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特表2023-550230充填剤を含む分解可能な酢酸セルローストウバンド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】充填剤を含む分解可能な酢酸セルローストウバンド
(51)【国際特許分類】
   D01F 2/28 20060101AFI20231124BHJP
   A24D 3/10 20060101ALI20231124BHJP
   A24D 3/02 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
D01F2/28 Z
A24D3/10
A24D3/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517843
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(85)【翻訳文提出日】2023-03-17
(86)【国際出願番号】 US2021060066
(87)【国際公開番号】W WO2022109253
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】63/116,613
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518011552
【氏名又は名称】アセテート・インターナショナル・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】クームス,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】デバナサン,ナルシ
【テーマコード(参考)】
4B045
4L035
【Fターム(参考)】
4B045BA08
4B045BB10
4B045BC02
4B045BD03
4B045BD05
4L035BB02
4L035EE05
4L035EE20
4L035FF01
(57)【要約】
本明細書に開示されているのは、酢酸セルロース及び充填剤を含むトウバンドである。充填剤を選択して、酢酸セルロースの分解速度よりも高い分解速度を有するようにしてよい。トウバンドを、開繊させ、成形してフィルターロッドとし、次いでそれを、シガレットフィルターの中に組み入れてよい。本明細書に記載のトウ、トウバンド、及びフィルター構造物は、他の公知のトウ、トウバンド、及びフィルター構造物よりは、早く分解する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸セルロースのトウバンドであって、前記トウバンドが、
a)1.3より大の置換度(DS)を有する酢酸セルロース;及び
b)充填剤(前記充填剤が、酢酸セルロースよりも大きい分解速度を有する);
を含む、酢酸セルロースのトウバンド。
【請求項2】
前記充填剤が、単糖類、多糖類、多糖類のエステル、加水分解された多糖類、オリゴ糖、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載のトウバンド。
【請求項3】
前記充填剤が、デキストラン、加水分解されたデンプン、変性され且つ加水分解されたデンプン、大麻、セルロース、又はそれらの組合せを含む、請求項1又は2に記載のトウバンド。
【請求項4】
前記充填剤が、前記トウバンドの合計重量を基準にして、0.1~99.9重量%、0.1~75重量%、0.1~50重量%、又は0.1~25重量%の量で存在する、請求項1~3のいずれか1項に記載のトウバンド。
【請求項5】
前記充填剤の分解速度が、前記酢酸セルロースのそれよりも、少なくとも3%高い、請求項1~4のいずれか1項に記載のトウバンド。
【請求項6】
前記充填剤の分解速度が、前記酢酸セルロースのそれよりも少なくとも10%高いか、又は前記酢酸セルロースのそれよりも少なくとも15%高い、請求項1~5のいずれか1項に記載のトウバンド。
【請求項7】
前記トウバンドが、前記酢酸セルロース対前記充填剤を重量比で、1:99~99:1、1:50~50:1、又は1:25~25:1で含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のトウバンド。
【請求項8】
前記トウバンドが、酢酸セルロースを、前記トウバンドの合計重量を基準にして、0.1~99.9重量%の量で含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のトウバンド。
【請求項9】
前記酢酸セルロースが、1.3~2.9、又は2~2.9の置換度を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載のトウバンド。
【請求項10】
前記トウバンドが、前記トウバンドの合計重量を基準にして、0.01~25重量%の添加剤を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のトウバンド。
【請求項11】
シガレットフィルターであって、開繊されたトウを含むフィルター要素を含み、前記開繊されたトウが、請求項1~10のいずれか1項に記載のトウバンドを含む、フィルター。
【請求項12】
請求項11に記載のシガレットフィルターを形成させるための方法であって、前記方法が、
a)前記酢酸セルロースのトウバンドを備えるステップ;
b)前記トウバンドを開繊させるステップ;及び
c)前記開繊されたトウバンドを成形して、フィルターロッドとするステップ、
を含む、方法。
【請求項13】
前記トウバンドが、
a)酢酸セルロース及び前記充填剤を溶媒と組み合わせて、ドープを形成させるステップ;
b)前記ドープを溶媒-紡糸して、複数のトウフィラメントを形成させるステップ;及び
c)前記複数のトウフィラメントを束ねて、トウバンドを形成させるステップ。
により形成される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記トウバンドが、
a)酢酸セルロース及び前記充填剤を組み合わせてフレークを形成させるステップ;
b)前記フレークを溶媒と組み合わせて、ドープを形成させるステップ;
c)前記ドープを溶媒-紡糸して、複数のトウフィラメントを形成させるステップ;及び
d)前記複数のトウフィラメントを束ねて、前記トウバンドを形成させるステップ。
により形成される、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、全内容及び開示が参照により本明細書に組み込まれる、2020年11月20日に出願の米国仮特許出願第63/116,613号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般的には、酢酸セルロース及び充填剤含む、トウ、トウバンド、及びシガレットフィルターに関する。特には、本発明は、トウの中、トウバンドの中、及びフィルターの中に含まれる充填剤に関するが、その充填剤は、そのフィルターの持続性及び生分解性が増大されるように選択される。
【背景技術】
【0003】
セルロースエステルは、タバコフィルター中の酢酸セルローストウとしての使用を含む、多くの目的のために広く使用されている。酢酸セルロースなどのセルロースエステルは、分解することが知られているバイオポリマーであるが、分解速度は、天然セルロースよりゆっくりである。例えば、酢酸セルロースは、十分なアセチル基が除去されて、微生物が分解のための材料を認識できるようになるまで分解しないため、タバコフィルターは、分解するまで最大で15年間かかることがある。喫煙の後、フィルターは、環境中に廃棄されることが多く、世界の人為的なごみの最も一般的な形態の1つである。推定4.5兆のタバコフィルターが、毎年ごみになっている。酢酸セルロースの分解時間及びフィルターに含まれる可塑剤のため、ごみが、望ましい水準より長くとどまる。酢酸セルロースを含む生分解性フィルターを形成する試みが行われてきたが、これらの試みは、修正及び/又は添加剤によるタバコの味の望ましくない変化、並びに十分に減少されない分解時間を含む様々な理由のため成功していない。セルロースエステルから構成される成形品には、同様の欠陥がある。
【0004】
参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,084,296号明細書には、酢酸セルロース又は他のセルロースエステル、並びに(1)30m2/g以上の比表面積、(2)0.001~0.07μmの一次粒径、又は(3)30m2/g以上の比表面積及び0.001~0.07μmの一次粒径を有するアナターゼ型酸化チタンを含む組成物が開示されている。光分解性及び分散性を改善するために、酸化チタンの表面が、リン酸塩若しくは他のリン化合物、多価アルコール、アミノ酸などで処理され得る。2.15を超えない平均置換度を有する低置換度セルロースエステルの使用は、高い生分解性を確実にする。組成物は、可塑剤及び/又は脂肪族ポリエステル、生分解促進剤(例えば有機酸若しくはそのエステル)をさらに含み得る。分解性セルロースエステル組成物は、高度に光分解性及び成形可能であるため、様々な物品の製造に有用である。
【0005】
参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,397,733号明細書には、開繊された(bloomed)酢酸セルローストウのフィルター要素及びフィルター要素を囲むプラグラップ、及びトウ中に分散されたピルを含む分解性タバコフィルターが開示されている。ピルは、水溶性又は透水性材料の内層及び2.0~2.6の範囲の置換度(D.S.)を有する酢酸セルロースの外層により封入される酢酸セルローストウの加水分解を触媒するように構成された材料を含む。
【0006】
参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009/0151738号明細書には、開繊された酢酸セルローストウのフィルター要素、フィルター要素を囲むプラグラップ、及びトウと接触したコーティング又はピルのいずれかを含む分解性タバコフィルターが開示されている。コーティング及び/又はピルは、酢酸セルローストウ及び水溶性マトリクス材料の加水分解を触媒するように構成された材料から構成され得る。この材料は、酸、酸性塩、塩基、及び/又は酸を生成するように構成された細菌であり得る。コーティングは、トウ、プラグラップ、又はその両方に適用され得る。ピルは、フィルター要素に入れられ得る。水が水溶性マトリクス材料と接触すると、加水分解を触媒するように構成された材料が、放出され、酢酸セルローストウの加水分解、及びその後の分解を触媒する。上記は、セルロースエステルで構成された物品にも適用可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、タバコフィルターに使用されるセルロースエステルの分解を補助する材料の制御及び持続放出が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
いくつかの態様においては、本開示は、酢酸セルロースのトウバンドを目的としており、そのトウバンドは、以下のものを含む:a)1.3より大の置換度(DS=degree of substitution)を有する酢酸セルロース;及びb)充填剤;ここで、その充填剤は、酢酸セルロースよりも大きい分解速度を有している。いくつかの態様においては、その充填剤には、単糖類、多糖類、多糖類のエステル、加水分解された多糖類、オリゴ糖、又はそれらの組合せが含まれていてよい。いくつかの態様においては、その充填剤には、デキストラン、加水分解されたデンプン、変性され、加水分解されたデンプン、大麻、セルロース、又はそれらの組合せが含まれていてよい。その充填剤は、そのトウバンドの合計重量を基準にして、0.1~99.9重量%、そのトウバンドの合計重量を基準にして、0.1~75重量%、そのトウバンドの合計重量を基準にして、0.1~50重量%、又はそのトウバンドの合計重量を基準にして、0.1~25重量%の量で存在させてよい。その充填剤の分解速度は、酢酸セルロースのそれよりも少なくとも3%大、酢酸セルロースのそれよりも少なくとも10%大、又は酢酸セルロースのそれよりも少なくとも15%大であってよい。そのトウバンドには、酢酸セルロース対充填剤を重量比で、1:99~99:1、1:50~50:1、又は1:25~25:1で含んでいてよい。そのトウバンドには、酢酸セルロースを、そのトウバンドの合計重量を基準にして、0.1~99.9重量%の量で含んでいてよい。その酢酸セルロースが、1.3~2.9、又は2~2.9の置換度を有していてもよい。そのトウバンドが、そのトウバンドの合計重量を基準にして、0.01~25重量%の添加剤を含んでいてよい。
【0009】
いくつかの実施態様においては、本開示は、開繊されたトウを含むフィルター要素を含むシガレットフィルターを目的としているが、ここでその開繊されたトウには、トウバンドが含まれる。そのトウバンドは、以下のものを含んでいてよい:a)1.3より大の置換度(DS)を有する酢酸セルロース;及びb)充填剤;ここで、その充填剤は、酢酸セルロースよりも大きい分解速度を有している。いくつかの態様においては、その充填剤には、単糖類、多糖類、多糖類のエステル、加水分解された多糖類、オリゴ糖、又はそれらの組合せが含まれていてよい。いくつかの態様においては、その充填剤には、デキストラン、加水分解されたデンプン、変性され且つ加水分解されたデンプン、大麻、セルロース、又はそれらの組合せが含まれていてよい。その充填剤は、そのトウバンドの合計重量を基準にして、0.1~99.9重量%、そのトウバンドの合計重量を基準にして、0.1~75重量%、そのトウバンドの合計重量を基準にして、0.1~50重量%、又はそのトウバンドの合計重量を基準にして、0.1~25重量%の量で存在させてよい。その充填剤の分解速度は、酢酸セルロースのそれよりも少なくとも3%大、酢酸セルロースのそれよりも少なくとも10%大、又は酢酸セルロースのそれよりも少なくとも15%大であってよい。そのトウバンドには、酢酸セルロース対充填剤を重量比で、1:99~99:1、1:50~50:1、又は1:25~25:1で含んでいてよい。そのトウバンドには、酢酸セルロースを、そのトウバンドの合計重量を基準にして、0.1~99.9重量%の量で含んでいてよい。その酢酸セルロースが、1.3~2.9、又は2~2.9の置換度を有していてよい。そのトウバンドが、そのトウバンドの合計重量を基準にして、0.01~25重量%の添加剤を含んでいてよい。
【0010】
いくつかの実施態様においては、本開示は、シガレットフィルターを形成させるための方法を目的とし、その方法には、以下のステップが含まれる:a)酢酸セルロース及び充填剤を含む、酢酸セルロースのトウバンドを備えるステップ;b)トウバンドを開繊するステップ;及びc)その開繊されたトウバンドを成形して、フィルターロッドとするステップ。いくつかの態様においては、そのトウバンドが、以下のステップで形成される:a)酢酸セルロース及び充填剤を溶媒と組み合わせて、ドープを形成させるステップ;b)そのドープを溶媒-紡糸して、複数のトウフィラメントを形成させるステップ;及びc)その複数のトウフィラメントを束ねて、トウバンドを形成させるステップ。いくつかの態様においては、そのトウバンドが、以下のステップで形成される:a)酢酸セルロース及び充填剤を組み合わせてフレークを形成させるステップ;b)そのフレークを溶媒と組み合わせて、ドープを形成させるステップ;c)そのドープを溶媒-紡糸して、複数のトウフィラメントを形成させるステップ;及びd)その複数のトウフィラメントを束ねて、トウバンドを形成させるステップ。そのトウバンドは、以下のものを含んでいてよい:a)1.3より大の置換度(DS)を有する酢酸セルロース;及びb)充填剤;ここで、その充填剤は、酢酸セルロースよりも大きい分解速度を有している。いくつかの態様においては、その充填剤には、単糖類、多糖類、多糖類のエステル、加水分解された多糖類、オリゴ糖、又はそれらの組合せが含まれていてよい。いくつかの態様においては、その充填剤には、デキストラン、加水分解されたデンプン、変性され、加水分解されたデンプン、大麻、セルロース、又はそれらの組合せが含まれていてよい。その充填剤は、そのトウバンドの合計重量を基準にして、0.1~99.9重量%、そのトウバンドの合計重量を基準にして、0.1~75重量%、そのトウバンドの合計重量を基準にして、0.1~50重量%、又はそのトウバンドの合計重量を基準にして、0.1~25重量%の量で存在させてよい。その充填剤の分解速度は、酢酸セルロースのそれよりも少なくとも3%大、酢酸セルロースのそれよりも少なくとも10%大、又は酢酸セルロースのそれよりも少なくとも15%大であってよい。そのトウバンドには、酢酸セルロース対充填剤を重量比で、1:99~99:1、1:50~50:1、又は1:25~25:1で含んでいてよい。そのトウバンドには、酢酸セルロースを、そのトウバンドの合計重量を基準にして、0.1~99.9重量%の量で含んでいてよい。その酢酸セルロースが、1.3~2.9、又は2~2.9の置換度を有していてよい。そのトウバンドが、そのトウバンドの合計重量を基準にして、0.01~25重量%の添加剤を含んでいてよい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
序論
本開示は、セルロースエステル(たとえば、酢酸セルロース)及び充填剤の組合せを使用して、トウ、トウバンド、及びシガレットフィルターを形成させることを目的としている。そのセルロースエステルは、1.3より大の置換度を有しているのがよく、そしてその充填剤は、セルロースエステルよりも大きい分解速度を有するように選択してよい。いくつかの態様においては、その充填剤が、単糖類、多糖類、又はそれらの組合せであってよい。さらなる態様においては、その充填剤には、デキストラン、加水分解されたデンプン、変性され、加水分解されたデンプン、セルロース、又はそれらの組合せが含まれていてよい。その充填剤は、所望される分解、充填剤、及び分解のためのメカニズムに応じて、そのトウの0.1~99.9重量%の割合で存在させてよい。いくつかの態様においては、その充填剤を、そのトウの0.1~75重量%、たとえば、0.1~50重量%、0.1~20重量%(その中間の数値すべてを含む)で存在させる。その充填剤の分解速度は、酢酸セルロースのそれよりも、少なくとも3%大、たとえば、少なくとも5%大、少なくとも7%大、少なくとも10%大、少なくとも15%大、又は少なくとも20%大であってよい。
【0012】
本開示はさらに、トウ、トウバンド、及びシガレットフィルターを形成させるための方法も目的としている。いくつかの態様においては、その充填剤をセルロースエステル(たとえば、酢酸セルロース)と組み合わせて、ドープを形成させ、次いでそれを溶媒-紡糸して、トウを形成させてよい。充填剤にもよるが、ドープが形成された後、たとえば繊維を形成させているときに、その充填剤を添加してもよい。繊維が一旦形成されたら(トウ)、それらの繊維を束ねて、トウバンドを形成させる。次いでそのトウバンドを、追加の処理にかけ、包装し、そして最終的には成形して、シガレットフィルターで使用するためのフィルターロッドとしてよい。
【0013】
セルロースエステル分解の基本的メカニズムは、そのセルロースエステルの置換度(「DS」)に依存する。セルロースエステルのDSとは、その置換度を指しており、たとえば酢酸セルロースについては、ASTM 871-96(2010)により測定することができる。その酢酸セルロースが、1.3よりも大きいDSを有している場合、アセテート部分が存在するために、酢酸セルロースは、天然で起きる酵素又はバクテリアによる分解はされない。アセテート部分をヒドロキシル部分に置き換えると、それによってDSが低下し、その酢酸セルロースは、加水分解される。アセチル部分の加水分解は、脱アセチル化(deacetylation)とも呼ばれる。本明細書に記載の分解可能なシガレットフィルターは、典型的には、1.3より大、多くの場合2.0~2.6の範囲、しかし高くとも2.9のDSを有し、したがって、アセテート部分が存在するために、天然に存在する酵素又はバクテリアで分解されない。
【0014】
理論に束縛されることなく言えば、セルロースエステルの分解速度よりも大きい分解速度を有する充填剤を組み入れることによって、トウ、トウバンド、及びシガレットフィルターの分解を加速することができると考えられる。充填剤を選択することによって、分解における改良と、濾過性能のバランスをとる。たとえば、充填剤を選択して、十分に小さいドメインとして、濾過漏れ(filter out)を防ぐこともできる。たとえばデンプン、グルコース、又はデキストランのようないくつかの充填剤は、各種の微生物のための食料源となり得る。そのような充填剤によって、微生物が増殖して、トウ、トウバンド、又はシガレットフィルターの上に直接定着し、分解を加速させることが可能となるであろう。各種の充填剤を組合せて使用することにより、それら充填剤の各種の性質及び性能を利用することが可能となる。たとえば、デキストランを添加すると、分解が改良されるし、その一方で、大麻又は連続短繊維を添加すると、その他の機械的性質が改良される。
【0015】
セルロースエステル
本明細書に記載のように、本開示は、セルロースエステルたとえば、酢酸セルロースと共に充填剤を含むトウ、トウバンド、及びシガレットフィルターに関する。その充填剤は、そのセルロースエステルの分解速度を上げる目的で、好ましくはトウの形成より先に、セルロースエステルと共に含まれる。本明細書において使用される際の酢酸セルロースは、二酢酸セルロースを指すが、本明細書に記載される充填剤及び方法は、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、プロピオン酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、硫酸セルロース、フタル酸セルロース及びそれらの組合せを含む、他のタイプのセルロースエステルに使用され得る。
【0016】
セルロースエステルは、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第2,740,775号で明細書及び米国特許出願公開第2013/0096297号明細書で開示されるものを含む、既知のプロセスによって調製され得る。典型的には、アセチル化セルロースは、適切な酸性触媒の存在下でセルロースをアセチル化剤と反応させ、次いで脱エステル化することによって調製される。
【0017】
セルロースは、コットンリンター、軟材又は硬材を含む様々な材料から供給され得る。軟材は、針葉樹(すなわちマツ科(Pinales)からのニードルベアリング木)からの木材に関して典型的に使用される総称語である。軟材を生成する木としては、松、トウヒ、スギ、モミ、カラマツ、ダグラスファー、ドクニンジン、イトスギ、セコイア及びイチイが含まれる。反対に、硬材という用語は、広葉樹又は被子植物の木からの木材に関して典型的に使用される。「軟材」及び「硬材」という用語は、木材の実際の硬度を必ずしも記載するわけではない。平均的に硬材は、軟材よりも高密度及び硬度であるが、両方の群の実際の木材硬度には、かなりの変動があり、いくつかの軟材木は、硬材木からの木材よりも硬質である木材を実際に生成することが可能である。硬材を軟材から区別する1つの特徴は、硬材木での細孔又は管の存在であり、それは、軟材木では不在である。顕微鏡レベルでは、軟材は、2種類の細胞、縦方向の木材繊維(又は仮導管)及び横方向の放射組織細胞を含有する。軟材では、木の内部での水輸送は、硬材の細孔と異なり、仮導管を通して行われる。いくつかの態様において、硬材セルロースは、アセチル化に関して好ましい。
【0018】
アシル化剤としては、カルボン酸無水物(又は単に無水物)及びカルボン酸ハロゲン化物、特にカルボン酸塩化物(又は単に酸塩化物)を挙げることができる。適切な酸塩化物としては、例えば、塩化アセチル、塩化プロピオニル、塩化ブチリル、塩化ベンゾイル及び同様の酸塩化物を挙げることができる。適切な無水物としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水安息香酸性及び同様の無水物を挙げることができる。セルロースに種々のアシル基を導入するために、これらの無水物又は他のアシル化剤の混合物も使用可能である。例えば、無水酢酸プロピオン酸、無水酢酸酪酸などの混合無水物をいくつかの実施形態でこの目的のために使用することもできる。
【0019】
ほとんどの場合、場合により、いくつかの追加的なヒドロキシル基置換(例えば、硫酸塩エステル)とともに、2.4~3などの高度の置換(DS)値を有する誘導体化セルロースを製造するために、セルロースは、アセチル化剤によって徹底的にアセチル化される。セルロースを徹底的にアセチル化することは、セルロース中の可能な限り多くのヒドロキシル基がアセチル化反応を受けるように、完了に向かって引き起こされるアセチル化反応を意味する。
【0020】
セルロースのアセチル化を促進するための適切な酸性触媒は、多くの場合、硫酸又は硫酸と少なくとも1つの他の酸との混合物を含有する。硫酸を含有しない他の酸性触媒もアセチル化反応を促進するために同様に使用可能である。硫酸の場合、セルロース中の少なくともいくつかのヒドロキシル基は、アセチル化反応中の硫酸エステルとして最初に官能化されることができる。徹底的にアセチル化されたら、次いで、セルロースは、一般に脱エステル化剤の存在下において、制御された部分的脱エステル化ステップを受ける。これは、制御された部分加水分解ステップと呼ばれる。
【0021】
脱エステル化は、本明細書で使用される場合、中間体セルロースエステルのエステル基の1つ以上が酢酸セルロースから隔離されて、ヒドロキシル基で置換され、3未満の(第2)DSを有する酢酸セルロース生成物が得られる化学反応を意味する。本明細書で使用される場合、「脱エステル化剤」は、中間体セルロースエステルにおいてヒドロキシル基を形成するために酢酸セルロースのエステル基の1つ以上と反応させることが可能である化学剤を意味する。適切な脱エステル化剤としては、低分子量アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ペンタノール、R-OH(式中、RはC1~C20アルキル基である)及びその混合物が挙げられる。水及び水とメタノールとの混合物も脱エステル化剤として使用され得る。典型的には、これらの硫酸エステルのほとんどは、アセチル置換の量を減少させるために使用される制御された部分加水分解中に分離する。低下される置換度は、0.5~3.0、例えば、1.3~3、1.3~2.9、1.5~2.9又は2~2.6の範囲であり得る。本開示のために、置換度は、1.3未満で天然の分解が発生し得るため、典型的に、1.3~2.9である。置換度は、バインダー組成物中で使用される少なくとも1つの有機溶媒に基づいて選択され得る。例えば、アセトンが有機溶媒として使用される場合、置換度は、2.2~2.65の範囲であり得る。本明細書で使用するとき、「分解(degradation)」という用語は、光化学的分解、生分解、又は各種の形態の分解も含めて、各種の分解機構及び速度(rate)を指している。酢酸セルロースの分解を、充填剤と比較する場合、その比較は、同一の分解機構に基づいているので、同様に速度を比較することができる。
【0022】
セルロースエステルの数平均分子量は、30,000amu~100,000amu、例えば50,000amu~80,000amuの範囲であり得、及び1.5~2.5、例えば1.75~2.25又は1.8~2.2の多分散度を有し得る。特記されない限り、本明細書に記載される全ての分子量は、数平均分子量である。分子量は、最終トウ又はフィルターロッドの所望の硬度に基づいて選択され得る。分子量が大きいほど、硬度の増加を導くが、分子量が大きいほど、粘度も増加する。セルロースエステルは、粉末又はフレークの形態で提供され得る。
【0023】
いくつかの態様において、異なる分子量のセルロースエステルフレーク又は粉末の混合物が使用され得る。したがって、高分子量セルロースエステル、例えば60,000amuより高い分子量を有するセルロースエステルのブレンドは、低分子量セルロースエステル、例えば60,000のamu未満の分子量を有するセルロースエステルとブレンドされ得る。高分子量セルロースエステル対低分子量セルロースエステルの比率は、変動し得るが、一般に1:10~10:1、例えば1:5~5:1又は1:3~3:1の範囲であり得る。異なるセルロースエステルのブレンドも使用され得、2、3、4つ、又はそれ以上の異なるセルロースエステルを様々な比率で含み得る。いくつかの態様において、1つのセルロースエステルが、大部分を占めて存在し得る一方、他のセルロースエステルが、より少量で存在する。
【0024】
セルロースエステル繊維、トウ及びトウベール
本開示のトウを形成するために利用され得るセルロースエステル(例えば酢酸セルロース)から繊維を形成するための複数の方法がある。いくつかの実施形態において、セルロースエステルから繊維を形成するために、溶媒中でセルロースエステルのフレーク又は粉末を溶解し、ドープ溶液を形成することにより、ドープが形成される。ドープ溶液は、典型的には、高粘性溶液である。ドープ溶液の溶媒は、水、アセトン、メチルエチルケトン、塩化メチレン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、氷酢酸、臨界超過二酸化炭素、前記ポリマーを溶解することが可能ないずれかの適切な溶媒及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。いくつかの態様において、溶媒は、アセトン又はアセトンと、最大で5重量%の水との組合せである。次いで、そのドープを濾過し、脱気をした後で、紡糸して、繊維を形成させる(溶媒-紡糸と呼ばれている)。そのドープは、各キャビネットが紡糸口金を含む、一つ又は複数のキャビネットを含むスピナーで、紡糸することができる。その紡糸口金には穴が備えられていて、それらの穴が、繊維から溶媒が蒸発する速度に影響を与えている。
【0025】
本明細書に記載の充填剤をそのドープに添加することができるが、それには、セルロースエステルの分解速度よりも大きい分解速度を有するという、制限事項が存在する。セルロースエステルの分解速度は、置換度、さらにはそのセルロースエステルが暴露されて分解される環境に依存する。充填剤の例としては、以下のものが挙げられる:単糖類(たとえば、グルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、ガラクトース、リボース、キシロースなど)、多糖類(たとえば、多糖類のエステル、加水分解された多糖類、オリゴ糖、デンプン、アルファ-セルロース、ヘミセルロースも含めたセルロース、ヒアルロン(hyaluronic)、アルギネート、グアーゴム、キチン、及びコンドロイチン、化工デンプン、加水分解されたデンプン、大麻シード多糖類など)。本明細書に記載のように、その充填剤を選択して、そのドープの中に含むことができるようにする、すなわち、十分に小さいドメインとして、濾過漏れを防ぐようにする。このサイズは、その紡糸口金の穴のサイズに依存する可能性がある。ドープの中に存在させる充填剤の例としては、単糖類、多糖類、多糖類のエステル、加水分解された多糖類、オリゴ糖、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0026】
溶媒は、ドープの中に、60~90重量%、たとえば、60~85重量%、60~80重量%、60~75重量%、60~70重量%、60~65重量%、65~90重量%、70~90重量%、75~90重量%、80~90重量%、又は85~90重量%の量で含ませることができる。その中間のすべての数値が、考慮されており、その中に含まれる。
【0027】
その充填剤は、そのトウ、トウバンド、又はシガレットフィルターの分解速度において、所望の改良を達成させるのに十分で、なお且つ、そのトウ、トウバンド、又はシガレットフィルターでの所望の性質をバランスさせる量でそのドープの中に含ませることができる。たとえば、その充填剤を、そのドープの0.1~39重量%、たとえば、0.1~35重量%、0.1~30重量%、0.1~25重量%、0.1~20重量重量%、0.1~15重量%、0.1~10重量%、0.1~7.5重量%、又は0.1~5重量%の量で存在させてよい。さらなる態様においては、その充填剤の下限は、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.75重量%、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、又は少なくとも3重量%である。上で引用した数値の間の、すべての他の数値及び範囲もまた含まれ、そして考慮に入っている。
【0028】
酢酸セルロースは、そのドープの中に、トウ、トウバンド、又はシガレットフィルターの所望の性質、たとえばシガレットフィルターの濾過性が保持されるのに十分な量で含まれていてよい。たとえば、酢酸セルロースを、そのドープの0.1~39.9重量%、たとえば、0.1~37.5重量%、0.1~35重量%、0.1~30重量%、0.1~25重量重量%、0.1~20重量%、0.1~15重量%、0.1~10重量%、0.1~7.5重量%、又は0.1~5重量%の量で存在させてよい。さらなる態様においては、酢酸セルロースの下限は、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.75重量%、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも37.5%、少なくとも39%、又は少なくとも39.5%であってよい。上で引用した数値の間の、すべての他の数値及び範囲もまた含まれ、そして考慮に入っている。
【0029】
ドープに顔料が添加され得る。ドープは、例えば、5~40重量%の酢酸セルロース、0.1~35重量%の充填剤及び60~90重量%の溶媒を含み得る。顔料は、添加される場合、0.1~5重量%、例えば0.1~4重量%、0.1~3重量%、0.1~2重量%、0.5~5重量%、0.5~4重量%、0.5~3重量%、0.5~2重量%、1~5重量%、1~4重量%、1~3重量%又は1~2重量%で存在し得る。ドープに添加される顔料は、特に限定されず、いかなる従来の顔料も使用され得る。一般的な適切な顔料の例としては、炭酸カルシウム、珪藻土、酸化マグネシウム、酸化亜鉛及び硫酸バリウムが含まれる。
【0030】
一般に、トウバンドのベールの製造には、ドープから繊維を紡糸すること、繊維を含むトウを形成する事、繊維からトウバンドを形成すること、トウバンドを捲縮すること、捲縮されたトウバンドをベイリングすることが含まれ得る。前記製造の範囲内において、任意選択的なステップとしては、限定されないが、紡糸後に繊維を加温すること、捲縮前に繊維及び/又はトウバンドに仕上げるか又は添加剤を適用すること並びに捲縮されたトウバンドを条件付けることが含まれ得る。少なくともこれらのステップのパラメーターは、所望のベールを製造するために重要である。
【0031】
いくつかの態様においては、充填剤がドープの中で、多すぎるドメインを有するようなら、その充填剤を、そのプロセス中のもっと後の時点、たとえば先に述べたステップのいずれかで含ませるようにする。具体的には、充填剤を、酢酸セルロースのフレークに添加してもよい。
【0032】
さらなる加工のために必要とされるサイズ及び形状でベールを多様にし得ることに留意されたい。いくつかの実施形態において、ベールは、高さ30インチ(76cm)~60インチ(152cm)、長さ46インチ(117cm)~56インチ(142cm)及び幅35インチ(89cm)~45インチ(114cm)の範囲の寸法を有し得る。いくつかの実施形態において、ベールの重量は、900ポンド(408kg)~2100ポンド(953kg)の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、ベールは、300kg/m3(18.8lb/フィート3)より大きい密度を有し得る。
【0033】
繊維
本開示で使用される酢酸セルロース繊維の構造は、特に限定されず、種々の既知の繊維構造が利用され得る。例えば、トウバンドは、広範囲のフィラメントあたりのデニール(dpf)を有する繊維を利用し得る。いくつかの実施形態において、トウバンドは、1~30dpf、例えば2~28dpf、3~25dpf、4~22dpf、5~30dpf、5~28dpf、5~25dpf、5~22dpf、10~30dpf、10~28dpf、10~25dpf、10~22dpf、15~30dpf、15~28dpf、15~25dpf、15~22dpf、20~30dpf、20~28dpf、20~25dpf又は20~22dpfの値を有し得る。
【0034】
本開示で使用される繊維は、限定されないが、円形、実質的に円形、鋸歯形、楕円形、実質的に楕円形、多角形、実質的に多角形、ドッグボーン、「Y」、「X」、「K」、「C」、マルチローブ及びそのいずれかの組合せを含むいずれかの適切な断面形状を有し得る。本明細書で使用される場合、「マルチローブ」という用語は、(限定されないが、均一に間隔をあけられるか又は均一にサイズ設定される)少なくとも2つの突出部が延在する(限定されないが、断面図の中央にある)点を有する断面形状を意味する。
【0035】
上記の通り、本開示で使用される繊維は、当業者に既知のいずれかの方法によって製造され得る。示されるように、いくつかの実施形態において、繊維は、スピナレットを通してドープを紡糸することによって製造され得る。本明細書で使用される場合、「ドープ」という用語は、繊維が製造される酢酸セルロース溶液及び/又は懸濁液を意味する。いくつかの実施形態において、ドープは、酢酸セルロース、充填剤及び溶媒を含み得る。いくつかの実施形態において、本開示と関連した使用のためのドープは、酢酸セルロース、充填剤、溶媒及び添加剤を含み得る。いくつかの実施形態において、酢酸セルロースは、10~40重量%(例えば、20~30重量%、25~40重量%、25~30重量%)の範囲のドープ中の濃度であり得、及び溶媒は、60~90重量%(例えば、60~80重量%、70~80重量%、80~90重量%)の濃度であり得る。充填剤及び添加剤が、そのドープの残り部分を占めるようにしてよい。いくつかの実施形態において、ドープは、40℃~100℃(例えば、45℃~95℃、50℃~90℃、55℃~85℃、60℃~80℃)の範囲の温度まで加熱され得る。
【0036】
適切な溶媒としては、限定されないが、水、アセトン、メチルエチルケトン、塩化メチレン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、氷酢酸、臨界超過CO2及び前記ポリマーを溶解することができるいずれかの適切な溶媒又はそのいずれかの組合せが含まれる。非限定的な例としては、酢酸セルロースの溶媒は、アセトン/メタノール混合物であり得る。いくつかの実施形態において、本開示の非常に高いdpf値を生じるために、典型的なdpf値(例えば、2~8dpf)のための量と比較して溶媒レベルの増加を使用し得る。例えば、いくつかの実施形態において、非常に高いdpfのトウを生じるために、典型的なdpfトウのための溶媒量と比較した場合、溶媒量は、5~30重量%より多くなり得る。追加的な溶媒量は、いくつかの場合、繊維の加工に課題をもたらし得る。
【0037】
本開示のいくつかの実施形態は、繊維上での表面官能性を達成するために繊維を処理することを含み得る。いくつかの実施形態において、繊維は、限定されないが、生物分解性部位(例えば、生物分解性を強化するために表面積を増加させる欠陥部位)、化学ハンドル(例えば、その後の官能化のためのカルボン酸基)、活性粒子結合部位(例えば、金粒子を結合する硫化物部位若しくは酸化鉄粒子を結合するためのキレート基)、硫黄部分又はそのいずれかの組合せを含む表面官能性を含み得る。当業者は、表面官能性を達成するための複数の方法及び機構を理解するべきである。いくつかの実施形態は、表面官能性を達成するために、浸漬、噴霧、イオン化、官能化、酸性化、加水分解、プラズマへの暴露、イオン化ガスへの暴露又はそのいずれかの組合せを含み得る。表面官能性を与える適切な化学物質は、限定されないが、酸(例えば、硫酸、硝酸、酢酸、フッ化水素酸、塩酸など)、還元剤(例えば、LiAlH4、NaBH4、H2/Ptなど)、グリニャール試薬(例えば、CH3MgBrなど)、エステル交換剤、アミン(例えば、CH3NH3などのR-NH3)又はそのいずれかの組合せを含む、酢酸セルロースと反応することが可能ないずれかの化学物質又は化学物質の集合であり得る。プラズマ及び/又はイオン化ガスへの曝露は、表面と反応し得るか、表面に欠陥を生じ得るか、又はそのいずれかの組合せであり得る。前記欠陥は、繊維の表面積を増加させ得、最終フィルター製品でのより高い装填及び/又はより高い濾過有効性をもたらし得る。
【0038】
本開示のいくつかの実施形態は、繊維に仕上げを適用することが必要となり得る。適切な仕上げとしては、限定されないが、油(例えば、鉱物油若しくは液体石油誘導体)、水、添加剤又はそのいずれかの組合せの少なくとも1つが挙げられ得る。適切な鉱物油の例としては、限定されないが、38℃(100°F)において測定される80~95SUS(Sabolt Universal Seconds)の粘度を有する無色透明(すなわちクリアな)鉱物油が挙げられ得る。適切な乳化剤の例としては、限定されないが、ソルビタンモノラウレート、例えばSPAN(登録商標)20(Croda,Wilmington,Del.から入手可能)、ポリ(エチレンオキシド)ソルビタンモノラウレート、例えばTWEEN(登録商標)20(Croda,Wilmington,Del.から入手可能)が挙げられ得る。水は、脱鉱物水、脱イオン水又は別の様式で適切に濾過及び処理された水であり得る。潤滑剤又は仕上げは、噴霧又はワイピングによって適用され得る。一般に、潤滑剤又は仕上げは、繊維をトウに形成する前に繊維に添加される。
【0039】
本開示のいくつかの実施形態において、仕上げは、ニートな仕上げ又は水中の仕上げエマルジョンとして適用され得る。本明細書で使用される場合、「ニートな仕上げ」という用語は、過剰量の水の添加を含まない仕上げ配合物を意味する。仕上げ配合物は、水を含み得ることに留意されたい。いくつかの実施形態において、仕上げは、ニートで適用され、その後、別々に水を適用し得る。
【0040】
本開示のいくつかの実施形態において、仕上げられたエマルジョンは、98%未満、95%未満、92%未満又は85%未満の水を含み得る。いくつかの実施形態において、水が要因である、より低い重量百分率の湿分(例えば、トウバンドの5%~25%w/w)を有する繊維を有することは、後のステップにおいて有利であり得る。仕上げられたエマルジョンの含水量は、繊維中の湿分の前記重量百分率を達成することを補助し得る少なくとも1つのパラメーターであり得る。したがって、いくつかの実施形態において、仕上げられたエマルジョンは、92%未満の水、85%未満の水又は75%未満の水を含み得る。
【0041】
トウ
ドープが形成され、溶媒-紡糸したら、溶媒を蒸発させ、そのドープを紡糸して、押出し加工し、複数の押出繊維(トウと呼ばれる)を形成させる。
【0042】
その充填剤は、そのトウ、トウバンド、又はシガレットフィルターの分解速度において、所望の改良を達成させるのに十分で、なお且つ、そのトウ、トウバンド、又はシガレットフィルターでの所望の性質をバランスさせる量でそのトウの中に含ませることができる。たとえば、充填剤は、トウの0.1~99重量%、たとえば、0.1~95重量%、0.1~90重量%、0.1~85重量%、0.1~80重量重量%、0.1~75重量%、0.1~70重量%、0.1~65重量%、0.1~60重量%、0.1~55重量%、0.1~50重量%、0.1~45重量%、0.1~40重量%、0.1~35重量%、0.1~30重量%、0.1~25重量%、0.1~20重量%、0.1~15重量%、0.1~10重量%、又は0.1~5重量%の量で存在させてよい。さらなる態様においては、その充填剤の下限は、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.75重量%、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、又は少なくとも3重量%である。上で引用した数値の間の、すべての他の数値及び範囲もまた含まれ、そして考慮に入っている。
【0043】
酢酸セルロースは、そのトウの中に、トウ、トウバンド、又はシガレットフィルターの所望の性質、たとえばシガレットフィルターの濾過性が保持されるのに十分な量で含まれていてよい。たとえば、酢酸セルロースは、トウの0.1~99重量%、たとえば、0.1~95重量%、0.1~90重量%、0.1~85重量%、0.1~80重量重量%、0.1~75重量%、0.1~70重量%、0.1~65重量%、0.1~60重量%、0.1~55重量%、0.1~50重量%、0.1~45重量%、0.1~40重量%、0.1~35重量%、0.1~30重量%、0.1~25重量%、0.1~20重量%、0.1~15重量%、0.1~10重量%、又は0.1~5重量%の量で存在させてよい。さらなる態様においては、酢酸セルロースの下限は、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.75重量%、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、又は少なくとも50重量%、又はそれより大であってよい。上で引用した数値の間の、すべての他の数値及び範囲もまた含まれ、そして考慮に入っている。さらには、上で述べたトウについての範囲は、シガレットフィルターの中に組み入れられる、トウバンド及びフィルターロッドにも適用される。
【0044】
ドープ、トウ、トウバンド、フィルターロッド、及びシガレットフィルターの中での、酢酸セルロース対充填剤の重量比は、変更可能であり、たとえば、1:99~99:1、たとえば、1:75~75:1、1:50~50:1、1:25~25:1、1:10~10:1、1:5~5:1、1:3~3:1、1:2~2:1、又はほぼ1:1である。いくつかの実施態様においては、酢酸セルロースが、充填剤よりも多い重量比、たとえば、少なくとも1.5:1、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも5:1、少なくとも10:1、少なくとも15:1、少なくとも20:1、少なくとも25:5、又は少なくとも50:1の重量比で存在する(間の範囲も全て含む)。
【0045】
トウ、トウバンド、フィルターロッド、及びシガレットフィルターにはさらに、添加剤が含まれていてもよい。それらの添加剤は、0.01~25重量%、たとえば、0.01~20重量%、0.1~20重量%、0.1~15重量%、0.1~10重量%、又は0.1~5重量%の量で存在させてよい。さらなる態様においては、酢酸セルロースの下限は、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.75重量%、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、又は少なくとも50重量%、又はそれより大であってよい。上で引用した数値の間の、すべての他の数値及び範囲もまた含まれ、そして考慮に入っている。
【0046】
トウが形成されたら、それを束ねてトウバンドを形成させるが、それには、複数のトウフィラメントが含まれている。いくつかの実施形態において、トウバンドは、10,000~100,00トータルデニール、例えば15,000~100,000、20,000~100,000、25,000~100,000、30,000~100,000、10,000~90,000、15,000~90,000、20,000~90,000、25,000~90,000、30,000~90,000、10,000~90,000、15,000~90,000、20,000~90,000、25,000~90,000、30,000~90,000、10,000~80,000、15,000~80,000、20,000~80,000、25,000~80,000、30,000~80,000、10,000~70,000、15,000~70,000、20,000~70,000、25,000~70,000、30,000~70,000、10,000~60,000、15,000~60,000、20,000~60,000、25,000~60,000又は30,000~60,000である。上限に関して、トウバンドは、100,000トータルデニール未満、例えば90,000未満、80,000未満、70,000未満又は60,000未満であり得る。下限に関して、トウバンドは、10,000のトータルデニールより大きく、例えば15,000より大きく、20,000より大きく、25,000より大きく又は30,000より大きい。
【0047】
いくつかの実施形態において、トウは、3.5kg~25kg、例えば3.5kg~22.5kg、3.5kg~20kg、3.5kg~17.5kg、3.5kg~15kg、4kg~25kg、4kg~22.5kg、4kg~20kg、4kg~17.5kg、4kg~15kg、4.5kg~25kg、4.5kg~22.5kg、4.5kg~20kg、4.5kg~17.5kg、4.5kg~15kg、5kg~25kg、5kg~22.5kg、5kg~20kg、5kg~17.5kg又は5kg~15kgの破壊強さを有することができる。上限に関して、トウは、25kg未満、例えば22.5kg未満、20kg未満、17.5kg未満又は15kg未満の破壊強さを有し得る。下限に関して、トウは、3.5kgより高い、例えば4kgより高い、4.5kgより高い又は5kgより高い破壊強さを有し得る。
【0048】
本開示のいくつかの実施形態において、トウバンドは、2種類以上の繊維を含み得る。いくつかの実施形態において、2種類以上の繊維は、dpf、断面形状、組成、トウバンドを形成する前の処理又はそのいずれかの組合せに基づいて様々であり得る。適切な追加的な繊維の例としては、限定されないが、カーボン繊維、活性化カーボン繊維、天然繊維、合成繊維又はそのいずれかの組合せが挙げられる。さらなる例としては、充填剤を含むいくつかの酢酸セルロースのトウ、及び充填剤を含まないいくつかの酢酸セルロースのトウが挙げられる。充填剤を含むトウ対充填剤を含まないトウの重量比は、1:99~99:1、たとえば、1:75~75:1、1:50~50:1、1:25~25:1、1:10~10:1、1:5~5:1、1:3~3:1、1:2~2:1、又はほぼ1:1の範囲であってよい。いくつかの実施態様においては、酢酸セルロースが、充填剤よりも多い重量比、たとえば、少なくとも1.5:1、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも5:1、少なくとも10:1、少なくとも15:1、少なくとも20:1、少なくとも25:5、又は少なくとも50:1の重量比で存在する(間の範囲も全て含む)。別のトウに、別のタイプの充填剤が含まれていてよいということも考えられるが、最終的には、組み合わされて一つのトウバンドが形成される。たとえば、いくつかのトウフィラメントには単糖類が含まれ、それに対して他のトウフィラメントには別の充填剤、たとえば多糖類又はデンプンが含まれていてもよい。さらに、トウには、トウには不可欠な、たとえばフレーク、粉体、又はドープに添加される充填剤、及び製造プロセスの後半で添加される充填剤、たとえばセルロース又はある種のデンプンが含まれていてよい。
【0049】
本開示のいくつかの実施形態は、捲縮されたトウバンドを形成するためにトウバンドを捲縮することを含み得る。トウバンドを捲縮することは、当業者に既知のいずれかの適切な捲縮技術を使用することも含み得る。これらの技術は、限定されないが、スタッファーボックス又はギアを含む様々な装置を含み得る。捲縮装置の非限定的な例及びそれらが作動する機構は、その全内容及び開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,610,852号明細書及び同第7,585,441号明細書に見ることができる。適切なスタッファーボックスクリンパーは、平滑なクリンパーニップロール又は溝付きクリンパーニップロール、テクスチャード加工のクリンパーニップロール、上部フラップ、下部フラップ又はそのいずれかの組合せを有し得る。
【0050】
捲縮の構成は、最終ベールの加工性において役割を果し得る。捲縮構成の例としては、限定されないが、水平、垂直、水平及び垂直間のいくつかの程度、ランダム又はそのいずれかの組合せが含まれ得る。本明細書で使用される場合、「水平」という用語は、捲縮構成を記載する場合、トウバンドの平面の捲縮又は繊維屈曲を意味する。本明細書で使用される場合、「垂直」という用語は、捲縮構成を記載する場合、トウバンドの平面の外側に突出し、且つトウバンドの平面に対して垂直である捲縮を意味する。水平及び垂直という用語は、一般的な全体的な捲縮構成を指し、+/-30度までの前記構成からの偏差を有し得ることに留意されたい。
【0051】
本開示のいくつかの実施形態において、捲縮されたトウバンドは、第1の捲縮構成を有する繊維及び第2の捲縮構成を有する繊維を含み得る。
【0052】
本開示のいくつかの実施形態において、捲縮されたトウバンドは、端部付近で少なくとも垂直な捲縮構成を有する繊維及び中心付近で少なくとも垂直な捲縮構成を有する繊維を含み得る。いくつかの実施形態において、捲縮されたトウバンドは、端部付近で少なくとも水平な捲縮構成を有する繊維及び中心付近で水平な捲縮構成を有する繊維を含み得る。
【0053】
捲縮構成は、その後の加工ステップにおける最終ベールの加工性に関して重要であり得、例えば、水平捲縮構成は、結合を強化するためにさらなるステップが行われない限り、垂直捲縮構成よりも良好な繊維の結合を提供し得る。実質的に後者の捲縮構成を有するトウバンドを捲縮するための方法は、例えば、それぞれ全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2013/0115452号明細書及び米国特許出願公開第2015/0128964号明細書に開示される。
【0054】
本開示のいくつかの実施形態において、繊維は、最終ベールのより良好な加工性を提供するために互いに接着され得る。接着添加剤は、いずれの捲縮構成とも一緒に使用され得るが、垂直捲縮構成と一緒に接着添加剤を使用することが有利であり得る。いくつかの実施形態において、接着は、繊維上及び/又は繊維中に接着添加剤を含み得る。そのような接着添加剤の例としては、限定されないが、バインダー、接着剤、樹脂、粘着性付与剤又はそのいずれかの組合せが挙げられ得る。本明細書に記載されるいずれかの添加剤又は2つの繊維を一緒に接着することができる他のものが使用され得、それらとしては、限定されないが、活性粒子、活性化合物、イオン樹脂、ゼオライト、ナノ粒子、セラミック粒子、柔軟剤、可塑剤、顔料、染料、香料、芳香剤、放出制御ベシクル、表面変性剤、潤滑剤、乳化剤、ビタミン、過酸化物、殺生物剤、抗真菌薬、抗生物質、帯電防止剤、難燃剤、消泡剤、分解剤、導電性変性剤、安定化剤又はそのいずれかの組合せが挙げられ得ることに留意されたい。本開示のいくつかの実施形態は、接着剤添加剤をドープに組み込むこと、接着剤添加剤を仕上げに組み込むこと、(トウバンドの形成前、後及び/又は中に)接着剤添加剤を繊維に適用すること、(捲縮前、後及び/又は中に)接着剤添加剤をトウバンドに適用すること又はそのいずれかの組合せにより、繊維(中、上又は両方)に接着剤添加剤を添加することを含み得る。
【0055】
接着剤添加剤は、最終ベールのより良好な加工性を提供するために、複数の接触点において繊維を一緒に接着するために十分な濃度で繊維中及び/又は繊維上に含まれ得る。使用される接着剤添加剤の濃度は、接着剤添加剤の種類及び接着剤添加剤が提供する接着の強度次第であり得る。いくつかの実施形態において、接着剤添加剤の濃度は、最終ベールのトウバンドの重量に対して0.01%、0.05%、0.1%又は0.25%の下限から5%、2.5%、1%又は0.5%の上限までの範囲であり得る。接着より多くのために使用される添加剤に関して、例えば最終ベールのトウバンド中の濃度がより高くあり得、例えば25%以下であり得ることに留意されたい。
【0056】
さらに、本開示のいくつかの実施形態は、捲縮前、後及び/又は中に繊維を加熱することを含み得る。前記加熱がいずれの捲縮構成とも組み合わせて使用され得るが、垂直捲縮構成と一緒に前記加熱を使用することが有利であり得る。前記加熱は、トウバンドの繊維を蒸気、エアロゾル化化合物(例えば、可塑剤)、液体、加熱された流体、直接熱源、間接熱源、繊維中の添加剤(例えば、ナノ粒子)に熱を生じさせる照射源又はそのいずれかの組合せに暴露することが必要であり得る。
【0057】
本開示のいくつかの実施形態は、捲縮されたトウバンドを条件付けることを含み得る。条件付けは、捲縮されたトウバンドの0.5%w/w以下の残留アセトン含有量を有する、捲縮されたトウバンドを生じるために使用され得る。条件付けは、捲縮されたトウバンドの8%w/w以下の残留含水量を有する捲縮されたトウバンドを達成するために使用され得る。条件付けは、捲縮されたトウバンドの繊維を蒸気、エアロゾル化化合物(例えば、可塑剤)、液体、加熱された流体、直接熱源、間接熱源、繊維中の添加剤(例えば、ナノ粒子)に熱を生じさせる照射源又はそのいずれかの組合せに暴露することが必要であり得る。
【0058】
UCEは、繊維を捲縮しないために必要とされる仕事の量である。UCEは、以下に報告されるように、ベイリングする前、すなわち乾燥後及びベイリングする前にサンプリングされる。UCEは、本明細書で使用される場合、以下の通りに測定される:(従来の校正の20分前に)ウォーミングアップされたInstron引張試験器(モデル1130、クロスヘッドギア-Gear #R1940-1及びR940-2、Instron Series IX-Version 6データ収集及び分析ソフトウェア、Instron 50 Kg最大容量負荷セル、Instronトップローラーアセンブリ、1インチ×4インチ×1/8インチ厚高グレードBuna-N 70 Shore Aデュロメーターゴムグリップフェイス)を使用し、長さ約76cmの、あらかじめ調整されたトウ試料(22℃±2℃及び相対湿気60%±2%で24時間、あらかじめ調整された)をトップローラーの中心上で環状にし、それにわたって均一に広げ、(1つの表示ディスプレーあたり)100g±2gまで穏やかに引くことにより、あらかじめ張力をかけ、且つ試料のそれぞれの端部を(製造業者推薦を上回らない最も高い利用可能な圧力において)、50cmのゲージ長(ラバーグリップの上部から測定されるゲージ長)を生じるように、より低いグリップにおいて固定し、次いで30cm/分のクロスヘッド速度で破断するまで試験する。3つの許容可能な試験が得られるまでこの試験を繰り返し、これらの試験からの3つのデータポイントの平均を報告する。エネルギー(E)限度は、0.220kg~10.0kgである。変位(D)は、10.0kgのあらかじめセットされた点を有する。UCEは、以下の式:UCE(gcm/cm)=(E*1000)/((D*2)+500)によって算出される。破壊強さは、同じ試験及び次の式BS=L(ここで、Lは、最大負荷における負荷(kg)である)を使用して算出することができる。本開示の特定の実施形態において、UCE値(gcm/cm)は、190~400、例えば200~300、例えば290の範囲であり得る。本開示の特定の実施形態において、破壊強さは、3.5kg~25kg、例えば4kg~20kg、4.5kg~15kg又は5kg~12kgの範囲であり得る。
【0059】
シガレットフィルター
分解可能なシガレットフィルターには、一般的には、充填剤を含む開繊された酢酸セルロースのトウで作成したフィルター要素(すなわちフィルタープラグ)、そのフィルター要素を包み込むプラグラップが含まれる。酢酸セルロースのトウは、フィルターの製造業者に、ベールとして搬送される。次いで、そのトウが、ロッド製造設備の中で、開かれ、すなわち開繊され(bloomed)、フィルターロッド、そして最終的にはシガレットフィルターが形成される。シガレットフィルターでは、各種の性質が望ましいが、そのような性質としては、以下のものが挙げられる:締まり具合(firmness)、圧力低下、圧力低下の可変性、開梱性、フライ(fly)、及び脱クランプ(uncramping)エネルギー。本明細書に記載の充填剤、さらにはその使用量を選択して、それらの性質とシガレットフィルターの分解性とのバランスをとってよい。
【0060】
実施態様
[実施態様1]
酢酸セルロースのトウバンドであって、前記トウバンドが、a)1.3より大の置換度(DS)を有する酢酸セルロース;及びb)充填剤;を含み、前記充填剤が、酢酸セルロースよりも大きい分解速度を有する、酢酸セルロースのトウバンド。
【0061】
[実施態様2]
前記充填剤が、単糖類、多糖類、多糖類のエステル、加水分解された多糖類、オリゴ糖、又はそれらの組合せを含む、実施態様1に記載のトウバンド。
【0062】
[実施態様3]
前記充填剤が、デキストラン、加水分解されたデンプン、変性され且つ加水分解されたデンプン、大麻、セルロース、又はそれらの組合せを含む、実施態様1又は2に記載のトウバンド。
【0063】
[実施態様4]
前記充填剤が、前記トウバンドの合計重量を基準にして、0.1~99.9重量%の量で存在する、実施態様1~3のいずれかに記載のトウバンド。
【0064】
[実施態様5]
前記充填剤が、前記トウバンドの合計重量を基準にして、0.1~75重量%の量で存在する、実施態様1~4のいずれかに記載のトウバンド。
【0065】
[実施態様6]
前記充填剤が、前記トウバンドの合計重量を基準にして、0.1~50重量%の量で存在する、実施態様1~5のいずれかに記載のトウバンド。
【0066】
[実施態様7]
前記充填剤が、前記トウバンドの合計重量を基準にして、0.1~25重量%の量で存在する、実施態様1~6のいずれかに記載のトウバンド。
【0067】
[実施態様8]
前記充填剤の分解速度が、前記酢酸セルロースのそれよりも、少なくとも3%高い、実施態様1~7のいずれかに記載のトウバンド。
【0068】
[実施態様9]
前記充填剤の分解速度が、前記酢酸セルロースのそれよりも、少なくとも10%高い、実施態様1~8のいずれかに記載のトウバンド。
【0069】
[実施態様10]
前記充填剤の分解速度が、前記酢酸セルロースのそれよりも、少なくとも15%高い、実施態様1~9のいずれかに記載のトウバンド。
【0070】
[実施態様11]
前記トウバンドが、1:99~99:1の、前記酢酸セルロース対前記充填剤の重量比を含む、実施態様1~10のいずれかに記載のトウバンド。
【0071】
[実施態様12]
前記トウバンドが、1:50~50:1の、前記酢酸セルロース対前記充填剤の重量比を含む、実施態様1~11のいずれかに記載のトウバンド。
【0072】
[実施態様13]
前記トウバンドが、1:25~25:1の、前記酢酸セルロース対前記充填剤の重量比を含む、実施態様1~12のいずれかに記載のトウバンド。
【0073】
[実施態様14]
前記トウバンドが、酢酸セルロースを、前記トウバンドの合計重量を基準にして、0.1~99.9重量%の量で含む、実施態様1~13のいずれかに記載のトウバンド。
【0074】
[実施態様15]
前記酢酸セルロースが、2~2.9の置換度を有する、実施態様1~14のいずれかに記載のトウバンド。
【0075】
[実施態様16]
前記トウバンドが、前記トウバンドの合計重量を基準にして、0.01~25重量%の添加剤を含む、実施態様1~15のいずれかに記載のトウバンド。
【0076】
[実施態様17]
開繊されたトウを含むフィルター要素を含むシガレットフィルターであって、前記開繊されたトウが、実施態様1~16のいずれかに記載のトウバンドを含む、シガレットフィルター。
【0077】
[実施態様18]
実施態様17に記載のシガレットフィルターを形成させるための方法であって、前記方法が、a)前記酢酸セルロースのトウバンドを備えるステップ;b)前記トウバンドを開繊させるステップ;及びc)前記開繊されたトウバンドを成形して、フィルターロッドとするステップ、を含む、方法。
【0078】
[実施態様19]
前記トウバンドが、a)酢酸セルロース及び前記充填剤を溶媒と組み合わせて、ドープを形成させるステップ;b)前記ドープを溶媒-紡糸して、複数のトウフィラメントを形成させるステップ;及びc)前記複数のトウフィラメントを束ねて、トウバンドを形成させるステップ;により形成される、実施態様18に記載の方法。
【0079】
[実施態様20]
前記トウバンドが、a)酢酸セルロース及び前記充填剤を組み合わせてフレークを形成させるステップ;b)前記フレークを溶媒と組み合わせて、ドープを形成させるステップ;c)前記ドープを溶媒-紡糸して、複数のトウフィラメントを形成させるステップ;及びd)前記複数のトウフィラメントを束ねて、トウバンドを形成させるステップ;により形成される、実施態様18に記載の方法。
【0080】
本発明が詳細に記載されたが、本発明の趣旨及び範囲内の修正形態は、当業者に容易に明らかになるであろう。上記及び/又は添付の特許請求の範囲内で列挙される本発明の態様及び種々の実施形態の部分及び種々の特徴は、全体的又は部分的に組み合わされ得るか又は交換され得ることが理解されるべきである。種々の実施形態の上記の記載において、別の実施形態を引用するそれらの実施形態は、当業者によって認識される他の実施形態と適切に組み合わされ得る。さらに、当業者は、上記の記載が一例であるに過ぎず、本発明を限定するように意図されないことを認識する。
【国際調査報告】