(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-30
(54)【発明の名称】T細胞及びB細胞介在性障害、ならびにT細胞及びB細胞癌を治療するための抗CD6抗体複合体
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20231122BHJP
A61K 38/05 20060101ALI20231122BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231122BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20231122BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20231122BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231122BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20231122BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20231122BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20231122BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231122BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20231122BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20231122BHJP
A61K 31/565 20060101ALI20231122BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20231122BHJP
A61K 31/395 20060101ALI20231122BHJP
A61K 31/427 20060101ALI20231122BHJP
A61K 31/4741 20060101ALI20231122BHJP
A61K 31/475 20060101ALI20231122BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231122BHJP
A61K 31/357 20060101ALI20231122BHJP
A61K 31/661 20060101ALI20231122BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20231122BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K38/05
A61P25/00
A61P37/02
A61P37/06
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P17/02
A61P3/10
A61K39/395 N
A61K31/4745
A61K31/337
A61K31/565
A61K31/7048
A61K31/395
A61K31/427
A61K31/4741
A61K31/475
A61K45/00
A61K31/357
A61K31/661
C12N15/13 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023529056
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(85)【翻訳文提出日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 US2021059482
(87)【国際公開番号】W WO2022104247
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595033056
【氏名又は名称】ザ クリーブランド クリニック ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】The Cleveland ClinicFoundation
【住所又は居所原語表記】9500 Euclid Avenue,Cleveland,Ohio,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】リン,フェン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076EE59
4C076FF67
4C084AA02
4C084AA17
4C084BA01
4C084BA32
4C084CA59
4C084NA05
4C084NA06
4C084NA13
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZB021
4C084ZB022
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB151
4C084ZB152
4C084ZC351
4C084ZC352
4C085AA14
4C085AA22
4C085AA25
4C085BB11
4C085EE01
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086BC14
4C086CA01
4C086CB20
4C086CB22
4C086DA34
4C086EA11
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA06
4C086NA13
4C086ZA01
4C086ZA96
4C086ZB02
4C086ZB07
4C086ZB15
4C086ZC35
(57)【要約】
本明細書に提供するのは、抗CD6抗体(またはそのCD6結合部分)及び有糸分裂阻害薬(例えば、モノメチルオーリスタチンE(MMAE))で構成される抗体薬物複合体(ADC)により、T細胞介在性障害、B1細胞介在性障害、T細胞リンパ腫、またはB細胞リンパ腫を有する対象を治療するための組成物、システム、キット、及び方法である。ある特定の実施形態では、該ADCは、さらに、該抗体成分を該有糸分裂阻害薬成分に接続する切断可能なリンカー(例えば、プロテアーゼで切断可能なリンカー)を含む。いくつかの実施形態では、該対象は、自己免疫性ブドウ膜炎またはマントル細胞リンパ腫を有するヒトである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象を治療する方法であって、
障害を有する対象に対して、抗体薬物複合体(ADC)を投与することを含む前記方法であり、前記障害が、T細胞介在性障害、B1細胞介在性障害、T細胞リンパ腫、またはB細胞リンパ腫であり、
前記ADCが、
a)抗CD6抗体、またはそのCD6結合部分、及び
b)有糸分裂阻害薬
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記有糸分裂阻害薬が、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有糸分裂阻害薬が、ビンクリスチン、エリブリン、パクリタキセル、タンパク質結合パクリタキセル、ドセタキセル、エストラムスチン、エトポシド、イクサベピロン、カバジタキセル、ビンクリスチンリポソーム、ビノレルビン、ビンクリスチン、パクリタキセル、エトポシド、ビンブラスチン、エトポシド、及びテニポシドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記対象が、前記T細胞介在性障害を有し、前記T細胞介在性障害が、自己免疫性ブドウ膜炎を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が、前記T細胞介在性障害を有し、前記T細胞介在性障害が、関節リウマチ(RA)、1型糖尿病、多発性硬化症、移植片対宿主病、セリアック病、及びシェーグレン症候群からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ADCがさらに、切断可能なリンカーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記抗CD6抗体、またはそのCD6結合部分が、表1から1つ以上のCDRを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記抗CD6抗体、またはそのCD6結合部分が、
図18~21及び30に示される1つ以上の可変領域を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記対象がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ADCが、前記対象に対して、約0.1~2mg/kgの用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記対象が、前記B細胞リンパ腫を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記B細胞リンパ腫が、マントル細胞リンパ腫である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記対象が、前記T細胞リンパ腫を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
抗体薬物複合体(ADC)を含む組成物であって、前記ADCが、
a)抗CD6抗体、またはそのCD6結合部分、及び
b)有糸分裂阻害薬
を含む、前記組成物。
【請求項15】
前記有糸分裂阻害薬が、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記有糸分裂阻害薬が、ビンクリスチン、エリブリン、パクリタキセル、タンパク質結合パクリタキセル、ドセタキセル、エストラムスチン、エトポシド、イクサベピロン、カバジタキセル、ビンクリスチンリポソーム、ビノレルビン、ビンクリスチン、パクリタキセル、エトポシド、ビンブラスチン、エトポシド、及びテニポシドからなる群から選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記ADCがさらに、切断可能なリンカーを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
前記抗CD6抗体、またはそのCD6結合部分が、表1から1つ以上のCDRを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
前記抗CD6抗体、またはそのCD6結合部分が、
図18~21及び30に示される1つ以上の可変領域を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
インビトロシステムであって、
a)i)抗CD6抗体、またはそのCD6結合部分、及びii)有糸分裂阻害薬を含む、抗体薬物複合体(ADC)、ならびに
b)T細胞リンパ腫細胞、またはB細胞リンパ腫細胞
を含む、前記インビトロシステム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本出願は、2020年11月16日に出願された米国仮出願第63/114,300号の優先権を主張するものであり、当該仮出願は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
2021年11月16日に作成され、22,322バイトのファイルサイズを有する「38968-601_SEQUENCE_LISTING_ST25」と題する、本明細書とともに出願されたコンピュータ可読配列表のテキストは、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0003】
連邦政府の支援に関する記述
本発明は、国立衛生研究所により付与されたEY025373及びEY033243の下、政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明においてある特定の権利を有する。
【0004】
本明細書に提供するのは、抗CD6抗体(またはそのCD6結合部分)及び有糸分裂阻害薬(例えば、モノメチルオーリスタチンE(MMAE))で構成される抗体薬物複合体(ADC)により、T細胞もしくはB1細胞介在性障害、またはT細胞もしくはB1細胞腫瘍を有する対象を治療するための組成物、システム、キット、及び方法である。ある特定の実施形態では、該ADCは、さらに、該抗体成分を該有糸分裂阻害薬成分に接続する切断可能なリンカー(例えば、プロテアーゼで切断可能なリンカー)または切断不可能なリンカーを含む。いくつかの実施形態では、該対象は、自己免疫性ブドウ膜炎またはGVHDまたはT細胞リンパ腫またはB細胞リンパ腫を有するヒトである。
【0005】
〔背景技術〕
病原性T細胞は、ほとんどの自己免疫疾患、移植片対宿主病(GVHD)、及び移植拒絶反応を含め、多くの疾患を引き起こす。正常なT細胞及び他の組織を温存しながら、これらの病原性T細胞を選択的に標的とすることは、現代医学における治療法開発の「究極の理想」である。これまでのところ、コルチコステロイド等の汎免疫抑制薬がこれらの患者の治療に使用されているが、効果は限定的であり、重篤な副作用がある。
【0006】
自己抗原または同種異系抗原に反応するこれらの病原性T細胞は、いったん活性化されると、活発に増殖を開始して組織損傷を引き起こすが、他の正常なT細胞は静止したままであることもまた確立されている。したがって、静止状態のT細胞のみを残し、増殖性T細胞を選択的に排除することは、病原性T細胞が介在する疾患に対する新たな標的薬を開発するための効果的な戦略となる。
【0007】
〔発明の概要〕
本明細書に提供するのは、抗CD6抗体(またはそのCD6結合部分)及び有糸分裂阻害薬(例えば、モノメチルオーリスタチンE(MMAE))で構成される抗体薬物複合体(ADC)により、T細胞介在性障害、B1細胞介在性障害、T細胞リンパ腫、またはB細胞リンパ腫を有する対象を治療するための組成物、システム、キット、及び方法である。ある特定の実施形態では、該ADCは、さらに、該抗体成分を該有糸分裂阻害薬成分に接続する切断可能なリンカー(例えば、プロテアーゼで切断可能なリンカー)を含む。いくつかの実施形態では、該対象は、自己免疫性ブドウ膜炎またはマントル細胞リンパ腫を有するヒトである。
【0008】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、障害を有する対象に対して、抗体薬物複合体(ADC)を投与することを含む、対象の治療方法であり、前述の障害は、T細胞介在性障害、B1細胞介在性障害、T細胞リンパ腫、またはB細胞リンパ腫であり、前述のADCは、a)抗CD6抗体、またはそのCD6結合部分、及びb)有糸分裂阻害薬を含む。
【0009】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供するのは、a)抗CD6抗体、またはそのCD6結合部分、及びb)有糸分裂阻害薬を含む抗体薬物複合体(ADC)を含む組成物である。
【0010】
特定の実施形態では、該有糸分裂阻害薬は、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)を含む。他の実施形態では、該有糸分裂阻害薬は、ビンクリスチン、エリブリン、パクリタキセル、タンパク質結合パクリタキセル、ドセタキセル、エストラムスチン、エトポシド、イクサベピロン、カバジタキセル、ビンクリスチンリポソーム、ビノレルビン、ビンクリスチン、パクリタキセル、エトポシド、ビンブラスチン、エトポシド、及びテニポシドからなる群から選択される。
【0011】
いくつかの実施形態では、該T細胞介在性障害は、自己免疫性ブドウ膜炎を含む。他の実施形態では、該T細胞介在性障害は、関節リウマチ(RA)、1型糖尿病、多発性硬化症、セリアック病、移植片対宿主病及びシェーグレン症候群からなる群から選択される。さらなる実施形態では、該ADCは、さらに、切断可能なリンカー(例えば、プロテアーゼで切断可能なリンカー)を含む。他の実施形態では、抗CD6抗体またはそのCD6結合部分は、表1から(例えば、抗体1、2、3、4、5、6、7、または8から)1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6個)のCDRを含む。ある特定の実施形態では、該抗CD6抗体、またはそのCD6結合部分は、
図18~21または30に示される1つ以上の可変領域を含む。他の実施形態では、該対象は、ヒトである。
【0012】
ある特定の実施形態では、該ADCは、前述の対象に対して、約0.1~20mg/kg(例えば、約0.1、0.5、0.8、1.0、1.3、1.5、1.7、5...10...15または20mg/kg対象)の用量で投与される。さらなる実施形態では、該対象は、前述のB1細胞リンパ腫を有する。他の実施形態では、該B1細胞リンパ腫はマントル細胞リンパ腫である。さらなる実施形態では、該対象は、前述のT細胞リンパ腫を有する。
【0013】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、a)i)抗CD6抗体、またはそのCD6結合部分、及びii)有糸分裂阻害薬を含む抗体薬物複合体(ADC)、ならびにb)T細胞リンパ腫細胞、またはB細胞(例えば、B1細胞)リンパ腫細胞を含むインビトロシステムである。特定の実施形態では、該細胞は、培養皿に存在する。
【0014】
さらなる実施形態では、本明細書で使用するのは、a)i)抗CD6抗体、またはそのCD6結合部分、及びii)有糸分裂阻害薬を含む抗体薬物複合体(ADC)ならびにb)前述のADCで対象を治療するための指示を含むシステムであり、前述の対象は、T細胞介在性障害、B1細胞介在性障害、T細胞リンパ腫、またはB細胞リンパ腫を有する。
【0015】
本特許または出願書類は、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を有する本特許または特許出願公開のコピーは、要請に応じて、必要な料金を支払うことにより、特許局により提供される。
【0016】
【0017】
〔
図2〕CD6が確立されたT細胞の細胞表面マーカーであり、そのリガンドであるCD166及びCD318に結合することを示す。
【0018】
〔
図3〕高親和性抗CD6mAbの同定及びヒト化を示す。
【0019】
〔
図4〕37℃で4時間インキュベーションした後、フローサイトメーターを使用して、活性化されたpHAmine蛍光を検出することによって測定して、抗CD6mAbがT細胞によって効率的に内在化されることを示す。
【0020】
〔
図5〕CD6標的化ADCの開発を示す。A.切断可能なリンカーを介してMMAEがコンジュゲートしたCD6標的化ADCの図。B.CD6-ADCは、増殖性T細胞をインビトロで0.5nMのIC50で強力に殺傷する。T細胞株(HH細胞)を、様々な濃度のCD6-ADC(ADC)、または抗CD6mAb(CD6)、または対照IgG(IgG)とインキュベートした。細胞死を異なる時点で評価した。4つの実験の代表的な結果。
【0021】
〔
図6〕CD6-ADCは、MTTアッセイによって測定して、インビトロで増殖性T細胞を殺傷する。様々な濃度のCD6-ADCを、T細胞株であるHH細胞とインビトロでインキュベートした。T細胞の生存を、MTTアッセイによって異なる時点で定量化した。
【0022】
〔
図7〕CD6-ADCは、PI組み込みアッセイによって測定して、インビトロで増殖性T細胞を殺傷する。様々な濃度のCD6-ADCを、T細胞株であるHH細胞とインビトロでインキュベートした。T細胞の生存を、PIアッセイによって異なる時点で定量化した。
【0023】
〔
図8〕CD6-ADCは、MTTアッセイによって測定して、インビトロで増殖性T細胞を殺傷する。72時間でのIC50は、約0.4nMと計算された。
【0024】
〔
図9〕CD6-ADCは、トリパンブルーアッセイによって測定して、インビトロで増殖性T細胞を殺傷する。様々な濃度のCD6-ADC(ADC)、裸の抗CD6mAb(CD6)及び対照IgG(IgG)を、T細胞株であるHH細胞とインビトロでインキュベートした。T細胞の生存を、トリパンブルーアッセイによって異なる時点で定量化した。
【0025】
〔
図10〕「裸の」抗CD6mAbは、低濃度ではインビトロで増殖性T細胞を殺傷しない。様々な濃度の抗CD6mAb(UMCD6)を、T細胞株であるHH細胞とインビトロでインキュベートした。T細胞の生存を、PIアッセイによって異なる時点で定量化した。
【0026】
〔
図11〕対照非特異的IgGは、低濃度ではインビトロで増殖性T細胞を殺傷しない。様々な濃度の対照IgG(IgG)を、T細胞株であるHH細胞とインビトロでインキュベートした。T細胞の生存を、PIアッセイによって異なる時点で定量化した。
【0027】
〔
図12〕WTマウスをレチナール抗原IRBPで免疫し、EAU(実験的自己免疫性ブドウ膜炎)を誘導した。脾細胞を10日後に収集し、BrdUの組み込みに基づく抗原特異的T細胞増殖アッセイに供した。すべての対照がここに示される。
【0028】
〔
図13〕マウス番号193の脾細胞を、様々な濃度の対照IgG(IgG)、裸の抗CD6mAb(UMCD6)及びCD6-ADC(ADC)の存在下で培養した。抗原特異的増殖性T細胞(BrdU+)をフローで定量したところ、対照IgGでもUMCD6でも見られなかったが、CD6-ADCは抗原特異的(ブドウ膜炎形成性T細胞)を濃度依存的に排除したことが示された。
【0029】
〔
図14〕マウス番号195の脾細胞を、様々な濃度の対照IgG(IgG)、裸の抗CD6mAb(UMCD6)及びCD6-ADC(ADC)の存在下で培養した。抗原特異的増殖性T細胞(BrdU+)をフローで定量したところ、対照IgGでもUMCD6でも見られなかったが、CD6-ADCは抗原特異的(ブドウ膜炎形成性T細胞)を濃度依存的に排除したことが示された。
【0030】
〔
図15〕マウス番号197の脾細胞を、様々な濃度の対照IgG(IgG)、裸の抗CD6mAb(UMCD6)及びCD6-ADC(ADC)の存在下で培養した。抗原特異的増殖性T細胞(BrdU+)をフローで定量したところ、対照IgGでもUMCD6でも見られなかったが、CD6-ADCは抗原特異的(ブドウ膜炎形成性T細胞)を濃度依存的に排除したことが示された。
【0031】
【0032】
〔
図17〕裸の抗CD6mAbでも対照IgGでも見られないが、CD6-ADCは、インビボでブドウ膜炎形成性T細胞によって誘導されるEAUからマウスを保護する。インビトロで増殖させたブドウ膜形成性T細胞を、本発明者らの確立されたプロトコルに従ってナイーブレシピエントマウスに養子移入した。次いで、これらのレシピエントマウスをランダムに3群に分け、0.5mg/kgのCD6-ADC(ADC)、裸の抗CD6mAb(UMCD6)または対照IgG(IgG)で処理した。EAUの発症及び重症度を、間接検眼法によって毎日観察した。
【0033】
〔
図18〕VH2-hIgG1CH抗体断片の(A)DNA及び(B)アミノ酸配列を提供する(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,562,975号参照)。
【0034】
〔
図19〕VH4-hIgG1CH抗体断片の(A)DNA及び(B)アミノ酸配列を提供する(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,562,975号参照)。
【0035】
〔
図20〕VH4-hIgG1CH抗体断片の(A)DNA及び(B)アミノ酸配列を提供する(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,562,975号参照)。
【0036】
〔
図21〕VL-hIgKCL抗体断片の(A)DNA及び(B)アミノ酸配列を提供する(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,562,975号参照)。
【0037】
〔
図22〕CD6-ADCは増殖性ヒトT細胞を排除する。A.CD6-ADCは増殖性T細胞を殺傷するが、B細胞は殺傷しない。HH細胞(Tヒト細胞株)及びRaji細胞(ヒトB細胞株)を様々な濃度のCD6-ADCまたは抗CD6IgGと6時間インキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、48または72時間培養し、トリパンブルー染色により死細胞を検出した。B.CD6-ADCは、用量依存的にヒトCD4及びCD8の両T細胞の数を有意に減少させる。B1.健康なドナーのPBMCを、抗CD3及び抗CD28Abによって5日間活性化した。活性化中に、様々な濃度(0.5、2、4nM)のCD6-ADC、抗CD6IgG、及びmIgGを添加した。CD4/CD8陽性細胞の頻度を、フローサイトメトリーによって検出した。B2.5日目の細胞収集の16時間前にBrdUを培地に添加した。細胞を抗BrdU Abで染色し、BrdUの組み込みをフローサイトメトリーで分析した。B3.CFSEを使用して、細胞増殖を追跡するためにPBMCを標識し、CFSE分裂細胞をフローサイトメーターによって検出した。各細胞型の数は、次のように計算した:各ウェルの総細胞数×陽性細胞の頻度。C.4nMのCD6-ADC及び対照によるCD4及びCD8T細胞へのBrdUの組み込みの代表的な結果。
【0038】
〔
図23〕CD6-ADCは、活性化された抗原特異的T細胞を殺傷する。aEAUモデルのマウスの脾細胞を、様々な濃度(0.5、2、4nM)のCD6-ADC、抗CD6IgG及びmIgGの存在下、IRBPペプチドで3日間再刺激した。細胞採取の16時間前にBrdUを添加した。BrdUの組み込みをフローサイトメトリーによって検出した。A.BrdU組み込みCD4陽性細胞の代表的な結果。B.3匹のマウスの結果のまとめ。
【0039】
〔
図24〕0.5mg/kgのCD6-ADCは、インビボで休止中のT細胞に有意な影響を与えない。ナイーブhtgCD6マウスに、0.5mg/kgのCD6-ADCを静脈内注射した。末梢血中のT細胞の頻度を、フローサイトメトリーによって観察した。A1.リンパ球中のCD3T細胞のパーセンテージ。A2及びA3.CD3T細胞におけるCD4及びCD8T細胞のパーセンテージ。N=3。
【0040】
〔
図25〕CD6-ADC処理により、ブドウ膜炎形成性T細胞(tEAU)の養子移入によって誘導される実験的自己免疫性ブドウ膜炎が軽減される。0.5mg/kgのCD6-ADCまたは対照を、誘導と同じ日にhtg CD6 tEAUマウスに投与した。A及びB.CD6-ADC処理マウスは、臨床及び組織学的スコアの低下を示した。N=5/群。C.移入後8日目のCD6-ADC処理マウス及び対照マウスにおける局所内視鏡眼底画像(TEFI)、共焦点走査型レーザー検眼鏡(cSLO)及びスペクトル領域光干渉断層撮影(SD-OCT)の代表的な画像。CD6-ADC処理tEAUマウスは、対照マウスよりもはるかに少ない異常を示した。D.眼底画像に表示される炎症を定量化した。E.18日目のtEAUのCD6-ADC処理マウス及び対照マウスの代表的な組織病理学的画像。mIgG及び抗CD6IgG処理マウスは、有意な網膜ひだ及び硝子体の浸潤細胞を示したが、組織病理学的変化はCD6-ADC処理マウスで緩和された。
【0041】
〔
図26〕CD6-ADC処理により、能動実験的自己免疫ブドウ膜炎(aEAU)が減少する。htgCD6マウスをIRBPペプチドで免疫し、aEAUを誘導した。A.6日目に、共焦点走査型レーザー検眼鏡(cSLO)の画像は、網膜に浸潤細胞を示し、これが、処理の開始に対する論理的根拠を与えた。B.0.5mg/kgのCD6-ADCまたはmIgG-ADC処理を、6日目から3日ごとにaEAUのマウスに施した。CD6-ADC処理マウスは、IgG-ADC処理マウスと比較して低い臨床スコアを示した。N=6/群。C.免疫後14日目のCD6-ADC処理マウス及び対照マウスにおける共焦点走査型レーザー検眼鏡(cSLO)及びスペクトル領域光干渉断層撮影(SD-OCT)の代表的な画像。D.画像定量化。E1.CD6-ADC処理マウスは、組織学的スコアの減少を示した。E2.20日目のtEAUのCD6-ADC処理及び対照マウスの代表的な組織病理学的画像。aEAUは、CD6-ADC処理によって緩和され、網膜のひだ及び細胞浸潤が少なくなった。
【0042】
〔
図27〕CD6-ADC処理により、ヒトPBMCによって誘導されるGVHDの重症度が低下する。GVHDモデルを、ヒトPBMCの注射によりNSGマウスで誘導した。0.5mg/kgのCD6-ADCまたはmIgG-ADCを3日目から3日ごとにGVHDマウスに投与した。A.ヒトCD45及びCD3陽性細胞の頻度(A1及びA2)ならびに絶対数(A3及びA4)は、CD6-ADC処理マウスの末梢血で減少した。各図中の小挿入図は、接種後最初の3日間のヒトCD45及びCD3陽性細胞の増加を示した。N=5/群。B.27日目のヒトCD45及びCD3陽性細胞の代表的なフローの結果。C.CD6-ADC処理マウスは、最終的に体重が増加したが、mIgG-ADC処理マウスは、GVHDの進行中に体重が減少した。D.CD6-ADC処理マウスは、27日目に脾臓(D1)と骨髄(D2)の両方でヒトCD45及びCD3陽性細胞が対照より減少した。E.CD6-ADC処理マウスは、12日目に血漿中のIFN-ガンマのレベルが対照マウスより低かった。
【0043】
〔
図28〕抗CD6mAbで染色された、実施例2からのMCL組織アレイの代表的な走査画像を示す。A.組織アレイの一部であるスライド。B.CD6染色のMCL生検標本。C.より高い倍率の同じ標本。
【0044】
〔
図29〕Aは、MCL細胞株SP53がCD6+であることを示す。ピンク:アイソタイプ対照で染色。青:抗CD6IgGで染色。Bは、CD6-ADCがインビトロでMCL細胞を強力に殺傷することを示す。SP53MCL細胞を、様々な濃度のCD6-ADCまたは対照IgG-ADCと72時間インキュベートした。細胞死をトリパンブルー染色によって評価した。
【0045】
〔
図30〕Aは、モノクローナル抗体UMCD6の重鎖の核酸配列(配列番号18)を示し、フレームワーク領域を赤で、3つのCDRを青で示す。Bは、モノクローナル抗体UMCD6の重鎖のアミノ酸配列(配列番号19)を示し、フレームワーク領域を赤で、3つのCDRを青で示す。Cは、モノクローナル抗体UMCD6の軽鎖の核酸配列(配列番号20)を示し、フレームワーク領域を赤で、3つのCDRを青で示す。Dは、モノクローナル抗体UMCD6の軽鎖のアミノ酸配列(配列番号21)を示し、フレームワーク領域を赤で、3つのCDRを青で示す。ある特定の実施形態では、UMCD6の可変領域が、本明細書のシステム、組成物、及び方法において(例えば、ヒト-マウスキメラ抗体において)使用される。他の実施形態では、6つのCDRのみ(例えば、ヒトフレームワークに移植されたもの)が、本明細書のシステム、組成物、及び方法で使用される。
【0046】
〔発明を実施するための形態〕
本明細書に提供するのは、抗CD6抗体(またはそのCD6結合部分)及び有糸分裂阻害薬(例えば、モノメチルオーリスタチンE(MMAE))で構成される抗体薬物複合体(ADC)により、T細胞介在性障害、B細胞介在性障害、T細胞リンパ腫、またはB細胞リンパ腫を有する対象を治療するための組成物、システム、キット、及び方法である。ある特定の実施形態では、該ADCは、さらに、該抗体成分を該有糸分裂阻害薬成分に接続する切断可能なリンカー(例えば、プロテアーゼで切断可能なリンカー)を含む。いくつかの実施形態では、該対象は、自己免疫性ブドウ膜炎またはマントル細胞リンパ腫を有するヒトである。
【0047】
本明細書に記載の実施形態の開発中に行われた研究において、本発明者らは、T細胞標的化抗体薬物複合体(ADC)を、臨床的に証明された抗有糸分裂薬である潜在性MMAE(モノメチルオーリスタチンE)を、米国特許第10,562,975号及び
図18~21に記載されているCD6に対するモノクローナル抗体(mAb)にコンジュゲートすることによって開発した。
【0048】
いくつかの実施形態では、米国特許第10,562,975号及び
図18~21に記載されている抗体からの軽鎖及び重鎖可変領域のみ、またはCDRのみが使用される。ある特定の実施形態では、本明細書のADCは、他の抗CD6抗体及びその抗原結合部分、例えば、当技術分野で既知のもの(例えば、LS Bio製ItolizumabまたはLS-B9829、UMCD6またはそのキメラ型、Singer,et al.,Immunology 88(4):537-543(1996)参照、参照により全体として本明細書に組み込まれる)を使用する。他の抗CD6抗体及びその断片、特にヒトまたはヒト化抗体を見出すためにPubMed及びUSPTO特許文献のインターネット検索を使用することができる。他の実施形態では、以下の表1に示す、米国特許第10,562,975号からの8つのVH鎖または8つのVL鎖のいずれかから1、2、3、4、5、または6つのCDR(下線部)が使用される。該ヒト化抗体は、以下の表1で1~8の番号が付けられており、各々重鎖及び軽鎖を含む。ある特定の実施形態では、本明細書のADCは、抗体1、2、3、4、5、6、7、または8からの6つのCDR(下線付き)のコレクションを使用する。
【0049】
【0050】
ある特定の実施形態では、該抗体は、モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片、例えば、Fab、F(ab)2、またはscFvである。ある特定の実施形態では、本明細書のADCは、コンジュゲートされたMMAEを、CD6に対して陽性であるT細胞に選択的に送達し(例えば、ヒトの眼に送達された場合、または腫瘍にもしくは全身的に送達された場合)、自己反応性T細胞のみが増殖性であり、正常なT細胞は静止しているため、活性化されたMMAEは選択的に自己反応性T細胞を中から殺傷する一方、正常なT細胞及び他の非T細胞に影響を与えずにおく。いくつかの実施形態では、様々なADCを、疾患T細胞(例えば、ブドウ膜炎形成性T細胞)を除去し、それによってT細胞介在性障害(例えば、実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)をCD6ヒト化マウスのモデルとして用いた自己免疫性ブドウ膜炎)を治療することにおける選択性及び有効性について試験することができる。
【0051】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載のADCは、自己反応性T細胞(例えば、眼のブドウ膜内)を選択的に標的とする一方で、正常なT細胞及び他の細胞を概して温存する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のADCは、任意のT細胞介在性障害、及びT細胞リンパ腫を治療するために対象に投与される。ある特定の実施形態では、本明細書のADCは、抗有糸分裂MMAE薬物ペイロードをT細胞に選択的に送達するための抗CD6mAb(またはその抗原結合断片)を提供し、コンジュゲートされた抗有糸分裂薬MMAEは、一般に、活発に増殖中の細胞のみを殺傷する。これらの2つの選択的アプローチを組み合わせることにより、病原性増殖性T細胞のみが除去され、静止状態の正常なT細胞及び他の増殖性非T細胞は影響を受けないままであるか、または一般に影響を受けない。
【0052】
3つの細胞外スカベンジャー受容体システインリッチ(SRCR)ドメインを含むタンパク質であるCD6(
図2)は、T細胞のマーカーとして30年以上前に発見され、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ、及びシェーグレン症候群を含めたT細胞介在性自己免疫疾患の治療の標的として提案されている。いくつかのグループにより、CD6がMS16-18のリスク遺伝子であることが発見され、キューバで開発された抗CD6mAbであるitolizumabがインドで乾癬及びCOVID-19の治療に承認されたことで、この分野への最近の関心が大幅に高まった(19、20)。過去10年間、CD6ノックアウト(KO)マウスの開発及び研究により、本発明者らは、自己免疫性ブドウ膜炎、MS及びRAのモデルを含めたいくつかのT細胞介在性自己免疫疾患モデルにおいて、CD6活性の欠如がマウスを保護することを発見した。これらのデータは、CD6が病原性T細胞応答の重要な調節因子であり、ひいては潜在的な治療標的であることを強く主張している。実際、本発明者らは、T細胞応答を直接抑制することにより、これらのT細胞介在性疾患モデルの治療に効果的な抗ヒトCD6mAbを特定し、ヒト化し、特許を取得した(米国特許第10,562,975号)。以下に記載の通り、本発明者らは、このヒト化mAbが、有効なADCに重要である極めて高い親和性で(ピコモル域で)CD6に結合することを実証した。さらに、本発明者らは、T細胞上のCD6に結合した後、このmAbが、迅速に内在化され得ることを見出した。これは、有効なADCのための別の重要な特徴である。
【0053】
本明細書の実施形態の開発中に行われた研究において、本発明者らは、ADCを、抗有糸分裂薬であるMMAEの不活化型を、本発明者らが同定した抗CD6mAbに切断可能なVC-PABリンカーを介してコンジュゲートすることによって生成した(
図5)。このADCは、意図的に、正常なT細胞及び他の組織細胞を温存しながら、増殖性自己反応性T細胞を選択的に殺傷するはずである。本発明者らは、この新規なADCが、活発に増殖中のT細胞をインビトロで効率的に殺傷すると判断し(
図5)、自己免疫性ブドウ膜炎に対する効果的な新薬としてのその可能性を示した。
【0054】
抗ヒトCD6mAbのヒト化及び特性評価。臨床開発プロセスの一環として、本発明者らは、本発明者らが同定したマウス抗ヒトCD6mAbを従来の相補性決定領域(CDR)移植技術によってヒト化し、表面プラズモン共鳴によってヒト化前後のmAbの親和性を比較した。
図3に示すように、親及びヒト化抗CD6の両mAbは、CD6に対して非常に高いKD10-11Mの親和性を有する。対照的に、他の抗CD6mAbであるitolizumabの親和性は、10-8Mであると報告されている。
【0055】
該抗CD6mAbは、T細胞によって効率的に内在化される。高い親和性を有することに加えて、T細胞標的化ADCに使用されるmAbの別の重要な特徴は、それがT細胞によって内在化される能力である。本発明者らは次に、mAbを、細胞内の酸性コンパートメント内で活性化された後にのみ蛍光を発するpH感受性色素であるpHAmine(Promega)で第一に標識し、ヒトT細胞株HHとインキュベートした後、フローサイトメトリー分析を行った。
図4に示すように、本発明者らは、pHAmine標識抗CD6mAbとインキュベートしたT細胞のほとんどが、インキュベーション後に蛍光を発することを見出し、該抗CD6mAbが、T細胞表面上のCD6に結合した後に効率的に内在化されることを実証した。
【0056】
本明細書の実施形態の開発中に行われた研究において、本発明者らは、CD6標的化ADCを、抗有糸分裂薬であるMMAEを、同定された抗CD6mAbにコンジュゲートすることによって開発した(
図5)。OD418/OD280を測定する分光分析によれば、標的薬対抗体比は、4と推定される。増殖性T細胞を殺傷するこの新規なADCを試験するため、本発明者らは、該HH T細胞を様々な濃度のADC、または親抗CD6mAbもしくは対照IgGとインキュベートし、トリパンブルー染色によって24、48、及び72時間の細胞死を評価した。本発明者らは、これらのインビトロアッセイにおいて、抗CD6mAbでも対照IgGでも見られないが、CD6標的化ADCは、増殖性T細胞を0.5nMのIC50で強力に殺傷することを見出し(
図5)、それがインビボで分裂中の自己反応性T細胞を殺傷するのに使用され得ることを示した。
【0057】
〔実施例〕
実施例1
T細胞介在性障害の治療法としてのCD6標的化抗体薬物複合体
病原性T細胞の選択的標的化は、多くの自己免疫疾患及び移植片対宿主病を含めたT細胞介在性障害の新たな治療法の開発における「究極の理想」である。本実施例では、本発明者らは、強力な有糸分裂毒素であるモノメチルオーリスタチンE(MMAE)の不活性型を、確立されたT細胞の表面マーカーであるCD6に対するモノクローナル抗体(mAb)にコンジュゲートすることによる、例示的なCD6標的化抗体薬物複合体(CD6-ADC)の開発を記載する。CD6はすべてのT細胞に存在するが、CD6-ADCは、活発に分裂中であるために抗有糸分裂MMAE介在性の殺傷の影響を受けやすい病原性T細胞を選択的に殺傷するように設計されている。本発明者らは、ヒトとマウスの両方で、CD6-ADCが実際に活性化された増殖性T細胞を選択的に殺傷し、正常なT細胞を温存することを見出した。さらに、同じ用量のCD6-ADCは、自己免疫性ブドウ膜炎の2つの前臨床モデル及び移植片対宿主病モデルを効果的に治療したが、裸の親抗CD6mAbもIgG対照も非結合対照IgG-ADCも治療しなかった。これらの結果は、このCD6-ADCが病原性T細胞の選択的排除、ひいては多くのT細胞介在性障害の治療のための医薬品として使用され得るという明確な証拠を提供する。
【0058】
材料及び方法
CD6-ADC及び対照ADCの生成:MMAEを、キット(CellMosaic Inc,Boston,MA)を使用し、製造業者が提供するプロトコルに従って、VC-PABリンカーを介して精製マウス抗ヒトCD6IgG(UMCD6)及び対照マウスIgGにコンジュゲートした。得られた生成物の標的薬対抗体比を、OD418/OD280を測定することにより推定した。
【0059】
ヒト初代T細胞殺傷アッセイ:ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を使用して、ヒトT細胞殺傷アッセイを実施した。非標識またはカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)標識PBMCを、U底96ウェルプレートに、最終濃度5×105細胞/mlにてRPMI1640培地(FBS10%、Pen/Strep100μ/ml、L-グルタミン2mM、HEPE25mM、ピルビン酸ナトリウム1mM、β-メルカプトエタノール50μM、hIL-2 100U/ml)中に播種した。T細胞を活性化、または抗CD3及び抗CD28抗体(Ab)(ThermoFisher Scientific,USA)と結合したDynabeadsでビーズ対細胞比1:1で活性化し、それぞれ、0.5、2、及び4nMのCD6-ADC、親マウス抗CD6IgGまたはマウスIgGとともに5日間インキュベートした。非標識PBMCの場合、細胞を採取する16時間前に10μMのブロモデオキシウリジン(BrdU)を培地に添加した。PBMCの数を顕微鏡下でカウントし、CD4及びCD8T細胞の頻度を、フローサイトメトリーによって、抗マウスCD4及び抗マウスCD8mAb(Biolegend,USA)で検出した。T細胞の増殖を評価するため、BrdUの組み込み(非標識PBMCの場合)及びCFSE希釈(CFSE標識PBMCの場合)を、フローサイトメトリーを使用して分析した。
【0060】
ヒトT細胞株MOLT-4殺傷アッセイ:通常の培養条件下で活発に増殖するヒトT細胞株MOLT-4(ATCC)を、0、0.1、0.5、2.5もしくは12.5nMのCD6-ADCまたは対照ADCを含む完全RPMI培地中、40,000細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種した。6時間のインキュベーション後、細胞を洗浄し、通常の完全RPMI培地でさらに72時間培養した後、各ウェルの生細胞及び死細胞を、トリパンブルー染色後にCountess Automatic Cell Counter(Invitrogen)を使用してカウントした。
【0061】
抗原特異的T細胞殺傷アッセイ:CD6ヒト化マウス(8~12週齢)の各々を、200μgのブドウ膜炎形成性IRBP161-180ペプチド(SGIPYIISYLHPGNTILHVD、配列番号17、GenScript USA Inc.,USAによりカスタム合成されたもの)及び250μgのMycobacterium tuberculosis H37Ra(Difco Laboratories,Inc.,USA)を含む200ulの完全フロイントアジュバント(CFA、Difco Laboratories,Inc.,USA)で皮下的に免疫した。この免疫化CD6ヒト化マウスから脾細胞を12日後に単離した。次に、4×105個の脾細胞を、RPMI1640培地(FBS10%、Pen/Strep 100μ/ml、L-グルタミン2mM)中、それぞれ0.5、2、及び4nMのCD6-ADC、抗CD6IgGまたはマウスIgGの存在下、20μg/mlのIRBP161-180ペプチドで3日間再刺激した。細胞を収集する16時間前にBrdUを培地に添加した。細胞を抗マウスCD4及び抗BrdU mAb(Biolegend)で染色した後、フローサイトメーターを使用してCD4+T細胞へのBrdUの組み込みを分析した。
【0062】
EAUの能動及び受動モデルのCD6-ADC処理:EAUの能動及び受動モデルの誘導を、以前に文献に記載された通りに行った。能動EAUの処理の場合、ブドウ膜炎の臨床徴候が免疫化後6日目に現れた時点で、0.5mg/kgのCD6-ADC、抗CD6IgGまたは対照IgGを腹腔内注射することにより、免疫化マウスを処理した。受動EAUの処理の場合、レシピエントマウスを、同数の予備活性化ブドウ膜形成性T細胞の養子移入後、同じ方法で処理した。EAUの発症及び重症度を、間接検眼鏡を使用して毎日観察し、以前に公開された基準に従って0~4の臨床スコアを割り当てた(Caspi,R.R.(2003)Experimental autoimmune uveoretinitis in the rat and mouse.Curr.Protoc.Immunol.Chapter 15,Unit 15.6.)。
【0063】
眼球撮像及び組織病理学的分析:眼球の撮像を以前に記載された通りに行った(Zhang et al.,J Leukoc Biol.2016 Mar;99(3):447-54、及びZhang et al.,J Autoimmun.2018 Jun;90:84-93.)。簡潔には、麻酔及び瞳孔拡張下、マウスをSD-OCT(Bioptigen,Inc.,USA)及びcSLO(HRA2/Spectralis,Heidelberg Engineering,Germany)で撮像した。SD-OCT撮像は、網膜の断面画像を取得するために、50oの視野(FOV)で行った。視神経を中央に配置して、55oのFOVのcSLO画像を取得した。cSLOを実行して、網膜及び網膜色素上皮等の網膜の外側の位置で赤外線(IR)反射率及び自己蛍光(AF)を測定した。EAU試験の最後に、眼球全体を採取し、10%ホルマリン溶液で48時間固定し、パラフィンに包埋した。5μmの切片を瞳孔と視神経軸で切断し、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した。切片には、網膜の炎症性浸潤及び構造的損傷に基づいて、以前に公開された基準に従って0~4の組織病理学的スコアを割り当てた(Caspi,2003)。
【0064】
GVHDのモデルのCD6-ADC処理:NSGマウス(The Jackson Laboratory,USA、8週齢)に放射線を照射(200rad)し、3×106個のヒトPBMCを尾静脈注射により静脈内投与し、GVHDを誘導した。誘導後、3日ごとに末梢血を採取した。細胞を抗マウスCD45、抗ヒトCD45、及び抗ヒトCD3mAbで染色した後、フローサイトメトリー分析を行った。0.5mg/kgのCD6-ADC及びmIgG-ADCの処理は、GVHD発症の開始を示す末梢血中のヒトPBMC数の増加が見られたD3から3日ごとに腹腔内に施した。27日後、脾細胞及び骨髄からの細胞を単離し、全白血球中のhCD45及びhCD3陽性細胞(mCD45及びhCD45陽性細胞)のパーセンテージをフローサイトメーターで検出した。皮膚、脾臓、肝臓、腸、及び結腸を採取し、10%ホルマリン溶液で固定し、パラフィンに包埋し、H&Eで染色した。
【0065】
結果
ペイロードとしてMMAEを使用したCD6-ADC及び非結合対照ADCの開発:
本発明者らは、これらのADCを、市販のキットを使用し、製造業者が提供するプロトコルに従って、VC-PABリンカーを介してMMAEを精製抗CD6IgGまたはマウスIgGにコンジュゲートすることにより生成した。OD418/OD280を測定する分光分析によれば、標的ペイロード対抗体比は、約3:1と推定される。調製されたCD6-ADC及び対照ADCをアリコートに分け、凍結乾燥し、実験まで-80℃の冷凍庫に保存した。
【0066】
CD6-ADCは、インビトロで活性化された増殖性ヒトT細胞を殺傷する:
CD6-ADCが活性化されたヒトT細胞を殺傷することを実証するために、本発明者らは、健康なドナーの正常なPBMCを使用してT細胞殺傷アッセイを設定し、抗CD3及び抗CD28mAbとコンジュゲートしたDyneabeadsを使用してT細胞を内部で活性化した。本発明者らは、次に、これらの細胞を、それぞれ、0.5、2、及び4nMのCD6-ADC、裸の親抗CD6IgGまたは対照IgGとともにインキュベートした。5日目に、本発明者らは、組み込まれたBrdUをマーカーとして使用し、フローサイトメトリーにより、各ウェルの増殖性CD4+及びCD8+T細胞のパーセンテージ及び絶対数を定量化し、増殖性ヒトT細胞を特定した。
図22を参照されたい。これらの試験により、対照ADC、親抗CD6IgG、または対照IgGが、調べたすべての濃度で増殖性CD4+またはCD8+ヒトT細胞のパーセンテージ及び数に測定可能な影響を与えなかった一方で、CD6-ADCは、濃度0.5nMでも濃度依存的に、これらの増殖性(BrdU+)ヒトT細胞のパーセンテージ及び絶対数の両方を内部で著しく減少させることが分かった(
図22c)。
【0067】
CD6-ADCは、インビトロで正常なヒトT細胞を殺傷しない
本発明者らのCD6-ADCが静止状態の正常なT細胞を温存することを実証するため、本発明者らは、健康なドナーのPBMCを、0~12.5nMのCD6-ADCまたは対照IgG-ADCと直接インキュベートし、次いでフローサイトメトリーにより、LIVE/DEAD色素(Thermal Fisher)を使用して、T細胞(CD3+)でゲーティングした後にT細胞殺傷を測定した。
図22を参照されたい。これらの試験により、対照(緑のバー、T細胞のみ)と比較して、調べた最も高い濃度(12.5nM)であっても、対照ADCもCD6-ADCもこれらの正常な初代ヒトT細胞に有意な悪影響を与えないことが分かった。さらに、調べたすべての濃度で、対照ADC(グレーのバー)またはCD6-ADC(黒のバー)で処理したサンプル間で得られた死T細胞のパーセンテージまたは絶対数に差はなかった。これらの試験は、本発明者らのCD6-ADCが正常なヒトT細胞を殺傷しないことを示す直接の証拠を提供した。
【0068】
CD6-ADCはインビトロで増殖性T細胞を殺傷するが、増殖性非T細胞は温存する:
CD6-ADCが増殖性T細胞を殺傷するが、CD6を発現しない他の増殖性細胞は殺傷しないことを実証するために、本発明者らは、ヒトT細胞株MOLT-4及びヒトB細胞株Rajiを使用した細胞殺傷アッセイを再度設定した。これらは両方とも通常の培養条件下で活発に分裂するが、T細胞株のみがCD6を発現し、Rajiは発現しない。本発明者らは、細胞を0、0.1、0.5、2.5または12.5nMのCD6-ADCとインキュベートし、次いでトリパンブルー染色後に死細胞をカウントすることによって細胞殺傷を評価した。これらの実験により、CD6-ADCが濃度依存的に増殖性MOLT-4 T細胞を殺傷する一方で、CD6を発現しない増殖性Raji B細胞には有意な悪影響を与えないことが分かった。これらの結果は、CD6-ADCが、活発に分裂中であっても、非CD6発現細胞を温存しながら増殖性T細胞を選択的に殺傷したことを示している。
【0069】
CD6-ADCは、インビトロで抗原特異的自己反応性T細胞を排除する
抗原特異的病原性T細胞の排除におけるCD6-ADCの可能性を調べるために、本発明者らは、ブドウ膜炎形成性IRBPペプチドでCD6ヒト化マウスを免疫し、次いで12日後に脾臓を採取した。本発明者らは、その脾細胞を使用した、様々な濃度のCD6-ADC、抗CD6mAbまたは対照IgGの存在下での抗原特異的リコールアッセイを設定した。増殖細胞を特定するため、本発明者らは、培養物にBrdUも添加した。3日後に、本発明者らは、各ウェルの全CD4+T細胞及び増殖性BrdU+CD4+T細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーによって定量化した。
図23を参照されたい。これらの実験により、分析された脾細胞において、CD4+T細胞が全細胞の30~35%を占め、このCD4+T細胞の4~5%のみがIRBP応答性増殖細胞(BrdU+)であることが分かった。これは、以前の報告と一致する。さらに、抗CD6mAbでもIgGでも見られなかったが、CD6-ADCは、培養物に含まれる増殖性BrdU+CD4+T細胞の数を濃度依存的に有意に減少させた。これらの結果は、CD6-ADCが、自己免疫性ブドウ膜炎を引き起こすIRBP特異的増殖性CD4+T細胞を選択的に殺傷することを実証した。
【0070】
CD6標的化ADCは、予備活性化ブドウ膜炎形成性T細胞の養子移入によって誘導されるブドウ膜炎の発症を抑制する
本発明者らは次に、予備活性化ブドウ膜炎形成性T細胞の養子移入によって誘導されるブドウ膜炎の治療におけるCD6-ADCの治療効果を調べた。簡潔には、以前に公開された本発明者らのプロトコルに従って、本発明者らは、インビトロでIRBP免疫化CD6ヒト化マウスから自己反応性T細胞を増幅し、その後予備活性化ブドウ膜炎形成性T細胞をナイーブマウスに養子移入し、ブドウ膜炎を誘導した。養子移入後、本発明者らは、マウスをランダムに3群に分け、0.5mg/kgの抗CD6 ADC、抗CD6mAbまたは対照IgGで処理した。この場合もやはり、本発明者らは、ブドウ膜炎の発症を間接検眼法によって毎日観察し、マウスの網膜をOCT及びSLOによって、8日目に眼球の組織病理学的分析とともに分析した。
図24を参照されたい。これらすべての試験により、この投与量で抗CD6IgGでの処理がわずかに疾患の発症を遅らせたものの、親抗CD6IgGや対照IgGでは見られないが、この投与量のCD6-ADCは、ブドウ膜炎形成性T細胞によって誘導される網膜炎症からマウスを有意に保護することが分かった。
【0071】
CD6-ADCは、能動免疫化によって誘導されるブドウ膜炎の進行を逆転させる
上記のEAUの養子移入誘導受動モデルに加えて、本発明者らは、能動免疫化によって誘導される自己免疫性ブドウ膜炎モデルにおけるCD6-ADCの治療効果も調べた。簡潔には、本発明者らは、CD6ヒト化マウスをIRBPペプチドで免疫し、6日後、本発明者らは、SLOによって、すべてのマウスが網膜での過蛍光白血球の存在よって示されるブドウ膜炎を発症したことを確認した。したがって、本発明者らは、これらマウスをランダムに分け、CD6-ADCまたは対照ADC(0.5mg/kg)のいずれかで処理し、間接検眼法によってブドウ膜炎の進行を毎日観察し、臨床スコアを記録した。さらに、本発明者らは、14日目にOCT及びSLOによってマウスの網膜も分析した。最後に、実験の終わりに、本発明者らは、組織病理学的分析用の眼球、及び抗原特異的Th1/Th17応答アッセイ用の脾臓を収集した。本発明者らは、対照ADCでは見られないが、CD6-ADCは、すべての眼球撮像技術によって分析して、処理マウスにおいてブドウ膜炎を有意に減弱することを見出した。
図25を参照されたい。その上、自己抗原特異的Th1及びTh17細胞は、CD6-ADC処理マウスにおいて、対照ADC処理マウスよりも著しく減少した。
【0072】
CD6-ADCはGVHDの前臨床モデルを治療する
自己免疫性ブドウ膜炎等の自己免疫疾患に加えて、他のT細胞介在性障害の治療におけるCD6-ADCの有効性を調べるため、本発明者らは、異種GVHDモデルを使用した。簡潔には、本発明者らは、照射NSGマウスに新鮮ヒトPBMCを注入し、フローサイトメトリーによって注入したヒトT細胞が活性化されることを検出し、血中での増殖まで3日待った。本発明者らは、したがって、マウスの半数をCD6-ADC(0.5mg/kg)で処理し、残りの半数を同じ用量の対照ADCで処理し、循環ヒトT細胞のパーセンテージ及び絶対数をフローサイトメトリーで週2回観察し、27日目までのGVHDの発症を評価した。実験の最後に、本発明者らは、組織病理学的分析用の異なる組織も収集した。
図26を参照されたい。これらの試験により、血中の白血球の80%超がヒトCD45+CD3+T細胞である対照ADCで処理したマウスと比較して、CD6-ADCで処理したマウスは、血中のヒトCD45+CD3+T細胞が1%未満しかないことが分かった。末梢血中のヒトT細胞のパーセンテージ及び数の顕著な差異に加えて、CD6-ADCで処理したマウスは、骨髄及び脾臓に含まれるヒトT細胞のパーセンテージの大幅な減少も示した。異なる組織の組織病理学的検査により、これらの血液学的分析結果が確認され、CD6-ADC処理により、皮膚や肝臓等の複数の臓器におけるヒトT細胞浸潤が著しく減少し、ひいてはGVHDが大幅に減弱されることが示された。
図27を参照されたい。
【0073】
病原性T細胞が介在する自己免疫疾患の治療の「究極の理想」は、正常な静止状態のT細胞及び他の組織細胞を温存しながら、これらの自己反応性T細胞を選択的に標的とすることである。本実施例におけるCD6-ADCは、1)CD6が、ほぼT細胞上でのみ発現され、CD6を発現することが知られている他の細胞は、全B細胞の1%未満を構成するB1a細胞及び一部のナチュラルキラー(NK)細胞であること、ならびに2)抗有糸分裂薬であるMMAEが、活発に増殖中の細胞を殺傷することから、この目標を達成するように思われる。CD6はすべてのT細胞上に存在するが、通常の条件下では、休止状態のT細胞は活発に増殖中ではないため、これら静止状態のT細胞は、MMAE介在性の殺傷に感受性がない。それに対して、自己反応性病原性T細胞は活発に分裂しており、CD6-ADC介在性の殺傷の餌食になる。
【0074】
本発明者らの知る限り、これまでのところ、自己免疫疾患を治療するために積極的に開発されているADCは1つだけである。このADCは、RNAポリメラーゼII阻害剤であるアマニチンを、T細胞、B細胞、NK細胞、好酸球、好塩基球、単球、マクロファージ及び好中球を含めたすべての白血球に存在するCD45に対するmAbにコンジュゲートすることによって生成される。このADCは、MS及びGVHDのモデル、ならびに炎症性関節炎の治療に非常に効果的であり、同社のウェブサイトでは、このADCは現在、臨床評価のためのIND-enabling試験中であると報告されている。このCD45標的化ADCは、ADCの適用が実際に腫瘍免疫療法に限定されず、自己免疫疾患治療に拡張され得ることを示しているものの、本発明者らのCD6-ADCとは大きく異なる。第一に、すべての白血球及び一部の幹細胞で発現するCD45とは異なり、CD6は主にT細胞で発現する。したがって、すべての白血球を標的とするCD45指向ADCの非特異的細胞毒性とは異なり、本発明者らの治療法は、T細胞を標的とするため、全身性の免疫抑制及びそれに関連する重度の副作用につながらないはずである。第二に、このCD45標的化ADCで使用されるペイロードであるアマニチンは、増殖細胞と静止細胞の両方を殺傷するが、本発明者らのCD6-ADCで使用されるMMAEは有糸分裂毒素であるため、増殖細胞のみを殺傷する。抗CD6mAbのT細胞選択性とペイロードMMAEの増殖細胞選択性を組み合わせることにより、本発明者らのCD6-ADCは、概して、増殖性T細胞のみを選択的に標的とすることで、良好な安全性プロファイルを有し、副作用が少ないはずである。実際、本発明者らの試験において処理したマウスはすべて、明らかな問題なくCD6-ADCに耐容性良好であった。
【0075】
CD6-ADCの開発に使用される親抗CD6mAbは、単独で、CD6+T細胞を枯渇させることなくT細胞応答を抑制することにより、多発性硬化症(MS)及び関節リウマチ(RA)等の自己免疫疾患のマウスモデルの治療に有効であることが以前に報告された。CD6-ADCは、強力なペイロードがコンジュゲートされているため、その親の「裸の」mAbよりも有意に高い治療効果を有するはずである。実際、以前の報告では、約4mg/kg(約100μg/マウス)で投与された場合、抗CD6mAbは、MS及びRAのモデルの治療に非常に効果的であったが、本実施例に記載の処理実験で、本発明者らは、0.5mg/kg(約12μg/マウス)の投与量で、CD6-ADCは予備活性化ブドウ膜炎形成性T細胞の養子移入後にブドウ膜炎の発症を有意に抑制したが、同じ用量の「裸の」抗CD6mAbでは、ブドウ膜炎発症を遅らせ、ブドウ膜炎発症の最初の1週間以内で、処理したマウスの網膜炎症を中程度に減弱したのみであることを見出した。これらのデータは、CD6-ADCが、自己免疫疾患の治療において、親抗CD6mAbよりも治療効果が大幅に向上していることを示しており、有効性に必要な用量ははるかに少なく、コストの削減及び潜在的な副作用の減少を含め、多くの利点につながる可能性がある。
【0076】
ブドウ膜炎患者の来院時には、患者はすでにブドウ膜炎形成性T細胞を発達させており、及び/またはブドウ膜炎の徴候を示している。本発明者らは、受動モデルにおいて予備活性化ブドウ膜炎形成性T細胞の養子移入後、または能動モデルにおいてマウスがブドウ膜炎の徴候を示した後に、処理試験を開始した。これら両モデルは、来院患者の状況を忠実に模倣している。本発明者らがマウスの網膜を検査するために使用したすべての眼球撮像技術(SLO、OCT、及び間接検眼法)は、診療所でのブドウ膜炎の診断及び評価にも一般に使用されている。したがって、これらの自己免疫性ブドウ膜炎の前臨床モデルから得られた肯定的な治療データは、CD6-ADCについて、ヒト患者用の薬物としての強力な根拠を提供する。
【0077】
自己免疫性ブドウ膜炎等の多くの自己免疫疾患に加えて、GVHDは、病原性T細胞が介在する別の障害である。GVHDは、鎌状赤血球貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症及び多くの血液悪性腫瘍等の疾患に対する最後の手段である同種骨髄(BM)移植後の患者のほとんどで生じる。活性化及び増殖したドナーT細胞が宿主組織を損傷してGVHDを引き起こすことが理解されているにもかかわらず、現在利用可能な治療選択は限られており、満足のいくものではなく、深刻な副作用を伴う。本発明者らは、ヒトのGVHDを治療するための潜在的な候補薬物を評価するために一般に使用される異種GVHDモデルを使用した。このGVHDの前臨床モデルでは、本発明者らは、病原性T細胞がインビボで活性化され、増殖した後、投与が0.5mg/kgの低用量であっても、対照ADCでは見られないが、CD6-ADCは、病原性増殖性ヒトT細胞を効率的に殺傷し、インビボでのヒトT細胞数の大幅な減少がもたらされ、その結果、肝臓、脾臓及び皮膚等の複数の臓器の病理が著しく減弱され、またはさらに減少することを見出した。これらのデータは、自己免疫性ブドウ膜炎のような自己免疫疾患に加えて、CD6-ADCが、GVHDの治療選択になる可能性があることを示唆する。
【0078】
患者が感染すると、病原体特異的T細胞が活性化され、増殖し始める。これらの患者が依然としてCD6-ADCの治療中の場合、病原体特異的T細胞もCD6-ADC介在性の殺傷の影響を受け、これが日和見感染症につながる可能性がある。これらの合併症を軽減するため、その場合は、抗生物質及び/または抗ウイルス薬が投与され、患者の侵入病原体制御が促進されるまで、CD6-ADC治療レジメンを停止することができる。
【0079】
要約すると、本発明者らが開発したCD6-ADCは、増殖性病原性T細胞を選択的に殺傷し、自己免疫性ブドウ膜炎の2つの前臨床モデル及びGVHDの前臨床モデルにおいて、低用量で投与された場合であっても疾患の進行を逆転させるのに非常に効果的である。これらの結果は、CD6-ADCが、自己免疫性ブドウ膜炎、多発性硬化症、関節リウマチ、GVHD、及び移植拒絶反応のような疾患が挙げられるがこれらに限定されない病原性T細胞介在性障害を治療するための薬物であることを示唆する。
【0080】
実施例2
B1細胞介在性障害の治療法としてのCD6標的化抗体薬物複合体
マントル細胞リンパ腫(MCL)は、侵攻性B1細胞非ホジキンリンパ腫であり、臨床予後が悪く、治癒しない(1)。これらの腫瘍細胞は転移し、リンパ節、脾臓、血液、骨髄、及びその他の組織に侵入し、通常は診断から2~3年以内に患者は死亡する(2)。現在の最前線の治療としては、細胞傷害性化学療法剤または粘り強い化学免疫療法とその後の幹細胞移植の組み合わせが挙げられる(3、4)。これらの利用可能な治療選択による深刻な副作用にもかかわらず、MCL患者はこれらの治療に最初は応答する傾向があるものの、患者のほとんどは後に再発するか、難治性になる(5、6)。したがって、これらの悪性B細胞腫瘍を標的とする新薬を開発することは、臨床的に非常に重要であり、緊急性がある。
【0081】
標的療法の開発における第一のかつ最も重要なステップの1つは、MCL細胞上の標的分子の同定である。調べたすべての患者のMCL検体が高レベルでCD6を発現していることが発見され、CD6がMCLの新規な治療標的である可能性が示唆された。試験において、本発明者らは、有糸分裂毒素であり臨床的に証明されたペイロード(7,8)であるモノメチルオーリスタチンE(MMAE)の不活化型を、本発明者らのCD6に対する高親和性モノクローナル抗体(mAb)に結合することにより、CD6標的化抗体薬物複合体(ADC)を開発した(
図5参照)。このADCは、MMAEをCD6+MCL腫瘍細胞に送達するように設計されている。重要なことには、有糸分裂毒素であるため、コンジュゲートされたMMAEは、活発に増殖中の細胞のみを殺傷する。CD6+細胞に対する抗CD6mAbの選択性と、増殖細胞に対する有糸分裂毒素MMAEの選択性を組み合わせることにより、この新規なADCは、増殖性CD6+悪性腫瘍細胞のみを殺傷し、正常な静止状態のCD6+細胞及びその他の増殖性非CD6発現細胞を温存するように設計されている。
【0082】
CD6は、主に、T細胞及びB1細胞と呼ばれるB細胞の小群で発現される。3つの細胞外スカベンジャー受容体システインリッチ(SRCR)ドメインを含むタンパク質であるCD6は、T細胞のマーカーとして30年以上前に発見された(19)。後の研究で、CD6がB1細胞と呼ばれるB細胞の小群に存在することも示唆された(20)。CD6は、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ、及びシェーグレン症候群を含めたT細胞介在性自己免疫疾患の治療の標的であることが示唆されている(22)。いくつかのグループが、CD6がMSのリスク遺伝子であることを発見した際、この分野への関心が著しく高まった(23~25)。最近、キューバで開発された抗CD6mAbであるitolizumabが、インドで乾癬及びCOVID-19の治療に承認された(26、27)。過去10年間、CD6ノックアウト(KO)マウスの開発及び研究により、本発明者らは、自己免疫性ブドウ膜炎(11)、MS(9)及びRA(13)のモデルを含めたいくつかのT細胞介在性自己免疫疾患モデルにおいて、CD6活性の欠如がマウスを保護することを発見した。本発明者らはまた、CD6KOマウスを使用して、CD6が実際にB1細胞に存在するが、他のB細胞や骨髄細胞には存在しないことを確認した(14)。
【0083】
本発明者らが調べたすべてのMCL患者のサンプルが高レベルでCD6を発現することを示すデータ(
図28)を使用して、患者に含まれる正常なT細胞はたとえそれらがCD6+であっても増殖性ではなく、MCL細胞は活発に分裂するため、本発明者らは、本発明者らが同定した抗CD6mAbを利用して、MCL細胞を選択的に殺傷するためのADCを、MCL患者のための新たな治療アプローチとして開発することができた。したがって、本発明者らは、同じ切断可能なVC-PABリンカー(
図5)を介して、有糸分裂毒素MMAEの不活化型を、本発明者らが同定した抗CD6mAbにコンジュゲートすることにより、ADCを生成した。このADCは、意図的に、正常なT細胞及び他の組織細胞を温存しながら、増殖性MCL細胞を選択的に殺傷するはずである。本発明者らはさらに、親の「裸の」抗CD6mAbでも対照IgGでも見られないが、この新規なADCは、活発に増殖中のMCL細胞をインビトロで効率的に殺傷することを示し(
図29)、MCL用の新薬としての可能性を実証した。
【0084】
調べたすべてのMCL患者検体はCD6+である。約200の腫瘍サンプルを含むMCL患者の組織マイクロアレイを使用した。そのアレイを本発明者らの抗CD6mAbで染色し、染色したスライドを調べた。腫瘍組織を欠いたいくつかを除いて、すべてのサンプルがCD6に関して強く染色されている(
図28)。これらの結果は、MCL細胞が高レベルで表面にCD6を発現することを初めて実証するだけでなく、CD6がMCL患者、特に現在利用可能な治療法に抵抗性の患者の新規な治療標的であることを示唆している。
【0085】
本発明者らは、MMAEの不活性型を、本発明者らが同定した抗CD6mAbに、CellMosaic Inc(Boston,MA)によって開発されたキットを使用してコンジュゲートすることにより、CD6標的化ADCを開発した(
図5A)。OD418/OD280を測定する分光分析によれば、標的ペイロード対抗体比は、4:1と推定される。MCL細胞を殺傷するこの新規なADCの可能性を調べるために、本発明者らは第一に、確立されたヒトMCL細胞株(30、31)であるSP53がCD6+であることを確認した。本発明者らは次に、SP53MCL細胞を様々な濃度のCD6-ADC、または対照ADC(同じキットを使用してMMAEとコンジュゲートした非特異的マウスIgG)とインキュベートし、トリパンブルー染色によって72時間のMCL細胞死を評価した。本発明者らは、抗CD6mAbでも対照IgGでも見られないが、CD6標的化ADCは、これらのインビトロアッセイでMCL細胞を強力に殺傷することを見出した(
図29)。
【0086】
参考文献:
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本明細書で言及される、及び/または以下に列挙されるすべての刊行物及び特許は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の記載された方法及びシステムの様々な修正及び変形は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者に明白であろう。本発明は、特定の実施形態に関連して説明されてきたが、請求される本発明は、かかる特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際に、関連分野の当業者にとって明白な、本発明を実施するための記載された様式の様々な修正は、本明細書に記載される範囲内であることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【
図2】CD6が確立されたT細胞の細胞表面マーカーであり、そのリガンドであるCD166及びCD318に結合することを示す。
【
図3】高親和性抗CD6mAbの同定及びヒト化を示す。
【
図4】37℃で4時間インキュベーションした後、フローサイトメーターを使用して、活性化されたpHAmine蛍光を検出することによって測定して、抗CD6mAbがT細胞によって効率的に内在化されることを示す。
【
図5】CD6標的化ADCの開発を示す。A.切断可能なリンカーを介してMMAEがコンジュゲートしたCD6標的化ADCの図。B.CD6-ADCは、増殖性T細胞をインビトロで0.5nMのIC50で強力に殺傷する。T細胞株(HH細胞)を、様々な濃度のCD6-ADC(ADC)、または抗CD6mAb(CD6)、または対照IgG(IgG)とインキュベートした。細胞死を異なる時点で評価した。4つの実験の代表的な結果。
【
図6】CD6-ADCは、MTTアッセイによって測定して、インビトロで増殖性T細胞を殺傷する。様々な濃度のCD6-ADCを、T細胞株であるHH細胞とインビトロでインキュベートした。T細胞の生存を、MTTアッセイによって異なる時点で定量化した。
【
図7】CD6-ADCは、PI組み込みアッセイによって測定して、インビトロで増殖性T細胞を殺傷する。様々な濃度のCD6-ADCを、T細胞株であるHH細胞とインビトロでインキュベートした。T細胞の生存を、PIアッセイによって異なる時点で定量化した。
【
図8】CD6-ADCは、MTTアッセイによって測定して、インビトロで増殖性T細胞を殺傷する。72時間でのIC50は、約0.4nMと計算された。
【
図9】CD6-ADCは、トリパンブルーアッセイによって測定して、インビトロで増殖性T細胞を殺傷する。様々な濃度のCD6-ADC(ADC)、裸の抗CD6mAb(CD6)及び対照IgG(IgG)を、T細胞株であるHH細胞とインビトロでインキュベートした。T細胞の生存を、トリパンブルーアッセイによって異なる時点で定量化した。
【
図10】「裸の」抗CD6mAbは、低濃度ではインビトロで増殖性T細胞を殺傷しない。様々な濃度の抗CD6mAb(UMCD6)を、T細胞株であるHH細胞とインビトロでインキュベートした。T細胞の生存を、PIアッセイによって異なる時点で定量化した。
【
図11】対照非特異的IgGは、低濃度ではインビトロで増殖性T細胞を殺傷しない。様々な濃度の対照IgG(IgG)を、T細胞株であるHH細胞とインビトロでインキュベートした。T細胞の生存を、PIアッセイによって異なる時点で定量化した。
【
図12】WTマウスをレチナール抗原IRBPで免疫し、EAU(実験的自己免疫性ブドウ膜炎)を誘導した。脾細胞を10日後に収集し、BrdUの組み込みに基づく抗原特異的T細胞増殖アッセイに供した。すべての対照がここに示される。
【
図13】マウス番号193の脾細胞を、様々な濃度の対照IgG(IgG)、裸の抗CD6mAb(UMCD6)及びCD6-ADC(ADC)の存在下で培養した。抗原特異的増殖性T細胞(BrdU+)をフローで定量したところ、対照IgGでもUMCD6でも見られなかったが、CD6-ADCは抗原特異的(ブドウ膜炎形成性T細胞)を濃度依存的に排除したことが示された。
【
図14】マウス番号195の脾細胞を、様々な濃度の対照IgG(IgG)、裸の抗CD6mAb(UMCD6)及びCD6-ADC(ADC)の存在下で培養した。抗原特異的増殖性T細胞(BrdU+)をフローで定量したところ、対照IgGでもUMCD6でも見られなかったが、CD6-ADCは抗原特異的(ブドウ膜炎形成性T細胞)を濃度依存的に排除したことが示された。
【
図15】マウス番号197の脾細胞を、様々な濃度の対照IgG(IgG)、裸の抗CD6mAb(UMCD6)及びCD6-ADC(ADC)の存在下で培養した。抗原特異的増殖性T細胞(BrdU+)をフローで定量したところ、対照IgGでもUMCD6でも見られなかったが、CD6-ADCは抗原特異的(ブドウ膜炎形成性T細胞)を濃度依存的に排除したことが示された。
【
図17】裸の抗CD6mAbでも対照IgGでも見られないが、CD6-ADCは、インビボでブドウ膜炎形成性T細胞によって誘導されるEAUからマウスを保護する。インビトロで増殖させたブドウ膜形成性T細胞を、本発明者らの確立されたプロトコルに従ってナイーブレシピエントマウスに養子移入した。次いで、これらのレシピエントマウスをランダムに3群に分け、0.5mg/kgのCD6-ADC(ADC)、裸の抗CD6mAb(UMCD6)または対照IgG(IgG)で処理した。EAUの発症及び重症度を、間接検眼法によって毎日観察した。
【
図18】VH2-hIgG1CH抗体断片の(A)DNA及び(B)アミノ酸配列を提供する(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,562,975号参照)。
【
図19】VH4-hIgG1CH抗体断片の(A)DNA及び(B)アミノ酸配列を提供する(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,562,975号参照)。
【
図20】VH4-hIgG1CH抗体断片の(A)DNA及び(B)アミノ酸配列を提供する(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,562,975号参照)。
【
図21】VL-hIgKCL抗体断片の(A)DNA及び(B)アミノ酸配列を提供する(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,562,975号参照)。
【
図22】CD6-ADCは増殖性ヒトT細胞を排除する。A.CD6-ADCは増殖性T細胞を殺傷するが、B細胞は殺傷しない。HH細胞(Tヒト細胞株)及びRaji細胞(ヒトB細胞株)を様々な濃度のCD6-ADCまたは抗CD6IgGと6時間インキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、48または72時間培養し、トリパンブルー染色により死細胞を検出した。B.CD6-ADCは、用量依存的にヒトCD4及びCD8の両T細胞の数を有意に減少させる。B1.健康なドナーのPBMCを、抗CD3及び抗CD28Abによって5日間活性化した。活性化中に、様々な濃度(0.5、2、4nM)のCD6-ADC、抗CD6IgG、及びmIgGを添加した。CD4/CD8陽性細胞の頻度を、フローサイトメトリーによって検出した。B2.5日目の細胞収集の16時間前にBrdUを培地に添加した。細胞を抗BrdU Abで染色し、BrdUの組み込みをフローサイトメトリーで分析した。B3.CFSEを使用して、細胞増殖を追跡するためにPBMCを標識し、CFSE分裂細胞をフローサイトメーターによって検出した。各細胞型の数は、次のように計算した:各ウェルの総細胞数×陽性細胞の頻度。C.4nMのCD6-ADC及び対照によるCD4及びCD8T細胞へのBrdUの組み込みの代表的な結果。
【
図23】CD6-ADCは、活性化された抗原特異的T細胞を殺傷する。aEAUモデルのマウスの脾細胞を、様々な濃度(0.5、2、4nM)のCD6-ADC、抗CD6IgG及びmIgGの存在下、IRBPペプチドで3日間再刺激した。細胞採取の16時間前にBrdUを添加した。BrdUの組み込みをフローサイトメトリーによって検出した。A.BrdU組み込みCD4陽性細胞の代表的な結果。B.3匹のマウスの結果のまとめ。
【
図24】0.5mg/kgのCD6-ADCは、インビボで休止中のT細胞に有意な影響を与えない。ナイーブhtgCD6マウスに、0.5mg/kgのCD6-ADCを静脈内注射した。末梢血中のT細胞の頻度を、フローサイトメトリーによって観察した。A1.リンパ球中のCD3T細胞のパーセンテージ。A2及びA3.CD3T細胞におけるCD4及びCD8T細胞のパーセンテージ。N=3。
【
図25】CD6-ADC処理により、ブドウ膜炎形成性T細胞(tEAU)の養子移入によって誘導される実験的自己免疫性ブドウ膜炎が軽減される。0.5mg/kgのCD6-ADCまたは対照を、誘導と同じ日にhtg CD6 tEAUマウスに投与した。A及びB.CD6-ADC処理マウスは、臨床及び組織学的スコアの低下を示した。N=5/群。C.移入後8日目のCD6-ADC処理マウス及び対照マウスにおける局所内視鏡眼底画像(TEFI)、共焦点走査型レーザー検眼鏡(cSLO)及びスペクトル領域光干渉断層撮影(SD-OCT)の代表的な画像。CD6-ADC処理tEAUマウスは、対照マウスよりもはるかに少ない異常を示した。D.眼底画像に表示される炎症を定量化した。E.18日目のtEAUのCD6-ADC処理マウス及び対照マウスの代表的な組織病理学的画像。mIgG及び抗CD6IgG処理マウスは、有意な網膜ひだ及び硝子体の浸潤細胞を示したが、組織病理学的変化はCD6-ADC処理マウスで緩和された。
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図26】CD6-ADC処理により、能動実験的自己免疫ブドウ膜炎(aEAU)が減少する。htgCD6マウスをIRBPペプチドで免疫し、aEAUを誘導した。A.6日目に、共焦点走査型レーザー検眼鏡(cSLO)の画像は、網膜に浸潤細胞を示し、これが、処理の開始に対する論理的根拠を与えた。B.0.5mg/kgのCD6-ADCまたはmIgG-ADC処理を、6日目から3日ごとにaEAUのマウスに施した。CD6-ADC処理マウスは、IgG-ADC処理マウスと比較して低い臨床スコアを示した。N=6/群。C.免疫後14日目のCD6-ADC処理マウス及び対照マウスにおける共焦点走査型レーザー検眼鏡(cSLO)及びスペクトル領域光干渉断層撮影(SD-OCT)の代表的な画像。D.画像定量化。E1.CD6-ADC処理マウスは、組織学的スコアの減少を示した。E2.20日目のtEAUのCD6-ADC処理及び対照マウスの代表的な組織病理学的画像。aEAUは、CD6-ADC処理によって緩和され、網膜のひだ及び細胞浸潤が少なくなった。
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図27】CD6-ADC処理により、ヒトPBMCによって誘導されるGVHDの重症度が低下する。GVHDモデルを、ヒトPBMCの注射によりNSGマウスで誘導した。0.5mg/kgのCD6-ADCまたはmIgG-ADCを3日目から3日ごとにGVHDマウスに投与した。A.ヒトCD45及びCD3陽性細胞の頻度(A1及びA2)ならびに絶対数(A3及びA4)は、CD6-ADC処理マウスの末梢血で減少した。各図中の小挿入図は、接種後最初の3日間のヒトCD45及びCD3陽性細胞の増加を示した。N=5/群。B.27日目のヒトCD45及びCD3陽性細胞の代表的なフローの結果。C.CD6-ADC処理マウスは、最終的に体重が増加したが、mIgG-ADC処理マウスは、GVHDの進行中に体重が減少した。D.CD6-ADC処理マウスは、27日目に脾臓(D1)と骨髄(D2)の両方でヒトCD45及びCD3陽性細胞が対照より減少した。E.CD6-ADC処理マウスは、12日目に血漿中のIFN-ガンマのレベルが対照マウスより低かった。
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図28】抗CD6mAbで染色された、実施例2からのMCL組織アレイの代表的な走査画像を示す。A.組織アレイの一部であるスライド。B.CD6染色のMCL生検標本。C.より高い倍率の同じ標本。
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図29】Aは、MCL細胞株SP53がCD6+であることを示す。ピンク:アイソタイプ対照で染色。青:抗CD6IgGで染色。Bは、CD6-ADCがインビトロでMCL細胞を強力に殺傷することを示す。SP53MCL細胞を、様々な濃度のCD6-ADCまたは対照IgG-ADCと72時間インキュベートした。細胞死をトリパンブルー染色によって評価した。
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図30】Aは、モノクローナル抗体UMCD6の重鎖の核酸配列(配列番号18)を示し、フレームワーク領域を赤で、3つのCDRを青で示す。Bは、モノクローナル抗体UMCD6の重鎖のアミノ酸配列(配列番号19)を示し、フレームワーク領域を赤で、3つのCDRを青で示す。Cは、モノクローナル抗体UMCD6の軽鎖の核酸配列(配列番号20)を示し、フレームワーク領域を赤で、3つのCDRを青で示す。Dは、モノクローナル抗体UMCD6の軽鎖のアミノ酸配列(配列番号21)を示し、フレームワーク領域を赤で、3つのCDRを青で示す。ある特定の実施形態では、UMCD6の可変領域が、本明細書のシステム、組成物、及び方法において(例えば、ヒト-マウスキメラ抗体において)使用される。他の実施形態では、6つのCDRのみ(例えば、ヒトフレームワークに移植されたもの)が、本明細書のシステム、組成物、及び方法で使用される。
【配列表】
【国際調査報告】