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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-30
(54)【発明の名称】非平坦な物品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/00 20060101AFI20231122BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20231122BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20231122BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20231122BHJP
   B27K 9/00 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
B05D3/00 D
B05D7/00 B
B05D3/12 C
B05D3/02 Z
B27K9/00 S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530875
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 EP2021082694
(87)【国際公開番号】W WO2022106724
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】20209317.5
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521314792
【氏名又は名称】プランティクス ホールディング ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】バッカー,ライツァー ヤン ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ルオー,マチュー バティスト
【テーマコード(参考)】
2B230
4D075
【Fターム(参考)】
2B230AA13
2B230BA20
2B230CB01
2B230EA20
2B230EB05
2B230EB13
4D075AA01
4D075BB05Z
4D075BB06Z
4D075BB21Z
4D075BB26Z
4D075BB91Z
4D075BB93Z
4D075BB95Z
4D075CA03
4D075CA47
4D075CA48
4D075DB11
4D075DB13
4D075DB20
4D075DB32
4D075DB36
4D075DB43
4D075DB48
4D075DB53
4D075DC38
4D075EA05
4D075EA06
4D075EB47
4D075EB51
(57)【要約】
本発明は、非平坦な物品を製造する方法であって、該方法は、繊維材料と、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコール及び0超~1.0の重合度を有する脂肪族ポリカルボン酸から導出されるポリマー又はそのようなポリマーの前駆体モノマーを含む樹脂とを含む構造体を用意すること、ここで、該構造体は、0.3~0.98のボイド率及び40重量%未満の含水量を有する、並びに、該構造体を、該重合度が0.5未満である場合には、0.5~1の重合度まで重合すること、必要な場合には、プレスして、ボイド率を低減すること、及び、定義された順序で、該ポリマーのガラス転移温度(Tg)を超える内部温度で力を施与することによって該構造体を非平坦な物品へと形成して、少なくとも0.5の重合度及び20重量%未満の含水量を有する非平坦な物品を形成することの工程を含む、上記の方法に関する。本発明はまた、該方法によって得られうる非平坦な物品及び該方法における使用の為に適した構造体に関する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非平坦な物品を製造する方法であって、該方法は、
繊維材料と、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコール及び0超~1.0の重合度を有する脂肪族ポリカルボン酸から導出されるポリマー又はそのようなポリマーの前駆体モノマーを含む樹脂とを含む構造体を用意すること、ここで、該構造体は、0.3~0.98のボイド率及び40重量%未満の含水量を有する、並びに、
該構造体を、下記の工程
該重合度が0.5未満である場合には、0.5~1の重合度まで重合すること、
プレスして、ボイド率を低減すること、及び、
該ポリマーのガラス転移温度(Tg)を超える内部温度で力を施与することによって該構造体を非平坦な物品へと形成すること、ここで、該結果として得られた非平坦な物品が、少なくとも0.5の重合度及び20重量%未満の含水量を有する、
に付すこと
の工程を含み、
ここで、重合すること(実施される場合)、ボイド率を低減すること、及び形成することが同時に行われる、又は
重合すること(実施される場合)及びボイド率を低減することが同時に行われ、続いて形成することが行われる、又は
重合すること(実施される場合)及びボイド率を低減することが、任意の順序で連続して行われ、続いて形成することが行われる、又は
重合すること(実施される場合)に続いて、ボイド率を低減すること及び形成することが行われ、ここで、該形成することはボイド率を低減することと同時に又はそれに続いて行われる
前記方法。
【請求項2】
重合すること(実施される場合)、ボイド率を低減すること、及び形成することが同時に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記構造体が、0.4~0.98、好ましくは0.5~0.98、より好ましくは0.6~0.98、更により好ましくは0.7~0.95、のボイド率を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記繊維材料が、1~10cm、好ましくは2~7cm、より好ましくは3~5cm、の繊維長を有する繊維を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記構造体が、前記繊維材料の重量に対して、20~70重量%、好ましくは25~45重量%又は30~60重量%、のポリマー含量、を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
形成する間、水が複数の穴を通じて蒸発する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記形成の後に、(第1の)硬化工程において、該物品が、少なくとも80℃の内部温度で、好ましくは80~140℃の内部温度で、好ましくは少なくとも15分間硬化され、ここで、好ましくは、前記第1の硬化工程の後に第2の硬化工程が続き、ここで、該物品は140~220℃、好ましくは140~170℃、の内部温度で、好ましくは少なくとも60分間、硬化される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記繊維材料が天然繊維材料であり、好ましくは、麻、亜麻、綿、ケナフ、ジュート、ラミー、サイザル、ヤシ、毛髪、羊毛、絹、及び羽毛由来の繊維からなる群から選択され、又は前記繊維材料が合成繊維材料であり、好ましくは、ビスコース、ガラス、ポリエステル、カーボン、アラミド、ナイロン、アクリル、及び/又はポリオレフィンに由来する繊維から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記脂肪族ポリアルコールが、
ジアルコール、好ましくは、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール及び1,2-エタンジオール、並びに、
少なくとも3つの水酸基を有するポリアルコール、例えば、グリセロール、ソルビトール、キシリトール及びマンニトールからなる群から選択される1以上であり;及び/又は、
ここで、前記脂肪族ポリカルボン酸は、クエン酸、イソクエン酸、シス-アコニット酸及びトランス-アコニット酸、並びに3-カルボキシ-シス,シス-ムコン酸からなる群から選択される1以上の酸を含み、好ましくは、前記脂肪族トリカルボン酸はクエン酸である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記物品が家具の部品であり、ここで、好ましくは、該部品が座部であり、より好ましくは、椅子の為の座部、又は(バー)スツールの為の座部である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法において使用する為に適した構造体であって、該構造体が、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコールと脂肪族ポリカルボン酸から導出されるポリマーを含む樹脂で含浸された繊維材料を含み、ここで、前記構造体が0.3~0.98のボイド率を有し、該ポリマーが0.5~0.8の重合度を有し、及び前記構造体が、20重量%未満の含水量、好ましくは10重量%未満の含水量、を有する、前記構造体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法によって得られうる非平坦な物品であって、前記非平坦な物品が、好ましくはASTM D 7264を使用して決定される、20MPa超の曲げ強度を有する、前記非平坦な物品。
【請求項13】
非平坦な物品であって、該非平坦な物品が、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコールと脂肪族ポリカルボン酸から導出されるポリマーを含む樹脂で含浸された繊維材料を含み、ここで、前記ポリマーが少なくとも0.5の重合度を有し、前記非平坦な物品が20重量%未満の含水量を有し、前記非平坦な物品が、好ましくはASTM D 7264を使用して決定される、20MPa超の曲げ強度を有する、前記非平坦な物品。
【請求項14】
前記構造体が、0.8以下、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.5未満、
更により好ましくは0.4未満、なおより好ましくは0.35未満、最も好ましくは0.2未満、のボイド率を有し、及び/又は少なくとも0.7g/cmの密度を有し、及び/又は10重量%未満の含水量を有し、及び/又は2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコールと少なくとも0.6、特には少なくとも0.7,より特には少なくとも0.8、の重合度を有する脂肪族ポリカルボン酸から導出されるポリマーを含む、請求項12又は13に記載の非平坦な物品。
【請求項15】
前記物品が家具の部品であり、ここで、好ましくは、該部品が座部であり、より好ましくは、椅子の為の座部、又は(バー)スツールの為の座部である、請求項13又は14に記載の非平坦な物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維材料、例えばバイオベースの繊維材料、と、ポリマーを含む樹脂とから物品を製造する方法に関する。そのようにして得られた該物品は、驚くほど強く且つ耐擦傷性であり、並びに非平坦な形状(non-flat shapes)へと形成されることができる。本発明はまた、該方法によって得られうる物品、及び該方法において使用する為の構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオベースの材料から物品を製造する為の様々な方法が当技術分野において知られている。これらの物品は、サステナビリティ(sustainability)の理由から望ましい。
【0003】
例えば、国際公開第2012/140237号パンフレットは、10~98重量%のバイオベースの粒子状又は繊維状の充填材と少なくとも2重量%のポリエステルとを含む複合材料を製造する方法を記載し、ここで、該方法は、充填材とポリエステル(又はその前駆体)とを一緒にすること、及び該一緒にしたものを硬化工程に付すことを含む。
【0004】
国際公開第2012/140238号パンフレットは、積層体の製造方法を記載する。担体が、ポリエステルの層でコーティングされている。次に、複合体が硬化されて積層体を与える。この手法を使用することにより、木材のスタックが互いに接着されることができる。
【0005】
市場において、特に、家具、輸送(例えば、自動車産業)及び建築の分野において、再生可能資源に由来する、特にバイオベースの資源に由来する、物品において、関心が高まっている。もちろん、再生可能資源から導出可能であることに加えて、該物品はまた、他の要件を満たさなければならない。それらは、例えば、適用可能な欧州規格の要件を満たすことによって証明されるように、魅力的な自然な外観及び感触を、良好な強度及び耐久性特性、例えば、良好な引っかき抵抗性、及び力の繰り返し印加に対する良好な耐性を包含する上記の良好な強度及び耐久性特性、と組み合わせるべきである。
【0006】
加えて、ほぼあらゆる形状、例えば複雑な形状を包含する上記のほぼあらゆる形状、を有する物品を製造することが可能でなければならない。これらは、家具(例えば、椅子、(バー)スツール((bar)stool)、及びソファ)、建築の為の非平坦な物品、及び輸送(例えば、自動車)産業の為の非平坦な物品(例えば、自動車のドアにおけるパネル)を包含する。慣用的に使用されている天然材料、例えば木材、は一般的に、所望の形成性を有しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これらの問題を解決する方法に関する。これは、構造的に複雑な(例えば、平坦でない)形状を有する物品の製造を可能にし、その物品は、上述されているように、良好な(自然な)外観及び感触、高い強度、並びに良好な耐久性特性を有し、及びそれは、再生可能資源から得られることができる。この方法は、本明細書において開示されている。
【課題を解決する為の手段】
【0008】
本発明は、非平坦な物品(non-flat article)を製造する方法であって、該方法は、
繊維材料と、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコール及び0超~1.0の重合度を有する脂肪族ポリカルボン酸から導出されるポリマー又はそのようなポリマーの前駆体モノマーを含む樹脂とを含む構造体を用意すること、ここで、該構造体は、0.3~0.98のボイド率及び40重量%未満の含水量を有する、並びに、
該構造体を、下記の工程
該重合度が0.5未満である場合には、0.5~1の重合度まで重合すること、
プレスして、ボイド率を低減すること、及び、
該ポリマーのTを超える内部温度で力を施与することによって該構造体を非平坦な物品へと形成すること、ここで、該結果として得られた非平坦な物品が、少なくとも0.5の重合度及び20重量%未満の含水量を有する、
に付すこと
の工程を含み、
ここで、重合すること(実施される場合)、ボイド率を低減すること、及び形成することが同時に行われる、又は
重合すること(実施される場合)及びボイド率を低減することが同時に行われ、続いて形成することが行われる、又は
重合すること(実施される場合)及びボイド率を低減することが、任意の順序で連続して行われ、続いて形成することが行われる、又は
重合すること(実施される場合)に続いて、ボイド率を低減すること及び形成することが行われ、ここで、該形成することはボイド率を低減することと同時に又はそれに続いて行われる
上記の方法に関する。
【0009】
驚くべきことに、この方法は、ほぼあらゆる形状の非平坦な物品の製造を可能にする。該構造体の組成、すなわち、本発明に従う方法における出発材料、は、特に重要であることが分かった。具体的には、高いボイド率を有する繊維材料、特に不織繊維材料、の使用は、そのような材料中の繊維が互いに相対的に動く為に幾らかの自由度を有する故に有利であることが分かった。その結果、該繊維材料はほぼあらゆる形状をとることができ、その形状は該樹脂中の該ポリマーによって安定化される。加えて、高いボイド率を有する繊維材料は、低いボイド率を有する繊維材料よりも樹脂を含浸することが容易である。これは、該繊維のより良好な接着をもたらし、従って、より強力な最終製品をもたらす。その上、有利には、該構造体の該含水量が20重量%未満であり、且つ該ポリマーの該重合度が少なくとも0.5である場合、樹脂の廃棄物が低減され、該構造体を形成する為に必要な時間が短縮される。従って、本明細書において定義される重合度及び含水量を選択することにより、不必要なエネルギー消費及び出発材料の廃棄による環境への影響が低減された。これはまた、該構造体が非平坦な物品を製造する為のすぐに使用可能な出発材料として出荷されることを可能にし、それにより、環境への影響が少ない非平坦な物品の製造を容易にする。
【発明を実施する為の形態】
【0010】
該方法は、以下により詳細に開示されている。該方法の具体的な利点及びその具体的な実施態様は、以下の更なる明細書から明らかになるであろう。
【0011】
繊維材料
本明細書において記載された方法における出発材料は、繊維材料と樹脂とを含む構造体である。
【0012】
本発明の方法において使用される該構造体は、該繊維材料の1以上の層を含む。1つの実施態様において、該構造体は、該繊維材料の単一層を含む。別の実施態様において、該構造体は、該繊維材料の2以上の層、例えば2~10層、好ましくは3~6層、を含む。該繊維材料の層は、織布層又は不織布層でありうる。好ましくは、該繊維材料の該層は不織布層でありうる。なぜならば、該層は形成することがより容易である為である。繊維材料の該層が織布層である場合、該繊維材料の2以上の層を使用することが望ましい場合がある。本明細書の文脈内において、語「繊維」は、規則的又は不規則な断面並びに幅及び厚さよりも実質的に長い長さを有するモノフィラメント、マルチフィラメント糸(multifilament yarn)、糸(threads)、テープ、ストリップ、及び他の細長い物体を云う。
【0013】
該構造体内の繊維材料の存在は、該構造体に、形成性、強度及び体積を提供する故に重要である。本発明の方法において使用される繊維材料は柔軟であり、且つ該繊維特性に悪影響を及ぼすこと無しに高圧にさらされることができること理解されるであろう。加えて、該繊維材料はまた、特定の特性、例えば、所望の外観及び感触又は特定のテクスチャ、を最終製品に与えうる。
【0014】
該構造体は、その中において使用される繊維材料が定義されたボイド率を有する為に、少なくとも部分的に良好な形成性を有する。該繊維材料(樹脂を含まない)は一般的に、少なくとも0.4、特には少なくとも0.5、より具体的には少なくとも0.6、更により具体的には少なくとも0.7、更により具体的には少なくとも0.8、のボイド率を有する。一般的な上限としては、0.98以下の値が言及されうる。該ボイド率は、材料の全体積にわたる該材料中のボイドの体積(気体、例えば空気、で充填されうる)を反映する。従って、該繊維材料の該ボイド率は、該繊維材料それ自体の密度及び該繊維材料を構成する材料(すなわち、該繊維材料が麻層である場合の麻の密度)の密度から計算されることができる。
【0015】
不織繊維材料において、該繊維材料は一般的に、その最長軸にわたって決定される0.5~10cmの繊維長を有する。好ましくは、該繊維材料は、1~10cmの繊維長を有する。より好ましくは、該繊維材料は2~7cmの繊維長を有する。該繊維材料において、該繊維長は一般的に、材料の長さ及び幅の程度である。例えば、織られた繊維材料が椅子の為の座部を製造する為に使用される場合、1つの方向における繊維は、該座部の長さに対応する長さを有していてもよく、一方、他の方向の繊維は、該座部の幅に対応する長さを有していてもよい。
【0016】
該繊維材料は、植物由来の繊維、好ましくはセルロース系及び/又はリグノセルロース系の繊維、を包含しうる。該繊維材料はまた、本質的に植物由来の繊維からなっていてもよい。植物由来の繊維に基づく繊維は、例えば、亜麻、麻、ケナフ、ジュート(jute)、ラミー(ramie)、サイザル(sisal)、ヤシ、綿等を包含する。該繊維材料はまた、動物由来の繊維を含んでいてもよい。動物由来の該繊維は、羊毛、毛髪、絹、羽毛(例えば、ニワトリの羽毛)由来の繊維であってもよい。内臓の他の部分がまた使用されうる。
【0017】
該繊維材料は合成繊維を包含しうる。適切な合成繊維の例は、ビスコース、ガラス、ポリエステル、カーボン、アラミド、ナイロン、アクリル、ポリオレフィン等に由来する繊維である。該繊維材料はまた、異なる起源の繊維の混合物、例えば、植物由来の繊維と合成繊維との混合物、でありうる。
【0018】
繊維材料の1以上の層は一般的に、シート(例えば、繊維マット)の形態である。これらのシートの繊維は、ランダム(例えば、不織シート)又は非ランダムの様式に配向されている。本明細書の文脈において、「非ランダムな様式で配向された」とは、繊維が本質的に規則的な様式で互いに対して配向されている全ての構造体を云う。非ランダムに配向された繊維を含むシートの例は、織布層、編物層、繊維が平行に配向された層、及び繊維が繰り返しパターンで互いに接続された任意の他の層を包含する。
【0019】
繊維材料の該層の繊維配向は例えば、最終製品(すなわち、本発明に従う方法によって得られうる物品)の強度に影響を及ぼすことができる。それ故に、該物品の強度を最大にする様式で繊維を配向することが好ましい場合がある。幾つかの実施態様において、繊維の少なくとも50%が平行に配向され、好ましくは、該繊維の少なくとも60%が平行に配向され、より好ましくは該繊維の少なくとも70%が平行に配向される。例えば、該物品が椅子の為の座部である場合、該繊維は、座部の先端から背もたれの上部に配向されてもよい。他の場合において、より多くの異方性特性又は双方向抵抗が必要とされうる。次に、該繊維は、2以上の方向に配向されてもよい。異なる層構造の組み合わせがまた使用されうる。
【0020】
樹脂
本発明の方法において使用される該構造体はまた、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコールと3~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリカルボン酸に由来するポリマーとを含む樹脂を含む。
【0021】
脂肪族ポリアルコールは、芳香族部分、窒素原子又は硫黄原子を含まない。幾つかの実施態様において、脂肪族ポリアルコールは本質的に、炭素原子、酸素原子及び水素原子からなる。脂肪族ポリアルコールは、少なくとも2つのヒドロキシル基、好ましくは少なくとも3つのヒドロキシル基、を含む。一般的に、ヒドロキシル基の数は、10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、である。
【0022】
脂肪族ポリアルコールは、2~15個の炭素原子、好ましくは3~10個の炭素原子、を有する。好適な脂肪族ポリアルコールの例は、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-エタンジオール、グリセロール、ソルビトール、キシリトール及びマンニトールである。グリセロール、ソルビトール、キシリトール及びマンニトールは、好適な脂肪族ポリアルコールの好ましい例である。グリセロールは、適切な脂肪族ポリアルコールの最も好ましい例である。これは、グリセロールは20℃の融点を有する為に、(例えば、全て90℃超の融点を有するキシリトール、ソルビトール及びマンニトールと比較して)加工が容易であるからである。その上、グリセロールは容易に入手可能であり、且つ望ましい特性を有するポリマーを結果として生じる。従って、幾つかの実施態様において、脂肪族ポリアルコールは本質的にグリセロールからなる。本明細書において使用される場合、「本質的に...からなる」は、他の成分(本明細書において、他の脂肪族ポリアルコール)が材料の特性に影響を及ぼさない量で存在しうることを意味する。
【0023】
異なる脂肪族ポリアルコールの混合物がまた使用されうる。脂肪族ポリアルコールは、少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも70モル%、好ましくは少なくとも90モル%、のグリセロール、ソルビトール、キシリトール又はマンニトールを含んでいてもよい。好ましくは、残部は、3~10個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコールである。多価アルコールは好ましくは、少なくとも70モル%、好ましくは少なくとも90モル%、より好ましくは少なくとも95モル%、のグリセロールを含む。
【0024】
幾つかの実施態様において、脂肪族ポリアルコールは、1:4(すなわち、4個の炭素原子当たり1個のヒドロキシル基)~1:1(すなわち、炭素原子当たり1つのヒドロキシル基)の、ヒドロキシル基の炭素原子数に対する比を有する。ヒドロキシル基の炭素原子数に対する比は、好ましくは1:3~1:1、より好ましくは1:2~1:1、更により好ましくは1:1.5~1:1、である。ヒドロキシル基の炭素原子に対する比が1:1である化合物が特に好ましいと考えられる。
【0025】
脂肪族ポリカルボン酸は、3~15個の炭素原子、好ましくは3~10個の炭素原子、を有する。脂肪族ポリカルボン酸は、芳香族部分、又は窒素原子若しくは硫黄原子を含まない。幾つかの実施態様において、脂肪族ポリカルボン酸は、炭素原子、酸素原子及び水素原子からなる。脂肪族ポリカルボン酸は、少なくとも2つのカルボン酸基、好ましくは3つのカルボン酸基、を含む。一般的に、カルボン酸基の数は、10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、である。
【0026】
特に、脂肪族ポリカルボン酸は、脂肪族ポリカルボン酸の総量に対して計算して、少なくとも10重量%のトリカルボン酸を含む。脂肪族ポリカルボン酸は、酸の総量に対して計算して、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、更により好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは95重量%、のトリカルボン酸を含んでいてもよい。幾つかの実施態様において、脂肪族ポリカルボン酸は、本質的にトリカルボン酸からなり、好ましくは本質的にクエン酸からなる。
【0027】
トリカルボン酸は、使用される場合、3つのカルボン酸基、一般的に最大15個の炭素原子を有する任意のトリカルボン酸でありうる。例は、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸(シス及びトランスの両方)、及び3-カルボキシ-シス、シス-ムコン酸を包含する。費用及び入手可能性の両方の理由から、クエン酸の使用が好ましいと考えられる。
【0028】
ジカルボン酸は、使用される場合、2つのカルボン酸基、一般的に最大15個の炭素原子を有する任意のジカルボン酸でありうる。好適なジカルボン酸の例は、イタコン酸、リンゴ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸及びシュウ酸を包含する。イタコン酸及びコハク酸が好ましい場合がある。1つの実施態様において、トリカルボン酸が使用される。
【0029】
脂肪族ポリカルボン酸は、酸の混合物、例えば、1以上のトリカルボン酸と1以上のジカルボン酸との混合物、であってもよい。幾つかの実施態様において、脂肪族ポリカルボン酸は、脂肪族ポリカルボン酸の総量に対して計算して、少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、のジカルボン酸と、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、更により好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%、のトリカルボン酸との化合物を含む。
【0030】
本発明に従う方法において使用される脂肪族ポリアルコール及び脂肪族ポリカルボン酸は、反応してポリマーを形成することができる。
【0031】
該ポリマーは、ポリアルコールとポリカルボン酸(及び任意的に、ポリアルコール及びポリカルボン酸から導出されるポリマー)とを一緒にすることによって液相を形成し、そして、必要に応じて、該得られた液相を硬化することによって得られることができる。化合物の性質に依存して、これは、例えば、成分の混合物を、酸がアルコール、特にグリセロール、中に溶解するであろう温度に加熱することによって行われることができる。該化合物の性質に依存して、該温度は例えば、20℃~200℃、好ましくは40℃~200℃、より好ましくは60℃~200℃、最も好ましくは90℃~200℃、の範囲の温度でありうる。幾つかの実施態様において、化合物は、100℃~200℃、好ましくは100℃~150℃、より好ましくは100℃~140℃、の範囲の温度で、5分~12時間、好ましくは10分~6時間、加熱及び混合されてもよい。該ポリマーは好ましくは、140℃以下の温度で硬化することによって得られる。
【0032】
任意的に、適切な触媒がポリマーの調製の為に使用されることができる。ポリマーの製造の為に適した触媒は、当技術分野において知られている。好ましい触媒は、重金属を含まないものである。有用な触媒は、強酸、例えば、塩酸、ヨウ化水素酸及び臭化水素酸、硫酸(HSO)、硝酸(HNO)、塩素酸(HClO)、ホウ酸、過塩素酸(HClO)、トリフルオロ酢酸、パラトルエンスルホン酸、及びトリフルオロメタンスルホン酸、であるが、これらに限定されない。ホウ酸が好ましい場合がある。触媒、例えば、Zn-アセテート及びMn-アセテート、がまた使用されることができるが、あまり好ましくない場合がある。
【0033】
任意的に、反応混合物の重合及び冷却後に、混合物が、揮発性塩基、例えば、アンモニア又は有機アミン、で(部分的に)中和されて、ポリマー溶液を安定化することができる。好ましい有機アミンは、低臭気のアミン、例えば、2-アミノ-2-エチル-1、3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、及び2-ジメチルアミノ-2-メチル-1-プロパノール、であるが、これらに限定されない。
【0034】
反応条件に依存して、脂肪族ポリアルコールと脂肪族ポリカルボン酸から導出されるポリマーは、新たに得られる場合、0.10~0.60、好ましくは0.20~0.60、より好ましくは0.30~0.60、の重合度を有していてもよい。本明細書において、「重合度」は、反応することができる官能基の最大値に対する、或る時点において反応した官能基の部分の比である。例えば、モノマーが反応していない場合、重合度は0である。重合度は、反応混合物の酸価を、存在するモノマーの合計の理論酸価と比較することによって決定されることができる。この方法は、目視検査から、該重合度が≦0.5であると思われる場合に好ましい場合がある。代替的には、重合度は、(重合反応中に生じる水分損失から)重量分析を使用して決定されることができる。この方法は、目視検査から、該重合度が>0.5であると思われる場合に好ましい場合がある。
【0035】
必要に応じて、樹脂が希釈されて、該樹脂の粘度を制御することができる。例えば、該樹脂は水で希釈されることができる。これは、繊維材料の1以上の層の樹脂での含浸を容易にする為に行われうる。幾つかの実施態様において、該樹脂の該粘度は、(室温で)0.55・10-3Pa・s~50Pa・s、好ましくは0.05Pa・s~2.5Pa・s、より好ましくは0.1Pa・s~0.15Pa・s、でありうる。他の実施態様において、該樹脂の該粘度は、(室温で)1Pa・s以下、好ましくは0.5Pa・s以下、より好ましくは0.1Pa・s以下、更により好ましくは0.01Pa・s以下、でありうる。粘度は、当技術分野において周知の任意の方法を用いて測定されることができる。
【0036】
一般的な方法
構造体
本明細書において定義されている繊維材料と、本明細書において定義されている脂肪族ポリアルコールと脂肪族ポリカルボン酸とに由来するポリマーを含む樹脂を一緒にして、本明細書の以下において及び特許請求の範囲において定義されている構造体を用意することができる。
【0037】
該繊維材料は、水を含まず、使用された出発材料の総重量に対して計算して、少なくとも10重量%の量で該構造体中に存在しうる。該繊維材料は、水を含まず、使用された出発材料の総重量に対して計算して、最大95重量%の量で該構造体中に存在しうる。該繊維材料の量が少なすぎると、該構造体が相対的に剛性であり、その為に形成がより困難になる可能性がある為に、該構造体から物品を成功裡に形成することが困難になる可能性がある。加えて、得られる非平坦な物品の強度は所望のものでない。繊維材料の量が多すぎると、これは、該方法によって得られうる物品の強度に影響を及ぼす。なぜならば、該繊維が適切に接着されない可能性があるからである。これは、非平坦な物品の特性、例えば、(曲げ)強度、見た目及び感触、並びに外観、に影響を及ぼす。幾つかの実施態様において、繊維材料の該量は20重量%~90重量%、好ましくは30重量%~85重量%、より好ましくは35重量%~80重量%、より好ましくは40重量%~80重量%、より好ましくは50重量%~80重量%、である。
【0038】
該繊維材料が所定の形状に切断されることにより、出発材料の無駄を減らし、形成を容易にしうる。繊維材料の1以上の層からのカットオフは、繊維材料の新しい層を作る為に再利用されることができる。例えば、椅子の為の座部を製造する場合、繊維材料の1以上の層を実質的に図1において図示されている麻マットの形状に切断することが望ましい場合がある。
【0039】
該構造体中の該繊維材料には、本明細書において定義されている樹脂が少なくとも部分的に提供される。好ましくは、該繊維材料の繊維の少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、には樹脂が提供される。繊維状構造体のより多くの繊維に樹脂が提供されるほど、該構造体からの非平坦な物品の製造がより容易になるであろう。当業者は、該樹脂を付すことが、当該技術分野において周知の方法、例えば、噴霧、浸漬、ロールコーティング、真空注入等、を使用して行われることができることを理解するであろう。例えば、樹脂は、該繊維材料の1以上の側面に(ロール)コーティングされ又はスプレーされうる。幾つかの実施態様において、該繊維材料の1以上の層に樹脂が各々提供される。
【0040】
樹脂を提供することは、繊維表面全体に樹脂が提供されることでありうる。また、該繊維表面の一部に樹脂が提供されることがまた可能である。以下に記載されている形成工程において、該構造体内の繊維が一緒に押され、それにより、該樹脂の再分配を結果として生じる。圧縮工程前に繊維表面の一部のみが樹脂で覆われている場合、この再分配により繊維表面の大部分に樹脂が提供される可能性がある。最終的な物品において、繊維と樹脂との相互作用が、問題の物品の魅惑的な特性を得ることに少なくとも部分的に関与するので、本質的に全ての繊維表面に樹脂が提供されることが好ましい。過剰な樹脂の施与は、該繊維の効果的なコーティングを確実にする為に処理の観点から魅力的でありうる。過剰な樹脂は、慣用的な方法、例えば、圧力の施与、を使用して、互い方法の任意の段階において除去されることができる。
【0041】
該樹脂は、該繊維材料に施与された後に、0超~1、好ましくは0.01~1、より好ましくは0.1~0.9、最も好ましくは0.4~0.8、の重合度を有する本明細書において定義されるポリマーを含んでいてもよい。該ポリマーが0の重合度を有すること、すなわちモノマーを含むこと、がまた可能である。一般的に、該樹脂は、上記で指定された重合度を有するポリマーを含むことが好ましい。形成直前の該重合度が高すぎる場合、特にポリマーが構造体内の繊維の動きを損なう場合、構造体を物品にうまく形成することが困難な場合がある。該重合度が低い(低すぎる)場合、予備硬化工程が保証されうる。
【0042】
該構造体の樹脂含有量は、該繊維材料の総重量及びポリマーの重量に対して計算して、5重量%~90重量%、好ましくは10重量%~70重量%、でありうる。好ましくは、該樹脂含有量は、20重量%~55重量%である。より好ましくは、該樹脂含有量は、30重量%~50重量%である。該ポリマーは該繊維材料の該繊維に結合すると考えられる故に、本明細書において定義されている樹脂含有量が望ましい。これは、形成工程後の構造安定性を結果として生じる、
【0043】
該構造体は、形成される直前に、該構造体の総重量に対して計算して、0.1重量%~60重量%の含水量を有する。幾つかの実施態様において、該構造体の含水量は、0.1重量%~25重量%、好ましくは0.1重量%~20重量%、より好ましくは0.1重量%~10重量%、である。該構造体の含水量が低いことは有利でありうる。なぜならば、それは、該構造体を形成する為に必要な時間を短縮し、場合によっては、該構造体からの漏れによる該樹脂の廃棄を低減するからである。低い含水量はまた、形成の間に生じる水蒸気爆発を回避することに役立ち、これは繊維を損傷し、及び形成の間に安全上の危険を引き起こす可能性がある。該含水量は、該構造体中の水の量を該構造体の総質量で割ったものとして定義される。
【0044】
該構造体の含水量が高すぎる場合、過剰な水を除去する為に乾燥工程に付されることができる。該乾燥工程は、水を除去する為に適した条件下で行われることができる。該乾燥の間、該樹脂の重合はほとんど又は全く生じない。これは、乾燥工程が必要な場合、含水量が高く、乾燥温度が有意な重合が起こる温度よりも低い為である。該乾燥は、60℃未満の温度、好ましくは10℃~60℃未満の温度、より好ましくは10℃~50℃の温度、更により好ましくは20℃~50℃の温度、最も好ましくは30℃~50℃の温度、で行われることができる。乾燥時間は、48時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましい。幾つかの実施態様において、該乾燥時間ははるかに短く、好ましくは最大8時間、より好ましくは最大4時間、更により好ましくは最大2時間、最も好ましくは最大1時間、である。最低でも5分の乾燥時間が言及されうる。減圧が、乾燥を促進する為に施与されることができる。該減圧は、0.9バール以下、好ましくは0.5バール以下、より好ましくは0.1バール以下、でありうる。該乾燥は、該構造体の総重量に対して計算して、含水量を20重量未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは2重量%未満、に低減しうる。
【0045】
追加的又は代替的に、重合度に依存して、該構造体を形成する前に、(乾燥した)構造体が予備硬化工程に付されることができる。該予備硬化の間、該樹脂の重合が生じ、(反応)水の除去が生じうる。該予備硬化は、少なくとも60℃の温度で実施されうる。例えば、予備硬化は、60℃~140℃、好ましくは60℃~120℃、より好ましくは80℃~120℃、の温度で実施されうる。乾燥工程が適用される場合、該予備硬化は、少なくとも0.6、好ましくは少なくとも0.7、の重合度を結果として生じうる。乾燥が適用されない場合には、該予備硬化は、含水量を、該構造体の総重量に対して計算して、35重量%未満、好ましくは20重量%未満、より好ましくは10重量%未満、更により好ましくは5重量%未満、最も好ましくは2重量%未満、に低減することができる。該予備硬化は、少なくとも5分間、好ましくは少なくとも10分間、より好ましくは少なくとも1時間、行われてもよい。最大として、24時間の予備硬化時間が言及されうる。一般的に、該予備硬化はオーブン内で行われる。乾燥の間に水分が除去され、従って、高湿度は逆効果になる為に、該オーブン内の湿度を慎重に制御することが有利である。従って、予備硬化時に、該オーブン内の湿度は50%未満、好ましくは40%未満、でありうる。湿度が低いほど、乾燥プロセスは速くなる。
【0046】
該構造体は、少なくとも0.3、特には少なくとも0.4、より特には少なくとも0.5、更により特には少なくとも0.6、なおより特には少なくとも0.7、のボイド率を有する。一般的な上限としては、0.98以下の値が言及されうる。上述されているように、該ボイド率は、材料の全体積にわたる該材料中のボイドの体積(気体、例えば空気、で充填されうる)を反映するので、材料の密度から計算されることができる。2以上の成分を含む材料の場合、該材料の理論密度は、各成分の密度に成分の重量分率を乗算し、該結果として得られた値(レバールール(Lever rule)を参照)を加算することによって決定されることができる。
【0047】
本発明はまた、本発明に従う方法において使用する為に適した構造体であって、該構造体は、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコールと脂肪族ポリカルボン酸から導出されるポリマーを含む樹脂で含浸された繊維材料を含み、ここで、該構造体が0.3~0.98のボイド率を有し、該ポリマーが0.5~0.8の重合度を有し、及び該構造体が、20重量%未満の含水量を有する、上記の構造体に関する。好ましくは、該構造体は10重量%未満の含水量を有する。他の好ましい態様は上述されており、その説明から明らかであろう。
【0048】
ボイド率を低減すること及び形成すること
次に、該構造体は、乾燥工程及び/又は予備硬化工程に付されたか否かにかかわらず、ボイド率を低減する為にプレスすること、及び、該構造体を非平坦な物品へと形成することに付される。プレス工程と形成工程とが組み合わされてもよいが、以下により詳細に説明するように、最初に該プレス工程を実施し、続いて、該形成工程を実施することがまた可能である。
【0049】
該プレス工程は、該構造体に力を施与することによって行われる。施与される圧力は、2~40バール(=kg/構造体1cm)、好ましくは5~30バール、より好ましくは10~20バール、でありうる。該プレス工程の持続時間は、同時形成が行われない場合、15秒~30分の範囲であることができる。同時形成を目的とする場合、以下に記載されているように、時間はより長くなってもよい。該プレスは、該方法によって得られた物品の厚さを決定する厚さ制御を使用して行われてもよい。好ましくは、本方法によって得られる物品の厚さは、0.5mm~10cm、好ましくは3mm~5cm、より好ましくは4mm~2cm、の範囲である。具体的には、該物品が家具の部品である場合、該方法によって得られる物品の厚さは、5mm~15mm、好ましくは7mm~12mm、の範囲でありうる。
【0050】
該プレス工程で施与される温度は、ボイド率の低減のみを目的としているか否か、又は形成を目的としているか否かに依存する。ボイド率の低減のみが目的とされる場合、温度は、例えば10~50℃の範囲内である。同時形成が目的とされる場合、以下に記載されているように、温度はより高くなる。
【0051】
該構造体は、例えば該構造体を型内に嵌め込むことによって予め形作られていてもよい。該型を少なくとも部分的にテフロンコーティングで裏打ちすることが有利でありうる。このことは、該構造体が該型へ付着することを防止する為に役立つ。
【0052】
該構造体は、力を施与することによって形成される(すなわち、形作られる)。該形成工程は、驚くほど強い物品、並びに表面均一性及び耐擦傷性の増加を結果として生じる。該形成工程は一般的に、型内又は該型の上で行われ、ここで、型は、該形成工程の前に該構造体を支持することができる形状として定義され、それにより、該形成工程の後に所望の形状を有する物品が得られることを保証する。
【0053】
該力は一般的に、該構造体を型、好ましくはテフロン材料でコーティングされた型、内で又は該型の上にプレスすることによって施与される。施与される該圧力は、2~40バール(=kg/構造体1cm)、好ましくは5~30バール、より好ましくは10~20バール、でありうる。例えば、圧力は、少なくとも5秒の総持続時間にわたって施与さられてもよい。該形成の持続時間が長いほど、該物品の安定性が高くなる。非常に長い期間の該形成は商業的に魅力的でないことが理解されるであろう。それ故に、24時間、好ましくは1時間、より好ましくは10分、の最大持続時間が言及されうる。該形成は、該方法によって得られた該物品の厚さを決定する厚さ制御を使用して行われてもよい。好ましくは、該方法によって得られる該物品の該厚さは、0.5mm~10cm、好ましくは3mm~5cm、より好ましくは4mm~2cm、の範囲である。具体的には、該物品が家具の部品である場合、該方法によって得られる該物品の該厚さは、5mm~15mm、好ましくは7mm~12mm、の範囲でありうる。
【0054】
形成工程で施与される温度は、該構造体の内部温度がポリマーのガラス転移温度(T)以上である温度である。ポリマーのTは、当技術分野において周知の任意の方法に従って測定されることができ、一般的に穿刺試験(puncture test)を用いて決定される。従って、該ポリマーの性質に依存して、該形成工程の間の内部温度は、50℃~180℃、好ましくは60℃~180℃、より好ましくは80℃~140℃、更により好ましくは100℃~140℃、でありうる。該ポリマーのT未満の内部温度は不利である。なぜならば、そのような内部温度では、該ポリマーは繊維が互いに相対的に動くことを妨げるからである。加えて、該ポリマーのT未満では、該構造体は脆くて形作ることができず、壊れる可能性がある。180℃超の温度はまた不利である。なぜならば、特に該繊維材料がセルロース繊維又はリグノセルロース繊維を含む場合に、このことにより、該繊維材料が壊れる可能性があるからである。該ポリマーがまた、形成工程の間に迅速に硬化することが望ましい場合、該形成工程の間の内部温度は、140℃~180℃、150℃~180℃、好ましくは155℃~170℃、でありうる。上述されているように、該形成時間は少なくとも5秒でありうる。最大24時間が言及されうる。該形成の直後に、非平坦な物品の内部温度は、100℃~130℃でありうる。
【0055】
幾つかの実施態様において、該形成に付された該構造体中に存在する水は、形成の間に除去されてもよい。幾つかの実施態様において、該形成に付された該構造体中に存在する水の少なくとも5%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも60%、が除去される。最大として、該形成に付された該構造体中に存在する水の100%が、該物品の該形成の間に除去されうる。重合が該形成と同時に生じる場合、これはまた、該樹脂の該重合の間に生成される水を含む。本明細書の文脈において、「同時に」という表現は、方法工程の文脈において使用される場合、該工程が時間的に少なくとも部分的に重複することを意味する。例えば、重合すること、ボイド率を低減すること、及び形成することがプレス内で同時に行われる場合、ボイド率の低減は、重合が完了する前に開始され、及び/又は完了することでありうる。
【0056】
幾つかの実施態様において、重合は、該形成工程の間に行われる。この実施態様において、該形成工程から結果として生じる非平坦な物品中の樹脂の重合度は、該形成工程に入る該構造体中の樹脂の重合度よりも少なくとも0.1、特には少なくとも0.2、高い。
【0057】
幾つかの実施態様において、該形成工程から結果として生じる非平坦な物品中の樹脂の重合度は、少なくとも0.7、特には少なくとも0.8、更に特には少なくとも0.9、であり、該形成工程に入る該構造体中の該樹脂の重合度は、0~0.7の範囲、好ましくは0.3~0.6の範囲、である。
【0058】
蒸気の形態で(すなわち、蒸発によって)水の除去を容易にする為に、該構造体の材料は、該形成の間に水透過部分(water-permeable part)と接触してもよい。例えば、該構造体を形成する際に多孔質シェルが使用されてもよい。多孔質シェルを使用することが有利であることが分かっており、ここで、該構造体に力を施与する為の手段と接触する多孔質シェルの側面は、各々が孔を含む平行溝を備えている。そのような多孔質シェルの使用は有利でありうる。なぜならば、水(蒸気)が該構造体を出る為に移動しなければならない距離を最小にし、従って、圧力上昇を低減するからである。該シェルはまた、非平坦な物品の表面上に特定のパターンを作成する為に使用されてもよい。
【0059】
該多孔質シェルは、300~1000孔/m、好ましくは400~900孔/m、より好ましくは500~800孔/m、の孔密度を有していてもよい。該孔は、0、5mm~3mm、好ましくは1mm~2mm、の直径を有していてもよい。適切な孔径は、複合材料中のポリマーの重合度を考慮して、当業者によって容易に決定されることができる。該ポリマーの該重合度がより低い場合(例えば、約0.40)、漏出を避ける為に小さな孔を使用することが望ましい場合がある。一方、該重合度が高い(又は、より高い)場合、孔径はより大きくてもよい。該孔は好ましくは、シェルにわたって均一に分散されている。
【0060】
本発明の方法は、高められた視覚的訴求力を有する物品の製造を可能にする。これは、該形成の前又は該形成の間に該構造体をプレスしてボイド率を低減する為である。その結果、繊維間の距離が短くなり、残りの空隙の大部分又は全部を樹脂が占める。このようにして、均質な表面を有する非平坦な物品を該形成の後に得ることができる。非平坦な物品の表面均一性は、視覚的に(肉眼で)、例えば、表面の「光沢」を判定することによって、表面の亀裂及び樹脂が完全に含浸されていない部分(「白色点」)をカウントすることによって、及び/又は該表面の平滑性に触れる(感じる)ことによって判定されることができる。
【0061】
該形成工程の後に、該形成された物品が型から解放される。
【0062】
形成後に、該物品中の該ポリマーは、少なくとも0.5、好ましくは少なくとも0.6、より好ましくは少なくとも0.7、特には少なくとも0.8、の重合度を有していてもよい。形成後の該重合度が低すぎる場合、以下に説明されているように、物品の強度を高める為に1以上の硬化工程が必要とされうる。最大として、形成後の理論的な重合度は1.0である。形成直後の非平坦な物品の含水量は、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは2重量%未満、である。該重合度が少なくとも0.5であり、且つ含水量が10重量%未満である場合、該非平坦な物品は有利には、安定した構造体を有し、それにより、下流の処理(例えば、該物品の輸送及び/又は更なる硬化工程)が単純化される。
【0063】
必要に応じて、該形成工程から結果として得られた非平坦な物品は、1以上の硬化工程(例えば、異なる温度での硬化)に付されてもよい。好ましくは、該非平坦な物品は、2以上の硬化工程に付される。該硬化工程は、ポリマーを更に重合し、従って、該物品の強度及び耐水性を(一層)更に高めることを意図している。従って、硬化工程の要点は、該ポリマーが反応温度にあることである。該硬化工程はまた、非平坦な物品内に残っている水の量を除去又は低減する為に実行されてもよい。
【0064】
硬化は、当技術分野において知られている加熱技術を使用して、例えばオーブン中で、行われることができる。様々なタイプのオーブンが使用されてもよく、例えば、ベルトオーブン、対流オーブン、赤外線オーブン、熱風オーブン、慣用的な焼成オーブン、及びそれらの組み合わせを包含するが、これらに限定されない。硬化は、単一の工程で、又は複数の工程で行われることができる。硬化時間は一般的に、物品のサイズ及び形状並びに使用されるオーブンの種類及び温度に依存して、5秒~3時間の範囲である。適切な硬化条件を選択することは、当業者の範囲内である。
【0065】
該物品は、100℃~220℃、好ましくは100℃~180℃、より好ましくは120℃~170℃、の内部温度で硬化されることができる。好ましくは、非平坦な物品が天然繊維(例えば、セルロース繊維又はリグノセルロース繊維)を含む場合、硬化の間の内部温度は170℃以下である。なぜならば、より高い温度はこれらの繊維を損傷する可能性があるからである。高い耐水性が目的とされる場合、硬化は好ましくは、150℃超の内部温度で行われる。従って、該硬化温度は、150℃超~220℃、好ましくは150℃超~180℃、より好ましくは150℃超~170℃、でありうる。該内部温度は、硬化の間又は該物品が硬化手段、例えばオーブン又はプレス、から取り出された直後に測定される。
【0066】
本発明に従う方法を使用して得られた該物品は、2つの工程において硬化されうる。このことは、非平坦な物品の含水量が依然として相対的に高い場合に有利である可能性がある。なぜならば、2段階方法が非平坦な物品の不均一な硬化を防止するからである。第1の硬化工程において、80℃~140℃、好ましくは105℃~135℃、より好ましくは110℃~130℃、の内部温度である。この温度において該物品を硬化することにより、該物品の表面上のブリスターの発生が最小限に抑えられ、これは、該物品がより高い温度で硬化された場合に発生するであろう。第1の硬化工程は、好ましくは少なくとも15分間、好ましくは少なくとも25分間、好ましくは少なくとも30分間、行われる。それは所望される限り長く実施されうるが、商業上の理由の為に、一般的に3時間を超えては実施されない。
【0067】
第1の硬化工程の後に、該物品は、第2の硬化工程において、140℃~220℃、好ましくは140℃~180℃、の内部温度で硬化されてもよい。非平坦な物品が天然繊維(例えば、セルロース繊維又はリグノセルロース繊維)を含む場合、硬化の間の内部温度は170℃以下であることが好ましい。なぜならば、より高い温度はこれらの繊維を損傷する可能性があるからである。該第2の硬化工程は、依然として必要であれば、該物品の強度を高める為に使用されることができる。これは一般的に、少なくとも60分間、好ましくは少なくとも90分間、行われる。商業上の理由の為に、該第2の硬化工程は一般的に最大3時間行われる。当業者には明らかであるように、温度勾配がまた硬化の間に施与されてもよい。
【0068】
硬化後に、重合度は一般的に、0.80超、好ましくは0.90超、である。その上、硬化直後に、該物品の含水量は一般的に、(物品の総重量に対して計算して)10重量未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満、最も好ましくは1重量%未満、である。貯蔵条件に依存して、該物品の含水量は硬化後に増加しうる。
【0069】
重合度に依存して、該物品中の該ポリマーは、水と接触させたときにゆっくり加水分解する。従って、該物品の或る程度の分解性が(例えば、包装用途において)所望される場合、より低い重合度が選択されうる。幾つかの実施態様において、該物品中の該ポリマーの該重合度は、0.6~1.0、好ましくは0.8~1.0、より好ましくは0.95~1.00、である。しかしながら、より安定な材料が所望される場合、より高い重合度が好ましい。それ故に、幾つかの実施態様において、該非平坦な物品中のポリマーの該重合度は、少なくとも0.90、好ましくは少なくとも0.95、最も好ましくは少なくとも0.98、である。一般的に、より低い重合度を有する非平坦な物品は、より高い重合度を有する非平坦な物品よりも柔軟である。
【0070】
該重合度に依存して、該非平坦な物品中の該ポリマーが加水分解されることができるので、該非平坦な物品中の該ポリマーは、幾つかの実施態様においてゆっくりと分解し、該繊維材料及び該ポリマーを生物学的分解の為に利用可能なままにする。従って、幾つかの実施態様において、該非平坦な物品は生物学的に分解可能である。その上、該ポリマーは本質的に炭素原子、水素原子及び酸素原子からなる故に、それは、クリーンな燃焼プロファイル、並びに有機廃棄物としての処分の為に良好な適合性を示す。
【0071】
当業者には明らかであるように、硬化後に得られる該物品の該重合度は、形成後に得られる該物品の該重合度と少なくとも同じ程度に高く、一般的にはより高い。形成後に得られる該物品の該重合度は、形成工程に付される該物品の該重合度と少なくとも同じ程度に高く、一般的にはより高い。予備硬化後に得られた該構造体の該重合度は、予備硬化前の該構造体の該重合度よりも高い。該構造体に提供される該樹脂の該重合度は、最大でも硬化後(形成後)の樹脂の重合度と同じくらい高く、一般的にはそれよりも低い。
【0072】
従って、上述されているように、非平坦な物品を製造する為の一般的な方法は、
繊維材料と、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコール及び0超~1.0の重合度を有する脂肪族ポリカルボン酸から導出されるポリマー又はそのようなポリマーの前駆体モノマーを含む樹脂とを含む構造体を用意すること、ここで、該構造体は、0.3~0.98のボイド率及び40重量%未満の含水量を有する、並びに、
該構造体を、下記の工程
該重合度が0.5未満である場合には、0.5~1の重合度まで重合すること、
プレスして、ボイド率を低減すること、及び、
該ポリマーのTを超える内部温度で力を施与することによって該構造体を非平坦な物品へと形成すること、ここで、該結果として得られた非平坦な物品が、少なくとも0.5の重合度及び20重量%未満の含水量を有する、
に付すこと
の工程を含み、
ここで、重合すること(実施される場合)、ボイド率を低減すること、及び形成することが同時に行われる、又は
重合すること(実施される場合)及びボイド率を低減することが同時に行われ、続いて形成される、又は
重合すること(実施される場合)及びボイド率を低減することが、任意の順序で連続して行われ、続いて形成することが行われる、又は
重合すること(実施される場合)に続いてボイド率を低減すること及び形成することが行われ、ここで、該形成することはボイド率を低減することと同時に又はそれに続いて行われる。
【0073】
形成後に得られた該非平坦な物品を硬化させることが好ましい。それ故に、非平坦な物品を製造する為の好ましい一般的な方法は、
繊維材料と、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコール及び0超~1.0の重合度を有する脂肪族ポリカルボン酸から導出されるポリマー又はそのようなポリマーの前駆体モノマーを含む樹脂とを含む構造体を用意すること、ここで、該構造体は、0.3~0.98のボイド率及び40重量%未満の含水量を有する、
該構造体を、下記の工程
該重合度が0.5未満である場合には、0.5~1の重合度まで重合すること、
プレスして、ボイド率を低減すること、
ポリマーのTを超える内部温度で力を施与することによって該構造体を非平坦な物品へと形成すること、ここで、該結果として得られた非平坦な物品が、少なくとも0.5の重合度及び20重量%未満の含水量を有する、
に付すこと、
ここで、重合すること(実施される場合)、ボイド率を低減すること、及び形成することが同時に行われる、又は
重合すること(実施される場合)及びボイド率を低減することが同時に行われ、続いて形成される、又は
重合すること(実施される場合)及びボイド率を低減することが、任意の順序で連続して行われ、続いて形成することが行われる、又は
重合すること(実施される場合)の後にボイド率を低減すること及び形成することが行われ、ここで、該形成することはボイド率を低減すること又はその後に同時に行われる、並びに、
少なくとも80℃の内部温度で非平坦な物品を硬化させること
の工程を含む。
【0074】
重合すること、ボイド率を低減すること、及び形成することが(実質的に)同時に行われることがまた好ましい。従って、非平坦な物品を製造する為のより好ましい一般的な方法は、
繊維材料と、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコール及び0超~1.0の重合度を有する脂肪族ポリカルボン酸から導出されるポリマー又はそのようなポリマーの前駆体モノマーを含む樹脂とを含む構造体を用意すること、ここで、該構造体は、0.5~0.98のボイド率及び40重量%未満の含水量を有する、
該構造体を、下記の工程
該重合度が0.5未満である場合には、0.5~1の重合度まで重合すること、
プレスして、ボイド率を低減すること、
ポリマーのTを超える内部温度で力を施与することによって該構造体を非平坦な物品へと形成すること、ここで、該結果として得られた非平坦な物品が、少なくとも0.5の重合度及び20重量%未満の含水量を有する、
に付すこと、
ここで、重合すること(実施される場合)、ボイド率を低減すること、及び形成することが同時に行われる、並びに、
少なくとも80℃の内部温度で非平坦な物品を硬化させること
の工程を含む。
【0075】
第1の実施態様
本発明の第1の実施態様において、該構造体は、重合工程、プレス工程、及び形成工程に同時に付される。この実施態様について以下に説明されている。第1の実施態様は、上述された繊維材料、樹脂、及び一般的な方法の特徴のいずれかと組み合わされることができる。
【0076】
従って、第1の実施態様において、非平坦な物品を製造する方法であって、該方法は、
繊維材料と、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコール及び0超~1.0、好ましくは0超~0.6、の重合度を有する脂肪族ポリカルボン酸から導出されるポリマー又はそのようなポリマーの前駆体モノマーを含む樹脂とを含む構造体を用意すること、ここで、該構造体は、0.3~0.98のボイド率及び40重量%未満の含水量を有する、
該構造体を、下記の工程
該重合度が0.5未満である場合には、0.5~1の重合度まで重合すること、
プレスして、ボイド率を低減すること、
ポリマーのTを超える内部温度で力を施与することによって該構造体を非平坦な物品へと形成すること、ここで、該結果として得られた非平坦な物品が、少なくとも0.5の重合度及び20重量%未満の含水量を有する、
に付すこと
の工程と、を含み、
ここで、重合すること(実施される場合)、ボイド率を低減すること、及び形成することが同時に行われる、
上記の方法が開示される。
【0077】
形成後に得られた非平坦な物品を硬化させることが好ましい。それ故に、第1の実施態様の非平坦な物品を製造する為の好ましい方法は、
繊維材料と、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコール及び0超~1.0、好ましくは0超~0.6、の重合度を有する脂肪族ポリカルボン酸から導出されるポリマー又はそのようなポリマーの前駆体モノマーを含む樹脂とを含む構造体を用意すること、ここで、該構造体は、0.3~0.98のボイド率及び40重量%未満の含水量を有する、
該構造体を、下記の工程
該重合度が0.5未満である場合には、0.5~1の重合度まで重合すること、
プレスして、ボイド率を低減すること、
ポリマーのTを超える内部温度で力を施与することによって該構造体を非平坦な物品へと形成すること、ここで、該結果として得られた非平坦な物品が、少なくとも0.5の重合度及び20重量%未満の含水量を有する、
に付すこと、
ここで、重合すること(実施される場合)、ボイド率を低減すること、及び形成することは同時に行われる、並びに
少なくとも80℃の内部温度で非平坦な物品を硬化させること
の工程を含む。
【0078】
該構造体は予備硬化されることが好ましい。従って、第1の実施態様の非平坦な物品を製造する為のより好ましい方法は、
繊維材料と、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコール及び0超~1.0、好ましくは0超~0.6、の重合度を有する脂肪族ポリカルボン酸から導出されるポリマー又はそのようなポリマーの前駆体モノマーを含む樹脂とを含む構造体を用意すること、ここで、該構造体は、0.3~0.98のボイド率及び40重量%未満の含水量を有する、
60℃~140℃の内部温度で該構造体を予備硬化させること、
該構造体を、下記の工程
該重合度が0.5未満である場合には、0.5~1の重合度まで重合すること、
プレスして、ボイド率を低減すること、
ポリマーのTを超える内部温度で力を施与することによって該構造体を非平坦な物品へと形成すること、ここで、該結果として得られた非平坦な物品が、少なくとも0.5の重合度及び20重量%未満の含水量を有する、
に付すこと、
ここで、重合すること(実施される場合)、ボイド率を低減すること、及び形成することが同時に行われる、並びに、
少なくとも80℃の内部温度で非平坦な物品を硬化させること
の工程を含む。
【0079】
第1の実施態様において、該構造体中の該繊維材料は、本明細書において定義されている樹脂を少なくとも部分的に含む。好ましくは、該繊維材料の繊維の少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、に樹脂が提供される。繊維状構造体のより多くの繊維に樹脂が提供される、該構造体からの非平坦な物品の製造がより容易且つより一貫したものとなる。当業者は、該樹脂を提供することが、当該技術分野において周知の方法、例えば、噴霧、浸漬、ロールコーティング、を使用して行われることができることを理解するであろう。例えば、該樹脂は、該繊維材料の1以上の側面に噴霧されうる。幾つかの実施態様において、該繊維材料の1以上の層に樹脂が各々提供される。
【0080】
第1の実施態様において、樹脂を提供することは、繊維表面全体に樹脂が提供されることでありうる。また、繊維表面の一部に樹脂が提供されてもよい。以下に説明されている形成工程において、該構造体内の繊維が一緒に押され、それにより、該樹脂の再分配を結果として生じる。圧縮工程の前に繊維表面の一部のみが樹脂で覆われていた場合、この再分配により繊維表面の大部分に樹脂が提供されうる。最終的な物品において、本質的に全ての繊維表面に樹脂が提供されることが好ましい。なぜならば、樹脂との繊維の相互作用が、問題の物品の魅惑的な特性を得る為に少なくとも部分的に関与するからである。
【0081】
第1の実施態様において、該構造体は、それが形成される直前に、該構造体の総重量に対して計算して、1重量%~40重量%の含水量を有する。幾つかの実施態様において、該構造体の含水量は、1重量%~35重量%、好ましくは2重量%~30重量%、より好ましくは3重量%~25重量%、最も好ましくは4重量%~20重量%、である。該構造体の低い含水量は有利である。なぜならば、それは、該構造体を形成する為に必要な時間を短縮し、且つ該構造体からの漏れによる樹脂の廃棄を低減するからである。
【0082】
第1の実施態様において、形成工程に入る構造体中のポリマーの重合度は、0超~0.7、好ましくは0.1~0.6、より好ましくは0.1~0.5、更により好ましくは0.2~0.5、更により好ましくは0.3~0.5、でありうる。
【0083】
第1の実施態様において、該樹脂の粘度は、0.55・10-3Pa・s~50Pa・s、好ましくは0.05Pa・s~2.5Pa・s、より好ましくは0.1Pa・s~0.15Pa・s(室温)、であってもよい。
【0084】
第1の実施態様において、該構造体は、例えば構造体を型に嵌め込むことによって、形成前に予め形成されてもよい。該型を少なくとも部分的にテフロンコーティングで裏打ちすることが有利でありうる。このことは、該構造体が該型へ付着することを防止する為に役立つ。
【0085】
第1の実施態様において、該構造体に力を施与することによって該構造体が形成され(すなわち、形作られ)、該構造体は水を蒸発させる為に十分な内部温度を有する。該形成工程は、驚くほど強い物品、並びに表面均一性及び耐擦傷性の増加を結果として生じる。該形成工程は一般的に、型内で行われ、ここで、型は、該形成工程の前に該構造体を収容することができる中空形状として定義され、それにより、該形成工程の後に所望の形状を有する物品が得られることを保証する。
【0086】
第1の実施態様において、該力は一般的に、該構造体を、型、好ましくはテフロン材料でコーティングされた型、内でプレスすることによって施与される。施与される該圧力は、2~40バール、好ましくは5~30バール、より好ましくは10~20バール、でありうる。圧力は、少なくとも5秒の総持続時間にわたって施与されてもよい。該形成の持続時間が長いほど、該物品の安定性が高くなる。非常に長い期間の該形成は商業的に魅力的でないことが理解されるであろう。それ故に、24時間、好ましくは1時間、より好ましくは10分、の最大持続時間が言及されうる。好ましくは、該形成時間は10分未満である。該形成は、該方法によって得られた該物品の厚さを決定する厚さ制御を使用して行われてもよい。好ましくは、該方法によって得られる該物品の厚さは、0.5mm~10cm、好ましくは3mm~5cm、より好ましくは4mm~2cm、の範囲である。具体的には、該物品が家具の部品である場合、該方法によって得られる該物品の厚さは、5mm~15mm、好ましくは7mm~12mm、の範囲でありうる。
【0087】
第1の実施態様において、形成工程で施与される温度は、該構造体の内部温度がポリマーのTを上回り、水が除去されるような温度である。従って、ポリマーの性質及び圧力に依存して、該形成工程の間の温度は、50℃~180℃、好ましくは80℃~140℃、より好ましくは100℃~140℃、でありうる。該ポリマーのTよりも低い内部温度は不利である。なぜならば、そのような内部温度では、該ポリマーは繊維が互いに相対的に動くことを妨ぐからである。加えて、該ポリマーのTよりも低い温度では、該構造体は脆く、且つ壊れる可能性がある。180℃超の内部温度はまた不利である。なぜならば、このことにより、該繊維材料を損傷する可能性があるからである。上述されているように、該形成時間は少なくとも5秒でありうる。最大24時間が言及されうる。好ましくは、形成時間は10分未満である。該形成の直後に、非平坦な物品の内部温度は、80℃~140℃でありうる。
【0088】
第1の実施態様において、該形成に付された該構造体内に存在する水は、形成の間に除去されてもよい。第1の実施態様において、該形成に付された該構造体中に存在する水の少なくとも5%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも60%、が除去されうる。最大として、該形成に付された該構造体中に存在する水の100%が、該物品の該形成の間に除去されうる。
【0089】
第1の実施態様において、蒸気の形態で(すなわち、蒸発によって)、水の除去を容易にする為に、該構造体の材料は、該形成の間に水透過部分と接触してもよい。例えば、該構造体を形成する際に多孔質シェルが使用されてもよい。多孔質シェルを使用することが有利であることが分かっており、ここで、該構造体に力を施与する為の手段と接触する多孔質シェルの側面は、各々が孔を含む平行溝を備えている。そのような多孔質シェルの使用は有利である。なぜならば、水(蒸気)が移動しなければならない距離を最小にし、従って、圧力上昇を低減するからである。該シェルはまた、非平坦な物品の表面上に特定のパターンを作成する為に使用されてもよい。
【0090】
第1の実施態様において、該多孔質シェルは、300~1000孔/m、好ましくは400~900孔/m、より好ましくは500~800孔/m、の孔密度を有していてもよい。該孔は、0、5mm~3mm、好ましくは1mm~2mm、の直径を有していてもよい。適切な孔径は、複合材料中のポリマーの重合度を考慮して、当業者によって容易に決定されることができる。該ポリマーの該重合度がより低い場合(例えば、約0.40)、漏出を避ける為に小さな孔を使用することが望ましい場合がある。一方、該重合度が高い(又は、より高い)場合、孔径は大きくてもよい。該孔は好ましくは、シェルにわたって均一に分散されている。
【0091】
第1の実施態様において、該形成工程の後に、該形成された物品が型から解放される。
【0092】
第1の実施態様において、形成後に、該物品中のポリマーは、少なくとも0.5、好ましくは少なくとも0.6、より好ましくは少なくとも0.7の重合度を有していてもよい。形成後の該重合度が低すぎる場合、物品の強度を高める為に更なる硬化工程が必要とされうる。最大として、形成後の理論的な重合度は1.0である。形成直後の含水量は、好ましくは20重量%未満、より好ましくは10重量%未満、最も好ましくは5重量%未満、である。該重合度が少なくとも0.5であり、且つ含水量が20重量%未満である場合、非平坦な物品は有利には、安定した構造体を有し、それにより、下流の処理(例えば、該物品の輸送及び/又は更なる硬化工程)が単純化される。
【0093】
第2の実施態様
本発明の第2の実施態様において、該構造体は、乾燥工程、続いて同時の重合工程、プレス工程及び形成工程に、逐次付される。この実施態様は、以下に説明されている。第2の実施態様は、該繊維材料、該樹脂、及び該一般的な方法の特徴のいずれかと組み合わされることができる。
【0094】
従って、第2の実施態様において、非平坦な物品を製造する方法であって、該方法は、
繊維材料と、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコール及び0超~1.0、好ましくは0超~0.6、の重合度を有する脂肪族ポリカルボン酸から導出されるポリマー又はそのようなポリマーの前駆体モノマーを含む樹脂とを含む構造体を用意すること、ここで、該構造体は、0.3~0.98のボイド率及び20重量%~60重量%の含水量を有する、
10℃~60℃未満の温度で該構造体を乾燥させること、
繊維材料と、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコール及び0超~1.0、好ましくは0超~0.6、の重合度を有する脂肪族ポリカルボン酸から導出されるポリマー又はそのようなポリマーの前駆体モノマーを含む樹脂とを含む構造体を得ること、ここで、該構造体は、0.3~0.98のボイド率及び20重量%未満の含水量を有する、
該構造体を、下記の工程
該重合度が0.5未満である場合には、0.5~1の重合度まで重合すること、
プレスして、ボイド率を低減すること、
ポリマーのTを超える内部温度で力を施与することによって該構造体を非平坦な物品へと形成すること、ここで、該結果として得られた非平坦な物品が、少なくとも0.5の重合度及び20重量%未満の含水量を有する、
に付すこと
の工程を含み、
ここで、重合すること(実施される場合)、ボイド率を低減すること、及び形成することは(実質的に)同時に行われる、
上記の方法が開示される。
【0095】
該非平坦な物品は、硬化されることが好ましい。それ故に、第2の実施態様の非平坦な物品を製造する為の好ましい方法は、
繊維材料と、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコール及び0超~1.0、好ましくは0超~0.6、の重合度を有する脂肪族ポリカルボン酸から導出されるポリマー又はそのようなポリマーの前駆体モノマーを含む樹脂とを含む構造体を用意すること、ここで、該構造体は、0.3~0.98のボイド率及び20重量%~60重量%の含水量を有する、
10℃~60℃未満の温度で該構造体を乾燥させること、
繊維材料と、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコール及び0超~1.0、好ましくは0超~0.6、の重合度を有する脂肪族ポリカルボン酸から導出されるポリマー又はそのようなポリマーの前駆体モノマーを含む樹脂とを含む構造体を得ること、ここで、該構造体は、0.3~0.98のボイド率及び10重量%未満の含水量を有する、
該構造体を、下記の工程
該重合度が0.5未満である場合には、0.5~1の重合度まで重合すること、
プレスして、ボイド率を低減すること、
ポリマーのTを超える内部温度で力を施与することによって該構造体を非平坦な物品へと形成すること、ここで、該結果として得られた非平坦な物品が、少なくとも0.5の重合度及び10重量%未満の含水量を有する、
に付すこと
ここで、重合すること(実施される場合)、ボイド率を低減すること、及び形成することが(実質的に)同時に行われる、並びに、
少なくとも80℃の内部温度で非平坦な物品を硬化させること
の工程を含む。
【0096】
第2の実施態様において、該構造体中の該繊維材料は、本明細書において定義されている樹脂を少なくとも部分的に含む。好ましくは、該繊維材料の繊維の少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%に樹脂が提供される。繊維状構造体のより多くの繊維に樹脂が提供されるほど、該構造体からの非平坦な物品の製造がより容易になる。当業者は、該樹脂を提供することが、当該技術分野において周知の方法、例えば、噴霧、浸漬、ロールコーティング、を使用して行われることができることを理解するであろう。例えば、該樹脂は、該繊維材料の1以上の側面に(ロール)コーティングされてもよい。幾つかの実施態様において、該繊維材料の1以上の層に樹脂が各々提供される。好ましくは、該繊維材料の含浸を容易にする為に、該樹脂は水で希釈される。
【0097】
第2の実施態様において、最終物品において、本質的に全ての繊維表面に樹脂が提供されることが好ましい。なぜならば、樹脂との繊維の相互作用が、問題の物品の魅惑的な特性を得る為に少なくとも部分的に関与するからである。
【0098】
第2の実施態様において、該構造体は、(希釈された)樹脂で含浸された直後に、該構造体の総重量に対して計算して、10重量%~60重量%の含水量を有する。幾つかの実施態様において、該構造体の含水量は、15重量%~55重量%、好ましくは20重量~50重量%、より好ましくは20重量%~45重量%、である。
【0099】
第2の実施態様において、該樹脂の粘度は、1Pa・s以下、好ましくは0.5Pa・s以下、より好ましくは0.1Pa・s以下、更に好ましくは0.01Pa・s以下(室温)、であってもよい。1・10-5Pa・sの最低粘度が言及されうる。
【0100】
第2の実施態様において、次に、該構造体が乾燥工程に付されて、過剰の水を除去する。該乾燥工程は、水を除去する為に適した条件下で行われることができる。該乾燥の間、該樹脂の重合は生じない。乾燥は、60℃未満の温度、好ましくは10℃~60℃未満の温度、より好ましくは10℃~50℃の温度、更により好ましくは20℃~50℃の温度、より好ましくは30℃~50℃、の温度で行われてもよい。乾燥時間は好ましくは、最大3時間、より好ましくは最大2時間、最も好ましくは最大1時間、である。最低でも5分の乾燥時間が言及されうる。該乾燥は、該構造体の総重量に対して計算して、含水量を20重量未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは2重量%未満、に低減しうる。
【0101】
第2の実施態様において、乾燥後及び形成前の該構造体は、該構造体の総重量に対して計算して、0.1重量%~20重量%の含水量を有する。幾つかの実施態様において、該構造体の含水量は、0.1重量%~20重量%、好ましくは1重量%~10重量%、より好ましくは1重量%~5重量%、である。該構造体の含水量が低いことは有利である。なぜならば、該構造体を形成する為に必要な時間を短縮し、該構造体からの漏れによる該樹脂の廃棄を低減し、且つ含水量が高い(高すぎる)場合に、形成の間に遭遇しうるいかなる困難をも回避するのに役立つからである。
【0102】
第2の実施態様において、(乾燥した)該構造体は、形成前に(予備)硬化工程に付されうる。(予備)硬化は、60℃~140℃、好ましくは80℃~120℃、の内部温度で行われうる。(予備)硬化は、少なくとも5分間、好ましくは少なくとも10分間、より好ましくは少なくとも1時間、行われうる。一般的に、該予備硬化はオーブン内で行われる。乾燥の間に水分が除去され、従って、高湿度は逆効果になる為に、該オーブン内の湿度を慎重に制御することが有利である。従って、(予備)硬化時に、該オーブン内の湿度は50%未満、好ましくは40%未満、でありうる。(予備)硬化は、少なくとも0.6、好ましくは少なくとも0.7、より好ましくは少なくとも0.8、の重合度を結果として生じうる。
【0103】
第2の実施態様において、形成の間に施与される力は、型、好ましくはポリテトラフルオロエチレン材料又は形成後に非平坦な物品を形成する為の手段から該非平坦な物品の除去を単純化する他の材料でコーティングされた型、内で該構造体をプレスすることによって施与されてもよい。施与される該圧力は、2~40バール、好ましくは5~30バール、より好ましくは10~20バール、でありうる。該圧力は、少なくとも5秒の総持続時間にわたって施与されてもよい。該形成の持続時間が長いほど、該物品の安定性が高くなる。非常に長い期間の形成は商業的に魅力的ではないことが理解されるであろう。それ故に、24時間、好ましくは1時間、より好ましくは10分、最も好ましくは5分、の最大持続時間が言及されうる。好ましくは、該形成時間は10分未満である。該形成は、該方法によって得られた該物品の厚さを決定する厚さ制御を使用して行われてもよい。好ましくは、該方法によって得られる該物品の該厚さは、0.5mm~10cm、好ましくは3mm~5cm、より好ましくは4mm~2cm、の範囲である。具体的には、該物品が家具の部品である場合、該方法によって得られる該物品の厚さは、5mm~15mm、好ましくは7mm~12mm、の範囲でありうる。
【0104】
第2の実施態様において、該形成工程で施与される温度は、該ポリマーのTよりも高い。従って、該ポリマーの性質に依存して、該形成工程の間の温度は、60℃~180℃、好ましくは80℃~140℃、より好ましくは100℃~140℃、でありうる。上述されているように、該ポリマーのT未満の内部温度は不利である。なぜならば、そのような内部温度では、該ポリマーは繊維が互いに相対的に動くことを妨げるからである。180℃超の内部温度はまた不利である。なぜならば、このことにより、該繊維材料が損傷する可能性があるからである。
【0105】
第2の実施態様において、乾燥工程の間にほとんど全ての水が蒸発している故に、形成の間に水を除去する必要はない。この実施態様における乾燥工程は有利である。なぜならば、使用される繊維材料の高いボイド率及び表面積の結果として乾燥が非常に効率的であるからである。低温及び短い乾燥時間は満足のいく結果をもたらすことができる。それにもかかわらず、形成の間にいくらかの水が依然として除去されうる。例えば、形成に付される該構造体中に(依然として)存在する水の少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、が除去されうる。最大として、該形成に付された該構造体中に(依然として)存在する水の100%が、該物品の形成の間に除去されうる。
【0106】
第2の実施態様において、形成後に、該物品中の該ポリマーは、少なくとも0.5、好ましくは少なくとも0.6、より好ましくは少なくとも0.7、最も好ましくは少なくとも0.8、の重合度を有していてもよい。形成後の該重合度が低すぎる場合、該物品の強度を高める為に更なる硬化工程が必要とされうる。最大として、形成後の理論的な重合度は1.0である。形成直後の含水量は、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは2重量%未満、である。該重合度が少なくとも0.5であり、且つ含水量が10重量%未満である場合、該非平坦な物品は有利には、安定した構造体を有し、それにより、下流の処理(例えば、物品の輸送及び/又は更なる硬化工程)が単純化される。
【0107】
第3の実施態様
本発明の第3の実施態様において、請求項1において定義された構造体は、乾燥工程及び重合工程、続いて同時のプレス工程及び形成工程に、逐次付される。この実施態様は、以下に説明されている。第3の実施態様は、該繊維材料及び該樹脂の特徴、並びに該一般的な方法の特徴のいずれかと組み合わされることができる。
【0108】
従って、第3の実施態様において、非平坦な物品を製造する方法であって、該方法は、
繊維材料と、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコール及び0超~1.0、好ましくは0超~0.6、の重合度を有する脂肪族ポリカルボン酸から導出されるポリマー又はそのようなポリマーの前駆体モノマーを含む樹脂とを含む構造体を用意すること、ここで、該構造体は、0.3~0.98のボイド率及び20~60重量%の含水量を有する、
10℃~60℃未満の温度で該構造体を乾燥させること、
60℃~140℃の内部温度で該構造体を予備硬化させること、
繊維材料と、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコール及び0超~1.0の重合度を有する脂肪族ポリカルボン酸から導出されるポリマー又はそのようなポリマーの前駆体モノマーを含む樹脂とを含む構造体を得ること、ここで、該構造体は、0.3~0.98のボイド率及び20重量%未満の含水量を有する、
該構造体を、下記の工程
該重合度が0.5未満である場合には、0.5~1の重合度まで重合すること、
プレスして、ボイド率を低減すること、
ポリマーのTを超える内部温度で力を施与することによって該構造体を非平坦な物品へと形成すること、ここで、該結果として得られた非平坦な物品が、少なくとも0.5、好ましくは少なくとも0.6の重合度及び20重量%未満の含水量を有する、
に付すこと
の工程を含み、
ここで、重合すること(実施される場合)、ボイド率を低減すること、及び形成することは(実質的に)同時行われる、
上記の方法が開示される。
【0109】
非平坦な物品は、硬化されることが好ましい。従って、第3の実施態様の非平坦な物品を製造する為の好ましい方法は、
繊維材料と、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコール及び0超~1.0、好ましくは0超~0.6、の重合度を有する脂肪族ポリカルボン酸から導出されるポリマー又はそのようなポリマーの前駆体モノマーを含む樹脂とを含む構造体を用意すること、ここで、該構造体は、0.3~0.98のボイド率及び20重量%~60重量%の含水量を有する、
10℃~60℃未満の温度で該構造体を乾燥させること、
60℃~140℃の内部温度で該構造体を予備硬化させること、
繊維材料と、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコール及び0超~1.0の重合度を有する脂肪族ポリカルボン酸から導出されるポリマー又はそのようなポリマーの前駆体モノマーを含む樹脂とを含む構造体を得ること、ここで、該構造体は、0.3~0.98のボイド率及び10重量%未満の含水量を有する、
該構造体を、下記の工程
該重合度が0.5未満である場合には、0.5~1の重合度まで重合すること、
プレスして、ボイド率を低減すること、
ポリマーのTを超える内部温度で力を施与することによって該構造体を非平坦な物品へと形成すること、ここで、該結果として得られた非平坦な物品が、少なくとも0.5、好ましくは少なくとも0.6の重合度及び10重量%未満の含水量を有する、
に付すこと、
ここで、重合すること(実施される場合)、ボイド率を低減すること及び形成することが(実質的に)同時に行われる、並びに、
少なくとも80℃の内部温度で非平坦な物品を硬化させること
の工程を含む。
【0110】
好ましくは、予備硬化は、0.5~1の重合度を有する構造体をもたらす。従って、第3の実施態様の非平坦な物品を製造する為のより好ましい方法は、
繊維材料と、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコール及び0超~1.0、好ましくは0超~0.6、の重合度を有する脂肪族ポリカルボン酸から導出されるポリマー又はそのようなポリマーの前駆体モノマーを含む樹脂とを含む構造体を用意すること、ここで、該構造体は、0.5~0.98のボイド率及び20重量%~60重量%の含水量を有する、
10℃~60℃未満の温度で該構造体を乾燥させること、
60℃~140℃の内部温度で該構造体を予備硬化させること、
繊維材料と、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコール及び0.5~1.0の重合度を有する脂肪族ポリカルボン酸から導出されるポリマー又はそのようなポリマーの前駆体モノマーを含む樹脂とを含む構造体を得ること、ここで、該構造体は、0.5~0.98のボイド率及び5重量%未満の含水量を有する、
該構造体を、下記の工程
プレスして、ボイド率を低減すること、
ポリマーのTを超える内部温度で力を施与することによって該構造体を非平坦な物品へと形成すること、ここで、該結果として得られた非平坦な物品が、少なくとも0.5、好ましくは少なくとも0.6の重合度及び5重量%未満の含水量を有する、
に付すこと、
ここで、ボイド率を低減すること及び形成することが(実質的に)同時に行われる、並びに、
少なくとも80℃の内部温度で非平坦な物品を硬化させること
の工程を含む。
【0111】
第3の実施態様において、該構造体中の該繊維材料は、本明細書において定義されている樹脂を少なくとも部分的に含む。好ましくは、該繊維材料の繊維の少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、に樹脂が提供される。繊維状構造体のより多くの繊維に樹脂が提供されるほど、該構造体からの非平坦な物品の製造がより容易になる。当業者は、該樹脂を提供することが、当該技術分野において周知の方法、例えば、噴霧、浸漬、ロールコーティング、を使用して行われることができることを理解するであろう。例えば、該樹脂は、該繊維材料の1以上の側面に(ロール)コーティングされてもよい。幾つかの実施態様において、該繊維材料の1以上の層に樹脂が各々提供される。好ましくは、繊維材料の含浸を容易にする為に、該樹脂は水で希釈される。
【0112】
第3の実施態様において、最終物品において、本質的に全ての繊維表面に樹脂が提供されることが好ましい。なぜならば、樹脂との繊維の相互作用が、問題の物品の魅惑的な特性を得る為に少なくとも部分的に関与するからである。
【0113】
第3の実施態様において、該構造体は、(希釈された)樹脂で含浸された直後に、該構造体の総重量に対して計算して、10重量%~60重量%の含水量を有する。幾つかの実施態様において、該構造体の含水量は、15重量%~55重量%、好ましくは20重量~50重量%、より好ましくは20重量%~45重量%である。
【0114】
第3の実施態様において、該樹脂の粘度は、1Pa・s以下、好ましくは0.5Pa・s以下、より好ましくは0.1Pa・s以下、更に好ましくは0.01Pa・s以下(室温)、であってもよい。1・10-5Pa・sの最低粘度が言及されうる。
【0115】
第3の実施態様において、次に、該構造体が乾燥工程に付されて、過剰の水を除去する。該乾燥工程は、水を除去する為に適した条件下で行われることができる。該乾燥の間、該樹脂の重合は生じない。乾燥は、60℃未満の温度、好ましくは10℃~60℃未満の温度、好ましくは10℃~50℃、の温度で行われてもよい。乾燥時間は好ましくは、最大3時間、より好ましくは最大2時間、最も好ましくは最大1時間、である。最低でも5分の乾燥時間が言及されうる。乾燥は、該構造体の総重量に対して計算して、含水量を20重量未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは2重量%未満、に低減しうる。
【0116】
第3の実施態様において、乾燥後及び形成前の該構造体は、該構造体の総重量に対して計算して、0.1重量%~20重量%の含水量を有する。幾つかの実施態様において、該構造体の含水量は、0.1重量%~20重量%、好ましくは1重量%~15重量%、より好ましくは1重量%~10重量%、である。該構造体の含水量が低いことは有利である。なぜならば、該構造体を形成する為に必要な時間を短縮し、該構造体からの漏れによる樹脂の廃棄を低減し、且つ含水量が(高すぎる)場合に、形成の間に遭遇しうるいかなる困難をも回避するのに役立つからである。
【0117】
第3の実施態様において、(乾燥した)該構造体は、形成前に(予備)硬化工程に付される。(予備)硬化は、60℃~140℃、好ましくは60℃~120℃、より好ましくは80℃~120℃、の内部温度で行うことができる。(予備)硬化は、少なくとも5分間、好ましくは少なくとも10分間、より好ましくは少なくとも1時間、行われうる。一般的に、該(予備)硬化はオーブン内で行われる。乾燥の間に水分が除去され、従って、高湿度は逆効果になる為に、該オーブン内の湿度を慎重に制御することが有利である。従って、(予備)硬化時に、該オーブン内の湿度は50%未満、好ましくは40%未満、でありうる。(予備)硬化は、少なくとも0.6、好ましくは少なくとも0.7、より好ましくは少なくとも0.8、の重合度を結果として生じうる。
【0118】
第3の実施態様において、形成の間に施与される力は、型、好ましくはポリテトラフルオロエチレン材料又は形成後に非平坦な物品を形成する為の手段から該非平坦な物品の除去を単純化する他の材料でコーティングされた型、内で該構造体をプレスすることによって施与されてもよい。施与される該圧力は、2~40バール、好ましくは5~30バール、より好ましくは10~20バール、でありうる。該圧力は、少なくとも5秒の総持続時間にわたって施与されてもよい。該形成の持続時間が長いほど、該物品の安定性が高くなる。非常に長い期間の形成は商業的に魅力的ではないことが理解されるであろう。それ故に、24時間、好ましくは1時間、より好ましくは10分、最も好ましくは5分、の最大持続時間が言及されうる。好ましくは、該形成時間は10分未満、より好ましくは5分未満、である。該形成は、該方法によって得られた該物品の厚さを決定する厚さ制御を使用して行われてもよい。好ましくは、該方法によって得られる該物品の該厚さは、0.5mm~10cm、好ましくは3mm~5cm、より好ましくは4mm~2cm、の範囲である。具体的には、該物品が家具の部品である場合、該方法によって得られる該物品の厚さは、5mm~15mm、好ましくは7mm~12mm、の範囲でありうる。
【0119】
第3の実施態様において、該形成工程で施与される温度は、該ポリマーのTよりも高い。従って、該ポリマーの性質に依存して、該形成工程の間の温度は、60℃~180℃、好ましくは80℃~140℃、より好ましくは100℃~140℃、でありうる。上述されているように、該ポリマーのT未満の内部温度は不利である。なぜならば、そのような内部温度では、ポリマーは繊維が互いに相対的に動くことを妨ぐからである。180℃超の内部温度はまた不利である。なぜならば、このことにより、該繊維材料が損傷する可能性があるからである。
【0120】
第3の実施態様において、乾燥工程及び予備硬化工程の間にほとんど全ての水が蒸発している故に、形成の間に水を除去する必要はない。この実施態様における乾燥工程は有利である。なぜならば、使用される繊維材料の高いボイド率及び表面積の結果として乾燥が非常に効率的であるからである。低温及び短い乾燥時間は満足のいく結果をもたらすことができる。それにもかかわらず、形成の間にいくらかの水が依然として除去されうる。例えば、形成に付される該構造体中に存在する水(なお)の少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、
が除去される。水の蒸発を促進する為のシェルが形成の間に存在する場合、該形成に付された該構造体中に(依然として)存在する水の少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも60%が除去されうる。最大として、該形成に付された該構造体中に(依然として)存在する水の100%が、該物品の形成の間に除去されうる。
【0121】
第3の実施態様において、形成後に、該物品中の該ポリマーは、少なくとも0.5、好ましくは少なくとも0.6、より好ましくは少なくとも0.7、最も好ましくは少なくとも0.8、の重合度を有していてもよい。形成後の該重合度が低すぎる場合、該物品の強度を高める為に更なる硬化工程が必要とされうる。最大として、形成後の理論的な重合度は1.0である。形成直後の含水量は、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは2重量%未満、である。該重合度が少なくとも0.5であり、且つ含水量が10重量%未満である場合、該非平坦な物品は有利には、安定した構造体を有し、それにより、下流の処理(例えば、物品の輸送及び/又は更なる硬化工程)が単純化される。
【0122】
第4の実施態様
本発明の第4の実施態様において、請求項1において定義された構造体は、重合工程及びプレス工程に逐次付され、ここで、該プレスは平坦な物品を結果として生じる。次に、該平坦な物品は、ポリマーのTよりも高い内部温度での形成工程に付される。この実施態様は、以下に説明され、並びに該一般的な方法、第2の実施態様及び第3の実施態様の特徴と組み合わされることができる。
【0123】
従って、第4の実施態様において、提供された又は得られた構造体がプレスされて平坦な物品を形成する。第4の実施態様の1つの変形例において、重合工程及びプレス工程がボイド率を低減させる為に同時に行われ、続いて形成工程が行われる。第4の実施態様の別の変形例において、ボイド率を低減させる為の重合工程及びプレス工程は、任意の順序で逐次に実行され、その後、形成工程が続く。第4の実施態様の更に別の変形例において、重合工程の後に、ボイド率を低減させる為にプレス及び形成が行われ、該形成は、ボイド率を低減させる為のプレスと同時に行われ、又はプレスに続いて行われる。
【0124】
平坦な物品は、室温に冷却されてもよい。該結果として得られた平坦な物品は、特に100℃超の温度で数時間硬化された場合に、一般的に非常に剛性である。平坦な物品を形成する為に施与される圧力は、2バール~40バール(すなわち、kg/構造体1cm)、好ましくは5バール~30バール、より好ましくは10バール~20バール、でありうる。例えば、圧力は、少なくとも5秒から最大24時間の総持続時間にわたって施与されてもよい。驚くべきことに、これらの平坦な物品は、該物品をポリマーのTよりも高い内部温度まで加熱し、そして、該平坦な物品を非平坦な物品に(プレス及び)形成することによって再形成することができる。特定の実施態様に応じて、これにより、高温及び高圧に長期間耐えることができる形成手段無しに、複雑な非平坦な物品の製造が可能になりうる。高圧に耐えることができる加熱された型は高価であり、従って、そのような型を必要としない方法が有利である。
【0125】
第4の実施態様において、形成の間に施与される力は、型、好ましくはテフロン材料でコーティングされた型、内で該構造体をプレスすることによって施与されてもよい。施与される該圧力は、1atm~40バール、好ましくは5~30バール、より好ましくは10~20バール、でありうる。該圧力は、少なくとも5秒の総持続時間にわたって施与されてもよい。該形成の持続時間が長いほど、該物品の安定性が高くなる。非常に長い期間の形成は商業的に魅力的ではないことが理解されるであろう。それ故に、24時間、好ましくは1時間、より好ましくは10分、の最大持続時間が言及されうる。好ましくは、該形成時間は10分未満である。該形成は、該方法によって得られた該物品の厚さを決定する厚さ制御を使用して行われてもよい。好ましくは、該方法によって得られる該物品の厚さは、0.5mm~10cm、好ましくは3mm~5cm、より好ましくは4mm~2cm、の範囲である。具体的には、該物品が家具の部品である場合、該方法によって得られる該物品の厚さは、5mm~15mm、好ましくは7mm~12mm、の範囲でありうる。
【0126】
第4の実施態様において、該形成工程で施与される温度は、該ポリマーのTよりも高い。従って、該ポリマーの性質に依存して、該形成工程の間の温度は、60℃~180℃、好ましくは80℃~140℃、より好ましくは100℃~140℃、でありうる。該ポリマーのTよりも低い内部温度は不利である。なぜならば、そのような内部温度では、該ポリマーは繊維が互いに相対的に動くことを妨ぐからである。180℃超の内部温度はまた不利である。なぜならば、このことにより、該繊維材料を損傷する可能性があるからである。更に、内部温度がポリマーのTよりも低い場合、構造体は脆く、破壊する可能性がある。上述されているように、形成時間は少なくとも5秒でありうる。最大24時間が言及されうる。好ましくは、形成時間は10分未満である。該形成の直後に、非平坦な物品の内部温度は、80~140℃でありうる。
【0127】
非平坦な物品
本発明はまた、本発明に従う方法によって得ることができる物品に関する。非平坦な物品は、例えばASTM D7264を使用して決定される、20MPa超の曲げ強度を有する。
【0128】
従って、本発明は、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコール及び(好ましくは3~15個の炭素原子を有する)脂肪族ポリカルボン酸から導出されるポリマーを含む樹脂で含浸された繊維材料を含む非平坦な物品であって、該ポリマーは少なくとも0.5の重合度を有し、該非平坦な物品は20重量%未満の含水量、及び、例えばASTM D7264を使用して決定される、20MPa超の曲げ強度を有する、上記の非平坦な物品に関する。該非平坦な物品は、0.8以下、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.5以下、更により好ましくは0.4以下、更により好ましくは0.35以下、更により好ましくは0.3以下、最も好ましくは0.2以下、のボイド率を有していてもよい。
【0129】
本発明に従う非平坦な物品中のポリマー及び充填材の性質については、本発明に従う方法の文脈において上述されたものが参照される。本発明に従う方法において使用されるポリマー及び繊維材料(の層)について指定された任意の好ましい態様はまた、本発明に従う物品中のポリマー及び繊維材料(の層)に適用される。
【0130】
幾つかの実施態様において、該非平坦な物品は、少なくとも20MPa、好ましくは少なくとも25MPa、より好ましくは少なくとも30MPa、特には少なくとも40MPa、最も好ましくは少なくとも50MPa、の曲げ強度(例えば、ASTM D7264において定義されているように、3点曲げ試験を使用して測定される)を有する。一般的に、該曲げ強度は可能な限り高くなければならない。該非平坦な物品の曲げ強度の上限としては、例えば200MPaでありうる。
【0131】
該非平坦な物品の密度は、少なくとも0.3g/cm、特には少なくとも0.7g/cm、好ましくは少なくとも0.8g/cm、より好ましくは少なくとも0.9g/cm、好ましくは少なくとも1.0g/cm、好ましくは少なくとも1.1g/cm、でありうる。該非平坦な物品が天然繊維(例えばセルロース繊維、例えば麻)を含む場合、該非平坦な物品が最大1.4g/cmの密度を有することが望ましい場合がある。より高い固有密度を有する繊維を有する繊維材料を含む非平坦な物品は、1.4g/cmよりも高い密度を有しうる。
【0132】
高耐久性及び高強度の非平坦な物品を目的とする実施態様において、本発明の物品は、少なくとも0.8、好ましくは少なくとも0.9、より好ましくは少なくとも0.95、の重合度を有する。
【0133】
該非平坦な物品の含水量は、非平坦な物品の総重量に対して計算して、20重量%未満である。含水量は、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、である。幾つかの実施態様において、該非平坦な物品の含水量は、湿度50%(相対)、温度20℃で24時間貯蔵した後に、より好ましくは48時間後に、最も好ましくは72時間後に、上で定義された通りである。上記されているように、耐水性は、例えば硬化温度の上昇と共に、増加する。
【0134】
特定の実施態様において、本発明は、30~80重量%の麻繊維、好ましくはランダムに配向された麻繊維、及び20~70重量%の樹脂、好ましくはグリセロール及びクエン酸から導出される樹脂、を含む、本発明に従う方法によって得られることができる非平坦な物品であって、該非平坦な物品中のポリマーは、少なくとも0.8、特には少なくとも0.9、更に特には少なくとも0.95、の重合度を有し、該非平坦な物品は、最大20重量%、特に最大15重量%、更に特に最大10重量%、の含水量と、最大0.6、好ましくは最大0.5、より好ましくは最大0.4、更により好ましくは最大0.35、のボイド率と、0.6~1.4g/cm、好ましくは0.8~1.4g/cm、の密度と、少なくとも30MPa、最も好ましくは少なくとも40MPa、の曲げ強度(例えば、ASTM D7264において定義されているように、3点曲げ試験を使用して測定される)とを有する、上記の非平坦な物品に関する。
【0135】
(不織)麻繊維は、麻繊維が該構造体に非常に望ましい形成性を提供する故に、本発明に従う方法において有利に使用されることができることが分かった。それ故に、幾つかの実施態様において、該非平坦な物品は繊維ボードであり、ここで、該繊維材料は麻繊維を含む。該繊維ボードは、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、最も好ましくは少なくとも30重量%、の本明細書において定義されているポリマーを含みうる。幾つかの実施態様において、該繊維ボードは、最大80重量%、好ましくは最大70重量%、より好ましくは最大60重量%、最も好ましくは最大50重量%、の本明細書において定義されているポリマーを含む。該繊維ボード中のポリマーの量が多すぎる又は少なすぎる場合に、その機械的特性(例えば、その曲げ強度)が低下する。
【0136】
本発明の方法について表現された好ましい態様は、これらが相互に排他的でない限り、組み合わされることができることが当業者には明らかであろう。同様に、本発明に従う方法について表現される好ましい態様はまた、本発明に従う方法によって得られる非平坦な物品、本発明に従う非平坦な物品、及び本発明に従う方法で使用する為の構造体に適用される。
【0137】
実施例
本発明は、以下の実施例によって説明されるが、これらに限定されるものでなく又はこれらによって限定されるものでもない。
【0138】
実施例1:ポリエステルポリマー溶液の調製
グリセロール(1.0kg、純度>99%)及びクエン酸(2.0kg、純度>99%)が、撹拌及び加熱された反応容器内で一緒にされた。ホウ酸(9g、0.5m/m、純度>99%)が添加された。約15分以内に、混合物は135℃に加熱され、そして、その温度で15分間保持された。次に、該混合物が水道水を用いて希釈され、その後に、含水量は40~50重量%であった。該混合物が冷やされた。
【0139】
実施例2:椅子の為の座部の製造
工程1:麻マットの調製
4枚の麻マットが麻ロール(15×1m、厚さ10mm、Hempflax製)から切断された。該切断された麻マットの寸法は、図1に示されている通りであった。
【0140】
工程2:該麻マットの含浸
該4枚の麻マットに、実施例1において得られた樹脂が各々含浸された。まず、該麻マットの一方の側面上に樹脂が均一に噴霧された。次に、該麻マットが裏返され、該麻マットの他方の側面に樹脂が噴霧された。該樹脂の含浸は室温で行われた。該4つのマット上に噴霧された樹脂の総量は、希釈前の樹脂の量及び4つのマットの総重量に対して計算され、40重量%であった。
【0141】
工程3:該麻マットの予備硬化
該含浸された麻マットが105℃で30分間予備硬化された。次に、それらは、室温まで冷やされた。それらが冷やされた後に、該4つの麻マットが互いに積み重ねられ、麻及びポリマーを含む複合材料の4つの層を有する構造体が作成された。
【0142】
工程4:該麻マットのプレス
該構造体は、(該構造体が予熱された型に付着することを避ける為に)テフロンでコーティングされた該予熱された型(145℃)内に入れられた。次に、それぞれが多数の孔を含む多数の平行な溝を含む多孔質シェルが該構造体の上に置かれた。該多孔質シェルは、1.5mmの直径を有する孔を含み、650個/mの孔密度を有していた。次に、該構造体が、145℃の温度(115~125℃の内部温度)で合計10分間プレスされた。この例において、該多孔質シェルの該孔は、該構造体からの水の蒸発を助ける。水蒸気爆発は発生しなかった。物品が該型から取り出された。そのようにして得られた物品は、亀裂の数及び樹脂が完全に含浸されていない領域の量の触覚検査及び目視検査によって決定される、滑らかで且つ均一な表面を有していた。
【0143】
工程5:椅子の為の座部の後硬化
次に、該物品がオーブンに入れられ、120℃で予熱された。椅子が最初にこの温度で30分間硬化された。椅子の表面に膨れは観察されなかった。次に、該椅子が160℃で105分間硬化された。次に、該椅子の為の座部が室温までゆっくり冷やされた。
【0144】
該座部は、0.9g/cm超の全体密度、0.85~0.95の重合度、及び約4重量%の含水量を有していた。曲げ強度は50MPa(繊維横断方向)~70MPa(繊維方向)の範囲内であった。
【0145】
次に、当該技術分野において知られている方法(及び/又は機械加工)を使用して、座部が椅子に変えられた。本明細書において開示されている方法を使用して得られる座部を含む椅子が図3及び図4に示されている。
【0146】
結果として得られた椅子は、安全性、強度、及び耐久性についての産業上の要求を満たした。具体的には、該椅子は、欧州規格EN 1728:2000、6.2.1及びEN1728:2000、6.7の要件を満たした。図4は、工業試験で使用される試験装置を示す。図5は、100,000サイクルを超えて300Nの力にさらされた後の椅子の背面を示す。写真から分かるように、試験による摩耗は観察されなかった。試験の間に、該椅子に負荷がかかることを考えると、これは非常に驚くべきことである。
【0147】
その上、該プロセス中のいずれの時点においても層間剥離は観察されなかった。
【0148】
実施例3
工程1:麻マットの調製
4枚の麻マットが麻ロール(15×1m、厚さ10mm、Hempflax製)から切断された。該切断された麻マットの寸法は、図1に示されている通りであった。
【0149】
工程2:該麻マットの含浸
該4枚の麻マットに、実施例1において得られた樹脂が各々含浸された。該樹脂は、麻マットの表面の一方の側に均一に分布していた。次に、該麻マットが裏返され、該麻マット中の全ての繊維が濡れるまで圧延ピンで全てのマットに圧力が加えられた。該樹脂の含浸は室温で行われた。
【0150】
工程3:該麻マットの乾燥
該含浸された麻マットが、40℃で12時間乾燥された。次に、それらは、室温まで冷やされた。それらが冷やされた後に、該4つの麻マットが互いに積み重ねられ、麻及びポリマーを含む複合材料の4つの層を有する構造体が作成された。
【0151】
工程4及び工程5:該麻マットの形成及び後硬化
次に、該構造体が、実施例2、工程4及び工程5に記載されているように形成され、そして硬化された。実施例2の生成物に関して、該結果として得られた生成物は、0.9g/cm超の全体密度、0.85~0.95の重合度、及び約4重量%の含水量を有していた。曲げ強度は50MPa(繊維横断方向)~70MPa(繊維方向)の範囲内であった。
【0152】
該結果として得られた非平坦な物品が処理されて、椅子の為の座部が作成された。該得られた座部は、(座部と背もたれとの間の、椅子の背部の湾曲部分に施与された)190kgに、破断すること無しに耐えるのに十分な強度であった。該プロセス中のいずれの時点においても層間剥離は観察されなかった。
【0153】
実施例4
工程1:麻マットの調製
4枚の麻マットが麻ロール(15×1m、厚さ10mm、Hempflax製)から切断された。該切断された麻マットの寸法は、図1に示されている通りであった。
【0154】
工程2:該麻マットの含浸
該4枚の麻マットに、実施例1において得られた樹脂が各々含浸された。該樹脂は、麻マットの表面の一方の側に均一に分布していた。次に、該麻マットが裏返され、該麻マット中の全ての繊維が濡れるまで圧延ピンで全てのマットに圧力が加えられた。該樹脂の含浸は室温で行われた。
【0155】
工程3:該麻マットの乾燥硬化
該含浸させた麻マットが、40℃で12時間乾燥され、そして、直ちに工程4に記載された予備硬化工程に付された。
【0156】
工程4:該麻マットの硬化
該乾燥された含浸麻マットが、105℃で4時間予備硬化された。次に、該4つの麻マットが互いに積み重ねられ、麻及びポリマーを含む複合材料の4つの層を有する構造体が作成された。
【0157】
工程5及び工程6:該麻マットの形成及び後硬化
次に、該構造体が、実施例2、工程4及び工程5に記載されているように形成され、そして硬化された。
【0158】
実施例2に関して、該生成物は、0.9g/cm超の全体密度、0.85~0.95の重合度、及び約4重量%の含水量を有していた。曲げ強度は、50MPa(繊維横断方向)~70MPa(繊維方向)の範囲内であった。
【0159】
該結果として得られた椅子の為の座部は、(座部と背もたれとの間の、椅子の背部の湾曲部分に施与された)190kgに、破断すること無しに耐えるのに十分な強度であった。該プロセス中のいずれの時点においても層間剥離は観察されなかった。
【0160】
興味深いことに、実施例2~実施例4は、いかなる着色剤も添加せずに、異なる色の椅子の為の座部をもたらす。実施例2~実施例4に記載された方法により得られた椅子が図6に示されている。着色剤を添加せずに非平坦な物品の色を制御する能力は、慣用的な方法を超える更なる改善である。
【0161】
実施例5:ガラス繊維充填材
この実施例において、390g/mの目付を有するツイル2/2織ガラス繊維マットが使用された。該マットは、2.55g/cmの線密度を有するガラス繊維から織られた。
【0162】
20cm×10cmの正方形のガラス繊維マットが、繊維用の特別なはさみを使用して切断された。層が秤量され、そして、実施例1の樹脂が含浸された。次に、該マットが80℃で45分間予備硬化された。
【0163】
10枚の含浸マットが互いに積み重ねられた。該積層体が、平坦なアルミニウム型及び湾曲した表面を有するアルミニウム型を有するホットプレス内に入れられ、平坦でない製品を結果として形成し、150℃で20分間、15kg/cmでプレスされた。該プレス後に、サンプルが160℃で1時間硬化された。固体で且つ強固な複合材料が得られた。体積繊維分率は55%であった。
【0164】
Testometric M350-20CT試験ベンチが使用されて機械的試験が行われ、191MPaの曲げ強度、14GPaの曲げ弾性率、及び13.5MPaの層間剪断強度が得られた。
【0165】
実施例6:他の繊維
実施例5の方法を使用して、160g/mの目付及び3000フィラメント/繊維をツイル2/2で有する炭素繊維マットから複合製品が製造され、ここで、炭素繊維は1.76g/cmの線密度を有した。魅力的な外装に加えて、該結果として得られた生成物は、良好な曲げ強度、曲げ弾性率、及び層間剪断強度を示した。
【0166】
織物アラミドシートを用いた実験がまた、良好な特性を有する複合材を与えた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】