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特表2023-550201バイオベースの材料及びそれを調製するための方法
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  • 特表-バイオベースの材料及びそれを調製するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-30
(54)【発明の名称】バイオベースの材料及びそれを調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20231122BHJP
   D06N 3/00 20060101ALI20231122BHJP
   C08H 1/00 20060101ALI20231122BHJP
   B29B 11/10 20060101ALI20231122BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20231122BHJP
   B29D 7/01 20060101ALI20231122BHJP
   B29B 7/88 20060101ALI20231122BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20231122BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
C08J5/18
D06N3/00
C08H1/00
B29B11/10
B29C48/08
B29D7/01
B29B7/88
C08J3/12 A
C08J3/20 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547751
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2023-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2021078687
(87)【国際公開番号】W WO2022079284
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】20306211.2
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】517125546
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ジャン モネ、サン テティエンヌ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE JEAN MONNET SAINT ETIENNE
【住所又は居所原語表記】MAISON DE L’UNIVERSITE 10 RUE TREFILERIE, 42100 SAINT ETIENNE, FRANCE
(71)【出願人】
【識別番号】523140843
【氏名又は名称】ラ タヌリ ヴェジェタル
(71)【出願人】
【識別番号】505257028
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ クロード ベルナール リヨン 1
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】ドレアージュ ファニー
(72)【発明者】
【氏名】シャラメ イヴァン
【テーマコード(参考)】
4F055
4F070
4F071
4F201
4F207
4F213
【Fターム(参考)】
4F055AA01
4F055BA03
4F055FA29
4F055FA34
4F055FA39
4F055GA17
4F055GA18
4F070AA62
4F070AC36
4F070AE02
4F070FA03
4F070FB06
4F070FC05
4F071AA70
4F071AA86
4F071AC05
4F071AC09
4F071AE04
4F071AE22
4F071AF15Y
4F071AF20Y
4F071AF21Y
4F071AF22Y
4F071AH19
4F071BA01
4F071BB03
4F071BC01
4F071BC12
4F201AA49
4F201AB06
4F201AB07
4F201AB10
4F201AB11
4F201AB12
4F201AG01
4F201AG02
4F201AG14
4F201BA01
4F201BA02
4F201BA03
4F201BC01
4F201BC13
4F201BC21
4F201BC33
4F201BD04
4F201BD05
4F201BD10
4F201BK02
4F201BK13
4F201BL08
4F201BM04
4F201BM05
4F201BM06
4F201BM14
4F207AA49
4F207AB06
4F207AB07
4F207AB11
4F207AB12
4F207AG01
4F207AG02
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK64
4F207KL84
4F207KL88
4F213AA49
4F213AB06
4F213AB07
4F213AB11
4F213AB12
4F213AG01
4F213AG02
4F213AG14
4F213AR02
4F213AR06
(57)【要約】
【課題】バイオベースの材料及びそれを調製するための方法を提供する。
【解決手段】本開示は、(i)植物タンパク質、(ii)1種又は複数の植物なめし剤、(iii)1種又は複数の可塑剤を含む混合物からの、動物の皮革に類似し得るバイオベースの材料の調製のための方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物タンパク質から半製品を調製するための方法であって、
(a)(i)植物タンパク質、
(ii)1種又は複数の植物なめし剤、
(iii)1種又は複数の可塑剤
を含む混合物を流動化させ、混錬するステップと、
(b)半製品を生成するために、流動化され、混錬された混合物を圧縮するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
なめし剤が、ポリフェノール性なめし剤から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
タンパク質が、穀物タンパク質、マメ科タンパク質、油糧種子タンパク質、大型藻類タンパク質、微細藻類タンパク質及びそれらの混合物からなる群から選択される植物タンパク質であり、好ましくは、植物タンパク質がコムギグルテンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
可塑剤が、水、粗製グリセロール、精製グリセロール、グリセロール誘導体、アルコール、ポリオール、サッカライド及びオリゴ糖、リグナン、飽和又は不飽和カルボン酸及びそれらの塩、クマリン、スルホン酸、アミノ酸、尿素、イオン液体、共晶溶媒、並びにそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはグリセロール、尿素、水、及びそれらの混合物から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
混合物が、フィラー、染料、顔料、粘度調整剤、pH調整剤、保存剤、疎水性物質、界面活性剤、イオン性調整剤、UV安定剤及びそれらの混合物の中から選択される有機又は無機添加剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
流動化が、混合物を60~250℃の範囲の温度まで加熱することによって得られる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
混合物の流動化、混錬及び圧縮が、押出ヘッドを備えた押出機において行われる、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
半製品が、シート、フィルム、プレート、ワイヤー、技術的プロファイル、管、ロッド又はペレットである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
調製された半製品を冷却するステップ、
調製された半製品を乾燥させるステップ、
半製品が、技術的プロファイル、管又はロッドである場合には、調製された半製品を造粒するステップ
のうちの1つ又は複数をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法によって得ることができる、半製品。
【請求項11】
半製品が、シート、フィルム、プレート、技術的プロファイル、管、ロッド又はペレットである、請求項10に記載の半製品。
【請求項12】
物品を調製するための、請求項10又は11に記載の半製品の使用。
【請求項13】
請求項10又は11に記載の半製品から調製される物品。
【請求項14】
物品が、射出成形される物品である、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
請求項10又は11に記載の半製品から物品を調製するための方法であって、押出カレンダー加工、押出膨張、押出スピニング、射出、3D印刷又は成形によって、加圧下で半製品を造形するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物タンパク質から、動物の皮革に類似し得るバイオベースの材料を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮革産業は、環境へのそれらの影響について頻繁に批判されている。なめし過程中の、水の大量消費、数々の化学物質の投入、並びに空気及び水への潜在的な化学廃棄物及び有機廃棄物の処分は、この産業のマイナスイメージに寄与している。多くの消費者が、動物の皮革からこれらの環境問題が目を背けられていることに関して憂慮した。
これらの生態系への懸念に対応し、且つ新しい要求を満たすために、動物の皮革に類似している新しい材料が浮上してきており、また浮上し続けている。提案されている主な代替は、完全に合成の石油ベースの材料(例えば、ポリ塩化ビニル)であるか、又はプラスチック材料、例えばポリウレタンでコーティングされた天然若しくは合成繊維基材から作製されている。
より機密性が高く、且つより高価な他の代替、例えばパイナップルの葉から作製されたパイナップル皮革、ユーカリの葉から作製されたユーカリ皮革、又はマッシュルーム皮革が存在している。非常に一般的には、ポリウレタンが、これらの天然要素と混合されている。
また、植物タンパク質から動物の皮革の代替を調製することが提案されてきた。したがって、特開平04-153378号公報は、植物タンパク質(ダイズタンパク質)を押し出すステップに続いて、結果として得られた材料のクロム又は植物ベースのなめしステップを含む、代替材料を調製するための方法を提案している。
【0003】
しかし、これらの代替の一部は、生態学的観点からは完全に満足のいくものではないと思われる。ポリウレタンベースの材料は、石油化学製品から誘導されており、生態学的責任を果たす調製方法に統合することが困難である。加えて、材料のライフサイクルが、必ずしも全体として考慮されているわけではない。これらの代替、特にポリウレタンと関連する繊維を含む代替の一部のリサイクルは、困難な場合がある。最後に、これらの代替では、熱可塑性特性を有している材料を得ることができない。
したがって、様々な技術分野において多種多様な適用のために使用することができる、バイオベースのリサイクル可能な材料が、依然として必要である。有利なことには、提案された材料は、動物の皮革の好ましい代替に相当し得る。さらに、この材料の調製方法は、迅速であり、経済的であり、且つ環境に優しい。
バイオベースの材料は、例えば米国特許第6902783号、欧州特許出願公開第0976790号明細書、Sun et al, Food Hydrocolloids, vol. 21, p.1005-1013によって提案された。これらの材料は、アルデヒド又はポリアルデヒドタイプの架橋剤を用いることによって、バイオポリマー又は植物タンパク質を架橋することにより得られる。その方法は、植物なめし剤を使用していない。次に、形成された化学結合は共有結合であり、リサイクル可能な、熱可塑性のような材料を得ることができない。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、植物タンパク質から半製品を調製するための方法であって、
(a)(i)植物タンパク質、
(ii)1種又は複数の植物なめし剤、
(iii)1種又は複数の可塑剤
を含む混合物を流動化させ、混錬するステップと、
(b)半製品を生成するために、流動化され、混錬された混合物を圧縮するステップと
を含む、方法、
並びにこのような方法によって得ることができる半製品、及び物品(市販品)の調製のためのそれらの使用に関する。
本発明はまた、本明細書に記載される半製品から物品を調製するための方法であって、押出カレンダー加工(calendaring)、押出膨張、押出スピニング(extrusion spinning)、射出、3D印刷又は成形によって、加圧下で半製品を造形するステップを含む、方法に関する。本発明はまた、このような方法によって得られた物品に関する。
本発明の他の態様は、以下及び特許請求の範囲に記載されている通りである。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】押出によって得られた試料T1~T4の写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明者らは、ある特定の形態(シート、フィルム、プレート)で、動物の皮革に類似する半製品、又は植物タンパク質からの、動物の皮革に類似し得る材料の調製を可能にする半製品を調製するための方法を開発した。
したがって、本発明は、植物タンパク質から半製品を調製するための方法であって、
(a)(i)植物タンパク質、
(ii)1種又は複数の植物なめし剤、
(iii)1種又は複数の可塑剤
を含む混合物を流動化させ、混錬するステップと、
(b)半製品を生成するために、流動化され、混錬された混合物を圧縮するステップと
を含む、方法に関する。
本発明はまた、本発明の方法によって得ることができる半製品に関する。
この説明において使用される「半製品」という用語は、多種多様な物品の調製のための基礎として働く製品を指す。
【0007】
「半製品」という用語には、シート、フィルム、プレート、ワイヤー、技術的プロファイル(profile)、ロッド、管、固体形状及びペレットが含まれるが、これらに限定されない。
本発明の半製品から調製することができる物品の例として、パッケージング、食品との接触を意図することができる成形品(カップ、食品容器、カトラリーなど)、家庭、織物又は装飾に使用するための成形品(ポット、箱、保護シェル、ボタン、記念品(token)、ハンドル、アームレスト、ソールなど)、織物品及び付属品、皮革商品及び付属品、スポーツ用品、農業又は園芸用のフィルム又はネット、可撓性材料のための仕上げフィルム、並びに発泡体が挙げられるが、これらに限定されない。半製品はまた、表面コーティングのための水溶液及び懸濁液を調製するために使用することができる。
本説明において使用される「技術的プロファイル」という用語は、特定の形状が与えられた材料を指す。
本発明の方法、及びこの方法によって得ることができる半製品は、下記の通りである。
【0008】
半製品を調製するための混合物の成分
本発明の半製品は、i)植物タンパク質、(ii)1種又は複数の可塑剤、及び(iii)1種又は複数の植物なめし剤を含む混合物を流動化させ、混錬し、圧縮した後に得られる。混合物は、さらに、任意の有機又は無機添加剤/成分(例えば、フィラー、染料、顔料、粘度調整剤、pH調整剤、保存剤、疎水性物質、界面活性剤、イオン性調整剤、UV安定剤)を含み得る。
植物タンパク質、1種又は複数の植物なめし剤、及び1種又は複数の可塑剤の混合物は、熱可塑性タイプの材料の調製をもたらす。したがって、このような特性は、材料が意図されている使用に適合させられた、非常に多様な造形の可能性を与える。
植物タンパク質及び可塑剤を含む混合物への、1種又は複数の植物なめし剤の直接的な添加により、動物の皮革に類似しており、且つ可撓性の増大及び良好な耐水性を示す材料を上手く調製することが、予想外に可能になる。さらに、このような材料は、リサイクル可能であるという利点を有している。
【0009】
タンパク質
本発明の文脈において有用なタンパク質は、植物タンパク質、例えば植物又は藻類由来のタンパク質である。
混合物は、典型的に、混合物の総質量に基づいて、15~70質量%、好ましくは20~60質量%の植物タンパク質を含む。
好ましくは、混合物は、動物性タンパク質(哺乳動物、魚、鳥、爬虫類及び両生類)を含まない。
本発明の文脈において有用な植物タンパク質は、好ましくは、穀物タンパク質(例えば、コムギ、ソバ、オオムギ、ライムギ、トウモロコシ、エンバク、スペルトコムギ、キノア、アマランス、チア、キビ、コメ)、マメ科タンパク質(例えば、マメ、エンドウマメ、ソラマメ、ルピナス、レンズマメ、イナゴマメ、リコリス、アルファルファ、クローバー、コロハ)、油糧種子タンパク質(例えば、ダイズ、ナタネ、亜麻仁、大麻、ヒマワリ、ヒマシ、ヤシ、オークドングリ、ピーナッツ、ゴマ、クルミ、アーモンド、綿、カボチャ種子、ブドウ種子、オリーブ、ココナッツ、ヘーゼルナッツ)、大型藻類タンパク質(褐藻植物門(褐色藻類)、緑藻植物門及び車軸藻植物門(緑色藻類)、紅色植物門(紅藻類))、微細藻類タンパク質(珪藻門(珪藻)、緑藻植物門(緑色藻類)、黄金色植物門(黄金色藻類)、及び藍色植物門(藍藻類)(例えば、アルスロスピラ・プラテンシス(Arthrospira platensis)(スピルリナ)、クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)(クロレラ))及びそれらの混合物からなる群から選択される。コムギタンパク質、特にコムギグルテン、ソラマメ及びクロレラタンパク質が、本発明の文脈において特に有用である。
【0010】
混合物は、典型的に、混合物の総質量に基づいて、20~85質量%、好ましくは15~70質量%、又は20~60質量%、又は35~75質量%の植物タンパク質を含む。植物タンパク質は、一般的に、植物タンパク質配合物の形態で、例えば油かす(例えば、ナタネ、亜麻仁、大麻、ヒマワリかす)又は濃縮物若しくは単離物(例えば、エンドウマメ濃縮物、ソラマメ濃縮物)又はタンパク質濃縮粉の形態で、混合物に添加される。植物タンパク質が、コムギグルテンである場合、様々な質のグルテンを使用することができる。
植物タンパク質又は植物タンパク質配合物は、典型的に、固体形態、例えば粉末形態で使用される。
【0011】
可塑剤
本発明において使用される可塑剤は、可塑化剤及び/又は変性剤として作用する。可塑剤は、混合物の粘度を低減し、したがってその処理を容易にすることを可能にする。可塑剤はまた、本方法によって得られた材料の可撓性、特に形成されているか、又は半製品を造形した後に形成することができるシート又はフィルムの可撓性を増大することを可能にする。
本発明の文脈において有用な可塑剤は、好ましくは、水、粗製グリセロール、精製グリセロール、グリセロール誘導体(例えば、グリセリルモノ、ジ-及びトリ-アセテート、ジグリセロール、ポリグリセリン、グリセロールエステル、ポリグリセロールエステル、グリセロールカーボネート)、アルコール、ポリオール(例えば、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、キシリトール、エリスリトール、アラビトール、イソソルビド、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ポリエチレングリコール、フェノール)、サッカライド及びオリゴ糖、リグナン、好ましくは2~10個の炭素原子を有している飽和又は不飽和カルボン酸、及びそれらの塩(例えば、酢酸、プロピオン酸、乳酸、イソ酪酸、ペンタン酸、ヘキサン(haxanoic)酸、グルコン酸、ソルビン酸、カプリル酸、安息香酸、没食子酸、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、コーヒー酸、ケイ皮酸、ヒドロキシケイヒ酸、アスコルビン酸、コハク酸、酒石酸、カプリン酸、又はそれらの構成異性体若しくはそれらの塩)、クマリン、スルホン酸、アミノ酸(例えば、プロリン、ロイシン、イソロイシン、リシン、システイン)、尿素、イオン液体(例えば、アンモニウム塩)、共晶溶媒(例えば、コリン/グリセロール)、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。一部の好ましい実施形態では、可塑剤は、グリセロール、尿素、水、プロパンジオール、ソルビン酸カリウム、及びそれらの混合物から選択され、好ましくはグリセロール、尿素、水、及びそれらの混合物から選択される。一部の実施形態では、可塑剤は、グリセロール及びグリセロール以外の可塑剤を含む混合物である。一部の実施形態では、可塑剤は、水及び水以外の可塑剤を含む混合物である。したがって、これらの実施形態では、可塑剤は、水以外の可塑剤の水溶液であり得る。
【0012】
混合物(流動化され、混錬されることになる)は、典型的に、混合物の総質量に基づいて、15~85質量%、好ましくは20~70質量%又は20~60質量%又は35~55質量%の可塑剤を含む。可塑剤は、単独で又は混合物で使用され得るので、混合物は、典型的に、混合物の総質量に基づいて、15~85質量%又は20~70質量%又は20~60質量%又は35~50質量%の可塑剤又は可塑剤の混合物を含むと理解される。
可塑剤は、固体形態又は液体形態で使用することができる。
一部の実施形態では、混合物は、添加された水を全く含まない(存在する水は、混合物の成分によってのみ提供される)。
【0013】
なめし剤
本発明の文脈において有用な植物なめし剤(又は植物タンニン)には、ポリフェノール性なめし剤及びそれらの混合物が含まれる。
ポリフェノール性なめし剤は、典型的に、糖又はテルペンに結合し得る2~10個のフェノール単位を含む。
植物なめし剤は、天然(例えば、植物エキス)であってよく、又は化学合成によって得ることができる。好ましくは、植物なめし剤は、天然薬剤である。
混合物は、典型的に、混合物の総質量に基づいて、0.01~20質量%、好ましくは2~15質量%又は2~8質量%の、ポリフェノール性なめし剤から選択される1種又は複数のなめし剤を含む。
一部の実施形態では、可逆的なめしのための無機タンニン、例えばカリウムミョウバンが、植物なめし剤に添加され得る。
一部の実施形態では、混合物は、アルデヒド(例えば、ポリアルデヒド、ジアルデヒド、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、キノン、リン脂質、ポリリン酸塩)及びそれらの混合物から選択される有機なめし剤を含まない。このような薬剤は、材料の不可逆的架橋を生じる。
【0014】
一部の実施形態では、混合物は、クロム塩、アルミニウム塩、ジルコニル塩、鉄及び/若しくはチタン塩、硫黄、又はそれらの混合物から選択される無機(金属性又は鉱質)タンニンを含まない。このような薬剤は、材料の不可逆的架橋を生じる。
ポリフェノール性なめし剤は、合成薬剤(例えば、ナフタレンポリマー、フェノールポリマー、ビスフェノールポリマー及びそれらの組合せ)から選択することができる。
植物タンニン(植物なめし剤)は、タンパク質に結合し、沈殿させる能力を有しているポリフェノールファミリーの物質である。タンニンは、それらの構造特性に基づいて、ガロタンニン、エラジタンニン、タンニン錯体、及び縮合タンニンを含めたフラボノイドの4つの主な群に分類することができる。
ガロタンニン(Gallotanin)は、様々なポリオール単位、フラバノール単位又はトリテルペノイド単位に連結した、ガロイル単位又はそれらの誘導体であるメタデプシド単位によって形成されたタンニンである。エラジタンニン(Ellagitanin)は、C-C結合によって一緒に結合している少なくとも2個のガロイル単位によって形成されており、カテキン単位とのグリコシド結合を含んでいないタンニンである。タンニン錯体は、ガロタンニン又はエラジタンニン単位が、グリコシド結合によってカテキン単位に連結しているものである。縮合タンニンは、カテキン単位のC-4と、別のカテキン単位のC-8又はC-6との間の結合によって形成されたプロアントシアニドールである。それらは、典型的に、2~8個のカテキン単位を含み、300~100,000g.mol-1の範囲の分子量を有している。カテキンモノマーは、イソフラボノイド、フラボン、フラボノール、フラバノノール、フラバノン、オーロン、カルコン、ジヒドロカルコン、アントシアニドール、フラバンジオール、及びフラバン-3-オール(カテキン)、アントシアニジン、並びにフラバン化合物と共に、より広範なフラボノイドファミリーの一部である。植物タンニンは、多種多様な植物種の木部、樹皮、葉、根、虫こぶ、壁孔、皮及び種子から抽出することができる。
【0015】
本発明の文脈において有用な植物タンニンは、好ましくは、縮合タンニン(フラボノイド)又は加水分解性タンニンである。
本発明の文脈において特に有用な植物タンニンの一部には、クリ、ミモザ、マツ、トウヒ、ヤナギ、カバノキ、マングローブ、ケブラコ、オーク、カシュー(cachou)、ヘザー、カナイグレ(canaigre)、ウルシ、ガンビール、ミロバラン、タラ、アカシア、サンザシ、ピーカン、ブドウ、モロコシ、クランベリー、ココア、コーヒー、クロウメモドキ、モクセイソウ及びそれらの混合物からなる群から選択される植物種から誘導された植物タンニンが含まれる。
混合物は、典型的に、混合物の総質量に基づいて、0.01~20質量%、好ましくは2~15質量%又は2~8質量%の1種又は複数の植物タンニンを含む。
植物タンニンは、典型的に、固体形態、例えば粉末形態で使用される。
【0016】
任意の添加剤
混合物は、さらに、機能的添加剤を含み得る。
フィラーを添加することによって、形成された材料に構造的強化をもたらし(強化用フィラー)、したがって、その耐性を改善し、その変形を低減することが可能になる。また、フィラーは、吸湿性である場合、材料の含水量を調節する助けになることができる。
したがって、混合物は、混合物の総質量に対して、0.05~20質量%、好ましくは0.1~15質量%の強化用フィラーを含有することができる。
好ましくは、フィラーは、セルロース誘導体(例えば、セルロース繊維、微結晶性セルロース)、有機フィラー(例えば、架橋されたデンプン、羊毛、リグニン、リグノスルホン酸塩)、無機フィラー(例えば、粘土、ガラス繊維、岩石繊維、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、シリカ)、合成フィラー(例えば、バイオベースのポリマー、石油由来のポリマー、リサイクルされた熱可塑性物質及び熱硬化性樹脂)、又はそれらの混合物である。バイオマス誘導体、例えば木部、亜麻、大麻、コムギ、リンゴ及び他の農業食品の副産物は、セルロース及びリグニン誘導体の供給源になることができる。
【0017】
混合物は、さらに、着色剤又は顔料を含み得る。したがって、混合物は、混合物の総質量に基づいて、0.01~30質量%、好ましくは0.05~10質量%の着色剤又は顔料を含有し得る。好ましくは、着色剤は、天然着色剤(例えば、インジゴ、フラボン、フラボノール、フラボノイド、ポリフェノール)である。
好ましくは、着色性顔料は、二酸化チタンである。
混合物はまた、匂い物質(odorant)(例えば、香料、芳香性の植物エキス、エッセンシャルオイル)を含み得る。
混合物は、さらに、褐変化反応、例えばメイラード反応を制御するための薬剤(例えば、フェルラ酸)を含み得る。
混合物はまた、粘度調整剤を含み得る。粘度調整剤は、材料への質感の付与(texturization)を促進するために使用することができる。したがって、混合物は、混合物の総質量に対して、0.01~30質量%、好ましくは0.05~10質量%の粘度調整剤を含有し得る。好ましくは、粘度調整剤は、粉(例えば、トウモロコシ粉、穀粉、タンパク質粉、油糧種子粉)、天然の及び修飾された多糖(例えば、デンプン、ヘミセルロース、アルギネート、カラギーナン、アカシアガム、グアーガム、粘液、キチン及びその誘導体、ヒドロキシル化、メチル化、カルボキシメチル化及び/又はエチル化セルロース)、並びにそれらの混合物から選択される。様々なデンプン、例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、ジャガイモデンプン及びそれらの混合物を使用することができる。デンプンは、天然であってよく、又は例えばゼラチン化若しくは化学的処理によって変性させることができる(例えば、酸化された、アセチル化された、カルボキシメチル化された、ヒドロキシエチル化された、架橋されたデンプン)。
【0018】
混合物は、さらに、混合物の総質量に基づいて、0.01~3質量%、好ましくは0.1~1質量%の保存剤を含有し得る保存剤を含み得る。好ましくは、保存剤は、有機物質(例えば、プロピオン酸、ソルビン酸並びにそのカルシウム塩及びカリウム塩、安息香酸、フマル酸、二炭酸ジメチル)及び無機物質(例えば、亜硫酸塩、二酸化硫黄、硝酸塩、亜硝酸塩、塩化ナトリウム)、並びにそれらの混合物から選択される。
混合物は、さらに、材料の加工性及び可撓性を改善する薬剤を含み得る。このような薬剤の例として、テルペン誘導体、例えばオレンジ又は木部(例えば、松脂)由来のテルペンが挙げられる。
【0019】
混合物はまた、疎水性物質を含み得る。疎水性物質は、材料の外観及び感触を改善し、材料の透湿性を低減し、その吸湿性を低減することができるだけでなく、水に対する材料の感度を低減することもできる。したがって、混合物は、混合物の総質量に基づいて、0.01~5質量%、好ましくは0.05~2質量%の疎水性物質を含有し得る。好ましくは、疎水性物質は、油(例えば、修飾することができる脂肪酸を含有している、ブドウ種子油、ナタネ油、ヒマワリ油、亜麻仁油、大麻油、ヒマシ油、綿実油、オリーブ油、アボカド油、トール油、ピーナッツ油)、脂肪、天然の及び改質されたレシチン、ワックス(例えば、蜜蝋、カルナウバワックス)、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
混合物は、さらに、pH調整剤を含み得る。pH調整剤は、植物タンパク質及び使用される他の化合物の溶解度を調整することを可能にし得る。したがって、混合物は、混合物の総質量に基づいて、0.01~5質量%、好ましくは0.05~2質量%のpH調整剤を含有し得る。好ましくは、pH調整剤は、酢酸、クエン酸、酒石酸、ギ酸、乳酸、消石灰、ソーダ灰、塩酸及びそれらの混合物から選択される。
混合物は、さらに、植物タンパク質のイオン性を変化させるために、塩を含み得る。
【0020】
半製品を調製するための方法
(i)タンパク質、好ましくは植物タンパク質、(ii)1種又は複数の可塑剤、(iii)1種又は複数のなめし剤、好ましくは植物タンニン、及び(iv)任意に前述の添加剤を含む混合物の流動化は、典型的に、混合物を、60~250℃、好ましくは90~180℃又はさらには140~160℃の範囲の温度に加熱することによって得られる。この温度は、典型的に、混合物の成分を分解することなく、混合物を流動化するように選ばれる。処理温度は、混合物の配合、典型的に可塑剤の含量に応じて決まる。したがって、加熱温度は、典型的に、混合物の成分の熱分解温度よりも低い。一部の実施形態では、温度は、約150℃である。混合物をホモジナイズするために、機械的混錬が使用される。混錬は、典型的に、流動化温度で実施される。
混合物は、典型的に、「ダイ」と呼ばれる押出ヘッドを備えた押出機において処理される。したがって、混合物は、押出機において流動化され、混錬され、次にダイの中で圧縮されて半製品を形成する。
【0021】
これらの半製品は、熱可塑性特性を有している材料から作製されている。さらに、この材料は、生分解性である。
したがって、換言すれば、本発明は、タンパク質、好ましくは植物タンパク質から半製品を調製するための方法であって、(i)タンパク質、好ましくは植物タンパク質、(ii)1種又は複数のなめし剤、好ましくは植物タンニン、(iii)1種又は複数の可塑剤、及び(iv)任意に添加剤を含む混合物を押し出し、圧縮するステップを含む、方法に関する。圧縮は、ダイを使用して行われる。
押出機の出口におけるダイの選択は、半製品の性質及び幾何構造を画定すると理解される。ダイは、シート、フィルム、プレート、ワイヤー、ロッド、管、固体形状及び技術的プロファイルを得るために使用することができる。
押出機は、熱可塑性材料の押出のために一般に使用されている従来のスクリュー押出機であり得る。押出機は、バレル内で回転する単一又は複数スクリュー押出機であり得る。好ましくは、押出機は、二軸押出機、典型的に共回転二軸押出機である。押出機のL/D比(L=スクリューの長さ、D=スクリューの直径)は、典型的に、10~100、好ましくは20~60の範囲である。1つ又は複数のスクリューの回転速度は、典型的に、10~1500rpm、好ましくは200~1000rpmの範囲である。
【0022】
押出機は、少なくとも1つの運搬帯域及び少なくとも1つの混錬帯域を含む。押出機は、交互に存在する運搬帯域及び混錬帯域を含み得る。運搬帯域は、固体及び液体を混合し、徐々に圧縮し、加熱することを可能にする。混錬帯域は、特に滞留時間を増大することによって、混合物の成分をより激しく混合することを可能にする。押出機はまた、外気における又は吸引を用いる脱気帯域を含むことができる。
押出機の各帯域内の温度は、変わることができる。典型的に、押出機は、250℃までの温度を有している少なくとも1つの運搬帯域、及び200℃までの温度を有している少なくとも1つの混錬帯域を含む。押出機はまた、運搬帯域の温度を混錬帯域の温度まで徐々に上昇させるための加熱帯域を含むことができる。ダイへの注入口において、混合物の温度は、典型的に90~180℃で変わり、ダイの中で典型的に70~150℃の範囲の温度に冷却することができる。
スクリュープロファイルは、当業者が混合物に適用したいと望むところの制約に従って選ぶことができる。
押出機における混合物の滞留/滞在時間は、典型的に、20秒~15分、好ましくは2~6分の範囲である。
混合物の成分は、液体又は固体形態で、供給ホッパーを通して押出機に導入される。これらの成分は、固体については計量デバイスを使用し、又は液体についてはポンプを使用して、主な供給ポート及び場合により二次ポートを介して導入することができる。例えば、タンパク質、好ましくは植物タンパク質は、典型的に固体形態で、可塑剤は液体形態で、なめし剤は固体形態で導入される。
【0023】
成分は、典型的に、20~90℃の温度で押出機に導入される。
他の実施形態では、混合物の成分は、共混練機(co-kneader)を使用して混合され得る。
次に、結果として得られた半製品は、周囲空気において、液体浴、例えば水若しくは脂肪において、又は冷却されたシリンダー上で、それらの最終形状に冷却される。典型的に、冷却デバイスは、ダイの出口に置かれる。したがって、本発明の方法は、調製された半製品を冷却するためのステップを含み得る。
方法はまた、調製された半製品を乾燥させるステップを含み得る。
混合物が、形材、管又はロッドに圧縮される場合、次にこの形材、管又はロッドは、ペレットに切断することができる。
切断は、冷却前又は冷却後に実施され得る。したがって、本発明の方法は、造粒ステップを含み得る。造粒操作は、当業者に周知の従来条件下で実施され得る。
次に、得られたペレットは、プラスチック処理の分野で周知の技術に従って、例えば押出カレンダー加工、押出膨張、押出スピニング、射出、3D印刷又は成形によって、加圧下で造形することができる。したがって、本発明はまた、ペレットから物品を調製するための方法であって、押出カレンダー加工、押出膨張、押出スピニング、射出、3D印刷又は成形によって、加圧下で物品を造形するステップを含む、方法に関する。
【0024】
したがって、ペレットは、多種多様な市販品、例えばシート、フィルム、パッケージング、食品との接触を意図され得る成形品(カップ、食品容器、カトラリーなど)、家庭、織物又は装飾に使用するための成形品(ジャー、箱、シェル、記念品、ハンドルなど)、織物品、革製品、スポーツ用品、農業又は園芸用のフィルム又はネット、可撓性材料のための仕上げフィルム、発泡体を調製するために使用することができる。
混合物が、シートに圧縮されるか(例えば、フラットダイを使用する)、又はシートを形成するためにペレットが使用される場合、これらのシートは、さらに処理され得る。例えば、シートは、カレンダー加工することができる。カレンダー加工は、シートの表面を平坦にし、その厚さを低減し、又はシートの表面に質感、例えば皮革のシボ(grain)を刷り込むことができる。皮革のシボの印刷は、得られた材料を、より動物の皮革のような外観又は感触にすることができる。
特に、シートは、典型的に動物の皮革から作製されているか、又は動物の皮革パーツを組み込んでいる物体の製造のための皮革代用品として使用することができる。
形成された材料はまた、織物コーティング基材として使用することができ、又は別の材料と共に多層において使用することができる。
【0025】
したがって、本願において記載される半製品は、多種多様な物品、例えばシート、フィルム、パッケージング、食品との接触を意図することができる物体(カップ、食品容器、カトラリーなど)、家庭、織物又は装飾に使用するための成形品(ポット、箱、保護シェル、ボタン、記念品、ハンドルなど)、織物品及び付属品、皮革商品及び付属品、スポーツ用品、農業又は園芸用のフィルム又はネット、可撓性材料のための仕上げフィルム、並びに発泡体を調製するために使用することができる。
したがって、本発明はまた、本明細書に記載される半製品から物品を調製する方法であって、半製品を造形するステップを含む、方法に関する。半製品の造形は、典型的に、押出カレンダー加工、押出膨張、押出スピニング、射出、3D印刷又は成形によって、加圧下で実施される。
したがって、本発明はまた、本説明において記載される半製品から調製される物品に関する。この物品は、射出成形される物品であり得る。
有利なことには、本発明の方法は、皮革代用品の調製において典型的に実行されるなめしステップを回避する。これらのなめしステップは、多量の水を消費する。したがって、経済的観点から、本発明の方法は、この水の高消費及びなめし用の水の処理に関する費用を節約することを可能にするので、非常に競争力が高いことが分かる。
【0026】
さらに、圧縮されることが意図された混合物に、なめし剤、好ましくは植物タンニンを直接に導入することにより、材料の調製物が、高い可撓性を有することが可能になる。特に、本発明の方法によって得られた材料は、別個のなめしステップを含む方法によって得られた材料よりも高い可撓性を有している。得られた材料は、可撓性であり、脆弱でなく、且つ強力である。
さらに、本発明の方法によって得られた材料は、良好な耐摩擦性を有している。この材料は、防水性もあり、良好な耐水性を有している。
以下の実施例は、例示目的で与えられる。これらの実施例は、決して本発明を制限するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0027】
市販の参照物
グルテン:Manito(Eurogerm)コムギタンパク質(参照番号FZG309461)、Vitalコムギグルテン(Roquette Freres)、
ホワイトクロレラ(White Chlorella):ホワイトクロレラ粉末(参照番号910287)(Greentech SA)、
ソラマメタンパク質:Favaマメタンパク質60SMP(Univar)、
グリセロール:Lucemill ltd.、植物性グリセリン(VG)EP/BP医薬品グレード、
カテキュー(catechu)、ミロバラン、クロウメモドキ、モクセイソウ、白ブドウのタンニン、クリの木及びオクシタニア地方の(Occitan)クリの木のエキス、硫酸第一鉄:Green’ing SARL、
ガンビール:純粋カテキューエキス(SCRD)、
カオリン:PoleStar 200R(Imerys)、
コーンブラン:Sofabran 184-80トウモロコシ繊維(Limagrain Ingredients)。
【0028】
1.本発明に従う試料の調製
試料を、100μm~1mmの厚さの調整可能な中心間距離を有しているフラットフィルムダイを備えた、直径16mm及び長さ640mmのThermo Scientific(商標)ブランド名Eurolab16押出機において調製する。押出機は、2つの取込み帯域、圧縮を用いる少なくとも1つの運搬帯域、少なくとも1つの混錬帯域及びダイ帯域を有している。
二軸の回転速度は、500rpmであり、異なる帯域の温度は、40~160℃である。
タンパク質、タンニン及び固体形態の添加剤を、第1の取込み帯域に導入した。
可塑剤及び液体添加剤を、第2の取込み帯域に導入した。
スクリュープロファイルは、以下の通りである:22mmの混錬スクリュー及び128mmの直接ピッチスクリュー。
試料EI1~EI4を、以下の混合物の押出によって調製した(百分率は、混合物の全質量に対する質量によるものである)。
【0029】
【表1】

【0030】
先に提示されている混合物により、圧縮及び/又は成形することができる粘着性材料が生成された。
結果として得られた試料は、可撓性であり、皮革と全く同様に、機械的に強力である。さらに、それらの試料は、試料をカビから保護する、固定された化学的構造を有している。
試料は、良好な耐水性を有していることが分かった。したがって、65℃の水中で一晩後、ごくわずかな膨潤しか観察できなかったので、試料の外観はほとんど変化していなかった。試料は、浸漬前よりもごくわずかに軟らかい構造を有しており、且つ良好な機械的耐性、特に浸漬前のそれらの機械的耐性に非常に近い引裂抵抗を有していることが分かった。
以下の表は、EI4試料の特性を示している。表の3列目に挙げられている方法に従って、試験を実施した。
【0031】
【表2】

【0032】
測定された試料EI4の特性は、皮革の仕様のいくつかの基準(耐水性、すなわち水滴に対する不透過性、耐摩擦性、及びボールに対するシボの強度)を満たしていることを示している。破断試験の結果が良好である場合、試料EI4は、皮革よりも低い弾性率及び高い破断伸びを有していることが分かる。これらの差異は、強化用フィラーが存在しないことによって説明することができる。
2.比較用試料の調製-なめし剤なし
試料を、前述の通り、フラットフィルムダイを備えたEurolab16押出機において調製する。
試料EC1~EC4を、以下の混合物の押出によって調製した(百分率は、混合物の全質量に対する質量によるものである)。
【0033】
【表3】


比較用試料EC1~EC4は、水に対して非常に感度が高いことが分かった。したがって、65℃の水中で一晩後、試料の外観が変化した。
試料は膨潤し、非常に軟らかい構造を有していた。試料EC3は、構造化されなくなっていた。さらに、65℃の水中で一晩後、それらの機械的耐性は、低下している(極めて引き裂き易くなっている)。
【0034】
3.比較用試料の調製-押出に続いてなめし
試料EC4を、先の表に記載されている通り、なめし剤を用いずに、高濃度の水を用いて押し出して、肉眼で見える著しい質感の付与を可能にした。
次に、前述の通り調製した試料EC4を、特開平04-153378号公報に記載されている条件を概ね模倣している条件下で処理した。特開平04-153378号公報は、植物タンパク質(ダイズタンパク質)を押し出すステップに続いて、結果として得られた材料の植物又はクロムなめしステップを含む、材料を調製するための方法を提供している。
【0035】
したがって次に、試料EC4を漸増濃度の様々ななめし材料(カテキュー、ミロバラン、クリ、カリウムミョウバンのエキス、及び水だけ)の水性浴に浸し、次に水ですすいだ。次に、試料をゆっくり乾燥させるために静置した。
水中浸漬試験は、乾燥後に得られた試料が、良好な耐水性を有していることを示した(試料EC4と比較して分解が少なかった)。したがって、このなめし過程は、植物タンパク質の構造を十分に固定した。
また、なめしにより、試料はカビに対して耐性が高くなった(試料EC4と比較して、真菌の成長が遅延している)。
しかし、得られた試料は、非常に脆い(脆弱である)ことが分かった。その性質は、皮革の性質には全く匹敵しなかった。
【0036】
4.機械的性質
試料EI5~EI16及びP1~P2を、直径2mmのスナップリングダイを備えた、直径16mm及び長さ640mmのThermo Scientific(商標)ブランド名Eurolab16押出機において調製した。押出機は、2つの取込み帯域、圧縮を用いる少なくとも1つの運搬帯域、少なくとも1つの混錬帯域及びダイ帯域を有している。
二軸の回転速度は、500rpmであり、異なる帯域の温度は、40~160℃である。計算された機械的比エネルギーは、50~210J/gである。
タンパク質、タンニン及び固体形態の添加剤を、第1の取込み帯域に導入した。
可塑剤及び液体添加剤を、第2の取込み帯域に導入した。
スクリュープロファイルは、以下の通りである:22mmの混錬スクリュー及び128mmの直接ピッチスクリュー。
試料EI5~EI16及びP1~P2を、以下の混合物の押出によって調製した(百分率は、混合物の全質量に対する質量によるものである)。
試料EI5~EI16及びP1~P2を、以下の混合物の押出によって調製した(百分率は、混合物の全質量に対する質量によるものである)。
【0037】
【表4】

【0038】
【表5】

【0039】
押出後、試料EI5~EI9及びP1~P2のロッドを、厚さ2mmのプレートとして130℃及び60バールで15分間圧縮した。タイプ1BAの試験片を切断し、40℃及び50%相対湿度で条件付け、EN ISO527-2:2012に従って、10mm/分の速度で一方向の機械的引張試験に付した。
試料EI5~EI9を、可撓性を定量的に比較するために、単一包埋で-100℃から150℃まで2℃/分の速度で、1Hzの周波数において動的機械分光法(DMA)分析に付した。
ガラス転移温度を、損失係数のピークで決定した。
また、試料を、島津製ベンチ上で機械的引張試験に付し、平均5つの試験片に対して10mm/分で実施した。
【0040】
以下の表は、EI5~EI9及びP1~P2試料の特性を示している。
【表6】

【0041】
試料EI5~EI9は、これらの試料において強化フィラーが存在していないことに起因して、破断歪みがかなり低かったにもかかわらず、革製品における使用と互換性がある破断歪みを示している。
漸増量のなめし剤を添加した場合、室温における引張強度に関して試料の機械的性質は劇的には変化しないが、DMAで測定されたガラス転移温度及び弾性率は、7.9%のタンニンまで明らかに進展することを観察することができる。このことは、材料を弱化することなく材料に可撓性を与える、植物なめし剤の能力を示している。
また、ホワイトクロレラ及びソラマメ濃縮物に基づく試料P1~P2は、グルテンベースのブレンドよりも機械的強度が低かったが、熱可塑性及び可撓性であることが見出された。
試料EI10~EI15も、上述の通り機械的引張試験に付した。加えて、それらの試料を、革製品産業の仕様と比較した。
【0042】
耐摩擦性を、ISO規格11640:2018に従って、Veslic試験によって定量化した。試料及び擦ったフェルトを、ISO105 A02:1993及びISO105 A03:2019に従って、グレースケールと比較した。また試料を、ISO5402-1:2017に従って曲げ強度試験に付し、ボール法(ISO3379:2015)に従って表面伸び(surface extension)及び引張強度試験に付した。
以下の表は、EI10~EI15試料の特性を示している。
【0043】
【表7】


植物なめし剤の植物供給源を変えることによって、破断歪みを43%から70%超まで変え、破断歪みを2倍にすることが可能になる。耐摩擦性は可変である。それにもかかわらず、革製品の標準仕様を満たすことがまだ可能である。試料を引き裂くことなく、数千回の曲げサイクルを達成することが可能である。すべての試料が、ボール貫通に対して高い耐性を示している。
【0044】
試料EI10~EI15は、広範囲な可撓性を示しており、これらは、組み込まれる植物タンニンの植物供給源を変えることによって達成することができる。
5.質感の付与
試料T1~T4を、100μm~1mmの調整可能な間隙の厚さを有しているフラットフィルムダイを備えた、直径16mm及び長さ640mmのThermo Scientific(商標)ブランド名Eurolab16押出機において調製した。押出機は、2つの取込み帯域、圧縮を用いる少なくとも1つの運搬帯域、少なくとも1つの混錬帯域及びダイ帯域を有している。
二軸の回転速度は、300rpmであり、異なる帯域の温度は、40~200℃である。最終的な押出帯域及びフラットフィルムダイの温度は、40~100℃である。
タンパク質、タンニン及び固体形態の添加剤を、第1の取込み帯域に導入した。
可塑剤及び液体添加剤を、第2の取込み帯域に導入した。
スクリュープロファイルは、以下の通りである:22mmの混錬スクリュー及び128mmの直接ピッチスクリュー。
試料T1~T4を、以下の混合物の押出によって調製した(百分率は、混合物の全質量に関する質量で表される)。
【0045】
【表8】

【0046】
押出物の外観を観察する。得られたシートが均質な質感を有していない場合には、使用に適していない。
結果は、図1に示されている。
4.5%の追加の水(添加水)を含有している配合T1は、著しい構造上の欠陥、すなわち気泡、孔及びシートの非対称性を示していることが観察される。それゆえに、追加の水は、混合物に全く添加されないことが好ましい。
【0047】
その他の配合物については、繊維の質感が均一に得られ、シートは軟質である。シートは、調整可能な空隙を有するロールの間でカレンダー加工することができ、加熱しても加熱しなくてもよい。ロールの一方だけを加熱する場合、一方の側に繊維の側面を得、他方の側には平坦な側面を得ることが可能である(試料T4)。
この二重の側面は、シボの側及び肉面を有する皮革に類似している。
図1
【国際調査報告】