(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-30
(54)【発明の名称】複合黒鉛材料及びその調製方法、負極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電気装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/587 20100101AFI20231122BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20231122BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20231122BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/62 Z
H01M4/133
H01M4/36 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530727
(86)(22)【出願日】2022-05-18
(85)【翻訳文提出日】2023-05-19
(86)【国際出願番号】 CN2022093671
(87)【国際公開番号】W WO2023040319
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202111079771.0
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】康 蒙
(72)【発明者】
【氏名】何 立兵
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050GA06
5H050GA10
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA08
5H050HA13
5H050HA14
(57)【要約】
本願は、複合黒鉛材料およびその調製方法、負極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電気装置を開示する。
【解決手段】 複合黒鉛材料は、バルク粒子及びバルク粒子の表面の少なくとも一部に位置する被覆層を含み、前記バルク粒子は2個以上の一次粒子が凝集してなる二次粒子であり、前記バルク粒子は、人造黒鉛を含み、前記被覆層は、非晶質炭素を含み、前記複合黒鉛材料の空気酸化温度T
0は630℃~730℃である。本願に係る複合黒鉛材料能は、二次電池が高いエネルギー密度を有するという前提の下で、急速充電性能及び低温出力性能を大幅に向上させることができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個以上の一次粒子が凝集してなる二次粒子であるバルク粒子と、バルク粒子の表面の少なくとも一部に位置する被覆層とを含む複合黒鉛材料であって、前記バルク粒子は人造黒鉛を含み、前記被覆層は非晶質炭素を含み、
前記複合黒鉛材料の空気酸化温度T
0は、630℃~730℃であり、任意に660℃~710℃であり、
前記空気酸化温度T
0とは、前記複合黒鉛材料の熱重量曲線における500℃とT
1温度とにそれぞれ対応する2点の2つの接線の交点に対応する温度であり、前記T
1温度とは、前記複合黒鉛材料の微分熱重量曲線における最大面積ピークのピークトップ温度であり、前記熱重量曲線と前記微分熱重量曲線は、試料質量10±0.05mg、パージガスが空気、ガス速率60mL/min、昇温速度5℃/min、測定温度範囲35℃~950℃の条件で行う熱重量分析により得られる、複合黒鉛材料。
【請求項2】
前記複合黒鉛材料は、さらに動的炭素材料を含み、
任意に、前記動的炭素材料は、前記バルク粒子における一次粒子と一次粒子との間の界面の少なくとも一部に及び/又は前記被覆層中に位置し、
任意に、前記複合黒鉛材料の総質量に基づいて、前記動的炭素材料の質量パーセント含有量は、1%~30%であり、さらに任意に8%~15%である、請求項1に記載の複合黒鉛材料。
【請求項3】
前記動的炭素材料の原料は、ハードカーボン、微細膨張黒鉛、膨張黒鉛、グラフェンから選ばれた1種又は複数種であり、前記動的炭素材料原料の(002)結晶面の層間距離d002≧0.3358nmであり、任意に0.3359nm~0.3366nmである、請求項2に記載の複合黒鉛材料、
【請求項4】
前記複合黒鉛材料の(002)結晶面の層間距離d
002は、0.3355nm~0.3364nmであり、任意に0.3356nm~0.3361nmであり、及び/又は、
前記複合黒鉛材料の体積平均粒子径Dv50は、8.5μm~14.5μmであり、任意に10μm~12μmであり、及び/又は、
前記バルク粒子の体積平均粒子径Dv50は、7.5μm~13.5μmであり、任意に9.0μm~11.5μmであり、及び/又は、
前記複合黒鉛材料の20000N作用力での粉体圧密密度は、1.45g/cm
3~1.75g/cm
3であり、任意に1.55g/cm
3~1.65g/cm
3である、請求項1~3のいずれの1項に記載の複合黒鉛材料。
【請求項5】
前記一次粒子の体積平均粒子径Dv50とそれからなる二次粒子の体積平均粒子径Dv50との比値は0.45~0.75であり、任意に0.55~0.65である、請求項1~4のいずれの1項に記載の複合黒鉛材料。
【請求項6】
前記複合黒鉛材料の総質量に基づいて、前記被覆層における非晶質炭素の質量パーセント含有量は、1%~8%であり、任意に2%~5%である、請求項1~5のいずれの1項に記載の複合黒鉛材料。
【請求項7】
S10:コークス粉末、又は、動的炭素材料原料粉末を添加したコークス粉末を提供し、前記コークス粉末又は前記動的炭素材料原料粉末を添加したコークス粉末を、黒鉛化処理してバルク粒子を得るステップであって、前記バルク粒子が2個以上の一次粒子が凝集してなる二次粒子であり、前記バルク粒子は、人造黒鉛を含むステップ、および、
S20:前記バルク粒子を有機炭素源と混合し、又は、前記バルク粒子を有機炭素源及び前記動的炭素材料原料粉末と混合し、炭素化処理した後バルク粒子の表面の少なくとも一部に非晶質炭素を含む被覆層を形成して前記複合黒鉛材料を得るステップ、
を含む複合黒鉛材料を調製する方法であって、
ステップS10とS20の少なくとも一方に前記動的炭素材料原料粉末を添加し、動的炭素材料原料はハードカーボン、微細膨張黒鉛、膨張黒鉛、グラフェンから選ばれた1種又は複数種であり、動的炭素材料原料の(002)結晶面の層間距離d
002≧0.3358nmであり、任意にd
002は、0.3359nm~0.3366nmであり、
得られた複合黒鉛材料の空気酸化温度T
0は、630℃~730℃であり、前記空気酸化温度T
0とは、前記複合黒鉛材料の熱重量曲線における500℃とT
1温度にそれぞれ対応する2点の2つの接線の交点に対応する温度であり、前記T
1温度とは、前記複合黒鉛材料の微分熱重量曲線における最大面積ピークのピークトップ温度であり、前記熱重量曲線と前記微分熱重量曲線は、試料質量10±0.05mg、パージガスは空気でかつガス速率が60mL/min、昇温速度5℃/min、測定温度範囲35℃~950℃の条件で行う熱重量分析により得られる、複合黒鉛材料を調製する方法。
【請求項8】
得られた複合黒鉛材料の総質量に基づいて、ステップS10、S20に添加された動的炭素材料原料粉末の総質量パーセント含有量は、1%~30%であり、任意に8%~15%である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
コークス粉末の体積平均粒子径Dv50は、6μm~12μmであり、任意に8μm~10μmであり、及び/又は、
動的炭素材料原料粉末の体積平均粒子径Dv50は、3μm~12μmであり、任意に4μm~9μmであり、
任意にコークス粉末の体積平均粒子径Dv50と動的炭素材料原料粉末の体積平均粒子径Dv50との比は1.05~1.75であり、さらに任意に1.2~1.5である、請求項7~8のいずれの1項に記載の方法。
【請求項10】
さらに、S10にバインダーを添加し、バインダーをコークス粉末と混合して造粒し、さらに黒鉛化処理してバルク粒子を得、或は、バインダーを、動的炭素材料原料粉末を添加したコークス粉末と混合して造粒し、そして黒鉛化処理してバルク粒子を得るステップを含み、
任意に、得られた複合黒鉛材料の総質量に基づいて、前記バインダー的質量パーセント含有量は、3%~12%であり、さらに任意に5%~8%であり、
任意に、前記バインダーは、アスファルトから選ばれたものであり、
任意に、造粒して得られた粒子の体積平均粒子径Dv50は、8μm~14μmであり、さらに任意に9.5μm~12μmである、請求項7~9のいずれの1項に記載の方法。
【請求項11】
S20において、前記有機炭素源は、石炭アスファルト、石油アスファルト、フェノール樹脂、ココヤシの殻から選ばれた1種又は複数種であり、任意に石油アスファルトであり、
任意に、得られた複合黒鉛材料の総質量に基づいて、前記有機炭素源の添加量は、有機炭素源を炭素化させて得られた非晶質炭素の質量パーセント含有量が1%~8%、任意に2%~5%となる添加量である、請求項7~10のいずれの1項に記載の方法。
【請求項12】
負極集電体および負極集電体の少なくとも1つの面に設けられた負極膜層を含む負極シートであって、前記負極膜層は、請求項1~6のいずれの1項に記載の複合黒鉛材料、又は請求項7~11のいずれの1項に記載の方法で調製された複合黒鉛材料を含み、
任意に、前記負極膜層は、さらに添加剤を含み、前記添加剤は、ハードカーボン、微細膨張黒鉛、膨張黒鉛、グラフェンから選ばれた1種又は複数種であり、前記添加剤の(002)結晶面の層間距離d
002≧0.3358nmであり、任意に0.3359nm~0.3366nmであり、
任意に、負極膜層の総質量に基づいて、添加剤の質量パーセント含有量は、1%~20%であり、さらに任意に3%~8%である、負極シート。
【請求項13】
請求項12に記載の負極シートを含む二次電池。
【請求項14】
請求項13に記載の二次電池を含む電池モジュール。
【請求項15】
請求項13に記載の二次電池、請求項14に記載の電池モジュールのうちの1種を含む電池パック。
【請求項16】
請求項13に記載の二次電池、請求項14に記載の電池モジュール、請求項15に記載の電池パックのうちの少なくとも1種を含む、電気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本願は、2021年09月15日に出願された発明の名称が「複合黒鉛材料及びその調製方法、負極シート、二次電池」である中国特許出願第202111079771.0号の優先権を主張するものであり、当該出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、電池技術分野に属し、特に複合黒鉛材料及びその調製方法、負極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電気装置に関する。
【背景技術】
【0003】
二次電池は、正極と負極との間での活性イオンの往復挿入・脱離により充電及び放電を行い、エネルギー密度が高く、サイクル寿命が長く、しかも汚染がなく、メモリ効果もないなどの顕著な特徴を有している。そのため、二次電池は、クリーンなエネルギーとして、環境やエネルギーの持続発展戦略に対応するために、電子製品から電気自動車などの大型装置分野への普及が徐々に進んでいる。しかしながら、伝統的な燃料車両による迅速及びタイムリーな給油に比べて、電気自動車は、一般的に、小さい倍率で充電され、これはしばしば長い充電時間を必要とし、消費者に航続距離の不安をもたらし、電気自動車の急速な普及が制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願は、二次電池に高いエネルギー密度を持たせるという前提で、大幅に向上された急速充電性能と低温出力性能を有させる複合黒鉛材料及びその調製方法、負極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の第1の態様は、2個以上の一次粒子が凝集してなる二次粒子であるバルク粒子と、前記バルク粒子の表面の少なくとも一部に位置する被覆層とを含む複合黒鉛材料であって、前記バルク粒子は人造黒鉛を含み、前記被覆層は非晶質炭素を含み、前記複合黒鉛材料の空気酸化温度T0は、630℃~730℃である前記複合黒鉛材料を提供する。空気酸化温度T0とは、前記複合黒鉛材料の熱重量曲線における500℃とT1温度とにそれぞれ対応する2点の2つの接線の交点に対応する温度であり、前記T1温度とは、前記複合黒鉛材料の微分熱重量曲線における最大面積ピークのピークトップ温度であり、前記熱重量曲線と前記微分熱重量曲線は、試料質量10±0.05mg、パージガスは空気で、かつガス速率が60mL/min、昇温速度5℃/min、測定温度範囲35℃~950℃の条件で行う熱重量分析により得られる。
【0006】
複合黒鉛材料の空気酸化温度T0は、複合黒鉛材料の空気酸化による重量減少が始まるときの温度を正確に表すことができ、ひいては複合黒鉛材料の端面および欠陥の数を正確に反映することができる。複合黒鉛材料の空気酸化温度T0は630℃~730℃であり、この時、複合黒鉛材料に含まれる端面及び欠陥の数は、適度であり、複合黒鉛材料は、良好な活性イオンと電子の輸送性能を有し、複合黒鉛材料表面での活性イオンと電子の電荷交換速度が比較的に速く、かつ複合黒鉛材料内での活性イオン固相輸送能力が比較的に高いため、二次電池は、高いエネルギー密度を持つという前提で、大幅に向上された急速充電性能と低温出力性能を有する。
【0007】
本願のいずれかの実施形態において、複合黒鉛材料の空気酸化温度T0は660℃~710℃である。複合黒鉛材料の空気酸化温度T0が適切な範囲内である場合、複合黒鉛材料により適度な端面および欠陥の数を有させることができ、さらに活性イオンと電子の輸送性能を向上させ、二次電池の急速充電性能及び低温出力性能を向上させることができる。
【0008】
本願のいずれかの実施形態において、複合黒鉛材料は、さらに動的炭素材料を含む。
【0009】
本願のいずれかの実施形態において、動的炭素材料は、バルク粒子における一次粒子と一次粒子との間の界面の少なくとも一部に位置する。
【0010】
本願のいずれかの実施形態において、動的炭素材料は、被覆層中に位置する。
【0011】
本願のいずれかの実施形態において、動的炭素材料は、バルク粒子における一次粒子と一次粒子との間の界面の少なくとも一部及び被覆層の両方に位置する。
【0012】
本願のいずれかの実施形態において、動的炭素材料原料は、ハードカーボン、微細膨張黒鉛、膨張黒鉛、グラフェンから選ばれた1種又は複数種であり、動的炭素材料原料(002)結晶面の層間距離d002≧0.3358nmである。
【0013】
任意に、動的炭素材料原料(002)結晶面の層間距離d002は、0.3359nm~0.3366nmである。
【0014】
前記動的炭素材料原料から得られた動的炭素材料が複合黒鉛材料のバルク粒子及び/又は被覆層に均一に分布している場合、活性イオンの急速な挿入・脱離に有利で、活性イオンと電子の輸送性能を向上させ、さらに二次電池の急速充電性能及び低温出力性能を向上させることができ、かつ、二次電池のエネルギー密度の損失をもたらすこともない。
【0015】
本願のいずれかの実施形態において、複合黒鉛材料の総質量に基づいて、動的炭素材料の質量パーセント含有量は1%~30%である。任意に、動的炭素材料の質量パーセント含有量は、8%~15%である。動的炭素材料の質量パーセント含有量が適切な範囲内である場合、複合黒鉛材料に高いグラム容量を持たせるという前提で、比較的に高い活性イオン固相輸送能力および比較的に高い活性イオンと電子の電荷交換速度を有させることができる。
【0016】
本願のいずれかの実施形態において、複合黒鉛材料(002)結晶面の層間距離d002は、0.3355nm~0.3364nmである。任意に、複合黒鉛材料(002)結晶面の層間距離d002は0.3356nm~0.3361nmである。複合黒鉛材料が比較的に高い層間距離d002を有する場合、その中の活性イオン固相輸送能力を向上させ、二次電池の急速充電性能および低温出力性能を向上させることができる。
【0017】
本願のいずれかの実施形態において、複合黒鉛材料の体積平均粒子径Dv50は、8.5μm~14.5μmである。任意に、複合黒鉛材料の体積平均粒子径Dv50は、10μm~12μmである。複合黒鉛材料の体積平均粒子径Dv50が適切な範囲内である場合、複合黒鉛材料は、より良好な活性イオンと電子の輸送性能及び急速充電性能を有し、かつ、複合黒鉛材料は、比較的に高い粉体圧密密度を有することができる。
【0018】
本願のいずれかの実施形態において、バルク粒子の体積平均粒子径Dv50は、7.5μm~13.5μmである。任意に、バルク粒子の体積平均粒子径Dv50は9.0μm~11.5μmである。複合黒鉛材料のバルク粒子の体積平均粒子径Dv50が適切な範囲内である場合、複合黒鉛材料は、より良好な活性イオンと電子の輸送性能を有するという前提で、さらにより高いグラム容量を有することができる。
【0019】
本願のいずれかの実施形態において、一次粒子の体積平均粒子径Dv50とそれからなる二次粒子の体積平均粒子径Dv50との比値は0.45~0.75である。任意に、一次粒子の体積平均粒子径Dv50とそれからなる二次粒子の体積平均粒子径Dv50との比値は0.55~0.65である。前記比値が適切な範囲内である場合、複合黒鉛材料のバルク粒子は、比較的に良い二次粒子の度合いを有し、複合黒鉛材料の活性イオンと電子の輸送性能を向上させると共に比較的に高い構造安定性を有させることができる。
【0020】
本願のいずれかの実施形態において、複合黒鉛材料の総質量に基づいて、被覆層における非晶質炭素の質量パーセント含有量は、1%~8%である。任意に、被覆層における非晶質炭素の質量パーセント含有量は、2%~5%である。非晶質炭素の含有量が適切な範囲内である場合、複合黒鉛材料に高いグラム容量を有させると共に、比較的に高い活性イオン固相輸送能力を持たせることができる。
【0021】
本願のいずれかの実施形態において、複合黒鉛材料の20000N作用力での粉体圧密密度は、1.45g/cm3~1.75g/cm3である。任意に、複合黒鉛材料の20000N作用力での粉体圧密密度は、1.55g/cm3~1.65g/cm3である。複合黒鉛材料の粉体圧密密度が適切な範囲内である場合、負極膜層は、比較的に高い圧密密度を有し、更に二次電池は比較的に高いエネルギー密度を有することができる。また、複合黒鉛材料は、サイクル過程において負極膜層の細孔構造を維持する能力が高くなり、負極シートの電解液浸潤性がより良くなるため、二次電池のサイクル性能を向上させることにも寄与する。
【0022】
本願の第2の態様は、S10:コークス粉末、又は、動的炭素材料原料粉末を添加したコークス粉末を提供し、前記コークス粉末又は前記動的炭素材料原料粉末を添加したコークス粉末を、黒鉛化処理してバルク粒子を得るステップであって、前記バルク粒子が2個以上の一次粒子が凝集してなる二次粒子であり、前記バルク粒子は、人造黒鉛を含むステップ、および、S20:前記バルク粒子を有機炭素源と混合し、又は、前記バルク粒子を有機炭素源及び前記動的炭素材料原料粉末と混合し、炭素化処理してバルク粒子の表面の少なくとも一部に非晶質炭素を含む被覆層を形成し、前記複合黒鉛材料を得るステップ、を含む複合黒鉛材料を調製する方法を提供する。ステップS10とS20の少なくとも一方に前記動的炭素材料原料粉末を添加し、動的炭素材料原料は、ハードカーボン、微細膨張黒鉛、膨張黒鉛、グラフェンから選ばれた1種又は複数種であり、動的炭素材料原料(002)結晶面の層間距離d002≧0.3358nmである。
【0023】
得られた複合黒鉛材料の空気酸化温度T0は、630℃~730℃であり、前記空気酸化温度T0とは、前記複合黒鉛材料の熱重量曲線における500℃とT1温度にそれぞれ対応する2点の2つの接線の交点に対応する温度であり、前記T1温度とは、前記複合黒鉛材料の微分熱重量曲線における最大面積ピークのピークトップ温度であり、前記熱重量曲線と前記微分熱重量曲線は、試料質量10±0.05mg、パージガスは空気で、かつガス速率が60mL/min、昇温速度5℃/min、測定温度範囲35℃~950℃の条件で行う熱重量分析により得られる。
【0024】
本願に係る複合黒鉛材料の調製方法は、操作が簡単でコストを抑えられ、大規模な工業生産が可能である。本願に係る方法により、端面と欠陥の含有量が適度な複合黒鉛材料が得られ、さらに二次電池は、高いエネルギー密度を有するという前提で、大幅に向上された急速充電性能及び低温出力性能を有することができる。
【0025】
本願のいずれかの実施形態において、動的炭素材料原料(002)結晶面の層間距離d002は、0.3359nm~0.3366nmである。
【0026】
本願のいずれかの実施形態において、得られた複合黒鉛材料の総質量に基づいて、ステップS10、S20に添加された動的炭素材料原料粉末の総質量パーセント含有量は、1%~30%である。任意に、ステップS10、S20に添加された動的炭素材料原料粉末の総質量パーセント含有量は8%~15%である。
【0027】
本願のいずれかの実施形態において、コークス粉末の体積平均粒子径Dv50は、6μm~12μmである。任意に、コークス粉末の体積平均粒子径Dv50は、8μm~10μmである。
【0028】
本願のいずれかの実施形態において、動的炭素材料原料粉末の体積平均粒子径Dv50は、3μm~12μmである。任意に、動的炭素材料原料粉末の体積平均粒子径Dv50は、4μm~9μmである。
【0029】
本願のいずれかの実施形態において、コークス粉末の体積平均粒子径Dv50と動的炭素材料原料粉末の体積平均粒子径Dv50との比は、1.05~1.75である。任意に、コークス粉末の体積平均粒子径Dv50と動的炭素材料原料粉末の体積平均粒子径Dv50との比は、1.2~1.5である。コークス粉末の体積平均粒子径Dv50と動的炭素材料原料粉末の体積平均粒子径Dv50との比が適切な範囲内である場合、複合黒鉛材料のバルク粒子に比較的に良好な二次粒子の度合いを有させることができる。
【0030】
本願のいずれかの実施形態において、前記方法は、さらに、S10にバインダーを添加し、バインダーをコークス粉末と混合して造粒し、そして黒鉛化処理してバルク粒子を得、または、バインダーを、動的炭素材料原料粉末を添加したコークス粉末と混合して造粒し、そして黒鉛化処理してバルク粒子を得るステップを含む。バインダーを添加することにより、複合黒鉛材料のバルク粒子に比較的に良好な二次粒子の度合いを有させ、複合黒鉛材料の活性イオンと電子の輸送性能を向上させると共に、比較的に高い構造安定性を有させることに有利である。
【0031】
本願のいずれかの実施形態において、得られた複合黒鉛材料の総質量に基づいて、バインダーの質量パーセント含有量は3%~12%である。任意に、バインダーの質量パーセント含有量は5%~8%である。バインダーの含有量が適切な範囲内である場合、粒子の過度の凝集を回避し、複合黒鉛材料のバルク粒子に比較的に良好な二次粒子の度合いを有させることができる。
【0032】
本願のいずれかの実施形態において、バインダーは、アスファルトから選ばれたものである。
【0033】
本願のいずれかの実施形態において、造粒して得られた粒子は、体積平均粒子径Dv50が8μm~14μmである。任意に、造粒して得られた粒子は、体積平均粒子径Dv50が9.5μm~12μmである。
【0034】
本願のいずれかの実施形態において、S20において、有機炭素源は、石炭アスファルト、石油アスファルト、フェノール樹脂、ココヤシの殻から選ばれた1種又は複数種である。任意に、有機炭素源は、石油アスファルトから選ばれたものである。
【0035】
本願のいずれかの実施形態において、得られた複合黒鉛材料の総質量に基づいて、有機炭素源の添加量は、有機炭素源を炭素化させて得られた非晶質炭素の質量パーセント含有量が1%~8%となる添加量である。任意に、有機炭素源の添加量は、有機炭素源を炭素化させて得られた非晶質炭素の質量パーセント含有量が2%~5%となる添加量である。有機炭素源の添加量が適切な範囲内である場合、複合黒鉛材料に高いグラム容量を有させると共に、比較的に高い活性イオン固相輸送能力を有させることができる。
【0036】
本願の第3の態様は、負極集電体および負極集電体の少なくとも1つの面に設けられた負極膜層を含む負極シートであって、前記負極膜層は、本願の第1の態様の複合黒鉛材料、又は、本願の第2の態様の方法で調製された複合黒鉛材料を含む負極シートを提供する。
【0037】
本願のいずれかの実施形態において、負極膜層は、さらに添加剤を含み、添加剤は、ハードカーボン、微細膨張黒鉛、膨張黒鉛、グラフェンから選ばれた1種又は複数種であり、添加剤(002)結晶面の層間距離d002≧0.3358nmである。これらの添加剤は、比較的に良好な活性イオンと電子の輸送性能を有し、二次電池に高いエネルギー密度を有させるという前提で、大幅に向上させた急速充電性能及び低温出力性能を有させることができる。
【0038】
本願のいずれかの実施形態において、添加剤(002)結晶面の層間距離d002は、0.3359nm~0.3366nmである。
【0039】
本願のいずれかの実施形態において、負極膜層の総質量に基づいて、添加剤の質量パーセント含有量は1%~20%である。任意に、添加剤の質量パーセント含有量は3%~8%である。添加剤の質量パーセント含有量が適切な範囲内である場合、二次電池に高いエネルギー密度を有させるという前提で、大幅に向上された急速充電性能および低温出力性能を有させることができる。また、添加剤の質量パーセント含有量が適切な範囲内である場合、サイクル過程中に負極膜層の細孔構造を維持する能力がより高くなり、負極シートの電解液浸潤性がより良くなり、二次電池はさらに良好なサイクル性能を兼ね備える。
【0040】
本願の第4の態様は、本願の第3の態様に負極シートを含む二次電池を提供する。
【0041】
本願の第5の態様は、本願の第4の態様の二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0042】
本願の第6の態様は、本願の第4の態様の二次電池、第5の態様の電池モジュールのうちの1種を含む電池パックを提供する。
【0043】
本願の第7の態様は、本願の第4の態様の二次電池、第5の態様の電池モジュール、第6の態様の電池パックのうちの少なくとも1種を含む電気装置を提供する。
【発明の効果】
【0044】
本願に係る二次電池は、高いエネルギー密度を有するという前提で、さらに大幅に向上された急速充電性能及び低温出力性能を有することができる。本願に係る電池モジュール、電池パック及び電気装置は、本願が提供する二次電池を含むため、少なくとも前記二次電池と同様な利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本願の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下、本願の実施例に必要な図面を簡単に紹介するが、以下に述べる図面は本願の実施形態の一部に過ぎず、当業者にとって、創造的な労働を払わずに、図面に基づいて他の図面を獲得することができることは明らかである。
【0046】
【
図1】本願に係る複合黒鉛材料の1つの実施形態の概略図である。
【
図2】本願に係る複合黒鉛材料のもう1つの実施形態の概略図である。
【
図3】本願に係る複合黒鉛材料の他の1つの実施形態の概略図である。
【
図4】本願に係る二次電池の1つの実施形態の概略図である。
【
図5】本願に係る二次電池の1つの実施形態の分解概略図である。
【
図6】本願に係る電池モジュールの1つの実施形態の概略図である。
【
図7】本願に係る電池パックの1つの実施形態の概略図である。
【
図9】本願に係る二次電池を電源として用いる電気装置の1つの実施形態の概略図である。
【
図10】実施例3と比較例2の複合黒鉛材料の熱重量曲線と微分熱重量曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、図面を適当に参照しながら、本願に係る複合黒鉛材料およびその調製方法、負極シート、二次電池、電池モジュール、電池パックならびに電気機器を具体的に開示した実施形態について詳細に説明する。但し、不要な詳細な説明を省略する場合がある。例えば、既によく知られている事項についての詳細な説明や、実質的に同一の構成に対して重複する説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを回避し、当業者の理解を容易にするためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供するものであり、特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0048】
本明細書に開示される「範囲」は、下限および上限の形で限定され、所与の範囲は、ある下限およびある上限を選択することによって限定され、選択された下限および上限は、特定の範囲の境界を限定する。このように限定された範囲は、端値を含んでいても含んでいなくでもよく、かつ、任意に組み合わせてもよく、すなわち、任意の下限を他の任意の上限と組み合わせて1つの範囲を形成することができる。たとえば、特定のパラメーターに対して60~120と80~110の範囲がリストされている場合、60~110および80~120の範囲と理解されることも予想される。また、リストされる最小範囲値が1および2であり、かつ、リストされる最大範囲値が3、4および5である場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4および2~5といった範囲は、すべて予想される。本明細書において、特別な説明がない限り、数値範囲「a~b」は、aとbの間の実数の任意の組み合わせの省略表現を表す。ここで、aとbはともに実数である。たとえば、数値範囲「0~5」は、「0~5」の間の実数のすべてが本明細書にリストされていることを意味し、「0~5」は単にこれらの数値の組み合わせの略記である。また、あるパラメーターが≧2の整数であると表記される場合、当該パラメーターが例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などの整数であることを開示しているに相当する。
【0049】
特別な説明がない限り、本願のすべての実施形態および選択的な実施形態は、互いに組み合わせて新規な技術案を形成することができる。
【0050】
特別な説明がない限り、本願のすべての技術的な特徴および選択的な技術的な特徴は、互いに組み合わせて新規な技術案を形成することができる。
【0051】
特別な説明がない限り、本願のすべてのステップは、順番に行ってもよく、ランダムに行ってもよく、好ましくは順番に行う。例えば、前記方法がステップ(a)および(b)を含むことは、前記方法がステップ(a)および(b)を順番に行うが、もしくは、順番にステップ(b)および(a)を行うことを意味する。例えば、前文に言及した前記方法がさらにステップ(c)を含んでもよいということは、ステップ(c)を任意の順番で前記方法に加えてもよく、例えば、前記方法は、ステップ(a)、(b)および(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)および(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)および(b)を含んでもよいなどを意味する。
【0052】
特別な説明がない限り、本明細書に言及される「含む」及び「含有」は、開放型であることを意味し、閉鎖型であってもよい。例えば、前記「含む」及び「含有」は、リストされていない他の構成要素も含まれ得るか、又は含有され得ることを意味し、リストされた構成要素のみが含まれるか、又は、含有されてもよい。
【0053】
特別な説明がない限り、本発明において、「または」という用語は、包括的である。例えば、「AまたはB」というフレーズは、「A、B、または、AとBの両方」を意味する。具体的には、Aが真(または存在する)でBが偽(または存在しない)、Aが偽(または存在しない)でBが真(または存在する)、またはAとBが真(または存在する)のいずれかの条件も、「AまたはB」という条件を満たす。
【0054】
本明細書において、「微細膨張黒鉛」とは、膨張前後の嵩体積変化(すなわち、膨張倍率)が80~200である黒鉛を意味し、「膨張黒鉛」とは膨張前後の嵩体積変化(すなわち、膨張倍率)>200である黒鉛を意味する。
【0055】
本明細書において、「コークス原料」とは、処理を経て「コークス」を得ることができる成分、すなわち、コークスを製造するための原料を言う。「コークス」とは、コークス原料をコークス処理して得られた生成物を意味し、「コークス粉末」と「コークス」は組成的に完全に一致し、「コークス粉末」とは一定の粒子サイズの粉末の形で存在する「コークス」を意味し、「コークス」を破砕などで処理して「コークス粉末」を得る。
【0056】
本明細書において、「動的炭素材料原料」と「動的炭素材料原料粉末」は、組成的に完全に一致し、「動的炭素材料原料粉末」とは、一定の粒子サイズの粉末の形で存在する「動的炭素材料原料」を意味する。「動的炭素材料」とは、「動的炭素材料原料」又は「動的炭素材料原料粉末」を黒鉛化処理及び/又は炭素化処理した後の生成物を意味する。
【0057】
本明細書において、「非晶質炭素」とは、黒鉛化の結晶化度が低く、非晶形態(又は固定形状や周期的な構造規則のない)に近い遷移状態の炭素材料を指す。本明細書において、「非晶質炭素」とは、有機炭素源を炭素化処理した後の生成物を意味する。
【0058】
二次電池の急速充電性能を向上させるための鍵は、負極シートと負極活性材の性能を向上させることである。二次電池の急速充電性能を向上させるために、従来技術では通常、負極活性材としてハードカーボンを選択するが、ハードカーボンは、グラム容量と圧密密度が比較的に低く、二次電池は高いエネルギー密度を持つことが困難であり、電気自動車の航続距離は大幅に短縮される。負極活性材として黒鉛を使用すると、二次電池は比較的に高いエネルギー密度を持つことができるが、二次電池の急速充電性能と低温出力性能は劣る。
【0059】
本発明者らは、多くの研究を経て、二次電池に高いエネルギー密度を持たせるという前提で、大幅に向上された急速充電性能と低温出力性能を有させることができる新規な複合黒鉛材料を提出する。
【0060】
複合黒鉛材料
本願の実施形態の第1の態様は、バルク粒子及びバルク粒子の表面の少なくとも一部に位置する被覆層を含む複合黒鉛材料であって、前記バルク粒子が2個以上の一次粒子が凝集してなる二次粒子であり、前記バルク粒子が人造黒鉛を含み、前記被覆層が非晶質炭素を含み、前記複合黒鉛材料の空気酸化温度T0が630℃~730℃である前記複合黒鉛材料を提供する。空気酸化温度T0とは、前記複合黒鉛材料の熱重量曲線における500℃とT1温度とにそれぞれ対応する2点の2つの接線の交点に対応する温度であり、前記T1温度とは、前記複合黒鉛材料の微分熱重量曲線における最大面積ピークのピークトップ温度であり、前記熱重量曲線と前記微分熱重量曲線は、試料質量10±0.05mg、パージガスは空気で、かつガス速率が60mL/min、昇温速度5℃/min、測定温度範囲35℃~950℃の条件で行う熱重量分析により得られる。
【0061】
空気酸化温度T0は、下記のステップを含む熱重量分析により決定することができる。すなわち、複合黒鉛材料を、秤量質量10±0.05mg、パージガスが空気でかつガス速率が60mL/min、昇温速度5℃/min、測定温度範囲35℃~950℃の条件で熱重量測定を行って熱重量曲線(TG曲線とも称される)と微分熱重量曲線(DTG曲線とも称される)を得、微分熱重量曲線から最大面積ピークのピークトップ温度T1を読み取り、かつ、熱重量曲線におけるそれぞれ500℃とT1温度とに対応する2点の2つの接線の交点を決定し、前記熱重量曲線における当該交点に対応する温度は、複合黒鉛材料の空気酸化温度T0になる。
【0062】
黒鉛の端面と欠陥の数が多いほど、黒鉛内の活性イオンを挿入・脱離できるサイトの数は、多くなり、二次電池は、急速充電性能および低温出力性能が向上する。本発明者らは、黒鉛の端面と欠陥の数が黒鉛の空気酸化による重量減少が始まるときの温度に密接に関連していることを予期せず発見した。黒鉛の空気酸化による重量減少が始まるときの温度が低いほど、黒鉛の端面と欠陥の数は、多くなり、さらに二次電池の急速充電性能と低温電力は、向上する。
【0063】
本発明者らは、熱重量曲線における500℃と最大面積ピークのピークトップ温度T1とにそれぞれ対応する2点の2つの接線の交点に対応する温度、すなわち、黒鉛の空気酸化温度T0が黒鉛の空気酸化による重量減少が始まるときの温度を、正確に表すことができ、さらに黒鉛の端面と欠陥の数を正確に反映することができることを予期せず発見した。本願の第1の態様の複合黒鉛材料は、空気酸化温度T0が630℃~730℃であり、この時、複合黒鉛材料に含まれる端面と欠陥の数は適度であり、複合黒鉛材料は、良好な活性イオンと電子の輸送性能を有し、複合黒鉛材料表面での活性イオンと電子の電荷交換速度が比較的に速く、かつ複合黒鉛材料内の活性イオン固相輸送能力が比較的に高いため、二次電池は、高いエネルギー密度を維持するという前提で、大幅に向上された急速充電性能および低温出力性能を有することができる。本発明者らは、また、従来の黒鉛の層間距離が比較的に小さく、かつ端面と欠陥の数も比較的に少なく、空気酸化温度T0がいずれも非常に高いため、二次電池の急速充電性能と低温出力性能を向上させることが困難であることを発見した。
【0064】
いくつかの実施形態において、複合黒鉛材料の空気酸化温度T0は630℃~730℃、640℃~730℃、650℃~730℃、660℃~730℃、670℃~730℃、680℃~730℃、690℃~730℃、700℃~730℃、710℃~730℃、720℃~730℃、630℃~720℃、640℃~720℃、650℃~720℃、660℃~720℃、670℃~720℃、680℃~720℃、690℃~720℃、700℃~720℃、710℃~720℃、630℃~710℃、640℃~710℃、650℃~710℃、660℃~710℃、670℃~710℃、680℃~710℃、690℃~710℃、700℃~710℃、630℃~700℃、640℃~700℃、650℃~700℃、660℃~700℃、670℃~700℃、680℃~700℃、690℃~700℃、630℃~690℃、640℃~690℃、650℃~690℃、660℃~690℃、670℃~690℃、680℃~690℃、630℃~680℃、640℃~680℃、650℃~680℃、660℃~680℃、または、670℃~680℃である。
【0065】
複合黒鉛材料の空気酸化温度T0が適切な範囲内である場合、複合黒鉛材料は、より適切な端面と欠陥の数を有し、さらに活性イオンと電子の輸送性能を向上させ、二次電池の急速充電性能及び低温出力性能を向上させることができる。
【0066】
いくつかの実施形態において、前記複合黒鉛材料は、さらに動的炭素材料を含む。いくつかの実施形態において、動的炭素材料は、バルク粒子における一次粒子と一次粒子との間の界面の少なくとも一部に位置する。この場合、負極活性材のバルク粒子は、人造黒鉛である一次粒子および一次粒子同士の間に位置する動的炭素材料を含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、動的炭素材料は、被覆層中に位置する。この場合、前記被覆層は、非晶質炭素と動的炭素材料を含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、動的炭素材料は、バルク粒子における一次粒子と一次粒子との間の界面の少なくとも一部および被覆層の両方に位置する。
【0069】
図1~
図3は、本願に係る複合黒鉛材料の異なる実施形態の概略図である。
図1~
図3を参照すると、複合黒鉛材料は、バルク粒子およびバルク粒子の表面の少なくとも一部に位置する被覆層102を含み、前記バルク粒子は、2個以上の一次粒子101が凝集してなる二次粒子である。
図1を参照すると、動的炭素材料103は、バルク粒子における一次粒子101と一次粒子101との間の界面の少なくとも一部に位置してもよく、
図2を参照すると、動的炭素材料103は、さらに被覆層102中に位置してもよく、
図3を参照すると、動的炭素材料103は、バルク粒子における一次粒子101と一次粒子101との間の界面の少なくとも一部および被覆層102の両方に位置してもよい。
【0070】
いくつかの実施形態において、複合黒鉛材料の総質量に基づいて、動的炭素材料の質量パーセント含有量は、1%~30%である。例えば、動的炭素材料の質量パーセント含有量は、3%~30%、3%~25%、3%~20%、3%~15%、5%~30%、5%~25%、5%~20%、5%~15%、8%~30%、8%~25%、8%~20%、8%~15%、又は、8%~12%である。動的炭素材料の質量パーセント含有量は、バルク粒子における一次粒子と一次粒子との間の界面の少なくとも一部に位置する動的炭素材料の質量パーセント含有量および被覆層中に位置する動的炭素材料の質量パーセント含有量の合計である。
【0071】
動的炭素材料の質量パーセント含有量が適切な範囲内である場合、複合黒鉛材料に高グラム容量を持たせるという前提で、比較的に高い活性イオン固相輸送能力及び比較的に高い活性イオンと電子の電荷交換速度を有させ、さらに、二次電池は、高エネルギー密度を有するという前提で、大幅に向上された急速充電性能及び低温出力性能を有することができる。また、動的炭素材料の質量パーセント含有量が適切な範囲内である場合、サイクル過程において負極膜層の細孔構造を維持する能力がより高くなり、負極シートの電解液浸潤性がより良くなり、二次電池は、良好なサイクル性能を兼ね備える。
【0072】
いくつかの実施形態において、動的炭素材料原料は、ハードカーボン、微細膨張黒鉛、膨張黒鉛、グラフェンから選ばれた1種又は複数種である。
【0073】
任意に、ハードカーボンの1V以下でのグラム容量≧320mAh/gであり、かつハードカーボンの20000N作用力での粉体圧密密度≧1.05g/cm3である。
【0074】
任意に、動的炭素材料原料は、微細膨張黒鉛、膨張黒鉛から選ばれた1種又は複数種である。特に、動的炭素材料原料は、膨張黒鉛から選ばれたものである。
【0075】
いくつかの実施形態において、動的炭素材料原料(002)結晶面の層間距離d002≧0.3358nmである。任意に、動的炭素材料原料(002)結晶面の層間距離d002は、0.3359nm~0.3366nmである。
【0076】
前記動的炭素材料原料の層間距離d002は、いずれも汎用な黒鉛より大きく、これにより得られた動的炭素材料が複合黒鉛材料のバルク粒子及び/又は被覆層に均一に分布している場合、活性イオンの急速な挿入・脱離に有利であるため、活性イオンと電子の輸送性能を向上させ、さらに二次電池の急速充電性能及び低温出力性能を向上させることができ、かつ、二次電池のエネルギー密度の損失をもたらすことがない。
【0077】
前記動的炭素材料原料は、さらに比較的に高い耐圧性能を有し、サイクル過程において負極膜層の細孔構造を維持する能力が高くなり、負極シートの電解液浸潤性がより良くなるため、二次電池のサイクル性能の向上にも寄与する。
【0078】
いくつかの実施形態において、複合黒鉛材料(002)結晶面の層間距離d002は、0.3355nm~0.3364nmである。任意に、複合黒鉛材料(002)結晶面の層間距離d002は、0.3356nm~0.3361nmである。
【0079】
複合黒鉛材料が比較的に高い層間距離d002を有すると、その中の活性イオン固相輸送能力を向上させ、二次電池の急速充電性能および低温出力性能を向上させることができる。
【0080】
いくつかの実施形態において、複合黒鉛材料は、体積平均粒子径Dv50が8.5μm~14.5μmである。任意に、複合黒鉛材料は、体積平均粒子径Dv50が10μm~12μmである。
【0081】
複合黒鉛材料の体積平均粒子径Dv50が適切な範囲である場合、複合黒鉛材料は、より良好な活性イオンと電子の輸送性能および急速充電性能を有し、かつ、複合黒鉛材料は、比較的に高い粉体圧密密度を有することができる。
【0082】
いくつかの実施形態において、バルク粒子は、体積平均粒子径Dv50が7.5μm~13.5μmである。任意に、バルク粒子は、体積平均粒子径Dv50が9.0μm~11.5μmである。
【0083】
複合黒鉛材料のバルク粒子の体積平均粒子径Dv50が適切な範囲内である場合、複合黒鉛材料は、より良好な活性イオンと電子の輸送性能を有するという前提で、より高いグラム容量を有することができる。
【0084】
いくつかの実施形態において、一次粒子の体積平均粒子径Dv50とそれからなる二次粒子(すなわち、バルク粒子)の体積平均粒子径Dv50との比値は0.45~0.75である。任意に、一次粒子の体積平均粒子径Dv50とそれからなる二次粒子的体積平均粒子径Dv50との比値は0.55~0.65である。
【0085】
一次粒子の体積平均粒子径Dv50とそれからなる二次粒子の体積平均粒子径Dv50との比値が適切な範囲内である場合、複合黒鉛材料のバルク粒子は、比較的に良好な二次粒子の度合いを有し、複合黒鉛材料の活性イオンと電子の輸送性能を向上させると共に、比較的に高い構造安定性を有することができる。また、バルク粒子は、サイクル過程において負極膜層の細孔構造を維持する能力が高くなり、負極シートの電解液浸潤性はより良くなるため、二次電池のサイクル性能の向上に寄与する。
【0086】
いくつかの実施形態において、複合黒鉛材料の総質量に基づいて、被覆層における非晶質炭素の質量パーセント含有量は、1%~8%である。任意に、被覆層における非晶質炭素の質量パーセント含有量は、2%~5%である。
【0087】
非晶質炭素の含有量が適切な範囲内である場合、複合黒鉛材料は、高いグラム容量を有すると共に、比較的に高い活性イオン固相輸送能力を有することができる。
【0088】
いくつかの実施形態において、バルク粒子表面の少なくとも一部は、被覆層に被覆されている。任意に、複合黒鉛材料は、バルク粒子及びバルク粒子の表面の少なくとも80%を被覆する被覆層を含む。特に、複合黒鉛材料は、バルク粒子及びバルク粒子の表面の少なくとも90%を被覆する被覆層を含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、複合黒鉛材料の20000N作用力での粉体圧密密度は、1.45g/cm3~1.75g/cm3である。任意に、複合黒鉛材料の20000N作用力での粉体圧密密度は、1.55g/cm3~1.65g/cm3である。
【0090】
複合黒鉛材料の粉体圧密密度が適切な範囲内である場合、負極膜層は、比較的に高い圧密密度を有し、さらに二次電池は、比較的に高いエネルギー密度を有することができる。複合黒鉛材料の粉体圧密密度が適切な範囲内である場合、サイクル過程において負極膜層の細孔構造を維持する能力は、高くなり、負極シートは電解液浸潤性がより良くなるため、二次電池のサイクル性能の向上にも寄与する。
【0091】
本願において、材料の体積平均粒子径Dv50は、本分野で公知の意味を有し、材料の累積体積分布百分数が50%に達する時に対応する粒子径を示し、本分野で公知の機械及び方法で測定することができる。例えば、GB/T 19077-2016粒子サイズ分布レーザー回折法を参照し、レーザー粒子サイズアナライザー、例えばイギリスのMalvern Instruments Ltd.のMastersizer 2000E型レーザー粒子サイズアナライザーを採用して便利に測定することができる。
【0092】
本願において、材料の層間距離d002は、本分野で公知の意味を有し、本分野で公知の機械及び方法で測定することができる。例えば、JIS K 0131-1996、JB/T 4220-2011を参照し、X線粉末回折装置(例えばPANalytical X’pert PRO)を使用してd002を測定することができる。
【0093】
本願において、材料の粉体圧密密度は、本分野で公知の意味を有し、本分野で知られている機械及び方法で測定することができる。例えば、標準GB/T24533-2009を参照し、電子圧力試験機(例えばUTM7305型)で測定することができる。例示的な測定方法として、材料1gを量り、底面積1.327cm2の鋳型に入れ、2000kg(20000Nに相当する)に加圧し、30s圧力維持し、そして圧力を外し、10s維持し、そして記録し、かつ計算して材料の20000N作用力での粉体圧密密度を得る。
【0094】
本願において、材料のグラム容量は、本分野で公知の意味を有し、本分野で知られている方法で測定することができる。例示的な測定方法として、測定される材料、導電剤であるカーボンブラック(Super P)、バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を質量比91.6:1.8:6.6で溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)と均一に混合し、スラリーに作製し、そして、作製されたスラリーを銅箔集電体に塗り、オーブンに乾燥して置く。金属リチウムシートを対電極とし、ポリエチレン(PE)フィルムをセパレーターとする。エチレンカーボネート(EC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:1:1で混合し、そしてLiPF6を前記溶液に均一に溶解して電解液を得、LiPF6の濃度を1mol/Lとする。アルゴンガス保護グローブボックスにてCR2430型ボタン式電池を組み立てる。得られたボタン式電池を12時間静置した後、25℃で0.05Cの定電流で0.005Vまで放電し、10分間静置し、そして50μAの電流で0.005Vまで定電流放電し、10分間静置し、10μAで0.005Vまで定電流放電し、そして0.1Cの定電流で2Vまで充電し、充電容量を記録する。充電容量と材料質量との比値は、当該材料のグラム容量である。
【0095】
複合黒鉛材料の調製方法
本願の実施形態の第2の態様は、複合黒鉛材料を調製する方法を提供する。前記方法は、S10:コークス粉末、又は、動的炭素材料原料粉末を添加したコークス粉末を提供し、前記コークス粉末又は前記動的炭素材料原料粉末を添加したコークス粉末を、黒鉛化処理してバルク粒子を得るステップであって、前記バルク粒子が2個以上の一次粒子が凝集してなる二次粒子であり、前記バルク粒子は、人造黒鉛を含むステップ、および、S20:前記バルク粒子を有機炭素源と混合し、又は、前記バルク粒子を有機炭素源及び前記動的炭素材料原料粉末と混合し、炭素化処理してバルク粒子の表面の少なくとも一部に非晶質炭素を含む被覆層を形成し、前記複合黒鉛材料を得るステップを含む。
【0096】
ステップS10及びS20の少なくとも一方に前記動的炭素材料原料粉末を添加し、動的炭素材料原料は、ハードカーボン、微細膨張黒鉛、膨張黒鉛、グラフェンから選ばれた1種又は複数種であり、動的炭素材料原料(002)結晶面の層間距離d002≧0.3358nmである。
【0097】
得られた複合黒鉛材料は、空気酸化温度T0が630℃~730℃であり、前記空気酸化温度T0とは、前記複合黒鉛材料の熱重量曲線における500℃とT1温度とにそれぞれ対応する2点の2つの接線の交点に対応する温度であり、前記T1温度とは、前記複合黒鉛材料の微分熱重量曲線における最大面積ピークのピークトップ温度であり、前記熱重量曲線と前記微分熱重量曲線は、試料質量10±0.05mg、パージガスは空気で、かつガス速率が60mL/min、昇温速度5℃/min、測定温度範囲35℃~950℃の条件で行う熱重量分析により得られる。
【0098】
具体的に、空気酸化温度T0は、下記のステップを含む熱重量分析により決定される。すなわち、秤量質量10±0.05mg、パージガスは空気で、かつガス速率が60mL/min、昇温速度5℃/min、測定温度範囲35℃~950℃の条件で熱重量測定を行って熱重量曲線及び微分熱重量曲線を得、微分熱重量曲線から最大面積ピークのピークトップ温度T1を読み取り、かつ、熱重量曲線におけるそれぞれ500℃とT1温度とに対応する2点の2つの接線の交点を決定し、前記熱重量曲線における当該交点に対応する温度は、複合黒鉛材料の空気酸化温度T0になる。
【0099】
本願に係る複合黒鉛材料の調製方法は、操作が簡単でコストを抑えられ、大規模な工業生産が可能である。
【0100】
本願に係る方法により、端面と欠陥の含有量が適度な複合黒鉛材料が得られ、さらに二次電池は、高いエネルギー密度を有するという前提で、大幅に向上された急速充電性能及び低温出力性能を有することができる。
【0101】
いくつかの実施形態において、ハードカーボンの1V以下でのグラム容量≧320mAh/gであり、かつハードカーボンの20000N作用力での粉体圧密密度≧1.05g/cm3である。
【0102】
いくつかの実施形態において、動的炭素材料原料は、微細膨張黒鉛、膨張黒鉛から選ばれた1種又は複数種である。任意に、動的炭素材料原料は、膨張黒鉛から選ばれたものである。
【0103】
いくつかの実施形態において、動的炭素材料原料(002)結晶面の層間距離d002は、0.3359nm~0.3366nmである。
【0104】
いくつかの実施形態において、コークス粉末を提供する方法は、コークス原料をコークス化処理してコークスを得、得られたコークスを粉砕、成形、分級処理してコークス粉末を得るステップを含む。
【0105】
いくつかの実施形態において、コークスは、市販から直接入手できる。
【0106】
任意に、前記コークス原料は、石油系原料、石炭系原料から選ばれた1種又は複数種であってもよい。例として、石油系原料は、重油、残留油、減圧残留油から選ばれた1種又は複数種であり、石炭系原料は、主に石炭アスファルトから選ばれたものである。重油、残留油、減圧残留油は、通常、石油精製プロセスで生成され、石炭アスファルトは、通常、石炭乾留プロセスで生成される。
【0107】
いくつかの実施形態において、コークスは、石油系非針状コークス、石油系針状コークス、石炭系非針状コークス、石炭系針状コークスのうちの1種又は複数種を含む。任意に、コークスは、石油系非針状コークス(例えば、焼成石油コークス、石油系生コークス)、石油系針状コークスのうちの1種又は複数種を含む。特に、コークスは、石油系生コークスを含む。適切なコークスを採用するにより、調製された複合黒鉛材料は、適当な数の端面と欠陥を有し、さらに比較的に良い活性イオンと電子の輸送性能および比較的に高い構造安定性を有するため、二次電池の急速充電性能、低温出力性能およびサイクル性能を向上させることができる。
【0108】
任意に、コークス原料のコークス化処理は、遅延コークス化装置中で行う。遅延コークス化装置は、加熱炉とコークスタワーを含み、遅延コークス化プロセスとは、まずコークス原料を加熱炉で所望のコークス化処理温度まで急速に加熱し、そしてコークスタワーに入り、かつコークスタワーで予熱、コールドコークスなどのプロセスを経てコークスを生成することを指す。
【0109】
本分野で知られている設備及び方法、例えば、気流ミル、機械ミル、ロールミル、または他の破砕設備などでコークスを破砕することができる。
【0110】
破砕して得られたコークス粉の形態は、塊状、球状及び類球状のうちの1種又は複数種を含んでもよい。破砕完了後、コークス粉末のエッジや角を研磨するように成形する。成形の度合いが大きいほど、粉末粒子は、球状に近くなり、これにより、複合黒鉛材料の表面に活性イオンの挿入・脱離サイトを増やすことができる。成形処理は、さらにその後の造粒プロセスにも有利であり、得られた複合黒鉛材料における二次粒子に比較的に高い構造安定性を有させることができる。
【0111】
本分野で知られている設備及び方法、例えば成形機または他の成形設備でコークス粉末を成形処理することができる。
【0112】
破砕や成形の過程で、過小な粒子が生成されることは多く、時には過大な粒子が存在するため、必要に応じて粉末中の過小な粒子や過大な粒子を除去するために分級処理することができる。分級処理後、より良い粒子サイズ分布を有するコークス粉末を得ることができ、その後の造粒および被覆プロセスを容易にする。分級処理は、分級ふるい、重力分級機、遠心分級機など本分野で知られている設備および方法を採用して行うことができる。
【0113】
いくつかの実施形態において、コークス粉末は、体積平均粒子径Dv50が6μm~12μmである。任意に、コークス粉末は、体積平均粒子径Dv50が8μm~10μmである。
【0114】
いくつかの実施形態において、動的炭素材料原料粉末を提供する方法は、動的炭素材料原料を粉砕、成形、分級処理して動的炭素材料原料粉末を得るステップを含む。粉砕、成形、分級処理の方法は、前記コークスの粉砕、成形、分級と同じである。
【0115】
いくつかの実施形態において、動的炭素材料原料粉末は、体積平均粒子径Dv50が3μm~12μmである。任意に、動的炭素材料原料粉末は、体積平均粒子径Dv50が4μm~9μmである。
【0116】
いくつかの実施形態において、コークス粉末の体積平均粒子径Dv50と動的炭素材料原料粉末の体積平均粒子径Dv50との比は1.05~1.75である。任意に、コークス粉末の体積平均粒子径Dv50と動的炭素材料原料粉末の体積平均粒子径Dv50との比は、1.2~1.5である。コークス粉末の体積平均粒子径Dv50と動的炭素材料原料粉末の体積平均粒子径Dv50との比が適切な範囲内である場合、複合黒鉛材料のバルク粒子に比較的に良い二次粒子の度合いを有させることができる。
【0117】
いくつかの実施形態において、動的炭素材料原料粉末を添加したコークス粉末において、コークス粉末と動的炭素材料原料粉末との質量比は、1~20:99~80である。任意に、コークス粉末と動的炭素材料原料との質量比は、3~12:97~88である。コークス粉末と動的炭素材料原料粉末との質量比が適切な範囲内である場合、端面と欠陥の含有量が適度な複合黒鉛材料を得ることに有利であり、さらに二次電池は、高いエネルギー密度を有するという前提で、大幅に向上された急速充電性能と低温出力性能を有することができる。
【0118】
いくつかの実施形態において、得られた複合黒鉛材料の総質量に基づいて、ステップS10、S20に添加された動的炭素材料原料粉末の質量パーセント含有量の合計は、1%~30%であり、例えば、3%~30%、3%~25%、3%~20%、3%~15%、5%~30%、5%~25%、5%~20%、5%~15%、8%~30%、8%~25%、8%~20%、8%~15%、または、8%~12%である。
【0119】
いくつかの実施形態において、前記方法は、さらに、S10にバインダーを添加するステップを含む。バインダーをコークス粉末と混合して造粒し、そして黒鉛化処理してバルク粒子を得、又は、バインダーを動的炭素材料原料粉末を添加したコークス粉末と混合して造粒し、そして黒鉛化処理してバルク粒子を得る。
【0120】
バインダーを添加することにより、複合黒鉛材料のバルク粒子は、比較的に良好な二次粒子の度合いを有し、複合黒鉛材料の活性イオンと電子の輸送性能を向上させると共に、比較的に高い構造安定性を有させることができる。
【0121】
任意に、得られた複合黒鉛材料の総質量に基づいて、バインダーの質量パーセント含有量は、3%~12%である。さらに、任意に、バインダーの質量パーセント含有量は、5%~8%である。バインダーの含有量が適切な範囲内である場合、粒子の過度の凝集を避けることができ、複合黒鉛材料のバルク粒子は、比較的に良好な二次粒子の度合いを有することができる。
【0122】
任意に、前記バインダーは、アスファルトから選ばれたものである。任意に、前記アスファルトの軟化点は、200℃以上である。
【0123】
任意に、前記アスファルトは、石炭アスファルト、石油アスファルトから選ばれた1種又は複数種である。
【0124】
任意に、造粒して得られた粒子は、体積平均粒子径Dv50が8μm~14μmである。特に、造粒して得られた粒子は、体積平均粒子径Dv50が9.5μm~12μmである。
【0125】
本分野で知られている設備及び方法、例えば造粒機を採用して造粒してもよい。造粒機は、通常、攪拌反応ケトルおよび反応ケトルの温度を制御するためのモジュールを含む。造粒過程中の攪拌回転数、昇温速度、造粒温度、降温速率等をコントロールすることにより、造粒度合いおよび粒子の構造強さをコントロールすることができ、最終的に製造された複合黒鉛材料のバルク粒子の体積平均粒子径Dv50を、所期の範囲内にすることができる。
【0126】
いくつかの実施形態において、S10において、黒鉛化処理温度は2800℃~3200℃であってもよい。任意に、黒鉛化処理温度は、2900℃~3100℃であってもよい。黒鉛化処理は、バルク粒子に適当な黒鉛化度を持たせることができ、さらに複合黒鉛材料は、比較的に高いグラム容量を持つことができ、黒鉛化処理は、また、活性イオンの挿入・脱離過程中でバルク粒子の格子膨張を低下し、黒鉛化処理は、バルク粒子の体相構造欠陥を効果的に解消し、二次電池のサイクル性能を向上させることができる。
【0127】
いくつかの実施形態において、S10において、黒鉛化処理時間は、10日~15日である。
【0128】
本分野で知られている設備及び方法、例えば黒鉛化炉、特にアチソン黒鉛化炉を採用して黒鉛化してもよい。黒鉛化処理終了後、造粒生成物が黒鉛化処理過程中に凝集して形成された少量の過大な粒子を篩にかけて除去することもでき、これにより過大な粒子が複合黒鉛材料の加工性能、例えば負極スラリーの安定性、塗布性能等に影響を与えることを防ぐことができる。
【0129】
いくつかの実施形態において、S10において、得られたバルク粒子の体積平均粒子径Dv50は、7.5μm~13.5μmである。任意に、得られたバルク粒子の体積平均粒子径Dv50は、9.0μm~11.5μmである。
【0130】
いくつかの実施形態において、S20において、有機炭素源は、石炭アスファルト、石油アスファルト、フェノール樹脂、ココヤシの殻から得られた1種又は複数種である。任意に、有機炭素源は、石油アスファルトから選ばれたものである。任意に、前記石炭アスファルト、石油アスファルトの軟化点は、250℃以下である。
【0131】
いくつかの実施形態において、得られた複合黒鉛材料の総質量に基づいて、有機炭素源の添加量は、有機炭素源を炭素化させて得られた非晶質炭素の質量パーセント含有量が1%~8%となる添加量である。任意に、有機炭素源の添加量は、有機炭素源を炭素化させて得られた非晶質炭素の質量パーセント含有量が2%~5%となる添加量である。有機炭素源の添加量が適切な範囲内である場合、複合黒鉛材料に高いグラム容量を持たせると共に、比較的に高い活性イオン固相輸送能力を持たせることができる。
【0132】
いくつかの実施形態において、S20において、炭素化処理温度は、700℃~1800℃である。任意に、炭素化処理温度は、1000℃~1300℃である。炭素化処理温度が適切な範囲内である場合、有機炭素源(及び任意の動的炭素材料原料)を炭素化させ、かつ人造黒鉛の表面の少なくとも一部に非晶質炭素を含む被覆層を形成することができる。
【0133】
いくつかの実施形態において、S20において、炭素化処理時間は、1h~6hである。
【0134】
いくつかの実施形態において、前記複合黒鉛材料の調製方法は、S10:コークス粉末および動的炭素材料原料粉末を提供し、バインダーをコークス粉末、動的炭素材料原料粉末と混合して造粒し、そして黒鉛化処理してバルク粒子を得るステップであって、前記バルク粒子が2個以上の一次粒子が凝集してなる二次粒子であり、前記バルク粒子は、人造黒鉛を含むステップ、および、S20:バルク粒子を有機炭素源と混合し、炭素化処理した後バルク粒子の表面の少なくとも一部に非晶質炭素を含む被覆層を形成して複合黒鉛材料を得るステップを含む。
【0135】
いくつかの実施形態において、前記複合黒鉛材料の調製方法は、S10:コークス粉末を提供し、バインダーをコークス粉末と混合して造粒し、そして黒鉛化処理してバルク粒子を得るステップであって、前記バルク粒子が2個以上の一次粒子が凝集してなる二次粒子であり、前記バルク粒子は、人造黒鉛を含むステップ、および、S20:バルク粒子を有機炭素源、動的炭素材料原料粉末と混合し、炭素化処理してバルク粒子の表面の少なくとも一部に非晶質炭素を含む被覆層を形成し、複合黒鉛材料を得るステップを含む。
【0136】
いくつかの実施形態において、前記複合黒鉛材料の調製方法は、S10:コークス粉末と動的炭素材料原料粉末を提供し、バインダーをコークス粉末、動的炭素材料原料粉末と混合して造粒し、そして黒鉛化処理してバルク粒子を得るステップであって、前記バルク粒子が2個以上の一次粒子が凝集してなる二次粒子であり、前記バルク粒子は、人造黒鉛を含むステップ、および、S20:バルク粒子を有機炭素源、動的炭素材料原料粉末と混合し、炭素化処理してバルク粒子の表面の少なくとも一部に非晶質炭素を含む被覆層を形成し、複合黒鉛材料を得るステップを含む。
【0137】
本願に係る調製方法において、コークス粉末又は動的炭素材料原料粉末を添加したコークス粉末を黒鉛化処理してバルク粒子を得、かつバルク粒子は、2個以上の一次粒子が凝集してなる二次粒子である。粉砕、成形などの処理を経て得られたコークス粉末は、主に単一な粒子であり、形態の面で、コークス粉末は、一次粒子(又は一次パーティクル)であり、コークス粉末又は動的炭素材料原料粉末を添加したコークス粉末を造粒し、黒鉛化処理して得られたバルク粒子は、複数の前記一次粒子の凝集体であるため、形態の面で、バルク粒子は、二次粒子である。
【0138】
本願の調製方法において、コークス粉末の体積平均粒子径Dv50およびその添加量、動的炭素材料原料粉末の体積平均粒子径Dv50およびその添加量、バインダーの添加量、有機炭素源の添加量等を調節することにより、異なる空気酸化温度T0を有する複合黒鉛材料が得られる。
【0139】
二次電池
二次電池は、充電電池または蓄電池とも呼ばれ、電池を放電した後、充電して活性材を活性化させて引き続き使用できる電池である。
【0140】
通常、二次電池は、正極シート、負極シート、セパレーターおよび電解質を含む。電池の充放電過程において、活性イオンは正極シートと負極シートとの間で繰り返し挿入・脱離する。セパレーターは、正極シートと負極シートの間に配置され、主に正極と負極の短絡を防ぐ役割を果たすと共に、イオンの通過を可能にする。電解質は、正極シートと負極シートの間に活性イオンを伝導する役割を果たす。
【0141】
[負極シート]
本願に係る二次電池において、負極シートは、負極集電体及び負極集電体の少なくとも1つの面に位置する負極膜層を含む。例えば、負極集電体は、それ自体の厚さ方向に対向する2つの面を有し、負極膜層は、負極集電体の2つの対向する面のいずれか一方または両方に配置されている。
【0142】
負極集電体は、金属箔シートまたは複合集電体を使用できる。金属箔シートの例として、銅箔を用いてもよい。複合集電体は、高分子材料ベース層および高分子材料ベース層の少なくとも1つの面に形成されている金属材料層を含んでもよい。例として、金属材料は、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀および銀合金から選ばれた1種又は複数種であってもよい。例として、高分子材料ベース層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などから選ばれたものであってもよい。
【0143】
負極膜層は、通常、負極活性材、任意のバインダー、任意の導電剤及び他の任意の補助剤を含む。負極膜層は、通常、負極スラリーを負極集電体上に塗り、乾燥、冷間圧延を経て得る。負極スラリーは、通常、負極活性材、任意の導電剤、任意のバインダー、他の任意の補助剤を溶媒に分散し、かつ均一に攪拌して形成する。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)または脱イオン水であってよいが、これらに限られない。
【0144】
いくつかの実施形態において、負極活性材は、本願実施形態の第1の態様の複合黒鉛材料、本願の実施形態の第2の態様の方法で調製された複合黒鉛材料のうちの1種を含んでもよい。
【0145】
いくつかの実施形態において、負極活性材は、さらに本分野で公知の二次電池に用いられる他の負極活性材を含んでもよい。例として、他の負極活性材は、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン系材料、スズ系材料およびチタン酸リチウムのうちの1種又は複数種を含んでもよい。シリコン系材料は、単体シリコン、シリコン酸化物、シリコン-炭素複合体、シリコン-窒素複合体およびシリコン合金材料のうちの1種又は複数種を含んでもよい。スズ系材料は、スズ単体、スズ酸化物およびスズ合金材料のうちの1種又は複数種を含んでもよい。本願は、これらの材料に限られておらず、二次電池の負極活性材として用いられる他の公知の伝統的な材料を用いてもよい。これらの他の負極活性材は、単独で1種を使用してもよいし、または、2種以上の組み合わせで使用してもよい。
【0146】
いくつかの実施形態において、導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、および、カーボンナノファイバーのうちの1種又は複数種を含んでもよい。いくつかの実施形態において、バインダーは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水溶性不飽和樹脂SR-1B、水性アクリル酸樹脂(例えば、ポリアクリル酸(PAA))、ポリメタクリル酸(PMAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、カルボン酸メチルキトサン(CMCS)のうちの1種又は複数種を含んでもよい。いくつかの実施形態において、他の任意の補助剤は、増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、PTCサーミスタ材料等)を含んでもよい。
【0147】
いくつかの実施形態において、前記負極膜層は、さらに添加剤を含んでもよい。この時、添加剤、複合黒鉛材料、任意の導電剤、任意のバインダー及び他の任意の補助剤を溶媒に分散し、かつ均一に攪拌して負極スラリーを形成し、そして、負極スラリーを負極集電体に塗り、乾燥、冷間圧延を経って負極膜層を形成してもよい。添加剤は、ハードカーボン、微細膨張黒鉛、膨張黒鉛、グラフェンから選ばれた1種又は複数種であり、添加剤の(002)結晶面の層間距離d002≧0.3358nmである。これらの添加剤は、比較的に良い活性イオンと電子の輸送性能を有し、二次電池に高エネルギー密度を有させる前提で、大幅に向上された急速充電性能及び低温出力性能を有させることができる。
【0148】
任意に、ハードカーボンの1V以下でのグラム容量≧320mAh/gであり、かつ、ハードカーボンの20000N作用力での粉体圧密密度≧1.05g/cm3である。
【0149】
任意に、添加剤は、微細膨張黒鉛、膨張黒鉛から選ばれた1種又は複数種である。特に、添加剤は、膨張黒鉛から選ばれたものである。
【0150】
任意に、添加剤(002)結晶面の層間距離d002は、0.3359nm~0.3366nmである。
【0151】
任意に、負極膜層の総質量に基づいて、添加剤の質量パーセント含有量は、1%~20%である。例えば、添加剤的質量パーセント含有量は1%~20%、1%~18%、1%~15%、1%~12%、1%~10%、1%~8%、1%~5%、2%~20%、2%~18%、2%~15%、2%~12%、2%~10%、2%~8%、2%~5%、3%~20%、3%~18%、3%~15%、3%~12%、3%~10%、3%~8%、又は、3%~5%である。添加剤の質量パーセント含有量が適切な範囲内である場合、二次電池に高エネルギー密度を有させるという前提で、大幅に向上された急速充電性能および低温出力性能を有させることができる。また、添加剤の質量パーセント含有量が適切な範囲内である場合、サイクル過程において負極膜層の細孔構造を維持する能力がより高くなり、負極シートの電解液浸潤性がより良くなるため、二次電池は、良好なサイクル性能を兼ね備える。
【0152】
いくつかの実施形態において、負極膜層は、面密度が0.035kg/m2~0.125kg/m2である。任意に、負極膜層は、面密度が0.078kg/m2~0.107kg/m2である。
【0153】
負極膜層の面密度が前述した範囲内である場合、負極シートは、比較的に高い可逆容量を有すると共に、比較的に低い活性イオンと電子を輸送するインピーダンスを有するため、さらに二次電池のエネルギー密度、急速充電性能、低温出力性能およびサイクル性能を改善することができる。
【0154】
本願において、負極膜層の面密度は、本分野で公知の意味を有し、本分野で知られている方法で測定することができる。例えば、片面に塗布され、かつ冷間圧延された後の負極シート(両面が塗布された負極シートの場合は、片面の負極膜層を拭き取ってもよい。)を面積S1の小さなディスクにパンチし、その重量を量り、M1として記録した。そして前記の量った後の負極シートの負極膜層を拭き取り、負極集電体の重量を量り、M0として記録した。負極膜層の面密度=(M1-M0)/S1である。
【0155】
いくつかの実施形態において、負極膜層は、圧密密度が1.2g/cm3~1.75g/cm3である。任意に、負極膜層は、圧密密度が1.4g/cm3~1.6g/cm3である。
【0156】
負極膜層の圧密密度が前述した範囲内である場合、負極シートは、比較的に高い可逆容量を有すると共に、さらに比較的に低いサイクル膨張および良好な動的性能を有するため、二次電池のエネルギー密度、急速充電性能、低温出力性能およびサイクル性能をさらに改善することができる。
【0157】
本明細書において、負極膜層の圧密密度は、本分野で公知の意味を有し、本分野で知られている方法で測定することができる。負極膜層の圧密密度=負極膜層の面密度/負極膜層の厚さである。本願において、負極膜層の厚さは、本分野で公知の意味を有し、本分野で知られている方法で測定することができる。例えば、4ビット精度のスパイラルマイクロメーターを採用する。
【0158】
いくつかの実施形態において、負極膜層は、空隙率が25%~45%である。任意に、負極膜層は、空隙率が28%~35%である。
【0159】
負極膜層の空隙率が前記範囲内である場合、負極シートは、適当な電解液浸潤性及び良好な反応界面を有し、負極の大倍率での充放電性能を向上させるため、二次電池の急速充電性能を向上させることができる。また、負極膜層は、適当な電解液維持量を有するため、二次電池の質量が比較的に低いため、二次電池は比較的に高い質量エネルギー密度を有することに有利である。
【0160】
本願において、負極膜層の空隙率は、本分野で公知の意味を有し、本分野で知られている方法で測定することができる。例えば、GB/T24586-2009を参照してガス置換法で測量することができる。測定方法として、片面が塗布され、かつ冷間圧延された後の負極シート(両面が塗布された負極シートの場合、まず片面の負極膜層を拭き取ってもよい。)を直径14mmの小さなディスクサンプルをパンチし、負極膜層の厚さ(負極シートの厚さ-負極集電体の厚さ)を測定し、円柱体積計算式に従って負極膜層の見掛け体積V1を算出し、媒体として不活性ガス、例えば、ヘリウム又は窒素ガスを使用し、ガス置換法を採用し、真密度測定装置(例えば、Micromeritics AccuPyc II 1340型)を使用して負極シートの真体積を測定し、測定は、GB/T 24586-2009を参照でき、負極シートの真体積から負極集電体の体積を差し引いて負極膜層の真体積V2を得る。負極膜層的空隙率=(V1-V2)/V1×100%。複数枚(例えば30枚)の負極シートサンプルを測定し、平均値を結果とし、これにより測定結果の精度を高めることができる。
【0161】
いくつかの実施形態において、負極膜層と負極集電体との間の粘着力は、4.5N/m~15N/mである。任意に、負極膜層と負極集電体との間の粘着力は、8N/m~12N/mである。
【0162】
負極膜層と負極集電体との間の粘着力が前述した範囲内である場合、二次電池の急速充電性能とサイクル性能を向上させることができる。負極膜層と負極集電体との間の粘着力が大きい場合、負極シートに良好な電子伝導能力を持たせ、活性イオンの挿入速度の向上に有利である。また、負極膜層と負極集電体との間の粘着力は、さらに負極シートがサイクル過程中に粘着信頼性を維持する能力を反映でき、二次電池が全ライフサイクルで良好な電子伝導能力を維持するのに有利で、二次電池のサイクル性能をさらに改善できる。
【0163】
本願において、負極膜層と負極集電体との間の粘着力は、本分野で公知の意味を有し、本分野で知られている方法で測定することができる。例示的な測定方法として、負極シートを長さ100mm、幅10mmの測定サンプルにカットし、幅25mmのステンレス鋼板1本を取り、両面テープ(幅11mm)を貼り、測定サンプルをステンレス鋼板上の両面テープに貼り付け、2000gローラーを用いてその表面を繰り返し3回(300mm/min)ロールし、測定サンプルを180度曲げ、手動で測定用サンプルの負極膜層と負極集電体を25mm剥がし、当該測定サンプルを、剥離面を試験機の力線と一致させるように試験機(例えばINSTRON 336)に固定し、試験機で30mm/minで連続的に剥離し、得られた剥離力曲線から滑らかな破壊の平均値を剥離力F0として取る。負極膜層と集電体との間の粘着力=F0/測定サンプルの幅である。
【0164】
本願において、負極膜層の関連パラメーターは、いずれも負極膜層の片面のパラメーターを指す。すなわち、負極膜層が負極集電体の2つの面に配置されている場合、いずれかの面の負極膜層のパラメーターが本願のパラメーターの範囲を満たせば、本願の保護範囲内であると見なされる。
【0165】
本願に係る二次電池において、負極シートは、負極膜層以外の他の付加機能層を除外しない。例えば、いくつかの実施形態において、本願に係る負極シートは、さらに負極集電体と負極膜層との間に挟まれ、負極集電体の表面に配置されている導電性下地層(例えば導電剤とバインダーからなるもの)を含む。他のいくつかの実施形態において、本願に係る負極シートは、さらに負極膜層の表面を被覆する保護層を含む。
【0166】
[正極シート]
本願に係る二次電池において、正極シートは、正極集電体及び正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられ、かつ正極活性材を含む正極膜層を含む。例えば、正極集電体は、それ自体の厚さ方向に対向する2つの面を有し、正極膜層は、正極集電体の2つの対向する面のいずれか一方または両方に配置されている。
【0167】
本願に係る二次電池において、正極活性材は、本分野で公知の二次電池用正極活性材を採用してもよい。例えば、正極活性材は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩およびこれらのそれぞれの改質化合物のうちの1種又は複数種を含んでもよい。リチウム遷移金属酸化物の例として、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物およびその改質化合物のうちの1種又は複数種を含んでもよいが、これらに限定されない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例として、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料およびこれらのそれぞれの改質化合物のうちの1種又は複数種を含んでもよいが、これらに限られない。本願では、これらの材料に限られず、他の二次電池用正極活性材として公知の伝統的な材料を用いてもよい。
【0168】
いくつかの実施形態において、二次電池のエネルギー密度をさらに高めるために、正極活性材は、式1に示すリチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの1種又は複数種を含んでもよい。
【0169】
LiaNibCocMdOeAf 式1
式1中、0.8≦a≦1.2、0.5≦b<1、0<c<1、0<d<1、1≦e≦2、0≦f≦1、Mは、Mn、Al、Zr、Zn、Cu、Cr、Mg、Fe、V、TiおよびBから選ばれた1種又は複数種であり、Aは、N、F、SおよびClから選ばれた1種又は複数種である。
【0170】
本願において、前述した各材料の改質化合物は、正極活性材をドーピング改質または表面被覆改質したものであってもよい。
【0171】
本願に係る二次電池において、正極膜層は、通常、正極活性材、任意のバインダーおよび任意の導電剤を含む。正極膜層は、通常、正極スラリーを正極集電体に塗り、乾燥、冷間圧延を経てなる。正極スラリーは、通常、正極活性材、任意の導電剤、任意のバインダーおよび任意の他の成分を溶媒に分散し、かつ均一に攪拌することにより形成する。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)であってもよいが、これに限られない。例として、正極膜層に用いられるバインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、および、フッ素含有アクリレート樹脂のうちの1種又は複数種を含んでもよい。
【0172】
本願に係る二次電池において、正極集電体は、金属箔シートまたは複合集電体を使用できる。金属箔シートの例として、アルミ箔を用いてもよい。複合集電体は、高分子材料ベース層および高分子材料ベース層の少なくとも1つの面に形成されている金属材料層を含んでもよい。例として、金属材料は、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀および銀合金から選ばれた1種又は複数種であってもよい。例として、高分子材料ベース層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などから選ばれたものであってもよい。
【0173】
[電解質]
本願に係る二次電池は、電解質の種類に対して具体的な限定がなく、ニーズに応じて選択することができる。例えば、電解質は、固体電解質及び液体電解質(すなわち、電解液)から選ばれた少なくとも1種であってもよい。
【0174】
いくつかの実施形態において、電解質として電解液を採用する。電解液は、電解質塩および溶媒を含む。
【0175】
本願では、電解質塩の種類に対して具体的な限定がなく、ニーズに応じて選択することができる。いくつかの実施形態において、例として、電解質塩は、LiPF6(ヘキサフルオロリン酸リチウム)、LiBF4(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiClO4(過塩素酸リチウム)、LiAsF6(ヘキサフルオロヒ酸リチウム)、LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート)、LiBOB(リチウムビス(オキサレート)ボラート)、LiPO2F2(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(リチウムジフルオロビス(オキサレート)ホスフェート)およびLiTFOP(リチウムテトラフルオロ(オキサレート)ホスフェート)から選ばれた1種又は複数種であってもよい。
【0176】
本願では、溶媒の種類に対して具体的な限定がなく、ニーズに応じて選択することができる。いくつかの実施形態において、例として、溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、メチルホルメート(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)およびジエチルスルホン(ESE)から選ばれた1種又は複数種であってもよい。
【0177】
いくつかの実施形態において、電解液は、任意に添加剤をさらに含んでもよい。例えば、添加剤は、負極皮膜形成添加剤を含んでもよく、正極皮膜形成添加剤を含んでもよく、例えば電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤など、電池のある性能を改善できる添加剤を含んでもよい。
【0178】
[セパレーター]
電解液を用いる二次電池、及び、固体電解質を用いる二次電池の一部において、さらにセパレーターを含む。セパレーターは、正極シートと負極シートとの間に設けられて隔離の役割を果たす。本願において、セパレーターの種類は特に限定されず、公知の良好な化学的安定性および機械的安定性を有する多孔質構造のセパレーターを任意に選択して用いることができる。いくつかの実施形態において、セパレーターの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリフッ化ビニリデンから選ばれた少なくとも1種又は複数種であってもよい。セパレーターは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよい。セパレーターが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同じであっても異なっていてもよい。
【0179】
いくつかの実施形態において、正極シート、セパレーターおよび負極シートは、巻き取りプロセスまたは積層プロセスによって電極アセンブリを作製することができる。
【0180】
いくつかの実施形態において、二次電池は、外装を含んでもよい。当該外装は、前記電極アセンブリ及び電解質を封止するために用いられる。
【0181】
いくつかの実施形態において、二次電池の外装は、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケースなどの硬質のケースであってもよい。二次電池の外装は、パウチ型ソフトバッグなどのソフトバッグであってもよい。ソフトバッグの材質は、プラスチック、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)等からの1種又は複数種であってもよい。
【0182】
本願において、二次電池の形状は、特別な制限がなく、円筒形、方形または他の任意の形であってもよい。例えば、
図4は、1つの例としての方形構造である二次電池5である。
【0183】
いくつかの実施形態において、
図5を参照すると、外装は、ケース51および蓋板53を含んでもよい。ケース51は、底板と、底板に接続されている側板とを備え、底板と側板は、囲まれて収容キャビティを形成してもよい。ケース51は、収容キャビティに連通している開口を有し、蓋板53は、収容キャビティを閉じられるように前記開口を覆設することに用いられる。正極シート、負極シートおよびセパレーターは、巻取りプロセスまたは積層プロセスによって電極アセンブリ52に形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容キャビティに封止されている。電解液は、電極アセンブリ52に含浸されている。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、1つまたは複数であってもよく、ニーズに応じて調節することができる。
【0184】
いくつかの実施形態において、二次電池は、電池モジュールに組み立てることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の数は、複数であってもよく、具体的な数は、電池モジュールの応用および容量に応じて調節することができる。
【0185】
図6は、1つの例としての電池モジュール4である。
図6を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順に配列されて設けられてもよい。もちろん、他の任意の方式で配列されてもよい。さらに、当該複数の二次電池5は、留め具によって固定されてもよい。
【0186】
任意に、電池モジュール4は、さらに収容空間を有するハウジングをさらに備え、複数の二次電池5は、当該収容空間に収容される。
【0187】
いくつかの実施形態において、前記電池モジュールは、さらに電池パックに組み立てることもでき、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、電池パックの応用および容量に応じて調節することができる。
【0188】
図7と
図8は、1つの例としての電池パック1である。
図7と
図8を参照すると、電池パック1には電池筐体および電池筐体に設けられている複数の電池モジュール4を含んでもよい。電池筐体は、上筐体2および下筐体3を含み、上筐体2は、下筐体3に覆設し、かつ、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することに用いられる。複数の電池モジュール4は、電池筐体内に任意の方式で配置されてもよい。
【0189】
本願に係る二次電池の調製方法は、公知されているものである。いくつかの実施形態において、正極シート、セパレーター、負極シート及び電解液を組み立て二次電池を形成する。例として、正極シート、セパレーター、負極シートを巻取りプロセスまたは積層プロセスによって電極アセンブリに形成し、電極アセンブリを、外装に入れ、乾燥した後に電解液を注入し、真空封止、静置、化成、成形などの工程を経て二次電池を得ることができる。
【0190】
電気装置
本願の実施形態は、さらに本願に係る二次電池、電池モジュール、又は、電池パックからの少なくとも1種を含む電気装置を提供する。前記二次電池、電池モジュール又は電池パックは、前記電気装置の電源として用いられてよく、前記電気装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記電気装置は、モバイル機器(例えば、携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電車、船舶および衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいが、これらに限定されない。
【0191】
前記電気装置は、その使用のニーズに応じて二次電池、電池モジュールまたは電池パックを選択できる。
【0192】
図9は、1つの例としての電気装置である。当該電気装置は、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又は、プラグインハイブリッド電気自動車などである。当該電気装置に対する高出力および高エネルギー密度のニーズを満たすために、電池パック又は電池モジュールを使用することができる。
【0193】
もう1つの例としての電気装置として、携帯電話、タブレット、ノートパソコン等であってもよい。当該電気装置は、通常薄型化が要求され、電源として二次電池を使用できる。
【実施例】
【0194】
以下の実施例は、本願に開示される内容をより具体的に説明するものであり、これらの実施例は、説明のみを目的としており、本願に開示する内容の範囲内での様々な修正および変更は当業者には明らかである。特に明記されていない限り、以下の実施例に記載されるすべての部、百分率及び比値は、重量に基づいており、かつ、実施例で使用されるすべての試薬は、市販され、または従来の方法に従って合成することができ、かつ、それ以上の処理なしに直接使用することができ、また、実施例に使用される装置は、いずれも市販から入手できる。
【0195】
実施例1
複合黒鉛材料の調製
石油残留油を490℃~510℃の条件で遅延コークス化処理して石油非針状コークスである生コークスを得、生コークスを粉砕、成形、分級処理して体積平均粒子径Dv50が9.5μmであるコークス粉末を得て複合黒鉛材料の主体原料とした。
【0196】
層間距離d002が0.3363nmである微細膨張黒鉛(膨張倍率180)を粉砕、成形、分級処理して体積平均粒子径Dv50が7.5μmである微細膨張黒鉛粉末を得た。
【0197】
コークス粉末と微細膨張黒鉛粉末を混合し、そしてバインダーである石炭アスファルトと混合して造粒し、造粒して得られた粒子の体積平均粒子径Dv50は、約13μmであった。造粒生成物を黒鉛坩堝に入れ、そして黒鉛坩堝をアチソン黒鉛化炉に置き、黒鉛坩堝の周囲に抵抗材料を充填し、電気を通すことで抵抗材料に電流を流して熱エネルギーを発生させ、3000℃程度で黒鉛化処理してバルク粒子を得た。
【0198】
得られたバルク粒子を有機炭素源である石油アスファルトと混合した後、トラックキルン内に最高温ゾーン約1150℃、最高温ゾーンの運行時間約4hで炭素化処理してバルク粒子の表面の少なくとも一部に被覆層を形成して複合黒鉛材料を得た。
【0199】
得られた複合黒鉛材料の総質量に基づいて、添加した微細膨張黒鉛粉末の質量パーセント含有量は1%であり、添加したバインダーの質量パーセント含有量は6%であり、添加した有機炭素源の質量は、有機炭素源を炭素化させて得られた非晶質炭素の質量パーセント含有量が3%となる添加量であった。
【0200】
負極シートの製造
前記で製造された複合黒鉛材料を負極活性材とし、バインダーであるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)および導電剤であるカーボンブラック(Super P)を重量比96.2:1.8:1.2:0.8で適量な溶媒である脱イオン水に十分に攪拌混合して均一な負極スラリーを形成し、負極スラリーを均一に負極集電体である銅箔の面に塗り、乾燥、冷間圧延した後、負極シートを得た。負極膜層は、面密度が0.097kg/m2であり、圧密密度が1.64g/cm3であった。
【0201】
正極シートの製造
正極活性材LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM523)、導電剤であるカーボンナノチューブ(CNT)、導電剤であるカーボンブラック(Super P)、バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を97.5:0.5:0.9:1.1の重量比で適量な溶媒であるNMPに十分に攪拌混合して均一な正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体であるアルミ箔の表面に均一に塗り、乾燥、冷間圧延して正極シートを得た。正極膜層は、面密度が0.178kg/m2であり、圧密密度が3.4g/cm3であった。
【0202】
セパレーター
セパレーターとして多孔質ポリエチレン(PE)膜を使用した。
【0203】
電解液の製造
エチレンカーボネート(EC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:1:1で混合して有機溶媒を得、そしてLiPF6を前記有機溶媒に均一に溶解して電解液を得、LiPF6の濃度は、1mol/Lであった。
【0204】
二次電池の製造
正極シート、セパレーター、負極シートを順に積層し、かつ巻き取って電極アセンブリを得、電極アセンブリを外装に入れ、前記電解液を添加し、封止、静置、化成、老化などの工程を経って二次電池を得た。
【0205】
実施例2
二次電池の調製方法は、実施例1と類似し、相違点として、得られた複合黒鉛材料の総質量に基づいて、添加した微細膨張黒鉛粉末の質量パーセント含有量は、3%であり、添加したバインダーの質量パーセント含有量は、6%であり、添加した有機炭素源の質量は、有機炭素源を炭素化させて得られた非晶質炭素の質量パーセント含有量が3%となる添加量であった。
【0206】
実施例3
二次電池の調製方法は、実施例1と類似し、相違点として、得られた複合黒鉛材料の総質量に基づいて、添加した微細膨張黒鉛粉末の質量パーセント含有量は、8%であり、添加したバインダーの質量パーセント含有量は、6%であり、添加した有機炭素源の質量は、有機炭素源を炭素化させて得られた非晶質炭素の質量パーセント含有量が3%となる添加量であった。
【0207】
実施例4
二次電池の調製方法は、実施例1と類似し、相違点として、得られた複合黒鉛材料の総質量に基づいて、添加した微細膨張黒鉛粉末の質量パーセント含有量は、12%であり、添加したバインダーの質量パーセント含有量は、6%であり、添加した有機炭素源の質量は、有機炭素源を炭素化させて得られた非晶質炭素の質量パーセント含有量が3%となる添加量であった。
【0208】
実施例5
二次電池の調製方法は、実施例1と類似し、相違点として、得られた複合黒鉛材料の総質量に基づいて、添加した微細膨張黒鉛粉末の質量パーセント含有量は、20%であり、添加したバインダーの質量パーセント含有量は、6%であり、添加した有機炭素源の質量は、有機炭素源を炭素化させて得られた非晶質炭素の質量パーセント含有量が3%となる添加量であった。
【0209】
実施例6
二次電池の調製方法は、実施例1と類似し、相違点として、得られた複合黒鉛材料の総質量に基づいて、添加した微細膨張黒鉛粉末の質量パーセント含有量は、30%であり、添加したバインダーの質量パーセント含有量は、6%であり、添加した有機炭素源の質量は、有機炭素源を炭素化させて得られた非晶質炭素の質量パーセント含有量が3%となる添加量であった。
【0210】
実施例7
二次電池の調製方法は、実施例3と類似し、相違点として、微細膨張黒鉛粉末の代わりに、層間距離d002が0.33615nmであり、体積平均粒子径Dv50が5.3μmであるハードカーボン粉末を使用した。
【0211】
実施例8
二次電池の調製方法は、実施例3と類似し、相違点として、微細膨張黒鉛粉末の代わりに、層間距離d002が0.33638nmであり、体積平均粒子径Dv50が7.2μmである膨張黒鉛粉末(膨張倍率300)を使用した。
【0212】
実施例9
二次電池の調製方法は、実施例3と類似し、相違点として、微細膨張黒鉛粉末の代わりに、層間距離d002が0.33620nmであり、体積平均粒子径Dv50が8.0μmであるグラフェン粉末を使用した。
【0213】
実施例10
二次電池の調製方法は、実施例1と類似し、相違点として、以下のように複合黒鉛材料を調製した。
【0214】
石油残留油を490℃~510℃の条件で遅延コークス化処理して石油非針状コークスである生コークスを得、得られた生コークスを粉砕、成形、分級処理して体積平均粒子径Dv50が9.5μmであるコークス粉末を得て複合黒鉛材料の主体原料とした。
【0215】
層間距離d002が0.3363nmである微細膨張黒鉛(膨張倍率180)を粉砕、成形、分級処理して体積平均粒子径Dv50が7.5μmである微細膨張黒鉛粉末を得た。
【0216】
コークス粉末をバインダーである石炭アスファルトと混合し、そして造粒し、造粒した後得られた粒子は、体積平均粒子径Dv50が約13μmであった。造粒生成物を黒鉛坩堝に入れ、そして黒鉛坩堝をアチソン黒鉛化炉に置き、黒鉛坩堝の周囲に抵抗材料を充填し、電気を通すことで抵抗材料に電流を流して熱エネルギーを発生させ、3000℃程度で黒鉛化処理してバルク粒子を得た。
【0217】
得られたバルク粒子を微細膨張黒鉛粉末、有機炭素源である石油アスファルトと混合した後、トラックキルン内に最高温ゾーン約1150℃、最高温ゾーンの運行時間約4hで炭素化処理してバルク粒子の表面の少なくとも一部に被覆層を形成して複合黒鉛材料を得た。
【0218】
得られた複合黒鉛材料の総質量に基づいて、添加した微細膨張黒鉛粉末の質量パーセント含有量は8%であり、添加したバインダーの質量パーセント含有量は6%であり、添加した有機炭素源の質量は、有機炭素源を炭素化させて得られた非晶質炭素の質量パーセント含有量が3%となる添加量であった。
【0219】
実施例11
二次電池の調製方法は実施例1と類似し、相違点として、以下のように複合黒鉛材料を製造した。
【0220】
石油残留油を490℃~510℃の条件で遅延コークス化処理して石油非針状コークスである生コークスを得、得られた生コークスを粉砕、成形、分級処理して体積平均粒子径Dv50が9.5μmであるコークス粉末を得て複合黒鉛材料の主体原料とした。
【0221】
層間距離d002が0.3363nmである微細膨張黒鉛(膨張倍率180)を粉砕、成形、分級処理して体積平均粒子径Dv50が7.5μmである微細膨張黒鉛粉末を得た。
【0222】
コークス粉末を微細膨張黒鉛粉末と混合し、そしてバインダーである石炭アスファルトと混合し、造粒し、造粒した後得られた粒子は、体積平均粒子径Dv50が約13μmであった。造粒生成物を黒鉛坩堝に入れ、そして黒鉛坩堝をアチソン黒鉛化炉に置き、黒鉛坩堝の周囲に抵抗材料を充填し、電気を通すことで抵抗材料に電流を流して熱エネルギーを発生させ、3000℃程度で黒鉛化処理してバルク粒子を得た。
【0223】
得られたバルク粒子を微細膨張黒鉛粉末、有機炭素源である石油アスファルトと混合した後、トラックキルン内に最高温ゾーン約1150℃、最高温ゾーンの運行時間約4hで炭素化処理してバルク粒子の表面の少なくとも一部に被覆層を形成して複合黒鉛材料を得た。
【0224】
得られた複合黒鉛材料の総質量に基づいて、2回で添加した微細膨張黒鉛粉末の質量パーセント含有量の合計は10%であり、添加したバインダーの質量パーセント含有量は、6%であり、添加した有機炭素源の質量は、有機炭素源を炭素化させて得られた非晶質炭素の質量パーセント含有量が3%となる添加量であった。
【0225】
実施例12
二次電池の調製方法は、実施例3と類似し、相違点として、下記の方法で負極シートを製造した。
【0226】
前述した製造された複合黒鉛材料を負極活性材とし、バインダーであるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)および導電剤であるカーボンブラック(Super P)を重量比96.2:1.8:1.2:0.8で混合した後、前記微細膨張黒鉛粉末と質量比96:4で混合し、適量な溶媒である脱イオン水を添加し、十分に攪拌混合して均一な負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体である銅箔の表面に均一に塗り、乾燥、冷間圧延して負極シートを得た。
【0227】
実施例13
二次電池の調製方法は、実施例10と類似し、相違点として、下記の方法で負極シートを製造した。
【0228】
前述した製造された複合黒鉛材料を負極活性材とし、バインダーであるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)および導電剤であるカーボンブラック(Super P)を重量比96.2:1.8:1.2:0.8で混合した後、前記微細膨張黒鉛粉末と質量比96:4で混合し、適量な溶媒である脱イオン水を添加し、十分に攪拌混合して均一な負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体である銅箔の面に均一に塗り、乾燥、冷間圧延して負極シートを得た。
【0229】
実施例14
二次電池の調製方法は、実施例11と類似し、相違点として、下記の方法で負極シートを製造した。
【0230】
前記で製造された複合黒鉛材料を負極活性材とし、バインダーであるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)および導電剤であるカーボンブラック(Super P)を重量比96.2:1.8:1.2:0.8で混合し、そして前記微細膨張黒鉛粉末と質量比96:4で混合し、適量な溶媒である脱イオン水を添加し、十分に攪拌混合して均一な負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体である銅箔の面に均一に塗り、乾燥、冷間圧延して負極シートを得た。
【0231】
実施例15
二次電池の調製方法は、実施例1と類似し、相違点として、下記の方法で複合黒鉛材料を製造した。
【0232】
石油残留油を490℃~510℃の条件で遅延コークス化処理して石油非針状コークスである生コークスを得、生コークスを粉砕、成形、分級処理して体積平均粒子径Dv50が7.0μmであるコークス粉末を得て複合黒鉛材料の主体原料とした。
【0233】
層間距離d002が0.3363nmである微細膨張黒鉛(膨張倍率180)を粉砕、成形、分級処理して体積平均粒子径Dv50が6.5μmである微細膨張黒鉛粉末を得た。
【0234】
コークス粉末と微細膨張黒鉛粉末を混合し、そしてバインダーである石炭アスファルトと混合して造粒し、造粒して得られた粒子の体積平均粒子径Dv50は、約9μmであった。造粒生成物を黒鉛坩堝に入れ、そして黒鉛坩堝をアチソン黒鉛化炉に置き、黒鉛坩堝の周囲に抵抗材料を充填し、電気を通すことで抵抗材料に電流を流して熱エネルギーを発生させ、3000℃程度で黒鉛化処理してバルク粒子を得た。
【0235】
得られたバルク粒子を有機炭素源である石油アスファルトと混合した後、トラックキルン内に最高温ゾーン約1150℃、最高温ゾーンの運行時間約4hで炭素化処理してバルク粒子の表面の少なくとも一部に被覆層を形成して複合黒鉛材料を得た。
【0236】
得られた複合黒鉛材料の総質量に基づいて、添加した微細膨張黒鉛粉末の質量パーセント含有量は20%であり、添加したバインダーの質量パーセント含有量は、6%であり、添加した有機炭素源の質量は、有機炭素源を炭素化させて得られた非晶質炭素の質量パーセント含有量が3%となる添加量であった。
【0237】
実施例16
二次電池の調製方法は、実施例1と類似し、相違点として、下記の方法で複合黒鉛材料を製造した。
【0238】
石油残留油を490℃~510℃の条件で遅延コークス化処理して石油非針状コークスである生コークスを得、生コークスを粉砕、成形、分級処理して体積平均粒子径Dv50が11.5μmであるコークス粉末を得て複合黒鉛材料の主体原料とした。
【0239】
層間距離d002が0.3363nmである微細膨張黒鉛(膨張倍率180)を粉砕、成形、分級処理して体積平均粒子径Dv50が7.5μmである微細膨張黒鉛粉末を得た。
【0240】
コークス粉末を微細膨張黒鉛粉末と混合し、そしてバインダーである石炭アスファルトと混合して造粒し、造粒して得られた粒子の体積平均粒子径Dv50は、約14.5μmであった。造粒生成物を黒鉛坩堝に入れ、そして黒鉛坩堝をアチソン黒鉛化炉に置き、黒鉛坩堝の周囲に抵抗材料を充填し、電気を通すことで抵抗材料に電流を流して熱エネルギーを発生させ、3000℃程度で黒鉛化処理してバルク粒子を得た。
【0241】
得られたバルク粒子を有機炭素源である石油アスファルトと混合した後、トラックキルン内に最高温ゾーン約1150℃、最高温ゾーンの運行時間約4hで炭素化処理してバルク粒子の表面の少なくとも一部に被覆層を形成して複合黒鉛材料を得た。
【0242】
得られた複合黒鉛材料の総質量に基づいて、添加した微細膨張黒鉛粉末の質量パーセント含有量は、1%であり、添加したバインダーの質量パーセント含有量は、6%であり、添加した有機炭素源の質量は、有機炭素源を炭素化させて得られた非晶質炭素の質量パーセント含有量が3%となる添加量であった。
【0243】
比較例1
二次電池の調製方法は、実施例1と類似し、相違点として、負極活性材として被覆層を有しない汎用の人造黒鉛を使用した。下記の方法で人造黒鉛を製造した。
【0244】
石油残留油を490℃~510℃の条件で遅延コークス化処理して石油非針状コークスである生コークスを得、生コークスを粉砕、成形、分級処理して体積平均粒子径Dv50が9.5μmであるコークス粉末を得た。
【0245】
コークス粉末をバインダーである石炭アスファルトと混合し、そして造粒し、造粒して得られた粒子は、体積平均粒子径Dv50が約13μmであった。造粒生成物を黒鉛坩堝に入れ、そして黒鉛坩堝をアチソン黒鉛化炉に置き、黒鉛坩堝の周囲に抵抗材料を充填し、電気を通すことで抵抗材料に電流を流して熱エネルギーを発生させ、3000℃程度で黒鉛化処理して人造黒鉛を得た。得られた人造黒鉛の総質量に基づいて、添加したバインダーの質量パーセント含有量は、6%であった。
【0246】
比較例2
二次電池の調製方法は、実施例1と類似し、相違点として、下記の方法で複合黒鉛材料を製造した。
【0247】
石油残留油を490℃~510℃の条件で遅延コークス化処理して石油非針状コークスである生コークスを得、生コークスを粉砕、成形、分級処理して体積平均粒子径Dv50が9.5μmであるコークス粉末を得て複合黒鉛材料の主体原料とした。
【0248】
コークス粉末をバインダーである石炭アスファルトと混合し、そして造粒し、造粒して得られた粒子は、体積平均粒子径Dv50が約13μmであった。造粒生成物を黒鉛坩堝に入れ、そして黒鉛坩堝をアチソン黒鉛化炉に置き、黒鉛坩堝の周囲に抵抗材料を充填し、電気を通すことで抵抗材料に電流を流して熱エネルギーを発生させ、3000℃程度で黒鉛化処理してバルク粒子を得た。
得られたバルク粒子を有機炭素源である石油アスファルトと混合した後、トラックキルン内に最高温ゾーン約1150℃、最高温ゾーンの運行時間約4hで炭素化処理してバルク粒子の表面の少なくとも一部に被覆層を形成して複合黒鉛材料を得た。
【0249】
得られた複合黒鉛材料の総質量に基づいて、添加したバインダーの質量パーセント含有量は、6%であり、添加した有機炭素源の質量は、有機炭素源を炭素化させて得られた非晶質炭素の質量パーセント含有量が3%となる添加量であった。
【0250】
測定部分
負極活性材のDv50及び粉体圧密密度、負極膜層の圧密密度の測定は、明細書に記載の前述した方法で測定した。
【0251】
(1)複合黒鉛材料の空気酸化温度T0の測定
ドイツのNETZSCH STA 449 F3 同時熱分析装置を使用して測定した。まず、複合黒鉛材料サンプル10±0.05mgを量り、平底Al2O3坩堝に入れ、蓋を閉めず、機械のパラメーターを設定し、パージガスは空気、かつ、ガス速率60mL/min、保護ガスは窒素ガスでかつガス速率を20mL/minに設定し、昇温速度5℃/min、測定温度範囲35℃~950℃を設定した。温度が500℃未満である時、当該段階では特徴ピークがないため、急速昇温、例えば昇温速度を10℃/minに設定することができる。
【0252】
熱重量測定終了後、複合黒鉛材料の熱重量曲線(TG)と微分熱重量曲線(DTG)を得、微分熱重量曲線から最大面積ピークのピークトップ温度T1を読み取り、かつ熱重量曲線における500℃とT1温度とにそれぞれ対応する2点の2つの接線の交点を決定し、前記熱重量曲線における当該交点に対応する温度は、複合黒鉛材料の空気酸化温度T0になった。
【0253】
(2)複合黒鉛材料のグラム容量測定
複合黒鉛材料、導電剤であるカーボンブラック(SuperP)、バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を質量比91.6:1.8:6.6で溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)と均一に混合してスラリーを作製し、作製されたスラリーを銅箔集電体に塗り、オーブン中で乾燥して置いた。金属リチウムシートを対電極とし、ポリエチレン(PE)フィルムをセパレーターとした。エチレンカーボネート(EC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:1:1で混合し、そしてLiPF6を前記溶液に均一に溶解して電解液を得、LiPF6の濃度を1mol/Lとした。アルゴンガス保護グローブボックスにてCR2430型ボタン式電池を組み立てた。得られたボタン式電池を12時間静置した後、25℃で0.05Cで0.005Vまで定電流放電し、10分間静置し、50μAの電流で再び0.005Vまで定電流放電し、10分間静置し、10μAで再び0.005Vまで定電流放電し、そして0.1Cで2Vまで定電流充電し、充電容量を記録した。充電容量と複合黒鉛材料質量との比値は、調製された複合黒鉛材料のグラム容量であった。
【0254】
(3)二次電池の急速充電性能測定
25℃で二次電池を0.33Cで充電カットオフ電圧4.4Vまで定電流充電し、そして電流0.05Cまで定電圧充電し、5min静置し、そして0.33Cで放電カットオフ電圧2.8Vまで定電流放電し、その実際容量をC0として記録した。
【0255】
そして、二次電池を順番に0.5C0、1C0、1.5C0、2C0、2.5C0、3C0、3.5C0、4C0、4.5C0で全電池充電カットオフ電圧4.4V又は負極カットオフ電位0V(先着者基準)まで定電流充電し、毎回の充電が完成した後、1C0で全電池放電カットオフ電圧2.8Vまで放電し、異なる充電倍率で10%、20%、30%……80%SOC(State of Charge、荷電状態)まで充電する時に対応する負極電位を記録し、異なるSOC状態での倍率-負極電位曲線をプロットし、線形フィッティングした後異なるSOC状態での負極電位が0Vである時に対応する充電倍率を得、当該充電倍率は、当該SOC状態での充電窓口であり、それぞれC10%SOC、C20%SOC、C30%SOC、C40%SOC、C50%SOC、C60%SOC、C70%SOC、C80%SOCと記され、式(60/C20%SOC+60/C30%SOC+60/C40%SOC+60/C50%SOC+60/C60%SOC+60/C70%SOC+60/C80%SOC)×10%に基づいて当該二次電池を10%SOCから80%SOCまで充電する充電時間T(min)を算出した。当該時間が短いほど、二次電池の急速充電性能が優れていることを表した。
【0256】
(4)二次電池のサイクル寿命測定
25℃で二次電池を0.33Cで充電カットオフ電圧4.4Vまで定電流充電し、そして電流0.05Cまで定電圧充電し、5min静置して0.33Cで放電カットオフ電圧2.8Vまで定電流放電し、その初期容量をC0として記録した。そして表1の記載に従って、充電、0.33Cでの放電を行い、サイクル容量保持率(すなわち、Cn/C0×100%)が80%になるまで各サイクルの放電容量Cnを記録し、サイクル数を記録した。サイクル数が多いほど、二次電池のサイクル寿命は長いことを表した。
【0257】
【0258】
(5)二次電池低温出力性能測定
25℃で二次電池を0.33Cで充電カットオフ電圧4.4Vまで定電流充電し、そして電流0.05Cまで定電圧充電し、5min静置し、そして0.33Cで放電カットオフ電圧2.8Vまで定電流放電し、その初期エネルギーをP0として記録した。そして、前記二次電池を0.33Cで充電カットオフ電圧4.4Vまで定電流充電し、そして電流0.05Cまで定電圧充電し、5min静置し、サーモスタット温度を-30℃に調節し、3h静置し、そして0.33Cで放電カットオフ電圧2.5Vまで定電流放電し、この時のエネルギーP1を記録した。P1/P0は、二次電池の放電エネルギー保持率であった。
【0259】
表2は実施例1~16及び比較例1~2の複合黒鉛材料の調製パラメーターを示した。
【0260】
表3は実施例1~16及び比較例1~2の測定結果を示した。
【0261】
【0262】
【0263】
表3の測定結果から分かるように、複合黒鉛材料の空気酸化温度T0が630℃~730℃である場合、二次電池に高いエネルギー密度を有させる前提で、さらに大幅に向上された急速充電性能と低温出力性能を有させることができた。また、二次電池の大倍率でのサイクル性能も明らかに改善された。
【0264】
図10は、実施例3および比較例2で製造された複合黒鉛材料の熱重量曲線および微分熱重量曲線図である。
図10からわかるように、実施例3の複合黒鉛材料は、比較的に低い空気酸化温度T
0を有し、そして複合黒鉛材料に含まれた端面と欠陥の数が適度であるため、二次電池に高いエネルギー密度を維持させるという前提で、大幅に向上された急速充電性能と低温出力性能を有させることができる。
【0265】
比較例1および比較例2の複合黒鉛材料は、いずれも比較的に高い空気酸化温度T0を有し、複合黒鉛材料に含まれた端面と欠陥の数が比較的に少なく、動的性能が比較的に劣り、二次電池は、大倍率充放電条件で使用しにくく、かつ二次電池は、低温出力性能が比較的に劣った。
【0266】
なお、本願は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は単なる例示に過ぎず、本願の技術案の範囲内において、技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏する実施形態は、いずれも本願の技術的範囲に含まれる。また、本願の要旨を逸脱しない範囲で、当業者が思いつく各種変形を実施形態に施したものや、実施形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本願の範囲内に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個以上の一次粒子が凝集してなる二次粒子であるバルク粒子と、バルク粒子の表面の少なくとも一部に位置する被覆層とを含む複合黒鉛材料であって、前記バルク粒子は人造黒鉛を含み、前記被覆層は非晶質炭素を含み、
前記複合黒鉛材料の空気酸化温度T
0は、630℃~730℃であり、任意に660℃~710℃であり、
前記空気酸化温度T
0とは、前記複合黒鉛材料の熱重量曲線における500℃とT
1温度とにそれぞれ対応する2点の2つの接線の交点に対応する温度であり、前記T
1温度とは、前記複合黒鉛材料の微分熱重量曲線における最大面積ピークのピークトップ温度であり、前記熱重量曲線と前記微分熱重量曲線は、試料質量10±0.05mg、パージガスが空気、ガス速率60mL/min、昇温速度5℃/min、測定温度範囲35℃~950℃の条件で行う熱重量分析により得られる、複合黒鉛材料。
【請求項2】
前記複合黒鉛材料は、さらに動的炭素材料を含み、
任意に、前記動的炭素材料は、前記バルク粒子における一次粒子と一次粒子との間の界面の少なくとも一部に及び/又は前記被覆層中に位置し、
任意に、前記複合黒鉛材料の総質量に基づいて、前記動的炭素材料の質量パーセント含有量は、1%~30%であり、さらに任意に8%~15%である、請求項1に記載の複合黒鉛材料。
【請求項3】
前記動的炭素材料の原料は、ハードカーボン、微細膨張黒鉛、膨張黒鉛、グラフェンから選ばれた1種又は複数種であり、前記動的炭素材料原料(002)結晶面の層間距離d002≧0.3358nmであり、任意に0.3359nm~0.3366nmである、請求項2に記載の複合黒鉛材料、
【請求項4】
前記複合黒鉛材料(002)結晶面の層間距離d
002は、0.3355nm~0.3364nmであり、任意に0.3356nm~0.3361nmであり、及び/又は、
前記複合黒鉛材料の体積平均粒子径Dv50は、8.5μm~14.5μmであり、任意に10μm~12μmであり、及び/又は、
前記バルク粒子の体積平均粒子径Dv50は、7.5μm~13.5μmであり、任意に9.0μm~11.5μmであり、及び/又は、
前記複合黒鉛材料の20000N作用力での粉体圧密密度は、1.45g/cm
3~1.75g/cm
3であり、任意に1.55g/cm
3~1.65g/cm
3である、請求項
1に記載の複合黒鉛材料。
【請求項5】
前記一次粒子の体積平均粒子径Dv50とそれからなる二次粒子の体積平均粒子径Dv50との比値は0.45~0.75であり、任意に0.55~0.65である、請求項
1に記載の複合黒鉛材料。
【請求項6】
前記複合黒鉛材料の総質量に基づいて、前記被覆層における非晶質炭素の質量パーセント含有量は、1%~8%であり、任意に2%~5%である、請求項
1に記載の複合黒鉛材料。
【請求項7】
S10:コークス粉末、又は、動的炭素材料原料粉末を添加したコークス粉末を提供し、前記コークス粉末又は前記動的炭素材料原料粉末を添加したコークス粉末を、黒鉛化処理してバルク粒子を得るステップであって、前記バルク粒子が2個以上の一次粒子が凝集してなる二次粒子であり、前記バルク粒子は、人造黒鉛を含むステップ、および、
S20:前記バルク粒子を有機炭素源と混合し、又は、前記バルク粒子を有機炭素源及び前記動的炭素材料原料粉末と混合し、炭素化処理した後バルク粒子の表面の少なくとも一部に非晶質炭素を含む被覆層を形成して前記複合黒鉛材料を得るステップ、
を含む複合黒鉛材料を調製する方法であって、
ステップS10とS20の少なくとも一方に前記動的炭素材料原料粉末を添加し、動的炭素材料原料はハードカーボン、微細膨張黒鉛、膨張黒鉛、グラフェンから選ばれた1種又は複数種であり、動的炭素材料原料(002)結晶面の層間距離d
002≧0.3358nmであり、任意にd
002は、0.3359nm~0.3366nmであり、
得られた複合黒鉛材料の空気酸化温度T
0は、630℃~730℃であり、前記空気酸化温度T
0とは、前記複合黒鉛材料の熱重量曲線における500℃とT
1温度にそれぞれ対応する2点の2つの接線の交点に対応する温度であり、前記T
1温度とは、前記複合黒鉛材料の微分熱重量曲線における最大面積ピークのピークトップ温度であり、前記熱重量曲線と前記微分熱重量曲線は、試料質量10±0.05mg、パージガスは空気でかつガス速率が60mL/min、昇温速度5℃/min、測定温度範囲35℃~950℃の条件で行う熱重量分析により得られる、複合黒鉛材料を調製する方法。
【請求項8】
得られた複合黒鉛材料の総質量に基づいて、ステップS10、S20に添加された動的炭素材料原料粉末の総質量パーセント含有量は、1%~30%であり、任意に8%~15%である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
コークス粉末の体積平均粒子径Dv50は、6μm~12μmであり、任意に8μm~10μmであり、及び/又は、
動的炭素材料原料粉末の体積平均粒子径Dv50は、3μm~12μmであり、任意に4μm~9μmであり、
任意にコークス粉末の体積平均粒子径Dv50と動的炭素材料原料粉末の体積平均粒子径Dv50との比は1.05~1.75であり、さらに任意に1.2~1.5である、請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
さらに、S10にバインダーを添加し、バインダーをコークス粉末と混合して造粒し、さらに黒鉛化処理してバルク粒子を得、或は、バインダーを、動的炭素材料原料粉末を添加したコークス粉末と混合して造粒し、そして黒鉛化処理してバルク粒子を得るステップを含み、
任意に、得られた複合黒鉛材料の総質量に基づいて、前記バインダー的質量パーセント含有量は、3%~12%であり、さらに任意に5%~8%であり、
任意に、前記バインダーは、アスファルトから選ばれたものであり、
任意に、造粒して得られた粒子の体積平均粒子径Dv50は、8μm~14μmであり、さらに任意に9.5μm~12μmである、請求項
7に記載の方法。
【請求項11】
S20において、前記有機炭素源は、石炭アスファルト、石油アスファルト、フェノール樹脂、ココヤシの殻から選ばれた1種又は複数種であり、任意に石油アスファルトであり、
任意に、得られた複合黒鉛材料の総質量に基づいて、前記有機炭素源の添加量は、有機炭素源を炭素化させて得られた非晶質炭素の質量パーセント含有量が1%~8%、任意に2%~5%となる添加量である、請求項
7に記載の方法。
【請求項12】
負極集電体および負極集電体の少なくとも1つの面に設けられた負極膜層を含む負極シートであって、前記負極膜層は、請求項1~6のいずれの1項に記載の複合黒鉛材料、又は請求項7~11のいずれの1項に記載の方法で調製された複合黒鉛材料を含み、
任意に、前記負極膜層は、さらに添加剤を含み、前記添加剤は、ハードカーボン、微細膨張黒鉛、膨張黒鉛、グラフェンから選ばれた1種又は複数種であり、前記添加剤(002)結晶面の層間距離d
002≧0.3358nmであり、任意に0.3359nm~0.3366nmであり、
任意に、負極膜層の総質量に基づいて、添加剤の質量パーセント含有量は、1%~20%であり、さらに任意に3%~8%である、負極シート。
【請求項13】
請求項12に記載の負極シートを含む二次電池。
【請求項14】
請求項13に記載の二次電池を含む電池モジュール。
【請求項15】
請求項13に記載の二次電池、請求項14に記載の電池モジュールのうちの1種を含む電池パック。
【請求項16】
請求項13に記載の二次電池、請求項14に記載の電池モジュール、請求項15に記載の電池パックのうちの少なくとも1種を含む、電気装置。
【国際調査報告】