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特表2023-550269心不全を治療するためのPDE9阻害剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】心不全を治療するためのPDE9阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20231124BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20231124BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P43/00 111
A61P9/04
A61P9/00
A61P29/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K38/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525599
(86)(22)【出願日】2021-10-26
(85)【翻訳文提出日】2023-06-23
(86)【国際出願番号】 US2021056696
(87)【国際公開番号】W WO2022093852
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】63/106,301
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519003930
【氏名又は名称】カーデュリオン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Cardurion Pharmaceuticals, Inc.
(71)【出願人】
【識別番号】509346070
【氏名又は名称】バンダービルト ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】ラフール ディリップ バラル
(72)【発明者】
【氏名】ティアゴ トロバティ マシエル
(72)【発明者】
【氏名】ディーパック グプタ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ワン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA44
4C084DC50
4C084NA05
4C084ZA361
4C084ZA371
4C084ZA392
4C084ZA832
4C084ZB111
4C084ZC202
4C084ZC422
4C084ZC432
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086ZA36
4C086ZA37
4C086ZB11
4C086ZC20
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、PDE9阻害剤、PDE9阻害剤を含む組成物、並びに心不全の治療のためにPDE9阻害剤及び組成物を使用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心不全の治療を必要とする患者においてそれを行うための方法であって、薬学的に許容される用量の、式(I)のPDE9阻害剤:
【化1】
[式中、Rは、R又はRのいずれかと環化されており、
、R及びRは、以下であり、
は、Rと環化されている場合、
【化2】
(式中、Rは、H、-CH、-C及びCからなる群から選択され、*は環化点を示す)であり、

は、環化されていない場合、H及び
【化3】
(式中、Rは、H、-CH、-C及びCからなる群から選択される)からなる群から選択され、
は、
【化4】
(式中、R及びR12は独立して、H、-CH、-C及びCからなる群から選択され、
*は環化点を示す)からなる群から選択される化合物であり、
は、Rと環化されている場合、
【化5】
(式中、*は環化点を示し、
は、H、C~Cアルキル、置換C~Cアルキル、分岐C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、置換C~Cシクロアルキル、C~C10アリール、置換C~C10アリール、C~Cヘテロアリール、置換C~Cヘテロアリール、C~Cアルコキシ、置換C~Cアルコキシ、分岐C~Cアルコキシ、C~Cシクロアルコキシ、置換C~Cシクロアルコキシ、C~C10アリールオキシ、置換C~C10アリールオキシ、C~Cヘテロアリールオキシ、置換C~Cヘテロアリールオキシからなる群から選択される)であり、
は、環化されていない場合、
【化6】
(式中、R10は、H、-CH及び-Cからなる群から選択され、
11は、C~C19アリール、置換C~C10アリール、C~Cヘテロアリール、置換C~Cヘテロアリールからなる群から選択される)であり、
は、水素、-CH、-C、-C、-CF、-CN、F及びClからなる群から選択され、
は、C~C10アリール、置換C~C10アリール、C~Cヘテロアリール、置換C~Cヘテロアリール、C~Cヘテロシクリル、置換C~Cヘテロシクリル、C~Cシクロアルキル、及び置換C~Cシクロアルキルからなる群から選択され、
は、水素、F、Cl、CN、-CH、-C、-C及び-CFからなる群から選択され、
Aは、存在しないか、又は-CHである]、
又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を前記患者に投与することを含む、方法であって、
前記式(I)のPDE9阻害剤が、体重当たり10mg/kg未満又は超過の用量で投与される、方法。
【請求項2】
前記式(I)のPDE9阻害剤が、6-[(3S,4S)-4-メチル-1-(ピリミジン-2-イルメチル)ピロリジン-3-イル]-3-テトラヒドロピラン-4-イル-7H-イミダゾ[1,5-a]ピラジン-8-オン(化合物1)、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記心不全が、急性心不全、慢性心不全、又はうっ血性心不全である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記心不全が、糖尿病誘発性心不全、自己免疫性心不全、又は炎症性心不全である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記心不全が、駆出率が保たれたか、又は駆出率が低下した心不全である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記PDE9阻害剤が、体重当たり約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、又は約9mg/kgの用量で前記患者に投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記PDE9阻害剤が、体重当たり約5mg/kg又は約8mg/kgの用量で前記患者に投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
心臓線維症の治療を必要とする患者においてそれを行うための方法であって、治療上許容される用量の、式(I)のPDE9阻害剤:
【化7】
[式中、Rは、R又はRのいずれかと環化されており、
R’、R及びRは以下であり、
は、Rと環化されている場合、
【化8】
(式中、Rは、H、-CH、-C及びCからなる群から選択され、
*は環化点を示す)であり、
は、環化されていない場合、H及び
【化9】
(式中、Rは、H、-CH、-C及びCからなる群から選択される)からなる群から選択され、
は、
【化10】
(式中、R及びR12は独立して、H、-CH、-C及び-Cからなる群から選択され、
*は環化点を示す)からなる群から選択される化合物であり、
は、Rと環化されている場合、
【化11】
(式中、*は環化点を示し、
は、H、C~Cアルキル、置換C~Cアルキル、分岐C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、置換C~Cシクロアルキル、C~C10アリール、置換C~C10アリール、C~Cヘテロアリール、置換C~Cヘテロアリール、C~Cアルコキシ、置換C~Cアルコキシ、分岐C~Cアルコキシ、C~Cシクロアルコキシ、置換C~Cシクロアルコキシ、C~C10アリールオキシ、置換C~C10アリールオキシ、C~Cヘテロアリールオキシ、置換C~Cヘテロアリールオキシからなる群から選択される)であり、
は、環化されていない場合、
【化12】
(式中、R10は、H、-CH及び-Cからなる群から選択され、
11は、C~C19アリール、置換C~C10アリール、C~Cヘテロアリール、置換C~Cヘテロアリールからなる群から選択される)であり、
は、水素、-CH、-C、-C、-CF、-CN、F及びClからなる群から選択され、
は、C~C10アリール、置換C~C10アリール、C~Cヘテロアリール、置換C~Cヘテロアリール、C~Cヘテロシクリル、置換C~Cヘテロシクリル、C~Cシクロアルキル、及び置換C~Cシクロアルキルからなる群から選択され、
は、水素、F、Cl、CN、-CH、-C、-C及び-CFからなる群から選択され、
Aは、存在しないか、又は-CHである]、
又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項9】
前記心臓線維症の治療が、フィブロネクチン並びに/又はI型及びII型コラーゲンの蓄積を減少させることを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
心筋炎症の低減を必要とする患者においてそれを行うための方法であって、治療上許容される用量の、式(I)のPDE9阻害剤:
【化13】
[式中、Rは、R又はRのいずれかと環化されており、
R’、R及びRは、以下であり、
は、Rと環化されている場合、
【化14】
(式中、Rは、H、-CH、-C及びCからなる群から選択され、
*は環化点を示す)であり、
は、環化されていない場合、H及び
【化15】
(式中、Rは、H、-CH、-C及びCからなる群から選択される)からなる群から選択され、
は、
【化16】
(式中、R及びR12は独立して、H、-CH、-C及び-Cからなる群から選択され、
*は環化点を示す)からなる群から選択される化合物であり、
は、Rと環化されている場合、
【化17】
(式中、*は環化点を示し、
は、H、C~Cアルキル、置換C~Cアルキル、分岐C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、置換C~Cシクロアルキル、C~C10アリール、置換C~C10アリール、C~Cヘテロアリール、置換C~Cヘテロアリール、C~Cアルコキシ、置換C~Cアルコキシ、分岐C~Cアルコキシ、C~Cシクロアルコキシ、置換C~Cシクロアルコキシ、C~C10アリールオキシ、置換C~C10アリールオキシ、C~Cヘテロアリールオキシ、置換C~Cヘテロアリールオキシからなる群から選択される)であり、
は、環化されていない場合、
【化18】
(式中、R10は、H、-CH及び-Cからなる群から選択され、
11は、C~C19アリール、置換C~C10アリール、C~Cヘテロアリール、置換C~Cヘテロアリールからなる群から選択される)であり、
は、水素、-CH、-C、-C、-CF、-CN、F及びClからなる群から選択され、
は、C~C10アリール、置換C~C10アリール、C~Cヘテロアリール、置換C~Cヘテロアリール、C~Cヘテロシクリル、置換C~Cヘテロシクリル、C3~C6シクロアルキル、及び置換C~Cシクロアルキルからなる群から選択され、
は、水素、F、Cl、CN、-CH、-C、-C及び-CFからなる群から選択され、
Aは、存在しないか、又は-CHである]、
又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項11】
ANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)及び/又はBNP(B型ナトリウム利尿ペプチド)の減少を必要とする患者においてそれを行うための方法であって、治療上許容される用量の、式(I)のPDE9阻害剤:

【化19】
[式中、Rは、R又はRのいずれかと環化されており、
、R及びRは以下であり、
は、Rと環化されている場合、
【化20】
(式中、Rは、H、-CH、-C及びCからなる群から選択され、*は環化点を示す)であり、
は、環化されていない場合、H及び
【化21】
(式中、Rは、H、-CH、-C及びCからなる群から選択される)からなる群から選択され、
は、
【化22】
(式中、R及びR12は独立して、H、-CH、-C及び-Cからなる群から選択され、
*は環化点を示す)からなる群から選択される化合物であり、
は、Rと環化されている場合、
【化23】
(式中、*は環化点を示し、
は、H、C~Cアルキル、置換C~Cアルキル、分岐C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、置換C~Cシクロアルキル、C~C10アリール、置換C~C10アリール、C~Cヘテロアリール、置換C~Cヘテロアリール、C~Cアルコキシ、置換C~Cアルコキシ、分岐C~Cアルコキシ、C~Cシクロアルコキシ、置換C~Cシクロアルコキシ、C~C10アリールオキシ、置換C~C10アリールオキシ、C~Cヘテロアリールオキシ、置換C~Cヘテロアリールオキシからなる群から選択される)であり、
は、環化されていない場合、
【化24】
(式中、R10は、H、-CH及び-Cからなる群から選択され、
11は、C~C19アリール、置換C~C10アリール、C~Cヘテロアリール、置換C~Cヘテロアリールからなる群から選択される)であり、
は、水素、-CH、-C、-C、-CF、-CN、F及びClからなる群から選択され、
は、C~C10アリール、置換C~C10アリール、C~Cヘテロアリール、置換C~Cヘテロアリール、C~Cヘテロシクリル、置換C~Cヘテロシクリル、C~Cシクロアルキル、及び置換C~Cシクロアルキルからなる群から選択され、
は、水素、F、Cl、CN、-CH、-C、-C及び-CFからなる群から選択され、
Aは、存在しないか、又は-CHである]、
又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項12】
ANPが、治療前のレベルと比較して約5%、10%、20%、30%、40%、又は50%、あるいはそれ以上減少する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
BNPが、治療前のレベルと比較して約5%、10%、20%、30%、40%、又は50%、あるいはそれ以上減少する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記式(I)のPDE9阻害剤が、6-[(3S,4S)-4-メチル-1-(ピリミジン-2-イルメチル)ピロリジン-3-イル]-3-テトラヒドロピラン-4-イル-7H-イミダゾ[1,5-a]ピラジン-8-オン(化合物1)、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物である、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記PDE9阻害剤が、体重当たり約10mg/kg~約500mg/kgの用量で前記患者に投与される、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記PDE9阻害剤が、体重当たり約50mg/kg、約100mg/kg、約150mg/kg、約200mg/kg、又は約250mg/kgの用量で前記患者に投与される、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記PDE9阻害剤が、体重当たり約60mg/kg又は約100mg/kgの用量で前記患者に投与される、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記PDE9阻害剤が、用量当たり約100mg~約800mgで前記患者に投与される、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記PDE9阻害剤が、用量当たり約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg又は800mgで前記患者に投与される、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記PDE9阻害剤が、QD、BID又はTIDで前記患者に投与される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記PDE9が、少なくとも1つの追加の治療薬とともに投与される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記追加の治療薬が、アンジオテンシントランスフェラーゼ阻害剤(ACEI)、β受容体遮断薬、ミネラルコルチコイド/アルドステロン受容体拮抗薬(MRA)、利尿薬、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害剤(ARNI)、ネプリライシン阻害剤(NEPI)、アンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)、血管拡張薬、及びヒドララジン(HYD)若しくは二硝酸イソソルビド(SND)、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記追加の治療薬が、ヒドロキシウレア(HU)、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、トランドラプリル、ビソプロロール、カルベジロール、コハク酸メトプロロール、ネビボロール、エプレレノン、スピロラクトン、サクビトリル、イバブラジン、カンデサルタン、バルサルタン、ジゴキシン、デスラノシド、ドーパミン、ドブタミン、ドペキサミン、ミルリノン、エノキシモン、ホスホクレアチン、シクロヘキシルエチルアミン、ニトログリセリン、二硝酸イソソルビド、ニトロプルシドナトリウム、プラゾシン、イバブラジン、カンデサルタン、バルサルタン、フロセミド、ブメタニド、トラセミド、ベンドロフルアジド、ヒドロクロロチアジド、メトラゾン、インダパミド、アミロライド、及びトリアムテレンから選択される、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記追加の治療薬が、アンジオテンシンIIである、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記PDE9阻害剤及び前記少なくとも1つの追加の治療薬が、同時投与又は連続投与される、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記PDE9阻害剤が、経口投与される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記PDE9阻害剤が、毎日投与される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記PDE9阻害剤が、1~7日間投与される、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記PDE9阻害剤が、少なくとも7日間投与される、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2020年10月27日に出願された米国特許出願第63/106,301号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
心臓不全(heart failure、HF)又は心不全(cardiac failure)は、心臓が体への血流を維持するために十分に送り出すことができない状態である。心臓不全の一般的な原因としては、とりわけ、冠動脈疾患、高血圧、心房細動、心臓弁膜症、過剰なアルコール摂取、感染症、及び心筋症が挙げられる。心臓不全は、一般的で、費用がかかり、かつ潜在的に致命的な状態である。2015年には、世界中で約4,000万人が心臓不全に罹患した。成人全体の2%が心臓不全に罹患しており、65歳以上では6~10%に増加する。診断後1年間の死亡リスクは、約35%である。心不全及び他の関連する心疾患に対する改善された療法の開発が急務である。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、心不全、心臓線維症、及び心筋炎症を含む心疾患を治療するために、化合物1、及び/あるいは化合物1又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を含む薬学的組成物を使用する方法を提供する。
【0004】
本開示の一態様は、心不全の治療を必要とする患者においてそれをおこなう方法であって、PDE9阻害剤、例えば6-[4-メチル-1-(ピリミジン-2-イルメチル)ピロリジン-3-イル]-3-テトラヒドロピラン-4-イル-7H-イミダゾ[1,5-a]ピラジン-8-オン(化合物1)、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を、心不全の治療を必要とする対象に投与することを含み、化合物が、患者の体重当たり10mg/kg超過又は未満の用量で投与される、方法を含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、心不全は、急性心不全、慢性心不全、又はうっ血性心不全である。いくつかの実施形態では、心不全は、糖尿病誘発性心不全、自己免疫性心不全、又は炎症性心不全である。いくつかの実施形態では、心不全は、駆出率が保たれたか、又は駆出率が低下した心不全である。
【0006】
本開示の一態様は、心臓線維症の治療を必要とする患者においてそれをおこなう方法であって、PDE9阻害剤、例えば6-[4-メチル-1-(ピリミジン-2-イルメチル)ピロリジン-3-イル]-3-テトラヒドロピラン-4-イル-7H-イミダゾ[1,5-a]ピラジン-8-オン(化合物1)、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を、心臓線維症の治療を必要とする対象に投与することを含む、方法を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、心臓線維症の治療は、フィブロネクチン並びに/又はI型及びII型コラーゲンの蓄積を減少させることを更に含む。
【0008】
本開示の一態様は、心筋炎症の治療を必要とする患者においてそれをおこなう方法であって、PDE9阻害剤、例えば6-[4-メチル-1-(ピリミジン-2-イルメチル)ピロリジン-3-イル]-3-テトラヒドロピラン-4-イル-7H-イミダゾ[1,5-a]ピラジン-8-オン(化合物1)、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を、心筋炎症の治療を必要とする対象に投与することを含む、方法を含む。
【0009】
本開示の一態様は、ANP及び/又はBNPの減少を必要とする患者においてそれをおこなう方法であって、PDE9阻害剤、例えば6-[4-メチル-1-(ピリミジン-2-イルメチル)ピロリジン-3-イル]-3-テトラヒドロピラン-4-イル-7H-イミダゾ[1,5-a]ピラジン-8-オン(化合物1)、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を、ANP及び/又はBNPの減少を必要とする対象に投与することを含む、方法を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、ANPは、治療前のレベルと比較して約5%、10%、20%、30%、40%、又は50%、あるいはそれ以上減少する。いくつかの実施形態では、BNPは、治療前のレベルと比較して約5%、10%、20%、30%、40%、又は50%、あるいはそれ以上減少する。
【0011】
当該方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PDE9阻害剤は、体重当たり約1mg/kg~約10mg/kgの用量で患者に投与される。いくつかの実施形態では、PDE9阻害剤は、体重当たり約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、又は約9mg/kgの用量で患者に投与される。当該方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PDE9阻害剤は、体重当たり約10mg/kg~約500mg/kgの用量で患者に投与される。いくつかの実施形態では、PDE9阻害剤は、体重当たり約50mg/kg、約100mg/kg、約150mg/kg、約200mg/kg、又は約250mg/kgの用量で患者に投与される。いくつかの実施形態では、PDE9阻害剤は、体重当たり約60mg/kg又は約100mg/kgの用量で患者に投与される。いくつかの実施形態では、PDE9阻害剤が、用量当たり約100mg~約800mgで患者に投与される。いくつかの実施形態では、PDE9阻害剤が、用量当たり約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg又は800mgで患者に投与される。いくつかの実施形態では、PDE9阻害剤は、QD、BID又はTIDで患者に投与される。
【0012】
いくつかの実施形態では、PDE9阻害剤は、少なくとも1つの追加の治療薬とともに投与される。いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、アンジオテンシントランスフェラーゼ阻害剤(angiotensin transferase inhibitor、ACEI)、β受容体遮断薬、ミネラルコルチコイド/アルドステロン受容体拮抗薬(mineralocorticoid/aldosterone receptor antagonist、MRA)、利尿薬、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害剤(angiotensin receptor neprilysin inhibitor、ARNI)、ネプリライシン阻害剤(neprilysin inhibitor、NEPI)、アンジオテンシンII受容体遮断薬(angiotensin II receptor blocker、ARB)、血管拡張薬、及びヒドララジン(hydralazine、HYD)若しくは二硝酸イソソルビド(isosorbide dinitrate、SND)、又はそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、ヒドロキシウレア(HU)、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、トランドラプリル、ビソプロロール、カルベジロール、コハク酸メトプロロール、ネビボロール、エプレレノン、スピロラクトン、サクビトリル、イバブラジン、カンデサルタン、バルサルタン、ジゴキシン、デスラノシド、ドーパミン、ドブタミン、ドペキサミン、ミルリノン、エノキシモン、ホスホクレアチン、シクロヘキシルエチルアミン、ニトログリセリン、二硝酸イソソルビド、ニトロプルシドナトリウム、プラゾシン、イバブラジン、カンデサルタン、バルサルタン、フロセミド、ブメタニド、トラセミド、ベンドロフルアジド、ヒドロクロロチアジド、メトラゾン、インダパミド、アミロライド、及びトリアムテレンから選択される。いくつかの実施形態では、PDE9阻害剤及び少なくとも1つの(a least one)追加の治療薬(therapeutic)は、同時投与又は連続投与される。いくつかの実施形態では、PDE9阻害剤は、経口投与される。いくつかの実施形態では、PDE9阻害剤は、毎日投与される。いくつかの実施形態では、PDE9阻害剤は、1~7日間投与される。いくつかの実施形態では、PDE9阻害剤は、少なくとも7日間投与される。
【0013】
参照による組み込み
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、あたかも個々の刊行物、特許、又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A図1A及び図1Bは、化合物1(IMR-687)が、60及び100mg/kgで6週間投薬されると、アンジオテンシンII注入モデルにおいて心臓サイズ及び心筋細胞肥大を減少させることを示す。
図1B図1A及び図1Bは、化合物1(IMR-687)が、60及び100mg/kgで6週間投薬されると、アンジオテンシンII注入モデルにおいて心臓サイズ及び心筋細胞肥大を減少させることを示す。
図2A図2A及び図2Bは、化合物1(IMR-687)が、60及び100mg/kgで4週間投薬された後に、腎摘出術-アルドステロンモデルにおいて心臓サイズ及び心筋細胞肥大を減少させることを示す。
図2B図2A及び図2Bは、化合物1(IMR-687)が、60及び100mg/kgで4週間投薬された後に、腎摘出術-アルドステロンモデルにおいて心臓サイズ及び心筋細胞肥大を減少させることを示す。
図3A図3A及び図3Bは、化合物1(IMR-687)が、アンジオテンシンII(左側)又は腎摘出術-アルドステロン(右側)と組み合わせて、60及び100mg/kgで投薬された後に、心機能不全のANPマーカー及びBNPマーカーを減少させることを示す。図3AはANPバイオマーカーを示し、図3BはBNPバイオマーカーを示す。
図3B図3A及び図3Bは、化合物1(IMR-687)が、アンジオテンシンII(左側)又は腎摘出術-アルドステロン(右側)と組み合わせて、60及び100mg/kgで投薬された後に、心機能不全のANPマーカー及びBNPマーカーを減少させることを示す。図3AはANPバイオマーカーを示し、図3BはBNPバイオマーカーを示す。
図4A図4A及び図4Bは、アンジオテンシンII(4A)又は腎摘出術-アルドステロン(4B)と組み合わせて、化合物1(IMR-687)を投与した後、HFpEF、PDE5及びPDE9の発現が増加し、cGMPレベルの低下、PKG活性の低下、及び過剰なCa++チャネル活性を引き起こすことを示す。
図4B図4A及び図4Bは、アンジオテンシンII(4A)又は腎摘出術-アルドステロン(4B)と組み合わせて、化合物1(IMR-687)を投与した後、HFpEF、PDE5及びPDE9の発現が増加し、cGMPレベルの低下、PKG活性の低下、及び過剰なCa++チャネル活性を引き起こすことを示す。
図5図5は、アンジオテンシンIIが、TGF-βの発現、フィブロネクチン並びにI型及びII型コラーゲンの蓄積を通じて心筋線維症を誘導することを示す(ScientificReports|6:37635|DOI:10.1038/srep37635)。
図6A図6A及び図6Bは、化合物1(IMR-687)が、アンジオテンシンIIと組み合わせて、TGF-β1及び下流の標的(フィブロネクチン並びにコラーゲンI型及びIII型)を遮断することによって心臓線維症を減少させることを示す。図6Bは、過ヨウ素酸-シッフ染色(グリコーゲンに富む細胞外マトリックス、並びに糖タンパク質、糖脂質、及びムチンなどの粘膜物質を示す。
図6B図6A及び図6Bは、化合物1(IMR-687)が、アンジオテンシンIIと組み合わせて、TGF-β1及び下流の標的(フィブロネクチン並びにコラーゲンI型及びIII型)を遮断することによって心臓線維症を減少させることを示す。図6Bは、過ヨウ素酸-シッフ染色(グリコーゲンに富む細胞外マトリックス、並びに糖タンパク質、糖脂質、及びムチンなどの粘膜物質を示す。
図7図7は、化合物1(IMR-687)が、腎摘出-アルドステロンと組み合わせて、TGF-β1及び下流の標的(フィブロネクチン並びにI型及びIII型コラーゲン)を遮断することによって心臓線維症を減少させることを示す。
図8A図8A図8Cは、化合物1(IMR-687)が、アンジオテンシンII(8A)又は腎摘出術-アルドステロン(8B)と組み合わせて、心筋炎症のマーカーを減少させることを示している。C Kelly RA et al.Circulation.1997;95:778-781。
図8B図8A図8Cは、化合物1(IMR-687)が、アンジオテンシンII(8A)又は腎摘出術-アルドステロン(8B)と組み合わせて、心筋炎症のマーカーを減少させることを示している。C Kelly RA et al.Circulation.1997;95:778-781。
図8C図8A図8Cは、化合物1(IMR-687)が、アンジオテンシンII(8A)又は腎摘出術-アルドステロン(8B)と組み合わせて、心筋炎症のマーカーを減少させることを示している。C Kelly RA et al.Circulation.1997;95:778-781。
図9図9は、鎌状赤血球症の網赤血球及び好中球、並びに駆出率が保たれた心臓不全患者の心筋でPDE9が過剰発現していることを示し、これらの状態ではナトリウム利尿ペプチドレベルが上昇しているにもかかわらず、cGMPが相対的に枯渇している可能性があることを示唆している。
図10図10は、化合物1+HU又はHU単独に無作為化された対象のベースライン特徴を示す。対象は正常血圧であり、収縮期血圧と拡張期血圧の両方が正常範囲内であった。
図11図11は、平均NT-proBNPレベルを示す。化合物1+HU群では、平均ベースライン及び4ヶ月追跡NT-proBNPレベルは、それぞれ467及び340pg/mlであった(平均127pg/mlの減少又は27%の減少)。HU群では、平均ベースライン及び4ヶ月追跡NT-proBNPレベルは、それぞれ343及び436pg/mlであった(平均93pg/mlの増加又は27%の増加)。NT-proBNPレベルの50%を超える減少が、化合物1+HUで処置された対象の30%では4ヶ月で見られたが、HU単独で処置された対象では見られなかった。
図12図12は、無作為化によるベースラインNT-proBNPの関数としての4ヶ月でのNT-proBNPの変化を示す。NT-proBNPの4ヶ月の変化について調整したモデルでは、化合物1+HUの主な効果は有意であった(p=0.01)が、ベースラインNT-proBNPレベルによる化合物1+HUの相互作用効果は非常に有意であった(p<0.0001)ことが判明した。ベースラインNT-proBNP値が400pg/ml以上の対象において、化合物1+HUは、ベースラインNT-proBNPから4ヶ月NT-proBNPまで、HU単独での平均28%の増加と比較して、平均約68%の減少と関連していた。対照的に、ベースラインNT-proBNPレベルが400pg/ml未満の対象では、NT-proBNPレベルは、HU単独と比較して、化合物1+HUでの4ヶ月の処置により有意に変化しなかった。化合物1+HUは、HU単独と比較して、4ヶ月にわたる心拍数又は血圧の変化と関連しておらず、これらの所見が血行力学的要因によるものではないことを示唆している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
ホスホジエステラーゼ(phosphodiesterase、PDE)は、環状ヌクレオチドを分解し、それによって体全体にわたるセカンドメッセンジャーの細胞レベルを調節する酵素ファミリーである。PDEは、臨床試験と市場にそれぞれ導入されている多数の化合物によって証明されているように、魅力的な薬剤標的である。PDEは、動態特性、基質選択性、発現、局在パターン、活性化、調節因子及び阻害剤感受性に関して異なる11のファミリーに機能的に分けられた21の遺伝子によってコードされる。PDEの機能は、環状ヌクレオチド一リン酸である環状アデノシン一リン酸(cyclic Adenosine Monophosphate、cAMP)及び/又は環状グアノシン一リン酸(cyclic Guanosine Monophosphate、cGMP)の分解であり、cAMP及びcGMPは、神経伝達及び平滑筋の収縮と弛緩の制御を含む、多くの重要なプロセスに関与する重要な細胞内メディエーターである。
【0016】
PDE9はcGMP特異的であり(cGMPの場合、Km cAMPは1000倍を超える)、このヌクレオチドに対するPDEの中で最も低いKmを有するため、cGMPレベルの調節において重要な役割を果たすと仮説が立てられている。PDE9は、脳全体にわたって低レベルで発現しており、基礎cGMPを調節する可能性がある。
【0017】
末梢では、前立腺、腸、腎臓、造血細胞においてPDE9の発現が最も高く、CNS以外の様々な適応症における治療の可能性をもたらす。
【0018】
本開示では、PDE9阻害剤(例えば、化合物1)は、心不全、心機能不全及び心筋症を含むがこれらに限定されない心疾患の治療に使用される。
【0019】
I.化合物
本開示の文脈において、3つのPDE9アイソフォームのうちのいずれかの50%阻害レベルに到達するのに必要な量が10マイクロモル以下、好ましくは9マイクロモル未満、例えば8マイクロモル以下、例えば7マイクロモル以下、例えば6マイクロモル以下、例えば5マイクロモル以下、例えば4マイクロモル以下、例えば3マイクロモル以下、より好ましくは2マイクロモル以下、例えば1マイクロモル以下、特に500nM以下である場合、化合物はPDE9阻害剤であるとみなされる。好ましい実施形態では、PDE9のIC50レベルに到達するのに必要なPDE9阻害剤の必要量は、400nM以下、例えば300nM以下、200nM以下、100nM以下、又は更には80nM以下、例えば50nM以下、例えば25nM以下である。
【0020】
いくつかの実施形態では、本開示のPDE9阻害剤は、血液脳関門をほとんど通過しないか、又は全く通過しない。例えば、本開示のPDE9阻害剤の脳内濃度と血漿中濃度の比(脳/血漿比)は、約0.50未満、約0.40未満、約0.30未満、約0.20未満、約0.10未満、約0.05未満、約0.04未満、約0.03未満、約0.02未満、又は約0.01未満であってもよい。脳/血漿比は、PDE9阻害剤の投与後30分又は120分で測定してもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、PDE9阻害剤は、国際公開第2013/053690号(その内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる)に開示される任意のイミダゾピラジノンPDE9阻害剤であってもよい。
【0022】
本発明の化合物が1つ以上のキラル中心を含む場合、化合物のうちのいずれかについての言及は、特に指定しない限り、エナンチオマー又はジアステレオマーとして純粋な化合物、並びに任意の比率のエナンチオマー又はジアステレオマーの混合物を包含する。
【0023】
一実施形態では、PDE9阻害剤は、式(I)の構造を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形である:
【化1】
[式中、Rは、R又はRのいずれかと環化されており、
、R及びRは、以下であり、
は、Rと環化されている場合、
【化2】
(式中、Rは、H、-CH、-C及びCからなる群から選択され、*は環化点を示す)であり、
は、環化されていない場合、H及び
【化3】
(式中、Rは、H、-CH、-C及びCからなる群から選択される)からなる群から選択され、
は、
【化4】
(式中、R及びR12は独立して、H、-CH、-C及び-Cからなる群から選択され、
*は環化点を示す)からなる群から選択される化合物であり、
は、Rと環化されている場合、
【化5】
(式中、*は環化点を示し、
は、H、C~Cアルキル、置換C~Cアルキル、分岐C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、置換C~Cシクロアルキル、C~C10アリール、置換C~C10アリール、C~Cヘテロアリール、置換C~Cヘテロアリール、C~Cアルコキシ、置換C~Cアルコキシ、分岐C~Cアルコキシ、C~Cシクロアルコキシ、置換C~Cシクロアルコキシ、C~C10アリールオキシ、置換C~C10アリールオキシ、C~Cヘテロアリールオキシ、置換C~Cヘテロアリールオキシからなる群から選択される)であり、
は、環化されていない場合、
【化6】
(式中、R10は、H、-CH及び-Cからなる群から選択され、
11は、C~C19アリール、置換C~C10アリール、C~Cヘテロアリール、置換C~Cヘテロアリールからなる群から選択される)であり、
は、水素、-CH、-C、-C、-CF、-CN、F及びClからなる群から選択され、
は、C~C10アリール、置換C~C10アリール、C~Cヘテロアリール、置換C~Cヘテロアリール、C~Cヘテロシクリル、置換C~Cヘテロシクリル、C~Cシクロアルキル、及び置換C~Cシクロアルキルからなる群から選択され、
は、水素、F、Cl、CN、-CH、-C、-C及び-CFからなる群から選択され、
Aは、存在しないか、又は-CHである]。
【0024】
いくつかの実施形態では、式(I)の構造を有するPDE9阻害剤は、以下からなる群から選択される:3-(4-フルオロフェニル)-6-((3-(ピリジン-4-イルオキシ)アゼチジン-1-イル)メチル)イミダゾ[1,5-a]ピラジン-8(7H)-オン(化合物P1)、-6[3-(ピリジン-3-イルオキシ)-アゼチジン-1イルメチル]-3-(テトラヒドロ-ピラン-4-イル)-7H-イミダゾ[1,5-a]ピラジン-8-オン(化合物P2)、6-((3S,4S)-4-メチル-1-ピリミジン-2-イルメチル-ピロリジン-3-イル)-3-(テトラヒドロ-ピラン-4-イル)-7H-イミダゾ[1,5-a]ピラジン-8-オン(P3、エナンチオマー1、又は化合物1)、及び6-((3R,4R)-4-メチル-1-ピリミジン-2-イルメチル-ピロリジン-3-イル)-3-(テトラヒドロ-ピラン-4-イル)-7H-イミダゾ[1,5-a]ピラジン-8-オン(P3、エナンチオマー2)。
【0025】
いくつかの実施形態では、PDE9阻害剤は、6-((3S,4S)-4-メチル-1-ピリミジン-2-イルメチル-ピロリジン-3-イル)-3-(テトラヒドロ-ピラン-4-イル)-7H-イミダゾ[1,5-a]ピラジン-8-オン(P3、エナンチオマー1、化合物1)である。
【0026】
いくつかの実施形態では、PDE9阻害剤は、6-((3R,4R)-4-メチル-1-ピリミジン-2-イルメチル-ピロリジン-3-イル)-3-(テトラヒドロ-ピラン-4-イル)-7H-イミダゾ[1,5-a]ピラジン-8-オン(P3、エナンチオマー2)である。
【0027】
いくつかの実施形態では、PDE9阻害剤は、ラセミ形態、又はエナンチオマーとして濃縮された形態若しくは純粋な形態である
【化7】
あるいはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物又は多形からなる群から選択される。
【0028】
いくつかの実施形態では、PDE9阻害剤は、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形である。化合物1のラセミ体形態(それ以外では、化合物P3として定義される)及び化合物1の無水形態は、国際公開第2013/053690号及び国際公開第2017/005786号に記載されている。結晶形態は、国際公開第2019/226944号に記載されている。化合物1(IMR-687)は以下の構造を有する:
【化8】
6-[(3S,4S)-4-メチル-1-(ピリミジン-2-イルメチル)ピロリジン-3-イル]-3-テトラヒドロピラン-4-イル-7H-イミダゾ[1,5-a]ピラジン-8-オン(化合物P3、エナンチオマー1、化合物P3.1としても知られている);式C2126;計算された分子量:約394g/mol。
【0029】
II.薬学的組成物
本開示は更に、治療有効量のPDE9阻害剤のうちのいずれかと、薬学的に許容される担体又は希釈剤と、を含む医薬組成物を、心疾患の治療を必要とする患者に投与することによって、それを行う方法を提供する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、治療有効量の式(I)の構造を有する化合物、その薬学的に許容される塩、溶媒和物又は多形と、薬学的に許容される担体又は希釈剤又は賦形剤と、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、治療上許容される量の化合物1又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形と、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と、を含む。
【0030】
薬学的に許容される塩
本開示はまた、PDE9阻害剤の塩、典型的には薬学的に許容される塩を含む。このような塩としては、薬学的に許容される酸付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、無機酸及び有機酸の塩が挙げられる。
【0031】
好適な無機酸の代表例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硫酸、スルファミン酸、硝酸などが挙げられる。適切な有機酸の代表例としては、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、桂皮酸、クエン酸、フマル酸、グリコール酸、イタコン酸、乳酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、シュウ酸、ピクリン酸、ピルビン酸、サリチル酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、酒石酸、アスコルビン酸、パモン酸、ビスメチレンサリチル酸、エタンジスルホン酸、グルコン酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、EDTA、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、テオフィリン酢酸、及び8-ハロテオフィリン、例えば8-ブロモテオフィリンなどが挙げられる。薬学的に許容される無機又は有機酸付加塩の更なる例としては、Berge,S.M.et al.,J.Pharm.Sci.1977,66,2(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0032】
更に、本開示の化合物は、非溶媒和形態で存在しても、水、エタノールなどの薬学的に許容される溶媒との溶媒和形態で存在してもよい。一般に、溶媒和形態は、本開示の目的では、非溶媒和形態と同等であるとみなされる。
【0033】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、化合物1を溶媒和形態、非溶媒和形態、又は結晶/多形形態として含む。いくつかの実施形態では、化合物1は、非溶媒和形態として存在する。いくつかの実施形態では、化合物1は、溶媒和形態として存在する。いくつかの実施形態では、化合物1は、結晶形態として存在する。いくつかの実施形態では、化合物1は、一水和物の結晶形態として存在する。
【0034】
製剤
本開示の化合物は、単独で、又は薬学的に許容される担体、希釈剤若しくはは賦形剤と組み合わせて、単回又は複数回の用量で投与してもよい。本開示による医薬組成物は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Edition,Gennaro,Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,2013に開示されている技術などの従来の技術に従って、薬学的に許容される担体又は希釈剤、並びに任意の他の既知のアジュバント及び賦形剤を用いて製剤化してもよい。
【0035】
医薬組成物は、経口、経直腸、経鼻、肺、局所(口腔及び舌下を含む)、経皮、槽内、腹腔内、経膣及び非経口(皮下、筋肉内、髄腔内、静脈内及び皮内を含む)経路などの任意の好適な経路による投与のために特に製剤化してもよい。経路は、治療される対象の全体的な健康及び年齢、治療される状態の性質、並びに有効成分に依存することが理解されるであろう。
【0036】
経口投与用医薬組成物には、カプセル、錠剤、糖衣錠、丸剤、トローチ剤、粉末及び顆粒などの固体剤形が含まれる。必要に応じて、組成物は、腸溶性コーティングなどのコーティングを用いて調製してもよいし、当技術分野でよく知られている方法に従って徐放又は持続放出などの有効成分の制御放出を提供するように製剤化してもよい。経口投与用の液体剤形としては、溶液、エマルジョン、懸濁液、シロップ及びエリキシルが挙げられる。
【0037】
非経口投与用の医薬組成物としては、滅菌の水性及び非水性注射液、分散液、懸濁液又はエマルジョン、並びに使用前に滅菌注射溶液又は分散液に再構成される滅菌粉末が挙げられる。他の好適な投与形態としては、座薬、スプレー剤、軟膏、クリーム、ゲル、吸入剤、皮膚パッチ及びインプラントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
静脈内、髄腔内、筋肉内及び同様の投与などの非経口経路の場合、典型的な用量は、経口投与に使用される用量の半分程度である。
【0039】
本開示は、治療有効量の本開示の化合物と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は希釈剤とを混合することを含む、医薬組成物の作製プロセスも提供する。
【0040】
本開示の化合物は、一般に、遊離物質として、又はその薬学的に許容される塩として利用される。このような塩は、本開示の化合物の溶液又は懸濁液を等モルの薬学的に許容される酸で処理することにより、従来の方法で調製される。好適な有機酸及び無機酸の代表例は、上に記載されている。
【0041】
非経口投与の場合、滅菌水溶液、プロピレングリコール水溶液、ビタミンE水溶液、又はゴマ油若しくはピーナッツ油中の本開示の化合物の溶液を使用してもよい。このような水溶液は、必要に応じて好適に緩衝され、液体希釈剤は最初に十分な生理食塩水又はグルコースで等張にされるべきである。水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下及び腹腔内投与に特に適している。本開示の化合物は、当業者に知られている標準的な技術を使用して、既知の滅菌水性媒体に容易に組み込まれる場合がある。
【0042】
好適な医薬担体としては、不活性固体希釈剤又は充填剤、滅菌水溶液、及び様々な有機溶媒が挙げられる。固体担体の例としては、乳糖、白土、スクロース、シクロデキストリン、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、及びセルロースの低級アルキルエーテルが挙げられる。液体担体の例としては、シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、リン脂質、脂肪酸、脂肪酸アミン、ポリオキシエチレン及び水が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、担体又は希釈剤は、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの当該技術分野で既知の任意の徐放材料を単独で、又はワックスと混合して含む場合がある。本開示の化合物と薬学的に許容される担体とを組み合わせることによって形成された医薬組成物は、次いで、開示された投与経路に適した様々な剤形で容易に投与される。製剤は、薬学分野で知られている方法によって単位剤形で都合よく提供されてもよい。
【0043】
経口投与に適した本開示の製剤は、それぞれ所定量の有効成分、及び任意選択的には好適な賦形剤を含有する、カプセル又は錠剤などの個別の単位として提供されてもよい。更に、経口的に利用可能な製剤は、粉末若しくは顆粒、水性若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液、又は水中油型若しくは油中水型液体エマルジョンの形態であってもよい。
【0044】
固体担体が経口投与のために使用される場合、調製物は、錠剤化され、粉末又はペレットの形態で硬質ゼラチンカプセルに入れられるか、又はトローチ若しくはロゼンジの形態であってもよい。固体担体の量は広範囲に変動するが、投薬単位当たり約25mg~約1gの範囲であろう。液体担体が使用される場合、調製物は、シロップ、エマルジョン、ソフトゼラチンカプセル、又は水性若しくは非水性液体懸濁液若しくは溶液などの滅菌注射液の形態であってもよい。
【0045】
本開示の医薬組成物は、当該技術分野における従来の方法によって調製されてもよい。例えば、錠剤は、有効成分を通常のアジュバント及び/又は希釈剤と混合し、その後、混合物を従来の打錠機で圧縮して錠剤を調製することによって調製されてもよい。アジュバント又は希釈剤の例としては、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ゼラチン、乳糖、ガムなどが挙げられる。有効成分と適合性である限り、着色料、香味料、保存料などの、このような目的に通常使用される他のアジュバント又は添加剤を使用してもよい。
【0046】
医薬組成物は、少なくとも10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、又は90重量%のPDE9阻害剤(例えば、化合物1)、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を含んでもよい。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、少なくとも90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、又は99重量%の化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を含んでもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形は、経口投与用組成物として製剤化される。例えば、固形錠剤の形態であってもよい。経口投与用組成物は、少なくとも充填剤及び/又は加工助剤を含む。加工助剤は、流動促進剤又は潤滑剤であってもよい。経口投与用組成物はまた、コーティングを含んでもよい。いくつかの実施形態では、経口投与用組成物は、充填剤として微結晶セルロース及び/又はアルファ化デンプンを含む。いくつかの実施形態では、経口投与用組成物は、加工助剤としてコロイド状二酸化ケイ素及び/又はステアリン酸マグネシウムを含む。いくつかの実施形態では、経口投与用組成物は、Opadry(登録商標)II白色フィルムコーティングを含む。Opadry(登録商標)IIは、生産性が高く、水溶性で、pHに依存しない完全な乾燥粉末フィルムコーティングシステムであり、ポリマーと、可塑剤と、顔料とを含有しており、迅速で積極的な放出のための即時崩壊が可能である。いくつかの実施形態では、経口投与用組成物は、加工中に除去される精製水を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、錠剤は、錠剤の総重量の約5重量%~約20重量%(例えば、約5重量%、10重量%、15重量%又は20重量%)のコーティングを含む。
【0049】
一実施形態では、錠剤は、錠剤の総重量の約4重量%~約6重量%のアルファ化デンプンを含む。
【0050】
一実施形態では、錠剤は、錠剤の総重量の約1重量%~約2.5重量%のコロイド状二酸化ケイ素を含む。
【0051】
一実施形態では、錠剤は、錠剤の総重量の約0.5重量%~約1.5重量%のステアリン酸マグネシウムを含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、この錠剤は、アルファ化デンプン、コロイド状二酸化ケイ素、及びステアリン酸マグネシウムを重量比5:2:1で含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、錠剤は、錠剤の重量の約10%のコーティングを含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を含む組成物は、制御された室温(20~25℃)で保存される。
【0055】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を含む組成物は、光から保護される。
【0056】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を含む組成物は、食物とともに摂取される。
【0057】
投薬
典型的な経口投薬量は、1日当たり約0.001~約100mg/kg体重の範囲、又はその中の任意の範囲である。典型的な経口投薬量はまた、1日当たり約0.01~約50mg/kg体重の範囲、又はその中の任意の範囲である。典型的な経口投薬量は更に、1日当たり約0.05~約10mg/kg体重の範囲、又はその中の任意の範囲である。経口投薬量は、通常、1回以上の投薬量、典型的には1日当たり1~3回の投薬量で投与される。正確な投薬量は、投与の頻度及び態様、治療される対象の性別、年齢、体重及び全体的な健康状態、治療される状態の性質及び重篤度、並びに治療される任意の合併症、並びに当業者に明らかな他の要因に依存するであろう。
【0058】
いくつかの実施形態では、PDE9阻害剤(例えば、化合物1)、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形は、それを必要とする患者に、6.0mg/kg未満又は約4.0mg/kg未満の投薬量(dosing)で投与される。例えば、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形は、約0.3~約3.0mg/kg若しくは約0.3~約1.0mg/kg、又はその中の任意の範囲の投与量(dosing)で投与される。患者は、心機能障害を有する場合がある。患者は、成人(18歳以上)又は子供(18歳未満)であってもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、患者は、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を約1mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、患者は、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を約3mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、患者は、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を約6mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、患者は、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を約8.0mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、患者は、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を約10mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、患者は、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を約20mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、患者は、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を約50mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、患者は、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を約60mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、患者は、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を約100mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、患者は、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を約200mg/kgで投与される。
【0060】
いくつかの実施形態では、患者は、患者の体重当たり少なくとも約1mg/kgの化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を投与される。いくつかの実施形態では、患者は、患者の体重当たり少なくとも約2mg/kgの化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を投与される。いくつかの実施形態では、患者は、患者の体重当たり少なくとも約3mg/kgの化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を投与される。いくつかの実施形態では、患者は、患者の体重当たり少なくとも約4mg/kgの化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を投与される。いくつかの実施形態では、患者は、患者の体重当たり少なくとも約5mg/kgの化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を投与される。いくつかの実施形態では、患者は、患者の体重当たり少なくとも約6mg/kgの化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を投与される。いくつかの実施形態では、患者は、患者の体重当たり少なくとも約7mg/kgの化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を投与される。いくつかの実施形態では、患者は、患者の体重当たり少なくとも約8mg/kgの化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を投与される。いくつかの実施形態では、患者は、患者の体重当たり少なくとも約9mg/kgの化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を投与される。いくつかの実施形態では、患者は、患者の体重当たり少なくとも約10mg/kgの化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を投与される。いくつかの実施形態では、患者は、患者の体重当たり少なくとも約20mg/kgの化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を投与される。いくつかの実施形態では、患者は、患者の体重当たり少なくとも約30mg/kgの化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を投与される。いくつかの実施形態では、患者は、患者の体重当たり少なくとも約40mg/kgの化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を投与される。いくつかの実施形態では、患者は、患者の体重当たり少なくとも約50mg/kgの化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を投与される。いくつかの実施形態では、患者は、患者の体重当たり少なくとも約60mg/kgの化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を投与される。いくつかの実施形態では、患者は、患者の体重当たり少なくとも約100mg/kgの化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を投与される。
【0061】
いくつかの実施形態では、患者は、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を体重当たり約4.0mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、患者は、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を体重当たり約4.5mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、患者は、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を体重当たり約8.0mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、患者は、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を体重当たり約8.5mg/kgで投与される。
【0062】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形は、それを必要とする患者に、1日当たり約100mg~約1,000mgの一定用量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、1日当たり約300~約800mgの用量で投与される。
【0063】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形は、それを必要とする患者に、1日当たり約20mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1,000mg、約1,100mg、約1,200mg、約1,300mg、約1,400mg、又は約1,500mgの一定用量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、1日当たり約400mgで投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、1日当たり約500mgで投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、1日当たり約600mgで投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、1日当たり約700mgで投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、1日当たり約800mgで投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、1日当たり約900mgで投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、1日当たり約1,000mgで投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、1日当たり約1,100mgで投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、1日当たり約1,200mgで投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、1日当たり約1,300mgで投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、1日当たり約1,400mgで投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、1日当たり約1,500mgで投与される。
【0064】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形は、それを必要とする患者に、用量当たり約100mg~約1,000mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、用量当たり約300~約800mgの用量で投与される。
【0065】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形は、それを必要とする患者に、用量当たり約20mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、又は約1,000mgで投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、用量当たり約400mgで投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、用量当たり約500mgで投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、用量当たり約600mgで投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、用量当たり約700mgで投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、用量当たり約800mgで投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、用量当たり約900mgで投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、用量当たり約1,000mgで投与される。
【0066】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形が患者に投与され、化合物1は1日1回(QD)投与される。
【0067】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形が患者に投与され、化合物1は1日2回(BID)投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形が患者に投与され、化合物1は1日3回(TID)投与される。
【0068】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形が患者に投与され、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形は食物とともに1日1回投与される。食物は有害事象プロファイルを劇的に減少させることが分かっている。化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を食物とともに摂取すると、吐き気、嘔吐及び頭痛などの副作用の発生率及び重篤度を低減することができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形が患者に投与され、化合物1、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形は、少なくとも7日間、10日間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、1年間、1.5年間、又は2年間、1日1回投与される。いくつかの実施形態では、患者は、3ヶ月間治療される。いくつかの実施形態では、患者は、6ヶ月間治療される。いくつかの実施形態では、患者は、1年間治療される。いくつかの実施形態では、患者は、1.5年間治療される。いくつかの実施形態では、患者は、2年、3年、4年、5年、5年以上、又は生涯にわたって治療される。
【0070】
製剤は、当業者に知られている方法によって単位剤形で提供されてもよい。例示の目的で、経口投与のための典型的な単位剤形は、約0.01~約1000mg、約0.05~約500mg、又は約0.5mg~約200mgを含有してもよい。
【0071】
III.治療方法
心臓不全又は心不全(cardiac or heart failure)は、心拍出量の低下及び/又は心内圧の上昇を引き起こす心臓の構造及び/又は機能の異常によって引き起こされる病態生理学的状態を特徴とする臨床症候群である。心筋が損傷して弱くなり、心室が伸張又は拡張して、心臓が全身に効率的に血液を送り出すことができなくなる可能性がある。
【0072】
先進国では、心臓不全の発生率は成人人口の約1~2%であるが、70歳以上では10%以上に上昇する。55歳時の心臓不全の生涯リスクは、男性で33%、女性で28%である。心臓を損傷するか、又は弱め、心臓不全を引き起こす可能性がある症状には、冠動脈疾患、高血圧(高血圧症)、先天性心疾患、心臓弁の欠陥、心拍リズムの異常、不整脈)、並びに感染症、アルコール乱用、肥満、糖尿病などの代謝異常、及びコカイン又は化学療法に使用される一部の薬物などの薬物の毒性作用による心筋の損傷(心筋症)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
心臓不全には、左心室若しくは右心室、又は心臓の両側が関与する可能性がある。一般に、心臓不全は、左側、特に心臓の主要なポンプ室である左心室から始まる。左心室心臓不全には2つのタイプがある:(1)駆出率が低下した心臓不全(HFrEF)、及び(2)駆出率が保たれた心臓不全(HFpEF)。駆出率は、心臓がどれだけうまく拍動しているかを示す重要な測定値であり、心臓不全を分類し、治療を誘導するために使用される。
【0074】
ナトリウム利尿ペプチドは、心血管ストレスの増加に対する拮抗メカニズムとして放出される心臓由来のホルモンである。ナトリウム利尿ペプチドの心臓保護効果は粒子状グアニル酸シクラーゼ受容体を通じて発生して、セカンドメッセンジャーcGMPを生成し、次いでこれが標的器官に作用して、特に抗増殖、抗炎症、及び抗癒着効果を発揮して、心血管ストレスの誘発を低減する。ナトリウム利尿ペプチドは心血管ストレスの強力なバイオマーカー及び予後の予測因子であるだけでなく、ナトリウム利尿ペプチドの生理学的作用は心血管ストレスに対抗するものである。ナトリウム利尿ペプチドの心臓保護効果は、cGMPの生成を介してもたらされる。ホスホジエステラーゼ、特にPDE9は、ナトリウム利尿ペプチドが生成したcGMPを分解する。
【0075】
心不全
本開示の一態様は、心不全の治療を必要とする患者に対してそれを行う方法であって、式(I)のPDE9阻害剤、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を患者に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、式(I)のPDE9阻害剤は、体重当たり少なくとも10mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、式(I)のPDE9阻害剤は、体重当たり少なくとも1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、又は10mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、式(I)のPDE9阻害剤は、体重当たり4.0mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、式(I)のPDE9阻害剤は、体重当たり4.5mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、式(I)のPDE9阻害剤は、体重当たり8.0mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、式(I)のPDE9阻害剤は、体重当たり8.5mg/kgの用量で投与される。
【0076】
本開示の別の一態様は、心不全の治療を必要とする患者に対してそれを行う方法であって、式(I)のPDE9阻害剤、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を患者に投与することを含み、PDE9が、体重当たり少なくとも10mg/kgの用量で投与される、方法を提供する。いくつかの実施形態では、PDE9阻害剤は、体重当たり少なくとも約15mg/kg、少なくとも約20mg/kg、少なくとも約25mg/kg、少なくとも約30mg/kg、少なくとも約35mg/kg、少なくとも約40mg/kg、少なくとも約45mg/kg、又は少なくとも約50mg/kgの用量で投与される。
【0077】
本開示の別の一態様は、心不全の治療を必要とする患者に対してそれを行う方法であって、式(I)のPDE9阻害剤、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を患者に投与することを含み、PDE9阻害剤が、治療前のレベルと比較して、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)及び/又はB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)を減少させる、方法を提供する。
【0078】
いくつかの実施形態では、式(I)のPDE9阻害剤は、対象におけるANPを減少させる。いくつかの実施形態では、式(I)のPDE9阻害剤は、治療前のレベルと比較して、対象におけるANPを少なくとも5%、10%、25%、50%、100%、150%、200%、又は250%減少させる。いくつかの実施形態では、式(I)のPDE9阻害剤は、治療前のレベルと比較して、対象におけるANPを少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%減少させる。いくつかの実施形態では、式(I)のPDE9阻害剤は、治療前のANPに対して、ANPを約2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、又は25倍減少させる。
【0079】
いくつかの実施形態では、式(I)のPDE9阻害剤は、対象におけるBNPを減少させる。いくつかの実施形態では、式(I)のPDE9阻害剤は、治療前のレベルと比較して、対象におけるBNPを少なくとも5%、10%、25%、50%、100%、150%、200%、又は250%減少させる。いくつかの実施形態では、式(I)のPDE9阻害剤は、治療前のレベルと比較して、対象におけるBNPを少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%減少させる。いくつかの実施形態では、式(I)のPDE9阻害剤は、治療前のBNPに対して、BNPを約2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、又は25倍減少させる。
【0080】
いくつかの実施形態では、心不全は、急性心不全、慢性心不全、又はうっ血性心不全である。いくつかの実施形態では、心不全は、糖尿病誘発性心不全、自己免疫性心不全、又は炎症性心不全である。いくつかの実施形態では、心不全は、駆出率が保たれているか、又は駆出率が低下している。
【0081】
心臓線維症
本開示の別の態様は、心臓線維症の治療を必要とする患者に対してそれを行う方法であって、式(I)のPDE9阻害剤、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0082】
心臓線維症は一般に、心筋における細胞外マトリックスの過剰な沈着を指す。線維細胞は通常、コラーゲンを分泌し、心臓に構造的な支持を付与するように機能する。このプロセスが過剰に活性化されると、弁の肥厚及び線維症が引き起こされ、白色組織が主に三尖弁上に蓄積されるが、肺動脈弁上にも蓄積される。肥厚と柔軟性の喪失は、最終的には弁機能不全及び右心臓不全につながる可能性がある。
【0083】
いくつかの実施形態では、心臓線維症の治療は、フィブロネクチン並びに/又はI型及びII型コラーゲンの蓄積を減少させることを更に含む。いくつかの実施形態では、心臓線維症の治療は、フィブロネクチンの蓄積を減少させることを更に含む。いくつかの実施形態では、フィブロネクチンは、少なくとも5%、10%、25%、50%、100%、150%、200%、又は250%減少する。いくつかの実施形態では、フィブロネクチンは、治療前のレベルに対して、約2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、又は25倍減少する。いくつかの実施形態では、フィブロネクチンは、治療前のレベルと比較して、約5%、10%、20%、30%、40%、又は50%、あるいはそれ以上減少する。いくつかの実施形態では、フィブロネクチンは、治療前のレベルと比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%、あるいはそれ以上減少する。いくつかの実施形態では、心臓線維症の治療は、I型又はII型コラーゲンを減少させることを更に含む。いくつかの実施形態では、I型又はII型コラーゲンは、少なくとも5%、10%、25%、50%、100%、150%、200%、又は250%減少する。いくつかの実施形態では、I型又はII型コラーゲンは、治療前のレベルに対して、約2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、又は25倍減少する。いくつかの実施形態では、I型又はII型コラーゲンは、治療前のレベルと比較して、約5%、10%、20%、30%、40%、又は50%、あるいはそれ以上減少する。いくつかの実施形態では、I型又はII型コラーゲンは、治療前のレベルと比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%、あるいはそれ以上減少する。
【0084】
炎症
本開示の別の態様は、心筋炎症(心筋炎)の治療を必要とする患者に対してそれを行う方法であって、式(I)のPDE9阻害剤、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0085】
心臓炎症又は心筋炎は、心筋(heart muscle)(心筋(myocardium))の炎症である。心筋炎は、心筋と心臓の電気系の両方に影響を及ぼし、急速な又は異常な心拍リズム(不整脈)を引き起こす。心臓炎症は、特にウイルス若しくは細菌からの感染症;薬;又は自己免疫疾患、薬剤、環境要因若しくはその他の誘因による心臓の組織若しくは筋肉の損傷によって引き起こされる可能性がある。最も一般的にはウイルスによって引き起こされ、左心臓不全を引き起こす可能性がある。
【0086】
いくつかの実施形態では、炎症は、少なくとも5%、10%、25%、50%、100%、150%、200%、又は250%減少する。いくつかの実施形態では、炎症は、治療前のレベルと比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%減少する。
【0087】
生物物理学的効果
ナトリウム利尿ペプチドは、心臓血管の恒常性の維持に重要な役割を果たす。それらの特性としては、血管拡張、ナトリウム利尿、利尿、心臓リモデリングの阻害などがある。しかしながら、心臓不全が進行すると、ナトリウム利尿ペプチドを補うことができなくなる。N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(N-terminal pro-B-type natriuretic peptide、NT-proBNP)は、心疾患及び心臓不全を診断するための診断薬として使用される。
【0088】
別の実施形態では、PDE9阻害剤は、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)及びB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)などの心疾患に関連するバイオマーカーを増加又は減少させるために使用される。別の実施形態では、化合物1は、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)及びB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)などの心疾患に関連するバイオマーカーを増加又は減少させるために使用される。
【0089】
心臓由来の心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)ホルモンは、心房拡張に応答して放出され、ナトリウム恒常性を維持し、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の活性化を阻害する働きがある。うっ血性心臓不全は、心臓容積の増加と、ナトリウム負荷を排泄できない圧力過負荷と、を特徴とする臨床症候群であり、これは、全身性の神経液性メカニズム並びに局所的な自己分泌メカニズム及び傍分泌メカニズムの活性の増加に関連している。うっ血性心臓不全では、このホルモンの合成及び放出が増加する結果、循環する心房性ナトリウム利尿ペプチドが大幅に増加する。
【0090】
脳性ナトリウム利尿ペプチド又はB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は、心室血液量の増加によって引き起こされる伸張に応答して心室内の心筋細胞によって分泌されるホルモンである。BNPの生理学的作用は、ANPの生理学的作用と類似している。これらのペプチドの正味の効果は、全末梢血管抵抗、したがって後負荷の減少による血圧の低下である。
【0091】
いくつかの実施形態では、化合物1は、対象におけるANPを減少させるために使用される。いくつかの実施形態では、ANPは、少なくとも5%、10%、25%、50%、100%、150%、200%、又は250%減少する場合がある。いくつかの実施形態では、化合物1は、治療前のANPに対して、ANPを約2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、又は25倍減少させるために使用される。いくつかの実施形態では、ANPは、治療前のレベルと比較して約5%、10%、20%、30%、40%、又は50%、あるいはそれ以上減少する。
【0092】
いくつかの実施形態では、化合物1は、対象におけるBNPを減少させるために使用される。いくつかの実施形態では、BNPは、少なくとも5%、10%、25%、50%、100%、150%、200%、又は250%減少する場合がある。いくつかの実施形態では、化合物1は、治療前のBNPに対して、BNPを約2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、又は25倍減少させるために使用される。いくつかの実施形態では、BNPは、治療前のレベルと比較して約5%、10%、20%、30%、40%、又は50%、あるいはそれ以上減少する。
【0093】
別の実施形態では、化合物1は、対象におけるヘモグロビン(hemoglobin、Hb)レベルを増加させるために使用される。Hbレベルは、少なくとも5%、10%、25%、50%、100%、150%、200%、又は250%増加する場合がある。いくつかの実施形態では、化合物1は、治療前のHbレベルに対して、Hbレベルを約2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、又は25倍増加させるために使用される。
【0094】
いくつかの実施形態では、対象のヘモグロビン(Hb)レベルは、総Hbの約0.5~約3.0g/dLの範囲で増加する。いくつかの実施形態では、対象のヘモグロビン(Hb)レベルは、総Hbの約0.5、約1.0、約1.5、約2.0、約2.5、又は約3.0g/dL増加する。
【0095】
別の実施形態では、化合物1は、対象における赤血球(red blood cell、RBC)レベルを増加させるために使用される。RBCレベルは、少なくとも5%、10%、25%、50%、100%、150%、200%、又は250%増加する場合がある。いくつかの実施形態では、化合物1は、治療前のベースラインレベルに対して、RBCレベルを約2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、又は25倍増加させるために使用される。
【0096】
更に別の実施形態では、化合物1は、成熟RBCレベルを増加させ、未熟RBCレベルを減少させ、かつ/又は成熟比を増加させるために使用される。RBCの成熟は、成熟RBC(Ery.C:単染性及び網状赤血球)に対する未熟赤血球(RBC)(Ery.B:後期好塩基性及び多染性)の比率、すなわちEry.B/Ery.Cを計算することによって測定される。成熟RBCレベルは、少なくとも5%、10%、25%、50%、100%、150%、200%、又は250%増加する場合がある。いくつかの実施形態では、成熟RBCレベルは、治療前のベースラインレベルに対して、約2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、又は25倍増加する。未熟RBCレベルは、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、又は80%減少する場合がある。成熟RBCレベルは、少なくとも5%、15%、25%、50%、100%、150%、200%、又は250%増加する場合がある。いくつかの実施形態では、成熟比は、治療前のベースライン比に対して、約2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、又は25倍増加する。
【0097】
併用療法
本開示の別の態様は、化合物1などの本開示のPDE9阻害剤、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは多形を、少なくとも1つの他の活性剤と組み合わせて使用する方法を提供する。それらは同時投与又は連続投与されてもよい。それらは、同時投与のために混合物として存在してもよく、又は連続投与のためにそれぞれ別個の容器中に存在してもよい。
【0098】
本発明の別の実施形態では、追加の治療薬が、アンジオテンシントランスフェラーゼ阻害剤(ACEI)、β受容体遮断薬、ミネラルコルチコイド/アルドステロン受容体拮抗薬(MRA)、利尿薬、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害剤(ARNI)、ネプリライシン阻害剤(NEPI)、Ifチャネル阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)、陽性変力薬、血管拡張薬、及びヒドララジン(HYD)若しくは二硝酸イソソルビド(SND)のうちの1つ以上である。
【0099】
本発明の別の実施形態では、第2の又はそれ以上の治療薬の場合、ACEIには、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル及びトランドラプリルが含まれるが、これらに限定されず;f3受容体遮断薬には、ビソプロロール、カルベジロール、コハク酸メトプロロール及びネビボロールが含まれるが、これらに限定されず;MRAには、エプレレノン及びスピロラクトンが含まれるが、これらに限定されず;ARNIには、サクビトリル/バルサルタンが含まれ;NEPIにはサクビトリルが含まれるが、これに限定されず;Ifチャネル阻害剤には、イバブラジンが含まれるが、これに限定されず;ARBにはカンデサルタン及びバルサルタンが含まれるが、これらに限定されず;陽性変力薬には、ジゴキシン又はデスラノシドなどのジギタリス強心配糖体、ドーパミン又はドブタミン又はドペキサミンなどのf3アドレナリン受容体作動薬、ミルリノン又はアムリノン又はエノキシモンなどのホスホジエステラーゼ阻害剤、ホスホクレアチン又はシクロヘキシルエチルアミン及び他の陽性変力薬が含まれるが、これらに限定されず、血管拡張薬には、ニトログリセリン、二硝酸イソソルビド、ニトロプルシドナトリウム及びプラゾシンが含まれるが、これらに限定されず;利尿薬には、フロセミド、ブメタニド、トラセミド、ベンドロフルアジド、ヒドロクロロチアジド、メトラゾン、インダパミド、アミロリド及びトリアムテレンが含まれるが、これらに限定されない。
【0100】
いくつかの実施形態では、追加の活性剤は、ベータ遮断薬(カルベジロール、メトプロロール、ビソプロロール)、ACE阻害剤(エナラプリル(Vasotec)、リシノプリル(Zestril)及びカプトプリル(Capoten))、アンジオテンシン受容体遮断薬(ロサルタン)、アルドステロン拮抗薬(スピロノラクトン(Aldactone)及びエプレレノン(Inspra))、ジゴキシン(ラノキシン)、利尿薬(フロセミド(Lasix))、又はARC阻害剤(ロサルタン(Cozaar)及びバルサルタン(Diovan))である。
【0101】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、ヒドロキシウレア(HU)である。
【0102】
他の活性剤は、本開示の異なるPDE9阻害剤であってもよい。他の活性剤は、ペニシリンなどの抗生物質製剤、ジクロフェナク若しくはナプロキセンなどの非ステロイド性抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drug、NSAIDS)、オピオイド若しくは葉酸などの鎮痛薬であってもよい。いくつかの実施形態では、他の活性剤は葉酸である。
【0103】
本明細書で使用される場合、「同時投与」という用語は特に制限されず、本開示のPDE9阻害剤と少なくとも1つの他の活性剤とが、例えば、混合物として、又は直後の順序で、実質的に同時に投与されることを意味する。
【0104】
本明細書で使用される場合、「連続投与」という用語は、特に制限されず、本開示のPDE9阻害剤と少なくとも1つの他の活性剤とが、同時にではなく、次々に、又はグループで、投与間に特定の時間間隔をもって投与されることを意味する。時間間隔は、本開示のPDE9阻害剤と少なくとも1つの他の活性剤のそれぞれの投与の間で同じであっても異なっていてもよく、例えば、2分~96時間、1~7日の範囲、又は1、2若しくは3週間から選択されてもよい。一般に、投与間の時間間隔は、数分~数時間の範囲、例えば、2分~72時間、30分~24時間、又は1~12時間の範囲であってもよい。更なる例としては、24~96時間、12~36時間、8~24時間、及び6~12時間の範囲の時間間隔が挙げられる。
【0105】
本開示のPDE9阻害剤と少なくとも1つの追加の活性剤とのモル比は、特に制限されない。例えば、本開示のPDE9阻害剤と他の1つの追加の活性剤とが組成物中で組み合わされる場合、それらのモル比は1:500~500:1、又は1:100~100:1、又は1:50~50:1、又は1:20~20:1、又は1:5~5:1の範囲、又は1:1であってもよい。本開示のPDE9阻害剤及び2つ以上の他の活性剤が組成物中で組み合わされる場合、同様のモル比が適用される。本開示のPDE9阻害剤は、組成物の約1%~10%、又は約10%~約20%、又は約20%~約30%、又は約30%~40%、又は40%~50%、又は約50%~60%、又は約60%~70%、又は約70%~80%、又は約80%~90%、又は約90%~99%の所定のモル重量パーセンテージを含んでもよい。
【0106】
IV.キット及びデバイス
本開示は、本開示の方法を好都合に及び/又は効果的に実施するための様々なキット及びデバイスを提供する。典型的には、キットは、ユーザーが対象(複数可)の複数の治療を実行すること、及び/又は複数の実験を実行することを可能にするのに十分な量及び/又は数の構成要素を含むであろう。
【0107】
一実施形態では、本開示は、本開示のPDE9阻害剤化合物又は本開示のPDE9阻害剤化合物の組み合わせを、任意選択的には葉酸、ペニシリンなどの抗生物質製剤、ジクロフェナク若しくはナプロキセンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)、オピオイド若しくは葉酸などの鎮痛薬のような任意の他の活性剤と組み合わせて含む、心疾患を治療するためのキットを提供する。
【0108】
キットは更に、包装と、説明書及び/又は製剤組成物を形成するための送達剤と、を含んでもよい。送達剤は、生理食塩水、緩衝溶液、又は本明細書に開示される任意の送達剤を含んでもよい。各構成要素の量は、一貫した、再現可能な、より高濃度の生理食塩水又は単純な緩衝液の製剤化を可能にするために変更してもよい。また、一定期間にわたって及び/又は様々な条件下で緩衝液(buffer solution)中のPDE9阻害剤化合物の安定性を高めるために、構成要素を変更してもよい。
【0109】
本開示は、本開示のPDE9阻害剤化合物を組み込んでもよいデバイスを提供する。これらのデバイスは、心不全又は心臓線維症のヒト患者など、それを必要とする対象に即座に送達できる安定した製剤を含む。
【0110】
デバイスの非限定的な例としては、ポンプ、カテーテル、針、経皮パッチ、加圧鼻用送達デバイス、イオン導入デバイス、多層マイクロ流体デバイスが挙げられる。装置は、単回、複数回又は分割投薬計画に従って本開示のPDE9阻害剤化合物を送達するために使用されてもよい。デバイスは、本開示のPDE9阻害剤化合物を生体組織にわたって、皮内、皮下又は筋肉内に送達するために使用されてもよい。PDE9阻害剤化合物の送達に適したデバイスの更なる例としては、国際公開第2014036555号に開示された膀胱内薬物送達用の医療デバイス、米国特許出願公開第20080108697号に開示されているI型ガラス製のガラス瓶、米国特許出願公開第20140308336号に開示されている、分解性ポリマーと活性剤とで作られたフィルムを含む薬物溶出デバイス、米国特許第5716988号に開示されている注射用マイクロポンプ又は活性剤の薬学的に安定な調製物を含有する容器を有する注入デバイス、国際公開第2015023557号に開示されているような、リザーバと、リザーバと流体連通するチャネル付き部材とを備える埋め込み型デバイス、米国特許出願公開第20090220612号に開示されているような1つ以上の層を有する中空繊維ベースの生体適合性薬物送達デバイス、国際公開第2013170069号に開示されているような、固体又は半固体の形態の薬物を含有するリザーバを画定するハウジングを有する細長い可撓性デバイスを含む、薬物送達のための埋め込み型デバイス、米国特許第7326421号に開示されている生体吸収性インプラントデバイスが挙げられるが、これらに限定されず、それぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0111】
V.定義
本明細書で使用される場合、冠詞「a」及び「an」は、そうでないことが明確に示されていない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0112】
本明細書で使用される場合、語句「及び/又は」は、そのように結合された要素、すなわち、ある場合には結合的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素の「いずれか又は両方」を意味すると理解されるべきである。そうでないことが明確に示されていない限り、「及び/又は」の節によって具体的に特定される要素以外の他の要素が、具体的に特定される要素に関連するか無関係であるかにかかわらず任意選択的に存在する場合がある。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」への言及は、「含む」などの非限定的言語と組み合わせて使用される場合、一実施形態では、Bを含まないAを指すことができ(任意選択的に、B以外の要素を含む)、別の実施形態では、Aを含まないBを指すことができ(任意選択的に、A以外の要素を含む)、更に別の実施形態では、AとBの両方(任意選択的に、他の要素を含む)を指すことができる。
【0113】
本明細書で使用される場合、「又は」は、上で定義された「及び/又は」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を分離する場合、「又は」又は「及び/又は」は、包括的であるとして、すなわち、いくつかの要素又はそのリストのうちの少なくとも1つ(但し、2つ以上のものも含む)及び任意選択的に付加的な列挙されていない項目の包含として解釈されるものとする。「~のうちの1つのみ」若しくは「~のうちの厳密に1つ」又は請求項において使用される場合、「~からなる」などの、そうでないことが明確に示される用語のみが、いくつかの要素又はそのリストの厳密に1つの要素の包含を指すであろう。
【0114】
一般に、本明細書で使用される場合、用語「又は」は、「いずれか」、「~のうちの1つ」、「~のうちの1つのみ」、又は「~のうちの厳密に1つ」などの排他性の用語が先行すれると、排他的代替(すなわち、「両方ではないが、一方又は他方」)を示すようにのみ解釈されるものとする。請求項において使用される場合、「~から本質的になる」は、特許法の分野において使用されるようなその通常の意味を有するものとする。
【0115】
本明細書で使用される場合、1つ以上の要素のリストに関する語句「少なくとも1つ」は、要素のリスト内の要素のうちのいずれか1つ以上のものから選択される少なくとも1つの要素を意味するように理解されるべきであるが、必ずしも、要素のリスト内に具体的に列挙されるあらゆる要素のうちの少なくとも1つを含むわけではなく、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを除外するわけではない。本定義はまた、具体的に識別されるそれらの要素に関連するかどうかにかかわらず、語句「少なくとも1つ」が指す要素のリスト内の具体的に識別される要素以外の要素が任意選択的に存在し得ることを可能にする。
【0116】
したがって、非限定的実施例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(又は同じく「A又はBのうちの少なくとも1つ」若しくは同じく「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、いかなるBも存在しない、任意選択的に2つ以上のAを含む少なくとも1つのA(及び任意選択的に、B以外の要素を含む)を指し、別の実施形態では、いかなるAも存在しない、任意選択的に、2つ以上のBを含む少なくとも1つのB(及び任意選択的に、A以外の要素を含む)を指し、また別の実施形態では、任意選択的に、2つ以上のAを含む少なくとも1つのA及び任意選択的に2つ以上のBを含む少なくとも1つのB(及び任意選択的に、他の要素を含む)などを指すことができる。
【0117】
「~を含む(comprising)」、「~を含む(including)」、「~を保有する(carrying)」、「~を有する(having)」、「~を含有する(containing)」、「~を伴う(involving)」、「~を保持する(holding)」などの全ての移行句は、非限定的である、すなわち、~を含むが、これらに限定されないことを意味すると理解されるべきである。
【0118】
米国特許庁の特許審査手続便覧に定められているように、「~からなる」及び「本質的に~からなる」という移行句のみが、それぞれ限定的又は半限定的な移行句であるものとする。
【0119】
本明細書で使用される場合、「対象」又は「患者」は、疾患又は障害、例えば、腫瘍形成又は癌にかかりやすい哺乳類などの任意の哺乳類(例えば、ヒト)を指す。例としては、ヒト、ヒト以外の霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、又はマウス、ラット、ハムスター若しくはモルモットなどの齧歯類が挙げられる。様々な実施形態では、対象とは、治療、観察、又は実験の対象となったことがある、又はこれから対象となるものを指す。例えば、対象は、癌と診断されたか、若しくは他の方法で癌を有することが知られている対象であるか、又は対象における既知の癌に基づいて治療、観察若しくは実験のために選択された対象であることができる。
【0120】
本明細書で使用される場合、「治療」又は「治療すること」は、疾患若しくは障害、又はその少なくとも1つの徴候若しくは症状の改善を指す。「治療」又は「治療すること」は、例えば、少なくとも1つの徴候若しくは症状の安定化又は少なくとも1つの兆候若しくは症状の進行速度の低下によって決定されるような進行速度の低下によって決定されるような、疾患又は障害の進行を低減することを指すことができる。別の実施形態では、「治療」又は「治療すること」は、疾患又は障害の発症を遅らせることを指す。
【0121】
本明細書で使用される場合、「予防」又は「予防すること」は、所与の疾患又は障害の徴候又は症状を獲得又は有するリスクの低減、すなわち、予防的処置を指す。
【0122】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という語句は、所望の治療効果を生み出すのに有効な、本教示の化合物を含む化合物、材料、又は組成物の量を意味する。したがって、治療有効量は、疾患又は障害を治療又は予防する、例えば、障害の少なくとも1つの兆候又は症状を改善する。様々な実施形態では、疾患又は障害は、癌である。
【0123】
2つの文字又は記号の間にないダッシュ(「-」)は、置換基の結合点を示すために使用される。たとえば、-CONHは炭素原子(C)を介して結合する。「任意選択的な」又は「任意選択的に」は、その後に記載される事象又は状況が発生する場合も、発生しない場合もあり、当該記載が、当該事象又は状況が発生する事例と発生しない事例を含むことを意味する。例えば、「任意選択的に置換されているアリール」は、本明細書で定義される「アリール」及び「置換アリール」の両方を包含する。1つ以上の置換基を含有する任意の基に関して、そのような基が、立体的に非実用的、合成的に実現不可能、及び/又は本質的に不安定な任意の置換又は置換パターンを導入することを意図されていないことは、当業者には理解されるであろう。
【0124】
本明細書における全ての数値範囲には、全ての数値、及び記載された数値の範囲内の全ての数値の範囲が含まれる。非限定的な例として、(C~C)アルキルには、C、C、C、C、C、C、(C~C)、(C~C)、(C~C)、(C~C)、(C~C)、(C~C)、(C~C)、(C~C)、(C~C)、(C3~C)、(C~C)、(C~C)、(C~C)、及び(C~C)アルキルのうちのいずれか1つも含まれる。更に、本開示の広範な範囲を示す数値範囲及びパラメータは上述のように近似値であるが、実施例のセクションに記載される数値は可能な限り正確に報告されている。しかしながら、そのような数値には、測定機器及び/又は測定技術に起因する一定の誤差が本質的に含まれていることを理解されたい。
【0125】
略語及び用語のリスト
H-NMR:プロトン核磁気共鳴分光法
ADME:吸収、分布、代謝及び排泄
AE:有害事象
AUC0-24:投与後0~24時間までの濃度-時間曲線下面積
BBB:血液脳関門
max:最大血漿濃度
cGMP:環状グアノシン一リン酸
CNS:中枢神経系
CV:変動係数
CYP:シトクロムp450
DMC:データ監視委員会
DMSO:ジメチルスルホキシド
DOAC:直接作用型経口抗凝固薬
ECG:心電図
EOT:治療の終了
FIH:ファースト・イン・ヒューマン
FTIR:フーリエ変換赤外分光法
GC:ガスクロマトグラフィー
hERG:ヒト遅延整流性カリウムイオンチャネル遺伝子
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
HU:ヒドロキシウレア
IC:阻止濃度
IC50:半最小発育阻止濃度
IV:静脈内
MAD:反復投与用量漸増試験
MTD:最大耐用量
NO:一酸化窒素
NOAEL:無毒性量
PD:薬力学
PDE9:ホスホジエステル-9
PEG:ポリエチレングリコール
P-gp:P糖タンパク質
PIC:カプセル封入粉末
PK:薬物動態(学)
RBC:赤血球
RH:相対湿度
qd:1日1回
QoL:クオリティ・オブ・ライフ
SAD:単回投与用量漸増試験
SAE:重篤な有害事象
SD:標準偏差
SEM:平均値の標準誤差
sGC:可溶性グアニル酸シクラーゼ
1/2:半減期
TK:毒物動態学
max:最高血中濃度到達時間
ULN:正常上限
WBC:白血球
w/w%:重量/重量パーセント
【実施例
【0126】
以下の実施例は、本開示を説明することを目的とするものであり、限定するものではないことが理解されるであろう。前述の説明及び実施例の様々な他の実施例及び変形例は、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、本開示を読めば当業者には明らかであり、そのような全ての実施例又は変形例は添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。本明細書で参照される全ての刊行物及び特許は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0127】
実施例1.化合物1の合成及び製剤化
化合物1は、国際公開第2013/053690号に開示されている6-[4-メチル-1-(ピリミジン-2-イルメチル)ピロリジン-3-イル]-3-テトラヒドロピラン-4-イル-7H-イミダゾ[1,5-a]ピラジン-8-オンのエナンチオマーである。化合物1は、国際公開第2013/053690号(その内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる)に開示された方法に従って調製された6-[4-メチル-1-(ピリミジン-2-イルメチル)ピロリジン-3-イル]-3-テトラヒドロピラン-4-イル-7H-イミダゾ[1,5-a]ピラジン-8-オンからのキラル選択的精製から調製してもよい。化合物1は、国際公開第2017/005786号(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示された方法を用いて調製してもよい。化合物1はIMR-687とも呼ばれる。
【0128】
【化9】
【0129】
実施例2.駆出率が保たれた高血圧症誘発性心臓不全(heart failure with preserved election fraction、HFpEF)モデルに対する化合物1の効果
全身性高血圧症は、HFpEFで見られる唯一の最も重要な併存疾患であり、大規模対照試験、疫学研究、心臓不全(HF)レジストリからその有病率は60%~89%であると報告されている。血圧の上昇は心筋細胞及び線維芽細胞の変化を誘発し、心臓リモデリングを促進する。更に、高血圧症は、内皮機能不全、冠動脈予備血流の減少、毛細血管密度の減少などの血管変化をもたらし、これら全てが酸素供給の減少につながる。全身性高血圧症も動脈硬化を引き起こし、これが心臓に不均衡な負荷を与え、心室と血管の結合解除及び後負荷の不一致につながる。これらの変化は、収縮及び拡張機能の低下につながる。
アルドステロンを注入され片側腎摘出されたマウス
【0130】
一側性腎摘出術及びアルドステロン注入(1%NaCl摂取を伴う)を4~6週間受けたマウスは、正常/保たれたLVEFを維持しながら、中等度の高血圧症、求心性左室肥大、肺うっ血、及び心エコー検査による拡張機能障害の証拠を伴うHFpEFを発症する。これらのマウスは運動障害も示す。分子レベルでは、これらのマウスの左心室組織は、ナトリウム利尿ペプチド、心臓サイズ及び心臓線維症の増加、並びに酸化ストレスの増加を示す。
【0131】
アンジオテンシンII-注入マウス
マウスにアンジオテンシンIIを様々な期間(1~8週間)投与すると、高血圧症の存在下でも非存在下でも心臓肥大及びリモデリングが引き起こされることから、アンジオテンシンII注入下の心臓リモデリングは血圧依存性因子及び血圧非依存性因子によるものであることが示唆されている。C57BL/6Jマウスは、アンジオテンシンIIに応答して代償性の求心性肥大及び線維症を発症する。肺うっ血及び運動不耐性は明らかであり、ミトコンドリア機能障害及び骨格筋萎縮のようなアンジオテンシンII誘発性の骨格筋異常に関連しているようである。要約すると、ヒトHFpEF表現型を反映するように菌株及び投与量が最適化されている場合、アンジオテンシンII注入は、関連するHFpEFモデルであると考えられる。
【0132】
実施例3.駆出率が保たれた肥満及び糖尿病誘発性心臓不全(heart failure with preserved election fraction、HFpEF)モデルに対する化合物1の効果
肥満は左心室に重大な構造変化を誘発し、HFpEF患者は肥満である可能性が著しく高くなる。肥満がHFpEFに寄与するメカニズムは複数ある。脂肪蓄積の増加は、炎症、インスリン抵抗性及び脂質異常症を促進し、動脈、骨格筋及び身体機能も損なうが、これらは全て、HFpEF患者における異常である。糖尿病もHFpEFで一般的に見られる。全身性のインスリン抵抗性及び高血糖症は、心臓のインスリン抵抗性、並びに心臓における神経ホルモン、交感神経及びサイトカインの不均衡を誘発する。これにより、心筋細胞肥大、間質線維症及びコラーゲン修飾(collagen modification)などの心臓リモデリングプロセスが誘発され、更なる細胞損傷、並びに拡張及び収縮期機能の低下につながる可能性がある。
db/dbマウス
【0133】
db/dbレプチン受容体欠損マウスは、レプチン受容体をコードする糖尿病(diabetes、db)遺伝子に点変異があり、2型糖尿病に続発する重度の高血糖を伴う病的肥満を自然発生的に引き起こす。したがって、このモデルは、この特定のHFpEF表現型を代表するHFpEFに対する肥満と2型糖尿病の複合的な寄与を調査する上で貴重である。db/dbマウスは、炎症性の全身性サイトカインフィンガープリントを示し、高インスリン血症と高レプチン血症の両方が存在するにもかかわらず、マウスは最初は心臓肥大を示さないが、最終的には高齢(6ヶ月)になると心臓肥大を発症する。組織学的レベルでは、これらのマウスの心臓には、心筋細胞の肥大、線維症の証拠及び毛細血管の希薄化が見られる。db/dbマウスは、HFの証拠を伴う肥満/代謝性HFpEF表現型を呈するようであるが、LVEFは保たれている。
【0134】
実施例4.心臓機能を改善し、心筋肥大、線維症及び炎症を低減するための、HFpEF前臨床モデルにおける化合物1の役割
モデル1:8週齢のC57BL/6J雄マウスを100mg/kgケタミン及び10mg/kgキシラジンで腹腔内麻酔した。全てのマウスに片側腎摘出術を施し、その後、浸透圧ミニポンプを介してd-アルドステロン(0.30μg/h)を連続注入する。全てのマウスを1.0%塩化ナトリウム飲料水で維持した。マウスは、ビヒクル又は化合物1のいずれかを60mg/kg/日又は100mg/kg/日で4週間又は6週間強制経口投与するように無作為化した(36匹のマウス、N=6/群)。マウスは標準温度、12時間/12時間明暗制御された部屋で飼育し、水と標準的な齧歯類用食餌を自由に摂取させた。治療開始から4週間又は6週間後にマウスを安楽死させた。マウスにおける60mg/kgの化合物1の投与は、成人ヒト対象に約4.8mg/kgの化合物1を投与するのと同等であることが示されている。同様に、マウスへの100mg/kgの化合物1の投与は、ヒト対象に約8.1mg/kgの化合物1を投与するのと同等であることが示されている。
【0135】
以下を含むいくつかの生物学的効果を試験した:心臓サイズ及び心筋細胞肥大(図2A及び2B);ANP及びBNPレベル(図3A右側、及び図3B右側);PDE-9 mRNA発現レベル(図4B);TGF-B1レベル及び下流の標的(フィブロネクチン及びI型及びIII型コラーゲン)(図7);並びに心筋炎症バイオマーカー(図8B)。まとめると、このデータは、化合物1(腎摘出術及びd-アルドステロンの連続注入の有無にかかわらず)が様々な形態の心疾患(例えば、心筋炎症、線維症など)の治療に有効であることを示している。
【0136】
モデル2:8週齢のC57BL/6J雄マウスをイソフルランで麻酔し、浸透圧ミニポンプを皮下移植して、10mM酢酸中のアンジオテンシンIIを1日当たり1.5mg/kgの用量で4~6週間連続注入した。実験動物群は、同じ期間にわたって4週間又は6週間強制経口投与することにより60mg/kg/日又は100mg/kg/日でビヒクル又は化合物1を投与するように無作為に割り当てた(36匹のマウス、N=6/群)。マウスは、標準温度、12時間/12時間明暗制御された部屋で飼育し、水と標準的な齧歯類用食餌を自由に摂取させた。アンジオテンシンII注入後4週間又は6週間後にマウスを安楽死させた。マウスにおける60mg/kgの化合物1の投与は、成人ヒト対象に約4.8mg/kgの化合物1を投与するのと同等であることが示されている。同様に、マウスへの100mg/kgの化合物1の投与は、ヒト対象に約8.1mg/kgの化合物1を投与するのと同等であることが示されている。
【0137】
以下を含むいくつかの生物学的効果を試験した:心臓サイズ及び心筋細胞肥大(図1A及び1B);ANP及びBNPレベル(図3A左側、及び図3B左側);PDE-9 mRNA発現レベル(図4A);TGF-β1レベル及び下流の標的(フィブロネクチン及びI型及びIII型コラーゲン)(図6A);並びに心筋炎症バイオマーカー(図8A)。まとめると、このデータは、化合物1(腎摘出術及びアンジオテンシンIIの連続注入の有無にかかわらず)が様々な形態の心疾患(例えば、心不全、心臓線維症、心筋炎症など)の治療に有効であることを示している。
【0138】
実施例5.糖尿病関連及び非糖尿病関連肥満における体重減少を改善するための、HFpEF前臨床モデルにおける化合物1の役割
モデル3:BKS.Cg-Dock7m+/+Leprdb/J株の、20週齢の雄で糖尿病になりやすい肥満db/dbマウスを、ビヒクル又は化合物1の長期間処置を60mg/kg/日又は100mg/kg/日で受けるように無作為に割り当てる(30匹のマウス、n=10/群)。処置は、皮下浸透圧ポンプを使用して8週間行う。マウスは標準温度、12時間/12時間明暗制御された部屋で飼育し、水と標準的な齧歯類用食餌を自由に摂取させる。
【0139】
タスク成果:60mg/kg/日又は100mg/kg/日の化合物1で処置したHFpEFのマウスモデルを使用して、以下を評価することを提案する。
【0140】
(a)生理学的測定:非侵襲的なテールカフ血圧分析装置を使用して、心拍数(bpm)と血圧(mmHg)を毎週モニタリングする。処置開始時(0日目)及び屠殺日(モデル#1及びモデル#2では4又は6週間、モデル#3では12週間)のインスリン及びグルコースレベル。
【0141】
(b)体重(g)、心臓重量/体重(mg/g)、ELISAによる血清アルドステロンレベル及び血清アンジオテンシンIIレベル。
【0142】
(c)パラメータcGMPイムノアッセイを使用した心筋cGMP濃度。
【0143】
(d)左心室心筋細胞肥大:心房性ナトリウム利尿ペプチド及び脳性ナトリウム利尿ペプチドのmRNA発現(遺伝子Nppa及びNppbによってコードされる)、ヘマトキシリン-エオシンで染色した切片の心筋細胞断面積、小麦胚芽凝集素で染色した切片の心筋細胞の直径。
【0144】
(e)心筋PDE-9発現:リアルタイムPCRによるmRNA及びウェスタンブロットによるタンパク質。
【0145】
(f)心筋線維症:マッソントリクローム及びPASで染色した切片の線維症面積(%)、リアルタイムPCRによるコラーゲンI型及びIII型、フィブロネクチン及びTGF-β1のmRNA発現。
【0146】
(g)心筋酸化ストレス:3-ニトロチロシン抗体で染色した切片の免疫組織化学的分析。
【0147】
(h)カルシウム処理タンパク質及びシグナル伝達経路:筋小胞体Ca2+-ATPase(SERCA2a)、Ca2+/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMKII)、プロテインキナーゼA(PKA)、及びホスホランバン(総計、蛍光体-Ser16及び蛍光体-Thr17)のイムノブロッティング。
【0148】
(i)心筋炎症:リアルタイムPCRによるマクロファージ浸潤、サイトカインmRNA発現(IL-1b、IL-6、IL-8、IL-13、IL-17、IFN-ガンマ、TNF-アルファ)の免疫組織化学的分析、プロテオームプロファイラー及びバイオプレックスアッセイによる心筋細胞及び血漿の炎症マーカー。
【0149】
(j)内皮活性化のマーカー:ELISAによる可溶性E-セレクチン(CD62E)、P-セルクチン(CD62P)、血管接着分子1(VCAM-1)及び細胞間接着分子1(ICAM-1)の血漿レベル。
【0150】
(k)肺うっ血:湿肺重量/乾燥肺重量、ヘマトキシリン-エオシンで染色した肺切片の組織学的分析。
【0151】
(1)腎損傷及び線維症:ヘマトキシリン-エオシンで染色した腎切片の組織学的分析、及びマッソントリクローム及びPASで染色した切片の線維症面積(%);リアルタイムPCRによるI型及びIII型コラーゲン、フィブロネクチン及びTGF-ベータ1のmRNA発現。腎機能は、血漿クレアチニン、血中尿素窒素(blood urea nitrogen、BUN)、尿中NGAL及びアルブミン尿のレベルによって評価される。
【0152】
(k)モデル#3(db/db):治療の開始時と終了時の体重を比較することによる体重減少の決定;リアルタイムPCRによるNPR-C脂肪組織mRNA発現;免疫組織化学による脂肪組織マクロファージの蓄積。
【0153】
実施例6.成人の鎌状赤血球症患者におけるIMR-687によるホスホジエステラーゼ-9阻害及びナトリウム利尿ペプチドレベル
IMR-SCD-102は、進行中の第2a相無作為化二重盲検プラセボ対照試験であり、化合物1(IMR-687)を単独療法として毎日50mg~200mg、又はバックグラウンドのヒドロキシウレア療法と組み合わせて(化合物1+HU)50~100mgで試験する。研究後半のプロトコル修正により、組み合わせコホート(化合物1+HU対HU単独)におけるサンプル収集及びNT-proBNPレベルの特性評価が可能になった。血漿NT-proBNPは、無作為化時及び4ヶ月時に15人の対象(100%HbSS遺伝子型)において測定した。併用治療を支持する2:1の無作為化スキームにより、化合物1+HUについては対象10名及びHU単独については対象5名とした。ベースライン、4ヶ月追跡、及びNT-proBNPレベルの変化を定量した。更に、NT-proBNPレベルの変化が治療及びベースラインNT-proBNPレベルに応じて変化するかどうかを試験した。
【0154】
化合物1+HU又はHU単独に無作為化された対象のベースライン特徴は同様であった(図10)。平均NT-proBNPレベルも分析する(図11)。化合物1+HU群では、平均ベースライン及び4ヶ月追跡NT-proBNPレベルは、それぞれ467及び340pg/mlであった(平均127pg/mlの減少又は27.3%の減少)。HU群では、平均ベースライン及び4ヶ月追跡NT-proBNPレベルは、それぞれ343及び436pg/mlであった(平均93pg/mlの増加又は27.0%の増加)。NT-proBNPレベルの50%を超える減少が、化合物1+HUで処置された対象の30%では4ヶ月で見られたが、HU単独で処置された対象では見られなかった。NT-proBNPの4ヶ月の変化について、化合物1+HUの主な効果は有意であった(p=0.01)が、ベースラインNT-proBNPレベルによる化合物1+HUの相互作用効果は非常に有意であった(p<0.0001)(図12)。ベースラインNT-proBNP値が400pg/ml以上の対象において、化合物1+HUは、ベースラインNT-proBNPから4ヶ月NT-proBNPまで、HU単独での平均28.0%の増加と比較して、平均67.9%の減少と関連していた。ベースラインNT-proBNPレベルが400pg/ml未満の対象では、NT-proBNPレベルは、HU単独と比較して、化合物1+HUでの4ヶ月の処置により有意に変化しなかった。化合物1+HUの組み合わせは、HU単独と比較して、4ヶ月にわたる心拍数又は血圧の変化と関連していなかった。
【0155】
HU処置対象への化合物1の添加は、SCDを有する成人、特にベースラインNT-proBNPレベルが400pg/ml以上の成人における心血管リスクを低減する潜在的な有効性を有する好ましい心血管安全性プロフィールを有するようである。
【0156】
実施例7.化合物1による選択的PDE9阻害は、駆出率が保たれた心臓不全の前臨床マウスモデルにおける心臓肥大及び腎損傷を軽減する
序論:心臓及び腎臓を保護するセカンドメッセンジャーである環状GMPの分解を通じて、過剰なPDE9は心筋細胞肥大、線維症、腎機能不全に寄与する場合があり、これらは駆出率が保たれた心臓不全(HFpEF)の発症及び進行に共通する特徴である。
【0157】
化合物1による選択的PDE9阻害は、HFpEFのマウスモデルにおける有害な心臓及び腎臓の表現型を軽減する。
【0158】
方法:溶媒と比較した化合物1(60mg/kg、100mg/kg)に対する心臓及び腎臓の応答を、HFpEF(1.5mg/kg/日のアンジオテンシンII注入[ang-II];一側性腎摘出術+0.30μg/hのd-アルドステロン注入+1%NaCl飲料水[neph-aldo];及びdb/db[db])の3匹の成体雄マウスモデルで6~8週間にわたって検査した。表現型検査には、心筋細胞断面積(cardiomyocyte cross-sectional area、CSA)の小麦胚芽凝集素染色、心筋PDE9、ナトリウム利尿ペプチド、炎症及び線維症マーカーの転写物量についてのRT-PCR;血漿ナトリウム利尿ペプチドについてのELISA;並びに尿中アルブミン対クレアチニン比(urinary albumin to creatinine ratio、UACR)。
【0159】
結果:化合物1は、ang-II、neph-aldo、及びdbモデルにおいて、ビヒクルと比較して心筋細胞サイズ中央値(CSA)をそれぞれ54、58、及び35%減少させた(全てp<0.003)。心筋PDE9、NPPA、NPPB、COL3A1及びIL-1β発現は、全てのモデルにおいて化合物1によって減少した(表1)。血漿BNPレベル中央値(pg/mL)は、全てのモデルにおいて、ビヒクル処置マウスに対して化合物1処置マウスの方が低く(ang-II:2376対5757;neph-aldo:1216対1860;db:830対1216)(全てp<0.007)、ANPについても同様の結果が得られた(表1)。UACRは、全てのモデルにおいて、ビヒクル処置マウスと比較して、化合物1処置マウスの方が低かった(表1)。心拍数及び血圧は、化合物1処置マウスとビヒクル処置マウスとの間で差がなかった。結果を表1に示す。
【0160】
【表1】
【0161】
中央値が表示される。ウィルコクソンの順位和検定からのP値。Ang-IIモデル(8週齢のC57BL/6マウスに、化合物1又はビヒクルを併用して、1.5mg/hのang-IIを6週間注入した)。Neph+d-aldo+1%NaC1モデル(一側性腎摘出術を施し、その後6週間、化合物1又はビヒクルを併用しつつ、d-アルドステロンを注入し、自由に1%NaC1飲料水摂取させた8週齢のC57BL/6マウス)。dbモデル(ビヒクル又は化合物1を8週間投与した20週齢のBKS.Cg-Dock7m+/+Leprdb/J)。mRNA発現レベルは、GAPDH、Rpl4及びEefle1に対して正規化した。
【0162】
結論:化合物1による選択的PDE9阻害は、HFpEFの3つの異なる前臨床モデルにおいて、心臓肥大及び腎機能障害の予防及び治療に有効であった。化合物1は、ヒトHFpEFの臨床試験における有望な治療法候補である。
【0163】
本明細書では本発明の好ましい実施形態を図示し説明してきたが、そのような実施形態が単なる例として提供されたものであることは当業者には明らかであろう。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、多くの変形、変更及び代用案を思いつくであろう。本明細書に記載された本発明の実施形態に対する様々な代替案が、本発明を実施する際に使用され得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を規定すること、並びにこれらの特許請求の範囲内の方法及び構造及びそれらの等価物が網羅されることが意図される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】