(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-30
(54)【発明の名称】分散型光ファイバセンシングによる振動の垂直距離予測
(51)【国際特許分類】
G01H 9/00 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
G01H9/00 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023529956
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-05-17
(86)【国際出願番号】 US2021064753
(87)【国際公開番号】W WO2022140485
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504080663
【氏名又は名称】エヌイーシー ラボラトリーズ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】NEC Laboratories America, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】サレミ、 ミラド
(72)【発明者】
【氏名】ハン、 シャオボ
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、 ミン-ファン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、 ユハン
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BC12
2G064BD02
2G064CC02
(57)【要約】
分散型光ファイバセンシング(DFOS)システム、方法および構造は、DFOSシステムの一部であるセンサファイバに垂直に位置する、センサファイバ自体を脅かす/損傷する/その他の方法で危険に晒す可能性がある振動源の近接性を判定する。本開示の態様によるシステム、方法、および構造は、光センサファイバに潜在的に損傷を与える振動源の近接を推定/決定するためのベイズ推論および最尤推定(MLE)技術とともに、地面における波の伝搬および減衰の基本的な物理的理解を入力として使用する人工知能(AI)方法を採用する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型光ファイバセンシング(DFOS)/分散型音響センシング(DAS)システムを操作して、振動源に対する垂直距離を決定する方法であって、前記方法は、
前記DASシステムを操作して、前記DASシステムの一部であるセンシング用光ファイバの異なる垂直方向の位置でのベースライン振動レベルおよびイベント特性を測定することと、
前記測定されたベースライン振動レベルと前記送信光ファイバに沿ったそれぞれの位置を地理的なマップに統合することと、
それぞれの垂直方向の位置における振動強度プロファイルのデータベースを生成することと、
前記振動強度プロファイルのデータベースにおいて、背景のトラフィック振動を決定し、メディアンフィルタリング手法に従って背景のトラフィック振動を除去することと、
前記DASの効果により振動を検出し、前記検出された振動の発生源の前記センシング用光ファイバからの垂直距離を決定することとを含む方法。
【請求項2】
前記垂直距離の決定が、前記DASシステムの動作に起因するウォーターフォールプロットのDFOSストリームから行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記垂直距離の決定が、前記ウォーターフォールプロットのストリームの画像2値化を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記垂直距離の決定が、カーネル密度またはガウス過程回帰(GPR)プロセスによる結合確率マップを用いて、それぞれの垂直位置における強度プロファイルを生成することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記決定された垂直距離があらかじめ定められたアラーム閾値条件を満たす場合に、アラームを生成し出力することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、分散型光ファイバセンシング(DFOS)に関する。より詳細には、分散型光ファイバセンシングによる振動の垂直距離予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者であれば理解できるように、分散型音響センシング(DAS)や分散型振動センシング(DVS)を含むDFOSシステムは、様々な環境およびインフラの状態を監視するために広く使用されていることがわかる。このようなDFOSシステムの現代的な重要性を考えると、DFOSシステム自体の動作に対する脅威を検出する技術は、歓迎すべき追加技術であると言えるだろう。
【発明の概要】
【0003】
DFOSシステムの一部であるセンサファイバに垂直に位置する振動源の近接性を決定するための方法であって、センサファイバ自体を潜在的に脅かす/損傷させる、またはその他の方法で危険にさらす可能性のある方法に向けられた本開示の側面によれば、当該技術の進歩がなされる。
【0004】
先行技術とは対照的に、本開示の側面によるシステム、方法、および構造は、光センサファイバに潜在的に損傷を与える振動源の近接性を推定/決定するためのベイズ推論および最尤推定(MLE)技術とともに、地中における波の伝搬および減衰に関する基本的物理理解を入力として用いる人工知能(Al)方法論を採用する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本開示のより完全な理解は、その中の添付図面を参照することによって実現され得る。
【0006】
【
図1】本開示の態様による、光ファイバセンサケーブルからの振動源の位置決めと、垂直距離および斜め距離を示す例示的なDAS配置の模式図である。
【0007】
【
図2】本開示の態様による、例示的なDFOSシステム動作のフロー図である。
【0008】
【
図3(A)】本開示の態様による、光ファイバセンサケーブルからの離散的な垂直点、および収集データの確率密度マップと比較した距離推定値の比較を示す図である。
【
図3(B)】本開示の態様による、光ファイバセンサケーブルからの離散的な垂直点、および収集データの確率密度マップと比較した距離推定値の比較を示す図である。
【0009】
【
図4(A)】本開示の態様による、連続カーネル密度マップおよび離散Binningおよび分布マップを示すプロットである。
【
図4(B)】本開示の態様による、連続カーネル密度マップおよび離散Binningおよび分布マップを示すプロットである。
【0010】
【
図5(A)】本開示の態様による、テストデータに対する予測結果のボックスプロットである。
【
図5(B)】本開示の態様による、テストデータに対する予測結果のボックスプロットである。
【0011】
【
図6】本開示の態様による、全体的な手順のフロー図である。
【0012】
【
図7】本開示の態様による、フィールドトライアルDFOSシステムに採用されるアーキテクチャ要素を示す概略図である。
【0013】
例示的な実施形態は、図および詳細な説明によってより完全に説明される。しかしながら、本開示による実施形態は、様々な形態で具体化され得、図面および詳細な説明に記載された特定のまたは例示的な実施形態に限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下は、単に本開示の原理を説明するものである。したがって、当業者は、本明細書で明示的に説明または示されていないものの、本開示の原理を具現化し、その精神および範囲に含まれる様々な配置を考案することができることが理解されよう。
【0015】
さらに、本明細書で援用されるすべての例および条件付き言語は、本開示の原理および本技術を促進するために発明者によって貢献された概念を理解する際に読者を支援するための教育的目的のためだけのものであり、かかる具体的に援用された例および条件に限定されないものとして解釈されることが意図される。
【0016】
さらに、本開示の原理、態様、および実施形態、ならびにその具体例を説明する本明細書のすべての記述は、その構造的および機能的等価物の両方を包含することが意図される。さらに、このような同等物には、現在知られている同等物と、将来開発される同等物の両方が含まれることが意図されている。つまり、構造に関係なく、同じ機能を果たす要素が開発されれば、その要素はすべて含まれる。
【0017】
したがって、例えば、本明細書における任意のブロック図は、本開示の原理を具現化する例示的な回路の概念図を表すことが、当業者には理解されよう。
【0018】
本明細書で明示的に指定されない限り、図面を構成する図は縮尺通りに描かれていない。
【0019】
近年、分散型振動センシング(DVS)や分散型音響センシング(DAS)を含む分散型光ファイバセンシング(DFOS)システムは、インフラ監視、侵入検知、地震検知など、多くのアプリケーションで広く受け入れられているが、これらに限定されないことを、ここで改めて説明したい。DASとDVSでは、ファイバの歪みの変化を検出するために後方レイリー散乱効果を使用し、ファイバ自体が光センシング信号をインタロゲータに戻し、その後の分析を行うための伝送媒体として機能する。
【0020】
図1は、インタロゲータ/レシーバ/検出/解析システムを採用した例示的なDFOS/DVS/DASシステムの簡略化した概略図である。このようなシステムは、光センシングファイバに光Tx信号を生成/印加し、反射/散乱した光信号を受信/分析システムに戻し、反射/散乱した信号とその後の受信信号を受信/検出/分析する。信号が分析され、音響イベント、振動イベント、および/または温度条件を含む、ファイバの長さに応じた環境条件を示す出力が生成される。
【0021】
これから示し、説明するように、本開示の態様は、分散型光ファイバセンシング(DFOS)技術およびAIベースの距離予測モデルを用いて埋設光ファイバケーブルの物理的損傷の脅威を検出するために採用され得るシステム、方法、および構造を開示する。
【0022】
当業者であれば、DFOSセンサケーブルを含む埋設光ファイバケーブルのインフラストラクチャを、掘削機、ドリルなどの様々な機械による許可または無許可の工事による可能な損傷から保護することが、これらの資産を保護し、あらゆる顧客へのサービスの継続性を維持するための、かかるインフラストラクチャの関係者の大きな懸念であると理解し認める。本明細書で開示する技術は、光ファイバからの潜在的な脅威源の位置と距離とを検出および推定することにより、光ファイバケーブルの可能性および/または差し迫った損傷や脅威に対して警報を発生させるインテリジェント早期警報システムを有利に提供する。
【0023】
環境中の振動源を特定するために、ジオフォンや加速度計を使用した多くの先行技術が存在することに留意する。最近では、伝搬波の到達時間から垂直距離を推定し、ランダムフォレスト分類法を導入するなどの取り組みが行われている。当業者には分かると思うが、伝搬する波の到達時間に依存する距離測定法は、振動源の周波数成分分析に大きく依存し、波が地上を伝わる速度に対して距離のスケールが短すぎることが多いため、特に波のピークの検出と追跡が困難である。そのため、地上波の到達時間差が非常に小さくなり、誤差が生じやすくなる。
【0024】
ここで
図1を参照すると、掘削機、ジャックハンマー、ドリル、コンパクターなどの地盤の状態を変化させる機械や装置は、一般的にボディ(P)波、シア(S)波、ローリー(R)波を含み得る地上波を生成することに注目する。この波は、実質的に半球状の前面として発生源から伝搬/拡大するものと理解される。これらの波の振幅は、発生源からセンサファイバまでの移動距離に応じて、センサファイバに到達する際に放射と材料の減衰により減衰する。
【0025】
最近の文献では、様々な地盤条件下での波の伝搬をモデル化するために、このような減衰の支配方程式のパラメータを見つけること、すなわち解析的な解法が論じられている。しかし、地盤の複雑さと不均一性とにより、このようなモデルの校正には計算コストがかかるため、現実のシナリオでは現実的に不可能である。しかし、埋設光ファイバ近傍の地中における波動伝搬の減衰は、材料効果と距離効果との組み合わせに支配されるという、運用上重要な命題が存在することに変わりはない。
【0026】
このことを念頭に置き、本開示の態様によるモデルを開発するために、これらおよび他の観測可能/決定可能な事実を使用し、先行技術の分析方法を麻痺させるパラメータを知るまたは学習する必要がないことに有利になることに留意されたい。その結果、本開示の態様によるシステム、方法、および構造は、埋設光ファイバに対する振動源の推定垂直距離を提供する。
【0027】
図1を引き続き参照すると、例示的なDFOSシステムのための例示的なシステム設定およびテスト回路図が示されている。光センシングシステム(DFOS)とAIベースの距離予測器は、光ファイバセンサケーブルのルート全体の遠隔監視を有利に提供する制御オフィス/中央オフィスに常駐するように例示されている。
【0028】
光ファイバの長さ方向に沿って配置されたセンシングポイントは、振動源からの距離によって、振動波の振幅が異なることになる。一般に、振動源と光センシングファイバとの距離が最も短い光ファイバ上の点(垂直距離-
図1の点3)は、光ファイバセンサケーブルに沿って振動源から遠い点(斜め距離-
図1の点1,2,4,5)と比較して、最も大きな振幅を示す振動波を体験することになる。より遠くに位置するある地点では、振動は完全に消滅し、より遠くに位置する地点では検出されない。
【0029】
しかし、我々の目的では、潜在的な振動源からの各振動インスタンスが複数の同時センサフィードバック(感知された振動)を生成するという事実が、その距離の振動強度プロファイルを生成することを可能にするのである。
【0030】
このような感覚的な検出が十分に行われた場合、振動源と振動強度を対応付ける結合確率分布関数または結合確率密度関数によってベイズ推論モデルを確立することができる。光ファイバセンサケーブルから様々な垂直距離で、一定の間隔でデータを収集することができる。
【0031】
図1に例示するように、振動源は、埋設された光ファイバセンサケーブルから1mから12mまでの距離に配置されている。光ファイバンサーの感知点間の距離は、採用されるDFOSシステム(本開示の態様によれば、有利には分散型音響センサ(DAS)または分散型振動センサ(DVS)システム)の所望の空間分解能によって確立されるため既知である。
【0032】
このようなマップを作成するために、光ファイバセンサケーブルからの距離と観測強度との正準共同確率分布を確立するための訓練データセットを収集する。テストデータは離散的な間隔で収集されるため、製品は結合確率分布となる。また、カーネル密度やガウス過程回帰(GPR)法をオーバーレイとして使用することで、共同確率密度関数を確立することに成功したことも紹介した。
【0033】
このようなマップと、各垂直距離には、その特定の垂直距離で形成される可能性が高いいくつかの対角距離が存在する事実とを利用して、光ファイバからの垂直距離の最大尤度を算出することができる。その手順のフロー図を
図2に例示的に示す。
【0034】
なお、同図において、「I」は入力、「P」は手順、「O」は出力を表している。以下にその詳細を説明する。
【0035】
このシステムは、以下の入力を受け取る。
【0036】
I-1:通常シナリオの統計:DFOSシステムで一定期間フィールド状態を監視した後、光ファイバセンサケーブルのルート全長(工事なし)の背景ノイズに加えて、例えば道路トラフィックからの信号を含むシステムベースラインとしてセンシング信号強度統計が取得される。
【0037】
I-2:DFOSウォーターフォールストリーム:DFOSセンサからのウォーターフォールデータのスナップショットを、スライディングタイムウィンドウに基づいて構成したもの。
【0038】
I-3:アラーム閾値:各タイムウィンドウ内のケーブルポイントにおいて、振動源の距離を算出する。最終的なアラームの判断は、ウォーターフォールを継続的に監視し、複数の時間枠で距離を推定することで行うことができる。振動源の光ファイバセンサケーブルからの垂直距離が閾値よりも短い場合(例:ケーブルまで5m未満)、アラームが作動し、地図上に表示される。
【0039】
システムは、以下の手順を実行する。
【0040】
P-1:背景トラフィックの除去:パッチベースのメディアンフィルタを使用して、背景トラフィックを除去する。
【0041】
P-2:画像の2値化:工事現場の異常状態として、Zスコアの計算により信号を正規化し、最初の2値化判定を得ることができる。
【0042】
P-3:インテンシティプロファイルの生成:離散結合確率マップ(カーネル密度およびGPR)を用いて、各距離におけるデータセット振動強度プロファイルを生成する。
【0043】
P-4:距離の予測:ベイズ推論により、斜めのセンシングポイントと垂直のセンシングポイントとの強度の複合効果に基づいて、垂直振動源の距離を決定する。
【0044】
O-1:表示:光ファイバセンサのケーブルルート情報および検出距離を表示し、通信事業者/オペレータに可視化する。距離の決定に基づいて、技術者に現場活動の確認/決定を促すアラームを発生させることができる。
【0045】
開発したモデルのコンセプトは、研究開発用に埋設された光ファイバと、サービスネットワーク内の様々な場所にある光ファイバとでテストすることに成功した。
【0046】
図3(A)および
図3(B)は、光ファイバセンサケーブルからの離散的な垂直点、および本開示の態様による収集データの確率密度マップと比較した距離推定値の比較を示す。
【0047】
この図からわかるように、同じ振動源でケーブルから垂直に12離れた位置の収集データに基づいて設定された結合確率と左表に示した方法による推定値とは、その試験が行われた場所の波の伝搬に関するパラメータが知られていないことを考えると、望ましいものである。同様に、同じデータに基づいて距離を推定し、連続的な代替案として確率密度を生成するカーネル密度法を使用した結果を、直接的な確率分布法としてのビニング法と比較して、
図4(A)および
図4(B)に示す。これらは、本開示の態様による連続カーネル密度マップおよび離散Binningおよび分布マップを示すプロットである。
【0048】
必要な精度に応じて、カーネル密度のような連続的な関数アプローチをより多くの計算コストで実装することができる。しかし、一般的には、離散的なBinningアプローチは、より少ない計算コストで満足のいく結果を提供する。さらに、開発したモデルの適用性を証明するために、より深い深さに埋設され、地盤の状態に関してより不確実性が高い供用中のケーブルの光ファイバでテストした。また、
図5(A)および
図5(B)では、離散的なBinningマップとGPR拡張連続マップとの2つのアプローチによる振動源距離推定結果を示している。これらは、本開示の態様によるテストデータに対する予測結果のボックスプロットを示す。
【0049】
図6は、本開示の態様による全体的な手順のフロー図である。その図を参照すると、本発明の方法は、まず、分散型光ファイバセンサ(DFOS)システムとして構成された配備型ファイバリンクの光ファイバセンサケーブルから距離を置いた異なる垂直位置で、道路やその他のトラフィック、またはイベントや建設イベントなどのイベント特性による通常のベースライン振動レベルを測定および/または判定することを含むことがわかる。
【0050】
第2に、DFOSシステムの光ファイバセンサケーブルの位置を、地理的な地図に関連付ける。
【0051】
第3に、カーネル密度とガウス過程回帰を含む結合確率マップを用いて、各垂直位置の振動強度プロファイルのデータベースを生成する。
【0052】
第4に、メディアンフィルタリングによる背景トラフィックの判定にAIエンジンを採用する。
【0053】
第5に、DFOSシステムの動作の影響により振動信号が検出されると、Alエンジンが起動し、光ファイバセンサケーブルからの垂直振動源距離を決定する。
【0054】
第6に、光ファイバセンサケーブルから決定された垂直振動源距離が所定の閾値距離(すなわち、≦5m)以内である場合にアラームが発生し、アラームを報告する地図上に表示される。
【0055】
最後に、近接する振動源によるファイバ損傷イベントを回避するために、地理的地図に基づき、施設のオーナー/オペレータ/メンテナンス作業がその場所に派遣される。
【0056】
この時点で、当業者は、地下の光ファイバケーブルの位置を特定し、ケーブルに対する脅威、特に光ファイバに対して垂直に発生する脅威を特定し、インフラの信頼性を向上させるための光ファイバセンシング技術の有用性をさらに理解するだろう。今回、光ファイバセンシングと機械学習技術とを用い、運用中の5G伝送ネットワークを用いて環境活動を連続的に監視することを初めて報告・説明することができた。5G通信のトラフィックと同じファイバ内で、当社のインテリジェントセンシングシステムはリアルタイムでデータを処理し、ケーブルの脅威検出、位置特定、トラフィックセンシングに役立つ情報を抽出する。センシングフィールド/エリアの結果は、ルート全体の道路トラフィックや環境状況を全体的に把握することができ、渋滞や車両数、速度などの季節変動を発見する可能性がある。
【0057】
運用面では、きめ細かな時間分解能と低遅延性により、交通事業者が渋滞回避や事故低減のための動的ルーティングなど、適応的で正確な交通管理戦略を設計することができる。さらに、電柱、木、石などの落下事故、道路工事、遠方の振動源など、現場でのさまざまなケーブル脅威事象を検知し、局所化することが可能である。これらのイベントを即座に報告することで、ファイバセンシングに基づくセンシング機能のケーブルセルフプロテクションを促進し、さらに設備を保護することができる。
【0058】
光ファイバセンシング技術は、光ファイバケーブル付近の振動を感知し、大量のデータセットを生成する技術で、光ファイバ内の干渉波位相ビートによるレイリー散乱の強度変化を検出することにより、1本の光ファイバでオンプレミスのAIアシスタント多連続センシング機能を実現する。エッジAIでローカルにデータを処理することで、データの伝送と保存との両方のコストを削減し、データのプライバシーを強化する。このような継続的なセンシングを実現するために、我々は、高い便益費用比を持つオンプレミスAIプラットフォーム上にホストされたFiber-VTMS(車両トラフィック監視システム)とFiber-CS3(ケーブル安全自己保護システム)とについて述べる。
【0059】
図7は、このようなメニーインワンシステムをシングルフィールドファイバに接続した状態を示す模式図である。Fiber-VTMSとFiber-CS3との情報共有により、相関のある複雑な事象を発見することができ、誤報を減らすことができる。例えば、交通渋滞の根本的な原因としての道路工事や、ケーブルの損傷事象に対する責任者。検出されたイベントのGPS座標は、ケーブル位置特定モジュールによってピンポイントで特定することができる。
【0060】
Fiber-VTMSは、通常のトラフィックパターンを高フレームレートで正確にセグメント化するために畳み込みネットワークアーキテクチャを使用し、車両カウントと速度は後処理ステップで提供される。Fiber-CS3は、Fiber-VTMSからオンライン情報を収集し、ある時間帯における異常検出のための場所固有の閾値を設定するために利用する。
【0061】
まず、顕著性検出器により強い振動点を検出し、Fiber-VTMSで通常のトラフィックに起因しないものをFiber-CS3に供給する。これにより、高密度な時空間センシングデータは低遅延でオンザフライの異常検出を行うことができるように疎なフォーマットに縮小される。検出された異常事象の脅威レベルは、さらに時間-周波数表現に基づいて評価される。ケーブルに沿って検出された事象の位置を、地図上で正確に特定することができる。高レベルなサマリーの結果は、イベントログに保存され、将来の分析に役立てられる。
【0062】
米国ニュージャージー州ロングビーチアイランド(LBI)の通信事業者の5Gネットワークにおけるフィールドトライアル場所で、本発明の方法とシステムを評価した。監視ケーブルは、最初の2kmを空中ケーブル、残りの17kmを地下ケーブル(深さ40~60インチに埋設)で島を横断する19kmのケーブルである。この試験では、1台の分散型音響センシング(DAS)インタロゲータ/アナライザ/AIシステムを使用し、リアルタイム、連続、長期監視(7ヶ月超)のためにフィールドファイバに接続するために遠隔地に配置される。
【0063】
フィールドテストでは、発見された異常行動(空中ケーブルと埋設ケーブルの両方)を判定し、エビデンスマップ上に表示することができた。これまでの実験では、ケーブルの脅威レベルは周波数減衰のメカニズムによって決定される。ここで初めて、この方法が現場での施工によって検証された。スコアが異常な場合、光ファイバセンサケーブルが切断されるなど、危険性の高いイベントが発生する可能性がある。光ファイバセンシング技術により、このような事象が発生した場合、即座に通信事業者に報告することができ、通信ネットワークのダウンタイムを防止/低減することができると判断した。
【0064】
フィールドトライアルで収集したデータを使って、発生源からケーブルまでの距離を推定するパイロットスタディに成功した。操作的には、少なくとも0.9mの間隔を隔ててケーブルまで1.8~11mの距離から、振動装置で機械のエンジン音を模擬した。アクティブカバレッジは、ケーブルに沿って約65.2mであった。収集したデータから、ケーブルに沿った各センシングポイント(合計41点)を、埋設ケーブルの中間点(21番目)で垂直に離脱させた。センシングポイントの強度は、中点での強度が一貫して高く、遠くのセンシングポイント(暗い部分)ではそれに比例して低下するという、明確な対称パターンで変化する。
【0065】
距離と強度との推定結合確率分布に基づく確率論的モデルを開発した。このモデルは、光ファイバセンサケーブルから振動源の距離を予測する際に、常に高い性能を発揮した。平均値と中央値の指標は、ケーブルからの距離が近いほど高い精度で予測できることを示した。
【0066】
その結果、運用中の5Gトランスポートネットワークにおいて、1本の標準ファイバで1台のDASを使用し、ケーブル安全自己保護、イベント位置特定、トラフィック監視アプリケーションを共存させることに成功した。天候や地盤など様々な環境要因で変動する環境下で、自己正規化に基づき動作する連続監視システムである。オンプレミスのAIプラットフォームは、タイムリーな動作を起こすための低レイテンシーを保証する。ファイバセンシングは、他のセンサを導入することなくケーブルの安全性を確保するユニークなソリューションであり、他のミッションクリティカルな5G以降のアプリケーションをサポートする上で非常に有用である。フィールドトライアルの結果、オンプレミスAIによる分散型ファイバセンシングは、通信事業者と第三者である顧客(交通事業者など)の双方に、相互に利益をもたらす付加価値を生み出すことができ、光ファイバが敷設されている人口の少ない地方都市での将来のスマート交通、安全な都市、スマートシティへの応用や監視に大きな可能性を持つことがわかった。
【0067】
この時点で、いくつかの具体例を用いて本開示を示したが、当業者は、我々の教示がそれほど限定されていないことを認識するであろう。したがって、本開示は、本明細書に添付された請求項の範囲によってのみ限定されるべきものである。
【国際調査報告】