に及び/又はロールギャップ(W)の縦方向の広がりに対して横に調整可能であること、を特徴とする請求項2に記載の圧延装置(1)。
【請求項4】
付加ロール(8)が、ロール装置(10)のワークロール(6)よりも大きい直径を備えること、を特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の圧延装置(1)。
【請求項5】
第1又は第2のワークロール(4,6,6’)が、小さい又は大きい直径のワークロールとして形成されていること、及び、小さい直径のワークロール(6)が、大きい直径のワークロール(4,6’)の直径の半分以下の直径を備えること、を特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の圧延装置(1)。
【請求項6】
付加ロール(8)の直径が、大きい直径のワークロール(4,6’)の直径以下であること、を特徴とする請求項5に記載の圧延装置(1)。
【請求項7】
ロール装置(10)の付加ロールチョック(7)が、大きい直径の1つのワークロール(4,6’)用のワークロールチョック(5,9’)の外部輪郭とほぼ一致する外部輪郭を備えること、を特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の圧延装置(1)。
【請求項8】
ワークロール軸受(9)が、付加ロールチョック(7)の取付け位置でロールギャップ(W)に対向する側のポケット(26)内に配置されていること、を特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の圧延装置(1)。
【請求項9】
ロール装置(10)のワークロール(6)が、少なくとも一方の側を、少なくとも1つの流体支持軸受(17)によってその長さの少なくとも一部にわたってその回転軸に対して平行に支持されていること、を特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の圧延装置(1)。
【請求項10】
ロール装置(10)のワークロール軸受(9)内のワークロール(6)の回転軸の位置が、付加ロール(8)の回転軸の位置に対して相対的に調整可能であること、を特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の圧延装置(1)。
【請求項11】
ワークロール(6)が、その回転軸に対して横に、ロール装置(10)のワークロール軸受(9)に可動に支承され、流体支持軸受(17)の支持シェル(18)によって位置決め可能であること、を特徴とする請求項9又は10に記載の圧延装置(1)。
【請求項12】
支持シェルが、ワークロール(6)の胴長さの実質的な部分にわたって延在すること、を特徴とする請求項9~11のいずれか1項に記載の圧延装置(1)。
【請求項13】
支持シェル(18)が、少なくとも1つの好ましくは液圧式の調整装置を介して、ワークロール(6)に対して調整及び/又は保持されること、を特徴とする請求項11又は12に記載の圧延装置(1)。
【請求項14】
調整装置として、圧延材用の少なくとも1つのガイド要素が設けられていること、を特徴とする請求項13に記載の圧延装置(1)。
【請求項15】
調整装置が、調整要素(23)によって支持シェル(18)に作用する複数の調整シリンダ(22)を有すること、を特徴とする請求項13又は14に記載の圧延装置(1)。
【請求項16】
ロール装置(10)の少なくとも1つのロールチョック(7)及び/又は少なくとも1つのワークロール軸受(9)が、少なくとも1つの媒体カップリング(24,25)を有すること、を特徴とする請求項1~15のいずれか1項に記載の圧延装置(1)。
【請求項17】
請求項1~16の特徴のいずれか1つを有する圧延装置(1)内で使用するためのロール装置(10)であって、少なくとも1つの付加ロール(8)と少なくとも1つのワークロール(6)を有し、付加ロール(8)が、付加ロールチョック(7)に支承され、ワークロール(6)が、付加ロールチョック(7)のワークロール軸受(9)内に配置されていること、を特徴とするロール装置(10)。
【請求項18】
付加ロール(8)が、ワークロール(6)よりも大きい直径を備えること、を特徴とする請求項17に記載のロール装置(10)。
【請求項19】
ワークロール軸受(9)が、付加ロールチョック(9)の取付け位置でロールギャップ(W)に対向する側のポケット(26)内に配置されていること、を特徴とする請求項17又は18に記載のロール装置(10)。
【請求項20】
ワークロール(6)が、少なくとも一方の側を、少なくとも1つの流体支持軸受(17)によってその長さの少なくとも一部にわたって回転軸に対して平行に支持されていること、を特徴とする請求項17~19のいずれか1項に記載のロール装置(10)。
【請求項21】
ワークロール軸受(9)が、付加ロールチョック(7)のポケット(26)内に可動に支承されていること、を特徴とする請求項19又は20に記載のロール装置(10)。
【請求項22】
少なくとも1つの付加ロールチョック及び/又は少なくとも1つのワークロール軸受(9)が、少なくとも1つの媒体カップリング(24,25)又は媒体接続部を備えること、を特徴とする請求項17~21のいずれか1項に記載のロール装置(10)。
【請求項23】
金属のストリップを圧延するための圧延装置を改装するための方法であって、圧延装置が、間にロールギャップを規定する少なくとも1つの第1及び第2のワークロール(4,6’)と、少なくとも1つの第1及び第2のバックアップロール(11,12)を有し、共通のロールスタンド(2)内で、少なくとも一方のワークロール(4,6’)がワークロールチョック(5,9’)に支承され、バックアップロール(11,12)がバックアップロールチョック(13,14)に支承されているものにおいて、
第1及び/又は第2のワークロール(4,6’)が、ワークロール軸受(9)内に配置されたワークロール(6)を支持する付加ロール(8)を有するロール装置(10)によって置換され、ロール装置(10)のワークロール(6)の直径が、置換すべきワークロール(6’)の直径よりも小さく、ロール装置(10)の付加ロールチョック(7)の外寸が、置換すべきワークロール(6’)のワークロールチョック(5)の外寸にほぼ一致すること、を特徴とする方法。
【請求項24】
請求項17~22の1つ又は複数の特徴を有するロール装置の使用を特徴とする請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属のストリップを圧延するための圧延装置であって、間にロールギャップを規定する少なくとも1つの第1及び第2のワークロールと、少なくとも1つの第1及び第2のバックアップロールを有し、共通のロールスタンド内で、ワークロールがワークロールチョックに支承され、バックアップロールがバックアップロールチョックに支承されているものに関する。
【背景技術】
【0002】
高いリダクションでの高強度のかつ薄い金属ストリップの冷間圧延のため、しばしば、18又は20のロールを有する改装可能な18-HS又は20-HS構造のロールスタンドが使用される。これらロールスタンドは、比較的小さいワークロールを有するが、技術的に複雑で整備を必要とする。4ロール構成からマルチロール構成への改装は、手間がかかる。
【0003】
特殊合金から成る高強度のかつ薄いストリップは、ニッチ製品であるので、ゼンジミア構造のような特殊なマルチロールスタンドの使用は、しばしば経済的でない。
【0004】
これらすべてのロールスタンドタイプに共通しているのは、小さいワークロールが、固有の支承部なしでロールスタンドに取り付けられ、付加的な装置による、特にバックアップロールによる垂直方向及び横方向の固定及び案内が行なわれることである。軸受を有しない小さいワークロールは、従来技術ではマニュアルでロールスタンドに導入されるもしくはロールスタンドから除去される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の根底にある課題は、比較的簡単な手段によって高いリダクションでの高強度のかつ薄い金属ストリップの圧延を可能にする、冒頭で述べた形式の圧延装置を提供することである。
【0006】
更に、本発明の根底にある課題は、異なる要求のために比較的簡単に改装可能な圧延装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の根底にある課題は、独立請求項の特徴によって解決される。本発明の有利な構成は、従属請求項から得られる。
【0008】
本発明の1つの態様は、金属のストリップを圧延するための圧延装置であって、間にロールギャップを規定する少なくとも1つの第1及び第2のワークロールと、少なくとも1つの第1及び第2のバックアップロールを有し、共通のロールスタンド内で、少なくとも一方のワークロールがワークロールチョックに支承され、バックアップロールがバックアップロールチョックに支承され、ワークロールチョックは、第1及び/又は第2のワークロールが、それぞれ、小さい直径の1つのワークロールと少なくとも1つの付加ロールを備えるロール装置に交換可能であるように形成され、小さい直径のワークロールが、付加ロールを介して支持され、付加ロールが、付加ロールチョックに支承され、小さい直径のワークロールが、付加ロールチョックのワークロール軸受内に配置されているものに関する。
【0009】
本発明によれば、一方及び/又は両方のワークロールが小さい直径の1つのワークロールと1つの付加ロールによって置換され得るように、大きいロール直径を有するロールスタンドの与えられたワークロール対編成が組み換えられるように、ロール装置を形成することを提案する。これにより、圧延装置の種々の構成を実現することができる。第1と第2のワークロールの両方が小さい直径の1つのワークロールと1つの付加ロールを有するロール装置によって置換される圧延装置のバリエーションの場合、これにより、全体として、小さいワークロールを有する対称なワークロール対編成が得られ、これら小さいワークロールにより、既に、比較的高いリダクションが達成可能である。
【0010】
関連するワークロール軸受内での小さい直径のロールの独自の支承により、このワークロールの位置は、付加ロールに対して及び/又はロールギャップを構成するためにこの付加ロールと協働するワークロールに対して軸方向と垂直方向の両方とも正確に規定することができる。その結果、特に安定して圧延条件が生じる。圧延中だけでなく、ロール交換時の位置安定性により、ワークロール対編成の設定は、簡単に行なうことができる。その点で、本発明は、製品スペクトルを拡大するための既存の設備の近代化のためにも特に適している。
【0011】
好ましくは、ロール装置内のワークロール軸受の位置が調整可能であり、従って、小さい直径のワークロールの位置も調整可能である。本発明によれば、ワークロール軸受は、付加ロールチョック内でこれら付加ロールチョックと共に移動可能な小さい「ワークロールチョック」の機能を満足する。
【0012】
特にこのましくは、ワークロール軸受の位置が、軸方向に及び/又はロールギャップの縦方向の広がりに対して横に調整可能である。
【0013】
これにより、ロール装置内のワークロールの回転軸の位置は、付加ロールの回転軸の位置に対して相対的に調整可能もしくは設定可能であることが保証されている。
【0014】
このような調整は、例えば、例えば、いわゆるオフセットを設定するために必要であり得る。これは、一方では付加ロールの縦方向中心軸の、他方ではワークロールの縦方向中心軸の軸中心オフセットもしくはオフセットであると理解され、この縦方向中心軸は、水平方向の変位に対する配置の安定性を改善する。基本的に、オフセットの設定は、ロール装置のワークロールチョックのポケット又は凹部内にそれぞれ設けられた異なる厚さの摩耗プレート又はシムによって行なうことができる。このため、選択的に、液圧式のピストンシリンダ装置を設けることができる。
【0015】
ワークロール軸受は、負荷を受けなくなるとすぐにロール装置のワークロールを付加ロールから持ち上げる粘弾性のバッファ上に支持することができるので、これにより、ロール装置の組立て及び分解時のロール装置のワークロールと付加ロールの間の表面接触が回避される。
【0016】
本発明によるロール装置の有利かつ好ましいバリエーションの場合、第1又は第2のワークロールのいずれかが、小さい直径のワークロールと付加ロールを有するロール装置によって置換される。特にこのましくは、本発明によれば、比較的大きい直径の第1の上のワークロールと、小さい直径のワークロールを有する下のロール装置を有する圧延装置が設けられている。比較的大きい直径の第1の上のワークロールと、比較的小さい直径の第2の下のワークロールとを有するワークロールのこの非対称の構成は、達成すべき減免率に鑑み特に有利であるとわかった。ワークロールのこのような直径比は、各ワークロールが、大小のワークロールの直径の算術平均に一致するワークロール対編成を有する圧延パスに相応する圧延結果が達成可能である点で有利である。
【0017】
好ましくは、付加ロールは、ロール装置のワークロールよりも大きい直径を備える。
【0018】
本発明による圧延装置の好ましいかつ合目的なバリエーションの場合、第1又は第2のワークロールが、小さい又は大きい直径のワークロールとして形成されていること、及び、小さい直径のワークロールが、大きいワークロールの直径の半分以下の直径を備えること、が企図されている。
【0019】
合目的に、本発明による圧延装置は、ロール装置の付加ロールチョックが、大きい直径の1つのワークロール用のワークロールチョックの外部輪郭とほぼ一致する外部輪郭を備えるように、形成されている。この構成により、特に、圧延装置の簡単な改装能力が保証される。従って、圧延装置のロールスタンド内のワークロールチョックの取付けスペース内に、ロール装置の付加ロールチョックが、交換可能に収容され得ることを保証することができる。スタンド領域内に、組換え作業は必要ない。
【0020】
本発明による圧延装置の有利な実施例の場合、第1又は第2のワークロールが、ロール装置の付加ロールチョックの取付け位置でロールギャップに対向する側のポケット又は凹部内に支承されていること、が企図されている。これにより、ワークロール及び/又はバックアップロール用に設けられた曲げ又はバランス取り装置の更なる適合が必要ないことが保証されている。
【0021】
独立した機能ユニットとして形成されたロール装置の本発明による構成により、ロール交換-このロール交換は、同時に構成変更でもある-を、従来の手段によって簡単かつ迅速に、しかも好ましくは完全に自動化されるように、実現することができる。
【0022】
基本的に、小さい直径のワークロールを片側又は両側でロール胴の少なくとも一部に沿って支持すること、が企図され得る。小さい直径のワークロールは、その縦方向軸に対して横の胴長さにわたってストリップ移動方向に対して横に曲がる傾向がある。
【0023】
本発明によれば、これは、第1又は第2のワークロールが、ロール装置の付加ロールチョックに回転軸に対して横に可動に支承され、少なくとも一方の側を、少なくとも1つの流体支持軸受によってその長さの少なくとも一部にわたって回転軸に対して平行に支持されていること、によって考慮することができる。オフセットの設定も、流体支持軸受によって実現することができる。
【0024】
この実施バリエーションの場合、流体支持軸受は、二重機能を授けられる。これは、小さいワークロールの撓みを補償し、付加ロールの回転軸に対して相対的なワークロールの回転軸の軸方向の位置を設定する。
【0025】
好ましくは、流体支持軸受は、ロール装置のワークロールの胴長さの実質的な部分にわたって延在する少なくとも1つの支持シェルを有する。支持シェルは、好ましくは、それぞれ終端側を、ロール装置のワークロールのルネット座上でシールされている。選択的に、支持シェルは、ロール装置のワークロールの支承部の領域でスペーサに対してシールすることができる。
【0026】
支持シェルの横方向のシールは、支持シェルとワークロールの間の液圧媒体の一定の圧力を維持するために使用される。液圧媒体として、例えば、ロール冷却及びロール潤滑のために通常使用される圧延エマルジョン又は圧延油が対象となる。
【0027】
本発明によるロール装置の有利な形態の場合、支持シェルが、少なくとも1つの好ましくは液圧式の調整装置を介して、ワークロールに対して調整及び/又は保持されること、が企図されている。調整装置は、付加装置もしくは外部の装置として圧延装置に設けることができる。
【0028】
例えば、調整装置は、調整装置として、圧延装置又は圧延機に設けられた、圧延材用の少なくとも1つのガイド要素を設けること又は形成することができる。
【0029】
本発明による圧延装置の特に有利な形態の場合、少なくとも1つの調整装置を、圧延装置に付設されたかつ入側及び/又は出側に配置された可動のテーブル又はストリップディフレクタ内に設けること、が企図されている。それぞれ圧延材用のガイドテーブルに調整装置を統合することは有意義である。
【0030】
調整装置は、調整要素によって支持シェルに作用する複数の調整シリンダを有することができる。
【0031】
ロール装置の少なくとも1つの付加ロールチョック及び/又はロール装置の少なくとも1つのワークロール軸受は、潤滑剤及び/又は冷却剤及び/又は他の液圧媒体用の少なくとも1つの媒体カップリングを有することができる。
【0032】
本発明は、更に、前記形式の金属のストリップを圧延するための圧延装置内で使用するためのロール装置に関する。ロール装置は、少なくとも1つの付加ロールと少なくとも1つのワークロールを有し、付加ロールが、付加ロールチョックに支承され、ワークロールが、付加ロールチョックのワークロール軸受内に配置されている。
【0033】
好ましくは、付加ロールは、ワークロールよりも大きい直径を備える。
【0034】
ロール装置が、交換すべきワークロールの構成にほぼ一致する構成を備えることを保証するため、本発明によれば、ワークロール軸受が、付加ロールチョックの取付け位置でロールギャップに対向する側のポケット内に配置されていること、が企図されている。
【0035】
ワークロールは、例えばワークロール軸受にロールギャップの縦方向の広がりに対して横に可動に支承すること、及び、少なくとも一方の側を、少なくとも1つの流体支持軸受によってその長さの少なくとも一部にわたって回転軸に対して平行に支持すること、ができる。
【0036】
ワークロールは、付加ロールに対して横及び/又は垂直に調整可能であり得る。
【0037】
このため、ワークロール軸受が、不可ロールチョック内で横及び/又は垂直に調整可能であること、が企図され得る。
【0038】
合目的に、少なくとも1つの付加ロールチョック及び/又は少なくとも1つのワークロール軸受が、好ましくはそれぞれ両方が、液圧媒体を導入するための少なくとも1つの媒体カップリング又は媒体接続部を備えている。液圧媒体として、ワークロールの冷却及び潤滑をするための及び流体支持軸受内の流体圧力を維持するための媒体としての潤滑剤及び/又は圧延エマルジョンが対象となる。
【0039】
本発明によるロール装置は、好ましくは、本発明による圧延装置と関連して前で開示された特徴の1つ又は複数を備える。
【0040】
本発明は、最後に、金属のストリップを圧延するための圧延装置を改装するための方法であって、圧延装置が、間にロールギャップを規定する少なくとも1つの第1及び第2のワークロールを有し、圧延装置が、更に、少なくとも1つの第1及び第2のバックアップロールを有し、共通のロールスタンド内で、ワークロールがワークロールチョックに支承され、バックアップロールがバックアップロールチョックに支承され、第1及び/又は第2のワークロールが、ワークロール軸受内に配置されたワークロールを支持する付加ロールを有するロール装置によって置換され、ロール装置のワークロールの直径が、置換すべきワークロールの直径よりも小さく、ロール装置の付加ロールチョックの外寸が、置換すべきワークロールのワークロールチョックの外寸にほぼ一致すること、を特徴とするものに関する。
【0041】
本発明を、以下で図に図示した実施例に関連付けて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明による圧延装置の概略的なかつ簡略化された図
図2A】従来のワークロール対の図
図2B】本発明によるロール装置
図3図2Bによるロール装置のワークロールの支承部の拡大図
図4】本発明によるロール装置の斜視図
図5】駆動側から見た図4による圧延装置の斜視図
図6】本発明による調整装置を有する圧延材を案内するためのガイドテーブルの斜視図
図7図6によるガイドテーブルの別の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明による圧延装置1は、ロールハウジング3を有するロールスタンド2を有し、その中に、上のワークロールチョック5内の上の(大きい)ワークロール4、下の(小さい)ワークロール6及び付加ロール8が支承されている。ワークロール4,6の間に、炉l-るギャップWが構成され、このロールギャップを経て、金属のストリップの形態の図示してない圧延材が案内される。
【0044】
圧延装置1は、既知のやり方で、曲げシリンダとバランス取りシリンダの両方を有し、これらシリンダによって、ワークロールの曲げとバックアップロールの重量を補償することができる。これら装置は、簡略化の理由から図面には図示されていない。更に、本発明による圧延装置は、簡略化の理由から同様に図面に図示されていない、ワークロール4,6を軸方向に移動するための手段を有する。
【0045】
本特許出願の意味の軸方向の移動または調整とは、該当するロールの縦軸の方向の移動であると理解すべきである。本特許出願の意味の垂直方向の移動は又は調整は、ロールギャップWの縦方向の広がりに対して横の調整であると理解すべきである。
【0046】
垂直な方向に、上のワークロール4は、上のバックアップロール11に支持され、これに対して、下のワークロール6は、下の付加ロール8に支持されている。付加ロール8は、下のバックアップロール12に支持される。上のバックアップロール11は、上のバックアップロールチョック13に支承され、下のバックアップロール12は、下のバックアップロールチョック14に支承されている。下のワークロール6と付加ロール8の組合せは、本発明の意味のロール装置10を構成する。ロール装置10は、付加ロールチョック7を有し、この付加ロールチョックに、小さい直径の士らのワークロール6が支承されている。ワークロール6の支承は、付加ロールチョック7のワークロール軸受9を介して実現される。
【0047】
ワークロール4,6は、それ自体既知のやり方で、圧延材のリダクションを行なう。本発明による圧延装置1は、好ましくは、金属ストリップを冷間圧延するための装置として形成され、比較的高いリダクション用に設計されている。
【0048】
ロールセット全体を安定させるため、上のバックアップロールチョック13と下のバックアップロールチョック14の両方は、それ自体既知のプッシャシリンダ15によってロールハウジング3内でその縦方向中心軸に対して平行に、バックアップロール11,12の横方向の変位に対抗する力の作用を受けている。このような安定化は、特に、ロールセットのロールの数が奇数であるために有利である。プッシャシリンダ15により、既知のやり方で、ワークロール4,6の縦方向中心軸に対して相対的なバックアップロール11,12の縦方向中心軸のオフセット(縦方向中心オフセット)を設定することができる。可能な可変のオフセット方向により、プッシャシリンダ15の作用方向は、各使用及び負荷時のために新たに計算しなければならない。これは、圧延装置1の制御ユニットSを介して行なわれる。
【0049】
圧延装置1の図1に示した構成の場合、下のワークロール6が、上のワークロール4のほぼ半分の直径を備えること、が企図されている。付加ロール8の直径は、上のワークロール4の直径よりも僅かに小さい。以下で更に説明するように、本発明による圧延装置1は、異なるロール対編成を有する異なる構成の間で改装することができる。これは、特殊合金から成る高強度のかつ薄いストリップが、高いリダクションで圧延されるべき場合に、比較的低いリダクションでそれほど強度を有しないストリップを圧延するためのロール対編成を有する圧延装置1を、簡単な手段によって改装することができるとの利点を有する。
【0050】
圧延装置の異なるロール対編成の構成は、特に、図2A及び2Bから読み取ることができる。図2Aには、第1の上のワークロール4と第2の下のワークロール6’を有する従来のワークロール対の端面の図が図示されており、上のワークロール4は、上のワークロールチョック5に支承され、下のワークロール6’は、下のワークロールチョック9’に支承されている。両ワークロール4,6’は、同じ直径を備え、これに応じて対称なワークロール対編成を構成する。
【0051】
本発明によれば、関連する上のワークロールチョック5を含めた上のワークロール4又は関連する下のワークロールチョック9’を含めた下のワークロール6’のどちらかが図2Bによるロール装置10に交換されるように、本発明による圧延装置1が改装されること、が企図されている。この構成は、図1に図示されている。
【0052】
図2Bによるロール装置10は、その外寸とそのジオメトリが、図2Aによる従来のワークロール対編成のワークロールチョック4,6’のジオメトリにほぼ一致する床ロールチョック7を有する。これは、特に、その直径が、上のワークロール4の直径にほぼ一致するか、僅かに小さい付加ロール8が、上のワークロールチョック内の上のワークロール4に応じて下の付加ロールチョック7に支承されていることによって可能にされる。下のワークロール6は、付加ロールチョック7のロールギャップWに対向する上側のポケット26内にそれぞれ配置されたワークロール軸受9に支承されている。
【0053】
図1による圧延装置1のバリエーションの場合、下のワークロール6の回転軸の位置が交換可能な摩耗プレート16によって調整可能であること、が企図されている。
【0054】
ロール装置10の図2Bに図示したバリエーションの場合、下のワークロール6が、その縦軸に対して横に可動に支承され、ポケット26内で流体軸受17によって調心されること、が企図されている。
【0055】
特に図2Bからの詳細図を示す図3からわかるように、流体軸受17は、実質的に下のワークロール6の胴の全長にわたって延在する2つの支持シェル18を有し、これら支持シェルは、下のワークロール6に対してシールされている。以下で説明する媒体接続部を介して、流体軸受け17は、冷却/潤滑剤、例えば圧延エマルジョンの作用を受けるので、支持シェル18が、ワークロール6の表面に載らないように、その間にワークロール6を封入することが保証されている。付加的に、支持シェル18の図示してない側方のシールが設けられ、このシールは、下のワークロール6のルネット座上に支持されるので、媒体圧力が構成されていない時に、支持シェル18が、ワークロール6に当接しないことが保証されている。
【0056】
付加ロールチョック7は、更に、ポケット26の下の領域に、粘弾性のバッファ27用の収容部を備え、これらバッファは、負荷を受けなくなると直ぐに、小さいワークロール6を関連するワークロール軸受9と共に持ち上げる。これにより、小さいワークロール6の表面性状を損ない得るロール交換時にワークロール6と負荷ロール8の間の表面接触が生じないことが保証される。
【0057】
説明した実施例の場合、小さいワークロール6は、2つの流体軸受17を、1つは圧延装置1の入側に、もう1つは出側に備える。支持シェル18の片側又は両側での作用は、選択的に行なうことができる。他の実施例では、片側に配置することも行なうことができる。
【0058】
図4は、本発明によるロール装置10の斜視図を示す。ロール装置の負荷ロールチョック7は、流体軸受け17への圧力供給をするための第1の媒体カップリング24と、下のワークロール6及び負荷ロール8の転がり軸受への冷却及び/又は潤滑剤の提供をするための第2の媒体カップリング25を備えている。
【0059】
圧延エマルジョンは、例えば、圧力供給をするための媒体として約1000l/minの容積流で流体軸受け17を経て循環させることができる。
【0060】
図5からわかるように、本発明による圧延装置1は、少なくとも片側に、圧延材を案内するためのガイドテーブル19を有する。ガイドテーブル19の案内平面は、ほぼ下のワークロール6の側面の高さにまで延在する。ガイドテーブル19には、本発明によれば、送りシリンダ21によってガイドテーブル19に対して相対的に移動可能に配置された調整バー20の形態の流体軸受17の支持シェル18の調整及び/又は調心をするための手段が設けられている。
【0061】
ガイドテーブル19は、図6及び7に拡大した形態で斜視図で図示されている。ガイドテーブル19の下側に配置された(図7参照)オクリシリンダ21によって、調整バー20は、支持シェル18に対して位置決めすることができる。調整バー20は、更に、プランジャ23によって流体軸受17の関連する支持シェルに作用する複数の調整シリンダ22を有する。調整シリンダ22により、流体軸受17の支持シェル18への背圧は、下のワークロール6の胴の全長にわたって設定することができる。本発明による圧延装置1の場合、入側と出側の両方にガイドテーブル19を設けることができる。
【0062】
流体軸受17の支持シェル18の設定は、ガイドテーブル19に固定された調整バーによって行なわれるので、ロール装置10に設けるべき付加的な調整手段は不要である。これにより、ロール装置10は、コンパクトかつ付加的な調整手段なしで形成することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 圧延装置
2 ロールスタンド
3 ロールハウジング
4 上のワークロール
5 上のワークロールチョック
6 下のワークロール
6’ 従来のワークロール対編成の下のワークロール
7 付加ロールチョック
8 付加ロール
9 ワークロール軸受
9’ 下のワークロールチョック
10 ロール装置
11 上のバックアップロール
12 下のバックアップロール
13 上のバックアップロールチョック
14 下のバックアップロールチョック
15 プッシャシリンダ
16 摩耗プレート
17 流体軸受
18 支持シェル
19 ガイドテーブル
20 調整バー
21 送りシリンダ
22 調整シリンダ
23 プランジャ
24 第1の媒体カップリング
25 第2の媒体カップリング
26 ポケット
27 粘弾性のバッファ
S 制御装置
W ロールギャップ
O オフセット
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】