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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-30
(54)【発明の名称】サイトケラチンに対する抗腫瘍応答
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/47 20060101AFI20231122BHJP
   C07K 14/74 20060101ALI20231122BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20231122BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20231122BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20231122BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231122BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20231122BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231122BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20231122BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
C07K14/47 ZNA
C07K14/74
C07K14/725
C07K16/18
C12Q1/02
A61P35/02
A61P35/00
A61K39/00 H
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61K35/17
A61P37/04
A61K47/68
A61K47/62
G01N33/53 N
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530808
(86)(22)【出願日】2021-11-22
(85)【翻訳文提出日】2023-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2021082541
(87)【国際公開番号】W WO2022106696
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】2018395.0
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520104123
【氏名又は名称】スキャンセル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥラン、リンダ・ジリアン
(72)【発明者】
【氏名】ブレントビル、ビクトリア・アン
(72)【発明者】
【氏名】クック、キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】シモンズ、ピーター
【テーマコード(参考)】
4B063
4C076
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QR72
4B063QR77
4B063QS33
4B063QS36
4B063QX01
4C076CC07
4C076CC27
4C076EE59
4C085AA02
4C085AA03
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB31
4C085BB33
4C085BB34
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085BB41
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA17
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA86
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、がんの免疫療法に使用できるシトルリン化サイトケラチンペプチドに関する。修飾ペプチドは、ワクチンとして、又はT細胞受容体(TCR)及び養子T細胞移入療法の標的として使用できる。このようなワクチン又は標的は、がんの治療に使用してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i) アミノ酸配列:
KFASFIDKVRFLEQQNKMLE(配列番号1)、
LREYQELMNVKLALDIEI(配列番号2)、
KSYKMSTSGPRAFSSRSFT(配列番号16)、
KSYKVSTSGPRAFSSRSYT(配列番号3)、
KLALDIEIATYRKLLEGEE(配列番号4)、
RSNMDNMFESYINNLRRQL(配列番号5)、及び
LTDEINFLRQLYEEEIRELQ(配列番号6)
(前記配列中の少なくとも1つのアルギニン(R)残基はシトルリンに置換されている)
の1つ以上、並びに/又は
ii) アルギニン以外の位置における、1個、2個若しくは3個のアミノ酸の置換、1個、2個若しくは3個のアミノ酸の挿入、及び/若しくは、1個、2個若しくは3個のアミノ酸の欠失を除く、i) のアミノ酸配列の1つ以上、
を含む、から本質的になる、又は、からなる、シトルリン化T細胞抗原。
【請求項2】
i) 以下のアミノ酸配列:
KFASFIDKV-cit-FLEQQNKMLE
L-cit-EYQELMNVKLALDIEI(配列番号11)
KSYKMSTSGP-cit-AFSSRSFT(配列番号23)
KSYKVSTSGP-cit-AFSS-cit-SYT(配列番号12)
KLALDIEIATY-cit-KLLEGEE(配列番号13)
cit-SNMDNMFESYINNL-cit-cit-QL(配列番号14)
LTDEINFL-cit-QLYEEEI-cit-ELQ(配列番号15)
(式中、「cit」はシトルリンを表す)
の1つ以上、並びに/又は
ii) シトルリン以外の位置における、1個、2個若しくは3個のアミノ酸の置換、1個、2個若しくは3個のアミノ酸の挿入、及び/若しくは、1個、2個若しくは3個のアミノ酸の欠失を除く、i) のアミノ酸配列の1つ以上、
を含む、から本質的になる、又は、からなる、請求項1に記載の抗原。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の抗原とMHC分子の複合体であって、場合によっては、前記MHC分子はMHCクラスIIであり、場合によってはDP4である、複合体。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の抗原と結合する結合部分。
【請求項5】
前記結合部分がMHCと複合体を形成する場合に前記抗原が結合する、請求項4に記載の結合部分。
【請求項6】
前記結合部分が、T細胞受容体(TCR)又は抗体である、請求項4又は5に記載の結合部分。
【請求項7】
前記TCRが細胞の表面にある、請求項7に記載の結合部分。
【請求項8】
医薬として使用するための、請求項1若しくは2に記載の抗原、請求項3に記載の複合体、及び/又は請求項4~7のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項9】
がんの治療又は予防に使用するための、請求項8に記載の使用のための、抗原、複合体及び/又は結合部分。
【請求項10】
前記がんが、AML、肺がん、結腸直腸がん、腎臓がん、乳がん、卵巣がん及び肝臓がんである、請求項9に記載の使用のための、抗原、複合体及び/又は結合部分。
【請求項11】
請求項1若しくは2に記載の抗原、請求項3に記載の複合体、及び/又は請求項4~7のいずれか一項に記載の結合部分を、薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物。
【請求項12】
請求項3に記載の複合体と結合する結合部分を特定する方法であって、前記方法は、候補となる結合部分を前記複合体と接触させる工程、及び前記候補となる結合部分が前記複合体と結合するかどうかを決定する工程を含む、方法。
【請求項13】
抗腫瘍免疫を刺激するサイトケラチンのシトルリン化T細胞エピトープを特定するin vitroスクリーニング方法であって、
シトルリン化エピトープに特異的なT細胞応答の誘導のためのサイトケラチンのスクリーニング;及び
腫瘍認識のためのシトルリン化エピトープに特異的なT細胞のスクリーニング
を含む方法。
【請求項14】
シトルリン化エピトープに対するT細胞応答の誘導のためのスクリーニングは、シトルリン化エピトープがCD4エピトープ又はCD8エピトープであるかどうかを特定するためのCD4 T細胞及びCD8 T細胞の選別を含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん免疫療法において使用できる修飾サイトケラチンペプチドに関する。この修飾ペプチドは、ワクチンとして、又はT細胞受容体(TCR)及び養子T細胞移入療法の標的として使用できる。このようなワクチン又は標的は、がんの治療に使用できる。
【背景技術】
【0002】
がんワクチンが効果的であるためには、耐性を破壊し、免疫抑制性の腫瘍環境を克服できる強力な免疫応答を誘導する必要がある。最近、腫瘍を破壊するCD4 T細胞の重要性が強調されているが、自己特異的なCD4応答の誘導は困難であることが証明されている。一方、修飾された自己エピトープを認識するCD4 T細胞は、関節リウマチ(RA)、コラーゲンII誘発関節炎、サルコイドーシス、セリアック病及び乾癬といったいくつかの自己免疫疾患の病態生理に関与することが示されている(Choy 2012;Grunewald and Eklund 2007;Coimbra et al. 2012;Holmdahl et al. 1985)。これらの一般的な修飾の1つはアルギニンのシトルリン化であり、アルギニンの正電荷のアルジミン基(=NH)から、シトルリンの中性電荷のケトン基(=O)への変換である。シトルリン化は、さまざまな組織に存在するカルシウム依存性酵素のペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD)が関与する。最近、抗原提示細胞(APC)によるシトルリン化T細胞エピトープの提示が、オートファジー及びPAD活性に依存することも、Irelandらによって実証された(Ireland and Unanue 2011)。このプロセスは、プロフェッショナルAPC及び上皮細胞上のMHCクラスII分子で提示するために、内因性の抗原処理を可能にするメカニズムであることも実証されている(Munz 2012;Schmid, Pypaert, and Munz 2007)。オートファジーはAPCでは構成的であるが、他の細胞ではストレスによってのみ誘導される(Green and Levine 2014)。シトルリン化エピトープを認識するT細胞は、シトルリン化ペプチドを発現しない正常な細胞を標的としない。オートファジーは、低酸素及び栄養飢餓などのストレスで誘発され、腫瘍の生存を促進するためにアップレギュレートされる(Green and Levine 2014)。
【0003】
サイトケラチンは、全ての上皮細胞で発現する中間径フィラメント(IF)タンパク質の最大のファミリーであり、それらは、著しい生化学的多様性(Liao, Ku, and Omary 1997)、広範な組織分布、複数の機能及び疾患との関連(Chou, Skalli, and Goldman 1997;Chang et al. 2013)を有している。それらは、細胞膜から細胞質に足場を形成することにより、細胞の形状と剛性を維持する上で重要な役割を果たす(Fuchs and Cleveland 1998)。構造的な機能に加え、細胞周期の進行、アポトーシス、ストレスに対する細胞応答、タンパク質合成、細胞サイズ及び膜輸送を調節する細胞シグナル伝達経路にも関与する(Paramio and Jorcano 2002;Coulombe and Omary 2002;Oshima 2002)。
【0004】
サイトケラチンの発現をプロファイリングすることで、特定のサイトケラチンの存在による上皮細胞の分類が可能となる(Moll, Divo, and Langbein 2008;Moll et al. 1982)。サイトケラチン8、18及び19は単層上皮細胞で発現し、サイトケラチン5及び14は基底上皮細胞で発現する。サイトケラチンフィラメントは柔軟であり、機械的及び非機械的な刺激の変化に応答して再編成して、細胞のシグナル伝達及び遊走を含むさまざまな細胞プロセスを調節できる(Gu and Coulombe 2007;Chung, Rotty, and Coulombe 2013)。
【0005】
サイトケラチンの発現は、病理学者ががんを分類するのに使用してきた:がん細胞の大部分は上皮細胞に由来する。サイトケラチンタンパク質の発現を調査するために腫瘍を染色することは、病理学者が、腫瘍を特定するのに非常に役に立つことが証明されている;1980年代以降、サイトケラチン特異的モノクローナル抗体は、がんの診断に使用されてきた(Oshima 2007;Moll, Divo, and Langbein 2008)。例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)では、サイトケラチン17の過剰発現は、腺がんよりも、扁平上皮がんに関連する(Moll, Divo, and Langbein 2008)。
【0006】
サイトケラチンが、がん細胞の転移に関与し、患者の予後の一因となることを示す研究が増加している(Karantza 2011)。例えば、結腸直腸がんでは、サイトケラチン8及びサイトケラチン20の発現の減少は、がん細胞の上皮間葉転換(EMT)及び患者の生存率の低下と関連する(Knosel et al. 2006)。膵臓がん患者では、膵臓腺がん患者の骨髄及び/又は血液中のサイトケラチン20の発現は、予後不良と相関する(Soeth et al. 2005;Matros et al. 2006;Schmitz-Winnenthal et al. 2006)。明細胞RCCにおけるサイトケラチン7及びサイトケラチン19の共発現は、良好な臨床転帰に関連する(Mertz et al. 2008)。これに対して、循環腫瘍細胞におけるサイトケラチン8及び18の共発現は、原発腫瘍切除の際の転移の存在及び低い全生存率と相関する(Bluemke et al. 2009)。サイトケラチンの発現と予後についての他の相関は、胃がん(Katsuragi et al. 2007)、肝細胞がん(Yang et al. 2008)、子宮内膜がん(Stefansson, Salvesen, and Akslen 2006)及び皮膚がん(Chen et al. 2009)を含む多くのがんにおいても見られる。
【0007】
I型及びII型サイトケラチンのヘテロ二量体が形成され、更に重合してフィラメントを形成するように調節される、28のI型配列及び26のII型配列の54のケラチン遺伝子が存在する。このプロセスは転写及び翻訳後の段階で調節されている(Gu and Coulombe 2007)。ケラチン、II型細胞骨格8、ケラチン8としても知られているサイトケラチン8は、第12染色体に局在するII型サイトケラチンのメンバーである。2つの選択的スプライシングバリアント、53kDa、483アミノ酸のアイソフォーム1(P05787-1)、及び、56kDa、511アミノ酸のアイソフォーム2(P05787-2)が、選択的プロモーターの使用と選択的スプライシングによって産生される(図1A)。多くの変異も特定されており、肝臓疾患、膵炎及び炎症性腸疾患に関連している(Szeverenyi et al. 2008)。
【0008】
サイトケラチン8(Cyk8)は、サイトケラチン18と重合する周知の上皮マーカータンパク質である。このサイトケラチンのペアは、胚で最初に発現する。成体の組織では、このペアの発現は、単層上皮(肝臓、膵臓、腎臓など)及び混合上皮(乳房、肺など)に限定される(Moll et al. 1982;Owens and Lane 2003;Franke et al. 1981;Blobel et al. 1984)。このペアの過剰発現は、腺がん及び扁平上皮がんで観察されている(Oshima, Baribault, and Caulin 1996;Vaidya et al. 1989)。乳がん及び黒色腫では、ビメンチンと共にサイトケラチン8及び18が発現すると、薬剤耐性、浸潤及び転移が増加することが報告されている(Thomas et al. 1999)。Cyk8の異常な発現は、非小細胞肺がんでも見いだされ、NSCLCの患者の血清にも存在する(Fukunaga et al. 2002)。Cyk8の自己抗体は、慢性関節リウマチ(RA)患者でも見いだされており、RAに関連するいわゆる抗ケラチン抗体の真の抗原の1つとして説明されている(Wang et al. 2015)。
【0009】
サイトケラチンタンパク質は、特にストレス時に上皮の構造的完全性を維持するのに重要な役割を果たす。これは重要な細胞調節因子であるが、上皮の腫瘍形成及びがん治療の応答性に関与することを示す証拠が増加している。タンパク質の翻訳後修飾は、細胞ストレス下で生じる。そのような修飾の1つに、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD)酵素によるアルギニン残基のシトルリンへの変換であるシトルリン化がある。シトルリン化は、ストレスを受けた細胞で誘導される分解とリサイクル過程(オートファジー)の結果として生じる(Ireland and Unanue 2011)。シトルリン化されたエピトープは、その後、CD4 T細胞による認識のためにMHCクラスII分子上に提示される。シトルリン化タンパク質に応答して放出される強力な免疫応答は、がん細胞を破壊するために利用され、方向転換される。この免疫応答はキラーCD4 T細胞によるもので、大量のIFNγが分泌される。これによりMHCクラスIIの発現が増加し、CD8 T細胞が関与することなく腫瘍細胞を直接死滅させる(Brentville et al. 2016;Durrant, Metheringham, and Brentville 2016)。腫瘍の認識は、シトルリン化及びオートファジーの両者に依存する。細胞骨格タンパク質であるビメンチンに由来する2つのシトルリン化ペプチドでマウスを免疫した後に、多数のIFNγ分泌CD4 T細胞が誘導されることが示されている。ex vivoでは、これらのCD4 T細胞は、飢餓又はラパマイシンのいずれかによってオートファジーが誘導された腫瘍細胞を認識する。腫瘍におけるビメンチンの機能及び発現は、国際公開第2014/023957号に詳しく説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】サイトケラチン8のアイソフォーム及びヒトサイトケラチン8と他の種の配列のアラインメント サイトケラチン8には2種類のアイソフォームが存在する(アイソフォーム1及びアイソフォーム2、図1A)。
図1B】サイトケラチン8のアイソフォーム及びヒトサイトケラチン8と他の種の配列のアラインメント ヒトサイトケラチン8(B)と他の種(マウス、ラット、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌ、ウサギ及びヒツジ)の配列のアラインメント。
図1B-1】図1Bの続き
図2A】シトルリン化サイトケラチン8ペプチドプールに対するIFNγ応答のスクリーニング HHDII/DP4を発現するトランスジェニックマウスを用いて、ペプチドに対するIFNγ応答をスクリーニングした。マウスを、2~3個の重複しないヒトCyk8シトルリン化ペプチドのペプチドプールで3週間、免疫した。初回投与から21日後に脾細胞を採取した。ヒトCyk8 citペプチドによる刺激に対するex vivo応答を、IFNγELISpotで評価した。培地のみの応答を陰性対照として用いた。各記号は個々のマウスの平均の応答を表し、横線はマウス間の中央値を表す。各プールの培地のみの応答に対するペプチド応答の統計的有意性を、ANOVAとDunnettの事後検定を用いて決定し、p<0.5、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001で有意なp値のみを示す。
図2B】シトルリン化サイトケラチン8ペプチドプールに対するIFNγ応答のスクリーニング 親C57BLマウスを用いて、ペプチドに対するIFNγ応答をスクリーニングした。マウスを、2~3個の重複しないヒトCyk8シトルリン化ペプチドのペプチドプールで3週間、免疫した。初回投与から21日後に脾細胞を採取した。ヒトCyk8 citペプチドによる刺激に対するex vivo応答を、IFNγELISpotで評価した。培地のみの応答を陰性対照として用いた。各記号は個々のマウスの平均の応答を表し、横線はマウス間の中央値を表す。各プールの培地のみの応答に対するペプチド応答の統計的有意性を、ANOVAとDunnettの事後検定を用いて決定し、p<0.5、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001で有意なp値のみを示す。Cyk8 133-151 cit、Cyk8 217-236 cit、Cyk8 371-388 citペプチドを用い、0.001μg/ml~10μg/mlでペプチド滴定を行い(C)、データを対数目盛でプロットし、GraphPad Prismを用いてEC50値を計算した。カーブフィット(R)が0.95を超える曲線のみ示す。
図2C】シトルリン化サイトケラチン8ペプチドプールに対するIFNγ応答のスクリーニング Cyk8 133-151 cit、Cyk8 217-236 cit、Cyk8 371-388 citペプチドを用い、0.001μg/ml~10μg/mlでペプチド滴定を行い、データを対数目盛でプロットし、GraphPad Prismを用いてEC50値を計算した。カーブフィット(R)が0.95を超える曲線のみ示す。
図3A】複数のシトルリン化サイトケラチン8ペプチドは強力なIFNγ応答を誘導する HLA-DP4マウスを、Cyk8 101-120、Cyk8 133-151、Cyk8 217-236、Cyk8 371-388及びCyk8 381-399シトルリン化ペプチドで、3週間、毎週免疫した。3回目の投与の7日後に脾細胞を採取した。Cyk8シトルリン化ペプチド及び野生型ペプチドに対する応答を決定するために、ex vivo IFNγELISpotを行った。各記号は個々のマウスの平均の応答を表し、横線はマウス間の中央値を表す。Cyk8 wtペプチドへの応答に対するCyk8 citへのペプチド応答の統計的有意性を、Mann-Whitney検定を用いて決定し、有意なp値のみを示す。
図3B】複数のシトルリン化サイトケラチン8ペプチドは強力なIFNγ応答を誘導する HLA-DP4マウスを、Cyk8 101-120、133-151及び371-388野生型ペプチドで、3週間、毎週免疫した。3回目の投与の7日後に脾細胞を採取した。Cyk8シトルリン化ペプチド及び野生型ペプチドに対する応答を決定するために、ex vivo IFNγELISpotを行った。各記号は個々のマウスの平均の応答を表し、横線はマウス間の中央値を表す。Cyk8 wtペプチドへの応答に対するCyk8 citへのペプチド応答の統計的有意性を、Mann-Whitney検定を用いて決定し、有意なp値のみを示す。
図4A】相同なヒト及びマウスのシトルリン化サイトケラチン8 217-236ペプチドは、同様のIFNγ応答を誘導する マウスサイトケラチン8とヒトサイトケラチン8の配列の比較した。
図4B】相同なヒト及びマウスのシトルリン化サイトケラチン8 217-236ペプチドは、同様のIFNγ応答を誘導する HHDII/DP4マウスで、マウス及びヒトCyk8 217-236 citを試験した。マウスを、マウスCyk8 217-236シトルリン化ペプチドで、3週間、毎週免疫した。3回目の投与の7日後に脾細胞を採取した。ex vivo IFNγELISpotを行い、マウス及びヒトCyk8 217-236シトルリン化ペプチド、並びにヒトCyk8 217-236野生型ペプチドに対する応答を決定した。各記号は個々のマウスの平均の応答を表し、横線はマウス間の中央値を表す。マウスCyk8 217-236 cit、ヒトCyk8 217-236 cit及びヒトCyk8 wtペプチドに対するペプチド応答の統計的有意性を、Dunnettの多重比較検定を用いたANOVAで決定した、p<0.5、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001、ns=有意性なし。
図5】サイトケラチン8ペプチドは、他のサイトケラチンと相同性を有する 異なるサイトケラチン間の高度の配列相同性のために、今回特定したサイトケラチン8ペプチドについてペプチドのBLAST検索を行った。これらのペプチドは、相同であるか、アミノ酸のミスマッチが1つであるという結果が示される。
図6A】HHDII/DP4及びC57BL/6マウスにおけるサイトケラチン8(Cyk8)citペプチド応答の特徴付け HHDII/DP4マウスを、個々のシトルリン化ペプチドで、3週間、毎週、免疫した。3回目の投与の7日後に脾細胞を採取した。ex vivo ELISpotは21日目に行った。脾細胞を、CD4/CD8ブロッキング抗体の存在下、培地又はcitペプチドで再刺激した。各記号は個々のマウスの平均の応答を表し、横線はマウス間の中央値を表す。CD4/CD8ブロッキング抗体の非存在下での応答に対する、これらのブロッキング抗体の存在下での応答の統計的有意性を、Dunnettの多重比較検定を用いたANOVAで決定した、p<0.5、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001、ns=有意性なし。
図6B】HHDII/DP4及びC57BL/6マウスにおけるサイトケラチン8(Cyk8)citペプチド応答の特徴付け C57BL/6マウスを、個々のシトルリン化ペプチドで、3週間、毎週、免疫した。3回目の投与の7日後に脾細胞を採取した。ex vivo ELISpotは21日目に行った。脾細胞を、CD4/CD8ブロッキング抗体の存在下、培地又はcitペプチドで再刺激した。各記号は個々のマウスの平均の応答を表し、横線はマウス間の中央値を表す。CD4/CD8ブロッキング抗体の非存在下での応答に対する、これらのブロッキング抗体の存在下での応答の統計的有意性を、Dunnettの多重比較検定を用いたANOVAで決定した、p<0.5、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001、ns=有意性なし。
図7】マウスでは単回免疫の14日後に応答が現れることから、これらはナイーブな応答であることが示唆される HHDII/DP4トランスジェニックマウスを、マウスを犠牲にする2日前又は14日前に、CpG/MPLA中のサイトケラチン8 371-388 citペプチドを1回投与して免疫し、ex vivo ELISpotを行ってIFNγ応答を決定した。各記号は個々のマウスの平均の応答を表し、横線はマウス間の中央値を表す。p値は、14日目のペプチド応答と比較した有意差を表し、有意なp値のみを示す。
図8A】がん細胞におけるサイトケラチン8の発現及びin vitroシトルリン化後のシトルリン化サイトケラチン8の検出 サイトケラチン8及びβアクチンをプローブしたがん細胞株である、組換えサイトケラチン8(レーン1)、ラダー(レーン2)、PY230(レーン3)、PANO2(レーン4)、LLC2(レーン5)、TRAMP(レーン6)、ID8(レーン7)、B16F1(レーン8)、PY8119(レーン9)の溶解物のイムノブロット。バンドは、サイトケラチン8(53kDa)及びβ-アクチン(43kDa)の予想されるサイズに対応する。
図8B】がん細胞におけるサイトケラチン8の発現及びin vitroシトルリン化後のシトルリン化サイトケラチン8の検出 Cyk8のin vitroシトルリン化は、PAD2又はPAD4のいずれかの存在下で行った。、組換えサイトケラチン8(レーン1)、サイトケラチン8+PAD2(レーン2)、サイトケラチン8+PAD4(レーン3)。
図9A】ヒトサイトケラチン8 371-388 citペプチドは、抗腫瘍実験においてin vivoでの生存率に有利な点をもたらす HHDII/DP4マウスに、B16腫瘍とIFNγ誘導DP4を投与した。4日、11日及び18日目に、HHDII/DP4マウスをCyk8 371-388 cit又はCyk8 371-388 wtペプチドで免疫した。免疫を行っていない対照マウス、及びCyk8 371-388 citペプチド又はCyk8 371-388 wtペプチドのいずれかで免疫したマウスの全生存率を示す。免疫マウスと対照マウスとの間の統計的差異を、Mantel-Cox検定で求め、p値を示す(全群n=10)。
図9B】ヒトサイトケラチン8 371-388 citペプチドは、抗腫瘍実験においてin vivoでの生存率に有利な点をもたらす HHDII/DP4マウスに、B16腫瘍とIFNγ誘導DP4を投与した。4日、11日及び18日目に、HHDII/DP4マウスをCyk8 371-388 cit又はCyk8 371-388 wtペプチドで免疫した。免疫を行っていない対照マウス、及びCyk8 371-388 citペプチド又はCyk8 371-388 wtペプチドのいずれかで免疫したマウスの、腫瘍移植後29日目の腫瘍体積を示す。免疫マウスと対照マウスとの間の統計的差異を、Mantel-Cox検定で求め、p値を示す。腫瘍体積の中央値及びMann Whitney U検定で求めたp値を示す(全群n=10)。
図9C】ヒトサイトケラチン8 371-388 citペプチドは、抗腫瘍実験においてin vivoでの生存率に有利な点をもたらす HHDII/DP4マウスに、B16腫瘍とIFNγ誘導DP4を投与した。4日、11日及び18日目に、HHDII/DP4マウスをCyk8 371-388 cit又はCyk8 371-388 wtペプチドで免疫した。免疫を行っていない対照マウス、及びCyk8 371-388 citペプチド又はCyk8 371-388 wtペプチドのいずれかで免疫したマウスの、実験期間中の腫瘍体積を示す。免疫マウスと対照マウスとの間の統計的差異を、Mantel-Cox検定で求め、p値を示す。腫瘍体積の中央値及びMann Whitney U検定で求めたp値を示す(全群n=10)。
図10A】ヒトサイトケラチン8 101-120 citペプチドは、抗腫瘍実験においてin vivoでの生存率に有利な点をもたらす HHDII/DP4マウスに、B16腫瘍とIFNγ誘導DP4を投与した。4日、11日及び18日目に、HHDII/DP4マウスをCyk8 371-388 citペプチドで免疫した。免疫を行っていない対照マウス及びCyk8 101-120 citペプチドで免疫したマウスの全生存率を示す。免疫マウスと対照マウスとの間の統計的差異を、Mantel-Cox検定で求め、p値を示す(全群n=10)。
図10B】ヒトサイトケラチン8 101-120 citペプチドは、抗腫瘍実験においてin vivoでの生存率に有利な点をもたらす HHDII/DP4マウスに、B16腫瘍とIFNγ誘導DP4を投与した。4日、11日及び18日目に、HHDII/DP4マウスをCyk8 371-388 citペプチドで免疫した。免疫を行っていない対照マウス及びCyk8 101-120 citペプチドで免疫したマウスの腫瘍移植後24日目の腫瘍体積を示す。免疫マウスと対照マウスとの間の統計的差異を、Mantel-Cox検定で求め、p値を示す。腫瘍体積の中央値及びMann Whitney U検定で求めたp値を示す(全群n=10)。
図10C】ヒトサイトケラチン8 101-120 citペプチドは、抗腫瘍実験においてin vivoでの生存率に有利な点をもたらす HHDII/DP4マウスに、B16腫瘍とIFNγ誘導DP4を投与した。4日、11日及び18日目に、HHDII/DP4マウスをCyk8 371-388 citペプチドで免疫した。免疫を行っていない対照マウス及びCyk8 101-120 citペプチドで免疫したマウスの実験期間中の腫瘍体積を示す。免疫マウスと対照マウスとの間の統計的差異を、Mantel-Cox検定で求め、p値を示す。腫瘍体積の中央値及びMann Whitney U検定で求めたp値を示す(全群n=10)。
図11A】サイトケラチン8 8-26 citペプチドは、抗腫瘍実験においてin vivoでの生存率に有利な点をもたらす C57BL/6にB16腫瘍(親非トランスフェクト細胞株)を投与した。4日後、C57BL/6マウスをCyk8 8-26 citペプチドで免疫した。免疫を行っていない対照マウス及びCyk8 8-26 citペプチドで免疫したマウスの全生存率を示す。免疫マウスと対照マウスとの間の統計的差異を、Mantel-Cox検定で求め、p値を示す(全群n=10)。
図11B】サイトケラチン8 8-26 citペプチドは、抗腫瘍実験においてin vivoでの生存率に有利な点をもたらす C57BL/6にB16腫瘍(親非トランスフェクト細胞株)を投与した。4日後、C57BL/6マウスをCyk8 8-26 citペプチドで免疫した。免疫を行っていない対照マウス及びCyk8 8-26 citペプチドで免疫したマウスの腫瘍移植後13日目の腫瘍体積を示す。免疫マウスと対照マウスとの間の統計的差異を、Mantel-Cox検定で求め、p値を示す。腫瘍体積の中央値及びMann Whitney U検定で求めたp値を示す(全群n=10)。
図11C】サイトケラチン8 8-26 citペプチドは、抗腫瘍実験においてin vivoでの生存率に有利な点をもたらす C57BL/6にB16腫瘍(親非トランスフェクト細胞株)を投与した。4日後、C57BL/6マウスをCyk8 8-26 citペプチドで免疫した。免疫を行っていない対照マウス及びCyk8 8-26 citペプチドで免疫したマウスの実験期間中の腫瘍体積を示す。免疫マウスと対照マウスとの間の統計的差異を、Mantel-Cox検定で求め、p値を示す。腫瘍体積の中央値及びMann Whitney U検定で求めたp値を示す(全群n=10)。
図12A】ヒトサイトケラチン101-120 citペプチドは、健康なドナーのPBMCで応答を誘導する 18人の健常者からPBMCを得、その大半でHLAタイピングを行い、13人はHLA-DP4陽性、2人はHLA-DP4陰性であり、3人のHLAタイプは決定しなかった。単離したPBMCを、培地又はヒトCyk8 101-120 citペプチドと共に培養した。Cyk8 101-120 citペプチドで刺激する前に、PMBCをCSFEで標識した。代表的なフローサイトメトリープロットを示す。
図12B】ヒトサイトケラチン101-120 citペプチドは、健康なドナーのPBMCで応答を誘導する 18人の健常者からPBMCを得、その大半でHLAタイピングを行い、13人はHLA-DP4陽性、2人はHLA-DP4陰性であり、3人のHLAタイプは決定しなかった。単離したPBMCを、培地又はヒトCyk8 101-120 citペプチドと共に培養した。Cyk8 101-120 citペプチドで刺激する前に、PMBCをCSFEで標識した。CSFE標識細胞集団内のCD4 T細胞集団の増殖応答を、7日目及び10日目にフローサイトメトリーで評価した。
図12C】ヒトサイトケラチン101-120 citペプチドは、健康なドナーのPBMCで応答を誘導する 18人の健常者からPBMCを得、その大半でHLAタイピングを行い、13人はHLA-DP4陽性、2人はHLA-DP4陰性であり、3人のHLAタイプは決定しなかった。単離したPBMCを、培地又はヒトCyk8 101-120 citペプチドと共に培養した。Cyk8 101-120 citペプチドで刺激する前に、PMBCをCSFEで標識した。7日目及び10日目に、増殖CD4 T細胞におけるCD134の発現を評価し、10日目の応答を示す。
図12D】ヒトサイトケラチン101-120 citペプチドは、健康なドナーのPBMCで応答を誘導する 18人の健常者からPBMCを得、その大半でHLAタイピングを行い、13人はHLA-DP4陽性、2人はHLA-DP4陰性であり、3人のHLAタイプは決定しなかった。単離したPBMCを、培地又はヒトCyk8 101-120 citペプチドと共に培養した。Cyk8 101-120 citペプチドで刺激する前に、PMBCをCSFEで標識した。7日目及び10日目に、増殖CD4 T細胞におけるIFNγの発現を評価し、10日目の応答を示す。
図12E】ヒトサイトケラチン101-120 citペプチドは、健康なドナーのPBMCで応答を誘導する 18人の健常者からPBMCを得、その大半でHLAタイピングを行い、13人はHLA-DP4陽性、2人はHLA-DP4陰性であり、3人のHLAタイプは決定しなかった。単離したPBMCを、培地又はヒトCyk8 101-120 citペプチドと共に培養した。Cyk8 101-120 citペプチドで刺激する前に、PMBCをCSFEで標識した。7日目及び10日目に、増殖CD4 T細胞におけるグランザイムBの発現を評価し、10日目の応答を示す。
図13A】ヒトサイトケラチン101-120 citペプチドは、がん患者のPBMCで応答を誘導する 5人の肺がん患者からPBMCを得た。HLAタイピングは行わなかった。単離したPBMCを、培地又はヒトCyk8 101-120 citペプチドと共に培養した。Cyk8 101-120 citペプチドで刺激する前に、PMBCをCSFEで標識した。患者のPBMCのCSFE標識細胞集団内のCD4 T細胞集団の増殖応答を、7日目及び10日目にフローサイトメトリーで評価した。
図13B】ヒトサイトケラチン101-120 citペプチドは、がん患者のPBMCで応答を誘導する 12人の卵巣がん患者からPBMCを得た。患者の大半ではHLAタイピングを行い、9人はHLA-DP4陽性、2人はHLA-DP4陰性で、1人はHLAタイピングを行わなかった。単離したPBMCを、培地又はヒトCyk8 101-120 citペプチドと共に培養した。Cyk8 101-120 citペプチドで刺激する前に、PMBCをCSFEで標識した。患者のPBMCのCSFE標識細胞集団内のCD4 T細胞集団の増殖応答を、7日目及び10日目にフローサイトメトリーで評価した。
図13C】ヒトサイトケラチン101-120 citペプチドは、がん患者のPBMCで応答を誘導する 5人の肺がん患者からPBMCを得た。HLAタイピングは行わなかった。単離したPBMCを、培地又はヒトCyk8 101-120 citペプチドと共に培養した。Cyk8 101-120 citペプチドで刺激する前に、PMBCをCSFEで標識した。7日目及び10日目に、増殖中のCD4 T細胞におけるCD134、IFNγ及びグランザイムBの発現を評価し、10日目の応答を示す。
図13D】ヒトサイトケラチン101-120 citペプチドは、がん患者のPBMCで応答を誘導する 12人の卵巣がん患者からPBMCを得た。患者の大半ではHLAタイピングを行い、9人はHLA-DP4陽性、2人はHLA-DP4陰性で、1人はHLAタイピングを行わなかった。単離したPBMCを、培地又はヒトCyk8 101-120 citペプチドと共に培養した。Cyk8 101-120 citペプチドで刺激する前に、PMBCをCSFEで標識した。7日目及び10日目に、増殖中のCD4 T細胞におけるCD134、IFNγ及びグランザイムBの発現を評価し、10日目の応答を 示す。
図14】ヒトサイトケラチン8 101-120 citペプチドに対する免疫応答は記憶T細胞が媒介する Cyk8 101-120 citペプチドに特異的なCSFElow T細胞について、記憶及びナイーブT細胞集団を特定するマーカーを用いて表現型を解析し、10日目に表現型をフローサイトメトリーで評価した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の側面では、
(i) アミノ酸配列:
KFASFIDKVRFLEQQNKMLE(配列番号1)(Cyk8 101-120)
LREYQELMNVKLALDIEI(配列番号2)(Cyk8 371-388)
KSYKMSTSGPRAFSSRSFT(配列番号16)(マウスCyk8 8-26)
KSYKVSTSGPRAFSSRSYT(配列番号3)(Cyk8 8-26)
KLALDIEIATYRKLLEGEE(配列番号4)(Cyk8 381-399)
RSNMDNMFESYINNLRRQL(配列番号5)(Cyk8 133-151)及び
LTDEINFLRQLYEEEIRELQ(配列番号6)(Cyk8 217-236)
(前記配列中の少なくとも1つのアルギニン(R)残基はシトルリンに置換されている)
の1つ以上、並びに/又は
(ii) アルギニン以外の位置における、1個、2個若しくは3個のアミノ酸の置換、1個、2個若しくは3個のアミノ酸の挿入、及び/若しくは、1個、2個若しくは3個のアミノ酸の欠失を除く、i) のアミノ酸配列の1つ以上、
を含む、から本質的になる、又は、からなる、シトルリン化T細胞抗原が提供される。
【0012】
本発明者らは、予想外にも、腫瘍細胞で発現する、少なくとも1つのアルギニンがシトルリンに置換されたサイトケラチン8により、特定の抗原に対するT細胞応答を上昇させることが可能であることを発見した。さらに、シトルリン含有ペプチドは、腫瘍ワクチン、並びにT細胞受容体(TCR)及び養子T細胞移入療法を含むがこれらには限定されない、T細胞による治療法の開発を可能にする。本発明者らは、健常者、がん患者及びHLAトランスジェニックマウスでは、シトルリン化サイトケラチンペプチドを認識し、IFNγを産生するT細胞のレパートリーが存在することを示した。また、彼らは、対象にシトルリン化されたサイトケラチンエピトープKFASFIDKVRFLEQQNKMLE(配列番号1)(Cyk8 101-120)及び/又はLREYQELMNVKLALDIEI(配列番号2)(Cyk8 371-388)を投与して、前記シトルリン化エピトープを発現する腫瘍に対する免疫応答を刺激した。
【0013】
本発明のT細胞抗原は、MHCクラスI又はクラスII抗原であってもよく、すなわち、MHCクラスI又はII分子と複合体を形成し、それぞれMHCクラスI又はII分子上に提示されてもよい。当業者は、特定のポリペプチドの存在下でMHC分子がリフォールディングされるか否かを決定することで、前記ポリペプチドと前記MHC分子が複合体を形成するか否かを決定できる。ポリペプチドがMHCと複合体を形成しない場合、MHCは適切にリフォールディングされない。通常、リフォールディングは折り畳まれた形態のMHCのみを認識する抗体を用いて確認される。詳細については、Garboczi, Hung, and Wiley 1992を参照。
【0014】
抗原中のアルギニンアミノ酸残基の全てがシトルリンに変換されることが好ましい。抗原中のアルギニン残基の1つ、2つ又は3つがシトルリンに変換されてもよく、残りは変換されない。したがって、本発明の抗原のシトルリン残基は1つ、2つ又は3つであってもよい。本発明の抗原のアミノ酸長は、最大で25であってもよい。その長さは、少なくとも5アミノ酸であってもよい。その長さは、18、19、20、21、22、23又は24アミノ酸以下であってもよい。本発明のT細胞抗原は腫瘍関連抗原であってもよく、腫瘍に対する免疫応答を刺激する可能性がある。
【0015】
本発明者らは、サイトケラチン8に関係するペプチドのアミノ酸配列と、同一又は類似のペプチドを含む他のサイトケラチン又は類似のタンパク質のアミノ酸配列との間に、高度の配列相同性を見いだした。
KFASFIDKVRFLEQQNKMLE(配列番号1)(Cyk8 101-120)は、18位のアミノ酸が置換されたサイトケラチン2内にも含まれ、その配列は本質的にKFASFIDKVRFLEQQNKLE(配列番号7)からなる。
KFASFIDKVRFLEQQNKMLE(配列番号1)(Cyk8 101-120)は、18位のアミノ酸が置換されたサイトケラチン7内にも含まれ、その配列は本質的にKFASFIDKVRFLEQQNKLE(配列番号8)からなる。
KLALDIEIATYRKLLEGEE(配列番号4)(Cyk8 381-399)と同じ配列は、サイトケラチン4に含まれている。
KLALDIEIATYRKLLEGEE(配列番号4)(Cyk8 381-399)は、2位のアミノ酸が置換されたビンチン内にも含まれ、その配列は本質的にKALDIEIATYRKLLEGEE(配列番号9)からなる。
KLALDIEIATYRKLLEGEE(配列番号4)(Cyk8 381-399)と同じ配列は、グリア線維性タンパク質にも含まれている。
【0016】
本発明者らは、健常者及びHLAトランスジェニックマウスにおいて、シトルリン化Cyk8ペプチドを認識するT細胞がIFNγを産生し、Cyk8ペプチドによる刺激の後に検出できることを示した。また、特定のシトルリン化Cyk8ペプチドがin vivoでT細胞応答を生じ、それ自体、がん治療のワクチンとして使用できることを示した。
【0017】
本発明のT細胞抗原は、
i) 以下のアミノ酸配列:
KFASFIDKVRFLEQQNKMLE(配列番号1)
LREYQELMNVKLALDIEI(配列番号2)
KSYKMSTSGPRAFSSRSFT(配列番号16)
KSYKVSTSGPRAFSSRSYT(配列番号3)
KLALDIEIATYRKLLEGEE(配列番号4)
RSNMDNMFESYINNLRRQL(配列番号5)、及び
LTDEINFLRQLYEEEIRELQ(配列番号6)
の1つ以上、並びに/又は
ii) アルギニン以外の位置における、1個、2個若しくは3個のアミノ酸の置換、1個、2個若しくは3個のアミノ酸の挿入、及び/若しくは、1個、2個若しくは3個のアミノ酸の欠失を除く、i) のアミノ酸配列の1つ以上、
を含み、から本質的になり、又は、からなってもよい。抗原は、アルギニン以外の位置で、置換、挿入及び置換から選択される合計1、2、3、4又は5個のアミノ酸が修飾されていてもよい。ii) のT細胞抗原は、好ましくは、甲状腺がん、結腸直腸がん、尿路上皮がん、胃がん、肝臓がん、神経内分泌腫瘍、膵臓がん、腎臓がん、前立腺がん、肺がん、乳がん及び婦人科腫瘍を含むが、これらには限定されない腫瘍に対する免疫応答を上昇させることができる。
【0018】
本発明のT細胞抗原は、
i) 以下のアミノ酸配列:
KFASFIDKV-cit-FLEQQNKMLE(配列番号10)(Cyk8 101-120)
L-cit-EYQELMNVKLALDIEI(配列番号11)(Cyk8 371-388)
KSYKMSTSGP-cit-AFSS-cit-SFT(配列番号42)(Cyk8 8-26)
KSYKVSTSGP-cit-AFSS-cit-SYT(配列番号12)(Cyk8 8-26)
KLALDIEIATY-cit-KLLEGEE(配列番号13)(Cyk8 381-399)
cit-SNMDNMFESYINNL-cit-cit-QL(配列番号14)(Cyk8 133-151)
LTDEINFL-cit-QLYEEEI-cit-ELQ(配列番号15)(Cyk8 217-236)
(式中、「cit」はシトルリンを表す)
の1つ以上、並びに/又は
ii) シトルリン以外の位置における、1個、2個若しくは3個のアミノ酸の置換、1個、2個若しくは3個のアミノ酸の挿入、及び/若しくは、1個、2個若しくは3個のアミノ酸の欠失を除く、i) のアミノ酸配列
を含む、から本質的になる、又は、からなることが好ましい。抗原は、アルギニン以外の位置で、置換、挿入及び置換から選択される合計1、2、3、4又は5個のアミノ酸が修飾されていてもよい。ii) のT細胞抗原は、好ましくは、甲状腺がん、結腸直腸がん、尿路上皮がん、胃がん、肝臓がん、神経内分泌腫瘍、膵臓がん、腎臓がん、前立腺がん、肺がん、乳がん及び婦人科腫瘍を含むが、これらには限定されない腫瘍に対する免疫応答を上昇させることができる。
【0019】
本発明者らは、予想外にも、サイトケラチン8に由来する特定のシトルリン化ペプチドが、甲状腺がん、結腸直腸がん、尿路上皮がん、胃がん、肝臓がん、神経内分泌腫瘍、膵臓がん、腎臓がん、前立腺がん、肺がん、乳がん及び婦人科腫瘍を含むが、これらには限定されない腫瘍に対する免疫応答を上昇させるのに使用できることを発見した。本発明者らは、
KSYKVSTSGP-cit-AFSS-cit-SYT(配列番号12)(Cyk8 8-26、18位及び23位がシトルリン化)
KFASFIDKV-cit-FLEQQNKMLE(配列番号10)(Cyk8 101-120、110位がシトルリン化)
KLALDIEIATY-cit-KLLEGEE(配列番号13)(Cyk8 381-399、392位がシトルリン化)
cit-SNMDNMFESYINNL-cit-cit-QL(配列番号14)(Cyk8 133-151、133位、148位及び149位がシトルリン化)
L-cit-EYQELMNVKLALDIEI(配列番号11)(Cyk8 371-388、372位がシトルリン化)
LTDEINFL-cit-QLYEEEI-cit-ELQ(配列番号15)(Cyk8 217-236、225位及び233位がシトルリン化)
がin vivoでシトルリン化Cyk8エピトープに対して免疫応答を引き起こすことを示した。ペプチドKFASFIDKV-cit-FLEQQNKMLE(配列番号10)(Cyk8 101-12)、L-cit-EYQELMNVKLALDIEI(配列番号11)(Cyk8 371-388)及びcit-SNMDNMFESYINNL-cit-cit-QL(配列番号14)(Cyk8 133-151)は、マウスのものと相同である。ペプチドKSYKVSTSGP-cit-AFSS-cit-SYT(配列番号12)(Cyk8 8-26)、KLALDIEIATY-cit-KLLEGEE(配列番号13)(Cyk8 381-399)及びLTDEINFL-cit-QLYEEEI-cit-ELQ(配列番号15)(Cyk8 217-236)は、それぞれ、1個及び2個のアミノ酸が一致しないため、マウスと相同ではない。
【0020】
シトルリン化ペプチドは、HLA-DR4モチーフを有する自己免疫疾患の患者のT細胞応答を刺激することが知られている。対照的に、本発明者らは、Cyk8 101-120(110位でシトルリン化)、Cyk8 133-151(133位、148位及び149位でシトルリン化)、Cyk8 217-236(225位でシトルリン化)、Cyk8 371-388(372位でシトルリン化)、Cyk8 381-399(392位でシトルリン化)及びCyk8 366-385(372位でシトルリン化)などの特定のシトルリン化Cyk8ペプチドが、HLA-DP4トランスジェニックマウスにおいてT細胞応答を強力に刺激できることを初めて示した。さらに、Cyk8 8-26 citは、C57BL/6マウスでCD4 T細胞応答を強力に刺激できる。HLA-DP4は人口の70%で発現していることから、これは血液腫瘍及び固形腫瘍の治療に有望なワクチンとなる。110位でシトルリン化されたCyk8 101-120 citに対する応答を示す一部の健常者はHLA-DP4を発現しているが、一部の健常者はHLA-DP4陽性ではなく、HLAクラスIIの他のアレルもこのペプチドを提示している可能性が示唆された。Cyk8 101-120 cit、Cyk8 133-151 cit、Cyk8 217-236 cit、Cyk8 371-388 cit及びCyk8 381-399 citの応答は、修飾されていない野生型配列に対して最小限であった。Cyk8 371-388、Cyk8 101-120、Cyk8 8-26シトルリン化ペプチド抗原を認識するT細胞は、腫瘍細胞を標的とし、in vivoで強力な抗腫瘍効果を誘発でき、したがって、シトルリン化Cyk8 371-388、Cyk8 101-120、Cyk8 8-26を、がんを治療するためのワクチンとして使用する最初の証拠を提供する。
【0021】
MHCクラスII抗原処理経路は、外因性の抗原の取り込みと処理、MHCクラスII分子のペプチド結合モチーフ、及び、MHCクラスII:ペプチド複合体の輸送と安定性といった多くの因子の影響を受ける可能性がある。MHCクラスIIのペプチド収容溝は両端が開いており、MHCクラスI分子と比較してペプチドの長さによる制約が少ない。MHCクラスII分子に結合するペプチドの長さは、13~25アミノ酸であり、通常、MHC分子からはみ出している(Kim et al. 2014;Sette et al. 1989)。これらのペプチドは、コア領域と呼ばれる連続する9個のアミノ酸を含む。これらのアミノ酸のいくつかはペプチド収容溝と直接相互作用する(Andreatta et al. 2017)。コアペプチドの両側のアミノ酸はペプチド収容溝からはみ出し;これらはペプチドフランキング領域として知られている。それらは、ペプチド結合とその後のT細胞との相互作用に影響を及ぼす可能性がある(Arnold et al. 2002;Carson et al. 1997;Godkin et al. 2001)。
【0022】
MHCクラスII分子は高度に多型性であり、ペプチド結合モチーフは、複数のMHCクラスII分子に結合できることが確認されている多くの入り混じったペプチドで、高度に退化している(Consogno et al. 2003)。ペプチド結合に重要なアミノ酸は、MHCクラスII:ペプチド複合体の結晶解析で特定されている(Corper et al. 2000;Dessen et al. 1997;Fremont et al. 1996;Ghosh et al. 1995;Latek et al. 2000;Li et al. 2000;Lee, Wucherpfennig, and Wiley 2001;Brown et al. 1993;Smith et al. 1998;Stern et al. 1994;Scott et al. 1998;Fremont et al. 1998)。これらの研究は、P1、P4、P6及びP9が常にMHCの方を向いているのに対して、P-1、P2、P5、P8及びP11は常にTCRの方を向いていることを示した。HLA-DR及びHLA-DPアレルの頻度を表1に示す(Thomsen and Nielsen 2012;Gonzalez-Galarza et al. 2015)。
【0023】
【表1】
【0024】
これに対して、MHCクラスI分子のペプチド結合特性は限定されている。MHCクラスIとの結合に重要なアミノ酸は、既知の天然結合ペプチドを分析する予測アルゴリズムでも特定されており(Jurtz et al. 2017)、これは、(HLA-B0801を除く)P2及びP9が、結合アンカー残基として作用するMHCの方を向いていることを示した。
【0025】
サイトケラチン8は、その遺伝子がクローニングされた種(ニワトリ、マウス、イヌ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ及びヒト)の間で高度に保存されている(図1B)。したがって、本発明の抗原は、必要に応じて、このような抗原をコードする配列を含む核酸と組み合わせて、非ヒト哺乳動物におけるがんを処置するために使用できる。
【0026】
本発明は、その範囲に、これまでに説明したアミノ酸配列を有するペプチド、及びそれに対して実質的な同一性、例えば、それに対して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%の同一性を有する配列、並びに医薬、特にがんの治療方法におけるその使用も含む。そのようなペプチドは、好ましくは、甲状腺がん、結腸直腸がん、尿路上皮がん、胃がん、肝臓がん、神経内分泌腫瘍、膵臓がん、腎臓がん、前立腺がん、肺がん、乳がん及び婦人科腫瘍を含むが、これらには限定されない腫瘍に対する免疫応答を上昇させることができる。2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列の同一性の割合は、一般に、最適な比較目的のために配列をアラインメントさせ(例えば、第2の配列との最良のアラインメントのために第1の配列にギャップを導入してもよい)、対応する位置のアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較することによって求められる。「最良のアラインメント」は、最も高い同一性をもたらす2つの配列のアラインメントである。同一性の割合は、配列内の同一アミノ酸残基又はヌクレオチドの数を比較することによって求められる(すなわち、同一性(%)=[同一である位置の数/位置の総数] × 100)。
【0027】
2つの配列間の同一性の割合は、当業者に公知の数学的アルゴリズムを用いて求めることができる。2つの配列を比較する数学的アルゴリズムの例は、KarlinとAltschulのアルゴリズム(Karlin and Altschul 1993)である。AltschulらのNBLAST及びXBLASTプログラムには、このようなアルゴリズムが組み込まれている(Altschul et al. 1990)。NBLASTプログラム(スコア=100、ワード長=12)を用いてBLASTヌクレオチド検索を行い、本発明の核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得ることができる。XBLASTプログラム(スコア=50、ワード長=3)を用いてBLASTタンパク質検索を行い、本発明のタンパク質と相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較の目的でギャップのあるアラインメントを得るために、Altschul et al. 1997に記載されているように、Gapped BLASTが利用できる。あるいは、PSI-Blastを用いて、分子間の関係を検出する反復検索を行うことができる。BLAST、Gapped BLAST及びPSI-Blastプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例.XBLAST及びNBLAST)のデフォルトのパラメーターが使用できる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov.参照。配列の比較に利用する数学的アルゴリズムの別の例は、Myers及びMillerのアルゴリズム(Myers and Miller 1989)である。GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)には、このようなアルゴリズムが組み込まれている。当該技術分野で公知の配列解析のための他のアルゴリズムには、Torelli and Robotti 1994に記載されたADVANCE及びADAM、並びにPearson and Lipman 1988に記載されたFASTAが含まれる。FASTAでは、ktupは検索の感度と速度を設定する制御オプションである。
【0028】
アミノ酸の置換とは、アミノ酸残基が同じ位置で置換アミノ酸残基に置換されることを意味する。挿入されるアミノ酸残基は、任意の位置に挿入されてもよく、挿入されたアミノ酸残基の一部若しくは全てが互いに直接隣接するように挿入されてもよく、又は挿入されたアミノ酸残基のいずれもが別の挿入されたアミノ酸残基に直接隣接しないように挿入されてもよい。
【0029】
本発明の抗原は、そのC末端及び/又はN末端に1個、2個又は3個の追加のアミノ酸が含まれてもよい。本発明の抗原は、1つのアミノ酸置換及び1つのアミノ酸挿入、1つのアミノ酸置換及び1つのアミノ酸欠失、又は1つのアミノ酸挿入及び1つのアミノ酸欠失を除いて、上記アミノ酸配列を含んでもよい。本発明の抗原は、1つのアミノ酸置換、1つのアミノ酸挿入及び/又は1つのアミノ酸欠失を除いて、上記アミノ酸配列を含んでもよい。
【0030】
挿入されたアミノ酸及び置換されたアミノ酸は、天然に存在するアミノ酸であってもよく、又は天然に存在しないアミノ酸であってもよく、例えば、天然にはない側鎖を有していてもよい。このような改変されたペプチドリガンドは、Douat-Casassus et al. 2007;Hoppes et al. 2014及びその中の参考文献で更に考察されている。2個以上のアミノ酸残基が置換及び/又は挿入される場合、置換/挿入アミノ酸残基は互いに同一であってもよく、又は互いに異なっていてもよい。各置換アミノ酸は、置換されるアミノ酸に対して異なる側鎖を有していてもよい。
【0031】
好ましくは、本発明の抗原は、MHC分子のペプチド収容溝でMHCに結合する。一般に、上記アミノ酸修飾は、MHCに結合するペプチドの能力を損なわない。好ましい態様では、アミノ酸修飾は、MHCに結合するペプチドの能力を改善する。例えば、変異は、ペプチドをMHCに固定する位置で行われてもよい。このような固定位置及びこれらの位置の好ましい残基は、当該技術分野で公知である。
【0032】
本発明の抗原は、免疫応答(例.T細胞応答)を誘発するために使用してもよい。この場合、「オフターゲット」免疫応答に関連する可能性がある望ましくない副作用の危険性を回避するために、免疫応答が意図した標的に特異的であることが重要である。したがって、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列は、他のタンパク質、特にヒトのタンパク質に由来するペプチドのアミノ酸配列と一致しないことが好ましい。当業者は、公知のタンパク質配列のデータベースを検索して、本発明に係る抗原が別のタンパク質中に存在するかどうかを確かめる方法を理解している。
【0033】
本発明は、シトルリン化エピトープに特異的なT細胞応答の誘導について標的ペプチドをスクリーニングすること;及び腫瘍を認識するためにシトルリン化エピトープに特異的なT細胞をスクリーニングすることを含む、抗腫瘍免疫を刺激する標的ペプチドのシトルリン化T細胞エピトープを特定するためのin vitroスクリーニング方法を記載する。シトルリン化エピトープに対するT細胞応答の誘導についてのスクリーニングは、シトルリン化エピトープがCD4又はCD8エピトープであるかどうかを特定するためのCD4及びCD8 T細胞のソーティングを含んでいてもよい。標的ペプチドは、サイトケラチン、より具体的にはサイトケラチン8であってもよい。
【0034】
本発明の抗原は、固相合成としても知られているメリフィールド合成法、又は他のペプチド合成法によって容易に合成できる。GMPグレードのポリペプチドは、Multiple Peptide Systems, San Diego, CAの固相合成技術によって製造される。あるいは、ペプチドは、所望であれば、当該技術分野で公知の方法により、組換えで調製してもよい。このような方法は、通常、発現されるポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクターの使用を含み、in vivoで、例えば、細菌、酵母、昆虫又は哺乳動物細胞においてポリペプチドを発現する。あるいは、in vitro無細胞系を使用してもよい。このような系は、当該技術分野において公知であり、例えばLife Technologies, Paisley, UKから市販されている。抗原は、単離されてもよく、及び/又は実質的に純粋な形態で提供されてもよい。例えば、それらは、他のポリペプチド又はタンパク質を実質的に含まない形態で提供されてもよい。本発明のペプチドは、Fmoc化学又は当業者に公知の他の標準的な技術により合成できる。
【0035】
第2の側面では、本発明は、第1の側面の抗原とMHC分子との複合体を提供する。好ましくは、抗原はMHC分子のペプチド収容溝に結合する。MHC分子は、MHCクラスI又はクラスIIであってもよい。MHCクラスII分子は、DP、DR又はDQアレル(例.HLA-DR4、DR1、DP4、DP2、DP5、DQ2、DQ3、DQ5及びDQ6)であってもよい。HLA-DP4が好ましい。MHCクラスI分子はA又はBアレルであってもよい。
【0036】
本発明の抗原及び複合体は、単離されていてもよく、及び/又は実質的に純粋な形態であってもよい。例えば、抗原及び複合体は、他のポリペプチド又はタンパク質を実質的に含まない形態で提供されてもよい。本発明では、用語「MHC分子」は、ペプチドとの結合が保持されることを条件として、組換えMHC分子、天然に存在しないMHC分子及びMHCの機能的に等価な断片、並びにこれらの誘導体又は多様体を含むことに留意されたい。例えば、MHC分子は、可溶性の形態、及び/又は多量体の形態で治療部分と融合してもよく、固体支持体と結合してもよい。
【0037】
本発明の抗原が複合体を形成できる可溶性の組換えMHC分子の調製方法は、当該技術分野で公知である。適切な方法には、大腸菌細胞又は昆虫細胞からの発現及び精製が含まれるが、これらに限定されるものではない。あるいは、MHC分子は、合成的に、又は無細胞系により調製できる。
【0038】
本発明の抗原及び/又は抗原-MHC複合体は、治療効果を引き出すことができる部分と結合していてもよい。このような部分は、免疫原性であることが知られているキャリアタンパク質であってもよい。KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)は、ワクチン組成物で使用する適切なキャリアタンパク質の一例である。あるいは、本発明の抗原及び/又は抗原-MHC複合体は、融合パートナーと結合していてもよい。融合パートナーは、検出のために、前記抗原若しくはMHCを固体支持体と結合させるために、又はMHCのオリゴマー化のために使用してもよい。MHC複合体は、例えばBirA酵素を用い、ビオチンを付加できるビオチン化部位を組み込んでもよい。他の適切な融合パートナーには、蛍光標識、発光標識、放射性標識、核酸プローブ及び対比試薬、抗体、又は検出可能な産物を産生する酵素が含まれるが、これらに限定されるものではない。検出方法には、フローサイトメトリー、顕微鏡法、電気泳動又はシンチレーション計数が含まれてもよい。
【0039】
本発明の抗原-MHC複合体は、可溶性の形態で提供されてもよく、又は適切な固体支持体と結合して固定化されてもよい。固体支持体の例には、ビーズ、膜、セファロース、磁気ビーズ、プレート、チューブ、カラムが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
抗原-MHC複合体は、ELISAプレート、磁気ビーズ又は表面プラズモン共鳴バイオセンサーチップと結合してもよい。抗原-MHC複合体を固体支持体に結合させる方法は、当業者に公知であり、例えば、親和性結合のペア(例.ビオチンとストレプトアビジン、抗体と抗原)の使用が含まれる。好ましい態様では、抗原-MHC複合体をビオチンで標識し、ストレプトアビジンでコートした表面に結合させる。
【0041】
本発明の抗原-MHC複合体は、多量体の形態(例.二量体、四量体、五量体、八量体又はそれ以上)であってもよい。多量体ペプチドMHC複合体調製の適切な方法の例は、Greten and Schneck 2002及びそこで示された参考文献に記載されている。一般に、抗原-MHC多量体は、ビオチン残基でタグ化され、蛍光標識5ストレプトアビジンで複合体化された抗原-MHCを用いて調製してもよい。あるいは、多量体抗原-MHC複合体は、免疫グロブリンを分子足場として形成してもよい。この系では、MHC分子の細胞外ドメインは、短いアミノ酸リンカーを介して免疫グロブリン重鎖の定常領域と融合している。抗原-MHC多量体は、10デキストランのようなキャリア分子(国際公開第02/072631号)を用いても調製される。多量体抗原-MHC複合体は、アビディティー効果により前記複合体と結合するT細胞受容体のような結合部分の検出を改善するのに役に立つ。
【0042】
本発明の抗原は、MHCとの複合体として細胞表面に提示されてもよい。したがって、本発明は、その表面に本発明の複合体を提示する細胞も提供する。このような細胞は、哺乳動物細胞、好ましくは免疫系の細胞、特に樹状細胞やB細胞のような特殊な抗原提示細胞であってもよい。他の好ましい細胞には、T2細胞が含まれる(Hosken and Bevan 1990)。本発明の抗原又は複合体を提示する細胞は、好ましくは集団の形態で単離されてもよく、又は実質的に純粋な形態で提供されてもよい。該細胞は、自然には本発明の複合体を提示しなくてもよく、あるいは、該細胞は、複合体を天然よりも高いレベルで提示してもよい。このような細胞は、該細胞を本発明の抗原でパルスすることで得ることができる。パルス化は、通常、10-5~10-12Mのポリペプチド濃度を用い、細胞と抗原を数時間インキュベートすることを含む。細胞は、組換えにより調製してもよい。本発明の抗原を提示する細胞は、以下で詳しく説明するように、当該細胞によって活性化されるか、又は当該細胞に結合するT細胞及びT細胞受容体(TCR)を単離するために使用してもよい。
【0043】
本発明のペプチドは、Fmoc化学又は当業者に公知の他の標準的な技術を用いて合成してもよい。
【0044】
本発明のペプチドを調製する別の簡便な方法は、発現系でそれをコードする核酸を使用し、核酸を発現させることである。このような核酸は、本発明の別の側面を形成する。
【0045】
当業者は、本発明のペプチドを提供するこのような核酸の置換、欠失及び/又は付加を決定できる。核酸は、DNA、cDNA又はRNA(例.クローニングで得たmRNA又は化学合成で調製したmRNA)であってもよい。治療的使用のために、核酸は、好ましくは、処置する対象で発現可能な形態である。本発明のペプチド又は本発明の核酸は、単離及び/若しくは精製された形態の単離物として、又は、それが天然に付随する物質を含まない若しくは実質的に含まない単離物として、提供されてもよい。核酸の場合、それは、発現のための1つ以上の調節配列以外のヒトゲノム中の遺伝子に隣接する核酸を含まないか、又は実質的に含まなくてもよい。核酸は、完全に又は部分的に合成してもよく、ゲノムDNA、cDNA又はRNAを含んでいてもよい。本発明の核酸がRNAを含む場合、示した配列は、TをUで置換したRNA等価物として解釈されるべきである。
【0046】
本発明のペプチドをコードする核酸配列は、核酸配列及びクローンが与えられれば、例えば、この明細書に記載の情報及び参考文献並びに当該技術分野で公知の技術(例えば、Sambrook 1989;Ausubel 1992を参照)により、当業者が容易に調製できる。これらの技術は、(i) 例えばゲノム源からのそのような核酸試料を増幅するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用、(ii) 化学合成、又は、(iii) cDNA配列の調製を含む。ポリペプチドをコードするDNAは、当業者に公知の適切な方法で調製し、使用されてもよく、これには、コードされたDNAを取得すること、発現されるべき部分のいずれかの側の適切な制限酵素認識部位を特定すること、及びDNAから前記部分を切り出すことが含まれる。次いで、この部分は、標準的な市販の発現系の適切なプロモーターと動作可能に連結してもよい。別の組換えアプローチは、適切なPCRプライマーを用いてDNAの関連部分を増幅することである。修飾ペプチドを発現させるために、又は核酸の発現に使用する宿主細胞のコドン優先度を考慮して、例えば、部位特異的変異誘発によって、配列を修飾できる。
【0047】
本発明は、上記少なくとも1つの核酸を含むプラスミド、ベクター、転写又は発現カセットの形態の構築物も提供する。本発明は、上記1つ以上の構築物を含む組換え宿主細胞も提供する。これまでに説明したように、本発明のペプチドをコードする核酸は、コードした核酸からの発現を含む組成物の製造方法と同様に、本発明の側面を形成する。発現は、核酸を含有する組換え宿主細胞を適切な条件で培養することで簡便に達成してもよい。発現による調製に続き、組成物は、適切な技術によって単離し、及び/又は精製され、次いで、必要に応じて使用してもよい。
【0048】
さまざまな宿主細胞においてポリペプチドをクローニングし、発現させる系は周知である。適切な宿主細胞には、細菌、哺乳動物細胞、酵母及びバキュロウイルス系が含まれる。異種ポリペプチドの発現のために当該技術分野で利用できる哺乳動物細胞系には、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎細胞、NSOマウスメラノーマ細胞及び他の多くのものが含まれる。一般的な好ましい細菌宿主は大腸菌である。原核生物細胞(例.大腸菌)における抗体及び抗体断片の発現は、当該技術分野で十分に確立されている。培養真核生物細胞における発現も、特異的結合メンバーの産生の選択肢として当業者が利用できる、近年の総説として、例えば、Reff 1993;Trill, Shatzman, and Ganguly 1995を参照。総説については、例えばPluckthun 1991を参照。
【0049】
プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子及び必要に応じて他の配列を含む適切な調節配列を含有する適切なベクターを選択又は構築できる。ベクターは、必要に応じて、プラスミド、ウイルス(例.ファージ)、又はファージミドであってもよい。詳細については、例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual(Sambrook 1989)を参照。例えば、核酸構築物の調製、変異誘発、配列決定、細胞へのDNAの導入及び遺伝子発現、並びにタンパク質の分析における、核酸の操作のための多くの公知の技術及びプロトコルは、Short Protocols in Molecular Biology(Ausubel 1992)に詳細に記載されている。
【0050】
したがって、本発明の別の側面では、本明細書に記載の核酸を有する宿主細胞を提供し、これは、単離されてもよい。更に別の側面は、そのような核酸を宿主細胞に導入する方法を提供する。導入は、任意の方法で行うことができる。真核細胞では、適切な技術には、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション、リポソームによるトランスフェクション、及びレトロウイルス又は他のウイルス(例.ワクシニアウイルス、又は昆虫細胞ではバキュロウイルス)を用いる形質導入が含まれる。細菌では、適切な技術には、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーション、及びバクテリオファージによるトランスフェクションが含まれる。導入に続き、例えば、遺伝子を発現する条件で宿主細胞を培養することによって、核酸からの発現を生じさせてもよく、又は可能にしてもよい。
【0051】
ある態様では、本発明の核酸は、宿主細胞のゲノム(例.染色体)に組み込まれる。組込みは、標準的な技術で、ゲノムとの組換えを促進する配列を含めることによって促進してもよい。
【0052】
本発明は、上記ポリペプチドを発現させるために、発現系で上記構築物を使用することを含む方法も提供する。本発明のポリペプチドを用いて、本発明のポリペプチドと特異的に結合する結合部分の特定及び/又は単離が可能である。このような結合部分は、免疫療法薬として使用してもよく、抗体を含んでいてもよい。したがって、別の側面では、本発明は、本発明のポリペプチドに結合する結合部分を提供する。
【0053】
本発明の抗原及び複合体を用いて、本発明の抗原及び/又は複合体と特異的に結合する結合部分の特定及び/又は単離が可能である。このような結合部分は、免疫療法薬として使用してもよく、抗体及びTCRを含んでいてもよい。
【0054】
第3の側面では、本発明は、本発明の抗原と結合する結合部分を提供する。
【0055】
好ましくは、結合部分は、前記ポリペプチドがMHCと複合体を形成している場合に、抗原と結合する。
【0056】
後者の場合、結合部分は、それが抗原にも結合するという条件で、MHCに部分的に結合できる。結合部分は抗原のみと結合してもよく、その結合は特異的であってもよい。結合部分は抗原-MHC複合体のみと結合してもよく、その結合は特異的であってもよい。
【0057】
本発明の複合体に結合する結合部分について、「特異的」とは、通常、結合部分が、1つ以上の本発明の抗原-MHC複合体以外の抗原-MHC複合体とは有意な結合を示さない状況を指すために使用される。
【0058】
結合部分は、T細胞受容体(TCR)であってもよい。TCRは、TCR配列のInternational Immunogenetics(IMGT)データベースとリンクするIMGTのTCR命名法によって記載される。IMGT命名法で定められた特有の配列は広く知られており、TCR分野の研究者が利用できる。例えば、それらは“T cell Receptor Factsbook”, (2001) LeFranc and LeFranc, Academic Press, ISBN 0-12-441352-8;Lefranc, (2011), Cold Spring Harb Protoc 2011(6): 595-603;Lefranc, (2001), Curr Protoc Immunol Appendix 1: Appendix 10; (Lefranc 2003)及びIMGTのウェブサイト(www.IMGT.org)に見いだされる。簡単に述べると、αβTCRは、2つのジスルフィド結合鎖からなる。各鎖(α鎖及びβ鎖)は、通常、2つのドメイン、すなわち、可変ドメイン及び定常ドメインを有するとみなされる。短い連結領域が可変ドメイン及び定常ドメインを接続し、一般にα可変領域の一部と考えられる。さらに、β鎖は通常、連結領域の隣に短い多様性領域を有し、これも、一般にβ可変領域の一部と考えられる。
【0059】
TCRは、当業者に公知のいずれの形式であってもよい。例えば、TCRは、αβヘテロ二量体であってもよく、また、(国際公開第99/18129号に記載されたような)一本鎖の形式であってもよい。
【0060】
一本鎖TCRには、Vα-L-Vβ、Vβ-L-Vα、Vα-Cα-L-Vβ、Vα-L-Vβ-Cβ又はVα-Cα-L-Vβ-Cβ型のαβTCRポリペプチドを、場合によっては、その逆の向きで含み、ここで、Vα及びVβは、それぞれTCRα及びβの可変領域であり、Cα及びCβは、それぞれTCRα及びβの定常領域であり、Lはリンカー配列である。TCRは、可溶性の形態(すなわち、膜貫通ドメイン又は細胞質ドメインを有さない)であってもよく;又は全長のα鎖及びβ鎖を含んでいてもよい。
【0061】
TCRは、T細胞のような細胞の表面に提示されてもよい。細胞は、ヒト細胞のような哺乳動物細胞であってよい。
【0062】
この細胞は、医薬、特にがんの治療に使用できる。がんは、固形腫瘍又は血液腫瘍であってもよい。がんは、甲状腺がん、結腸直腸がん、尿路上皮がん、胃がん、肝臓がん、神経内分泌腫瘍、膵臓がん、腎臓がん、前立腺がん、肺がん、乳がん及び婦人科のがんであってもよい。細胞は、治療する対象に由来するものであってもよく、又は治療する対象に由来しないものであってもよい。
【0063】
TCRのα及び/又はβ鎖定常ドメインは、天然の/天然に存在するTRAC/TRBC配列と比較して切断されていてもよい。また、TRAC/TRBCは修飾を含んでいてもよい。例えば、α鎖の細胞外配列は、IMGT番号で、TRACのアミノ酸T48がC48で置換される、天然の/天然に存在するTRACに対する修飾を含んでいてもよい。同様に、β鎖の細胞外配列は、IMGT番号で、TRBC1又はTRBC2のS57がC57で置換される、天然の/天然に存在するTRBC1又はTRBC2に対する修飾を含んでいてもよい。天然のα鎖及びβ鎖の細胞外配列に対するこれらのシステイン置換は、リフォールディングされた可溶性TCR、すなわち、細胞外のα鎖及びβ鎖をリフォールディングすることで形成されるTCRを安定化する非天然の鎖間ジスルフィド結合の形成を可能にする(国際公開第03/020763号)。この非天然のジスルフィド結合は、ファージ上で正確に折り畳まれたTCRの提示を容易にする(Li et al. 2005)。さらに、可溶性TCRと結合した安定なジスルフィドを使用することで、結合親和性と結合半減期の簡便な評価が可能となる。非天然のジスルフィド結合を形成する別の位置は、国際公開第03/020763号に記載されている。
【0064】
各鎖の可変ドメインはN末端に位置し、フレームワーク配列(FR)に埋め込まれた3つの相補性決定領域(CDR)を含む。CDRは、ペプチド-MHC結合の認識部位を含む。α鎖可変(Vα)領域をコードする複数の遺伝子及びβ鎖可変(Vβ)領域をコードする複数の遺伝子があり、これらは、そのフレームワーク、CDR1及びCDR2配列、並びに部分的に特定されたCDR3配列によって区切られる。IMGT命名法では、Vα遺伝子及びVβ遺伝子は、それぞれ、接頭辞TRAV及びTRBVによって参照される(Folch et al. 2000;Lefranc 2001;“T cell Receptor Factsbook”, Academic Press)。同様に、α鎖及びβ鎖で、それぞれTRAJ又はTRBJと呼ばれる複数の結合遺伝子又はJ遺伝子が存在し、β鎖では、TRBDと呼ばれる多様性遺伝子又はD遺伝子が存在する(Folch et al. 2000;Lefranc 2001;“T cell Receptor Factsbook”, Academic Press)。T細胞受容体鎖の莫大な多様性は、アレルバリアントと接合部多様性を含むさまざまなV、J及びD遺伝子の間の組合せ再配列に起因する(Arstila et al. 1999;Robins et al. 2009)。TCRα鎖及びβ鎖の定常領域又はC領域は、それぞれTRAC及びTRBCと呼ばれる(Lefranc, (2001), Curr Protoc Immunol Appendix 1: Appendix 10)。本発明のTCRは、変異を含むように改変してもよい。ファージディスプレイ及び部位特異的変異誘発といった変異を有する高親和性TCRバリアントを調製する方法は、当業者に公知である(例えば、国際公開第2004/044004号及びLiら(Li et al. 2005)を参照)。
【0065】
TCRは、イメージング化合物、例えば、診断に適した標識によって標識してもよい。このような標識された高親和性TCRは、CD1-抗原複合体、細菌スーパー抗原及びMHC-ペプチド/スーパー抗原複合体から選択されるTCRリガンドを検出する方法で役に立ち、この方法は、TCRリガンドを、TCRリガンドに特異的な高親和性TCR(又は多量体高親和性TCR複合体)と接触させる工程;及びTCRリガンドとの結合を検出する工程を含む。Zhuら(Zhu et al. 2006)が説明する多量体高親和性TCR複合体(例えば、ビオチン化ヘテロ二量体を用いて形成される)では、(市販の)蛍光ストレプトアビジンを使用して、検出可能な標識を提供できる。蛍光標識された多量体は、例えば、高親和性TCRに特異的なペプチドを担持する抗原提示細胞を検出するためのFACS分析における使用に適している。
【0066】
本発明によれば、シトルリンを有するサイトケラチン8ペプチドは、T細胞受容体(TCR)を介したがん免疫療法の標的として使用できる。TCRは、MHC分子と複合体を形成してAPCの表面に提示される短いペプチド抗原を認識するように設計されている(Davis et al. 1998)。特定のシトルリン含有ペプチドの同定は、新規な免疫療法の開発に有利である。このような治療用TCRは、例えば、腫瘍に細胞傷害性薬剤又は免疫エフェクター剤を送達するための可溶性標的化剤として使用してもよく(Boulter et al. 2003;Liddy et al. 2012;McCormack et al. 2013)、又は、これらは、養子療法用にT細胞を改変するために使用してもよい(June et al. 2014)。
【0067】
本発明のTCR(又はその多価複合体)は、例えば、細胞殺傷における使用のための毒性部分であるか、又はインターロイキン若しくはサイトカインのような免疫刺激剤であってもよい治療薬と、代替的又は追加的に、(例えば、共有結合又は他の様式によって)結合していてもよい。本発明の多価高親和性TCR複合体は、多量体ではない野生型のもの又は高親和性T細胞受容体ヘテロ二量体と比較して、TCRリガンドに対する結合能が強化されていてもよい。したがって、本発明の多価高親和性TCR複合体は、in vitro又はin vivoにおいて、特定の抗原を提示する細胞の追跡又は標的化に特に有用であり、また、このような用途の別の多価高親和性TCR複合体を製造するための中間体としても有用である。したがって、高親和性TCR又は多価高親和性TCR複合体は、in vivoで使用する薬学的に許容される製剤として提供されてもよい。
【0068】
本発明のTCRは治療薬として使用できる。この場合、TCRは可溶性の形態であってもよく、好ましくは免疫エフェクターと融合していてもよい。適切な免疫エフェクターには、IL2及びIFNαといったサイトカイン;スーパー抗原及びその変異体;IL8、血小板因子4、メラノーマ増殖刺激タンパク質といったケモカイン;T細胞又はNK細胞といった免疫細胞上の抗原と結合する抗体(例.抗CD3抗体、抗CD28抗体又は抗CD16抗体)、並びにその断片、誘導体及び多様体;並びに補体アクチベーターが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
本発明の結合部分は抗体であってもよい。この明細書では、用語「抗体」は、免疫グロブリン分子、及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、天然のものであるか、部分的に合成されたものであるか、又は全合成されたものであるかを問わず、抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を指す。用語「抗体」には、抗体の断片、誘導体、機能的等価物及び相同体、ヒト化抗体、免疫グロブリン結合ドメインを有するポリペプチド、又は、抗体結合ドメインであるか若しくは抗体結合ドメインと相同である結合ドメインを有するポリペプチド若しくはタンパク質が含まれ、天然のものであるか、部分的に合成されたものであるか、又は全合成されたものであるかは問われない。したがって、別のポリペプチドと融合した免疫グロブリン結合ドメイン又は等価物を含むキメラ分子が含まれる。キメラ抗体のクローニング及び発現は、欧州特許出願公開第0120694号及び同第0125023号に記載されている。ヒト化抗体は、非ヒト(例.マウス)抗体の可変領域及びヒト抗体の定常領域を有する改変された抗体であってもよい。ヒト化抗体の調製方法は、例えば、米国特許第5225539号に記載されている。抗体の例は、免疫グロブリンアイソタイプ(例.IgG、IgE、IgM、IgD及びIgA)及びそれらのサブクラス;Fab、scFv、Fv、dAb、Fdといった抗原結合ドメインを含む断片;及びダイアボディーである。抗体は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、この明細書では「mab」と称する場合がある。
【0070】
抗体、例えばモノクローナル抗体を用い、組換えDNA技術を使用して、元の抗体の特異性を保持する別の抗体又はキメラ分子を調製できる。このような技術には、抗体の免疫グロブリン可変領域又は相補性決定領域(CDR)をコードするDNAを、異なる免疫グロブリンの定常領域又は定常領域とフレームワーク領域に導入することが含まれてもよい(例えば、欧州特許出願公開第184187号、英国特許出願公開第2188638号又は欧州特許出願公開第239400号を参照)。ハイブリドーマ(又は抗体を産生する他の細胞)は、遺伝子が変異したり、他の変化が行われる可能性があり、その結果、産生された抗体の結合特異性が変化することも、変化しないこともある。
【0071】
完全な抗体の断片は、抗原を結合する機能を実現できることが示されている。結合断片の例は、(i) VL、VH、CL及びCH1ドメインからなるFab断片;(ii) VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iii) 1つの抗体のVL及びVHドメインからなるFv断片;(iv) VHドメインからなるdAb断片(Ward et al. 1989);(v) 単離されたCDR領域;(vi) 連結した2つのFab断片を含む二価の断片である、F(ab’)断片;(vii) VHドメインとVLドメインが会合して抗原結合部位の形成を可能にするペプチドリンカーによって連結されているVHドメインとVLドメインである、一本鎖Fv分子(scFv)(Bird et al. 1988;Huston et al. 1988);(viii) 二重特異性一本鎖Fv二量体(PCT国際出願PCT/US92/09965号);(ix) 遺伝子融合により構築された多価又は多重特異性の断片である「ダイアボディー」(国際公開第94/13804号;Holliger and Winter 1993)、である。ダイアボディーは、ポリペプチドの多量体であり、各ポリペプチドは、免疫グロブリン軽鎖の結合領域を含む第1のドメイン及び免疫グロブリン重鎖の結合領域を含む第2のドメインを含み、2つのドメインは、(例えば、ペプチドリンカーによって)連結しているが、互いに会合して抗原結合部位を形成することはできない:抗原結合部位は、多量体内のあるポリペプチドの第1のドメインと、多量体内の別のポリペプチドの第2のドメインとの会合によって形成される(国際公開第94/13804号)。二重特異性抗体については、さまざまな方法で(例.化学的に、又はハイブリッドハイブリドーマから)製造されてもよい従来の二重特異性抗体(Holliger and Winter 1993)であってもよく、又は、このような二重特異性抗体の断片であってもよい。完全な抗体ではなく、scFv二量体又はダイアボディーを使用することが好ましいかもしれない。ダイアボディー及びscFvは、Fc領域がなく、可変ドメインのみを用いて構築でき、抗イディオタイプ反応を低下させる可能性がある。二重特異性抗体の他の形態には、Traunecker, Lanzavecchia, and Karjalainen 1991に記載の一本鎖「Janusins」が含まれる。二重特異性の完全な抗体とは対照的に、二重特異性ダイアボディーは容易に構築でき、大腸菌中で発現されるため、有用であるかもしれない。適切な結合特異性のダイアボディー(及び抗体断片のような他の多くのポリペプチド)は、ライブラリーのファージディスプレイ(国際公開第94/13804号)により容易に選択できる。ダイアボディーの一方のアームを、例えば、抗原Xに対する特異性で一定に保ち、他方のアームを変化させたライブラリーを調製し、適切な特異性の抗体を選択できる。「抗原結合ドメイン」は、抗原の一部又は全部と特異的に結合し、抗原の一部又は全部と相補的である領域を含む抗体の一部分である。抗原が大きい場合、抗体は抗原の特定の部分にのみ結合でき、その部分はエピトープと呼ばれる。抗原結合ドメインは、1つ以上の抗体可変ドメインが提供してもよい。抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)及び抗体重鎖可変領域(VH)を含んでいてもよい。
【0072】
修飾されたタンパク質足場に基づく結合部分も、この発明に包含される。タンパク質骨格は、目的の標的分子の結合部位を提供するように修飾された、安定で可溶性の天然のタンパク質構造に由来する。修飾されたタンパク質足場の例には、2つのαヘリックスに結合界面を提供するブドウ球菌プロテインAのZ-ドメインに基づくアフィボディ(Nygren 2008);βバレルフォールドの開口端に小さなリガンドの結合部位が組み込まれたリポカリンに由来するアンチカリン(Skerra 2008)、ナノボディ及びDARPinが含まれるが、これらに限定されるものではない。修飾されたタンパク質足場は、通常、抗体と同じ抗原タンパク質に結合するように標的化されており、治療薬となる可能性がある。これらは、in vivoで、特定の組織に対する阻害剤又は拮抗剤として、又は毒素のような標的分子を特定の組織に送達するビヒクルとして機能する可能性がある(Gebauer and Skerra 2009)。短いペプチドを使用して、標的タンパク質を結合してもよい。フィロマー(phylomer)は細菌のゲノムに由来する天然の構造ペプチドである。このようなペプチドは、タンパク質の折畳みのさまざまなアレイを表し、in vivoでタンパク質-タンパク質間相互作用を阻害/破壊するために使用できる(Watt 2006)。
【0073】
これまでに説明したように、本発明者らは、ある修飾されたCyk8抗原が腫瘍と関係があり、シトルリン化ペプチドが、腫瘍に対する免疫応答を引き起こすために使用できるT細胞応答を刺激することを見いだした。本発明は、医薬として使用するための、第1の側面の抗原、第2の側面の複合体及び/又は第3の側面の結合部分を提供する。第1の側面の抗原、第2の側面の複合体及び/又は第3の側面の結合部分は、がんの治療方法に使用できる。また、がんを治療する医薬の製造における第1の側面の抗原、第2の側面の複合体及び/又は第3の側面の結合部分の使用、並びにがんの治療方法であって、本発明の第1の側面の抗原、第2の側面の複合体及び/又は第3の側面の結合部分を、そのような治療を必要とする対象に投与することを含む方法も提供される。本発明の抗原は、単独で使用してもよく、又はプールとして組み合わせて使用してもよい。加えて、それらは、イピリムマブ、ペムブロリズマブ及びニボルマブといったチェックポイント阻害薬を含むがこれらには限定されない抗がん剤のような他の治療薬と組み合わせて使用してもよい。
【0074】
本発明者らは、シトルリン化されたサイトケラチン8ペプチドが、T細胞応答を強力に刺激できることを最初に示した。本発明は、対象の腫瘍組織に対する免疫応答を局所的に刺激する適切な手段を提供する。これらのCyk8 citペプチドに特異的なT細胞は、腫瘍細胞を標的とし、in vivoで強力な抗腫瘍効果を誘発でき、したがって、がんを治療するためのワクチンとして、Cyk8 citエピトープを使用する最初の証拠を提供する。ワクチンに対する免疫応答の刺激には、患者の自然免疫応答、及び腫瘍に対する免疫応答の誘導を目的とする免疫療法(例.チェックポイント阻害剤、腫瘍抗原に対するCAR-T及び他の腫瘍免疫療法)が含まれる。免疫応答のこのようなサポート又は誘導は、免疫応答を開始して維持し、しばしばこの活性化を遮断する腫瘍媒介免疫抑制を回避するために、さまざまな臨床現場で有益である可能性がある。これらの応答は、自己免疫疾患の治療で忍容される可能性がある。
【0075】
いくつかの態様では、細胞性免疫の応答は、ストレス誘発翻訳後修飾ペプチドに特異的であり、ここで、免疫応答は、TCRαβ又はγδを発現するT細胞の活性化を含む。本発明はまた、TCR、個々のTCRサブユニット(単独又は組合せ)及びそれらのサブドメイン、可溶性TCR(sTCR、例.定常ドメインの残基間に、ナイーブなTCRには存在しない少なくとも1つのジスルフィド鎖間結合を有する可溶性αβ二量体TCR)、並びにクローン化TCRであって、前記TCRが自己又は同種異系T細胞又はT細胞前駆細胞に改変されたもの、それらの調製方法、並びに前記TCRを有する他の細胞に関する。
【0076】
がんは、甲状腺がん、結腸直腸がん、尿路上皮がん、胃がん、肝臓がん、神経内分泌腫瘍、膵臓がん、腎臓がん、前立腺がん、肺がん、乳がん及び婦人科のがんであってもよい。
【0077】
本発明は、本発明の抗原、複合体及び/又は結合部分を含む医薬組成物を提供する。製剤は、アジュバント又は他の薬学的に許容されるワクチン成分と共に製剤化してもよい。特定の態様では、アジュバントは、TLRリガンド(例.CpG(TLR9)、MPLA(TLR4)、イミキモド(TLR7)、ポリI:C又はamplivant TLR1/2リガンド、GMCSF、油エマルジョン、細菌産物又は全不活化細菌)である。
【0078】
抗原は、T細胞抗原又はB細胞抗原であってもよい。本発明のペプチドは、単独で又は組み合わせて使用してもよい。加えて、それらは、イピリムマブのようなチェックポイント阻害薬を含むがこれらには限定されない抗がん剤のような他の治療薬と組み合わせて使用してもよい。
【0079】
本発明の抗原は、ペプチドとして、必要に応じて国際公開第02/058728号で開示されているようなペプチドの形態で、in vivoで送達できる。本発明者らは、驚くべきことに、本発明の抗原をペプチドとして投与された場合に強力な免疫応答を引き起こすことを見いだした。このようなペプチドは、ペプチドの配列そのものとして、抗原を含むポリペプチドとして、又は全長タンパク質としても投与できる。あるいは、本発明の抗原は、抗原をコードする核酸として、抗原を含むポリペプチドをコードする核酸として、又は全長タンパク質をコードする核酸としても、in vivoで投与できる。このような核酸は、ミニ遺伝子の形態であってもよく、すなわち、リーダー配列及び抗原、又はリーダー配列及び全長タンパク質をコードする。
【0080】
この明細書では、用語「治療」は、ヒト又はヒト以外の動物に利益をもたらす治療計画を含む。抗原、核酸、複合体及び/又は結合部分は、薬学的に許容される担体と組み合わせて医薬組成物を形成してもよい。このような担体には、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、リポソーム、水、グリセリン、エタノール及びこれらの組合せが含まれるが、これらには限定されない。
【0081】
本発明の組成物の投与方法としては、注射が主な経路であることが想定されるが、カテーテル又は他の外科用チューブで送達してもよい。いくつかの適切な投与経路には、静脈内、皮下、皮内、腹腔内及び筋肉内投与が含まれる。粉末製剤から調製した液体製剤を使用してもよい。
【0082】
静脈内注射、又は患部への注射では、活性成分は、発熱物質を含まず、pHが適切で、等張であり、安定性が維持される、非経口的に許容される水溶液の形態である。当業者は、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル液又はラクトリンゲル注射液といった等張なビヒクルを用いて、適切な溶液を調製できる。必要に応じて、保存料、安定化剤、緩衝剤、抗酸化剤及び/又は他の添加剤を配合してもよい。
【0083】
経口投与のための医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤又は液剤の形態であってもよい。錠剤は、ゼラチン又はアジュバントといった固体の担体を含んでいてもよい。液体の医薬組成物は、一般に、水、石油、動物若しくは植物油、鉱油又は合成油といった液体の担体を含む。生理食塩水溶液、デキストロース若しくは他の糖類の溶液、又はエチレングリコール、プロピレングリコール若しくはポリエチレングリコールのようなグリコールを含んでいてもよい。製剤が液剤の場合、例えば、pH6.8~7.6の非リン酸緩衝液を含む生理学的塩溶液、又は凍結乾燥粉末であってもよい。
【0084】
組成物は、腫瘍部位又は他の所望の部位に局所的に投与してもよく、又はそれが腫瘍若しくは他の細胞を標的とする様式で送達しもよい。いくつかの態様では、抗原は、TCRαβ又はγδを発現するT細胞の活性化を含む細胞性免疫応答のためのアジュバントを配合することなく投与される。
【0085】
組成物は、好ましくは、「治療的に有効な量」で個体に投与され、これは、個体に利益をもたらすのに十分な量である。投与される実際の量、及び投与の速度と時間経過は、対照の特性及び重症度に依存する。治療の処方、例えば、投薬量などの決定は、開業医及び他の医師の責任で行われ、通常、治療される障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法、及び開業医に公知の他の因子が考慮される。本発明の組成物は、特に、がんの治療と最初の治療又は手術の後の再発の予防に関連する。このような技術及びプロトコルの例は、Remington's Pharmaceutical Sciences(Remington 1980)に見いだすことができる。組成物は、治療されるべき状態に応じて、単独で又は他の治療と組み合わせて、同時に又は連続的に投与してもよい。他のがん治療には、他のモノクローナル抗体、他の化学療法薬、他の放射線療法技術又は当該技術分野において公知の他の免疫療法が含まれる。本発明の組成物の特定の用途の1つは、手術の補完として、すなわち、腫瘍を除去した後に再発するがんのリスクを低下させるのを助けることである。本発明の組成物は、化学合成によって、完全に又は部分的に製造できる。この組成物は、十分に確立された標準的な液相、又は好ましくは固相ペプチド合成法によって容易に製造できる(その一般的な説明は広く入手可能である(例えば、Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd edition (Stewart 1984)、The Practice of Peptide Synthesis (Bodanzsky 1984)及びApplied Biosystems 430A User’s Manual, ABI Inc.を参照))。あるいは、この組成物は、溶液中で、液相法によって、又は固相、液相及び溶液化学の組合せによって製造でき、例えば、最初にそれぞれのペプチド骨格を完成させ、次いで、所望かつ適切であれば、保護基を除去した後、それぞれの炭酸若しくはスルホン酸又はその反応性誘導体の反応による残基Xの導入によって製造できる。
【0086】
本発明の抗原、複合体、核酸分子、ベクター、細胞及び結合部分は、天然に存在しないものであってもよく、精製されたものであってもよく、修飾されたものであってもよく、及び/又は組換え体であってもよく、単離されたものであってもよく、及び/又は合成されたものであってもよい。
【0087】
本発明は、本発明の複合体と結合する結合部分を特定する方法を提供し、この方法は、候補となる結合部分を複合体と接触させる工程、及び候補となる結合部分が複合体と結合するかどうかを決定する工程を含む。
【0088】
本発明の各側面の好ましい特徴は、他の各側面にも準用される。この明細書で示した先行技術文献は、法律によって許容される最大限の範囲で組み込まれる。
【実施例
【0089】
以下の実施例及び図面を参照して、本発明を更に説明する。
【0090】
方法
1.1 市販のmAb
抗IFNγ抗体(クローンXMG1.2)、抗マウスCD4抗体(クローンGK1.5)、抗マウスCD8抗体(クローン2.43)及び抗ヒトCD4抗体(クローンOKT-4)は、BioXcell, USAから購入した。抗ヒトCD134抗体(クローンREA621)及び抗ヒトCD8抗体(クローンREA734)は、Miltenyi, Germanyから購入した。抗ヒトCD4抗体(クローンRPA-T4)、抗ヒトグランザイムB抗体(クローンGB11)は、Thermo Fisher Scientific, USAから購入した。抗ヒトIFNγ抗体(クローンE780)は、eBioscience, USAから購入した。
【0091】
1.2 細胞株
マウス黒色腫B16F1、マウス膵臓pan02細胞株は、American Tissue Culture Collection(ATCC)から入手し、特に明記しない限り、10%ウシ胎児血清(FCS)、L-グルタミン(2mM)を補充し、炭酸水素ナトリウムで緩衝化したRPMI培地1640(GIBCO/BRL)で培養した。トランスジェニックマウスTRAMP細胞は、ATCCから入手し、炭酸水素ナトリウムが1.5g/L、グルコースが4.5g/Lとなるように調整された4mMのL-グルタミンを含み、0.005mg/mlのウシインスリン及び10nMのデヒドロイソアンドロステロンが90%;ウシ胎児血清が5%;Nu-Serum IVが5%を補充したダルベッコ改変イーグル培地で培養した。マウス乳腺がん細胞株PY8119及びPY230は、ATCCから入手し、Ham’s F12 Kaighn培地、5% FBSで培養し、PY230細胞株は、0.1% MITO+Serum Extender(Corning)の存在下でも培養した。ヒト細胞株HeLa及びマウス細胞株LLC2は、ATCCから入手し、10% ウシ胎児血清を補充したイーグル最小必須培地で培養した。ID8細胞株はKUMC University(Kansas, USA)のK. Roby博士より提供を受け、10% FCSを補充したDMEMで培養した。
【0092】
1.3 in vitroシトルリン化
サイトケラチン8のシトルリン化は、0.1MのTris-HCl pH7.5(Fisher)、10mMのCaCl(Sigma)及び5mMのDTT(Sigma)中で行った。溶液の最終濃度は、Tris-HCl pH7.5が376mM、CaClが3.76mM、DTTが1.88mMであった。試料をPAD酵素とともに37℃で2時間インキュベートした後、-80℃で一晩又は使用するまで保存した。PAD2酵素は148mUで使用し、PAD4は最終濃度152mUで使用した。PAD酵素は、Modiquestから、hPAD2が37mU/μl及びhPAD4が38mU/μlのものを購入した。
【0093】
1.4 免疫源
1.4.1 ペプチド
純度が90%を超えるペプチドは、Peptide Synthetics(Fareham, UK)が合成し、0.2mgのアリコートとして-80℃で凍結乾燥保存した。使用する日に、10%ジメチルホルムアミドで所望の濃度に再構成した。
【0094】
1.5 プラスミド及びトランスフェクション
HHDIIプラスミドを調製するために、EL4-HHD細胞の全RNAからcDNAを合成した。これは、フォワード及びリバースプライマーを使用してHHDを増幅するためのテンプレートとして使用し、pCR2.1にサブクローニングした。次いで、ヒトHLA-A2リーダー配列、グリシンセリンリンカーを介して、ヒトHLA-A0201 MHCクラスI分子のα1及びα2ドメイン、並びにマウスH-2DbクラスI分子のα3、膜貫通及び細胞質ドメインと共有結合したヒトβ2ミクログロブリン(β2M)分子を含むHHD鎖を、Invitrogenから入手した哺乳動物発現ベクターpCDNA3.1のEcoRV/HindIII部位に挿入した。
【0095】
エンドトキシンを含まないプラスミドDNAを、endofree Qiagen maxiprepキット(Qiagen, Crawley)を使用して調製した。
【0096】
以前に説明されたプロトコル(Brentville et al. 2016)を利用するリポフェクタミントランスフェクション試薬(Invitrogen)を使用して、細胞株をトランスフェクトした。B16F1細胞は、ZFN技術(Sigma)を使用してマウスMHC-I及び/又はMHC-IIをノックアウトし、pVitro 2キメラプラスミドを使用して、構成的HLA-DP4をトランスフェクトした。細胞は、以前に説明されている(Xue et al. 2016)ように、ヒトHLA-A2リーダー配列、グリシンセリンリンカーを介して、ヒトHLA-0201 MHCクラス1分子のα1及びα2ドメイン、並びにマウスH-2Dbクラス1分子のα3、膜貫通及び細胞質ドメインと共有結合したヒトβ2ミクログロブリン(β2M)分子を含むHHDIIプラスミドでもトランスフェクトした。B16F1 HHDII細胞も、pVITRO2ヒトHLA-DP4プラスミドでトランスフェクトした。IFNγ誘導プラスミドpDCGASヒトHLA-DP4は以前に説明されている(Brentville et al. 2019)。
【0097】
1.6 ウエスタンブロット
細胞溶解物を、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)を含むRIPAバッファーで調製し、タンパク質を4~12% NuPAGE Bis-Trisゲル(Invitrogen)で分離した後、PVDF膜に転写した。組換えサイトケラチン8タンパク質を陽性対照として使用した(ab73641, Abcam)。膜を3%BSAで1時間ブロックし、0.5μg/mlのヒトサイトケラチン8(クローンTROMA-1, Millipore)及びβアクチン(Ab8227, Abcam)(1:15000)に対する抗体をプローブとして使用した。タンパク質を、蛍光二次抗体IRDye 800RD及びIRDye 680RD二次抗マウス抗体(βアクチン用)を使用して可視化した。Licor Odysseyスキャナーを使用して膜を画像化した。
【0098】
1.7 免疫
1.7.1 免疫プロトコル
生後8~12週の、国際公開2013/017545号に記載のHHDII/HLA-DP4トランスジェニック系統マウス(EMMA repository, France)及びC57BL/6マウス(Charles River, UK)を使用し、Nottingham Trent大学のスタッフが世話をした。全ての作業は、内務省のプロジェクト ライセンスの下で行った。ペプチドを10%ジメチルホルムアミドに溶解して1mg/mLとし、次いで、アジュバントとして各マウス6μgのCpG及びMPLA(Invivogen, UK)それぞれで(一連の希釈液に)乳化した。ペプチド(25μg/マウス)を尾の付け根に皮下注射した。
【0099】
腫瘍投与実験では、(特に明記しない限り)初回免疫の3日前に、マウスの右脇腹に1×10のB16 HHDII/iDP4細胞を皮下投与し、次いで、上述のとおりに免疫した。腫瘍の成長を3~4日間隔で監視し、腫瘍の直径が10mm以上となったらマウスを安楽死させた。
【0100】
1.8 免疫応答の分析
1.8.1 動物組織の単離及び分析
脾臓を解体し、赤血球溶解緩衝液で2分間処理した。腫瘍を採取し、機械的にばらばらにした。
【0101】
1.8.2 末梢血単核細胞(PBMC)の単離
静脈穿刺で得た末梢血試料をリチウムヘパリンチューブ(Becton Dickinson)に採取し、直ちに処理した。PBMCはFicoll-Hypaqueを使用する密度勾配遠心分離で単離した。PBMCの増殖及び培養ELISpotアッセイは、単離の直後に行った。
【0102】
1.8.3 ex vivo ELISpotアッセイ
ELISpotアッセイを製造元(Mabtech, Sweden)の指示に従い、マウスIFNγ捕捉・検出試薬を使用して行った。簡単に説明すると、抗IFNγ抗体を96ウエルImmobilin-Pプレートのウエルにコーティングした。(さまざまな濃度の)合成ペプチド及び1ウエルあたり5×10個の脾細胞を、それぞれ、プレートの3つのウエルに加えた。5μg/mLのLPSを陽性対照として使用した。標的細胞でパルスしたペプチド、それぞれを1ウエルあたり5×10個で3つのウエルに添加し、プレートを37℃で40時間インキュベートした。インキュベーション後、捕捉したIFNγをビオチン化抗IFNγ抗体で検出し、ストレプトアビジンアルカリホスファターゼと発色基質で発色させた。リポ多糖(LPS;5μg/mL)を陽性対照として使用した。ブロッキング実験では、Bioxcellの抗CD4ブロッキング抗体(RPA-T4)及び抗CD8ブロッキング抗体(2.43)を20μg/mLで使用した。自動プレートリーダー(Cellular Technologies Ltd)を使用して、スポットを分析し、計数した。
【0103】
1.9 増殖アッセイ
末梢血試料(約50mL)をリチウムヘパリンチューブ(Becton Dickinson)に採取した。試料は室温に保ち、静脈穿刺の直後に処理した。PBMCはFicoll-Hypaqueを使用する密度勾配遠心分離で単離した。PBMCの単離直後に増殖アッセイを行った。健常者の試料から常法で得たPBMCの中央値は、1.04×10PBMC/mL全血(範囲:0.6×10~1.48×10/mL)であった。トリパンブルー排除で評価した生存率の中央値は93%(範囲90~95%)であった。
【0104】
単離した新鮮なPBMCに、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)(ThermoFisher)を加えた。簡単に説明すると、暖かいPBS中の50μMストック溶液を、DMSO中5mMのマスター溶液から調製した。CFSEを、最終濃度5μMとするためにPBMC(5×10細胞/mLローディング緩衝液(5%v/v熱不活性化FCSを含むPBS))に直ちに追加した。PBMCを暗所、室温で5分間インキュベートした後、過剰(×10v/v容量)のローディング緩衝液で2回洗浄して(300×gで10分)、細胞に取り込まれていないCFSEを除去した。細胞を完全培地で1.5×10/mLとし、プレートに播種し、上述したように、ビヒクル(陰性対照)、PHA(陽性対照、最終濃度10μg/mL)又はペプチド(10μg/mL)を含む培地で刺激した。増殖が対照の2倍で1%を超える場合に、ペプチドに対するドナーの応答が生じたと見なした。
【0105】
7~11日目に、培養液から500μLの細胞を取り出し、PBSで洗浄し、抗CD4抗体(PE-Cy5、クローンRPA-T4、ThermoFisher)、抗CD8抗体(クローンRPA-T8、ThermoFisher)及び抗CD134抗体(PE-Cy7、クローンREA621、Miltenyi)の1:50希釈液で染色した。製造元の指示に従い、細胞内固定/透過化緩衝液(ThermoFisher)を使用して、細胞を洗浄、固定、透過化した。サイトカインの細胞内染色は、抗IFNγ抗体(clone 4S.B3, ThermoFisher)又は抗グランザイムB抗体(PE, Clone GB11, Thermofisher)の1:50希釈液を使用して行った。染色した試料は、MACSQuantソフトウェアバージョン2.8.168.16380を備えたMACSQuant 10フローサイトメーターで分析し、染色したビヒクル刺激対照を使用して、適切なゲートを決定した。
【0106】
1.10 T細胞集団のフェノタイピング
増殖アッセイを、上記1.9の項に記載の方法に従って行った。7~11日目に、培養液から500μLの細胞を取り出し、PBSで洗浄し、製造元の指示に従い、抗CD4抗体(PE-Cy5、クローンRPA-T4、ThermoFisher)、抗CD45RA抗体(VioGreen、クローンREA562、Miltenyi)、抗CD177抗体(CCR7、PE-Vio770、クローンREA108、Miltenyi)、抗CD127抗体(APC-Vio770、クローンREA614、Miltenyi)の1:50希釈液で染色した。染色した試料は、MACSQuantソフトウェアバージョン2.8.168.16380を備えたMACSQuant10フローサイトメーターで分析し、染色したビヒクル刺激対照を使用して、適切なゲートを決定した。
【0107】
1.11 FACSセルソーティング
10日目に、培養ウエルの内容物を穏やかに混合し、(ペプチド刺激に従って)プールし、PBSで洗浄した(300×gで10分)。ペレットは、10μLの抗CD4抗体(eFluor450、クローンRPA-T4、ThermoFisher、カタログ番号48-0049-42)及び10μLの抗CD8抗体(APC、クローンRPA-T8、ThermoFisher、カタログ17-0088-41)を含む500μLのPBSに穏やかに再懸濁した。細胞を4℃で30分間染色した後、1mLのPBSで洗浄し(300×gで5分)、300μLのFACSソーティング緩衝液(1mMのEDTA、25mMのHEPES及び1%v/vのHI FCSを加えたPBS)に再懸濁した。染色したそれぞれの試料から10μLを取り出し、90μLのFACSソーティング緩衝液を加えた。増殖を決定するために、MACSQuant Analyzer 10フローサイトメーターで10,000イベント収集した。残りの細胞は、バルクFACSソーティングに使用した。
【0108】
細胞を、MoFlo XDP高速セルソーターを滅菌条件で使用して並べ替える。全ての試料は、CD4+ve/CFSE集団とCD4+ve/CFSE集団を分離する1mLのRNAプロテクト(プロテクト、Qiagen 5部:FACSソーティング緩衝液、Sigma 1部)中でソートされる。ソートした細胞(バルク)を-80℃で保存する。
【0109】
シトルリンを含むサイトケラチン8ペプチドを認識するTCRのα鎖とβ鎖のペアの決定。RNAプロテクト中のCD4+ve/CFSE集団とCD4+ve/CFSE集団にソートした細胞(バルク)を、TCRA及びTCRB鎖のNGSシーケンシングのためにiRepertoire Inc(Huntsville, AL, USA)に送り、増殖していないCD4+ve/CFSE集団に対する、CD4+ve/CFSE細胞におけるTCRの増殖を確認する。簡単に説明すると、ソートした細胞からRNAを精製し、RT-PCRを行い、次いで、cDNAを、ヒトTCRα及びβ250PERプライマー(iRepertoire Inc., Huntsville, AL, USA)を使用して、アンプリコンレスキューマルチプレックスPCR(ARM-PCR)にかける。プライマーに関する情報は、米国特許第7,999,092号及び同第9,012,148号に記載されている。PCR/DNA試料の評価後、10個の試料ライブラリーをプールし、Illumina MiSeqプラットフォーム(Illumina, San Diego, CA, USA)を使用してシーケンシングした。生データを、iRwebソフトウェア(iRepertoire)を使用して分析した。使用されたV、D及びJ遺伝子とCDR3の配列を特定して割り当て、iRwebツールを使用してツリーマップを生成した。ツリーマップは、各固有のCDR3を色付きの四角形として示し、各四角形のサイズは、レパートリー内の各CDR3の存在量に対応し、位置はV領域によって決まる。
【0110】
TCRα及びTCRβ鎖の同族ペアと配列を解明するために、iRepertoireはiPair(登録商標)技術を使用して、(同時にバルクシーケンスされ、バルクソートされた)CD4+ve/CFSE細胞集団の細胞が、iCapture 96ウェルプレートに1細胞/ウエルで播種する。RT-PCRを行い、アンプリコンレスキューマルチプレックスPCR(ARM-PCR)を使用して、単一の細胞からTCRα及びβ鎖が増幅できる。データは、iPair(登録商標)ソフトウェアプログラムを利用して、特定の鎖のペアの頻度と、バルクデータとの比較でランク付けされた配列を分析できる。
【0111】
1.12 統計的方法
データは、100万個の脾細胞あたりのスポット数として表した。平均値と標準偏差(SD)は、4回の測定値から計算した。3匹のマウスの各群について、平均値とSDも計算した。必要に応じて、GraphPad Prism 6ソフトウェアを使用してANOVA分析を行った。
【0112】
実施例1 異なる種のサイトケラチン8の相同性
サイトケラチン8には2つのアイソフォーム、アイソフォーム1(P05787-1)及びアイソフォーム2(P05787-2)が存在し、それらの配列を図1Aに示す。サイトケラチン8は、マウス、イヌ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ及びヒトの間で高度に保存されている(図1B)。ワクチンは、ヒト及びマウスでT細胞応答を誘導し、マウスで抗腫瘍応答を誘導することから、他の種でも同様の応答が見られると仮定できる。
【0113】
実施例2 HHDII/DP4及びC57BL/6マウスにおけるサイトケラチン8エピトープに対するT細胞応答
腫瘍関連エピトープに対するT細胞応答は、寛容と胸腺内のT細胞欠失のために、しばしば弱いか、存在しない。C57BL/6及びHHDII/DP4トランスジェニックマウスで、シトルリン化サイトケラチン8ペプチドのIFNγ応答を刺激する能力をスクリーニングした。選択したペプチドについて、予測IEDB結合スコア及びペプチドスクリーニングELISpotアッセイの結果を、表2に要約する。
【0114】
【表2】
【0115】
サイトケラチン8ペプチド応答のスクリーニング
HHDII/DP4及びC57BL/6マウスを、CpG/MPLAをアジュバントとして組み合わせてヒトシトルリン化ペプチドで免疫した。25μgのペプチドを、週1回、3週間、皮下投与した。3回目の免疫の7日後にマウスを選別し、各ペプチドに対する免疫応答を、ex vivo IFNγELISpotで評価した(図2)。我々は以前に、シトルリン化ペプチドがトランスジェニックDR4マウスで応答を誘導できることを示した。マウスが異なればMHCレパートリーが異なることを考慮して、トランスジェニックHHDII/DP4及び非トランスジェニックC57BL/6マウスをスクリーニングに使用した。
【0116】
トランスジェニックHHDII/DP4マウス(図2A)及びC57BL/6マウス(図2B)において、ヒトCyk8シトルリン化ペプチドに対する有意なIFNγ応答が検出された。HHDII/DP4マウスでは、Cyk8シトルリン化ペプチド101-120、133-151、217-236、371-388、381-399は、有意な免疫応答を誘導した(それぞれ、p=<0.01、p=<0.001、p=<0.0001、p=<0.0001、p=<0.0001)。C57BL/6マウスでは、Cyk8 8-26シトルリン化ペプチドのみが有意な応答を誘導し(p=<0.001)、他のシトルリン化Cyk8ペプチドに対する有意な応答は検出されなかった。HHDII/DP4におけるT細胞応答のアビディティーを、ペプチドCyk8 133-151 cit、Cyk8 217-236 cit、Cyk8 371-388 citによる滴定を行うことで決定した(図2C)。T細胞応答の最も高いアビディティーは、ペプチドCyk8 371-388 citでlogEC50値が-7.1~-7.6Mであり、Cyk8 133-151 citペプチドのアビディティーは、logEC50値が-6.0~-6.5Mでわずかに低く、Cyk8 217-236 citペプチドのアビディティーはlogEC50値が-5.0~-5.9Mとわずかに低かった。
【0117】
Cyk8ペプチドに対する免疫応答が、野生型(wt)のペプチドではなく、シトルリン化ペプチドに特異的であるかどうかを判断するために、HHDII/DP4トランスジェニックマウスを、Cyk8 101-120 cit、133-151 cit、217-236 cit、371-388 cit、381-399 cit又はCyk8 101 wt、133-151 wt、371-388 wtペプチドで免疫した。HHDII/DP4マウスに、CpG/MPLAを含む25μgのペプチドを週1回、3週間、皮下投与した。3回目の免疫の7日後にマウスを選別し、各ペプチドに対する免疫応答をex vivo ELISpotで評価した(図3A及び3B)。中等度から高度のIFNγ応答が、Cyk8 101-120 cit、133-151cit、217-236 cit、371-388 cit、381-399 citで免疫したマウスで検出され、これらは、wtペプチドに対する応答と比較して有意であった(それぞれ、p=0.0454、p=0.0087、p=0.0003、p=0.0022、p=0.0238)。低度から中程度のIFNγ応答が、Cyk8 101-120 wt、Cyk8 131-15 wt、Cyk8 371-388 wtで免疫したマウスで検出されたが、citペプチドに対する応答と比較すると、有意な応答はなかった。このことから、HHDII/DP4マウスで生じた免疫応答が、シトルリン化したCyk8 101-120、Cyk8 133-151、Cyk8 217-236、Cyk8 371-388、Cyk8 381-399ペプチドで認められ、wtに対する交差反応は観察されなかったことが確認された。
【0118】
Cyk8 101-120、133-151、371-388ペプチドの配列は、ヒトとマウスで完全に相同であるが、Cyk8 217-236とCyk8 8-26ペプチドはアミノ酸のミスマッチが2つあり、Cyk8 381-399とCyk8 8-26はアミノ酸のミスマッチが1つある(図4A)。マウスCyk8ペプチド217-236(位置227及び228でミスマッチ)に対する免疫応答がヒトCyk8ペプチドと同じであるかどうかを判断するために、HHDII/DP4トランスジェニックマウスをマウスCyk8 217-236citペプチドで免疫した。25μgのペプチドを、CpG/MPLAをアジュバントとして組み合わせて、HHDII/DP4マウスに週1回、3週間、皮下投与した。3回目の免疫の7日後にマウスを選別し、マウス及びヒトペプチド217-236に対する免疫応答を、ex vivo ELISpotで評価した(図4B)。マウス217-236 citペプチドで免疫したマウスで中程度のIFNγ応答が検出され、その応答はヒト217-236 citと交差反応し、有意差は観察されなかった。
【0119】
異なるサイトケラチン間には高度の配列類似性が存在する。今回特定したサイトケラチン8ペプチドが、他のサイトケラチン又はビメンチンなどの他の抗原で見いだされるか否かを判断するために、ペプチドのBLAST検索を行った。Cyk8 381-399(KLALDIEIATYRKLLEGEE(配列番号4))ペプチドが、完全な配列一致でサイトケラチン4及びグリア線維性タンパク質中でも見いだされ、位置2における1つのアミノ酸の違いでビメンチン中にも見いだされた(図5)。Cyk8 101-120(KFASFIDKVRFLEQQNKMLE(配列番号1))ペプチドが、位置18における1つのアミノ酸の違いで、サイトケラチン2及びサイトケラチン7でも見いだされた(図5)。サイトケラチン8に加えて、これらのペプチドは、サイトケラチン2、4、7、ビメンチン及びグリア線維性タンパク質を標的とするために使用できる。
【0120】
シトルリン化ペプチド特異的応答は、CD4媒介性であることが以前に示されている。Cyk8 8-26 cit、Cyk8 101-120 cit、Cyk8 133-151 cit、Cyk8 371-388 cit、Cyk8 381-399 citに対する応答が、CD4依存性であるかどうかを判断するために、25μgのペプチドを、CpG/MPLAをアジュバントとして組み合わせて、HHDII/DP4トランスジェニックマウス及びC57BL/6マウスに1週間に1回、3週間、皮下投与した(図6A HHDII/DP4、図6B C57BL/6)。3回目の免疫の7日後にマウスを選別し、抗CD4又はCD8抗体の存在下でELISpotアッセイを行った。Cyk8 8-26 cit(p=<0.5)、Cyk8 101-120 cit(p=<0.01)、Cyk8 371-388 cit(p=<0.001)及びCyk8 381-399 cit(p=<0.001)ペプチドに対するIFNγ応答は、抗CD4抗体の存在下で有意に減少したが、Cyk8 133-151 citペプチドに対する応答は有意には減少しなかった。Cyk8 8-26 cit、Cyk8 101-120 cit、Cyk8 133-151 cit、Cyk8 371-388ペプチドでは、抗CD8抗体の存在下におけるIFNγ応答は有意に減少せず、これらのペプチドはCD4ペプチドであることが確認された。Cyk8 133-151 citペプチドに対するIFNγ応答は、抗CD4抗体の存在下で減少したが、これは有意ではなかった。Cyk8 381-399 citペプチドに対するIFNγ応答は、抗CD8抗体(p=<0.01)及び抗CD4抗体(p=<0.001)の存在下で有意に減少し、このペプチドがCD4(MHCクラスII)拘束性であるが、ネスト化CD8(MHCクラスI)拘束性ペプチドも含む可能性があることが確認された。
【0121】
Cyk8 371-388 citペプチドに特異的なT細胞の既存の記憶集団が存在するかどうかを判断するために、25μgのペプチドをCpG/MPLAと組み合わせて、HHDII/DP4トランスジェニックマウスに、脾細胞回収の14日又は2日前に皮下投与した(図7)。脾細胞回収の14日前にCyk8 371-388 citペプチドで免疫したマウスで、中等度から高度のIFNγ応答が検出され、これらは、対照と比較して有意であった(p=0.0163)。脾細胞回収の2日前にCyk8 371-388 citペプチドで免疫したマウスでは、応答は検出されなかった。これらの結果は、HHDII/DP4トランスジェニックマウスにおけるCyk8 371-388 citペプチドに対する応答は、ナイーブT細胞に由来し、回収の2日前の免疫で増強された既存の記憶集団に由来するものではないことを示す。
【0122】
実施例3 腫瘍細胞が提示したcitサイトケラチン8ペプチドは腫瘍治療の標的となる可能性がある
本発明者らは、ウエスタンブロット法により、メラノーマB16F1細胞がサイトケラチン8を構成的に発現し(図8A)、in vitroでPAD2及びPAD4の両者がサイトケラチン8をシトルリン化できることを、既に立証した(図8B)。
【0123】
IFNγ誘導ヒトDP4(iDP4)をトランスフェクトしたマウスB16メラノーマ細胞の増殖に対するCyk8 371-388(cit及びwt)による免疫の効果を、HHDII/DP4トランスジェニックマウスで評価した(図9A)。Cyk8 371-388 citペプチドは、ヒトとマウスで相同であり、CD4 T細胞による免疫応答も最強であることから、これを選択した。Cyk8 371-388 wt又はCyk8 371-388 citによる免疫の3日前に、マウスにB16 HHDII/iDP4腫瘍細胞を投与した。Cyk8 371-388 citペプチド又はCyk8 371-388 wtで免疫したマウスは、免疫を行っていない対照マウスよりも生存率が有意に高かった(それぞれp=0.0003、p=0.0018、図9A)。60日目の生存率は、対照マウスでは10%であったのに対し、Cyk8 371-388 cit免疫マウスは70%であり、Cyk8 371-388 wt免疫マウスでは40%であった。これらの結果は、Cyk8 371-388 citペプチドが誘導する抗腫瘍応答とは有意差がない(p=0.2953)が、Cyk8 371-388 citによる免疫は、wtペプチドによる免疫と比較して生存率を30%の改善するHHDII/DP4トランスジェニックマウスにおける抗腫瘍応答を、Cyk8 371-388 wtペプチドが刺激できることも示唆する。毒性は認められなかった。腫瘍移植の29日後の腫瘍体積は、対照群(中央値 509mm)と比較して、Cyk8 371-388 cit免疫マウス(中央値 0mm)では有意に低かった(p=0.0013、図9B)。Cyk8 371-388 wtで免疫したマウスの腫瘍体積(中央値 4mm)も、対照群と比較して有意に低かった(p=0.0015)。免疫を行っていないマウスは、Cyk8 371-388 cit又はCyk8 371-388 wtペプチドで免疫したマウスと比較して、比較的急速に大きな腫瘍が発生した(図9C)。Cyk8 371-388 citペプチドは、腫瘍を有するHHDII/DP4トランスジェニックマウスにおいて抗腫瘍応答を誘導できることを、これらの結果は示している。
【0124】
IFNγ誘導ヒトDP4(iDP4)をトランスフェクトしたマウスB16メラノーマ細胞の増殖に対するCyk8 101-120 citによる免疫の効果を、HHDII/DP4トランスジェニックマウスで評価した(図10A)。Cyk8 101-120 citペプチドは、ヒトとマウスで相同であり、CD4 T細胞による免疫応答も強力であることから、これを選択した。Cyk8 101-120 citペプチドによる免疫の3日前に、マウスにB16 HHDII/iDP4腫瘍細胞を投与した。Cyk8 101-120 citペプチドで免疫したマウスは、免疫を行っていない対照マウスよりも生存率が有意に高かった(p=0.0072、図10A)。50日目の生存率は、対照マウスでは20%であったのに対し、Cyk8 101-120 cit免疫マウスは70%であった。毒性は認められなかった。腫瘍移植の24日後の腫瘍体積は、対照群(中央値 89mm)と比較して、Cyk8 101-120 cit免疫マウス(中央値 2mm)では有意に低かった(p=0.0221、図10B)。免疫を行っていないマウスの腫瘍体積(29日目の最高中央値 509mm)は、免疫群(35日及び38日目の最高中央値 9mm)と比較して大きかった(図10C)。Cyk8 101-120 citペプチドは、腫瘍を有するHHDII/DP4トランスジェニックマウスにおいて抗腫瘍応答を誘導できることを、これらの結果は示している。
【0125】
マウスB16メラノーマ細胞の増殖に対するCyk8 8-26 citによる免疫の効果を、C57BL/6で評価した。Cyk8 8-26 citによる免疫の3日前に、マウスにB16腫瘍細胞を投与した。Cyk8 8-26 citペプチドで免疫したマウスは、免疫を行っていない対照マウスよりも生存率が有意に高かった(p=0.0002、図11A)。20日目の生存率は、対照マウスでは0%の生存率であったのに対して、Cyk8 8-26 cit免疫マウスは70%で、29日目では40%に低下した。毒性は認められなかった。腫瘍移植の13日後の腫瘍体積も、対照群(中央値 586mm)と比較して、Cyk8 8-26 cit免疫マウス(中央値 19mm)では有意に低かった(p=0.0054、図11B)。免疫を行っていないマウスの腫瘍体積(17日目の最高中央値 1150mm)は、免疫群(23日目の最高中央値 523mm)よりも大きかった(図11C)。これらの結果は、Cyk8 8-26 citペプチドは、腫瘍を有するC57BL/6マウスにおいて、抗腫瘍応答を誘導できることを、これらの結果は示している。
【0126】
実施例4 健康なヒトドナー及びがん患者のサイトケラチン8に対する応答
HHDII/DP4マウスでは、Cyk8 371-388 citペプチドに対する応答は、免疫の2日後では検出できなかったが、14日後には検出できた。このことは、これらがナイーブな応答であり、このマウスには既存の免疫が存在しないことを示唆している。これは、ヒトがシトルリン化Cyk8ペプチドに対して免疫応答を有するか、又は免疫応答を引き起こすことが可能であるかという問題を提起した。この実験のために、Cyk8 101-120 citペプチドに対する応答を、健常者及びがん患者で測定した。卵巣がん及び肺がん患者の臨床の詳細を、それぞれ表3及び4に示す。これを調べるために、18人の健常者からPBMCを得、Cyk8 101-120 citペプチドの存在下で培養した。13人のドナーはHLA-DP4陽性であり、2人のドナーはHLA-DP4陰性であり、3人のドナーについてはHLAの型を決定できなかった。
【0127】
【表3】
【0128】
【表4】
【0129】
Cyk8 101-120 citペプチドの存在下で培養する前に、18人の健常者のPBMCを、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で標識した。7日目及び10日目に、細胞を抗CD4及び抗CD8蛍光色素結合抗体で染色し、増殖をフローサイトメトリーで評価した(図12A)。CD4 Cyk8 101-120 cit特異的増殖(CFSE)集団は、7日目では18人中4人のドナーで検出でき、10日目では増加して6人が特異的な応答を示した(図12B)。10日目にCD4 Cyk8 101-120 cit特異的増殖応答が良好であった6人のドナーのうちの5人について機能解析を行った。増殖が認められたドナーのT細胞で、IFNγ、グランザイムB及びCD134の発現を測定した(図12C、D及びE)。5人のドナー、全てのT細胞はCD134を(対照培地のバックグラウンドを超えて)発現し、4人はIFNγも発現し、2人はグランザイムBも発現した。このデータは、健康なドナーでは、Cyk8 101-120 citペプチドに対するT細胞応答を検出でき、これらのT細胞は増殖し、機能に関連するマーカーを発現することを示す。
【0130】
Cyk8 101-120 citペプチドの存在下で培養する前に、5人の肺がん患者及び12人の卵巣がん患者のPBMCを、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で標識した。7日目及び10日目に、細胞を抗CD4及び抗CD8蛍光色素結合抗体で染色し、増殖をフローサイトメトリーで評価した(図13)。CD4 Cyk8 101-120 cit特異的増殖(CFSE)集団が、7日目に5人中1人の肺がん患者で検出された。これは10日目に減少し、特異的応答を示す肺がん患者のT細胞は認められなかった(図13A)。Cyk8 101-120 citペプチド特異的増殖(CFSE)集団が、7日目に12人中3人の卵巣がん患者で検出された。これは10日目に増加し、12人中4人のT細胞がCyk8 101-120 citペプチドに対して特異的な応答を示した(図13B)。CD4 Cyk8 101-120 cit特異的増殖応答が良好であった1人の肺がん患者及び4人の卵巣がん患者(図13C及び12D)について、7日目及び10日目に機能解析を行った。肺がん患者のT細胞は、CD134、IFNγ又はCD134のいずれの発現も(対照培地のバックグラウンドを超えて)示さず(図13C)、4人中1人の卵巣がん患者のみが、CD134及びグランザイムBの特異的発現を(対照培地のバックグラウンドを超えて)示したが、IFNγの発現は示さなかった(図13D)。このデータは、がん患者では、少数の患者でCyk8 101-120 citペプチドに対するT細胞応答が検出できるが、その頻度は低く、程度が小さいことを示す。
【0131】
これらの結果は、健康なドナーのT細胞が、Cyk8 101-120 citペプチドに対するCD4増殖応答を引き起こすことが可能であることを示唆し、これは、細胞傷害活性の機能マーカーの上方制御にも関連する。少数のがん患者のPBMCも、頻度は低いものの、Cyk8 101-120 citペプチドに対するCD4応答を引き起こすことができる。Cyk8 101-120 citペプチド特異的T細胞応答の増殖の程度は、健常者と比較して、肺がん及び卵巣がん患者では小さかった。このがん患者におけるT細胞応答の小ささは、患者が服用している薬物又は患者の腫瘍媒介免疫抑制が原因の可能性がある。これらの結果は、健常者と比較して、Cyk8 101-120 citペプチドに応答するがん患者の数が少なく、Cyk8 101-120 cit特異的増殖応答を示したがん患者の大多数では、機能マーカーの共発現はなかったことを示す。
【0132】
実施例5 健康なヒトドナーでは、ナイーブT細胞集団はCyk8 101-120 citペプチドに応答する
1人の健常者のPBMCを、Cyk8 101-120 citペプチドの存在下で培養する前に、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で標識した。10日目に、細胞を抗CD4抗体、抗CD45RA抗体、抗CD177(CCR7)抗体及び抗CD127抗体で染色し、増殖と応答T細胞の表現型をフローサイトメトリーで評価した(図14)。10日目に、CD4 Cyk8 101-120 cit特異的増殖集団が検出でき、これらのT細胞の大部分は記憶細胞で(5.96%がTEMRA、52.91%がエフェクターメモリー、32.75%がセントラルメモリー)、8.38%のみがナイーブT細胞であった。これらの結果は、健常ドナーでは、ペプチド刺激後にCyk8 371-388 cit特異的T細胞応答を引き起こすことができ、応答するT細胞の大部分は、記憶T細胞であることを示す。
【0133】
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図1A
図1B
図1B-1】
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図13A
図13B
図13C
図13D
図14
【配列表】
2023550154000001.app
【国際調査報告】