(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】血液酸素化の正確な算出を可能にするための、様々な波長のレーザパルスによって生成される音響信号を正規化することにおける光エネルギーメーターの使用
(51)【国際特許分類】
A61B 5/145 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
A61B5/145
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518833
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(85)【翻訳文提出日】2023-05-18
(86)【国際出願番号】 US2021051608
(87)【国際公開番号】W WO2022072202
(87)【国際公開日】2022-04-07
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508152917
【氏名又は名称】ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF REGENTS OF THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
(71)【出願人】
【識別番号】517008526
【氏名又は名称】ノンインベイシックス,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エセナリエフ,リナト
(72)【発明者】
【氏名】ペトロフ,ユーリー
(72)【発明者】
【氏名】ペトロフ,アイリーン
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK01
4C038KL05
4C038KL07
4C038KX01
4C038KY04
(57)【要約】
【解決手段】本明細書のシステム、装置、および方法は、光音響測定を行い、使用される様々な光パルスの光エネルギーレベルの変動に対して修正するか、または正規化する。光源は、光パルスを組織に方向付け、光エネルギーメーターは、様々な光パルスの光エネルギーを測定し、音響検出器は、光パルスに応答して組織によって生成される音響応答を測定し、およびプロセッサは、測定された音響応答に基づいて、かつ光パルス間の異なるエネルギーレベルに対して補正または正規化された分析物の濃度を算出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物の濃度を測定する方法であって、
複数の光パルスを組織へと方向付ける工程と、
前記組織に方向付けた前記複数の光パルスの光エネルギーレベルを測定する工程と、
前記組織に方向付けられた前記複数の光パルスに応答して前記組織の複数の音響応答を測定する工程と、
測定された前記光エネルギーレベルに基づいて、測定された前記複数の音響応答を正規化する工程と、
正規化された前記複数の音響応答に基づいて分析物の濃度を決定する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記複数の光パルスを組織へと方向付ける工程は、第1の波長で第1の光パルスを前記組織へと方向付けること、および第2の波長で第2の光パルスを前記組織へと方向付けることを含み、ここで、前記第1の波長と前記第2の波長は異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の光パルスは、600nm~1,300nmの1つ以上の波長である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組織の複数の音響応答は、前記複数の光パルスが方向付けられる前記組織の同じ側から測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記組織の複数の音響応答は、前記複数の光パルスが方向付けられる前記組織の異なる側から測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記分析物は、ヘモグロビン、オキシヘモグロビン、およびデオキシヘモグロビンの1つ以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
1つ以上の分析物の決定された濃度および前記組織の特徴付けられた特性に基づいて、血液酸素化を決定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記組織は、1つ以上の血管、および前記1つ以上の血管を囲む組織を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
分析物の濃度を測定するためのシステムであって、
複数の光パルスを組織へと方向付けるための少なくとも1つの光源と、
前記組織へと方向付けられた前記複数の光パルスの光エネルギーレベルを測定するための光エネルギーメーターと、
前記複数の光パルスに対する前記組織の複数の音響応答を測定するための音響検出器と、
測定された前記光エネルギーレベルに基づいて測定された前記複数の音響応答を正規化し、かつ正規化された前記複数の音響応答に基づいて分析物の濃度を決定するためのプロセッサと
を含む、システム。
【請求項10】
前記複数の光源は、第1の波長で第1の光パルスを生成するように構成された第1の光源、および第2の波長で第2の光パルスを生成するように構成された第2の光源を含み、ここで、前記第1の波長と前記第2の波長は異なる、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記複数の光パルスは、600nm~1,300nmの1つ以上の波長である、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの光源は、複数の光源を含み、各光源は、異なる波長で光パルスを生成するように構成される、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの光源および前記音響検出器は、前記組織に対して互いに同じ側に配向される、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの光源および前記音響検出器は、前記組織に対して互いに異なる側に配向される、請求項9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2020年9月29日に提出された米国仮特許出願第63/084,706号の優先権を主張し、その出願は参照により本明細書に全体として組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、医療システム、装置、および方法に関し、具体的に、血液酸素化および/またはヘモグロビン濃度の決定などの組織中の分析物の濃度を測定するためのものである。
【0003】
多くの研究、医療および臨床の応用では、分析物の濃度測定が必要とされる。パルス酸素測定法は、例えば、対象の血液酸素化をリアルタイムで決定する、一般的に使用される技術である。しかし、パルス酸素測定法は、対象の全体的な血液酸素濃度をよりよくし得る、より深い血管の血液酸素化の決定において多くの課題に直面する。そのため、光音響測定またはフォトアコースティック(photoacoustic)測定などの代替技術が開発されてきた。とはいえ、例えば、測定精度を向上させるために光音響またはフォトアコースティック測定技術については、改善が望まれている。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、一般的に、医療システム、装置、およびそれらの使用のための方法に関し、具体的に光音響またはフォトアコースティック測定および診断システム、装置、および方法に関する。光音響的に(すなわち、フォトアコースティック的に)1つ以上の生理学的パラメータを決定するシステム、装置、および方法が記載される。試料を調査するために使用される複数の光パルスの測定された光エネルギーレベルに基づいて、そのような光音響測定を補正するシステム、装置、および方法が記載されている。
【0005】
例示的なシステムの1つ以上の光源は、複数の光パルスを皮膚などの組織に方向付ける場合がある。システムの音響検出器は、光パルスに応答して組織によって生成される音響応答を検出することができる。分析物濃度の算出は、様々な特性および/または様々な特性間の比、例えば、光パルスに応答して組織中で生成される音響信号の振幅(複数可)に基づく場合がある。信号平均化のために、各算出は複数の波長のそれぞれの光パルス群の比に依存する場合がある。各波長の光源によって生成される光エネルギーの振幅の変動は、分析物濃度の不正確な算出をもたらす可能性がある。本開示の例示的なシステムは、組織に方向付けられた光パルスの光エネルギーレベルを測定するための光エネルギーメーターをさらに含み得る。システムのプロセッサは、音響応答を引き起こす異なる光パルスの異なるエネルギーレベルに対して正規化または補正された音響応答に基づいて、分析物、典型的に、ヘモグロビンの濃度を算出し得る。その後、音響応答に対してそのような補正または正規化を適用することによって、より正確な光音響測定および分析物の濃度の算出が行われ得る。特に、各波長での光エネルギーをエネルギーメーターで測定し、得られた音響信号(複数可)を所定のエネルギーレベル(複数可)に正規化することができる。
【0006】
光源によって放出される各パルスのエネルギーは、例えば、ビームスプリッタを用いるなどしてパルスのエネルギーの一部を光エネルギーメーターの開口部に方向付けることによって、光源の出力オリフィスに接近して測定してもよい。パルスのエネルギーの残りは、1つ以上の光ファイバまたは光ガイドを含み得る光送達システムを通して組織に方向付けられることができる。プロセッサは、光パルスに応答して生成された音響信号の波形を光パルスのエネルギーで除算し、それによって音響信号の波形を正規化するように指示され得る。
【0007】
多くの実施形態では、様々な波長の光パルスが使用される。複数の波長が使用される場合、光送達システムの透過率が異なる波長で異なり得るため、光源出力でエネルギーメーターによって測定されるエネルギーと、光送達システムを通過した後に組織に入射するエネルギーの比は、システム較正工程(複数可)において、使用される波長のそれぞれに対して事前に確立され得る。プロセッサは、音響信号をそのエネルギーについて正規化する際に較正係数を使用し、選択された比率タイプに応じて、任意選択で追加の乗算器(複数可)または除算器(複数可)を適用するように指示され得る。
【0008】
本開示の態様は、分析物の濃度を測定する方法を提供する。例示的な方法は、複数の光パルスを組織へと方向付ける工程、組織に方向付けられた複数の光パルスの光エネルギーレベルを測定する工程、組織に方向付けられた複数の光パルスに応答して組織の複数の音響応答を測定する工程、測定された光エネルギーレベルに基づいて、測定された複数の音響応答を正規化する工程、および正規化された複数の音響応答に基づいて分析物の濃度を決定する工程を含んでもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、複数の光パルスを組織へと方向付ける工程は、第1の波長で第1の光パルスを組織へと方向付けること、および第2の波長で第2の光パルスを組織へと方向付けることを含み、ここで、第1の波長と第2の波長は異なる。
【0010】
いくつかの実施形態では、複数の光パルスは、600nm~1,300nmの1つ以上の波長である。
【0011】
いくつかの実施形態では、組織の複数の音響応答は、複数の光パルスが方向付けられる組織の同じ側から測定される。
【0012】
いくつかの実施形態では、組織の複数の音響応答は、複数の光パルスが方向付けられる組織の異なる側から測定される。
【0013】
いくつかの実施形態では、分析物は、ヘモグロビン、オキシヘモグロビン、およびデオキシヘモグロビンの1つ以上である。
【0014】
いくつかの実施形態では、方法は、1つ以上の分析物の決定された濃度および組織の特徴付けられた特性に基づいて、血液酸素化を決定する工程をさらに含むことがある。
【0015】
いくつかの実施形態では、組織は、1つ以上の血管および1つ以上の血管を囲む組織を含む。
【0016】
本開示の態様は、分析物の濃度を測定するためのシステムを提供する。例示的なシステムは、複数の光パルスを組織へと方向付けるための少なくとも1つの光源と、組織へと方向付けられた複数の光パルスの光エネルギーレベルを測定するための光エネルギーメーターと、複数の光パルスに対する組織の複数の音響応答を測定するための音響検出器と、測定された光エネルギーレベルに基づいて測定された複数の音響応答を正規化し、かつ正規化された複数の音響応答に基づいて、分析物の濃度を決定するためのプロセッサとを含むことがある。
【0017】
いくつかの実施形態では、複数の光源は、第1の波長で第1の光パルスを生成するように構成された第1の光源、および第2の波長で第2の光パルスを生成するように構成された第2の光源を含み、ここで、第1の波長と第2の波長は異なる。
【0018】
いくつかの実施形態では、複数の光パルスは、600nm~1,300nmの1つ以上の波長である。
【0019】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの光源は、複数の光源を含み、各光源は、異なる波長で光パルスを生成するように構成される。
【0020】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの光源および音響検出器は、組織に対して互いに同じ側に配向される。
【0021】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの光源および音響検出器は、組織に対して互いに異なる側に配向される。
【0022】
引用による組み込み
本明細書で言及される公報、特許、および特許出願はすべて、あたかもそれぞれの個々の公報、特許、または特許出願が参照によって組み込まれるように具体的かつ個別にしめされているのと同じ程度、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本開示の新規な特徴は、とりわけ添付の請求項で説明される。本開示の特徴と利点についてのよりよい理解は、発明の原則が利用されている例示的な実施形態を説明する以下の詳細な記載と添付の図面とを参照することにより得られる。一致する参照番号は全図面で対応する部分を指定している。図面は必ずしも同一縮尺で描かれているわけではない。
【
図1A】本開示の実施形態に係る、反射モードで動作する光音響測定システムの概略図を示す。
【
図1B】本開示の実施形態に係る、送信モードで動作する光音響測定システムの概略図を示す。
【
図2】本開示の実施形態に係る、光音響の測定の例示的な方法のフローチャートを示す。
【
図3A】本開示の実施形態に係る、実験的例における光音響応答のグラフを示す。
【
図3B】本開示の実施形態に係る、実験的例における光音響応答のグラフを示す。
【
図3C】本開示の実施形態に係る、実験的例における光音響応答のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
様々な実施形態に対する詳細な言及がここで行われ、その例は添付図面に示される。以下の詳細な記載では、本開示の発明(複数可)および記載された実施形態の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が記載される。しかし、本発明は、これらの具体的な詳細なしで、任意選択で実施される。他の例では、周知の方法、手順、構成要素、および回路は、実施形態の態様を不必要に不明瞭にしないように、詳細には説明されていない。
【0025】
本明細書で使用される用語は、特別の実施形態だけを記載することを目的としており、請求項を制限することを意図していない。実施形態の説明および添付の請求項で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が他に明白に示していない限り、複数形を同様に含むことが意図されている。また、本明細書で使用されるように用語「および/または」は、関連する列挙された項目の1つ以上の任意のおよびすべての可能な組み合わせを指し、包含することが理解されるであろう。「含む」および/または「含むこと」という用語は、本明細書での使用時に、明示された特徴、整数、工程、操作、要素、および/または構成要素の存在を特定するが、1以上の他の特徴、整数、工程、操作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を除外するものではないことが、さらに理解される。
【0026】
本明細書で使用されるように、用語「場合」は、文脈に応じて、述べられた条件先例が正確である「とき」または「時に」または「決定することに応答して」または「決定に従って」または「検出することに応答して」を意味するものと任意に解釈される。同様に、「[記載された条件先例が正確である]ことが決定された場合」または「[記載された条件先例が正確である]場合」または「[記載された条件先例が正確である]時」という表現は、文脈に応じて、記載された条件先例が正確であると「決定時に」または「決定することに応答して」または「決定に従って」または「検出時に」または「検出することに応答して」のことを意味するものと、任意選択的に解釈されている。
【0027】
図1Aおよび
図1Bは例示的な光音響測定システム(100)を示す。光音響測定システム(100)は、1つ以上の光または光パルスを生成するための光または光源(110)、音響センサ(120)、光または光源(110)に動作可能に結合された光エネルギーセンサ(130)、光または光源(110)に結合された光送達システム(115)、ならびに光または光源(110)、音響センサ(120)、および光エネルギーセンサ(130)に動作可能に結合されたプロセッサ(140)を含むことがある。光エネルギーセンサ(130)は、例えば、ニュージャージー州ニュートンのThorlabsのDET 100A検出器、イスラエル・エルサレムのOphir OpticsのPE25-CもしくはPE50BB-DIF-C検出器、またはカリフォルニア州サンタクララのCoherent Inc.のEnergyMaxセンサであってもよい。光または光源(110)は、いくつかの例を挙げると、光パラメトリック発振器(OPO)、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード、レーザダイオードアレイ、ナノ秒持続時間のパルスを備える他のパルス光源などであってよい。光または光源(110)は、皮膚または他の表面組織などの組織(TI)に1つ以上の光パルスを方向付けるように配向され得る光送達システム(115)に結合されることがある。調査されるべき適切な組織(TI)の例としては、乳児の手または成人の指の表在静脈、橈骨動脈、上矢状洞、内頸静脈、および他の血管を含む。1つ以上の光パルスは、発色団、例えば、ヘモグロビンによって吸収される波長の近赤外線(NIR)光の短い、典型的に100ナノ秒より短いパルスであってよい。1つ以上の光パルスは、可視、赤外線、および/または紫外線の範囲、例えば、600nm~1,300nmの波長範囲、例えば、ヘモグロビンの等辺点である805nmの波長であってもよい。光パルス(複数可)は、光源またはレーザ、組織の安全性、患者の安全性、および他の考慮事項によって制限されるように、例えば、1μJ~1mJの間のエネルギーレベルの広範囲のエネルギーレベルを有することがある。光パルス(複数可)は、広範囲の反復率、例えば、1~10,000Hzの間の反復率を有することがある。
【0028】
音響センサ(120)は、組織(TI)に方向付けられた1つ以上の光パルスに応答して、組織(TI)によって生成された音響信号(複数可)を検出するように構成され得る。音響センサ(120)は、
図1Aに示されるように、音響センサ(120)が組織(TI)に対して光源(110)と同じ側に配向され、その場所で音響信号(複数可)を検出することができる反射モードで動作するように構成され得る。代替的にまたは組み合わせて、音響センサ(120)は、
図1Bに示されるように、音響センサ(120)が組織(TI)に対して光源(110)と反対側に配向され、その場所で音響信号(複数可)を検出することができる送信モードで動作するように構成され得る。音響センサ(120)は、いくつかの例を挙げると、単一の広帯域音響検出器、音響アレイ、または音響マトリックスを含むことがある。反射モードで動作する音響センサ(120)などのシステムおよび1つ以上の構成要素は、組織全体の厚さが制限要因にならない場合があるため、任意の表在静脈または血管を調査するために使用され得る。
【0029】
プロセッサ(140)は、音響センサ(120)および光エネルギーセンサ(130)に動作可能に結合されることで、検出される様々な光学強度に基づいて、検出された音響応答を正規化することができる。例えば、第1の光エネルギーを備える第1の光パルスに応答する組織(TI)からの第1の音響応答が検出され、異なる第2の光エネルギーを備える第2の光パルスに応答する組織(TI)からの第2の音響応答が検出され得るなどであり、異なる音響応答は異なる光エネルギーに対して正規化され得る。正規化された音響応答値に基づいて、プロセッサ(130)は、いくつかの例を挙げると、全ヘモグロビン(THb)、オキシヘモグロビン、およびデオキシヘモグロビンなどの分析物の濃度を算出し得る。算出された濃度は、視覚ディスプレイなどシステム(100)のユーザインターフェースを用いて表示またはその他の方法でユーザに提供され得る。
【0030】
図2は、光音響測定の例示的な方法(200)のフローチャートを示す。工程(210)において、1つ以上の光パルスが、皮膚または他の表面的組織などの組織に方向付けられる。1つ以上の光パルスは、本明細書に記載される波長範囲、エネルギーレベル範囲、および/または反復率範囲にあってもよい。典型的に、複数の光パルスは、それぞれが異なる波長にあり、組織に方向付けられる。複数の光パルスが組織に方向付けられる実施形態では、各光パルスは異なる波長にあってもよい。工程(220)において、光パルス(複数可)の光エネルギーが、光エネルギーメーターで測定される。工程(230)において、1つ以上の光パルスに応答して生成された音響信号が検出され得る。工程(240)において、測定された光学エネルギーに基づいて音響信号が正規化され得る。異なる光または光パルスに応答する音響信号は、光または光パルスの異なるエネルギーを補正するために正規化されてもよい。工程(250)において、検出され正規化された音響信号に基づいて、分析物濃度が算出され得る。分析物濃度は、例えば、総ヘモグロビン(THb)、オキシヘモグロビン、および/またはデオキシヘモグロビンであり得る。工程(210)、(220)、および(250)は、参照により本明細書で援用される2015年7月8日出願の米国特許出願第14/793,969号明細書(現在は米国特許第9,380,967号明細書)、2015年7月8日出願の米国特許出願第14/794,022号明細書(現在は米国特許第10,307,088号明細書)、2015年7月8日出願の米国特許出願第14/794,037号明細書(現在は米国特許第10,231,656号明細書)、および2019年1月22日出願の米国特許出願第16/253,678号明細書に記載されるように実行されてもよい。
【0031】
光エネルギーの測定値を正規化する例は、以下の通りである。第1の光パルスは特定波長にあり、エネルギー(E1)を有し得る。第1の光パルスは、組織に入り、波形(S1(t))として検出され得る組織から音響応答を生成することができ、tは、通常はマイクロ秒スケールの時間である。プロセッサは、(S1(t))を(E1)で分割するように指示され得る。同じ波長にありエネルギー(E2)を有する第2の光パルスは、組織に入り、波形(S2(t))として検出され得る音響応答を生成することができ、tは、通常はマイクロ秒スケールの時間である。プロセッサはさらに、(S2(t))をE2で分割するように指示され得る。プロセッサはさらに、これら2つのエネルギー正規化された波形を平均し(例えば、[S1(t)/E1+S2(t)/E2]/2)、必要なパラメータを算出するためにその平均を使用する、すなわち、平均された波形における特性ピークの振幅を見出すように指示され得る。通常、算出の精度を向上させるために、2つより多くの波形が平均化される。
【0032】
上記の工程は、実施形態に従って光音響測定を実行する方法(200)を示すが、当業者であれば本明細書に記載の教示に基づいて多くの変形を認識するであろう。工程は異なる順序で達成されてもよい。工程は、追加または削除されてもよい。工程のいくつかは、下位工程を含んでもよい。工程の多くは、有益または有利である限り何度も繰り返されてもよい。
【0033】
方法(200)の工程の1つ以上は、本明細書に記載されるような様々な回路、例えば、プロセッサ、コントローラ、または回路基板などのうち1つ以上を用いて実行されてもよい。そのような回路は、方法(200)の1つ以上の工程を提供するようにプログラムされてもよく、プログラムは、コンピュータ可読メモリに記憶されたプログラム命令、または、例えば、プログラム可能なアレイロジックもしくはフィールドプログラマブルゲートアレイなどの論理回路のプログラムされた工程を含んでもよい。
【0034】
実験データ
【0035】
血管のファントム(例えば、直径3mmのプラスチックチューブ内にヒツジの血液を入れ、血管周囲の軟組織を模倣するイントラリピッド溶液にチューブを浸したもの)を用いた実験で、以下のデータが得られた。血液の酸素濃度を徐々に変化させた。各酸素化濃度で血液試料を採取し、その酸素化濃度を標準のコオキシメータ(例えば、「ゴールドスタンダード」)を用いて測定した。さらに、光音響測定を、700nmと800nm、760nmと800nm、および1064nmと800nmといった3つの波長ペアで行った。各波長ペアについて、公表されているオキシヘモグロビンおよびデオキシヘモグロビンの光吸収スペクトルから導かれる対応するアルゴリズムを用いて、血液の酸素化濃度を算出した(例えば、https://omlc.org/spectra/hemoglobin/を参照)。
【0036】
図3Aは、特定の波長にあるレーザパルスに対する音響応答(すなわち、光音響信号)の平均化を示す。提示された波形は、対応する波長にある平均パルスエネルギーに対して正規化されない。
【0037】
図3Bは、各波長での平均パルスエネルギーの波形を正規化した後の同じ音響応答を示す。
【0038】
その後、各波形の最も顕著なピーク(すなわち、チューブ内の血液から生じるピーク)の振幅は、以下のアルゴリズムに従って、(
図3Bのグラフに示される)血液酸素化を算出するために使用される:
・700/800nmのペアで、SO2=(1.17-0.5×R1)×100%、R1=A(700)/A(800)
・760/800nmのペアで、SO2=(1.54-0.76×R2)×100%、R2=A(760)/A(800)
・1064/800nmのペアで、SO2=(-0.23+1.45×R3)×100%、R3=A(1064)/A(800)
【0039】
各波長ペアにおいて得られた酸素化値を、
図3Bのグラフ領域に示す。
【0040】
図3Cは、本実験からの完全なデータセットを示す。各データポイントは、各波長ペアに対して行われたいくつかの測定の平均値である(エラーバーは標準偏差を表す)。
図3Aおよび
図3Bの信号は、
図3Cの時間スケール上、約408分で対応する群に属する。
【0041】
理解されるように、3つの異なるアルゴリズムを使用するエネルギー正規化された光音響信号から導かれる血液酸素化は、コオキシメトリ(co-oximetory)によって提供される値と十分に相関する。
【0042】
本開示の好ましい実施形態が本明細書中で示され、かつ記載されてきたが、このような実施形態はほんの一例として提供されているに過ぎないということは、当業者に明らかであろう。多数の変形、変更、および置き換えが、本開示の範囲から逸脱することなく、当業者によって現在想到されることとなる。本明細書に記載される本開示の実施形態の様々な代案が、本開示の発明の実施に際して利用され得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を規定するものであり、この特許請求の範囲とその等価物における方法および構造体は、それによって包含されるものであることが意図されている。
【国際調査報告】