(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】液体洗浄剤濃縮物、レディ・トゥ・ユース溶液、その用途および洗浄方法
(51)【国際特許分類】
C11D 17/08 20060101AFI20231124BHJP
C11D 7/36 20060101ALI20231124BHJP
C11D 7/32 20060101ALI20231124BHJP
C11D 1/00 20060101ALI20231124BHJP
C11D 3/33 20060101ALI20231124BHJP
C11D 3/36 20060101ALI20231124BHJP
C11D 3/43 20060101ALI20231124BHJP
C11D 3/50 20060101ALI20231124BHJP
C11D 3/40 20060101ALI20231124BHJP
C11D 7/06 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
C11D17/08
C11D7/36
C11D7/32
C11D1/00
C11D3/33
C11D3/36
C11D3/43
C11D3/50
C11D3/40
C11D7/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023524662
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(85)【翻訳文提出日】2023-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2021079351
(87)【国際公開番号】W WO2022084511
(87)【国際公開日】2022-04-28
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500163399
【氏名又は名称】ケミシェ・ファブリーク・ドクトル・ヴァイゲルト・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Chemische Fabrik Dr.Weigert GmbH & Co.KG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】アイゼルト,デニス
(72)【発明者】
【氏名】ヴルフ,バスティアン
(72)【発明者】
【氏名】シュプリンガー,マティーアス
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB27
4H003AC23
4H003BA12
4H003DA05
4H003DA12
4H003DB01
4H003DC02
4H003EA21
4H003EB13
4H003EB14
4H003EB16
4H003EB24
4H003EC02
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA07
(57)【要約】
a.少なくとも1種のホスホン酸塩、b.アミノポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシポリカルボン酸、およびそれらの塩から選択される第1のキレート剤、ならびにc.少なくとも1種の酵素、好ましくはタンパク質分解酵素を含み、pHは、9または9>である、液体洗浄剤濃縮物。本発明はまた、レディ・トゥ・ユース溶液;対象物の洗浄および/または消毒のためのその使用、および洗浄方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.少なくとも1種のホスホン酸塩、
b.アミノポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシポリカルボン酸、およびそれらの塩から選択される第1のキレート剤、
c.少なくとも1種の酵素、好ましくはタンパク質分解酵素を含み、
pHは、9または>9である、液体洗浄剤濃縮物。
【請求項2】
前記液体洗浄剤濃縮物は、9~12、好ましくは10~12、より好ましくは10~11のpHを有する、請求項1に記載の液体洗浄剤濃縮物。
【請求項3】
前記少なくとも1種のホスホン酸塩が、ホスホノブタントリカルボン酸(PBTC)塩、アミノトリスメチレンホスホン酸(ATMP)塩、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)塩、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)塩、およびそれらの混合物から選択される、請求項1または2に記載の液体洗浄剤濃縮物。
【請求項4】
前記ホスホン酸塩が、ホスホノブタントリカルボン酸のナトリウム塩、アミノトリスメチレンホスホン酸のナトリウム塩、またはそれらの混合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の液体洗浄剤濃縮物。
【請求項5】
前記第1のキレート剤が、(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、グルタミン酸-N,N-二酢酸(GLDA)、イミノジコハク酸(IDS)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)、ポリアスパラギン酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、ニトリロモノ酢酸ジプロピオン酸、ニトリロトリプロピオン酸、β-アラニン二酢酸(β-ADA)、ジエチレントリアミン五酢酸、1,3-プロピレンジアミン四酢酸、1,2-プロピレンジアミン四酢酸、N-(アルキル)エチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン三酢酸、シクロヘキシレン-1,2-ジアミン四酢酸、セリン二酢酸、イソセリン二酢酸、L-アスパラギン二酢酸、グルコン酸、グルコヘプタン酸、リンゴ酸、酒石酸、ムチン酸、乳酸、グルタル酸、クエン酸、タルトロン酸、ラクトビオン酸、スクロースモノカルボン酸、スクロースジカルボン酸、スクローストリカルボン酸、およびそれらの塩から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の液体洗浄剤濃縮物。
【請求項6】
前記第1のキレート剤が、(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸のナトリウム塩またはメチルグリシン二酢酸のナトリウム塩である、請求項1~4のいずれか一項に記載の液体洗浄剤濃縮物。
【請求項7】
前記液体洗浄剤濃縮物が、アミノポリカルボン酸およびその塩から選択される少なくとも1種の第2のキレート剤を含み、前記第1のキレート剤および前記第2のキレート剤が、互いに異なる、請求項1~6のいずれか一項に記載の液体洗浄剤濃縮物。
【請求項8】
前記液体洗浄剤濃縮物が、前記ホスホン酸塩としてホスホノブタントリカルボン酸のナトリウム塩、アミノトリメチレンホスホン酸のナトリウム塩、またはそれらの混合物、前記第1のキレート剤として(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸のナトリウム塩、および前記第2のキレート剤として好ましくはメチルグリシン二酢酸のナトリウム塩を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の液体洗浄剤濃縮物。
【請求項9】
前記液体洗浄剤がまた、界面活性剤、ヒドロトロープ、アルカノールアミン、アルカリ金属水酸化物、溶媒、腐食防止剤、香料、および染料から選択されるさらなる成分を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の液体洗浄剤濃縮物。
【請求項10】
以下の成分の少なくとも1種が、それぞれの場合において以下の重量割合で前記液体洗浄剤濃縮物中に存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載の液体洗浄剤濃縮物:
-前記液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、1~13重量%、好ましくは2~10重量%の重量割合の前記ホスホン酸塩または前記ホスホン酸塩混合物;
-前記液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、0.5~10重量%、好ましくは1~8重量%の重量割合の前記第1のキレート剤;
-前記液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、0.5~10重量%、好ましくは1~8重量%の重量割合の前記第2のキレート剤;
-前記液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、0.05~4重量%、好ましくは0.1~2重量%の重量割合の前記酵素または前記酵素混合物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の液体洗浄剤濃縮物を0.05~99.9%含み、pHが9または>9である、レディ・トゥ・ユース塗布液。
【請求項12】
前記液体洗浄剤濃縮物が、9~12、好ましくは10~12、より好ましくは10~11のpHを有する、請求項11に記載のレディ・トゥ・ユース塗布液。
【請求項13】
対象物の洗浄および/または消毒、好ましくは対象物の機械洗浄および/または消毒のための、請求項1~10のいずれか一項に記載の液体洗浄剤濃縮物の使用または請求項11もしくは12のいずれか一項に記載のレディ・トゥ・ユース塗布液の使用。
【請求項14】
前記対象物が、医療用および/または外科用の機器および/または装置である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記液体洗浄剤濃縮物または前記レディ・トゥ・ユース塗布液が、低温で、好ましくは38℃以下、より好ましくは18~35℃、さらに好ましくは20~30℃、さらにより好ましくは22~27℃、さらにいっそう好ましくは約25℃の温度で分配される、請求項13または14に記載の使用。
【請求項16】
a)請求項11または12に記載のレディ・トゥ・ユース塗布液を調製すること、
b)医療用および/または外科用の機器および/または装置を、レディ・トゥ・ユース塗布液で洗浄することを含む、医療用および/または外科用の機器および/または装置を洗浄する方法。
【請求項17】
前記レディ・トゥ・ユース塗布液を、低温で、好ましくは38℃以下、より好ましくは18~35℃、さらに好ましくは20~30℃、さらにより好ましくは22~27℃、さらにいっそう好ましくは約25℃の温度で調製する、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗浄剤濃縮物、レディ・トゥ・ユース塗布液、対象物の洗浄および/または消毒のためのその使用、および洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用および手術用の機器(instruments)および装置(apparatuse)は、病院では、通常、アルカリ性洗浄剤を用いて機械で洗浄し、その後、化学的または熱的に消毒される。強アルカリ性の洗浄剤は、敏感な表面に対して攻撃的な影響を与えることがある。そのため、弱アルカリ性の酵素洗浄剤が好ましいが、満足な洗浄性能が得られず、塗布濃度が高いという欠点がある。さらに、先行技術で知られている酵素洗浄剤は、他の攻撃的な成分(constituent)をしばしば含んでおり、これはすべての表面に対して良好に許容されるものではなく、特に金属表面に対して腐食作用を有することがある。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、低い塗布濃度のみで非常に優れた洗浄性能を可能にし、同時に様々な材料、特に金属表面に対して高い材料適合性を示す、液体洗浄濃縮物およびそのレディ・トゥ・ユース(または即使用できる、使用準備完了、即時使用可能な、すぐに使用可能な;ready-to-use)塗布液を提供することを目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本発明は、請求項1、11、13、および15の特徴によって本目的を達成する。請求項1は、液体洗浄剤濃縮物を含み、:
a.少なくとも1種のホスホン酸塩(またはホスホネート;phosphonate)、
b.アミノポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシポリカルボン酸、およびそれらの塩から選択される第1のキレート剤、ならびに
d.少なくとも1種の酵素、好ましくはタンパク質分解酵素を含み、
ここで、液体洗浄剤濃縮物のpHは、9または>9である。
【0005】
有利な実施形態は、従属請求項に見出すことができる。
【0006】
本発明の文脈において、本発明による液体洗浄剤濃縮物は、水または水を含む溶媒混合物で希釈して、レディ・トゥ・ユース塗布液を与え得る。しかしながら、これは、液体洗浄剤濃縮物自体が水または水性溶媒混合物を含み得ることを排除するものではない。
【0007】
液体洗浄剤濃縮物は、好ましくは9~12のpHを有し、より好ましくは10~12、さらに好ましくは10~11のpHを有する。
【0008】
1.ホスホン酸塩
液体洗浄剤濃縮物は、少なくとも1種のホスホン酸塩を含む。本発明の文脈では、ホスホン酸塩は、ホスホン酸の塩である。ホスホン酸塩は、好ましくは、ホスホノブタントリカルボン酸(PBTC)塩、アミノトリスメチレンホスホン酸(ATMP)塩、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)塩、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)塩、およびそれらの混合物から選択される。塩は、アルカリ金属塩、好ましくはナトリウム塩およびカリウム塩、より好ましくはナトリウム塩であり得る。より好ましくは、ホスホン酸塩は、PBTCのナトリウム塩、ATMPのナトリウム塩またはそれらの混合物である。
【0009】
液体洗浄剤濃縮物中のホスホン酸塩またはホスホン酸塩混合物は、液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、好ましくは1~13重量%、より好ましくは2~10重量%、さらに好ましくは3~8重量%の重量割合で存在する。
【0010】
第一に、本発明の文脈では、ホスホン酸塩は、腐食防止剤としての有利な効果を示す。第二に、本発明の文脈では、ホスホン酸塩が洗浄製剤(または配合、または処方;formulation)を安定化する役割を果たすことが観察された。ホスホン酸塩がない場合、個々の要素(ingredient)を変化させたときに、液体洗浄剤濃縮物のpHにかなりの変動が観察される。したがって、ホスホン酸塩は、腐食を抑制する役割を果たすだけでなく、pH緩衝剤としても機能する。
【0011】
2.キレート剤
液体洗浄剤濃縮物は、アミノポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシポリカルボン酸、およびそれらの塩から選択される第1のキレート剤を含む。第1のキレート剤は、好ましくは、(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、グルタミン酸-N,N-二酢酸(GLDA)、イミノジコハク酸(IDS)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)、ポリアスパラギン酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、ニトリロモノ酢酸ジプロピオン酸、ニトリロトリプロピオン酸、β-アラニン二酢酸(β-ADA)、ジエチレントリアミン五酢酸、1,3-プロピレンジアミン四酢酸、1,2-プロピレンジアミン四酢酸、N-(アルキル)エチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン三酢酸、シクロヘキシレン-1,2-ジアミン四酢酸、セリン二酢酸、イソセリン二酢酸、L-アスパラギン二酢酸、グルコン酸、グルコヘプタン酸、リンゴ酸、酒石酸、ムチン酸、乳酸、グルタル酸、クエン酸、タルトロン酸、ラクトビオン酸、スクロースモノカルボン酸、スクロースジカルボン酸、スクローストリカルボン酸、およびそれらの塩から好ましくは選択される。塩としては、アルカリ金属塩、好ましくはナトリウム塩およびカリウム塩、より好ましくはナトリウム塩を挙げることができる。
【0012】
好ましい実施形態において、第1のキレート剤は、アミノポリカルボン酸およびその塩から選択される。第1のキレート剤は、好ましくは、HEDTAのナトリウム塩、EDTAのナトリウム塩、GLDAのナトリウム塩、IDSのナトリウム塩、またはMGDAのナトリウム塩であり、より好ましくは、MGDAのナトリウム塩、またはHEDTAのナトリウム塩である。
【0013】
液体洗浄剤濃縮物中の第1のキレート剤は、液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、好ましくは0.5~10重量%、より好ましくは1~8重量%、さらに好ましくは2~6重量%の重量割合で存在する。
【0014】
液体洗浄剤濃縮物は、第1のキレート剤について定義されたアミノポリカルボン酸およびその塩から選択される第2のキレート剤をさらに含んでもよく、ここで、第1のキレート剤および第2のキレート剤は、互いに異なる。第2のキレート剤は、好ましくは、HEDTAのナトリウム塩、EDTAのナトリウム塩、GLDAのナトリウム塩、IDSのナトリウム塩、またはMGDAのナトリウム塩であり、より好ましくは、MGDAのナトリウム塩またはHEDTAのナトリウム塩である。
【0015】
液体洗浄剤濃縮物中の第2のキレート剤は、液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、好ましくは0.5~10重量%、より好ましくは1~8重量%、さらに好ましくは2~6重量%の重量割合で存在する。
【0016】
好ましい実施形態において、液体洗浄剤濃縮物は、ホスホン酸塩としてPBTCのナトリウム塩、ATMPのナトリウム塩、またはそれらの混合物、第1のキレート剤としてHEDTAのナトリウム塩、および第2のキレート剤として好ましくはMGDAのナトリウム塩を含む。驚くべきことに、ホスホン酸塩に加えて、第1のキレート剤と第2のキレート剤の好ましい組み合わせ、およびそれらの選択は、液体洗浄剤の洗浄性能および腐食能にかなりの影響を与える。洗浄性能と腐食抑制効果は、互いに逆の関係にあることが観察され得る。腐食抑制効果が良いと洗浄性能は悪くなり、逆もまた然りである。しかしながら、この2つの特性は、ホスホン酸塩に加えて、第1のキレート剤および第2のキレート剤の好ましい組み合わせによって、最適な方法で調整することができる。
【0017】
3.酵素
液体洗浄剤濃縮物は、少なくとも1種の酵素を含む。酵素は、好ましくは、タンパク質分解酵素または酵素混合物である。
【0018】
液体洗浄剤濃縮物中の酵素または酵素混合物は、液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、好ましくは0.05~4重量%、より好ましくは0.1~2重量%の重量割合で存在する。酵素活性は、好ましくは30×10-2~100×10-2KNPU/g、より好ましくは70×10-2~85×10-2KNPU/gである。
【0019】
4.その他の成分
液体洗浄剤濃縮物は、界面活性剤、ヒドロトロープ、アルカノールアミン、アルカリ金属水酸化物、溶媒、腐食防止剤、香料、および染料から選択されるさらなる成分を含むこともできる。
【0020】
界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、およびそれらの混合物であり得る。カチオン性界面活性剤は、例えば、アルキルアミンおよびポリアミンから選択される。アニオン性界面活性剤の例は、アルキルカルボン酸塩およびアミノ酸系界面活性剤である。非イオン性界面活性剤は、例えば、アルキルアルコキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、脂肪族アルコールアルコキシレート、脂肪酸アミド、脂肪酸アルコキシレート、脂肪酸アルキルエステル、脂肪族アミン、アルキルポリアミン、脂肪族アミドエトキシレートおよびアミンオキシドから選択される。両性界面活性剤は、例えば、ベタイン類、スルタイン類およびグリシネート類から選択される。界面活性剤は、好ましくは、脂肪族アルコールアルコキシレート、アミノ酸系界面活性剤、およびそれらの混合物から選択される。
【0021】
脂肪族アルコールアルコキシレートは、脂肪族アルコールエトキシレート(FAEO)および脂肪族アルコールプロポキシレート(FAPO)、ブチルエーテル化脂肪族アルコールエトキシレート(FAEOBV)、ブチルエーテル化脂肪族アルコールプロポキシレート(FAPOBV)、メチルエーテル化脂肪族アルコールエトキシレート(FAEOMV)、メチルエーテル化脂肪族アルコールプロポキシレート(FAPOMV)、ブチルエーテル化脂肪族アルコール系EO/POコポリマー(FAEOPOBV)、メチルエーテル化脂肪族アルコール系EO/POコポリマー(FAEOPOMV)、および脂肪族アルコール系EO/POコポリマー(FAEOPO)から選択してもよい。脂肪族アルコールアルコキシレートは、好ましくは、脂肪族アルコール系EO/POコポリマーである。
【0022】
脂肪族アルコールアルコキシレートは、0~10個のEO単位、好ましくは1~4個のEO単位、より好ましくは1~2個のEO単位を含んでよい。さらに、脂肪族アルコールアルコキシレートは、0~8個のPO単位、好ましくは1~8個のPO単位、より好ましくは4~8個のPO単位を含んでよい。さらに、脂肪族アルコールアルコキシレートは、少なくとも1種のC6-C16脂肪族アルコールラジカル、好ましくはC12-C15脂肪族アルコールラジカルを有してもよい。脂肪族アルコールアルコキシレートは、2EO/6PO単位を有するC12-C15脂肪族アルコールラジカル、8EO/4PO単位を有するC12-C15脂肪族アルコールラジカル、10EO単位を有するメチル-またはブチル-エステル化C12-C14脂肪族アルコールラジカル、6EO/8PO単位を有するC10-C12脂肪族アルコールラジカル、2EO/4PO単位を有するC12-C14脂肪族アルコールラジカル、4EO/5PO単位を有するC12-C14脂肪族アルコールラジカル、5EO/3PO単位を有するメチルエーテル化C13-C15脂肪族アルコールラジカル、および5EO/3PO単位を有するC13-C15脂肪族アルコールラジカルからなる群から選択してもよい。脂肪族アルコールアルコキシレートは、2EO/6PO単位を有するC12-C15脂肪族アルコールラジカル、2EO/4PO単位を有するC12-C14脂肪族アルコールラジカル、および4EO/5PO単位を有するC12-C14脂肪族アルコールラジカルから好ましくは選択される。
【0023】
液体洗浄剤濃縮物中の脂肪族アルコールアルコキシレートは、液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、0.1~9重量%、好ましくは0.4~2重量%の重量割合で存在し得る。
【0024】
脂肪族アルコールアルコキシレートの添加は、発泡性界面活性剤の効果を減衰させることができる。脂肪族アルコールアルコキシレートを選択することにより、液体洗浄剤濃縮物の所望の発泡挙動を調整することができる。機械洗浄工程、例えば機器すすぎ(または洗浄;rinse)機または消毒洗浄機(WD)による使用には低発泡成分が必要であるため、強い発泡は不利になる。機械洗浄中の顕著な泡の形成は、計量ポンプ圧力の低下をもたらし、最終的には洗浄工程が中止されることになる。
【0025】
アミノ酸系界面活性剤は、飽和または一価の不飽和C10-C18炭素ラジカル、好ましくは飽和C12-C16炭素ラジカルを有する化合物から選択してもよい。
【0026】
アミノ酸系界面活性剤はまた、サルコシン、タウリン、グルタミン酸およびそれらの塩から選択することができる。塩は、アルカリ金属塩、好ましくはナトリウム塩およびカリウム塩、より好ましくはナトリウム塩であり得る。アミノ酸系界面活性剤の好ましい実施形態は、ラウロイルサルコシン、オレオイルサルコシン、ミリストイルサルコシン、ステアロイルサルコシン、ラウロイルグルタミン酸、およびそれらのナトリウム塩から選択される。特に好ましいのは、ラウロイルサルコシン、ラウロイルグルタミン酸、およびそれらのナトリウム塩である。
【0027】
液体洗浄剤濃縮物中のアミノ酸系界面活性剤は、液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、0.05~5重量%、好ましくは0.1~2重量%の重量割合で存在し得る。
【0028】
液体洗浄剤濃縮物は、ヒドロトロープを含んでいてもよい。本発明の文脈では、「ヒドロトロープ」は、可溶化剤(または溶解補助剤;solubilizer)として作用する化合物である。本発明によれば、これらは特に、比較的小さい極性部分と大きい非極性部分とを有する両親媒性化合物であり、これらは非極性溶媒と極性溶媒との両方に可溶である。本発明によるヒドロトロープと定義される化合物は、疎水性が低く、水への溶解度が高い。極性部分は水への高い溶解性を保証し、非極性部分は官能基として機能する。本発明によるヒドロトロープは、特に、澄んで(または透明、またはクリア;clear)安定な液体洗浄剤濃縮物および澄んだレディ・トゥ・ユース塗布液を配合することを可能にする。本発明によれば、界面活性剤として定義される化合物は、ヒドロトロープではない。
【0029】
本発明の文脈において、ヒドロトロープは、アルキル硫酸塩、好ましくはC6-C10-アルキル硫酸塩、およびそれらのナトリウム塩、より好ましくはオクチル硫酸ナトリウムおよびエチルヘキシル硫酸ナトリウム;アルキルスルホン酸塩、好ましくはC6-C10-アルキルスルホン酸塩;芳香族スルホン酸塩、好ましくはキシレンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびそれらのナトリウム塩;プロピオネート、好ましくはイソオクチルイミノジプロピオネート、n-オクチルイミノジプロピオネート、カプリル(caprylic)およびカプリン(capric)アンホプロピオネート;4~10個のEO単位を有するC4~C10エーテルカルボン酸、好ましくは8個のEO単位を有するアルキル(8)ポリエーテルカルボン酸および5個のEO単位を有するアルキル(4~8)ポリエーテルカルボン酸;アルキルグリコシド、アルキルジグリコシド、アルキルポリグリコシドおよびそれらの混合物から選択してもよく、ここで、アルキルラジカルは好ましくは分枝または非分枝C4-C16-アルキルラジカルであり、グリコシドラジカルは好ましくはヘキソース単位およびペントース単位から選択され、より好ましくはグルコピラノース単位およびキシロピラノース単位から選択される。好ましくは、ヒドロトロープは、オクチル硫酸ナトリウム、エチルヘキシル硫酸ナトリウム、またはそれらの混合物である。
【0030】
本発明の文脈において、ヒドロトロープは、ある温度範囲内で製剤を澄んだものにし、任意に脂肪族アルコールアルコキシレートの可溶化剤としての機能を有する。
【0031】
液体洗浄剤濃縮物中のヒドロトロープは、液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、0.05~13重量%、好ましくは0.1~7重量%、より好ましくは0.15~3.5重量%の割合で存在し得る。
【0032】
アルカノールアミンは、好ましくは、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミンおよびそれらの混合物から選択される。本発明の文脈において、アルカノールアミンまたはその混合物は、特に、液体洗浄剤のアルカリ性を調整する役割を果たす。モノエタノールアミンは、良好なタンパク質精製剤であるという利点を有する。液体洗浄剤濃縮物中のアルカノールアミンまたはその混合物は、好ましくは、液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、1~26重量%、より好ましくは4~18重量%の重量割合で存在する。
【0033】
アルカリ金属水酸化物は、好ましくは水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムであり、より好ましくは水酸化カリウムである。本発明の文脈において、アルカリ金属水酸化物は、特に液体洗浄剤のアルカリ性を調整するのに役立つ。液体洗浄剤濃縮物中の水酸化カリウムは、好ましくは、液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、1~8重量%、より好ましくは2~5重量%の重量割合で存在する。
【0034】
溶媒は、水または水を含有する溶媒混合物であることができる。水に加えて、エタノール、2-プロパノール、グリコール、グリセロールおよびそれらの混合物から選択される有機溶媒を含む溶媒混合物が好ましい。好ましいグリコールは、1,2-プロピレングリコールである。液体洗浄剤濃縮物中の有機溶媒は、好ましくは、液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、0.5~10重量%、より好ましくは3~7重量%の重量割合で存在する。
【0035】
水は、好ましくは、液体洗浄剤濃縮物の全質量に基づいて、30~90重量%、より好ましくは35~70重量%、さらに好ましくは35~60重量%、さらに好ましくは35~50重量%、さらに好ましくは35~45重量%の重量割合で、液体洗浄剤濃縮物中に存在する。
【0036】
本発明は、液体洗浄剤濃縮物中の少なくとも1種のホスホン酸塩と第1のキレート剤との組み合わせが、低い使用濃度のみで非常に優れた洗浄性能を達成し、同時に、種々の材料、特に金属表面に使用した場合に高い材料適合性を有するという驚くべき発見に基づいている。
【0037】
液体洗浄剤濃縮物に存在する有効要素は、先行技術で知られている他の洗浄剤よりも著しく低い用量で使用できることが観察された。これは、特に、達成される洗浄性能に関する相乗効果によるものである。ホスホン酸塩と第1のキレート剤との組合せを含む、血液に関する、濃縮物の洗浄性能は、それぞれの個々の構成成分(component)の洗浄性能よりも優れている。これは、特に、アミノポリカルボン酸およびその塩の物質クラスから選択されるキレート剤に関する。
【0038】
先行技術では、好ましくは界面活性剤を含む酵素系弱アルカリ性液体洗浄剤は、通常、機械洗浄中に約40℃の水温で計量される。これは、洗浄剤が低い温度では発泡し過ぎる傾向があるため必要なことである。しかしながら、この欠点は、入口温度(通常約18~22℃)から40℃までの加熱時間が、洗浄剤が効果を発揮するまでの遅延を引き起こすため、洗浄プログラムの実行時間が長くなることである。しかしながら、本発明による液体洗浄剤濃縮物は、好ましくは38℃以下、より好ましくは18~35℃、さらに好ましくは20~30℃、さらにより好ましくは22~27℃、さらにいっそう好ましくは約25℃の温度で、過度の発泡によってプログラムが中止されることなく、水吸込みの後に直接的に低温水分配(または分注する、または計量する、または調合する;dispense)を実施することを可能にする。このような低温水分配は、先行技術から知られ、市販されている液体洗浄剤では、現在不可能である。液体洗浄剤濃縮物の低温水分配は、独立した発明的内容を有する。
【0039】
液体洗浄剤濃縮物のもう一つの重要な要件は、異なる材料に使用した場合に可能な限り高い材料適合性を有することである。特に医療用および/または外科用の機器および/または装置に関しては、ステンレス鋼および(カラー)陽極酸化アルミニウム部品の腐食防止が重要である。驚くべきことに、この濃縮物は、様々な材料に適用した場合に、高い材料適合性を示す。特に、ホスホン酸塩と第1のキレート剤の組み合わせの存在により、ステンレス鋼および(カラー)陽極酸化アルミニウム部品に対する腐食抑制特性が著しく改善される。さらに、驚くべきことに、本発明による液体洗浄剤濃縮物をより頻繁に使用することにより、特にステンレス鋼部品の改善された光沢および改善された感触が観察される。
【0040】
本発明の文脈において、ホスホン酸塩は、キレート剤または分散剤として機能するだけでなく、腐食防止剤としても有利な効果を有することが観察された。さらに、ホスホン酸塩を用いない場合、個々の製剤要素を変化させると、液体洗浄剤濃縮物のpHにかなりの変動が観察される。したがって、これは腐食防止剤としての役割を果たすだけでなく、さらに緩衝剤としての役割も果たす。
【0041】
さらに、ホスホン酸塩に加えて、2種類のキレート剤の好ましい組み合わせとその選択が、洗浄性能と腐食抑制能力に大きな影響を与えることが判明した。Ca2+イオンおよびMg2+イオンに対する高い錯体形成定数を有するキレート剤は、血液に関して、組み合わせでより優れた洗浄性能を示す。洗浄性能と腐食能は、互いに逆の関係にあることが観察された。腐食抑制が良好であれば、洗浄性能は劣り、逆もまた然りである。しかしながら、これらの特性は、ホスホン酸塩に加えて、第1のキレート剤および第2のキレート剤の好ましい組み合わせによって、最良の方法で最適化することができる。
【0042】
本発明は、本発明による液体洗浄剤濃縮物を0.05~99.9%含むレディ・トゥ・ユース塗布液にさらに関し、レディ・トゥ・ユース塗布液のpHは9または>9、好ましくは9~12、より好ましくは10~12、さらにより好ましくは10~11である。
【0043】
レディ・トゥ・ユース塗布液は、好ましくは0.05~10%、より好ましくは0.1~1%の、本発明による液体洗浄剤濃縮物を含む。
【0044】
上に挙げたレディ・トゥ・ユース塗布液の成分、特性および有利な効果は、液体洗浄剤濃縮物について先に定義したものに相当する。しかしながら、レディ・トゥ・ユース塗布液中の成分は、重量比で以下の割合で存在する:
【0045】
レディ・トゥ・ユース塗布液中のホスホン酸塩またはホスホン酸塩の混合物は、レディ・トゥ・ユース塗布液の全質量を基準として、好ましくは0.0005~1.3重量%、より好ましくは0.002~0.1重量%、さらにより好ましくは0.003~0.08重量%の重量比率で存在する。
【0046】
レディ・トゥ・ユース塗布液中の第1のキレート剤は、好ましくは、レディ・トゥ・ユース塗布液の全質量に基づいて、0.00025~1.0重量%、より好ましくは0.001~0.08重量%、さらに好ましくは0.002~0.06重量%の重量割合で存在する。
【0047】
レディ・トゥ・ユース塗布液中の第2のキレート剤は、好ましくは、レディ・トゥ・ユース塗布液の全質量に基づいて、0.00025~1.0重量%、より好ましくは0.001~0.08重量%、さらに好ましくは0.002~0.06重量%の重量割合で存在する。
【0048】
レディ・トゥ・ユース塗布液中の酵素または酵素混合物は、好ましくは、レディ・トゥ・ユース塗布液の全質量に基づいて、0.000025~0.04重量%、より好ましくは0.0001~0.02重量%の重量割合で存在する。
【0049】
レディ・トゥ・ユース塗布液中の脂肪族アルコールアルコキシレートは、レディ・トゥ・ユース塗布液の全質量に基づいて、0.00005~0.9重量%、より好ましくは0.0004~0.02重量%の重量割合で存在し得る。
【0050】
レディ・トゥ・ユース塗布液中のアミノ酸系界面活性剤は、レディ・トゥ・ユース塗布液の全質量に基づいて、0.000025~0.5重量%、好ましくは0.0001~0.02重量%の割合で存在することができる。
【0051】
レディ・トゥ・ユース塗布液中のヒドロトロープは、レディ・トゥ・ユース塗布液の全質量に基づいて、0.000025~1.3重量%、好ましくは0.0001~0.07重量%、さらに好ましくは0.00015~0.035重量%の重量割合で存在することができる。レディ・トゥ・ユース塗布液中のアルカノールアミンまたはその混合物は、レディ・トゥ・ユース塗布液の全質量を基準として、0.0005~2.6重量%、好ましくは0.004~0.18重量%の重量割合で存在することが可能である。
【0052】
レディ・トゥ・ユース塗布液中のアルカリ金属水酸化物は、レディ・トゥ・ユース塗布液の全質量に基づいて、0.0005~0.8重量%、好ましくは0.002~0.05重量%の重量割合で存在することができる。
【0053】
レディ・トゥ・ユース塗布液中の有機溶媒は、レディ・トゥ・ユース塗布液の全質量に基づいて、0.00025~1.0重量%、好ましくは0.003~0.07重量%の割合で存在することができる。
【0054】
レディ・トゥ・ユース塗布液中の水は、レディ・トゥ・ユース塗布液の全質量に基づいて、90.0~99.985重量%、好ましくは95.0~99.98重量%、より好ましくは99.6~99.96重量%の割合で存在し得る。
【0055】
本発明はまた、対象物の洗浄および/または消毒のため、好ましくは機械洗浄および/または消毒のための、本発明による液体洗浄剤濃縮物の使用または本発明によるレディ・トゥ・ユース塗布液の使用に関する。有利な実施形態では、液体洗浄剤濃縮物またはレディ・トゥ・ユース塗布液は、好ましくは低温(または冷たく、または熱のない温度;cold)で、より好ましくは38℃以下、さらに好ましくは18~35℃、さらにより好ましくは20~30℃、さらにいっそう好ましくは22~27℃、さらによりいっそう好ましくは約25℃で分配する。
【0056】
本発明の文脈では、機械的洗浄は、自動プログラム実行中に、好ましくは機器すすぎ機またはWDにおいて、人間の介入なしに実施される。「洗浄および/または消毒」という表現は、液体洗浄剤濃縮物およびレディ・トゥ・ユース塗布液が、単一の方法ステップにおける洗浄と消毒の組み合わせ、および洗浄ステップの後に別の消毒ステップが続くプログラムシーケンスの両方で使用できることを表している。
【0057】
対象物(object)は、好ましくは、医療用および/または外科用の機器および/または装置である。
【0058】
本発明はさらに、以下のステップを特徴とする、医療用および/または外科用の機器および/または装置を洗浄する方法に関する:
a)請求項11または12に記載のレディ・トゥ・ユース塗布液を調製すること、
b)医療用および/または外科用の機器および/または装置を、レディ・トゥ・ユース塗布液で洗浄すること。
【0059】
有利な実施形態では、レディ・トゥ・ユース塗布液は、好ましくは低温で、より好ましくは38℃以下、さらに好ましくは18~35℃、さらにより好ましくは20~30℃、さらにいっそう好ましくは22~27℃、さらによりいっそう好ましくは約25℃の温度で調製する。レディ・トゥ・ユース塗布液は、本発明による液体洗浄濃縮物を分配することによって調製することができる。任意に、レディ・トゥ・ユース塗布液は、本発明による液体洗浄剤濃縮物から出発して手作業で調製することも可能である。
【0060】
次に、本発明を、添付の図面を参照しながら、特定の有利な実施形態に基づいて例示的に説明する。示されているのは、以下の通りである:
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】塗布液の異なる濃度(すなわち、1a)10%および1b)5%)において、DIN 51360 Part2に準拠したGG25ねずみ鋳鉄チップを用いた腐食試験。
【
図2】ステンレス鋼グレード1.4034の試験片のアノード部分反応の電流密度-電位曲線であり、本発明による調製物(I)、ホスホン酸塩を含まない調製物(II)、および異なるpH値の塩溶液による測定が比較対象として示されている。
【
図3】ステンレス鋼グレード1.4031の試験片のアノード部分反応の電流密度-電位曲線であり、本発明による調製物(I)、ホスホン酸塩を含まない調製物(II)、および異なるpH値の塩溶液による測定が比較対象として示されている。
【
図4】ステンレス鋼グレード1.4034の試験片を用いた腐食電位、すなわち電流密度極小値のポジション(上)およびターフェル(Tafel)解析のグラフ結果(下)。
【
図5】本発明による調製物(I)および比較としてホスホン酸塩を含まない調製物(II)を用い、汚れとしてヘパリン化した羊の血液を用いた浸漬洗浄試験の結果
【
図6】Ca
2+とMg
2+のlog(K)文献値との比較でプロットした、第二のキレート剤を変化させた際の、羊の血液に対するホスホン酸塩とMGDAを含むレディ・トゥ・ユース塗布液の洗浄性能
【
図7】Ca
2+とMg
2+のlog(K)文献値との比較でプロットした、第二のキレート剤を変化させた際の、羊の血液に対するホスホン酸塩とMGDAを含むレディ・トゥ・ユース塗布液の洗浄性能と腐食挙動
【
図8】25℃で3ml/lの濃度の本発明による液体洗浄剤濃縮物の低温水分配に対する圧力および温度曲線
【
図9】先行技術から知られ、市場で標準的な洗浄剤をそれぞれの標準推奨濃度で25℃で低温水分配する場合の圧力と温度の曲線
【0062】
1.ホスホン酸塩
1.DIN51360 Part2に準拠したGG25ねずみ鋳鉄チップによる腐食試験
【0063】
4種類の異なるホスホン酸塩(すなわちATMP、HEDP、PBTC、DTPMPのナトリウム塩)と2種類の他のキレート剤(すなわちグルコヘプトン酸ナトリウム、HEDTA)を、その他の点では一定の液体洗浄製剤中で等モル比で、腐食抑制効果を調査した(必要に応じてpHを調整した)。評価のために、DIN 51360 Part2に従って、GG25ねずみ鋳鉄チップを用いて、異なる濃度の塗布液(すなわち、10%および5%)で腐食試験を実施した。
【0064】
a.機器および材料
-ペトリ皿φ100mm(ガラス製またはプラスチック製)
-Whatman社製フィルターペーパーφ70mm589、無灰分、中速ろ過
-DIN 51360 T2に準拠したねずみ鋳鉄GG25チップ(リーガー・インダストリーハンデル(Riegger Industriehandel)社,商品番号(Article) 03-39)
-脱塩水
【0065】
b.手順
スパチュラを用いて、2.0g±0.1gのチップをペトリ皿に入れたろ紙に秤量した。チップは、φ40-50mmの範囲に、できるだけ中央に配置した。チップとろ紙は、10%または5%のレディ・トゥ・ユース塗布液2mlで均一に濡らし、シャーレを蓋で密閉した。このようにして調製した試料を、直射日光や風通しのない室温(20~25℃)で2時間±10分間保存した。チップは取り出して廃棄した。ろ紙を流水脱塩水ですすぎ、アセトン中で5~10秒間回転させた。ろ紙は室温(20~25℃)で乾燥させた。腐食の程度は、乾燥後直ちに測定した。各試験は、2回繰り返し(又は二重に;duplicate)実施した。
【0066】
c.評価
評価は、目視による評価ではなく、発生した腐食の表面積と使用した濾紙の総表面積を関連付けた。表面積の積分は、ImageJソフトを使用して求めた。
【0067】
d.結果
図1は、異なる濃度の塗布液(試料1:Na-ATMP、試料2:Na-HEDP、試料3:Na-PBTC、試料4:Na-グルコヘプトネート、試料5:Na-DTPMP、試料6:Na-HEDTA;試料参照:無添加比較)においてGG25ねずみ鋳鉄チップを用いてDIN 51360 Part 2に従って腐食試験を行った結果で、
図1a)は10%のレディ・トゥ・ユース塗布液を用いた試験、
図1b)は5%のレディ・トゥ・ユース塗布液を用いて試験を示す。いずれの場合も、Na-ATMP(試料1)とNa-PBTC(試料3)を含むレディ・トゥ・ユース塗布液で最良の結果が得られた。
【0068】
2.pHの検討
ホスホン酸塩が腐食防止剤として作用することが示された。ホスホン酸塩のさらなる効果は、洗浄剤濃縮物の他の組成が一定である状態で、他の構成成分、例えばキレート剤を系統的に変化させることで観察することができる。
【0069】
【0070】
ホスホン酸塩が存在する場合、pHは安定することが示されている。これが欠けると、要素を変化させた際、すなわち異なるキレート剤を添加した際に、pHのかなりの変動が観察される(表1参照)。したがって、ホスホン酸塩は、液体洗浄濃縮物とレディ・トゥ・ユース塗布液において腐食防止剤として機能するだけでなく、緩衝剤としても機能する。
【0071】
2.ホスホン酸塩とキレート剤の組み合わせ
ヘパリン化した羊の血液を用いた電気化学的腐食測定と浸漬洗浄試験を実施した。
【0072】
この目的のために、2つの調製物を調製した。調製物(I)は、本発明による液体洗浄剤濃縮物であり、これは以下の成分から調製した:
3.5重量%のエンドプロテアーゼ
10重量% 50%PBTC
8.5重量% 45%KOH
6.0重量% 40%MGDA、3Na
6.0重量% 40%HEDTA
0.5重量% 2EO/4POを有する脂肪族アルコールアルコキシレートC12-C15
3.2重量% 42%硫酸Na-オクチル
16重量% 99%トリエタノールアミン
100重量%まで 水
【0073】
調製物(II)は、調製物(I)と同一になるようにpHを調整した、他の点で同一の製剤を有するホスホン酸塩を含まない比較物である。実施された試験に基づいて、キレート剤としてのアミノポリカルボン酸塩と組み合わせたホスホン酸塩の相乗効果を明確に示すことができる。
【0074】
1.電気化学的腐食測定
a.測定方法
それぞれの場合、まずシステムの開回路電位(OCP)を決定した。これは、十分な平衡状態を確保するために、600秒かけて行われた。次に、測定したOCPに対して、-0.1~+1.5Vの電位範囲で電流密度-電位差曲線を記録した。この目的のために、0.01V/秒の走査速度で0.001Vのステップサイズが設定された。
【0075】
b.測定手順
電気化学的腐食実験を行うために、Autolab PGSTAT204ポテンショスタットと、3電極配置と銀/塩化銀参照電極を有する平板試料用腐食測定セル(Metrohm AG)からなる測定セットを使用した。試験片には、1.4034および1.4301等級の研磨ステンレス鋼プレートを使用した。
【0076】
1.4034(クロム鋼:耐食性が低い、
図2参照)と1.4301(クロムニッケル鋼:耐食性が高い、
図3参照)の2種類のステンレス鋼グレードの試験片について電気化学腐食試験を実施した。このために、必要な腐食条件を得るために、塩化ナトリウムの0.9%溶液(物理的生理食塩水に相当)に調製物(I)および(II)の10%塗布液を作成し、電流密度-電位曲線を記録した。pHは、ホスホン酸塩を含む調製物(I)では10.5、ホスホン酸塩を含まない調製物(II)では11.5であった。調製物(I)からの塗布液のpHが低いにもかかわらず、測定結果は、より高いpHでホスホン酸塩を含まない変形例の場合よりも低い腐食電流を示した(
図2参照)。原理的には、鋼材の耐食性はpHの上昇とともに向上することが予想されるため、比較的低いpHでの耐食性の向上も明確な抑制効果を示していると考えられる。
【0077】
観察された挙動の原因がpHであることを排除できるために、水酸化カリウム溶液でpHを10.5または11.5に調整した塩溶液を用いて、さらなる試験を実施したところ、観察された挙動にpHが関与していることがわかった。これは、2つの塗布液の測定pHに相当するが、洗浄液の成分が腐食挙動に影響を与えることはない。また、pHを調整しない塩化ナトリウム溶液を用いた試験も参考として実施した(pH=7.9)。関連する電流密度-電位曲線(
図2参照)は、pHの上昇とともに腐食電流が減少することを明確に示している。したがって、予想通り、pH=11.5では、pH=10.5およびpH=7.9と比較して、より低い電流が観察される。
【0078】
特に耐食性の低い鋼1.4034を用いた試験シリーズでは(
図2参照)、pHだけの効果と2つの製剤の追加効果を完全に区別することができる。したがって、ターフェル分析によって決定された個々の測定の腐食電位と腐食速度も、ここで説明された効果を明確に描写している。これらは以下の表2および
図4で確認することができる。
【0079】
NaCl溶液の場合、pHの上昇は腐食速度の低下と、より正の電位方向への腐食電位のシフトをもたらした。塗布液の添加により、同じpH範囲で両方の効果が増強され、ホスホン酸塩を添加した本発明による変形例では、上述したように、ここでのpHはホスホン酸塩なしの比較変形例よりも低いものの、腐食電位がより正の値に向かって最もシフトしていることがわかる。
【0080】
【0081】
2.浸漬槽での洗浄試験
a.機器および材料
-ステンレス鋼プレート(僅かに(slightly)粗面化、表面積1cmx9cm)
-10IU/mlの硫酸プロタミンまたは塩化プロタミンでヘパリン化した羊の血:ACILA GmbH
-マーカーポイント φ 8mm グリーン
-脱塩水
【0082】
b.手順
ヘパリン化した再活性化羊の血液の試験プレートの調製:
【0083】
ヘパリン化した羊の血液と硫酸プロタミン/塩化プロタミンは、試験まで6℃の気候キャビネットで保管した。試験用汚れの調製のため、羊の血液と硫酸プロタミン/塩化プロタミンは20℃に達している必要がある。グリースフリーのステンレス鋼プレートは、ラックにクランプし、できるだけ水平にまっすぐ並べるようにした。
【0084】
75μlの硫酸プロタミンまたは塩化プロタミンを、50mlのガラスビーカー中のマグネチックスターラー上で5mlのヘパリン化した羊の血液と短時間混合した。この溶液の100μlを各プレートにピペッティングし、取り付け穴および側面の表面を汚染しないように接種用ループで均一に割り振った。その後、各バッチを水蒸気飽和空気中(空気湿度RH100%)で室温で1時間インキュベートした。プレートのラックは脱塩水に浸すことができるが、プレートは水位より上に保管する必要がある。100%RHを設定するために、8.5リットルのプラスチック缶の底に少なくとも1リットルの脱塩水を入れた。脱塩水は、水平に置いたトレイの底を完全に覆わなければならない。開始の2時間前までにトレイを蓋で覆った(雰囲気の調整)。1時間後、凝固した血液の汚れが付着した湿潤試験片をプラスチックトレイから取り出し、室温で乾燥させた。
【0085】
乾燥した試験片の品質を確認した。汚れの上に気泡があるまたは凹凸があるプレートは除外した。他のプレートには、それぞれグリーンのマーカードットが接着されていた。試験プレートは、スクリューキャップ付きの試験管に入れ、浸漬試験に使用するまで室温で保管した。
【0086】
浸漬試験の手順
濃度:2.5ml/l
水質:脱塩水
温度:45°C±1°C
保持時間:4分
攪拌速度:350回転/分(IKA社製RCTクラシックスターラー)
試験プレート:ヘパリン化し、再活性化した羊の血液
【0087】
両試験の調製物を用いて、脱塩水中2.5ml/lの用量で、温度45℃、接触時間4分の条件で浸漬洗浄試験を実施した。各製剤の変形例で4回の個別実験を行い、残渣を0.1%アミドブラック溶液で染色し、面積を測定した。4回繰り返した(四重の;quadruplicate)測定の平均値は、
図3にプロットされている。
【0088】
c.評価
評価は、乾燥したプレートを用いて目視で行った。また、ImageJソフトウェアを用いて、試験片の総面積に対する残留血痕の積分を用いて評価を行った。
【0089】
d.結果
図5は、汚れとしてヘパリン化した羊の血液を使用した、本発明による調製物(I)およびホスホン酸塩を含まない調製物(II)による浸漬洗浄試験の結果を示している。
【0090】
図5が示すように、ホスホン酸塩を含まず、キレート剤としてアミノポリカルボン酸塩のみを含む比較調製物(II)に比べ、本発明による調製物(I)では、ヘパリン化した羊の血液の除去においてやや優れた洗浄結果を得ることができた。さらに、本発明による調製物(I)の塗布液のpHは、10.5で、10.7のpHが決定された調製物(II)の塗布液のそれよりもさらに幾分低いものであった。
【0091】
本発明による液体洗浄濃縮物および調製物(I)のレディ・トゥ・ユース塗布液は、ホスホン酸塩を含まない調製物(II)の洗浄濃縮物およびその塗布液と比較して、通常逆の効果を有する低いpHにもかかわらず、ステンレス鋼に関する改善された腐食保護、例えばアルミニウムとのより良い材料適合性および血液に関する洗浄性能の改善を示す。また、広い濃度範囲でホスホン酸塩の存在により、所望のpHへの緩衝作用が観察された。
【0092】
3.キレート剤の組み合わせ
キレート剤MGDAを、本発明による液体洗浄濃縮物に含まれるホスホン酸塩PBTCに加えて、第2のキレート剤(すなわち、HEDTA、EDDS、IDS、GLDA、ポリアスパラギン酸塩、EDTA)とそれぞれの場合に組み合わせ、このシリーズのすべての試験調製物について羊の血液に関する腐食抑制特性および洗浄性能について調査した。
【0093】
1.腐食試験
腐食試験は、DIN 51360 Part2に準拠したGG25ねずみ鋳鉄チップを用いて、塗布液の濃度を2.5%として実施された。試験は、上記のホスホン酸塩の腐食試験と同様に実施され、評価された。
【0094】
2.浸漬槽での洗浄試験
a.機器および材料
-ステンレス鋼プレート(僅かに(slightly)粗面化、表面積1cmx9cm)
-10IU/mlの硫酸プロタミンまたは塩化プロタミンでヘパリン化した羊の血:ACILA GmbH
-マーカーポイント φ 8mm グリーン
-脱塩水
【0095】
b.手順
ヘパリン化し、再活性化した羊の血液を用いた試験片は、上記のように調製した。
【0096】
浸漬試験手順:
濃度:2.0ml/l
水質:脱塩水
温度:45°C±1°C
保持時間:4分
攪拌速度:350回転/分(IKA社製RCTクラシックスターラー)
試験プレート:ヘパリン化し、再活性化した羊の血液
【0097】
両試験調製物を用いて、脱塩水中2.0ml/lの用量で、温度45℃、接触時間4分の条件で浸漬洗浄試験を実施した。各製剤の変形例で4回の個別実験を行い、残渣を0.1%アミドブラック溶液で染色し、面積を測定した。
【0098】
c.評価
洗浄結果は、乾燥したプレートで目視評価した。また、ここでは他の個別試験との相対的な面積を積算することで評価を行った。
【0099】
3.腐食・洗浄試験結果
第一に、第二のキレート剤の選択が洗浄性能と液体洗浄剤の腐食挙動の両方に影響を与えることが確認された(
図6、
図7参照)。第二に、腐食挙動と洗浄性能の間に相互関係があることがわかった(
図7参照)。つまり、腐食防止効果が向上すると洗浄効果が低下し、逆に腐食防止効果が低下すると洗浄効果が向上する。また、洗浄性能とキレート剤のCa
2+イオンおよびMg
2+イオンとの複合安定度(log(K))との間にも、さらなる相関関係が見られる(
図6参照)。log(K)値が高いキレート剤を使用すると、レディ・トゥ・ユース塗布液の洗浄性能が向上するが、安定定数が低いキレート剤を使用すると、それに応じて洗浄性能が低下する。この関係は、3つのパラメータを昇順に並べ、Ca
2+イオンとMg
2+イオンのlog(K)値の平均値に対してプロットすると、特に明確に見ることができる(
図7参照)。
【0100】
4.低温水分配
先行技術では、酵素系、弱アルカリ性、液体洗浄剤(好ましくは界面活性剤を含む)は、通常、機械洗浄のために約40℃の水温で計量される。これは、洗浄剤が低い温度では発泡し過ぎる傾向があるため必要なことである。しかし、約40℃の温度で分配することの欠点は、洗浄剤が効果を発揮する前に、入口温度(通常約18~22℃)から40℃の温度まで加熱するための一定の時間遅れが最初にあるため、洗浄プログラムの実行時間が長くなる。
【0101】
これに対して、本発明による液体洗浄剤濃縮物およびレディ・トゥ・ユース塗布液は、過度の泡の発生によりプログラムが中止されることなく、好ましくは38℃以下、より好ましくは18~35℃、さらに好ましくは20~30℃、さらにより好ましくは22~27℃、さらにいっそう好ましくは約25℃で、水吸込みの後に直接的に低温分配を実施することを可能にする。これは、先行技術から知られている洗浄剤では現在不可能である。
【0102】
図8は、洗浄および消毒システム(MMM社のユニクリーン(UniClean) PL II)からの正しく完全なプログラムシーケンス(圧力および温度曲線)を示す。ここで、本発明による液体洗浄剤濃縮物は、25℃で3ml/lの濃度で分配された。
【0103】
これは、先行技術から知られている市販の洗浄剤のいくつかについて、25℃でそれぞれの推奨標準濃度でアナログ的に実施した(特に、ドクターワイゲルト社、ネオディッシャー・メディクリーン・フォルテ、6ml/l、#681964;ルーホフ社、エンドザイムAWプラス、3.5ml/l、ドクターシューマッハ社、サーモシールド・エクストリーム、3ml/l、#460764、ボーラー社、デコネックス・ツイン pH10 ツイン・ザイム、3ml/l+1.5ml/l,#0370073+#0.397577;プロリスティカ、プロリスティカ2倍濃縮アルカリ洗浄剤、3ml/l,#290186),#290186)。これらの洗浄剤では、
図9に示すように、プログラムの終了が観察される。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
本発明は、低い塗布濃度のみで非常に優れた洗浄性能を可能にし、同時に様々な材料、特に金属表面に対して高い材料適合性を示す、液体洗浄濃縮物およびそのレディ・トゥ・ユース(または即使用できる、使用準備完了、即時使用可能な、すぐに使用可能な;ready-to-use)塗布液を提供することを目的とする。
WO02/02727A1は、酵素がアルカリ性pHおよび高水濃度存在下で安定である液体酵素洗浄組成物に関する。
CN106635488A1は、バイオフィルムを効果的に除去するための酵素を含む内視鏡洗浄剤およびその調製方法に関する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
本発明は、請求項1、9、11、および14の特徴によって本目的を達成する。請求項1は、液体洗浄剤濃縮物を含み、:
a.少なくとも1種のホスホン酸塩(またはホスホネート;phosphonate)、
b.(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸、メチルグリシン二酢酸、およびそれらの塩から選択される第1のキレート剤、ならびに
c.(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、グルタミン酸-N,N-二酢酸、イミノジコハク酸、メチルグリシン二酢酸、およびそれらの塩から選択される第2のキレート剤、
d.少なくとも1種の酵素、好ましくはタンパク質分解酵素を含み、
ここで、液体洗浄剤濃縮物のpHは、9または>9である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の文脈において、本発明による液体洗浄剤濃縮物は、水または水を含む溶媒混合物で希釈して、レディ・トゥ・ユース塗布液を与え得る。しかしながら、これは、液体洗浄剤濃縮物自体が水または水を含む溶媒混合物を含む可能性を排除するものではない。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
2.キレート剤
液体洗浄剤濃縮物は、(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、およびそれらの塩から選択される第1のキレート剤を含む。塩としては、アルカリ金属塩、好ましくはナトリウム塩およびカリウム塩、より好ましくはナトリウム塩を挙げることができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
液体洗浄剤濃縮物は、HEDTA、EDTA、GLDA、IDS、MGDA、およびその塩から選択される第2のキレート剤をさらに含み、ここで、第1のキレート剤および第2のキレート剤は、互いに異なる。第2のキレート剤は、好ましくは、HEDTAのナトリウム塩、EDTAのナトリウム塩、GLDAのナトリウム塩、IDSのナトリウム塩、またはMGDAのナトリウム塩であり、より好ましくは、MGDAのナトリウム塩またはHEDTAのナトリウム塩である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
本発明はさらに、以下のステップを特徴とする、医療用および/または外科用の機器および/または装置を洗浄する方法に関する:
a)請求項9または10に記載のレディ・トゥ・ユース塗布液を調製すること、
b)医療用および/または外科用の機器および/または装置を、レディ・トゥ・ユース塗布液で洗浄すること。
【手続補正7】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.少なくとも1種のホスホン酸塩、
b.
(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸、メチルグリシン二酢酸、およびそれらの塩から選択される第1のキレート剤、
c.(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、グルタミン酸-N,N-二酢酸、イミノジコハク酸、メチルグリシン二酢酸、およびそれらの塩から選択される第2のキレート剤、および
d.少なくとも1種の酵素、好ましくはタンパク質分解酵素を含み、
前記第1のキレート剤および前記第2のキレート剤は、互いに異なり、
pHは、9または>9である、液体洗浄剤濃縮物。
【請求項2】
前記液体洗浄剤濃縮物は、9~12、好ましくは10~12、より好ましくは10~11のpHを有する、請求項1に記載の液体洗浄剤濃縮物。
【請求項3】
前記少なくとも1種のホスホン酸塩が、ホスホノブタントリカルボン酸(PBTC)塩、アミノトリスメチレンホスホン酸(ATMP)塩、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)塩、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)塩、およびそれらの混合物から選択される、請求項1または2に記載の液体洗浄剤濃縮物。
【請求項4】
前記ホスホン酸塩が、ホスホノブタントリカルボン酸のナトリウム塩、アミノトリスメチレンホスホン酸のナトリウム塩、またはそれらの混合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の液体洗浄剤濃縮物。
【請求項5】
前記第1のキレート剤が、(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸のナトリウム塩またはメチルグリシン二酢酸のナトリウム塩である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の液体洗浄剤濃縮物。
【請求項6】
前記液体洗浄剤濃縮物が、前記ホスホン酸塩としてホスホノブタントリカルボン酸のナトリウム塩、アミノトリメチレンホスホン酸のナトリウム塩、またはそれらの混合物、前記第1のキレート剤として(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸のナトリウム塩、および前記第2のキレート剤として好ましくはメチルグリシン二酢酸のナトリウム塩を含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の液体洗浄剤濃縮物。
【請求項7】
前記液体洗浄剤がまた、界面活性剤、ヒドロトロープ、アルカノールアミン、アルカリ金属水酸化物、溶媒、腐食防止剤、香料、および染料から選択されるさらなる成分を含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の液体洗浄剤濃縮物。
【請求項8】
以下の成分の少なくとも1種が、それぞれの場合において以下の重量割合で液体洗浄剤濃縮物中に存在する、請求項1~
7のいずれか一項に記載の液体洗浄剤濃縮物:
-前記液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、1~13重量%、好ましくは2~10重量%の重量割合の前記ホスホン酸塩または前記ホスホン酸塩混合物;
-前記液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、0.5~10重量%、好ましくは1~8重量%の重量割合の前記第1のキレート剤;
-前記液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、0.5~10重量%、好ましくは1~8重量%の重量割合の前記第2のキレート剤;
-前記液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、0.05~4重量%、好ましくは0.1~2重量%の重量割合の前記酵素または前記酵素混合物。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の液体洗浄剤濃縮物を0.05~99.9%含み、pHが9または>9である、レディ・トゥ・ユース塗布液。
【請求項10】
前記液体洗浄剤濃縮物が、9~12、好ましくは10~12、より好ましくは10~11のpHを有する、請求項
9に記載のレディ・トゥ・ユース塗布液。
【請求項11】
対象物の洗浄および/または消毒、好ましくは対象物の機械洗浄および/または消毒のための、請求項1~
8のいずれか一項に記載の液体洗浄剤濃縮物の使用または請求項
9もしくは
10のいずれか一項に記載のレディ・トゥ・ユース塗布液の使用。
【請求項12】
前記対象物が、医療用および/または外科用の機器および/または装置である、請求項
11に記載の使用。
【請求項13】
前記液体洗浄剤濃縮物または前記レディ・トゥ・ユース塗布液が、低温で、好ましくは38℃以下、より好ましくは18~35℃、さらに好ましくは20~30℃、さらにより好ましくは22~27℃、さらにいっそう好ましくは約25℃の温度で分配される、請求項
11または
12に記載の使用。
【請求項14】
a)請求項
9または
10に記載のレディ・トゥ・ユース塗布液を調製すること、
b)医療用および/または外科用の機器および/または装置を、レディ・トゥ・ユース塗布液で洗浄することを含む、医療用および/または外科用の機器および/または装置を洗浄する方法。
【請求項15】
前記レディ・トゥ・ユース塗布液を、低温で、好ましくは38℃以下、より好ましくは18~35℃、さらに好ましくは20~30℃、さらにより好ましくは22~27℃、さらにいっそう好ましくは約25℃の温度で調製する、請求項
14に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗浄剤濃縮物、レディ・トゥ・ユース塗布液、対象物の洗浄および/または消毒のためのその使用、および洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用および手術用の機器(instruments)および装置(apparatuse)は、病院では、通常、アルカリ性洗浄剤を用いて機械で洗浄し、その後、化学的または熱的に消毒される。強アルカリ性の洗浄剤は、敏感な表面に対して攻撃的な影響を与えることがある。そのため、弱アルカリ性の酵素洗浄剤が好ましいが、満足な洗浄性能が得られず、塗布濃度が高いという欠点がある。さらに、先行技術で知られている酵素洗浄剤は、他の攻撃的な成分(constituent)をしばしば含んでおり、これはすべての表面に対して良好に許容されるものではなく、特に金属表面に対して腐食作用を有することがある。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、低い塗布濃度のみで非常に優れた洗浄性能を可能にし、同時に様々な材料、特に金属表面に対して高い材料適合性を示す、液体洗浄濃縮物およびそのレディ・トゥ・ユース(または即使用できる、使用準備完了、即時使用可能な、すぐに使用可能な;ready-to-use)塗布液を提供することを目的とする。
WO02/02727A1は、酵素がアルカリ性pHおよび高水濃度存在下で安定である液体酵素洗浄組成物に関する。
CN106635488A1は、バイオフィルムを効果的に除去するための酵素を含む内視鏡洗浄剤およびその調製方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本発明は、請求項1、9、11、および14の特徴によって本目的を達成する。請求項1は、液体洗浄剤濃縮物を含み、:
a.少なくとも1種のホスホン酸塩(またはホスホネート;phosphonate)、
b.(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸、メチルグリシン二酢酸、およびそれらの塩から選択される第1のキレート剤、ならびに
c.(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、グルタミン酸-N,N-二酢酸、イミノジコハク酸、メチルグリシン二酢酸、およびそれらの塩から選択される第2のキレート剤、
d.少なくとも1種の酵素、好ましくはタンパク質分解酵素を含み、
ここで、液体洗浄剤濃縮物のpHは、9または>9である。
【0005】
有利な実施形態は、従属請求項に見出すことができる。
【0006】
本発明の文脈において、本発明による液体洗浄剤濃縮物は、水または水を含む溶媒混合物で希釈して、レディ・トゥ・ユース塗布液を与え得る。しかしながら、これは、液体洗浄剤濃縮物自体が水または水を含む溶媒混合物を含む可能性を排除するものではない。
【0007】
液体洗浄剤濃縮物は、好ましくは9~12のpHを有し、より好ましくは10~12、さらに好ましくは10~11のpHを有する。
【0008】
1.ホスホン酸塩
液体洗浄剤濃縮物は、少なくとも1種のホスホン酸塩を含む。本発明の文脈では、ホスホン酸塩は、ホスホン酸の塩である。ホスホン酸塩は、好ましくは、ホスホノブタントリカルボン酸(PBTC)塩、アミノトリスメチレンホスホン酸(ATMP)塩、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)塩、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)塩、およびそれらの混合物から選択される。塩は、アルカリ金属塩、好ましくはナトリウム塩およびカリウム塩、より好ましくはナトリウム塩であり得る。より好ましくは、ホスホン酸塩は、PBTCのナトリウム塩、ATMPのナトリウム塩またはそれらの混合物である。
【0009】
液体洗浄剤濃縮物中のホスホン酸塩またはホスホン酸塩混合物は、液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、好ましくは1~13重量%、より好ましくは2~10重量%、さらに好ましくは3~8重量%の重量割合で存在する。
【0010】
第一に、本発明の文脈では、ホスホン酸塩は、腐食防止剤としての有利な効果を示す。第二に、本発明の文脈では、ホスホン酸塩が洗浄製剤(または配合、または処方;formulation)を安定化する役割を果たすことが観察された。ホスホン酸塩がない場合、個々の要素(ingredient)を変化させたときに、液体洗浄剤濃縮物のpHにかなりの変動が観察される。したがって、ホスホン酸塩は、腐食を抑制する役割を果たすだけでなく、pH緩衝剤としても機能する。
【0011】
2.キレート剤
液体洗浄剤濃縮物は、(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、およびそれらの塩から選択される第1のキレート剤を含む。塩としては、アルカリ金属塩、好ましくはナトリウム塩およびカリウム塩、より好ましくはナトリウム塩を挙げることができる。
【0012】
好ましい実施形態において、第1のキレート剤は、アミノポリカルボン酸およびその塩から選択される。第1のキレート剤は、好ましくは、HEDTAのナトリウム塩、EDTAのナトリウム塩、GLDAのナトリウム塩、IDSのナトリウム塩、またはMGDAのナトリウム塩であり、より好ましくは、MGDAのナトリウム塩、またはHEDTAのナトリウム塩である。
【0013】
液体洗浄剤濃縮物中の第1のキレート剤は、液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、好ましくは0.5~10重量%、より好ましくは1~8重量%、さらに好ましくは2~6重量%の重量割合で存在する。
【0014】
液体洗浄剤濃縮物は、HEDTA、EDTA、GLDA、IDS、MGDA、およびその塩から選択される第2のキレート剤をさらに含み、ここで、第1のキレート剤および第2のキレート剤は、互いに異なる。第2のキレート剤は、好ましくは、HEDTAのナトリウム塩、EDTAのナトリウム塩、GLDAのナトリウム塩、IDSのナトリウム塩、またはMGDAのナトリウム塩であり、より好ましくは、MGDAのナトリウム塩またはHEDTAのナトリウム塩である。
【0015】
液体洗浄剤濃縮物中の第2のキレート剤は、液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、好ましくは0.5~10重量%、より好ましくは1~8重量%、さらに好ましくは2~6重量%の重量割合で存在する。
【0016】
好ましい実施形態において、液体洗浄剤濃縮物は、ホスホン酸塩としてPBTCのナトリウム塩、ATMPのナトリウム塩、またはそれらの混合物、第1のキレート剤としてHEDTAのナトリウム塩、および第2のキレート剤として好ましくはMGDAのナトリウム塩を含む。驚くべきことに、ホスホン酸塩に加えて、第1のキレート剤と第2のキレート剤の組み合わせ、およびそれらの選択は、液体洗浄剤の洗浄性能および腐食能にかなりの影響を与える。洗浄性能と腐食抑制効果は、互いに逆の関係にあることが観察され得る。腐食抑制効果が良いと洗浄性能は悪くなり、逆もまた然りである。しかしながら、この2つの特性は、ホスホン酸塩に加えて、第1のキレート剤および第2のキレート剤の組み合わせによって、最適な方法で調整することができる。
【0017】
3.酵素
液体洗浄剤濃縮物は、少なくとも1種の酵素を含む。酵素は、好ましくは、タンパク質分解酵素または酵素混合物である。
【0018】
液体洗浄剤濃縮物中の酵素または酵素混合物は、液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、好ましくは0.05~4重量%、より好ましくは0.1~2重量%の重量割合で存在する。酵素活性は、好ましくは30×10-2~100×10-2KNPU/g、より好ましくは70×10-2~85×10-2KNPU/gである。
【0019】
4.その他の成分
液体洗浄剤濃縮物は、界面活性剤、ヒドロトロープ、アルカノールアミン、アルカリ金属水酸化物、溶媒、腐食防止剤、香料、および染料から選択されるさらなる成分を含むこともできる。
【0020】
界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、およびそれらの混合物であり得る。カチオン性界面活性剤は、例えば、アルキルアミンおよびポリアミンから選択される。アニオン性界面活性剤の例は、アルキルカルボン酸塩およびアミノ酸系界面活性剤である。非イオン性界面活性剤は、例えば、アルキルアルコキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、脂肪族アルコールアルコキシレート、脂肪酸アミド、脂肪酸アルコキシレート、脂肪酸アルキルエステル、脂肪族アミン、アルキルポリアミン、脂肪族アミドエトキシレートおよびアミンオキシドから選択される。両性界面活性剤は、例えば、ベタイン類、スルタイン類およびグリシネート類から選択される。界面活性剤は、好ましくは、脂肪族アルコールアルコキシレート、アミノ酸系界面活性剤、およびそれらの混合物から選択される。
【0021】
脂肪族アルコールアルコキシレートは、脂肪族アルコールエトキシレート(FAEO)および脂肪族アルコールプロポキシレート(FAPO)、ブチルエーテル化脂肪族アルコールエトキシレート(FAEOBV)、ブチルエーテル化脂肪族アルコールプロポキシレート(FAPOBV)、メチルエーテル化脂肪族アルコールエトキシレート(FAEOMV)、メチルエーテル化脂肪族アルコールプロポキシレート(FAPOMV)、ブチルエーテル化脂肪族アルコール系EO/POコポリマー(FAEOPOBV)、メチルエーテル化脂肪族アルコール系EO/POコポリマー(FAEOPOMV)、および脂肪族アルコール系EO/POコポリマー(FAEOPO)から選択してもよい。脂肪族アルコールアルコキシレートは、好ましくは、脂肪族アルコール系EO/POコポリマーである。
【0022】
脂肪族アルコールアルコキシレートは、0~10個のEO単位、好ましくは1~4個のEO単位、より好ましくは1~2個のEO単位を含んでよい。さらに、脂肪族アルコールアルコキシレートは、0~8個のPO単位、好ましくは1~8個のPO単位、より好ましくは4~8個のPO単位を含んでよい。さらに、脂肪族アルコールアルコキシレートは、少なくとも1種のC6-C16脂肪族アルコールラジカル、好ましくはC12-C15脂肪族アルコールラジカルを有してもよい。脂肪族アルコールアルコキシレートは、2EO/6PO単位を有するC12-C15脂肪族アルコールラジカル、8EO/4PO単位を有するC12-C15脂肪族アルコールラジカル、10EO単位を有するメチル-またはブチル-エステル化C12-C14脂肪族アルコールラジカル、6EO/8PO単位を有するC10-C12脂肪族アルコールラジカル、2EO/4PO単位を有するC12-C14脂肪族アルコールラジカル、4EO/5PO単位を有するC12-C14脂肪族アルコールラジカル、5EO/3PO単位を有するメチルエーテル化C13-C15脂肪族アルコールラジカル、および5EO/3PO単位を有するC13-C15脂肪族アルコールラジカルからなる群から選択してもよい。脂肪族アルコールアルコキシレートは、2EO/6PO単位を有するC12-C15脂肪族アルコールラジカル、2EO/4PO単位を有するC12-C14脂肪族アルコールラジカル、および4EO/5PO単位を有するC12-C14脂肪族アルコールラジカルから好ましくは選択される。
【0023】
液体洗浄剤濃縮物中の脂肪族アルコールアルコキシレートは、液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、0.1~9重量%、好ましくは0.4~2重量%の重量割合で存在し得る。
【0024】
脂肪族アルコールアルコキシレートの添加は、発泡性界面活性剤の効果を減衰させることができる。脂肪族アルコールアルコキシレートを選択することにより、液体洗浄剤濃縮物の所望の発泡挙動を調整することができる。機械洗浄工程、例えば機器すすぎ(または洗浄;rinse)機または消毒洗浄機(WD)による使用には低発泡成分が必要であるため、強い発泡は不利になる。機械洗浄中の顕著な泡の形成は、計量ポンプ圧力の低下をもたらし、最終的には洗浄工程が中止されることになる。
【0025】
アミノ酸系界面活性剤は、飽和または一価の不飽和C10-C18炭素ラジカル、好ましくは飽和C12-C16炭素ラジカルを有する化合物から選択してもよい。
【0026】
アミノ酸系界面活性剤はまた、サルコシン、タウリン、グルタミン酸およびそれらの塩から選択することができる。塩は、アルカリ金属塩、好ましくはナトリウム塩およびカリウム塩、より好ましくはナトリウム塩であり得る。アミノ酸系界面活性剤の好ましい実施形態は、ラウロイルサルコシン、オレオイルサルコシン、ミリストイルサルコシン、ステアロイルサルコシン、ラウロイルグルタミン酸、およびそれらのナトリウム塩から選択される。特に好ましいのは、ラウロイルサルコシン、ラウロイルグルタミン酸、およびそれらのナトリウム塩である。
【0027】
液体洗浄剤濃縮物中のアミノ酸系界面活性剤は、液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、0.05~5重量%、好ましくは0.1~2重量%の重量割合で存在し得る。
【0028】
液体洗浄剤濃縮物は、ヒドロトロープを含んでいてもよい。本発明の文脈では、「ヒドロトロープ」は、可溶化剤(または溶解補助剤;solubilizer)として作用する化合物である。本発明によれば、これらは特に、比較的小さい極性部分と大きい非極性部分とを有する両親媒性化合物であり、これらは非極性溶媒と極性溶媒との両方に可溶である。本発明によるヒドロトロープと定義される化合物は、疎水性が低く、水への溶解度が高い。極性部分は水への高い溶解性を保証し、非極性部分は官能基として機能する。本発明によるヒドロトロープは、特に、澄んで(または透明、またはクリア;clear)安定な液体洗浄剤濃縮物および澄んだレディ・トゥ・ユース塗布液を配合することを可能にする。本発明によれば、界面活性剤として定義される化合物は、ヒドロトロープではない。
【0029】
本発明の文脈において、ヒドロトロープは、アルキル硫酸塩、好ましくはC6-C10-アルキル硫酸塩、およびそれらのナトリウム塩、より好ましくはオクチル硫酸ナトリウムおよびエチルヘキシル硫酸ナトリウム;アルキルスルホン酸塩、好ましくはC6-C10-アルキルスルホン酸塩;芳香族スルホン酸塩、好ましくはキシレンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびそれらのナトリウム塩;プロピオネート、好ましくはイソオクチルイミノジプロピオネート、n-オクチルイミノジプロピオネート、カプリル(caprylic)およびカプリン(capric)アンホプロピオネート;4~10個のEO単位を有するC4~C10エーテルカルボン酸、好ましくは8個のEO単位を有するアルキル(8)ポリエーテルカルボン酸および5個のEO単位を有するアルキル(4~8)ポリエーテルカルボン酸;アルキルグリコシド、アルキルジグリコシド、アルキルポリグリコシドおよびそれらの混合物から選択してもよく、ここで、アルキルラジカルは好ましくは分枝または非分枝C4-C16-アルキルラジカルであり、グリコシドラジカルは好ましくはヘキソース単位およびペントース単位から選択され、より好ましくはグルコピラノース単位およびキシロピラノース単位から選択される。好ましくは、ヒドロトロープは、オクチル硫酸ナトリウム、エチルヘキシル硫酸ナトリウム、またはそれらの混合物である。
【0030】
本発明の文脈において、ヒドロトロープは、ある温度範囲内で製剤を澄んだものにし、任意に脂肪族アルコールアルコキシレートの可溶化剤としての機能を有する。
【0031】
液体洗浄剤濃縮物中のヒドロトロープは、液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、0.05~13重量%、好ましくは0.1~7重量%、より好ましくは0.15~3.5重量%の割合で存在し得る。
【0032】
アルカノールアミンは、好ましくは、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミンおよびそれらの混合物から選択される。本発明の文脈において、アルカノールアミンまたはその混合物は、特に、液体洗浄剤のアルカリ性を調整する役割を果たす。モノエタノールアミンは、良好なタンパク質精製剤であるという利点を有する。液体洗浄剤濃縮物中のアルカノールアミンまたはその混合物は、好ましくは、液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、1~26重量%、より好ましくは4~18重量%の重量割合で存在する。
【0033】
アルカリ金属水酸化物は、好ましくは水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムであり、より好ましくは水酸化カリウムである。本発明の文脈において、アルカリ金属水酸化物は、特に液体洗浄剤のアルカリ性を調整するのに役立つ。液体洗浄剤濃縮物中の水酸化カリウムは、好ましくは、液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、1~8重量%、より好ましくは2~5重量%の重量割合で存在する。
【0034】
溶媒は、水または水を含有する溶媒混合物であることができる。水に加えて、エタノール、2-プロパノール、グリコール、グリセロールおよびそれらの混合物から選択される有機溶媒を含む溶媒混合物が好ましい。好ましいグリコールは、1,2-プロピレングリコールである。液体洗浄剤濃縮物中の有機溶媒は、好ましくは、液体洗浄剤濃縮物の全質量を基準として、0.5~10重量%、より好ましくは3~7重量%の重量割合で存在する。
【0035】
水は、好ましくは、液体洗浄剤濃縮物の全質量に基づいて、30~90重量%、より好ましくは35~70重量%、さらに好ましくは35~60重量%、さらに好ましくは35~50重量%、さらに好ましくは35~45重量%の重量割合で、液体洗浄剤濃縮物中に存在する。
【0036】
本発明は、液体洗浄剤濃縮物中の少なくとも1種のホスホン酸塩と第1のキレート剤との組み合わせが、低い使用濃度のみで非常に優れた洗浄性能を達成し、同時に、種々の材料、特に金属表面に使用した場合に高い材料適合性を有するという驚くべき発見に基づいている。
【0037】
液体洗浄剤濃縮物に存在する有効要素は、先行技術で知られている他の洗浄剤よりも著しく低い用量で使用できることが観察された。これは、特に、達成される洗浄性能に関する相乗効果によるものである。ホスホン酸塩と第1のキレート剤との組合せを含む、血液に関する、濃縮物の洗浄性能は、それぞれの個々の構成成分(component)の洗浄性能よりも優れている。これは、特に、アミノポリカルボン酸およびその塩の物質クラスから選択されるキレート剤に関する。
【0038】
先行技術では、好ましくは界面活性剤を含む酵素系弱アルカリ性液体洗浄剤は、通常、機械洗浄中に約40℃の水温で計量される。これは、洗浄剤が低い温度では発泡し過ぎる傾向があるため必要なことである。しかしながら、この欠点は、入口温度(通常約18~22℃)から40℃までの加熱時間が、洗浄剤が効果を発揮するまでの遅延を引き起こすため、洗浄プログラムの実行時間が長くなることである。しかしながら、本発明による液体洗浄剤濃縮物は、好ましくは38℃以下、より好ましくは18~35℃、さらに好ましくは20~30℃、さらにより好ましくは22~27℃、さらにいっそう好ましくは約25℃の温度で、過度の発泡によってプログラムが中止されることなく、水吸込みの後に直接的に低温水分配(または分注する、または計量する、または調合する;dispense)を実施することを可能にする。このような低温水分配は、先行技術から知られ、市販されている液体洗浄剤では、現在不可能である。液体洗浄剤濃縮物の低温水分配は、独立した発明的内容を有する。
【0039】
液体洗浄剤濃縮物のもう一つの重要な要件は、異なる材料に使用した場合に可能な限り高い材料適合性を有することである。特に医療用および/または外科用の機器および/または装置に関しては、ステンレス鋼および(カラー)陽極酸化アルミニウム部品の腐食防止が重要である。驚くべきことに、この濃縮物は、様々な材料に適用した場合に、高い材料適合性を示す。特に、ホスホン酸塩と第1のキレート剤の組み合わせの存在により、ステンレス鋼および(カラー)陽極酸化アルミニウム部品に対する腐食抑制特性が著しく改善される。さらに、驚くべきことに、本発明による液体洗浄剤濃縮物をより頻繁に使用することにより、特にステンレス鋼部品の改善された光沢および改善された感触が観察される。
【0040】
本発明の文脈において、ホスホン酸塩は、キレート剤または分散剤として機能するだけでなく、腐食防止剤としても有利な効果を有することが観察された。さらに、ホスホン酸塩を用いない場合、個々の製剤要素を変化させると、液体洗浄剤濃縮物のpHにかなりの変動が観察される。したがって、これは腐食防止剤としての役割を果たすだけでなく、さらに緩衝剤としての役割も果たす。
【0041】
さらに、ホスホン酸塩に加えて、2種類のキレート剤の組み合わせとその選択が、洗浄性能と腐食抑制能力に大きな影響を与えることが判明した。Ca2+イオンおよびMg2+イオンに対する高い錯体形成定数を有するキレート剤は、血液に関して、組み合わせでより優れた洗浄性能を示す。洗浄性能と腐食能は、互いに逆の関係にあることが観察された。腐食抑制が良好であれば、洗浄性能は劣り、逆もまた然りである。しかしながら、これらの特性は、ホスホン酸塩に加えて、第1のキレート剤および第2のキレート剤の組み合わせによって、最良の方法で最適化することができる。
【0042】
本発明は、本発明による液体洗浄剤濃縮物を0.05~99.9%含むレディ・トゥ・ユース塗布液にさらに関し、レディ・トゥ・ユース塗布液のpHは9または>9、好ましくは9~12、より好ましくは10~12、さらにより好ましくは10~11である。
【0043】
レディ・トゥ・ユース塗布液は、好ましくは0.05~10%、より好ましくは0.1~1%の、本発明による液体洗浄剤濃縮物を含む。
【0044】
上に挙げたレディ・トゥ・ユース塗布液の成分、特性および有利な効果は、液体洗浄剤濃縮物について先に定義したものに相当する。しかしながら、レディ・トゥ・ユース塗布液中の成分は、重量比で以下の割合で存在する:
【0045】
レディ・トゥ・ユース塗布液中のホスホン酸塩またはホスホン酸塩の混合物は、レディ・トゥ・ユース塗布液の全質量を基準として、好ましくは0.0005~1.3重量%、より好ましくは0.002~0.1重量%、さらにより好ましくは0.003~0.08重量%の重量比率で存在する。
【0046】
レディ・トゥ・ユース塗布液中の第1のキレート剤は、好ましくは、レディ・トゥ・ユース塗布液の全質量に基づいて、0.00025~1.0重量%、より好ましくは0.001~0.08重量%、さらに好ましくは0.002~0.06重量%の重量割合で存在する。
【0047】
レディ・トゥ・ユース塗布液中の第2のキレート剤は、好ましくは、レディ・トゥ・ユース塗布液の全質量に基づいて、0.00025~1.0重量%、より好ましくは0.001~0.08重量%、さらに好ましくは0.002~0.06重量%の重量割合で存在する。
【0048】
レディ・トゥ・ユース塗布液中の酵素または酵素混合物は、好ましくは、レディ・トゥ・ユース塗布液の全質量に基づいて、0.000025~0.04重量%、より好ましくは0.0001~0.02重量%の重量割合で存在する。
【0049】
レディ・トゥ・ユース塗布液中の脂肪族アルコールアルコキシレートは、レディ・トゥ・ユース塗布液の全質量に基づいて、0.00005~0.9重量%、より好ましくは0.0004~0.02重量%の重量割合で存在し得る。
【0050】
レディ・トゥ・ユース塗布液中のアミノ酸系界面活性剤は、レディ・トゥ・ユース塗布液の全質量に基づいて、0.000025~0.5重量%、好ましくは0.0001~0.02重量%の割合で存在することができる。
【0051】
レディ・トゥ・ユース塗布液中のヒドロトロープは、レディ・トゥ・ユース塗布液の全質量に基づいて、0.000025~1.3重量%、好ましくは0.0001~0.07重量%、さらに好ましくは0.00015~0.035重量%の重量割合で存在することができる。レディ・トゥ・ユース塗布液中のアルカノールアミンまたはその混合物は、レディ・トゥ・ユース塗布液の全質量を基準として、0.0005~2.6重量%、好ましくは0.004~0.18重量%の重量割合で存在することが可能である。
【0052】
レディ・トゥ・ユース塗布液中のアルカリ金属水酸化物は、レディ・トゥ・ユース塗布液の全質量に基づいて、0.0005~0.8重量%、好ましくは0.002~0.05重量%の重量割合で存在することができる。
【0053】
レディ・トゥ・ユース塗布液中の有機溶媒は、レディ・トゥ・ユース塗布液の全質量に基づいて、0.00025~1.0重量%、好ましくは0.003~0.07重量%の割合で存在することができる。
【0054】
レディ・トゥ・ユース塗布液中の水は、レディ・トゥ・ユース塗布液の全質量に基づいて、90.0~99.985重量%、好ましくは95.0~99.98重量%、より好ましくは99.6~99.96重量%の割合で存在し得る。
【0055】
本発明はまた、対象物の洗浄および/または消毒のため、好ましくは機械洗浄および/または消毒のための、本発明による液体洗浄剤濃縮物の使用または本発明によるレディ・トゥ・ユース塗布液の使用に関する。有利な実施形態では、液体洗浄剤濃縮物またはレディ・トゥ・ユース塗布液は、好ましくは低温(または冷たく、または熱のない温度;cold)で、より好ましくは38℃以下、さらに好ましくは18~35℃、さらにより好ましくは20~30℃、さらにいっそう好ましくは22~27℃、さらによりいっそう好ましくは約25℃で分配する。
【0056】
本発明の文脈では、機械的洗浄は、自動プログラム実行中に、好ましくは機器すすぎ機またはWDにおいて、人間の介入なしに実施される。「洗浄および/または消毒」という表現は、液体洗浄剤濃縮物およびレディ・トゥ・ユース塗布液が、単一の方法ステップにおける洗浄と消毒の組み合わせ、および洗浄ステップの後に別の消毒ステップが続くプログラムシーケンスの両方で使用できることを表している。
【0057】
対象物(object)は、好ましくは、医療用および/または外科用の機器および/または装置である。
【0058】
本発明はさらに、以下のステップを特徴とする、医療用および/または外科用の機器および/または装置を洗浄する方法に関する:
a)請求項9または10に記載のレディ・トゥ・ユース塗布液を調製すること、
b)医療用および/または外科用の機器および/または装置を、レディ・トゥ・ユース塗布液で洗浄すること。
【0059】
有利な実施形態では、レディ・トゥ・ユース塗布液は、好ましくは低温で、より好ましくは38℃以下、さらに好ましくは18~35℃、さらにより好ましくは20~30℃、さらにいっそう好ましくは22~27℃、さらによりいっそう好ましくは約25℃の温度で調製する。レディ・トゥ・ユース塗布液は、本発明による液体洗浄濃縮物を分配することによって調製することができる。任意に、レディ・トゥ・ユース塗布液は、本発明による液体洗浄剤濃縮物から出発して手作業で調製することも可能である。
【0060】
次に、本発明を、添付の図面を参照しながら、特定の有利な実施形態に基づいて例示的に説明する。示されているのは、以下の通りである:
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】塗布液の異なる濃度(すなわち、1a)10%および1b)5%)において、DIN 51360 Part2に準拠したGG25ねずみ鋳鉄チップを用いた腐食試験。
【
図2】ステンレス鋼グレード1.4034の試験片のアノード部分反応の電流密度-電位曲線であり、本発明による調製物(I)、ホスホン酸塩を含まない調製物(II)、および異なるpH値の塩溶液による測定が比較対象として示されている。
【
図3】ステンレス鋼グレード1.4031の試験片のアノード部分反応の電流密度-電位曲線であり、本発明による調製物(I)、ホスホン酸塩を含まない調製物(II)、および異なるpH値の塩溶液による測定が比較対象として示されている。
【
図4】ステンレス鋼グレード1.4034の試験片を用いた腐食電位、すなわち電流密度極小値のポジション(上)およびターフェル(Tafel)解析のグラフ結果(下)。
【
図5】本発明による調製物(I)および比較としてホスホン酸塩を含まない調製物(II)を用い、汚れとしてヘパリン化した羊の血液を用いた浸漬洗浄試験の結果
【
図6】Ca
2+とMg
2+のlog(K)文献値との比較でプロットした、第二のキレート剤を変化させた際の、羊の血液に対するホスホン酸塩とMGDAを含むレディ・トゥ・ユース塗布液の洗浄性能
【
図7】Ca
2+とMg
2+のlog(K)文献値との比較でプロットした、第二のキレート剤を変化させた際の、羊の血液に対するホスホン酸塩とMGDAを含むレディ・トゥ・ユース塗布液の洗浄性能と腐食挙動
【
図8】25℃で3ml/lの濃度の本発明による液体洗浄剤濃縮物の低温水分配に対する圧力および温度曲線
【
図9】先行技術から知られ、市場で標準的な洗浄剤をそれぞれの標準推奨濃度で25℃で低温水分配する場合の圧力と温度の曲線
【0062】
1.ホスホン酸塩
1.DIN51360 Part2に準拠したGG25ねずみ鋳鉄チップによる腐食試験
【0063】
4種類の異なるホスホン酸塩(すなわちATMP、HEDP、PBTC、DTPMPのナトリウム塩)と2種類の他のキレート剤(すなわちグルコヘプトン酸ナトリウム、HEDTA)を、その他の点では一定の液体洗浄製剤中で等モル比で、腐食抑制効果を調査した(必要に応じてpHを調整した)。評価のために、DIN 51360 Part2に従って、GG25ねずみ鋳鉄チップを用いて、異なる濃度の塗布液(すなわち、10%および5%)で腐食試験を実施した。
【0064】
a.機器および材料
-ペトリ皿φ100mm(ガラス製またはプラスチック製)
-Whatman社製フィルターペーパーφ70mm589、無灰分、中速ろ過
-DIN 51360 T2に準拠したねずみ鋳鉄GG25チップ(リーガー・インダストリーハンデル(Riegger Industriehandel)社,商品番号(Article) 03-39)
-脱塩水
【0065】
b.手順
スパチュラを用いて、2.0g±0.1gのチップをペトリ皿に入れたろ紙に秤量した。チップは、φ40-50mmの範囲に、できるだけ中央に配置した。チップとろ紙は、10%または5%のレディ・トゥ・ユース塗布液2mlで均一に濡らし、シャーレを蓋で密閉した。このようにして調製した試料を、直射日光や風通しのない室温(20~25℃)で2時間±10分間保存した。チップは取り出して廃棄した。ろ紙を流水脱塩水ですすぎ、アセトン中で5~10秒間回転させた。ろ紙は室温(20~25℃)で乾燥させた。腐食の程度は、乾燥後直ちに測定した。各試験は、2回繰り返し(又は二重に;duplicate)実施した。
【0066】
c.評価
評価は、目視による評価ではなく、発生した腐食の表面積と使用した濾紙の総表面積を関連付けた。表面積の積分は、ImageJソフトを使用して求めた。
【0067】
d.結果
図1は、異なる濃度の塗布液(試料1:Na-ATMP、試料2:Na-HEDP、試料3:Na-PBTC、試料4:Na-グルコヘプトネート、試料5:Na-DTPMP、試料6:Na-HEDTA;試料参照:無添加比較)においてGG25ねずみ鋳鉄チップを用いてDIN 51360 Part 2に従って腐食試験を行った結果で、
図1a)は10%のレディ・トゥ・ユース塗布液を用いた試験、
図1b)は5%のレディ・トゥ・ユース塗布液を用いて試験を示す。いずれの場合も、Na-ATMP(試料1)とNa-PBTC(試料3)を含むレディ・トゥ・ユース塗布液で最良の結果が得られた。
【0068】
2.pHの検討
ホスホン酸塩が腐食防止剤として作用することが示された。ホスホン酸塩のさらなる効果は、洗浄剤濃縮物の他の組成が一定である状態で、他の構成成分、例えばキレート剤を系統的に変化させることで観察することができる。
【0069】
【0070】
ホスホン酸塩が存在する場合、pHは安定することが示されている。これが欠けると、要素を変化させた際、すなわち異なるキレート剤を添加した際に、pHのかなりの変動が観察される(表1参照)。したがって、ホスホン酸塩は、液体洗浄濃縮物とレディ・トゥ・ユース塗布液において腐食防止剤として機能するだけでなく、緩衝剤としても機能する。
【0071】
2.ホスホン酸塩とキレート剤の組み合わせ
ヘパリン化した羊の血液を用いた電気化学的腐食測定と浸漬洗浄試験を実施した。
【0072】
この目的のために、2つの調製物を調製した。調製物(I)は、本発明による液体洗浄剤濃縮物であり、これは以下の成分から調製した:
3.5重量%のエンドプロテアーゼ
10重量% 50%PBTC
8.5重量% 45%KOH
6.0重量% 40%MGDA、3Na
6.0重量% 40%HEDTA
0.5重量% 2EO/4POを有する脂肪族アルコールアルコキシレートC12-C15
3.2重量% 42%硫酸Na-オクチル
16重量% 99%トリエタノールアミン
100重量%まで 水
【0073】
調製物(II)は、調製物(I)と同一になるようにpHを調整した、他の点で同一の製剤を有するホスホン酸塩を含まない比較物である。実施された試験に基づいて、キレート剤としてのアミノポリカルボン酸塩と組み合わせたホスホン酸塩の相乗効果を明確に示すことができる。
【0074】
1.電気化学的腐食測定
a.測定方法
それぞれの場合、まずシステムの開回路電位(OCP)を決定した。これは、十分な平衡状態を確保するために、600秒かけて行われた。次に、測定したOCPに対して、-0.1~+1.5Vの電位範囲で電流密度-電位差曲線を記録した。この目的のために、0.01V/秒の走査速度で0.001Vのステップサイズが設定された。
【0075】
b.測定手順
電気化学的腐食実験を行うために、Autolab PGSTAT204ポテンショスタットと、3電極配置と銀/塩化銀参照電極を有する平板試料用腐食測定セル(Metrohm AG)からなる測定セットを使用した。試験片には、1.4034および1.4301等級の研磨ステンレス鋼プレートを使用した。
【0076】
1.4034(クロム鋼:耐食性が低い、
図2参照)と1.4301(クロムニッケル鋼:耐食性が高い、
図3参照)の2種類のステンレス鋼グレードの試験片について電気化学腐食試験を実施した。このために、必要な腐食条件を得るために、塩化ナトリウムの0.9%溶液(物理的生理食塩水に相当)に調製物(I)および(II)の10%塗布液を作成し、電流密度-電位曲線を記録した。pHは、ホスホン酸塩を含む調製物(I)では10.5、ホスホン酸塩を含まない調製物(II)では11.5であった。調製物(I)からの塗布液のpHが低いにもかかわらず、測定結果は、より高いpHでホスホン酸塩を含まない変形例の場合よりも低い腐食電流を示した(
図2参照)。原理的には、鋼材の耐食性はpHの上昇とともに向上することが予想されるため、比較的低いpHでの耐食性の向上も明確な抑制効果を示していると考えられる。
【0077】
観察された挙動の原因がpHであることを排除できるために、水酸化カリウム溶液でpHを10.5または11.5に調整した塩溶液を用いて、さらなる試験を実施したところ、観察された挙動にpHが関与していることがわかった。これは、2つの塗布液の測定pHに相当するが、洗浄液の成分が腐食挙動に影響を与えることはない。また、pHを調整しない塩化ナトリウム溶液を用いた試験も参考として実施した(pH=7.9)。関連する電流密度-電位曲線(
図2参照)は、pHの上昇とともに腐食電流が減少することを明確に示している。したがって、予想通り、pH=11.5では、pH=10.5およびpH=7.9と比較して、より低い電流が観察される。
【0078】
特に耐食性の低い鋼1.4034を用いた試験シリーズでは(
図2参照)、pHだけの効果と2つの製剤の追加効果を完全に区別することができる。したがって、ターフェル分析によって決定された個々の測定の腐食電位と腐食速度も、ここで説明された効果を明確に描写している。これらは以下の表2および
図4で確認することができる。
【0079】
NaCl溶液の場合、pHの上昇は腐食速度の低下と、より正の電位方向への腐食電位のシフトをもたらした。塗布液の添加により、同じpH範囲で両方の効果が増強され、ホスホン酸塩を添加した本発明による変形例では、上述したように、ここでのpHはホスホン酸塩なしの比較変形例よりも低いものの、腐食電位がより正の値に向かって最もシフトしていることがわかる。
【0080】
【0081】
2.浸漬槽での洗浄試験
a.機器および材料
-ステンレス鋼プレート(僅かに(slightly)粗面化、表面積1cmx9cm)
-10IU/mlの硫酸プロタミンまたは塩化プロタミンでヘパリン化した羊の血:ACILA GmbH
-マーカーポイント φ 8mm グリーン
-脱塩水
【0082】
b.手順
ヘパリン化した再活性化羊の血液の試験プレートの調製:
【0083】
ヘパリン化した羊の血液と硫酸プロタミン/塩化プロタミンは、試験まで6℃の気候キャビネットで保管した。試験用汚れの調製のため、羊の血液と硫酸プロタミン/塩化プロタミンは20℃に達している必要がある。グリースフリーのステンレス鋼プレートは、ラックにクランプし、できるだけ水平にまっすぐ並べるようにした。
【0084】
75μlの硫酸プロタミンまたは塩化プロタミンを、50mlのガラスビーカー中のマグネチックスターラー上で5mlのヘパリン化した羊の血液と短時間混合した。この溶液の100μlを各プレートにピペッティングし、取り付け穴および側面の表面を汚染しないように接種用ループで均一に割り振った。その後、各バッチを水蒸気飽和空気中(空気湿度RH100%)で室温で1時間インキュベートした。プレートのラックは脱塩水に浸すことができるが、プレートは水位より上に保管する必要がある。100%RHを設定するために、8.5リットルのプラスチック缶の底に少なくとも1リットルの脱塩水を入れた。脱塩水は、水平に置いたトレイの底を完全に覆わなければならない。開始の2時間前までにトレイを蓋で覆った(雰囲気の調整)。1時間後、凝固した血液の汚れが付着した湿潤試験片をプラスチックトレイから取り出し、室温で乾燥させた。
【0085】
乾燥した試験片の品質を確認した。汚れの上に気泡があるまたは凹凸があるプレートは除外した。他のプレートには、それぞれグリーンのマーカードットが接着されていた。試験プレートは、スクリューキャップ付きの試験管に入れ、浸漬試験に使用するまで室温で保管した。
【0086】
浸漬試験の手順
濃度:2.5ml/l
水質:脱塩水
温度:45°C±1°C
保持時間:4分
攪拌速度:350回転/分(IKA社製RCTクラシックスターラー)
試験プレート:ヘパリン化し、再活性化した羊の血液
【0087】
両試験の調製物を用いて、脱塩水中2.5ml/lの用量で、温度45℃、接触時間4分の条件で浸漬洗浄試験を実施した。各製剤の変形例で4回の個別実験を行い、残渣を0.1%アミドブラック溶液で染色し、面積を測定した。4回繰り返した(四重の;quadruplicate)測定の平均値は、
図3にプロットされている。
【0088】
c.評価
評価は、乾燥したプレートを用いて目視で行った。また、ImageJソフトウェアを用いて、試験片の総面積に対する残留血痕の積分を用いて評価を行った。
【0089】
d.結果
図5は、汚れとしてヘパリン化した羊の血液を使用した、本発明による調製物(I)およびホスホン酸塩を含まない調製物(II)による浸漬洗浄試験の結果を示している。
【0090】
図5が示すように、ホスホン酸塩を含まず、キレート剤としてアミノポリカルボン酸塩のみを含む比較調製物(II)に比べ、本発明による調製物(I)では、ヘパリン化した羊の血液の除去においてやや優れた洗浄結果を得ることができた。さらに、本発明による調製物(I)の塗布液のpHは、10.5で、10.7のpHが決定された調製物(II)の塗布液のそれよりもさらに幾分低いものであった。
【0091】
本発明による液体洗浄濃縮物および調製物(I)のレディ・トゥ・ユース塗布液は、ホスホン酸塩を含まない調製物(II)の洗浄濃縮物およびその塗布液と比較して、通常逆の効果を有する低いpHにもかかわらず、ステンレス鋼に関する改善された腐食保護、例えばアルミニウムとのより良い材料適合性および血液に関する洗浄性能の改善を示す。また、広い濃度範囲でホスホン酸塩の存在により、所望のpHへの緩衝作用が観察された。
【0092】
3.キレート剤の組み合わせ
キレート剤MGDAを、本発明による液体洗浄濃縮物に含まれるホスホン酸塩PBTCに加えて、第2のキレート剤(すなわち、HEDTA、EDDS、IDS、GLDA、ポリアスパラギン酸塩、EDTA)とそれぞれの場合に組み合わせ、このシリーズのすべての試験調製物について羊の血液に関する腐食抑制特性および洗浄性能について調査した。
【0093】
1.腐食試験
腐食試験は、DIN 51360 Part2に準拠したGG25ねずみ鋳鉄チップを用いて、塗布液の濃度を2.5%として実施された。試験は、上記のホスホン酸塩の腐食試験と同様に実施され、評価された。
【0094】
2.浸漬槽での洗浄試験
a.機器および材料
-ステンレス鋼プレート(僅かに(slightly)粗面化、表面積1cmx9cm)
-10IU/mlの硫酸プロタミンまたは塩化プロタミンでヘパリン化した羊の血:ACILA GmbH
-マーカーポイント φ 8mm グリーン
-脱塩水
【0095】
b.手順
ヘパリン化し、再活性化した羊の血液を用いた試験片は、上記のように調製した。
【0096】
浸漬試験手順:
濃度:2.0ml/l
水質:脱塩水
温度:45°C±1°C
保持時間:4分
攪拌速度:350回転/分(IKA社製RCTクラシックスターラー)
試験プレート:ヘパリン化し、再活性化した羊の血液
【0097】
両試験調製物を用いて、脱塩水中2.0ml/lの用量で、温度45℃、接触時間4分の条件で浸漬洗浄試験を実施した。各製剤の変形例で4回の個別実験を行い、残渣を0.1%アミドブラック溶液で染色し、面積を測定した。
【0098】
c.評価
洗浄結果は、乾燥したプレートで目視評価した。また、ここでは他の個別試験との相対的な面積を積算することで評価を行った。
【0099】
3.腐食・洗浄試験結果
第一に、第二のキレート剤の選択が洗浄性能と液体洗浄剤の腐食挙動の両方に影響を与えることが確認された(
図6、
図7参照)。第二に、腐食挙動と洗浄性能の間に相互関係があることがわかった(
図7参照)。つまり、腐食防止効果が向上すると洗浄効果が低下し、逆に腐食防止効果が低下すると洗浄効果が向上する。また、洗浄性能とキレート剤のCa
2+イオンおよびMg
2+イオンとの複合安定度(log(K))との間にも、さらなる相関関係が見られる(
図6参照)。log(K)値が高いキレート剤を使用すると、レディ・トゥ・ユース塗布液の洗浄性能が向上するが、安定定数が低いキレート剤を使用すると、それに応じて洗浄性能が低下する。この関係は、3つのパラメータを昇順に並べ、Ca
2+イオンとMg
2+イオンのlog(K)値の平均値に対してプロットすると、特に明確に見ることができる(
図7参照)。
【0100】
4.低温水分配
先行技術では、酵素系、弱アルカリ性、液体洗浄剤(好ましくは界面活性剤を含む)は、通常、機械洗浄のために約40℃の水温で計量される。これは、洗浄剤が低い温度では発泡し過ぎる傾向があるため必要なことである。しかし、約40℃の温度で分配することの欠点は、洗浄剤が効果を発揮する前に、入口温度(通常約18~22℃)から40℃の温度まで加熱するための一定の時間遅れが最初にあるため、洗浄プログラムの実行時間が長くなる。
【0101】
これに対して、本発明による液体洗浄剤濃縮物およびレディ・トゥ・ユース塗布液は、過度の泡の発生によりプログラムが中止されることなく、好ましくは38℃以下、より好ましくは18~35℃、さらに好ましくは20~30℃、さらにより好ましくは22~27℃、さらにいっそう好ましくは約25℃で、水吸込みの後に直接的に低温分配を実施することを可能にする。これは、先行技術から知られている洗浄剤では現在不可能である。
【0102】
図8は、洗浄および消毒システム(MMM社のユニクリーン(UniClean) PL II)からの正しく完全なプログラムシーケンス(圧力および温度曲線)を示す。ここで、本発明による液体洗浄剤濃縮物は、25℃で3ml/lの濃度で分配された。
【0103】
これは、先行技術から知られている市販の洗浄剤のいくつかについて、25℃でそれぞれの推奨標準濃度でアナログ的に実施した(特に、ドクターワイゲルト社、ネオディッシャー・メディクリーン・フォルテ、6ml/l、#681964;ルーホフ社、エンドザイムAWプラス、3.5ml/l、ドクターシューマッハ社、サーモシールド・エクストリーム、3ml/l、#460764、ボーラー社、デコネックス・ツイン pH10 ツイン・ザイム、3ml/l+1.5ml/l,#0370073+#0.397577;プロリスティカ、プロリスティカ2倍濃縮アルカリ洗浄剤、3ml/l,#290186),#290186)。これらの洗浄剤では、
図9に示すように、プログラムの終了が観察される。
【国際調査報告】