(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-30
(54)【発明の名称】送電網の電圧不平衡の抑制方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H02J 3/14 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
H02J3/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530953
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(85)【翻訳文提出日】2023-05-23
(86)【国際出願番号】 CN2021122374
(87)【国際公開番号】W WO2023050384
(87)【国際公開日】2023-04-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林貴応
(72)【発明者】
【氏名】高錦鳳
(72)【発明者】
【氏名】何▲うぇいちぇん▼
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AE09
5G066DA02
5G066DA06
(57)【要約】
本願は送電網の電圧不平衡の抑制方法及び装置を提供し、トラッキング微分器によって90°遅れた送電網電圧を計算し、90°遅れた送電網電圧を利用して瞬時電力を計算し、さらに瞬時電力に基づいて出力コンバータ電圧を計算することにより、送電網の電圧不平衡に対する抑制を実現し、トラッキング微分器の役割はノイズに汚染された信号から微分情報を抽出することであり、三角関数微分とその90°遅れた送電網電圧は正比例の関係を有するため、トラッキング微分器で90°遅れた送電網電圧を計算することができ、配列の使用を不要にすることで、送電網の周波数の変化に対して敏感ではなく、送電網の周波数が変動してもその制御性能に影響せず、且つ大量のメモリリソースを節約する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PWM整流器に適用され、
送電網電圧及び送電網電流を取得するステップと、
前記送電網電圧に基づき、トラッキング微分器によって90°遅れた送電網電圧を計算するステップと、
前記90°遅れた送電網電圧及び前記送電網電流に基づき、瞬時電力を計算するステップと、
前記瞬時電力に基づいて出力コンバータ電圧を計算するステップと、
前記出力コンバータ電圧に応じて、対応するパルス列を得て、送電網の電圧不平衡を抑制するステップと、
を含むことを特徴とする、送電網の電圧不平衡の抑制方法。
【請求項2】
前記送電網電圧及び送電網電流を取得するステップは、
三相交流電圧及び三相交流電流を取得するステップと、
前記三相交流電圧及び前記三相交流電流に対してクラーク変換を行い、直交静止座標系での前記送電網電圧及び前記送電網電流を得るステップと、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記瞬時電力は、瞬時有効電力及び瞬時無効電力を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記瞬時電力に基づいて出力コンバータ電圧を計算するステップは、
直交静止座標系での前記送電網電圧に対してパーク変換を行い、直交回転座標系でのd軸送電網電圧及びq軸送電網電圧を得るステップと、
前記瞬時有効電力と所定有効電力に差を取った後に、比例積分コントローラ及び共振コントローラに入って得られたオフセット量に前記d軸送電網電圧を加え、d軸出力コンバータ電圧を得るステップと、
前記瞬時無効電力と所定無効電力に差を取った後に比例積分コントローラ及び共振コントローラに入って得られたオフセット量に前記q軸送電網電圧を加算して、q軸出力コンバータ電圧を得るステップと、
前記d軸出力コンバータ電圧と前記q軸出力コンバータ電圧に対して、逆パーク変換を行ってα軸出力コンバータ電圧とβ軸出力コンバータ電圧を得るステップと、
を含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記出力コンバータ電圧に応じて、対応するパルス列を得て、送電網の電圧不平衡を抑制するステップは、
前記α軸出力コンバータ電圧及び前記β軸出力コンバータ電圧に基づき、変調ポリシーを利用して対応するパルス列を得るステップと、
前記パルス列を出力コンバータに入力して、送電網の電圧不平衡を抑制するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記変調ポリシーは、パルス幅変調、空間ベクトルパルス幅変調、又は正弦波パルス幅変調を採用することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
送電網電圧及び送電網電流を取得するステップに用いられる取得モジュールと、
前記送電網電圧に基づき、前記トラッキング微分器によって90°遅れた送電網電圧を計算するステップに用いられるトラッキング微分器と、
前記90°遅れた送電網電圧及び前記送電網電流に基づき、瞬時電力を計算するステップに用いられる瞬時電力計算モジュールと、
前記瞬時電力に基づいて出力コンバータ電圧を計算するステップに用いられる出力コンバータ電圧計算モジュールと、
前記出力コンバータ電圧に基づき、対応するパルスシーケンスを得て、送電網の電圧不平衡を抑制するステップに用いられるパルスシーケンス取得モジュールと、
を含むことを特徴とする、送電網の電圧不平衡の抑制装置。
【請求項8】
前記取得モジュールはさらに、三相交流電圧及び三相交流電流を得るステップと、前記三相交流電圧及び前記三相交流電流に対してパーク変換を行い、直交回転座標系での前記送電網電圧及び前記送電網電流を得るステップと、に用いられ、
前記瞬時電力計算モジュールはさらに、前記90°遅れた送電網電圧及び前記送電網電流に基づき、瞬時有効電力及び瞬時無効電力を計算するステップに用いられることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記出力コンバータ電圧計算モジュールはさらに、
直交静止座標系での前記送電網電圧に対してパーク変換を行い、直交回転座標系でのd軸送電網電圧及びq軸送電網電圧を得るステップと、
前記瞬時有効電力と所定有効電力に差を取った後に比例積分コントローラ及び共振コントローラに入って得られたオフセット量に前記d軸送電網電圧を加え、d軸出力コンバータ電圧を得るステップと、
前記瞬時無効電力と所定無効電力に差を取った後に比例積分コントローラ及び共振コントローラに入って得られたオフセット量に前記q軸送電網電圧を加算して、q軸出力コンバータ電圧を得るステップと、
前記d軸出力コンバータ電圧と前記q軸出力コンバータ電圧に対して、逆パーク変換を行ってα軸出力コンバータ電圧とβ軸出力コンバータ電圧を得るステップと、に用いられることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記パルス列取得モジュールはさらに、
前記α軸出力コンバータ電圧及び前記β軸出力コンバータ電圧に基づき、変調ポリシーを利用して対応するパルス列を得るステップと、
前記パルス列を出力コンバータに入力して、送電網の電圧不平衡を抑制するステップと、に用いられることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
コンピュータプログラムが記憶され、該コンピュータプログラムがプロセッサによって実行されると、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法を実行することを特徴とする、コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は電力電子技術分野に関し、具体的には、送電網の電圧不平衡の抑制方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三相アクティブフロントエンド整流器が不平衡送電網で正常動作を実現し、可変母線電圧、単位力率及び5%未満の電流全高調波歪み(Total Harmonic Distortion、THDであって、送電網の電流品質を反映し、THDが小さいほど電流品質が高いことを示す)を実現するために、従来技術は比例積分コントローラ、繰り返しコントローラ及び共振コントローラによって、三相アクティブフロントエンド整流器に作用する出力電圧を取得する。
【0003】
比例積分コントローラ(Proportional-Integral Controller、PI)は、電流における基本波電流をトラッキングし且つ出力電圧の第1成分を取得することに用いられる。繰り返しコントローラは、電流における6倍周波数成分をトラッキングして6n±1次高調波を抑制し且つ出力電圧の第2成分を取得することに用いられる。共振コントローラは、電流における2倍周波数成分をトラッキングして3次高調波を抑制し且つ出力電圧の第3成分を取得することに用いられる。整流器の出力電圧は、出力電圧の第1成分、出力電圧の第2成分及び出力電圧の第3成分の和である。
【0004】
それにより、送電網電圧及びデッドタイム効果により生じる6n±1次(例えば、5次、7次)高調波、及び送電網の不平衡により生じる3次高調波を同時に抑制するという目的を達成する。
【0005】
従来技術は、重複コントローラによって6倍周波数成分に対するトラッキングを実現しているが、該方法は送電網の周波数に対して非常に敏感であり、送電網の周波数が変動すると、制御性能が大幅に悪化する。また繰り返し制御は400個の浮動小数点の配列を2つ(50Hzの送電網、20kHzの制御周波数に対応)設定する必要があり、メモリの消費が非常に多い。
【発明の概要】
【0006】
本願の実施例の目的は、従来技術の制御方法が送電網の周波数に対して敏感であり、送電網の周波数が変動すると制御性能が悪化するという問題を解決することに用いられる、送電網の電圧不平衡の抑制方法及び装置を提供することである。
【0007】
本願の実施例は、PWM整流器に適用され、
送電網電圧及び送電網電流を取得するステップと、
送電網電圧に基づき、トラッキング微分器によって90°遅れた送電網電圧を計算するステップと、
90°遅れた送電網電圧及び送電網電流に基づき、瞬時電力を計算するステップと、
瞬時電力に基づいて出力コンバータ電圧を計算するステップと、
出力コンバータ電圧に応じて、対応するパルス列を得て、送電網の電圧不平衡を抑制するステップと、を含む送電網の電圧不平衡の抑制方法を提供する。
【0008】
上記技術的解決手段は、トラッキング微分器によって90°遅れた送電網電圧を計算し、90°遅れた送電網電圧を利用して瞬時電力を計算し、さらに瞬時電力に基づいて出力コンバータ電圧を計算することにより、送電網電圧の不平衡に対する抑制を実現し、トラッキング微分器の役割はノイズに汚染された信号から微分情報を抽出することであり、三角関数微分とその90°遅れた送電網電圧は正比例の関係を有するため、トラッキング微分器で90°遅れた送電網電圧を計算することができ、配列の使用を不要にすることで、送電網の周波数の変化に対して敏感ではなく、送電網の周波数が変動してもその制御性能に影響せず、且つ大量のメモリリソースを節約する。
【0009】
いくつかの好ましい実施形態において、送電網電圧及び送電網電流を取得するステップは、
三相交流電圧及び三相交流電流を取得するステップと、
三相交流電圧及び三相交流電流に対してクラーク変換を行い、直交静止座標系での送電網電圧及び送電網電流を得るステップと、を含む。
【0010】
いくつかの好ましい実施形態において、瞬時電力は、瞬時有効電力及び瞬時無効電力を含む。
【0011】
上記技術的解決手段において、改良された瞬時電力理論を用い、90°遅れた送電網電圧及び送電網電流を利用して、瞬時有効電力及び瞬時無効電力を計算し、不平衡送電網における瞬時有効電力及び瞬時無効電力に対するトラッキングを実現し、実際の送電網電力の状況をより正確に反映して、瞬時電力に対する制御を強化することができ、送電網の不平衡に対してより高い抑制能力を有する。
【0012】
いくつかの好ましい実施形態において、瞬時電力に基づいて出力コンバータ電圧を計算するステップは、
直交静止座標系での送電網電圧に対してパーク変換を行い、直交回転座標系でのd軸送電網電圧及びq軸送電網電圧を得るステップと、
瞬時有効電力と所定有効電力に差を取った後に、比例積分コントローラ及び共振コントローラに入って得られたオフセット量にd軸送電網電圧を加え、d軸出力コンバータ電圧を得るステップと、
瞬時無効電力と所定無効電力に差を取った後に比例積分コントローラ及び共振コントローラに入って得られたオフセット量にq軸送電網電圧を加算して、q軸出力コンバータ電圧を得るステップと、
d軸出力コンバータ電圧とq軸出力コンバータ電圧に対して、逆パーク変換を行ってα軸出力コンバータ電圧とβ軸出力コンバータ電圧を得るステップと、を含む。
【0013】
上記技術的解決手段において、瞬時無効電力と所定無効電力に差を取った後に比例積分コントローラ及び共振コントローラに入り、比例積分コントローラを使用して制御の静的偏差を除去し、次に共振コントローラを導入することにより、歪み送電網成分を再構成することで、送電網の不平衡状況で送電網の電圧高調波による電流高調波を除去する。
【0014】
いくつかの好ましい実施形態において、出力コンバータ電圧に基づいて、送電網の電圧不平衡を抑制するための対応するパルス列を得るステップは、
α軸出力コンバータ電圧及びβ軸出力コンバータ電圧に基づき、変調ポリシーを利用して対応するパルス列を得るステップと、
パルス列を出力コンバータに入力して、送電網の電圧不平衡を抑制するステップと、を含む。
【0015】
いくつかの好ましい実施形態において、変調ポリシーは、パルス幅変調、空間ベクトルパルス幅変調、又は正弦波パルス幅変調を採用する。
【0016】
本願の実施例が提供する送電網の電圧不平衡の抑制装置は、
送電網電圧及び送電網電流を取得するステップに用いられる取得モジュールと、
送電網電圧に基づき、トラッキング微分器によって90°遅れた送電網電圧を計算するステップに用いられるトラッキング微分器と、
90°遅れた送電網電圧及び送電網電流に基づき、瞬時電力を計算するステップに用いられる瞬時電力計算モジュールと、
瞬時電力に基づいて出力コンバータ電圧を計算するステップに用いられる出力コンバータ電圧計算モジュールと、
出力コンバータ電圧に基づき、対応するパルス列を得て、送電網の電圧不平衡を抑制するステップに用いられるパルス列取得モジュールと、を含む。
【0017】
上記技術的解決手段の送電網の電圧不平衡の抑制装置は、取得モジュールと、トラッキング微分器と、瞬時電力計算モジュールと、出力コンバータ電圧計算モジュールと、パルス列取得モジュールと、を含み、トラッキング微分器の役割はノイズに汚染された信号から微分情報を抽出することであり、三角関数微分とその90°遅れた送電網電圧は正比例の関係を有するため、トラッキング微分器で90°遅れた送電網電圧を計算することができ、マイクロコントローラにおいて100個の浮動小数点の配列を2つ設定する必要がなく、従って、送電網の周波数の変化に敏感ではなく、送電網の周波数が変動してもその制御性能に影響せず、且つ大量のメモリリソースを節約する。
【0018】
いくつかの好ましい実施形態において、取得モジュールはさらに、三相交流電圧及び三相交流電流を得るステップと、三相交流電圧及び三相交流電流に対してパーク変換を行い、直交回転座標系での送電網電圧及び送電網電流を得るステップと、に用いられる。
【0019】
瞬時電力計算モジュールはさらに、90°遅れた送電網電圧及び送電網電流に基づき、瞬時有効電力及び瞬時無効電力を計算するステップに用いられる。
【0020】
上記技術的解決手段の瞬時電力計算モジュールは、90°遅れた送電網電圧及び送電網電流を利用して、瞬時有効電力及び瞬時無効電力を計算し、不平衡送電網における瞬時有効電力及び瞬時無効電力に対するトラッキングを実現し、実際の送電網電力の状況をより正確に反映し、瞬時電力に対する制御を強化することができ、送電網の不平衡に対してより高い抑制能力を有する。
【0021】
いくつかの好ましい実施形態において、出力コンバータ電圧計算モジュールは、
直交静止座標系での送電網電圧に対してパーク変換を行い、直交回転座標系でのd軸送電網電圧及びq軸送電網電圧を得るステップと、瞬時有効電力と所定有効電力に差を取った後に、比例積分コントローラ及び共振コントローラに入って得られたオフセット量にd軸送電網電圧を加え、d軸出力コンバータ電圧を得るステップと、瞬時無効電力と所定無効電力に差を取った後に比例積分コントローラ及び共振コントローラに入って得られたオフセット量にq軸送電網電圧を加算して、q軸出力コンバータ電圧を得るステップと、d軸出力コンバータ電圧とq軸出力コンバータ電圧に対して、逆パーク変換を行ってα軸出力コンバータ電圧とβ軸出力コンバータ電圧を得るステップと、に用いられる。
【0022】
上記技術的解決手段における出力コンバータ電圧計算モジュールは、瞬時無効電力と所定無効電力に差を取った後に比例積分コントローラ及び共振コントローラに入り、比例積分コントローラを使用して制御の静的偏差を除去し、次に共振コントローラを導入することにより、歪み送電網成分を再構成することで、送電網の不平衡状況で送電網の電圧高調波による電流高調波を除去する。
【0023】
いくつかの好ましい実施形態において、パルス列取得モジュールは、
α軸出力コンバータ電圧及びβ軸出力コンバータ電圧に基づき、変調ポリシーを利用して対応するパルス列を得るステップと、パルス列を出力コンバータに入力して、送電網の電圧不平衡を抑制するステップと、に用いられる。
【0024】
本願の実施例は、コンピュータプログラムが記憶され、該コンピュータプログラムがプロセッサによって実行されると、上記のいずれかの方法を実行するコンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【0025】
上記説明は本出願の技術的解決手段の概要に過ぎず、本出願の技術的解決手段をより明確に理解するために、明細書の内容に従って実施することができ、且つ本願の上記及び他の目的、特徴及び利点をより明確に理解できるようにするために、以下に本出願の具体的な実施形態を挙げる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本願の実施例の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下に本願の実施例に必要な図面を簡単に紹介し、理解すべきことは、以下の図面は本願のいくつかの実施例を示しているに過ぎず、範囲を限定するものと見なすべきではなく、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の関連する図面を取得することができる。
【0027】
【
図1】本願の実施例に係る送電網の電圧不平衡の抑制方法のステップフローチャートである。
【
図2】本願の実施例に係る送電網電圧及び送電網電流を取得する具体的なステップフローチャートである。
【
図3】本願の実施例に係る出力コンバータ電圧を利用して送電網の電圧不平衡を抑制するステップフローチャートである。
【
図4】本願の実施例に係るPWM整流器の機能ブロック図である。
【
図5】本願の実施例に係る送電網の電圧不平衡の抑制方法の動作フローチャートである。
【
図6】本願の実施例がさらに係る送電網の電圧不平衡の抑制装置の機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0028】
1 取得モジュール
2 トラッキング微分器
3 瞬時電力計算モジュール
4 出力コンバータ電圧計算モジュール
5 パルス列取得モジュール
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に図面を参照しながら、本願の技術的解決手段の実施例を詳細に説明する。以下の実施例は本願の技術的解決手段をより明確に説明するためにのみ用いられ、例に過ぎず、これにより本願の保護範囲を限定するものではない。
【0030】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。本明細書で使用される用語は、単に具体的な実施例を説明することが目的であり、本出願を限定することを意図したものではない。本願の明細書と特許請求の範囲及び上記図面の説明における「含む」及び「有する」という用語及びそれらの類語は、排他的ではないものを意図している。
【0031】
本明細書における「実施例」への言及は、実施例に関連して説明される特定の特徴、構造又は特性が、本出願の少なくとも1つの実施例に含まれ得ることを意味する。本明細書の各所にこの語が出現しても、必ずしも全てが同じ実施例を指すわけではなく、他の実施例と相互に排他的で独立した又は代替的な実施例を指すものでもない。当業者は、本明細書に記載の実施例は他の実施例と組み合わせることができることを明示的かつ暗示的に理解する。
【0032】
交流充電スタンドについて言えば、送電網の不平衡領域で動作することが多いが、業界標準は50Hz±5Hzの範囲内で正常に動作することを求めている。
【0033】
出願人は、従来技術が、送電網の周波数の変動に敏感であるため、充電スタンドの故障が発生しやすく、該エリアにおける送電網の安定した運用にさえ影響を及ぼすことに注目した。
【0034】
送電網の周波数の変動に敏感であることによる充電スタンドの故障を防ぐために、出願人は瞬時電力理論を用いて瞬時有効電力及び瞬時無効電力をリアルタイムに計算し、且つ通常の電流インナーループを電力インナーループに改良し、瞬時有効電力及び瞬時無効電力を直接トラッキングできることを発見した。しかし、不平衡送電網において、通常の瞬時電力理論は無効電力を正確に計算することができず、瞬時電力に対する制御も大幅に制限される。したがって、出願人は、改良された瞬時電力理論を採用し、不平衡送電網における無効電力の良好なトラッキングを達成することができる。しかし、改良された瞬時電力計算は90°遅れた電圧値を必要とするため、依然として100個の浮動小数点の配列を2つ設定する必要があり、これはマイクロコントローラにとって依然として大きな課題である。
【0035】
以上を鑑みて、出願人はアクティブフロントエンド整流器の制御アルゴリズムにおいて、三角関数の微分とその90°遅れた送電網電圧が正比例するという特徴を利用し、トラッキング微分器を導入して90°遅れた電圧を取得し、それにより100個の浮動小数点の配列を2つ設定して計算することを回避し、大量のメモリ消費を不要として、且つ、この計算方式は送電網の周波数の変化に対して敏感ではなくなり、送電網の不平衡及び送電網の周波数が変化する条件下で、アクティブフロントエンド整流器の正常な動作の実現を保証する。
【0036】
例として、送電網の周波数が元の商用周波数の周波数50Hzから45Hzに変化した場合、トラッキング微分器を用いてその微分を計算した微分量も周波数の変化に追従し、それにより正確な有効電力及び無効電力を計算する。配列法を用いた場合、50Hzは400個の配列(50usの制御周波数による)に対応し、55Hzは363(363.63)個の配列要素に対応し、45Hzは444(444.44)個の配列要素に対応するため、動的配列を用いないと送電網の周波数が変化した時に、対応して正確な電力を計算することが難しく、且つ組み込み式の安全性に対する要件が高く、また動的配列を用いるとメモリがオーバーフローするリスクがあるため、動的配列を用いることができない。
【0037】
なお、本願の以下の実施例は、業界標準によって送電網の周波数が50Hz±5Hzの範囲内であることが求められる状況に適用されるが、この状況に限定されず、可能性がある他の送電網の周波数の変動状況にも適用され得る。
【0038】
図1を参照し、
図1は本願の実施例に係る送電網の電圧不平衡の抑制方法のステップフローチャートであり、該方法は、ステップ100~500を含み、PWM整流器に適用される。
【0039】
ステップ100では、送電網電圧及び送電網電流を取得する。
【0040】
ステップ100における送電網電圧及び送電網電流は直交静止座標系での送電網電圧及び送電網電流であり、直交静止座標系での送電網電圧及び送電網電流を直接取得してもよく、三相交流電圧及び三相交流電流を取得した後にそれに対してクラーク変換を行い、直交静止座標系での送電網電圧及び送電網電流を取得してもよい。
【0041】
ステップ200では、送電網電圧に基づき、トラッキング微分器によって90°遅れた送電網電圧を計算する。
【0042】
ステップ200におけるトラッキング微分器の役割はノイズに汚染された信号から微分情報を抽出することであり、三角関数微分とその90°遅れた送電網電圧は正比例の関係を有し、送電網電圧に対するトラッキングを実現し、90°遅れた送電網電圧を取得する。
【0043】
ステップ300では、90°遅れた送電網電圧及び送電網電流に基づき、瞬時電力を計算する。
【0044】
ステップ300において瞬時電力を計算する場合、さらに瞬時有効電力及び瞬時無効電力に区別してもよく、区別しなくてもよく、ここでは限定されず、90°遅れた送電網電圧及び送電網電流から瞬時電力を計算できればよく、母線電圧は母線上の電力に直接関連しており、従って電力インナーループは電流インナーループより速い応答速度を得ることができる。
【0045】
ステップ400では、瞬時電力に基づいて出力コンバータ電圧を計算する。
【0046】
ステップ500では、出力コンバータ電圧に応じて、対応するパルス列を得て、送電網の電圧不平衡を抑制する。
【0047】
PWM(Pulse Width Modulation、パルス幅変調)整流器は工業応用に不可欠な電力電子機器であり、電力、電子、通信、交通輸送、医療衛生等の分野で広く応用されている。トラッキング微分器は能動的外乱除去制御技術(Active Disturbance Rejection Control Technique、ADRC)を用いる。出力コンバータ電圧は出力コンバータが送電網の電圧を変換した後の電圧である。瞬時電力の大きさは瞬時電圧電流瞬時値の積に等しい。瞬時有効電力は負荷のエネルギーに関連し、瞬時無効電力は単位力率を制御する。
【0048】
上記技術的解決手段は、トラッキング微分器によって90°遅れた送電網電圧を計算し、90°遅れた送電網電圧を利用して瞬時電力を計算し、さらに瞬時電力に基づいて出力コンバータ電圧を計算することにより、送電網の電圧不平衡に対する抑制を実現する。トラッキング微分器の三相交流送電網電圧を付帯した90°遅れ情報で、それぞれ100個の浮動小数点データがある2つの配列を代替するため、配列の使用が不要であり、従って、送電網の周波数の変化に敏感ではなく、送電網の周波数が変動してもその制御性能に影響せず、且つ大量のメモリリソースを節約する。
【0049】
いくつかの好ましい実施形態において、
図2を参照し、
図2は送電網電圧及び送電網電流を取得する具体的なステップフローチャートであり、即ちステップ100はさらに、
三相交流電圧及び三相交流電流を取得するステップ101と、
三相交流電圧及び三相交流電流に対してクラーク変換を行い、直交静止座標系での送電網電圧及び送電網電流を得るステップ102と、を含む。
【0050】
本願の実施例において、三相交流電圧及び三相交流電流は母線から直接収集され、従って、該実施例の方法は収集された三相交流電圧及び三相交流電流に直接対応することができる。
【0051】
いくつかの好ましい実施形態において、さらに、瞬時電力を瞬時有効電力及び瞬時無効電力に区別し、その場合、ステップ300は、90°遅れた送電網電圧及び送電網電流に基づき、瞬時有効電力及び瞬時無効電力を計算するステップを含む。
【0052】
本願実施例の送電網の電圧不平衡の抑制方法は、改良された瞬時電力理論を用い、90°遅れた送電網電圧及び送電網電流を利用して、瞬時有効電力及び瞬時無効電力を計算し、不平衡送電網における瞬時有効電力及び瞬時無効電力に対するトラッキングを実現し、実際の送電網電力の状況をより正確に反映して、瞬時電力に対する制御を強化することができ、送電網の不平衡に対してより高い抑制能力を有する。
【0053】
いくつかの好ましい実施形態において、ステップ400において、瞬時電力に基づいて出力コンバータ電圧を計算する計算フローは、具体的には、
直交静止座標系での送電網電圧に対してパーク変換を行い、直交回転座標系でのd軸送電網電圧及びq軸送電網電圧を得るステップと、瞬時有効電力と所定有効電力に差を取った後に、比例積分コントローラ及び共振コントローラに入って得られたオフセット量にd軸送電網電圧を加え、d軸出力コンバータ電圧を得るステップと、瞬時無効電力と所定無効電力に差を取った後に比例積分コントローラ及び共振コントローラに入って得られたオフセット量にq軸送電網電圧を加算して、q軸出力コンバータ電圧を得るステップと、d軸出力コンバータ電圧とq軸出力コンバータ電圧に対して、逆パーク変換を行ってα軸出力コンバータ電圧とβ軸出力コンバータ電圧を得るステップと、を含む。ここで、所定無効電力は無効電力の所定値であり、所定有効電力は有効電力の所定値である。比例積分コントローラは、積分作用によりコントローラの出力と偏差の積分を比例させ、従って遷移過程が終了する時に残差がない。しかし積分作用が加わると、安定性が低下する。積分作用時に比例度を増大させると、安定性を保持することができるが、オーバーシュート量と発振周期が増大し、遷移時間が長くなる。このコントローラは最も多く使用され、チャネルの遅れが小さく、負荷の変化が小さく、プロセス要件に残差があってはならないシステムの調整に適用される。共振コントローラは、インダクタンス及びコンデンサで構成され、1つ又は複数の周波数で共振現象を発生させることができる回路であり、共振回路と総称される。所定無効電力が0である場合、その補間値は、瞬時無効電力の反数、すなわち負の瞬時無効電力である。一般的なグリッドタイインバータはいずれも単位力率モードで動作し、該モードでは、無効電力が0であり、送電網に伝達される有効電力が最も多く、同じ有効電力での損失が最も小さい。状況によって無効電力が0でない場合、例えば、グリッドタイインバータが、低電圧ライドスルー機能を提供し、送電網に所定量の無効電力を供給して送電網電圧の安定性を維持することが求められる場合もある。
【0054】
本願の実施例において、瞬時無効電力と所定無効電力に差を取った後に比例積分コントローラ及び共振コントローラに入り、比例積分コントローラを使用して制御の静的偏差を除去し、次に共振コントローラを導入して、歪み送電網成分を再構成することで、送電網の不平衡状況で送電網の電圧高調波による電流高調波を除去する。且つ、不平衡状況で改善された瞬時電力は実際の送電網の状況をより反映することができ、従って、改善された瞬時電力を用いることで、d軸電流及びq軸電流から再構成された再構成歪み送電網成分はより正確である。例えば、送電網の周波数が46Hzである不平衡三相送電網は、α軸電流及びβ軸電流の各400個の浮動小数点要素の配列が予め決定されているため、配列を利用して90°遅れた電圧を取得する方法は送電網の周波数の変化に適応できず、その性能が大幅に劣化する。例えば、送電網の周波数が元の商用周波数の周波数50Hzから45Hzに変化した場合、配列法を用いると、50Hzは400個の配列(50usの制御周波数による)に対応し、55Hzは363(363.63)個の配列要素に対応し、45Hzは444(444.44)個の配列に対応するため、400個の配列を用いると、45Hzにおいて完全な周期のデータ(400個より大きい)を記憶することができず、55Hzではアクセスアルゴリズムが非常に複雑であり、且つ小数が存在するため一定の誤差が生じる。
【0055】
本解決手段はトラッキング微分器によって90°遅れた送電網電圧を得ることにより、改善された瞬時電力理論を計算し、該過程において微分コントローラの計算は送電網の周波数と関係がなく、大量の配列も必要とせず、瞬時電力の計算は90°遅れた送電網電圧を必要とし、通常の方法は配列によって取得され、該方法は同様に送電網の周波数の影響を受けるのに対して、本解決手段は微分コントローラを利用して取得されるため、本解決手段は周波数が変動する送電網でも安定して運用することができ、且つ送電網の電圧高調波を効果的に抑制する。
【0056】
いくつかの好ましい実施形態において、
図3を参照すると、
図3は出力コンバータ電圧を利用して送電網の電圧不平衡を抑制するステップフローチャートであり、即ちステップ500は、具体的に、
α軸出力コンバータ電圧及びβ軸出力コンバータ電圧に基づき、変調ポリシーを利用して対応するパルス列を得るステップ501と、
パルス列を出力コンバータに入力して、送電網の電圧不平衡を抑制するステップ502と、を含む。
【0057】
本願の実施例において、得られた出力コンバータ電圧に対して、変調ポリシーを利用して対応するパルス列を得て、出力コンバータは該パルス列に基づいて送電網の電圧不平衡を抑制することができる。
【0058】
いくつかの好ましい実施形態において、ステップ501で使用される変調ポリシーは、パルス幅変調(Pulse width modulation,PWM)、正弦波パルス幅変調(Sinusoidal Pulse Width Modulation,SPWM)、空間ベクトルパルス幅変調(Space Vector Pulse Width Modulation,SVPWM)などを含む。
【0059】
本願のいくつかの実施例に基づき、
図4を参照すると、
図4はPWM整流器の機能ブロック図であり、
図4において、Ea、Eb、Ecはそれぞれa、b、c三相送電網電圧のサンプルであり、サンプリング点はインダクタンスの送電網に近接する端にあり、Ia、Ib、Icはそれぞれa、b、c三相電流サンプルであり、サンプリングされるのは三相インダクタンスを流れる電流であり、Vdcは母線電圧サンプルであり、サンプリングされるのは出力コンデンサ上の電圧である。Q1~Q6はスイッチトランジスタであり、アルゴリズムで得られたパルス列はスイッチトランジスタに印加し、そのオンオフを制御する。位相同期ループ(Phase Lock Loop、PLL)は送電網の周波数及び位相を計算し、出力されたwは送電網角周波数である。座標変換であるパーク変換及びクラーク変換は、三相静止座標系を二相静止座標系及び二相回転座標系に変換する。電力計算に用いられるのは90°遅れた送電網電圧及びリアルタイムの送電網電流であり、本願において90°遅れた送電網電圧はトラッキング微分器により得られ、該モジュールの計算結果は瞬時有効電力及び瞬時無効電力である。
【0060】
従来のベクトル制御において、アウターループは一般的に出力電圧ループであり、出力電圧を制御して安定させ、インナーループは電流ループ又は電力ループであり、インダクタ電流又は全体電力を制御して安定させる。本願の実施例は電力ループの改良に基づき、瞬時有効電力は負荷のエネルギーに相関し、瞬時無効電力は単位力率を制御する。座標逆変換は逆パーク変換及び逆クラーク変換であり、PWMモジュールはSVPWM又はSPWM又は他のPWM変調方式であってもよい。PWM1~PWM6はPWMモジュールの出力であり、それぞれQ1~Q6スイッチトランジスタのオンオフを制御する。
【0061】
図5を参照すると、
図5は送電網の電圧不平衡の抑制方法の動作フローチャートであり、具体的には、
母線電圧Vdc、三相交流電圧Ea、Eb、Ec及び三相交流電流Ia、Ib、Icを収集するステップを含む。
【0062】
三相交流電圧Ea、Eb、Ec、三相交流電流Ia、Ib、Icに対してクラーク変換を行って直交静止座標系での送電網電圧Eα、Eβ(即ち、α軸送電網電圧Eα、β軸送電網電圧Eβ)及び直交静止座標系での送電網電流Iα、Iβ(即ち、α軸送電網電流Iα、β軸送電網電流Iβ)が得られ、下記の式に示すとおりである。
【0063】
【0064】
【0065】
直交静止座標系での送電網電圧Eα、Eβに対して、パーク変換を行って直交回転座標系での送電網電圧Ed、Eq、即ちd軸送電網電圧Edとq軸送電網電圧Eqが得られ、下記の式に示すとおりである。
【0066】
【0067】
トラッキング微分器を直交静止座標系での送電網電圧Eα、Eβに対して作用させると、直交静止座標系での90°遅れた送電網電圧Eα’、Eβ’が得られる。トラッキング微分器の計算は以下のとおりである。
【0068】
xα1(k)=xα1(k-1)+h・xα2(k-1)
【0069】
xα2(k)=xα2(k-1)-h・r^2(xα1(k-1)-Eα(k-1)+2/r・xα2(k-1))
【0070】
xβ1(k)=xβ1(k-1)+h・xβ2(k-1)
【0071】
xβ2(k)=xβ2(k-1)-h・r^2(xβ1(k-1)-Eβ(k-1)+2/r・xβ2(k-1))
【0072】
Eα90°遅れ電圧Eα’=(Xα2(k))/w
【0073】
Eβ90°遅れ電圧Eβ’=(Xβ2(k))/w
【0074】
ただし、rは速度トラッキング因子であり、rの値が大きいほどトラッキング速度が速くなり、hはフィルタ因子であり、hの値が大きいほど波形が滑らかになり、xα1(k)は現在のk時点のEαのトラッキングであり、xα2(k)はEα微分のトラッキングであり、xβ1(k)はEβのトラッキングであり、xβ2(k)はEβ微分のトラッキングであり、xα1(k-1)はk-1時点のEαのトラッキング結果であり、xα2(k-1)はk-1時点のEα微分のトラッキング結果であり、xβ1(k-1)はk-1時点のEαのトラッキング結果であり、xβ2(k-1)はk-1時点のEα微分のトラッキング結果である。wは送電網の角周波数であり、位相同期ループ(phase lock loop、PLL)によって得られる。
【0075】
直交静止座標系での90°遅れた送電網電圧及び直交静止座標系での実際の送電網電流を用いて、改善された瞬時電力P、Qを計算し、下記の式に示すである。
【0076】
瞬時有効電力P=Eα’・Iβ-Eβ’・Iα
【0077】
瞬時無効電力Q=Eα’・Iα+Eβ’・Iβ
【0078】
コントローラは、母線電圧所定値Vdc*及びサンプリング値Vdcに基づいて、比例積分コントローラを介して有効電力所定値P*を得る。
【0079】
所定有効電力P*と瞬時有効電力Pとの差は比例積分コントローラ(
図4におけるPI)及び共振コントローラ(
図4におけるR)に入り、共振コントローラの出力から比例積分コントローラの出力を減算して得られたオフセット量には、さらに直交回転座標系での送電網電圧Edを加算してd軸出力コンバータ電圧Vdを得る。
【0080】
所定無効電力0と瞬時無効電力Qとの差が比例積分コントローラと共振コントローラに入り、共振コントローラの出力から比例積分コントローラの出力を減算して得られたオフセット量に、さらに直交回転座標系での送電網電圧Eqを加算してq軸出力コンバータ電圧Vqを得る。
【0081】
比例積分コントローラの伝達関数は、下記の式に示すとおりである。
【0082】
【0083】
共振コントローラの伝達関数は、下記の式に示すとおりである。
【0084】
【0085】
Kp、Ki、Kr、ωc及びsはそれぞれ比例ゲイン、積分ゲイン、共振ゲイン、カットオフ周波数及び微分演算子である。
【0086】
アウターループ比例積分コントローラの入力は所定電圧と実際電圧との差Vdc*-Vdcであり、出力は所定有効電力P*であり、有効電力インナーループ比例積分コントローラ及び共振コントローラの入力は所定有効電力と計算有効電力との差P*-Pであり、出力はVd’であり、無効電力インナーループ比例積分コントローラ及び共振コントローラの入力は所定無効電力と計算無効電力との差Q*-Qであり、出力はVq’であり、この場合、インバータ電圧Vd、Vqは、下記の式に示すとおりである。
【0087】
Vd=Ed-Vd’
【0088】
Vq=Eq-Vq’
【0089】
d軸及びq軸出力コンバータの電圧Vd、Vqから逆パーク変換によってα軸、β軸出力コンバータの電圧Vα、Vβを得て、下記の式に示すとおりである。
【0090】
【0091】
最後に、α軸、β軸出力コンバータの電圧Vα、VβはSVPWMによって対応するパルス列を得る。
【0092】
上記実施例において、比例積分コントローラを用いて制御の静的偏差を除去する。且つ、共振コントローラを導入して歪み送電網成分を再構成し、送電網の不平衡状況での送電網の電圧高調波による電流高調波を除去する。不平衡状況で改善された瞬時電力は実際の送電網の状況をより反映することができ、改善された瞬時電力を用いることで、d軸電流及びq軸電流から再構成された再構成歪み送電網成分より正確である。改善された瞬時電力を計算する際にそれぞれ100個の浮動小数点要素がある2つの配列を使用する必要があることを省略するために、トラッキング微分器を導入して90°遅れた送電網電圧を取得する。
【0093】
以上から、本願の1つ又は複数の実施例の利点は以下のとおりである。1.送電網の周波数変化に対して敏感ではなく、50Hz±5Hzの送電網において正常に動作することができる。2.メモリ消費が少なく、それぞれ400個の浮動小数点要素がある2つの配列を設定し、1つの商用周波数周期の繰り返しコントローラ出力を記録する必要がない。3.送電網の不平衡に対してより優れた抑制効果を有する。
【0094】
図6を参照すると、
図6に示すとおり、本願の実施例がさらに係る送電網の電圧不平衡の抑制装置の機能ブロック図であり、取得モジュール1、トラッキング微分器2、瞬時電力計算モジュール3、出力コンバータ電圧計算モジュール4、パルス列取得モジュール5を含む。取得モジュール1は、送電網電圧及び送電網電流を取得するために用いられる。トラッキング微分器2は、送電網電圧に基づき、トラッキング微分器によって90°遅れた送電網電圧を計算するために用いられる。瞬時電力計算モジュール3は、90°遅れた送電網電圧及び送電網電流に基づき、瞬時電力を計算するために用いられる。出力コンバータ電圧計算モジュール4は、瞬時電力に基づいて出力コンバータ電圧を計算するために用いられる。パルス列取得モジュール5は、出力コンバータ電圧に基づき、対応するパルス列を得て送電網の電圧不平衡を抑制するために用いられる。
【0095】
本願の実施例の送電網の電圧不平衡の抑制装置においては、トラッキング微分器2の役割はノイズに汚染された信号から微分情報を抽出することであり、三角関数微分とその90°遅れた送電網電圧は正比例の関係を有するため、トラッキング微分器で90°遅れた送電網電圧を計算することができ、マイクロコントローラにおいてそれぞれ100個の浮動小数点がある2つの配列を設定する必要がなく、送電網の周波数の変化に敏感ではなく、送電網の周波数が変動してもその制御性能に影響せず、且つ大量のメモリリソースを節約する。
【0096】
いくつかの好ましい実施形態において、取得モジュール1はさらに、三相交流電圧及び三相交流電流を得るステップと、三相交流電圧及び三相交流電流に対してパーク変換を行い、直交回転座標系での送電網電圧及び送電網電流を得るステップと、に用いられる。瞬時電力計算モジュール3はさらに、90°遅れた送電網電圧及び送電網電流に基づき、瞬時有効電力及び瞬時無効電力を計算するステップに用いられる。
【0097】
本願実施例の瞬時電力計算モジュール3は、90°遅れた送電網電圧及び送電網電流を利用して、瞬時有効電力及び瞬時無効電力を計算し、不平衡送電網における瞬時有効電力及び瞬時無効電力に対するトラッキングを実現し、実際の送電網電力の状況をより正確に反映し、瞬時電力に対する制御を強化することができ、送電網の不平衡に対してより高い抑制能力を有する。
【0098】
いくつかの好ましい実施形態において、出力コンバータ電圧計算モジュール4はさらに、直交静止座標系での送電網電圧に対してパーク変換を行い、直交回転座標系でのd軸送電網電圧及びq軸送電網電圧を得るステップと、瞬時有効電力と所定有効電力に差を取った後に、比例積分コントローラ及び共振コントローラに入って得られたオフセット量にd軸送電網電圧を加え、d軸出力コンバータ電圧を得るステップと、瞬時無効電力と所定無効電力に差を取った後に比例積分コントローラ及び共振コントローラに入って得られたオフセット量にq軸送電網電圧を加算して、q軸出力コンバータ電圧を得るステップと、d軸出力コンバータ電圧とq軸出力コンバータ電圧に対して、逆パーク変換を行ってα軸出力コンバータ電圧とβ軸出力コンバータ電圧を得るステップと、に用いられる。
【0099】
いくつかの好ましい実施形態において、パルス列取得モジュール5はさらに、α軸出力コンバータ電圧及びβ軸出力コンバータ電圧に基づき、変調ポリシーを利用して対応するパルス列を得るステップと、パルス列を出力コンバータに入力して、送電網の電圧不平衡を抑制するステップと、に用いられる。
【0100】
本願の実施例は、コンピュータプログラムコマンドが記憶され、前記コンピュータプログラムコマンドがコンピュータのプロセッサによって読み取られ実行されると、本願の実施例に係る方法を実行するコンピュータ可読記憶媒体をさらに提供する。例えば、コンピュータ可読記憶媒体は、送電網電圧及び送電網電流を取得するステップと、送電網電圧に基づき、トラッキング微分器によって90°遅れた送電網電圧を計算するステップと、90°遅れた送電網電圧及び送電網電流に基づき、瞬時電力を計算するステップと、瞬時電力に基づいて出力コンバータ電圧を計算するステップと、出力コンバータ電圧に基づき、対応するパルス列を得て送電網の電圧不平衡を抑制するステップと、を実行することができる。
【0101】
本願が提供する実施例において、当然のことながら、開示された装置及び方法は、他の形態で実現することができる。これまで説明された装置の実施例は例示的なものに過ぎず、例えば、前記ユニットの分割は論理機能の分割に過ぎず、実際に実現する時には他の分割方式を有してもよく、例えば複数のユニット又はアセンブリを別のシステムに組み合わせるか又は集積してもよく、又はいくつかの特徴を無視し、又は実行しなくてもよい。別の点では、図示又は議論される相互の結合又は直接的な結合、又は通信接続は、通信インタフェース、装置又はユニットを介した間接的な結合又は通信接続であってもよく、電気的、機械的又は他の形態であってもよい。
【0102】
また、前記分離部材として説明されたユニットは物理的に分離してもよく又は分離しなくてもよく、ユニットとして示された部材は物理的ユニットであってもよく又はそうでなくてもよく、すなわち一箇所に位置してもよく、又は複数のネットワークユニットに分布していてもよい。実際の必要に応じてそのうちの一部又は全てのユニットを選択して本実施例の解決手段の目的を達成することができる。
【0103】
さらに、本願の各実施例における各機能モジュールは一体に集積されて1つの独立した部分を形成してもよく、各モジュールが単独で存在してもよく、2つ又は2つ以上のモジュールが一体に集積されて1つの独立した部分を形成してもよい。
【0104】
本明細書において、第1及び第2などの関係用語は、1つの実体又は操作を別の実体又は操作から区別するためにのみ使用され、これらの実体又は操作の間に任意のそのような実際の関係又は順序が存在することを必ずしも要求又は暗示するものではない。
【0105】
以上の記載は本願の実施例に過ぎず、本願の保護範囲を限定するものではなく、当業者にとって、本願は様々な修正及び変更が可能である。本願の主旨及び原則の範囲内でなされる任意の修正、等価置換、改良等は、いずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。
【国際調査報告】